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2011年10月19日 第8回石綿による疾病の認定基準に関する検討会 議事録

労働基準局労災補償部補償課職業病認定対策室

○日時

平成23年10月19日(水)18:00~


○場所

中央合同庁舎5号館 専用第14会議室(12階)
(千代田区霞が関1-2-2)


○出席者

参集者:五十音順、敬称略

神山宣彦、篠原也寸志、廣島健三、三浦溥太郎
宮本顕二、森永謙二、由佐俊和

厚生労働省:事務局

鈴木幸雄、河合智則、神保裕臣、児屋野文男、渡辺輝生、倉持清子、大根秀明、斎藤将

○議事

○大根中央職業病認定調査官 検討会の開催に先立ちまして、傍聴される方にお願いがございます。本検討会は原則公開としておりますが、傍聴される方におかれましては、別途配付しております留意事項をよくお読みいただき、静粛に傍聴いただきますとともに、参集者の自由な意見の交換を旨とする検討会の趣旨を損なうことのないよう、会議の開始前後を問わず、ご留意をお願いいたします。
 これより「第8回石綿による疾病の認定基準に関する検討会」を開催いたします。本日は大変お忙しい中をお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。なお、審良委員、岸本委員からはご欠席との連絡をいただいております。本日の検討会には、オブザーバーとして環境省環境保健部石綿健康被害対策室の桑島室長にご出席いただいております。また、厚生労働省安全衛生部労働衛生課の田原中央じん肺診査医にも同席していただいております。よろしくお願いいたします。前回の検討会以降、事務局に人事異動がありましたので、紹介させていただきます。7月29日付で鈴木労災補償部長が着任しております。部長より一言ご挨拶申し上げます。
○鈴木労災補償部長 7月29日付で労災補償部長を拝命いたしました、鈴木でございます。ご参集の皆様方におかれましては、労災補償行政に対しまして、日ごろより多大なるご理解とご協力を賜っておりますこと、厚く御礼申し上げます。また、本日は遅い時間帯ではございますが、ご参集いただきまして、重ねて御礼申し上げます。私はこちらに来る前3年ほど労働衛生課長をしておりましたので、各種の委員として直接的にお世話になった先生方もいらっしゃいますし、当時、環境省における石綿救済の検討の中ではじん肺の診断基準の見直しも行いまして、その際に先生方のいろいろな知見について参考にさせていただき、間接的にも非常にお世話になったという経緯がございます。今後は労災補償という新しい立場で石綿被害者の補償に取り組むことになりましたので、また委員の皆様方のご支援をいただきながら、的確に対応していきたいと考えているところでございます。
 石綿による疾病の認定基準に関する検討会も既に回を重ねまして、本日はびまん性胸膜肥厚に関する報告書の取りまとめに引き続き、石綿による肺がんの関係の検討もお願いすることとしております。この認定要件につきましては、石綿関連疾患の中でも最も議論を要する部分ではないかと考えておりますし、また社会的な関心も高い課題でございます。本検討会における先生方のご忌憚のないご審議を通じまして、現在の医学的知見に照らし、より良い認定基準にしていきたいと考えております。改めて先生方のご支援をお願い申し上げまして、簡単ではございますがご挨拶とさせていただきます。よろしくお願いいたします。
○大根中央職業病認定調査官 これ以降の写真撮影はご遠慮いただきますようお願いいたします。それでは、座長であります森永先生に議事の進行をお願いいたします。
○森永座長 前の会議が遅れまして、こちらに出席するのが少し遅れましたことをお詫びいたします。委員の先生方がそれぞれお忙しくて、しかも台風で流れたこともありまして、本日はこのような時間帯でしか設定できなかったところ、前の会議が長引いてしまいまして、大変申し訳ありませんでした。それでは議事に入る前に、資料の確認をお願いいたします。
○大根中央職業病認定調査官 本日の資料は資料1「石綿による疾病の認定基準に関する検討会 報告書(びまん性胸膜肥厚関係)案」、資料2「石綿による肺がんに関する日本及び主要諸外国の認定基準並びにヘルシンキクライテリアの比較」、資料3「石綿による健康被害に係る医学的判断に関する考え方」報告書(抄)(平成18年2月)、資料4「石綿による疾病(肺がん)の論点メモ」、資料5「アフターヘルシンキクライテリア関係文献」が5件、資料6「胸膜プラークと肺内石綿小体濃度との関連に関する検討」、資料7「石綿肺がんの労災決定事案の概要」、以上です。不足等があればお申し出ください。
○森永座長 資料4が資料5の後ろにありましたが、皆さん、よろしいですか。まず、びまん性胸膜肥厚について、事務局から資料1の説明をお願いいたします。
○大根中央職業病認定調査官 資料1は石綿による疾病の認定基準に関する検討会報告書案です。本報告書案は、前回提出したものを、検討会でのご議論を踏まえて修正したものです。中身についてですが、32頁の文献リストまでの修正点は形式的なものですので、33頁のIIびまん性胸膜肥厚の診断及び補償に対する考え方について以降の内容を、特にご確認いただければと思います。念のために、33頁以降を一通り読み上げます。
 II びまん性胸膜肥厚の診断及び補償に対する考え方について。1 びまん性胸膜肥厚の診断。(1)「びまん性胸膜肥厚」の定義。胸郭の臓側胸膜に炎症があり、それが壁側胸膜に波及し、両者が癒着している病態は、臨床上、石綿関連疾患以外の肺疾患に伴いよく見られるものである。(長期間の結核性胸膜炎や膿胸の後遺症、リウマチや自己免疫疾患、種々の薬剤によって生じることはよく知られている)。
 しかし、臨床の場においてこのような病態をすべて「びまん性胸膜肥厚」と診断することはない。「びまん性胸膜肥厚」を独立した疾患と捉えて診断するのは、それが石綿ばく露を原因として生じた場合についてのみであり、それ以外の原因によるものは、同様の病態を示すものであっても「びまん性胸膜肥厚」と診断しない。
 ○石綿ばく露以外に臓側胸膜と壁側胸膜が癒着して肥厚する病態を引き起こす原因の主なもの。感染症(細菌性膿胸、結核性胸膜炎)、膠原病(リウマチ性胸膜炎他)、薬剤性線維性胸膜炎、放射線治療(後)、外傷性血胸、冠動脈バイパス術(後)、尿毒症性胸膜炎、悪性腫瘍。
 (2)「びまん性胸膜肥厚」の治療。「びまん性胸膜肥厚」の特徴は、臓側胸膜と壁側胸膜が癒着することにより、胸膜に運動制限が生じ、拘束性換気障害を呈することである。ただし、初期の段階では、無症状か、軽い労作時呼吸困難を呈するのみであり、特段治療の適応がない。
 しかし、病状が進行し、著しい呼吸機能障害を呈するようになれば、酸素療法を必要とする状態となり、療養補償の対象となる。
 (3)「びまん性胸膜肥厚」の診断。「びまん性胸膜肥厚」の診断は画像による以外に有効なものはなく、専ら胸部X線写真、胸部CT画像の読影によることとなる。上記(1)の石綿ばく露以外の原因によるものとの鑑別がなされ、かつ石綿の職業ばく露歴が認められることを前提に以下の①又は②により、画像診断を行うべきである。
 ①胸部X線写真による診断。びまん性胸膜肥厚の診断に関し、レントゲン学的にさまざまな定義が試みられているが、国際的に統一されたものはなく、2000年のILO国際じん肺標準フィルムによるびまん性胸膜肥厚の定義は、厚さが3mm以上としている。しかし、厚さや拡がりだけで、びまん性胸膜肥厚と、胸膜外脂肪組織との鑑別ができないのも事実である。また、融合した胸膜プラークとの鑑別もできない。
 他方、肋横角の消失をびまん性胸膜肥厚の所見とした場合には、肋横角消失を伴わない非常に稀なびまん性胸膜肥厚例が除外されるが、読影者間のばらつきが極めて小さくなるという意味で有用である。胸部CT画像所見に基づく精査を踏まえた結果においても、肋横角の消失による定義の方が、一定の厚みと拡がりによる定義よりも信頼性が高いとされており、胸部X線写真上の定義としては、肋横角の消失のほうが最近では重要視されている。
 ただし、肋横角の消失が認められないもののびまん性胸膜肥厚が十分疑われる症例、胸膜外脂肪組織や融合した胸膜プラークとの鑑別が必要な症例については、胸部CT画像による診断を併せて行うべきである。
 ②胸部CT画像。多くの研究報告によれば、胸部X線写真と比べて、CT画像は胸膜プラークやびまん性胸膜肥厚の所見、さらには軽度の肺線維化の所見を検出し、胸膜外脂肪との鑑別にはるかに有用であることは明らかである。イギリスにおいては、CT機器の普及状況等が考慮されてCT画像による診断要件が示されなかったものと考えられるが、我が国でのCT機器の普及を考慮すると、胸部X線写真による診断と胸部CT画像による診断を同等に評価するとしても、問題はないものと考える。なお、胸部CT画像による診断においては、胸膜がびまん性に肥厚している状態を確認するとともに、胸膜プラークの有無のチェックも重要である。
 (4)胸水が持続貯留し被包化された症例の診断について。石綿によるびまん性胸膜肥厚の少なくとも1/3から1/2は、良性石綿胸水後に発症したものであることが種々の疫学調査で報告されている。逆に、良性石綿胸水の側から観察した場合、多くの場合は数カ月以内に胸膜癒着を残さずに自然消失するものもあれば、肋横角が消失し、びまん性胸膜肥厚を来す例や、少量の胸水が残存したままの例がある。また、稀にではあるが、胸水が持続貯留し被包化され、肺の再膨張が不可能となり、呼吸機能の低下を来す場合がある。
