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2011年11月30日 第1回 労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方に関する研究会

職業安定局高齢・障害者雇用対策部障害者雇用対策課

○日時

平成23年11月30日(水)10:00~


○場所

中央合同庁舎第5号館専用14会議室


○出席者

【委員】 岩村座長、石井委員、大胡田委員、駒村委員、杉山委員、武石委員、山岡委員


【事務局】 山田障害者雇用対策課長、田窪主任障害者雇用専門官、石田障害者雇用対策課長補佐、西川障害者雇用対策課長補佐


○議題

1.研究会の開催について
2.これまでの検討経緯等について
 ・障害者権利条約について
 ・厚生労働省におけるこれまでの検討について
 ・障害者制度改革の動きについて
3.今後の研究会の進め方について
4.意見交換

○議事

○事務局
 定刻となりましたので、ただいまから、第1回「労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方に関する研究会」を開催いたします。
 参集者の皆様方には、本日、ご多忙のところご参集いただきましてありがとうございます。座長が選任されるまでの間、事務局で司会を務めさせていただきます、障害者対策課で課長補佐をやっております西川と申します。よろしくお願いいたします。
 まず、本日配付いたしました資料の確認をお願いいたします。議事次第に続きまして座席表、配付資料として資料1から資料8まで、参考資料として参考1から参考3までをお配りしています。よろしいでしょうか。
 それでは、開催に先立ちまして、山田障害者雇用対策課長よりご挨拶申し上げます。
○障害者雇用対策課長
 本日は、「労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方に関する研究会」を開催させていただくことになり、委員の皆様にご参集賜り、感謝申し上げます。
 ご承知のことと思いますが、障害者権利条約は、我が国では平成19年9月に署名をして、現在、批准に向けて、各分野における国内法制の整備等の検討を進めています。特に労働・雇用分野における条約への対応については、既に、平成20年4月に研究会を計11回開催し、平成21年7月に中間整理を取りまとめています。また、そのあと、労働政策審議会の障害者雇用分科会において、平成21年10月から計7回の検討を行い、平成22年4月に主な議論の状況を、中間的な取りまとめという形でまとめています。
 そのような中、昨年6月の閣議決定では、労働・雇用分野における障害を理由とする差別の禁止、職場での合理的配慮の提供を確保するための措置等について検討を行い、平成24年度内を目途に、その結論を得るということとされていることから、これまでの研究会や分科会での議論や、内閣府の障害者制度改革推進会議の議論なども踏まえつつ、今後、必要な法整備に向け検討を進めていく必要があります。
 特にこれまでの研究会や分科会では、労働・雇用分野における障害を理由とする差別の禁止や合理的配慮の提供の義務づけに関し、国内法に位置づけるという方向性については、既に確認ができているものの、2点、合理的配慮が適切に提供されるための仕組み、合理的配慮を行う事業主の負担に対する助成の在り方などについては、先の研究会、分科会においても、さらに検討すべき課題とされていまして、本研究会においては、こういった点を中心にご検討いただければと思います。
 最後になりますが、先の閣議決定では、平成24年度内を目途に結論を得る、となっていますが、本研究会については、来年の夏ごろを目処に、検討すべき課題についてご議論いただき、一定の課題の整理、取りまとめを行っていただきたいと考えています。
 本研究会における障害者権利条約への批准に向けた先生方の活発なご議論の中で、我が国においては、障害者の方々の雇用がさらに進み、差別がなくなるような状況をつくり出していきたいと思っていますので、よろしくご検討のほど、お願いいたします。
○事務局
 本日は第1回目ですので、各参集者の方々と事務局のメンバーをご紹介させていただきます。名簿の順に従って、参集者の方々のご紹介をさせていただきます。
 資料1の裏面、別紙の上から順に、弁護士でいらっしゃいます石井妙子様。石井様は経団連からのご推薦で、委員としてご参集いただきました。東京大学大学院法学政治学研究科教授でいらっしゃいます岩村正彦様。弁護士でいらっしゃいます大胡田誠様。大胡田様については、社会福祉法人日本盲人会連合からのご推薦で、委員としてご参集いただきました。NPO法人おおさか地域生活支援ネットワーク理事長でいらっしゃいます北野誠一様。北野様については、公益社団法人全国精神保健福祉会連合会からのご推薦で、委員としてご参集いただきましたが、本日は、都合によりご欠席とのご連絡をいただいています。慶應義塾大学経済学部教授でいらっしゃいます駒村康平様。駒村委員におかれましては、本日、所用により、終了前にご退席されるとのご連絡をいただいています。日本労働組合総連合会総合労働局雇用法制対策局長でいらっしゃいます杉山豊治様。法政大学キャリアデザイン学部教授でいらっしゃいます武石恵美子様。社会福祉法人全日本手をつなぐ育成会常務理事でいらっしゃる田中正博様。田中様についても、所用により本日ご欠席とのご連絡をいただいています。毎日新聞論説委員でいらっしゃいます野澤和弘様。野澤様につきましても、本日は都合によりご欠席とのご連絡をいただいています。社会福祉法人日本身体障害者団体連合会の常務理事及び事務局長でいらっしゃいます森祐司様。森様についても、本日は都合によりご欠席とのご連絡をいただいています。一般社団法人日本発達障害ネットワーク副理事長でいらっしゃいます山岡修様。以上、合計11名の有識者の方々にご参集を賜りました。
 続きまして、事務局のメンバーの紹介をいたします。山田障害者雇用対策課長。田窪主任障害者雇用専門官。石田課長補佐。私は、本日司会を務めさせていただいています、課長補佐の西川です。よろしくお願いいたします。
 次に、本研究会の開催要綱についてご説明させていただきます。資料1の1、開催の「趣旨」です。国際条約の障害者権利条約については、これまで条約の締結に向け、平成20年4月に研究会、平成21年10月からは労働政策審議会の障害者雇用分科会において議論・検討を行い、主な議論の状況を中間的に取りまとめている状況です。
 その後、昨年6月の閣議決定、「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について」におきまして、権利条約に対応するための労働・雇用分野における障害を理由とする差別の禁止や、合理的配慮の提供の確保などについて、平成24年度内を目途にその結論を得るとされています。本研究会は、こうしたこれまでの議論を踏まえつつ、これまでの議論から、更なる検討を進めるため開催するものです。
 2の「主な検討事項」です。(1)、障害を理由とする「差別禁止等枠組みの対象範囲について」、(2)「合理的配慮の内容及びその提供のための仕組みについて」、(3)「合理的配慮を行う事業主の負担に対する助成の在り方について」、(4)「その他」としています。後ほど詳細についてはご説明しますが、(1)及び(2)については、これまでの議論でも検討がされてきています。本研究会においては、(3)を中心にご議論をお願いしたいと考えています。
 3、4については省略させていただきますが、5の「開催時期」については、今月から開催させていただいて、概ね、月1回程度の開催と考えています。
