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2011年10月21日 第10回精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会 議事録

労働基準局労災補償部補償課職業病認定対策室

○日時

平成23年10月21日(金)18:00〜20:00


○場所

中央労働委員会第612会議室(労働委員会会館6階)
(東京都港区芝公園1−5−32)


○出席者

(参集者:五十音順、敬称略)

阿部未央、荒井稔、岡崎祐士、織英子、黒木宣夫、清水栄司、鈴木庄亮、山口浩一郎、良永彌太郎

(厚生労働省:事務局)

鈴木幸雄、河合智則、神保裕臣、渡辺輝生、倉持清子、板垣正、西川聡子

○議事

○板垣中央職業病認定調査官 始めに、本検討会は原則公開としていますが、傍聴される方におかれましては別途、配布しております留意事項をよくお読みいただき、静粛に傍聴いただくと共に、参集者の自由な意見の交換を旨とする検討会の趣旨を損なわないよう、会議の開始前後を問わず、ご留意をお願いします。
 定刻になりましたので、ただいまから第10回精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会を開催します。先生方におかれましては、ご多忙中のところ、ご出席いただきまして誠にありがとうございます。検討会を始めるに当たり、資料のご確認をさせていただきます。本日、ご用意させていただいた資料は1頁、資料1「報告書(たたき台)」、61頁、参考として「団体からの意見要望」、以上となります。資料の欠落等ございましたらお申し出ください。写真撮影は以上とさせていただきますので、ご協力をお願いします。
 それでは、座長の岡崎先生、よろしくお願いします。
○岡崎座長 それでは、議事に入っていきたいと思います。前回、第9回までの間に精神障害事案に関する労災認定の迅速化のための多くの論点がございますが、それについてご議論いただきまして、新しい心理的負荷評価表の案も作成されました。前回までにご議論いただいた内容、あるいはいただいたご意見、そういったものをまとめまして、事務局で報告書のたたき台が作成されています。本日は、この報告書について議論をいただくことになっています。よろしくお願いいたします。
 最初に事務局から資料の説明をしていただきたいと思います。資料については8項目ありますが、報告書の全体構成、その後、項目ごとに分けて説明をいただいて、順次、確認しながら進んでいきたいと思います。
 それでは、全体構成からよろしくお願いします。
○西川職業病認定業務第一係長 それでは、事務局から資料の説明をさせていただきます。先ほど座長からお話がありましたとおり、始めに全体の構成についてご説明をさせていただきまして、項目1の「はじめに」について説明をさせていただきたいと考えています。
 まず、全体の構成ですが、先ほどございましたとおり8項目に分かれています。1の「はじめに」ということで、開催要綱等を基に、検討会の開催の背景などについてまとめさせていただいています。
 2番は「検討に当たっての基本的な考え方」で、どういった考え方でご検討いただいたのか、あるいは対象となる精神障害はどういったものか、その精神障害の成因に関する考え方、ストレス−脆弱性理論に関すること、それから業務起因性を考えるに当たって、業務によるストレス、業務以外のストレス、個体側要因、そういったものの関係あるいは、そういったものをどの期間で評価するかの評価の範囲、そして、既に発病している疾病が悪くなった場合の業務起因性の考え方、そういったことについて基本的考え方としてまとめさせていただいています。
 3番は「業務による心理的負荷の評価」ですが、ここを中心にずっとご議論いただいていたところですが、(1)〜(3)では新評価表、のちほど説明させていただきます別添2で前回、前々回とご議論いただいた業務による心理的負荷評価表の新しい表を付けていますが、それに関することをお示ししています。(4)にはその中にも含まれている長時間労働の考え方、(5)では出来事が複数ある場合の考え方、それから分科会を別途設けてご検討をいただいたセクシュアルハラスメントに関することが(6)の構成になっています。
 次に4で、先ほど3で「業務による心理的負荷の評価」についてまとめさせていただきましたが、4では業務以外の心理的負荷と個体側要因の評価としてまとめさせていただいています。
 5は「発病の有無の判断及び発病時期の特定」、6は「療養及び治ゆ」の関係をまとめています。
 次頁の7ですが、これは前回運用でいろいろご議論いただきましたが、「専門家の意見の聴取」でお医者様、法律専門家の方の意見の聴取についてまとめています。
 全体の結論として8で「まとめ」を置かせていただきました。
 最後に、検討会にもお示ししました参考文献を記しておりまして、その後、別添1は資料の頁番号では19頁からになりますけれども、セクシュアルハラスメント事案に係る分科会報告書、こちらの本検討会では第7回にご報告をお願いしましたが、その専門分科会の報告書です。31頁から別添2で、業務による心理的負荷評価表、ご議論いただいていましたストレスを評価するための表を付けています。別添3は、業務以外の心理的負荷評価表で41頁ですが、これはいま使っているものと全く同じですが、業務以外のストレスを評価するための表として付けさせていただきました。
 次は参考で、参考1、43頁にはICD-10の第V章の障害を列挙しています。参考2は夏目先生にお願いしましたストレス評価に関する調査研究の要約、中心部分を参考2で付けさせていただきました。参考3で、57頁ですが、業務による具体的な出来事が現行の表にもいろいろありますし、今回の新しい表でもいろいろご検討いただいたところですが、どのように変わっているかをまとめさせていただいたものです。参考4は、前回ご議論いただいた関係ですが、お医者様の医学的意見の聴取の仕方がこの案ではどのように変わっていくのかを示したものです。報告書としては以上の構成になっています。
 内容で、まず「はじめに」のところだけを説明させていただきますが、(1)検討会開催の背景等で、業務による心理的負荷を原因とする精神障害につきましては、平成11年9月に策定された判断指針に基づき労災認定が行われています。平成22年5月には業務と疾病の間に因果関係があることが明らかな疾病として労基則の別表に掲げる列挙疾病に追加されたところです。こういった精神障害の請求件数は判断指針が策定される直前の平成10年度には全国で42件でしたが、平成22年度には全国で1,181件の請求があり、それだけの数になっていますと共に、これからも増加が見込まれています。こういった状況の中で、精神障害の事案の審査には平成22年度で平均して8.6か月の期間を要していまして、多くの事務量が費されているところです。
 厚生労働省の自殺・うつ病への対策、これは平成22年5月にプロジェクトチームの報告書が出ていますが、ここでも精神障害事案に対する労災手続きの迅速化が言及されていまして、労災請求に対する審査の迅速化は不可欠となっています。そこで、本検討会は厚生労働省からの依頼により審査の迅速化や効率化を図るための労災認定の在り方に関して検討を行ったということで背景等をまとめさせていただきました。
 検討状況ですが、平成22年10月15日の第1回から○回にわたってと、今回で終われば10回、次回があれば11回、先があるかもしれませんが何回かにわたって検討会を開催し、検討を行った。またセクシュアルハラスメントについては、その性質から被害を受け、精神障害を発病した労働者の方の労災請求や労働基準監督署における事実関係の調査が困難となる場合が多いなど、また異なる特有の事情がありますので、より深く実態を把握した上で検討を行う必要があると考え、この検討会の下にセクシュアルハラスメント事案に係る分科会を開催しまして、平成23年2月2日から5回にわたって検討を行い、6月28日付けで分科会報告書をまとめていただき、本検討会に報告されたところです。この報告書は分科会の検討内容を含め、審査の迅速化や効率化を図るための労災認定の在り方に関してこの検討会として取りまとめたものであるということで「はじめに」のところをまとめています。
○岡崎座長 ありがとうございました。いま、報告書(案)全体の8項目から成る構成と、報告書の一等最初の「はじめに」のところの(1)と(2)をご説明いただきました。まず、この全体の報告書(案)の構成についてはいかがでしょうか。ご意見をいただけますでしょうか。「はじめに」、それから「検討に当たっての基本的考え方」「業務による心理的負荷の評価」「業務以外の心理的負荷及び個体側要因の評価」「発病の有無の判断及び発病時期の特定」「療養及び治ゆ」、それから「専門家の意見の聴取」そして最後に「まとめ」という形になっています。そのあとに、参考文献、別添参照があります。特にご意見はよろしいですか。いままで議論をされて、この大項目について検討してまいっておりますので、これについてはよろしいかと思います。
そういうことで、内容に入らせていただきたいと思いますが、その報告書の「はじめに」の(1)と(2)で順番にご意見がございましたらお願いします。いかがでしょうか。(1)は検討会開催の背景、設置の目的ですが、それから(2)は、経過、検討状況ですね。特に(2)ではセクシュアルハラスメントについての要望も踏まえて、分科会を設置しまして、それで別添1にあるような報告書が添付される形になったわけです。いかがでしょうか。特にございませんでしょうか。それではまた後で、ご意見をいただいてもいいと思いますが、このところまではご了承いただいたということにさせていただきたいと思います。それでは、項目2の説明をお願いします。
○西川職業病認定業務第一係長 それでは項目2について説明をします。項目2は検討に当たっての基本的考え方で、(1)はこれまでご議論いただいたうちの第1回のところで、どういった視点でご検討いただいたかをまとめさせていただいています。検討の視点としまして、本検討会では審査の迅速化やそのための調査の効率化に加え、認定の促進は重要な課題であり積極的に推進すべきものであるとの基本的認識のもと、医学的知見、これまでの認定事例、裁判例の状況等も踏まえ、業務による心理的負荷の評価方法に関する事項、審査の手順等の運用体制に関する事項、その他、迅速かつ公正な労災補償を行うために必要な事項について検討を行ったと。検討に当たってはまず、審査に時間を要する理由の1つとして、現行認定の基準の分かりにくさがあると考えられることから、現行の基準の具体化や明確化を行うことができれば審査の迅速化とともに認定の促進が図られるのではないか、精神障害の事案の審査・決定に当たり、現在、すべての事案について行っている、①調査計画の策定、それから②請求人、事業主等の関係者からの聴取書の作成、それから③医証、あるいは労働時間の記録等の関係資料の収集、そして④調査結果の取りまとめと事実認定、さらに⑤精神科医3名で構成する専門部会での協議、⑥その専門部会の結果に基づく業務上・業務外の決定と、そういったプロセスのうち、②や③の調査は事実関係を明確にするために省略をすることができないものの、より効率的に行う方法があるのではないか。それから、認定事実を前提に医学的な因果関係を合議制により判断する⑤の専門部会での協議は、認定の基準での具体化や明確化により省略できるものがあるのではないかと、そういった視点から幅広く検討を行ったとしています。
 (2)で、対象となる精神障害ですが、こちらは第6回でご議論をいただいたところを中心にまとめさせていただきましたが、本検討会が検討の対象としたのは全ての精神障害であり、11年の報告書では対象疾病に関して原則としてICDー10第V章に示される「精神および行動の障害」を対象とするとしていますが、この趣旨は精神障害の分類方法についてWHOが定めた基準を用いることを明示したものであり、全国の精神障害事案を斉一的に取り扱うため、今後もこれを維持することが適当であると。また、これはアメリカ精神医学会による基準、DSMと言われるような基準など、他の診断基準を否定するものではないと。さらに業務に関連して発病する可能性の高い精神障害はICDー10の分類でいうF0〜F4に分類される精神障害であるということ、そのうち、F0及びF1に分類される精神障害については他の認定基準等により頭部外傷、脳血管疾患、中枢神経変性疾患等、器質性脳疾患の併発疾病としての認定が行われるべきこと、F5〜F9に分類される精神障害については業務との関連で発病することは少ないと考えられること、さらにいわゆる心身症は本検討会で検討する精神障害には含まれないこと及び自殺の取扱いに関することについても11年報告書に示された考え方を維持することが適当であると。これは第6回でのご議論と11年の報告書を基に書かせていただいています。