 このような胸水が貯留した状態のまま著しい呼吸機能障害を来すような症例については、Parkesの“Occupational Lung Disorders, Third edition”やMorgan & Seatonの“Occupational Lung Diseases, Third edition”といった、世界的なじん肺の教科書には記載がなく、Lightの“Pleural Diseases, Fifth edition”やCraighead & Gibbsの“Asbestos and Its Diseases”にも記載はない。それ以外の文献でも、そのような病態の診断名として良性石綿胸水とするかびまん性胸膜肥厚とするかに関して記述したものは、調べた範囲ではみられず、確立した見解は未だ得られていないものと考える。
 2 びまん性胸膜肥厚を労災補償の対象とする要件。労災補償の対象となるびまん性胸膜肥厚とは、上記1の(1)による鑑別や(3)の画像診断によりびまん性胸膜肥厚と診断されているもののうち、以下の判断要件を満たすものとすべきである。
 (1)ばく露量に関する要件。びまん性胸膜肥厚の有所見率と石綿のばく露濃度や累積ばく露量との関係についての調査研究の結果をまとめると、低濃度ばく露では有所見率は低いこと、胸膜プラークとの比較では有所見者の累積ばく露量は高く、石綿肺との比較では累積ばく露量が低いということが言え、有所見者の累積ばく露量としては両者の中間であろうと考えられる。今回収集した文献によれば、有所見率は累積ばく露量と相関関係にあるとするものも見られたが、これについては未だ提言は得られていないものと考える。
 また、業務上のばく露によるものとみなすために必要なばく露期間の考え方としては、平成15年8月の本検討会報告書及びそれを踏まえた平成18年2月の本検討会報告書の内容、すなわち「概ね3年以上の職業による石綿ばく露年数が目安になると考える。」を変更すべき知見は得られていないことから、現時点においてこれを変更すべき理由は認められない。
 なお、この「概ね3年以上」の3年については、推定累積ばく露量が、ある一定のレベルに達することを意味するものではなく、あくまでも把握した過去の症例のうち、ばく露期間が最も短かったものを目安として引用したものであることに留意する必要があり、この要件を満たさない場合には、再度石綿ばく露歴を確認する等、慎重に対応することが必要である。
 おって潜伏期間に関する要件については、石綿の初回ばく露からびまん性胸膜肥厚発症までの平均潜伏期間の多くが30年を超え、少なくとも20年以上と考えるのが妥当であると思われるが、現時点において、潜伏期間を要件として確立できるまでの医学的知見は得られていないため、設定しないことが適当である。
 (2)呼吸機能障害に関する要件。びまん性胸膜肥厚では、胸郭の臓側胸膜と壁側胸膜が癒着するために、呼吸運動に伴う肺の動きが制限される。その結果、全肺気量、肺活量、努力肺活量の減少が引き起こされ、拘束性換気障害を呈することとなる。この拘束性換気障害の程度は、胸膜病変の程度と相関するとされており、胸膜病変の程度が軽度である初期においては、拘束性換気障害の程度も軽度にとどまり、無症状か軽い労作時呼吸困難を呈するのみであることが多い。
 しかしながら、胸膜病変が進行すると慢性呼吸不全状態となり、在宅酸素療法の適応となって継続的な治療を要することとなる。
 今回びまん性胸膜肥厚に係る文献を整理した結果、慢性呼吸不全を来さないびまん性胸膜肥厚は労災補償の対象としないという考え方について変更を要する知見は認められなかった。また、この具体的な要件として、現行の認定基準においては、“著しい呼吸機能障害を伴うもの”とし、当該著しい呼吸機能障害の程度についてパーセント肺活量等の値を掲げているが、これらの値についての報告書(平成22年6月)の内容を変更すべき知見も認められなかった。
 ただし、これらの値は石綿ばく露を原因としない一部の閉塞性換気障害による呼吸機能障害も包含することとなる。拘束性換気障害を原因とすることを画像で確認する意味で、片側にのみ肥厚がある場合は側胸壁の1/2以上、両側に肥厚がある場合は側胸壁の1/4以上という、現行の拡がりの要件は残すべきである。
 (3)その他。胸水が持続貯留し被包化された症例については、良性石綿胸水又はびまん性胸膜肥厚のいずれの診断名であっても、著しい呼吸機能障害を呈するものは労災補償の対象となることに留意する必要がある。以上です。本日は、まずこの報告書案について確認していただいた上で、ご了承いただければと考えております。よろしくお願いいたします。
○森永座長 ただいまの説明について、何かご意見があればお願いいたします。
○由佐委員 33頁のびまん性胸膜肥厚の定義のところで、除外すべき病態というのがあります。いろいろなものがある中で、「冠動脈バイパス術(後)」というのが1つあります。これは開胸手術後の状態ということだと思うのですが、バイパス術に限らず、そのほかの開胸手術といったものも入れてもいいかなと思います。「等」とか、そういった文言を入れるか、そのようにしてはどうかなと思うのですが、三浦先生いかがでしょうか。
○三浦委員 これについては文献に記載があるものをここに網羅して、このような形でどうかと申し上げたのですが、臨床上は由佐委員のおっしゃるとおりです。ヨーロッパで冠動脈バイパス術後が圧倒的に多いとされているのは、例えば肺がんの手術などは、その後長生きということをあまり考えないからではないかということがあるのです。ちょっと長いのですが、「冠動脈バイパス術をはじめとした開胸術後」、冠動脈バイパス術というのが文献に結構出てきますので、そこだけはちょっと残して、あるいは「等」だけでもいいのですが、「等」よりは「はじめとした開胸術後」のほうが日本には合っているかなと考えます。
○森永座長 「冠動脈バイパス術等の開胸術後」のようにしたほうがいいという意味ですか。
○三浦委員 そうです。あるいは「冠動脈バイパス術をはじめとした」、「等」と言うと、冠動脈バイパス術がかなり強い印象を持ちますので、それ以外の開胸術もということで、開胸術の代表選手として「冠動脈バイパス術をはじめとした開胸術後」としてはどうかと思うのですが、長ければ直してください。
○森永座長 冠動脈バイパス術等の開胸術後ではなくて、冠動脈バイパス術を含む開胸術後、どちらがいいですか。
○由佐委員 どちらでもそう変わらないと思います。
○三浦委員 簡単なほうで「等」ということでいいですか。
○森永座長 これは胸膜プラークもそうです。術後何かあると、プラークでないものをプラークと見間違えてしまうことがあるので、術後の場合はびまん性胸膜肥厚も、プラーク様の所見も非常に注意して見ないといけないです。その他何かあればお願いいたします。いま直すところは分かりましたか。
○大根中央職業病認定調査官 はい。
○宮本委員 36頁の上から10行目の「今回、びまん性胸膜肥厚に係る文献を整理した結果、慢性呼吸不全を来さない肥厚は労災補償の対象としないという考え方」ですが、「慢性呼吸不全を来すびまん性胸膜肥厚は、労災補償の対象とする考え方について変更を要する知見は得られなかった」のようにしたほうがいいのではないか。と言いますのは、呼吸不全がなくてもパーセントVCが基準を満たせば補償されるからです。このままの文言ですと、呼吸不全のほうで決まってしまうように取られてしまいますので、そのようにしたほうがいいかなと思いました。また、その下の行に「また、この具体的な要件として」の「この具体的な」を、パーセント肺活量などがありますから、「その他の要件」としたほうがいいかなと思いますが、いかがでしょうか。
○森永座長 その他の要件というわけではないでしょう。
○宮本委員 関連する。
○森永座長 「また」が要らないですね。労災補償の対象とするという考え方について変更を要することはなかったので、その具体的な要件としてはということでつながります。つまり、「慢性呼吸不全を来すびまん性胸膜肥厚は労災補償の対象とするという考え方について、変更を要する知見は認められなかった。この具体的な要件としては」とつなげれば、それでいいのではないですか。そういうことですね。
○宮本委員 はい。
○森永座長 34頁の胸部CT画像の下から5行目に、「我が国でのCT機器の普及を考慮すると、胸部X線写真による診断と胸部CT画像による診断を同等に評価するとしても問題はないものと考える」の「同等に」という意味があまり芳しくないですね。同等というのはちょっとおかしいです。
○三浦委員 同等以上ですからね。
○森永座長 どのように直さないといけないでしょうか。これはともに、一緒に評価するわけですよね。
○神山委員 前の最後のパラグラフに、「胸部CT画像による診断を併せて行うべきである」とあるので、「併せて」というのを使ったらどうですか。つまり、「診断を併せて評価するとしても問題はないものとする」、すぐ上のパラグラフ、①の最後の行です。
○森永座長 上には「併せて行うべきである」と書いてありますね。
○神山委員 ですから、「同等に」を「併せて」としてはどうでしょうか。
○森永座長 「併せて評価するとしても問題はないものとする」、むしろ併せて評価すべきなのです。
○渡辺職業病認定対策室長 33頁の最後の行で「①又は②」、つまりX線画像でもいいし、CT画像でもいいという形であれば、併せてと言ってしまうと、両方やらないと駄目という意味になってくるような気がしますから、ちょっとどうかなと思いました。
○森永座長 問題はないと書いてあるのだから。私は本来は両方評価すべきという立場ですが、三浦先生はどうですか。
○三浦委員 単純写真だけでは、脂肪による胸膜肥厚様の所見が区別できませんので、やはり日本では肋横角の鈍化と同時に、CTによる評価を併せて行うと言うほうが、かえっていいかなと考えます。
