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2011年3月1日 精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会 第2回「セクシュアルハラスメント事案に係る分科会」 議事録

労働基準局労災補償部補償課職業病認定対策室

○日時

平成23年3月1日(水)17:00〜19:00


○場所

厚生労働省専用第21会議室(中央合同庁舎5号館17階)
(東京都千代田区霞が関1−2−2)


○出席者

(参集者:五十音順、敬称略)

戒能民江、加茂登志子、黒木宣夫、水島郁子、山口浩一郎

(厚生労働省:事務局)

小宮山洋子、尾澤英夫、河合智則、神保裕臣、渡辺輝生、幡野一成、板垣正、西川聡子

○議事

○西川職業病認定業務第一係長 はじめに、本分科会は原則公開としていますが、傍聴される方におかれましては、別途配布しております留意事項をよくお読みの上、会議の間はこれらの事項を守って傍聴いただくようお願い申し上げます。
 定刻になりましたので、ただいまから「第2回精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会 セクシュアルハラスメント事案に係る分科会」を開催します。まだ加茂先生はおいでになられていませんが、すぐにおいでになられるかと思いますので、恐縮ですが始めます。先生方、また本日お話いただける有識者の皆様におかれましては、ご多忙中のところご出席いただきまして、誠にありがとうございます。本日は小宮山厚生労働副大臣が出席しています。開催に当たり、小宮山副大臣よりご挨拶を申し上げます。
○小宮山厚生労働副大臣 皆様、本当にどうもありがとうございます。精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会 セクシュアルハスメント事案に係る分科会ということで、前回から皆様にご協力をいただいてありがとうございます。この件につきましては、私も解説委員をNHKでしていたころからいろいろ取材もさせていただき、いろいろな方のお話も伺わせていただきました。議員になって今年13年目ですが、その中でそういう職場でのセクシュアルハラスメントによりまして、いろいろ被害を受けていらっしゃる皆様のお声を聴くような集会とかも、何回か主催というかご協力をして開かせていただいて、本当にこの問題は難しいというふうに思っておりました。
 これまでも精神障害の労災認定の中で入っていたということなのですが、セクシュアルハラスメントはいろいろな意味で見えない精神的なダメージが大きいということ、いろいろな意味で特別なのではないかということで、今回私が副大臣で労働問題を扱う責任者にもなりましたので、是非このことを特に取り出して、きちんと対応できる検討会をつくってほしいと強くお願いしまして、この会をつくっていただいたのが経緯です。
 今日は、被害者の支援活動、相談、カウンセリング、訴訟・調停などの場面でセクシュアルハラスメントの被害者に接していらっしゃる皆様にお越しいただきまして、お忙しい中本当にありがとうございます。皆様の現場で受け止めていらっしゃる声を聴かせていただくことが、この分科会での検討にも非常に参考にさせていただけるものだと思っておりまして、今後の検討に必ず活かすように、そしてこの検討会で成果として出していただいたものは、私が責任を持ってしっかりと反映させるように努力をいたしますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。ありがとうございます。
○西川職業病認定業務第一係長 会議を始めるに当たりまして、事務局から資料の確認をいたします。本日、用意した資料は、資料1が近藤様のご提出資料、資料2が井上様のご提出資料、資料3が大竹様のご提出資料、資料4が大塚様のご提出資料となっています。欠落等がありましたら、お申し出ください。写真撮影等は以上としますので、ご協力をお願いします。座長の山口先生、よろしくお願いします。
○山口座長 議事に入ります。前回の分科会で決定したとおり、また、本日は小宮山副大臣にもご出席いただいておりますとおり、セクシュアルハラスメントの実態を把握するということで、支援団体、相談機関等において、セクシュアルハラスメントを原因とする精神障害を発病した事案に多数接しておられる方々から、ヒアリングを実施することにしています。本日は4名の方にお越しをいただいています。最初、15分程度セクシュアルハラスメントの実態についてお話をいただきまして、その後質疑応答という形で進めます。そして、すべての方のお話、個別の質疑が終わりました後に、もう一度皆様にメインテーブルに着いていただきまして、全体の内容を踏まえて再度お伺いしたい事項など、質疑応答を行いたいと思います。そういうことでヒアリングを進めたいと思います。はじめにお話いただくのは、近藤恵子様です。事務局から簡単にご紹介をお願いします。
○西川職業病認定業務第一係長 事務局から紹介をします。お一人目は、北海道ウィメンズ・ユニオン書記長の近藤恵子様です。近藤様は労働組合に所属されて、セクシュアルハラスメントを受けて精神障害を発病された労働者の方に対する支援活動を多数行っておられます。近藤様、よろしくお願いします。
○近藤参考人 北海道ウィメンズ・ユニオンの近藤です。どうぞよろしくお願いします。私は、最初にセクシュアルハラスメントの労災認定が認定されなかった、そういうケースについて不支給処分の取消訴訟を行っています原告の、肉声をまず皆様に聞いていただきたいと思います。
(テープ開始)
 私がセクハラ被害に遭ったのは2004年です。2011年の現在も心療内科へ通院しています。退職後に労基署に行きましたが、セクハラ労災認定の難しさを担当職員の説明で知りました。セクハラは心理的負荷評価表で「II」であること、セクハラは事実だけでは労災認定は難しいという説明でした。
 私が上司からセクハラ被害を受けたときのショックは、忘れられません。同時に、明日からどんなふうに接したらいいんだろうと戸惑いました。直ちに声を上げることもできませんでした。生活があるからです。派遣社員という立場から、会社でもめごとを起こすことで解雇されるのではないかという不安がありました。
 私が取った行動は、機嫌を損ねないように立居振舞うことでした。相談できる同僚がいましたので、同僚も2人きりにならないように気を配ってくれましたが、毎日隙を見せないようにすることで身を守り、それがうまくいかなければ、次第に私に隙があったからだと自分を責めていきました。
 私の変化に気づいた同僚が、心療内科に受診するように勧めてきました。被害を受けた半年後です。医師は男性で、セクハラの事実を伝えることに抵抗があり、いまの体の状態を訴えるのが精一杯でした。
 それからもセクハラ行為は続き、思いどおりにいかないことで嫌がらせが始まりました。業務にも支障が出始め、私はやりがいを感じていた仕事ではありましたが、上司から距離を置くことで自分の身を守ろうと考え、それまでの部署を離れました。派遣元にはじめて相談したのもこの時期でしたが、何の対応もしてくれませんでした。
 加害者から距離を置くことで少しは精神的に楽になるのではないかと思っていましたが、内線で呼び出されたり、内線に出ないと私の席に来るなどの行為が続きました。次第に特徴的な加害者の大きな足音を聞くだけで体が震え、ますます追い詰められていきました。派遣先の組合にも相談しましたが、「酒の席に付き合わされているのも知っているし、あいつは女性関係で2、3度注意されたこともある」と理解は示しながらも、何の対応もされませんでした。
 そのころの私は、会社に向かい、駐車場に車を止めても車から出ることができず、そのまま病院に行き、点滴をし、会社に通勤をすることさえ困難になっていました。また、家計を支えていましたので、家族に心配をかけないように、朝出勤するように見せかけ、終業時間までデパートの駐車場に車を止め、車の中で体を休めていました。音楽は好きだった私が、音のない時間を求めていました。テレビの音も耳に障り、部屋の照明も目に差し込み、吐き気がしました。本を読むことさえできなくなりました。仕事にもますます集中できなくなっていきました。そしてある時、帰宅をしてバッグを開けると、ナイフとロープが入っていました。夢の一部分のように、うっすらと店内でその商品を見ていた記憶はありますが、バッグを開けるまで買ったことに気づきませんでした。
 私は限界を感じ、セクハラを受けてから2年半後に退職を決意しました。セクハラの相談窓口が設置されたのは、私が退職する半年ほど前だったと記憶していますが、フリーダイヤルが記載されたカードが配られただけで、何の説明もなく、自分のプライバシーがどこまで守られるのか不安で利用しようとは思いませんでした。
 会社を辞めたことですべてが解決するわけではなく、男性との接触ができなくなっていきました。買物もままならず、売場近くに、駐車スペースに車を止め、短時間で店を出られるようにしていました。店内の照明で目まいがしました。乖離、自傷行為、OD・摂食障害を経験しました。目を覚ますと腕がヒリヒリする。見ると切っている。目を覚ますと、買った記憶のないコンビニ弁当の空があるという毎日でした。
 セクハラによって退職を余儀なくされ、何とか生活を維持するために週に1日程度短時間の仕事をしても、安定剤なしでは働けず、帰宅すると極度な疲労感と目まい、激しい乗物酔いのような状態になり、倒れ込み、気がつくと2、3時間経過していたことも度々でした。病院では入院も検討していましたが、女性病棟がなく、あったとしても男性の看護師がいることから、通院治療が続きました。生活保護を勧められました。
 平成17年に労災申請を行いましたが、請求人の疾病は業務上の事由によるものとは認められないとして、棄却されました。棄却理由として、発症前「おおむね6カ月」間における恒常的な長時間労働など、過重な労働実態が認められない、職場にはセクハラ相談窓口が設置され、請求人から相談はないまでも、その実績からシステムとして機能し、支援できる体制であったものと判断され、加えて同僚も上司の請求人に対する当該行為をたしなめる等を行っていることから、出来事に伴う変化等は過重とは認められないという内容でした。
 発症前、おおむね6カ月の出来事に限定し、判断基準とされてしまったことで、発症後のセクハラやパワハラ、雇用主に相談しているにもかかわらず対応してもらえなかった事実は、バッサリと切り捨てられています。退職に至るまでの経緯を見なければ、その実態を把握することはできません。また、同僚が加害者をたしなめた行為は、そこにセクハラがあった事実の証明にしか過ぎず、棄却理由に挙げられたことに疑問を感じます。
 そして、申請に当たって家族は呼ばれ、私の成育歴についての聴き取りが行われたことについて、なぜ聴き取りが必要だったのでしょうか。私自身に原因があったことを探るのではなく、セクハラによって通院を余儀なくさせ、働けなくなった現状をもって判断すべきであると考えます。
 就労することもままならない中、生活を維持することができない現状の中で焦り、「明日からどうやって生活していこう」という言葉が幾度も日記に残されています。この事実をもっても労災が認定されないというのは、認定基準の根幹に問題があるのではないでしょうか。セクハラは性暴力であるという認識、併せてその出来事によってもたらす精神的ダメージの理解がなされ、認定基準の見直しがなされることを心から望みます。
(テープ終了)
○近藤参考人 いま聞いていただきましたのが、セクシュアルハラスメントの犯罪実態によって大変重い後遺症を抱えて、いまなお悪戦苦闘している当事者の肉声です。私は20年近くセクシュアルハラスメントを主に主訴としてやってくるたくさんの女性労働者の方々とのお付合いを重ねてまいりましたが、セクシュアルハラスメントという職場の性暴力犯罪、労働災害に、この社会の認識があまりに薄いということに大きな憤りを感じてまいりました。
 平成21年度の男女雇用機会均等法の施行状況を見ますと、均等室に持ち込まれた相談というのは、セクハラが最も多いのです。1万1,000件を超えて51%、半分以上がセクハラの相談になっています。しかし、具体的な紛争解決に導かれたものは、たった58件でした。ここでもセクシュアルハラスメントの相談は多いのに、その解決と実態の間に大きな乖離があることがわかります。
 また、私が所属しております働く女性の全国センターで、5日、10日、15日とホットラインを実施しておりますが、2007年7月から半年間、この間でも持ち込まれた相談の最も多かったのがセクシュアルハラスメントです。また、私が日常的な活動をしております北海道ウィメンズ・ユニオンは、これは女性の人権ネットワークの一部として仕事をしておりますが、さまざまな性暴力被害に遭われた当事者の中で、セクシュアルハラスメントによって職場を奪われた方々がたくさんおいでになります。
 こうした方々は、勤め続けられない、即座に生活困窮者となる、職場を追われたことによって、適切な回復支援が受けられないことによって、ますます症状が悪化する。具体的な交渉や裁判に取り組んでも、時間やたくさんの労力がかかることに加えて、和解交渉とか判決の内容によっては、セクシュアルハラスメントによって奪われた対価としての補償額があまりに低額過ぎる。結局、職場の労働災害によって、当事者は労働権を奪われる。生活権を奪われる。時には生存権さえ脅かされる。たくさんの方々がリストカットを続けたり、自死を試みたり、時には実際に亡くなった方もおいでになります。
 こういう大きな労働災害としてのセクシュアルハラスメントについて、なぜこれまで労災認定がここまでされなかったのか、ということを私たちは当事者と一緒に考えてまいりました。
 1つは、労働災害としての認識が決定的に欠如しているということがあるだろうと思います。単なる人間関係のもつれだとか、男女関係のもつれだとか、あるいは人間関係のトラブルだとか、そういった問題で片づけられてまいりました。
