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2011年4月28日 第6回石綿による疾病の認定基準に関する検討会 議事録

労働基準局労災補償部補償課職業病認定対策室

○日時

平成23年4月28日(木)16:00~18:00


○場所

労働基準局会議室(中央合同庁舎5号館16階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2)


○出席者

(参集者:五十音順、敬称略)

審良正則、岸本卓巳、神山宣彦、三浦溥太郎
宮本顕二、森永謙二、由佐俊和

(厚生労働省:事務局)

河合智則、神保裕臣、渡辺輝生、倉持清子、大根秀明

(環境省)

寺谷俊康

○議事

○大根中央職業病認定調査官 それでは「第6回石綿による疾病の認定基準に関する検討会」を開催いたします。本日は大変お忙しい中、お集まりをいただきましてありがとうございます。委員の先生方におきましては、本年度も引き続きまして、よろしくお願いを申し上げます。なお、篠原委員、廣島委員におかれましては、本日の検討会はご欠席との連絡をいただいています。また、事務局に異動がございましたので、紹介をさせていただきます。職業病認定対策室補佐として幡野の後任に倉持が着任いたしております。
 それから私は、笹川の後任の職業病認定調査官の大根でございます。よろしくお願いいたします。
 写真撮影等は以上とさせていただきます。以後はご遠慮をいただきたいと思います。それでは、座長であられます森永先生に議事の進行をお願いいたします。
○森永座長 いつものことですが、資料の確認からお願いします。
○大根職業病認定調査官 それでは資料のご確認をお願いいたします。本日の資料は、資料1「びまん性胸膜肥厚の認定について」1枚のものです。資料2「石綿によるびまん性胸膜肥厚」文献レビューです。資料3は「平成22年度びまん性胸膜肥厚に関する調査業務報告書(抄)」です。資料の不足等はございませんでしょうか。よろしいでしょうか。以上です。
○森永座長 まずは資料1から説明をお願いできますか。
○大根中央職業病認定調査官 それでは資料1についてご説明をさせていただきます。資料1「びまん性胸膜肥厚の認定について」です。ご案内のとおり、本検討会の第3回、第4回においてびまん性胸膜肥厚の認定基準の見直しの必要性についてご議論をいただいてきたところですが、これまでのご議論を踏まえまして、事務局として本日の検討の論点を整理したものが資料1です。
 現行の認定基準ですが、この1のほうにありますように、1点目として胸部エックス線写真で、最も厚いところが5mm以上、片側のみの肥厚については側胸壁の2分の1以上、両側の肥厚については側胸壁の4分の1以上というエックス線写真による厚み、拡がりの要件です。2点目は原則石綿ばく露作業への従事期間3年以上との、いわば石綿原因の要件です。3点目が著しい呼吸機能障害を伴うものという、いわば療養の必要性の要件です。これら3つの要件からなっているわけです。
 この3つの要件に関して、本日ご提出しております資料2の文献レビュー、資料3の臨床例の解析報告、これらを踏まえて資料1の下のほうに論点としてお示ししておりますが、業務上の石綿ばく露により発病したことを確認する方法、著しい呼吸機能障害があることを判断する方法、そして不正確な診断を排除する方法、以上の点についてご検証いただきたいと考えているところです。
 その際、4点ほどご考慮いただきたい点があります。1つは我が国においてはイギリスとは若干異なり、CT画像による診断が広く一般に行われる状況があると考えられること、これが1点目です。2点目は本検討会の委員の先生をはじめとして、石綿関連疾患に造詣の深い先生方のご尽力によって、このびまん性胸膜肥厚の診断についても専門医の先生方の間に普及してきている状況にあるのではないかと考えられること、これが2点目です。
 3点目はエックス線写真による厚み、拡がりの要件、この要件は診断基準的な要件にも見えますが、他の認定基準においては、このような診断にかかわる要件が盛り込まれているものはないということ、これが3点目です。4点目として呼吸機能障害の程度については検査により、明確になるということ、これが4点目です。
 以上の状況について考慮していただきながら、本日の論点についてご検討くださいますようよろしくお願いを申し上げます。資料1については以上です。
○森永座長 事務局から拡がり、厚さの要件は他の石綿関連疾患の場合にはそういうことは書いていないので、ちょっとこれだけ入れるのはおかしいのではないかという話がありました。何か委員の先生方ご意見はありますか。そう言われてみればそうだなということですか。ということですが、今日は資料2、資料3があるので、そちらのほうをそれぞれの担当している先生から報告を受けて、もう一度、資料1に返って検討するということで、先にこの問題だけを検討するのもイメージが浮かんでこないので、資料2、資料3の説明に先に進んでよろしいですか。
 折角忙しい中を資料2、資料3が出てきましたので、その説明を担当の方からお願いするという形で進めたいと思います。資料2は、前回の委員会のときにお話していました環境省で石綿によるびまん性胸膜肥厚の文献レビューをするということで、とりあえず出てきたのがこの資料2です。資料2を担当した方から説明をそれぞれしていただくということで進めたいと思います。
 疫学のほうは実は私が担当しましたので私からまず紹介させていただきます。ワープロミスが多いので非常に申し訳ありませんが、次回までにはきちんと訂正させていただきます。1枚目で石綿ばく露によって石綿肺が発症することは知られているわけですが、その石綿肺にはよくびまん性胸膜肥厚が伴うのだということまでは知られていたわけです。ところが胸膜肥厚という言葉を聞いたときに、実際は胸膜プラークとびまん性胸膜肥厚というのを混同して使われていた時代があったということなのです。1966年のこのElmsの論文で、そこのところは概念分けができたわけですが、後ほど画像で審良委員から説明させていただきますが、胸膜肥厚イコールびまん性胸膜肥厚ではないのですが、そこのところがなかなか、特にプラークとびまん性胸膜肥厚と混同している場合が多いということです。
 疫学の論文を読む場合もプラークとびまん性胸膜肥厚を一緒にしたような胸膜肥厚と書いてある論文は意味がないというか、石綿によるびまん性胸膜肥厚を理解する上での論文としては役に立たないということですので、そういう論文は省いて、論文をレビューすると、ここにある20点弱のものが残ったということになります。
 いちばん最初の論文は、胸膜疾患としては胸膜プラークがいちばん多いということです。次が胸水の貯留で、びまん性胸膜肥厚は頻度的にはそれほど多くないというペーパーが出ている。2頁の真ん中ですが、不整形陰影、この場合は石綿肺ということになりますが、石綿肺はばく露量反応関係は有意に認められるのだけれども、びまん性胸膜肥厚については石綿肺ほどの量反応関係ははっきりとは見られなかったという論文です。
 3頁目の上のNemethの論文は肺線維症ということだけを取り上げていくと、線維症というのは石綿のばく露のない部分でも結構出てくる。肺線維症の有所見率は男では38.8%、女でも25.6%、対照群では男8.9%、女4.1%ということで、線維症の所見とびまん性胸膜肥厚の所見と両方を持っている場合は、特異度(specificity)は非常に高くなるのですが、逆に今度はsensitivityは低くなる。プラークは特異度は非常に高くなるのですが、びまん性胸膜肥厚のsensitivityそのものがあまり高くならないということが書いてあります。
 次のBohligは有名なドイツのレディオロジストのペーパーです。いままでは胸膜肥厚の分類はILOの国際じん肺分類が使われているわけですが、それがよくないというようなことを言っています。彼は肋横角の消失を1つのポイントに挙げています。その下の論文は有名なオーストラリアのWitenoomの青石綿の鉱山のデータですが、厚さの測定はかなり読影者の間では差があるということで、厚みの測定は、なかなかリライアビリティについては問題があるのではないかということになります。
 次の論文も胸膜プラークがたくさんできて融合しているような場合は、びまん性胸膜肥厚との鑑別はなかなか難しいということが書かれてあります。
 次のFishbeinらの論文は、胸膜のびまん性胸膜肥厚の場合に肋横角の鈍化というのは1つ重要だということを主張している論文です。
 次の論文も同じように肋横角の鈍化を非常に重視している論文です。その下のフィンランドの論文ですが、これもやはり肋横角の消失といったものを1つのポイントに挙げています。Jakobssonらの論文ですが、やはり肋横角の消失というのを1つのポイントに考えています。
