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2011年4月12日 第2回リウマチ対策作業班議事録

○日時

平成23年4月12日(火)
15:00-17:00


○場所

経済産業省別館 8階 827号会議室


○出席者

洪 愛子 (社団法人日本看護協会常任理事)
戸山 芳昭 (慶應義塾大学医学部教授)
長谷川 三枝子 (社団法人日本リウマチ友の会会長)
福地 義之助 (順天堂大学名誉教授・漢方免疫アレルギー研究会理事長)
宮坂 信之 (東京医科歯科大学教授)
山中 朋子 (青森県健康福祉部医師確保対策監)
山本 一彦 (東京大学大学院教授)
横田 俊平 (横浜市立大学大学院医学研究科教授)

○議題

1 今後のリウマチ対策について
2 その他

○議事

○荒木課長補佐 ただいまより第2回リウマチ対策作業班を開催いたします。会員の皆様におかれましてはお忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。本来は3月16日に開催する予定でしたが、直前に東日本大震災の発生もございまして、延期となっておりました。今回はその仕切り直しということでの作業班です。
 本日の出席状況につきまして、ご報告させていただきます。本日は今村班員、住田班員、辻班員から、欠席の連絡をいただいております。山本班員につきましては、ご出席いただくということでお伺いしておりますが、若干遅れていると理解しております。以降の進行につきましては、宮坂班長によろしくお願いいたします。
○宮坂班長 本日はリウマチ対策の今後の方向性、あるいは具体的な方策に関しまして、これまでの議論を踏まえまして、事務局と相談しながら、昨日皆様のお手元に配られたと思いますが、素案に基づきまして、今日は皆様からより一層のご意見をいただく、あるいは追加をして良いものにするということを考えておりますので、よろしくお願いいたします。事務局から配付資料のご確認をお願いいたします。
○荒木課長補佐 議事次第、班員名簿、作業班の座席表がございます。それ以降は資料1ということで、前回第1回の対策作業班での主な指摘事項をまとめたものです。資料2はリウマチ対策の骨子、新規報告書の素案の形についてお示ししております。資料3はいちばん肝となります、いま宮坂班長からもご説明のありましたリウマチ対策報告書の素案です。
 そのあとに参考資料を付けておりますが、第1回目の資料、前回の報告書を参考資料として付けておりまして、参考資料6までになっております。資料の説明は以上です。過不足等がございましたら、事務局に申し伝えください。
○宮坂班長 議事に入ります。まず、議事1「今後のリウマチ対策について」です。事務局からご説明をお願いいたします。
○荒木課長補佐 資料1の前回の主な指摘事項を簡単に読み上げます。まず、骨子(案)全体にかかわる指摘事項です。小児リウマチと一般的に言われるのは、若年性関節リウマチとかスティル病等の免疫疾患を含んで考えられたりして、診断時点では、はっきりしていないものが含まれているので、本疾患の対象範囲を明確にすべきではないのかというご意見がありました。
 個別の各施策に関する指摘事項として、まず医療等の提供の部分です。1つは専門医の偏在が、地域における診療レベルの格差に大きく影響しているという実情、そのためには地域における専門医を積極的に育成する必要があるのではないか。2点目として、リウマチ患者が最初に受診される慢性期の治療を外来で担う一般開業医、かかりつけ医の先生に対しても、必至な基本的診療技術の普及は重要である。ガイドラインもそのような目線で作成されたものを別途に考えてもよいのではないか。やり方としては、そのようなものがあるのではないかというご意見です。
 さらに、小児リウマチと成人リウマチでは、ガイドラインの整備状況、あるいは可能な専門の医師数で大きく違いがあるということで、小児リウマチに対する対策も報告書に盛り込んで欲しいというご意見もいただいております。さらに、リウマチ診療に特化した医師以外の医療従事者の育成も重要であろう。例えば看護師については特定看護師を示すのか、あるいは別途の高度のケアを提供できる看護師を示すのかを明確にすべきであるというご意見をいただいております。
 情報提供・相談体制についてです。患者が理解しやすい、あるいは心理面のケアも含めた医療情報の充実が必要である。さらに、いかに患者を早期の段階で専門病院に集めるのか。積極的に早期発見、早期治療、寛解導入療法を行えるかが、成否を決めるので、効率的に集め、効率的に普及啓発をする方法を模索する必要がある。例えばWord○○dayなどのシンポジウム等を活用したらどうかというご意見がございました。
 さらに、国の相談員養成研修は年に1度させていただいておりますが、こちらの研修の充実はよいが、実際に相談業務に就いていない者もいるのではないかということで、その有効活用を図るべきだというご意見がありました。
 最後に研究開発等の推進です。リウマチは寛解率も上がっているとはいえ、その病態は不明であり、根治するわけではないので、研究の推進は引き続き重要である点を忘れてはならないというご意見でした。
 生物学的製剤です。生物学的製剤の長期安全性についての確認、これは開発と導入されてまだ数年しか経っていませんので、そういう長期の副作用の確認等も必要ではないか。そのためのデータベース構築も重要ではないか。さらには、小児リウマチに関しては、生物学的製剤の適用がないとか、適用拡大のハードルが高いという実情、さらには医薬品に対する特例的な薬事承認の対応も欲しい。
 最後に対策の評価ですが、これは5年を目処に前回方向性を出しておりますが、せめて中間評価のようなもの、定期的な評価のようなものは必要なのではないかというご意見がありました。
○宮坂班長 ただいまのご説明に対して、ご質問等はございますか。
○横田班員 裏の頁の上から2段目ですが、生物学的製剤は小児では2つ認可されています。エンブレルかフェモラ、ヒュミラとカナキンマブは申請に入っているということです。いずれにしても、稀少疾患という枠に入るだろうと思うのですが、私たちは10年間かけて治験をやってきています。そういう治験のシステムを作るのは我々の責任だと思いますし、それに対して、副作用の有害事象の問題をはっきりさせてという条件ですが、承認、認可をよろしくお願いいたします。
○宮坂班長 続けて、前回の作業班でまとめた資料2について説明をいたします。前回作業班で、リウマチ対策の骨子についてのご議論を踏まえて、平成17年の報告書を参考に骨子となる部分をまとめています。事務局から説明をお願いいたします。
○荒木課長補佐 資料2です。これは前回のご議論をまとめたものですので、そのまま読み上げます。これは大きく1、2、3、4で、この組合せについては前回の報告書についての骨組みと大きく変わっておりません。医療等の提供、情報提供・相談体制、研究開発等の推進、施策の評価等という4つです。
 医療等の提供については、リウマチに必要な医療体制、人材育成、専門情報の提供の3点です。情報・提供相談体制については、自己管理の促進、情報提供体制の確保、相談体制の確保の3点です。研究開発等の推進については、効果的かつ効率的な研究推進体制の構築、研究目標の明確化、医薬品等の開発促進という項目を盛り込むべきだというご意見をいただいたと理解しております。
