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2014年3月5日 化学物質のリスク評価結果と健康障害防止措置の導入に関する意見交換会 議事録

労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室

○日時

2014年3月5日(水) 13:30~


○場所

一般財団法人 大阪科学技術センター 4階 401号室


○議事

 

司会者(鈴木) 定刻より1分ほど早いのですが、これからスタートにさせていただきたいと思います。ただ今より平成25年度第3回化学物質リスク評価に関わるリスクコミュニケーションを開催致します。私は本日司会を務めさせていただきます、テクノヒルの鈴木でございます。今日はよろしくお願い致します。
3月末の決算期、またお足元の悪い中今日はご参集いただきまして大変ありがとうございます。まず開始に先立ちまして、お手元の資料の確認をさせてください。受付のほうで配布させていただいた資料でございますが、まず今日のレジュメ、この資料に二つの講演の内容が入っております。

  それから次にピンクのアンケート用紙、これはこれからご説明をさせていただきますが、基調講演が終わった後に書いていただく内容になりますのでよろしくお願い致します。それからブルーのアンケート用紙、これは終わられた)後書いていただきますので、後ろのほうに置いておいてください。それからカードが青と赤1枚ずつ、これは後でコーディネーターの堀口先生のほうからご説明させていただくときに、皆さんからちょっとご意見を聞いたりするときに必要になりますので、掲げられるようにしていただければありがたいと思います。

  それから最後にチラシです、発がんの恐れのある有機溶剤を取り扱う際には作業記録を作成、保存しましょうということで、厚生労働省の各都道府県、労働局から出ているチラシがお手元に行ってると思います。不足されている方はいらっしゃいませんか。

  このリスクコミュニケーションにつきましては、労働者の健康障害を防止するために厚生労働省が行っております。化学物質のリスク評価にあたりまして関係の事業者の方、あるいは事業者の団体、それから協会の方、皆さまと情報共有して意見交換をするためにこれを実施しております。厚生労働省から受託し、テクノヒルが事務局をやらせていただいています。

  まず今日のスケジュールについてご説明させていただきたいと思います。まずリスク評価の結果、平成25年の7月の取りまとめについてということで、検討会委員の、独立行政法人労働安全衛生総合研究所の研究企画調整部の首席研究員であられます宮川宗之先生に約40分ご講演いただきます。大体終わりを215分頃を予定しております。

  次に化学物質のリスク評価を踏まえた健康障害防止措置の導入について、DDVP、発がんのおそれのある有機溶剤というタイトルで、厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質評価室の室長の角田伸二さまにご講演いただきます。こちらが終わりますと約20分間の休憩いただきまして、その間に先ほどお話しさせていただいたピンクのアンケートに感想、疑問、またご質問についてお書きいただき、会場におります事務局のほうにお渡しいただければと思います。これはできましたら一言でも結構なので記載していただければと思っております。先週東京でも開催させていただいたのですが、大変しっかりしたご意見を皆さまからいただきまして、それについて各厚生労働省の担当官、先生方のほうからご返答させていただいております。内容についてはそれぞれ皆さんのお立ち位置がございますので、お名前は当然伏せますのでそれについてご意見いただき、事実関係をお答えさせていただければと思います。

  意見交換におきましては基調講演いただきました先生に加えて、長崎大学の広報戦略本部準教授の堀口先生にコーディネーターをお願いします。また厚生労働省の担当官に入っていただきまして疑問にお答えいただきたいと思います。講演の途中でメモ書きで書いていただいて、後で消していただいても結構なので、お気付きのところございましたらピンクのアンケートへ書いていただければと思います。

  それから今日の後半の意見交換を含めて議事録を作成致します為録音しておりますがあらためてご了承いただければと思います。議事録につきましてはお名前、ご所属、その辺については全て伏せさせていただきますので、あくまで会場内ということでご理解いただければと思っております。その後マイクで質問を個別に受けさせていただきたいと思っております。本日は4時半で一応閉会させていただきたいと思います。特に有機溶剤について、昨年の7月の内容についてはいろんなご意見があると思いますので、積極的にご意見いただければと思います。

  それでは宮川先生、よろしくお願い致します。

 

基調講演

「リスク評価の結果について」

 

宮川 独立行政法人労働安全衛生総合研究所の宮川と申します。よろしくお願い致します。それでは本日は最初にリスク評価の結果、昨年7月に取りまとめられたものについてお話をさせていただきます。

  私の名前が付いたスライドになっておりますけれども、これは国のほうでまとめていただいたものでございます。始めに私の話の概要でございます。始めに職場における化学物質の安全性確保全般についての原則のお話をさせていただきます。その次に国の事業でありますリスク評価制度について、まずリスク評価の推進体制、それからリスク評価対象物質・案件の選定手順、評価のスキーム、さらにリスクの判定基準、方法についてお話を致します。で、その後で3番としまして昨年のリスク評価結果、具体的に三つの物質を取り上げますけれども、長い名前ですがDDVP、ジクロルボスですね、それから酸化チタンのナノ粒子です。それからリフラクトリーセラミックファイバーについて、一番上が詳細リスク評価、あとの二つの初期リスク評価の結果となっております。最後に今後の予定についてお話を致します。

(スライド3

では始めに安全確保の原則の話をさせていただきたいと思います。すでに皆さまご存じと思いますけれども、職場・労働現場で取り扱われる化学物質はたくさんございます。約6万とも7万ともいわれておりまして、毎年1200物質を超える新規届け出があるということで、数が次々と増えているということです。化学物質は非常に役に立つものでありますけれども、使い方を誤ると場合によっては健康障害の原因となります。業務上疾病発生状況、休業4日以上についてまとめたものがこのグラフでございます。平成元年から平成24年まで休業4日以上の発生件数ですが、これをどう見るかですが、この辺は300超えております。平成の10年代になってから200を切るようになって、最近、平成18年が国のリスク評価事業が始まった年だと思いますけれども、それが功を奏したかどうかは別としまして、私には少し減少傾向にあるのかなと見えますが、いずれにしましても年間200件以上の災害が生じているという状況でございます。実際の事例としては事故的なばく露による急性の影響のものは多いようでございますけれども、そういうものを防ぐリスク評価をきちんとする、化学物質の管理をきちんとすることによって、さらにそれ以上の潜在的なリスクを回避することもできるのではないかと思います。

 

(スライド4

  労働安全衛生関係法令における化学物質関係の規制等の体系を示した図でございます。化学物質はいっぱいありますけれども、少数の物質は厳しい規則で縛られております。製造禁止あるいは製造許可等です。この中には石綿等が入ります。過去においてがんの原因になった物質等はこういうところで対応されているということでございます。その下にありますのが約100物質ぐらいですか。特別規則に基づく取り扱い等管理が法令で決まっている物質というのがありまして、この物質についてはいろいろ取り扱い方法、あるいは職場の労働者の健康管理について細かな規定がされていて、その下で取り扱ってくださいということになっております。

  その次にありますのが、ここからここまでで640物質。これが、SDS、セーフティデータシート、安全性データシートという、これは実際にどういう有害性があるか、危険性があるかというのを記した文書ですけれども、これを譲渡提供のときには交付しなければいけない義務があるという物質が640あります。その中から、厳しい具体的な規制があるものの残りが、約500超の物質だと思いますけれども、これについてはセーフティデータシートに基づいて自主的に取扱業者に管理をしてくださいということになっております。

  残りのものについては、この努力義務というのが日本の化学品の特有のものだと思いますけれども、できればSDSを交付するように努めましょうということに、努めなければならないということになっているのでありまして、それに基づいて危険有害性を調査する、リスクアセスメントをするという努力をするよう規定されているというものが、これは一般の物質でございます。で、新しい届け出がありましたものについては変異原性の試験をする、それが強いという場合には発がん性の試験をするということで、データによってはだんだん上のほうに上がってくるものもあるということになります。不幸にして事故等が起こったために、こちらだったものがこういう所に入ってくるというものもあるかもしれません。

 

(スライド5

  化学物質の対策の方向性というスライドでございます。過去にはハザードベースで特定の有害性がある、発がん性がある、それでは厳しい規制をしましょうということになっていまして、この平成18年以降スタートしたリスク評価事業はリスクベースの規制でございます。これはリスクに基づいて規制をしましょうというもので、皆さん、すでによくご存じだと思いますけれども、ハザードとリスクはどう違うのかといいますと、ハザードというのは個別物質に固有のその物質が持っている毒性、あるいは爆発とか引火性とかいう危険性、そのような性質です。リスクというのは、その特定のハザードを持っている物質に一定のばく露をすることによって、実際に健康障害が生じるかどうか、健康面に限ったお話をしますけど、健康障害が生じる可能性がどの程度あるか、ほとんどないのか、かなり高いのか、そういう確率をリスクといいます。従ってリスクアセスメントというのは、ばく露状況を調べ、ハザード、こういうような毒性を調べ、両者を比較することによってこの取り扱い状況で健康障害が起こる可能性があるか、あるいはまあ大丈夫だろうと見てよいのか、というのを調べるのがリスクアセスメントでございます。で、リスクアセスメントは事業者が自ら自分の職場でやる場合もありますし、国全体としてある化学物質がどういうふうに国内で使われていて、その毒性がどの程度あって、国内で健康障害が発生する可能性があるのかないのかという、国がやるというレベルのものもあります。本日のお話は国が実施しているリスク評価事業のお話でありまして、重篤な健康障害の恐れのある物質について国が自らリスク評価を行うということで、リスク評価の高い場合にはそれなりに対応するというシステムでございます。