 6頁です。ばく露濃度が比較的高い例でびまん性胸膜肥厚が出てくるだろうという解析をしています。次も同じフィンランドですが、この例は肋横角の消失を1つのポイントにしているということです。7頁の下のほうの論文はびまん性胸膜肥厚の発症頻度はプラークに比べて、これは低いということを紹介しています。フランスのAmelleですが、これは厚さと拡がりを一応定義にして解析しているわけですが、この例ではプラークとびまん性胸膜肥厚の特に差はあまり見られなかったということです。
 次の例もフランスの例ですが、この例はプラークの有所見率は非常に高くて、びまん性胸膜肥厚については発生の頻度は低い。低濃度ばく露のばく露群では、プラークはたくさん出るけれども、びまん性胸膜肥厚を引き起こす可能性は低いという論文です。
 9頁はトルコの地域住民の人のいわば環境ばく露みたいな例なのですが、家の漆喰にトレモライトを使っているようなケースでの例ですが、プラークはばく露量とは関係しないけれども、びまん性胸膜肥厚のほうは累積ばく露量とそれなりに相関するという論文になっています。ここでは中皮腫の死亡率も高いという論文になっています。
 10頁ですが、これもまたフランスの例です。こういうばく露濃度が比較的低い集団では、プラークは出てくるけれども、びまん性胸膜肥厚はあまり出てこない結果になっています。10頁の下のほうの有名なリビーの話ですが、これも累積ばく露量を推定してみているわけですが、プラークよりもびまん性胸膜肥厚の所見者のほうが累積ばく露量は高いという結果になりまして、疫学調査の論文を概括してみると、ばく露量はびまん性胸膜肥厚についてはプラークよりも高そうだ。頻度的にはどうもプラークよりも頻度は低いというような論文、概要をまとめればそういうことになります。もう1つは肋横角消失を1つのキーポイントに入れて読影をしないと、なかなか石綿によるびまん性胸膜肥厚と脂肪とかほかの肥厚と混ぜて解析してしまう結果になるので、やはりそういう論文はそれなりに評価できるけれども、そうでない論文は評価できないのではないかという印象を受けました。レビューをしたものとしてはそういう印象を受けています。本来なら画像を先に説明したほうがよかったかもしれませんが、画像を審良先生お願いできますか。
○審良委員 びまん性胸膜肥厚のレントゲン学的な定義はまだ定まったものがないのですが、厚みと拡がり、あるいは肋横角の消失の両方を使うか、どれかになってきていると思います。結局レビューしてみたら、胸部写真でびまん性胸膜肥厚を診断すること自体が正確ではないというのがいちばんです。特に胸部写真で厚みと拡がりで診断してしまいますと、それ以外のものが入るので特に胸膜外脂肪沈着が区別できない、それと胸膜プラークの融合も区別できなくなるということで、非常にspecificityが低いということです。特に脂肪の関係ですが、胸膜肥厚と体重との関係を見た論文があり、それが14頁の下にあります。体重の胸壁の3分の2以上に拡がる3mm以上の胸膜肥厚の頻度は標準体重未満では0ですが、標準体重の人で0.9、軽度の肥満において6.9%、中等度から高度の肥満で20.6%まで上がったということです。その後、2001年、Leeらもほとんど同じような報告をしていますが、BMIが30kg/ m2以上の患者さんは全周性の胸膜肥厚に関連していたことを報告しています。
 結局は、厚みと拡がりでは胸膜や脂肪組織、胸膜プラークの融合との区別が非常に難しいということ。それでAmeilleeらの報告が肋横角の消失と胸膜の厚みと拡がりとの診断基準を比較して、結局、肋横角の消失を採ったほうが正確ではないかという結論を出しています。それに対してまたいろいろと肋横角の消失のないびまん性胸膜肥厚を除外するとか、あるいはびまん性胸膜肥厚の診断率を低くするという意見も出ているのですが、肋横角の消失だけを判断基準にするとびまん性胸膜肥厚の診断ではspecificityは上がるのですがsensitivityは下がるということです。
 Mcloudの有名なびまん性胸膜肥厚の論文があるのですが、それでは結局その拡がりと厚みの定義を用いれば胸膜肥厚プラークの融合のものが25%入ってきたということになっています。だから拡がりと厚みでは胸膜肥厚プラークの融合は区別できていないのです。ただ肋横角の消失のみはびまん性胸膜肥厚がなくても起こるということを指摘していますが、これは消失とそれに連続した胸膜の肥厚ということが重要であって、それを入れると意味が違うと思います。ヒラーダルらも同じように拡がりと厚みの分類は破棄すべきであると述べています。
 1つ面白いのが16頁の真ん中ぐらいにあります。Hoyle、Currieらが総説の論文を書いているのです。そこでびまん性胸膜肥厚の定義がcostophrenic angle obliterationを伴うか伴わない側胸壁の25%以上に及ぶ平滑な連続した胸膜の肥厚であるということを総説で書いたのですが、それに対してレター的な意味でHoyleが、いまはそのステージはもう違うのだよと言って、costophrenic angleの消失がもうびまん性胸膜肥厚の定義に現在では変わっているのだということを雑誌で述べたということになっています。
 結局どの定義でも胸部エックス線写真はびまん性胸膜肥厚を診断するには十分でないと思います。CTがあるのですが、CTはそれに対して断然、特にCTがびまん性胸膜肥厚の診断にいいというのは胸膜外脂肪組織を簡単に区別できるということで、胸膜肥厚以外は入ってこなくなるということです。Lynchらの定義以外はCTによるびまん性胸膜肥厚の定義がいまのところないです。ただ、これも厚みと拡がりをもってしているのですが、これはおそらく胸部写真を関連させて入れているのと、CTもたまに難しくなる胸膜プラークの融合を除外しようとして、おそらくこれを入れていると思うのです。ただ、CTで見ればびまん性胸膜肥厚とプラークは画像的に見ていれば違うものなので、そこまで厳密に数値で提示する必要はないと思うのです。
 むしろ、非常に軽いものをCTでは拾ってしまうので、サブプリニカルな胸膜肥厚も入ってしまうということです。それと軽度な胸膜肥厚が本当に石綿によるものかどうか、胸膜肥厚自体は診断できても、その原因が石綿であることまではCTでもわからないので、胸膜肥厚があるということだけの診断になるのです。軽いものはおそらく心不全とか胸膜炎とか、昔、起こしていたのと区別がつかないし、その辺が拾い上げはいいのですが、特異度がないということです。最終的には全体的な国際的な流れとしては、やはりCTがびまん性胸膜肥厚、石綿関連疾患の検出に感度が高いことで、そちらのほうがいいということを推奨していますが実際には使われていないです。
○森永座長 まとめるとどういうことになるのですか、印象でもいいのですが。
○審良委員 胸部写真を使おうとしたら、やはり肋横角の鈍化とつながるびまん性胸膜肥厚としたほうを使うほうが、診断としてはいいということです。ただ、それでもsensitivityは低くなるし、それを診断に用いるとしては非常に不十分な診断方法だということです。
○森永座長 そこへCTを加えたら。
○審良委員 それで加えればいいです。その形を採らないと、おそらく胸部写真で1つの診断基準を作るのは無理だということです。
○森永座長 宮本委員からお願いします。
○宮本委員 21頁をご覧ください。「呼吸機能」についてびまん性胸膜肥厚に関する論文を集めてレビューしました。私の場合はそれぞれの呼吸機能障害を項目毎にまとめました。まず21頁にある真ん中から下に、「拘束性換気障害」の視点に立って、びまん性胸膜肥厚ではどんなことが言われているかというのをまとめました。1988年からずっと次頁まで入っているのですが、結論として言えるのは、いまは常識となっていますが胸膜が厚くなることによって肺が縮んでくるということで、拘束性換気障害を起こすということです。
 最近の面白い点は22頁になりますが、CTとも合わせて胸膜肥厚の程度と肺活量、いわゆる拘束性換気障害との関係を検討した論文が最近出ています。ただ、これも結論からいうと、いろいろな方法で、CTでもコンピュータで胸膜の厚さを調べて、それから面積を出して肺の大きさを比べたり、従来の主観的に写真を見てとかありますが、大きな差はなかったということを述べていました。CTは非常に良いのですが、それをさらに手を加えてやらなくても、肉眼的に評価したCT所見で呼吸機能との関係を十分把握できることをCopleyらが2001年に報告しています。
