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2011年7月20日 独立行政法人評価委員会高度専門医療研究部会(第6回)議事録

○日時

平成23年7月20日(水)16:00~20:15


○場所

厚生労働省専用第23会議室


○出席者

   永井部会長、猿田部会長代理、和田委員、夏目委員、花井委員、本田委員、三好委員


○議事

○政策評価官
 定刻になりましたので、ただいまから「第6回の厚生労働省独立行政法人評価委員会高度専門医療研究部会」を開催いたします。遅れている方がいらっしゃいますが、定足数に達しておりますので、これから開催いたします。委員の皆様方におかれましては、台風が来ている状況、そしてお忙しい中、お集まりいただきまして誠にありがとうございます。
 本日は新しい任期の下での第1回目の会合になります。委員の皆様方に部会長をご選出いただくことになります。それまでの間、私、政策評価官の篠原が議事の進行をさせていただきます。よろしくお願いいたします。本日は祖父江委員、内山委員がご欠席です。花井委員、和田委員は出席と伺っているという状況です。
 通常ですと、ここで委員の紹介になりますが、当部会は、全員再任のため、委員の紹介は省略させていただきます。先に委員の皆様方には辞令を郵送し、本年の6月30日付けで厚生労働省独立行政法人評価委員会の委員又は臨時委員として厚生労働大臣から任命が行われたとのことです。また、7月12日に開かれました委員会総会におきまして、皆様方の高度専門医療研究部会への分属が正式に決定しております。事務局のほうで異動がありましたので、紹介させていただきます。室長補佐の田鍋です。

○政策評価官室長補佐
 田鍋です。よろしくお願いします。

○政策評価官
 それでは議事に入ります。部会長、部会長代理の選出です。委員会令第5条3項において「部会に部会長を置き、当該部会に属する委員の互選により選任する」ということ、委員の皆様方の互選により選任することになっておりますが、いかがですか。

○本田委員
 互選ということでご推薦したいと思います。この高度専門医療研究部会というのは、まだ一度も評価をやっていませんので、初めての評価ということもあり、これまでの経緯から考え、ご経験、ご見識を踏まえて前回会長をされておられた永井委員に、引き続きお願いしたほうがいいのではないかと考えますが、いかがでしょうか。

○政策評価官
 よろしいですか。
(異議なし)

○政策評価官
 どうもありがとうございました。それでは永井委員に引き続き部会長をお願いしたいと思います。それでは以降の議事進行については、部会長のほうからお願いいたします。

○永井部会長
 それでは、引き続き部会長を務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。最初に、部会長代理を指名させていただきます。部会長代理は、先ほどご紹介がありました評価委員会第5条第5項におきまして、「部会長に事故があるときは、当該部会に属する委員のうちから部会長があらかじめ指名する者が、その職務を代理する」とされています。私から指名させていただきますが、医療関係全般に幅広いご見識をお持ちでいらっしゃいます猿田委員に、引き続き部会長代理をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
(異議なし)

○永井部会長
 よろしいでしょうか。それでは猿田委員にお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは議題に入ります。議題(2)、独立行政法人の実績評価を行っていただくわけですが、高度専門医療研究部会は今年度初めて評価を行うことになっておりますので、評価の流れ、評価基準について事務局から説明をお願いします。

○政策評価官室長補佐
 それでは事務局より個別評価項目に関する評価の進め方について、資料の1-3-?に沿って説明させていただきます。まず、最初に各法人の理事長から年度業務実績の概要について説明をいただきます。その後、評価項目、これが大体各法人15分前後ありますが、それを4つのパートに分けていただき、それぞれ法人から業務実績と自己評価の説明をしていただきます。その後、委員の方には、評定記入用紙、こちらの循環器病研究センターですと資料2-5になりますが、こちらに評価を記入していただきます。また、その際、疑義等ございましたら質問していただきます。それぞれのパートでそれを繰り返しながら評価を進めていただくことになります。
 評価については、真ん中よりやや下に判定基準というものがあります。ここに「S」、「A」、「B」、「C」、「D」とあります。まず「B」が基本計画に概ね合致している場合。そこから計画を上回っている場合には「A」。大幅に上回っている場合には「S」です。反対にやや下回っていれば「C」。下回っており改善が必要なものは「D」という評価基準になっています。
 また、「評価の際の留意点」と点線で囲まれているところの?で、各委員の方々には、評定を記載していただく際には必ず理由を付していただきたいということです。また、「S」や「D」という大幅に計画を上回ったり下回ったという場合には、判断をされた根拠について具体的に記載していただきますようお願いいたします。
 評価委員会では、特に厳正な評価を行っていただきたい事項があります。前大臣から、独法の評価委員会におきまして、業務経費に冗費が生じていないか、人件費の関係、サービスを高める努力をしているか、そういったものについて特に厳正に評価してほしいというご指示がありました。また、総務省に設置されております政策評価・独立行政法人評価委員会におきましても、毎年度評価の視点というものが各省に送られてきます。この中に内部統制をきちんとしてほしいといった指示等が諸々あります。そういったものについては、「業務実績評価別添資料」というものに法人の取組を入れていただいております。こちらの循環器の場合は資料2-3になります。この資料を見ていただきながら、厳正に評価をしていただきたいと思います。また、その評価をする際に、参考として、資料1-3-?にチェックポイントいうものが資料として入っております。
 法人の個別評価が終わりましたら、各委員の評価を踏まえた評価書案を作成いたします。各委員の起草担当の法人については、資料1-3-?に「起草委員(案)一覧」を付けておりますので、ご確認及びご了承いただければと思います。評価書案の作成については各法人の所管課と起草委員との間で調整していただきながら案文の作成を行っていただきます。作成していただいた評価書案については、総合評価の部会において審議していただきます。
 また、個別評価を欠席された場合の取り扱いについてです。起草担当の法人の評価を欠席された場合は、個別にレクを行い評価していただきます。起草担当以外の法人の場合は評価をしていただく必要はありませんが、もし事前にお送りした資料等を基に評価をされた際には、おおむね部会が開催された3日後までに、その評価結果の評定記入用紙を事務局宛にご提出いただければと思います。
 次に資料1-4と1-5です。こちらは事務局のほうで、評価の参考として作成したものです。それぞれの法人の自己評定の一覧になっています。通常はこの横に昨年度の実績を載せてありますが、高度専門医療研究部会については、今年が初めての評価になっておりますので載せておりません。
 次に、資料1-5です。当部会以外の厚生労働省所管の法人の過去3年間の「S」~「D」の分布をグラフにしたものです。こちらは、自己評定と評定結果をグラフにしております。ご覧いただけばおわかりかとは思いますが、自己評定よりも、当然といえば当然なのですが、評定結果の評価が厳しくなっている状況です。事務局からは以上でございます。

○永井部会長
 ありがとうございます。ただいまの件で何かご質問はございますか。

○夏目委員
 これから評価に入るのですが、その前に一言だけ申し上げておきます。私は臨時委員の夏目です。経歴等を見ていただくとわかるように医療の専門家では全くございません。したがって、今回の高度専門医療研究の機関の評価に当たり、あえて一言申し上げます。当然のことながら、今回の対象機関は、日本最高水準レベルの研究開発とか、あるいは医療の提供を目標とされていると。これからその実績の説明等があると思いますが、私はそういう意味では医療の専門家ではありませんので、それが本当に日本の最高レベル、最高水準なのかどうか、そこは相当わかるように説明していただきたい。要するに私が言いたいことは、私は企業系は若干経験がある。組織運営、経営管理についてはそれなりに経験がありますが、医療のほうは誠に申し訳ありませんが、そういう意味での経験がほとんどない、知識もないということで、一国民あるいは利用者という立場、そういう目線で医療の提供、研究開発のほうは見させていただく。そういう意味では数値目標の達成度といったようなものは、これは数値ですから私にもよくわかります。ただ業務の質、研究の質、医療の提供のレベルとかそういうものが本当に日本の最高水準を目指す機関にふさわしいのかどうか、そこは、私ども一般国民、利用者にもわかるような説明をしていただかないと、そこは仮に「S」だと、自己評価を「S」だと言われたところで、本当に「S」なのかどうか、なかなか私には評価できません。そういう意味では専門の先生が大勢いらっしゃるので、そちらのほうのご判断を尊重していただくのがいちばんいいとは思いますが、できましたら、一般の国民、一般の利用者にもわかるような説明をしていただけると大変ありがたいということを申し上げたいと思います。以上です。

○永井部会長
 ありがとうございます。他にいかがでしょうか。評価基準の「S」、「A」、「B」、「C」、「D」ですが、「S」は、中期計画を大幅に上回っている。「A」は、中期計画を上回っている。「B」は、中期計画におおむね合致している。大体計画どおりであれば「B」という、それは決して悪い評価ではない。「B」が付いてもですね。その辺の基準をよく確認しておきたいと思います。よろしいですか。「S」というのは、大幅というのは難しいのですが、想定外というようなことをある程度加味している必要があると、そんな理解でよろしいですか。

○猿田部会長代理
 先ほどご説明いただいた資料で、労働安全衛生研究所とか国立健康・栄養研究所とかいろいろなところが出ています。ここで見てみますと、「S」、「A」、大体こういう形でいままで評価されていたということで、先生がおっしゃったように標準が「A」か「B」かということだと思うのです。

○永井部会長
 「B」が大体基準になっているという、そんなふうに考えていただきたいと思います。
 それでは国立循環器病研究センターの個別評価を始めたいと思います。最初に橋本理事長から、一言お言葉をいただけますか。

○国立循環器病研究センター理事長
 理事長の橋本です。評価委員の先生方におかれましては、大変ご多忙のところ多くの時間を費やして我々の評価のためにご尽力いただき、大変ありがとうございます。座って説明させていただきます。
 「業務実績概要資料」の6頁をご覧ください。「中期計画の概要」があります。そこをご覧いただきながら22年度における業務実績の概要にいてご説明したいと思います。個々の評価事項については、後ほど担当者が説明いたしますので、私はこの中期計画を遂行するために、初年度、どういう方針でどういう整備をしたかを説明したいと思います。
 国立循環器病研究センターが発足してから30数年経ちまして、縦の関係は非常に密になりましたが、横の関係を構築するのが大変難しいというのが基本的な認識としてあります。そういう中で独法化して比較的自由に組織再編できるというようなこともありますので、1年目は、中期計画を遂行するための基盤整備に重点をおきました。その1点は、病院と研究所の一体化です。循環器病研究センターの研究所は課題解決型の研究所ですし、最先端の医療をやっていく中で、いろんな課題が出てきます。これをどう研究と臨床を結びつけるかということが大きな問題です。
 第2点として、センターを一体として運営するための意思決定プロセス、これが確実で迅速でなければいけない。そのために組織をどう構築したらいいのか。第3点として、情報発信と収集。人材育成あるいは政策提言のための基盤整備という視点で考えてまいりました。第4点に、独法組織一般として進めるべきいろいろな作業あるいは組織を作るということがあります。それについては当然粛々とやってまいりました。第5点、なかなか形には出ませんが、職員のインセンティブをどう作り出していくか、あるいはいろいろな決定、職員の意思を阻害する因子はなにか、それをどうチェックして排除していくかという視点から1年目は組織の基盤整備ということをやってまいりました。
 先ほど申し上げた第1の病院と研究所の一体化については、かつて研究所の中に臨床研究センターがありましたが、橋渡しをする、あるいはオープンイノベーション、知財戦略等いろいろなことをやっていくには、研究所の中の1組織では駄目であるという視点から、研究開発基盤センターというのを、病院と研究所とほぼ同格の第三の組織として作りました。そこに多くの人材を配置して、いろいろな事業を開始しています。また、病院と研究所をいかにジョイントさせるか、ジョイントリサーチプロジェクトというようなものを立ち上げたり、あるいは両者が一緒にやるミーティングを開いたり、そういうことで病院と研究所の一体化というものを1年目は推進してまいりました。
 第2点の一体として運営するための意思決定プロセス。これは責任と権限の明確化ということであります。従来の縦組織としての要素が強かったセンターの中に、横の繋がりを入れるということとチェック機能を入れるということであります。これは病院で申し上げますと、副院長を複数制にした。あるいは、例えば循環器内科は循環器病研究センターの中に4つの部門があります。これがときには三すくみの状態になる。四すくみの状態になるということがありましたので、それぞれの部の上に部門長というものを設け、全体として1つの意思決定ができる。あるいは指示ができるというような組織を作ってまいりました。また、理事会、執行役員会はもちろんですが、事務の領域においては、ヒト・カネ・モノを完全に分離するという組織を作りましたので、逆に、そこの横の繋がりがないといけないということで、理事長室で事務課長以上の職員を定期的に集めて会議を開き、横の連絡を密にすることを行いました。
 また、病院では重症回診を実施しており、どこかの患者さんが急激に悪くなったというときには、病院長、副院長、当該科の担当医、そして関連科の担当医、リスクマネージャー、こういうものが瞬時に集まりチェックをし、そして対策を練るようなことも積極的に実施しております。第3点目情報発信と収集、あるいは人材育成、政策提言のための基盤はいろいろありますが、やはりナショナルセンターとしてのミッション、疫学的な情報、あるいはバイオリソース、こういう循環器のデータをいかにナショナルセンターとして集めるか。そういうための組織の構築を図ってまいりました。また、病院、研究所そして関連施設とのネットワーク、3つの異なるネットワークがありましたが、これをフラット化する、1本化するというのをカルテの電子化とともに、いま行っております。
 第4点目として、独法組織一般として進めるべき作業については、また後ほど詳しく担当者が申し上げますが、もう1つ、業務運営をいかに効率化するか。ガバナンス、コンプライアンス、こういうものをどうしっかりと構築していくかということであろうかと思います。第5点目、職員にインセンティブをどう付与していくか、あるいは阻害因子をどう排除するかということがあります。これは人事においては年功序列あるいは学閥と、センターにはないと思いますが、そういう噂が立つようなことのないような人事を行って、しかも若い人たちに希望が出るような、空が見えてくるような人事を積極的に行ってきたつもりであります。また、レジデントあるいはティーチャーをお互いに評価し表彰する。あるいは、院内啓発活動を積極的に行っていく中で、どの先生がどういうことをしているかを広報誌等で積極的に紹介していくということもやっていますし、患者さんから投書箱に寄せられた意見、これを、ただそういうものがあるというのではなく、その意見に対して病院側がどう対応するか、したかという結果まで求めるというチェック機構も作っております。そういうことで1年目はこの5年間の中期計画をいかに達成するか、そのためにはどういう組織が必要か、どういうチェック機構が必要か、そういう視点で1年目の基盤整備を行ってきたところです。以上でございます。

○永井部会長
 続きまして、評価の進め方ですが、国立循環器病研究センターの個別評価については、評価シートをご覧いただいて、個別項目を4つのグループに分けて、グループごとに評価を行っていくということです。よろしいですか。第1グループ、項目の(1)から(2)、研究・開発に関する事項、臨床を志向した研究・開発の推進、病院における研究・開発の推進という点について評価を行います。法人から説明を10分、委員の評定、質疑15分、合計25分となっています。おわかりですか。センターから1グループ、項目の(1)から(2)について説明をお願いできますか。

○国立循環器病研究センター研究開発基盤センター長
 研究開発基盤センター長の妙中です。お話をさせていただきたいと思います。業務実績概要資料、この絵の描いてある8頁に当たるところで業務実績評価シート、横長のA4の資料の9頁に当たるところを説明させていただきたいと思います。
 最初に、臨床を志向した研究・開発の推進というところで、総長からもお話がありましたように、研究所と病院等、センター内の連携強化をまず実施しました。それを実施するために研究・開発基盤センターを設置しましたが、これは従来ありました臨床研究センターだけではなくて、トランスレーショナルリサーチというか、基礎研究を実験的に実施する臨床研究部、それに加えて今後ますます重要になってくる先進医療・治験を推進するという部門が必要ですので、その2つの部分を分けました。
 さらに、知的資産部を設立し、外部との連携も含めて、これは知的財産部ではないというところも我々は1つ考えたところで、特許とか、そういう形になっている財産だけではなくて、循環器病センターの持っている人材であるとか、これまでのブランド名、外部とのネットワークとかも使って、外部、内部を連携させていくというものも含めています。ベンチ、フローム・ベンチ・ツー・ベットサイドということを目指してやりました。
 さらに、臨床研究部、先進医療・治験推進部の活動を知的資産部にする活動についてあとで少し詳しくお話しますが、予防医学・疫学情報部、バイオバンクデータセンター、これらを連携させることで、これは国の大きな取組になっていますが、バイオバンクを作っていくということで、循環器病センターの中のバイオバンクの資料の管理とか、データの管理を実施し、病院の部門の疫学研究等を下支えするという組織もつくらせていただいています。
 さらに、製品化したあと、その治療、高度医療技術が一般の方、広く日本全国、あるいは世界で使ってもらえる様、訓練施設としてトレーニングセンターを設置しました。これは新しく出てきた医療、特に医療機器、高度な医療機器等を使ったものに関していいますと、トレーニングが付いてこそ初めて上手に使っていただけるということがあります。具体的には、昨年度に承認を受けた植込み型人工心臓の機器がありますが、これについてのトレーニングを今年の初めぐらいから始めて、いま6カ月ぐらいになりますが、その間に外部の5大学、1病院に対してもトレーニングを始めています。
 そういうことでジョイントリサーチプロジェクトをどんどん実施した結果、ここに書かれておりますように、研究所と病院との共同研究の数が飛躍的に増えてきており、中期計画に向けて努力をしていきたいと考えています。さらに、研究棟の前に医療クラスター棟を新設するということで、今年の10月に竣工予定で、この機能をさらに充実させていきたいと考えています。
 その下にありますように、先端医療開発特区(スーパー特区)というものも循環器病センターを中心に活動が行われていますが、これは先端的な循環器系の治療機器を最終的に製品化して国民に届けるということを担う特区であり、循環器病センターをコアとして5つの治験病院、10の医工学研究施設、12の製品化企業、先端技術保有企業が参加している全日本的な組織です。これを運用させていただいて、これまで、すでに先端的な医療機器として1件が承認を受けていますし、平成22年度には1件の企業治験がここから出てきた技術で行われています。さらに、NEDOの橋渡し研究のサポートをいただいている研究を含めて、2件が医師主導治験に入っていく準備に入っています。
 この図の説明の真ん中の段にありますが、産学官等と連携の強化ということで、産学官連携室を設置し、外に向けての情報等をして、機械要素技術展とか、イノベーションジャパンという、これまで医療施設が直接出展してない所の展示会等にも出させていただいて、2万人弱の人たちに対して我々の情報の発信、連携の強化を始めています。
 海外との連携に関しても、アストラゼネカ・スウェーデンとの創薬に関しての包括的な共同研究契約の締結であったり、世界のメディカル・ポリス、これは医療機器の非常に開発の盛んなミネソタ州ミネアポリスのグループですが、そこのグループとともに国際フォーラムを去年も今年も開催し、まさに連携を深めています。
 知的資産部としては、去年の6月にスタートしたばかりですが、すでに117件の企業との交渉実績があります。知的資産部を通ってこない案件もありますので、そういうのもどんどん増えてくると思います。共同研究に関しては、平成22年度よりも若干増加していますが、これもいまお話したような活動を通じて、ますます盛んになっていくのではないかと考えています。
 いちばん右側の研究・開発の企画及び評価体制の整備ということで、いまお話した臨床研究支援体制の整備として部門を置いたこと、いろいろな評価のための評価委員会の改組とか、学術文献データベース「ウェブオブサイエンス」の導入等で評価する体制も実施しています。
 さらに、今度は知的財産に関してですが、管理強化に関しては、部門を設置したこと、「知的財産ポリシー」の策定をしたこと。さらには、これは特筆すべきことだと思うのですが、経済産業省の実施している創造的産学連携体制整備事業があります。これは主としてTLO等そういうものを対象に支援する所で、全国の5つの拠点が整備されていますが、我々はそういうTLOの中に入って、ただ1つだけ、おそらく日本で初めてだと思うのですが、医療機関が創造的産学連携体制整備をする拠点として指定されています。これを使って各種の活動を先ほどの展示会等も含めていたしました。さらに、知的資産の活用ということで、これまで企業との連携ではないような知的財産、循環器病センターの研究者が中心になってやった知財に関して、TLO、ヒューマン・サイエンス振興財団等で登録されているわけですが、その110件の特許の評価の洗い直しも、外部の評価を含めてしています。
 その結果、従来技術に対する優位性とか、実施予定時期、予想される市場の規模、実用化における課題等も含めて評価をして、A評価が30%、B評価が62%、C評価が8%ということで、こういう外部の目の入った評価を基に今年度は知的財産の活用をしていきたいと思っています。
 続いて病院における研究・開発の推進ということで、資料の9頁、横長の資料の評価シートの15頁についての説明をします。病院における研究・開発の推進といいましても、いまお話しましたように病院も研究所も一体になって循環器病センターは研究を進めていますが、主として臨床研究機能の強化というところについてお話をします。
 お話しましたように、臨床研究センターでやったものを臨床研究部と先進医療・治験推進部という2つの重要な機能として分けました。だけど、これでばらばらに、ともすればいろいろな大学によりますと、その2つの部門が陣取り合戦みたいなことをしている所もあるのですが、我々の所は、治験とか臨床研究の計画・実施の相談窓口を臨床研究部の臨床研究企画室に一本化することで、そこでうまく振り分けることをして、効率的に、しかも軋轢なく進んでいける体制を取っています。
 マネジメントとしては、生物統計及びデータマネージャーによる臨床研究支援、これは多施設共同研究として5課題、単施設は3題の支援をしています。臨床研究コーディネーター、これは臨床研究を、患者との間の説明も含めて、そういうことをする治験等の支援ですが、治験以外の介入研究でも4件、観察研究でも5件の実施の支援をしています。
 申請から締結までの期間、これは治験に関してですが、期間が49日、治験実施率が、企業から頂く治験の費用はこれまでは前払いだったのですが、それを実績払いにしたことを含めて、平成21年度の63%から平成22年度は81%に、インセンティブが向上したことはあると思いますが上がっています。
 さらに、治験のポイントの換算表見直しによる契約金額の適正化ということで、下のグラフにありますように、平成21年度に比べて約3倍の大幅な金額の推移となっています。内容的には、循環器病センターでしかできない植込み型の人工心臓の治験、医師主導型の治験で脳内ステントの治験調整などもやっています。
 さらに、ニーズをヒアリングするということで、医師ばかりではなく看護師、調理師、あるいは検査技師も含めたことを、知的資産も中心に、うまくニーズを拾い上げるということで臨床研究機能を強化していくということをやっています。
 倫理性・透明性の確保についても、右に書いていますように体制の整備をしたこと、これは外に向けてすごく大事なことだと思うのですが、説明会、教育、セミナーとして、循環器病センターの外側の研究者や臨床研究に参加している方々に向けての毎月1回のセミナーの開催で、これは非常に好評でたくさんの方に受講していただいています。さらに、病院に来ておられる患者とかも含めて治験啓発キャンペーンも実際に循環器病センターの中で実施しており、延べ300人以上が参加をしています。利益相反委員会等の発足も含めて倫理性・透明性の確保ということで、病院における研究・開発の推進の中に加えてしております。

