ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 労働基準局が実施する検討会等> 平成22年度管理濃度等検討会> 平成22年度第3回管理濃度等検討会議事録




2011年4月12日 平成22年度第3回管理濃度等検討会議事録

労働基準局安全衛生部労働衛生課環境改善室

○日時

平成23年4月12日(火)15:30~17:30


○場所

経済産業省別館825号会議室


○議事

○櫻井座長 ただいまから、平成22年度第3回「管理濃度等検討会」を開催いたします。今日ご欠席は、田中委員と和田委員です。大前委員は少々遅れるという連絡が入っていると聞いております。配付資料の確認について、事務局からお願いいたします。
○事務局 本日はお集まりいただきまして、ありがとうございます。配付資料の確認をいたします。1つ目は、1枚目に「会議次第」と書いてある綴りになっているものです。資料3-1として、前回第2回の検討結果について、資料3-2として検討対象物質の用途等一覧。資料3-3として検討対象物質の測定技術にかかる資料。資料3-4は、ACGIHの提案理由、ドキュメンテーションになっています。資料3-5は、日本産業衛生学会の許容濃度の提案理由になっています。3-1から3-3までが1つのホッチキス止めになっており、3-4、3-5については、机上のみの配付とさせていただいております。
 参考資料として、参考資料1「管理濃度等検討会中間報告書」、こちらは第2回のときに中間報告書(案)として取りまとめいただいたものの正本版です。参考資料2は、その中間資料を基に公示した、「作業環境測定基準の一部を改正する告示等」になっております。参考資料3は、「作業環境測定基準の一部を改正する告示等の施行等について」という通達の写しです。こちらは、作業環境測定基準の管理濃度の値等を引用している通達がありますので、そういったものの通達を改正するものと、都道府県労働局に宛て通知した施行通達になっております。
 机上配付として、厚生労働科学研究補助金での名古屋委員のニッケルに関する研究の報告書からの抜粋で、「ニッケル化合物の測定法について」です。もう1つニッケルの関係ですが、櫻井座長からの追加の資料です。以上です。
○櫻井座長 揃っていらっしゃいますか。大丈夫かと思います。それでは、議事に入ります。1つ目の議題は、前回の検討結果についてです。事務局から資料の説明をお願いいたします。
○事務局 資料3-1です。第2回の検討結果についてまとめたものを記載しております。1,4-ジクロロ-2-ブテンの局所排気装置の性能要件について、0.005ppm。ベンゾトリクロリドの管理濃度等については、取り扱っている事業場での作業環境測定の測定結果、危険性に関する文献を収集することとして、継続審議とされております。こちらについて、まだ時間がかかっておりまして、第4回にさせていただきたいと考えております。3つ目が質量濃度変換係数(K値)についてです。こちらは4種類のデジタル粉じん計について、K値の値を決めていただきました。4番目は中間報告書で、参考資料1に付けているものになっております。なお、当検討会の名称ですが、平成22年度から始まった検討会ですので、平成23年度になりましたが、引き続き平成22年度の第3回検討会とさせていただいております。以上です。
○櫻井座長 何か修正・追加等ありますでしょうか。特にないようですので、議題1については終了して、2つ目の議題に入りたいと思います。「管理濃度等の見直しを検討する物質について」です。事務局から説明をお願いいたします。
○事務局 管理濃度等の見直しを検討する物質について、資料3-2です。こちらは物質名が左に書いてあり、右側に現行の管理濃度と日本産業衛生学会の許容濃度、ACGIHのTLVの値を書いております。ACGIHと日本産業衛生学会の値については、管理濃度の値よりも低いものについては括弧内に提案年度、採用年度を記載しております。現行の管理濃度のほうが、日本産業衛生学会、又はACGIHより値が高くなってしまっているものについて抜き出してあります。こちらの9物質について、管理濃度の値を検討いただきたいと考えております。こちらの9物質について、順番に検討をお願いしたいと思います。
○櫻井座長 従来からの方針に従って、産業衛生学会またはACGIHの勧告値が管理濃度よりも低いのがあった場合に、検討するわけで、現在この9物質があります。ということで、これについて順次、検討するということでよろしいですか。そういう方針ということですので、早速、議題を進めて、ここに書いてあるとおりの順番でいきたいと思います。エチレンイミンについて、ご議論をお願いいたします。事務局から、資料の説明をお願いいたします。
○事務局 資料3-2です。1つ目にエチレンイミンがありまして、管理濃度が現行0.5ppmのところ、ACGIHが2009年に0.05ppmを採用しております。エチレンイミンの用途ですが、文献によるとタウリン、農薬、有機合成、各種高分子化合物(ポリエチレンイミンなど)の用途として使われているものです。生産量については、なかなか文献に載っているものがありませんでしたので、不明としております。
 資料3-3です。こちらは、各検討対象物質の測定技術にかかる資料で、各委員及び日本作業環境測定協会精度管理センターさんのご協力を仰ぎながら取りまとめた資料です。1つ目にエチレンイミンが書いてあり、文献などから定量下限値を拾い出して、計算をしております。上から2つ目とかいちばん下のものによると、管理濃度の1/10以下を測定できるのではないかと考えております。
 資料3-4のACGIHのドキュメンテーションに、エチレンイミンを付けております。これを見ると、1つ目にTLVRecommendationが書いてあり、こちらにエチレンイミンの提案理由等を書いてあります。検討をよろしくお願いいたします。
○櫻井座長 資料3-3の測定の技術に関する資料は、仮に0.5を0.05に下げた場合に、定量下限がその1/10未満の方法があるかどうかを、あらかじめ調べてあるものです。まず、0.5を0.05にするかどうかという点のご議論をお願いしたいと思います。ACGIHが0.05に下げた根拠について、少し時間をとって、ドキュメントを見て、ご意見をいただきたいと思います。5分ないし10分ぐらい、目を通していただきたいと思います。
○中明委員 私がいままで主張してきたことと、また違ったあれになってしまうかもしれないのですが、いままでどちらかというと、管理濃度は産衛学会かACGIHか、どこか低いほうをとりましょうという話でしたよね。これでいけば、0.05という形になります。測れるのかなと思えば、当然測れますという話になっているから、それでもいいのですが、実際にいま生産量とか、不明な部分が結構ありますよね。対象物質、有機合成に使うとか何とかとあります。
 そうすると、私のいまのあれでいくと、現行でもいいのかなという気もしないでもないのです。実際に日本の産業の場でいろいろな問題が起こっているかというと、あまりないと思うのです。そういう事例が出てきてしまってからどうのこうのというのはまずいのだろうと思うのですが、現行でうまくやっているのだったら0.5でもいいのかと思うのです。ACGIHのヒトでの研究にしても、比較的小さい子供が換気の悪い所で2時間ばかりいたら、喉だとかそっちのほうの影響が刺激の問題などが出てきますということで、実際上はここのあれがあまりヒトでのというのはない。現場でのデータというのは、どっちかというと少ないような気がするのです。