 次がいちばん問題になる事項で、22頁の下にあります(2)の「閉塞性換気障害」です。びまん性胸膜肥厚において閉塞性換気障害があるかどうかということが、いまいちばん議論になっていると思っています。というのは、現在のじん肺の基準の中で石綿肺の、環境省の基準では石綿肺とびまん性胸膜肥厚ともに閉塞性換気障害も救済の中に入っています。22頁の下のほうに書いてあるのは、基本は閉塞性換気障害はないというのですが、昔の報告はほとんどが喫煙者であるために、閉塞性換気障害のある人がたくさん入っているということで、なかなか議論ができないということです。
 ただ面白いのは、次の23頁の上から8行目から9行目になりますが、Yatesらが1996年にびまん性胸膜肥厚を8~9年間観察し、その間1秒率は変化しなかったということで、もともと喫煙者が(炭坑労働者は喫煙者がほとんどですから、日本もそうだと思うのですが)、それによるいわゆる肺気腫、いまはCOPDと言いますが、を合併していることが多いので、彼らの報告もここに書きましたが、ほとんど閉塞性換気障害がベースにある人が多いわけです。ところがその中で、8~9年間、約10年見ても、1秒率は変化がなかったということは、びまん性胸膜肥厚が原因の閉塞性換気障害、1秒率の低下ではない可能性を示唆しているということです。
 一方でむしろ石綿は閉塞性換気障害を引き起こすとした報告もあります。1991年に1篇だけなのですが、一応閉塞性換気障害があったということを書いていますが、ごく軽度です(ここで彼らが言っているのは末梢の気道閉塞を主に取り扱っているのですが)。ただし、やはり喫煙の影響は除外できないわけで、彼らは非喫煙者108名を対象にやって、軽度な閉塞性換気障害はあったと報告しています。
 次に拡散障害ということで「肺拡散能」、いまDLCOとして我々は測ることができますが、それについては従来どおりびまん性胸膜肥厚では低下するのだけれども、それは肺の容積が小さくなるために値が小さくなるので、肺の単位ボリューム当たりで補正すると(DLCO /VA)正常ということです。石綿肺を合併するともともと肺実質が障害されてくるので、肺拡散能が落ちてきます。絶対値も落ちてくるのですが、びまん性胸膜肥厚の場合には先ほど森永座長が言われたように、肺が基本的には異常はなくて胸膜肥厚だけということですので、肺が小さくなっているために拡散能が小さくなるのだけれども、補正すると正常ということです。
 24頁目の上3分の1と半分ぐらいにかけて何を言っているかというと、本来びまん性胸膜肥厚というのは胸膜肥厚だけであって肺野は異常ないのですが、ただ、よくよく観察すると胸膜直下に線維化は起こっているということで、それをDLCOで検出できるということを言っているわけです。ですから、胸部レントゲン写真で肺野は0/0型と判断しても、ごくわずかな線維化はあるのだと。それはDLCOの軽度の低下で、ある程度検出できるということを彼らは言っています。
 (4)は先ほどから話題になっているcostphrenic angle、肋横角の鈍化とか消失という表現になりますが、それについての記載があります。これは先ほど診断に関しての観点から肋横角が問題になりましたが、ここで面白いのは呼吸機能から見て肋横角の消失が大事であることを示しています。それはどういうことかというと、我々が深呼吸するときには、ちょうど横隔膜がいちばん大事なわけで、横隔膜の動きが肺の換気にいちばんきいてきます。肋横角が消失ということは、横隔膜と肋骨のところが癒着しているために、横隔膜が上下にうまく動けないということで、呼究機能障害にすごく関係しているということです。理論的に説明している論文で、非常に私も読んでみて勉強になりました。ただ、あとで報告があると思うのですが、岸本先生が中心になった症例で検討したのですが、我々の検討ではあまりその関係は証明できませんでした。25頁は「呼吸困難」ですが、肺野は異常なくても胸膜の肥厚だけがあると、呼吸困難は意外と強いということを報告した論文ばかりです。これも理にかなっていて、胸壁が硬くなっていますから、肺が大きく膨らまないわけです。肺が膨らもうと思っても胸壁が厚くなって邪魔をしているわけですから、運動すると大きく深呼吸ができないということで、労作時の息切れが当然強くなることが予想されているということです。びまん性胸膜肥厚の患者さんでは呼吸困難を訴えることが多いということを書いていて、これも理にかなっています。
  25頁の下ですが、びまん性胸膜肥厚と石綿肺の合併による呼吸機能障害で、先ほど森永座長からびまん性胸膜肥厚は石綿肺を入れないわけですが、両者の合併は結構多いわけで、そうなってくるとどうしてもそれに伴う肺活量低下が余計強く出ているということを書いています。
 最後は「喫煙」の影響です。これはいつも問題になりますが、じん肺ばく露者、石綿肺のばく露者は多くはたばこ飲みですので、それによるいわゆるCOPDの合併は絶対にあるわけです。呼吸機能を見ると、両方組み合わさった形の呼吸機能で、肺機能というのは肺全体で評価するのですが、片方が線維化で硬くなって、片方は肺気腫で軟かくなっている場合、両方ミックスしたものしか我々は評価できないわけで、そういうことが多いということが書かれています。あとシリカのばく露とCOPDの合併は意外と多いこともあります。喫煙によるCOPDの合併は少ないとか、いろいろな報告があるということで、そういうものを少しレビューしました。
 たばこを吸っているとびまん性胸膜肥厚になりやすいとか進行しやすいという報告が2篇ほどあり、1つは関係がないというのと、1つは日本から1987年の古い論文ですが、喫煙の程度とびまん性胸膜肥厚の出現の頻度で有意差はなかったということです。呼吸機能とは離れますが、喫煙に関係してこんな論文もありましたので紹介しました。
 以上、まとめますと、従来言われていたとおり、びまん性胸膜肥厚は胸壁が硬くなるわけですから、拘束性換気障害を呈する。閉塞性換気障害については伴うものを、喫煙の影響がありますので判断は難しいのですが、過去の非喫煙者を対象にした研究を併せて考えてみると、閉塞性換気障害があっても軽度です。ですから,びまん性胸膜肥厚単独で高度な閉塞性換気障害を起こすことは考えにくい。鑑別のためにはDLCO、特にDLCOを補正したDLCO/VAが非常に役立つということです。ただ、DLCOが測定できる施設は非常に限られているのが問題です。なお,肋横角の鈍化については診断の上からも呼吸機能の障害の観点からも確かに着目すべきであることは感じました。
○森永座長 篠原委員が今日は欠席ですが、篠原委員にレビューをしていただいた分がありますので、わかる範囲で私から簡単に説明します。
 29頁からです。びまん性胸膜肥厚に関する肺内の繊維の定量、あるいは石綿小体の定量の論文を篠原委員にレビューしていただいています。
 石綿繊維ですが、29頁の上では繊維の濃度はプラークよりも多い。あるいは一般の人よりもプラークの有所見の人よりも多い。プラークよりは多いという結果が出ているということです。Gibbsらの論文はよく引用される論文だと思いますが、これについては角閃石のアスベストの濃度とか繊維数がコントロールに比べて高いのだけれども、ばく露濃度のレベルは、プラーク、軽い石綿肺、中皮腫の濃度と同じぐらいだったということが30頁に書いてあります。繊維については31頁の上に書いてあるように、長くて細い角閃石のアスベストがクリソタイルよりも多数肺内に存在しているのだということが書いてあります。
 石綿小体についてはあまりたくさん調べた例はないのですが、BALF中の石綿小体だと10本以上あるのが20例中12例で、残りの7例も1cc当たり1本以上見つかっているというような例がある。あまり数は多くないがそういう論文があります。どちらかというと、プラークよりも高濃度の中段にびまん性胸膜肥厚は起こっているのではないかという論文が、プラークと同じだという論文よりは多い印象を受けています。文献レビューについて、各委員の先生方から、何かご質問はございますか。なければ実際の症例を集めた、これも環境省の委託でやられている資料3について、岸本委員から説明をお願いします。
○岸本委員 私は臨床的なものと画像をやらせていただいて、肺機能検査は宮本委員がやっていらっしゃいますので、そちらは宮本委員にお願いしたいと思います。この目的は事務局からびまん性胸膜肥厚の認定基準はないというのが冒頭出ましたが、我々は労災・救済の認定基準として、画像上の所見というのはとても重要なものですから、いまの認定基準の画像を満たす症例を、対象として集めていますので、それは十分ご了解いただきたいと思います。ただ、著しい肺機能障害があるかないかということは問わないということにしています。
