ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 中央最低賃金審議会(目安に関する小委員会)> 平成22年度第6回目安に関する小委員会議事録




2010年8月4日 平成22年度第6回目安に関する小委員会 議事録

労働基準局労働条件政策課賃金時間室

○日時

平成22年8月4日(月)
18:00~


○場所

日本青年館ホテル(5階)


○出席者

公益委員

今野委員長、勝委員、野寺委員、藤村委員

労働者委員

石黒委員、田村委員、團野委員、萩原委員

使用者委員

池田委員、小林委員、高橋委員、横山委員

事務局

八田勤労者生活部長、畑中勤労者生活課長、瀧原調査官、山本主任中央賃金指導官、
伊津野副主任中央賃金指導官、平岡勤労者生活課長補佐

○議題

平成22年度地域別最低賃金額改定の目安について

○議事

第6回目安に関する小委員会
(第1回全体会議)

○今野委員長 
 ただ今から第6回目安に関する小委員会を開催します。前回の小委員会においては目安を取りまとめるべく努力したところですが、労使の見解に隔たりが大きく、今回に持ち越し、労使に目安の取りまとめに向けた再考をお願いしております。本日は是非目安を取りまとめたいと思っておりますので、労使の一層の歩み寄りをお願いいたします。
 論点は、雇用戦略対話の合意と生活保護との乖離解消分の引上げとの大きく分けて2つあると思いますが、前回の目安小委員会において、それぞれ労使に再考をお願いしているところです。
 それでは、私の方で両者の主張を整理いたしました。労働者側からは雇用戦略対話について前回と同様ですが、掲げられた目標の達成について、着実な一歩となる最低賃金の引上げの目安を示すべきであり、できる限り早期に全国平均800円を確保することについては今年度をスタートとして、とりわけ800円と乖離が大きいC、Dランクについてこの目標を踏まえた大幅な引上げを行うべきであるべきであるという主張がなされました。使用者側からは雇用戦略対話の前提である4つの事項の全てをパッケージとして合意されたものであり、800円という数値目標だけを取り出すべきではない。とりわけ2020年度までの平均で名目3%、実質2%の成長が重要であるという主張がありました。
 また、生活保護との乖離解消についてですが、労働者側からは、昨年は乖離幅の大幅な拡大や経済危機を受けて、緊急避難的に乖離解消ルールの見直しをしたことはやむを得ない、しかし今年度は経済状況も改善してきており、速やかな解消をすべきであり、地方最低賃金審議会の審議に任せるのではなく、地方最低賃金審議会において審議の指針となるような目安を示したいという主張がなされました。それに対して、使用者側は原則としては今までの解消ルールで解消を目指す。しかし、新たに乖離が生じた地域については、昨年の公益委員見解を踏まえて2年以内で解消する。乖離額が非常に大きい地域、東京、神奈川は解消年数を地方最低賃金審議会の審議に任せる、あるいは、解消年数を1年延長する。乖離額が2倍程度に拡大した地域、京都、兵庫、広島は解消年数を1年延長する。乖離額が大幅に拡大した地域、大阪は解消年数を地方最低賃金会の審議に任せるという主張をされております。間違いありませんか。よろしいですか。
 本日の目安に関する小委員会において、目安を取りまとめたいと思っていますので、労使の一層の歩み寄りを期待しています。
それでは、この2点を踏まえて議論していきたいと思います。何か追加して主張することはありますか。

○團野委員
 特に追加して申し上げることはありませんが、これまで3点ほど、基本的主張を申し上げてきましたが、今回は特に雇用戦略対話合意に関わる部分と生活保護に絞って申し上げます。全国最低800円に達成に向けて、道筋が目に見えるような目安を示すべきであると考えています。着実な一歩となるような取りまとめができればと思っています。生活保護との乖離解消は、2008年に整理されたとおりであり、最低賃金法改正の趣旨は速やかな解消ということで整理されました。それから3年経っています。速やかに生活保護と最低賃金の解消を基本におくべきと考えます。労働側は柔軟な考え方を示していますので、早期にいかに解消できるか、一歩踏み込んだ議論と取りまとめをお願いしたいと考えています。是非、明確な目安を示すべきであると考えています。

