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2011年10月26日 第11回労働政策審議会安全衛生分科会じん肺部会(議事録)

労働基準局安全衛生部労働衛生課

○日時

平成23年10月26日
15:30~16:30


○場所

厚生労働省専用第21会議室


○出席者

公益代表(敬称略)

相澤 好治、神山 宣彦、永井 厚志

労働者代表(敬称略)

上原 幸作、近藤 之、杉山 豊治、真島 勝重

使用者代表(敬省略)

加藤 正勝、金子 明、清川 浩男、桐明 公男、橋中 克彰

事務局

宮野 甚一 (安全衛生部長) 椎葉 茂樹 (労働衛生課長) 猿田 克年 (主任中央じん肺診査医)
田原 裕之 (中央じん肺診査医)

○議題

(1)じん肺健康管理状況について

(2)デジタル撮影による「じん肺標準エックス線写真集」について
    
(3)屋外のアーク溶接作業及び金属等の研磨作業に係る調査研究報告書について

(4)その他

○配布資料

資料1-1平成21年、平成22年じん肺健康管理状況
資料1-2じん肺健康診断実施結果の推移
資料1-3随時申請によるじん肺管理区分決定件数等の推移
資料1-4平成21年、平成22年業種別じん肺健康管理実施状況
資料2デジタル撮影による「じん肺標準エックス線写真集」について
資料3屋外のアーク溶接作業及び金属等の研磨作業に係る調査研究報告書について
参考資料1-1「じん肺標準エックス線写真集」(平成23年3月)フィルム版及び電子媒体版の取扱いについて
参考資料1-2「じん肺健康診断及びじん肺管理区分の決定におけるDR(FPD)写真及びCR写真の取扱い等について」の一部改正について
参考資料2平成20年度屋外のアーク溶接作業及び金属等研ま作業に係る調査研究報告書
参考資料3平成21年度屋外のアーク溶接作業に係る粉じんばく露防止対策等報告書

