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2011年7月27日 独立行政法人評価委員会国立病院部会(第34回)議事録

○日時

平成23年7月27日(水)13:00~16:00


○場所

専用第23会議室


○出席者

   猿田部会長、田極部会長代理、高瀬委員、和田委員、海辺委員、夏目委員、山田委員


○議事

(以下、議事録)
 
○政策評価官
 ただいまから「第34回厚生労働省独立行政法人評価委員会国立病院部会」を開催します。委員の皆様方におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして、ありがとうございます。本日は新しい任期の下での第1回目の会合となりますので、後ほど委員の皆様方に部会長のご選出をお願いしますが、それまでの間、政策評価官の私、篠原と申しますが、議事の進行をいたします。よろしくお願いします。
 当部会の委員の皆様方をご紹介します。資料1-1です。皆様方には先に辞令を郵送しましたが、厚生労働省独立行政法人評価委員会委員または臨時委員として、本年6月30日付で厚生労働大臣の任命が行われています。また、7月12日に開かれました委員会総会において、皆様方の国立病院部会への分属が正式に決定しています。
 資料に沿って紹介します。お手元の資料1-1、1-2をご参照ください。猿田委員、高瀬委員(新任)、田極委員、和田委員です。臨時委員の先生方は、海辺委員(新任)、夏目委員、山田委員です。事務局を紹介します。室長補佐の田鍋です。
 議事に入ります。最初の議事は、部会長、部会長代理の選出です。最初に部会長の選出をお願いしたいと思います。選出手続を説明します。お手元の水色の資料集の48頁をご覧ください。厚生労働省独立行政法人評価委員会令の第5条第3項において「部会に部会長を置き、当該部会に属する委員の互選により選任する」こととされています。委員の皆様方の互選で選任していただくことになるのですが、いかがですか。

○山田委員
 互選ということで提案をしますが、この委員会のいままでのご経験を踏まえて、またご見識を踏まえて、猿田委員に引き続きお願いをしてはいかがかと提案をします。

○田極部会長代理
 私も、これまでのご経験・ご見識を踏まえ、また、7月12日に開催された厚生労働省独立行政法人評価委員会の総会で、委員長を務められることになりました猿田委員を部会長に推薦したいと思います。

○政策評価官
 ただいま山田委員と田極委員から、猿田委員を部会長にというご推薦がありましたが、いかがですか。
(異議なし)

○政策評価官
 ありがとうございました。それでは、猿田委員に部会長をお願いしたいと思います。以後の議事進行については、部会長にお願いします。よろしくお願いします。

○猿田部会長
 ただいま互選にて委員長になりました猿田です。いままで2年間やらせていただいて、また引き続きということになりますが、どうぞよろしくお願いいたします。
 この部会において部会長代理を決めなければいけません。評価委員会令の第5条第5項において「部会長に事故があるときは、当該部会に属する委員のうちから部会長があらかじめ指名する者が、その職務を代理する」とされていますので、この部会でこれまでやってこられてご経験があり、ご見識を踏まえています田極委員にお願いしたいと思っているのですが、よろしいですか。
(異議なし)

○猿田部会長
 ありがとうございました。それでは、田極委員、よろしくお願いします。

○田極部会長代理
 猿田部会長よりご指名をいただきましたので、部会長代理を務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。

○猿田部会長
 どうぞよろしくお願いします。早速ですが、これから国立病院機構の評価をいただくことになりますが、各法人の概要とその課題について、事務局から課題を中心にご説明をお願いします。

○政策評価官室長補佐
 事務局より資料1-3に沿って簡単に説明します。国立病院機構については、医療を提供すること、医療に関する調査及び研究を行うこと、医療に関する技術者の研修を行うこと等の業務を行うことにより、公衆衛生の向上や増進に寄与することを目的とし、平成16年4月に設立されています。現在、第2期中期目標、中期計画を進行中です。本部は目黒にあり、病院が全国に144病院あります。職員は5万2,000人を超えており、大規模な法人です。また、厚生労働省の中で唯一の特定独立行政法人となっており、役職員の身分は国家公務員となっています。
 次です。6.「当面の課題とその取組」ですが、平成22年12月7日に閣議決定されている独立行政法人の事務・事業の見直しの基本方針や、平成22年12月27日に報告書が出されている厚生労働省の独立行政法人・公益法人等整理合理化委員会等により、国立病院と労災病院との診療の連携や統合、また、病院ネットワークの統合、病院のそれぞれの再編といったことが言われています。これを踏まえて厚生労働省では、国立病院・労災病院等の在り方を考える検討会を立ち上げ、今年度末を目途に、国立病院と労災病院の今後の方向性の整理を行う予定としています。

○猿田部会長
 どなたかご質問はありますか。新しい委員の先生方、特にご意見はありませんか。ありませんようでしたら、次に進みます。
 議題(3)です。実際に実績評価に入るわけですが、新任の先生がいらっしゃいますので、評価の流れ、評価基準について、事務局からお話いただきます。

○政策評価官室長補佐
 資料1-4-?をご覧ください。評価の進め方についてご説明します。初めに、法人の理事長より、年度業務実績の概要について説明をしていただきます。続いて個別の評価に入っていくのですが、評価項目は全体で14項目あります。こちらを当部会では5つのパートに分けており、それぞれのパートごとに法人から業務実績と自己評価について説明をいただきます。それが終わりましたら、委員の方には質疑がありましたら質疑をしていただきながら評定記入用紙、こちらは資料2-5になりますが、評定記入用紙に評価を記入していただくことを各パートで繰返し進めていただきます。
 評価についてですが、こちらは資料の真ん中よりやや下に「判定基準」があります。S、A、B、C、Dと5段階となっており、「B」が中期計画に概ね合致している、「A」は中期計画を上回っている、「S」は中期計画を大幅に上回っている、「C」は中期計画をやや下回っている、「D」は中期計画を下回っており、大幅な改善が必要、となっています。委員の先生方には、評価をしていただく際には必ず理由を付していただくとともに、例えばSとかDと評価する場合には、中期計画を大幅に上回った、また下回ったと判断した根拠を、具体的に記載していただくようお願いします。
 また、評価に際しては、評価委員会が特に厳正に評価をする事項があります。これについては、前大臣から独法の評価委員会に対して、業務経費の冗費が生じていないかとか、法人の諸手当等が適切かといったことについて、厳正に評価を行っていただきたいという要請がありました。
 また、同じように、総務省に設置されております政策評価・独立行政法人評価委員会で2次評価をしているのですが、こちらから毎年「評価の視点」が送られてきます。こちらを踏まえた評価もしていただく必要があります。こちらについては、資料2-4になりますが、法人のそれに対する取組を「業務実績評価別添資料」にまとめてあります。こちらを見ていただきながら資料1-4-?にそちらのチェックポイントを付けていますので、これを参考にしていただきながら評価をしていただきたいと考えています。
 個別評価が終わりましたら、各委員の評価を踏まえた評価書案を起草委員に作成していただきます。起草委員は、資料1-4-?をご覧ください。こちらに「起草委員(案)一覧」を付けています。昨年度と同様に、起草委員として田極委員にお願いしたいと考えています。また、財務諸表等の会計に関する意見担当として、和田委員にお願いしたいと思います。
 評価書案の作成については、各法人の所管課室と起草委員との間で調整していただきながら案文の作成を行っていただきます。起草委員において作成いただきました評価書案については、8月24日(水)に総合評価の部会を予定していますので、そちらでご審議いただくことになっています。
 また、個別評価を欠席された場合の取扱いですが、起草担当の方が個別評価を欠席されたと場合には、後ほど個別にレクを行い評価をしていただくことになります。起草担当以外の方が個別評価を欠席された場合には、評価等は不要です。ただし、事前に送っています資料等でご評価いただける場合には、評価結果について反映いたします。
 資料1-5と1-6です。資料1-5は委員の方々の評価の参考になればということで事務局で作成したものです。これは当部会の個別評価の一覧になっており、昨年度と対比できる形になっています。資料1-6は、当部会以外の厚生労働省所管の全法人の過去3年のSからDの個数を集計したものです。こちらは評定の結果と自己評価との差も見て取れると思いますので、ご参考にしてください。

○猿田部会長
 ただいまご説明いただきましたが、特に新しい委員の方、おわかりいただけましたか。要するに、これから評価をしていただくわけですが、いちばん重要なポイントは、先ほど事務局からお話いただきましたように、自己評価をしていただきますが、その他評価の区分けで、SとかAとかBとかそこのところが資料1-4-?に書いてあります。このところがいちばん重要でして、この評価を付けるにあたって、特にSとかDを付ける場合にはコメントを特別に書いていただくことがあります。ほかのところもできれば書いていただきたいということです。
 標準ですが、大体AからBぐらいのところが標準になると思います。資料1-6にいろいろな図が書いてありますが、例えば労働安全衛生研究所とか福祉医療機構とか、そういう所でこれまで大体S、A、B、C、Dの配分がこういう形でなってきたということで、白いところが自己評点で、黒いところが評点結果ということです。
 実はこの間、今度の新しい体制になって、高度専門医療研究部会の評価をやってみたら、かなり「S」評価が付いているのです。第1年目からそういうことでよいのかなど気になりました。この国立病院機構に関しては、これまでの経験があってしっかりやられてきておられますし、そういう点はよくわかって自己評価されていると思います。
 もう1つは、実際にこれから作業に入りますが、去年の経験から、本日だけではとても時間が足りないのです。ですから、ここでもちろん評価を付けられる方は付けていただき、時間が足りない方は、お持ち帰りいただいて、2、3日後あたりに出していただくのでよいと思います。それが本当に正しい評価になると思います。私は、昨年、当日では混乱して、やはり持って帰らなくてはとても無理だったということが分かったものですから。一応ご了承いただければと思います。そのようなところをお分かりいただけましたでしょうか。山田先生方はわかっていますよね。そういうことでよろしいですか。特にご質問はありませんね。
 それでは、先に進みたいと思います。国立病院機構の個別評価に入りますが、最初に矢崎理事長から、平成22年度における業務実績概要のご説明をお願いします。

○矢崎国立病院機構理事長
 本日は、私どもに対します評価委員会に、ご多用のところ、また蒸し暑い中ご出席いただきまして、誠にありがとうございます。そして、今回新たにご参加くださいました高瀬委員、海辺委員には、厚く御礼申し上げますとともに、今後ともよろしくお願いいたします。
 私ども国立病院機構は、発足後7年を経過しまして、事業の3本柱である診療事業、臨床研究事業、教育研修事業は、目覚ましく進展し、それを支える経営基盤の安定化についても、一層の成果を上げることができたのではないかと存じ上げています。
 特に医療事業について、144病院のネットワークをフルに生かした活動については後ほど報告申し上げます。教育研修事業については、その中でも念願でありました看護学部、大学院が新設され、我が国の医療の質及び生産性の向上を目指した、いわゆるナースプラクショナーといいますか、NPの日本版である、高度な看護能力に加えて診療能力を合わせ持つ看護師の育成が、本格的にまた着実に開始されたことです。
 さらに、補助金ではなく自己資金を財源とするNHO総研の活動、すなわち新薬導入のための治験の推進、あるいは診療データの分析を行うなどの活動が本格化し、我が国の医療の質向上に貢献するとともに、政策提言などに資するエビデンスの構築などに着実に成果を上げることができました。
 経営面についても、努力を積み重ねて、国時代に積み上がった7,600億円に及ぶ債務を着実に返済する一方、特に厳しい運営費交付金削減にも耐えて、赤字病院を減らし収支を著しく好転させたところです。
 しかし、昨年も申し上げましたように、独立行政法人の縛りが、私どものような医療事業を自立的に行っている法人にとり、ますます厳しい規制となり、事業の運営そのものに重大な支障を来すのではないかと危惧しているところです。すなわち、ほとんどの独法は、収入が国からの運営費交付金に、税金に依存していることから、例えば定員の削減とか、さらには、利益は中期計画期間中には投資にも回すことができない、その上利益の処分は原則として国に納めることとした対応を迫られていることなどがあります。
 ご案内のように、私どもに対する運営費交付金は削減され続けており、今日ではそのほとんどが、過去の公務員の年金資源を私どもを通して共済組合に支払われる義務的経費などが主でして、運営費交付金で収益を上げている他の独法とは大きな相違があります。医療事業を展開するには、古くなった医療機器の更新や建物の改築に膨大な額の投資が必要になります。それには収益を積み重ねて投資を行わなければ、提供する医療の質は低下しますし、職員のモチベーションも失われてしまい、ひいてはかつての国時代の赤字体質に逆戻りするものと危惧されているところです。
 その利益を国に納めることを原則とした対処法の改善を、今回は特にお願いしたいと願っています。できれば独法を卒業することに、それに越したことはありませんが、利益処分に関する原則の緩和の具体的な処方箋の1つに、利益処分にあたっての総務省の税金で運営されている法人を対象とした経営努力認定の基準がありますが、これを医療事業の特性に照らして、それにふさわしい、すなわち利益が投資に回されるような仕組みへの見直しについて、何卒サポートをお願いしたく存じます。
 この点については、独法発足時に厚労省をはじめ国は、負債が積み重なり続けていた国立病院がまさか利益を出すとは、想定外のことで、この点が見過ごされてしまったのではないかと私は善意に解釈しているところです。私ども機構を評価し、その健全な運営をサポートしていただけるのがこの委員会でして、また、国や外部に対して意見を具申できる存在でもあります。何卒ご支援をいただきたく改めてお願い申し上げるわけです。
 以上で、私どもとして申し上げることを簡単にまとめました。ありがとうございました。

○猿田部会長
 いま矢崎理事長からお話があったとおりでして、実際に私どもが今まで見ていて、こんなにまで経営状態が改善するとは思わず、本当に驚いております。先ほどお話がありましたように、総務省の考え方は、せっかく皆様方が各病院で努力され、財政状態を良くされ、国立病院機構全体として良くなり、これだけしっかりした体制にして、収支を良くし、そのお金で古建物を直すとか利用の仕方をもっと考えなくてはいけないのに、それをなかなか分かって下さらない。私どもが実際に評価をやっていても、それを非常におかしく感じていますので、そのあたりのところを、私どもの委員会としてどうしていったらいいか。今年から評価が始まりました高度専門医療研究部会の場合とは、また少し違った形で考えていかなくてはいけないと思います。実際にここは交付金がそれほど多くありませんが、そういったことも考えて特に評価をしていただければと思います。
 また、総括的な、どういう方向でいったらいいかということを皆様方に相談させていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。矢崎先生、どうもありがとうございました。
 早速ですが、時間の関係もありますので、これから個別評価に入ります。お手元に資料があると思いますが、全部を個別項目において5つのグループに分け、各グループごと、例えば1グループが項目1~4、そういう形で各項目ごとに5グループでやっていきますが、大体20分ぐらいご説明していただいて、10~15分ぐらい委員の先生方からご質問をお受けして、それで一応評価をしていただくという形で、トータルとして1グループが大体40分ぐらいでいきます。
 先ほど申し上げましたように時間がたぶん足りなくなると思いますので、今日できないところは持ち帰っていただいて、書き入れて提出していただくことになるかと思いますが、よろしいですか。
 それでは、第1グループ、項目1~4「診療事業」になりますが、ご説明をよろしくお願いします。