○永井部会長
 ただいまのご説明に、ご質問はいかがですか。

○猿田部会長代理
 体制とすれば、これからの、こういったセンターにおける研究から臨床への橋渡しは非常に重要な点ですが、いまお話を伺ってその体制が出来上がりつつあることは非常にいいと思うのですが、実際に基礎の研究者と臨床の研究者とでどのぐらい会議を持っていらっしゃいますか、あるいは合同での会議はどのぐらいやられていますか。

○国立循環器病研究センター研究開発基盤センター長
 私が全部カバーしているわけではないですが、頻度としては月に2回ぐらいの割合でそれぞれのグループでやっています。いまお話したように、医師主導の治験に入ってくるものはほとんど毎週行っています。

○猿田部会長代理
 そうですね。いちばん大切なことは、基礎研究と臨床研究の間で、臨床のほうが基礎へぶつけることと基礎から臨床へ持ってくること、両方が非常に重要なのですね。だから、その点での合同の会議は先ほど部長から随分まとめられていますから、そういった形での合同の委員会が必要ではないかということが1つ。その点はいま2回ぐらいということで、合同と、できるだけ幅広い範囲で検討していただくことが1つ。
 もう1つは、トランスレーショナルリサーチに持っていくときに重要なのは、知的資産の問題です。いまどのぐらい、ここに組織をつくったとありますが、実際に知的資産に関する専門家はどのぐらいいるのですか。

○国立循環器病研究センター研究開発基盤センター長
 知的資産部の正式なスタッフは2人です。非常勤の方が2人、倫理委員とも含めて2人、事務職は1人、全くの事務部門、これは常勤、循環器病センターですが、産学連携部門の係をつくり、そこに1人配置しています。プラス、先ほど少しお話しました経産省の拠点整備事業、あれは外部のいろいろな組織を入れられるのです。それを使って外部の専門家等を使って2カ月に1回ぐらい、そういう財産をどうやって評価するかということの会議をして、自分たちの能力を高めることと外部との連携をやろうとしています。

○猿田部会長代理
 実際に平成22年につくって、特許として正式に出された循環器病センターからのものは、いくつぐらいあるのですか。

○国立循環器病研究センター研究開発基盤センター長
 特許の数は、8頁にも書かれていますように36件と、これは残念ながら横ばいといいますか、循環器病センターから出ていっている件数はこれだけです。ただ、平成16年とか、平成17年とか、活性化の時代がありますよね。あのときは何でも特許を出せというところがあったのが、いまは変わってきています。

○猿田部会長代理
 ですから、本当の特許として、国際的な評価としてどのぐらい認められているかということなのですね。

○国立循環器病研究センター研究開発基盤センター長
 ものになるということがすごく大事なところで、いまのところはライセンスの契約でいいますと7件とか、いままでの合計ですが、そのようなもの。まだ収入が出てないものなども9件ぐらいあるのですが。

○猿田部会長代理
 入っているのですよね。

○国立循環器病研究センター研究開発基盤センター長
 はい。

○猿田部会長代理
 わかりました。

○三好委員
 評価項目1の研究・開発に関する事項を説明していただきまして、基盤整備がかなり充実されたというお話だったのですが、自己評定で「S」とされた理由です。基盤整備というとスタートなので、それがどうして、結果が出て、何かそういう花が開いてすごかったというのであれば「S」は理解できるのですが、いまの段階で「S」というのは目標どおりかという感じがしなくもないのですが。

○国立循環器病研究センター研究開発基盤センター長
 平成22年度の計画を読んでいただいたらいいと思うのですが、体制の整備をするということが書かれていると思うのですが、説明としてはなかなか難しいのですが、いまお話しましたように外部との連携とか相談件数が増えてきているとか、実際にTR治験が始まったとか、医師主導の治験に向かっているとかも含めて、国際的な連携も、体制整備だけではなくて実際の活動としてかなり活発化してきているというのが、私が「S」にした1つの理由です。評価する体制をつくるとか、そういうところが書かれていると思うのですが、実際に評価もして、経産省の事業等も含めて活発に活動しているということで、私は「S」ということで書いたつもりです。

○夏目委員
 評価項目2の病院における研究・開発ですが、ここは数値目標が1つで、治験依頼から契約締結までの期間を平均50日以内という目標に対して、平均49日と1日下回っているのですが、1日下回るということをどう評価したらいいか。これが大幅という評価になるのか、それとも50日が1日程度だから、おおむね計画どおりだねという評価になるのか、治験依頼から契約の締結までの期間で1日単位にどの程度の重みがあるのか、その辺を教えていただければと思います。

○国立循環器病研究センター研究開発基盤センター長
 正直言いますと、50日が49日で、それほどの大きな差はないと思っています。目標を少し下回ったかというのが正直なところです。ただ、説明の中で言いました治験実施率の向上とか、これは63%、80%、これを優位とするかどうかですが、かなり増えてきていますし、治験の契約金額の推移、これは複数年契約にしたとかいろいろな要素もあるのですが、5,200万円だったのが1億7,200万円ということで、これはかなりの実績ではないかとは我々自身は思っています。

○国立循環器病研究センター理事長
 「S」とか「A」とか、それについては先ほども基本的なご説明をいただきましたので、それを自己評価するときにどう考えるかということであろうと思いますし、それは評価委員の先生方と自己評価とは違う部分があるかとは思います。ただ、基盤整備をしっかりやった、それは当初の計画をやったということであるとお考えだと思いますが、私の立場から申し上げると、確かに基盤センターをつくって、それをどれだけ強固な組織にするか、あるいは膨らませてできるかについては、正直申し上げて計画の段階でここまで来るとは思いませんでした。
 1つは、個々のところに適材を配置できるかどうか、そういう人材を外部から1年目に持ってこられるかどうかもありますし、それが実際にファンクションするかどうかもあります。そういう意味でこれは甘いと言われればそれまででありますが、私が考えていました病院と研究所、それを下支えする組織ではなくて、病院と研究所を引っ張り上げる組織としてかなり組織体制ができたと自負していますので、評価を「S」と付けました。

○猿田部会長代理
 例えば、いまの評価の仕方ですが、私どもとすると、確かにいまこういう形で基礎と臨床をしっかりうまく締結させた、そこはいいのです。そうすると、その効果がどれだけ出てくるかがもう1つ見たい。いま先生がおっしゃったように、確かにその体制をつくり直したことは私は非常に評価するのです。それがこれからどう、どれだけの効果が出てくるかを見たいものですから、こちらの評価としてはそういう形が出てしまうということだと思います。

○花井委員
 私は患者の視点ということなので、こういった研究を推進していくと、患者の利益はどうバランスするのかが気になるところですが、評価項目2の中で、治験について一般市民に向けても非常に啓発していることは非常にいいことだと思っています。例えば、その中で臨床研究と治験はある程度違う。いま同じ基準でやるべきだという議論があるのですが、そのあたり、臨床研究レベルの話と治験とで、ほとんど臨床研究も治験レベルのクライテリアでやっているのか、それともまだ治験と臨床研究は少し違う整理になっているのかをお聞かせ願いたい。
 同じポイントで利益相反に関しても説明されているということですが、臨床研究における利益相反は非常に難しい問題ですが、どのようなクライテリアでお考えになっていて、患者の権利という視点からすれば、どういう基準かということに少し興味があるので教えていただけたらと思います。以上2点です。

○国立循環器病研究センター研究開発基盤センター長
 臨床研究と治験は厚労省の制度上の問題でももちろんあるわけですが、一応、臨床研究と治験はパンフレットも分けて、明確にわかっていただけるような説明をしています。
 いまお話がありました利益相反に関しても、例えば各企業からの共同研究とか、そういう費用の分担とかも含めて、倫理委員会と同時に外部の委員の方々を入れて利益相反に関して評価しているというところです。
 お話されました患者とか一般国民に対しての説明は私はすごく重要だと思っていて、ここに臨床研究に関しての倫理性・透明性のことだけ書いてありますが、実は先ほどお話した知的資産部の1つの活動として一般国民の意識がどうなのかという調査等も含めてしており、特に例えば5,000人規模のインターネット調査等もして、医療機器などに関しては日本国民が日本初の医療機器を非常に高く望んでいるとか、医療機器メーカー等、一生懸命支援したいとか、医療機器に関してものすごく期待しているというアンケート結果なども出ており、そういうものを外部に対して公表することも含めて、一般の国民ないし患者もそうですが、それをもっと広い一般社会との連携といいますか、透明性とかも含めて確保していく活動もすでに開始しているということです。

○花井委員
 よくわかるのですが、私が聞きたかったのは、患者から言えば、例えば新しいデバイスがあって、こういう治験が始まるのだけれどもどうですかとご説明があったときに、もしそれを進めてくれている人が、例えば薬食審であればメーカーから50万円、500万円というのですか、そういうことがもしあって、例えば説明してくれている先生が年間300万円企業からもらっているということがあったら、患者としてはそこで正しい判断ができないわけです。そのクライテリアは決まっているということですか。

○国立循環器病研究センター研究開発基盤センター長
 それは決めています。

○花井委員
 参考までに、金額はわかりますか。

○先進医療治験推進部
 山本です。治験についてはポイント表があり、治験の内容について複雑性とか、治験の期間とか、そういうものに応じてポイントを付けて、それで価格が決まるというシステムになっていますので、何か特定の会社からたくさん頂くとか、そういうことはありません。
 また、入った研究費ですが、すべて病院の会計が管理しますので、あまり研究者が自由に使えるものではなくて、人がかなり限定されて使われています。

○永井部会長
 時間の関係がありますので、とりあえずいまの項目についてご記入いただいて、もしその間に何かご質問等がありましたらお願いします。よろしいですか。治験が随分伸びたようですが、これは何か要因があったのですか。

○先進医療治験推進部
 山本です。独法になるまで単年度契約で行っていましたが、独法になって4月から複数年度契約にしましたので、そういう意味で少し、1年の契約ではなくて、2年、3年という形での契約になっており、契約金額はその分伸びています。

○永井部会長
 よろしいですか。次に第2グループ、項目3についてです。研究・開発に関する事項、担当領域の特性を踏まえた戦略的かつ重点的な研究・開発の推進。これについて評価を行います。10分で法人から説明をお願いします。そのあと質疑15分、合計25分となっています。お願いします。

○国立循環器病研究センター理事(研究所長)
 研究所長の寒川です。早速、説明をいたします。私の説明する部分は、カラーの冊子の10頁です。評価シートについては、全部入れると16頁から33頁までになっています。我々のセンターは、先ほど説明がありましたように、できるだけ我々の研究所で開発されたものを病院あるいは治療につなげるということで、そういう面では循環器制御にかかわる非常に基礎的なメカニズム、それにかかわる分子の同定、機能の解明をやっています。一方、循環器病の本体の解明にかかわるところ、それについてはいろいろな疾患の動物を使っての研究、あるいはヒトでのデータからの研究という形で行っています。また、臨床で得られたデータを研究に還元するという意味でも、循環器病の実態把握という面も積極的に進めています。そういう中ではいろいろなコホートスタディとか、全国的なもの、あるいは地域密着型ということでも進めています。もう1つは、高度先駆的な標準的な予防、診断、治療法の開発の推進ということであります。さらに、非常に創薬につながる医薬品および医療機器の開発の推進ということでも進めています。
 そういうことで当研究所は、すべて循環器病にかかわる分子的なものとして、蛋白、ペプチド、そういったものから生理的な機能、あるいは病態的な機能の解明ということです。それと同時に、医療機器でも、人工臓器、人工心臓を代表するような研究、現在では非常に小型のものを開発するという形でも進めています。
 一方、診断に関しては、近年、画像診断というのが非常に重要になってきています。そういうものの新しい手法の開発、得られたデータの評価法の開発、そういったものを進めています。全体的な研究の概要として、そういった非常に広範なものになるわけでして、大学の場合ですと循環器内科、もちろん腎臓とか、高血圧とかというのもありますが、それの全体を包括して、また医療機器まで入るというふうに理解していただければいいと思います。臨床の部門と同時に基礎の部門も存在するとお考えいただければと思います。
 平成22年度の当センターにおける循環器疾患の解明と医療推進に大きく貢献している成果。大きく貢献する成果というものの、どの部分から大きく貢献することにというのは難しいところですが、10頁の左側の欄に示していますように、平成22年度の英文の論文数は全部で342編ということです。引用数は、これは前年度ですので、まだそう多くはありません。
 インパクトファクターが4.5以上のもの、ある程度高いものはいくらあるかを調べてみますと、35編あります。35編のインパクトファクターは256ポイントということで、平均しますと大体7.3ぐらいになるということで、まあまあではないかと、これも捉え方によりますが、かなりの実績を挙げられたのではないかと考えています。そのうちで特に5つの研究だけをこの頁に抜き出していますが、AMPKという酵素の心不全における役割という研究。シロリムスステントを使った場合の再狭窄に対する、もう一度それを使ったときの安全性・有効性ということでの評価をする研究も行っています。我々の所は伝統的に生理活性ペプチド、循環器疾患にかかわるペプチドの研究を積極的に進めています。そういう中で、これまでにグレリンというペプチド、我々の研究室で約10年前に発見したものですが、それについての循環器系での心不全とか、あるいは慢性閉塞性肺疾患、そういったものでの臨床研究はすでに実施して、ある評価はしているのですが、阪大との共同研究で胃全摘後のグレリンが体重減少をかなり抑制するということで、これは重症な心不全におけるカヘキシアの改善にもつながるものです。不整脈における予後不良の指標という研究も進めています。もう1つは、閉経前の女性では院外心停止の発生率と死亡率が男性よりかなり低いということで、エストロゲンの保護作用というのが臨床研究からも出ています。逆に言いますと、女性の場合、閉経後はこういった形でのリスクが非常に増えるということです。こういうことで、いくつかの典型的な研究、医療を示していますが、非常に広範にわたっての研究を行っています。
 こういった結果を治療に結びつけるのは、まだまだ非常に遠いものではあります。ただ、一部には非常に臨床に近いものもあり、臨床研究を進めています。ちなみに、グレリンについては、現在、企業でのフェーズ?も進められています。ただ、企業が進める場合は、特定の適用しかやりませんので、こういった多方面での作用を持つペプチドの場合は、臨床研究におけるエビデンスといいますか、そういったものも、ヒトに対しての有効性を出すために必要ではないかと考えています。その他の研究、10頁の左にありますようにいろいろな新しいペプチドの探索、あるいは胎児不整脈に対する薬物治療とか、コホート研究をはじめ非常に積極的に進めています。
 再生医療に関しては、現在、いろいろな所で行われており、特にES、iPSが進められていますが、我々の所はこういった研究のうち、iPSは現在のところ中心としてはやっておらず、本来持っている間葉系の細胞に関して、それをどう生かすかということで、安全性を前面に出して研究を行っています。
 そういうことで個別の説明を行いますと非常に長くなりますが、現在、ペプチドを中心としたトランスレーションも進めていますし、先ほど妙中副所長からも説明がありましたが、新しい医療機器の開発が進んでおり、私自身、当初予想した以上のかなりの実績が得られているのではないかということで、自己評価としては「S」を付けましたが、先ほど議論がありましたように、それをどう判断するかもあります。それから、こういった基礎研究は、実際の評価は何年かあとにならないとわからないわけでして、去年やったものを今年研究内容で評価するのはなかなか難しいところもあり、今後見守っていただければと思っています。

