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2011年1月21日 社会保障審議会年金数理部会(第44回)議事録

○日時

平成23年1月21日(金)15:00~17:00


○場所

全国都市会館 第2会議室(3階)


○出席者

山崎部会長、宮武部会長代理、牛丸委員、翁委員、駒村委員、
佐々木委員、田中委員、野上委員、林委員

○議題

(1)長期金利と年金の財政分析(ヒアリング)
(2)年金数理部会における財政検証について

○議事

○石原首席年金数理官
 それでは、定刻になりましたので、ただいまより、第44回「社会保障審議会年金数理部会」を開催させていただきます。
審議に入ります前に、お手元の資料の確認をさせていただきます。
座席図、議事次第のほか、次のとおりでございます。
資料1は、「長期金利と年金の財政分析」でございます。
資料2は、2つに分けておりまして、資料2-1が「年金数理部会における財政検証に向けての基礎資料-制度間比較-」、資料2-2は、「年金数理部会における財政検証に向けての基礎資料-平成16年財政再計算との比較-」でございます。
配付資料は以上でございます。
次に、本日の委員の出欠状況について御報告いたします。本日は全委員御出席でございますので、会議は成立いたしておりますことを御報告申し上げます。
なお、年金局長は公務のため欠席させていただいております。
それでは、以後の進行につきましては、山崎部会長にお願いいたします。

○山崎部会長
 委員の皆様には、御多忙の折お集まりいただきまして、大変ありがとうございます。本日は、最初に「長期金利と年金の財政分析」というタイトルで、福永顕人氏からヒアリングを行います。次に、「年金数理部会における財政検証について」、基礎資料をもとに審議を行います。
 それでは、最初の議題に入ります。今回の年金数理部会における財政検証では、デュレーションという指標を用いた分析を行うことを検討しておりますが、それにあたり、デュレーションを含め長期金利の分析に関して、福永氏をお招きしてヒアリングを行うこととしました。
 福永顕人氏は、社団法人日本アクチュアリー会正会員で、現在、アール・ビー・エス証券会社東京支店のチーフ債券ストラテジストとして御活躍しておられます。本日はお忙しいところお越しいただきましてありがとうございます。
 それでは、よろしくお願いいたします。

