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2011年5月9日 第4回今後の高年齢者雇用に関する研究会

職業安定局高齢・障害者雇用対策部高齢者雇用対策課

○日時

平成23年5月9日(月)15:00~17:00


○場所

厚生労働省専用第12会議室(合同庁舎第5号館12階)


○出席者

小畑准教授、権丈教授、駒村教授、佐藤教授、清家塾長


中沖高齢・障害者雇用対策部長、土田高齢者雇用対策課長


上田高齢者雇用事業室長、前田高齢者雇用対策課長補佐


桃井高齢者雇用事業室長補佐


○議題

(1)とりまとめに向けた検討
(2)その他

○議事

○清家座長 時間となりましたので、第4回の「今後の高年齢者雇用対策に関する研究会」を開催したいと思います。本日はご多忙のところお集まりいただき誠にありがとうございました。早速議事に入りたいと思います。
 本日は「とりまとめに向けた検討」ということで、これまでご議論いただいたことを整理して、改めて全体を通した意見交換を行いたいと思っています。前回の研究会で私のほうから事務局にお願いしていましたとおり、事務局において、これまでに皆様からいただいた意見を課題ごとに整理していただき、それを基にとりまとめに向けた議論に資するよう、主な論点に関する研究会としての考え方の方向についてのたたき台を作成していただきました。まず、その資料について事務局からご説明をお願いします。
○前田高齢者雇用対策課長補佐 ご説明させていただきます。配付資料として、資料1と2を準備させていただきました。資料1は「高年齢者雇用対策に関する主な論点と意見の概要」、資料2は「たたき台」です。
 資料1の「主な論点と意見の概要」をご説明させていただきます。検討項目としては2つの大きな柱があります。1つ目が「希望者全員の65歳までの雇用確保措置の在り方」、もう1つは、3枚目の「年齢に関わりなく働ける環境の整備」の大きな2つの柱を準備しています。
 1頁目からですが、論点としては2つあります。「定年年齢の引上げについてどのように考えるか」、「継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る基準制度についてどのように考えるか」です。
 定年年齢の引上げについて出されたご意見については、1つ目は、一番上にありますが、やや総論的な部分にもなりますが、雇用確保措置のターゲットとしてどこまでを考えているのか。
 2013年の年金支給開始年齢の引上げをターゲットにしているのか、それとも将来的なものを考えているのかという点が問題提起でしたが、それについて中長期のグランドデザインも必要ではないかというご指摘もありました。
 定年の引上げについてですが、段階的に行うのか、一気に引き上げるのか。
 定年を無くすという方向もあり得るのではないか。
 定年については私企業のルールとはいえ、公的な性格もありますので、原則引き上げるのは望ましいという考え方もあるのではないか。
 定年と年齢差別禁止の関係ですが、定年だから辞めさせられるのは、ある面では納得がいくが、能力がないから辞めさせられるというのは納得がいかないという面もあるので、ある意味で、定年制は公平な制度ではないかというご指摘がありました。
 現実的な側面に目を向けてみると、定年制について取り巻いている社会的な実態が、60歳定年を義務化した時と比べてどうなっているのかという問題提起がありました。
 65歳定年といった場合に、企業の寿命の問題もあるだろうと。企業の在り方が長期間に変わっていくこともあって、それを前提に考えていく必要があるということ。その長期間にわたって雇用保障をすることになれば、人材のほうでも変化に対応できるようにするということが必要になってくるといったことで、能力を転換してまで同一の企業内で雇用を維持することが労働者にとってよいことなのかどうか。転職市場とか企業内外での能力開発の整備とセットで検討すべきではないかというご指摘もありました。
 同様に43年間も1つの企業に雇わせ続けることが可能なのかという問題提起もありました。
 次に、「継続雇用制度」についていくつかご意見がありましたが、1つ目は、基準に関して、高齢期の健康問題をどう考えるかという問題提起がありました。
 希望者全員と言った場合の、その内容、条件面でどうなのか。
 基準の内容については、例えば法律では規定していないが、どこまで立法として介入すべきなのかという問題提起がありました。
 企業の立場からしますと、継続雇用の対象とする方を選別したいという考えがあるけれども、こういった企業についてどうするのか。
 基準についてですが、瑕疵があった場合はどうなるのか、法律にそこは明記されていないので、論点なのではないか。
 最後になりますが、すべての労働者の65歳までの雇用ということにするのであれば、現在の高齢法の基準制度は見直していかなければならないというご意見がありました。
 「年齢に関わりなく働ける環境の整備」では、論点は多岐にわたっていて、6つあります。1つ目が「雇用における年齢差別の禁止についてどのように考えるのか」ということです。1つ目としては、基本的には、働く意欲のある方の能力のある限り働ける社会の実現を目指すが、能力と雇用の機会をどのように考えていくのか。雇用の機会を守れば労働条件の変更はある程度認められているということ。
 年齢差別禁止については、長期的な観点では検討していかなければならないが、当面の政策課題としては、まだ熟していないというご指摘がありました。
 年齢にかかわりなく働ける社会というのは、逆に年齢にかかわりなく職を失う社会ということであること。このような社会にするのであれば、根本的に変えていく必要があるのではないか。
 60歳定年を取り払えるのか、取り払った場合どういう問題が起きるのか、それとも、60歳定年制を維持した上で、それ以上の雇用を進めていくという考え方に立つべきなのか、どちらなのかということ。
 中長期的には、労使が納得した形で年齢にかかわりなく働ける社会を目指すべきではないか、ということでした。
 2番目は「高年齢者の能力開発の在り方についてどのように考えるか」という点です。転職のサポートについて、継続雇用できない場合に、企業がサポートするような措置ができないか。
 高年齢者になると教育訓練の場が減少するので、従業員が新たな技術に対応し、新しいことに挑戦することが必要であるというご指摘。
 能力・成果を正しく評価するための指標についてのスキルを管理者がどう高めていくかが肝要であるというご指摘がありました。
 次の論点は、3つ目になりますが、「年齢に関わりなく働けるようにするためのシルバー人材センターの在り方についてどう考えるか」です。ご意見としては、この制度、事業は55歳定年の時にできた制度で、現在は、60歳からの就業の機会を対象とする制度といまなっていますが、現在の状況から見ると、制度設計としてずれてきているのではないかというご意見がありました。
 次の論点が「70歳まで働ける環境整備の在り方についてどう考えるか」ですが、こちらについては、1つ目として、現在65歳以上の適用がない雇用保険についてどのように関係を整理していくべきか検討するべきではないかということ。