○議事

○椎葉労働衛生課長 定刻になりましたので、ただいまから第11回「労働政策審議会安全衛生分科会じん肺部会」を開催します。委員の皆様方におかれましては、大変お忙しい中、当部会にご出席いただきまして、誠にありがとうございます。私は8月より、安全衛生部労働衛生課長を務めさせていただいております椎葉と申します。よろしくお願いいたします。
 本来、このじん肺部会は本年の3月22日に開催する予定で、委員の皆様方にはご案内をしておりましたが、東日本大震災の影響を受けまして延期させていただきました。委員の皆様方には多大なるご迷惑をおかけしましたこと、改めてお詫び申し上げます。
 本日は委員改選後初めての部会となりますので、分科会長選出までの間は、恐縮ですが私が議事進行を務めさせていただきます。まず議事に入る前に、委員に就任された皆様方をご紹介させていただきます。お手元にお配りしてある資料のいちばん後ろに、委員の名簿があります。そちらをご参照していただければと思います。
 私のほうから順にご紹介させていただきます。まず公益代表ですが、ちょうど私の正面にいらっしゃる方が公益の先生方です。相澤委員、神山委員、永井委員です。小畑委員と土橋委員については、本日は所用のためにご欠席との報告を受けています。
 続いて労働者代表のご紹介をさせていただきます。私の左、窓側の席です。まず上原委員と近藤委員です。市川佳子委員におかれましては、10月24日をもって退任されまして、後任は杉山委員が任命されています。杉山委員、よろしくお願いします。次に真島委員です。川原委員については、所用のためにご欠席との報告を受けています。
 続いて使用者代表の委員は、こちらの壁側です。加藤委員、金子委員、清川委員、桐明委員、橋中委員です。
 本日は公益代表委員3名、労働者代表委員4名、使用者代表委員5名、計12名のご出席をいただいております。労働政策審議会令第9条第1項及び第3項に定める定足数を満たしているところです。本日は参考人として、中災防の労働衛生調査分析センターの青柳上席専門役にご出席いただいております。よろしくお願いします。
 次に、私どもの安全衛生部長が交代しています。宮野安全衛生部長よりご挨拶を申し上げます。
○宮野安全衛生部長 8月より安全衛生部長を務めております、宮野と申します。よろしくお願いします。じん肺部会の開催に当たりまして、一言ご挨拶を申し上げたいと思います。
 じん肺の問題については、新規の有所見者数、これは長期的には減少傾向にありますが、近年においては横這い傾向という状況になっています。また、現在も40万人を超える労働者の方が粉じん作業に従事され、いまだに5,000人を超える方がじん肺の有所見となっています。引き続き重要な課題であると認識しています。厚生労働省におきましては、こうした状況を踏まえまして、今後とも委員の皆様方のご指導をいただきながら、じん肺法に基づく健康管理、また労働安全衛生法に基づく健康障害予防対策について、最新の科学的な知見、技術の進歩の状況を踏まえて、対策に取り組んでまいりたいと考えています。
 本日はそうした観点から、1つは最近のじん肺政策に係る動向として、昭和53年以来、じん肺の審査にはじん肺標準エックス線フィルムというフィルムを使用してまいりましたが、近年デジタル撮影によるエックス線写真撮影が一般的になってきたことから、本年、デジタル写真で構成された「じん肺標準エックス線写真集」を作成して、都道府県労働局に配付するとともに、その運用について、先般、都道府県労働局長あるいは医療機関に通知をしたところです。これについてご紹介したいと思っています。
 また、平成20年度から始まりました「第7次粉じん障害防止総合対策」において、重点課題とされたアーク溶接作業に係る粉じん障害防止について、これは私どもからの委託事業として、屋外のアーク溶接作業及び金属等研磨作業に係る調査研究事業、この結果報告が取りまとまったところです。この結果報告を受けて、必要な対応をしてまいりたいと考えています。
 本日はこうした動向も踏まえた対応方針等について、ご説明をさせていただきたいと考えていますので、委員の皆様方より忌憚のないご意見をいただきたいと思っています。よろしくお願いを申し上げます。
○椎葉労働衛生課長 それでは、事務局に異動がありましたので、ご紹介させていただきます。ちょうど部長の隣ですが、本年8月より主任中央じん肺診査医を務めている猿田です。
○猿田主任中央じん肺診査医 よろしくお願いします。
○椎葉労働衛生課長 それから、その隣ですが、昨年8月より中央じん肺診査医を務めている田原です。
○田原中央じん肺診査医 よろしくお願いします。
○椎葉労働衛生課長 それでは部会長の選出に移らせていただきます。労働政策審議会令第7条第6項の規定に基づきまして、この部会に所属する公益を代表する、親審議会であります労働政策審議会委員のうちから選挙して選出することとなっています。この部会において、公益を代表する労働政策審議会の委員でいらっしゃいますのは、相澤委員です。したがいまして、相澤委員に部会長にご就任いただきたいと考えていますが、よろしいでしょうか。
