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2010年12月13日 第3回精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会 議事録

労働基準局労災補償部補償課職業病認定対策室

○日時

平成22年12月13日(月)14:00〜16:00


○場所

厚生労働省専用第21会議室(中央合同庁舎5号館17階)
(東京都千代田区霞が関1丁目2番2号)


○出席者

(参集者:五十音順、敬称略)

阿部未央、荒井稔、岡崎祐士、織英子、黒木宣夫、清水栄司、鈴木庄亮、山口浩一郎、良永彌太郎

(厚生労働省:事務局)

尾澤英夫、河合智則、神保裕臣、渡辺輝生、幡野一成、板垣正

○議事

○板垣中央職業病認定調査官 本検討会は原則公開としておりますが、傍聴される方々におかれましては、別途配付しております留意事項をよくお読みの上、会議の間はこれらの事項を守って傍聴していただくようお願い申し上げます。
 定刻となりましたので、ただいまから第3回「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」を開催させていただきます。先生方におかれましては、ご多忙中のところご出席いただきまして誠にありがとうございます。清水先生は、間もなくみえると思いますので始めさせていただきます。
 配付資料の確認をさせていただきます。資料1「第3回における論点」、資料2「論点に関する労災補償の現状」、資料3「最近の裁判例」、資料4「論点に関する医学的知見」です。
 写真撮影等は以上とさせていただきますので、ご協力をお願いいたします。
 それでは座長の岡崎先生、よろしくお願いいたします。
○岡崎座長 前回に引き続き検討を進めていきます。前回できませんでした論点2が、本日の論点1となっておりますが、これらを含めて資料の説明を事務局からお願いいたします。
○幡野職業病認定対策室長補佐 第2回検討会では、精神障害の業務上外の判断枠組みについての具体的な論点についてご検討いただきました。今回は論点1として「業務による心理的負荷の評価基準の明確化」、論点2として「心理的負荷の評価対象について」をご検討いただく予定にしております。
 先ほど座長からもご紹介がありましたが、今回の論点1は、第2回の論点2と同じものです。今回の資料1は前回の資料1の2、今回の資料2は前回の資料2の4及び資料2の5、今回の資料3の1は前回の資料3の2と同じものです。
 まず、「業務による心理的負荷の評価基準の明確化についての具体的な論点」について資料に沿って説明させていただきます。事務局としては、資料1の「複数の出来事」及び「労働時間の評価」について基準を明確化できないかということでお諮りしております。「複数の出来事」について、現行の判断指針においては、特に基準について定めはありません。第1回検討会資料6に、判断指針と同日に出た運用の留意点を示した課長事務連絡があります。その中で、 「(4)具体的出来事が重複した場合の取扱い」、「(5)複数の出来事が認められる場合の取扱い」という形で定めております。
 「(4)具体的出来事が重複した場合の取扱い」ですが、出来事が判断指針における別表1の(1)の具体的出来事の複数に該当すると考えられる場合には、重複して評価することはせず、心理的負荷強度が最も高い出来事を代表して評価することとするとされております。具体的な例で申しますと、転勤に伴い、仕事の内容、ポスト、職場の人間関係等も当然に変化いたしますが、別表1に示した出来事はこのような変化を包含するものという前提で作成しているので、「転勤をした」という出来事のみを評価するということで示されております。
 別表1の出来事の類型⑤のいちばん上に「転勤をした」という出来事があります。その心理的負荷の強度は、平均的には「II」のところに☆が付いています。その右側に、心理的負荷の強度を修正する際の着眼事項として、職種、職務の変化の程度、単身赴任の有無、赴任先の海外の治安の状況等というもので評価していくこととされておりますので、先ほど申しましたように、それぞれの出来事といいますか、重複している部分については「転勤をした」というところに包含される仕組みとなっております。
 次は「複数の出来事」についてです。発病前おおむね6か月間に、当該精神障害の発病に関与したと考えられる複数の出来事が認められる場合には、その各々の心理的負荷の強度の総体が「客観的に、当該精神障害を発病させるおそれのある程度の業務による強い心理的負荷が認められる」と言えるか否かについて検討するとされております。この場合、それぞれの出来事の発生時期、当該出来事の持続、改善の状況等と精神障害発病の関係について個々の事案に即して総合的に検討することとされております。資料1の1の①の四角で囲っている部分が、いま申し上げたところです。これが、平成11年の補償課長事務連絡です。
 具体的な例として、資料2の1、6頁に事例を2つ挙げております。事例1は、病院に勤務する医師が、当直のときに患者の家族から暴行を受けて骨折をする負傷をし、その直後に、死亡した別の患者の家族から被災者を名指しで訴えられたものという事例です。
 これについて、患者の家族からの暴行については、「悲惨な事故や災害の体験をした」ということで、出来事の類型①に当てはめて、平均的強度は「II」とされております。続いて、訴えられたということが、「顧客や取引先からクレームを受けた」というところに推定して、出来事の類型②にあります。これも平均強度は「II」とされております。これを、それぞれ当てはめ、さらに暴行事案に関する警察等の対応の最中に次の出来事が立て続けに起こっているところから、総合的に判断して出来事の心理的負荷は「III」としました。先ほど申し上げましたとおり、出来事の発生時期として非常に近接している、また、前回の出来事の持続している時期に次の出来事が起こっているところが見受けられます。
 事例2は、生命保険の営業職員について、ノルマが達成できなかった事案です。仕事上のミスについて、さらに上司からの叱責を受け、研修生との間のトラブルが約1か月の間に生じているものです。
 現実的な判断に当たり、ノルマの未達成を「ノルマが達成できなかった」という出来事の類型②に当てはめて、平均的な心理的負荷は「II」。上司からの叱責については、「上司とのトラブルがあった」というところに当てはめて出来事の類型⑥になり、平均的な強度は「II」です。研修生とのトラブル等を「部下とのトラブルがあった」ということで平均強度は「I」ですが、これも出来事の類型⑥です。それぞれを当てはめて、これらについて立て続けに起こっていることから、心理的負荷は総合的に評価して「III」としました。これらについては、約1か月の間に続けざまに起こっていることから、先ほど申し上げました出来事の発生時期、ないしは当該出来事が持続している範囲での、さらに出来事が起こったというところで評価されていると考えております。
 続いて裁判例です。資料3の1、10頁です。これは平成21年5月18日東京地方裁判所での判決で、国が敗訴した事案で、そのまま確定したものです。概要として、被災者は、平成2年に電気機械器具製造会社に入社し、技術者として生産技術プロセス開発等に従事し、平成12年4月ごろから平成13年7月まで、新規液晶生産ライン開発プロジェクトであるM2ラインプロジェクトの業務に従事したところ、平成13年4月ごろに精神障害を発病したとされております。
 これについての判旨は、原告の業務をめぐる状況を見ると、原告は、新規性のある、心理的負荷の大きい業務に従事し、厳しいスケジュールが課され、精神的に追い詰められた状況の中で、多くのトラブルが発生し、さらに作業量が増え、上司から厳しい叱責に晒され、その間に本件会社の支援が得られないという過程の中で、その間、長時間労働を余儀なくされていた。以上の原告に対する心理的負荷を生じさせる事情は、それぞれが関連して重層的に発生し、原告の心理的負荷を一貫して亢進させていったものと認められるのであり、上記のような原告の業務による心理的負荷は、社会通念上、客観的にみて、精神障害を発症させる程度に過重であったといえるとされております。
 以下4行飛ばした下ですが、業務起因性を否定するA地方労災医員協議会及びB医師の意見は、上記の心理的負荷の強度について、個々の要因を分析して、必ずしも強度の心理的負荷とはいえないと評価するものである。上記の個々の分析的な評価自体を肯じる余地はないわけではないが、上述のとおり、本件における原告の心理的負荷は、M2ライン立ち上げプロジェクトに関与し始めた時点から、原告は、上述のとおりの複数の要因に重層的に晒されたことに大きな特色があるのであり、上記の意見のように、分析的、個々的にして必ずしも強度でないという評価をすることが相当であるとは考えられない。こういうことで、業務起因性を認めた事例です。
 この複数の出来事の評価に関する判旨の上のほうの部分ですが、出来事として考えられるものとしては、新規性のある、心理的負荷の大きい業務に従事したこと、つまり新しい業務に従事したということ、厳しいスケジュールが課されたこと、その中で多くのトラブルが発生したこと、作業量の増加、上司からの厳しい叱責というものがあります。これについては、私どもは判断指針に基づき、出来事が重複するものは1つにまとめ、それぞれ判断していった結果を出しました。その辺のところが、裁判所と見解が異なったということになります。以上が裁判例です。