○今野委員長
 前回から変更なしということですか。使用者側はいかがですか。

○小林委員
 目安審議に当たっては、第4表に基づいて行うべきと主張してきました。今年は雇用戦略対話合意を踏まえて審議しなければ行けないので、本来ならば、昨年同様の結論のはずですが、それなりの目安額を出さなければと考えています。
 使用者側としては、生活保護との乖離解消は、法律に規定されているものですので、経済情勢は厳しいですし、第4表がマイナスということもありますが、生活保護との乖離が拡大したところへの配慮を柔軟に対処すべきであると考えています。

○池田委員
 今日の日経新聞の記事に、中小企業の歳出削減で、シーリングの問題が出ていました。現実に国会を見ても、政府としても強い覚悟があるのかどうか、聞いてみたいと思います。昼に開催された行政から仕事を請け負っている中小企業の会合で、行政からのモデル賃金が負担になっているという意見が出ていました。経営者団体だけではなく行政側の問題でもあると考えています。公共の仕事をするためには、人を減らさなければならなくなります。こうした厳しい状況ですので、大幅な最低賃金の引上げには対応できません。
 最低賃金を全国最低800円にすると、東京は1000円以上になると思います。10%位の引上げになるのではないでしょうか。Aランクが1000円以上になる道筋をつけられても、本当に困難であると申し上げたいです。どう対処するか大変な問題を含んでいると思います。雇用戦略対話の内容自体についても、慎重な審議が必要であり、単にC・Dランクだけの問題ではないと思います。

○今野委員長
 労働側が官邸や政府に話をしたということを公益委員は聞いていますが、使用者側には直接説明されますか。間接的には使用者側に伝えましたがいかがいたしましょう。

○團野委員
 6月3日に雇用戦略対話で合意しました。その内容には最低賃金他があり、7月16日に民主党幹事長サイドに迫りました。彼らは、約束事だと言っていました。民主党からも政府サイドに働きかけをと話もしましたし、政策調査会、厚生労働省、経済産業省、荒井元総理大臣補佐官についても要請をしました。
 また、7月末に政労トップ会談と定期協議があり、トップ会談では、本予算に向けて要求基準の整備が始まっていますが、マイナスシーリング枠から適用除外してほしいと連合会長から申し上げました。定期協議では、本予算での予算付けが本筋だが、本年度の予備費から数千億を中長期的に使えるようにプールし、賃金を引き上げた企業になんらかの補助ができるようにと話をし、担当大臣からは、検討したい旨の回答があったところです。

○田村委員
 行政からの仕事、つまり公契約についても努力していると思っております。千葉県野田市の公契約条例では、最低賃金を割っているような企業は入札に参加できません。行政も最低賃金をみて見積もりを作成するようになっています。
 行政としても努力していると感じています。

○萩原委員
 東京では1000円を超えるという話ですが、目指すところを政労使で合意したのであれば、それに向かってやるべきところをやりたいと思います。あまり悲観的にならずに審議をしてまいりたいと思います。

○池田委員
 先ほどの話で、補助というのは、最低賃金に対する補助ということですか。つまり賃金の上昇分が払えない事業所に対して国が補助するということ意味でしょうか。

○團野委員
 そうではありません。賃金補助は、最低賃金の引上げが誤りだったという意味になるので、それは違います。効果的な施策について政府サイドで考えて実行に移してほしい旨伝えたところです。

○池田委員
 最低賃金を1000円に引き上げる問題ですが、今回はC・Dランクに対して、どのように取りまとめるかという問題であると思います。政府がC・Dランクをどう成長させるかの戦略を持たなければならないと思いますし、A・BランクとC・Dランクの幅を考慮し、C・Dランクでも東京と同じ額を払えるような施策を考えてもらいたいと思います。