(異議なし)
○椎葉労働衛生課長 ありがとうございます。それでは、以降の議事進行は相澤部会長にお願いします。お手数ですが相澤部会長は、部会長席に移動してください。よろしくお願いします。
○相澤部会長 ご指名いただきました相澤です。適切にこの部会が進行されますように、委員の皆様方にご協力をお願いします。
 それでは、これより私が議事進行を務めさせていただきます。最初に部会長代理についてですが、労働政策審議会令第7条第8項において、部会長代理は、部会に属する公益を代表する委員または臨時委員のうちから、部会長が指名をすることになっています。私としては神山委員に部会長代理をお願いしたいと思いますがよろしいでしょうか。
                 (異議なし)
○相澤部会長 ありがとうございます。それでは神山委員、よろしくお願いします。
 では、本日の1つ目の議題に入りたいと思います。議題(1)じん肺健康管理状況について、事務局から説明をお願いします。
○猿田主任中央じん肺診査医 議題(1)じん肺健康管理状況について、資料1によりご説明させていただきます。まず資料1-1ですが、「平成21年、平成22年じん肺健康管理状況」です。いちばん上の1「じん肺健康診断結果」ですが、これは現在じん肺作業に従事している在職者の数字となります。詳細については次の頁、資料1-2に昭和55年以降の数字をまとめています。
 1列目の「適用事業場数」ですが、ご覧の数字となっていまして、中段より下となりますが、ここ数年、4万3,000前後で推移しています。2列目の「粉じん作業従事労働者数」ですが、その年の景気、その年の製品の生産状況等により、毎年数万の幅で増減しています。下から2段目、平成21年度が41万、平成22年度が48万となっています。3列目と4列目が、じん肺健診の実施状況です。例えば「管理1」の場合は3年に1回の健診となりますので、実施事業場、受診者数としては、およそ半分の数字となっています。
 この表でいちばんのポイントとなるのが、5列目の「新規有所見労働者数」となります。昭和55年に6,842名だったものが、平成13年に約250名となりまして、大幅に少なくなっていますが、以後、これまでの10年間、250名前後で下げ止まりの状況となっています。この新規有所見労働者数をできる限りゼロに近づけたい。しかし、そのためには従前の対策の延長ではなく、ブレイクスルーとなる新たな第一歩を踏み出す必要があると思われます。
 2重の縦線より右、1~4の管理区分決定の数となります。平成22年度は概ね各最少の数字となっていまして、右から3列目、有所見者数の3,915の数字。それから、いちばん右の列のいちばん下、有所見率1.6%の数字は、両方とも過去最少となっています。
 最初の頁に戻りまして、資料1-1中ほどの2「随時申請に係るじん肺管理区分決定状況」にまいります。この数字は過去にじん肺作業に従事していた方の、随時申請によるじん肺管理区分の決定の数字となります。詳細については2頁後ろの資料1-3にあります。平成22年度の決定件数の合計1,900というのは過去最少。右から2列目のいちばん下、有所見者数1,251も過去最少。合併症の294も過去最少となっています。
 資料1-4「業種別じん肺健康管理実施状況」にまいりますが、1枚めくると平成22年の数字になります。この表の5列目が、新規の所見者の数で、上が製造業、下が鉱業、建設業と続いています。業種別では中ほどの、「金属製品製造業」の5列目新規有所見労働者数がいちばん多くなっています。下から4行目の5列目が「トンネル建設工事業」の新規有所見労働者数となりますが、平成21年は2名、平成22年はゼロとなっています。簡単ですが、資料の説明は以上です。
○相澤部会長 どうもありがとうございました。それでは、ただいまのご説明について、何かご質問がありましたらお願いします。よろしいですか。また何かありましたら後ほどでも結構です。
 続いて議題(2)に移らせていただきます。デジタル撮影による「じん肺標準エックス線写真集」について、ご説明をお願いします。
○田原中央じん肺診査医 事務局より、資料2について説明させていただきます。お手元の資料2、1頁の1「作成の経緯」をご覧ください。まず、こちらについて読み上げさせていただきます。
 じん肺の判定における胸部エックス線写真の読影には、従来「じん肺標準エックス線フィルム(昭和53年)」を用いて行うこととしており、じん肺法に定める第1型以上のエックス線写真の像が認められる場合にじん肺の所見があるとしています。
 アナログ写真で作成された現行画像集は、これまで数回の増補等が行われたのですが、相当期間を経て劣化してきていること、近年エックス線写真のデジタル撮影への移行が進んでいることを踏まえまして、厚生労働省はこのたびデジタル撮影による新たな標準画像集として、「じん肺標準エックス線写真集(平成23年3月)」を作成しています。
