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2010年9月17日 第27回 労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会建設労働専門委員会

職業安定局建設・港湾対策室

○日時

平成22年9月17日(金)15:00~


○場所

厚生労働省 職業安定局第1会議室


○出席者

公益代表

征矢座長、柴田委員、白木委員

労働者代表

野村委員、古市委員、山下委員

使用者代表

加藤委員、才賀委員、福田委員、室川委員

参考人

職業訓練法人全国建設産業教育訓練協会 菅井専務理事
独立行政法人雇用・能力開発機構 中山大学校部長

事務局

山田職業安定局次長、堀井建設・港湾対策室長、高松建設・港湾対策室長補佐、山建設・港湾対策室長補佐

○議題

(1)教育訓練の現状と課題について
(2)その他

○議事

○征矢座長 議事に先立ちまして、本年7月に建設・港湾対策室長に異動がありましたので、ご紹介させていただきます。
○堀井室長 7月30日付で建設・港湾対策室長を拝任しました、堀井でございます。よろしくお願いします。
○征矢座長 次に委員の出欠状況ですが、本日は上山委員がご欠席です。それでは議事に入ります。本日は「教育訓練の現状と課題について」をお二方にご説明をいただくことにしています。お1人目は、職業訓練法人全国建設産業教育訓練協会の菅井専務理事です。お2人目は、独立行政法人雇用・能力開発機構大学校部の中山部長です。それでは初めに菅井専務、よろしくお願いします。
○才賀委員 菅井の前に、富士教育訓練センターの会長をやらせていただいている才賀でございます。富士教育訓練センターは平成9年4月に開校し、今年で14年目でございます。トータルの教育延べ人数は約40万人日ということで、大いに勢いを増しているというのも現状でございます。3年ほど前には1年間に4万人日いけるだろうということで頑張っておりましたが、そこまでは若干手が届かず、それ以後、景気の低迷もありまして、いま3万5,000~3万6,000人というのが現状でございます。これからはゼネコンだけ、また発注者だけでなく、専門工事業者も併せて建設業界の育成に努めていきたいと、かように思っております。できましたら「建設オープンカレッジ」というようなことで、大きく広く今後、進んでいきたいということで、希望を持って向かっているところでございます。本日は短い時間ですけれども、当協会の菅井専務に説明させますので、よろしくお願いしたいと思います。ありがとうございました。
○富士教育訓練センター菅井専務 お手元に資料等を配付してありますが、パワーポイントで説明をさせていただきたいと思います。
 今回の議題は、教育訓練の現状と今後の見通しについてということでお時間をいただきました。現在の施設の状況ですが、当初は建設大学校の跡地を払い下げたという形で、5万1,000平米の敷地を活用して教育をしています。220名泊まって、必ず研修は宿泊をしてという形の施設にしています。場所は静岡県富士宮市の朝霧高原ですが、学校の裏山が富士山という場所です。建設業はチームワークが大切ですから、団体のチームワークを作るために、毎年、7月には訓練生を富士登山に教育訓練の一環として連れて行き、皆さんと感動を味わう教育をしているところです。
 役割について、現状をお話します。団体会員は建設専門工事業と言われている32の団体が母体で、運営されています。開校時には22団体だったと思いますが、毎年1団体ずつ増えている状況です。厚生労働省からは、全国規模の広域認定の職業訓練施設という形での認可をいただいています。国土交通省からは、業種横断的な拠点的教育訓練施設という位置付けをいただいています。静岡県からは、職業訓練法人の認可をもらっています。支援団体としてたくさんの団体がありますが、団体会員が32、賛助会員が5ということで、たくさんの団体にご協力をいただいている状況です。
 職業訓練の実施ですが、当然、技能の向上が教育の目的です。未熟練者の即成果・即戦力化、中堅技能者のキャリアアップ、このような目的で教育をしています。登録基幹技能者の受託ですが、今、専門工事業は職長クラスの管理能力の向上ということで教育しています。多能工の育成は平成9年から教育をしていますが、複数の業種の仕事ができる人材育成、併せて出張講座による技能教育をしています。
 未入職者の教育では、高校、専門学校、大学といった、これから職に就こうという方たちの教育も積極的にやっていくために、現在、実務体験教育を実施しています。いま大切なこととして、ここにキーワードがあるのかなと感じます。また、年間250名の海外の研修生を受け入れて日本語の教育をしています。センターとして土木設計技士資格検定試験という、これは民間資格ですが、去年と今年で約2,000名の受講者を迎えました。このような事業を行っています。
 こういった形で各組織が教育を行い、富士教育訓練センターが人材育成に取り組むことにより、健全で生産効率の高い建設産業の実現に貢献していると思います。社会資本整備に取り組むことにより、安全・安心な社会の実現に貢献する建設産業界を、富士教育訓練センターは支えている。こんなふうな気持で教育を実施しています。
 現状の数字から説明します。教育訓練の人日数の推移です。平成9年に開校して今年で14年目、平成21年までの数字のグラフです。毎年、こうした形でたくさんの方が教育に参加をしていて、昨年度は3万5,913人日という延べ人数です。受講者の推移ですが、平成9年から平成18年、19年は、人材育成と建設業の質の向上をしようと、たくさんの方たちが参加するようになりました。平成21年度は、受講者の数が1万4,561名、参加企業が5,000社以上です。大体、こんな数字がこの2、3年横ばいで推移しているのではないかと感じています。平成9年の開校時からの累計ですが、受講人数は9万人、参加企業が3万1,222社、教育訓練人日数が40万1,000人日です。