○櫻井座長 ヒトのデータが、逆に使えるようなデータはないみたいですね。
○中明委員 あまりないという感じがするのです。だから、いままでどちらか低いほうを主張してきましたが、それはもう少し様子を見てもいいのかなという気がして、現行の0.5でもということをいまちょっと考えているのです。
○櫻井座長 ACGIHは、3頁のいままでの履歴を見てみると、1966年まで5ppmで、1967年から2008年までは0.5ppm。そのあと2008年に0.05をプロポーズして、2009年に採択したということになっているのですね。比較的最近ですね。
○中明委員 最近は最近です。
○櫻井座長 ACGIHも、従来は動物のデータはあまり使わない。
○中明委員 これだと皮膚への影響がちょっとあれしているのかな。
○櫻井座長 皮膚。これは吸収。
○中明委員 2008年、STEL0.1で、TLVは0.05にしたわけです。STEL0.1で、皮膚はA3になっていますね。A3は動物への発がん性の影響ですか。ただ、ヒトではわかっていないということですね。
○櫻井座長 そうですね。
○中明委員 皮膚のことを考えると、ちょっとやはり。そこまで考えて、彼らは2009年に1桁下げたのかもしれないです。
○櫻井座長 それも頭にある。発がんの絡みのですね。
○大前委員 これを読んでいますと、この物質は非常に強いアルキル化剤だと書いてあるのです。前のドキュメンテーションがないので、前が何で0.5だったかわからないのですが、非常に強いアルキル化作用があって、変異原性があるということで、少し厳しく見たのではないですかね。それで1桁下げたと、そんなイメージですかね。
○櫻井座長 そうですね。変異原性は強烈のようですね。
○松村委員 TLVの表の最新版の根拠は、上部気道の刺激と肝臓と腎臓のダメージと書いてありますね。
○櫻井座長 その数字がサマリー的なところにもありますが、5ppmで1.5カ月で、気管支炎が認められたということで、それより低い濃度のデータはないから、5ppmがLOAELになりますかね。6週で1日4時間と、どこかに書いてあった。だから、もし8時間に直すと2.5。さらに、LOAELからNOAELということを考えたからだと思うのです。
○大前委員 いまのデータで、5ppmから1/10見て0.5にしたのではないですかね。0.5にした理由というのは、この5ppmのデータから0.5にして、アルキル化剤で非常に強いから、今回少し低くしたと、そんなイメージではないですかね。
○櫻井座長 そんなイメージですね。0.5を1/10にして0.05にしたと。それをサポートする根拠として、変異原性、動物への発がん性、それとばく露の時間が4時間だったというのも考慮されているかもしれませんけれども。あと、肝臓とか腎臓もあるのですね。
○大前委員 これですと、5ppmのときも大丈夫ですね。5ppmを4時間で1カ月半で、こういう変化があるわけですから。
○中明委員 影響としては大きいと。
○櫻井座長 あと、ドキュメントの3頁の左のカラムのいちばん上に、Reproductive/Development Toxicityの所で、10mg/㎥というと、これはやはり同じですよね。同じ5ppmで、20日で何かポジティブなデータも出ている。これはサマリーのほうには書いていないのですけれども。5ppmが0.5、0.05。データとしては5から0.05に下げるということは1/100ですね。そうすると、種差、0.5からは1/10にしているのですが、データからいけば5から下げていっているわけですよね。
○中明委員 5が0.5、0.05。
○櫻井座長 1/100になるわけですね。NOAELから1/100にしている。時間は1/2にしたとしても1/50。それと種差。
○中明委員 1/500。彼らは彼らの、それなりの根拠は持っているのだと思う。大前先生、産衛学会のほうはまだ何も考えていなくていいですか。
○大前委員 と思います。
○中明委員 何か直接的にまだ。
○大前委員 このSBSのデータがおそらく最新の情報でしょうから、これ以上の新しいのはないと思うので、その辺。
○櫻井座長 いまの意見交換の内容から考えると、やはり0.5を0.05にするということで、よろしいですか。ほかに何かありますか。
○名古屋委員 日測協も持っていない。どのぐらいの事業場があるかわからない。昔はわかりましたよね。
○松村委員 前に新しい分析法の委員会をやっていたときに、1事業場ぐらいどこかにあったかもしれない。茨城県か何か、本当に少なかったような気がします。
○中明委員 だから、逆に厳しくしてもそんなには影響ないという話にはなるのです。
○小西委員 実際に計測された数は、本当に少ない。
○櫻井座長 1つ言い忘れたのは、この1.5カ月というのを、期間の外挿も考える感じなのですね。1.5ですと、ちょっと短いですからね。測定のほうも大丈夫ですか。
○中明委員 0.008というのは何ですか。
○小西委員 005となるわけですね。
○名古屋委員 005だから、マスしか使えないということでしょう。
○中明委員 測るほうとしても、厳しいといえば厳しいですね。
○小西委員 厳しいと思いますね。計算上では10分の測定に計算し直していますからね。例えば上から2つ目のこれなどについても、トータルボリュームを増やすか何かすれば、下がっていく可能性はあるかなという気がします。これは10分で計算してしまっているから。
○名古屋委員 上は0.15L/minで333分だから、もうちょっと長いのでしょう。50Lなのです。下が10Lですよね。だから、下が1L/minで10分なのだから、上もたぶん0.15ではなくてもうちょっと。でも、インピンジャだから駄目かな。
○小西委員 行くには行くのだろうと思います。ただ、これは上から2つ目のと、4番目のNIOSHのが3514とありますね。2つ目のものは、結局これの前の方法ですよね。
○中明委員 そうですね。厳しいな。
○名古屋委員 でも、10分にこだわらなくても。
○小西委員 10分にこだわらなくてもいいと思うのですけれどもね。いつも10分でということでなくてもいいのだと、必要な時間はきちんと計算したほうがいいだろうと思いますけれどもね。
○中明委員 それは測定士さんにお任せしますよみたいに。
○小西委員 現実に濃度が下がっていくと、ほかの物質でも10分ということでは対応できなくなってきますよね。
○中明委員 できないです。
○名古屋委員 現行の方法では。
○小西委員 333分だもんね。5時間だね。
○名古屋委員 50Lで。
○櫻井座長 エチレンイミンの管理濃度と抑制濃度も、同じ数字の0.05ppmとすることで、よろしいですか。
○中明委員 はい。
○櫻井座長 それはそのように結論として、次に進みたいと思います。ニッケル化合物です。まず、事務局から説明をお願いいたします。
○事務局 資料3-2に用途、生産量等が書いてあります。ニッケル化合物の用途としては、ステンレス鋼、合金鋼、ニッケル合金、鋳物などの製造、めっき製品、溶接、化成品、触媒、電池、硬貨、顔料などとなっております。生産料については、2006年で約19万トンとなっております。現行の管理濃度がニッケルとして0.1mg/m3となっているところですが、日本産業衛生学会の許容濃度で水溶性のものについて0.01mg/m3というものが2009年に出ております。