 

(スライド6

  このリスク評価制度ですけれども、リスクを評価するためには有害性を一方では調べる必要があります。この物質は大量に摂取したり吸入したりするとどういう健康障害が起こるのか、それはどの程度それを吸い込むと、あるいは摂取するとそういう障害が起きるかというのを調べる。有害性の評価ということが必要になります。

  それからもう一つ、じゃあ実際にどういうふうに取り扱われていて、個々の労働者はどういうような状況でばく露しているのか、ほとんどばく露がないのか、あるいは結構ばく露があるのかを調べないとリスク評価はできません。そこでこのリスクの評価システムとしては、どうしても有害性の評価をしてどこの程度までであれば健康障害が生じないであろうという評価のレベルを設定する必要があります。一方実態としてのばく露の状況を調べないとリスクはあるかどうかは分かりません。従ってばく露を調べるということで、これは報告を求めるということもしておりますし、その中から国自らが実際の現場へ出向いて行って、ばく露状況を調査するということもしております。その両者を突き合わせて現場でリスクがあるかどうかというのを判断することになります。このようなリスク評価を実施するに際しては、初めにリスク評価の対象の物質を選定しなければいけません。この物質に選定されると、選定された物質の取り扱い事業場はばく露状況等の報告をする必要があります。で、透明性を高めるためにパブリックコメントを募集して、どういう物質について調べたらいいのでしょうかっていうことを広く国民から求めておりますし、また企画検討会というのが設定されておりまして、そこで取扱量だとか、あるいは有害性、あるいは評価の原則を議論して、対象を選定をしているところであります。

  さらに実際に対象物質が選定され、リスク評価を行って、ある程度のリスクがあるかもしれないということになったときには、健康障害予防対策のための決定ということで、こちらも別の検討会がございまして、そちらでやっているということでございます。

 

(スライド7

  少しずつその中身についてお話をしたいと思います。まずリスク評価の推進体制、平成21年以降の話ですけれども、企画検討会では評価方針、それから対象物質の選定、さらにこのリスクコミュニケーション、結果がこうでしたよというのを広く周知して、ご意見を伺うというのも、この検討会の下で行っているということです。それからリスク評価検討会の中には先ほど言いましたように有害性を調べるのと、ばく露を調べるのと両方が必要ですので、二つの小検討会の中で、こちらでは文献レビュー等により有害性評価値を策定し、評価値を決定する。こちらのほうではばく露報告に基づき、さらに現場に調べに行って、実際のばく露状況がこうでしたということを検討し、両者を突き合わせて評価をするということになっております。

 

(スライド8

  例年ですが、6月にパブリックコメントがあり、対象物質の候補が募集され、7月頃基本的な考え方の下に対象物質が選定されます。それが示されまして、翌年1年間報告対象期間となり、それが終わると取り扱い状況が分かります。実際のリスク評価をするためにはこの頃に有害性の評価をしておいて、文献レビューですね、その次にばく露を実際に調べに行き、突き合わせて初めてリスク評価ができるということになります。

 

(スライド9

  次にばく露評価のスキームです。これはガイドラインができておりまして文書化されております。度々細かい所は改正されておりますけれども、現在の状況についてまとめたのがこのスライドです。このスライドがリスク評価のキーポイントになると思います。まず2段階のリスク評価方式をとっています。初期リスク評価と詳細リスク評価です。この違いは追って説明致します。まず実際にリスク評価を始めると、有害性評価ということで文献レビューをし、1次評価値と2次評価値というのを調べて見ます。簡単に言いますと、2次評価値というのは許容濃度です。日本産業衛生学会が設定している許容濃度、あるいは米国ACGIHが設定している許容濃度、それからドイツのMAKが設定している値、あるいは場合によっては米国NIOSHが設定している値というものを使います。基本は産衛の許容濃度、あるいはACGIHTLVになります。

1次評価値というのはもう少し安全マージンを見込んで計算したものです。文献レビューをします。そうすると特定の有害性があることが分かります。がんの場合に関しては10のマイナス4乗、1万分の1の過剰発がんレベルを基準にして計算をします。これは遺伝毒性があって閾値がないと考えるものについて、しかもそれを計算するために必要なユニットリスクという値がしっかりと報告されている場合にそれを使って、10のマイナス4乗の発がんレベルを基準として求めたのが1次評価値です。

  それから、1次評価値としては、生殖毒性とか、一般毒性、あるいは神経毒性のようなものがありますが、そのような毒性に関しては、動物実験等のデータを基に、その場合には動物と人間の種差を考慮して10倍とか、作用の重篤性を考慮して10倍とか、一定の安全係数を掛けていって、動物実験で影響が見られるか見られないかギリギリのレベルからかなり低い所、10分の1100分の1という所を取って設定したのが1次評価値です。従ってこちらのほうが通常時、2次評価値よりも相当低い値になっております。

  で、1次評価値と2次評価値というのを設定致します。一方ばく露のほうを現場に測りに行って推定をするわけです。ばく露を測りに行ったときの平均値を取るのではなくて、何人か個人のばく露状況を調べたらその中の最大のもの、あるいは統計的な処理をして95%カバーできるように、上から5%の推定値、そういうものを求めます。その上から5%の推定値と個人ばく露の最大値の両方を比較して、大きいほうを取ってきてばく露の評価値として、その値と有害性評価値、1次評価値と2次評価値、を比べるということです。

  実際のばく露がどうだったか。青い所、1次評価値よりも下であればリスクは低いと考えられます。ある物質について測ってみたら幾つかの現場では労働者は1次評価値をオーバーしてばく露している。しかし2次評価値は超えていない、いわゆる許容濃度のレベルまでは行っていない。この場合には現時点ではリスクは高くはないと判断されます。さらにある物質については何人かの労働者が許容濃度、2次評価値、をオーバーするような結果になった。この場合にはある程度リスクがあるかもしれないということで、このときに直ちに規制ということではなくて、その次に詳細リスク評価という確認に移ることになります。1次評価値と2次評価値、初期リスク評価と詳細リスク評価、混同しやすいのでこの辺の言葉を区別して覚えていただければと思います。

  詳細リスクの評価の場合には基本的には2次評価値を使って評価を致します。もう一度レビューをし直して、新しい情報があるかないかということを確認致します。さらにばく露の実態を少し追跡して確認をし、実際にどうかというところを調べていきます。やはり2次評価値は超えてないと、もう大丈夫だ、ということであれば、自主的な対応策を指導するということで対応してもらっていますし、やはり許容濃度をオーバーして、2次評価値をオーバーしてばく露する労働者がいるという場合には、当該事業場には指導監督ということが行われているようですし、またその特定の事業場だけじゃない一般化できるような問題がある、工程に共通した問題なのだ、ということであれば、リスクを低減するための個別具体的な施策、場合によっては先ほどの三角形のピラミッドで言うと特別規則と同じような形で対応するということになるというのが、このリスクの評価のスキームです。いずれにせよ現場でのばく露と、それから文献レビューで求めた評価値とを比べて、しかも安全側のマージンを見込んだ1次評価値と、許容濃度レベルの2次評価値を使って評価するということで、最初の初期リスク評価で問題があったときにはさらに詳細に検討した上で最終的な判断をするという比較的慎重なことを行ってるということでございます。

 

(スライド10

  リスクの判定ですけれども、基本はやはり許容濃度・リスク評価値と、それからばく露の実態を比べるというところにあります。すでに説明しましたけれども、1次評価値、2次評価値と、これは許容ばく露濃度と書いてありますけど、1次評価値、2次評価値と、それから個人ばく露濃度、これは8時間加重平均して、8時間の平均値に変換したものを比較するわけです。先ほども少し申しましたけれども、ばく露のほうについては母集団の最大の値を推定するということで、個人ばく露でもって最も高かった人と、それから上側5%値、いずれか高いほうを取ってきてばく露の最大値として、そのばく露の最大値と1次評価値、あるいは2次評価値を比較して判断をするということが行われています。従ってここでのポイントは、ばく露のほうは、そのばく露集団の平均値を持ってきて評価値と比較するのではなくて、高めの値を取ってきて比べる、すなわち実際の比べる値としては、ほとんどの労働者がそれ以下に入るという所と、こちらを比べるということになります。

 

(スライド11

  リスク評価結果についてはこれからお話をしたいと思いますけど、今のような手順で実際にここにあるような物質が評価されまして、例えばN,N-ジメチルアセトアミドとか、フェニルヒドラジンとかDEHPというのはリスクは高くないということで評価は終了。二酸化チタンのナノ粒子、それからナフタレン、リフラクトリーセラミックファイバーについては詳細評価に移行ということで、来年度に移行するということですね。それから詳細リスク評価をすでにやったDDVP、これについては結果としてリスクが高く、措置を要すということになっておりますし、三酸化アンチモンと金属インジウムについては継続検討、さらに胆管がんの問題で注目されました1,2-ジクロロプロパンについては、急にここに入ってきまして対策が必要ということになっております。

  私の話ではこの二酸化チタンとリフラクトリーセラミックファイバーとジクロルボスについて個別の結果についてご紹介を致します。

 

(スライド12

  まずDDVPの結果であります。こちらは初期リスク評価が終わって、ある程度懸念があるということで詳細評価に移って出てきた結果です。もうすでにご存じだと思いますけれども、家庭用の殺虫剤とか文化財用燻蒸剤等、殺虫剤として使われているので、その作用は、人であれば神経毒性に関係する、コリンエステラーゼ阻害作用です。