○国立病院機構医療部長
 それではグループ1、診療事業、1頁から46頁までの業務実績について、ご説明申し上げます。資料の1頁、(1)患者の目線に立った医療の提供、?分かりやすい説明と相談しやすい環境づくりです。患者満足度調査については、平成22年度も本音を引き出しやすい設問形式でプライバシーに配慮して実施し、結果は総合評価をはじめ、分かりやすい説明、相談しやすい環境づくりについて、前年度の平均値を更に上回る満足度が得られるなど、各病院ごとに調査結果を踏まえた改善が着実にされたところです。
 2頁です。各病院の取組の2の(1)の?ですが、クリティカルパスの積極的な活用、カンファレンスへの患者・家族の参加などを通じて、分かりやすい説明に努めています。また患者・家族を対象とした勉強会、相談会を実施しているほか、3頁にありますように、図書コーナー、情報室の設置も更に進みました。職員に対し、接遇やコミュニケーションの研修を実施した病院も前年度より増加し、4頁にありますように、医療ソーシャルワーカー(MSW)についても、平成22年度は21名増員しました。
 5頁です。セカンドオピニオンの体制づくりを推進し、平成22年度のセカンドオピニオン窓口設置病院は更に増加し、134病院となりました。
 6頁です。「患者の価値観の尊重」です。患者満足度調査の結果には残念ながら表れていませんが、患者の利便性を考慮し、地域の医療ニーズを踏まえて、土日の外来やリハビリテーションなどを実施する病院が増加しているほか、待ち時間対策についても、待ち時間の状況を分析し、勤務体制の変更を含む工夫を行っています。
 7頁です。患者や家族を対象とした勉強会は、患者のセルフマネージメントを支援する取組にもなっています。
 8頁の「個別の診療報酬の算定項目の分かる明細書」の発行です。これは中期計画期間中に全病院で発行する体制を整備することとしたところですが、平成22年4月より、国が原則として全患者を対象に発行すべきとの方針を打ち出したこともありまして、平成21年度、19病院が対応していたところ、平成22年度は133病院、これは正当な理由があるとして届け出ている病院を除く、すべての病院で全患者について対応しました。もちろん、残り11病院も求めがあった場合に発行可能となっております。そのほか院内助産所や助産師外来を開設した病院も増え、妊産婦や家族のニーズに合わせたお産や育児支援を充実させています。
 9頁の「自己評定」です。患者満足度調査については、各病院が結果を分析してさまざまな改善を図っており、総合評価をはじめとする項目で、前年度平均値を更に上回る満足度の向上が見られました。医療ソーシャルワーカーの増員を更に進めたほか、クリティカルパスの実施件数増加、セカンドオピニオン窓口設置病院の増加、多様な診療時間設定や待ち時間対策の工夫など、患者のニーズに対し、きめ細やかな対応を進めたところです。以上の取組などを踏まえ、自己評定「A」を計上させていただいています。
 続きまして11頁、(2)「安心・安全な医療の提供」、?医療倫理の確立です。病院内の相談窓口の個室化を更に進めたほか、建替えを行った病院ではプライバシーに配慮した外来ブースを新たに設置したり、面談室の増設などを行い、患者満足度調査においてもプライバシーへの配慮に係る満足度が前年度を上回る結果となりました。カルテの開示請求については、開示することが治療の妨げになるなどのケースを除き、すべて開示を行っています。
 12頁の「臨床研究、治験に係る倫理の遵守」です。すべての病院に設置している倫理審査委員会の開催件数及び審査件数が前年を上回り、活発に活動しています。倫理委員会、治験審査委員会の委員を対象とした研修会を開催し、倫理的な問題について、医療従事者へ助言することのできる体制の基礎となる人材の養成に努めました。また審議された内容について、各病院においても、本部に設置している臨床研究中央倫理審査委員会や中央治験審査委員会と同様に、ホームページに掲載するなどして概要の公開をしております。
 14頁の「医療安全対策の充実」です。2の病院間相互チェックですが、これは医療安全対策について病院同士で相互に訪問し合い、チェックすることで、医療安全対策の質の均てん化を行い、更に質を向上させようとするもので、平成22年度は実施に向け、6つの視点と136のチェック項目から成るチェックシート案を作成し、チェックの方法を具体化しました。このチェックシートを用いて、今年度、試行的な相互チェックを始めています。院内感染防止につきましては、全病院で院内サーベイランスを実施しているほか、院内感染対策チーム等による院内ラウンドを行っています。また感染管理認定看護師を配置している病院数、人数ともに増加し、院内感染防止体制を強化しています。
 15頁です。医療事故等の報告については、日本医療機能評価機構が行う医療事故情報収集に積極的に協力するとともに、国立病院機構においても「警鐘的事例」についての発生原因や、再発防止策を含めた事故の情報を「医療安全白書」として公表し、我が国の医療安全対策の充実に資する取組を行ったところです。
 16頁です。長期療養患者が使用する人工呼吸器については、平成19年に機種の標準化を始めてから、標準機種の使用割合が当初の35%から55.7%に増加した一方で、新機種が普及するなど、最新の状況を踏まえた見直しが必要となったことから、長期療養患者が使用する人工呼吸器の標準化に関する専門委員会を再度設置して検討を開始しました。
 17頁です。平成20年度から2年間のプロジェクトとして実施した、「転倒・転落事故防止プロジェクトについて」は、平成22年度はプロジェクト期間中の転倒・転落事例半年分の約1万6,000事例のアセスメントシートについて分析を行い、転倒または転落した患者の特性を明らかにし、リスク軽減に資するよう各病院に情報発信をいたしました。
 18頁にありますように、医療安全対策に係る委員会の開催や各種研修も、引き続き実施しているところです。
 19頁、「自己評定」です。医療倫理につきましては、プライバシーに配慮した取組を進めるとともに、全病院に設置された倫理審査委員会が外部に情報公開をしながら活動しています。医療安全については、病院間相互チェックの実施に向け、そのツールとなるチェックシートを作成し、医療安全対策の標準化の取組を進めるとともに、感染管理認定看護師の配置・増員や研修を通じた対策の質の向上、更には情報発信により、我が国の医療安全対策の充実に貢献すべく積極的な取組を行いました。以上の取組などを踏まえて、自己評定「A」を計上させていただいています。
 続きまして21頁、(3)「質の高い医療の提供」、?クリティカルパスの活用です。クリティカルパスの普及が更に進み、実施件数28万3,702件は、中期計画の最初の年の平成20年度に比べて16.4%の増加となりました。地域連携パスについても実施病院数が更に増えたところです。
 22頁、「EBMの推進」です。エビデンスに基づいた医療の質の向上と均てん化に関して、平成22年度は新たな取組を行いました。まず1つ目は、厚生労働省の新規事業である「医療の質の評価・公表等推進事業」への参加です。従来より機構では、臨床評価指標による評価を行ってきましたが、当該事業に当機構の事業計画が採択され、データ収集や計測のしやすさ、病院の改善策への活用のしやすさを重視した、各病院のDPCデータから計測できるプロセス指標とアウトカム指標の組合せなど、17指標を考案しました。DPC対象45病院についてこの指標を計測し、病院ごとの数値を原則、病院名をオープンにして公表し、また各指標の計測マニュアルもホームページ上で公開しました。このことは医療を病院横断的に可視化し、透明性を確保しつつ、各病院が計測結果を基に医療の質の向上に取り組むという効果のみならず、当機構以外のDPC病院においても、自院のDPCデータから指標を算出し、評価を行うことができるため、我が国の医療の質向上に貢献できる取組みと自負しております。
 また、2の臨床評価指標の公表及び改善は、全144病院を対象とした臨床評価指標のことですが、従来の26項目について、平成21年度から見直しを開始していたところです。エビデンスに基づくプロセス指標を中心に幅広い領域の指標案について、DPC以外の病院においてもレセプトデータから抽出できる情報を精査し、最終的に87の指標を平成22年度中に決定いたしました。
 23頁です。これらの指標の計測に必要な診療情報のデータベースと、収集・分析システムを構築したことも、平成22年度の新たな成果です。平成22年4月に総合研究センター診療情報分析部を創設し、各病院のレセプトデータ、DPCデータを収集・分析するための診療情報データバンクを10月に完成させました。早速、このシステムを活用し、医療の質の評価公表等推進事業の成果を上げたほか、本年度に実施する144病院を対象とした87指標の測定にも活用できるデータベースを作成できました。
 25頁、「長期療養者をはじめとする患者のQOLの向上等」です。長期療養者をはじめとする患者のQOL向上では、ボランティアを積極的に受け入れて、地域との触れ合いや行事などイベントの開催に取り組むほか、季節の特別メニューなど食事の楽しみを増やすことで、患者のQOL向上に寄与しています。在宅療養支援では、重症心身障害児等の通園事業や、在宅の重症難病患者が必要時に入院できる施設として、自治体の事業に協力しています。また、介護サービスを充実させるために、療養介助職を729名から767名に増員するとともに、平成22年度は各病院の療養介護職のリーダーを集めた研修を実施し、知識・技術の向上を図りました。
 26頁です。老朽化した重症心身障害、筋ジストロフィーなどの病棟について、平成22年度中に55病院の建替設計を進めており、うち8病院が工事に着手、1病院は完成するなど、耐震化と療養環境の改善に積極的に取り組みました。
 28頁、「職種間の協働、チーム医療の推進」ですが、平成21年度に引き続きチーム医療推進のための研修を開始し、栄養サポートチーム、がん化学療法、輸血の3つの分野について、複数の専門職種が合同で必要な知識と職種間連携業務の習得を図りました。
 29頁、「自己評定」です。平成22年度新規に設置した総合研究センターの診療情報分析部において、各病院の診療情報を収集・分析するシステムとデータベースを確立しました。平成22年度の国の新規事業である医療の質の評価と公表に率先して参加し、エビデンスに基づく医療の均てん化につながる指標群を考案し、計測結果を病院名入りで公表するとともに、他の医療機関でも活用いただける計測マニュアルを公開して、我が国の医療の標準化に貢献しました。144病院を対象とした領域別の臨床評価指標については、前年に引き続き抜本的な見直しを進め、診療情報分析システムを用いて継続的に計測できる87の指標を決定しました。クリティカルパスは実施件数が更に増加し、中期計画の目標を大きく上回る達成状況にあります。長期療養患者のQOL向上に関しても、療養介助職の増員と質の確保や、老朽化した病棟整備を進めました。チーム医療の研修により職種間の協働を推進しています。以上の取組などを踏まえ、自己評定「S」を計上させていただいております。
 32頁、(4)「個別病院に期待される機能の発揮等」です。?地域医療への貢献で、地域連携クリティカルパスを実施している病院が増加するとともに、紹介率、逆紹介率が増加し、また平成22年度、新たに5病院が地域医療支援病院として指定されるなど、地域医療機関との連携が一層進展したところです。医療体制、地域医療体制に関する都道府県委員会への参加病院も大幅に増加し、平成22年度は新たに、地域がん診療連携拠点病院、救命救急センター、地域災害拠点病院、へき地医療拠点病院、総合周産期母子医療センターに、7つの病院が指定を受けました。
 また33頁の7の東日本大震災への対応ですが、東日本大震災では現地対策本部を設置し、医師、看護師等から成る医療班を派遣するなどして、延べにして約8,000人・日の職員を被災地に派遣し、機構本部、ブロック事務所、各病院が組織を挙げて対応しました。厚生労働省DMAT事務局を担っているのが当機構災害医療センターですが、災害医療センターにおいては、震災直後より全国のDMATを指揮し、また当機構からもDMAT33班、約160人が出動し、急性期のトリアージ、広域搬送などを実施しました。
 これら災害急性期の活動から亜急性期、すなわち避難所の巡回診療や救護所の医療活動を切れ目なく実施するため、34頁にありますように、医療班を派遣し、その数は5月にかけて計50病院、77班、399人となりました。当初は被災地の情報も少なく、現地に派遣した機構対策本部員と医療班が医療支援ニーズの情報を収集し、地元自治体と関係者の方々と情報共有・調整を行った結果、機構の医療班は岩手県山田町など、いくつかのエリア担当を任され、地域の医療資源が活動を開始できるようになるまで、日々変化する医療ニーズを把握しながら必要な支援を継続しました。遠方からも多くの医療班を派遣しましたが、ブロック事務所ごとに病院と調整し、後続の医療班に活動内容や課題が引き継がれるようにしたため、病院チームが交替をしても一貫した方針と指揮系統が確保され、機構病院ネットワークを活かした支援ができました。
 さらに福島県におきましては、福島第1原子力発電所の事故直後から派遣を開始し、避難された住民の被ばくの有無が不明であった時期に、ほかの機関に先駆けていち早く放射線スクリーニング活動を行いました。このほか、現在も継続していますが、心のケアチームを派遣するとともに、被災病院への看護師派遣、そして35頁になりますが、被災地域の患者受入れ、計画停電に際しての在宅難病患者への対応、被災地への物資の支援など、迅速かつ組織的に実施いたしました。
 36頁は災害医療に関する研修状況を載せていますが、今回の震災対応は、このような日ごろの従来からの研修が活かされたと考えています。また今回の震災の経験を今後の研修内容に反映させることとしています。
 37頁、「救急・小児救急患者の受入数」です。救急患者の受入総数は前年度より減少したものの、より重症度の高い救急患者数を表す救急受診後の入院患者数は増加していて、平成20年度と比べても7%の増加となっています。また救急車による受入数は、消防庁の速報によれば救急班送者数が全国的に、平成21年度に比べ平成22年度は6.3%増加したところ、国立病院機構では8.9%増加して受入れをしています。
 38頁ですが、(4)のドクターヘリ、防災ヘリによる診療活動も増えています。
 39頁、?「政策医療の適切な実施」です。重症心身障害医療については、全国の病床の約4割を占めており、引き続き在宅療養支援のための通園事業や、NICUの後方病床としての機能強化のための調査研究を行いました。
 40頁、心身喪失者等医療観察法に基づく医療の確保について、機構は制度発足時より主導的な役割を担ってきたところですが、平成22年度は新たに2病院で41床整備し、患者の受入れを開始しました。結核医療については、機構の病院がほとんどの都道府県で結核の入院医療機関として指定されており、中でも多剤耐性結核など、比較的難易度の高い患者の診療を担うことで、地域の結核医療の最終拠点となっています。平成22年度は国の結核医療政策の検討にも積極的に参画しました。
 42頁です。「重点施策の受け皿となるモデル事業の実施」ということでは、先に述べましたとおり、医療の質の評価と公表を推進する国の事業に、採択された3団体のうちの1つが国立病院機構であり、医療の質の評価に有用かつ計測しやい指標の考案、個別病院名を入れての測定値の公表、そして普遍的に活用可能なマニュアルの公開によって、我が国の医療の標準化モデルを提示できたと考えています。また、後に述べますが、国のいわゆる特定看護師養成調査施行事業にも参加し、特定看護師の育成に取り組んでいます。
 43頁、「自己評定」です。東日本大震災について、さまざまな支援のニーズに対し、迅速かつ組織的な支援活動を実施しました。地域医療支援病院数や地域クリティカルパス件数、紹介率、地域医療の委員会等への参加病院数、地域の各種拠点病院に指定された病院数が、いずれも更に増加しており、地域医療の中で積極的に求められる役割を果たしています。ほかの設置主体では必ずしも実施されない恐れのある医療観察法病床の66.9%、筋ジストロフィー専門病床の95.6%、重症心身障害病床の38.1%、結核病床の38.3%を機構の病院が占めており、引き続きセーフティネットとしての機能を担っています。医療の質の評価公表や、チーム医療の推進に資する特定看護師の養成など、国の重要施策の受け皿となる事業にも率先して取り組みました。以上の取組などを踏まえ、自己評定「S」を計上させていただいております。グループ1の説明は以上です

○猿田部会長
 ありがとうございました。いま、1~4のところまでご説明いただきましたが、どなたかご質問はございますか。

○山田委員
 全体的に見て、大変素晴らしい成績を出していらっしゃるということは、よくわかりました。ただ、いちばん最初の患者満足度調査のところで、9頁の自己評価のところを見させていただくと、入院、外来ともに前年度平均値を上回って大変いい結果が出ているとお書きになられているのですが、今日、机上配付していただいた資料2-8、評価シートの説明資料ですね。事前に配っていただいたのとちょっと中の形式が違うので、私が十分つかみきれていないのかもしれないですが、4頁、5頁のところに入院患者へのアンケート、外来患者へのアンケートがあると思います。入院患者のアンケートは非常に素晴らしいと思いますが、外来患者へのアンケートを見ると、病院について外来の総合評価は、平成21年度の4.110から4.112に、確かに0.002上がっているということですけれども、1の病院についての総合的評価で、?の治療の結果に満足しているかは、昨年に比べると0.004下がっている。家族や知人に勧めたいというところは昨年に比べると0.014下がっている。その下の病院での出来事というところで?の診療前、ここの内容がよくわからないですが、診療前、?の診察、治療云々、?の病院の環境、会計の項目のところは、みんな昨年よりポイントが下がっているのです。そういうふうに私は理解したのですが、それでよろしいでしょうか。そうなると、あまり手放しに「外来の部分の評価は全く問題ない」というふうにお書きになるのは、表現がちょっとまずいのではないかと思います。確かに全体としては非常によくなっている。
 こうなった原因は、個別のものを見てみなければわかりませんが、ある特殊な病院があって評価が非常に低い病院があったのか、そういうことの分析をした上で、この辺の表現を、「悪いところは少し改善をしなければいけない」というような表現の仕方に変えたほうがいいのではないかと思います。もし私の解釈が間違っていたら訂正してください。

○国立病院機構医療部長
 まず入院と外来、それぞれで総合的評価という項目がありますが、それは各設問の得点を合計したものではなく、アンケートに答えてくださった方が、総合評価の事項に対して何点付けてくださったかという点数です。その「総合的評価」と、中期計画上、目標に明記している、「分かりやすい説明」と「相談しやすい環境づくり」、それと「プライバシーへの配慮」を主要な項目として抜き出しましたので、それらについては上回ったということで病院の改善の努力が出ているのではないかと考えていますが、ご指摘のように細かく見ていくと、前年よりも悪くなっているところもあります。特に病院での出来事で、例えば会計の待ち時間が増えたということの点数も出てきています。例えばこれは先ほどもご説明しましたが、レセプト並の明細書を発行するようになって、対応すべき病院はすべて対応しましたけれども、まだ慣れなくて、お待せするようなこともあったのではないかと思います。さまざまな取組が行われている中で、よく対応をとっている所は点数が悪くなった理由を、例えば待ち時間対策であればストップウォッチで測って、それぞれの部門でどのぐらいの待ち時間があったかも測定して、次の年の対応に活かすこともやっていますので、今回、平成22年度に悪かったところは、今後、これを糧に改善を図ることになると思っています。

○猿田部会長
 山田委員、いいですか。だから機構としてはAという形にしたのかもしれません。

○国立病院機構理事長
 先ほど、投資がなかなか難しいという話をしました。いま、重心の患者さんの病棟というのは改築を始めましたけれども、大部分の病院の外来は手付かずなのです。非常に古い構造になっていて、患者さんにとって機能的でない外来になっていますから、外来の満足度はどうしても落ちてしまう。今後の課題は、先ほどの利益処分で、外来のシステム化で少しでも患者さんに満足いただけるような方策を、これから我々はしていかなければいけない。いちばん後回しになってしまったので、そこがいちばん辛いところなのです。

○猿田部会長
 あちこちの病院を見てまいりますと、本当に病院によってずいぶん差がございますね。それはものすごく感じるところです。もう1つ、私は非常に評価したいのが、土日や連休のときに、かなり外来を開かれて頑張られたこと。実際にそれをやったことによって、その日の患者数はかなり来ていますか。要するに開いた分の効果が十分出たかどうかなのですが、それはどうなのですか。その広報が悪いために患者さんが思ったほど来なかったり、いろいろとあり、国立病院としてはどうか伺いたかったのです。

