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2011年10月18日 平成23年度化学物質のリスク評価検討会(第1回有害性評価小検討会)

労働基準局

○日時

2011年10月18日


○場所

経済産業省別館 11階 1111号会議室


○議事

○瀧ヶ平室長補佐 本日は大変お忙しい中ご参集いただきまして、誠にありがとうございます。ただいまより「第1回有害性評価小検討会」を開催させていただきます。
 本日は、平成23年度の有害性小委員会としては初回でございますが、先週、ナノウイルスマテリアルの関係で合同検討会を開催させていただいていますので、要綱、参集者の紹介につきましては参考1のほうにつけてございますので、それによりましてご紹介に代えさせていただきます。なお、本日はご都合により、池田委員、高田委員はご欠席となってございます。
 次に、座長の選出をお願いいたします。どなたかご推薦はありますか。ないようでしたら、事務局としては引き続き大前先生にお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
                 (異議なし)
○瀧ヶ平室長補佐 それでは、大前先生に座長をお願いいたします。以下、議事の進行につきましては大前先生にお願いいたします。
○大前座長 それでは、また座長をやらせていただきます。よろしくお願いいたします。まず最初に、配付した資料の確認をお願いします。
○瀧ヶ平室長補佐 お配りした資料は、薄いほうと厚いほうがあります。厚いほうは机上のみということで配付しています。薄いほうで、議事次第が書いてあるものの次に、資料1-1、資料2-1、資料3-1、その後に、資料4-1、資料4-2、資料4-3、資料5として「今後の検討予定」、それと、参考1、2、3、4と付けています。
○大前座長 それでは早速、本日の議題に入ります。まず最初に、議題1です。がん原性試験結果の評価について、3物質ありますが、事務局、よろしくお願いします。
○大淵有害性調査機関査察官 それでは、大淵より説明します。資料については、まず参考2をご覧ください。本日、国が実施するがん原性試験について、3物質の評価をしていただくこととしていますが、初めに、その背景等について簡単に説明をします。
 厚生労働省におきましては、労働安全衛生法の第57条の5に基づいて、化学物質による労働者の健康障害防止のための国の援助等ということで、その1つとして、国自らがん原性試験を実施しています。その試験の結果、その化学物質が「がんを労働者に生ずるおそれのあるもの」とされた場合には、厚生労働大臣は、その化学物質を製造、あるいは取り扱う事業者が、その化学物質によって労働者に健康障害が起こることを防止するための指針を公表するということが、同じく、労働安全衛生法の第28条第3項で決まっています。
 それから、がん原性試験の実施にかかるスキームですが、試験本体を実施する前に、試験の実施可能性を判断するフィージビリティテストをします行い。これを踏まえて、試験が可能となった物質の中から、現在では吸入試験について、毎年度1物質を選び、試験を行っています。試験は、用量の決定をするための2週間試験、13週間試験を実施した上で、2年間(104週間)のがん原性試験を行っていて、フィージビリティテスト着手後、試験結果の公表までには5年程度を要していまして、これまでの実施状況等については別紙2に付けています。順序は逆になりましたが、先ほど申し上げた試験の流れについては、その前の頁、別紙1にあります。
 図で簡単に説明します。別紙1から申し上げると、がん原性試験の対象物質の選定から行政対応までのフロー図ですが、関係者によるがん原性試験の候補物質の選定ということで、リスク評価の枠組みの中の企画検討会で候補物質を選定していただいて、いくつか選ばれたその物質の中からフィージビリティテストを実施しまして、そのフィージビリティテストの結果を踏まえて、有害性評価小検討会において最終的な試験対象物質を選定していただいています。2週間試験、13週間試験、104週間の試験を経て、その結果をまた有害性評価小検討会で評価していただきます。その評価結果に基づきまして、その物質ががんのおそれのあるものとなった場合には、1つは、下向き矢印の、先ほど申した厚生労働大臣の指針の作成という流れがあります。もう1つは、右側に進む流れとして、そういったものをリスク評価の対象物質にすることについて、企画検討会へ提案することがあります。評価の結果、がん原性のおそれがないという場合については指針作成の必要はなしということで、現在の流れはこうなっています。
 別紙2です。これまでの試験の実績等ということで、表が2つに分かれていますが、上は既に試験が終了したもの、下については試験が実施中で、今後報告がなされる予定のものです。本日、先生方に評価をしていただきますのは、平成22年度、それから、平成23年度に報告があった物質で、吸入関係ではアクリル酸、経口の関係ではアミノエタノール、ジフェニルアミンというものです。
 先ほど別紙1で、対象物質の選定から行政対応までのフロー図を説明しましたが、この仕組みによって候補物質の選定等をするようになったのは比較的新しい話でして、そういったものの流れとしては、平成27年度報告予定のアクロレインあたりからが新しい流れのものです。それ以前は、必ずしもリスク評価のスキームに乗って物質を選定するものではなかったのですが、いま現在は、物質の選定から最終的な結果の評価について別紙1の流れに乗せるというルールを作っています。以上が、がん原性試験についての背景、あるいは、これまでの実績等についての説明です。
 続きまして、本日の評価対象物質は3物質あります。審査の順番ですが、本日の3つの物質のうち、試験を実施した日本バイオアッセイ研究センターでの評価結果としましては、1.のジフェニルアミンがんは原性があり、2.のアミノエタノール、3.のアクリル酸はがん原性が認められないという結果で、試験を実施した機関ではそういう判断でした。このため、がん原性があるというものについては時間をかけて検討したいと思いまして、ジフェニルアミン、経口で行ったこちらの試験から順に説明をします。説明につきましては、物質自体については私のほうから説明しまして、試験の内容等については、実際に試験を行った日本バイオアッセイ研究センターの担当者から説明していただいて、進めたいと思います。1物質ずつ説明をしまして、ご議論をいただき、それが終わったらまた次の物質という形で、よろしくお願いします。
 それでは、資料1-1「ジフェニルアミンの経口ばく露によるがん原性試験結果」をご覧ください。最初に、お詫び申し上げなければいけないのですが。事務局でミスがありまして、こちらの表題が「経口ばく露」となっていますが、正しくは「経口投与」ということで、ミスでございます。後ほどホームページ等に掲載する際には訂正したものを掲載したいと存じます。それでは、内容に入ります。
 1、被験物質についてです。ジフェニルアミン、CASNo.122-39-4のものですが、構造式はここにあるとおり、ベンゼン環が2つ、その間にアミノ基があるという構造になっています。物理化学的性状ですが、無色あるいは灰色の結晶で、芳香があります。融点は52.85℃で、溶解性は、水にやや溶け、アルコール、エーテルに可溶です。それから、用途ですが、有機ゴム薬品、染料、火薬安定剤、塩素系溶剤の安定剤、医薬品、といった用途で使用されています。
 続きまして、生産量等です。2009年の推定ですが、約2,500tで、国内に製造業者あるいは輸入業者があります。次の1-6、許容濃度等ですが、こちらは特に現在、特化則や有機則に入っている物質ではありませんので、管理濃度は設定されていません。また、日本産業衛生学会の許容濃度も設定されていません。アメリカのACGIHにおいては、TWAが10mg/m3となっています。発がん性の評価ですが、IARCでは現在、特段の評価はなされていません。労働安全衛生法上の規制ですが、名称等を通知すべき危険物及び有害物、いわゆるMSDSの対象物質となっています。それから、規則等ではありませんが、変異原性が認められた既存化学物質ということで、労働基準局長名で行政指導を行っています。
 1-7、変異原性です。こちらについては、文献の情報と、日本バイオアッセイ研究センターで実施した試験の結果を載せています。文献の情報では、ネズミチフス菌を用いた変異原性試験については、代謝活性化の有無にかかわらず陰性との報告があります。また、日本バイオアッセイ研究センターで行いました、チャイニーズハムスターを用いた染色体異常試験では代謝活性化の有無にかかわらず陽性という報告があります。私からの説明は以上にしまして、以下は日本バイオアッセイ研究センターのから説明していただきます。
○山崎氏 それでは説明させていただきます。私は日本バイオアッセイ研究センターの山崎と申します。よろしくお願いします。
 まず、ラットとマウスを用いた、ジフェニルアミンのがん原性試験の結果です。2頁目の中段で、3の方法をご覧ください。ラットはF344、マウスはB6D2F1を用いました。餌に被験物質を混ぜて、2年間、自由摂取させる経口投与による試験です。ラット、マウスは雌雄とも被験物質投与群は3群で、対照群を1群設けました。各群の動物は群あたり50匹です。投与濃度は、ラット、マウス、雌雄とも250ppm、1,000ppm、4,000ppmとしました。観察、検査項目としまして、一般状態の観察、体重、摂餌量の測定、血液学的検査、血液生化学的検査、尿検査、剖検、臓器重量測定及び病理組織学的検査を実施しました。
 続きまして、4に結果を示しています。まず、ラットですが、投与の結果、動物の生存率に影響はみられませんでした。また後ほど、後ろのほうのグラフ等で説明します。
 続きまして、一般状態の観察です。被験物質の代謝物によると考えられる褐色尿が雌雄の4,000ppm群に、尿による外陰部周囲の被毛の着色が雄の4,000ppm群と雌の全投与群に認められました。これはやはり、尿による着色です。