 しかし、先ほど申し上げましたように、職場で起こるセクシュアルハラスメントの相談件数がかなり多いという実態がありながら、この分科会でもご報告されておりますように、これまでセクシュアルハラスメントの被害が労災認定されたケースはたったの61件で、そのうち業務上ということで認定されたのはただの22件です。ほとんどセクシュアルハラスメントによる労災申請は通らない、というのがこの社会の現状になっているのではないかと思います。
 例えば、ドアにぶつけて小指を折った、あるいは通勤途上で階段から足を滑らせて転んで足首を捻挫した、それで職場に行けなくなったら、即時に労災が執行されます。保険金が下ります。
 しかし、セクシュアルハラスメントについては、例えば労基署に手続きに行ったとする。これは実際にあったケースですが、最初に相談をしても、労災申請の書類さえ渡されなかったそうです。その方は3回基準監督署に足を運びました。ようやく書類を手に入れて、苦しい事実経過を思い出して診断書やさまざまな書類を整備して持っていった。なかなか相談を受け付けてもらえない。やっと「期日」が決まって出かけていくと、個室に労基署の職員が5人並んでいる。こちらはたった1人です。その上細かな必要と思われない事情聴取のような質問を何と3時間も4時間も繰り返されて、最後、その方は意識が朦朧となって、もうどうなってもいい、一刻も早くこの場から帰りたいというふうに思ったそうです。その方は労災申請をしましたが、却下されました。却下されたあと、その当事者の方は、「再審査請求をする気力も何も残っていなかった」とおっしゃっています。
 たくさんのセクシュアルハラスメントの被害者が職場を追われ、職場に行けなくなって、基準監督署の門を叩いていますが、最初の手続きの段階でいわば水際で追い帰される。継続的に申請をする意欲を削がれる。さらに、そこで二次被害、三次被害を加えられる。これでは理不尽な被害に遭った当事者が、どこまで行っても救われないということになります。
 そういう第1次関係機関での被害に加えて、実際には労働基準監督署、労働局、中央審査会といった流れの中で、当事者が救済される可能性というのは、だんだん狭くなるというのが現状です。こういった不十分な対応と「二次加害」ともいわれる事態を、何としても無くしていただかなければ、当事者は命さえ脅かされる毎日の中で苦しみ続けていかなければなりません。
 私たちは、セクシュアルハラスメントは労働災害である、職場で起こる性暴力犯罪である、これは重大な人権侵害なのだという認識を、この社会に徹底させていただきたいと思います。これまでたくさんの方が入口のところで門戸を閉ざされ、さらに、申請をしてもさまざまな理由で棄却された背景には、こういった問題があると思っています。
 私は、この分科会が成立したことをとても大きな喜びとしています。この分科会で是非取り組んでいただきたいことは、毎日毎日、自分の命を断とうとすら思って、今日この時間を生き延びているたくさんのセクシュアルハラスメントの被害者のために、どういう被害実態があるのかの全国調査をしていただきたい。詳細な、つぶさな実態調査をしていただきたいと思います。その上で、全国何箇所かセクシュアルハラスメントの申請に専門化されたチームを持った労基署を、是非つくっていただけないかと思うのです。おそらくこの分科会がいろいろな検討を加えられて、新たなセクシュアルハラスメントの判断基準や指針がつくられるとしても、もう少し時間がたぶんかかるだろうと思います。しかし、当事者の方は今日、明日の問題に困っていらっしゃるわけですから、いくつかの労基署に、ここに行けばセクシュアルハラスメントの労災認定がすぐできるという部門を是非つくっていただいて、専門の職員を配置していただけないものかと思います。
 また、これまでセクシュアルハラスメントの労災認定にかかわって使われてきたストレス脆弱性理論というものが、実は当事者を大変追い詰めてまいりました。当事者がなぜこの出来事によってこれだけの被害、あるいは精神的な症状を発しているのかを根拠づけるために、例えば過去の性暴力被害がなかったかとか、家庭環境がどうだったかとか、そういったことをかなり細かく調査されるわけですが、これは私は百害あって一利無しの調査だと思います。
 当事者の方々は、たまたま就労した職場の中でたまたま加害者との関係で被害に遭っているわけですから、その被害、災害によって起こっている現状、現実、症状の実態こそ、つぶさに判断していただきたいと思うのです。実際に就労ができなくなっている状況こそを、判断基準にしていただきたいと思います。そうでなければ理不尽な被害を受けた当事者が、根掘り葉掘り、この人はどういう資質の者で、どういう病気をして、家族関係はどうでという被害者の側にその原因を求められるのは、言語道断のやり方だと思います。
 例えば、性暴力犯罪の被害者が裁判を受けるときに、欧米ではレイプシールド法という法律があって、過去の性体験を問うてはならないという原則があります。私は、セクシュアルハラスメントの労災の認定基準の中にも、例えばセクハラシールドといった基準をつくっていただいて、過去のさまざまな出来事に言及したりして当事者を追い詰めるのではなくて、いまそこにある被害の実態から労災の認定をきちんと判断していただくという仕組みを、是非ここでつくっていただきたいと思っています。
 そういう全国調査とか、労働基準監督署の窓口の専門化といったことに加えて、ここを通じて新たな判断基準ができるまでの間、いまここで命を脅かされているたくさんの当事者のための緊急の回復支援策を、何としても講じていただけますように、心からお願いをいたします。いま声を上げたくても上げられない、あるいは声を上げたけれどもつぶされてしまったというたくさんの当事者の声を、本当は一人ひとりの声を皆様に聞いていただきたいと私は心から思いますが、改めて当事者とともに新たな基準をつくっていただけますことをお願いします。
○山口座長 ありがとうございました。質疑に移りたいと思います。ただいま近藤様のお話に対してご質問、ご意見がありましたら、どうぞ。
○戒能先生 大変参考になったと思います。最後のほうに取り組んでほしいことということで、主に3点おっしゃったと思うのですが、いちばん最初に被害実態の全国調査ということをおっしゃって、被害実態に即した基準づくりということをおっしゃっていらしたと思うのです。いままでの近藤さんの支援をなさっている経験から、あるいはほかの例、被害者の方をずうっとご覧になってきた経験から、基準のどの辺がいちばん問題かというところを少しお話いただければと思います。
○近藤参考人 私たちがいちばん判断基準で問題だと思っておりますのは、精神的な負荷の強度が「II」というところに規定されていることが、いちばん大きな問題だと思います。ほかのさまざまな要素と比較しても、セクシュアルハラスメントの精神的負荷は私は強度「III」で当然だと思っており、実際に被害を受けた方々がどういう状態になられるかを考えると、例えば私どもが対応したある方は、多重人格障害を起こされたのです。実際に私どものウィメンズ・ユニオンの相談室においでになって、私たちも交渉を重ねたり、裁判に取り組んだりするときに、その方がどういう被害に遭われたのか、どういうところで苦しんでおられるのか、いろいろ細かくお話を伺いますが、そのお話をしている最中に彼女は加害者の男性になるのです。それで加害者の男性の声色や表情になって、彼女が痛めつけられた言葉そのものを加害者になりきって表現されるのです。
 そういう状態がしばらく続いて、それから彼女は、自分を貶めた相手、自分を強姦した相手、それからそういった訴えをしていっても取り合わなかった上司の名前などをいちいち叫び続けながら、何々を許さない、何々をしたことを覚えているぞみたいなふうに、大変な状況になり、そのあとまたふっと元のご本人に戻られるのですが、そういう厳しい人の心の壊れ方というか、そういう状況にいつも対応しています。
 その方は女性専用のマンションに引っ越しせざるを得なくなりました。つまり、加害者と似た男性とは、恐ろしくて路上でなかなか行き交うこともできない。もちろん、元あった会社に行く電車やバス等の公共機関を使うこともできない。会社の同僚と一緒に行った中華料理店のチェーンに入ることもできない。時には、弁護士さんの事務所に行く道筋が一時的な記憶喪失になってわからなくなってしまう。
 そういう重い症状を彼女だけではなくて、たくさんの当事者の方々が発症されるわけです。しかし、彼女たちは明日の仕事を奪われる。明日の仕事を無くすことができないので、我慢して我慢して会社に通い続けるわけです。時には、以前よりももっと朗らかな様子で意欲的に快活に仕事に取り組む方も中にはいます。けれども、それはいつか限界が来てできなくなってしまうわけです。それが人によっては8カ月だったり、1年半だったり、2年だったりするわけですが、発症した日を診療、病院に行った日と考えて、その以前の6カ月間にそういった出来事があったかなかったかと判断される6カ月という時間の設定の仕方も、セクシュアルハラスメントの被害者にとっては現実的ではないと思います。何年もかかってようやく病院に行く。病院に行ったけれども、セクシュアルハラスメントの被害を訴えられるのは少数の方々です。ようやく言えるようになったら、もう何年も経っていたという方もいます。最初はうつ病の診断になっている。物事との因果関係がなかなかあとから立証できにくい状況に置かれる。
 そういう女性労働者が置かれている現状と、セクシュアルハラスメントを労働災害と認識しないこの社会のあり様の中で、当事者がそのような形になることを考えると、セクシュアルハラスメントの精神的負荷の強度は、最初から最強のものというふうに基準を差し替えていただきたいと思います。
○水島先生 本日はお話をありがとうございました。いま被害の実態調査に関してお話を伺いたいのですが、私どもは被害者の方に被害のお話を伺うことについてはどうしても躊躇してしまって、あまりこういうことを聞いてはいけないのではないかと思ってしまうのですが、例えばこういう調査を行う場合にはどのような方法で、あるいはどのようなことに注意して行えばよいかということのお考えを、お聞かせいただけますか。
○近藤参考人 私はできるだけ当事者のヒアリングを中心にした実態調査をやっていただきたいと思いますが、それはなかなか難しいこともありますので、いま全国に女性のウィメンズ・ユニオンとか、性暴力被害を支える民間の女性支援団体等も多数ありますので、そういった支援者とともに安全な場所で当事者がきちんと語りをできるような、そういうところでヒアリングをしていただくことと、それから過去の性暴力被害やセクシュアルハラスメントについて、文書だと書けるという方もおいでになりますので、そういったものを集めていただくとか、全国実態調査をするときにも、当事者、支援者がこういう形でやってほしいという要望を取り入れていただいて、新しい調査方法を是非工夫していただきたいと思います。
○黒木先生 性被害の内容をご本人がお話するのは、なかなか大変なことだと思うのです。しかし、精神疾患に罹患したという場合には、どういう内容の性的な被害を受けたのかという基本的な最初のいちばんの部分がないと、これによって発症要因の1つとしてこの行為があったと、あるいはこの行為によって起こったということは、医学的にはなかなか判断しづらいこともあるのです。何かこの事例についてでもいいのですが、もしお話ができるようであれば、どういう、いろいろなレベルがあると思うのです。レベルというか、どういうところをいちばん考えておられるのかをお話していただけますか。
○近藤参考人 私どももよく質問されることですが、どこからどこまでがセクハラなのだとよく質問されることがあるのですが、セクシュアルハラスメント、例えば強姦されたからこの程度の心身の状態が発症するとか、何度こういうことが起こったからこうなる、という問題では決してないと私どもは思っているのです。
 実際に女性労働者が重い精神疾患になってしまうケースは、例えばアルバイトだったり派遣だったり非正規の不安定な身分の中で、たとえ安い賃金であっても、その賃金無しには明日の生活は支えられないという方々が、我慢に我慢を重ねてセクシュアルハラスメントと闘うというのでしょうか、そこのところが被害の深刻さをますます加速させていくのです。
 ですから、いまのご質問は私どもはなかなか詳しく説明しにくいところですが、それこそどのようなセクシュアルハラスメントの行為があったかということと、そのことによってどのような心身の症状が発症しているかということを、ご本人の状況をきちんと聞いていただければ、それは自ずとわかることだと思います。
 それから、当事者の方は相談窓口に行っても病院に行っても、辱めを受けたとか、ひどい性暴力被害を受けたということを、なかなか口は開けないものなのです。ですから、ご本人がこういうことがあっていまこのようにつらいという訴えがあったら、それがセクシュアルハラスメントの事実なのだというふうに受け止めていただく、そういう受け止め方がまず何よりも大事ではないかと思います。私たちは、いつも当事者がそこにいることが最大の証拠であると考えています。
○黒木先生 ご本人が話された、それをどう掬い上げるか、どう聞いていくかと、それは非常に大事だと思うのです。だから、例えば男性の医師には話しづらいとか、女性であれば話しやすいとか、そこの実態はどういう事実があったかと、ここはいちばん基本的なところだと思いますので、なかなか難しいと思います。
○近藤参考人 どうぞよろしくお願いします。
○山口座長 加茂先生、何かありますか。
○加茂先生 聴取の段階では二次被害と三次被害のお話が先ほどあったのですが、私たちとしてもいちばん気になるところですが、具体的にどういった、そういった調査官による被害というか二次被害、三次被害があるのかということと、もう1つは、先ほどセクハラシールドというお話をされましたが、具体的にはどういうことをお考えになっているのかをお聞かせください。
○近藤参考人 最初のどういう二次被害、三次被害があるかというのは、本当に山ほどあるのですが、私たちが一緒に闘ったあるケースでは、これは札幌の労基署で実際にあったことですが、こちらのほうがたくさんそういうケースを持っているので、労基署で申請の手続きをして、いろいろな事情聴取というとおかしいですが、いろいろな背景を聞かれるわけですが、そのときに女性の監督官、女性の職員に対応していただくようにお願いしたのです。それから、ウィメンズ・ユニオンのスタッフが必ず同席してその手続きを一緒に進めることを約束していただいたのです。