○宮坂班長 それを基にして、次の資料ですね。
○荒木課長補佐 資料3で、骨子を基に宮坂班長にご作成いただいたものが、「リウマチ対策報告書(素案)」です。これについては、ご作成いただいた班長から簡単にご説明いただければと思います。
○宮坂班長 資料3リウマチ対策報告書(素案)です。私が要点を簡単にご説明しながら、皆様のご意見をいただき、一つひとつ確認をして先に進めていただきます。まず2頁で、1 リウマチ対策の現状と問題点で、いまの現状です。ここに書いてありますように、リウマチの患者数は一般的に70万人、80万人といわれているのですが、実はこれはかなりいい加減な数字で、はっきり把握はされていないということを最初にいっております。ここでいうリウマチとは関節リウマチをいうということです。
 イ治療の動向です。リウマチの病因・病態は、いまだ解明されたとはいえず、効果的な対症療法はあるものの、根治的な治療法が確立されていません。これが第1点です。
 かつてはリウマチの症状は継続的に悪化し、患者によっては強い疼痛や変形・拘縮などによる機能障害によって、QOLの低下が生じていました。しかし、昨今は早期診断・早期治療が可能になり、メトトレキサートや生物学的製剤の治療薬の効果的な選択により、リウマチの治療は飛躍的な進展を遂げている。特に新規に発症した患者では、早期から積極的な治療を行うということで、関節破壊の完全な阻止を期待できる治療方法が確立されつつある。しかし、一方で、過去にリウマチを発症し、すでに関節破壊を来してしまった、そしてADLが制限されている方というのも数多くいて、この方たちのためには機能回復の技術革新が求められているというのが、いまの治療の動向です。もし何かご意見があれば言っていただくことにして、少し先にいきたいと思います。
 これまでのリウマチ対策の経緯が(ア)に書いてありますが、厚生労働省では平成9年に、ここに書いてあるようなことが行われて、現在までに免疫アレルギー疾患予防・治療研究事業によるリウマチの病態解明、治療法の確立等の研究が進められている。そして、シンポジウム、パンフレット等で情報提供がされているとともに、ホームページでここに書いてあるような、正しい情報の普及の強化が図られている。それから、都道府県レベルでは、保健師を対象にしたリウマチ・アレルギー相談員養成事業が実施されて、地域における相談体制の確保促進が図られています。医療機関等における適切な診断、治療法の普及のためには、関連学会との協力によって、これまでに「リウマチ対策の診療マニュアル」等のガイドラインが作られ、医療機関に配付されています。それから、平成17年に今回のリウマチ対策の基になるものが作られて、リウマチ対策の方向性というものが発出され、戦略的、体系的に、リウマチ対策が推進されているということを述べてあります。
 これに基づいて、従前の事業の拡充に努めるとともに、国民やリウマチ患者を対象としてシンポジウムを開催し、リウマチに関する一般的な疾病情報、適切なへ治療や薬剤に関する情報などを広く啓発する事業も開始されています。平成8年からはリウマチ科の自由標榜が認められ、平成20年の調べでは、現在標榜施設は5,100施設となっていることを指摘しております。
 (イ)地方公共団体におけるリウマチ対策です。これも行われているのですが、必ずしも十分ではないということで、現時点では各都道府県でリウマチ患者に関する調査や患者の実態把握が十分になされていない可能性があることを指摘しています。
 (ウ)リウマチに関する専門医療です。リウマチ性疾患に関する専門医療の向上を図るために、昭和62年からリウマチ学会で専門医制度が認定されたということになって、いまは専門医制評価・認定機構によって承認されていて、現在は指導医が854名、専門医が4,356名います。このほかに、日本整形外科学会は独自に認定リウマチ医制度を有していて、こちらには5,389名がいます。これとは全く別に、昭和61年2月からリウマチ登録医制度というものが制定され、これがいま日本リウマチ財団に移管され、こちらで3,498名の登録医が認められているという現状があります。
 (エ)リウマチに関する研究では、平成12年10月に国立相模原病院に臨床研究センターが開設され、平成16年4月からは理研の免疫・アレルギー科学総合センターとの間で、花粉症、リウマチをはじめとする免疫・アレルギー疾患克服に関する基礎的な研究と臨床研究の連携強化、研究成果の応用を伴う協力が行われているということが、ここで指摘されております。ここまでが、1リウマチ対策の現状と問題点の中で、我が国におけるリウマチ対策の現状を記載したものです。ここまでの点で何かございますか。よろしゅうございますか。またあれば、あとからご指摘いただくことにしまして、先に進めます。
 (2)リウマチ対策における課題です。(ア)医療の提供等に関する課題では、まずリウマチの治療をリウマチ患者の状況で見ると、リウマチ友の会の調査で、これは平成22年に行われたものですが、ここで現在受けているリウマチ診療に対する満足度は、「満足」が44.3%、自助具を使用している患者が59.8%、手術を受けたことのある患者が42%を占めていて、関節破壊が患者のQOL低下の大きな要因になっていることが、これで明らかになると思います。リウマチ診療における問題点ですが、医療技術等の進歩により、リウマチの早期診断が可能となりまして、治療ではメトトレキサートのような抗リウマチ薬、あるいは生物学的製剤を必要に応じて使うこと、それから人工関節を中心とした外科的治療といったことの進歩によって、寝たきりになるリウマチ患者が減少してきていますし、そこに、いま言ったような内科的あるいは外科的な治療が寄与、貢献していると。
 これも友の会から引用させていただいたものですが、患者の調査では、メトトレキサートが80.7%、生物学的製剤が29.1%に使用されていると報告されています。ただ、これは友の会という比較的病気が重い集団をとっていますので、一般の患者では、たぶんここまでメトトレキサート、生物学的製剤の頻度は高くないのですが、友の会の数字を引用するとこうなります。
 リウマチは悪化するまでに適切な治療をしないで放置すると、軟骨・骨の破壊を来して、関節機能が低下し、ADLの障害を受けます。そして、QOLの低下を招きます。これを防止するためには、世界的には抗リウマチ薬を早期から積極的に用いる治療が推奨されてきているようになっているけれども、我が国では、未だそれが十分に対応できているとは言えない。
 その理由としていくつか書きましたが、まず欧米では第一選択薬剤となっているメトトレキサートの使用には専門的な治療が要る。それから、生物学的製剤には多額の医療費が必要ですし、副作用で感染症が起こりますので、これに対するリスクマネジメントに関する専門的な知識が必要だと。それが故に、なかなか使われにくいということがあります。
 それから、リウマチ診療はパラダイムシフトと言われるように、飛躍的に進化をしたわけですが、専門医療を担う医師というのは、全国的に増加傾向にはありますが、都道府県間では大きな偏在があることも事実です。それから、先ほど専門医はいろいろな種類があると申し上げましたが、それが統一されていない。診療拠点となる病院が少ないなどの理由によって、受診すべき医療機関の選択で、患者がやや困っている状況があるということです。