○国立病院機構医療部長
 実際に休日などに診療を実施して、どのくらい患者さんがいらっしゃったかという具体的な数値まではないのですが、ただ、特に多様な診療時間の設定ということで、ポイント数が前年よりも上がった病院は、小児科の休日や時間外の外来の窓口を設けて、そこは患者家族から大変好評だったということは聞いています。具体的な数字は持ち合わせていません。

○猿田部会長
 やられる各病院の先生方、あるいは事務の方々は非常に大変なのだと思います。せっかくやられて、それがきっちり伝わっていると患者さんも来るし、大変良いことだと思っていますが、前もってよく伝えておくことが大切と思います。そうでないというのは広報の問題もあったものですから伺いました。

○夏目委員
 事前に資料をいただいていたので、ざっとは見てきたのですが、いまの説明があったところも含めて全般的な印象としては、例年どおり非常によく頑張っているという印象を持ちます。ただ、若干、こういう表現がいいのかどうかわからないですが、あるところまで来てしまったので、なかなかそれ以上が難しくなってきているのかなと思いつつも、7年経ってちょっと中弛みの兆しが出てきたのではないか。抽象論で言うな、具体的に言えと思われるかもしれませんが、具体的にはこれから指摘を交ぜながら言うとして、若干、中弛みのところにきたのかなという印象を全般的に受けました。そういう前段を申し上げて、いくつか細かいことも含めて教えていただければと思います。
 第1点目は、中期計画の目標にもなっているセカンドオピニオン制度の充実の中で、全病院で受入れ対応できる体制を整備することになって、全病院144病院が目標になっているのですが、5頁の右側に、昨年はプラス4の133までいったのに、平成22年度は1病院しか増えていない。134病院で、残りまだ10近くの病院があるということで、まだ3年間あるわけですから目標達成を心配しているわけではないですが、少しテンポが落ちてきている感じがしますので、何か理由があるのかどうかが第1点目です。
 第2点目は、いまお話があった患者満足度調査の関係で、待ち時間対策について3.5以下と、ほかの指標に比べると極端に低いわけです。ほかは4.5とか4とか、大体4を超えているのですが、ここだけはなかなか前進しない。私もときどき患者になることがあるのですが、待たされると非常に不安になるわけです。患者自身が病院に行くときは大変不安な気持を持って行きますので、なかなか声が掛からないと自分は忘れられたのではないか、自分は無視されて、ほかの人に行ったのではないかと不安が更に増します。7頁に「看護師等による積極的な患者への声掛けや状況説明」と書いてあり、なかなか大変でしょうが、これを本当にやっていれば患者の不安もないし、看護師さんがそこまでやってくれるならということで、おそらく3.5前後の満足度ではなく、5近いところまでいくのではないかという気がします。そういう意味で、もうちょっと待ち時間対策について強化していただければいいのではないか。これはある面で要望です。
 3点目が、14頁の医療安全対策の充実の中で、中期計画上の表現として「相互チェックを実施するなど」となっています。これは5年間で実施すればいいのですが、平成21年度で相当体制整備を進められた。専門委員会も作った。では平成22年度からもう施行なり何かやっているのかなと思ったら、相変わらずという表現は悪いですが、チェックシートの作成やチェック方法を検討したということで、なかなか実施に移していないのです。まだ3年あるからいいのだということなのか、病院相互でいろいろ牽制し合って実施に移すのが難しいのか、そこら辺がどうかというのが3点目です。
 4点目ですが、17頁の転倒・転落事故防止プロジェクトで、2年間で半減の目標を掲げて強力に推進ということで非常にいい取組だと思いますが、平成22年度の実績を見ると、真ん中より上で、プロジェクトの達成状況として、B以上の非常に重大な事故は、2.62%から2.26%で減少していることはいいと思いますが、そもそもの半減目標に対してはどうなのか。以上4点です。

○猿田部会長
 ありがとうございました。何かお答えがございますか。

○国立病院機構医療部長
 順番に、まず最初のご質問で、セカンドオピニオンで病院の数の増え方が緩やかになったのではないかというご指摘ですが、まだセカンドオピニオン窓口のできていない所は、どういう背景でまだ設置されていないか調べています。その共通点として精神科の病院があり、患者さんのニーズとして多いのは、疾患別で言うと、がんであったり神経難病であったりするものですから、精神科の病院としての取組み方が進みにくいという診療科の課題が1つあります。他の要因としては、医師不足地域の病院で医師の確保を考えると、そこまで時間が割けないところもありますが、いずれにしても窓口設置に向けた努力は続けている状況です。
 2つ目のご質問の満足度調査の待ち時間対策ですが、待ち時間に関する項目も6項目ぐらいあって、その中で実はよくなっているのもあります。例えば、呼出しの仕方、診療の順番、職員の態度に関する項目ではプラスの評価で、よくなっているのですが、一方で、平成22年にいちばん下がった要因として、会計までの待ち時間が長かったと不満の回答があって、全体として下がったということです。これは病院によって、例えば採血で待ち時間が長い所では、採血職員の早出勤務を導入して混雑しないようにしたとか、患者さんが来られて、医師の診察や各種検査のどこが、いちばん待ち時間が長いか調べた上で、検査ごとの結果が出る時間が何時ごろがピークか情報を発して、患者さんの来院時間の目安とするなど、すぐに待ち時間解消までいかないですが、細やかな取組でまだできることは、いろいろやっていく余地はあるのではないかということで、そういう取組を進めている状況です。
 3つ目のご質問の病院間相互チェックについて、まだ実施できていないということですが、評価シート説明資料という白い資料の57頁で、チェック項目を全体で136項目作ったとあり、その具体例として次の58頁に項目が書いてあります。平成22年度は、さまざまな専門分野のスタッフとディスカッションして固めたということで、これを使ってパイロット的に病院相互チェックをやる予定でした。ちょうど震災のあった次の月曜日からスタートする予定だったところが、できなかったということで実施には至りませんでした。これは今年度になって直ちに実施をして遅れを取り戻そうとしているところです。
 4点目のご質問の転倒・転落事故防止プロジェクトですが、確かに平成20年度にスタートしたときには半減を目標に掲げていましたけれども、プロジェクトを実施したことでかえって報告が増え、これは報告の精度が上がったのではないかと思います。職員の意識も向上し、逆に報告件数が増えたという経緯もありました。そこで半減には至らなかったのですが、いろいろ分析してみて、3B以上の重症度が高い転倒・転落がどうかというと、それは最初の平成20年度に比べると統計的にも有意に減りましたので、転倒・転落全体の半減は達成できなかったものの、重大事象の発生率減少というところで、少し効果の兆しがあるのではないかと思っています。引き続き転倒・転落の低減に努めてまいりたいと思っています。

○国立病院機構理事長
 夏目委員から、中弛みの印象があるという厳しいご批判をいただきました。国時代の職員は結構資質があって優秀な人がたくさんいたのですが、必ずしも十分機能してはいなかった。独法になって、意識改革して皆さんが一生懸命働くようになったので、この目覚しい成果が上がりました。言うなればゴム紐はいっぱい引っ張られた状態にあるのです。先ほどは外来というハードの面を申し上げましたが、もう1つは、独法の縛りが定員を削減しろというものですから、済生会など他の公的医療法人と比べると、我々の職員数は約半分ぐらいなのです。ですから、是非、その縛りを取り除いていただければ、サービス向上は一層充実しますし、中弛みと言われるのが一皮むけて、さらに待ち時間の問題や声掛け運動が充実するには独法の縛りを緩和していただき、せめて他の公的医療法人と同じぐらいのスタッフを整えていただければ、いま、ご指摘の問題は更に解決できるのではないかと思いますので、是非、その点もサポートいただければと思っています。

○猿田部会長
 よろしいですか。

○田極部会長代理
 いろいろご意見があるかと思いますが、43頁を拝見しても、震災対応ということで、全国的なネットワークを活かして、しかも以前から災害医療に対していろいろと研修を行うなど準備をされてきたということで、この震災については、あらゆる所で「想定外」という言葉が使われていますが、この災害医療の派遣について、国立病院機構ではプロとしてきちんと想定した対応をされたということで素晴らしい実績を積まれたと高く評価します。
 私も夏目委員と重なるところがあるのですが、4頁にMSWの配置状況がありますが、これからは医療・介護連携、あらゆる施設との連携、あるいは在宅との連携が非常に重要になってくると思いますので、全病院にMSWを配置する体制を整えていただくことが必要なのではないかと思います。ここも人員としては増えていますが、配置されている病院が3病院増えたということですので、残りのまだ配置されていない病院について、ニーズなどもあるかと思いますが、そういったところを踏まえながら早目に対応していただきたいと思います。
 あと会計のところで、先ほど「待ち時間が」という話がありましたが、私もいろいろと調査をしたときに、あらゆる病院が明細書の発行で会計の待ち時間が長くなっているというお話も聞きました。そういったところが満足度が高まらない結果なのかなと思うのですが、引き続き努力はしていただきたいと思います。これも人員を増やすというところがあると思いますが、病院業務については人が基ですので、このあたりは人を増やすような仕組みが必要なのではないかと思います。以上、質問ではなく意見です。

○山田委員
 私も問題点だけ指摘しているわけではなくて、非常によくやっていただいているところも、きちっとお話させていただかないといけないと思うので申し上げます。(3)の質の高い医療のところで、医療の標準化に向けた取組として厚労省の新規事業に参画され、17指標についてデータを収集・分析し、医療を病院横断的に可視化して、今後の診療やケアの透明性の確保につなげたと、これは非常に大きな仕事だと思います。実は我々も手を挙げたのですが残念ながら参加できませんでした。これは素晴らしい事業で、今後、同じように医療の質の確保、透明性の確保といったものについて、非常に大事なことだと思いますので、引き続きやっていただきたいと思います。
 先ほど東日本大震災のことに触れられましたけれども、全国のDMATを、国立病院機構が中心になって全体をコントロールしている。あるいはご自分の所からDMATチームをたくさん派遣している。あるいは今回のように放射線被ばくしたリスクの高い所で、被ばく者のスクリーニングを行ったことは非常に大きな活動だと思っています。この辺は非常に高く評価させていただきたいと思います。
 これは直接、評価点には関係ないのですが、福島県で救護班が活動するときに、放射線被ばくに関して救護班が被ばくしないようにとか、あるいは救護班の被ばくを測定するといった形で、何らかの対策をとられたことはありますか。あったら教えていただきたいと思います。

○国立病院機構医療部長
 いちばん最初にスクリーニング活動に行ったチームというのは、まだ状況も全くわかりませんでしたので、フィルムバッジなども付けて自分の被ばく線量を測定しながら、幸い心配するようなことはありませんでした。あとは福島にかかわらず、現地の情報が今回は非常に入りにくかったこともあり、2次災害でどういうことがあるかもわからないということで、常に緊張感を持ちながら情報をできるだけ本部のほうでも入手して、派遣する医療班に伝えてコミュニケーションをとる努力をしたということがあります。

○猿田部会長
 ほかに委員の先生方、ございませんか。

○?瀬委員
 細かいことで恐縮ですが、セカンドオピニオンの件です。私などもこの年になると病気がちになってセカンドオピニオンによく行くのですが、大きな資料の2-8の21頁で料金のことです。例えば45分で2万円とか1時間で2万1,000円など、かなり高い感じがするのです。もちろんセカンドオピニオンに取り組まれている病院が増えることは好ましいのですが、料金的にあまり高いと実際は利用できないみたいな感じになると思います。その辺は今後はどうされるのでしょうか。

○国立病院機構医療部長
 セカンドオピニオンの料金設定につきましては、各病院がそれぞれに設定することになっています。なかなか一律に決めにくいのは、その地域の状況により、その地域の機構病院以外にもセカンドオピニオンを実施している所もあると思いますので、大体、その状況に合わせたというか、相場と言ったら変ですけれども、そこを見ながらということです。高い金額の所も低い金額の所もあるし、いろいろバラエティに富んだ実態となっているのがいまの状況です。

○海辺委員
 私は、がんのほうの患者団体なものですから、がんのセカンドオピニオンですと予約を入れるのが非常に大変だということが実際あったりします。それで、ある程度高額な料金設定にしていただいたほうが、本当に必要な人が相談しやすい環境が整うという部分もあるし、病院ごとに設定価格が難しいところはあるのではないかというのが正直なところですから、一概にこれを見ただけで、その価格が妥当かどうかはわからない部分があるかと思います。例えば弁護士さんなんかの相談の場合、1時間5,000円ということがあろうかと思いますけれども、実は診療報酬みたいなので設定されると、医師と1時間お話をしても極端に安かったり、逆に業務を圧迫するところも出てきたりしますから、そういうところの価格設定は非常に難しいところがあると思いました。
 相談支援のほうで見ていて、例えば2頁の「分かりやすい説明に係る取組例などで、カンファレンスや看護計画の策定に患者・家族が参加できるようにし」というのは、非常にいい取組だと思いますが、例えばこういうことを、ある程度DPCの病院などで標準化する予定があるのか、いい事例の1つとして1病院だけがやっているのかで、全体の評価もいろいろ変わってくるのかなという印象を持ちました。
 もう1つ、メディカル・ソーシャルワーカーを配置する病院が増えていることは非常にいい取組だと思いますが、がんの各拠点病院に相談室を作ることを決めても、相談件数が年に何千件もある病院もあれば、かんこ鳥で年に数件しかない病院もあったりしてばらつきがあります。その内容や質、稼働率については調査されているのか、されていないのかは、この評定に大きく影響するものではないかもしれないですが、興味を持ちました。

○国立病院機構医療部長
 分かりやすい説明について、患者や家族の方々が参加してという、1つのツールとして普及を促進していこうとしているのがクリティカルパスです。クリテイカルパスを活用することの推進によって、できるだけ患者さんとも情報共有してご理解をいただくという取組は、機構を挙げて進めているところです。それからMSWについて、相談件数、内容まではまだデータがないものですから、今後の課題としたいと思います。

○猿田部会長
 時間の関係もありますので、4~5分で評定をしていただきます。あるいはできなかったらお家に帰ってやっていただくことにします。では4~5分とっていただきます。
(評価シート記入)

○猿田部会長
 まだかと思いますが、時間の関係がありますので、続きまして第2グループです。項目5~7、臨床研究事業、教育研修事業、総合的事項についての評価を行います。法人からの説明を15分、委員の質疑と評定で15分、合計30分です。よろしくお願いします。