  リスク評価の結果の概要ですけれども、まず2次評価値、許容濃度ですけども、0.01ppm0.1mg/m3 という値が2次評価値になっております。で、ばく露の結果がどうだったかというと、リスク評価における個人ばく露測定は19人の方にお願いをしてあり、個人ばく露測定の最大値、または先ほど言いましたように区間推定上側限界値の大きいほうを取るということで、この場合は推定値の上側限界値が大きいほうで1.022mg/m3 だということで、従ってこの値とこれを比べる、0.1mg/m3 と比べるということになりますと、こちらのほうが高かった。すなわち基準になるやつよりも相当高いばく露があったために何らかの防止策が必要ということになります。DDVPを含有する製剤の成形加工または包装の業務について、作業工程に共通した問題であり、当該作業工程について健康障害防止の措置の検討が必要ということで、この障害防止措置検討会のほうに議論が移ったということです。

 

( スライド1314)

  この辺はDDVPの有害性評価書からの抜き書きであります。この辺は特に後で見ていただければと思いますけれども、発がん性は2B、人に対して発がんの可能性がある。あとは急性毒性等がありますけれども、一番中心になるのはこの次です、ここですね、コリンエステラーゼ活性が阻害される。これは神経伝達物質ですね。経皮および経口ばく露により神経毒性が見られることもあるということで、コリンエステラーゼ阻害作用による神経毒性がこの物質の最も重要なエンドポイントということになります。

 

(スライド15

そもそもこのTLV、許容濃度ですけども、ACGIH0.01ppmというのはそのコリンエステラーゼ阻害作用による神経毒性を中心に作られたものということでございます。実際に、この物質について、この有害性評価委員会で検討した結果では、1次評価値はなしということです。まず発がん性の閾値の判断ができないため、1次評価値はなしと書いてあります。2次評価値は先ほども言いました米国のACGIH0.01ppm0.1 mg/m3 です。これはここに書いてありませんけども神経毒性の発現を防ぐという観点から作られたものです。ちなみに有害性評価委員会のほうで1次評価値を計算したときは、多分これの5分の1ぐらいの値が文献レビューで出てきた神経毒性の値から求めたのですけれども、1次評価値と2次評価値に10倍程度の差がないときには1次評価値を設定する必要はないということでこれを利用してます。

 

(スライド16

ばく露の状況のほうですけれども、作業報告の提出状況から分かるのは13事業場から39作業の報告があり、述べ223人についてデータがあるということで、局排設置率100%ですが、マスクの使用率は74%。実際に22年から24年度にかけて調査に入った結果であります。これは5事業場、個人ばく露19人、4単位作業場、19地点でもって調査をしたということです。調査対象事業場における用途ですけれども、他の製剤等の製造を目的とした原料としての利用ということで、DDVPを他の原料と混合溶融し、成形加工することによって、板状の蒸散型殺虫剤を作るというような工程等がありましたということです。主な作業ですけれども、原材料の混合、混練、それから板状にロール成形、計量、包装等という作業をしている人たちが対象になっておるものです。

 

(スライド17

  ばく露調査の結果、個人ばく露の最大値が0.627 mg/m3 、全データの区間推定上限値、これは計算値が1.022、先ほどから言っておりますけれども、こちらの大きいのでこれを基準に比較するということになりました。

 

(スライド18

2次評価値がこれです。0.1 mg/m3 。対象者を並べていくと、この辺のほうはみんなこの2次評価値をオーバーしている。高いばく露が見られた作業は、DDVPを含有する製剤の成形加工、または包装の業務ということで、2次評価値すなわち米国ACGIHの許容濃度を超えている所がこれだけあったということです。

 

(スライド19

  結論です。評価結果です。リスクの判定および今後の対応ですけども、これに対しましてはリスクの高い作業としてDDVPを含有する製剤の成形加工、または包装の業務を確認したということで、このばく露レベルは2次評価値0.1 mg/m3 を越えるものであり、またその要因を解析したところ、成形加工、または包装の業務については作業工程に共通する問題ということが分かったということで、健康障害防止措置の導入が必要というのが結論になります。

  こちらには、皮膚刺激性とか経皮ばく露による有機リン中毒だとか神経毒性というのが書いてありますけれども、基本的には2次評価値は神経毒性を基準に作られたものだと思いますので、やはりこれを対象に健康障害防止措置の検討が必要ということだと思いますし、経皮吸収等も考慮する必要があるというのが、この物質についての結論でございます。

 

(スライド2021

  その次に二酸化チタンの話をしたいと思います。二酸化チタンのナノ粒子の、これは初期リスク評価結果です。二酸化チタンについてはナノサイズではないものについてすでに評価結果が出ておりまして、その後二酸化チタンのナノのサイズのものに限ってさらにやり直したということで、ナノのものに関しては初期リスク評価の段階であります。

 

  で、用途は書いてありますけれども、アナタースとルチルで違うと思いますが、化粧品、塗料、光触媒等に使われているものです。結論から言いますと、リスク評価結果の概要です。有害性評価結果として、2次評価値が0.15 mg/m3 8時間平均値という値が出てきたということです。ナノの二酸化チタンについてはしばらく前に産総研の研究グループから確か0.6ぐらいの、この4倍ぐらい高い値が出ておりますが、あれは10年暫定というような形だったと思います。要するに生涯ばく露を仮定しないで、45年労働者がばく露するという形ではなく、検討していると思います。こちらのほうは一定の基準に従って出てきた数値から計算したものでございますが、NIOSHの勧告している値に近いものかなと思います。

  それから実はこの作業をやっているときにはまだなかったので書いてないのですけど、日本産業衛生学会のほうからナノサイズの二酸化チタンの粒子についても昨年許容濃度の提案があり、現在暫定としています。今年の5月以降になると確定する可能性があります。その値が多分これの倍ぐらいの差だったと思います。

  ばく露結果のほうですが、リスク評価における個人ばく露測定25人で、個人ばく露測定の最大値または区間推定上側限界値の大きい方、この場合は後者の方、こちらですね、推定値が2.887mg/m3 ということで、これと比べれば相当大きい値となりました。従ってばく露最大値が2次評価値を上回っているということで、製造工程での充填、梱包作業を行う事業場に対して当該作業工程に共通した問題があるか、より詳細に分析し、さらにリスク評価をするために詳細リスク評価に移行というのが現状です。

 

(スライド22

  こちらはナノサイズの二酸化チタンの発がん性です。IARC2B、人に対して発がんの可能性があると一応なっております。あとは、実際の問題としては二酸化チタンの有害性評価の文書です。問題は発がんの試験で、吸入できちんとしたものがないというのが一番の問題です。動物でもって癌ができるという実験報告があったのですけれども、複数の濃度を設定し、きちっと2年間ばく露するという実験ではなく、当初何カ月間かこの濃度で、そこから濃度を変更してどうのこうのというものでがんの評価には十分使えるものがないというのが一つの問題です。

  一方、吸入でドースを複数ふったものについては、呼吸器系、肺への一般的な影響は認められるということです。今回のこの2次評価値は、呼吸器に対する一般的な毒性、動物実験の結果から、種差だとかばく露期間等考慮して計算をした1次評価値というのがもとまったのですが、ただその元のデータがGLP対応のきちんとしたものとまでは言えないという状況であったため、1次評価値としては設定困難ということだったと記憶しております。ちょっと後のほうを見ていくと出てくると思いますけれど、その場合でも2次評価値は何とか作らなくちゃいけないというので、事実上その値が2次評価値としたというのが0.15という値だったと思います。

 

(スライド23

ACGIHの許容濃度は、一般のチタンとしてものすごく高い10 mg/m3 というのがあります。これはナノに関しては使えないということです。1次評価値はなしですね。毒性量を設定できる長期発がん性データがないためと書いてありますけれども、きちんとしたデータがないということです。1次評価値はなしです。

2次評価値についてはラット等の3カ月、90日ばく露ですね、13週間吸入ばく露試験によるNOAELです。毒性量を人のばく露濃度に換算する、種差だとかを考慮して安全マージンを取って計算した値を2次評価値としたということで、これは動物の呼吸器に対する影響から持ってきた値です。

 

(スライド2425

  一方ばく露状況ですけれども、920事業場から4123作業の報告が得られ、述べ57637人ということです。この中から実際に調べに行った所が9事業場で、個人ばく露測定は25人です。梱包とか充填、投入等の作業で、結果がどうだったかと申しますと、個人ばく露の最大値が1.644、それから区間推定による上側5%値が2.887ということで、従ってこちらのほうが代表値になります。それを先ほどの値と比べると、当然のことでありますけれども2次評価値0.15と比べて、この値ですね、0.15と比べれば相当高い値です。

 

(スライド26

2次評価値がここに書いてあります。いろんな作業ごとに、ちょっと字が小さくて恐縮ですけれども、相当の種類の工程作業が2次評価値を上回っているという状況がございます。恐らく産衛学会の現在の暫定値での許容濃度も、多くの所が上回っていると思いますし、NEDOの値を上回っている所も、つまり産総研の値を上回っている所もあるということで、これについては相当程度ばく露を受けている人が居ることは確かだということです。

 

(スライド27

従って二酸化チタンについての結論ですけれども、二酸化チタンのナノ粒子についてはさらに検証、さらなるリスク評価が必要ということで詳細リスク評価に移ります。で、作業工程等を分析し、検討が必要ということになります。

 