 資料1の①です。具体的に明確化というとどのようなものが考えられるのかということで、いくつか例として挙げさせていただきました。①の下の「例えば」というところからですが、中程度の心理的負荷の出来事が2つ(以上)認められた場合は、単純に、強度の心理的負荷があったと評価することができるかどうか。2つ目は、特定の出来事の組合せについて、心理的負荷を強度のものと評価するものとし、出来事の組合せを示すことができるか。先ほどの認定例で申し上げますと、それぞれ出来事の類型が異なったところを組み合わせて、心理的負荷強度を「III」としています。
 最後に、また、複数の出来事について心理的負荷の総体を評価するにあたり、出来事の発生時期の近接性を考慮に入れる必要はないか。先ほどの事例2では、1か月以内に続けざまに起こったところを捉えて強度を上げています。それを具体的な1か月、2か月という形で示すことができないかと。また、これらが組合せとして、先ほどの2つ目と組み合わせて評価する基準を明確化できないかというところで例として挙げたものです。以上が、「複数の出来事」についてです。
 資料1の②以下で「労働時間数について」です。判断指針における別表1の出来事の類型③のところで、「勤務・拘束時間が長時間化する出来事が生じた」というものが定めてあります。出来事としての長時間化は、ここで評価するのが通常となろうかと考えております。
 出来事の強度の修正については、判断指針の第4の2、(1)イが「出来事の平均的な心理的負荷の強度の評価」、ロが「出来事の平均的な心理的負荷の強度の修正」となっております。ここで、出来事の強度の修正について、ロのなお書きのところですが、出来事の発生以前から続く恒常的な長時間労働については、「別表1の(2)の欄による心理的負荷の強度を修正する」とされています。
 例示として、「所定労働時間が午前8時から午後5時までの労働者が、深夜時間帯に及ぶような長時間の時間外労働を度々行っているような状態等が認められる場合」というのがあります。したがって、出来事自体が「I」という評価の場合、このような状況があった場合には「II」と修正されます。
 「(2)出来事後の状況が持続する程度による心理的負荷の評価」です。次の頁の頭の部分で、「仕事の量(労働時間等)の変化後の持続する状況」があります。「恒常的な長時間労働は精神障害の準備状態を形成する要因となる可能性が高いとされていることから、上記(1)のロに示した恒常的な長時間労働が認められる場合には十分に考慮する」とされております。この長時間労働については、先ほど申し上げました例示の部分ですが、このようなものに該当するような恒常的な長時間労働ということでご理解ください。
 いま申し上げましたことについては、平成20年に職業病認定対策室長の事務連絡が出ております。事務連絡については資料1の②の下の四角囲みのところの3行目に、「『出来事』の強度を修正し、また、『出来事後の状況の持続する程度』を『特に過重』と判断することができる『恒常的な長時間労働』については、1か月当たりおおむね100時間程度の時間外労働である旨を示している」ということです。
 そのほかに特別の出来事として「極度の長時間労働」が定められています。これについては四角囲みの上2行ですが、その労働時間の目安は示していません。ただ、この判断指針の中では、「数週間にわたり生理的に必要な最小限度の睡眠時間を確保できないほどの長時間労働により、心身の極度の疲弊・消耗を来し、それ自体がうつ病等の発病原因となるおそれのあるもの」という例示があります。具体的な時間数は示されていないものの、そのようなものが例として挙げられています。
 参考までに、前回(第2回)の資料の27頁、これは国家公務員の認定のためのものです。真ん中より若干下のところに(2)「超過勤務等」という定めがあります。その3行下に「精神疾患の発症前6か月間に、公務上の必要により期間の限られた業務を集中的に処理するなどのため、週数十時間にまで及ぶ超過勤務を4週間以上にもわたって行った場合には留意すること」とされております。
 第2回検討会資料の40頁に地方公務員のものが載っています。上から1、2、3、4となっていて、5の(1)「肉体的過労等を発生させる可能性のある事象」のウ「期限の定められている職務のため数週間程度から1か月程度にわたって行う、特に過重で長時間に及ぶ時間外勤務(週40時間を超える程度の連続)」、またエ「通常の日常の職務に比較して、特に精神的、肉体的に過重な職務のため、1か月程度以上にわたって行う、過重で長時間に及ぶ時間外勤務(週数十時間程度の連続)」という定めがあります。
 これら長時間労働についての決定の状況については、今回の資料2の2、7頁です。これは平成21年度の認定・決定等の件数です。これは、すべてのものについて、時間外労働時間が判明しているわけではありませんが、わかっている事例のみ集計・分類したものです。時間外労働時間数については、発病前6か月以内の平均時間外労働時間数のうち最も長いものということで集計したものです。
 全体をご覧になってわかりますように、20時間未満が80件と最も多く、そのほかのところは160時間以上が9件、その他のところは大体11〜32件というところで推移し、合計229件です。
 上から2番目の業務上認定をしているところですが、全体と比較しますと120時間以上〜140時間未満、140時間以上〜160時間未満、160時間以上の40件については、すべて業務上と認定されております。さらに100時間以上に限って申し上げますと、100時間以上〜120時間は27件中の24件で88.9%。100時間以上をすべて足し上げると95.4%の認定です。80時間以上〜100時間未満のところでは、15件中12件で80%、80時間以上をすべて足し上げると93.8%程度の業務上です。
 先ほど申し上げましたように恒常的な時間外労働100時間のところで切っておりますので、出来事があって、その前後に100時間以上の労働時間があると、たとえ出来事自体が①であったとしても、それを②に上げて、さらに特に過重と評価されて「強」となるところであるということです。したがって、100時間というのが1つ大きなポイントかと考えております。
 8頁の(2)「極度の長時間労働の認定状況」については先ほど申し上げましたように、具体的な数字として何時間という形では示しておりませんが、140時間以上のものについて1件、160時間を超えているものについて5件、合計6件の長時間労働を認め、「極度の長時間労働」として特別な出来事の対象とした。即ち、これだけで心理的負荷が「強」であると判断した事例です。
 下の「参考」のほうですが、これは120時間ないしはそれ以上の時間についてどういうものがなるかということです。ここでの参考は計算のしやすさ、わかりやすさで、4週間(28日間)をもって1か月としております。土曜と日曜が休みで、ほかに休日はない。したがって20日の労働日があり、その労働日は8時間労働で、1時間休憩で9時間である。さらにNHKや総務省調査等から参考とさせていただき、身の回りの関係であるとか通勤については大体5時間とした場合で、睡眠時間が4時間となるケースをそれぞれ示しています。
 業務により、睡眠時間が4時間となるケースは、いまの前提で申しますと、1日の時間外労働が約6時間です。先ほど、恒常的な労働時間の例示のところでありましたが、午前9時から午後5時までだと7時間労働となりますので、さらに1時間超えていく状況が考えられます。2つ目は土曜日に14時間の休日労働を行った場合です。そうすると、月(4週)の時間外労働は176時間になります。さらに日曜日にも14時間の休日労働を行うと、月の労働時間は4週間ですから232時間になるという状況です。
 同じように、睡眠時間が5時間となるケースで考えると、そのほかの条件は一緒とすると、毎日5時間の時間外労働を行うと、週の時間外労働は約25時間、月(4週)の時間外労働は100時間になります。続いて休日労働を1日13時間、土曜日に行ったとすると152時間、さらに日曜も同じだけ行ったとすると204時間になります。これは参考までということで、このような時間帯でやっていくと、このぐらいの時間外労働になるという目安です。
 以上が、論点1についてのご説明です。
○岡崎座長 本日、事務局からの提案としての論点は大きく2つに分かれます。複数の出来事が存在する事案をどう扱うか、労働時間数を具体的に示すことができないかという問いかけです。複数の出来事が存在する事案についての扱いの中に、例えばということで3点ほど論点が示されておりますが、自由にご検討いただければと思います。
○山口先生 複数の出来事というのは、当然ですけれども、発症前にという意味ですね。
○幡野職業病認定対策室長補佐 そうです。
○山口先生 「複数の」というのは、出来事の性格が違ったものが複数起こっているのと、同じようなものが複数起こっているのとありますが、これは両方を含んでいるのですか。この事例を見ると、違ったものが起こっていますが、それに限るという意味ですか。