○高橋委員
 生活保護との乖離について、労働側の柔軟な姿勢は心強いです。使用者側もガチガチではなく、すでにルール化されているので、それを大きく変えるのは望ましくないと考えておりますので、速やかな解消という目的を変えるつもりはありません。ただし、乖離額が年により大きく変動するという構造的な問題があります。地方最低賃金審議会委員に聞くと、来年まで含めてどうしようかというところまで自主的に話し合っているところもあります。これまでは最低賃金と生活保護との乖離解消年数の言及にとどめており、あとは地方最低賃金審議会に任せてきました。自主性に任せるというところに配慮する必要があると思います。

○石黒委員
 労働側は乖離の解消を目標にしてやっているわけではなく、それを超えていくことが重要と考えています。速やかな解消という基本原則を踏まえてやるべきです。

○今野委員長
 前回と労使の見解がほとんど変わらないということですので、前回の目安に関する小委員会の終わりの段階と状況は同じということですね。そうしますと、公労・公使の会議で個別に御意見を伺いながら調整していきたいと思いますが、よろしいでしょうか。

(異議なし)

○今野委員長
 それでは公労会議から始めたいと思いますので、使用者側は控え室でお待ちください。




(第2回全体会議)

○今野委員長
 それでは、第2回全体会議を開催いたします。お手元に公益委員見解を配布しておりますので、事務局は読み上げてください。

○伊津野副主任賃金指導官
 それでは、読み上げさせていただきます。
 平成22年度地域別最低賃金額改定の目安に関する公益委員見解。
 1、平成22年度地域別最低賃金額改定の引上げ額の目安は、表1中で下線が付されていない県については、同表に掲げる金額とし、下線が付された都道府県(利用可能な直近の平成20年度データに基づく生活保護水準との乖離額から、平成21年度の地域別最低賃金引上げ額を控除してもなお生活保護水準を下回っている都道府県)については、以下に掲げる金額と、表1に掲げる金額とを比較して大きい方の金額とする。(1) 表2中の下線が付されていない都道府県(昨年度の地方最低賃金審議会において、今年度以降も引き続き乖離額を解消することとされていた都道府県)については、原則として、それぞれ同表のC欄に掲げる乖離額を、昨年度において乖離額を解消するための期間として同審議会が定めた予定解消年数(以下「予定解消年数」という。)から1年を控除した年数(以下「乖離解消予定残年数」という。)で除して得た金額とする。ただし、そうした場合に、今年度の引上げ額がこれまでに例を見ないほどに大幅になるケースや、地域別最低賃金と実際の賃金分布との関係等を勘案して地域の経済や雇用に著しい影響を及ぼすと考えられるケースについては、当該金額を原則としつつ、同表のC欄に掲げる乖離額を乖離解消予定残年数に1年を加えた年数で除して得た金額も踏まえて、地方最低賃金審議会において審議を行うものとする。(2) 表2中の下線が付された県(昨年度に乖離額を一旦解消したが、最新のデータに基づいて比較を行った結果、新たに乖離額が生じた県)については、それぞれ同表のC欄に掲げる乖離額を、当該乖離額を解消するための期間として地方最低賃金審議会で定める年数で除して得た金額とする。(表1)ランク、都道府県、金額、A、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪10円。B、栃木、埼玉、富山、長野、静岡、三重、滋賀、京都、兵庫、広島10円。C、北海道、宮城、福島、茨城、群馬、新潟、石川、福井、山梨、岐阜、奈良、和歌山、岡山、山口、香川、福岡10円。D、青森、岩手、秋田、山形、鳥取、島根、徳島、愛媛、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄10円。(表2)都道府県、平成20年度データに基づく乖離額(A)、平成21年度地域別最低賃金引上げ額(B)、残された乖離額(C)(=A-B)、北海道、50円、11円、39円、青森、9円、3円、6円、宮城、23円、9円、14円、秋田、8円、3円、5円、埼玉、27円、13円、14円、千葉、10円、5円、5円、東京、65円、25円、40円、神奈川、70円、23円、47円、京都、32円、12円、20円、大阪、31円、14円、17円、兵庫、22円、9円、13円、広島、22円、9円、13円。