 しかし、私どもとしてはそういう最大限の配慮をしていただいたと思った席でも、女性の職員の方が「そういうときだったら、私だったら必ず逃げるわね」とか、「なぜそのとき声を上げられなかったのか」とか、「そういう職場に、よく毎日毎日通うことができたわね」というふうに大変な発言が続くのです。私たちはそれを途中で制止しなければなりませんでした。
 なぜそういう発言が続くのかというのは、セクシュアルハラスメントがどういう犯罪であって、セクシュアルハラスメントが起こったときに、被害者がどういう心理状態に置かれて、どういう対応をせざるを得ないかについて、事情を聞く側の職員の方々があまりに認識が薄いというか、そういった研修が十分にされていないということだと思いました。
 ですから、わざわざ女性の職員の方をお願いしても、結果的にはひどい目に遭ってしまったということがありますので、これが男性の職員の方であれば、当たり前のように「そんな職場は一日も早く辞めるべきだね」とおっしゃったり、「早く辞めなかったからここまでつらい目に遭ったのではないか」とか、「あなたは、もともとそういう傾向があって統合失調症になったのでしょう」みたいなことを本当に配慮なくおっしゃいますから、それは本当にテープを全部とっておいてお聞かせしたいぐらいのことですが、それは実際にそういう手続きに立ち会った者しか、それから当事者の方しかわからないことかもしれませんが、そういう被害は山ほどあります。
○加茂先生 実際に事情聴取をする調査官に、特別な教育とか研修をする必要があるとお考えですか。
○近藤参考人 はい。私はたまたまセクハラシールドと申し上げましたが、過去の成育歴、家族環境、ボーイフレンドがいたかどうか、妊娠の経験があるか、時には処女かどうかみたいなことまで問い質されるのは、私は重大な人権侵害だと思います。そういうことが実際にセクシュアルハラスメントの労災認定をするのに必要かどうかというのは、絶対に不要だと私は思いますが、「それを調べなくてはいけない」と労基署の方々はおっしゃるのです。つまり、その人がもともと持っていた資質や脆弱性ということだと思いますが、頑健な人であれ、感受性の強い人であれ、事態が起こったことによって引き起こされた症状について、厳密に判断をすべきだと私は思います。聞いていけないことは決めるべきだと私は思っています。
○黒木先生 いろいろな相談を受けられていると思うのですが、内容によってご本人のこの内容は、レベルといいますか、その辺はご自分ではいかがですか、その感じ方とかですね。
○近藤参考人 それはもしかすると、例えば同じタッチでも、ものすごく嫌に思う人とそうでない人がいるかもしれません。けれども、私たちはそういう個人的な差といいますか、そういうことではなくて、ある人がある時ある状況の中で、加害者から行われた言動によってどういう被害を受けたかということが重要だと私は思っています。
○黒木先生 ある人にはそれほどでもなくても、この人には非常にショックであったということであれば、そのショックであることを追求しなければいけないということですね。
○近藤参考人 そうです。それはあり得ると思うのですが、実際にショックを受けた側の認定を考えていただかないと、個人個人の。だから、客観的な判断基準といわれるのは、私は当たらないと思うのです。一般的に客観的な判断でもって、精神的な負荷が確かに重い低いと考えなくてはいけないといういままでの物差しで、いろいろな付随する周辺状況などについても、たぶん細かい聴き取りがあったのだと思いますが、それはさらに当事者の症状を重くするばかりだと私は思います。
○黒木先生 そうすると、ご本人が軽いものであっても、あくまでも被害者の立場に立って労災認定はされるべきであると言われるのでしょうか。
○近藤参考人 そうです。軽い重いということをおっしゃるのは私もよくわかりませんが、当事者がいまどういう状況になっているかに焦点を合わせていただければいいと思うのです。
○黒木先生 軽い重いというのは言い方が難しいですが、例えば言葉は何かを言ったかもしれないが、タッチはしてないということでも、それをすごく捉えてしまうということもありますよね。
○近藤参考人 それはあります。日常的な性的な言動があって、例えば「お前なんかは、代わりはいくらでもいるんだから」と、いまのテープの方もそうですが、「派遣社員なんかいくらでも代わりがいる。お前の代わりなんかいくらでもいる。好きにしてやる」と言われたら、そのことが本当に決定的なダメージになることはありますから。
○黒木先生 それは、そのことをもって本人が非常にショックを受けた、ということでやはり認めるべきであるということでしょうか。
○近藤参考人 そうです。つまり彼女は、相手のそういった言動がなければ、健康な労働者として仕事を進めることができたわけですから。
○山口座長 ほかにありませんか。私も実は伺いたい点があるのですが、また最後に皆様ご一緒になって伺う機会があると思います。近藤様への質疑はこの辺でということにします。どうもありがとうございました。
 次に、井上摩耶子様からお話を伺います。事務局から簡単にご紹介をお願いします。
○西川職業病認定業務第一係長 事務局からご紹介をさせていただきます。お二人目はウィメンズカウンセリング京都の代表をしておられます、井上摩耶子様でいらっしゃいます。井上様はカウンセラーとして、セクシュアルハラスメントですとか、性暴力、ドメスティックバイオレンスなどの被害に遭われた女性のカウンセリングの活動をしておられます。それでは井上様、よろしくお願いいたします。
○井上参考人 ウィメンズカウンセリング京都の井上摩耶子です。私は16、17年前から、裁判で性暴力被害者の意見書を書いたり、専門家証言をしてきました。今日は「セクハラ強姦」は、そういう意味ではいちばん重いものであり、そういう被害が意外と多いんだ、というお話をしたいと思います。加害者はみんな目撃者がいない所を選んで性暴力をふるう。証拠もない。だからこそ真相はどうなのかが裁判でもなかなか明らかにならない。それで、私は被害当事者の話を聞いて意見書を書いたりしているのです。そういう体験からお話をしたいと思って来ました。
 セクハラ強姦というのは、セクハラでいちばん厳しい被害だと思います。でも、強姦に至らなくても、触られたり、暴言を吐かれたりすることでもPTSDといった深い傷を負うこともあるので、そこら辺は一人ひとりの被害の状態や程度をきちんと理解してほしいと思います。ここでは、意外とセクハラ強姦はよくあることなんだということを知ってほしいと思います。レジュメに沿って説明します。
 セクハラ強姦は、対人関係トラブルに一応分類されていますけれども、そうではなくて、①の「事故や災害の体験」という出来事の類型に入るのではないかと思います。ICD-10とか、DSMの基準からも、強姦というのはA基準を満たしている、いちばん厳しいところに分類されていると思うのですが、そこが理解されていない。「顔見知りによる強姦」、英語ではacquaintance rapeで、これは刑事事件でも強姦ということなのだけれども、「顔見知り」であるが故にそこが理解されていない犯罪なのです。顔見知りの関係における「合意のない性行為」というのが「顔見知りの強姦」なのですが、顔見知りなもので、必ず相手側は合意があったと主張します。被害者とともに裁判を闘ってきて思うことは、「合意」ということに対する社会文化的、法的な合意が未だないということです。それがないことが問題で、合意というところでいつも裁判がめちゃくちゃになってしまう。まず「合意とは何か」という判断、定義をつくるべきだと思っています。相手側が顔見知りで、上司や尊敬する指導教授であったりする場合、そういう人が「合意の上での性行為だった」と主張すると、それを覆すことはすごく難しいのですね。しかし、強姦の80〜90%は顔見知りの強姦です。これはアメリカでははっきり統計が出ていますし、日本ではまだ大がかりな調査はないけれども、たぶんそうだろうと私は思っています。セクハラ強姦というのは均等法のセクハラ指針を見ると、やはり「対価型セクハラ」という呼び名しかないのだろうと思いますけれども、私はなかなかそんなところに納まらない被害だと考えているのです。結局、対価型セクハラの定義というのは、職場における労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応によって、解雇、降格、減給等の不利益を受けることになること、それが対価型のセクハラで、環境型セクハラとは違うのだという定義です。しかし、労働者の対応として、「拒否した」「抵抗した」「抗議した」という行為があって、それ故に雇い主が解雇し、降格した。それが「対価型セクハラ」だというように読めますけれども、これは被害者が「拒否したり、抵抗したり、抗議できる」という前提の上での定義です。でも、今日私がお話したいのは、被害者が一切そういう行為をとることなしに、セクハラ強姦は起こってしまうのだということです。
 もう1つ強姦というのは、基本的自己決定権、「性的自己決定権」の侵害という特徴をもっているので、暴力によって、殴られた、蹴られた、骨が折れたということとは決定的に違う性格をもつ暴力なのです。ASDとかPTSDといった精神障害のほかに、もう男性が恐くて結婚ができないとか、セックスができないという状態に陥ります。かなり以前に事件が起こって、今もなおそういう状態のままという人がいます。ある意味、一生涯にわたる、長期にわたる心の傷を与える。また、日本にはいられないといって外国に出て行った人もいます。日本語をしゃべると、そのことを日本語で思い出すので、フラッシュバックが起きる。アメリカとか、外国に行ったときに忘れることができたと言って、2人の被害当事者が国外に出て行かれました。
 そのようなセクハラ強姦の事例を簡単に話します。会ったその日にも強姦ってされちゃうものなのですよ。これは単回の一回限りのケースです。これは中学校での事件です。先輩教師から後輩教師へのセクハラ強姦です。この人は子どもが産まれて、育児休業を取っていたのですが、復帰後の同僚との関係などを相談したかった。上司が「相談に乗るよ」と言ったので、飲みに行った。ものすごく飲まされて、その日のうちにホテルに連れて行かれて強姦されたのですね。朝方の6時ごろになって、夫からの携帯電話でやっと逃げることができた。しかし、明日からまた職場で会うので、彼女は別れるときに、「ではまた明日、よろしくお願いします」というような別れ方をした。セクハラの場合は、強姦されても明日も働き続けるということが絶対的な第一条件なので、明日も顔を会わすことになる加害者との関係を壊さないようにしようとして、「あなた一体私に何をしたの!」などと抗議できないのですね。そういう別れ方をした。朝方に帰宅し、その日はすぐに床についた。もちろん眠れなかったのですが。次の日、あまりにおかしい彼女の様子に、夫が「どうしたの?」と尋ね、彼女は直ぐに夫に事件を打ち明けることができました。ASD(急性ストレス障害)を発症して、精神科にも行きました。この人は30代の女性です。
 2つ目は上司から試用期間中の女性会社員へのセクハラ強姦です。試用期間中で、その女性新入社員が、「5時(定時)でみんな帰りましょう」という週間中に、先輩と一緒に食事会をして、自分のことを話したり、相手のことを知ったりして、早く職場に馴染みたいと考えたのです。20代の若い女性でした。それで順番にみんなにアナウンスして、今日は彼と、明日は彼女というように、順番に上司や同僚と一緒に食事に行きました。ある日、ある上司が、食事のあとにお酒を飲みに行って、カラオケボックスに行って、そのままそこで彼女を強姦をしたのですね。これもあまりにもひどい状態で帰宅した彼女の様子を心配したお母さんの問いかけで、彼女は直ぐに事件を話すことができました。その後、以前軽いうつになったことがあって精神科を受診していたことがあったので、その精神科医に話すことができて、PTSDと診断されました。20代で、試用期間中で、調子が悪くなってしまって、会社を辞めてしまいました。今、セクハラ労災の申請をしようと、弁護士と相談しているところです。
 次は演劇塾の講師から女性塾生への強姦です。加害者(東京在住)が自分の出演している舞台、大阪公演を見に来るようにと誘いました。その日は、打ち上げだったのですごく遅い時間になってしまった。電車がなくなるという時間だったんですけど、最近の女性だから「まんが喫茶」でも泊まれると考えて、その旨、お母さんに電話で伝えました。「やっぱり先生に会いたい」ということになったのですね。先生が「自分の泊まっているホテルでしゃべろうよ」と言うので付いて行ったのですね。そこで直ぐに強姦されてしまいました。4カ月後に精神科医に話すことができて、PTSDだという診断をもらいました。彼女はバレリーナー志望で、仕事はバイトでした。バレリーナー志望で直ぐコンテストが近づいていて、それに受かったら、そこから進路が決まるというところだった。けれどもレイプされたので男性の踊り手と組めなくなったのですね。それでそのコンテストにも出場できず、バレーを諦めたままです。人生の進路が変わってしまうというケースです。これらは1回目に、会ったその日に強姦されたケースです。このようなケースがいっぱいあるのです。
