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2011年7月25日 独立行政法人評価委員会調査研究部会(第54回)議事録

○日時

平成23年7月25日(月)9:30~12:00


○場所

専用第22会議室


○出席者

   田村部会長、武見部会長代理、田宮委員、岩渕委員、政安委員、中村委員、酒井委員、馬場委員


○議事

(以下、議事録)
 
○田村部会長
 定刻となりましたので、第54回厚生労働省独立行政法人評価委員会調査研究部会を開催させていただきます。委員の皆様におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして誠にありがとうございます。本日は金倉委員、清水委員がご欠席となっております。なお、政安委員はまだお見えではありませんが、いずれお見えになると思います。
 本日の議題は、お手元の議事次第のとおり、労働安全衛生総合研究所の平成22年度業務実績に関する個別評価を行います。それでは、労働安全衛生総合研究所の個別評価に入らせていただきます。最初に前田理事長からご挨拶と平成22年度における業務実績の概要のご説明をお願いします。

○労働安全衛生総合研究所理事長
 労働安全衛生総合研究所理事長の前田でございます。本日は朝早くから私どもの研究所評価にお集まりいただきましてどうもありがとうございました。
 私ども労働安全衛生総合研究所の概要について簡単にご説明申し上げます。緑色のバインダーのいちばん最後のところに、資料1-5としまして、平成22年度業務報告説明資料のパワーポイントをプリントアウトしたものが添付されていると思います。メインは後ほど研究企画調整部長からご説明申し上げますが、私からは冒頭の4頁の研究所の概要について、既にご存じの先生方も多いかと思いますが、新しく代わられた先生方もいらっしゃるということで、ざっと説明申し上げたいと思います。資料1-5の右下に番号が書いてありますが1頁は研究所の概要となっております。研究所は平成23年3月31日現在で職員103名、平成22年度の予算が約23億5,000万円の研究所でございます。
 特徴としましては、我が国で唯一「産業安全及び労働衛生」の分野における総合的研究機関として、「職場における労働者の安全と健康の確保」に資するための調査研究を実施しています。設立はもともと2つあった研究所を平成18年に統合いたしまして、現在の労働安全衛生総合研究所となっています。
 2頁に組織図があります。ここに書かれてあるとおりでして、これは空間的な場所を示した図ではなくて、組織の内部構造を示しているものです。役員の下に、総務部、研究企画調整部、労働災害調査分析センター、国際情報・研究振興センターと研究部門があります。研究部門としましては、安全研究領域、健康研究領域、環境研究領域の3領域と、それぞれの領域に属する研究グループがあります。
 3頁は、労働安全衛生総合研究所の事業体系図です。現在、我が国におきましては、年々減少してきていますが、まだ年間1,000人を越える死亡災害が労働災害として発生しています。死傷災害については、通常は休業4日以上がカウントされることが多いのですが、不休災害を含めますと、年間54万人に及ぶ労働者が被災し、また、メンタルヘルス不調などの業務上疾病も数多く発生しているというのが現状です。これらにつきまして、災害調査等の実施による労働災害の原因調査のノウハウの蓄積と労働災害予防等に関する研究成果をうまくリンクいたしまして、研究所の特色を出した行政ミッション型研究所として活動を行っています。
 研究所のミッションとしましては、労働災害の防止です。労働災害と申しますと、職業性疾病も含んだ概念と考えておりますが、労働者の健康増進、職業性疾病を含む労働災害の防止に関する総合的な調査研究の実施と、科学技術的な専門的観点からの災害原因調査を事業の2本柱として実施しています。また、それに附帯する業務を行っております。
 4頁は研究所の活動ですが、このような調査研究業務を通じまして国内外の関係機関等との協力、また災害調査などの研究成果の作成、普及・活用の活動を実施しているわけですが、模式的に書きますと、4頁にありますように、厚生労働省及び事業場、そのほか学会・協会、他の官庁などと相互の連携を図りつつ研究を実施しています。平成23年度は3月11日に発生した大震災に関連する研究課題も実施していますが、今日ご説明するのは平成22年度の業務実績ですので、平成22年度終了間際に発生した大震災に関連する事項は、特別に出てこないと思います。そのようなことも含めまして、災害の防止、技術の向上に努めております。以上、簡単ではありますがご紹介させていただきました。ありがとうございました。

○田村部会長
 ありがとうございました。これからの進め方ですが、労働安全衛生総合研究所の個別評価につきましては、評価シートの個別項目を4つのグループに分けまして、グループごとに評価を行ってまいります。まずグループ1ですが、これは評価項目の1から7に該当しますが、効率的な業務運営体制の確立、労働現場のニーズに沿った研究の実施について評価を行います。所要時間は法人からのご説明は20分、委員の評定と質議15分、合計35分ということで進めてまいります。それでは、法人からのご説明をよろしくお願いします。

