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2011年4月13日 第52回労働政策審議会安全衛生分科会議事録

労働基準局安全衛生部計画課

○日時

平成23年4月13日(水)15:00~17:00


○場所

厚生労働省議室(9階)


○出席者

委員:五十音順、敬称略

相澤好治、明石祐二、市川佳子、伊藤雅人、犬飼米男、今田幸子、瀬戸実、高橋孝行、高橋信雄、
谷口元、露木保、土橋律、山口氏(豊田耕二代理)、内藤恵、中原俊隆、名古屋俊士、古市良洋、眞部行雄、三浦武男、芳野友子

事務局

金子順一 (労働基準局長)
渡延忠 (審議官)
平野良雄 (安全衛生部長)
前田芳延 (総務課長)
高崎真一 (計画課長)
田中正晴 (安全課長)
鈴木幸雄 (労働衛生課長)
半田有通 (化学物質対策課長)

○議題

(1)東日本大震災に係る対応について
(2)平成二十三年東北地方太平洋沖地震に起因して生じた事態に対応するための電離放射線障害防止規則の特例に関する省令について
(3)労働災害防止団体改革検討専門委員会及び指定・登録制度改革検討専門委員会の設置について
(4)その他

○議事

○相澤分科会長 お待たせしました。それでは、定刻になりましたので、ただ
いまから第52回労働政策審議会安全衛生分科会を開催いたします。本日は、中
原委員と豊田委員、中村委員が欠席されております。豊田委員の代理で山口様
がお出ででございます。よろしくお願いします。
 それでは、議題に入る前に、労働基準局長からご発言を求められております
ので、労働基準局長よろしくお願いいたします。

○金子労働基準局長 委員の皆様には、大変お忙しい中ご参集賜りましてあり
がとうございます。既にご案内のとおりでございますが、3月11日に東日本大
震災が発生いたしました。大変多くの方が亡くなられ、そして被災されたわけ
でございます。いま、厚生労働省といたしましては、全力を挙げてその対策に
取り組んでいるところでございます。そこで、本日につきましては、本来予定
されていた議題に加えまして、私ども労働基準行政のほうで対応しております
震災対応につきまして、時間を作っていただき説明させていただきたいと思っ
ておりますので、よろしくお聞き取りいただければと考えるところでございま
す。
 加えまして、2つ目の議題といたしまして、福島第1原発が被災したことによ
りまして、緊急作業時における労働者が受ける放射線量の上限を引き上げさせ
ていただきました。申すまでもなく、この件につきましては、本来であります
と安全衛生分科会を開催いたしまして委員の皆様にお諮りさせていただく事案
でございますが、対応に緊急を要したということもございまして、この分科会
を開催せず改正させていただきました。委員の皆様に対しましては、この点に
ついてお詫び申し上げますとともに、ご理解を賜りたいと考えております。そ
れでは、それぞれの議題のところで担当課長のほうから説明させますので、ご
審議のほどよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

○相澤分科会長 どうもありがとうございました。それでは、議事を進めさせ
ていただきます。本日の議題は、「東日本大震災に係る対応について」。報告事
案として、「平成二十三年東北地方太平洋沖地震に起因して生じた事態に対応す
るための電離放射線障害防止規則の特例に関する省令等について」、それから
「労働災害防止団体改革検討専門委員会及び指定・登録制度改革検討専門委員
会の設置について」の3点でございます。
 まず、「東日本大震災に係る対応について」を事務局からご説明をお願いいた
します。

