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2010年5月21日 第4回化学物質のリスク評価検討会 有害性評価小検討会

労働基準局

○日時

平成22年5月21日(金)16:00~


○場所

経済産業省別館827号会議室


○議事

○長山室長補佐 引き続き、「有害性評価小検討会」を開催します。以下の議事進行につきましては、
大前先生にお願いします。
○大前座長 はい、わかりました。引き続き先生方、お疲れでしょうが、どうぞよろしくお願いしま
す。それでは、議事に入る前に資料の確認を事務局のほうからよろしくお願いします。
○長山室長補佐 資料としてはまず、第4回の検討会の議事次第を1枚付けておりまして、本日は、が
ん原性試験結果の評価ということで2物質、「2,4-ペンタンジオン」「2-メチル-1-プロパノール」に
ついて、こちらの議題を用意しています。裏面に「配付資料一覧」が付いていますのでご覧ください。
本日は2物質、資料1が1つ目、資料2の枝番が2つ目となっています。資料1で「2,4-ペンタンジオ
ン」のほうで資料1-1が、がん原性試験結果をまとめたものです。資料1-2と1-3は机上のみの配付で
すが、その試験の詳細な報告書を付けています。資料1-4はこちらの安全衛生情報センターのモデル
MSDSを付けています。
 資料2は2-メチル-1-プロパノールですが、同じように2-1に結果が付いていまして、資料2-2、2-3
についてはそれぞれラット、マウスの詳細な報告書を机上配付しております。資料2-4はモデルMSDS
が付いています。参考資料として、有害性評価小検討会におけるがん原性試験結果の評価についてと
いうものを裏表の1枚ものを付けています。資料は以上です。
○大前座長 皆さん、資料は揃っておりますか、よろしいですか。それでは、議事に入ります。物質
は2物質あります。それぞれ1物質ずつ区切って進行したいと思いますが、資料の順番に、最初に
2,4-ペンタンジオンについて事務局のほうから説明をよろしくお願いします。
○平川査察官 それでは、事務局のほうから説明させていただきます。まず、2,4-ペンタンジオンの
吸入ばく露によるがん原性試験結果と、引き続き「2-メチル-1-プロパノール」の議論をさせていただ
きます。先ほど、長山補佐からもお話がありましたように、国で実施するがん原性試験つきましては
いちばん最後の参考資料のフロー図にありますように、がん原性試験を実施したものについては学識
経験者による有害性試験結果の評価を行います。
 その結果、法28条第3項第2号の判断で「がんを労働者に生ずるおそれのあるもの」であることの
判断をこの場でしていただくことになります。仮におそれのある場合には指針作成並びにリスク評価
の対象物質とすることの企画検討会の提案の検討となります。おそれのない場合については指針作成
の必要なしになります。この指針作成の場合には「化学物質による労働者の健康障害防止措置に係る
検討会」の場でまた改めて健康障害防止対策の検討を行っていただく流れになっています。
 これまでの成果は裏の別紙にありますように、平成27年度において2,4-ペンタンジオンと2-メチル
-1-プロパノールというものが結果として上がってきましたので、本日、ご評価をいただきたいという
ことです。それでは、1つずつ説明をさせていただきます。
 資料1-1に、被験物質の概要を示しています。試験結果の詳細は私の説明ののち、日本バイオアッセ
イ研究センターのほうから説明させていただきます。
 まず、被験物質の名称です。2,4-ペンタンジオン、この別名はアセチルアセトンと呼ばれています。
CAS?aF123-54-6という物質です。構造式、分子量は、構造式は資料のとおりでして、分子量は100.12
です。物理化学的性状につきましては無色透明の液体で、沸点は139℃、蒸気圧は2.96mmHg、比重は
0.9721で、溶解性につきましては水、アセトン、エタノールに可溶、保管条件としては室温で暗所に
保管となっています。
 用途につきましては、触媒用の金属キレート、溶剤合成中間原料、接着剤、メッキ用、燃料添加剤
ということになっています。
 生産量、製造業者は2008年時点で推定3000t、製造業者につきましてはダイセル化学工業が知られ
