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2010年9月29日 第2回 事業場における産業保健活動の拡充に関する検討会議事録

労働基準局安全衛生部労働衛生課

○日時

平成22年9月29日(水)


○場所

厚生労働省専用第23会議室


○議事

○古田職業性疾病分析官
 本日は大変お忙しい中、ご参集いただきまして、大変ありがとうございます。
 定刻になりましたので、ただいまより第2回「事業場における産業保健活動の拡充に関する検討会」を開催いたします。
 本日ご出席いただいております委員のうち、前回ご欠席だった先生で岡田委員と河野委員が本日お見えでございますので、ご紹介いたします。それから、本日、岸委員はご欠席でございます。
 それでは、最初に配布資料の確認をさせていただきます。お配りしております資料を順番にご確認ください。
 検討会の次第がございます。それから資料1、産業医等で構成される事業場外組織(外部専門機関)の在り方の論点ごとの整理というものであります。資料2といたしまして、外部専門機関の考え方(案)。資料3といたしまして、外部専門機関等利用時の法的責任負担関係についてという資料がございます。これは三柴委員の文責により作成いただいた資料でございます。それから、資料4、「地域における産業保健活動の推進に関する検討会」における意見等でございます。それから、資料5、地域産業保健センター事業の現状。資料6、行政刷新会議ワーキンググループ事業仕分け第2弾、平成22年4月23日分の資料がございます。資料7、地域産業保健センターの利用促進と地域資源の活用についてという資料がございます。資料8、事業場における産業保健活動の拡充に向けての検討項目。最後、資料9でございますが、産業保健師の活動基盤に関する実態及び日本看護協会が取り組む事業について。これはこの後のヒアリングの資料でございます。
 資料は以上でございます。ご確認いただければと思います。よろしくお願いいたします。
 それでは、今後の議事進行につきましては、中原座長にお願いいたします。

○中原座長
 それでは、本日の議題に入りたいと思います。
 今日は、まず産業保健師の活動等について、日本看護協会からヒアリングを行います。発表は日本看護協会常任理事の井伊久美子さんです。よろしくお願いいたします。

○井伊常任理事(日本看護協会)
 日本看護協会の常任理事の井伊でございます。どうぞよろしくお願いいたします。着座にて失礼いたします。
 本日は私どものこの事業についてご説明をさせていただく時間をいただきまして、大変感謝申し上げます。ありがとうございます。
 10分と伺っております。資料に沿って説明をさせていただきたいと思います。
 私どもの資料は本日資料9ということで、産業保健師の活動基盤に関する実態及び日本看護協会が取り組む事業についてということで、カラーで用意をしていただきました。どうもありがとうございます。
 私どもでは、昨年度、産業保健師だけではなく、保健師に関する基礎調査を行っております。そうしたことから、私どもがつかんでおります産業保健師の実情と、それを受けまして、今年度この産業保健師の強化を大きな課題と受け止めておりまして、それについてこの11月から事業を開始するという計画でございます。それについてご説明をしたいと思います。
 まず、スライドの右下に数字がございますので、このスライド番号に沿ってご説明いたします。
 まず、1番目です。保健師就業者数の推移ということで、これはご覧いただきまして一目瞭然でございます。現在一番多く保健師が従事しておりますのは市町村、この産業保健領域におきましては、事業場ということで平成19年に2,651人という従事者届けということになっております。現在でも、保健師の就業は7割弱が行政に就業しているという状況でございます。
 それから、おめくりいただきまして、2番目のスライドになります。これは現在の保健師の国家試験合格者の推移でございます。平成19年以降は保健師の養成は年間1万人を超えるという状況です。これは看護系大学が昨今急増いたしまして、そうした影響によるものが大きいです。昨年7月に保助看法の改正がございました。それによりまして保健師教育は6カ月から1年ということで、同時に文部科学省のほうも保健看護系大学における保健師教育については選択制を認めるとなってございます。ですので、そうしたことから現在、保健師教育の充実を図るカリキュラムの検討が進められているところですが、その中でも産業保健については充実をするという方向だと伺っております。
 また、そういたしますと実習場等の配慮をしなくてはいけないということになりますので、文部科学省のほうの選択制ということも有効になるだろうと思いまして、恐らく保健師の養成数はこれから若干減っていくというのが予測されるところです。いずれにいたしましても適正な養成数と、それから産業保健の教育の充実ということが今後は見込まれると思います。しかしながら、現在1万人を超える保健師の養成でありますが、ここから採用されるといいますか、就業する保健師の数は1,100人前後というのが今のところの実情でございます。
 その次が右下の数字で、スライド3ということになります。ここからが私どもの産業保健師に関する調査をいたしました結果で、概要をご紹介しているものです。
 昨年度、21年度に保健師全数を対象にいたしましてweb調査を行っております。産業保健師につきましては、1,339人が回答をしております。全事業場で勤務する保健師の約4割強が答えていただいたという状況でございます。
 スライド4です。その結果でございます。産業保健師の実情といいますか、基盤の部分のご紹介ということになります。
 産業保健師の現在の平均年齢が40.3歳。ですので、比較的ベテランの、しかし行政と比べますと50代は少なく、40代が多いという分配になっております。
 それから、最終学歴は、全体からいたしますと、4年生大学卒業、あるいは大学院修士課程修了者が全体の平均よりも多いという状況でございました。
 それから、4番目に雇用形態とあります。これが1つ注視していただかないといけない部分かと思っております。正規で働いている人が75%。ですので、産業保健師の4人に1人は非正規雇用ということになります。最初にも申し上げましたが、保健師の多くが行政で働いておりまして、行政は90%以上が正規雇用ということになります。ですので、現在1万人ほど養成されている保健師学生のうち、約2割ほどは保健師を志望しているという状況がございます。けれども、結果的に採用はされていないという状況です。その中でも、どの領域で保健師になろうと思うかというと、やはりまずは正規で採用されたいというのが学生の心情でございまして、この非正規が4人に1人という状況が志望数が少ない1つの要因ではなかろうかと考えているところです。
 それから、スライド5でございます。これは産業領域における保健師の各業務についてお尋ねをしております。この時点では主たる業務、従たる業務、1つずつ選べということで調査をいたしました。結果、このように3位がメンタルヘルス対策となりましたが、これについては回答した保健師から大いにクレームがあり、余り順位はつけられないぐらいの業務量なんだというクレームがありました。今年度の調査では工夫をしているところです。
 それから、次をおめくりいただきまして、6枚目でございます。これは現在私どもが把握をしております産業保健師の活動の特徴でございます。大きく7項目ほど挙げさせていただいております。
 メンタルヘルス、自殺対策を含む労働者が抱える多様な健康問題にきめ細かく対応している。これは割り方重要なことだと認識しております。恐らくメンタルヘルスにいろいろ問題を感じている方、そういうことについてご自分が心配に思っている方が、最初から自分はメンタルなんだというふうにご相談にいらっしゃることは、これは産業保健領域だけではなく地域保健全般でもそういう傾向があるかと思います。ですので、2番目の身近なところで気軽に相談できる窓口となるということとも関連いたしますが、例えば少しけがをして、あるいは打撲をして、そういうことについて相談したいと入ってこられて、それが話を聞いているとメンタルのほかの問題も抱えているというようなことが多々あって、そういうことについてきめ細かな対応ができるということが大きな特徴だろうと思っております。
 特にそれに関連して申しますと、例えばお手洗いとか社員が比較的集いやすい場の横に保健師の居室があって、そこに入りやすくするような工夫をしている事業場もあると聞いておりますし、保健師の場合は、事業場によりますと職場巡回をするということが社員の方には認識をされていて、そういう機会を活用して、声をかけたり、あるいは相談を受けたり、あるいは次の役につながるメリットがあるという活動をしております。特にそういうメンタルヘルスの問題につきましては、日替わりでだれにでも相談ができるというわけではなく、やはり固定した相談できる存在というのが重要なのではないかと考えているところです。
 それから、3番目の対象者の状況を最も適切に把握し、様々な重要な方々との連携・調整ができると。これは恐らく特に休職・復職を繰り返すような場合には重要になろうかと思っております。産業医と主治医との調整をすることもあると聞いております。
 また、労働者ご本人だけではなく家族支援につきましても、これは比較的重要なことになりまして、当然ご本人の了解というものを考慮しながら、家族のサポートの方策を検討するということもあろうかと思っております。
 その下にも幾つかございますが、保健師の場合は、ポピュレーションアプローチができるということが最も活動の方法論としては特徴的かと思います。例えば、新人教育をするような場面で保健師としての顔を売るとか、あるいはどういう相談について活用できるということのサジェスチョンですとか、それから上司の方も含めた全体への問題提起等がやりやすい立場であるということも、この6番目には含まれているかと思っております。
 それから、7番目、これが比較的私としては今後重要になるだろうと思っているところでして、最初にもご覧いただきましたが、現在事業場の保健師は2,651人しかおりませんが、市町村には2万3,833人の保健師がおります。こういう求職者、あるいは休んでいる方々がどういう地域で暮らしているかということも大変大きな要素になるかと思いますので、そうした連携ができるということも産業保健師の活動の特徴になろうかと考えております。以上が活動内容です。
 次が7枚目になります。これは先ほどの保健師の活動基盤の調査の続きでございますが、現任教育について聞いております。これはちょっと残念なことなんですけれども、他の活動領域に比べて産業領域の保健師は現任教育を受ける機会が圧倒的に少ない、こういう実情があります。これも志望者が少ない1つの要因ではないかと思っております。特に新任研修が少ないということは、これは受ける機会がなかった人の割合をお示ししてございますが、行政領域と比べると格段に受ける機会がなかった人が多いわけですので、このようなことの整理は必要ではないかと考えたところです。
 それから、次は8番目ですけれども、やはり活動基盤の調査の続きでございます。研修の機会が少ないといったことの多分大きな要因の1つが、1人職場であるということであろうかと思っております。保健師全体といたしましては、8人に1人が1人職場ですけれども、産業保健師の場合は3人に1人ということになっております。職位といたしましてはそういうことですので、管理職は少ないという状況ですけれども、それに比べて比較的統括的な立場にある保健師の割合が多いというのも特徴かと思っております。
 このようなことを受けまして、私どもでは今年度中堅期以上の保健師の強化ということで、研修及び保健師同士のサポートがし合えるような仕組みを探る事業をスタートさせることを計画しております。
 9枚目のスライドをご覧ください。ここからが今年度開始いたします私どもの事業でございます。保健師全体にとりまして、この現任教育の再構築というのは大変大きな課題です。中でも産業保健師につきましては、先ほどご覧いただきましたように、現任教育の機会が少ないということがあります。そういったことを受けまして、今年度より早速事業として展開しようということで計画をいたしております。現在、中堅期につきまして最も重視をするということが、これからの管理者あるいは新人教育においても資すると考えまして、中堅期、特に中堅の中でもリーダー級の人たち、この人たちの強化を予定しております。
 10枚目のスライドですが、主にどのような能力を強化していくかということで、3点ほど挙げてございます。事業場全体に対する提言力、それから職場における体制づくりに関するマネジメント、それからメンタルヘルスも含んだ産業関連疾患、こうした分析能力、ここを中堅期でございますので、強化をするというようなことを重視をしたいと考えています。
 その後、11、12のスライドは研修内容をご紹介しているものですので、どうぞ後ほどご参照くださいませ。
 最後にスライド13ですけれども、これが私どもの今年度の事業の概要です。11月10、11日の2日間でリーダー級の人たち、今年度は50名を対象にコンサルテーションを進める予定です。応募資格につきましては、会員、非会員を問わず、全国から参加者を募集しようと考えております。経験10年以上の実務をなさっている方、特に3番目、自組織の産業保健活動の展開にとどまらず、今後他組織への協力・助言等幅広く活躍する意向のある人、こういう方を意図的に強化をいたしまして、そしてこの方々を中心に産業保健師が強化できる仕組みにつなげたいということで今年度は考えております。また、私どもでこういう研修をすることで、実際に産業保健領域に携わっている保健師の掘り起こしになるのではないかということも期待をしているところです。
 以上でございます。長くなりまして、失礼いたしました。