○渡辺職業病認定対策室長 ですから①のいちばん下のただし書きの所で、そういう例は併せて行うと。X線でやる場合でもCTが要りますと言っているのです。②はCTだけの診断でもいいですといった形で位置づけられていると考えていたのですが、そうではないのでしょうか。
○森永座長 33頁のいちばん下が、「①又は②により画像診断を行うべきである」と書いてあるのは、いまの健康管理手帳の制度がそうだからそう書いただけの話であって、本来的には石綿の健康管理手帳制度をもっときちんとしてもらわなければいけないわけです。ここの文面のニュアンスは、本当はCTもきちんとやるべきであると私は思いますし、たぶん三浦委員も、審良委員も、岸本委員もそのように思っていると思います。
 最後の被包化された良性石綿胸水については、いまのところはこのような形でしか表現ができないということです。一応いま皆さんから意見が出ましたので、それに修正を加えて、何か細かいことがあれば、また委員の先生方から意見をもらうことにして、おおむねこのようなまとめでよろしいでしょうか。あとは座長と事務局に一任させていただければと思います。この内容でいけば、いままでの認定基準を大幅に変えるということではないので、肺がんの認定基準を改正した場合に合わせて、びまん性胸膜肥厚も改正する。つまり、厚みのところは外して、肋横角のところを取り上げればということですが、そのような内容で一緒にやればいいですね。特に急いでどうこうすることではないと思います。
 びまん性胸膜肥厚については一応このような取りまとめで、肺がんの取りまとめのときに合わせて、整合性も含めてもう一度検討するということで、これはとりあえず了承していただいたという扱いでよろしいですか。
                  (了承)
○森永座長 ありがとうございます。それではそのようなことで、若干の手直しがあるかもしれませんが、それは肺がんのときに合わせてまとめて報告書を出すときに、もう一度議論していただきたいと思います。以上で資料1は終わりましたので、次に、事務局から資料2以降の説明をお願いいたします。
○大根中央職業病認定調査官 とりあえず資料2から資料6までについて、説明いたします。資料2以降は、石綿による肺がんの関係となっております。資料2、資料3ですが、今般の肺がんの認定要件に関する検討を行っていただくに当たり、現行の認定基準およびその基となった考え方、石綿による肺がんを補償の対象としている諸外国における認定基準の内容、それとヘルシンキクライテリアのポイントを確認・比較することにより、効率的なご検討に資するように、事務局のほうで整理したものです。
 資料2の初めですが、我が国の認定基準です。現行の認定基準ですが、資料3にある平成18年2月の「『石綿による健康被害に係る医学的判断に関する考え方』報告書」を踏まえて策定されたものです。認定基準の基本的な考え方として、資料3の報告書、2頁の(イ)の「石綿が原因であるとみなす考え方」という項目にありますが、肺がんの発症リスクを2倍以上に高める石綿ばく露があった場合をもって、石綿に起因するものとみなすという考え方によっているわけです。これについては、各国ともこの考え方に即しているのではないかと思われます。具体的な医学的所見の要件として、資料2の日本のポイントにありますが、1つは石綿肺が認められることを掲げております。後ほど詳しく申しますが、この要件についてはイギリス、ドイツ、ベルギーでも掲げられている、それからヘルシンキクライテリアにも示されているということです。
 我が国の医学的所見として、次に肺内の石綿繊維数が所定数認められることを掲げております。具体的には、乾燥肺重量1g当たり5,000本以上の石綿小体、気管支肺胞洗浄液1ml中5本以上の石綿小体、乾燥肺重量1g当たり200万本(5μmを超すもの)または500万本(1μmを超すもの)、この本数以上の石綿繊維ということです。この要件については、ヘルシンキクライテリアに示されており、ベルギーのほうでも同様に採用されているということです。なお、ヘルシンキクライテリアにおいては、角閃石繊維ということになっておりますが、我が国と調べた範囲ではベルギーでも、石綿の種類を問わず、この基準となっているように聞いております。
 一方、胸膜プラークの医学的知見については、プラークがあることだけをもって肺がん発症リスクが2倍になるばく露があったとはいえないという考え方から、石綿ばく露作業従事期間が10年以上あることの要件を合わせて、業務上と認めるものとしているところです。このように医学的所見と従事期間を合わせて要件とする方法は、ほかの国には見られない日本独自の方法です。なお、石綿ばく露作業従事年数が10年に満たない場合であっても、胸膜プラークや石綿小体・石綿繊維が認められる場合には、これを直ちに業務外とするわけではなく、ばく露作業の内容、頻度、従事年数、従事時期等について、個々の事案ごとに慎重に総合判断をすることを明示しているところです。
 続きまして、主要諸外国の認定基準の例として、まずイギリスです。資料2の2頁ですが、イギリスにおいては医学的所見としての要件は石綿肺のみとなっております。胸膜プラーク、石綿小体・石綿繊維については、要件として掲げられておりません。石綿肺が認められる場合は、期間を問わず、石綿作業に従事していたことが要件で、石綿肺が認められない場合は、特定の高濃度作業、これは2頁の下にありますように、3つ示されております。これらの高濃度作業に、1975年以前は5年以上、1975年以降は10年以上、従事していたことが要件とされております。このようにイギリスにおいては、石綿肺が認められない場合は、かなり厳しい要件が課されているのではないかということです。
 続いて、ドイツ、資料2の3頁です。医学的所見の要件として、石綿肺のほか、微少石綿肺、石綿粉じんに由来する胸膜の変化(胸膜プラーク、胸膜肥厚等)が掲げられております。一方、これらの医学的所見がない場合には25繊維年が証明される石綿ばく露があることが要件となっております。こちらで微少石綿肺となっておりますが、1型に満たない程度の線維化所見を指すものと考えられます。なお、この要件は、ほかの国では見当たらないところです。また、胸膜プラークの存在が要件の1つに掲げられています。ただ、X線で認識可能であることや、所定の拡がり・厚みが必要なようです。この要件も、ほかの国では見当たらないところです。
 さらに、胸膜肥厚の存在も要件の1つに掲げられております。この資料にある両側、散在性ということで、これはいわゆるびまん性胸膜肥厚と同義ではないかと考えております。ただ、この胸膜肥厚、両側、散在性のものについても、所定の厚みがあることが必要とされております。そのほかにヒアリン合併症、胸腔漏、胸膜炎が掲げられておりますが、これらがどのような病態を指すものかは判然としないところもあります。最後に、25繊維年を証明できる場合が要件として掲げられております。ドイツにおいては、年代ごとに作業ごとの石綿粉じん濃度に関する記録があります。それらの数値に基づき、従事期間を1時間単位で把握した上で、その時間が1,920時間に達したことをもって1年ということで、厳格に繊維年を算出し、それが25繊維年以上あると認められれば業務上となると、こういう仕組みと理解しております。
 続きまして、ベルギー、4頁です。医学的所見の要件として、石綿肺のほかにドイツと同様と言っていいかと思いますが、両側のびまん性胸膜肥厚の存在が掲げられております。また、我が国と同様に、肺内または気管支肺胞洗浄液内に一定数以上の石綿小体・石綿繊維が認められることが掲げられております。医学的所見以外の要件に関しては、1985年以前に特定の石綿ばく露作業、これは4頁の中ほどから18種類が示されております。これらの石綿ばく露作業に10年以上従事していたことという、従事期間のみの要件が掲げられております。最後に、ドイツと同様に、25繊維年の石綿ばく露があることという要件が掲げられております。そのほかに、潜伏期間に関する要件として、肺がん発症の10年以上前に職業上の石綿ばく露が始まっていること、これが要件となっております。
 諸外国の最後にフランス、6頁です。8種類の特定の作業、これは認定基準に「病気を発症し得る労働作業の限定的なリスト」ということで、具体的に示されておりますが、この8種類の特定の作業に10年以上従事したことを要件としております。
 なお、医学的所見の要件としての石綿肺に関してですが、当たった文献においては示されていなかったところで、申し訳ございませんが、それ以上の詳細については不明です。
 以上が各国の認定要件の概要ですが、これらをヘルシンキクライテリアの記述内容に沿って整理しますと、医学的所見の要件として石綿肺ですが、ヘルシンキクライテリアにおいて「高濃度ばく露の指標となる」とされており、日本、イギリス、ドイツおよびベルギーで、共通の要件となっております。フランスについては確認した範囲では見られませんでしたが、詳細はちょっと不明な点があります。なお、ドイツにおいては微少石綿肺についても要件に掲げているところです。
 次に、両側のびまん性胸膜肥厚については、ヘルシンキクライテリアにおいて中濃度または高濃度ばく露が原因であることがあるため考慮されるべきであるとされているわけで、ドイツとベルギーが要件に掲げているところです。
 胸膜プラークですが、ヘルシンキクライテリアにおいて、石綿ばく露の指標であるが、低濃度ばく露に関連している可能性があるので、石綿にばく露した職業歴の有無または石綿繊維負荷量の計測による裏付けが必要であるとされております。我が国においては、石綿ばく露作業従事期間の要件と合わせて、業務上とする方法をとっておりますが、ドイツにおいては拡がりと厚みを限定した上で、単独の要件としているようです。