○福永氏
 ただいま御紹介にあずかりました、アール・ビー・エス証券の福永と申します。
 今、御紹介いただきましたように、今はチーフ債券ストラテジストといいまして、具体的には、円金利が、これから長期金利が上がるのか下がるのかということを分析してレポートを書くというような仕事をしているのですけれども、以前、生命保険会社に少しいたこともありまして、あるいはアクチュアリーという仕事をしていたことも、少しだけですがありまして、そういったところと絡みながら、現在の日本の長期金利がどのように動くか、当然需給も反映されてマーケットも動きますので、そういったところを含めて仕事をしているという次第でございます。具体的に年金というところ、特に公的の年金というところに関して少しでも私の今までやってきたことが絡むところがあればというところで、今回、お仕事を引き受けさせていただきました。
では、早速ですが、この資料を順に説明させていただければと思います。1枚めくった2ページの「概要」のところに4点ございます。まずは、基本的なところといいますか、概念的なところといいますか、債券を運用する場合、投資する場合の概念として、イールドカーブという概念であったり、あるいはスポットとフォワードの関係であったり、それとデュレーション。デュレーションと俗に言うと満期までの年限という意味になりがちですけれども、そうではなくて、リスク量としてのデュレーションという意味の概念であったり、それと、債券に投資するに当たって極めて重要なキャリーという概念であったり、そういったものを説明させていただきたいと思います。
 その後、その債券の投資ということ及び債券のデュレーションリスクということ、年金の財政を考える上での関係性ということを2点目で述べさせていただきたいと思います。具体的には、今の運用でどういった問題点がもしかしたらあるのかどうかといったところの問題提起、資産の側の金利リスクをこれから増やすべきなのではないかといったところの議論をしたいと思います。
 3点目ですけれども、「生命保険会社の現状」ということで、生命保険会社さんも同様に負債のデュレーションリスク、長い負債を持っているということで、それに合わせて、これまで、この10年ぐらいですか、少しずつ資産運用を変えてきたという経緯がございまして、そちらの概観というところを説明させていただきたいと思います。
最後は、現在、私がメインの仕事でやっているような、これからの長期金利の見通しということ、特に長い年限の金利の需給等、そういったところを説明させていただきたいと思います。
では、早速ですけれども、1点目のところ、次の4ページから説明させていただきたいと思います。本当に一番ベースになっている簡単なというか、一番重要なコアな部分から説明していきたいと思います。まず、債券を投資するということでどのようにマーケットができていて、どのようにプライシングされていてということの話になりますけれども、例えば10年国債というものがあります。俗に10年国債と言うと、あるいは10年金利と言うと、期間10年の金利を当然指しますが、一般には、一番最近に発行された新発の国債の金利のことを指すということです。今であれば312回ですけれども、この回号は、クーポン1.2%で、満期が2020年の12月なので、それまでの半年に1回ずつ、1.2%の半分のキャッシュフローが生まれます。100円持っていれば60銭のキャッシュフローが生まれます。元本は当然最後に返ってきます。
みんな、10年金利、10年金利と言うのですけれども、これは本当に厳密に言うと、今日から10年後の金利ではないということです。そんなことどうでもいいというのは確かに一方ではあるのですけれども、毎日毎日、10年金利、本当の10年金利というのは世の中にはないということは一応重要な点ではあるかなとは思います。今後、その後の計算を本当にいろいろとしていくにあたっては、重要といいますか、考えなければならない点にはなってきます。
その次にイールドカーブ、5ページですけれども、複利利回りとは何でしょうということで、ここで式にしました債券の価格というものをPとします。その債券の価格というのは、その債券にまつわるすべてのキャッシュフローを割引率rというもので一律に割り引いた場合、CF÷(1+r)のt乗のようなもの、tが何年、1年、2年、3年という、あるいは先ほどの話で言うと、厳密にはちょっとずれている何か月何日とか、そのようにずれているものに応じ乗じて割るということをして、このrを満たすような、Pというのがマーケットで取引されている価格なので、Pが決まってからrが決まるというのがマーケットの一応の順番にはなっております。
これでrが決まりますと、10年金利、10年の複利利回りというものが一応定義できるのですけれども、この場合、5年金利、5年後のキャッシュフローに対しても、例えばこれが1.2%だとすると、5年後の金利というのも、ディスカウントファクター、DFtと書いたものが1/(1+1.2%)の5乗、6年後のものは(1+1.2%)の6乗、そういったもので割り引いてプライスを計算していることになるのですが、そうすると、逆に言うと、すべての年限の金利が1.2%だと言っていることに等しいのですけれども、複利利回りというのは実は余り正確な金利ではないということがあります。
債券というのは金利と価格があって、それだけで終わりかと言うのですけれども、厳密に議論し出すと、そういったいろんなことが起こってきます。本当のことを言うと、イールドカーブというのは年限ごとに金利が違うという状況に今ございますので、複利利回りというのは、例えば10年の複利利回りという形で、0年から10年までの金利がすべて1.2%だというような仮定を置いた上でしゃべってしまうことになっていて、余り厳密ではないという状況にはなっております。結局は年限ごとに金利が違うということで、それを横軸、縦軸にとってイールドカーブという概念が実際には起こってくるというのが、例えば最近の金利市場ではこういったカーブになっております。
次ですが、更に計算が出てきて複雑になっていくのですけれども、「スポット金利とフォワード金利」と書きました。例えば、これはよく債券の教科書みたいなものに出てくる話になりますけれども、5年までの金利が実際には、先ほどのように違っていまして、5年までの金利がr5、10年までの金利がr10と違う金利がついている場合には、それぞれの価格はP5、P10、以下の式のように書かれます。そうしますと、5年後から10年後までの5年間の金利というのは、マーケットが効率的であれば、ここの式変形のような形で書かれまして、結局、5年後の5年金利、5年後から10年後までの5年金利というものは、ここのr5→10と書いた式変型でP5÷P10の1/5乗-1で書けるものになっていきます。
例えば、n年後からn+1年後というものも同様に考えますと、Pn÷Pn+1-1という金利で書かれるということになります。なので、例えば10年債と9年債があると、9年後の1年金利というのが出せるという話で、実際にマーケットでトレードされているものは、すべて、今日から何年後というのがいろんな債券がトレードされているのですけれども、それを逆に計算すると、何年後の短期金利というのがすべて計算できるということが、ここでは1対1対応になっているということがわかります。
実際にそれを、先ほどのイールドカーブというマーケットがあるときに計算してみたのが7ページのものになります。JGBの複利利回りというのが実際にマーケットで観測される、マーケットでトレードされているものですけれども、そこからオレンジの、何年後の短期金利、10年後の短期金利、20年後の短期金利が計算できます。実際に計算してみますと、現在は、フォワードの短期金利、遠い将来のフォワードの短期金利というのはおおよそ3%のところで漸近している形になっています。
なぜこういう漸近しているかというと、これは非常に理論的にもシンプルでございまして、例えば20年後の短期金利と30年後の短期金利というのが、どちらかの方がどちらかよりも高いということは普通は考えにくいというか、予想できる以上で、20年後より30年後が金利が高いですよというのは、今の時点で予想するというのは普通はなくて、大体一緒でしょうということが普通ならば予想されるのですけれども、実際そのようなマーケットになっている、それが3%ということになっております。
経済学的な話で言いますと、この金利、漸近していくような最後の金利というのがいわゆる自然利子率みたいなもの、均衡金利水準という呼ばれ方をすることもありますが、いわゆる潜在成長率と長期のインフレ期待、期待インフレ率というものにリスクプレミアムが乗っかったものという言い方がされると思います。現在の日本の潜在成長率が何%なのか、例えば、一説には1%を下回っていて0%台だという話も出てきたりもしますし、インフレ期待というものも、最近はデフレ懸念が大きいという話もあって、日銀が擬似的なというか、中期的な物価安定の理解と言っている1%よりもマーケットでは下に見られていたりもするのですけれども、それを足したものにインフレリスクプレミアムというものが1%程度以上、1.何%乗って、最終的には3%ぐらいというものがマーケットで遠い将来のフォワード短期金利ということで織り込まれているというのが現状でございます。
ちょっとまた違う話ということで、次のページ、デュレーションというものの概念を説明したいと思います。これは何かと申し上げますと、デュレーションというのは、先ほども申したのですけれども、現在から満期までの期間というのが一応英語の意味にはなりますけれども、そうではなくて、債券のマーケットで使われるデュレーションというのはリスク量をあらわすものです。金利が変化したときに価格がどれぐらいの変化率かということで、具体的にはこの式のように、Pをrで微分してPで割ったものということになります。
似たような概念として、DV01というものがあります。デルタとも呼ばれるのですけれども、これは絶対量、変化率ではなくて、価格の変化量というもので単純にPをrで微分したものになります。1bp変化したときの変化量というものを使うことが多いです。
実際に、いわゆるゼロクーポン債というものを考えた場合、この1つ目のデュレーションというものは、まさに満期までの期間と大体一致する概念でして、だからこそデュレーションと呼ばれております。
ただ、実際には、そういう固定利付債とかゼロクーポン債とか以外のものでも、デュレーションというものは定義することは可能であって、その場合には年限とは全然違うものになってきます。まさに後で触れるような年金負債とかいうものは、いろんな年限で年金保険料の支払いというものがあらかじめ負債としてあるという、そういうキャッシュフローを割り引いてみると当然時価というものも計算できますし、同時にデュレーションというものも計算できるというものになってきます。
いわゆるALMというものでマッチさせるべきものというのは、当然、変化率ではなくて、絶対量ですね。金利が何十ベース、何%変化したときに負債の変化量と資産の変化量が絶対額ベースで同じになるようにしないといけないということでございます。
そして、キャリーとフォワード。いろいろ概念が出てくるのですけれども、キャリーというのは、ここで、例えば1年債を0.9%、9年債を1.6%、10年債を1.7%ということを考えた場合に、1年債に投資していて、1年後にそのまま償還します。そうすると、期間収益率は0.9%になります。10年債に投資していると、1年後に、それは9年債になる。先ほども申しましたが、10年債というのはほうっておくとどんどん短くなっていって、1年後には9年債になります。そうすると、もしそのまま金利が動かないのであれば、自動的に金利が10bp下がります。先ほどのように、イールドカーブというものが右肩上がり、順イールドと呼びますけれども、となっていると、放っておくだけでどんどん持っている債券の金利が下がっていきます。この場合は10bp下がって、そうすると、その分の時価変動も出てきますし、クーポンの収入も得られるということで、実際、金利が動かなければ、長い債券に投資すればするほどリターンが高いというのが現状です。それはなぜかといいますと、先ほどのイールドカーブが右肩上がりだからです。
逆に言いますと、長期債で運用すべきだというのに短期債で運用してしまった場合には、擬似的に、機会損失といいますか、1.635%の損になるということです。金利がここで、19.7bpと書いていますが、1.797%まで上昇すると10年債と1年債での期間収益率が同じになるということです。この1.797%というのはフォワード金利と呼びます。先ほどのフォワード金利とは別の計算の仕方をしたのですけれども、実は数学的に計算しますと、この数字と先ほどの数字は全く同じになるということになっております。
いろいろとご説明しましたが、勿論、非常に周知の情報ではあるのですけれども、より債券実務的に密着するような申し方で、普通の教科書等に載っているのと少し違う説明の仕方になっていると思うのですけれども、こういったものがいわゆる債券のマーケットでの数学といいますか、概念になっております。
結論としましては、順イールドである場合には、フォワード金利がスポット金利よりも高くて、フォワード金利以上に金利が上昇しないのであれば、長期債のリターンが短期債のリターンより高いということで、結局、フォワードよりも金利が上がる。先ほど、フォワード短期金利が3%ぐらいだと言いましたけれども、最終的に金利が3%よりも高くなるのか低くなるのか、もし高くなると思わないのであれば、ここから金利がもし少し上がるだけであれば、長いものを買うべきだというのが基本的な債券の投資戦略ということになります。
では、2つ目のテーマに移らせていただきます。こういういわゆる債券投資の話と、実際の年金の財政を考える場合の負債を考慮した場合というときにどう絡んでくるかという話をしたいと思います。まず、ALMといいますか、財政をより負債を考慮して考えるという話をするのであれば、当然、時価ベースで考える必要が出てきます。資産の時価から負債の時価を差し引いた額がどの程度になっているのか、それがより増えていくように運用するということが大事になってきます。実際に、現在の値とともに、例えば金利が1%変化した場合に資産の時価がどれぐらい動くか、負債の時価がどれぐらい動くか、それによって資産と負債の差額というのがどれぐらい変わってしまうのかというのを考えて、それが財政に与える影響というのが大き過ぎないかどうかをチェックする、これが一連のチェック機能になってくるのかと思います。
最終的に、またこれも式で書きますと、次のページの式のところ、資産の時価をr、金利で微分したものと、負債の時価を金利で微分したものの差額が大き過ぎないかどうか、なるべく小さくするということが基本的なスタンスになるべきでございます。
負債の方ですけれども、基本的には、年金給付、これからの支払いというものが、一応向こう100年までシミュレーションしているわけですので、そこまでに延々とキャッシュフローがあるということです。それを適切なマーケットの金利で割り引いたものが時価になります。なので、イメージで言うと、デュレーションというのは非常に長いです。ここで50年と書きました。実際50年かどうかは別として、何十年という年限のデュレーションになっております。負債は100兆円あって、例ですけれども、デュレーションが50年であった場合には、時価ベースで見た負債は、金利が1%変化すると50兆円変動するというシンプルな関係がわかります。
一方、資産の方のデュレーションはということで、14ページに書いているところ、これは資産はいわゆるGPIFで持たれている資産、これをベースにして考えますと、今、国内債券、国内株式、外国債券、外国株式の昨年9月時点のデータをちょっと拝借してきましたが、このような形で持っておるようでございます。基本的には、国内債券の市場運用部分というのは、債券インデックスを使って、パッシブ、アクティブありますけれども、それに沿った運用をしているということなので、デュレーションはおおよそ7年程度だと思います。