 (3)で、成因に関する考え方(ストレス−脆弱性理論に基づく評価)ですが、これは第1回でご議論いただいたところを基に書かせていただいています。精神障害の成因として、判断指針及び11年報告書が依拠している「ストレス−脆弱性理論」は、平成11年以後の精神医学上の知見を考慮しても、最も有力な考え方といえ、また裁判例においても是認されている。したがって、本検討会においても精神的障害の成因としてはストレス−脆弱性理論に依拠することが適当と考える。(注)としまして、「ストレス-脆弱性理論」は環境由来のストレスと個体側の反応性、脆弱性との関係で精神的破綻が生じるかどうかが決まるという考え方であり、ストレスが非常に強ければ個体側の脆弱性が小さくても精神障害が起こるし、個体側の脆弱性が大きければストレスが小さくても破綻が生ずると、そういった考え方です。この場合のストレス強度は環境由来のストレスを多くの人々が一般的にどう受け取るかという客観的な評価に基づくものによるとしています。
 (4)として、業務起因性の考え方です。アとして業務起因性の基本では業務によるストレス、業務以外のストレス、個体側の要因の関係を書かせていただいています。こちらも第1回、第2回でのご議論を基に書かせていただいています。精神障害に関する労災請求事案については、発病の原因が業務にあることが主張されるが、業務による出来事の心理的負荷が一般には強いと推定される事案であっても、同時期に業務以外の強い心理的負荷が生じている場合や個体側要因が顕著に現れている場合があり得る。このため、精神障害の業務起因性を判断するに当たっては、業務による心理的負荷の有無、程度を判断し、業務以外の心理的負荷や個体側要因についても確認した上で、業務による心理的負荷が認められ、業務以外の強い心理的負荷や個体側要因が認められない場合には業務起因性を肯定する、業務による強い心理的負荷が認められない場合や、明らかに業務以外の心理的負荷や個体側要因によって発病したと認められる場合には業務起因性を否定する従来からの考え方を維持することが適当である。また、出来事によって受ける心理的負荷の強さの程度は個人ごとに差があるが、労災保険制度が補償の対象とする業務上疾病が、業務に内在し、または通常随伴する危険の現実化と評価される疾病であることから、「業務による強い心理的負荷」が客観的に認められることが必要であり、それは一般の労働者にとっても強い心理的負荷を与えると評価される出来事。出来事にはその前後の状況が含まれますけれども、そういった出来事に遭遇したという事実によって判断されると。ただし、労働者の職種や経験等は様々であることから、労働者に与える心理的負荷の程度を一律に定めることは適当でないため、労働者の属性に基づく修正をすることによって公平性を保つ必要があると。したがって、精神障害を発病した労働者と職種、職責、年齢、経験等が類似するものを想定し、そのような者にとって、どの程度の心理的負荷であるかを判断する方法が合理的であり、結局、「同種の労働者」が一般的にどう受け止めるかを判断するこれまでの考え方を維持することが適当であるという形でまとめさせていただいています。
 イは業務起因性の評価の範囲ということで、これは評価の期間についてのことです。第4回のご議論を基にまとめさせていただきました。11年報告書では、次のような理由から心理的負荷の評価の対象となる出来事は発病前おおむね6か月の出来事とするのが妥当とされています。精神障害については、発病から遡れば遡るほど出来事と発病との関連性を理解するのが困難となり、ライフイベント調査では6か月を調査期間としているものが多いこと。一方、各種研究結果においては精神障害が発病する前1か月以内に主要なライフイベントのピークが認められるとする報告が多いこと。ICD-10の分類のF43.1、外傷後ストレス障害の診断ガイドラインが「トラウマ後、数週から数か月にわたる潜伏期間(しかし6か月を越えることは希)を経て発症する」ということにしていること。
 本検討会においても評価期間について検証が必要と考え、ライフイベント調査の状況等を確認したが、面接により詳細な内容の調査を行う場合、6か月を越えると個人の記憶の精度が大きく低下するため、調査期間を6か月以内としているものが多いことや、出来事の発生時期と発病との関係を示す新たな知見が見当たらない現状では、原則として発病前、おおむね6か月以内の出来事を評価するとの現行の取り扱いを維持するのが適当であると考える。ただし、いじめやセクシュアルハラスメントのように出来事が繰り返されるものについては、分科会報告書で指摘されているとおり、繰り返される出来事を一体のものとして評価することから、これが発病より6か月よりも前に開始されている場合でも、発病前6か月以内の期間にも継続していれば開始時からの行為を評価をすることとなる。また、発病前、おおむね6か月より前に業務により負傷し、療養中の労働者について、社会復帰は困難であるという状況が継続している場合には、発病前、おおむね6か月以内の社会復帰が困難な状況をとらえて、「重度の病気やケガをした」という出来事として、強い心理的負荷があったと評価すると。なお、本人が主張する出来事の発生時期が6か月より前である場合であっても、実際には6か月以内の出来事が発病の原因となっていることもあるので、そのような場合には発病前、おおむね6か月における業務内容やその変化等について調査をし、業務内容の変化や新たな業務指示等が認められるときにはこれを出来事として評価すべきであると。また、発病前、おおむね6か月以内には業務による出来事が認められない場合でも、その間に長時間労働がある場合には、(4)のイは労働時間が長い状態を出来事として評価することを示した新しい評価表についてのところですが、それにより、それが出来事になるものであることに留意する必要があると。
 ウでは、既に発病している疾病の悪化の関係です。こちらは第5回にご議論いただいたことを基にまとめさせていただいています。既に軽度の精神障害を発病している者が、新たな心理的負荷を要因として精神障害を重症化させることは、臨床において経験することがある。このため、既に業務外の精神障害を発病している者が、発病後に生じた業務による心理的負荷が要因となって、精神障害を悪化させることは有り得ると考えると。しかしながら、一般に既に精神障害を発病している者は、病的状態に起因した思考から、自責的・自罰的になり、ささいな心理的負荷に過大に反応をするのであり、悪化の要因は必ずしも大きな心理的負荷によるものとは限らない。また、自然経過によって悪化する過程において、たまたま業務による心理的負荷が重なっていたに過ぎない場合もあると。このような精神障害の特性を考慮すると、悪化の前に強い心理的負荷となる業務による出来事が認められたことをもって、それが精神障害の悪化の主たる原因であるとまで判断することは現時点では医学上困難であり、したがって、業務起因性を認めることも困難と言わざるを得ない。本検討会では、これらの事情も勘案し、既に精神障害を発病している方本人の要因が業務起因性の判断に影響することが非常に少ない、極めて強い心理的負荷があるケース。具体的には「特別な出来事」に該当する出来事があり、その後、おおむね6か月以内に精神障害が自然経過を越えて著しく悪化したと医学的に認められる場合については、その心理的負荷が悪化の主たる原因であると推認して、業務起因性を認めるのが適当との結論に至ったと。また、精神障害で長期間に通院を継続しているものの、症状がなく、寛解状態にあり、または安定していたという状態で通常の勤務を行っていた方の事案については、ここで言う発病後の悪化の問題としてではなく、治ゆ後の新たな発病として判断すべきものが少なくないことや、発病時期の特定が難しい事案について、些細な言動の変化を捉えて発病していたと判断し、それを理由にその後の出来事を発病後のものと捉えることは、適当でない場合があることに留意する必要があるという形でまとめさせていただいています。
○岡崎座長 2の検討に当たっての基本的考え方について、ご説明いただきましたが、ここも何回か議論されたところであります。どうぞ、ご意見をいただければと思います。
○阿部先生 よろしいですか。レジュメの5頁のウの「既に発病している疾病の悪化の業務起因性」の既往歴がある人の取扱いなのですが、結論的にはちょっと文言が狭くなる誤解があるのではないかと思い確認です。確かここでの議論では既往歴がある人についても、全く業務外とするのはよくない一方で、業務上とするときにも、労災という性質上、特別に配慮することはできないので、一般の労働者と同じような基準で判断しましょうということだったと思います。強い心理的負荷だと、基本的には業務起因性が認められず、極めて強い心的負荷がある場合に認めるとすると、一般的な労働者とは異なる判断基準になりずれてしまうのかなと思ったのですが、その点を確認していただければと思います。
○岡崎座長 いかがでしょうか。
○阿部先生 事務局の説明だと、もともとの病気が悪化した場合と区別をするためにこのような表現にしたということだったでしょうか。
○渡辺職業病認定対策室長 この点については、何度かこの検討会でも議論がなされて、最終的にこういう形でということで、まとまったということを文章化させていただいたつもりでございますけれども。
○良永先生 私のほうからも少しよろしいですか。いま、阿部先生のほうからご指摘ございましたけれども、文章によって、論理的にちょっとわかりにくいなという感じもするのですね。というのは、既に発病している疾病があって、それが業務上の要因とはいえ、些細な負荷がかかったら、過大に反応するケース。また、たまたま業務による心理的負荷が重なっていたりする場合もある。それはそうであると思いますけど、その次の件は、悪化の前に強い心理的負荷となる業務による出来事が認められたケースを、主たる出来事とまでは言えないという件が、ちょっとわかりにくい。強い負荷がかかった場合には、それは病気をしておろうがおるまいが、発病する、いわゆるIIIランクで評価するということなので、病気をしていた人に強くかかった場合、それは無視するというふうに読めるのですよね。
○阿部先生 そうですよね。
○良永先生 特別な出来事がある場合、例外をと続くので、ちょっとその辺落差があるなという気はするのです。いま、阿部先生のご指摘を聞いてそう思いましたね。
○岡崎座長 事務局は、そこのところの説明はどうでしょう。
○西川職業病認定業務第一係長 前半の説明で誤解があったかもしれませんが、ここで書いておりますことは、誠にそういったことで、いわゆるIIIといいますか、強い心理的負荷だけでは、それが悪化の主たる原因かどうかというのはわからないので、そういった場合に業務起因性を認めるのは難しいのではないかというご議論があった。第6回のときにご議論いただいたときに、まず療養中の方は他の人よりも緩やかに認めるべきではないかというようなご議論がまず出て、いやそうではないのだというようなお話があって、全く同じでいいのかどうかというお話になったときに、いろいろありましたけれども、最後のまとめとしては、いろいろ今後検討が必要なところもあるけれども、少なくとも心理的負荷が非常に強い、まさに特別な出来事のような、極度の出来事があった場合には、少なくとも業務上があると認めるということについては、先生方のご意見は一致したのではないかというようなおまとめをいただいておったと考えておりまして、それを表現させていただいたのがここということです。
○阿部先生 そうすると、同じ業務の負荷がかかったとしても、ちょっと厳しく判断するという方向ですね。一般的な人と同じように、特段の配慮はしないが、同じようにと私の中で理解していたつもりでおりましたので、ちょっと厳しいのかなと思った次第です。
○岡崎座長 こういう表現を入れると、いまの悪化の前に、ウのパラグラフで言うと3つ目の、「悪化の前に強い心理的負荷となる業務による出来事が認められることをもって、ただちにそれが精神障害の悪化の主たる原因であるとまで判断することは、現時点では医学上困難であり」という表現、「ただちに」と入れても、ニュアンス、先生がおっしゃったこととは異なりますかね。このパラグラフの最初にありますように、既に精神障害を発病している者は、病的状態に起因した云々からなり、些細な心理的負荷に過大に反応する。これが全てかどうかと言われるとわからない。「するのであり」というのは、全てというふうに読み取れますが、「するのであり、悪化の原因、要因は、必ずしも大きな心理的負荷によるものとは限らない」というのが前提としてありますよね。ここを変えないといけないということになりますね。