 なお、この研究会とは別に、先ほどご説明しました昨年6月の閣議決定を踏まえて、障害者雇用促進制度における障害者の範囲等の在り方を検討する研究会、地域の就労支援機関の役割と連携の在り方を検討する研究会を立ち上げまして、検討を始めたところです。本研究会においても、それらの研究会と関わる部分については、適宜、情報提供をさせていただきながら進めさせていただきたいと考えています。
 次に、要綱に従いまして、座長の選任に入らさせていただきます。座長の選出について、どなたかご推薦がございましたら、お願いいたします。
○駒村委員
 これまで「障害者雇用分科会」の分科会長代理をされていました、岩村先生がよろしいかと思います。
○事務局
 ただいま駒村委員から、岩村委員を座長にというご推薦がありましたが、皆様いかがでしょうか。
(異議なし)
○事務局
 異論がありませんようですので、本研究会の座長を岩村委員にお願い申し上げたいと思います。
 岩村先生、これからの議事進行について、よろしくお願いいたします。
○岩村座長
 座長にということでご指名をいただきました。委員の皆様のご協力、事務局の皆様のご支援を得ながら、この研究会を進めていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、議事の公開について申合わせをしておきたいと思います。これについて、事務局からご説明いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○事務局
 参考1をご覧ください。会議の公開については、厚生労働省における「審議会等会合の公開に関する指針」において、懇談会等行政運営上の会合は、2のマル1~マル5までに該当する場合を除いて、原則公開するとしています。具体的には、「個人に関する情報を保護する必要がある」、マル2として「特定の個人等にかかわる専門的事項を審議するため、公開すると外部からの圧力や干渉等の影響を受けること等により、率直な意見の交換又は意思決定の中立性が不当に損なわれる」、マル3「公開することにより、市場に影響を及ぼすなど、国民の誤解や憶測を招き、不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれがある」といった場合を除いて公開することとしており、「特段の事情により会議又は議事録を非公開とする場合にあっては、その理由を明示すること」とされています。本研究会においては、これに従って、今後、議事及び議事録は原則公開という扱いにさせていただきたいと考えています。なお、回を重ねていく中で、議題等によって非公開とすべきとのご意見が委員からあった場合のみ、会議及び議事録の公開について、その取扱いをその都度、判断することとしたいと考えています。
 また、配付資料についても、議事、議事録と同様に、原則公開するものとし、取扱いに注意が必要な場合は、その旨を表示して、非公開の扱いとすることにさせていただきたいと思います。以上です。
○岩村座長
 ただいまご説明いただきました、この会議の公開方法について、何かご意見はありますでしょうか。よろしいですか。
 それでは、いま説明があったとおりで取り扱わせていただくことにしたいと思います。
 早速、本日の議題に入りたいと思います。お手元の議事次第に沿って進めていきます。議題2、「これまでの検討経緯等について」、事務局から説明をいただきたいと思います。これについても、資料を事務局で用意していただいていますので、それについて事務局から説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○事務局
 それでは順次、資料2から資料7まで、これまでの検討経緯といたしまして、まず、障害者の権利条約の概要、それから厚生労働省におけるこれまでの検討、そして内閣府を中心として政府全体で検討を進めている、障害者制度改革の動きにつきましてご説明させていただきます。
 資料2、「障害者権利条約について」ですが、この条約は、平成18年12月に国連において採択をされまして、我が国は平成19年9月に署名をしています。この条約は、平成23年10月現在で、106か国の国・地域が批准をしておりまして、我が国も署名を行っていることから、条約批准に向けて、条約の求める内容につきまして必要な国内法の整備をした上で、速やかに条約の締結を行う必要が生じています。
 まず1「条約の概要」です。この条約は、障害者の権利及び尊厳を保護・促進するための包括的・総合的な国際条約でして、具体的には、マル1一般的義務として、障害を理由とするいかなる差別(合理的配慮の否定を含む。)を禁止すること、マル2身体の自由、拷問禁止等の“自由権的権利”及び教育、労働等の“社会権的権利”について、締約国が取るべき措置を定めていること、マル3条約の実施を促進・保護・監視するための枠組みを維持、強化、指定又は設置すること等を定めているものです。特に、障害を理由とする差別に、合理的配慮の否定を含めているという点は特徴的な部分です。
 なお、合理的配慮の内容につきましては、資料2の3頁に条約の仮訳をつけています。条約の2条「定義」のところに「合理的配慮」の定義があります。「『合理的配慮』とは、障害者が他の者と平等にすべての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」と定義をされています。
 1頁に戻り、○の2つ目ですが、権利条約は総合的な条約ということで、雇用・労働分野については27条で規定しています。雇用分野については、公共・民間部門での雇用促進等のほか、マル1あらゆる形態の雇用に係るすべての事項に関する差別の禁止、マル2公正・良好な労働条件、安全・健康的な作業条件及び苦情に対する救済についての権利保護、マル3職場において合理的配慮が提供されることの確保等のための適当な措置をとることが規定されています。
 ○の3つ目ですが、下線部、条約の批准のためには、先ほどのマル1~マル3のように、現在、国内法制に規定のない事項について、国内法制の整備の可否又は是非について整理した上で、現時点で対応可能な事項については速やかに法的整備を図る必要があると考えています。なお、この点につきましては2頁、平成19年の労働政策審議会障害者雇用分科会におきましても、意見書の中で同様のことを指摘されています。
 また、3頁に仮訳を付けていますが、先ほど見ていただきました中の第1条「目的」には、障害者の定義について規定があります。ここでは、これまでの機能障害と言われる身体的又は精神的、知的といった機能の障害だけではなく、いわゆる社会モデルといわれる考え方で、障害者の定義の中に「様々な障壁との相互作用によって参加することが妨げられることのあるものを含む」と定義をしています。その他はご一読いただければと思います。
 続いて資料3です。開催要綱の説明の際に簡単に説明をしました、これまでの研究会、分科会の経緯を付けています。1頁では、平成20年4月から開催をいたしまして、計11回開催をいたしました研究会の経緯とメンバーを示しています。この研究会では、各国の事例とともに関係団体からヒアリングを実施しまして、平成21年7月に中間整理の形で取りまとめを行っています。
 続いて2頁は、平成21年7月から、先ほどの研究会を受けまして、労働政策審議会の障害者雇用分科会で議論を行っています。合計7回開催いたしまして、昨年の4月に議論の状況を中間的な取りまとめとして報告しています。
 続いて3頁、ここからは、いまご説明をしました平成20年の研究会での中間整理、それから平成21年の障害者雇用分科会での中間的な取りまとめを、項目ごとに比較表という形にしたものです。こちらについてはポイントをかいつまんでご説明をさせていただきます。