 続きまして、体重についてです。投与期間を通して、体重の低値が雄の4,000ppm群と雌の全投与群に認められます。また、雄の1,000ppm群でも、投与初期にのみ体重低下がみられます。摂餌量です。摂餌量の低値が、雄の1,000ppm群の投与初期と4,000ppm群のほぼ全投与期間を通して、また、雌の1,000ppm群と4,000ppm群の投与開始から78週にかけて多くの週で認められます。後ろのほうに図があります。説明いたします。
 7頁です。この物質によるラットの生存率のグラフです。上段に雄、下段に雌を示しています。○、△、□、◇の印と、コントロールから、250ppm、1,000ppm、4,000ppmの投与濃度で示しています。ご覧のように、上段の雄、下段の雌とも、投与群の生存率は対照群とほぼ同じような推移を示しています。
 次に、体重推移です。8頁をご覧ください。上のほうに雄、下のほうに雌を示しました。先ほど示したように、◇印の最高用量4,000ppmです。雄の4,000ppm群では試験期間を通して体重増加の抑制がみられます。対照群の最終体重を100%とすると、この群では92%です。下段の雌のほうですが、○印の対照群に比べて、すべての投与群で体重増加の抑制がみられます。投与群の最終体重は、△印の低用量250ppm群で97%、□印の中間用量1,000ppm群で91%、◇印の最高用量4,000ppm群が83%です。
 資料の説明に戻ります。5頁に、腫瘍の発生状況を示しています。上段にラットの雄、下段にラットの雌を示しています。雄では、脾臓に悪性腫瘍の血管肉腫、並びに血管腫と血管肉腫を合わせた発生が、Peto検定とCochran-Armitage検定で増加傾向を示しています。また、皮下組織でも、皮下組織と脾臓を含む全臓器に、Peto検定とCochran-Armitage検定で血管肉腫の発生の増加傾向を示しています。血管腫と血管肉腫を合わせた発生は、4,000ppm群で増加し、Fisher検定でも有意でした。
 以上のように、統計で示された血管系腫瘍の発生増加は、当センターのヒストリカルコントロールデータの範囲を超えていまして、非常に稀な腫瘍であることから、ジフェニルアミン投与によるものと判断しました。
 なお、良性腫瘍の最下段の所に、Peto検定とCochran-Armitage検定で、精巣での間細胞腫の発生が有意に上昇していますが、精巣での間細胞腫の発生は雄ラットにおける通常の加齢性病変であり、当センターのヒストリカルコントロールデータの範囲内にあることから、被験物質の投与によるものではないと判断します。
 また、皮下組織では線維腫、並びに線維腫と線維肉腫を合わせた発生が、低用量250ppm群で有意でした。しかし、この群だけであり、用量に対応した変化ではないということで、被験物質の投与の影響ではないと判断しています。
 続きまして、雌のほうに移ります。表2ですが、雌では子宮の腺がん、並びに腺腫と腺がんを合わせた発生が、Peto検定とCochran-Armitage検定で増加傾向を示しました。この腫瘍の発生は当センターのヒストリカルコントロールデータの範囲を超えていまして、非常に稀な腫瘍であることから、ジフェニルアミンの投与による発生と判断しました。
 続きまして、腫瘍以外の病変について説明します。3頁、2つ目のパラグラフです。ジフェニルアミンの投与により、腫瘍以外には血液/造血系では血液学検査で、メトヘモグロビンの高値が雄の1,000ppm以上の群と雌の全投与群に認められました。メトヘモグロビンの増加によると考えられる貧血が、雄は4,000ppm、雌は1,000ppm以上の群に認められています。また、血液学的検査及び血液生化学的検査で、貧血に関連した種々の変化が投与群に認められました。すなわち、血小板数の低値、網赤血球比の高値、総ビリルビンの高値が、雄では4,000ppm群、雌では1,000ppm以上の群に認められています。
 なお、やはり血液系に関連することで、脾臓では重量の高値が雄の1,000ppm以上の群と雌の4,000ppm群に、赤血球充満が雌雄とも4,000ppm群、髄外造血とヘモジデリン沈着が雄4,000ppm群に、被膜の繊維性組織の増生と血管拡張が雌雄の4,000ppm群にみられました。その他、巣状の線維化が雌4,000ppm群に認められています。
 続きまして、肝臓への影響として、肝重量の高値が雌雄の1,000ppm以上の群に、肝細胞の中心性肥大が雌雄の4,000ppm群に、肝臓の逸脱系酵素の高値が雌雄とも投与群にみられます。
 続きまして、腎臓への影響です。腎臓への影響として、腎臓重量の高値が雄の1,000ppm以上の群に、慢性腎症の程度の増強が雄の4,000ppm群に、近位尿細管の褐色色素沈着が雌雄とも4,000ppm群に、腎盂の鉱質沈着が雄の4,000ppm群と雌の1,000ppm以上の群に、また、血漿中の尿素窒素の高値が雌雄とも4,000ppm群に認められました。これらの結果から、腫瘍以外の影響を指標にしますと、無毒性量のNOAELは、雄では血液/造血系及び肝臓への影響、雌では血液/造血系への影響をエンドポイントとして、雄は250ppm、摂取量として12mg/kg体重/日です。雌では当然のNOAELが求められませんで、最低毒性量(LOAEL)が最低用量の250ppmで、15mg/kg体重/日です。
 次に、マウスの結果をお話します。4-2です。雄では、4,000ppm群に尿道の閉塞、尿閉と言われていますが、尿閉による顕著な生存率の低下がみられました。雌では逆に、4,000ppm群の生存率は、投与終了時には対照群よりもかなり弱まっています。一般状態の観察では、被験物質の代謝物によると考えられる褐色尿が雌雄の4,000ppm群に認められました。
 続きまして、体重です。体重の低値が、雄の4,000ppm群に全投与期間を通して、雌では4,000ppm群に投与開始後18週以降に認められました。雌雄とも投与群の摂餌量は対照群と同様です。やはりこちらにも図がありますので、図で説明します。
 9頁をご覧ください。上段のほうにマウスの雄、下段に雌の生存率を示しています。雄で特に目立つのは、雄のほうの◇の印の所で、最高用量4,000ppm群は投与期間の後半で生存率の大きな低下がみられました。投与終了時には、○印の対照群が62%であるのに対して、この雄の4,000ppm群では32%とかなり低くなっています。先ほど言いましたように、尿閉による死亡です。下段の雌ですが、投与終了時には最高用量群が対照群よりもかなり生存率が上回っています。
 続いて、10頁をご覧ください。マウスの体重推移を示しています。上段が雄、下段が雌で、ともに◇印の最高用量の4,000ppm群で体重増加の抑制が認められました。投与終了時には、対照群を100%とすると、4,000ppm群の雄では77%、雌では85%です。3頁に戻ります。特に雄のほうですが、雄の4,000ppm群では尿閉による生存率の低下が顕著にみられること及び顕著な体重増加抑制がみられることから、雄の投与濃度4,000ppmは最大耐量(MTD)を超えていると考えています。
 続きまして、腫瘍の説明をします。6頁目、上段にマウスの雄、下段に雌の腫瘍発生の状況を示しています。上向きの矢印のものが特に注目すべき腫瘍だと思っていただければいいと思います。脾臓に、血管腫と血管肉腫を合わせた発生増加が1,000ppm群に認められ、Fisher検定で有意でした。その他、いちばん下の全臓器という所ですが、皮下組織、骨髄、脾臓、肝臓及び腎臓を含む全臓器における血管腫の発生はPeto検定で増加傾向を示しました。全臓器の血管腫、並びに血管腫と血管肉腫を合わせた発生は、1,000ppm群で増加し、Fisher検定でも有意です。なお、肝臓の血管腫、並びに血管腫と血管肉腫を合わせた発生は、Peto検定で有意な増加傾向を示しましたが、いずれも当センターのヒストリカルコントロールデータの範囲内であることから、ジフェニルアミン投与によるものとは断定できませんでした。
 続きまして、6頁の下段をご覧ください。雌の腫瘍の発生状況です。雌では特に腫瘍の発生増加は認められていません。
 続きまして、腫瘍以外の病変について説明します。4頁に戻ります。血液/造血系では、血液学的検査でメトヘモグロビンの高値が雌雄の全投与群に認められました。メトヘモグロビンの増加によると考えられる貧血が雌雄とも全投与群に認められました。また、血液学的検査及び血液生化学的検査で、貧血に関連した種々の変化が投与群に認められています。すなわち、網赤血球比の高値が雌雄の250ppm群と1,000ppm群に、総ビリルビンの高値が雄の全投与群と雌の1,000ppm以上の群に認められます。なお、貧血に伴って、骨髄には造血亢進が雌雄の4,000ppm群に認められています。脾臓には重量の高値が、雄は1,000ppm以上で、雌は全投与群で認められています。なお脾臓では、ヘモジデリン沈着が雌雄の全投与群に、髄外造血が雄の1,000ppm以上の群と雌の全投与群に、赤血球充満が雌の4,000ppm群に認められています。ヘモジデリン沈着は、雌雄の1,000ppm以上の群の肝臓と、雌雄の4,000ppm群の腎臓にも認められています。その他、肝臓への影響として、肝細胞の中心性肥大が雌雄の4,000ppm群で増加しました。
 ラットと同じように、泌尿器系への影響も出ています。雄の4,000ppm群に特に尿閉が認められまして、先ほど言ったように、かなりの死亡が出ています。血漿中の尿素窒素の高値が雌の4,000ppm、腎臓重量の増加が雌の1,000ppm以上の群に、腎盂腎炎が雄の4,000ppm群に認められています。さらに、病理組織学的検査では、雄の4,000ppm群で膀胱の拡張と硝子滴変性、尿道の炎症が認められます。肺では、尿毒症性の肺炎が雄の4,000ppm群に、肺静脈の変性が雌雄4,000ppm群に認められています。これらの結果から、腫瘍以外の影響は、雌雄とも最低投与濃度の250ppm群で血液/造血系の影響が認められることから、最低毒性量(LOAEL)は250ppm、雄は29mg/kg体重/日、雌は36mg/kg体重/日であると考えられます。
 それでは、ジフェニルアミンの最終的なまとめでございます。ラットでは、雄では脾臓の血管系腫瘍の発生の増加傾向、並びに脾臓と皮下組織を含む全臓器の血管系腫瘍の発生増加、雌では子宮に腺がんの発生増加傾向が認められます。これらの結果から、ラットに対するジフェニルアミンの発がん性が示されました。マウスでは、雄では脾臓、並びに脾臓、肝臓を含む全臓器に血管系腫瘍の発生増加が認められました。したがって、雄マウスに対するジフェニルアミンのがん原性が示されました。雌マウスでは腫瘍の発生増加が認められず、がん原性は示されませんでした。以上です。