 ここだけはどうしてもお話をしたいと思って、このグラフを用意しました。平成14年から当センターで、こういった高校生のインターシップに関わる職業教育をしていこうということで、これは全国建設業協会と連携プレーしてやっている内容です。数字も見ていただくとわかるように、年々、こういったニーズが増えています。168名ですが、石川県では来年の2月ぐらいにまたやりますし、180名ぐらいが今年の実績かなと思います。全員が当センターでこういう勉強をしたいという学校もあります。しかし、中には予算がないという話が聞こえてきます。そんな所にたくさんの投資ができたら、もっともっと職業の勉強をしながら、こうして就職できるような環境が出来上がるのではないかと感じています。それでは画像をお見せします。これもどうしても皆さんにお見せしたい。2年前、高校生の教育を紹介した内容です。(ビデオ紹介)
 こういう形でビデオを通しながら、お話させていただきました。「建設業というのは夢のある仕事だよ」と彼が言った言葉に胸が熱くなりました。我々も少し忘れている状況があったのかなという感じがします。今年、建設業の人材育成支援助成金が創設されました。私は本当にうれしいなと思います。できたら全国47都道府県の高校生が、こういう職業の勉強ができる環境をもっと早くしていただけたら、うれしいと思っています。
 次に、富士教育訓練センターの中期構想について説明します。まず使命ですが、私たちは平成9年から、自分たちの手で人材育成をしていこうということで、自分たちに必要な人材を自らの手で育成していくとして開校しました。次に、将来構想ですが、日本における職業訓練のオンリーワンを目指していく。当初、9年にスタートしたとき、本当にこのセンターが成り立つのかなという不安すら抱えながらセンターの仕事をしていましたが、これからは皆さんが共有できる訓練施設にしていきたいと思っています。
 5つほど構想を掲げています。1番目は「講師陣のさらなる充実と教育訓練生活環境の充実を図っていく。2番目には「実力を養うための指導環境の十分な整備」、3番目に「「建設オープンカレッジ」への飛躍を図る」。4番目に「建設産業界の魅力と名声の高揚」、5番目に「持続的発展のためのコミュニティ形成」です。細かいところは皆さんのお手元に配付している資料を見ていただければわかると思います。こういった構想の下に富士教育訓練センターを、これから進めていきたいと思っています。
 いろいろな状況がありますが、教育訓練施設ですから「あの資源を最大限に利用したら何でもできる」、そんな環境がございます。その中で人を育てるのは先生、講師ですので、講師の陣容を充実させ、合宿生活をしながら研修をするわけですから、その環境の充実を図る。指導員に対する十分な整備ということで、能力アップも実施していく。「建設オープンカレッジ」という形で、開かれたいろいろな人たちが集まって教育訓練が受けられるような場にしていく。4番目の建設産業の魅力ですが、先ほどのビデオの中で、子どもたちが「夢のある仕事だ。」と言っていましたが、そういう建設業にしていきたい。5番目が持続的な発展のためのコミュニティの形成ですが、いろいろな地域の人たちも当センターに集まって、いろいろなことができるような環境にしていきたいと思います。
 次に、今後の方向性です。教育訓練機関としての運営強化ですが、1点目は「認定職業訓練の充実と斬新なカリキュラムの提供」です。時代が刻々と変わっていきますから、それに対応できるカリキュラムを提供をしていく。2点目は「キャリアアップの促進」です。当然、能力アップといったところに目線を向けて実施していく。3点目は「実務実習の拡大と出前実務実習の促進による若年者の建設業界への入職促進」です。「なかなか時間を割いてセンターまで来て実務実習は。」というお話がたくさん聞こえてきます。それであれば私たちが出向いて行って実習をすることによって、そういった実務的な教育も指導できるような環境を作っていく。若年者の建設業界への入職促進を、もっともっと積極的にやっていく。4点目が、「実施人数拡大のためのPR活動の創案」です。当然、いろいろな媒体を活用しながらPRをしていこうと思っています。5点目が「ニーズに対応した短期型出前講座の実施」です。最近は3日の講習もたくさん出てきています。そんなところから私どもが出向いて行って講座を開く。昨年、愛知県と長崎県の出前講座で学校の先生方の講座も開きました。非常に参加者が多くて、喜ばれた状況がありますから、ニーズに対応していこうと思っています。
 関係機関との連携強化ですが、1点目は、会員団体との連携強化により満足度の向上を図る。現在、32の団体ですが、たくさんの団体がまだまだあります。たくさんの方が集まって連携できる環境を作っていく。2点目が関係省庁、関係団体との連携強化です。3点目が派遣実績企業との関係強化です。
 指導者の資質向上とカリキュラムの充実ですが、1点目は客観的な業績・能力の評価体制の確立で、教育者の評価の体制の確立をしていく。2点目は、Web-learningでの情報提供と通信教育の導入。3点目が多能工技能者の育成と技術者の高品質確保のための管理能力の育成です。
 教育訓練環境、生活環境の整備ですが、耐震化を含めた施設、生活・教育環境の整備をしていく。建設大学校は昭和30年代から40年代に造られた施設で非常に老朽化が進んでいます。何とか環境整備をしながら実習をしていますが、こういった時代とともに古くなってくるところの整備も、これから着々としていかなければと思っています。2点目が教材、機器の質的整備です。教材も古くなってきますので整備をしていく。
 『朝霧コミュニティ』の形成ですが、ブログなどを通じて交流の場の構築と情報公開、ホームページの充実をしていく。安定した運営の実施では、事業収入の拡大として、現在、32の団体が母体で運用していますから、たくさんの団体が加入してここを利用でき、そして皆さんが素晴らしい教育ができる環境を拡大をしていく。そして助成金、支援金等の獲得強化に、これからの方向性が出てくると思っています。
 不安を抱えて教育するのではなく、本当に安心して安定した教育ができるような環境を、是非、作っていただきたい。いつも何かびくびくしながら教育するのではなく、日本の将来が大きく変わっていくときに若者をどう育てていくか。たくさんの議論がされて、そこにしっかりした教育、環境が出来上がったら、私は教育訓練校の地位はもっともっと高まるのではないかと思っています。
