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2011年3月28日 社会保障審議会年金数理部会(第45回)議事録

○日時

平成23年3月28日(月)14:00~16:00


○場所

全国都市会館 第2会議室(3階)


○出席者

山崎部会長、宮武部会長代理、牛丸委員、翁委員、駒村委員、
佐々木委員、田中委員、野上委員、林委員

○議題

(1)平成21年財政検証・財政再計算に基づく公的年金制度の財政検証について
(2)その他

○議事

○石原首席年金数理官
 定刻になりましたので、ただいまより第45回社会保障審議会年金数理部会を開催させていただきます。
 審議に入ります前に、お手元の資料の確認をさせていただきます。
 座席図、議事次第のほか次のとおりでございます。資料1は「平成21年財政検証・財政再計算に基づく公的年金制度の財政検証(案)」でございます。資料1は、3つに分けておりまして、資料1-1は第1~3章。資料1-2は第4~8章。資料1-3は参考資料・用語解説でございます。
 資料2は「平成21年財政検証・財政再計算に基づく公的年金制度の財政検証 要旨 (案)」でございます。
 その他、参考資料として「公的年金制度一覧」をつけております。
 配付資料は以上でございます。
 次に、年金数理部会委員の異動について御報告いたします。山崎泰彦委員におかれましては、社会保障審議会の委員の任期が1月28日までとなっておりましたが、1月29日付で御再任いただいております。
 また、部会長の選任についてですが、社会保障審議会第6条3項に「部会長は部会に属する社会保障審議会の委員の互選により選任すること」とされております。年金数理部会においては2名の社会保障審議会の委員がいらっしゃいますが、あらかじめこの2名の方々で互選をしていただいたところ、山崎委員が選出されましたので、山崎委員に部会長をお願いいたします。
 次に、本日の委員の出欠状況について御報告いたします。本日は、全員が御出席でございます。なお、年金局長につきましては、所用で若干遅れて参る予定でございます。
 それでは、以後の進行につきましては、山崎部会長にお願いいたします。

○山崎部会長
委員の皆様には御多忙の折、お集まりいただきまして大変ありがとうございます。
 本日の議題は、平成21年財政検証・財政再計算に基づく公的年金制度の財政検証についてです。本部会では、公的年金制度の一元化の推進に係る閣議決定において、被用者年金制度の安定性・公平性の確保に関し、財政再計算時における検証のほか、毎年度の報告を求めることを要請されております。これを受けて、昨年11月に平成21年財政検証・財政再計算結果等につきまして制度所管省から報告を受けました。その後、委員会で検証の内容と報告書の案文について検討を行ってまいりました。委員の皆様に御協力いただき、できました報告の案がお手元の資料でございます。詳細につきましては、事務局から説明していただきたいと思います。それでは、よろしくお願いします。