○中原座長
 ありがとうございました。
 それでは、ただいまのご発表につきまして、ご質問等がございましたら出していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○森委員
 産業医の仕事をする際、いつも保健師さんの役割が非常に大きいことを感じます。特に、現場において労働者、従業員の個別の問題をきちんとケアをしていただくというのは本当に重要だと思っています。そのような役割を果たす保健師の教育について心配なのは、まさしく先ほど説明があった教育の問題です。1つは学部教育で保健師という資格をとるまでに、産業保健という分野がどの程度教育されているのが標準で、または最低限なのだろうかという疑問があります。また、現任教育については、企業などの産業保健の場において、本来の中で受けられるべきものが提供されていないということで、その原因の一つは、職場に教育体制そのものがないということではありますが、それだからといって、コストをかけて外に研修を受けに行こうとしても、職場でその必要度が分かってもらえないということだろうと思います。
 そこで、私がご質問したいのは、まず基盤となる学部教育において、産業保健に関してどのような教育を受けているのかということを知りたいと思います。
 もう一つは、中堅教育の中では、組織に対してアプローチをする方法がかなり重要になると思います。また、保健師さんが働く職場は、もちろん専属産業医がいる職場もあるのですが、産業医が嘱託でしかいない場合も多く、いずれの場合も産業医との連携は大切で、特に後者の場合には職場の中で保健師が常勤なので、産業医や産業保健全体をリードしていただくことも必要になります。中堅教育の中では、産業医との連携が重要なテーマですし、今回の検討会の1つのテーマになっていますが、これらの点については、どのような趣旨で教育がされているんでしょうか。その卒前教育の話と中堅教育の中での産業医との連携などの話、2点教えていただければと思います。

○中原座長
 どうぞ井伊先生、お答えいただければと思います。

○井伊常任理事(日本看護協会)
 まず学部教育の中での産業保健に関する教育内容がどのぐらいなされているのかということだと思いますが、現在看護系大学におきましては、看護師教育と保健師教育を統合的に行わざるを得ないという実情がございます。そういう中で、保健師教育の多くの部分を看護師教育に読み替えながらやっているという大学も少なくありません。その読み替えの比率とか、保健師領域の中でもどの部分に力を入れて行うかということについては、大学の理念、あるいは方針に委ねられているというのが現状でございます。ですので、相当しっかりと産業保健領域においても実習まで行って教育をしている大学と、それから授業といたしましても何コマかで産業保健を終わらせて、そして産業保健領域における実習は全く行っていないという大学があるというのが実情です。非常に差があるとご理解いただかないといけないかと思います。
 恐らく今の実習上の状況等からいたしますと、この1万人ほど養成されている保健師の多くは、そうした実習までの教育は受けていない人のほうが多いと言わざるを得ないという実情だと思います。これが昨年の法改正によって、半年が1年というふうに多くなりますので、ここは充実させることになろうかと思っております。
 それから、医師との連携につきましては、私どもがこの計画を立てるに当たりまして、中堅期ですので、中堅期として最もどこに力を入れてやらなければいけないか。特に2日間でやるコースでございますので、そういうことでワーキングを持ちまして相当検討させていただきました。その結果、それは当然のことだということで、あえてこの中に項目としては入れてございません。ただ、このコースの持ち方といたしましては、ベストプラクティスを要所要所に入れ込んで、そして進める予定でございます。ですので、産業医との連携、あるいは主治医との連携ということについては、これは保健師としてどのように自分を高度化していくかというところなんですね。ですので、そこを強化するというのは恐らくコンサルテーションの内容になろうかと思っております。そういう意味で、グループワークとかベストプラクティスとかいうような内容を入れ込んで、実践事例として学んでいただこうと考えております。

○中原座長
 ありがとうございました。
 今、北海道大学の岸先生に万難を排してご出席いただきました。よろしくお願いいたします。
 どうぞ、今村先生。

○今村委員
 スライド4なんですけれども、産業領域における保健師さんの雇用形態というところで、4人に1人が非正規雇用という問題意識ということで掲げられたんだと思うんですけれども、これは全員が正規雇用であるべきだというお考えで出されたのでしょうか。
 というのは、1つは保健師さんのご自分のニーズがどうかということと、もう一つ、保健師さんの役割はとても産業保健では大きいと、できるだけ多くのまだ保健師さんが入っていない現場に、こういう保健師さんに入っていただくためには、逆に非正規であったほうが当初は広がりやすいのではないかとちょっと思っている部分もあるものですから、その辺のお考えをちょっと伺えればと思います。

○井伊常任理事(日本看護協会)
 全体の平均といいますか、産業領域だけではなくて、行政、産業、福祉領域、それから医療機関で全体の数が出ております。そういたしますと、全体としては9割が正規で働いていると。そういうことと比較して、正規職員の多い領域を選ぶというのが保健師の心情ではないかということで、この数を出させていただきました。
 それから、今先生がおっしゃいましたように、働きやすいことがどのようであるかというのは、今ワーク・ライフ・バランスとかいろいろなことがあります。ですので、そうしたことも選択肢の1つではないかと思いますが、でも保健師界を見ますと、比較をすると非正規であると少し分が悪いということだろうと考えております。

○河野委員
 私も産業保健師として現場で27年ほど働きました。今村先生がおっしゃってくださったように、保健師は現場で非常に大事な働きをすると思っています。今のご質問ですが、これは産業保健師の専門性と関わってくると思います。産業保健師はメンタルだけではなくて、働く人の身体も含めた健康支援においては一番身近な専門職です。そのため、働く人とのラポール形成ができやすい立場にあり、いろいろな情報を得ることができます。それらの情報を産業保健チーム、つまり、産業医、産業保健師、産業衛生技術者、衛生管理者などからなるチームに持ち込んで、その後のケアについて検討し、実践していくときに、全人的な対応ということで専門性を発揮していきますので、例えば派遣とかで、たまにその職場に行って仕事ができるようなものではありません。やはり、じっくりと対象者に関わりながらケアするというのが私たちの専門でもありますので、派遣というよりも正規従業員としてそこにいて、仕事をすることが必要です。
産業医の先生は嘱託の方が多いと思います。それをしっかりと企業の中で正規社員の保健師が情報収集その他を含めて、社員あるいは事業主とラポールをとっておいて、それを生かして産業医の先生とご一緒に検討しながら支援をしていくという、そのパターンが成功すると思います。そういった意味で、正規で入るということが私自身は必要だと思っています。

○今村委員
 正規で入っていただければ、それが一番望ましいんだろうと思っています。私の組織、日本医師会も200人ぐらいの職員がいるので、週に1回保健師さんに来ていただいて、職員の方のいろいろな面談等をやっていただいています。別に正規の職員ではありませんが、保健師さんの役割というのはとても大きいと、そこは先生と全く。
 今日の議題になってくると思うんですが、小さな事業、地産保であるとか、そういったところに保健師さんの役割も担っていただくとなると、なかなか現状では正規の職員として雇用するということはまだまだ難しいと。あるいは、地域との連携という話の中で、市町村にいらっしゃる保健師さんをどういうふうにしてその場で活躍していただくとなれば、非正規の雇用という意味ではなくて、常勤ではないけれども、ご相談に乗っていただく形で来ていただくということが今後必要なのではないかと思ってそれを申し上げているということです。

○中原座長
 ありがとうございます。
 ちょっと今村先生のご意見にわたる部分が入っておりますが、とりあえず今はヒアリングに対するご質問ということでお願いします。
 それでは、一応最後に座長から聞かせていただきたいのは、スライド5の業務内容でメンタルヘルス対策が第3位となっています。これはちょっと趣旨がよく分からないんですが、アンケートの対象になった人からウエートが高過ぎるという評価なのか、ウエートが低過ぎるという評価なのか、ちょっとよく分からないけれども、何かクレームがついているようなことをおっしゃいましたけれども、ここら辺はどういう趣旨なんでしょうか。

○井伊常務理事(日本看護協会)
 これは私どものweb調査でやったものでございます。質問肢の構成といたしまして、この項目のうち、あなたにとっての主たる業務を1つ、従たる業務を1つ選んでくださいという質問にしておりました。そういたしまして、結果が健康相談保健指導が一番多くなって、そして2番目に各種健康診断と事後管理が多くなったんですね。保健師として恐らく事業場でどういうことを一番主な仕事だということでやっているかというと、これを選ばざるを得ないと。けれども、実際にはこの差がつくほどの1位、2位、3位、それからあるいは生活習慣病対策、それから他職種・他部門とのコーディネートなどは、どこの職場でも産業保健師であればほぼ同じ比率でやっているのだと。なので、こういう質問の仕方が問題があると、実態を反映しないというクレームでございました。

○中原座長
 ありがとうございます。

○岡田委員
 研修内容の件なんですけれども、保健師さんが事業場に密着するということになった場合、この研修内容で企業そのものをよく理解するということで、例えば業績評価とか、人事制度とか、そういうことを知っておかないと、これからのメンタルヘルス対策をする上で非常に私は問題があると思うんです。だから、恐らくここに書いておられるような内容ですと、上っ面だけになってしまって、本来どこに問題があって従業員が悩みを抱えているのかというところまで、これは追求できないと思うんです。
 企業の組織はどうなっていて、人事制度がどうなっていて、業績評価がどうなっているのか、そこを産保センターなんかに行っていますと、恐らく保健師さんはそんなことを分かっていないので、私たちが相談をしても、そこは分かっていないだろうというような意見が多いんです。だから、そういうことも含めて、企業の実態がどうであるのかというのをやっぱり的確につかむということが、産業保健師にとって極めて私は有効だと思いますので、今の時代の流れで経済状況はどうなっているのか、そういうことも含めてきっちりとご理解していただくと、さらにパワーアップができるのではないかと思いますので、その点もまたご考慮いただいたらと思います。

○井伊常任理事(日本看護協会)
 ありがとうございました。

○中原座長
 よろしいですか。

○河野委員
 すみません、一言だけ。このスライドの9番のところの中堅期研修をするということは意味が分かりましたけれども、新人とエキスパート教育について何か考えておられるのかお聞かせいただければと思いましたが、時間がないみたいですから、後でまた教えてください。

○中原座長
 今日は解説をしていただくのが多くて、産業保健師のことは今回の検討会の非常に大きな重点ですので、後でまた十分時間をとりたいと思います。
 それでは、井伊先生、ありがとうございました。
 それでは、議題1、外部専門機関の在り方について、前回の議論の続きに入りたいと思います。まず、用意している資料について、事務局からご説明をお願いいたします。

