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2010年8月24日 第18回有期労働契約研究会 議事録

○日時

平成22年8月24日(火)10:00~12:00


○場所

厚生労働省共用第8会議室(6F)


○出席者

<委員>

阿部委員、荒木委員、鎌田委員、佐藤委員、橋本委員、山川委員

<事務局>

渡延労働基準局審議官
前田労働基準局総務課長
田中労働基準局労働条件政策課長
青山労働基準局労働条件政策課調査官
澁谷労働基準局労働条件政策課長補佐

○議題

(1)有期労働契約研究会 報告書(案)について
(2)その他

○議事

○鎌田座長 定刻より少し早いのですが、委員の皆様、もうおそろいでありますので、ただいま
から第18回「有期労働契約研究会」を開催いたします。
 委員の皆様方には、御多忙のところ、また、この暑いところを御出席いただき、誠にありがと
うございます。
 本日は、藤村委員と奥田委員が御欠席でございます。
 本日はまず、厚生労働省において8月5日付で組織改編がなされ、労働条件政策課が発足し、
人事異動もあったとのことでございますので、この件について事務局より御説明をお願いいたし
ます。
○前田総務課長 労働基準局総務課長でございます。
 今、座長からお話がございましたように、8月5日付で厚生労働省の内部組織が変わりまして、
これまで、この有期労働契約の問題については労働基準局総務課で併せてやらせていただいてお
りましたが、労働条件あるいは労働契約、この有期労働契約を含め、そういったものについての
政策の企画及び立案を専ら担当する課ということで新たに労働条件政策課ができまして、今後、
有期労働契約の問題についても、その労働条件政策課の方で所掌をするということになりました
ので、よろしくお願いいたします。
 なお、併せて今回、職業安定局に派遣・有期労働対策部ということで、非正規問題についてと
りまとめを行うような組織ができました。ただ、これまで、この研究会で御議論いただいてきま
した有期労働契約の締結とか終了とか、あるいは労働条件の問題については、引き続き労働基準
局の方で担当はしていくということですので、その点についても併せてよろしくお願いいたしま
す。
 新たにできました労働条件政策課の課長の田中でございます。
○田中労働条件政策課長 田中でございます。よろしくお願いいたします。
○前田総務課長 青山調査官は引き続き、労働条件政策課の方に移るということでございます。
○青山調査官 引き続き、よろしくお願いいたします。
○前田総務課長 それから、課長補佐の澁谷でございます。
○澁谷課長補佐 澁谷と申します。よろしくお願いいたします。
○前田総務課長 以上、よろしくお願いいたします。
○鎌田座長 ありがとうございました。それでは、議事に入りたいと思います。本研究会は、昨
年の2月から開始いたしまして、本年の3月に中間とりまとめを公表いたしました。中間とりま
とめては、さまざまな論点について、考えられる選択肢などを複数提示したものでありますけれ
ども、その後、本研究会では、労使関係者からのヒアリング、あるいは諸外国の実態分析などを
行いまして、議論を更に深めてまいったところでございます。
 検討を更に深める部分もあるとは思いますが、一方で、この研究会は、本年の夏ごろまでに報
告書をとりまとめるという予定で進んできておりましたので、現在、とりまとめをすべき時期と
なっております。そこで、前回までの議論を踏まえ、中間とりまとめをベースに、事務局に本研
究会の報告書(案)を作成していただきました。
 既に委員の皆様から御意見をいただいております事項については、私の方で拝見させていただ
き、事務局に伝え、報告書(案)に盛り込んでおります。本日は、報告書(案)を基に意見交換
するという形で進めさせていただきたいと存じます。
 それでは、報告書(案)の御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
○青山調査官 それでは、私の方から御説明いたします。
 報告書(案)は、資料2と資料3がその資料でございます。資料2は報告書(案)の本文を概
要にしたものでございますので、資料3の本文の方に沿って御説明させていただきたいと思いま
す。
 本来ならば全文をお読みすべきものだと思うんですが、時間の関係もございますので、全体の
構成等を御説明しながら、特に中間とりまとめ以降、内容を書き進めたところなどを中心に御説
明させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 それでは、資料3の、めくっていただきまして、目次の裏にある1ページ目の「はじめに」を
ごらんください。
 これは、この報告書(案)に至る経緯などを書いているものですが、3パラグラフ目までが中
間とりまとめの前の状況でございまして、過去の法改正のときの宿題等を書き、その後、研究会
での議論を進めた経緯を書いておりますが、3パラグラフ目の最後の2~3行で、本年3月に中
間とりまとめを公表したということを書いた上で、最後の2つのパラグラフで、中間とりまとめ
の公表後は、労使関係者からも意見を聞くとともに、諸外国の事例の研究等を踏まえて、議論を
深めた。その成果を報告書にしたということを書いておりまして、末尾として「本報告書を受け
て、有期労働契約のルールの在り方の議論が更に深められることを期待するものである」と結ん
でおります。
 それでは、本文に行きます。
 2ページ以降で、まず「第1 総論的事項」でございます。
 「1 現状と課題」でございますが、長いので、特に中間とりまとめとの関係で御説明いたし
ます。
 1パラグラフ目は、我が国における雇用システムと、その中での有期労働契約の状況なんです
が、1パラグラフ目の最後にありますように、多様なニーズにより用いられてきたということで
ございます。ここは中間とりまとめと同じ記述でございます。
 2パラグラフ目も、特に近年は、量的な増加ということとか、それは多様さの度合いを増して
いるということで、更に活用要因を含めて説明している部分でございます。すみません、ここは
中間とりまとめとほとんど変わらない部分かと思いますので、説明は省略いたします。
 3ページに行っていただきまして「また」以下のパラグラフにつきましては、勤務の実態とし
て、継続雇用する方針にあるものも少なくないとか、あと、一時的・臨時的でない仕事について
も有期労働契約の反復更新で対応している実態も見られるといった実態を表現しております。
 次のパラグラフも、この辺りはずっと、中間とりまとめをほぼ引き継いている部分でございま
すが、有期労働契約に関する法制の現状で、有期労働契約については、1回の契約期間の上限等
以外に規定がないということで、無期労働契約については、解雇権濫用法理が定着する一方で、
有期労働契約については法規制がないが、ただし、一定の雇止めについては解雇権濫用法理が類
推適用されるという雇止め法理が形成されていることなどを記述しております。
 最後の「一方で」のパラグラフにおきまして、更に有期労働契約について、大臣告示によって
契約内容の明示や予告等に関するルールづくりをしてきたということで、3ページの最後の行以
降でございますが、我が国では、法の規制は最低限としつつも、無期労働契約に関するルールを
準用するなどの形で対処してきたというルールの現状を書いております。
 4ページの1つ目の「最近生じている」のパラグラフにつきましては、最近の実態ということ
で、平成20年末以降の雇用情勢の急激な悪化を踏まえた雇用不安の問題、あと、中ごろになりま
すけれども、賃金が低いなどの労働条件が低位にあることや、バランスを欠いたものという現状
が書かれております。
 その次の「また」のパラグラフにおきましては、我が国の全体の経済社会を見ますと、労働力
供給が制約されていくという中で、労働者の能力発揮を促し、労働力を有効に活用し、労働市場
への幅広い人材の参加を促進することが不可欠ということで、有期契約労働者を対象に、公正な
処遇の下、職場定着や職業能力形成を促進していくことが重要ということで、それが労使双方に
も正の相乗効果をもたらすということを記述しております。
 最後の「一方で」のパラグラフにおきましては、有期契約労働者の現状として、正社員を希望
しながら有期契約労働者になっている者を典型に、先が見えない不安やステップアップが見込め
ないことなどから、働く意欲の向上や職業能力形成への取組みが十分ではない実態ということと
か、4~5ページ目にかけまして、そういう不安を背景に、労働者が労働条件への不満や権利の
主張を十分にできない現状も指摘されるところということでございます。
 これまで述べました現状と課題を踏まえまして、5ページの上の方の、少し段落が行を分けて
書いてある部分、10行ほどの段落でございますが、ここでは、このような雇用の不安定さ、待遇
の低さ等に不安、不満を有し、格差が顕著な有期契約労働者の課題に対して政策的な対応が、今、
求められている。こうした課題は、有期労働契約がさまざまな目的や動機により利用・活用され
る過程において、結果的に生じたものという面もあることを踏まえ、今後は、契約の締結から終
了に至るまでを視野に入れて、いかにして有期労働契約の不合理・不適正な利用がなされないよ
うにするかとの視点が重要。すなわち、雇用の安定、公正な待遇等を確保するため、不合理・不
適正な利用を防止するとの視点を持ちつつ、有期労働契約法制の整備を含め、有期契約労働をめ
ぐるルールや雇用・労働条件管理の在り方を検討し、方向性を示すことが必要ということで、全
体的な、総論的な、この研究会としての考えを示しております。
 5ページの「2 検討に当たっての基本的考え方」以降は、1で言いましたような課題と、そ
ういう今後の在り方を考えるに当たっての考えるべき事項を幾つか列挙しております。これも中
間とりまとめから引き続いている構成でございます。
 (1)は、労働市場が公正を確保しつつ機能するためのルールづくりということです。
 1パラグラフ目は、一人でも多くの人が生きがいや働きがいを実感しながら就業して、充実し
た職業生活を送るということで、そうした労働者が社会を支えて、経済社会の持続的な発展を可
能としていくといったねらいの下に、有期契約労働者の雇用の安定や公正な待遇等を確保するこ
とが重要ということを言っております。
 次の「また」以降で、雇用の安定という場合に、現下の厳しい雇用失業情勢の中では、正社員
の職を得ることが困難ということで、まずはトライアル雇用としての活用例がありますように、
有期労働契約は無業・失業状態から安定的雇用に至るまでのステップという役割を果たし得るこ
とに注目すべきというふうに有期労働契約の機能を評価しております。特に中小企業においても、
有期労働契約によって採用した後、正社員登用の道を開くなどの取組みも報告されたということ
で、ヒアリングで得た情報なども入れております。
 次の「さらに」のパラグラフで、ここは労働市場での機能を考える場合に、企業側からは、需
要変動等に伴う「経営リスク」へ対応するといった「柔軟性」への要請があるということでござ
いますが、そうした場合、需要変動が予測しにくくなったとして恒常的な業務についても有期労
働契約が活用されるようになったが、この結果、かつては企業側が負担していた経営リスクを、
有期労働契約を利用することで回避する傾向が顕著になってきているとの指摘もあって、いかに
して公正な配分を実現するのか、十分に検討されるべきである。また、正社員と有期契約労働者
の処遇を含めた雇用の在り方についても、公正さの視点から検討の余地があるということでござ
いまして、リスクについての記述をしております。中間とりまとめ以降にもリスクについての記
述がございましたが、その後の御議論も踏まえて、修正して書いております。