○労働安全衛生総合研究所研究企画調整部長
 研究企画調整部長の浅田でございます。先ほど理事長からご説明申し上げましたプレゼンテーション用の資料1-5の「平成22年度業務報告説明資料」と資料の1-1「平成22年度業務実績評価シート」に沿って、グループ1の評価項目の1から7まで順にご説明申し上げます。
 各項目の説明に入ります前に、若干資料の修正がありますのでご説明申し上げます。事前に委員の皆様方にお送りしておりました資料に一部誤りがありました。その主な修正点は、まず資料1-1の評価シートにつきましては、まず、表紙の裏に目次を付けたということです。次に6頁から7頁にかけまして、評価シートの左から3列目、平成22年度計画の「公共調達の適正化」の項目が抜けておりました。また、いちばん右の業務の実績欄の同じく「公共調達の適正化」についても追加しました。次に12頁の下の表ですが、国内学会への参加人数が平成19年が当初05となっておりましたが、205の誤りでございますのでそのように訂正しております。それと29頁の業務実績の欄のところに表がございます。ここで「平成22年度のTLO扱い、意匠出願中」というのが従前は2の(4)となっておりますが2の(2)に訂正しております。
 次に、プレゼンテーション用の資料をお開きください。主な修正点は、まず23頁です。「研究成果の法令・通達等への反映状況」の平成22年度の左の列、「研究等の成果を反映して策定された法令・通達等」の下の4つの項目につきまして、従前は通達名を書いてありましたが、省令告示に変更しております。また、22年度の最初の災害調査欄の研究課題につきましても、「液体噴霧時の静電気による爆発・火災の防止に関する研究」に修正いたしました。次に、28頁の評価項目15の成果の積極的な普及・活用の表ですが、先ほどの修正と同じく、22年度TLO扱いの意匠出願中の件数を2(4)であったのを2(2)としました。それと、左列の2行目の22年度の特許出願件数を1件から2件に変更いたしました。以上でございます。
 それでは、グループ1の評価項目の1から7までの説明に入ります。
 まず、評価項目1の「効率的な業務運営体制の確立」につきましては、プレゼンテーション資料の5頁、評価シートの1頁をお開きください。主としてプレゼンテーション用の資料に基づいて説明いたします。組織体制の一元化につきましては、平成18年度の旧産業安全研究所と旧産業医学総合研究所の統合以降、その組織的な一体化、統合による相乗効果の推進を図るため、3研究領域体制の導入、あるいは労働災害調査分析センターの設置、国際情報・研究振興センターの改組などに取り組んでまいりましたが、中期目標期間の最終年度である平成22年度は、両地区総務部門の統合推進により3名の人員削減を行いまして、間接部門のさらなる効率化を実現したところであります。
また、効率的な組織運営につきましては、両研究所の統合以降、評価基準の統一、各種審査規程の整備、内部統制の構築、テレビ会議システム・電子決裁システムの導入などに取り組んでまいりましたが、中期目標期間の最終年度である平成22年度は、両地区共通のより充実した研究管理システムの拡充、具体的には評価者の拡充による多面的な評価の導入、年1回の期末評価から年に2回の中間・期末評価への移行、事前・中間・事後評価に追跡評価の追加、評価項目の再編整理、評価結果の課題の採否、あるいは研究計画の見直しへの厳格な反映を行うとともに、セキュリティを確保した上での両地区共用のグループウェアの充実、両地区のメンバーが打ち合わせを行う際のテレビ会議システムの活用、具体的に言いますと利用回数が20年度は8回、21年度が22回、22年度は57回と大幅に増えておりますが、こういった取組みなど、効率的な事業運営に積極的に取り組んでまいりました。
質の高い人材の登用につきましては、研究開発力強化法に基づきまして、人材活用等の方針を策定公表したほか、任期付き研究員を広く公募をしまして、優秀な人材確保に努めるとともに、個人業績評価システムを用いた研究員の構成、的確な業績評価を人事管理に反映させる等の取組みを行いました。研究管理・総務部門の一元化につきましては、すでに申し上げましたので説明を省略いたします。以上のように、評価項目1については、効率的な業務運営体制の確立に積極的に取組み、中期目標を上回る成果を上げたことから、自己評価はAとしました。
 次に評価項目2の「内部進行管理の充実」につきましては、プレゼンテーション資料の6頁、評価シートの4頁をお開きください。研究管理システムの充実については、両研究所の統合以降、当初別々の評価基準、評価方法で評価を実施し、その後、実効性確保にも留意しつつ、順次統合を進めてまいりましたが、中期目標期間の最終年度である22年度には、内部・外部研究評価規程を改正し、より充実した評価システムとしての実質的な統合を実現いたしました。
 研究管理の進行については、各研究グループ長による日常的な管理、各種会議への進行状況の報告・検証を通じたより広い観点からの定期的管理の二本立てで、また研究評価につきましても、内部・外部研究評価委員会が二本立てで実施することにより、効果的かつ効率的な研究業務の推進が実現できるようになりました。
 研究員の業績評価につきましては、22年度の評価項目の重複の整理、重みづけの見直し、評価者の拡充などの見直しを行うことによりまして、より公平かつ適正な評価の実現に取り組んでまいりました。以上のように、評価項目2につきましては、内部進行管理の充実に積極的に取り組み、中期計画を上回る成果を上げたことから、自己評価はAとしております。
 次に評価項目3「業務運営の効率化に伴う経費節減」については、プレゼンテーション資料の7頁と8頁、評価シートの6頁をお開きください。経費節減については、平成22年4月に策定した随意契約等見直し計画に基づき、公告期間の延長、仕様の見直し、入札参加要件の緩和等を行いまして、一般競争入札による調達を徹底すること、例えば電力供給につきましては一般競争入札をすることによりまして、東京電力ではなく、IPPいわゆる独立電力事業者であるエネットと契約しております。そういったことによりまして、競争性、透明性を確保するとともに、経費の節減に努めてまいりました。この結果、随意契約は平成18年度の63件で2億円から、22年度の5件で3,600万円に大幅に減少いたしました。残る5件については、事実上競争が期待できない水道、ガス等のみで占められております。省エネルギー対策については、日照時間帯での廊下等の完全消灯、昼休み時間中の消灯と省電力に積極的に取り組んだ結果、光熱水料が対20年度比で22.5%減、対前年度比で5.6%減を達成いたしました。
 一方、運営費交付金以外の外部資金の獲得につきましては、次の頁ですが、積極的に取り組んだ結果、科研費等の競争的研究資金と民間等からの受託研究を併せまして、3億1,300万円余りに達し、過去最高額を更新いたしました。受託研究の例として、民間から受託した労働現場での対策に直結する「新JIS規格に適合した高作業性防振手袋の開発に関する研究」や、NEDO(新エネルギー産業技術総合開発機構)から受託し、複数の研究機関で共同研究を進めている、「生活支援ロボットの安全性検証評価手法の開発」があります。特に後者の受託研究は、当研究所が長年培ってきたロボットの安全性評価の技術を、現在国策として取り組んでいる、人と共存できる安全なロボットの開発に役立てることができるという意味で、非常に大きな社会的な効果、貢献が期待される事業です。
 さらにこの評価項目の数値目標は評価シートの7頁にありますように、中期目標期間中において平成17年度は運営費交付金から一般管理費で15%、事業費で5%の相当額を節減するとされております。それらの実績は、一般管理費で39.8%減、業務経費で30.1%減です。いま申し上げましたのは、このプレゼンテーション資料では35頁の「数値目標の達成状況」にも記載されています。以上のように、評価項目3につきましては、業務運営の効率化に伴う経費節減等に積極的に取り組みまして、中期計画の数値目標である一般管理費15%減、事業費5%減に対して、それぞれ大幅に上回る39.8%減、30.1%減を達成するなど、中期計画を大幅に上回る成果を上げたことから、自己評価はSとしております。
 次に評価項目4の「効率的な研究施設・設備の利用」については、プレゼンテーション資料の9頁、評価シートの10頁をお開きください。研究施設・設備の共同利用、有償貸与については、貸与対象となる研究施設設備のリストを見直しまして、1件追加して85件にするとともに、減価償却を考慮して貸与料金の適正化を図るとともに、研究所のホームページでPR、あるいは講演会等の参加者に対してパンフレットを新たに作成・配付するなど、本制度の周知に努めてまいりました。また、プロジェクト研究や科研費の研究による12件の協同研究の実施、あるいは前年度53人から75人へと増加した若手研究員等の受入れを通じまして、当研究所の研究施設・設備の有効利用の促進を図りました。さらに研究施設・設備の使用状況の把握につきましては、退職研究員の研究室を整備し、新規採用研究員、あるいは他の研究員に再配分するとともに、施設管理担当者による定期的なモニタリングを実施いたしました。以上のように、評価項目4については、効率的な研究施設・設備の利用に積極的に取組み、中期計画を上回る成果を上げたことから、自己評価はAとしています。
 次に評価項目5の「労働現場ニーズの把握と業務への積極的な反映」については、プレゼンテーション資料の10頁、評価シートの11頁をお開きください。労働現場ニーズの把握と業務への反映については、学識経験者、労使の有識者等から構成される、労働安全衛生重点研究推進協議会において、今後おおむね10年間に我が国が推進すべき労働安全衛生分野の研究戦略として、3重点領域と22優先課題を策定し、22年10月に報告書を取りまとめ、ホームページに公表しました。また、協議会シンポジウム、客員研究員等との研究交流会、業界団体との意見交換会、さらには学会参加、各種委員会への参加、労働現場調査などを通じて、現在までは将来の研究ニーズの把握に積極的に取り組み、研究業務に的確に反映するよう努めました。また、行政ニーズの把握と業務への反映については、厚生労働省との意見交換会の開催、厚生労働省からの要請を受けた研削盤等構造規格に関する調査研究など、10課題の行政支援研究を実施いたしました。そのほか、厚生労働省から委託調査、「ナノマテリアルの作業環境中における挙動等の調査事業」等も実施いたしました。以上のように評価項目5については、現場のニーズの把握と業務への積極的な反映に精力的に取り組みましたので、中期計画を上回る成果を上げたことから、自己評価はAとしております。
 次に評価項目6の「労働現場ニーズ及び行政ニーズに沿った調査及び研究の実施」のうち、プロジェクト研究についてです。プレゼンテーション資料の11頁、評価シートの13頁をお開きください。ここで対象とする22年度に実施したプロジェクト研究などは重点的に研究資金、研究要員を投入するプロジェクト研究が10課題、政府の長期的戦略指針に基づいたイノベーション25研究が3課題、WHOの「労働者の健康推進に関するWHOアクションプラン」に登録しているGOHNET研究が3課題の計16課題です。このプロジェクト研究等には、研究費の4分の3、研究員を延べ90人近く投入するなど、当研究所の中核的な研究です。
 ここでプロジェクト研究等をご理解いただくために、いくつか研究課題を取り上げ、その概要を説明いたします。プレゼンテーション資料の12頁のプロジェクト研究の「災害多発分野におけるリスクマネジメント技術の高度化と実用化に関する研究」は、建設、機械、化学といった災害が多発している産業分野を対象にしたリスクマネジメント技術の体系化を目的とした研究です。建設分野におけるリスクマネジメント推進アクションプログラムのフォローアップ、機械分野におけるITを活用した安全管理システム設計ガイドの作成、化学分野における化学プラントの安全管理情報基盤の開発を行いました。
 続きまして、プレゼンテーション資料の13頁のプロジェクト研究です。「災害復旧工事における労働災害防止に関する総合的な研究」は、地震、台風、集中豪雨などの自然災害が多発する我が国における災害復旧工事の安全確保を目的とした研究でありまして、斜面復旧工事での土砂崩壊の危険性の評価、地震による木造建築物の損傷程度の評価方法の開発、スレート屋根の復旧工事での踏抜き防止対策の開発を行いました。
 次に、プレゼンテーション資料の14頁のイノベーション25研究、「多軸全身、手腕振動ばく露の人体への心理・生理影響の評価方法に関する研究」です。産業現場で広範に利用されている振動機械工具の健康影響を明らかにすることを目的とした研究で、性別差、ばく露方向による影響の差異、椅子の背もたれ角度・工具を持つ角度による健康影響の差異、振動と騒音の複合相乗効果を明らかにいたしました。
 次に、プレゼンテーション資料の15頁、GOHNETです。「中小企業における労働安全衛生マネジメントシステム(OSHMS)の確立」は、中小企業に対して効果的に労働安全衛生マネジメントシステムを導入・定着させることを目的とした研究であり、教育用ビデオや現場の改善事例集を開発し、現場に提供することにより、公務災害の被災者数やメンタルヘルス不調による休業者数が着実に減少したことが明らかになりました。また、この研究は日本産業衛生学会のグッドプラクティス奨励賞を受賞いたしました。これらの調査研究等は、いずれも現在多発している労働災害、職業性疾病等の重要な課題について、有用な予防対策あるいは客観的なリスク評価手法等の提供する成果が得られておりまして、この社会的貢献は大きいものと考えられます。以上のように、評価項目6につきましては、労働現場のニーズに沿ったプロジェクト研究等に積極的に取り組み、中期計画を上回る成果を上げたことから、自己評価はAとしております。
 次に評価項目7の「基盤的研究」については、プレゼンテーション資料の16頁、評価シートの17頁をお開きください。基盤的研究は、長期的な視点から労働安全衛生上必要とされる基盤技術を高度化するための研究として位置づけられておりまして、当研究所の経営資源をプロジェクト研究へ重点的に配分する方針のもと、課題数を絞り込んでまいりました。基盤的研究につきましても、内部研究評価を通じて労働現場のニーズ等を踏まえた適切かつ計画的な研究の実施に取り組んでまいりました。また、基盤的研究は将来のプロジェクト研究に発展・継承される萌芽的研究も多く、例えばプレゼンテーション資料の右の部分に示されておりますように、「建設業の石綿ばく露」、「建設業の有害物ばく露」、「建設業労働者の死因に関するコホート」の3本の基盤的研究が「建設業における職業コホートの設定と労働者の健康障害に関する調査研究」に発展・継承されております。
 ここで、基盤的研究をご理解いただくために、いくつか研究課題についてその概要をご説明いたします。プレゼンテーション資料の17頁です。基盤的研究の「工業用ナノ粒子の作業環境測定に資する粒子の評価法の検討」は、近年、工業分野で脚光を浴びている炭素系ナノ粒子の測定法の開発を目的とした研究であり、サッカーボールのようなフラーレン、多層カーボンナノチューブであるMWCNT、カーボンブラックのそれぞれの物質について、一般大気粒子との分離測定を可能とした測定法を開発し、現場調査等に活用いたしました。
 プレゼンテーション資料の18頁です。基盤的研究の「非石綿ガスケットの高温クリープ特性の評価に関する研究」は、石綿ガスケットの製造・使用の禁止に伴いまして、産業現場で使用されるようになった非石綿ガスケットの主な損傷要因である高温クリープ特性を明らかにすることを目的とした研究であり、一次元のクリープ構成式を三次元に拡張するとともに、FEM、即ち、有限要素解析に適用することにより、非石綿ガスケットの漏洩リスクの予測と交換時期の最適化に寄与してまいりました。この研究は、日本高圧力技術協会の科学技術振興賞を受賞いたしました。以上のように、評価項目7については、長期的視点から労働安全衛生上必要とされる基盤技術を高度化するための研究、プロジェクト研究の萌芽的研究としての基盤的研究に積極的に取組み、中期計画を上回る成果を上げたことから、自己評価はAといたしております。以上をもちまして、グループ1の説明を終了いたします。

○田村部会長
 ありがとうございました。委員の皆さまには、評価シートへの評定等の記入をお願いします。質問等ありましたら、適宜ご発言をいただければと思いますが、いかがですか。

○馬場委員
 最初に、業績の評価シートを読ませていただきました。非常に簡潔に理解しやすく書かれてあったと感銘を受けました。質問させていただきますが、最初の業務運営の効率化の評価シートを見ると、理事長の打ち合わせを週1回、各研究領域長が出席する役員会議の2つの会議を設けられていますが、最終的な組織としての意思決定は、この2つはどういう位置関係になっているかわかりにくかったもので、そこを教えていただけますか。

