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2011年4月14日 第5回精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会 議事録

労働基準局労災補償部補償課職業病認定対策室

○日時

平成23年4月14日(木)14:00〜16:00


○場所

厚生労働省専用第23会議室(中央合同庁舎5号館19階)
(東京都千代田区霞が関1丁目2番2号)


○出席者

(参集者:五十音順、敬称略)

阿部未央、荒井稔、岡崎祐士、織英子、黒木宣夫、清水栄司、鈴木庄亮、山口浩一郎、良永彌太郎

(厚生労働省:事務局)

尾澤英夫、河合智則、神保裕臣、渡辺輝生、倉持清子、板垣正

○議事

○板垣中央職業病認定調査官 はじめに、本検討会は原則公開としておりますが、傍聴される方におかれましては、別途配付しております留意事項をよくお読みいただきまして、静粛に傍聴いただきますとともに、参集者の自由な意見の交換を旨とする検討会の趣旨を損なわないよう、会議の開始前後を問わず、ご留意をお願いいたします。
定刻になりましたので、ただいまから第5回「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」を開催いたします。先生方におかれましては、ご多忙中のところご出席いただきまして、誠にありがとうございます。ここで補償課長より一言申し上げます。
○河合補償課長 本日の第5回「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」の開催に当たりまして、一言申し上げます。
 ご存じのとおり、前回のこの検討会は3月11日に予定されておりまして、開催直前に発生いたしました東日本大震災の影響で当日の開催は急遽中止いたしまして、本日に至ったものです。この間、労災補償部では被災地の救済を第一の最優先課題として取り組んでまいりましたし、現時点におきましても震災対策を中心に据えて全国が業務運営を行っているわけですが、同時に、労災補償行政として推進しなければならない重要課題につきましては、震災対策と併せて可能な限り実施するという方向におります。
 本検討会は国民の皆様からの期待も非常に高く、そういう観点で、このような緊急事態ではありますが、どうしても早急に実施すべき重要課題と位置づけまして、先生方にもご無理をお願いして本日ご参集いただいたところです。前回の検討会が実施されなかったことにより今後のスケジュールにも微妙な影響が出るかもしれませんが、可能な限り予定どおり進めていくことができればと思っております。先生方には、各分野で非常にご多忙な毎日が続いているとは思いますが、この検討会の意義をご理解いただきまして、今後ともご協力いただきますようお願いいたします。どうぞよろしくお願いいたします。
○板垣中央職業病認定調査官 また、4月1日付で人事異動がありましたのでご紹介させていただきます。職業病認定対策室長補佐の倉持です。
○倉持職業病認定対策室長補佐 倉持でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○板垣中央職業病認定調査官 検討会を始めるに当たり、資料のご確認をさせていただきます。本日ご用意させていただきました資料ですが、資料1-1「ストレス評価に関する調査研究」、資料1-2「ストレス評価に関する調査研究結果と『心理的負荷評価表』における平均的強度」、資料2「第5回における論点」、資料3「論点に関する労災補償の現状」、資料4「最近の裁判例」、資料5「論点に関する医学的知見」。以上です。資料の欠落等がありましたらお申し出ください。写真撮影等は以上とさせていただきますので、ご協力、お願いいたします。それでは座長の岡崎先生、よろしくお願い申し上げます。
○岡崎座長 それでは、私のほうでさせていただきたいと思います。前回は、先ほど課長さんからもお話がありましたように、ちょうど震災の日にぶつかってしまいまして、中止していただいて今日になったわけですが、先生方、こういう事態で大変お忙しいところをお出でいただいたと思います。どうもありがとうございます。そういう状況にもかかわらず、この問題は検討していかなくてはいけないということは明らかですので、議事を進めさせていただきたいと思います。
 今日、2時間ほど予定されておりますが、前半のほう、先ほど資料でもご説明がありましたが、「ストレス評価に関する調査研究」が厚生労働省の研究費で日本産業精神保健学会に委託されて行われまして、その主任研究員であられました大阪樟蔭女子大学大学院の夏目誠教授にお出でいただいておりますので、本日は、その結果について、またその解釈等についてご説明いただいて、質疑等を行っていただければと思っております。では夏目先生、どうぞよろしくお願いします。
○夏目先生 夏目です。よろしくお願いいたします。お手元に資料1-1がありますから、これをご参照ください。国のほうから研究費をいただきまして、「ストレス評価に関する調査研究」、健常者群における国の判断指針別表1にある43項目および新規20項目のストレス点数と発症頻度について報告させていただきます。
 研究の「目的」です。精神障害に係る労災認定基準は、職場における心理的負荷を客観的に評価するため、これまでのライフイベント(生活の出来事)の研究を基にストレッサーの測定をしました。ストレスといいますと、作用因子であるストレッサーと、不安、緊張、不眠になるような反応、あるいはそれを強めたり弱めたりする緩衝要因の3つに分かれますが、今回のストレスの測定の基本は、ストレッサーから判断しております。そこを1つお断りしておきます。
 この研究は、客観性を持つようにした評価方法です。昔から行われているのですが、正式には「社会的再適応評価尺度」と呼ばれています。この尺度あるいはそれを少し変更した尺度、最近はインタビューによるStressful life eventに関する報告も出ています。現在まで世界的に1,000件を超える多くの論文報告があり、世界的に高い評価を得ており、多くの追試や発展的研究がなされております。
 ライフイベント法の、生活の出来事を測定するメリットはどういう点にあるかと言いますと、このように社会環境的、心理的ストレスのばく露に対する客観的、主観的ではなくて客観的に評価できるようにしたのがこの方法の特色です。いろいろな方々に回答をいただいた点数の平均値を求めたものをストレス点数と呼んでおります。このような生活上の出来事はどのようなメリットがあるかと言いますと、まず観察です。多くの人が観察できることが可能であり、独立して存在しており、かつ期間が限定されている。こういう事実関係の有無を問うものだと考えてください。あくまでも事実関係を問うような形でやっております。これはほかの評価尺度に比べて、認知の歪みとか、その他の方法に比べまして客観性が担保されるのではないかと考えております。
 私達は2002年と2006年、同じように厚生労働省から委託研究を受けまして、このような調査発表を以前行いました。その調査結果をもちまして、2009年4月の判断指針改正に活かされていると思います。
 それから4年経っていますので、いろいろな社会や産業変動が続いていると考えております。例えば、企業を中心に長期間にわたる日本経済の不況を反映し、多くの企業では「集中と選択」というような形でのリストラが行われていますし、失業率の増加、就職できない人の増加、あるいは派遣社員など、いわゆる非正規社員の増加、あるいは企業内の人員構成も多く変わりますし、従来から言われています年功序列・終身雇用制度を前提とした人事労務管理制度も大きく変容しています。また、コンピューターを中心にした急速な技術革新や市場経済の開放化、あるいは規制緩和の波などによる企業合併・吸収、能力制度を基盤にした目標管理制度の導入が行われる中で、勤労者の新たなストレスが多く出ているだろうという前提で調査をしたわけです。43項目以外で、主としてこの4年間に現実問題となっているストレッサーに対して、勤労者が感ずるストレスの程度を検討する必要性を強く感じました。
 そこで私が主任研究員になりまして、今日参加されています荒井先生、黒木先生を含めました精神科医、公衆衛生、統計学者、心理学者、臨床心理士ですね。保健師、衛生管理者など、さまざまな専門領域より構成されている研究班を構成し、精神科医の場合は臨床場面で出るような訴えを、産業医の先生などからは職場などで見られる出来事を、心理学者・保健師などからは職種、文献、調査などから把握できるような新たなストレスを提出いただきました。それらを集めていろいろな検討をしたわけです。
 まず、①それが別表1以外の新規のものかどうかということを検討した。②内容に妥当性があるかどうか、③一般性があるかどうか、④症状などとの重複性はないか、⑤ライフイベントの条件である観察可能で独立しており、期間が限定されて事実関係を問うものであるかどうかを厳しく吟味しまして、20項目を新たにライフイベントの項目として抽出しました。20項目の内訳ですが、職場関連項目が15項目、職場以外の個人に関する関係が5項目であります。このような20項目と国の指針にあります43項目を含めました、計63項目から成るストレス調査票を作成したわけです。
 どのような人を対象にしたかということです。東京を中心にした首都圏や関西、名古屋、広島、福岡、沖縄、札幌・北海道にわたるほぼ全国に近い領域で、製造業から農林漁業、鉱業、建設業、製造業、電気・ガス・熱供給・水道業、情報通信業、運輸業、卸売・小売業、金融・保険業、不動産業、飲食店・宿泊業、医療・福祉、教育・学習支援業、サービス業など、一応統計に載っています全業種を網羅しました。
 方法ですが、35名の班員がいますから、原則として班員が調査票について説明したあとに、調査票に記入したものを該当者から郵送で送っていただくという形をとって、当然、無記名です。有効回答者は1万494名、1万人を超えまして、女性が1,977名です。これは郵送によるものですから有効回収率は当然落ちるわけですが、有効回収率は59%です。当たり前のことですが、本研究は学会あるいは各班員が所属しています大学、研究機関、その他に設けられています研究倫理委員会の承認を得て実施しております。
 2.対象と方法です。まず、1「調査票の作成」です。先ほど新規項目を20項目と言いましたが、今回、どのような項目がメインとなって検討されたかについて報告したいと思います。
 まず[職場15項目]です。①「組織の統廃合などを推進する担当者になった」。②「権限が乏しい店長などの管理職になった」。③「退職者が多く中堅職員がいなくなり、管理職と若手の負担が増加した」。