 その次のパラグラフにありますように、こうして有期労働契約のさまざまな側面を見るとき、
雇用の不安定さへの対応、あるいは労使のニーズへの対応等の観点で、不合理・不適正な利用を
防止するための措置も含めたルールの検討が求められると改めて整理しております。
 その次の「一方で」のパラグラフ以降でございますが、ここでは2~3行目にありますように、
有期契約労働者以外の類型の労働者の雇用の在り方やルールとの関係も視野に入れるということ
を記述しておりまして、例えば正社員に適用されるルールとの関係やその在り方も含めた雇用シ
ステム全体への影響にも留意すべきということとか、下から2つ目の「また」のパラグラフにあ
りますように、さまざまなニーズがあるということで、従来のようないわゆる正社員のみでなく、
従来の正社員でも非正規労働者でもない、職種や勤務地等が限定された無期労働契約で雇用され
る者なども含めた多様な類型の労働者といった「多様な正社員」の環境整備も視野に入れること
が有用であるということで、その次のパラグラフにありますように、こうした多様な選択肢が連
続的なものとして用意されることも、公正な待遇等を実現するために有用であるというふうに書
いております。
 次の7ページでございますが、なお、こうした多様な働き方というものは、労働者の意思に反
して一方的に実現されてはならないということと、ただ、その場合に、労使のみに委ねるのみで
は十分に実現できないということで、政府の役割、均衡待遇・正社員化の推進とか、マッチング
機能も重視した就労支援、雇用保険等のセーフティーネットや職業能力開発といった政策も重要
であるということは言うまでもない、当然のことでありますが、記述しております。
 (2)は、有期契約労働者の多様な実態を踏まえということでございます。
 中間とりまとめの前の段階でも、この研究会でやりました実態調査によりまして、4つの職務
タイプに分けて分析したということは明らかになっておりましたが、その後の分析におきまして
明らかになったことを踏まえて、真ん中辺りの「また、高年齢者には」という文章がありますが、
高年齢者には、満足度などの点でほかの年齢層の者と異なる傾向も見られるなど、年齢とか契約
社員、嘱託社員といった就業形態などによってもニーズが異なっているということ。また、有期
契約労働者の中でも「勤務時間が限定されている」とか「正社員に比べての責任が軽い」等の働
き方を自らのニーズとして「本意」で選択している者と、正社員を希望しながら「不本意」で有
期労働契約を締結している者とが存在するといった違いがあるということで、こうした中で、い
ずれかを前提として一律のルールを当てはめると、意図せざる効果を惹起させる可能性があると
いったことも確認されたということで、新たな知見を入れております
 次の(3)は、労働契約の原則を踏まえ、これを発展させることということで、労働契約法の
総則に書かれているような、労使対等から始まり、均衡考慮、仕事と生活の調和等の原則との関
係に留意するということが書かれております。これは中間とりまとめを踏襲しております。
 8ページ目の上から3つ目の「なお」以下のパラグラフでございますが、私法的効果を生じさ
せることを検討する場合には、契約当事者の意思を超越して、例えば「無期労働契約とみなす」
ことなどについては、合意原則との関係に留意が必要ということで、契約原則との関係への留意
をここでも述べております。
 総論の最後ですが「3 検討に当たっての留意事項」です。
 (1)が労使当事者の予測可能性の向上を旨とするということで、これは中間とりまとめから
引き続いている論点でございますので、基本的に変わっておりません。引き続き重要ということ
でございます。
 (2)の施策の相互関係、施策の及ぼす効果等につきましては、これも中間とりまとめから、
このような視点は入っておりましたけれども、やはり1パラグラフ目にありますとおり、さまざ
まな施策が考えられるが、組み合わせ得る関係とか、代替的な関係などの相互関係が見られる部
分もありますので、これらに留意するということも今回明記しております。
 9ページに移っていただきまして、(3)は雇用・労働をめぐるシステムや、その中での有期労
働契約の位置づけを含めた総合的な比較法的検討ということで、諸外国の検討についての記述で
ございますが、これは中間とりまとめと引き続き同じでございます。
 これに当たっては、最後の2行にありますように、雇用・労働をめぐるシステムの全体像とか、
その中での有期労働契約とか、法制の位置づけや機能の相違にも留意する必要があるということ
でございまして、これは中間とりまとめ以降も、これに留意しながら研究会を進められてきたと
思いますので、これらのことは後ろの各論の方で、個々に反映して記述してございます。
 あと(4)で、さまざまな性格の規定・行政手法の総合的な活用ということで、さまざまな性
格の法規制の手法を視野に入れて検討するということでございます。
 特に2パラグラフ目で、中間とりまとめのころから、現場の労使の取組み方が多様なので、そ
ういう工夫を取り込める余地を残したルールを検討しようという課題だったと思いますが、特に
諸外国からの知見も踏まえまして、例えば労働者の意向も踏まえつつ、集団的な労使間の合意に
よって、法律の規制を労使にとってより妥当なルールに修正することを可能とするといった諸外
国の例もありましたので、そういうものも参考に、自主的な創意工夫が取り込めるルールの在り
方も視野に入れるというふうに、ここは補充しております
 総論は以上でございます。10ページ以降が各論でございます。
 まず、10ページの第2は各論の1つ目で「第2 締結事由の規制、更新回数や利用可能期間に
係るルール、雇止め法理(解雇権濫用法理の類推適用の法理)の明確化」でございます。
 「1 基本的考え方」で、中間とりまとめでは、ある程度、政策の相互関係を中心に書いてお
りましたけれども、ここでは、このルールの意義的なものを書いておるかと思います。
 1パラグラフ目では、特に4行目以降でございますが、例えば恒常的な業務にも有期労働契約
が活用されるケースなどにおいては、雇用の不安定等の課題が生じている面もあることに対応し
て、不合理・不適正な利用を防止、抑制するという視点でルールを定立する立場に立てば、この
第2で取り上げるような締結事由の在り方、更新回数や利用可能期間の上限の在り方等々のルー
ルは検討の中心事項であるということで、この意義が大きいことを述べております。
 次のパラグラフでは、2以降に記述する選択肢を3つ述べているものでございますので、省略
します。
 3パラグラフ目は、各ルールの相互関係を多少述べておりまして、契約から締結終了までのい
ずれの過程に着目してルール化を図る必要性が高いのかというのは検討が必要なんですけれども、
例えば締結事由規制と、更新回数や利用可能期間の規制は、セットで行う国もあるんですが、そ
うでない国もあるので、組み合わせ可能なものと考えられるといったことを書いております。
 そういうことで、次の「このように」以降のパラグラフですが、こうした雇用の安定等に向け
た手法は一様ではないということで、2~4に選択肢を掲げますので、それぞれの抱える課題、
規制がもたらす効果、影響等を念頭に置きつつ、あと、ほかの施策との組み合わせによる施策の
全体像も描きながら検討が必要であるということで、この場合、労働者が充実した職業生活を送
ることができる可能性を最大限広げるという視点も持ちながら、今後、必要な政策の立案に関わ
る関係者において適切に判断されることが望まれるということで、この意思を、研究会としての
選択肢に関する考えを示しております。
 次のパラグラフは飛ばしまして、11ページでございます。2以降が、この第2における選択肢
を1つずつ示しているものでございます。
 「2 締結事由の規制」でございます。
 これは、1パラグラフ目と2パラグラフ目は、締結事由を考える場合の我が国の現状で、恒常
的な業務も含めて、有期労働契約が多様に利用されているという現状を書いております。ここは
中間とりまとめを踏襲しております。
 2つ目が、フランスでは締結事由規制を講じているという例を紹介しております。
 3つ目の「これに対して」以降のパラグラフで、我が国の導入について論じております。まず、
フランスのような無期労働契約の原則につきましては、我が国は採用していない。労働契約の締
結は自由ということでございまして、労働慣行としても、有期労働契約は長期雇用を補完するも
のとして機能してきたところであります。こうした中で、無期原則を採用するべきという意見が
あるが、しかしながら、そうしたことに関する基本的な考え方そのものの転換については、雇用
の実態や労使の認識等にも関わるものでありまして、他方、無期原則を採るとしても、制度化の
在り方は一様ではないということを述べております。そういうことで、無期原則について考え方
を一旦整理しております。
 その次のパラグラフで「一方」ということで、締結自体の規制を導入するということについて
は、先ほどの基本的な考え方から直ちに採否が決まるというものではなく、有期労働契約の機能
等を踏まえて検討し得るという形で、今後、議論を進める前提として書いております。
 12ページの「例えば」のパラグラフにおきましては、有期労働契約についての締結事由規制を
考えるに当たっての課題を書いておりまして、先ほどから出ております、安定雇用へのステップ
としての機能など、有用な機能を果たし得ることについても十分に留意すべきということで、締
結事由が制限されれば、新規の雇用が抑制される、人材確保が困難となる、企業の海外移転が加
速する等の影響が生じないか等の懸念が生ずるということを書いております。この辺りの懸念は、
基本的には中間とりまとめから出ているものでございます。
 このパラグラフの最後で、締結事由規制を行っているフランスでも、締結事由を失業対策のた
め拡大しているという事例も、その後、確認されましたので、加えております。
 その次のパラグラフで、締結事由を規制する場合の課題として、フランスでも実態としては締
結事由に該当するかをめぐって争いが生じており、最終的に、司法の判断となっているというこ
とを入れておりまして、やはり予測可能性の確保等の観点から有効に機能し得るかは、課題とい
うことを述べております。
 次の「他方」のパラグラフでは、そういう締結自体を規制する手法のほか、濫用を規制するた
め、更新回数や利用可能期間に関するルールを設けることで、先ほどの弊害に対処するというド
イツの例などを紹介しているところで、これは中間とりまとめと同じなんですが、特に、その後、
スウェーデンにおいても、締結事由規制を設けていたが、事由の拡大、複雑化がもたらされて、
利用可能期間に上限を設ける規制に移行したという経験を持っていることがわかりましたので、
そのスウェーデンの経験を加えております。
 そういうことでございまして、あと、13ページの上の「なお」のパラグラフは、諸外国と比較
する場合の留意点として、締結事由に該当しない場合、無期労働契約となるんですけれども、フ
ランスなどの国においては、無期労働契約となった場合に、無期労働契約の解雇について金銭解
決が可能となっておりますが、我が国は解雇権濫用法理という規制があるということで、解雇無
効となるということで、無期労働契約となった後の効果が違うことも留意が必要であるというこ
とを載せております。
 その次のパラグラフでは、ほかの規制との関係ということで、締結事由規制をした場合には、
更新の際の判断基準の明示等の必要性は相対的に低下するといったほかの施策との代替関係を述
べております。
 今後、この各選択肢・施策の後に、なるべく、ほかの施策との相互関係を、議論で明らかにな
った範囲で書くようにしているということでございます。
 「3 更新回数や利用可能期間に係るルール」でございます。