 次に、石綿小体・石綿繊維数についてですが、ヘルシンキクライテリアにおいて、小体数・繊維数が示されております。我が国とベルギーが同様の数値をもって、要件として掲げているところです。
 医学的所見以外の要件ですが、石綿ばく露作業従事期間については、イギリスにおいては3種類に限定した高濃度作業に、1975年以前は5年以上、1975年以降は10年以上、従事していたこととなっております。また、ベルギーにおいては、1985年以前に18種類の石綿ばく露作業に10年以上、従事していたこととなっております。フランスにおいては、8種類の特定の作業に10年以上、従事していたこととされているところです。我が国においては、従事期間だけの要件は設けておらずに、胸膜プラーク等の医学的所見と合わせた要件となっているところは見ていただいたとおりです。
 25繊維年の累積ばく露量については、ヘルシンキクライテリアにおいて示されているわけですが、ドイツ、ベルギーが採用しているところです。潜伏期間ですが、ヘルシンキクライテリアにおいて、最初の石綿ばく露から最低10年の潜伏期間が必要であるとされております。ベルギーにおいて、10年以上前に職業上の石綿ばく露が始まっていることが要件であることが明示されております。なお、我が国においては、潜伏期間に関する明確な規定はありませんが、10年以上のばく露作業従事歴を満たす場合には、必然的に潜伏期間も10年以上であることとなりますので、現行では石綿小体数等により認定する場合以外は、こちらの要件も含まれていると言っていいのではないかと思います。なお、ヘルシンキクライテリアにおいては、クリソタイル繊維のクリアランス率が大きいことが示されておりますが、角閃石繊維とクリソタイルを区別して扱っている国は、調べた範囲では見当たらなかったというところです。資料2、資料3については以上です。
 続いて、資料4から資料6ですが、こちらの資料については森永座長から本検討会に提出するように指示がありましたものです。
 資料4は、森永座長に作成いただきました今般の議論の論点メモです。
 資料5ですが、アフターヘルシンキクライテリア関係の文献です。資料5-1ですが、ヘルシンキで開催された国際専門家会議で議長を務めたヘンダーソンらがまとめた1997年から2004年までの間に出版された石綿ばく露と肺がんの関係についての文献のレビューです。資料5-2ですが、ギブスらのヘルシンキクライテリアに対する批判、資料5-3、資料5-4は、ギブスらの批判に対する反論の書簡です。資料5-5ですが、「アスベストばく露による中皮腫と肺がんの定量的リスク」と題するホジソンとダントンの論文です。
 資料6です。胸膜プラークと肺内石綿小体濃度との関連に関する調査結果ですが、これについては後ほど調査を担当されました由佐委員からご報告をいただければと考えております。資料2から資料6までについては以上です。
○森永座長 たくさん資料が出てきたので大変ですが、資料4を用意しましたので、これに沿って話をしていけばいいかと思います。これは平成18年のときに、こういう形で検討したということで、その検証の意味も含めて議論を始めたいと思います。まず、1の肺がんの発症リスクが2倍となる石綿ばく露量があれば、石綿による肺がんとみなすという基準の考え方です。これについては、皆さんどういうご見解なのかを確認の意味でお聞きしたいのです。それは資料3の2頁の真ん中、(イ)石綿が原因であるとみなす考え方ということで、寄与危険度割合が50%以上を採用した。相対リスクが2倍ということは、寄与危険度割合が50%と計算されますので、例えば相対リスクが5倍ということは、それは寄与危険度割合が80%、つまり石綿による原因か、そうでないかの確率が、相対リスクが5倍のばく露量で線を引けば80%ということになる。逆に50%、相対リスクが2倍というのは、フィフティ・フィフティだと。つまり、2頁の下から5行目から書いてあることです。ある物質にばく露されることとがんの発生との関係です。そういう考え方で、肺がんの原因が石綿以外にも多くあるので、また石綿以外の原因による肺がんを医学的に区別できないので、肺がんの発症リスクを2倍以上に高める石綿ばく露があった場合をもって、石綿に起因する肺がんとみなすことが妥当だという結論を、平成18年当時そういう考え方を出したわけです。これはいままでになかった考え方だと思いますが、これについてはよろしいですか。神山委員と三浦委員は、もう既にそのときの委員だったのですが、ほかの委員の先生方もよろしいですね。
○神山委員 今日の資料2でも、イギリス、ドイツ、ベルギー、フランスと、それぞれまとめていただいていますが、ドイツ、ベルギーは25繊維年と明確に言ってはいるのです。
○森永座長 イギリスも明確に言っていますね。
○神山委員 イギリスも明確にしているわけですね。ですから、これはそういう意味でも、国際的な面から見てもいいのではないかと思います。
○森永座長 2番の「肺がんの発症リスクが2倍となるばく露量の程度について」ということですが、これについては資料5-1までは平成18年当時集めた文献の中に入っていたと思うのですが、平成18年は2006年。資料5-2は2007年で、資料5-3も2008年、資料5-4が2007年ということで、資料5-2、資料5-3、資料5-4は実は平成18年度に取りまとめた検討会には、まだ発表されていなかった意見ということで、当然ヘルシンキクライテリアにも批判的な意見もあるということです。
 累積ばく露量で見た場合、資料5-5ではいろいろなばらつきがあることを言っているわけです。実は資料5-1もそうなのですが、資料5-1は25繊維年から100繊維年、いろいろな職種によってもばらつきがあると。だけど、それのいちばん低いところを取って25繊維年にしましょうという意見でした。実はそれに対してもいろいろ批判があるわけですが、疫学調査のレビューが正しければ、それはそれでいいのだという話で、とりあえずはそういう考え方もあるということは、平成18年度にも言っています。この点については、皆さん方、一応仮置きでそのままでいいと考えて議論を進めていって、よろしいですか。
 そうすると、今度は論点の3になりますが、石綿肺についてはどうでしょうか。石綿肺の定義というところが問題になると思うのですが、石綿肺の所見を指標とする考え方について、意見はありませんでしょうか。この前の平成18年2月の報告書のときには、あまり触れていなかったですね。それは以前からそうだったから、そうだったという話でいっていたように思いますが、それはよろしいですか。ドイツの微少石綿肺という、ちょっとわかりにくいドイツ語が、この訳は間違っていないとは思いますけれども。
○神山委員 ドイツ語の元は何なのですか。微少と訳していますが、英語のマイクロか何かですか。
○森永座長 英語ではないので、ドイツ語です。
○神山委員 ドイツ語は何なのですか。
○森永座長 たぶん病理の話だと思うので。
○神山委員 2の訳してある内容のほうなのですが、これは1はレントゲンで、粒状影1/0以上で、これは日本も同じでその辺はいいと思うのですが、2のほうは病理プレパラートがある場合、生検か何かで得た場合に、こういった所見があるということと、最後の行に「肺線維症巣中に石綿小体が紛れもなく存在することの検証も必要である」と、これがどういう表現で、非常に強いものか、あればいいというのか、この辺のニュアンスが原本を読んでいないのでわかりませんが、もしこれがこの字句どおりであれば、微少か微石綿肺と言いつつも、かなりばく露濃度は高いほうというか、1とあまり差のないような方向を少しここで足かせか何か掛けているように感じるのです。これは病理的には、プレパラートに石綿小体があれば、相当なばく露量があったということですから、これがなければ顕微鏡で線維化がちょっとでもあれば石綿肺とするというように、際限がなくなってしまうような気が最初はしたのですが、そうではないという受け取り方でよろしいのですね。
○森永座長 いや、資料2の3頁のドイツの2の「微少石綿肺であるとの診断は、少なくとも呼吸細気管支壁に及ぶと同時に隣接する肺胞の中核にも拡大する恐れのある線維症の組織学的な検証のほか」。
○神山委員 これはプレパラートでやるわけですね。
○森永座長 そうですね。「線維症巣中に石綿小体が紛れもなく存在することの検証も必要だということ」。
○神山委員 これがプレパラート中にあるということが必要であると言っているわけで。
○森永座長 そういうことだと思いますよ。
○神山委員 だから、かなりのばく露量を暗示しているのだと思いますけれども。
○森永座長 これは病理学的にどうですか。
○廣島委員 石綿肺は、蜂窩肺とか蜂巣肺というような高度の線維化にいきなりなるわけではなく、その前の段階があります。最初に石綿繊維が肺に入りますと、気管、気管支、細気管支と奥に入り、細気管支周辺に集簇して、その末梢の肺にも行きますが、石綿繊維は細気管支周囲に多く分布します。
 その石綿繊維の影響によって、細気管支の壁が厚くなり、そしてその周囲の肺胞壁も線維性に肥厚してきます。これが石綿肺の初期の病変です。小葉と呼ぶ1cm程度の区画の中に細気管支を中心とした細葉という構造があります。石綿肺は細気管支を中心とした病変であるということが大事であると思います。これが小葉結合織のほうから始まりますと、別の病気と考えられます。