○国立病院機構医療部長
 それでは、グループ2、47~62頁の業務実績についてご説明します。47頁、2「臨床研究事業」です。平成22年度より臨床研究事業は、新たに設置した総合研究センターの臨床研究統括部が担当しています。引き続き機構の全国的なネットワークと豊富な症例数を活かして、大規模臨床研究を推進しました。平成19年度までに選定した課題数が18になりますが、18課題はすべて患者登録を終了し、得られた成果を国内外の学会誌等で発表するとともに、平成20年度、平成21年度の課題については患者登録が進捗しています。平成22年度は新たに2課題を選定しました。
 49頁の新型インフルエンザワクチンについては、前年度に質の高い臨床データを短期間にまとめ、国のインフルエンザワクチン政策の根拠とされたところですが、平成22年度はこれらの臨床試験の最終的なまとめを行い、特に小児臨床試験については、終了報告書作成と、GCP適合性調査を受けたことによって、用量変更の企業が行う薬事承認申請に至っています。
 トリ型インフルエンザH5N1ワクチンの新規株についての追加接種効果の研究を行い、危機管理のための新型ワクチン備蓄方針の決定に不可欠な成果を上げました。また、一連の新型インフルエンザワクチン臨床試験、臨床研究の成果は、中心となった病院長の人事院総裁賞受賞につながりました。
 52頁のネットワークを活かした研究体制については、研究分野ごとに各病院の実績を点数化し、高い実績を有する病院を主たるメンバーとする研究ネットワークグループを形成してきたところですが、平成22年度においては、3カ年の活動評価に基づき、臨床研究組織の再構築を決定しました。国立病院機構全体の研究活動実績のポイント数は臨床研究の活動度を表しておりますが、前年度よりさらに増加しており、英文原著論文数やインパクトファクターの高さにつながっています。
 53頁の「EBM推進のための診療情報分析」です。平成22年4月に新たに設置した総合研究センターの診療情報分析部において、レセプトデータ、DPCデータなど、診療情報の収集・分析を行うためのシステム「診療情報データバンク」を構築し、各病院のデータ収集を開始しました。これを活用した成果の1つが、先に述べた「医療の質の評価・公表等推進事業」に採択されて実施した臨床評価指標の計測ですが、指標そのものについても、その定義や根拠、意義などを先行研究のエビデンスを基に検討し、計測方法を確立するということを行いました。
 また、もう1つの活用の成果は、DPC病院についての病院特性の評価、地域における病院の役割機能などを可視化するSWOT分析や、抗菌薬、血液製剤の適正使用など、診療プロセスの分析であり、その結果を診療情報分析レポートとしてまとめ、全病院に分析結果のフィードバックを行いました。
 55頁の「治験の推進」です。平成22年度より新たに設置した総合研究センターの治験研究部を中心として、国が策定した「新たな治験活性化5カ年計画」に中核施設、拠点施設、推進協議会の会長施設として関与し、中央治験審査委員会の設置、開催、治験の人材確保、人材育成に先導的な役割を果たしています。
 常勤の治験・臨床研究コーディネーター(CRC)の配置病院と配置数はさらに増加しました。また、治験に関連する研修会を延べ500人以上に実施し、その内容には国際共同治験に必要な知識、能力の修得も含んでいます。
 56頁、病院に対する本部の指導・支援ということでは、平成22年11月より、新たに治験進捗状況把握システム(CRC-Log Book)を導入し、治験期間の短縮や症例数の向上が可能な体制となっています。平成22年度の治験実績は、症例数が前年度より減少しましたが、中期計画の最初の平成20年度に比べて3%増という結果でした。また、我が国の新薬開発等への貢献に関しては、平成21年度と平成22年度に新薬として承認、または適用追加の承認がされた医薬品222品目ある中の114品目、51.4%について、機構の病院が承認申請の前提となる治験を実施しておりました。
 57頁の(2)「医師主導治験」は、製薬企業からの依頼ではなく、医師が自ら主導する治験ですが、その数は平成16年度から平成22年度まで、全国では71課題と聞いております。そのうちの11課題を機構の職員が中心となって実施しております。平成22年度は新たにパーキンソン病の治療中に見られる精神症状抑制に関する多施設共同の二重盲検比較試験を開始しました。初めてプラセボを用いた医師主導治験ということで、この契機に治験薬の割付けシステムや安全性情報管理システムを構築し、医師主導治験の実施体制を強化しました。さらに、糖尿病腎症進展阻止のための抗血小板薬の効果についても、医師主導治験の準備を進めているところです。
 58頁、「高度・先進医療技術の臨床導入の推進」で、職務発明の権利化の推進についても積極的に取り組んだところです。
 59頁、「研究倫理の確立」については、各病院の臨床研究委員会及び治験審査委員会、本部の臨床研究中央倫理審査委員会、中央治験審査委員会が活発に活動し、また外部への情報発信に努めました。
 60頁の「自己評定」です。新型インフルエンザワクチンの研究で、国のワクチン政策の決定に必要なエビデンスを提供したほか、臨床研究組織については実績評価に基づく再構築を行い、活動度の増加に伴って研究組織も増えました。質の高い治験を推進する体制を強化するとともに、医師主導治験を推進するための体制整備を行いました。承認された新薬等の約半数は国立病院機構で治験を実施しておりました。以上の取組などを踏まえ、自己評定「S」を計上させていただいております。
 63頁、3「教育研修事業」です。質の高い医師の育成について、平成22年度は初期臨床研修医710名を受け入れるとともに、機構独自の後期臨床研修制度である専修医の制度において、新たに17コース、34プログラムを設定し、充実を図りました。平成22年度は専修医の初めての5年コース修了者を含む106名の専修医修了認定を行いました。また、研修医・専修医を対象として、新たに「良質な医師を育てる研修」を開始しました。これは64頁になりますが、救急小児疾患などの10のテーマごとに機構の各領域の指導医が、最新の機器を用いた実習や講義、グループワークを通じて実地研修を行うもので、知識、技術の修得のみならず、医師としてあるべき姿を、さまざまな指導医から学ぶ機会として、全人的な医療を推進できる医師の育成に努めました。
 64頁の4ですが、専修医の留学制度は平成22年度に7名が米国VAホスピタルにて短期研修を行いました。さらに平成22年度から新たに留学受入先のVAホスピタルから臨床教授を招聘し、8病院において臨床講義や教育回診などを通じて米国流のEBMに基づく診断法、治療決定のプロセスを学ぶ機会を持ちました。精神科領域では、テレビ会議システムを活用した多施設共同研修を行っており、平成22年は新たに3病院が参加し、活発に症例検討会などを実施しました。臨床研修においては、急性期系の病院のみならず、結核、精神・障害者医療などセーフティーネット分野の研修も機構のネットワークを活用して組み込んでおり、連携プログラムとして、幅広い能力を有する医師の育成に努めました。
 68頁です。平成22年度、新たに「医師キャリア支援検討委員会」と、その下に「研修指導責任者部会」を設置し、医師のキャリア支援に関する課題の抽出と検討、研修医の教育・進路指導の課題を専修医制度に反映させる仕組みを整えました。研修医・専修医に対しては、情報誌「NHO NEW WAVE」や WEBサイトを通じてキャリア支援の情報を発信しました。
 戻りまして65頁の「質の高い看護師等の育成」では、平成22年度はモデル的に新卒の看護師が1年かけて院内・院外をローテーションする卒後研修を実施しました。研修生にとっては幅広い領域の看護を実践しながら、自己の適性を見直す機会となり、この春より自ら希望する業務に従事しています。
 2ですが、平成22年4月に東京医療保健大学との連携による新構想、看護学部、大学院が開設されました。大学院の高度看護実践課程は、全国に先駆けてクリティカル領域の日本版NPというか、「特定看護師」の養成に取り組んでおり、厚生労働省の特定看護師養成調査事業の対象に指定されました。ここでは医師の初期臨床研修を参考に、救命救急センター臨床研修プログラムを作成し、機構の医師が臨床教授として指導に当たることとしており、平成22年度は臨床実習の実習要綱の作成を行うなど、チーム医療推進のための高度実践能力を有する看護師の育成を推進しています。
 67頁、附属看護学校については、第三者評価を参考にカリキュラムの充実を図っており、看護師国家試験の合格率は99.1%と全国平均を上回る高い実績を上げました。
 70頁、看護師のキャリアパスについては、専任の教育担当看護師長を配置している病院が、前年度より16病院増えて84病院になったほか、専門看護師、認定看護師の配置病院数も増加し、配置数は80名増の400名となりました。71頁では看護師長を対象としたさまざまな研修を紹介しています。
 72頁、コメディカルをはじめとする医療関係職種を対象とした研修では、平成21年度からチーム医療推進のための研修を開始して、職種ごとではなく、職種横断的な研修を行っているところです。平成22年度、栄養サポートチームが68名、がん化学療法研修120名、輸血研修181名が参加し、チーム医療の要となる人材育成を行いました。また、質の高い治験を推進するためのCRCの研修では、初級CRCについて、特に国立病院機構以外の病院からも参加を受け入れ、我が国の治験活性化に貢献しています。
 73頁です。地域医療に貢献する研修事業では、地域の医療従事者を対象とした研究会や一般向け講習会などを、地域のニーズを踏まえて活発に開催した結果、中期計画の目標値15%を大きく上回る47.6%の増加となりました。
 74頁、「自己評定」です。東京医療保健大学と連携した看護学部、大学院の開設により、特に大学院では全国に先駆けてクリティカル領域の特定看護師の養成に取り組みました。良質な医師の育成については、新たに機構の指導医ネットワークを活用したテーマ別の実地研修を開始しました。治験推進の核となる人材養成や新たな看護師卒後研修をモデル的に実施しました。地域の医療従事者を対象とした研究会なども開催件数が大幅に増加しました。以上の取組などを踏まえ、評定「S」を計上させていただいています。
 78頁、4「総合的事項」です。本部においては個別病院ごとの政策医療に係る機能、地域医療事情、経営状況等の把握に努めているところですが、政策医療ごとのコスト分析が可能となったことから、平成22年度より各病院にて政策医療分野ごとの損益計算書の作成に着手しました。
 79頁、エイズについての取組では、全国8ブロック中、4つのブロックで、ブロック拠点病院に指定されている機構の病院が、全科対応による診療と臨床研究、またHIVに関わる医療従事者の育成を実施しています。平成22年度は新たに九州医療センターに「AIDS/HIV総合治療センター」を設置し、包括的治療を行う体制を強化しました。また、各都道府県のエイズ中核病院や拠点病院の医療従事者を対象とした研修や会議を、ブロック拠点病院が積極的に実施し、エイズ医療の普及・向上や病院間の連携推進を図ったところです。
 81頁、「調査研究機能の強化」では、平成22年4月に総合研究センターを開設したことにより、診療情報の分析については、各病院からレセプトデータなどの収集を開始することができました。また、DPCデータを活用して医療の質を評価する指標の研究と計測値の公表、ほかの医療機関も活用できるマニュアル情報の発信を行ったほか、機構各病院の特徴、それぞれの地域における役割機能の可視化など、多角的な分析を行い、結果のフィードバックを行いました。
 82頁の「自己評定」です。各病院にて政策医療コスト分析を開始しました。エイズについてはブロック拠点病院を中心に、我が国のエイズ医療の充実に努めました。新たに総合研究センターを設置し、年度内に診療情報の収集を開始するとともに、医療の質の評価・公表事業における指標作成と計測値の公表などの情報発信、さらに診療情報分析レポートの作成という成果を上げました。以上の取組などを踏まえ、評定「A」を計上させていただいています。グループ2の説明は以上です。

○猿田部会長
 どうもありがとうございました。それでは、いまの3つですが、研究事業、教育・研修事業、総合的評価についてご質問をいただきたいと思います。最初に私から、治験において医師主導型の治験がかなり多くなって、特にパーキンソンのタブルブラインドでもテストが始まったとのこと。実際にいま国立病院機構として、CRCは随分増えていますが、ほかのいわゆる生物統計家、データマネージャー、そのほかの各人員は十分なのですか。

○国立病院機構総合研究センター臨床研究統括部長
 生物統計家についてはどこでも不自由をしており、私どものグループとしても2人だけです。CRCやデータマネージャーはお蔭さまで教育研修の結果、数としては増えており、医師主導治験にも対応できるように体制整備ができていると思っております。

○猿田部会長
 ついでにもう1つ伺いたいのですが、国立病院機構の中には研究をかなりしっかりやっている所があります。そこから本当に日本初のシーズが出てくるとか、そういう可能性もありそうですか。

○国立病院機構総合研究センター臨床研究統括部長
 私どもは臨床研究に特化する形で進化をしてきておりますので、いまのところは基礎研究からのシーズは出てきておりません。そのため、それを補完するために文科省の理化学研究所と基本協定を結び、理化学研究所で出てきているシーズについて、臨床開発をさせていただくという段取りになっているところです。

○猿田部会長
 ありがとうございました。どなたかいかがですか。

○夏目委員
 数値目標になっているので気になるのですが、治験の実施症例数について、先ほど57頁の説明がありました。平成20年度に比べると目標に向かって着実に増えているということですが、平成21年度に比べて、平成22年度が110例ぐらい減っているということです。CRCの増員とか体制の整備にも努めて、企業へのPR等も努力されているにもかかわらず、これは一過性の事柄なのか、何か少し大きな流れが変わってきているのかという点が1点目です。
 2点目は、大したことがないと言ってはいけないのかもしれませんが、労災病院との連携という議論があります。それについて78頁に整理されていますが、ここで実際の医療連携状況例というので、7例ぐらい紹介されているのですが、患者の紹介とか逆紹介が多いということで、正直なところ、労災病院との連携は問題や課題が多いということなのか、それとも労災病院そのものが30病院ぐらいだったと思いますが、たまたま近くに労災病院が少ないので、連携しようと思っても限界があるという話なのか、その2点です。

○国立病院機構総合研究センター臨床研究統括部長
 1点目ですが、例数が減っているということについては、国際共同治験が大変増えております。国際協同治験ではわが国で実施される例数はわが国単独で行う治験よりも少なくなります。また、私どもがやっている治験のうちの30%ぐらいが、癌の治験になっております。癌の治験というのは1プロトコール当たりの症例数が少ないのです。平成22年度に国全体で開始されたプロトコールが632プロトコールあって、そのうちの270プロトコールは国立病院機構のどこかの施設でやっているような状況ですが、1プロトコール当たりの実施症例数が減っていることもあって、全体として減っております。したがって、中期目標に実施症例数を目標値として出しておりますが、状況としては大変厳しいと思っているところです。

○猿田部会長
 連携のことはいいですか。

○国立病院機構医療部長
 労災病院との診療連携ということですが、例として書いているのは、近隣にある労災病院との具体的な連携状況で、それぞれの病院が強みというか、どういう診療分野が得意かということがありますので、それに応じた連携の内容になっていくということで、それによって患者にとっても利便性が向上し、地域医療体制としてもうまく資源活用ができるようにということで連携をしている状況です。

○猿田部会長
 ですから、むしろ労災病院とやるよりも、高度専門医療研究センターとの連携も、これからは非常に大切なのではないでしょうか。それはどうなのですか。例えば、国立成育医療研究センターとの問題、あるいは長寿、精神、もちろんがんもあります。例えば、エイズの問題が先ほど出てきました。国立国際医療研究センターとの共同でやっておられますが、そのほうが大切なのではないか。労災病院というのはかなり離れた感じを受けますけどね。

○夏目委員
 検討会で勉強しろと言われているのです。

○猿田部会長
 すみません、勝手なことを言いました。ほかにどなたかご意見はありますか。もう1つだけ私が気になったのは、これだけ研修システムがしっかりしているのに、後期研修医の数がちょっと減っているのではありませんか。修了者は多くいますのに、後期研修者がちょっと減っているのが気になります。これは何か理由がありますか。あるいは大学に研究で戻る人が多かったのかとか。

○国立病院機構医療部長
 後期研修について、機構独自の専修医制度というプログラムを作っておりますが、それ以外にも大学に籍を置いてレジデントとして来ている方もいますので、専修医またはレジデントが後期研修医として機構で働いているということです。後者の大学からの後期研修医が減っていますが、機構としては、できるだけ専修医に魅力があるような内容にするために、留学や良質な医師を育てる研修などで充実していこうということを心がけております。

○猿田部会長
 初期のほうはともかくとして、後期研修医が居着くということは、非常に重要ですよね。

○山田委員
 いまの後期研修医のことですが、病院の医師不足を解消していくためには、後期研修医をたくさん採用することも必要ですし、後期研修医が終わったあと、どのぐらい病院に残ってもらえるかという数が大事になってくると思います。平成22年度は修了者が106名で、その中で国立病院機構の病院に残った方は何人ぐらいいらっしゃるのでしょうか。

○国立病院機構医療部長
 例年、専修医を終えてから機構に就職する方は54~56%ぐらいです。今回初めて5年コースの修了者も出ましたので、5年コースで修了した方のほうが、より機構に就職した方が多かったということはあります。

○国立病院機構理事長
 医師不足というのは病院の医師不足であると思います。ご指摘のとおり、我々はキャリアパスを作って病院医師を育成しようと思っています。自分たちの所に就職するということになりますと、医師の囲い込みだということで、ほかの医療法人あるいは大学から非常に問題視されます。我々としては、質の高い医師を育成するというのは、国立病院機構に就職してもらいたいと願っていますが、それはあまり強く出さないために、こういう結果になっています。それと大学からレジデントが我々の所にたくさん来ていますので、そういう意味では大学ともいい関係で医師を育成していることになるかと思います。

○猿田部会長
 ありがとうございました。ほかにないようでしたら評価をしていただきたいと思います。
(評価シート記入)

○猿田部会長
 それでは、時間のこともありますので、第3グループの評価に移ります。項目8「効果的な業務運営体制について」です。所要時間は法人からの説明が10分、質疑と評定を合わせて10分、合計20分です。それでは、ご説明をお願いします。