(スライド28

  最後にリフラクトリーセラミックファイバーについての初期リスク評価の結果をお知らせします。用途ですけれども、これは各種の耐火、耐熱材料として、ファイバー状のものとして使われているということで、有害性評価結果は2次評価値が0.2f/cm3 です。元は、これは根拠はACGIHでしたかね。それでばく露評価のほうは40人について測定をし、何回も言っておりますけれども、個人ばく露の最大値または上限5%の推定値の、この場合には個人ばく露の最大値のほうが大きい値になりまして、1.841f/cm3 です。従ってこの値と、これを比べて、ばく露のほうが2次評価値を上回っているということから、この秤量、投入、研磨、切断、梱包、巻き取り等の作業に共通した問題があるかどうか、さらに詳細に分析するということになっております。

 

( スライド29)

  この物質についてはライニング材、こういう防火、耐火の用途として使われているものということでございます。人造繊維ですね。

 

(スライド30

発がん性はやはり同じ2Bです。実際の毒性としては、呼吸器に対して刺激性とか、こういう症状が出るようですけれども、大きな問題は反復ばく露のときに肺に対して影響が出るか、さらにそれが肺がんに結び付くかということです。ACGIHTLV0.2f/cm3 ですね。これは吸入性繊維としてこの値が出ております。

 

(スライド31

その評価の根拠ですけれども、ACGIHのものはヒトのほうではどうも相当長いこと使われているけれどもがんは起きるというような明確な証拠はない、ただ動物実験をやると発がん性が見られると、どうも閾値があるタイプの作用ではないかというようなことで、この程度であれば大丈夫であろうというのがACGIHの根拠だったと思います。われわれのリスク評価事業の中では1次評価値はありません。動物実験より導き出したこの基準値というのが2次評価値を超えてしまったため、許容濃度のほうを取るということで1次評価値はありません。2次評価値はACGIHのこの0.2f/cm3 です。

 

(スライド32

実際には398事業場から850作業の報告があり、述べ826人の作業者が居るということで、これ局排設置率54%、あまり高くないですね。全体換気のほうが16%。一番問題はこれが半分程度というところ。8事業場で40人についてリスク評価事業の中で国のほうで調べに行った結果があります。調査対象事業における用途ですけれども、耐熱接着材料の製造、超高温用無機繊維断熱材の製造、対象物質を材料とした他製品の製造等ということで、秤量、投入、研磨、切断、梱包、巻き取りというような作業です。

 

(スライド33

  結果ですけれども、個人ばく露の最大値が1.84、繰り返しになりますが、上側の5%推定値が1.7ということでTLV2次評価値を超えております。

 

(スライド34

ここに示しましたのがACGIHTLVから取ってきた2次評価値で0.2f/cm3 ですね。多くの作業でそこをはるかに上回っているのが見られたということでございます。

 

(スライド35

  結論としまして個人ばく露測定の最大値は対象物を含有している製品を製造している事業場における切断作業で最大値が1.84ということでございます。ばく露が2次評価値を上回っているということで、詳細なリスク評価が必要で、この物質についても詳細リスク評価のほうに移るということです。

 

(スライド36

  最後に個別の物質を終えまして、今後の予定について簡単に触れたいと思います。平成25年度のリスク評価ですが、詳細リスク評価としてはナフタレン、酸化チタン、リフラクトリーセラミックファイバーをやったということです。それ以外に初期リスク評価もやっております。26年夏ごろをめどに、これらの物質について評価書がまとめられるという予定になっております。

(スライド37

今後のリスク評価でございますけれども、過去には発がん性を中心にIARCでもって評価の上のほうにあるものを中心にやってきました。その後、生殖毒性とか神経毒性とか、その他の呼吸器感作性等一般の毒性も追加して評価をする、24年度についてはナノマテリアルについても入れたということでございます。

 

 

  今後の話ですけれども、257月、去年の企画検討会で選定されたものということだと思いますが、発がんについては引き続き実施する、特に有機則の対象物質のうち、発がん性の恐れのあるものについては、今まで有機則対象物質はすでにある程度の規制を受けている、特別規則による管理を受けている、ということで除外していたのだと思いますけれども、もし間違いでしたら後で行政の方に訂正してもらいたいと思いますが、これからはそういうものについても発がんの恐れのあるものについては特に気を付けて見ておこうということで、リスク評価の対象にしようということで、こういう物質が挙がっております。

  まず発がんの恐れがあるものということで、1,1,2,2-テトラクロルエタンが挙がっており、それ以外にここにありますような物質についても企画検討会で取り上げられたということです。その他、国が実施した発がん性試験の結果において発がん性が示唆される物質ということで、これは国が自ら動物実験をやった結果でもってポジティブのものについてはリスク評価をするということで、ジフェニルアミンの名前が挙がっております。さらに生殖毒性または神経毒性でGHS区分が1のもの、これは危険有害性に関する分類の国際基準ですが、JISにも取り入れられているGHSですね。それで生殖毒性の区分の1というもの。また神経毒性という区分指定はないのですが、GHSでは神経毒性は標的臓器毒性の一つとして取り扱われており、従って標的臓器毒性として神経毒性が問題となり区分1になっているものというものを対象にしようということで、ここにあるような物質が検討対象に挙がっているということでございます。以上でございます。

 

司会者(鈴木) 宮川先生、どうもありがとうございました。宮川先生におかれましてはリスク評価の委員会の主要な委員としてご多忙中のところ大変お時間とご尽力いただいています。ありがとうございます。先ほど配りましたピンクのアンケートなんですが、先週の東京でもそうなんですがプレゼンテーションの資料に関するご質問が結構ございまして、たとえば今、先生のほうからリスク評価のいろんな考え方、5ページの評価スキームなんかの所で先ほど大変お時間いただいたんですが、ここが例えば会社に帰って説明できないよということであれば、5の下と書いていただいて、このプレゼンテーションのスライドの所でこういうことが分からないとか、そういう形で書いていただければ幸いです。各プレゼンテーションのスライドが読みにくいので、このページ数の上下で書いていただければということでございます。赤い紙を出していただいて、まず先生は専門の立場からいろいろなお話をさせていただきました。三つの例えば具体的な今年度の評価、リスク評価しました、DDVP、それから酸化チタンのナノ粒子、それからリフラクトリーセラミックファイバー、この3品についてご説明させていただきましたが、 専門のほうのご質問を先生のほうに後でいただきたいと思いますので、赤い紙のほうを、ひとつ、くどくなりますがよろしくお願いします。

  続きまして行政の立場からお話をいただきたいと思っております。厚生労働省安全衛生部化学物質評価室の室長の角田伸二さまより、今、宮川先生からお話のございましたDDVPおよび発がんの恐れのある有機溶剤についてお話をいただきます。よろしくお願い致します。

 

基調講演

「化学物質のリスク評価を踏まえた健康障害防止措置の導入について」

 

角田 ただ今ご紹介いただきました厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課の化学物質評価室の角田と申します。どうぞよろしくお願い致します。先ほど宮川先生からリスク評価検討会の結果ということでお話がありましたが、私からその結果を踏まえまして、健康障害防止のための規制措置についての報告が今般取りまとめられましたので、その中身についてご説明したいと思います。物質はDDVPと発がんの恐れのある有機溶剤でございます。これらの検討の結果につきましては、実際にこれからこの報告を受けまして、具体的な規制の中身となる条文等を詰めていくということでございます。その過程におきましていろいろとご参考にさせていただくために、こうして皆さまにご説明を致しましてご意見を聞くというリスクコミュニケーションの場を設けておりますので、そういう趣旨で開催させていただいているというところでございます。

  それからもう1点補足しますと、先ほど司会から議事録につきましては、具体的なお名前は出さないで整理するというふうに申し上げましたが、厚労省のホームページにその議事録を掲載するという予定でございますので、そのときはAさんとか、仮名で掲載をする予定で考えておりますので、ご承知おきいただければと思います。

 

(スライド40)  それではこの資料でございますけれども、これは先ほどもご説明がありましたとおり、今年度リスク評価を行ったものでございます。初期リスク評価、詳細リスク評価、それからリスク評価ということでございますが、ここにありますとおり右下の所に赤字で書いてありますジメチル-2,2-ジクロロビニルホスフェイト、DDVP、それからその下にあるその他検討という所で、発がんの恐れのある有機溶剤10物質というふうに書いてあります。先ほどの宮川先生の資料にこの緑の所がなかったのですけれども、この緑の部分については通常のスキーム、つまり有害性の調査をし、それからばく露実態調査をして、その二つでもって評価するっていうのとはちょっと別のスキームで検討したものということで、先ほどのものにはちょっと入れておりませんでしたが、この緑の部分も今回検討しまして、健康障害防止措置の検討をしたというところでございます。

  それから一番右にあります1,2-ジクロロプロパンにつきましては、これは健康障害防止措置を検討するということになりましたが、皆さまご承知の方もいらっしゃると思いますが、昨年の101日に政省令改正による規制が導入をされているところでございます。

 

(スライド41

  まず昨年の724日のリスク評価報告書の概要ということで、先ほどのご説明にもありましたとおり、このような形で評価結果が取りまとめられております。DDVPにつきましてはDDVPを含有する製剤の成形加工、または包装の業務について適切なばく露防止措置を講じられない状況では健康障害のリスクが高いということで、その健康障害防止措置の検討が必要という結論でございます。

  それから有機溶剤10物質でございますが、有機溶剤中毒予防規則によって一連のばく露低減措置が義務付けられておりますけれども、職業がんの原因となる可能性があることを踏まえて、これらの物質の製造または使用して行う有機溶剤業務を対象として記録の保存期間の延長等の措置を講ずる必要があるという取りまとめでございます。