 これは、一定の上限を設定して、なお存在するような有期労働契約であれば、無期労働契約と
同様の、またはこれに類するルールに従うものとすることが公平にかなうという考え方を紹介し
ております。
 それで、1パラグラフ目の最後の4行ぐらいですが、これは、有期労働契約の利用を基本的に
は認めた上で、その利用の状況に応じて、言わば濫用と言える状態を排除するという手法である
ということで、今後稀少となる労働力の有効な活用にも資するということを書いております。
 これについても、諸外国の例として、次のパラグラフで、イギリス、韓国やスウェーデンの例
を述べております。
 13ページの最後の「上記のような考え方」からのパラグラフでは、回数や期間の上限といった
区切りを設ける場合の在り方として、特に中間とりまとめ以後の記述を進めた部分としては、業
種、職種、就業形態、年齢等といった多様性にも留意する必要があるということで、現在、そう
いう「区切り」を多様性で反映している例も、まだ我が国にないということでございますが、こ
れまで多様性が指摘されてきましたので、そうした個々の事情を反映し得る工夫、例えば集団的
な労使の合意により、法律による共通の「区切り」のルールを、より妥当な内容に修正し得るよ
うな可能性やルールの適用対象の在り方を含めて検討すべきということで、総論にも類似の記述
がございましたが、述べております。
 あと、次の「3年」というのは、今の労働基準法第14条とか、一部の場合に「3年」を超える
と解雇権濫用法理が類推適用される可能性があるというリスク回避的考慮から使われているとい
うことも踏まえた検討が必要であるということを述べておるのは、中間とりまとめと同じでござ
います。
 その次のパラグラフも中間とりまとめのところを踏襲しておりますけれども、こういうルール
はステップアップの道筋が見え、意欲の向上にもつながるとか、職業能力形成の促進等と関連付
けて制度を構築するなどにより広がりを持ち得るといった評価をしております。
 その次の「一方」のパラグラフで、そうした基準の明確さの反面、この「区切り」の手前での
雇止めの誘発という副作用の懸念は、中間とりまとめと同様、指摘しておりまして、特に韓国で
は最近、2年の上限規制というものを新たに導入しましたけれども、上限到達時には、雇止めさ
れた、無期化された両方の例が見られたということで、引き続き注視しながら参考としていきた
いということを書いております。
 次の14~15ページにかけてのパラグラフは「区切り」を超えるに至った場合の法的効果として、
無期みなしから申し込みみなし、あと、解雇権濫用法理と同様のルール適用といったさまざまな
選択肢があることを述べているのは中間とりまとめと同じでございます。
 少し飛ばしまして、最後の「ここで他の施策との関係について見ると」というパラグラフにつ
きましては、先ほどありましたように、ほかの施策との関係を記述しておりまして、例えば「区
切り」までの間であっても有期でございますので、雇止め法理等の適用の意義が認められる。一
方で「区切り」を超えた後の法的効果によっては、労働契約の締結があり得る場合であれば、そ
の後であっても雇止め法理の意義はなお存するといったこととか、あと、特にこのルールで更新
回数を制限した場合は当事者の予測可能性が高まるので、一定の明示義務といったものの必要性
は相対的に低下するといった代替的な関係なども述べております。あと、回数の制限をした場合
には細切れ化への対応の必要性が低くなるということも書いております。
 次に3つ目のルールで「4 雇止め法理(解雇権濫用法理の類推適用の法理)の明確化」でご
ざいます。
 これは解雇権濫用法理といって、一定の場合について、雇止めに解雇権濫用法理を類推適用す
るという判例法理でございますが、それが確立している。
 そういう中で、15ページ目の2パラグラフ目ですけれども、この解雇権濫用法理の明確化を考
えるに当たっては、今の判例法理では雇止めが無効となった場合にも、無期労働契約に転化する
わけではなく、有期の契約が更新されるということでございますので、そういうことにも留意し
て、法的効果も検討が必要であるということを述べております。
 16ページで、その次のパラグラフで、これも中間とりまとめと同じですけれども、このルール
は個々の事情を具体的に判断するものでございますので、事案に応じた妥当な処理が可能という
利点も述べております。
 その次の「一方」のパラグラフで、ただ、これは個々の事案ごとに主観的な要素も含めて総合
的に判断しているという法理でございますので、事前の予測可能性に欠けるという部分について
の課題が、中間とりまとめ同様、指摘されております。これについては、労使の判断の参考とな
るような、何か補足する内容を示し得るかが課題となっておりますけれども、実務の問題として
検討されるべきということになっております。
 あと、このルールにつきましても、最後のパラグラフで、ほかのルールとの関係を述べており
まして、先ほどの締結事由規制等が導入されない場合に機能するということは勿論のこと、第2
のルールである「区切り」のルールとの組み合わせも機能し得るということも書いております。
 第2は以上でございます。
 17ページで「第3 労働条件明示等の契約締結時の手続に関連する課題」でございます。
 「1 契約締結時の明示事項等」で、これも中間とりまとめとほとんど記述は進めていない部
分でございますが、概略を申しますと、今、大臣告示で求めている締結時の「更新の有無」や「更
新の判断基準」といった明示事項について、法律によって規範性を高めることが方向性として考
えられるということでございます。これも、ほかの施策との相互関係が見られるのは先ほどのル
ールで述べたとおりでございます。
 すみません、少し飛ばしまして「2 契約期間について書面明示がなされなかった場合の効果」
ということで、労働基準法で、今、義務付けられている契約期間を契約当初に書面明示するとい
うことにつきまして、それがない場合の効果をどうするかという議論でございますが、これにつ
きましては、書面明示がない場合に「無期労働契約とみなす」という立場とか、当事者の意思を
解釈する観点に立って反証を許す、推定するという立場と、申込義務を課すという立場など、こ
れもさまざまな法的効果の選択肢があるということで、検討が必要であるということでございま
す。
 最後の「また」のパラグラフでは、そういうルールを設ける場合にも、書面明示をどの時点で
設けるのか。契約締結時当初なのか、締結時点から一定期間経った場合に明示すればよいとする
のか等の選択肢も引き続き検討ということとなっております。基本的には中間とりまとめを踏襲
しております。
 次は19ページで「第4 有期労働契約の終了(雇止め等)に関する課題」でございます。
 「1 契約期間の設定」で、具体的には細切れ化の問題でございます。1回の契約期間の短縮
化が進んでいるという実態があるということです。
 これは中間とりまとめの段階から、3パラグラフ目にありますように、こうなると労働者にと
ってはリスクヘッジができないということで、雇用が一層不安定になるという課題が指摘されて
おりましたが、その後、ヒアリング等でも、更新の機会を一定の面談機会に活用して、コミュニ
ケーションとして使っているという例も一部見受けられましたので、その評価は一律ではないと
いう点はあるかと思いまして、記述しております。いずれにしても、必要以上に短い期間となら
ないような方策を検討することが必要であるという形で課題としております。
 「2 雇止めの予告等」で、これも現在、大臣告示で雇止めの予告については求めているもの
でございます。
 これについても告示でルール化しておりますところ、それを法律に基づくものとすることにつ
いては検討が必要であるということでございます。
 ただ、これについては「高度技能活用型」に属する者や、あと、その後に出てきた高年齢者と
いった、類型によっては必要性が異なり得るという点にも留意するという点を加えております。
 20ページに行っていただきまして「3 雇止め後の生活安定等」でございます。
 初めの2つ目のパラグラフで、雇止め予告に関連した、解雇予告に相当する予告手当について
でございます。これは現在、告示等にはございませんけれども、法的に位置づけることも考えら
れますが、解雇と雇止めの違いにも留意が必要であるということで、留意点を述べております。
 次に3パラグラフ目以降は、今の雇止め予告に関連するものとは別に、契約終了時に払う手当
の在り方でございます。これは中間とりまとめから、フランスでの契約終了手当を研究していた
ところですが、その後、中間とりまとめ以降も更に研究が進んだかと思いまして、それを反映さ
せております。
 すなわち、フランスでは、不安定雇用への補償として、契約終了時に支払いを事業主にさせて
いる。これは、無期化へのステップとならない有期労働契約としての利用には、不安定雇用の対
象としての費用負担を課すという趣旨でございまして、その証拠に、有期労働契約として継続す
る場合にも、一旦、契約期間が終わったときにも、有期労働契約として継続する限りは払わなけ
ればいけないというものとなっておりまして、一方で、無期化されれば払わなくていいというこ
とで、まさに無期化を促進する効果も持つということが、この議論の中で考えられたかと思いま
す。我が国について考えると、こうした手当については、こうしたフランスのような雇用の不安
定さへの補償等の観点とか、あるいは雇止め時における無期労働契約との公平の観点を含めて、
さまざまに考えられるということで、どういう趣旨、目的でやるのか、どうした内容でやるのか
などをほかの施策との比較をしながら検討が必要であるということで、そうした場合に、退職金
や雇用保険との関係、だれが費用負担をするかといったことも含めて検討されるべきということ
で、課題としております。
 なお、最後に書きましたように、これもほかの施策との組み合わせという点では、締結事由規
制や更新回数や利用可能期間に係るルールの導入の有無に影響されずに、考えられる点であると
いうことで書いております。
 次が21ページで「第5 均衡待遇、正社員への転換等」でございます。
 これは、まず「1 基本的な考え方」で、均衡待遇、正社員への転換に通ずる全体的な考え方
を書いておりまして、中間とりまとめと基本的に趣旨は変わっておりませんけれども、待遇への
不満とか、あと、2パラグラフ目にありますように、ステップアップが見込めないということへ
の不満は相当あるということで、パートタイム労働法も参考に、均衡のとれた待遇の推進とか、
あと、雇用の安定及び職業能力形成の促進という観点からの無期化や正社員転換等の推進が考え
られるということでございます。
 その次の「なお」のパラグラフでありますように、正社員転換等という場合の正社員は、もと
もと、この研究会上の定義は、いわゆるフルタイム、直接雇用、長期雇用を前提とした待遇を受
ける者という定義を持っておりますけれども、そういう正社員に限定するとハードルが高いとい
うことの指摘をここでも述べております。
 あとは、最後の「なお」のパラグラフで、この施策を考えるに当たってのほかの施策との組み
合わせの関係で、これもこういう均衡待遇や正社員転換を推進するというルールであれば、締結
事由規制や更新回数や利用可能期間に関するルールの導入の有無にかかわらず、影響されずに検
討することが可能と考えられますけれども、特に締結事由規制をするよりは、ほかのルールによ
って、有期労働契約の利用可能性を限定しない場合において、こうした施策への期待が大きくな
るということで、多少、相関関係を論じております。特に「区切り」を超えるに至った場合に、
職業能力開発等の観点からより積極的な取組みがなされるようなシステムが考えられ得るという
ことで、関連付けられるということで、関係を述べております。