○幡野職業病認定対策室長補佐 想定しているところは、先ほど申し上げましたように、同じようなといいますか、派生するような出来事というのでしょうか、そちらのほうは現状のものでも判断表等で評価されているところですので、どちらかといえば、類型が異なるものと想定しております。
○岡崎座長 同じ人に起きるわけですので、その総体として扱うときに、どういうものを総体として扱えるかという問題の辺りから議論していただいたほうがいいでしょうか。
○山口先生 仕事の上で原因があり、その仕事のことで上司から1週間ぐらいの間に何回も叱られたというのと、全然関係のないものを含め、違った仕事のことで一定の期間内に何回も起こっているというのと、医者の目でみると、これは一連の関係はあるのでしょうね。関係があるというのは、行為の状況とか性格によっても違ってくるのではないか。
○岡崎座長 そこを違えるべきか、あるいは同じ人に起こった心理的出来事ですので、総体として扱うときに同じに扱えるか、という議論を是非お願いできればと思います。
○山口先生 わかりました。
○岡崎座長 現状では、複数のものがあったときには、それぞれを評価して、最も強度の強いものを採用するとはなっているのですが、現実には、総体として複数のものを総合して扱うものが判例等においても出てきていますので、それに対応した検討が必要ではないかということだと思います。
○阿部先生 いまの山口先生のお話は、先ほどご説明いただいた重複した場合の取扱いと、複数の出来事が認められる場合のどっちなのか。事務のほうでやるときにはすっきりと分けられるのですか。先ほどの事務局からの説明では、転勤した場合に、その職務内容が変化するというのは当然その中に含まれるというのですが、例えばノルマが不達成で、そのために上司に叱責されたという場合には、やはり別として扱うのがいまの扱いですか。そうすると、それを複合的に見ると射程は結構広くなってきます。
 医師の事案のように全く違うような、関連性がないことが短期間のうちに起きたときには合わせ技でという、その射程だけであれば比較的狭いというか、レアケースな感じがするのです。複合的なという捉え方を広くするとかなり広くなるというか、想定されるケースがたくさん出てくるような気がするので、その取扱いも結構重要なのではないかと思います。
○岡崎座長 そういうことは、頻度的にはそういうふうになる可能性は高いですので、そういうところも含めてご議論いただければと思います。
○黒木先生 細かいことですけれども、事例2の「仕事上のミスについて上司からの叱責を受けた」というのは、ノルマが達成できなかったことに対してということではないのですか。
○岡崎座長 ないですね。
○阿部先生 ノルマが達成できなかったから叱責を受けたということになると1つになるのですか。重複したという扱いになるのでしょうか。
○黒木先生 例えば、何回ぐらい叱責を受けたとか。
○岡崎座長 この事例を具体的に検討しましょうか。これを議論していただいて、整理するといいのでしょうか。資料2です。
○黒木先生 裁判例に関しても「多くのトラブル」と書いてあります。
○岡崎座長 そこは具体化しなければいけないでしょうね。
○黒木先生 具体的にどのようなトラブルがあったとか。
○岡崎座長 いかがでしょうか。
○黒木先生 現実的には、転勤と職務内容が変化したということは一体的に捉えるけれども、その職務内容が変化して、量が増えて、難易度が高いものに変わったということになると、また追加で考えるわけですよね。一体的に捉えるものと、そうではなくて過重として本人に負荷がかかったというものとして捉えるというのがあるので、出来事の捉え方としては、本人に負荷がかかったということを考えれば、それは多くの出来事が評価できれば、それは多くの出来事を評価して、発症にどう影響したのかということは考えたほうがいいのではないかという気がします。
○岡崎座長 その場合の総合の仕方はどのようになるのですか。
○黒木先生 あくまでも本人に決定的なダメージを与えたものが何かというのを読み取るのはなかなか難しいと思います。でも、ファクターとして働いているのであれば、その多くのファクターをより検討することは必要かと思います。あくまでも本人に決定的なダメージを与えた内容が何かというのは非常に重要だろうという気はします。
○山口先生 いまの点ですが、先生方のようなお医者さんですと、当該患者をご覧になりますね。だけど、労災の認定の場合は、書類だけで判断しなければいけないから、そこがうまく判断できますか。
○黒木先生 だから、自殺と精神障害とは別だと思います。自殺の場合は大体意見書、精神障害の場合は主治医のカルテとか診療録といったものが出てくるので、何が影響したのかということは、それで読み取れる部分が大きいと思います。本人は仕事だと言っているけれども、カルテを見ると業務外の要因であったり、そのために受診をした、そのことで眠れなくて受診をしたということもあり得ると思います。
 精神障害の場合には、ある程度医証があるのでそれを参考にできるかと思うのですが、問題は自殺の場合です。自殺の場合に、精神障害をいつ発症して、その発症に影響した因子がどのように絡んでいるのかということを分析していかなければいけないので、それを分析するためには、発症の時期を特定します。これは、必ず部会でも、まず初めに特定しなければいけないし、そこから遡って6か月間の間に出来事があるかどうかを検討するわけです。その出来事がどういう時期に、どういうふうに起こったのか時系列に見ていくところで、決定的に自殺に追い込むような、あるいは精神障害の発症に追い込むような出来事が影響したのだろうという推測はできると思います。
○岡崎座長 そこは、なかなか難しいですね。1つの出来事があって、それに対して脆弱性、衰弱性だと閾値が下がるというか、閾値に近づいたところまで来ていて、その次の出来事はそんなに大きくないけれども、閾値を超えるには十分であったということもあり得るわけです。
 その辺りの総合というのは、いろいろな関数的な関係があるのだろうと思うのです。それをすべて具体化しようとすると、さまざまな類型を挙げるか、あるいは非常に大雑把に近接してある程度の強度のものが起きた場合には、総合するとそれは閾値を超えるであろうと推定するか、なかなか難しいのではないかと思うのです。両方掲げられるのではないか。
○黒木先生 その出来事の内容によると思うのです。違う出来事が2つあれば発症につながったとか、そうはならないと思うのです。
○岡崎座長 そうではないでしょうね。現実的には、臨床的にも決定的なものが必ず見つかるとは限らないです。その辺りが非常に難しいところがあると思います。その辺りについて荒井先生はいかがですか。
○荒井先生 別表の中に出てきている出来事自体が、研究レベルよりは過剰包括されているというのが大事な点だろうと思うのです。研究で扱っているのは絶対ではないですけれども、相対的に独立した出来事、本人の意思ではコントロールできない出来事が起こってきたと。それに対して個人が適応するのにどれだけのエネルギーが必要でということが前提になっていて、自分が原因となって起こった出来事は、研究レベルでは対象から外して研究しているという大前提があります。
 ここで私たちが扱っている出来事は、自分がミスをしたことも出来事になっているのですが、出来事研究ではそれは扱えないのです。そこは、どうしても私たちは研究ベースを持ってきたい、証拠として出したいわけですが、大前提が違って、出来事というもの自体の捉え方が違っていますので。独立していない出来事まで含めた生活上の出来事研究というのは、研究水準だと逆にオミットされてしまいます。自分が起こしたことについて数えてもおかしいのではないかという議論になってきています。
 重なり合いということもそれと同じで、1つの出来事があって、それに付随して出来事が起こってくる。それを2つあったと数えるか、1つの出来事の延長線で起こってきた1類型として数えて、また違う出来事があって、それに伴う出来事の変化がまた出てきていて、その2類型があって、それを2つと数えるのだと、研究レベルのものを引いてくることは可能かと思います。
 裁判例だと同じ筋道ですよね。これがあって、ある出来事があったから、次の出来事が起こって、その次の出来事が起こった結果、その次の出来事が起こるという、それが重層という言葉で表現されているのだと思うのです。それは、黒であることは間違いないのですが、研究レベルでは同一線上に上がってしまいますので、そこを科学的な証拠を出せと言われてもなかなか難しいということです。
 全然違うカテゴリーの出来事がいくつあったら、一定期間に2つとか3つとか4つとか起こったら、有意に発症リスクが高まるという報告は当然あるわけですが、それはいま申し上げましたように、出来事が仕事上だけではないということと、それからディペンデントな出来事は排除されているという限界があるので、すぐには使えないのでお示しすることができないのです。