 これが微少かどうかということですが、2010年の国際会議でまとめられた石綿肺の病理学的な所見に関する論文があります。そこでグレードを分けていますが、今申し上げた所見がいちばん最初の石綿肺の所見とされています。また、石綿肺の病理学的診断には、石綿を確認することが重要です。石綿繊維自身は光学顕微鏡では見えませんので、石綿を貪食したマクロファージがつくる石綿小体を顕微鏡で見ます。それは通常、細気管支の壁、あるいは肺胞壁に存在します。それが存在することが診断に必須です。これがなければ、ほかの原因で同様な線維化が起きても、石綿肺ということはできません。また、たとえ石綿小体があったとしても、線維化がない場合は、石綿肺ということはできません。ここに書いてあることが石綿肺の初期の病理像であると考えます。
○神山委員 ですから、これは石綿小体が存在することは必須条件になっている、という受け取りでいいですね。
○廣島委員 必須です。これがなければ、石綿ばく露があるとは判断できないからです。
○三浦委員 画像では、あるいは切除した肺の肉眼所見では、グレード1という段階の病理学的な石綿肺は、区別できないのですね。ですが、画像上、区別できなくても、こういう病理所見があれば、これを石綿肺とするというように私は解釈しました。ただ、神山委員の言われるように、石綿小体が紛れもなく存在するということと、同時に初期の線維化所見があるという、この2つを兼ね備えるというのは、ある程度ばく露がしっかりしていないと出てこない所見だと考えられます。
○森永座長 何か意見はありますか。
○斎藤職業病認定対策室係長 先ほど神山先生のほうからのドイツ語ですが、ミニマーラアスベストーセ、ミニマーラ、ミニマムのことかなと。
○森永座長 ドイツ語、フランス語になると、我々はちょっとしんどいところがありますね。
○神山委員 ミニマールだから、英語のミニマムでしょうね。マイクロではなくてミニマムですね。
○三浦委員 グレード1という意味なのでしょうかね。
○廣島委員 グレード2になりますと、もう少し周辺の肺胞に広がります。
○森永座長 だから、普通は石綿肺の診断で病理学的な診断まで求めないのですが、間質性肺炎とのどうしても紛らわしい例が、最近どんどん出てきます。最終的に病理の所見があるものについては、こういう道で拾う術がありますよという意味ではないかと思います。実はこれは救済法のときにも、一応1/0以上ということになっていますが、実際は1/0と0/1の鑑別は、単純のフィルムではなかなか難しいわけで、そこはCTを活用していかなければいけない。日本の医療レベルはそこまで来ているわけですから。そういう石綿による線維化というものがあれば、それはドイツでは認められていると、病理学的に確かめられれば認めているという意味です。
 ただ、それぞれの国はそれぞれ認定基準が違うのですが、それぞれの国の石綿以外の社会制度の違いが、まずあるわけです。そこを理解してこれを見ないと。イギリスの医療制度は国民保健制度ですから、こういうややこしい、難しい症例は、みんな専門医の所へ回るシステムになっているわけです。医療費は原則ただです。ドイツは、労災保険をもらうと、労働者は今度は企業を訴えられないわけです。だから、逆にどちらかというと、やさしい認定基準になっている。イギリスはそうではない。それは制度の背景が違いますから。社会制度の背景が違うので、どこの国も同じ認定基準になるかというと、そうではないということ、そういうバックグラウンドが違うということを理解した上で、日本はどうあるべきかということを考えていただかないといけない。だけど、そこの大本のバックグラウンドのところは、本当は政治家がちゃんとやってくれないといけないのですが、あまりやってくれていないです。
 だから、石綿肺は本当は診断が非常に難しいということですね。それは言っていいですよね。だけど、本当に石綿肺があれば、これは肺がんのリスクを2倍以上に高めるという、これについては皆さん、もう反対はないですよね。当然、石綿肺という診断が正しければという条件が付きますけれども。
 次の「胸膜プラーク画像を指標とする考え方」ということですが、これはいろいろな意見があります。平成18年当時は、プラークは肺がんのリスクを高めるけれども、プラーク自身が肺がんのリスクを高めるわけではない。だけど、プラークのある人は肺がんのリスクが高くなる。しかし、それは1.6倍前後で、2倍は行っていない。だけど、プラークのある患者さんをフォローしていって、線維化の所見が出てきた人については、明らかに2倍以上の所見があるという、きちんとした疫学調査の評価の下に、当時認定基準を出したわけですが、その後さらにいろいろな調査が出てきていますので、それを今日、委員である廣島先生、由佐先生がまとめたものがありますので、その説明をお願いしたいと思います。由佐委員、説明をお願いします。資料6ですか。
○由佐委員 資料6で説明します。我々は、主に肺がんの手術例を対象にして、胸膜プラークと肺内の石綿小体濃度の関係を研究してまいりました。今回は、6つの病院から多数の症例を集積することができて、その結果をある学会研究会で発表しましたので、その資料を基にここで説明します。
 「はじめに」とあるのは、いま森永先生からお話がありましたように、胸膜プラークというのは石綿ばく露を受けたことを示す所見であることは、いままで言われているところです。しかし、石綿ばく露量との関係というのは、いままでにはあまりそのようなデータは示されていません。そこで、この胸膜プラークと石綿ばく露量との関係を明らかにしたいということで、この研究をしました。
 研究対象は2つのパートに分かれていて、我々の千葉労災病院で施行した肺がん手術例について、手術の所見で肉眼的に胸膜プラークを認めた症例が66例。2番目は、千葉労災病院の症例も含めて、他の協力施設6施設から集積した石綿ばく露歴のある肺がん手術例又は剖検例で、肺内の石綿小体濃度が計測されて評価可能な胸部画像所見が得られた161例を対象にしています。研究方法は、ばく露歴の調査や胸膜プラークの画像での所見、肺内の石綿小体濃度の計測を行っています。
 次の頁は、千葉労災病院の症例の結果です。手術例230例のうち、手術時の肉眼的所見で胸膜プラークを認めた症例が66例ありました。これは、全例男性です。そのうち、その下の表では肉眼所見で認めたけれども、CTや胸部レントゲン写真ではプラークの所見が検出できなかった症例が36例。CTで検出されたけれども、レントゲンで検出されなかった症例が24例。レントゲンでも検出された症例のC群が6例でした。これから見ると、実際に胸膜プラークがあっても、画像で検出できる症例は半数に満たない程度の例であることがわかりました。
 次の頁には、そのような実際の胸膜プラークの肉眼所見を示しています。左の上下2枚の写真は、「XP(-)CT(-)」と書いてありますが、これはレントゲン、CTで検出できなかった胸膜プラークで非常に小さくて、隆起、肥厚の程度も軽微なものでした。真ん中の例は、レントゲンでは検出できなかったけれども、CTでは検出できるといった例です。下のCTの図がわかりにくいかと思いますが、胸膜プラークの所見が検出できました。右の例は、レントゲンでも検出できた胸膜プラークの例で、非常に隆起が強い、肥厚の強いプラークが多発している症例。これはレントゲンでプラークの所見が見えた。このような症例があります。
 それぞれの例の石綿小体濃度を測った結果が次の頁です。グラフで示していますが、A群が画像所見で見えなかった、プラークが見えない症例。B群とC群は、プラークが画像所見で見えた、検出できた症例です。縦軸が石綿小体濃度ですが、対数表示をしています。太い横線で5,000本のラインを引いています。赤い線が、それぞれの群の中央値を示していますが、下の表を見るとA群では中央値が629本、B群、C群では中央値がおおよそ3,000本になります。両者間に有意差があるということで、どうもプラークの大きさが小体濃度と関連している。プラークが大きくて画像で見えるようになったものは、画像で見えないものに比べて小体濃度が高いことがわかりました。
 次の頁は、より多数の161例について検討しました。これをCTやレントゲンでプラークが検出できなかった例、レントゲンで検出できないけれどもCTで検出できた例、CT、レントゲン両者で検出できた例の3群に分けて、各群の小体濃度を示しました。そこで示されるように、レントゲン、CTで検出できなかった群では中央値が506本、CTで検出できた群は3,470本、レントゲンでも検出できた例は約2万本になります。この5,000本というラインで区切ってみますと、レントゲンで検出できたいちばん右側の群について見ると、これの90%の症例が5,000本以上であることが言えます。
 次の頁は、いまのようなことからCTで胸膜プラークの拡がりの程度をある程度半定量的に分類をして、小体濃度との関係を見ました。拡がりの程度をScore0、Score1、Score2と分類をしてみました。Score0は、プラークをCTで検出できないものです。Score1はこの図に示しますように、一側の胸部CT画像で胸膜プラークが最も広範囲に描出されたスライスを見て、その範囲が胸壁内側の1/4未満のものをScore1、1/4以上のものをScore2と分類しました。下にScore1の例、右側にScore2の例を示しています。このように、CTの所見での胸膜プラークの拡がりの程度をScore0、Score1、Score2と分けて、それぞれの群の石綿小体濃度を示したのが次の頁です。これを見ると、Score0の群よりもScore1、Score1よりもScore2の群の石綿小体濃度が有意に高いことがわかります。Score2の石綿小体濃度の中央値は1万6,500本、Score1は3,300本、Score0では559本となっています。それぞれの症例でXP、レントゲンでも胸膜プラークが検出できた症例をそこの赤で示しています。ほとんどの症例がScore2に入っていますが、Score1に少数の例があります。Score0にも1例だけ赤いドットがありますが、これはあとから見ると、レントゲンの所見で胸膜プラークを読みすぎた症例ということがわかりました。ということでScore2の症例を見ると、そのうち74%の症例が5,000本以上の石綿小体濃度を持っていたことがわかりました。