 以下の項目は今回いちばんメインになると思うのですが、長時間労働がいろいろな形で問題になっていますので、長時間労働に関する項目を6項目入れました。④「2週間以上にわたって連続勤務を行った」。⑤「1か月に60時間以上、80時間未満の時間外労働(休日労働を含む)を行った」。⑥「1か月に80時間以上、100時間未満の時間外労働を行った」。⑦「1か月に100時間以上、120時間未満の時間外労働を行った」。次いで⑧「1か月に120時間以上、140時間未満の時間外労働を行った」。最後に⑨「1か月に140時間以上の時間外労働を行った」。このような6項目の長時間労働に関する項目をメインとして行っています。
 それ以外として「訴訟の担当者になった」「海外勤務になった」「国内で海外に関する業務を行った」「上司などの公私混同があった」「非正規社員である自分の契約満了が迫った」「同僚などの病気により負担が生じた」。今回、これが15項目の職場関連新規項目です。
 当然、個人的、職場外の項目もありますので、今回、5項目を選出しました。1つは「介護により負担が生じた」。もう1つは「期待していた年金額がもらえなかった」。いま年金が非常に話題になっていますが、「期待していた年金額がもらえなかった」。「訴訟を起こした、起こされた」「就労に必要な子育て支援が地域や家庭で受けられない」「子どもが離婚した」。以上20項目について、43項目とともに調査を行ったわけです。調査票に関しましては、このような63項目の調査票につきまして、次のところに載っている43項目はこれの認定指針の表に挙げられている43項目、既に検討されている項目ですね。これは時代の変化とともにどのように変わったかということも検討したいがために、今回の43項目として追加しております。
 続きまして、2「対象と調査票の配布」です。対象は先ほど業種について述べましたが、職種です。いろいろな職種があるわけですが、職種として専門的・技術的職業従事者、管理的職業従事者、事務従事者、販売従事者、サービス職業従事者、保安職業従事者、農林漁業作業者、運輸・通信従事者、生産工程・労務作業者、その他、を網羅しております。年代としては、10歳代から60歳代までの勤労者を対象として配布を行いました。先ほど言ったように、郵送で回答してもらったわけで、1万494名から回答をいただいたわけです。健常者群という定義が非常に難しいと思うのですが、今回、我々が定義したいちばんのポイントは、「通常の業務を日々行っている人」を健常者群と定義させていただきました。
 3「対象者の内訳」です。先生方、表がありますので表1からご覧いただけたらと思うのですが。まず表1です。1万名を超えていますが、「性別」で見ますと、男性が8,485名で81%、圧倒的に男性が多いという形です。では「年代別」はどうかと言うと、表2ですが、40歳代が3,176名と最も多く、次いで30歳代です。3番目、「業種」です。製造業が6,020名で58%ぐらいです。製造業がいちばん多くて、次いで情報通信業の1,381名、運輸業の664名です。農林漁業というのはなかなか取るのが難しかったので、この程度の数しか取れなかったということもあります。「職種」ですが、表4をご覧ください。いちばん多いのは専門的・技術的職業従事者で、4,284名で41.3%です。わりと管理的な職業従事者が多くて、1,698名。事務従事者が1,676名。以下、このような数になっております。
 現在、契約とか派遣とか請負とか、いろいろなことが言われていますが、「雇用形態」はどうかというのが表5です。俗に言う正規社員の方が9,507名で90.9%。経営者もおられますが、正規社員が圧倒的に多いわけです。契約社員の方が451名、労働者派遣事業所の派遣労働者が111名、パート・アルバイトが185名、そのような構成になっています。
 表6「職位」をご覧ください、ポストです。当然、役職なしの方がいちばん多くて5,628名で54%、課長・課長補佐級が1,542名、あと、職長・主任級というような内訳になっております。
 表7「従業員数」、会社の従業員数を見たわけですが、産業医の先生を中心に取ってもらったこと、あるいは職場に関係している精神科医の先生方を中心に取ってもらったこともありまして、1,000名以上の企業がいちばん多くて、7,670名は1,000名以上の企業で、73.7%です。次いで500〜999名となっています。私もこの調査を3回行ったのですが、この手の調査の難しいところは、多くの勤労者の方にかなり負担を強いた調査票になるわけです。なかなかシビアな項目がたくさん入っておりますので、それに対していろいろなところの了解を得てやるとなると多少の制約は出てくるという点はご了解ください。
 4「ストレス点数評価方法」をご覧ください。評価方法は次の(1)から(3)の順序で行いました。これは判断指針に従いまして、最近おおむね半年間に体験があったかどうかをまず聞きます。体験があれば○を付けてもらって、体験があった項目について0から10の11段階にあるところで、自分は該当すると思われるストレス度のところに○を付けていただきます。ですから「体験なし」の場合は、当然ストレス度の評価はありません。
 まず「体験あり、なし」から聞いて、ある場合に付けていただくという方法をとりました。次に、点数を付ける場合に一体どの程度の点数か迷いますので、一応の基準としてここに書きました。0が「全くストレスを感じなかった」、5が「中程度のストレスを感じた」、10が「極めて強いストレスを感じた」。このような一応の目安を与えまして、それによって各対象者の方々に○を付けていただきました。各項目の点数を合計し、その平均値と標準偏差を求め、平均値に「ストレス点数」という名前を付けました。当然、点数が高いほどストレス度が強いわけです。
 3.結果です。まず表8をご覧ください。表8「ストレス点数」。これは63項目を質問項目順に取ったデータです。まず質問項目がありまして、右に行くに従って、ストレス点数、標準偏差、その「あり」と答えた人の人数、その出現頻度のパーセントを示しています。
 まず「重度の病気やケガをした」というのであれば、点数は6.2になっていまして、標準偏差は2.8です。人数が1,222人で、1万何人から出現頻度を求めますと11.6%です。2番目の「悲惨な事故や災害の体験をした」は、点数が5.8で、標準偏差が2.9で、人数が969で、頻度が9.2です。ライフイベント法は標準偏差が少し幅があって出るというのが、これは外国で行われたデータでも一緒ですが、標準偏差にやや幅があるというのは1つの特色ではないかと思っております。
 これは質問項目順のあれですが、ランキングを見たほうがピンときやすいと思いましたので、(1)全体のランキング、表9をご覧ください。今回は7.1が最高です。いちばん点数が低いのは2.8です。ですから、2.8から7.1までの幅の点数のランキングになります。標準偏差は2.4から3.6までの幅があります。早速、ランキングの表に基づいて説明したいと思います。
 大体、10位までは6点以上、6点以上が10位までです。5点以上は37位までです。まず1位です。これは前回の指針のときに追加された項目ですが、「ひどい嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」。これが7.1でトップになっています。標準偏差が2.9で、出現頻度は結構高くて5.9%に達しています。2位「退職を強要された」。これは従来からあるものですが、この点数が6.5で、出現頻度が1.8%です。「左遷された」がありますが、これは従来の評価表を見ますとストレス強度はIIなのです。なのに、結構高く出ているというような形になるのではないかと思うのです。点数は6.3で、出現頻度は2.7です。
 初めて4位に今回の新規項目であります「1か月に140時間以上の時間外労働を行った」。今期の新規項目ですが、これが6.3点で、出現頻度が4%です。続いて「交通事故を起こした」。これは従来からIIIの評価ですが、6.3で、出現頻度は4.7%です。6番目に「上司とのトラブルがあった」。これも従来の評価ではIIですが、今回は6.2であって、出現頻度は13.7%です。結構高い出現頻度だと思っています。7位が「重度の病気やケガをした」。これは従来からIIIですが、これが6.2で、出現頻度が11.6%です。
 8位が今回の新たな項目であります「訴訟を起こした、起こされた」で、これが6.1、出現頻度は1.2%です。9番目、これも今回の新規項目ですが、「1か月に120時間以上、140時間未満の時間外労働を行った」。この点数は6.1で、出現頻度は5.3です。10位、「会社で起きた事故(事件)について責任を問われた」。これは従来ストレス強度はIIですが、6.0で、出現頻度が4.5です。11位が「達成困難なノルマが課された」。12位が「労働災害の発生に直接関与した」。13位が「会社の経営に影響するなどの重大な仕事上のミスをした」。この「重大な仕事上のミスをした」というのは、従来IIIでストレスが強いとされていたのですが、今回は5.8という点数が出ています。出現頻度は3.6です。
 14番目に今回の新規項目であります「1か月に100時間以上、120時間未満の時間外労働を行った」。これの点数は5.8で、出現頻度は8.5%です。結構な出現頻度かなと思ったりします。15位が従来からあります「悲惨な事故や災害の体験をした」。16位が従来からあります「違法行為を強要された」。17位、「同僚とのトラブルがあった」。「同僚とのトラブルがあった」は、従来ストレス強度はIなのです。軽度だとされていたのですが、今回5.7という点数が出ております。一応、10.1%という出現頻度になっています。18番目は従来からあります「非正規社員であるとの理由により、仕事上の差別、不利益取り扱いを受けた」。「セクシュアルハラスメントを受けた」が5.6です。「顧客や取引先から無理な注文を受けた」が20位です。「自分の関係する仕事で多額の損失を出した」、これも従来からあります。
 今回22位に新規項目が来ていますが、「上司などの公私混同があった」は5.4で、出現頻度が9.5%です。23位は従来からある項目です。24位が今回の新規項目で「1か月に80時間以上、100時間未満の時間外労働を行った」が、点数は5.3で、14.2%という高い出現頻度であると思います。25位が今回の新規項目であります「就労に必要な子育て支援が地域や家庭で受けられない」。これが5.3で、出現頻度が1.9%です。26位は従来からある「仕事の内容・仕事量の大きな変化を生じさせる出来事があった」。27位も従来からあります「勤務・拘束時間が長時間化する出来事が生じた」。