○毛利調査官
 それでは、まず資料1でございますけれども、前回論点、今回資料8に沿って議論していただきましたが、四角の中がその論点で、その下に検討会の会議での意見のほかに、会議後にいただいたご意見ですとか、あるいは事務局からの資料等を「前回資料等」に並べてまとめているものでございます。
 まず、論点の(1)アですが、メンタルヘルスに関する対応など産業医の職務が多様化してきたため、産業医の選任を要する事業場において、産業医を含む多様な分野の専門家等を抱えた事業場外組織による活動を行うことが有効ではないかについて最初に議論いたしました。
 以下、この産業医等で構成される事業場外組織というのを、外部専門機関と言うこととしたいと思います。
 まず意見でございますが、①は今回の検討の必要性に係るということでございまして、今後のメンタルヘルス対策として、ストレスに関連する症状・不調が認められる労働者に対して面接を行う、必要な者には就業場の措置の組織の意見ですとか、保健指導を行うということになりますけれども、これに対応できる産業医の数は十分ではないとか、あるいは嘱託産業医では十分な対応が困難な場合もあるということで、今対応が求められているということでございます。
 それから、②は三菱化学の事例をプレゼンしていただきましたけれども、比較的大規模な事業場では、産業医、保健師、カウンセラーという体制でメンタルヘルスを含む活動を行っている例が多いということでございました。
 ③ですが、心と体の元気プラザの事例を発表していただきまして、中小規模の事業場でそうした外部専門機関と契約をすることによって、保健師、カウンセラーも加えた体制でメンタルヘルスケアを充実させている、成果も出ているというような例がございました。委員のほうからは、こうした事例は決して少数ではないというご意見がございました。
 ④でございますけれども、そうしたことで②、③ともですけれども、産業看護職、カウンセラーが対応することによって、産業医が担当すべきことに専念できるので、効果的、効率的にメンタルヘルス対策を含む活動ができるので有効であるというご意見でございます。まとめにもそのように書いているということでございます。
 それから、論点のイでございますけれども、こうした外部専門機関に所属する複数の医師が協働して産業医活動等を行うことについてどう考えるかということでございます。
 ①は、まず当方から資料を出しましたが、産業医の職務というのは、総括管理、健康管理、作業管理など非常に幅が広いんだということ。それから、②につきましては、複数の医師が協働して産業医活動を行うことによりまして、事業場の作業態様などに応じた強みのある産業医の方が業務の提供を行えるのでよいという意見が委員からございました。
 あと、③、④にもメリットを並べておりますけれども、メンタルヘルスに関連した身体症状について、専門領域の様々な医師と連携して総合的に管理が可能になる、事業場、労働者の側から見れば、複数の医師等の知見を参照することができる。それから、産業医の中でも資格を持ちながら経験がなく、受託もできないという若い方もいらっしゃいますけれども、チームで働くことでお互いが向上する。それは当然事業場のメリットにもつながってくる、そういうメリットがあるということでございます。
 一方で、これが有効に機能するためには条件が要るというものが⑤でございますけれども、ある事業場についてチームを組んで複数の医師が担当した場合に、産業医の意見ですとか取りまとめというのは、代表する人が行ったほうがよいというご意見がございました。まとめとしましては、複数の医師が協働して作業医活動を行うことは有効であるけれども、代表者が意見を調整するなどの方策が必要であろうと書いております。
 次に、論点のウでございますけれども、事業場は産業医の職務の依頼先を個人の産業医とすることもできるし、一定の要件を満たす外部専門機関とすることもできることについて、どう考えるかということについてご意見をいただきました。
 まず①、これは委員からあったご意見でございますが、そうした外部専門機関を活用した活動が有効で、コストに見合ったものであると考える事業場については、そういう選択肢を設けるほうがよいという意見。
 それから、②としましては、産業医の選任率が、50から99人では63.7%という数字もございましたが、選任しない事業場の中には、適当な産業医が近くにいないということを理由に挙げる事業場もございますので、選択肢を増やすことで、こうした選任を促進することができる、これはメリットではないかと考えております。
 それから③、複数の医師との契約というのも現状でもあるんですけれども、適するものを自分で見つけてきてそろえたり、契約を交わしたりということは、非常に手間とコストがかかるので、外部専門機関との契約とすれば、それがメリットになるということでございます。
 一方で、問題点についてきちっと考えなければというご指摘も委員のほうからありまして、それを以下に書いてございます。
 まず、④1人の産業医が担当できる事業場数というのは自ずと限界があるのではないかということ。
 それから、⑤としましては、機関との契約ということで、産業医の権限とか責任が曖昧になってはいけないのではないかという意見がございました。
 それから、⑥ですけれども、これはイの⑤にもありました、その言い換えでございます。
 それから、⑦は、健診業務とセットにしているような事業場で受託している外部専門機関について、産業医が仮に非常に厳しい意見を事業場に対して言うときに、健診業務の受託まで打ち切られてしまうのではないかというようなことで意見が言えないと、そういうことがないようにしなければいけないのではないかというご意見でございました。
 それから、⑧につきましては、専属産業医がいるような事業場については、専属産業医
は事業場について非常によく理解ができる立場でありますので、これを外部専門機関で代替できるかというのは疑問であるというお話がございました。
 ということで、まとめとしましては、一定の要件を満たす外部専門機関が産業医の職務を行うという場合には、産業医が選任されていると見なすということも可と考えられるけれども、④以降にありますように、要件を適切に定めて問題が生じないようにする必要があるというふうにまとめております。
 4ページ目ですが、以上のようなことを基に外部専門機関が産業医の職務を行うということを想定した場合に、次のような機関であることが求められると考えられるとまとめております。(1)アからウまでの内容ですとか、いろいろな条件というものから書き出している部分ということでございます。
 まず、論点の中にアイウと3つ挙げておりますけれども、まず産業医の数につきましてですが、(1)イの②などから産業医として一定の知識を有する医師がいるということが求められるのでないか。それから、ウの④から受託する事業場数に応じた数の産業医がいるのではないかということ。それから、医師の経験の要件につきましては、(1)アの③、④、まとめにありましたけれども、メンタルヘルスに関する一定の経験を有する医師がいるということが求められるのではないか。それから、保健師等の専門職につきましては、メンタルヘルスに精通した保健師等の専門職が要るということが求められるのではないかということでございます。
 論点のほうには項目を挙げておりませんでしたけれども、ご意見の中のものをまとめますと、全体の業務の仕方、あるいは管理ということについて、こういうことが求められるのではないかというのが、そこに2つ書いてあることでございます。
 (1)ウの⑦にありましたことなどから産業医等を指揮し業務管理する、そういう産業医である人がいることが求められるのではないか。
 それから、2番目としまして、受託した事業場の産業医の職務を総括する医師がいて、当該事業場を担当する複数の医師等を取りまとめることが求められるのではないかということでございます。
 この2つはちょっと分かりにくいかと思うんですけれども、上のものは複数いる産業医の代表を決めるというような、理解しやすさのために言えば産業医長というような存在になるかと思います。
 下のほうは一つ一つの事業場に対して業務を行うときに、責任を持ってする産業医の方を決め、その人が意見なども取りまとめて言うというようなイメージになるかと思います。
 以上が資料1でございます。
 資料2のほうは、今の資料1を基にしまして、これからの議論のたたき台になるように事務局のほうで外部専門機関の考え方をまとめたという案でございます。
 まず、1の趣旨につきましては、メンタルヘルス対策報告書で書かれたような、面接等行うときに、従来の産業医の有する資質、実務経験だけでは必ずしも十分に対応できないということで、以下に新たな制度として整備し、活用する方策について素案を示すということを書いております。
 2はこの外部専門機関の方向性でございますけれども、少し繰り返しになりますけれども、まず産業医とメンタルヘルスに対応できる医師・専門職が連携をするということが重要であるということ。それから、メンタルヘルスに精通した保健師やカウンセラーと連携して対応することで時間を効率的に使うことができるということでございます。
 以上のことから求められる外部専門機関のあるべき姿としましては、メンタルヘルスに関する一定の知識と経験を有する医師がいること、メンタルヘルスに精通した保健師等の専門職がいることとなります。
 それから、(2)ですが、複数の医師の協働による産業医活動ということで、メンタルヘルスに関連した各種の身体症状についても、産業医とメンタルヘルスの経験を有する方が連携をすることによって、総合的な健康管理が可能になり効果的であるというもの。
 それから、事業場の業種・業態に応じて、有害業務など強みを持つ方が複数の中からその仕事を行うことが効果的であるというもの。
 それから、3番目ですけれども、一方で、複数いる産業医について、それを指揮して業務管理をする者が必要である。また、事業場に対して意見を調整して示さないと混乱があるということで、事業場に対して責任を持って、それを取りまとめ産業医の存在が必要であるということでございます。
 以上のことから求められる外部専門機関の姿としましては、一番下に2点書いてある点でございます。産業医であって、一定の知識や経験を有する者が指揮・管理をすること。それから、受託した事業場について、産業医等の職務を総括する者が取りまとめを行うということでございます。
 それから、(3)でございますけれども、産業医の職務の実施を外部専門機関が行った場合ということでございますが、事業場との契約によって外部専門機関が産業医の職務を行う場合には、産業医が選任されていると見なしてもいいのではないかということでございます。
 これを適切に行うようにするためには、あるべき姿としましては、産業医業務を受託した事業場の数に応じた産業医の数が必要なのではないかということを挙げております。
 以上、まとめて3に外部専門機関の具体的イメージを挙げておりますけれども、まずアとしましては、産業医であって一定の知識経験を有する者が産業医を指揮し業務を管理するということで、例えば選任された経験が一定年数以上の産業医ですとか、労働衛生コンサルタントですと、産業医科大学を卒業したような方ですとか、そういう者としてはどうかということ。
 それから、イとしましては受託する事業場数に応じた数の産業医がいるということが必要。ウとしましては、メンタルヘルスに関する一定の知識経験を有する医師がいるということ。エとしましては、精神保健の知識経験を有する保健師等がいるということが必要ではないかということです。
 オとしては、実際に業務をやるときには、その事業場の産業医の職務を総括する医師を決めて、担当する複数の医師等の業務を取りまとめる。勧告を行う場合には、複数の医師等で意見が異なる場合には、この総括する医師が意見の調整を行って、組織として勧告を行うというようなイメージでございます。
 4は産業医が選任されていると見なすという部分ですけれども、ただし以下に書いてあることにつきましては、1,000人以上ですとか、あるいは有害業務ですと500人以上で、専属の産業医を選任することと今なっておりますけれども、専属の場合、大規模では業務の形態も非常に多様でありますので、外部専門気機関でそれを代替できるかについては十分な検討が必要であろうということでございます。この辺りにつきましても、ご意見をいただければと思います。
 それから5としまして、これは具体的にここに挙げたようなものを実現しようとしたときに、どういう仕組みが適するかということについてでございますけれども、こうした質を担保するためのいろいろな要件を決めますと、行政としましてその要件を満たしているかというものを審査しまして、満たしているものを登録するという、登録機関の制度がございます。登録したものは公表いたしますので、事業場がその中から選べるとことになるわけでございます。
 この登録制度につきましては、行政の一定の介入ができるようになっておりまして、例えば産業医の選任・解任の届け出を求めるとか、あるいは業務規定を定めて出すようにとか、一定の実績についても報告を求めたりというようなこともできますし、一定年数ごとの更新が求められるということですとか、立入ですとか要件に適合しない場合には、適合命令取り消しというようなものまでございますので、こうしたものでかなりきちんとしたものを出していくというような制度にしてはどうかということでございます。
 以上、後ほどご議論いただければと思います。

○中原座長 
 ありがとうございました。前回の議論を基に、事務局側がイメージをまとめてくださいました。
 それでは、次に資料3について、三柴委員からご説明をお願いいたします。

○三柴委員
 まずご覧いただきたいのが資料3の一番後ろについている参考図でありまして、前回の議論等を踏まえると、おおよそこういったイメージで外部機関とそれをめぐる法的な関係を想定できるのではないかと考えました。真ん中にあるのが外部機関ですけれども、当然のことながら外部機関に必ずしも精神科医がいるとは限りませんので、右側に精神科クリニック等という機関を別に立てて、外部機関はそこから連携・指導等を得るという格好になっていくのではないかと想定しました。
 外部機関の中では、産業保健スタッフが雇用されて、そのトップに産業医長と便宜的に名前をつけましたけれども、要するに他の産業医などを指揮して業務管理するという者がそこに当たってくるということになるのではないかと想定しました。
 この図を描いていろいろ考えてみたんですけれども、法的に分析しますと、実は結構調整の必要な問題がいろいろあるんだなということが分かってきました。法律論というのはあくまで例外想定をしないといけないということで、ここで前提としていることがいつも起こるわけではないと思うんですけれども、その例外の中に案外制度の本質が浮かび上がるという場合もあるので、万一を考えていろいろ練ってみたと。なるべく頭が整理できるように表にしてみたのが、その資料3の1枚目からということになります。
 前回の機会に、第三者機関をつくると法的責任の整理が必要になってくるというふうに自ら発言を申し上げまして、その発議の責任をある面とらせていただければと思ってまとめ始めたんですけれども、左端にありますように、1つは労災保険、第2が民事の過失責任、第3が主に法律上の守秘義務、それから4番目に医師法上の応招義務、それから5番目に安衛法上の勧告権限、これを第三者機関をつくったときに、外部機関をつくったときに、どういう負担の仕方、あるいは帰属の仕方になるのかということを整理してみたわけでございます。
 細かくはご説明申し上げられないのですけれども、そのような整理をしてみた結果、結局どういうことが分かって、どこに特に問題が起き得るのかということを簡潔に申し上げたいと思います。
 まず第一に、最初にご案内した図、参考図をもう一度ご覧いただきますとご理解頂けると存じますが、要するに大きく3つの機関が登場する可能性があって、特に企業などと外部機関、これの関係がどれほど一体的で、連帯しているのかということによって、法的な責任関係も変わってくる可能性がある。
 もう少し申し上げますと、外部機関というのがどれだけ独立性を認められるかが焦点の1つとなるということです。つまりこれまでは、企業において独自に雇ったり、あるいは外から来ていただくにしても、企業が使用していた産業保健スタッフの方については、この方々の過失による問題はみんな企業が責任をとっていたわけですね。安衛法上の仕組みからも、結局、法的には履行補助者ということになりますので。
 ところが、外に機関をつくって、それが独立した存在だということになってきますと、要するに企業等が何か起きたとしてもうちの責任ではないと、独立した機関の責任なんだということが、場合によって出てき得るということです。そうしますと、安衛法が産業医などの選任を義務づけていることとの関係上、やっぱり重要な論点として、外部を特に個人ではなくて組織にした場合、機関にした場合に、要するに外部機関がおかした過失の責任を企業等がどう負うのか、あるいは負わないのか。負うとすればどこまで負うのかということを考えなければならない。
 これは例えば極端に申し上げると、保証契約とか、重畳的な債務の引き受けとか、そういう形で整理をして、外部機関がやったことも企業等がよろず責任を負うのだという整理の仕方もモデルとしてあり得るわけですけれども、それは極論なんだと思うんです。ですから、どこで調整するのかという問題が多分出てくるなと。
 それから、第2に、これは既に毛利調査官のご説明にもあったところと関連しますけれども、産業医が複数登場するという場面は、いろいろな表をつくった中でも、モデルとしてそういう場面が生じてくるわけですけれども、今の安衛法の体系の定め方ですと、勧告権というのは個々の産業医に帰属するとも読めるわけです。安衛法上は「産業医は・・・勧告することができる」という定め方になっていますので。
 そうしますと、産業医同士で意見が割れたというときに、確かに産業医長なりが意見を調整するということが原則にはなると思うのですが、それぞれ個性の強い方がそろったときに、どうしても不調になってしまうということが起こったとしますと、さあどうしようということになってくると思うんです。安衛法上これは保障された権利なんだから、おれの言うことを聞いてくれというような個性の強い人が出てきたときにどうしようということです。こういう問題も解決しなければならないと。
 それから、3番目に個人情報保護法について、表にはあえて書かなかったんですけれども、一言申し上げておかないといけない。それは恐らく外部機関をつくった場合、企業などの従業員に関する健康情報は、外部機関と委託契約を結んで、取り扱いを一括して委ねるということになるんだと思います。しかし、一応独立した外部機関をつくるということになりますと、第三者性は強まるわけですから、企業の内部の機関であると、あるいは人間であるということが言いづらくなってくるわけですから、単純にそういう扱いでいいのかということを考えておく必要があると思います。
 今の法律論上は、個人情報保護法上は、外部機関と企業との委託契約で情報の取り扱いは一切外部に委ねます。多分健診機関もそういう取り扱にしていると思うんですけれども、それでいいのかなと思いますけれども、本当にそれでいいのかというのを再度考える必要がある。
 最後に、ちょっとこれは私もまだ考えられていないというか、調べられていないんですけれども、医療法との関係で、外部機関あるいは精神科クリニック等が登場するとしたら、何か整理が必要になる事柄が出てくる可能性がないかなということをちょっと思案しています。これはまだ調査していないですし、何が問題になるのかということすら思い浮かんでおりませんけれども、以上のよう雑駁な説明で恐縮なんですけれども、一応お伝えすべきところはこんなところかなと存じます。