ています。
 許容濃度等につきましては管理濃度なし、日本産業衛生学会での許容濃度もなし、ACGIHでもなしと
なっています。労働安全衛生法の法規制につきましては、労働安全衛生施行令別表第1の危険物という
ことで指定をされています。
 変異原性については陽性の結果を示したという報告等が紹介されているというところの、陰性だと
か報告されているものもあれば、陽性を示したというような報告もされてるといった状況です。
 それでは、バイオアッセイ研究センターの試験内容につきましてご説明をお願いします。
○西沢(バイオアッセイ) バイオアッセイの西沢です。よろしくお願いいたします。それでは、当
センターで行いました2,4-ペンタンジオンのラットとマウスの吸入によるがん原性試験の結果につい
てご説明します。
 2頁の下のほうに方法から書いてあります。試験はF344ラットとB6D2F1マウスを用いて、試験別投
与群3群と対照群1群の4群の構成で行いました。通常のがん原性試験のスタイルですので雌雄各群と
も50匹、ラット合計400匹、マウス合計400匹を用いました。被験物質の投与は、2,4-ペンタンジオ
ンを1日6時間、1週5日間の104週間、動物に吸入暴露することにより行いました。投与濃度は、ラ
ットは雌雄とも100、200、400ppm、マウスも同じで雌雄とも100、200、400ppmです。観察、検査とし
て、一般状態、体重、摂餌量、血液学的検査、血液生化学的検査、尿検査、剖検、臓器重量、病理組
織学的検査を行いました。
 3頁に結果を示しています。まず、ラットですが投与の結果、動物の生存率及び一般状態に影響は見
られませんでした。体重は、雄の200ppm以上の群で増加の抑制が見られましたが、400ppmは増加抑制
でしたが、200ppm群は投与期間の周期には対照群とほぼ同じような推移を示しました。雌では400ppm
群で体重増加の抑制が見られています。400ppm群の最終体重は対照群に対して雄は90%、雌は88%で
した。摂餌量は雄の200ppm以上の群と雌の400ppm群は低値でございました。
 後ろに図がありますのでちょっとご説明させていただきます。6頁にペンタンジオンのラットの図が
あります。6頁がペンタンジオンのラットの生存率です。上段が雄で下段が雌でして、雄のほうはご覧
のように対照群と投与群が同じような推移を示しています。雌のほうも対照群は○なのですが、○は
下から2番目ぐらいにありまして、ほぼ投与群と対照群は特に大きな変化はありません。
 7頁の図2にペンダンジオンのラットの体重の推移を示してあります。雄は上段、400ppmは◇ですが、
400ppm群で体重の増加抑制が見られています。それから、□の200ppmも途中で少し体重が対照群より
低値です。最終体重は対照群に対して400ppm群が90%、200ppm群が98、100、99と、最終体重
400ppm群だけ低値です。雌のほうも◇の400ppm群が増加抑制を起こしています。対照群に対しまして
は最終体重が88%、100ppmと200ppmは投与群と同じような推移です。
 それでは3頁に戻っていただいて、今後は腫瘍の説明をしていきます。4頁に腫瘍の発生状況を示し
てあります。表1が2,4-ペンタンジオンのがん原性試験における主な腫瘍発生、ラットの雄です。良
性腫瘍、悪性腫瘍が見られておりますが、ご覧のように検定結果で有意な増加に見られたものはあり
ませんでした。それから下の段、表2の2,4-ペンタンジオンのラットの雌の主な腫瘍の発生を示して
おります。統計的に差が見られたのはCochran-Armitage検定、Fisher検定とも減少傾向、ないしは減
少というものだけで、腫瘍の統計学的に有意な増加は見られませんでした。
 3頁の「結果」に戻らせていただきます。上から7行目ぐらいから病理の話が始まっています。病理
検査では、ご説明しましたとおり、2,4-ペンタンジオンに関連しました腫瘍の発生増加は認められま
せんでした。非腫瘍性病変としましては雌雄とも鼻腔に変化が見られまして、呼吸上皮の扁平上皮化
生、炎症、移行上皮過形成と嗅上皮の萎縮等が見られています。これらの病変は何れも軽度でした。
これらの鼻腔の結果から、本試験における2,4-ペンタンジオンのラットに対する2年間吸入暴露によ