 22ページに行っておりますが「2 均衡待遇など公正な待遇」でございます。
 1つ目のパラグラフは、中間とりまとめからの議論でございますけれども、EU諸国のような
「有期契約労働者であることを理由とした合理的理由のない差別の禁止」といった法規制のみを
置く。あとは裁判所等の判断という枠組みの検証でございます。これにつきましては、我が国に
おいては、近年、職務給的な要素を取り入れる動きも出てきているとはいえ、一般的には、諸外
国のような職務給体系とはなっていないということで、職務遂行能力という要素で待遇を決定し
ているということでございますので、そうなると、何をもって正社員と比較するのか、何が合理
的な理由がない差別に当たるのかという判断が難しいということで、検討が必要という考えでご
ざいます。
 次の「一方」のパラグラフでございますけれども、それでは、パートタイム労働法の枠組みを
参考にした検証をしておりまして、例えばパートタイム労働法の枠組みにありますような、正社
員と同視し得る場合の均等待遇を導入しながら、その他の有期契約労働者についても、均衡を考
慮しつつ、職務の内容・成果、意欲、能力及び経験等を勘案して待遇を決定するといった均衡待
遇の仕組みがありますので、そういう仕組みであれば多様な有期契約労働者が対象にできるとい
うこととか、実情に即した対応を可能とするということが考えられます。
 最後のパラグラフで、この場合に、パートタイム労働法では、先ほどの均等待遇が求められる、
正社員と同視し得る者の要件の中に、無期契約労働者か「実質無期」であることが要件とされて
いますけれども、今回、有期契約労働者について同様の均等待遇の措置を考える場合には、この
要件についてはどう考えるかということは議論でしょうということでございます。
 23ページは「3 正社員への転換等」でございます。
 これは能力形成等に資するということで、そういう方策が効果的であるということが1パラグ
ラフ目にありますが、2パラグラフ目にありますように、パートタイム労働法の枠組みも参考と
しつつ、正社員への転換の推進の措置を義務付けるほか、何らかのインセンティブを与えるなど
のさまざまな選択肢を検討していく必要があると結んでおります。
 最後の「また」のパラグラフでは、先ほど総論でも少し出てきました、正社員への転換を考え
る場合に、正社員に転換するということだけを考えるとハードルが高いということで、あと、労
働者のいろいろなニーズもあるということを考えますと「勤務地限定」「職種限定」の無期労働契
約など、多様な雇用モデルを労使が選択し得るようにすることも視野に入れた環境整備の検討が
求められるというふうに書いております。この課題は中間とりまとめでも出ていたかと思います。
 それで、その後の議論も踏まえまして、そうした場合に「勤務地限定」等の無期労働契約にお
いて、その対象となった勤務場所が閉鎖などをされた場合に雇用保障をどうするのか、どうなる
のか。整理解雇の在り方も含めた雇用保障は、本当にそれ以外の労働者と違うのかどうかという
点はさまざまな意見があったかと思います。ヒアリングでも御意見があったかと思います。これ
については、まずは労使間での契約内容の明確な合意ということが紛争防止のために必要であり
ますし、なお進んで、これらのルールの在り方については、まだこういうモデルについての取組
みや実例、あと、裁判例の集積の状況も踏まえながら、注視しながら、検討が必要であるという
ふうに検討課題としております。
 24ページ以降は、最後の「第6 一回の契約期間の上限、その他」でございます。
 「1 平成15年労働基準法改正の影響等」とありますけれども、平成15年の労働基準法改正
で、1回の契約期間の上限を原則1年から3年に延長したことの評価と、更に、その見直しの可
能性でございますが、実際に1年を超える有期労働契約は利用が総じて少ないということが既に
明らかになっていたかと思います。
 ヒアリングにおいても、労使双方から、原則3年の上限を延長するというニーズは把握するに
至っていないかと思われます。
 そういうことで、中間とりまとめと基本的に方向性は変わっておりませんけれども、3パラグ
ラフ目にありますように、1回の契約期間の上限は維持することが一つの方向と考えられると結
んでおります。
 「2 暫定措置についての取扱い」でございまして、これは1の1年から3年に延ばした際に
設けられた、3年といった契約期間が可能となった場合に、1年を経過した後は、労働者の方は
いつでも一方的に退職できるという暫定措置の扱いでございます。
 この暫定措置を考える場合に、1つ目のパラグラフにありますように、もともと、これは労働
者の拘束を防ぐという趣旨で設けられた暫定措置かと思うんですが、実際に中途退職する労働者
が拘束される事態が頻繁に生じているということは余り把握されていないなど、労働者の拘束と
いう懸念は余りないということが明らかになっていたかと思います。
 そういうことで、有期労働契約というものは本来、互いを拘束するということが一つの本旨で
あるということで、その考え方が2パラグラフ目に書いてありますが、そうしたことを考えると
「当分の間」の規定として、暫定措置として設けられた、1年を経過した労働者はいつでも辞め
られる、退職できるという措置につきましては、その役割を終えたものと考えてよいか、更に議
論するべきであるということで、基本的には中間とりまとめのときからも、このような考え方は
示されていたかと思いますけれども、引き続き、こういう考えで更に議論というふうに結んでお
ります。
 以上でございます。
 すみません、1点、その他の資料の簡単な御説明ですが、資料4は前回も出しました「有期労
働契約に関する各論点について」で、今回の報告書(案)に書かれた各論点を有期労働契約の経
過に沿って図にしたものでございまして、締結から終了まで、どの場面にどういうルールが適用
され得るか。選択肢ですので、網羅的にせず、あり得る選択肢を全部載せておりますけれども、
それを特に無期労働契約との比較も含めて図式化しているものでございますので、議論の参考に
していただければと思います。
 あと「参考資料」とありますが、これは先ほどの契約期間更新回数の上限のルールのところで、
韓国の例を引き続き参考にするとありましたし、そこでの注でも若干書いておるんですけれども、
最新でわかっております韓国の上限規制の運用状況でございます。
 特に最新でわかっているものが、今年5月に一定の期間が経過した有期契約労働者を事業主は
どのように扱おうとしているかということがわかるデータでございまして、例えば1ページ目の
5月の、特に2年以上という、法定の2年という期限が過ぎる労働者についての扱いが参考にな
るかと思うんですが、これを見ますと、契約終了、雇止めだと思うんですが、32.4%で、正規職
に転換したのが24.8%、継続雇用は、恐らくそのまま雇い続けたということで、法的には無期労
働契約とみなされるはずの類型ですが、それが42.7%で、こういうことを踏まえて、先ほど雇止
め、無期化、両方の例が見られたということでございますし、特に後者2つを足しますと、6割
強が無期労働契約になったかなということは評価されると思います。ただ、これは単月の状況で
ございますし、韓国も制度が導入されて日も浅いですので、引き続き注意深く、動向は見守って
いかなければと思っております。
 こうしたことも含めまして、すみません、初めに言うべきだったんですが、この報告書(案)
では、こういう参考のようなデータ等につきましては一部、注に入っております。中間とりまと
めでは全部上にあったかと思うんですけれども、注で注書きするに値するようなものにつきまし
ては、本文に番号を付けた上で、注で説明するという形を取っておりまして、参照いただければ
と思います。
 私からの説明は以上でございます。
○鎌田座長 どうもありがとうございました。
 委員の皆様のさまざまな御意見を私の方でお伺いいたしまして、それを鋭意、反映させた形で、
この報告書(案)を作成いたしました。これにつきまして、御質問・御意見がございましたら、
どうぞ、御自由に発言をいただきたいと思います。
 どうぞ、お願いします。
○荒木委員 大変多様な議論を非常に明確にまとめていただいたことに対して感謝をしたいと思
います。その上で幾つか、更に改善した方がいいかとも思われる点について御指摘をしたいと思
います。
 報告書(案)の8ページですが、全体に趣旨を明確にするという観点からの指摘なんですけれ
ども、3の2行上のところに「例えば、有期労働契約について一定の状態となったときに、契約
当事者の意思を超越して『無期労働契約とみなす』ことなどについては、労働契約の合意原則と
の関係に十分に留意が必要である」という記述がございますが、これは契約当事者双方の意思を
超越してということでしょうか。
 すなわち、無期労働契約とみなすとか、あるいは申し込んだものとみなすとか、そういう場合
は、使用者の方は当然に、その意思に反しているときの規制を考えているわけですから、ここで
言っているのは恐らく、労働者が望まないのに無期労働契約とみなしてしまうようなことは問題
であるという指摘だと思いますので、そうしますと「契約当事者双方の意思」と書いた方が明確
かと思います。
○青山調査官 御趣旨はおっしゃるとおりでございます。
○荒木委員 それから、修文に関わる点は省くといたしまして、11ページの「2 締結事由の規
制」の真ん中のパラグラフで「フランスでは、労働法典において労働契約は期間の定めなく締結
されることを定めた上で」とありますが、これは奥田先生に確認していただきたいんですけれど
も、以前はそういう条文だったんですが、現在は、締結されるのが一般あるいは通常であるとい
う条文に変わっているかもしれませんので、少し御確認いただければと思います。
 同じ11ページの一番下から3行目で「一方、有期労働契約の締結自体の規制」で、全体に「締
結事由の規制」という言葉が使われたと思うんですが、部分的に「締結自体の規制」という言葉
があります。これは「締結事由の規制」に統一していただいた方が正確かと思います。と申しま
すのは、反復更新も締結自体であることには変わりありませんが、ここで議論しているのは反復
更新ではなくて、初回の有期労働契約の締結に事由を要求するかということですので、ここも「締
結事由の規制」と書いていただいた方がわかりやすいかと思いました。
 12ページの上から5行目ですが「すなわち、こうした機能を有してきた」。有期労働契約は安定
雇用のステップとしての機能を果たし得るという話で、それを受けて「こうした機能を有してき
た」と書いてありますが、有してきた部分もありますし、今後期待されるという部分もあります
ので「こうした機能を担い得る」というような表現の方が今後の施策を考える上ではいいのかな
という気がいたしました。
 13ページですが、下から2番目の段落で「この点、例えば」ということで、イギリス、韓国や
スウェーデンの法制では有期労働契約の利用期間がそれぞれ4年または2年を超えた場合には無
期労働契約になる。それで「ドイツの法制では」ということで、ドイツだけ詳しく、客観的な事
由がない場合にも有期労働契約の締結を認めているが、その利用期間が2年を超えた場合には、
無期労働契約となる。これを読みますと、イギリス、韓国、スウェーデンでは客観的な事由があ
る場合の話なのかという誤解を生みますので、イギリス、韓国、スウェーデンも、いずれも客観
的な理由なく有期労働契約の利用を認め、それが4年とか2年を超えた場合には無期労働契約に
なるということですので、ドイツの規制も含めた表現をしていただいた方が誤解がないかと思い
ます。
 ただ、ドイツの場合には、客観的な理由があれば2年を超えても利用できるということがあり
ますので「ドイツ」の後に括弧をして「(客観的な理由がある場合を除く)」というものを入れて
