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2012年3月8日 平成23年度化学物質のリスク評価検討会(第3回有害性評価小検討会) 議事録

労働基準局安全衛生部

○日時

2012年3月8日(木)10:00~12:00


○場所

経済産業省別館 8階 825号会議室


○議事

○瀧ヶ平室長補佐 おはようございます。本日は大変お忙しい中、ご参集いただきましてありがとうございます。委員の先生方お集まりでございますので、ただいまから「第3回有害性評価小検討会」を開催させていただきます。本日はご都合により、池田委員、西川委員がご欠席です。以降の議事進行は大前座長にお願いいたします。
○大前座長 おはようございます。本日もよろしくお願いいたします。配付資料の確認をお願いいたします。
○瀧ヶ平室長補佐 議事次第と、その裏側に資料一覧を付けております。資料1-1「発がん性以外で選定した化学物質の一次評価の検討」、資料1-2「リスク評価対象物質の選定根拠が発がん性以外の場合の一次評価値に関する対応(案)」、資料1-3「発がん性以外で選定した物質に係る評価値の算出についての検討資料」、資料2-1「アンチモン及びその化合物」の評価値について、資料2-2「アンチモン及びその化合物のGHS情報」、資料2-3、アンチモン及びその化合物の「有害性総合評価表」です。参考1「リスク評価の手法」、参考3「アンチモンの需給状況」、別冊として参考2「有害性総合評価表、有害性評価書」、机上配付で参考4「各物質の提案理由書」です。
○大前座長 議事に入ります。最初の議題は、発がん性以外で選定した化学物質に係る一次評価値について、前回の委員会で生殖毒性とか、神経毒性をスタートにした場合、一次評価値をどうしようかという議論をいたしましたが、それの継続です。事務局から説明をお願いいたします。
○瀧ヶ平室長補佐 資料1-1は、前回の検討会でいろいろご意見をいただきましたので、それをまとめてあります。
 全般的な話としては、いろいろな毒性があるので、一次評価値の設定について、がんだけに限る必要はない。生殖・発生毒性や一般の臓器毒性も含めて本来は検討すべきものである。慢性の臓器毒性についても、ある程度の配慮をすべき。発がん性以外の特殊毒性で、一次評価値を作るのはよい。データが不完全であればあるほど不確実性係数は多くなり、一次評価値が小さくなるという非常に難しい問題がある。一次評価値が二次評価値よりも大きくなるような場合というのは、一次評価値が不要。一次評価値と二次評価値が1桁違えば出すが、1桁違わなかったら出す必要はないというような発想があるかもしれない。
 生殖毒性だと二世代にわたり調査していないと使わないというルールを決めるとか、何かルールづけをしておかないと整合性が取れなくなる。ある程度データが溜まってから、候補となった物質を並べて、トータルとして妥当なところに重篤度を取っているか、期間の補正等が適度にできているか、ということを全体としてバランスが取れているか検討してはどうか。表を作ってみて、根拠とその実験の確かさを横並びにして検討してはどうか。
 呼吸器に対する毒性で、例えば、刺激性の物質を吸わせると呼吸数が減るが、それも取るのか。呼吸器の場合は、解剖してみて病理学的な変化があれば、当然重要な影響だということで採用するのは当然だと思う。この辺もやはり個別の問題になる。呼吸器の場合は、一過性の影響と、沈着して起きてくる、あとの間質性肺炎とか、そういう別のタイプの影響等もある。共通しているのは、神経毒性にしても、こういう呼吸器にしても、病理学的な変化があるのは間違いなくアウトだというのは当然だと思うが、もっと下流域をどう見るかというのは、個別の論文や影響を見て判断せざるを得ないだろう。
 今年度の評価物質に関しては、評価書を作る作業の中で、この議論をもっと深めていき、ある程度の方向性と枠ができればよいのではないか。本日の議論を「リスク評価の手法」の最後の部分に足して、決定版ではないという意味で、案として記載し、それで有害性評価書を作成してもらえばよい。二次文献で毒性等を判断できない場合、オリジナルに当たらなくてはいけない(オリジナルに当たっても、必ずしも元まで辿り着けるかどうかわからないが)。特に、一次評価値を決めるために使った情報に関しては、一次文献に戻ることが必要である。
 初めから全部確定的な判断をするのではなく、10物質とか20物質を溜めて評価し、その中でどのようなデータを使って、どう判断したか、重篤性のUFを使ったか、ばく露期間の補正をどう行ったかを一覧表とし、トータルで眺めてバランスがおかしくないようにチェックした上で、最終判断という方法が必要。ヒトに関する研究結果の場合、基本的には採用すべき。
 あとは、生殖・発生毒性の事項として、現実的ではないばく露の経路を使って、奇形性が認められたような場合をどう扱うか。有害性評価書を見ると、生殖毒性のほうで評価値相当を計算の次に、何を重篤な影響と取ってUFを10余計に付けるか、あるいはばく露期間がいろいろ異なったものがあり、それでばく露期間の修正をどのようにするかというのはなかなか難しいところもある。妊娠期間の後期に、短期間だけ投与して奇形が出てきたときに、その濃度とばく露日数の修正をどうやってするのか、しないのかということで計算結果はだいぶ違ってくる。発生毒性をどう取り扱うかというのは非常に難しい。通常、子どもに出てきた奇形の重篤性もあるが、母体の毒性がない用量で、子どもに現れるのを真の奇形と判断することが多いので、そういう考え方をルールとして作ればよいのではないか。
 生殖・発生毒性で一次評価値を決める場合の情報というのは、OECDなり何なりのガイドラインを満たしている実験のデータを使う、というようなルールづけもあるとは思う。数は途端に減るかもしれないけれども、それがいちばん厳しいルールづけ。試験の内容以前に、GLP基準で実施された試験がどういったものかも、試験の信頼性を担保する1つの重要なところである。生殖・発生毒性に限ると、まずGLP等を満たした動物実験施設で、OECDのガイドラインに則ってやったというのは取るべき情報である。母性毒性がなくて、子どもに対する毒性が出てくるものが1つの条件。投与経路に関しては、労働衛生なので、基本的に吸入ばく露があればよいが、吸入ばく露の毒性情報は非常に少ないと思うので、経口投与の情報も従来どおりに使用すべき。
