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2011年8月5日 独立行政法人評価委員会年金部会(第32回)議事録

○日時

平成23年8月5日(金)13:00~15:30


○場所

厚生労働省専用第21会議室


○出席者

   山口部会長、川北部会長代理、竹原委員、安浪委員、安達委員、光多委員


○議事

○山口部会長
 定刻になりましたので、ただいまから第32回厚生労働省独立行政法人評価委員会年金部会を開催いたします。委員の皆様におかれましては、お忙しい中お集りいただき、誠にありがとうございます。本日は、大野委員が欠席でございます。
 本日の議題はお手元の議事次第のとおり、(1)年金積立金管理運用独立行政法人の平成22年度個別評価について、(2)年金積立金管理運用独立行政法人の不要財産の国庫納付について、この2点についてご審議をいただきます。
 それでは、年金積立金管理運用独立行政法人の個別評価に入りたいと思います。最初に、三谷理事長からのご挨拶と平成22年度における業務実績の概要についてご説明をお願いいたします。 

○年金積立金管理運用独立行政法人理事長
 理事長の三谷です。私どもの法人は、昨年度から第2期中期計画期間に入っておりまして、今回はその初年度の評価ということになります。どうぞ、よろしくお願いいたします。お手元の資料1-1に平成22年度における取組(概要)がございますが、これにある内容につきまして簡単に私から話をさせていただきます。第2期中期計画期間におきまして、私どもに新たに課せられました最大の課題は、年金給付等に必要な流動性をいかに円滑に確保し、期日に不足なく年金特別会計への寄託金等の返還を行なうかという点にあると考えております。ご承知のとおり、平成20年度までは財政融資資金、もとの旧資金運用部から返済を受けた資金を新規の寄託金として年金特別会計から寄託を受け、各年度多いときには10兆円を超える金額を、基本ポートフォリオの達成に向けて市場での運用に回していくということが、私どもの基本的な役割であったところです。第1期中期計画の最終年度であります平成21年度には、こうした新規の寄託金がなくなりまして、逆に4兆円弱の資金を償還するということになりましたが、この年は財投債の満期償還額及びその利金がほぼ同額ありましたため、市場での運用資産の売却はごく小額に止どまったところでございます。
 ところで、第2期中期計画期間でありますが、平成21年度の財政検証によれば、期間を通じて相当多額の資金不足が見込まれており、かつ、足下のところまでを見ますと、この不足額は財政検証の想定を大きく上回って推移しております。平成22年度におきましては、特別会計への寄託金償還等が6兆2,000億円に上りまして、財投債の満期償還額、利金2兆6,000億円との差額、及びその年度明け後のしばらくの年金の支払用資金として、結果的には、年度間で合計4兆8,000億円弱の市場運用資産の売却を行ったところでございます。
 ご承知のとおり、市場では通常、資産の買いというのは歓迎されますが、売りに対しては神経質になりがちでありますし、また、私どもは運用金額が膨大でありますことから、私どもの行動自体、市場関係者からは常に注目を浴びているところでもございます。そうした中で市場の価格形成等に不測の影響を及ぼさないよう配慮しつつ、こうした多額の資産売却を円滑に行っていくことは簡単なことではございません。
 そこで、私どもではまず組織面の見直しを行い、管理部門での仕事を見直し、一部作業の外注化、兼務体制の大幅な拡充、仕事の流れの効率化等を図ること等で要員の捻出を図る一方、企画部内に資金業務課というものを新設いたしまして、キャッシュ・アウト関連事務に万全を期しますほか、調査室を増員して内外の市場動向の調査・分析の充実を図ることといたしました。また、実際の資産売却に当たりましては、市場へのインパクトの軽減を図るため、年金特別会計への寄託金償還スケジュールに配慮しつつ、平準的な売却を心がける一方、その時々の市場の動向をも踏まえ、売却対象資産を選定するとともに、状況に応じて売却額にも緩急を付ける等の対応も図ったところでございます。売却の都度、その前後の市場の動きを注意深くモニターしておりますが、結果的には市場にほとんど影響を与えることなく、スムーズに売却を実行することができたと考えております。加えて、実際には発動することはありませんでしたが、万一に備えての短期借入れの整備、すなわち主要な金融機関との間での借入れ約定の締結等も行ったところでございます。
 次に資金運用面でありますが、昨年度は外国株式、短期資産でほぼベンチマーク並、国内債券、国内株式、外国債券ではベンチマークを上回る超過収益率を達成できましたが、年度初めのいわゆるギリシャ危機と、その後の主要通貨に対する円高の進行や、年度末近くの東日本大震災後の国内株式の急落から、年度通期の結果は残念ながら2,999億円の損失、率にして0.25%のマイナスとなったところでございます。この間、昨年度は外国債券パッシブ、外国株式パッシブの運用にかかる運用受託機関構成の見直しを行い、応募運用機関、外国債券パッシブの場合には既存ファンドが4ファンドと新規応募が9ファンド、外国株式パッシブの場合には既存ファンドが6ファンドと新規応募が9ファンド、それぞれその中から最終的に既存先と新規先を合わせて各6ファンドずつ選定いたしました。また、その過程で運用委託手数料についても年度中3億8,000万円の減額を実現することができました。これは平年度ベースでは10億6,000万円、それまでの運用手数料の約6割に相当する金額でありまして、資産運用による損益に比べれば微々たるものではありますが、大きな成果であると考えております。
 このほか、昨年度中は、運用体制面で問題のあった2ファンドを解約したほか、毎年行っている運用受託機関の総合評価において、そのレベルが一定数値以下である先に対しては、従来の資金配分の停止措置だけではなく、新たに資金の一部回収を実行することといたしました。これは、新規の寄託金配分が当分の間、事実上見込めない中では、資金配分の停止が運用受託機関のディスインセンティブとして働かなくなるということから導入したものでありますが、実際に一部回収されるということになりますと、やはり運用受託機関においてはかなり大きな反響があったと聞いております。
 このほか運用委員会でも何度かご議論いただいた上で、外国株式運用の一部を、より成長力が大きく収益機会も大きいと見られるエマージング諸国の株式に振り向けることとし、昨年秋に運用機関の公募を開始し、現在その最終的な選考を進めているところでございます。
 さらにリスク管理面では、ギリシャ危機や東日本大震災後には基本ポートフォリオへの影響をチェックし、リスクに大きな上昇が見られないことを確認したほか、東日本大震災の直後には、臨時の経営会議を随時開催の上、運用受託機関、資産管理機関の状況に問題のないことを確認するとともに、業務面への影響や市場動向についての情報を共有、必要な措置を講じたところでございます。
 最後に保有資産の売却ですが、この中期計画期間中に、保有するすべての職員宿舎、2件ですが、これを売却することとしております。入居しておりました職員の理解も得まして、昨年度はそのうちの1件、横浜市にある日野宿舎を売却いたしました。リーマンショック以来、不動産価格が下落を続けている厳しい環境の中ではありましたが、幸い予定価格を大幅に上回る価格で売却することができました。以上、私からのご挨拶と、昨年度の私どもの業務実績の概要についての説明を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

○山口部会長
 ありがとうございました。 それでは、これからの評価の進め方ですが、年金積立金管理運用独立行政法人の個別評価につきましては、平成22年度の運用結果の概要について説明を行ったあとに、評価シートの個別項目を3つのグループに分けまして、グループごとに評価を行っていきたいと思います。それでは、平成22年度の運用結果の概要について、法人から説明をお願いいたします。

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役
 法人の審議役の大江でございます。私から資料1-7を使いまして、昨年度の業務概況報告をさせていただきます。資料1-7「平成22年度業務概況書」の3頁をご覧ください。「運用資産のパフォーマンス」となっておりますが、ただいま理事長が申し上げましたとおり昨年度の収益率は-0.25%でした。4頁にその額が書いてありますが、-2,999億円です。資産全体が120兆円近い規模ですので、0.25%といいましても3,000億円ほどのマイナスという金額となっております。その背景、マーケットの状況ですが9頁をご覧ください。「運用環境」ということで、(1)「経済環境」、特に国内のところ、3行目から4行目にかけて書いておりますが、ちょうど下期に入り中東、北アフリカ情勢緊迫化による原油等の資源高、円高になったり、あるいは年度末には東日本大震災の発生により厳しい経済環境となった、こういった状況の中で特に国内株式の下落が大きかったというところです。(2)「市場環境」を書いておりますが、国内債券は長期金利が低下し価格が上昇、それに対して国内株式が下落をし為替についても円高となったというところです。特に市場ベンチマークの動きにつきましては10頁をご参照いただければと存じます。
 戻りまして、7頁です。そういった単年度の動きに加えて、全体の動きです。自主運用開始(平成13年度)からの収益額の図ですが、昨年度は2,999億円のマイナスでしたけれども、平成13年度の自主運用開始以来、累積では11兆4,000億円ほどのプラスを積み上げてきております。この間、21年度に9兆円という大きなプラス、その前が-9兆3,000億円というリーマンショックのときですが、各年度とも非常に損益の動きは大きいわけですが、昨年はマイナスではございましたが、動きとしては比較的小さな動きであったのではないかと考えております。私どもとしては、長期的にはしっかりと収益を確保しているのが、これでおわかりいただけると考えております。説明は以上です。よろしくお願いいたします。

○山口部会長
 次に、個別評価に入りたいと思います。第1グループは、評価項目の1~3について評価を行いたいと思います。所要時間は法人からの説明を20分ぐらい、委員の評定と質疑は25分ぐらいで、合計45分ぐらいで第1グループ評価項目1~3「年金積立金の管理及び運用に関する主要な事項?」について評価を行いたいと思います。
 法人のほうから説明をお願いします。