いただいて、スウェーデンと同じ、2年を超えた場合に無期労働契約になるという規制に統一し
ていただいた方がわかりやすいと思いました。
 それから、22ページですが「2 均衡待遇など公正な待遇」の2行目で「EU諸国のような『有
期契約労働者であることを理由とした合理的理由のない差別の禁止』」というふうに「差別」とい
う言葉が使われておりますが、EU指令自体は不利益取扱いの禁止という言葉であります。タイ
トルは差別の禁止と書いてあるんですが、内容自体は不利益取扱いの禁止です。
 それで、労働基準法第3条の差別禁止の場合は、有利にも不利にも差別取扱いは禁止されます
が、EUの規制は、有期契約労働者の不利益取扱いの禁止ですから、有期契約労働者を有利に扱
うことは禁止されていません。EU指令はそうでありますし、実際、各国法もそのようなことに
なっているようで、ドイツ、イギリス、フランス、オランダで、オランダは、文言上は差別禁止
のようなんですが、趣旨としては不利益取扱いの禁止と解されているようですので、これは「不
利益取扱いの禁止」と書いていただく方がより適切ではないかと思います。
 以上、とりあえず御指摘です。
○鎌田座長 ありがとうございます。
 文言的な部分と、それから、少し内容に関わるようなものもあったかと思いますけれども、一
応、最初に8ページの「契約当事者双方の意思」という、これはこういう趣旨で、ですから、こ
ういった趣旨でお書きいただければいいかと思います。
 11ページの真ん中のフランスについては、奥田先生は今日御欠席なんですが、確認した上で表
現を整えていただければと思います。
○青山調査官 わかりました。
○鎌田座長 同じく11ページの、今、荒木先生がおっしゃった一番下から3行目で「締結自体の
規制」と「締結事由の規制」ということで、荒木先生が言われたロジックで私も理解いたします
ので、これは「締結事由の規制」ということでお書きいただければと思います。
 12ページの上から5行目の「こうした機能を有してきた」。少し表現を幾つかの意味内容を含め
て表現した方がいいのではないかということでありますので「こうした機能を担い得る」で私も
よろしいのではないかと思っております。
 あと、13ページですけれども「この点、例えば、イギリス、韓国やスウェーデンの法制では」
というのは、確かにこれはそうですね。表現的に言えば、要するに客観的な事由がない場合とい
うことが前提になっているわけですので、そのことを含めて表現を少しわかりやすくするという
ことで、趣旨としては同じだと思いますので、そういうふうに思います。
 荒木先生、22ページまで飛ぶんでしたか。
○荒木委員 はい。
○鎌田座長 「差別」という表現を使うか「不利益取扱い」という表現を使うかどうかというこ
となんですが、これは両方、いろいろ議論があるところなんですが、先生方、どうでしょうか。
差別ということでお使いになっている先生も多いですし、今、荒木先生がおっしゃったように、
不利益取扱いということでお使いになっている先生もいらっしゃるというふうに、あるいはさほ
ど意味的には違わないのではないかといったお考えの方もいらっしゃるとは思うんですが、先生
方の御意見をお伺いしたいと思います。
 どうぞ。
○橋本委員 厳密に考えると荒木先生のおっしゃるとおりだと思うのですが、私のドイツの文献
などを読んでいる印象では、余り論者は意識せず、差別の禁止、不利益取扱いの禁止、そして、
均等待遇と、文献などを見る限りは、これらの用語について、とくに言葉を使い分けているわけ
ではないという印象もあるので、余り変わらないのではないかという気もしています。
 また、実際、まだ有利取扱いが問題になったことも余り、コメンタールなどでそのようなこと
が細かく議論されているようでもなさそうですので、何とも申し上げにくいのですが、ただ、厳
密に考えれば、荒木先生のおっしゃるとおりという気もします。ドイツの条文などでは不利益取
扱いの禁止という言葉を使っていますので、荒木先生の御指摘でいいのではないかと思います。
○鎌田座長 あと、ほかの先生方、いかがでしょうか。
 EU諸国、あるいは今、具体的にドイツの例を挙げまして、不利益取扱いという文言を使われ
ているわけですね。
○橋本委員 はい。
○鎌田座長 それでは、そのような形で進めていきたいと思っています。
 あと、ほかの先生、御遠慮なくどうぞ。
 どうぞ。
○山川委員 非常に多様な意見をまとめていただいて、ありがたく思っております。
 いずれも本筋に関わることではないですけれども、まず1点は若干、追加的な考慮事項という
ことになってしまうかもしれませんが、現在、民法の債権法部分の改正の動向等の関係で、民法
629条の取扱い、それから、期間の定めのある継続的な契約についての不相当な更新拒絶の制約と
いうことが提案されていまして、多分、10月ごろにはその辺りの検討が法制審議会の部会で検討
されることになります。外在的な話ですので、もし書くとしたら注くらいが相当かもしれないで
すけれども、例えば5ページの2の直前ぐらいのどこかに「現在進行中の民法(債権法)の改正
の検討動向にも留意する必要がある」など、そういう形を追加した方がいいのかなと思います。
直接の検討事項が重なるということではないかもしれませんので、そのくらいかと思います。
 以上が1点で、あとは表現ぶりの問題になっていきますけれども、13ページの「3 更新回数
や利用可能期間に係るルール」の一番下辺りだと思いますが「年齢等の属性といった多様性」と
いうところがありまして、これは労働基準法第14条でも年齢で区切ってはいるのですが、実際に
は年齢そのものというよりも定年後の再雇用といった場合の話ですので、どうしたらよいか難し
いですけれども、「定年後の再雇用の場合におけるような年齢等」というふうにした方が、年齢そ
のものを直接属性として切り分けるよりもいいのではないかという問題が起きるかもしれません。
ただ、現在の労働基準法第14条がそういう形ですので、これはお任せします。
 もう一点も表現ぶりの問題ですけれども、22ページで、先ほどの均衡待遇の部分ですが、第1
パラグラフの最後の「十分な検討が必要である」という点につきまして、その前にいろいろ書い
てありますけれども、一体、何についての十分な検討かという問題がありますので、「これらの点
について十分な検討が必要である」ということではなかろうかと思います。
 それから、同じ22ページの3段落目で「正社員との比較の在り方など」についての部分ですけ
れども、これも雇用政策研究会報告や成長戦略などとも関係するんですが、この書き方ですと、
特に最後の1行で「パートタイム労働法の枠組みを参考に」と書きますと、平成19年の改正法附
則で、施行後3年経過後、検討を行うということになっていることが出てきませんので、それも
留意する必要があるという趣旨を入れた方がいいかと思います。そこで、例えば「パートタイム
労働法の枠組みや平成19年改正法附則7条に基づく検討の動向を」とし、この場合は「参考に」
という表現もおかしいので、「検討の動向を留意しつつ、引き続き十分に検討していく必要がある」
という方が現在の状況には合致するかなと思います。
 あと、細かな文章の点もあるんですが、こちらはまた、もし時間があれば申し上げます。
○鎌田座長 ありがとうございます。
 今、表現のところで幾つか御指摘いただいたところは私もそう思いますので、よろしくお願い
します。
 あと、冒頭におっしゃった債権法との関係なんですが、確かに現在進行しているところであり
まして、もし、ほかの先生方に御異論がなければ私も、先生、場所は5ページの2の上辺りでし
たか。
○山川委員 そうですね。2の直前くらいが今後の検討の方向性みたいなことだと思います。ほ
かになかなか注を付ける部分が見当たらなかったんですが、もし、ほかにあればそれで結構です。
○鎌田座長 注でいきますか。
○山川委員 どちらでも結構です。
○鎌田座長 これは検討させていただければ、この辺はお任せいただきたいと思うんですが。
○山川委員 お任せします。
○鎌田座長 本当は、個々に債権法改正の御提案をいただいたものについて反映できるものは議
論しておければいいんですが、何分、向こうの提案の方も今後議論するということなので、やは
り少し、今、先生がおっしゃったような、留意をしつつというぐらいではなかろうかとは思うん
ですが、注にするか、本文にするかは、あと、場所も含めて、少し検討させていただきたいと思
います。
 あと、22ページの一番下のパートタイム労働法の枠組みのところも、今、先生がおっしゃった
ような趣旨で、これはそういう形で文章をお書きいただければと思います。
 あと、ほかの先生からございますでしょうか。
 どうぞ。
○阿部委員 報告書の根幹部分ではないので、いいかなとは思うところはあるんですが、6ペー
ジの一番上の行に「労働市場全体における『柔軟性』」という、その「柔軟性」というものがよく
よく考えると何を意味しているのか、よくわからないというふうに思い出しまして、確かによく、
柔軟な労働市場と言われることが最近多いわけですけれども、これは多分、北欧やオランダの、
特に北欧でしょうか。フレキシキュリティから来ているような話で、フレキシビリティとかセキ
ュリティを合わせたフレキシキュリティという言葉がありますけれども、多分、その辺りがあっ
て、柔軟な労働市場という言葉が最近出てきたのではないかと思うんですけれども、もしフレキ
シビリティという英語を日本語に訳すとすると、柔軟性ではなくて順応性とか順応的なとかとい
うふうな言葉になるのではないかと思うんですよ。
 昨日、少し気になって辞書を見ていたら、適応性の高いとか、順応性が高いとか、どうも英語
ではそういうような意味をしているようでして、柔軟なといいますと柔軟剤を思い浮かべてしま
って、これはソフトなんですよ。なので、これは一般的に日本では柔軟な労働市場と言われるよ
うにはなっていますが、それでは、その柔軟なというのは一体、何を意味しているかといいます
と、具体的にはよくわからないというところがあるので、かぎ括弧つきなので余り大事ではない
かもしれませんが、フレキシビリティから来るとすれば、むしろ順応性の高いとか、順応的なと
か、それでは、順応的なというのは一体何なのかとよくよく考えると、多分、活発な労働移動が
行われる労働市場ということになろうかと思うんですよ。実際に北欧諸国でのフレキシビリティ
というものを見ると、活発な労働移動と、労働参加のしやすい市場形成というような政策体系に
なっているように思いますので、この辺りの「柔軟性」という言葉をどういう意味で使っている
かというのは少し気になりました。
 これはこれで使われている言葉なのでいいとしたら、もう少し、この脚注にでも落としていた
だいて、意味するところは、企業側の財やサービスの需要変動等に伴う経営リスクに対応して、
労働力の雇用量の調整をどうするかという意味でお書きになっていると思いますので、そうだと
すると、内部労働市場と外部労働市場での労働力の適正な配置とか、それに伴う労働移動とかと
いうような意味で使っているということをもう少し明確にしてもいいのかなという気はしました。
 報告書全体ではないので、それはお任せいたします。
○鎌田座長 まず、阿部先生が御指摘いただいた趣旨については私も、今、おっしゃったような
趣旨で書かれているのではないかと思っていますね。
○青山調査官 はい。そのとおりだと思います。
○鎌田座長 ただ、今、おっしゃったように「柔軟性」という用語がフレキシビリティの表現と
して適切かどうかということにやや疑義を感じるということでしたね。でも、使っていますね。
そういうことなので、この学問的な違和感ということもわかりますので、注のところでその趣旨
をもう少し、先生、順応という言葉がよろしいんですか。
○阿部委員 いや、それもわかりません。フレキシブルの訳だと思うんです。