 2(1)目安小委員会は本年の目安の審議に当たっては、平成16年12月15日に中央最低賃金審議会において了承された「中央最低賃金審議会目安制度のあり方に関する全員協議会報告」を踏まえ、特に地方最低賃金審議会における合理的な自主性発揮が確保できるよう整備充実に努めてきた資料を基にするとともに、「雇用戦略対話における最低賃金の引上げに関する合意(平成22年6月3日 雇用戦略対話第4回会合)を踏まえた」調査審議が求められたことに特段の配慮をした上で、諸般の事情を総合的に勘案して審議してきたところである。
 目安小委員会の公益委員としては、地方最低賃金審議会においては最低賃金の審議に際し、上記資料を活用されることを希望する。
 (2)昨年度の地方最低賃金審議会において、今年度以降も引き続き乖離額を解消することとされていた都道府県については、今年度の解消額は、これまでの公益委員見解で示した考え方に基づけば、本来、最新のデータに基づいて算出された乖離額を、乖離解消予定残年数で解消することを前提に定められるものである。
 しかし、最低賃金と生活保護の比較について、最新のデータに基づいてこれを行った結果、昨年度の地方最低賃金審議会において最低賃金が生活保護水準を下回っているとされた都道府県の大部分において、乖離額が昨年度と比較して拡大するといった状況が見られるところである。
 このため、最低賃金額は、労働者の生計費なかんずく生活保護のみによって定められるものではなく、労働者の賃金、通常の事業の賃金支払能力も含めて総合的に勘案して決定されるべきであることにかんがみ、各地域の経済・企業・雇用動向等の実態を踏まえ、今年度においては、上記のこれまでの公益委員見解で示した考え方に基づく解消方法を見直すこともやむを得ないものと考える。
 具体的には、今年度の解消額の目安については、乖離額を乖離解消予定残年数で除して得た金額を原則とすることが適当である。ただし、そうした場合に、今年度の引上げ額がこれまでに例を見ないほどに大幅になるケースや、地域別最低賃金と実際の賃金分布との関係等を勘案して地域の経済や雇用に著しい影響を及ぼすと考えられるケースについては、当該金額を原則としつつ、乖離解消予定残年数に1年を加えた年数で除して得た金額も踏まえて、地方最低賃金審議会において審議を行うことが適当である。
 (3)上記の見直しに伴い、残された乖離額を解消するための期間について、昨年度の地方最低賃金審議会の答申において、原則として今年度で乖離額を解消するとしたケース(埼玉、東京、神奈川、京都、大阪、兵庫、広島)のうち、今年度で乖離額を解消するとした場合、引上げ額がこれまでに例を見ないほどに大幅になるものや、地域別最低賃金と実際の賃金分布との関係等を勘案して地域の経済や雇用に著しい影響を及ぼすと考えられるものについては、乖離解消予定残年数に1年を加えた年数までと見直すことが適当と考える。
 一方、昨年度の地方最低賃金審議会の答申において、昨年度で乖離額を解消するとしたケース(秋田、千葉)については、今年度新たに発生した乖離額について、これまでの公益委員見解で示した考え方を踏まえると原則として2年以内で解消することになるが、できるだけ速やかな解消を図ることが適当と考える。
 なお、具体的な解消期間については、地域の経済・企業・雇用動向等も踏まえ、地方最低賃金審議会がその自主性を発揮することを期待する。
 (4)また、今後の最低賃金と生活保護の具体的な比較については、その時点における最新のデータに基づいて行うことが適当と考える。ただし、解消すべき生活保護との乖離額が年々大きく変動しうるという問題については、別途対応を検討することが適当である。
 (5)目安小委員会の公益委員としては、中央最低賃金審議会が本年度の地方最低賃金審議会の審議の結果を重大な関心をもって見守ることを要望する。以上です。