 

(スライド42

  ジメチル-2,2-ジクロロビニルホスフェイト、DDVPの説明ですが、主な有害性につきましては先ほどお話もございましたが、発がん性その他でございます。それから用途としましては殺虫剤等で使われているというところで、これまでの経緯としましては、平成1241日にSDSが導入されたときにSDSの交付対象物質ということになっておりますが、それ以外に特に規制はないという状況でございます。

 

(スライド43

  先ほどのリスク評価結果を受けまして健康障害防止措置に関わる検討会で検討してまいったわけですが、この報告書が129日に公表されたところです。その要旨ですが、特定化学物質障害予防規則、特化則のアクリルアミド、これは特定第2類物質というカテゴリーでございますが、これと同様に作業環境測定の実施や、発散抑制措置等を講じることが必要、それからもう一つは発がんの可能性があることを勘案し、特化則の特別管理物質と同様の措置を講じることが必要ということです。特別管理物質といいますのは、作業の記録と30年間の保存、作業場への掲示等が必要になってくるというものですが、がん等の遅発性の健康障害を生ずる恐れのある物質を規定しまして、このような措置を義務付けているというのが特別管理物質です。それと同様の措置を講じることが必要であるという結論でした。

 

(スライド44

  具体的には措置検討会で検討シートという細かい表を整理をしまして、どういったことが必要かということで取りまとめるわけですが、このように措置内容としまして規制化の要否ということを順次検討をしてまいったところです。このような検討シートにつきましては厚労省のホームページにも掲載されてございます。右のほうに書いてあります上の二つは先程申し上げた部分、それから一番下に経皮吸収の神経毒性が指摘されていること、皮膚感作性があることから取扱時これらの有害性にも留意することが必要ということで、今後特別規則等による規制、一番下ですね、関係法令の改正を行うということで予定しております。右のほうにありますとおり平成268月頃公布、10月頃施行ということで予定をしているというところです。

 

(スライド45

  今、特定第2類物質ということで申し上げたんですが、特定化学物質はこのような形で大きく分類されてございます。第1類、第2類、第3類というような形になっておりまして、第1類はPCB等の製造許可物質です。で、第2類がその次のカテゴリーでございまして、第2類はさらに四つのカテゴリーに分かれております。特定第2類、管理第2類、オーラミン、エチルベンゼン等という形になっております。特定第2類は一番上に書いてありますが、DDVPはここと同様の措置が必要という結論になりましたので、この中に入れるというような方向での検討になろうかと思いますが、発がん等慢性障害の他、急性中毒を防止する措置が必要なものを特定第2類ということでくくっているところです。それから、一番下に特別管理物質というのがございますが、これも先ほどありましたとおりこのDDVPはこの部分にも位置付けるということが必要だという結論です。特別管理物質はその第1類、第2類、第3類といった区分とは切り口がちょっと違う分類なんですけど、先ほど申し上げましたとおり、遅発性の健康障害に対応するという形で位置付けられているものです。

 

(スライド46

  これはただ今の分類に物質名等の例示を入れて再整理したものです。青い部分がちょっと見づらいかもしれないんですが、特別管理物質という形のくくりでございまして、それから赤い部分で書いてあります所が大量漏洩の防止が必要になってくる防止措置を講ずることになっているグループでございます。あと右のほうには対応する規制措置の概要を示しているところでございますのでご参考にしていただければと思います。

 

(スライド47

  それから発がん性のある有機溶剤のほうの検討でございます。発がんの恐れのある有機溶剤とは何かということですが、有機則で規制対象となっている有機溶剤のうち、国際がん研究機関IARCにおいて発がん性の評価が12Aまたは2Bに区分されている以下の10物質ということです。有機溶剤の名称を使っていますけれど、ジクロルメタンは、ジクロロメタンと同じでございます。ジクロルメタンについては、1,2-ジクロロプロパンのように職業性胆管がんの原因物質である蓋然性が高いとされた労災請求事例が出ているということでございます。

 

(スライド48

これがその10物質の一覧です。一番左の1種、2種というのは有機溶剤の第1種、第2種の区分です。隣がIARCの発がん性区分です。それから以下ずっとその規制が導入された時期をまとめているところでございます。表示対象というのが真ん中辺にありますが、容器が包装に名称や人体に及ぶ作用等を表示するというルールのことでございます。それから測定は作業環境測定の関係、それからSDS対象。あとがん指針というのがありますけども、これは安衛法に基づいてがんを労働者に生ずる恐れがあるものについて大臣が指針を公表しているというものでございまして、法律なり特化則による規制ではございませんが、この指針に基づいて必要な措置をお願いしているという性格のものですが、10のうち六つについては、すでにがん指針に基づく管理をお願いしているというものでございます。

 

(スライド49

次が検討経過ということで、昨年から129日の報告書の公表までどのように検討してきてきたかという流れをまとめております。この背景としましては、先ほど来申し上げております、印刷業務従事者に胆管がんの事案が発生したことが背景にございます。このためすでに有機溶剤予防規則で規制されている物質であっても、発がんの恐れがあるものについては職業がん予防の観点から対応していく必要があるという考えで検討してまいったというところでございます。最初は有害性の評価小検討会で検討致しまして、IARCの発がん性評価で2B以上、これが発がんの恐れがあるということの検討結果です。次にリスク評価検討会で職業がんの原因となる可能性があることを踏まえて、これらの物質を製造または使用して行う有機溶剤業務を対象として記録の保存期間の延長等の措置を講ずる必要があるという結論が出て、報告書が公表されました。それから、その後化学物質の健康障害防止措置検討会で918日まで措置内容の検討を致しまして、先ほど申し上げましたような検討結果が、右にありますが、出たというところでございます。その報告書をまとめまして、厚労省の安全衛生部長名で通知を関係団体宛てに発出をしているところです。今後の日程につきましては先ほどのDDVPと同じですが、8月頃公布で10月頃施行ということで進めてまいる予定でます。

 

(スライド50

  具体的にどのような方向で措置を講ずるかということで、措置検討会の検討結果です。発がんの恐れがある当該有機溶剤については発がん性という有害性を勘案し、特化則へ移すともに以下の措置が必要となる特化則の特別管理物質と同様の措置を講ずることが必要であるということで、措置内容としましては作業記録の作成、記録の30年間の保存、これは健康診断結果でありますとか測定結果、それから測定の評価結果、それから作業記録、こういったものが該当致します。それから名称なり人体に及ぼす作用、取り扱い上の注意事項、使用保護具、これを掲示をするというところでございます。それから四つ目は、事業廃止時に記録を労働基準監督署長に報告をするという規定でございます。測定とか作業とか診断の記録でございます。

それから5番目は有害性に応じた含有率、すそ切り値の見直しということで、これが5%から1%というふうに書かれておりますが、現在有機溶剤の混合物につきましては、すそ切り値が5%で、5%超の含有のものについて有機溶剤含有物と定義しまして、有機溶剤あるいは有機溶剤含有物を有機溶剤等というふうに規定して、それに規制を導入するという仕組みでございますけれども、これが発がん性に着目しまして特化則に移すということになりますと、その特化則の規定で混合物のすそ切り値は1%という形になりまして、それについて特化則の規定を適用していくという形になりますので、そういった形で今検討している中身をこの5番にまとめているところです。

 

(スライド5155

発がんの恐れのある有機溶剤ということで、以下の10物質をまとめておりますが、時間の関係もありますので、恐縮ですが後ほどまたご確認いただければというふうに思います。スライド1~5まで、MIBKまで10種類まとめております。

 

(スライド56

それから先ほど発がんの恐れのある有機溶剤で、報告書の公表に合わせて通知を発出したというふうに申し上げましたが、具体的にはちょっと細かくて恐縮ですが、このような通知でございます。関係団体宛てにお送りしておりますのですでにご覧になっていらっしゃる方もいるかもしれませんが、中身としましては二つ○がありますが、一つは健康障害防止措置検討の結果として、丸数字1作業記録の作成、丸数字2記録の30年間保存、丸数字3名称、人体に及ぼす作用、取り扱い上の留意事項、使用保護具の掲示等の措置を行うことが必要とされたということですので、このため今後予定する改正を待たずに速やかに同措置を講ずることにより、職業がん予防の取り組みの促進を図ることを周知してくださいというお願いを発したというところです。それから、先ほどがん指針の対象物質が六つあるというふうに申し上げましたが、それにつきましては別途がん指針に基づく措置を求めているので、その周知を図ったというのが二つ目の○の所です。このような通知を出しているところでございます。

 

(スライド57

それから、今申し上げましたような中身につきましては、本日も資料に添付しておりますけれども、発がんの恐れのある有機溶剤を取り扱う際には作業記録を作成、保存しましょうというリーフレットを作りまして、厚労省のホームページでも掲載をしているところでございます。その下の部分、これも同じくリーフレットの表現を掲載したものでございます。それからあとは参考になりますけれども、有機溶剤の分類と措置内容ということでご参考にしていただければと思います。

 