○大前座長 ありがとうございました。1物質ずつということで、このジフェニルアミンの発がん性につきましてご討論をお願いしたいと思います。
○西川委員 まずラットについてですが、ラットの雄で、精巣の間細胞腫が用量に従って増加しているようにも見えます。すべて背景データの範囲内ということで有意な腫瘍とは判断されなかったのですが、用量相関性があることについての考察は何かされたのでしょうか。
○山崎氏 病理部分の鏡検担当から説明させていただきます。
○相磯病理検査部長 精巣の間細胞腫瘍は対照群30、70、250ppmで40匹、1,000ppm群で46匹、4,000ppmで46匹。1,000ppmと4,000ppmで発生数は同じになっています。傾向検定では多少その有意差はついていますが、Fisher検定ではついていません。F344のラットにかなり好発する間細胞腫を、この剤の影響と考えるのはちょっと無理があると思いました。
○西川委員 Fisher検定で有意でなかったと言うのですが、これには*印が付いています。
○相磯病理検査部長 失礼しました。Fisherではついています。間違えました。ただ、1,000と4,000では発生率は同じだと。用量相関というのは、ここでははっきりとしたものは示されない。
○西川委員 あまりしつこく申し上げるつもりはないのですが、背景データというのは、ちなみに数値的にはどのくらいですか。
○松本信頼性保証責任者 当センターで行いました試験で、雄ラット、対照群2,747匹を調べております。このうち2,282匹に間細胞腫が発生しております。平均発生率が83.1%、範囲としては56%から98%、すなわち50匹中49匹出ている試験もございます。
○西川委員 ありがとうございました。わかりました。それはそれで結構だと思います。
 もう1つの点は、マウスの雌で、子宮に組織球性肉腫が1,000ppmの群で発生増加しており、これを有意な変化とは捉えなかったということですけれども、雄で見ますと、血管腫+血管肉腫が1,000ppmの群のみで増加しているという傾向と似ているとも思えます。質問の1つは、まず雄で、死亡率が結構高かったということですが、すべて剖検して組織を鏡検するに耐えうる強い死後変化はなかったと考えてよろしいですか。
○相磯病理検査部長 はい、大丈夫です。死後変化は鏡検で判断できます。
○西川委員 瀕死の状態で解剖したということですか。
○相磯病理検査部長 頻死を積極的に、積極的というか、頻死もしっかりと見ていますし、死後変化で腐ってトロトロになるということはありません。
○西川委員 それで雄のいちばん高い用量で有意な増加はなくて、その次の1,000 ppmで血管系の腫瘍が増えている。一方、雌では子宮の組織球性肉腫が1,000 ppmの群のみで増加していまして、4,000 ppmでは増加していない。雌についても結構死亡率は高かったと思うのですが、この雌の子宮の腫瘍を有意なものとしなかった理由というのは何かありますか。
○山崎氏 ちょっとお待ちください。確認します。
○松本信頼性保証責任者 雌の組織球性肉腫は、当センターでは雌マウス2,245匹について検査をしておりまして、発生率が464匹であります。すなわち平均発生率が20.7%、範囲としては10~34%ということで、17匹というのはこの34%です。
○西川委員 ちょうど上限です。
○松本信頼性保証責任者 いちばん上に当たりますが、これまでもこの程度が対照群で発生しているということでございます。
○西川委員 ぎりぎり背景データの上限値に当たるということですね。
○松本信頼性保証責任者 はい。
○西川委員 いいと思います。ぎりぎりというのはちょっと気にはなるところですね。わかりました。基本的に、その背景値に基づいて、この腫瘍を有意なものとはみなさなかったと、そういうことですね。
○相磯病理検査部長 はい。
○西川委員 わかりました。
○大前座長 そのほかいかがでしょうか。3つくらい質問があるのですが、1つはラットの脾臓では有意だったのですが、雌では有意になっていませんよね。これは、なぜ雌雄でこの差が出たと考えられているのですか。
○山崎氏 ラットですか。
○大前座長 雄では脾臓の血管腫が増えていますね。雌は増えていませんよね。性差というのは何か説明できる要因があるのですか。
○山崎氏 いや、ちょっとはっきりわからないのです。ただ、現象的にマウスのほうもそうだったのですが、血管系腫瘍が雄では出るということで、雌のほうではなかなか出にくいというふうな傾向でございます。
○大前座長 脾臓に影響があったのはメトヘモグロビン、要するに溶血があったから、がんの脾臓に対する影響があったというふうに考えていいわけですか。がんだけではなくて、がん以外の影響もそうですけれども。そうするとメトヘモグロビンの貧血のレベルといいますか、程度は雄と雌とは差はなかった。
○山崎氏 そう滅茶苦茶差が有るものではございませんが。ラットのほうですね。
○大前座長 ラットでもマウスでもどちらでも。
○山崎氏 かなり低濃度から。化学物質の投与によるこのメトヘモグロビン等による貧血というのは、かなり下のほうまで出まして、ズルズル下のほうから出ます。そして、バイオの試験でも過去やりましたパラクロロニトロベンゼンとか、オルトクロロニトロベンゼン。
○松本信頼性保証責任者 パラのほうです。
○山崎氏 パラのほうですか。その系統のものはやはり脾臓のほうがパンパンになりまして、ものすごく大きくなりまして、ダメージがあって、皮膜の増生あるいは腫瘍にまで発展しております。それと、血管系腫瘍と脾臓の、メトヘモグロビン等によるそちらのほうの障害による関係、あるいはそういうことを起こしてできたような腫瘍との関係は、はっきり私は存じておりませんが。
○相磯病理検査部長 よろしいでしょうか。いままで当センターの研究では、脾臓のメトヘモグロビン血症による脾臓の肥大、これは髄外造血等で脾臓がかなり肥大しています。その後、その症状が強いものについては脾臓の皮膜の増生だとか、あるいは線維肉腫といったような、一般的な腫瘍が出ています。しかし、この血管系の腫瘍との関係は、いままで経験がございません。
○大前座長 そうしますと、いまの血管系の腫瘍のことは今回初めてということですが、いまの脾臓に対する影響、あるいは腎臓に対する、あるいは尿閉なんかも、このメトヘモグロビン血症でたぶん説明がつくわけですよね。そうすると、メトヘモグロビン血症が起きないようなレベルですと、おそらくがんも起きないだろうというような考え方でよろしいですか。
○山崎氏 現象的にはそういうふうに見てとれますが。
○大前座長 というのは、結構これは濃度が高いですよね。4,000ppm、1,000ppmと。摂餌量も結構高くて、ACGIHが10mg/m3と言っていますが、この数字から見ると結構高いので。この10mgは、根拠を書いていないのですが、たぶんメトヘモグロビン血症が起きないような量で決まっていると思うのですね。そうすると、ACGIHの10というのは結構そういう意味では、このレベルだったら、動物的に出たようなメトヘモグロビン血症を介するような影響は起きないだろう。ただ、血管肉腫に関してはさっきおっしゃったように、いままでなかったということになりますか。
○山崎氏 そうだと思います。ちょっと待ってください。ACGIHについて調べてみます。ジフェニルアミンについてはACGIHは、やはり昔やられております。動物実験からNOAELが12mg/kgということで、そこら辺からきて、それをヒトの呼吸量に換算しておりまして、現場のほうの許容濃度等に。特にヒトに疫学的に何かあったとかそういう話ではございません。
○大前座長 さっきの血管肉腫あるいは血管腫のことですけれども、これ、ラットの雄で全臓器をまとめて計算してありますよね。これは、脾臓と、あるいはもう1つ皮下組織ですか。
○山崎氏 はい。
○大前座長 皮下組織とこの2種類かな。2つのところで出たものを足して全臓器で計算してありますけれども、これは臓器が違っても血管肉腫というのは同じと考えていいのですか。
○相磯病衛検査部長 同じと考えております。
○大前座長 構わないのですか。
○相磯病理検査部長 はい。原発と転移ということを区別できませんし、血管系を1つの臓器と考えまして、全身で出たものを全部足して処理しています。
○山崎氏 NTP等のパラクロロニトロアニリンでしたか、全臓器足すような手法を、かなりいろいろな物質について、血管系腫瘍についてはやっております。
○大前座長 もう1つは統計の問題です。Cochran-Armitageで増加傾向が出ているのですが、これはnが0,0,0,5とか0,1,0,5というレベルですと、Cochran-Armitageは当てはめが全然良くなくて、見た目は有意だけれども、実はよくわからないという可能性はないですか。
○松本信頼性保証責任者 Cochran-Armitageですが、全臓器の血管腫と血管肉腫を当てはめたものに関しては、ちょっと我々のコンピュータシステム上の制限がございまして掛けておりませんので、実際上はつくのでしょうけれども、今回の表にはつけておりません。
○大前座長 Cochran-Armitageは、これだけ1つのセルに入っているnが小さいと、本当に使えるのかなという気がするのです。Fisherのほうは正確検定なので、これは大丈夫だと思うのですけれども。
○山崎氏 Cochran-Armitage検定、Peto検定、Fisher検定と、複数の検定を用いまして、そういうことは逃さないようにという思想で3つの検定をやっています。部分的には検定によっては出にくいものとか、そういうものがあるとは思いますが。3つで漏れなくがん原性を逃さないようにしようという思想でやっております。
○大前座長 この血管肉腫は、ヒストリカルコントロールはどのくらいなのですか。
○松本信頼性保証責任者 血管肉腫だけですと、雄ラットで2,748匹行っておりまして、そのうち8匹です。ですから、平均発生率が0.3%で、試験ごとで0~4%、すなわち最大2匹ということになります。雌ラットはいいですね。それからマウスのほうですが、マウスの血管肉腫は2,244匹中、全臓器合わせまして、どこかの臓器に血管肉腫があるものが157匹、平均が7%で、0~18%の範囲にありますから、9匹までです。