 以上が私どもの現状と今後の方向性の説明です。ありがとうございました。○征矢座長 ありがとうございました。ただいまご説明がありました内容につきまして、ご質問等がございましたらお願いします。
○福田委員 日建連の福田です。最近の若い人は集団で研修したり泊まり込んで研修するというのは、私が聞いているところではあまり好きでない。先般、私も見学させていただきまして大変いい施設だなと思ったのですが、先ほどお話にあったように老朽化というか建物が古いかなと思います。これからの若い人を育てるには、もうちょっと魅力のある建物に変えていったほうがいいという印象を持ちました。その辺も助成金の問題で難しいかもしれませんが、何とか頑張ってその辺も力を入れてもらいたいと感じました。
○征矢座長 ほかにございますか。
○柴田委員 質問していいですか。これで収支は赤字とかでなくて、何とかやっていけるという状態なのですか。
○富士教育訓練センター菅井専務 現状はトントンです。
○柴田委員 素晴らしいですね。もう1つの質問は、せっかく実習をやるのですから、実習しながら老朽化の建物を改築していくことはできないのですか。
○富士教育訓練センター菅井専務 実は教育している中で、子どもたちの感想文の中に、自分たちが必死になって造ったものが一瞬に壊されて非常に嫌な思いをすると、そんなレポートがあったのです。それからですが、施設の中を少しでも実習で改築できるようにして、やることによって人が見るわけですから彼らはいい加減なものを造らない、いま、そんな環境に少しずつ変えていっていますけど、追い付かないですね。
○加藤委員 先ほどビデオを見させていただいて大変感動したというか、学校の勉強というのは勉強で、現実的にああいう感じで実務でやると、社会に出て大工さんだったら大工さん、鉄筋屋さんだったら鉄筋屋さん、それがどういう仕事かというのが実体験できると、現実的には離職率の減少にもつながるのではないか。いわゆる頭で思っていたのと実際の仕事のギャップが少なくなるから、その分、入職するときにそれなりの気持で入って来るだろうし、いま、私どものゼネコンに新規で入って来て10年ぐらいまでの定着率は、かなり悪くなってきています。私たちの時代というのは、私は昭和49年に会社に入ったわけですけど、学校の3年のときにゼネコンの現場に行って、夏休みに1カ月ぐらいの実習がありましたから、ゼネコンというのはどういう会社であるか実体験した上で、覚悟の上で入るということがありました。
 ただ、最近、そういうのもあまりなくなってきて、現場としては新卒者を入れるというのは、かなり覚悟がいるのです。怪我をさせたらいけないとか、その辺のことを考えるし、要望があるときは受け入れるけれど、そういうのが当たり前ではなくなってきて、だんだん体験が少なくなってきた。そういうことを考えると、いわゆる離職率減少のためにも、こういう施設というのは非常に大切なのではないか。先ほど3万6,000~3万7,000人日になったというご説明でしたが、平均すれば毎日140~150人ぐらいが施設で研修を受けているのではないかと思います。かなりの人たちの役に立っているという気がしますので、先ほど今年度建設業人材育成支援助成金が創設されたということでしたけれども、離職したときの雇用保険を考えて、長期的に見れば十分ペイするのではないか。もっともっと進めていったほうがいいのではないかという気がしました。
○室川委員 全建ですが、建設業界の状況を先日来、いろいろ皆さんと議論している状況で、そういう中にあって研修生を送り出す立場からしますと、なかなかこういう状況の中で研修生を送り出すのは大変なわけです。国の助成金も活用させていただきながら、私どもも地方協会を通じて訓練生も送り出して、お世話になっているという状況です。そういうようなことで助成金の取扱いについて先日来、議論していますけれども、是非ともそこの助成金のあり方については、よく検討していただいて、是非とも継続していただけるような方向で考えていただければ、いいのかなと考えています。
 また富士のセンターさんでは助成金の活用についても、訓練生の募集に当たっては非常に懇切丁寧な説明をしていただいて、抱き合わせで訓練生の募集をしていただいています。そんな状況もございますので、それも進めていただければありがたいと思っています。
○柴田委員 1つだけ、前々からいつも思っているのは、例えば大学生とかいわゆる在学の生徒たちのインターンシップというときに、先ほど危険もあるから普通の会社は受け入れたくないが、一方でそういう所は欲しいという話もあり、助成金というよりも、いわゆる文科省の教育カリキュラムの中にこれを組み込んでいかないと。昔から言われているのは、学校の教育と職業教育がものすごく分離しているという話なので、文科省の予算もここの中に入れられるような形にできると、前々からいいなと思っています。それが完全に厚労省や国交省など、社会人用の予算でなく、本当に文科省予算がいいなと私は前々から思っているのです。それをここで言ったからといって何のあれにもならないですが、もうちょっとうまくいけばいいなと思いました。
 特に設計士なんかは設計を勉強していても、結局、自分で造るものというのは会社に入ってからでないと造れなくて、びくびくしながら倒れないか心配だとか言っている人もいたりして、むしろそこですぐ壊すものだったら、なおさら1回造ってみてもらうとか、そういう多段階にわたって、ここをうまく利用して機能できればいいなと思うのと、あとオンリーワンとおっしゃっていましたが、さっき見ましたら近場の県からしか来ていないわけです。東京一極集中というか関東だけなので、北海道や沖縄の人たちはそういう機会がないということですから、いろいろ考えさせられました。
○才賀委員 特に東京だとかは多いのですけれども、北海道だと2,400人とか全国47都道府県から結構来ています。
○白木委員 高校生のコースは、どういう形で実施しているのですか。
○富士教育訓練センター菅井専務 高校生の場合は、交通費は自分で負担する。宿泊と受講については建設業協会が負担する形で実施しています。