○永井部会長
 ご質問をお願いします。

○本田委員
 2点あり、評価の仕方という先ほどのお話と全く同じなのですが、インパクトファクター4.5以上が35編というのが、医療の推進に大きく貢献する成果について、年5件以上という数値目標を挙げていらっしゃることに対して、大変成果を挙げたと書いてあるのですが、それと比較するのもどうかということもあるのですが、大体こういうインパクトファクター4.5以上のものをそういうふうに取るのですか、それとも取り方は一般的に何かあるものなのかが1つです。

○国立循環器病研究センター理事(研究所長)
 先ほども言いましたように、それは適切な線であるかどうかは何とも言えませんが、それについては我々の所は一応1つの線域として4.5以上のものが何件あるかということでしました。さらに、それを上げていくというのもあります。ただ、一方で今後そういったものがどれだけ引用されるかということが大きな評価になると思います。ですから、これが2年後、3年後、重要な研究であればいろいろな人が引用すると考えられます。我々は、こういった中から非常に引用度の高いものが出てくることを祈っているわけですが。

○本田委員
 ある意味では、そういう数字を今後経年的に見ることに意味があるという理解でよろしいのですか。

○国立循環器病研究センター理事(研究所長)
 そう考えています。

○本田委員
 もう1点、患者、国民向けの情報の啓発手法ということでホームページを作られたというお話だったのですが、作ったということしか書いてないもので、例えば情報という意味では、患者、国民の方がどういうことを知りたいかとか、どういう視点でものを見ているからこれを提供をしなくてはいけないとかと、そういう手法の開発みたいなものが大事だと思うのですが、その辺がほとんど書いていなかったような気がします。例えば、患者団体と連携してやっているとか、何かPRポイントがあったら教えてください。

○国立循環器病研究センター理事(研究所長)
 我々の所は心臓移植を始めて10年以上経ちますので、そういった患者との交流、それも行っていますし、病院内でもボランティアの方、そういう人を介してできるだけ我々の専門的な目線だけではなしに、一般の方からも見られるような、そういったものをできるだけ反映する形でも行えるようにしています。
 ただ、これは研究というよりも医療のほうに当たると思うのですが、情報発信としてはいろいろな方法で、特に独法前にはかなり制約がありましたが、独法後はいろいろな手法が使えるということで、今後まだまだ一般の方にもアップデートな情報をお知らせすることはできると思っています。同時に、この資料にも書いてありますように、専門医に関してもそういったトレーニング、あるいは情報を発信する方向で行っています。

○本田委員
 こういうホームページがあるというのは、きちんと広報されているのですか。

○国立循環器病研究センター理事(研究所長)
 昨年度からそういった広報誌、それも非常に専門家向け、あるいは一般の方、周辺の開業医というふうにいくつかに分けて、そういった広報誌を作って、年に4回程度出している形です。そういう面では広報係という部署もつくることによって推進できていると思っています。

○猿田部会長代理
 先生のところの整備計画、新しいタイプのペプチド研究、これは素晴らしいのですが、いまいろいろな大学を見たときに、新しい循環器系の新しいタイプの機器、そういったところをやっている大学は少ないですね。それで、実際にやっている所は理工系でやっていたり、臨床ではなかなかできていないということで、先生のところは、そういう意味では非常にいいと思うのですが、実際にいまはどうですか。

○国立循環器病研究センター理事(研究所長)
 我々の研究所では、人工臓器部が中心になって、人工肺あるいは人工心臓、または埋込み型で非常に小型のものも開発しています。ただ、先ほど臨床研究と治験が出てきましたが、実際の患者が使えるようになるためには、どうしても企業が国内で治験をする、そういった形に持っていけるかどうかにかかっていると思うのです。ですから、最近承認されました、最近というか数年になりますが、新しい人工心臓の場合も、テルモなどは日本での治験でなしに海外で先に治験をしたというように、そういう所もあります。これはどうしても企業の場合にリスクがあると避けるということですが、これは創薬にしても同じだと私は思っているのです。
 日本の場合にそういったものの医療応用ができる創薬のシーズと同時に、もっとかなり進んでいるものはあると思うのです。医療機器にしてもそうです。ですから、今後は最終的には企業がしてくれないと、製品あるいは薬にならないわけで、そういった面での民間との十分な連携、理解してもらう、そういうことです。最近は製薬会社のオープンイノベーションというのでアカデミックな知恵を借りたいという形もありますので、そういう面ではセンターが独法化して、さらにそれは加速できるのではないかと思っています。

○猿田部会長代理
 日本は医薬品に比べてこの方面は非常に遅れているのです。そういったことで、いままでいくつかやった所もだんだん下火になってしまったものですから、循環器病研究センターみたいな所が本当にそういう形で伸びるようにやってもらうとよろしいですね。

○国立循環器病研究センター理事(研究所長)
 ですから、企業がやってもいいというふうな、はっきりした安全性と高性能を出していって、やってもらうことが重要だと思っています。

○国立循環器病研究センター研究開発基盤センター長
 従来のいろいろな医工学研究施設がやっていた所と我々と大きく違うところがあると思っています。1つは、臨床的なニーズ、アンメットニーズの、まだ見えてないけれども、これはおそらく非常に重要だと思うところに焦点を絞って、それをどう解決していくかという手法でやっています。多くの所はシーズがあって、それからスタートして、これだったらこのようなものはできるのではないかと、そこが1つ大きく違うところです。
 もう1つは、先ほど寒川先生が言われましたが、最終的に患者に届いてこそという意味で、先ほどお話したようなスーパー特区の機構みたいな、ああいうものを使って産学連携、医工連携、それから外とも本当にどうやっていくかが重要だと、その2つの点がほかのいままでのところとは違うと思っています。

○夏目委員
 時間がないので恐縮ですが、数値目標自体が5件以上が大きく貢献するという若干抽象的な目標になっているのです。だから、そこの大きくを、先ほど本田委員がご質問されたことに絡んでしまうのですが、大きくというのがどういうことで大きくかが、インパクトファクターという要素でご説明されたということで、それなりに理解はしました。
 もう1つ、疾病に注目した研究の実施ということで、概要資料の10頁に循環器病の本態解明とか、実態把握とか、この研究が進めば一般国民の方にも相当のメリットが出てくるのではないかということを期待したいと思うのですが、こういうものは国立循環器病研究センターでなければなかなかできない研究なのか、ほかでも結構やっている研究なのか、その辺の研究の、質というのは少し言い過ぎかもしれませんが、その辺はどう、国立循環器病研究センターならでは、うちの所以外ではなかなかこういうところの研究はやってないということなのか、その辺はどうですか。

○国立循環器病研究センター理事(研究所長)
 それぞれ大学でもそういう研究もやっている部門もあります。ただ、コホート的な一般住民を対象としたもの、あるいは疾患に注目したもの、そういったものにおいても資料にも書いてありますが、我々の所はそれをまとめる中心的な役割もやっており、予防医学部というのが担当しています。
 独法にあり、昨年度から基盤センターの中にバイオバンクといいますか、そういったものをつくり、これまで競争的研究費によりそういった疫学研究をやっていたのが、センターに来院する患者の臨床データ、検体、それをセンターの事業として集積していって、それからエビデンスを出していくという方向に大きく変わっていますので、今後、そういった登録数、それが増えてきますと、大きな成果が期待できると思っています。
 シートにも書いてありますが、妊産婦の死亡症例、当センターだけが全国で唯一行っており、それからもエビデンスは出すことはできています。これは非常にユニークな点だと思っています。

○永井部会長
 論文については、お手元に論文数と引用数等の調査ということで、英文の論文数は2009年の295が2010年は330ほどある。数だけですが随分伸びているように思います。その中で特にハイインパクトジャーナル、インパクトファクター10点以上が2010年は9と3と書いてあるのですが、資料のほうで数えますと15点以上が4ありますが、これは数え方の何か違いがあるのですか、またあとで見直しておいていただけますか、4あるように思いますが。

○国立循環器病研究センター理事(研究所長)
 はい。

○永井部会長
 論文が伸びたというのは、例えばスタッフの意識が高まったとか、そういうこととは関係ありませんか。

○国立循環器病研究センター理事(研究所長)
 永井先生、これは昨年出ている論文は、実際にその前。

○永井部会長
 その前ですよね。

○国立循環器病研究センター理事(研究所長)
 ですから、私自身、独法になって数年後にどれだけ効果が出てくるかが今後注目していただきたい点だと思います。それで、センターの場合、循環器病研究開発費が独法になってから交付金で手当てされますので、そういうことからいきますと、プロジェクトとしても34プロジェクトです。総長がプロジェクトを選ぶ。それがスタートしていますので、そういったものが数年後に成果になって現れるのではないかと思います。
 先ほどの永井先生のご指摘ですが、これは年度集計をするか歴年の集計をするかで違ってきまして、我々の所は年度でいくと非常に難しい場合は歴年でやっている場合もありますし、そこの点ではないかと思います。

○永井部会長
 わかりました。10点以上というのは、なかなか出せる雑誌ではないと思いますが、専門領域で先生方ですとStrokeとか、Circulation, Circulation Researchなどにコンスタントに出ているのは、非常に重要なことだと思います。少なくともこれらの雑誌についてはある程度の数を維持することが大事ではないかと思います。実際に拝見して、きちんと論文が出ているということがよくわかりました。
 次にまいりたいと思います。項目番号の4から9までです。第3グループ、医療の提供に関する事項、人材育成に関する事項、医療の均てん化と情報の収集・発信、国への政策提言、これらについての評価を行いたいと思います。まず、ご説明をお願いします。

○国立循環器病研究センター病院長
 この6つの項目に関して、病院長の内藤から報告いたします。
 まず、循環器病研究センターの病院が、どのような立場で診療しているかですが、循環器病の究明と制圧というセンターの理念を達成するために、循環器病研究センターの病院のスタンスとしては高度医療の提供、その普遍化あるいは標準化に向けてということはもちろんですが、それだけではなくてその1歩上の医療、次の世代の医療を患者とともに作るというスタンスで取り組んでいます。ターゲットとなる病気は、現在は動脈硬化症から心筋梗塞、脳卒中が中心ですが、今後は特に心臓病では心不全と不整脈が大きなターゲットになるだろうと考えています。従いまして、重症心不全の診療を今後どうしていくかということは我々の施設が率先して考えるべき課題ですが、その中でも現在の中核的な治療法の心臓移植、それに至るまでの補助人工心臓LVASの装着に関する医療は、我々の施設のミッションと考えています。これらのスタンス、ターゲット、ミッションの基に、人材と体制、システムづくりを併せて課題の4から9に取り組んでまいりましたところ、思いのほか良い成果が出たと考えましたので、いずれの評価も一応「S」としました。あとは個別に説明します。
 評価項目4、高度先駆的な医療、標準化に資する医療の提供です。高度先駆的な医療については、先進医療の6種類を我々の施設で認定されています。そのうち、いちばん最近認可されたものは、胎児の不整脈に対する胎盤を経由した不整脈薬を投与するというもので、ほかにも胎児のシャントの先進医療も入っていますが、そのような胎児の治療というのは我々の施設が以前からずっと得意にしてきたところですので、これはまさに我々の施設のためにあるような先進医療と思っています。この不整脈の抗不整脈薬投与に関しては、平成22年度に7件の実施をしています。
 資料集の4頁は、急性期の心原性脳梗塞患者に対する自己の骨髄単核球静脈内投与が出ていると思います。これも、我々の施設の特徴を非常に反映した高度医療だと思いますが、自分の単核球を静脈内投与することによって、脳梗塞に陥った領域に血管を再生させようというもので、12例の予定のうち8例を経過した段階で、なかなかよさそうだという報告を聞いています。医療の標準化に関しては、移植LVASの件は大きいことですが、これはあとで述べます。そのほか頑張ったことは、我々の施設はカテーテル治療を盛んに行っています。それについて、ハイブリッドオペ室、つまりカテーテルをする検査装置と手術台を組み合わせたような部屋を作りまして、カテーテル治療の一層の推進を図った。これによって思いのほか症例が伸びて、カテーテル治療の推進が進んだと考えています。
 t-PA、組織型プラスミノーゲン・アクティベータという脳梗塞に対する血栓溶解療法も、我々の施設は盛んに行ってきて、既に保険の通っているアルテプラーゼのほかに、デスモテプラーゼという梗塞発症から長い時間が経って使える薬についても、治験に携わっています。CCUというのは一般的にはCoronary care unitですが、それをCardiovascular care unitという名前に変えまして、病院内のCCUの施設の整備等を行って、心臓血管系の救急患者を広く受け入れるということで、救急体制の変換を行っています。以上が評価項目4についてです。
 評価項目5、患者の視点に立った良質かつ安心できる医療の提供です。患者の満足度調査、患者参加型の医療、医療安全、チーム医療、医療連携等について簡単に説明します。満足度調査は、総合評価5点満点の4.4点あるいは4.2点という数字で、前年度あるいはNCの平均より少し良かった。患者参加型の医療ではICの促進、インフォームド・コンセントの促進をやっているのと、情報提供として患者図書室に当たる「健康情報ひろば」を設けています。医療安全については、コミュニケーションを重視した取組を行ってまいりまして、医療メディエーター協会でメディエーターとして認定されるレベル2までのものを33名が認定されています。
 チーム医療では、多職種のチーム回診が451回ありました。このうち、重症回診が259回ありました。この重症回診というのは、平成18年2月に大野病院事件があったあとに、死亡した患者を警察に届けるかどうかということで院内で非常に議論があって、それを受けて当時の副院長が医師、看護師、事務職等7、8名で重症者を回診するシステムを作りました。これは当センター独自のもので、当初は死亡者の警察届出の議論が中心でしたが、最近は医療の、特に倫理的な妥当性を議論する場になっていて、このような場が臨床の現場であるのは非常に貴重なことと考えています。医療連携については連携医登録の推進、メディカルソーシャルワーカーの増員、連携パスの推進等がありまして、病院機能評価のバージョン6の認定に昨年6月に合格しています。
 評価項目6は政策医療の一環として、センターで実施すべき医療の提供です。これについて、移植と補助人工心臓のことをお話しますと、臓器移植法の改正後、平成22年度は過去最多の9例の心臓移植が行われました。この中には、初の家族の承諾心移植を含んでいます。あと、小児の移植が可能になりましたので、まず小児の移植を実施する施設として施設の認定、無菌室等の整備、阪大との連携を図っています。一方、臓器を提供する側の施設でもありますので、特に虐待等のことも含めたマニュアルの整備、それと実際のシミュレーションを行いました。
 補助人工心臓は、通算150件超の補助人工心臓(LVAS)の植込みをしていますが、特に最近の話題は平成23年2月にエバハート、デュラハート、植込み型の補助人工心臓が保険適用となりました。それに併せて施設承認、医師の認定を受けています。平成23年6月までに6例を経過しています。従来、体外型のLVASの場合は一旦植え込みますと病院から出られないということで非常に不自由でしたが、植込み型の補助人工心臓が今後盛んになると、重症心不全の患者の治療が根本的に変わってくることが予想されます。そのような移植あるいは補助人工心臓の装着を必要とするような患者の相談が、全国からまいります。それに往診をしていまして、去年は全国各地で24件往診をしています。
 評価項目7は、人材育成です。ここではレジデントとナース、センター外の人材育成についてお話します。レジデントは従来と変えて、人員、体制の整備を行いました。つまり、教育研修部という部を作り、若手の非常に活気のある部長を抜擢しました。それで、各部にプログラムディレクターを置いて、そのプログラムを見直すことをしています。プログラムは、レジデント・専門修練医それぞれ14ずつ28ありまして、この数自体は平成21年度、平成22年度で増えていませんが、平成22年度になって内容の見直しをして、平成23年度からは新たに専門修練医のプログラムを臨床遺伝、成人先天性、小児心臓外科の3つを増やしました。それと、昨年のレジデントの募集から専門修練医に関しては、別のコースの重複の受講を許すことを決めましたので、実際にはプログラムの数自体は増えていませんが、プログラムにアプライできるという意味では既に1.5倍ぐらいに増えていると思っていただければと思います。あと、レジデントとの相互の意見交換と、レジデントマインドあるいはスピリットの高揚を図る。これは、昨年も今年もホテルを取りまして開催しました。
 レジデント等の評価は、平成22年度はレジデントアワードを設けて、レジデントの実績評価をした。逆に、本年度はティーチングアワードを設けて、総合評価という形に持っていっています。あとは若手の研究開発費が開発費の中にありますので、それに対するアプライもレジデントには奨励しています。
 ナースに関しては、CVEN、Cardiovascular Expert Nurseというシステムが、センター独自のものとしてかなり有名です。平成14年から始まったものですが、かなり難しいですが現在までに125名ほど、この資格を取っています。昨年は6名の資格認定をしました。センター外については、56頁に医療クラスター棟、フォーラム、セミナー、公開講座、講習会等が書いてありますのでご覧ください。
 評価項目8、医療の均てん化と情報の収集・発信に関する事項。ここでは、NCVCネットのことと広報のことを報告します。NCVCネットは1996年に運用を開始して、全国11施設で情報の交換をしていた循ネットというシステムがありました。これを平成22年8月に発展的解消したものがNCVCネットです。研究所のイントラネットと合体して、センター全体としてのベーシックなイントラネットに変えたということですが、具体的に何が変わったかというと、11施設との連携は昔はイーサネットという回線型の連結だったのですが、これをインターネット環境での連結に変えた。というのは、それによって、より多くの施設の参入ができるだろうということを見込んでのことです。ただ、従来のカンファレンス等の機能がそれでなくなるようになっては元も子もありませんので、それについては機能を保つようにしていますが、残念ながら回線がありませんので、リアルタイムの動画等を配信することは少しできなくなっています。
 広報に関しては、ホームページによる情報提供の推進を行ってきていますが、もう1つは研究所長からもありました「こくじゅん通信」という広報誌を昨年の11月から発行しています。これは3カ月に1回の発行で、昨年の11月のいちばん最初が不整脈、今年の2月が移植、その次が救急医療、その次が生活習慣病と現在は4号までいっています。あと、吹田のコホートに基づく情報発信も、少しずつできていくようになっています。
 評価項目9、国への政策提言、医療政策の推進等に関する事項です。まず、専門的提言は63頁に出ています。植込み型LVASの保険償還に関する署名を行って、厚労大臣に提出しました。それから学会ガイドライン等の参画、提言の発信、医療イノベーション推進室に次長として参画といったことがあります。東日本大震災対策は、震災の翌週の3月14日に対策本部を設置して、初期対応としては後方支援病院としての体制を整える、派遣チームを作る、あるいは肺血栓塞栓症、たこつぼ心筋症についてのホームページ上の情報提供と、こちらの医師が電話を持って直接対応するホットラインを作りました。その後の対応は本年度になってからですが、簡単に紹介します。4月に被災地の支援の何を求められているかという様相がだいぶ変わっているだろうということで、調査チームを派遣しました。これは宮城県と山形県です。その情報等を基にして、被災地での循環器病の抑え込みという観点から、提言を5月に1回、6月に1回出しています。現在、岩手県に2回目の調査チームを出していますが、循環器病センターの非常においしいという評判の減塩食がありますので、これをなんとか被災地に持っていくことができないかというプロジェクトも進めています。国際貢献に関しては、貢献した人の数は96人となっています。
 ジョイントシンポジウム、研究協力等を延生大学、カロリンスカ研究所等と行っています。大きな受賞に関して3つあります。1つ目は、脳卒中に関する国際的な大きな賞のカロリンスカ・ストローク・アワードを当方の山口名誉総長が受けました。2つ目は美原賞。これは脳血管障害の研究助成で、本邦のものですが対象は国際的です。かなり高額の賞の出るもので、峰松副院長が受賞しています。3つ目はAHAの蘇生科学シンポジウムで、当方の野々木心臓血管内科部長が表彰を受けています。以上です。