○労働安全衛生総合研究所理事長
 お答えします。役員会議は、開催回数の問題もありますが、基本的に監事への業務報告的な性格で、実際の所内の運営を行うに当たっての意思決定は、理事長打ち合わせで行っております。

○馬場委員
 次の点は、いまのご説明の全般にかかるのですが、研究テーマをかなりシビアに評価されて、例えば基盤研究からプロジェクト研究に移行させるとか、いろいろな評価を含めて、試みをやっておられるのは大変高く評価します。それと並行して、科研費等の基盤的な経費は減っていますが、外部資金の導入で受託研究の率が飛躍的にこの数年上がっていますね。この受託研究の飛躍的な伸びは、基盤研究課題をある程度評価してプロジェクト研究にしたり、そういうふうに仕分けすることで、受託研究も増えてきたと考えてよろしいのですか。受託研究が増えていることと、いま、かなり研究のテーマを厳選されて評価してやっているという2つは連動することなのか、見かけ上大きな関係がないのか、もし何かありましたら教えてください。

○労働安全衛生総合研究所理事長
 結果として、連動しているような形に見えますけれども、直接の関係はありません。研究の重点化として基盤的研究を制限することにより、プロジェクト研究の重点化を図っています。時期を同じくして、我々独立行政法人が運営費交付金以外の研究資金にシフトしていくべきであるという要請がありました。大学系では常識だったのですが、もともと国立研究所ではあまり科研費などに目を向けていなかったので、そういう時代の要請を受け、今では一般的な競争的研究資金を獲得して研究をするという世の中の動きに沿ったものとなっているいうことです。

○労働安全衛生総合研究所研究企画調整部長
 若干補足させていただきます。運営費交付金が私どもの研究資金の主たるものを占めていますが、効率化係数をかけて毎年削減されています。それに伴い、当研究所としても、外部研究資金を積極的に獲得していきたいという考えがあります。先ほどご説明しましたプレゼンテーション資料の17頁にある、工業用ナノ粒子の基盤的研究ですが、右下に応用として?があります。平成23年度、いわゆる科研費の基盤(C)の獲得に繋がっています。このように、基盤的研究を外部研究資金の獲得にも活用しているところです。以上です。

○酒井委員
 馬場委員の質問と関連して素朴な質問です。受託ですが、NEDOの公募型の受託をとっていますよね。これは、とてもすばらしいことなのだと思います。これは何年計画なのですか。というのは、もしこれがなかったとすると、本当に伸びているというのは、そのとおりにとっていいのかどうか気になったのですが。

○労働安全衛生総合研究所理事長
 NEDOの研究は、第1期が3年計画ということで、これがなくなると、非常に大口の外部資金がなくなるということで大変なことだと認識はしております。

○酒井委員
 3年で単年度で2億いくらついているという。そうすると、来年もその程度のものを作っていくと考えてよろしいのですか。

○労働安全衛生総合研究所理事長
 NEDOの第2期研究は、第1期の中間評価を踏まえ、継続の可否が決まることになっています。平成24年度は、その次の課題を含め、考えています。

○酒井委員
 1つ、労働現場のニーズ把握で非常に多様な形でニーズ把握をされていると理解して、そのことは皆さんのいろいろな研究に反映していると思うのですが、写真にある客員研究員、フェロー研究員研究交流会で直近で、例えば皆さんたちの研究所にどんな要請というか、ニーズというか、希望といいますか、取り組むのにどんなことが出ているか、もし差し支えなければご紹介いただきたいのが1点。もう一つは、冒頭理事長から3.11の件については今年度の話なので、平成22年度の実績評価にならないということなのですが、ずっと見せていただいて、本当に研究、そのほかのことがシステマティックに、中期計画に基づいて着実に成果を上げていると思うのですが、中期計画の中で立てた計画を粛々とやっていくのは当然のことで、その点については、何の異論もないのですが、産業界の安全、健康の問題はその時々に非常に動きがあると思うのですね。例えば、去年熱中症が、非常にたくさん発生して、安全課長が7月の時点で通達を出して、この産業とこの産業に特に気をつけなさいということがあったのですが、今日のご報告の中に、例えばそういう熱中症と関連して、取り組んでいるのはよく知っているのですが、こういう私たちに示していただく成果の中に、一言も触れられていないのはどういうことなのか。そういう意味で3.11が先ほど具体的に既に研究課題に挙げたものもありますという理事長のお話だったのですが、例えば参考までにどんな研究テーマを挙げて、それがこういった年度評価の中にどういうふうに私たちが考えていけばいいか、お考えがあったら是非お聞かせいただきたい。

○労働安全衛生総合研究所理事(小川)
 毎年、そのときの重要なテーマを設定して、客員研究員・フェロー研究員との交流を深めているわけですが、平成22年はメンタルヘルス、過重労働の課題を中心に、特に産業医をなさっている客員研究員の先生には現場でどういう問題があるかを提起していただいて、一方では当研究所でやっている研究を紹介することによって、今後どういうふうに研究を進めたらいいかについて意見交換を行いました。

○労働安全衛生総合研究所理事長
 熱中症研究と震災関係ということですが、熱中症研究については、イノベーション25研究というプロジェクト研究等に分類される研究課題の1つとして、熱中症を取り上げることになっています。震災とも絡むのですが、熱中症対策については、熱中症対策の準備段階の研究を行っています。震災関連の研究については、現時点で確定的なところまで申し上げられないのですが、がれき処理に基づくアスベストの汚染の問題や震災後の復旧工事における安全性の研究を行っています。これは、ちょうどプロジェクト研究の成果が終わったところなのですが、それをさらに発展させた形で、次のプロジェクト研究の中で、一部分、震災をターゲットにした研究を進めるというようなことをあといくつか考えています。

○労働安全衛生総合研究所研究企画調整部長
 若干補足させていただきます。評価シートの13頁の右側に平成22年度の業務の実績の欄があり、平成22年度に行っているプロジェクト研究等の一欄が掲げられています。その中に、イノベーション25研究がありまして、イとして「作業温熱ストレスの労働生理学的評価と予防対策技術の研究」をやっています。こういった研究を通じて、熱中症対策等の予防に取り組んでいるところです。震災対応については、先ほどご説明したプレゼンテーション用資料の13頁が、災害復旧工事における労働災害防止に関する総合的研究です。これは実は平成21年度から始めていたわけですが、こういった成果は当然震災の復旧工事等にも対応が可能ですので、今年度については、少し力点をそちらに移した形で進めていくとともに、新たにがれき処理作業や屋根の補修工事からの墜落・転落の防止、あるいはアスベスト飛散に関する調査研究、さらにはかなり過酷な環境で長時間作業することからくる作業中のストレスの問題についても、平成23年から新たに新規課題として立ち上げることとしています。以上です。

○酒井委員
 ありがとうございました。熱中症に関しては、今年も非常に早くからマスコミ等が動いているというか、注目しているわけです。そういうものにいちばんデータを持っておられる労働安全衛生総合研究所が、そのことについて去年あれだけ言われたことに対して、研究として、フォローアップとしてどういう検証ができたのか、できないのか、さらに新しい提案は何なのかということがあってもいいと思っています。3.11に関連しては、とてもそのとおりだと思うのですが、福島原発の中での課題については皆さん方は全然取組みはないのですか。例えば、熱中症等でいくと、おわかりのとおりの放射線の影響の話と熱中症のことは相当大きな問題だと思っているのですが、その辺是非積極的に取り組んでいただければいいと要望するところです。特にお答いただかなくて結構です。

○労働安全衛生総合研究所理事(小川)
 昨年、特に熱中症が多かったということから、厚生労働省からもそういう指摘がありました。我々の研究所としては、より具体的な対策という視点で研究をしていく必要があることから、早急に熱中症予防のため飲水量をどの程度にしたらいいか、どういう保冷剤が有効であり、かつどこにつけたらいいか、そういうことを中心にして研究を行い、今後、福島県での熱暑環境での作業に関して、具体的な予防対策を進める観点から協力できればと検討しているところです。

○岩渕委員
 いまおっしゃったことは非常によくわかるのですが、こういう緊急で、しかも国民が注目しているテーマについては、もしかしたらどの程度結果が得られるかをあまり斟酌せずに取り組んでいただけないかという希望です。つまり、結果として大した成果が上がらないかもしれませんが、できる範囲内で積極的に取り組むことの大切さもあると思いますし、結果を恐れずに1つ本気で取り組んでいただきたいと思います。

○中村委員
 プロジェクト研究、基盤的研究の成果については、報告していただいたもの以外の評価も高いということですばらしい実績と評価します。関連して、例えば中小企業における労働安全衛生マネージメントシステムの成果は、今後どのような形で展開されていくのでしょうか、もちろん研究所ですから、限界があると思いますが、行政等と連携して広く展開することを期待しています。この点は、いかがでしょうか。

○労働安全衛生総合研究所研究企画調整部長
 この研究は、実は、ある地方自治体をモデルケースとして取り上げたものです。もちろん、今後は同種の地方自治体、同じような作業を行っているところに対して水平展開することも可能です。また大企業ではなくて、あまり管理体制がしっかりしていない中小規模事業場で、具体的にどういう取組みをすれば効果が上がるのか、即ち、そんなに費用をかけず、またスタッフも多数配置せずに効果を上げることができるかということの1つの例示として、他業種等にも十分展開が可能だと思っています。今後は、そういった形で研究成果の普及を進めてまいりたいと思います。

○田村部会長
 よろしいですか。だいぶ時間が押してまいりましたので、次のグループに移らせていただきます。よろしいですか。
 次にグループ2、評価項目8から13の「学際的な研究の推進、研究項目の重点化、成果の積極的な普及・活用」についての評価を行います。所要時間は、法人からのご説明が15分、委員の評定と質議が15分の合計30分で進めてまいりたいと思います。法人からのご説明をよろしくお願いします。