○白木委員 それは、どこかの高校のクラス全員とか、あるいはいろいろな高校から選抜してもらって送ってもらうとか、そういうやり方ですか。
○富士教育訓練センター菅井専務 例えば千葉県なら千葉県の工業高校が10校あれば、そこからとりあえず募集して、定員が30名ですが40名、50名来るわけです。そういう場合は、学校にお任せして受講者を30名選んでもらう。学校の校長が言うには、できれば自分の学校の生徒は全員、こういう教育をさせたいし、センターまで連れて行きたいと。なおかつ受けることによって学校の科目の中にということですが、予算が取れない。
○才賀委員 文科省のほうは、助成金もあるのですが手続が面倒で、それだけでまいってしまうと。ですから、雇用保険のほうが、早く使える、慣れているというところもありますし。
○征矢座長 ほかにございますか。よろしいですか。いずれにしましても、いろいろお聞きしてご議論いただいた上で、新しい計画をどう作るかというところにつなげていく課題だと思いますので、よろしくお願いします。
それでは引き続きまして、雇用・能力開発機構の中山部長に、ご説明をお願いします。
○能開機構中山部長 本日は、このような機会を与えていただきまして本当にありがとうございます。お手元に資料2-1と資料2-2をお配りしています。教育訓練の現状と課題を中心にお話させていただき、最後に生涯職業能力開発体系について紹介させていただきたいと思います。
 1頁、国(雇用・能力開発機構)及び都道府県が、職業能力開発促進法に基づいて設置している職業訓練校のことを、公共職業能力開発施設と呼んでいます。この公共職業能力開発施設で実施している訓練を下に3つ書いていますが、離職者訓練、在職者訓練、学卒者訓練、これを公共職業訓練と呼んでいます。本日は一番右側の学卒者訓練を中心にお話をさせていただきたいと思っています。この学卒者訓練は、都道府県と私ども雇用・能力開発機構の両方が行っていますが、都道府県のほうは職業に必要な基礎的な技能及び知識を習得する職業訓練で、私どもは、それよりもやや高度な技能及び知識を有する高度技能者養成訓練を行います。そういう切り分けを行って実施しているところです。
 2頁、右上に公共職業訓練施設の設置根拠が書いてあります。職業能力開発促進法15条の6において、国及び都道府県の行う職業訓練が定められていて、(1)~(5)の種類の施設があります。この(1)~(5)で全国に270校が設置されていて、本日は(2)と(3)の施設についてご紹介します。(3)の職業能力開発大学校については、雇用・能力開発機構だけが設置して運営していますが、(2)については都道府県も設置しています。都道府県が全国で11校設置しているところです。下の日本地図を見てください。私ども雇用・能力開発機構は全国10ブロックに、赤字で書いてある職業能力開発大学校を10校設置しています。この職業能力開発大学校に附属短期大学校を12校ぶら下げる形で、全国に展開しているところです。これ以外に横浜市と神戸市に港湾職業能力開発短期大学校を設置しています。それと東京の小平市に職業能力開発総合大学校東京校というのを設置していて、これらの24校、25施設で高度技能者養成訓練を展開しているところです。
 3頁、「ポリテクカレッジ」の設置目的ですが、私どもは実学融合による実践的なカリキュラムにより、ものづくり現場に密着した訓練環境の下に、実習主体の訓練を展開しているところですが、インターンシップなども十分取り入れながら、ものづくり現場を支える実践技能者を養成しているところです。中ほどに「専門課程」と「応用課程」と書いてありますが、「専門課程」というのは、技術革新に対応できる高度な知識と技能を習得した実践技能者を養成することを目的とした2年間の訓練課程です。この専門課程を出た学生が、更にステップアップしたいということであれば「応用課程」に進みます。ここでは、建築で言うと企画開発から峻工に至るまでのものづくり能力、さらには新技術の開発、改善、省力化等にも対応できる、将来の現場のリーダーとなる人材を養成することを目的とした、2年間の訓練課程です。この「専門課程」と「応用課程」の両方を設置しているのが職業能力開発大学校、「専門課程」だけを設置しているのが短期大学校です。
 仕上り像を難しく表現していますが、要するに企業や建設業界で、私どもが養成する学生の立場や役割はどういうものかを、右側の三角形で示しています。研究・開発者、技術者と言われる方々というのは、4年制の工科系大学や大学院卒業の方が担うべき立場、役割であろうと思っていますが、下の鉄筋工、型枠工と言われる方々、いわゆる建設労働の技能工の方々、そして先ほど申しました技術者の方々の技能と技術のインターフイスの役割を担う技能者が、私どもの学生の仕上り像です。技能もできるし、技術もわかるという役割だと思っています。ピーター・ドラッカー先生の言い方を借りると、「テクノロジスト」という言い方ができると思います。日本のものづくりの強みというのは、このテクノロジストが多いからだと言われているところですが、そういう仕上り像を目指しているところです。下にポリテクカレッジ全体の訓練の特徴と就職状況を掲げています。これはまた後ほど説明させていただきたいと思います。
 4頁、先ほどご紹介したポリテクカレッジ24校を左側に書いていますが、各校にどういう科が設置されていて、1学年の定員が何名かを表した表です。ブルーの専門課程のところですが、建設系の定員は3科設置していて、下のほうを見ていただくと190、90、20とあり、1学年の定員が300名です。右側のグリーンの応用課程を見ていただくと、建築系の定員は1学年120名で実施しているところです。なお先ほど、都道府県においても短期大学校に専門課程を設置していると言いましたが、岩手県、岐阜県、大分県で設置していて、4科、1学年70名で運営しているところです。