 近接性というのは非常に重要な観点だろうと思います。ここにも書いてありますように、1か月で大体1つの出来事が終わって、それに適応する作業が終わる。急性ストレス反応は1か月で収束すると言われていますので、私たちがある大きな出来事を経験しても、1か月の間ほかのことが起こらなければ、なんとか1か月でそのストレスに対応できるのが健常者だろうと考えられています。それがまだ収束しないのに、次の系列の違う出来事が起こってくる、また次の出来事が起こってくるといった、近接性の中で重複する出来事があった場合には、発症のリスクはより高まっていくと考えるのが通常だろうと思っています。
 6か月の中に3つあったというのと、1か月の間に3つあったというのは、また別の過重があるのではないかと。これは科学的な証拠もありますし、そのように考えたほうがいいのではないかという気はします。1か月というのはちょっと人為的なのですけれども、先ほど申し上げた急性ストレス反応が1か月で収束する、治るという意味で、1か月というのが根拠かなという気がいたします。
○岡崎座長 なかなか難しいところであります。出来事の独立した事象のリストは、検証されたものはまだできていない段階だというお話でした。それから、出来事の過重等を評価する際に、近接性は重要ではないかということ。独立した出来事の良いリストができていない段階でも、現実的には労災の認定は進めていかなくてはいけないから、そこがなかなか難しいところです。そういう意味で、いま既存の出来事のリストというのは作られているわけですので、そういうことも合わせて、不十分性も合わせて検討しながらやっていく以外になかろうと思います。
 そういう状況で、この複数の出来事が生じた際の総合化の進め方として、1つは近接というのは、事務局からの論点にも出ておりますけれども、近接性というのは重要ではないか。例えば1か月というお話がありました。ただ、PTSDは発症が6か月以内というのを認めているわけで、そういう心理的メカニズムも想定されているわけです。
○黒木先生 持続は3か月。
○荒井先生 急性に起こるものと、蓄積していって起こるものという考え方だと思います。
○岡崎座長 6か月以上のもっと長いものは何かないのですか。
○黒木先生 6か月を超えるものはあります。
○岡崎座長 現実の症例としてはあり得ると思うのですが、そういう期間というのはなかなか難しいです。現状では6か月という扱いを、この認定基準は採用しているわけです。
 近接性や時間の問題以外も含めていかがでしょうか。
○黒木先生 先ほど言いましたように、業務の内容がかなり影響を与えていると思います。
○岡崎座長 内容の問題ですね。
○黒木先生 昨年の労働衛生課の研究を見ても、いわゆる仕事の失敗、あるいは過重な責任の発生、これ単独よりもそれにプラスして、仕事の量や質の変化が加わった場合にオッズ比で1.5倍、それから役割・地位の変化が加わると1.6倍、この3つが同時に起こると、単独の過重な責任の発生と、仕事の失敗単独よりも2.45倍という結果も出ています。
 これは、自殺のリスクということに関しては、発症にも近づく決定的なダメージを与えるというものが同時に起こると、リスクは高くなるということだろうと思います。
○岡崎座長 出来事そのものが、中に総体リスクの差があるのだというお話ですね。事務局からの論点の2番目と関係することだと思うのです。同じ事象として書いてありますけれども、それ自体がリスクという点でいうと違うのではないか。ある組合せの出来事は心理的負荷強度が高いのではないかというお考えだと思います。そういうリストを作ろうとすると、これは大研究が必要になってなかなか大変だと思います。
 現状では、最初に心理的負荷強度の標準的なものを判定して、さらにその強度を修正するという形でやっていますので、その中に一応含まれているのかとは思います。問題は、2つ生じた場合の総体として評価するまでの演算の仕方がいちばん大きな問題だと思います。いま具体的に出ているのは、1か月という期間の中に、近接して類似のもの、あるいは性質の違うものであっても近接して生じた場合は、それを総合して心理的負荷強度を上げるという方向だと思います。上げる方向で、総体として評価するのは妥当かということではないかと思います。それでは、1か月以上離れたら全然関係ないかということも難しいところですが。鈴木先生、清水先生はいかがですか。
○鈴木先生 ストレス生理学からいうと、ストレッサーの質は違っても、受けるストレスは同じものとなっています。いわゆる歪みというのは、ストレッサーの質が違っても歪みの程度で受けるほうは同じだと。同じ質のものが変化してしまう。ホルモンとか、自律神経というふうになっていますので、重複の場合は何らかの形で影響が加わると聞いております。2+3が5になるかどうかは問題がいろいろあろうかと思います。
 それから、近接性というのも、ストレスAを受けたときに、だんだん時間が経つと回復適応して軽くなっていく、歪みが小さくなっていくわけですが、その小さくなるなり方が戻らないうちに、また別のストレッサーからストレスを加えられると大変大きいストレスになることは、いまでも問題になっているので、おっしゃったように近接性というのはかなり重要かと思います。重複は加算されていいし、近接性も考慮されていいと思います。
○岡崎座長 近接性と、ストレッサーの性質の違いにかかわらず、複数連続して起きるということは生理学的に意味があるということですね。
○清水先生 私も、今回の論点が明確化という論点だと思いますので、そういった意味で、明確にするという意味では、2つ以上の出来事があった場合は、先ほどどのような計算かというお話をいただいたように、私としては単純に足し算をするということが、最も明確ではないかというのは1つあります。こちらに具体的な出来事のリストができていますので、1つ強度「II」のものがあって、もう1つ別の出来事として強度「II」のものがあれば、非常に単純に考えれば2足す2なら4になるのではないかという考え方があると思いますので、原則論としては、そのような単純な足し算をするということが明確な基準にはなるのではないかと思います。
○良永先生 近接性の話は、私もなるほどと思ってお伺いしていました。もう1つは、先ほど持続性という言葉が出たけれども、出来事が短い間隔を置いて連続して起きていくと、例えば先ほど座長がおっしゃった1か月で切るとほかのが全部捨象されるということも起こるかなと思って、少し気になったところなのです。連続して起こる場合のことも、もう1つ考えておかなければいけないかなと思います。
 先ほど事務局からご紹介のあった東京地裁判決ですが、これを見ると、1か月、2か月ではなくて、もう少し長い期間の間にずっと連続して、いろいろな心理的負荷に悪影響を与える出来事が続いているような気もするのです。そういうことですので、近接性と、もう1つ連続性も視点になるかと思います。ただ、これはどこで切るかというのが難しいのでしょうけれども、無視するわけにはいかないかなという気がしています。いかがでしょうか。
○黒木先生 具体的にはどのようなことですか。
○山口先生 反復性ということではないですか。
○良永先生 例えば別表1にいろいろな出来事の類型がありますが、これの違う出来事が続けて起こっていくということを想定したのです。
○岡崎座長 連続性ですね。
○良永先生 資料でいうと、東京地裁判決の判旨の部分でしょうか。これはどのパターンに当たるかわかりませんけれども、厳しいスケジュール、トラブル発生、作業量増加、上司からの叱責、支援が行われない、長時間労働、いろいろなものが書いてあります。全部パターンとしては違うところに当てはまるのだと思うのです。
○岡崎座長 そうですね。
○良永先生 こういうことが連続して起きた場合のことも、考慮する必要はありはしないかという意見です。
○山口先生 いま議論されているのは、まさにそのような場合ではないのですか。1か月なら1か月の間に続いて起こっていると。だから、そういう意味では連続性のあるケースを議論していたのではないですか。
○良永先生 先ほど「例えば1か月以内に」というご発言がありましたので、その点が気がかりだったという意味です。
○岡崎座長 近接性を評価する際に、例えば1か月間に2つあったことを近接と評価してはどうかというご意見だと思うのです。
○良永先生 ああ、そういう趣旨ですか。
○岡崎座長 はい。ただ、連続して起こるということと、近接性は概念が違いますので。
○良永先生 それでしたら、いまのお話と私が言っていることは矛盾はしないということですか。
○岡崎座長 矛盾はしないです。
○良永先生 わかりました。
○岡崎座長 しかし、連続して起こるということを視点として入れることは、大事ではないかと思います。
○良永先生 ありがとうございました。
○黒木先生 東京地裁の評価はどのように判断されたのでしょうか、出来事評価は。
○西川職業病認定対策室第一係長 監督署の段階でということでしょうか。
○黒木先生 はい。
○西川職業病認定対策室第一係長 これはいくつかばらばらの出来事で取っていまして、まずラインを導入するに当たって、小さなメンバーですが、3、4人のところのリーダーになったというところを、「昇格・昇進があった」というものにしています。それから、新しいラインをつくっていくことで機械を導入したりして仕事量が増えているわけですが、それはそれで、「仕事内容・仕事量の大きな変化があった」ということに当てはめています。さらに、トラブルが度々起こったことは、「ノルマが達成できなかった」ということに当てはめています。