○石原首席年金数理官
 それでは、私の方から説明させていただきます。
 まず、資料1-1が公的年金制度の財政検証の案の最初でございます。2枚めくっていただきますと目次がございます。簡単に全体像を御紹介させていただきたいと思います。
 まず「はじめに」で全体の前文がございまして、第1章につきましては「公的年金各制度の平成21年財政検証・財政再計算結果等」ということで、各制度の財政検証・財政再計算についての概要をまとめてございます。
 第2章は「平成21年財政検証・財政再計算結果の制度間比較」ということで、1章で全体の概要、2章では分析ということで制度間の比較分析を中心に記述してございます。
 第3章は「前回の平成16年財政再計算結果との比較」ということで、前回の再計算結果との比較を分析対象としてございます。ここにつきましては、今回の財政検証・財政再計算ですが、大きな制度改正等がないということで、ほぼ前回の再計算と経済前提等を合わせれば比較できるという状態でございまして、そういった意味では、以前こういった分析にはなかった新しい試みとして、前回との比較分析ということが可能になって、こういう形で入れているということでございます。
 第4章は、当部会の検証の目的の一つの柱でございます「公的年金制度の安定性の分析」ということで、第4章は安定性の分析の中でも給付水準、保険料水準及び積立水準についての分析を入れてございます。
 第5章でございますが、「公的年金制度の安定性の分析」ということで、安定性の分析を2つに分けまして、第5章では前提を変更した場合の影響についてまとめてございます。
 第6章で「公的年金制度の公平性の分析」ということで、安定性に次ぐもう一つの柱でございます公平性に関する分析を入れております。
 第7章でございますが、「公的年金給付費等の規模」ということで、今回の財政検証においては以前から御相談申し上げておりましたように、GDP比ですとか、マクロ経済的な視点でどの程度の規模になっているか、公的年金制度全体の状況を分析してみたらどうかということで御提案申し上げていましたが、それを章立てさせていただいております。
 第8章は「公的年金の財政評価」ということで、本報告書の結論部分に相当いたします。
 報告書の内容でございますが、前回1月21日の年金数理部会におきまして、全般の安定性の分析の制度間比較につきましては御報告申し上げておりますので、若干重複する形になりますので、ここではその部分については要旨で説明させていただきたいと思います。申し訳ありませんが、資料2の要旨をご覧いただければと思います。「平成21年財政検証・財政再計算に基づく公的年金制度の財政検証(要旨)」でございます。
 まず、報告書の前段階ですが「1.平成21年財政検証・財政再計算に基づく財政検証」。「この報告書で行う平成21年財政検証・財政再計算に基づく財政検証は、社会保障審議会年金数理部会が、平成13年の閣議決定を受けて被用者年金制度の安定性と公平性の確保に関して行うものである。ここでは被用者年金制度に加え国民年金も対象とし、すべての公的年金制度について検証を行っている」ということで、この報告書が閣議決定を基に行われていることを明示してございます。
 「2.公的年金制度の安定性の分析」の(1)給付水準と保険料率でございます。「厚生年金の標準的な年金の所得代替率は、マクロ経済スライドにより、当初の62.3%から緩やかに低下し、2038年度以降50.1%となり50%を上回る見込みである。共済年金については、厚生年金と同一のマクロ経済スライドを行った上で保険料率の引上げにより財政の均衡を図るため、最終保険料率が国共済・地共済で19.8%、私学共済が19.4%となる見込みである。なお、保険料水準を固定している厚生年金の最終保険料率は18.3%、国民年金の最終保険料率は16,900円(平成16年度価格)である」。
 (2)マクロ経済スライドについてですが、「マクロ経済スライドは、報酬比例部分について2019年度、基礎年金部分について2038年度まで行われる見込みとなっており、調整終了年度、各年度の調整率ともすべての制度で同一である。その結果、厚生年金の標準的な年金でみた場合、給付が約2割抑制される見込みとなっている」。
 次に、具体的な財政指標で今回の再計算結果を見てみようということで記述してございます。(3)主な財政指標の見通しの?年金扶養比率でございます。年金扶養比率と申しますのは、1人の老齢年金の受給権者を何人の被保険者で支えているかという数字でございますが、図表の1、年金扶養比率の将来見通しをご覧いただきたいと思います。これが制度間で並んでおりまして、年度は2010年、2030年、2070年、2105年という形で推移を見てございます。
 厚生年金で見ていただきますと、2010年当初ですが2.59で、1人の老齢年金受給権者を2.6人程度の被保険者が支える状況になってございますが、2030年には2.09、2070年には1.18ということで、1人ちょっとで1人を支えるというところまで落ちていきます。それが2105年では少し回復しますが1.20ということで、かり低い水準でとどまっているという状態になってございます。
 国共済+地共済ですが、2010年では1.55ですが、2070年では0.94と1を割るところまでいって、2105年で1まで回復します。
 私学共済は現在4.59とかなり高い状態ですが、それが急速に落ちてまいりまして2070年では1.42、それが2105年では若干戻って1.60になります。
 基礎年金では現在2.4人に1人ですが、2070年では1人で1人の状態になって、2105年には若干回復して1.1というところになってございます。
 その下に、前回との比較がございまして、2100年度までが前回の推計でございますが、2100年時点で比較して見ていただきますと、厚生年金では1.19でございますが、前回は1.66という数字でした。これが今回1.19まで落ちるということは、将来推計で少子化なり高齢化、高齢者の寿命が延びて少子化が進むということで影響がかなり大きいということで、年金扶養比率についても前回に比べて厳しい状態になっているということが見られるかと思います。
 厚生年金でもそうですが、国共済+地共済でも前回は1.2ですが、今回は0.99。私学共済では前回が2.45で、今回は1.58。基礎年金でも1.4が1.1ということで、各制度とも厳しい状況になっていることがうかがえます。
 結果として?総合費用率がどうなったかということが2ページ目にございます。図表2でございますが、総合費用率と申しますのは注に書いてございますが、支出のうち自前で財源を賄わなければいけない額が標準報酬総額に対してどの程度の比率になっているかという率でございます。ですから、積立金等がない場合の賦課保険料率という形になってございます。
 これで見ていただきますと、厚生年金ですが、2010年には18.8となってございますけれども、2030年になりますと17.2と若干下がる形になってございます。高齢化が進んで年金受給者も増えるわけですが、基本的にはマクロ経済スライドによる給付の抑制効果や支給開始年齢の引上げといった影響で、2030年には17.2まで賦課保険料率が落ちる形になってございます。それが以後、急速に上がってまいります。2070年には25.5という形になっております。それが2105年には若干落ちて24.2になるのですが、依然として最終保険料率の18.3よりはかなり高い値になってございます。
 国共済+地共済では、厚生年金では若干下がりましたが、2010~2030年まで下がらなくて、18.9が21.4に抑制はされているものの若干上がっていく形。それが2070年では急速に上がりまして30%近い29.4になって、それが若干下がって28.6に落ち着くと。国共済+地共済も最終保険料率は19.8%でございますので、かなり最終保険料率よりも高い水準の費用が必要になっているという状態になってございます。
 私学共済は、2010年で13.4ですが、2030年ではこれも下がらなくて16.9まで上がってまいります。それが2070年では倍近い数字32.3まで急速に上がりまして、2105年には若干下がって28.3ということでございます。
 前回との比較を見ていただきますと、前回は厚生年金で20.4%の賦課保険料率でございましたが、今回は24.4%まで上がっています。18.3%という最終保険料率は厚生年金は変わっておりませんので、18.3%と20.4%の差が積立金の寄与から前回は出していた部分でございますが、それが24.4ということで積立金の寄与を前回よりも大きく求めているという状態であるということが言えるかと思います。
 国共済+地共済でも前回は23.6ですが29.1まで。私学共済は24が28.9まで上がるということで、年金扶養比率もそうですが、かなり財政的には厳しい状態が示されているということかと思っております。
 ?保険料比率は、注に書いてございますが、自前で財源を賄わなければならない部分に対して保険料が何パーセントぐらい賄えているのか。あとは積立金の取り崩しや運用収入で賄っている部分でございますが、保険料がどの程度賄われているかという指標でございます。図表3でございます。
 厚生年金で申し上げますと、2010年には84.6%という形で、積立金からの運用収入等がないと2010年でやっていけない状態ですが、総合費用率で見ていただいて2030年には下がっておりましたのを反映しまして、マクロ経済スライドの影響等で給付水準が若干低下するという影響がございました。保険料比率で見ると、保険料だけで支出を賄える状態で2030年には106.5ということで100を超える状態になってございます。それが2070年では、やはり少子高齢化の進展で71.7まで落ちて、2105年でも75.8ということで、保険料で賄われている部分は全体の支出の4分の3になっているという状態でございます。
 国共済+地共済ですと、現在8割程度が賄われているのが、2030年でも9割程度ですし、2070年では67%と3分の2程度しか賄えないということで、どちらかというと積立金にかなり頼った運営になっているということかと思います。
 私学共済は厚生年金と同様ですが、93から2030年度には114.4ということで、総合費用率で見ていただきますと、私学共済は2030年度は2010年度よりも上がっているのですが、保険料率がかなり上がる形になりますので、どちらかといいますと保険料比率はかなり上がりまして、財政的には2030年度ではかなりいい状態、保険料だけで支出が賄える状態に達します。それが急速に2070年度では落ちまして、国共済+地共済も若干比率が低下して6割弱の水準まで落ちて68%まで戻るという状態でございます。
 国民年金は現時点でも国庫負担の2分の1の交付額等がございまして、103.6ということで基礎年金拠出金で支出を賄える状態になってございます。2030年度では、マクロ経済スライドの影響もありまして107.1ということで、この辺でかなり積立金を積んでいける余裕が出てきている状態という形になってございます。それが2070年では急速に悪くなって73.8、2105年で78.9という形になってございます。
 前回との比較でございますが、厚生年金では前回が89.8ですが、今回は75.1ということで、かなり保険料で見られる部分が減っているということは、それだけ積立金に頼っている運営になっているかと思います。
 各制度とも同様ですが、国共済+地共済では79.2から67.6。私学共済は76.3から66.7。国民年金でも87.1から78.0ということで、それぞれ積立金の寄与が大きくなっているという形になってございます。
 (4)具体的な積立金による保険料率の軽減効果でございますが、図表4でございます。軽減効果を料率で見てみますと、ピーク時で厚生年金で7.4%、2105年でも5.9%の費用を必要としていると。国共済+地共済で9.8%、2105年で8.8%。私学共済で13.4%、2105年では8.9%。国民年金で6,100円、2105年では4,500円の積立金からの保険料寄与を得ているという状態であるという形になっております。
 以上が、積立金等の財政状況に関する比較分析の内容でございます。
 要旨はこの辺にさせていただきまして、先ほどの資料1-1の内容は、ほぼ要旨で今御説明させていただいたような内容になってございますので、省略させていただきたいと思います。
 資料1-2に進めさせていただきます。積立金の寄与までざっと御説明申し上げましたので、少し細かい内容につきまして前回触れておりませんでした項目を中心に、新しい項目を説明させていただきたいと思います。
 まず、「4.年金の財源と給付の内訳」でございますが、78ページでございます。これ以降は部会では初めてご覧いただく形になりますので、図表を丁寧に見ていただければと思います。79ページでございます。年金の財源と給付の内訳の表でございますが、財源と給付の内訳とは何かをまず御説明させていただきます。
 平成21年財政検証・財政再計算に基づく各制度の年金の財源と給付の内訳ですが、運用利回りによって各制度の年金給付を一時金換算しまして、割引率で割り引いて換算するという形で、95年間にわたる各制度の年金給付の内訳、保険料収入や国庫・公経済負担、積立金から得られる財源等について、運用利回りで現価に直して表示しているものでございます。
 図表4-4-1を具体的にご覧いただきますと、まず、表頭が各制度、これは今までと同じですが、財源としまして厚生年金では1,660兆円、将来95年間にわたる保険料や収入の内訳ですが、現価ベースで1,660兆円というものでございます。それが給付では勿論収支が均衡しておりますので1,660兆円の均衡した給付になっているということでございます。
 この内訳を保険料と積立金と国庫・公経済負担に分けてございまして、国庫・公経済負担の欄でご覧いただきますと、どちらかといいますと国民年金の欄ですが、財源の220兆円に対して国庫・公経済負担が120兆円と、割合としては2分の1国庫負担があるものですから、かなり大きな国庫・公経済負担が他制度に比べると入っているということが目立つかと思います。
 国庫・公経済負担を除いてみますと、厚生年金では保険料が1,190兆円に対して積立金から得られる財源が140兆円程度ですが、国共済や地共済ですと197兆円に対して47兆円、私学共済ですと18.6兆円に対して3.4兆円ということで、どちらかというと共済組合については積立金から得られる財源の割合が厚生年金や国民年金より若干多くなっているというところが見てとれるかと思います。
 それから、給付についてですが、財源と同じ数字ですが、給付については過去期間と将来期間に分けてございます。厚生年金の場合1,660兆円ですが、過去期間が830兆円、将来期間も830兆円と同じ数字でございます。国共済+地共済は173.4兆円と106.7兆円ということで、私学共済も若干ですが、国民年金の方が120兆円と100兆円ということで、国共済+地共済や国民年金で若干過去期間分の給付が大きくなっているということがわかるかと思います。
 全体的な特徴はこういう形になっておりまして、前回と同じような感じでございますが、今回の分析の新たな特徴としまして、83ページ以降にいっていただきたいと思います。冒頭でも申し上げましたが、今回の再計算では大きな制度改正等はないということでございまして、前回の再計算での図表と比較分析ができることが大きな特徴になってございます。この財源と給付についても比較分析をすることで若干、新しい分析ができておりますので、御紹介させていただきたいと思います。
 前回の再計算時における財源と給付の内訳では、2005~2099年度までの合計を計算していますが、今回は5年間ずれて2010~2104年度までになってございます。また、計算の基準時点では、前回は平成16年度末であるのに対して、今回は平成21年度末と5年間ずれています。従いまして、前回の財政再計算時の数値と比較するに際しては、前回の数値を平成21年度末時点の数値に変換した上で、名目価格のずれを調整して、合計対象とする年度をそろえて比較することにしています。このような比較をすることで、前回から今回へ有限均衡の対象とする期間を5年後ろにずらした際に、どのような財源で給付のバランスが保たれたかを分析できることになってございます。
 具体的に表で見ていただきたいと思いますが、84ページです。国民年金で財源と給付の内訳をそれぞれ前回と比較して見られるようにしたものです。今申し上げましたように、前回は2005~2100年度までという形でございますが、今回は2009~2104年度までという形になっています。そこで、期間も合わせて、前回のものについては2005~2009年度までを切り分けて、2005年までを出して2005~2009年度と、2010~2099年度までに分けました。今回のものは2010~2099年度までと、2100~2104年度までの期間にずらして分けて、それぞれ同じ期間で比較することができるようにしてございます。
 給付合計で見ますと、国民年金の場合2005~2009年度までが現価ベースで24.1兆円でございます。それが前回の計算でも勿論財源も21.4兆円この期間で賄われているわけですが、その内訳が保険料収入で11.9兆円、国庫・公経済負担で10.3兆円ということで、足りない部分を積立金から財源1.9兆円使って、この期間の財源を賄っているという形になってございます。
 2010~2099年度は275兆円が給付ですが、財源としましては保険料収入が118兆円、国庫・公経済負担が148兆円ということで、足りない部分が8.7兆円で、全体として収支を賄うという形になってございます。それが今回は2010~2099年度ですが、給付合計で214.9兆円になってございまして、財源ですと214.9兆円の内訳が、保険料収入が89.7兆円、国庫・公経済負担が115.8兆円になってございます。積立金からの寄与が9.4兆円という形になっています。
 今回の再計算で2100~2104年度では、給付が2.8兆円で、財源は保険料が0.9兆円、国庫・公経済負担が1.5兆円ということで、積立金から0.3兆円必要となっているということでございます。