○渡辺職業病認定対策室長 よろしいでしょうか。
○岡崎座長 解決策を。
○渡辺職業病認定対策室長 この、多分先生方のご議論の中のロジックというのは想像ですけれども、通常は、まず個体側の要因というのは置いておいて、まず業務によるものが強いかどうかと判断をして、強いものがあって、それでその後に個体側要因がどれだけありますかって、個体側要因が強くて、どうもそっちが原因だと判断した場合には、これは強い業務負荷があっても駄目なんですよね、業務外になる。このケースの場合は、先にもうそれがはっきりしているので、まず先に個体側要因というものを評価して、それがもう原因であるようなものを先に除外してしまうというような、ロジック的にはそんなことになっているのかなという気がするのですけれども。
○荒井先生 よろしいですか。既往歴と、現在発病して症状がある。例えば急性期であるというのとは分けないといけないと思うんですよね。先生、既往歴とおっしゃった。
○阿部先生 現在、軽度の発病中の人と、過去にあったけれどいまはないっていう。
○荒井先生 そうです。いまは症状がないという方については、一般健常者と同じに扱うし、いま症状がある方については、与える心理的負荷についての評価がなかなか難しいというので、それは「ただちに」という座長がおっしゃったような言葉で、それは個別の案件で決めていくことになるだろうだろうなと思います。ですから、既往歴は、一応、既応というのは、後遺症なく、後遺障害、症状固定かもしれませんが、いずれにしろ症状が安定しているということは次のパラグラフにあることだと思うのですが、ただ、いま発病中の人です。
○阿部先生 業務外で発病中の人に。
○荒井先生 業務外かどうかもわかりません。いずれにしろ。
○岡崎座長 特定しなくて。
○荒井先生 症状が軽い重い、いろいろあると思うのですが、症状がいまある、現にあって、我々で言えば急性期と。まだいろいろ変性する可能性がある時期の方という方に対してのことではないのですか。
○阿部先生 現在進行形の方ということですね。
○渡辺職業病認定対策室長 もう、いままさに治療をされている、治療をしてないかもしれませんが、発病して症状のおありになる方の場合。
○阿部先生 はい。
○岡崎座長 むしろ問題になるのは、後半のほうの、寛解ないし症状固定の方が多いのではないですかね、現実的に。そうとも言えないですかね。
○荒井先生 既往歴をお持ちの方は、たくさんいると思います。
○岡崎座長 その場合の扱いは、明解に決まってるわけですね。
○阿部先生 現在進行形についても、基本的には普通の人と同じ、業務の起因性について個体側要因は別に置いておいて、その業務自体について心理的負荷がどのぐらいかというのを見ましょうというのだったと思ったので、そうすると、何か個体側要因とそこのところがごっちゃになっているような気がして。
○河合補償課長 よろしいですか。おそらく、議論の中でもそうだったのですけれども、既に発病しておられる方というのは、どのようなストレスで発症するというのは、現在の医学的治験で、もしくはストレス−脆弱性理論も含めてそうなのですけれども、ちょっとまだはっきりわからないと。わからないので、それは別の小さなストレスで発症するかもしれないし、私的要因で何かあるのかもしれないけれども、だから、医学的には現時点ではわからないけれども、例えば特別な出来事というのは、どういうものを意味しているかというと、出来事後を考慮する必要がないような、そういう意味では、出来事後を考慮すべき「強」と言われるストレス要因とは、やはり質的に違う大きさのストレスなので、そういう特別な出来事が起こった場合には、仮に既に発症している人であっても、業務上として捉えることに合理性を有する。考え方としては、そこの部分については、業務上として見るべきでなのではないかというふうに、そういう意味では広く捉えて、考えるというのは、いまの医学的知見という意味ではないかなと。先ほどおっしゃいましたように、既に既往歴がある方というのは、また後の話になりますので、別にストレスというのは、通常の一般労働者と同じように、そこの部分は当然考えていくべきではないかと。そういう形を取らないと、精神医学は、これからもっともっと進んで行くと思いますけれども、現時点では、ここを捉えるのが合理的なのではないかということで、原案としてはこういう形になっているのですが。
○岡崎座長 こちらは前半のほうだから、現在病状がアクティブな方と考えたほうがいいと思いますね。後半は、寛解ないし治ゆと、症状固定と労災ではなっていますけれども、という状態の方に対してはどうするかというのは分けて考えると、こちらのほうがやっぱり、そういうアクティブな状態ですので、実際、いろいろな業務以外のストレスの影響にしても、なかなか影響かどうかというのは、見分けにくい状態であるので、やはり、あまり異論を挟むことができないようなストレス状況があって、もう1つは、自然経過とは異なる経過がその結果として生じたという、ある程度明確な基準にしないと、なかなか判断できないだろうという、そういうことだと思うんですけどね、この記載は。多くのケースは、後半のほうに該当することが多いのではないのですかね、既往歴のほうで。
○織先生 すみません、質問よろしいでしょうか。いまの座長の説明で、非常によくわかったのですが、ちょっと確認なのですが、例えば既に業務外の精神障害を発病している者という表現は、イコール症状が続いていて、寛解者とか治ゆ者を含まないということなのでしょうか。ぱっと読むと、発病している者というふうに言われると、イコール現に症状がある人というふうに狭く受け止めない人もいるかなと思うのですが。
○岡崎座長 そこはどういうように書かれて。
○西川職業病認定業務第一係長 趣旨としては、まさに治療が進行中の方というか、症状を現にお持ちの方という趣旨でございますので、ちょっと、いわゆる既往のある方ということまで含まれてしまうように誤解を招くということであれば、書きぶりの修正を。
○織先生 そうですね。そのように工夫してしていただけるとありがたいと思います。それと、もう1点、似たような言葉で、悪化の要因という言葉と、悪化の主たる原因ということで、原因と要因を区別されて書かれているのですが、これはどういう区別の使方なのでしょうか。
○西川職業病認定業務第一係長 たくさんあるものを要因と書きまして、主たるものというのは1個ですので、それを原因と表現したのですけれども。
○織先生 要因というのは複数のもの。
○西川職業病認定業務第一係長 どれが主因かまだわからない状態の並んでいるものを。
○河合補償課長 そこは、事務局でも意見が分かれて、原因ばかり出てきてどうなるんだという話になって、ちょっと分けて書いているのです。
○織先生 これ、よろしければ、コメ印か何かで、欄外でちょっと書いていただけるとありがたいかなと思います。
○岡崎座長 通常の用語の使用もそうですかね。原因と要因と。
○河合補償課長 原因のほうが。
○岡崎座長 原因でも複数のものを指して集合的な概念として原因という場合もあるでしょうがね。ここでは、そういうふうに使っていますよということを特定したほうがいいですかね。
○荒井先生 精神医学の中では、リニアコーザリティー、直線的因果律は否定されているわけです。例えば、私が申し上げたいのは、たまたま統合失調症なのですけれども、統合失調症については、直線的な因果律は否定されてきつつあると言ったらいいのでしょうか。
○織先生 ストレス的に。
○荒井先生 原因ですね。出来事があって、その出来事によって統合失調症が発病するという、直線的因果律は否定的であって、要するに引き起こされたと。
○河合補償課長 日本語にするには、どうすれば。要因のほうが正しいのですか。
○荒井先生 要因だと思うんですね。要因の中、要するに要因の中のストレスの1つがトリガーになってる、引き金になってる。
○黒木先生 ということは、原因という言葉はないということなのですか。主因と。
○荒井先生 主因。
○黒木先生 副因も加わると。
○荒井先生 それは、あり得るだろうと思う。私はたまたま、統合失調症の理論で申し上げたので、直線的な因果律は否定されているわけですが、例えば、急性ストレス反応は、直線的な因果律なわけですよね。だから、あるストレスがあって、それが原因となって急性ストレス反応が起こった。その場合には、原因という言葉を使えると思うのです。ただ、いろいろな主因があって、その中のどれがどういう副作用をしたかわからないけれども、ある病状が出てきた場合に、それぞれを要因というふうに表現されたほうがいいのだろうと。要因がたくさん集まって、原因となったというべきなのでしょうね。
○河合補償課長 なるほど。
○岡崎座長 これは。
○河合補償課長 もう1回、解説してみます。
○岡崎座長 追加しますか。
○河合補償課長 それとも、ここ自体を変えていくか。
○織先生 それと、前の頁に、成因というのも出てくるのですが、ちょっと医学的な素人からすると、成因と要因と原因は、多分報告者の意図としては、明確に区別されていると思うのですが。
○岡崎座長 成因は別ですね。
○織先生 ちょっとわからない。
○岡崎座長 やっぱり解説したほうがいいですかね。
○織先生 できれば、欄外に書いていただけると、より報告書がわかりやすくなるように思います。
○岡崎座長 そうしましょうか。いいですか。
○山口先生 この文言は、要因と原因とに分けて整理されたのですね。
○河合補償課長 一応は、されています。特にここのところは、やはりどう表現するかという。別に恣意的になっているわけではなくて、どっちが原因で、どっちが1つの要因かなという感じであるのですけれども。
○山口先生 いままで拝見してきて、要因というのは、発症に作用するいろいろな因子がある、その1つだということでしょう。原因というのは、作用の仕方が要因と違うというのです。それを荒井先生は、直近とおっしゃっておりそういう考え方もあり得ると思います。英語でもそういういろいろな要素があるとき、特別なものを直近、ダイレクト&プロキシメイトというから、それでしょう。黒木先生が言われたのは、おそらく主因、メジャーか、あるいは決定的、デセシブということでしょう。考え方としてはあり得るから、言葉としてフィットしたのを使えばいいということではないかと思います。
○荒井先生 実際に、メインとマルチファクタ、他要因の差はあるのだろうと思います。もう本当に、その日から症状が起こる方と、そうではなくて間があいて、起こってくる方と、そういうのでも主要因が原因と考えられると思ってるんです。
○岡崎座長 いずれにしましても、ここで使用されているのが、一般的に正しいかどうかというのがよくわからないので、ここではこういう意味で使っているというのを解説することにしましょう。そのほうが、親切だと思います。それで、いまの(2)のウの後のほうになりますと、寛解状態とか、症状固定後のケースの場合がここに出ておりますが、おそらくはこちらのケースが多いのではないかと思いますが、ここはよろしいですね。前半のほうは、非常に強い業務起因性のストレスがあって自然経過から外れたという、この表現は非常にいい表現だと思いましたが、基準が設けられて、後半のほうは、これは新たな発病として判断するという、そういう扱いにすると。その場合でも、勿論注意することはございますけれども、そういった記述がなされていまして、両方組み合わせると、かなりカバーできるのではないかと思うのです。では、一応、そういうことで、先ほどのただちにというのは、特別入れなくてもよろしいですね。
○鈴木先生 入っていたほうがよろしいですね。
○岡崎座長 入ったほうがよろしいですか。
○鈴木先生 入ったほうが、明確ですね。
○岡崎座長 では、入れることにしましょう。
○鈴木先生 もう1つ、細かいことですが、真ん中の頁の2頁というところで、(2)下から6行目、世界保健機構(WHO)とありますが、普通は、世界保健機関。
○西川職業病認定業務第一係長 失礼しました。
○鈴木先生 厚生労働省の人に言わせると、そういうことになりますので、是非よろしく。
○山口先生 そこのアメリカ精神医学会による議論、DSMも、普通、DSM IVを使ってるんじゃないですか。
○荒井先生 変わりまして。
