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2011年2月28日 化学物質による労働者の健康障害防止に関する意見交換会(リスクコミュニケーション)の議事概要

○日時

平成23年2月28日(月曜日)13時30分~16時30分


○場所

大阪労働衛生総合センター(大阪市西区土佐堀)


○出席者

参加者:約30名


○議題

(1)基調講演
「リスク評価制度と健康障害防止措置」 圓藤 陽子(関西労災病院産業中毒センター長)
「化学プラントのセーフティアセスメント」 角田 浩(東洋エンジニアリング株式会社 技術部長)

(2)意見交換
コーディネーター
堀口逸子(順天堂大学医学部公衆衛生学教室)

パネリスト
講演者2名
棗田衆一郎(中央労働災害防止協会化学物質管理支援センター課長補佐)
松井孝之(厚生労働省化学物質評価室室長)
寺島友子(厚生労働省化学物質評価室化学物質情報管理官)

○議事

【リスク評価と健康障害防止措置】
・リスク評価は本来事業者が自主的に行うものではあるが、中小事業場では十分に行われていない面もあることから国自らも行っている。リスク評価の結果を踏まえた、健康障害を防止するための措置については、法令によるものと行政指導によるものがあるが、必要とされたものについては、特化則の対象としている。
・有害物ばく露作業報告の作成にあたり、報告期間の前年に事業場において対象物質の取扱いの記録を取っていただくことにしている。報告は事業場単位となっている。取扱いのないものについて、作業を把握・記録する必要はない。
・リスク評価の対象物質に関し、平成21年度までは発がん性をターゲットとし、IARCの区分の1と、2A・2BとEUで2のものを取り上げ、ほぼ終了。平成23年1~3月のばく露報告物質は、発がん性のほかの生殖毒性等も考慮。手順については資料4~5ページに記載のとおり。対象物質の選定に当たっては公募もしている。専門家による検討会で決定し、厚生労働省ホームページに掲載している。
・今後のリスク評価の予定としては、資料1の最終頁にあるように、本年度の詳細リスク評価はインジウム他5物質、初期リスク評価では二酸化チタン、ナフタレン、1,3-ジクロロプロペン等10物質程度を予定している。今年の1~3月に報告をもらう予定のものではクメン等がばく露調査の対象になる。さらに24年度に報告いただく分としては、12月28日に告示をし、パンフレットを印刷しているところであるが、14物質を指定したところ。
・化学物質によるヒトへの影響に関し、遺伝(世代間)、個人差、回復可否の点から考察すると、がんは不可逆性(罹患すると完治しない)がある。また女性が有害業務にも従事するようになり、母体毒性という視点でも、次世代に影響のある生殖毒性とともに考える必要がある。個人差、代謝物の毒性は難しいところ。個人ばく露測定やバイオロジカルモニタリングでその影響を考察する方法も検討したい。
・過去に規制対象となったエピクロロヒドリンや2,3-エポキシ-1-プロパノールと比べ、感作性が低いと思われる酸化プロピレンが対象となったのは、ばく露の可能性がより高かったためで、エチレンオキシドと同等の規制とした。エポキシプロパノール等とは、物性、使用量、用途範囲が違うため、ばく露のリスクも異なる。ばく露実態調査結果を踏まえ判断している。
・有害性評価の1次評価値は、発がん性の動物実験の10の-5乗~10の-6乗のユニットリスクを10の-4乗に換算したもので、かなり低い。2次評価値は発がん以外の危険性が中心で、産衛学会、ACGIHのデータを使い、数ppm。物質によって開きは異なり、数十のこともあれば3桁以上のこともある。
・1,3-プロパンスルトンの許容値が極めて低いが、ばく露実態調査での個人の吸入ばく露のリスクは低いと考えられる。常温の蒸気圧が低いことが濃度に影響していることはあると思うが、蒸気圧がないわけではないので、行政指導通達において、防じん機能付き防毒マスクの着用が望ましいとしたところ。
・化学物質について安全評価をしてから社会に出すべきである。
・新規化学物質については有害性の調査が義務付けられている。一方で既に使われている既存物質については調査がされたうえで使われているわけではないため、国が有害性の調査やリスク評価を行っているところ。
・「リスクは高くない」として評価終了となった物質についても、各現場で、評価値を超えない管理をしていただきたい。リスク評価の対象物質はMSDS交付対象物質から選定しており、hazardがないわけではない。対策は引き続き必要であり、その旨を行政指導通知でお伝えしている。
・局所排気装置の排気出口の管理濃度の指針はあるか。また、局所排気装置等の使用等の規制の見直しについての最新の情報を知りたい。
・学識経験者による化学物質管理のあり方の検討会を行い、平成22年6月にとりまとめを行った。現在の規制では、対策は密閉化、局所排気装置の設置、プッシュプル型換気装置の設置に限られているが、この検討会の中で、他の方法も柔軟に取り入れるべきとの指摘をいただいており、今後、検討していく予定。
・リスク評価の検討会の資料等、提供できる情報はできる限りホームページに掲載している。掲載情報は厚労省HPからメールでお知らせする仕組みもあり、フォローいただければと思う。

【化学プラントのセーフティアセスメント】
・HAZOPでの網羅性の確保のためには、全てのライン(配管)を丁寧に追うことが必要である。HAZOPの質を上げるためには、HAZOPを行うチームにベテランを入れるなど、メンバー選びが重要なポイントとなる。個人の経験が知見の差として出るので、チームに多くの知見を持った人を入れる。
・HAZOPのずれの原因と結果(影響)に関し、例えば、流量計で仕込む場合、流量計が壊れていることが原因となって仕込み量が適量とならない場合、影響としての反応槽の液面異常(液面高、または液面低)でチェックする、流量×時間でチェック(所要時間の早い、遅い)など。重要な計器については冗長化を図ることもある。
・対策は、設備と人の対応によるものの組み合わせで考えて良い。
・プラントの老朽化対策について、使えるかどうかは、材料と、機構の耐久力による。(単に時間経過だけで判断することは適切ではない)
・リスク評価、セーフティアセスメントで何%事故が減るか、という点に関し、リスクアセスメントは安全を保証するものではない。重大な災害に至らないように、事前に問題点を洗い出し、どう備えるべきかを検討するためのツールである。
・サンプリング作業における健康障害防止措置の例として、密閉式のサンプリング用器具が採用されている現場もある。
・HAZOPの他のセーフティアセスメントの手法には、危険事象の「発生頻度を定量的」に解析する手法、「影響規模を定量的」に解析する手法などあるが、これらは専用のシステム(プログラム)が必要であり、その結果を評価するのも経験が必要である。それに比べHAZOPはチームで行うものであり、また汎用性が高いため、使いやすい評価方法といえるだろう。
・評価において、根本原因が他にあるルール違反もヒューマンファクターとして扱う場合もある。例えば、視界が確保できないために、ゴーグル未着用というルール違反を冒す場合など。(故意、悪意によるルール違反は、リスク評価の対象にはなり得ない。)

(以上)


<照会先>

労働基準局安全衛生部 化学物質対策課化学物質評価室

電話: 03(5253)1111内線5512

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