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2010年11月15日 第2回精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会 議事録

労働基準局労災補償部補償課職業病認定対策室

○日時

平成22年11月15日(月)16:00〜18:00


○場所

厚生労働省専用第21会議室(中央合同庁舎5号館17階)
(東京都千代田区霞が関1丁目2番2号)


○出席者

(参集者:五十音順、敬称略)

阿部未央、荒井稔、岡崎祐士、黒木宣夫、清水栄司、鈴木庄亮、山口浩一郎、良永彌太郎

(厚生労働省:事務局)

尾澤英夫、河合智則、神保裕臣、渡辺輝生、幡野一成、板垣正

○議事

○板垣中央職業病認定調査官 初めに、本検討会は原則公開としています。傍聴される方におかれましては、別途配布しています留意事項をよくお読みの上、会議の間はこれらの事項を守って傍聴いただくようお願い申し上げます。
 定刻になりましたので、ただいまから第2回「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」を開催いたします。先生方におかれましては、ご多忙中のところご出席いただきまして、誠にありがとうございます。なお、織先生は体調不良によりご欠席との連絡をいただいております。
 資料の確認をいたします。資料1「第2回及び第3回における論点」、資料2「論点に関する労災補償の現状」、資料3「最近の裁判例」、資料4-1「精神疾患等の公務上災害の認定について」、資料4-2「精神疾患に起因する自殺の公務災害の認定について」。資料の欠落等がございましたらお申し出ください。
 写真撮影等は以上とさせていただきますので、ご協力お願いいたします。座長の岡崎先生、よろしくお願いいたします。
○岡崎座長 本日の資料の説明を事務局からお願いします。
○幡野職業病認定対策室長補佐 まず、前回の検討会で質問いただいた事項です。資料の15頁です。出来事の類型別の平均処理期間(業務上、業務外を含む)ということで整理いたしました。これを見ますと、「特別な出来事」について7.1か月です。特別な出来事はこれのみをもって心理的負荷強という評価ができるというもので、具体的には心理的負荷が極度のもので、例えば生死にかかわる事故への遭遇です。2つ目として、業務上の傷病により6か月を超えて療養しているものに発病したものです。例えば病状が急変し、極度の苦痛を伴った場合等で精神障害を発症した場合です。3つ目として、極度の長時間労働です。これは数週間にわたり、生理的に必要な最小限度の睡眠時間を確保できないものです。このように判断指針に書かれているところです。
 続いて7.6か月としての「事故や災害の体験」、7.8か月が「その他」です。この「その他」というのは、発病前6か月で業務上の出来事が認められなかったというものです。要は比較的わかりやすいというか、顕著な出来事においては、平均処理期間も短い傾向があるのではないか。また、出来事がないということは、判断指針の作りで、必ず業務外ということになりますので、これも比較的短いという状況があるのではないかと考えています。
 続いて16頁です。これについては疾患名別の平均処理期間で、業務上のもののみです。234件について分類しています。これはいろいろな疾患名で取っていまして、例えば「統合失調症」はF2のうちのF20です。さらに細分していくと、その下にいろいろと出てくるというものです。これをご覧になりますと、F2の部分で、統合失調症以下、上の3つの部分ですが、これらはすべて10か月を超えています。
 現実的に判断指針の決定例を見ると、いわゆるうつ病エピソードF3の類、適応障害など神経性障害がストレス関連障害等のF4のもの、この2つでほとんどということで、それ以外の精神障害の場合には、かなり検討に時間を要したのかと考えています。以上が前回ご質問いただいた点についてです。
 資料2-1の7頁です。現行の判断指針による判断の流れです。前回も簡単にはご説明したところですが、今回は図を作って入れてあります。なお、前回の資料をバインダーに綴じていますが、その中に付箋を付した部分があります。そこに判断指針の心理的負荷評価表を入れているので、そこをご参照いただきたいと思います。
 まず判断の流れです。まず発病前6か月というところで、業務上の出来事がどのようなものがあったのかを検討します。その出来事の平均的な心理的負荷の強度の判定を行います。これは評価表の(1)で行うこととしていて、例えばいちばん上にある「重度の病気やケガをした」。これですと「III」という評価です。ここの心理的負荷の「I」「II」「III」ですが、「I」は日常的に経験する心理的負荷で一般的に問題にならない程度の強度とされています。「III」は、人生の中で稀に経験することもあるような強い心理的負荷ということで、判断指針で定められています。「II」については、「I」と「III」との中間の心理的負荷という形で定めています。
 さらに、当該事案において平均的な負荷より大きいもの、小さいものが出てくるということで、続いて評価表の(1)の右隣に(2)がありますが、この視点で心理的負荷の強度の修正を行うこととしています。例えばいちばん上の「重度の病気やケガをした」でいうと、被災の程度、行為障害の有無、程度、社会復帰の困難性といった視点から、平均的強度「III」を「II」にするのか「I」にするのかを決めていく手続きです。例えばこれは重度の病気やケガということですので、重度でないものは「III」から「II」に下がっていくというシステムです。
 (3)です。そのさらに右側に、「出来事の状況が持続する程度」という欄があって、その出来事後の状況が「特に過重」であったのか、または「相当程度過重」であったのか、またはそれ以外であるのかを判定していきます。ここで「相当程度過重」ということについては、各々の項目に基づいて同種労働者と比べ、業務内容が困難で業務量が過大であるような状態ということで定められています。また、「特に過重」という点については、業務内容が困難で恒常的な長時間労働が認められ、かつ多大な責任の発生、支援、協力の欠如、特に困難な状態を指すと定められています。
 ここで心理的負荷が「III」であって、なおかつ相当程度過重であった場合には「強」という評価、また心理的負荷が「II」または「III」で、かつ特に過重であったという評価も「強」となります。この場合のほかに「特別な出来事」というものがありまして、これは先ほど申し上げたとおりです。これらは表1の判断によらず、直接「強」という評価を受けるとされています。それ以外の場合ですが、「I」「II」で相当程度の過重しかなかった場合、特に過重があったとしても「I」の心理的負荷しかなかったような場合ですと、「中」ないし「弱」ということになって、そこで業務外とされるというシステムです。
 そして、「強」になったものについては、業務以外の心理的負荷の強度及び個体側の要因の評価を行っています。業務以外の心理的負荷については、評価表を1頁めくると「職場以外の心理的負荷評価表」があります。これも「I」「II」「III」としていて、「III」がいちばん強いというものです。
 ここで業務以外の心理的負荷について、「III」に該当する出来事が認められない場合であって、個体側要因は判断指針では精神障害の既往歴、生活史、具体的には過去の学校生活、職業生活、家庭生活における適応に困難が認められるような場合、またアルコール等依存状況、賭博といったものへの傾向が強い方などを含んでいます。それと性格傾向というところで、これらで特段のものがなければ、その時点で業務上という判断がされるところです。
 この強度「III」に該当する出来事が認められた場合で、判断指針の定めとしては、さらに強度「III」の中でも極度のようなものであるとか、強度「III」のものが複数あるような場合については、精神障害発症にとってかなり有力なものではないかという定めがあります。また、個体側要因については、明らかなもの、顕著なものである場合も、精神障害発症についての原因ではないかということが考えられています。それらと、先ほどの業務による心理的負荷で「強」とされたもののどちらが有力な原因であるのかを総合判断し、業務上、業務外を判断します。
 したがいまして、業務による心理的負荷が「強」であって、業務以外の心理的負荷は「III」のものがない、個体側要因も顕著なものがない場合には自動的に業務上です。それ以外に認められる場合には総合判断をして、業務上外の決定というプロセスで現状では認定しているところです。
 事例として1つ出しています。例えば事実関係で管理職に昇進し、初めての管理職への就任であって、希望していなかった未経験の分野の業務であった。上司からは早期の成果を強く求められておりますが、部下からの信頼は得られず、次第に孤立した状況になった。また、休日出勤が大幅に増加した。4つ目として、親の健康問題を気にしている。5つ目として、以前不眠症になったことがある。