 ここで一旦、資料2の9頁をご覧ください。この表1は、もともと使っていた「じん肺標準エックス線フィルム」の構成です。実物がいまこちらにある赤いカバーのレントゲン写真、この中に23枚のレントゲン写真が入っています。この構成を示したのが表1です。これが古くなってきたということでして、新しいものを作ろうという動きが平成19年度から始まりました。
 その経緯ですが、11頁の図1をご覧ください。平成19年度から平成21年度までの3年間及び平成22年度の1年間、合計4年間の厚生労働科学研究において、適切な画像の収集と選定が行われています。この経緯を示したのが図1です。もともと全国の7施設から、およそ1,200人分のレントゲン写真を集めまして、適切な所見があるものを選ぶ、典型的でないものを外す、複数の専門医がお互いに読影して、ばらつきが出ないものを選ぶとか、そういった経緯があります。
 そういう形で絞りまして、下に28例とありますのが、厚生労働科学研究の中で写真を28まで絞ったということです。私どもでは、この28例まで絞られたのを受けまして、昨年の10月から11月にかけて行政検討会を行いました。その結果、さらに写真を絞り込んだり、逆に足りなくなったところを別の施設から補うといったことをしまして、出来上がったのが10頁の表2です。「じん肺標準エックス線写真集」、この新しい写真集の22例プラス組合せ写真2枚、合計24枚の写真という構成を作りました。
 表1と表2を見比べていただきますと、まず変わっているところは、表1のほうは分類が「じん肺の種類」ということで、けい肺、石綿肺、その他のじん肺という分類を使っていましたが、新しい写真集では「陰影の種類」、所見なし、粒状影、大陰影、不整形陰影、その他の陰影という、実際にエックス線写真で写る影の種類で分類をしています。
 その次にあります「型(及び区分)」については、前のものと新しいもので同等になることで選んでいます。あと、それぞれの写真に関するプロフィール。最後に「CT」とありますのは、新しいものはフィルム版は労働局のみにしまして、一般の医療機関向けにはDVD-ROMで貸し出していくということにしています。そのDVD-ROMには参考として、一部の症例についてCT写真もデータとして入れているというものです。
 以上がこの資料の説明でして、これが新しいほうの現物のフィルム版です。これは、基本的には労働局で使うためだけのものです。さらに、いまお示ししているのがDVD-ROMの電子媒体版です。医療機関等にはこちらを貸し出して、じん肺健診等の目的であればコピー可としているので、機械で取り込むなり、ディスク自体を複製するなりという形で、普及を図ってまいりたいと思っています。
 資料2はここまでにしまして、後ろのほうに参考資料1-1があります。この写真集自体は昨年度のうちに作成させていただきました。ですので、平成23年3月という名前が付いているのですが、震災の影響を受けて、運用開始を延期させていただきまして、9月26日に労働局向けに通知をしたところです。ですので、実質は10月から使用開始となっています。その通知の写しを参考資料1-1、参考資料1-2という、2つの通知の写しを示しています。こちらには、先ほどのフィルム版は労働局で使いますということ、電子媒体版を医療機関等に貸し出すという一般的な取扱いについての解説ですとか、2つ目の通知のほうには、実際にじん肺健診での運用についての扱い方を示しています。簡単ですが、以上です。
○相澤部会長 ありがとうございました。ただいまのご説明に対して、何かご質問等がありましたらお願いします。よろしいでしょうか。
 それでは、議題の(3)に入ります。屋外のアーク溶接作業及び金属等の研磨作業に係る調査研究報告書について、ご説明をお願いします。
○猿田主任中央じん肺診査医 議題(3)屋外のアーク溶接作業及び金属等の研磨作業に係る調査研究報告書について、資料3に基づき説明させていただきます。調査報告の概要については、調査を実施していただいた中災防の青柳上席専門役より説明させていただきたいと思います。1頁の「調査の目的」ですが、先ほどじん肺健診新規有所見者数が約250名で下げ止まっていることを説明しました。その中でも、アーク溶接の作業者によるものが約10%となっています。新規の有所見者数は、少なければ少ないほどよい。しかし、これらの数字をさらに下げるためには、被害者が出てから規制をするという従前の事後対応を改めて、新たな第一歩を踏み出す必要があります。
 「第7次粉じん障害防止総合対策」においては、個人サンプラーを用いて作業現場の実態を調査して、その結果を基に必要な対策を検討する方針となりまして、今回の調査が行われています。想定されるハザートについてリスクアセスメントをして、その結果に基づいてじん肺部会においてご判断いただくというのが、これまでの方向性であると伺っています。
 今回の調査結果については、中災防の青柳上席専門役より説明いただきます。それでは、青柳参考人よろしくお願いします。