 次は継続ケースです。セクハラ被害者は仕事を続けようとするので、セクハラ関係を続けようとしているわけでは全くないのですが、セクハラ被害が継続してしまうのですね。むしろ一般的には単回ではなく、継続するケースのほうが多いだろうと思います。先輩医師の後輩医師へのセクハラ強姦です。後輩医師の歓迎会で、先輩医師がまず飲み屋でワイセツ行為をして、どうしてもホテル行こうと彼女の腕を掴んで離さない。彼女は、「行けません」と断った。何度も断るけれども、どうしても腕を離してくれないので、「また今度」と言ってしまったのです。それでやっと先輩医師は腕を離してくれたので、家に帰りました。でも配属されたばかりの新任医師ですから、翌日もちゃんと病院へ行きました。翌日から、先輩医師のストーキングが始まりました。昨夜、「今度また」って言ったけど、「それはいつ?それはいつ?」と、ずっと付きまとわれました。電話も持たされているのですが、それで言われたり、昼休みに言われたり、病院ですから宿直室に呼ばれて言われたりしました。ついに1週間後に、「この日は、妻がいないから、温泉に行こう」としつこく誘われて、どうしても断れず、温泉に行きました。温泉に行ってもいろんなところをウロウロして彼のところへ近づかないようにしていたのですけれども、結局、強姦をされてしまいました。1年ぐらいずっとその関係を続けていました。ついに妊娠して、このときに妹にやっと話せたのですね。PTSDになりました。裁判も始めたのですが、本人尋問のときは、精神科に入院していて、そこから出廷しました。彼女は20代後半でしたけれども、やっぱり男性患者はもう診ることができなくなって、臨床医を辞めました。このセクハラ事件をちゃんと理解をして、元の大学に彼女を戻すことを援助してくれた先生がいたので、今は元の大学に戻ることができましたけれども、自分のキャリアは変わりました。
 次は高校の講師から非常勤の女性講師へのセクハラ強姦です。家まで送っていくよと彼の車に乗せられた。途中で触られたり、下半身にも手を入れられたりという強制ワイセツ行為がありました。彼女は非常勤で、彼は常勤の講師です。彼女は非常勤なので、「自分が次にまた契約されるかどうか」ということをすごく心配しており、そのためには、職場の中で問題を起こしたくないと思い、ハラッサーからの行為に我慢に我慢を重ねていました。結局3カ月後にしつこく迫られて強姦被害を受けました。これが継続したセクハラ強姦被害になり、10カ月も我慢をした後で、やっと同僚に言って、それから学校で問題になりました。PTSD的な症状がありました。
 ここから言えるのは、単回のセクハラ強姦で終わった被害者はみんな一人暮らしではなくて、家族がいたり夫がいたりして、被害を受けて帰って来るなり、「どうしたの?」と聞いてもらえたので打ち明けることができたのですね。でも、継続ケースは一人暮らしです。異変に気づいて尋ねてくれる人もいないので、打ち明けることができずに、「どうしよう、どうしよう」と眠れないままに明日がきて、翌日、加害者に会わなければならないのですよね。そのことは後でも説明しますけれども、そうなってしまうと、告発するということが、本当に遠のいてしまいます。
 次はセクハラ強姦事件を打ち明けることの困難ということです。誰に対してもセクハラ強姦を打ち明けることは難しい。抱きつかれたり、触られたり、性的なことを言われるセクハラも厳しい暴力ですけれども、強姦されたというのは、もうひとつ打ち明けにくい被害ですね。それでも、家族と同居していて、その関係が良好な場合には、打ち明けることができる。だけど、夫や母親に心配をかけたくないと、話せない場合も多い。一人暮らしの場合、電話などで誰かに、「今、こんなことになってしまった、強姦されたんだけど」などと話すことは稀ですね。職場の同僚や公的なセクハラ相談窓口に相談するなどというのは、もっとあとです。なぜなら、仕事を続けたいということが、彼女の優先順位の第1位だからです。そのためには、職場のみんなに知られたくない。なるべく穏便に自分の力でなんとか解決したいと思うので、被害が継続してしまうのです。
 または、尊敬する上司などからのセクハラ強姦は、被害当事者にとってもはっきりと強姦とは捉えられないことも多いです。何が起こったのかわからない。カウンセリングでいういわゆる「外傷ストーリーの再構築」を果たさなければ、セクハラ強姦だとは認識できない。事実から逃れないで、「それは強姦だったのだと、私は強姦を受けたのだ」というストーリーを、残念だけれども「私は強姦被害者なのだ」というストーリーを、きちんと自分でつくり上げるまでは、何が起こったかわからないのですよ。そういう場合には、被害者が誰にも打ち明けられていない場合には、強姦セクハラの唯一の証人は加害者だけなのです。そして、被害者は、次の日も次の日も、加害者に「あれは何だったのですか?」と尋ね続けることになるのです。でも加害者側にしたら、ここでセクハラ相談窓口に行かれたりしたらえらいことになる。自分が加害者として仕事を失うという危険性もあるので、被害者が相談に来たら、必ず再被害を与える。つまり、また強姦します。そうなると、1回目は加害者に難なく(被害者の落度ではなく)強姦されてしまったのだけれども、2回目は、自分から加害者のところに、「あれは何だったのですか?」と聞きに行って、そこで強姦されたとことになる。被害者は、自分から加害者に近づいて行って強姦されたのだから、「あなたもよかったのでしょう」「あなたの方から行ったのでしょう」と思われると思う。もう誰も自分のことをわかってくれるはずがないと思い、ここで「誰かに言う」という通路が閉ざされてしまう。自分から出掛けて行ったセクハラ強姦は継続することになり、誰かに打ち明けることはさらに困難になります。「見知らぬ男」に強姦されることも大変なことです。でも「それは強姦だ」と被害者にも直ぐにわかるけれど、尊敬する指導教授や、上司に強姦されたときには、「見知らぬ男」からの強姦被害よりも、ある意味複雑なトラウマ体験になるだろうと思います。 
 さらに、加害者よりも被害者側を責める「強姦神話」がある。「女のノーはイエスのサイン」「隙を見せた女が悪い」「嫌や、嫌やと言っているけれど、本当は強姦されたいのでしょう」「ちゃんとした女なら最後まで抵抗するはず」というような「強姦神話」を聞かされて育っているので、被害者自身も「強姦神話」を内面化しています。被害を受けたということで、自責感、罪悪感をもってしまう。「やっぱり私があそこでなぜもっと激しく抵抗しなかっのだろう」とか、「なぜ帰らなかったのか」と思う。帰れないんですけれどね。こうして自分を責めるので、「こんなこと打ち明けたら、みんなに責められるのではないか」と思ってしまい、まず人に言えなくなります。
 最後に、労災認定手続についてです。「発生前6カ月にあった出来事により判断」というのを聞いた途端に、「それは無理でしょう」と思いました。まず、セクハラ強姦を精神科医に話すことがすごく困難ですね。精神科医が男性であるときには恐いのですよね。なかなか地方ではまだ強姦によるPTSDの診断をできない先生もいます。遠くから関西の有名な男性精神科医に診察を受けに来た被害者がいました。私も先生を推薦して「大丈夫」と言っているのに、すごい恐いのですね。普通精神科はドアを閉めて話しますよね。でも彼女は、「ドアを開けておいてください」と言った。1対1でしゃべれないという感じで恐いのです。理解してもらえないだろうと思い、恥ずかしくて話せないと思うので、先ほどの近藤さんの話されたケースもそうですけれども、眠れないとか、うつっぽいとか、症状だけは話せるけれども、肝心なセクハラ事件のところが話せないのです。
 まだ強姦やセクハラやDVでPTSDを発症するということを知らない精神科医がいます。私は京都なのですが、ある大学病院の医者から事務所に電話がかかってきました。「性暴力被害によるPTSDだろうということだったけれども、あれは軽いうつだった。PTSDは、戦争か災害でしか起こらないということを理解しておくように」とインテークワーカーが説教されました。ちょっとびっくりするけれども、まだそういう人もいます。
 事件後、1年、1年以上も経った受診では、6カ月前の出来事での判断はできないのではないかなと思います。それから先ほどもちょっと言いましたが、単回の1回限りの事件ではなくて、継続した長期反復するセクハラ強姦被害の心理的負荷の評価というのは、いわゆる「複雑性PTSD」になるのではないかと思います。DSMでもまだ認められてはいませんけれども、DVとか、反復・継続した被害の場合には、単なるPTSDではなくて、もっと複雑になるのではないかということを言っているジュディス・ハーマンなどがいます。人格の深い部分が傷つく、あるいは対人関係が根こそぎ奪われるといった深い傷を受けます。
 それから長期化する場合には、被害者は加害者に対してやっぱり抵抗的になるのですね、被害を受けたくないので。だから加害者はセクハラに加えて報復的なパワーハラスメントを、学校の場合はアカハラといった多重被害を与えます。それからセクハラ相談をしたことによって仲間からトラブルメーカー扱いをされたり、関わり合いになりたくないと、仲間外れにされたりする。裁判での証言などを依頼すると、みんな引いてしまい味方は誰もいないという事態がよく起こります。告発したことによる孤立無援状態ですね。
 誰かに被害を打ち明けて、精神科を受診したあとに症状が劇的に悪化することがあります。抑圧し、忘れていたトラウマ体験がバーッと一気によみがえるためで、これはエクスポージャー療法(暴露療法)を始めた直後に症状がバーッと悪くなるのと同じようなメカニズムでしょうと思います。それからセクハラによって、先ほども出ていましたが、過去の性的虐待がよみがえる。セクハラ裁判の本人尋問の最中に解離していた養父からの近親姦を思い出して、ワーと泣き出したケースがありました。ついでに解離していたセクハラがもう1つの場所でも起こっていたのを思い出した。性暴力被害とは、なかなか複雑な被害だということが言いたいです。これで終わります。
○山口座長 どうもありがとうございました。質疑に移ります。ただいまの井上様のお話に対するご質問、ご意見等ございますか。
○黒木先生 ちょっと確認です。いろいろなたくさんの事例をどうもありがとうございました。この、温泉に呼び出されたという事例は、断りきれずに、2人になるということがわかっていて本人が呼び出されて被害に遭ったという理解でよろしいですか。
○井上参考人 そうですね。明日からも医者を続けたい。ものすごく意地悪もされているのです。新任の医師なのに、難しい患者を診察させたりして。そういうことで医者が続けられなくなるかもしれないという、脅しによってそうなりました。
○黒木先生 それから、被害後に何が起こったかわからないと言ったとのことですが、これは何か呆然として、本人が、自分の受けたことが認識できてなかったということでしょうか。○井上参考人 そういうことだけではなくて、信頼する指導教授とか、先輩医師とかが、そういうことをしたので、まさかそんなことをするはずがないと。人格的にも信頼している人なので、もしか愛によるものなのかと迷います。でもそんなはずはない、「合意」の話も何もなくて飛びかかってきたわけだから。でもこれをそのまま、あなたは強姦魔ですねとはどうしても言えない。何が起こったのだろうかと、一晩中考えてもやはりわからないという状態です。
○黒木先生 あと1つ。非常に専門的にカウンセリングされて、それから裁判とか、意見書も書かれると。これはご本人の話を聞いて、それから加害者と思われる人の、例えば主張とか、それも総合して判断されるのでしょうか。
○井上参考人 加害者には会えないので。裁判官は被害者側の被害者ストーリーと、加害者側のストーリーの信用性とか、迫真性を見て、どっちのストーリーが正しいかということを決めるのです。だから目撃者と証拠がないので、どの裁判も大変で、うまくいかないときもありますけれども、それしかできないのだろうと思います。
○黒木先生 井上様の場合には、その被害者の話を聞いての意見書を書かれるのですか。
○井上参考人 そうですね。
○戒能先生 ありがとうございました。職場や大学、学校などで、単回ケースも多いけれども、継続ケースが大変多いと。その継続ケースでもセクハラ強姦と呼ばれるものが非常に多い、影響も深刻だというお話を伺ったと思うのですが、継続的なケースの場合、先ほどのお話にあったような、2頁目のIVのところで、わからないので、その加害者に何か起こったのか尋ねるというようなことのお話があったのですが、そういう場合と、一見外側から見ると、付き合っている、それから恋愛関係にあると、本人も進んでそういう恋愛関係を続けているように見えるような事例というのがあるのではないかというように思うのですが、ちょっとそのことについて、お話しください。
○井上参考人 この中でも私たちは「迎合メール」と言っているのですけれど、「今日も先生に会えて嬉しかったです」とか、映画を見てその感想文を一生懸命に書いたりします。普通、強姦の加害者にやらないでしょうということをするのです。でもそうすることによって、毎日強姦されるのがちょっと減ったりする。継続している強姦被害を止められないので、ちょっとでも軽く済むようにと、ニコニコして相手の機嫌を取ると、毎日しつこく、無理強いされていたことが強いられないですむ。相手の機嫌を取るために、「迎合メール」を出したり、プレゼントをしたりするのですが、それはもう、裁判官が見ても、「プレゼントでしょう、あなたも好きなのでしょう、愛情からでしょう」となってしまう。違うのです、それは何とかして軽く、セクハラを止めたいという意思の現れなのです。
○戒能先生 そういう場合は、相談するまでに非常に時間がかかるということだと思うのですが、どういうことがきっかけになって相談したり、医者に行ったり、何かするのでしょうか。
○井上参考人 相談というのは、私にですか。
○戒能先生 ええ、例えばカウンセラーとか、それぞれいろいろな相談を。
○井上参考人 先ほどもその話が出ていましたけれども、私は意見書を書くために聞く、だから意見書を書くということは、「加害者はあなたとは全く違うことを言うから、本当にストーリーをきちんと全部言ってくれなければ駄目なのよ」と言います。私はあなたと一緒に、あなたのために聞くのだと言います。そこがあれば、人はしゃべるものなのです。冷ややかに何かしゃべってごらんではなくて、「セクハラ労災を掛けるために話を聞きますよ」と、その目的がはっきりしていれば、人は相手を信じて、もちろん信頼関係をつくってですけれども、しゃべるものです。何か野次馬みたいに聞いたのでは誰もそういう話はしないけれども、この人は私と一緒に、困っている私のために何かしてくれるのだと思えば全部を話すものだし、全部を話されたほうがストーリーはきちんと組み立てられます。
○黒木先生 相手に合わせるという、そのメールを出されると、それは相手の自分に対する被害を少なくするためにそういう相手に合わせるのだと言われるのでしょうか。その期間が、例えば半年とか、1年続いて、そこで自分が被害を受けたというように主張が変わる。これは主張が変わるということではないのですか。