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役
 使う資料は、資料1-2の「業務実績評価シート説明資料」、図を書いたものを基本にご説明します。関連して、A3の資料1-3は詳しく中身を書いたもので、それも適宜ご参照いただければと存じます。
 資料1-2の1頁の目次から簡単にご説明を申し上げます。これからご説明するのは、全体としてPart1、Part2で、Part1は運用に関するいろいろな事項が並んでいます。Part2は業務の関係ということで、内部統制や経費の話が項目として並んでいます。大きくはこの2つのパートです。
 2頁は、Part1の項目と自己評価を書いています。いま部会長からはこのPart1の中を2つに分けるというお話がありました。評価項目1が運用の目標、評価項目2がリスク管理、評価項目3が運用手法、財投債の管理及び運用、ここまでをただいまからご説明申し上げます。ここまでは、自己評価を「A」としています。3.「透明性の向上」、4.基本ポートフォリオ、5.市場への影響、5.(2)「年金給付のための流動性の確保」は、また後ほどご説明します。なお、最後の評価項目7が自己評価「S」です。
 それでは、ご説明申し上げます。1頁は、大きな基本的な方針です。左下に小さい字で、個別評価シートP6~P8と書いてありますが、資料1-3のA3の資料の頁を書いています。1頁に書いてあるのは基本的な枠組で、第2期の中期目標を基に、私どもは左の?基本ポートフォリオを策定します。それから、右の?基本ポートフォリオに基づく管理を行う。その際、ベンチマーク収益率の確保という目標があります。そのための?具体的な行動を取っているというところが、10頁以下で順次出てまいります。
 2頁は、上に小さい字で「評価の視点」と書かれています。私どもの運用方針を定めている「管理運用方針」については、少なくとも毎年1回検討を加え、必要に応じて速やかに見直しを行ったか。これが評価をいただく視点です。管理運用方針には、左の四角に書かれてあるような運用目標等々を記載していますが、右にあるように昨年度ですと管理運用方針の見直し項目があります。その中身は平成23年4月1日改正、改正自体は昨年度末にして、実施を今年度早々していますが、中身は運用受託機関の総合評価をより有効に活かすということで、総合評価が一定水準に満たない運用受託機関について、資金の一部回収を行えるようにすることを明示したということです。これによって、運用能力等の点で問題になる運用機関からは、資金の一部回収をすることとしています。
 これとの関連で3頁の評価の視点をご覧いただきますと、運用機関の評価について適切な指標を設け、それに基づいて評価をしっかりやっているかです。運用機関の管理は左の図にありますように、運用機関との間では毎月、月次の報告を受けています。それで中身に問題等がある場合は随時ミーティングを適宜やっていますし、年に1回運用機関を評価するためのミーティングをやって、さらに年末に向けて半年程度経ったところでリスク管理ミーティングをやるというスキームにしています。そういった中で、いま申し上げた運用機関に対するミーティングを踏まえた評価で、右側の平成22年度です。総合評価の対象はそこに記載のとおり、パッシブ運用機関、債券アクティブ運用機関、株式アクティブ運用機関等で、定性評価、定量評価それぞれを行って、その中で評価が一定程度に達しなかったところは、資金の配分停止と一部回収です。国内債券アクティブ、国内株式アクティブ、外国株式アクティブそれぞれこういうことでやらせていただいています。かつては新規資金がありましたので、配分ということを通じて評価の低い所には配分しないということでめりはりをつけていましたが、現在は新しく配分するニューマネーがなくなってきて、むしろキャッシュ・アウトという中では評価の低い所から回収をする、そういった意味でのめりはりをつけました。これを昨年度から実行して、2頁の管理運用方針は既にやっていることを方針として明確にしました。
 4頁は、運用の目標の中の「ベンチマーク収益率の確保」です。評価シートは、左下の頁に書いてあるとおりです。ここでは数値目標としては、各年度において各資産ごとのベンチマーク収益率が確保されるよう努めるということです。評価の視点は、そういった収益率が確保されるよう、運用機関の管理等をしっかりやっているかといったところです。平成22年度の具体的な数字は左下の表のとおりです。国内債券がプラス0.14、国内株式が0.19、外国債券が0.32と、いずれもプラスを確保しています。外国株式のみ-0.08、短期資産が0.01ですが、真ん中の薄く網掛けをしたところの※は、ベンチマークと私どもの収益率の差が±0.1未満の場合には、概ねベンチマーク並みと評価するということです。パッシブ運用の場合でも、売買のコストあるいは評価する時価の差等によって、0.1%程度はプラスマイナスが生ずるということです。したがって、5つの資産ですと真ん中にあるように国内債券、国内株式、外国債券がプラスのαを獲得できた。それから、外国株式と短期資産は、概ねベンチマーク並みの収益と評価をしています。
 5頁は、「ベンチマークの設定」です。評価の視点をご覧いただきますと、ベンチマークについて適切な市場指標を設定しているかですが、既にベンチマークについては下に記載のとおり設定をしてきており、昨年度の場合、特段の変更はしていません。
 6頁からは、「リスク管理」の項目に入ってまいります。まず、「年金積立金全体の乖離状況の把握等」といういちばんの基本の項目ですが、評価の視点は、乖離状況を少なくとも毎月1回把握し、必要な措置を講じているかです。平成22年度の乖離状況は、下の表に載せています。積立金全体の基本ポートフォリオの資産構成割合は左の欄にありますように、国内債券が67%、以下11%、8%、9%、5%という構成割合がありますが、いちばん右端の乖離許容幅という欄をご覧いただきますと、67に±8、11に±6といったものが乖離が許される範囲内ということです。昨年度の1年間の各月末のデータを載せていますが、大体1%前後ぐらいの乖離。年度末にかけて若干そこが拡大した資産もありますが、基本的に大きな乖離がなかったということで、問題がないことを確認しています。
 7、8頁は「対複合ベンチマークの超過収益率の要因分析」です。これは評価の視点にも書いていますが、先ほど申し上げた基本ポートフォリオの構成割合、例えば国内債券67のウェイトどおりに、パッシブ運用、市場ベンチマークどおりのリターンであった場合と比べて、私どもの実際の収益率にどういう差があって、それがどういうように生じているかというのがここでのリスク管理で、これをしっかり認識をしておくことです。これを見ていただくと、7頁の真ん中の表の個別資産要因?で合計で+0.12というのがありますが、これは4頁で申し上げた資産ごとに私ども運用機関等で収益がプラスを確保できていますので、そういったものが積み上がってこういうことになっています。それから資産配分要因?で若干のマイナスが出ていますが、6頁で申し上げている資産構成割合、基本ポートフォリオから若干乖離が出ていましたので、そこが出ているという認識です。
 9頁からは「各資産のリスク管理」です。ここの評価の視点は、各資産ごとに定期的にモニタリングをするということです。9頁の下に書いている図は、トラッキングエラー、各資産のアクティブリスクの程度です。モデルから出てくる推定と実際のデータから計算できる実績ですが、いずれもアクティブリスクとしては大きな変化がなく、またその範囲も大きいものではないことを確認しています。
 10頁は、株式アクティブファンドのβ値、あるいは債券ファンドのデュレーションということで、市場との乖離の程度はβ値の場合は市場どおりであれば1となりますので、そこから若干乖離している程度。それから修正デュレーションの対ベンチマークの乖離、金利リスクに対する感応度を示すもので、0がベンチマーク、市場どおりで、そこから若干の乖離が生じているということを確認しています。いずれも問題のないものでした。
 11頁は、その他のリスク管理です。その他、信用リスク、カントリーリスク、取引先がデフォルトしないカウンターパーティーリスク、市場での売買のしやすさという流動性リスクといったものもモニターをしています。
 12、13頁からは、各運用機関、資産管理機関のリスク管理です。12頁は「運用受託機関」です。評価の視点は、運用機関に対してガイドラインを示しているか、しっかりモニタリングをしているか、それを踏まえて適切な措置を取ったかです。私どもは運用機関に対しては、守るべき運用ガイドラインを提示しています。併せて、その運用機関に対するベンチマークを設定する。それを踏まえて、それぞれリスク管理指標、目標値の遵守状況等の確認をします。その結果、ポツの2つ目ですが、実績は若干軽微なガイドライン違反が発生していますが、問題がないということで再発防止策の適正な実施を求めるとともに、口頭で厳重注意をしたといったものがありました。3月の東日本大震災が発生した際には、ちょうどマーケット終了直前に震災が発生していますが、その後通常どおりの業務が行われているのか、システムのバックアップ体制等がどうなっているのかといったものを確認して、問題がないということを把握しました。
 運用体制の変更等については、運用機関の場合は誰が運用しているのか、どういう体制で運用しているのかが大変重要ですので、主要メンバーについては私どもは事前に報告を受け、登録をして、資料として把握しています。主要メンバーが変わる場合には事前にご説明を受けることにしていますが、運用体制変更の実績は細々したものも入れて、記載のとおりの件数がありました。ただ、このうち国内株式アクティブの1ファンド、外国株式アクティブの1ファンドについては、昨年度、事前にご報告いただいた際に運用体制の変更内容に重大な問題があったということで解約をしたことがありました。
 13頁は、一方、各株や債券といった証券を管理する信託銀行、資産管理機関に対するリスク管理です。これも運用機関と同じようにガイドラインを提示し、報告をいただいたりモニターをします。その結果、実績は運用機関とほぼ同様で、震災の際には運用機関と同様、いろいろな点を確認しました。いちばん右の資産管理体制の変更については、変更後の体制に問題がないことを確認しています。
 14、15頁は、インハウス運用です。インハウス運用は、国内債券で自ら取引をしています。枠組は15頁をご覧いただきたいと思いますが、インハウス運用リスクは運用機関と同じように、私どもの中でも運用部が運用ガイドラインを示していて、いろいろなデータの報告も受け、リスク管理のモニターをし評価もするということで、一種の内部牽制機能を働かせるという仕組みにしています。14頁は、そこにあるように取引先の評価といったものも運用部がやることを通じて、しっかりとモニター、リスク管理をやっています。
 16頁は「運用手法」です。パッシブ運用を中心とした運用手法、評価の視点としては、各資産ともパッシブ運用が中心となっているか、収益確保あるいは運用の効率化のための運用手法の見直しを行っているかということです。真ん中の表にあるように、全体では大体8割がパッシブで、パッシブ中心の運用を行っています。
 2点目の収益確保や運用効率化の取組みは、1つ目の項目は収益機会の拡大を図る観点から新興国、中国、インド、ブラジルといったエマージング国への株式投資、こういうことをやるエマージング株式運用機関の公募を開始していて、現在その運用機関の選定作業中です。2つ目は最初に申し上げた運用機関の評価を行いまして、評価で一定水準に達しなかった所から一部回収を行う工夫もしています。それから、インハウス運用の取引先の追加といった効率化を図っています。
 17頁の運用手法の2点目は、「運用受託機関の選定」があります。評価の視点は、第1に運用受託機関を適時見直しているか。第2に、しっかりそういった評価をしているかというところです。左側にあるように、私どもは運用機関はすべて公募をして、評価項目に基づいて評価をすることにしています。右側にあるように、平成22年度の実績ということで、冒頭に理事長からも申し上げたとおりですが、昨年度は外国債券パッシブ運用、外国株式パッシブ運用について公募をして、そこに記載のとおり新規の応募もあれば既存のものもありますが、そういった中からしっかりと評価をし、選定を行うことをしています。その際、左下にあるように、特に今回のポイントは、従来は運用委員会にもご報告はしながら選定作業を進めていましたが、第2期の中期目標の中で新たに手数料を含む総合評価を踏まえ、運用委員会でご審議の上選定ということで、運用委員会が個別の運用受託機関の選定に関与するという仕組みが始まりましたので、その初めてのものということで対応したのが右側のパッシブです。エマージング株式運用は、先ほど申し上げたとおりです。
 18頁の「財投債の管理及び運用」が最後の項目になりますが、評価の視点は財投債の管理運用が適切に行われているか等です。ご承知のとおり、財投債については、かつては財投改革の中で引き受けをしていた時期がありますが、既に引き受けはやめていますので、現在はそこのグラフを見ていただければわかるように、満期まで償還をして、それが減っている。そういったものをきちんと管理している状況です。私からの説明は以上です。よろしくお願いします。