○青柳参考人(中災防) 中災防の青柳です。「屋外のアーク溶接作業及び金属等の研磨作業に係る調査研究報告」の内容について、説明させていただきます。平成20年及び平成21年度、厚生労働省の委託事業として実施しました。専門家の方々にお集まりいただいて、「屋外のアーク溶接作業及び金属等の研磨作業に係る調査研究委員会」を立ち上げ、事務局等で実態調査に赴いたわけです。目的は、いま主任からお話があったとおりで省かせていただいて、ダイレクトに「調査の概要」を説明いたします。
 平成20年度と21年度の屋外作業場における調査の対象としては、1「屋外におけるアーク溶接、溶断、ガウジング作業」、2「屋外における金属等研磨作業」、3「屋外におけるコンクリート研磨作業」、4「屋外における石材の穿孔・削孔作業」の4つの作業について、右側の「調査方法」に基づいて、個人サンプラーを用いてばく露濃度の測定を行いました。この方法は、参考資料2及び3に細かく載っています。例えば、参考資料2の平成20年度の報告書の5頁に概要が示されています。
 従来から行われている作業環境測定は、屋内作業場等について等間隔のマス目での定点測定を行っていますが、これらの実態調査においては作業者一人ひとりの口元付近の粉じん濃度を測定しました。そして、そのサンプリングの結果の数値は、ここにありますように「屋外作業場等における作業環境管理に関するガイドライン」、平成17年に通達された方法に則りましてサンプリングを行って、その濃度の評価を行いました。それについては、管理濃度を超えるものを「管理区分2」、管理濃度以下のものについては「管理区分1」と、あくまでも便宜的に分類させていただきました。
 細かい内容については、調査方法の枠の中の下の部分に記されています。「管理区分1」は、個人サンプルによる粉じんの濃度の測定結果が管理濃度以下であったもの。これについては、従来どおりじん肺健康診断の実施による早期発見に努める。「管理区分2」、測定値が管理濃度を超えていたものについては、所在の有効な呼吸用保護具の着用など、粉じんのばく露濃度低減措置が必要、というような形の評価を加えることにしました。
 次の頁は「調査結果のまとめ」で、1から4まで記しています。その前に、お手数ですが参考資料3の13頁をご覧ください。平成19年度の調査データから平成21年度の調査データまで、細かい数値は抜きにしますが、作業方法による測定値の分布を示しています。平成19年度は屋内ですが、アーク溶接と溶断、平成20年度は炭酸ガスアーク溶接、被覆アーク溶接、金属研磨、コンクリート研磨。平成21年度の測定データは、炭酸ガスアーク溶接、被覆アーク溶接、金属研磨、溶断、ガウジング、削孔・穿孔。これは、石材の削孔・穿孔です。このような測定値の分布をプロットしたものです。
 これらについてまとめたものが、資料3の2枚目の調査結果です。1「屋外におけるアーク溶接、ガス溶断、ガウジング作業の粉じん濃度」ですが、左側に1から4まで作業の内容を示しました。次のカラムには調査年度、3つ目が粉じん濃度の平均値です。その際に、評価の基準となった管理濃度を示させていただきました。左側の欄は管理区分2、即ち測定値が管理濃度を超えているもののパーセンテージを示しました。以下、順を追って説明します。
 屋外における「炭酸ガス半自動アーク溶接」は、平成20年度に実施しましたが、延べ17人の作業者に個人サンプラーを着けて粉じん濃度を測定した結果、平均値が8.62mg/m3でした。アーク溶接においては、最大57.13mg/m3という測定値が認められました。
 次で「被覆アーク溶接」については、平成20年度と21年度と連続して調査を実施しています。平成20年度においては、7人の平均濃度が1.32mg/m3、うち第2管理区分に該当した者が29%。平成21年度においては、11人の平均値が4.19mgで、第2管理区分に該当した者が64%という結果になりました。
 次は、平成21年度に実施した「ガス溶断」ですが、5名の方に個人サンプラーを装着して測定を行いました。その結果、平均濃度では2.62mg/m3で、5人中1名の方が第2管理区分に該当しました。
 次は「ガウジング」です。平成21年度に屋内作業場で2名の方に個人ばく露濃度の測定を行いました。その結果、平均は2.22mg/m3でしたが、管理濃度、即ち管理区分2に該当する方は認められませんでした。
 これらのまとめの結果、文献調査などにおいても、溶接ヒュームが作業者の口元付近では著しく高い数値が得られていて、その測定値は数十から数百mg/m3の粉じん濃度に達する報告が認められています。今回の57.13mg/m3等々も含めまして、そのような結果になったわけです。それらに基づいて、参考資料3の平成21年度の報告書のまとめの項において、個人サンプラーによる粉じん濃度測定結果の評価が「管理区分2」である者の割合が高い。また「管理区分1」であった者でも、1部の者には個人サンプリングによる測定時間中に管理濃度を超えることが認められたという結果です。