 この事実関係で見ますと、まず判断の流れとして、管理職に昇進したという出来事は、平均的な心理的負荷の強度は「I」とされています。続いて、その状況からして希望していなかった未経験の分野の業務ということで、心理的負荷の強度を「II」に修正しています。3の状況から、「出来事後の状況が持続する程度」を「特に過重」と判定しています。4つ目として、業務以外の心理的負荷(4の状況)、個体側要因(5の状況)を総合的に判断して、業務上としたという事例です。
 なお、これら具体的な検討に当たっては、精神障害発病の有無も含めて客観的な判断がなされる必要があることから、複数の専門家による合議等、いわゆる専門部会によって行うこととされています。
 資料3です。これは裁判例で17頁からのものです。前回も若干の裁判例をご紹介したところですが、今回は平成20年度、平成21年度の国敗訴事案の評価のポイントで、特に出来事の評価のポイントということで出させていただいたものです。平成20年度、平成21年度の精神障害に関しての判決件数は73件で、これは前回申し上げたとおりです。敗訴件数は11件(10事案)で、そのすべてをここに取りまとめたところです。
 19頁です。判決例1番で、「会社で起きた事故(事件)について責任を問われた」というものです。平均的な心理的負荷の強度は「II」とされています。なお、出来事評価の着眼点としては、事故、事件の内容、関与、責任の程度、社会的反響の大きさ、ペナルティの有無が掲げられています。具体的には、被災者の部下が取引先に被災者を中傷したビラを撒いたことについて責任を問われ、配置転換された事例です。原処分は、中傷ビラの内容は事実無根であるということです。就業規則上の処分は特になく、配置転換も左遷とはいえない。したがって、心理的負荷は「中」であるから業務外。一方、上司からこの問題について2時間にわたって糾問的に逐一詳細な事情聴取を受けた。また、取引先である親会社への立入禁止。また、長年従事した事業から外されるということを勘案し、裁判所は、総合評価は「強」と判定されたところです。
 2つ目です。これはノルマが達成できなかったというもので、平均的な心理的負荷の強度は「II」です。出来事評価の着眼点としては、ノルマの内容、困難性、強制性、達成率の程度、ペナルティの有無、納期の変更可能性が挙げられています。これについては、開発段階から関与していたシステムが販売不振でシェアの拡大ができず、長時間労働を強いられた事案です。
 原処分はノルマの未達成については、発病前6か月にはまだ確定していなかったということと、また、一時期は売上げが回復基調にあったということから、「II」のままで修正すべき事案ではないとしています。月100時間を超える時間外労働がありましたが、発病前6か月に長時間化したものではないということで、評価しないとしたところです。これについては、システムの販売不振等は存続の危機を感じさせるものであって、責任者であった被災者には相当強いとした上で、100時間を超える時間外労働は業務上の出来事についての心理的負荷の強度を「強」とするに足りる長時間労働に当たるとした。このようなことです。
 20頁の裁判例3です。仕事内容、仕事量の大きな変化を生じさせる出来事があったというものです。平均的な強度は「II」とされています。着眼点としては、業務の困難度、能力、経験と仕事内容のギャップ、責任の変化の程度というものがあります。これについては、生産ライン立上げプロジェクトに従事し、月40〜85時間の時間外労働も見られた。これは原処分段階での時間です。結果的に、これは訴訟のうちで92時間程度と国が認定したものです。これについては、それぞれ業務量の増加した事実、トラブルが発生した事実もありましたけれども、特に大きなものではないし、恒常的な長時間労働はあったものの、それだけをもって心理的負荷をさらに大きくするという要因ではないということで、「強」には至らないという判断でした。
 一方、裁判所は新規性のある心理的負荷の大きい業務に従事して、スケジュールも非常に厳しく管理されていた。また、上司からの叱責等もあった。会社の支援が得られないという過程の中で、長時間労働が余儀なくされていたということで、重層的にこれらの事情が発生し、精神障害を発症させる程度に過重であったとされたところです。
 続いて、勤務・拘束時間が長時間化する出来事があった、4、5番です。これについては、平均的な強度の負荷は「II」です。着眼点としては、勤務・拘束時間の変化の程度、困難度です。時間がないので4番だけを説明させていただきますが、これについては仕事自体の困難度はかなり高い業務であったということです。それと、精神的な緊張も強いられる業務において、時間外労働が増加し、発症1か月前には月100時間を超える時間外労働となった事案です。
 原処分は、精神的な緊張も強いられる業務ということは認定しつつも、この方の本来業務であったということと、直前に時間外労働が増加していましたので、「勤務・拘束時間が長時間化した」というものに当てはめましたが、出来事に伴う変化は特に修正すべきものではない、業務と能力、経験にギャップはないということで、総合評価は「中」としたところです。
 一方、裁判所は所定外労働時間数については、自殺前2か月は100時間を超えていること、さらにその前の3〜6か月前は概ね80時間程度で、8か月前から増加の傾向にあったということです。これだけを見ても、強いストレスを引き起こすということで「業務上」としたものです。
 続いて21頁で、6、7番です。これは出向したということで、平均的な強度の負荷は「II」とされているところです。着眼点としては、在籍、転籍の別、出向の理由、経過、不利益の程度が挙げられています。
 7番のほうを説明しますと、この方、長年研究職に従事していた労働者が出向により現場管理職となり単身赴任し、また、出向先で被災者が指摘した防波堤工区の危険性について問題がないとされ、この問題によって関係者との関係が悪化した事案です。これについては、東京の本社から北九州、子会社の事務所への出向ということでした。原処分では、単身赴任、業務環境の変化など一定のストレスを認めたものの、全く異質の業務ではないこと、緊急を要する問題や特に解決すべき問題はなかったという評価をしたところです。さらに工区の危険性についてですが、これについては特に問題はないとの結論を得たものですので、その後の被災者1人での検討については業務とはいえないとして、心理的負荷として評価しないとしたものです。
 一方、裁判所は、研究職から現場の管理職となる出向であったこと、勤務地の変更や単身赴任というところで、非常に大きな心理的負荷と評価して、さらにこれが継続している間に先ほどの防波堤工区問題によって心理的負荷を受けたものに加えて、部下の欠勤等への対応等が行われたということで、これは精神障害を発症させる程度の危険を有するものという判断をされたところです。
 続いて22頁で8、9番です。配置転換があった例です。平均的な強度は「II」です。この着眼点としては、業種、職務の変化の程度、合理性の有無が挙げられています。8番を説明しますと、給油所から金融営業へ配置転換された事案です。これは給油関係の部署から貯金専任渉外係、具体的には共済保険の加入促進業務担当です。ただ、これは特別な知識等は要求されず、目標設定も同僚より少なかったということと、ご本人の希望であったということから、心理的負荷は「II」としています。時間外労働の増加等もほとんどないこと、研修や上司・同僚のアドバイスもあったということで、原処分では過重と評価しないとしたものです。
 一方裁判所、全くの畑違いの業務に従事させる配置転換は、過度に大きな心理的負荷を与えたとした上で、経験者と同様の目標設定を受け、実績は結果的に皆無であって、援助体制は機能していなかった状況から、心理的負荷を増長させたという評価をされています。
 23頁の10番で、特別な出来事についてです。これは特別な出来事の中でも、業務上の傷病により6か月を超える期間にわたって療養中の者に発生した精神障害です。
 具体的にはじん肺の方で、じん肺の症状が徐々に悪化していった事案です。国は精神障害の発病前概ね6か月において、じん肺の症状の急変であるとか、極度の苦痛発生は認められないとして評価しなかったところですが、裁判所は急変、極度の苦痛発生がないことの認定はしていましたが、これをもって業務起因性を否定するのは相当ではないとして、発病1年前の身体症状から、病状悪化を認識せざるを得ない状況にあったということです。また、介護者に負担をかけ続けながら、解放されることのない苦しみに耐え、死の恐怖に怯えながら生き続けなくてはいけないという自らの状況を深く自覚することになったとして、心理的負荷は相当程度に過重と評価して業務上と認めたという事例です。以上が裁判例です。
 続いて論点についてで、資料1の1頁です。論点としていくつか用意させていただいていますが、まず、精神障害の業務上外の判断枠組みについての具体的な論点についてです。1つ目として、業務外での心理的負荷及び個体側要因についてです。「業務以外の心理的負荷」の程度及び「個体側要因」の程度を判断することとなっていますが、これらについては被災者のプライバシーを完全に把握しなければ、適正な判断はできないのではないかということです。