 次の頁です。今回161例のうち、ばく露歴が明らかだったのが141例です。その141例について石綿ばく露の開始から検査まで、潜伏期間を調べてみると、その次のこのグラフのようになりました。平均の潜伏期間としては、47年でした。ほとんどが30年以上という長い潜伏期間が経ったあとの患者を対象とした結果ということが言えるかと思います。データとしては以上で、いまのデータをまとめると、次の頁に「まとめ」と書いています。これは省略しますが、見ていただければと思います。以上です。どうもありがとうございます。
○森永座長 ありがとうございます。かなり大規模な数で調査したと思いますが、いまの由佐先生の報告あるいはほかの論文も含めて、認定要件に胸膜プラークをもって何か指標ができるかということについて、皆さんの意見をお伺いします。廣島先生、補足することはありますか。別によろしいですか。
○廣島委員 はい。
○森永座長 要するに、アスベスト関連疾患のことをよく知っている呼吸器科医及び放射線科医で、プラークは読影をしたということですね。プラークについてはほとんど意見の不一致はなかったと思いますが、肺内の石綿小体の計測法は神山委員の改良の方法でマニュアルに沿って実施しており、これは石綿小体の計測の技術研修会に参加してトレーニングを受けている、実際に経験を持っている検査技師が実施しているということを私から補足しておきます。どうでしょうか。正直言って、こういう結果が出るとは思わなかったのですが。
○神山委員 図面の3枚目ですから、「石綿小体と胸膜プラーク-161例の検討(2)-」という、Score0、Score1、Score2を横に並べたものが非常に重要な結論を暗示するものだと思いますが、十分な理解が足りているかどうかも心配で、もう少し詳しく説明していただけるとありがたいのですが、Score0で赤線は中央値を示しているわけですね。中央値は小体数で表現されていて559本、Score1は3,300本と説明がありましたが、その下の5,000本で切ったときの以上、未満でのパーセンテージを含めて、それから赤を足したときの説明を追加していただきたいと思います。
○由佐委員 まずScore0、Score1、Score2というふうに、CTで見た胸膜プラークの拡がりの程度というのを分類しました。Score0、Score1よりScore2のほうが拡がりが大きいということです。それぞれの症例についての石綿小体濃度を示したのが、このグラフです。Score0のグループの石綿小体濃度の中央値が559本です。5,000本という線で切りますと、Score0の症例のうち、5,000本未満の症例が88%、5,000本以上の症例が12%だったということです。同じくScore1の場合は、中央値が3,300本で5,000本未満の症例が60%、5,000本以上の症例が40%だったということです。Score2の場合は、中央値が1万6,000本で5,000本以上の症例が74%、5,000本未満が26%だったということです。この赤のドットというのは、それぞれのScoreの群の中の症例ですが、個々の症例でXP、レントゲンで検出できていたか、できなかったというのを調べまして、できたものを赤で示しています。
○森永座長 それは、161例の検討の(1)を見ればいいわけですよね。レントゲンだけで。
○由佐委員 こちらの検討(1)のXP+のいちばん右のグループのそれぞれの症例をこちらに写して、こちらで赤で示したとご理解いただけたらと思います。
○森永座長 どうですか。レントゲンで認められるプラークは、ほとんど5,000本以上あるのだからということになりますよね。ただ、これはわかっている人がプラークだと言っているので、わかっていない人がプラークだと言っていると、どうなるかがわからないですが。
○由佐委員 ですから、レントゲンでプラークがある、なしというのは、これは1例間違っている症例がありますが、レントゲンであることをCTでも確認することは必要かなと思います。
○森永座長 レントゲンである、要するにプロバブル以上ということをレントゲンだけで言うには、かなりのプラークがないと言えないです。見るほうとしても確定診断として。だから側胸部のものは怪しいものがたくさんあります。横隔膜だったら確かに言えるけれども、プラークの確認はCTは必要だとは思います。私ばかり喋ってはいけませんが、三浦先生どうですか。
○三浦委員 しっかりしたプラークがあって、まず単純写真でCTで確認した確かなプラークということを前提としての話ですが、その場合には90%が5,000本以上。しかも、多い人は中央値が2万本近いということですから、その所見だけでまずは肺内石綿小体が非常に多いグループとしてもいいのではないかと思います。手術したり何かしていない段階でも、この所見をもって石綿小体の多いグループとみなすということでいいのではないかと考えます。
○神山委員 それを示しているようにも、逆は真なりではないかもしれないけれども、XPでプラークが信頼できる情報として得られれば、相対リスク2倍以上というか5,000本以上というか、それだというのを示しているデータということですね。ただ、それでない人は駄目なのかというと、そうではないということも示しているわけですね。
○森永座長 実際は肺がんの患者は、大体みんなCTを撮りますからね。ですから、CTの評価というのができるわけで、161例の検討の(2)のScore2を採用するか、しないかということですよね。
○神山委員 素人の質問で恐縮ですが、Score1の5,000本の上のほうに黒い点が1集団ありますね。これは、単純なX線ではプラークがなかった人ですからCTで検出されて、なおかつ小体の多い人。この群は、先ほどのCTの分類で1/4未満、1/4以上というときには、1/2以上とか未満で切ったときの上に属するような人なのかどうかは、ご検討されましたか。
○由佐委員 神山先生のご指摘は、Score1の部分ですね。
○神山委員 Score1の部分です。
○由佐委員 Score1の群は1/4未満のプラーク。
○神山委員 全部、未満なのですね。
○由佐委員 そうです。
○神山委員 未満で、上のほうのグループ、分布があるということですね。
○由佐委員 この未満のグループの中で、赤いドットのグループがありますね。これはCTではScore1という部類のグループだったけれども、レントゲンでもプラークが検出できたという症例です。その上の先生がいまおっしゃった黒い部分が1万から10万の間にありまして、これは落ちてしまうことになります。
○神山委員 わかりました。
○渡辺職業病認定対策室長 (2)ですが、Score1でもX線で確認できるものと、Score2はScore1よりも大きいですが、X線で確認できない理由は何が考えられますか。
○由佐委員 レントゲンで見ているのは、よく見えやすいところというのは側胸部とか横隔膜の部分です。しかも、その厚さが厚ければ検出しやすいです。CTは、水平断のスライスで見ている。見方の違いがあると思います。
○森永座長 肺野に重なって見えるプラークは、石灰化しないとわからないわけですね。Score2だと5,000本未満の例が26%、4分の1あるわけですが、いいのではないですかという考え方もありますね。
○三浦委員 Score1ですと、まだ胸膜プラークかどうか悩む症例も結構混ざってくる可能性がありますが、Score2でしたら誰が見てもCTで見れば、これは胸膜プラークと言える症例だと思います。そうすると、この検討の(2)でもScore2があれば、ここは一応5,000本あるグループとみなすと捉えてもいいのではないかと思います。いろいろな基準をごちゃごちゃやるよりは、これはアスベストをばく露していることだけは間違いない。そして、誰が見ても間違いない所見であるという観点でいけば、しかも一部これでいきますと4分の1ぐらいは5,000本未満ですが、それは1つのグループとしてみなすとしたほうがいいかなと思います。
○神山委員 今回のは拡がりで、ドイツのように厚みは見ていない。もう因子には入れていないわけですね。
○由佐委員 見ていないです。
○神山委員 これを入れた場合にも、絞れるかどうかというのは検討されたのでしょうか。
○由佐委員 やってみないとわからないですが。
○神山委員 非常に複雑になってしまって、かえって分散してしまう可能性もあるからですね。
○森永座長 厚みは、経過年数が長くなれば厚くなりますよね。経過年数があっても、拡がりがあるというのはわからないですが、厚みに関しては長く経過が経つほど、厚みが出てきますよね。だから、古いプラークは髭みたいなプラークができてきますから、厚みはいいのではないですか。Score2というのは少なくとも片側でも、マルティプルにあるということが実際は原則になると思います。
○神山委員 ポジティブなプラスのほうを明確に示せますよね。
○森永座長 Score1だとプラークでないのも紛れ込んでくる例はありますが、Score2だとプラークの講習を受けた人だったらわかりますね。どうですか。一遍も見たことがない人が言うのは無理だけれども、そういう石綿の講習会を受けたような人が見ると、Score2はわかりますよね。そういう意味では、認知度が上がるとは思います。ほかに何か意見はありませんか。