○鎌田座長 そういったような趣旨を注のところで少し落としたような形で書くと、より、この
問題意識といいますか、阿部先生の問題意識が。
○青山調査官 おっしゃったような御趣旨を「柔軟性」の意味するところを解説するような形で
検討します。
○鎌田座長 これは、順応性が高いとかというふうに訳されているケースもあるんですか。
○阿部委員 それはないです。読んだことがないと思います。
○鎌田座長 やはり、みんな「柔軟性」なんですか。
○阿部委員 「柔軟性」ということだと思います。
○鎌田座長 どうぞ。
○佐藤委員 そこのところで、そこはとても大事な論点で、ここの文脈における「柔軟性」の言
葉遣いの適否と、それから、阿部さんがおっしゃったのは「柔軟性」というのは、フレキシビリ
ティというのは、レベルとタイプで多様なのです。それで、レベルは個別企業でというものが1
つあるわけです。それは、例えば機能的柔軟性とか数量的柔軟性というふうに、金銭的を入れる
場合もあります。伸縮、伸び縮みです。それで、数量的というのは雇用調整しやすいという意味
です。
 そういう個別企業レベルで、要するに変動に対応しやすいという意味で「柔軟性」で、本文は
多分、その意味で使っていると思うんですが、文章では「労働市場全体における」という言葉が
入ってしまっているがゆえに、労働市場全体でのフレキシビリティということになると、阿部さ
んがおっしゃったように、労働市場全体での適材適所をキープするような、簡単に言うと、円滑
な労働力移動をしやすくするとかというレベルの話が入ってくるということなので、私としては、
その問題を入れ込むは少し厄介なので「労働市場全体における」を取ってしまえば、これは要す
るに企業レベルのところで流れてきていると思うんです。
 更に、企業側からは変動へのリスク対応といったことの要請があるということですね。
○鎌田座長 それでは「柔軟性」という言葉も取ってしまうわけですか。
○佐藤委員 それでしたら、別に経営リスクへの対応という意味とほとんど同義ですから、そう
いう意味で言いますと「柔軟性」はそのままでもいいわけです。ただ「労働市場全体における」
ということを入れると、それについての説明が必要になってくるということだと思います。
○鎌田座長 より波及力の大きい概念が入ってくるということになりますね。
 どうぞ。
○阿部委員 ただ、5ページの「さらに」の後に「労働市場における有期労働契約の機能に関し」
という、有期労働契約の機能に関してなんですよ。ですから、そこまで考えると、どうも外部労
働市場というものがちらちら浮かんでくるということなので、ですから、私は外部と内部、どち
らも入れて書かれているのではないかというふうには推測したんです。
 ですから、そういう意味で、脚注で落とし込んで、もう少し、この「労働市場全体における『柔
軟性』」というものが明確になった方がいいかなと思ったりします。
○佐藤委員 ですから、脚注で、その「柔軟性」のところに、今、言ったことを補足説明すると
いう処理が一番適切かもしれないですね。
○鎌田座長 そうですね。
 どうぞ。
○荒木委員 両先生の議論に、私も趣旨は賛同いたします。
 佐藤先生が言われたように、ここは2つのことを言っているんです。企業における「柔軟性」
の問題と、労働市場全体の「柔軟性」の問題を1つの文章で書いてしまっているので、阿部先生
の御指摘のような問題も出てきていると思いますから、両方書いていいのではないかと思います。
特に諸外国の経験で、有期労働契約を非常に厳しく規制した結果、市場は硬直的になって「柔軟
性」が欠如して、雇用失業問題が生じた。そういう話も後でやっていますから「柔軟性」の問題、
市場全体のマクロの問題としての「柔軟性」という視点もやはり指摘しておいた方がいいです。
 他方、企業レベルにおける数量的な「柔軟性」と機能的な「柔軟性」をどう組み合わせるかと
いう問題。その両方で「柔軟性」は非常に重要な概念であると思いますので、これはむしろ、ど
ちらかを消すのではなくて、両方をきちんと言葉を補って書いていただくというのがいいのでは
ないかと思いました。
 それで、ついでで恐縮ですが。
○鎌田座長 それでは、その点については注でということで対応したいと思いますので、よろし
くお願いします。
 どうぞ。
○荒木委員 その点について少し御議論いただければと思った点がございまして、23ページなん
ですが、下から6~7行目からありますけれども「勤務地限定」「職種限定」、そういう方の雇用
保障の在り方について「様々な意見がある」となっていて、あとは「何よりもまず」ということ
で、さまざまな意見があるけれども、それをどう考えるべきかについては特段議論がされており
ません。
 それで、これは確かにさまざまな意見があるんですが、一つの考え方としてこういう考え方も
あるのではないかぐらいのことは指摘しておいてもいいのかなという気がいたしまして、例えば
ということで次のような文章を入れてはどうかということを御議論いただければと思います。
 「様々な意見がある」の後ですが「従来の正社員の場合」、この従来の正社員というのは、いわ
ゆる本当に雇用保障の手厚い正社員のことを考えているんですが「従来の正社員の場合、雇用保
障という数量的な『柔軟性』の制限が職務内容や勤務地の変更を含む労働条件の柔軟な変更とい
う機能的な『柔軟性』によって補完されてきたこととのバランスに着目するのも一つの考え方で
あろう」。
 そういう文章を一つの考え方として示しておいて、そして、その後に「何よりもまず」という
ことで、当事者による処理の重要性を指摘する。そういう文章につなげるというふうなことぐら
いは書いておくのも一つの在り方かなと私自身は考えているところです。
○鎌田座長 先生、今、おっしゃったような文章を入れる御趣旨といいますか、どういったこと
を行うんでしょうか。
○荒木委員 趣旨は、現在の正社員の雇用保障というのは、確かに数量的な「柔軟性」は縛って
いるわけです。解雇権の濫用規制によって、解雇には厳しい規制を課しております。しかし、言
うなれば数量的な「柔軟性」の欠如を補うために、配置転換によって職務内容を変更したり、あ
るいは勤務地を変更したりという、いわゆる機能的な「柔軟性」というものを取り入れていると
いうのが現在の正社員の雇用の在り方であります。
 それで、この「勤務地限定」とか「職種限定」はあるが、しかし、有期ではなく、無期契約で
雇われている社員の雇用保障の在り方を考える場合には、この人たちについては、機能的な「柔
軟性」について制限をしているということに着目した雇用保障の在り方を考えるというのが一つ
の考え方ではないかということです。
○鎌田座長 1つは、今、先生がおっしゃったように、解雇などの数量的な「柔軟性」の制限と
いうことが従来の正社員の場合にはあって、それとの言わばバランスの中で職種変更や配置転換
というものが非常に柔軟に行われている。そういう事実をお書きになって、そのことで、この前
後の文章との中で、方向性といいますか、どういったような御趣旨をここに盛り込もうとされて
いるのかということを、すみません、もう一度お願いします。
○荒木委員 要するに、雇用の安定というものを補うために機能的な「柔軟性」を正社員の場合
は取り入れているわけですね。その機能的な「柔軟性」を縛るとすれば、数量的な「柔軟性」に
ついては、ある程度認めるというふうなことにしないとバランスが取れないということになりは
しないか。そういう考え方は1つあり得るだろうということを書いておいてはどうかということ
です。
○鎌田座長 それは逆から見ると、配置転換とか職種変更とかというようなものを限定すると、
言わば数量的な「柔軟性」についても変化が出てくるというニュアンスが入るんですか。
○荒木委員 正社員の場合でも、その両方のバランスを取ってきたわけですから、機能的な「柔
軟性」を縛った場合のバランスの取り方は当然考えなければバランスは取れないというのは一つ
の考え方ではないかということです。
○鎌田座長 わかりました。
 どうぞ。
○山川委員 私もそういう理解があり得ると思います。ただ、文章の流れは「様々な意見がある」
に続いているので、「様々な意見がある」につなげるという流れからすると、今、荒木先生がおっ
しゃっておられた、補完的な関係が成り立つという理解があり得ることに着目する必要があると
か、そんな表現ではいかがでしょうか。
○荒木委員 表現ぶりは、今御指摘いただいたものの方が、むしろいいかもしれません。
○鎌田座長 ほかの先生方は、いかがですか。
○佐藤委員 今の点は、趣旨はよくわかるのですが、入れる箇所が、荒木先生がおっしゃってい
るのは「何よりもまず」の前に入れるということで、そうしますと、そのような意見もあるとい
うことがあって、最終的に「様々な意見がある」という形の方が座りとしてもいいのかなという
ことのように思いました。
 なので、そうすると、この箇所は「何よりもまず」よりももう少し前の箇所かなと思います。
ただ、その箇所が、今、読んでいるんですが、どこがいいのかというのがあれなんですけれども、
もう少し前のところで、そのような考え方、やや包括的な考え方ですので、それを入れておいて、
そのいろんな考え方、意見があるというふうに落ち着くという構成かなと思います。ただ、その
箇所が、今、よくわからないのですが、1つは「何よりもまず」の前よりももう少し前のところ
があり得るかなということです。
○鎌田座長 先生、その前後の文章から行きますと「勤務地限定等の無期労働契約については、
勤務場所の閉鎖等の際の雇用保障の在り方について、様々な意見がある」。この後ですね。
 それで、その中で、今、先生がおっしゃったように、いわゆる通常の正社員の人たちについて
の雇用保障と、それから、一方での職種替えなどの柔軟性の話をすると、そこがメインというよ
りは、まずむしろ後ろがメインで、後ろとは何かといいますと、勤務地が限定されたような人た
ちについての雇用保障はどうなるのかというニュアンスがむしろ表から出てきますね。その次に、
今、先生のおっしゃったような御意見の趣旨というのは、その限りで雇用保障の在り方について
も見直す、あるいはより柔軟な考え方ができるというようなニュアンスは出てきませんか。少し
言っていることがわかりづらいかもしれません。
○荒木委員 より具体的に言いますと、整理解雇の4要件ないし4要素のうち、正社員の場合は、
ある工場が閉鎖された場合に、使用者が配置転換命令権を持っている場合は、ほかの事業場に配
置転換することによって雇用を維持する。そういうことが可能であるから、そういう努力をせず
に整理解雇をするとすれば解雇権濫用というふうに評価されがちであるということがあるわけで
す。
 ところが、この「勤務地限定」で勤務地の工場が閉鎖された場合には、使用者は配置転換命令
権を持っていないわけです。そうした場合には、整理解雇の4要素のうちの一つがより容易に充
足されるという方向に、恐らくなるだろうと思います。そうした場合の雇用保障の在り方という
ものは、正社員についても全体でバランスを取って考えてきたということがあります。新たに、
ここで「多様な正社員」を考える場合には、正社員の雇用保障ではセットで認めてきた機能的柔
軟性を認めないわけですから、それとのバランスということを考えざるを得ないのではないか、
そういう考え方も一つあり得るであろうという趣旨です。
○鎌田座長 趣旨はわかりました。
 ただ、やや重たい問題提起といいますか、あくまでも有期雇用の中の正社員の転換の中でいろ
いろな形態が、労使のイニシアティブの中で考えていただきましょうという文脈の中で、もし、
そういう労使でおつくりになるさまざまなパターン、正社員の多様なパターンの中に、法律論と
して整理解雇に関わるルールに対する意見を入れるというのは少し何か、この全体の研究会の中
で、今、そこまで議論もしておりませんし、やや重たいような感じが私などはするんですけれど