○山口部会長
 ありがとうございました。委員の皆様は、評定記入用紙へ評定等の記入をお願いします。質問等がありましたら、適宜ご発言をください。

○竹原委員
 事項の1の管理・運用の基本的な方針と、項目3の運用手法の両方に関わる問題です。平成22年度に関しては、国内外の株式アクティブ運用でプラスのαが取れているわけですが、平成18年以降5年間の長期で見ると、必ずしもアクティブ運用から期待されるような超過収益率が取れていない事実があるわけです。そのときに資料1-7も拝見すると、大体トラッキングエラーが国内外で2%程度のファンドが多いかと思いますが、運用の基本方針において運用機関に対して、トラッキングエラーの水準を指示しているのか、していないのかをまず1点教えてください。
 仮に2%くらいのトラッキングエラーだとすると、インフォメーション・レシオの水準を考えても、そもそも20%程度の組入比率で、αはほとんど運用手数料まで考えると期待できないのではないかという気がしますが、その点についてご意見をお聞かせください。

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役
 まずトラッキングエラーの水準を示しているかということですが、私ども運用機関を採用する際に、各運用機関で当然、運用手法から導き出せる、大体この手法というのは、これくらいのトラッキングエラー、α、したがってIRを目標とするということでまずご説明をいただいた上で、採用を決めた際にリスク管理指標としてこれぐらいのトラッキングエラーをガイドラインの中で示す作業をしているというのが第1点目です。
 第2点目は、αが取れていないお話については、正直を言うとサブプライム、リーマンの際にかなりマーケットが荒れましたので、そこでαを取るのが難しかった時期が続いて、その後リーマンの回復期以降、ある程度安定的にαが取れてきているのかなというのが状況です。その上で、どのような水準のαをアクティブ、パッシブ全体で狙っていくのかですが、私どもは株だけでも10兆円ぐらいのサイズで、アクティブ運用機関でも1,000億円というサイズで、通常運用機関がやっているようなサイズに比べると大きいというところがあります。したがいまして、小回りが利くかどうかという点でいきますと、応募いただく運用機関もそうですが、これぐらいの規模でものすごく高いアクティブリスクで、高いリターンを狙う手法は馴染みにくい点があります。したがって、私どもが実際に応募していただいた所をしっかり見ていく過程で、私どもが信頼できるということで契約先として採用している所のアクティブリスクが、それほど大きなものにはなっていない結果になっています。全体として、私どもはアクティブだけではなくて、先生ご承知のようにパッシブ運用であっても、株ですとベンチマーク入替えのタイミングを入替えの当日にやるのではなくて、その前後をうまくずらしてαを狙うとか、あるいはコーポレートアクションでTOBに応ずるのがいいのか、マーケットから買うのがαに資するのかといったことをかなり細かく見ながらですが、パッシブ運用であっても超過収益を獲得することを期待していて、そういった全体の中で私どもは超過収益を狙っています。

○川北部会長代理
 同じような質問になりますが、外国株に関しては5年間の平均で見ても、アクティブというのは超過収益が取れていないと資料では見えますが、これに関してはどう考えられているのか。これは、ほかの機関も多分に外国株に関してはアクティブでαは取れていないと理解していますが、そうであるなら手数料の高いアクティブこそ止めてしまって、パッシブ化したほうがいいのではないのかなと思いますが、これに関してご意見をお伺いしたいと思います。

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役
 そこは、むしろ川北先生のほうが大変お詳しいだろうと思いますが、私どもは外国株式アクティブについても定期的なマネージャーストラクチャーの見直しは行ってきていますが、正直難しいのが実態かなと感じています。ただ、この間、国内以上に海外、リーマン、リーマン回復期も難しい状況がありまして、短期的にマーケットが大きく荒れていく中で、どういった手法が有効なのかを見極めていく必要があると思っています。外国株式についても、いずれまた見直しの時期が来るとは思いますが、それに向けて私どもとしても運用委員会ともよくご相談しながら、どういったやり方がいいのかというのはしっかり考えていく必要があると考えています。

○川北部会長代理
 それに関連する話で、ベンチマークとして現在外国株に関してはMSCIのKOKUSAIを利用されている。その一方で、エマージングの株式の投資を始めようとされている。このあたりの整合性と、ほかの運用機関の動きを見ていると、もう少しエマージングの比率を高くしたようなベンチマークを用いようという動きも見られていると思いますが、そのあたりに関してGPIFさんはどうお考えなのかということです。

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役
 その点に関しては、エマージングをどう見るのかということです。ただ、エマージングそのものもリーマンのときに大きく凹みまして、逆に言うとものすごい勢いでV字で回復したということもありますが、そういったエマージングをどう見るか。私どもが考えているのは、エマージング市場はそれなりに成熟をしてきて、もはや私どもは先進国のみを見ていていいのか。そういう意味でβとして見たときに、そこに厳然として存在するエマージングをどう見るのかということが1つあります。ただ、おっしゃるような意味で、もう少し大きく見込んでやってみたらどうかという議論については、私どもは基本ポートフォリオをすごく意識してやらなければいけませんので、次の大きなステップというのは基本ポートフォリオの見直しの機会に議論することがあるかもしれませんが、まず私どもとしてはそこに厳然として存在するβ市場であるエマージングを少し始めてみようというのが現在の状況で、そういったものを踏まえて今後さらに基本ポートフォリオの見直しといった中で、議論が進んでいくと考えています。

○川北部会長代理
 そういう意味では、実験的にやられると理解していいですか。実験的というのは語弊があるかもわからないですが。

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役
 言葉は大変重要でして、私どもとしては申し上げたように、そこに厳然として存在するエマージングマーケットをまず始めてみる。別に実験的にやるということではありませんが、大きくという議論は今後のさらなる課題だというところだと思います。

○安浪委員
 四半期の概況運用報告書がディスクローズされているので、四半期別の収益を見てみたのです。すると、今年度が年間で2,999億円の損失になっていますが、いちばん大きいのは平成22年度の第1四半期で-3兆5,800億円という巨額の数字が出ています。第2、第3、第4はプラスになっている。この第1四半期の前の平成21年度の第4四半期は1兆5,000億円のプラスになっていて、平成22年度第1四半期の-3兆5,800億円が今年度の赤字になったいちばん大きな足を引っ張っている原因かなと思います。これが、去年の12月と比べると、ベンチマークも平成22年度の第1四半期は非常に悪いですので、それについてどうのこうのという話はないですが、前の四半期から比べて何か要因があったのか。また、この第1四半期が大きく赤字が出たから、今期第2四半期、第3四半期、第4四半期に向けてのアクション改善案というか対策というか、そういったことを考えられたことはありましたか。

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役
 おっしゃっている趣旨は、四半期というか月次でデータは振れますので、そういった意味では資料1-7の、ブルーの業務概況書の10頁に市場ベンチマークの動きを書いていますが、もちろん国内市場、海外市場、いろいろ月次で振れるというところで、前半は正直いいまして、このときここにあるように外国株式があまり良くない。ただ、外国株式などは9頁にも書いていますが、秋にいわゆるQE2、量的金緩和第二弾を行って、むしろ回復に向かっていったということがあります。そういったマーケットの動き、それに対する海外のそれぞれの政府の対応といったもので、マーケットとしてはいろいろな数字が時々刻々、今日なども動いていますが、そういったものが出てまいります。私どもとしては、基本的に基本ポートフォリオに基づいて管理運営をしていますので、後ほど出てきますが、いまマーケットが動いているのが、基本的な構造に影響を与えるようなものなのかどうかを、短期的なリスクはモニターをして、基本ポートフォリオを変えるべきかどうかをずっとモニタリングをしているということで、昨年こういった動きがあったときにもモニタリングをして、そういった基本ポートフォリオの見直しの対応までは必要ないということを考えてきたというのが実態です。

○安浪委員
 出来事としては何か。

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役
 5月の連休の頃にギリシャ危機がありまして、ヨーロッパとグローバルにはこういった動きがあります。そういった中で、いろいろな対応をしてきたということです。

○安浪委員
 わかりました。

○光多委員
 2つお伺いします。1つ目はインハウスの運用です。私は国内債券については、ほとんどインハウスでおやりになるぐらいでもいいかなという感じもしていますが、インハウスの将来の運用方針についてお伺いしたいです。
 2つ目は細かいことで恐縮ですが、実際のベンチマーク収益率の数字がありますが、運用委託手数料を勘案すると、これから参考資料のこちらの運用委託手数料率を引けばいいということでよろしいのですね。

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役
 はい。

○光多委員
 先ほど、運用の状況が悪い所については停止又は廃止をした、回収をしたとおっしゃっていましたが、その場合の委託手数料はどういう形で処理されるのでしょうか。

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役
 まず技術的なということで、最後の委託手数料の扱いですが、当然回収をすると残高が減ってきます。手数料は資産残高に応じてお支払いをするので、残高が減った分の手数料だけは減るという仕組みになっています。
 1点目のインハウス運用ですが、私どものインハウス運用というのは手元の流動性。現に、いま年金給付のためにキャッシュ・アウトをするために市場で売却等もしていますが、そういった場合に自ら運用することとすれば、いちいち運用機関に言わずにそれだけ情報を秘とくしながらマーケットで売るということもできる。こういったことも考慮してインハウス運用をやっていますが、おっしゃっているように全部やるとなると、私どもの体制側の問題もあります。そうすると、独立行政法人としてここがいいかどうかはむしろ先生方にはいろいろサポートをいただいていますが、経費面での制約等がありますし、また全部うちでやるとなると、今度はうちが実際に売買する場合には当然、証券会社、ブローカーを使いますので、そういったところに手口がどんどん出ていく。あちこち、いろいろな所にばらけて、いろいろな情報ルートが出たほうがマーケットに対してもいいのかなということを考えると悩ましいところではありますが、そういうことで当面いまのような姿をしているとご理解をいただければと思います。

○光多委員
 全部というのは言いすぎですが、大体どのくらいまで増やそうとしておられるのでしょうか。

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役
 いまのところ、ここまで増やすという目標はありませんが、今後私どもがどのぐらいの資産規模になっていくのか。これは、おそらく国全体の制度にも関わってくる問題でもあります。そういった動きがあれば、また検討をする必要が出てくるかもしれませんが、いまの現状を維持していくところかなと考えています。

○山口部会長
 私から質問です。リスク管理の項目で、法人のほうでこの評価を「A」という形で出していますが、ここに掲げられている事項は大体定例のリスク管理業務が書かれているように思われます。評価の「A」というのは、中期計画を上回っているということですので、法人としてどの部分が中期計画を上回っているという認識をされているのかを少しご説明いただきたいです。