○井上参考人 それは大体1年ぐらいがもうギリギリの線ですね。やっぱりすごく抑圧しているので眠れなかったり、先生(加害者)を本当は嫌だと思っているけれども、ニコニコしながら対応している。その神経が擦り切れますね。そうやって抑えて抑えて仕事のためにと頑張っているけれども、やっぱり普通の人間なので、1年ぐらいでもう駄目みたいになって、誰かに言おうかとなる。それと症状がすごく悪くなってしまうので、もうヘトヘトになって何も頭が回らないとかで、やっぱり言わなければね、となるのだと思います。
○黒木先生 そうするとその1年間というのは、ご本人の意思で動く、相手の加害者と思われる人に会いに行くということもあり得るわけですね。
○井上参考人 だって毎日職場で会うのですね、こういうケースは。
○黒木先生 職場だけではなくて。
○井上参考人 だからセックスなどをするときは、下宿に来たりするのを入れてしまうわけですね。
○黒木先生 それもすべて被害者は我慢していると。
○井上参考人 そうそう、そうです。
○山口座長 ほかの先生方、いかがですか。
○加茂先生 井上先生はそういう事例をたくさん持っていると思うのですけれども、いま迎合メールと、非常におもしろいひとつの典型を教えていただいたのですが、そのほかにも何か典型的なパターンというのはいくつかありますか。
○井上参考人 このごろはブログに被害を受けているということを自分で書く人がいます。そうすると、裁判でもあったのですが、わりに被害者を理解していた裁判官が、「何でこんなに恥ずかしいことを書くの?」と疑問に思う。しかし、その人は誰にも言えてないのです。だから不特定多数の誰か遠い所にいる人に書いて、「頑張ってね」と、返信が来たりする。そのことが励みになっている。意見書を書いていたので、ほかの若い人にも聞いたら、3人もやっているよと言っていました。でもそれから教育大でのこの前の事件みたいに、ネット上ですごいことになったりしたので、「それは止めたほうがいい」と言ったケースもありました。ネットに救いを求めるというのがありますね。
○加茂先生 あとは、初回の事件のあとの、一見恋愛に見えるような、疑似恋愛的な時期がありますよね。そういったケースもかなりパターン的に、1例だけではなく、2例3例と同じようなケースがあるということでしょうか。
○井上参考人 そうですね。疑似恋愛ではないです。勤め続けなければならない、あるいは、大学院レベルの人が多いけれども、博士号をもらうためにどうしてもここは我慢しなければというので、相手のところに行って、被害を受け続けているだけです。
○加茂先生 あともう1点は、セクハラは一般的に対価型と環境型に分けるけれども、このセクハラ強姦に関してはどうなのかというお話が冒頭にありましたけれども、これはまた別に、このセクハラの中でも対価型とか、環境型とは別にこういった項目を設けたほうがいいというようにお考えですか。
○井上参考人 そこはちょっとシステム的にどうしたらいいのか、まだ私にもわかりませんけれども、何か対価型という言葉では、このセクハラ強姦というのはとても表現できていないなと思います。
○加茂先生 ここで挙げていただいた事例などは、セクハラという言葉に入れてしまうと、ちょっと、何かもともとの。
○井上参考人 でしょう。でもやっぱり関係がセクハラ関係なので、そういうことなのです。私は意見書にはいちいち「セクハラ強姦」と書いています。だから普通の強姦事件みたいだけれども、強姦事件で毎日職場に行って被害を受け続けているのも変でしょう。だからものすごく複雑なことですよね。
○加茂先生 しかし、いくつかのパターンに類型化できる可能性はあるというお話ではありませんか。例えば迎合メールとか、一見恋愛に見える形とか。
○井上参考人 それはありますね。やはりすごく迎合していますよ。だからちょっと長くなるとドメスティックバイオレンスのケースに似てくる。マインドコントロールをされて、DV夫も脅しと餌で釣りますから。機嫌よくさせるために迎合すると、殴るのをちょっと減らすのと同じです、その辺のメカニズムは。
○山口座長 よろしいですか。どうもありがとうございました。またあとでお聞きすることもあるかと思います。
 次に大竹弥生様からお話を伺います。事務局のほうで簡単にご紹介をお願いいたします。
○西川職業病認定業務第一係長 ご紹介させていただきます。次は、財団法人横浜市男女共同参画推進協会で、男女の人権相談課にいらっしゃいます大竹弥生様です。大竹様は、横浜市から委託を受けておりますこちらの協会において、セクシュアルハラスメント、性別による差別等の相談を受け付けておられます。それでは、大竹様よろしくお願いいたします。
○大竹参考人 横浜市男女共同参画推進協会男女の人権相談課職員の大竹です。よろしくお願いいたします。私の資料は資料3です。1枚目の相談業務のチラシを通じ、私が行っている業務について簡単に説明させていただきます。
 チラシの行頭にありますように、これは横浜市男女共同参画推進条例に基づく相談制度ということで、私どもの協会が横浜市から受託しております。横浜市内において、市内在住、在学、在勤の方が、性差別の人権侵害があった場合に、横浜市長に申し出ることができる制度です。こういう制度ですので、主な相談内容はセクシュアルハラスメントや雇用上の男女差別を主として、さまざまな相談を受けております。私は、この中で事務局として、電話相談や関係者調査を行っております。
 出された申し出は、研究者や弁護士で構成している専門相談員会議で検討して進められていきます。チラシの左下に「相談の流れ」とありますが、まず、私のほうで相談者から電話相談を受け付けます。その後、相談者が市長への申し出を希望されたら、チラシの裏面にある「相談申出書」に記入して提出していただきます。申出書の内容を検討してこちらが受理しますと、専門相談員が相談者面談を行い、その面談内容については、専門相談員会議で検討し、関係者調査の必要があるとなった場合には関係者への調査を行います。そして、調査の中で関係者側に問題があると認められたときには、横浜市長の名をもって、相手方に対して指導・要請を行います。
 このような制度ですので、全国規模で行っているようなものでもなく、横浜市内という限られた地域の中で行っている制度です。本日は、この制度の運用を通じ、私が把握していることについて少し説明させていただきます。
 9頁の資料を基に説明させていただきます。こちらは、私どもの制度を利用した申出者、つまり被害者がその過程で直面するいくつかの状況を説明したものです。左側は対応の流れ、右側は各段階における被害者等の状況について補足したものです。
 流れのほうの図で、いちばん最初のところに「セクハラ被害の発生」とあります。この時点ですでに、被害者は被害を受けたことによる心身への大きなダメージを受けております。
 次は、「被害の発生」から矢印が二手に分かれています。このフローには書いてありませんけれども、「職場で適切に対応された場合」というのもあると思うのですが、あくまでこちらの申し出がされた場合の流れを示しておりますので、これは省いております。
 職場内で対応されなかったケースと、職場で対応されたけれども、そこの場所で二次被害を受けた場合に分かれると思います。この時点で、被害者は被害事実が相談した相手に理解されないことによる精神的な苦痛を受け心身へのダメージを受けます。
 被害に遭った方が、職場内で対応されなかった方は、その後すぐに外部機関へ相談するという相談行動をとる場合と、心身不調に陥って行動できない状態になる場合に分かれます。一方で、職場で対応されたけれども、二次被害を受けたという方も、同じように、すぐに外部機関に相談行動のとれる方と、そうではなくて、そこから心身不調に陥って行動できない状態になった方に分かれます。いずれの場合でも、すぐに相談行動がとれる人と、そうでない人がいるわけですが、どちらかというと私が相談を受けている限りでは、相談行動にすぐに移れない方がほとんどであると感じております。
 このように、心身不調になって、行動できない状態になると、数カ月経ってからやっと外部機関への相談行動を起こすことになっていきます。この時点では、被害に遭われた方が相談行動をとるまでに至っては、とても大きなエネルギーが必要であって、本人の心身の負担は非常に大きなものであると感じております。
 いままでご説明した中での時間の経過として、ここまでの間で大体1年ぐらいかかる方も稀ではなく、多いと思います。私どもの制度では、一応被害に遭われてから1年を限度、ボーダーラインとさせていただいております。それはなぜかというと、1年以上経過すると、こちらで調査を行った場合でも、さまざまな理由から事実認定の困難さが増すということもあり、一応こちらでは時間の制限として1年で区切らせていただいているのが実情です。実際には、被害に遭われた方は、職場で相談してから、外部への相談をしてみようと行動を起こすまでの間に1年かかる、1年経過する方が非常に多いのが現実だと思います。
 次は、被害について外部へ相談行動を起こそうと思い立って相談をするわけですが、今度はその時点で、自分自身が受けた被害、起こったこと、相談したいことを整理して相談する窓口に伝えることが非常に難しい状況に出食わします。右側に書いてあるように、申し出に至るまで、いかに被害者が困難な状況に置かれるかということが見られると思います。
 私のほうでまず電話相談を受けますが、電話相談の中でも、被害者が伝えたい内容をとりとめもなく、時系列にはならず、まとまらない状態で、非常に散漫とした状態でお話をしてきます。それを私のほうで聴き取り、こちらが逆に時系列に整理して、いままでの流れはこういうことでよろしいですかと整理してあげないとまとまらない状況が多いです。
 最近は被害の状況が非常に複雑化していて、先ほどのフロー図にもありましたように、単に被害に遭った、そこの時点ですぐ外部機関に相談するというのではなくて、散々職場内で相談をして対応を求めたけれども、あちらでも対応されず、こちらでも対応されずといった状態で、やっと外部に辿り着くという状態になります。その時点までの間にかなり状況として複雑化していることもあります。こちらが電話で相談を承るときにも、状況を聴き取るのが非常に大変だというのが最近の傾向です。
 なおかつ私どもの制度の場合は、申出書を提出していただくところからが、対応処理の開始となりますので、どうしても申出書に記入していただかなければならないということはあります。電話相談において、口頭で伝えようと思ってもまとまらない話を、本人が整理して文書で示すのは非常に難しい状況です。そういうこともあり、申出書の記入がなかなかはかどらず、これを記入するまでの間に1週間、2週間、はたまた1カ月とかかっている方も見受けられます。
 電話対応したり、申出書の記入を促す過程で、被害に遭われた方は心理的に非常に混乱されている状況が汲み取れます。その1つは興奮していて、とりとめもなく話すという症状、相談したいとは思ったけれども半ば放心状態のような形でボーッとして、ポツリポツリと小声で話をしていて、なかなか内容が聴き取りにくいという状況もあって、申出書の提出までに時間がかかるということも見受けられます。
 申出書が出された後で、私どものほうで必要と見られる場合には事実調査に動きます。事実調査の段階でも、また困難なことにぶつかります。セクハラの事案というのは物証がないことが多く、加えて関係者調査に辿り着いたとしても、行為をした相手が、自分がやった行為について認めないことが多くあります。
 その1つとして行為者が調査協力自体を拒否したり、行為事実を否定したり、行為事実を認めたとしても、被害者の同意の存在を主張して譲らないということ、それから密室で行われるため、被害者以外の証言者がいないことも多いということがあり、調べるこちら側に非常に困難なハードルがあります。
 その後、調査をして被害事実があったかどうかといった判断をするわけですが、下の矢印に進んで、被害事実の認定が行われて、指導・要請が必要と認められた場合、相手に指導・要請をするのですが、その後で職場環境や、被害者の処遇の改善が見られる場合もあれば、その一方で指導・要請したにもかかわらず、相変わらず職場環境が変わらず、処遇の悪化も見られる。これらについて、私どもの制度では追跡調査なども行っておらず、追跡して、その後またさらに指導を加えることもできないというのが実情です。
 一方で、先ほど申し上げたように、関係者が行為を認めないということもあり、被害事実の認定が不可であるといった場合には、当然のことながら職場環境や処遇の悪化を招いたり、改善されないといった状況が見られます。
 ここまでお話ししましたように、被害に遭われた方は、まず申し出をする段階までに、数々のハードルがあり、さらに事実調査を行った場合でも、結果が出るまでの過程で、被害者としてはいくつもの困難なハードルがあるということが言えると思います。そうして、職場の環境、処遇の悪化が続いていると、被害に遭われた方も次第に職場に居づらくなるといった状況になり、ついには退職してしまうという状況も稀なケースではないと思います。退職するとなると、本人は職を失って、収入源を失うわけですから、経済的に困難な状況にもなりますし、職を失ってしまった、しかも原因がセクハラであったということで、本人が働くことについての気力、働くだけではなくて、生活そのものについての気力・体力も喪失してきます。
 そういたしますと、仕事のキャリアを中断したり、そこで断ち切られてしまうと、仕事もその人が生きる価値の一部であったということもありますので、その人にとっては、その人のアイデンティティそのものの危機にも直面してくる問題であります。そうなると、被害者の人生計画にも影響してくるようなことになってしまうことになります。
 資料として配付はしておりませんけれども、具体的なケースを少しお話させていただきます。私どもの制度は、平成13年7月から行っております。平成23年2月の今日までに出された申し出件数は53件あります。このうちの30件が、セクハラ及びセクハラを背景とした二次的な被害が見られる事案でした。当制度で、労災申請のあっせんをするケースはないのですけれども、セクハラによって精神障害が発症したケースについて少しご紹介いたします。