○前田総務課長 労働基準局総務課長の前田です。資料1をご覧いただきたい
と思います。「東日本大震災に係る対応」ということで、これまでの労働基準行
政における対応をまとめています。
 まず1頁です。今回の地震の概要については、皆様ご案内のとおり、未曾有
の大震災、さらに津波で、非常に大きな被害ということです。若干特徴として
は、今回、地震が午後2時46分、津波が2時49分という昼間であったことで、
仕事をされているときに被災された方もかなり多数に上ることがあろうかと思
います。あと、被害状況で、特に津波の影響もあって、負傷者よりも亡くなっ
た方、あるいは行方不明の方が非常に多いかと思います。
 2頁をご覧いただきたいと思います。まず、現在の被災地等における労働基準
監督署における開庁あるいは対応の状況ということです。労働基準監督署につ
いて、岩手県におきましては7つの監督署がありますが、1箇所釜石の監督署は
かなり海岸にあるということもありまして、津波のために立入りができないと
いうことで、現在閉庁していまして、釜石のハローワークのほうで監督署の職
員も労働相談等の業務を実施しているという状況です。
 それから、宮城県においては、5つの監督署すべて現時点では開庁しています。
 福島については、ご案内のとおり、富岡の監督署が原発から20?圏内という
ことで、閉庁せざるを得ないという状況です。富岡署については、現在いわき
の監督署の中で業務を行っています。あと、現在県庁にオフサイトセンターが
設けられていますが、そちらに労働局の職員を派遣しているという状況です。
 それぞれ局において特別相談窓口を設置するとか、あるいは、土日も含めて
電話相談などを実施してきています。さらに、避難所において出張相談などを
行い、特に仕事中に被災された方には労災保険の対象になるということで、労
災保険の請求の勧奨、あるいは立替払の請求なども含めて周知等を行っている
ところです。それからさらに、ワンストップサービスということで、ハローワ
ークはもちろんですが、年金事務所や社会福祉協議会等とも連携して、いろい
ろな相談に応じられるように取り組んできているところです。
 これまでの相談件数をそれぞれ各局で書いていますが、若干局によって傾向
的に違うところもあります。例えば、福島局ですと原発等の関係もありまして、
休業手当なり雇調金等の関係の相談がほかと比べて多いという状況です。
 一方、宮城では、労災関係の相談がいちばん多いという感じです。それから、
被災地以外のところの避難所に避難されている方もいらっしゃるということで、
それについても各局で出張相談等を実施しています。
 また、労働局への職員の応援体制ということで、福島局については、電離放
射線関係の専門の職員を3月末から福井局のほうから現在2名応援に派遣して
います。さらに4月に入りまして、隣接の局ということで、岩手であれば秋田、
宮城については山形などを中心に労災保険、あるいは立替払等の相談の対応の
ために、現在職員を他局から応援で派遣しています。今後さらに請求の増加等
も見込まれますので、全国規模で応援体制をさらに来週以降組んでいく形で予
定しています。
 これまでの震災への対応ということで、3.のところです。1つは労働相談への
対応です。地震、それから計画停電等もありまして、休業時の休業手当の支払
い等についての問い合わせなども、かなり多くきたということもあります。そ
ういった休業時の賃金、雇用管理、解雇などの取扱いについて「Q&A」を作成
しました。特に、基準法上の休業手当の支払いはもちろんでありますが、それ
に合わせて、雇用調整助成金の活用ということも含めて周知を行っている状況
です。それから、監督署を中心に緊急の相談窓口を開設して、先ほど申し上げ
たような相談に応じているというところです。
 解雇、雇止めということで、今回の震災等の影響で解雇、雇止め等が懸念さ
れるところです。それについて労働基準行政、職業安定行政、雇用均等行政の
連継のもとに、その予防のための啓発指導などの対応を各局に指示しています。
 また、派遣、有期、パートの雇用維持・確保についても、大臣名で経済団体
等に対して要請を行ったというところです。
 3頁は労災保険関係についてです。特に今回は仕事をされているときに、地震
あるいは津波で被災されたという方が、かなりいらっしゃるかと思います。基
本的にその場合には、労災保険の給付の対象になるということを含めて、いち
ばん下のところに「Q&A」を現在作成して、被災者あるいは遺族の方にご紹介
して、周知、請求勧奨を行っているところです。あと、労災保険給付の弾力的
な取扱いということで、例えば、医療機関や事業主の証明なしに労災診療とか
休業補償の請求ができるように取扱いを行うとか、あと、請求に関して、労災
認定のためのさまざまな資料が事業所等にもうなくなってしまって散逸してい
ることも予想されますので、そういう場合の調整をいろいろ定めて迅速な労災
補償を行う。また、管轄外を含めて請求の受付をするとか、避難所への出張の
際にもそういう受付を可能にするというような取扱いを行っています。
 労働保険料の関係につきましては、現時点において納付期限の延長等という
ことで、これは国税通則法とも並びですが、被災地域、青森、岩手、宮城、福
島、茨城県について、労働保険料の納付期限は、一般的には年度更新が6月か
ら7月でありますが、その納付期限等を申請など特段の手続なく延長していま
す。それから、その被災地域以外の事業主につきましても、震災によって財産
に相当な損失を受けた場合には、申請に基づいて個別に納付を猶予する扱いを
させていただいています。
 未払賃金立替払ということで、倒産等で労働者に賃金が払われていない場合、
国が立替払を行うという制度がありますが、それについても、罹災によって倒
産等の申請が難しい場合もありますが、その申請に必要な書類の簡略化などを
行い、迅速な処理を実施することにしています。
 中小企業退職金共済制度について、納付期限延長手続の簡素化、あるいは、
財形の融資制度について最長3年間の返済猶予などの特例措置を講じていると
ころです。
 健康確保について、特に心のケアということが非常に問題になるということ
で、産業保健推進センターあるいは地域産業保健センター等で、メンタルヘル
スを含む健康問題について、電話などでの相談を受け付けるとともに、ポータ
ルサイトでも被災者向けの特設ページを設けているところです。
 4頁です。今後も含め、特に解体開始、あるいは復旧工事で、災害復旧工事に
おいて災害防止対策の徹底を図るということを建設業団体に要請するとともに、
復旧工事における粉じんへのばく露防止等のため、マスクの配付などを行って
います。あと、特にマスクが不足しているということで、我が国の型式検定合
格品と同等以上の粉じん捕集能力を有する米国規格のマスクの使用についても
暫定的に認めるという形の取扱いをしています。
 それから、原発事故への対応については、次の2番目の議題とも係りますが、
1つは、電離則の被ばく線量の上限を緊急的に引き上げたということです。現在、
労働局から、原発責任者に対し被ばくを受けた方について、作業後の速やかな
診療、あるいは処置の実施、臨時の健康診断等について指示をし、本社にも同
様の要請をしました。それから、3月24日に作業員3人が被ばくされたという
事故を受けて、安全衛生管理体制の確立などを指導しています。さらに、作業
員の個人被ばく線量の測定、被ばく限度の管理についての徹底についても指導
したということです。さらに、今後の健康診断についても、労働局から追加の
指示を行っているという状況です。以上です。

○相澤分科会長 どうもありがとうございました。ただいまのご説明につきま
して、質問等がありましたらよろしくお願いします。

○市川委員 未曾有の大惨事にあたりまして、厚生労働省として緊急かつ様々
な場面で柔軟な対応を迅速にとっていただいたということに対しては、まずも
って敬意を表したいと思いますし、今後も復旧・復興は相当長い年月がかかる
と思われますので、更に労働行政の総力をあげて、是非、労働者あるいは国民
の生活の復興のために総力をあげて、ご尽力をいただきたいことをお願いした
いと思います。
 その上で、具体的にこれは「安全衛生分科会」ですので、安全衛生関係でい
くつか要望を申し上げたいと思います。資料のいちばん後の頁に「アスベスト
対策」等々について書かれています。当然この建設業等、このがれき処理に当
たられる労働者の皆さんには、こういったことを徹底するのは当然のことです
が、実は、いま多くのボランティアの方々が現地に入っているわけです。連合
もボランティアを募集し、岩手、宮城、福島に、いまの予定では、6カ月で2
万5,000人ぐらい派遣する予定で取り組んでいます。宮城に行きましたチーム
から聞きますと、宮城県の労働局が、宮城県では民家でもアスベストが使われ
ているケースが多い、アスベストをモルタルで固めたようなものを壁などに使
っている。「ボランティアの方も、アスベスト対応のマスクを着けてください」
という指導が労働局からあったようで、大変にありがたい指導だと思います。
ボランティアですと、安全衛生法の対象にはならないのかもしれないが、やは
り安全を守るという意味で、そういった注意喚起等々、是非、厚生労働省とし
ても更に一層強くやっていただきたいと思っています。
 また、連合もボランティアに組合員を派遣する責任から、アスベスト対応の
マスクは、用意をし現地に送っています。いまここにも米国規格と書かれてい
るように、大変品不足になっているようで手に入りにくくなっていますが、そ
ういったことの増産も含め、是非安全衛生行政として力を入れてやっていただ
きたいのが1点です。
 もう1点は、原発の屋内退避地域において、仕事をせざる得ない労働者がお
ります。これは例えば屋内での仕事で、通勤は車とかでしたらそれほどでもな
いのでしょうが、屋外作業が求められる、例えば電信、公益関係で多いと思い
ますが、労働者を抱える組合から何か基準のようなものを出していただけない
かと。電離則というのがありますが、あれはそういったものは想定されていな
い規則です。何か法令上、そういう一定の放射線が出ている地域で作業せざる
を得ない労働者に対して、何らかの規制というか、法令上はなかなか難しいか
と思いますが、法令で規制できないとしても、注意事項、ガイドライン、そう
いう屋内退避地域で屋外で作業せざるを得ない、あるいはその近辺で屋外で働
かざるを得ない方に対して、例えばこういう装備をしなさいと。マスクをしな
さいとか、長袖、そういった一般的なものでもよろしいですし、あるいは線量
計を持って行くほうが望ましいとか、作業時間はきちんと記録しましょうとか、
そういった一定の喚起をするようなガイドラインのようなものを、厚生労働省
として出していただけないかと思い、要望したいと思います。以上です。