○永井部会長
 ありがとうございます。ご質問をお願いします。

○猿田部会長代理
 まず研究のところで、先ほど急性脳梗塞に対する細胞療法が出ていました。これは、北海道の札幌の本望先生方との合同のものとは研究内容が違うのですか。細胞のやり方、そのほかは同じようですが、違いますか。

○国立循環器病研究センター理事(研究所長)
 私から説明します。北海道の先生は、骨髄の間葉系の細胞を培養して増やしてやっています。ですから、かなり細胞がアグリゲートしやすいということがありまして、場合によれば塞栓とかが起こりやすい状況ですが、我々のところはプライマリーで、培養ではなく骨髄細胞の浮遊系ということで、そこが大きく違っています。

○猿田部会長代理
 効果面ではどうですか。副作用の面とか。というのは、本望さんの所もだいぶ症例を重ねて随分評価できるものとして、いま実際にどういうふうに一般の治療室に持っていこうかということで議論されているようです。

○国立循環器病研究センター理事(研究所長)
 それは、急性期の場合の効果の判定は難しいところがありますので、全例が終わって客観的にどう評価できるかになるのではないかと思います。我々の所は5、6年前に骨髄の間葉系の細胞を心不全の患者にカテーテルで投与するというのを既にやっています。

○猿田部会長代理
 要するに、細胞自体がどの部分でどう効果を出しているかというのは、まだ本当のところはっきり評価できないと思います。

○国立循環器病研究センター理事(研究所長)
 最近では、移植した細胞がそのまま変わることは、まずないと言われています。

○猿田部会長代理
 ありがとうございます。今度は病院のほうの評価で、いちばん重要なところは患者の待ち時間そのほかといった点のものと、インシデント、アクシデントの頻度はどのくらいですか。インシデント、アクシデントの数は、実際にいまの体制になって減ったのか、増えたのか。

○国立循環器病研究センター病院長
 インシデントレポート全体は、月で200何十か出てまいります。そのうちのアクシデントというか、あるレベル以上のものは年に20いくつですから2とか3です。そのバランスの状況は、ここしばらく変わっていないと思います。

○猿田部会長代理
 これだけ強力な体制でやっていったら、そういったものがもう少し減ってきてもいいと思いますが、そのあたりをどう評価しますか。

○国立循環器病研究センター病院長
 一般的には、最初はインシデントレポートの数自体が伸びて、それがある程度定常状態になると、今度は重大なものとそうでないものとのバランスが変わってくると聞いていますので、まだ変わっていく移行期なのかなと思っています。

○猿田部会長代理
 待ち時間に対しては、あまり患者からの苦情が出ていないか、あるいはそれに対する対策はどうなっていますか。

○国立循環器病研究センター病院長
 待ち時間対策として、予約制実施しています。

○猿田部会長代理
 各病院、国立病院もそうですが、皆さんの所はそれがいちばん不平が多いのです。ですから、循環器病センター病院の場合はどうかなと思って伺いました。

○国立循環器病研究センター病院長
 あまり待ち時間が長いというクレームは出てこないです。時々ドクターによっては、そういう方もいますが、いまのところは比較的、うまくいっているかと思っています。

○猿田部会長代理
 当然、患者からのクレームを受け取るような箱とか、そういうものを用意してきちんとやっていらっしゃるのですよね。

○国立循環器病研究センター病院長
 患者からのクレームに関しては、一応三方向からやってきます。1つ目は投書、2つ目は窓口に直接行く、3つ目はネットを介してですが、それらが一応ある所に集まって、振り分けられて対応する体制はできています。

○永井部会長
 待ち時間に関して、いま特定機能病院の外来を減らせという意見があります。そもそも、すごく長く待たせるということを指摘されています。待ち時間の改善は特定機能病院に限りませんが、取り組んでいただきたいと思います。私の個人的経験ですと、大学病院ではしばしば30分枠で何人も入れていく。そうすると、患者は同じ時間帯に何人待っているかわかりませんから、全員が早く来てしまうわけです。私は、東大病院で1人1枠にしたところ、待ち時間は明らかに少なくなりました。一度、そういうこともご検討いただけますか。

○国立循環器病研究センター病院長
 我々の所では、60分で6人という入れ方です。

○永井部会長
 その6人目の人が、どこにいるかがわからないわけです。そうすると来た者順になるわけですから、全員が早く来てしまうということになると思います。例えば9時から10時の間に6人いると、全員がもし8時50分に来てしまうと、最後の人はひょっとすると1時間待つことになりかねません。60分に6枠を作って、1人一枠ずつ入れておけば、そういう行き違いが起こらないのではないかということです。

○国立循環器病研究センター病院長
 例えば間違えて来院されても、大体1時間以内ぐらいで帰院するということで。

○永井部会長
 1時間待たされるというのは苦痛だと思います。それをいかに短くするか。もし時間のかかりそうな人だったら二枠取るなど、いろいろな工夫で待ち時間はもっと短くできるはずです。それは検討課題ということで。

○国立循環器病研究センター病院長
 それと運悪く待たされる方に対しては、例えば待ち時間に生活習慣病の教室等を聞いていただくこともやっています。

○永井部会長
 人材育成ですが、若い人は集まってきていますか。その辺の求心力、若い人にとっての魅力というのはどうでしょうか。

○国立循環器病研究センター病院長
 レジデント・専門修練医という意味合いでしょうか。一昨年、特に心臓内科のレジデントが少なくて危機感を持ちまして、それに関して去年だいぶ、いろいろな所への案内広報等を頑張ったつもりです。それで、去年から盛り返していると思っています。

○永井部会長
 それから、いろいろな医療の質の評価、臨床成績に何か数字を出されたほうが、改善していることがわかりやすいと思います。例えばAMIの死亡率でもよいと思うし、いろいろな指標を編み出して検討することは大事と思いますが、何かされていますか。

○国立循環器病研究センター病院長
 医療の質に関しては、もちろん非常に重要な問題です。

○永井部会長
 あとは、いろいろな臨床成績ですね。

○国立循環器病研究センター病院長
 成績に関しては、ホームページに必ず載せるようにということで指導をしています。質の評価に関しては、もちろんインディケーターを作るところから始めなければいけない部分もありますが、とりあえず体制として、この6月から医療の質の管理室という部屋を設けました。そこが中心になって、やっていくことになろうと思います。

○永井部会長
 患者満足度は非常に高いですね。同時に、どういうところを改善してほしいかという点を聞いておかれると、目標も立てやすいと思いますので、その辺のご検討もお願いします。

○花井委員
 患者の視点ということで患者の満足度が非常に高いことはいいことですが、医療の質といったときに患者満足度で評価される質と、本当の医療の質は違うのだという議論もあります。ソーシャルワーカー4名全員を定員として入れたということですよね。それは非常にいいのではないかと思いますが、移植コーディネーターの実数とPT、理学療法士の実数が何人ぐらいいるかを聞きたいのと、先ほどネットワークで、結構いくつかの施設が加わって循ネットから移行したということですが、ユーザー数はわかりますか。入っていても、実は使われていない可能性が。使われているというのはユーザー数だと思います。施設数は書いてありますが、ユーザー数がわかれば教えていただきたいと思います。2点です。いわゆる急性期リハビリというのは非常に重要視されていて、理学療法士が忙しいし、人がいないということがよく聞かれますので、これが増えると患者にとっては利益が高いと言われていながらなかなか難しい点ですので、是非。

○国立循環器病研究センター病院長
 移植コーディネーターは2人です。これは臓器移植のコーディネーターですが、それとは別に組織移植のコーディネーターがいます。それと、生理機能等のセラピストに関しては、OTが3名、PTが7名、STが2名、視能訓練士が1名になっています。特に最近、リハビリテーションに関して、我々の施設は2つ大きな柱があります。1つは脳のリハビリ、もう1つは心臓リハビリです。その2つが、いままで脳の内科あるいは心臓の内科に別々に属するような形を取っていたのですが、それを中央に集める体制にして、そこにセラピストのメンバーも集まって作り直したという経緯があります。それによって、循環器病のリハビリテーションが総括的にできるようにと考えています。

○花井委員
 PT、OT、STとナースの連携はどうですか。

○国立循環器病研究センター病院長
 悪くないと思っています。協調してやっています。
 それから、先ほど聞かれたNCVCネットに新しい施設がどれぐらい入ってきて、どうなっているかについては手元に資料がなく、わかりません。

○花井委員
 ユーザー数もわからないですね。ユーザーというか施設というか、クライアント登録をしているユーザー数はわかりませんか。

○国立循環器病研究センター病院長
 ちょっと把握していません。

○夏目委員
 評価シート59頁の評価項目7についてです。またまた数値目標に対してどうかということですが、下から2つ目にセンター外の医療従事者に対する各種研修を年4回以上企画・実施しなさいというのが目標で、その実績が「年4回以上、企画・実施を行った」と書いてあります。4回以上実施しなさいといって、実績が4回以上実施を行ったというのは、具体的には何回なのかはどうでしょうか。少なくとも、4回はやっているということだろうとは思いますが。

○国立循環器病研究センター病院長
 こちらの書類の12頁の左の下にあります。

○夏目委員
 これによると4回ですよね。

○国立循環器病研究センター病院長
 そこに18回と書いてあります。その内訳として、模擬手術室・ICU等を備え外部を含む医療従事者の研修が可能な医療クラスター棟、各部門による公開講座等、インターンシップ、医療政策として実施する研修ということを挙げていて、18という数になっています。

○夏目委員
 わかりました。

○本田委員
 質問というよりは先ほどもあったのですが、例えば循ネットからNCVCネットに移行すること、均てん化という視点で、独法化の大きな柱の1つというか役割の大きな1つだと思いますが、こういうところでどれぐらいと連携して進めているかとか、広報誌「こくじゅん通信」を発行しているとおっしゃいますが、発行するだけだったら誰でもできるという言い方は失礼かもしれませんが、そういうものがどのようにきちんと患者や必要な人たちの手に入っているのかとかをきちんと書いてほしかったと思ったのですが、何かあったら教えてください。

○国立循環器病研究センター病院長
 追加すると、広報誌に関してはもちろんセンター内には置いてはありますが、開業の先生方、医師会等への配布等も併せて行っています。それから、広報誌以外に医療連携に関するパンフレットの作成もありまして、これも開業の先生方、医師会等へ広く配布しているものがあります。

○永井部会長
 よろしいですか。時間の都合もありますので、次に進みます。第4グループ項目10から14、効率的な業務運営に関する事項、法令遵守等です。ご説明をお願いします。

○国立循環器病研究センター企画戦略室長
 カラーの資料の13頁で、まず概括的な説明をします。経営改善に向けた取組です。経常収支率が104.6%、経常利益が10億7,000万円余です。総収支率が106.6%で、当期純利益が15億6,000万円余になります。
 右側から説明しますが、収入増加対策ということで、特に平均在院日数の短縮に取り組んできました。平均在院日数を短縮化し、新入院患者数を増やすと同時に手術件数を増やし、1人1日あたりの診療収入の引き上げを狙ったわけです。改善結果に書いてありますが、平均在院日数が20.4日から19.1日と、1.3日減少しています。私どもの病院の場合は、移植の待機患者がいたり先天性の心臓疾患の患者がいたりということで、どうしても在院日数は長くなりがちです。かつ、センターのミッションとして超急性期、超重症患者、脳卒中や心筋梗塞の患者の積極的な受入れも方針として掲げてやっていますので、その中で1年で1.3日の減少に到達したということになります。新入院患者数が9,141名が9,493名と、352名の増です。救急車の搬送も、298名増えています。先ほど申し上げました1人1日あたりの点数の増は、719.8点。約10%弱増えているということです。
 左側の経費の削減に関する努力です。いちばん大きいのは給与の問題で、これは何を比べるのかが難しいのですが、計画と比べて1.47%の減で、正確に言うと39.89%の人件費に抑え込んでいます。それから材料費の削減。これは研究所と病院全体の数字なので、病院だけで見ると40.0%となりますが、私どもの計算では5%ぐらいの削減効果を実現したと考えています。後発薬品の利用促進、医薬品等の共同購入によるコストの削減ということで実現をしてきました。一般管理費の削減は、共通セグメントの中の一般管理費になりますが、これも17.0%の減です。これは委託関係の洗い直しによるものです。建物のコストの削減も実現しています。
 評価シートの68頁からあとは、全体で運営問題が5項目あります。そのうち、自己評価では「S」を3項目、「A」を2項目と考えています。5項目の1つ目は、68頁でいうと効率的な業務運営体制ですが、事業計画の中で申し上げますと副院長の複数制の導入、事務部門の改革のあたりは冒頭、総長からの説明の中にもありましたが、加えてその他の改革ということで、外部の有識者から成るアドバイザリーボードの設置や診療部門長の設置といったことを実現していて、私どもはここは自己評価として「S」を付けています。
 大きな2つ目は、評価シートの72頁の効率化による収支改善です。中期計画では、5年間を累計した経常収支が100%以上ですし、平成22年度の計画では経常収支率が99.05%ですが、先ほど申し上げたように経常収支率で104.6%を実現しているということです。給与制度の適正化は、人事院勧告を受け入れたということで、これは義務ではありませんで、私どもの自主的な判断として人事院勧告に準ずるということで、さまざまな削減を行っています。それから材料費の削減、一般管理費の削減、建築コストの適正化で104.6%の収支率を実現したということです。
 3つ目の評価項目は82頁です。法令遵守、コンプライアンスです。内部監査の実施、監事の監査、会計監査人の監査ということで三重構造の監査を実現しています。特に私どもは、理事会は当然ですが、月一度の執行役員会にも監事が常時出席しています。契約関係にも力を入れていて、契約審査委員会とは別に契約監視委員会も、3月に監事以外は全員外部の有識者で設置しています。契約審査委員会にも、監事はオブザーバーで参加しています。こういったことで、コンプライアンスの実現にも力を入れているということで、自己評価では「A」です。
 4つ目は88頁です。予算、収支計画及び資金計画、その他です。自己収入の増加に関する事項は、受託研究、共同研究、寄付受入の取扱規程を整備して、国時代は受入れができなかった共同研究や寄付金について、それぞれ53件、21件、合わせて約8,500万円の受入れを実現したということです。その他、最後の89頁ですが、剰余金の使途について言及しておきたいと思います。剰余金は積立金として計上しています。ここは、私どもとしては自己評価は「A」です。
 最後に92頁、その他主務省令で定める業務運営に関する事項です。大きな1つは人事システムの最適化です。ここに書いてあるように、業績評価制度を昨年度、役職職員については平成22年度の冬期のボーナスから、その他の職員も10月から実施。これは平成23年の夏のボーナスから手当に反映されることになりますが、制度としては10月から実施をしています。年俸制も導入したということです。
 次の頁は人事に関する方針ということで、医師確保対策と看護師確保対策に力を入れています。とりわけ看護師確保対策については、院内の保育所の整備や宿舎のリフォーム、これは個室化しています。それから手当の新設等ということで、平成22年4月1日に比べて平成23年4月1日というタイミングで、大幅な増員を実現しています。そういったことで、最後の項目になりますが、ここは「S」評価を付けています。以上です。

○永井部会長
 診療報酬額の全体額はどこに書いてありますか。

○国立循環器病研究センター企画戦略室長
 全体額は、カラーの概要資料のいちばん最後の頁に、損益計算書の概要を載せています。損益計算書の右側に医業収益ということで、182億円です。

○永井部会長
 ありがとうございました。ご質問はいかがですか。

○猿田部会長代理
 いまは、看護師の数はもう十分ということですか。

○国立循環器病研究センター企画戦略室長
 まだ、もう少し増やしたいとは思っています。

○永井部会長
 材料費がすごく減ったのが非常に目立ちますが、どういう工夫をされたのかを少しお話いただけますか。

○国立循環器病研究センター企画戦略室長
 平均在院日数を短縮化し、回転を良くして一人1日当たりの点数を大幅に伸ばすという効率的な病棟運営をする中で、こういう数字が。

○永井部会長
 でも、回転を良くすると材料比率がかえって上がってしまう場合もあると思いますが、材料費の購入価格自体をかなり抑えられたのでしょうか。

○国立循環器病研究センター企画戦略室長
 それはこちらにありますように、共同購入とか、そういったもので抑えています。

○永井部会長
 循環器で外科を入れて40%ぐらいですか、かなりいい数字だと思いますが、大学病院ではとてもそこまで行っていないですね。

○夏目委員
 評価シートの70、71頁の効率的な業務運営体制についての件で、4部制にして業務の効率化を図ったと書かれていますが、4部制にするといっても総務と人事を分けるとか、財務と分けるというのは一般的な会社どこもみんなそのような状況ですが、病院では大変に業務の効率化が進むような体制変革になるのでしょうか。何か一般的なことをやっているなという印象しか持たないのです。
 それから、各部門の再編を行っているかということで、行っていますと。一層の効率化を目指して改編したとその下にありますが、実際にどの程度効率化が実現したのか、何人ぐらい削減されたのかといった効果があるのか。さらに、その下の業績手当について月数を0.2カ月下げたということですが、これは人件費を削減するという目的で下げたのか、それとも業績があまり良くないからということで、業績手当ですから業績を勘案して下げたのか、とりあえずその辺を教えてください。

○国立循環器病研究センター企画戦略室長
 具体的な数字でどれぐらいの経費削減になっているかはなかなか難しいわけですが、事務部門の人件費の額そのものは数字がありますので申し上げますと、事務と技能職と合わせて平成21年度比で2.4%の削減となります。
 それから、業績手当ですね。

○夏目委員
 いいです、削減したということですから。
 別の質問に変えます。申し訳ないです。時間がないので73頁の一般管理費が数値目標15%以上、5年間でということですが、1年目で17%まで来ていますね。そうすると、これからは増やすことになるのか、これからどうするのか。そもそも計画が甘かったのか、今後どういうことにしていくのかは、いかがですか。

○国立循環器病研究センター企画戦略室長
 私ども努力をした結果、こういうことになったので、これをまだあと4年あるわけですから、少しでもさらに上乗せする形で努力をしていきたいと考えています。

○三好委員
 もう1点です。カラーの13頁のいちばん下の、受託研究、平成22年度実績、共同研究53件、寄付金21件とありますが、前年と比べてどうかということです。その変化です。

○国立循環器病研究センター企画戦略室長
 国時代はこういった形でのお金を受け取ることができませんでしたので、そういった意味で申し上げると0との比較になります。これ以外にも厚生労働省からの科学研究費や文部省からの研究費、制度的には研究者が受け取る形になりますが、そういったものも、これとは別に16億円ぐらいあります。