 参考資料3の103頁をご覧ください。アーク溶接作業、ガス溶断、ガウジングが載っていますが、衛生工学的な対策について検討するが、それらであっても不十分な場合には、有効な呼吸用保護具を着用することが必要であると提言をさせていただいています。
 2「屋外における金属研磨作業の粉じん濃度」です。これは平成20年、21年度両年度に跨がって実施しています。平成20年度においては、3名の方に個人サンプラーを装着して測定をしました。その平均値は0.34mg/m3でしたが、いわゆる管理濃度を超えた値を示すものは認められませんでした。同様に、平成21年度の5人については、その平均値が0.67で第2管理区分、即ち管理濃度を超える数値を示すものは見られませんでした。したがいまして、これらをまとめますと、平成20年度、21年度とも評価がすべて「管理区分1」で、測定時間中に管理濃度を超えるような数値も示されませんでした。したがって、従来どおり、じん肺健康診断の実施によるじん肺症の早期発見に努めていただきたい、とまとめさせていただきました。
 次は「調査結果のまとめ?」です。3「屋外におけるコンクリート研磨作業の粉じん濃度」で、作業内容は、コンクリート研磨です。これは、平成20年度のみ実施しまして、2人に個人サンプラーを装着しました。その平均値は0.06mg/m3で、「管理区分2」であった方は認められませんでした。なお、管理濃度0.34mg/m3というのは、所定の要領で遊離けい酸含有率から管理濃度を求めた数値です。遊離けい酸含有率は、13.3%でした。これらの結果、評価がすべて「管理区分1」で、測定時間中に管理濃度を超えることはほとんどなかったということです。したがいまして、従来どおり、じん肺健診の実施によるじん肺症の早期発見は、いままでどおり行われたいとまとめさせていただきました。
 最後に4「屋外における岩石等の穿孔・削孔作業の粉じん濃度」です。これは平成21年度のみの調査で、延べ6人の方にサンプラーを着けて測定を行いました。その平均濃度は1.33mg/m3という結果が得られましたが、いわゆるこの岩石そのものは遊離けい酸含有率の比較的高い花崗岩であったためか、遊離けい酸含有率が38.8%、したがって管理濃度はいわゆる事務所環境衛生基準に比べても低い、0.06mg/m3という管理濃度が得られたわけです。したがって、6人の作業者のうち6人ともが、第2管理区分に該当してしまいました。
 そういうことから、これからの結果をまとめますと、参考資料3の103頁、先ほどのアーク溶接の下から2番目の項「岩石等の穿孔・削孔作業」で要点だけをお話させていただきます。やはり管理濃度等を鑑みると、呼吸用保護具を着用することが不可欠であるとまとめさせていただきました。もう少し丁寧に申し上げますと、呼吸用保護具については、電動ファン付き呼吸用保護具の使用も1つの選択肢として考えていただいてよろしいと。そして、従来どおりじん肺健康診断も実施されたいとまとめさせていただきました。以上、私からの説明とさせていただきます。
○相沢部会長 ありがとうございました。ただいまの説明について、ご質問、ご意見がありましたらお願いします。
○加藤委員 調査結果のまとめの中で、ガス溶断について、平成19年度屋内では0.41mg/m3というような数値で、今回平成21年度は2.62(mg/m3)と。その中で、5人のうち1人なのですが、注意書きとして「作業位置の換気が良好でない等の結果」となっています。これは私の経験でいきますと、ガス溶断で通常の酸素とアセチレンのような溶断の場合、屋内で0. 41(mg/m3)なのに何で屋外で2.62(mg/m3)平均となってしまうか、ちょっと理解できないのですが。
○青柳参考人 私の記憶ですが、屋内については、たしか下方吸引型の局所排気装置が設けられていて、環境管理がなされていたと記憶しています。一方、屋外のガス溶断といいましても、屋外作業場といえども、やはり換気が不十分な部分があります。具体的に申し上げますと、例えば造船のようなブロックの部分の溶断作業になりまして、若干ヒュームが出ていたのではないかと考えています。
○加藤委員 作業位置の換気が良好でない等の結果の1人というのは、いまのような話ですね。通常の場合ですと、やはり平均で2.62( mg/m3)というような数値になってしまうのですかね。
○青柳参考人 ガス溶断ですね。
○加藤委員 ガス溶断です。その前の平成19年の屋内が0.41( mg/m3)と。屋内で0.41( mg/m3)なのに、何で屋外でこのような高い数値になっているのでしょうか。
○青柳参考人 ちょっと、いま確認してみます。
○加藤委員 その上の被覆アーク溶接や半自動の場合はヒュームガスが出て、これはかなり環境が悪くなるのは理解できるのですが、通常アセチレンと酸素の組合せの場合に出てくるのは、CO2とH2Oだけなはずなので、それがこのような粉じんが。確かに酸化鉄のような粉じんもあるかもしれませんが、ちょっと理解に苦しむなと思いました。