 ②はストレス−脆弱性理論です。これは第1回の資料11でご説明したところですが、「ストレス−脆弱性理論」によれば、「業務による強い心理的負荷」が認められる場合、さらに「業務以外の心理的負荷」や「個体側要因」を判断しなくとも、業務との相当因果関係の存在は肯定できるのではないかということです。
 ③「業務以外の心理的負荷」や「個体側要因」の関与は、業務外と判断した場合の補足的な理由として位置づけることで足りるのではないかということです。その関係で、資料2の2、8頁をご覧ください。まず、認定例等からの状況です。「業務による心理的負荷」と「業務以外の心理的負荷」及び「個体側要因」に関する認定状況です。監督署における認定状況です。平成21年度の決定件数852件のうち、業務による心理的負荷が「強」と判断されたものは234件ありました。先ほどの流れで「強」と判断されても、「業務以外の心理的負荷」である「個体側要因」による発症と認められた場合は業務外となるわけですが、これらによって当該精神障害を発病したとして業務外とされた例はありません。234例が「強」とされて、すべて業務上と認定されているところです。
 背景としては、「業務以外の心理的負荷」「個体側要因」を認定するための事実認定は、請求人ないしは家族からの聴取によるほかはないということがほとんどで、請求人やその家族が不利益となりかねない事実を積極的に陳述することはほとんどないということが1つあります。
 もう1つ考えられますのが、これらの存在が明らかになった場合でも、「業務による強い心理的負荷」が認められることを前提として、これら「業務以外の心理的負荷」又は「個体側要因」によって精神障害が発病したことを証明するのは非常に困難であるということが考えられるのではないかということです。
 裁判の状況です。先ほど平成20年度、平成21年度に判決のあった73件のうち、業務による強い心理的負荷が認められた上で「業務以外の心理的負荷」又は「個体側要因」により、当該精神障害を発病したとして業務外とされたものはありませんでした。こういった状況です。
 判断指針の定めですが、判断指針の第4、判断要件の運用の3で業務以外の心理的評価の強度の評価、その4、個体側要因の検討、その5、業務上外判断の考え方ということで載っています。その中で、「業務以外の心理的負荷」「個体側要因」が認められる場合にあって、強度「III」に該当する業務以外の心理的負荷が極端に大きかったり、強度「III」に該当する出来事が複数認められる等、業務以外の心理的負荷が精神障害発病の有力な原因となったと認められる状況。それから、精神障害の既往歴や生活史、アルコール等依存状況、性格傾向に顕著な問題が認められ、個体側要因が精神障害発病の有力な原因。
 頁を打っていないのですが、第1回目の資料6で、判断指針を載せています。先ほど付箋の前の所が判断指針の本体で、その中で付箋の前に「参考」というものがありまして、「精神及び行動の障害分類」というものがありまして、その前の頁からです。(2)「業務以外の心理的負荷」「個体側要因」が認められる場合ということで載っています。
 こういった精神障害発病の有力な原因となったと認められる状況ということで、極めて大きな業務以外の負荷ないしは顕著な個体側要因がなければ、判断指針としては業務としての心理的負荷「強」である場合には業務上と認めるという作りになっているところです。
 参考として公務員の例を見ますと、本日の資料の28頁です。5、公務起因性の考え方ということで、国家公務員の公務災害の認定についてのものです。公務起因性の判断に当たっては、業務の過重性だけでなく、職員の個人的な要因が与える影響についても十分調査を行い、その結果、例えば、次に掲げるような精神的又は肉体的な不調などがなく、精神疾患の発症前には同種の日常業務を支障なく処理できていたと認められる場合には、専ら、前記1の(1)に基づき、医学経験則に照らし、精神疾患の発症原因とするに足る業務の過重性の有無をもって業務起因性の判断を行えば足りるとされています。その(1)として、精神疾患を繰り返し発症するなどの既往歴があること。(2)として、対人関係に過敏で職場における人間関係の構築ができないなど性格傾向に著しい偏向があること。(3)として、以前に従事した業務、勤務環境に適応できず休んだりしていたこと。(4)として、精神疾患を発症させるおそれのある私的な要因が認められること。これらについては、判断指針とほぼ同じ定めと考えています。
 続いて、地方公務員については本日の資料の41頁です。真ん中より上の7ですが、自殺の原因としては傷病苦、経済問題、被災職員又は家族等に係る事故・事件の発生、うつ病・精神分裂病等の精神疾患、アルコール依存症、家庭問題、異性問題、交友関係等が考えられるとされ、自殺については、被災職員の性格等種々の要因も影響する。そのため、当該職員の個体的・生活的要因について調査し、評価する必要があるとされています。以上が、「業務以外の心理的負荷」及び「個体側要因」についてです。
 次に資料1の1頁の下の④です。以下については、「出来事」及び「出来事後の状況が持続する程度」、先ほどの評価表のところですが、その辺のところについてです。まず、「出来事」及び「出来事後の状況が持続する程度」を個々に評価する現行の認定手法は非常に複雑であるとともに、精神医学に関する知識に基づく判断が必要であるため、すべての事案について精神部会の協議を経て認定することとなっています。この認定方法を工夫することによりまして、一般的な事案については協議を簡略化して認定することが可能となるのではないかという考えです。例えば「出来事」ごとに、一般に起こる「出来事後の状況」をあらかじめ具体的に盛り込んで評価に反映させた新たな評価表を策定することにより、より迅速で合理性の高い評価ができるのではないかという考えに基づくものです。
 ⑤です。例えば対人関係のトラブルのように、1回の出来事の心理的負荷が弱いものであったとしても、一定期間反復継続することによって強い心理的負荷と評価できるものもあるのではないか。このような場合についても、「出来事」及び「出来事後の状況が持続する程度」を個々に評価するのは、適正な評価が難しいのではないかという問題意識です。
 先ほどの出来事の評価表をもう一度ご覧ください。いま申し上げた対人関係のトラブルは、出来事の類型⑥にあります。そこでは、ひどい嫌がらせ、いじめ以下、同僚とのトラブルまでありますが、例えば上司とのトラブルは、標準的な評価としては「II」で、その着眼点としては、トラブルの内容や程度で定めがあります。しかし、これ1回で終了してしまいますと、この程度、内容等で評価されなければ、修正されることはなく、そのまま「II」ということで、右側の出来事の状況が持続する程度を検討する視点に移っていくところです。
 一般的にトラブルについては、例えば上から4つ目の、職場の物的・人的環境の変化後の持続する状況で、対人関係・人間関係の悪化で見ていますが、その中での対人関係のトラブルが持続している、職場内で孤立した状況になったということで、これについてはトラブルが継続していた場合、「出来事」としての「II」のトラブルと、持続後のものを再度評価して、併せた形で評価することとしています。例えば継続しているようなものであれば、これを含んだ形で評価できないかという考えです。
資料2の3、9頁をご覧ください。「出来事」と「出来事後の状況が持続する程度」の総合評価の状況をまとめたものです。まず1つ目として、出来事の心理的負荷強度の評価状況です。852件の出来事についてですが、「III」と評価されたものが179件、「II」が349件、「I」が176件、特別な出来事が30件、その他、出来事が認められなかったというものが118件です。「I」と「III」が25%、「II」が50%という状況です。その下に、主な出来事ごとの心理的負荷強度の分布というものがあります。
 10頁です。まず、出来事後の心理的負荷の強度が「III」の事案の総合評価の状況です。179件のうち、「強」と評価されたものが163件、「強以外」と評価されたものが16件です。総合評価が「強」に至らなかった事案の例で、先ほどの上司とのトラブルですが、業務の進め方について専務に叱責されたことから、「上司とのトラブルがあった」(平均II)に当てはめ、他の従業員のいる前で、代表権を有している専務からの処分を予感させる叱責であったことから、「III」に修正した。しかしながら、結果的に何も処分をされていないこと、また時間外労働等の増加もなく、出来事後の状況が持続する程度は「相当程度過重」とはいえないとして、総合評価は「中」とした例です。「III」となると、9割を超えるものが「強」とされ、結果として業務上と認定されているということです。
 続いて11頁です。出来事の心理的負荷強度が「II」の事案の総合評価の状況です。「II」と評価されたものが349件ありまして、「強」が41件、「強以外」が308件で、約88%が「強以外」と評価されています。「強」となった事案の例です。まず、営業及び配車管理等を行っていた職員が、経理、庶務等の事務も併せて行うこととなった事例です。これは仕事内容・仕事量の大きな変化があった、平均強度「II」と当てはめまして、修正はせずにそのままと評価したものです。仕事量の増加により時間外労働が月100時間を超え恒常的な時間外労働がみられることから、出来事後の状況が持続する程度は「特に過重」とし、総合評価を「強」としたものです。