国内株式、外国債券、外国株式というものは、原則としてデュレーションゼロです。先ほどのデュレーションの定義のところで述べましたけれども、金利が変わっても時価が変わるものではないものに関しては、基本的にはデュレーションがゼロです。より複雑なモデルを使って、これは一般的にはそうだと思いますが、金利が上がったときに株高、円安になりやすいというヒストリカルな関係をモデルに組み込んで計算すると、こういった試算、実はデュレーションがマイナスという、モデル上そのような形になることもあります。そういったことも含めて考えますと、資産のデュレーションというのは、先ほどの負債のデュレーションに対して非常に小さいと思います。ざっくり計算で言って、金利1%変化すると、今のGPIFの資産というのは、大体6兆円程度変動しますが、負債と比べると極めて小さいということです。
資産と負債の差額を考えないといけないというのが本来の考え方であるという前提に立ちますと、資産の金利リスクというのを増やせば増やすほど、実は全体で見るとリスクを減らしていることになるということになっています。今の状態というのは、負債を全然持ってない人にすると、単純に債券をどんどんすごく空売りしている状態と同じであるということになります。
では、例えば資産の金利リスクを少し増やそうということを考えるのであればということで、手段としましては、15ページに書きました。主に2つ、今のマーケットでは考えられます。超長期の債券、超長期と言うと一般に10年より長いものを指しますけれども、これを購入します。この場合、昔は結構マーケットの規模が小さかったのですけれども、10年超の国債の発行額は、2011年3月時点で約120兆円でして、毎年約20兆円ずつ増えています。例えば4年後を考えると、80兆円程度増えて、200兆ぐらいになるというマーケットでございますので、決してGPIFの規模と比べて、流動性がなくて買えないという理由はないと思います。
あともう一つの手段として、超長期の10年超の金利スワップを受ける。スワップというのは、基本的に債券を買ったのと同じような金利リスクをとるのですけれども、実際には資金を使わないデリバティブ取引になる。金利リスクのみを取引する、先ほどで言うとクーポン部分のみを取引するような、ここに書いたような取引になるのですけれども、これの場合には、実際にお金を必要としないという意味では、リスクだけとるという意味で、いわゆる資金手当てみたいなものを考えなくていいという意味では非常に便利なものでして、実際に、例えば欧州の民間がメインにやっている、公的も含めてかもしれませんけれども、主に民間の年金基金とかではスワップを多用しているというのが現状でございます。
これは便利は便利なのですけれども、実際はやや、書いたようなメリットもありますが、デメリットとして、カウンターパーティリスクや市場流動性、超長期の国債ほどの市場流動性は現状ないというのがありますので、そういった点は、もしやる場合には問題が出てくる可能性はあるとは思っております。
また、金利リスクから少し話をそらしまして、次に、インフレリスクについて1ページ述べたいと思います。16ページです。実際の年金給付というのは、ゼロフロアみたいなものも当然入ったりしますけれども、原則としてインフレに連動するものですので、資産側でもインフレに連動するような資産を持った方が、より資産と負債の時価のぶれというのがなくなってくるということです。すなわち、実質金利に対するデュレーションというものを本当は増やすべきでございます。
例えばインフレと言った場合に、よいインフレと悪いインフレというのが俗に言われますが、経済成長とともにインフレが加速する、そういったのはよいインフレですけれども、例えば原油高であったり、財政懸念によって金利が急騰して、海外から急激に円売りを浴びて円安になってインフレになる、そういったスタグフレーションみたいなものが両方ありますけれども、よくインフレヘッジと言って、株や不動産をと言った場合には、1つ目のよいインフレのヘッジにしかならない。一方でコモディティを買うというのですると、原油高になった場合にはヘッジになるのですけれども、それ以外のインフレだとヘッジにならないということで、結局、負債のインフレリスクをきちんとヘッジするということを考えた場合には、物価連動国債を買う以外には方法はないというのが本質的な、理論的なものになります。
そういった意味で言うと、負債のインフレリスクというのはかなり無視できないところではございますので、実際には、どれぐらい実務に落とし込むかは別ですけれども、物価連動国債というところの投資を考えるというのは極めて重要なオプションになっているというのが現状だと思っております。
「結論」というところの17ページですけれども、先ほども申し上げましたとおり、資産の金利リスクを増やすということで、資産側だけ見ると金利リスクは増えているように見えても、資産と負債の差という、年金財政の全体を考えると、実はリスクを減らしている行為になるということです。今のままですと、昨年度ぐらいから、どちらかというと債券、GPIFの方での運用では債券を売り超になっているのが現状だと思いますけれども、そうやって売っていくのは、資産だけ見るとリスクを減らしているように見えるのですけれども、財政全体を見ると、むしろリスクを増やしている行為になりますので、その減る分ぐらいは、積立金を取り崩さずに短期借り入れ等で手当てするというのも一つの案かと思っております。あるいは、そもそも保有している債券というものの平均デュレーションをより少しでも伸ばしていくというのも、本来であればやるべきことなのかなとは思っております。
例えばベンチマークとする債券インデックスというのをより、10年超のものに限定したようなインデックスを使って、それをベンチマークとして運用するとか、あるいは財投債引き受けの償還分については、それをボンドインデックスの運用に回すのではなくて、その部分について、そのまま、30年債やら40年債やらに投資するというのも一つの案かと思っております。
以上が2つ目の章になります。
3つ目のところは、同様に、負債が長いと世の中で言われているというか、実際にそういう長い保険契約を持っている生命保険会社さんがこの10年間ぐらいどういった運用をしてきたかということを19ページから見ております。
まず、アセット・アロケーションですけれども、ここで、主要生命保険会社、民間の生命保険会社さん11社の一般勘定の資産の合計というものをデータでとってきております。まずアセット・アロケーションを見ますと、国債、地方債、社債等々、いろいろ持っております。その増減というものを見ますと、これは株式を時価でとってきていますので、時価の変動で株が上下動していますけれども、時価の変動を除きますと、株は気持ち売り越しという感じです。あと貸付も減らしております。赤色の部分ですね。あと紺色部分の国債というものを毎年増やしています。ざっくり平均しますと、国債を毎年3兆円ずつぐらい増やしているというのが現状です。
その国債の中ですが、その国債の平均デュレーションといいますか、平均の年限というものを伸ばしているというのが次の20ページになります。年限ごとに国債、満期10年超というものを例えば見ますと、紺色部分でありますが、毎年毎年増えている。増減で見ますと、例えば直近で言うと、毎年5~6兆、そういった単位で10年超の国債の保有を増やしているという状況です。既に持っているすべての国債の7割ぐらいが10年超の国債という形で、先ほどのボンドインデックスとかと比べると極めて平均の年限が長いという形になっております。
更に、21ページ、これは直近の売買のデータからとってきたものですけれども、今年度に関しては、例年にも増して国債の買いが多いというのが現状です。これについては、最近ですと、銀行窓販で、一時払い終身とか、そういった商品が売れているとかいうのがニュースでも出てきますが、そういったものが売れることによって、保険料収入が増加していて、更に例年にも増して超長期の国債を買うという需要が生まれているようでございます。
それと、国債以外の話、22ページ、特に外債の話です。これは同じく11社のデータから外債の保有残高の合計をとってきたものですけれども、例えば2009年度ですと、棒グラフで書きましたが、20兆円ぐらい外債を持っております。そのうちのオレンジの部分の4兆円ぐらいというのは円建ての外債になっています。なので、イメージで言いますと、先ほどの国債と同じように、円金利リスクを持った資産というもので持っております。残りの16兆円程度、紺色の部分が外貨建ての外債ですけれども、ヘッジと書きましたように、16兆円程度外債を持っている中で、紫の部分の約12兆円程度というのが為替のヘッジをしています。例えば10年の米国債を買います。ドル円の為替リスクがありますので、そこを短期の為替フォワードでヘッジするということをしますと、アメリカの長期金利というのは、日本の長期金利よりも、現状低下しつつあるといっても高い状況でございますので、その高い利回りを得ながら為替リスクをとらずに運用するということで、今の円の低金利というのを免れながら運用するということを目指しているような感じです。リスクを最低限に抑えながら、利回りもとりにいくというのが一番典型であらわれているのが、このヘッジをしながら外債に投資するというところなのかなと思っています。現に、今年度更にそういったものの動きは強いようでございます。
更に、そのヘッジ外債というものをもう少し詳しく書いたのが23ページです。いろいろと式を書いておりますけれども、ヘッジ外債に投資することで、円債よりも超過して得られるリターンというのは、ポイントの3点目に書きました。最後の式ですが、海外の長短金利差から日本の長短金利差を引いたものが超過利回りとなります。今の場合、すごくざっくり言ってしまいますと、下のチャートで書きましたが、赤の線というのがヘッジ外債、外債を買って為替フォワードでヘッジするというものをした場合の利回りですけれども、それと普通にJGBの日本国債を買った場合のリターンというのを見ますと、今、赤の方が上側に来ている状態、右側の欧州のドイツの国債でも直近ではそうなっておりますけれども、現在であれば、普通に日本の国債を買うよりも、海外の国債を買って、為替ヘッジ、勿論、時間の変動がありますけれども、利回りベースで言うとより高いリターンを得られるということ。勿論、リスクは出てくるのですけれども、そういったことをして、なるべく少ないリスクで、円債、今の低金利で高いリターンを得るということをやっているのが今の生命保険会社の業界の感じでございます。
それから24ページですけれども、具体名も出てしまっておりますが、ここでお示しした各生命保険会社というのは共通するものがありまして、上場している生命保険会社であったり、あるいは上場を目指していると世の中で報道されているような生命保険会社では、実は先ほどの資産の時価と負債の時価の差額であったり、その差額が金利が変動したときにどれぐらい変動してしまうか、そのデュレーションリスクを開示しています。
これは、金融庁の方で開示する義務はないのですけれども、上場しているところであれば、自ら、自分たちはこういうリスクを持っていますということで開示しているのが現状です。ここの詳しい数字というのは、具体的過ぎるので触れませんけれども、こういったテーブルのような開示がされておりまして、このリスク・センシティビティーと書いたところのリスク・フリー・レート50bp上昇、50bp低下と書いたオレンジの部分ですね。こういったところが資産と負債の時価ベースでの、公正価値ベースでの差額が、金利が上下するとどれぐらい動いてしまうかというものに相当しますが、今でも、今まで触れてきましたように、国債の残高を増やしながら、なおかつ、国債の平均デュレーションというのを伸ばしてきた現状であっても、まだまだ負債よりも資産の方が金利リスクが小さいという状況が続いておるようでございまして、定量的に見ますと、30年金利スワップで、この開示している7社合計で14兆円程度、金利リスクを増やさないと資産と負債が一致しないというのが現状のようでございます。淡々と毎年毎年債券の購入を進めて、このギャップを埋めようというのが現状行われていることだと思われます。開示されてないところも、単純に比例計算しますと、30兆から40兆円程度あるという状況でございます。
それから、業界にまつわる規制、特にソルベンシー規制に関してですが、生命保険会社では、25ページですが、ソルベンシー規制を一応変更するということで、ツーステップに分けて変更するということが現状進んでおります。1つ目の変更というのは、来年度から正式に開始することになっておりますが、これについては、負債の金利リスクというものを意識している制度ではないので、この制度が導入されたから急に資産の金利リスクを増やさないといけないというインセンティブにはならない規制でございます。
そういった規制というのはいつ導入されるかというと、これも導入の方向に話が進んでおりまして、いわゆる経済価値ベースの規制と呼ばれているものですけれども、これはフィールドテストというものが実施されまして、今のペースで進めば、あるいは欧州等の動向を踏まえますと、それができてからまた何年後とかそういう話を考えていくと、大体2015年前後、これは当然何も決まってない話ですけれども、今のペースでいけばそれぐらいにはそういったものができるというふうになってきます。そのころには、今のように、買い続けて負債の金利リスクと資産の金利リスクが離れ過ぎないようにということを各社が意識しながら運用しているというのが現状でございます。
大体以上のような感じでございまして、最後のところは、私がふだんやっているということで書きましたが、余り詳しくは触れるつもりはありませんが、一応私の仕事としましては、これから金利が上がるか下がるかという話を考えていまして、28ページのテーブルで書きましたが、当面、低金利は続くとは思っていますけれども、今年の終わりごろには10年金利が1.55%、今、1.2%ぐらいですけれども、そこから少し上がっていく。ただし、急騰するというわけではなくて、少し上がっていく。20年金利も2.35%というところで上がっていくということを考えております。
1つだけ、先ほどの需給の話とかも絡んでくる話なので、超長期債の流動性に絡んでくる話として、35ページですけれども、国債の発行額というものの現時点でのデータを見たものになります。2010年3月時点での市中で流通している国債の発行額というのは、1年超のもので、このテーブル、最初のところの下に書いてありますが、462.7兆円ございます。1年から5年が201兆、5年から10年が119兆、10年から40年が96兆というものだったのですけれども、今年の3月、次の3月には10年超のものは117.7兆円に増えると。全体も495.9兆円に増えるということで、この増減に書きましたが、全部で33.2兆円、この太字のところですが、増える中で、10年超というのが21.1兆円増えるという感じになっていて、超長期の発行というのは、当然、今の日本の財政を考えれば増えていく方向にありまして、特に借り換えの頻度が上がらないようになるべく長い債券を発行するという財務省の意向もございまして、超長期、10年超のセクターが急速に発行額が増えているという状況でございますので、どちらかというと、流動性の観点から言いますと、非常に投資しやすい環境と言えるとは思っております。
先ほど3点目のところで触れた生命保険会社、あるいはそれに類するといいますか、簡保であったり、全共連であったり、そのような負債がある保険を持っている人たちが買っている量よりも発行ペースの増加というのはどちらかというと速いという感じにはなっていて、ほかの投資家さんが参入してくるのを待っているような環境であるというのは事実は事実でして、恐らくマーケットの注目というのは、公的年金が10年超の債券により積極的に投資するというのがどういったタイミングで起こるのか注目しているのが、現状、今のマーケットでございます。
駆け足、かつ、長くしゃべってしまいましたけれども、私からは以上のような説明でございます。