 神経毒性の事項ですが、末梢神経、中枢神経、不可逆的な毒性、可逆的な毒性、あるいは反応の範囲とかいろいろなものがあるが、確かに影響として出てくるのは反応。毒性とは言えないみたいなものもあるので、どのような線引きをして、どのような質のデータを使うか。神経毒性に関しては、生殖毒性と同様に、動物実験の場合はGLPの施設で、ガイドラインに則ったもの。中枢神経毒性と、特に高次脳機能の結果は動物では得られない。ヒトでしかわからないけれども、ヒトで実験するわけにはいかないので、その辺をどう考えるか。神経の場合、一応ガイドラインに準拠した試験もあるでしょうし、神経症状だけでも毒性と言えば毒性だが、さらに組織変化を伴っているか、その重篤性についても重要なファクターになる。
 神経毒性でスクリーニング試験は、GLP適応の試験施設がOECDのガイドラインで行ったものが非常に多い。その先を詳しく調べるような実験は、具体的なガイドラインがあるという状態ではないと思う。多くの論文は、大学等でそれぞれの方法に従って実験されたものが多いので、そういうものを初めから排除してしまうと、採用する情報がなくなる可能性がある。試験方法の妥当性がそれなりに認められているような試験であれば、大学や研究機関で実施したものも一応採用せざるを得ない。神経毒性に関しては、必ずしもGLPではない所でも、いろいろなアイディアで、さまざまな研究が行われているので、そちらの情報も見ていく。ヒトの調査で影響が出ているものについては、そのほうが参考になる。神経毒性の場合、反射を見ているようなものもある。その影響のレベルによって、反射レベルの影響はアドバンスエフェクトと、どこで線引きするかというのは非常に難しい。それは、個別の物質、個別の論文、個別の影響を見て、この影響はやはり防ぐべき影響だということを判断していくしかない。単回投与による標的臓器毒性の部分と、反復投与による臓器毒性の部分の両方を比較し、総合的に判断しないと、本当に神経毒性であるか否かはわからない。例えば、2-アミノエタノールで自発運動の抑制とあるが、これが神経毒性によるものかどうかは、これだけでは判断できない、というご意見がありました。
○大前座長 前回の議論をまとめていただきました。概ね私の記憶している範囲で、全般的な話、生殖毒性、神経毒性でこのような議論があったのではないかと記憶しております。何か付け加えること、あるいは修正すること等はありますか。
○宮川委員 細かいことですけれども、最後の頁のいちばん上は「アドバンスエフェクト」ではなくて、「アドヴァースエフェクト」です。
○大前座長 そのほかにはよろしいでしょうか。前回は、資料1-1にあるような議論をしたということで、これをもとにして事務局のほうで作業をしていただいたようなので、事務局から説明をお願いいたします。
○瀧ヶ平室長補佐 資料1-2をご覧ください。前回のご意見を集約する形で、一次評価値に関する対応としての案です。
 選定根拠が生殖・発生毒性の場合について、生殖・発生毒性試験(原則は吸入ばく露試験とするが、吸入試験結果を使用できない場合は、経口投与の情報も使用)が、下記(1)(2)の条件を満たす場合、得られたNOAEL等が妥当であることを、リスク評価検討会(有害性小検討会)で確認し、一次評価値を算定し、その数値が二次評価値の10分の1以下である場合は、リスク評価に活用する。
 (1)GLP等を満たした実験施設で、OECDのガイドラインに則って行った試験によるデータであること、又はヒトに対する影響について信頼できるデータであること。(2)発生毒性については、母体毒性がなくて、子どもに対する毒性が出ているものであること。
 選定根拠が神経毒性、その他の場合。毒性試験がGLP等を満たした実験施設で、OECDのガイドラインに則って行った試験、又は信頼できる試験もしくはヒトへの健康影響のデータである場合、得られたNOAEL等が妥当であることをリスク評価検討会(有害性小検討会)で確認し、一次評価値を算定し、その数値が二次評価値の10分の1以下である場合は、リスク評価に活用する。こういう対応方針を考えました。
 資料1-3「発がん性以外で選定した物質に係る評価値の算出についての検討資料」ということで、前回、いろいろな物質の評価レベル等について、一覧表にして検討してみてはどうかというお話でしたので、ある程度物質を書き込んでおります。○付きの数字が後ほど出てくるのですが、○付きの数字については、今年度の委託事業で、現在有害性評価書を作成してもらっている途中のものです。5.のエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート等については、まだ中身が確定しているものではありませんので、一応議論の参考にということで載せております。
 1から順次説明させていただきます。フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(別名DEHP)です。これについては、ACGIHのTLVが5mg/m3です。そこは読んでいただければと思います。日本産衛学会についても、提案理由で読んでいただければと思います。その下の有害性の種類のNOAEL等から算出した評価レベルということで、試験結果について、評価レベルを設定するとこのようになるということで書いてあります。雌雄のICRマウスにフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)の0%、0.01%、0.1%、0.3%を106日間投与した実験では、0.1%投与群で妊娠率の低下、産児数及び生存児数の減少が見られ、0.3%投与群では妊娠が成立しなかったということで、NOAELを14mg/kg体重/日ということで0.01%のほうをとったということで、そこから計算をして、評価レベルを11.8mg/m3に設定してあります。これはACGIH、日本産衛学会で出している5mgよりも高いということになっています。
 その下のほうの評価レベルのほうは、生殖毒性等ではなくて、肝臓及び腎臓重量の増加等の組織学的変化についてNOAELを出し、結果として7ppm food又は3.2mg/m3ということが出ています。
 2のアンチモンについては、もともとが発がん性で酸化アンチモンがIARCで2Bということで選定されておりますが、生殖毒性についてもあるということです。アンチモン自体については、議題2のほうで再度ご説明いたしますけれども、ACGIHのほうで0.5mg/m3、日本産衛学会のほうでは0.1mg/m3ということで、酸化アンチモンについては、日本産衛学会のほうが新しいということで、0.1mg/m3を二次評価値で採用しようと前回の話ではなっております。