○国立病院機構企画経営部長
 第3グループについて説明します。85頁です。最初に「本部・ブロック機能の強化」についてです。1.本部機能の強化については、平成22年度に医療部研究課の組織を見直し、治験の推進や診療情報の分析を行う総合研究センターを新設して、全国規模で行う病院支援業務の強化を図ったところです。また、ブロック事務所機能の強化については、病院職員の募集など前年と同様に病院支援業務を進めているところです。
 86頁、東日本大震災時の本部・ブロック事務所による支援業務についてご説明します。震災発生時には、本部においてNHO災害対策本部を設置するとともに、3月14日から宮城県及び岩手県において、NHOの現地対策本部を立ち上げました。本部・ブロック事務所の職員を継続的に派遣して、被災地の医療ニーズを直接把握するとともに、地元自治体等との連絡調整、あるいは医療班の派遣調整などを行って、NHOの医療班が迅速に活動できる体制を構築しました。
 また、医療班の派遣に当たっては、ブロック事務所が主体となって、被災地への移動手段の確保、派遣病院の調整を行うことで、派遣元の病院機能を維持しつつ、継続的な現地支援を行うことが可能となりました。また、被災地への緊急物資の輸送に関しても、各ブロック事務所が病院と連携して、災害拠点病院などが備蓄していた医薬品や医療材料、食料などを調達して、被災病院への物資支援を行いました。このほか、被災病院からの患者受入れの調整、自治体からの看護師派遣の要請の調整についても、ブロック事務所が主体となって実施しております。
 次に「個別病院毎の経営改善計画(再生プラン)の実施及び支援」についてです。平成22年度は再生プランの最終年度でした。これを踏まえて、平成21年度実績において、運営費を短期借入金で賄っているなどの11病院を本部に招集して、理事長をはじめとする役職員と病院長、事務部長との意見交換を行うなど、計画の進捗管理を行ったところです。また、ブロック事務所の専属チームが、前年に引き続いて個別訪問などを行っております。こうした結果、平成22年度末において、再生プランの改善目標を達成した病院は30病院となり、運営費を短期借入金で賄っているなど最低目標に達しなかった病院は4病院となっております。
 87頁です。「効率的な管理組織体制」ということで、1.6ブロックによる効率的な管理業務の継続です。これは従来からの本部と6ブロック体制を維持しつつ、事務職員については、平成21年度から本部・ブロック事務所の職員数を288名体制に見直しております。
 国家公務員の再就職者が就いているポストの見直しですが、役員の公募については、平成21年度末で任期満了となった国家公務員の再就職者の3つの役員ポストについて、公募により後任者の選考を行っております。なお、嘱託ポストや非人件費ポストは設置しておりません。
 88頁と89頁、「内部統制の充実」についてです。1.本部組織の見直しについては、平成21年4月に設置した「業務監査室」が、引き続き内部監査やコンプライアンスの対応に関する業務を行っています。なお、内部監査については、支出原因契約に関する事項、収入管理に関する事項を重点項目として、書面監査を全病院で実施するとともに、実地監査を49病院、2ブロック事務所で実施して、記載にあるような指摘を行っています。また、内部監査計画で実地検査を計画した病院に限らず、会計処理の不適正な事案が認められた病院については臨時の内部監査を行っております。
 89頁、「コンプライアンスの徹底」です。こうした業務監査室の設置と併せてコンプライアンスの徹底のために、新人採用職員研修における職員への周知を行うとともに、各病院のホームページ、や院内での掲示により、取引業者等への周知も行っております。また、平成22年度からは各病院において、本部で法令遵守状況に関する自主点検チェックシートを作成しましたが、それを活用して職場内での四半期ごとの自主点検を実施しております。
 90頁、「弾力的な組織の構築」です。事務部門については、病床規模に応じて事務部門の見直しを行い、平成22年度は3病院が事務部長制から事務長制に移行しております。また、臨床研究部門についても、研究実績による評価をもとに組織の見直しを行っております。組織運営の方針については、副院長複数制の導入を行っていますが、7病院で引き続き実施しております。また、機能に応じて特命事項を担う副院長を設置しておりますが、平成21年度までの5病院に加えて、平成22年度は新たに箱根病院など4病院において設置し、病院経営あるいは看護師確保の特命事項に取り組んでおります。
 91頁、「地域連携部門の体制強化」です。平成22年度は新たに2病院で専任の職員を配置して、131病院で、専任職員384名の配置を行っております。こうした取組によって紹介率や逆紹介率の高い病院も増えております。医療安全管理部門の強化については、平成22年度までに143病院で専任職員を配置しておりました。なお、今年度の平成23年度には全病院で専任職員の配置をしているところです。
 「看護部門の体制強化」については、病棟部門に必要な職員数は常勤職員で配置し、外来については、受付時間や外来診療時間帯に合わせて非常勤職員を配置するなど、効率的な看護師配置を進めております。また、キャリアパス制度充実のために、専任の教育担当師長、認定看護師等を配置して体制整備を進めています。
 92頁は「事務部門の改革」です。医事専門職の複数配置を実施した病院は、平成21年度の24病院から、平成22年度は30病院に増やしています。また、DPC対象病院等への診療情報管理士の配置についても、平成21年度の89名から、平成22年度は98名にするなど重点的な配置を進めております。また、これは大半を再配置によって実現するということで、事務部門全体としては、平成21年度の2,575名から、平成22年度の2,563名と、効率的な配置を行っています。
 93頁は「人材育成、教育研修機能の強化」です。1つ目のキャリアパス制度の充実は再掲です。次の「教育研修部及び教育研究室の設置」ですが、事務職も含んで組織体制の構築、人材育成体制を強化する足掛かりとして、平成22年度は新たに教育研修部1病院、教育研修室2病院を設置し、累計で教育研修部26病院、教育研修室11病院となっております。
 94頁は「組織のスリム化・適正化に向けた取組」です。1つ目は再掲です。また職員の給与水準及び諸手当については、次の評価項目の114頁で詳細に記述していますが、国の給与制度等を踏まえて、通則法に則って適切に対応しております。
 95頁は「職員配置」です。職員配置については業務量の変化に対応して病棟部門、外来部門の看護師の配置を行うなど、柔軟に対応しております。なお、育児短時間勤務については平成19年に導入していますが、平成22年度は251名が取得している状況です。また、技能職常勤職員の離職後の不補充は、平成22年度は142名の削減計画に対して、それを上回る218名の純減となっています。このほか、検査部門、給食業務などはアウトソーシングを必要に応じて進めております。
 96頁は「職員の業績評価等の適切な実施」です。院長ほか年俸制職員、あるいは年俸制以外の管理職、一般職員の賞与に業績評価を反映させるほか、平成22年1月の昇給から、昇給にも業績評価結果を反映させているところです。また、平成22年4月には、これまでの業績評価の運用状況に関するアンケート調査を実施して、その結果を踏まえた改善策として平成22年10月から、業績評価マニュアルを改正し、あるいはポケットマニュアルを作成し、あるいは評価者及び被評価者の研修を充実させるなど、制度の一層の周知や運用の充実を図っています。また、新たに評価者となった職員500名に対する研修も実施しております。
 97頁は「監事監査、外部監査等の充実」です。評価委員会による評価結果については、各病院に周知徹底を行っているところであり、病院運営に反映させるための意識付けを進めております。2つ目に、会計監査人による病院監査の実施についても、現地監査、書面監査を本部及びブロック事務所並びに病院を対象に平成22年度も実施して、業務改善を行っています。その際、ITの利用に関する統制状況の評価も会計監査人によって行われ、監査結果に基づき、医事会計システムの標準仕様書の見直しなど、改善策を講じています。そのほか、会計制度に関する説明会、会計監査人からの指摘に対する対応についても、引き続き取り組んでいるところです。
 98頁は「監事機能との連携の強化」です。平成22年度は内部監査で14病院の抜打監査を計画しました。また、契約に関する監査に加え、抜打ちの手法が最も有効と思われる現金等の取扱いに関する監査についても抜き打ち監査を行っております。実施数としては、13病院で監査を実施して、記載にあるような指摘を行っています。
 99頁は「外部評価の活用」です。日本医療機能評価機構の病院評価認定病院数ですが、平成22年度は新たに3病院が認定され、合計52病院となっています。このうち12病院については、最新の評価体系で更新認定されています。このほか、NPO法人卒後臨床研修評価機構においても3病院が評価認定されています。
 100頁、再編成業務等の実施状況です。善通寺病院と香川小児病院の統合については、平成22年5月に統合新病院の整備計画を公表し、実施設計を行った上で、平成23年3月に入札の上、施工業者を決定しています。また、工事のスケジュールを踏まえて、統合予定時期を平成25年度に前倒ししています。
 101頁は「自己評定」です。各評価項目の業務実績については申し上げた通りです。数値目標のある地域医療連携室や医療安全管理室への専任職員の配置など、前倒しで進めているものもあるとともに、全病院を対象とした会計監査の実施や日本医療機能評価機構の受審の推進など、着実に取り組みを進めているところです。また、効率的な業務運営体制としては、東日本大震災の本部・ブロック事務所の対応なども効率的に行えたものとして「A」評価で自己評定しております。よろしくお願いします。以上第3グループについての説明です。

○猿田部会長
 どうもありがとうございました。どなたかご質問ありますか。

○夏目委員
 3点ばかりお願いします。第1点目は、内部統制の充実について、特にコンプライアンスの徹底は極めて重要で、医療現場という非常に特殊な所ですし、また医師など、いろいろ難しい問題があるだろうと思います。そういう意味で自主点検というのは非常にいいことではないか。やはり絶えず繰り返し意識をさせることが、コンプライアンスを徹底するには大事ではないかと思います。そういう意味では、大変いい試みだと思います。自主点検を実施してどうかということですが、コンプライアンス上の不祥事がどのぐらい出ているのかわかりません。目に見えた成果が出ているのか、それともこれからなのかというのが第1点目です。
 第2点目は、90頁に絡んでです。事務部長を事務長にしたということで、これが効率化に入っているのですが、単に名前を変えただけなのかなと。部長だから下に課長がいたのが今度は事務長だから、課長職をなくしたとか、課制を採ったとか、そういう変化があるのかどうかと。
 もう1つこれに絡めて、その下の副院長複数制ということですが、これについては資料2-8の375頁に、複数制副院長をどう置いているか。その次の頁に特命の副院長を置いている状況が整理されています。これを見ますと、平成22年度に例えば名古屋医療センター、大阪医療センターは、その前の頁の複数制副院長で、副院長が複数いるということです。この複数というのがどういうことなのか。この前は5人の副院長もいる病院もありましたので、複数というのは、普通は2人ぐらいかと思っているのですが、何人いるのか。それに加えて特命の副院長がいるということになると、実際は副院長がそれぞれ何人いるのかなと。単に待遇改善、処遇改善で副院長が設置されているのであれば、本来の趣旨・目的に反するのかなということです。例えば名古屋医療センターなどは、複数制副院長ということで何人いて、それに加えて看護師確保でもう1人いるのか、それとも複数制の中で、特命をあえて付けているという意味なのかです。
 3点目は、これも非常に大事なことですが、全職員への業績評価の実施ということで、これも非常にいい試み、いい取組だと思います。96頁に、一般職員に対してもということで、昇給に反映させたということになっています。この反映の仕方ですが、一般的にいうと、昇給は1年間に例えば4号俸、金額だと2,000円とか、ある一定のルールがあると思いますが、業績がプラスの評価をされると、標準に対してどのぐらい昇給にプラスになるのか。そして、業績が悪いと、標準が仮に2,000円だとすると、それが1,500円の昇給になってしまうのか、それとも昇給がストップしてしまうのか。マイナス昇給はないと思いますが、どの程度の業績を昇給というのか、極めて大事な給与制度に具体的にどう反映させているのか、その辺を教えていただければと思います。

○猿田部会長
 いまの3つについて、よろしくお願いします。

○国立病院機構総務部長
 先に最後の業績評価の昇給範囲がどのぐらいなのかということについて、お答えします。私どもの号俸で言いますと、1年間良好な成績で勤務すると、通常は4号俸の昇給です。それを業績評価の中で、非常に優良な成績と評価されると、通常は良好なところは4であるのに対して8号俸、ですから、倍の昇給の効果という制度で運用をしております。
 では、非常に評価が低くなった場合はどうなるのかということですが、もともと評価が低いというのとは別に、例えば勤務日数が低い、あるいは懲戒の処分を受けたとか、いろいろな要素がありますが、業績の評価だけではなく、そういう要素もいろいろ加味すると、いちばん低い所は昇給しない場合がありますし、通常4のところが2号俸という所もあります。

○夏目委員
 そういう客観的な日数が多いとか、何か不祥事を起こして処分を受けたとか、そういうことを除いて一般的な業績評価ということでは3号俸ぐらいとか、2号俸とか、1号俸減というのがあるのですか。

○国立病院機構総務部長
 2号俸というのはあります。

○猿田部会長
 いまの評価法はどのような形で。いろいろな所の病院でやっていても、これは非常に複雑なのですね。例えば、看護師の場合も、看護師の責任者が、下の人に、下のほうから上のほうへやってというきっちりした評価方法はできていますか。

○国立病院機構総務部長
 いま部会長から看護の話がありましたが、看護の部門でしたら、看護師長が1次の評価者になっていて、部下の看護師について評価をします。その上に2次評価者あるいは最終評価者ということで看護部長なり病院長がいるということで、1人だけの判断ではなく、全体の組織としての判断ということで評価を行っています。

○猿田部会長
 そうすると、機構のほうからすれば、各病院長評価あるいは看護師長の評価というのは、こちらからやるのですか。

○国立病院機構総務部長
 看護部長の評価については、病院長が行います。先ほどの評価は医師の分もありましたが、病院長については、病院の1年間の運営の状況、それぞれ病院ごとの評価をもって、病院長の評価としています。

○猿田部会長
 病院長に関しては、内部からの評価と本部からの両方が入ってくる。

○国立病院機構総務部長
 病院長の評価については、医療面と経営面ということで、本部が指標を作って、その指標をもって評価としています。

○猿田部会長
 あと2つ、夏目委員からの質問に関してお願いします。

○国立病院機構企画経営部長
 内部統制、コンプライアンスの関係ですが、ここで挙げている自主点検チェックシートは各法規に遵守してやるということでかなり分厚いものです。なぜ四半期ごとかというと、全部を一遍にやるのがなかなか難しいので、それぞれ分けながらも実施してほしいということで、四半期ごとの自主点検と挙げております。この点検の結果で、どのぐらい問題点が見付かったかというのはまだフォローできておりません。

○夏目委員
 コンプライアンス上の不祥事というか事件は、結構多いのですか。そんなに多くないのですか。

○国立病院機構企画経営部長
 そんなに多くありません。これは相対的な問題ですが、現金が持ち出されるとか、受け取った現金を職員が使ってしまったとか、そういう事案がありますので、この中でも現金の取り扱いについては、1つは業務マニュアルで、内部できちんと統制する仕組みを強化するということをマニュアル化しながら取組を進めております。内部で上司、部下できちんと統制できるという手続を進めているところです。特に契約の関係などは本部で1件1件随意契約のチェックなどをやっていますので、かなり意識は高まってきているのではないかと思います。
 次に、事務部長と事務長ですが、委員が言われたように、事務部長の下には課長がおりまして、事務長の下にはおりません。基本的にはクラスの問題もさることながら、職員の人数が違います。事務長というのは課長級よりも少し高いぐらいの位ですが、事務職員の規模が違ってくるというのが大きな違いです。

○夏目委員
 副院長の数は。

○国立病院機構副理事長
 白表紙の資料の375頁に載っていますが、平成22年度で7病院のうち、ブロック担当理事が院長である病院というのは、院長がブロックのいろいろな病院の面倒を見なければならないということで、ここは副院長を2人制にしています。通常、副院長は1人ですが、2人にしておりまして、その2人は基本的に両方ともドクターです。ブロック理事以外に北海道医療センターと松本医療センターの2つがありますが、これは統合病院です。2つの病院を1つの組織にしているということで、例えば松本医療センターは、一方の病院には院長がいて、副院長がいるのですが、もう一方の病院には副院長だけです。院長は両方の病院を見ているとか、そういうケースの場合に副院長複数制という形になっています。
 一方の特命副院長というのは、基本的には例えば統括診療部長とか看護部長とか、まず部長のポストにある人を副院長と同等に働いてもらういうことで設けている制度です。特に看護師などは、看護師を確保するための看護部長が特命副院長を兼ねているという形になっています。
 それからあと、経営とか地域連携はそれぞれの病院のテーマに応じてこういうのを置いて、そのプロジェクトが終われば解消していくという性格のものです。

○夏目委員
 人によってではなくて、仕事によって配置しているという考え方ですね。

○国立病院機構副理事長
 はい、そういうことです。例外的に人事の都合で一時的に、たぶん1年は超えないと思いますが、どうしても特命副院長にせざるを得ないケースがあることはあるのですが、それはいずれ解消するという話です。

○山田委員
 外部評価の活用ということで、日本医療機能評価機構の病院評価認定を使われていますが、これは活用ということですから、本部としては積極的にどんどん受けろという姿勢を出しているのでしょうか。というのは144病院の中で、まだ52というのはちょっと少ないような気がしますし、年間3病院増えたというのも、ちょっと歩みが遅いのかなという気がしないでもないのです。もちろん旧国立療養所系の病院は、なかなか受けにくいということはよくわかりますが、本部の方針としては積極的に受けるということをなされているのでしょうか。

○国立病院機構医療部長
 これは中期計画で、中期計画期間中に数値目標で73病院と一度決めていますので、できるだけ認定を受ける病院が増えるようにということは勧めています。ただ、委員がご指摘のように、旧療養所系の所はなかなか難しかったり、あとは建物が古い所もあって、建替えをしないと難しいという所は、今後の建替え計画なども踏まえるということで、まだ一気に進みにくいということがありますが、増やしていく方向で進んでいるところです。

○和田委員
 内部統制というのは、いまどの法人でも重要な事項として実施されてきているわけですが、その範囲がなかなか難しくて、全職員に対して、その目的をしっかり知らしめることが難しいようですが、その辺はできるだけ繰り返し研修を行うことで実施していったらよろしいかと思います。
 拝見した限りでは、積極的によく取り組まれているかなと思います。ただ、この書きぶりでは、いわゆる監事監査と外部監査と内部監査の三様監査が、お互いに十分連携し合って、その効果を上げていくというところで、監事監査の業務監査、特に理事とか役員の意思決定等についても、監事はしっかり監査をして、意見を申し述べるというような事項の記載があまり見当たらなかったようなので、その辺はきちんとやられているのだろうと思いますが、今後そういった点についても記載をしていただいたほうがよろしいかと思います。
 95頁に、技能職常勤職員の離職後の不補充が書かれており、平成16年度から平成22年度まで1,623名で、純減率が45.2%とあります。平成22年度においても218名の純減を図ったということですが、技能職の方の離職後の不補充がこんなにあったら、業務の対応はどうしたのですか。

○国立病院機構総務部長
 技能職の関係についてお答えします。評価シートの説明資料の383、384頁にその状況の資料があります。384頁に、技能職というのは、例えば一般職員の中で電気の関係を行う、あるいはボイラーの関係をする。退職した方のあとについては、外部へいろいろ業務を委託する、あるいは非常勤の方を雇用して、その業務の運営を行うということで、常勤の職員の新たな採用は行っていませんが、業務について、必要な所についてはアウトソーシングあるいは非常勤職員ということで対応しています。

○国立病院機構副理事長
 内部統制の話ですが、資料2-4の48~59頁にかけて、相当詳しく記載してあります。もちろん単にチェックシートを配って、自主点検をさせてというだけではなく、そのポストに就くときには研修はもちろんするわけです。あと役員との意見交換は、例えば監事であれば、週例役員会というのがあって、そこには必ず出席していただく、あるいはブロック担当理事も含めた月例役員会には非常勤の監事にも必ず毎月出席していただく。それから4者会議と言って、執行部門、内部統制部門、監事、会計監査人の方々を一堂に会してディスカッションもしますし、監査法人とはマネージメントレターなどのやり取りや役員との意見交換もやっています。それから、来月になると思いますが、監事とは役員全員と必ず意見交換をするという形でやっていますので、そういう意味での連携はかなりとれていると思っております。