○労働安全衛生総合研究所研究企画調整部長
 グループ2の評価項目の8から13までの説明に入ります。まず、評価項目8の「学際的な研究の実施」については、プレゼンテーション資料の19頁、評価シートの18頁をお開きください。産業安全と労働衛生の両知見を活用した研究の実施については、学際的研究を担う組織として、両分野の専門家からなる人間工学・リスク管理研究グループと両分野横断的な環境研究領域を設置するとともに、研究評価の要素の1つとして、学際的視点を盛り込むことにより、学際的研究に取り組む仕組みを整備しました。取り組んだ学際的研究の課題としては、プロジェクト研究「災害多発におけるリスクマネージメント技術の高度化と実用化に関する研究」や、厚生労働科学研究費補助金の研究である「加齢に伴う心身機能の変化と労働災害リスクに関する研究」等が挙げられます。後者の研究については、フローチャートに示されているように、高年齢労働者の生理的・身体的機能特性や認知的・心理的特性と労働災害リスクとの関連性を明らかにすることにより、高年齢労働者の労働災害防止に寄与することを目的としています。この研究成果は、今後急速に増加が見込まれる高年齢労働者の災害防止に役立つことが期待されています。以上のように評価項目8については、学際的研究の実施に積極的に取り組み、中期計画を上回る成果をあげたことから、自己評価をAとしています。
 評価項目9の「研究項目の重点化」については、プレゼンテーション資料の20頁、評価シートの19頁をお開きください。プロジェクト研究等の重点化については、基盤的研究課題数が前の中期目標期間における年平均の102課題から平成22年度には48課題まで大幅に絞り込むことにより、相対的な指標である全研究課題に占める基盤的研究課題数の割合を平成18年度の87%から平成22年度の75%に減少させるとともに、絶対的な指標である基盤的研究の研究費総額も平成18年度の9,080万円から平成22年度の4,610万円に減少させてまいりました。中期目標に定められた数値目標は、中期目標期間中の基盤的研究の年平均課題数を前の中期目標期間中の基盤的研究の年平均課題数に比して20%程度減少させるということですが、直近の5年間の実績は36.3%の減であり、その目標を大幅に上回ったところです。以上のように評価項目9については、研究項目の重点化に積極的に取り組み、中期計画の数値目標20%の減少を大幅に上回る36.3%減の成果をあげたことから、自己評価をSとしています。
 評価項目10の「研究評価の実施」については、プレゼンテーション資料の21頁、評価シートの20頁をお開きください。研究評価については、平成22年度に内部・外部研究評価規程の見直しを行い、運用の改善を図りました。見直し後の評価項目、評価内容は右の表に示されたとおりです。事前評価については、目標設定からその他の評価の5項目、中間、事後評価については、目標達成度からその他の評価の5項目に再編整理しました。
 内部研究評価は、各部長、領域長、役員等から成る多面的な評価者が競争的研究資金、受託研究を含め、すべての研究課題を対象に中間・期末の年2回、事前・中間・事後にさらに追跡を加えた各段階での評価を実施する方式に移行して、評価の一層の公平化、適正化、厳格化を図ったところです。
 外部研究評価は、労働安全衛生分野の学識経験者、労使の有識者等の外部評価者がプロジェクト研究、イノベーション25研究の研究課題を対象に年1回、事前・中間・事後・追跡の各段階での評価を厳正に実施しました。平成22年度の外部評価の結果は、棒グラフに示されたとおり、いずれも課題の通常レベルの3.0を上回る評価を受けました。また、外部評価の実施時期を3か月前倒しの12月に改めることにより、評価結果を次年度の研究計画により確実に反映させる措置を講じました。
 なお、中期計画の数値目標が外部評価結果及び研究への反映について、評価結果の受理日から3か月以内に公表を行うとありますが、当研究所は、外部評価の受理日ではなく、実施日の12月14日から3か月以内の3月7日に公表することにより、達成して、その目標を十分上回る成果を出したところです。これらの研究評価の結果、研究課題の採否、あるいは研究計画の見直し、さらには研究予算の増減のみならず、個人業績評価を通じて、昇格、昇任、表彰等に反映させたところです。以上のように評価項目10については、研究評価システムの運用の改善等により、適切な研究評価の実施に積極的に取り組み、中期計画の数値目標を十分上回る結果をあげたことから自己評価をAとしています。
 評価項目11の「国内外の基準制定・改定への科学技術的貢献」については、プレゼンテーション資料の22頁、評価シートの22頁をお開きください。国内外の基準・規格制定・改定への貢献については、平成22年度にISO、IEC、OECD、JISなどの国内外の基準・規格の制定改定のために、70の委員会に21人の役職員が参加し、当研究所の研究成果の提供による規格等への反映、規格制定のための実証実験の当研究所で実施などの貢献を行いました。その具体例はプレゼンテーション資料の22頁の左下に示されています。参加した委員会数は年々増加傾向で、平成22年度は70件の高水準になり、参加役員数も数値目標の20件を上回ったところです。行政からの要請に基づく基準制定への貢献については、同じ頁の右半分にその概要を示した「研削盤等構造規格に関する研究」や、24頁にある「災害調査復命書及び労働者死傷病報告に基づく災害分析調査と労働災害防止対策に関する研究」をはじめ、10課題の行政支援研究を実施して、法令構造規格等の制定・改定のための基礎資料の提供を行いました。プレゼンテーション資料の23頁には、平成21年度と平成22年度に法令・構造通達等に反映された行政支援費、あるいは災害原因調査の具体例が示されています。この表で明らかのように多くの行政施策が当研究所の取りまとめた科学的知見に基づいて実施されています。以上のように評価項目11については、国内外の基準制定・改定への科学技術的貢献に積極的に取り組み、中期計画の数値目標を上回る成果をあげたことから自己評価をAとしています。
 評価項目12の「原著論文、学会発表等の促進」については、プレゼンテーション資料の25頁、評価シートの24頁をお開きください。論文、学会発表等については、各研究員が精力的に取り組んだ結果、平成22年度は講演・口頭発表が345回と単年度の数値目標である340回を上回るとともに、論文発表等が403回と過去4年間一貫して増加し続け、単年度の数値目標である170報の2.3倍に達しました。また、中期目標期間の数値目標である講演・口頭発表等の5年間で1,700回と論文発表等の5年間で850報に対して、それぞれ104%の1,775回、201%の1,705回を達成しました。論文の引用件数については、平成20年が他論文への引用件数が10件以上となる原著論文数が12報となり、単年度の数値目標である10報を上回る成果を達成しました。学会等における受賞については、平成22年度は11件の獲得があり、過去4年平均の4件に比べ、大幅に増加しました。このように評価項目12については、各研究員が原著論文・学会発表等に積極的に取り組み、論文発表等の件数が中期計画期間中の数値目標の2倍以上に達成するなど、中期計画を大幅に上回る成果をあげたことから自己評価をSとしています。
 評価項目13の「インターネット等による研究成果情報の発信」については、プレゼンテーション資料の26頁、評価シートの24頁をお開きください。インターネット等を通じた情報発信については、平成22年度に研究書ホームページの視認性の改善、いわゆる見やすさの改善、コンテンツの充実などの大幅なリニューアルを行った結果、ホームページのアクセス件数が対前年比46%増の448万件に達しました。このうち、研究業績・成果等へのアクセス件数が単年度の数値目標の50万件の約2.3倍に当たる114万件に達しました。また、メールマガジンによる情報提供も役職員のコラム欄を追加するなどの改善に努め、対前年比22%増の783アドレスの利用者に毎月1回研究所の最新情報、トピックスなどを配信しました。
 研究成果の公表については、プロジェクト研究等の終了課題の成果を取りまとめた特別研究報告SRRの40号を発刊したほか、技術ガイドラインとしての安全資料SDを26号から28号までの3刊発行しました。一般誌等への寄稿、取材への協力については、一般誌等への寄稿が過去4年間の年平均件数41件と比べて80%増の74件。新聞、テレビ等の報道機関の取材協力が過去4年間の年平均件数16.5件と比べて45%増の24件に達するなど、国民に対してわかりやすい成果、普及に努めました。以上のように評価項目13については、インターネット等による研究成果情報の発信に積極的に取り組んだ結果、ホームページのアクセス件数が対前年度比46%増、研究業績、成果等へのアクセス件数が単年度の数値目標の約2.3倍に達するなど、中期計画を大幅に上回る成果をあげたことから、自己評価をSとしています。以上をもちまして、グループ2の説明を終了します。

○田村部会長
 ありがとうございました。委員の皆様におかれましては、評価シートへの評定等の記入をお願いいたします。質問等がありましたら適宜お願いいたします。

○田宮委員
 評価項目8番の学際的な研究のところは大変興味深く聞かせていただきました。前から2つの研究所のシナジー効果という点で、この新しいグループに着目して聞かせていただきました。特に、今回は労働災害に基づいた高齢労働者についての身体的な条件、心理的な条件も含めてのリスクということで、非常に貴重な取組みだと思って拝見していました。
 厚労科研費も平成22年で終了しておりますし、プロジェクトで続いている所もありますが、もう少し具体的にどんな成果が出ているか。それから、熱中症など非常にここと関係するお話も先ほど話題に出ました。現場の高齢労働者がこれから増えてくると思われますので、具体的にこの成果を、ガイドラインとか指導に是非還元していただきたいと思っておりますので、その辺のことももう少し詳しく教えていただければと思います。

○労働安全衛生総合研究所研究企画調整部長
 例えば、高齢者では転倒災害、転んでつまずくという災害が、若年者に比べて明らかに多いという結果が出ております。転倒災害に当たって、例えば身体的特性として何がいちばん関連するのかという研究を行いました。閉眼片足立ちという、いわゆるバランス感覚を見る機能がこれにかなり関連性が高いという結果が出ております。そういう研究成果については、もう少しわかりやすいような形で成果を取りまとめ、今後広く社会に対して提供してまいりたいと考えています。

○労働安全衛生総合研究所理事(小川)
 補足させていただきます。当然これから高齢者はどんどん増えてくるわけです。その高齢者の機能もいろいろ幅広くありますので、簡単にこれでこうだと決めるのは、まだいまの段階ではできない状況です。そういう意味では、どちらかというと、もう少し基礎的なデータ、高齢者は転倒が多いとか、機能的にはどういう面が問題かというような基礎的な資料を集めている段階であるということです。実際に行政の法令につながるのはこの次の段階と考えております。

○武見部会長代理
 2つありまして、1つはいまの学際的な研究のところです。実際にその内容は研究成果のことも含めて素晴らしいことは十分理解した上での質問です。2つの研究所が統合されたのが平成18年で、5年目に入ってきている中で、一般的な感覚、特に国民の目で、産業安全と労働衛生の両方をやるのは当たり前なのではないのというような見方。既にその研究所として1つになってきているということであればです。そういう中で、平成22年度の成果自体にどうのこうのということはないのですが、学際的な研究というものの考え方自体が、中期計画では確かにそこをいかに統合していくかということが主になっていますが、今後を考えると、御研究所にとっての学際とは何なのだろうかという辺りのことについて考えていることがあれば聞かせていただきたいということが1つです。
 もう1つは、最後のところのインターネット等による研究成果というところですが、これも前年度に比して非常にたくさんのアクセス数があるということなのですが、その理由としては、ここにある研究業績、成果へのアクセス数が増えたことがいちばんの主要原因でしょうか。研究業績は非常に多くなって素晴らしいということが、たぶんそのアクセスを支えているのだと思いますが、それ以外の工夫もあって、このインターネットへのアクセスが増えているのか、やはり主はこの研究業績の辺りなのか、その辺についてももしあれば教えていただきたいと思います。