 生殖・発生毒性の評価レベルの検討については、妊娠期間中に投与し、21日目に帝王切開した結果での影響をもとに、評価レベルを算定し、NOAELが0.027mg/m3、8.1×10-3mg/m3というものが評価レベルとして計算されたということになっています。
 次の頁も同じく生殖毒性の関係で、3の2-エチルヘキサン酸です。ACGIHについては5mg/m3となっております。NOAELのほうから評価レベルを計算したのが下のほうになります。Wistarラットに、飲用水に混ぜて飲ませた結果をもとに、LOAELを100mg/kg体重/日ということで計算をしたところ、6mg/m3となっています。
 4.のN,N-ジメチルアセトアミドについては、ACGIHで10ppm、産衛学会も同じく10ppmです。有害性の種類から評価レベルを計算したものについては、同じく妊娠中に吸入ばく露させた結果、胎児の発育が阻害された。ラットの実験結果から281ppmをLOAELとして採用して計算して0.281ppmが出てきました。
 3頁は2-エチルヘキサン酸の続きで、これも生殖毒性から選定しているのですけれども、ほかの反復投与毒性として、肝臓等の異常ということで計算した結果51mg/m3ということで、ACGIHよりも1桁大きな数値が出てきています。4のN,N-ジメチルアセトアミドの続きになりますが、こちらもACGIH、日本産衛学会は10ppmなのですが、肝障害等の実験結果をもとに計算すると0.15ppmになったということです。
 4頁も生殖毒性から選ばれた5.のエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートです。ACGIHが0.1ppm(0.5mg/m3)、日本産衛学会も同じ数値になっております。有害性の情報から計算をすると、精子及び精子細胞の消失等ということで計算をして15mg/m3(3.2ppm)ということで、これはACGIH、日本産衛学会でも大きな数値が出てきました。
 6.のジエチレントリアミンはいまやっていただいているものですが、ACGIHが1ppmとなっていて、下のほうの有害性の種類から計算をすると、妊娠期間の延長、胚・胎児死亡の増加等からNOAELを出して、評価レベルが4.32ppmということで、ACGIHの数値よりも高い数値が出ているということです。
 7.の2-ブロモプロパンも、生殖毒性から選定しているものです。ACGIHは情報なし、日本産衛学会は1ppmということで、有害性の種類から選んだ場合、ラットに毎日吸入させた結果、200ppm以上の群で用量に依存した性周期の延長が見られ、6日以上の性周期を示した割合は1,000ppm群で対照群の2倍以上に認められたが、有意な変化ではなかったということで、NOAELを50ppmということで計算をして、0.97ppmということで、ほぼ日本産衛学会の数値と同じような評価レベルになりました。下のほうは、もう少し違った試験結果で計算すると、100ppmということで、日本産衛学会の数値よりも大きな数値が出ています。
 生殖毒性と神経毒性は分けたほうがよろしいかと思いますので、とりあえずここまでで切らせていただきます。
○大前座長 前回のご意見、ご議論に従い、いくつかの物質について実際にやってみたということになります。それぞれ有害性の種類、生殖・発生毒性の情報が入っておりますけれども、今回のこの部分に関しては先ほどのOECDガイドラインに則っているかどうかはちょっと外していただいて、それは元に戻らないとわからないことです。仮にOECDのガイドラインに則っていると仮定してという形で見ていただきたいと思います。このような感じになりそうだということですが、いかがでしょうか。
○宮川委員 N,N-ジメチルアセトアミドの場合を見ていただきたいのですが、その隣と比べるとおわかりいただけると思います。不確実性係数の計算のところで、2-エチルヘキサン酸の場合にはUFとして、ばく露日数の試験期間のUFを取っておりません。こちらのN,N-ジメチルアセトアミドでは試験期間として10が取られております。中を見ますと、これはどちらも妊娠の中にばく露、例えば上のほうだと6~19日目、左側の2-エチルヘキサン酸ですか。N,N-ジメチルアセトアミドの場合は、ラットの実験だと6~15日。下のほうにあるウサギの実験では7~19日と書いてあります。どちらも比較的妊娠の短い期間にばく露したものですが、UFの取り方が違っております。これは、いままでの作業の中で取った場合もあるし、取らなかった場合もあるということで統一がとれていないので、こうやって見ていくといくつか出てくると思います。
 その中で、UFを取ったために、二次評価値よりも10分の1以下になったものについては、それが妥当かどうかをよく考えて、この低い値を採用するのか、あるいはこれでUFを取らなければ0.21ppmではなくて、2.1ppmになるとすると10分の1にはならない。こういう形で並べて見ていって、この場合はこのUFがどうかということを考えることが重要かと思います。
 難しいのは、このように妊娠期間のうちの一部だけ見るような、比較的発生毒性に注目したようなタイプの実験と、それから反復投与毒性と同時に見るという形で9週間のばく露を行った(2-ブロモプロパンの)実験が後のほうにも出てくると思いますけれども、そちらをどのように対応させるかが問題です。9週間ばく露のほうは13週ばく露と日数補正をしていたと思いますから、その辺も考える必要があるのかと思います。
○大前座長 そのほかにはいかがでしょうか。いま宮川先生がおっしゃったようなことを、まとめていまのリスク評価の資料の後ろのほうに、生殖・発生毒性の場合とまた出てくると思うのですけれども、そこのところにしっかり書き込まないと、統一したルールでやらないといけないということです。実験の質自体は、リスク評価検討会(有害性小検討会)のほうでしっかり見ていただいて、そこで実験の質を評価していただき、それに基づいてこんな感じになるということです。結構細かいところをしっかりルール化しておかないと、ばらばらになってしまうということです。
○清水委員 生殖・発生毒性はあまりよくわからないのですが、このガイドラインで、いつばく露させるかというものはないのですか。