も、いかがでしょうか。
 どうぞ。
○佐藤委員 今の点については、例えば資料2の報告書(案)の骨子の2.の○の3つ目のとこ
ろでも「『多様な正社員』の環境整備など有期契約労働者以外の形態の労働者との関係も視野に」
ということで、かなり骨子の中で考慮事項として入ってきていますね。そのことを受けた文章が
どこかで必要になってくるかなとは思うんです。ただ、その箇所がどこであるのかの問題があっ
て、それが1つは資料3の報告書(案)の23ページの「勤務地限定」「職種限定」ということで、
今、議論されている箇所がそれに相当し得ることであることは間違いないと思うんです。
 ただ、そのときに、荒木委員がおっしゃった趣旨の文面をどこに入れるかということで言いま
すと「何よりもまず」というのは少しあれなので、私は流れから言いますと「この場合」の前の
ところの「多様な雇用モデルを労使が選択し得るようにすることも視野に入れた環境整備を検討
することが求められる。なお、この場合に、従来の正社員の場合、雇用保障という数量的『柔軟
性』を制約しつつ、労働条件の変更という機能的『柔軟性』の組み合わせを保障するという組み
合わせの中で考えられてきたこともあり、それを考慮すると、勤務地限定等の無期労働契約につ
いては、勤務場所の閉鎖等の際の雇用保障の在り方にも連動していくものである」というような
形で入れるということは可能かなと思います。
 つまり「多様な正社員」の中身についての多少の言及をどこで入れるかといいますと、必要で
ある。しかし、箇所が少し問題であるけれども、そういうことがあり得るという意見です。これ
は別に一意見ですので、どうしてもというわけではないですけれども、ただ「多様な正社員」の
ところについてはどこで言及されているのかが、私、今、つらつらと見ているんですが、そこは
これまでの研究会でも随分出てきたところですので、もし事務局の方で、資料2の2.の3つ目
の○の箇所に対応する文章がどこであるのかということを少し教えていただければと思うんです。
○青山調査官 まさに総論で言っている「多様な正社員」は、いろんなところで本来、いろいろ
論点の中には関わってくるとは思うんですけれども、明確に書いてあるのは、まさに先ほどから
御議論になっています資料3の報告書(案)の23ページの「3 正社員への転換等」に、従来の
正社員であった者を今後どうするかというときで、限定正社員などの多様な雇用モデルという形
で1つ出てきているかなと思っております。
○橋本委員 今の点に関して質問なのですが「多様な正社員」については雇用保障の程度につい
て、やはり議論が集中していると思うのですけれども、少し確認させていただきたいのですが、
前提としては、この「多様な正社員」というものは、やはり-「正社員」という言葉が使われて
いるので-正社員に準じた処遇を受けられるという、それが前提なのでしょうか。
 つまり、賃金等々の制度はどうなるのかとか、そこら辺の議論ははっきりとはされていないと
思うのですが、前提としては、やはり処遇が現在の正社員並みになるということが前提だと私は
理解していたのですが、そのような理解でよろしいのでしょうか。だからこそ、企業側にとって
はかなりハードルが高い話になってしまうので、雇用保障は従来の正社員よりは弱いということ
を認めてほしいというような議論かと理解していたのです。
 なぜ、こんなことを申し上げたかといいますと、今日も事務局から韓国の最近の動向について
詳しい資料も出していただきましたが、私自身も韓国の動向に関心を持っておりまして、2週間
前に韓国に行って最新の動向について情報を得てきました。そこで、韓国語もできませんので、
かなり限界のある情報収集ではあったのですけれども、今、韓国では何か問題になっているかと
いいますと、資料では正規職転換と継続雇用と2つに分かれていて、この継続雇用が何なのかと
いうのが、この研究会でもよくわからないというような議論があったかと思います。
 この点について、韓国では明確に区別されていまして、正規職転換は日本のような正社員転換
とほぼ同様に考えていいかと思います。試験を実施して正社員に登用するとか、または、この正
規職転換の中で多い内容としては、従来の正規職の給与等級より低い等級を新たに追加して、そ
こに有期契約労働者を一括転換するというものが実際は行われているようです。これが正規職転
換といいまして、継続雇用は何かといいますと、単に契約だけを無期労働契約にすることを意味
するそうで、労働条件はこれまでと同じというのがこの継続雇用のようです。
 もう少し細かく言いますと、継続雇用に分類されると思われるものには、日本のコース別人事
管理のようなイメージかと思いましたが、分離職群といって、新たな職群をつくって、そちらに
移行するというようなこともしているようですが、この場合にも、労働条件が改善されていない
というところが、今、韓国で大きな問題になっているようです。しかしながら、もう無期契約労
働者になってしまっているので、均等待遇原則がかかってこないので、法的な対応もできないと
いうことで、現在の議論としては、こういう合理性のない職群をつくるということ自体が脱法行
為であるという議論とか、正規職転換というものを促す法制度こそ、やはり促進すべきであると
いうような主張はあるようです。
 このような韓国の動向を知りまして、少し、この研究会では無期化した後の処遇といいますか、
そこは視野に入れるのか、入れないのかというのもあるかと思うのですが、少しあいまいなまま
に来ていたのではないかという点に気が付きました。労使自治に委ねるというのも一つの在り方
だと思いますけれども、少し問題提起させていただければと思いました。
 以上です。
○鎌田座長 何度も申し上げますが、本研究会といたしましては有期雇用の方たちの問題をメイ
ンに考えておりまして、その中で正社員転換、そして、その転換先の正社員の在り方についても
多様な在り方があり得るだろうということ。しかし、それはどのような形で転換をするのか。そ
れから、転換した先の「多様な正社員」の在り方も、労使の自主的な取組みによって、そこは考
えてほしいという、そこまでは恐らく、今までの議論の中で共通していたと思っているんです。
 問題は、今、議論になっているのは、そのように転換された労働者の、まさに正社員の雇用保
障に関わる法的ルールについて何か言うべきかどうかということだと思うんです。それで、そこ
は実はさまざまな意見があるということで、この研究会としては慎重で、かつ抑制的な態度を取
っているのではないかというふうに私としては考えておるのですけれども、荒木先生の御意見は、
もう少し、この点についてのニュアンスを入れてはどうか。
 ただ、ニュアンスといっても「多様な正社員」の雇用保障に関わるルールとして何がいいのか
というのは大問題で、ニュアンスといっても、何か方向性を示すようなニュアンスとまでは先生
はお考えではないということだと思いますので、要は従来の数量的規制と、それから、配置転換
などの機能的な「柔軟性」と先生はおっしゃいましたが、それとのバランスを考慮したような意
見もあったということですね。考慮するような意見も、さまざまな意見の中にはあるということ
ですね。
 どうぞ。
○荒木委員 座長がおっしゃったように、この研究会で議論したときも無期契約労働者の雇用保
障をどうするかというのを正面から議論するというのは少し、この研究会のスタンスとはずれる
だろうということで、有期契約に集中して議論してきたというのは座長のおっしゃるとおりであ
りますので、おまとめになったとおりであると思っております。したがいまして、私が言いまし
た趣旨は、「様々な意見がある」と書いてあるのですが、一体、どういう考え方があるのか、一つ
も示さずにまとめてよいのかということがありましたので、いろんな考え方の一例として、こう
いう考え方を示すことのもあるのでは、ということでした。
 いずれにしても、この問題は、裁判所に行った場合に解雇権濫用、この人は無期労働契約に転
換していますから、無期契約労働者の解雇の場合の解雇権濫用法理がどう適用されるかという、
裁判所が判断すべき事項であります。そこを立法でどうこうするということではありませんので、
座長がおっしゃるとおり、必須のことではありません。したがって、そこは座長にお任せして、
何か書くとしたら書くということもあるでしょうし、書かないというのも一つの処理の仕方では
ないかと了解しております。
○鎌田座長 ありがとうございます。そういったことで、この点については私に一任させていた
だくということで、最終的な文章を作成するときには考慮したいと思っております。どうも、御
指摘ありがとうございました。
 あと、ほかの先生方から何かございませんでしょうか。
 どうぞ。
○山川委員 もし時間があるようでしたら、文章の流れの点だけ述べます。
 先ほどの議論と若干関連するかもしれませんが、7ページの1行目から「多様な働き方やその
選択は、労働者の意思に反して一方的に実現されてはならないことに留意すべきである」とあり
ます。その後に「ただ」とあって、その後に政府の役割が書いてあるのですが、「ただ」というの
は、普通は一種の逆接で、前に言ったことを一部修正する接続詞だと思いますが、ここは「ただ」
ではないのではないか。
 つまり、労働者の意思に反する一方的実現はよくない。それが労使当事者の取組みに委ねるの
みでは十分できないので、政府の役割が重要であるというのは、むしろ付け加えているような感
じがするので、「また」くらいの方がいいのかなと思います。つまり、労働者の意思に反して一方
的に実現されてはならないという原則への例外といいますか、それと逆の論旨を展開する接続詞
ではないのではないかということです。
 それと若干似たような点がありまして、19ページです。第4の「2 雇止めの予告等」で、こ
れはいきなり「雇止めの理由の明示が徹底されていないとの声があるほか」と始まっていますが、
これは何の声なのかよくわからないので、アンケート調査によればということだと思います。
 その次に「このため」というのがあるのですが、アンケート調査でこのような声が多いという
ことから導かれるのは、この雇止め予告等の対象の拡大と、法律に基づくものとすることについ
てであろうと思いますが、その次に書かれているのが「実態に即した検討が必要である」という
ことです。これはむしろ留保の趣旨で、つまり、検討が必要であるということと、しかしながら、
その検討は実態に即してさまざまな有期労働契約の類型に応じて考えるべきであるということの
2つが書かれているような気がします。
 したがって、2の第2段落はそれを分けて「対象を広げることも含めて見直しの上、法律に基
づくものとすること等について検討すべきであるが」として、その際には次のように「なお有期
労働契約の実態に即した検討が必要である」というふうにしてはいかがかと思います。
 これも表現の問題ですので、お任せします。
○鎌田座長 19ページのそこのところは先生御指摘のとおりで、7ページの方ですけれども、こ
れは実は私も、この「ただ」は悩んだんです。
 まずは、少し青山さんから、この「ただ」ということの趣旨を説明してもらっていいですか。
○青山調査官 わかりました。
 この7ページのなお書きの初めの部分では「労働者の意思に反して一方的に実現されてはなら
ない」ということは、逆に言うと当然、労働者の意思を尊重してといいますか、労働者の意思に
より選択されるべきということを言っているんですけれども、後段の方は、そういう労働者も含
めた当事者の取組みにのみ委ねては十分実現できないということなので、当然、まず当事者の意
思が尊重されるべきなんですけれども、当事者の意思だけでやっているとうまくいかない場合が
あるので「政府の役割」というふうにつながっていくので、ただしみたいな趣旨でつなげたとい
うつもりでございます。