○半田化学物質対策課長 ただいまご指摘いただいたボランティアの皆さんな
ども含めた対策ですが、先ほどのご紹介でメーカーより寄付をいただき配付し
ているマスクは、そういったボランティアの方に対しましても労働局において
配付しています。併せて環境省大気環境課とは毎日連絡を取っていまして、あ
ちらからも様々な保護具の提供もやっていただきまして、切れ目のないような
対策に心がけているところです。
 増産の件に関しても、震災の翌日に、直ちに大手メーカーに対して増産を要
請するとともに、翌週、これまた環境省と共に、業界団体に対し増産要請して
います。以上報告しておきます。

○高崎計画課長 2点目の関係ですが、屋内退避地域あるいは、立入りが制限さ
れている地域も含め、いわゆる放射線のばく露との関係で、作業について何ら
かの基準が必要だと。電離則がそういうものを想定した規程ではないと、まさ
にご指摘のとおりで、そういう問題意識は持っています。実はその点について
は、厚生労働省のみならずいろんな省庁も関係していますので、いま政府部内
のほうで、そういう全体的な作業をどうしていくのかについて検討が進められ
ているところです。私どももそこに参画する形で、当然そこで就労の際、労働
者のばく露防止という観点から、そこでいろいろなものを組み入れていく形で
やっています。至急でやっていますが、そんなに時間もかからず、ご提示でき
ると思います。いずれにしてもそういうことをやっていますので、出来次第、
情報を提供させていただきたいと思います。

○古市委員 私は建設労働組合員に所属しています。組合員から防じんマスク
を早急に手配してほしいという要望が、震災後直ぐに寄せられました。お願い
しましたところ直ぐに手配していただき、お礼を申し上げます。政府の就労支
援雇用対策であります『「日本はひとつ」しごとプロジェクト』の政策を見てみ
ますと、地元の被災者を雇用して、その地域のがれきの処理ですとか、そうい
ったことを仮設住宅の建設等に活用するというようです。そのこと自体は大変
結構ですが、安全対策の面から要望を申し上げたいと思います。災害防止につ
いての項目があり、復旧工事における災害防止対策は徹底するとなっています。
建設業は、大変残念なことでありますが、法令遵守の意識が非常に稀薄な産業
で、建設業団体等にお願いするというようなぐらいでは、なかなか実際の現場
に徹底しないことがありますので、是非そこは、もう一段の努力をしていただ
きたいと思っております。
 建設業職業安定局のほうで、「第8次建設雇用改善計画作り」をやり、最近ま
とまりましたが、その議論の中で「どうしてこんなに法令が遵守されていない
のだろうか、この産業は」ということが非常に議論になりました。事実、国土
交通省が毎年行っております、公共工事の設計労務単価を積算するための調査
をやりますが、これは公共工事の現場ですので国交省の現場等を中心にして調
査をします。その中で10人以上の法人事業所の社会保険の適応率という数字が
出てまして、厚生労働省からは聞いたことはありませんが、国土交通省がこう
いう数字を発表しました。例えば、東京の10人以上の法人事業所では、社会保
険は強制適応ですから全部100%でなければいけないのですが、実は、社会保険
に適応している会社は32%しかないという数字を発表しました。こういうのを
見ていただいてわかるように、社会保険にも入らないような状態ですので、安
全衛生法をしっかり遵守してもらうかどうか、非常におぼつかない産業であり
ます。是非そういう産業だということを前提に、しっかり対処していただきた
いというのが基本的なお願いであります。
 今回の震災に関係して、がれきの撤去等を行うという場合に、被災者が建設
業従事者であれば、ある一定の教育を受けている可能性があるわけですが、い
ままで建設業に携わったことがない被災者が、そういうところで新たに雇用さ
れて働くことになりますので、是非、教育をしっかりして現場に投入すること
については、是非がんばって実施していただきたいと思っています。
 私どもの組合員が最初に震災直後に市役所や県から依頼をされ、遺体の捜索
の手伝いとかをずいぶんたくさんやりましたが、みんな着の身着の儘で避難し
た人たちが作業に携わりますので、例えば、安全靴を持っていないとか、道具
がない、まともな作業着がない、こういう状態です。こういうがれきの撤去と
いうような非常に危険な現場で素人に働いてもらう場合は、教育とともに、そ
ういう作業に従事するのに相応しい環境を整えるということが、必要不可欠で
あります。ここは是非、事業主の皆さんに徹底していただくように、配慮して
いただくようにお願いしたいと思います。
 私も被災の現場を相当の箇所を何日もかけて歩きましたが、アスベストの被
害が非常に懸念されます。特に木造住宅であっても、建築基準法でアスベスト
含有建材を使うことが以前は義務化をされており、アスベストを含有していな
い建材は使えなかったという時代があるわけでして、そういうものが大量にあ
ります。特に木造の現場でなくて、鉄骨の現場では鉄骨にアスベストを吹付け
することが義務づけられていまして、そういう現場がたくさんあります。アス
ベストがいまだにくっ付いたり剥がれたりしたような現場が非常にありまして、
ここは是非、厚生労働省で空気中のアスベスト濃度をしっかり検査して、作業
ができる環境なのかどうかは目配りをして、アスベストによる被害を新たに発
生させないような取組みを是非、心がけていただきたいと思います。
 長くなり恐縮ですが、政府のこの対策の中に総務省の対策のようですが、被
災地における就労管理システムの活用という項目があります。これは、アスベ
ストに関する労災認定の問題で、私どもが、組合員が過去にアスベストの作業
に従事したかどうかということを確認することが建設労働者の場合、非常に困
難です。要するに、零細な事業者は雇用をされていないで働く労働者がたくさ
んおり、そういう人がどこの現場でアスベストの作業をしたか30年前、40年
前の記録を探すというのは大変難しい。そういうことで労災認定は大変苦労し
ています。そういったことをなくすためにと言いますか、アスベスト被害、就
労者にとりましての安全な社会補償の確保に資するために、そういう現場で働
いたということがわかるように、被災地における就労管理システムを行うとい
うことがあるようです。厚生労働省の政策に関係することだと思いますので、
これは被災の現場は公共工事で、建対協も適応されますので、建対協とアスベ
ストの被害といいますか、アスベスト作業に従事したことが、この就労履歴を
見ればわかる。そういうものでありますので、そこは総務省の仕事というふう
にあんまりおっしゃらずに、しっかり連携をして進めていただくようお願いい
たします。長くなって恐縮です。