 また、雇用対策法との関係で、現在、雇用対策法で定年制のある場合は、例えば60歳を超える定年を設定する場合であれば、採用の時にその定年を下回るような年齢を条件として設定してもよいということになっていると思うが、これは問題ではないかという問題提起がありました。
 また、労働市場全体で雇用を支えるという考え方はあるけれども、社会がそのような状態になるまでまだ時間がかかるので、これまでの経緯からして不自然にならないような様々な工夫を考えなくてはならないと。
 転職システムについても仕組作りが必要ではないかがご指摘としてありました。
 5つ目の論点は、「高年齢者雇用と若年者雇用との関係についてどのように考えるか」ということがありました。若年者雇用との関係については、いろいろなご意見がありますが、頭数で要員を管理している場合は代替関係があって、古い技術に加えて、新しい技術を扱う企業については代替関係はないというご指摘がありました。
 EUについては、高齢者の早期退職を勧奨する政策を講じたけれども、結果として特に若年者の失業問題が解決したことはなかったという経験があるという紹介がありました。
 また、若年者の供給も従来と比べて減ってきていますので、以前と比較すれば影響は減ると思うというご意見がありました。
 最後になりますが、「高齢女性の就労支援についてどのように考えるか」という論点については、男性と女性の就業率が乖離しているので、そこをどう考えていくのかという問題提起、また、女性が家族の介護の理由で仕事に就けなかった割合などが多いので、介護休業の問題も関係してくるのではないかというご指摘がありました。いままでの主な論点と意見については、以上です。
 資料2の「たたき台」をご説明させていただきます。たたき台は、大きく分けて3部構成にしています。1つ目は総論的なもの、2と3で各論的な部分を書いています。1つ目の1として、「今後の高年齢者雇用対策の方向性」で、サブタイトルとして、「生涯現役社会の実現に向けて」と仮に付けてあります。2つマルがありますが、1つ目は、少子高齢化の進展に伴って労働力人口の減少が見込まれている中、経済社会の活力を維持するとともに、社会保障制度などの持続可能性を高めていく必要があるので、そのためには、意欲と能力のある高年齢者の知識や経験を労働市場の中で有効に活用することが必要ではないか。このため、中長期的には、高齢者が可能な限り社会の支え手として活躍できるよう、年齢にかかわりなく働ける「生涯現役社会」を実現する必要があるのではないか。
 2つ目として、60歳代前半の方々の生活の安定は、基本的に働く場の確保により支えるべきであり、2013年度からの老齢厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢の引上げも踏まえて、定年退職後、年金支給開始年齢までの間に無年金、無収入となる方が生じることがないように、雇用と年金を確実に接続させる必要があるのではないか。そのためには、当面は、就業を希望する方全員の65歳までの雇用確保を確実に進めるべきではないか。これが総論の部分の提起です。
 2として、各論に入りますが、「希望者全員の65歳までの雇用確保」と題しております。1つ目として、その65歳までの雇用確保のための方策として、まず、現行60歳である法定定年年齢を引き上げる方法について検討すべきではないか。また、それがなかなか難しい、できない場合であっても、少なくとも法定定年年齢を60歳としたままで希望者全員について65歳までの継続雇用を確保する方法を考えるべきではないか。
 法定定年年齢の引き上げについては、2つ選択肢があって、1つ目は、老齢厚生年金の定額部分の支給開始年齢の65歳への引上げ完了を機に、法定定年年齢を65歳まで引き上げる方法とか、定年年齢を老齢厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢の引上げに合わせて段階的に65歳まで引き上げていく方法があるのではないか。
 また、法定定年年齢の引上げは行わず、希望者全員65歳までの継続雇用を確保することとする場合には、まず継続雇用制度の対象となる高年齢者に係る現行の基準制度は廃止する必要があるのではないかということです。
 次は「賃金」についてです。現在の60歳代前半の方々の賃金は、年金の報酬比例部分の受給を前提に決定されている側面もあると考えられますが、その報酬比例部分が支給開始年齢が引き上がっていくことに伴って60歳代前半の高年齢者の賃金は、その生活の安定を考慮して、労使の話合いによって、仕事の内容とそれに見合った労働条件の設定について適切なものとしていくことが重要ではないかということを問題提起しています。
 ここからは実態面ですが、前回の改正高年齢者雇用安定法の施行状況を確認しますと、施行後、現在5年経過していますが、それにもかかわらず雇用確保措置を講じていない企業もありますので、現在、勧告までできることになっていますが、勧告を行って、なお雇用確保措置を講じない場合には、雇用確保措置の義務の履行を確保するために、例えば企業名を公表するなどにより、より強力な方策を講ずることを検討すべきではないか。
 最後ですが、高年齢者の雇用はその知識、経験を活かした安定した雇用確保が基本となりますが、やむを得ず離職する方々に対しては、円滑に企業間の労働移動が行われるように、国が例えば助成金の一層の活用などによって再就職を支援する必要があるのではないかという指摘をしています。
 3「生涯現役社会実現のための環境整備」として、いくつか論点を挙げています。1つ目は、高年齢者の就業意欲は高いのですが、就業のニーズとなりますと多様になるということで、できるだけ多くの方々がその意欲、能力、多様なニーズに応じて働くことができる生涯現役社会を実現するために、環境の整備を行っていく必要があるのではないか。
 企業の方々には高年齢者の職業能力開発に積極的に取り組んでいただくとともに、労働者自身が高年齢期において、高齢期を見据えた職業能力開発に取り組むことが必要なのではないか。このように企業と労働者が取組を促進するためには、国としてもさまざまな施策の活用を図っていく必要があるのではないか。
 また、企業においては、高年齢者に対して職域の拡大とか高年齢者に配慮した作業環境の導入・改善、賃金制度についても就業の実態、生活の安定を考慮したものにするなど行っていくべきであって、国がこのような企業の取組を引き続き支援していくべきではないか。
 また、多様な就業機会の確保の観点から、シルバー人材センターの積極的な活用と、シルバー人材センターによる就業機会の拡大を図っていくべきではないか。
 また、女性については、高齢期における女性の就業率を高めていくためには、まずは、ちょっと長期になりますが、若年期からの就労の参加を促進する必要があること。また、出産・育児等で離職した場合でも、教育訓練を含めた再就職支援を行うことによって、なるべく継続的な就業ができるような環境整備を行うことが必要ではないか。既に高齢期になっておられる女性に対しては、働きやすい就業機会の提供が重要で、シルバー人材センターによる職域の拡大などで対応していく必要があるのではないかということ。