○黒木先生 時間外はどのくらいあったのですか。
○西川職業病認定対策室第一係長 署の認定では、月に最大で92時間です。裁判所では102時間といわれております。
○黒木先生 これはどのくらいの期間に起こっているのですか。
○西川職業病認定対策室第一係長 先ほど申し上げたものは発病前6か月の中全部ですので、4月の発病で、2月にトラブルが発生、その前の12月に新しい機械が入って仕事が増えたという状態です。
 4月の発病で、その前6か月、9月のところからいろいろ拾っておりまして、先ほどの小グループのリーダーになったというのが9月、12月に新しい機械が入って仕事が増え、さらに2月頃からトラブルが多々発生したということで、事実認定はされております。
○岡崎座長 「連続して」という表現と合うのかなと思いますけれども。
○山口先生 これは判決ですから、お医者さんの先生方が患者の過程をずっと診ておられて、このように認定されたという話ではないのです。あとで訴訟になって、裁判官が過去から振り返って、こうだったと整理しただけの話で、果たしてこれが医学的に根拠のある整理かどうかは別問題です。
○岡崎座長 先生が先ほどおっしゃったように、認定そのものがほとんど書類に基づいて行うという制約もあるということは、確かに認識しておかなければいけないのだろうと思うのですが、できるだけ資料を集めていただいて、現場に近いところで審査もされているのだろうとは思いますが、厳密に言うと、そういった問題も含んでいるかもしれませんね。
○山口先生 こういう訴訟が起こる最近の例ですから、医学の先生方にご紹介しますと、会社外の医師の診断を受けて、病名は覚えていませんが、うつ病だったか気分障害だったか、休職しているのです。休職の規定がありまして、3年間の休職が認められるようになっているのです。
 休職を認められる期間が長く回復すなわち復職の可能性が大きいですから、休職が認められたときには業務上なのか業務外なのかを争わないで休職に入るのです。それで3年経って治らなければ解雇されるという規定なので、2年半ぐらい経ったところで、会社が復職の措置をいろいろとするのですが、それに応じないで3年の期間がきてしまいかけた。
 そのまま3年経ったら復職できないで解雇ということになりますので、3年経つ前の日に、自分の疾病は業務上の疾病であるということの認定の申請をしたわけです。
 その経過を裁判所があとから振り返ってみて、こうだったと言っているわけですけれども、休職に入られたのは、業務上の認定の申請をされた何年も前ですし、その辺の事情は判例がいっているのかどうか本当はわからないと思います。だから、先生方は自分で患者を診ておられて、目の前の実態を明確なように思っておられるのではないかと思いますが、裁判になった事件はあとから振り返りますから、判決文ははっきりしていますが、その辺はそれほどはっきりしていないことが多いと思います。
○黒木先生 事実がはっきりしない部分もあるのですね。
○岡崎座長 通常診断書を書くときには、業務上かどうかということを特に意識して書いていない医師が大部分だと思いますので、そういった情報を十分に集めているかどうかということも、具体的には問題があるかと思います。
 いま、本日の論点の1の中の①の「複数の出来事」というものを議論いただいているのですが、織先生から何かご意見はございますか。
○織先生 基本的なところを確認させていただきます。平均的強度の類型が「I」と「II」の場合には、「I」は低いので、「II」のほうについてのみ考慮する。「II」は、中等度が併存した場合にはどうするのかと。いまその議論だったということでしょうか。「I」と「II」が併存する場合にも、「I」についても考慮するのか。というのは、「I」というは日常生活において比較的よく起こるというものなので、「II」があるときに、必ず複数併存する場合に登場するのかなと思うのですが。
○幡野職業病認定対策室長補佐 事務局としては、「I」は日常的なものということですので、仮にそれを足したとしても、普通の生活の中で起こっているという理解で提出させていただいております。
○織先生 「I」と「II」が併存する場合には、「II」のほうを詰めていくということですね。
○幡野職業病認定対策室長補佐 はい。
○織先生 中等度の「II」が併存する場合はどうするかという問題は、大変難しい問題だと思うのですが、私自身は、長時間労働と他の類型が併存する場合には、確実に強度は増していくのではないかという印象を持っています。労働時間は比較的明確な基準ですし、証拠等も収集しやすいので、特定の出来事が併存する場合に、平均的強度を高める中で、時間については格別の扱いをしていただけたらと思います。
○岡崎座長 事務局から出されている論点1に、論点と言いますが、「例えば」ということで1、2、3とありますが、2番目ですね。そのような特定の項目が重視すべきと考えられるかどうかという論点ですが、いま織先生がおっしゃったのは、長時間労働も定義する必要がありますが、長時間労働とそのほかの出来事が組み合わさった場合、例えばプラス「II」の心理的負荷の強度のものが組み合わさった場合には、強いと評価できるのではないかということですね。
○織先生 そうです。
○岡崎座長 先ほど、「I」をどうするか、「II」をどうするかという議論をしないで、前提で出発しましたのは、いまあるカテゴリーが本当の意味で、先ほど黒木先生がおっしゃったようにリスクが違うのです。ですから、組合せによってはそれが効いてくる。例えば仮に「I」となされているものであっても、組み合わさった場合には、効果として強く効いてくるものもあるのではないかということもありましたので保留したのですが、一応この間の検討が前提になっていますから、「I」については、頻度も高いし、組合せ上は考慮しないことにしまして、「II」以上が対象かとは思いますが、いま織先生からは、長時間労働は評価をして、特定の出来事の組合せを構成するものとして考えていいのではないかというご提案があったわけですが、いかがでしょうか。長時間労働という場合には、数量的にもあれですか。そのあとにかかわってきますけれども。
○織先生 そうですね、何時間だったらと。
○良永先生 確認しておきたいのですが、今日の配付資料6頁の生命保険営業職員の話ですが、ここに「平均II」、「平均II」、「平均I」と3つの事項がありまして、その下に「以上の出来事が立て続けに起こっていることから、『III』とした」とありまして、ここに「I」が入っているのですが。
○黒木先生 これは「II」です。
○山口先生 「部下とのトラブルがあった」は「平均I」ではないですか。
○黒木先生 この当時は「I」ですが、今は「II」に上がっています。
○良永先生 これは「II」に上がっていることが前提に「III」になったのですか。
○幡野職業病認定対策室長補佐 と言いますか、この当時は「I」の評価でございました。それはともかくとして、現実としてノルマ未達の部分と、上司とのトラブルが立て続けに起こっているということで、「III」という評価だったはずでございます。当時としては「I」でございますので、現実的に見る場合には、そういったものも起こっているという出来事自体があったことは認定しますものの、現実としての決定に当たっては、ほかのものがあればこれを特に見る必要はないのだろうと。
 ただ、いま先生がおっしゃられましたように、現状ですと「II」になっておりますので、この評価は現状であれば当然ながら含めてやられているということです。
○良永先生 現在はそれでわかりました。当時「I」であったことについて、私はその当否を言っているわけではありませんで、「I」と評価されたものの業務上外認定における評価の意味というか、極端に言うと、あったということは認めるが評価に影響を与えないという位置づけでしょうね。
○幡野職業病認定対策室長補佐 さようでございます。先ほど申し上げましたように、労働時間と組み合わされた場合には、またその出来事が効いてくるということはございますものの、これだけが起きたということであれば。
○岡崎座長 そうですね。
○山口先生 そうすると、労働時間という要素と複数の出来事である要素というのは、評価表の運用に関する規則みたいなもので特記したほうがいいので、この事例2の裏にある感じだと、いまの評価表の☆の右側に当てはめて出しているわけでしょう。これは原則は出来事が1つだということでやっているから、運用の方法として特記したほうが使いやすく、客観化しやすくなるのではないかという気がします。
○岡崎座長 具体的にはどうなりますか。
○山口先生 例えば負荷の評価表ですが、運用に関する留意点というものを作って、それを付けるということです。それが私の頭の中でイメージしたものです。
○岡崎座長 そうしますと、いわゆる長時間労働ということが評価された場合にはということを書いて。
○山口先生 いま労働時間数は、精神障害の場合は何時間ということでは出ていません。
○岡崎座長 そうですね。
○山口先生 ところが、脳・心臓疾患では1か月に100時間とか、4か月で平均などと言っていますから、判例は勝手にあれを使って認定していたり、60時間ぐらいだったら課長の性格が悪いから発症したとか、いろいろなものを足し算してやっているのです。判例を見ていますと、精神障害の場合でも労働時間は非常に大きな要素になってくると思います。それに対する対応を、判断指針がしないで済むとは考えられないので、どこかで工夫をしなければいけないと思います。
