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2011年5月17日 精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会 第4回「セクシュアルハラスメント事案に係る分科会」 議事録

労働基準局労災補償部補償課職業病認定対策室

○日時

平成23年5月17日(火)14:00~16:00


○場所

厚生労働省専用第21会議室(中央合同庁舎5号館17階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2)


○出席者

(参集者:五十音順、敬称略)

戒能民江、加茂登志子、黒木宣夫、水島郁子、山口浩一郎

(厚生労働省:事務局)

小宮山洋子、尾澤英夫、河合智則、神保裕臣、渡辺輝生、倉持清子、板垣正、西川聡子

○議事

○倉持職業病認定対策室長補佐 はじめに、本検討会は原則公開としていますが、傍聴される方におかれましては、別途配付しております留意事項をよくお読みいただき、静粛に傍聴いただくとともに、参集者の自由な意見の交換を旨とする検討会の趣旨を損なわないよう、会議の開始前後を問わずご留意をお願いします。
 ただいまから、「第4回精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会 セクシュアルハラスメント事案に係る分科会」を開催します。なお、本日の会議には、小宮山副大臣が出席の予定ですが、少し遅れています。ご了承いただきたいと存じます。
 先生方におかれましては、ご多忙のところご出席いただきまして、誠にありがとうございます。会議を始めるに当たり、事務局から資料の確認等をします。本日用意しました資料は、資料1 論点、資料2 心理的負荷の強度の修正等の目安(案)、資料3-1 ストレス評価に関する調査研究結果と「心理的負荷評価表」における平均的強度、資料3-2 「セクシャルハラスメントを受けた」についての回答分布となっています。資料の欠落等がありましたら、お申し出ください。
 写真撮影等は以上としますので、ご協力をお願いします。
 座長の山口先生、よろしくお願いします。
○山口座長 議事に入ります。前々回は第2回ですが、支援団体、相談機関等におけるセクシュアルハラスメントを原因とする精神障害の発症事例について、ヒアリングを行いました。前回の第3回は非公開でしたが、これまで実際に労災請求のあった事案の内容をお示しいただきまして、認定の背景、問題点をご議論いただいたわけです。
 今日は第4回ですが、前々回のヒアリング、前回の実際の事案、さらに若干議論しました第1回の議論を踏まえ、論点の資料に沿ってご検討をお願いします。
 まず、事務局のほうから資料が提出されていますので、そのご説明をお願いします。
○西川職業病認定業務第一係長 事務局から資料の説明をします。本日用意しました資料1は論点ということで、これは実は第1回の資料3の考えられる論点に対応しているのが基本です。また、ヒアリングでお伺いした事項を踏まえ、新たに追加した論点もあるということの構成になっています。
 中身を説明します。論点1①「セクシュアルハラスメントを受けた」ということの出事事の平均的強度についてどのように考えるか、②強姦、強制わいせつ等の特に心理的負荷が強いセクシュアルハラスメントの取扱いについて明確にしてはどうか、こういったあたりをヒアリングでも少しお話があったところです。
 「ストレス評価に関する調査研究」ということで、資料3-1と3-2に資料を付けていますが、これは昨年度、厚生労働省から日本産業精神保健学会にお願いして、これはセクシュアルハラスメントに限らずということですが、いろいろな出来事の心理的負荷の強度を調査していただいたものがあります。
 資料3-1の19位を見ていただきますと「セクシュアルハラスメントを受けた」という出来事が入っており、点数としては5.6点となっています。
 資料1に戻りますが、こちらの結果では、「セクシュアルハラスメントを受けた」という出来事の平均ストレスは先ほどの5.6点でして、ほかの平均的強度IIIの出来事の水準には至っていないところです。
 ただ、実際の事案を見ましても、出来事の強度をIIと評価したものがいちばん多いのではありますが、極度の心理的負荷があった、非常に強かったと評価したものもありますし、強度をIIIに修正したものも決して少なくはないところです。
 また、資料3-2で同じ調査の回答分布を示していますが、見ていただきますと山の2つあるところがおわかりになるかと思いますが、5点という真ん中ぐらいのところに一山あり、10点という非常に強かったというところにも一山あるところです。
 といったことを踏まえ、出来事の平均的強度はIIとしつつも、IIIに修正する要素を具体的に示してはどうか。また、強姦、強制わいせつのほかいろいろあるかと思いますが、特に心理的負荷が強い出来事については、現行の特別な出来事等、1個だけでも心理的負荷の強度が大変強いというのを評価できるものだということに該当するということを明確にしてはどうかということで挙げています。
 これに関して資料2もご覧いただきたいと思いますが7頁になります。資料2は、論点①②だけでなくてほかの論点も絡みますが、①②に非常に関連が深いので、ここで説明します。
 先ほどの「心理的負荷の強度の修正等の目安(案)」と、これもたたき台ということでご議論いただければと思っているのですが、先ほど申しました心理的負荷が非常に強い、極度だというものに該当するものについて、例えば強姦とか、本人の意思を抑圧してのわいせつ行為などについては、そういったものだというふうに定めてはどうかと。
 2つ目の○では、行為の対応や反復継続の程度等を要素としてIIIといいますか、強い心理的負荷というものだということで修正するというものを示してはどうかと。
 中身としては、1つ目のポツは身体接触を含むもの、2つ目は身体接触のないものを示しています。1つ目のポツですと、身体接触を含む、胸やお尻への身体接触を含むセクシュアルハラスメントでずっと継続して行われた。あるいは単発であっても、そのあと会社に相談しても対応されなかったり、そのあと職場の人間関係が悪化したというものは、評価を強める方向で修正してはどうかと。
 あるいは接触がない事案であっても、発言に限るセクシュアルハラスメントであっても、これは前回のご議論の中でも少し出ていたところですが、発言の中に人格を否定するものを含んで、かつ継続してなされたものとか、あるいは継続してなされていて、その会社の対応がうまくなされなかったという事案については、強いものだと修正してはどうかと。
 修正しない平均的なものが当てはまると考えられるものとして、接触を含むものでも行為が単発であって、会社に相談した結果適切な対応がなされたものとか、あるいは発言に限るものであって、その発言が単発に終わった、あるいは何回か行われたが、相談等の結果適切に対応されて、発病する前に終了したものなどは、平均的なものが原則として当てはまると考えてはどうかと。
 修正にしては弱くなるほうの修正も場合によってはあり得ると考えており、発言の内容が「○○ちゃん」と呼ぶということなどもセクシュアルハラスメントには当たるかと思いますが、そういったものとか、あるいは職場内にポスター等を掲示されたということなどは、比較的心理的負荷が強いということではないという形になってくるのではないかと。こういったことを目安として挙げていますが、こういったものでいいのかどうかということを含めてご議論をいただければと思っています。
 資料1の1頁へ戻り③ですが、繰り返されるセクシュアルハラスメントを適切に評価するために、どのような方策を取ることが適当か。先ほどの資料2の中でも繰り返されること、継続していることは中に含まれていましたが、単発としては強いとはとは言えなくても、一定期間反復継続することで強い心理的負荷と評価できるものがあるのではないかと。先ほどの資料2のような「出来事」と「出来事後の状況が持続する程度」というのも、行為の内容や反復継続の程度を組み合わせて強い心理的負荷と言える方法を具体的に例示してはどうか、ということで挙げています。
 ④です。6か月より前に発生したセクシュアルハラスメントが原因で業務上と認められる精神障害はあると考えられるか。セクシュアルハラスメント事案は、こういった出来事が継続的に発生する事案が多く、そういった事情について考慮する必要があるのではないかということです。判断指針全体について、セクシュアルハラスメントに限らないですが、心理的負荷の評価対象としては、対象疾病の「発病前おおむね6か月」ということで限定しているところです。
 ただ、前回、実際の事案を見ていただきましたが、6か月以上前にセクシュアルハラスメントが発生しているものは多数あり、それは発病までずっと続いているものばかりであり、発病直前の6か月に当該事実がないものは特になかったと。
 なお、1回終わって約1年2か月後に加害者と同部署に配属されたことを契機として発病したものは、1件ありました。こういった状況でして、実際監督署で評価するにあたっても、多くの場合、長期間続くものについては、全体を見て一体的に評価されていたところです。
 こういったところを踏まえて「例えば」ということですが、発病前おおむね6か月という評価期間、それ自体は維持しつつ、6か月より前からずっと続いて発病前6か月以内にも行われているセクシュアルハラスメントについては、こういった継続するという特有の事情から、全体を一体のものとして評価するという扱いとしてはどうか、ということを書いています。