○山崎部会長
 ありがとうございました。ただいまの説明に関して何か御質問等がありましたらお願いいたします。

○翁委員
 質問させていただきたいのは、金利リスクという概念なのです。金利リスクというのは、バンキングの方でよく使う概念で、そのときは資産と負債のいわばALM上のミスマッチを金利リスクと概念で考えるのですけれども、今、御説明があった中で、資産の金利リスクとか負債の金利リスクという使い方をしていて、厳密にはちょっと意味が違うのではないかなという感じを持つのですが、つまり、資産の金利リスクとおっしゃっているのは、金利に対するセンシティビティが大きくなるように資産を持つということですね。

○福永氏
 はい。

○翁委員
 ですから、ALM上のミスマッチがあって、それで金利が変化したときに全体でどういうリスクが生まれるかというようなことが金利リスクなのではないか、年金財政の方での金利リスクという言葉をお使いになっていますが、それらは、どういうふうな関係なのか。それがまず1つです。
 それからあと2つあって、2つ目は、物価連動債ですけれども、これだけ長期的に見ればニーズがあるにもかかわらず、結局、全然発行してないわけですね。最近。それはやはり、例えばフロアとか、デフレの状況での何かヘッジをつければニーズが出てくるのか。私も、ニーズがあるはずだと、長期的には思うのですけれども、なぜそういう発行に至らないのかと、それは何がポイントになっているとお考えになっているのかということが2点目です。
 それから3点目は、最後のところでお話になろうとされたのかもしれませんが、ソブリンリスクについてです。つまり、平時であれば、財政状況がよければまさに金利リスクのところだけを考えていればいいだろうと思うのですけれども、これだけ債務残高大きくなっていて、格下げもあるかもしれないというようないろいろな状況になってきていて、そういったリスクについて、例えば生保とかそういったところは全く意識していないのかどうなのか、マーケットの長期的な感触はどのような感じなのか。その3つを教えていただきたい。

○福永氏
 まず1点目ですけれども、バンク、銀行の場合でALMと言っているものも、あるいは生保、年金でALMと言う場合にも、本質的には資産の金利リスクと負債の金利リスク、ばらばらに見た場合、なるべくそれを同じにしようという観点では同じだと思います。ただ違うのは、銀行の場合は、負債の金利リスクと言った場合、預金ですよね。定期預金、あるにはありますけれども、流動性預金も最近増えているという中で、資産側の貸し出しと比べると、普通にやると資産の金利リスクの方が大きくなりやすいのが普通です。預金でファンディングしてきて長く貸し出すということで、金利リスクというのが自動的に資産の方でとられているというのが銀行の形態になっているので、ALMと言うと、基本的には資産の金利リスクを落とさないといけない。預金に対して金利リスクを資産で取り過ぎているので、減らさないといけないというのが銀行でALMで起こってくることですけれども、生保であったり、いわゆる年金というものになってくると、負債の方が非常に長い契約になっていることによって、今だと、負債の方にすごく大きい金利リスクがあって、それをギャップを減らすために資産の方でとらないといけないという、そういった意味で、向きが逆になっているということがあります。なので、そういった意味で違いが出てしまうのですけれども、概念としては、資産と負債でマッチングさせようという概念は一緒だと思います。
 2つ目、物価連動債ですけれども、当然、実需という意味で言うと、負債で何かインフレに連動して支払いをしないといけないような人でないと、それにマッチさせて資産で買う必要がないわけですので、例えば普通の保険であれば、インフレになったからといって、固定の保険金、普通の保険金であれば変わらないですので、その場合に、物価連動債を買う必要はないことになります。やはりそういったものに対応するという、先ほどの銀行の預金ではそういったことが起こりませんので、基本的には年金ですね。賃金に連動するかCPIに連動するかあると思いますけれども、そういったものでないと普通は起こらない話ですし、それでなおかつ、最大の年金である公的なところが運用するという判断に至ってない時点で、民間の方が主導してどんどんそういう動きが広まるということには今はなってない。どちらかというと、実際に投資が始まるとすれば、最大の投資家になるだろうGPIFが投資してないというところで、流動性が長期的に確保されるかどうかわからないという中で、積極的な投資にちょっと引いてしまっているというのが現状なのかなあと思います。
 なので、この投資家が、GPIFという投資家がいれば投資に参入してもいいと思っているような人は少なからずいらっしゃるとは思うのですけれども、現状、むしろそこが弊害になっている。確たる投資家がいない。絶対に投資しないといけない投資家はいないというのが一番の問題なのかなあと思っています。勿論、フロアの問題等もあるのですけれども、それよりもそちらの方があるかなあとは思っています。
 それから、最後のソブリンリスクですけれども、例えばCDSマーケット、クレジットデフォルトスワップと呼ばれている、日本国債がデフォルトしたときにすごく儲かるような取引というのは、海外の投資家を中心にすごく行われている。日本人同士で行っても、実際、国債がデフォルトした場合、例えば日本の銀行と日本の生保がそういう取引をした場合でも、両方ともが残っているかどうかわからないので、あまりそういった取引は行われていないのですけれども、海外勢を中心にそういった取引が行われていて、そこで見られているデフォルト確率というのは、かなり高いパーセントに、今、マーケットではなっているというところでございます。
要するに、海外から見た日本の財政というのは、海外の人から見ると、全然だめだと見ているような投資家さんも多いは多いのですけれども、実際それが本格的な金利上昇の問題につながっていないというのは、現状ですと、いわゆる経常黒字であって、海外からのファンディングを必要としない、むしろ外貨をどんどん日本人が得てしまっていて、国内の中で外貨を円にかえて投資しないといけないという形になっているということなので、わかりやすく長期金利の水準という意味で、そういった財政リスクが反映されない状況になっていると考えるべきだと思います。
 経常が赤字になれば、海外の人たちの思っている財政リスクのリスクプレミアムの金利水準でないと国債がファンディングできなくなるということになると思うのですけれども、ただ、それがいつ起こるのかという話になると、これはいろんな計算の仕方が出てくると思いますが、私の見解ですと、いわゆる所得収支ですね。これまでの経常黒字の積み上がりでできた対外債券からの投資収益というところがかなり積み上がってきていますので、簡単には経常赤字にはならないと思っています。本当にイメージになってしまいますけれども、10年後とか、あるいはそれよりも長いところにならないとそういったことは起こらなくて、それまでは長期金利の急騰というのは起こらないのかなとは思ってはいるのですけれども、ただ、それまでに何もしなければ、そのタイミングではそうなってしまうしかないというのが答えかなと思っています。

○山崎部会長
 田中委員。

○田中委員
 3点ほどお伺いしたいと思います。1点目は、今のことに関連してですが、もし公的年金の資産で、そういった国の発行する国債、超長期ものの国債の受け皿になるというようなことがずっと続くのかどうかという問題です。
 いわゆるサステイナブルなものなのかどうかということが、さっきおっしゃったように、海外の投資家には懸念されているということですが、もしそういう循環が生まれればかなりそういった資金循環はうまく進んでいくものなのか、それともどこかにやはり限界があるのかということについての見通しですね。それをお伺いしたいのが、もう一点です。
 それから3点目は、金利スワップのお話をされたのですが、金利スワップの市場、私も余り詳しくは見ていないのですが、金融危機以降、国債のいわゆるイールドカーブと金利スワップのイールドカーブの関係がかなり混乱したという事実があるようですが、特にスワップの担保に関するスプレッドが上乗せされる現象が最近発生していてということと、それから超長期スワップについての市場の流動性をどう考えればいいのか。特にヨーロッパの保険規制のソルベンシー2では、非流動性スプレッドなるものの考え方が導入されているのですが、こういった公的年金債務についてもそういう非流動性スプレッドなるものを考慮すべきなのかどうか、そういった論点について御意見をお聞かせ願いたい。