○宮川委員 生殖毒性試験は4つぐらいあります。催奇形性の試験と、一世代試験、二世代試験と、それからコンバインドといって反復ばく露の毒性試験と併せるもの、それぞればく露期間が違うと思います。実験のタイプどおり本当にきちんとガイドラインに合っているかどうかというのは見ていかなくてはいけなくて、そもそも設定されているばく露期間が違うのを、どうやって統一するかというのが非常に難しい問題です。
○大前座長 そのほかにご意見はいかがですか。今回トライアルしていただいたこの結果、二次評価値、ACGIHと日本産衛学会の値と、いま計算していただいた評価値を比べてみて、今回の案では10分の1以下だったら一次評価値として採用しようと。1桁も違わないのだったら大差はないから、一次評価値をあえて出すことはない。もちろん一次評価値が大きくなってしまうと論外ですけれども。次の神経毒性のほうをお願いいたします。
○瀧ヶ平室長補佐 6頁で神経毒性の関係です。8.の2-アミノエタノールは平成24年度に入ってからリスク評価をすることになる物質です。ACGIHのほうはTWAで3ppm(8mg/m3)、STELで6ppm。根拠となる試験については、その下の日本産衛学会と同じ試験をもとにということです。日本産衛学会のほうは、3ppmを許容濃度として提案していると思います。これについてはイヌ、ネズミについての試験結果等がそこに書いてありますけれども、そのような実験をもとにしております。有害性の種類から評価レベルを求めた場合ということで、ラット、モルモット、イヌを本物質蒸気5~25ppmに40~90日間吸入ばく露した実験で、自発運動の抑制、脱毛、表皮の菲薄化が観察ということで、LOAELを5ppmとして計算をしたところ、評価レベルとしては0.05ppmになりました。
 9.のアセトニトリルは、いまやっていただいている途中のものです。ACGIHでは20ppm、日本産衛学会からはまだ提案はないということです。反復投与毒性のほうから求めた場合ということで、マウス雌雄に13週間反復吸入ばく露したところ、限局性潰瘍、雌雄の群で前胃粘膜の限局性及び多発性退色等が認められて、NOAELとしては100ppmを採用して計算したところ、7.5ppmとなったということです。
 10のクメンのほうは、ACGIHのほうで、呼吸抑制が見られた実験のところで50ppmという数値をTLVで出しています。反復投与毒性については、ラットにクメンを6時間、5日間、それで13週間の全身ばく露で500ppm以上の群で自発運動量の有意な減少を認めたということで、評価レベルは7.5ppmとなっています。
 これは神経毒性から選択したものなのですけれども、2-アミノエタノール、アセトニトリルについては、生殖・発生毒性についての情報もあるということで、生殖・発生毒性から計算したところ、評価値が2-アミノエタノールについては1.2ppmということで、ACGIHの3ppmよりも低くなっています。アセトニトリルについて評価レベルを出したところ、112.5ppmということ、その下のほうには経口ばく露の試験結果ということで5.4ppmが計算されたということです。
 8頁で11、一酸化二窒素です。これはGHSの関係でいくと生殖・発生毒性、神経毒性ともに基準値ということで選ばれています。ACGIHについては、TLV-TWAで50ppmが出されております。評価レベルについては、生殖・発生毒性の試験結果から、評価レベルが5ppmと計算されております。
 12のクロロメタンについては、ACGIHのほうで、肝腎臓障害を来し、中枢神経抑制と死を引き起こすということで、TLVが50ppm、STELで100ppmが出されております。日本産衛学会のほうは50ppm。評価レベルのほうは、生殖・発生毒性については、マウス雌75匹を1群として、マウスを交尾させた後に、妊娠6~18日目まで吸入させた結果、NOAELを250ppmで計算して、19ppmとなっております。
 反復投与毒性についてはヒトの情報による評価ということで、ボランティアの方に0ppm、20ppm、100ppm、150ppmを6週間吸入させ、行動、神経、筋電図、臨床等の広範な検査を行った結果、何ら異常は見出せなかったが、本物質の呼気や血中濃度に数倍の個人差が見られたということ。2~3週間にわたって300ppmに、1日当たり8~16時間ばく露された6症例のうち、1人は判断力の低下、自動車運転の誤操作、視覚低下、摂食及び嚥下困難、頭痛、平衡失調が10日ほど続いたため入院したが、臨床検査では軽度の高血圧以外には特に異常は見られず、3カ月の入院で症状は改善した。そういうヒトの情報をもとに計算した結果、30ppmを評価レベルとして出しています。
 13のタリウム及びその水溶性化合物です。ACGIHでは0.02mg/m3、日本産衛学会のほうは情報なし。有害性の種類の試験結果からレベルを計算したところ、生殖・発生毒性については、硫酸タリウムをラットに妊娠6~9日間に経口投与した実験で、学習能力障害が観察されたという試験をもとに計算をして、0.0008mg。反復投与については、ラットに硫酸タリウムを90日間経口投与した実験で、脱毛、流涙、眼球突出の発生率が投与量依存性に増加し、血清生化学変化を認めたということで、NOAELを0.2mgとして計算をして、0.002mg Tl/kg/dayというのが評価レベルで出ました。
 14のメチレンビスについては、呼吸器官等のほうで、有害性があるということで選ばれていて、神経毒性とか生殖毒性とは違うのですが、TWAで0.005、日本産衛学会のほうでは0.05mg/m3、単位が違うので値的にはほぼ一緒です。有害性の情報から評価レベルを計算すると、マクロファージの集積の肺病変等が認められて ということで、LOAELを0.23mg/m3で計算をして、2×10-3mg/m3という数値が出ている、という評価レベルの計算をしております。あとのほうは、神経毒性のほかに生殖毒性が入ったりしていますが、このような評価レベルの計算をしているということです。
○大前座長 神経毒性がメインで、後ろのほうは若干神経毒性以外のものもありますが、いかがでしょうか。例えば、2-アミノエタノールとかアセトニトリルは自発運動の低下、あるいは自発運動の抑制というのを影響と見て計算するとこうなる。アウトカムを何を取るかというのは非常に重要な問題だと思います。
○宮川委員 いまの2-アミノエタノールの例だと、90日間、13週ばく露のようなことをやっていて、自発運動の抑制が見られたと書いてあります。これが、毎日のばく露のすぐ後に測ったデータなのか、直前に測ったデータなのか、あるいは反復ばく露が終わって日数を置いてからもそういう影響が残るのかどうかによって、事実上急性の影響なのか、本当に蓄積した慢性の影響なのかわかりません。原著に当たってみないと、これを採用するかどうかというところには、なかなか難しいものがあるような気がいたします。