るNOAELは鼻腔への影響をエンドポイントといたしまして100ppmであると考えました。以上がラット
の概略です。
 次にマウスの試験結果を続けてご説明します。マウスも動物の生存率、一般状態にペンタンジオン
の影響は見られませんでした。体重は雄の400ppm群は投与期間の中盤まで増加の抑制が見られました
が、それ以後は回復しまして対照群と同様な体重推移を示しました。雌では2,4-ペンタンジオンの影
響と思われる体重の変化は見られませんでした。最終体重は400ppmの雄は対照群に対して97%、雌は
101%でした。摂餌量は雄の400ppm群が投与期間の30週以降、やや低値で推移しました。
 マウスのほうも図がありますのでご説明します。8頁の図3にペンタンジオンのマウスの生存率を示
してあります。上段の雄はControl○というのがいちばん下で、Controlの最終の生存率は60%です。
投与群のほうが生存率が高いということで低下は見られていません。それから、下段の雌ですが、雌
のほうのControl○は上から2番目にありまして、最終生存率は62%です。いちばん上に◇400ppmが
ありまして、最終生存率がControlより高い68%で、投与に対応した生存率の変化は起きていません。
 9頁にペンタンジオンのマウスの体重の推移を示しています。400ppmの◇は投与期間の中盤辺り、少
し対照群より低くて、ここでわずかな体重増加の抑制が見られたのですが、72週~76週ぐらいから対
照群の体重が少しづつ下がってきまして、以降は400ppmも他の投与群も対照群と同様な推移を示した
ということです。それから、下の段の雌ですが、下のライン2つが対照群と400ppmのものでして、ほ
ぼ同様な推移を示しています。中間投与群がかえって上の2つで高い値で約1割ぐらい高い値で推移し
た状況です。
 5頁の表3にペンタンジオンのマウスの主な腫瘍の発生を示しています。上段、雄ですが、統計学的
に有意な変化が見られたのは肝臓の肝細胞腺腫、200ppm群で、Fisher検定で有意な増加となっていま
す。しかし、投与濃度と対応した変化ではありませんでしたので、被験物質の影響とは考えませんで
した。なお、当センターの背景データでは、肝細胞腺腫1試験当りの最大発生数は19匹ですので、
200ppmの18匹は当センターの背景データの範囲内です。
 それから、いちばん下の悪性腫瘍の全臓器でPeto検定で増加傾向を示しましたが、これはaのマー
クが付いており、下に説明が記載してありますが、Peto検定の有病率法のみで有意となりました。し
かし、ご覧のように全動物の組織球性肉腫の発生例数はControlから3、2、2、4匹ということで、実
質的な増加はありませんので、組織球性肉腫の発生に増加はあったとは考えませんでした。結果的に、
ペンタンジオンのマウスで腫瘍の発生増加は雄のほうは見られないと結論しました。
 表4にマウスの雌の主な腫瘍の発生増加を示しています。マウスの雌では統計学的に有意な増加傾向、
ないしは増加は見られませんでした。
 それでは、3頁に戻りまして、マウスが真ん中ぐらいから始まっておりまして、さらにその下、5行
目ぐらいから病理の話が始まっています。雌雄とも2,4-ペンタンジオンに関連した腫瘍の発生増加は
認められませんでした。非腫瘍性病変としましては、雌雄ともやはり鼻腔に影響が見られました。鼻
腔には雌雄とも滲出液の貯留が見られまして、呼吸上皮、嗅上皮、粘膜下の腺に病変の増加が見られ
ています。呼吸上皮には、扁平上皮化生、エオジン好生変化、潰瘍、壊死、移行上皮過形成が見られ
まして、嗅上皮には萎縮、呼吸上皮化生、エオジン好生変化、さらに壊死等も見られています。粘膜
下の腺には呼吸上皮化生の増加が見られています。この雌雄の鼻腔の滲出液の貯留と嗅上皮の萎縮は
ともに最低濃度の100ppm群まで見られました。これらの結果より、マウスの2年間の吸入暴露による
最小毒性量は鼻腔の影響をエンドポイントとして、100ppmと考えました。以上がマウスの結果の概略
です。
 それで、最終的には「まとめ」となりますが、以上のように、がん原性試験としましてはラット、
マウスとも雌雄とも腫瘍の発生増加は認められませんで、ラットとマウスに関するがん原性の証拠は
認められませんでした。以上です。
○大前座長 ありがとうございました。先ほど事務局からも説明がありましたが、この参考の資料の