○労働安全衛生総合研究所理事長
 学際研究についてですが、私は産業安全研究所の出身で、安全の研究をずっとやっています。そういう研究は、もともと学際性を帯びた研究であると。1つの分野だけ従来学問の分野で追求したのでは事故はなくならないから、学際的なところに目を向けなさいということは先生方からも言われているわけです。それと、この安全と衛生と一緒になったという意味の学際というのは少し性格が違うといいますか、いまになって思えば、両研究所がそれぞれ独立にあって、あまりよく協調できていないのではないかということで、特に学際研究を進めるという意思決定があったと私は考えております。
 そういう意味では、とりあえず境界研究領域という組織的なものとして動かしてはおりますけれども、実際に所内で研究を行う上では、単に組織の枠にとどまらず、もう少し広い分野で安全衛生のメンバーが一緒になって研究を進めているという現状にあります。一般的に安全衛生は、両方の分野を見渡して研究をするのがよいのですが、ただ、すべての研究がそうすべきものでもない訳です。それぞれの分野に特化した研究もあり、バラエティに富んだ、多面的な研究ができるのがよいのではないかと考えております。

○労働安全衛生総合研究所研究企画調整部長
 ホームページについては、従前から研究成果の欄に対するアクセス数は多かったのですが、辿り着くのが面倒な構造になっていたのを、比較的容易に早く辿り着けるようにしたというのが1つの大きな成果かと思っております。平成22年においては、国際的なデータなどについてもアクセス数が多い状況にあります。

○田宮委員
 先ほどの学際研究についてなのですが、武見先生のお話はそのとおり思って伺っていました。もう少し具体的に伺いたいのですが、各プロジェクト研究の中に、元の研究所の両方のメンバーが入っているのはどのぐらいか。あとは、研究成果のオープンな発表会みたいな、この学際チームだけではなく、そういう取組みがどの程度他に具体的にあるのかを教えていただけますか。

○労働安全衛生総合研究所理事長
 個別の資料は準備していないのですが、本日の添付資料9に「特別研究報告」という形で論文集的に書かれています。これは平成22年度の成果ではないのですけれども、ここでそれぞれの課題において、どのような研究者が担当しているかということが出ております。必ずしも環境領域という学際的なものを組織した所でない人たちが一緒に研究をしているというのが、ここの所属をご覧いただければわかるというのが一例かと思います。あまりクローズした所ではなくて、所内でもいろいろな分野から参画して研究を進めていることがおわかりになるかと思います。

○政安委員
 武見委員からもお話が出ていたのですが、ホームページのリニューアルのアクセスが増えたことはよくわかりました。特段なこととして、障害者の音声ガイドを作ったことは画期的だと思うのですが、そういう要望とか、研究所としてどうしてそういうのを考えられたのか、というところのかかわり方についてお伺いします。

○労働安全衛生総合研究所理事長
 視覚障害者がホームページにアクセスできるということは、私としてはそんなに画期的というよりも、これをしていないほうが怒られるレベルのものだろうと思っています。実際にこの研究所のホームページでも、全部が全部対応できていなかったということをきちんと潰して、特に画像ファイルについては見える人はわかるけれども、音声読上げに対応できないというものがないような手当てをしたということです。広い意味では、世間一般の要求水準に合わせたというものかと考えております。

○田村部会長
 ほかによろしければ、次にグループ3にまいります。グループ3は「成果の積極的な普及・活用、労働災害の原因の調査等の実施、国内外の労働安全衛生機関等との協力の推進、公正で的確な業務の運営」に関するもので、評価項目は14から20に該当いたします。これについての評価を行いますが、所要時間は法人からの説明を15分、委員の評定と質疑を15分、計30分ということで進めてまいります。それでは、法人からの説明をお願いいたします。

○労働安全衛生総合研究所研究企画調整部長
 グループ3、評価項目の14から20までの説明に入ります。評価項目14の「講演会等の開催」については、プレゼンテーション資料の27頁です。評価シートも27頁に相当します。安全衛生技術講演会等の開催については、研究成果を広く一般に普及することを目的として、平成22年度は「厳しい経済状況下における労働安全衛生」、副題として「働く人の生命と健康を守る」をテーマとする、安全衛生技術講演会を3回開催するなど、延べ9回の講演会を開催し、単年度の数値目標3回を大きく上回りました。
 9回の講演会のうち、ソウル科学技術大学等の共催による、「北東アジアにおける労働安全衛生研究の最前線」と題する、国際産業安全衛生シンポジウムを東京で開催するなど、国際的な講演会の企画・開催にも取り組みました。延べ参加者数は1,453人に達するとともに、安全衛生技術講演会でのアンケート調査結果で「とても良かった」、あるいは「良かった」とする割合が93%に達し、単年度の数値目標である75%を大きく上回りました。
 「研究所の一般公開等」については、4月に両地区で一般公開を実施し、参加者は前年度比18%増の328人に達しました。このほか国内外の19の機関・団体、企業等からの見学希望に応じ、延べ295人が研究所の施設見学等に訪れました。
 以上のように、評価項目14については、研究成果の一般への普及に積極的に取り組んだ結果、講演会の開催回数が単年度の数値目標の3倍に達するとともに、安全衛生技術講演会で「とても良かった」、あるいは「良かった」とする割合が、単年度の数値目標75%を大きく上回る93%に達するなど、中期計画を大幅に上回る成果を上げたことから、自己評価はSとしております。
 評価項目15の「知的財産の活用促進」については、プレゼンテーション資料の28頁、評価シートの29頁です。特許権の取得促進については、職務発明規程に基づく特許審査会での職務発明の審査手続の整備、研究評価項目への特許等の出願の明記、特許に精通した担当者の配置による相談支援体制の整備などに取り組みました。その結果、特許件数は計7件、うち新規は2件です。登録特許件数は計38件で、うち新規は3件となり、登録特許件数は過去最高となりました。
 新規の登録特許の例としては、下に示したように「ICタグを用いた丸鋸安全システム」などが挙げられます。特許の活用促進については、特許権実施規程・同取扱細則の整備、メーカーとの共同出願の促進、特許流通データベースへの登録、研究所ホームページでの概要の掲載等に取り組みました。
 以上のように、評価項目15については、知的財産の積極的な取得、活用促進に精力的に取り組み、過去最高の登録特許件数になったことと、中期計画を上回る成果を上げたことから自己評価はAとしております。
 評価項目16の「労働災害の原因の調査等の実施」については、プレゼンテーション資料の29頁、評価シートの30頁です。労働災害調査等の実施については、平成22年度に科学的・専門的観点から、災害原因の究明が必要な災害調査が15件、犯罪捜査や刑事裁判に必要な、刑事訴訟法に基づく鑑定等が17件、労災保険給付の判定に必要な鑑別等が12件、計44件を実施いたしました。これらの成果は、依頼元である行政機関や、捜査機関に報告書等として提出され、行政目的、あるいは捜査目的を達成するための必須かつ重要な資料として活用されております。このことは、依頼元である労働基準監督署等に対するアンケート調査結果において、報告書を災害の再発防止の指導や送検・公判維持のための資料として活用した割合が85%に達していることからも明らかです。なお、この割合は単年度の数値目標として用いられ、実績の85%というのは、数値目標の80%を大きく上回っております。
 労働災害の災害調査等の改善に向けた取組みとしては、各研究グループ部長や、労働災害調査分析センターによる進行管理の徹底を図ったほか、災害調査等報告会における発表と討議を通じて、災害調査報告書等の質の改善に努めました。
 以上のように評価項目16については、労働災害原因調査等の適切な実施を積極的に取り組んだ結果、報告書の活用割合が単年度の数値目標の80%を大きく上回る85%に達する等の、中期計画を大幅に上回る成果を上げたことから自己評価はSとしております。
 評価項目17の「労働安全衛生分野の研究の振興」については、プレゼンテーション資料の30頁、評価シートの32頁です。労働安全衛生重点研究推進協議会については、今後概ね10年間に、我が国が推進すべき労働安全衛生分野の研究戦略として、3重点領域と22優先課題を策定し、平成22年10月に報告書を取りまとめるとともに、研究所のホームページに掲載し、その普及に努めました。また研究戦略の普及を目的として、平成23年1月に労働安全衛生重点研究推進協議会シンポジウムを開催し、労働安全衛生分野の専門家、労使関係者等の参加者が、過去最高となる247人に上りました。右下の写真は、盛況であった当時のシンポジウムの状況です。
 学術誌等の発行については、国際学術誌『Industrial Health』は、中期計画の数値目標である、年4回を上回る年6回の発行を実現するとともに、インパクトファクターについて、単年度の数値目標である0.8を上回る0.95を実現しました。また和文学術誌『労働安全衛生研究』は、単年度の数値目標である年2回の発行と同じ回数の発行を実現しました。『Industrial Health』と『労働安全衛生研究』の両学術誌は、いずれもJ-Stageに、全掲載論文が閲覧可能となっており、特に『Industrial Health』については、世界各国から前年度の2倍に当たる20万件を超えるアクセスと、7万件のダウンロードがあり、広く活用されているところであります。
 以上のように、評価項目17については、労働安全衛生分野の研究の振興に積極的に取り組み、『Industrial Health』が中期計画の数値目標を上回ったこと、インパクトファクターが、単年度の数値目標を上回ったこと、J-Stageのアクセス、ダウンロード件数が大幅に増加したことと、中期計画を上回る成果を上げたことから自己評価はAとしております。
 評価項目18の「労働安全衛生分野における国内外の若手研究者等の育成への貢献」については、プレゼンテーション資料の31頁、評価シートの35頁です。大学等との連携の推進については、連携大学院協定を締結している5大学において、13人の研究員が客員教授等として、研究・教育指導を行うとともに、同協定に基づき、7人の大学院生等を当研究所に受け入れ、研究指導を行いました。また、連携大学院協定を締結していない23の大学等に対しても、31人の研究員が客員教授等として研究・教育指導を行いました。若手研究者の受入れについては、右下の棒グラフにあるように、内外の大学研究機関から、単年度の数値目標44人を70%上回る、過去最高の75人の若手研究者等を受入れ、研究指導を行いました。
 労働安全衛生機関の支援については、労働政策研究・研修機構労働大学校の産業安全専門官研修、JICAのマレーシア労働安全衛生行政プロジェクトのカウンターパート研修等の、外部機関が主催する研修の研修生を受け入れ、講義等を行ったほか、都道府県労働局の技術研修等に講師を派遣しました。
 以上のように、評価項目18については、労働安全衛生分野における国内外の若手研究者等の育成への貢献に積極的に取り組んだ結果、若手研究者等の受入れが、単年度の数値目標の44人を大きく上回る、過去最高の75人に達するなど、中期計画を大幅に上回る成果を上げたことから自己評価はSとしております。
 評価項目19の「研究協力の推進」については、プレゼンテーション資料の32頁、評価シートの36頁です。研究協力協定の締結、国際的な研究協力の推進については、右下の表に記載されている6カ国、12機関と研究協力協定を締結し、共同研究を進めるとともに、イギリスのラフボロー大学と、ソウル科学技術大学から大学院生を受入れ、研究指導を行いました。研究交流会については、フェロー研究員39人、客員研究員16人、計55人を委嘱し、客員研究員・フェロー研究員交流会の開催等を通じて、研究情報の交換を行いました。
 共同研究、研究員の相互派遣については、国内外の大学、企業等との共同研究を積極的に推進した結果、当研究所の研究員が研究代表者であるプロジェクト研究、科研費研究等全体に占める共同研究の割合は、中期計画の数値目標である15%を大幅に上回る43%に達するとともに、若手研究員の派遣・受入数は単年度の数値目標である20人を大幅に上回る90人の実績を上げました。
 以上のように、評価項目19については、国内外の研究協力の推進に積極的に取り組んだ結果、共同研究の割合が中期計画の数値目標15%を大幅に上回る43%を達成するとともに、若手研究員の派遣・受入数が単年度の数値目標20人を大幅に上回る90人に達する等、中期計画を大幅に上回る成果を上げたことから自己評価はSとしております。
 評価項目20の「公正で的確な業務の運営」については、プレゼンテーション資料の33頁、評価シートの38頁です。情報の管理については、情報セキュリティポリシー及び情報セキュリティ管理規程に基づき、管理責任者、業務担当者等を選任し、情報セキュリティ対策推進体制を整備するとともに、情報の格付けに応じた対策や情報セキュリティ要件の明確化に基づく対策を推進しました。また個人情報保護管理規程に基づき、管理者を選任するとともに、保有個人情報の適切な利用と保護を推進しました。
 情報公開については、独立行政法人通則法で公表が義務づけられている資料以外に、調達関係資料、特許情報、施設・設備利用情報等について、ホームページ上で積極的に公表しました。
 研究倫理等については、人、ヒト由来の材料を対象とした研究については、外部有識者を含む研究倫理審査会において、厳正な審査を行い、42件中不承認又は変更勧告となった9件は、研究計画の修正、書類の再提出などを行わせました。過去5年間の審査結果が左下の表に記載されております。また利益相反や動物実験についても、内部規程に基づき必要な審査を行いました。
 遵守状況の把握については、業務責任者を選任し、法令の遵守状況の把握に努めるとともに、ホームページ上の「国民の皆様の声募集」に寄せられた意見等の活用も図りました。また、管理職を対象とした、セクシュアルハラスメント防止に関する研修を実施し、コンプライアンス意識の向上の一助といたしました。
 以上のように、評価項目20については、公正で的確な業務の運営に積極的に取り組み、研究倫理審査会における厳正な審査と、中期計画を上回る成果を上げたことから自己評価はAとしております。
 以上をもちましてグループ3の説明は終了いたします。