 資料3-3に定量下限値について文献等から拾い出して計算したものがあります。こちらは、おおよそ0.01mgの1/10の値が、捕集時間を10分にするなどといったものにして計算した結果、測定できるのではないかという結果が出ております。
 日本産業衛生学会の提案理由については、資料3-5にニッケル化合物として付けてあります。
○櫻井座長 そもそもこのニッケルについては、現行の管理濃度が0.1なわけですが、それを決めたのが去年でしたか。2年になりますか。
○名古屋委員 前回ですね。
○櫻井座長 当時、産業衛生学会でこれを検討していることは、その過程にあったので、前回0.1を決めたときにはこの結論は出ていなかったと思います。
○大前委員 2009年に最初の提案をして、1年間ペンディングになっておりますので、まだ決まってはいないのです。今年の総会が終わらないと、一応この数字にはならないということにはなります。私は前回いろいろな都合で出席できなくて、この間の委員会は震災の関係で中止になってしまいましたので、最新の状態、ニッケルがどうなっているのか、ちょっといま情報がないものですから申し訳ないです。
○櫻井座長 この0.01に対して、それに対する反論等が出ているかどうか、ちょっといま確認できませんよね。
○大前委員 反論は出ていまして、1つのポイントは許容濃度の提案理由の133頁、3枚目の裏側の左側の段の下が提案の数値になっているのですが、ニッケル化合物製錬粉じんと製錬粉じん以外の許容濃度の中で、(吸入性粒子)というのがあるのです。これはいちばん最初にこのように付けたのですが、ペンディングになった状態で、この吸入性粒子を取るという議論になったところまでは私は出席しているのです。それがそのままになっているのか、あるいは吸入性粒子がこのまま生きているのか、ちょっとまだ確認ができていない状態です。
○櫻井座長 なるほど。吸入性粒子を入れるか、入れないかというのが。
○大前委員 それがたしか議論になりまして、いちばん最初のこの提案では入れているのですが、ペンディングになってディスカッションをし始めたときに、吸入性粒子はなくていいのではないかという議論がたしかあって、その状態で出てきているのかどうか。したがって、急がなければ総会で決まったあとでもいいのではないかと思うのですが、取立ててこれを急ぐのだったらともかくとして、もし今日決めなくてはいけないということでもなければ、少しずらしてもいいのではないかと思いますけれども。
○櫻井座長 そういうことも念頭に入れながら、一応何か今日議論はしておいたほうがいいと思うのですが。
○名古屋委員 前回は、吸入性とそれの大きな粒子の間の確たる根拠がないから、インハラブルでいいですよというので、インハラブルになったと思いました。
○櫻井座長 管理濃度にはインハラブルという概念は入っていませんね。
○名古屋委員 入っていません。
○櫻井座長 入っていないのですが、この場で皆さん議論したとき、インハラブルということにしましたよね。
○名古屋委員 そうです。
○櫻井座長 100μm以下という。そのときの根拠の1つは、肺だけではなくて鼻腔がんがという話があって、それはそうだというわけで、インハラブルにしたのです。ただ、それでいくと、今度は産業衛生学会のほうの根拠の考え方は、発がんは製錬粉じんに限定しているのです。それ以外の粒子については、発がんの根拠は十分でないということで、それは考慮していないわけです。そうすると、水溶性ニッケル化合物については鼻への影響はないので、これで議論しているのは全部、肺への影響に限定されているわけです。そうすると、インハラブルということはなくなると思うし、あえて言うなら吸入性だなということになるわけですね。だから、(吸入性)になっているのは妥当性があるような気もするのですけれども。だけど、管理濃度では吸入性という縛りはしたことはないですか。
○名古屋委員 管理濃度ではないのですが、インジウムだけですね。それは、まだ詳細評価になっていないから上がってこないだけで。
○大前委員 管理濃度ではないですね。
○小西委員 あのときは、オープンで取るか分粒装置を使って取るかという問題で、結局いまのところオープンフェイスで取るということになっているわけですね。ですから、必ずしもインハラブルの100μmということで規定しているわけではないということですね。それは今後の実験によって、違いがあるかどうかは確認しましょうということ、たしかそうだったと思うのです。そうしないと、ニッケルだけではなくて、ほかの金属が全部いままでそういう足かせがないので、金属を全部見直しをしなければいけないと、たしかあのときはそういう議論だったと思うのです。
○櫻井座長 そもそもインハラブルが適切に測られているかどうか、トータルよりもインハラブルの濃度が濃くサンプリングされたりするような事態もあってですね。だから、この問題は議論が簡単ではないと。とりあえずこれも根拠は、ある程度頭の中にある方も多いと思うのですが、動物実験のデータなのです。NOAELが0.027mgNi/m3、133頁の左側に書いてあります。それを不確実性係数2.5で割って0.0108mg、それを丸めて0.01。これがポイントなのです。
 念のために、どんなデータかというのを見ていただこうと思って、これには細かく書いていないので、今日用意してきたのはこのB5の資料です。これは今日慌ててオリジナルのペーパーを見ようと思ったら、手元になかったので、これを見ました。丸善から出ているNEDO、産総研などが出している詳細リスク評価書で、そのデータを紹介していました。この資料はそれです。半頁の文で書いてある所の4行目から、「ラットに硫酸ニッケル六水和物のエアロゾルを0、0.12、0.25、0.5」公比2、非常に精度の高いものだと思います。1日6時間、週5日で104週ばく露して、雌雄で肺の慢性炎症、マクロファージ過形成、肺胞タンパク症および線維症、気管支リンパ節のリンパ過形成および鼻部嗅上皮の萎縮が認められた。2番目の0.12mgの所では、それがなくて、0.25からそれが認められた。それをmg/m3に直すと、0.027がNOAELで、0.056がLOAELということになるわけですね。
 そのデータがどんなデータかというのを見たら、138頁のこの表です。いちばん左がコントロールで、左から2番目がNOAELに相当するもので、3番目がLOAELですが、ガクッと所見が非常にたくさん出ていますね。慢性活動性炎症が42/53とか、マクロファージ過形成が35/53、肺胞タンパク症が12/53。肺胞タンパク症は、その右にいくと41/53になったりしますし、35/53と線維症まで出ていますね。かなり強烈ですね。ちょっと嫌な感じだなとは思いますね。そうすると、NOAELの0.027mgNi/m3という数値は、このデータからすると一応慎重に考えなければいけないのだろうなと感じるのですが、どうでしょうか。
○中明委員 この辺の微妙な濃度変化で、影響の出方が変わるというのはちょっと嫌ですよね。
○櫻井座長 そうですね。
○中明委員 NOAELが、LOAELの所でも。
○櫻井座長 そうですね。NOAELとLOAELの差があまり大きくないですね。
○中明委員 そこの間がまた何かあったら、こっちが増えると思います。比較的ね。
○櫻井座長 相当接近していますね。