 今回こういう形で分析して何を見たいかということでございますが、まず、2100~2104年度で見ていただきますと、先ほどから申し上げましたように、100年後の時点においてはかなり収支が均衡していない状態になっています。ということで、積立金が必要なわけですが、前回では2100年で1年分の積立金しかない状態になるわけです。その状態では収支が均衡していませんので、5年先の積立金からの寄与が期待できない状態になっているわけで、どうやって5年間の財源が出てきたのかということが、こういう形の分析をすることで見ることができるのではないかと。
 具体的に申しますと、2100~2104年度までですと、給付が2.8兆円出ますが、財源としては保険料収入と国庫・公経済負担で0.9兆円と1.5兆円ですから、積立金から0.3兆円必要としております。前回は2100年までで収支均衡していたので、その0.3兆円がどういう形で出てきているのかということをここで見ることができるわけです。その内訳ですが、まず2010~2099年度ではどうだったかということですけれども、ここで積立金から得られる財源が0.6兆円増えていると。2100~2104年度では3,000億円ここも必要としていますし、前回より必要としていますし、2010~2099年度では6,000億円前回より必要としていると。全体として9,000億円ぐらい前回より財源が必要になっているわけですが、それが2005~2009年度で見ていただきますと、前回は1.9兆円ここで使う予定になっておりまして、全体の積立金からの財源が10.6兆円あります。前回で見ますと10.6兆円の積立金からの財源から2005~2009年度の1.9兆円使った形で、下の積立金利用可能財源を見ていただきたいんですが、ここに書いてありますのが2009年度末で8.7兆円。ですから、この10.6兆円から1.9兆円を引いて8.7兆円積立金からの財源が残る予定になったという形です。それが実際には、平成21年度では9.6兆円残っているという状態になっています。ここが改善しているものですから、2010~2100年度までの期間では6,000億円足りなくなっていますが、2100年以降で3,000億円というものが前回で必要とされています。積立金に寄与を求められているのが最初のところで出てきているということです。具体的には分析を深めないといけませんが、金利を上げたりすることで将来の積立金の評価額が下がったりする、そういった評価が大きいのだと思いますが、ここで出ているのは最初の積立金でかなりその部分の費用ができているということが見て取れるかと思います。
 85ページの図表が厚生年金でございます。厚生年金で見ていただきますと、やはり2100~2104年度では21兆円給付が必要になってございますが、財源で申しますと保険料が12.兆円、国庫・公経済負担が4.1兆円で、ここの部分で4.2兆円積立金から財源を必要としています。
 そこをどうやって見ているかですが、2010~2099年度で内訳を見ていただきますと、2階部分の給付費が998.5兆円から1004.9兆円ということで若干上がっております。国民年金の中で基本的に基礎年金拠出金等が下がっているのは、金利水準を上げているので現価ベースの数字は下がるという効果があるのですが、2階部分についてはマクロ経済スライドの期間が短縮したりしていますので、その効果もあって若干上がっている形になっています。基礎年金拠出金につきましては、マクロ経済スライドの期間が延びた効果で下がっておりまして673.4兆円が630兆円ということで、2階部分が0.6%上がって、基礎年金部分は6.4%下がる形。
 それに対して保険料収入ですが、1186.3兆円から1173.3兆円ということで、金利が上がっている割には1.1%しか下がっていないものですから、ここでかなり余裕が出ていまして、積立金から得られる財源を見ていただきますと、国民年金ではこの部分が前回は増えていたんですが、今回では前回142.7兆円積立金を必要としていたんですけれども、今回は136.2兆円で済むという形になっています。基本的には、被保険者数が増えている等で保険収入が確保できているということがここの財源が低くなった要因で、ここが増えているので2105年度以降の4.2兆円が出てきていると。2005年からの最初の5年間で見ますと142.7兆円が今回は140.5兆円ということで、国民年金に比べてここが逆に下がっていると。真ん中の期間2010~2100年度までの間で厚生年金の場合ですと財源が生み出されているという形で、国民年金とは逆になってございます。
 次に、国共済+地共済が86ページでございます。これも大体同じでございまして、2100~2105年度で見ていただきますと、1兆円ぐらいの財源を必要としていますが、国民年金と同様に、ここは積立金からの財源が45.2兆円から45.8兆円ということで若干必要としております。ここはどうやって満たされているかということですが、国民年金と同様に、最初の2009年度末の積立金が増えていると。45.2兆円から46.7兆円に増えることで賄われている形になってございます。
 88ページが私学共済でございます。私学共済も国共済と同様でございますが、2100年度以降の所要財源1,000億円程度ですが、これが2010年度以降の90年間では若干多く必要としていまして、それが最初の方の期間で生み出されていることになってございます。それが今回の新しい現価に関する分析でございます。
 次に、90ページにいっていただきたいと思います。「5.デュレーション」でございます。ここも以前から御提案申し上げていました年金財政に関して、実際のキャッシュフローがどの期間ぐらい先なのかといったことを見てデュレーションを計算して、金利との関係の分析を少し深めたいということで御提案申し上げていたものでございます。
 まず、91ページの表が基礎でございますのでご覧いただきたいと思いますが、金利についてイールドとフォワードとその標準偏差とリスクについて表示してございます。
 イールドと言われていますのは、市場でよく表現されていますが、10年国債で言えば1.181%となっておりますが、10年国債の金利が現在ですと表面のクーポンが1%ちょっと、1.2%という数字、10年間に平均して受け取れる金利が何パーセントぐらいなのかという数字をイールドと呼んでございます。
 それに対してフォワードですが、金利はイールドというのは10年満期の国債ですと、最初の1~10年間すべて1.181%をもらう形になるわけですが、フォワードと言いますと、すべて1.181%をもらうのではなくて、1年目は1年目の金利をもらって、2年目は2年目の金利をもらってという形で、市場で2年債と1年債の差でついている金利で、その予想平均が10年債の1.181%という形で考えた場合の金利水準がフォワードでございます。ですから、10年債で2.561%フォワードになっていますが、10年債は表面利率1.2%程度になっておりますが、それを購入して金利水準が変わらなければ1年経った時点で売却することによって、利息収入プラス評価益を足した形としてフォワードの金利である2.561%が得られるという性格のものと理解してございます。
 そういった意味では、債権の運用でデュレーションを10年と考えますと、10年のデュレーションで運用した場合には、基本的にはイールドの平均ではなくてフォワードに近い金利収入が得られるという形と理解しています。勿論10年先のフォワードで考えますと、リスクが伴って金利が上がってしまいますと、当然そこで債権の評価額も下がりますので、そういった意味でかなり標準偏差、リスクもございます。過去1年間の標準偏差を見ていただきましても、長期債の方が価格変動も大きいという形の表が出てございます。
 価格変動から金利の変動を見ておりますが、金利の変動からリスクを計算して見ていただきますと、40年債では11%もリスクがあるという形で、長期債の運用については勿論リスクも伴うという表が図表4-5-1でございます。
 基本的にはこういった形でございますが、フォワード金利について10年や10年以上では2.5%を超える金利も実現していると。40年でも2%を超えていますし、市場でよく言われています1%程度の金利という話よりも、フォワードで見るとかなり高い金利になっているという点は後の評価で出てまいりますので、ここまでにさせていただきたいと思います。
 デュレーションについてですが、表は92ページでございます。時間の関係もございますので簡単に。デュレーションの概念ですが、基本的には将来支出が平均的にどのくらい先にあるのかということで、その費用がデュレーションでございますが、運用収入を除く収入と運用で賄わなければいけない純支出の部分という形に分けてございます。見ていただきますと、支出ですと30年程度、収入は若干短くて30年弱という数字が出てございます。純支出で見るとかなり先になっておりまして、国共済+地共済では短いですが、厚生年金で50年、私学共済で60年のデュレーションということで、年金財政の給付を見る限り、積立金の運用という意味ではかなり長期的な運用が可能な状況になっているということが、この辺りから見てとれるかと思ってございます。
 93ページ以降ですが、「第5章 公的年金制度の安定性の分析」ということで、前提を変更した場合の影響についてまとめてございます。出生率が変更した場合では、人口推計が低位の場合、高位の場合を中心に計算していただいておりますし、死亡も同じように人口推計での仮定で低位の場合、高位の場合。経済的要素についても、賃金上昇率が2.9%、運用利回り4.2%の場合が高位ケース、賃金上昇率2.1%、運用利回り3.9%が低位ケースということで、それぞれ設定して前提条件を変えた場合の試算をお願いしてございます。
 結果は100ページでございます。表の見方でございますが、表頭にケースを出してございます。基本ケースと出生高位、出生低位、死亡高位、死亡低位、経済高位、経済低位、出生高位・経済高位、出生低位・経済低位。後ろの2つはダブルで条件をかけた場合ということでございます。
 各ケースについて何を見ているかということですが、マクロ経済スライドの開始年度や調整終了年度が入ってございますが、基本的に見ていただきたいのは、最初の給付水準。これは厚生年金と国共済は同じ動きをしますが、厚生年金で代表して見ていただければと思います。あとは最終保険料率、これは逆に厚生年金は同じでございますので、国共済や私学共済といった他共済の部分で見ていただければと思います。
 最初の給付水準ですが、厚生年金は基本ケースが50.1%ですが、出生高位ということで出生がかなり多いと53.9%ということでかなり厚く給付ができる形になっていると。出生がかなり悪くなりますと46.9%まで給付水準を下げなければいけない。ただし、死亡が多いと52.3%まで上げられる。死亡が少ないと寿命が延びて47.9%まで下げる必要が出てくる。経済高位ですと50.7%まで上げられる、経済低位ですと47.1%。出生高位・経済高位になりますと54.6%ですが、出生低位・経済低位ですと43.1%まで給付水準を下げなければいけないという状態だということでございます。
 最終保険料で見ていただきますと、時間の関係もございますので私学共済だけでコメントさせていただきます。例えば出生高位では、給付水準が53.9%ということで高まりますが、逆に私学共済ですと、その給付水準が高まった上に最終保険料率が18.3%ということで下げることができます。ところが、死亡の場合で見ますと、死亡高位ですと給付水準は52.3%まで上げることができるんですが、私学共済ですと死亡高位の場合は、逆に基本ケースよりも保険料率を高く19.7%まで取らなければいけないという形になって、給付が動くことによって最終保険料を調整するものですから、厚生年金との関係で若干最終保険料率が動いている形になっているということが御理解いただけるかと思います。そのような分析をしてございます。
 次に、104ページからが「第6章 公的年金制度の公平性の分析」でございます。公平性につきましては職域部分を除いて比較するという形でございまして、どうやって除いて計算しているかは105ページの四角で囲っているところに書いてございます。具体的な方法でございますが、1階部分は賦課方式で賄うことを仮定しておりまして、基礎年金拠出金相当保険料率を1階部分の保険料率として先取りをいたします。2階部分及び3階部分の保険料率は、保険料率から基礎年金拠出金相当保険料を控除した残りの料率を、当該年度の2階部分と3階部分の給付費で按分するという形で機械的にやったものという形でございます。手法については前回と同じでございます。
 結果が106ページでございます。5年飛びでございますが具体的な各年度について、保険料率を3階を除いた職域部分を除く保険料にして、それを1階と2階に分けて計算をした結果を載せてございます。具体的には図表で見ていただければと思いますので、まず、108ページの上の図表を見ていただきたいと思います。
 2階部分だけで比較して見ていただきますと、2階部分の保険料率は当面、全体の保険料率は私学が低い形で出ておりますが、将来で見ていただきますと保険料率が上がってまいりますと、私学と国共済+地共済が厚生年金よりも若干高い水準で推移するという形になってございます。
 109ページが1階の比較でございます。こちらは逆になっておりまして、私学共済と国共済はほぼ同一なんですけれども、厚生年金の方が高くて、標準報酬の額が共済組合の方が高いものですから、その影響で1階部分の料率が共済組合よりも低いと。厚生年金よりも低くなっているということが、この辺りに出ております。
 1階と2階とを合わせた結果が112ページでございます。1階の方が低いというのは聞いておりまして、給付は職域部分を除けば同じだと考えられますので、職域部分を除いた保険料率で比較をしたものが図表6-3-6でございますが、厚生年金の方が共済よりも高いという数字になってございます。1階の料率が高い分、1階プラス2階も高くなってしまうという状態でございます。
 それから、前回との比較は114ページでございます。2100年度でご覧いただきたいと思います。職域部分を除く料率ですが、厚生年金18.3ですけれども、国共済+地共済は前回が16.467、今回は17.373ということで、前回はもっと差があったのですが、今回は差が若干縮まってきているという状態でございます。
 1階部分の保険料率は前回5.7で今回は5.8。国共済+地共済で4.0と4.2ということで若干縮まっていますが、これはかなり差があるままという形です。
 2階部分は、前回が12.55と今回が12.46ですから大体同じぐらいですが、国共済+地共済は前回12.45、今回は13を超えておりまして、前回は厚生年金とほぼ同じ保険料率で2階部分であったものが、今回は厚生年金より2階部分の料率については高めの数字が共済組合で出ているという差になってございます。それが分析結果でございます。
 115ページ以降は「第7章 公的年金給付費等の規模」でございます。今回GDPを示してございますが、全体の公的年金給付費の規模について、まず第7章の1で出してございます。図表7-1-1を見ていただきたいと思いますが、平成21年度価格でどのような水準になっているかを見ていただければと思います。実質的な価格で見ていただきますと、公的年金給付費で2010年度48.7兆円でございますが、2013年度までは団塊の世代が入ってくるといった影響で52.7兆円まで増えます。これが若干だんだん下がってまいりまして、マクロ経済スライドの効果もあって2030年度には44.1兆円まで下がります。それが2070年度では35.0兆円まで、これは人口減の影響もあって若干下がっていく。それが2070年度以降はかなりまた下がると。この辺は人口が減っていってかなり下がっていく、給付自体も下がっていくという状況が示されております。
 保険料も同様の傾向をとりますが、積立金で必要な部分で見ていただきますと、2030年度ではマイナスになっているということで、この辺でマクロ経済スライドの効果が出てきて、積立金がなくても保険料で賄える状態が出てきているということが全体の傾向としては示されてございます。
 ちょっと駆け足になりますが、117ページにいっていただきたいと思います。今回の財政検証の経済モデルについてコメントをしている部分でございますが、今回の厚生年金及び国民年金の財政計算の基礎となった経済前提をつくった経済モデルについて、どのようなモデルかを再掲してございます。ここで見ていただきたいのは?でございますが、人口が減るものですから、労働時間が次第に減っていくという推計になっていると。労働力率等は増える形になっているんですが、実際の人口減の方が大きいものですから、トータルの労働時間では減っているということ。
 ?ですが、労働時間は減っているんですけれども、資本成長率がプラスを維持しているということが今回の特徴と考えています。コブダグラス型のモデルなものですから、労働が減って資本が増えているということになっておりますので、どちらかというと賃金がその分上がりやすくなっているということかと思っております。それが将来のコメントでも出てまいります。
 119ページがGDP比でございます。GDP比で見ていただきますと、GDPは今のモデルを単純に伸ばして推計したものでございますが、それで公的年金給付費を割ってGDP比を見たものでございます。給付費だけでコメントさせていただきますと、GDP比で2010年度で8.9%ぐらいですが、マクロ経済スライド等の効果で8%ぐらいまで落ちます。それが2070年度では11%まで上がっていくという形で、それから若干落ちますが、2105年でも10.5%と高い水準を維持しているという状態が示されてございます。
 分析の内容は以上でございます。
 最後は「第8章 公的年金の財政評価」をご覧いただきたいと思います。第8章はこの報告書の中心でございますので、とりあえず朗読させていただきたいと思います。