 28位が今回の新規項目であります「期待していた年金額がもらえなかった」。5.2で、出現頻度は2.8%です。29位も今回の新規項目ですが、「子どもが離婚した」。5.1で、出現頻度は1%です。30位の「ノルマが達成できなかった」は従来からあります。31位が今回の新規項目であります「2週間以上にわたって連続勤務を行った」。5.1で、出現頻度は11.2です。結構多いですね。32位が従来からある項目です。33位が今回の新規項目で「介護により負担が生じた」。これは5.1という点数で、出現頻度は6.7%です。34位も今回の新規項目ですが、「権限が乏しい店長などの管理職になった」。点数が5.0で、出現頻度は2.6%です。35位、「部下とのトラブルがあった」。36位、「複数名で担当してきた業務を1人で担当するようになった」。これは従来からある項目です。
 37位が新規項目ですが、「退職者が多く中堅社員がいなくなり、管理職と若手の負担が増加した」。これは5.0の点数で、10.9%です。これは、5.0でも順位が違うのは、小数点第2位、第3位を取りますと下がりますので、四捨五入をしていますから、同じような点数に見えますが、これは差異が出ております。38位が従来からの項目で「転勤をした」。39位が「配置転換があった」。これは従来からの項目です。40位が今回の項目で、「1か月に60時間以上、80時間未満の時間外労働を行った」。これが4.6という点数で、出現頻度は24.2%とかなり高いです。41位が「非正規社員である自分の契約満了が迫った」。これも今回の新たな項目ですが、4.6で、出現頻度が2.2です。42位、これも今回の項目ですが、「訴訟の担当者になった」。4.6という点数で1.3%です。43位、44位、45位は、従来からある項目です。
 46位、これは今回の項目で、「組織の統廃合などを推進する担当になった」。これは4.5で、出現頻度は3.5%です。47位、48位、49位、50位は、従来からある項目です。51位が今回の項目で、「同僚などの病気により負担が生じた」。これが4.3という点数で、出現頻度は12.1%です。52位、これも今回の項目で「海外勤務になった」。4.0というストレス強度であり、出現頻度は2.9%です。53位、54位、55位、56位、57位は、従来からある項目です。58位も59位も60位も従来からある項目です。61位「国内で海外に関する業務を行った」が3.1点で、出現頻度は16%です。62位、63位は、従来からある項目です。
 これが今回の大まかなデータです。それを掬うことがいちばん大きなポイントになると思いますので、ストレス強度と出現頻度がどの程度かというのも1つのポイントになりますから、ストレス強度と出現頻度を中心にこの表の説明をさせていただきました。
 続きまして、出現頻度ということで、表18をご覧ください。これは頻度の高い項目順に並べていまして、これは、先生方あるいは一般的な印象とあまり大きなずれがないと思うのですが、「仕事のペース、活動の変化があった」が42.8%、2人いれば1人ぐらいあるよねという形ですね。
 このようなところが非常に高い項目で、むしろ出現頻度が少ないというところを見れば、例えば、50位から見ていきますと、「労働災害の発生に直接関与した」が2.9%。「期待していた年金額がもらえなかった」は2.8%、あまり多くないですね。「セクシュアルハラスメントを受けた」が2.7%。「左遷された」が2.7%。「権限が乏しい店長などの管理職になった」が2.6%。「早期退職制度の対象となった」が2.3%。「非正規社員である自分の契約満了が迫った」が2.2%。「違法行為を強要された」が2.1%。「非正規社員であるとの理由により、仕事上の差別、不利益取り扱いを受けた」が2%。「就労に必要な子育て支援が地域や家庭で受けられない」が1.9%。「退職を強要された」が1.8%。「訴訟の担当者になった」が1.3%。「訴訟を起こした、起こされた」が1.2%。「子どもが離婚した」が1.0%です。これが今回の研究のメインの内容だとご理解ください。
 最後に考察を述べたいと思います。考察ですが、本調査の意義は、35名の研究班によりほぼ全国的、全業種、全職種を対象にした調査が行われた。前回、2回やりましたが、諸般の事情により、あるいは研究費の額にもより、いろいろな形の全業種、全職種までいきませんでしたが、今回は一応、曲がりなりにも全国的で全業種、全職種を対象にした調査は行われたのではないかと。1万名以上のデータが得られていますから、かなりのニーズを把握できたのではないかと思っています。ただ、業種だとか、いろいろな偏りが若干あるというのは、あくまでもこの種の調査は協力してもらえないとデータが得られませんので、そこは多少いろいろなご意見があると思いますが、一応ご了解いただきたいところです。
 今回、本研究のオリジナリティと言えるものがあるとすれば、これがオリジナリティではないかと思っています。それは何かと言いますと、残業時間が延びるほどストレス度は上がり、出現率は下がる。これは見事な関係が出たということです。残業時間が延びれば延びるほどストレスは上がるし、当然、出現頻度は下がるというデータがはっきり出たということです。例えばどういうことかと言いますと、読み上げますが、1か月に140時間以上の時間外労働をしたというのは、ストレス強度は6.3で、頻度が4%です。これは140時間です。1か月に120時間以上行った場合のストレス強度は6.1で5.3%です。1か月に100時間以上、120時間未満の場合は5.8で8.5%です。1か月に80時間以上、100時間未満の場合は、ストレス強度は5.3で14.2%です。1か月に60時間以上、80時間未満の場合は、ストレス強度が4.6で24.2。
 即ち、残業時間別に見ていくと点数は、いちばん強度が6.3で、時間が減るに従って、6.1、5.8、5.3、4.6と見事に下がっていきます。当然のことかわかりませんが、出現頻度は、140時間以上であれば4%、その次であれば5.3%、それから8.5%、14.2%、60時間以上であれば24.2%というような、ほぼ直線的な関係が今回はほぼ得られたのではないかということが、本研究の私なりのオリジナリティではないかと思っています。以上です。ご清聴、どうもありがとうございました。
○岡崎座長 どうもありがとうございました。最後にお話いただいたように、残業時間とストレス度の相関があるということが示された。出現率も残業時間と相関をするということでした。時間がある限り、ご質疑をお願いしたいと思います。
○黒木先生 大変な調査だったと思うのですが、ちょっと確認です。有効回答率が59%ということで、4割は回答を除外されているわけですよね。その内容と、その理由と、この調査票を見ると、6か月間の間にこういった項目を体験したことがあるかどうかということを聞いて、体験したことがあるという人に対して、この項目についての、どれぐらいストレスを感じるかということをやったということですよね。
○夏目先生 はい。
○黒木先生 そうすると、この内容からいくと、ストレス点数の質問項目の評価点数は出ていて、13頁に「『体験あり』の頻度から」ということで2つあるのですが、これは両方とも、体験した人が感じているストレス内容ということでよろしいのですよね。
○夏目先生 はい。「体験あり」という人のみ答えていますので、その点数です。Holmesが最初にやったときは、体験がある、なしにかかわらず点数を付けてもらっています。でも、やはり体験ありとなしでは衝撃度が違うからという意見が多々出ていますので、ここ3回は、「体験あり」というところを中心に点数をつけてもらっています。
○黒木先生 今回は、「体験あり」ですね。
○夏目先生 ありです。ありのみの平均値であるから、実際あったことに対する評価です。
○黒木先生 それと、10段階ということなので、その10段階のうちの例えば5が真ん中ですよね。
○夏目先生 はい。
○黒木先生 それは、体験した人が真ん中ぐらいだと主観的に感じ取った、ということでよろしいのですね。
○夏目先生 はい。結局、客観性といいながら、その人が感じたというのがポイントになりますので、そこは本人の感じ方で、本人が真ん中程度であれば5だし、ちょっと強いと思えば7ぐらいとか、そういう形で付けたのではないかと思います。7が強いと感じられたと思いますので、そこは主観的なものです。でも、体験した項目によって数は違いますが、1万何人の平均値を取ることによって、かなり客観化できるのではないかと思っています。
○黒木先生 内容についてですが、例えば「重度の病気やケガをした」ということも、これは11.6%ですよね。パーセンテージとしてはかなり多いのではないかという気がするのです。
○夏目先生 これは高いですよね。班員の丸山先生から意見がありまして、統計を担当した山村先生にもう1回チェックしてもらったのですが、誤差範囲内を目をつぶればこのぐらいの数字であろうという回答をいただきました。
○岡崎座長 ほかにはいかがですか。
○良永先生 少し教えていただきたいと思います。調査対象者の選択はどうしてされたのかと思ったのです。端的に言うと、現在の労働市場における正規雇用労働者と非正規雇用労働者の比率は7対3ぐらいだと言われています。先ほどのデータを見せていただきますと、雇用形態で正規社員がほぼ9割になっていますので、労働市場の実状と少し違うのかなと思ったり、従業員数のところで1,000名以上のところが70%を占めていますので、かなり企業規模が大きいところに全体として傾斜しているのではないか。それから、職種も専門的・技術的あるいは管理的業務に従事されている方の比率が非常に高くて、俗に言う一般従業員が低い。労働市場の実状と調査対象者として表れてきた方々がかなり違うのかなと思いましたので、その点の事情等を教えていただければと思います。
○夏目先生 非常に端的にポイントを突いた質問をしていただき、ありがとうございました。我々も、なるべく非正規の方をたくさん取りたいと思ったのです。いろいろな先生方にアプローチしたわけです。でも、フィールドを持っている先生の数が少ないということがありまして、その先生方に、なるべく非正規の方を取ってほしいという形で依頼したのですが、現実にこれぐらいしか集まらなかった。非正規の方の回収率の問題も1つ出てくるのではないかと思います。次の点です。これは、答えるのにかなり負担がかかると思うのです。わりとシビアな質問がたくさんありますので、答えるのにかなり負担がかかるし、これに答えてもらったからといって、その人に対して我々が返すものは何もないわけです。
 今回は倫理委員会のほうからの指摘があり、各業種ごと、あるいは企業ごとのデータは返さない、2次利用はしないということにしたのです。お国で研究した中で、さらに自分たちでやった研究をどこかで発表したい先生方は多いわけです。そういう先生方のニーズは、2次利用はしないということでやめましたので、そういう点で、1つそういう結果を生じた可能性はあると思います。