ところにこの委員会がやるべき仕事の中身が書いてありまして、そのフロー図のところに法第28条第
3項第2号の判断、「がんを労働者に生ずるおそれのあるもの」であることの判断というのがこの委員
会で判断で、おそれがあるということになったらそれぞれ右側もしくは下側に進むようにします。そ
れはなしということになれば、それで終わるということなので、いちばん最初に皆さんにご意見を伺
いたいのは、いまの報告をいただいて、この2,4-ペンタンジオンのヒトに対する発ガン性を考えなく
てはいけないかどうか、まずご意見を伺いたいと思います。いかがでしょうか。
○西川委員 ご報告どおりでいいと思います。高い用量で体重へのわずかな影響もありますので暴露
量は十分だと思いますし、その結果、がん原性がないという結論でいいのではないでしょうか。
○大前座長 そのほか、いかがですか。これは鼻腔の変化は特にそれから先、扁平上皮等々は腫瘍に
移行するようなレベルじゃないわけですよね。そうですね。
○西沢(バイオアッセイ) 軽度ですね。
○大前座長 そうしましたら、この物質に関しまして、いまいただいた報告から判断すると、特にヒ
トにがん原性を考えることはないと判断してもよいというようなことでよろしいですか。
○西沢(バイオアッセイ) はい。
○大前座長 では、この物質、ありがとうございました。それでは、2物質目の2-メチル-1-プロパノ
ールについてのご説明をよろしくお願いします。
○平川査察官 それでは、引き続きまして、2-メチル-1-プロパノールの、今度は経口ばく露によるが
ん原性試験の結果です。このがん原性試験の結果については、飲水ばく露による試験結果ということ
になっています。また、調査については日本バイオアッセイ研究センターからご説明を賜りたいと思
います。
 まず、被験物質については2-メチル-1-プロパノール、別名イソブタノールという形で言われている
ものです。CAS ??78-83-1でして、構造式はそこに書いてあるとおりでして、分子量は74.12というこ
とです。
 物理化学的性状については、無色透明の液体で、比重は0.806、融点は-108℃、沸点は107.9℃です。
水に8.7%溶解し、アルコール、エーテルに可溶ということです。保管は室温暗所ということです。
 用途は、有機合成溶剤、ペイント除去剤、メタクリル酸イソブチルの原料ということです。生産量、
製造業者、輸入業者については、生産量は合成ブタノール全体で435,659t、製造業者については三菱
化学、協和発酵ケミカル、チッソが言われています。輸入業者については、BASFジャパン,オクセア
ジャパンというところが言われています。
 許容濃度については、管理濃度が50ppm、日本産業衛生学会で50ppm、150mg/m3ということです。
ACGIHについてはTWAで50ppm、IARCでは「なし」ということです。労働安全衛生法上の法規制につい
ては、労働安全衛生法施行令別表第1の危険物のうち、引火性の物、労働安全衛生法施行令第18条の
名称等を表示すべき危険物及び有害物で、また、同第18条の2の名称等を通知すべき危険物及び有害
物、施行令別表第6の2で言われている第2種有機溶剤に指定されているということです。
 変異原性については、こちらで把握する限りにおいては陰性の報告があるという状況です。それで
は、がん原性試験の結果について、日本バイオアッセイ研究センターのほうからご説明をお願いした
いと思います。
○加納(バイオアッセイ) バイオアッセイ研究センターの加納です。よろしくお願いします。2-メ
チル-1-プロパノールの試験の結果について説明させていただきます。試験方法としましては、先ほど
の吸入の説明と同様に、F344ラット、およびB6D2F1マウスを用い、被験物質投与群3群、および対照
群1群の計4群構成で、雌雄各群とも50匹、合計ラット400匹、マウス400匹を使用しました。投与
については、2-メチル-1-プロパノールを混合した飲水を104週間、すなわち2年間にわたって動物に
自由摂取させることにより、連続投与しました。投与濃度は、ラットは雌雄とも3300、10000、および
30000ppm。このppmの単位は、重量比w/wをppmとして表示しています。マウスについては、雄では