 それから、(イ)治療法の安全性評価と新薬導入です。現在使われている医薬品の安全性の評価については、特に生物学的製剤では全例調査というのが行われて、そういう調査が義務づけられていまして、その中で生物学的製剤の有害事象を検出する体制が整えられてきています。生物学的製剤の有害事象では、ここに主なものを括弧で書きましたが、感染症、間質性肺炎があります。あるいは抗リュウマチ薬ではレフルノミド、メトトレキサート、タクロリムスで、やはり間質性肺炎が起きます。特に日本人でよく起こるということも、ここではあえて指摘したいと思います。それと、先ほど横田先生もお話になられたように、海外からの新薬導入が遅い、特に小児では、いまようやく2剤、大人では5剤ですが、新薬の導入が遅いという指摘があるということです。
 (ウ)では患者の実態把握で、先ほども申し上げましたように、患者の実態というのが、例えばリウマチの発症率、有病率、発症年齢、機能予後、生命予後、これらに関する疫学的なデータが十分に得られていないということですので、これらを客観的にとらえるための研究に対して、公的競争資金などを用いて、継続的な支援を行うことが必要であると思われる。また、医療機関で収集する情報のみならず、患者の目線で収集された情報も、医療の標準化や国等が進める対策を検討する上では、重要である。
 (エ)医療機関の連携ですが、これは病診連携ということです。医療機関同士の連携、特に各地域で拠点となるような医療機関を確保して、かかりつけ医との間に密接な病診連携システムを構築することが必要であることを、ここで指摘しております。
 (オ)では、医師とコメディカルをさらに資質を向上させるためには、リウマチの早期診断、早期治療をできる医師を育成することが必要ですし、小児においても、全国的にまだ非常に少ない、こういった医師の養成も必要である。
 それに対して厚生労働省の研究班あるいは学会との連携で、いま診療ガイドラインの普及を図っていますが、必ずしも全ての医療機関においてこれを活用した標準的な医療がなされているわけではない。それから、メトトレキサートあるいは生物学的製剤を用いた治療方法、あるいはすでに関節破壊が進行して日常生活の活動性が低下した患者に対する治療方法の普及のために、最新の医学的知見を踏まえた診療ガイドラインの改訂、その普及が求められている。そして、リウマチは全身性疾患ですので、その早期診断にはリウマチ以外の膠原病を鑑別することが必要であるということで、専門の医師の育成に当たっては、内科医だけではなく、整形外科医、その他がこれを縦割りで診療を行うのではなく、横の連携を深めて、関連学会との連携も通して、幅広い知識を修得する機会を設ける必要があることを指摘しています。さらに、リウマチ診療では医師とコメディカルの連携も必要不可欠で、リウマチ診療に精通した看護師、薬剤師、理学療法士、作業療法士などの育成も重要であるとしています。
 そして、(イ)研究開発、医薬品に関する課題です。リウマチの疫学、早期診断法や早期治療法の開発等については、国や関係学会等を中心に積極的な取組が進められて、寛解導入療法が標準化されつつある。ただし患者に最適な治療法の選択方法、あるいはその治療を勧める上で、それぞれの立場から注意すべき事項、診療計画表など、標準化されていないものもあります。研究実施体制に関しては、これまでの明確な目標設定と、その達成度を適正に評価する体制に加えて、継続的に多くの機関が活用できるような患者データベースを用いて、効率的な患者情報を収集すること、そして病因・病態研究を通じて、さらに新規治療法の開発を目指すべきであるということを指摘しています。もちろんそれと同時に、リウマチの予防法の開発、根治治療的な開発に向けた研究の推進も、引き続き図られるべきであるということです。ですから、ここの(2)では、リウマチ対策における課題をさまざまな側面から指摘しているということになります。ここまではよろしいでしょうか。
○長谷川班員 4頁の医療提供のリウマチに対する治療のところで、友の会の調査ですが、作成したのが平成22年で、調査実施は平成21年です。
○宮坂班長 わかりました。ここは平成21年に訂正します。ありがとうございました。ほかはいかがでしょうか。問題点の指摘としては、大体よろしいでしょうか。かなり網羅はできているとは思います。このあとに、それに対してどう対策をするかということが出てきますので、よろしいでしょうか。
 次に2の今後の対策についてにいきます。(1)リウマチ対策の基本的な方向性、今後の目標です。最終的な目標は、国のリウマチ対策の目標としては、リウマチに関する予防法や根治的治療法を確立し、国民の安心・安全な生活の実現を図ることにあります。これが最終的な目標です。
 当面の目標としては、平成17年に通知した「リウマチ対策の方向性等」を踏まえて、?医療提供等の確保、?情報提供・相談体制の確保、?研究体制の推進といった点について、施策を実施・推進することによって、リウマチの早期診断手法が確立されたこと、生物学的製剤の効果的な選択による寛解導入療法が見出されつつあるということで、改善されたこともあるのですが、なお残る課題、新たに生じる課題も明らかにされてきています。こういう事実を踏まえて、劇的な治療法の変革により生じた必要とされる施策の変化や、以前より指摘されている問題点を踏まえて、その解決を図るため必要なリウマチ対策を改めて策定する必要があるとしています。当面の目標としては、以前は不治の病とされたこの病気を、「寛解導入が可能な疾患」とすることを目指すべきである。このため、最新の知見に基づいた診療ガイドラインの改訂等による最新の診療水準を普及すること、あるいは失われた関節機能を改善させることを目的とした医療の提供等や、リウマチに係る適切な医療情報を得られる様な体制の構築を目的とした診療情報相談体制の確保、関節破壊を阻止するための治療方法の確立や、関節破壊に伴う日常生活の活動性の低下の改善を目的とした研究開発及び医薬品等開発の推進に取り組むことが重要であるとしています。ここはよろしいでしょうか。
 イ 国と地方公共団体の適切な役割分担と連携体制の確立等ということで、役割分担が重要であると。特に国と地方公共団体の役割分担については、リウマチの特性及び医療制度の趣旨等を考慮すれば、基本的には都道府県は適切な医療体制の確保を図るとともに、市町村と連携しつつ地域において正しい情報の普及啓発を行うことが必要である。一方、国は地方公共団体が適切な施策を進めることができるよう、先進的な研究を実施し、その成果を普及する等の必要な技術的支援を行う必要がある。また、このような国と地方公共団体における役割分担の下で、国は患者団体、医師会、ここに書いてあるようなさまざまな学会、財団等の関係団体と連携をして、リウマチ対策を推進していくことが必要である。よろしいでしょうか。