(スライド6062

それから職業性の胆管がんに係る対応ということで、これは243月の労災請求に端を発しまして、これまで取り組んできた中身等を整理しております。一番下から四つ目の所に1,2-ジクロロプロパンを発がん物質として特化則で規制というのがございます。それから一番下から二つ目の所にある、ジクロロメタンについて、有機溶剤記録の保存期間の延長と発がん物質としての対応を準備中、というのが、先ほど来ご説明しております有機溶剤10物質のことでございます。胆管がんについての資料もご参考にしていただければと思います。あとこれは1,2-ジクロロプロパンの規制措置等の概要ということで、12月にリスクコミュニケーションをやりましたときにご説明した資料からサマリーをまとめたものでございます。

(スライド63

あと、最後になりますが、ホームページの掲載ということで今日の資料に載せていない、より細かい資料等はこういった所でご覧になっていただければ、報告書、先ほどのリーフレット、あるいはすでに法制的な措置が行われましたジクロロプロパンの規制の中身をご覧になることができますので、ご参考にしていただければと思います。一連の検討会についても出した資料や議事録等をご覧になれますので、ご参考にしていただければと思います。以上でございます。駆け足で恐縮でしたが、ご質問等また後ほどお願いしたいと思います。ご清聴ありがとうございました。

 

司会者(鈴木) 角田室長、どうもありがとうございました。これにて第1部の基調講演のほうは終了させていただきたいと思います。当会の一番の目的である意見交換およびそのリスクコミュニケーションが実は一番大事なところになっております。東京でも昨年12月それから先週とやらせていただきまして、特に皆さん評価していただいたのは自分が聞きたいことを他の方からも聞いていただいたんで、確認ができたということで、大変ご評価いただいております。

それでは今241分ぐらいなので、約20分間休憩をさせてください。それでは開始35分にさせてください、255分までに赤い紙のほうに記載いただきまして事務局のほうに渡していただければと思います。開始は35分から開始をさせていただければと思います。その間20分間休憩になりますので、書いていただいた方は外が休憩室になっておりますので、空気をちょっと入れ替えていただければと思います。また今日は、基調講演のお二人以外に厚生労働省から化学物質対策課の方に来ていただいています。それから堀口先生も今年度おられますので、皆さんのご意見を活発にいただきたいと思います。それではすみませんが、お手数掛けますがご意見いただければと思います。よろしくお願い致します。

(  休 憩  )

 

司会者(鈴木) それではお待たせしました。これから意見交換会のほうに入りたいと思いますので、これからスタートさせていただきたいと思っております。

  意見交換のほうですが、コーディネーターは先ほどご紹介いただきました長崎大学広報戦略本部準教授堀口先生にお願い致します、よろしくお願いします。 

  パネリストとしては先ほど基調講演いただきました労働安全総合研究所の宮川先生、それから厚生労働省化学物質評価室の室長である角田さま、それから厚生労働省化学物質物質評価室の室長補佐である岸さま、この4名でやらせていただきます。よろしくお願いします。

  このいただいた質問を堀口先生のほうで整理させていただいてお答えをさせていただきたいと思ってます。一応1時間程度でこのご質問に対するご返答をさせていただいて、その後個別にご質問がもしありましたらマイクでいただければと思っております。一応終了は4時半を現在考えております。

  それでは堀口先生、ひとつよろしくお願い致します。

 

堀口 おひとかた、「化学メーカーに勤務しているので参加させてもらいました。専門の方の話を普段聞くことがないので、難しかったですが勉強になりました。ありがとうございます。この後の意見交換がどんなものか興味深いです」というご意見をいただきましてありがとうございます。 

  ということで皆さんのお手元に赤と青の紙があると思うんですけれども、もう34年目になるんですが、物質ごとに割とこの化学物質のリスクコミュニケーションをやっておりまして、室長もやり始めてから3代目になります。で、今まで個人的にで結構なんですけれども、このような意見交換会にご参加の経験がある方は赤の紙、初めての方は青の紙を上げていただけないでしょうか。はい、お願いします。ありがとうございます。分かりました。基本的には全ての皆さんのご意見を私が読み上げていってお答えをしていただくんですけれども、途中で意味を取り間違えていたりとか、もう少し質問で補足がある場合には普通に挙手をしていただければマイクで言っていただくことになりますので、よろしくお願いします。

  まず資料の確認から行きたいと思うんですけれども、2ページの下の資料、「業務上疾病発生状況のグラフですけれども、疾病者減少について法整備もあると思うが法整備以外に有害物の摂取量との因果関係も情報としてほしいのですが」ということで。これ、なんか減ってきてるような数字になって、2の下、その因果関係何か分かりますか?

角田 これ自体は化学物質等による疾病者数ということで把握をしているものなので、ご質問の趣旨の因果関係っていうところまで今整理したものはないんですけれども、具体的にどういうものがあるかっていうことは、事例的に整理はしています。

岸 大体のところで年間200件ほどあるんですけれども、半分は一酸化炭素中毒で、その残りの半分、つまり4分の1は特化物の関係、残りの4分の1は有機溶剤中毒の関係という風にお考えいただければと思います。

 

堀口 はい、ありがとうございます。19ページの下になります。「リスク評価にはIARCを基準になっているように見えるが、区分2A2B1とを同列に作業にかかっているように見えますが、区分1を最優先等、有害性の高いものから全てではないのか。特に今回の有機溶剤は2B類が多いので、どういう意図の選択か分かりにくい」ということです。

角田 実は過去の流れでどのように選択してきたかっていう資料がなかったもので、それでちょっと分かりにくい面もあったのかもしれません。平成18年からばく露作業報告を行いまして、それを受けてずっとリスク評価をしてきており、先ほど宮川先生が言われた新しいスキームでやっておりますが、18年にばく露作業報告を出していただく物質、そこからスタートしたときはIARC12Aを選定し、その後19年もIARC12A20年もそういったものでやってきておりまして、ほぼカバーできましたので、21年から2Bという形で次第に拡大をしてきておるところでございます。それから23年のばく露作業報告につきましては、そういった発がん性以外にも重篤な障害を起こす恐れがあるということで、生殖毒性とか神経毒性のものを選定してきております。大体そのような流れでやってきておりまして、1なり2Aのものにつきましては18年当初以降リスク評価を実施してきておるというところでございます。

堀口 宮川先生、付け加えてお願いします。

宮川 今の説明でほぼ答えになっていると思います。対象として選ぶというのは最初に候補になる所からですので、個別具体的に来年度どうしようかというときには、その検討会で、実際の取扱量だとか専門家の立場からこれはこういう所が危ないという意見が出たのも考慮して、最終的には選んでいるので、単純にIARCのグループ分けでやってるということではないと思いますが、そもそも企画検討会に上がってくる前の段階で、行政の考え方としては今のようなことがベースにあると思います。

堀口 はい、私も先生と一緒の検討会なのですけど、どんなに有害性が高くても使用されていなければ、評価の優先順位としては低くなりますので、どれだけ流通されているかとか、そういうものも何トン国内で使用されてるかとか、検討会ではそのような所も資料に上がっている中で、宮川先生始め専門家のご意見が加わった形で物質を選んでいるというところになります。

  明日も検討会です。朝10時からですね、遅刻しないようにしましょう。検討会は皆さん傍聴できることになってますので、ホームページ等で確認いただき、積極的にご参加をいただければと思います。

 

  あと、次ですが、「5ページの下にばく露評価スキームを説明されているのですが、これが説明されたホームページがありませんか」ということです。。宮川先生お願いします。

 

宮川 このままの図が載っている所ではないのですが、これに書いたようなことを文章化したのは、行政のリスク評価担当が、実際、このリスク評価指針を文書として公表されておりまして、その中で、この図だけではなくて、それぞれの有害性を評価するに当たってどういうものを持ってくるかというものも載っていたと思います。

角田 「ばく露評価ガイドライン」という形でルールをまとめておりまして、それにこうした1次評価値、2次評価値と比較をするということとか、最大ばく露濃度を決める時に実測最大値と区間推定値の大きいほうとする等のルールをまとめております。それから「リスク評価の手法」というものも取りまとめておりまして、そうしたルールにつきましては、資料の一番最後の参考、厚生労働省ホームページ掲載情報という所でリスク評価の検討会報告書が載っていますが、この報告書の中にリンク先とかも載っておりますので、そこのばく露評価ガイドラインとかリスク評価の手法とか書いてある所をご参照していただければルールが確認できるかと思います。

堀口 宮川先生どうぞ。

宮川 1点追加です。毎年少しずつ評価の指針等に修正が入っておりますので、今年の指針ではこうなってるのにこの物質についてやり方が違うのではないかと思われるところがあるかもしれませんが、その辺りは多少指針自体を少しずつ見直しているということなので、年度によっては変わっているという可能性もありますので、ご承知おきいただければと思います。

 

○堀口 次は21ページの上です。「発がんの恐れのある有機溶剤10物質は通常のスキームと違う別スキームとおっしゃいましたが、どのようなスキームであったのでしょうか、教えてください」っていうことですね。