5000、10000、および20000ppm、雌では2500、5000、10000ppmで実施しました。観察、検査項目とし
ては、一般状態の観察、体重、摂餌量、摂水量の測定、血液学的検査、血液生化学的検査、尿検査、
剖検観察、臓器重量測定および病理組織学的検査を行いました。
 結果については、まずラットの結果から説明します。ラットの試験の結果、2-メチル-1-プロパノー
ル投与による生存率の低下は雌雄とも認められませんでした。一般状態の観察において、尿による外
陰部周囲の汚染が雌の30000ppmでやや多く見られました。体重については、雌雄の30000ppmで増加抑
制が認められ、104週目の最終体重は、対照群に対して雄で93%、雌では89%でした。摂餌量、摂水
量は、雌雄とも10000ppm、30000ppmでほぼ全投与期間を通して低値が認められました。
 各投与群における全投与期間を通しての平均被験物質摂取量、単位はmg/kg体重/日ですが、雄では
3300ppmで181、10000で513、30000で1421mg/kg体重/日でした。雌では3300ppmで297、10000ppm
で676、30000ppmで1783mg/kg体重/日ということでした。摂取量については、飲水中の被験物質濃度
が増加するに従って、設定濃度比、ラットについては公比3をとっていますが、この値よりもやや低い
伸びでした。これは、高用量群において摂水量がやや減少していることから、それに起因したものと
考えられます。生存率と体重については後ろのほうに図が添付されていますので、ご覧ください。
 7頁に、ラットの生存率のグラフがあります。先ほどと同様に、上段が雄、下段が雌です。雄につい
ては、△印の30000ppm群が死亡時期および生存率がやや低いように見えますが、統計結果では有意差
は見られていません。最終生存率については、対照群の○印が80%、3300の△印が70%、10000ppmの
□印が78%、30000ppmの◇が80%でした。雌についても、○印の対照群がいちばん生存率が低く、こ
れについても対照群と比較して投与群での生存率の有意差は付いていません。雌の最終生存率が、対
照群が70%に対して、3300が78%、10000が88%、30000が78%でした。
 8頁に体重の推移が示してあります。雄の30000ppm群で全投与期間を通して体重の低値が認められ
ています。最終計測日の体重は、対照群に対して3300が100%、10000が99%、30000が93%という
ことで、最高用量の30000ppm群のみ有意な低値が認められています。雌についても同様に、30000ppm
で投与12週目以降、体重の低値が認められています。最終計測日の体重で、対照群に対して、3300ppm
が100%、10000ppm群が96%、30000ppm群が89%と、30000ppm群でのみ有意な低値が見られています。
 次に、腫瘍の説明です。5頁に、主な腫瘍の発生状況が示してあります。まず上段の雄ですが、雄の
悪性腫瘍の腹膜の中皮腫の発生が、対照群1匹に対して、3300ppm群が0、10000ppm群が2匹、
30000ppm群が4匹と、経口検定のPeto検定およびCochran-Armitage検定で増加傾向を示しています。
しかしながら、30000ppm群の発生は、Fisher検定では有意な増加は認められていません。また、その
発生率も、各投与群の発生率も日本バイオアッセイ研究センターの背景データの範囲内ということで、
背景データの範囲は0から最高で8%、匹数でいうと4匹で、今回の30000ppm群の最高発生率と同数
値となります。したがって、腹膜中皮腫の発生は被験物質の投与の影響ではないと判断しました。
 そのほかに、雄では下垂体の腺腫がFisher検定でのみ有意差が認められていますが、減少性の変化
ということと、投与用量に対応した変化ではありませんでした。
 下段の雌のほうについては、ご覧のとおり、雌については腫瘍の発生増加が見られたものは、いず
れの検定結果でも見られていません。
 3頁に戻っていただきます。したがいまして、雌雄とも投与群に腫瘍の発生増加および腫瘍に関連し
た病変の発生は認められませんでした。そのほか、腫瘍以外の影響として、雌では腎臓の実重量と体
重比の高値が10000ppm以上、尿検査において、尿潜血の陽性例の増加、および腎臓の乳頭壊死、ある