○和田委員
 わかりました。いまの内部統制のほうは、もう一度これをよく読んで理解いたします。技能職常勤職員の離職後の不補充が、ここに書かれていますが、これによる法人の効果というか、1つは、不補充による経済的な効果が経済的に。経済的にというのは支出がそれだけ減少するのだろうと思いますが、それを外注などによって安く実施するというか、そういうことによって経済的な利益がどの程度生まれてくるのか。
 それと一方で不補充の制度で、この職種だと大丈夫かなと思うのですが、反対に、慣れた人を不補充にして外部委託をしていくので、非常に不便が生ずるという批判というか、それを危惧して、あまり積極的にやらない独法もあるようですが、その辺は国立病院機構ではどのようにお考えでしょうか。

○国立病院機構副理事長
 不補充のメインの職員のいちばん大きな塊は看護助手です。看護助手は法人として出発するときに業務範囲が結構まちまちであるというか、配膳・下膳、掃除、ベッドメーキングなどを主にやっている方もあれば、一方ではボディータッチ、食事の介助、入浴の介助などがあります。単純な食器洗浄などについては、業務委託で対応できるのではないか。掃除とかベッドメーキングにしてもそうですが、そういったものについては積極的に業務委託を推進しようと。ボディータッチについては療養介助職という一定のボディータッチのスキルを持った2級ヘルパー相当の人たちだけを採用して、そういう業務、しかも夜勤対応もできる形でする。それによって経済的な効果もあるのですが、看護師はむしろ看護師でなければできない仕事に、より重点的に仕事ができるようになったというメリットも生まれているわけです。
 経済的な効果からいえば、直接雇用する人に比べると、業務委託にしても非常勤にしても、単価としては違うことは違うわけで、経済的なメリットは当然あるわけですが、それを狙いにしてきたというよりは、一方では閣議決定で採用抑制職種として指定されて、増やしてはいけないという形に、かなり前からなっていましたから、そこはそういうのに従って、でも、やはり現実の問題としては、看護師たちが苦労しているボディータッチなどは積極的に人を投入して、ちゃんとやっていこうということですから、経済的な効果は一般論としてはメリットがあります。療養介助職もかなり増やしていますから、そういう意味でどこまでメリットがあるかは分からない。繰り返しになりますが、一方で看護師は、人工呼吸器管理や流動食など、もっと医療的なものが必要な部分について、かなり重きを置いた取組ができるようになってきています。そこはメリットだと思います。

○猿田部会長
 要するに、評価委員からすると、技能職というのは、どういう技能職かは細かいところでわからないものですから、そういうことです。
 時間がだいぶ延びてしまいました。ここで評価と合わせて全部で10分、45分まで時間をいただいて休憩します。ありがとうございました。
(休憩)

○猿田部会長
 次は、第4グループになります。項目9~11、「業務運営の見直しや効率化による収支改善」についての評価です。ここは20分間の説明と、質疑・評定を含めて20分、合計40分です。それでは、説明をよろしくお願いします。

○国立病院機構企画経営部長
 105頁です。「業務運営の見直しや効率化による収支改善」について申し上げます。まず、収支相償を目指した収支改善の推進についてですが、職員の適正配置を行うことなどにより、診療報酬上の上位基準の取得を図ることと併せて、材料費や人件費、委託費等に係るコスト削減に努め、個々の病院においても収支相償以上を目指して収支改善を推進しています。この結果、医業収益は前年度より約526億円増加しています。また、費用の縮減等に努めた結果、経常収支率は107.1%となり、機構全体としては収支相償を達成することができています。なお、総収支率は106.0%となり総収支の黒字も維持しています。次に、年度末賞与の実施については、平成22年度は117病院で支給しています。
 再生プランについては、86頁と同じ内容となっています。106頁の下のほうに「QC活動に対する取組」ということで、「できることから始めよう!」をスローガンに、職員の自発的な取組を奨励、評価しています。平成22年度の応募数は過去最高の197件となり、確実に増加してきているところです。
 107頁の法人業務に対する国民のニーズを把握して、業務改善を図る取組では、全国一斉の患者満足度調査の実施、全病院での意見箱の設置と、これらの意見を参考にした業務改善などを行っています。またホームページ上では、東日本大震災における支援活動などの最新情報の公表も推進しています。また、「業務改善に取り組む職員」を人事評価で適正に評価するとともに、国民のニーズとずれている事務・事業の見直しも推進し、平成22年度の病棟の稼働状況に応じた整理・集約を実施して、6病院216床を集約しています。
 108頁は「福利厚生費の見直し関係」です。法定外福利費については、業務運営上必要不可欠なものに限定して支出しています。平成22年度も、レクリェーション費用は支出していません。弔電、供花は厚労省に準じた基準で実施し、健康診断等については労働安全衛生法に基づくものと、感染防止を目的としたワクチン接種を実施しています。表彰制度も厚労省の基準を踏まえて実施しているものと、先ほどのQC活動の奨励ということで実施しています。
 109頁の「経営意識の向上」、「経営力の向上」では、平成22年度も引き続き医事業務研修を実施しています。この研修では、医事担当の職員に加えて、経営企画担当職員も対象として、診療部門に対し経営的視点から積極的に助言等を行える人材の育成を図っています。また平成22年度は、診療報酬改定がありましたので、この改定内容の説明あるいは請求漏れ防止等にかかる診療報酬の研修を、全国8か所で実施し、319名が受講しています。
 110頁は、78頁で説明しました「政策医療にかかるコスト分析」です。111頁の「業務運営コストの節減」では、共同入札を実施して材料費の抑制を図っているところですが、なかでも医薬品については、薬価改定を踏まえた共同入札を実施するとともに、10月に契約価格を変更して単価見直しを行うなど、さらなる医薬品費の抑制を図っているところです。
 112頁は「適正な在庫管理」で、医薬品や診療材料の保有在庫日数の縮減、SPDの導入等に努めているところです。手術件数等が増加する一方で、材料費の抑制にも努力をしているところです。また、5の「後発医薬品の利用促進」については、平成22年度は薬効区分別の状況やブロック別・病院別の導入状況の分析を行うとともに、採用率の高い病院の取組事例や比較的採用頻度の高い後発医薬品をリスト化して、各病院へ情報提供をしています。採用率の状況は、金額ベースでは、平成21年度の8.8%から9.5%に、数量ベースでは、平成21年度の20.7%から平成22年度の24.6%にそれぞれ向上しているところです。
 113頁は「人件費率等」です。業務委託契約の検証では、全病院で業務委託契約の契約額等について調査を行い、各病院に結果のフィードバックを行っています。また、人件費率と委託費率を合計した率の抑制については、各種の取組によりまして、平成21年度の57.4%から平成22年度は55.3%に抑制することができています。
 114頁は、総人件費の削減です。技能職の退職後不補充あるいは非常勤職員への切替え、アウトソーシング化、非効率となっている病棟の整理・集約などで、収益に見合った職員配置を進めています。これにより、人件費としては40億円の削減が行われています。しかし、他方で、心神喪失者等医療観察法に基づく専門病棟の運営、障害者自立支援法に基づく筋ジス病棟における療養介護事業等国の制度の創設、改正に伴う人材確保が必要になっています。また、救急医療、周産期医療への対応、政策医療の推進、医療サービスの質の向上、医療安全の確保のために人材の確保が必要になっています。人件費でみれば、約151億円の増額となりまして、平成22年度の常勤職員の人件費は、前年度と比較して111億円の増という状況です。人件費削減を図っていく一方で、政策医療の実施や患者の目線に立った良質な医療提供を行うためには、一定の人件費増は避けられないのではないかと考えているところです。
 次に、「職員の給与水準」です。平成22年度のラスパイレス指数は、医師は110.9、看護師98.3、事務・技術職98.3となっていまして、医師のみが国の給与水準より高くなっていますが、自治体病院あるいは民間医療機関の給与水準とは、まだ相当な開きがあると考えています。
 115頁は、国と異なる諸手当です。(1)「民間医療機関等の給与実態を踏まえて救急医療・深夜勤務等に応ずる手当」は、医療分野の職務の困難性を考慮したもの、あるいは国での勤務医の処遇改善を支援する補助制度の創設に対応するものです。(2)「医師確保等を図るための手当」についても、医師不足に対応するためのものや専門化・高度化した病院を運営する国立病院機構の特性を考慮した手当としています。
 (3)独立行政法人に求められる能力実績主義を踏まえた手当及び俸給の調整額の見直しですが、独立行政法人の給与制度の趣旨に則りまして、独法移行時に設けたものなどです。こうした点が、国と異なる諸手当となっています。
 116頁は「投資の効率化」です。1.全面建替整備、病棟建替等整備については、平成22年度は全面建替が3病院、病棟建替等が31病院、外来等建替が4病院ありました。平成22年度に着工した12病院については、設計仕様の標準化を引き続き行い、契約価格は平成21年度と同水準、つまり国時代の建設コストの約5割減に抑制して実施しています。また平成22年度は、「病院設計標準(障害者病棟編)」を策定し、各病院の設計実務の迅速化や標準化を進めています。3.建設コストの削減については、整備単価の見直し、入札情報の早期の情報提供を引き続き推進しているところです。4.大型医療機器の共同入札については、平成22年度入札分は平成21年度中から手続きに着手しまして、CT、MRIなど7品目を対象機器として実施しました。また、平成23年度の入札分について8品目としていますが、平成22年度中から手続きに着手しています。これらにより、保守費用を含めて、総コストで市場価格を大幅に下回る購入価格となるなど、効率的な設備整備を行っています。
 117頁の「医療機器の価格情報等の共有」については、平成22年度も65種類の対象機器について情報提供を行ったところです。
 118頁の「適正な契約事務の実施」については、「契約監視委員会」での契約状況の点検ということで、競争性のない随意契約1,674件等について、監事及び外部有識者による「契約監視委員会」での点検を実施しています。また、2.「随意契約等見直し計画」については、平成22年4月に策定していますが、監視委員会での点検などの取組により、随意契約の割合が件数、金額ともに大幅に減少するということで、計画を着実に進めている状況です。
 119頁は「競争性確保に向けた取組」です。これは入札に参加しなかった業者等にアンケート調査を実施するなどして、指針の徹底を図っているところです。また、契約情報の公表を引き続き行いまして、契約事務に関する規程の見直しをし、平成22年度から適用しています。
 120頁の「会計事務に係る標準的業務フローの徹底」については、契約事務をはじめとする標準的業務フローを、平成22年4月及び23年3月に改定しています。また、窓口収納現金以外の現金についても、取扱いに関する業務フローを新たに策定して、周知を図ったところです。
 121頁は「市場化テストの実施」です。事務消耗品などの物品調達業務について、内閣府の官民競争入札等監理委員会と連携しまして、平成22年度は実施要項の作成、入札手続き等実施に向けた準備を行いました。この7月より調達を開始しています。
 122頁は「一般管理費の節減」です。水道光熱費の費用節減など、経費の縮減・見直しを行い、平成22年度は4億400万円という額になっています。
 123頁からは、「事業費における冗費の点検・削減」です。既にご説明しました医薬品や大型医療機器共同入札の実施などのほか、124頁の2に記載してありますが、共同入札の新たな取組として、地上デジタルテレビの購入について、インターネットを通じてせり下げ方式で複数回の入札を行うリバースオークションを実施しています。
 125頁では、全病院に対する経費削減の取組状況の調査、取りまとめ結果を一覧とした周知を行ったこと、あるいは各種の研修において周知徹底を図っていることを記述しています。また契約の適正性、競争性の確保については、前述のとおりです。
 126頁は、以上についての「自己評定」です。数値目標については、後発医薬品の採用率の向上、あるいは一般管理費の削減で着実に進展しています。また、病院の設計仕様の標準化、医療機器の共同入札の取組、リバースオークションの導入というようなことで、さまざまに工夫をしながら取り組んでいるところであり、「A」評価で自己評定をしていますので、よろしくお願いします。

○国立病院機構財務部長
 続いて、134頁の「医療資源の有効活用」です。医療機器の効率的な利用の促進ということで、CT、MRI等の高額医療機器の稼働数の向上ということで、各種努力によりまして、平成20年度比8.7%、稼働総数が増加しました。また共同利用の推進もしていまして、地域にいろいろ広報活動を積極的に行いまして、平成20年度比19.9%ということで、かなりこれも大幅に利用数が増加しているところです。
 続いて、135頁の「病床の効率的な利用の推進」です。稼働状況に応じた整理・集約ということで、一般病床については、平均在院日数が減ったという積極的な理由もありますが、大学から医師が引き上げられたという消極的な理由などにより、平成22年度においては3個病棟を休棟などにより集約しました。結核病床については、結核の入院患者数、病床利用率が低下傾向であることから、休棟または廃止、一般病床とのユニット化を進めています。精神病床についても、1個病棟を休棟により集約したところです。
 136頁の「医療の質の向上を伴った収支の改善」です。各病院において、地域医療連携の活動強化、救急患者の積極的受入れなどを行っています。下に、紹介率、逆紹介率、救急搬送件数等、各種指標がありますが、いずれも増加しています。平均在院日数については減少という形になっています。また、その下に施設基準の取得状況の一覧がありますが、上位の施設基準を取ることによって、医療の質を高めるとともに、収支の改善を図っているところです。
 137頁は「保有資産の有効活用」です。閉校した看護学校校舎やリハビリテーション学院の校舎の跡地などを、こども通園事業を行う自治体や居宅支援事業を行う民間業者に貸し付けるといったことを行っているところです。
 138頁は「教育研修事業」です。附属看護学校から国立病院機構病院への就職率ですが、平成22年度、23年3月卒についても70%ということで、7割をキープしている状況です。また再掲ではありますが、国家試験合格率は99.1%ということで、高い水準を維持しているところです。
 139頁「IT化の推進」です。財務会計システム、経営分析システム、評価会は、例年と同様に適切に対応しております。
 140頁の「医事会計システムの標準化」です。医事会計システムの標準化を進めるため、共同入札を実施しています。平成22年度末時点で、86病院において稼働しています。うち、平成22年度には42病院が増えた形になっています。共同入札を6回実施し、合計でコストの削減額が17.5億円ということで、非常にコスト削減に資しています。
 続いて、142頁の「次期業務・システムの最適化」です。平成26年4月に、次期業務システムを最適化するとしているのですが、平成22年にスケジュールの検討と支援業者の選定を行いました。8の「電子政府への協力」ということで、Pay-easy、e-Taxについては、引き続き利用しているところです。
 143頁の「自己評定」ですが、CT、MRI、高額医療機器の共同利用数は非常に伸びています。また、国家試験の合格率も、全国平均を大きく上回っています。医事会計システムについても順調に導入を進めています。紹介率・逆紹介率の向上、新入院患者数の増加、平均在院日数の短縮化等を行っていますので、ここについては「A」という自己評定とさせていただいています。

○国立病院機構企画経営部長
 145頁は「収入の確保」です。未収金対策の徹底については、高額療養費の現物給付化に取り組むとともに、事務担当者に加えて看護師、医療ソーシャルワーカー等の連携協力による退院時未精算の防止など、未収金の発生を未然に防止する取組を進めています。平成22年度の未収金債権のうち、破産更生債権を除いた医業未収金、つまり新たに発生した未収金の額は、前年度と比較して1億400万円減少していまして、医業収益に対する医業未収金の比率は0.07%となっています。数値目標よりも大きく低減させる実績を出すことができたと思っています。
 146頁の「診療報酬請求業務の改善」については、研修説明会等のほかに、職員による効率的なレセプトチェックが可能となるように、レセプトチェックシートを作成していましたが、これについて診療報酬改定を受けて改定を行い、改めて周知徹底をして、院内でのレセプト点検の取組を進めているところです。
 147頁の「臨床研究事業」については、平成22年度は28億円の競争的研究費の獲得という実績を上げています。
 149頁の「自己評定」ですが、数値目標となっている未収金比率の低減を一層進めたことなどを踏まえて、自己評定としては「A」評定としてお願いしています。以上が、第4グループの説明です。

○猿田部会長
 どうもありがとうございました。それでは、どなたかご質問はありますか。

○?瀬委員
 医師の給料のところなのですが、これは中期目標や平成22年度計画とは直接関係ないかもしれないのですが、平成22年度の診療報酬改定で、一応勤務医に手厚くするというような方向で出されたのですが、それとの関係がどうなっているのでしょうか。もう1点、医事会計システムなのですが、これは待ち時間との関係でそれを短縮するような形のものなのでしょうか。その辺りをお教え願いたいと思います。

○国立病院機構副理事長
 医師の給与と診療報酬改定の影響ですが、直接関係づけてはいません。ただ、医師の給与自体は、その前の年に国の補助制度として創設された救急、産科の分野については、手当を出していいという話があって、平成21年度に国の補助制度に準じてそういう制度を作ったことはあります。
 もう1つは、業績評価制度を活用して、すべての医師を一遍に上げるのではなくて、やはり給与を上げたい医師というか、それだけ評価の高い医師については着実に上げているということがあります。それから、もう1つは、残業手当は着実に毎年増えてきているのが実情です。