(ケース紹介は大竹参考人の申し出により議事録から省略)

 いずれの事例についても、被害から相談行動をとるまでに1年以上かかることが非常に多いということを、私はこのケースをご紹介した中で申し上げたいと思います。いずれのケースも被害を我慢して1年間経つうちに、耳が聴こえなくなったり、めまいがする、不安感が出るなどといった精神症状が出て、不具合をもっているケースがほとんどでした。
 次は資料の10頁の説明に移らせていただきます。セクハラの精神障害事案特有の事情ということです。こちらは、読みながら説明させていただきます。先ほど申し上げたケースにもありますように、被害者の特徴として、被害者の境遇として、非正規雇用者、契約社員、パートタイマー、アルバイト、派遣社員等の方。それから独身者、これには離婚経験者を含んでおりますが、さらに母子家庭である方などが多いです。これらの被害者は、職業的地位の低さ、収入の低さ、生計を担う上での経済的困難さを抱えています。特に自立生計者、母子家庭の母親がセクハラ被害を受けて、仕事を辞めたいと思っても、あるいは通勤が困難になりそうな心理状態になっても、再就職が難しい社会状況もあって、仕事を辞められない。つまり、辞めて逃げられないといった状況にあると言えます。行為者が、被害者のこのような事情を知った上で、このような事情を抱えている人を選んでいることが多く見られます。
 相談行動に対する躊躇感については、相談者としては、相談した結果職場内に被害の事実が明るみに出ることによって、職場内で上司や同僚、さらには会社そのものから差別的対応をされること、特に労災申請に対する先入観、労災申請をすると組織の問題点を外部に告げ口をしたとか、組織を訴えた人ということで、組織や同僚から後ろ指を指されるという先入観や偏見が、いまだに組織の中にはあるということを考えて、労災申請を踏みとどまる傾向もあります。
 それから、外部に相談して訴えたために職場に居づらくなって辞めれば、生活困難になることへのおそれがあります。その一方で、被害者としては、行為者と、その行為されたそのものに対して非常に許せないという嫌悪感や傷付き感、行為者との再開に対する恐怖があります。この間に立って、さまざまな葛藤があって、その中で本人の精神症状が悪化していくといったことが見られます。
 次に、セクハラ被害者への相談対応時や、事実関係調査時の留意事項としては、セクハラの被害を特定するために、被害者に対して、さまざまなことを子細に聴取する必要があるのですが、聴き取りに対しては、相手の心理状況に細心の注意をして進めなければならなりません。なぜならば、具体的な情報を持たないまま、調査をした人や被害者が、行為者から名誉毀損で訴えられる懸念があるため、またその一方であまり細かく聴いたり、繰り返し聴いたりすることで、被害者が責め立てられているような心理状況に陥ったり、被害者が被害を想起して症状を悪化したりするおそれがあります。
 それから、調査時には、被害者、行為者、関係者すべてのプライバシー保護を配慮しなければならないし、こちらの制度としては、会社のほうに調査の許可を取るということもありますので、所属長などにも調査の同意を得ることもありますので、このプライバシー保護については、所属長などにも遵守していただくようにお願いしています。
 聴き取りや結果通知の順番は、必ず最初に被害者、その次に行為者や関係者の順に行うことを心がけております。また、聴き取りを行う際に、女性のセクハラ被害者には、聴き取りを行う者が、男性の専門相談員である場合、男性でも構わないかどうかを被害者に事前に了解を取ることに心がけております。
 最後に、セクハラ精神障害事案の労災認定に関する改善課題です。こちらのほうで、さまざまな業務を通じて感じておりますことは、対人関係のトラブルという項目がありましたが、セクハラ被害を対人関係のトラブルとすることについては違和感を持っております。特に対価型セクハラに代表されるような行為は、上司や同僚など身近な人から、つまり安心・安全であると思っていた相手からの一方的で突然の被害がほとんどです。対人関係の中でトラブルになるというのは、双方の文脈の中で起こると考えられますが、被害者にとってはコンテクストの過程とは無関係に、一方的に突然である点で、対人関係のトラブルに当てはめるには違和感があり、取り返しのつかない重大な事故、災害にも相当するものと考えます。
 また、セクハラ被害の程度によって段階分けが必要ではないかと考えております。例えば、比較的軽度と思われる卑猥な画像や、誹謗中傷などの環境型セクハラ、こういうものの中には重度なケースもあると思われますけれど、これらと、対価型セクハラ、中でもレイプに相当するような被害を同列には考えられないのではないかと思います。レイプ被害は、女性にとって望まない妊娠や、生命の危機に値するほど心身へのダメージをもたらす重大な被害であって、それに見合った被害の認定がされるべきであると考えております。説明が長くなりましたが、以上のとおりですのでよろしくお願いいたします。