 どういう症例を対象としたかはそうなのですが、環境省のほうで担当した委員がございまして、その委員が77頁に出ていますが、資料を提供していただいたのは全国労災病院の青森から長崎、それから奈良の地区はアスベストの関連疾患が多いということで、済生会中和病院とか、国立病院機構奈良医療センター、それと近畿胸部疾患センターから症例を集めました。症例収集の基準は労災認定基準の胸部レントゲンの正面像でびまん性胸膜肥厚に一致した例ということです。集まった症例は78例ありました。それともう1つ、胸部レントゲンと呼吸機能の検査が1年以内のものは可とするが、1年以上を超えたものは画像と肺機能とミスマッチになるのではないかということで外しました。
 そうしますと、78例から21例が外れました。その他の57例に関しては、胸部画像が一致しているし、肺機能検査が1年以内にやってあるということで、この57例について検討したということです。そうしますと、9頁にありますように、男性が56例で女性は1例のみです。診断時の年齢は59歳から88歳で中央値が69.8歳で、これは中皮腫や石綿肺がん症例とほぼ同じぐらいの年齢の方でした。
 我々は診断のきっかけ等も調べてみたわけですが、健康診断で発見された方が21.1%です。いま石綿健康管理手帳の対象範囲が広がっておりまして、プラークだけでなくて胸膜病変がある人も対象ということで、そのうち6例は石綿健康管理手帳で診断をされています。ただ、症状がある方はそこにあるように44例で、当然のこととはいえ、呼吸困難を訴えた方が多いということがわかりました。呼吸困難度は最近はMRC分類を使っており、全く呼吸困難がない方が2例、軽度の呼吸困難がある方でMRC1が18例で、労作時の呼吸困難が主徴であるMRCの2というのが18例で最も多く、3、4という例は18例で31.6%あったということです。自覚症状は乾性咳嗽が予想したとおり29例と多かったということです。
 いま宮本委員が注目された喫煙歴ですが、やはりアスベストばく露者の方は喫煙者が多くて非喫煙者は16.1%しかなかったということで、重喫煙を意味する600を超えた方が29例で50%を超えていたということです。調査をした症例は過去例もあり、19例は既に亡くなっていらっしゃったということで、呼吸不全もしくは肺炎、心不全というようなことで亡くなっている方が多く、生存期間の中央値は25.5カ月で2年ちょっとということです。労災認定をされるようになった方というのは、予後はそれほどよくないということがわかりました。
 文献レビューでも注目されましたが、びまん性胸膜肥厚はどの程度の石綿ばく露で起こるのかということで、職業歴に注目したところ、そこにあるように建設業、石綿製品製造業、造船所内作業、保温作業、配管、石綿吹付け、断熱作業ということで、石綿中等度以上の高濃度ばく露者が大半を占めました。低濃度ばく露ではプラークは起こりますが、びまん性胸膜肥厚は起こらないのではないかというような結論が出ておりました。我々はびまん性胸膜肥厚というのは心不全とか肝硬変の胸水、リウマチ性胸膜炎、結核性胸膜炎等でもっともたくさん症例があるのではないかということで、広く原因をアスベストによらないものもといって集めたのですが、石綿ばく露でなかった人は3例だけで、すべて珪肺症で、結核性胸膜炎のためのびまん性胸膜肥厚のある3例しか、今回は集めることができなかったということです。
 この3例を除く57例を検討したわけですが、石綿ばく露期間は26.0年で潜伏期間は46.1年、ばく露年数等は石綿肺がんとか、中皮腫に一致していますし、潜伏期間が40年を超えているというのも、中皮腫や石綿肺がんと同じような長い潜伏期間があるということがわかりました。そこにあるように石綿肺でPR1/0以上の例は7例しかなく、良性石綿胸水の既往歴が明らかにある例が56.2%と多く、大半が石灰化胸膜プラークという意味ですが、プラークを合併していた症例が86%となっています。
 我々は全部労災救済認定された人を集めたわけではなくて、認定されている方は66.4%で、画像は一致するけれども、認定されていない例も31.6%ありました。認定されていない理由は、呼吸機能障害がないということで、石綿健康管理手帳の対象であって、労災補償の対象になっていない方がこの程度いたということです。これが臨床の結果です。
 画像は、バイアスをなるべく低くしようということで、呼吸器放射線の専門家である加藤先生を中心として呼吸器内科医が入った班、酒井先生を中心として呼吸器内科医が3人入った班の2班をつ作りまして、同じ画像を別個に見て、どれぐらい所見が一致するかということで、今回はやってみました。そうした結果、18頁にありますが、このような一致率がありました。それともう1つは胸膜肥厚の厚みだとか、水平方向の拡がりだとか、垂直方向の拡がりが呼吸機能等に関係あるのではないかということで、17頁の下に、どの程度まで垂直方向が拡がっているかというのを5段階にこのように分けてみました。拡がりは4分の1程度なのか、2分の1程度なのか、2分の1を超える程度の拡がりなのかという、そういう分け方をしてみたわけです。
 画像所見一致率(kappa値)が18頁の上に書いてありますが、かなりの一致率でした。胸水の有無だとか、crow's feet signという、臓側胸膜の変化があるかないか、この辺りはかなりの一致率だったのですが、先ほども問題になった厚みはとんでもなく違っていて、ちょっと問題があるなと思いました。というのは、厚みをどこからどこまで測っていいのか、特にCTではわかるのですが、胸部のレントゲン正面でどこからどこを測るのかというのは、各委員毎に問題がありまして、いまの胸部レントゲンで5mm以上の厚みというのは大変だねということがわかりまして、審良委員が言われましたように、なかなか問題があるだろうと思います。
 ただ、我々は胸部画像とCTを一緒に見たので、胸膜プラークなのか、びまん性胸膜肥厚なのかというのは、CTで見て臓側胸膜に変化があれば、これはびまん性胸膜肥厚であろうと判断しました。ただ、それがなくて、壁側胸膜の病変だけであると、これはプラークだけだよということですので、プラークの癒合をびまん性胸膜肥厚と診断することはありませんでした。ただ、除外した症例の中には、びまん性胸膜肥厚ではなくて胸膜プラークだけの症例もあるということで、このような症例はCTをもって外したということがありました。そこがいちばん今回、CTとレントゲン正面像を並行して見て、正しい診断をするという点では、とてもいい結果が出たのではないかと思います。
 気腫化、線維化に関しては、今回は時間がなかったのが原因だったのですが、有るか無いかだけしか検討をしなかったということです。18頁の下にありますように、気腫化が大なり小なりあった例が56.1%、線維化はPR1型という意味ではなくて、先ほども申しましたように石綿肺があった例というのはたしか9例だったと思うのですが、CTを見ると、何らかの線維化があった例というのが半数程度もあったということです。審良委員たちが言われるSCLS/Dotsという石綿肺に比較的特徴とされるようなこういう所見があった人は12.3%しかなかったということで、線維化があっても必ずしもそれがアスベストばく露によって起こったのかどうかということの検討はできていませんでした。古い症例があるので、HRCTが撮られていないということがあり、それが十分検討できていなかった例もあります。我々がいちばんそうだと思ったのは、無気肺がある症例が結構ありました。70.2%あって、その無気肺の中で68.1%は円形無気肺がありました。これは臓側胸膜の変化で、びまん性胸膜肥厚の際によく見るサインでcrow's feet signと円形無気肺はびまん性胸膜肥厚の際によく見られると言われていますが、それはそうだなということでした。
 それと胸水が溜まっている例をどう扱うかということでしたが、胸水は70%に見られたということです。良性石綿胸水からびまん性胸膜肥厚になった際に、胸水が残る例が多かったということです。いまいちばん問題になっている横隔膜の鈍化ですが、右が98%、左が90%ということで、今回検討した57例はほとんど横隔膜の鈍化があったということです。左右とも鈍化のなかった症例はなかったということで、確かに横隔膜の鈍化のないびまん性胸膜肥厚はあるのですが、頻度的には低くて、今回検討した57例の中にはないということで、審良委員が言われましたように、横隔膜の鈍化を基準にすると、横隔膜の鈍化のないびまん性胸膜肥厚を外すことにはなるのですが、残念なことに今回、対象とした症例にはなかったということです。
 あと、画像と肺機能検査については宮本委員が検討されましたので、そちらにお任せをするということです。ただ、先ほど申されましたように、画像の認定基準は外して、症例を集めるとすると、審良委員も言われましたように、本当に微々たる胸膜のcostophrenicの鈍化のものも入れることになると、心不全や肝硬変合併で胸水が溜まった人だとか、過去の結核の後遺症などが入ってくるので、とても対象症例が広くなるのではないかと思います。今回は労災救済認定基準の胸部画像の厚みが5mm、両側だと4分の1、片方だと2分の1あるという例を集めてみたのですが、それで集めても21例がはじかれたということになります。それはいろいろな面から外れたわけなのですが、その辺りは今後、この検討会で検討されたような形で、今年度はもう少し集めてみたいなと思っています。