○中原座長
 どうもありがとうございました。これだけの論文といいますか、まとめていただいて、これだけの短い時間で説明というのはちょっと申しわけないんですけれども、先を急がないと、3回で終わるという事務局の案自体がそもそも問題だと、これは独り言だと思ってください。やっぱり決められたタスクを我々はこなしていくのが仕事でございます。
 それで、今日は実は報告書案を取りまとめる会議としたいと、こういうのが事務局の提案でございます。つまり、今日の議論を踏まえた上で、次回大体の案を出してもらって、最終的なまとめまで持ち込んでいきたいと。今日は中間的まとめのようなことまでしたいということだろうと、私は座長として勝手に解釈しているんですが。
 そうしますと、先ほどのヒアリングとか前回の議事なんかを見ますと、皆様方、発言をし出すと止まらなくなって、自分の意見をおっしゃっていただくのは非常に結構なことなんですが、ほかの人が意見を言う時間がなくなってしまうということでございます。おまけに今日は、前回ほとんど議論をしなかった地域産業保健センターのことも、今言ったような趣旨ですので、議論をしなければいけないということありますので、私、座長の独断で議事進行をさせていただきたいと思うんですが、どなたからでも結構ですから、資料2について一通りご自分の意見を順番に述べていただいて、できれば全員の方に述べていただいて、それをまとめるのは、また事務局にお任せして、次回まとめたものを出していただくと。
 残りの時間、当然1時間ぐらいは必要なんですけれども、地域産業保健センターのことについて、また議論をしたいと思いますが、いかがでございましょうか。
 もし特にご異議なければ、どなたからでも結構ですから、資料2について、ご自分のご意見を、あるいはここをもっと議論すべきだというような趣旨のことをお話しいただければと思うんですですが、いかがでございましょうか。
 最初に口火を切るのは、やっぱり森先生が一番適当ではないかと思うんですが。

○森委員
 かなり分かりやすくまとめていただきまして、ありがとうございます。
 私は4点の意見があります。私が前回懸念していたのは、産業医の権限とか職務を、法人がほんとうに代行でき、責任がとれるんだろうかというところでありました。今の説明で、その懸念はかなり薄れてきているところはあります。4点のうち1つ目ですが、産業医の勧告は、実際上は文書であまりされていないので、多くの場合、口頭で何らかの形で行われることが実態としては多いと思います。この勧告を、産業医サービスを受託をした法人が行うこととして定義してしまうと、どの組織でも、多くの場合躊躇することになると思います。やはり組織という契約の中で行うとしても、その組織として当たるのは産業医チームで、産業医チームの中の総括する人が調整をして、口頭または文書で出すという、その流れを何らかの形で担保していただきたいと思います。
 先ほどいろいろな意見の人がいて調整できないという話がありましたが、一方で、産業医の業務は機関として受けた業務であるから、先ほど毛利調査官のほうの説明がありましたように機関の中には責任を持って行う統括的な医師が組織の中で管理していただくことがよいかと思います。そのような方法で、各産業医の権限が一定の範囲で制限される中で、チームとして提言できるような、勧告できるようなバランスをとるのがいいのではないかなと思います。
 2点目は、総括する医師のイメージとして、日本産業衛生学科の産業衛生専門医を加えてほしいと思います。これは公的な制度としての位置づけではないのですが、これが唯一産業医活動の実践能力そのものを専門家が評価をしているという制度です。産業医科大学を卒業して実習を受けて、一定の経験があるだけでは取れない、それ以上の資格ですので、何らかの形で産業衛生学会の産業衛生専門医も報告書に盛り込んでいただきたいという希望があります。
 3点目は、専属産業医の部分は十分な検討が必要であるということであります。先ほど岡田委員から、保健師でも企業の中のことがよく分かって業務を行っていくというのがとても重要であるとの話がありました。産業医も当然そうです。今回の制度改正というのは、あくまでもより良い産業医活動を行っていくことが前提でありますから、私は専属要件まで今回の制度の中で置き換えるという話にはすべきでないと思います。もしそうなると、むしろサービス内容が後退することになります。ぜひ、今回の制度改正の中では、専属要件に変えるものではないということを明確にすることが必要と思います。
 それから、最後の点ですが、今の労働安全衛生法の産業医の業務の中で、唯一事業者が選んで複数の産業医がいる場合に、事業者が選んでどの産業医にさせるか決めることになっているのが、衛生委員会の委員です。この役割は、事業者側か、委託を受けた機関側か、どちらが選ぶのか、その辺りの取り扱いも明確に何らかの形でいただければと思っています。おそらく全体を取りまとめる産業医が衛生委員会に出るのが一番望ましいとは思いますが。
 以上、4点です。

○中原座長
 ありがとうございました。スマートにまとめていただきました。
 次にどなたかいかがでしょうか。今村先生は発言できるようですね。

○今村委員
 私は概ねこの考え方、原案に賛成です。
 3点あります。意見と要望です。
 まず、この外部機関を利用できるところという利用の仕方が多分2つあって、1つは選任されているんだけれども、どうしてもメンタルの部分でなかなか対応できないと、そういった場合の利用と、そうではなくて、元々産業医がいないからお願いをするんだというケースがあると思うんです。現実、先ほどご説明があったように、50人から99人の事業場は本来選任しなければならないにもかかわらず、されていないと。やはりそういうところが本来の対象であって、元々産業医が選任されているところまで自由にこういう機関を利用することになると、ご意見にもありましたけれども、民民の契約ですから、では気に入らないことを言う産業医は代えてしまえというようなことが起こるようなことは、私は余り好ましいことだとは思っていないので、ある一定の人数制限というものもあっていいのではないかということがまず1点です。
 それから、2点目は、私は外部専門機関というものを読んでみて、医師会はとてもふさわしい機関だと思っています。そもそも多数産業医もいます。その場合、資料3になりますが、三柴先生の精神科クリニックというこの3つではなくて、外部専門機関の中にそもそも精神科医が含まれてしまうんですね。そういった場合の法的な問題というのが何かあるのか、また後ほど教えていただければ。
 もう1点、細かいことなんですが、保健師さんに関してはメンタルヘルスに精通という書き方がされているんですが、もうちょっとここを明確にしていただければと。産業医は一定の経験みたいな書き方で、こちらは精通というのは、ちょっとどのレベルを求めておられるのか分からないので、ちょっとここは詳しく書いていただければ。
 以上の3点です。

○中原座長
 どうもありがとうございます。医師会等が専門機関といいますか、精神科クリニック等との関係というのは、また後で三柴先生に触れていただくことといたしまして、では岡田先生、よろしくお願いします。

○岡田委員
 まず、第1点ですが、専属産業医がいるところの事業所で外部の機関と委託契約等をするということに関しては、先ほどのご意見のように、これは企業の中でバッティングが起こって、トラブルが発生する可能性があるのかなというので、これはちょっと危惧するところだと思います。
 先ほど三柴先生のほうからご意見がありましたように、外部機関と内部との問題ですけれども、外部機関から出た意見は、あくまでもコンサルテーションの結果として、助言、勧告ではなしに、最終的に決定権は事業者にやっぱりあるわけですよね。この機関から出たものを最終決定するのは、内部の産業医ではなしに、外部の機関から助言、勧告とはいうものの、これはコンサルテーションの結果であって、最終的に事業主に決定権がありますから、ここの外部機関と企業の間のトラブルというのは余り起こらないのではないかと。というのは、最終決定権は事業者にありますから。そのときに、セカンドオピニオンとして内部の産業医に意見を聞いて最終決定をすればいいことですので、内部に産業医がいる場合は、それで恐らくうまくいくだろうと思うんです。
 でも、本来は内部に産業医がいるときには、この機関の意見を聞くとややこしくなってくるので、その企業自身が外部の機関と提携することがある。むしろ、100人以下であるとか、そういうところが共同して企業がスクラムを組んで、経費の節減のために集まって、この機関にお願いするというシステムであれば、これは恐らくコンサルテーションの結果として非常にうまくいくと思います。そうすると、中小零細企業さんの出費も減るでしょうし、例えば月々1万円を出して、100社が集まってこちらにお願いするという形であれば、経営上も成り立つ。以前のTHPの労働者健康増進サービス機関のようになってしまうと、結局だんだん返上するというような問題が起こってきますので、せっかくああいういい機関ができても、どうも健診機関さんのほうがみんな返上してしまうことになります。
 それから、確かに先ほど今村先生がおっしゃったように、事業所が外部委託の機関と自社の産業医を比べた場合に、明らかに医療機関のほうがいいということになった場合に、産業医を解任して、こちらのほうへ全部お願いしたほうがよく言うことを聞いてくれるんじゃないかというような、耳が痛いというか、自分のところに不利益なことを言う産業医は解任したほうがいいのではないかという問題が起こってくると、これは極めてまた問題でありますので、やはり事業所のことをよく知っている産業医が、問題点をちゃんと突いて、事業主に対して、管理監督者に対してちゃんと意見を言うという立場で、それでもって産業医が不利益を受けないというようなことが担保されていれば、やはりそれは産業医を優先すべきだろうというように思います。その点はちょっとご考慮していただいたらいいのではないかと思います。

○中原座長
 ありがとうございました。
 それでは、次、河野先生、よろしくお願いします。

○河野委員
 今の皆様のご意見、私も賛成でございます。先ほどから聞いていて、本当にこの外部専門機関ができたらどんなにいいだろうと思います。なぜかといいますと、全ての労働者に質のいい産業保健サービスをと考えたときに、圧倒的に多い小規模事業場に日が当たるので、外部専門機関を置いていただくということの意味は大変大きいと思っております。
 あと、私のほうからお願いしておきたいことは、新しい枠組みで外部専門機関というのが考えられていくとしたならば、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、やっぱり医師だけではなくて、チームでどのようにサービスを展開していくのかということをもう少し明確に出していただければと思います。そしてもちろん保健師につきましては、先ほど申しましたように、私は非常に有用な人材資源だと思いますので、今村先生がおっしゃったように資格要件もきちんとして、ちゃんとサービスができるような体制を整えていくといったようなことでやっていただきたいなと思います。

○中原座長
 それでは、順番のようですから、武田委員、お願いします。

○武田委員
 私もこういう会社ができて活動されることはいいとは思います。産業医を選任していたとしても、専門外のことを産業医がコンサルテーションしてもらうために使うとか、あるいは事業者が専門的な話を聞く場合ではいいのではないかと思います。ただ、こういった会社を産業医として契約する場合であれば、産業医との関係性を考えると、やはり交代で人がいろいろ代わってくるというのは、なかなか納得いかない部分があります。限られた対象に対して、例えば小さい集団であれば、産業医の選任契約もそれほどとれていないような99名以下のような会社であれば、小さい規模なので、産業医として従事してもすぐ中が分かるとか、あるいはキーパーソンがだれか分かるというような、そういう小規模の組織であれば、産業医契約もあるのかなと思いますけれども、余り大きい会社にこれを当てはめるのは、なかなか運用上難しいのではないか、そういうふうに思いました。
 やはり産業医との信頼関係がないと、産業医巡視で職場を全部見てもらって、いろいろな意見を伺うという場合でも、やはり企業秘密になるようなところは見せたくないなとか、あるいは個人の話についても、会社の事情はそれほど伝えたくないとかという形になってしまうのは、やはりまずいなと思います。できれば、個別の産業医と契約ができるような、会社とではなくて、統括される医師と直接契約が交わせる方がとてもうれしいなと思います。
 それから、先ほどから保健師さんの資格要件は言われていますが、メンタルヘルスに関する一定の知識と経験を有する医師についての資格要件も明確にしていただかないといけなのかなと思っています。精神科医という書き方をしていないので、精神科医以外の医師も含まれるのだろうなと思いますが、この資格要件も明確にしておかないと質の担保が図れないのでないかと思います。