 また、もう1件は、業務成績が上がらないとして社長から叱責を受け、営業部長から営業課長に降格され、担当を外すなどされた事案です。これは「上司とのトラブル」(平均II)に当てはめまして、修正はせずに「II」と評価したものです。続いて、社長からの度重なる叱責が確認できたことと、その叱責の内容が業務指導の範囲を超えて繰り返し行われていることから、出来事後の状況が持続する程度は「特に過重」とし、総合評価を「強」とした事例です。
 さらに、出来事の心理的負荷強度が「I」の事案の総合評価です。「I」と評価された事案であって、総合評価が「強」となったものはありませんでした。判断指針については、このところは第4の判断の要件、2の業務による心理的負荷の強度の評価、(2)の出来事後の状況が持続する程度による心理的負荷の評価で定められています。
 また、業務による出来事後の状況等も併せて評価している例として、34頁をご覧ください。これは国家公務員のもので、公務に関する負荷の分析表です。これは負荷の類型をそれぞれ分けた上で、出来事例を載せ、さらに過重な負荷となる可能性のある業務例という形で載せています。ここについては、この業務例はいわゆる出来事後の負荷も含めた形で、このような形で書かれているのではないかということでご紹介させていただいています。また、当然ながら公務員ということですので、業務範囲がかなり絞られていますので、こういった形での作り方ができるのではないかと考えているところです。以上です。
○岡崎座長 前回のご質問に関連する資料をお示しいただき、論点1に関するご説明をいただきました。続いて論点2も併せてご説明されますか。
○幡野職業病認定対策室長補佐 どうしましょうか。
○岡崎座長 本日は論点1と論点2が示されていますが、時間がありましたら論点2にも進めればとは思っているのですが、論点1の説明がありましたので、そちらから進めさせていただいて、時間がありましたら論点2にいくことにしましょうか。
○幡野職業病認定対策室長補佐 はい。
○岡崎座長 いまご説明のありました、前回のご質問に関する資料についてはよろしいですか。
○良永先生 質問したのは私ですので、発言させていただきます。私が質問した趣旨は、この検討会の設置目的との関係でお伺いしたかったのです。認定業務の遅れが生じていることについて、遅れるのはよくないわけですから、認定基準の見直しによって業務の遅れがないように工夫できるものならしたいという趣旨ではないかと思ったのです。
 それで、認定基準だけに原因があるのかどうかというのが、私の質問の大きなポイントだったのです。認定基準もあるけれども、その運用プロセスで手間がかかって遅れていることはないだろうかということがありましたので。認定基準で迅速化が図れるのであれば、それはそれとして結構なことですが、ほかの要因も考えておかなければいけないのではないかということです。
 今日のお話を伺っていますと、資料1にはっきり出てきているのは、認定手法が非常に複雑であること、すべての事案について精神部会の協議を経て認定することとなっている。このようなことが遅れの大きな要因の1つとなっているというご認識でしょうか。それはそれで事実であれば、そこは工夫したらどうかという話になるかと思いますが、そのような理解でよろしゅうございますか。
○幡野職業病認定対策室長補佐 そのとおりです。現状が非常に複雑であるが故に、監督署長の判断が難しく、監督署長のみでは判断しかねるということがありますので、認定基準の中で医学的なバックボーンが含まれた形での基準を作って、監督署長での判断が可能となるようにしたいということが1つの考えです。
○岡崎座長 論点の中に先生のご指摘になった迅速化に役立つ領域の問題が含まれていると思いましたので、論点に従って進めようと思います。そのほかにございますか。
 論点1を検討していきます。ご覧になってわかりますように、提案されている①から⑤の中が2つに分けられると思います。①から③の問題、④⑤が1まとめにできます。そういったことで、最初の①②③にわたる問題です。この点についてご意見はありますか。「ストレス−脆弱性理論」で業務上か業務外かを判断しているわけですが、「個体側要因」「業務以外の心理的負荷」の評価は難しいという現実がありまして、業務による強い心理的負荷が確認されれば、おおよそ、それに従って業務による強い心理的負荷を判断してもいいのではないかという重点のシフトの提案だと思います。いかがでしょうか。いままでの枠組みの変更につながる提案ですが、現実は先ほど数値が出されたように、業務上の強い心理的負荷が認知されますと、あまりそれは変わっていないという現実があるわけですので。
○黒木先生 自殺の労災認定と、自殺ではない精神障害の労災認定では、出てくる資料も全然違います。精神障害の場合は大体医療機関にかかっているので、医証、主治医の意見は出てきます。しかし、自殺の場合は医療機関にかかっていない事例が結構多いのです。7〜8割がかかっていないのです。全く医療機関にもかかっていないのが7割弱ぐらいあります。
 そういうことになると、その家族の聴取、同僚、上司の聴取になるので、そこから本当に精神障害に罹患していたかどうかを検討していかなければいけないとなると、なかなか個体側要因、業務外の要因ということを特定するのは難しいと思います。職場の業務の要因を検討するのは、それはデータとして出てくるので、それはしやすいと思います。
 入口で個体側要因はあったかもしれないけれども、それはわからない、認められないというのが正直なところではないかと思うのです。福岡の裁判事例がありましたが、この方は給油の仕事も対人関係があまりうまくいかないので、所長が灯油の配達の仕事を長年、させていたのですが、本人あるいは親の希望で、保険の外交の仕事に配置転換がなされました。したがってもともと対人関係の苦手な人が、たまたま対人折衝をしなければいけない業務に携わったために発症したと考えるのが妥当なわけです。
 本人の対人関係がうまく保てないところが本当の原因であって、業務はあまり関係ないのではないかという気がするわけです。つまり、本人の対人折衝がうまくできない個体側要因が、根本的な要因で発症したと考えるのが妥当と判断できるものと考えられます。ですから、過重性の評価は判断指針に従ってやるべきだろうと思います。
○岡崎座長 いかがでしょうか。
○荒井先生 調査の段階でプライバシーの問題もあるし、申述する任意性は担保されているので、申述されないことも当然あり得ると思います。それはそれで構わないのですが、不明と、ないということを明確に分けていく作業が重要なことだろうと思います。わからないというものと、ないというのは、いまの認定のプロセスの中では、「ない」と書いてあるものがたくさんあるのですが、ないかあるか不明というのが実際のところというものがたくさんあると思います。ですから、ないというのを担保にするのではなくて、調査できない、あるいは申述されないということをもって、不明とするということになるかと思います。特に業務上の心理的負荷が強の場合については、不明であっても構わないということだろうと思います。それは、いまの監督署長が決定する場合に強であれば、個体側要因、業務外の要因等が不明であっても、判断することは可能ではないかと存じます。
○岡崎座長 なかなか難しいところです。臨床の場におられる先生方お二人のご意見を伺ったのですが、どうぞ。
○山口先生 ①の問題です。現在の認定基準ではこれは調べることになっているわけですね。だけど、答えてもらえない場合もあるでしょうし、はっきりしない場合もあるでしょうから、それは行政としてはできる限りのことをすればいいのであって、プライバシーの問題に突っ込んで、刑事事件のような捜査機関ではありませんから、それはそれ以上のことは不可能です。いま先生がおっしゃったように、なかったというのか、調査が十分できなかったというのか、そこだけはっきりしておけば、それでいいのではないかという気がしますけれども。刑事事件でも、はっきり証拠が全くない場合もあるでしょうけれども、証拠が十分でないから起訴には無理だよというのもありますから、そこはなかったとはっきり言えるのか、それともはっきりとはわからないのか、そのどちらかさえはっきりしておけばいいのではないか。
○黒木先生 むしろ分からないですよ。
○良永先生 いまのご議論を聞いていて、災害的出来事を媒介として生じる負傷とか死亡事故がありますが、そういうケースについては業務起因性と業務遂行性と、2つの概念を使って認定実務が行われていると承知しております。それで、業務遂行性が認められる状況で事故が起きた場合には、それは業務起因性を推定するという実務がずっと行われてきて、判例学説もたぶんこれは基本的に支持してきていると思うのです。いまの話を聞いていると、強度の「III」、精神障害を発症し得るに足りるだけの強度があったということが現にあった場合には、それを積極的に否定するようなことがない限りは業務起因性ありと推定するという、先ほど黒木先生のお話を聞いていて。
○黒木先生 でも、おっしゃっているのは身体障害の場合ですね。
○山口先生 負傷のケース。