 それから、一酸化二窒素ですが、生殖・発生毒性で、動物のデータから5ppmが求められていて、TLVが50で10倍の開きがあります。TLVの根拠を見てみますと、ヒトのデータで、自然流産の危険性の増加を来すようなものだとか、精神運動や、認識機能の低下等を最小限にできるということが書いてあるので、場合によってはヒトのデータがあるかどうかを確認した上で、動物のデータと並べて、原則的には低い方を取るということだと思います。それによって計算結果が違ってくる可能性もあると思います。
 タリウムに関しては、評価レベルが「kg/day」という単位になっているところがありますので確認をしていただき、もしかすると換算間違いとか、いくつか計算間違いもあるのではないかと思います。9頁の下のほうの計算式です。例えば、いちばん下も「Tl/kg/day」と書いてあります。評価レベルが「mg/m3」になっていません。これは、まだ作業中のものを持ってこられたということなので、この辺は確認が必要かと思います。
○大前座長 そのほかにはいかがでしょうか。
○高田委員 6頁のアセトニトリルの反復毒性のところなのですが、神経毒性をここでは見ていきたいということなのでしょうけれども、この実験ではNOAELを100ppmとしています。その上の200ppmのところというのは、前胃の扁平上皮過形成とか、胃の病変主体で、これだと神経毒性を見ていないデータを、エンドポイントごとにNOAELを計算しているのですが、それはよろしいのでしょうか。
○大前座長 これは、神経毒性だったら、先ほどの自発運動の低下が800ですか。本来は神経毒性から見たら400からスタートすべきだということですね。
○高田委員 はい。
○松井化学物質評価室長 いまのご指摘ですが、今後算定をするときに非常に問題になってくるところです。神経毒性は反復投与の試験の中に大体含まれていて、その結果に神経毒性がある。ほかの影響も付随して記載されているので、通常評価書を作るときには、反復投与の結果、どういう反応が出たかということで、評価書の中で評価レベルを算定されます。その場合、神経毒性だけを抜き出したほうがよいのか、あるいはほかの影響も重視して、そちらのほうを考慮するのか、その辺もルールを決めておかないと違う数字になってまいります。
○宮川委員 いまの点ですけれども、通常の13週の反復吸入ばく露試験で毒性評価をするときに、ルーチンで行動観察に入ると思うのです。それは、神経毒性のスクリーニングとしてそういうのを一応見るということです。そこでポジティブの場合は、本当であればその先に神経毒性の評価をしなくてはいけなくて、OECDのガイドラインには神経毒性テストのガイドラインと、発達神経毒性のガイドラインがあります。そのようなもので、さらに詳細な評価が必要ということであります。現実的にはそこまでいかないでおしまいになってしまうものが多いです。自発運動のところに影響が出ただけで、これが神経毒性かどうか、これが本当のLOAELかどうかというのはちょっと疑問があります。
 ただ、ほかの毒性も取るかどうかということも、神経毒性と同じように詳細な評価が必要なものも出てくると思いますので、その辺はなかなか難しいところであります。もし神経毒性に注目してこの事業をするということであれば、一応神経毒性のところを抜き出した上で評価すべきです。評価書を最初に作るときに、反復毒性全般と、神経毒性と思われるところを並べて抜き出しておくという作業が必要になってくると思います。
 反復毒性全体としては前回も議論がありましたように、そもそもTLV等を設定するときに、原則的には考慮されているはずだということから、個別の柔軟な対応をしないといけないと思います。
○大前座長 いまの評価書は、反復毒性のところがまとまっていますけれども、あれに神経毒性の項を独立させて、それでその他の臓器毒性を独立させて分けて書かないと、結局はわからなくなってしまう。資料1-2は、生殖・発生毒性と神経毒性、あっ、「その他の場合」とあります。「その他」は神経毒性を含んで全部という形になりますね。失礼いたしました。
○瀧ヶ平室長補佐 本当は、生殖毒性と神経毒性のどちらかで選ぶというパターンなのですが、それ以外のものでも委員の先生方から、これは評価したほうがいいと言って選ばれるものがあるということで、「神経毒性その他」という括りにしたのです。そういう意味では、神経毒性で選んだものという切り分けをすれば、やはり神経毒性についてのLOAEL/NOAELを出したほうがいいということなのでしょうね。
○大前座長 資料1-2のところに3番を作って、「その他の毒性」ということで独立させたほうがわかりやすいでしょうね。そのほうが神経毒性、生殖・発生毒性にちゃんと注目していると。もちろん発がん性は当然ですけれども、そういう意味合いになりますから、そのほうがベターなのでしょうね。
 それから9頁のMDIの場合ですけれども、日本産衛学会もACGIHも呼吸器で作っていて、雄ラットの試験も呼吸器の試験です。いずれも呼吸器毒性で、この場合は一次評価値は要るのかというところなのです。ターゲットが違うから、一次評価値を作る価値がある、ターゲットが同じだったら一次評価値は作る必要がないかもしれない。
 いずれにしても、例えば今回はこのようにトライアルしていただきましたけれども、詰めなくてはいけないところは、当然これからしっかり詰めなければいけないわけですが、資料1-2の生殖・発生毒性の場合の条件の(1)(2)、それから神経毒性の場合の記述はよろしいですか。前回は、神経毒性に関しては各大学、研究機関等がいろいろな工夫をして、高次脳機能などの実験をやっているのですが、それはなかなかガイドラインにはかかわってこないということで、それも取るべきではないかというのが、資料1-1の中に記載がありますけれども、この辺はどうでしょうか。
○宮川委員 これは2のほうの1行目の、「OECDのガイドラインに則って行った試験または、信頼できる試験」というのが、基本的には個別に考えて、ガイドラインでなくて大学等がやったものでも原著を見て、きちんと評価できるものであれば取るという意味に私は読んだのですが、それでよろしいでしょうか。
○大前座長 そういう意味でよろしいですか。
○瀧ヶ平室長補佐 はい。