 ウ 当面の方向性についてです。まず医療の提供です。8頁です。リウマチの治療法については、現時点では完全な予防法あるいは根治的な治療法はないということです。しかし、早期からメトトレキサートを積極的に使う、あるいはそれが効かない例に対しては生物学的製剤を積極的に導入することで、関節破壊の進展を阻止させる治療法が確立しつつある。このような背景を踏まえ、今後はリウマチが強く疑われる患者、進行性かつ活動性の高いリウマチ患者、高齢かつ臓器合併症などの生命予後のリスク因子を有するリウマチ患者などが、早期に専門医療の可能な医療機関を受診し、リウマチによる関節破壊が阻止できるような医療体制の確保が重要である。また、治療方針が確定した患者は、リウマチ診療に必要な基本的診療技術を習得したかかりつけ医によって継続される様な病診連携体制が構築されることも必要である。ですから、進行性の予後不良な例は、できるだけ専門医が診るようにして、軽症あるいは治療方針が確立されたものは、かかりつけ医が診るというような、役割分担をすることが必要であるということを、ここで言っています。
 そのあとですが、既に関節破壊が進行し日常生活の活動性が低下している、既に時間の経ってしまった患者に対しては、関節破壊の進展阻止を目指した重症化防止の取組、人工関節を中心とする外科的治療、総合的な理学療法等による関節機能の改善を目指した取組も、リウマチの医療等の提供を考慮する上では重要である。これらの取組を行うことで、可能な限り入院患者を減少させ、あるいは入院しても短期で退院し社会復帰できるような、適切な入院治療・外来治療を提供することを目指す。これが医療の当面の方向性です。
 情報提供・相談体制は、ここに書いてあるように、国民あるいは患者に情報提供体制を確保する、あるいは相談体制を確保するための対策を講ずる。そして、研究開発に関しては、リウマチ対策研究の基本的な方向性としては、関節破壊を阻止するための治療方法の確立に重点を置くとともに、関節破壊に伴う日常生活の活動性の低下を改善させるための有効な治療法の開発を推進する。ですから外科的な側面、内科的な側面あるいは理学療法的な側面、そういったものについて開発したいと。そして、長期的な視点に立っては、リウマチの予防法と、根治的な治療法の開発を進め、最終的にはリウマチの克服を目指すということです。これがリウマチ対策の基本的な方向性です。一般論です。ここまではよろしいでしょうか。このあとに具体的な方策になります。特に問題はございませんでしょうか。
○洪班員 8頁の情報提供・相談体制というところで、患者、国民に対しての情報あるいは相談体制というのは、もちろん大事だと思うのですが、医療従事者全体に対する情報提供、相談体制も。
○宮坂班長 そうですね。医療従事者、特にコメディカルですね。ここには患者のこと、一般国民のことしか書いていませんが、医療従事者も併せて、そういった情報提供をするということですね。ほかにありますか。なければ先に進みます。
 (2)リウマチ対策の具体的方策です。ア 医療提供等の(ア)リウマチの治療に必要な医療体制の確立です。国においては、日本医師会等医療関係団体や関係学会等と連携して、メトトレキサート及び必要に応じて生物学的製剤を使用する治療により、寛解に結び付けることができるようになったことを踏まえて、診療ガイドラインの改訂を行うとともに、その普及により地域の診療レベルの不均衡の是正を図ることが必要である。これが第1点です。
 第2点は、都道府県においては、上記のような取組、あるいは医療計画等を活用して、地域におけるリウマ関する医療体制の確保を図ることが求められている。また、適切な地域医療の確保の観点から、地域保健医療対策協議会等の場を通じて、関係機関との連携を図る必要がある。なお、地域医療に求められた連携体制の例としては、病状の安定している時期あるいは寛解導入後の技術を習得した身近なかかりつけ医が診療をする。それから、急速進行性の高リスク群、ここに書いてある例や難治例、急性増悪をきたした例、あるいは診断から導入までに至るまでの時期では、専門的な対応を、リウマチ診療の専門機能を有する診療を医療機関が行う。ここも住み分けをするということです。なお、リウマチの早期診断には専門的な対応を要することも多いため、身近なかかりつけ医が専門的な検査や診断が可能な医療機関に、時期を逸することなく患者を紹介することも必要である。また、リウマチは全身の臓器にかかわる疾患であることから、このような専門医療機関等を支援できる診療体制を有している病院を都道府県に1箇所程度は確保するという医療連携体制が考えられる。そして、小児リウマチの医療体制においても、必要に応じて都道府県と連携して、その確保に努める必要がある。これが第2点です。よろしいでしょうか。
 第3点は、地方公共団体においては、機能障害の回復や機能低下の阻止のために、リハビリテーションを行うことができる環境の確保を図る。そのためには、市町村においては、高齢者が寝たきり状態になることを予防するために実施している、地域リハビリテーション推進事業、高齢者の医療の確保に関する法律に基づく機能訓練の活用や介護保健制度に基づく介護サービスの活用等も考慮し、地域におけるリハビリテーション体制の確保に留意をする。あわせて、在宅療養を支援するための難病患者等居宅生活支援事業の活用を図ることも重要である。ここはよろしいでしょうか。
○山中班員 前回の報告書のあとに、地方公共団体においては医療法に基づく医療計画がだいぶ変わってきております。ここに記載されていますように、病院間の連携は特に前面に出されておりますが、医療計画の中では、がんや脳卒中など、4つについての連携を進めると特にあるのですが、それを進めるツールとして、医療連携クリティカルパスが地域では浸透してきております。そういう意味では、リウマチ、こういった疾患に対しての連携パスについては。
○宮坂班長 それについては11頁で触れます。
○山中班員 そうですか。是非そういったものの導入があれば、さらに連携が進むものと思われます。
○宮坂班長 そうですね。
○山中班員 それから、リハビリテーションですが、例えば地域リハビリテーション推進事業ですが、これは事務局の方にも確認していただきたいのですが、これまで都道府県でやっていました地域リハビリテーションの推進事業だと思いますが、これは補助事業がなくなりまして、いま青森県は県単独でやって継続しているのですが、継続していない都道府県が多くなっています。機能訓練についても、どちらかというと介護保険の介護予防の事業のほうに一括されてきておりますので、この辺の文言の整理を確認していただく必要があると思います。制度上の問題なのですが、それがあるかと思いました。
○宮坂班長 ここは確認していただいて、場合によっては文言の修正が必要かもしれないですね。
○荒木課長補佐 確認いたします。
○長谷川班員 それと関連ですが、まず、いままでのリウマチの都道府県での位置づけとすると、国の難病対策を対象にして、地域の保健医療対策などには上がってきていない疾患、悪性だけが対象のような。関節リウマチに関しては相談事業にすら入っていないような中で、国の位置づけと都道府県との兼ね合いを、これからどのように考えて。いままでは当然できていなかったと思うのです。それを前提として。
○宮坂班長 そうですね。これは今後そういう体制を構築していかないと、難病の、いわゆる130の特定疾患プラスアルファの130は、難病相談支援センターがやるのですが、リウマチに関しては何もないのですよね。ですから、そういったものも対応していく必要があるのだろうと思います。ほかにはよろしいでしょうか。