○中原座長 ありがとうございます。
 それでは、岸先生、先にされますか。よろしくお願いします。

○岸委員
 今回の議論は、前回私が、事業場における産業保健活動を充実させていくためには、多様な職種が協働で行うような活動が大事である、それがグローバルスタンダードであるということを申し上げたと思いますが、今日の資料1、2、3を拝見しまして改めて申し上げたいのは、1985年にILOが161号条約というのを出しておりまして、日本はまだ批准しておりませんが、第161号条約は85年ですので、既に25年前に国際的には出てきたものです。この161号条約は労働衛生機関に関する条約ということで、種々の観点からそれが出てきているんですが、本来産業保健活動というのは予防的な機能を持つもので、職場で安全かつ健康な作業環境の確立を維持していくためには、労働者の健康に配慮して、その労働者の能力に作業を適合させることだというふうに書かれております。
 使用者、労働者及び労働者代表に助言と責任を持つ機関であるということで、私は医師で産業医で、また労働衛生コンサルタントでもございますけれども、私1人でできないことがたくさんあるわけです。そういう点からしますと、161号条約の精神にのっとりまして、今回はたまたまメンタルヘルスの問題が非常に大きいものですから、メンタルヘルスに一定の知識と経験を有する医師がいるとか、精通した保健師がいるとかいうことも書かれてありますけれども、本来はもっと多様な専門職、例えば161号条約が念頭に置いているのは、インダストリーハイジェニストですとか、あるいはエルゴノミスト、人間工学の専門家ですとか、産業現場で健康障害を起こす要因は非常に多様なわけですから、そういうことも視点に入れまして、いろいろな能力を持った、あるいはいろいろなバックグラウンドを持った専門家が本来産業現場の産業保健活動に携わって、それでこそ働く人の健康や安全も守られますし、それから企業にとっても最終的にはそれがいいことだと思うんです。
 ですから、今は専ら論点が産業医とか産業保健師とかそういうことに絞られ過ぎだと私は思っておりまして、本来の産業保健活動にどのような人材が必要なのか、そういうことをもう一度、例えば161号条約のことを詳しく申しましたけれども、そこに立ち返って考えることが、私はいいことだと思っております。外部機関で一定の力があることは非常に必要になりますので、ある意味力がなくて、余り働く人の健康と安全のために役に立たないようなところは、企業は長い目で見れば依頼しないと思います。私はそれで構わないと思うんです。それで、予防的にもちろんメンタルヘルスの問題なんかも解決できるのであれば素晴らしいと思いますし、今現場はそれを求めていると思いますので、むしろもう少し大きい視点で、いろいろ改革になるようなことをぜひ希望したいと思います。
 以上でございます。

○中原座長
 ありがとうございました。
 それでは、三柴先生、お願いいたします。

○三柴委員
 いろいろと関連するお話を頂きましたので、どこからどう申し上げるべきかとちょっと悩んでしまうんですけれども、まず資料2で事務局からお示し頂いている案については、全面的に賛成致します。先ほどちょっと法的に整理すると難しい点があると申し上げたのは、あくまで詰め方が難しい点があると。特に安衛法のような監督取締法規と、我々が法曹として主に取り扱ってきたような民事法の関係、それに基づく責任のとらせ方とかその辺の関係について詰めないといけない点があるという趣旨にとどまります。
 2番目に、今までの先生方のご議論をうかがっていて、やはり改めて整理が必要かなと感じましたのは、主なイメージとしてサービス先をどのような企業と想定するかという点です。今村先生からは50人以上というところ、それから岡田先生からはおそらく主に産業医の選任義務のない従業員数50人未満の事業所が活用する産業医の共同選任制度のイメージでお話しされたのかなと思うんですけれども、恐らくこの事務局案で想定されたのは、大企業については武田先生がおっしゃるようにそもそも専属がいるから、コンサルテーションレベルではいいけれども、とって代わるということは余り考えられなくて、それ以下の中小企業のうちそもそも選任義務がないところは別にして、選任義務があるレベルのところで選任率を上げ、さらにサービスの質も高める、ということかと思います。逆に、質か高いから使ってもらえるという場合もあると思いますけれども、そういう正の循環を生み出したいというねらいに発するものだと思うので、そこを再確認する必要があって、それとの関係で機関の性格をどう考えるかということになるんだと思うのです。
 それから改めて法律論にちょっと触れますが、今村先生から、例えば医師会などがこの外部機関の役割を請け負ったときに、精神科クリニックなどと外部機関は一体になる可能性があると。そうすると法的にどういう問題が生じるかとお尋ねがありましたけれども、資料3の1枚目も一番上の右側、精神科クリニック等と銘打ったところの下のほうに、「外部機関が独自に精神科医を雇用する場合は2)に準じる」というふうに書いておきまして、精神科クリニック等と外部機関が合体するという場合を一応想定はしたんですけれども、ただ例えば精神科医の先生というのは、恐らく専ら予防医療ばかりではなくて、多分診療活動もされておられるんだろうと思うんです。そういう先生が予防医療を専ら行う外部機関で一メンバーとして活動される場合には、恐らく応招義務を負うかどうかの問題などが提起されてくるように思います。今村先生のご見解は異なるかもしれませんが。

○今村委員
 僕はそこは違います。明らかに医療機関として診療する場合と、これは産業保健サービスを提供する1つの組織というか、機関としてそこに登録するということですので、全く意味合いが私は違うと思って、そこに応招の義務が発生するということはないと思っています。あくまでも精神科の先生が診療所で医療を行う場合と、ここに登録をして産業保健をするというのは違う性質のものだと。

○三柴委員
 応招義務について私が法学系のコンメンタールで調べる限りは、あくまで個人に帰属するものであると。ですから、その人がどこで働いているかということではなくて、その人が診療活動を行っている医師かどうかということが基本的な判断基準になって、例えばあるサービス機関に精神科医の先生がいるとクライアントさんから見て明らかなような場合に、自分が非常に重い不調状態にあるから診てほしいというような申請があったら、多分応じざるを得ないのかなと考えたんですけれども、違うのでしょうか。
 
○鈴木労働衛生課長
 事務局でも課題になっておりまして、次回までに。

○中原座長
 そういうことで、次回までに事務局が、当然医政局のほうと協議をしないと答えられないだろうと思います。

○今村委員
 1点だけ修正をさせていただきます。今、三柴先生から私が50人以上と言ったというのは、100人未満という、岡田先生と同じことを申し上げたということです。

○三柴委員
 申しわけありません。私の記憶違いです。

○中原座長
 どうもありがとうございました。一通り皆さん方のご意見はお伺いいたしました。
 それで、本当はここから議論に入りたいんですが、事務局から課せられたタスクがもう一つありまして、地域産業保健センターの在り方について、前回ほとんど議論ができなかったので、今から1時間ほどそれについて議論をして、次回あるいは次々回ということが考えられるのであれば、またそれは事務局のほうで考えてもらいたいんですが、一応今のつもりとしては、地域産業保健センターについて1時間ほど議論していただいて、次回に取りまとめの方向でまたご議論いただくということにしたいと思います。
 それでは、議題2の地域産業保健センターの在り方について、事務局側が用意している資料についてご説明をお願いいたします。

○古田職業性疾病分析官
 私のほうから資料4と5と6と8についてご説明申し上げます。資料7につきましては、保健指導室のほうからご説明いたします。
 資料4をごらんください。地域における産業保健活動の推進に関する検討会というものが平成20年6月から平成21年1月まで4回開催されております。報告書はまだまとまっておりませんが、そこで出た意見ということで参考としてご説明申し上げます。少しありますので、簡単にご説明申し上げます。
 そもそもこの検討会は中小企業の労働者に対する産業保健サービスの充実ということ、それから地域の各種関係者とのネットワークの構築、それから地域における産業医による産業保健サービスの提供、こういったことをテーマにした検討会でございます。
 資料4の1ページの1番目、地域産業保健センター事業についてということになっていますが、活動の充実強化について幾つかご意見が出ているということです。ざっとまとめますと、地域産業保健センターの周知広報活動、あるいは情報提供といったものを強化していく必要があるというふうなこと。それから、労働基準監督署など行政との連携を図る必要性がある。それから、健康相談窓口はサテライト方式、地域の医療機関に窓口を設置する、あるいは休日・夜間もやる、そういった弾力化が必要である。それから、保健師等の積極的な活用を図る必要がある。そういったご意見が出されております。
 2番目といたしましてメンタルヘルス対策関係ですが、産業保健推進センター、それから地域産業保健センター、メンタルヘルス対策支援センターがそれぞれ役割分担をし、有機的な連携を行う必要があるというご意見が出されております。
 2ページ目ですけれども、関連いたしまして、労働者の職場復帰支援に当たっても、事業者、相談機関、産業医、主治医等のネットワークの形成について、よい方策を検討する必要があるというご意見が出ております。
 4番目といたしまして、地域の各種関係者とのネットワークの課題ということで、精神科医、それから産業保健スタッフ、産業医が連携するために事例検討会などの場も必要ではないかということです。それから、精神科以外の他の診療科の医師にもメンタルヘルスに関する教育を行い、地域産業保健センターで一定の対応をしていただく必要があるのではないかということが出ております。
 それから、5番を飛ばしまして6番ですけれども、小規模事業場における健康確保対策について、産業医の資格を有する診療所の医師の活用を長期的な課題としてとらえるべきではないか。それから、地域保健と産業保健の継ぎ目のない連携が必要ではないか。こういったご意見が出ているということでございます。
 続きまして、資料5ですけれども、地域産業保健センターの現状について簡単にご説明したものでございます。
 1番は、地域産業保健センターはどういうものかということを説明した部分でございます。ちょっと省略させていただきます。
 2番、地域産業保健センターにおける医師の業務について、その現状等をご説明しております。
 1つ目の○ですけれども、医師は健康相談窓口の対応をする、あるいは個別訪問の指導・助言の役割を担っております。これらの業務に従事していただく医師は、産業医、もしくはこれを有するというような要件を定めております。そのほか、産業保健に関する研修を受講した精神科医の方に対して協力を求めることができるというふうにもしております。地域産業保健センターの実施の要綱でこういったことを定めております。
 実際の健康相談窓口ですけれども、平成20年度約8万の利用者がございましたが、その内容は主に定期健康診断の結果の事後措置とか、そういった定期健康診断に関連する内容が多かったということでございます。
 一方、4つ目の○ですけれども、小規模事業場では健康診断結果に基づく医師の意見聴取、これは法令で定められておりますけれども、まだ3割の事業場での実施にとどまっているという結果もございます。
 先般、9月7日に公表されましたが、職場におけるメンタルヘルス対策検討会報告書におきましては、こういった地域産業保健センターの活動のため、医師の確保、それから医師が事業上の状況を十分に把握することができるようにすることが必要ということが報告書に書かれております。
 その裏側、すみません、ページが打っていないですけれども、またその報告書におきまして、2行目ですけれども、地産保センターにおいて業務を行う医師等の資質の向上及びコーディネーターの活動の充実等、業務の効率化の方策を検討する必要があるということも指摘をされております。
 3番目で、地域産業保健センターにおける保健師の業務ということで、3つ目の○のところですけれども、地域産業保健センターで保健師さんにつきましては産業医の資格を有する医師の指示の下で、単独での対応も可能としているところでございますが、実際の活動の実績ですけれども、医師の方にご活動いただいている回数に比べると、まだ現状ではかなり少ないという状況があるということでございます。
 続きまして、資料6でございますが、産業保健推進センターの主として関係の資料でございます。資料6は去る4月23日に行政刷新会議の事業仕分け第2弾で、独立行政法人労働者健康福祉機構、産業保健推進センター業務の関係の資料でございます。
 2枚目に図表がついておりますけれども、産業保健センターの見直し、改革案ということで、こういう資料が出されております。業務の重点化・効率化を図る、専門・実践的な研修・助言等の業務に重点化を図る。それから、組織を集約化する、財政支出を削減する。こういった改革案が出されておりまして、そのずっと下についておりますが、産業保健推進センターの関係の資料なんですけれども、関連で地域産業保健事業についても、メンタル不調者への重点化という関係の資料がついております。
 その結果、資料6の表紙のほうに戻りますけれども、調査結果概要ということで、当該法人が実施し、事業規模は縮減。省内仕分け結果、3分の1縮減にとらわれないさらなる削減を求めるという評価結果になっているということでございます。
 それから、資料7はこの後、保健指導室のほうからご説明いただきます。
 資料8でございますが、今日この後検討いただきたい検討項目でございます。資料8の2ページ目、裏側、検討事項2でございます。検討事項の括弧のタイトルだけ読み上げさせていただきます。(1)地域産業保健センターの医師の業務について。(2)産業保健活動に従事する保健師等専門職の活用について。(3)地域と職域の連携による支援について。
 こういうことで、この後ご検討いただくことになります。
 続きまして、保健指導室のほうからも説明いたします。