 5頁、ポリテクカレッジと一般の工学系大学と何が違うのか、よく質問されますので、このような形で一覧表にまとめています。左側に項目として目的、教育の方法、就職した者のキャリアルートがあります。キャリアルートを見ていただくと、私どもは徹底して、現場監督補助→現場監督→現場所長とキャリアアップしていくことを想定した人材育成を行っているところです。カリキュラム、設備、就業年限を見ていただくとわかりますように、ポリテクカレッジと国立大学は、同じ4年制の形態を持っていても違うものとなっています。特に私が本日、皆様方に強調したいのは次の授業時間です。国立大学が4年間で平均3,000時間の授業時間であるのに比べて、私どもは5,616時間で展開していて、学生の夏休みは4週間ぐらいしかない非常にハードな学生生活です。特に下に書いてありますように、実技・実習時間が3,600時間と非常に多くなっているところです。しかしながら学生数が全体で6,300人と少なく、知名度はそれほど高くないといった状況です。なお、一番下の授業料については、私どもは2年間課程で構成しているものですから、年間の授業料は39万円と、国公立大学の短大と同額を設定しているところです。
 6頁、ここまで大層な説明をしていますが、本当に現場で通用する人材を養成しているのかと思われても困りますので、少し写真をお見せしながら訓練現場を紹介したいと思います。ここに紹介しているのは専門課程の住居環境科です。カリキュラムの構成を見ていただくと、建築の計画設計、構造関係、建築施工関係といった3要素で構成された内容となっています。右上に実習風景がありますが、左側の写真は床の衝撃音試験をやっているところです。2階で重量物を落として、1階でどのような騒音が測定されるかといったことの実験をやっているところです。右側は木造家屋の施工実習です。今現在、分担しながら屋根の仕上げを行っているところです。その下に総合制作実習とありますが、これは短期大学校の卒業研究に当たるものです。216時間使って、ここにあるような建物を建てて性能評価まで行うものです。いわゆる計画を立てて設計して、施行して評価まで行うというものですが、ここにあるのはツー・バイ工法による施工と、気密性能評価を行った卒業制作です。主な就職分野が右下に書いてありますが、このような技術者となって就職しているところです。この専門課程を修了すると2級建築士の受験資格が与えられていますが、応用課程に進む学生の約3割は、応用課程の在学中に2級建築士を取得して卒業しているところです。
 7頁、応用課程ですが、カリキュラムの構成は建築の施工と施工管理を行うための3要素として、施工図、施工実習、性能評価の大きな三本柱で構成されています。その下に標準課題実習というのがありますが、これは応用課程の1年次、通算でいくと3年次のときに約900時間かけて行う、3つの施工と施工管理課題実習です。これについては次のチャートで少し詳しく紹介したいと思います。その下に開発課題実習というのがありますが、これは4年時に行うもので一般の大学の卒業研究に当たるものです。具体的な事例として右側に「孟宗竹の建築物への応用」とあります。これは昨年度、横浜市が横浜市開港150周年記念イベントをやった際に、その会場に建てられた建物です。これは総合大学校東京校で請け負い、実際に会場に建てたものですが、竹を活用した新しい建築物の企画開発がテーマで、竹の構造計算、竹の材料実験、構造設計、施工を行った事例です。主な就職分野は、右下にあるような技術者になって就職しているところです。
 8頁、これは先ほど申しました、応用課程の1年次に取り組む標準課題実習を具体的に紹介したものです。いちばん上の木質構造施工・施工管理課題実習というのは、いわゆる木造家屋の計画、設計、施工及び施工管理を行う実習で、252時間を使って取り組んでいるところです。右側の仕上り像にありますように、工務店、住宅メーカーの人材需要に対応する訓練と位置付けているところです。その下は鉄筋コンクリート造、すなわちRCの構造施工・施工管理課題実習で、その下の鋼構造施工・施工管理課題実習にも取り組んでいます。いわゆる鉄筋コンクリートと鋼構造、鉄骨構造の施工と施工管理課題実習については、右側にありますようにゼネコン、サブゼネコンの施工管理、人材需要に対応したものと位置付けて実施しているものです。一番下にある施工図、性能評価というのは、上にあった3つの施工・施工管理に振り分けて行われる性能評価等で、ここにある写真は木造のパネル実習をやっているところであり、右側はタイルの引張試験などを行っているところです。
 9頁、ただ今ご紹介した鋼構造施工の施工課題実習は、訓練時間が252時間で行われるものですが、そこにありますように設計から調査・測量等、仮設、基礎というようにずっと流れていきます。仮設などのところにもありますように現場説明会も行いますし、基礎、土台の設置も行います。躯体のところに入りますと足場の組み立て作業ですとか、クレーンを使った揚重作業、ガス溶接、アーク溶接なども行って検査を行い、内装工事の仕上げを行う。実際の一連の建設現場と変わらない施工管理、実務が流れているところをご紹介したものであります。
 10頁、建設業界からいただいています求人と就職状況をご紹介したものです。平成21年度の状況ですが、専門課程が10.8倍、応用課程が13.6倍の求人をいただいています。特に専門課程の場合、就職する学生は、4年制の工科系大学の学生と競争しなければならない非常に厳しい就職戦線でした。ただ、おかげさまで、専門課程の就職率が99.3%、応用課程が97.8%と非常に高い就職率を確保させていただくことができたところです。
 11頁、これまでに説明してきました専門課程、応用課程の学生を採用していただいている企業の評価を分析したものです。上のほうにありますように、平成16年から平成19年までの4年間、学生が就職した902社、対象人員は3,400人の学生を対象に行ったものです。これは今年の4月に実施したものでして、建築分野に特化した108社、280人の就職者の分析結果をご紹介したいと思います。一番上は調査対象企業の業種です。専門課程、応用課程とも、ほとんどの修了生が訓練科に関連した業種の企業に就職しているところです。調査対象企業の規模ですが、専門課程も、応用課程もほとんどが300人未満の中小企業でして、私ども公共訓練の本来の目的にかなっていると考察をしているところです。次に、工科系大学との比較を伺っています。入社した時点において、私どもポリテクカレッジの学生が工科系大学の学生と比較してどうでしょうかという質問の調査です。ブルーのところで誤植がありまして、「76.7%」となっているのですが「83.3%」でございます。入社時においては、83.3%の企業から工科系大学の学生よりも技能・技術を持っていると評価していただいているところです。右側のグラフは熱意について聞いています。59.3%の企業が、仕事に熱意を持って取り組んでいるというように評価していただいています。