 少し先に進みます。「リウマチによる関節破壊ストップ作戦」の提唱。現在リウマチ患者の総数は70~80万人、リウマチの根治的治療はいまなお確立されていないけれども、メトトレキサートの早期積極的な使用及び生物学的製剤の積極的な早期投与によって、不治の病とされていたリウマチがコントロールできる疾患として、その位置づけを移しつつある。こういう早期診断、治療は、いわゆるWindow of Opportunityと、この時期にやると寛解に入りやすい時期をWindow of Oppotunityと言っているわけですが、早期診断、早期治療の重要性を表すものとして、国際的には注目を集めている。診断に関しては、米国及び欧州リウマチ学会による新分類基準が発表されて、我が国でもこれを広く使用する方向にある。それから、関節破壊を非侵襲的に評価できる関節超音波の標準化、これはいま日本リウマチ学会を中心に進められています。
 10頁です。こうした診断及び治療法の革新を踏まえ、今後リウマチが原因で関節機能が損われることがないようにすることにより、患者の生活の質を向上させるとともに、入院患者の減少や入院期間の短縮を図るためには、最新の知見に基づいて提唱された早期診断法やリウマチ発症早期における、リウマチ寛解導入療法といった有効性の高い治療法を普及し、適切な医療を効率的に提供できる体制を確立すること、相談や情報提供等患者を取り巻く環境を整備し、患者が適切な医療を可能な限り早期に享受できるようになることを目指す必要がある。特に寛解という明確な治療目標を設定し、DAS28のような、総合的な疾患活動性指標を用いて、目標到達まで治療をする。これはTreat to Targetと言っているわけですが、これは糖尿病では例えばHbA1cを見て行う、高脂血症ではLDLコレステロールを見て行うというような、具体的な指標を用いて、設定した目標に到達するまで治療する、これがTreat to targetですが、こういったものがリウマチの分野でも急速に広がってきておりますし、さらに今年には、米国及び欧州リウマチ学会から、新寛解基準が導入され、これを我が国でも図る必要があることを指摘しています。よろしいでしょうか。
 次の(イ)人材育成で、まず、リウマチの基本的診療技術を習得した身近なかかりつけ医の育成です。最初が、診療ガイドラインに基づく治療を行うことで、患者のQOLを向上させ、効率的かつ適切な医療の提供を促進できると考えられることから、国においては、日本医師会の医療関係団体や日本リウマチ学会等の関係学会と連携をして、診療ガイドラインの普及を図るなど、急速に変遷しつつあるリウマチの診断、治療に関する啓発的な活動を積極的に行う。これに加えて、診療ガイドラインに基づいた診療における必要な疾患自体の知識、適切な治療法及びその考え方、外来診療における留意事項等のかかりつけ医が習得しておくべき基本的な診療技術を明確にするとともに、リウマチの基本的診療技術を習得した身近なかかりつけ医の育成に努める。
 医学教育においては、すでにコア・カリキュラムの中で、関節リウマチの病態整理等の到達目標が掲げられておりますし、また医師国家試験では、出題基準にもリウマチが取り上げられています。こういったことを指摘しているとともに、臨床研修においては、現在経験が求められる疾患の1つとして、リウマチが取り上げられています。そして、プライマリケアの基本的診療能力として、その正しい知識及び技術の習得が求められています。臨床研修を受けている医師は自らリウマチについて経験する必要がある。それから、日本医師会においても、生涯教育という観点から、教育が充実されることを望みたいとしております。これは、まずかかりつけ医のレベルですね。
 次が専門医で、11頁です。リウマチの診療の質の向上などで、専門医が偏在しているということです。それに関しては、関係学会におけるリウマチ専門の医師が適切に育成されることが望まれる。それから、全臓器に関わる診療ができる、総合的な能力をもった専門の医師の存在が重要と考えられるので、関連学会においてはそのような方向で検討することが望まれる。そして、それぞれの地域におけるリウマチ専門の医師を育成するために、リウマチ診療の専門的機能を有するだけではなくて、専門的な診療を担う医師の教育研修を、それぞれの地域で効率的に行える医療機関の確保も、この偏在を是正するためには重要である。
 リウマチ学会のリウマチ専門医あるいは日整会の認定リウマチ医の認定などでは、専門家のあり方を考えるだけではなく、リウマチの鑑別診断、メトトレキサート、生物学的製剤を用いる専門的な薬物治療と、そのリスク管理や手術の予後に関する知識等の共通化が図られるとともに、将来的には、こういった専門医は統一されていくことが望ましい。小児リウマチに関しては、疾患管理により高い専門性が求められます。そういった人材を日本小児科学会と専門的な診療において、専門的な診療技術の確立やその普及に向けた取組が望まれるということです。
 医師等については、保健師、看護師、薬剤師、理学療法士において、リウマチ患者に適切に対応できるような、知識、技能を高めておく必要があります。保健師、看護師については、財団や看護協会の研修等で、今後ともより一層リウマチにかかわる教育が充実されることが望ましい。これが(イ)人材育成です。ここまではいかがでしょうか。
○洪班員 最後の医師以外の医療従事者の育成に関してですが、適切な治療をガイドラインに基づいてやっていくというのは分かるのです。ただ、ここで知識、技能を高めておくと言っても、適切に対応できるとはどのようなことなのかという具体的な部分が何もないので、充実することが望ましいと言われても、実際には何が求められているかといったところに関しては少し追加していただければと思っております。
○宮坂班長 治療法が180度変わった中で、メトトレキサートのように使い方によっては副作用が起きるような薬、あるいは生物学的製剤のように感染症が起こるような薬が出てきておりますので、医師だけではなく、コメディカルの方々がその辺りの知識を持って合併症や有害事象の予防、早期診断といったところに十分な知識を持つ必要があるということをここでは意味しているわけです。
○洪班員 それは具体的に少し追記していただければと。治療がどのような段階に行っているかというところで、治療への不安や苦痛緩和、あるいは副作用の早期発見や患者さんが自己決定していくことに関して支援するといった役割が、たぶん他の職種にも求められていると思いますので、そこを若干追記していただければと思います。
○宮坂班長 わかりました。もう少し明確に書くということですね。
○山本班員 これは看護師さんのレベルというか、例えば専門的な看護師を必要とするなどといった記載を含めるべきかどうかというのは、どのようにお考えですか。
○洪班員 この段階ではそこまでは書かなくても、まずは底上げをしっかりしていくということと、このことに関して、看護師さんたちももっと関心というか、自ら関わっていくような方向づけをするのがいいのではないかと思っております。
○山本班員 まさしく言われたとおりで、看護師さんが何十万人といる中で、全員の底上げをするのがいいのか、それとも限られた方々がエキスパートになったほうがいいのかということが本当は根底としてあるのですが、時期尚早だったら書かないほうがいいですし、どのような表現にするかというのはここの中だけで議論をすると。社会的にはそのようなディマンドがあるのは間違いないので、ここでどう書くかということは、割と重要かもしれないです。