○田村部会長
 ありがとうございました。委員の皆様におかれましては、評価シートへの評定等の記入をお願いいたします。併せて質問等がありましたらご発言ください。

○岩淵委員
 特許で、車椅子のバッファーはどのようなものなのか、現場で活用できやすいものなのかどうかを説明してください。それから国際協力の中で、言葉の壁とよく言われるのですが、そういうものは全くないのかどうか。個人によって全然違うでしょうけれども、例えば幹部の方たちもいらっしゃるのでしょうけれども、英語をベースにして研究をやられるのでしょうか。共同研究のプラスと、もしかしたらマイナスもあるのではないかという懸念をしているところなのですが、その辺りはどうですか。

○労働安全衛生総合研究所研究企画調整部長
 車椅子の安全装置については、車椅子の転倒防止を目的として、車椅子の傾きの角度が一定以上になるかどうかをセンサーで計測をして、一定以上になるとエアーバッグが開くことにより、仮に転倒したとしても安全性が確保されるような機構を特許として登録を受けたものです。

○岩淵委員
 それの実用化の見通しはどうなのですか。

○労働安全衛生総合研究所研究企画調整部長
 現在、メーカーにおいて実用化に向けた検討を行っており、商品化される見込みであると聞いております。

○労働安全衛生総合研究所理事長
 国際化については、英語圏の所と、韓国、中国があります。ヨーロッパは英語圏でなくてもみんな英語でいきます。英語に関しては堪能な人が増えてきていますので、大体英語ですべて話が終わっている状況にあります。韓国、中国については、研究所内に韓国人、中国人の研究者もおりますので、そういう人が自分自身の研究の範囲を超えても、意思疎通の手助けをすることにより、仮に相手が英語があまり上手ではないケースでも韓国語、中国語を使って意思疎通は十分に行えていると考えております。
○馬場委員
 説明資料の評価項目18とか、評価項目19で細かい話なのですが、いくつかの年度計画で、例えばここで若手研究者の受入れが当初の年度計画の数値目標が44人、実際は75人のアウトカムがあった。それから下のほうの共同研究にしても、20人以上が90人、それからどこかの講演会も3回を予定していたのが9回という形で非常に素晴らしいことだと思うのですけれども、言い換えると年度計画の数値目標の設定のところは、例えば若手研究者を受け入れる場合、当然研究所のキャパシティの問題で、妥当な数値が挙げられていると思うのですが、その辺はいかがなのでしょうか。こういうときに、その評価を数値でやること自身非常に問題があるかと思うのですが、一応そういう方向になっていますので、それについてはどうなのでしょうか。

○労働安全衛生総合研究所理事長
 研究生の受入れなどについては、この線が妥当であるというのとは微妙に異なる目標の設定であると思っております。この線であれば、研究交流が十分にできていると。かつ、そのためにほかの業務に支障があるというのもまずいので、支障を来さない、最大の効果があるといえばそうなのですけれども、そういう意味で実際にできる数よりは、目標は少し低い数値です。これは相手があるものですから、お金を出して雇ってくるとかそういうのであれば、こちらの努力にもそのままストレートに反映しますが、そういう理由で目標が決まっていると考えております。

○労働安全衛生総合研究所研究企画調整部長
 若干補足させていただきます。私ども独立行政法人の場合は、先ほど申し上げましたように予算自身も毎年削減されて、かつ定員も削減されるような状況にあります。一方、数値目標だけはともすれば上がりがちだという大変厳しい状況にあります。例えば講演会の開催回数とか、研究員の受入れについても、私どもに研究資源が無尽蔵にあれば、いくらでも高い目標を設定していただいても結構なのですが、自ずと限度があると思いますので、今後数値目標をご検討いただく際には、制約要因についても考慮に入れていただければ大変ありがたいと思っております。

○田村部会長
 それに関連してですが、数値目標を大きく上回ったということは素晴らしい成果だと思うのです。しかし、それに伴っていろいろな負担がかなり大きくなってきているのではないかと思うのですが、その辺りはどうなのですか、あまり問題なく対応できたのでしょうか。

○労働安全衛生総合研究所研究企画調整部長
 実際問題として、数値目標を示されますと、どうしてもその数値目標は是が非でもクリアしなければならないというインセンティブが働きますので、そういう意味では研究員も含めて、従前に比べるとかなり高密度な作業を強いられているというのが現状ではあります。
 もう1つは平成22年度ではなくて、平成23年度ですが、国から強く節電を求められたことから、一般の15%を大幅に上回る、清瀬地区30%、登戸地区25%という目標を立ててやっております。そういう意味でもご配慮いただければ幸いです。

○中村委員
 すべて数値が高くなったことは評価できると思うのですけれども、39頁に研究倫理審査委員会のデータがあります。これが平成21年、平成22年と増えています。この増えているというのはどのように評価したらいいのか教えていただけますか。

○労働安全衛生総合研究所理事(小川)
 特に、我々のような行政ミッション型独立行政法人は、行政に十分貢献しないといけないということが強く求められています。基礎的な研究はもちろん必要な部分は必要ですけれども、現場で本当に役に立つ研究をということが強く期待されるようになりました。そうすると、必然的に研究の内容も、現場を中心とした研究、もしくは人を中心とした研究が増えざるを得ない。そういう中で審査件数が増えてきているということです。

○中村委員
 研究倫理指針等に則ってというところはどういう狙いなのかという質問なのです。増えているというのは、要するに研究者の意識が醸成されてきたということなのでしょうか。

○労働安全衛生総合研究所理事(小川)
 ガイドラインそのものがどんどん短いスパンで変更されています。この変更に伴い、ガイドラインの内容が厳しくなってきている実情にあります。そういう視点も、審査件数が増えてきているという理由の一つと考えられます。
 質問にはなかったのですが、不承認の数が増えているではないかということについては、ガイドラインの厳格化に研究員一人ひとりがなかなかそこまで付いていけない場合もあるので、研究倫理審査会において厳しく指導し、社会全体の要求に応えるように見直してきていると理解していただければありがたいと思います。

○中村委員
 その審査委員会が、実効を上げつつあると考えてよろしいですね。

○労働安全衛生総合研究所研究企画調整部長
 若干補足いたしますと、研究倫理審査の対象となる研究は、人を対象とした研究、あるいはヒト由来の材料、例えば血液等を対象とした研究のすべてとなります。先ほど申し上げましたように、できるだけ労働現場に役立つ研究、私どもの場合は人の健康影響に関連する研究が重要視されてきましたので、研究倫理審査の対象となる研究課題が増えてきたということです。

○武見部会長代理
 同じ頁の遵守状況の把握という中で、ホームページ上に「国民の皆様の声募集」というバナーを作ったというのはすごく素晴らしいと思うのです。具体的にはどういう形のものが来ているのかを教えていただけますか。もう1つは講演会のところで、これもたくさんの努力をしてこの実績を出されていると思うのですが、参加者の評価に関していうと、安全衛生技術講演会の評価が今回は非常に高かったということで、例えば一般公開みたいな、広く国民の評価がわかれば教えていただけますか。