 結果的に回収が可能だったのは、産業医の先生の場合も、どちらかと言えば1,000名以上の企業に常勤でおられる先生のほうが、その企業のことをよく把握していて、企業の従業員の方の信頼も高いので、結果的にそういう先生方に最終的に依頼するという形にならざるを得ない。もう1つは、1年間と制約された研究期間であるということです。3年ぐらいあれば、もう少し無作為の抽出などいろいろなことが可能なのですが、1年のうちに研究の計画を作って、倫理委員会を通して、そこからいろいろなところに働きかけるというと、どうしてもタイムリミットが迫ってくるという問題があるのではないかということです。ですから、大企業で正規の方が増えた。
 サービス業の方は、販売などいろいろな方の場合は、じっくり座って答えてもらうというのは、なかなか難しいのではないかと思います。いろいろな所に出張したり、販売に出かけていますと、渡して「書いてください」と言っても難しい。彼らの回収率が悪かったのですが、そういう問題が関与しているのではないかと思います。これは調査の限界だと思っています。そういう意味では、先生がご指摘されたとおり、現在の労働市場をそのまま反映しているかと言われたら、少し反映していない面はあると思います。ありがとうございました。
○岡崎座長 事務局からは資料は特にないですね。
○西川職業病認定業務第一係長 追加の資料ではありませんが、資料1-2ということで17頁に1枚、事務局で作成した資料を付けさせていただいています。夏目先生のご説明の中でも言及していただきましたが、10頁の点数順の表に、いまの評価表に載っている事項については、いまの評価表の平均的強度を質問項目の横にローマ数字で記載させていただいたものです。また、平成18年度にも日本産業精神保健学会にストレス調査をお願いしています。これは平成21年4月の評価表の改正のときの参考にさせていただいた調査ですが、その際の質問項目は今回の質問項目とは異なります。ですから、そのままというわけにはいきませんでしたが、同様の質問項目があるものについては、平成18年度の点数も参考に示させていただきました。※が付いているのは、質問項目が丸っきり一緒ということではなくて、似ている質問項目ということで並べさせていただいているものです。
○岡崎座長 どうもありがとうございました。17、18頁の資料も参考にして議論していただければと思います。いかがでしょうか。
○清水先生 夏目先生、大変有意義な研究のご説明ありがとうございました。最初の「目的」のところで、性や年代別についての点数の平均値という言葉もいただきました。例えば女性と男性でストレスのランキングが大きく変わったのか、あるいは40歳以上、40歳未満といった2つの年代の分け方でも結構ですので、そのランキングがどうであったかを少しお教えいただければと思います。
○夏目先生 報告書のほうには記載しなかったと思うのですが、統計の先生のほうに性別、年代別の有意差は出しています。もし先生がご興味があれば、あとから郵送させていただくということでよろしいでしょうか。
○清水先生 わかりました。
○夏目先生 点数であれば、この表を見ていただけばいいと思います。あとは、統計的検定が必要であるかどうか。必要でしょうか。これで大体おわかりいただけますでしょうか。
○清水先生 わかりました。
○夏目先生 有意差を出すときにちょっと問題になるのは、人数が1万何人ですから、ちょっとした差でもすべて有意差が出てしまうのです。そうすると統計的有意差にどんな意味があるかと統計の先生とディスカッションしたのです。事実を記載したほうがパッと見てわかりやすいということなので、こうさせていただきました。
○清水先生 ありがとうございました。
○岡崎座長 ほかにはいかがですか。
○荒井先生 こういう大規模な1万人の調査というのはなかったわけですが、これだけ大きいと、普通の経験された方でも分布があるはずだと思うのです。それは、普通の分布でない特に高いストレス度を経験されたパターンを示したものについては、特にそれは重要視していかなければいけないと思うのです。いかがでしょうか、標準偏差。
○夏目先生 これも、統計をやった山村先生とディスカッションしています。たしか報告書のほうにも少し分布を出していますよね。そこは、検討すべき課題ならば検討したほうがいいということになると思います。単純に平均値だけ出すのが果たしていいのかどうか。あるいは、点数の分布を見るのも意義があるのではないか。統計の先生から、分布を見るのも結構重要ではないかというご指摘をいただいています。
○荒井先生 そうですね。中心に、5に集まるのが普通の分布ですよね。ところが、そうではなくて、もっと高いところに平均が、あるいはピークがあるところがいくつかあると思うのです。それについては、より重み付けしたストレス度を考えていくことが、先生にやっていただいた研究をより正確に反映していくことにつながるのではないかと思うのです。
○夏目先生 それで今回の報告書に分布図を掲載しましたので、そちらを見ていただくと。これを活用するかどうかは委員会の先生方の判断になると思いますので、そちらでまた議論していただきまして、有用であればご活用をお願いしたいと思います。ありがとうございました。
○岡崎座長 ほかには、いかがでしょうか。確かに分布のパターンによって、正規分布しているものは平均値で代表するのもいいのですが、尖り度が非常に強いとか、逆に非常に小さいという場合は、平均値が代表するかどうかという代表性の問題が出てくるわけですね。
○夏目先生 統計の先生からも、むしろこちらをしっかり見なさいと言われています。今回それを全部付けていますので、そこでまた検討していただけたらいいのではないかと思います。
○岡崎座長 今後の評価表の検討に非常に有益な資料をご提供いただいたと思うのですが、ほかにはいかがでしょうか。
 事務局から出された17頁、18頁の従来の強度の評価I、II、IIIというのを見ますと、上位の10位の中に、従来だと評価ストレス強度がIIという評価のものが3個あります。11位から下の中にも、従来だと評価がIというのが入っているということがありますので、変化が生じているということが言えるのだろうと思いました。そういったことも含めまして、よろしいでしょうか。夏目先生の研究結果のご報告については、よろしいですか。
 夏目先生、どうもありがとうございました。ご苦労さまでした。こういう非常に客観的なデータが示されましたので、そういったものを踏まえまして、事務局のほうで心理的負荷評価表の案を作成していただいて、またご検討いただければと思います。夏目先生には今日は遠くからお出でいただいて、ご苦労さまでした。
                (夏目先生退席)
○岡崎座長 それでは、先ほど資料でご説明がありましたが、後半の「第5回における論点」という資料に移りたいと思います。事務局からご説明をいただけますか。
○西川職業病認定業務第一係長 それでは、資料2以降の資料についてご説明させていただきます。資料2は、「第5回における論点」ということで用意させていただきました。前回、第4回に論点の2以降として用意していたものと大筋は同じです。今回の説明は、まず第5回における論点の1「心理的負荷の評価対象について」です。
 「心理的負荷の評価対象について」ということで(1)として挙げさせていただいていますが、既に業務外の精神障害を発病している場合において、発病後に生じた出来事を原因としてその疾病、その病気を業務上と評価することが適切なものがあると考えられるかどうかということです。四角の中に現行の取扱いを挙げさせていただいています。平成11年の報告書においては、発病後の心理的負荷については何も触れられていないということです。その結果、判断指針においては「対象疾病の発病前」、おおむね6か月の心理的負荷を判断する、それをもって評価するということで要件としていますので、運用上、発病後の出来事は評価しないということになっているのが現状です。それでいいのかどうかということが(1)の論点です。細かくこの論点を分解していきますと、ア、イ、ウ、エということで挙げさせていただきました。ウまでは先ほど言いました第4回のときの資料に載せていましたが、エは補足で追加させていただいたものです。
 アは、既存の精神障害が「悪化」したといえるのは、何がどのように変化した場合か。こういったことが定義できるのかどうかということも含めてですが、例えば、うつ病であれば軽症とか重症とか病名がありますが、そういった病名の変化。症状の数。社会的な適応能力の悪化、働けなくなったこと、外出できなくなったこと。そういったメルクマールはほかにもあるかもしれませんが、そういったことで悪化していないということが判断できるのか。それとも、そういったところをはっきり定義することは難しいのか。どう考えていけばいいのかというようなことについて、ご議論いただければと思います。
 イ、「悪化」があるとした場合には、それは業務による強い心理的負荷が原因と判断することができるような場合があるのか。悪化の原因が、業務開始前経過も含めてそれ以外の原因かということを区別することができるのか、そういったことは難しいのか。難しいとしても、何か業務で大きなことが起こったときなどに、それが原因だろうと言ってもいいようなときがあるだろうかどうかということで、ご議論をお願いします。
 ウについては、自殺について同じようなことで、自殺の原因がこれだと言えるかどうかというようなことについてもご議論をお願いできればと思っています。
 エですが、ここで論点として挙げさせていただいているのは、まさに業務外の精神障害を発病されて、それはまさに治療を続けている状態のことを想定して書かせていただいてはいますが、実際の事案の中には、ずっと長いこと病院に通われているが、症状が落ち着いて、いわゆる寛解状態にあるようなケースですとか、あるいは、だんだん悪くなっていて、どこかの段階では確実に発病してというようなケースですが、発病時期があまりはっきりしないというようなケースもあります。こういった問題について、発病後の心理的負荷の評価というような形で対応するのか、そうではなくて、一定程度寛解状態、落ち着いた状態であれば、例えば症状固定と考えるといった別途の取扱いができるのかどうか。
 発病時期がはっきりしなくて、些細なと言うのも変かもしれませんが、症状が出始めたようなところをとって発病としてしまったために、そのあとの出来事が評価されないというようなケースについても、発病時期の特定の問題として別途対応するというようなことも考えられるのではないか、ということで挙げさせていただいています。こういった論点を、今回挙げさせていただきました。