第8章 公的年金の財政評価
1.総合的な評価
○年金財政の安定性について
 平成21年財源検証・財政再計算においては、各制度とも、過去の実績等を踏まえて設定した各種基礎率を用いて数理計算が行われ、2105年度までの約100年間について収支の均衡が図られることが示されている。
 年金数理部会としては、以下の点からみれば、公的年金の財政の安定性は一定程度評価できるものと考える一方で、以下に示すような様々な懸念事項があるものと考えている。したがって、今後の動向を毎年度の決算状況等を通じて把握しつつ、引き続き公的年金の財政の安定性について検証していくことが重要である。

《評価のポイント》
 ・ 基本ケースにおける給付水準をみると、厚生年金の標準的な年金の所得代替率は今
後緩やかに低下し、2038年度以降は50.1%となる見込みであり、50%を上回る水準と
なっている。なお、給付先決め方式である共済年金の給付は、厚生年金と同一のマクロ
経済スライドの調整率を用いて調整され、最終的な所得代替率は、国共済が48.1%、地
共済が47.0%、私学共済が47.9%となっている。
 ・ 基本ケースにおける保険料水準をみると、共済年金の保険料率は、毎年0.354%ずつ引き上げられ、最終保険料率は、国共済+地共済が19.8%、私学共済が19.4%にとどま
る見込みとなっている。なお、保険料水準固定方式である厚生年金、国民年金の保険料
(率)は法定されており、最終保険料(率)は厚生年金が18.3%、国民年金が16,900円(平成16年度価格)である。
 ・ 公的年金給付費の規模は、2010年度でGDPの9%程度であるが、将来においても
GDPの11%程度となっている。この水準は、現在の欧州諸国の年金給付の対GDP比
からみて、それほど過大なものとはなっていない。
 ・ 保険料収入の規模は、対GDP比でみると2010年度で6%弱であるが、将来も6.4%
程度で安定的に推移しており、保険料負担の大幅な増加とはなっていない。
 ・ 積立金で賄うべき費用(積立金活用分)の規模は、対GDP比でみて、将来でも2%
前後にとどまっている。
 ・ 積立金の運用利回りは4.1%(2020年度以降)と、現在の10年国債のイールド金利
(2,010年:1.2%)に比べて高く設定されているが、年金財政においては、長期的には
保険料や給付費が概ね賃金上昇率に応じて増減することから、賃金上昇率と比較した実
質的な運用利回りで評価することが適当であり、また、金利の評価は、年金給付が長期
にわたることを考慮し、フォワード金利(現時点での将来の想定金利)で行うことが適
当である。今回の財政検証・財政再計算では、実質的な運用利回りは1.6%(2020年度
以降)となっている。これに対し、現在の国債の10年超のフォワード金利(2010年時
点)は2%を超える水準となっており、直近における資金の下落傾向を考慮すると、賃
金上昇率と比較した実質的な金利は1.6%を上回っている。
 ・ 年金財政において、積立金を活用して賄うべき「純支出」のデュレーションは、ど
の制度でも、現在の積立金の運用における債券運用のデュレーション(厚生年金、国民
年金で6年程度)を大幅に超えており、順イールドの状況を考えれば、運用のデュレー
ションを長くすることで、運用利回りを改善する余地がある。