○労働安全衛生総合研究所研究企画調整部長
 最初のご質問ですが、「国民の皆様の声募集」については、平成22年度はゼロ件でした。それ以外に「お問い合わせ」という別のコーナーがあり、そこでは個別の企業等から、現場での具体的な安全対策がわからないのだけれども、どうすればいいのでしょうかというような、さまざまなお問い合わせをいただいております。それに対しては、専門分野の研究員に回答を作らせて、的確にフィードバックするようにいたしております。

○労働安全衛生総合研究所理事(高橋)
 一般公開については手元に資料はありませんが、これほど高くはなくて、6割とか7割程度です。

○武見部会長代理
 すべてについてそういう評価をなさっているわけですね。

○労働安全衛生総合研究所理事(高橋)
 そういうことです。

○田宮委員
 若手研究者の受入れのところで、75名と非常にたくさんの方を受け入れてアクティブにやられているのは素晴らしいと思います。先ほどの数値ということと関連して、その中身でちょっと気になったので確認させていただきます。評価シートの3頁、本日の最初のほうに議論した件で、研究者人材データベースへの登録というところは、ちょっと今年の数字が減っているのが気になっていました。こういうものと、今回のこの項目との関係というのが、75名の若手研究者とありますが、公募でやっている分が減っているのかとか。平成21年が58と非常に多かったこともあって、今年は17と減りが目立ったので、その辺の構造は数値の中身にも関係すると思うので教えてください。

○労働安全衛生総合研究所研究企画調整部長
 若手研究者の受入れというのは、連携大学院協定を結んでいる大学、その他日ごろから共同研究等を通じて、関係のある大学・研究機関等から若手研究者、あるいは大学院生などを受け入れるものです。したがって、一般に公募して受け入れているものではありません。一方、研究者人材データベースJREC-INというのは、私どもの任期付研究員を公募するときに、このような業務内容で、このような資格を持った方を募集しますというデータを公表するものです。したがって、両者はリンクしておりません。

○田宮委員
 これは職員ということで、この若手研究者というのは職員ではなくて、給与は発生しない外部のということですか。

○労働安全衛生総合研究所研究企画調整部長
 ご指摘のとおりです。

○酒井委員
 プレゼンテーション資料の29頁の労働災害の調査について、これは毎回毎回お聞きしていて、大変素晴らしい成果が上がっていることは十分承知しております。フローチャートがあって、このフローチャートの中に「厚生労働省の要請を受け研究員を派遣」と書いてあります。このことと、最初のブロックの組織図の中の労働災害調査分析センターとの関連です。最初に重大な労働災害が発生して、厚生労働省のほうからこういう調査をといったときの調整の仕方というのは、誰がそこを担当するのかという一般的なルールを説明していただきたいというのが1点です。
 フローチャートの最後に、「法改正等の再発防止策として反映」と書いてあります。これも毎年20件前後行われているわけですが、どの程度再発防止策としてまで行っているのかを説明していただけますか。

○労働安全衛生総合研究所研究企画調整部長
 1点目ですが、私どもの研究所の組織の中に、労働災害調査分析センターという部門を設置しております。そこが労働災害の外部からの依頼・要請を受けたときの窓口になります。

○酒井委員
 何名の方が配置されているのですか。

○労働安全衛生総合研究所研究企画調整部長
 約3名です。そこで災害の内容を詳しく見て、災害の原因究明にはどの専門分野の研究員が必要であるかということを把握して、該当する研究グループの部長を通じて研究員を中心とした、災害調査メンバーを編成いたします。そのメンバーが現地に急行する仕組みです。
 最後の行政施策への反映ですが、例えばプレゼンテーション資料の23頁に「研究成果の法令・通達等への反映状況」とあります。平成21年度の上から3つ目の項目に、千代田区内のマンション建設工事で発生したアース・ドリルの転倒災害、これはマスコミでも大きく報道されたものですが、それの原因調査を行い、解明した結果を行政に報告したところです。その報告は、同種工事における災害防止対策の徹底という表題の行政通達に反映されています。
 その次の項目の、石川県金沢市内の建設現場における足場倒壊災害調査についても、手すり先行工法に関するガイドライン等に活用されています。

○労働安全衛生総合研究所理事長
 先ほど、労働災害調査分析センターの人数について3人とお答えしましたが、併任を含めて5名体制をとっております。

○酒井委員
 全部研究員ですか。

○労働安全衛生総合研究所理事長
 研究員とセンター長です。

○労働安全衛生総合研究所理事(小川)
 非研究員であるセンター長が1人で、残りはすべて研究員です。

○田村部会長
 次にグループ4の「財務内容の改善に関する事項」に移ります。これは評価項目の21から24に該当いたします。これについての評価を行わせていただきますが、所要時間は、法人からの説明が10分、委員の評定と質疑15分の、合計25分ということで進めさせていただきます。まず法人のほうからの説明をお願いいたします。

○労働安全衛生総合研究所総務部長
 「財務内容の改善に関する事項」についてご説明いたします。説明資料の34頁、評価シートの40頁です。評価項目21「運営交付金以外の収入の確保」についてということで1つ目の○です。競争的研究資金、受託研究の獲得については、私ども研究所一体となって取り組んでいるところです。右の表を見ますと、平成22年度の結果として、競争的研究資金については23件、4,347万円の獲得額でした。内訳としては、左のほうに挙げておりますが、文科省及び学振科研費補助金が14件、厚労科研費補助が9件です。
 受託研究等の全体については14件で、2億6,965万円の獲得額でした。そのうち民間からの受託研究は12件あります。大型の受託研究として、前にも説明しておりますが1件NEDOから、生活支援ロボットの安全性検証手法の研究開発というのが2億4,880万円あります。全体の合計として37件、約3億1,300万円の収入の確保という結果になっております。
 競争的研究資金、それから受託研究等の数値目標です。年間30件以上獲得という目標設定でした。実績は37件で達成しております。獲得した合計金額も、対前年比53.5%増の3億1,300万円余と、過去最高額を更新しております。その結果、自己評定はSとさせていただいております。
 なお、左の下に科研費による研究の例、民間企業の受託研究の例を挙げております。
 右の○ですが、自己収入の確保についてです。下の表を見ますと、先ほど研究企画調整部長が説明しておりますので、合計額だけお知らせいたしますと年間84万円となっております。
 説明資料の35頁、評価シートの42頁です。評価項目22の「予算、収支計画及び資金計画」について説明いたします。私どもが財務内容の改善において最大の課題として取り組んでいるのが、この経費の節減です。経費の節減については、まず一般競争入札を徹底すること。電気料についても、一般競争入札による調達を実施するとともに、平成22年度においても省エネ機器の導入を進めるなどして、光熱水料の節減を積極的に進めております。
 また研究設備、機器の購入に当たり、非常に特殊な物が多いのですけれども、できるだけ汎用品を使用するような仕様変更、保守管理・メンテナンス等についても仕様書を見直すことにより1者応札が少なくなるように取り組んでまいりました。入札の公告についても、当研究所のホームページに掲載して広く周知に努めて、入札への参加を促したところです。厚生労働省の掲示板にも、私どもの入札公告を掲載していただいて、多くの業者が入札に参加していただけるよう呼びかけを行ったところです。その甲斐があって、大幅な経費の節減を進めることができたのではないかと考えております。1者応札については、対20年度比でマイナス17.6%下げております。
 全体予算・決算の状況について、資料1-4にある財務諸表、決算報告書のとおりです。予算の執行については、年度途中で予算の執行状況、業務の進行状況を見ながら、適宜見直しを進めつつ節減にも努めたところです。経費削減の達成度については下の表にありますが、平成22年度の運営費交付金を充当して行う事業について、退職金手当を除く人件費は、予算額に対して95.3%、一般管理費は70.9%、業務経費は93.7%の執行率となっております。研究所ですので、当然研究成果を上げるのがいちばん大きな目的ですけれども、効率的な予算執行により、少しでも経費を少なくする努力を行いつつ、一定以上のパフォーマンスを上げることができたのではないかと考えております。
 数値目標の達成状況については、中期計画の中で人件費は5年間で5%以上の削減、一般管理費は15%削減、事業費は5%削減という数値目標を設定しています。平成22年度の決算数値で申しますと、退職手当を除く人件費については、平成17年度比17.4%減、前年度は8.2%減でした。一般管理費、これも人件費を除くものですが39.8%減、前年度は37.7%減でした。業務経費については30.1%減、前年度は18.2%減でした。いずれも前年度を上回る結果を出しております。それと、中期計画の数値目標を大きく上回る削減率を達成したということで自己評定はAとしております。
 36頁で、評価項目23「人事に関する計画」です。これも、先ほど研究企画調整部長からも少しお話を申し上げておりますが、新規研究員の採用については、当研究所のホームページへ掲載するのはもとよりですが、研究者人材データベースのJREC-IN及び学会誌への公募掲載をお願いしております。任期付き研究員の採用活動を行ったところです。その結果、前年度に採用内定した7名を、平成22年4月1日付で採用するとともに、平成22年度は17名の応募がありましたが、その中から平成22年度中に1名を任期付き研究員として採用いたしました。また、他の1名を平成23年4月1日付採用内定者として内定したところです。
 研究員の昇任、昇格、昇給についても、清瀬地区と登戸地区の共通の業績評価基準に基づき、研究業績、対外貢献、所内貢献の3つの観点から研究員の評価を行い、その結果を昇任、昇格等の人事、さらには優秀研究者表彰、若手研究者表彰に反映させております。優秀研究者表彰は2名、若手研究者表彰は2名ありました。評価結果については、公平かつ適正に行うため、研究員の所属部長、領域長、役員等が多面的に評価を行うシステムとしております。
 右の人員の指標で、平成22年度末の常勤職員数は103人です。数値目標である当年度末の常勤職員数見込みの115人を12人下回る結果でした。人件費総額の見込みについては、平成22年度における人件費の総額は9億1,000万円、平成22年度計画の9億7,400万円と比べて6,400万円節減いたしました。
 国家公務員及び他の法人との給与水準の比較についてですが、対国家公務員で見ますと、研究職は92.6%、事務・技術職は107.5%でした。結果的には、事務・技術職が100%を上回っておりますが、私どもは元は国研です。国家公務員の給与と全く同じ給与規定で運営しております。それに基づく任用についても同様です。事務・技術職については、全員が厚生労働省からの出向者だということで、これについても同様の形で対応していると言っていいと思います。
 37頁の評価項目24は「施設整備に関する計画」です。評価シートは46頁です。施設整備に関する計画については、中期計画及び年度計画に沿い、施行シミュレーション施設の改修工事、真ん中辺りの右の表の赤い字で記しておりますけれども、改修工事です。登戸地区の、研究本館の耐震改修工事を実施したものです。耐震改修工事はいちばん下です。先ほど、3月11日に発生した東日本大震災の話がありましたが、登戸地区でも大変大きく揺れております。ただ、耐震改修工事については前年10月に終わっていて、被害等は特になかった状況です。生物棟の空調設備改修工事については、平成22年度に行う予定ですけれども、経費節減の観点から、中期計画期間中には実施しないことを決定したところです。
 ポイントのみを説明させていただきましたが、以上です。