○宮坂班長 たぶん、2つありますね。全体的な底上げとしてはあまり専門的ではなくても、例えばリウマチの治療目標は寛解であるということすら、一般の方はわかっておりませんし、リウマチの早期診断方法そのものが変わってきて、早くやったほうがいいのだと、昔は5年、10年経ってでき上がった人をどうするかという議論をしていたわけです。そういった早期診断に関して、ごく一般の看護師さんもその辺の概念の変遷を理解していただきたい。もう1つは、いま山本先生が言われたもう少し専門性を持った、例えば薬剤の副作用などといったことにも通じた、患者さんの問いかけに答えられるような専門性の高い人を育成する、たぶん二通りあります。
○戸山班員 あとから総論でお話しようかと思ったのですが、5年ぐらいを1つの目処として、ある方向性を示すということであれば、総論的な方向性といったものである程度然りにして、そのあとのものは部種、部署ないしその項目、項目で、どのように数値あるいは各論でおもてに出せるかといったものを何らか構築するのがベストだと思うのです。一緒に入れてしまうと、ここは総論、ここは各論となってしまうので、方向性ですから、そちらのほうがいいのではないか。あるところによっては、これが5年でどのぐらいの達成度になるか、その後どうなったかというものは、やはり今後出していくべきだと思うのです。そのための仕組みをどうするかというのはここの方向性ではなくて、この下で何かお考えいただくなりしてやるのがいちばんいいのではないかと思います。
○宮坂班長 そうですね。これの下か上か、どちらかわからないですけどね。
○戸山班員 そうですね。ここに振られるかどうかわからないですが、そんな感じがします。
○宮坂班長 ここは、我々は作ったほうですから、本来、評価する人は別にいるというか、第三者が評価すべきなのかもしれないです。
○横田班員 その分野で、人材育成のところの、かかりつけ医のリウマチの診療技術を。
○宮坂班長 10頁でいいですか。
○横田班員 10頁です。かかりつけ医の育成ということと、リウマチ専門医の育成ということを分けて書いているのは大変いいことだと思います。特に、かかりつけ医の育成のところに、診療ガイドラインとその普及ということが書かれているのですが、診療ガイドラインについては、いま戸山先生が言われたとおり具体的にどうするかが非常に大きいのではないかと思うのです。
○宮坂班長 そうですね。
○横田班員 小児科の場合は、一般小児科医はここまでやっていいという診療ガイドラインと、専門医用のガイドラインと分けて作っているのです。そのような意味では、メトトレキサートまでは一般医にお願いするという形で、例えばそれに3カ月なら3カ月という期限を付けて、それで炎症が治められない場合は専門医へ紹介しろという形に持っていっているのです。それは1つの方法だと思うのですが、そこの内容についての問題があるかなと感じました。
○宮坂班長 そうですね。実は、今度の指定研究の中にこの診療ガイドラインを作ることが盛り込まれていて、そこで実践しないと、これがみんな絵に描いた餅になってしまうのです。前のは5年以上前に作ったものですから、全く実情に合っていないのです。本当は去年ぐらいに出来ていなければいけなかったのですが、ちょっと立ち遅れておりまして、遅ればせながら、それを指定研究の中でやろうということにはなっております。
○横田班員 11頁の3段目ですが、現在、先ほど出た専門医性の評価認定制機構から、各学会別の専門医ではなく、診療、内容に分けてやっていこうという方向が出てきているので、これは実現する可能性が高いだろうと。戸山先生がいらっしゃいますから、いちばんお詳しいと思います。
○戸山班員 そのディスカッションになったので、もう1ついいですか。いま座長は、最終的にはトータルでリウマチを診られるような専門性を持ったドクターを育てるという方向性と言われたと思うのですが、例えばリハビリテーションでは、リウマチのリハビリテーションに特化するような方向性が望ましいのか。いまリハビリのほうは脳血管障害とか心臓、癌などに分かれていますが、そうではなくて、内科医も整形外科医もトータルなものを持った、そのような方向性とではかなり違ってくると思うのです。リウマチという大きい中で細分化なのか、それとも違うのか、リウマチの中でも、それが少し求められる感じはします。例えば、そこに手術が入って、人工関節が入ると違うと。それをどのようにやるか、どのようにするかというのがいちばん大事ではないか。
○宮坂班長 これはどの分野でもそうなのですが、分化と統合という相反することを両方やらないといけないのだろうと思います。結局、分化していってしまうと、隣のことはわからないという話になるので、分化する中で統合する努力をしていかなければいけないという意味でこのように書いたのです。
○戸山班員 そうすると、9頁のリウマチのリハビリテーションを行うといったものは、トータルで見てリハビリが大事だという仕組みのところであって、決してリウマチに。
○宮坂班長 リウマチだけに特化したものではない。
○戸山班員 そうではないと。
○山本班員 リウマチのリハビリは他のリハビリとちょっと違うのです。他のリハビリというのは、一応パスができて、だんだん良くなっていくのを助けていく、良くなるスピードがどうなるかというものですが、リウマチはそうではなくて、リアルタイムに症状が変わっていくので、受持医と連携を密にしてやらないと、やり過ぎたり、やり足らなかったりしてしまうのです。その辺が他の分野とちょっと違うのです。ですから、リウマチに特化したというのはおかしいですが、リウマチもよくわかるリハビリテーションと、そうでないリハビリテーションというのとではちょっと違うというのは少しここで、場合によったら強調しておいていただけると助かるかもしれません。
○宮坂班長 9頁のところですね。
○山本班員 普通のリハビリというのは、最初にポンとあることが発生したあとに、いかにして良くしていくかというパスの中に行きますが、リウマチはそうではないのです。リウマチは途中で悪くなったり、また良くなったりするので、そこがちょっと違います。
○宮坂班長 わかりました。そういったことを少し検討したいと思います。先に進みますが、(ウ)診療の質の向上で、ガイドラインとクリニカルパスです。繰り返しを省きますので、最初がガイドライン、次がクリニカルパスです。入院するリウマチ患者に対して適切な入院医療が提供されるよう、専門的なリウマチ診療を行う病院は、病態別重症度別のクリニカルパス(検査及び治療等を含めた詳細な診療計画表をいう)を積極的に導入していくことが望まれる。患者の長期的な治療計画の標準化については、標準化された治療計画の推進のためには、地域連携クリニカルパス(リウマチの専門医療機関と地域の医療機関等が診療上担う医師を明確化した計画表等により、リウマチ患者に対する診療の全体を体系化したものをいう)等も有効であると考えられるということです。専門情報に関しては、国、学会が協力するということと、もう1つは国立病院、相模原病院臨床研究センターの相談窓口もこのまま使うということです。
 イの情報提供・相談体制の確保については、ごく一般的なことが書いてありますし、いままでお話したことですのでお目通しだけでいいと思います。相談体制の確保については、「リウマチ・アレルギー相談員養成研究会」の内容を充実させるということです。また、地方公共団体はこのような取組を踏まえて、都道府県においては体系的なリウマチ相談体制の構築、具体的には一般的な健康相談等は市町村において実施し、支援の一環としての相談・支援、医療機関情報の提供実施等については、保健所において実施する等を検討し、実施することが望ましい。