 まず、資料の構成ですが、右側が研究会における中間整理、それから左側が分科会の中間的な取りまとめを示しています。まず、第1「基本的枠組み」、「枠組みの全体像」としまして、ここでは労働・雇用分野における条約への対応について、どのようにまず考えていくのかという大枠についての考え方を示しています。また、既存の障害者雇用率制度との関係で、条約との関係をどう整理、位置づけていくのかを示しています。
 右側の研究会の中間整理のいちばん上の○ですが、労働・雇用分野において、マル1障害を理由とする差別の禁止やマル2職場における合理的配慮の提供について、実効性を担保するための仕組みも含めて、国内法制に位置づけることが必要であるとの意見が大勢であったとされています。
 3つ目の○ですが、実効性を担保するための仕組みとしては、いわゆる準司法的手続(例えば行政委員会による命令)のような形で判定的に行うというよりはむしろ、第3者が間に入って、あっせん、調停など、調整的に解決を図ることが適当との意見が大勢でした。
 続いて5つ目の○ですが、差別禁止の枠組みと、現行の障害者雇用率制度との関係については、雇用率制度は障害者の雇用の促進に有効であり、差別禁止の枠組みと矛盾しない、いわゆる積極的差別是正措置に当たるとの意見が大勢であったとまとめられています。
 そういった研究会での中間整理を受けまして、左側の分科会での中間的な取りまとめにおきましては、労働・雇用分野における障害を理由とする差別の禁止及び合理的配慮の提供については、実効性を担保するための仕組みを含めて国内法制に位置づけることに異論はないと。それから、障害者雇用率制度についても、積極的差別是正措置として捉えて、引き続き存置すべきということで異論がなかったとなっています。
 続いて4頁ですが、差別の禁止に関しての対象となる障害者の範囲、事業主の範囲について議論をいただいています。中間整理のいちばん上の○ですが、差別禁止及び合理的配慮の枠組みの対象となる障害者の範囲については、雇用率制度の対象となる障害者に限定せず、広範な障害者を対象とすべきであるとの意見が大勢でした。
 3つ目の○ですが、広範な障害者を対象とする場合、その対象に該当するか否か、手帳等により客観的に判断することはできないため、どのように対象者を確定するのかを検討すべきではないかとの意見もありました。
 4つ目の○ですが、条約上の障害者の定義には、先ほどご説明をしました、いわゆる機能障害だけではなく、社会的なバリアや環境上のバリア等「様々な障壁との相互作用」によって問題が生じている者も含まれるとされており、そのような考え方で捉えるべきではないかとの意見がありました。
 障害者の範囲につきましては、分科会での中間的な取りまとめにおきましては、差別禁止等の対象とする障害者の範囲は、障害者雇用促進法の第2条に規定する障害者、いわゆる雇用率制度から離れて広範な対象とすべきではないかということで異論がなかったと。ただ、3つ目のパラグラフになりますが、使用者代表の委員からは、特定の労働者が障害者に含まれることについての予見の可能性が担保されるべきではないかとの意見が出されています。
 続きまして事業主の対象範囲についてです。研究会では、事業主の範囲は、フランス・ドイツと同様に、すべての事業主を対象とすべきとの意見がありました。ただし、分科会のほうを見ていただきますと、労働者代表の委員からは、事業主の範囲についてはすべての事業主との意見が出されましたが、これに対して、使用者代表の委員からは、とりわけ中小企業の事業主については、職場の就業環境や公的な支援の整備状況なども勘案しながら、段階的な実施も含め、一定の配慮が必要との意見が出されています。
 続いて5頁ですが、第2「障害を理由とする差別の禁止」の基本的な考え方、それから禁止すべき差別を示しています。障害を理由とする差別というものはどういうものなのか、例えば、「間接差別」や「労働能力に基づく差異」は差別に該当するのかといった考え方、それから差別を禁止すべき対象となる雇用に関する事項について示しています。
 中間整理の1つ目の○ですが、外見上は中立的でも、職務とは関連がない等合理性のない条件を設定し、実質的に障害者を差別するような、いわゆる「間接差別」については、条約上明文の規定はありませんが、差別に該当するのではないかとの意見がある一方で、間接差別については、男女雇用機会均等法改正の際にも議論されておりますが、何が間接差別に該当するのかの基準など、実際にはかなり難しい問題があるのではないかとの意見もありました。
 2番目の○ですが、労働能力を評価した結果として生ずる賃金等の差については、差別に該当しないのではないかとの意見がありました。
 3番目の○ですが、合理的配慮の否定については、条約においては「差別」に含まれるとしておりますが、我が国の法制上、それ自体を第3の類型の差別と構成するのか、いわゆる合理的配慮が提供されていないこと自体で、実際に差が生じていなくても「差別」として捉えていくのか、それとも、直接差別に組み込んで考え、これは実際に差が生じていることについて、合理的配慮が提供されていないことを原因としている場合に、それを「差別」というふうに捉えていくかについても、検討すべきではないかとの意見がありました。
 下に行って、差別の禁止の対象とすべき事項につきましては、マル1~マル5までの雇用に係るすべての事項を対象とすべきではないかということで、○の1つ目ですが、採用については、事業主に広範な裁量があること、他の応募者がいること等、立証が難しい、差別があった場合の対応が難しい等問題はあるが、条約でも明記されており、立証できるものまで除外することは適当ではないので、差別禁止の対象から除外すべきではないのではないか、という意見がありました。
 こういった研究会での中間整理を受けて、分科会では、障害を理由とする差別を禁止することについては、こちらは全体として異論がなかったというふうになっています。
 下の段に移りまして、条約においては、雇用に係るすべての事項を差別禁止対象としており、そういったものを対象としていくということで異論はなかったと。また、労働者代表の委員からは、禁止すべき差別の中に間接差別も含まれるのではないかとの意見が出され、これに対して、公益委員、それから使用者代表委員からは、具体的な判断基準を示していくのは困難ではないかとの意見が出されています。
 6頁で、下の段の左側、第3「職場における合理的配慮」の内容、それから基本的な考え方です。
 中間整理の○の1つ目ですが、合理的配慮については、条約の規定上は、それを欠くことは障害を理由とする差別に当たるとされていますが、これを実際に確保していくためには、関係者がコンセンサスを得ながら障害者の社会参加を促すことができるようにするために必要な配慮として捉える必要があるとの意見が大勢であったと。
 2つ目の○で、「合理的な配慮」は、個別の労働者との関係で問題となるので、行政が企業への指導又は助成によって障害者の雇用を拡大してきたこれまでの手法とは大きく異なるとの意見がありました。
 4つ目の○ですが、「合理的配慮」は、個別の労働者の障害や職場の状況に応じて、使用者側と障害者側の話し合いにより適切な対応が図られるものであるので、本来的には、企業の十分な理解の上で自主的に解決されるべきものであるとの意見が大勢でした。
 いちばん下の○ですが、何が差別であり、どのような合理的配慮が必要であるかを明らかにする必要があるとの意見が大勢でした。また、合理的配慮の内容は、個別の労働者の障害や職場の状況によって多様であり、また、それに要する費用・負担も異なるので、合理的配慮の概念は法律でまず定め、その具体的内容は指針で定めるのがよいのではないか、との意見が大勢でした。