 ⑤ですが、複数の出来事の典型的なものについて総合評価のものを具体的に示すことができないか。次の⑥の出来事後の評価と重なる部分もあるかもしれませんし、別に示せるところもあるのではないかというところがあるかと思いますが、例えばということで四角の中です。対人関係のトラブルを相談したことを契機としてセクシュアルハラスメントがその後起きたものとか、セクシュアルハラスメントへの対応に伴う加害者や同僚からのいじめ、嫌がらせ、こういったことが想定されますので、こういったことについては心理的負荷が強いと判断できるかどうか、そういったことについて具体的な例を示してはどうかということで考えてはどうかということで考えています。
 3頁、⑥ですが、出来事後の状況のうち典型的なものについて、どのように評価する、あるいは評価しないことが適切か、明らかにすることができないか。先ほど資料2の中にも含まれてくるところですが、会社に対してセクシュアルハラスメント被害やその改善を訴えた後に、職場の人間関係が悪化してしまったとか、あるいはせっかく相談したにもかかわらず、会社が何ら対応してくれなかったと、そういった事実は心理的負荷が強まる要素だということを明示してはどうかと。
 また、一方でセクシュアルハラスメントの被害を訴えることができずに、そのため会社も対応しなかったという事案もあるわけですが、だからといって心理的負荷が弱かったということにはならない、ということを明示してはどうかと考えています。
 ⑦は、どの程度の事実関係が確認できれば、心理的負荷の強度を適切に判断できるかということです。どこのラインを越えれば、強い心理的負荷があると認められるかといった典型例、先ほどの表、資料2のそれぞれということになってくるかと思いますが、その典型例をはっきり示すことができれば、その典型例に該当するための確認事項が自ずとおのずとわかってくるのではないかと。そういった確認事項が示されれば、調査の迅束化、請求人の負担の軽減、認定の適正ということにつながっていくのではないか、ということでこの論点を挙げています。
 論点2ですが、こちらは運用に関する論点です。これも①②③はもともと第1回の資料に入っていたところですが、それに対応してヒアリングで言われたこととか、それ以外に事務局で検討したこともありますが、対応策としていくつか考えられることを枠の中に示しています。
 運用に関することとして①、請求に至る前かもしれませんが、請求人が相談や請求を控える場合があるとすれば、その原因は何か。これを解消するために、どのような方策を取ることが適当か、ということでパンフレット等の情報提供とか、相談・窓口の体制とか、請求手続とか、いろいろ観点は考えられるかと思いますが、考えられる対応として、パンフレットの整備ということもあり得るかと思いますし、ヒアリングの中でも、窓口での相談の際に、言われたことによって請求をする気を削がれてしまうこともありましたので、業務上認定が難しい場合でも、相談の際には被害者の立場に立って対応の行うことを徹底すると。認定できますと安請け合いするわけにはいかないでしょうが、調べてみなければならないことも当然あるわけですから、そういったあたりで請求を阻害しないように被害者の立場に立って対応を行う、ということを徹底すべきではないか。
 これもヒアリングでのご指摘はありましたが、請求人からの聴取などをするに当たって、専門的知識を有する職員を配置する、あるいはそういった職員に対して研修を充実させる必要があるのではないかと。こういったことを考えられる対応策として挙げています。
 ②は、監督署における調査の過程で留意すべき事項として何があるかと。特に、請求人や加害者、同僚等からの聴取の際に留意すべき事項は何かということで、これもヒアリングでもご指摘はいろいろありましたが、聴取の留意視点として次のことを示してはどうかと。被害者、加害者等のプライバシー保護に関することと。相手方にもプライバシー保護を依頼するという話もヒアリングでは出ていましたが、そういったこと。聴取の順序に関すること。これもヒアリングでは、被害者から先に聴いて加害者からあとに聴くというお話が出ていましたが、そういったこと。聴取時間、聴取側の人数、担当者の性別に関すること。聴取が長過ぎることがあったというお話。人数があまりにもバランスを欠いている、聴取側が5人いて請求人が1人でつらかったというご指摘もありました。担当者の性別に関することとして、異性の方といいますか、女性が被害者の場合に男性から聴取をするというときには、それでいいかの同意を取るということもヒアリングの中では言われていました。例えばそういったことが考えられるのかと思っています。
 聴取の内容に関することとして、あまり細かく聴いたり、繰り返し聴いたりすると、被害者が責め立てられているような心理状況に陥ったり、あるいは被害のことを思い出して症状を悪化する恐れがある、ということに注意すべきだということを示してはどうかと。
 ③として、当事者にしか事実関係が明らかでないという場合があり得るかと思うのですが、これを明らかにするために有効な手法があるかと。どういったことができるかということですが、当事者の主張に大きな相違がある場合の調査に関して、次のことを示してはどうかと。時系列的に、具体的に行為を確認するため、当時の日記や加害者とのやり取りの録音等の記録があれば、そういったものの収集に努める。あるいは加害者や被害者の主張を否定する方については、可能な限り具体的な情報を示しながら聴取を行う。これはその事案事案によってできることがそれぞれ限られてくるところはあるかもしれませんが、こういったところで調査のための留意点などを示してはどうか。ということでヒアリングを参考にして挙げています。
 5頁3は、ヒアリングで提示された内容に関する論点です。先ほどの1と2のところにも、ヒアリングでご指摘のあったことをいろいろ盛り込ませていただいたつもりではありますが、そこに入らなかったものを第1回の資料3の枠組に入らなかったものについて、新たな論点として挙げています。
 ①は、「セクシュアルハラスメントを受けた」という出来事です。これはいま、判断指針の具体的な出来事の表の中で、「対人関係のトラブル」という出来事の類型に位置づけられているところですが、ここに位置づけることが適当ではないのではないかというご指摘がありました。ヒアリングの中では、事故や災害の体験に位置づけることが適当ではないかということもご指摘がありましたが、事故や災害は外見的に明らかなものだという事情もあり、セクシュアルハラスメントについては当事者しかわからないという特異な事情もありますので、そういったことも含めて取りあえず「対人関係のトラブル」、いわゆる双方向のお互いさまのトラブルではないというというご指摘を受けとめまして、この論点を挙げたところです。
 その他、ここまで1、2の論点のほか、セクシュアルハラスメント事案について特に次のことを考慮すべきではないかということで、いろいろ評価の関係でもヒアリングでご指摘いただいたことを挙げています。被害者の方はセクシュアルハラスメントを軽くしたいとか、まだ働き続けたい、勤務を継続したいという心理から、やむを得ず加害者に迎合するメールを送ることとか、加害者の誘いを受け入れたりするということがあるというご指摘で、こういった事実を単純に合意の根拠とするのは適当でないと。これはいろいろなケースがあるかと思いますが、こういったことがあるからといって単純に合意があったのだということはいかがかと。あるいは被害から相談行動を取るまでには長期間かかることは多いと。これは普通に長期間かかるので、長期間かかったと、相談が遅くなったことをもって単純に心理的負荷が弱いという根拠にすべきではないのではないかと。これは被害者の方は、相談窓口や病院でセクシュアルハラスメントを受けたことをすぐに話せないということも普通にあると。それで、最初の相談のときに話さなかったからという事実をもって単純に心理的負荷が弱いという根拠にすべきではないのではないかと。加害者が被害者に対して優越的な地位にある場合、上司であるとか、そういった立場にある場合には、そういう関係性にあるということで心理的負荷の強度が強くなり得るのだと。これは個体側要因の判断に当たり、被害者の過去の性暴力被害とか、妊娠の経験は判断の要素にならないのではないかと。こういったことを考慮すべきではないか、こういったことを示してはどうかということで論点として挙げています。
 事務局から用意した資料は以上です。これはたたき台として皆様でご議論いただければと思っています。よろしくお願いします。
○山口座長 それでは論点に沿って議論をしていただきたいと思いますが、いま事務局の説明にありましたように、資料1にある「論点」が3つに分かれておりますので、その順序でお願いいたします。それから、資料1の論点の1と資料2というのは関連していると思いますので、これをご覧いただきながら論点の1をご議論いただきたいと思います。
 1は認定の基準に関する問題点ですが、⑦までありますので、順序はこだわりませんが、できれば最初のほうからお願いしたいと思います。どなたからでも結構です。
 まず、平均的な強度がどうかということですが、資料3に付いている夏目先生の新しい調査では、位置づけとしては大体IIというところのようですが、この辺についてはどうでしょうか。