○山口座長 どうもありがとうございました。ご質問、ご意見がありましたらお願いいたします。私のほうから非常に手前勝手な提案ですけれども、時間が押せ押せになっておりますので、後でまとめてご質問させていただく時間があると思います。それで一緒にということでよろしければそうさせてください。
○大竹参考人 はい。
○山口座長 すみません、どうもありがとうございました。最後に、大塚孝子様からお話を伺います。事務局からご紹介をお願いいたします。
○西川職業病認定業務第一係長 ご紹介させていただきます。最後は、弁護士の大塚孝子様です。大塚様は、弁護士として離婚等の男女トラブルを含む、各種の民事訴訟等に携わっておられます。
 また、男女雇用機会均等法に、セクシュアルハラスメントや性別による差別的取扱い等に関する、労働者と使用者との間の紛争について、調停による紛争解決の援助を図るという手続が定められております。大塚様は、東京労働局の雇用均等室において、調停委員として、こうしたセクシュアルハラスメント等の事案を取り扱っておられます。それでは大塚様、よろしくお願いいたします。
○大塚参考人 ご説明させていただきます。まず、セクシュアルハラスメントによる被害を受けた方から相談を受ける場合には、基本的には損害賠償を請求したいということで相談を受けたり、仲裁、あっせん、調停でも基本的にはそのようになるかと思います。その場合に加害者が、損害を賠償しなければいけないことになるには、まずセクハラ行為があったこと、それが違法であること、被害者に損害が発生したこと、その損害と違法行為との間に相当な因果関係があること、という要件が必要になります。
 これは、一般の不法行為による損害賠償請求に関しても同様なわけですが、セクハラによる場合に困難を伴うのは、セクハラ行為があったかどうかの事実認定が非常に困難であることに尽きるかと思います。セクハラというのは、性的言動の存在と、それが意に反する性的言動であったことが必要になります。この2つの要件を認定していくのは非常に困難が伴っております。
 その理由ですが、性的接触を伴うような行為については、多くの場合第三者がいない密室で行われるということで、それが職場であったり、大学等である場合には、両者の間に支配従属関係がありますので、それを利用して引き起こされる場合が多いということです。
 そのような場合には、被害者が被害の最中に抵抗しなかったり、被害をすぐに訴えなかったりするのが通例です。加害者より事実そのものが否定されてしまったり、被害が継続するような場合には恋愛関係にあったということで、意に反する性的言動ではなかったということで、セクハラ行為自体を争われたり、意に反する性的言動ではなかったという形で争われたりということになります。
 この場合にどういう判断でセクハラ行為の有無を判断しなければいけないのかということです。一般的に、先ほどから事例で出ておりますように、性的な行為を強要された場合に、その場から逃げればいいのではないかとか、継続する場合にはさっさと会社を辞めればいいのではないか、という考え方が従来は一般的な常識であると、世間一般の方はそう考えるであろうという捉え方をされていました。その場合には、なかなかセクハラという認定がなされなかったのです。
 1990年代ぐらいになってから、支配従属関係を利用した性的言動の場合には、被害者がすぐに抵抗できなかったり、被害を訴えることができなかったりするのが、経験則上当然あることなのだと、それが普通なのだという考え方が裁判所、それから社会的な認知となりました。経験則の考え方に変換を来したということです。それによって、裁判所なども、被害者がすぐに抵抗しないとか、継続した関係を持つことが経験上相当であるという判断を出すようになりましたので、いま現在においてはそういう裁判例がたくさん出てきております。
 ここに2つ、経験則が変わってきたところを判断した裁判例として、平成9年11月20日の東京高裁判決と、平成10年12月10日の仙台高裁秋田支部判決を挙げております。平成9年11月20日の高裁判決は、横浜セクシュアルハラスメント裁判ということで、横浜地裁では認定されていなかったのですが、東京高裁でセクハラ行為が認定されております。
 私たちがご相談いただいたときにはどうやって具体的に判断するのかというと、被害者からは時系列に沿った具体的な事実を確認します。加害者との具体的な行為、具体的な言動をきっちりとお話していただくと非常に理解しやすくなります。時系列的に、具体的にお話をしていただけると、非常に理解しやすいと思います。
 ただ、被害者だけの供述だけで判断することは、特に裁判等になるとなかなか難しいので、ほかの証拠も検討しなければならないわけです。そのときに、加害者から手紙が来ていたり、被害者がその当時具体的な事実を日記に書いていたり、録音テープがあったりという物的証拠があると非常に判断しやすいのですが、そういう物的証拠があるとは限りません。
 先ほど井上さんがおっしゃっていたように、私も精神科の医者やカウンセラーに意見書を求めます。被害者とその方は以前に面識はないものですから、1回だけお会いしていただくのではなかなか難しいので2、3回会っていただきます。費用もかかってしまうのですが、そういう形で意見書を出していただくのは非常に有効な証拠になっている現実があります。具体的な事件についての被害者言動、加害者の言動についても書いていただけるのですが、セクハラというのはこういうものなのだというような、セクハラ自体についての認識についても、意見書の中に書いていただけるので、裁判官などはそこでかなり認識が違ってくる効果があります。争いがあるような場合には意見書を書いていただく形でやっております。
 セクハラ行為をする人は、その人1人にしているということではなくて、職場内、大学内などではほかに被害者もいるケースがありますので、そういう方のお話も一緒に聴くことができると大変助かります。またそうでなくても、被害者から事後に相談を受けた方、場合によってはカウンセラーから直接お話を聴くということで、こちらの認定をしやすくすることもやります。この辺は、裁判になった場合のことを考えて、証拠を確保する意味合いもあって、こういう方がいらっしゃればお会いして、お話を伺う形になります。
 ここでセクハラ行為があると、存在することが認定できた場合、次はセクハラ行為の違法性の判断をする必要があります。セクハラ行為の中にも、違法でない行為もあるのかどうかというところは議論のあるところです。その前提として、セクハラとはなんぞやというところからの判断にもなってくるかと思います。基本的にセクハラ行為は違法性を帯びてくるものかと思っていますが、かなり社会的に相当な行為と見られるセクハラがあるのかどうかという議論も多少あるかと思います。私自身は、セクハラ行為は基本的に違法性があるのではないかという認識です。
 ただし、違法性というのは非常に幅があります。ちょっとした言動から、先ほどから出ております強姦に至る行為まで、加害行為の態様により、違法性には非常に幅があるという認識でおります。違法行為が単発で起こる場合、強姦などはそれ自体でもかなり違法性が強いわけですが、ちょっと肩に触ったり、胸に触ったりといった行為、強姦に至らないような場合であっても、それが継続することになると、それ単体では違法性の程度が低くはないのですけれども、それほど重くない行為であっても、それが継続して繰り返されることで違法性が強くなるということではないかと思っています。セクハラ行為によって、その人が受けた損害の大きさも違法性の判断をする1つの要素になってくるかと思います。
 もう1つ、使用者としての責任を考えたときに、使用者にも責任があるケースに関しても、さらにセクハラ行為の違法性が高まってくるのではないかと考えます。これは学者が言っているとかそういうことではないので、正しいかどうかはわかりませんけれども、私自身が思うのは、いろいろ相談を受けているときに、会社が何もきちんと対応してくれなかったという訴えが大きくありますので、二次被害という言い方をすることもできるのかもしれません。セクハラに対して、会社に相談してもあしらわれてしまって、きちんと対応してもらえなかった。さらにそれを理由に解雇されたり、退職を余儀なくされたりというケース、又は不本意な配属をされるということがあります。会社が責任を問われるような事情がある場合には、違法性の幅がさらに広がるのではないかと感じております。
 そこに書いてありますように、使用者責任という場合に、普通は民法第715条による使用者責任ということでの構成になるかと思います。最近は、民法第709条というのは、加害者本人が負う不法行為責任なのですけれども、会社自体も使用者責任ではなくて不法行為責任を負う構成をする場合もあります。それから債務不履行責任、契約責任としての民法第415条による責任を負うのだという考え方も裁判例では現れております。使用者責任というのは、使用者としての指導・監督が不十分であった、逆に言えばそこができていたということになれば責任を負わなくてもいいわけです。不法行為責任とか、債務不履行責任ということになると、その会社自身が責任の主体になる形になりますので、より違法性が強いとも捉えられるのではないかと思います。
 セクハラ行為があって、違法性があってというと、次は損害が発生していることが必要になります。その損害の中にも、いろいろな損害があるかと思います。損害として賠償される例を見ますと、精神的損害としての慰謝料、仕事を辞めざるを得なかったことによる逸失利益、典型的な精神障害を受けたことによって後遺症が発生してしまったということで後遺障害による慰謝料、逸失利益を損害賠償として請求する場合もあります。一般的には治療費とか弁護士費用なども損害の項目として入ってきております。
 当初、平成4年ごろからセクハラに損害賠償などがかなり認められる傾向になり、特に使用者責任としての損害賠償が認められる傾向が出てきています。慰謝料に関しては、最初は100万円台というケースが多かったかと思いますが、徐々に慰謝料の金額が高額化している現状があります。例の横山ノックさんのケースなどは1,000万円ぐらいの慰謝料になっていますので、高名な方でない普通のケースであっても、慰謝料の金額が最近は400万円、500万円、600万円というケースが出てきています。逸失利益については、通常6カ月とか1年ぐらいの給料相当額が補償されているケースがあるのかと思います。
 後遺障害による損害というのは、PTSDの診断が出ていたり、その他の精神障害が認定されているような場合には、後遺症による損害賠償も認められております。ただし、精神障害を発症したという認定をするのは非常に難しいわけですので、そういうケースがたくさんあるかというと、まだ判例を検索してもそれほど多くはなっておりません。
 判例の3の(2)の下のところに、セクハラ行為と被害の発生について相当因果関係があるということで出ております、平成13年11月30日の東京地方裁判所の判決と、平成14年3月12日の旭川地裁判決の2つを掲載しております。これは、いずれも大学の関係での事例だったと思います。平成13年の例は、大学における研究合宿中に、担当教授が、参加女子学生に対して猥褻行為をしたケースです。研究合宿中であったことから、正規の授業時間外で、学外で行われた合宿中の行為であったということ等から、大学の使用者責任が問えるのかどうかというところが論点になっているケースです。このケースについては、PTSDという認定がされて、慰謝料は150万円ほど払われております。
 平成14年の旭川地裁のケースは、医科大学医学部看護学科の学生と、医学学科の学生との関係なので、職場におけるセクハラとは違うのですが、これもPTSDということで後遺症も認定されました。通常の慰謝料と、後遺症の慰謝料と合わせて400万円が支払われているケースです。
 これらは判例などを見ますと、精神障害の発症と、セクハラ行為との間に因果関係があるのかどうかというところが争点になっておりますので、現実的に裁判になった場合にも、そこの判断をするのは非常に難しいのかと思います。現実的に後遺障害までの認定はまだかなり難度が高いのかと思っています。
 以上が、セクハラ行為によって、損害賠償に至るまでに必要な要素ということでご説明させていただきました。セクハラの認定に関しては、いままで皆さんがご説明されましたように、非常に判断に困難を伴うことなのですが、その際の判断として、セクハラというのは職場等における支配従属関係にある場で起こりやすい行為であって、そのような状況下においては、セクハラに対して被害者は抵抗ができないし、すぐに訴えることもできないし、関係が継続することもごくごく普通に経験則上存在するのだということを理解していただいた上で、業務上の行為としてのセクハラの認定を行っていただきたいと思います。
 セクハラによる心理的負荷の判断に関してですが、今後判断基準を決めていっていただくときに、先ほども申し上げましたように、違法性に関しても非常に幅がありますので、そういうことに関しても明確な判断基準を定めていっていただけると判断しやすくなるのではないかと思います。具体的にどういう判断基準というところはなかなか申し上げにくいのですが、是非明確化を図っていっていただけたらと思います。
 心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針第1のところを読ませていただきますと、多くの人が一般的にはどう受け止めるかという、客観的な基準によって評価する必要があるとされております。先ほどから申し上げておりますように、セクハラという行為の特質、支配従属関係の中で、優越的な立場を利用して行う性的言動であるという心理的負荷を、必要以上に負っている被害者であるところを考慮していただき、そういう状況下にある被害者を基準として是非判断をするようにしていただきたいと思います。多くの人が一般的にどう受け止めるかということでは、セクハラに関する判断はできないであろうと思いますので、是非そういう状況下にある被害を受けた方を基準にして判断するという判断基準を定めていただけたらと思います。
 さらに言うと、本来はその方が受けた被害ですので、その方がどうだったかということでの判断基準を申し上げられるといちばん実情に沿うのかとは思うのです。それをしていただきたいのですが、なかなか難しいとも思います。少なくとも、セクハラを受けた被害者の立場に立った判断基準というところまでは是非していただけたらいいのかと思っております。以上です。
○山口座長 どうもありがとうございました。予定された時間は7時までなのですが、本日は事前に副大臣には、少し延びるかもしれませんと申し上げましたところ、それは少しは結構ですというので時間はいただいております。大塚先生へのご質問だけだと時間の関係もありますので、すみませんが皆さんこちらに移っていただきまして、まとめてご質問をさせていただきます。