○田中安全課長 先ほどの建設業の法令遵守への対応、また、教育への強化と
いう2点についてまとめてお話します。ご指摘のとおり、災害の復旧・復興工
事が実際に当たりまして、建設業以外からの他業種からの労働者の参入の機会
が増えると予想されるわけで、そのために雇入れ時の教育とか、新規入所者に
対する教育の確実な実施が必要であると思っているわけです。このため関係団
体、関係業者に対しましては、新規入所者に対する教育の徹底を図っています
が、今回の補正予算の中におきまして、東日本大震災の災害復旧・復興に向け
まして、安全衛生を確保するために、支援事業による検討しているところで、
その中でその事業において、安全衛生の専門家が工事を受ける事業者からの依
頼を受けまして、建設工事において、不慣れな未熟な労働者に対しての安全技
術教育の充実を図ることを1つの事業として入れています。加えまして先ほど
の法令遵守の関係でもありますが、そういうエリアに対しますパトロールの実
施とか、技術的な相談への対応とか、こういったことについても対応すべく事
業の要求を検討しているというところです。
 次に保護具の関係です。例えば作業靴等については、基本的には事業者責任
で用意することではございますが、非常に過酷な状況の中で劣化や破損が続く
とか、また非常時なことがありまして、すぐさま新品を調達できないこともあ
るわけです。このような状況の中でボランタリーですが、日本保安用品協会を
通じまして保護具メーカーから無償の作業靴とか、ヘルメット等の提供がござ
いました。これは災害復旧工事におきまして、労働者災害防止の観点から有効
活用するために、労働局等が実施します現場パトロール等の際にそういうもの
を用意しまして、必要に応じて配付するということで十分ではないかもしれま
せんが、この作業保護具の不足に対しまして、対応したいと思っているところ
です。私のほうからは以上です。

○半田化学物質対策課長 アスベスト対策に関しましては、基本的には必需化
と、保護具の着用を徹底してお願いしていこうと考えています。委員のご指摘
がありましたモニタリングに関しましても環境省大気環境課と共同して取り組
んでいくことを考えています。環境省それから環境省の廃棄物対策課、国土交
通省とも連携を図っていますが、ご指摘いただきました総務省との情報交換、
そういったことも活用させていただき、取り組むようにいたします。ありがと
うございました。

○三浦委員 いま先ほど古市委員のほうから法律を守らない建設業界という話
が出ましたが。私は39年この業界に入って仕事をさせていただいて、法律を守
らないという形の中でやった覚えがないので、その辺の内容だけ1つだけ断わ
らせていただきます。
 もう1つお聞きします。3月15日付ですか、電離則の特例という形の中で、
基発0315第7号で細部事項の5で被ばくした労働者への事後的な健康管理につ
いてのところでありますが、こういう被ばくとは実効線量で、何ミリシーベル
トを指しているのか、以上であるのか。また、電離則の第4条及び第5条の範
囲という形の中で考えさせてもらえばいいのか、そこを教えてください。
 現在政府から出されている避難、それと屋内退避区域ですが、通常の屋外作
業を行う場合であっても、区域境界付近では、風向きにより大気中の放射線量
が増加することも予想されると。労働者への被ばく懸念がされるところですが、
電離放射線障害防止規則第4条では、放射線従事者が受ける実効線量が、5年間
について100ミリシーベルトを超えずと。かつ1年間では、50ミリシーベルト
を超えないようにしなければならないとありますが、今回この放射線従事者で
はない我々建設業界ですけれども、一般の作業であっても現実に被ばくをする
恐れがあるわけなので、線量計による放射線管理等を講ずるべきことが必要な
のかどうか。
 もう1つ、特に雨が降った場合には、注意が必要なのかという情報もありま
すので、放射線被ばくについて、かなり神経質になっている状態だと。この不
安を取り除く何らかの文章を出すような計画があるのかどうか。それを教えて
ください。
 安衛法の関係の中で、今回の原発事故周辺での工事にかかる法規制、災害防
止のための注意事項等の情報がありましたらご提供願いたいと思います。前回
の前に起きました淡路阪神大震災で、このときに死亡災害が28件だったものが、
発生年の平成7年には、約40件増加したと。その後、発生前の水準に戻るまで
に5年程度を要したと。その点厚生労働省として、協会に提供できる災害防止
のための情報がありましたら提供をお願いします。

○相澤分科会長 4点ほどありました。

○高崎計画課長 まずその後の関係と若干重なりますが、ご質問がありました
事後的な健康管理に関係について、そこの通達にも書いております臨時の健康
診断の指示については、これは今回の緊急作業、通常の業務ではなく、まさに
原発の事故の復旧なり拡大防止のためにやむを得ない作業として取り組んでい
る作業に従事された方が、作業を累計計算しまして、100ミリシーベルトを超え
た方については、作業終了後に臨時の健康診断を指示するという形で現在実施
をさせていただいています。具体的には東電に対しても指示していますし、協
力会社のほうについても3人被ばくされたこともありましたので、その関係に
ついて指示してきているところです。
 次に原発内でのいろんな緊急作業とは別に、周辺での復旧作業なり何なりで、
特に建設業に従事されている労働者の方々が不安がられている。あるいは、ど
うしたらいいかという話も出ましたが、先ほど市川委員のほうから提起された
問題でもあろうかと思います。繰り返しになりますが、いまの電離則は、基本
的には屋内の施設の中での放射線業務を受理されることを念頭に作られた規定
です。それを杓子定規に屋外にいろいろな作業に当てはめるということについ
ては、いろいろ無理があるのも事実です。その辺については、先ほど申し上げ
ました政府全体として、関係する役所もいろいろありますので、がれきの撤去
を中心とする、いわば放射線で汚染されたようながれきを取り扱うような作業
全体についてのいろんな面での取り扱いについて、現在詰めの調整を行ってい
ます。その中には当然、そこで従事される労働者のばく露防止対策という観点
も入っています。それについて、できるだけ早く取りまとめて示したいと思っ
ています。そういう予定はあるということで、ご理解いただければと思います。
 当然、こういうような状況の中で労働災害の発生をなくすべく、既に申し上
げましたように、私どもとして全力を挙げていろんな取組みを進めていますが、
これについては、ある時点で終わりということではなく、状況はどんどん変わ
っていきますので、その時、その時、その都度、その都度、見直すべきものは
見直し、追加すべきものは追加するという形で、今後とも努力して参りたいと
思っています。そういう意味では、まさにこういう事態ですが、それにより労
働災害が増えないように、あるいは不幸にして増えるにしても、できるだけそ
れを抑え込むように、全力を挙げて取り組んで参りたいと考えていますので、
ご協力よろしくお願いいたします。

○田中安全課長 先ほど計画課長が申しましたように、建設工事につきまして
は、3月18日、28日にその1、その2という形で、がれきの整理から建物の建
築、インフラの復旧など、その都度その都度の時期に応じた安全対策というも
のがあります。いまはその1、その2を出しておりますが、その後のインフラ整
備、さらには復興に移ると、またいろいろなことがあると思いますので、安全
対策についてそれに応じた形での対応、お願い文書を出したいと思っておりま
す。

○古市委員 三浦委員からお叱りをいただきましたので、たぶん三浦委員の所
属する会社では、きっとそういうことはないと思います。各労働局が毎年、建
設現場を300ほど調査いたします。その結果はいつも公表されます。それによ
りますと、直ちに作業停止命令を受ける現場も相当数ありますし、労働安全衛
生法違反を指摘される事例が、ほとんどどこでも50%を超えているというのが
実態であります。先ほど安全課長から、事業主の依頼によって安全衛生の専門
家を派遣するという話がありましたが、特に零細事業者が多うございます。そ
ういう皆さんが、建設業で働いたことのない人たちを雇用して仕事をしてもら
うので、これはしっかり教育してもらわなければいけない、専門家に依頼しよ
うというようになればいいのですが、いままでの状況を見ると、どちらかとい
うと零細事業主は、そういう手立てをなかなか講じないという危険性がありま
す。そこはより丁寧に努力をしてほしいというお願いでありますので、是非よ
ろしくお願いいたします。