○青柳参考人 そうですか。後付けの話になって大変恐縮ですが、表面に錆塗り塗装がしてある状態になりますと、必ずきれいな金属板での溶断ではないということになってしまいますので、若干金属ヒュームプラス塗料等のガスや粉じんが出てきているのかなという気がします。
○加藤委員 ただ、このガス溶断というのは、かなり建設業では使う機会が頻繁にあるものですから、右に書いてありますように、「所定の有効な呼吸用保護具を着用することが必要」で規制されると、辛いものがあるなというのはちょっと感じました。
○桐明委員 造船業のケースについてですが、いまおっしゃったように、新しい船を造るときは塗装する前に切断作業をやってから塗装しますから、塗料由来の問題はありません。これは、たぶん修理で入ってきた際に、既存の鋼板を切断して新しいものを付けるときか、さもないと船を解体する作業の問題ではないかと思います。船を解体するときですと当然塗装されているものを切るわけですから、まさにスクラップ業者は切るのが仕事ですので、そういうことであればあるかもしれませんが。先ほどおっしゃったように私も数値がちょっと、異常な環境でないと、こんなにはならないのではないかという気はします。そのような環境であまり作業をすることがないものですから。造船業といっても、修理業なども行っておりますのでそのようなケースもあるのではないかという気はします。
○加藤委員 それともう1つは、「調査結果のまとめ?」の屋外におけるコンクリート研磨作業は、コンプレッサーによる斫り作業ですかね。
○青柳参考人 手持ちグラインダーですね。
○加藤委員 ディスクグラインダーですか。
○青柳参考人 はい。
○加藤委員 建設の場合、この斫り作業もかなり粉じん作業に該当するのですが。
○青柳参考人 斫り作業は、調査時には実際に行われていません。
○加藤委員 建設の場合、先ほどの資料1-4の2枚目で、トンネルの粉じんについてはかなり業界として努力していまして、既に電動ファン付きマスクが常態化しています。平成22年度の結果でゼロになったのは、たぶん初めてではないかと思います。私も、いままでの努力が報われて非常に嬉しかったのです。しかし、その下の建接業で、まだ何人かの新規の有所見者がいるもので、これらの方が斫り屋さんなのか、それとも溶接屋さんなのか、その辺りがわかれば対策もちょっと打てるかなという気がしました。
○青柳参考人 この場合のコンクリートというのは、実際には建設業が対象ではなかったわけです。コンクリートパイルの屋外における仕上げ研磨、あえて言うならばバリスリ研磨を中心に測定をしています。ですから、斫りはありません。ディスクグラインダーだけでの研磨になっています。
○加藤委員 わかりました。
○神山部会長代理 先ほど造船で、ガス溶断でそんなに高い値は出ないというのは、常識的にはそのように理解しています。青柳参考人が調査のときに見たような表面の塗料の問題や、そのほかの環境からくるかもしれない粉じん等の巻き込みなどを諸々含めて、独自にこういったガス溶断の粉じん濃度のデータは、どの程度蓄積されているものなのでしょうか。それに比べて1桁も高いということが言えるかどうかですね、2.62(mg/m3)という値は。たぶんデータ数が非常に少なくて信頼度が低いかもしれませんが、いかがでしょうか。
○桐明委員 実際に数値を計測したことは最近はございません。というのは、屋内作業も屋外作業も皆マスクをして作業をしていますので、防げるということが前提になっています。ですから、数値がいくらぐらいと言われてもデータがございません。計測しろと言われればすぐできます。
○神山部会長代理 一般的には、これはかなり高い値だなという印象なのですね。
○桐明委員 ですから、特殊な要因がないと、こんな数値にならないのではないかという気がしたものですから。
○相沢部会長 青柳参考人、1人だけものすごい高いと、引っ張って平均濃度が高くなってしまいますから、その辺りの濃度データを後ほど参考までに示してください。
○神山部会長代理 もう1つよろしいですか。これは青柳参考人への質問になるかと思うのですが、管理濃度が3.0(mg/m3)というのは、たぶんこれはシリカがゼロのときの上限値のような値いですね。3、4に関しては、0.34(mg/m3)とか0.06(mg/m3)、これはシリカ含有率があって低くなってきたものですね。この場合は、シリカの含有率を実際にその現場で測定は可能だったのでしょうか。
○青柳参考人 これは、実際に先ほどもお話しましたように、コンクリート研磨の場合には、非常に浮遊粉じんは少ないものですので、その近辺の堆積じんを収集し、再発じん法で遊離けい酸を測定したということです。ですから、コンクリートは本来こんなに高くないのかなという気もしますが、それ以外の夾雑物の粉じんが混ざっている可能性があります。
 一方の石ですが、これはかなり取れましたので、併行測定点でかなり多くの浮遊している粉じん中の遊離けい酸を測定するという目的で、サンプリングを行っています。
○神山部会長代理 これで何パーセントぐらいですか。
○青柳参考人 石は38%近かったです。
○神山部会長代理 わかりました。どうもありがとうございました。