 そうすると、評価表には「注」ということで括弧書きがありますから、目立ってよくないということであれば、このようなものでもいいのかもしれませんが、運用の留意点のようなものがあるのだと思いますから、それを何かにまとめたほうがいいかなと思います。勝手な意見かもしれませんが。
○岡崎座長 論点1の①の「複数の出来事」については、随分議論いただいたと思います。具体的にも、近接性、連続性ということで、そこに留意して出来事を評価するということ。それから、長時間労働というのが入った場合には、出来事の組合せ上、それは強い心理的負荷強度をもたらす可能性が非常に高いと考えるべきではないかという提案がありまして、それを具体的に注意書きなり何なりで、運用の仕方として導入してはどうかというご意見をいただきました。そういったところでよろしいでしょうか。長時間労働以外にも、もっとこの項目は重視すべきではないかというご提案がありましたら、お出しいただきたいと思います。
○荒井先生 連続性と近接性のことなのですが、業務の困難性が大きいと思います。黒木先生の研究でも大きいですよね。困難性、難易度です。難しくて、責任が発生する、ペナルティが発生するという系列があるわけですが、それについては労働災害になっている事案が多いということがあったので、そういうところについては少し書き込んで。逆に言うと、そういうものが業務上になっているということだと思うのです。ですから、その事例を出すということで、皆さんに理解していただくと。それが1つの典型例と。
○岡崎座長 扱い方は、その長時間労働といったようなもの。
○荒井先生 そうですね。業務が困難であって、それに伴って出来事が近接あるいは連続して起こると。それで仕事がうまくいかなくて、ペナルティが発生してというストーリーがあるわけです。それだけではないわけですが、そういうものを事例としてお示ししていくことが、皆さんにとってわかりやすいことになるのだろう。事例集でもいいのですが、モデルをお示しすることが。
 2つ以上認められた場合について、2つなのかという議論はあるかもしれません。例えば3つだと主張される方がいると思いますし、2つだと主張される方もいると思うのですが、いずれにしろ、2つ、3つではなくて、具体的な事案を書き込んで示すことが、事務局もお考えなのだろうと思うのですが、そうするとわかりやすいと思います。
○岡崎座長 ご異存がなければ、過去6か月間に近接あるいは連続して出来事が生じたと。その場合に、その生じた出来事の中に長時間労働をもたらすものがあったという場合、それから、出来事が生じてそうなったのでしょうが、業務自体に困難性と責任性が非常に高いものが含まれている場合には、それに留意して評価をすると。
○荒井先生 例えばですね。
○岡崎座長 評価をするということは、心理的負荷が強度であるという総合的な判断を促進するものですよね。長時間労働と併せて、その業務の困難性、責任性のデータもあるということですので、それを加えると。
○山口先生 荒井先生には申し訳ないのですが、私はそれは腑に落ちないのです。業務の重要さ、難度、責任度というのは、まさに評価表の☆の右側の要素を考慮して決めるようになっているのではないかと思うのです。だから、それを別の運用の何とかで書き出すというのは。
○荒井先生 運用というか、事例集です。この表自体を云々する話ではなくて、どちらかというと、どのようなものがより労災として認められているかということを例示するということで、例としてはこのようなものですというときには、いま申し上げたような業務の困難性など。
○山口先生 それはよく企業の実務担当者の方などに、これをご覧になってどのようなものがここに当てはまるのかよくわからないと、だから、そういう実例などの例を示したものがないと、会社ではやりにくいのだという声は聞きますから、先生のおっしゃっているようなものができれば、益するところは多いと思います。
○荒井先生 そういう意味です。過去に認定されたものでもいいですし、あるいは作成してもいいのですが、モデルケースのようなもので何パターンか。
○山口先生 事柄の性質上、判断指針で認定基準のようなものですから、相手先は役所の出先機関です。だから、本来は企業などは関係ないわけですが、従業員を抱えていますから、メンタルヘルスもやっていかなければいけません。そういうときに、みんな関心を持って役所のものを見ているわけです。そうすると、これだけですと、解説書も何もない法律の条文を見させられているようで、よくわからないわけです。だから、評価表の運用について、そのような何かわかりやすいマニュアルとか解説があればいいと、企業の人は口を揃えて言います。
○黒木先生 現実に100時間以上の時間外労働の労災認定患者と、99時間以内と比べると、出来事として多いのはノルマを達成できない、過重な責任、仕事の失敗で、その中のノルマが達成できないという事例は、100時間以上の時間外労働者に多いというデータも出ています。なぜノルマが達成できないかというのは、いろいろな理由がそれに付随していると思います。あるいは原因であったり誘因であったりということがあるので、そこから過重性が出てきて、精神疾患の発症につながっていくということではないかなという気がします。
○岡崎座長 黒木先生のご意見は、私は先ほど先走って、長時間労働と同じように扱うのかなと思って入れましたが、そういった方向のご意見ですか。
○黒木先生 長時間労働は当然考えなければいけませんし、それが疲弊した状況を作っていることは間違いないので、そこに何か出来事が加わると発症につながるということはあると思います。
○岡崎座長 そうすると、業務の困難性、責任性というのは、事例集の中の事例で示すことでよろしいですね。それでは、出来事の近接性、連続性に留意して評価を行うと。その際に長時間労働がある場合には、ほかの出来事との組合せにおいて心理的負荷強度が強度になる可能性が高いものとして考える、といったところでまとめさせていただきます。
 次に論点1の2つ目の「労働時間数」へ移らせていただきます。先ほど黒木先生から、長時間労働は心理的負荷強度を「強」とする非常に重要な評価項目であるというご提案がございました。一部議論に入っていますが、いかがでしょうか。具体的に数値として示すことができるかどうかですが、これについてはデータも示されていますので、議論しやすいかと思います。
 先ほど山口先生が、ほかの疾患のということをおっしゃっていましたが、ほかの疾患ではどのような目安があるのでしょうか。
○山口先生 ここの問題点は、極度の長時間労働の数値を考えてみるということなのでしょうか。それとも100時間程度の時間外労働があれば、業務の評価で1ランク☆印が上がるということの議論をするのですか。
○幡野職業病認定対策室長補佐 まず、恒常的労働時間としまして、現状で月100時間が示されております。その上の「極度」ということであれば、当然それより高い時間が想定されるところでございますが、そこの部分がまず示されておりません。したがいまして、まず、それだけでも「強」となるような時間のところをご議論いただいて、それで100と近似の場合だと、どこで区分けを付けていかなくてはならないのかというものが必ず出てまいりますので、そうなりますと、次にそちらも併せてやっていただくと考えております。
○山口先生 それはいただいた資料2の8頁の表で見ますと、極度の長時間労働で認定されたのは140時間以上ですね。だから、140時間以上だったら認定されるというのははっきりしていると思いますが、件数がわずか6件だから、これでいま基準を決めるというわけにはいかないのではないかと思います。これでいいのかどうかというのは、この数字が出ているから、こういうことを念頭に置きながら運用していくのはいいと思いますが、決めるには件数があまりにも少ないから、もうちょっと観察、分析が必要かなという気がします。
○黒木先生 指針には、生理的に必要な最低限の睡眠しか確保できないほどの状況が数週間、2〜3週間ということでいいのですかね。それが具体的にどのくらいの時間外労働につながるかは書いていないですね。先ほど事務局が紹介した地公災などは、週40時間と具体的に書いてあるので、そこの生理的な睡眠が確保できないということをどのように考えて入れ込むかということだと思います。
○山口先生 差し障りのあることを言うことになるかもしれませんが、これは民間ですから、ものすごく労働時間は長いと思わなければいけませんから、140時間以上は当然これに当たるのでしょうけれども、問題は7の数値を使って、100時間で特別な要素があれば評価を高くするというのは従来のやり方で、これは問題ないと思います。120時間以上だと全体が20件で、業務上の認定が20件だから、ここでこれを採用してやっていいかどうかは検討の余地があります。
○黒木先生 土日を休んでも120時間になるのですよね。
○岡崎座長 8頁の。