○伊藤委員 今日いただいた資料1の3頁のいちばん下、「健康確保対策」につ
いて意見を申し上げます。配付資料によりますと、厚生労働省は今回の震災を
受けて、メンタルヘルスに関連した相談受付、ポータルサイトの運営にすでに
取り組まれているとのことです。まずはこうした支援策が被災者にしっかりと
届くように、対策をお願いしたい。もう1つは、日本商工会議所においては国
に対して3月31日、東日本大震災の復旧・復興に関する要望として、被災した
経営者並びに労働者の健康確保のために、国による臨時健康診断や電離放射線
健康診断などの実施を求めております。もし国が実施できないのであれば、事
業主による臨時健康診断などの実施に対する助成をお願いしたいという要望で
す。

○永田主任中央労働衛生専門官 先ほどお話のあった健康相談や心の健康相談
については、被災者向けに「生活支援ニュース」というのをお配りしておりま
す。こういうもので、1号と2号が出ております。その中で、産業保健推進セン
ターでは電話相談を実施していますといったこともご紹介しておりますので、
そういった形で被災者自身に見ていただけるような資料としてお配りしており
ます。

○伊藤委員 印刷物で配られているのですか。

○永田主任中央労働衛生専門官 こういうように表裏になっております。こう
いうものをセットでお渡しして、その方々が実際に現地でお配りいただくよう
な形になっております。

○伊藤委員 ちなみに、これは何万部ぐらい配付されているものですか。

○高崎計画課長 被災地というのは電気もないので、テレビもつかなければイ
ンターネットも見られないという状況ですので、少し原始的な手法ではありま
すけれども、きちんと情報提供するために政府が取り組んでおりますのは、壁
新聞を張るとか、ビラという形で被災地の避難所に持ち込んで、それを配ると
いう形でやっております。ですから、まさに委員がご指摘されたように、いま
の被災地の状況に即応した形での情報提供の一環として、そういうものをやっ
ております。その中でメンタルヘルスの相談も、きちんと位置づけてやってい
るということです。

○伊藤委員 このビラというのは、どのぐらい印刷されているものなのかご存
じありませんか。

○高崎計画課長 手元に数字がありません。ただ、被災地に十分に行きわたる
ように厚生労働省全体として取り組んでいるということで、足りないというこ
とはないと思っております。ご指摘いただいた健康診断の関係についても、現
在そういう要望があることを踏まえて、私どもも前向きに対応すべく作業を進
めているところです。

○相澤分科会長 よろしいでしょうか。ほかにございませんか。

                 (意見なし)

○相澤分科会長 それでは、活発なご質疑をいただきまして、どうもありがと
うございました。ただ今いろいろなご要望が出ましたので、それについては厚
生労働省のほうで検討していただきたいと考えております。続いて、平成23年
の東北地方太平洋沖地震に起因して生じた事態に対応するため、電離放射線障
害防止規則の特例に関する省令等についての報告をお願いいたします。

○高崎計画課長 資料2-1をご覧ください。今回の改正の措置の背景につきまし
ては、いま申し上げたところです。福島第一原子力発電所の災害の状況に鑑み
て、その災害の拡大を防止するためには、電離則の中で定められていた緊急作
業における放射線被ばく線量の上限を引き上げる必要があったというものです。
従来は規則第7条において、実効線量100ミリシーベルトという基準が設けら
れていました。それについて今回、改正の概要にありますように、250ミリシー
ベルトに引き上げたということです。
 この引上げに至るまでの検討プロセスとしては、改正の概要にあります。1つ
には、ICRP(国際放射線防護委員会)という、放射線に関する国際的な権威あ
る委員会の1990年の勧告において、今回の福島原発のような「重大事故時にお
いては、事故の制御あるいは即時かつ緊急な救済作業における被ばくについて
は、約500ミリシーベルトを超えないようにすべき」という国際的な基準の考
え方が示されておりました。それに加えて、被ばく限度引上げに当たっては、
当然、健康障害等を引き起こすことがあってはならないわけです。その点につ
いて確認を取ったところ、右のほうにありますとおり、放射線被ばく線量が250
ミリシーベルト以下においては、急性期の臨床症状が出るという明らかな知見
は認められませんでした。
 尚その点を踏まえて、引上げの関係については従来から電離則の改正等につ
いて、文部科学省所管の放射線審議会にも諮問して改正してきたという経緯が
あります。後ろのほうに資料を付けておりますが、放射線審議会にも諮問して、
妥当であるとの答申もいただいているところです。そういう状況も踏まえて、
かつ、今回の事態に限っての措置として、緊急作業に従事する労働者の被ばく
線量の上限を、250ミリシーベルトに引き上げたものです。その関係省令は、3
月14日から施行しているところです。
 後ろのほうに関係資料として、2頁が特例省令による改正後の電離則第7条の
規定がこうなるというものです。第2項1号で、実効線量についての基準が250
ミリシーベルトという形になるわけです。
 3頁は関係条項ですので、4頁を見ていただければと思います。先ほど三浦委
員からご質問いただいたものです。この特例省令を施行するに当たり、いわゆ
る施行通達という形でお示ししたのがこの通達です。中身はいま言ったような
ことが、趣旨なり概要に書いてあります。第2の細部事項を見ていただければ
と思います。今回に限った措置ということで、本省令の適用対象となる区域は、
この災害には非常事態宣言が出されており、その宣言の中で非常事態応急対策
実施区域というものが定められておりますので、その中での措置という形にな
っております。現在は原発から半径30?圏内がそれに該当します。
 施行開始日は3月14日ですが、終了日も規定されております。これは原子力
緊急事態解除宣言というものが出されているところで、そこをもって終了する
という形になっております。「特にやむを得ない緊急の場合」とは、事故の制御
と即時かつ緊急の救済作業を行うことがやむを得ない場合ということになって
おります。過去に出した平成13年の省令を4頁で引いております。この中で、
例えば250ミリシーベルトまでという基準は1個1個の作業ではなくて、緊急
作業を毎日毎日繰り返していき、それをずっと累積していって、どこかの時点
で250ミリシーベルトに達したら、そこから先は駄目という意味だということ
が書かれております。あるいは今回、緊急作業に従事された方が通常の放射線
業務に復帰された場合は、極力追加の被ばく線量を落とすようにということが、
留意事項の中に書かれております。
 最後の5点目が、先ほど三浦委員よりご質問いただいた点です。緊急作業に
従事するというのはやむを得ないことですけれども、やはり大事なのは事後的
な健康管理の問題です。その点については今、私どもでは2つの対策を実施し
ております。1つが労働安全衛生法第66条第4項に基づき、具体的には緊急作
業によって100ミリシーベルト以上被ばくされた方は、終了後に急性期のいろ
いろな症状が出ないことを確認するための臨時の健康診断の実施を、事業者に
指示するということを考えております。現に東京電力及び協力会社に発動して
おります。2つ目は、すでに電離則第44条の中に規定されているものですが、
緊急作業に従事される労働者がその作業を終了したときに、直ちに医師による
診察及び処置を受けさせるという義務が事業者にはかかっております。これを
きちんとやっていただくことを徹底していくという意味で、この通達の中で「確
実な実施」ということで指示をさせていただいております。
 6頁と7頁が、私どもから放射線審議会に対する諮問の案文です。8頁は、そ
れに対して妥当であるとの答申文です。9頁がICRPの1990年勧告の抜粋、10
頁が官報の掲載の写しです。