○大前座長 そのほかいかがでしょうか。いま血管肉腫は今回初めてというお話でしたが、その血管肉腫自身も溶血性の貧血と関連があるということはないのですか。そのデータはいまのところない。
○相磯病理検査部長 持っていません。
○大前座長 それから変異原性の評価ですが、労働安全衛生法では変異原性があったと。それから文献のほうではネズミチフス菌がなしで、バイオアッセイはありという評価になっています。このデータから遺伝毒性について何か言えますか。
○清水委員 このバクテリアの報告というのはいくつぐらいあるのですか。1件だけのものは。
○山崎氏 いや、何件かありますが。
○清水委員 全部陰性、全部すべての報告が陰性ということですね。
○山崎氏 全部ではございません。中には1個とかそういうものもありますけれども、調べた中では陰性がほとんどです。
○清水委員 陰性が。そうですか。
○山崎氏 Amesのほうも。それで染色体異常試験で、うちでやったやつで、D20値が0.042で、これは陽性でしょうということで。大淵さんから説明がありましたように、変異原性が認められた既存化学物質ということで、公表すべき物質ということになっております。
○大前座長 このデータと、これは同じデータなわけですね、労安法の変異原性と、それからバイオアッセイのやつはね、なるほど。染色体異常試験というのは、バイオアッセイのデータしかないのですか。そのほかの。
○山崎氏 そのほかではないということはないのですけども、古すぎまして、ちょっと信用しにくい。やはり自分たちのしっかりした方法で最近やったというふうなデータを信用して、これを出しています。
○清水委員 染色体異常試験は強いほう。
○山崎氏 そうです。
○大前座長 あとは古くて、いまのところ正しそうなやつは出されていますか。信頼できそうなデータは1個しかない。
○西川委員 ラットの雌の子宮に腺がんがあって、それが増加傾向を示しているというまとめがあります。1つは、コントロールとの有意差がないということですが、先ほどからのロジックでいくと、ひょっとして背景データの中に入るのかなという気もするのですが。
○山崎氏 いま調べておりますが、数が微妙に少ない場合には特に背景データ等を注意して見ております。この現報告書にも必ずそういうふうな背景データを載せておりまして、それを利用いたしまして、それ以内であるとか、大幅に超えているとか、そういう評価をしております。
○西川委員 ただ、この試験では。
○松本信頼性保証責任者 ラットの雌の子宮の腺がんですけれども、2,544匹中15匹が腫瘍を持っております。これは0.6%で、0~4%ということであります。
○西川委員 コントロールの1例というのは、たまたまということですね。
○松本信頼性保証責任者 はい。2匹まではヒストリカルコントロールの範囲内です。
○大前座長 そうしますと、この発がん性試験に関しては1,000までは出ていないと。4,000では出ている。
○山崎氏 はい。
○大前座長 4,000で出ているから、Peto検定あるいはCochran-Armitageをやると、まあ有意ということで。その遺伝毒性があるかないかということで、1,000ppmはがんに関してのNOAELと言えるのかどうかというところで、もし、それが言えるのだったら、先ほどのこのフロー図を見て、そんなに心配ないでしょうけれども、遺伝毒性があるということだったら考える必要がある、そういうことになりますかね。Amesはほとんどネガティブである。
 染色体異常は、信頼できるデータ1個がポジティブである、という状況がある。しかも0.042で強い、ポジティブであると。がん以外に関しては貧血が起きなければ起きないだろうということで、それはあまり心配することではないと。
○清水委員 染色体異常は構造異常だけですか。
○山崎氏 すみません、ちょっと手元に持っていませんので、また精査したデータを清水先生のほうに送らせていただきたいと思います。
○宮川委員 がんの閾値、LOAELについては文書では全然記述がないのですけれども。この辺は毎回書いていらっしゃらないのが普通で、一般毒性のLOAELだけ記載しているのですか。
○山崎氏 がんの閾値についてですか。特に書いておりません。
○宮川委員 こういう最後のリスク評価に関わるようなものについては、もしそれが書けるのであれば書かれたほうがいいのかなという気がちょっと。
○山崎氏 今後検討させていただきたいと思います。
○宮川委員 それから一般毒性の閾値のほうは、最低用量の250で影響があったものをLOAELと表現されていますが、これはいつも、やはりそういう言い方をされているのですか。
○山崎氏 私たちのほうではそういう言い方をしています。
○大前座長 でも、それは相当危ないLOAELですよね。
○山崎氏 はい。
○大前座長 このLOAELは使わないほうがいいと思いますけれどね。それで、一応この検討会のミッションは、先ほどのフロー図にありますように、おそれがあるということで指針作成という方向に行くか、あるいは大丈夫だろうということで指針作成のほうに行かないかということをある程度判断しなくてはいけないみたいなのですが。いちばん最初この濃度を決めたのは、当然、対応試験をやられて決まっているわけですよね。
○山崎氏 2週間試験から始まって13週間試験、それとがん原性試験ということで順を追いまして、いわゆる一般的なルールどおりのドーズ設定です。
○大前座長 それが結果として、たぶん労働現場よりも相当高い濃度、250ppmでも相当高い濃度だったろうというレベルにあって、高い濃度だったということになると思います。
○清水委員 化学構造的には、この構造から分解したときにどうなりますかね。今日、池田先生がいらしていないね。アニリンの可能性もある。
○大前座長 これ、やはり濃度を決めるときに、ある程度現実的な濃度といいますか、労働現場での濃度というのも考える必要があるのですかね。いままではルールの形だけですけれども、ルールどおりではなくて、そういうこともちょっと考える必要はありますかね。実際にこれを労働現場のほうの評価とか、リスクか何かに持ってくるわけなので。現実的な濃度よりも相当高くても、動物実験のルールで割り振ってしまうというのもちょっと考える必要があるかもしれませんね。
○山崎氏 先生、吸入の場合は当然吸うということで、同じルールということはあり得るのです。経口の場合のメリットといたしまして、単純な安価な便利な方法で、発がん性のポテンシャルを探るという意味で、まるきり同じ投与経路、投与量ということはちょっと難しゅうございます。もちろん先ほどもちらっとありましたけれども、吸入量を逆に現場から換算して持ってくるとか、そういう手法もあるのはあるのですが、発がん性試験の場合は逃してはいけないということで、かなり上のほうの濃度になっているというのが現状でございます。
○大前座長 これはいかがいたしましょうか。ご意見をいただければと思います。1つは、いまの4,000で出ていると。それもヒストリカルコントロールの2倍か3倍くらいですか、多く出ていると。一応、傾向性の検定では有意で出ているということを重視して、リスク評価の対象物質とすることはいいのでしょうが、指針作成の方向に進むのか、あるいはこの実験だけですと、結構濃度が高いということもありますし、それから、その血管肉腫がどういうものから起こるかわかりませんけれども、相当メトヘモグロビント、あるいは貧血で説明できる部分があるかもしれない。最低濃度が250ppmですから、ラットですと12mg/kg、マウスですと30mg/kgくらいですか。体重当たりですから、ACGIHが10mg/m3だから、労働現場だとこれの10倍、呼吸量10m3として、100mgくらい。体重で割ると、一桁。一桁くらいになりますね。したがって濃度が高いので、発がん試験で1,000ppmまでは大丈夫だと。
○西川委員 マウスの場合1,000 ppmで有意に血管腫瘍が増えていますので。
○大前座長 そうですね。マウスは1,000でいいのですね。大淵さん、フロー図で、評価小検討会で指針作成にいく矢印と、それから企画検討会にいく矢印がありますね。これは、もうおそれがなければ右のほうには行かないと思うのですけれど、今回みたいに判断が結構難しい場合といいますか、例えばリスク評価のほうに行って、それから戻るということはあり得るのですか。要するに、こういうような矢印は。
○松井化学物質評価室長 リスク評価のほうに行きますと、リスクが高い場合は制度に基づく規制の検討ということになります。今まではその、こから、がん原性の指針、技術指針というほうには行ったことはないのですけれども。
○大前座長 そういう道はないのですね。
○松井化学物質評価室長 いや、ご議論いただいて、そのほうがいいということであれば考えられなくはないですけれども。リスク評価の場合、ほかの有害性も併せて検討いただくということになりますので。
○大前座長 そうですね。いかがいたしましょう。一応いままでのルールどおりですと、遺伝毒性の情報はちょっと足りない。染色体異常試験が1個しかないという意味で足りない。それからAmesはネガティブだということで、なかなか判断が難しい。もし閾値があるというふうに判断すれば、おそれがないというふうに言ってしまっていいと思うのですが。そこの判断が結構。
○山崎氏 染色体異常の、ただデータの話ですけれども、いちばん信用のおけるうちのデータを載せたまでで、ほかの人がやってのデータですので。ただ、もうちょっとやはり規制のときには精査すべきで。まあ、私自身がね。そうかもわかりませんし、委員会のほうでも変異原性のところは精査すべきだと思います。
○清水委員 ほかはあまり調べていないわけですか。
○山崎氏 まあ変異原性のあるものということで、この安衛法の57条の5ですか、あれになったときに何だと調べたら、うちのデータが大もとですよというふうな話だったのです。
○清水委員 in vivo系の変異原性試験の報告があるかもしれないわけですね。
○山崎氏 はい、そうですね。
○清水委員 そうなると、ちょっと判断が。
○山崎氏 たった1つという話ではないと思いますので、よく精査すべきだと。私も報告書に書いて申し訳ないのですけれども。