 左側の分科会でも、障害者に対して職場における合理的配慮の提供を事業主に義務づけることについては、異論がないということで合意を得ていると。2番目のパラグラフですが、また、合理的配慮は個々の労働者の障害や職場の状況に応じて提供されるもので、多様かつ個別性が高いものであるので、法律では概念を定め、具体的な配慮の内容は、配慮の視点を類型化しつつ、指針として定めることが適当であるということで、異論がないということです。
 続いて7頁、2行目ですが、合理的配慮の枠組みです。こちらは研究会、分科会とも同じような枠組みで整理をすべきではないかとの意見が出されています。
 研究会の中間整理の○ですが、合理的配慮の内容としては、障害の種類ごとに重点は異なるが、おおまかに言えば、マル1通訳や介助者等の人的な支援、マル2定期的な通院や休暇、休憩といった医療面での配慮、マル3施設や設備面での配慮、そういったものが必要であるとの意見が大勢であったと。
 次に、具体的に障害の種類ごと、特性ごとに、研究会では必要な合理的配慮として例示されています。1番目の○ですが、例えば、視覚障害者や聴覚障害者及び盲ろう者については、点字、拡大文字、補聴システム等の機器や通訳者等が合理的配慮の具体例として挙がるのではないかという形で、障害特性に応じて具体例が示されています。
 いちばん下の○ですが、通勤時の移動支援、身体介助については、企業の合理的配慮というよりはむしろ、福祉サービスとして行うべきではないかとの意見がありましたが、一方で、労働災害では通勤も対象となっており、通勤も職務と連動するものであるので、今後は労働政策として企業に義務づけたり、助成措置を設けたりすべきではないか、との意見もありました。
 こうした意見を踏まえまして、分科会におきましては、合理的配慮をもう少し広い範囲の雇用と捉えて、募集ですとか採用の時点でシャットアウトされているようならば、そこに合理的配慮をすれば、本人のスキルが活かせるのではないかとのご意見がありまして、当然、条約上の差別禁止の対象に募集・採用が入っているなら、合理的配慮も当然、そこに関わるだろうということで、その意見が出されていまして、募集ですとか採用の機会が合理的配慮の内容に入るとのことで、こちらは異論がなかったと。
 2番目のパラグラフの真ん中ですが、使用者代表からは、先ほどの通勤時の移動支援等、労働時間外のものを合理的配慮の対象に含めることは適当でないとの意見が出されています。
 続きまして8頁のいちばん上の段の、合理的配慮の実効性の担保、合理的配慮の提供のための仕組みについてです。こちらは分科会のみの説明とさせていただきます。合理的配慮の実効性を担保するためには、指針等により好事例を示しつつ、当事者間の話し合いや第三者が入ってのアドバイスの中で、必要なものを個別に考えていくことが適切であるとの意見が出され、こちらは異論がなかったと。
 3番目のパラグラフですが、労働者代表、使用者代表、それから障害者代表の委員からは、障害者に対する合理的配慮を行う事業主の負担に対する助成の在り方を検討するべきではないかとの意見がありました。
 続いて下の段、合理的配慮の提供のための仕組みの部分です。相談体制も含め、合理的配慮が適切に提供されるための仕組みを検討する必要があるとの意見が出され、異論はなかったとされています。
 こちらの助成の在り方、それから適切に提供されるための仕組みについては、こちらの本研究会でも議論をしていただくポイントになるかと思います。
 最後の行で、過度の負担という考え方です。条約上にも、先ほど合理的配慮の定義でご説明をしましたが、「均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」というのが合理的配慮の定義に入っていました。それについて分科会では、事業主にとって配慮の提供が過度の負担となる場合には、事業主が合理的配慮の提供義務を負わないということで、異論がないとのことでした。
 2番目のパラグラフですが、過度の負担については、合理的配慮と同様に非常に個別性が強いということで、企業の事業規模等を総合的に勘案して、個別に判断する必要があり、判断基準として一律の数値基準を設けることにはなじまないとの意見が出されまして、こちらも異論がなかったと。
 3番目のパラグラフですが、使用者代表の委員からは、過度の負担か否かを判断する要素として、企業規模、それから企業がその時々に置かれている財政状況や経営環境全般が考慮されるべきではないかとの意見が出されています。
 9頁ですが、過度の負担と公的助成との関係で意見が出されています。左側の分科会の中間的な取りまとめですが、労働者代表の委員、障害者代表の委員からは、公的な助成等を考慮した上で何が過度の負担かどうかということを判断すべきではないかとの意見が出されています。
 いちばん左側の列の第4「権利保護(紛争解決手続)の在り方」です。差別禁止や合理的配慮の提供に関する救済手続について、どのように考えていくかということです。
 研究会の中間整理では、上から5番目の○ですが、企業の提供する合理的配慮について障害者が不十分と考える場合に、それを直ちに外部の紛争解決に委ねるのではなく、企業の中で、当事者による問題解決を促進する枠組みが必要との意見が大勢であったとされております。
 6番目の○ですが、障害者に対する差別や合理的配慮の否定があり、企業内で解決されない場合には、外部機関による紛争解決が必要となりますが、訴訟によらなければ解決しないような仕組みは適切ではなく、簡易迅速に救済や是正が図られる仕組みが必要との意見が大勢であったと。
 そういう意見を踏まえまして、分科会では、企業内における労使の十分な話し合いや相互理解等により、できる限り自主的に問題解決されるべきであると。自主的な解決がされない場合は、外部の第三者機関による解決を図るべきとしておりますが、刑罰法規や準司法的手続のような判定的な形で行うのではなく、調整的な解決を重視すべきであるとの意見が出され、異論がなかったとのことで、こちらは合意を得ていると。
 いちばん下の段ですが、紛争の早期解決、実効性を考えると、紛争解決手続として、既に存在する紛争調整委員会を活用した仕組みとすることが妥当であるとの意見が出され、異論はなかったということで、こちらの権利保護(紛争解決手続)については、ほぼ分科会でも同意を得ていて、異論はないという状況でまとまっています。以上が資料3です。
 続きまして資料4ですが、政府における障害者制度改革全般の動きについてです。1頁、「障害者制度改革の推進体制」で、右側の●の1つ目ですが、障害者権利条約の締結に必要な国内法の整備をはじめとする、障害者に係る制度の集中的な改革を行うために、平成21年12月の閣議決定で、障がい者制度改革推進本部を設置しています。本部の下に障がい者制度改革推進会議という会議を設けて、その下に政策分野別に部会を設けて、現在、議論をしています。特に部会の中では、障害者に対する差別禁止法の制定に向けた議論を行う、差別禁止部会が設置をされていまして、本研究会とも関わる部分だと考えています。
 裏面は、障がい者制度改革推進会議の開催経緯です。第12~14回、これは昨年の5月24日~6月7日ですが、一次意見として、推進会議の意見を取りまとめていまして、それを踏まえて、6月29日に閣議決定等をしています。それ以降、障害者基本法の改正に関する二次意見、第35回では「障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言」を取りまとめています。
 資料5ですが、昨年6月の閣議決定の全体像です。ポイントは、「横断的課題における改革の基本的方向と今後の進め方」ということで、この閣議決定では、横断的な課題で3つの基本的な方向で改革をしていくということを示しています。(1)は障害者基本法の改正です。こちらについては7月末に成立しています。(2)障害を理由とする差別の禁止に関する法律の制定。こちらの部分が非常に本研究会とも関わってくる部分です。それから(3)が「障害者総合福祉法」の制定となっています。