○中明委員 だから、このデータからしますと、ちょっと変わると、ふっとそっち側に移ってしまう。影響がドーンと出てしまうという可能性は大きいですね。
○櫻井座長 そうですね。ただ、これはラットのデータで、右側はマウスのデータなのです。マウスでは1ランク上になるのです。0.25がNOAELになっている。齧歯類の肺のこういった粒子状物質に対する影響の出方というのは、ヒトより時によると敏感に出る傾向があるから、種差、10減らすことは、最近それを考えるとそこまでやらない場合が多いのですが、この場合は2.5にしてあります。同じでいいという意見もないことはないです。粒子状物質の肺に対する影響については。
○大前委員 これはたしか2.5にしたのは、吸入性粒子のレベルなので、それが肺に到達するのはヒトとラットもあまり変わらないだろうと。したがって、カイネティクスはいいのではないかと。残りのダイナミクスだけ考えればいいのではないかということで、2.5にしたと思うのですね。
○櫻井座長 なるほど。
○大前委員 2.5はそういう意味だと思います。一応、4と2.5に分けてという考え方。
○櫻井座長 そうすると、ほぼ妥当性はあるという感じですか。
○大前委員 と思うのですけれども。少なくともいまの2年間のNOAELが0.027なので、ACGIHの0.1は高いですね。これはインハラブルですが、この場合は。レスピラブルでこのぐらいで、インハラブルで、比率はどのぐらいにしたのか。これを0.1にしたのは何かありましたよね。アメリカかどこかの業界が、実際の現場で、インハラブルとレスピラブルとの比を測定したか何かのデータがあって、それで0.027を0.1にしたと。インハラブルで0.1というのは、たしかそのような理由でしたね。現場と合わせたと。
○櫻井座長 これは0.01でレスピラブルにしておくというのは、妥当性はあるように思います。
○大前委員 私はあると思うのです。ただ、たしかレスピラブルを外すという議論になっていたので、私はこれでいいと思っているのですが、ちょっと。
○名古屋委員 管理濃度の0.1のときというのは、もともとのカテゴリーが詳細評価からきたときというのは、要するに粉体のニッケルを測ったときのもので下りてきているわけですよね。そのときのACGIHの値が0.2に初め決めたのですが、やはり比重があって、そこで発生機にかけると飛散しすぎがあまりないから0.1にしましょうとなっていますよね。今度のカテゴリーは違っていて、水溶性の場合は0.1だと。ニッケルについても、製錬の粉じんは、要するに肺に入ってくるから0.01なのだということだから、ニッケルを1つの塊にするのではなくて、分けていかないといけないカテゴリー。それを1つのニッケルにして0.01にしてしまったら、これは溶接だとかほかの業界が、いまでも大変な迷惑がかかっているのに、それでまた違ったことになってしまうので、用途に分けてきちんと。水溶性の物だったら、当然それは妥当なものだったら0.1でもいいし、製錬粉じんだったら、肺に影響があるのだったら0.01でもいいと思うのです。そのほかと分けないと、1つニッケルの塊でしてしまったら違った話になってしまうので、今回の管理濃度はきちんと分けて、用途別に管理濃度を分けるという、新しい手法に入ってもいいのではないかと思いますが。
○櫻井座長 そうですね。
○名古屋委員 ニッケルの規制をかけるときの条件と今の条件は、随分違う条件できている。だから、それを同じように比較してはまずいのではないかと思います。
○櫻井座長 おっしゃるとおりです。
○中明委員 そういう意味では、5月の産衛で開催の委員会でも提案を、大前先生がおっしゃったような部分も考慮に入れるし、いま名古屋先生のご指摘のようなこともあって、作るのはもうちょっとあとにして、できればニッケルはそれぞれ対象のたびに管理濃度を決めていくという方向で考えたらいいのかなという気はします。それがこの議論だと思います。
○櫻井座長 そんな感じですね。そうすると、急には決められないと思います。次回でも無理だろうなという気がしますが、どうでしょうか。
○中明委員 次回予定しているのは5月でしたか。
○櫻井座長 やるとしたら5月。次回どれだけ議論が進められるか。今日だいぶ議論していただいて、問題点はだいぶはっきりしていると思いますので。ほかに何かご意見はありますか。測定のほうは、どの数字でも大丈夫だということですか。
○中明委員 ニッケルはかなり。
○櫻井座長 先へ進んでよろしいでしょうか。次はベリリウム及びその化合物です。事務局から説明をお願いいたします。
○事務局 資料3-2です。ベリリウム及びその化合物の用途として、宇宙・エレクトロニクス・機械工業のベリリウム-銅その他の合金類として。宇宙・兵器・原子力工業で遊離金属として。エレクトロニクス及びマイクロエレクトロニクスでベリリウム酸化物としてという記載があります。生産量ですが、ベリリウム鉱石の年間世界生産量が約1万トンで、ベリリウムの約400トンに相当するというものです。現行の管理濃度は0.002mg/m3で、ACGIHがインハラブル粒子としてベリリウム0.00005mg/m3という値を2009年に採用しています。
 資料3-3に定量下限値を計算した結果を載せております。いちばん下ですが、こちらで1/10は測定できるという計算が出ております。ACGIHのドキュメンテーションを資料3-4に付けております。ご検討をよろしくお願いします。
○櫻井座長 このドキュメンテーション、これはかなり長いものになります。ACGIHは最初にRecommendationをサマリー的に書いたようになっており、それが和訳もされております。10分ぐらいご覧になって、そのあとでご議論をいただきたいと思います。
○松村委員 分析法の感度は、ちょっと十分とは言えないのですが、この作業環境測定基準で、どちらも吸光光度法という定義になっています。蛍光光度法は発光ではないかと思うのです。ICP-AESというのは吸光ではなくて発光なので、この分析法の分類をもう少し幅を広げて原子分光とか、そのようにしてもらうと吸光と発光の両方、どちらの原理でも元素に基づく光の吸収、発光のどちらもカバーできるのです。そうしないとAESというのが言葉の上で一致しないのです。ただ、いまICPは普通に使われているので、これを除外することはないので、分析の分類のほうを変えていただきたいと思います。
○櫻井座長 そうすると、どのようにしたらよろしいですか。
○松村委員 原子分光という言葉があると思います。
○櫻井座長 原子吸光を分光にするのですか。
○松村委員 そうです。吸光というと、あらかじめ炎などで光を与えておいて、その中から特殊な波長だけを吸収するという意味ですが、そうではなくて、それ自身が出す光を分析する発光なのです。Atomic Emission Spectrophotometerだと思うので、吸光と言ってしまうとちょっと外れてしまうのです。ですから、原子分光という言葉があると思うのです。
○櫻井座長 分光、光を分ける。
○松村委員 そうです。ですから、発光でも吸光でもいいのです。
○櫻井座長 それだったら両方入るからですか。
○松村委員 はい。
○櫻井座長 吸光光度、原子分光、または蛍光光度でいいのですか。
○松村委員 原子発光ですね。吸光光度、原子吸光、または原子発光です。
○櫻井座長 または原子発光。そうすればいいわけですね。
○松村委員 ええ。AESというのはAtomic Emissionですから。