○鎌田座長 ですから、そこは追加なんですね。追加ではないんですか。
○青山調査官 そうですね。
○鎌田座長 どうぞ。
○山川委員 わかりました。
 そうすると「その場合、働き方如何にかかわらず、すべての労働者にとって、雇用の安定、公
正な待遇等が確保されるべきことを忘れてはならないが」というのがここにも入っていたのです
が、この点はどうなるでしょうか。
○青山調査官 ここは逆に、確かに逆説ではない部分かもしれません。
○山川委員 ここを「忘れてはならず」としていただければ、つまり、意思のみで決めてはいけ
ない、労働者の意思だけで左右できる問題ではないという趣旨でしたら、座長が熟慮されたとい
う趣旨がよくわかりますので、それで結構です。
○鎌田座長 そのつなぎ方ということでね。実はメインは、政府の役割というものをどのように
インプットしようかということで、少しつなげ方を苦慮したということなんです。
 どうぞ。
○青山調査官 すみません、先ほど山川先生がおっしゃられた19ページの声の部分は、少し確認
はいたしますが、アンケートか、あるいはもしかしたらヒアリングでの声を拾ったか、そこはソ
ースを確認して、正確な記述を座長と相談したいと思います。
○鎌田座長 どうぞ。
○荒木委員 それでは、少し修文にわたる点で恐縮ですが、8ページの3の(1)の「一定のル
ールを設ける際には」というところなんですけれども、その2行目で「必要に応じて裁判等によ
る」とありますが「必要に応じて」というよりも「紛争が生じた場合には」ということかなと思
いました。そうすると「紛争が生じた場合には裁判等による紛争解決規範として機能するととも
に、当事者の行為規範としても妥当するようなものとすること」となります。
 ここでいいたい趣旨は、何か立法する場合には当然、権利義務関係を定めると思われますので、
それはやはり裁判規範として機能するのが恐らく第一義でしょう。しかし、それは同時に行為規
範としても妥当するようなものである必要がある。多分、そういう趣旨ではないでしょうか。こ
のままだと行為規範が前提で、必要に応じて裁判規範として機能するという、何か少し逆ではな
いかという気がいたしました。
○鎌田座長 いや、多分、先生の趣旨だと思うんです。紛争が生じているという、先生が修文さ
れたような趣旨がむしろメインなのかな。
 これはどうですか。少しわからないんです。
○荒木委員 これもお任せしますので、御検討いただきたいと思います。あと「それでもなお紛
争が解決しない場合は」というのも少し変な気がしましたので、「それでもなお紛争の発生を完全
に抑止することは困難であるところ」、その解決は裁判のみに委ねるとすることではなく、行政も
やる。そういう感じの書き方が通りがいいかなという気がいたしました。
 あとはスウェーデンのところなんですが、12ページの下から4行目なんですけれども、これも
確認の上、確定させていただきたいんですが「なお、スウェーデンにおいても、締結事由規制を
設けていたものの、事由の拡大、複雑化がもたらされた後、制度改正が行われ」という、この事
由の拡大、複雑化の後、制度改正という、非常にニュートラルには書いてあるんですけれども、
因果関係をより示すには、事由の拡大と、それに伴い規制が複雑化し、実効性が問題となり、制
度改正が行われたというふうに書いた方が意味していることが伝わりやすいかと思いました。
 少し確認の上、ここを考えていただければと思います。
○青山調査官 わかりました。
○荒木委員 以上です。
○鎌田座長 ありがとうございます。
 今、先生がおっしゃったスウェーデンのところも、そういった趣旨で恐らく研究会でも議論さ
れたと思いますので、より明確にするという観点でよろしくお願いしたいと思います。
○青山調査官 はい。
○鎌田座長 どうぞ。
○阿部委員 20ページのところなんですが、下から5行目に「退職金や雇用保険との関係」と書
いてあるところなんですけれども、この文脈ではフランスで不安定雇用への保障ということで契
約終了時に、金銭だったと思いますけれども、手当の支払いを求めているということで、それを
日本について考えた場合にどういうことをしていったらいいかという議論だと思います。
 そのときに「我が国について考えると」という部分で「こうした雇用の不安定さへの補償」と
いう部分と、それから「無期化の促進の観点」「雇止め時における無期労働契約との公平の観点」、
3つ挙げて、それらを考えたときに退職金や雇用保険というものが出てくるんだと思うんですが、
このとき、雇用保険はいろんなものがあって、例えば「雇用の不安定さへの補償」といった場合
には「不安定さへの補償」に対応するかどうかはわかりませんが、雇用保険の中の失業手当とい
う部分があると思いますし、それから「無期化の促進の観点」から言いますと、例えば保険料の
問題とかそういった点も出てくるのではないかと思うんです。
 例えば、こういう不安定雇用をたくさん抱える事業主に対して保険料を引き上げるとか、そう
いった考え方もあると思うので「雇用保険との関係」の「雇用保険」というものが一体、何を示
しているのかといったところをもう少し書いてもいいかなというふうな気がいたします。それは
上の3点と対応関係を明らかにした上で「退職金や雇用保険との関係」を書いていただいた方が
いいかなというふうな気がしました。
 私自身は「無期化の促進の観点」というところから、雇用保険の保険料との関係とか、料率と
の関係とかを考えてもいいのではないかと思っていますので、これは個人的な意見です。
 以上です。
○鎌田座長 どうもありがとうございます。
 この点について、何かコメントはありますか。
○青山調査官 もともと中間とりまとめの前後からも言われていたことで、多分、そんなに保険
料との関係の御議論はこれまでなかったと思うんですが、契約終了直後の生活保障のために払う
という趣旨もあるのかなということで、雇用保険という公的給付における関係、雇用保険は当然、
公的保険としてやっていますが、そういうものと、こういう事業主がすべて払うというものとの
関係で、あるいは負担することも絡めて雇用保険との関係は考えなければいけない。既に雇用保
険として、我が国は失業時の生活保障の手当が公的にありますので、そういう趣旨で御議論され
たととらえていますので、今、阿部先生が言われた視点は新しいといいますか、これまで余り込
めてはいなかったかなと思った次第です。
○鎌田座長 今、阿部先生が御指摘いただいた、更に雇用保険の中身に関わることとか、そうい
うことについては、事実を申し上げれば、余り深く議論はしてこなかったと思っておりまして、
そもそも契約終了時の手当というものの必要性をどう考えるかという大問題が前提になっており
まして、それを実現しようとした場合にどういったような考慮事項があるのかという、少しその
辺のところは絞らないというような形で出てきた言葉であると思いますし、この研究会の中での
議論も、それでは、具体的にどういうものとリンクさせて考えるのかというまでは議論していな
かったような気がするんですよ。そういうようなことだったというふうに理解しています。
 ただ、阿部先生がおっしゃったように、もし、こういった手当を導入するということになれば、
雇用保険との関係を結び付けるということになると、相当、技術的にも難しい問題がたくさん出
てくるのではないかと思います。
 この点について、何かありますでしょうか。
 そういうことで申しますと、契約終了時の手当については、今、言ったような、実は実現方式
といいますか、そういうことを含めますと、より慎重な検討が必要だというふうなニュアンスな
のかもしれません。
 そういうようなことでよろしいですか。
(「はい」と声あり)
○鎌田座長 あと、先生方で何かありますでしょうか。
 それでは、今、先生方からおもだったところは御意見を伺いまして、とりまとめたいと思いま
すが、なお内容、それから、表現に関わるところについては、私に御一任いただくということで
よろしいでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○鎌田座長 ありがとうございます。
 先生方は、本当はもっと言いたいことがたくさんあるのではないかと思いますが、限られた時
間の中で今回、こういう形での期日が来ましたので、しかし、私としては、非常に専門家の先生
方のかなり重要な御指摘で、重要なものができたのではないかと思っております。
 それでは、そういったことで進めさせて、最終的な報告書をとりまとめたいと思っております。
ありがとうございます。
 この委員会につきましては昨年の2月からいろいろと議論をしてきておりますけれども、報告
書の最終的に確定する作業はまだ残っておりますが、こうした形でお集まりいただく機会は、こ
れが最後になろうかと思いますので、本日は金子労働基準局長もおいでいただいておりますので、
一言ごあいさつをお願いしたいと思います。
○金子局長 最後ということでございますので、一言、御礼のごあいさつを申し上げたいと思い
ます。
 たしか1年半前の2月、大変狭い部屋で第1回目の会合を開きまして、今後の有期労働契約の
施策の方向性について御議論いただきたいという、大変ざくっとしたお話で検討の御依頼を申し
上げたと思っております。
 その後、いろんな形で調査を実施していただいたり、ヒアリングを実施していただいたり、何
回にもわたって御議論いただいたということで、今日まとめていただいた、まだ座長に御一任さ
れた部分も残っておりますけれども、大変論点がわかりやすく整理できたのではないかと思って
おります。これはひとえに、それぞれ専門的な見地から大変御熱心に御議論いただいた成果であ
ろうと思っております。
 やはり、なかなか、この有期労働の問題は大変大きな問題で、広がりの大きいものでもござい
ます。これから労使を含めた議論につなげてまいるということになるわけでございますが、今後
もさまざまな議論が行われると思いますけれども、恐らく、この研究会の報告書がそういう議論
をする上で大変有益な、基本的な資料になるのではないかと思っております。
 この間の先生方の、特に座長の鎌田先生の御労苦に対しまして御礼を申し上げますとともに、
関係の先生方に重ねて御礼を申し上げまして、また今後、引き続き審議会での議論、その他、い
ろんな形での議論が起こってくると思いますけれども、そうした際には重ねて御指導いただきま
すよう重ねてお願い申し上げまして、御礼のごあいさつとさせていただきます。
 本当にありがとうございました。
○鎌田座長 金子局長、ありがとうございます。
 最後ということで、私からも一言申し述べたいと思いますが、この研究会は、今、金子局長も
おっしゃっていただきましたように、大変難しい問題に昨年の2月から取り組んでまいりました。
その中で、委員の皆さんの非常に熱心な御発言・御議論と、それから、ヒアリングに御協力いた
だきました多くの関係者・関係各団体の皆様の御支援、更に、これを土台、基礎で支えてくださ
った厚生労働省のスタッフの皆さんの献身的な御努力によって、ようやく、この最終段階に到達
することができました。私としても非常に感無量でありまして、改めてお礼を申し述べたいと思
っております。
 研究会はこれで一区切りとなりますが、私といたしましては、この研究会報告書が労使関係者、
それから、国民各層にとって、議論する場合の有益な素材となり、良好な雇用システムを生み出
す契機となれば誠にありがたいと感じておりますので、今後、こういったことでも、是非とも御
活用のほどをよろしくお願いしたいと思います。
 それでは、本日はありがとうございました。


(了)
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労働基準局労働条件政策課政策係

内線: 5587

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