 補足として、「悪化」という用語ですが、裁判例など、あるいは社会一般にも「増悪」という用語を用いているものもありますが、労災補償実務において、既に発病して現に療養が必要な状態の疾病が重症化することを「増悪」という言葉と区別して「悪化」ないし「重症化」と呼んでいますので、ここでは「悪化」という言葉を用いさせていただいています。
 この論点に関する資料としまして、裁判例と医学的知見ということで用意させていただいています。裁判例は29頁からになります。「発病後の出来事に関する主な裁判例(平成21年以降)」ということで、これも第4回に用意させていただいたものをそのまま用意させていただいています。平成21年以降のもので、発病後の出来事や心理的負荷について、評価すべきである、あるいは評価すべきでない、というような考え方が示されているものを挙げさせていただいています。
 4つに分類させていただいています。1つ目は、発病後の悪化または増悪というのは業務起因性として考慮すべきでないということをおっしゃられた裁判例。それから、同じようにおっしゃりつつも、とはいえこれは増悪していないのだというような個別の判断をしている裁判例。3番目として、発病後の悪化についても判断するという枠組みを示して判断をした上で、この個別の事案は悪化させるものではなかったとした事案。4番目として、発病後の悪化について検討して業務起因性を認めた事案。こういうことで分けさせていただいています。ただ、4番については、発病後のことだけに業務起因性を認めているものではなくて、こういった裁判例においては当初の発病についても心理的負荷が大きかった、業務上であると認定をしています。
 具体的な裁判例は次の頁からということになります。まず30頁以降の1、発病後の悪化は業務起因性の判断で考慮すべきでないとした事案につきまして、平成21年の大阪地裁の判決から載せさせていただいています。これは自殺の事案でしたが、自殺が精神障害の増悪の結果と相関関係があると考えることが困難だということで、発症後その増悪要因となる心理的負荷となるべき業務上の出来事があったとしても、これをもって自殺との間で条件関係があるということはできないと判示したものです。
 2番目は、平成22年10月8日最高裁不受理のものですが、判決文としては平成21年9月16日の東京高裁の判決です。こちらも自殺の事案ですが、業務起因性を検討するに当たり、発病後の業務上の要因による心理的負荷を考慮するのは相当でないと判示した事案です。これは、自殺が発症時点と軽快時点で起こりやすく、最も悪化した段階では逆に起こりにくいということから、このような判示をされています。平成22年2月3日の東京高裁判決についても、ほぼ同じようなことが判示されています。
 次に、33頁からの2のパターンです。そういったことを示しつつ、結局増悪したのか、していないのかということを検討・判断した事案です。①の平成22年3月4日最高裁不受理の事案、これは平成21年9月17日の東京高裁の判決です。枠組みとしまして、うつ病は自殺の危険性が高いところ、うつ病発症後の出来事が契機で希死念慮が生じるのではなくて、希死念慮が既に前から存在していて自殺企図や自殺が起こる、というようなことを判示しておられます。自殺したことをもってうつ病が増悪したとは認められない、というような判示をされています。
 ②は、平成22年6月23日の大阪地裁の判決です。これは、事案の概要のところで、同年6月にフロント係に異動させられたとありまして、判示の枠組みとしては、発症前の業務の内容、あと業務外のことなどを見て判断するのだと判示しています。ただ、原告のフロント係での職務遂行が社会通念上、原告の本件疾病の発症ないしそれを増悪させるに足る質的過重性を与える程度のものであったとまで認めることはできない、ということです。これは、フロント係での職務遂行というのは発病後の出来事ですので、そういったことを一応個別の事案としては評価をしたと。ただ、これは増悪させるに足るとは認めなかったという事案です。
 3番目のパターンは、発病後の悪化、増悪については検討するという枠組みで検討したという事案です。ただ、個別には悪化または増悪させる危険はないものであったとした事案です。①は平成22年1月の東京地裁の判決です。発症後の業務による心理的負荷の程度は、いずれも判断指針にいう「強」に至るものではないからということで結論を導いています。
 また②、平成22年2月23日の京都地裁判決も、うつ病の症状が増悪したと、増悪があったということは認めたわけですが、業務がうつ病を発症する程度の強い心理的負荷を課すものであったとまでは言えず、業務にうつ病を発症させ、または増悪させる危険性が内在していたとは言えないということで判断をした事案です。
 ③は、平成22年6月9日の東京地裁判決を載せさせていただいています。これは、この後、平成23年3月23日に東京高裁で判決が出まして、地裁はここにあるとおり国のほうが勝訴ということでしたが、これが取り消されまして、請求人の側が勝訴ということになった事案です。ここの一審の段階では、発病後の出来事は増悪させるような業務上の出来事があったと認めることはできないということでしたが、高裁のほうでは、発病前のことも業務上であったし、発病後のことでも業務に内在する危険が現実化したということで判示をしています。
 ④は、一旦休職されてそのあと復職された事案です。36頁の下のところから、本件復職後の業務の内容等に照らせば、本件疾病を悪化させ自殺を招くような危険な業務は存在しなかったということを判示しています。
 ⑤は、平成22年11月17日の東京地裁の判決です。精神疾患発症前後の業務上の出来事を総合考慮するのが合理的だということで、前も後も見るのだということですが、本件研修課への異動というのは発病後の出来事ですが、それについては、健常者に対する関係で精神障害を発病させるような極度の心理的負荷を引き起こす出来事であったと評価することはできないから、本件精神疾患の増悪に関する業務起因性の判断に当たってもその程度の事情として評価するのが相当だ、ということで判示しています。
 4番は、発病後の悪化について検討して、これは業務起因性があるのだと認めた事案です。ただ、当初のところも業務上と認定しているというものでもあります。先ほどの東京高裁で取消しになったものも、載せてはいませんが、高裁のほうはこちらに入ります。
 載せているものは①、平成21年5月28日の名古屋地裁の判決です。発症後に従事した業務も客観的にも過重であったと認定されるなら、継続する過重な業務により発症・悪化させられた精神障害により正常な認識等が阻害されて自殺行為に出たものとして、発症・悪化、さらに自殺とも相当因果関係があると推認すべき場合も存する。そして、この事案はそういう事案であった、ということで認定をした事案です。
 また②、平成22年10月26日の長崎地裁の判決です。これも、発症後の業務が客観的に見て労働者に過重な心理的負荷を与えるもので、これにより既に発症した精神障害、これ自体も業務上だとは言っていますが、これが増悪したと認められる場合には業務起因性を認めるということを示しています。
 次の41頁の資料5「論点に関する医学的知見」ということです。これも1「発病後の悪化(又は増悪)について」ということで示しているものについて、ご説明させていただきます。3点挙げさせていただいています。
 ①は、「『過労自殺』を巡る精神医学上の問題に係る見解」ということで、日本産業精神保健学会のほうでおまとめいただいている見解です。48頁に過労死弁護団全国会議の意見書のご提言を付けさせていただいています。発病後業務が原因となって精神障害を増悪させ、その結果自殺した場合について業務起因性があると判断するように判断指針を改定すべきだというご意見をいただいている意見書ですが、こちらはこれに対応して見解がまとめられたものです。この文章中で「意見書」と出てくるのは、弁護団のもののことを示しています。
 43頁の(1)精神医学における増悪の概念ということで、重症度の判断は症状の数で判定する一方で、症状の数が少なくても1つ1つが重い場合には重症ということもあり得るという考え方もある、ということなども示されています。44頁の上のところでは、精神障害は診断基準に示される症状の数、頻度、その程度によって具体的に把握されるので、増悪は自殺念慮との関係をいうものではない、というようなことを出されています。
 (2)発病・増悪要因の関係では、精神障害、特にうつ病の発病に関しては、生物学的、心理的、社会的側面が絡み合って発病するということが通説となっていて、増悪についても、この3要因が絡み合って起きてくるものだということが示されています。社会的要因というのが、業務によるストレスということになってくるのかと思います。
 (3)病気の増悪と自殺の関係です。先ほどの裁判例の中でも少し出てきましたが、クレイネスの曲線で示される病期と自殺企図との関係では、うつ状態が明らかとなった発症時点と症状の軽快過程で現実との直面化が行われた場合が多く、最も状態の悪化した段階では逆に起こりにくい、というような見解が示されています。
 46頁は、(4)意見書に対する見解ということでまとめています。既に精神障害を発病した方にとっては、些細なストレスでもそれに過大に反応することはむしろ一般的であると。これは、発病すると病的状態に起因した思考により、自責的・自罰的となって客観的思考を失うからと考えられている、というようなことなどが示されています。
 さらに、次の資料は、ICD-10の診断ガイドラインです。ここでは、まず、うつ病エピソードの診断ガイドラインを載せさせていただいています。うつ病エピソードの診断ガイドラインでは、まず最初に総論的な形で、3種類すべての典型的な抑うつのエピソード、抑うつ気分、興味と喜びの喪失、および活動性の減退による易疲労感の増大や活動性の減少に悩まされると。ほかの一般的な症状にはこの(a)から(g)までがあるというようなことを示された上で、次の頁から、軽症うつ病エピソード、中等症うつ病エピソード、精神病症状を伴わない重症うつ病エピソード、精神病症状を伴う重症うつ病エピソードということで、それぞれ病名を違えて、この程度の症状の数であればこういったものというようなことが、それぞれ診断ガイドラインが示されているところです。こういったものが悪化を判断するときに参考になるのかどうかということで、挙げさせていただいています。
 54頁からは、アメリカの「DSM-IV-TR精神疾患の分類と診断の手引き」ということで、診断マニュアルを載せさせていただいています。ここの総論の最初に挙げさせていただいているのは、DSM-IV-TRのそもそもの総論のところですが、重症度と経過の特定用語ということで、軽症というのはこういったもの、中等症というのはこういったもの、重症というのはこういったものということを、このマニュアルではまとめておられると。