○福永氏
 まず1つ目の質問で、資金循環的に、GPIFといいますか、年金資産として国の債務を請け負って、それでいいのかという話ですけれども、勿論、最終的に、先ほど言った経常赤字になってしまうようなタイミングになるまでに、国の財政自体がきちんとしたサステイナブルな財政規律シナリオというのを描けていないのであれば、それが大前提であって、そうでなければ何をどうやっても循環的にやってもだめだということになりますので、最終的にそこまでには、そういったことをするということは当然重要だと思いますけれども、それまでの間の、そういった方向に向かうということは決まっているのに、目先の需給として超長期の債券を発行しても買う人がいないという事態に陥るぐらいであれば、本当は最終的には財政が健全化に向かうというのが出ているのであれば、それまでの間の発行について、例えばGPIFで買っていて、それで需給が保たれているということになっても、それは全員がハッピーなことでございますので、それはそれでいいのかなという認識ではございます。
 2つ目の超長期金利スワップですけれども、確かにリーマンショック前後から、具体的に言いますと10年超のセクターでは、国債の金利の方がスワップの金利よりも高い状態であったり、あるいはそもそも、ある期間をとると、国債金利が何十ベースも上がりながらスワップの金利が何十ベースも下がるとか、真逆の動きをしたりとか、連動性も完全になくなってしまったりということが結構ございました。
そのときに、マーケットの横にいて感じたことは、恐らくスワップマーケットの方での流動性が極めて低下していた。一日に取引が数回しかないとか、それも何億とか、そのような状況でしかなくて、マーケットでついているレート、トレードされているレートといっても、そのレートで何千億、何兆という単位での取引は全くできないような状況であったということがございました。現状ですとそれはかなり回復はしてきているのですけれども、例えば、本当にGPIFくらいの規模の、100兆円ぐらいあるような規模のものに対して、何兆、何十兆という単位でスワップを超長期セクターでやるということになると、恐らく、その反対側をやる、スワップを払うという人たちが具体的にマーケットでイメージされない限り、マーケットの逆側をできないということになります。
1つやるとすれば、財務省が将来の金利上昇リスクを、彼らとしては嫌だと思うので、そこを払うと。財務省が払ってGPIFが受けるということで、そこはいわゆるデリバティブの資金を使わずに、金利リスクだけこちらからこちらに移動させるということは全く不可能ではないですし、むしろスワップを本格的に使って公的年金がやっていくには、それ以外しかないのかなというイメージはあります。
 流動性といった場合に、今日取引しますと言ったときの流動性もあるのですけれども、アウトライトで、残高自体が、永遠に受けばかり、片方ばかりやり続けて、カウンターパーティ同士でのリスクが積み上がってしまう状態というのは、それは別のリミットがありまして、例えば1日100億は買えます、スワップは受けられますという流動性があっても、それを毎日100億ずつ同じ証券会社と相対でやり続けて、1,000億まで積み上がりましたといった場合には、毎日100億、他のお客さんとはできるけれども、その人とはもう1,000億以上はできない、そういった別のリミットもございまして、それも含めて、本当に本格的に金利スワップを使うということになると、カウンターパーティとして財務省というものを想定に入れなければ基本的には無理かなと思っています。
 先ほどの流動性スプレッドのようなもの、概念的には微妙にはなってくるのですけれども、それを入れる入れないという話に関しても、特に国債を、スワップを使えないということになると、30年、40年辺りのものというのは事実上国債を買うぐらいしか金利リスクを増やす手段というのは限られてくるのですけれども、そうした場合に、スワップ金利で負債を評価するということをすると、先ほどのような国債とスワップの金利が全然違う動きをするようなときには、ALMということを考えたつもりだったのに、実際の負債と資産の時価は全然逆に動いてしまうということが起こり得るということになるので、ユーロ圏のソルベンシー2というものをそのまま導入して同じように考えるということは実務上の問題としては出てくる。特に割引率を考えた場合に、そういったスワップ金利を使うとか、あるいは非流動性スプレッドを入れるとか、そういったところを機械的にやってしまうというのはあまりよろしくないのかなというのはあると思います。

○佐々木委員
 見通しの点でお聞きしたいのですが、投資家ということでどのように動かれているかというのは今お聞きしたのですが、源泉は個人の資金が多いわけです。個人の資金が、よく言われるのは、高齢層で、貯蓄から消費へどんどんシフトして、今の貯蓄がどんどん少なくなって、当然需給が悪くなるということが一つの懸念として言われていると思うのです。それと、これは税制の改革とか社会保障の改革とも絡むと思うのですが、やはり日本の国債に対する投資の懸念で、特に新興国を含めて外国証券の投資が増えているというのは新聞でも言われているのですが、やはり需給の問題と絡んでくるのではないのかなと思うのですね。
それともう一つは、特に新興国中心に人口が増えて、エネルギーとか資源、そういった価格が当然これから上昇してくるのではないかということで、特にオイルなんかも、今100ドル近くて、これから200ドルに近く上がると言われているわけです。そういった中で、この超長期の、今、日本ですと2%ぐらいの価格が本当に当面維持できるのかどうか、その辺りの懸念が非常に大きいのではないのかなと思っておりますけれども、その辺りをコメントいただければと思います。

○福永氏
 まず1つ目の点で、いわゆる経済学で言うと貯蓄率みたいな話になると思いますが、高齢者になってくると、当然、年金をもらいながらも貯蓄を取り崩して生活していくという人たちの割合が増えていけば、人口動態的に預金というのは減っていく方向でしかないと。それはひいては国債の受け皿となるというか、預金を通して銀行は国債を買うにしても、そういった国債の需給に悪影響があるのではないかということは当然考えられるシナリオではございますけれども、一方で、特にそういった直近の資金循環的な考えで言いますと、預金の増え方というのは、どちらかというと、法人の預金の方が結構増えているという傾向が強いです。
特に限界的なという増え方で言うと、法人預金の上下動の方が結構影響としては大きくて、いわゆる貸し出しが伸びないというか、資金需要がないということ。あるいは、設備投資をするにしても内部留保のみでやってしまって、結局、利益がどんどん出れば出るほど預金は積み上がっていくような方向にある、そういったところが今のところはあるということであるので、個人の人口動態で少しずつ、確かにそういう影響はありながらも、今のところはそれは十分に相殺されているというのが現状ではございます。
 それから、日本の個人の資産が海外の証券投資、あるいは投信等を通して、そういったところから海外の投信に向かうということですけれども、これ自体は、前の景気循環で景気が持ち上がっていた2004、2005、2006、2007年ぐらいまでも結構ありました。それは国債にとって悪影響がなかったかというと、少しは金利上昇要因にはなったと思います。ただ、それも全体のいろんな相場の変動にもみ消されるぐらいのものでありましたし、当時は先進国の債券に投資するようなものが非常に売れていたというのは、そのときはそのときでそういうニュースが頻繁に出ていたと思いますけれども、最近は新興国のものに投資するというところで出てきています。当然、リーマンショックがあったときなどには、そういう外に出ていくお金が相対的には少なかったですけれども、また景気の循環でそういうものが出てくるのですけれども、それは前の景気循環と比べて極端に多いかと言われると、そうではないかとは思っております。
 むしろエマージングを使うということで、以前だと、欧米の債券に投資する場合と比べて、単位当たりのリスク量が相対的に大きいので、自分の資産の何割という向け方がやや少ないといって、結局円に残りやすくなるという見方もできるのではないかなあとは個人的には考えております。
 最後に、エネルギー価格、あるいは商品価格というところの影響ですけれども、そういった形で、コストプッシュインフレと呼ばれるようなものでインフレが起こった場合に、それが本当に構造的に長続きするものなのかどうかということと、それと、それだけをもって、例えば中央銀行、日銀がインフレを警戒してどんどん金利を引き上げていって、金融引き締めに向かうのかどうかというと、これも、世界、人類は進化していくものであるということであると、例えば人口が増えて食料危機になるのであれば、もっと生産性の高い食品をつくったり、より耕地を増やしたりということで、その年、来年、再来年くらいは食料難になっても、何十年後かには食料の自給がとんでもなくおかしくなってしまうということはないだろうという話であったり、原油に関しても、プライスが上がってくればくるほど高コストでしか採掘できない原油というのが採掘されるということで、長期的に構造的に上がり続けることはないだろうというのがいわゆるマーケットでの考え方になっていると思います。
 プラスアルファとして、中央銀行がそれだけをもって、現にインフレが起こってしまったからといって、そこでどんどん金利を引き上げて金融を引き締めるかというと、それをしてしまって、景気を壊したからといって、それが本当に新興国主導で国際商品価格が上がっているのであれば、それによってインフレを抑えることが相対的にあまりできないということになるので、そこは100%それを考慮して、淡々と利上げするというふうにはならないのではないか。そうすると、結局は長期金利というのもそんなに上がらないのではないかという見方ができるのではないかとは考えております。

○山崎部会長
 野上委員、お願いします。

○野上委員
 デュレーションのところについてお聞きしようと思います。13ページ、「年金負債について」ということで、この部会のメインのところでございますが、例えば年金負債の時価というところで、給付を割り引いたものが時価という、これはちょっと違うような気がいたします。普通、負債といいますと、価値といいますか、将来給付と将来収入の現価それぞれを差し引くというのが時価でございますので、将来入ってくる年金保険料等々もここの計算に入ってくるべきだと思います。
 その次の行ですが、物価経済スライドで考慮して、「ほぼ固定されたキャッシュフロー」と書かれておりますが、ここは若干違うのではないか。物価スライドと言いますといろんなファクターがございますが、1つは物価連動部分というのがございまして、それはむしろ、金利の言葉で言うとフローティングに近いものでございますので、むしろデュレーションを短くするのではないか。一方で、マクロ経済スライドの中で、構造的なファクターでデモグラフィックな部分というのがございますが、そこは確かにデュレーションを長くするファクターだということで、単純にキャッシュフローが固定されているという書き方というのはちょっとどうかなという気はいたします。ですから、50年というかなり長い例示をされておりますが、これは若干違うのではないかなという気はいたします。
 それと、次のページでございますが、確かに、今、資産、負債というのがございまして、ただ、積立金は、実際の負債に応じたような資産というのは、今、年金財政の中で持っておりませんので、単純にデュレーションだけ比べて金利リスクあるなしという議論はちょっと大ざっぱ過ぎるのではないかなという気はいたします。
ただ、現在、短過ぎるという認識は多分正しいと思うのですが、年金財政として見るというときに、リスクを減らすというときにどちらの方向でのリスクなのか。金利が上がったときのリスクなのか。あるいは下がったときのリスクなのか。実は試算を短くするというときは、金利が更に下がるとリスクが減るという方向になりますので、そういう意味では、ここの言い方も若干単純化過ぎるのではないか。
 以上、2点でございます。