 資料5の裏面ですが、四角囲みになっている部分が、本研究会の設置の経緯となった閣議決定の文章です。1つ目の○は、労働・雇用分野における障害を理由とする差別の禁止、職場における合理的配慮の提供を確保するための措置、これらに関する労使間の紛争解決手続の整備等の具体的方策について検討を行い、平成24年度内を目途にその結論を得るとされています。
 次の○は、障害者に対する通勤支援、身体介助、ジョブコーチ等の職場における支援の在り方について、総合福祉部会の検討結果を踏まえて、必要な措置を講ずるとされています。
 次に資料6ですが、いまご説明をした障がい者制度改革推進会議、それから総合福祉部会での議論のうち、この研究会に関わる合理的配慮などの部分を抜粋したものです。こちらについては3頁「障害者総合福祉法の骨格に関する総合福祉部会の提言」ということで、8月30日に総合福祉部会で取りまとめたものです。上の四角囲みの「雇用の質を確保するための法改正」という表題の結論のところで、雇用の量だけでなく質としての雇用を確保するため、障害者雇用促進法を改正し、障害者権利条約27条で求められる労働への権利、障害に基づく差別の禁止、職場での合理的配慮の提供を確保するための規定を設けるべきではないかと提言を受けています。それ以外の部分については、ご参考としてお読みください。
 最後の資料7、こちらは、今年の7月末に推進会議のご意見を踏まえて改正された、障害者基本法の関係部分の抜粋です。2頁の下の段の「定義」の第二条、こちらについては、障害者の定義について、先ほどの権利条約上の社会モデルの考え方を取り入れまして、「社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける」というような社会モデルの考え方を取り入れています。そして、その社会的障壁については、「障害がある者にとつて日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のもの」と定義されています。
 続いて3頁の第四条ですが、「差別の禁止」を規定しています。第四条の1項については、これまでも同様に差別を禁止するという規定がありましたが、2項を新たに追加しまして、社会的障壁の除去について、その除去を怠ることが差別に該当するのだという趣旨の条文を置いています。権利条約では、先ほどご説明したように、合理的配慮をしないことが差別であるということを踏まえて、障害者が個々の場合で社会的障壁の除去を必要とするときに、そのための負担が過剰でないときには、その障壁を除去するための処置が実施されなければならないと、実施しなければそれが差別に該当するという条文です。
 資料7までのご説明は以上です。
○岩村座長
 ただいま事務局から、資料2~7までについてご説明をいただいたところです。これらの資料、あるいはご説明につきまして、ご意見、あるいはご質問などがありましたら、お願いをしたいと思います。
○杉山委員
 連合の杉山です。質問を少しさせてください。先ほど説明いただいた資料3の、雇用分科会の中間的な取りまとめ、その内容を説明していただいたのですが、この中で、事業主にとっての「過度な負担」という言葉が出てくるわけで、重要なテーマになってくるわけですけれども、この分科会の中、もしくはその研究会の中で、過度な負担に対する認識というのは、どのような捉え方をしていたのか、もう少し補足していただけるとありがたいなと思いますので、よろしくお願いします。
○岩村座長
 それでは、事務局のほうでお願いできますか。
○事務局
 過度の負担を議論をするというよりは、まず、「合理的配慮」をどういうふうに捉えるのかというところを議論していただいて、実は、その合理的配慮というのは、先ほどご説明したように、障害の特性、それから障害をお持ちの方の職場の状況、そういうことで非常に多様性があるであろうと。障害をお持ちの方の数と、事業所における職場の種類を掛け合わせたものの分だけ、合理的配慮の種類があるという極端な話ですが、そういう中で、それぞれ合理的配慮というものを超えたときに、過度の負担とされますので、この合理的配慮を超える過度の負担についても、ある意味コインの裏表の関係ですが、非常に個別性が高いというふうに議論、意見が出されて、資料8頁のいちばん下ですが、こういった形でまとまっていると聞いております。
 ただ、過度の負担と言ったときに、合理的配慮のもの自体が、非常に個別性・多様性が高いということだけではなくて、先ほどご説明をしましたけれども、使用者代表から、企業規模だとか、そういった観点も加えて、何が過度かどうかというものを考えていく必要があると。それから、労働者代表の委員からは、逆に、いまいろいろな公的助成制度がありますけれども、その助成の有無でも過度かどうかということが決まっていくので、そういったことも踏まえて考えるべきではないか、というようなご意見が出ております。以上でございます。
○杉山委員
 ありがとうございました。知りたかったのは、たぶん、非常に重要なポイントだと思っていまして、この議論でまとめられてきたところがあって、中身はそんなに違和感がないというふうには捉えているのですけれども、議論している中で、会議に参加していた皆さんが、この過度な負担というものの相場感、その辺をどういう認識をお持ちになられていたのかなというところを、知れたら知りたいということで、質問させていただいたのです。よくわからないですよね、実は。どこからどこまでやるのが過度なのか。もちろん、配慮をすればコストがかかるというのは当然のことだと思うのですけれども、その中で特段、そこは今後詰めることだということであれば、それはそれでかまわないと思いますけれども。
○事務局
 相場感というところですけれども、分科会とか研究会でのやり取りを見ておりますと、どの基準、どのラインが過度の負担なんだというところでの相場的な合意が得られているというふうには考えておりません。そこについては、合理的配慮の内容との裏腹の関係だということで、個別性が非常に高いという議論はされておりますし、その1つの考え方には、企業規模だとか、公的助成、先ほど申し上げたような考え方を組み入れて考えるべきではないかと言われておりますが、なかなか、ここのラインを越えたときに過度の負担だ、というところで合意がされている相場的な何かがされているというふうには、今はなっておりませんので、当然、この研究会で議論をしていただかないといけない部分の1つであると思いますので、そういうところも含めて議論をしていただきたいと思います。
○岩村座長
 補足しますと、資料3の8頁の左側、いちばん下の欄のマル1「過度の負担の判断」で、分科会の中間取りまとめの内容が紹介されていますが、その中の第2段落で、「個別に判断する必要があり、判断基準として一律の数値基準を設けることにはなじまないとの意見が出され、異論はなかった」ということですので、おそらく杉山委員がおっしゃるような、そういう相場感といったものというのは、どうもなじみませんねと。そこがいま、事務局のほうからご説明いただいたように、いろいろな要素が絡んでくる。あくまでも、個別で考えるということが背景となっていて、こういう取りまとめになったのではないかというふうに思います。
 そのほか、いかがでしょうか。
○駒村委員