 12頁、先ほどは入社時でしたけれども、入社後はどうかということをお聞きしています。入社後、2年から5年経過した時点のポリテクカレッジの卒業生と工科系大学との比較を行っています。ここにも誤植がありまして、ブルーのところが「60.9」になっているのですが「50.9」の間違いでございます。50.9%の企業から、他の工科系大学の学生よりも「優れている」と評価していただいています。どういう点が優れているのかというのが右の棒グラフです。「実践的な技能に優れ即戦力となっている」「専門的な知識・技能が活かされている」「新しい課題にも積極的に対応する」といったことを評価していただいています。その下のグラフですが、これは工科系大学との比較で人間性の点を聞いています。40.7%の企業が「几帳面・まじめである」「積極性・自主性・向上心がある」といった点で評価をしていただいているところです。いちばん下のところ、今後の採用希望はどうかをお聞きしています。42.6%の企業が、引き続きポリテクカレッジの修了生を積極的に採用したいと回答いただいています。私どもとしては採用実績のある企業からの採用希望ですので、もう少しブルーのところが多くなるような取組み、もう少し高い評価をしていただけるように頑張らなければならないと考えています。
 13頁、ここまでご紹介しました企業評価は、建築系の修了生と機械系や他の系の修了生とほぼ同じような傾向であります。しかしながら、ただいまからご紹介します修了生の定着状況については、先ほど加藤委員のお話にもありましたように少し違いがあります。
 これは平成18年度に修了した学生、2,315人に対して、3年間たった時点でどういう状況にあるか。いわゆる、七五三現象について調査したもので、今年の4月に実施したところです。真ん中の棒グラフを見ていただきますと、建築分野の専門課程の修了生の定着率は60.6%であります。一番右側、一般の短大の定着率に比べて高いものの、専門課程全体の定着率が77.3%であるので、それよりも低い状況になっています。右側の応用課程を見ていただいても同様です。一般の大学よりも定着率は高いものの、応用課程全体の84.9%という定着率に比べるとやはり低い状況にあります。では、離職した理由が何かを調べたのが下のグラフです。専門課程のほうは赤いところの「キャリアアップ」を理由としたものが一番多いのですが、2番目としては「倒産、解雇、事業縮小等の会社都合」というデータが出ています。応用課程は「倒産、解雇、事業縮小等の会社都合」が一番の離職の理由というように出ているところです。
 14頁、私どもは事業主や事業主団体を支援する事業の一環として、ポリテクカレッジの有する専門的な技能・技術、あるいは施設設備を活用した在職者訓練を実施しています。雇用・能力開発機構全体では、年間4万2,000人に取り組んでいるところですが、ポリテクカレッジでは約1万人程度を実施しているところです。ポリテクカレッジの建築系としてはそこにご紹介していますように、平成21年度実績としては99コース、984人に取り組んだところです。右側のほうに実施した主な訓練コースをご紹介しています。民業圧迫にならないように配慮しながら、ものづくり関係に特化して在職者訓練のコースを設定し、実施しているところです。要するに、CADだけのコースといったものは実施をしておりません。是非、建築系の皆様からもたくさんオーダーをいただけましたら、私どもも対応させていただきたいと思っています。
 15頁、先ほどの在職者訓練の1つのコースをご紹介しているものですが「木造住宅の耐震精密診断技術」です。これは既存の建物の耐震状況について診断するものですが、ユーザーの関心が高いと見えて、このコースは非常に受講者が増えております。本日は、その下の生涯職業能力開発体系との関係を少しご紹介させていただきます。詳しくは後ほどご紹介いたしますけれども、産業分類、中分類の総合工事業という業種の中で、構造設計という職務のところを取り上げています。構造設計の職務に必要な能力を私どもは職務分析によって抽出し、切り出しまして、その能力の塊をレベル1、レベル2、レベル3といった、やさしいほうから難しいところにこのような形で位置づけているものです。段階的、体系的な職業能力体系を作成しているところです。訓練を展開する際には、必ずこの職務のこのレベルのこの能力を習得するものであるということを明確にして、訓練を実施しているところです。後ほど詳しく説明させていただきたいと思います。
 16頁、先ほどの在職者訓練と同様、私どもは事業主や事業主団体の方へのご支援の一環として、受託・共同研究にも取り組んでいます。平成21年度全体で76件に取り組んでおりまして、建設関連はここにご紹介しています20件でございます。企業の先端的な課題や実践的な技術を私どもが行う訓練に反映するという趣旨も持っており、共同研究、委託研究の企業からいただきます研究費用のほとんどが材料代だけの実費負担という形で取り組んでいるところです。
 17頁、私どもは常に産業界にマッチした訓練を展開するために「訓練ニーズ把握調査」といったものを実施しています。平成22年4月から5月にかけてものづくり系、非ものづくり系分野、併せて1,411社に調査を行いました。このうち、左側のグラフは建築関連の169社に対して行ったものであります。右側は全体の1,411社への調査データでして、比較しながら見ていただければと思います。
 まず、新卒採用の希望状況はどうかを今年の春の段階で聞いています。ブルーのところを見ていただきますと、建築関連の企業は全企業に比べると約10%ぐらいの差が見られるというところです。2つ目、新卒を採用するに当たって重視する教育機関はどこですかということを聞いています。ほとんど同じようなデータが出ているように思いますが、建築関連の企業においては上から2つ目のえんじ色がやや高いかなと思っています。これは専門学校卒業生ということですが、やはり建築関連においては資格取得を重視していらっしゃるかなと私どもは考察をしているところです。ポリテクカレッジ卒は下から2つ目のブルーです。その上の上、グリーンが高専です。高専とポリテクカレッジはそれほど高い評価を得られているわけではないのですが、左側の下にありますように、1年間に卒業する学生数が圧倒的に異なっています。私どもとしては、そういうところが原因ではないかと考察をしています。