○福永氏
 まず、1つずつということになっていきますと、13ページのところからですけれども、給付と将来の入ってくるものを合わせて考えるということは、当然、その方がわかりやすいとは思います。そうすると、基本的にはデュレーションはもっと伸びることにはなります。一番シンプルに考えると、積立金の見通しというところで、17ページに抜粋して持ってきてしまった資料がありますけれども、この前年比というものが、運用利回り入ってきますけれども、そこを除いてくると、名目ベースで書いてプラスマイナス出てくるものが基本的にはキャッシュフローとして出てくるということになりますので、それをとってくると、むしろ最初の方は資金が入ってきて、その後、資金が出ていくということになるので、デュレーションという意味だと、手前のショートが増えるので、より長くなってしまうことにはなると思います。
 マクロ経済スライドの細かい話ということは、私もそんなに、少なくとも私の方が知っているということはあまりないとは思うのですけれども、ここで固定されたと書いたのは、確かに言い方があまりよろしくはないのですけれども、金利の変動に対してキャッシュフローが変わらないという意味での固定されているという意味にはなってきます。
 例えば金利が上がったときにインフレが上がりやすいというか、金利が上がったときに経済成長が伸びやすいとか、そういった相関をモデルに入れて、ここまで考慮したモデルをつくっていろいろ計算するといったところまでやるのであれば、それはそれでそうだということになるのですけれども、でも、それはそのモデルを信じた上での運用ということになってしまうので、例えば金利が上がったのにインフレが下がってしまったとか、金利が下がったのにインフレが上がってしまったとか、そのような、そのモデルで考慮しなかったシナリオが起こったときにはきちんとALMできなかったということになってしまいますので、やはり本質的には金利が変動しても影響されないキャッシュフローがある時点で、そこは本来であればヘッジしなければいけないというイメージなのかなと思っています。
 この50年というのは、きちんとした計算をせずに書いていて、例として書いているものですので、実際にこれから計算されるようになるのかどうかわかりませんが、した場合には、全然違ってもおかしくないとは考えております。
 それと資産側の話になるのですけれども、14ページですね。ここでとってきているもので言いますと、あくまでこれから入ってくるものに関しての、これからの年金保険料としてもらうものに関してのものというのは、先ほどのように、負債側に入れてしまうのであれば、資産側は本当にこれだけを考えることになるのかと思いますので、この計算になるのかなと思います。
先ほど1章で触れましたように、デュレーションというのは変化率であって、DV01というのが変化量であるというような話をしましたが、それも債券マーケットでやっている人も結構混同して言葉を使ってしまうことが多いのですけれども、平均デュレーションというものを考えてギャップがあると述べるのか、あるいは金利リスクの絶対量というか、本当に1%金利が変化したときに、資産を時価ベースというか、フェアバリューベースで考えてどれぐらい変動するか、負債はどれぐらい変動するか、それぞれ考えて、その差額を絶対額ベースで引き算して考えるということをした場合には、その場合に相当する資産側の変動というのは6兆円である。それを増やせば増やすほど負債の方での変動に近づくという意味でのリスクを減らすこととなるという、最後の下線を引っ張った行につながるという考え方で書いております。

○野上委員
 実際の計算というのは、私どももやったこともない話で想像の域を出ないのですが、金利が変動することによって、確かに物価とか賃金上昇とか、あるいはいろんなファクターがどう変わるかというのはありますが、公的年金であるときはその辺りまで入れないと、恐らく、実際問題としてはやったことにはならないのではないかなと。これは私の意見でございます。
 ただ、積立金自体が、現在、負債に比べてかなり少ないですので、ただ、そこの少ない資産の中で合わせようという動きをするときには、やはりそういう細かい計算も置いておいて、もう少し長くしたらいいではないかと、そういう大雑把な議論も成り立ち得るのではないかなという気はしております。

○山崎部会長
 他にありますか。よろしいですか。
 それでは、以上で福永顕人氏からのヒアリングは終了いたします。本日はお忙しい中どうもありがとうございました。
 次に、年金数理部会における財政検証について、審議いたします。事務局より資料の説明をお願いいたします。