 ただ、2000年以降、こういうびまん性胸膜肥厚を集めて肺機能なり画像なり、画像もCTを含めて検討した論文はありませんので、なおかつ職業歴もさまざまということでしたので、是非、今回のこの57例をデータベースにして、例えば経年的な変化なども検討していきたいと思っています。今回の報告書には具体的な症例をかなりたくさん入れています。玄馬先生の報告書は60頁にあるように、症例を2例集めてみて、肺機能の経年的な悪くなり方も検討できる例がありましたので、ここに記載しています。こういう経年的にフォローアップできている例は肺機能の%VCが何が原因で悪くなるのかということを突きとめるいい資料になると思いますので、平成23年度はもう少し、じっくりと腰を据えて、いろいろな検討をしていきたいと思います。とりあえずは、この平成22年度の報告書は、症例を集めて検討したということです。
○森永座長 宮本先生、お願いします。
○宮本委員 この症例集積の調査業務で、呼吸機能に関して私が担当しましたので、簡単にご説明します。28頁をご覧ください。自覚症状と呼吸機能と2つの視点で検討しました。従来から胸痛があると言われていますが、今回は12%しかいません。また,乾性咳嗽は約半数ということでした。呼吸困難はMRCで2度。25頁の下をご覧ください。これがMRCの0から4度の説明です。現在のじん肺法で用いられているフレッチャー・ヒュージョーンズ分類は1から5までの分類で、ほとんどこれと似たようなものですので、2度というと中ぐらいです。普通の方よりも、息切れのためどうしても歩くのが遅いという程度です。それが28頁に戻ると、そういう方が33%でいちばん多かったということでした。文献レビューのところで体動時の息切れは当然起こるということが推定されますが、今回の症例に限ってみると、意外に呼吸困難の程度は軽い人が多かったことになります。当然ながら息切れが強い人は、乾性咳嗽も多かったということが、下の表になります。
 次は29頁にそれぞれの呼吸機能との関係の相関係数と有意性の検定を表3と表4にまとめています。いちばん重要な拘束性換気障害の指標である%VCに何が関係してきているかと見ました。この資料の32頁がガス分析との関係とレントゲン写真から見た拡がりとの関係をみています。この網掛けしたところをご覧ください。表6がいちばんわかりやすいと思いますが、呼吸機能が拘束性換気障害にいちばん大事なわけですが、それと労災の認定というのは単純写真で拡がりだけ見ていますから、あまり相関がないということです。垂直方向の肥厚の拡がりの長さと水平方向の拡がりはCT検査で見ていますが、これのほうが非常にいい相関がありました。つまり,胸部写真で見た拡がりから呼吸機能を推定することは、よくないということで、呼吸機能というのは独自に判定しなければいけないということを改めて示していることになります。
 30頁は息切れ(呼吸困難)です。息切れというのは患者さんの訴えで、非常に客観性が乏しいわけですが、30頁の図を見てわかるように横軸が%VCで、60%のところが現在の基準です。ちょっと縦に線を引くと、それより低い値の人はどうなっているかというと、MRCの4度は息切れが非常に強くて、服を脱いだり着たりするだけでも息切れが強い人ですが,このうち1人以外は現行の基準で全員認定されています。ただ、MRCの3度でそこそこ息切れが厳しい人も、現在の基準では漏れる人がいますが、大体カバーしているということで、呼吸困難の程度は非常に客観性が乏しいといいながらも大事な所見であることが改めてわかりました。30頁は息切れです。息切れというのは患者さんの訴えで、非常に客観性が乏しいわけですが、 図3は横軸が%VCで拘束性換気障害の程度で、縦軸が1秒率で、閉塞性換気障害の程度を示しています。1秒率70%より上は閉塞性障害がない,下がある。X軸の%VCの80%よりも低い値は拘束性換気障害があるということになります。これを見てわかるように、ほとんどの方が拘束性換気障害を起こしています。かつ、そのうちの3分の2程度は、1秒率はほとんど正常であるということになります。この報告書には記載しませんでしたが、ちなみに%VCの60%に現行の基準で縦に線を引くと、そこから下は現行では救済されて、そこから上の方についてはどうかということになりますが、一応この中で%1秒量が50%以下で救済される方は4人だけでした。
 33頁です。先ほどから肋横角の消失のことが話題になりまして、理屈上からも肋横角が消失の程度が強いと息切れも強くて、拘束性換気障害とか1秒率よりもより強く下がるのではないかということを当然予想されたのですが、そうではなかったという報告になります。この図を見て、1群というのはどちらかが肋横角の消失がある。しかも90度以下は軽度ですね。3群というのは肋横角の消失が両側にあって、かつ90度以上ですから肋横角の消失がかなり強度だということです。1群と3群で比較すると、平均値で見ると%VCも1秒量も下がっていますが、残念ながら症例数が少なかったということもあって有意差が出ませんでした。呼吸困難は、逆に右肩上がりに上がると思ったのですが、これも今回の症例に限って言うと、そういう関係がなかったということで、予想した結果ではなかったということです。
 35頁で、たまたま非喫煙者が9名いました。これは非常に貴重な9例で、当然たばこによる肺気腫はないのですが、CTの気腫化有無を見ると、たばこを吸っていない人でも半分近くは線維化があるということでした。石綿だけでなくて、ほかの粉じんも吸入している方ですので、そういうのが少し影響しているのかなと。いわゆる、じん肺ではmixed dust fibrosisの周辺は気腫化が起こってきますので、そんなのが入っているのかもしれないということです。推測で何とも言えませんが、この9例については非常に貴重なので、今後検討したいなとは思っています。以上です。
○岸本委員 1つだけ追加をよろしいですか。74頁を見てください。71頁の胸部レントゲンは、両側性のびまん性胸膜肥厚の症例ですが、肺機能は著しく障害されていません。この63歳の方は4年間ずっと手帳検診で診ていらっしゃいますが、自覚症状はなくというような人がいらっしゃるので、宇佐美先生がお書きになった例なのですが、いま宮本委員がおっしゃったようにレントゲンでびまん性胸膜肥厚の基準に合致する例であっても、著しい呼吸機能障害もないし、自覚症状もないという例があるということでご紹介しました。以上です。
○森永座長 岸本委員と宮本委員から報告がありましたが、何か委員の先生方からご意見はありますか。
○神山委員  先ほど、石綿に関連していないという例が3例だけで、ほとんどが関連していた。これは、一般的に今回参加した病院が特殊な病院だから、57例と石綿関連が高いのか、先ほどの森永先生の文献レビューだと、びまん性胸膜肥厚がかなり低い。その辺のことについて何か。
○岸本委員 石綿を意識して集めていらっしゃるので、本来はもっと多いのですが、出てこなかったのだろうと思います。
○神山委員 普通は、こんなに率が高くないわけですね。
○岸本委員 率は高くありません。
○神山委員 わかりました。
○森永座長 これは、厚さとか拡がりは関係なく、各病院で石綿によるびまん性胸膜肥厚と診断された例を集めたという理解でいいのですね。
○岸本委員 はい。ただ、一応労災認定基準の拡がりと厚みのあるものをということで。
○神山委員 労災も受けているケースということですか。
○岸本委員 そうではなくて、一応画像上、労災認定基準の胸部レントゲン正面像がそうだというものを集めてくださいということで集めたのですが、必ずしもそうではない例も入ってきたということです。
○三浦委員 全例CTで確認しているのですか。
○岸本委員 そうです。
○由佐委員 被包化胸水の例の率が結構高いと思いますが、そういう場合は拘束性の障害が機能的には大きくなる。
○岸本委員 そのように宮本委員もお書きになっていらっしゃいます。
○三浦委員 被包化胸水の胸水の量の度合いはどうですか。ここに書いてあるのは胸膜肥厚があって、その間にわずかに残っているようなのが載っていますが。
○岸本委員 それも入っていますし、胸水が大量に残存する症例も入っています。
○三浦委員 その胸水の性状はどうですか。
○岸本委員 そこまでは問うておりません。