○山口先生 変わったのですか。
○荒井先生 変わりまして、DSM Vを準備されて、ICDも同じで11が。
○山口先生 もう11が出るのですか。
○荒井先生 出るので、それによってもフレームワークは変わると思うのですが、いずれにしろ、ICDなり、DSMという体系は維持されるのだろうということだと思うんですが。
○岡崎座長 現行のを書いておけばよろしいですかね。
○職業病認定業務第一係長 現行と言ったら、DSM IV-TR。
○岡崎座長 DSM IVTRとICD10ですね。
○荒井先生 細かいことなんですけど、4頁の下のほうの、しかし6カ月を超えることの「希」にのぎ偏がいりませんかしら。
○岡崎座長 のぎ偏が抜けてる。
○河合補償課長 私も国語字典を繰ったんですよ。だから。
○荒井先生 2つあるのですね。
○河合補償課長 両方載ってて、私もちょっとここが気になってですね。
○荒井先生 のぎ偏のほうが、多いような気がします。
○河合補償課長 わかりました。
○西川職業病認定業務第一係長 申し訳ありません。ガイドラインが平仮名でしたので、平仮名にさせていただきます。
○荒井先生 それでもいいと思うのですけれども。
○河合補償課長 いずれにしろ、この希望の希を、「まれ」はちょっとあれかもしれません。
○黒木先生 5頁の下から3行目。「既に精神障害を発病している者」これ、カンマか何かですか。
○岡崎座長 「者本人」でいいのですか、これ。
○西川職業病認定業務第一係長 「者本人」のつもりでしたが。
○黒木先生 者。
○西川職業病認定業務第一係長 患者ということではなく、「方」といいますか、者、人という意味のつもりでありましたが、ちょっとわかりにくいですか。
○黒木先生 発病している本人ですか。
○西川職業病認定業務第一係長 はい。「者」はいらないですかね。
○岡崎座長 こういう表現、難しいですよね。最近は、何々している「方」とか書いたりする場合もありますし、なかなか。では、このままでいいですか。それをしている者本人という表現ですよね、これは。何かほかに変わる表現がございますか。
○黒木先生 はい、ほかにないと思います。
○河合補償課長 そこは、労働者なんですよね、我々が取り扱えるのは。そういう意味では、やっぱり、労働者とか、いろいろこのときも考えたのですけれども、労働者本人が、例えば既に精神障害を発病している労働者本人の要因がとか、こうすれば、労災なので。では、労働者にするということでよろしいですか。
○岡崎座長 最近も一番それが。
○山口先生 これは病気の発症の過程のこと言ってるんでしょう。給付の対象にする、しないというようなニュアンス何もないんだから、労働者と言ったほうがいいのですか。言っても間違いだとは思わないですけど、何かそう限定しなきゃいけないような意味があるのかなという気がします。
○岡崎座長 行政分野的にそれが1番標準であればそうしたほうがいいかもしれませんが、私ども医学的には、文書ではあまり労働者と出てこないものですから。
○河合補償課長 医学的には、者でよろしいですか。
○西川職業病認定業務第一係長 最初、患者であるべきと思われた。
○黒木先生 ちょっと繋がらない。
○西川職業病認定業務第一係長 ちょっと繋がらないですね。
○鈴木先生 このあたり、業務起因性だから、労働者でいいじゃないですかね。
○西川職業病認定業務第一係長 ご相談をさせていただきます。
○岡崎座長 ただ、我々も慣れてないだけで、労働者というのが一般的でしたら、そのほうがいいのではないでしょうか。
○西川職業病認定業務第一係長 よろしければ、労働者で。
○岡崎座長 では、そういうことで統一をしていただくということで、よろしいですかね。他にはいかがでしょうか。では、特にないようですので、一応、項目2は終わりまして、それでは項目3のご説明をお願いいたします。項目2のほうは、先ほど出たご意見を基に修正をしたいと思います。では、お願いします。
○西川職業病認定業務第一係長 それでは、項目3についてご説明します。項目3は「業務による心理的負荷の評価」ということで、第2回から前回の第9回まで多方面からこの観点についてご検討いただいたところです。特に第7〜第9回について心理的負荷評価表についてご議論をいただき、それを(1)〜(3)にまとめております。(1)は、業務による心理的負荷評価表ですが、本検討会は、上記2の基本的考え方に基づき、業務による強い心理的負荷が認められるか否かの判断の基本となるものとして、新たに「業務による心理的負荷評価表」を作成したと。別添2、31頁ですが、確認をいただければと思います。前回の検討会に提出したものとほとんど変わりませんが、検討会でのご指摘に合わせて字句の修正をさせていただいたところがありますし、例えば32頁の①事故や災害の体験の、重度の病気や怪我をしたというところですが、「重度」の病気や怪我をしたとか、仕事内容、仕事量の「大きな」変化があった、「ひどい」いじめ、嫌がらせを受けたというところは、評価が出来事に入っているものについて、それぞれ括弧書きという形でさせていただきました。
 こういった「重度の」という程度を前提として、平均的な心理的負荷の程度はIIIですということで「重度の」と書いておりますが、あくまで括弧書きとして「中」であったり、「弱」であったりする場合は「重度の」ではないという趣旨で括弧書きにしております。ほかのものについても同じで、36頁の15の大きな変化を生じさせる出来事があったと、これは大きなということを前提にして平均的にはIIで、典型的に想定される例は「中」ということですが、「大きな」でなければ「弱」だと。「大きな」でなくてもこの出来事で拾うのだが、それは「弱」だという形で整理しております。前回のご指摘でそういう所を直させていただいております。
 戻りまして、資料全体の8頁、真ん中の頁で6頁です。こういった新評価表を作成し、新評価表においては業務による強い心理的負荷が認められるものを心理的負荷の総合評価が「強」と表記し、業務による強い心理的負荷が認められないものを「中」又は「弱」と表記しています。なお、「弱」というのは、日常的に経験するものであって、一般的に弱い心理的負荷しか認められないものであり、「中」は経験の頻度はさまざまであって、「弱」よりは心理的負荷があるものの、強い心理的負荷とまでは認められないといったものを指して書いております。
 (2)は、新評価表の出来事等の見直しです。本検討会は厚生労働省が平成22年度に行った「ストレス評価に関する調査研究」、日本産業精神保健学会に実施していただいたものについて検討した結果、ストレス調査は規模が大きく、対象業種等も広汎であるだけでなく、現行の職場における心理的負荷評価表に掲げられた具体的出来事の心理的負荷の大きさを網羅的に調査した唯一の研究であり、かつ、ストレス研究の専門家等によって選定された職場で実際に見られる新たなストレッサーについても調査した優れた研究であると評価し、その結果に基づき現行の評価表に示す出来事の平均的な心理的負荷の強度を見直した。また、これと併せ、各請求事案における「具体的出来事」への当てはめを容易にさせる観点から、類似する項目、極めて頻度が小さい、請求件数が少ないといった項目は他の項目と統合する。さらに最近の職場環境の変化に伴い、業務による心理的負荷として感じられることが多い出来事は追加するという見直しを行った。このほか、「具体的出来事」の一部について、より正確な表現とする趣旨の修正を行っている。
 さらに「出来事の類型」についても、分かりやすさの観点から、類似するものは統合するとともに、セクシュアルハラスメントについては、「対人関係のトラブル」という分類から想定される対人関係の相互性の中で生じるものに限らないとする分科会報告書に基づき、これを独立した類型とした、ということで現行の表と新しい評価表の見出し、あるいは評価、類型の違いについては参考の3の57頁にまとめております。ここの中身については、前回までご議論いただいたものと同じですので、特に新たなものではありません。
 (3)の新評価表の考え方ですが、新評価表は次のような考え方に基づき作成されています。アは、特別な出来事の評価。出来事それ自体の心理的負荷が極めて大きいため、出来事後の状況に関係なく強い心理的負荷を与えると認め得るものについては、「心理的負荷が極度のもの」と整理した。また、数週間にわたり生理的に必要な最小限度の睡眠時間を確保できない状況を、その期間における労働時間数として示し、これを「極度の長時間労働」として、強い心理的負荷を与えると認め得る出来事とした。これらの出来事については、その事実が認められれば、その事実のみで業務による心理的負荷を「強」と判断できる特別な出来事として新評価表の冒頭に掲げています。なお、これら特別な出来事に該当しない場合は、下記イにより関連する「具体的出来事」に当てはめ、その心理的負荷の強度について、さらに検討することとなる。特別な出来事に該当しないから業務外ということは、当然そういったものではない。さらに検討しますということです。
 イは、特別な出来事以外の評価ですが、判断指針では、業務による心理的負荷の強度の評価は、原則として発生した出来事を職場における心理的負荷評価表に記載された「具体的出来事」に当てはめる。さらに、その「出来事」自体の心理的負荷の強度を事案に応じて修正・評価する。さらに「出来事後の状況が持続する程度」というものも評価を行って、これらの組合せにより総合判断をするということにしており、現行の評価表もこれに沿った形式となっております。
 しかしながら、このような「出来事」及び「出来事後の状況が持続する程度」を、個々に評価するやり方は複雑であるとともに、ほぼすべての事案について、精神医学に関する高度な知識に基づく判断が必須となると。ですから、専門部会が必須となっている。また、対人関係のトラブルについては、1回の出来事の心理的負荷が弱いものであったとしても、一定期間反復継続することによって、強い心理的負荷と評価できるものがありますが、このような場合には「出来事」と「出来事後の状況が持続する程度」というのを、個々に評価する方法では総合評価に齟齬が生じやすいと考えられる。このため本検討会は、「出来事」及び「出来事後の状況が持続する程度」を別々に評価する現行の方式を一括して評価するという方法に改めることとし、新評価表はそれに対応するものとした。
 このため新評価表では「特別な出来事」以外の出来事に関して、まず「具体的出来事」ごとの平均的な心理的負荷の強度、強いほうから「III」「II」「I」の3段階を示した上で、「心理的負荷の総合評価の視点」として、具体的出来事ごとに典型的に想定される検討事項、すなわちその出来事自体の内容、出来事ごとに一般的に起こる「出来事後の状況」等、その出来事に伴う業務による心理的負荷の強さを総合的に評価するための視点を明示し、これらの全体を検討して出来事と出来事後の状況を包含したものである心理的負荷の相対を「強」「中」「弱」の3段階で評価するものとした。
 さらに具体的出来事の内容に関わらず、総合評価に際して共通に検討する事項として、①出来事後の状況の評価に共通の視点。②恒常的長時間労働が認められる場合の総合評価の取扱いを別掲したということで書いております。
 ウの出来事ごとの総合評価の具体例ですが、本検討会は、上記イのほか、具体的出来事ごとに心理的負荷の総合評価が「強」「中」「弱」と判断される具体例や、あるいはその判断に当たって参考となる解説を新評価表に示すこととした。上記イの「心理的負荷の総合評価の視点」や、出来事ごとの総合評価の具体例は、次の考え方に基づき示しているということで、類型①の「事故や災害の体験」という1番の類型については、出来事自体の心理的負荷の強弱を特に重視して評価しています。そのほかの類型の出来事については「出来事」と「出来事後の状況」の両者を軽重の別なく評価しており、総合評価が「強」と判断されるのは次のような場合である。
 1つ目のパターンは、出来事自体の心理的負荷が強く、その後にその出来事に関して一定の対応が行われている場合。2つ目のパターンは、出来事自体の心理的負荷は中程度であっても、その出来事に関する対応が特に困難を伴っている場合。いずれにしても具体例はあくまでも例示ですので、表の具体例に示しているもの以外は「強」にならないというものではないということです。
 (ウ)は、上記(イ)のほか、いじめやセクシュアルハラスメントのように出来事が繰り返されるものについては、繰り返される出来事を一体のものとして評価し、その「継続する状況」は心理的負荷が強まるものとしております。