 55頁以降は、それぞれの気分障害について、軽症というのはどういうもの、中等症というのはどういうもの、重症はこういったものだということを、大うつ病エピソード、躁病エピソード、混合性エピソードといったところで、それぞれ示されているものを示させていただいています。こういったものを参考に本日のご議論をいただければと思っています。よろしくお願いします。
○岡崎座長 ありがとうございました。本日の論点とその資料についてご説明いただきました。それでは、本日の論点についてご議論をいただければと思います。
○黒木先生 いままでは、精神障害の発症要因として業務要因が関係して発症したという場合に、精神障害については認めると。しかし、既存の精神障害があったとしても、業務要因が強く関係して悪化したり、あるいは自殺したという場合も認めるということで、これはかなりいままでの労災認定のあり方と、少し考え直さなければいけないということだと思うのです。
 また、裁判例を随分お話されましたが、裁判例も整理が必要かなという気がするのです。例えば、不安神経症で通院して、抑うつが加わったと。これは合併したのか、抑うつあるいはうつ病が新たに発病したのかということもあるし、身体疾患があって、そのあと抑うつ状態があって、職場に出て適応ができなくて自殺をした場合、これは一連のつながりがあるわけです。だから、いわゆる発症要因を事例によって少し整理し直すことが必要です。それがまず1つではないかという気がするのです。既存の精神障害があったとしても、例えば本当に寛解状態で、良い状態で症状がないという状態が続いて、そして業務要因が関係した場合に認めるのかどうかということも含めて、全体的にかなり慎重に議論をしたほうがいいという気がします。
○岡崎座長 ありがとうございました。発症後にも業務上の悪化があると考えるかどうかということですね。いかがでしょうか。
○山口先生 いま黒木先生がおっしゃったことは、私は基本的に賛成です。いままでの判断指針は発症前に出来事があって、そして発症した場合の業務起因性というか、業務上によるものかどうかを判断しているわけですね。いま問題になっているのは、既に業務外の要因によって発症している人の、その後の出来事があって、それをどう業務上の出来事あるいは負荷と評価するかという問題です。言うなれば判断指針に新しいタイプのものが必要なのではないかというのが黒木先生のご提案かと思うのです。
 私も、そういう基本的な違いがあると思います。だから、まず業務外の要因で発症したというところで、かなりクリアになっていなければいけない点がいくつかあるのではないかと思うのです。1つは、既に業務外の理由によって発症したというのではないのですが、身障者の人の場合に、心理的肉体的な負荷をどう考えるのかというときに、判例の中に本人を基準にせよと言っているものが出てきています。もし、こういう考え方が確定したとするならば、身障者と既に発症している人とは違いますが、発症のハンディキャップを負っている人という点では共通の要素がありますから、その要素をどう評価すべきかという問題が出てくると思います。
 また、悪化した場合に、ICD-10に載っているような症状の悪化でしたら、例えば療養補償を受けている人を休業補償に切り替えるという程度で済むのかもわかりませんが、死亡というか自殺ということになった場合に、補償の仕方も違ってきますが、いままで問題になっている自殺というのは、何か特別の病理機序があって、状況がいちばん悪いときに起こらないという特殊な病機がありますので、自殺の場合にはそういうことを加味して、特別の認定判断が必要になってくるのではないでしょうか。 もう1つの要因は、肉体的心理的負荷、つまり出来事と因果関係がなければいけませんから、既に発症している方の場合には、発症していることがはっきりしているわけですから、それに対して自分でどういう療養の態度をとっているのかどうか。つまり、人から言われ、医者からも言われているのに、全然療養していない、治療も受けていない、病院にも行っていない、むしろ拒否していると、そのような療養上の態度を考慮しなければいけなくなってくるのではないかという気もします。
 もう1つ、これは法律上の問題で技術的な問題です。業務外の理由によって発症していて、後の出来事によって業務上と認めるということになった場合に、発症の正式な時点はどこになるのか。その時点が法律上は請求権の時効の起算点になると思いますから、技術的にはどこかで確定しなければいけないと思うのですが、どうなるのか。そういった事柄が、いままでの、出来事が先にあってそれが原因となって発症した、というのと違った要素なのではないかという気がしますので、ご検討いただけたらと思います。
○岡崎座長 本日の資料2に「心理的負荷の評価の対象について」というタイトルが付いているのは、そういうことです。従来は、発症していなかった方が発症することについて、業務起因性があるかないかということを評価してきたわけですが、ここでははっきりと既存の精神障害というか、既に業務外の原因だろうと考えられることで精神障害が発病している方について、その発病後に生じた出来事が悪化の原因とみなすことができるか。そういった方を対象にして、業務起因性を論じることができるかという非常に大きなテーマです。
○山口先生 少し付け加えれば、医学の先生方からお考えになれば、全く医学的には業務外の理由によって発症したことが、業務上の出来事によって後に発症するというのが医学的にどう考えられるか。医学的にそういうことがあり得るかどうかということですが、その観点を離れて全く常識しかない法律家の観点から見ますと、業務外の理由によって発症していた方が、その後勤務しておられて、何か業務上の出来事があって、もし前に業務外の理由によって発症していなければ、この業務上の出来事があれば当然発症したであろうという出来事があるのに、たまたま事前に業務外の理由で発症していたためにカウントされなくなるというのは、法律家の判断では不公平かなという気もするのです。その辺は、医学の先生からご覧になってどうでしょうか。
○黒木先生 お答えできるかどうかわかりませんが。業務外の要因で発症し、通院もしている場合、そして職場の出来事が関係してその病気が悪化したということは、もちろん言えると思うのです。だから、どの程度悪化して、どの程度業務要因によってその病気が悪化した部分を引きずったかという議論になってくるのではないかと思うのです。もともとの業務外の要因で発症した精神障害が、何らかの業務上の出来事によって悪化することは臨床的には当然よくあり得ることで、この業務上の出来事は判断指針に則って、非常に強いものであれば、業務外の要因で精神障害が発症しているけれども、その悪化した部分に関しては少し検討ができるかなという気はします。
○荒井先生 事務局からも資料として提案があったように、用語の問題が難しくて、既存の障害としてあったとしても、例えば後遺障害があるけれど、ずっと安定していた場合であったり、あるいは完全に寛解して後遺障害も残していない場合もあるし、就労している場合には、DSM-IVでもICD-10でもいいですが、ある程度社会生活あるいは日常生活の障害程度と病状の重さは同じことを示しているということで、少なくとも仕事をしているというと、重症の方が仕事をしている可能性は非常に少ないと思うのです。ですから、働いていらっしゃる方の場合は、軽い障害の方に限った議論になるのが一般的だろうと。対象としては、寛解しているか軽い精神障害を持っておられるか、領域はそこなのだろうということが大きいと思います。中等症以上の方が通常の業務を果たしていることは、逆に言えば中等症でないことの証明になると考えなくてはいけないのではないでしょうか。
 黒木先生がおっしゃったように、業務外の要因で発症していたと。それは、寛解している場合には新たな発病として業務上の問題を検討すればいいと思います。寛解していなくて後遺障害があるとか、あるいは慢性期の症状があったとすれば、仕事をされている場合には、いま症状としては軽いわけですから、その上にあるストレス、ある心理的負荷が加わったために悪化したと。それについては悪化と取り上げて、業務と関連した悪化と、すなわち軽症であった人が悪くなる。その代わり、我々の一般的な経験で言えば、ある出来事があって悪くなった方は、悪くなった出来事がなくなれば軽くなって、元の状態に戻るというのが一般的だと思うのです。そのように一般臨床では考えております。
○岡崎座長 お二人の先生に共通しているのは、やはりそういうことはあるということですね。私自身も臨床をやっていまして、重症度が職場の出来事や状況によって変化するということは大いにあり得ますので、これは現象としては非常に多く臨床の場におりますと遭遇しているわけですが、ここで言う業務起因性と判断できるような症例がそんなにたくさんあるわけではありません。仕事に就いている方はどなたでも、日常的にある出来事と関連して変化するということはよくありますが、その出来事が極度のものであるかどうかということはそんなに多くはないわけで、それはまた別個の判断が必要です。しかし、発症しておられる方が、職場の状況等によって重症度が変化するということはありますので、この問題は対象にすることはできると考えられます。
○阿部先生 業務外の精神障害を負っている場合に、軽度の精神障害を負っている場合が多いとおっしゃっていたのですが、必ずしも使用者側が業務外の精神障害を知らない場合もあります。そうすると、もしこれを入れるとなったときに、使用者の認識可能性みたいなものを取り込んでいかなくてはいけなくなるのかなと。最初から業務上であれば、もちろん無過失責任で使用者が責任を負うのですが、最初の原因が業務外であってその後の業務により精神障害が悪化するという場合には、使用者が既存の精神障害を知っていて悪化しないようにしなければいけないというか、使用者の認識可能性が、無過失責任である労災の中に入ってくることになり、ちょっと複雑なのかなと思いました。
○岡崎座長 それは、具体的には何らかの業務外のことと絡んで、例えばうつ病を経験された方がどこかで治療して、特に職場には関係なく治療しておられて、通院しているかもしれませんが、しながら仕事をしておられたと。そういう方が業務上のことで悪化した場合の責任の問題については、職場で知らされていなかった場合は責任の取りようがないのではないかということですかね。
○阿部先生 難しいのかなと。
○岡崎座長 そうですね。その問題は難しいところですね。