○黒木先生 負傷のケースですよね。負傷があったとしても、例えば追突事故で、通勤災害でケガも何もしなかった場合を想定すると、普通に職場に復帰できたという場合は、これは判断指針によると1ランク下がりますので、それは業務外ということになります。あくまでも強度のストレスがなければ、業務上にはならないですね。
○良永先生 だから、アナロジーとしてお話しただけなのです。発症し得るに足りるだけの強度が認められた場合には、それ以外の原因があるかもしれないけれども、それは業務上と推定するという考え方ではないかなと思って発言しただけで、もちろん私も全く同じだとは考えておりません。
○山口先生 いまの良永さんの意見は、はっきりさせておいたほうがいいので、ちょっと反論するようなことになりますけれども、良永さんのような考え方は業務上の認定の考え方ではないと思います。黒木先生がおっしゃったように、負傷の場合は業務遂行性と業務起因性と、両方で判断するということになっている。だけど、病気の場合は業務遂行性は関係ない。例えば脳溢血で、業務が原因にはなっているけれども、自宅で発症したというのは遂行性なんかないわけです。精神障害でもそうです。だから、理屈上、病気の場合は業務遂行性があれば起因性を推定するということにはならないし、認定基準はそのようにできていないと思います。認定基準は精神障害もあるし、脳・心もありますが、脳・心の場合は業務上認定の伝統的な理論に従って、発症と業務との間に因果関係があるという、ずっと伝統的なものがある。その因果関係というのは相当因果関係のことだと。それで、出来事が競合している場合には、相対的に有力な出来事でなければいけないということが、脳・心の認定基準の最初には考え方として明記されているわけです。
 そういうことから考えますと、精神障害のほうはそのように書いていないものだから、ここをどのように考えていくかというのは、②の問題、③の問題に関係がありますが、従来の考え方は私は良永さんがおっしゃっているような考えではできていないと思います。もし良永さんのように考えられるとしたら、問題は生じないのであって、もう既に答えは出ているのではないかと思います。そこがそうでないから問題なのではないかというのが私の認識です。これは出だしの問題で、いちばん重要なところだと思いますので、余計なことを申しましたが、そういうのが私の理解です。
○岡崎座長 そこのところを補えるかですね。
○良永先生 山口先生の考え方と私の考え方が違っているというように、自分では認識していないのです。要するに精神障害を発症するに足りるだけの強度が業務上あったとすれば、その他のいろいろな原因があるかもしれないけれども、一応推定をするという、そういう考え方なのですよね、と言ったのです。業務遂行性の場合をいまここで言っているつもりはないのです。だから、それをはっきり否定するような事情が何らかの契機で明らかになれば、それは否定されるかもしれませんね。
○岡崎座長 ご提案、その論点の考え方は。
○渡辺職業病認定対策室長 いま良永先生がおっしゃったように、業務による強い心理的負荷があれば、それをもって業務起因性を推定するという考え方を、むしろそういう方向でいいのではないかというのが論点の趣旨です。実は、いまの判断指針は、どうもそれよりも推定は駄目よと。つまり、強い業務による心理的負荷があったとしても、業務以外のこともはっきりさせた上でなければ判断しては駄目よとなっているのではないか。つまり、推定を許していないという作りになっているのではないかという感じです。精神障害では判断指針と言っています。ほかは大体認定基準というネーミングなのですが、脳・心もそうですし、私ども化学物質にばく露した場合の認定基準もあるのですが、そういったものについては業務上とする要件だけを並べていて、それが認められても、さらに業務外要因をきちんと調べた上で最終的に判断しなさいとなっているのは、この精神障害の判断指針だけなのです。
 これは平成11年に初めて作ったときに、精神障害というのは非常に難しいし、我々行政のほうもいままでほとんど経験がないということもありました。件数的にも全国で年間数十件という状況であるからということもあって、非常に丁寧に、全部を専門家の合議体で決しようというようにしたのが平成11年の考え方かなと。つまり、そのときにはそんな安易な推定方法は許さないよということを考えたのではないかと、私どもは考えています。10年以上やってきて、いろいろこの状況を見てみると、出来事が「III」と評価され業務による心理的負荷が「強」と評価されてもなお、本当に業務上にしてはいけないものがあるのかもしれませんが、そこはいま言ったような限りなくゼロに近いものであるし、そのためにどれだけの事務量、手間をかけるかということを考えたら、推定方式をここで導入するというのも1つの考え方かなという思いもあって、今回これを論点としてみました。ただ、医学的にそこまではできないという考え方もあるだろうし、法律的にもそれは難しいということもあるのだろうと思いまして、私どもは先生方にいろいろご議論していただきたいなと考えた次第です。
○岡崎座長 今回お引き受けする際に、どうもそうではないかと思っていたのですが、いま非常にわかりやすくご説明いただいて、そういう現実的な処理は私は好ましいことかなと思っております。ただ、いままでそうでない枠組みでやってきた経緯がありまして、医学的に厳密に考えると、そう簡単ではないのではないかという先生の先ほどのご意見もありましたので。
○荒井先生 厳密には、もちろん考えていいと思うのです。「強」となる出来事があった事例に関しては、ほとんどの場合、個体側要因や業務外の要因について、それを読み込んで業務外としたものはないのです。ですから、実際問題として、それは問題にしていないわけです。しかし、業務上になったケースから、個体側要因、あるいは業務外の要因についての検討がされ、几帳面で真面目で仕事熱心でという方、執着気質という病前性格の場合に、業務上となった場合により自殺されやすいという報告があります。これは担当者の方が努力して、あるいは被災された方たちの協力によって情報が得られて、精神障害にしても自殺にしても、それを予防するという視点では、業務外の出来事や個体側要因について全く情報を持たない仕組みを全部に作ってしまうのは、重要な情報が欠落する危険があると思います。
 ただ、そのときには簡便法として、例えば質問表でやるとか、時間を節約するための手段はあると思うのです。
○黒木先生 たしか昨年の労働衛生の研究で、6年間の認定事例の調査結果が出ているのですが、その中で認定された自殺、あるいは精神障害の事例の中で、性格傾向からいくと責任感、執着気質などといったものは確かにそういう傾向が出ているのです。ただ、私が話したいのは、精神障害が発症したとき、これは明らかに過重性があって認定された場合、個体側要因というのは、この時点では見えないことが多いだろうと思うのです。時間が経過して初めて本人の性格傾向であるとか、あるいは本人の職場外の要因であるなどといったことが見えてくることがあります。そうすると、どの時点まで因果関係を継続してみるのかということが、やはり非常に重要な点ではないかなという気がします。自殺はともかくとして、労災認定された休業事例がどういう経過を辿るかというのが、今後の課題かなという気がするのです。
○岡崎座長 そういった検討していく課題というのは、今後もあると思います。ただ、現実の認定の迅速化という中で、どういった現実的な処理をしていくかという課題が一方であるだろうと思いまして、今回、事務局のほうから提案いただいていることが生じているのだろうと思っていますが、清水先生、いかがですか。
○清水先生 私も今日、このような論点は、①②③、すべてそのとおりというように感じました。特に労働災害、あるいは労働災害を防ぐという立場に立てば、業務による強い心理的負荷がかかっている人は、既に労働災害につながるという意味で考えたほうがいいというところですよね。いままでだとそれが、ひょっとしたら業務以外の心理的負荷があるからとか、個体側要因があるからということで、そういう意味で非常にわかりづらくなっていたと思うのです。労働災害を防ぐという意味では、先ほどお示しいただいたような心理的負荷評価表がどこの職場でも知られていて、この人にはいまこういう強い心理的負荷がかかっているのだから、労働災害を防ごうという部分があるという意味でも、①②③はすべて妥当なのではないかと、お聞きしていて思いました。以上です。
○岡崎座長 ご意見をいただいていない阿部先生、いかがでしょうか。
○阿部先生 「II」とか「III」の話で、事務局の方がもし推定できるとすれば、かなり事務の簡素化になるというお話があって、はっきり「II」か「III」かというのが区別できるのであれば、すごく事務処理の簡素化につながると思うのですが、実際に「II」か「III」かで裁判例で認定が、例えば国のほうで「II」と判断しても、裁判のほうで、すごく強だから「III」と認定するのもあるというのを考えると、普段事務処理をしてる方が「II」か「III」かだけはっきり区別できるものなのかなと。できないとすれば、補足的な意味でもそれを加えておいたほうが安全というか、そういうことはないのかなというのがちょっと疑問としてあります。
○黒木先生 過重性の評価をしっかりすれば、そこだけを取り出せばあまり間違いないかなという気がしますけれども。裁判事例が正しいとは限らないわけですから。