○三浦委員 といいますのは、2004年のヒンイスの論文でトラプトラングというのがありまして、それは胸腔が陰圧になっているから、胸水はむしろ漏出液になる。それであれば、胸水のために呼吸機能が低下しているのではなくて、胸膜肥厚のためにあるから胸水も引かなくて、胸腔内圧が陰圧になっているからだということであれば、それが胸膜肥厚による呼吸機能の低下と考えていいと思います。そうでないと、いわゆる良性石綿胸水による呼吸機能の低下と区別できないと思います。だから、瑞々しく溜まっているようなものは臨床的に引けると判断できるようなものは、中身が必要かなと考えています。
○岸本委員 大体、胸水の性状については結果は出ているようですが、それが明らかでないものは良性石綿胸水に関連したものとしています。ですから、良性石綿胸水が明らかな症例を良性石綿胸水からびまん性胸膜肥厚になったというふうにしています。ただ、すべてではありません。
○三浦委員 要するに原因ではなくて、瑞々しい胸水のために呼吸機能が低下しているのか、あるいはそうではないのかという観点での質問です。そこの判別の基準が、胸腔内圧が陰圧で胸水が漏出液になっていれば、日本語がないものですからトラプトラングという表現をされていますが、そうすればそれは胸膜肥厚に伴う、胸膜線維症に伴う呼吸機能の低下と判断していいなと私は考えています。ですから瑞々しい胸水だけでは、必ずしも良性石綿胸水による%肺活量の低下とか、それとは区別できないと思います。かなり胸水がある場合には、胸水の性状が必要ではないかなと考えています。
○森永座長 被包化された胸水をびまん性胸膜肥厚としてしまっていいのかどうかという議論がありますが、話がややこしいから後回しにして、要するに胸水のないびまん性胸膜肥厚と言える例について、もう一度資料1に戻って考えてみた場合、厚さ、拡がりは別にいいのではないかなという考え方もある。問題は、石綿によるびまん性胸膜肥厚という診断をどのようにするのかというところが、いちばん大きいですよね。平成18年当時は皆さんご存じのように大変な最中のときに、エイヤーとやったというのが実情です。それまでは、たしかびまん性胸膜肥厚は、全例本省協議ではなかったかな。そのときは、良性石綿胸水も本省協議。両方、本省協議だと大変だなということもあって、何か1つ物差しがあったほうがいいだろうということで、当時拡がりと厚さの要件を出したという理解でいいと思いますが。
○神山委員 森永先生の疫学のレビューを中心にしてまとめられたらそれでもいいのですが、中皮腫だったら大体平たく言って、アスベスト関連が8割、9割という常識的な線がありますね。肺がんだったら5%未満、数パーセントがアスベスト関連というごく一般的な理解がありますが、そういう非常にざっくりとした言い方をした場合に、このびまん性胸膜肥厚というのはアスベストとの関連が大体何パーセントぐらいと言っていいですか。そういう疫学調査というのは、いまのところでは言えないのでしょうか。
○森永座長 疫学調査としては、ないのではないですか。
○神山委員 かなりそのパーセンテージは高いと言っていいですか。半分とか。
○岸本委員 それはないと思います。肺疾患によって起こってきても、びまん性胸膜肥厚を意識しない医師のほうが大半です。私の所に3例あったのは、私の患者を診て意識して3例出したということなので、もっと広く集めれば他疾患によるもののほうが多くて、アスベストによるものというのはそれほどないと思っています。
○神山委員 では肺がんの数パーセントぐらいのイメージでもいいですか。
○岸本委員 いいのではないかと思います。
○神山委員 そうであれば、石綿ばく露歴というのがかなり大切になってきますよね。
○森永座長 びまん性胸膜肥厚があっても、ひどくならないと患者さんは受診しないですよね。一方で石綿のばく露の方は手帳をもらっているから、ちゃんと来ますよね。だから、病院ベースで集めた症例について、石綿と言われるものと言われないものとの頻度の差があるのかということは、そういうデータでは言えないと理解したほうがいいと思います。疫学としては、そう思いますが、それでいいですよね。
 それで、厚さが5mm、拡がりが2分の1以上、両側の場合4分の1以上という要件というのは、イギリスの場合の認定基準が当時そうであった。現在は、イギリスはその要件は取っ払って、どちらかというとむしろ肋横角のobliterationをどう訳するのかは、あとでまたこの検討会で訳語を決めておく必要があると思いますが、それに変えているということです。それに対して、委員の先生方からご意見はありませんか。
○岸本委員 座長のおっしゃるとおりだと思います。
○森永座長 この厚さと拡がりの要件というのは、ある程度以上に進行したというか、びまん性胸膜肥厚をピックアップするには非常にいい要件ですよね。
○岸本委員 審良委員がおっしゃられましたように、CTで見て本当にあるかないかというものまで出してくると大変なことになるので、ある程度の基準というのは著しい肺機能障害というものを取ってきた場合に目安になると思いましたし、そうであったために我々も、これを目安として集めてみたということではあります。
○三浦委員 ただ、特に厚さについてはあまり厳密には。大雑把なものですから、目分量で3mmも5mmに見えてもいいと思います。時々、委員が「これは5mmないから、ちょっと足りないから」という基準。何か、まるっきり目分量の厚さと、まるっきり厚みがないのが肋横角が鈍だからというので、いきなり持ってこられても逆に困りますので、ある程度確かに肋骨の何分の1かの厚みはあるとか、そういうことが少なくとも必要だということと、上下方向の広がりの範囲についても全くの目分量で、どこからどこまでを取るかというのはどこの基準にも書いていないのです。一応、肺尖から肺、頚部までとなっていますが、縮んでくればどこからどこまでを取っていいかがわからない。
 ただ、一昨年か何かで岸本委員が厚労省のあれで、びまん性胸膜肥厚の研究を出しましたよね。あのときに、私がCTで頭尾方向の右も左も全部足して、20で割る。要するに、スライス厚でもってある程度やったのですが、それでいくと呼吸機能とものすごくきれいに相関したデータをたしか報告に出してありますので、それはある程度の広がりは呼吸機能に影響すると考えていいと思うのです。ただ、その半分や4分の1というのはあくまで目分量であって、ひいき目に見れば多少変わるでしょうし、あまり厳密なものではない。最も厚いところが5mm、あの当時のイギリスのものもそうです。そのあとのILOの基準が、今度は3mm以上は記載しなさいという基準に変わっていますので、そういった点が。どうしてもCTを参考にするというのは必須条件ではないかなと考えます。
○岸本委員 三浦委員のおっしゃるとおりで、我々もこれだけ症例を集めて見て、厚みをどこからどこまでを取るかというのを3人ずつの2グループで検討したのですが、各々みんな違うということです。三浦委員が言われましたように、CTだと一致する。これは宮本委員がおっしゃられましたように、CTだと有意差があるけれども、レントゲンだと有意差がないというエビデンスにもなっていますので、三浦委員のおっしゃられたとおりだと思います。
○森永座長 それは、びまん性胸膜肥厚の診断基準であって、労災の認定基準ではないというのが今日出してきた資料1の趣旨だと理解しますが、そのことについて意見はありませんか。
○渡辺職業病認定対策室長 先ほどの先生のお話もそうですが、結局ある程度の厚みがあったとか、そういうことが呼吸機能を低下する証明なのだというお話がありました。いまの基準もそうですが、呼吸機能の低下というのは別の検査で確認をすることになっているわけです。そうすると、そこは一次スクリーニング的な意味合いなのだろうかと。呼吸機能が落ちている病態というので一次スクリーニングをやって、その次にしっかりと呼吸機能検査をするようなイメージにいまなっているのかなという感じになっているものですから、どうもしっくり理解できないなというのがあったものですから、そこはどういうふうに整理できるのだろうかと。
○森永座長 非常に難しい話ですね。石綿によるびまん性胸膜肥厚の診断が、胸部の専門医の間に普及している状態にあるとは未だに到底思えないのですが、どうですか。
○岸本委員 おっしゃるとおりで、意識をされている方が少ないので、この前の呼吸器学会の特別報告でも呼吸器内科、呼吸器外科の先生方に是非こういう病態は、労災・救済認定の対象ですよということを私も申しておきましたし、森永座長のおっしゃられるとおりだと思います。ある一部の先生にはとてもよくわかっていますが、まだ十分理解されている先生方が少ないのが現状です。