 最初の研究会ですから、わりと自由に言ってもいいのでしょうか。いまのところで、合理的配慮に個別性があり、それと表裏で過度の負担も個別性があるという話はわかったのですけれども、公的助成の性格をこの際どう考えるかだと思うのですけれども、雇うのが、もう当然であると。合理的配慮をしつつ雇うのは当然であり、それに関わるコストというのは、当然企業が負担すべき投資なんだと、こう理解するか、合理的配慮という条件整備、ある種、公共財だという理由で、政府はここに対して助成するという、どちらがどちらから接近するかによって、この公的補助の性格も変わってくると思いますので、そこの議論は今後深めていきたいなと、私は思っております。
○事務局
 いま、駒村委員からご指摘いただいて、この研究会でまさに議論を深めていかないといけない点ですが、先ほどご説明させていただいたように、合理的配慮の提供義務は誰がまず負うのかといったときに、法制的には事業主が負うとしていくことが、ある程度は合意を得ていると。そのラインで考えていきますと、いまおっしゃったような、合理的配慮を障害をお持ちの方に提供するということが、公共財的な役割の位置づけなんだというふうにするというのは、非常にそこは難しいのかなと。ですので、これまでの合理的配慮を行う事業主の負担に対する助成の在り方を検討していただきたいとしておりますが、おそらくそれは助成という考え方ではなくて、何かまた別の仕組みを考えていかないと、義務化したものに対して助成をするという矛盾をどう解決していくのかというところを、まさに今後、ご議論いただきたいと思っております。
○岩村座長
 では、障害者雇用対策課長、お願いします。
○障害者雇用対策課長
 ここは差別禁止の問題を扱う上で、合理的配慮の提供義務と公的助成の関係については、きちんと整理しておかないと、後々この制度見直しが行われた後、非常に大きな問題を抱えることに、おそらくなると思います。端的に言えば、この合理的配慮の提供という、ある意味、新概念を法体系の中に打ち込むことと引き替えに、この障害者雇用に関する公的な助成の考え方のある種の転換を行う必要がおそらくあると。差別禁止に係る制度見直しがなされた前後で、同じような公的な助成をするものはたぶん多くあると思いますが、ただ考え方の背景というものは、合理的配慮の提供義務ということを念頭に置いた形での、新しい公的助成の考え方を出していかないと、混乱が生じるのではないかと思っています。
○岩村座長
 補足すれば、条約自体から派生してきて、「合理的配慮を行うこと」ということ自体が、法制上は、先ほど事務局から説明があったように、事業主の義務というふうに位置づけないと、条約との整合性が取れないということがございます。そうすると、いままさに課長補佐も課長も説明されたように、ではそれに対する助成というのをどういうふうに理論構築するのか、そこが実は大きな課題で、おそらく、この研究会におけるいちばんの重要な検討課題になるのではないかと思っております。ということで、是非、駒村先生のお知恵も拝借したいと考えておりますので。
○駒村委員
 合理的配慮という社会システム自体は、もう公共財的な性格があるけれども、1個1個の個別対応というのは、まさに雇用するというのが当然のことである以上、企業の個別投資の話であると。したがって、視点としては、福祉政策というよりは、やはり労働政策や産業政策的な視点のほうの色彩が強いと。その上で、労働政策としての個別性とか、企業負担としての産業政策上の配慮というのが必要になってくる。こんなような整備なんでしょうかね。
○岩村座長
 ありがとうございました。また、そこの点は詳しく、この後の研究会のほうで検討させていただければということになります。そのほか、いかがでしょうか。
○大胡田委員
 紛争解決の処理の手続の点で、これまでのご議論の様子等をお聞きしたいのですけれども、いただいた資料の中では、あっせん、調停が望ましいということで、特に命令とかそういったものを想定されていないと読めまして、私自身も、お互い話し合いで解決ができれば、それがいちばん望ましいことは自ずとわかることではあるのですけれども、障害者に対する差別というのは、これまで非常に問題となってきて、それが話し合いでうまくいかなかったからこそ、権利条約の中で、ここまで厚く保障するようにという位置づけがされたのだろうと思うのですね。こういう状況を踏まえたところで、なお、あっせん、調停、話し合いのみでうまくいくものだろうかというのは、一抹の不安があるのですが、この点については、従来どのようなご議論があったのか、教えていただけますでしょうか。
○岩村座長
 事務局のほうでお願いします。
○事務局
 研究会・分科会での検討というのが、合理的配慮の内容とも関わってきますが、まず、非常に個別性が高いということと、労使間なり障害者も入れた形で、個々に対応していくべきものだということの中で、それは、第一歩の救済の手続として、すぐに準司法的な手続だとかで行うよりは、まずは調整解決というのを図るのがあるべきではないかと。
 それでは、図られない場合にはということで、既存にある紛争調整委員会などを活用した仕組みで、いわゆるあっせん、調停的な解決を図り、それでもなお解決しないというときには、当然、司法の手続になっていくというふうに考えています。
○大胡田委員
 そうしますと、やはり最終的にどうしてももめる場合には、裁判でという話になってしまうと思うのですが、それ以前に簡易な手続の中で、何らかの強制的な命令を発するような機関を求めるのも、1つの解決手段だろうとは思うわけなのですね。この辺について、いままでの議論の中で異論がなかったということですが、やはり、全くそういう視点の意見というのはなかったわけなのでしょうか。
○事務局
 資料3については、ポイントをかいつまんでご説明をしましたけれども、紛争解決をする紛争調整委員会を活用する場合であっても、例えば労働者代表のほうからは、具体的な内容としては、勧告権限だとか、企業名の公表などの権限付与が必要ではないかというような意見も出されておりました。
○山岡委員
 今回、当事者側、障害者団体からの委員が数名おられるのですが、本日は欠席が多くて非常に残念なのですけれども、私は発達障害の団体から代表して出てきております。先ほど資料の中で、平成21年7月に中間整理が出された前回の委員会で検討されていた時と、今はちょっと状況が違っているということをお話させていただきたいと思います。発達障害については、2005年4月に発達障害者支援法という法律ができまして、自閉症、学習障害、ADHDとその他の障害が、障害の1つとして認めていただいたわけです。また、先ほどの資料の中にもありましたけれども、さらに本年8月に公布された障害者基本法の改正中で、精神障害に含むという形ですが、発達障害が障害者の1つとして位置づけられております。先ほどの資料の中で、以前の委員会では、発達障害も対象に入れてはどうかというような意見があると、記載されておりましたが、先ほど述べたような改正を受けまして、当然に発達障害も対象であるということを、ここで認識をいただきたいと思っています。
 それからもう1つですけれども、実は、現在、文部科学省のほうで、やはり2010年6月の閣議決定を受けまして、中央教育審議会の特別支援教育の在り方に関する特別委員会が設置されておりまして、その中で、このインクルーシブ教育に向けた特別教育支援の在り方、要するに障害者の権利条約の批准に向けた検討が進められております。実は私、この委員にも入っておりまして、既に13回の検討を重ねてきているところであります。
 さらに、今年4月から、その特別委員会の下に、合理的配慮等環境整備検討ワーキンググループというワーキンググループが設置されまして、まさに合理的配慮について、検討が進められております。そのワーキンググループにも私は委員として入っております。雇用分野と教育分野のところが、この合理的配慮については大きなポイントとなっていると思いますので、そちらでの検討状況も折々触れながら、参加させていただきたいと思っています。