○良永先生 いまのご指摘のことは、現実に起こり得るかなと思いました。大事なご指摘だと思いますが、使用者側がそういう病的状態にあることを知り得なかったということは、民事損害賠償の場合には予見可能性とか注意義務が問題になりますから、いろいろ問題になると思うのです。労災保険とか業務災害の場合には、それは基本的にはあまり問題にならないのではないかと、私は思うのです。もちろん、知っていれば適切な健康管理義務を果たすべきであったのに、それを懈怠したからという判例もどこかにあったような気もするのです。業務起因性を認める理由にしたことがあったと思うのですが、それは不可欠のものではないと思うのです。ですから、知っていなかったから、そのこと自身が業務起因性の有無を判断する重要なポイントにはならないのではないかなと、私は思ってしまうのです。どれだけの負荷がかかったかだけが問題になるのではないかと。誤解があるかもしれませんが、重要なご指摘だということは承知した上での発言です。
○阿部先生 通常のストレスで普通の人だったら耐えられるものが、軽度の精神障害を負っている場合には耐えられなくて、軽減措置みたいなものを使用者が取らないと、悪化してしまうような状況の人もいるかもしれないと考えると、知っていないと、軽減措置を取りたくとも取れないのではないかなというのが、疑問としてあります。
○織先生 既存の精神障害があっても、業務起因性を認めるべき場合があるということで、委員の先生の意見は一致しているように思いました。その場合、自殺あるいは悪化の直前にしていた業務の危険度によって判断すると。業務の危険度がIIIとかの非常に強いものであれば、通常の人と同じ保護の対象になるのでいいと思うのですが、そうではなくて、負荷評価表ではII程度の、通常の人であれば乗り越えられるだろうというストレスしかなかったのだけれど、使用者側が既存の精神障害の事実を知っていて、治療の必要性とか職務を軽くしなければいけないというのを知っていながらそういう措置を怠ったという場合には、それの事情と相まって業務起因性を認めるという選択肢はあるのではないかと思います。
○岡崎座長 そういう対象はありそうであるということでは一致しているようですが、そのあとどのように判断していくかについての議論で、いくつか具体的な提案が出ていますが、いかがでしょうか。
○荒井先生 これは障害者雇用促進のときの議論にもあるのですが、障害者が明白に会社に自分が障害を持っていると述べている場合は、手帳を所持しているということを明示して、障害者雇用枠、あるいは障害者であっても障害者として雇用されていない方がいるわけですが、そのようにしていた場合には、健康配慮義務について会社に一定の責任は発生すると思うのです。ところが、私病としてうつ病、うつ病ではなくてもいいのですがなっていて、それを会社に述べていない、あるいはインフォーマルには知ってるということがあるのは非常に微妙なところだと思いますが、少なくとも公式に会社の上司あるいは事業者に知らせていない場合には、会社に特段の配慮義務がそこですぐに発生するとは考えられないと考えたほうが現実的だと思います。
 というのは、先ほど申しましたように、軽度の方は障害を持っていることに対して何の保障もないのです。手帳も交付されない、本人が望まないということもあるでしょうし、望んでも交付されないので、障害を証明する手段がない。あるいは診断書を提出することについては、本人の不利益も発生するかもしれないので、本人があえてやらないとか、いろいろな障害があると思うのです。いずれにしろ本人が私病として持っているものについて会社に言っていない場合には、事業者が特段の安全配慮義務をその時点で持つということは考えられないと思います。
○渡辺職業病認定対策室長 行政の実務上は、いわゆる民事責任、安全配慮義務違反という問題と労災補償の対象を完全に明白に分けていまして、民事上の責任が生じるかどうかと労災の対象とするかどうか、労災は完全に当初から無過失責任ということを前提としておりますので、そこは完全に切り分けています。そこの議論は、もっと制度の本質の議論のときには必要かもしれませんが、ここの場ではとりあえずそういう形で整理をしていただいたほうがいいと思います。
 安全配慮義務の話になると、そもそも精神障害はそれぞれの持つ個人の脆弱性がみんな違うという中でやっている話ですので、それはたぶん増悪のときだけに生じる問題ではないし、当初から、例えばこの人は弱いことがわかっている人だとすると、この人には普通の仕事はさせられないみたいな話にもなってしまうと思うので、精神障害のいまの検討の中では、従来の行政の整理の中でやっていただいたほうがいいのだろうと、事務局としてはそのように考えております。
○岡崎座長 法律上の責任問題を絡ませると、確かに難しくなってくるというか、この趣旨から少し広がりますので、ここではそういった対象があるということを前提にして、それを労災の認定のシステムの中でどのように位置づけるかということかと思います。頻度としては臨床の場では非常に多く遭遇することで、要望もありますし、いままでのシステムの中にそこの位置づけがなかったものですから、現場では既存の評価の方法で非常に苦労なさっていたと思うのです。そのようにやろうとすると、工夫するあまり本来の趣旨からもいろいろな変形が生じたのではないかと思いますので、この際はっきり発病後に生じた出来事を原因として既存の精神障害が悪化したということがあるということ、そういったものがあることを認めることができるのではないかということを前提にして、そういう場合にどのような心理的負荷の評価をするかという、評価の仕組みを方法としていくかということを具体的に検討いただければいいのかなと思います。
○清水先生 治療的な観点から発言させていただきます。うつ病について、イギリスに「ステップドケア」というガイドラインがありますが、そこでは初発のうつ病と再発のうつ病で違うステップで対応しようということになっておりまして、初発のうつ病はプライマリケアのチームで対応すると。再発のうつ病はもう少しステップが上で、治療抵抗性の方も含むのですが、メンタルヘルスの専門家が対応するようにという治療の構造があります。
 今回のうつ病などの労災の認定を迅速化するという趣旨でも、同じように初発の方は非常に迅速化していく。これだけのCommon Diseaseになって、誰でもかかる病気ですから、初発の方は迅速化していくのは大事だと思いますが、再発の方や治療抵抗性の方、今回のように既存の精神障害が悪化したような場合は、ここまでのご議論をお聞きしていても、判断は非常に難しいということになると思うのです。ですから、それは従来どおり、迅速化するというよりは、専門家の方々がそれぞれを個別に対応すべきではないかと。そういった意味では、論点のエのように、別途対応するべきということにならざるを得ないのではないかと思いました。
○良永先生 いまのご発言と関係すると思いますし、医学系の先生方のご意見もお伺いしたい点があります。この問題を考えていると、精神障害ではなくて、循環器系の疾患で最高裁判所までいったケースがいくつかあったと思います。これは地公災基金関係の事件だったと思います。瑞鳳小学校事件や町田高等学校事件などが頭に浮かびますが、いずれも疾病自体は業務外なのですが、適切な治療を受ける機会を失って、結果としてお亡くなりになったと。最高裁判所は、両方とも公務起因性を認めたのではなかったかと思います。
 1つ注意したいのは、最高裁判所のケースで死亡までいっているケースなのです。今日、事務局でいろいろご紹介になったケースの大半は自殺までいっているのです。自殺までいっていないのは1ケースです。一般論としては、既存疾病が業務起因性がないとしても、業務で有意な影響があってそれが悪化した場合には、検討の対象から外してしまうことにはならないのではないかと思うのです。ただ、最高裁判所で出ているケースは循環器系なので、精神障害の場合にどういう特色というか、悪化したという場合には、例えばうつ病の場合には、軽度のうつ病が悪化するというのは具体的にどういう症状までいくと。いわゆる悪化して別の治療が必要になるとか、休業期間が長くなるとか、そういう顕著な症状の変化があるという、今日の事務局からの提案そのものなのですが、具体的にうつ病を例に取るとどういうことが考えられるのか。これは医学系の先生がお詳しいだろうと思いますので、その辺りが明確になってくると議論しやすいかなと思います。自殺はまた別に考えていったほうがいいかなと思っています。
○岡崎座長 自殺はそうですね。
○織先生 私も良永先生に全く賛成で、法律家から見ると、悪化というのは自然的な経過とか通常の治療経過とは異なる過程で、症状が著しく重くなるというイメージを抱いているのですが、実際には精神障害の方の症状は人それぞれなので、悪化というのを一概に定義づけられるのかどうか。臨床医の先生に、率直なご意見をお聞かせいただきたいと思います。
○岡崎座長 それでは、清水先生からご説明をお願いします。
○清水先生 いくつか資料をいただいていますので、ICD-10の49頁をご覧ください。論点アでいただいたような、「既存の精神障害が『悪化』したといえるのは、何がどのように変化した場合か」という点ですが、ICD-10の49頁を見ると、うつ病のエピソードが軽症、中等症、重症と分けることができるということがあります。(a)から(g)の症状があるということになっていて、50頁を見ると、軽症というのは「これらのうち少なくとも2つ」という表現なのです。ですから、症状が2つあるとお考えいただければと思います。
 51頁ですが、中等症を見ると、「少なくとも3つ(4つが望ましい)」という表現があると思います。その上が精神病症状を伴わない重症うつ病エピソードで、「他の症状のうちの4つ」ということですので、基本的には症状の数が増えていくということでご理解していただければと思います。さらにその上が精神病症状を伴う重症うつ病エピソードで、いわゆる妄想といった症状も加わってくる状態になって。
 精神医学的にはこういったうつ病に関しても、症状の数が変化したということでも軽症、重症といったものも評価できますし、実際うつ病の薬、抗うつ薬といったものが効果があるということを判定するのも、症状が軽くなった、重くなったといったものをスコア化、点数などで見ることで、この薬は効果があったということも判定できますので、もちろん何がどのように変化したということも判定はできるわけですが、実際はそこに専門家による診察が必要であったり、横断的なその時点での観察が伴っていないといけないということもあります。
○岡崎座長 ありがとうございました。現在では、うつ病は症状が揃ってくる程度。
○黒木先生 清水先生がおっしゃったことも、もちろんそうだと思いますが、これは産業精神保健学会の委員会の中でも随分検討されたのですが、必ずしも数が多いから重症ということにはならないのではないかという議論がされました。日常生活に支障を来していく、出社どころか不眠状態も続いて、家庭の中でもサポートしなければいけないような状態になってしまう。これは明らかに重症化、あるいは悪化と考えてもいいのではないかと。わかりやすく日常行動の変化によって重症度を考えていくのが良いと思います。