○渡辺職業病認定対策室長 たぶん平成18年のときには、もっとそういうのが強かったのだろうと思いますので、どうもびまん性胸膜肥厚というのは一部の中ではかなりはっきりしてきているけれども、呼吸器の先生方全体の中ではまだしっかりした認識がない中で、ああいう形になったということなのかなということもあります。現状もそれほど改善されていないということであれば、びまん性胸膜肥厚の診断のガイドライン的なものを認定基準の中に盛り込むとか、あるいは労災の認定の対象となるびまん性胸膜肥厚というのが書かれるのか、それともいまみたいな認定要件としてこの状態にあることというのが書かれるのかのいくつかのパターンがあると思いますが、いろいろ整理していくと、どうも認定要件として書く整理がなかなか難しいなというのが我々の思いだったものですから、ここを1回整理したほうがいいかなと論点として出したというのが背景です。
○森永座長 論点の②については、前回に宮本委員を中心に新たな判定基準も含めて検討しましたので、これについてはいいですよね。あとは、論点の①と③を議論しなければならない。論点の①と③はどちらかというと、実はある程度関連することでもありますが、いままでの要件①というのは、1つは③の不正確な診断を排除する方法には役立っていたということですよね。それは皆さん賛成ですよね。しかも、肋横角のobliterationを入れると、よりそれが除外できる。切り捨ててしまう例は非常に少ない。切り捨ててしまう例については別途協議すればいいということを書けば、問題ないですよね。
 問題は①になりますが、疫学調査の論文でいうと、プラークと同じという論文もありますが、どちらかというとプラークよりはもっと多いばく露があるのと、もう1つはプラークを伴っているびまん性胸膜肥厚が非常に多いという2点がありますよね。それだけで判断できるかどうかという問題もありますが、そういうのも今度の認定要件に入れたほうがいいのかどうかということです。何かここで委員の先生方、意見はありますか。costophrenic angle obliterationというのをどう扱うか。それは認定要件ではなくて、いま室長が言った診断のガイドラインでとおっしゃったのですか。
○渡辺職業病認定対策室長 そういうものもあり得るのかなと思ったのですが、ただ、そういうものは普通は学会とかで作るので、さすがに私どもの所で作るのはおこがましいかなというのがありますが。
○森永座長 石綿によるびまん性胸膜肥厚とは、こういうものを言うのですよというのをどこが出すかは別にして、何かそういうものがあったほうがいいだろうとは思います。いちばんいいのは学会でやってくれるのが本当はいちばんいいのでしょうけれども、職業災害学会でやりますか。
○岸本委員 そうですね。私も申しましたように、論文のレビューもそうだったように、胸膜プラーク程度の低濃度ばく露ではどうも起こらないだろうということで、12頁を見ていただくと、今回57例の職業歴がすべて書いてあります。表3の左側にあるように、石綿中等度ばく露以上のばく露歴を有する方がほとんどを占めています。すなわち86%がそうなので、これは盛り込むというよりも意識をするという意味では、こういうばく露歴のある方ということになるのかなと思います。それで、こういう職業歴で、なおかつ26年のばく露期間があるというような結果が57例出ているということなので、ある程度そういうことを意識しながらということになるのではないかなと思います。というのは、画像上石灰化がなければ、非石灰化胸膜プラークは、びまん性胸膜肥厚が出現した場合に、どれがプラークだというのが確認できないということがありますので、診断のところでそこが常に問題になってくることもあるので、そこのあたりに1つ問題点はあるなとは思っています。
○森永座長 12頁の岸本委員の建設業は、もっと詳しい業種がないといけないね。
○岸本委員 そうですね。本当はそうだと思います。
○河合補償課長 この12頁で、確かに対象症例の中の建設業等が8とありますが、そういう意味では多いと見るのか、それともおそらく母数もあるので、母数から見れば少ないと見るのか、どうですか。
○岸本委員 少ないと思いますし、いま森永座長がおっしゃられましたように、建設業の場合は高濃度ばく露、中等度ばく露、低濃度ばく露がありますので、ざっくりと建設業と言うべきではなくて、もっと詳しい職業歴を聞くべきだろうと思います。決して頻度的に多いわけではないですが、一部の方では中等度ばく露以上の方もあることは事実なので、今年度の検討ではこの8例を詳しく職業内容を聞いてみる必要があると思います。
○神山委員 ばく露期間が平均25.9年で、プラスマイナス15.4年で、最少は10年ぐらいはあるのですか。
○岸本委員 ございます。
○神山委員 10年未満はどうですか。
○岸本委員 未満もあります。石綿吹付け作業者で作業期間が短い例で認めています。
○神山委員 最少は何年ぐらいですか。
○岸本委員 最少は5年ぐらいだったと思います。確認してみます。
○河合補償課長 石綿吹付けだと、何かそうかなと思いますよね。
○岸本委員 はい。石綿製品製造が8例。これは奈良、大阪の例ですが、短い例がありますので、今回確かに石綿高濃度ばく露が知らされているようなところからの症例が少なくはないというのも事実ではありますが、もっと広く症例を集めてみたいなと思っています。57例が倍になれば、また新たなものが出るのではないかなと思います。ただ、建設業以外の業種は、明らかに中等度ばく露を来す職業であることも事実ではあります。
○森永座長 資料1ですが、現行の認定要件の特に①については、石綿によるびまん性胸膜肥厚の所見があった場合に、著しい呼吸機能障害があれば労災の対象となり得る、あるいは救済の対象となり得るという理解でいいと思います。ですから、それを認定要件に入れるか入れないかというのは、ほかの疾病の関係でいえばむしろ入れないほうがいいだろうというのが行政のほうの考え方だろうと思いますので、それはそれで理解できますが、しかしどこかでそれを言わないと闇雲にみんな出てくる可能性もあるということですので、報告書にはそれをどこかに載せる必要がある。ただし三浦委員が言ったように、厚さと拡がりは概ねでいいのではないかなと。それはいいですよね。厳密に測れないしね。もう1つは、costophrenic angle obliterationは何と訳するのですか。意見はありますか。それも入れたほうがいいですよね。それから、アスベストの疾患については単純なレントゲンだけではなくて、CTも活用すべきだというのは労災に関しては必要だということは言い切っていいですよね。もう1つは、岸本委員の報告書の中身は、別途取り上げるよりは、どこかレビューの中へ入れ込んでまとめたほうがいいですか。
○森永座長 報告書の話。今回の検討会の報告書の中に、このレビューも当然入れて最終的に認定要件でいままで述べたことは、認定要件ではないけれども診断にとっては非常に大事ですよということをどこかで書かないと、なかなか呼吸器の先生方にも理解してもらえないところがあるから、それは入れるべきだと。報告書としてのイメージを考えています。そのときに、岸本委員の報告書のレビューの中に一緒に入れ込んで入れたほうがいいのかなと思ったのですが、どういうまとめ方をするかということです。最終的に、ばく露はある程度はないといけませんよという話は、レビューの中では当然出てくる。
○渡辺職業病認定対策室長 この報告書をそのまま書くみたいな形は、なかなか取れないだろうと。
○森永座長 それと報告書は別ですから、やはりレビューの中に取り入れて。
○渡辺職業病認定対策室長 これを要約したような形で。
○森永座長 そうすると、これを宮本委員の呼吸機能のところは、岸本班でまとめたところのものを引用していただく形で追加で書いていただければいいし。
○岸本委員 これもまだ時間的に不十分だったので、宮本委員にこの会が始まる前にお願いした労災認定をされた人とされていない人がいるので、そのあたりも含めてもう一度再検討していただけると、新たなものが出てくるのではないかなと思っています。
○森永座長 画像のところは、審良委員が書いているところに岸本班の報告書を岸本委員が追加で書くような格好で。
○岸本委員 それを盛り込んでもらうと。
○森永座長 職業のばく露のところは、疫学のところに私が取り込んで書く。あとは、全体をどうまとめるかという案を次回に出して検討していただいて、それでよければそれで行くし、もう1回議論が必要ならもう1回やって取りまとめるという段取りでいいのではないですか。どうですか。
○渡辺職業病認定対策室長 ①の「石綿ばく露により発病したこと」というところのいちばん大きなポイントとしては従事歴3年がありますが、ここについてはいまあまり議論がなかったのですが。
○岸本委員 これは平成15年に、びまん性胸膜肥厚を労災の対象疾病とするかどうか、私と三浦委員から症例を15例出して検討した事案で、これはいいだろうといった症例のいちばん職業歴が短かったのが3年なので、この3年を使ったということが平成18年のときも継続したということなので、三浦委員はこれをどう思われますか。