○櫻井座長 吸光光度、原子吸光、または原子発光。
○松村委員 はい。
○菅野委員 これは現行の測定基準はそうなっているという意味だと私は理解していたのですが、そうですよね。
○事務局 そうです、現行の。
○松村委員 この辺の関係の環境測定というのは現行方法ではどうなっているのでしょうね。そこをちょっと言葉を広げていただきたいのです。
○櫻井座長 そのようになっているのですが、それはちょっと不都合があるということですか。
○松村委員 ええ。ただ、それにしても管理濃度の半分というか、1桁は行かないので、この捕集条件などでは、やや不十分ですが。
○小西委員 分析法というのは、例えばベリリウムで仮に新しい、すごい桁のACGIHの値を採用したとしても、高い所を測れるものを残しておかなければいけないわけです。結局低いものだけを採用するのではなくて、濃度が高ければそれを使えるわけです。ですから、いまの測定基準というのは、本当はそんなに濃度の高い所はないのですが、高い所の濃度を測れる方法がずっと残ってきているのです。
○松村委員 それはそうですね。だけど、低い所も測れなければ困ります。
○小西委員 ですから、それが測定基準には並列になって出てきているということです。
○松村委員 だから、全部含めておけばいいとは思うのです。ただ、定量下限値というのは、いちばん低い所の限界が書いてあるわけですから、これがいまの0.00で0が4つ付いた5だと、その1/2までしか測れないのです。
○櫻井座長 いちばん下のICP-MSなら、1/50ですね。
○松村委員 そうですね。
○中明委員 ICP-MSはどこにでもあるとおっしゃっていましたが、本当にそうなのですね。大前先生、できそうですか。
○大前委員 できません。
○中明委員 だから、どこでも測れるというマシンだったらいいのですが、そうではないのはちょっときついかなと思います。どこそこのあの人の所へ行かなければ測れないというのでは。そんなにひどくはないのだろうと思うのですが。
○名古屋委員 いま金属はICPでしょう。
○小西委員 ICPというのは結局だんだんそのようにして、おそらくこういう形で入ってくると、いままであったのは測定機関なら測定機関が備えつけるべき機器と連動があるのです。いままでは入っているものが全部ないと認めないという形になっていると、全然使わなくても機械を持たなければいけないということが昔はあったのです。例えばICP-MSを持っていなくても、頼まれればできなければいけませんが、おそらくそういう所は仕事を受けないでしょうね。
○松村委員 でも、ベリリウムなどは、そんなにあちこちに出す事業ではないでしょう。
○小西委員 結局できる所はできる所という形に変わってくるのでしょうね。
○松村委員 私はそれでもいいと思います。
○小西委員 専門的な所にそういうものが集まってくるということになってくるのではないかという気がしますね。
○櫻井座長 ベリリウムは、アメリカでも集中的にいろいろ調べられていることはよくわかりますからね。
○中明委員 確かにいやらしい金属であることは確かですね。
○名古屋委員 でも、日本には主に1社しかないですよ。1社で、それもベリ銅だけですから、ほとんど日本には影響はありません。知多半島の限られた所でやっていて、それもブランドの所で火花が散らないためにベリ銅を使って、そこだけを加工している会社が1社だけしかありませんから、決めても大きな会社は大丈夫です。
○櫻井座長 この文献で引用されているのは吉田さんの文献、あるいは島先生の流れですね。
○名古屋委員 そうです。
○櫻井座長 あの方がそこをずっとフォローしているわけですね。
○名古屋委員 そうです。やっています。産業医ですから。
○櫻井座長 ACGIHのクロノロジーを見ると、長年2μg/㎥できていたのが、1999年にそれを0.2μg/m3にしようとしたのです。だけど、決まらないで検討して、さらにそれよりも低い0.05μg/m3を2005年に勧告して、2009年にアドプトされた。さんざん検討したのです。
○名古屋委員 飛行機の軸受けとか、アメリカはすごく使っているのですが、日本はほとんどないのです。
○中明委員 アメリカは作業への影響などは見ているのかな。それであのようにした。
○櫻井座長 本当に細かくいろいろ調べて、Chronic Beryllium DiseaseとBeryllium Sensitizationの両方を予防するのは、0.05μg/㎥未満にしなければ無理かなというデータが、縷々書いてあるように思いますが、いかがでしょうか。
○大前委員 感作を予防するというか、判断というのは、いままで管理濃度の中でありましたか。
○櫻井座長 初めてかもしれません。
○大前委員 初めてだと思います。感作を予防しようと思ったら、このぐらいの濃度でなければ駄目なのでしょうが、感作性物質はたくさんありますので、もしこれで感作を予防するという観点で決めるとなると、結構影響が大きいかなという気がします。
○櫻井座長 ただ、これは感作だけではなくて、Beryllium Diseaseが、ほぼ同じ濃度レベルで起こっているのですよね。そこはちょっと違うのではないかと思います。Beryllium Diseaseは全然重篤ですからね。
○大前委員 ほかの省で大気中のベリリウムのリスク評価を、先ほどの吉田先生がやられたのですが、結局はどうしようもないのでペンディングになっているのです。環境濃度とあまり変わらないではないというか、一般環境と。どうしようもないということでペンディングになっていることはなっていますね。
○櫻井座長 いまのところは、何かを決めるということはやっていないわけですね。
○大前委員 ええ、決めていません。一応リスク評価は終わってしまったのですが、決められないのです。
○櫻井座長 それでは、これはどうしますか。日本が本当に非常に限定されたところでのみ使用しているとしたら。
○中明委員 そういうことであれば、私は現行でもいいのかなと思います。あまりシビアにするのがいいとも思いません。逆に先ほどのと一緒で厳しくしても大丈夫かと、そこしかないのだよということで。
○松村委員 名古屋先生、でも1か所でしか使っていないとおっしゃいますが、結局合金みたいなものの加工というのは、あちこちで出る可能性は。
○名古屋委員 そこしかない、使っていない。ベリリウム合金は、昔から3社しかなくて、いまは1社しかないはずです。
○小西委員 少なければ、その方法論も検討してやればできないということではないのでしょうが、たくさんあって、そこまでできないということで逆ですよね。少ないのだったら、そこだけの管理みたいなものだから、それはそれだけの濃度をきちんと計測してもらうということにするかですね。
○名古屋委員 昔はやっていたのですが、事故を起こして問題になって、やる所が1社になったのだと思います。
○小西委員 今回、それがここに上がってきたということは。
○櫻井座長 新たに調べたわけではないのですね、もともとあったわけだから。誤解しました。例の対策課でやっているリスクアセスメントから上がってきたわけではないから、現状の2μgを超えているから、上へあがってきたというわけではないわけですね。
○名古屋委員 ニッケルはそうでしたが、これは違います。