○黒木先生 発症前は、例えば1か月ではなくて、1週間、2週間で、発症前が夜勤あるいは深夜労働が集中して、夜も遅くまでやって帰る、睡眠も確保できないような状況が数週間続いているという状況だと、それは因果関係があるかなという気はするのです。だから、1か月というよりも、発症の2、3週間前の時間外が大変な状況であったというのであれば、かなり過重性は高いと考えてもいいかなと。
○山口先生 120時間ぐらいでもあり得るということですか。
○黒木先生 事例によると思いますけれども、ほとんど毎日出てきている、深夜に帰っているという状況ですよね。あるいは寝泊まりをしているとか、そのような状況が数週間ですよね。
○山口先生 この8頁に出ているのが例なので、これで議論すればいいのでしょうが、1の睡眠時間が4時間になるケースというのは、時間外労働は6時間になっているのです。これはこのような例だからいいですが、民間は6時間だったら深夜業にかかるから、あまりそれは多くなく、どちらかというとこのようなときは土日に出てくるようになるのです。6時間長く働いて、土日休んでいるというのは民間ではあまりないように思います。だから、土日の休日が取れているか取れていないかという要素も、どこかで入れたほうがいいと思います。
○岡崎座長 そのほうが現実的ですね。土日はすっかり休めて、週日は長時間というパターンは意外に少ないのではないでしょうか。
○鈴木先生 土日の場合も入っているのではないですか。
○岡崎座長 ありますね。それに加えて土日も出た場合が例示してあるのですね。
○荒井先生 2の業務により睡眠が5時間となるもののいちばん下で、土日も働いたケースが204時間で、それが例えば3週間と考えると、153ですね。
○山口先生 労働時間が週40時間ですから、160何時間です。だから、時間外が204時間もあれば370時間ぐらい働いているわけですからね。
○荒井先生 数は少ないですが、そういう160時間が5件あってということですよね。連続してというのが大事だという、いまの極度がそうですね。休日なしに働いたということも、重要な要素になっていると思うのですが、そうすると150内外の数字が出てくることも。それから地公災の例示の40という。それは3週間だと120になりますが。
○河合補償課長 医学的には、土日も休まずに1週間で40時間残業したのと、土日は休んで1週間40時間の時間外労働したものと、どう評価すべきなのでしょうか。
○黒木先生 土日にはかなり休めますよね。現実に研究職で実際に診ている人がいるのですが、土日は休んでいます。ところが深夜業務なので40時間ぐらいは残業しているのですが、何とかもっています。産業医の面談もしていないというから、軽減すべきであるとの診断書を書きました。本人は、そこから部署を替えてほしいという要望も出しているのですが、危ないと思って連絡をしても、会社は替えないので、いまのところ診断書を出して様子を見ています。でも、ずっともっているのです。
○河合補償課長 土日に休めば、それだけ疲労は回復すると考えるべきだと。
○黒木先生 そのように考えてもいいかなと思います。
○河合補償課長 そう考えても、それは別に医学的におかしいことではないということですか。
○黒木先生 おかしくないと思います。
○河合補償課長 逆に言えば、3時間ずつでもずっとやっていたほうが苦しいだろうと。
○黒木先生 連続は条件としては厳しいと思います。
○岡崎座長 大体臨床医の先生方は、ご自身が結構長時間労働をしていますので、長時間労働に関しては見方がかなり厳しいのです。そのような印象を受けていますが、織先生はいかがでしょうか。
○織先生 弁護士の立場からすると、極度の長時間労働は、事務局でお作りいただいた「労働時間と認定状況の関係」からすると、120時間を超えた例では全件認定になっていますから、120時間を基準にしていただけたらと思います。
 というのは、120時間を基準にしたとしても、もし土日は休めていたはずなのにうつ病になったというのであれば、プライベートによる心理的負荷があったのではないか、あるいは身体的素因があったのではないか、あるいは相当因果関係が認められないのではないかという、他のところでいくらでも篩い落とせると思うのです。それを、あまり労働時間を厳しくしてしまうと、本来テーブルに載るべき案件が、どんどん落とされていってしまうのではないかという懸念がございます。120時間というのはちょっと甘いかもしれませんが。
○山口先生 反対ではないのですが、決断するのに20では実証的な基礎が足りないかなという気がするのです。
○黒木先生 120時間というのは月にということですか。
○岡崎座長 4週間ですね。資料の7頁で、先ほどのご説明ですと業務上と認定されたものは、20件中20件が120時間以上ということですね。120時間以上は100%認定されているということで、100時間〜120時間で24/27というように認定が分かれてくることになります。
 いま議論いただいているのは、労働時間の程度のみを要件として、強い心理的負荷の存在を肯定するものとして、表現としては「極度の長時間労働」ということで、「例えば、数週間にわたり生理的に必要な最小限度の睡眠時間を確保できないほどの長時間労働」という定義なのですが、それについての評価期間あるいは時間数、何週間ぐらいどういった労働時間があった場合にはという、目安を議論しているわけです。具体的には、織先生からは120時間以上が妥当ではないかと。その前には140時間以上というご意見がありました。
○鈴木先生 この時間は、発症前4週間ということでしょうか、過去6か月の平均ですか。
○西川職業病認定対策室第一係長 資料2の(1)と(2)では取り方が違いまして、(2)はまさに「極度の」ということで、そこだけを見て認めたものですので、評価期間となっています発病前6か月の中で、いちばん長かったところを取っております。(1)は、ものによって評価期間は違うのですが、発病の時点から遡って、いちばん短いものは直前1か月、いちばん長いものは直前6か月の平均を取っておりまして、その1個の事案がどれであったかは、監督署がどこを見たかによって違っております。
○良永先生 1か月と6か月と混ざっているのですね。
○西川職業病認定対策室第一係長 混ざっているということです。
○黒木先生 発症前を見ることが多いのではないでしょうか。
○西川職業病認定対策室第一係長 全部発症前です。
○黒木先生 発症前1か月、あるいは発症の前が睡眠が取れていないというのは大きな要素にはなると思います。
○西川職業病認定対策室第一係長 6か月前だけとかではなくてということですよね。
○黒木先生 はい。もちろん6か月前から長時間残業は発生しているのだけれども、発症した時点から、その直前の状況がどのようなものだったかということを検討して初めて長時間労働が精神疾患発症に関係していると言えるのではないでしょうか。
○良永先生 お伺いしたいのですが、資料によると120時間以上は全部認定されています。時間数が短くなればなるほど、認定件数と請求件数の差が開いています。
 認定されたり認定されなかったりするときの判断要素ですが、例えば120時間以上は100%ですが、これは労働時間だけで認定したのですか、それともほかの要素も組み合わせた事例も含まれているのですか。
○岡崎座長 これは組み合わせた事例です。
○幡野職業病認定対策室長補佐 基本的に出来事がございまして、この表の具体的な出来事からいったものでございます。
○岡崎座長 そういう事例の時間外労働時間数を評価したら、このような分布になっているということですね。ですから、長時間労働というファクターがあれば非常に率は高いということがわかる一方で、120時間を超えたものはほかの出来事に関係なくという感じですか。そうは言えませんか。
○幡野職業病認定対策室長補佐 はい。出来事がございまして、その出来事の評価と出来事後の評価で、ともに120時間があり、何らかの出来事があればほとんど業務上ということです。
○山口先生 出来事があればというのは、数値を決めて、それだけでほかは見ないでということですよね。
○岡崎座長 いま議論いただいているのは逆ですね。時間数のみを要件として、強い心理的負荷が存在したと肯定する条件になっている表現に、時間的な目安を付けられるかということですよね。
○黒木先生 出来事がないというのはあまりないですよね。
○岡崎座長 出来事は必ずあると思いますけれども。
○清水先生 いまのお話にございましたように、そういう意味では明確化というか、わかりやすさを求めるのに1か月当たり、例えばここには、おおむね100時間程度の時間外労働があることが、心理的負荷評価表の具体的出来事の1つに書いてあって、それが心理的負荷の強度で「II」であれば、先ほどのほかにもう1つ出来事があれば、それは強度「III」になるという考え方として、非常にわかりやすいと思いますので、そういう意味では1か月当たりおおむね100時間がいいのか、120時間がいいのかといったご議論もあると思うのですが、このリストの中に、1か月当たりおおむね何時間程度の時間外労働があるということが、1つの心理的負荷の要素なのだということがわかりやすく書いてあると、非常にいいのかなと思います。
○岡崎座長 資料1の1頁の囲みの中に書いてある職業病認定対策室長事務連絡という、こういった具体的な目安の時間がある程度使用されているわけですよね。