角田 ちょっと説明が分かりにくかったかもしれませんが、通常のスキームですと先ほど宮川先生がご説明されたとおり、まず第1年目に初期リスク評価を行います。で、そこで2次評価値を超えるばく露が確認できたら2年目に詳細評価を行うということでございまして、これらは、ハザードを確認する有害性評価とそれから実際に現場の作業をやってらっしゃる所に入ってばく露の実態を測定するばく露実態調査結果をもって評価するというのが通常のやり方です。で、今回の発がんの恐れのある有機溶剤10物質というのは、このばく露実態調査についてまだ行っておりません。通常ですと大体12月頃に事業者の皆さんにばく露の作業報告を上げてくださいということをお願いしまして、翌年1年間のデータを、翌々年の1月から3月までに出していただいて、その出していただいた事業場の中からコントロール・バンディングという手法で解析をしまして、ばく露が高そうだなと思われる事業場に調査をするという仕組みでやっているのですけれども、今回の有機溶剤の10物質についてはそのような形のばく露実態調査はやっておりません。申し上げたとおり、やはり胆管がん事案ということもございまして、1,2-ジクロロプロパンは規制対象とし、それ以外に原因物質である蓋然性が高いというような事例も出ているジクロロメタンなどの有機溶剤について急ぎ措置をする必要があるだろうという中で検討してきたという経過がございます。ばく露実態調査は今後行う予定です。10物質のうち9物質については、この3月までに事業者の皆さんからばく露作業報告が出てきますので、その結果を踏まえて26年度にばく露実態調査を行う予定でございまして、その上でそのデータを踏まえて必要があれば規制内容の見直しを行うと、つまり今はその有機溶剤業務ということで規制をする方向で検討しているんですけれども、他に規制すべき必要な業務が出てくるかとか、あるいはこの業務については除外してもいいんじゃないかとか、そういうデータが出てくればそれを踏まえて再度検討するというところでございます。

 

堀口 ありがとうございました。次ですが、「23ページの下の特別管理物質は、24ページの上では2類の別章のように見えます。両者の違いを教えてください。」

角田 特別管理物質といいますのは、遅発性の病害、発がんでございますけれども、その恐れがあるものについて特別な管理が必要だということで特別管理物質というふうに定義付けをしまして、必要な措置、例えば作業記録の作成とかそれの30年間保存で規制するものでございます。ちょっとこれ(スライド46)、色が付いてなくて見づらいんですけれども、第1類物質のPCBの下にちょっと横に薄い線があるかと思うんですけれども、(特別管理物質の範囲はこの線が囲む範囲で)こう行きまして、こう行きまして、こうなって、それでこう行きまして、で、ここになるという範囲が特別管理物質というグループです。ですから第1類の中でもPCBのように特別管理物質に入ってないものもありますし、ジクロロベンジジン、ベリリウムのように入ってるものもございます。それから特定第2類でも塩化ビニルとかベンゼン等は特別管理物質に入ってますが、アクリルアミドとか塩素とかこの線の下の所は入ってないという、そういう整理でございます。

 

堀口 はい、ありがとうございました。それでは今度26ページのスライドなんですけれども、二つご質問がありました。「事業廃止時とは会社自体を閉めるときという解釈でよいでしょうか、つまり会社は存続するが当該事業のみ廃止するというときは特に報告は必要ないということでよろしいでしょうか。」

角田 ここでの事業廃止時といいますのは、会社が存続されなくなったということだけではなくて、(存続するが)その該当する事業を廃止した場合も必要というふうに理解しております

 

堀口 もう一つは26番のスライドですけど、「発がん性の恐れのある有機溶剤についての措置内容について、33ですね、名称、人体に及ぼす作用、取り扱い上の注意事項、使用方法の掲示、この3ですね、の掲示内容についてはGHSの有害性情報と注意事項にプラスして保護具を記載するぐらいでよいでしょうか。その場合、絵表示もあれば分かりやすいと思いますが追記してもよいでしょうか。」

宮川 表示内容につきましては、容器への表示内容に準じた形で結構だと思っております。それで絵表示につきましては、入れていただくことでより分かりやすいと思いますので、入れていただくというのは差し支えございません。

 

堀口 それから30ページの上の作業記録についてのご質問です。「リーフレットには電磁的記録による保存でも構いませんかとありますが、今日お配りしたリーフレット、一般的に特化則で定めている記録についても電磁的記録でもよいという理解でよろしいでしょうか。30年間という長期間の保存をどうするか社内で議論しており、書面だと保管場所の確保を考える必要があり、特化則で定められている記録が電磁的でもよいということであれば対応を考えやすいと思っています。」

岸 電磁媒体を用いた記録というのは別の法律で認められておりまして、安衛法に係る記録につきましては基本的に電磁的記録で結構ですので、CDROMとかハードディスク上での記録、あとPDFで記録するということで一向に構いませんので、そのような対応でお願い致します。

 

堀口 一応スライドの番号が書いてあったのはこのようなものなんですが、少しずつ読んでいきたいと思っています。ちょっと前後したかもしれませんが、「保護具の掲示とはどういう意味でしょうか。当社の作業所では一般的な保護具は全員着用させてます」ということなんですけど。保護具の掲示とはどういう意味でしょうか。

岸 保護具というのは呼吸用保護具だけではなくて、例えば手袋とか長靴であったり、あとは作業着とか、いろいろ種類がございますので、その作業をするにあたって使うべき保護具を列挙していただければ結構です。マスクにつきましても防じんマスクとか防毒マスクとか、防毒マスクにもいろいろ種類がございますからこういう種類を書いていただければより分かりやすいと思います。

 

堀口 はい、ありがとうございます。それではちょっと物質別に行きたいと思っていますが、DDVPから行きたいと思いますが、「DDVPにおいて経皮吸収の神経毒性で皮膚感作性があるが、作業を行う上で作業服の規制はあるのか。」

 

角田 適切な保護具を使用するという形になっておりますので、それについても基本的には同じでその中で対応するというところではないかと思います。

 

堀口 「局所排気装置設備の排気は、DDVPですが、外部放出でいいのでしょうか。」

岸 基本的に局所排気装置ということになりますと、外部へ排気を放出する措置をとっていただければと思います。それに例えば排ガス施設を設けるというのは一般環境への影響等も配慮して付けるということもある話ですので、その辺りは総合的にご判断いただければと思います。

 

堀口 「DDVPの作業環境測定の頻度はどうなるのか、」頻度はって書いてあるんですけど。

岸 特化物の作業環境測定につきましては基本は半年に一度となっていますので、そのように考えていただいて結構だと思います。

 

堀口 はい、分かりました。それから、酸化チタンのお話が幾つかありまして、「酸化チタンの場合ナノと通常物質のリスクはどのような点で差があるのかが知りたい。」

角田 ナノの場合は、ご承知の方もいらっしゃるかもしれませんが、非常に粒子のサイズが小さいということもありますので、吸入したときに通常の粒子とまた違う機作、障害を人体にも及ぼす可能性がありますので、そういったことから今ナノ酸化チタンについてのリスク評価を実施しているというところです。

堀口 宮川先生、追加お願いします。

宮川 具体的に、客観的に言えるのは、一般のものについてリスク評価書がすでに出ていると思いますので、その二つを比べていただきますと、どこが違うかというところは分かっていただけるかと思います。

 

堀口 「酸化チタンナノ粒子の動物実験で呼吸器に障害が出たという報告はどこを見ると分かるのでしょうか。」

宮川 それも現在厚労省のウェブサイトに掲載されているリスク評価書、それから特にその評価書本体ではなくて、その付属・別紙となっている有害性評価表、それから有害性をまとめた有害性評価書の所に書いてあるものと思いますので、そこを見ていただければと思います。

 

堀口 それで「酸化チタン等の、混練されている塗料に関して、今後規制や観察措置等とられる可能性があるのでしょうか。」

角田 酸化チタン(ナノ)につきましては、先ほどご説明がありましたとおり、今年25年度に詳細評価という形で実施しておりますので、その結果を大体夏ぐらいになると思いますが、リスク評価報告の形で取りまとめて公表したいというふうに考えております。で、その時点でリスクが高くて健康障害防止措置の必要があれば先ほどのDDVPと同じように健康障害防止措置検討会のほうに検討が移るという形になりますので、現時点でどんな形になるのかはまだはっきりとは申し上げられない状況です。

 

堀口 「酸化チタンRSFの有害性評価値とばく露結果に関してあまりにもその値が懸け離れている。リスク評価としてすでにこのような値が出ているのであれば、すでに健康被害が出るのではないでしょうか。」

宮川 はい、粉じん、不溶性の溶けない粉、特に細かいものとか、あるいは繊維状のものについては、肺の中に長く残留して長期の潜伏期間を置いて有害性が出るという場合があり、すでにそういうことが分かっているものと、これらの二つの物質が同じだというわけではありませんが、ものによってはばく露後20年、30年たってからがんが出るようなものもあります。従って現在のものがそういうものでなければよいのですけども、そういうようなものであった場合には数十年後に結果が出てくることもあるので、今調べたばく露状況が評価値よりも高いからといって今すぐ出ない。しかしその後はどうかということは必ずしも明確ではないので、今現に健康影響が出てないからこれで大丈夫なはずだという結論にはならないかと思います。

 

堀口 「化粧品用途の酸化チタンはこのような結果から、消費者用途のばく露調査を行うべきではないでしょうか。」

宮川 消費者に関しては行政の話だと思うのですけれども、区別しなければいけないのは、化粧品として使われているものと、それから塗料あるいは触媒作用に期待して使われているようなものでは結晶の形が違いますので、それによって相当程度有害性も違う可能性がありまして、一律には扱えないと思いますが、このリスク評価事業では少なくとも有害性が高いと思われるほうに関して評価をし、評価値を出すというかたちでやっておりますので、それは直ちに化粧品に使われている材料に同じだけの有害性があるかどうかという話にはならないかと思います。

角田 私ども厚労省の安全衛生部では労働者のばく露による健康障害の恐れがあるものについてリスク評価を行っておりますが消費者に関するばく露ということでは所管はしておりません。

 