○櫻井座長 それともう1つ、これはインハラブルとして勧告しているのです。そういう問題もあって、その気持はわかりますが、理由ははっきり書いてないのです。感作を予防するために、鼻の粘膜を無視できないと考えているのだろうと思います。その問題もあって、現在の管理濃度による管理に、このまますぐパッと持ってくるのは少し議論が必要で、簡単に決めにくいと思われますが、皆さんのご意見を。そうなるかという気もするのですが。
○中明委員 私もまだ研究所にいたころ、ベリリウムを測った回数はそんなにないのですが、測るほうがすごく感度が良くて、いくらでも低い所まで測れてしまうみたいなところがあったのです。そんなにあちこちで測った数字はありませんでしたがね。
○櫻井座長 例えば、中小企業などでバラバラ使うことがないのであれば、今ここでそういうことを一切考えないでパッと下げるというよりは、少し現状を調べたりする手はありますね。
○中明委員 現状はどうなっているのだっけ。
○名古屋委員 たぶん管理されているのでしょう。疾病が起こってからどうかですよね。
○中明委員 あまり積み残しをしては申し訳ないのですが、これも少し先送りにしませんか。
○櫻井座長 難しい問題ばかりで、これも今のような方向でよろしいでしょうか。今後の検討ということですね。
○中明委員 かなり毒性が強いことは強いから、現状がどうだということをもう少し。
○名古屋委員 1社に聞いてみたら。
○小西委員 労働者がどのぐらいかというのは、健康診断か何かでそこをかけるしかないのです。健康診断はやらなければいけないと思うので、そこから何人ぐらい受けているかということなのでしょうね。
○事務局 そうですね。過去に扱っていれば、半年に1回とか健康診断を受けることになっています。
○小西委員 いま使っているかどうはかはわからない。
○事務局 はい。
○小西委員 会社などはわかるのでしょう。それもわからないか、もうその会社がないかもしれないですね。
○名古屋委員 リスク評価をやってみるといいですね。どこに何が、どのぐらいの会社があってというのは、昔と違っていまはわかりますからね。
○櫻井座長 あれはいいですね。これをもしリスク評価でやったら、たった1か所だから、評価表の必要はないということになると思います。
○名古屋委員 逆にそうなると思います。
○櫻井座長 先へ進んでよろしいでしょうか。硫化水素です。それでは、事務局からお願いします。
○事務局 資料3-2です。硫化水素の用途は、分析試験(金属沈殿剤)、金属の精製、各種工業薬品、農薬、医薬品の製造、蛍光体(夜光、蛍光染料)、エレクトロルミネッサンス(面照明)、フォトコンダクター(光電リレー露光計)の製造、溶剤製造(DMSO、高級メルカプタン)、皮革処理(脱毛剤)となっています。生産量は、2009年で1,000トンとなっています。現行の管理濃度は、5ppmですが、ACGIHが2010年に1ppmを採用しております。
 資料3-3の4番目に定量下限値の計算をしてあります。ただ、1/10まで測れるという結果になっておりません。検知管はカタログを見ますと0.1ppmとなっております。こちらもACGIHのドキュメンテーションを資料2-4に付けてあります。
○松村委員 硫化水素というのは酸欠でも測定しなければいけないガスになっていますよね。そのために使うガスセンサーのようなものがあるはずですが、そういうものは作業環境測定には使ってはいけないのですか。
○小西委員 使ってもいいです。ホルムアルデヒドとか。検知管と同等という形なら大丈夫です。
○事務局 検知管と同等という形の扱いになっています。
○小西委員 検知管が使えるものについては、感度があればセンサーも使えるということになっているはずです。
○松村委員 だったら、それはそういう種類のものがあるはずですよね。
○小西委員 そうですね。
○菅野委員 検知管だけでもいいのですか。
○小西委員 検知管でもいいですし。
○菅野委員 検知管だけでもいい。
○小西委員 センサーは検知管と同等という扱いになっているのではないですか。
○菅野委員 検知管は環境の影響があるので、初めから検知管でしか測れないというのはまずいのです。
○小西委員 有機溶剤とかね。有機溶剤は換算値が関係するので求めなければいけない。
○事務局 硫化水素については検知管方式において測定機器、またはこれと同等以上の性能を有する測定機器を用いる方法によることができるということになっています。
○管野委員 それは特化物ですよね。
○事務局 特化物で、測定基準の第10条第2項に「前項の規定にかかわらず」というのが書いてあり、その9物質の中に硫化水素が入っていますので、硫化水素については検知管ということで大丈夫です。
○松村委員 でも、ガスセンサーのようなものは連続的に濃度を追跡できるので、検知管よりも使いやすいと思いますが。
○櫻井座長 そういうものも、もし1ppmに下げた場合には、ちゃんと明記して使えるようにしたほうがいいということですね。
○名古屋委員 単純に検知管が0.1ppmでいけるということです。同等ですから、計算は大丈夫ですということです。
○櫻井座長 5を1にするということについて、いかがでしょうか。いままでの歴史を見ると、20から10、10から5、5から1と下がってきていて、下げようとしているわけですが。
○中明委員 これは液体捕集にしろ、直接捕集にしろあまり感度は良くないね。検知管がいちばんいいというのはちょっと気になるのです。
○名古屋委員 硫化水素は用途が多いからでしょう。
○櫻井座長 分析のほうをもう少し努力してほしいということですね。検知管がいちばんいいのではね。
○中明委員 検知管でというのもちょっと寂しいなと思っているのです。
○小西委員 でも、基本的には普通の酸化物云々というより、むしろ、いま松村先生が言われたように、酸欠の所ではたくさん使われているということなのだと思いますけれどもね。
○中明委員 もしあれだったら、ガスセンサーはこんなものがあるよみたいなのを、本当はどこかで出しておかなければまずいのかなという気がしないでもないのです。
○小西委員 本当はガイドブックに載せなければいけないのです。
○中明委員 本当はね。でも、いまここでそこまであれしたとか、私は1にする分にはいいと思います。
○櫻井座長 これは根拠はヒトの実験のデータですよね。
○小西委員 そうですね。
○櫻井座長 メタボリック・チェンジスということで、何かしらいろいろ見つかるところですね。
○中明委員 もともと臭いがきついから、ごめんなさいというのはあったのですが。
○櫻井座長 臭いはきついですからね。臭いの閾値がどこかに書いてありましたが、ものすごく低いですね。
○中明委員 確かに低かったですよね。
○松村委員 ただ、この臭いは麻痺というか、習慣的になると思います。
○櫻井座長 すぐ麻痺してしまいます。
○中明委員 だから、最初の「はっ」というところを、測定しないと駄目です。
○櫻井座長 特にこれについてはよろしいでしょうか。
○中明委員 それでは、1ですね。
○櫻井座長 はい。硫化水素は1ppmということで結論とさせていただきます。管理濃度、抑制濃度いずれも1ppmとするということで、ご同意を得ました。
 今日は4つでいいと思っていましたが、あと30分ありますので、次はエチレングリコールモノメチルエーテルです。
○事務局 資料3-2です。エチレングリコールモノメチルエーテルの用途は、溶剤、水分測定、皮革の染色、速乾性油等、ジェット燃料の氷結防止、ニトロセルロース、セルロースアセテート、合成樹脂等の溶剤、写真フィルムの製造、香料の固定剤、半導体やマイクロフィルム等です。