《懸念事項》
 ・ 現在、日本経済は明確にデフレから脱却できている状況ではなく、前提としている
賃金上昇率等が高めの設定になっている可能性がある。特に、経済前提の基礎となった
コブダグラス型の生産関数の計算において、労働時間が減少するにもかかわらず投資が
続くことが仮定されている。経済のグローバリゼーションが進み、新興諸国への投資が
増加している現状では、この仮定は高めの設定になっている可能性がある。
 ・ 今回の財政見通しでは、マクロ経済スライドによる給付水準調整が2012年度から
2038年度までの27年間毎年実施される見込みとなっている。しかし、景気循環による
経済の変動は避けられないことから、2012年度から2038年度までの間においても、景
気の悪化によりマクロ経済スライドの実施の遅れや実施できない期間が生じてくる可能性がある。
 ・ 今回の財政検証における労働力率等は、例えば30歳代前半の女性有配偶の労働力率
が47.7%から65.8%へ、60歳代前半の男性が70.9%から96.6%へ上昇するなど、より
多くの者が働くことが可能となった状況を想定した「労働市場への参加が進むケース」
に基づいて設定されており、今後の状況を注意深く見守っていく必要がある。
 ・ 出生、死亡、経済的要素の前提を変更した場合、今回試算したケースにおいても、
厚生年金の標準的な年金の所得代替率が43.1%(「出生低位、経済低位」)になることが
ある。また、共済年金の最終保険料率は、国共済+地共済が20.1%(「死亡高位」)、私学共済が20.7%(「出生低位」)になることがある。