○宮本委員 もう1つのデータで胸部写真とCTで比較した同じ161例の検討がありますが、私はこちらのほうがより精度が高いのではないかという気がします。その理由は、胸部写真でプラークを確認できて、かつCTでも確認する。そして振り返って、胸部写真で明らかにプラークあるものがXP(+)CT(+)になりますが、これを基準にすると90%は5,000本以上で、かつ少ないのも1,000本ですから、非常に基準がシンプルで細かいことが必要ないのかなという気もします。ですから、写真で明らかにプラークがある。CTで確認する。いまでは日本はCTがどこでも撮れますから、そうした例で翻ってみて、胸部写真で明らかにあるというものであれば5,000本は満たしているという。こちらのデータのほうが、5,000本以下の症例を拾う確立が少ないのではないかなという気がします。
○森永座長 いま、石綿小体が議論になっているので、石綿小体の話を先に行きましょうか。資料4の論点5。石綿小体から次の6のばく露従事期間は、昭和53年の検討会のときに出されてきたものです。当時は当然、石綿小体というのは基本はプレパラートで認めるという話、それから喀痰で認めるというのもあったと思いますが、そういうレベルの話でした。
 それから、当時の座長は瀬良先生という私の恩師ですが、いろいろな疫学調査をレビューして、10年というのが出ましたが、これは石綿製品製造業断熱保温作業者の10年だということです。そういう延長線で、肺がんの認定基準については平成15年度はしていない。そのときから私は座長を務めていますが、肺がんの認定基準は検討していなくて、平成18年にクボタの問題が起こったときに、石綿小体は改めて繊維の小体の数でいこうということになりましたので、そちらで判断する。1本あったら認めるという話ではないという理解ではいたのですが、ちょうど5,000本というものが出たときに、このヘルシンキクライテリアのデータはベルギーのグループのデータも使われているわけで、ベルギーの石綿小体の計測方法については神山法とほとんど同じということも確認しています。ですから、私はこの5,000本というのはヘルシンキクライテリアで言っている小体の方法と同じだと。ベルギーはフランスと比較をやっていて、それもほとんど同じだという答えを出していますから、神山法が大体スタンダードな方法だということも確認を取っていますので、それでいいのではないかなと思いますが、皆さん何かご意見はありますか。石綿小体と繊維。繊維はあとで言います。
○神山委員 先ほどの資料2でいくと、イギリスとフランスは小体等の測定は入っていないようですが、入っていないのですね。ドイツも入っていないのですね。小体計測は外国ではベルギーだけですね。
○森永座長 でも、実際はフランスは測定をやっている。研究レベルではやっていますね。
○神山委員 セバスチャンとかいますから、やっている人はいるとは思いますが、普及度とかこういう基準を設けたときに、やれる人がどの程度いるかとか、そういう問題もあるのかもしれませんね。国ごとに、採用しているところと採用していないところがある。先ほどのプラークあるいはX線所見等で、プラークがばく露レベルとどうかという研究なども含めてですが、相対リスク2倍というものをどれ1つ取っても100%というのがない。100%があれば、その基準だけでいいのかもしれませんが、ないとなると組合せという問題が大きなファクターになってきて、その組合せに矛盾があってはいけないのですが、矛盾のない範囲で組み合わせていくことによって、多面的に救済というか、労災の相対リスク2倍であればそれを漏れなく証明するという観点からしても、いろいろな測定方法があって、それが相互に矛盾なく採用されて行われているのであれば、そのほうがずっといい。労災被害を受けた人のためにもなると思います。
 そういう意味でいけば、先ほどの宮本先生のご質問も確かに科学的には(1)で、XPプラスCTでカチッと切れば、間違いなくリスク2倍以上の人だけが入ってくるわけですが、逆に(2)の次の次のスライドを見ると、Score1で見ていったときに入ってくる人がかなりいらっしゃるわけですよね。Score2に入ってくる。広く拾っている方向へ行っているわけで、(1)は科学的には矛盾なく行くのでしょうけれども、広く救えるのでは(2)のほうが広くなっているということで、私はそちらのほうがいいのではないかと思います。
○三浦委員 その件について戻っていいですか。
○森永座長 関連する話で。
○三浦委員 直接写真でプラークあり、なしを決めるのは、いちばん診断基準が難しいです。最初の千葉労災の230の手術例で、肉眼所見でありの中でX線写真だけが「+あり」というのは、たったの6例の9%です。この9%の率は非常に少なくて、かなり厳密に判断しているという結果、これだけ少ない例がX線写真で「あり」と判断されている。たぶん、これは同じ基準で写真を見直されていると思いますから、厳密な基準で判定された単純写真でのプラーク。その場合には、9割が5,000本以上だということが言えますが、今度は逆に現実に戻ってみると、その厳密な診断基準をどのくらいの人が踏襲してプラークありと判断してくれるかということになると非常に難しくなって、逆にどんどん甘くなってしまうと、単純写真で「あり」と、とにかく言っておこう。それでCTを見たら、これだけの拡がりがあるから、それではということになってしまう。プラークがあるからと。そうすると、CTで見たプラークのScore1も、かなりそちらに入ってくる可能性があります。ですから、ここではヒラーダルが疫学調査に用いたように、厳密なプラークの診断基準を設けておいて、それに合致するものはOKとか、厳密な縛りを付けないと、最初の(1)のデータだけでは診断基準に直ちには用いることができない。ただ、明らかにこれは非常にいいデータですから、なんとかそこを持ち込みたいということは私自身もありますが、そのためにはかなり厳密な診断基準を設けなければいけないと思います。
○森永座長 この石綿小体を測った例は、実際は石綿小体で5,000本以上あれば、それはそれで○になっているわけですよね。神山委員がおっしゃった意味は、資料4でいうと3 or 4 or 5とorでいけば、拾えるのではないかという基準でいけばいいのではないかという意見ですよね。実際はCTを撮っているのだから、CTを使うに越したことはないので、そこが2だと4分の1が5,000本以上ないけれども、それは無視していいのではないかという意見と理解して、Score2という物差しを作ってもいいのではないかということですね。
○廣島委員 いまの(1)を基準にするか(2)を基準にするかという議論ですが、(1)のほうが正確のように見えます。XPとCTでプラークがあるものだけを拾えば、90%以上が5,000本以上であるということで、こちらのほうが正確のように見えますが、5,000本以上であっても、XP(-)CT(+)とか、XP(-)CT(-)という方が出てきますので、そこに拾われない方が出てきます。ですから、ポジティブ・プレディクティブバリューで評価すると、(1)のほうが(2)よりも勝りますが、実はネガティブだった人が本当に陰性だったことも考慮するアキュラシーレートで評価すると(2)のほうが(1)より勝ります。5,000本以上なのに基準を満たさない方をなくすためには、(2)のほうがいいのではないかと思います。
○由佐委員 レントゲンでプラークがあればいいか、CTでScore2であればいいかのどちらかという議論みたいですが、これはorでどちらも入れたらいいのではないかと思います。
○廣島委員 そうですね。当然(1)のいちばん右側はいいですね。5,000本以上と判断できます。また、(2)のScore2も5,000本ある人が74%ですので、これを基準としてもいいのではないかと思います。
○森永座長 orでいけば、落とす率が低くなる。でも、実際はここの例はそこで×になっても、小体数で○になっているわけですよね。
○由佐委員 これは全部計った症例を検討していますので、実際の認定に関わるような例では小体数は計れないものもたくさんあるわけですから、とにかく何らかの条件でor、orで、どれか1つに引っかかってくればいいという考え方で、いま神山先生がおっしゃったのはそういうことだと思いますが。
○三浦委員 私も、その考えは賛成です。ただし、先ほども言いましたように単純写真で胸膜プラークありと言う場合の厳密な基準、確認を。
○森永座長 確認はCTですね。しょうがないよね。
○由佐委員 そこは、その所見がCTで確認できると。
○三浦委員 そうではなくて、逆に言えば単純写真で目を瞑って「あり、あり」と言って、こちらを見ないで勝手になしにしておいて、ありと言った中でCTで確認できたものというと、これは逆に言えばScore1がかなり入ってきます。ですから、単純写真で胸膜プラークがあるということを厳密に言うには、石灰化したこういうものとか、たぶん由佐先生たちが千葉労災の手術例を検討したときには、かなり厳密な基準のめあわせをして読んでいるはずなので、そうでないと、こんなに少ないはずはないと思います。もう少し多いところに落ちてくると思います。ばく露開始からも結構時間が経っている方が多いので。そうすると、単純写真で、ありプラス、それがありという場合には、ほとんど無条件でという場合には、ありの基準を明確にしておかないといけないと思います。
○森永座長 それはそうですね。そこは(2)で行くべきだよね。要するに、もう少し一応全部やれということで。レントゲンorで行く場合は非常にストリクトな診断基準を設けないといけないというのは、本当にそう思います。ですから、そこは(2)で行ったほうがいいのかもわかりません。