 生産量は7,920トン(1998年~2002年の国内供給量)となっています。現行の管理濃度は5ppmですが、日本産業衛生学会が2009年に0.1ppm、ACGIHが2006年に0.1ppmと、それぞれ提案と採用をしております。
 資料3-3の5番目にエチレングリコールモノメチルエーテルがあって、計算した結果、2つのうちの1つでは0.1ppmの1/10まで測れるという計算をしております。
 エチレングリコールモノメチルエーテルについては、ACGIHのドキュメンテーションと産業衛生学会の提案理由説明の双方をそれぞれ付けてあります。ご検討をよろしくお願いします。
○櫻井座長 これは産衛とACGIHが一致して0.1にしております。提案理由を見ると、ほとんど内容は同じですね。日本語のほうを見ていただければいいわけですが、産衛の125頁の許容濃度の提案を読んでみますと「以前の提案では精巣萎縮の予防に注目し許容濃度5ppmと設定したが、妊娠ラットにおいて3ppm曝露で造血障害が示唆された。ヒトでは35.7ppm曝露で貧血、0.55に下げると貧血が回復した」。これはあまり参考になりません。「妊娠ウサギの10ppm曝露により有意な胸骨骨化の遅延が認められた」。それから「PBPKモデルによれば、ヒトは齧歯類と比べ、約13倍感受性が高いことが示唆される。妊娠ラットでは3ppmで影響が見られるので、3を13で割って0.23ppm以下の曝露レベルが安全と考えられる。また、ヒトでは0.19ppmの曝露レベルでは貧血も見られず、尿中メトキシ酢酸濃度も低値を示している。以上のことから、今回は造血器毒性、生殖・発生毒性の予防のために0.1ppmを提案する」。
 これは動物ですが、結局、動物のデータで決めているわけです。その点、いままで管理濃度を決定するのに動物のデータだけで決定することはないのです。種差を1/10にするところ1/13にしています。
○大前委員 それにしても5ppmは高すぎますので、これは確実に下げなければいけません。
○櫻井座長 そうですね。生殖・発生毒性というのは、やはり予防する、あるいは造血器のいずれも大変気持の悪いものですので、ACGIHと産業衛生学会の意見が一致しているということですので、よろしいですか。
 それでは、本物質については、0.1ppmを管理濃度とするということで同意していただきました。どうもありがとうございました。
 次に酢酸イソペンチルに移りたいと思います。事務局から説明をお願いします。
○事務局 資料3-2です。酢酸イソペンチルの用途は、塗料、印刷インキ用溶剤、油脂、ワニス、ラッカー、靴クリーム、医薬品の抽出精製溶剤、果実エッセンス、ニトロセルロースの溶剤等となっています。
生産量は100トン。現行の管理濃度は100ppmですが、日本産業衛生学会では2008年に50ppm、ACGIHは2000年に50ppmにそれぞれ提案と採用をしています。
提案理由等が一緒の関係で酢酸ノルマル-ペンチルも同時に読み上げます。酢酸ノルマル-ペンチルの用途は、ラッカー、塗料、写真フィルム、マニキュア液、蛍光灯の蛍光物質等の溶剤、香料、ペニシリンの抽出、ドライクリーニングの染み抜き、殺虫剤等となっています。
 生産量については200トン(平成13年推定)。現行の管理濃度と許容濃度(TLV)については同様に100ppmと50ppmとなっています。
 資料3-3です。こちらも定量下限値の計算ですが、50ppmの1/10は十分測定できるのではないかと考えられます。
○櫻井座長 随分低い濃度になって、問題はないですね。それぞれの提案理由、いかかでしょうか。
○中明委員 私はいいと思います。酢酸イソペンチルとノルマル-ペンチルの両方ともいいのではないでしょうか。
○櫻井座長 これもやはり動物実験のデータを見て、最近そういうことになっていますね。10ぐらいの種差を取って50としている。産業衛生学会、ACGIHいずれも同様の判断でやられているようですので、特段ご異存がなければ。
 それでは、この2つを併せて、管理濃度50ppmということを結論とさせていただきます。次にメチルイソブチルケトンに進みたいと思います。
○事務局 資料3-2です。メチルイソブチルケトンの用途は、硝酸セルロース及び合成樹脂、磁気テープ、ラッカー溶剤、石油製品の脱ロウ溶剤、脱油剤、製薬工業、電気メッキ工業、ピレトリン、ペニシリン抽出剤という記載があります。
 生産量は、生産が5万3,127トン。輸出が2,544万kg、輸入が43万kgとなっています。現行の管理濃度は50ppmですが、ACGIHが2010年に20ppmを採用しています。
 資料3-3の8番目にメチルイソブチルケトンが書いてあり、定量下限値を文献等から計算しますと、20ppmの1/10は測定できるのではないかと考えられます。
○櫻井座長 提案理由をご覧になって、いかがでしょうか。
○中明委員 メチルエチルケトンの管理濃度はいくらでしたか。MIBKのほうが匂いとしてはいいなと私は思っています。
○事務局 メチルエチルケトンは200ppmです。
○中明委員 それはちょっと厳しいのかな。
○小西委員 使う回数が多い物質ですからね。
○松村委員 実際にどのぐらいの濃度で現場で出ているかわかりませんが、メチルエチルケトンよりは蒸発しにくいから、そんなに困難ではない気もするのです。あまり問題はなさそうです。
○大前委員 それはばく露実験から見つけたもので、こんなに人数が少なくていいのかなという気がしますが、仕方ないですかね。6人で重いという気がしますが。
○櫻井座長 ばく露実験ですね。6頁ですか。
○大前委員 6頁の左側の欄のいちばん下のIregrenという人ので、6人の男性、女性でやって、200mg/m3で中枢神経系の症状が有意と書いてありますが、それが49ppmだから、20にしたのだと思いますが。
○櫻井座長 ヒトのばく露実験ですね。右側にもありますね。Wigaeusさんの。
○大前委員 これはあまり有意性が書いてないのです。
○櫻井座長 そうですね。これは書いてないが、左のIregrenのほうが。
○大前委員 症状が有意だったということですがね。
○櫻井座長 49ppmでStatistical elevationが。これですね。12人を分けているのですか。10mg/m3と200mg/m3で2群に分けているのです。でも有意差があれば実験ですからいいのではありませんか。
○大前委員 そうですね。
○櫻井座長 特に異存がなければ、20ppmとするということでよろしいでしょうか。分析のほうも大丈夫ですね。
 では、メチルイソブチルケトンについては、管理濃度20ppmということで結論とさせていただきます。
 最後にオルトーフタロジニトリルです。事務局からお願いします。
○事務局 資料3-2です。オルトーフタロジニトリルの用途は、青色染料の中間体となっています。生産量はデータなしという記載があって、書いてある書物が見当たりませんでした。現行の管理濃度は未設定で、日本産業衛生学会が2009年に0.01mg/m3を提案しています。
 資料3-3は定量下限値を文献から計算したところ、2つ目と3つ目で1/10を測定できるのではないかと考えられます。日本産業衛生学会の提案理由を資料3-5で付けています。
○松村委員 フタロジニトリルというのはどういうわけか、アメリカはオルトーではなくて、メタしかないのです。なぜか使っているものが違う。メタに対しては5mg/m3というデータがあるのです。