○戒能先生 そういうご研究から19位ということを出されたというご説明を受けたのですが、今回はそういう調査だとしても、今日すぐに資料はわかりませんが、対象となる人で、1つは性別の問題で、女性が少なかったような気がいたします。
 もう1つは、このセクシュアルハラスメントというのは重いのから軽いのまで本当にいろいろなケースがあると思うのですが、比較的対象者が正社員の方が多かったような気がします。そうすると、非常勤、派遣という受けやすい方々の経験が反映できるような調査の仕組みを、今後ご検討いただけると、より実態が反映できるのではないかという感想を持ちました。
○山口座長 いまの点はこういうことではどうでしょうか。I、II、IIIは平均的な基準ですから、ほかの部分もそういう問題はいろいろとあるわけです。だから、平均的な基準は平均的な基準として出して、その出来事を評価する視点、あるいは出来事に関連した事情、そこのところで、例えば雇用形態などの事情が評価されてくるのではないかと思います。
○戒能先生 前回ケースを見ていただいたときも、そのことがよくわかりましたので、それは今回はそういう方法でよろしいかなと思っております。
○山口座長 それと、平均的な位置づけはそうといたしましても、論点の②にありますように、強姦、強制わいせつ等の特に心理的負荷が強いセクシュアルハラスメントの取扱いについて、明確にしてはどうか。これも「明確にする」とまでは書いてありませんが、この前のご議論では、皆さんからあまり反対の意見がないというか、このようにしたらどうかという雰囲気だったように思います。
 この点は平成17年に「セクシュアルハラスメントによる精神障害等の業務上外の認定について」という通達が出ていまして、そこでもこういうことが指摘されておりますので、この議論の中でも、こういう方向で解決をしていくというのが、皆様のお考えではなかったかと思いますが、どうでしょうか。
○河合補償課長 ここの部分は特別な出来事ということで別立てにして、言い方は悪いのですが、一発認定の対象にする形で入れるというお考えでよろしいでしょうか。
○山口座長 私はいいのではないかと思います。皆様のご意見もそういうことでよろしいですね。
(異議なし)
○山口座長 それでは②はそういう方向でお願いいたします。
 次は、繰り返される場合の評価を適切にするにはどうしたらいいかという論点です。これは④とも関係しているのではないかと思いますが、資料1の3のヒアリングで提示された論点なのですが、②のいちばん最初の継続的なタイプで、勤務を継続したいという心理から、やむを得ず加害者に迎合するようなメールが送られることがあることを、ヒアリングの中で指摘をいただいたわけです。これに関連しているのではないかと思います。あとの4つの問題も、そういう要素が強いことになると思いますが、この評価をどうするかです。
○西川職業病認定業務第一係長 資料2でも修正の目安の中に、IIIに修正してはどうかというものの中で、継続して行われたようなものについて、継続のものと単発のものと書き分けてお示しさせていただいておりますので、その継続する事情の中に、先ほどの迎合するようなメールというのも、事情の中にはいろいろと出てくるのかと思います。こういった資料2の中で、こういう形で修正することでよいのかどうかという形でご議論をいただければと思っております。
○黒木先生 迎合メールというのは、どのように考えるのですか。本人は仕事の継続、あるいは加害者に好意を寄せるようなメールを送るということですよね。
○西川職業病認定業務第一係長 はい。
○黒木先生 でも、その真意というのはわからないですよね。
○西川職業病認定業務第一係長 真意がどうであったか、外形的に見て、例えば「楽しかったです」といったようなことが書いてあったからといって、それだけをもって合意があったと見るのではなく、本当に楽しくてそう書いていたのか、働き続けたいという関係からそう書いていたのか。
○黒木先生 それはわかりますが、それはそういう状況で、本人の心理状況を推測するというか把握するということですよね。だから、客観的に見て、いろいろな職場の周辺の情報というのは大事なので、その人たちから見ても、その一定期間は本人が相手と非常に仲よくしていたとか、そういうことだってあるわけですよね。でも、それが例えば1年あるいは何か月か過ぎて、それは違うのだということを言ったとしても、そこをどう扱うかということなので、それは留意するという程度でいいのではないかなと思います。
○山口座長 どうでしょうか。
○河合補償課長 いずれにしても、事案ごとに違ってくるところがあると思います。ただ、外見的な姿だけで見て単純に考えるなとしておかないと、現場も、こういうのはあるから右から左へということでもないのだということは、書いておいたほうがいいかなという意味で。
○黒木先生 留意するということであれば、それは構わないと思います。
○山口座長 私もそれでいいと思いますが、難しいのは迎合なのかどうかという判断でしょう。黒木先生は、いろいろな状況を見て客観的にとおっしゃいましたが、こういう場合に難しいのは、客観的な状況と本人の主観的な意図が合っていないから難しいのではないですか。
○河合補償課長 それは難しいと思います。
○山口座長 最初の印象、データで一方的に決め付けないで、よく見るということしかないのではないでしょうか。
○加茂先生 仲よく見えたというのも、外から見えただけの可能性もありますよね。
○黒木先生 もちろんそうなのです。だから、外からはそのように見えたかもしれない。いろいろな事例がありますが、本人が実際に加害者といろいろなところへ行ったりと。そして、あるトラブルを経験して、その加害者とうまくいかなくなる。そこから、自分はセクハラを受けたのだという主張をする人もいるわけです。だから、あのときはこうだったけれども、実際は違うのだということを言う場合もあると思うのです。
 だから、そこを精神疾患が発症するような、セクハラとしての要因があったのかどうか。そこは非常に難しいと思うのです。真実が何かというのはわからない部分があると思うので、かといって、本人が合わせたというところも配慮に入れるということは必要かなという気はします。
○河合補償課長 症例として、こういうことは結構あるのでしょうか。
○加茂先生 非常に多いと思います。
○黒木先生 裁判事例は非常に多いのです。
○河合補償課長 先生のところに相談に行かれるのも、そういうのは結構多いのですか。
○加茂先生 単発の強姦ケースはほとんどないと思います。最初はこういう始まり方をして、黙っていたらだんだんそれが合意だと取られて、何度も誘われるようになって、そのうちに、ここで話題になっている迎合メールが頻回にやり取りされるし、誘われると付いて行って、「楽しい」と言ってみたりというケースなのです。実際に大きく問題になるのは、このケースだろうと思います。
 ほとんどが、いま言ったような、メールの内容がどうこうということ、楽しそうにしていた、そういったところがポイントになってきてしまうのです。
○河合補償課長 ある意味では、物証が残っていますよね。
○加茂先生 物証というか印象なのです。周りから見た印象と、メールなのです。
○戒能先生 メールは、内容が残りますからね。
○河合補償課長 そうなのですよね。
○戒能先生 そうなのです。
○西川職業病認定業務第一係長 残されたメール自体はあるものなので、それはそれ自体として、こういったものがあったという事実はあるわけですので、それがどういう気持から出されたものか。先ほど黒木先生がおっしゃられた、途中でこういう出来事があって、そこから変わっているということになれば、それはそれで評価のときにそれを見て判断することになるでしょうし、そうではなくてずっと続いていて、どこかで耐えきれなくなってというケースもあるのでしょうし、これは事案の全体を見ていかざるを得ないということですよね。
○黒木先生 メールの内容によると思うのです。例えば相手に合わせてどこかへ行くとか、短いメールしか入っていないと。しかし、いろいろなメールに相手のことをこのように思った、相手の言葉にこのように傷ついた、相手にこのようなことを要求した、本当はこのようにしたかったと、かなり長いメールが送られてくると。そうすると、それはその時点では本人の真実に近い部分はあるのではないかなという気はするのです。だから、そこは分析してみないとわからないです。
 そういう長いメールがたくさんあって、どこかからおかしくなると。お互いにうまくいかなくなって、あのときは違うのだと言い出すという事例も、中にはあるわけです。だから、これは事例ごとに検討するしかないと思います。
○西川職業病認定業務第一係長 いまのところ現場では、やむを得ずこういったメールが送られることも一般的であるということ。
○黒木先生 一般的というのはまずいと思います。
○西川職業病認定業務第一係長 あり得るということまで共通認識にななっているわけではないので、その点は注意喚起をすると。もちろん事案はさまざまですので、そこはよく見てやっていこうというようなことは必要なのかなと。
○加茂先生 一般的とまでは言えないかもしれませんが、わりと多いということはあります。
○河合補償課長 こういう文言をきちんと報告書に織り込んでいくということは、非常に意味があるということですね。
○加茂先生 すごく意味があると思います。