○大前座長 ここのところに、いまの話は含まれているということで、試験が信頼できれば、必ずしもガイドラインに則っていなくてもいい、あるいはガイドラインのないものもある。いままでは、ほとんど発がんがターゲットでやってきて、生殖・発生毒性が少し出てきましたので、そこはしっかりやっていただくのですが、今度はそれに加えて神経毒性と、その他の毒性と分けてしっかりとやりましょうと。それに基づいて、必要だったら一次評価値を計算していきましょうというお話です。そのルールとしては、資料1-2がいちばん元のルールということで、さらに細かいルールは実際のリスク評価の手引きのほうにしっかり記載していくことになろうかと思います。
 そのリスク評価の手法のほうで、本日出てきたご意見で検討しなくてはいけないのは、生殖・発生毒性の場合ですと、ばく露のタイミングをどうするかというところ。それから前回出てきた、生殖・発生毒性のどこまでを有意な影響として取るかどうか、アウトカムをどこまで取るかというところです。リスク評価検討会で議論していても、これは大した生殖・発生毒性ではないから取らなくてもいいのではないかというご意見が出るような影響もあります。やはり、これは取らなければいけないというのも当然あるわけです。そこのアウトカムのレベルはしっかり書く必要がある。
 それから神経毒性に関しては、どのタイミングで出た毒性なのか。要するに短期で、朝吸って、夕方に寝てしまって、また翌朝ちゃんと起きているといった反復投与の場合、そのような短期の話なのか、あるいはその影響が蓄積していって、それで長期的に神経に対する機能的、あるいは組織的な障害を起こしているものかどうか。そこのところを、しっかり分けて考えなくてはいけないということがいま出てきたと思います。
 9頁のタリウムの生殖・発生毒性の4行目に、「学習能力の障害が観察された」とありますが、これはたぶん子どものラットのことを言っていると思うのです。これは、生殖・発生毒性のほうに入れていいのですよね。現れているのは神経毒性だけれども。
○宮川委員 そう思います。
○大前座長 そのほかにご意見はいかがでしょうか。前回の議論、それから本日の議論、それから本日まとめていただいた表等をもとにして、資料1-2は概ねこれでいきましょうと。ただし、神経毒性はちゃんと独立させて、3番として「それ以外の毒性」ということで、神経毒性をしっかり意識して記載する。
 それから参考1にあります、「リスク評価の手法」の後ろのほうに、生殖・発生毒性あるいは神経毒性に関しては、その判断基準をこれから作っていく。どのようなアウトカムを取るのかということも含めて作っていく。その場合に、小委員会のほうには、生殖毒性の専門の先生は2人いるのですけれども、神経毒性の専門の先生はいません。来年度には、神経毒性に明るい先生に加わっていただいて、それで具体的な評価手法の細かいところを詰めていくということになりますか。いまのあの委員会には、神経毒性の専門家はいないと思うのです。いままでは神経毒性には注目してこなかったのです。発がん性と生殖・発生毒性は専門家の先生がちゃんといらっしゃるのですが。
 最初の議題はこのぐらいでよろしいでしょうか。ほかに何かありますか、ないようでしたら2番目の議題の、「アンチモン及びその化合物」の評価値について事務局から説明をお願いいたします。
○瀧ヶ平室長補佐 資料2-1をご覧ください。今年度の委託でばく露調査等をしている物質で、平成24年度に入ってからリスク評価が行われるものです。前回の説明の際にこれをお出ししております。発がん性については、IARCで2Bになっているのは酸化アンチモンです。ここには酸化アンチモンと三酸化アンチモンと両方載せていますけれども、別名ということで同じものです。原著のほうで2つの書き方をしているものですからそう書いてあります。
 発がん性から考えると、右の下のほうの評価値ですが、一次評価値については、閾値のない場合であるのだけれども、ユニットリスクに関する情報がないということで、一次評価値、発がん性についてはなし。二次評価値については、アンチモン及びその化合物として、日本産衛学会のほうで0.1mg/m3を出しておりますので、それを二次評価値ということで提案しております。
 検討していただきたい事項としては、酸化アンチモン以外の一次評価値をいかがいたしましょうかという話と、前回の酸化アンチモンの製造現場について、ACGIHができるだけ低くというものを出しているので、それの扱いについて現在の製造状況についての確認をということでした。最初に製造現場のほうの話ですが、参考3に「アンチモンの需給状況」を付けております。
 製造している事業者の日本精鉱から情報をいただいております。三酸化アンチモンの製造については、現在三酸化アンチモンをどうやって作っているかというと、金属原料、これはアンチモンが99.6%以上で、不純物が非常に少ないものを輸入してきて、それを酸化させて酸化アンチモンにしているという製造方法が取られています。過去1960年代までは、日本でも採掘をして、鉱石から精錬という手法でいろいろ製造していた。そのときには鉱石からの精錬になるので、不純物も非常に多くてということです。
 現在は、金属アンチモンを輸入してそこから作っているという話なのですけれども、資料の1頁の下のほうが、アンチモンの地金で、金属アンチモンとして輸入している状況の表です。2頁の表は、三酸化アンチモンとして出来上がったものを輸入している数字です。金属アンチモン、もしくは三酸化アンチモンとして輸入をしている。そのうち金属アンチモンについて、それを使って三酸化アンチモンにしている工程の作業が残っているということです。
 3頁は三酸化アンチモンの出荷実績です。これは金属アンチモンから三酸化アンチモンを製造して出したものです。その下のほうは、三酸化アンチモンの用途ということで、「難燃助剤」として使われているのがほとんどです。下のほうの「その他」というのが、触媒等に使われているということです。アンチモンの製造については、今はそういう状況にあるということでした。
 酸化アンチモン以外の一次評価値の話なのですが、資料2-3「有害性総合評価表」にアンチモン及びその化合物を付けておりますが、先ほど一覧表の中にも載せておきましたけれども、それの2頁目のところに生殖・発生毒性の試験結果から評価レベルを出すと0.027になるという試験が出ております。