いは乳頭の鉱質沈着の発生増加が30000ppm群で認められました。また、30000ppm群では、統計学的に
有意ではありませんでしたが、腎盂、尿路上皮の過形成の発生が見られています。雄については、腎
臓重量で体重比のみの高値が30000ppm群で見られましたが、雌で見られたような病理組織学的変化、
あるいは尿潜血の陽性例の増加等は認められていません。
 したがいまして、以上の結果より、2-メチル-1-プロパノールのラットに対する2年間混水経口投与
による無毒性量(NOAEL)は、雄では体重増加の抑制および腎臓への影響をエンドポイントとして
10000ppm、用量としては513mg/kg体重/日に相当します。雌については、腎臓への影響をエンドポイ
ントとして3300ppm、用量としては297mg/kg体重/日に相当します。
 引き続きまして、マウスの結果について説明させていただきます。マウスでは、生存率の低下は雌
雄とも認められませんでした。一般状態の観察でも、投与と関連があると考えられる所見は、すべて
の投与群で認められていません。体重については、雌の10000ppm群で投与期間の終期に低下傾向が見
られ、104週目の最終体重において対照群に対して88%でした。また、摂餌量が雄の20000ppm群でほ
ぼ全投与期間、雄の10000ppm群でも多くの週で低値が認められています。また、雌の10000および週
5000ppm群でも摂餌量の低値が散見しています。摂水量については、雄の全投与群および雌の5000ppm
以上の群でほぼ全投与期間を通して低値が認められ、雌の2500ppm群でも投与期間中の多くの週で低値
が見られました。これらの摂水量から算出した平均被験物質摂取量は、雄では5000ppm群487、
10000ppm群939、20000ppm群は1796mg/kg体重/日に相当します。雌については2500ppm群で340、
5000ppm群で664、10000ppm群で1299mg/kg体重/日に相当します。各投与群の平均被験物質摂取量の
比率は、雌雄とも公比2ですが、飲水中の被験物質濃度比とほぼ同じ値を示しています。
 生存率と体重については図が添付されていますので、9頁をご覧ください。9頁に雌雄の生存率が示
してあります。雄雌ともに、グラフ上では若干差があるようにも見えますが、検定結果では、対照群
と比較して生存率に差は見られていません。最終生存率は、雄では対照群70%、5000ppm群66%、
10000ppm群72%、20000ppm群が82%でした。雌についても、対照群が58%に対して、2500ppm群が
52%、5000ppm群が62%、10000ppm群は40%でした。
 10頁に体重の推移が示してあります。雄については、すべての投与群で対照群とほぼ同様の推移を
示していまして、有意差は認められていません。最終計測日の体重が、対照群に対して、5000ppm群は
105%、10000ppm群が104%、20000ppm群が103%でした。雌については、10000ppm群で投与終期に、
グラフではちょっと見にくいですが、体重の低下傾向が見られ、最終体重には有意な低値が認められ
ています。最終計測日の体重が、対照群に対して、2500ppm群が94%、5000ppm群が96%、10000ppm
群は88%でした。
 腫瘍の発生状況について、6頁をご覧ください。上段の雄については、いずれの検定結果でも腫瘍の
発生増加は認められていません。下段の雌についても、いずれの腫瘍の発生増加も認められていませ
ん。
 3頁に戻ります。したがいまして、雌雄とも投与群の腫瘍の発生増加および腫瘍に関連した病変の発
生増加は認められませんでした。また、雌の10000ppm群における体重の低値以外は、いずれの検査項
目でも毒性変化と考えられるような影響が認められていません。したがいまして、2-メチル-1-プロパ
ノールのマウスに対する2年間混水経口投与による無毒性量(NOAEL)は、雄では最高用量の20000ppm、
用量としては1796mg/kg体重/日に相当します。雌については、体重への影響のエンドポイントとして
5000ppm、用量としては664mg/kg体重/日であると考えられました。
 最後に、まとめとしまして、ラットでは雌雄とも腫瘍の発生増加は認められず、ラットに対するが