 ウは研究開発及び医薬品等開発の推進で、(ア)効果的かつ効率的な研究推進体制の構築については、研究企画・実施・評価体制の構築に際し、明確な目標設定、適切な研究評価等を行うことにより、リウマチに関する研究をより戦略的に実施し、得られた成果がより効果的に臨床応用されることが重要である。国は政策的課題に関連するテーマを勘案した上で、適切に公募課題に反映させるとともに、採択に当たっては、リウマチ分野において重要性、発展性が高く、かつ独創性、新規性の高い研究課題を採択するほか、この事業の中でテーマの類似しているようなものは統廃合することが必要である。国が進めていくべき研究課題は、民間企業や医療機関等が国との役割を認識しながら、研究事業の評価委員会の意見も踏まえて課題を決定する。また、治療効果を含めたリウマチ患者の動向を適切に把握することは、単に疾患統計という視点のみならず、病因・病態・治療・予後等の研究を効果的かつ効率的に進める上に重要である。また、薬物投与による長期的な副作用に関するデータ等を収集する必要性が高いので、継続的かつ汎用性の高いデータベースをその対策のために利用することも重要である。
 (イ)は研究の目標の明確化で、当面成果を達成すべき研究分野ということです。関節破壊の防止に関しては、リウマチを可能な限り早期診断をする。そして、関節が壊れる前に、寛解導入を積極的に行うといった治療法を目指す。また、生物学的製剤については、より効果的かつ安全性が高い使用方法を確立するための研究。治療効果、重症度の改善効果については、副作用の少なくない医薬品使用時の安全性を、より詳細に把握するための研究、こういったことが求められるということです。関節機能の改善に関しては、既に関節機能が進行し、身体機能に障害を来しているリウマチ患者の活動性を改善させることを目的として、外科的治療や医療用具の開発、リハビリテーション療法の確立を目指すということです。
 長期的目標を持って達成すべき研究分野としては、上記の関節破壊の阻止や関節機能の改善に関する研究も含みつつ、病因・病態に関する更なる研究を進めて、リウマチの克服を目指すということで、リウマチ予防法と根治的な治療法の確立として、リウマチの病因・病態や先端的な治療に関する研究としていくつか例が書かれてあり、こういったことを行う必要があるだろうということです。
 (ウ)の医薬品等の開発促進ですが、ドラッグ・ラグがあることが問題になっていて、これを早く導入することと、もう1つは、今は日本人は日本人のデータが必要だと言っているのですが、安全性・有効性を確保する必要性はあるが、適切な外国のデータがあれば、それを活用しながら医薬品の薬事法上の承認に当たって、適切に対応していく必要もある。国においては、治験環境の確保だけではなく、有害事象を的確に把握できるような副作用データベースの活用も検討する必要がある。リウマチに対する生物学的製剤が世界的に導入されたのは1898年の終わりですから、まだそれほど経っていない。ですから、短期的な副作用はわかっているが、長期的な副作用、例えば悪性腫瘍といったことに関しては留意する必要があるということです。
 (3)施策の評価等については、国においては、適宜、有識者の意見等を聞きつつ、国が実施する重要な施策の実施状況等について評価し、また地方自治体の実施する施策を把握することにより、より的確かつ総合的なリウマチ対策を講じていくことが必要である。そして地方公共団体においても国の施策を踏まえて、国や関係団体等の連携を図り、施策を効果的に実施するとともに、主要な施策について政策評価を行うことが望ましいということです。いま個別にいろいろとご意見を伺いましたが、全体も含めて何かご意見があればお伺いしたいと思います。
○横田班員 文言はこれで十分だと思います。特に14頁の(ウ)は厚生労働省の方々に是非とも認識していただきたいことで、いま進行している生物学的製剤は、これまで私どもが使ってきた治療薬とはまるでニュアンスが違うということです。どこが違うかと言うと、有害事象の中の感染症が非常に多発するということは言われているとおりで、人間の体にとって炎症を起こすというのは非常に重要な生体反応ですが、それを起こしているサイトカインがブロックしてしまうような薬剤だということです。
 先日調べましたら、生物学的製剤を導入している年齢は、ほぼ平均して成人で57歳、小児ではタイプによって違いますが、10~15歳です。この治療法自体はサイトカインをブロックするということなので、ある意味で究極の対症療法でして、原因療法ではないのです。したがって、大人よりも40年以上幅があり、しかも対症療法ですから、使い始めてすぐにやめるというわけにはいかない薬なのです。感染症の中でも持続して感染していくというウイルスとか細菌がいるわけで、いわゆるlatent infectionと言うのですが、このようなことを非常に心配しております。その結果として発がんに至ったり、自己免疫疾患に至ったりするだろうということは、世界中の小児科でこのリウマチを扱っている人たちが心配しております。私どももベースにやりますが、モニタリングが非常に必要な薬剤なのだということを、是非理解していただければと思います。
○宮坂班長 特にEBウイルスなどといったものですね。
○横田班員 はい、そうです。
○宮坂班長 その他何かあればお願いいたします。
○福地班員 いまの話に関連してですが、感染症が副作用として重要だというのは、お話のように、特にリウマチ患者は50代、60代から生物学的製剤が使われることになるということです。外国からリウマチに関するいろいろなガイドラインが出ていると思いますが、我が国における特性として考慮しておかなくてはいけないのは、やはり、結核の既往疾患者が非常に多いことを常に念頭に置いた対策をしていく必要があるということです。実際の臨床の場で見ていても、呼吸器系の患者さんのレントゲンをスクリーニングしますと、非常に多くの患者さんに固定された、安定した病巣が見られるのです。
 例えば、いま在宅酸素療法をやっている患者さんの中の、少なくとも28%から30%の人は、結核の後遺症なのです。これは非常に重症な呼吸不全ですが、もっと軽いレントゲン上の所見の人はたくさんいて、場合によっては40%などという数字も出ております。大事なことは、固定されたと思われるものを調べてみると、培養すると結核菌が生きているということも、よく知られているところだということです。日本ではその点で非常に高率に結核既往があるということと、換算選定して少し違ったアプローチ、海外のガイドラインと違ったアプローチが必要かどうかということも、特に結核については考慮する必要があると。
○宮坂班長 欧米で言うと、スペインが非常に高く、欧米ではリウマチの患者さんにTNF阻害薬、特に抗TNF-α抗体を使って、結核の発生が10倍上がったということがありました。日本もほぼそれに準ずる対策を取って、現在は生物学的製剤を使っている患者さんの約3割が抗結核薬を使っているのですが、使っている人からは全く出ないのです。使っていない人の中に、再活性化が出てくるということはかなり知られていることですので、それについては今後とも対策を取っていかなければいけないと思います。