○相澤分科会長 いまのご説明について、何かご質問はありますか。

○市川委員 命をかけて現場の中で原発の復旧作業に当たっておられる作業員
の皆さん、あるいは消防、警察、自衛隊の皆さんに対して、国民の1人として
心から感謝と敬意の気持を表したいと思います。
 今回の省令の改正ですが、非常に残念なことであるとはいえ、こういう緊急
事態においては、誠にやむを得ない措置であったと労働側としては受けとめた
いと思います。それと、事後的な健康確保措置について、万全を期していただ
きたいということは、強くお願いしたいところです。
 昨日の新聞などを見ますと、原発作業員の皆さん方の体内の被ばく量がどう
なっているのかということについて、非常に不安を感じていて、早期の体内被
ばく量の検査を求める声が高まっているという報道がされています。新聞の範
囲ですけれども、第一原発内にはそういう検査をする機械があったのに、いま
は使えない状態だということで、急遽車両で他の所からその機械を持って来て、
別の所で検査をしているという報道がされております。放射線管理手帳を持っ
てやっておられる方は、これまでの被ばく量なども管理されているわけですけ
れども、事務所がめちゃくちゃになったか何かで取りに行けないということで、
管理も手薄になっているということも含めて、作業員の皆さんが非常に不安に
なっていることについて、東電あるいは関連会社の事業者の責任で何とかしろ
と言うだけではなくて、やはり国としてもしっかりと、作業員の皆さんの不安
を解消するような手立てを取っていただきたいと思います。

○高崎計画課長 いま原発内において、緊急作業に従事されている労働者の被
ばく放射線量の管理が何よりも大事だということは、まさにご指摘のとおりで
す。一部では個人ごとの線量計をつけていなかったということもあったわけで
す。それについては安全衛生法令違反の可能性もありますので、私どもとして
もきちんと調査等を申し出るところです。ただ、こういう状況ですので、現地
に入ってというわけにはまいりませんので、行政として対応できる範囲内で、
きちんと対応しているところですし、今後とも対応したいと考えております。
 なお、今回の原発の関係につきまして政府全体としては、経産省の原子力安
全・保安院のほうで一元的な情報対応みたいなこともやっております。そこで、
私どもとしては今回のこういうような状況も踏まえて、保安院を通じて東京電
力に確認しました。現時点で東京電力及び協力会社においては、それぞれ一人
ひとりの日々の累計の被ばく線量をきちんと記録にとどめるという形で、管理
をされていることは確認しています。今後とも労働者の放射線のばく露量の管
理については徹底していただくよう、私どもとしてもきちんと指導してまいり
たいと考えているところです。

○高橋(信)委員 今回の規制値の見直しは迅速にやっていただき、大変理に
かなったいい対応だったと思います。これについてはお礼申し上げます。これ
に関連して、質問が1つとお願いがあります。
 1つはすでにICRPから、500ミリシーベルトまでは許容内だという勧告があ
ったものを、100ミリシーベルトにしていたということですが、それを今度はさ
らに250ミリシーベルトということで、出た数字が半分です。それはどういう
根拠でされたのですか。見方によっては、もうちょっと広げてもいいのではな
いかという感触もあるわけです。そういう論拠的なものを、ご存じでしたら教
えていただきたいと思います。
 それからお願いのほうです。こういう規制を作るときには国際的なスタンダ
ードがあるとか、学会の知見等々に基づいて決めていくと思います。今回はこ
れでもう特に問題がないということですので、穿った見方をすると過剰規制に
なりはしなかったかという懸念も出てくるわけです。したがって、これからこ
ういうものを決めるときは、もちろん安全率を確保するとか、それに倍して安
全な水準を確保するということは大事ですけれども、実現可能性とそういった
命題というものの両方を、うまくバランスが取れるような決め方をしていただ
きたいということです。これは将来の課題ですので、お願いとしてとどめてい
ただければよろしいと思います。

○高崎計画課長 ICRPの1990年時点の勧告において、500ミリシーベルトと
いう考え方が示されていたことは事実です。ただ、日本においてはICRPの勧
告が出た際に、国内法制にどう反映させるかと。それは私どもの所管している
労働安全衛生法だけではなくて、例えば経産省が所管されている原子力等規制
法の中でも同じような規制があります。ですから各省でバラバラの対応があっ
てはいけないということで、政府全体で一元的にどういうように、国内法制の
中で採用していくかということについては、文科省の所管である放射線審議会
のほうで、非常に慎重に時間をかけて議論をした結果を踏まえて、それを放射
線審議会としての答申という形で出しました。それに沿って各省が、私どもで
言えば電離則、経産省で言えば原子力等規制法を直してきてという経緯がある
わけです。
 それで、1990年の500ミリシーベルトの勧告もどうするかについても、放射
線審議会で議論をされたわけです。その結論は、我が国では緊急作業について
は従来どおり、100ミリシーベルトで継続するというご判断だったわけです。私
どもとしてもそれを踏まえて、電離則は100ミリシーベルトという形で実施し
てきました。これを今般、こういう緊急作業時の対応の必要性の中で、250ミリ
シーベルトに引き上げたわけです。この250ミリシーベルトという考え方につ
いては、250ミリシーベルト以下では急性期の臨床症状は出ない、他方、それを
超えてしまいますと、例えば白血球が急激に減少するという症状が出るという
ことで、いわば250ミリシーベルトが分水嶺と言いますか、境界線という形に
なっていたのです。緊急作業ということで、今回の引上げの数字としては250
ミリシーベルトという形で判断したものですし、その考え方は放射線審議会の
ほうに正式に諮問していただき、専門家のご意見をいただいて妥当であるとい
う見解をいただいています。

○犬飼委員 今回の改正については、やむを得ないことだと思うのですけれど
も、意見があります。2頁の第7条1項です。文章表現なのでしょうけれども、
例えば最後の件りに、「限度を超えて放射線を受けさせることができる」という
表現ぶりですね。行政文書ですから、この反対に「これらの規定にかかわらず」
ですから、「限らない」というような表わしぶりができないものかと。その上の
段ですと、母性保護ということを反対に表そうとすればやむを得ないのかもし
れませんが、「妊娠する可能性がないと診断された女性の」という表現がありま
す。内容が変わらなければいいので、この表現のあり方を今後は少し考えてい
ただけるとありがたいかなと。「受けさせることができる」というような表現は、
心情的に非常に好ましくないと思います。これは要望ですけれども、よろしく
お願いします。
○相澤分科会長 要望ということでよろしいですか。それでは今後の要望とい
うことにさせていただきます。ほかにありませんか。それでは規則第15条をお
願いします。