○永井部会長
 ほかにいかがですか。

○和田委員
 第1に、240億円の収益に対して、最終的には当期純利益15億8,800万円という利益が出ていますが、これは法人としてはどう評価を。

○国立循環器病研究センター企画戦略室長
 いちばん最後の頁をご覧いただければと思いますが、経常収益244億円の下に当期の臨時利益が7億2,000万円ありまして、その結果、当期の純利益が15億円ということです。この臨時利益のうちの大部分が財務諸表の中にもコメントとして付していますが、承継資産の算定誤りによる修正益ということですので、私どもの実力というよりも経理的な整理の中で出てきたもので、当期純利益15億円といいましても、その分相当圧縮されることになろうかと思います。ですから、それほど大きな金額だとは認識していません。

○和田委員
 経常利益のほうでいうと、10億7,400万円ということですね。

○国立循環器病研究センター企画戦略室長
 そのとおりです。

○和田委員
 これは法人としては、経営努力によるもの。

○国立循環器病研究センター企画戦略室長
 そのように認識をしています。セグメントで見ていただきますと、診療部門の収支差が大きいわけで、そこは先ほど申し上げた病院の経営効率に努力をした結果だと考えています。

○永井部会長
 超過勤務に対しては、どういう対応を取っておられますか。若い人が過重労働にならないようにしないといけないと思いますが。

○国立循環器病研究センター企画戦略室長
 私ども、月々具体的に個人個人で、どれだけの超過勤務をしているかは全部取っていまして、あまりにも多い人に対してはそれぞれの医長や部門長から指導していただくような体制にしています。これは非常に重要な問題だと思っていて、内部の幹部会議などにもそういう資料が上がってくるという仕組みにしています。

○永井部会長
 いろいろな国立大学病院で、労基署への訴えがあちこちで起こっていますので、その辺の状況の把握、対策を是非よろしくお願いしたいと思います。ほかにいかがですか。よろしいですか。時間が延びてしまいましたが、ご記入いただいて、その間に事務局から今後の取扱いの説明をお願いします。

○政策評価官室長補佐
委員の皆様方には、短い時間の中を評価していただきまして申し訳ありません。評価の記入がまだ終わっていない委員がいらっしゃいましたら、お持ち帰りになって記入していただくことも可能です。また、その際には評定記入用紙について電子媒体を送らせていただこうと思っていますので、その電子媒体のほうに記入していただいてメールで送っていただくか、若しくは紙をFAXで事務局宛に送っていただくということで、もしお持ち帰りになって書かれる場合には7月25日(月)までに、事務局までご提出いただくようにお願いします。以上です。

○永井部会長
 では、循環器病研究センターの皆様、本当にありがとうございました。ここまでといたします。
(法人入れ替え)

○永井部会長
 国立がん研究センターの個別評価を始めたいと思います。最初に理事長の嘉山先生からご挨拶、平成22年度における概要をお話しいただきます。よろしくお願いいたします。

○国立がん研究センター理事長
 最初に総括説明をさせていただきます。がんセンターの概要ですが、先生方はもう十分ご存じなので、ここは詳しくはお話しませんが、今年で50周年になります。1966年に当時大学等々でがんの研究等がそれほど進んでいなかった時代に、やはりがんが結核からあるいは脳卒中から死亡の第1位になりましたので、いまから50年前に現在の築地につくられたわけです。
 業務としては、がんにかかわるすべての調査、研究及び技術の開発等々が当時与えられたわけですが、それから50年経ちまして、昨年度独立行政法人になったわけですが、3番の理念のところにありますように、「癌」という字を3つに分けると口が3つありますので、三輪のようになっていますが、従来は、これが臨床・研究・運営局だったわけですが、それを臨床・研究だけではなくて、現在では、やはり国民の皆さんにも、あるいはがんを勉強する全国の方々にも啓発及び教育ということで、教育というのを大きく入れさせていただきました。
 去年の4月1日から新しいがんセンターのミッションとして8つを挙げたわけです。がん難民をつくらない。調査というのは、がん登録あるいはその他の例えば、がんの患者さんがいかに職に就いているか等々の調査をするということです。研究に関しては、もうノーベル賞級の研究をしていただかなければ、タックスペアの国民にはアカウンタビリティできないだろうということで、そのようなレベルの高い研究をしようということをミッションとして考えました。技術開拓ですが、がんに関する技術開拓になるわけですが、新薬の創薬、機械的な医療技術というものもこのがんセンターに関しては、ロイターで私が調べた限りでは、非常に最近低迷していましたので、世界を目指そうということをミッションとして考えました。それらを使った先進医療をがんセンターが均てん化をやってまいりましたが、そのおかげで、反対に地方のがんセンターが非常に均てん化されてきたということで、従来のがんセンターの使命は、役割を果たせば果たすほど存在意義が少なくなってきますので、やはり先進医療でほかのがんセンターと違った存在証明をしなければならないということで、そういう旗を掲げさせていただきました。教育は先ほど申し上げたとおりです。政策立案に関しては、厚生労働省と共同でしていかなければならない使命を負っているわけですが、現場をもっている我々としては、現場からの声を、特に患者さんからの声、働いている医療人からの声を政策立案していく。当然のことながら、がんセンターは国のがんの責任を負わなければいけないということですので、国際的ながんネットワークへの参加等々をやっていくということです。
 組織、その他に関しては、ここに書いてあるとおりです。
 従来の職員の意識改革に向けた取組としては、このスライドにありますように、まず病院長がいて、部長制だったのです。部長が6名おりまして、その部長が第1領域等々、第2領域等々、何の機能を果たしているか分からないようなものだったわけですが、例えば、その部長の下に呼吸、小児科、婦人科等々がおりまして、機能的な責任の所在が明らかでなく、また権限も明らかでなかったものですから、それをまず科別にしました。科長を大幅に増やしまして、その代わり、科長にはオートノミーを与えるということをして、外来医長、病棟医長等は科長が選任するというようにさせていただきました。
 もう1つは、現在は総長イコール理事長ですが、総長が運営会議を14名で構成していて、ここでの決定事項は、私がヒアリングをした150人の職員からは全く分からなかったということを確認していましたので、この体制では駄目だということで、全体運営会議を作りました。当然のことながら、責任をもっている職員はすべて参加するという、大学での教授会のようなものですが、全体運営会議を科長、副科長、あるいは研究所の責任者、看護師、事務部が集まる組織を作って、上からの考えを下に、あるいは下からの考えを汲み上げて、情報の均一化を図ったということです。そうでないと、同じ使命を果たせないということです。こういうことをやりましたおかげで、皆さんかなり責任をもっていただいて、各委員会での決定も、いままではただ報告事項だけだったのが多かったのですが、各委員会がベタライズするような結果を出していただけるようになりました。
 もう1つの工夫としては、企画戦略会議というのが理事長の横に書いてありますが、次のスライド、5頁目です。これは私が2カ月間でいろいろな方と、ほとんど150人ぐらい、研究所から東病院、中央病院も、看護師も合わせてヒアリングをして、その中からこれはと思う人を3人選ばせていただきました。その人たちからいろいろ私が考えた企画書を作ってもらう、あるいはその企画戦略の方々から現場の声を挙げていただくというのが1つです。
 もう1つは、目安箱を置きました。この目安箱に関しては、人の誹謗中傷ではなくて、いかにがんセンターをよくするかというような建設的な意見を書いていただきたいと。できれば署名入りで書いていただく。もちろん署名入りでなくても結構ですので、いい意見であれば書いてほしいということで目安箱を置きました。職員のアンケートをしばしば取りました。例えば保育所の現状がどうなっているかとか、看護師の2交代制、3交代制のどちらがあなた方の職場環境にとっていいですかとかいうことをやったわけです。あとは、ホームページで外部の意見をしばしば取り入れまして、一切事務は私に隠さないように全部持って来てくれましたので、それをすぐにこの企画戦略会議にかけたわけです。そうすると、現場からの声が上に来るし、上からの声も下に行くという仕組みができたわけです。
 もう1つは、旗を立てなければなりませんので、All for Cancer Patientsというのは最初の標語だったのですが、掃除をしている方々のやっていることも、あるいは研究所で試験管を振っている人のアクティビティ、つまり行動のすべてががん患者さんのためにということを考えました。これは職員78名が応募してくれたのですが、All for Cancer Patientsという人が2名いたのですが、それに「Activity」を加えました。こうすることによって、イメージとして、自分のやっている行動がすべて患者さんのためになるのだということで、それも研究でもすごい高度な研究のアクティビティも、縁の下の力持ちのような行動もすべてそれは患者さんのためなのだということを意識としてもっていただくようにしました。
 7頁目ですが、大体学会に行って帰って来ると、段ボール箱13箱ぐらい書類があるのですが、それに全部目を通しました。どういう書類かと言いますと、もちろんすべての書類なので、108円のペットボトルを買うものから132億円のIBMの契約書まで、あと研究所の計画書の内容、それで大体把握ができましたので、これをやりますと、日曜日は全く1年間ありませんでした。秘書たちもすごく手伝ってくれました。私自身は大学で病院長、学部長をやっておりましたので、値段にしても研究計画書にしても大体どういうものかは分かっていましたので、その中で疑問があった場合には担当者を呼んで説明をしてもらいました。こういうことをやると、私自身が商売をやれるわけではないのですが、トップが下を見ているということで、職員に、1つは自分の家だというような感触を持たせたわけです。コスト意職ももちろん持ちましたし、上が見ているというので、研究も、当時は見ていなかったものも、やっぱり生き生きとしてくるということが、これでやれたと思っています。
 事業体系は、ここに書いてありますように、研究事業、臨床を志向した研究・開発推進。もう1つは、トランスレーショナルリサーチです。研究所とがんセンター、病院があるわけですが、それが完全に創立当初に比べると離れたので、これを一緒にすることを工夫して、このあとお話しますが、現在はある大学の医学部長まで出てくれるようなカンファレンスになっています。
 あと、職員の厚生をすごく図りました。あとから出てきますが、レジデント、看護職、医師、リスクを負っている医師、研究所でも責任を負っている方等々にはインセンティブを出すような工夫をしました。
 以上が御旗を立てたということと、情報の共有化、情報開示もやりました。広報を作りました。従来は、ちょっと変な週刊誌に載ったようなこともあったのですが、どんな会社でも広報はあるわけで、そういう広報も作って、要するに、日陰なしに運営していくことを基本にしたところ、現時点では職員が非常に頑張ってくれている、その結果があとから出てくるデータに出ていると考えています。以上です。

○永井部会長 
 ありがとうございました。個別の項目についてご説明いただきたいと思います。1グループから4グループまであります。1グループは項目1から3、研究・開発に関する事項です。約10分でご説明いただけますか。よろしくお願いいたします。

○国立がん研究センター理事長
 まずスライドの9と10に、いま先生がおっしゃったカテゴリーが入っています。まず9頁からお話します。研究事業ですが、上のほうに書いてありますが、病院における研究・開発の推進です。先ほどお話したように、組織を大幅にドラスティックに変えたということで、責任体制ができました。従来、私が行った時には医療事故と思われる事例も15ほどそのままになっていたのですが、この責任感を負わせる体制にしたところ、かなりそれが明確に表に出て来まして、それをきちっと処理することができるようになりました。あと、自分の診療科ということで、部下の面倒も見るようになりました。臨床試験、治験ですが、がんセンターは非常にそれを役割としていましたので、CRCが31人の席があったのですが、11人が常勤で、あとは全部非常勤です。その非常勤もかなり長期間にやっていて、常勤の方よりは非常勤の方のほうがプロというような感じの仕事ぶりでしたので、彼らのモチベーションを上げるために、その人たちを20人常勤化して、それを増やしました。薬事の規制要件に関する専門家育成を図るために、がんセンターはやっぱり創薬をしなければいけない組織ですので、その知財のノウハウを知るために、PMDAと従来から人事交流をやっていたのですが、それを積極的に人数を増やしました。いろいろな委員会がありましたが、遺伝子解析研究などいろいろな委員会を統合審査するようにしました。治験申請から症例登録、中期目標、中期計画に、いまお話したことは全部入っているのですが、従来140日だったものを減らすということで、短縮の努力をいたしまして、その結果として目標を達成することができました。
 右側の頁、担当領域の特性を踏まえた戦略的かつ重要的な研究・開発の推進ですが、従来、がんセンターは非常に閉ざされた組織だったことはよく知られていたのですが、それでは、やっぱり現在のメガサイエンスの時代の研究はできません。したがって、大学、これは東大の先端研ですが、あと6NCとの多施設共同研究体制を組織しました。そのためのゲノムあるいはエピゲノム・プロテオームの解析拠点及びデータベース拠点も立ち上げて、これは現在オンゴーイングになっています。膵がん、肺腺がん、ちょっと個別のことになってしまうのですが、研究結果として、複数の要因を同定で、ALK等の遺伝子で肺がんのリスクが分かったということを発表させていただきました。バイオバンクのための新たな包括同意書。これが日本に欠けている点だったのですが、がん研究センターにいらした患者さんからその患者さんの遺伝子あるいはがんの検体を、すべてのいろいろなゲノムの研究に使っても結構ですというような包括同意書を作りました。このためには、いろいろな工夫もしたのですが、現在7,300を超すバイアルの新規受入があり、それを使ってもいいよという同意が90%を超しています。これはアメリカの三大がんセンターのスローン・ケタリングでも60%ちょっとですから、やっばりがんセンターがそれだけ国民に信用を得てるのかなという結果を得ています。高度先駆的な技術に関しては、検診センターで、検診もがんセンターが進めなければいけない業務の1つですが、肺がんにおけるALK転座の分子診断法を確立しています。
 10頁の上の臨床研究事業です。先ほど話しました研究所と病院とを結ぶことです。これはリサーチカンファレンスと言って、ファイヤリングディスカッションと言って、学会ではなかなかできないような質問、ブレークするような質問をしてほしいと。そうでないとノーベル賞は取れませんので、そのような非常にちょっとホットなディスカッションの場を月に1回設けさせていただきました。手術検体、これはバイオバンクですが、従来、がんセンターは個人が持っていたのです、ゲノムのバンクを。それをセンターのバンクと変えさせていただいて、それを職員一同も賛成してくれて、その体制を構築しました。もう1つは、都道府県のがん臨床拠点病院です。がんセンターが先端医療をやるためには、治験だけでは駄目だと考えていますので、都道府県の拠点病院に活躍していただいて、臨床試験部会を創設して、これもいまオンゴーイングにすることができました。それによって、従来日本の臨床試験が進まなかった症例数をここでカバーできます。研究成果に関するデータベースは、ロイター等を使って、内部の研究者が研究できるようなことにしました。先ほど一度お話しましたが、知財の戦略室は、従来は1人、弁護士と医師の資格をもった方がいたのですが、やはり東大のTLOのような多分野の弁理士がいないと、1つのエンザイムでも弁理士がすべて違うわけで、そういう機能をがんセンターでは持っていませんでしたので、TLOと連携することによって新たな事業ができました。それによって、従来目利きがいなかったものですから、無駄な特許に向けたお金を600万円払ったりしました。そういうのも全部キャンセルできましたので、それも我々の益になっていると思います。
 最後は、結果ですが、これもレベルが高いと言えることだと思いますが、センターが支援した臨床試験が大腸がん診療ガイドラインに採用されたということです。
 先ほどの知財戦略室が活躍してくれまして、従来、がんセンターはこの50年で包括共同研究はしたことはないのです。島津製作所の田中耕一さん、ノーベル賞の方ですが、質量分析などの技術を中心に包括共同研究をすることになりました。以上です。

○永井部会長
 臨床の研究開発は、何かおやりになっていますか。

○国立がん研究センター理事長
 もう一度9頁に戻っていただいて、診療事業の所をご覧ください。「高度先駆的な医療標準化に資する医療の提供」と書いてありますが、これはその中のアカデミズムでいいますと、いちばん下の肺がんのEGFR遺伝子変異の有無とその他の遺伝子の変異と発がん及び抗がん剤感受性相関を明らかにする目的で全エクソンを解析したことが1つです。あとは、国際がんゲノムコンソーシアムで、日本では理研とうちとで請け負っているのですが、肝がんの全シークエンスが完成しました。この前、ちょっと記者会見をさせていただきました。それが特筆することで、あとは従来やっていることを情報開示したところです。

○永井部会長
 ありがとうございます。ご質問はいかがでしょうか。

○猿田部会長代理
 体制が整ってきて非常に進歩が出ていると思います。私が特にいちばん興味をもっているのは、やはりトランスレーショナルリサーチですね。その点で、先生の所ではかなり知財から臨床研究をするためのルートまでしっかりしており、生物統計、データマネージャーなどの人員体制がはしっかりでき上がってきているように思えますね。

○国立がん研究センター理事長
 それは、もうでき上がりました。このあと出てくるのですが、人件費がちょっと複雑なのですが、日本はインフラが非常に各組織で弱いので、その実務者を揃えなければいけないので、揃えました。

○猿田部会長代理
 そうですね。それをしっかり整えていかないと、特に生物統計家などは少ないですから、先生の所は重要ですね。ありがとうございました。

○永井部会長
 ほかにいかがでしょうか。東大のTLOが一緒に仕事をするようになったそうですが、やはり違いはあるのですか。

○国立がん研究センター理事長
 全然違います。私が前にいた大学でも、知財に関して最初は頑張ろうとしたのですが、やはりその専門家がいないと、いまお話したように、あるエンザイムに対する弁理士が書類を書くわけですが、その人がいない限りアメリカのベンチャー企業には勝てないという感じのレベルでやっています。先生もご存じのように、大体目利きして特許に出しても、スタンフォード大学で5割です。ところが、東大TLOが目利きすると6割ですから、やはり目利きがかなりいいのではないかと思っています。いまのところは1人送って、教育もしてもらっています。

○永井部会長
 確かに、バイオ系や医療系の知財は複雑な構造になっていて、工学系の技術のようなわけにはいかないということをよく聞きますね。

○猿田部会長代理
 もう1つ、いまPMDAとかなり交流を始めましたが、これは日本では特に大切です。PMDAは人が少ないものですから、出入りをうまく続けていっていただきたいと思います。

○国立がん研センター理事長
 先生のおっしゃるとおりで、いま3人出入りしているのですが、月給がちょっと違いまして、私も困って月給を何とかしないと。

○猿田部会長代理
 あれでも、少し上げたのですよね。

○国立がん研究センター理事長
 近藤理事長が上げてくれたようなのですが、まだ医者のほうが高いですね。

○猿田部会長代理
 是非その点も。薬剤師さんもそうですが。

○国立がん研究センター理事長
 薬剤師も看護師もそうです。

○本田委員
 ご説明があったかと思うのですが、がんセンターの病院と研究所が、これまですごく切り離されているというか、それぞれが好きなことをやっているというイメージが強かったのですが、今回合同のカンファレンスのようなことをされるようになったと伺っています。その成果のようなものを、何かおっしゃっていただければと思います。