 それの詳しいのが、「有害性総合評価書」の11頁にオとして、生殖・発生毒性、吸入ばく露、三酸化二アンチモンということで、三酸化二アンチモン0.250mg/m3を交配前1.5~2カ月、交配期間、妊娠期間及び出産の3~5日前まで4時間吸入ばく露し、無処置の雄と交配させた試験で、妊娠匹数は対照群、ばく露群でそれぞれ10/10、16/24匹であった。また、ばく露群の非妊娠動物では、卵胞に卵細胞がなく、卵巣嚢腫が観察された例も見られた。雌ラットに、三酸化二アンチモン0mg/m3、0.027mg/m3、0.082mg/m3、0.27mg/m3を妊娠期間中に1日24時間、21日間吸入ばく露し、妊娠21日目に帝王切開した試験で、母動物の体重変化には投与による影響は見られなかったが、0.082mg/m3群に胎児体重の低値、0.08mg/m3以上の群に着床前後の子宮内胚・胎児死亡率の増加等が見られた。
 これの原著がIARCのモノグラフとか、製品評価技術基盤機構の評価書をもとにこの試験結果を引用しております。一次評価値の話と、製造現場でのできるだけ低くという取扱いについての検討をいただければと思います。
○大前座長 アンチモンに関して製造の話と、生殖・発生毒性をもとにして計算すると0.008mg/m3になるということで、アンチモンが発がん以外の理由で一次評価値が提案できる最初の物質になるかもしれないという観点でご議論をお願いいたします。先ほどの議論の中で、実験の質の面で、ここで取り上げております試験は、主として取り上げていい質かどうかというところに関してはいかがですか。これは、IARCの文献を引用していますので、そんなにレベルの低い情報ではないと思います。とは言っても原著に当たっていないので、資料1-2の(1)にあるGLP等を満たした実験施設で、OECDのガイドラインに則って行った試験データであることということは、ちょっとこれだけでは単純に判断できないということです。(2)のほうの、母体毒性がなくて、子どもに出ているというのは満たしていると思います。
○宮川委員 最終的にリスク評価で、その評価値に使われそうになったものについては、念のため原著は取るということ。それからIARC等で引用しているときに、そこの最後の結論、IARCとして生殖毒性をどう考えているかというのは、結論の部分があるかどうかというのをできれば確認したいところだと思います。IARCの場合は難しいかもしれませんけれども、ACGIHとか日本産衛学会の場合であれば、それなりのことが書いてあるような気もいたします。
○大前座長 前回の議論でも、資料1-1の2頁の5つ目の○で「特に、一次評価値を決めるために使った情報に関しては、一次文献に戻ることが必要」ということですので、IARCは信頼できる文献ではあると思いますけれども、少なくともIARCにたぶん文献が載っていると思いますから、それで文献が取れれば、それを取ってしっかりチェックをする。
 資料1-2には書いてありませんけれども、資料1-1の「一次評価値を決めるために使った情報に関しては、一次文献に戻ることが必要」というのは共通ルールでよろしいですよね。生殖・発生毒性、もしくは神経毒性に関しては。その上に、オリジナルまで必ずしも辿り着けないかもしれないと書いてありますけれども、それは仕方がないです。
 本日の段階ではオリジナルがありませんので、オリジナルが妥当な文献であれば、アンチモン及びその化合物に関して、一次評価値の案として、生殖・発生毒性をもとにして数字はいくつでしたっけ。
○松井化学物質評価室長 いまのアンチモン及びその化合物の関係で、ちょっと議論をいただいておかないといけないかと思っているのがもう1つあります。資料2-2をご覧いただくと、アンチモン及びその化合物の中でいろいろな化合物があります。もちろん鉛とかフッ素の関係で、毒性が出ているものはちょっと別格だと思うのです。先ほどの話で、発がん性についてIARCが評価をしているのが、2Bになっているのは酸化アンチモンということです。生殖毒性の先ほどの試験も、材料が酸化アンチモンなのです。この辺で酸化アンチモンの試験結果で、その評価値をすべて、ACGIHのほうはアンチモン及びその化合物という括りで作っておりますので、それは採用できるかと思うのです。一次評価値を判断するときに、対象の化合物なり、金属なりはどうするかというところは、後々議論がまた出てくるかと思います。
○大前座長 いかがでしょうか、金属というのはみんな共通して同じ決め方をして、ルールづけしておかなくてはいけないということになります。いまの場合は、酸化アンチモンに限定して一次評価値を示す。そのほかのものに関しては情報がないのでわからないということになります。そのようなスタイルにすべきか、あるいは場合によって生殖・発生毒性のメカニズムがわかっていれば、アンチモン全部とやってもいいかもしれませんが、それがわからない場合に関しては単品を示す。神経毒性も同じだと思うのです。あるいは、そういう意味では発がん性も同じでしょうか。
○清水委員 日本では、大体金属化合物ですと、例えば鉛だったら鉛とその化合物というような、カドミウムなどもそうです。今回出ているのは、水溶性とか何か限定しているのがあります。一般的には、その化合物というのに、こんなにたくさんあると、そのデータとしてはターゲットを絞ったものしか出てきません。そうなると、すべてを引っくるめて言うのはなかなか難しいのではないかと思います。
○宮川委員 水溶性の無機の塩で、アンチモンのイオンが出てくるようなものでは基本的に同じと考えてもいいかもしれませんが、ただクロムなどの引き合いを考えると、酸化数によって毒性が違ったりする可能性もあると思いますので、そこはいくつかに分けなければいけないものも今後出てくるとは思います。
○細田氏(中災防) 実際に測定をするときを考えたときに、今年の測定で見ると、ほとんどが三酸化アンチモンです。やはり加工している部分が多いものですから、製品になったものですから。ただ、一部に製造現場で、化学種が何であるかわからないダスト的なものがあるわけです。そういうものを測ったときに、一次評価値を決めるために、その化学種を全部同定しなければいけないとなると、現実味が全然ないと思うのです。そういうものを特定的に作っている現場ならいいですけれども。
○大前座長 動物実験の場合は、化学種はたぶん決まると思うのでそれはいいのですが、実際にヒトのデータを使う場合は、いまおっしゃったようなことは、主なものは三酸化アンチモンだろうけれども、ひょっとしたらそれ以外にも入っている可能性はあり得ます。