 18頁、人材育成に関する課題をお聞きしています。これは建築関連の企業、全企業とも、ほとんど同じ傾向であると思います。課題としては「指導する人材が不足している」「人材育成を行う時間がない」「育成をしてもすぐ辞めてしまう」といった点が課題であると思っています。その下のグラフは、人材育成の目標は何ですかということを聞いています。両方ともほとんど同じような傾向にあると思います。先ほど申しましたように、建築関連の企業におきましては下から3つ目、やはり「資格取得等」ということを重視していらっしゃるのかなと考えているところです。
 19頁、採用する際に求める専門的職業能力は何ですかということを聞いており、建築関連をお示ししているところです。左側の職務1と職務2というのは調査用のために作ったものですけれども、先ほどの生涯職業能力開発体系から切り出したものであります。それぞれの職務能力に対し、「若年者」と「40歳以上」の2つのカテゴリーでお聞きしているところです。全体的な分析結果としては真ん中の枠組みのところを見ていただきたいと思いますが、若年者及び40歳以上とも「建築製図・トレース」「建築情報支援」「設計」「企画開発」「施工計画」及び「施工管理」の職務に関する専門的職業能力を求めている。特に若年者においては、50%を超える企業において「建築製図・トレース」及び「建築情報支援」に関する能力、40歳以上においては「施工管理」に関する能力を求めているというところです。この調査を見まして、現在展開しています専門課程、応用課程のカリキュラムはほぼ企業ニーズにマッチしているものとなっていると考察しているところです。
 20頁、まとめに入らせていただきます。ポリテクカレッジの教育訓練現場の課題についてまとめています。18歳人口が減少する中にあって、魅力あるポリテクカレッジとして存在価値を高め、引き続き地域の産業界に貢献する施設に成長していかねばならないと考えています。そのために私どもが取り組まねばならない課題としては、1番目に入口と出口の確保であります。左側の下のほうに18歳人口との関係を示していますが、左側にありますように18歳人口は年々減少してきているところです。幸いにも、私どもポリテクカレッジの高校からの応募状況については平成21年、22年と上がってきているところではありますが、これは高校の就職状況が非常に厳しいということも相俟っていると考えています。私どもとしては常に2倍を確保するような、高い評価を得て、地域における魅力あるカレッジ運営を行い、産業界に良い人材を供給していかねばならないと考えているところです。
 右側の就職状況ですが、一般大学の就職率が上から3つ目の折れ線グラフになっています。一般大学の就職率に比べ高い就職率を確保しているところです。下の棒グラフは、平成20年度、平成21年度の求人企業数を表しています。ブルーのところが専門課程、オレンジのところが応用課程ですが、それぞれ専門課程で4割、応用課程で3割、求人数が減っているところでございます。平成22年度はさらに厳しい状況でして、私どもとしては新規企業の開拓に組織を挙げて取り組まなければならないと考えています。
 21頁、産業界のニーズをキャッチアップして、カリキュラムの見直しを行い、産業界から評価される人材を養成することを常に行わなければならないと考えています。すなわち、PDCAサイクルを常に回しながら訓練を展回していかねばならないということを考えています。
 3番目は訓練の充実です。高校から入ってくる学生の基礎学力が非常に低下している状況への対応、それから最近の学生気質ですぐにあきらめてしまう傾向があり、学生の中退防止と進路指導支援の強化を図っていかねばならない。?Bにありますように技能検定、若年者ものづくり競技大会、技能五輪大会へも積極的に挑戦をさせ、ポリテクカレッジのものづくり力といったものを強化し、気運を醸成していかなければならないと考えているところです。4番目には職業訓練指導員の指導力の強化と先端技術を含めた技能・技術の向上であると思っています。
 22頁、先ほどの富士教育訓練センターでも取り組んでおられましたように、地域におけるポリテクカレッジの存在価値の向上を目的として、地域の工業高校等や地域におけるものづくり振興を積極的に行っています。その下の緑のところに、平成21年度に工業高校等へ行った支援状況を書いています。先生たちの研修、指導員を高校に派遣して授業を行うことなどを平成21年度、272件実施しているところです。一番下のほうに地域におけるものづくり振興支援をご紹介しています。ここは小学校、中学生も含めた「ものづくり体験教室」というものを実施していまして、平成21年度は220回、2万7,000人余に対してそういう教室を開催しているところです。
 23頁、最後に私どもからお願いがございます。是非、雇用・能力開発機構が有しますノウハウ・資源等を活用していただければありがたいと思います。1つ目はこれまでご紹介しました職業訓練指導員の活用であります。受託・共同研究、カリキュラムの作成、講師がいないのであれば私どもから指導員を派遣いたします。そういったものを活用して、人材育成に取り組んでいただければと考えています。2つ目は私どもが整備しています施設設備・機器の活用であります。各種材料試験機や測定器を備えていますので、是非活用していただければと思います。3つ目は職務能力を明確化し、明確化したものを基にして人材育成していくために、生涯職業能力開発体系を活用していただければと思っています。