 (4)の長時間労働の心理的負荷の考え方は、評価表の中に含まれていることですが、ア、イ、ウで3種類の評価の形を示しております。アは極度の長時間労働ですが、本検討会は11年報告書と同じく、極度の長時間労働。例えば数週間にわたる生理的に必要な最少限度の睡眠時間を確保できないほどの長時間労働は、心身の極度の疲弊、消耗を来し、うつ病等の原因となると考える。臨床経験上、発病直前の1カ月に概ね160時間を超えるような時間外労働を行っていた場合や、同じく直前の3週間に概ね120時間以上の時間外労働を行っているような場合には、ここでいう「心身の極度の疲弊、消耗を来し、うつ病等の原因となる場合」に該当するものと考える。なお、ここでいう時間外労働とは、1週40時間を超える労働時間をいうが、労働時間数は長いものの、手待ち時間の割合が多く労働密度が特に低いような場合には、心身の極度の疲弊、消耗を来すとは評価できないものであるから、単純に時間外労働時間数のみで判断すべきではないということを注書きしております。
 イは、長時間労働それ自体の「出来事」としての評価で、出来事表の項目の16の関係ですが、これまでは極度の長時間労働の場合を除き、長時間労働それ自体は心理的負荷の生じる出来事としては評価していなかったところですが、本検討会はストレス調査の結果も踏まえ、特に他に出来事が存在しない場合を想定して、長時間労働それ自体を出来事とみなして新評価表に盛り込み、その心理的負荷を評価することができるように改めた。
 ウは、恒常的な長時間労働による総合評価は、本検討会は11年報告書と同じく、出来事に対処するために生じた長時間労働は心身の疲労を増加させ、ストレス対応能力を低下させる要因として心理的負荷の総合評価に当たり、考慮すべきものと考える。さらに長時間労働は、一般に精神障害の準備状態を形成する要因となっているとの考え方も考慮すれば、恒常的な長時間労働の下で発生した出来事の心理的負荷は、平均よりも強く評価される必要があると考える。
 これらを踏まえ、恒常的な長時間労働(月100時間程度となる時間外労働)が出来事の前又は後に認められる場合には、業務による心理的負荷の総合評価を次のとおりとすることが適当であるということで3種類挙げており、①具体的出来事の心理的負荷の強度が、労働時間を加味せずに「中」程度と評価する場合であって、出来事の後に恒常的な長時間労働が認められる場合には総合評価は「強」とする。②具体的出来事の心理的負荷の強度が、こういった恒常的な長時間労働を加味せずに「中」程度と評価される場合であって、出来事の前に恒常的な長時間労働が認められ、出来事後すぐに概ね10日以内に発病に至っている場合又は出来事後すぐに発病には至っていないが、事後対応に多大な労力を費した後発病した場合には総合評価は「強」とする。③具体的出来事の心理的負荷の強度の評価が、労働時間を加味せずに、「弱」程度と評価される場合であっても、出来事の前及び後の両方に恒常的な長時間労働が認められる場合には、総合評価は「強」とする。これで締めております。
 (5)は、出来事が複数ある場合の考え方として、精神障害の発病に関与する業務による出来事が複数ある場合、業務による心理的負荷は全体を総合的に評価される必要があります。ただし、実際の事案では、その状況が多様であることから、一律の評価方法を示すことは困難である。一方、ある出来事の直後にその出来事が生じた場合や、ある出来事に関連する次の出来事が生じた場合には精神障害を発病しやすいという臨床経験上の意見を参考に、本検討会は次のように取り扱うことが適当と考える。アは、複数の出来事が発病に関与したと認められる場合には、まずそれぞれの具体的出来事について総合評価を行い、いずれかの具体的出来事によって「強」の評価が可能な場合には、業務による心理的負荷は全体としても「強」だと判断する。
 イは、いずれの具体的出来事でも単独では「強」と評価できない場合には、それらの複数の出来事について、関連して生じているのか、関連なく生じているのかを判断した上で、①出来事が関連して生じている場合には、その全体を1つの出来事として評価することとし、原則としては最初の出来事を具体的出来事として新評価表に当てはめて、関連して生じた各出来事は出来事後の状況等とみなすということで、その全体の総合評価を行う。②ある出来事に関連せずに他の出来事が生じている場合には、その時間的な近接の程度等によって、それら複数の出来事による心理的負荷の総合評価を行う。具体的には単独の出来事の評価が「中」と評価する出来事が複数生じている場合には、それらの出来事が生じた時期の近接の程度、出来事の数、その内容等によって総合評価が「強」となる場合もあることを踏まえつつ、個別に総合評価をする。一方「中」とする評価出来事が1つあるほかには、「弱」と評価する出来事しかない場合には総合評価も「中」であり、「弱」とする出来事が複数生じている、「中」や「強」がない場合には、総合評価も「弱」となると考えられる。
 (6)セクシュアルハラスメントですが、セクシュアルハラスメントについては分科会報告書が取りまとめられ、本検討会に報告されている。分科会においては、こうした問題に詳しい法学、医学の専門家により専門的な検討がなされており、本検討会も分科会報告書の内容は妥当と考えることから、評価表において「セクシュアルハラスメントを受けた」という出来事を対人関係のトラブルという類型から分離・独立した類型とするほか、分科会報告書は認定の基準に関する事項、運用に関する事項と両方に分かれておりますが、このいずれについても分科会報告書の内容を本検討会の報告とするとまとめています。以上です。
○岡崎座長 項目3について、ここは心理的負荷評価表、それから先ほども出たセクシュアルハラスメントについての項目が新たに入って別添1が付加されております。内容はちょっと多いのですが、7回から9回と非常に詳しくご議論いただいたところですので、そんなに多くはないかと思っていますが、いかがでしょうか。
○山口先生 内容ではないのですが、新しい評価表をここでまとめられたら、どういう形で世の中に出るのでしょうか。これがいちばん使われるものになりますから、なるべく見やすい形で出るといいと思っているのです。ここに付いている程度だと誤りというわけではありませんが、ちょっと見にくいなと。もう少し世間には一見して、このように変わった、このように使われるという分かりやすい形で出ればいいなという気がするのですが、最終的にはどんなイメージになるのですかね。
○西川職業病認定業務第一係長 まず、検討会報告書をまとめていただきましたら、その後の手続としては、それを尊重して労働基準局長通達で地方の労働局にこういう形で判断するようにという指示を出すことになろうと思いますが、いまの判断指針に心理的負荷評価表が別添として付いているように、新しい認定の基準にも心理的負荷評価表が別添として付くことを想定しておりましたし、それに通達だけではなくてパンフレットを作成したり、それをホームページに載せたりということは当然しなければいけないことだと考えております。
○山口先生 最近、基準監督署なんかにパンフレットをもらいに行くと、格段の進歩で、昔はなるべくわからないように書いてあったことが、最近はよくわかるように書いてあるから、役所も変わったなと思いますが、ああいうわかりやすいものになるように、中身と関係のないことですが、希望を申し上げたいと思います。
○岡崎座長 それは是非、いろいろ工夫していただいて、見やすくて、わかりやすいというのは大事ですので。
○山口先生 わかりやすいということと同時に見やすいということですね。
○岡崎座長 ほかにはいかがでしょうか。この中にいくつかの新しい考え方が盛り込まれているわけです。ここはかなりの時間検討していただいたところですが、いかがですか。特に項目3については、いまのところは特に修正するところはないということで確認をして、項目4に進ませていただきたいと思います。項目4は「業務以外の心理的負荷及び個体側要因の評価」です。よろしくお願いします。
○西川職業病認定業務第一係長 それでは、項目4についてご説明します。項目4は「業務以外の心理的負荷及び個体側要因の評価」です。第2回とか第9回にも少しご議論いただきましたし、こちらは現在の判断指針等を参考に記載しているところもあります。
 まず精神障害の業務起因性は、業務以外の心理的負荷又は個体側要因によって発病したことが明らかな場合には否定される。ただし、実際の労災請求事案において、業務による強い心理的負荷が認められたにもかかわらず、業務以外の心理的負荷又は個体側要因により発病して業務外と判断されたものはほとんどないという状況です。検討会には平成21年度の分について、そのようなものはありませんでしたということを、第2回のときにお話ししているかと思いますが、平成22年度についても同じような事案はございませんでした。
 したがって、このような実態を考慮して、また審査の迅速化、請求人の負担軽減を図る観点から、業務以外の心理的負荷及び個体側要因の調査については可能な限り簡略化を図ることが適当であるということで、12頁に具体的には業務以外の心理的負荷及び個体側要因の有無とその程度の調査は、基本的に本人・家族に提出を求めるチェックリスト等の定型的な文書により行うこととし、こういった調査、あるいは主治医から得られた医証等から顕著な事情が認められた場合に限り、その詳細を調査するという方式によるものとして、その評価は下記によるのとする。
 なお、行政庁で行う業務以外の心理的負荷及び個体側要因の調査には、おのずから限界があることから、調査により顕著な事情が確認できなかった場合には、それらの事情がないと断定することは適当ではなく、確認できなかったと整理しておくべきである。
 (1)業務以外の心理的負荷がある場合の評価ですが、11年報告書では別添3のとおり、主要な業務以外の出来事による平均的な心理的負荷の強度を示し、これによりその心理的負荷を評価し、業務起因性の有無の判断の際に考慮するとされており、この基本的な考え方を維持することが適当である。別添3は41頁ですが、いまの業務以外の心理的負荷評価表そのものです。この基本的な考え方を維持することが適当であるということで、具体的には業務による強い心理的負荷が認められる事案については、強度IIIに該当する業務以外の出来事であって、心理的負荷が極めて強いものがある場合や、強度IIIに該当する業務以外の出来事が複数ある場合等業務以外の心理的負荷によって発病したことが医学的に見て明らかであると判断できる場合に限って、業務起因性を否定するのが適当である。このため別添3において心理的負荷の強度をIIIとしている出来事の存在が明らかな場合に、その詳細を調査することで足りる。
 なお、心理的負荷が強いとは判断されない業務以外の出来事、別添3において、II又はIという出来事については、業務起因性の有無の判断に当たって、特に考慮する必要はないものと考えるとまとめています。この「具体的には」のところは、いまの判断指針で示しているやり方です。
 (2)については、個体側要因がある場合の評価ということで、11年報告書では個体側要因の具体的内容として既往歴、生活史(社会適応状況)、アルコール等依存状況、性格傾向及び家族歴を挙げ、これらを総合して個体側要因を精神医学的に判断するとされており、この基本的な考え方を維持することが適当である。具体的には業務による強い心理的負荷が認められる事案については、就業年齢前の若年期から精神障害の発病と寛解を繰り返していて、請求に係る精神障害がその一連の病態であると考えられる場合、あるいは重度のアルコール依存状況がある場合等、個体側要因によって発病したことが医学的に見て明らかであると判断できる場合に限って業務起因性を否定するのが適当である。このため、上記ような発病原因に直接影響し得る状況の存在が明らかな場合に、その詳細を調査することで足りるとまとめています。
○岡崎座長 項目4をご説明いただきましたが、ご意見はありますか。可能な限りは迅速化のために簡略化が可能かどうかの視点からの処理の仕方が入っているわけですが。ここはよろしいですか。特にないようですので、項目4についても、特に修正はないということで。またあとでお気付きの点がありましたらご指摘いただいて、項目5に進ませていただきたいと思います。次は「発病の有無の判断及び発病時期の特定」です。お願いします。