○石原首席年金数理官
 では、私の方から、資料2-1と2-2について御説明申し上げます。
 資料2-1でございますが、今回、各公的年金制度の財政検証とか財政再計算につきましてヒアリングを行っていただきました。その結果につきまして、基礎的な数字や財政指標に関して制度間比較や前回との比較について整理いたしましたので、若干ご覧いただいて御議論願えればということでございます。2-1の資料が制度間比較、それから2-2の資料が16年財政再計算との比較でございます。
まず、2-1の資料からでございます。資料の構成ですが、被保険者数についての制度間比較、それから次のページが標準報酬月額、受給者数、それから年金総額等の財政指標という構成にしてございます。
 まず、1ページ目の被保険者数のところからご覧いただきたいと思います。表の構成ですが、表足が年度で、表頭が各制度という形で、制度については国民年金の1号被保険者、厚生年金、国共+地共済。国共+地共済は、国共と地共についてそれぞれ公表されているところについては分けて記載してございます。それから私学共済、国民年金の3号という順に並べてございます。
 被保険者数ですが、2010年から2105年まで並べておりまして、それぞれどの制度でもおおむね減少傾向、人口の減少に伴いまして減少しているということがご覧いただけるかと思います。
 数字自体わかりにくいので、下の方にグラフを用意させていただいております。グラフで見ていただきますと、上の方の赤い線の走っておりますのは厚生年金でございます。厚生年金の方を見ていただきますと、当初、数年間は若干微増したり横ばいの数字が続きますが、いずれにしても、将来的に見ますと、2010年からは4割以下の数字という形で減少していくことが見て取れます。
それから、一番下になっております緑の線が私学共済でございます。私学共済の場合ですと、学齢人口に比例して被保険者数を見込んでおりますので、そこの出生率の低下の影響が出ておりまして、やはり将来的にもかなり低くなっているということがわかるかと思います。
 2ページ目へいっていただきたいと思います。標準報酬総額でございます。ここは、各制度とも賃金が将来推計では伸びておりますので、被保険者は減っておりますが、とりあえず賃金の増等を反映して増えているということでございます。
それから3ページ目へいっていただきまして、受給者数でございます。受給者数の表ですが、上のところに年金種別の合計の数字、それから2段目が老齢相当と通老相当、3段目が障害と遺族という形で並べてございます。
合計は、ちょっと性格が見にくいので、2段目の老齢・退年相当というところでご覧いただきたいと思いますが、厚生年金ですと、2010年の1,330万人から、2045年までになりますと1,730万人まで老齢年金の受給者が増えております。それ以後は、少子化の影響等ございまして減少して、2105年には910万人まで減るという形になってございます。
 国共済+地共済ですが、これは2010年から2015年まで若干増えまして、274万3,000人まで増えたところで、厚生年金よりもそこでピークが早く来まして、2015年、ピークになって、あとは減少していくという形になってございます。
 私学共済ですが、2010年度、10万2,000人ですが、それが2050年まで増えます。16万6,000人というところまで増えて、そこをピークにして減少するということで、厚生年金よりピークが若干遅くなっているということでございます。
それから基礎年金ですが、これは厚生年金同様に、ピークで申し上げますと、2040年とか45年のところに3,700万人という形でピークになるという形の動きになってございます。
 通老相当ですが、通老相当は各制度でちょっとばらつきがございますが、国共済+地共済ですと、私学共済もそうですが、現時点よりもかなり増えるという形の見通しという形になってございます。
 それから次の4ページが年金総額。表の構成は同じようにしてございますが、年金総額は、これも賃金スライド等の影響がございまして、全体的には増えているということでございますが、性格がわかりにくいということもございますので、右の5ページ目、種別別構成比でご覧いただきたいと思います。年金種別別の構成比でご覧いただきますと、2010年、厚生年金ですが、老齢・退年相当の割合が69.2%でございます。それが2030年には64.5%ということで、若干減ります。それがまた、そこをボトムにして、2105年には68.2%まで回復するという形になってございますが、その右を見ていただきますと、通老相当の方は、2010年9.0%が、2055年には15.5%に増えて、また落ちていくということで、老齢と逆の動きでございまして、通老等が増えることで老齢が減る。でも、通老が若干将来的には落ちていくことで、老齢の割合も増えていくという形の動きになっているということでご覧いただけるかと思います。
 国共済+地共済ですと、その話が若干逆といいますか、通老相当はずっと増えておりまして、通老相当でご覧いただきますと、2010年に1.8%ですが、2105年には14.7%までずっと増え続ける。その分、老齢相当ですが、76.1%から66.1%まで減るという形の動きになっているということでございます。
 私学共済につきましても、61.5%から若干老齢相当の割合が増えまして、また、通老相当が増えることに伴って、52.6%まで老齢相当の割合が減るという状況でございます。
 基礎年金につきましては、老齢相当の割合は、通老相当がないものですから、他に比べて、成熟化がここだけ、老齢相当だけ進みますので、91.7から93.5まで増えているという状態でございます。
それから6ページへいっていただきたいと思います。6ページからが財政指標でございます。年金扶養比率でございますが、厚生年金が2010年には2.59という数字でございますが、少子高齢化の影響がございまして、それで、2.59人で1人の受給者を支えるという状態から、2075年には1.16人で1人を支える状態になる。それが2105年には若干回復して、1.2人で1人という状態になってございます。
国共済+地共済で見ましても、2010年、1.55ですが、2075年にボトムの0.93、1人で1人以上の重い状態になりますが、0.93まで下がって、2105年には1.0に上がってくる。同様の動きになってございます。
私学共済ですと、4.59から、2060年にボトムになりますが、1.38、それが2105年には1.60まで上がるという動きでございます。
基礎年金で見ますと、人口ですので動きが少しわかりやすいのでございますが、基礎年金で少し見ていただきますと、2010年に2.4になっています。基礎年金ですと、2.4人で1人を支える状態ですが、2015年には2.0。ここがかなり下がっております。団塊の世代が65歳に到達するのが2010年から15年で到達しますが、その影響が出ておりまして、第1次ベビーブームの影響で2.4から2.0と急にここの5年間でかなり落ちております。それから、2.0からまた落ちて、ずっと落ちていくわけですが、第2次ベビーブームの影響というのが2035年ぐらいから始まりまして、1.5から、ここは20年間ぐらい続きまして、第2次ベビーブームの影響で、2050年に1.1まで落ちるという状態になってございます。それからボトムですが、2065年には1人で1人を支える状態というのが基礎年金でございます。最後には1.1ということで、若干上がってございます。
下の段の総合費用率をご覧いただきますと、厚生年金は、2010年、18.8%という形でございます。それが支給開始年齢の引き上げですとかマクロ経済スライドの実施等によりまして、18.8が若干ずつ下がってございまして、2030年には17.2まで減少するという形になります。それ以後はやはり年金扶養比率の低下等の影響がございまして、次第に上がっていくという形になりまして、2075年には25.6まで上がる。それ以後また若干下がるという状態になってございます。
2105年には24.2%でございますが、24.2%の保険料があれば、運用収入がなくても収支が賄えるという状態ですが、2105年の24.2%は、最終保険料で見ますと18.3%ですから、最終保険料率に比べて5.9%高い状態という状況になってございます。
国共済+地共済で申し上げますと、2010年に18.9という数字ですが、それが厚生年金ですと、2030までで下がりますが、国共+地共済ですと、成熟化が進んでいる影響等ございまして、これがあまり下がらないで、横ばいの数字になっております。2030年でも21.4という数字で、横ばいが続いておりますが、それ以後は、厚生年金同様に急速に上がってまいりまして、2075年では29.6%まで上がる。若干2105年では落ちますが、28.6ということで、最終保険料の19.8と比べますと8.8%上回る水準という状態でございます。
私学共済ですが、2010年には13.4%で、他制度よりかなり低い状態であるわけですが、これは厚生年金ですと総合費用率下がっているのですが、やはり成熟化の程度がかなりきついものですから、その影響を受けまして、2030年ですと16.9%まで上がるという状態でございます。それ以後は、成熟化に加えて、他制度と同様に少子高齢化の影響を受けますので、2065年には32.8%。ただ、厚生年金や国共+地共済よりも高い総合費用率になってございます。それが2065年以降はさすがに下がってまいりまして、2105年には28.3ということで、最終保険料の19.4%に比べますと、やはり国共+地共と同様に8.9%程度上回る状態という状況でございます。
独自給付費用につきましては、総合扶養率と同様ですので省略させていただきます。
それから、下の保険料比率ですが、保険料比率と申しますのは、保険料が支払うべき支出に対して何%になっているかということで、そういった意味では、総合費用率と逆の動きになっているという形のものでございます。
厚生年金ですと、現在の支払うべき費用のうちの保険料が、2010年で84.6%ですが、これが総合費用率の方が若干低下してまいりますので、そういった意味では、2030年で見ますと、106.5ということで、保険料だけで、運用収入がなくても支出を賄える状態になっているということが示されております。
2035年ではさすがにそこは100を切って、保険料、運用収入が必要な状態になるわけですが、ずっと保険料比率低下しまして、2075年には71.4ということで、ここでボトムになります。2105年では若干上がって75.8%ですが、いずれにしても、25%ほど、運用収入または積立金取り崩しが必要な状態ということでございます。
国共+地共ですと、厚生年金はかなり、84.6から106まで上がっているのですが、2010年、国共+地共ですと80.8という数字でございます。それが2025年に92.0ということで、92.0まで上がってからやはり減少していくという形になります。厚生年金ですと、2025年程度では100を超えますので、保険料だけで賄える状態ですが、国共+地共ですと100を超えませんので、いずれにしても、運用収入なり積立金取り崩しがなければ、どの年次でもやっていけない状態という形になっているということで、若干その違いが出ていることがご覧いただけると思います。2025年が92.0ですが、2075年には66.5ということで、ここでボトムになりまして、2105年は68.8ということで、3割以上が積立金からの寄与で埋めなければいけない状態という状況になってございます。
私学共済ですと、保険料比率は、厚生年金同様に、2020年から100を超えます。2030年に114.4ということになりますが、2040年からは86.9ということで、やはりここから保険料だけでは賄えない状態になりまして、2065年に58.8でボトムになって、最終的には68.2という形になってございます。
国民年金ですが、国民年金は103.6ということで、当初から黒字を想定してございます。黒字というか、積立金がなくても運営できる状態になってございまして、それが2030年には107.1まで上がります。107.1まで上がってまいりますが、先ほど申し上げました第2次ベビーブームの影響等ございまして、2040年辺りから急激に落ちまして、2070年に73.8というボトムになって、78.9まで若干上がるという状態でございます。
それから収支比率が最後の8ページでございます。収支比率は、保険料に運用収入を加えて支出がどれぐらいなっているかという比率でございますが、そういった意味では、保険料比率と逆の動きになるということでございます。2010年ですと、厚生年金で107.2ということで、赤字の状態ですが、保険料比率が、2015年には93.9ですが、2015年には収支比率は94.3ということで、運用収入があるものですから、ここで黒字転換になります。2030年には、マクロ経済スライドの影響等で、総合費用率が減るということを申し上げましたが、その影響もございまして、収支は改善して、2030年には75.1という数字が出てございます。そこがボトムになりまして、以後はずっと上がっていきまして、2105年には124.4ということで、支出が収入の25%ぐらい足りないというぐらいの数字になってございます。
それから国共+地共済ですが、2010年では103.1と、これも赤字ですが、厚生年金同様、2015年には黒字転換しておりまして、2030年には80.2まで改善するという状況でございます。ただ、2065年以後は赤字になりまして、136.3まで到達してございます。
私学共済につきましては、当初から91.4ということで黒字ですが、それが2030年には61.1までよくなりまして、急速に悪化しておりまして、厚生年金より早く、2060年には赤字という状態になっています。
国民年金ですが、当初、89.4ということで黒字になってございますが、2030年には75.5まで下がって、あとは2070年以降は赤字という状態でございます。
積立比率が最後でございまして、積立比率につきましては、2010年が、厚生年金で4.9ですが、2040年にピークで7.5年分まで増える。収支の改善に伴って増えております。国共+地共ですと、ピークが2050年、私学ですと、ピークがもうちょっと早くて12.8ということで、2035年にピークということでございます。国民年金でも、現在、4.6から、2040年、7.6まで改善するという状態が示されてございます。
以上が制度間の比較でございます。
次に、資料2-2にいっていただきたいと思います。2-2が前回の再計算との比較でございます。まず、構成ですが、国民年金、厚生年金、国共+地共と私学という順序でございまして、国民年金の場合ですと、老齢年金の受給者数、拠出金算定対象者数、1号被保険者数という順番で、基礎的な資料と、あとは、その裏のページが財政指標という形の構成にしてございます。
全体の老齢基礎年金の受給者数についてですが、表としましては、16年再計算の数字と21年財政検証の数字を比較して、その割合をとってございます。割合を中心にご覧いただきたいと思いますが、2010年におきましては、16年再計算に比べて被保険者数が1.1%ぐらい多い状態という形になってございます。老齢年金受給者数ですね。基本的には、人口推計もそうですが、寿命の伸びを前回よりも多目に見込んでおりますので、その影響で、老齢年金の基礎年金の受給者数なんかも前回よりも増えているという形になってございます。2065年には7%、前回よりも増えているという形になります。そこまでいきますが、2085年以降になりますと、今度は少子化の影響が出てきまして、少子化で被保険者数が減るので、2075年、2080年とか2090年になりますと、その影響でかえって受給者数が減ってしまうということが示されております。2100年で比べますと、老齢基礎年金の受給者数は、7.5%、前回よりも少ないという状態になってございます。
拠出金の算定対象者数ですが、拠出金算定対象者数は、2010年から2020年ぐらいですと、厚生年金の被保険者が増えている影響などございまして、若干、16年再計算より増加してございます。
ただ、以後、すぐに少子化の影響がやはり出てきますので、前回より出生率の仮定を厳しく見ておりますので、そういった意味で、かなり少子化が進むという前提で計算されているということで、ずっとマイナスが立っておりまして、2100年では29.3%、前回より少ないという状態でございます。
1号被保険者につきましても、これは厚生年金が増えている関係で、2010年から6%弱少ないわけですが、2100年では4割弱、39.5%、前回より少ないという状態でございます。
次のページへいっていただきまして、年金扶養比率でございます。年金扶養比率は、2010年ではほぼ同じ程度でございますが、2065年くらいになりますと、以降は0.3ポイントぐらい低下しているということで、1.0ということで、1人が1人を支える状態になってきてしまっているということがご覧いただけると思います。
保険料比率ですが、保険料比率につきましては、16年再計算から21年再計算にかけて、2010年で6.4%悪化しております。それが2015年には13.3%まで悪化の幅が広がっております。これはマクロ経済スライドの関係がございまして、マクロ経済スライドが、21年再検証では、2012年から引くということになっておりますが、16年財政再計算では、勿論、2010年からずっと効いておりますので、その辺りの差がございまして、マクロ経済スライドが12年からしか効かないということで、財政が若干悪化するということが見て取れるかと思います。その影響で、6.4から11.3まで、前回より悪化幅が広がっているということでございます。
それが、同じような数字になりますが、今度は逆に2023年度以降ですが、2023年度以降は、前回は2023年度までがマクロ経済スライドの期間ですが、今回の財政検証では、2038年度までマクロ経済スライドを実施するということになっております。ですから、2038年までマクロ経済スライドを実施する影響で、そこが、11.3、前回より悪化していたわけですが、急速にその幅が縮まってまいりまして、2040年では3.4%、前回よりよくなっているという状態になります。それがやはり年金扶養比率が悪化しているということも影響してきますので、マクロ経済の効果がなくなりますと、以後は悪化が続きまして、最後ですと、2100年では9.2%悪化しているという状態でございます。
保険料比率と逆の動きになりますのは収支比率でして、2010年では9%、これも悪化しておりますが、数字が逆という意味ですが、それが10%まで同じように悪化して、急速に悪化幅がやはり縮まってまいりまして、マクロ経済スライドが終わる2040年のところでは6.2%、若干金利が上がっているということもございまして、その影響で、2050年まで6.2から8.1まで改善するということがございます。そういったことで、8.1まで、2050年、改善しますが、以後は改善幅が減ってまいりまして、2100年には5.1%悪化という状態でございます。
積立比率ですが、積立比率は、収支が当初悪化するものですから、2025年で1.7年分ぐらい悪化してございますが、2035年から収支が改善しますので、そんな影響もございまして、2080年では0.9年分、前回よりよくなっているという状態でございます。
厚生年金でございますが、厚生年金ですと、被保険者が現時点で9%ぐらい増えてございます。それが、前回よりも9%増えているのが、2020年では12%超えるという形になってございます。ただ、以後は少子化の影響がございまして、2100年では、前回再計算より18.1%の減、被扶養配偶者数は最初から減でございまして、将来、2100年では36.3%の減、老齢年金受給者数は、寿命の伸びで2070年では28.6%上がっておりますが、やはり少子化の影響がそこから出てきて、将来、2100年で13.6%の増にとどまっているという状態でございます。
年金扶養比率では、被保険者の伸びを反映して、当初は前回より高いのですが、2100年では0.46、それから総合費用率ですが、マクロ経済スライドの率、時期の違い等を反映しまして、若干前回よりもよくなっております。2035年では1.0%、前回よりよくなる状態ですが、少子高齢化が進んでいますので、55年以降は悪化しておりまして、2100年で4%悪化する。
独自給付費用率も同じような動きでございます。
保険料比率は、総合費用率と逆の動きをしていまして、2035年では5.2%、これは保険料比率改善しておりますが、2055年以降は前回より悪化する。
収支比率は、金利を上げている関係で、保険料比率よりも改善のマイナスになっているところが長いですが、2075年以降はやはり前回より悪化しているという形でございます。
積立比率は、途中での収支の改善を受けまして、2060年に2.2年分ぐらい前回より増えている状態でございます。
それから4ページへいっていただきまして、国共+地共でございます。国共+地共ですが、被保険者数は、当初は若干、0.6%減少しています。減少は減少しておるわけですが、減少率の仮定が前回より若干緩いということで、2025年には3.3%、前回より増えてございます。ただ、少子化の影響等がやはり出てきますので、将来、2100年では21.9%の減。被扶養配偶者は、2100年で35.6%の減。老齢年金の受給者数は、寿命の伸びで、2065年では3%ぐらい増えていますが、やはり2100年では5.8%、前回より、老齢年金の受給者ですら減っているという状態でございます。
年金扶養比率は、2010年では同様な状態ですが、被保険者が増えている影響もございまして、若干、2025年辺りでは改善しています。ただ、少子高齢化の影響があって、2100年では0.21下がるという形になってございます。
総合費用率は、2010年で0.8%くらい悪化しておりますが、若干、2015年ではその悪化幅が増えております。これはマクロ経済スライドの関係ですが、それが2025年ではプラス、若干悪化幅が25ぐらいから減ってまいりまして、2035年度には前回より改善するという状態になっています。厚生年金ですとかなり改善しておりましたが、国共+地共ですと、前回より改善しているのは2035年のところだけという形でございます。それが2100年では5.5%悪化している。独自給付費用率も同じような状況です。
保険料比率ですが、保険料比率は総合費用率と逆の動きで、8割ということで、2010年で3.7%悪化しておりますが、ここの場合、ちょっと目立ちますのが、前回の保険料、2010年に18.8%で打ち止めにしておったのですが、今回、2023年に19.8%ということで、保険料を2025年以降、上げております。その関係が出ておりまして、若干、2025年や2030年辺りの数字が、3.4ということで大きくなっているということが目立ちます。いずれにしても、2035年で4.8%、保険料比率は改善しておりますが、2055年以降は悪化していて、11.6%、最後は悪化している。
収支比率は、金利の影響が、金利が上がっているものですから、途中、改善しておりますが、2085年以降は赤字になっているという状態でございます。
積立比率で申し上げますと、途中での収支の改善を受けまして、2080年度に2年分ぐらい増えている。
私学共済に移らせていただきます。5ページですが、私学共済ですと、被保険者数が、現状は、前回の再計算が、学齢人口に比例して被保険者が減るという前提ですが、現実には増えておりますので、その差で、11.9%、2010年時点では増えています。それが、少子高齢化の影響がございまして、2100年では38.8%の減になる。被扶養配偶者数は、将来的には42.4%まで下がって、老齢年金は、寿命の増加で、途中、21.5%ぐらい増えるときもありますが、最終的にはやはり前回より減ってございます。
年金扶養比率ですが、当初はやはり被保険者の増加を反映して高い数字が出ておりますが、将来的には、2100年で0.88程度下がっている。
総合費用率も大体同様な動きでございますが、総合費用率は、国共済でも、2035年度で前回より改善しているのですが、私学共済については前回よりもすべての年度で悪化している。2035年も0.6悪化ということで、どちらかというと、年金扶養比率の減少がやはり効いて、かなり厳しい状態ということになってございます。
ただ、保険料比率は、同様に保険料率のアップ等もございまして、2030年では前回よりよくなっているという状態でございますし、収支の方は、積立金からの金利の影響がございますので、2030年から2095年までは前回よりよくなっております。そういった意味では積立金の比率が、割合が高いと見て、収支比率の改善幅が若干大きいということが目立つかと思います。
それから積立比率ですが、これも将来的に、2100年度で1.7年分ぐらいは収支の改善を受けて改善する形になっているということでございます。
以上です。