○勝又保健指導室長
 健康局保健指導室長の勝又でございます。
 それでは、資料7のご説明をさせていただきます。
 私のほうからは地産保センターの利用促進の有効な取り組み事例とか、小規模事業場を含めた地域の健康づくり資源の活用について、平成17年度から地域と職域の連携ということで、都道府県、それから政令市を含む保健所設置市等に補助金を出して、地域職域連携推進事業というものを推進しておりますので、その中身について説明をさせていただきます。
 3ページをご覧いただきたいと思います。地域職域連携推進協議会は、地域保健法第4条に基づく基本指針及び健康増進法の第9条に基づく健康増進事業実施事案に対する健康審査の実施等に関する指針において、地域と職域の連携推進に当たって、関係者等から構成される協議会の設置が位置づけられております。
 4ページでございますけれども、21年9月1日現在で、47都道府県全てに設置がされておりまして、さらに二次医療権の中では、346二次医療権の中、320のところで地域職域連携推進事業が推進されているところでございまして、特に二次医療圏ではそれぞれの二次医療圏の固有の健康課題を特定いたしまして、地域特性を生かした健康課題の解決に向けた事業の実施が行われているところでございます。
 5ページが、特にメンタルで地域職域連携推進事業の中でやられているものが、調査、それから就労者、休職者等への相談とか、職域におけるサポート体制へのスーパーバイズなどが行われているところでございます。
 メンタルヘルスのところでは、特に南多摩保健所なんかでは、例えば死亡統計等から働き盛りの人たちの自殺が多いという実態から、地区の医師会とか労働基準監督署などへの聞き取り調査を行いまして、職場と家族との連携がなかなかとりにくいというような実態があるということが明らかになりまして、その実態を踏まえた事業の取り組みというものがなされているところでございますし、それから地産保センターと共同で中小企業に出向いていって、従業員等へのメンタルヘルスチェック、それからメンタルヘルスに関する講演会等を行っているところでございます。
 こういったものにおきまして、6ページのところでございますけれども、自殺うつ対策の充実も踏まえまして、現在概算要求といたしまして、都道府県の地域職域連携推進事業の下に自殺対策うつ等の実務者連絡会議ということで、特に顔と顔が見える企業の産業医さん、あるいは産業保健師さん、それから病院、診療所の先生方、それから地産保の人たちと、実務者レベルできちんとした会議を設けることによて、例えば下に書いています会議及び事業の内容のところで事例検討会を行ったり、あるいは2番目のところの休職者及びその家族への健康相談というようなことを、一定の個人情報の保護も含めまして、ルールをつくりながら、連携を図っていくということが重要なのではないかということで、こういう会議をつくっていくというのはどうだろうかということが検討されているところでございます。
 次に7ページが、生活習慣病予防を中心といたしまして中小企業と連携をしている島根県の事例をご紹介いたしますけれども、7ページのところ、大体14年ぐらいから島根県の浜田圏域ではモデル的に地域と職域の連携をやっておりまして、8ページのような構成団体で取り組みが行われています。もう既にこのときから顔と顔の見える関係というようなところを重視したメンバーで会議を行っておりまして、9ページのところでは20歳代、30歳代の男性の健康管理といいますか、精密検査を受けに行かないとか、あるいは缶コーヒを相当数飲んでいるとかいうような、そういう健康実態に基づきまして、対策の柱を地域と職域でいろいろ話し合いを進めました結果、健診、保健指導を受けやすい環境づくりを推進するとか、あるいは心身の健康に関する情報提供の充実をする、あるいは生活改善等の動機付け支援の充実、それから保健指導の内容とか教材等を一緒に活用するというようなことの事業を進めてまいりました。
 そして、10ページに、例えば事業所の健康づくりをやっている中小の優良事業所を表彰したり、それから保健所等が健康づくり応援団ということで、事業所の出前講座をやるんですけれども、最初は保健所だけでやっていたんですけれども、地域の医師会だとか、あるいは市役所の保健師さん、それから様々な関係団体の人たちがチームを組んで、各事業所の要望にこたえて出前講座をやる。
 それから、次の11ページには事業所の健康づくりのための情報マップづくりをやる。
 それから、12ページでは、健康管理とか経年的な健康の記録みたいなものができていませんので、「まめなくんファイル」というものを労働者の方々に配布をするということなど行いまして、地域と職域の連携を進めているというような状況でございます。
 最後に13ページのところでございますけれども、特に地産保の方々と連携をとりまして、利用促進につながるような地域職域連携推進協議会をやっているところが相模原市でございます。メタボリックシンドロームを含めた生活習慣病予防のための取り組みの状況ということで、相模原市の労働基準監督署の方々のところから、健康診断有所見率の状況とかを教えてもらえると、やはり相模原市では非常に若い方々、55歳から59歳ぐらいの方々の健康に問題があるというようなこととか、あるいはメンタルヘルス対策の必要性というものが相模原市の中でいろいろ語られることになりまして、14ページですけれども、20年から本格的に地域職域連携推進協議会というものを、15ページにありますメンバーで行ってまいりました。
 そして、16ページのところにございますように、健康診断の実施以外の取り組みというのが事業者では行われていないとか、健康づくりに取り組んでいないところが多いというようなこともございまして、17ページにありますように、具体的に自分自身ができること、それから事業所ができること、それから関係機関ができること、特に地産保ができることはどういうことがあるのかというようなことについて、さらには保健所ができることは何なのかというようなことを皆さんで話合いをされました。
 そして、18ページにございますように、保健所が主催する市民講演会、健康教育等で地産保の方々に個別相談を実施していただくとか、あるいは地産保センターの事業を紹介するとか、それから地産保の人と一緒に事業所に出ていって健康相談を行う、それから様々なリーフレットとか、広報誌を地産保と一緒につくって、それを配布、周知するというような活動を続けたことによりまして、平成17年にはメンタルヘルスの相談が29件しかなかったところでございますけれども、21年には130件の相談を地産保で受けるということで、事業が広がりを見せてきたというような、そういった事例でございます。
 以上でございます。

○中原座長
 ありがとうございました。これで事務局側が用意した資料の説明は終わったわけですが、1つ質問させてもらっていいですか。
 資料6の省内仕分け結果、3分の1縮減にとらわれないさらなる削減を求めると書いてあるんですが、これは要するに3分の1にしろということなのか、それとも3分の2でいいけれども、もっとやれということを書いているのか、どっちなんですか。よく分からないんですけれども。

○鈴木労働衛生課長
 これは産業保健推進センターの集約について、3分の1程度というふうに事務局から提示したんですけれども、さらに切り込むことも想定してというふうに。

○中原座長
 要するに、今ある事業規模の3分の1にするということなんですか。

○鈴木労働衛生課長
 事業規模といいますか、箇所数です。47都道府県に産業保健推進センターがそれぞれありますが、それをブロック化といいますか、3分の1程度、もっと減らしていいのではないかというような、とらわれないというのはそういう意味です。

○中原座長
 これは産業保健推進センターということで、今議論をしようとしている地域産業保健センターとは違うものですね。

○鈴木労働衛生課長
 はい、一応そういう意味では異なりますが、やはり今まで地域産業保健センターを支援してきたという機能がありますので、集約ということの影響はあるのではないかということで、論点として出させていただきました。

○中原座長
 似たような言葉がいっぱい出てきて、明確に頭の中の整理しておいてもらわないとと思いまして。要するに、地域産業保健センターというのは、資料6の次の紙の下半分のそのまた下半分ということなんですね。

○鈴木労働衛生課長
 そうでございます。これは独立行政法人が仕分けの対象になったんですけれども、労働者健康福祉機構でございますけれども、それが実施している産業保健推進センターと類似の機能があるのではないかということで、併せてこの地域産業保健センターも評価の対象になってしまいましたので、そういう意味でこの一番下の4分の1、ここに改革案を提示したと。
 具体的には、重複するような相談機能や情報提供機能は廃止して、メンタル不調者、過労死予備軍への健診後の対応や、長時間労働者に対する面接指導に重点化するというような方針が一応定まっているところです。

○中原座長
 要するに、メンタルと過労死、それと長時間労働等、そういう人に対する指導業務というのを地域産業保健センターで重点的に取り組もうと。

○鈴木労働衛生課長
 はい。特にこの後の事情として、メンタルヘルス対策に関する検討会の報告書が出ましたので、重点化した中で、その量的ニーズなり、質的なニーズ、こういったものをどうすべきかということで、今後の予算要求の際にご意見をいただいて、反映させていただいてというふうに思っております。

○中原座長
 ありがとうございました。一応座長から問題を明確にできたのかどうかよく分かりませんが、ちょっと私のほうで問題点を明確にしたつもりでございます。
 それでは、次に今ご説明のあったことについてご議論いただきたいと思います。検討事項2という、資料8の2ページ目、これに沿ってご意見を伺うのが一番いいんですけれども、どなたからでも結構ですが、今ご説明をいただいて、ご意見はそう簡単には出てこないということはあるかもしれませんが、よろしくお願いします。

○今村委員
 時間のないところで、議論の前にちょっと確認をさせていただきます。
 今の事業仕分けについては推進センターなんですが、実は地域産業保健センター事業というのは、今まで347カ所、群市の医師会が実施していたわけです。それを昨年の12月に突然、今年の4月1日より県単位で実施するということになって、実は37の都府県が、県医師会が実施をしている。10は、もうこれは間に合わないから無理だということで、先ほど事業仕分けの対象になった推進センターが受けておられるという実態があります。
 それと、この省内の事業仕分けにかかったことで、結局結果的には推進センターも県だよ、地産保事業も県だよと。先生がさっきおっしゃったように名前もよく似ているし、やっているようなこともよく似ているようなことなんだから、予算を減らしてしまえという極端な話が起こって、我々として現場は、今まで苦労して実施してきたものについて、新たな仕事が増えるのに、予算はカットというのでは、これはとてもやっていられないという現場の声があるんです。その辺、予算について、課長のほうから今どんな現状にあるか、まずご説明いただいた上で、この議論をしたいと思います。

○鈴木労働衛生課長
 先ほどの資料にありましたように、先ほど省内仕分けと言いましたけれども、省内仕分けでまず第一弾があって、その後行政刷新会議の仕分け作業の対象になりました。全体としては、さっきの3分の1程度に集約というのは産業保健推進センターですが、事業予算としては3割ほど削減するというような改革の相場観があったわけですが、それはここにあります直接文言にはなっておりません。ただ、そういうようなことで一応予算編成をすることになりましたが、地域産業保健推進センターについては、そういう意味でいったん産業保健推進センターに類似する情報提供や、いわゆる重点化の対象にならないようなよろず相談的なもの、そういったものは削減いたしまして、それは3割程度削減しております。ただ、その後の状況として、メンタルヘルスの検討会などで、今後のメンタルヘルスの充実を図るべきだということで、過労死やメンタルヘルスに関して、そこは増額を見込んでおりまして、具体的な額は現時点で提示できませんけれども、そういったスタンスで、従来の活動に支障を来さないようなことで、いわゆる真水の部分を活動費については確保しようと考えているところでございます。
 それから、産業保健推進センターについては当課の所管ではございませんが、一応集約を初年度、来年度、何カ所かやるということになっても、産業医に対する研修というような、まさにコアな部分のこれまでの議論については、できる限り低下しないように工夫をしていきたいというふうに聞いておりますので、それはここでご披露させていただきます。
 以上でございます。

○中原座長
 ありがとうございました。よろしいですか。
 それでは、どう進めていけばいいのか、どなたか検討事項について、今読み上げました1、2、3のことについて、ご意見等ございましたら出していただければと思うんですが、いかがでしょうか。
 もう明らかに今回の地域産業保健センターのことについては、メンタルヘルス対策ということを重点的に考えて、この場の議論が提起されているというのは明らかなように思います。その他、地域産業保健センターとして必要な事業も、要するに過労死とか長時間労働者に対する面接指導とか、例示してあるのは現在問題になっているものに対して、そもそもが中小企業向けの対策であることは間違いないんですけれども、中小企業向けに現在問題になっているものについて重点的に対応していこうということ。そういう具合に理解すればよろしいんでしょうか、地域産業保健推進センターというのは。