 それは、それこそ個別対応でしかやりようがないですか。でも、三酸化アンチモン製造工場と書いてあれば、やはり三酸化アンチモンで、ほかのがあったとしてもメジャーは三酸化アンチモンなのでしょうから。測定はICP等でまとめて、アンチモンとしてやっていたのですよね。
○細田氏 はい、アンチモンとして測ります。
○松井化学物質評価室長 幸いと言っていいのかどうかわからないのですが、ACGIHのTLVの括りが、アンチモン及びその化合物で、それで0.5というのが提案されています。
○細田氏 それは、それで構わないです。
○松井化学物質評価室長 そこの部分は、判断に使う二次評価値の部分はこれが使えるということです。
○細田氏 はい、そうです。測定という意味では、一次評価値を同じ定義なら楽なのです。化学種ごとに違うという話になってしまうと。
○大前座長 いまの皆さんのご意見は、大体一次評価値に関しては、化学種がわかればそれをしっかり書くと。特に動物実験などですと、化学種は必ずわかったものを使っているはずなので、それで出てきた生殖毒性なり、あるいは神経毒性なり等々の結果については、そのものを同定する。同じアンチモンの化合物、ほかのアンチモン化合物と同じようなことがあれば、当然同じようなことをやる。三酸化アンチモンと、例えば塩化アンチモンとかいっぱいあります。タリウムみたいに水溶性かどうかというのも、もし情報がちゃんとあるのだったら、一次評価値に関しては分ける。
 それから昨日でしたか議論があった、酸化チタンのルチルとアナターゼみたいなものも、データとしてしっかり分けられるのだったら、一次評価値を書く場合はそれをちゃんと分ける。そのようなルールでよろしいですか。たぶんそうしないとまずいですよね。
○細田氏 そうですね。
○瀧ヶ平室長補佐 資料2-2を説明させていただきます。アンチモン及びその化合物として、モデルMSDSのほうに載っているものをまとめてあります。アンチモンとしては、GHS区分としては呼吸器のほうで「区分2」になっている。アンチモン化水素(スチビン)については「区分1」、呼吸器系、腎臓、血液。これは気体の物質ということです。 
 アンチモン酸鉛については、鉛化合物としてIARCで2Aになるということです。フッ化アンチモンについては、フッ素として骨の部分のところと、アンチモン化合物としてACGIHが設定しているのをもとに肺、心血管系ということです。その下のものもACGIHをもとに、アンチモン化合物として肺、心血管系のところを「区分1」にしています。三塩化アンチモンについては、三塩化アンチモンとしてGHSのほうで、生殖細胞変異原性が「2」、呼吸器系が「2」となっております。酸化アンチモンについては、先ほどのIARCのほうで2Bになっているモノグラフをもとに、GHSも1Bの区分にしています。その下の2つも、アンチモン化合物として、ACGIHのTLVの数値のもとになったものをもとに、そのようなことで「区分1」にしています。物質を特定しての生殖毒性ということになると、酸化アンチモンが、IARCで述べているのをもとに1Bになっていました。資料2-2の説明は以上です。
○大前座長 アンチモンでもう1つ問題がありそうなのは、ACGIHの資料である参考4の46頁と51頁です。46頁のほうは、“ANTIMONY and COMPOUNDS”で、アンチモン及びその化合物ということで0.5になっております。
 51頁のほうは、“ANTIMONY TRIOXIDE,PRODUCTION”と書いてあって、三酸化アンチモンの製造で、ここではA2になっています。アンチモン及びその化合物では発がん分類の記載はなくて、PRODUCTIONのところの製造現場というところでA2になっています。先ほど、製造方法に関する情報を紹介していただきましたが、1960年代までの製造法と、今の製造法は随分違っているらしいです。1960年代までの製造法でやった場合は、“ANTIMONY TRIOXIDE,PRODUCTION”のところでがんが出てきている。
 現在は、アンチモンと酸素をくっ付ける製造法だと、一応アンチモンの製造なのですけれども、これは発がんに入れるかどうかというのは難しいところです。たぶん情報はないと思うのです。この発がん情報は1960年代以前の情報で発がん分類がA2ですか。これは、たぶんIARCは2Bになっていると思いますが、新しい製造法の情報はたぶんないと思うので、それをどうするかというのは少し考えなければいけないところですが、情報がないものは判断のしようがないというのが結論かもしれません。
○細田氏 アンチモンの場合は、使用範囲がものすごく広くて、製造現場というのはかなり限られているのですが、そこから先はものすごく広がっていて、見た感じでは三酸化アンチモンをつかまえる可能性が非常に高いのです。
○大前座長 難燃助剤というのは、三酸化アンチモンの形で使っているのでしょうね。
○細田氏 そうです。
○大前座長 繊維に練り込むとか、まぶすとかそういう形ですね。
○細田氏 繊維とかプラスチックに粉体で混ぜてやって防炎にするとかです。
○大前座長 防炎ですね。防炎加工するのは大体アンチモンが入ってくると見ていいわけですね。そうすると、我々の周りには三酸化アンチモンがいっぱいあるということですね。
○細田氏 はい。色と兼ねているのがあって、発色剤とか顔料とか。
○大前座長 変な問題を出しましたけれども、この問題は解決のしようがないので、とりあえず今回のリスク評価のアンチモン、三酸化アンチモンの発がん性に関しては、今あるデータでやっていくということです。アンチモンに関してほかに何かありますか。アンチモンに関しての確認ですが、IARCの情報から原著を見ていただいて、もう一度この質をチェックしていただいて、質的に十分なものであれば、本日決めていただいたルールに則って、生殖・発生毒性をもとにした一次評価値が出てくる可能性がある。0.008でしたか、出てくる可能性があるということでよろしいでしょうか。事務局のほうで、アンチモンに関してそのほかにありますか。時間的には早いのですが、本日の議事予定はこれで終わります。事務局から何かありますか。
○瀧ヶ平室長補佐 次回は3月22日の14時から、場所はここの825号会議室を予定しております。4月以降、またリスク評価検討会を開催することになりますけれども、それは追って正式にご通知させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○大前座長 本日はどうもありがとうございました。


(了)

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