○制度間の公平性について
 制度間の公平性に関しては、「基本的には、制度間で、過去の運営状況等を考慮した上で、同じ年金給付に対する保険料水準に差がないこと」という観点から検証を行うこととし、第6章に示した方法で、各制度の保険料率を、1階・2階・3階部分に振り分けて、同じ年金給付に対する保険料水準を検証した。
 被用者年金制度の公平性は、1階部分と2階部分の給付がほぼ同じことから、職域部分を除く保険料率で評価することが適当である。被用者年金の保険料水準をみると、現時点では、共済年金の積立比率や報酬が高い等の要因で、1階部分、2階部分、職域部分を除く部分すべてで、共済年金の保険料率が厚生年金を下回っている。今後、各制度の保険料率は段階的に引き上げられるが、全制度が最終保険料率に到達した2030年度以降においても、制度間で以下のような差が生じている。職域部分を除く保険料率は、将来において、共済年金間の差はほぼなくなるものの、厚生年金と共済年金の間の差は残る見込みである。この差は、被用者年金制度の財政単位の一元化を図るなどの方法を採らない限り、完全になくすことは困難である。
 制度間の公平性については、保険料率を計算する際に用いられた諸前提や制度間の積立比率の違い等も考慮に入れて判断する必要があり、今後とも引き続き検証していくことが重要である。

 ・ 職域部分を除く保険料率は、前回の財政再計算時より厚生年金と共済年金の間の差
が縮小しているものの、今回の財政検証・財政再計算でも、将来において、厚生年金に
比べ共済年金で1ポイント程度低くなる見込みである。
 ・ 1階部分の負担は、基礎年金制度の下、「定額給付・定額拠出」となっているが、こ
の負担を各制度において料率換算した場合には制度間で差が生じており、1階部分の保
険料率は、厚生年金に比べ共済年金で低くなっている。
 ・ 2階部分の保険料率は、前回の財政再計算時には各制度ともほぼ同程度であったが、
今回の財政検証・財政再計算では、将来において、共済年金に比べ厚生年金で低くなる
見込みである。

2.今後の公的年金各制度の財政検証・財政再計算の際の要留意・検討項目
○国民年金の財政の詳細な分析
 平成16年財政再計算においては、マクロ経済スライドによる調整が基礎年金と報酬比例部分共に2023年度までとなっていた。今回の財政検証・財政再計算においては、基礎年金のマクロ経済スライドの調整期間が2038年度までと大幅に延長し、報酬比例部分の調整は2019年度までと短縮している。このため、厚生年金の将来の所得代替率は前回の50.2%から今回の50.1%へと微減にとどまるものの、基礎年金部分の率は前回の28.4%から今回の26.8%へと低下している。このことは、基礎年金の水準についての議論につながるものであり、重要な論点となる可能性がある。また、今回の財政検証では、国民年金の保険料納付率を8割と見込んでいるが、最近の実績では6割程度と低く、見込みと最近の実績の間で乖離が見られており、今後、保険料の未納状況が年金財政に与える影響について、より詳細に分析していくことが必要である。

○共済年金における被保険者数の見通し
 共済年金における2階部分の保険料率が将来厚生年金を上回ることとなるのは、共済年金における被保険者数の見通しが大きく減少していることが大きな要因と考えられる。私学共済においては、前回の財政再計算においても、被保険者数と学齢対象人口の減少に連動して減少する見込みとしていたが、その後の実績は逆に増加を示している。また、国共済、地共済の被保険者数の場合も、警察や自衛隊のように人口が減少しても一定数必要と考えられる職種の被保険者が存在することを考えると、将来、今回の仮定よりも被保険者数が多くなる可能性がある。今回の財政見通しは、被保険者数が大きく減少しても収支が均衡することが示されているという意味では保守的な仮定の下で行われている。今後、被保険者数が今回の仮定よりも多くなる前提に基づいた試算も示していく必要がある。

○経済変動の影響の計測
 現在の財政検証・財政再計算は、長期的な経済前提について一定の数値で見込むこととしているが、実際の経済においては、景気の変動がないということは考えられない。公的年金制度の財政に大きな影響を与えているマクロ経済スライドは、物価や賃金が下落する局面では働かないこととなるため、今後、景気変動によりマクロ経済スライドが働かない時期の存在も考慮した財政検証・財政再計算を行っていく必要がある。

○確率的将来見通し
 前提の変更については、それぞれを別個に変えてみるだけでなく、全体が動いたときの財政の動きをみる必要もある。この一つの方法として、確率的将来見通し(Stochastic Projection)を作成することが考えられる。これは、各基礎率について一定の確率分布をすると考え、その確率で実現するとした試算を数多く行うことにより、当該制度の財政状況の将来のあり得る可能性(確率)を計算するものである。ただし、基礎率の分布など、今後解決すべき問題点があるほか、出生率や死亡率のように将来的にある傾向をもって変化すると考えられる要素の設定方法も検討が必要である。さらに、共済年金では、1回1回のシミュレーションごとに、厚生年金や国民年金のシミュレーションで設定される基礎年金拠出金単価やマクロ経済スライドの数値等が動くため、これとの整合性をどうするかという問題がある。
 しかし、ある程度の割切りをした上でも、この確率的将来見通しを作成していくことは、年金制度の安定性をより詳細に検討するために不可欠なものとなっていくと考えられる。また、マクロ経済スライドが働かない状況を考慮に入れた財政見通しを作成する上でも有効な手法となり得ることから、今後の検討が望まれる。
 以上でございます。