○山口座長 いまのでよろしいですか。私は反対ではありませんが、申し上げておきたいのは、日本の場合は、セクハラの被害者は圧倒的に女性です。アメリカなどを見ていますと、かなり多くは男になってきているのです。男性も被害者になるようになってくると、ここはもう少し違った要素で見られるようになると思うのですが、いまの状況では、私も皆さんがおっしゃったことに賛成です。ただ、セクハラの現象としては、理論的には問題を抱えている点なのだということだけ申し上げておきます。
○黒木先生 それは事実の判断、認識に逆の影響を与える可能性があるということですね。
○山口座長 はい。
○加茂先生 セクハラ事案というのではないですが、拉致監禁事件の刑事になった案件を見たことがあるのですが、犯人がこういうメールを送らせているということもあるのです。その辺も1つのポイントかと思うのですが。
○山口座長 それはもちろんそうです。脅迫されることを察知して送っているということもあると思います。
○加茂先生 ありますよね。だから、その文書の中身だけを見て決めるというのは、非常に問題が大きいのではないかと思います。
○水島先生 継続という点で1点確認させていただきたいのですが、資料2に反復、継続の程度を要素としてIIIに修正する例として、どちらのケースも会社に相談しても対応改善されなかったということが入っていまして、これがあたかも要件のようになっているのですが、これは要件としてお考えなのか、あるいは例示ということでしょうか。
○西川職業病認定業務第一係長 資料2全体は修正の目安ということで、典型例というのも変ですが、こういったものについては修正するのが普通だと考えてよいのではないかというたたき台として出させていただいたものです。
 いまご指摘があったのは、2つ目の○の1ポツと2ポツの趣旨かと思います。説明が十分でなかったかもしれませんが、まず1つ目のポツのほうは、胸やお尻への身体接触を含むセクシュアルハラスメントで継続して行われたものです。それはそれだけを想定しています。または、単発であっても、その後それを会社に相談したのに、会社に対応してもらえない、単発であっても会社に相談したら、そのことで職場の人間関係がこじれてしまったとか、そういったものが加わった場合に、全体として見たときに、平均的というよりはより強いケースと修正してよいのではないか、という想定で書いております。
 2ポツ目のほうの接触がない場合は、ひどいものもあるのでしょうけれども、接触の場合とは多少違う場合もあるのかなということで、身体接触のない性的な発言に限るセクシュアルハラスメントであれば、発言の中に人格を否定するようなものがあって、かつ継続してなされた事案、あるいはずっと継続してなされていて、会社に相談しても対応がうまくなされなかったという事案、こういったものに当てはまる場合には、一般的にはIIからより強いところへ修正するのが普通と考えてはどうかということでお示ししております。
○水島先生 誤解しておりました。改めて確認させていただきますが、つまり2つ目のほうは、人格を否定するようなセクハラであれば、会社への相談如何にかかわらず、継続されていればIIIが修正相当であるということですね。
○西川職業病認定業務第一係長 そういうことでたたき台としては出させていただいております。先生方がよろしければ、そのような形でいかがかということです。
○山口座長 そこはご理解いただいて、人格を否定する程度にまで至っていなくても。
○黒木先生 この単発というのは、内容によっていろいろあると思うのです。身体的な接触で。ここで単発というと、どのようなところを単発として考えておられるのですか。
○西川職業病認定業務第一係長 胸や尻への身体接触を含むセクシュアルハラスメントが1度行われたと、それよりもこういった場合ということを具体的に想定を書き込んだほうがいいのではないかというご指摘でしょうか。
○黒木先生 例えば相談しても対応改善されなかったと。これもセクハラ委員会にかけて、それはセクハラとは言えないということもあるかもしれないですよね。
○西川職業病認定業務第一係長 それはあるかもしれないですね。
○黒木先生 例えば相談をして、委員会にかければ、対応したということになるのですか。
○戒能先生 単に委員会が開かれたということだけではなくて、それによって何らかの改善が行われたという意味かなと。
○河合補償課長 加害者への措置。
○戒能先生 それも含めての環境の改善ですね。
○河合補償課長 大きいものは、上の強制わいせつに入ってくるので。
○戒能先生 それ以外の。
○河合補償課長 ここの部分は、我々としてはそこに至らないものと考えております。ただ、それだって仮に単発であっても、強制わいせつに至らないものであっても、会社が放置しているような状況であれば、そこは加味したほうがいいのではないかという事務局としての考えです。そういう意味では、現在でいう出来事後の措置ですよね。
○山口座長 セクハラそのものは、実際には身体接触があるかないかで分けているわけですよね。
○西川職業病認定業務第一係長 この資料についてはそうです。
○山口座長 上のほうは、身体的接触があっても、言葉はともかくとして単発のほうも入ると。
○西川職業病認定業務第一係長 はい。
○山口座長 下のほうは、継続型だけを念頭に置いているということですね。
○河合補償課長 そういう意味では、身体接触を少し強く評価するということですね。
○西川職業病認定業務第一係長 身体接触がない場合と比べてですね。
○山口座長 それは考慮に入れるとして、現在の評価表の中でそれを考慮していくとすると、どのような措置がいちばんスムーズかということが次の問題です。いちばんスムーズなのは、出来事がセクハラになっているわけですから、その後の事情の変化という要素で、ただしそれが裁量的にプラスでもマイナスでもいいというのではなくて、これはこういう方向で評価しなさいということだったらいいのではないかと思いますが。
○西川職業病認定業務第一係長 いまの表全体のご議論は、本体の専門検討会でご議論いただかないといいけないと思っておりますので、このセクハラの分科会では、こういったものはこういう形で評価すべきだということを取りまとめていただければ、全体との関係については、こちらの報告書を本体に上げたときに、ですからこれをこのように盛り込みましょうという話になるのかなと思っております。
○山口座長 水島先生、それはどうですか。
○水島先生 はい。
○山口座長 ③はその程度でよろしければ、④に進みます。これは現在の心理的負荷の評価の対象になる期間が、発症前おおむね6か月としていまして、実際にこの前非公開で議論した例からいうと、6か月以上前にセクシュアルハラスメントが発生して、直前の6か月に該当事実がないものがないということがわかりましたので、一応これでいいのではないかという気もいたしますが、どうでしょうか。
○黒木先生 セクハラ以後は何かあったのですよね。6か月前にセクハラがあって、発症の6か月の間には何か変化はあったのですよね。
○西川職業病認定業務第一係長 ずっと継続していたものについては、セクハラ自体も続いていましたし、職場の中での配置転換も対応しなかったということです。
○加茂先生 かなり特別な事例になると思うのですが、単発の強姦などの事例で強い解離反応などが起きた場合などには、発症が6か月を超えてしまうことがあるのではないかなとは思うのです。そういったものは、オミットしてしまうのかという問題はあるかと思います。
○黒木先生 例えばどのような事例でしょうか。
○加茂先生 レイプの事例でよくあるのですが、そういう事件があって、激しい衝撃を受けて、解離の症状が非常に激しくなって、淡々と仕事はできているのだけれども、実は発症していて、1年後ぐらいにPTSDや抑うつの症状が出てくるというケースもゼロではないです。
○黒木先生 発症はずっと前ですよね。
○加茂先生 発症はずっと前と見てもらえるならば、それはいいのかと思います。
○黒木先生 解離反応が起きたところを発症とすれば、当然6か月以内に入るわけですよね。
○加茂先生 そうです。
○黒木先生 6か月以内に入るという考えでいいと思います。
○加茂先生 それはそうですね。
○黒木先生 だから、あとはその出来事をどのくらい引きずっていたか、あるいは影響があったかという話になってくると。
 だから、出来事があって、それが6か月以内であれば、当然その対象になるわけですから、それは発症と精神疾患の因果関係ということですから、それは大丈夫だと思います。
○加茂先生 心配しているのは、例えば解離反応が大きかった場合に、本人の受診がないと至らない場合がありますよね。
○黒木先生 それは受診をしていなくても、発症はその前に認められるということであれば、それはいいのではないですか。必ずしも受診していない人もいるわけですから。
○加茂先生 遡及をして、そこから解離反応が始まっているとすれば、そこでよいと。
○戒能先生 診断が出ればということですね。
○黒木先生 遡ってみて、そこで発症していたと。しかし本人は医療には受診していなかった。でも、そのときの発症は6か月以内ということもあるし、それは当然因果関係はあるということになります。
○加茂先生 わかりました。
○河合補償課長 いまのような事案というのは特殊な案件なのでしょうか、それともわりとあるような話なのでしょうか。
○加茂先生 わりとあるのです。というのは、強姦というのは女性にとって非常に大きなものであったり、受ける人がわりと若い女性であったりということもあって、最初にそのような驚愕反応に近いような解離反応が起きることがあるのです。やっと医療につながるのが何年後というケースが結構ありますので。