○国立がん研究センター理事長
 最初、MDR(学際的研究支援)といって、要するに研究所でこういう研究をしていますよということと、こういう基礎研究をしてくれないかなということを、病院の医者に、ただ題目だけ書かせました。それを合わせるようにしたのですが、やはり駄目なのですね。永井先生も猿田先生も経験があると思いますが、医工学を並べても結局駄目なのですよ。実は、成功しているのはあまりありません。結局は、そこで喧々諤々と同じスペースで、同じ空間で、同じ時間でディスカッションしないと駄目なのですね。20頁をご覧ください。第1回目は、ナノテクを使ったドラッグデリバリーと、それを使った臨床をやりました。そこで、確かにナノテクががんにいっているのですが、それが人間に使えるのかと。実はいまフェーズ?まできているのですが、ナノテクはすごく小さな粒子ですよね。それが、いまの放射線ではないですが、人間にどこまで残るのかということを完全に質問して、次にどういう研究をしたらいいのかと。20頁に書いてあるようなかなり厳しい質問をして、かなりホットなディスカッションをしました。結果としては、ナノテクのドラッグデリバリーという薬を運ぶ方法ですが、注射をしてその薬を運ぶ方法でうちの抗がん剤もやってくれないかとか、医者から基礎研究者に投げかけていることがいくつもあるというようなことが、実際始まっています。

○本田委員
 これは、定期的にされているものなのですか。

○国立がん研究センター理事長
 定期的にやっています。いまお話したように、最初はただ並べただけの(学際的研究支援)で始めたのですが、実態がないことに気がつきましたので、このリサーチカンファレンスを始めたところで、実際に研究ができるようになりました。

○夏目委員
 すみません、我々評価委員は数値目標があれば、それに基づいて、できるだけ客観的な評価をしろということになっていますので、いま数値目標について見ていたのですが、おおむね数値目標を相当上回るということで、少なくともいま説明があった点については、相当業績が上がっているかなという感じをもちました。それと同じに、冒頭理事長からあったお話に関して、それは組織運営に関することなので後ろのほうでまた出てくるのかもしれませんが、折角なので質問いたします。やはり、いままで組織の持っていた問題点や欠陥を直そうと。そのときには、やはりそこに従事している職員、社員の意識改革がいちばん大事で、意識改革はやはりトップのリーダーシップと器から直すという、組織を直し器を直すことによって意識も変わる部分もあると思うのですね。そういう意味では、旧運営会議を全体運営会議にされたり、科長制、組織改革もされて、相当意識改革が理事長の思いのとおり進んでいるのだろうとは思います。
 ちょっと心配なのは、全体運営会議が100名の運営会議というと、ほとんどディスカッション、議論できない会議で、一方的なトップの方針や指示の伝達の場になるのではないかと。そういう意味で、意見交換とは書いてあるのですが、本当の意味での意見交換の場のようなディスカッションの場があるのか。いまはとりあえず意識改革が先行するから、理事長の強烈なリーダーシップの下で、この組織を前に進めていけばいいのだと。それである程度までいったら、皆で横のディスカッションなども大事にしようということなのか、その辺り、どういうお考えをもっておられるのでしょうか。企画戦略会議がそういうことをやるのかなと思ったら、3名の方が理事長の指示でいろいろなものを提案するということで、必ずしもディスカッションの場、議論の場ではないようです。その点が1つです。
 それから、すべての立案や決裁書類に目を通すことは非常にすごいのですが、すご過ぎて、これはいまの理事長ならできますが、永続性がないのではないかと思います。組織は、ある面では誰がやってもきちんと運営されるというところをも目指さなければいけないので、スーパースターがいるからうまくいく、理事長の超人的な、献身的な努力で維持するという組織運営は、いまの改革時期はいいと思うのですが、もう少し経つとそこはやはり超人的、献身的な努力ではなく、きちんとしたミッションを果たす、がんセンター本来の目的に即した運営がなされるようにしていかなければいけないのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

○国立がん研究センター理事長
 ありがとうございます。2つあったと思うのですが、1つは全体運営会議のことと、もう1つは全部書類を見てチェックするのは、なかなか体力もいるし時間もかかるし無理だろうということです。まず全体運営会議は、おっしゃるようにこの場は情報伝達です。100人ですから、しょうがないです。ただし、各委員会がありまして、例えば医療安全委員会等、それに関係する部署の委員会、従来は事務局が決めたことを伝達する場だったのですね。それが、いまは委員会がディスカッションの場になっていますので、その委員会に企画戦略の3人に出席してもらいます。3人はどのようなメンバーにしたかといいますと、1人は病院の臨床です。もう1人は、医局員の医局長、もう1人は基礎系の人ということで、各分野から意見をもってきてもらうこともあります。ですから、企画立案だけではなくて、この企画戦略室はそういう意見も汲み上げることがあります。
 もう1つは、最初に全部の書類を見た理由は、見た理由と正直に言いましたが、この7月から見ていません。それは、文化を変えるためです。先生がおっしゃったように、ある社会を意識改革するためには、結局は文化なのですね。ですから、あえて病院長も兼任したのはそういう意味なのですが、病院の文化を変えなければいけない。医療安全に対する文化を変えなければいけないと。私が思っている医療安全の考え方と全然違うのですよ。ですから、プリンシプルを変えるために最初は全部見たのですが、この7月からは秘書に言って、この項目、要するに大型のお金と研究の2本だけは自分で見るけれども、あとのもの、出張に誰が行っているということまで全部見ていたのですが、それは全部止めました。国立がん研究センターの事務系も医師も研究所の研究者も看護師等も、かなり意識変革ができたと感じたところでそれは止めましたので、たぶん私でなくても、文化が変わったので、できるのではないかと思います。
 それから、意思の疎通や横の疎通は、その委員会でやっています。それは大学でも同じなので、例えば会社経営でも全社員の意見を聞くということはなかなか難しいので、その部署部署でディスカッションしてそれを上に上げるという体制を取っていると思いますので、それを何とか汲み上げたいと考えています。

○花井委員
 非常に先進的な感じで、組織体制から変わったということでドラスティックだなと思って聞いていました。臨床研究や治験が進むと、倫理的問題が常に出てくるのですが、利益相反ルールの適用拡大もしたと書いてあるのですが、これは先ほどのお話からいくと、意識改革という意味では、これを適用する前の感じと研究者の倫理性、いわゆる利益相反に対する意識は、見る見る変わったというようなことはありますか。

○国立がん研究センター理事長
 研究費の不正使用というか、自分では悪意はないのですが、ちょっと事務的なことで報告していなかったこと等々、今回全部自己申告してもらったのです。大学などの科学技術研究費ですと、従来は単年度予算でしたので、預け金というような形をやっていた所もあるのですよ。それは、私腹を肥やしているのではないのですが、やはりそういう方が数名、自分で出てきたのです。もちろん、きちんと修正はさせましたが、そのようなことが意識の中に出てきたので、従来は闇になっていたものが表に出てきたということで、私は健全になってきたのではないかと思います。
 それからCOIに関しても、ある1人がある企業から年間300万円か600万円をロイヤリティーでもらっていたのです。それも表に出ていなかったのですが、独法化後は出てきていますので、遵法精神がきちんと出てきているのでなはいかと思います。先生もご存じのように、COIは法律はないのですよね、要するに守るべきことなので。ただ、今度新しく7月から日本医学会の基準があるのですが、それはすごく厳しいのです。全部報告しなければいけませんし、自分の研究等に関係する株式は持ってはいけないということを適用することにしましたので、COIに関してはほかの組織よりもかなり進んだ組織になってきたのではないかと思っています。

○永井部会長
 ありがとうございます。それでは、グループ2、項目4から6の医療の提供に関する事項についてのご説明をお願いいたします。

○国立がん研究センター理事長
 すみません、先ほどの9頁の診療事業の所を説明させていただきます。ちょっと先走って言ってしまったのですが、ここに書いてある高度先駆的な医療、標準化に資する医療の提供というものが診療事業の最初に書いてあります。1つは、がんセンターの役割として希少がん、つまり少ないがん、一般的ながんセンターでは診てもらえないような少ないがんの外来を立ち上げました。これは、日本で国立がん研究センターにしかありません。そして、そのサルコーマに対する集学的な研究も受けられるようなシステム、人間の配置にしたわけです。もう1つは、陽子線なので、別に国立がんセンターだけではないのですが、東病院においては先進的な医療の1つとして陽子線治療を実施しています。それから、治験実施のための診療体制、治験病棟及び通院治療センターの体制を整備しました。これは、ベッド数も増やしましたし、環境もよくしたということを東病院で行ったわけです。
 従来、日本のがんセンターでは考えられなかったことなのですが、私がいちばん不思議に思ったのは、やはり高貴な方が、がんセンターで発見されたにも関わらず、東大病院で手術を受けたということを聞いていましたので、これはやはり何かいちばん大事を取ったのだろうと思いました。それは行ってみてわかったのですが、がんセンターでは全身管理等々のプロがいないということで、総合内科を日本で最初に作りました。これは、デパートメント・オブ・インターナルメディスンということで、総合内科なのですがベッドは持ちません。遊軍となって、例えば糖尿病を持っている患者さんには、その医者にコンサルトすると。心臓病を持っている患者さんには、例えば手術であれば手術に関しての相談をすると。あるいは、透析患者さんはほとんど手術をしていませんでしたが、がんセンターでももはや透析の患者さんも手術ができると。今後、高齢化社会になりますからがんが増えてきますし、それに伴ってこれからの患者さんには、いろいろな余病が付きものですから、これを避けては通れないと思いました。また人件費も少し増えたのですが、実務部門ですので、ここを増やしました。現時点では常勤4名、非常勤1名ということで、従来と違う、完全に医療の質が上がったといえると思います。あとは先ほどお話した肺がんのことです。
 次は、患者さんの視点に立った良質かつ安心な医療の提供です。驚いたことに、説明同意文書が各診療科で違っていたのですね。それを、人が違っても、科が違っても、患者さんへの説明は同じクオリティを保たなければいけないということで、各々テンプレートを出してもらいました。例えば、外科が内科のインフォームドコンセントの内容を評価するというようなことで、患者さんへの説明の質を上げました。それを作ったのが、去年の6、7月ぐらいです。各診療科の診療実績、従来5年生存率をがんセンターは一切出していなかったのですが、一気に出しました。これによって、患者さんがどのぐらいの医療をやっているかがわかると思いました。情報開示という意味です。これも、去年の7月からすべてのホームページに出ています。
 それから患者さんが、がんという直接的な疾患だけではなく、いろいろな悩みを持ちますので、患者さんの日常生活の啓発をするという意味で、膵がん・胆道がん教室、あるいはご存じのように髪の毛が抜けますので、これに対する対策も取っています。患者さんのサロン、これは脳腫瘍がやっているのですが、患者さんは脳腫瘍になったためにいろいろな思いの丈があるので、それを語っていただいて、心のケアもするというようなシステムを整えたわけです。あとは仕分けにかかってしまったのですが、国立栄養研究所と組んで、サプリメントあるいは食事等の指導も共同でやるようなことを、昨年度はいたしました。
 それから、患者・家族の会であります「がんを知って歩む会」を実施していますし、そこでは何がいちばんの眼目かというと、我々の目線ではわからないような患者さんの目線でのいろいろな問題点ですね。がんという病気から発生する問題点を汲み上げることです。私ががん難民をいちばん最初のミッションに挙げたのは、がん難民を無くすことです。がんの患者さんの精神的、肉体的、社会的(家族関係も含める)、経済的なものをすべて吸収しようということで、昨年の7月10日から「がん相談対話外来」を実施しています。これは、従来はセカンドオピニオンといわれているものに匹敵するのですが、そうすると医者だけで、難しい言葉を使ってしまったりして、心まで入っていけなかったのです。そのために、4つで組ませたのです。それは精神科の医師、がんの専門家の医師、看護師、ソーシャルワーカーの4人体制で組みましたら、90%以上の方がそのがん対話を受けてよかったということでした。これで、がん難民がだいぶ減ったと思います。
 その他として、緩和チーム医療は件数はどんどん増えています。実は、これは1990年にWHOが本当は初期からやりなさいということをリコメンデーションしていたのですが、日本のがんの専門家はやってこなかったことがありました。がんセンターではいまでは6割が急性期から緩和治療を始めています。必要のない方もいらっしゃいますので、6割ということです。私は従来大学にいましたが、がんセンターはびっくりすることに在院期間が16日なのですね。16日では、検査して手術してポーンと退院してしまいます。リハビリテーションは必要なのですが、ほとんど置いていなかったのです。ですが、リハビリ科を独立して創設しまして、そこにOT、PTを1人、STを1人倍増しまして、がんのリハビリテーションを開始しました。以上が、この診療事業で新しく始めたものです。

○永井部会長
 どうもありがとうございました。それでは、ご質問をお願いします。

○猿田部会長代理
 非常に大きな改革を行ったと思います。少し伺いたいのは、がん難民をつくらないということで、いちばん重要なことはやはり経済的な問題なのですね。患者さんが本当に経済的に困って、実際に、なかなかそれを先生方には申し上げられないという辺りのところの対応をどうしていくかです。
 もう1つは、例えば陽子線にしても粒子線にしてもお金は高いですね。本当にそれに対して、実際に受けようと思っても、お金持ちの方は受けられますが、そうでないということがあるので、国立がん研究センターとして、がん難民を減らすということでは、どういう対応を取っていったらいいのでしょうか。

○国立がん研究センター理事長
 ソーシャルワーカーを1人置いていますので、先生がおっしゃるように、経済的な面というのはいちばん医療人がやってはいけないことです。そのときに、1つはいちばん身近なことで言えば高額医療になりますので、その制度を教えることですね。もう1つは、急性期が終わってそのあとの維持療法があります。東京まで通うのが大変であれば、そのときはその地区の都道府県がん拠点病院がありますので、そこに紹介するようなことをしています。そのほかは、我々がお金を出すわけにいきませんので。

○猿田部会長代理
 実際にいろいろな巷の意見を聞きますと、それがどうしても出てきます。あるいは、特別な形の保険があれば、例えば粒子線でも実際民間保険ですと、10分の1ぐらいになるということも随分努力されているものですから、そういった意見がうまく吸い上げられていけばと思います。

○国立がん研究センター理事長
 よろず相談は世界で最初ですから、アメリカのMDアンダーソンもやっていないです。日本がこのような最初の問題を抱えましたので、これは最初のスタディですから、これをスタディとして相談支援室長にやってもらって論文にしなさいと。何が問題になっていて、何をどのように解決すればいいのかをランセット辺りに出しなさいと言っていますので、もうすぐ最後の結果が出ます。ただ、1つは先ほどお話したセカンドオピニオンとして、90%の医者がほかの病院でやっている医療も標準以上いっていますよということを私は聞いたので、実はほっとしたのです。がんセンターの医者がほかの病院の悪口を言って、とんでもない医療をやっていると言われたら困るなと思ったのです。ということは、いまの日本のがん医療がかなり均てん化してきていることの裏返しだと考えています。先生の質問に、具体的な数字で93%などと言うことはできるのですが、中身はいままとめている最中です。

○猿田部会長代理
 もう1つ、総合内科を作られたことは非常にいいことだと思います。これからは、やはり合併症を伴った方が非常に多いですから、そこは特に重要だと思います。

○国立がん研究センター理事長
 先生がご心配になった、お弟子さんはきちんと透析の専門医を持っていますので、大丈夫です。

○猿田部会長代理
 よく教育してください。できる方ですが。

○国立がん研究センター理事長
 機械も買いましたから。

○花井委員
 リハビリテーションが充実しているというのは非常に評価するところなのですが、MSWが1名というのはいかにも少ない気がするのですが、今後増員の予定はありますか。1,000床で1名というのは。

○国立がん研究センター理事長
 いまは10名以上います。

○花井委員
 メディカルソーシャルワーカーが10名いるのですか。

○国立がん研究センター理事長
 はい。それもあとで人件費のところで出てくるのですが、実業ですので、1人だったものを3人にしたり、82頁にその数値的なものが出ていますので、見ていただければと思います。

○花井委員
 いや、メディカルソーシャルワーカーです。

○国立がん研究センター理事長
 ソーシャルワーカーですね。

○花井委員
 先ほど1名とおっしゃられたので、えらい少ないなと思いまして。

○国立がん研究センター理事長
 ソーシャルワーカーは、1人から3人にしました。常勤が1人から3人で、そのほかに非常勤がいますから、10人以上います。

○花井委員
 10人いるのですね。

○国立がん研究センター理事長
 はい。もともと、あとで出てきますが、非常勤が非常に多い組織だったものですから、それを常勤化していて、モチベーションが上がって、人数はさらに増やしていると。87頁に、相談の件数と、ソーシャルワーカーの数は出ていませんが、これだけこなしているよということで、平成21年と22年で、ソーシャルの問題ですが、相談件数は増えて、こなせるようになっています。

○夏目委員
 患者の視点に立った良質かつ安心な医療の提供というところで、1つ重要なところが、患者満足度調査ということで、がんセンターでも患者満足度調査を実施したと書いてあります。循環器センターは、どこの項目がどうで、ナショナルセンター平均よりも良い、悪いでしたが、がんセンターは実施しただけで、内容については一切ないようなのですが、あまり中身がよくないからここに書かなかったのか、その辺りはどうなのでしょうか。

○国立がん研究センター理事長
 先ほどお話したように各項目がほとんど満点だったんですよ。いま猿田先生にもお話したように、いままとめているところで、ランセットに書いているところなので、出してもいいのですが、ほとんど満点でした。ただ、項目はいろいろな項目が出てきました。お金の問題、家族関係も何%というのは、いまはちょっと出していないのですが、そういうものも全部論文にして出すつもりです。

○永井部会長
 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは第3グループ、項目7から9、人材育成等について、説明をお願いします。