○夏目委員
 2つお聞きしたいのですが、1つは、いまも少しお話が出ました総人件費削減、総人件費改革についてなのですが、これは独法評価にあたって極めて重要なテーマとされています。ただ、理事長が冒頭おっしゃられたように、税金にほとんど依存していない、ほとんどが自分たちの収入で運営している国立病院機構に、画一的一律に適用するのはいかがなものかといつも思っているのですが、そうは言っても重要なテーマとなっていますので、質問させていただきます。
 114頁に整理されているのですが、「平成22年度における」という所の上から7、8行目ぐらい、平成17年度と比較して294億の増となっていると。削減に向けた取組ということで、266億円の削減。しかし、病院機構として役割を果たすということで、560億円増加したとなって、ネットでは結果的には増加しましたという整理なのですね。ここに書いてある役割を果たすための人件費増、この???それぞれ、私は最もだと。これであれば、人件費が増えても国民的にも納得、理解がいただけるのではないかと思うのですが、ここら辺はちょっとうがって見過ぎていると言われるかもしれませんが、この???に「等」が付いているのですね。???で560億円の増加がほとんど説明がつくのであれば、全くその役割を果たすための増がこれだけあったということで、十分理解できるのですが、この「等」がちょっと悩ましくて、これ以外にも結構あって、???はあくまでも一つの事例であって、それ以外にも結構な増額要素はあったのだよということになると、それではその増額要素はどういう内容だったのかという議論になってくるのだろうと思うのですね。したがって、いますぐには出ないのかもしれませんが、この???で560億円増の何割ぐらい説明がつくのか。8割方つくのか、9割方つくのか、その辺の感じがわかると、我々は評価をするにあたって、自信をもって評価できるのではないかなと思いますので、もしわかれば教えていただきたいと思います。
 もう1点は、評価項目の10「業務運営の見直しや効率化による収支改善のうちの医療資源の有効活用」です。これは例年、大体自己評定も「S」だったと記憶しています。評価委員会でも、大体「S」になっていたと私は記憶しているのですが、今年は「A」の自己評定なのですね。内容的には、昨年と同じようなレベルではないかなと、特段昨年よりも下がっているわけではないのではないかという気がするのですが、何で今年は「S」から「A」にしたのか、少しここは謙虚になったということなのか、ちょっとその辺、例年と同じレベルの努力というか、成果を上げながら、何で今年は下げたのかという点について、お願いします。

○国立病院機構副理事長
 総人件費改革の関係で、人件費増の要因として???と書いて、それに「等」が付いています。何で「等」が付いているのか、私自身よくわからないのですが、???でほとんどすべてだと。その中で、以前は?は結構大きかったのです。触法病棟を整備しなければいけないといったようなことで多かったのですが、いまはちょっと一段落しています。いま多いのは、やはり?だと思います。また、自立支援法が本格施行されますと、?が増えていくというような感じだと思います。
 この「等」の意味は、私流に解釈すれば、これ以外にあるのは、いろいろな病休や代替要員など、目に見えないところで職場環境改善のような形で人が増えている部分、あるいは残業手当が実態に即して出されるようになっていくのがあるとは思いますが、基本的には???ですべてが言い尽されると私は思っています。
 それから、確かにいろいろな医療機器の効率的な利用などは、昨年と同じぐらいの効果はあがっています。したがって、私どもはここも本当は「S」が欲しいという感じもします。ただ、昨年に比べて、いわゆるIT化の財政効果が昨年よりは少し少ないというのもあったと思います。むしろ私どもは、医療本来のほうで、昨年「A」だったものをどうしても「S」で評価していただきたい。具体的には東日本大震災や臨床評価指標など、かなりいろいろな診療で大きな取組をしましたので、むしろウエイトはそちらに置いたというのが現実です。

○国立病院機構企画経営部長
 先ほど医事会計システムの標準化に関し、待ち時間の短縮を狙ったものかというご質問ですが、基本的には機械の導入は業務を効率化する面があります。ただし、医事会計システムは既に結構入っているところだと思いますので、この標準化の意義としては、事務職員の場合は特に配置換などもありますので、やはり業務マニュアルとセットで、システムもある程度標準的なものを前提として、どの病院も医事会計事務を適正に実施するという大きな目的があります。その中で、業務をできるだけ効率化して、システムで取り込めるものは取り込んでいき、その結果、患者さんとの関係でサービスの向上がもたらせれば望ましいと思っています。

○山田委員
 いまの総人件費の所ですが、やはりこの分野で人件費の削減をするということは、これはもう医療の質の低下を招くとか、場合によっては医療の存続不可能な状態になってしまうという分野ですので、ここのところは絶対に削減してはならないと私も考えています。したがって、ある分野での増加は仕方がないわけですので、そこはやはりこの委員会として強く言うべきだろうと思っています。
 ここで言うべきかどうかわかりませんが、定員についても、これは医師、看護師に枠をはめるというのは論外であって、我々日赤はもう医師、看護師には定員制は全く引いていません。事務系はかなり抑えています。したがって、どこかの表にありますように、赤十字の100床当たりのドクター数、看護師数は非常にずば抜けて高いという状況になっています。その分、収益は国立病院機構ほど高くは上げていません。やはり定員制についてもこれは絶対に廃止すべきであるということは、強く打ち出すべきではないかと思います。

○猿田部会長
 ありがとうございました。ほかにありますか。看護師の卒業生の就職率が70%ぐらいですが、この数はどうなのですか。やはり、給与との関係もあって。でも70%就職してくれればいいと。その点はいかがでしょうか。

○国立病院機構副理事長
 いま看護師を採用しているのは、1年間に3,500人より上ぐらいですかね。その中で、半分は外部からの採用で、半分はこの看護学校からの採用という感じです。その半分を満たすレベルというのは、いまの看護学校の定員からみて、7割ぐらい国立病院機構に就職してもらえれば、半分は満たせるだろうというような水準です。これは、地域によってばらばらですが、大体7割というのは結構いい水準ではないかなと思っています。

○猿田部会長
 ありがとうございます。それからもう1つ、後発品の伸びは着実に伸びていますが、そろそろこれぐらいが限界ではないですか。そうでもないですか。

○国立病院機構医療部長
 後発品については、また着実に目標に向かって伸ばしています。やはり情報をいろいろ病院に提供していますので、どういう種類の後発品がより使われているかと、機構の中でも分野ごとに調べると、造影剤や抗菌剤など先行的に切替えが進んでいる病院の情報を提供していますので、そういうものを活用して、まだ取組を進めていない所が取り込めるのではないかと思っています。ただ難しいのは、常に新薬が出てまいりますので、分母のほうが金額ベースですと、高価な新薬を使うことになると、どうしても比率として悪くなってくるので、一旦到達したらずっといい目標でいられるかというと、なかなか不断の見直しをしていかなければいけないという難しさはありますが、それに取り組んでいるところです。

○猿田部会長
 どうしても、国立病院機構のデータがほかの病院の指標にもなるものですから、それで伺いました。ありがとうございました。もしよろしければ、5分ぐらいいただきまして、評定をお願いします。
(評価シート記入)

○猿田部会長
 それでは、最後の第5グループの項目12~14、経営の改善、固定負債割合の改善、重要な財産の譲渡等、人事に関する計画等について評価をいたします。このセッションは、法人からの説明が15分、委員の質疑と評定が15分の、合計30分ということです。それでは、ご説明よろしくお願いいたします。

○国立病院機構企画経営部長
 151頁の「経営の改善」です。上位基準の取得や新規患者の増加などの取組によりまして、経常収支は538億円、経常収支率は107.1%となっていまして、年度計画における経常収支105%を超える収支率となっています。総収支は495億円でして、経常収支及び総収支で黒字を維持しているところです。再生プランについても、すでにご説明したとおりです。
 153頁の「自己評定」ですが、数値目標、経常収支率100%以上というところから見ても高い経常収支率を実現しているということで、昨年度に引き続いて「S」評価としています。
 経営改善に関しまして、次の項目ですが、162頁をご覧ください。第6「剰余金の使途」です。平成22年度における剰余金は495億円となっていますが、これは将来の投資や借入金の償還に当てるための積立金、すなわち目的積立金として申請しています。平成21年度決算における剰余金348億円については、そのうち256億円が平成23年3月末に目的積立金の承認を受けています。この21年度決算については、当初満額を目的積立金として申請していましたが、現行の承認基準、経営努力の認定基準では、計画や前年度の実績を上回る実績を上げるということとともに、各年度の新たな取組について個々に判断するということになっていまして、満額の承認を得ることができなかったのです。現行のこの経営努力の認定基準については、運営費交付金に依存する独立行政法人を念頭に作られたものと考えていますが、当機構の収入は、ほとんどが診療報酬による自己財源です。運営費交付金については、国期間の債務に充てられるものが中心となっていまして、機構事業分については不採算部門に向けられたものであり、利益を生み出すものとはなっていません。
 また、機構が行う医療事業は、診療報酬という一律の公定価格が定められていまして、自治体病院の経営状況等も踏まえれば、通常の取組で利益が出るというものではないと思っています。また、医療法では非営利が目的となっていまして、利益は患者さんに還元するということにもなっています。特に診療報酬での上位基準の維持などについては、適切な平均在院日数を維持すること、高い紹介率を維持すること、流動性の大きい医師や看護師を確保することなど、複数年度にわたり不断に努力をして初めて達成され、維持されるものです。現行基準での新規性の要件というのは適切ではないのではないかと思っています。こうした状況から、当機構としては、機構の医療事業に即した経営努力認定の基準を作っていただければと考えております。以上でございます。

○国立病院機構財務部長
 続きまして、155頁の「固定負債割合の改善」です。平成22年度については投資が496億です。平成21年度、22年度は1,231億円の投資を行ったところですが、借入れは172億ということで、投資に比べて借入れが非常に少なかった年です。その結果として、固定負債残高が、平成20年度からの累計で840億、14.1%減ったという結果になっています。
 156頁の「医療機器・建物整備に関する計画」ですが、医療機器整備のほうについては、昨年度217億の投資を行ったところでして、累計で470億ということで、中期計画期間中の850億が枠なのですが、それをもう55.3%消化したという形になっています。
 次に建物、施設整備のほうですが、施設整備のほうも積極的に進めていまして、昨年度は278億円の投資を行いました。累計で760億ということで、中期計画期間中の投資額が1,852億ですので、41%がもう投資されているということになっています。
 158頁ですが、建替整備の決定後の償還性のフォローアップも引き続きやっていますし、自己資金を積極的に活用していまして、医療機器整備については217億投資したわけなのですが、全部が内部資金です。病院さんが自ら用意する場合もあれば、ほかの病院さんの預託したお金をお借りしているという場合もあるのですが、機構内部でファイナンスができているということです。一方、建物については、278億のうち106億ということで、残りの部分は財投から借り入れているということです。
 159頁は承継した債務の償還ですが、約定どおり行っているところです。160頁は、特に言うことはありません。
 161頁は重要な財産の譲渡・担保です。3月にご説明しましたが、旧十勝療養所等7病院について国庫納付を行うという決定をしました。今年度は、これについて財務省とお話をして、国庫納付をしていくという段取りになっています。あと、これも3月にお話しましたが、善通寺病院の土地の一部を香川県立の養護学校の用に供するように譲渡するという計画になっています。
 自己評定ですが、固定負債の割合についても着実に減らしています。また、医療機器・建物の投資についても、中期計画からすると順調なペースで投資を行っていますので、「S」とさせていただいているところです。
 投資に関しては、昨年度の実績の話ではないのですが、昨年の11月に事業仕分けがありまして、その場で、機構としてちゃんとした投資計画を作るべし、というご指摘を受けました。一方、先ほど利益の説明もありましたが、我々の基礎体力のほうもかなり上がってきて、投資すべき時期に来ているというのが我々の認識です。それで、投資計画を我々のほうとしても考えていまして、関係省庁とお話をしているのですが、整えば中期計画の改定をしたいと思っていまして、そのときには本評価委員会にもお諮りしたいと考えています。
 我々がいまのところ考えている案なのですが、平成30年、第3期中期計画が終了するまでの8年間をターゲットとして、建物については、耐用年数が39年なのですが、これを超えるものを建て替えていく。医療機器については、耐用年数はそれぞれなのですが、大型のものだと6年が多いので、6年間で大体更新していく。ITに関しては、電子カルテをすべての病院で入れる水準までやっていく。これが我々の基本的な投資需要の考え方です。これらを行いますと、平年度化すると1,000億程度の投資が必要ということで、我々は独法になってからの最高が750億ぐらいですので、ちょっと多いですが、我々のいまの体力からすると可能なレベルなのではないかと考えています。
 現在の中期計画については、有り体に言うと、これほど儲かっていない状況で作っていますので、建物についてはまだ病棟の部分しか入れていません。外来については計画していない状態になっています。医療機器についても、実際に一昨年度は250億ぐらい投資しているのですが、年間170億ぐらいのレベルにしているので、これを250億ぐらいまで引き上げたいと思っています。また、電子カルテ、ITについては対象にすらしていないというのが、いまの中期計画の状況ですので、我々の体力に見合った投資を行って医療の質の向上を当然図っていきたいですし、医療安全にも資するものになるのではないかと考えています。
 一方、資金面でどうかという話なのですが、いま申し上げたとおり、年間1,000億投資するとして、8年間で8,000億ということなのですが、我々のいまの業務キャッシュフローは大体年間1,000億ぐらいありますので、業務キャッシュフローの範囲内で投資が行えるのではないかと思っています。ただ、国時代から借りていた借金が5,000億ぐらいまだありますので、それを返済する分についてはちょっと借りないと足りないのですが、基本的に、借金を増やさずとも投資はできると思っています。そのためには、先ほど企画経営部長が言いましたとおり、稼いだ利益については使えるように目的積立金化していかなければいけませんし、運営費交付金についても、これ以上くださいという話はないのですが、国の期間の債務についてはきっちり国からいただくという形をとれば、必要な投資はできていくと考えています。以上です。

○国立病院機構総務部長
 続きまして、165頁について説明します。第7の1、「人事に関する計画」です。1番の患者のQOLの向上及び療養介助事業の実施については、平成22年度は38名の増加を図りまして、平成22年度現在で767名の配置としたところです。2番の技能職の離職後の不補充、非常勤化、アウトソーシングは、先ほど和田委員からご質問がありましたが、内容はお答えしたとおりですので、説明は割愛させていただきます。3番の良質な人材の確保及び有効活用ということで、平成22年度においても引き続き、病院長の選任に当たっては適材適所を徹底するとともに、職員の採用はブロック単位で行いまして、ブロック内の各病院長を委員とした人事調整会議により必要な人材を適材適所に配置を図っているということです。
 4番の研修の実施については、評価シートの説明資料の465頁に平成22年度の実施状況を付けています。平成22年度は、トータルで1万人を超える職員に対して研修を実施しました。新たな研修としては、評価シートの165頁に戻りますが、QC手法を実用的に各病院で実施していただくためのQC手法研修、20代の医療職、事務職を交えたチーム医療等を推進するための青年共同研修、さらには、良質な医師を育てる研修、新人看護教員研修などを行ってきていますし、初級者臨床研究コーディネーター養成研修なども実施してきています。また、当然のことながら、管理監督者研修ということで院長をはじめとする研修も実施してきていまして、大変多くの職員に対して研修を実施し、能力開発・人材育成を図っています。
 166頁の「障害者雇用に対する取組」ですが、平成22年度の厚生労働省令の改正施行によりまして、いままでより多くの障害者を雇用することが義務付けられています。当機構においても、基準日である6月1日はもとより、各月においても法定雇用率を上回る雇用を実施してきています。
 次に、6の「医師確保対策の推進」です。平成21年度には、機構本部に人材育成キャリア支援室を設置しまして、それに引き続き平成22年度には「医師キャリア支援検討委員会」を立ち上げて、医師キャリアに関する課題、その対応策について検討を行うとともに、研修医、専修医の教育・進路指導にかかる指導医からの助言を得て、専修医制度に反映させる体制、研修医指導責任者部会を立ち上げまして、そういう体制を整えました。研修医・専修医向けの情報誌「NHO NEW WAVE」についても、引き続き第2号、第3号を発行するとともに、この情報誌と連携したWEBサイトも開設し、情報発信をしています。さらに、先ほどお話しましたような研修医・専修医を対象とした研修を平成22年度に12回実施し、244名の受講がありました。指導体制も、各領域の専門性に秀でた指導医師によって実施を図ってきました。そのほか、医師給与などについて記載したパンフレット「けっこういいぞ!! NHO」を大学関係機関等への配付、シニアフロンティア制度による退職予定医師、また、すでに定年を過ぎ勤務延長期間中の医師のさらなる勤務の延長、また、医師確保困難病院にかかわる大学等関係機関への機構本部からの働きかけ等を行ってきました。
 167頁は「看護師確保対策の推進」です。これについては、看護師の職場定着を促して離職防止を図るとともに、看護師確保困難病院への看護師供給にもつなげるということで、卒後研修のモデル的導入を2病院で行ってきました。研修を終わった8名は引き続き機構病院で勤務をしていますとともに、このモデルの導入の評価については各病院に情報発信を行っています。
 その下に、看護師確保を推進するための「奨学金の貸与状況」を示しています。平成22年度の状況ですが、664名に奨学金を支給しまして、そのうち、この春卒業した260名のうち249名が機構病院に勤務をしました。年々この奨学金の効果というものが表れてきていると思っています。それから、(2)潜在看護師に対する離職後のギャップ解消ということで、各病院レベルで公開講座や講習会を実施してきています。平成22年度は92回、延べ400人強の方が参加しまして、このうち、仕事を離れていた方25人が機構病院に就職となりました。(3)は「けっこういいぞ!! NHO看護職版」ということですが、これについても昨年より部数増刷が必要となりまして、平成22年度は3万5,800部を各教育機関あるいは地域の看護団体等々に配付しまして、積極的に就職活動、採用活動に活用しているところです。168頁の技術職の削減については先ほどと重複しますので説明を省略させていただきますが、数値としては218名の削減ということで、計画に対しては153.5%、5割増という実績です。
 169頁に「広報に関する事項」を示しています。機構総合パンフレットをリバイス、ホームページに掲載ということもしていまして、機構の使命、行っている診療研究・研修の内容を詳細に記しています。地域の医療機関や大学、看護学校等々へもお配りをしています。その下の記載は先ほどと重複しますが、「NHO NEW WAVE」、WEBサイトの開設です。
 (3)ですが、東日本大震災への医療班派遣等の支援活動について活動状況をホームページで日々更新をしてお示しするとともに、「NHOだより」という広報誌を出しています。評価シート説明資料の159頁に「NHOだより」の東日本大震災特集号をお示ししています。これについても、各病院を通じて自治体や地域の医療関係者にお配りし、病院の外来などに置いて患者さんへも活動状況をお知らせしているところです。さらに、広報ということで、評価シートの説明資料の268頁に添付していますが、治験の私どもの活動について製薬メーカー向けに私どものパンフレットを作成し、広報活動についても行っています。
 170頁は「自己評定」です。いま言いました技能職に対する数値目標、研修、人材の確保、人事評価等についてのシステムということで、対象職員約5万人に対する業績評価の実施等、これらの主要な点を踏まえて、今回自己評定としては「A」を付けさせていただいています。以上です。