○河合補償課長 そういう意味では、診断の問題であるということですね。
○加茂先生 そうですね。発症をどこに見るかという、診断の問題だと考えれば、それはいいのかなとも思います。
○河合補償課長 そこの辺を危惧されてというお話ですね。
○加茂先生 そうです。一見何ともないように見えるケースがあるので、そこですね。非常に淡々とやっていたように見えたという反応は、周囲から多く見られるので、そこを心配しました。
○黒木先生 自殺の事案というのは、ほとんど医療機関にかかっていないですよね。
○加茂先生 そうですね。
○黒木先生 やはり発症時期は必ず特定しますから。
○山口座長 セクハラの事例ではありませんが、いま黒木先生がおっしゃったように、自殺の事例というのはほとんど医者にかかっていないのです。ところが認定基準だと、発症の時点を明確にするということになっているから、これが明らかにならないのです。
○戒能先生 難しいですよね。
○山口座長 出来事があって、翌日に自殺している人もいるのです。
○戒能先生 発症しているのかどうか。
○山口座長 発症しているのか、していないのかわからないのですが、裁判になればそれなりに裁判所は、前日に発症していたものと認めるとかやっていますが、なかなか難しいです。
○加茂先生 自殺の場合にそういうケースが多々あるということは、認定の人たちもよくわかっているのですが、セクハラという言葉は軽いので、そこまで重い事例があることを医師の側も知らない人は結構いるのではないかと思うのです。そこも、診断する側の態度としても心配になるところではあるのです。
○山口座長 よろしければ、加茂先生がおっしゃった点に、④では発症の判断に十分注意をするということにして、⑤に入ります。セクハラ事案で、複数の出来事が起こる場合があって、それは何らかの形で総合的に評価したほうがいいのではないか。もしそうだとすると、何か典型的な例について、具体的に示すことができないだろうかと。
 先ほど発症後の会社の対応、対人関係の変化は考慮されておりましたから、それと似たような関係で、何かここでまとめられるものがあればということだと思います。
 いまの評価表だと、セクハラを受けて、そのこと自体は大したことはないとして、そのことをきっかけとして、上司や同僚から著しい嫌がらせなどを受けるようになったと。それは嫌がらせのほうで、別に評価するのでしょうか。
○西川職業病認定業務第一係長 いまのは何が出来事後で、何が違う出来事かというご判断かと思うのですが、違う出来事の類型に当てはまれば、大体は違う出来事の類型に当てはめてやっているのではないかと思われますので、その後の状況が、それを見て「上司とのトラブル」、「ひどいいじめ、嫌がらせまたは暴行を受けた」に該当すると判断した場合には、それぞれ2つの出来事を拾っているとは思いますが、そこまでに至らないと思って、出来事後の状況で評価していることもあるかもしれません。その辺は何とも言えません。
○山口座長 出来事の強度、状況にかかわることですから、それを見てみないと言えませんが、理屈の上だけから言えば、複数の出来事といっても、同じ強度の複数の出来事が続いている、間を置いているという場合と、続いて行われたことによって、強度がその回数だけ強くなっていること、さらに回数が繰り返されていることによって、足し算ではなく掛け算のように強くなる場合とあると思うのですが、そういうので適切な事例をうまくまとめられると、非常にやりやすいような気もするのですが、難しいですかね。
○戒能先生 訴えたことで孤立したり、いじめを受けたりというのは、すごく一般的ですよね。だから、まさに第1位の嫌がらせ、いじめのひどいものになる場合が、多々あるのではないかなと思います。そういうことをまとめてくださると、事実の評価が違ってくると思います。
○山口座長 会社の対応を取り上げて、そのこと自体はコンプライアンスの観点から放っておいてはいけないことですから、使用者の対応のタイプを見てみて、足し算か掛け算かで考え方をまとめたらどうでしょうか。
○西川職業病認定業務第一係長 足し算、掛け算と言いますと、加重すると言いますか、評価を上げる。
○山口座長 いちばん簡単なのは、回数の評価の問題だと思うのです。2回行われたからIではなくIIになる、あるいは2回行われたから足し算ではなく、掛け算になるという場合もあると思いますが、それを使用者の対応いかんでうまく分けられないですかね。
○河合補償課長 これはセクハラだけに限るものではなくて、ほかの案件にだいぶはねてくることは間違いないです。そこの部分のご指摘は。
○山口座長 難しいですか。
○河合補償課長 いえ、親検討会でも議論をしないと、足していくのか掛けるのかは、この場での結論は難しいのかなとも思いますが。
○山口座長 難しいとは思いますが、それがあったらやりやすいのです。例えば対応でも、相談した課長代理、課長が、「何を言ってんだ」というのと、社長が「とんでもない、お前の心得違いだ」といっているのと、それは違うのではないかという気がするということなのです。
○西川職業病認定業務第一係長 会社の対応という意味では、セクシュアルハラスメントの事案の場合は、出来事後の状況を会社の対応を監督署でも見ております。足並みを揃えてその評価をやっているかどうかは別として。
○山口座長 会社の対応の評価をどうするかということです。
○西川職業病認定業務第一係長 それで、先ほどの資料2にもそういったことを盛り込んでお示しさせていただいて、こういったものでどうでしょうかということでお示しさせていただいたところです。
 そういった対応でよろしいのか、先ほどの⑤で例に挙げているような、例えば別のトラブルがあって相談したらセクハラになったというのは、必ずしも会社の対応がということとも違ってくるものかと思いますので、こういったものについて、一連だから上げていいというのか、個別にバラバラだから何とも言えない、ケース・バイ・ケースだということになるのか、いかがでしょうか。
○山口座長 医学的な観点から見たらどうですか。対人関係にトラブルがあって、それを相談したことが契機でセクハラが生じる。これをバラバラに評価するか、総合的に評価するか。セクハラに対する対応で、加害者や同僚から、いじめや嫌がらせを受けると。
○黒木先生 それは総合ですよね。
○山口座長 やはり心理的負荷は強くなるという考え方ですか。
○黒木先生 当然だと思います。
○山口座長 そうすると、これは総合的に評価するという方向ですね。
○渡辺職業病認定対策室長 現在の判断指針では、例えば6か月の期間に複数の出来事が生じた場合は総合的に評価するという考え方は示しております。ただ、なかなかそれが具体化されていないものですから、実際の事例で、この事案とこの事案を総合的にIIIと評価したと、きちんと体系づけられたものというのは見受けられていないというのが、実情です。
 できればセクハラに限らず、ある意味典型的というか、この出来事とこの出来事というのは、付随的に起こることがよくあるというものについては、これとこれがあったら、こう評価していいのではないかということを、セクハラに限らず、ほかのものでも示せたらなと。これは親の検討会の話になりますが。ここでは、特にセクハラに限定して、こういうこととこういうことが起きた場合にはIIIとして評価するという、その考え方を具体化したのが資料2だと。事務局の整理としては、そのような感じです。
○黒木先生 例示をするということですよね。
○渡辺職業病認定対策室長 そうですね。それが資料2の中の具体的な文言に、この2つは盛り込まれています。IIIに修正するものとして、こういうものが盛り込まれております。
 ここには「対人関係のトラブルを契機として」というのは、具体的に書いていないのですが、2つ目のものは具体的に書かれております。できれば対人関係のトラブルが先にあって。
○山口座長 評価表は医学的根拠があってできているわけですが、いわゆるライフイベント方法ですから、総合的に評価するとなっていても、出来事ひとつひとつは独立していて、お互いにはつながっていない。出来事に関するいろいろな事情を総合的に判断するという考え方なのだろうと思います。
 いま室長がおっしゃったのは、出来事そのものがくっ付いている場合もあるのではないかと。これは実際に起こる場合に、しばしば我々も経験することですが、いままでの評価表の考え方とは少し違うような気もしますが。それは資料2の論点もそうですし、ヒアリングで出ていた、セクハラを対人関係のトラブルというのではなく、事故として位置づけたらどうかとの絡みだと思います。
○黒木先生 いま室長がおっしゃったのは、セクハラがあって、その出来事が重なるというか複数起こると、その後の会社の対応とか、相談をしてもなかなか相談に応じてくれないという出来事後のことですよね。そうではなくて、セクハラプラス何か付いてくるという考えですか。
○渡辺職業病認定対策室長 はい。例えば⑤で示してあるものも、セクハラと上司とのトラブルとが生じているわけです。それぞれの評価を単独でして、それがある近接した時期に起こっているわけですから、その心理的負荷の総合評価をするというのが、いまの評価表の考え方には示してあるのです。ではIIとIIがあったらIIIにできるかというと、そうはできない。そこは精神医の先生に総合評価をしていただいてくださいという形をとっていることが多いですね。
○黒木先生 上司が加害者であると、当然大変なことが起こってきますよね。