 別冊の資料2-2を簡単にご紹介させていただきたいと思います。生涯職業能力開発体系です。表紙をめくっていただきますと、A3の紙があります。私どもは平成14年度から産業業種団体と連携を図りながら、お力を借りながら職務分析を行い、能力の体系化に取り組んでまいりました。現在ではここにお示ししていますように、日本産業分類の中分類で46業種、職務数で2,400の職務を体系化しているところです。本日はマーキングしている「建設業」の中の中分類の「職別工事業」、それからあわてて作りましたものですからちょっとマーキング箇所が違っているのですが、071の「大工工事業」のところをご紹介させていただきたいと思います。大工工事業のところをずっと右に見ていただきますと、職務数が24、仕事数が98、作業数が360といったものを構築しているところです。
 次の頁は、生涯職業能力開発体系をご紹介しています。これは一番上に書いていますように職別工事業です。上のほうが職業能力体系、いわゆる仕事の体系になっています。下のほうは少ないですが職業能力開発体系、いわゆる訓練の体系、この2つをもって生涯職業能力開発体系と呼んでいます。本日は中ほどにあります、大工工事業の一般木造大工という職務についてご紹介をさせていただきます。
 次に、頁の右上に「様式3」と書いてある横表をご覧ください。これは大工工事業の一般木造大工という職務を職務分析によって切り分け、上のほうにありますようにレベル1、レベル2といったやさしいほうから難しいほうにその能力を張りつけたものです。建具の取付け(サッシ)とあると思いますが、これが仕事で、その下の大壁の窓まぐさと窓台の取付けなど、そういったものが作業だと思っていただければいいわけです。この仕事ができるためには、こういう作業ができなければならないというように見ていただければありがたいと思います。
 レベル1、レベル2とあります。レベル1は本当に基礎的なものを位置づけています。技能検定で言うと3級程度に相当いたします。レベル2は、技能検定で言いますと2級程度でまあまあ仕事ができる。レベル3というともう10年選手と言われるものでして、一人前、技能検定でいいますと1級レベルになります。レベル4は、一人前の人もさらにレベルアップしていくものを掲げておりまして、先端的なもの、高度なものをその業界において定め、振り付けていただければいいと思っています。本日は、このレベル2の下のほうにマーキングしています、構造材の加工・仕上げについてさらにご紹介をしたいと思います。
 次の「様式4」と書いてある頁をご覧ください。左側のほうに、先ほどご紹介した作業が書いてあります。木工作業や土台継手・仕口作業といったものが書いてあります。この木工作業という作業に必要な知識と技能は何か、ということをすべて書き出しているところです。私どもはこの様式4をもとにしてカリキュラムを作っています。
 以上、簡単に説明しましたが、このような生涯体系を私どもは有しています。このような生涯職業能力開発体系というのは、私どもが事業主団体と一緒になって作った標準的なモデルであります。現時点では各企業がお使いになるとき、あるいは各事業主がお使いになるときはこれをカスタマイズして活用していただいているところです。是非、建設業業界におかれましても、それぞれの建設労働者の職務能力を明確にした上で人材育成に取り組まれることをお勧めいたします。その際には、私どもの持っています生涯職業能力開発体系をご活用いただければありがたいと思っています。大変早口で雑駁な説明でございましたが、以上でございます。ありがとうございました。
○征谷座長 どうもありがとうございました。何かご質問等がありましたらお願いいたします。
○柴田委員 簡単な質問なのですが、最初のパワーポイントの資料の10頁、大変高い就職率が出ています。修了者数を専門課程で見ると296人で、就職希望者が153人、希望しない方たちはどういう方たちなのですか。
○能開機構中山部長 その上の応用課程に進学しています。
○征谷座長 ほかにございますでしょうか。
○古市委員 この機構はなくなりますよね。この仕事は誰が引き継いでやっていくのですか。
○能開機構中山部長 申し上げましたように、雇用・能力開発機構は廃止されますが、職業能力開発事業、つまり今ご紹介しているようなものは特化した形で、新しい法人に引き継がれます。
○古市委員 もう1つ、技能五輪等の競技大会に積極的に参加させているというお話がありました。成績というか、その辺のところを教えていただけますでしょうか。
○能開機構中山部長 左側の技能検定、若年者ものづくり競技大会までは結構な人数が取り組み、良い成績を収めているところでございます。技能五輪につきましては、予選会に出て、県の代表となって出場できるかどうかというところが瀬戸際です。ただし、今年は民間企業の方々と競争しまして銅メダルを取った者がおります。それは、なかなか立派なものだと思っています。メカトロニクス系、ネットワーク関係の業種でございます。技能五輪への挑戦と、それなりの成果を収めていくというのは、今後の大きな課題だと思っています。
○征谷座長 ほかによろしいですか。最後に事務局から、第8次建設雇用改善計画の策定スケジュールについて説明をお願いします。
○掘井室長 お手元の資料3、次期第8次の建設雇用改善計画の策定に向けたスケジュールということで、若干現状を踏まえて修正をさせていただいたものを配付しています。
 資料3にありますように、本日も大変貴重なお話、どうもありがとうございました。また次回を含め、数回ヒアリングということで、関係する方々からお話を聞かせていただきます。ヒアリングののちに具体的な計画の審議を行い、最終的には大体2月か3月ぐらいに雇用対策基本問題部会でご審議をいただき、今年度中に第8次計画の策定ということで考えさせていただきたいと思っています。以上です。
○征谷座長 ただ今の説明につきましてご意見等ありますでしょうか。よろしゅうございますか。ほかにご意見等ありませんようでしたら、本日の委員会を終了させていただきたいと思います。
 本日の会議に関する議事録の署名委員につきましては、労働者代表は野村委員、使用者代表は福田委員とさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。本日はどうもありがとうございました。


(了)
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