○大前座長 そしたらリスク評価のほうに行って、それから場合によっては戻ってくるというようなパターンでどうですか。もしリスク評価のほうでほかのデータを調べてみて。バイオアッセイでは強い陽性があった。ほかの信頼できるデータがあるかどうか、それはわかりませんけれども。それで特にそのネガティブなデータが多いとか、そうなるとトータルとして変異原性がないというような判断になる可能性もある。そうすると指針の作成が要らなくなってしまいます。そこでやはり変異原性があるということになれば、やはり考えなくてはいけないということで。回り道をするという、そういう判断はもし可能だったら、そのほうがベターかと思いますが、どうでしょうか。
○松井化学物質評価室長 問題は、変異原性のほうの情報収集がもう少し必要だということですね。それでしたら、リスク評価に行くかどうかという判断は企画検討会のほうなのですけれども、場合によってはリスク評価に行く前に変異原性の情報収集をして、ご判断いただくという選択肢もあるかなとは思います。
○大前座長 いかがでしょうか、先生方。そこがはっきりしないと、ちょっと。
○清水委員 決めにくいですね。
○松井化学物質評価室長 十分なデータとは言えないのですが、参考の3に、モデルMSDSを付けております。その3枚目の裏の、11.有害性情報の中ほどに生殖細胞変異原性ということで、一応このモデルMSDSを作った時点での二次文献の記載は載ってはいます。
○大前座長 「なし」というのは陰性という意味ですかね、データがないという意味ですかね。
○松井化学物質評価室長 試験がなしということになっていますね。
○大前座長 試験がなしということは、データがないということか。
○宮川委員 おそらくデータがない。
○大前座長 データがないということですね、これは。
○松井化学物質評価室長 いまの変異原性の情報収集については少し事務局のほうでバイオアッセイセンターとも相談をしまして、検討させていただいて。もしMSDSをご覧になって、これでご判断いただけるのであればそれで終わりということになります。さらにもう少し見ないといけないということであれば、事務局のほうで情報収集をした上で、然るべき機会にもう一度、有害性評価小検討会にかけるようなことで。
○大前座長 それがかなったら、今日の段階ではペンディングという形で、このデータを集めていただく、そういう形でよろしいですか。
○清水委員 これで見る限りあまり報告はないですね。されていない。
○大前座長 これで結果がないと書いてあるのは1つだけですものね、変異原性試験で、複数指標の共有性評価なし。
○清水委員 2006年。
○大前座長 そうしましたら今日の段階では、ジフェニルアミンにつきましてはペンディングにして、それで変異原性試験の結果を少し精査したらということで、よろしいですか。
                  (了承)
○大前座長 では、そのようにさせていただきます。よろしくお願いいたします。それでは2つ目の物質、よろしくお願いします。
○大淵有害性調査機関査察官 それでは、2つ目の物質2-アミノエタノールです。資料2-1です。こちらについても標題は「経口ばく露」となっておりますが、「経口投与」に後ほど訂正をさせていただきます。1の被験物質については私から説明をさせていただきます。
 こちらはCASNo.141-43-5という物質で、構造式は水酸基とアミノ基がそれぞれ付いた形の構造になっております。物理化学的性状は、室温で無色透明な粘ちょう液体で、融点が10.3℃、溶解性は水、メタノール、アセトンに容易に溶けるというものです。
 かなり幅広の用途があります。合成洗剤、乳化剤、化粧品、靴墨、つや出し、ワックス、農薬など有機合成、切削油、潤滑油などの添化剤、防虫添加剤、繊維の柔軟剤原料、ガス精製、有機溶剤、pH調節剤、中和剤などの用途があります。
 1-5の生産量等ですが、アミノがモノ、ジ、トリの合計で43,000tという情報があります。製造業者、輸入業者については、ここに示すような情報があります。
 1-6の許容濃度等は、管理濃度はありません。日本産業衛生学会の許容濃度は3ppm、7.5mg/m3という値があります。アメリカのACGIHでは3ppmという値があります。IRCAの発がん性の区分はありません。労働安全衛生法上の規制はMSDSの対象物質となっています。
 1-7の変異原性については、文献等の情報では、微生物を用いた復帰突然変異試験については、ネズミチフス菌、大腸菌を用いた試験で代謝活性化の有無にかかわらず陰性の結果、それ以外の文献でも陰性の結果が出ております。それ以外の試験としては酵母菌を用いた試験での陰性、ヒトリンパ球を用いた染色体異常試験での弱い陽性、ヒトリンパ球を用いた姉妹染色分体交換試験で陰性、ラット肝細胞株を用いた染色体異常試験で陰性、チャイニーズハムスターの胎児細胞を用いた試験で陰性、経口投与されたマウスの骨髄細胞を用いた、こちらは「核」となっていますが、小さいという字を入れた「小核試験」で陰性といった結果があります。以上で私からの説明を終わり、続いてバイオアッセイからの説明をお願いします。
○山崎氏 引き続きまして、私が2-アミノエタールの説明をいたします。先ほどの試験と同じ部分については省略して説明いたします。まず2頁の方法は、先ほどのラット、マウスとも系統は同じです。ここで違うのは被験物質の投与方法です。先ほどは餌に混ぜた自由摂取ですが、今度は飲水に混ぜた自由摂取です。したがって、飲水の量も測っております。
 投与濃度は、ラットは雌雄とも800、2,400、7,200ppmで、マウスは雌雄とも800、2,000、5,000ppmとしました。これは13週試験の結果より設定しております。観察、検査項目は先ほどと同じで、今回は摂水量の測定も加わっております。
 3頁の結果です。まずラットですが、試験の結果、雄の生存率は対照群と同様であり、雌は7,200ppm群の生存率が、対照群より低値でしたが、特に投与に関連した死因の、これが多いというようなものは認められず、投与による影響であるとは判断し切れませんでした。一般状態の観察では、尿による外陰部周囲の汚染、褐色尿及び赤色尿が雌の7,200ppm群に認められました。
 体重については、体重増加の抑制が雌雄の7,200ppm群に認められました。摂餌量の低値が、雌雄の7,000ppm群で全投与期間を通して認められました。被験物質を混ぜた飲水の摂水量の低値が雄では7,200ppm群で全投与期間を通して、2,400ppm群でも多くの週に認められております。雌でも摂水量の低値は、7,200ppm群で投与開始から90週までと多くの週で、また2,400ppm群も散見されております。
 生存率、体重は7頁に図がありますので説明いたします。上段に雄、下段に雌を示しています。上段の雄の投与群の生存率は対照群と同様です。雌ではちょっとバラついていますが、いちばん下に落ちているのは◇の最高用量の7,200ppm群です。対照群よりやや低値を示しております。雌対照群の生存率は、試験終了時には76%、これに対して最高用量の雌7,200ppm群は66%と10%程度の低下を示しております。それほど大きな変化ではないと思いますが、わずかな低値が認められます。
 8頁は体重推移です。上段に雄、下段に雌を示しており、◇が雄7,200ppmです。この群では試験期間を通して体重増加の抑制がみられました。この群の最終体重は対照群を100%とすると90%と、10%程度の増加抑制が起こっています。下の雌です。◇が雌の7,200ppmですが、この群では試験期間を通して体重増加の抑制がみられました。この群の最終体重は、対照群を100とすると79%と、20%程度の減少が認められます。
 引き続いて腫瘍の説明です。5頁の上段にラット雄、下段にラットの雌の腫瘍発生を示しております。特に雄で腫瘍の発生増加は認められておりません。雌では副腎の褐色細胞腫と悪性の褐色細胞腫を合わせた発生がPeto検定で増加傾向を示しました。各投与群の発生数はヒストリカルコントロールの範囲であることから、被験物質による投与の影響とは考えませんでした。したがって、雌にも被験物質の投与による腫瘍の発生増加はないと判断しております。
 3頁に戻って腫瘍以外の病変です。腎臓の乳頭壊死の発生増加が、雌雄の2,400ppm以上の群に、腎臓の尿路上皮の過形成が雌7,200ppm群に認められております。そのほか腎臓には、腎臓への影響を示唆する変化として、尿素窒素の高値と尿潜血の陽性例の増加が、雌の2,400ppm以上の群に、腎臓重量の増加が雄は7,200ppm、雌は2,400ppm以上の群に認められております。以上が非腫瘍性の病変です。
 これらの結果から、腫瘍はなかった、それと非腫瘍がこのぐらいの所で出たという結果です。これらの結果から無毒性量(NOAEL)は雌雄とも腎臓への影響をエンドポイントとして、800ppm、雄42mg/kg体重/日、雌は69mg/kg体重/日であると考えました。
 次にマウスの試験の結果を説明します。4-2にマウスの結果を載せました。試験の結果、生存率の低下が、雄は800ppmと5,000ppm、雌は2,000ppm以上の投与群にみられましたが、やはりこれも投与に関連した特定の死因の増加はみられておりませんので、被験物質投与による影響であるとは断定できておりません。一般状態の観察では、投与と関連があると考えられる所見は認められませんでした。
 体重と摂餌量、摂水量です。体重、摂餌量は対照群と同じような推移を示しました。摂水量では低値が、雄の5,000ppm以上の試験期間の後半に、雌5,000ppmではほぼ全投与期間を通して認められております。
 9頁に図があり、マウスの生存率、上段が雄、下段が雌です。先ほど触れましたが、生存率の低下が上段の雄は△の800ppm群と、◇の5,000ppm群に認められております。対照群の生存率が82%で、これに対して800ppm群のほうは62%、5,000ppm群は66%と、やや低くなっています。下段の雌は、□の2,000ppm群と◇の5,000ppm群では生存率の低下がみられています。対照群の最終の生存率は72%ですが、2,000ppm群の生存率は46%、5,000ppm群の生存率は48%と、若干少ない傾向を示しております。ただし、これも特定の死因の増加はありません。