○山口座長 黒木先生がおっしゃったケースは、現在の評価表の運用の方法に従えば、評価表の平均的な強度に当てはめた後の事情として評価するわけですが、それでは足りないですか。
○黒木先生 いや、今までずっと評価表でやってきているので、セクハラに限らず、例えば仕事に失敗してそのミスを補おうとしたら、当然仕事量が増える、残業も増えるということで、これらは大体連動しているのです。ずっと事例を見ていると、出来事が連動するということは結構あると思います。ですからセクハラも多くの事例を分析して、連動しているケースでこういう場合は認定になっているとか、ある程度事実の傾向があれば、それは検討してもいいのではないかという気がします。
○渡辺職業病認定対策室長 ここに掲げてある2つは、実際の事例をずっと集めた中で実際に出てきた2つです。実際にこういう事例があってということです。
○山口座長 いまのというのは⑤ですか。
○渡辺職業病認定対策室長 そうです。⑤の四角の中の2ポツぐらいです。
○山口座長 そうすると下のほうはいいけれども、上のほうはやりにくいですよね。
○渡辺職業病認定対策室長 そうですね。これはちょっと難しいですね。
○黒木先生 下はわかりますよね。
○山口座長 下はよくあるケースですから変化で。
○黒木先生 上はやはり連動はちょっと難しいと思います。連動というのは、あくまでもセクハラという行為があって、その後に起こってくる。一時的にセクハラがあって、その間に上司のいじめとか同僚が無視するとか、そういったことがつながってくるというのであれば例示できるのではないかという気はします。
○渡辺職業病認定対策室長 1つ目のポツが難しいものですから、資料2の中にも具体的に書いていないのです。2ポツ目は具体的に入れたのですが、1つ目は我々も難しいからなかなか書けないのです。
○戒能先生 1つではないような状況がありますよね。複数ありましたよね。
○山口座長 対人関係のトラブルを相談したことがある。セクハラの原因になっていれば、一連のセクハラの行為として評価できるのですけれども、前後関係だけだとどうかな。
○黒木先生 相手も違ってしまうわけですよね。
○西川職業病認定業務第一係長 できるところまででもお示しいただければ、やはり現場としてはやりやすくなるはずです。1つ目のポツはケースによってさまざまだということであれば、2つ目のケースのようなパターンは、一般的に評価を上げてもいいのではないかということであれば、それはそれでそういったことをお示しいただくことも、非常に意味のあることかと思います。
○河合補償課長 具体例というか典型例という意味で、下のほうを付ける形で。
○黒木先生 下のほうはいいです。
○山口座長 下のほうはよくあるケースだし、必ず出ているけれども。
○河合補償課長 もちろん事例はありましたけれども、何となく特殊というか。可能性は大いにあると思いますが、どちらかというと。
○西川職業病認定業務第一係長 下に比べれば少ないというのはあると思います。
○加茂先生 1例目は、例えば職場内の女性の同僚などとうまくいかないことがあって、そこの部長とそのことについて相談しようと行ったら、「飲みに行こう」と言われて、そこで性的関係を強要されたというケースを想定するのがいいのですか。
○戒能先生 必ずしもストレートにはいかないかもしれないけれども、そういう場合もあると言っておきたいところですよね。
○山口座長 それと関連して、対人関係ではなくて事故と位置づけるというのはどうですか。
○黒木先生 事故と言うと、何か偶発的ですよね。ちょっと違うような感じです。
○戒能先生 事故も、特に被害を受けた人は本当にそう思うというのはよくわかるのです。ただ。
○山口座長 私も被害者の気持ちは、まさにそういうことでよくわかる気もするのです。ただ、認定の評価表の仕組み等々からいきますと、事故というのは会社で爆発事故があってひどいけがをしたようなケースですから、必ず前提としてその事故が業務とどういう関係があるかということが問題になって、業務遂行性や業務起因性が問題にならざるを得ないのです。いまセクハラが対人関係に入っているのは、職場の対人関係が前提だからで、業務との関係ということ自体、あまり独立に問題にならないのです。対人関係が職場の中にセットされているから。
 そういう意味では、対人関係に入れておいたほうが認定しやすいと思います。セクハラでも業務に関係がなく、個人的な関係で起こることはいくらでもあると思いますから、それをいろいろチェックしていくことになったら認定が大変です。私個人は、対人関係に置いておいたほうがセクハラに対する認定がやりやすくなると思っているのです。
○戒能先生 たぶん対人関係はそうかもしれませんが、対人関係の相互性みたいなものがトラブルですから、それが想定されて事故ではないかというご意見が出ているのではないかと思うのです。これは親委員会のお仕事かもしれませんが、1つの考え方として、こういう検討会が始められた意義の1つに、セクシュアルハラスメントが精神的な被害の労災の独立した問題になってしまっています。ですから、どこに位置づくのかわからないけれども、最後になるのかわからないけれども、セクシュアルハラスメントという項目があってもいいような気もしています。最終的にここで検討しているようなことが、この表の中に入り込んでいくことになると、だいぶ違うのではないかという気はしているのです。個人的にそんなことを考えております。
○山口座長 それは十分考えられるのではないかと思います。いまはセクハラだけが問題になっていますけれども、もう1つ大きな問題として、いじめというのが非常に増えてきています。これには単なる対人関係のトラブルではない要素もありますから、長期的に見ると私は、いずれセクハラやいじめというのは別のジャンルになり得る可能性が大きいと思います。ですから、そういう考え方は十分あり得るということにしておいて、評価表自体の項目立て、評価表自体の問題になりますから、親委員会のほうでご判断いただいたらどうですか。考え方としては。
○西川職業病認定業務第一係長 独立させることもあり得るのではないかと、ここではまとめていただいて。確かに全体の作り自体は、親委員会で表のご検討をいただかなければいけません。とりあえず、ここはセクハラの分科会ということで、セクシュアルハラスメントについては両先生とも。
○山口座長 対人関係の中でもセクハラには、特別の要素があるという認識は必要ということですね。
○河合補償課長 そのような形で報告書をまとめるということでよろしいでしょうか。
○山口座長 いまの程度だったら、皆さんもご異論はないと思います。
○黒木先生 先ほど事故とおっしゃいましたけれども、確かに強姦などは本人にとってみれば寝耳に水で、突然起こったものに関しては業務の中で、人間関係の中で起こるものとは違う種類ですよね。セクハラにしても性質とか程度とか、いろいろなものがあるので、いま言われたような議論は親委員会でもすべきだろうと思います。
○加茂先生 「ひどいいじめ、嫌がらせ又は暴行があった」というのは、どこに入っているのでしたか。これも対人関係ですか。
○西川職業病認定業務第一係長 いまは対人関係に入っています。第1回の資料があるかと思います。
○戒能先生 対人関係ですと、ひどい嫌がらせですね。
○山口座長 これも元の評価表にはなくて、改正のときに入ったのでしょう。
○西川職業病認定業務第一係長 そうですね。一昨年の改正のときに追加されたものです。第1回の資料6の。
○黒木先生 表を見てもらえば1番。
○西川職業病認定業務第一係長 それは改正のときです。
○山口座長 それではよろしいですか。次は⑥、出来事を個々の状況に応じ、典型的なものについてどのように評価するか、あるいは、しないのが適切か明らかにすることができないかということです。これは今までの議論の中でかなり明らかにするというか、できるという方向で議論が進んできていますから、その中で出たものはなるべく拾っていただきます。ここにもありますように、会社に対してセクシュアルハラスメントの被害やその改善を訴えた後に、職場の人間関係が悪化した事実、会社が何ら対応しなかった事実は、心理的負荷が強まる要素であると例示してはどうかということについては、皆さん大体こういうお考えの下で発言なされてきたのではないかと思います。その次のセクシュアルハラスメントの被害を訴えず、そのため会社が対応しなかった事実は、心理的負荷の強度を弱める要素とはならないことを明示したらどうかというのは、どうですか。
○水島先生 ちょっと引っかかったのですが、弱める要素とはならないと言いましょうか、心理的負荷の強度の判断に入れてはならないというか、影響を与えないということまでではないかと思ったのです。これを読みますと、逆にセクシュアルハラスメントの被害を訴えて、その後に会社が対応した場合には、心理的負荷の強度を弱めるというように読めてしまう感じがいたしました。そうではなくて、おそらく変わらないということではないかと思いました。弱めることにも強めることにもならないのではないでしょうか。
○西川職業病認定業務第一係長 対応されたとしても、弱くも強くもならないということですか。
○水島先生 私はそうではないかと読みました。
○戒能先生 それとの関係で資料2です。私がこだわっているのが修正しないもの、IIがIIのままというところです。いまは少しニュアンスが違うのかもしれませんけれども、どちらにも影響がないという意味ではそうなるのですが、適切な対応がされるとそのままだというところがちょっと。会社で対応されても。その辺はご専門の先生のご意見をお聞きしたいところです。