○今村委員
 私のほうから、現状医師会が実施している経緯もあるので、ちょっと私のほうから簡単にお話を申し上げて議論していただければと思うんですが、まず新たなメンタルヘルスや荷重労働者、長時間労働に対する面接指導というのは、大変重要な課題ではあるけれども、それに対応できる医師が地産保に登録されているかというと、現状なかなか、それは先ほどの産業医の話と同じで、今これに十分にすぐに対応できるような体制には入っておりません。
 したがって、いろいろな関係職種の人が連携をして、この中で対応するということがとても大事で、そういった意味で保健師の役割というのが出てくると思っていまして、冒頭井伊先生の話に私がいろいろ申し上げてしまったのもそこにあって、そういう方をどう活用できる仕組みをつくるかということがあるんですが、現状地産保の予算というのが国の委託事業ですので、非常に縛りが大きくて、使い勝手が悪いと。例えば、今地産保を実施している医師会が先ほどの事業外資源という形で、機関として、50人以上の産業医活動を提供したと。そこに保健師さんを例えば常勤で雇ったときに、この地産保のほうでその方を活用できるのかといったときに、予算の出どころが違う、事業の実施主体が違うというような形で、難しくなるのではないかなと。
 そういう意味で、もう少し弾力的な運用ができれば、一体的に、例えば医師会という組織の中で50人以上については、先ほどのような事業外機関としての活動、50人未満については地産保としての活動ということで、他職種の連携の中で私はできると思いますし、それができれば、先ほど室長からお話があったような、諸地域との連携ということももっと密接に保健師さんを使ってできるのではないかなというふうにちょっと感じておりますので、その辺をちょっとご検討いただければと思います。

○中原座長
 ありがとうございます。
 ご意見ありますでしょうか。では、森先生から。

○森委員
 私は勝又室長に、地域産業保健センターのあり方について、現在のお立場からどのようなことが見えているかお聞きしたいと思います。小さな事業場については、確かに地域と職域の連携はすごく大事である。しかし、地域産業保健センターに対して、仮にすごく需要が出てきて、全ての小規模事業所がサービスをしてほしいとなれば、これはうれしい悲鳴なのでしょうが、その先もう無理だということになる。そうなると、地域とどうやって連携するかというのがものすごく大事になると思います。
 ところが、地域産業保健センターの制度と保健所の制度は元々違う制度で出てきているので、連携をしようとしたときにとてもやりにくい部分もきっとあるだろうし、それから今回のいろいろな取り組みの中でも、地域産業保健センターのほうが具体的に面談をしているようなケースもあれば、逆に地域産業保健センターに相談があったものを保健所のほうで引き取って相談をしている部分もある。
 そうすると、長い歴史がある保健所の部分の機能から見て、地域産業保健センターはどういう機能を持っていると、連携がしやすいと映るのか、地域職域連携の取り組みから、どのようなことが出てきているのか、少しお聞きしたいと思います。

○勝又保健指導室長
 難しい質問だと思うんですけれども、現在はどちらかというと個別の対応ということで地産保にはやっていただいているということなので。

○森委員
 そういう機能があると、保健所としてはとても助かるということでもあれば。

○勝又保健指導室長
 全てが保健所で対応できるということもありませんので、市町村にまたそれを照会をしたり、あるいは地産保のほうで対応できるところはやっていただいたりというような、そういう機能分断というか。

○森委員
 そうすると、今行っている地産保の議論というのは、保健所から見ても、連携を進めやすい方向に向かっていると考えていいということなんですね。

○鈴木労働衛生課長
 事務局で地域職域の連携というのは2つほどパターンがあって、新たな枠組みで面接というものが入ってきますと、ストレスを持った労働者が面接に行くと。そうすると、必ずしも職場の要因だけではなくて、その際に地域の保健所だったり、市町村保健センターだったり、そういうところに照会できるようなシステムがある程度できるといいのかなと。今は関係者が単に連携しているだけで、人の流れというか、対象者が流れていかないというパターンが1つ。
 もう一つ、派遣村のときにちょっと話題になりましたが、ハローワークに生活保護だとか関係者が行くと、ワンストップ的な機能ができます。ですから、例えば地産保はスペース的に無理があるかもしれませんが、地産保のスタッフと市町村の保健センターのスタッフが、一緒に何か対応できるというようなことも、非常に濃厚な連携になるのかなというのをちょっと想定しておりました。

○中原座長
 そのほかご意見ございますでしょうか。

○武田委員
 地域産業保健センターはいろいろなところにあって、使い勝手がよくていいと思いますが、いかんせん利用者が少ないと思います。過重労働に伴う面接指導等も受けるという形になったけれども、結果的にそんなに利用者が増えているわけでもありませんし、今度またメンタルの面接の部分も受ける形を想定されていて、だから確かに枠組みとしてつくっておかなければということになるのでしょうが、余り最初から過重なものをやってしまうと、コストばかりかかって利用実績が低いままになってしまうのではと思います。やはりニーズに応じた機能だとか、体制を考えておかないと、今度新しい枠組みができるかできないかまだ確定していないですけれども、それを余り先広にやってしまうと大変ではないかなと、そんな気がします。
 無論、今かかっている経費がとてもそれでは足りないので、必要だという部分もあって、それに対応することは必要でしょうが、拡充していくというところは、やはりもう少し利用実績を見ながらやっていかないと難しいのではないかと思います。

○今村委員
 今、武田先生のおっしゃった部分はまさにあって、平均値としての利用という話になると、かけている費用と、どうなんだという議論は常にあると思うんです。ただ、残念ながら非常に全国的には取り組みに差があって、ものすごく熱心に活発に取り組まれていて、地域に本当に小規模事業場にとっては大事な組織だという場所もあります。その予算の配分が、やはり国の行政ですからある程度均一になって出てくるので、足らないところは足らない、医師会が持ち出しで全部やっているんだと。一方、余ってしまうところもあるという、そういう実態は今まではあったかと思います。しかしながら、先ほど申し上げたように、県単位の実施ということになっていますので、その辺はちょっと推移を見なければいけないかなと。
 それから、やはり平均的に見れば、予算の使い勝手が非常に悪いために、様々な持ち出しが医師会に発生しているから、もう少し逆に使いやすさと費用を増やしていただいて、先ほどの保健師のような活用ができれば、逆にもっともっと利用者が増えると。
 それから、先ほどの検討会の報告書にありましたけれども、やはり周知活動というのはとても大事なので、多くの方たちにこういう組織があるということを知っていただくということは大変重要だなと思っています。

○中原座長
 ありがとうございます。そのほかございませんか。
 岡田委員、何かございますか。

○岡田委員
 地域とは密接に関係はあると思うんです。例えば、私どもが統合失調症なんかの従業員で地域にお願いすると、地域はなかなか引き受けてくれずに、お父さんが認知症でどうしようもないのに引き受けてくれませんかといっても、地域ではそこまでできませんと言われて、休業中の従業員をどうやってフォローしたらいいんだろうかといって困って、最終的にはまた地域のほうにお願いして、何とかしてくださいということになったので、そういう意味では非常に大企業であっても重要だと思います。
 それから、私たちにとって、今グループ会社の考え方がありますので、グループ会社の中には50人未満の事業所もたくさんありますので、今は恐らくグループ会社として母体企業が全部見るというシェアード・サービスセンター的な考え方が大きな企業では全部導入されてきているんですね。でも、実際には、私どもはできたら50人未満の事業所については、この地産保を活用したりとか、遠隔地にある場合には地産保を活用してくださいという形で、むしろ私たちはその事業所に対して地産保の活用を進めるというような形で今進めております。したがって、そことの連携というのもコーディネーターの方がいらっしゃいますよね。コーディネーターの方といろいろ話をしながら、対応していただくというようなことは、大企業としても地産保との連携は図っております。

○今村委員
 私ばかりで恐縮なんですが、これは大事な問題なので、ぜひ申し上げておきたいんですが、今先生からご指摘があったように、大企業の利用というのも決していけないというわけではないんですが、本来の趣旨は、小規模の事業所、産業医も選任できないところの労働者の健康確保をどうするかという視点で始まっている事業。
 実態を見ますと、やはり利用者のかなりの部分が、大企業のそういう地方の小さな事業所の利用者がすごく多いんです。なぜかというと、大企業がそういう情報を持っておられて、そういう組織があるということを知っているので、それを利用されている。逆に本来の利用しなければいけない小規模の事業所は、それを知らないために利用できないという問題がありますので、利用に関わる費用というのは、例えば国からの予算で大体このぐらいの人数と決まっていると。そういう大企業の方たちの労働者の方の健康支援にその予算が使われて、本来の小規模の方に回らないということもありますので、こういった費用をどうするかという問題もまた大きな課題だと思っています。

○森委員
 本当に小さなところに対して、果たして大企業での経験で培ったメンタルヘルス対策モデルが使えるかどうかというのは、十分検討されていないと思います。現在私たちが小規模の事業主の災害補償団体との共同研究でこの問題についての調査を行っている最中です。かなりいろいろな小規模の企業に足を運んで出てきたものは、やはり先ほどあったワンストップという話なのです。
 小規模の企業では、メンタルヘルス対策についても事業主がキーパーソンになることは間違いないのですが、ここでいうワンストップというのは、単に健康の問題に限定したワンストップではなくて、事業主が何でも相談する身近な人というワンストップだったんです。そうすると、身近な人はだれかというと、10人以上の企業になると社会保険労務士さんとか、それ以下になると税理士さんだったりとかする。何でも相談できる身近な人が1人いると、そこからいろいろな問題の専門家に相談がつながっていくという事例が実はかなりありました。さらに調べると、「メンタルヘルス対策も一緒にやりますよ」みたいなことをインターネットで謳っている税理士さんが実際にいらっしゃることもわかったのです。
 そうすると、先ほどあったような広報機能をもっと効率にやろうとすると、事業主が対象ではなくて、そういう事業者にとってワンストップサービスを受ける人たちに適切にアプローチする方法をもう少し練ることによって、もっと効率的に提供できる可能性があるのではないかなという仮説をもっています。どうも大企業と同じようなイメージで、ワンストップで健康の問題の相談に乗りますといった方法は、どうも小さなところに合っているモデルではないのではないかと思います。その団体でも、加入者サービスとして、メンタルヘルスの相談窓口の契約を持っています。しかし、すごく利用実績が低い状態です。したがって、そういう辺りのことを意識してはじめて、地産保に保健師を置いた場合にも、機能が生きるのかなと思っています。

○中原座長
 ありがとうございました。
 岡田先生、どうぞ。

○岡田委員
 先ほどの今村先生のご意見の中でちょっと誤解があったらいけませんので。私たちは出資関係のない、例えば私どもの会社ですと、実際にガスの機具を売っている会社がありまして、そこは全く関係がないんですね。そこで20人のところは地産保、出資関係のあるところは私たちがケアしているという形で、はっきりとそこは線引きしていますので。

○今村委員
 先生の会社という意味ではありませんが。

○中原座長
 地産保に関しては、今村先生がご発言になっているように、医師会が、どれくらい一生懸命になるかは地域によって違うと思いますが、かなり一生懸命されていると思いますが、私のような立場といいますか、地域保健にも関係している者から見ると、保健師の役割が非常に大きいように思うんですが、地産保のほうには保健師という存在はほとんど常勤、あるいは非常勤はいるんですか、常勤はそんなに多くないように。

○古田職業性疾病分析官
 地域産業保健センターは、そういう常勤の職員の方がいらっしゃるという形にはなっていません。相談を担当していただく医師の方は、例えば週に1回とかお願いするという形ですし、コーディネーターの方も常勤の職員という形ではなくて、例えば医師会の職員の方が一部そういった役割をやっていただいていたりとか、あるいは別途コーディネーターの方を非常勤のような形でお願いしていたりとか、そういった形になっております。保健師の方はそんなに多くないんですが、お願いしているところがございますけれども、それもスポット的にといったらちょっと言葉が適切でないかもしれませんが、そういった形でやっている。常勤の方はいらっしゃいません。

○中原座長
 はっきりと言うと、地産保で主に働いてもらっているのは医師会を中心とする医師であって、その保健師の方をどういう形であれ働いてもらうというのは現実的には余り多くはないということですね。

○鈴木労働衛生課長
 先ほどの資料5の裏の3の地産保における保健師の業務について一番下の○で、医師が年間7,903回である一方、保健師は年間208回ということです。