ん原性はないと結論しました。また、マウスについても、雌雄とも腫瘍の発生増加は認められず、マ
ウスに対するがん原性はないと結論しました。以上です。
○大前座長 ありがとうございました。いかがでしょうか。ラットの投与濃度を3300から30000に振
っていますが、もっと投与濃度を上げると中皮腫は増えますかね。この中皮腫だけは一応ヒストリカ
ルコントロールの範囲ですが。
○加納(バイオアッセイ) 中皮腫が増えるかどうかわかりませんが、体重増加の抑制とか、その辺
を考慮しますと、あと、飲水量が若干下がっていますので、これ以上濃度を上げて試験を実施するこ
とは適切ではないと判断して、30000ppmを最高用量として設定しました。また、摂取量についても、
ラットの摂取量は、雄で1400mg/kg、雌では1783mg/kg、わりと高用量で十分な用量を摂取した試験だ
と考えています。
○大前座長 マウスで鼻腔に見られた所見というのは、飲水のところから誘発したもので出ているの
ですかね。あるいは、吸収されたあと。
○加納(バイオアッセイ) 鼻腔ですか。
○大前座長 鼻腔の、腫瘍性ではなくて。
○加納(バイオアッセイ) 非腫瘍性。
○大前座長 ニューロシスもないので、投与濃度ではあまり大した変化ではないということですが。
○加納(バイオアッセイ) 呼吸上皮の変化については、程度が減弱ということと、エオジン好性変
化の発生の減少ということだと。
○大前座長 減少濃度ですか、これは。
○加納(バイオアッセイ) はい。
○大前座長 失礼しました。そうですね。そのほか、いかがでしょうか。何かご質問、ご意見は。
○宮川委員 用量の設定なのですが、雄と雌で変えるということは結構よくあるのですか。
○加納(バイオアッセイ) 経口試験ではわりとありますし、公比を変えることもありますので、雄
雌で3濃度、3濃度が全く別の濃度になることも多々あります。
○宮川委員 1点だけ。マウスのほうは最高用量がNOAELだったのですよね。
○加納(バイオアッセイ) マウスの雄については、一応影響がなかったということで、そのように
判断しました。
○宮川委員 NOAELと判断するのは結構だと思いますが、最高用量で全く何もないというのも、その上
はどうだったのかという用量設定についての意見が出る場合もあるかなと思いましたので。
○加納(バイオアッセイ) 混餌試験においては最高で5%というのがガイドラインで決まっています
が、強制経口投与あるいは飲水では、がん原性試験におけるガイドラインの最高濃度の設定は特にな
いと思います。しかしながら、今回の設定において、90日試験のガイドラインでは、低毒性の物質の
限界試験の用量が1000mg/kgでいいということがありまして、がん原性試験に設定の定めはないのです
が、それを著しく超えるような用量でがん原性試験を実施することは合理的ではないと考えました。
試験の結果においても、先ほどラットでは1400と1700mg/kg程度の摂取量がありましたが、マウスに
ついても、雄では約1800mg/kg、雌は1300mg/kgとあり、十分な量を摂取させたと考えています。また、
ラット同様に摂水量が若干減少しますので、これ以上濃度を上げると恒常性の維持等に影響が出るの
ではないかという判断で濃度を設定しました。
○大前座長 何かありますか。よろしいですか。それでは、この物質に関しても、特に労働者に対す
るがん原性はないだろうという判断でよろしいですか。どうもありがとうございました。それでは、2
物質、審理が終わりました。あとは、今後の予定について事務局からよろしくお願いします。
○長山室長補佐 今後の予定ですが、特に資料は用意しておらず、単独の有害性評価小検討会として
は特に予定がありません。6月11日に合同の検討会がありますので、よろしくお願いします。
○大前座長 どうもありがとうございました。これで今日の小検討会を終わらせていただきます。


(了)

厚生労働省労働基準局安全衛生部
化学物質対策課化学物質評価室 長山
〒100-8916 東京都千代田区霞が関1-2-2
   TEL 03-5253-1111(内線5518)
   FAX 03-3502-1598

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