○鈴木先生 労働時間について、最近私は自動車部品工場と関係しているのですが、今年度に入りまして時間外労働の割増しがきたりしまして、なるべく時間外はするなということで、労働組合に入っている人たちの時間数は、人事課の残業というのはなくなりまして、40時間のところに寄ってきているのです。労組以外の人、いわゆる管理職などを含めますと、休憩しないというところが多いのです。実はしているんだけれども、していないという。表向きはなっていないけれども医師による面接はしようということで、100時間以上残業をやっています。
 100時間以上でどのような状況かというと、若くてやる気のある人というのは、190時間でもピンピンしているのがいたりしまして、医学的に問題のある人はごくわずかです。キャリアパスなどの問題もありますし、一概に労働時間を短くしなさいとは言いにくいのです。全体としては減る方向にあります。
 したがって、120としないで100にして、いろいろな状況を加味するとしたほうが漏れが少ないと思います。3頁の四角の中にあるように、100というのがいい数字かなと思います。
 先ほどの業務上認定の分布表を見ると、100から120時間の人数が上がっているのです。これは100時間以上というのがマークしやすいので、どうしても数が増えてしまうということですね。統計でいうとヒーピングといって、丘ができるという意味ですが、そういう意味でも時間外労働100時間というのは、いい数字かなと思っています。行政関係では今までよく使われていますので。
○岡崎座長 100時間ですね。
○鈴木先生 はい。
○岡崎座長 確かに、最近、私ども医療の現場も、労働基準監督署の指示が非常に厳しくなっていまして、当直明けなどの勤務は、いままで習慣として医師の場合は普通にやっていたのですが、管理者としては大変困っています。本当に医師が足りないという現状の下で苦しいところなのですが、でも、そのような前進的な方向だと基本的には思っています。
 確かに先生がおっしゃるように、これから時間外が減ってきますので、140時間などは極めてレアなケースになってくると思います。ですから、むしろ今後感度をよくしておかなければいけない面もありますので、すでに使用されている100時間というのも、1つの案ではないかなと思います。
○良永先生 100時間とする場合、27ケースのうち24ケースということで、非常に高比率で認定されているのはよくわかりますが、気になるのは3つは落ちているのです。ですから、今日でなくてもいいのですが、どのような事案でこれが業務外になったのかを、参考までにわかれば教えていただければと思います。
○岡崎座長 3例が違いがあるわけですね。
○良永先生 少数なので無視してもいいかなとは思うのですが、先ほどの100時間ぐらいを目安でというお考えも非常に有力だと思うのです。3つ落ちているので、確認しておきたい気はします。
○岡崎座長 次回にでもまた具体的なケースをお示しいただくことにしましょうか。
○良永先生 はい。
○岡崎座長 まだ時間に関して、これがいいという結論は出せていないと思うのですが、100時間から140時間までの幅が今のところあると思いますが。
○河合補償課長 事例から見て、長時間労働は精神障害の発症に大きな影響を及ぼすと言えるのか、甘いのでしょうか。どのような感じでございましょうか。
○黒木先生 大体は出来事があって、その出来事のあとに長時間労働が発生し、それは100時間以上あるいは100時間近い場合が多いので、その場合は大体認定という形になっていく事例が多いと思うのです。
 ただ、事例によっては150時間、160時間、200時間近くの人もいましたけれども、発症しない人もいるわけです。それから、1つの事例でも、残業時間が200時間近いときには発症しないで、暫く時間が経って全然別の要因で、本人は業務上と言っていますが、上司とのトラブル、それも大したトラブルではなく、本人自身がその中で浮いてしまったことによって、その請求をしてくるという事例もあるので、個別事例で随分違うという気はします。
 だから、何時間があったから絶対に精神障害が発症するというのは、時間外労働だけで特定するのであれば、100時間というのはどうかなという気はしています。
○河合補償課長 出来事とセットということですね。
○黒木先生 セットです。それは基本だと思います。
○岡崎座長 出来事がなくて、長時間労働があるというのもないでしょうから。出来事があって起きるものでしょうから。
○荒井先生 年齢が相当効いてくるのではないかと思うのです。20代、30代、40代、50代で、長時間労働の個体に対する影響が変わってくると思います。ですから、これは証拠を出せといったら難しいですが、35歳ぐらいが1つの分水嶺になっていて、35歳以前だと相当無理ができる方が多くて、35歳を超してからやると、それなりの健康障害が出てくるという、経験則と言いますか、激しい長時間労働が多い職場でリタイア率が高いのは35歳です。ですから、35歳を超えてから長時間労働をするのは、リスクは上がると考えています。年齢のことはないですよね。
○岡崎座長 年齢のファクターが抜けていると。
○荒井先生 はい。
○岡崎座長 それは本当に妥当な指標だと思います。
○荒井先生 いま100時間という数が出ているのですが、50歳の100時間と20歳の100時間では、ある程度は違うと思います。どのくらいの比率かということでお示しすることは難しいのですが、違うことは違うと思います。
○岡崎座長 そこは本当に考慮すべきファクターだと思います。労働時間数を評価する際に、年齢を考慮するのは妥当ですよね。留意して評価をすることが。
○荒井先生 検討していただいた上で、いろいろな結論が出てくると思うのですが、適用するときに個体側の問題として考慮していただきたいと。
○岡崎座長 そうですね。
○山口先生 それはある意味では個体側の要因も見るということですか。
○荒井先生 狭い意味での個体側要因ではないのですが、加齢ですね。エイジングに伴う健康の障害しやすさは当然増してくるわけですから、それについては負荷の程度が違うのだろうという気がします。
○岡崎座長 修正の要因として、個体側要因には年齢は入っていたのでしょうか。
○山口先生 入っていないです。
○岡崎座長 たしか明記されていませんよね。どちらに入れるかという問題でもあるのですね。
○渡辺職業病認定対策室長 医学的な問題としては、そのほうが適正な認定が向上していくと思います。一方で、現状は100時間あれば年齢は関係なく、評価を1ランク上げましょうということでやっていますが、それが年齢ごとにということになると、また認定の実務の面で言いますと、よけいに難しくなる方向になってしまいまして。
○黒木先生 これは個体側要因に入るのではないですか。
○山口先生 いまのも100時間だけではなくて、業務も見ているわけですよね。
○渡辺職業病認定対策室長 そうです。業務を見て評価しまして、それに出来事前に100時間の労働時間があった場合には、出来事評価を1ランク上げましょうとしています。それが、今度は100時間あったからといって、単純に「II」を「III」には上げませんと。その人の年齢ごとに、個別判断になるのではないかと思ったものですから。
○荒井先生 極端なことを言うと、極度の長時間労働について年齢を考慮していただければとは思っています。いま実際に100時間で走っていることはわかっていますし。
○山口先生 それは、実際には年齢を見て、年寄りだからきつかったであろうという推定は働くかもしれないけれども、若いからいくら働いてもいいのだよというようには使えないでしょう。
○荒井先生 それはそうですね。
○山口先生 プラスアルファの要因だから。
○荒井先生 年齢が上がれば、100の重みがより重くなるというように。
○黒木先生 医学的にということですね。
○荒井先生 はい。それを反映させるかどうかは、また別の問題だと思います。
○山口先生 そうすると、申請の様式か何かに生年月日が書いてあれば年齢はわかりますから、それで、過重要因になるかどうかだけを見ればいい。
○岡崎座長 複雑化しないということが今回の趣旨ですので、ご指摘の点は確かに大事な点ではあるのですが、同じように効かないというのは合意できるようなことでもありますので、複雑にしない形でそれをどう反映させるかを検討すべきかと思います。それを記録に留めまして、留意をするという項目として残しておきたいと思います。
 私の不手際で時間がきていますので、本日はどうもありがとうございました。本日の論点1だけになってしまいました。しかも論点1の中の2つ目の「労働時間数」については、おおよその目安まで到達しておりませんが、次回の冒頭にそれをまとめさせていただいて、その次の本日の論点2に次回は移らせていただきます。今日は時間の関係でここで終わらせていただきます。ありがとうございました。
○板垣中央職業病認定調査官 次回は1月28日(金)の午後6時からを予定しています。よろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

労働基準局労災補償部
補償課職業病認定対策室

電話: 03(5253)1111(内線5570、5572)

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