○西川職業病認定業務第一係長 「発病の有無の判断及び発病時期の特定」です。心理的負荷の評価を行うに当たり、精神障害の発病の有無及びその発病時期を正しく把握することは極めて重要な事項となる。このため、主治医に対する意見照会により、主治医の考える疾病名、発病時期、それらの診断根拠を明確に把握する必要がある。なお、発病の有無やその時期の判断は、基本的にICD-10に準拠した診断意見となるように意見照会を行うべきである。また、多くの自殺事案に見られるように、治療歴はないが、軽症うつ病エピソードのように、症状に周囲が気付きにくい精神障害の発病が疑われる事案については、関係者に対して症状に関する調査を尽くし、言動の変化等の有無を的確に把握するよう努める必要がある。第6回の議論を基にまとめております。
○岡崎座長 この項については、何かありますか。
○荒井先生 治療歴はないが、軽症とあえて言う必要がありますか。というのは、中等症でもわからないうつ病の方はたくさんいらっしゃるので、あえて軽症と形容する必要はないと思います。
○岡崎座長 中等症以上は気付きますよということも含んでいるわけですね。
○荒井先生 中等症でも気付かないこともあります。
○岡崎座長 実際はそうですが、この文章だと軽症は気付かないが、そのほかは気付くという表現も含有しているからですね。
○荒井先生 それは気付くという意味になってしまうので、うつ病エピソードだけにしていただいたほうがわかりやすいかもしれません。
○岡崎座長 それはそうです。おっしゃるとおりです。これは私もそう思いますね。7の軽症は消すということですね。そのほかに何かありますか。ないようですので、いまの点を修正させていただくことにして、項目5はご了承いただいたことにさせていただきます。それでは、項目6の「療養及び治ゆ」のご説明をお願いします。
○西川職業病認定業務第一係長 「療養及び治ゆ」ですが、精神障害の治療においては、薬物療法等の身体療法と精神療法が患者の症状、病態に応じて行われ、それらに加え精神症状が一定程度改善・安定した後に、早期の社会復帰を目的とした職場復帰プログラム等を活用したリハビリテーション療法が行われることが通例である。リハビリテーション療法が実施された場合には、リハビリテーション療法の実施中は療養期間であるが、それが終了した時点では、一般に職場復帰が果たされるか、あるいは症状の大きな変動がない状態に達するので、その時点が通常は治ゆ(症状固定)ということになる。
 これらの療養期間について、一概に示すことは困難であるが、例えば、薬物が奏効するタイプのうつ病の場合には、急性期から症状が安定するまでの期間として91%が療養開始から3カ月以内に、リハビリテーション療法としてのリハビリ勤務を含めた職場復帰が可能となるまでの期間としては88%が療養開始から6カ月以内に、完全な回復や復職を含む症状固定までの期間としては治療開始から1年以内が79%、2年以内が95%という報告がある。参考文献10とありますが、黒木先生編集の「PTSD医の診断と法の判断」を第6回で資料に出しましたが、そのような報告があります。
 労災保険制度においては、「急性症状が消退し慢性症状は持続しても医療効果を期待し得ない状態となった場合」には、症状固定と判断されることから、就労が可能な状態にまで改善していなくても症状固定の状態にあるという場合は当然あるわけですが、労災認定された事案の中には5年を超える等、非常に長期間にわたり療養を継続している例も少なくない実情にある。これらの事例については症状の変化や治療内容の経過を精査の上、治ゆ(症状固定)という状態に至っていないかどうかについて、十分に検討することが必要と考えられる。
 また、精神障害の治療では「寛解」という診断がなされることがある。これは治療により精神障害の症状が現れなくなった状態や、安定した状態を示すものであり、院内寛解、家庭内寛解等、さまざまな段階で用いられることもあるが、通常の就労が可能な状態で「寛解」というような診断がなされている場合には、労災保険の定義で言う治ゆ(症状固定)の状態にあると考えてよい。なお、患者が社会復帰した後に、症状の動揺防止のため、長期間にわたり投薬が必要とされる場合のアフターケア制度や、一定の症状を残したまま症状固定となった場合の後遺障害に対する補償が適切に実施される必要がある。また、症状固定の判断を適切に行うためには、病状の変化を的確に把握することが重要であり、病状の的確な把握方法等について、今後精神障害の労災請求が急増する傾向がある中で、速やかに検討すべき課題である、という形でまとめました。
○岡崎座長 療養及び治ゆについての概念を明確にしておくということですが、医学的な判断の必要なところでもありますが、この記述について、ご意見、ご質問はございますか。
○阿部先生 わかりやすくなっていると思いますが、14頁の上から6行目の「通常の就労が可能な状態」という箇所の「通常の」と、「なお」以下のところとの関係でわかりづらいかと思いました。「長期間にわたる投薬が必要とされる場合のアフターケア制度、一定の症状を残したままの症状固定」というのがあって、軽減措置を受けている人は、ここで言う「通常」には含まないという趣旨でいいのか。アフターケア制度を継続中の人でも、通常就労が可能であればここでいう「通常」に入るのか。結局そこがアクティブになるのか、全く新たに業務認定をするのかというところの分かれ目になると思うので、「通常」というのがどこまでを含んでいるのかを、もう少し明らかにしたほうがいいのではないかと思いました。
○山口先生 これは私もちょっと気になったのですが、元の業務とか、元の職場という意味に狭く解釈されたらちょっと問題ではないかと思います。判例などもそのように見ていなくて、普通の定年までいる新卒の採用で、業務が決まっていなくて、大きな会社で業務がたくさんある場合には、元の業務ではなく、ほかの業務でも配置が可能かどうか探せと言っています。言葉はこれで間違いだということではありませんが、元の職場でというような狭い意味ではないということが分かるようになったほうがいいかなと思います。
○黒木先生 職場復帰する際に、必ずしも原職復帰ということではありませんよね。原職は一般的ではありますが、例えば復帰するときに原職に戻すと悪化するという場合は調整して配置転換していることがあるので、通常というのは、例えば職場に戻していく段階的に短縮勤務から始めて8時間勤務に戻すというのが、一般的に通常勤務ということです。そこでも就業制限が付いて、時間外とか出張は禁止するので、その就業措置をどこまでやっていくかということはあると思いますが、大体8時間勤務が一般的にできるようになったら、一応固定ということでもいいのではないかと私は思います。
○岡崎座長 通常の扱いについて、具体的に何かありますか。
○渡辺職業病認定対策室長 私どもの感じでは、前段にあるリハビリ勤務というかリハビリ就労と対比する概念として通常という感じで考えていたのです。ですから、いま黒木先生がおっしゃっていたこととほとんど同じかなと思います。もう少しここを正確に書いたほうがいいということであれば。
○岡崎座長 職務軽減をしたり、時間を短くして、徐々に延ばしていくとか、そういう就業をしてフルタイムで、特別の軽減がなくて、原職というわけではないですね。そのようには限定しないと。
○山口先生 いま座長がおっしゃったようにリハビリ就労はどちらに入るのですか。復帰プログラムで就労するのはリハビリ療法だということになっていますが。
○渡辺職業病認定対策室長 まだ治療中ということで整理させていただいてます。
○黒木先生 復帰するまでに医療機関でリハプログラムというリハビリをやった上で、復職準備状態になって、会社で復職支援制度というのがありますので、そこに復職支援制度を活用して、一般就労、通常の勤務ができるような状態に戻していくことになります。だから、戻ったところで症状は固定という形でいいのではないかと思います。
○織先生 そうすると、他の労働者と全く同じ就労という意味ではなくて、残業を免除されていたり、休日労働を免除されているという状態でも、通常の就労ということでよろしいのでしょうか。
○岡崎座長 そこはケースで考えなければいけないかなという気がします。例えば、症状がある程度残っていると。やはり就業措置が必要である。しかし、これ以上治らないという人もいるかもしれません。例えば交代勤務とか夜勤などがあると、なかなか夜勤まで入れ込めないという人もいるので、そこの判断はなかなか難しいですよね。でも、日常、昼間の8時間勤務は可能となったというところは、一応固定したという考えでいいのではないかと思います。
○山口先生 もう1つは、ここのところで、リハビリテーション療法というのが出ていて、よく読めばわかるのですが、労災保険の給付でいう給付の対象とならない、いわゆる福祉事業でやっているリハビリテーションというのがありますが、それではないということがはっきりわかりますかね。
○渡辺職業病認定対策室長 普通のリハビリテーションというのは、そういう医療施設の中で行うのがリハビリテーションですが、この場合は元の会社で試行的に勤務して、最初は短時間勤務で、それがだんだん長くなって、最終的にはフルタイムで勤務できるようにするということがリハビリ療法という理解をしています。
○山口先生 6の3行目に「職場復帰プログラム等を活用したリハビリテーション療法」と書いてありますから、読めばわかるでしょうね。
○黒木先生 リワークとか職場復帰プログラムというのは最近の話なのです。おそらく5、6年ですかね。
○荒井先生 歴史は10年ぐらいですが、広くみんなが認知するようになったのは。
○黒木先生 医療機関でデイケアプログラムとしての職場復帰プログラムが活用されたとか、利用されるようになったのは、本当に5、6年なのです。
○山口先生 それが問題ではないのです。
○黒木先生 私が言いたいのは、ちょうどこの調査をやったときというのはその前なのです。その前の段階なので、そんなに区別をして調査をしたというわけではなくて、職場に戻っていく、家庭内で病状が安定して、地域に出られる、それから職場に戻れるというようなことを事例と精神科医に聞いた結果がこれなのです。ちょっとニュアンスが違うのです。
○良永先生 山口先生のご発言に関連して、これだと何をもって治ゆとするかということがポイントだと思います。結局、治ゆと認定されると療養補償給付も休業補償給付も出ませんよね。労基法の19条の適用も全部解除されてしまいますので、被災者にとっては非常に重大な利害問題になります。だから、山口先生がおっしゃった、いわゆる福祉事業としてのリハビリテーションと、労災補償給付としてのリハビリは、はっきり区別してわかるようにしたらいいのではないかという趣旨が含まれていたと思います。山口先生がよく読んでわかるというのは、やはり具合が悪いので、一般の方々、あまり予備知識のない方でも読めばこういうことなのだと分かるような表現があるといいなと思います。私もちょっとわかりにくいという気がします。
○山口先生 それは良永先生がおっしゃったとおりですが、いわゆる社会復帰事業のリハビリというのは、治ゆのあと行うものだという知識を持っている人は少ないと思います。
○黒木先生 本人がなかなかリハビリに乗らないというのが中にはあるわけです。例えば1回休職して、復職をする過程で、1回目はなかなか本人も「うん」と言わないし、しかし、休・復職を繰り返して、やはり駄目だったという場合に、ようやく休職期間の間に職場復帰プログラムに乗っていくことが多いです。あるいは会社のほうも、これは安定した勤務ができないと復職は認められないとか、結局会社にとっても本人にとってもよくないということになれば、リハビリ的なことをやった上で復職するのがいいのではないか、というような説得をしていきますよね。
○山口先生 それがはっきりしていれば、それでいいのです。
○岡崎座長 記述上の説明が必要のようですので、「通常の」というのに解説を加えるか、変えたほうがよさそうですか。例えば休日勤務とか、出張がどうだとか、そういったところまで全部回復していないと、「通常の」と言わないかどうかとか、ちょっと微妙な問題がありますよね。そこまで含めないで、通常のいわゆるリハビリプログラムを終了して、昼間のフルタイムの勤務の就業を開始したら、通常の勤務をしているとみなすのではないかと思うのですが、そこまで厳密に記載するかどうかという辺りは、ここで方向を決めておいて、表現はこのあと一任いただいて。
○黒木先生 就業措置に関しては、私は個別だと思います。事業所によっても違いますし、職種とか業務内容によっても全然違ってくるので、そこまで細かく決める必要はないのではないかと思います。
○岡崎座長 という方向で整理していただくということで。