○山崎部会長
 ありがとうございました。余り時間がありませんが、御質問ありますでしょうか。
 佐々木委員。

○佐々木委員
 この基礎資料の位置づけが十分わかってないので質問が少し的外れかもしれません。細かい点ですが、この制度間比較のところで、単位を100万人と1,000人で別々にする意味はあまりないのではないかなと。積立金の方も、標準報酬の総額、兆円と億円とか、あえてこうする必要もないのかなということで、これはこの資料がどういう位置づけかよくわからないので、単位を揃えていただいた方が見やすいかなと思います。
 それと、前回との比較を御説明いただいたのですが、そもそもこれは5年間の実績がどうだったかということが1つあると思いますし、それから21年度以降の前提をどのように変えたのかという部分に分けて、前提等も対比表をつくっていただいた方が非常にわかりやすい。結果がどうだったかというのは確かにそうかもわかりませんが、その5年間の実績を反映したものと、その前提を変えたことによる比較をやっていただいた方が、これからディスクロージャーの資料をつくるうえで必要ではないかと思います。
 3つ目は、指標がいろいろ出ているのですが、例えば厚生年金だと所得代替率というのは非常に重要性基準として大きいと思うのですが、それがここには入ってないのですが、ここに選ばれた率の理由というのは何かあったのかどうか。
以上の3つが疑問に思った点です。

○石原首席年金数理官
 お答え申し上げます。
まず、1点目の単位がそろっていないという話ですが、前回の報告書をご覧いただいても、単位が揃っていない形になってございます。その理由としますと、単位を揃えた方が見やすいという面もございますが、共済組合ですと、特に私学共済ですと、単位を揃えると、例えば厚生年金ですと何点何兆円みたいな単位になりますが、私学共済で何点何兆円にすると、0.0兆円という数字が出るケースもございますので、そういった意味で、わかりやすさをどの程度、表の目的によってその辺りは使い分ける必要があるかと思っておりまして、いずれにしても、報告書を作成する段階でまた御相談させていただきたいと思います。
 それから実績と前提と対比表の件でございますが、今、口頭で申し上げたような話をわかりやすく対比表にするということは勿論重要なことだと思っておりまして、報告書の段階でその辺りをどう説明していくのかについても、また文章も含めて御議論いただきたいと思います。今回の資料につきましては、位置づけ、私から冒頭申し上げるべきでしたが、報告書をこれからおまとめいただく形になろうと思いまして、その報告書に盛り込んでいく基礎資料の一つとして、今回ご覧いただいて御議論賜りたいということで提出申し上げたものでございまして、これから説明を加えて報告書という形にしていく段階で、再度御議論いただければと思っております。
 それから所得代替率ですが、御指摘のとおり、前回の報告書でも当然分析されてございます。今回についても入れ込むことを検討しておりますが、まだこの段階では単に横並びで比較しただけということでございますので、そういった意味では、報告書の段階で見て、再度御議論いただければと思います。
 以上です。

○山崎部会長
 野上委員。

○野上委員
 今まで、各制度の方がかなり作業をされて、それをまとめる段階でどういう方向性を持って報告するかということだと思うのですが、今、言われたように、前提条件のところで、前回かなりいろんな議論をしたと。その辺りは、数字だけがひとり歩きしてしまうと、委員の方々、私も含めてかなり疑問に思った点については何か忘れ去られてしまうのではないかという危機感といいますか、そういう懸念を持っておりますので、そこは是非、これを見てもわかるように、物価、マクロ経済スライドにかなり頼った運営ということで、更にそのマクロ経済スライドが働くためにはいろんな経済前提がかなりドラスティックに好転しないといけないというのが前回の議論だったのではないかなと。その辺りをどう反映していくかというのはかなり技術的にも難しいと思うのですが、是非そこをやっておかないと、今まで議論したことが、逆に言うと無駄になってしまうのではないかなという、感想のような話でございます。

○山崎部会長
 駒村委員。

○駒村委員
 教えてもらいたいのですけれども、これは各保険者で被扶養配偶者の計算というのは何かルールがあって統一してやったのですか。被扶養配偶者の減り方がかなりばらばらになるのは、たまたまなのか、どうやったのかというのを技術的なところだけ教えてください。

○石原首席年金数理官
 被扶養配偶者ですが、基本的には各制度で見込んでいる形になっていますが、原則的には、被保険者を見込みまして、被保険者に対して何人ぐらい被扶養配偶者がいるかというような基礎率を設定して、それで見込む形だと理解しております。ですから、被保険者の見込み方が各制度で若干違っておりますので、その影響で若干被扶養配偶者の減少、変化率等も違ってきているということかなと思っております。また年齢構成他いろいろあるのだと思いますが、大まかに言えばそのような感じかと思っております。
以上です。

○駒村委員
 被保険者と被扶養者の対応関係というのは、何かこういう計算式でやるとか決めたのではなくて、これは各保険者にお任せして計算していたのでしょうか。

○石原首席年金数理官
 基本的には、被扶養配偶者につきましては、被保険者に対して被扶養配偶者は1人いるかいないかということですから、被扶養配偶者を持っているか持っていないかという率を掛けて計算するという形になっているかと思います。それについて、どういう率に設定するかということにつきましては、他の年金の失権率ですとか、そういった他の基礎率と同様ですが、基本的には各制度でその実績に応じてそこを算定して、それで将来見通して計算するという形かと思っております。

○山崎部会長
 他にございますか。
それでは、特にないようでございますので、本日はこれで終了したいと思います。どうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

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(代)03-5253-1111(内線3382)

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