○山崎部会長
 ありがとうございました。
 ただいまの説明につきまして、何か御質問等ございますか。
 佐々木委員どうぞ。

○佐々木委員
 このレポート自体はこちらでよろしいかと思うのですが、2点お伺いしたいことがあります。1つ目は、懸念事項で日本経済がデフレから脱却できていない。だから、高めになっている可能性がある。こういう御指摘はそのとおりだと思うのですが、そもそもこの計算の前提のときの、例えば高位とか中位とか低位というところにそういう懸念があるとすれば、この低位のところに反映されているのか、また、そのようなことがあったのかどうかコメントをいただきたいと思います。
 もう一つは、実際のこの方針に基づいた実行として、例えばGPIFの運用は、2010年は基本目標1.8%、共済組合はわかりませんが、そういうことは実際の運用の目標とどう連動しているのか、その2点をお願いします。

○石原首席年金数理官
 まず、第1点目の懸念事項で、デフレから脱却できていない話が試算の前提を変えたケースで、低位ケースがある中にどう反映されているのかという御質問でございます。先ほどは端折って説明させていただいて申し訳ありませんでしたが、94ページのケースで見ていただきますと、経済の中位ケースでございますが、物価が1.0、賃金上昇率が2.5、運用利回り4.1になっております。それに対しまして、佐々木先生から御指摘の低位ケースは物価が1.0、賃金が2.1、運用利回りが3.9ということで、若干低位になっておりますが、デフレから脱却という意味では、現在時点の物価がマイナスですとか賃金がマイナスといった状況は想定されていないという状態でございます。基本的には、物価上昇率は経済の中位ケースでも高位ケースでも低位ケースでも同じ上昇率が使われておりまして、どちらかといいますと現在のデフレ状態が異常な状態ということで、長期的な経済前提としては、物価はある程度、日銀の目標であります1%程度伸びる状態を中心に、全要素生産性の伸びが1%でない場合、もう少し低い場合という形で高位と低位、大きく伸びる場合と小さく伸びる場合という形で整理していると考えてございます。
 第2点目の運用でございますが、基本的には運用につきましては現在こういった形の再計算が示されてGPIFの運用委員会等で再計算の目標をにらみながら運用を決定していく、ポートフォリオを組んでいると理解しております。

○山崎部会長
 ほかにございますか。

○牛丸委員
 今、御報告をいただきました報告書の内容に関しては、既に小委員会等でいろいろと議論しましたから同意いたします。ただ、こういう形で発表されますので、そこで2点お願いといいますか質問をしたいのですが。1つは、御承知のように今回、東日本大震災で大変被害が出ました。多くの方々が亡くなり、多くの方々が被災されました。現在、救援と復興に向けて官民すべてが協力して対応している状況だと思います。当然今後、多額の予算を使うことになるでしょうし、今後の経済への影響も避けられないと思います。今回の報告書は、勿論このような事態の発生等を全く予測していない前提で作成されたわけです。100年ということを考えておりますので長期的な影響は緩和されるでしょうが、短期に加えまして中期的には影響が出てくるのではないか。先ほど景気云々の話もありましたけれども、当然こういうことが今回発表する財政に向けたものに関して何らかの影響があるのではないかということを私は懸念していますが、その辺のことを発表の段階で言及する必要があるのではないかということが1点です。
 それから、もう一つは、質問をしながらお願いです。後ろにマスメディアの方がいらっしゃいますが、質問は、今日こういう形で発表という形をとりますが、その後これだけで終わるのか、何らかの形・手段を通して、この内容が一般の方々にどう報告されるのかという、その辺のプロセスを教えていただきたいのです。というのは、今、地震のことをお話ししましたけれども、いわゆる福島原発に伴ういろいろな情報、発表が行われていて、それをずっと聞いておりまして感じたことは、それなりの基準から発表がなされていて当然なんですが、その真意が必ずしも一般の方々、十分な知識を持っていない方々に伝わっていない。そこで思ったのは、専門家がいろいろな発表したときに、その真意をよりわかりやすく理解できるような形で伝える人とか、あるいはそういう手段が必要ということです。この報告書においても、易しくなりましたが、かなり専門的な部分があります。この報告自体が誰を対象としているかによって違ってくると思いますが、でき得れば一般の方々にも理解していただきたいと思っておりますので、発表に際して今私が考えたような懸念が解消されるような対応をしていただくとありがたいということでお願いということです。
 以上、2つというか、3つというか、質問とお願いです。お願いいたします。

○石原首席年金数理官
 2点承りました。まず、震災の件でございますが、勿論震災の影響をこの中に盛り込めているわけではございません。震災につきましては勿論、一定程度、東北地方等を中心に生産能力等の低下、停電の影響等による生産能力、GDPの減少といった影響がおっしゃるとおり懸念されておりまして、勿論、年金財政に影響がないとは思っておりませんが、どの程度影響があるのかについては今後考えていくテーマなのかなと思っております。
 ただ、本報告書につきましては、基本的には現時点における各公的年金制度の財政検証なり財政再計算が平成21年度においては行われました。その再計算結果を評価して、安定性と公平性についての意見を取りまとめるという形のものだと考えておりまして、そういった意味では今、牛丸先生が御懸念になった点につきましては、各制度自体でまず評価していただいて、それについて数理部会として安定性・公平性の観点から必要があればまた意見を申し上げるという形になろうかと考えております。
 ただ1点、この場で申し上げるのがいいかどうかということはありますが、基本的には牛丸先生の御懸念と御指摘のとおりだと思いますけれども、状況の変化としましては、勿論、株価が落ちたり更に懸念が深まっている要素もございますが、例えば、出生率につきましては、平成21年の財政検証の結果で前提としています人口推計の出生率の仮定と比べますと、現在の出生率が若干上回っているような面もございます。そういった意味では、一方的に懸念ばかりではないということは、この場で御指摘申し上げたいとは思っております。
 それから、年金数理部会の報告書自体は財政報告につきましても、今回の検証につきましても、若干数理的な、専門的といいますか、かなり突っ込んで分析している点もございますので、わかりにくいということもありまして、前回からですが、基本的に広報ということについては御指摘のとおり重要だと考えております。ただ、広報として今までですと、どちらかというと年金数理部会セミナーというようなことで行ってきたのですが、年金制度そのものの広報についてどのような形でやったらいいのかを若干見直す作業にも入っておりますので、こういった専門的な内容を含め、年金制度に対する国民の理解をどのような形で求めていくのかということについては、若干お時間をいただいて検討させていただきたいなと思います。
 以上です。

○山崎部会長
 牛丸委員、よろしいですか。他にございますか。
 林委員、お願いします。

○林委員
 いつも思っていた財政計算時点の問題でございまして、平成21年財政検証という題になっています。資料1-1の4ページを開くと、中段にまさしく年金数理部会が平成20年11月、昨年の秋だったと思いますが、制度所管省から財政検証・財政再計算の内容について、確かに私どもも御説明を受けたわけでございます。検証した時点がいつかというのは、平成21年のいつかなんですよね。それは明らかにしないわけですか。平成21年のいつかだったと思うのですが。

○石原首席年金数理官
 検証の日付といいますか、基本的にはここで書かれてございますのは11月に各制度からのヒアリングをお願いして、資料の検討をいただいて、先ほど申し上げたように、1月に一部分ですが検討の会議を持たせていただきました。その結果を本日付で取りまとめの案という形で作業をさせていただいておりまして、本日付での報告書という形で取りまとめるものと想定しておりましたが。

○林委員
 そのとおりなんですけれども、例えば、計算は平成21年10月にやったとか、そういうことは言わないわけですね。平成21年にやったものですというのは。

○石原首席年金数理官
 各制度がいつ再計算をしたかという時点は、厚生年金と国民年金は同一ですが、国共済と私学ではずれておりますので、時点はそれぞれバラバラになっておるのかなと思っております。