 10頁に体重の推移を示しております。上段が雄、下段が雌ですが、ご覧のように雌雄とも対照群と同様の推移を示しております。
 6頁の腫瘍の発生状況に移ります。上段が雄、下段が雌です。雄では肺の細気管支-肺胞上皮腺腫の発生はPeto検定、Cochran-Armitage検定で有意な増加傾向を示しておりますが、各投与群における発生率は、当センターのヒストリカルコントロールデータの範囲内にあることから、被験物質の投与によるものではないと判断しております。雌では、子宮の組織球性肉腫の発生はPeto検定で増加傾向を示しましたが、この腫瘍の発生率も、当センターのヒストリカルコントロールデータの範囲内にあります。したがって、被験物質の投与によるものではないと判断しました。
 3頁に腫瘍以外の続きと、まとめがあります。投与群に腫瘍の発生増加及び腫瘍に関連した病変の発生増加は認められておりません。なお、腫瘍以外の毒性影響も精査しましたが、この時点では認められませんでした。これらの結果から、無毒性量(NOAEL)は、雌雄とも5,000ppm、これは最高用量になると思いますが、雄は528mg/kg体重/日、雌は656mg/kg体重/日と最高用量のかなり大きな値を示しております。
 まとめです。ラット、マウス、雌雄とも腫瘍の発生増加は認められず、2-アミノエタノールのラット、マウスに対する発がん性はないと結論いたしました。以上です。
○大前座長 ありがとうございました。発がん性はないという試験結果だということですが、いかがでしょうか。変異原性はマイナスで、発がん性もいくつか矢印は付いていますが、みんなヒストリカルコントロールの範囲内だから大丈夫だろうという結論ですが、よろしいですか。そうしますと、この場合はフロー図の指針の作成の必要性はなしということでよろしいですか。
○西川委員 腫瘍はいいのですが、死亡例があり、特定の死因がないということで、毒性の標的は腎臓になりそうですが、腎臓にはそういう変化は何もなかったということなのでしょうか。
 マウスでもそうですが、ラットの試験の死亡例に、投与に関連した死因はなかったというコメントがあります。毒性所見は腎臓を中心に出ているようですが、死亡例についての腎臓の所見はどうでしたか。
○山崎氏 マウスの雄では、800ppm群で白血病とか肝臓腫瘍、5,000ppm群で尿閉、排尿障害、水腎症及び白血病による死亡/瀕死が対照群よりもわずかに多いということで、この群ではこれだというような特定のものはありません。
○西川委員 ラットはどうですか。ラットのほうが腎臓の所見が入っていますが。
○山崎氏 雄には特定の病変あるいは腫瘍による死亡の増加はありません。雌は7,200ppm群は白血病による死亡/瀕死が対照群よりやや多く認められたということです。対照群2匹に対して7,200で6匹ということで、顕著とまでは言わないまでも、わずかな増加ということです。
○西川委員 それから、先ほどの物質とも関連するのですが、尿閉という言葉をおっしゃっているのですが、尿路に閉塞があってということを確認されているのですか。あるいは無尿と混同されているかのどちらかですね。
○大前座長 いかがでしょうか。無尿なのか、例えば尿路系に石が詰まっていて出てこないのか。物理的にも、神経学的にもいろいろなことがあるでしょうが、それで無尿になっているのかどうかということですが。
○西川委員 大きな問題ではないので、また調べていただいて次回以降でもお願いします。議事を進めてください。
○大前座長 それは後ほどお調べください。それでは、次の物質のアクリル酸をお願いします。
○大淵有害性調査機関査察官 続きまして、資料3-1のアクリル酸の吸入ばく露によるがん原性試験結果を説明します。いままでの2つは経口投与でしたが、こちらは吸入によるばく露です。1の被験物質については、CASNo.79-10-7で、構造式はこちらに書いてあるようなものです。
 物理化学的性状は、無色の液体で、沸点が141℃です。溶解性は水やアルコールに可溶です。用途は、高分子を作る際のものもあるということで、ほかのここに書いてあるようなアクリル酸エステル、アクリロニトリル、ブタジエン、酢酸ビニルなどの他のモノマーと共重合させたものは不織布バインダー、フロッキー加工用バインダー、繊維の改質剤などとして使用される。また、ポリアクリル酸塩類は高吸水性樹脂、増粘剤、凝集剤などの用途があります。
 生産量等は2007年度で製造・輸入量の合計が10万t~100万tの間で、製造業者等はここに書いてあるとおりです。
 許容濃度等は、管理濃度、日本産業衛生学会の許容濃度は設定されておりません。米国のACGIHの値としては2ppmというのがあります。労働安全衛生法上の規制等は、危険物で引火性のものという規定。それから他の2物質同様、MSDSの対象物質となっております。IRCAの発がん性の区分は、グループ3、ヒトに対する発がん性については分類できない物質という位置づけです。
 続きまして1-7の変異原性についてですが、Ames試験に関する陰性の報告が1つと、mouse lymphomaの陽性の報告が2報あるということで、その詳細は下に書いてあるとおりです。まず、Cameronについては、Ames試験とmouse lymphomaの報告があり、Ames試験については、ネズミチフス菌の4菌株を用いて、代謝活性化を用いない場合、ラットS9の代謝活性化を用いた場合及びハムスターS9の代謝活性化を用いた場合のそれぞれで試験を実施して、いずれの場合も陰性の結果が報告されています。mouse lymphomaの試験では、ラットS9の代謝活性化を用いた場合と用いない場合で試験をして、いずれも陽性という結果です。
 次のMooreのmouse lymphomaの試験では、代謝活性化を用いない場合のみでの試験で、結果は遺伝子突然変異作用は陰性、染色体異常誘発作用が陽性であるという報告があります。ただ、なお書きでCameronらのアクリル酸に関してのmouse lymphomaの結果については、コロニーの大きさのデータがないため、この論文ではアクリル酸の突然変異誘発性が遺伝子突然変異によるものか、染色体の構造異常によるものかを判断することはできなかったという報告になっています。以下はバイオアッセイから説明してもらいます。
○齋藤氏 バイオアッセイ研究センターの齋藤と申します。よろしくお願いします。
○大前座長 先ほどの答えは、またあとでお願いします。
○齋藤氏 それでは、3の方法からご説明いたします。試験は経口試験と同様に、F344のラット、B6D2F1マウスを用いて、投与群3群、対照群1群の計4群の構成で、雌雄各群とも50匹、合計ラット400匹、マウス400匹で行いました。被験物質の投与は、1日6時間、週5日間を104週にわたり、動物に吸入ばく露することにより行いました。投与濃度は、ラットは雌雄とも10、40、160ppm、マウスは雌雄とも2、8、32ppmとしました。
 観察、検査としては、一般状態の観察、体重及び摂餌量の測定、血液学的検査、血液生化学的検査、尿検査、剖検、臓器重量測定及び病理組織学的検査を行いました。それでは、ラットの結果からご説明します。
 ラットでは試験の結果、動物の生存率及び一般状態にアクリル酸の影響はみられませんでした。体重は雌雄の160ppmで増加の抑制がみられました。160ppm群の最終体重は対照群に対して、雄は87%、雌は90%でした。摂餌量では雌雄の160ppm群が投与期間を通して低値を示し、投与の前半には雌雄の40ppm群は多くの週で、雄の10ppm群ではわずかに低値を示した週がありました。
 7頁にはラットの生存率のグラフがあります。ご覧のとおり、投与群、対照群で差はみられませんでした。8頁は体重推移です。上段の雄の体重推移を見ますと、◇の最高投与群の160ppm群で投与期間を通じて低値であることがご覧いただけると思います。最終体重は対照群に対して、160ppm群は87%でした。下段の雌の体重推移にしても、雄同様、投与期間を通じて対照群に対して低値を示しています。最終体重は対照群に対して90%でした。
 3頁に戻って、病理組織学的検査の説明です。雌雄ともアクリル酸に関連した腫瘍の発生増加は認められませんでした。5頁の表を見ますと、表1に雄、表2に雌の腫瘍発生の数を示してあります。雄で40ppm群に精巣の間細胞腫がFisher検定で有意な増加を示したのがありますが、こちらは投与濃度に対応した変化ではないということで、被験物質の投与の影響ではないと判断しました。雌は、いずれの検定でも増加あるいは増加傾向は出ておりません。
 3頁に戻り、非腫瘍性病変の説明です。非腫瘍性病変としては、雌雄ともに鼻腔に嗅上皮の萎縮、呼吸上皮化生、扁平上皮化生及び配列不整、呼吸上皮の扁平上皮化生、並びに固有層の腺の呼吸上皮化生の発生増加が認められました。しかし、その病変はいずれも多くの動物が軽度であり、10ppm群にはアクリル酸の影響と考えられる変化はみられませんでした。また、本試験におけるアクリル酸のラットに対する2年間吸入ばく露による無毒性量(NOAEL)は、鼻腔への影響をエンドポイントとして10ppmであると判断しました。
 次にマウスの説明です。マウスでは試験の結果、雄の32ppm群で生存率が高くなりました。一般状態にアクリル酸の影響はみられませんでした。体重は雄の32ppm群で投与期間の中期まで増加の抑制がみられましたが、それ以降は回復し、対照群と同様な体重推移を示しました。雌ではアクリル酸の影響と思われる変化はみられませんでした。32ppm群の最終体重は、対照群に対して雄は102%、雌は99%でした。摂餌量は、32ppm群の雄では投与のほぼ全期間を通じて低値で推移し、雌では低値の週が散見されました。8ppmの群では11週以降、雌では42週までの低値の週が多くみられました。
 9頁はマウスの生存率です。上段の雄で32ppm群の生存率が高くなりました。雌では統計的に差はみられませんでした。10頁には体重を示したグラフがあります。上段の雄で、◇の32ppm群が投与の中ごろまで対照群と比べて低値を示しておりました。雌では差がみられませんでした。