○阿部先生 先ほど黒木先生がおっしゃっていた裁判例8の粕屋農協事件なども。
○黒木先生 おかしいですよ。
○阿部先生 地裁も高裁も負けてしまっているのですが、確かに精神科医の判断が3人あったうち、2人の方は過重でないという判断をしているにもかかわらず、地裁でも高裁でも負けてしまっている例は確かに。
○黒木先生 発症要因をどう考えるかです。どの視点で精神医学的な観点から、発症要因がどれが主体かということを見るかによって違ってくるというのがあります。
○阿部先生 業務の過重性の心理的負荷が個体要因を抜きにして客観的に判断できるのであれば、③でいけるのであれば、たぶんすごく簡素化になる。
○黒木先生 あれだってあれだけ検討して、個体側要因がこれだけあると言っているにもかかわらず負けているわけですよね。
○阿部先生 そうです。
○渡辺職業病認定対策室長 話があれなのですが、いまお話ししているのは「II」「III」の話ではなくて、「強」、つまり確かに仕事には非常に強い心理的な負荷がありますと。つまり、ありますというからには、先ほど流れ図で言ったように、「III」の出来事があって、そのあとにもかなりの状況がありましたということで、「強」という評価をしました。仕事では間違いなく強い心理的負荷がありますという評価があった上で、それでも本当にこの人は脆弱性に問題ないのですかということを、もう一度その上で見なさいという仕組み、そういうことですよね。そこが誤解されていないかという点です。
 もう1つは、おっしゃるとおりなのです。各地の先生方は、「強」という判断をするときに、仕事のことだけではなく、その人の性格傾向も含めて「強」という判断をすることがあるのかもしれないなということであれば、そういうことが現実にはあるのかもしれないという気はしています。個人の性格傾向みたいなものが前提としてなければ、「強」という判断が難しいという、何か荒井先生のお話もそのように仰ってるようにも聞こえたのですが、そうではなくて「強」という判断は仕事の状況とか、それだけで評価できるということを一応の前提とした場合には、このような推定ができるのではないかなというのが論点の趣旨なのです。ですから、そこはもしかすると現場で認定している先生はちょっと違う思いがあるかなという気がしたのですが。
○岡崎座長 業務による強い心理的負荷という判定の中に、既に個体側要因とか。
○渡辺職業病認定対策室長 そこも含めた上で「強」という評価をするとすれば。
○岡崎座長 判定していないかどうかというご質問なのか。
○黒木先生 性格傾向がこういう傾向があると判断する場合は、業務外という判断をする事例のほうが、多いような気がします。業務外の事例に業務外の要因とか性格傾向があったという形で出てくるということが多いように思います。だから、認定の検討をするときに、例えば性格傾向が執着気質であるとか、あるいは非常に几帳面であるとかはマイナス評価はしないと思います。むしろ、そういった性格傾向は別に発症要因ということではあるけれども、むしろ業務が非常に詰まっていて、ノルマを達成しなければいけないし、そのために本人の性格傾向が働いたということですから、性格傾向をそういうところでマイナスに評価することはあまりしないと思います。
○岡崎座長 ということです。
○荒井先生 調査のプロセスとして、実際に行われているのは同時にいろいろな情報を取っているわけです。その中で、個体側要因や業務外の要因について聞くわけですね。全体を評価して、「強」だということを局が判断する場合には、個体側要因がどうだとか、業務外の要因がどうだからそうでないでしょうという議論になることは、まずないですね。業務外についての心理的負荷についても個体側要因についても長時間を使う必要はないと思います。しかし、一定の先ほど申しました簡便法、要するに調査するときにアンケートを多くお配りして書いていただくとかが考えられると思います。
 以上です。
○鈴木先生 確かに業務上外の負荷、それから個人的要因、これはメンタルな問題を考える場合に大変必要だし、魅力も感じるわけなのです。そういう言い方もよろしくないのですが。実際としては、業務上の負荷が大きく、「強」であれば9割方それで通っているということで、ほとんど個人的要因、私生活のことは感じられなくなってしまうということがあります。ですから、それについてはもう全然しなくていいということでは、ちょっと問題が残るので、先ほど荒井先生がおっしゃったようにチェックリスト方式などというのを用意したり、あるいはヒアリングで親しい交友関係、あるいは職場の同じ係の中の人間、こういう者に聞きますと、多大な借金を抱えていたとか、交通事故を起こしたことが直近にあったとか、そういうことで突出している出来事としてわかるわけですから、チェックリストプラスヒアリングということで済ませて、それ以上あまり突っ込まないと、軽く考えるというか、漏れがないように、かつ軽く考えたほうがいいのではないか、こういうことで運用上のやり方で迅速化を図れるのではないかと、このように私は思いました。
○岡崎座長 何かまとめをしていただいたような感じですが、そういった具体的な方法が考えられるかなと。
○山口先生 事務局にお伺いしたいのですが、個体側要因と業務外の要因というのは、普通はどのようにして調査されるのですか。ヒアリングですか。
○幡野職業病認定対策室長補佐 労災ですので、当然ながら発症日を確定させて、かかった疾病を確定させなければなりません。これは専門部会等、医学的事項ですので、最終的な判断はやっていただくのですが、その前提となる事実を当然ながら聴取りという形で調査いたします。
○山口先生 それは個体要因とか業務外を分けないで、全体でですね。
○幡野職業病認定対策室長補佐 全体でやっております。ですから、そこの部分の中で、必ずいつ発症したかというと、そのときに何が起こったかというのは家庭的な問題もありますし、その方の特質もありますので、含めて調査していると。また、例えば前提として診療歴等があった場合には、いま判断指針に載っておりますのは過去の精神疾患についての既往とアルコール依存関係ですので、この辺のところが出てくれば、ご同意を得た上でカルテ等を取り寄せて調査すると、こういう方法をとっております。ですから、これはほとんど物として何か残っているということはありませんので、ご本人、家族、職場の同僚および友人といったところの聴取りが中心かと考えているところです。
○山口先生 そうすると、認定判断をするときに、その調査や聴取りを整理して、業務上の心理的負荷、それから業務外、個体要因と分けられて整理されたようなものにはなっていないのですか、全体として見ると。
○幡野職業病認定対策室長補佐 全体といいますか、それをさらに専門部会にかけますので、プロセスとしての流れがありますので、当然聴取りされた中で、個体側要因なり、本人の業務外の負荷なり、そこは整理して挙げていくという形にはなりますけれども。それをターゲットにして直接調査するということは、実務的にはあまりないのではないかとは思っています。
○山口先生 いや、私が思いましたのは、皆さんが言っておられるのでいちばん問題ないのは、業務による強い心理的負荷が仮にあるとしますね。あと、業務以外の心理的な負荷があっても弱いと。個体要因はないとか、あるかないか分からないというのさえはっきりすれば、理屈がどうであれ、業務による心理的負荷だけを判断することで決まるわけですから、そこの見極めが非常に早い段階でできれば、手続きもそう遅れないでいくのではないかという気もするのですが、分けてしまうのは不可能なのですか。
○渡辺職業病認定対策室長 ないという判断を。
○山口先生 というか、私の言うのは、この3つのうちの要因のどこの判断が難しくて遅れるのだろうかということなのです。それがいま伺ったのは、3つを分けてやっているのではなくて、全体のヒアリングで見るからという、そういうお話だったように思うのです。
○岡崎座長 とても大事なところでして。
○渡辺職業病認定対策室長 まず、個人的に私的な問題を抱えていなかったかとか、この人に性格的な、あるいは精神障害を発病しやすいような何か内在的なものがなかったかというのは、生存者の場合にはご本人から聴く。それから、死亡事案、自殺事案の場合には、家族から聴く。これは全部やっていると。それの言い分が正しいかどうかというのまでは、なかなか確認はできないわけです。ほかにも必要があれば、同僚の方、あるいは上司の方に聴取りをしますが、その際にこの人は家庭的に何か問題があるという話はしていなかったかとか、この人が昔、精神障害にかかったという事実を知らないかとか、そこで初めて第三者の話が出てくるのですが、これはそれだけを確認するために同僚や上司に聴取りをするということはまずしないので、ほかにも上司、同僚に確認すべき事項があった場合に合わせて聴く。