○国立がん研究センター理事長
 10頁をご覧ください。教育研修、情報発信事業、国への政策提言に関する事項です。上3分の1から下が、全部この項目になると思います。人材育成に関する項目から始めさせていただきます。人材育成は、従来、がんセンターはやっていたことはやっていたのですが、システム化していなかったのです。1つは、大学と大学院連携をいま進めていまして、東大、慶応、順天堂で進めています。いちばん進んでいるのが慶応です。いままでは、リサーチをしてもティーテルが取れなかったと。これはしょうがないのですが、マル合がないものですから、そこで慶応と包括的な同意書をして、がんセンターでやった研究で価値があるものは慶応で評価していただいて、その代わりティーテルが取れるというシステムにしました。これで、やっとがんセンターの悩みだったリサーチをしないでただ手術だけすればいいというようなことではなく、やはりリサーチマインドをもった伸びていく医学者、あるいは医療者をつくるという、教育の根幹ができました。その代わり、我々医者、研究所の研究員も含めて、大学からマル合という文部省でいう大学設置基準に合うような論文と研究をしていなければ、それができません。東大とは、いまオンゴーイングでやっています。順天堂とは、ほとんど完成するところです。これが、いちばん私は大きな所だと思います。
 それから、先ほどお話しましたように、総合内科を作ったということで、やはり全身管理教育をもう一度しなければいけないということで、NCC Universityをつくりました。93頁に書いてあります。ここに講師が出ていますが、肺外科の淺村さんです。ここに書いてあるような項目が、つまりがんセンターにレジデントで勉強しにきたのに、帰ったら何もできなかったと言われたくないので、がんセンターで抗がん剤の使い方だけはできるのが当たり前で、そのほかのこともきちんとしなさいということで、このユニバーシティーを作ったわけです。これによって、いま満杯で授業を聞いていますので、再教育なのですが、実は研修制度で本当はやってきているはずなのですが、2、3年経つと忘れてしまうのかもしれませんので、これをやっています。
 それから、レジデントは従来、がんセンターはタコ部屋だと言われたぐらい評判が悪かったのですが、処遇を、各センターはもうやったと思いますが、350万から550万の年収にしました。従来国立病院の副看護部長というのは、軍隊的な位だったのです。それでは駄目で、機能でということで、副看護部長を4人に増やしまして、そのうちの1人の副看護部長が教育をやると。それから医師も、副院長は1人でした。つまり、次のポジョンということで、非常に軍隊的な組織だったのですが、それを機能的にしまして、5人の副院長にしました。そのうちの1人に、教育担当を責任を持ってもらい、いま企画立案をして実行しているところです。責任を持たせますと、いろいろなアイディアや試みを彼らがやってくれます。
 それから情報発信ですが、リーダーシップを発揮しなければいけないがんセンターでしたが、それがされていなかったのです。都道府県の診療拠点病院の協議会を使いまして、院内がん登録の全国集計を、組織別ですべて公表しました。これは、従来は公表されていなかったのです。がん登録が、どの病院が何%で、大腸がんがどのぐらいだというのは一切わからなかったのですが、本田先生等々の強い意見もあったのですが、やはり情報開示がいちばんですから、すべて情報開示をしました。これは、オールジャパンの仕事です。それから患者必携、これも本田先生は我々の委員として貴重な意見をいただいていますが、8万部刷って全国に配りました。これを、各患者グループ等々が使っていただければと。国民は知らないということは不安なのですね。その不安を解消するようなことができると思います。
 次に、国への政策提言あるいは推進等に関してです。これは、厚生労働省のがん対策室と連携をしまして、いろいろなことをやっています。先ほどもお話しましたように、これは労災病院でも始めたようですが、がん患者さんがどのぐらい就職、職業に戻れているのか。これを、私どもはいま患者さんのリストを持っていますので、そこからいくと。これを労働組合や企業でやってしまいますと、組合や企業の目線でやってしまいます。何が問題なのか、雇うほうも何が不安なのかというようなことをこれから解明していくようなことをやろうとしています。それから、「国家戦略としてのがん研究シンポジウム」を開催しました。ここでは何をやろうとしたかといいますと、ただのシンポジウムで終わらせないで、いまのがん研究あるいはがんワクチンの2つをやったわけですが、日本で何のインフラが足りないのかと。つまり、日本の研究者はセル、ネイチャー、サイエンスはまだ世界でトップクラスです。減っているのは、ニューイングランドジャーナルオブメディスン等々のクリニカルリサーチが、かなり痛手を受けているのです。ですから、そのシーズを使って、我々日本がこれから頭脳を使って創薬をやっていくためには何のインフラが足りないのかを、このシンポジウムで明らかにして、それを厚生労働省のがん対策推進室等と連絡し合って、これからの施策にしていっていただきたいと意見を出しています。
 それから、福島第一原発等に関しては、最も日本で早くフィルムバッチの設置をお話しましたし、土壌の測定をしろというようなことも言いました。それから、風聞被害で困らないように、きちんと科学的に行動しなさいというようなことも、何度か記者会見を開いて、我々の知っている情報を出しました。国際原子力委員会等のチェルノブイリの報告書がありますが、あれだけでは足りないと思いましたので、ドイツの放射線防護委員会の第3国の報告書も和訳して、それをホームページに載せました。がんセンターは、がんに関係するすべての国民に起きる不安あるいは問題等を解決するミッションがありますので、それをやりました。
 それから今回の被災に関しては、5日目に行きまして、いま問題になっている福島市で実は最も放射線の線量が高いということを、がんセンターでは5日目に行っています。それは、ホームページに全部出しています。3日目から、築地の空気中の放射線物質の測定と、地面の測定を表に出しています。ですから、我々としては3日目のボンというときに、いちばん降ったなというのは、完全にわかっていたわけです。それも、きちんとホームページにエビデンスとして、論評すると誤解を受けるので、エビデンスを出すことが我々の役割ですので、そのこともやったわけです。それが、いまお話しました教育研修、情報発信、それから国への政策提言です。以上です。

○永井部会長
 ありがとうございました。ご質問はいかがですか。

○猿田部会長代理
 最後の東北の地震のことですが、あそこでいちばん大きな問題になったのは、がん治療をしている人が続けられなくなったと。かなりそれが問題になったのですが、実際に国立がん研究センターにはそういう情報はかなり届いていますか。どのぐらいの患者が続けられなくなったのか、それが非常に重要な問題だったのですね。

○国立がん研究センター理事長
 ヘリコプターで来たのは2人です。これは、福島医大から骨髄移植の患者さんが来ました。そのほかに113頁にありますが、3月14日から31日時点の統計を取っていますが、この表にありますように福島県、宮城県、茨城県、岩手県、山形県からです。山形県の場合には予定入院だったのですが、被災のためかどうかわからないのです。この被災県と福島の方がすごく避難されたので、実は山形大学医学部がパンクしてしまったのです。それで、こちらに来た患者さんがいます。
 それから、翌日にすべてのがん拠点病院で薬がないか、CTが止まったか、MRIが止まったかをホームページに全部出しました。それは、彼等が死ぬ思いでファックスでやり取りしました。そのお蔭で、被災地のがん患者さんがどこの病院に行ったらいいのかがわかったので、大きな混乱が起きなかったということです。それは、私自身は弟子があの辺りに全部いますので、そういうメールをもらいましたので、がんに関しては大丈夫でした。

○猿田部会長代理
 特に、治療面で心配したものですから。

○国立がん研究センター理事長
 治療面でもやりました。

○永井部会長
 ほかにいかがでしょうか。いま国のがん政策で、何がいちばん問題になっているのか、先生はどのように感じておられますか。それに対して、どう対応を取っておられますか。

○国立がん研究センター理事長
 難しい質問ですね。国の政策で何がいちばん間違っているか。

○永井部会長
 間違っているというわけではなくて、課題としてはいかがでしょうか。

○国立がん研究センター理事長
 私は、そんなに大きくは間違っていないと思うのですね。先生もご存じのように、WHOが日本の医療の評価を毎年出していますが、日本のがんに関する死亡率は、世界一低いのです。手術などにしても世界一ですが、日本の国民が日本のがん医療が非常に劣ると思っているのは、その周辺にあるアメニティー、つまり待たされるとか、なかなか医者が説明してくれない、時間がない。どういうことかといいますと、手術の仕方、抗がん剤の使い方の問題では、エンドポイントが世界一なので、問題はないと思っています。
 しかしながら、事務官がMDアンダーソンと国立がん研究センターを比べますと、ベッド数1つに対して98倍違うのです。看護師は、9.2倍違います。医師も、やはり10倍ぐらい違うのですね。したがって、患者さんと接している時間が非常に少ないというようなことがあります。それはなぜかというと、事務官が少ないと医師が事務官の仕事を大体3割ぐらいしていますから、そうすると患者さんの所に行けなくなりますので、私はやはりインフラの整備がいちばん大事なのではないかと思っています。

○永井部会長
 それから、がん登録事業は順調に進んでいるのですか。

○国立がん研究センター理事長
 これは、昨年の4月1日にがん登録を100%にしたい、あるいはするということを、私は所信表明でお話したのですが、個人情報保護法がありまして、首長さんが駄目と言っている所は、なかなか進んでいないです。それから、がん登録に対する予算が一般財源なのです。要するに、がん登録に使いなさいというようなことが書いていないのです。ですから、これを一般財源ではなくて、やはり法律でこれはがん登録に使いなさいというようなことをしないと。都道府県では福島県が今年から始めました。去年まではやっていないという現状があるぐらいに、やはり政治との問題だと思います。

○永井部会長
 大学病院が無関心ということはないですか。

○国立がん研究センター理事長
 大学病院は、ほとんどやっていると思いますが。

○永井部会長
 かつては、あまり協力的ではなかったですが。

○国立がん研究センター理事長
 学会レベルでがん登録をやっていると思います。学会というのは、例えば脳腫瘍であれば、脳腫瘍の全国統計をがんセンターが中心でやっています。ですから、大学はあまり問題ないと思います。都内の大学は、あまりやっていないのだそうです。

○永井部会長
 本田委員どうぞ。

○本田委員
 さまざまな取組を前向きにやっていただいていて、大変喜んでいます。この患者必携や、さまざまな情報提供を推進して頑張っていただいているのですが、例えば患者必携にしても各地の拠点病院に送られたということでしたが、実際に各地の拠点病院の相談支援センターや医療の事務局側が、どのように患者さんに手渡すのかなど、今後そのようなことをきちんと見ていかれるのか。というのは、作るとか渡すというのは誰でもできるかもしれませんが、その後の対応を踏まえた形になってるのでしょうか。

○国立がん研究センター理事長
 がんセンターにそこまで力を持たせていただけるのならやりますが、まだNIHでもNCIでもないので、ただ、One of hospitalなんですよ。よく考えると、国立がん研究センター付属病院、ただの病院なんです。法的なギャランティは何もないのですよ。アメリカのNIH、あるいはNCIというような、法的なバックグラウンドは何もありません。したがって、そういう中でやっていくとしたら、善意か、あるいは都道府県拠点病院の協議会で合意をして、そこでやっていただくと。やれという命令をできるギャランティはないのですよ。
 これはやはり政治の問題だと思いますが、もちろんいろいろな努力はしています。NCIは、ある程度ファウンディング、お金を配る。そして、10%は自分の所で使っていいというような組織ですから、国がそういうことを保証しているのですね。ところが、がんセンターは阿吽で、がんセンターが中心でやるのだよとなっていますが、例えば永井先生の東大病院にやれと言っても、知らないよと言われればそれきりなのです。日本人は、そういうところを作るのが下手なんですよ。つまり、きちんとした制度がないんですよ。阿吽でやってきているのです。奈良・平安時代から。それをきちんとしないと、もうそろそろいけないのではないかと思います。永井先生も改革されたのでおわかりだと思うのですが、そろそろきちんとしなければいけない時代だと思います。しかし、本田先生がおっしゃるようなことは努力します。

○本田委員
 逆に課題だということがわかったので、ありがとうございました。

○永井部会長
 先生がいろいろな取組をされて、現場が疲弊しないように人を増やしたり、人件費を上げたり、いろいろなことを同時にされていらっしゃるわけですね。

○国立がん研究センター理事長
 2月2日に大臣から辞令をいただいてから、中医協、全国医学部長病院長会議等で東京に出てくる度に、事務の人に名簿をもらってアトランダムにヒアリングをしたのですね。そのときに感じたことは、個々人の能力はかなり優れているのですが、それをサポートする体制がないと。研究費にしても、大学と比べれば私は潤沢にあると思いますが、それをきちんとガバナンスしてくれる人がいないということがわかりました。まずは、彼らの働きやすい環境を作るということで、始めました。ただし、そのときにはコンプライアンスはきちんとやるということが合い言葉です。ですから、自分で立っていくことと、自分で律することと、自分で浄化することの3つを合わせて石を打っていったわけです。皆さんそれをきちんと受け止めてくれて、去年の3月には、特別ボーナスも出すことができました。つまり、トップが自分たちが頑張ったよということを見てくれているよということが、いちばんモチベーションが上がるのですね。先生が言われる、そういうこともやってきました。

○永井部会長
 よろしいでしょうか。それでは次に項目の10から14、効率的な業務運営等に関してご報告をお願いします。

○国立がん研究センター企画経営部長
 それでは、私のほうから説明させていただきます。11頁には大きく5つの項目がありますが、順番にご説明いたします。まず効率的な業務運営体制ですが、これについては先ほど嘉山理事長からも説明がありましたように、企画戦略室というものを設置して問題解決や政策立案に迅速に対応する体制を構築したということが、いままでにない取組だと思います。それから、病院と研究所の組織の再編ということで、これも先ほどご説明がありましたが、研究所についても同じように効率的な研究業務を推進する体制を整備したと。そういうことの中で、病院には新たに、中央病院は5人、東病院は3人の副院長、研究所については5名の副所長を設けまして、それぞれ特命事項を定めて、全体として効率的な業務運営、分担の下に進められる体制をつくったということがございます。
 それから、2つ目に、効率的な収支改善、電子化の推進ですが、これも先ほどご説明がありましたが、すべての購入伺いを理事長決裁にして、理事長による個別決裁の確認を通じて、こういう点についてもっと安くできないのかといった個別の指摘を理事長からしていただきながら、職員にコストの意識が徹底されていったと。そういう中で、仕組みとしても原則すべての業者に見積りを複数者から取ることを徹底するなど、無駄遣いを排除して大幅にコスト削減が実現できたということがございます。それから、いろいろとコスト削減をしていく上でも、相手方の言いなりになってしまうとそういうこともできないわけですので、こちら側も専門的な知識を有する人材を活用していくということで、具体的には、施設設備部門に専門知識の高い人員体制を整えて、見積査定作業の精度の向上を図るということで、無駄の排除をしていったということがございます。こうしたことを通じまして、平成22年度の当期利益については最終的に25.8億円ということで、経常収支率についても、これは年度計画の目標で、中期計画でも100%ということを毎年度の目標として掲げていますが、経常収支率が107.2%という、当初目標を大幅に上回る率を達成できたところでございます。また、一般管理費についても、これも削減目標というものを掲げているわけですが、これについても、年度計画で掲げている目標は、対21年度で15%以上ということですが、22年度については19%の節減を達成できたということがございます。また、医業未収金比率についても、平成21年度に比べて0.04%縮減できたということがございます。
 次に、法令遵守等内部統制の適切な構築についてですが、先ほど来説明がありましたように、情報の共有化ということを通じて、経営に関する情報もそれぞれの職員に対して情報伝達ができるような体制を組むということの中で、職員が一丸となって問題意識を踏まえて適切な業務改善に取り組む意識が醸成できたということがございます。それから、理事長が決裁を見る中で、一つひとつの不明な点等について改善を図らせる中で、合理的・科学的・透明性のある意思決定が行われることが職員に浸透できたと。こういうことの中で、職員の意識が国時代と比べて随分と変わってきて、自主的にいろいろな問題を申告して是正を図っていく体制ができてきたということ、これがいちばん大きなポイントだと考えています。
 4つ目、予算、収支計画、資金計画、短期借入等ですが、これについては、まず長期借入金については、年度計画の中では目標として、長期借入金については平成22年度は28億円以内という目標を掲げていたわけですが、これは、さらに内容を圧縮して17億7,000万円に圧縮をしたということです。ただ、実際に借り入れる時期が、22年度中ではなくて23年度に繰越しをすることになりましたので、結果的に、22年度については長期借入金の借入れはなかったということでございます。これに伴い、年度当初に170億円ほどあった長期借入金ですが、これが155億円ほどに圧縮されています。それから、短期借入金についても、年度計画の中で万が一の場合には借り入れる枠を設けていましたが、これも特に借り入れる必要がなかったことで、22年度の借入れはございませんでした。一方、寄付についてですが、新たな財源を確保するという観点から、寄付受入規程という国時代にはなかったものを整備できたわけです。これについて周知をすることによって、民間からの寄付受入れを開始して総額で1億4,480万円の寄付を22年度においては受け入れることができました。そのほか、民間企業治験あるいは共同研究にかかる外部資金として、18億6,700万円の受入れ、また、国等の競争的研究費ということで、厚労科研、文科省の科研費などの競争的な研究費について積極的な申請を行いまして、総額53億9,000万円ほどの研究費を受け入れたということがございます。
 最後ですが、主務省令で定める業務運営に関する事項として、いくつかのものをここに掲げています。フラッグを掲げるということは先ほどお話がありました。それから、特に職員の採用ですが、一旦採用したらそのあとずっとということだけではなくて、常勤職員の中でも任期付きの職員の採用といった新しい取組も始めました。そういった新規の職員採用について、候補者をすべて理事長が面接の上で決定するという仕組みの中で職員の増員を図っています。また、研究所長、人事部長、人事課長等の幹部職員については、採用に当たって公募を実施したところです。いま少し触れましたが、適度の緊張感を持って業務に従事してもらうためには、一旦採用したらあとはあまり働かなくてもいいということではなくて、きちんと働いていただく意識、適度な緊張感を持っていただくという意味で、常勤職員として採用する職員については任期を付すという取組を新たに始めているところです。
 障害者雇用については、国時代は厚生労働省全体の中で雇用率がカウントされていたわけですが、独法になって、それぞれがどれだけ雇用しているかということが対外的に出てくる状況になりました。その中で、本来2.1%の法定雇用率が必要なところを、蓋を開けてみましたら0.66%という非常に低いパーセントだったわけでございます。雇用数にして17人の新たな障害者を雇わなければいけないという問題に直面しまして、22年度中に努力して3名雇用し、また、23年度4月に新たに知的障害者の雇用を進めていこうということで5名の職員を採用しましたが、引き続き、まだ雇用しなければならない職員数が不足しているという状況にあるということでございます。あと、いろいろな情報を対外的に公表していこう、患者目線から考えた情報公開を進めていこうということで、ホームページや記者会見を通して病院の治療成績あるいは先進医療の提供情報等について積極的に情報発信をしているということでございます。
 あと2つ出ています。特に、経費削減という観点もありますが、国時代に予定されていた施設・設備整備については、独法になりまして改めて新体制の下で必要性を検証して、必要性の乏しい一部の施設整備は取りやめることとしたといったようなことを行って、経費削減等にもなっています。あと、情報開示ということで、理事会の議事録もホームページで公開する、あるいは不祥事案も隠さずに公表するということで、隠蔽のない業務方針がセンター全体にわたって 浸透してきているというところでございます。以上でございます。

○永井部会長
 ありがとうございます。ご質問いかがでしょうか。

○三好委員
 2点あるのですが、1点は、給与の基準を従来の年功序列から変えられたというところです。具体的に評価制度などを変えられて、給与体系を変えたのか。いまは高いとか低いとかは関係なくて、従来と変わってどのような評価体系にされたかというのが1つです。

○国立がん研究センター理事長
 評価委員会を作りまして、なかなか満点の評価制度はないのですが、まず自己評価をしていただくと。研究所の人と病院の人と看護師さんと違いますが、いずれにしても3つぐらいの項目で評価していきます。上司が評価すると。その評価委員会で上司と本人が当たっていればまず問題ないだろうということなのですが、あまりにも違っている場合は、その関係者を委員会に呼んで、上司が違うのか本人が違うのかということをきちんと評価して、すごく評価がよかった場合にはAAというのを何人かにいたしまして、昇給の基準にしていきました。国立大学が全部法人化になったときに、各大学でやり方が違いますが、そのインセンティブを付けるということで、従来の年功序列で上がっていくやり方よりは、そちらのほうがモチベーションが上がると考えたので、そのような方法をとりました。

○三好委員
 ここに中期計画があって、年度計画があると。最近の企業だと、ブレークダウンしていって個人の評価につながっていくのですが、そういうシステムにはなっていると理解していいのですか。それに関連して月次評価というものを導入されたので、月次評価はどの程度の単位まで単位の組織長が認識できるのか。その辺の仕組みはどうなっているのかと疑問に思ったのです。

○国立がん研究センター企画経営部長
 いま言われたように、中期計画があって、年度計画があって、その年度計画に基づいてそれぞれの職員が年度計画に照らし合わせて業務を執行していくということになっています。そのときに、業績評価をするときには、計画を意識しながら自分としてはこういう点について頑張っているのだ、ということを書いてもらうことにしています。それを踏まえて業績評価を行い、それが処遇に反映されるという仕組みになっているということでございます。