○高崎計画課長 続いてもう1つの報告案件です。資料2-2をご覧いただきた
いと思います。こちらは震災対応ではありません。改正の背景にありますよう
に、昨年実施された事業仕分けの中で、産業保健促進センターあるいは地産保
の事業が見直された関係で、労働安全衛生法を形式的に少し手当てしなければ
なりません。
 具体的に申し上げます。改正の概要を見ていただければと思います。安全衛
生法第13条において、労働者の健康管理については労働者数が50人以上の事
業所は、産業医が対応することになっております。他方、労働者数が50人未満
の事業所は、産業医の選任義務がかかっていない代わりに、「労働者の健康管理
等を行うのに必要な医学に関する知識を有する医師」又は「その他厚生労働省
令で定める者」が健康管理をするように努めなければならないという規定にな
っていました。医師のほうは明らかですけれども、もう1つの「その他厚生労
働省令で定める者」というのは、労働安全衛生規則第15条の2において、「地
域産業保健センター事業の実施にあたり、備えている労働者の健康管理等に必
要な知識を有する者の名簿に記載されている保健師」と書いてあったわけです。
 ところが、この名簿を地産保センターに備えておくという事業が、実は事業
仕分けの事業の整理の中で廃止されました。端的に言いますと、今年度に入っ
て地産保センター事業に、この名簿がずっと置かれるということがなくなって
しまっているので、それを踏まえての対応です。改正ではその名簿がなくなっ
た代わりに省令においては中身を書くということで、「労働者の健康管理等を行
うのに必要な知識を有する保健師」というように規定させていただきました。
 その上で「必要な知識を有する」という内容については、私どもの行政解釈、
行政通達のほうで「従来名簿に記載されていた保健師」はもちろんいいわけで
すし、その方々はリバイスされません。そういう方々に加えて、例えば「日本
産業衛生学会登録産業看護師のうち保健師の資格を有する方」その他「ある一
定の研修を受けられた方等」、まさに必要な知識を有する保健師の中身を示して
いきたいと考えており、それについての省令の手当てということです。
 具体的には2頁を見ていただければと思います。労働安全衛生規則の第15条
の2の第1項のほうで、従来名簿に記載されていた「保健師」が、「労働者の健
康管理等を行うのに必要な知識を有する保健師」とさせていただきました。そ
の内容につきましては私どもの解釈や通達で、保健師等の中身を示したいとい
うことで改正をして、本年4月1日から施行されております。以上、ご報告で
す。

○相澤分科会長 いまのご説明に対してご質問、ご意見がありましたらお願い
いたします。よろしいですか。
 それでは、続いて「労働災害防止団体改革検討専門委員会及び指定・登録制
度改革検討専門委員会の設置について」です。本議題は昨年実施された仕分け
での指摘を踏まえて、中災防等の労働災害防止団体及び試験・検査等の指定・
登録制度の今後のあり方について、専門委員会を設置して検討しようとするも
のです。まず、背景あるいは対応案について、事務局からご説明をお願いいた
します。

○高崎計画課長 資料3をご覧いただければと思います。これは机上配付をし
ておりますが、昨年の12月27日付で厚生労働省独立行政法人・公益法人等整
理合理化委員会から報告書が出され、その内容について当安全衛生分科会で対
応していただければというものです。報告書の抜粋を「改革への提言」の1に
まとめております。
 中身は2つのグループに分かれております。1つが特別民間法人のグループの
もので、この分科会の関係で言いますと、労働災害防止団体の関係です。中央
労働災害防止協会は設立根拠となる「労働災害防止団体法」の見直しを含めて、
同法の趣旨に見合う適切な経営形態に移行するために、審議会において検討を
始め、1年を目途に結論を得ます。他の特別民間法人、つまりほかの業種別の団
体も同様の検討を始めることになっております。
 もう1つのグループが公益法人の関係です。まず私どもの指定事務の関係で
は、(財)安全衛生技術試験協会が該当します。そこは指定法人の在り方につい
て全面的に見直す、検討は関係する審議会等で行うということで報告書がまと
められております。
 2つ目が試験料・登録料の関係です。私どもの関係では同じく試験協会に加え
て、(社)労働安全衛生コンサルタント会、(社)日本作業環境測定協会が該当
しますが、国家試験、国家資格等の試験料、登録料等については、適正な料金
となるように見直すというようになっております。
 3つ目のカテゴリーとして、検査・検定の関係です。私どもでは(社)日本ボ
イラ協会、(社)日本クレーン協会、(社)ボイラ・クレーン安全協会、(社)産
業安全技術協会が該当します。これらについては民間参入を促進するための登
録要件の緩和・見直し等を行い、登録法人数の拡大を図るという改革への提言
をいただいているところです。いずれも審議会で検討を行うという形になって
おります。
 それを踏まえての提案として、下のほうにスケジュールがあります。一緒に
やるということもあるのかもしれませんが、中身が2つのグループに分かれて
おりますので、本日議決をいただいた上で、労働政策審議会安全衛生分科会の
下に労働災害防止団体改革検討専門委員会、指定・登録制度改革検討専門委員
会というものを設置して、5月~11月にかけてご検討いただきます。11月を目
途にとりまとめた上で、12月に分科会にご報告いただき、この分科会としての
対応を改めて議決いただきたいということです。
 2頁を見ていただきたいと思います。そういうことで本日お諮りしたいのは、
労働政策審議会安全衛生分科会運営規程を改正して、第5条の2に新たに条項
を起こし、「分科会に、その所掌事務について特に専門的な調査を行う必要があ
るときは、その定めるところにより、専門委員会を置くことができる。2 専門
委員会の議事運営に関し必要な事項は、分科会長が分科会に諮って定める」と
いう規定を定め、専門委員会を正式に分科会の下部組織として位置づけさせて
いただきたいということです。
 続いて、具体的な専門委員会の中身です。3頁を見ていただければと思います。
趣旨にありますように、安全衛生分科会に労働災害防止団体改革検討専門委員
会を置きます。組織のほうの?にありますように、委員というのは労働政策審
議会本審の委員です。臨時委員というのは、分科会に所属している本審委員以
外の委員です。加えて専門委員ということで、分科会委員以外の専門の方をご
指名いただいて参画いただきます。いずれにしても分科会長のほうでご指名い
ただきます。?ですが、労使はそれぞれ同数です。座長は、分科会長が公益を
代表する者から指名するという形にさせていただければと思っております。会
議の運営は分科会運営の例によるということで、専門委員会のほうで決議した
点は座長から分科会長にご報告いただきます。専門委員会という性質上、少数
意見等があった場合はそれも併せてご報告いただくという形にしたほうが、よ
ろしいのではないかと考えております。次の頁にもう1つの専門委員会の文書
も用意しておりますが、中身は基本的に同じですので、説明は省略いたします。