○黒木先生 これだけを見ると、例えば職場で本人が2人分の仕事をして、誰もサポートがなかった、やはり支援体制が欠如していたということになれば、当然増えますよね。これはそういう事後措置として、ある程度対応することによって弱まるということを言っているのではないですか。違うのですか。
○西川職業病認定業務第一係長 趣旨としてはそういうことです。
○戒能先生 そういう場合もあるけれども、そうでない場合もある。
○黒木先生 そうでない場合というのは、例えばどういう場合ですか。
○戒能先生 心理的負荷の強度が、それで弱まって収まるということが必ずしもない場合もある。
○黒木先生 それは出来事の評価ですから、当然収まらないこともありますよ。この辺はあくまでも客観的に評価するという観点から、たぶん出されていると思うのです。
○西川職業病認定業務第一係長 そのご指摘は、元の出来事の大きさによっては、その後会社でいかに適切な対応がされても、やはりそのときに深い傷を負ったという場合もあるのではないかと。
○黒木先生 それは変わらない。それをこのいちばん上にということでいいのではないでしょうか。
○戒能先生 いちばん上でなくても、そういうことがあるのではないかということです。
○山口座長 裁判所だったら、心理的負荷の場合に「それのみでは」という言葉を入れるのでしょうね。そういう趣旨ではないですか。
○加茂先生 そもそも行為が単発であって、以下事案までを入れるか入れないかということですよね。
○戒能先生 そうです。たぶん継続は上に入っているからいいとして、単発のところは。
○山口座長 そこは皆さんのご趣旨は大体一致しているようですから、表現を考えていただこうと思います。お忙しいところ、小宮山副大臣にお越しいただきました。
○小宮山厚生労働副大臣 続けてください。
○山口座長 もう1問終わりますと一段落しますし、あるいは最後でも結構ですが、皆さんもお声を伺いたいでしょうから、ご挨拶をお願いいたします。
 それでは次に進みます。これは技術的になかなか難しく、頭の痛いところですが、どの程度の事実関係が確認できれば、心理的負荷の強度を適切に判断できるかという問題です。
○戒能先生 行為とか発言の例示をするというのは、どういう意味でしょうか。
○山口座長 評価表の細かいものを出すことは、非常に難しいと思うのです。特別の出来事で、評価表とは別に評価するものはこういうものだということを書き足すのが、いいのではないかと思います。
○西川職業病認定業務第一係長 今のはまさに資料2ですよね。
○河合補償課長 資料2が完成すれば、ある意味、現場は非常にわかりやすいのです。構成要件ではないですけれども、何を見ればいいかというのがはっきりしてきて、わかりやすくなるのではないかという意味です。
○山口座長 資料2の「心理的負荷が極度に」というだけでは狭すぎますか。
○西川職業病認定業務第一係長 資料2ぐらいまでしか書けないのではないかというところで、資料を用意させていただきました。
○戒能先生 あまり細かくは書けない。
○西川職業病認定業務第一係長 逆に言えば、なるべく細かく書いたつもりでこれを出しております。
○山口座長 そうすると、この前から問題になっていたように、例えば「本人の意思を抑圧して」というような表現も。
○西川職業病認定業務第一係長 前回のご議論を踏まえて書き直してこうなっておりますが、書きぶりにご指摘があれば、是非おっしゃっていただきたいと思います。
○山口座長 水島先生、何かいい表現はありませんか。
○水島先生 この表現でよろしいのではないでしょうか。
○西川職業病認定業務第一係長 もしあれでしたら、後でご指摘いただければと思います。
○山口座長 要素は3つだと思います。非常に強制力が加わっているということと、その前提として当然、身体的接触があるということと、意思が踏みにじられているということです。一応それでアウトラインはいいとしますと、資料2の強度の修正等の目安(案)というのは、大体これでよろしいでしょうか。いまのは「特別な出来事」として評価いたしますから、この評価表とは関係なく。
 その次の段落は、平均的強度はIIだけれども、このような事情があれば出来事の変化としてとらまえて、強度をIIIにするということです。下から2番目が、平均的な強度に該当すると。いちばん下はいろいろな事情があり、事情に合わせて強度を考えるということですから、Iに修正する場合もあるのではないかということで、2つほど例が挙がっています。しかしポスターを貼ったといっても、1枚か200枚かで全然違ってくると思います。
○水島先生 3番目の修正しないものというのは、やはり書いたほうがわかりやすいというご趣旨ですよね。ただ、そうなりますと身体接触で行為が単発で会社に相談していない場合は、先ほどのあれでは弱めないということですので、IIのままでいいという理解だと思うのです。しかし、こちらだけを見ますと、会社に相談することが要件になってしまうように私には見えてしまいます。逆に修正しないものについては、平均的な強度が当てはまるものですので、あえて明示する必要はなく、修正するもの、つまり私はIIIのほうに行くものと、Iのほうに行くものだけを指摘すればよいのではないかと思いました。
○山口座長 ご趣旨はわかりました。水島先生のおっしゃったのは2番目の段落で、胸や尻への身体接触を含むセクシュアルハラスメントで、平均的強度がIIの場合であってもということでしょう。
○水島先生 はい、そうです。
○山口座長 下の段落も、発言に限るセクシュアルハラスメントで平均的強度がIIであってもということですよね。ですから、そのこと自体がIIIに当たるとか、「特別な出来事」に当たるというのは全然別ですよね。
○河合補償課長 要するに、引き上げるものを明記すればいい。
○戒能先生 引き下がるわけではないですよね。
○西川職業病認定業務第一係長 引き下がるのでいけば、下に1つ書かせていただいておりますが。
○戒能先生 具体的なケースで最初はIIIだったものが、IIになってしまったというのがあったように思います。
○西川職業病認定業務第一係長 IIだったものがIになったものは。
○戒能先生 IIIがIIというのはなかったですか。
○西川職業病認定業務第一係長 IIIになったということは上がったということです。ただ、いまの仕組みは、IIIになった後で出来事後の状況が評価されないと業務上につながらないケースがありますので、そういったケースのことをおっしゃっているかと思います。ですからIIIが下がったわけではないのですが、全体としてはどうかなというところです。そこはわかりやすさという観点から、修正しないものも例示したのです。しかし、ここは特に必要ないということであれば。
○河合補償課長 報告書の中では、「特別な出来事」と強めるものを書くことで終えるという形でよろしいでしょうか。
○山口座長 それで十分ではないですか。
○水島先生 Iもあるとわかりやすいとも思ったのですが、今回の議論とは直接関係ないかもしれません。
○山口座長 内容的には「特別な出来事」として処理するものと、評価表の位置づけとして、平均的な強度をIIとするというのは基本として固まりましたから、「特別な事情や状況」でどういうものを評価してIIIにするかを書けばいいのです。
○黒木先生 たぶん現場では、あるとわかりやすいという気はしますね。
○山口座長 どれがですか。
○黒木先生 修正しないものです。たしか評価表はセクハラを受けた過程ですよね。やはり迷うことがものすごく多いですよね。
○山口座長 それでは、そこはこうさせていただいたらどうですか。黒木先生や水島先生のご意見もありますから、下から2番目の平均的強度の代表的なものをどういう形で表現するかはともかく、あったほうが分かりやすいからそれを検討してみる。そして親委員会に対する報告は、セクハラという観点から評価表を見て、特別な配慮が必要なものだけ意見を聞かれているので、そこの点だけをお答えすればいいのではないでしょうか。いまの評価表が妥当であるとかないとか、そのようなことは聞かれていないわけです。セクハラに合わせて、どこが修正を要するかということだけにお答えすればいいのではないかと思います。
○西川職業病認定業務第一係長 わかりやすさの観点から例示するということですね。先生の最初のご指摘は、要件のように取られてしまうというところだったわけですよね。ただ、例示ということであれば、おそらく支障はないのかもしれません。
○水島先生 例示についてはそうですが、IIIとIIというのは修正するものと修正しないものである程度。
○西川職業病認定業務第一係長 違いを付けて。
○水島先生 というか、バランスが取れていないとよろしくないのではないかと思いますので、その点に留意があったら結構です。
○河合補償課長 表現の仕方は、またご相談しながらということでよろしいですか。
○山口座長 はい。それでよろしいです。⑦はこれで議論したことになっていますか。そうしますと資料1の1の認定の基準に関する論点という、いちばん問題のある所は以上で終わります。
 次は、2の運用に関する論点です。これは理論的に難しいというより、かなり技術的にどういうようにしていったらいいかということですので、できる限りここで指摘されているようなことに、十分努力してやっていくということに尽きるのだろうと思います。この論点は①から③までありますので、それをご覧いただいて、ご意見を承ればと思います。
○黒木先生 「専門的知識を有する職員の配置」というのは、どういう人を指しているのでしょうか。