○田村部会長
 ありがとうございました。委員の皆様におかれましては評価シートへの評定等の記入をお願いいたします。また質問等がありましたら適宜ご発言ください。

○田宮委員
 先ほどもご説明いただいた、新規研究員のところで1つ伺います。2点あるのですが、1点目は人事に関する計画のところです。パワーポイントの36頁ですが、先ほども応募者数だけが書いてあるのは気になっていて、ポストがどのぐらいに対して応募が来たのかがわからないと、どのぐらい幅広く人材が集まったのかがわからないと思っていました。いま伺いますと、平成21年に58人いらしたときに、ポストは7あったわけです。平成22年は17人で、17人から1人のポストということで、1つはこういう資料は両方合わせて出していただきたいというのが1点です。
 それから、このような新規研究員のポストと人数がすごく変わるというのはどういう理由か。この人たちの後ろの経済的な位置づけ、たぶん研究費からとかいろいろあるのだろうと思うのです。人事に関する計画となるとある程度一定に、すごく幅があるようだと大変ではないかと思うので、この辺の幅が出てきている理由を伺います。
 もう1点は研究費の件です。NEDOから大量にいただいているというのは評価できると先ほどから出ているのですけれども、科研費が下回っているのがちょっと気になっています。パワーポイントの34頁で、おそらくこの上のほうの資金が減って、下は本当に素晴らしいNEDOのロボットのことで上がっています。科研費が減っているのは、何か理由があれば教えていただきたいです。もし、特に理由なく変動の範囲であれば、もう少し科研費の獲得努力が必要かと思います。その2点をお願いいたします。

○労働安全衛生総合研究所理事(高橋)
 最初の質問であります応募者数の表ですが、次年度以降ご指摘の点を踏まえて回答させていただきます。人数が変動するのは、退職者の補充という意味で、退職した研究員が持っていた研究分野を、その研究員の後任といいますか、後を継ぐ方を選ばなければいけない。途中で大学へ転出する方もいますので、そういう方が年度によってかなり変動があります。退職される方は定年退職の方、中途退職の方がいますので、そういう方の変動に応じた補充が、やはり年度によってばらつくということです。

○田宮委員
 新規に獲得された研究費による人員も入っているのですか。例えば科研費を取った場合には人員確保ができますが、そういうのはこの人数に入っていないのですか。

○労働安全衛生総合研究所理事(高橋)
 これには入っておりません。人件費付研究費の人数は、ここにはカウントしておりません。あくまでも運営費交付金に基づく人件費で賄っています。

○田宮委員
 そうすると、退職者によって変動するということですね。

○労働安全衛生総合研究所理事(高橋)
 はい。

○労働安全衛生総合研究所研究企画調整部長
 競争的資金の導入に関するご質問ですが、科研費は大きく分けて文部科学省と学振の科研費と、厚生労働省の科研費があります。厚生労働省の科研費のテーマが変わり、私どもの研究所としてはなかなか応募しにくいテーマになってしまった、というのが減った主な理由です。
 平成22年度はこういう結果になりましたので、平成23年度の獲得額を増やすべく、平成23年度の採択課題は平成22年度中に応募があることから、平成22年度の応募件数は相当増やす対応をとりました。

○馬場委員
 人事制度の任期付き研究員のことで確認させていただきます。これは、シニアのポストに対しても適用するのか、若手だけの新規応募と分けられているのかどうかが1点です。それからどこかの資料にあったと思うのですが、若手の任期付きで採用された方が、その期間中プロモーションでテニアになるという実績があったように見たのですけれどもそこはいかがなのでしょうか。
 1点目は、すべてのポストを新たに、例えばシニアの方が辞めた後、そのポストを仮に募集する場合に、すべてのポストが任期付きという制度を導入しているかどうかについてはいかがですか。

○労働安全衛生総合研究所理事長
 制度としては、若手任期付きと、招聘型というシニアの任期付きと2通り用意しております。現在のところ、すべて若手の任期付きという形で運用しております。採用に当たっては、原則任期付きという形をとっておりますが、ここ5、6年はすべて原則どおり若手任期付きの研究員として採用しております。
 もう1点、若手任期付き研究員が、任期終了後に任期を付さない、パーマネントの研究員として採用し直すかどうかこの審査をすることになっております。現時点でパーマネントになることが決まった者もおります。このような状況です。

○馬場委員
 任期終了後にやられているのですか。

○労働安全衛生総合研究所理事長
 任期終了前です。終了した瞬間に失職してしまって、それから職を探すわけにはいかないということなので、その期間は余裕を持って行っている状況です。

○労働安全衛生総合研究所理事(高橋)
 補足させていただきますと、厳密に言うと任期が満了する10カ月前に審査をいたします。審査に落ちた場合には、次の職を探すケースが出てしまいます。研究期間としてはちょっと短かくなるのですが、そこの調和点がそのぐらいかということで運用しております。

○中村委員
 41頁で、当期総利益が7億9,591万円と非常に高いものを国庫に納付したというのは素晴らしいと思っています。また、一方で1億円以上の当期総利益がある場合においては、目的積立金を申請できるとありますが、しなかった理由は何かあるのでしょうか。この点についてはどのようにお考えなのか聞かせてください。

○労働安全衛生総合研究所総務部長
 平成15年度にこの申請を行ったのですが、非常にハードルが高かったのです。5年の中期計画を終わらせて、今年度が最終ですので集約化を図ったわけですが、全部国庫へ返すのです。したがって、その目的で積立てをやる場合に、その目的というのがものすごく狭く、なかなか認めてくれない事情があって、平成15年のときにそれを超える理由が、この2期の期間中も成り立たなかったということで、毎年度少しずつ累積があったのですが、承認が下りないだろうということで全額返す形になっています。

○酒井委員
 関連したことですが、先ほどの説明の中で、節電の話が出て、かなり大きな数字を言われました。このことは、財務との関連でいくと、来年度はどのようになるのかということ。それからいちばん気になるのは、そのことによる研究の進捗・計画との関連がどのようになることを見込まれているかということ。研究者たちの研究条件との関連を、いまはどのようにされようとして進んでいるのでしょうか。

○労働安全衛生総合研究所理事(高橋)
 財務との関係で言うと、後で説明があると思いますけれども、ピーク時間帯の制限ですので、研究はなるべくピーク時間帯を避けてやるようにということです。いわゆる料金に反映する総電力量への影響は少ないのではないか。研究については、極力研究員の立場から計画どおりやっていただくように、土・日とか夜間・早朝という運用をしています。

○労働安全衛生総合研究所研究企画調整部長
 若干補足しますと、平日の9時から20時までのピーク時間帯における電力を、大幅に節電することを目標として掲げております。土・日は対象外です。したがって、振替え休日を取り、土・日に研究を実施するということにより、現時点では研究の実施に大きな影響は出ていないということです。

○田村部会長
 皆さん、評定の記入は終わりましたでしょうか。まだ終わっていない方もいると思いますが、その点について事務局から説明をお願いいたします。

○政策評価官室長補佐
 評定の記入が終わっていない委員の方がいらっしゃいましたら、評定記入用紙をお持ち帰りになって記入していただくことも可能です。また、評定記入用紙については、先に電子媒体で様式をお送りさせていただいていると思いますが、そちらを利用していただくことも可能です。お持ち帰りになって記入していただく場合には、28日(木)までに事務局宛、メールもしくはファクスなどでお送りいただきますようお願いいたします。

○田村部会長
 それでは、労働安全衛生総合研究所の平成22年度の個別評価に関する審議は以上とさせていただきます。法人・所管課の方はご退室をお願いいたします。

(法人・所管課退室)

○田村部会長
 2つ目の議事の「その他」について事務局から説明をお願いいたします。

○政策評価官室長補佐
 議事次第(2)「その他」については、内部統制についての職員アンケートの件です。いま、委員の方々のお手元にお配りしておりますものが、内部統制に関するアンケートの事務局案です。これは、既にメールでお示しさせていただいたものですが、それについて各委員からご意見等を頂戴いたしましたので、それを踏まえた現時点での案となっております。今回これを見ていただきまして、部会として了承していただけましたら今日明日中に、所管課を通じて各法人のほうへ至急アンケートをお送りし、アンケートに記入していただいて集計します。できましたら、12日の総合評価の部会の1週間ほど前には、集計したものを各委員にメール等でお示しし、評価の参考にしていただければと考えております。

○田村部会長
 これから、事務局案を説明していただけるのですか。

○政策評価官室長補佐
 中身については、個人がわからないようにという点と、できるだけそれぞれ委員の方からいただいたご指摘等を反映させるような形で質問は作っております。この調査の方法は、研究員全員にアンケートをしてもらおうと。何割ということになると、回収率を考えると極端に低くなる可能性もありますので、研究職の皆様全員ということで考えております。それであったら、なかなか本人も特定できないだろうということで、アンケートの発送については、所管課を経由して各法人宛にメールでお送りして、回収は法人を噛まさず、直接事務局のほうに回答していただこうと考えております。

○田村部会長
 これまでにいただいたご意見等は、大体この中にうまく反映して作っていただいたということかと思います。この内容については、あらかじめ各委員には配布して見ていただいているということですので、特段問題がなければ、時間的なこともありますのでご了承いただければ、これで進めさせていただきたいと思うのですが、よろしいでしょうか。
(了承)

○田村部会長
 それでは、部会としてはこれで進めていただくということで了承いたしましたので、時間的にはかなり短い期間ではありますけれども、よろしくお願いいたします。

○政策評価官室長補佐
 新たな試みで、こちらとしても不手際があるかと思いますが、集計については至急やるようにいたしますので、よろしくお願いいたします。

○田村部会長
 よろしくお願いいたします。本日の議事は以上となります。事務局から連絡事項等がありましたらお願いいたします。

○政策評価官室長補佐
 次回の開催は、8月1日(月)の15時からを予定しております。場所は、省内の専用第14会議室です。議題は、医薬基盤研究所の個別評価とその他の予定です。事務局からは以上です。

○田村部会長
 本日は以上とさせていただきます。長時間にわたって熱心なご審議をいただきまして誠にありがとうございました。


(了)
<照会先>

政策統括官付政策評価官室

独立行政法人評価係: 03-5253-1111(内線7790)

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