 さて、教育分野における合理的配慮ですけれども、設置者に義務を付けるということ、雇用分野でいきますと、事業主に義務づけると同じことなのですけれども、ちょっと違っているところは、教育の分野につきましては、特に小中学校は公立が中心ですので、設置者が大概国とか県とか市町村になりまして、官になるということです。ですから、さっきお話が出ておりました設置者の義務の部分に関する過度な負担というところですが、民間が主体となる雇用の分野とは、若干考え方が違うかなと思っています。
 この他に、教育分野が雇用と違うところというのは、設置者側にわりと共通性が高いというか、公立の小中学校を中心に考えると、共通性が高いわけですけれども、労働分野でいきますと、障害者側も個別的なニーズがありますし、事業主側も個別性が高いということで、非常に難しいのだろうと思います。ただ、文部科学省における合理的な配慮等のワーキンググループにおいても、いま、かなり詰めの段階に来ているのですけれども、先ほどお示しいただいた方向性と同様に、指針という形で具体例を示していくという形が、現在の方向性になっています。
 さて、この雇用の分野について、どのように考えていけばいいのかということです。冒頭に事務局からもお話があったとおり、今回、障害者の権利条約の批准に向けて我々は検討しているわけでありますけれども、既に100か国以上の国が批准している状況にあって、我が国だけで、こういう方向でいいのではないか、ということだけではないと思っています。この委員会のスケジュールを見ますと、予定の中に入っているので安心したのですけれども、是非、各国、その他の批准された国の状況等も教えていただいて、それらを参考にしながら検討していきたいなと思っています。
 私、実は、本業はサラリーマンで、雇用側のほうに立って、人事部にいたり、本部にいたり、雇用側の立場でもかかわったことが多くありまして、今回の検討に際し、合理的配慮について極めて高い義務を雇用主側に課すということが必要というような極端な意見を聞いたことがありますが、それもちょっと行き過ぎかなと、私は実は思っています。というのは、最終的に我々当事者団体として望むのは、障害のある方々が自立をして社会生活が営めるような社会にするということが目標でありまして、一方的に雇用主に過度な義務を課してしまうと、結局、雇用されないということになってしまうと、結局障害のある方にとって良い方向にはならない危険性があります。そのあたりも踏まえた上で、研究会の中で検討していければと思っているところであります。以上です。
○岩村座長
 ありがとうございます。では、課長どうぞ。
○障害者雇用対策課長
 おそらくいま公開の場で、この合理的配慮について明示的に議論しているのは、内閣府の障害者制度改革推進会議と文科省と、我々厚労省だと思っておりまして、いま山岡委員がおっしゃられた、立ち位置がやや違うところはあるのですけれども、文科省側とも意見交換しつつ、我々のほうでも参考になる点があれば参照にしていこうと思っています。
 それから、欧米の状況については、後ほどご説明するスケジュールのところ、次の回でご紹介をしようと思っていますが、これは既に、内閣府の障害者制度改革推進会議の差別禁止部会でも、欧米先進国の状況についてのレビューは行われているのですが、正直なところ、この差別禁止、合理的配慮についてうまくいっているというわけでは必ずしもなくて、多くの国が課題を抱えつつ進んでいるというのが事実だと思います。ただ、逆に、我が国がまだ条約の批准ができていないということで、先行している国が多いだけに、そういった国々の抱えている問題について考え、我々がよりいい形で差別禁止、合理的配慮、公的支援について制度化していくということに十分参考になると思います。そこのところはここでもご議論いただけるように材料を出していきたいと思っております。
 最後におっしゃられた点については、これは私の私見も混じりますけれども、基本的に、この合理的配慮の枠組みについては、やはり制度的に整えなければいけないものではありますけれども、それぞれの企業なりというところで、実際、これがきちんと定着していくかどうかということについて考えると、おそらくこれは、法的な枠組みを作った上で、それぞれの現場で働く障害者と企業、それから働く障害者を囲む同僚の人たちの間で、合理的配慮とは一体何なのかということを考えて、作り上げていくというような性格のものではないかと思っています。でなければ、先ほどおっしゃられたような、摩擦が当然に起きると思います。当然の摩擦は起きればいいと思います。しかし、障害者が、いかに労働という現場で働きやすくするかということのために、この合理的配慮という概念は導入されるものであります。例えば統合失調症の方ならこういう合理的配慮をしろというような、硬直的な扱いをするなというのが、基本的に権利条約の思想だと思います。今後の検討に当たって、現場レベルで、どうやって合理的配慮を作り上げていくかということが重要だという認識は、絶えず持っておかなければいけないと思っています。
○岩村座長
 あと、発達障害者の件はいかがでしょうか。
○事務局
 発達障害をどう捉えるかということなのですが、本日、参考資料3で、現行の障害者雇用の制度の概要をピックアップしてお配りをしておりまして、4頁に、現行の障害者雇用促進法における障害者の範囲、それから雇用義務の対象というものを資料として付けさせていただいています。実は、障害者雇用促進法の第2条第1号で、「障害者」という定義を置いておりまして、これは身体障害、知的障害又は精神障害、これらを「障害」と総称しておりますが、「障害があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者」と定義をしておりまして、実は身体障害が何か、知的障害が何か、精神障害が何かという定義は置いておらず、まず障害者というのは、そういう障害があるため、長期にわたってこういう困難が生じている者なんだという定義をした上で、次の法律第2条第2号以降で、身体障害者という者をそれぞれ定義していっています。
 身体障害者については、基本的には障害者、身体障害福祉法の手帳の交付を受けた者ということになっております。知的障害者については、同様に療育手帳の交付を受けた者と。それから、精神障害者についてだけは、精神保健福祉手帳の取得者と、それ以外で、統合失調症、そううつ病(そう病・うつ病を含む)、てんかんで手帳を所持されない方も精神障害者としております。
 実は、障害者の範囲には、それ以外も当然含まれておりまして、先ほど言った、長期にわたって職業生活の相当の制限を受けたり、職業生活の困難な者というものであれば、例えば、いま出ました発達障害であるとか、例えば難病をお持ちの方ですとか、手帳をお持ちでない高次脳機能障害の方ですとか、そういった方が障対法の2条にいう障害者に入っています。
 先ほどの資料3の4頁で、差別禁止の対象範囲をどう捉えるかというところで、障対法の2条の障害者としてはどうかということで、異論はなかったということになっておりますので、手帳をお持ちでない発達障害の方も当然障害者という意味では入ると。ただ、資料3の4頁のほうでご説明をしたときに、使用者代表のほうからは、いわゆる誰が、今回で言うところの障害者に入るのかという、予見の可能性は担保してほしいと、そういうことは意見としては出されているという状況であります。以上でございます。
○山岡委員
 ありがとうございます。もちろん、障害者の範囲については、発達障害だけではなくて、基本的には個人的な意見でありますが、すべての困難や障害を持つ方が対象になるように、ということを常々申し上げておりますので、よろしくお願いいたします。