○国立がん研究センター理事長
 正直なことを言いますと、私もまだ非常に悩んでいます。従来の公務員制の給与体系から、独立行政法人になって何とか自立しなければいけないので、給与体系は非常に大事なので、そこを、公務員制度もわかっていて、そうはいっても、退職金等々の積立てがありますので、民間にすぐに移行するわけにいきませんので、緩やかにと。いま私が事務にお願いしているのは、子供を産んで、育てて、家のローンが終わるまでは、生活ができなければならないので給料はやるけれども、そのあとは、大体50歳前後だと思いますが、本当に頑張っている人は上に上げて、頑張らない人はそのままとか、下にと。これをトータルの人件費の中で動かしていくやり方を、大きく筋としてはやってくれと。ただし、一気に変えると大混乱を起こすので、公務員の制度の給与体系を知っている人を、4月から空いていた人事部長に迎えたのです。委員のご質問は非常に具体的なことなのですが、まだ試しで、また変えなければいけないと思っています。何とかみんなが頑張れる、けれども、やはり生活をしなければいけないので、普通にやっている人には生活ができるような給与体系にしたいと。いままで公務員として悪いと言われているところは変えなければいけないと思っていますので、そのような変え方にしたいと思っています。

○永井部会長
 収入は442億円。これは研究所と病院を合わせてだと思うのですが、セグメント別にはどうなっているのですか。

○国立がん研究センター企画経営部長
 概要の128頁は、年度計画との比較になっているものです。セグメント別については、財務諸表をご覧いただきますと、ここは必ずしもセグメント別になっていませんが、損益計算書が5頁に出ています。経常収益のところで、全体で442億円の経常収益があるわけですが、この中でいちばん多いのは業務収益の中の医業収益です。これが314億円ほどございます。それから、研究収益が42億円ほどあると。これらが非常に大きな部分になっています。セグメント別に見ますと、同じ資料の24頁をご覧いただきますと、それぞれのセグメント情報ということで、研究事業、臨床研究事業、診療事業、教育研修事業、情報発信事業、法人共通の部分に分けまして事業収益がここに出ています。

○永井部会長
 これが平成21年度に比べてどうだったのか、それぞれについての数字はわかりますか。

○国立がん研究センター企画経営部長
 まず、21年度は国時代なもので、国時代の会計区分そのものが現在とは違っていますので、ちょっと比べることができなくなっています。

○永井部会長
 わかりました。

○和田委員
 いまのに関連してなのですが、評価シートの93頁に。

○国立がん研究センター企画経営部長
 この93頁と先ほどの事業概要説明資料の128頁が、一応リンクする形になっています。

○和田委員
 これが25.8億円になったけれども、その原因は収益の増加と費用の削減ですと。そうすると、これは足し算をすると45億円ぐらいですか。

○国立がん研究センター企画経営部長
 これは年度計画と比べての数字になっていますので、年度計画に比べて収益は26億円ほど多かったということです。それから、費用については、当初年度計画で予定していたものよりも、人件費、材料関係では11億7,000万円ほど費用として多かったけれども、一方で経費削減で12億円ほど削減できていると。その結果として、年度計画に比べて、これだけの出入りがあった中で、収支差としては、当初3億1,000万円と予想していたものが25億8,000万円になったと。そのように見ていただければと思います。

○和田委員
 計算をすればわかるのですが、ここに書かれているこのままの収益の増加を足し算をして、費用の減少を足し算をしただけでは、これは45億円ぐらいになってしまう。人件費が増加しましたというようなことをここに書かないと、当期利益25.8億円の説明になっていないのではないかというのが1つです。これをずっと読むと、何か間違っていると読めてしまうので。

○国立がん研究センター企画経営部長
 これは確かに費用の削減だけではなくて、増加の部分は書いていないといったことがありますが、全体像を必ずしも示せていなくて、代表的なものを示させていただいているということになります。

○夏目委員
 人件費を、アクティビティをよくするために体制強化で10億円増やしましたといった要素がこの中には書いていないから、いま和田委員が言われたように、収益の増加と費用の削減を単純に足すと45億円ぐらいになるはずなのです。それが25億円でとどまっているのは、ほかに20億円ぐらい増要素があると。そのうちの10億円は人件費の増だというのはほかで書いてあるのですが、ほかは何で10億円ぐらい増があるのか。

○国立がん研究センター企画経営部長
 例えば収益の中の△で書いてある部分がありますが、これが評価シートのほうには書いていないと。代表的な増要因だけを載せましたので、そこを加味していただかないと数字が合わなくなってくると。

○夏目委員
 これを足したら、全部で35億円の収益の増でしょう。マイナスのことなど1つもないでしょう。それで、費用の削減で12億円でしょう。35億円と12億円を足せば、どうしても経営的には47億円ぐらい良くなるのではないですか。ほかに増要素があるのがここには出ていません、というのならわかりますが、当初計画よりも25億円良くなったことが、この収益の増加と費用の削減で説明がつくということにはならないでしょう。

○国立がん研究センター企画経営部長
 説明が十分できなくて大変申し訳ないのですが、先ほどの評価シートとポンチ絵との違いですが、評価シートのほうに書いていないものが確かにこちらにはありまして、このポンチ絵を見ていただきますと、先ほど言いました収益の中の△の部分と、費用増に絡む11.7億円の部分が評価シートのほうには書いていなかったので、説明が十分ではなかったのだと思っています。失礼しました。

○夏目委員
 ほかにもいくつかあります。1つ目は、先ほどもう議論があったのだろうと思うのですが、総人件費改革に向けた取組ということで、評価シートの83頁です。総人件費の改革の取組が適正かどうかといったようなことは、政・独委も評価の視点にしているし、厚生労働省の評価委員の評価の視点にもなっていますので、非常に大きな項目なのですが、総人件費改革に向けた取組としてということで、技能職等々3つありまして、700万円の削減となっているのです。あまりにも少ないのですが、これは、たまたま22年度は技能職の退職はほとんどいなかった、給与カーブの変更は、先ほどあったのかもしれませんが、実施したのだけれども、まだ効果が出ない、特殊業務手当で手当化したので、結果的には人件費は下がらなかったといったようなことなのか。総人件費改革に向けた取組の実績が700万円の削減ということなので、その辺はどう理解したらいいのかというのが1点目です。
 2点目は、評価シートの87頁の建築コストの適正化ということです。ここもいろいろな努力をされているのですが、例えば先ほど聞いた循環器センターは、国時代、21年度に比べて建築コストを約20%削減したという実績が出ているのですが、がんセンターのほうはここに書いてあるような削減額は何パーセントぐらいの削減と理解したらいいのか、というのが2点目です。
 3点目は93頁です。中期計画の中期目標になっている一般管理費に関してです。これは循環器センターでもお聞きしたのですが、中期計画の最終年度の5年後に15%という目標を、循環器センターはもう超えてしまったのですが、がんセンターも19.1%と超えてしまったと。これは、そもそも15%の目標自体が甘かったということなのか。これからどうされるのか。この目標はもう実現したということで終わりということなのか。
 4点目は非常に面白いので、理事長に直接お聞きしたほうがいいのかもしれませんが、評価シートの99頁です。ガバナンス、内部統制の組織構築ということで、弁護士の先生を理事長特任補佐として常勤で任用するということで、すべての重要案件に関与させる体制を構築したという非常に興味深い体制なのですが、弁護士の先生を常勤で任用して日常の業務はどうされているのか。また、この特任補佐にはスタッフは付いているのか。内部組織、例えば総務部とか法務グループなどがあるのだろうと思うのですが、あるいは監査室といったところとの関係はどうなっているのか。質問の数が多くて恐縮なのですが、以上4点です。

○国立がん研究センター企画経営部長
 まず1番目のご質問ですが、初年度700万円になっているというのは、確かにご指摘のとおり技能職の退職者が少なかったということと、もう1つは、独法移行時に給与カーブの変更をしたことによります。これによって当然のことながら給与は下がることになるわけですが、経過措置として3年間の現給保障がされているという部分がありまして、この関係で数字が出ないということです。もちろん長期的には出るわけですが、22年度についてはそういったことで、トータルとして700万円の削減にとどまっているということでございます。
 3点目のご質問で、93頁の一般管理費の関係ですが、これは、最終年度において平成21年度比15%以上削減と書いてあります。こういった一般管理費についても、年度によって増えていくものなどが当然あるわけですので、そういったことで、仮に今回15%を達成していたとしても、それが最終年度においてどういう状況になっているのかというのは、まだ未知数な部分があります。これは、もう達成しているというよりも、むしろ5年後にどうなっているかということが最終的には評価されるものだと私どもは思っていますので、引き続き努力していくことだと思っています。

○国立がん研究センター財務経理部長
 2つ目の建築コストの適正化ということですが、これまでの国時代はある程度参考としていた資料がありましたが、法人になりまして、民間等の手法を取り入れた形で、業者側の提示額をそのまま丸呑みするのではなくて、物価資料や民間等で大体の査定額等を考慮して予定価格を作成するということで、コスト削減を図ったものでございます。

○夏目委員
 大体、目の子で、循環器センターは2割と言っていたのですが、例えば国立病院機構の話をすると、国時代に比べて5割ぐらい削減したという報告が過去にされているのです。がん研究センターの場合は建築コストがどのぐらい下がっているのか。それは今日でなくてもいいです。あとで結構です。

○国立がん研究センター理事長
 1番から全部お答えします。まず人件費に関して700万円ですが、これはミッションを、私自身は総人件費を大学時代から1%でずっとやってきましたので、人件費を圧縮しようというのはよくわかるのですが、がんセンターがミッションを果たすためには、現場の実働部隊に関しては人件費を上げる、そのかわりに、そうでないところは削っていくということは、いま先生がおっしゃったとおりのことをやっていきたいと思います。700万円ですが、実は、ある方が退職金をボコンと持っていってしまったのです。人件費は5,000万円か6,000万円は減らせていたのです。4月1日に辞めた方がいらしたので、退職金がここで引っ張られたのです。委員がおっしゃるように、今後も人件費の圧縮はしていくつもりです。
 2番は建物ですが、87頁を見ていただきたいと思います。今年は新たに建てたものがないのです。実質あるのは、契約を結んだものがありまして、いま工事が始まっているのはたった1つです。それは、87頁にありますように、中央病院のサイバーナイフ棟を契約によって従来の価格と比べて20%近く下げました。もう1つは、そこに入っている機械が、直線型の加速装置という中性子を出す放射線の機械なのですが、それは200億円の開発費をただでいただくことになりました。それは寄付していただくのですが、そのようなことで、実は、目に見えないところではプラスになっています。
 3番目の一般管理費は、おっしゃるように15%はもともとの目算が甘かったのではないかと思いますが、国立がん研究センターとしては19.1%も達成してしまったのですが、今後もこの一般管理費はさらに圧縮をしていくと。私自身は書類を見ていて圧縮できると感じていますので、これはさらに圧縮していこうと思っています。できると思っています。
 4番目の弁護士さんのことなのですが、これは、スタッフはいません。監査室は法律の専門家ではないのです。事務的には、いままで公務員のいろいろな職種をやってきた方で、法律を持った方がやっているわけではないので、その監査室の職員がこの弁護士と相談をしながらいろいろな事案を解決していっているということですが、私自身もこの契約に関して非常に疑義がありますので、いま、その弁護士さんとは相談をしているところです。委員のご指摘のとおりだと思っています。

○和田委員
 ちょっとしつこいかもしれませんが、一般的に、この政・独委評価の視点にも入っているように、総人件費の経過年数に応じた取組が順調であるかについては、どうしても評価の対象にせざるを得ないのです。ここのところを法人としてはどのようにご説明になるか。この評価委員会だけではなくて、国民に対してどう説明をするのか。一方で総人件費改革がありながら。いいとか悪いとかというのはまだ判断の外なのですが、私どもとしてもなかなか悩ましいところもありますので、お聞かせいただければと思います。

○国立がん研究センター理事長
 いちばんの問題点だと思っています。独立行政法人になったときに国民に対して我々がいちばんやることは何かと考えますと、限られたお金の中でいかにアクティビティを国民に還元するかだと考えています。私自身は、これだけの書類を全部見ました。先ほど夏目委員も、これをずっと見ているのかとおっしゃいましたが、なぜ見たのかといいますと、どこが削減できて、どこが削減できないかを見たのです。それが書類を全部見た理由です。
 122頁をご覧ください。事務職が、常勤が57、非常勤が66、派遣・委託が153です。和田委員はこれをどう見るか。私が解釈したのは、実際はこの153は従来は運営費として表に出ていたのです。派遣は人件費ではないのです。ですから、実際は事務職は、ほかから人を借りない限り、できていなかったのです。したがって、この派遣会社に払っている運営費を人件費のほうに回して、実際は人件費が増えたように見えますが、全体の中から見れば、使っている全体は減っている。私は派遣が全部悪いと言っているわけではないのですが、やはり仕事のモチベーションが落ちるのです。がんセンターはプロフェッションの集まりですから、そうなりますとプロを育てなければいけないということで、この派遣の人たちを常勤化していったのです。したがって、見かけ上は人件費は増えているように見えるのですが、全体の中ではお金を使っていません。そのように国民に説明するしかないと思っています。人件費を数字の上だけで減らしたということでは、独立行政法人はアクティビティは落ちると思う。そうなると、国民に対して本当のミッションを果たせないことになりますので、見かけ上は増えているのですが、実際はこれは減っているのです。例えば派遣会社に払う分が運営費が減っているのです。ですから、運営費が減った19.1%の中には、従来は人件費として計算しなければいけなかった派遣費用が入っている。ですから、名目のディストリビューションは人件費が増えたように見えるだけで、実際は増えていない。最初からこれを全部人件費と計算すれば、とんでもない人件費をもともと使っていたのです。ですから、その人件費をディストリビューションを変えただけです。もしも人件費を減らすのであれば、業務を何もしないで怠けていれば、いちばん人件費は減るのです。そうなったら、国民から委託されている我々の業務は、最も大事な眼目ができなくなる。そうなれば、日本にがんセンターがなくなるとなれば、国家の柱が1本ずつ折れていくと同じです。見かけ上の人件費ではなくて、もともとこれは全部人件費だったのです。実は、この中でやり繰りしているのです。ですから、増えているように見えていますが、実は人件費は増えていないのです。減った分が一般運営費のほうの19.1%にいっていますので、アクティビティを上げるのであれば、そのように説明するしかないのではないかと思います。実際に、こういう人数でやっていたのです。

○和田委員
 ご説明はわかりました。おっしゃるように、こちらの法人と全く逆のことをやりまして、職員を業務委託のほうに人件費から振ってしまうような法人も出てきています。人件費だけ比較しても意味はない、人件費と業務委託費との合計で対前年比どうだと言っているというような意見も出てきたり、いろいろするのですが、評価シートあるいは実績報告のようなもので挙がってくるのでしょうか。ここに、いまおっしゃられるようなことが書かれていれば、そのような説明のしようがありますよね。

○国立がん研究センター理事長
 数字は出してありましたよね。

○和田委員
 それから、ここに書かれている?から?まで、人件費増というのが、従事者を増員した、手当を引き上げた、医師手当の改善をしたという辺りのところになっている。ほかの法人を見ると、それを見直したというのは△でいくらと出てきているのです。でも、これは+で増えたように書かれている。増えているのですからいいのですが、それによる効果、例えば収益がどうであったか。人を10人増やしても、その人件費に見合う収益が上がっている場合には、そういう書き方がしてあれば、おのずとそういう評価の仕方ができると思うのです。

○国立がん研究センター理事長
 もうちょっとわかりやすく作ればよかったのですが、129頁をご覧いただければと思います。インセンティブを付けたところがどういうアクティビティを上げたかといいますと、129頁に手術件数が入っています。これはがんセンターの眼目で、最初に手術をしますので、これが入口になります。お薬から入ることもありますが、がんの場合はまず手術が最初のスタートになりますので、21年度と22年度では手術件数は増えていますし、病床稼働率は1ベッドで年に大体1,000万円と言われているのですが、それが実際に中央病院で増えていますし、もう1つは、これは医療安全にかかわって、病院の生命なのですが、130頁にありますように、従来、プロの職業であるにもかかわらず、看護師の離職率が非常に高かったのですが、それが、このインセンティブにしたお蔭で、中堅層が残ってくれるようになったのです。中堅層が残るということは、従来がんセンターは、新人かすごい人という感じで、真ん中のちょうど教育をする連中が、東大病院などはわかりませんが、その離職率が非常に問題だったのですが、それが一気に下がっていますから、クオリティは完全に上がっている、国民に対してフィードバックできていると考えています。レジデントも、私がいくまでは定員割れだったのです。30人ですが、3次募集までして全国から25人もレジデントが来なかったのです。それが、こういうことで、1次募集だけで定員オーバーになったということで、我々が実際に患者さんに接したりする中身が上がっていますので、そういう効果はある、つまりアクティビティは上がっていると考えていただいてよろしいのではないかと思っています。よろしくお願いします。

○永井部会長
 最後に、今日は発言がないので、中釜先生に。インパクトファクターがすごく高い事案がたくさん出ていますが、これはという研究実績、これが昨年度のヒットでしたというものを、1つ2つご紹介いただけますか。

○国立がん研究センター研究所長
 1つは、ネイチャーメディスンに出したものです。これはまだ動物モデルの段階ですが、白血病のステムセルの阻害によって急性白血病、骨髄性白血病の発症を予防できるメカニズムを解明しました。いまは、それに向けて実際に臨床展開できるような共同研究についても進めています。これは1つの大きな成果です。そのほかにも、セルとかネイチャージェネティクスという論文も毎年1、2本出ていますので、これは継続して進めていきたいと思います。

○永井部会長
 今回から論文数と引用数まで全部調べていただいて、やはりがんセンターが抜きん出ているので、是非これを落とさないように頑張っていただきたいと思います。

○国立がん研究センター研究所長
 そうですね。はい。

○永井部会長
 よろしいでしょうか。それでは、事務局から、これからの進め方についてお願いします。

○政策評価官室長補佐
 評価の記入がまだ終わっていない委員の方がいらっしゃいましたら、持ち帰って記入することもできます。その場合には、7月25日(月)までに事務局まで評定記入用紙をご提出いただくよう、お願いします。なお、お配りしている資料の送付について、ご希望の方がいらっしゃいましたら、これについても事務局までお申し付けください。

○永井部会長
 がん研究センターの先生方、どうもありがとうございました。今後の予定について事務局からお願いします。

○政策評価官室長補佐
 資料の1-6になりますが、次回は8月4日(木)の13時から、国立精神・神経医療研究センターと国立長寿医療研究センターの個別評価を予定しています。場所は、厚生労働省内12階の専用第14会議室になります。また、今日テーブルの上に、次々回8月10日(水)の9時半から開催する会議についてのご案内を置かせていただいています。こちらについては、7月27日までに事務局にファックスかメールでご回答いただければと思います。

○永井部会長
 よろしいでしょうか。それでは、長時間にわたりまして委員の先生方ありがとうございました。これで本日の会議は終了させていただきます。どうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

政策統括官付政策評価官室

独立行政法人評価係: 03-5253-1111(内線7790)

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