 最後ですが、年齢差別禁止は、社会、雇用システムへの影響について多角的な観点から考慮する必要があることなどを踏まえて、当面の政策課題として、まだ議論が十分に熟していないため、中長期的課題として、引き続き議論を進めていく必要があるのではないか。他方で、当面は定年制等の雇用確保措置のほかに、高年齢者の就業を確保する観点から、雇用法制の在り方について、超高齢社会に適合するよう検討を進める必要があるのではないかという柱を考えています。ご説明は以上です。
○清家座長 ありがとうございました。ただいま事務局から、資料2の「主な論点に関する研究会としての考え方の方向(たたき台)」をご説明いただきました。最初の総論の部分はあるわけですけれども、資料1で意見の概要を整理していただいておりますように、大きく分けて論点の1つが、希望者全員の65歳までの雇用をどのように確保するかということです。もう1つは年齢にかかわりなく働ける環境を、どのように整備していくかということです。
 資料1は皆さん方からいただいたご意見を事務局で整理したもので、いままで議論してきたわけです。そこで今日はこのたたき台を基に、いよいよ研究会報告の最終文案に向けて、皆様からご意見をいただき、取りまとめに入っていきたいと思います。最初に「希望者全員の65歳までの雇用の確保」という部分について、少し委員の先生方のご意見を承りたいと思います。もちろん、その前の総論も含めてご議論いただきますが、まずは最初の部分です。
○佐藤教授 1にもかかわってきてしまうのですが、2の「希望者全員の65歳までの雇用確保」は、定年制の下にある人たちを対象にしています。いわゆる雇用期間の定めのない正社員です。ただ、1で「生涯現役社会」という議論をする場合に、「年齢にかかわりなく」と言ったときに、どのような雇用形態であれ年齢にかかわらず、生涯現役社会ということだと思います。2は、その中から現状は定年制の下にある人たちの60歳定年のさらに先ということだと思うのです。1の最初のマルに、「年齢にかかわりなく」とあります。私は是非、どのような雇用形態であれ年齢にかかわらず、というようにしてほしい。「就業形態にかかわらず」と言うか、「雇用形態にかかわらず」と言うかは別として、特に有期契約の人が増えてきていますので、雇用形態にかかわらず生涯現役、少なくとも65歳までというメッセージを1の所で書いていただくとありがたい。
 それにかかわって、ちょっと具体的なことを言ってしまいます。資料1の3枚目の4に書いたところなのですが、もし、そういうものをしなさいということになったら、60歳定年のままで希望者全員の再雇用を選択する会社があるとします。ただ、その企業でそう言われても、転職をしたいと思って転職すると。すると別の会社も60歳定年で、希望者全員が65歳までだと、現行法で言えば定年年齢を超えた部分については、60歳までという年齢条件を付して雇うことが可能ですよね。そうすると、65歳を超えたところで転職してしまうと、極端な話、年齢条件がかかって雇われない可能性があるのです。そこをどう書くかは別ですけれども、私はやはり雇用対策法のほうで定年とは別に、少なくとも65歳までは合理的な理由がない限り、年齢条件を付けてはいけないというのがないと一貫しないのではないかと。
○清家座長 たとえ定年は60歳でも、65歳までは採用差別をしてはいけないと。
○佐藤教授 そうですね。合理的な理由があれば別ですけれども、そういうようにしないと。全部定年延長になればいいのです。一応現状で言えば、定年延長も希望者全員。これはまた議論するところですが、希望者全員を再雇用するというのが仕組みの選択になってくると、本人が希望して転職する場合もあるわけですよね。そうすると、定年60歳が残ったままですと、転職したときに年齢上、雇用機会を得られないということが起きかねないのです。そこは両方向、整合的な形で議論していただけるとありがたいというのが、もう1つの意見です。
 その上で、資料2の「希望者全員の65歳までの雇用確保」の1頁のマルの2つ目の後です。ここはどういう趣旨かというと、人事管理で定年制と賃金制度と昇進・昇格のシステムと、ここはシステムになっているわけです。補完的な関係ですので、もし定年延長を選択した場合、賃金制度や昇進・昇格の制度の見直しが必要になるということを、どう見直すかは別として、書いておく必要があるでしょう。
 段階だけで定年延長をした場合、定年制と賃金制度と昇進・昇格というのは、やはり補完的な制度になっていますから、定年延長だけをしておいて、ほかは変えなくても済むということにはならないということは言っておいたほうがいいです。どう変えるかどうかは、労使で議論すべきだと思います。ただ、定年延長だけ独立して動かせるわけではないということは言っておかないと、間違ったメッセージを伝えることになるかと思います。可能であれば1頁の2の2つ目のマルの下辺りに、人事制度の中で定年制と賃金制度と昇進・昇格は相互補完的な関係なので、定年延長を選択した場合、賃金制度や昇進・昇格の仕組みの見直しが必要になるだろうというメッセージは、やはり出しておいたほうがいいかと。
○清家座長 そうすると、2つ目のマルの所にマル1、マル2があった上で、マル1とマル2を実現するために必要な賃金制度の改定等についても議論が必要だと。
○佐藤教授 賃金制度と昇進・昇格の見直しが必要になるだろうということです。どう見直すかは別ですけれども、それだけが動かせるというようなメッセージは、やはりよくないでしょう。確かに定年制の仕組みはいろいろですし、賃金制度も変わってきていますので、一律ではないと思います。ですから3つが相互補完的な制度で、定年制を動かせばほかの制度も見直しを必要とするということは言っておけばいいと思うのです。もうすでに変えている所もあって、すんなり定年延長ができる会社もあるとは思うのです。それが2番目です。
 あと、1頁の一番下のマルの「希望者全員再雇用なり、勤務延長をする」というのは、どういうシステムを想定するのですか。こちらで言うと、2頁のいちばん上です。希望者全員というのは、希望する人を雇いますと。どういう仕事なのか、処遇をどうするのかということになると思うのです。これをわかりやすく言うとどうなるのですか。極端な言い方をすると、会社がオファーして、本人が納得するものをオファーしなければいけないのか。あるいはオファーしたものが本人を辞めさせるつもり、そういう希望を聞いた上でオファーしているということがあれば、それで本人が100%納得しない場合もあり得ると。この希望者全員というのが何なのかということを少し書いておかないと、後で労使で議論をするときに、本人が希望するものをオファーしなければいけないという極端なものから、可能な範囲で企業の状況を見てオファーしなさいと。もちろん、それで変な企業があった場合は個別紛争に行くかもしれませんけれども、100%満たすものをオファーしなければいけないのかどうかということは、少しわかるような形で書いておく必要があるかと思います。以上、3点です。
○清家座長 そうしたら、少し詰めていきましょうか。最初の点は、「どのような雇用形態であれ」というような文章をどこかに入れる形で、期間の定めのない雇用の者だけを対象にしたのではないということを言っておいたほうがいいと思います。それに付随する問題は、「生涯現役社会実現のための環境整備」の所で議論するものです。私も法律家でないのでわからないけれども、例えば60歳定年というのは法律上認めておいて、募集・採用の年齢制限は、60歳を超えても許さないということができるのかどうか、そこは後で。