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役
 なかなか厳しいご指摘をいただきましたが、私どもとしてはもちろんおっしゃるような意味での定常のリスク管理もあります。ここの項目では書いてはいませんが、例えば後ほど出てくる昨年のギリシャ危機や東日本大震災が起きたときに、短期的なリスクをモニターするということをやっていて、そういったことの成果を踏まえて適切にしっかり対応できたということもあって、A評価ではないかと考えています。

○山口部会長
 カントリーリスクとか信用リスクについてのモニタリングというのも、格付け状況の確認をしているということに止どまっているように思われますが、法人として東日本大震災とかギリシャ危機といったような問題、その影響をここではシステムとか、そういったことをかなりチェックされていると出ていましたが、事務面だけではなくてマーケットの評価として、どう見ていったらいいのかといったようなことに踏み込んで、適切にリスク評価をしたかどうかといったようなことについての言及がないように思われますが、その点はいかがですか。

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役
 先生がおっしゃっているマーケットに踏み込んだというのは、先生の期待されている部分というか、もし差し支えなければ教えていただければお答えしやすいかなと思います。

○山口部会長
 これはまた別の項目でも出てくるところではあると思いますが、基本ポートフォリオの見直しを状況に変化があればやっていくということで、あとで出てくる基本ポートフォリオにも関わる話ではありますが、急激な市場変動があった場合にはそれをチェックしていかなければいけないというのが業務計画の中に入っているわけですね。それが、急激な市場変化であったかどうかといったようなことをSVモデルといったようなもので評価をされているというところで、これは別のところで話をするほうがいいかもしれませんが、そういった東日本大震災やギリシャ危機といった事態が発生したときに結果として急激な市場変動ではなかったといったような形になっている部分があります。そういう結果になったのれは、日常的なリスク管理の評価というのが必ずしも十分ではなかったためいのではないかということを想像させるようなことにつながるので、いま質問をしているということです。

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役
 詳しくは22頁をご覧いただければと思います。あとで出てくるパーツになります。いま山口先生にご指摘いただいたのは、この図のことであろうと思います。いまご指摘のあったSVモデルというのは右側の図です。これは要するに、短期的なリスクを何をもって見るのかということで、デイリーベースのSVモデルというものを昨年度から特に活用したというもので、特に上にピョコッと出ているのは国内株式のデータですが、年度末に東日本大震災を受けて株式は少し出て、すぐまた戻る。それから、基本ポートフォリオというのは下のほうに小さい数字で這っているものがありますが、こういったものを見て資産ごと、資産全体のリスクがどう変化をしているのか、それが基本ポートフォリオにどういう影響を与えるのかというのをまた昨年度からモニターを開始をしたといったところで、そういった意味でマーケットをしっかり見ていると私どもは考えています。

○竹原委員
 私も、あとでこの部分はお聞きしようかと思っていたのですが、22頁のSVモデルにしろ、従来から使われているGARCHモデルにしろ、提案されてからかなりの期間が経って、ある意味我々の中ではこなれたモデルになっている。それから、これは純資産額ベースではなくてベンチマークレベルですよね。それで分析をされたからというのは、評価の対象にはならないと思いますが、その点はいかがお考えですか。

○年金積立金管理運用独立行政法人調査室長
 22頁は確かにおっしゃるとおり、このモデルについてはかなり開発されて定着しつつあると理解していて、ただ新しいモデルの有効性というのはある一定程度の普及とか、当然そういうものの経験値も必要だろうということで、もう一昨年度になりますが、私どもとして、とりあえずGARCHをやって、昨年度デイリーデータに基づくSVをやったということです。先生のご指摘の新しいアプローチについては、いま大学との間で共同研究等を行っていて、そういう中で例えばコンディショナルバリアトリスクといった概念、あるいは相関関係であればコピュラーとか、手法について鋭意やっています。
 そこで、この図に戻って、改善ということが具体的にこの中でどう現れているかを若干補足的にご説明すると、左側のGARCHは月次データでやりましたが、我々はこれをリーマンショックのときに見たわけで、これが2008年、ちょうどポートフォリオのリスクがバブル崩壊の1.5倍ぐらいの水準に飛び跳ねたことが一応確認されています。その理由は、結局、各個別のリスク水準を見ると、外国株式は上の黒い線ですがブラックマンデーの水準、国内株式は若干重なって見づらいですが、日本のバブル崩壊の水準まで上がった。リーマンショックのときは、そういうものが同時に起こったことが非常に特徴的で、過去はそういうことがなかったということです。そういう中で、そのときの相関構造が完全に崩れて、結果としてかなりのリスク水準になったけれども、その後戻ってだんだん落ち着いてきたということです。
 そういうものが、より精密に見たらどうだったのかということでやったのがSVモデルです。これはデイリーデータ、より精緻なモデルということですが、リーマンショックのときは当然SVモデルというのは上がっています。ただ、よく見てみると2008年1月、2月ぐらいに、国内の株式がかなり反応していることもある意味で観察できるわけで、これは従来のGARCHでは把握できなかったことが、今回SVモデルにすることによって把握できたと理解しています。

○竹原委員
 そんな説明を聞きたいのではなくて、SVモデルを使ったことがリスク管理についてA評価にすることの理由なのかということを主張されるのかどうかを伺いたいのです。

○年金積立金管理運用独立行政法人調査室長
 手続論を申し上げると、このSVモデルによって実際に東日本大震災のときに我々は計測して、それを3月末の運用委員会で議論しています。このSVモデルに基づく結果を運用委員会で議論して、そのときにはまだ長期的な構造変化が認められないということで、ポートフォリオの見直しはまだいいだろうという結論を得ているという意味においては、根拠の1つになるのかなと考えています。

○山口部会長
 ほかにご質問、ご意見はありませんか。よろしいですか。
 次に第2グループ、評価項目4~7です。「年金積立金の管理及び運用に関する主要な事項?」についての評価を行います。所要時間は先ほどと同様に、法人のほうからご説明を20分ぐらい、委員の皆様の評定と質疑は25分ぐらい、合計で45分でやりたいと思います。
 それでは、法人のほうからご説明をよろしくお願いします。

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役
 資料としては19頁から説明します。19頁の「透明性の向上」です。評価の視点をご覧いただきますと、業務概況書などで理解しやすく情報公開しているか等というところです。左下のほうですけれども、業務概況書あるいは四半期運用状況報告、こういったものの速やかな公表ということです。これもしっかり出させていただいています。内容の充実ということで業務概況書、議決権行使の議案の行使状況に関するデータの充実等をやりました。ホームページのことに触れておりますが、ホームページにつきましては全面見直し、リニューアル、今年の6月にやっておりますが、昨年度からそれに取りかかったというところを示しております。
 運用委員会のさらなる透明性の向上では、1つは運用機関の選定過程についてということで、運用委員会での審議対象に加えたということは先ほど申し上げたとおりです。議事録についても、厚労大臣からの中期目標の中で一定期間経過後に公表するとありましたので、一定期間経過後ということで7年後に公表すると運用委員会で議論のうえ決めました。
 20頁は「運用委員会」です。運用委員会につきましては、22年度においては透明性の向上のために審議対象を増やす、あるいは議事録公表したというところは重ねて同じものを書いています。
 21頁で、「基本ポートフォリオ」の部分です。ここは既に第2期中期目標に沿って、第1期中期計画における基本ポートフォリオをそのまま維持することにしたところです。
 それから22頁は、先ほど来議論がありましたが、ここでの評価の視点ということでは、急激な市場変動があった場合に必要に応じて見直しの検討を行っているのかということです。第2期の中期目標からは急激な市場変動があった場合には見直しの検討を行うということで、ギリシャ危機、東日本大震災のような場合に対応してきたところです。
 23頁からが、民間活動への影響に対する配慮という部分です。こちらの(1)と25頁の(2)が関連しますので連続して説明します。(1)の評価の視点としては、資金の投入及び回収に際して、特定の時期への集中を回避するなどの適切な配慮がなされているかということ、それから民間企業の経営に対して影響を及ぼさないように適切に配慮されているかということですが、管理運用法人の投資行動の部分で、可能な限りマーケットの価格形成、民間の投資行動を歪めないように配慮というところで寄託金償還が出ております。現在私どもは年金特別会計のほうに、年金給付のために必要な資金ということで寄託金の償還を進めております。そういったものをしっかりとマーケットに影響を与えずにやるというところです。
 これに関連して25頁で、実はこの「年金給付のための流動性の確保」が自己評価「S」にさせていただいたところです。評価の視点としては、年金給付等に必要な流動性が確保されているか、市場の価格形成等に配慮して資産の売却を円滑に行っているか等々です。一番下に「必要となる多額の資金を円滑かつ確実に確保」とありますが、平成22年度の寄託金償還は約6兆2,000億円ですが、そのうち基本的には財投債の、これは満期まで保有しますのでその償還金と利金、これらは所与のものとして活用するということで、昨年の場合大体2兆6,000億円ほどありました。その差額分につきましては市場で資産を売却して回収する。一昨年度は寄託金償還がほぼ財投債の償還金、利金で賄えたということもありましたので、実質、昨年度がこういった難しい作業をやったという初年度であったわけです。
 そのための市場価格形成等に配慮した様々な措置を実施ということですが、その際に「体制・機能の更なる強化」という真ん中の図ですが、冒頭理事長から申し上げたとおり、企画部、私の部ですが、そこの中に資金業務課を新設とあります。これは資金の回収の専門担当部署ということで課を設置しました。そこで何をやってるかということですが、綿密な資金計画の策定。まず厚生労働省でいついついくらという金額が回収金額として出てきますが、そういったところを密接に連携しながら情報を集めた上で、どういった資産売却計画にしていくのかをここでプランニングをします。その際に市場動向を勘案して回収時期を分散したり、あるいは回収する運用機関からどういうタイミングでどこからいくらというのをここでプランニングします。その上で必要な流動性の確保をやっていくわけです。それをサポートするのが「調査部門の強化」という真ん中のところです。こちらも体制を強化して職員を増員しており、どういった資産を売却していくのがマーケットに対する影響が小さいか等、そういったものを見るために市場動向の調査、分析をすることでその体制の充実を図ったところです。
 こういった作業を通じて昨年度数兆円にわたる市場資金を市場から回収して、その際にマーケットに影響を与えるようなことはなかった、そういうことで必要な資金が確保できたのではないかと考えております。その金額が23頁の「市場回収額の実績」に載っております4月から3月までの金額です。ここに書いてある金額は財投債からの満期償還金等は含んでいない、市場で売却して作った額です。
 それから25頁に戻って、体制・機能の更なる強化の中では「短期借入の整備」というところがあります。先生方のご了解もいただいて短期借入の枠を中期計画に盛り込みましたが、これはもちろん最後の最後の切札ですので、予見し難い事由による一時的な資金不足に対応するための最後の措置ということですが、昨年度はこの短期借入先を選んで万が一のときにも備える体制は確保したというところがあります。
 24頁に戻ります。株主議決権行使状況ということで民間活動への影響に対する配慮というところです。この点に関してはこの委員会でも何度か議論がありましたが、これについては私どもとしては民間企業の経営に影響を及ぼさないというのが基本として中期目標で示されているものです。その図の左側にありますように、個々の議案に対する判断は法人としては行わない。その分何をしているかといいますと、運用受託機関において議決権行使のガイドラインを策定して、それを実際に行使をしていただく、そのガイドラインの策定、あるいは行使した状況を私どもが報告を受けた上で評価をする、その評価を通じて適切に議決権行使を管理するという方法を取っております。そういった意味で最終的には議決権行使の具体的な判断は運用機関に委ねているところです。右下ですが、昨年度の場合の改善が必要な指摘事項としては、基本的には各社とも概ね良好でしたが、一部の運用機関、外国株式につきましては仕組み上シェアブロッキングというのもありますが、そういったところで議決権を行使しなかった社もあったというところで改善の必要性を認めましたので、各運用機関にはその改善をお願いしたというところがあります。ここまでのパートの説明としては以上です。よろしくお願いいたします。