○神山委員 もう1つ追加で蛇足ですが、(1)の図と(2)の図の両方を見て、これは石綿小体、相対リスク2倍を基準にして、プラークでどこまでそれが判定できるかということをあくまでもやっているわけで、先ほどの議論もそうですが、石綿小体5,000本が良いか悪いかにこれを使うわけではないわけで、その辺は誤解のないようにしていただきたいということです。例えば(2)の1,000本以上というので見てみたときには、胸膜プラークというのは大体Score1もScore2も収まっているわけですよね。ところが、これが肺がん発症リスク2倍という観点で言っているわけではない。プラークでも、ひどいプラークは2倍以上という観点に使えるかもしれないという目的でこの研究はされたと思うので、そこのところを逆に取ると誤解を与えかねないので。
○廣島委員 ヒラーダルの論文によると、肺がんの発症リスクはプラークがあると1.4倍です。今回は、肺がんの発症リスクが2倍であると考えているわけではありません。ヒラーダルのレポートはコホートスタディで、きちんと予後を見ています。私たちの検討は、予後は見ておらず、現時点でのCTの変化と石綿小体濃度だけを比較していますので、必ずしも肺がんの発症リスクが2倍かどうかはわかりません。要するに、石綿小体濃度5,000本に相当するCT所見あるいはレントゲン所見を検討しました。
○神山委員 そういうことですよね。ですから5,000本という従来リスク2倍という面で見たときには、こういう形になりますということで、それを基準に見た段階での議論をしているわけですが。
○廣島委員 コホートスタディでこれから何十年もフォローすることは不可能です。現時点で基準を組まないといけませんので、コホートスタディはできません。
○神山委員 従来、プラークで疫学1.4倍とかいうのがあったものとも、そう矛盾はしないということだとは思いますが、そのとおりだと思います。
○森永座長 石綿小体については、クリソタイルが一般的には作りにくいということがありますので、そこの議論もしなければなりませんが、時間がないのでそれは次回にします。6の「石綿ばく露作業従事期間を指標とする考え方について」という議論を始める前に、事務局で資料7が用意されていますが、これについていまどこまで行っているのかの説明をお願いします。
○大根中央職業病認定調査官 資料7「石綿肺がんの労災決定事案の概要」です。石綿による肺がんに関する労災保険給付の請求事案のうち、平成18年2月9日から平成22年11月末までに決定した事案が3,008件です。内訳は、支給とされた事案が2,475件、不支給とされた事案が533件となっています。これらについて、資料7の集計項目の石綿ばく露作業、これは認定基準に掲げられている石綿製品の製造工程における作業等で、職種を転々とされる方とそれ以外の方がありますので、それについての一定の分類に基づく石綿ばく露作業、ばく露期間としては、ばく露開始年月日、終了年月日についてのデータを踏まえたばく露期間、もう1つは医学的所見、石綿肺所見の有無、胸膜プラーク所見の有無、石綿小体、石綿繊維所見の有無、本数等と、石綿ばく露作業、ばく露期間、医学的所見という項目について、集計ができるようになりました。次回の検討会で必要なデータ項目について、本日この場でご指示をいただければということで、次回そのご指示を踏まえた形のものを資料として提出したいと考えています。資料7については以上です。
○森永座長 では、どういう集計を出すかということをこの委員の先生方の意見を聞いてやるということですね。
○大根中央職業病認定調査官 そういうことです。
○森永座長 何か意見はありますか。石綿ばく露作業は労災の認定基準で書いている作業で、とりあえずは複数ある場合はどうするのですか。本当はこれは大変ですよ。複数ある場合は、いちばん最初の作業にとりあえず分類してやる。
○大根中央職業病認定調査官 最も長いところを。
○神山委員 よろしいですか。今までに症例がたくさん蓄積されてきていますので、その中に石綿小体数のデータも結構あるだろうと思います。ですから、いまおっしゃっている石綿ばく露作業ごとにでも、発症リスク2倍というか25繊維年というのか、そこに達するまでの期間を石綿小体の本数を指標にしてまとめてみると、ある作業では10年要件には関係なく、早い時期に到達するということがわかるのではないかと思いますので、是非その辺の取りまとめをしてもらえたらありがたいと思います。
○森永座長 事務局、わかりますか。
○大根中央職業病認定調査官 いま、神山委員のほうからご指示がありました形での集約化、表のような形にまとめることが可能と思いますので、それでよろしければ次回、そのものを資料として提出の方向で準備をしたいと思います。
○森永座長 一応、資料4について順番に議論はしてきました。まだ4、5、6が十分にできていませんが、3については審良委員と岸本委員に改めて意見を聞かないといけないと思いますので、もう一度その点も確認をするという意味ではやりたいとは思います。
 びまん性胸膜肥厚の取りまとめをいちばん最初にやったわけですが、ドイツやベルギーはびまん性胸膜肥厚を要件の1つにしている。イギリスは取り外したというややこしい経緯がありますが、これについては肺がんとは絡んできますので、最終的にもう一度議論するということでよろしいですか。あまり大幅に変わるものではないですからね。何かありますか。
○大根中央職業病認定調査官 冒頭の資料のご説明の中でも申し上げたことですが、びまん性胸膜肥厚に併発したと言えばよろしいのかと思いますが、併発した肺がんについて今ほどもお話にありましたドイツ、ベルギーにおいては、びまん性胸膜肥厚の所見ありをもって補償対象とする基準となっていると理解をしていますので、こうしたことからびまん性胸膜肥厚について我が国においても、石綿肺がんの認定要件に加えることが考えられるのではないかなと思っています。すなわち、業務上と認められるびまん性胸膜肥厚の方に併発した肺がんについては、それをもって業務上としてもよろしいのではないかと思いますので、その辺について次回にでもご検討を併せてしていただければなと。
○森永座長 それは、資料1の報告書の21、22頁の話になってくると思います。びまん性胸膜肥厚と、例えば石綿繊維や石綿小体との関連。我が国では幸い、石綿小体の計測ということは労働者健康福祉機構を中心に、いくつかのセンターで精度管理ができた上で、なおかつ測れるようになってきたということで、そちらのデータは日本ではかなりあるわけです。ベルギーはかなりあるみたいです。それをせっかくのことですから、積極的に活用するということで次回までに用意してもらう。資料1に書いてある文献も、もう一度確認しましょう。そうしておいたほうが無難です。びまん性胸膜肥厚は、既にびまん性胸膜肥厚で認定されている人が肺がんを発症したら、それはそのまま認めるほうが手続上、いいということはありますよね。その点について、ここで是非言っておきたいという意見がありましたら、委員の先生方どうですか。
 なければ、次回は石綿小体の話をすると、どうしてもクリソタイルの話が出てきます。資料5-1で、クリソタイルばく露者は少なくとも42繊維年必要だということをヘルシンキクライテリアを作ったヘンダーソン自身が言っています。ですから、25繊維年がいいのかどうかという議論も、クリソタイルの場合は当然一緒にしなければいけませんので、そのことも含めて議論をしたいと思いますし、事務局でいま言った作業がどれぐらいの期間でできるかということもありますよね。それで日程を決めてもらいたいのですが。
○渡辺職業病認定対策室長 いま言った作業というのは、びまん性胸膜肥厚の関係ですか。
○森永座長 作業従事期間の話。もちろん資料1の文献も、もう一遍確認をしたほうがいいという。
○渡辺職業病認定対策室長 びまん性胸膜肥厚の人の小体数がわかるはずだから、それを集めろというような趣旨を。
○森永座長 それは集められないと思う。びまん性胸膜肥厚で、石綿小体を測っているのはほとんどない。肺がんだから手術するので測れるので、日本はないです。だから、それは外国の文献に頼らざるを得ない。石綿の繊維の計測については、それぞれのラボで違うと書いてあるけれども、少なくともヘルシンキクライテリアでレビューしたものについては、意外と一致しているとレビューした人自身が書いています。それは、期間特定の人しかできないから、そう大幅な違いがないということも言えると思う。ただ、SEMでやった評価とTEMでやった評価は並列しないほうがいいかもわかりませんが、その辺は篠原委員、何か意見はありませんか。いまは全部TEMでやっていますが。
○篠原委員 私もよくわかりませんが、SEMでやるのはどちらかというと長い繊維、5ミクロン以上の繊維の評価がしやすいとか、角閃石系の繊維の評価がしやすいとか、そういうできがあるのかなという気がします。
○森永座長 これは一応、ヘルシンキクライテリアはTEMでということになっていますよね。
○神山委員 いまは分析TEMがいちばんパーフェクトというかトータルに評価できて、SEMは利用目的を限れば使えるというぐらいの限定付きになっているのではないかと思います。
○森永座長 では、事務局の作業具合と委員の日程で、みんなが都合のいい日がなかなか見つからなくて、今日も6時という時間になってしまいましたが、日程調整を事務局でお願いします。
○大根中央職業病認定調査官 承知いたしました。
○森永座長 時間がオーバーして申し訳ありませんが、これで終わりたいと思います。皆さん、ご苦労さまでした。


(了)
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