○佐藤教授 わからないですよね。
○清家座長 2つ目の点は、2番目のマルのような個別の所に入れておくのか、それとも最初の総論の所で。
○佐藤教授 あまり書くと、やや嫌らしい感じもするので、私は2つ目のマルの後でもいいかと思ったのです。
○清家座長 ただ、あらゆる所で希望者全員の65歳までの雇用の確保を進めようとすれば、当然それは賃金の制度の体系にも出てくるので、総論の2つ目のマルの後ぐらいに書くと。「雇用と年金を確実に接続させる必要がある。そのためには、当面は、就業を希望する者全員の65歳までの雇用確保を確実に進める」という中に、確実に進めるための条件として、賃金制度の改定等についても真剣に考えるということですよね。両方ありますよね。それとも、もうちょっとさり気なく、2番目のマル辺りに入れてもいいのか。
○佐藤教授 私は、定年延長の所でいいのではないかという気がするのです。定年延長を選択する場合、定年だけを動かせるような制度にはなっていないということを言っていただくだけでもいいかと思うのです。
○清家座長 定年の引上げを可能にするような賃金制度の改定については。
○佐藤教授 昇進・昇格とですね。労使で合意を得る必要があるのではないかというようなこと。労使で合意を得ることは必要ですが。
○清家座長 ほかの委員の先生方も、そういうことでよろしいですか。特に異論がなければ、そういう感じで修文してみます。
                 (意見なし)
○清家座長 3つ目はどうですか。
○佐藤教授 今までは基準があることが問題だという議論をしていたわけですよね。今度は無くなるわけですよね。
○清家座長 つまり希望者というのが、オファーされた条件に対する希望者なのか、無条件の希望者なのかということですよね。しかし一般的に言えば、雇用関係というのは無条件の希望はないわけですよね。とにかく自分の都合で雇わせると。
○佐藤教授 ある面では今の条件があるほうが、もしかすると明確な可能性もあるのです。これは条件設定の在り方だと思うのです。
○土田高齢者雇用対策課長 現行法でも、もし9条の2項がなければ、希望する者全員が原則ということになっていますので、それは今でもあり得る問題ではありますから、それは一定の幅があるというように理解してよいのだろうと思います。それを労使で話し合って、こういう人でないと雇わないという基準を明確に作ってもいいということです。
 基本労働条件というのは労使で話し合って、そこで合致しないと労働契約は成立しないわけなので、そこはある意味、幅があるわけです。さらに基準を労働条件以外のところで設けていた健康問題、あるいは設けていた今までのヒアリング調査などで挙がっているところでは、業績評価とか、意欲といったことでやっているということだと思います。
○清家座長 要するに、健康状態や業績みたいな基準はやめましょうというのは明確だと思うのです。その代わり、うちの会社としては60歳以上の人の健康状態を考えると、給料は3分の1でないと到底雇えません、だから給料は3分の1でいいですか、それで嫌な人はという話でしょ。それが条件になるのかどうか。
○佐藤教授 その辺の議論があまりなくて、オープンで希望者全員だけ出していいのかという話なのです。少しは議論をしておかないと。
○土田高齢者雇用対策課長 法律の条文は、それも含めて今でも希望者全員と書いているのではないかと考えています。
○佐藤教授 わかります。ただ、それは現状では使っていないわけです。今まではそうでなかったから問題は起きなかったけれども、もしそうしてしまった場合、会社にはオファーする義務がありますというのは、非常にわかりやすいですよね。それで選ぶか選ばないか。とにかくオファーしなければいけないというのはあるかもしれない。そのときにオファーしたものが合理的であるかどうかをチェックするというのはあると思うけれども、希望者全員というのは何なのかと思うのです。いくつか例があるとわかりやすいけれども、何もないところもあまりオープンにしてしまっていいかというのが、ちょっと気になるのです。
○清家座長 いま佐藤さんが言われたように、例えば定年制度があったときに、定年を迎えた労働者に対して、65歳までの継続雇用の条件をオファーしなければいけないというのが1つあります。もう1つは、そのときにオファーされる条件があまり極端に変なものではいけないというルールをつくるということですか。しかし、それはちょっと難しいかな。あまり変ではいけない。
○中沖高齢・障害者雇用対策部長 いま高年齢者等職業安定対策基本方針を作っております。その中で、例えば賃金の話などは、「継続雇用制度を導入する場合における継続雇用後の賃金については、継続雇用されている高年齢者の就業の実態、生活の安定等を考慮し、適切なものとなるよう努めること。」ということで、非常にふんわりしているのですけれども、労使であまり極端なものは設定しないでくれというニュアンスのことは書いています。たぶん、こういった指針の中で労使に話し合ってもらって、どこまで書けるかという問題が出てくるのではないかと思います。ただ先生がおっしゃるように、いくら何でもそれでオファーしたことになるのかというものが出てきたときは、やはり問題でしょう。ですから、そこをどこまで強く法律の中で書けるかというとなかなか。
○土田高齢者雇用対策課長 個々の労働条件については、基本的に行政は介入してこなかった、労使で決めるという原則でやってきたということがあります。
○清家座長 法律の趣旨からいって、明らかに全員がアクセプトできないような条件を出すのはよろしくない。ただ、みんながみんな満足するような条件を出さなければいけないかというと、そういうことはない。私はそこは法律論的にはわからないけれども、いま部長が言われたように、指針等で対処したほうがいいのか。
○佐藤教授 混乱がないように議論するために、少し検討したものを書いておくということはあると思うのです。何もなくてそれだけが一人歩きするのは、ちょっと気にはなります。特に議論の出発点が、いままでの基準を設けるのはよくない、それよりももう少しという議論でしょ。しかし、実はそうなるかどうか分からないと私は思っています。基準を議論しないでこれをオープンにしてしまうと、もしかすると、今よりもっとセレクションされる可能性もあるわけですよね。そこは私もやや不安なところがあって、その辺は議論しておいたほうが。いままで実態としては少なかったですよね。しかしどうなのかなと、やや危惧もあるのです。
○清家座長 これは前から議論があるのです。小畑先生などに伺いたい。希望者全員などというところで裁判になったときに、民事効を持たせるかどうかというのとも絡んできますよね。
○小畑准教授 私は、先ほどの事務局からのご発言のように、指針でやるほうがいいのではないかと考えております。というのは、やはり法律の中で取り込んでいくとなると、何を書くのかというのは、かなり難しい問題ですよね。どういうようにバランスよく、過不足なく書くかというのは難しいのではないかと思いました。
○清家座長 そうですね。その上で極端な使用者を罰するというか。
○佐藤教授 他方で、とにかく希望する条件で雇ってくれというようになっても困るので、法律で書くというより、極端に振れないようなことを、指針でやるようなことを、ちょっと書いておいてくれるとありがたいということです。ご検討いただければと思います。