 それから、さっきガイドラインとか指針を示されるということで、雇用側の過度な負担についても申し上げたのですけれども、文部科学省における検討でも、ガイドラインとか指針などの形で事例を示していくということで進められています。できれば、私はミニマムスタンダード的なもの、最低限ここまでというところを、書き振りで分ける等により、きちんと示しておくべきだと思っております。以上です。
○岩村座長
 ありがとうございます。そのほか、いかがでしょうか。よろしければ、次の議題に進みたいと思います。
 次は議題3、「今後の研究会の進め方」ということです。これについても、事務局のほうで資料を用意していただいておりますので、それについての説明をまずいただきたいと思います。よろしくお願いします。
○事務局
 資料8です。「今後のスケジュール」ということで、第1回から第9回までのスケジュール(案)を示しております。
 第2回以降でございます。第2回の前半部分でも、「これまでの検討経緯等」ということで、まず、障害者制度改革推進会議差別禁止部会での議論の状況をご説明したいと思っております。それから、先ほど「各国制度について」というところがありましたので、欧米をはじめとした各国制度についてもご説明をしたいと思っております。今後の3回目以降、どういった論点を中心に議論していただくかということで、論点を提示させていただいて、3回目以降のご議論に入っていただくということです。
 2回目ですが、文章としては書いてありませんが、平成20年研究会では、障害団体の方から先ほど簡単にご説明しましたが、ヒアリングを実施しております。そのヒアリングの概要についても、併せて、この第2回ではご説明をしたいと考えております。
 3回目以降ですが、先ほどご説明した、差別禁止の対象範囲から、各項目ごとにご議論いただきたいと思っております。杉山委員のほうから出ました、「過度の負担」をどう考えていくのかというのは、3回目の3つ目の○の合理的配慮の内容のマル1、4回目の合理的配慮の内容のマル2で議論をしていただこうと考えております。
 5回目では、これまでの3回、4回での各項目についての論点を整理するということで、5回目の後半以降、先ほど来、駒村委員からも意見をいただいております、事業主の負担をどういうふうな考え方で支援していくのか、助成していくのかということについて、6回、7回まで議論をしていただいて、8回、9回で研究会の取りまとめという形が、7月までのスケジュールということでお示しをさせていただきます。以上です。
○岩村座長
 いま、今後の研究会の進め方ということについて、事務局からご説明をいただいたところです。いまお話がありましたように、第2回目までは、これまでの検討経緯ということで、各国の制度などについて説明をいただいたり、あるいは、以前の研究会でヒアリングを行っておりますので、その概要についての説明をいただくということをした上で、この研究会における論点の提示があるということです。そして、第3回目以降で、本格的にそれぞれの論点について検討していくということになります。
 こうしたこれからのこの研究会の進め方、あるいは主な検討事項ということについて、ご意見、あるいはご質問などあれば、お願いをしたいと思います。
 大体、検討内容はいちばん最初にお示しいただいた、この本研究会における検討事項というものに沿って構築していただいていて、それに沿って順次進めていくということだと思います。それから、先ほど大胡田委員からご質問のあった救済の問題というのは、第4回の権利擁護のところに入るという理解でよろしいですね。
○大胡田委員
 この会議の中で、先ほど紛争調整委員会を活用した解決法が望ましいということに沿って、よりそれを具体化していくのかなと思うのですけれども、どの程度のところまで詰めることが予定されているものなのでしょうか。全く白紙ならば白紙ということでもかまわないのですけれども。具体的に、こういう仕組みを作りましょうというところまで詰めることを予定されてはいないのでしょうか。
○事務局
 どこまで具体的なところを詰めるかというのは、この紛争解決だけではなくて、それ以外の分野についても全般にわたってそうなのですが、ご意見をいただけるのであれば、それを1つのご参考にして、各委員の皆さまからご意見をいただくということが可能になりますので。ただ、事務局としても、ここまで決めてしまうのだと、例えば法令上で言えば、法律の事項だけではなく、省令、それから通達、ガイドラインの最後までここで決めるのだというところまでは、ギチギチ言うことではございませんので、もし、何か紛争解決、いまの手続の中で、ある一定程度の方向性に付加的だとか、付随できるような細かな部分までご意見がいただけるのであれば、それは貴重なご意見として賜りたいと思ってますので、お願いをいたします。
○岩村座長
 前の検討会のときの議事録とか、そういったものの情報というのは、あると、情報提供していただいたほうがよろしいのではないかと思うので、その点、特に大胡田委員については、そういう配慮が必要かなというふうに思いますので。
○障害者雇用対策課長
 どのようなやり方でやるかは考えますけれども、検討させていただきます。
○岩村座長
 よろしくお願いいたします。そのほか、進め方について、いかがでしょうか。よろしゅうございましょうか。
 それでは、資料8にあるような形で、今後の検討は、この研究会において進めていくということでまいりたいと存じます。
 それ以外に、何か事務局のほうでございますか。予定していた議題はここまでということですが、よろしいでしょうか。
 それでは、今日のところは第1回目ということで、これまでの検討の経緯と、この研究会で検討する課題、そして、今後のスケジュールということについて、事務局から説明をいただいて、ご意見等を伺ったところでございます。本日用意している議題は以上でございますので、今日はこれで終了いたしたいと思います。
 それでは、次回以降の日程等について、いまスケジュールということでお示しいただいたことではありますけれども、より具体的な説明を事務局のほうからいただきたいと思います。よろしくお願いします。
○事務局
 次回以降については、先ほど資料8でお示ししたとおり、毎月1回程度のペースで開催させていただきたいと思っております。したがいまして、次回は明日以降になってしまいますが、12月中の開催を予定しておりまして、現在調整中であります。決まり次第、ご連絡をさせていただきたいと思います。それ以降の日程についても、別途ご都合をお伺いしているところでございますが、どうぞよろしくご参集の方、お願いいたします。
 また、別の研究会の場でしたが、本日ご出席いただいている杉山委員のほうから、障害者雇用を行っている企業ですとか、地域の就労支援を行っているような機関に対しての現場視察を行ってはどうかとのご意見が、実は出ております。これについては、現在、障害者雇用の関係で3つの研究会を同時並行で立ち上げている状況で、日程は杉山委員を中心に調整させていただきたいと思いますが、この3つの研究会にご参集いただいている委員の皆様に参加希望を伺うような形で、出席できる、または希望される方については、任意で出席をいただくようなことで調整を行いたいと思いますので、そちらについてもよろしくお願いいたします。以上でございます。
○岩村座長
 それでは、今日はこれで終了とさせていただきたいと思います。どうも、お忙しい中、ありがとうございました。


(了)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 第1回労働・雇用分野における障害者権利条約への対応の在り方に関する研究会

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