○猿田部会長
 どうもありがとうございました。いまのところは特に重要なところが多いですね。常勤の問題そのほかがありますが、どなたかご質問ございますでしょうか。この剰余金の使い方がやはりいちばん重要な問題で、この委員会としても、もちろん評価の点ではその評価を言いますが、やはり理解の仕方なのですよね。診療報酬でこれだけやっているということと、ほかのところとは違いますから、その点をどうこの評価委員会として挙げていくかということですよね。

○夏目委員
 非常に初歩的な質問なのですが、剰余金の92億は目的積立金として承認をされなかったということで、この92億はどうなってしまったのですか。国が配当みたいなもので取り上げたということになるのですか。

○国立病院機構副理事長
 目的積立金というのは、認められればすぐ使えるのです。翌年度からでももちろん使える。この92億はそうならなかったと。中期計画期末、平成25年度が終わってから、それは国庫に納付するか、あるいは次の第3期中期計画に繰り越すかを、もう一度協議しなければならないという段取りになります。

○田極委員
 もともとこの目的積立金というのは、独法制度ができたときにインセンティブとして機能させようという趣旨で作られたと思うのです。私も不勉強なところがあるのですが、そういう意味では、現状ではインセンティブとしてうまく機能していないのではないかというところが、やはり問題だと思います。折角独法制度を作って、インセンティブを付けてということでやったのに、この目的積立金がしっかり機能しなければ大きな問題だと思います。折角、皆さんが努力しても、目的積立金としてさらなる患者への還元などを含めたサービスができないということになりますので、このあり方についてはしっかり議論しておく必要があると思います。特に経営努力をどう認定するかというのは、各独法の業務、運営費交付金などの税金などから来る収入との関係などもあると思うのですが、そういった独自性も踏まえて経営努力をどう認定するのかといった基準、また、目的積立金について、どういう目的であれば国民の目線から見たときに妥当と思われるかといったことについて、しっかり議論しておく必要があるのではないかと思います。

○夏目委員
 それに関連して、資料2-2の(参考資料1)「建築年次分布(民間病院等との比較)」ということで、先ほどもお話が出たように、外来病棟の老朽化が民間のほぼ倍という構成比になっています。外来の老朽化が非常に進んでいるということなのですが、この辺は関係者に十分理解されているのかどうか。一般の国民利用者からすれば、あまり古い汚い病院に行くよりは、やはりそれなりにきちんとした病院に行きたい、そういうところで診てもらいたいと普通思うのではないかと思うのですが、この辺の老朽化度合いについての認識が十分関係者に理解されているのかどうか、その辺はいかがでしょうか。

○猿田部会長
 要するに、病棟のほうはしっかりやるとお話がありましたが、外来のほうをやらないというところは、どうしても気になると思うのです。そこはどうなのでしょうか。もう1つは、これから先ITを入れて、例えば電子カルテを使ったりすることになると、外来のやり方も全部変えなければいけないでしょう。そういったことがあるのか。その辺りはどうなのでしょうか。

○国立病院機構理事長
 私どもとしましては、外来のシステム、医療全体のシステム化で効率化を図らないといけない。それによって人員も削減できるのではないか、それで質の高い医療サービスが提供できるのではないかということで、やはりある程度のしっかりした投資をしていかないといけない。いままでは、投資計画が十分立てられるかどうか、事業として十分利益を生む体質になるかどうかということがわからなかったので、少し投資が遅れていたことは否めない事実だと思います。私どもとしては、これを改善したいと思っているのですが、実際に、この剰余金の利益処分に関しては、先ほど田極委員からおっしゃっていただいたように、総務省の定める基準が、新しい取組だと認めますよということなのです。我々のようにずっと努力してきて、もうゴムが伸び切った状態のところは、さらに伸び切ったところしか認めないというスタンスで臨まれるので、我々としては、老朽化した施設の改修など、それとは違った次元で議論されてしまう。そういう悲しさがあるので、我々もこういう状況を幅広く皆さんに知っていただく努力をしますが、実際に投資に回るお金がどのぐらいになるかということを担当する省庁に十分理解していただかないと、とても駄目ですので、そういう意味で、この評価委員会で情報発信していただければ大変ありがたいと思っています。

○猿田部会長
 よくわかりました。ありがとうございました。

○和田委員
 私も、この剰余金の使途は、特に独立行政法人ができたとき、国立大学法人ができたときの法律の趣旨からすれば、少しく腑に落ちないところがあるのです。まず、昨年度も、利益処分が全部目的積立金に案として計上されたことについて、これは適法なものですというご意見も申し上げたのですが、92億は認めないという話になって、256億だけが目的積立金になった。また、今年度は495億円を目的積立金として案として出されるわけですが、これが、どういう理由で、どれだけの額を目的積立金から外されてしまうかわからないという。これは何とかしないといけないのだろうと思うのです。
 法人として、利益剰余金を400億、500億と出すのは、医療のほうの経営努力は並々ならぬ努力だと思います。運営費交付金をもらってやる事業のほうから浮かせたわけではないわけですから。しかし、その剰余金をどうしていいのか。法人としてはそれをどう考えられるのか。先ほど、平成30年までの間に1,000億ずつ8,000億の設備をというお話がありましたが、もともと独法で、出資者は国ですから、耐用年数が来れば建て替えるというようなことは、法人に期待するのではなくて、国がそのときに出資してくれるという考え方も十分あるのだろうと思うのです。例えば私学などのように、補助金は出ても建物を建てるときには自分で金を調達して自分で建てなさいということではないわけです。建物を建てるのは、法人が自前で建てるのではなくて、必要があれば国が建てて出資するという形になるのだろうと思うのです。500億の剰余と、そのほかに減価償却等の内部留保があって、キャッシュフローベースでいえば800億から1,000億近くが毎年浮くだろうと。それで8,000億を設備投資するというのが、独立行政法人国立病院機構のスタンスなのか。それは、国のほうがそういうことを認めるのか、期待するのか。収支が改善されないような国立の病院、どこというわけではありませんが、ナショナルセンターなど、そんなことができないところもあるわけですよね。もちろん法人としての性格が違う部分があろうかと思います。
 是非法人のほうからお聞きしたいのは、独立行政法人としてこの剰余をどうしたいのかということです。一生懸命努力をして、それはお国に返すのだ、そのかわり建物などの出資はそれはそれで国がちゃんとやってくれるのだ、というのも1つの考え方なのだろうと思いますが、そうではなくて、どうこの剰余をお考えになっているのかをお尋ねしたいと思います。特に去年の92億が、どういうわけで92億を計算されて、これが目的積立金から外されたのか。その辺のところと併せて教えていただければと思います。

○国立病院機構理事長
 細かいことは副理事長にお話いただきますが、いま和田委員が言われた2つの道で、1つは、国から資金が出て老朽化した建物などに投資するということは、これは全く国時代に戻ることなのです。自己努力ということではなくて、国にいろいろ申請して予算を獲得するというのは、国時代なのです。自主的な努力で、自分たちで賄って事業を健全化して、さらに発展させるということがないといけない。これが独法の趣旨だと思うのです。ですから、後半の、国から出資を受けてということですと、昔の国時代になって、職員のモラルは下がってしまうと思いますので、これは絶対に避けたい。それなら今後どうするかということは、副理事長にお願いします。

○国立病院機構副理事長
 私どもとしては、利益剰余金というのは自前の財源で生み出したものなわけです。しかも、医療というのは配当禁止なわけです。確かに国は出資者かもしれませんが、配当禁止ということは、患者さんのために使いなさい、外部に出してはいけませんよ、というのが医療法人の鉄則だと思いますので、そこは、自前財源で作った利益であり、配当禁止であり、なおかつ、その財源の元になっている診療報酬というのは公定価格で全国一律なわけですから、その中で生み出した利益というのは、私どもは患者さんにすべて還元するというのが当たり前だろうと思っています。それは交付金で暮らしている独法とはやはり違うと思っています。
 ちょっと横道にそれますが、医療事業をやっているのは、国立大学病院も医療事業をやっていますし、自治体病院もやっているわけですが、国立大学法人については総務省が定める経営努力認定のルールから外れているわけです。やるべきことをやったら自前で稼いだ利益については自分で使ってよろしいと。たぶん先生も関与されたと思いますが、そのようになっていますよね。それから、自治体病院については、地方独法法で、そういう経営努力認定などそもそも要らないと。それはすべて中期計画の範囲内であれば使ってよろしいという整理になっていますよね。私どもも、中期計画では、もうすでにご承認いただいていますが、剰余金の処理については老朽建替え等の投資または過去債務の償還に当てるということが中期計画で決められているわけですから、それは中期計画どおりにやらせていただきたい、というのが私どもの立場です。
 建物については、国の時代から一部を除いては財政投融資で、病院建物というのはすべてお金を借りて建ててきたのです。それがいま過去債務になっているわけで、それをいま一生懸命返しているわけです。国の出資というのは確かに一部ありました。それは現在でも一部出資はあります。それは何かというと、重心・筋ジス病棟の耐震整備といったものについては、民間の社会福祉法人については国が2分の1、なおかつ県が4分の1で、全体の4分の3は見るというルールがありますが、それに準じたものとして出資金はあることはある。ただ、それは今回全部整理がついたという話ですから、基本的には病院建物は自分で建てなければならないというのは国時代からの鉄則ですし、それはそういう形で私どもも受け止めさせていただいています。
 それから、92億がなぜ外れたのかというのは、総務省ルールに基づくと、毎年毎年新たに生み出した利益、つまりΔの部分だけなのです。簡単に理解していただこうとすれば、平成21年度は350億の利益が出ました、平成22年度は495億の利益が出ましたということで、要は、ごくごく大ざっぱに言えば、そのΔの部分だけが経営努力認定の対象になると。本当の計算式はだいぶ違うのですが、簡単に言うとそういうイメージのことなのです。我々の医療事業のように、ずっと何年もかけて努力して7対1をとったというもの、簡単には人は増やせませんし、在院日数も明日から急に半分にするというわけにいきませんから、何年もかけてやる、そういったものが全然Δとしては反映できない。去年から今年にかけてどれだけ上がりましたかという程度にしか見てもらえていませんので、そういう形でいろいろ計算してみると92億は落ちてしまったというのが現実の姿です。

○猿田部会長
 結局、この問題は解決しておかないと、毎年起こることなのです。

○国立病院機構理事長
 平成21年度は92億ですが、いまの基準で、新しい経営努力で増収したということになると、剰余金495億はほとんど積立金に認められないという状況になってしまうのです。私は、ものすごく大変な事態だと思います。

○猿田部会長
 ここだけでなく、ほかのことでも理解をもらえていないところがあるのです。どうしたらいいのかです。そこをよほど考えていかなければいけないし、ここで私たちが言ってもいけませんが、本当に考えたいと思います。全体としてどう考えていったらいいかです。

○医政局国立病院課国立病院機構管理室長
 今日は評価委員会なので、あまり本省側から言うべきではないのですが、先ほど和田委員からもお話がありました。和田委員には、部会長とともにナショナルセンターの方も同時並行で委員をやっていただいており、ナショナルセンターの方と混ざってしまうといけませんので、国立病院機構について所管省庁としての投資の考え方を説明しますと、国立病院機構は基本的には研究所などの部分がないという整理になっていますので、厳密に言うとそういう部分もやっているのですが、建物については、先ほど副理事長から説明があったように、財政投融資、要するに自分の借金で建て替えなさいというのが基本です。ナショナルセンターは、病棟については扱いは同じですが、研究所とか教育をする建物という病棟でない部分は、稼げない建物だという認識がありますので、そういったところについては一般整備ということになっています。
 確かに平成16年の独立行政法人以降、国立病院機構には、財務省からお認めいただいた出資金扱いになっている建物整備のお金は入っています。ただ、それも、いまご説明があったように、本来的には経営力のない重心や筋ジスや難病の病棟の、昭和56年の建築基準法の基準が変わる以前に建てた病棟について、これは前の大臣も今の大臣もそうですが、患者さんを収容している建物で耐震基準がなっていないというところは可及的速やかに整備せよとのご指示があり、518億と175億というのを全2年でいただいたのは事実です。しかし、これは例外といえば例外で、本来は、そういう病棟であっても、建替え時期が来れば国立病院機構の方が借金して建て替えなさいというのが実はルールなのです。ただし、耐震については、そういう状況でしたから、約700億ぐらいの出資金はいただいたというのが実情です。
 整理しますと、先ほど言った利益の処分の仕方というのは、この委員会としては、国立病院機構の利益は投資にまわさないと病棟や機械の維持ができないというところを、検証していただいた上で、どうかというジャッジが必要ではないかと思います。ナショナルセンターのほうは、一方において交付金が入っているのですが、もう部会をやっていただいてわかると思うのですが、国立病院機構の交付金とは中身が違うと思うのです。例えば国立病院機構が過去債務といっているのは、公務員の国期間の退職金なのです。あまりよそのことを言っても仕方ないのですが、大学とかナショナルセンターというのは、同じ医療をやっていますが、国期間かどうかは関係なく、立ち上がった期首の人間は、満額退職金の交付金は措置していただけるということになっている。それから、前にも議論しました公経済負担という共済上の負担のあり方の問題、この辺は、大学とかナショナルセンターは、非公務員でも同じように国家公務員共済を使っていますが、そういうところは本省が払っていますから、費用負担が発生していない。ですから、医療の部分で見る場合に、国立病院機構と大学やナショナルセンターは同じ公定価で勝負をしているのですが、財務省が言うほど国立病院機構というのは利益が出るような形になっているのか否かというところが、今後議論になってくるのかなと思います。先生の最初の問いからすると、国立病院機構は、本省側からすれば、自分で稼いで建て替えてくださいと言わざるを得ない状況であるということです。

○猿田部会長
 実は、私どもは、ナショナルセンターの評価をやってみて、研究が非常に重要だということで、運営交付金がものすごく多いですよね。それで驚いたのです。どのように考えていくかですね。ともかく、この委員会としては、国立病院機構は委員としてしっかりもう1回相談させていただいて、どういう方向でしっかり言っていったらいいかということは、きちんとやっていきたいと思いますので、ご理解いただければと思います。努力していきたいと思います。委員の先生方、ほかに何かございますか。いいですか。それでは、これで委員会のほうとしては意見がないようですが、事務局から今後の予定をよろしくお願いします。

○政策評価官室長補佐
 委員の方々の中で評価の記入がまだ終わっていない方がいらっしゃいましたら、お持ち帰りになって記入していただくということで結構です。本日、電子媒体の評定記入用紙をお送りしますので、そちらに記入していただいてメールで返信ということも可能です。その際は、8月3日(水)までに事務局宛にお送りいただきたいと思います。

○国立病院機構理事長
 本当に暑い中、例年7月から8月にかけて先生方に多大なご苦労をおかけして、誠に申し訳ないと存じます。先ほどから議論がありますように、私どもの医療事業に対してご理解いただいて、今後ともよろしくサポートしていただければ大変ありがたいと思います。本日は長時間にわたってご議論いただきまして、ありがとうございます。このあとも膨大な宿題が出ているようで、本当に申し訳なく思います。本当にありがとうございます。心より御礼申し上げます。

○猿田部会長
 どうもありがとうございました。委員の先生方、お暑い中どうもありがとうございました。これで本日の評価委員会は終わらせていただきます。宿題が付いてしまいましたが、どうぞよろしくお願いします。

○国立病院課長
 国立病院課長の池永でございます。お疲れのところ、大変申し訳ございません。議事録外として一言ご挨拶させていただきたいと思います。私事ですが、まだ予定なのですが、29日付で異動することになりまして、局内の総務課のほうに変わることになりました。この国立病院部会の皆様方には大変お世話になりまして、どうもありがとうございました。引き続き医療の分野を担当しますので、引き続きお世話になると思いますが、どうぞよろしくお願いします。どうもありがとうございました。

○猿田部会長
 特に今日のことは、よろしくお願いします。

○政策評価官室長補佐
 次回は、8月24日(水)の13時から、同じ23の会議室で行います。ご案内を机上に配付していますので、お持ち帰りになり、後ほどファックスなりでお送りいただければと思います。


(了)
<照会先>

政策統括官付政策評価官室

独立行政法人評価係: 03-5253-1111(内線7790)

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