 ただ、本人があまりしゃべらないとか、あるいはしゃべったから重症だということもあり得るし、この精神障害の精神症状の評価は、客観的に評価するのが非常に難しい部分があるので、重症化あるいは悪化ということに関しては検討したほうがいいかなという気がします。
○岡崎座長 いまお二人の先生からご説明いただいたことを総合したものが、精神病の概括的な重症度を表現するGAFというものがありまして、「全般的機能障害尺度」と訳したかと思いますが、清水先生にご説明いただいたようなものを「精神病理症状」というのですが、精神病理症状の重症の度合いと、もう1つは生活機能、自立機能がどうかということ、また精神疾患の場合は、自分と外の世界をどのように認知するかといった認知が冒されている、妄想とか幻覚がそうなりますが、そういったものと、そういう精神病理症状の程度と生活機能の障害の度合い、その2つを総合して重症度と言っていることが多いです。
○荒井先生 これは前にも申し上げたかもしれませんが、ICD-10は、前文で症状があること、すなわち発病だと考えるなということを明確に書いています。日常生活の支障、社会生活の支障が出てきて、初めて症状に名前を付けるときにICD-10という本を使えとインストラクションしています。DSM-IV-TRでも、職業上あるいは日常生活上の著しい支障がこの症状によって出てきていることをもって、病気の発病と定義をしているわけです。
 ですから、症状があること、すなわち発病とは言えないと思いますし、発病としているのはどこかというのは、たどっていくと1年前に不眠があったというのが発病なのかという議論になるのですが、通常の社会生活、日常生活を送っておられた場合には、その時点を発病と捉えることはあまりしないのが一般的だろうと思うのです。ですから、重症度も日常生活、社会生活に明白な支障が出てきた時点をもって発病とするのがいいでしょうし、悪化も(a)状態から(a)より随分悪い状態になったというのを悪化と考えるのがよくて、症状数だけでは表現されないものだということになっていると思います。
○山口先生 荒井先生がおっしゃることは、皆さん何も反対しておられないだろうと思うのです。何らかの形で悪化という判断ができることも、先生方の議論ではっきりしたと思います。問題は、事前に業務外の理由によって発症があって、それが何かの時期に悪化したという判断がなされて、それが初期の発症の結果なのか、それとも途中で業務上の出来事があってそれによって悪化したのか、どちらなのかという因果関係の判断ができないと、前のほうだと補償の対象になりませんが、あとのほうだと判断できれば、これは業務上の出来事ですから、業務起因性があるということで補償の対象になるわけです。どちらの過程で、別の言葉で言えば、因果関係というのか、自然的な過程で発症したのかということでしょうけれど、法律的にそこが判断できないと、補償するかしないか答が出ないのです。そこの過程は医学的に見極めがつくのでしょうか。
 同じようなことで法律上難しい問題が起こったのは、公害が問題になったときに、川で廃液を流すと。Aの工場も流しているし、Bの工場も流している。どちらの工場の廃液も下流の農作物を枯らすのに十分だったというときに、一体どちらに原因があるのか、どちらの流した廃液の過程によって損害を与えているのかがはっきりしないと、法律的には責任が特定できないのです。それと同じとは言いませんが、似ている要素があって、どちらが原因なのか、どちらの過程で悪化しているのか。悪化は判断できますが、そこが判断できないと法律的には答が出ないかなという気がします。
○黒木先生 山口先生のおっしゃるとおりで、臨床的にはここが非常に難しいのです。もともと既存の精神障害があるわけですから、たまたま自然悪化しているときに業務要因がかかわって悪化してしまった場合もあります。例えば、既存の精神障害の人、あるいは既存でなくても、パワハラを受けた場合、あの上司だったらみんな大変だとか、みんなおかしくなるとか言って、しかし、別の所に環境を移してあげても、原因を取り除いてもなかなか治らないと。そうすると、これは本人の個体側の要因に起因した病態ではなかったかという判断になるのです。既存の精神障害が業務要因が有力な原因として作用して悪化した場合に、そこをどう判断するのかは、本当に業務要因が悪化の1つのファクターになっているのかどうかという判断は難しいです。でも、業務要因が非常に強くて悪化した場合は、その悪化は本人の自然悪化かもしれないけれど、ある部分に関しては、ある期間に関しては認めるという道はあってもいいのかなという気はするのです。
○岡崎座長 確かに、その区別は難しいところはあると言ってもいいのでしょう。ただ、明瞭に区別できる場合もあって、私の経験を申し上げますと、これが労災云々ということではないのですが、ある県警のメンタルヘルスをやっているときに、復職していただいたときに、何人かいらっしゃるのですが、名物の課長がいらっしゃって、その課長の下に復職すると必ず再発するのです。所長と相談をして、そうではない方のところに置くと、普通に復職してやっていけるということがあります。それがあらかじめわかっていて、それを避けたか避けないかは安全配慮義務になるかどうかはわかりませんが、そういうことがありますので、確かに職場要因が再発に関係するということが区別できる場合も明らかにあるのです。だから、難しい場合ももちろんあるのです。
 初発についてはいまやっていますが、ライフイベント法でやる限りは、発症にかかる要因についても近似的な推測しかできないと思うのです。再発の場合についても、それとどれだけ違うかということも言えますので、できる限り総合的な判断を綿密にやって、これは職場起因性があると言えるようであれば、職場に戻っておられる方は就業に耐えるということで戻っておられる状態ですから、寛解とか治癒、あるいは非常に軽い状態になって復職しておられると思いますので、その方が再発した場合には、職場起因性を検討する対象になり得るのではないかと考えてもいいのかなと思います。
○河合補償課長 全体にお話を聞いておりますと、いわゆる業務外要因で発症しておられる方であっても、その後に客観的に見て強度な業務上の要因があった場合には、それは認めてもいいのではないかというお話ということでよろしいのでしょうか。
○黒木先生 認めるとしても、条件が必要だと思います。もともと既存障害があるわけですから、既存障害が治っていく、悪化の部分が治るという、その部分に関してもですね。
○河合補償課長 それはあくまでも客観的に見て、業務上要因を見る場合にも客観的に見て判断しなければいけないし、その後の症状の経過も当然見ていかなければならない。そういう感じでよろしいのですね。
○岡崎座長 発症されたことによって脆弱性が増大しているということもありますし、そういう個体側の理由も十分考慮して、業務起因性は総合的に判断することになると思いますので、心理的な負荷がどうしても極度ないしは非常に強いといったものが業務起因性があると認定される場合には、多くなるのではないでしょうか。そういった結果になるのではないかと思いますが、総合的に判断しなければいけないと思います。
○阿部先生 総合的に判断するとしても、基本的には通常のI、II、IIIという同じ基準で判断するのか、それとももう少し緩やかに、既存の精神障害を負っているので、緩やかに総合的に判断してもいいと捉えるのかで違ってくると思うのですが。
○岡崎座長 どうでしょうか。緩やかにという方向には、むしろならないのではないでしょうか。
○阿部先生 既存の精神障害を負っているから、例えば先ほど織先生がおっしゃったように、IIかIIIか怪しくても認めていきましょうという感じではないということですか。あくまでも通常の基準と同じということでしょうか。
○黒木先生 それはならないです。不公平になりますから。
○阿部先生 そうかもしれません。
○岡崎座長 少なくとも同じでしょうね。
○河合補償課長 労災というのは、業務に内在する危険、要するに仕事の中にさまざまな病気を発症させる、もしくはケガをさせる原因があったということですので、業務に内在する危険があったということが客観的にわかるような出来事で評価するという感じで、先生方のご意見としてはよろしいでしょうか。
○荒井先生 増悪を初発と同等に評価するということがいちばん。要するに遠いものがあったり近いものがあったり、いろいろありますけれども。
○河合補償課長 現場はそこの部分が難しくて、はっきりここの観点で調査するのだということは明確にしておかなければいけないものですから。
○荒井先生 先ほどの増悪の定義から遡って、ある一定期間を、初回の認定のときにやったのと同じ調査をしていただくのは、増悪に対しても同じではないでしょうか。
○岡崎座長 そこの明細化については、今後検討が必要だと思いますが、今日のところは発病後にも心理的な負荷が非常に強い、ないしは極度の出来事があった場合には業務上であると認めるということでは、先生方のご意見は大体一致したのではないかと思います。
○黒木先生 その既存障害の状態とか、それも関係あるのではないですか。悪化したときの既存障害の、きちんと仕事もできていたとか、寛解状態にあったとか、そういう状況も当然入ってくると思うのです。
○岡崎座長 そうですね。そういったものを含めて総合的に評価をして、判断をしなければいけないだろうと思います。したがって、先ほど申し上げましたが、初発のとき発症について行っているように、非常に強い心理的負荷があった場合に認めているわけですが、そういうものがあったかどうかを総合的に判断しないといけないだろうと思うのです。そういったことが、今日ご議論いただいて、とりあえず一致したと言ってよろしいのかなと思います。そういった極度のもの、あるいは非常に強い出来事に当たるかどうかについては、また次回以降行われる心理的負荷の評価表等の見直しを議論いただいた上で行っていくことになると思いますが、今日のところはそんなところでよろしいでしょうか。
 どうもありがとうございました。今日は2つご議論いただきましたが、そのようなことでまとめさせていただきます。それでは、事務局にお返しします。
○板垣中央職業病認定調査官 次回の日程ですが、検討会は5月31日(火)の午後2時から開催予定としておりますので、よろしくお願いします。これをもちまして、本日の検討会を終了いたします。本日はどうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

労働基準局労災補償部
補償課職業病認定対策室

電話: 03(5253)1111(内線5570、5572)

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