○今野委員長
 ありがとうございました。公益委員といたしましては、これを中央最低賃金審議会に示したいと思っていますが、よろしいでしょうか。

○小林委員
 使用者側委員は依然として、中央最低賃金審議会に対して、この公益委員見解を示すのは、反対なのですが、労使の意見の隔たりが大きいということで、このままではどうしてもまとまらない、という判断での公益委員見解だと理解しております。

○團野委員
 雇用戦略対話の合意について、明確な目標が設定されたことにより、目安に関する小委員会の審議が難航しましたが、こうして中央最低賃金審議会に対して目安の取りまとめができたことは一定の成果があったのではないかと思います。そして、地方最低賃金審議会においても、この公益委員見解を踏まえた審議を期待したいと思います。

○今野委員長
 ただ今の御意見で、皆様のお立場は分かりましたので、あえて決を採ることはいたしません。この公益委員見解を、小委員会の報告として、中央最低賃金審議会に示したいと思います。
 では、目安に関する小委員会報告書ですが、ただ今、印刷をしていまして、もうしばらく、お待ちください。

○畑中勤労者生活課長
 目安に関する小委員会報告書ですが、印刷が終わりました。

○今野委員長
 では、皆さんにお配りください。それでは、目安に関する小委員会報告について 引き続き取りまとめたいと思います。お手元に案を配布していますので、事務局は朗読してください。