 3頁に戻り、病理組織学的検査の結果です。雌雄ともアクリル酸に関連した腫瘍の発生増加は認められませんでした。6頁に表があります。上段の雄のハーダー腺の腺腫で32ppm群にFisher検定で有意な増加を示しております。当センターのヒストリカルコントロールデータでは、ハーダー腺の腺腫の発生は0~10%、平均4.9%で、5匹という10%はヒストリカルコントロールデータの範囲内であるということで、被験物質の影響とは断定しませんでした。ほかは減少あるいは減少傾向、雌では統計的に有意な差がついた雌雄はありませんでした。
 3頁に戻り、非腫瘍性病変です。雌雄とも鼻腔と鼻咽頭にアクリル酸の影響がみられました。鼻腔では嗅上皮と腺の呼吸上皮化生、嗅上皮と呼吸上皮のエオジン好性変化の発生が、雌雄とも増加しました。また雄は嗅上皮の萎縮、雌は滲出液及び呼吸上皮の過形成の発生増加がみられました。また鼻咽頭には雌雄ともエオジン好性変化の発生数の増加がみられました。この中で、雄では鼻腔の嗅上皮と固有層の腺の呼吸上皮化生、嗅上皮と呼吸上皮のエオジン好性変化が、雌では鼻腔の嗅上皮と固有層の腺の呼吸上皮化生、嗅上皮のエオジン好性変化、鼻咽頭のエオジン好性変化が、それぞれ最低濃度の2ppmまで認められました。よって本試験におけるアクリル酸のマウスに対する2年間吸入ばく露による最少毒性量(LOAEL)は、鼻腔と鼻咽頭への影響をエンドポイントとして2ppmであると考えられました。
 まとめは、ラット、マウスともに雌雄とも腫瘍の発生増加は認められず、アクリル酸のラットに対するがん原性はないと結論いたしました。以上です。
○大前座長 ありがとうございました。変異原性は若干陽性のものもあるようですが、発がん性は今回はみられなかったということですが、いかがでしょうか。それでは、この件に関しては、特に指針の作成の必要はないという判断です。
 時間が押しておりまして、今日はもう1つあります。2番目の「国が行う生殖毒性試験の対象物質の選定」を、あと15分ぐらいでやらなければいけません。ちょっとタイトになりましたが、事務局から説明をお願いします。
○大淵有害性調査機関査察官 それでは、事務局から説明いたします。資料4-1「国が実施する生殖毒性試験の対象物質の選定について」です。まず試験の趣旨等から説明いたします。先ほどがん原性試験の趣旨等についてもご説明しましたが、そちらとも少しダブります。これまでは国の試験ということでは職業がんに着目して、がん原性試験、変異原性試験を実施しておりましたが、近年、国内外で生殖毒性の関心が高まっているということで、労働現場で製造・使用される物質について、平成23年度から生殖毒性試験も行うこととなりました。
 2の「リスク評価における生殖毒性試験の位置付け」ですが、国が行うリスク評価においては、評価対象物質の有害性評価、ばく露評価を行い、その結果を基に総合的な評価を行う仕組みになっています。しかしながら、評価対象物質の中には生殖毒性に関する情報が、必ずしも十分ではないものが含まれておりますので、そういう物質について、国が生殖毒性試験を実施して、その結果を有害性評価に活用するということを考えていきたいと思います。
 別紙の3頁です。リスク評価の対象物質はそもそも企画検討会で決めるわけですが、その中から有害性評価小検討会において、生殖毒性の対象物質あるいはその候補物質を選定していただくという考え方です。
 最初の頁に戻って、2の後段です。国が作成したリスク評価書は化学物質のGHS分類を行う際の根拠資料となっておりますので、国が行った生殖毒性試験の結果はGHS分類のほうにも反映させることが可能です。
 3の「試験の方法」です。私どもでいま予定している試験はOECDテストガイドラインの422(反復投与毒性・生殖発生毒性併合試験)と言われるもので、投与の方法については吸入による全身ばく露を予定しております。試験は用量設定のための予備試験と、その後の本試験の2段階となりますが、2年度にまたがっての実施を予定しています。ただし、対象物質の物理化学的性状等によっては予備試験の前に試験の実施可能性を検討するためのフィージビリティテストが必要になる場合もあるかと考えております。

 4は「試験対象物質選定の基本的な考え方」です。上で説明したこととダブってくる部分があります。リスク評価の対象物質の中から選んでいくということですが、まずリスク評価対象物質については、厚生労働大臣の告示で、有害物ばく露作業報告の対象物質に関係する告示を毎年行っておりますので、その中で物質が定められます。平成23年はもうしばらくすると新しい告示を出す予定ですが、その物質については平成24年1~12月に労働現場で行われるばく露作業について作業報告を求めることとしており、この物質に関係するリスク評価を実際に行うのは平成25年度以降になります。
 今年度に開始する生殖毒性試験については、平成23年告示予定物質の中から、その対象物質あるいは候補物質を選定していただき、平成25年度以降に行われるリスク評価にその結果を発表したいと考えたいと存じます。
 「試験の対象物質あるいは候補物質の選定基準」です。具体的に平成23年に告示を予定している物質は、本日の資料の資料4-2に掲げている物質です。資料4-2ではCAS番号、性状、生殖毒性に関するGHSの区分、そのGHS区分の関係としてモデルMSDS上ではどんな記載がされているかという情報を示してあります。
 この中で生殖毒性に関係する情報をもう少し詳しく示したものが資料4-3になります。今日の会議においては、いま示している物質の中から生殖毒性が特に必要と考えられる物質を先生方に選んでいただきたいと考えております。ここの標題は選定基準となっておりますが、事務局では現在、細かな選定基準の案は特に持っておらず、今日の先生方の議論の中でこういう物質は、こうこうこういう理由で生殖毒性の試験が必要だというご議論をしていただければありがたいと思っております。
 6の「有害性小検討会における検討事項」は、いま申し上げた選定基準あるいはそれに基づく物質の選定について検討いただき、また実際に試験が終わりましたら、リスク評価の中で有害性を評価していただくときに、生殖毒性試験の結果を含めてご検討いただきたいと思っております。
 もう少し資料の説明をさせていただきたいと思います。資料4-2を上から順に説明しますと、アクリル酸メチルについては、GHSでは「分類できない」という生殖毒性の区分で、関係省庁で作っているモデルMSDSでは「情報なし」となっております。これについては事務局で情報を探させていただきました。資料4-3の2頁、3頁、4頁の途中ぐらいまでになりますが、若干情報がみられましたので、補足いたします。
 いくつかの試験が行われているようですが、1つ目の試験についての試験結果を見ますと、「124ppm以上の群の雄で精巣相対重量の有意な増加を認めたが、組織に影響はなかった」とか、次の試験でも「生殖器官の重量や組織に影響はなかった」。3つ目の試験でも体重の減少等は出ていますが、生殖毒性的な影響はあまりないようです。4頁の試験結果についても、生殖毒性あるいは催奇形性といったものはみられないという状況です。
 資料4-2に戻り、2番目のアセチルサルチル酸はGHSの区分が1Aで、モデルMSDSのほうでは、「ヒトで生殖毒性を示す報告がある」と記述されています。イソシアン酸メチルは区分が1BでMSDSのほうはラット、マウスの妊娠後にばく露した試験で、胎仔の死亡、吸収胚の増加が報告されています。「反復又は長期の接触により、ヒトで生殖・発生毒性を引き起こす」という記載があります。
 塩化ホスホリルは「分類できない」、モデルMSDSでは「情報なし」となっておりますが、こちらで把握した情報では、資料4-3の6頁の下のほうに塩化ホスホリルについて記載してありますが、OECDのSIDSの情報では、試験結果として卵巣濾胞細胞の減少云々という記載があり、著者らは被験物質の毒性による二次的影響であるとしているという情報です。
 資料4-2に戻り、次はクロロエタンです。こちらについてはGHS区分は「分類できない」、モデルMSDSは「データ不足」という情報。備考欄に構造類似のクロロメタンについて、GHS区分は1という情報があります。
 クロロエタンについてもう少し詳しい情報は資料4-3の7頁です。こちらについては2つほど情報を載せており、1つ目のマウスの試験は、母マウスへの影響はなかったが、かなり高い濃度で13,200mg/m3という条件ですが、仔胎に有意な影響が出ているということです。2つ目の試験結果は、精子の形成に影響を認めたという報告があるが、詳細は不明という情報です。
 続いての物質は資料4-2、2-クロロフェノールです。GHSの区分が1Bということで、その関係のモデルMSDSではラットの飲水投与試験で、「一腹当たり胎仔数の減少、死産仔数の増加が見られた」という報告があります。また、「ばく露された母動物の体重増加、赤血球数などの血液指標に影響はない」という記述があります。
 次は臭素ですが、GHSは「分類できない」、モデルMSDSは「情報なし」です。私どもの情報でも、さらなる情報は把握できませんでした。
 ピリジンは、GHSが区分2、モデルMSDSは、親動物の一般毒性についての記載はないが、睾丸及び副睾丸の萎縮や発情周期の延長が認められています。
 メタクリル酸は、GHSは「分類できない」、モデルMSDSは「データ不足」ということですが、こちらで調べた情報では、資料4-3の9頁ではラットとマウスの試験結果が示してあります。結論だけを申しますと、上記90日間の吸入試験では、ラット及びマウスのすべての群で生殖器官への影響を認めていません。
 資料4-2の裏側の頁です。メタクリル酸メチルです。GHSの区分は2、モデルMSDSの記述はラットの催奇形性試験で、母体毒性が発現する用量で胎児毒性がみられているというものです。
 エチレングリコールモノエチルエーテルです。GHSの区分が1B、モデルMSDSの記述は、マウス、ラット及びウサギにおいて母体毒性がみられない用量で、発生への影響がみられていることから区分1Bとしたというものです。
 エチレングリコールモノメチルエーテルです。GHS区分は1B、モデルMSDSの記述ではマウス、ラットで母動物毒性のみられない用量で、胎児の発生への影響がみられることから区分1Bとしたということです。