○土田高齢者雇用対策課長 組合があれば、組合とちゃんと話し合ってもらえればいいのです。組合がない場合には別途、個別紛争処理みたいな形で解決していただくとか、調停などになろうかと思います。
○清家座長 とりあえず佐藤先生、ご発言どうもありがとうございました。ではお1人ずつ、ほかにまたご意見を。どうでしょうか。駒村先生、何かございますか。
○駒村教授 これは前半後半関係なくですか。
○清家座長 できれば、今のところはたたき台の2の「希望者全員65歳までの雇用確保」と、1の最初の総論の所です。そこで、なければ、また次に進みます。
○駒村教授 2ポツは2013年までの当面の議論で、こういう書き方なのかと思います。むしろ3のほうでいくつか考えたいと思います。
○清家座長 あと、権丈先生と小畑先生は特にありませんか。
○小畑准教授 ええ、ここは。
○清家座長 また戻ることがあるにしても、むしろ3のほうですね。わかりました。それでは「生涯現役社会実現のための環境整備」に移って、議論をしていただきたいと思います。それでは駒村先生、お願いします。
○駒村教授 2ポツが当面2013年までの課題です。3ポツは、それを超えた中長期の課題です。書き方としてはこういう感じかと思っているのですけれども、最後の所が労働政策のところでどこまで書けるのかということは、あまり考えずに申し上げます。やはりこの問題が出てくると、今度は「在老」をどう評価していくのかという問題が出てきます。あるいは生涯現役となってくると、70歳以上への厚生年金の適用問題というのも当然出てきます。また、基礎年金拠出金分の保険料が、拠出部分が反映されない時期が長くなってきますので、同時に年金政策、所得保障政策とパッケージで考えなければならないところがすごく多くなってくるのではないかと思います。そこについて、文面ではあまり明確に書いていないのではないかと思っております。生涯現役となってきますと、年金の適用、計算、さらには受給についての議論も同時に問うていかなければいけないのではないかと思っておりますので、そこのところはどこかで読めるように書いたほうがいいのではないかと思いました。
○清家座長 被保険者の期間。
○駒村教授 そうですね。生涯現役となると、70歳以上も入ってこないと。65歳は超えたけれども、それは当然、見えなければいけないと思います。いや、70歳から支給開始をしろと言っているわけではないですよ。そんなすごいことを言うつもりはないわけです。適用対象をどうするかということです。
 もう1つは、これもときどき聞かれるところですけれども、いま最終的には18.3%で、そのうち6%相当は基礎年金の拠出金を出しているわけです。20~60歳の期間と、60歳の距離がどんどん離れていくと、拠出しているのにオーバーした部分は年金に全然反映されない期間が長くなっていくことをどう考えるかという問題も、派生的に生まれてきます。そこで生涯現役社会と年金政策とを、どう揃えていくのかという意見です。
○清家座長 それはどこかに書いたほうがいいですね。どうですか。基本的に生涯現役の考え方というのは、現役で働く労働者であれば雇用保険の65歳以上も含めて、社会保険や労働保険を適用するというのが筋でしょうね。年金について私はいま急に質問したくなってしまいました。要するに年金の給付額は、在職中の標準報酬月額の平均値ですよね。そこで、先ほどの議論と関係するのですが、最後のほうで、安い賃金で雇用を延長されたりすると、年金額にマイナスに反映されてしまうので、そういうことは早くやめたほうがいいというようなインセンティブにはならないのですか。加入期間との掛け算だからあれですが、例えば加入期間にはシーリングがあって、標準報酬だけ、最後のほうの安い賃金も含めて計算されてしまうと、長く勤めるとかえって給付額が減ってしまう人が出てくるのではないかと思うのです。
○駒村教授 それには当然、何歳から働いているかというのも影響があります。ちゃんと反映される期間もありますので。
○清家座長 つまり、年を取ってから安い賃金で働き続けたことが不利にならないようにしておかないと、かえってディスインセンティブになってしまうでしょう。
○駒村教授 それはそうですね。
○清家座長 それがちょっとだけ心配になった点です。先ほどの話で、継続雇用時の労働条件と年金給付ということです。賃金がいちばん低い10年間は計算しないとか、そういうルールにすれば別ですけれども。
○駒村教授 むしろ、拠出した分を全部反映させるようにしたほうがいいのではないかと思います。
○清家座長 拠出したものを全部反映というのは。
○駒村教授 年金額にきちんと反映させるということです。
○清家座長 総額でやるのですか。
○駒村教授 そうです。決定的なのは、基礎年金の拠出金分などは、折角拠出を混ぜて取られているのに、反映されないということになります。そういう部分は給付率でいくと、半分しか返ってこないということです。
○清家座長 よくわからないのが報酬比例部分の計算のときに、報酬比例部分の給付額が過去の賃金の平均額みたいなもので計算されると、年を取ったときに安い賃金で働くと損をすると。
○駒村教授 そこの部分もありますし、標準的に20~60歳まで払った期間というのは、その1階部分にちゃんと反映してもらって、2階部分も反映してもらうのですけれども、ものすごく働いた部分については、今度は1階部分に反映してもらえない。40年払っているケースだったら、折角基礎年金拠出金分まで負担しているのに、1階部分が給付に反映されない。リターン率で見ると半分ぐらいになってしまうわけですから、もともと基礎年金にあった矛盾が生涯現役になると5年、10年というように延びていってしまう。
○清家座長 そうすると、ここは在老の問題もあるし、生涯現役を促進するという視点と整合的な形に、年金社会保障制度を見直すというようにしてもらったほうがいいかもしれませんね。そして働いている人には労働保険、社会保険を適用し、なおかつ、それが生涯現役の働き方と矛盾しないような形で制度を見直す必要があれば見直すと。
○駒村教授 そこで細かい年金の議論に触れると難しいと思いますけれども、少なくとも整合性のある年金制度にしなければいけないという話はあると思います。
○清家座長 少なくとも雇用保険のところは労働保険関係で、雇用保険部会でこれから議論する論点に入っているのですけれども、役所の方針としてはどうですか。もう延長するのですか。それはまだ決まっていないのですか。
○土田高齢者雇用対策課長 担当責任者ではないのですが、検討する方向にはなっていると思います。
○清家座長 ただ大きな理念としては、70歳以上までやるかどうかは別として、生涯現役であれば社会保険も労働保険も適用すると。
○駒村教授 少なくとも雇用保険はもうちょっと延ばさなければいけないし、年金のほうはいまは70歳までという形ですよね。
○清家座長 OECDもああいうように言っているぐらいだから、年金の支給開始年齢の引上げの議論は、当然しなければいけないでしょうね。
○駒村教授 3ポツの議論は将来課題で、2ポツでまずは足元という話かと思います。
○清家座長 もしかしたら今の税・社会保障の一体改革の中でも出てくるかもしれないし。
○駒村教授 大きな意識改革をすれば、そこはいきたいと思います。