○伊津野副主任賃金指導官
 それでは読み上げさせていただきます。
 中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告(案)、平成22年8月4日。
 1、はじめに。平成22年度の地域別最低賃金額改定の目安については、累次にわたり会議を開催し、目安額についてそれぞれ真摯な議論が展開されるなど、十分審議を尽くしたところである。
 2、労働者側見解。労働者側委員は、勤労者の所得格差が拡大し、生活そのものに困難を極める人たちが拡大していることを指摘し、ナショナルミニマムとして「生活できる最低賃金水準」を早急に確立することが必要不可欠と指摘した。
 また、日本経済は、アジアを中心とした輸出入の回復によって景気回復の兆しが見られるものの、配分構造は歪んだままであり、雇用や消費関連の指標の改善は見られず、内需は弱いままとなっている。今後、日本経済が回復へと向かうためには、勤労者生活の安心・安定を確保し、個人消費の落込みに歯止めをかけ、消費拡大へ反転させる必要があると主張した。
 さらに、最低賃金の水準は一般労働者の賃金実態からみて依然として低く、先進国の中ではもっとも低い水準となっており、賃金の底上げにつながる最低賃金を確立することが急務となっていると主張した。
 次に、雇用戦略対話において、最低賃金の具体的な目標金額の水準について合意がなされたことを高く評価し、政労使による初めての目標金額の水準の確認であり、極めて重い合意であると主張した。  
 こうした状況を踏まえれば、雇用戦略対話の合意に掲げられた目標の達成に向け、着実な一歩となる目安を具体的に示すことが必要であると主張した。具体的には、勤労者生活や最低賃金の現状を踏まえれば、本年度をスタートとして3年程度でこの目標を実現することが必要であり、とりわけ800円との乖離が大きいC、Dランクについて、この目標を踏まえた大幅な引上げを行うべきであると最後まで強く主張した。
 また、生活保護との乖離解消については、最低賃金法上も要請されており、生活保護との乖離がある地域においては、一気に解消することを強く求めると主張した。
 3、使用者側見解。使用者側委員は、日本経済は、着実に持直しの動きが続いているが、設備投資に力強さが見られないなど、民間主導の自律的な景気回復過程に入っているとは言い難い状況にあり、とりわけ、中小零細企業の多くは、いまだに景気回復の実感すら持てないところが多いのが実態であると主張した。
 また、完全失業率は3カ月連続の上昇となり、有効求人倍率も依然として低水準であり、雇用情勢も依然として厳しい状況が続いていると主張した。
 さらに、雇用戦略対話における合意については、数値目標の部分だけでなく、その前提条件である事項(経済成長、中小企業の生産性、中小企業支援策)のすべてをパッケージとして合意されたものであり、数値目標だけ取り出して検討できない。とりわけ、「2020年度までの平均で、名目3%、実質2%を上回る成長」が重要であるが、当面、この達成は極めて困難である。また、中小企業の生産性は停滞ないしマイナス傾向にあり、中小企業の具体的な支援策は未だ決まっていない。こうした状況の中で、最低賃金だけを引き上げれば、中小零細企業にもたらす影響は測りしれず、企業の存続をおびやかすだけでなく、地域の雇用情勢の更なる悪化を招くおそれがあると最後まで強く主張した。
 以上の点を踏まえれば、今年度の目安審議に当たっては、全てのランクでマイナスとなっている賃金改定状況調査結果を十分に踏まえて議論を行うべきであり、経済成長の前提を満たしていないだけでなく、パッケージとして合意された事項のいずれも達成されていない現状においては、とりわけC、Dランクの大幅な引上げは困難であると主張した。
 また、生活保護との乖離解消については、生活保護の基準年度の変更により、乖離額が拡大し、再び乖離が生じた。乖離額が拡大した地域については、地域の経済状況や賃金の分布状況を踏まえながら、昨年同様に乖離解消の方法について見直しが必要と主張した。また、乖離額の変動問題については、今後、早急に検討を行うべきと主張した。
 4、意見の不一致。本小委員会としては、これらの意見を踏まえ目安を取りまとめるべく努めたところであるが、労使の意見の隔たりが大きく、遺憾ながら目安を定めるに至らなかった。
 5、公益委員見解及びこれに対する労使の意見。公益委員としては、賃金改定状況調査結果を重要な参考資料とするとともに、地域別最低賃金と実際の賃金分布との関係にも配慮しつつ、加えて、生活保護に係る施策との整合性にも配慮することとする規定が新たに加えられた最低賃金法改正法の趣旨及び雇用戦略対話における最低賃金の引上げに関する合意(平成22年6月3日 雇用戦略対話第4回会合。以下「雇用戦略対話合意」という。)を踏まえ、平成20年度の公益委員見解で示した、一定の前提の下での生活保護と最低賃金との比較(直近データによる比較は、別添グラフ参照。)を行い、また、上記の労使の小規模企業の経営実態等への配慮及びそこに働く労働者の労働条件の改善の必要性に関する意見等にも表れた諸般の事情を総合的に勘案し、公益委員による見解を下記1のとおり取りまとめた。なお、公益委員としては、雇用戦略対話合意については、できる限り早期に全国最低800円を確保すること、経済成長、中小企業の生産性、中小企業支援策の実施状況に配慮すべきものと考える。
 本小委員会としては、地方最低賃金審議会における円滑な審議に資するため、下記1を公益委員見解として同審議会に示すよう総会に報告することとした。
 また、審議の際の留意点等に関し、下記2以下のとおり示し、併せて総会に報告することとした。 
 なお、下記の公益委員見解については、労使双方ともそれぞれ主張と離れた内容となっているとし、不満の意を表明した。また、使用者側の全部は、下記1の公益委員見解を地方最低賃金審議会に示すよう総会に報告することは適当でないとの意見を表明した。
 さらに、雇用戦略対話合意において、当該合意における最低賃金引上げの目標の円滑な達成を支援するため、最低賃金引上げにより最も影響を受ける中小企業に対する支援等の取組を講じることを検討すべきとされており、本小委員会としては、政府において必要な検討が行われることを要望する。また、行政機関が民間企業に業務委託を行っている場合に、年度途中の最低賃金改定によって当該業務委託先における最低賃金の履行確保に支障が生じることがないよう、発注時における特段の配慮を要望する。
 なお、「記」以下につきましては、先ほど読み上げました公益委員見解のとおりでございますので省略させていただきます。
 一番末尾の頁でございますが、先ほどの別添のグラフのところでございます。それでは、最初の部分だけ読み上げさせていただきます。生活保護(生活扶助基準(1類費+2類費+期末一時扶助費)+住宅扶助)と最低賃金。以上です。