○櫻井座長 オルトーフタロジニトリルについては、長年管理濃度未設定できておりまして、日本産業衛生学会でもそれを考慮して努力して許容濃度を決めてくれたという感じのものです。
 提案の理由を見ますと、ラットの腹腔内投与の実験のNOAELを使っております。140頁のいちばん上に書いてありますように、腹腔内投与と経気道ばく露は一応同等と考える。そこの不確実性係数は使わない。種差による不確実性係数を10とする。実験の投与期間が3か月であるということ。白血病様病変の罹患率の高い動物実験結果があることなど、不確実性が若干あるので、0.01mg/m3というのは、その両方を考えて5を使って出した数字です。50で割っているわけです。体重50kg、勤務中に1日10m3吸うと仮定して計算すると、0.01mg/m3です。
○中明委員 文献を見ると、懐しい先生方のお名前ばかりが出てくるので、だいぶ長い間やっていないということなのかもしれませんね。
○櫻井座長 そうですね。喜田村先生、細川先生、久保田先生。どうでしょう、よろしいですか。
○菅野委員 測定法は、私がチェックをして、チェックをし漏らしたのですが、オルトーフタロジニトリルで、この濃度の場合、ろ過捕集法ではちょっと具合が悪く、捕集方法を再度。
○櫻井座長 最初はろ過捕集で。
○菅野委員 0.01mg/m3というのは、オーダーとして、フタロジニトリルの蒸気圧と大体同じぐらいのものだと思います。
○櫻井座長 蒸気圧を考えると。
○菅野委員 そうすると、フィルター上で蒸発しますので、ろ過捕集では蒸発してなくなってしまいます。
○櫻井座長 そうですね。ろ過では液体とか固体捕集。
○菅野委員 ええ。それが必要だと思います、そうすると30Lとか3Lという捕集速度がちょっと難しいですので、もう一回チェックし直します。
○櫻井井座長 ありがとうございます。いまこの場ではできませんか。
○菅野委員 はい。すみません。資料を持ってきておりません。
○松村委員 これは、捕集剤の後ろに吸着剤を付けてという二重にやる方式ですか。
○菅野委員 昔はメタのほうで5mg/m3だったので、大して誤差はないだろうと。2%か4%ぐらいだと思うのですが、それが2桁下がっていますので、まずいと思います。
○名古屋委員 根拠になっているのが平成7年のデータだものね。
○松村委員 このときには、たぶん捕集は固体から蒸発するようなサブリメーションみたいなことはあまり考えてないと思います。
○菅野委員 目標濃度が高ければ別に問題はないのです。機器分析のほうにばかり気を取られて捕集のほうはうっかりしましたので。
○松村委員 そうですね。
○櫻井座長 今日は一応ペンディングさせていただきます。
○中明委員 捕集方法について、どこかで検討する機関はあるのですか。

○松村委員 でも、標準サンプルをフィルターにくっ付けて、空気をどんどん通して減るかどうか見ればいいわけですね。
○菅野委員 減るのは間違いありませんので。
○名古屋委員 まず大事なのは比率の30……ではありませんか。
○菅野委員 たとえ低くても比率の問題は変わらないと思います。
○櫻井座長 ということですと、今日はこれ以上検討はできませんので、次回まわしということになります。次回はこれ以外何かやることがあるのですか。
○事務局 一つは報告書のとりまとめがあります。あともう1つはデジタル粉じん計のK値について、第2回でトンネルの分については決めていただいたのですが、タバコの煙の中の粒子状物質を測るというのがありまして、それのデータ取りを日本作業環境測定協会のご協力をいただいているところです。それについての議題が次回あります。
○櫻井座長 では、そういうものを含めて、今日後回しにしたものを、そのときにまでに議論できるものがあったらそれをやるという方向でよろしいでしょうか。
○松村委員 有機溶剤系のもので、いままでの管理濃度を半分にするとか、50を20にするとか低くなるのは技術的には分析方法もいいのですが、実際の現場でそのために、いままでの管理、局排とか、そういうものでは評価が変わってしまうような可能性がどのぐらいあるのか。現在の作業環境測定の結果から、これがどのぐらい影響するかというのは何かデータがありますか。ちょっと気になるのですが。現在の作業環境測定の第1区分に評価されているような所です。
○櫻井座長 管理区分の分布がどうなるかということですか。
○松村委員 はい。ですから、局排をそれだけ強くしなければいけないとか、扱い方を変えなければいけないとか、具体的にそういう影響がどのぐらい出るのか。
○名古屋委員 昔は日測協が全部データを持っていたのですが、いまはないのでしょうね。
○松村委員 いまはありません。いまは統一精度管理みたいな、昔のようなものはないのでしょう。
○小西委員 あとは逆にいうと、行政のほうに毎年6月の終わりに測定機関からの報告がありますよね。各都道府県の労働局へ測定機関が報告して、それが上がってきますよね。
ああいうのを集計して、1だったものが、1として計算すると何パーセントぐらいずれるかというのは。いまのところデータを持つとすると、そこしかないのではないかなという気がします。
○事務局 事業報告ですので、具体的な測定結果までは来ていないと思います。
○小西委員 測定協会で前にやっていたときは、全測定機関対象にして、数を全部調べたのです。計算ですぐ出せたのです。
○松村委員 毎年報告書を出しておられたから、あれはとてもいいですね。 
○小西委員 いまはやっていないから。
○松村委員 いまは環境省はPRTRは政府の中央が全部データを集計するようになったでしょう。だから、逆にいうと、ベリリウムをどこで使っているかというのも、それで引っ掛ければ出てくるシステムではないかと思うのです。そういうのが作業環境ではないというのは、すごいデータが出ているはずなのに、ちょっともったいないなという気がします。
○櫻井座長 そういうデータがここにあって、それを念頭に置いて、もちろん絶対に下げなければならないという場合もあるでしょうし、そうではないような場合もあるわけで、判断の根拠にしたいとは思いますが、なかなか。
○松村委員 数値の上で下げるのはすごく楽ですし、労働者はたぶんこのほうがいいだろうと思います。
○名古屋委員 30%ぐらい管理区分1が2になって、30%ぐらいがいい、50へ行ったらまずいから、ペンディングにしましょうという話を昔はよくしていましたが、いまはそのデータが日測協がないから、そういう話はありませんよね。それをもっと早くやれば、そんなに下げなくて済んだかもしれません。
○松村委員 折角データがたくさん作られているはずなので、もったいないなという気がします。
○櫻井座長 そのほか何かありますか。ちょうど5時半になりました。事務局から何かありますか。
○事務局 次回、第4回は8人の委員の先生からしかまだ集計結果が手元にないのですが、できましたら、参加いただける人数のいちばん多い5月23日月曜日13時半~15時半でお願いしたいと思います。
○櫻井座長 そういうことでよろしくお願いいたします。それでは、今日はこれで終わります。どうもありがとうございました。


(了)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 労働基準局が実施する検討会等> 平成22年度管理濃度等検討会> 平成22年度第3回管理濃度等検討会議事録

ページの先頭へ戻る