○林委員
 ですから、いずれにしても平成21年にやったと。

○石原首席年金数理官
 財政再計算の呼び方につきましては、厚生年金、国民年金が前回で申し上げれば平成16年時点で再計算を行い、法律改正を実施して、通常国会に提案して成立しておりますが、そういった形で再計算を行ってきております。厚生年金が平成16年に行って、平成16年の財政再計算という形で時点は若干ずれていますが、国共済も私学共済も、保険料率の引上げはたしか平成17年とかずれていたと思いますが、そういう形で時点はずれていますが、呼び方としては平成16年再計算という形で呼んでおりまして、今回は平成21年財政再計算なり財政検証という呼び方をさせていただいております。

○林委員
 先ほど牛丸委員からもありましたが、震災の影響は勿論あるのですが、これは所詮平成21年に計算したものなんですね。勿論その時点で地震なども予測できればしたはずですが、そうすると、平成21年の話だからというのははっきりしておいた方がいいんじゃないかと思うんです。

○石原首席年金数理官
 わかりました。御指摘の点ですけれども、そこは注なり何なり、いつの時点のデータに基づいて推計を行ったかということですが、資料のほかに参考資料を用意しておりますので、資料1-3をご覧いただきたいと思います。平成21年財政検証・財政再計算結果等ということで、各制度の財政検証なり財政再計算がどのように行われたとか、基礎数はこのようにつくっているといった数字を並べておりまして、林先生からの御指摘が明確に出ているわけではないのですが、結果が主ではございますけれども、要するに基礎となったものはどのようにとったかといった内容についても若干触れていると思いますので、少し検討させていただいて、もし、工夫できる余地があれば、この辺りの帳票を少し直すことで。例えば、187ページをご覧いただきますと、基礎数の設定方法などが書いてございます。この辺りの基となる統計がいつの統計であるとか、その辺りも出ております。ただ、全体としてまとまって、いつまでのデータでやっているので震災の影響は含んでいないですとか、その辺り全体の報告書の中で必要があれば入れるという形で対応させていただきたいと思います。

○林委員
 ありがとうございます。

○山崎部会長
 では、田中委員どうぞ。

○田中委員
 今回の報告書というのは、第一の目的が財政検証ということで、公的年金制度の横断的な財政状況の比較といったことに主眼が置かれておりますが、 現在、年金改革の方向はどうなっているか、つまびらかではないのですが、この報告書の示唆するところを年金改革にどう生かすかという観点で、何らかの参考になるような表現をもうちょっと明確に出された方がいいのではないかと思っています。年金数理部会の報告書の性格から客観的記述にとどめるということだったので限界はあると思いますけれども、今後、よりよい年金改革をしていく場合に 示唆になるようなことを多少書き込むということについてはいかがお考えでしょうか。

○石原首席年金数理官
 御指摘のとおりだと思いますが、基本的には、この報告書の性格でございますが、各制度の財政再計算なり財政検証を受けて、客観的に比較しながら分析していくということで、将来の政策的な提言を目的にするというものではないと理解しております。今後の年金制度の在り方という意味では、そういった提言があまりされていないという状況かと思っております。ただ、そういった意味では、あくまでも現行制度による検証を行ったものでございまして、例えば「はじめに」のところでございますが、1ページの最後で「本報告書での分析やデータが、今後の年金制度の財政の安定性及び公平性の確保に寄与するとともに、一元化をはじめとする公的年金制度改正の検討に資すれば幸いである」ということで、年金数理部会としては今後の改正の検討に寄与してもらうということを想定しているんだということは、ここで述べているつもりでございます。

○山崎部会長
 よろしいですか。他にございますか。
 野上委員どうぞ。

○野上委員
 今までいろいろ御意見を申し上げてきましたので、報告書に関しては了承させていただきます。
 今回のところではちょっと無理だなというところで、言わなかった点を中心に最後にコメントさせていただきますと、将来に対しての課題というようなところで聞いていただければと思います。
 1つは、確率的将来見通しということで、この章を設けていただいたということに関しては、私自身はかなり高く評価しております。ただ、ここでシミュレーションを行うときに、今回の経済前提等でもありますように、将来の経済モデルに基づいた率を使うのか、あるいはフェアバリューといいますか、現在の市場に整合的な金利(一般的にはリスクフリー金利)を使うのか。私は現在の市場に整合的な金利の方がいいとは思うんですが、その点については次回のときに課題になってくるのではないかというのが1点でございます。
 もう一つは、公平性については基礎年金拠出金等について言及いただいた、あるいは未納の影響等についても言及をいただいた点については感謝をしております。ただ、他制度との比較といいますか、例えば、3階建て部分あるいは生活保護とか農家の方の個別所得補償のようないろいろな制度との絡みで、今後はいろいろな検証が必要ではないかという点でございます。
 それと、各委員が話されましたように、世間に対しての発表の仕方といいますか、透明性についてはいろいろなところで指摘されているのですが、まとめて考えますと多分、全体の納得感と発表のタイムリー性といいますか、機動性という辺りが求められているのではないかと。その辺りが恐らく今後はより重要になってくるのではないかと思います。
 以上3点でございます。

○石原首席年金数理官
 まず、第1点、フェアバリューの点でございますが、以前から野上先生には御指摘いただいている点でございまして、どのような形でこのようなフェアバリューという分析に近づけていくのか。現在、財政再計算自体が経済前提をモデルと設定して、それを元にやるという形でございまして、フェアバリューという形、いわば市場金利で評価、市場での評価を中心に分析するという形になっておりませんので、どの程度できるかということでございますが、いずれにしろ課題として認識しておりますので、次回に向けての宿題とさせていただければと思います。
 それから、もう一点の生活保護等の他制度との関係ということでございますが、今回御提案申し上げたのは、せめてGDP内、日本経済全体との関係ということでGDP比ということで見ていただきました。経済との関係などはもう少し深くしながら、今おっしゃられましたように生活保護等のデータの関係ですとか、年金数理部会的な色彩、財政を中心にしてどこまでそういう形でやるのかということを御相談申し上げながら、若干検討するような体制を整えたいと思います。
 最後に、発表に関してですが、今回こういう形で財政検証の報告をご検討いただいておりますが、毎年度につきましては、決算についての財政報告を各制度からお願いして、年金財政報告書を検討していただいております。この年金財政報告書についても、少し時期が遅いのではないかという御指摘をいただいておりまして、今回ですと4月の中旬にはヒアリングをお願いしたいと思っておりますし、将来的にはもうちょっと発表時期も早めて、よりスピーディーにタイムリーに年金財政についての情報公開という役割を果たして参りたいと考えています。
 以上です。

○山崎部会長
 よろしいですか。
 それでは、特にそのほか御意見ないようでございます。委員の皆様にはいろいろと御指摘いただき、御議論を尽くしていただいたものと思います。特に、報告書の修文が必要との御意見はございませんでしたので、これをもちまして本部会の平成21年財政検証・財政再計算に基づく公的年金制度の財政検証とさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○山崎部会長
 それでは、異議がないものと認めます。それでは、これを本部会の報告とし、この議題につきましてはこれで終了いたします。
 それでは、事務局より今後の予定について説明をお願いいたします。

○石原首席年金数理官
 今申し上げましたとおり、4月13日と19日に年金数理部会を開催し、平成21年度の財政状況につきまして報告を受ける予定でございます。13日は10時から本日と同じ場所で、厚生年金、国民年金からの報告を、19日は13時からホテルフロラシオン青山で、国共済、地共済、私学共済の報告を受ける予定でございます。
 以上です。

○山崎部会長
 本日はこれまでにさせていただきます。どうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

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(代)03-5253-1111(内線3382)

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