 駆け足になって申し訳ございませんが、次回の告示で予定している物質について、生殖毒性の関係の情報を簡単に説明させていただきました。説明を省略しましたが、これらの物質に関係する資料としては、本日の資料の中では、A3版を折り畳んである参考4です。こちらは6月に開催したリスクの企画検討会において、リスク評価の対象物質を選んでいくときに使用した資料です。今日付けましたのは、生殖毒性以外の有害性の情報についても載っておりますので、ご参考ということでお配りしております。以上です。
○大前座長 ありがとうございました。今日、この検討会のミッションは、今回告示される物質から生殖毒性試験をやるものをとりあえず選んでくださいということです。先ほどありましたように、有害性の吸入試験ですので、吸入のフィージビリティがあるもの、いまデータをたくさん説明していただきましたが、このデータでないもの、もしくは不十分なものについて少しご意見をいただきたいと思います。フィージビリティの問題がありましたので、1物質ではなくて3物質ぐらい候補があれば挙げていただいて、実際にフィージビリティがあるかどうかを、これはバイオアッセイでやられると思いますが、バイオアッセイで検討していただいてということになろうかと思います。
 この物質がいいのではないかというご意見はありますか。いまのご説明で臭素が全く情報がないのですが。あとは塩化ホスホリルが粉でやっているようで、ガスではないので、フィージビリティはちょっと難しいかなという感じがあります。何かご意見はありますか。クロロエタンは1.3%という非常に高い濃度で影響があったということで、あまり現実的ではないかなという気もしますが。
○宮川委員 基本的に既に1Aあるいは1Bという分類が付いているものは、いまさら生殖毒性試験をしなくてもよろしいのではないかという気持はいたします。そうすると、いくつかを除いて残りから考えるということでどうでしょうか。
○大前座長 そうすると、残るのは最初の物質のアクリル酸メチルと、「分類できない」ものの中でクロロエタンと塩化ホスホリルは、やたら濃度が高いとか粉体らしいので難しいだろうと。それを除いた臭素、ピリジン、メタクリル酸、後ろに行ってメタクリル酸メチル、そのぐらいの中から1物質、2物質ぐらいをピックアップしていただきたいと思います。先ほどの説明でアクリル酸メチルはネガティブだというデータですよね。
○宮川委員 アクリル酸メチルについての記載を見ると、生殖毒性試験の結果ではなくて、13週吸入実験の結果で生殖器官の臓器に対する影響がなかったという意味かと。資料4-3の1.のアクリル酸メチルのいちばん上のところで、BASFの資料は12あるいは13週ではないかと思います。下のほうは違うかもしれません。
○大前座長 そうですね。これは生殖器の毒性ですね。そうすると、1番のアクリル酸メチルも候補物質にはなり得るということですが。メタクリル酸とメタクリル酸メチルというのは代謝されると体内で同じものになるのでしたか。もし同じものになるのだったら、どちらかをやればいいわけですよね。アクリル酸メチルは20万tぐらい作っていましたので、随分たくさん作っていますよね。臭素などは実験ができるのですか。これは吸入実験ですよね。臭素にばく露したらチャンバーが駄目になってしまいませんか。
○西沢試験管理部長 臭素は問題があると思います。分析のほうは炭素がありませんので、炭素なしの分析を考えなければいけないということと、先生がおっしゃるとおり、腐食性がありますので、検討が必要かと思います。
○大前座長 そうしますと、そういう状況がありそうなので、臭素を外すとして、アクリル酸メチル、ピリジン、メタクリル酸、メタクリル酸メチルの4物質が、いま可能性がある候補として残っているのですが、何か優先順位に関してご意見があればと思います。
○西沢試験管理部長 塩化ホスホリルは「分類できない」になっていますが、これは水と反応して塩化水素を発生します。バイオアッセイがいま使っている吸入チャンバーは、気液分離をする際には水封型というタイプを採っております。それから自動給水装置を使っておりますので、チャンバーの中は、水があります。塩化水素が発生すると試験になりませんので、塩化ホスホリルは、いまのタイプのチャンバーではすぐには試験ができません。
 それからメタクリル酸は、蒸気圧がかなり低いので、ばく露ができたとしても、あまり高濃度にならないということで生殖毒性試験として成立するかという問題があると思います。いまのところは以上です。
○大前座長 そうしますと、いまのご意見で濃度も考えますと、残っている物質がアクリル酸メチル、ピリジン、メタクリル酸メチルの3つが、フイージビリティも考えると妥当そうかなということですが。
○寺島化学物質情報管理官 基本的なことですが、アクリル酸メチルは、いまがん原性試験を実施中の物質です。基本的に有害物ばく露作業報告の告示予定の物質は、神経毒性で選んでここに入っています。
○松井化学物質評価室長 アクリル酸メチルについては、生殖毒性については情報がないということで、先ほどのわずかな情報しかなかったのです。がん原性試験の期間と生殖毒性試験の実施期間が相当異なるものですから、生殖毒性試験については、リスク評価をやる場合に使える時点までに終了することが見込まれるのに対して、がん原性試験はそれからさらに先になってしまいますので、特にダブっているから今回は選ばないという判断にはならないのかなと思います。
○大前座長 毒性試験日が違うので、がん原性試験の中からは生殖器の毒性は出てくるのでしょうが、生殖毒性は出てこないと思います。ただ、いまおっしゃったように、もともと選んであるもの全部が神経毒性のタイプだということで、若干そういう意味では本来の生殖毒性試験のためのリストではないのですが、いずれにしても今年はこの中から選ばざるを得ないということなので、いまのアクリル酸メチル、ピリジン、メタクリル酸メチルの3物質が、いままでの議論の中で残っていますが、特にこの物質を優先的にやるということがなければ、この3物質でフィージビリティ等々も含めて、バイオアッセイのほうでご検討していただくということでよろしいですか。バイオアッセイのほうで、この中で特にというご意見はありますか。いまのフィージビリティがなさそうなものは全部外したということですが。
○西沢試験管理部長 最終的に確認したいのですが。アクリル酸メチル、ピリジン、メタクリル酸メチルの3つというお話ですか。
○大前座長 はい。
○西沢試験管理部長 そうですね。この中からであれば今年度は実行可能です。
○宮川委員 追加でもう1つ。4-3を見ますと、一応いま挙がった物質についても、1つぐらいは生殖毒性あるいは発生毒性試験の結果があるようですので、原著を一度取り寄せていただいて、1つでも相当やられているなというのがあれば、それは後回しということも考えられます。あるいは出てきたのが比較的簡単な試験しかないということであれば、それは出た以上。
○大前座長 そういう既存の文献を少し詳細に読んでいただいて、その中で外せるものがあれば外すと、もう十分信頼できる生殖毒性試験がやられていれば外すという選択をしていただくということでよろしいですか。フィージビリティの問題と、いまの情報の精度といいますか、それの問題で外せるものは外して物質を決める。最終的には1物質だそうですので、1物質に絞ると。何かコメントはありますか。では、今日の段階では3物質ということで決めさせていただきます。いまのような形でフィージビリティと既存の情報の精度でやる必要がないものは外すということにします。
○奥田管理室長 試験の方法に関してのところで確認をとりたいのですが、以前、厚生労働省から委託で生殖毒性の吸入試験をやったときには、雄2週間、雌2週間、妊娠中の雌に対して2週間という形で予備試験をして、本試験としてOECDのガイドライン422という試験の流れを作っていたわけで、それを踏襲するような形と考えるのか、あるいは予備試験としては通常の濃度だけを決定するための2週間程度の試験という形を採るのか。OECDの422を生殖毒性としてのデフェニティブの試験という位置づけで、いま一応資料4-1に挙がっていますので、そういう位置づけとしてよろしいのかどうかです。
○瀧ヶ平室長補佐 試験方法についてはOECDの422に基づいてやるということで、予備試験のほうについては、いま3つの物質を選んでいただきましたので、それがどういうやり方かということとも絡んできますので、バイオアッセイと事務局で詰めて、具体的な話をしてもらえればと思います・
○大前座長 最も生殖毒性試験としてふさわしい予備試験を選んでいただくということだと思いますが、それはバイオアッセイと詰めていただくことにします。
○西川委員 試験方法の問題が出たので確認させていただきますが、なぜOECDの422を実施するかということについて説明をいただければと思いますが、あくまでもスクリーニング試験と理解しております。もっと長い、例えばOECDの416等の2世代生殖毒性試験などがありますが。
○松井化学物質評価室長 先生がおっしゃるように、理想的には仮に陰性の試験結果が出ても、陰性だと非常に信頼できるような試験が望ましいわけですが、大変申し訳ないのですが、予算の関係もあって、名称はスクリーニングですが、陽性の結果が出て、それが特に母体に強い影響を及ぼしていないというところであれば、信頼できるのだろうということで、今回はこれで行えないかなと考えております。
○西川委員 わかりました。
○大前座長 そのほか、生殖毒性試験に関してご意見、コメントはありますか。なければ随分遅くなってしまいましたが、今日の最後の議題、今後の予定について、事務局からお願いします。
○瀧ヶ平室長補佐 資料5に予定が書いてあります。合同会議は名古屋先生のほうでやっておりますが、有害性の試験については、年明け以降に議題としてはフィージビリティテスト終了物質の中からのがん原性試験の選定と、いま中災防で委託調査してもらっている有害性評価についてのことを議題にして、また年明けに開催させていただきたいと思っております。以上です。
○相磯病理検査部長 先ほどがん原性試験結果の評価で、2-アミノエタノールの尿閉に関してですが、これは膀胱に大量の尿が貯留しており、そこから先に出ていかないということで、腎臓で尿はできております。
○大前座長 無尿ではないということですね。不手際で15分ほど遅くなってしまいました。今日はどうもありがとうございました。


(了)

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