 そうしますと、場合によってはこの確認というのはご本人からだけ、あるいはご家族からだけ。そういうことが不利益になることを知っていれば、まずその不利益なことを積極的には、少なくともこちらが根掘り葉掘り聴けば、しょうがなく話してくれる場合もあるかもしれませんが、こちらもプライバシーのことを根掘り葉掘り聴くということもなかなかしにくいですから、向こうが積極的に話していただけたことはちゃんと記録に残す。でも、そうではないのは全部、どこにも出てこないという、もともとの事実の確認方法がそういう感じなのです。そうすると、非常に積極的に何でも話してくれる人と隠したがる人で、結局私どもの調査も限界があるものですから、そこで差ができてしまうのも、どうも不公平感という感じも持ちます。そういうこともあって、一応いまの要件でいくと、誰かに一言は聴かなければいけないですね。この人に個人的な問題はなかったかということ、あるいはこの人に精神障害を発病しやすい何かがあるかどうかを聴いたことはないかとか、ご本人に、あるいは家族に聴く。いまの仕組みですと、一度は誰かからそういう確認をしなければいけないということになっていますが、その確認をしても、本当のことが出てくることがなかなか難しいのではないかなというのであれば。
○山口先生 だから、それをほどほどにやればいいのではないかと。
○幡野職業病認定対策室長補佐 先ほど荒井先生がおっしゃいましたような、例えば表のような形で提出してもらう、ないしはそれに基づいて一定限聴くことを決めて聴取するという方法で確定できるとすれば、先ほど先生がおっしゃられたように、そのあとは少なくともそこを聴く必要がなくなるということは出てこようかとは考えています。
○山口先生 私ばかり話してあれですが、前回からいままでお話を伺っていますと、業務による心理的負荷というのは、項目で表に展開されているわけですね。それを見れば判断ができるようになっていて、業務外のものもそうなっていますが、個体側の要因は項目が挙がっているだけで、アルコールだとか既往症だとか、なかなか判断しにくい。先生方のお話を伺っていると、何か現れていないものもあるというお話ですから、あれで個体側要因が本当にあるのかどうかというのは、聴き方とか、誰に対して聴くという前に、何を聴くかということが確定されていないから、まず難しいと思います。だから、個体側要因も何か確認できる程度に聴けばいいのではないか。業務外の要因も、誰か同僚なり何なりに聴けばいいという程度で、本当に知っている人は誰かというのを探し回って聴いていたら、これは大変なことになる。
 ということで、手続上業務による負荷に集中して、そこに特化して調べるというやり方を実務的にやりさえすれば、問題は軽減するのではないかという気がするのです。というのは、③の業務以外の心理的負荷や個体側要因の関与は、業務外と判断した場合の補足的な理由として位置づけるというのは、わかりやすく言えば、これは特別にこういう事情があるということがわからなければ、業務上の心理的負荷だけで決めていいという意味だと思います。それで実際やるというのも、私は特に反対ではありません。そうすると、いまの指針を書き替えなければいけなくなるのではないかという気がします。それと、いまの判断指針を変えないで、運用でうまくやるというのだったら、何かひと工夫必要かなという気がします。実務的に、感覚的に、どうですか。
○岡崎座長 その辺りは、即この検討会全体の問題にかかわることですね。この論点の結果として、全体を判断指針の運用で対応するのか、あるいは先生がおっしゃった書替えに踏み込んでやるのかということは、これは事務局のほうの何と言うのでしょう、構え自体をお聞きしておかないといけない。
○山口先生 おそらく事務局で考えておられるのは、いまのままでいけば、ものすごく時間がかかってしまうと。それが1つの大きな問題だと。そうすると、認定基準は業務による心理的負荷と業務外の心理的負荷と個体要因と、3つの要素で成り立っている。前の業務による心理的負荷を認定の積極的な要件にする。これだけあれば、もう認定してしまうと。あとの業務以外の心理的負荷とか個体側要因というのは、これは消極的な要件にしてしまって、これがあればこれを考慮するけれども、もう特に出てこなければ、前に積極的な要件が認定できれば、それだけで見てしまうという、こういうお考えではないかと思うのです。
 ところが、いまの判断指針はそうではない。3つは対等な要素で、3つの要素を総合判断するのですよと。そこを変えるか運用で対応するか、そこの違いです。
○岡崎座長 いまお話いただいたのは、いかがでしょうか。
○河合補償課長 その点を含めて、事務局でこうしたいとか、そういうことではないので、この場で十分ご議論いただいて、収斂する所は収斂していくと思いますので、それは最終的にここで結論をまとめていただければいいので、今日の段階では全くそういうことを我々も思っておりませんし、いろいろ参考になるご意見をいただいているわけですので。
○岡崎座長 わかりました。何がいちばんいいかということから考えて。
○良永先生 議論としては真っ直ぐな議論でないかもしれませんが、費用対効果のことも考えるのです。調査に莫大なエネルギーと時間を費やしたけれども、例えば業務外とするようなケースは極めて稀、なくはないけれども稀とするならば、認定業務の迅速化、要するに救済の迅速化ですから、その価値を優先するという、少し暴論かもしれませんが、これは一般論です。そういう議論の仕方もあっていいのではないかと思ったりするのです。
○河合補償課長 もちろん、それはそういう考えもあろうかと思いますが、あくまでも労災法と医学的根拠に基づいて、そういう形がとれるのであればとればいいし、もしそれがとれないのであれば、医学的にちょっとおかしいということであれば、それはそれでまた別の議論が出てくるかなとは思っていますけれども。
○良永先生 私もそれを強調するつもりはないのですけれども。
○河合補償課長 ただ早ければいいというものでもないと。
○良永先生 それはそうです。
○岡崎座長 そういったところも含めて、ご議論いただければと思います。
○黒木先生 いまの山口先生のお考えは非常に賛成なのですが、ただ医学的に、なぜその人が精神障害として発症したのかと、その発症要因を考える際に、一般的には業務要因、業務外要因、それから本人の個体側要因、これを外すことはできないのです。でも、特例というか、これはもう明らかに業務が関係し過重性が高いものに関しては、たぶんそのようにもっていってもいいのではないかなと思います。やはり事例によるのではないかなと思うのです。現実に1136例のうちの234例が認定されているということになると、自分が仕事で病気になったのだということを考えて請求してくる人はたくさんいるわけですね。でも、実際に特に自殺ではない精神障害の人は、自分はこういうことがあったから病気になったという主張をしてくることが多くみられます。そうすると、発症要因として、この3つを3つの観点から考えざるを得ないし、検討しなければいけないということになるかと思うのです。だから、事例によって違うのではないか思います。
○岡崎座長 この論点1の①②③を含む所については、かなりご意見が出たかなと思います。時間的にも、次の④⑤のほうに移りたいと思うのです。①②③のまとめという形で申し上げるのも何ですが、現場の先生方は当然、精神医学的に考えて、業務上の心理的負荷が発症にかかわったかどうかということについては、従来どおり業務外の要因、あるいは個体側要因を考えなくてはいけないということですが、情報を得ることが難しいという現実もありますし、業務上の強い心理的負荷があった場合には、結果として違う、総合評価にはなっていないということも考えます。そういう現実もありますし、先ほど費用対効果の問題も出されましたが、確かにそういうこともあります。迅速化という今回の目的からいたしますと、それに沿って簡便化できるところは簡便化したほうがいいのではないかと思うのです。具体的にもチェックリストを使うとか、個体側要因については重要な項目として挙げられているけれども、現状では何を聴くかということも揃っていないということもあります。チェックリストの採用とか、そういった具体的な方策を考えて簡便化していくことを加えれば、事務局が提案されているような考え方がかなり受け入れられるのではないかと、議論をお聞きして感じましたが、そのようなまとめでよろしいでしょうか。
 具体策については、このあとでまた検討することになると思いますので、そういったところでとりあえず議論の現状を締め括らせていただいて、時間がある限り④と⑤の論点に移っていきたいと思います。こちらについてはいかがでしょうか。これには具体的な案として、評価表を新たに策定するということも検討されていますので、先ほどの議論と関連すると運用だけではないということもあるのかなと思っているのですが。
○山口先生 ここの所ですが、④の所も事務局にお尋ねしたいのは、これは出来事後の状況を入れた評価表に、この評価表を改めるということですか。
○岡崎座長 という案が出されているのですね。例えば具体的な項目の例としては、どんなものがありますか。仮に作るとしたら、強い何々があったという表現の項目になるのでしょうか。現在は出来事とその後の持続する状況を分けていますね。例えば、それを合わせたような表現の項目ということですね。
○幡野職業病認定対策室長補佐 そうです。
○河合補償課長 いずれにせよ、これはこういう新しい形でできるかどうかという。
○岡崎座長 その検討も含めて。
○河合補償課長 先生方にお尋ねしながら、現実にいまいろいろな調査もお願いしており、そういう形で何らかのものができるのか、できないのか、現行のものを維持すべきなのかを含めてどのようにお考えか、ちょっとお聞きしたいと思います。