○中原座長
 そうですね。それで、地域と職域の連携ということにも関与してくるんですが、やはり保健師の活動というものを、地産保ではもう必要ないからこうなのか、それとも十分取り組まれていないからこうなるのか、そこら辺のところはどうなのかなと思ったんですが。特にこれからメンタルヘルスに力を入れようというのだったら、当然地産保に保健師の活動を導入していくことも大きな柱というか、考えなければいけないようには思うんですが、そこら辺はどうなんでしょうか。
○鈴木労働衛生課長
 もうご議論いただいて、大体そういうふうに認識されていると思うんですが、ここで検討事項でお願いしたかったのはまさにそうで、今まで枠組みがもし導入されれば、先ほどの外部専門機関と同じように、50人未満ではこれがそういう役割を果たしますので、医師が効率的に業務をするためには、地産保においても保健師の確保と面接を補助するような業務が当然必要になってくるんじゃないかということを改めて確認させていただきたかったということでございます。

○中原座長
 どうぞ。

○河野委員
 先ほどの議論の中で、いろいろな専門職がチームで労働者を支援していくという考え方をもう少し新しい枠組みの中に入れていただくということに賛成ということを申し上げることと、それから資料6の後ろのほうについている産業保健センターの見直しについてというところの地産保の事業の2つ目にあります、いわゆる医師による指導といったような、限定的な記述は、前のものであって、これからの新しいものではないですよね。

○鈴木労働衛生課長
 これからのものです。こういう取りまとめをいただいたので、これに沿って改革をしなければいけないということです。

○河野委員
 そういうことですか。そうしますと先ほどの議論からすると、新しい枠組みではなく以前と同じで、限定されているような感じに見えましたので、ちょっとお伺いしたいと思いました。

○鈴木労働衛生課長
 これは長時間労働者に対する面接は医師により行うことになっておりますので、ここには「等」がないんです。

○中原座長
 これは労働安全衛生法で「医師による」と明確に書かれていると思います。

○鈴木労働衛生課長
 今回の新しい枠組みに関しては、面接に関して、最終責任は医師が負うにしても、その前半のいろいろな細かい聞き取りとか、それからその後の保健指導等については、保健師の活躍する場は多々あるのではないかと考えております。

○河野委員
 法的な縛りがあるということですね。ただ、保健師の役割が見えるようにしていただくとありがたいです。

○鈴木労働衛生課長
 この医師による指導は、これは限定です。その上のほうの今後メンタルヘルス不調者への対応等については、新しい枠組みの中で、保健師による……

○河野委員
 といったことが入れられていくというふうに解釈して。

○鈴木労働衛生課長
 そういうことでございます。

○河野委員
 ありがとうございます。

○中原座長
 私が問題提起をしたかったのは、検討事項2の(2)のアです。労働衛生における保健師の役割をどう考えるか、大きな課題がここで出てきております。私は地域保健でも関与していますし、職域保健でも関与していますが、地域と職域の連携というのは、今勝又室長からきれいな説明があったんですが、実際にはなかなか難しくて、例えば検索、コンピューターで検索するとずらずらっといっぱい出てきますけれども、何のことはない、勝又室長の保健指導室から出たマニュアルというか、文書に沿った形の会議をやったという報告をそのまま載せているものが多くて、一度やっても2回、3回と続くのはなかなか難しいというのが現状のようでございます。
 そこら辺で保健師の役割というのを非常に狭くとらえているという、現実的にはそういう面があるのではないかと思います。昔から、例えば保健所は労働安全衛生法に基づく定期健康診断というのは、健診機関がいっぱいあるところはそこに頼めばいいんですけれども、本当に僻地、離島に行くと、保健所しか頼むところがないし、保健所も受けざるを得ないから受けていると。だけど、実際上、保健所の仕事と言えるのかどうか。保健所の仕事なんですけれども、実績報告として上げるような場合、疑義が出てきたりというようなことは結構あることなんです。実際には、連携は行われているんですが、どう連携すべきかというのを大上段に振りかぶると、なかなかそこは難しいですね。
 今勝又さんはどうも保健所を念頭に置いたような説明が多かったように思ったんですけれども、実際に保健師がいるのは市町村ですから、市町村にしてみればほかにたくさん仕事がある、その中の中小企業が健診も保健指導もやってくれということであれば、当然受けたいわけですけれども、なかなか手が回らないというのも現実問題としてはあるようだし、そもそも依頼があれば検討するんですが、依頼がなければもうほかの仕事で忙しいから、とても産業の方面まで構っていられない。あるいは、地域・職域の連携というのも、言葉はいいけれども、では具体的に何をやるんですか、もっと明示してください、予算でもついたら必ずやりますというような感じの議論だけになってしまうようなのが現状ではないかなと思ったりするんですが、座長が余計なことをいっぱい言い過ぎると議論が進まないので申しわけないんですけれども、そこら辺で何かご意見はございますでしょうか。保健師の労働衛生における役割というようなところです。

○岸委員
 先ほど160号条約の予防的な機能を持つということも申し上げましたけれども、この資料8の事業場における産業保健活動の拡充に向けての検討項目でも(1)とか(2)のところで、医師の数とか医師の知見、専門分野、保健師その他の専門職の確保等というふうに書かれて、いろいろ議論に向けての検討項目で出ていると思うんですが、今日の皆様方の議論を拝聴して、また事務局が用意されたものもお聞きしまして、産業保健活動の中の予防的な機能と事後措置に関わるメンタル不調が出た場合の後のケアといいますか、そこがどうもごちゃごちゃになっていますので、もう少し整理していただきたいと思います。
 これは保健師の機能ばかりではなくて、産業医活動は本来どうあるべきかということとも非常に関係すると思うんです。
 私も北海道産業保健推進センターの相談員をしておりますので、地産保のこととか、ある程度存じておりますけれども、これからはやはり予防的なところでもう少しシステム的な産業保健活動を展開しませんと、状況が悪ければ悪いほど、もう少しそこを整理して、専門家といっても私は医師と保健師ばかりが出ているというふうに申しました。最初のところはインダストリーハイジェニストとか、エルゴノミストと申しましたけれども、メンタルな面でしたら産業生理の専門家ですとか、もっとたくさんいろいろな専門家がいるはずなんです。そこが全然出てこないのでは、例えばメンタルに特化しても、このままでは議論が不足していると思います。
 もう少し現状を打開するために、ワンストップの話とかもいろいろ出ましたけれども、もう少し全体を見まして、それから企業外組織の在り方も今後の産業保健活動全体をもっと改善できるような方向で少し議論の枠組みを設定していただけないでしょうか。そうしませんと、なかなか小手先のことになってしまって。
 今回のこの事業外のことを含めて、今大きな見直しをされようとしているのは、私は大変結構なことだと思うんですけれども、やはりまだまだ欠けている議論があると思います。よろしくお願いいたします。

○中原座長
 おっしゃるとおりだと思います。
 河野先生、いかがですか。

○河野委員
 今岸先生がおっしゃったこと、とても共感できます。今年の8月に産業看護の国際会議が日本で開かれました。そのときにいろいろな国の産業看護職がやってきて、日本のメンタルヘルス、特に自殺者が10年間も3万人を超えているというのは、本当に先進国として不思議な気がするとの意見がありました。産業保健の活動を一生懸命やっていてもやっぱりこういう状況ということは、何が原因なのかといったことが話題になりました。いろいろな原因が意見として出ましたが、産業看護の国際会議ですから、そういう中で保健師の役割が話題の中心になりました。保健師そのものは、看護職の1つで、看護の理念、つまり、相手を全人的にとらえて、気持ちや生き甲斐を尊重して、その人の生活適応への支援をするという看護の理念に基づいた活動をする専門職ですし、最も対象者に近い存在の専門職ですから、まさにメンタルヘルスの面から言えば、有用な人材であり、大いに活用されるべきであるが、現状はどうかとの質問がありました。法的位置づけが弱いこともあり、必ずしも充分な活用はなされていないとの回答に、納得できないようでした。
 保健師は、予防看護ということに視点を置いた活動をしますし、看護の理念に基づいて個人に対してだけではなく、集団に対しても、それから組織に対しても働きかけるという、機能があります。職場での健康問題は個人の努力だけでは解決できないことが多いですから、この機能は大切だと思います。そのため、諸外国の看護職がいっているように、保健師は産業保健サービスの中でとても大事な機能を担っている職種です。我が国でも、もう少し保健師が活動しやすいようなシステムが導入されると、労働者のメンタルヘルスケアにお役に立てると思います。もちろん保健師だけで何かできるとか、そういうことではなくて、先ほどから申し上げておりますように、医師をはじめとしたいろいろな専門家のチームの中で働きやすいような状況をつくっていただくと、もっともっと保健師の活動ができ、日本のメンタルヘルス対策、あるいは過重労働対策、それから心身一如ですから、メンタルだけではなくて、身体のほうも併せて労働者の健康度が上がっていくのではないかと思います。私はそのように思って、産業現場で働く保健師たちと働く人たちの健康度を上げるにはどうしたらよいかを考え、努力していきたいと思っているところです。
 今、座長から保健師の機能ということがありましたので、発言させていただきました。

○中原座長
 ありがとうございます。岡田委員。

○岡田委員
 岸先生がおっしゃられますいろいろな職種の方を入れるということも、確かに私も賛成なんですが、ただ職場環境についてはそれでいいのかも分かりませんが、メンタルについては果たしてそれでいいのかなと私もちょっと疑問点は持っております。産業医は基本的には面談をして、休職を助言するとか、就業制限をするとか、専門員を紹介するという形で明確に決まっているんですけれども、保健師さんの場合は保健師指導して行動変異を求めるという生活習慣病の対策はこれは明確なんですけれども、メンタルの問題の方を保健師さんが面談した結果、結果は何を求めておられるのか、そこはむしろご意見を聞きたいんです。
 結果として保健師さん役割というのは、メンタルヘルス不調、もしくは予防的なものも含めて、面談をして、産業医の指導の下、どういう最終的な結論を導き出すのか、そこを産業医とどう連携していくのか。生活習慣病は先ほどいいましたように明確なんですけれども、メンタルの場合は今、例えば産業保健の中ではどういうような目標とか目的、もしくは結論を持っておられるのか、そこが恐らく役割を考える上で非常に重要なポイントだと思うんですけれども、その辺はいかがなんでしょうか。

○河野委員
 そもそも職場におけるメンタルヘルスケアの目的は、働く人々のメンタルヘルスを向上させることですので、保健師の役割はチームの一員として看護の理念に基づいた活動をすることだと思います。
保健師は、メンタルヘルスケアについても一番身近な専門職です。先生も保健師さんとご一緒に働いていらっしゃるので多分お分かりいただけると思うんですが、保健師は社員からすると専門職として一番相談しやすい、垣根が低いといいますか、そういう専門性を持っています。ですので、社員の皆さんは本音で語ってくださいますし、実にいろいろな情報をいただけます。そして、社員の身近かでサポートさせていただきますから、メンタルヘルスケアで非常に重要な気づきへの支援といったようなことができると思います。今自分がどういう状況にあるのか、当然本人が判断することではありますが、やはり専門職がサポートしないと、そういう気づきというのはなかなかできにくいものですから、保健師はその役割をはたします。
 それと、産業医につなげていく、そしてそこでいろいろとご相談をして、先ほど言いましたその人にとって何が一番いいのかといったようなことを共に考えていただく。そのようなことをしながら、本人が自立的にメンタルヘルスの悪い状態から元に戻っていただけることを支援する、またさらによい状態を保てるような状況を環境整備を含めてつくり出していくという役割を担います。

○中原座長
 ありがとうございました。
 前回の健診機関でのヒアリングでは、三位一体ということで、三者ということで、確か産業医と保健師とカウンセラーみたいな、そういうような仕事の職種、メンタルヘルスに関しては三位一体ということが必要だと。河野先生の言葉を借りれば、チームアプローチということが絶対必要だということを実践しているんだろうと思います。
 そういうようなことで、座長としては、この際産業保健師というものをできれば産業保健の体系の中に導入していきたいと、そういうぐらいな意気込みを事務局の説明を聞いて感じております。
 そういうようなことの第一歩。いきなり理想論といいますか、岸先生のおっしゃるような全体像を議論するというのは当然必要だし、これは目標として想定はしなければいけないと思いますが、とりあえずこの検討会では産業保健師の位置づけを明確にしていくというのも一里塚として、ぜひ今回クリアしていきたいなという気が座長としてはしております。
 もう時間になりましたので、もしよければ今日の議論をまとめて、事務局で報告書案というのを次回ご提示いただければとは思います。ただ、次々回というものが想定できるのかどうかは、ちょっと私の立場では言えませんけれども、そういうことも考えていただければとは思っております。
 次回の予定について、事務局からご説明をお願いいたします。

○古田職業性委員疾病分析官
 次回は10月6日水曜日、16時30分からの開催を予定しております。よろしくお願いいたします。

○中原座長
 ありがとうございました。それでは、第2回事業場における産業保健活動の拡充に関する検討会を閉会させていただきます。
 どうも活発なご議論ありがとうございました。


(了)

(担当)厚生労働省労働基準局安全衛生部

労働衛生課 毛利、廣瀬

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