○三浦委員 たしか3年というのが2例あったのですが、いずれも高濃度ばく露ですよね。かなりの吹付けと同等の高濃度ばく露。ただ、年数だけで言ってしまうと、最低条件として集積されたもののいちばん短いものが3年だったということです。だから、その当時に基準として、最低限3年ぐらいあることというのが条件に加わったので、これはあくまで高濃度ばく露で。
○神山委員 それに関連して、資料2のレビューの29頁の2番目のパラグラフですか、GibbsとPooleyの肺内石綿量のレビュー結果ですが、ちょっと表現が不正確であると思います。つまり、石綿肺と肺がんが最も高濃度で、中皮腫とびまん性はこれより低く、胸膜プラークでは低濃度というのは平均値で表現しているのだろうなとは思いますが、中皮腫というのはご存じのように非常に低濃度から高濃度まで幅広く、1年で中皮腫になる方はなるというようなことがあります。中皮腫とびまん性胸膜肥厚を一括りにしているので、これはもう少し正確なレビューをしておかないと、この文章が一人歩きして変な誤解を生む可能性があるのではないでしょうか。最低線で言っているのか平均値で言っているのかぐらいは、最低表現すべきと思います。
○岸本委員 神山委員のおっしゃるとおりだと思います。中皮腫と、びまん性胸膜肥厚を同等にするのは私も間違っていると思いますし、これをこのようにするのであればエビデンスをきちんと出さなければいけない。
○神山委員 レビューですから、間違えていなければいいですが、その表現が問題かもしれませんね。
○森永座長 これは、また検討して皆さんにお送りします。
○森永座長 ばく露量をどういう表現でするかということは非常に難しいですよね。いままでは中皮腫だと1年以上。1年未満は×かというとそうではなくて、1年未満は本省協議ということになりますよね。ですから、いままではそういう観点でこれも3年という言い方をしていたと。
○河合補償課長 参考までにあれですが、3年というのは例えば表3の中だと、どの業種になるのですか。
○岸本委員 石綿製品製造や石綿吹付け作業というところですね。それから断熱作業も。
○河合補償課長 そういう意味では製造業の中で、ある程度密閉されて管理された工場とか職場における作業というわけですか。
○岸本委員 そういうことになります。たしか1例だけ造船の艤装作業で、昭和40年前の作業があったように覚えていますが。
○河合補償課長 それは3年でそこの仕事をされていて、発症は何年後ぐらいになるのですか。
○岸本委員 ここにあるように40年越えていますね。だから、この46.1年というのは妥当な線ではないかなと思っています。潜伏期間に関して、いままで言及された論文というのがないので、今回このデータを見て私も驚きました。
○河合補償課長 逆に、いま発症される方は40年前の作業をやっておられた方ということですね。
○岸本委員 そういうことになるのではないかなと思います。
○河合補償課長 40年前に石綿吹付けとか、そういう作業に。
○岸本委員 そうですね。1975年に石綿吹付け作業が一応禁止になっていますので、40数年というのはリーズナブルな年数ではないかなと思っています。
○渡辺職業病認定対策室長 その潜伏期間についての要件というか、考え方というのは出せるのでしょうか。いまは全く、びまん性胸膜肥厚に関しての潜伏期間の考え方、これまでの報告書の中にもそこの考え方は一切出ていなかったのですが。
○森永座長 ばく露年数はないですね。
○岸本委員 ばく露年数はあっても、潜伏期間という発想での論文がないことに私も気づきましたので、それを今回は検討してみました。中皮腫もそうで、従来は25年とか30年と言っていて、データを集めれば集めるほど潜伏期間は長くなって、平成13年に森永先生が労災認定された症例をまとめたときは38年だったのですが、我々が検討するとそれが43年になりました。石綿肺がんも46年になりました。今回のびまん性胸膜肥厚も、そういうことで長くなっていますので、ほぼ同じような潜伏期間があるのかなとは感じています。
○森永座長 少なくとも、ばく露が疾病よりも前にあるというのが職業性疾患の前提になりますし、職業の場合は最低10年以上というのが、これは医学的には考え方が当然のこととして、因果関係を考える場合の5つの因果関係とか5つのいろいろな要因がありますが、その1つとして非常に大事だという理解で、特に法律の文章にも入れていないし認定基準のところにも述べてこなかった。だから、例えば石綿救済法でも、中皮腫は潜伏期間が最低10年以上なんて、どこも書いていない。
 けれども、日本国内でばく露を受けた例は救済法の対象になるけれども、中国でばく露を受けて、その方が日本へ来て中皮腫になった場合はどうするのかといった場合に、ややこしい話が出てきますが、9年前まで中国におられた方は日本でのばく露だとは当然考えられないから、救済法の対象にはならないことになります。けれども、法律までそんなことは書いていないですよね。合理的に当然のこととして理解している。だから、認定要件で書く場合でも、逆に言うとそれ以下だったら駄目だということも言えないし。何か課長さんはご意見が。
○河合補償課長 どんな感じなのかなと思って。そういう意味ではいちばん重要な部分というか。
○渡辺職業病認定対策室長 これまでの報告書の中では、例えばわかっているものはその潜伏期間はこのぐらいですよというようなものも盛り込まれていたのですが、びまん性胸膜肥厚に関してはそういったようなことがこれまで一度も述べられたことがないので、先ほどの医学参考情報的な意味でもそういうことが盛り込めるのであれば、より確かな診断にもなるかもしれないなという気がしたものですから。
○森永座長 それは言えると思います。少なくとも数十年以上前のばく露が原因で、ばく露を受けて、すぐにびまん性胸膜肥厚は出てこない。それは我々はわかっていますが。
○神山委員 びまん性胸膜肥厚の発見というか診断というのは、呼吸困難とかの自覚症状が出て病院に行ったりして、発見されるのでしょうけれども、その潜伏期間を肺がんあるいは中皮腫と同じに考えていいのですか。つまり、このびまん性胸膜肥厚は、自覚があまり出にくく発見しにくいとか、致命的でないとか、いろいろある場合に、病院に行かないケースが多くなるとかで潜伏期間がそんなに正確に求められないのではないかと想像しますが、どうでしょうか。
○岸本委員 おっしゃるとおりかもしれません。一定以上の肥厚になって、肺活量等が減ってこないと自覚症状が出てこないので。
○神山委員 どの段階から胸膜肥厚とするかというので、相当な年数のばらつきが出ますよね。
○岸本委員 その可能性は十分あると思います。
○森永座長 検討会の報告書としては潜伏期間も盛り込んで書きますので、書いてみたもので議論をしたほうが、ないところで議論してもこれ以上詰まらないので、少なくとも1カ月ぐらいはいただきたいとは思います。次回は、またあとで事務局と各委員の先生方で調整して、夏に会議をやるとよろしくないと言われているので、概ね夏までにやる方向でよろしいでしょうか。
 今日出してきたレビューと岸本班の報告の内容をレビューに追加して、さらにレビューのそれぞれの委員の先生方の概要をまとめて、それに基づいて今後の石綿によるびまん性胸膜肥厚の主に診断ですね。診断で、こういうことを留意しなければいけないということを述べて、あとは呼吸機能障害が一定以上あれば、これは補償するという考え方は変わらないですよね。それは、この間も基準のほうは改定しましたから、前者のほうで主にまとめて、それをたたき台にして最終的に厚さと拡がりを本当に認定要件に載せるべきなのか。載せなくても、診断基準のほうで取り扱うほうがいいのかを議論して、びまん性胸膜肥厚については目処をつける方向でやりたいと思いますが、よろしいですか。
 これは要件を外しても、救済法にそう影響はないと思います。概ねということが付いて、要するに診断の話ですね。これぐらいないと、著しい呼吸機能障害はあまり起こりませんよというのがいままでの経験ですからね。
 ちょうど2時間になったので、これで今日は終わりたいと思いますが、事務局のほうにお返しします。
○大根中央職業病認定調査官 次回の検討会の開催日についてはお話にありましたが、別途各委員のほうと日程調整をした上で決定したいと思います。ありがとうございました。


(了)
<照会先>

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補償課職業病認定対策室

電話: 03-5253-111(内線5571)

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