○相澤分科会長 いまのご説明に対してご意見、ご質問がありましたらお願い
いたします。

○市川委員 内容については了承いたしますが、特に労働災害防止団体という
のは、震災前に見直せという報告書が出ています。こういう事態になったとき
に労働災害防止団体の役割というものが、また新たにクローズアップされてき
ているということで、この報告書ができたときとは違う状況にあるのではない
かと思っております。この報告書ではどちらかというと、経営形態の合理化の
ほうに着目した見直しという雰囲気が漂っているわけです。しかし役割とは何
か、そしてその役割を果たすためにどういった運営形態が合理的なのかという
ことを。ただ無駄があるからやめていけという方向ではないような形での検討
ができるように、少し要望しておきたいと思います。

○相澤分科会長 ご要望ということですけれども、よろしいでしょうか。

○明石委員 専門化する委員会が行われることについては反対いたしませんが、
ここに導かれた整理合理化委員会の法的位置づけというのは、どういうところ
にあるのでしょうか。

○高崎計画課長 最終的には確認いたしますが、たしか法律上あるいは設置法
上、どこかに合理化委員会が位置づけられていたということではなくて、厚生
労働大臣の私的なものと言うのが適切かどうかは別として、諮問いただくもの
として位置づけられていたのではないかと思います。もし正確なところが違い
ましたら、次回にまた改めてご報告させていただきたいと思います。

○明石委員 そういう質問をさせていただいたのは、この整理合理化委員会の
メンバーの中に、使用者側の方がいらっしゃらないとか、議事録を読むと、徹
底的にヒアリングをしたという感じがあまりなかったものですから、質問させ
ていただきました。

○相澤分科会長 ほかにご意見はありませんか。それでは、ただいま説明があ
った分科会の運営規定の改正案と、労働災害防止団体改革検討専門委員会及び
指定・登録制度改革検討専門委員会の設置案のとおり、改正及び設置すること
にしたいと思いますが、よろしいでしょうか。

                 (異議なし)

○相澤分科会長 どうもありがとうございました。それでは分科会の運営規定
の改正案と、労働災害防止団体改革検討専門委員会及び指定・登録制度改革検
討専門委員会の設置案については、了承といたします。また、専門委員会の委
員につきましては、専門委員会設置規定にありますように、これから私のほう
で選定させていただきたいと思います。分科会の委員の皆様方にもお願いする
ことがありますので、その節はよろしくお願いいたします。以上で議題は終わ
りです。本日の分科会を終了したいと存じます。
 なお、安全衛生分科会の委員の任期につきましては、今月26日までとなって
おります。本日の分科会をもって委員を退任される方がおりますので、最後に
ご挨拶をいただければと思います。公益側委員の今田委員と内藤委員、今日ご
欠席の中原委員と名古屋委員と露木委員、労働側の芳野委員、使用者側の伊藤
委員がご退任となっております。順番にご挨拶をいただければと思います。

○今田委員 10年の間、分科会の委員を務めさせていただきました。私が専門
としている社会科学の研究の観点から言いますと、この分科会には非常に幅広
い分野のテーマがあったもので、私などがなかなか理解できないようなものも
あって、一生懸命勉強してこの分科会について行ったというのが現状です。よ
うやくということもないのですが、ようやくお役解放ということになりました。
 私の個人的な印象では、この分科会は労使が対立の構図ではなくて、非常に
熱心に共通のテーマ、安全衛生というものについて真摯に話し合う、非常に実
りの多い審議会でした。他の分科会や審議会もそうでしょうけれども、とりわ
け安全衛生分科会というのは、そういう議論が非常に多かったというのが私の
印象です。この間、震災や放射能事故などがあって、ますます安全や衛生とい
う問題が国民的な関心にもなっていますし、日本の社会にとっての大きな課題
になっています。私は辞めることになりますが、この分科会の意義というもの
が、ますます大きなものになるだろうと思っていますので、皆様どうか今後と
もこの分科会で、実り多い議論をよろしくお願いしたいと思います。ありがと
うございました。

○内藤委員 私も今田先生、名古屋先生と並びまして、5期10年にわたって分
科会に参加させていただきました。労働安全衛生法は5年に1度の改正がござ
いますので、途中2度にわたり、大きな改正にかかわらせていただくことにな
りました。もともと浅学菲才でございますので、私がどれほど新しい労働行政
に貢献できたかは、いま振り返りましても内心忸怩たる思いがいたします。た
だ、法律学の解釈論を専攻とする私にとりましては、逆に法を作る場にいくら
かでもかかわり、大変勉強させていただきました。今後は違った場、あるいは
異なる機会に、ここにいらっしゃる諸委員の先生方にご指導・ご鞭撻賜る場も
あろうと思います。どうぞ今後ともよろしくお願いいたします。10年間にわた
り、誠にありがとうございました。

○名古屋委員 本委員会以前からの委員で、10数年の間、分科会に参加させて
いただきました。労働衛生工学という専門の立場からということでしたけれど
も、その中でいくらかでもお役に立てることがあったとしたら幸せだなと思っ
ています。本当に長い間、ありがとうございました。

○露木委員 私は2期4年にわたりまして、委員の皆様方及び安全衛生部の事
務局の皆様に大変お世話になりました。ありがとうございました。ちょうど大
変な時期を迎えているわけで、私も厚生労働省のOBの立場で、これからます
ます大変になるのではないかと思っております。皆様方の今後のますますのご
活躍、ご健勝を祈念申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。

○芳野委員 大変ありがとうございました。労働安全衛生分科会は非常に専門
性の高い議案が多く、非常に勉強させていただきました。労働安全衛生という
のは、命にかかわる課題が多いということについて再認識させていただきまし
た。皆様方のご指導に感謝を申し上げたいと思います。本当にありがとうござ
いました。

○伊藤委員 皆様にいろいろお世話になりました。皆様のお話を聞いていると
10年間ということで、私もちょうど10年間という長い間、一緒に過ごさせて
いただき、本当にありがとうございました。商工会議所の中で私の担当する委
員会が代わって、今回交代することになったのです。労働委員会の共同委員長
というポジションができまして、そこに就いております。また、厚生労働省の
方々とは別の機会でお会いする機会があると思います。これからもよろしくお
願いいたします。皆様、どうもありがとうございました。

○相澤分科会長 退任される委員の皆様方、ありがとうございました。これか
らも安全衛生の専門家として、ご指導又はご鞭撻をいただきたいと考えており
ますので、今後ともよろしくお願いいたします。それでは事務局から連絡事項
をお願いいたします。

○高崎計画課長 本日はご苦労様でした。次回の日程については、また追って
ご連絡させていただきます。

○相澤分科会長 それでは本日の分科会はこれで終了いたします。議事録の署
名については、労働者代表は犬飼委員に、使用者代表は瀬戸委員にお願いいた
します。本日はお忙しい中、どうもありがとうございました。


(了)

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