○山口部会長
 委員の皆様には、評定記入用紙への評定等の記入をお願いいたします。ご質問がありましたら適宜ご発言ください。

○川北部会長代理
 先ほども議論になった22頁の基本ポートフォリオの見直しですが、私の意見としましては、月次もしくは日次の変動を計測するということで、本当に基本ポートフォリオの見直しをすべきかどうかという判断の基準として十分だったのかどうかという質問なのです。むしろ、その基本ポートフォリオの見直しという観点からすると、もう一つマクロ経済的な観点で何らかの大きな変化が生じているのかどうか、そういう議論も必要ではないのかなという気がするのですが、その辺りはいかがお考えでしょうか。

○年金積立金管理運用独立行政法人調査室長
 ご指摘のとおりでありまして、まず私どものいまの基本ポートフォリオですが、いま先生ご指摘のように、まさに長期的なマクロ経済に関する前提を置いているということ。したがいまして、短期的に市場が変動した場合でもマクロの変化がないということであれば、基本的にはポートフォリオの見直しはしないということになっています。
 そこで、マクロについてどう考えるかということですが、多分いろいろな要因はあるとは思いますが、まずは短期的にも市場が大きく変動したのかどうかと。それをまずトリガーとして捉えて、そこで何かいろいろな指標を見て、これはマクロ的には問題があるだろうというようなことが起きれば、それはその時点で検討する格好になっています。先ほど申し上げましたが、実際に3月末の運用委員会でこれらの資料をお見せしたところ、当面は静観といいますか、まだこの時点ではマクロ的な構造変化が起こっているかどうかわからないので、ウォッチをしていこうと。このような感じで一応現在に至っているとご理解いただければと思います。

○川北部会代理
 それは、その後また検討はされるわけですか。というのは、例えばGARCHのモデルで見てみると、ブラックマンデー以降の状況とか日本のバブルの崩壊とか、アジア通貨危機とか、同時多発テロとか、やはり、そこをきっかけに大きなマクロ的な動きがあったようにも見えるのですが、何かそれを内部ではどう検討されているか教えていただければと思いますが。

○年金積立金管理運用独立行政法人理事長
 マクロの動きは、基本的に我々が見るのは経済全体の構造が変化しているのかどうかということだろうと思っています。ここで出ている、いまおっしゃったようないくつかの事象というのは、今度の地震も含めまして、いわば原因が極めてはっきりわかっているということで、それがマーケットの価格形成にどういう影響を及ぼすのかということは、こういったモデルも見ながら、比較的早く沈静化していくのか、これが長びくようであれば、例えば地震なら、地震以外にも何か経済構造に大きな変化を与えるような要因があったのかを考えるということだろうと思います。
 私どもは、少なくともこれまでのところでは、去年1年間を見ましてもギリシャショックとか地震とかありましたが、それがそのマクロの全体の経済構造を大きく変えて、これからのマーケットのあり方が大きく変わっていくという判断には結局至らなかったということで、別にこれは事件が起きた直後にチェックするだけではなくて、常にその辺は念頭に置きながら、具体的な行動として議論をするということばかりをいつもやっているわけではありませんが、何かそういうことが起きていないかどうかということは常に頭の中で考えながら我々としては行動しているということです。

○光多委員
 いまのとちょっと関係するのですが、運用委員会の役割というのはどういう形になっているのでしょうか。この資料によりますと、当初は中期計画の策定とか管理運用業務の実施状況の監視とか、いろいろありましたが、何か今日のご説明ですと、受託機関の選定のところ一色になっているような感じがするのですが。何かもうちょっと、例えば管理運用業務の実施状況の説明、それがベースだと思いますが、いまのご質問の、例えばいまのマーケットの状況とか日本の経済がどういう構造になっているか、その辺についても運用委員会には何らかのご意見をいただいているのですか。そこは調査部だけでやっているのですか。何か第三者的な目で見たそういうご意見というのは、どこかで吸収しなければいけませんが、運用委員会はどのような役割を果たしているのでしょうか。

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役
 運用委員会本来の目的は法律に基づきまして、1つは私どもの監視といいますか、モニターするという役割が与えられています。それから、ある意味で理事長に対する助言といいますかアドバイスという機関、実質的にはいろいろご相談をしてやっているというところです。そういった中で委員がおっしゃるように、本来私どもが想定していますのは、やはり一番は基本ポートフォリオ、何を置いても運用の基本はどういう基本ポートフォリオを作っていくのか、あるいは見直しをしていくのか、それが基本だろうと思いますので、そういったところで短期的に何か起こったときのご相談も含めていろいろとお話をさせていただいています。それに加えまして、委員がおっしゃった個別運用機関の選定に関与するといったところは、実は第2期の中期目標の中で厚生労働大臣のほうから運用委員会に期待する役割として追加されたところです。そういった目標の枠組みの中でそれぞれ本来期待された役割、あるいは具体的に追加された役割で、運用委員会と私どもと一緒に、120兆円近い積立金ですので、しっかりと運用できるように一緒になって取り組んでいきたいというのが私の考えです。

○光多委員
 かなり選定のところに軸足が移っているので、逆にいくと運用委員会の透明性の向上が下がったような感じがしました。もっと例えば大きな話、理事長への助言とか、エマージングの運用についてどう基本的に考えるかとか、これから世界経済、日本経済がどうなっていくか、その辺についての助言、その上で機構がどういう形で資産を運用したらいいかと、そこに結びつけてアドバイスされるという、そういう役割というのはいま現在ではそれほどやっておられないのですか。もし、その辺があるとすれば、その辺はむしろ透明性という形で。

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役
 委員ご指摘のエマージングにつきましても、もちろん運用委員会でどのようにしていくか、こういったものをどう考えていくのか、何度も回を重ねて議論をいただいた上で始めたものです。基本的に、運用の大きな枠組みを議論していただく中で、運用機関の選定にも関与していただくことを追加的な役割として付加されたということですので、基本は変わっていないと考えています。そういった意味で運用委員会の先生方は役割が増えて大変かなというところも正直ありますが、しっかりと先生方と相談しながらよりよい運用を目指していきたいと考えています。

○安浪委員
 今年度の事業報告書をいま見ていまして、資料1-6の77頁に「予算・決算の概況」という表が付いています。そこで平成18年度~22年度までの予算額と決算額という欄がありまして、予算額と実際の決算額とが書いてありますが、先ほどの光多先生のご質問にも関連してくるのですが、これは確かに最近の経済の変化等を考えますと非常に難しい面もありますが、ここの予算と決算額はほかの項目はほぼ予算どおりの数字が出ていますが、この運用収入が予算と決算額が相当の差が出ています。運用収入でほぼ同じなのは平成18年度で、予算が3兆2,000億円で決算が3兆9,000億円です。あと、平成19年度は差額が9兆円、平成20年度が13兆円、平成21年度が6兆円です。今年度が予算が3兆9,000億円に対して-2,900億円。年度の初めに立てているのでしょうが、予算の立て方そのものが、例えば運用委員会の意見を聴きながら数字を出してくるとか。確かに1年間の運用収益を予想するというのは非常に難しい面はあるとは思いますが、この予算の立て方の正確性といいますか、御社の場合もこれを立てるためには相当いろいろな研究開発をされたり、世界のマーケットの状況を分析されたり、いろいろなことをされているのですけれども、あまりにも差額があり過ぎて、さてこれで予算管理されているのかどうかという疑問があります。
 予算も今年度に関しては、第1四半期で大きな3兆円の赤字が出ましたが、当然それが出れば年度予算は見直すべきだと思います。ここの表に書かれている予算とその実績との差額があまりにも大きいので、予算の立て方そのものをもう少しいろいろな意見を聴いて立てることをされたらいかがでしょうかという気がしますが。

○年金積立金管理運用独立行政法人管理部長
 私ども独立行政法人の予算の策定の仕方ですが、平成18年度から平成21年度までが第1期の4年間、それから平成22年度以降が第2期の5年間で22年度が最初の年度という形になっております。まず予算としましては、基本ポートフォリオに基づく想定運用利回りを用いまして策定しています。これは毎年毎年市場の実勢に合わせて見直して運用収入の予算を作っているものではありませんので、あくまでも基本ポートフォリオに基づいて数値を入れている、こういう形になっています。したがいまして、予算と実績には大きな乖離があるということです。

○安浪委員
 中期計画に基づくのはいいのですが、やはりそれを年度ごとに落とし込んで実際に予算を作っていく、そして予算管理をやっていくのが本来の姿かという気がしますが。

○年金積立金管理運用独立行政法人管理部長
 経費とか、そういったものにつきましては細かく積み重ねて管理をして見ていますが、やはりこの市場での運用そのものにつきましては、この予算といったところがどの程度できるかといったところもありますし、いまの中期計画における予算の策定といった方法論から言ってしまいますと、基本ポートフォリオに基づく想定利回りで。

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役
 私のほうから補足をさせていただきます。先ほど業務概況書の7頁で、ジェットコースター、こういう表現がいいかどうか、ものすごいマイナスとものすごいプラスがあるのです。例えば平成20年度に-9兆3,000億円という前年度実績が出ると翌年度には前年度マイナスだから、どの程度またマイナスを立てるのかプラスを立てるのか。基本的に基本ポートフォリオは長期的に収益を上げていくというものではありますが、単年度で見ますと、それこそ年度の最後の最後に、今回の震災が起きたとか、いろいろな動きがありますので、正直言いまして、実績を踏まえて翌年度を正確に見据えるということがなかなか困難なものなのかなと。したがいまして、私どもとしては基本的に基本ポートフォリオが想定しているようなリターンを入れた上で。

○安浪委員
 運用委員会の意見とかは聴かれないということですか。

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役
 翌年度のリターンですか。

○安浪委員
 予算については、運用委員会のご意見は聴かないのですか。

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役
 予算も運用委員会に事前にご説明をしていますが、まさに翌年度のリターンがどうなるかというのは、なかなか運用委員会の先生方でも、逆にそこがわかれば、みんな相当リターンを翌年度稼げるということで、皆さんすごい収益を上げられると思いますが、そこがなかなか当たらないのでプロでも大変苦労しているというのが実情ではないかなと考えています。