○清家座長 ただ、それは将来の話ということですね。わかりました。了解しました。権丈先生は何かございますか。
○権丈教授 私からは「生涯現役社会実現のための環境整備」の3つ目、4つ目辺りについてです。「高年齢者の職域拡大と高年齢者に配慮した作業環境の導入・改善、高年齢者の就業の実態や生活の安定等を考慮した賃金制度、短時間勤務の導入等を図っていくべき」という点を入れていただいて良かったと思います。できれば、そうした環境整備は、高年齢者だけをターゲットにするというよりは、労働者全般に広げることでよりよいものになるかと思いますので、そうした視点をいれていただけたらと思います。5つ目の「高齢期における女性の就業率を高めていくためには」には、高齢期だけでなく、若年期からの就労参加の促進、一度離職した場合の再就職のための支援、継続的な就業ができる環境整備を行うことが必要だという指摘があり、良いと思います。高年齢者だけでなく、全体として働きやすい環境を整備するというのも重要だと考えます。
 もう1点は、シルバー人材センターの積極的活用という点です。4つ目と5つ目のポイントの両方に記載され強調されていますが、どうでしょうか。シルバー人材センターは、多様な就業機会を確保する場とみることはできます。平成15年の「今後の高齢者雇用対策に関する研究会」の報告書でも、シルバー人材センターを積極的に活用し、その地域における就労を希望する高齢者のワンストップサービス機能を備えた総合就労支援センターとして位置付ける可能性も述べられていました。そういう方向性もあるかもしれませんが、その一方で、全体の労働市場を撹乱する可能性もあると思います。シルバー人材センターは、今のところは臨時的かつ短期的、又は軽易な就業機会の確保ということになっているので、そこのところは住み分けされているようですが。シルバー人材センターの積極的活用が、どの程度のことを意味するのかを考える必要がありますし、やはり雇用の場での環境を重視すべきではないかと考えます。
○清家座長 確かに4つ目のマルで、年齢にかかわりなく多様な就業機会を確保する場として、シルバー人材センターの意義を述べているわけだから、次のマルでわざわざ女性についてだけ、シルバー人材センターが特別だと言うと、シルバー人材センターの仕事というのは、もともと女性向きというバイアスを与えるとよくないかもしれない。ここはなくてもいいのかもしれませんね。あったほうがいいですか。
○佐藤教授 私は直してもいいと思います。シルバー人材センターについては前に説明を受けたのですけれども、これは雇用ではないわけです。任意就労で、いわゆる雇用保険などはカバーされていないし、最賃も適用対象ではないわけですよね。実際は少ないけれども、いまは60歳以降がいいのですか。55歳からですか。
○土田高齢者雇用対策課長 実態としては、平均年齢がかなり上がってきています。
○佐藤教授 上がってきているのはわかるけれども、制度的には60歳からいいわけですか。
○土田高齢者雇用対策課長 そうです。
○佐藤教授 それはどうかなという気はしています。やはり少し見直したほうが。少なくとも65歳以上に直すとか。先ほど言われたようにやはり攪乱要因として、実態は少ないにしても、かなり低賃金就労みたいなものをつくっている可能性もあるので、やはり上げていくようにしないと。ほかが変わってきたにもかかわらず、そのまま置いて来てしまったわけですよ。それは見直さないとまずいのではないか。55歳定年のときにできた制度でしょ。ですから一応65歳という想定で考えると、仕組みは10歳上げるぐらいのつもりでいく。実際はもうそうなっていると思うので、やはり位置づけもきちんと見直す時期にきているのではないでしょうか。今度やらないとそのまま置いていくというのは、問題ではないかという気はします。
○清家座長 希望者全員65歳までと言っていることとの整合性を取るためには、65歳までは雇用労働をするのだから、雇用以外の労働の場というのは、65歳以上だろうというのはあるのです。そういう面では、いま佐藤さんが言われたようなことがいいと思うのです。ただ、一方で希望者全員ということは、65歳以前でも雇用労働以外のこともしたい人もたぶんいるだろうと。ですから、そういう人の選択肢に対応する受け皿として、原則の中の例外として早期引退をする人たち、しかし完全に引退するのではなく、シルバー的な働き方をしたければしてもいいという、そのぐらいの感じで残さないと。
○佐藤教授 ただ、これに国の金が入っているかどうかはわからないけれども、わざわざそこを支援する必要はない。公的にしてNPO法人とか、いろいろあるわけですよ。自主的にやればいいのではないか。そういうものを公的に支援してやる必要があるのかということです。時代も変わっていて、いろいろなボランティアの働き方、いわゆる新しい公共のものもたくさんあるわけです。自分たちで積極的にやるほうがいいのではないかという気もしないでもないのです。
○駒村教授 シルバー人材センターが低賃金という研究があるわけではないのですね。
○佐藤教授 どうですかね。よくわかりませんけれども。
○清家座長 ただ低賃金の温床と言う前に、原則として65歳まで希望者全員雇用の社会にしましょうと言っているのだから、あまりそこで大っぴらに、60~64歳の間はそうでないのもよろしいのではないですかと言うのもいかがなものか。
○佐藤教授 収入はあるわけですよね。これも中途半端なのです。
○清家座長 ここの所は65歳までの話ではないからいいと言えばいいけれども、原則はそうだと。ただ、そこは調整が。
○佐藤教授 このままズルズルといくと、やはり「検討の必要はある」ぐらいのことは書いておくことをしないと、一度できてしまった制度は動かないというのは問題かな。
○中沖高齢・障害者雇用対策部長 もう少し、将来的な検討のあり方を検討していく必要があるというような。
○清家座長 いままで一定の役割を果たし、これからも65歳以上のところでは、一定の役割を果たすのです。ただ65歳までについては、原則を見直す必要があるかもしれません。
○土田高齢者雇用対策課長 パートタイムなど、生きがい就労という形で置きましたので、そういう意味で「多様なニーズに応じた働き方」という中で入れてあります。
○佐藤教授 もしそうであれば、完全にボランティアのほうに振っていくほうがいいのではないか。
○土田高齢者雇用対策課長 ボランティアだと、ちょっと小遣い銭ぐらいでも収入がほしいという方もいらっしゃるのではないかと思います。
○清家座長 だから一応いまある制度を活用するという観点かと思います。確かに課長が言われたように、ボランティアで働きたい人もいるけれども、いまの新しい原則で言うと、65歳以前でそういうように働きたい人というのは例外的というか、一般的にはそうではないだろうという話ではありますね。これは大河内先生が1970年ぐらいにつくったもので、そのときは確かに55歳定年ですから意味があったと思うのです。そこは変えていく必要があるのかもしれませんね。それは検討しましょう。小畑先生は何かございますか。
○小畑准教授 方向性として、特にここがちょっとという所はないのですけれども、いまのシルバー人材センターのお話もそうだったように、どういう変化が起きたのか、そしてこのような議論をする経緯が何なのかというのは、一応きちんと書きながら確認しないといけないだろうということを、いま非常に痛感いたしました。