○戸山班員 総論的でよろしいでしょうか。
○宮坂班長 結構です。
○戸山班員 先ほどのことともダブりますが、方向性としてはこのような方向でいいと思います。たしか越智先生が委員長のときの平成17年度にスタートしたことで、本当であれば何かマップというか、どこができて、どこが達成度の。
○宮坂班長 それはやったのです。
○戸山班員 載っていますね。ただ、これをわかりやすい形で日本全国に配られて、この次はこうだというのが作られると非常にいいのがあるというのが1つ。2つ目は、たぶん非常に初期で、それをひょっとしたらと疑って、専門医に早く送ってやれるという仕組みを作ることが非常に大事で、その診療ガイドラインも、一般的にある程度のところではなくて、その仕組みをできるだけ送れるような何かを作るということが、この5年でやることができれば非常にいいと思うのです。内科にしろ、整形外科にしろ、専門医に行けばあるレベルのところでやってくれるというものはある程度あると思うので、その下のところを早く送れる、何かそのようなものを工夫して作ることが大事ではないかと思います。
もう1つは疫学とデータベースのことですが、座長はまだまだ不十分で、70万、80万はわからないということでしたが、そこは国からできる限り支援していただいて、4,000例、5,000例と持っているところがありますから、本当はそれも一元化した形に作れると最高だと思います。
○宮坂班長 その他何かあればお願いいたします。
○山本班員 9頁の括弧の付いている「リウマチによる関節破壊ストップ作戦」の提唱は非常にいい名前で、キャッチフレーズとしてはいいのです。この言葉がここから出ていくときに、我々にとっては非常によくて、例えば、これだけ重要だから研究費をどうしましょうというときにはいいのです。しかし、患者さんから「リウマチによる関節破壊ストップ作戦」がいま展開されていると言われたときに、残念ながら、今ほとんどの患者さんはストップできていないので、それが目標だと言っても、患者さんとしては現実とのギャップを感じる可能性もあると思います。仮にこの言葉を出すとしたら、もう少し違う言葉にしたほうがいいのではないか、ということを少し考えたほうがいいかなという気がします。
○宮坂班長 ええ。
○山本班員 これの言いたいことはよくわかるのです。しかし、これを国としてボーンと、今やっていますと言えるほどはやっていないし、ストップ作戦が。
○宮坂班長 きちんとやれば、もう可能なわけです。それがまだ出来ていないところが問題であって。
○山本班員 可能な患者さんの数もまだ限られているわけですから。
○宮坂班長 既に壊れてしまった人に対しては通用しないですし、それはそれで対策を講じるけれども、やはりこれから出てくる人を、とにかく早く見つけて抑えないといけない。越智先生のときのお考えは、軽症のリウマチと重症のリウマチがあって、この人たちを重症化させないと言っていたのですが、今はその考えは基本的になくなってしまって、どんなリウマチも置いておけば悪くなり得るから、早く見つけて、早く治療しようというのが世界的なコンセンサスなのです。そのような意味で、このキャッチフレーズがいいかどうかはなかなか難しいです。
○山本班員 方向性としてはこれでいいのですが、仮に、おもてに出すとしたら、この文面でいいのか、言葉を一生懸命考えていったほうがいいのか、そこだけ。
○戸山班員 早く見つけるような形に。
○宮坂班長 それはお役所的にも検討していただくということで、我々は。
○山本班員 気持はこれでいいのです。しかし、これを厚生労働省として、いま関節破壊ストップ作戦をやっていますというのでいいのかどうかはちょっと。
○宮坂班長 しかし、そのぐらいの気概を持ってやっていかないと。
○長谷川班員 私どもは患者の情報を割と持っております、それは患者の声かもしれませんが、みんなが「寛解」という言葉にどこまで馴染むかと思っておりましたら、治療の目標が寛解と言われたとき、患者自身は非常に期待感を持っているのです。私どもの会員は関節破壊のために何十年と重度の障害ですが、これで機能障害がストップする、重度の人でも生物学的製剤に大変な期待感を持っているのです。そのような意味では、遠い先か、近い先かはわからないけれども、期待が持てるということでは、寛解と同じように捉えられるかなというのが1つあります。
○宮坂班長 今いただいたような指摘を素案に反映させて、最終的に作成していただく、事務局もそれでよろしいですね。
○荒木課長補佐 結構です。
○宮坂班長 今日の議論は以上ですが、今後の予定としては、今日いただいたご意見を踏まえて、作業班からのリウマチ対策報告書(案)を事務局と相談の上で作成いたします。やり方としては、よろしければ私が預らせていただいて、この案をまとめ、リウマチ・アレルギー対策委員会に提出するという方法を取りたいと思いますが、よろしいでしょうか。
                  (了承)
○宮坂班長 ありがとうございました。事務局もよろしいですね。
○荒木課長補佐 結構です。
○宮坂班長 以上で第2回の作業班を閉会したいと思いますが、事務局から今後の予定についてお願いいたします。
○荒木課長補佐 今後の予定について説明いたします。本日はリウマチ対策に関しての活発なご議論、ご意見をいただきまして、ありがとうございました。また、宮坂班長の適切な議事進行のお蔭で、早めに終えることができました。リウマチ対策作業班については、本日の議論を踏まえて、班長からこの作業班の意見として対策報告書(案)として作成していただくことになりますので、作業班自体の開催については本日までとなります。これまで多大なご協力をいただきまして、あるいはメール等でもいろいろとご案内させていただきましたが、貴重なご意見をありがとうございました。本日言い足りなかった、あるいは本日持ち帰っていただいて、こういうことも言っておけばよかったというものや、さらにご意見があるようでしたら、事務局宛、4月26日までにいただければと思います。どのような形で反映させるかを班長とも相談いたしまして、取り仕切らせていただきます。
 次に、リウマチ・アレルギー対策委員会についてですが、今回作業班にリウマチ対策報告書(案)を作っていただきましたので、それを基に対策委員会へ報告をすることになりますが、現在、震災の関係で仕切り直しの調整を行っているところです。5月中旬等を目途に開催するかなといった状況ですので、ご承知おきください。なお、本日の議事録については後日送付させていただきますので、よろしくお願いいたします。
 最後に、当方の疾病対策課長の難波より、簡単にご挨拶させていただきます。
○難波疾病対策課長 先生方には貴重なご意見等をいただきまして、本当にありがとうございました。この報告書は、今後のリウマチ対策の柱となるべきものですので、先生方からいただきましたご意見等を十分踏まえまして、委員会に上げていきたいと思います。本当にどうもありがとうございました。
○宮坂班長 どうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

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代表電話: 03-5253-1111
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