○岡崎座長 実際に携わっていただいたご経験を踏まえて、そういうより良いあり方はどうかという。
○河合補償課長 特に我々として、いまの段階で何か具体的にお示しできるような腹案があるわけではないので、先生方に何か、そういうのはどんなものでしょうかという感じなのです。
○黒木先生 例えばどんな場合でしょうか。ちょっと頭のイメージが湧かないのですけれども。
○荒井先生 要するに出来事があって。いや、私が言う必要ない。
○岡崎座長 先ほど、公務員のあれのようなあり方が例としては出されましたね。
○荒井先生 出来事があって、そのあとに伴う変化を2段階で評価して、「強」に至る、至らないということを考えているわけです。ひとつの出来事で発症するものもそれは当然あるわけですが、そうではない、そのあとに例えば過重な労働があったから発症する、「II」から「III」に上がる、あるいは「III」から「強」になるなどということがあり得るから、それを1つのプロトタイプを作ってそれを例示して、それに従って「強」なり、あるいはそれ以外だというように判断をされるという提案ですよね。
○渡辺職業病認定対策室長 そうですね。先ほどの表でちょっとお示ししましたけれども、出来事として「III」の評価が得られたものは、9割以上が業務上といいますか、「強」になっているのです。そうしますと、もうほとんどそれはパターンがあるのではないか。つまり、逆に1割弱の、「III」だけど業務上にならないケースというものを、ある程度そういうものは駄目なのでしょうというのをはっきりさせていくと、それ以外はもう「III」まで行って、要はネガティブな要件に当てはまらなかったら業務上としていいですよみたいな、そんな感じ。逆に「II」の場合は、1割だけが業務上外ですね。「II」でこういう要件に当てはまったものはいいのではないですかというものが可能なのではないかなと。まだ具体的なそのものはわからないのですが、例えばそういうものができたら、だいぶ判断しやすくなるのではないだろうかということを考えているわけです。
○黒木先生 これは非常に判断の一般化というか、平均化というか、そういうことにもつながっていきますよね。いま部会によっていろいろ検討することについて、やはりそういった例示があるとわかりやすいと思いますし、それは迅速化にもつながっていくのではないかなという気がします。
○幡野職業病認定対策室長補佐 いちばんわかりやすいのは労働時間、これはもう通達を出しておりまして、いま100時間と1本の線で引いておりますが、出来事後に100時間があれば、「II」の出来事があればもうこれで業務上と。したがって、出来事後の100時間継続しているということであれば、「II」のものはすべからく「強」と見る、それが1つ考え方としてあろうかと。そうしますと、そのほかの出来事後の要件も、これと組み合わせることによって、もう「強」とできるものはしてしまおうというのがこの「例えば」の例の所です。例えば対人関係のトラブルですと、比較的、出来事後の出てくるものも決まっておりますので、そういったものは極力組み合わせてしまって、「強」としてできるものはしていくというものを考えていきたいと思っております。
○黒木先生 出来事を押し上げる要因として時間外労働が発生することが多いと思われます。ただ、出来事、例えば役割の変化とか転勤とか仕事の内容が変わったとかいう場合、しかし、時間外があまりないという場合は、当然それは業務外になるわけです。そういったものを押し上げる時間外労働はどのぐらいあるかということによって、睡眠がどのぐらいとれていないかということに関係してくるし、精神障害の発症に、これはこういうことが関係したという特定にはなっていくのではないかなという気はします。
○岡崎座長 ⑤は、弱い負荷であっても、反復あるいは継続をするといった、この項目は前回の判定表の改正のときもなかなか難しく、処理が難しいなと感じた項目でしたね。こういった項目が1つでまとまって表現されると、かえっていいという場合もあるようですね。というように感じます。
○山口先生 当然、一緒にしたほうが常識的でやりやすいわけでしょう。
○岡崎座長 通常の表現です。
○山口先生 そのほうがいいような気がしますね。
○幡野職業病認定対策室長補佐 さらに、監督署長がものによっては自ら判断できるところまで作ってしまえば、かなりの短縮が見込めるのではないかという面もあります。
○良永先生 私は異存はありません。これはこれでいいと思います。
○山口先生 その上で、「III」になったものの扱いはおっしゃっておられたように、こういうデータに基づくと、確かにそうでないケースもあり得ると思います。だから、もし医学的な見地から特に強い反対がなければ、医学的知見とはぴったり合わないかもしれないけれども、早期に救済するという、そういう政策的な配慮から、実際の運用はそうするということで、法律の上ではいいのではないか。医学的な知見とも衝突はしないでしょう。100%支持はされないかもしれないと思いますが、どうですか。とにかく、60%だけれども早くやらなければいけないから、これでいきますと。確かに100%明らかになれば、誰も文句は言わないのだけれども、2年も3年もかかってはそれはしょうがないと。
○黒木先生 もう誰が見ても、こういう時間外労働が100時間以上も続いていれば、これはもう過重性があったということになるし、その後に自殺をしたり、精神障害を発症したということになれば、因果関係否定というのはなかなか難しいのではないかなと思います。ただ、自殺ではない精神障害の事例で、出来事がなくて時間外がずっと続いている、ところが、時間外は減ったところで、何かトラブルがあって発症したという事例もありますので、その辺はやはり慎重に見ていくことが必要かもしれません。例えばどれぐらいの時間外労働をしていて、どのぐらいの睡眠状態が確保されていたかどうか、そして生理的に必要な最小限度の睡眠が確保できない睡眠状態が確認できて、休みもなく出てきているということが揃えば、これはかなり発症要因としては医学的にも認められるのではないかなという気はしますけれども。
○岡崎座長 強い業務上の負荷があった、その「強い」の所を厳密にやるという運用でいいのではないかというご意見ですね。ほかはいかがでしょうか。
○荒井先生 ⑤についてなのですが、持続的にある心理的負荷がかかってくることによって、精神障害が発病するのだという主張は当然あるわけですが、災害性というものをどこに見出すかということがあり得ると思うのです。デイリーハッスルズという言葉も心理学領域では使われていますし、それが精神障害の一要因だという主張は受け入れられているので、全く否定はできないのですが、先ほど申し上げた災害性というものを日常的な煩わされごとの中に、どのように組み込んでいくのかというのは非常に難しい課題だろうと思います。
○岡崎座長 これもやはり個別例を検討しないと。
○荒井先生 慢性のことについては、「なるほど、これは慢性に続いているけれども『強』だ」という事例が例示されれば、イメージがわかるのです。デイリーハッスルズ自体の負荷、心理的な負荷をどのぐらいに見積もるのかというのは、難しい課題だろうと思います。
○岡崎座長 大体予定された時間を使ってしまいましたのであれですが、何かこれは是非というご意見がありましたら、最後にお願いします。
○阿部先生 先ほどの⑤の話なのですが、対人関係のトラブルというのは、意外と件数としては多いですよね。災害性がない場合にもパワハラとかセクハラみたいなものは、出来事ではなくて全体で捉えるのであれば、災害性がある場合と別立てにしたほうがいいのか、どっちなのかなと。
○荒井先生 別立て方式ですね。
○阿部先生 別立て方式のほうがベターなのですか。
○荒井先生 いや、いま行われているのは別立て方式で、ひどいいじめという概念自体が別立てだと思うのです。
○岡崎座長 まだ検討すべきことは残っておりますが、時間の関係で今日はこの辺りで終わらせていただければと思います。今日は論点1をご議論いただきまして、どうもありがとうございました。おおよそ事務局からの提案についてご検討いただいて、そういった変更といいますか、運用も含みますが、全体としては迅速化に対応した改正が必要かなというご意見をいただいたと感じました。論点の2を次回検討させていただいて、全体として今後どういった作業を進めていくかということについて、次回、あるいは次々回ぐらいまでに明確化できればと期待をしております。時間がまいりましたので事務局にお返しをして、今日はこれで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
○板垣中央職業病認定調査官 次回の日程ですが、検討会は12月13日(月)午後2時から開催予定としておりますので、よろしくお願いいたします。本日はどうもありがとうございました。これをもちまして、本日の検討会を終了いたします。


(了)
<照会先>

労働基準局労災補償部
補償課職業病認定対策室

電話: 03(5253)1111(内線5570、5572)

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