○渡辺職業病認定対策室長 この段落で説明したかったのは、寛解という診断がなされたというものとの関係です。結構現場の職員からも「寛解という診断がなされているのだが、それは治ゆと判断していいのだろうか」という質問がよくあるものですから、寛解と言っても、単純にいろいろなレベルがあって、院内寛解のレベルでの寛解であれば、それは治ゆとは見られません。でも、もう働けますと言って、寛解という診断が出ているのであれば、普通は治ゆですということについて説明するというのがいちばんなのです。
○岡崎座長 ここの2行はそういうことですね。だから、「通常の」というのは、そういう意味ではおっしゃったとおりですが、ただ、そこの事情がわからないで読んだ方が、「通常の」というのは何だと引っかかるといけないので、解説を加えたほうがいいかどうか、もう一度文章上、検討いたします。
○渡辺職業病認定対策室長 わかりました。完全なフルタイムと言ってもいいのですが、それは当然ですよね。「完全なフルタイムにしていいですよ」と言われて、医師は「寛解です」と言ったら、それは完全に治ゆの状態になりますから、このぐらい厳しいものを、ここで例示的に示しているということでもいいのだと思いますので、そこはまた文章を考えてお示ししたいと思います。
○岡崎座長 リハビリテーションのところをどうするかと。
○荒井先生 医学的という言葉を、是非リハビリテーションに入れて、「医学的なリハビリテーション療法としての」という言葉を入れて、それはリワークまでを指すと区分しないとわからないと思います。先生がおっしゃったように、リハビリテーションのあとの補助的なというと語弊がありますが、病気の尻尾にある、本当に病気を卒業するために必要な、維持するとか、そういうのではなくて、医学的なリハビリテーション、医学の範囲の中のリハビリテーションというように。
○山口先生 理学療法的な、そういう意味ですね。
○荒井先生 そうです。いま医師指示のもとにという非常に微妙な意味合いがあります。
○岡崎座長 それは有力な候補として、表現をあとでまとめさせていただくことで、ご一任いただければと思います。
○清水先生 いまいろいろお話いただいた中で、療養及び治ゆという問題は、今後、精神障害を労災保険制度で行うこと自体、もともとこういった労災保険というのは整形外科の疾患などで、職場での事故で、例えば足を1本切断せざるを得なかったということで身体障害のような形で、後遺障害という形で、症状固定といったものが明確にわかりやすいものだったという前提があると思いますので、整形外科の先生方も労災保険では、ここまでが症状固定ということは判断しやすかったのだと思います。
 精神障害というのは最初の議論にもあったように、個体側に要因があるということもあります。ここにも3カ月以内が急性期の治療で、6カ月以内のリハビリテーションで、その後、1年、2年で症状固定という流れを書いていただいています。精神科医が労災保険制度を十分意識していないと、5年を超えるなど、非常に長期間にわたる療養を継続している例が増えてしまうということも確かに考えられるところがあります。ここのところは実際に労働者にも非常によく知っていただく必要があると思います。
 一方では、診療に当たる精神科医が、通常の精神障害の個体側要因と心理ストレスをそれほど分けて考える必要がない形で診療していると思いますので、そういうところを明確にして、労災保険制度の中で、症状固定という判断をしなければいけません。症状固定のあとに後遺障害に対してアフターケアとして投薬をするのだという理解が精神科医のほうでは必要なのかなと思いますので、本当にここの内容を、それこそ図入りみたいな感じで分かりやすくしていただくと、今後精神障害の労災請求が増えていく中で問題にならないのではないかと思います。
○岡崎座長 もしわかりやすい図をいれることができれば非常にいいかもしれませね。
○黒木先生 いま清水先生がおっしゃったことは非常に重要なことで、確かに身体的なものと違って、精神障害における精神症状をどう見るかというのは、本人が例えば精神症状を訴える。それを診る精神科医側は、これは訴えているから治っていないということで、ずるずる5年も10年もいわゆる症状固定にならない。本当は個体側の要因が主因となっている状態で、その辺の症状固定をどう考えていくかというのは大きな課題だと思います。
労災保険は基本的には自立あるいは職場に早く戻すということですから、逆行してはいけないと思うので、いまおっしゃったことは今後の大きな課題だと思います。だから、症状固定をどう考えるかというのは、今回は無理だとしても、精神医学的な症状固定をどのように考えるかというのは、今後の課題としてもらえるかと思います。
○荒井先生 障害認定のときに症状固定という言葉が出てくる以外に、精神科医が書類に症状固定という言葉を使うことは少ないのです。ですから、治ゆという概念は、補償学上の治ゆ概念と、医学上の治ゆ概念を混同してしまうのです。書く書類によって治ゆ概念が違うので、補償学上の問題であれば症状固定を治ゆという言葉を指していうこともありますし、医学上は治ゆではないと書いていらっしゃる先生がたくさんいます。補償学上の書類であるにもかかわらず、症状固定はしていないというように症状固定している方を書いている精神科医にいるので、それは精神科医の啓発活動も、先生のご指摘のように必要だろうと思います。
○山口先生 それは黒木先生がおっしゃったように大問題なのです。この定義は負傷を想定していますから、症状が固定だけではなくて、文書を見ると、医学的効果が期待できないということになっています。しかし、実際に医師の所に行けば、医師は患者を診て、そんなことは言えないので、いろいろ治療していただけるのです。問題は治ゆという定義が疾病には十分合っていない。いまはそれに合うよう運用で工夫していますが、将来いつかはこの点に戻って考えなければいけないときが来るだろうと思います。
○荒井先生 そのように先生がお考えなら、それは非常にフレグラントだと思います。ただし、先生方は症状固定をある時点で決定できるというお話がありますが、整形外科医はそれは非常に難しいことで、3カ月、半年、1年で症状固定が変わることは当然起こり得るのです。精神科医も、まだ精神科医が症状固定ということに出くわす、あるいは判断する機会が少ないので、それをトレーニングしていく。それは学会でもやっていかなければいけないでしょうし、治ゆ概念を明確に理解してもらう作業から始めなければいけないと思います。
○良永先生 余計なことですが、そこを扱うと障害補償の等級表とか、障害補償のほうとの関係も一緒に検討しなければならないようになるかもしれませんね。
○荒井先生 もちろん症状固定すれば、後遺障害の認定がありますので、当然そうなりますね。
○黒木先生 私は労災病院にいたものですから、普通一般的にはいわゆる身体疾患が重症であれば療養期間も長いと考えますよね。実はこれが全然逆なのです。軽度の人のほうが療養期間も長いし、なかなか症状固定に至らない。特に整形外科の疾患あるいは頭部外傷などの事例には逆比例しているのです。それはなぜかということなのです。
○岡崎座長 ここは大きな問題で、当面研究課題ですね。
○山口先生 それは労災保険の入口にして、出口の問題だと思います。
○岡崎座長 たぶんこれは精神医学のほうから再編しようとすると、影響が大きすぎますので、いままで進められてきた労災補償のシステムに合わせて精神医学的なことをむしろ読み替えるというか、これはどれに対応するかという労災補償のほうから精神医学のほうに対応を見出す形のほうが当面はいいのではないかと思います。そうでなければ本当に全体がガラガラポンとなる可能性もあるような問題ですので、携わられた方は難しい問題だということはわかっておられるだろうと思います。そういうことを記録していただいて、ここは今後の課題であるということを明確にしておけばいいかなと思います。
○阿部先生 確認ですが、「通常の」で、本人という意味で見ると、院内寛解とか家庭内寛解ではなくて、通常の就労というのはわかるのですが、「通常の」というとおそらく多くの人はほかの労働者と比較してしまうのでないかと。先ほど織先生も言われたように、残業免除があったり、交代ができなかったり、あるいは投薬中であるかもしれないが、ここでいう「通常の就労」に当たるというのであればその旨記載した方がよくないでしょうか。
○岡崎座長 どういう修飾を入れたらそれがわかりますかね。
○荒井先生 本人の精神状態に対応したということです。
○織先生 これは医師が寛解と診断する際の1つの事情と関連していますよね。そうすると、あまり通常の就労というところを明確にしてしまうと、医師の診断の裁量を狭めるようになるので、先ほどの私の意見を撤回するようで申し訳ないのですが、通常の就労のままでよろしいのではないかという気がします。
○山口先生 院内寛解、家庭内寛解と言っているのだったら、職場寛解でもいいのでしょうね。
○荒井先生 職場内寛解ですか。
○鈴木先生 聞いたことがないです。
○山口先生 そうですか。
○荒井先生 職場内寛解の方はたくさんいらっしゃいます。
○鈴木先生 難しいですね。
○岡崎座長 具体例を挙げた解説は付いたほうがいいですかね。
○西川職業病認定業務第一係長 いずれにしろ、8時間ぐらいの就業は可能な状況という趣旨でということは、ここの検討会の場としてよろしいということですね。
○岡崎座長 よろしいということですね。
○西川職業病認定業務第一係長 その上で残すか、「通常の」を入れるか入れないかも含めて、表現についてはご相談させていただきます。
○岡崎座長 具体例も入れて、簡単な解説を付けることにさせていただきたいと思います。ということで、項目6はよろしいでしょうか。ありがとうございました。それでは、項目7の「専門家の意見の聴取」に進みたいと思います。説明をお願いします。
○西川職業病認定業務第一係長 項目7についてご説明いたします。「専門家の意見の聴取」ということで、前回ご議論いただいた関係をまとめております。部会の、いま全数行っている精神科医3名の専門部会について、全数ではなくて省略できるのではないかということが大筋です。概略としては、参考4の59頁に図を描いておりますが、前回の第9回にお出しした資料の中で表現を統合というか、このパターンとこのパターンをまとめてこういう表現ができるというところを、少し集約させていただき、同じような趣旨を書かせていだいたつもりです。
 専門家の意見の聴取ということで、11年報告書では発病時期や業務起因性の判断に関して、すべての事案について複数の専門医、地方労災委員等の合議制によって行うことを求めており、現在請求事案すべてについて、精神科医師3名により構成する専門部会での協議が行われている。本検討会では、これまで述べた基準の具体化や明確化によって特定の事案については専門部会での協議を省略する等、専門家医の意見聴取に関して、次のとおり取扱いを変更することが適当と考える。
 (1)専門医の合議制、いまの専門部会を継続する事案ということで、①自殺事案であって、治療歴がない事案、②行政庁が認定した事実関係を新評価表に当てはめた場合に、心理的負荷強度が「強」に該当するかどうかを含めて判断し難い場合に「強」に該当するか、そうでないのかわからないという事案、③同じく事実関係を当てはめた場合に、「強」に該当するということはわかるが、顕著な業務以外の心理的負荷又は個体側要因が認められる事案、④その他発病の有無、疾患名、発病時期、心理的負荷の強度の判断について、高度な医学的検討が必要な事案などについては、引き続き専門医の合議(専門部会)により判断するのが適当である。
 (2)主治医の意見に基づき判断する事案は、行政庁が認定した事実と主治医の診断の前提となっている事実が、発病時期やその原因に関して矛盾なく合致しており、その事実を新評価表に当てはめた場合、「強」に該当することが明らかな事案については、専門部会の協議、専門医からの意見聴取などを経ずに、業務起因性を認めることが適当である。ただし、疾患名がICD-10のF3、F4以外のものである場合には、そういったものの事例は非常に少ないので、事例が集積されていないことから、当面、専門医の意見を求めて、慎重に判断すべきである。
 (3)は専門医の意見に基づき判断する事案です。①主治医が発病時期やその原因を特定できない。あるいはその根拠等が曖昧な事案のように、主治医の医学的判断の補足が必要な事案、②行政庁が認定した事実関係を新評価表に当てはめた場合に、「強」に該当するが、何らかの業務以外の心理的負荷又は個体側要因が認められる事案。先ほどの顕著なということではなくて、ただ、なにがしかあったというような事案。同じく事実関係を新評価表に当てはめた場合に、明確に「強」には該当しないといった事案については、主治医の意見に加えて、専門医から意見を求めて、これらの意見に基づき、業務起因性を判断することが適当である。ただし専門医に伺った場合に、ここは専門部会の協議が必要だと判断された場合には、もちろん上記(1)の専門部会を継続するという形でやるべきだと書いています。