○光多委員
 ただいまの77頁の、この予算・決算はキャッシュフローですか。

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役
 キャッシュフローではなくて、時価評価も、評価損益も含めた収益、ですから、実現益、まさに実現したものではなくて時価評価が年度末に下がればマイナスが出るし、プラスになればプラスになる。

○光多委員
 そうすると投資と書いてあるのは、どういう意味ですか。

○年金積立金管理運用独立行政法人管理部長
 投資のほうは、運用収入は発生ベース、想定利回りで計算していますが、計算した運用収入があったことを前提にして投資をするというものが1つあります。また、以前は新規の寄託金というものを預かっていましたので、その寄託金が投資に向かうというものがあります。これはキャッシュフロー的な話ですが、そういったものから構成されて、この投資の金額が出ているということです。

○年金積立金管理運用独立行政法人理事長
 この運用収入の項目の予算は、いろいろ検討してやっているというわけではなくて、非常に機械的にやっていまして、想定される残高に対して当初基本ポートフォリオを作るときに想定した運用利回りを掛けて機械的にやっています。したがって、毎年度大きく変わるような数字ではありません。

○山口部会長
 私のほうからいいでしょうか。この運用委員会の関係ですが、運用受託機関の選定についても、その選定過程についても運用委員会の審議の対象とするといったようなことが書いてありますが、運用受託機関の選定をするという過程で、委員の方々の適格性といいますか、利害関係とか、そういった面について疑義が生ずるような可能性はないということでよろしいでしょうか。

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役
 はい、私どもはそのように考えています。

○山口部会長
 金融機関の関係の方が入っているということについて、もともと運用委員会が全体としての基本ポートフォリオを作ったり、中期計画の中でそういうことをやるというのは、もちろんよろしいかと思いますが、受託機関の選定というのは、以前から入っていた項目だったのでしょうか。

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役
 具体的には、大きな方針は運用委員会でご議論いただいて、個別の運用機関の選定については、私どもが選定を終わったあとに、事後に報告をさせていただくというのがかつての姿でした。この第2期からは、そこを最終的に決める前に、きちんとご相談をして結論を出すということに変わったわけです。
○山口部会長
 その場合、表面的にそういった疑義が生ずるように見える部分がないほうが望ましいのではないですか。

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役
 そういうことも踏まえまして、運用委員会とも相談をしまして、運用機関を選定する作業の際には、名前はマスキングをしてそこはわからないようにして選定作業に関与していただいています。

○年金積立金管理運用独立行政法人理事
 若干補足させていただきますと、いま先生のご指摘のとおり、運用委員会委には民間の運用経験のある方にも入っていただいているのですが、特定の企業の名前が出てきますと、その方との利害がどうなのかという心配があるわけです。ただ第2期では、従来に比べて外部の有識者の方々の意見をより反映するような形で運用機関の選定を行えというのが中期目標ですので、従来からそこの点には十分留意していたわけですが、固有名詞はすべて落としまして、ABCとかいう形で、特定の運用機関である、あるいはここはどこだということがなるべく運用委員会の先生方にお出しする資料の中でも特定できないような形でまとめております。私ども事務当局からの説明についても、特定の運用機関であるということがわからないような格好での説明、質疑のやり方で、その属性についてのご意見をいただき、整理をさせていただいています。

○山口部会長
 わかりました。これは非常に大事な点だと思います。そういう疑義が生じるようなことになれば、本来意図されていることとは違うようになってしまいますので、今後とも十分その点留意されるようにお願いいたします。
 ほかに何かご質問等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、次に第3グループに入りたいと思います。第3グループにつきましては、項目番号8番から12番で、業務の質の向上に関する事項です。これについての評価を行いたいと思います。先ほどと同じように、所要時間は法人から説明を20分でいただきまして、そのあと25分で委員の評定と質疑ということでやっていきたいと思います。それでは、法人のほうから説明をお願いします。

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役
 資料は25頁の1枚めくったところに、「Part2」の目次がございます。これをご覧いただきますと、評価項目8から評価項目12があります。評価項目8は、内部統制あるいは管理及び運用能力の向上、評価項目9は、調査・分析の充実、評価項目10は、効率的な業務運営体制の確立、評価項目11は、業務運営の効率化に伴う経費節減、評価項目12が、財産の処分等となっています。このうち、評価項目10、評価項目11は、それぞれ自己評価は「S」とさせていただいております。
 26頁から、各項目についてご説明させていただきます。「内部統制の一層の強化に向けた体制整備」ということで、評価の視点としては、内部統制に対してどのような取組みを行ったかです。まず、理事長の意思決定をさせる体制ということで、経営管理会議あるいは企画会議と書かれていますが、東日本大震災の際には随時開催し、全体状況を把握しました。本来は、月に1回、事業の進捗状況を管理するという目的でしたが、今回こういった臨時の使い方をして、内部統制として、しっかりグリップしたところです。
 27頁です。次の項目で、具体的にはそこにあるような「コンプライアンス委員会」「運営リスク管理委員会」等々、各委員会を開催しまして、しっかりとこの辺の内部統制の実施を図ったところです。
 28頁は、運用機関に対するコンプライアンス、関係法令等の遵守ということです。運用機関に対しては、ガイドラインを提示し、各種のミーティング、報告、何かがあればこちらで説明を求める対応をするといったことをしています。29頁は、内部監査の充実です。監事とも連携をしながら、内部監査の充実を図ってきております。
 30頁に、監事監査の充実・強化の取組みを書かせていただいております。現在の常勤監事は、昨年度から厚生労働大臣の任命で来られておりますが、その際に、特にいちばん下の○のところですが、?から?とあります。いろいろな方針、計画等を策定しまして、計画的に管理をしていく。?ですが、企画会議、契約審査会議等、重要な会議にすべて出席されて、事後的に監査をするというより、必要に応じて意見表明することによる、いわゆる予防的観点に立った監査の実施を図るということで、監事監査の充実・強化が図られるというところです。31頁は、その具体的な年度計画のアウトラインです。
 32頁は、「運用経験者の採用」です。私どもは、運用経験者をずっと採用してきておりまして、昨年度は、応募者総数62名のところ2名採用しています。今年の3月と4月に採用していまして、今回少し若い方に重点を置いて採用いたしました。そのうち、証券アナリスト資格取得者1名といった状況です。
 33、34頁です。33頁は、職員研修をしっかりやっているという話です。34頁は、専門的な資格取得をどう支援していくかということです。さまざまな支援措置を講じていますが、右側にあるように、証券アナリストの合格者については、昨年度末で26名です。全体が70数名の法人ですので、かなり高い割合で保有している者がいるというところです。なお、下にありますのは、情報システムに関する基礎編の資格で、ITパスポートというもので、こういったものも職員に取らせるようにということで、私どもは情報システムをやっておりますので、その専門性を高めることに取り組んでおります。
 35頁は、「調査・分析の充実」です。調査研究の充実ということで、新たに始めましたのが、大学との連携強化で、委託調査研究はこれまでもやってきているところです。大学との連携強化ということでは、大学の先生方との共同研究をやるということで、そこにありますような、積立金の長期的な枠組み、マーケットインパクトに関する研究といったものを、今後の基本ポートフォリオの策定等に活かしていこうといったものです。
 委託調査研究では、基本ポートフォリオの検証方法、あるいはプライベートエクイティ、海外インフラといったオルタナティブ、こういったものを今後の検討に活用するために、調査研究を行ったものです。
 いちばん右が、市場動向に関する分析強化で、先ほど申し上げました、年金給付のために市場で売却をしていく、そのために調査室の人員増、そこで市場に関する情報収集を行い、こういったものをそういうキャッシュ・アウトに活用したという実績がございます。
 36頁は、組織、体制のところの見直しで、私どもはここを自己評価として「S」を提案させていただいております。先ほど来申し上げていますように、右側で申し上げますと、資金業務課あるいは調査室、これはキャッシュ・アウト機能の強化あるいはそれを支える市場分析のための体制強化で、こういったもののために増員あるいは課を作ることをしてきています。本来であれば、こういったものは増員すべきなのかもしれませんが、私どもは独法として、何とか工夫をしていくということで、その上の総務課ですが、管理部門の人員体制の縮小ということで、18名を13名に減らすことで工夫をして、その分を資金業務課と調査室の増員に当てたということで、新たに人を増やすことなく、体制強化ができたということで、先ほどのキャッシュ・アウト、流動性の確保を適切に図れたということの表裏で、「S」を提案させていただいております。
 37頁は「人事評価制度の運用」で、右の実績評価はボーナスに向けての評価、能力評価は昇給等に反映するものですが、これについても、昨年度はしっかりやらせていただいているところです。
 38頁の「業務運営の効率化に伴う経費節減」です。数値目標及び評価の視点は、図の中にありますが、まず一般管理費は、人件費あるいは事務諸経費等の一般管理費については、与えられている目標は、平成21年度の予算に対して5年間で15%の節減で、毎年3%の節減になります。平成22年度では、すでに3%の節減をしています。それ以外のシステム等の経費を含める業務経費については、5年間で5%となっています。これも単年度では1%ですが、平成22年度はその目標は達成しております。
 人件費です。人件費はわかりにくいのですが、平成18年度から平成22年度は法律を踏まえた目標期間になっていますが、平成22年度は5年目ということになります。5年で5%の節減に対して、平成22年度は11%ということで、5%以上の節減をしております。これは人件費が一般管理費の中に含まれるということで、相応の経費節減をしたということです。独法という枠組みの中、目標のある中で、こういったことで、先生方にも昨年度、しっかりと人件費は必要ではないかというご指摘がありましたが、目標に沿ってやってきているところです。
 39頁は、「管理運用委託手数料の水準」です。ここも自己評価は「S」を提案させていただいております。特に右側で、「運用受託機関構成の見直し」で、最初のほうで、パッシブ運用機関の選定をしまして、単年度の節減効果は2.7億円となっています。これは、昨年秋にこういったものの見直しをいたしましたので、年度としてはフル年度の影響効果は出ておりませんが、もし4月1日の年度当初からやっていたとすると、10億円ほどの削減効果を見込んでおりまして、本来この外国債券、外国株式のパッシブは大体18億円ぐらいの手数料ということですので、6割ぐらいが節減できたということです。そういったことで、私どもとしては、「S」評価を提案させていただいております。
 最後は40頁で、「財産の譲渡」です。評価の視点にありますように、今回私どもは平成22年度から平成26年度までの中期計画で、この5年間で資産を売却するようにということで、該当する宿舎が横浜の日野宿舎、市川の行徳宿舎でした。もちろん入居者もございましたし、職員の中途採用といったところで、宿舎の入居を要件にしていたという経緯もありましたので、職員に対する丁寧な説明に努め、宿舎売却の手続きに何とか移ることができました。特に5年間でという中で、初年度に横浜の日野については売却することができたということです。日野宿舎については、厳しい中、予定価格を上回る売却ができたというところですし、市川の行徳宿舎については、今後今年度中に売却手続きに着手したいというところです。以上です。よろしくお願いいたします。