○佐藤教授 雇用対策法については、定年制があればそれを超えた部分、60歳定年ならば60までというようにやってもいいわけですよね。
○土田高齢者雇用対策課長 常用の募集はそうです。有期の募集にはそのような例外はありえません。
○佐藤教授 ですから、そこの問題もあるのです。
○土田高齢者雇用対策課長 有期の募集は我が社は60歳定年なので60歳以上は雇えませんと言うことはできないことになっています。常用で雇う場合は、うちは60歳定年なのでということで例外が認められています。
○佐藤教授 有期の場合は、年齢条件は一切課せられないのですね。
○土田高齢者雇用対策課長 はい。
○清家座長 期間の定めのある者だけ認めているわけです。
○佐藤教授 では、あまり心配しなくてもいいのかな。ただ、実態としては大学などでも、60歳定年だと非常勤は60歳まででなければ駄目という運用で、結構やっている所もありますよね。そうすると、それは法律違反ですよね。では、そこは問題ないのか。
○土田高齢者雇用対策課長 定年が60歳だと、常用で雇う場合は60歳を超えた方は勘弁してくださいということができることととなります。
○佐藤教授 それは私の誤解か。
○土田高齢者雇用対策課長 有期の募集はそれが認められていません。60歳を超えていても応募機会を与えなければなりません。
○佐藤教授 では、あまり気にしなくてもいいのか。ただ雇止めのところで、有期で60歳で更新しないようなことがあると問題ですが、それはいいわけですね。
○土田高齢者雇用対策課長 有期の雇い止めは期限が到来したという理由だけでやっているので、仕方がない面があると思います。年齢がこれだから雇い止めにしましたということで表沙汰にするかどうかですね。調査ではそういうことを言っている企業もあるようです。
○佐藤教授 わかりました。そうすると私の誤解だけで、先ほどの問題はないのかな。
○清家座長 ちなみに、うちの医学部などは教授を外から公募するとき、定年まで10年間教授職として勤められる人を採用対象にしています。
○佐藤教授 それはどうなのだろう。
○清家座長 医学部の教授は、その講座を10年ぐらい牽引してもらわないと困るから。
○佐藤教授 つまり、55歳より若くなければ駄目というようなイメージですね。
○清家座長 そういうのは本当はいけないのだろうけれども。
○佐藤教授 つまり人材育成上、10年は不可欠であるということが証明できればいいのです。10年はいないと、若手育成はできないということが説明できればいいのではないですか。
○清家座長 そうすると、あと1つ厄介なのは、希望者全員というときの条件ですか。それは先ほど小畑先生も言われていたように、指針等である程度工夫する。民事効を持たせるというのはどうですか。
○土田高齢者雇用対策課長 あれは前回、岩村先生がおっしゃっていたように、デフォルトをどこに設定するかという問題があります。仮にデフォルトが65歳定年ということになれば、これは取りも直さず、65歳定年制と同じと考えられます。その例外措置として継続雇用制度があるというような話になって、結局措置を講じていない所は65歳定年になります。
○清家座長 そうすると65歳定年制法制化と同じ意味を持つ。
○土田高齢者雇用対策課長 はい、同じになるのではないかと思います。あるいはデフォルトをどこにするかにもよるので、定年制なしをデフォルトにするというのであれば、それはもう定年制なしということが我が国の法制の基本ということになります。民事効を持たせるためには、60歳定年を基本にして65歳定年や定年なしというのを上に重ねるというのは、おそらく難しいだろうと思います。
○清家座長 その場合、使用者側がこういうルールをつくった上で、使用者側に強く、それを必ず履行するようなインセンティブを持たせるための方策というのは、別途設けなくてもいいのですか。
○土田高齢者雇用対策課長 定年が引き上げられてしまえば要らないのだろうとは思いますが、たたき台の中では、尚書きで、仮に雇用確保措置を残すのであれば、公表制度などがあるのではないかということを書いています。
○清家座長 一応議論はあれですけれども、1、2、3を通じて、最初のそもそも論も含めて、この際ご意見をいただければと思います。
○駒村教授 1ポツの所です。2ポツ、3ポツは足元から未来へ、ただ、ここの所は未来から足元へという順番で並べてあって、それはそれでいいかと思っているのですけれども、1ポツのマル1の最初の段落は、どちらかというと、社会的な必要性を書いています。私としては、ここのところをもうちょっと強く言いたい。社会保障制度は全部、世代間扶養になっていますので、多くの人が支えていく社会でなければいけないということについては、労使も国民も共有していただきたいというのが1のマルの前半です。後半ですが、もう一方では社会的な必要性とともに、高齢者自身も自らの能力を発揮していく。今度はミクロというか、先ほどは社会からの要請ですけれども、後半の「このため」以降は、どちらかというとご本人のためにも自分の能力を発揮して、経験を発揮していくということが伝わるような文面にしたらいいかと思いました。
○清家座長 特に日本の場合は、高齢者自身の就労意欲とか生きがい的な考え方も強いので、少し積極的な意味を持たせると。ほかにはいかがでしょうか。
○佐藤教授 先ほどの雇用対策法の所で、「常用の場合は」というのがあったでしょう。例えば60歳で転職する場合、中途採用の求人が出ていて、30歳、40歳で60歳定年という求人の所にはエントリーできないわけですよね。
○土田高齢者雇用対策課長 60歳以上の方がですか。
○佐藤教授 そう。ですから、そこはやはり書いておく必要があるのではないかと思ったのです。
○清家座長 期間の定めのない雇用契約。
○佐藤教授 可能性として、中途採用の所で定年60歳の所は、全部60歳までになってしまうわけですよね。61歳になってしまうと転職しようと思うと、そこはエントリーできなくなってしまいますよね。ですから、それは書くというか、少し議論しないとまずいのではないか。つまり有期の所しかエントリーできなくなるわけですよね。60歳定年の場合、通常の常用雇用で中途採用をしている所は、エントリーできなくなりますよね。
○清家座長 そのときに、例えば60歳定年の会社があるでしょう。それまでその会社に勤めていた人に、61歳までの定年延長は認めていないわけですよね。
○佐藤教授 いや、一応ルールとしては希望者全員ということになるわけですから、再雇用全員でいくわけです。
○清家座長 希望者全員ですけれども、それまでと同じような期間の定めのない雇用ではない。同じ社員には認めていないのに、よそから来た人にだけ認めなければいけないということになると難しいのではないですか。
○佐藤教授 そういう意味ですか。そうですね。
○土田高齢者雇用対策課長 実際に継続雇用制度の8割以上が、1年の有期なので、実態とは整合しているのだろうとは思います。
○清家座長 そういう面でいちばんすっきりするのは、定年を65歳にして、65歳までの採用差別は禁止すると言えばいちばんすっきりします。
○佐藤教授 65歳定年延長をしている所ならいいけれども、どちらにしても60歳を過ぎていると、転職すると有期しかないというか。