○今野委員長
 ありがとうございました。それでは、この案を本小委員会報告にしたいと思いますが、よろしいでしょうか。

○高橋委員
 ただ今、読み上げていただいたところですが、3番目の使用者側見解について、「完全失業率は3カ月連続で上昇」となっておりますが、これは私たちが第2回の目安に関する小委員会で提示したものの引用だと思いますが、その後、完全失業率の最新のデータが発表されており、現時点では4カ月連続での増加となっておりますので、修正いただきたいと思います。
 目安制度については、ランク区分のあり方、生活保護との乖離解消方法のあり方及び資料などの課題がありますので、目安制度に関する全員協議会を再開し、検討させていただきたいと思います。

○今野委員長
 それでは、よろしいですか。では、この案を本小委員会報告にしたいと思いますが、よろしいでしょうか。

(異議なし)

○今野委員長
 他にございますか。よろしいですか。それでは、8月6日13時からの中央最低賃金審議会に私から報告することとしたいと思います。また、目安審議に用いた資料については、事務局より地方最低賃金審議会において活用できるよう送付していただいているとは思いますが、その点は大丈夫ですか。

○伊津野副主任賃金指導官
 目安に関する小委員会で使用しました資料については、全て都道府県労働局に送付しております。

○今野委員長
 分かりました。他に何かございますか。

○團野委員
 多くの時間と労力を費やした今年の目安審議は、公労使の三者構成による審議において、労使の意見がまとまらなかったことは残念なことだと思います。ただ、労側としては、これまでもそうでしたが、これからもこの三者構成で目安を取りまとめるという考え方は大事にしたいと考えています。使用者側各委員とは、その思いについては一緒だったと感じています。思いは一緒であったが、立場が異なるということで、意見が対立しました。しかしながら、お互いに十分な議論を尽くして、こうして目安を取りまとめられたということは非常によかったと思います。

○高橋委員
 私からも一言申し上げます。
まず、公益委員に感謝を申し上げたいと思います。使用者側は公益委員見解(案)に全員一致で反対しましたが、委員長が採決を行わなかったことは、三者構成にとって重要な配慮だと思います。
 また、労働者側委員が一貫した主張を貫徹されたことに敬意を表したいと思いますし、また事務局のご苦労も感謝を申しげたいと思います。
 しかしながら、使側全員の反対表明という異例ともいえる形で終わったことは残念でした。三者構成を維持することに対する強い思いは、労働側と何ら変わりなく、今後とも大事にしていきたいと思っております。来年の目安審議でもこれを十分に踏まえ、目安の取りまとめに最大限努めていきたいです。

○今野委員長
 他にありますか。それでは、以上をもちまして、本日の目安に関する小委員会を終了します。議事録の署名を團野委員、高橋委員にお願いします。なお、昨年もそうだったのですが、この目安に関する小委員会報告を中央最低賃金審議会総会前なのですが、マスコミに公表させていただきたいと考えていますので、御了承いただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。

(異議なし)

○今野委員長
 それでは、そのようにさせていただきます。以上をもちまして本日の目安に関する小委員会を終了します。ありがとうございました。


(了)
<照会先>

労働基準局労働条件政策課賃金時間室
最低賃金係 (内線5532)

(代表番号)03-5253-1111

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 中央最低賃金審議会(目安に関する小委員会)> 平成22年度第6回目安に関する小委員会議事録

ページの先頭へ戻る