○山口部会長
 各委員は評定書にご記入いただきつつ、質疑応答をお願いいたします。

○竹原委員
 36頁の新組織体制のところでお伺いします。新たに強化された資金業務課、調査室のそれぞれの配置人員数と、その方々の資格との関係で、バックグラウンドについて教えていただきたいと思います。

○年金積立金管理運用独立行政法人管理部長
 資金業務課は、現在は課長を含めて6名です。バックグラウンドとしては、特に資金業務課長については、外部から中途で採用しました、某金融機関におりまして、十分に資金業務等に詳しい者を配置しまして、キャッシュ・アウトに備える体制を取っております。課長以下については、プロパー職員も含めての話ですが、証券アナリストの資格を持った者も含めて、配置をしている状況です。
 調査室は、資格については証券アナリストのみならず、博士を持った者も含めまして、運用数理について詳しい者で固めているところです。また、若手で採用した中で、証券アナリストを持った者も含めて、組織を運営している状況です。

○竹原委員
 もう1点お聞きしたいのですが、資金業務課と調査室で、少人数でやっていらっしゃると思うのですが、先ほどのキャッシュ・アウトの話、マクロの動向を含めた調査業務を含めると、資金業務課と調査室がうまく連携をして、相乗効果が働くような組織構造になっているべきだと思うのですが、この2つの課の連携というのはあるのでしょうか。

○年金積立金管理運用独立行政法人調査室長
 隣同士ということもありますので、日々連携は取れていると考えております。

○川北部会長代理
 非常に細かな点なのですが、40頁の行徳の宿舎は、平成23年度中に売却手続きに着手ということですが、実際に売り先や金額は決まっているという意味で、着手ということなのでしょうか。

○年金積立金管理運用独立行政法人管理部長
 こちらについては、現在売却の仲介業者を選定の上、公募をしておりまして、市場に対してこれを売り出すことをまさにやっている最中です。現状、ある程度の業者がこれから集まってくるのだろうという段階です。実際に値段がどうかといったところは、今後の話ですので、もう少し時間が必要かなと思っておりますが、何とか今年度中には処分できるのではないかという算段も立っております。

○光多委員
 竹原委員の質問に戻ってしまうのですが、昨年度にだいぶお願いしたのですが、調査室は具体的に何を調査しておられるのでしょうか。例えば調査レポートが出されているのか、内部だけに配付されているのでしょうか。それから、「一般的な市場分析」と書いてあるのですが、私の記憶ですと、運用のいろいろな手法とか、かなりテクニカルなこともやっておられたと記憶しているのですが、具体的に何をおやりになって、アウトプットというのはどういう状況でしょうか。

○年金積立金管理運用独立行政法人調査室長
 強化の観点から申し上げますと、まず、市場動向分析です。これは月1回実際にレポートを作っておりまして、それを内部の会議に上げています。それに基づいて、実際にどのような形のキャッシュ・アウトをするか、あるいはどのような形のリバランスをするか、こういうような策定を行っています。これが1つです。
 あともう一つは、調査研究ということです。これは実際の具体的なリスク管理につなげるための研究等を行っているところです。

○光多委員
 そういう話を聞くと、調査室より企画部にあったほうが落ち着きがいいような戦略的な調査ですよね。一般的な、市場分析のための調査という形よりは、企画的な調査でしょうかね。

○年金積立金管理運用独立行政法人調査室長
 実際に私どものやっている仕事は、そもそもは基本ポートフォリオみたいなものが所管であることを考えると、ご指摘のとおりだとは考えております。

○光多委員
 しつこいようですが、先ほどの運用委員会に戻ります。先ほど部会長の質問にありましたが、運用委員会の役割として、例えば事業者選定にかかわると。それはブラインドでやっておられるという話だったのですが、17頁に選定の項目がありまして、例えば運用委託手数料がここまで下に貼り付いてしまうと、ここだけで選ぶのであればわかるのですが、組織・人材、投資方針の辺りになると、マーケットのプロというのは、これを見たら大体どこかがわからない人というのはいないのです。私はこれ以外のところでやっているのですが、実際に見ると、これはどこの会社というのはわかります。
 例えばそこは全部パラにして、運用委託手数料だけであったら、これは運用委員会にわざわざ図る前に自動的になってしまうわけなので、運用委員会の方々がブラインドでやって、本当にその方々の知見を利用されているのかどうか。逆にいくと、このメンバーを拝見しますと、いまのマーケット調査とか、これからの市場動向とか、そういう大きな知見を聞いたほうがと。大臣からの話もあって、そこは一応形式的にやるとしても、もうちょっとうまくお使いになるような形のほうが、調査室としても助かるのではないかという感じがするのですが。

○年金積立金管理運用独立行政法人理事
 運用委員会の機能については、フォーカスが受託機関の選定というところで、これは第2期の始めということと、大臣からの特段のご指示があったということで、それを重点的にご説明させていただきましたが、先ほど申し上げましたように、運用委員会にはいろいろなご経験をされている方にお集まりいただいております。
 私どもが月次のリスク管理の状況を定期的にご報告するのとは別に、いろいろな運用委員会としての議論、あるいはどのようなことをテーマとして取り上げるかということについては、非常に広範な角度から論点を整理させていただきながら、ご相談させていただいております。
 先ほど申し上げましたように、エマージングの問題につきましても、こうした国々が、世界の経済の中に占めてくるウエイトはどんどん大きくなってきているのだから、運用委員会でしっかり議論しようではないか、というような問題提起もいただきながら、論点を作っていったということです。
 それから、先ほどの基本ポートフォリオの見直し等についても、それぞれ大きなマーケットの変動について、しっかりそれをモニターしながら、運用委員会で議論しようではないかということを、運用委員の先生方からのご提起もあったわけです。
 定例として毎月ご報告するリスク管理の状況とは別に、そのようなテーマについては、私どもとして年間スケジュールに応じて、こちらからご提案する部分もございますが、各委員から、私どもがこれからよりよい運用をしていくためには、どのような論点を優先して議論すべきなのかということは、むしろ運用委員の先生方のほうから、次はこういったことを議論をしようというご提案もいただきながら、やらせていただいている状況です。

○安浪委員
 説明書の23頁に、市場回収額の実績が月別に出ていまして、10月が8,000億円で、普通の月よりちょっと多いかなと思います。それは寄託金の償還のために、これから市場売却されるというのはある程度恒常的な形になってくるのでしょうから、いくら売るか、見積り、資金計画というのはこれから非常に大切になってくると思います。
 教えていただきたいのは、売却する場合は、運用機関には一律にそれぞれ100億円売ってくださいとか、例えばパッシブとアクティブを混ぜながらやるのか、パッシブだけについて売却を出すのか、それはいろいろと市場環境を見ながら判断されていくと思うのですが、そこら辺の話とか、10月が特に多かった理由は何かございましたら、理由を教えていただければと思います。

○年金積立金管理運用独立行政法人理事長
 売却する資産の選定、どこにいくら売却させるかというのは、その都度マーケットを見ながら、今回はこのマーケットがいいとか、このようにマーケットの環境が変わってきたからこっちにしようとか、もちろん基本ポートフォリオからの乖離の状況とか、そういったことを総合判断してやっております。
 ご質問の10月が非常によかったというのは、資料1-7の46頁をご覧いただきますと、去年の夏から秋にかけては、国債ファンドからの売却が中心になったわけですが、ここにある10年国債の利回りを見ていただきますと、10月の頭辺りから、ずっとかなり金利が低くなっています。したがって、値段としては高い値段が付いている時期があったわけです。基本的には将来の資金計画を見ながら、平準的にやっていこうということですが、こういう金利が非常に低下しているマーケットというのは、売りやすいマーケットでもありますし、また、そういう高い値段で売れれば、それだけ運用の利益の面でもプラスになるわけですので、この10月から11月の時期にかけて、かなり多めに売ったということです。
 その前を見ていただきますと、7月、8月、9月でも、8月が少し多めになっております。ここもご覧いただきますと、ずっと国債金利が下がってきて、8月の中旬にかけては0.9ぐらいまでいっています。こういった時期に、市場の流動性も高いし、売りやすいし、かつ収益的にも非常にプラスになります。持っていた評価益ですと、将来どうなるかわからないのですが、売却ということになりますと、そこで終わりですから、そこでどの程度の実現益が出るかによって損得が決まるわけですので、そういったマーケットの状況を見ながら売ってきたということです。

○山口部会長
 私からですが、どこの項目に当たるのかよくわからないのですが、内部統制に関連する話かもしれません。このあとの議題にもなりますが、これまで以前の融資の関係で保有していた印紙を、譲渡、国庫納付するという議案がこのあと出てきますが、この管理について教えていただきたいと思います。これまで、これは財産として認識されていたということでいいですよね。貸借対照表のどこにそれは出ているのでしょうか。

○年金積立金管理運用独立行政法人管理部長
 「平成22事業年度財務諸表等(案)」の3頁に、貸借対照表がございます。貸借対照表の法人全体の部分で、左上に資産の部がありまして、その中の?「流動資産」、「その他の流動資産」の1,911万1,600円です。これが次の議題になる登記印紙の部分です。

○山口部会長
 ずっとこれは過去からこういう状態で、過去から計上されてきたということですか。

○年金積立金管理運用独立行政法人管理部長
 はい。

○山口部会長
 そういうことで、今回、国庫納付をしようということになって、そういう議案が出ているわけですが、なぜこれが今日まで残る形になったのでしょうか。どのような管理をされていたと理解すればいいのでしょうか。

○年金積立金管理運用独立行政法人管理部長
 登記印紙そのものは金庫の中に保管はしておりますが、どうして残ってきているかについては、登記印紙そのものは、法務局にいって印鑑証明等に使うとか、かなり限定的にしか使えないことはご承知のとおりかと思います。
 そこで、私どもとしては、この年金積立金管理運用独立行政法人が行う業務にとりまして、特段必要がないので、何らかの処分ができないかということはいろいろと考えてきまして、関係方面にも当たってきたところです。
 これは法務局が出しているものですので、法務局に聞きまして、何とかこれを換金できないかと聞いてきましたが、法務局としては、1度売ったものは換金できないということで、撥ね返されてしまったという事実がございます。
 もう一つが、登記印紙特別会計の制度が、平成22年度末をもちまして、登記印紙そのものがなくなるといった状況にありました。私どもとしては、登記印紙がなくなれば、その時点で、手元にあるものは法務局が引き取ってくれるものではないかという期待も抱いておりました。実際には、平成23年3月末に登記印紙という名前そのものはなくなったのですが、市場に出回っている登記印紙そのものは、従来の目的であれば使えるということで、基本的には換金できないという話になってしまいました。これで処分については悩んでいたところですが、独法の通則法の改正もありまして、国庫納付の方法等も道筋が開けましたので、ここでお諮りいたしまして、何らかの形で売却等をして、その部分を国庫にお返ししていきたいと考えているところです。