○西川職業病認定業務第一係長 行政の職員でということです。研修を実施するなどで、セクシュアルハラスメントについての理解と言いますか、専門的知識を深めて、その職員が主として対応を行うということでいかがかという趣旨です。
○黒木先生 そういう意味ですね。わかりました。
○戒能先生 そうすると、研修というのが大前提になるということでよろしいでしょうか。
○山口座長 この前ヒアリングしたときにも、なるべく被害者の立場に立って対応してほしいというご意見が強くあったようですから、これは行政のほうでもそれなりの配慮をすればできることではないかと思います。パンフレットの整備というのは、抽象的に考えれば効果はあるような気がいたしますけれども、パンフレットをもらいに行きにくいということはないのですか。
○西川職業病認定業務第一係長 あるかもしれません。
○河合補償課長 この辺はこの前来ていただいた関係機関の方へ配布して、そこでパンフレットがあるような話ですね。
○山口座長 そういう所に配付していただけるのだったらいいと思います。
○河合補償課長 別に官公庁だけに置こうということではなくて、今はそういう形を考えております。
○小宮山厚生労働副大臣 パンフレットの整備というのは、パンフレットの中身を理解し合うということでしょ。ですから、これも言い方ですよね。行き渡るようにという。
○山口座長 次の問題は、基準監督署における調査を行う過程です。やはりどうしても事実関係がある程度掌握できないと処理できないですから、事情聴取というか、調査を行うことになると思いますけれども、そこが非常に微妙なのです。
○戒能先生 たぶんヒアリングのときにも出ていて、プライバシーの保護の中に入るのかもしれませんけれども、成育歴とか、あまりそのこととは関係のないものではなく、本当に必要なところだけに留意していただきたいというのはありますね。
○山口座長 事情を聴くときに、監督署のほうから出向けないのですか。監督署に来てもらって、聴いている声が聴こえるような所ではまずいということはないのですか。
○河合補償課長 いいえ、そんなことはない。出向くことは可能だと思います。当然、我々も事案によっては出向いていくことが結構ありますので、そういう一文を少し入れるという感じでしょうか。
○神保補償課長補佐 安心できる環境でお聴きするということだろうと思います。それこそ監督署で何もない状況でお聴きするというのは、極めてよろしくないので、個室なりを用意するとか。こちらから押しかけて行ったときにうまい状況で聴けるかというと、必ずしもそうではないのです。私どもも無理矢理来ていただくということはしておりませんので、そこはご要望も踏まえつつ、いちばん安心できる環境でお聴きするのがいちばん適切ではないかとは思っています。
○河合補償課長 いずれにしても臨機応変に、相手のプライバシーをきちんと考えて対応するような形で、当然配慮できると思います。
○山口座長 それはできるだけこの趣旨に合うようにお願いします。③はいちばん難しい問題です。事実関係が明らかでない場合に、明らかにするために有効な方法はあるかということです。
○水島先生 1点教えていただきたいのです。2つ目の「可能な限り具体的な情報を示しながら」というのは、例えば加害者側に対して被害者の具体的な状況を知らせるということも含まれてきてしまうわけでしょうか。
○西川職業病認定業務第一係長 含まれてくるかと思います。
○水島先生 被害者の主張を否定することに対抗するご趣旨であろうことは理解できますが、「必要に応じて」という一言を入れることはできないでしょうか。「可能な限り」と言いますと、たくさんの情報を出すように読めてしまう危険性があるように思いました。
○西川職業病認定業務第一係長 伝えなくてもいいこともあるだろうということですよね。
○水島先生 はい。伝える情報は最小限でよいと思いますので。
○山口座長 事実を明確にする上で意外と役立つのが、時系列的に整理することです。労働委員会の不当労働行為の認定も、実はなかなか証拠というものがないのです。それをどうやって認定するかということになりますと、起こった事柄を時系列的に整理してもらってそれを見ると、大体わかってくるのです。時系列的に整理するというのは簡単なことですけれども、いちばん基本になっていて、これをやればかなり分かってくるし、推認が効くようになってくると思います。
○黒木先生 それに加えて精神症状を明らかにしていくためにも、時系列的に見ていくと。例えば出来事と、ある時期にどういう症状が出たというのを対比していくと、そのときの精神症状に影響を与えている出来事が何か、その発端がどこから始まってきたかということも含めて、全体の精神症状の推移がわかってくると思うのです。それをすることによって、精神疾患の発症と出来事との因果関係がある程度明らかにできます。特に長い事例の場合は是非、時系列にまとめていくことが必要だと思います。
○戒能先生 おっしゃるとおりだと思います。DVの場合もそうですが、セクシュアルハラスメントの被害を受けて精神的なダメージを受けると、整理をすることが難しいのです。
○黒木先生 いや、整理するのはこちらでするわけですから、本人は。
○戒能先生 ですからそのサポートをきちんとしていただかないと、そういうものが。支援団体の方がいらしてサポートしてくださるならいいのですけれども、そうでない場合もあるので、そういうこともご考慮いただくといいなと思いました。
○山口座長 表はどちらで作ることもあり得ると思うのです。労働委員会などは、どちらかというと申し立てているほうとか、申立人のほうに書いてもらって公益委員が見て、これではよく分からないというときに「ここはどうですか。もっと埋めてください」と言う。要するに、書出しは誰が書くかというのはまちまちだけれども、三者で作っていくようなものではありますね。
○西川職業病認定業務第一係長 実際の聴取では直接、加害者や被害者と言いますか、請求人、会社の方、そのほかの方から役所が聴いて、役所のほうで紙を作るというのが実際の運用です。ただお出しいただければ、それは当然拝見して参考にさせていただくことになろうかと思います。
○倉持職業病認定対策室長補佐 実際に経過を詳細にまとめて提出される請求人の方も、結構いらっしゃるのです。そういう場合はそれを基にしながら、分からないところだけを確認するとか、そういう進め方もできるのではないかと思っています。
○山口座長 最初から聴いていると、聴かなくてもいいようなことをいろいろ聴いて、被害者が非常にディスカレッヂされたりする。
それでは大体これでよろしいでしょうか。そうしたら資料1の論点の2までは終わりました。論点3は併せてご議論いただきましたので、事務局でまとめていただける程度に議論がなっていると思います。では、時間が5分ほどございますので、副大臣からお願いします。
○小宮山厚生労働副大臣 皆さん本当にお忙しい中、精力的にご議論いただいて、論点が詰まるところまできて、大変感謝申し上げます。セクシュアルハラスメントは最初にも申し上げましたし、皆さんもご承知のように、本人にとっては非常に重い影響があるのに、それをどう評価するのか、どういうように認めていくのかということが、これまで本当に難しい分野でした。今回、こういう形で取り組んでいただいた意義というのは、当事者にとっても非常に大きいと思っています。後はまとめていただいた論点をきちんと事務方で取りまとめをして、なるべく実効性があって使えるようなものにと思っております。よろしくお願いしたいと思います。
 伺っておりまして目安(案)の所で、強くするものと、一部弱くするものと、これまでどおりのものをどうするかというお話がありました。1つのやり方としては、強くするというのがいろいろと意味のあるところで、そこをメインにしながら、弱くする部分、変えるところを先に出して、これまでどおりのところも分かりやすく実例も入れていくとか、書き方のアクセントの問題でもあると思うのです。これは強くするものとの間に今までのものがあって、最後に弱くするものがあるから、どこが変わってどこがどうなっているのかが分からないわけです。ですから強くしてしっかり評価するというのが、ここでの非常に大きな成果物だと思います。そこを強調しながら、逆に弱くてもいいところも、変えるところをメインにしながら。あと、これまでの標準的なIIの評価をするところであっても、わかりやすく具体的にする。それが限定的に取られないように、例示としてこういうものをという書き方をすればいいのではないかと思いました。その辺りは担当のほうできちんとお取りまとめをいただければと思っております。本当にありがとうございます。
○山口座長 ありがとうございました。それでは一応次回で終わりのようですから、本日までの議論を踏まえて、事務局に議論の案を作っていただくようにお願いしたいと思っております。次回の日程等はいかがですか。
○倉持職業病認定対策室長補佐 次回の日程は6月23日の木曜日、14時からを予定しております。会場については追ってお知らせしたいと存じます。本日はどうもありがとうございました。
○山口座長 本日はどうもありがとうございました。副大臣もお忙しいところどうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

労働基準局労災補償部
補償課職業病認定対策室

電話: 03(5253)1111(内線5570、5572)

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