○相沢部会長 ほかにはいかがでしょうか。
○杉山委員 2点教えてください。単純な質問で申し訳ないのですが、3頁の評価のところを見ていますと、「ほとんどなかった」という表現が書かれているのですが、ほとんどなかったというのはもう少し定量的に言うとどのような意味合いなのでしょうか。2点目は、先ほどの意見にもあったかと思うのですが、調査の母数が非常に少ないなというのが正直な感想です。母数が少ないから、この結果を全部否定するという立場には立ちませんが、例えばこれを見て平成20年で母数が少ないのに平成21年ではまたフォローしていないとか、やはりもう少しデータの母数を増やすフォローをしていくことによって、よりデータの信頼性と客観性が高まるのではないかと思います。特に、先ほど出ていた環境諸条件によっても数値が変わることが想定されるとすれば、そのようなことをしたほうがいいのではないかと思っています。もし、その点についてお考えがあれば、お聞かせ願えればと思います。以上です。
○青柳参考人 1点目の「ほとんど」の意味ですが、これは平成20年度のデータです。参考資料2、平成20年度屋外のアーク溶接作業の32頁の下のグラフをご覧ください。サンプリング時間は5,000秒ですから、数時間にわたって測定を行っているわけです。そのうち、この0.35(mg/m3)近い管理濃度を超える濃度を示したのは、測定開始後4,000秒の部分だけ、一時管理濃度を超えていたということで、これを「ほとんど」という表現にさせていただいたわけです。
 もう1点、データのフォローが必要ということで、全体的にもそういうことが必要かなとは考えています。一つひとつのデータは、確かに数が少なかったのですが、それらについて短時間の作業ではなくて、1日の1シフトの中でさまざまな回数、さまざまな時間帯で実際にいろいろな作業が行われていますので、基本的には代表的に考えてよろしいかと思いました。そのようなことですが、今後必要だということになれば、それは積極的に考えていかなければいけないとは思っています。
○杉山委員 1点目の関係で、先ほどグラフで説明していただいてわかったのですが、これは超えている部分が少なければいいという理解ですか。
○青柳参考人 いいえ、そうはなかなか言えません、解釈はかなり難しいと思います。
○杉山委員 超えている部分の面積で判断すればいいのか、少しでも超えてはいけないという理解をすればいいのでしょうか。
○青柳参考人 先生方がいらっしゃるので、私が説明するよりはということもありますが、ばく露のリスクから考えると、やはり平均的に基準を超えているか、いないかが大きな分かれ目ではないかと思います。ですからばく露濃度の場合には、平均値で管理濃度を超えているかいないか、というところでお考えいただいたほうが宜しいと思います。
○相沢部会長 粉じんという慢性的な疾患を起こすようなものですから、急性の中毒を起こすようなものですと一時期でも超えては困るわけです。こういう性質を考えれば、平均的な濃度でいいということですね。よろしいでしょうか。ほかにはいかがでしょうか。ちょっと例数が少ないですが、精度は高いということで審議させていただきます。ほかにご質問、ご意見はないようですね。
 大変貴重なご意見をいただいて、ありがとうございました。屋外におけるアーク溶接と岩石の穿孔等の作業については、これらの調査研究報告によって、呼吸用保護具を使用する作業として規制することが必要であると、じん肺部会に報告されたわけです。したがって、じん肺部会としても屋外におけるアーク溶接と岩石の穿孔等の作業について、呼吸用保護具を使用する作業として規制することが必要であるか。つまり、法令改正をすべきかどうかを、じん肺部会として意見をまとめておく必要があるわけです。いまご議論いただきましたが、じん肺部会としては、屋外におけるアーク溶接と岩石の穿孔等の作業について、呼吸用保護具を使用する作業として法的に規制することが適当であるということで、まとめたいと考えますが、よろしいですか。
○加藤委員 ガス溶断は除くということでよろしいですか。
○相沢部会長 アーク溶接と岩石の穿孔ですね。ありがとうございます。それでは、じん肺部会としての意見はまとまりましたので、今後、事務局で必要な手続を進めていただきたいと思います。
 最後に、議題4「その他」ですが、事務局から何かありますか。
○猿田主任中央じん肺診査医 特にありません。
○相沢部会長 それでは、当部会の議事はすべて終了しました。ありがとうございます。議事録ですが、労働政策審議会運営規定第6条第1項により、部会長の私と私の指名する委員のお二人が署名することとなっています。署名は、労使代表1名ずつとしたいと思います。本日の議事録の署名は、近藤委員と金子委員にお願いいたします。
 それでは、本日は大変お忙しいところ、貴重な議論をいただきましてありがとうございました。以上で閉会とさせていただきます。


(了)
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