 本日はお四方からいろいろお伺いいたしました。1つは、事柄の性質上我々が知らない実情について、非常に貴重な事実をご紹介いただきました。こういう事実をよく踏まえて議論をしなければいけないと感じました。それから、被災者団体、ケースワーカーのほうでは、労災認定についてのいろいろな動きをして、実際に取消訴訟もしておられます。その労災認定との関係は私どもの仕事でもあるわけですが、それがいちばん大きな我々の課題だと思いますが、その中でどう対応していくのか。さらに、損害賠償の点で考えていくとどういう問題があるか。相談という仕事から見ると、一体どういう問題があって、その問題がどのように見えてくるのか。
 いろいろな問題点があると思いますが、副大臣は国会開会中で党のお仕事も大変だと思いますが、もう少しお付き合いいただきますので、皆様方からご質問、ご意見がありましたらお願いいたします。
○戒能先生 大塚弁護士に2点お伺いします。1点は、セクハラ行為と精神的障害発症との因果関係ということで、判例を2つご紹介いただきました。いずれも大学関係ということなのですが、その相当因果関係を判例で認めたポイントみたいなところ。非常に因果関係が認められない判例のほうが多いと思うのですが、この事例でどういうポイントがあったので認められたのかということが1点目です。
 2点目は、大塚先生の資料の3頁ですが、これは労災認定の業務上外の認定のところになると思うのですがご提言をいただいております。これは、認識の問題としてご提言いただいていると思うのです。そういう支配従属関係だということを認識した上で認定すべきだということなのですが、ただ法的な問題として考えたときに、そういう認識の問題だけで解決できるのか。実際に調停とか裁判にかかわっていて、どういう問題をクリアしていく必要があるのかを教えていただくと大変参考になるのかと考えました。
○大塚参考人 実際の裁判のときには、いま申し上げたようにセクハラ行為、違法性、損害、因果関係のところをすべて証明していかないと損害賠償につながらないわけです。その4要素をどうやって証拠で裏付けていくかということに尽きるかと思います。
 違法性のところは、セクハラ行為があると認定されれば出てくるのかと思うのです。通常「ショックを受けました」という損害程度でしたら損害立証も可能かと思うのです。PTSDが発症しましたということになると、その立証は非常に困難になってきます。セクハラ行為があったかどうかのところと、あとは損害も内容によって証明しなければいけない、PTSD等になるとそこの立証が非常に難しくなります。因果関係に関しても先ほどから出ていますように、ほかの要因でその人の要因とか、業務上外で、職場外でのいろいろなストレスで発症したのではないかという形で、因果関係の問題になることが多いかと思います。
○山口座長 私も2、3伺いたいことがあるのですが、横浜はこの相談に早くから着手されていますが、この相談だけで問題がうまく解決したような例はありますか。
○大竹参考人 電話相談の場合は、組織のほうの問題まで解決できたものはないです。相談者本人の中での問題として問題解決ができたケースはいろいろあると思います。組織のほうを改善したり、相手のその行為に対しての問題解決とまではなかなかならないです。
○山口座長 本人のメンタルな問題の解決の例はあるということですが、それは非常に少ないか、かなりあるか、頻繁にあるかどのぐらいですか。つまり、そういう意味でのケースワークはどの程度有益なのかということを知りたいのです。
○大竹参考人 精神的に病気になってしまった方が治癒したというものはないのですけれども、気持や考え方の問題で、いままではちょっと後ろ向きだったものが、考え方を切り換えて、いままでは休職してその組織にとどまっていようと思っていたのを、自分自身で新たな道を見つけて転職することの決断ができたというような、自分自身の中の問題解決としてなされたケースはいくつかあります。たくさんあるというわけではないのですけれども、そういうケースもあります。
○山口座長 被災者の支援運動をなさっているケースワーカーのことも取り上げられましたが、労災の認定を非常に大きな問題として取り上げておられると思うのですが、それが非常に難しい、だからなんとかする必要がある。それは私どもも同じです。
 もし労災の認定がなされたとすると、労災で面倒が見られるのは療養、休業補償、遺族補償、障害補償ですから、先ほどご紹介いただいたようなセクハラの例というのは、労災でどういう補償をするのが適切だとお考えですか。
○近藤参考人 ほとんどの当事者が、加害者がそのままになっている職場には行けなくなります。セクシュアルハラスメントが起こった労働環境で働き続けることが困難になって、休職を余儀なくされたり、退職を余儀なくされますので、まず第1に休業補償はどうしても必要です。それから、当然心身のダメージのために治療行為をしなければなりませんので、もちろん医療補償はすぐにも必要になります。
 特にセクシュアルハラスメントは、回復までに長い時間がかかります。セクシュアルハラスメントだけではなくて、性暴力被害を受けた方の回復支援というのは、本当に丁寧なサポートと時間がかかることがわかっております。セクシュアルハラスメントの被害者が本当に安全な、健康な状態で新たな就業環境で働き続けることができるまでにはかなり時間がかかります。特に、先ほど井上さんがおっしゃったような、被害者の立場に立って回復支援を進めていくカウンセリングなども大変必要になります。当事者が自分の社会的な関係を回復できるまでに必要な手立てすべてを労災でということにはならないと思いますが、この社会がきちんと用意することがどうしても必要だと思っています。
○山口座長 いま、いろいろなタイプの給付があります。それはいろいろ条件が決まっています。先ほど伺っていたら、やはり居づらくなって退職される方が多いと。退職されると雇用関係というか、就業関係がなくなっていますから、居づらくなって退職ということでは休業補償を出すことは非常に難しくなります。療養補償は、そういう関係があるときに発症して、治癒していなければ可能だと思います。治癒された場合でしたら、今度は逆に障害補償給付ということになります。この障害等級も決めるのがなかなか難しいです。
 労災で認定されたら、それは認定されないよりはるかに状況は好転すると思いますが、労災認定があれば、セクハラの問題が解決されるということは、これは私個人の考え方かもしれませんが、甚だ残念ながら法律はそこまで来ていないということです。なぜかといえば、損害賠償ですと先ほど大塚先生がおっしゃったように、慰謝料の請求が可能ですけれども、労災補償の場合は稼得能力の損失を填補するということでできていますので、どうしてもそこで非常に大きな限界があるような気がするのです。細かいことはともかくとして、制度のいちばん大きな枠組みについてはどのように考えていけばよろしいでしょうか。
○近藤参考人 本来労働者としての、生涯にわたる補償が得られればもちろんいいのですが、私たちがいま本当に切実に求めているのは、職場を離れざるを得なくなって、きょう、あすから食べていくこともできず、通院治療にかかる費用さえままならないという、本当に切迫した当事者のために、せめて休業補償と医療補償はすぐにも付けてほしいというのが、当事者と私たちの願いなのです。その道をいま断たれているわけですから、最低限のところをシャットアウトされていることについて、是非ご検討をお願いしたいと思います。
○井上参考人 心理的回復を果たすためには、全部から切り離されてしまうと引きこもりみたいになってすごく駄目なのです。かなり専門的な分野にある人は仕事を続けられていて、そこでヨレヨレになりながら仕事をすることで、ちょっとしたことが励みになったりして回復していくのです。そのためにもやはり労働者としていていいのだということが大切です。そこを断たれてしまうと、心理的な回復の片一方の羽根がもがれたような感じになってしまいますので、いま近藤さんが言われたような補償をしてほしいと思います。
○山口座長 ご意見はよくわかりました。
○黒木先生 大塚先生にお伺いします。業務上外の判断に関して、セクハラはなかなか事実認定が難しい。あくまで被害者を基準に判断をしていくべきだと言われました。治療的には私も相談を受けて、それから治療していくという点では、やはり被害者の立場に立って、被害者の言っていることを信じて、そして治療をしていくのが基本だと思うのです。ただその因果関係ということになると、事実認定がはっきりしない事例に対してはどのようにお考えですか。
○大塚参考人 事実認定がわからなければ難しいのでしょうね。ただ、その事実認定をするときにも、どういう判断基準でするのかというところで、従来のように世間一般の考え方というのが、セクハラ被害を受けた方がなんで抵抗しなかったのか、なぜ訴えなかったのかという判断になってしまえば、認定がしづらくなります。
○黒木先生 判例を見ると、本当にそういう行為があったかどうかということもわからない事例もあります。そういう場合に、片方の本人がそう言っていると、その言っていることで、そのことから精神症状が出ていることもあるわけです。因果関係を考えていくときに、本人がそのことをどのように受け止めて、精神症状はどのように形成されていったかという、その過程はものすごく大事だと思います。被害者の立場はもちろん大事ですけれども、どういう過程でそういうことが起こってきたのかを考えるのも大事なのではないのでしょうか。
○大塚参考人 それは、おっしゃるとおりだと思います。
○水島先生 2つほど伺います。まず大竹様にお伺いします。相談を受けているとき等で、今回は女性が被害者の話ばかりだったと思うのですが、男性が被害者であるケース、あるいは同性間のセクハラというのは例としてありましたか。
○大竹参考人 最近少しずつ出てきましたが、数としてはまだ非常に少ないです。男性が、校内で男性の先輩から性的な関係を迫られて拒否したら、複数の仲間からからかわれたという相談もありました。
○水島先生 その場合にセクハラの問題は女性特有ということではなく、男性、あるいは同性間に関しても同様にと考えたらよろしいのでしょうか。
○大竹参考人 はい、そうだと思います。そもそも会社、企業、組織の中において女性の地位が低かったというこれまでの現状もありますので、どうしても被害者は圧倒的に女性が多いのが現実だと思います。ベースとしては、男性も女性も変わりなく危険性はあるのだと思いますが、どちらのリスクが高いかというと、圧倒的に女性のほうが高いのが現状だと思います。
○水島先生 ほぼ同じ質問を大塚先生にもお願いいたします。大塚先生のお話を伺っていても、やはり女性で支配従属関係がある弱い立場にある労働者というイメージだったのですが、例えば男性であるとか、あるいはセクハラだけではなくパワハラのような事例も、応用できる普遍的なものになるべきなのか、あるいは女性のセクハラというように特別なものと捉えるべきであるのか、その辺はどのようにお考えでしょうか。
○大塚参考人 特に女性に特有ということで捉える必要はないと思っていますが、現状では女性が弱い立場にあると。従属関係になっているケースが多いところはありますが、考え方としては区別する必要はないと思っています。
○山口座長 時間をかなり超過いたしましたが、本日は皆様のご意見をお伺いすることができました。大変貴重な機会を与えてくださいましたご出席者の皆様に心から御礼申し上げます。また、公務多忙なところ、時間を割いてくださいました副大臣、しかも政治家の30分というのは我々の300時間ぐらいですから、最後にご挨拶をいただけますか。
○小宮山副大臣 本当にありがとうございました。それは、政治家の中でもプライオリティの問題だと思います。これは、私のほうからお願いをしてつくっていただいた研究会ですのでプライオリティは高く、これからも是非伺いたいと思います。
 私が整理するのは変なのですけれども、これは労災認定の基準に関する検討会ですので、労災基準の中で対応できることが、ここのメインのテーマだと思います。最後に座長がおっしゃいましたように、いまある基準の補償の中で、どこに当てはめられるのか。その中に今回セクシュアルハラスメントについて新たな基準が設けられるのか、その場合にはどういうものなのかというもの。それから、最初に近藤さんから言っていただいた実態調査という別のカテゴリーの問題というか、それを基にしてやるわけですから、それもここでやるのか、どこでやるのかということがあると思います。
 それから最後の話にあった、そのときにも緊急的な対応と、長期的なケアのメンタルヘルスは労災のところでどうかかわるのか、また別のことかもしれません。もしかすると、それをトータルにやろうとすると、新たな法律が必要だという話にもなるかもしれないと思いながらかかわってきたものとして大変だと思うのですけれども、少なくとも今回セクシュアルハラスメントでこういう分科会をつくりましたので、こことして労災の中でできるのは何なのか。それは、いままでの考え方の中ではおそらく難しい話になると思うのですが、そこをどこまで広げられるのかということ。
 その中に可能だと思うのは、精神的負荷の強度の問題とか客観的基準ということが、いままでの考え方では合わないということなので、そういうところを改善することができる。そういう意味では、この分科会の中で、労災認定の問題として扱えるもの、そうでないもの、すぐにできるものと、また新たな、もうちょっと大きな枠組みをつくるものというように、いくつかに整理をして、それで必ず対応のできるところからやりたいと思いましたので、よろしくお願いいたします。
○山口座長 どうもありがとうございました。以上でヒアリングは終了させていただきます。重ねて、大変貴重なお話をお伺いすることができましたことを御礼申し上げます。是非、次回以降の検討に活かしていきたいと思います。
 本日はこれで終了いたしますが、次回の分科会について1点お諮りしたいことがあります。前回第1回分科会での議論で、労災認定をされた、これは行政上の認定を受けたケース、あるいは不認定とされた個別の事案の内容を踏まえ、具体的に議論しなければいけないのではないかという問題提起がありました。そのときには、確かにそうだけれども、公開の場ではなかなか難しいのではないか、場合によっては差し障りもあるのではないかと言われましたので、次回は非公開で分科会を開催させていただき、認定された事例、あるいは認定されなかった事例の内容を具体的に取り上げて分析し、検討をしていただきたいと考えておりますが、いかがでしょうかということです。
 専門検討会の開催要領には、検討会は原則として公開であると定められておりますが、ただし書きが付いていて、検討条項に個人情報等を含み、特定の個人の権利又は利益を害するおそれがあるときは非公開とするとなっておりますので、この条項に基づいて次回は非公開とさせていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
(異議なし)
○山口座長 ご異議はないようですので、次回は非公開で、個別の事案の検討をするということで、事務局のほうにお願いいたします。本日はどうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

労働基準局労災補償部
補償課職業病認定対策室

電話: 03(5253)1111(内線5570、5572)

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