○土田高齢者雇用対策課長 ないわけではないですけれども、そういう求人を出すこともできるということです。そういう求人が多くなるだろうということはあるかと思います。
○清家座長 先ほど小畑先生が言われたこととも関係しますが、そもそも論で話すときにこの話というのは、いわゆる期間の定めのない雇用で働いている人たちの同一社内における65歳までの雇用の確保が、たぶん念頭に置かれた趣旨なのです。ただ佐藤先生が言われたように、今はこういうご時勢ですから、どんな働き方であれということは、絶対に書き加える必要があると思うのです。しかし本来の趣旨は、どちらかと言えばどんな働き方であれ、同一社内で65歳まで継続するようにしてくださいということですよね。そこが雇用における一般的年齢差別禁止とは違うところでもあるでしょう。ただ、これだけ流動化し、その他雇用が増えているときに、それでいいのかというのは確かにあります。
○佐藤教授 現状で考えていくと、60歳代になって転職というのは、極端に不利になるということですよね。
○清家座長 おっしゃるとおりです。逆に言えば、1社内での雇用継続を増やす分だけ、外からは減ることになります。しかし、どちらかと言えばそのほうが長年培った能力も活かせていいのではないかというのが、その趣旨でしょうね。
○佐藤教授 あるいは65歳まで定年にしておいて、みんなが転職できるようにするというのが1つです。1社雇用ではなくて、転職もかなりあるということを前提にしなければならないけれども、どこへ行っても65歳だから転職できる。65歳定年だけれども、当然仕事や労働条件などで転職して、行った先も定年が65歳というのが、もう1つのストーリーですよね。
○清家座長 おそらく高年齢者雇用安定法の趣旨は、たぶん前者だろうと思います。もちろん転職、その他が増えているとはいえ、やはり多くの日本の労働者のウェルフェアの向上のために資すると。それは意見の分かれるところかもしれないけれども、一応安定的な雇用をよしとする観点から言えば、そういう趣旨ではないですか。そこが大きな分かれ目です。私は先ほど佐藤さんがおっしゃった、どんな働き方であれ、どんな雇用形態であれ的なものを、この中に織り込むのはいいと思うのですが、いま改正されようとしている法律の趣旨のメインストリームのところは、65歳まで1つの会社の中でということです。そういう点から逆に言えば、先ほど佐藤さんの言ったシルバー人材センター60歳以上を大っぴらに認めるというのも、変と言えば変ですよね。
○佐藤教授 そういう意味では50代半ばで転職するというのが、1つのメッセージになると思うのです。先ほどの10年いなければ雇わないというのと同じ発想で、転職するなら50代半ばぐらいまでに決めて移るほうがいい、60歳を過ぎたら無理という話ですよね。
○土田高齢者雇用対策課長 50歳ぐらいで自分の将来を、1回見つめ直す必要があるということですね。
○清家座長 ですから、そういうものも幅広くできるようにするという条件を、どこかに1個ぐらいマルで入れておいてもいいのかもしれませんね。それは個人のキャリアの観点からです。そういうコンテキストの中でシルバー人材センターがあってもいいのかもしれないというような。ただ、この研究会の報告は少し幅広くていいと思うのです。労働市場の流動化を促進するかどうかというのは、たぶん法律の改正の趣旨とは違います。それはもっと大きな雇用政策というか、労働市場政策のあれでしょうから、違ってくるのでしょう。もしそういう流れがあるとしたら、それをある程度織り込んだ報告にしておくことは必要です。労政審でも厚労省でも、少しどちらかにというのはあるだろうけれども、そんなに皆さん、まだ意見が固まっているわけでもないでしょう。今のところは何となく安定的な雇用を基礎としつつ、流動性を高めるという。
○佐藤教授 ただ、流動化させるかどうか。職業生涯が延びれば、結果として転職者は増えますよね。企業の寿命がこれで延びるかというと短くなるし、それで職業生涯が長くなるのだから、転職する回数が増えるというのは当然ではないでしょうか。ですから、それを前提にしなければいけないかなという気はします。
○清家座長 それはそうです。おっしゃるとおりです。それはこの話と非常に密接に結び付きますよね。個人の雇用期間が長くなるというか、就業期間が長くなることと、個々の企業の雇用保障可能期間が短くなることとのコンビネーションから言えば、やはり労働市場を通じた雇用保障をどのように確保するかというのは大切です。それはいつもあるけれども、一方でそう言うと今度は、では雇い主のほうは自由にもうちょっと首にしてもいいのかという話になってしまい、そこはまたいろいろ議論も出てきます。わかりました。
○駒村教授 これも領空侵犯的になるので、事務局にお願いしなければいけないかもしれません。3ポツの「高齢期における職業能力」という文章は、これでいいわけですか。いまの話だと、むしろ生涯にわたるということだと思うのです。
 もう1つは、健康についてです。やはり生涯現役社会を意識した健康管理というか、労働安全衛生も考えなければいけない。ちょっと古い資料かもしれませんけれども、健康保険組合が解散しているのもあるかもしれないにしろ、企業側が労働者の健康に関心を持たないことが増えてきているような統計を見たことがあります。やはり労使ともに生涯現役社会を意識した健康管理の強化というのも、キーワードとしては重要かと思います。
○清家座長 やはり若い人で非正規が増えて、健診受診率などが落ちると、それは高齢期の就労可能性に影響してくるかもしれませんね。例えば派遣法だと、派元に健診を義務化しているのですよね。
○土田高齢者雇用対策課長 特殊健康診断のような危険業務みたいなものは、派遣先でやることになっていますけれども、一般健康診断は派遣法では派元です。
○清家座長 そういうものが徹底されるように、きちんと健診受診のルールが。いま健保組合だと、受診率が低いと保険料が高くなったりするというインセンティブはないのですか。
○駒村教授 間もなく動くか、止まっているのかどうか。
○清家座長 それにインセンティブが何か付くのですか。
○駒村教授 後期高齢者拠出金に連動させるようなことが、結局どうなっているのかわかりません。
○清家座長 健康投資の話はどこかに入れたほうがいいですよね。ほかによろしいですか。それでは今日いただいた議論を踏まえて、事務局で最終報告の原案をお作りいただくことになるかと思います。次回はそこで出された報告書の原案を議論していただきます。今日のご議論を伺っても、いままで散々議論してきましたので、議論の基本的な方向性については、あまり隔たりはないものと思います。ワーディングも含めて、あるいは少し大きな追加部分もあるかもしれませんが、事務局で原案を作成して、できればその前に各委員に何らかの形で意見を求めていただく機会を持った上で、次回、原案を議論したいと思います。次回は6月7日の3時から開催しますので、それまで事務局に原案を作成していただいて、取りまとめに当たりたいと思います。今日はどうもありがとうございました。


(了)
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(TEL)03-5253-1111(内線5815)

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