 (4)は法律専門家の意見の聴取ですが、前回の法律専門家を部会に入れるべきではないかというご議論を踏まえて書いているものです。業務上外の決定に当たっては、発病の有無、疾患名、発病時期、心理的負荷の強度といった医学的事項のほかに、関係者が相反する主張をする場合の事実認定の方法、関係する法律の内容などについて、法律専門家の助言が必要な場合もあるので、そのような場合には専門部会の医学専門家の意見とは別に法務専門員等の法律専門家の意見を求めることにより、適切に対応する必要があるという形でまとめております。
○岡崎座長 これは事案が増えてまいりまして、迅速化のために合議が必要なものと、そうではないものとを分けて処理するようにしようということ。あるいはいま最後のほうで出てきましたが、法律の専門家のご意見も求める場合には、それを求められるようにしようといったことが盛り込まれた改正というか案です。ここに関してはいかがでしょうか。
○織先生 専門部会でも協議が省略された案件についても、是非専門部会に事後報告の形でいいのですが、処理の結果について報告していただきたいと思います。
 というのは地方によっては請求事案が少ない所もあると思いますので、判断の均衡を保つためにも、是非、事後報告していただいて、専門部会で情報を共有していただきたいと思います。
○岡崎座長 それは私も大事なことかなと思いますので、このフローチャートに、それがわかるような、専門部会にどういう事案があったかというのを、簡単な一覧、リストが紹介されるというのは、いろいろな意味でいいのではないかと思います。
○黒木先生 ただ、東京都だと3部会が動いているのです。3部会で全部協議しているので170件ぐらいです。それを全部共有はしていませんよね。
○荒井先生 ただ、部会長クラスが見て、自分の部会でそれまでやってきたことと不都合があるのであれば、議論する可能性は残していただいたほうがいいかなという気がします。
○岡崎座長 他の部会の意見を。
○荒井先生 3部会あって、部会長が3人いるわけですが、3人は局のレベルも大体揃ってきていますので、そんなに齟齬はないはずです。ただし、それを担保するという意味では部会長が結果だけでも伺うと。
○黒木先生 それは部会にかけない事例ということですね。
○荒井先生 そうです。
○黒木先生 部会にかけない事例を、例えば部会長に一応意見聴取をする。
○荒井先生 意見書を読ませてもらうということではありませんか。
○岡崎座長 それは現場では可能なのですかね。リストぐらいは簡単に。
○渡辺職業病認定対策室長 それは可能だと思います。実は報告書にはその旨記載はしてないのですが、ほかにも検討あるいはこうしたほうがいいという意見は、この検討会の中で出ています。その中でも運用で対応しようとしているものについては、この通知に引き続いたものとして、そういうものを地方に発出する予定ですので、その際に、そのこと、つまり部会でやらなかったものについての事案も、部会の先生方には情報を提供するようにという内容のことは入れようと思っていました。この検討会の報告書の中にはそのことは触れていませんが、そういうことで考えておりました。
 ほかにも検討会の中でいろいろなご意見が出ましたので、それを踏まえて、ここでは触れていないものでも指示するものがあります。その中の1つとしてやろうと思っていましたので、それでよろしければそうしたいと思います。この検討会の報告書の中に、いまのことも入れるべきだということであれば、入れさせていただいて構わないと思っています。
○荒井先生 運用でやっていただければと思います。
○岡崎座長 よろしいですか。織先生、運用でよろしいですか。
○織先生 結構です。
○岡崎座長 では、そういうことで記録にとどめます。
○良永先生 お尋ねですが、地方労災医員制度というのは省令か、あるいは通達に基づく予算措置ですか、何で行われている制度ですか。
○渡辺職業病認定対策室長 訓令です。
○良永先生 なぜそれを聞いたかというと、前回の委員の意見を踏まえておられると思いますが、法律専門家の意見の聴取というのが入りましたね。ここで法務専門員等というのが入って、これはいま訓令なら訓令に位置付けるという前提での話ですね。
○渡辺職業病認定対策室長 こういう人が既にいらっしゃいます。いろいろ法律的な助言を得るということで、一応配置はされておりましたので。
○良永先生 これをフローチャートにするのは難しいですかね。医学の所に一緒に書くと難しくなるかもしれませんが、文字だけではなくて、図があるとすぐわかるので。
○渡辺職業病認定対策室長 59頁の絵の中に入れられないことはないと思っています。その辺も工夫いたします。
○良永先生 これは要望です。
○岡崎座長 そういう要望があったことも含めて、項目7についてはよろしいでしょうか。ありがとうございました。それでは、最後の項目8「まとめ」のご説明をお願いします。
○西川職業病認定業務第一係長 「まとめ」を読み上げさせていただきます。「本検討会では、精神障害事案の審査をより迅速に、また、調査を効率的に行えるよう、業務による心理的負荷の評価の基準に関し、最新のストレス調査、これまでの認定例、裁判例を参考に評価の具体例、長時間労働がある場合の評価方法、出来事が複数ある場合の評価方法等を盛り込んだ新たな評価表を示した。
 また、業務以外の心理的負荷や個体側要因については、請求人の負担軽減にも配慮し調査の簡略化を図ることを示した。
 さらに、このような基準の具体化や明確化により、現在、請求のあったすべての事案について行っている専門部会での協議は、判断が難しい事案に限定することが可能であることを示した。
 本検討会としては、今回の報告に基づく運用の改正により、認定の公正を確保した上で、審査が迅速化され、現在の約8.6カ月という審査期間が6カ月に短縮されることを期待するものである。あわせて、どのような場合に労災認定がなされるかが分かりやすくなることを通じて、業務により精神障害を発病した労働者から労災請求が行われ、認定の促進が図られることを期待する。
 これに加え、行政に対しては、新たな基準の内容の関係者に対する周知、相談・問合せに対する懇切・丁寧な説明の徹底に努めるとともに、セクシュアルハラスメント事案に関する聴取担当者等の必要な人員の確保と育成にも最大限の努力を願うものである。
 最後に、今回の検討は、精神医療の分野には未解明の部分も多数ある中で、現時点で得られる医学的知見と臨床上の経験を前提に検討したものであるが、この分野の研究も日々進んでおり、また社会、経済状況の変化が著しい昨今においては、労災認定の基準等に関して、今後も適宜検討していくことが重容であると考える」という形でまとめております。
○岡崎座長 ありがとうございました。「まとめ」の最後の文章ですが、いかがでしょうか。
○山口先生 「まとめ」、15頁の第5段目の段落の「さらに」の結びに「可能であることを示した」と書いてありますが、本体の文章を見ると、「適当である」とか、そういう文章になっているから「適切な点であることを示した」というほうが、内容的には重いのではないかという気がします。
 次の16頁へ行って、審査期間が6カ月に短縮されるというのは結構ですが、ここでいきなり出てきて、なぜ6カ月になるのか、我々は全然わかりません。結構なことだから、別に反対ではないのですが。
○西川職業病認定業務第一係長 我々が通常6カ月を目指しておりますので。
○山口先生 なぜ5カ月にしないのだとか言われると困ってしまう。だから、相当程度短縮されるとか、そういう表現ぐらいのほうがいいのではないかという気がしますが、6カ月でやれる、それを目標にしているのだったら、別に書かれるのは反対ではありません。
○神保補償課長補佐 通常の業務上疾病が6カ月ということにしているものですから、精神障害だけ別なのです。通常のところ業務上疾病の期間まで短くしたいということです。
○山口先生 それだったら素人向きに、通常疾病の審査期間である6カ月というように、に何か形容詞が入っていたほうがわかりやすいですね。
○荒井先生 5ではないの、4ではないのという話になりますね。
○河合補償課長 そのように変えます。
○岡崎座長 ほかにはいかがでしょうか。以上で本日の課題である報告書のたたき台のご検討は全部終わったわけです。どうもありがとうございました。修正がごく少数でしたが、ありましたので、事務局と相談をいたしまして、先ほどのご意見に基づいて報告書の最終案を作成し、報告としたいと思っておりますので、ご一任いただければと思います。よろしくお願いします。
 長い期間にわたって、この検討会にご尽力いただきまして、こういう報告書が一応まとまる形になったわけです。最後ですので先生方に一言ずつご感想なり、何かいただければと思います。私の司会が不慣れで、あちこちに行ったりしながら、ご迷惑をかけ、申し訳ありませんでした。今後のために一言いただければと思います。特になければ結構ですが、よろしいですか。
 それでは、本当にありがとうございました。本日はまたご苦労さまでした。これで務めを果たさせていただきましたので、事務局にお返ししたいと思います。
○板垣中央職業病認定調査官 ご議論ありがとうございました。本検討会の報告については、先ほど座長からご説明のあったとおり、ご提出をいただき、報告書の内容に基づいて精神障害等の労災認定の基準の見直しを行ってまいります。また、報告書については、報告書のご提出をいただいた後に報道発表をさせていただき、さらに厚生労働省ホームページの掲載等で公開する予定としております。最後に鈴木労災補償部長よりご挨拶申し上げます。
○鈴木労災補償部長 専門検討会の終了に当たりまして、一言ご挨拶と御礼申し上げます。座長の岡崎先生はじめ、ご参集の先生方におかれましては、大変お忙しい中、昨年の10月以来、延べ10回にわたる検討会に精力的にご議論いただきました。前回までにほぼ議論が終息しまして、今日、報告書の案をということで提示させていただきましたが、さらに今日の議論を踏まえ、より洗練されたものになったのではないかと思っております。改めまして皆様方に感謝申し上げる次第でございます。
 本検討会の経緯は、既にご存じですし、報告書にも書いてあるとおりでございますが、いかに審査を迅速に進めるかということを目的として検討してきたわけでございますが、心理的負荷評価表の中に、具体的な例を盛り込むなど、基準をより明確化できたものと考えておりまして、審査の迅速化はもとより、労災補償が行われるべき方の認定の促進にも大きく寄与するものと考えております。
 医学的にも行政の手続の中に、新しい要素を取り入れることができたと思いますが、本日、ご意見にもありましたように、国民の方々に、いかにわかりやすく情報発信していくかということや、治ゆ、症状固定という概念について、臨床の現場にいかに情報発信していくかというのは、非常に重要かと思っております。
 私は労働衛生課長として、「職場復帰の手引」の改訂に携わったわけございますが、その際にもリハビリと言いますか、試し出勤など、非常に重要ですが、なかなか難しい面があると思いましたので、その辺りとも連携を図りながら、今日のご議論について、少しでもわかりやすく臨床の現場にご理解をいただけるように努力したいと考えております。
 報告書については、本日ご指摘いただいたものを修正した上で、必要な手続を踏まえまして、できるだけ早く基準の見直しや現場への周知を図って、少しでも労働者の方々の認定の促進につながるように努力してまいりたいと考えております。
 最後になりますが、改めまして委員の皆様方に非常に貴重なご意見、ご指摘を幅広く頂戴いたしましたことについて、感謝申し上げまして、また今後の引き続きのご助言、ご支援をお願い申し上げましてご挨拶とさせていただきます。どうもありがとうございました。
○板垣中央職業病認定調査官 それでは、本日をもちまして本検討会を終了したいと思います。先生方におかれましては、昨年10月より非常にご多忙のところ、ご参集いただきまして、誠にありがとうございました。


(了)
<照会先>

労働基準局労災補償部
補償課職業病認定対策室

電話: 03(5253)1111(内線5570、5572)

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