○山口部会長
 ほかにございますか。

○光多委員
 前のところで、今年は3,000億円の損なのですが、これまでの全体の運用益では、11兆円の利益を出しているということです。このバランスシートを見ると、未処理損出が3兆円で、積立金が4兆円ですが、この11兆円の運用益と損失というのは、どのように理解したらよろしいのでしょうか。

○年金積立金管理運用独立行政法人管理部長
 先ほどの財務諸表の4頁に「純資産の部」というのがあります。光多委員がご指摘のところは、純資産の部の?「利益剰余金」の部分かと思います。
 私どもの財務諸表で表現するところの、いわゆる利益剰余金で、現在のところは6,988億円ですが、この数字は国庫納付等、国にお返ししたものは除いたネットの数字になっています。
 これに対して業務概況書の数字は、国にお返しした金額を含めてのグロスの数字だということでご理解いただければと思います。

○光多委員
 4頁のここではないのですか、法人全体でもよろしいのですか。

○年金積立金管理運用独立行政法人管理部長
 法人全体でのバランスシートで、利益剰余金が約7,000億円というのが、現状です。

○光多委員
 利益剰余金ですが、そこの未処理損失が3兆円で、積立金が4兆円というのは、11兆円とはどういう関係になるのですか。

○安浪委員
 この全体の中に、厚生年金勘定、国民年金勘定、承継資産運用勘定の3つに分かれていまして、厚生年金勘定では前年度に余剰金がありまして、その分を全額、利益積立金に積み立てたのです。法人全体で見ますと、4兆円の積立金があって、なおかつ片方で欠損金が3兆3,000億円あるという歪な、普通では考えられない勘定になっているのですが、積立金の積立ては勘定別に立てていいというルールがあるのです。厚生年金勘定で余剰金があったものだから、去年の余剰金を丸々積立金に積み立てておられたので、厚生年金勘定以外では損失が発生していても、法人全体としては、積立金があるのと欠損金が両立てになってしまうと。
 法人全体で見ると確かに歪な形なので、私もそれはどうしてなのかとお聞きはしたのですが、勘定別に積立金を処理することになっているというご説明でした。

○年金積立金管理運用独立行政法人管理部長
 業務概況書の数字は、主として運用の成績を全体として整理したもので、それに対して財務諸表はあくまでも勘定を基に、独立行政法人会計基準に従いまして、私どもが持っている4つの勘定ごとで、勘定ごとに経理をしなさいという話になっておりますので、安浪委員がご指摘のような話になっているところです。
 財務諸表で申し上げますと、14頁をご覧いただくと、横の大きな表があります。ここは、負債の部を厚生年金勘定、国民年金勘定、総合勘定、承継資金運用勘定といった4つの勘定ごとに区分して、整理して、右端に法人単位の合計の残高が出ているものです。

○安浪委員
 勘定ごとに積立金を立てるというルールでやられているのはわかるのですが、足し込んで、法人全体で4兆円の積立金があって、なおかつ同じバランスシートの上で、繰越欠損金が3兆3,000億円乗っかっているというのは、法人全体の決算書を見た場合に、ちょっと違和感がある決算書です。そこは私は100%クリアにはなっていない状況ではございます。

○光多委員
 累計で11兆円儲かっているという話は、損益レベルではなくて、バランスシートのところで11兆円あるので、利益剰余金のところには入ってきていないということですか。

○年金積立金管理運用独立行政法人管理部長
 話が混同してしまったかもしれませんが、業務概況書の全体で、例えば7頁に、累積で11兆3,000億円の利益があるという話ですが、財務諸表との違いは、先ほど申し上げたように、国庫納付のお金を入れているかいないか、その辺がいちばん大きな違いです。

○光多委員
 国庫納付金はいままで延べでいくらしておられるのですか。

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役
 累積で6兆1,000億円ほどです。ですから、その分が国にいってしまっているので、私どもの手元にはその分はないという。

○光多委員
 パッと見ると、3兆円の累積損失があるというのは、理事長も安心して眠れないのではないかと思うのですが、恐ろしい金額の累積損失がありますので。

○年金積立金管理運用独立行政法人理事長
 3兆円分の損失は、先ほどの14頁の承継資金運用勘定で見ていただきますと、当期未処理損失は2兆9,900億円というのが出ています。これは何かと言いますと、昭和61年頃から年金福祉事業団が、当時、資金運用部に全額預託した資金のうち、一部を借りて、市場運用していました。それの残りです。
 これは、実は今年の3月にこの勘定は閉鎖されました。結果的には、厚生年金勘定、国民年金勘定にばらまかれるわけですが、一応ここでこの勘定は閉まったということです。この勘定も運用益を上げていたのですが、当時の旧資金運用部から借りたお金の金利が相当高かったものですから、結果的には欠損になってしまったということです。いずれにせよ、この3月末で閉鎖されたものですので、ここは一応決着が付いたというものです。

○川北部会長代理
 ついでに教えていただきたいのですが、バランスシートの3頁を見ますと、「流動資産」のところに「金銭等の信託」で102兆円、「投資その他の資産」のところで「金銭等の信託」で13兆円上がっているのですが、「投資その他の資産」と「流動資産」に上げている違いというのは何なのですか。運用資産ごとに分けられているのか、何か勘定の特殊性なのか。

○年金積立金管理運用独立行政法人管理部長
 流動資産と固定資産の違いにつきましては、1年以上云々という話になるのですが、私どもが保有している運用資産は、基本的には金融商品会計基準に基づく売買目的有価証券として整理しております。それはすべて流動資産の部の金銭等の信託に含まれているのですが、もう一つ私どもが保有しております、先ほども出てきました財投債の部分です。これは満期保有を目的としておりますので、満期保有を目的とした財投債の部分については、1年未満のものについては、流動資産の金銭等の信託に入れておりますが、1年超の部分については、固定資産のほうで計上していますので、これの違いです。

○川北部会長代理
 10頁に「満期保有目的債券」ということで、18兆円あるのですが、このうち5兆円ぐらいが1年未満で償還されると。残りがまだ数年かかると、そういう理解でよろしいわけですか。

○年金積立金管理運用独立行政法人管理部長
 左様でございます。

○山口部会長
 よろしいでしょうか。以上ですべての項目の評価が終わりました。資料1-8について、法人所管課からご説明をお願いいたします。

○大臣官房参事官(資金運用担当)
 資金運用担当参事官です。私から、簡単にこの後の評価の段取りについてご説明いたします。資料1-8をご覧いただきますと、年金積立金管理運用独立行政法人の総合評価については、本日法人からのヒアリングを基に行っていただいている個別評価の分析結果と併せまして、年金積立金の運用が年金財政に与える影響についての検証報告、この両者を勘案して行うことになっております。
 後者については、これも例年ですが、私ども厚生労働省で、年金財政との関係について分析した運用報告書というものを用意して、お伝えすることになっております。これについては、次回8月19日の冒頭にご報告申し上げまして、それと併せまして、総合評価を行っていただくことになると思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。以上です。

○山口部会長
 事務局から、このあとの取扱いについて、ご説明をお願いいたします。

○政策評価官室長補佐
 評価のご記入について、まだ終わっていない委員の方がいらっしゃいましたら、評価シート及び評定記入用紙をお持ち帰りになって、ご記入していただくことも可能です。また、電子媒体版の評定記入用紙について、各委員にこれから送らさせていただきますので、それを使っていただくことも可能です。
 お持ち帰りになった場合には、8月10日(水)までに、事務局まで評定記入用紙をご提出いただきますよう、よろしくお願いいたします。以上です。

○山口部会長
 次の議題に入ります。今後行うことを予定している不要財産の国庫納付についてです。まず事務局から説明をお願いし、続いて法人からご説明をお願いします。

○政策評価官室長補佐
 昨年11月27日に独立行政法人通則法が改正され、第46条の2によりまして、不要財産となった財産については、主務大臣の認可を受け、国庫納付することとなっております。また、国庫納付するに当たり、同条第5項において、評価委員会のご意見を伺うとなっております。
 この度、法人から国庫納付につきましての認可申請がきていますので、ご審議をお願いしたいと思っております。法人からご説明お願いします。

○年金積立金管理運用独立行政法人管理部長
 資料1-9をご覧ください。先ほども話に出てきましたが、私どもが今回不要財産として、譲渡及び国庫納付をしようとしているのが登記印紙で、金額は約1,900万円です。私どもが、どうしてこの登記印紙を保有しているかですが、もともと年金福祉事業団時代に住宅融資をしておりました。その際に、担保として、土地建物を徴求していたわけですが、それに対して抵当権を設定していたというところです。
 平成13年になりまして、年金福祉事業団から、年金資金運用基金という特殊法人に組織が変更になり、このときに抵当権者の名義変更をしないといけないといったことがありまして、登記印紙を購入し、抵当権の名義変更手続きに着手したところですが、その後、また年金資金運用基金が、年金積立金管理運用独立行政法人に組織替えするという話が出てきましたので、その時点で一旦名義変更の手続きを中止しました。
 結果として、平成18年に現在の独立行政法人に組織替えされたわけですが、そこで私どもは現在は住宅融資を行わない形になったものですから、以前保有していた登記印紙そのものが不要になってしまったといった経緯がございます。
 今回、登記印紙については、譲渡して、国に納めるという手続きがございますので、それに従って行っていく次第です。説明は以上です。

○山口部会長
 ご質問等がありましたら、お願いいたします。年金福祉事業団時代から承継している、権利義務関係のいろいろなものがあったと思うのですが、これで全部なくなったと理解していいのでしょうか。

○年金積立金管理運用独立行政法人管理部長
 はい。

○山口部会長
 よろしゅうございますか。それでは、この登記印紙の譲渡収入を国庫納付することについて、了承したいと思います。今後の手続きの過程で内容に変更があった場合の取扱いについては、私が事務局と調整して決めさせていただく形で、ご一任いただけますでしょうか。
               (各委員了承)

○山口部会長
 ありがとうございます。それでは本日の議事は以上となります。次回の開催等について、事務局からお願いいたします。

○政策評価官室長補佐
 次回の年金部会の開催は、8月19日(金)の13時から、場所は省内専用第12会議室を予定しております。議題は、GPIFの総合評価、RFOの総合評価となっております。開催案内は机の上に置かせていただいておりますので、8月10日(水)までに、事務局宛てに、メールまたはファックスでご回答いただければと思います。
 なお、お配りしている資料について、郵送をご希望される場合には、郵送させていただきますので、事務局までご連絡ください。以上です。

○山口部会長
 本日は以上とさせていただきます。長時間にわたりまして、熱心なご審議をいただきまして、ありがとうございました。


(了)
<照会先>

政策統括官付政策評価官室

独立行政法人評価係: 03-5253-1111(内線7790)

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