○宮川 同じ方からの質問で、下のほうに書いてあるのがちょっと気になったので、話題がずれるのですけども、「有機溶剤については発がん性が基準ですが、生殖毒性や遺伝毒性の点での導入は考えられないですか」。これが規制ではなくて、有害性評価・リスク評価自体ということであれば、個別に出てきた場合については有機溶剤であっても生殖毒性や神経毒性、遺伝毒性があるかどうかということについては検討しております。ちなみに遺伝毒性という言葉は半ば専門家でなければいけない労働安全衛生コンサルタントになろうという人々が大変誤解をしている場合があって、遺伝毒性というのは遺伝子に対する有害作用で発がんに関連するというものであって、直接的な意味では子どもに対する影響・遺伝的な病気になるという意味では使われておりません。ただ、GHS分類の場合には少しまた意味がちがい、生殖細胞変異原性という形でちょっと扱っていますけれども、遺伝毒性については意味をよく文書等でご確認していただければと思います。

 

堀口 消費者に関しては予防ではないんですけれども、何かしら不具合が生じている場合には消費者庁のほうのいわゆる事故調の所にデータが上がってきたりとか、あとは国民生活センターのほうで消費者からの申し出があって調査をされることがありますので、どこのルートに乗っかるかというのは多分消費者の場合には消費者庁下の関係のルートに乗っかってると思います。

  それで12ページの下のスライドになりますが、酸化チタンの所ですけれども、1次評価値、評価値なし、無毒性量を設定できる長期発がん性試験のデータがないためとあるんですよね。で、「今年1月に公表されたLung overload(胚過負荷)に関する報告書では、酸化チタン等のPSLTと実験動物における発がんは人に外挿できないとしている。検討会ではどのように議論されたのか。」

宮川 まず今回のリスク評価値は発がんに基づいて算出したものではありません。マウスへばく露の実験結果から、肺の炎症作用等に対する影響があるかないかというところでNOAELを求めて算出したのが今回の0.15という値です。従って、発がんの実験で吸入のものが一つ、ポジティブに出たというのがあるのですがそれは使っておりません。また、もう一つの問題は、仮に発がんがあったとしても、それは肺のクリアランスに影響するような、過負荷、肺にたくさんあまりにもたくさんの粒子が入り過ぎてそれを排出するような機能が働かなくなった結果として、2次的に発がんに出るのであって、本来の発がん性に基づくのではないではないかという議論は確かにありますが、本当にそうかどうかという議論も難しいですし、その前に、そもそもきれいに発がん性を示した動物実験があるという状況ではないので、それに基づいては算出をしておりません。今後そういうdoseをふって比較的低用量まで、過負荷にならないところまで用量を設定した実験結果が出てくれば、その段階でまた検討されると思います。

 

堀口 それで、同じスライドの2次評価値の所の質問ですけど、「現時点酸化チタンナノ粒子の許容濃度は存在せず、(提案されたものはあるが)この数値は1次評価値ではないでしょうかと。それともこの数値は今後許容濃度として採用されるのでしょうか。」

宮川 まず許容濃度ですが、産業衛生学会で提案されたもの(年未満のものは暫定値ですが)・暫定値があるときに、許容濃度が存在しないかどうかどうかというのはなかなか難しいところです。私は、提案された段階で(意見は伺ってるとこであるけれども)許容濃度と考えられるとして出したものなので、それなりに尊重すべきだとは思います。ただし、国の検討会では暫定値はまだ暫定ということで、恐らく使っていなかった可能性がありますし、そもそもこの初期リスク評価書を作ったときには、産業衛生学会の暫定値も当初は提案されていなかったはずなので、原案の有害性評価書を作った段階では書かれていません。従って許容濃度がないとすると1次評価値とすべきではないかという意見があるかもしれませんが、1次評価値ではございません。1次評価値のほうについては、細かいことですがGLP適合の試験のようなきちんとしたものがなければ使わないので、1次評価値では使わないことになりました。詳しくはネット上にある国の指針を見ていただければ分かるのですが、2次評価値がない場合に、代わりにこういう形で計算できるものがあるときは使えるかどうかというと、今の指針では使えることになってしまいます。私はちょっと疑問に思っているので、本来は、これは1次評価値として使うべきだと思うんですが、ルールにのっとってみていくと、1次評価値としてはデータ不十分で使えないというものが、2次評価値の代替的なものとして入ってくる可能性があるようなことになっていますので、事実上2次評価値として評価に使われております。ただ、これが規制値かというと規制ではなく初期評価ですので、あくまでもリスクがあるかないかを検討しているときの基準ということで、初期評価の段階で、それが規制という、許容濃度として利用されるというようなものとは、ちょっと考え方が違うということです。ちょっと回りくどい言い方で申し訳ありません。

 

堀口 「初期リスク評価書を拝見したが本数値は13週間の試験のものであり、45年の労働機械はどのように外挿をされたのか。ECHAでは労働者個人差の不確実係数を5としているが、検討会ではどのように考慮されたんですか。」

宮川 細かいことですけれども、GHSの標的臓器毒性・反復では、もう90日・13週試験があればそれを使うというのが基準になっています。そういうことを参考に、ばく露期間ですけれども、通常の場合には90日の亜慢性データがあればそのまま評価レベルを考えるときに使っております。それから45年の労働期間への外装ということですが、その部分は期間を考慮していません。だからそのままの数値でやったと思います。

それからECHAの場合の話ですが、個人差のがんの不確実係数を5としているということですが、このリスク評価のルールでは、個人差は、労働者は比較的健康な人ということで、一般環境と違って個人差を設けておりませんので、個体差、個人差の不確実係数は1でやっております。

 

堀口 「ナノ材料のリスク評価としてカーボンブラック、カーボンナノチューブ等の検討が予定されてたと思いますが、これが酸化チタン以外のナノ材料をどのようなスケジュールで検討されるんでしょうか?」 宮川先生。

宮川 記憶ではカーボンブラックについては、いったん企画検討会で挙がったけれども、対象にならなかった...?

○岸 カーボンブラックについては、今まさにこの物質について3月まで報告を求めているところですので、該当する企業では報告していただいているかと思います。ナノチューブにつきましては今現在のところ、ばく露作業報告の対象にはまだしておりませんけれども、今後対象としていきたいと考えているところでございます。

 

堀口 それでは「発がんの恐れのある有機溶剤について、塗料製造業ではこれらの溶剤を研究開発の製品の出荷検査のために塗料することがある、この場合の作業の時間はごくわずかであり、規制対象として含まれることに疑問があります。2Bと同じと書いてありますが。規制では常時作業に従事するとなっているが、常時の定義が不明です。少なくとも一定の作業時間の目安、何々時間以上/日が必要なのではないでしょうか。」ということなんですが。東京会場でも同じような質問が出てた気がするんですけど。

岸 常時性の話ですけど、基本的に明確な基準っていうのはこちらでは示しておりませんが、常態として使用するもの、つまり、本来の仕事として行うべきものであればこれは常時性があるというふうに考えております。それに反対の言葉としては臨時の作業ということになると思いますので、その人は本来の仕事としてその業務があるかどうかということで判断いただければと思います。あと使用量、消費量による適用除外等もございますので、そういう場合には措置の中で適用除外となるような内容がございますので、その辺りで検討いただければというふうに思っております。

 

堀口 それで、発がんの恐れのある有機溶剤10物質については、リスク評価がリスク評価制度とは異なる別のスキームで検討されている。先ほどちょっとご説明があったと思いますが、「今回の発がんの恐れのある有機溶剤10物質以外で別のスキームで検討されている事例を教えてください。」

角田 今のところはございません。10物質については先ほど胆管がんの事案等を踏まえてそのような対応をしております。あと、1,2-ジクロロプロパンは資料で「リスク評価」と書いてあって、「初期評価」、「詳細評価」と書いていなかったのですが、あれも本来でしたら初期評価をやり、その後もう1年かけて詳細評価をやるということが考えられたのですけれども、急いで対応しなければならない重要な案件だという観点から、初期評価をもってリスク評価を終了して規制を検討したという経緯はございます。通常の2年間のやり方とは若干違います。今のところは10物質と1,2-ジクロロプロパンがそうであったということだけでございます。

 

堀口 「発がんの恐れのある有機溶剤を含有した混合物について、すそ切り値の見直しが検討されていますが、SDSについての記載で変更になるものはあるでしょうか?」

岸 法令が有機則から特化則に替えた場合には、関係法令が触るぐらいでございます。もちろん有害性で発がん性等はまだ記載がない所についてはそこに入れていただく必要があります。

堀口 (宮川)先生(いかがですか)。

宮川 はい。一般論から言いますと、JIS/GHSに沿ったラベルの場合には、1%とか0.1%がすそ切り値だったと思います。で、5%というのから1%になると、そこは少しすっきりする。ただ、発がん性のときには、今度0.1%とかいうのがかかってきますので、JISの準拠の場合と、それから個別の法律で要求がある場合と、JISは、JISの中に個別の法律の要求があるときにはそれもと書いてありますので、結局両方を考慮するというしかありません。

角田 特化則と有機則の関係について若干補足しますと、10物質については今のところ考えておりますのは、特化則に移すということです。今は有機溶剤ですが、これを特化則のほうに移します。発がん等の健康障害の恐れがあるものについては、特化則で規制しておりますので、移すと。そうすると特化則の1%すそ切りにした規制がかかってきます。それから一方で有機則を一部準用して対応している1,2-ジクロロプロパンとかエチルベンゼンの規制に似通った形で仕組むことになるのではないかと考えております。その場合例えば、例えばその10の有機溶剤のうちのジクロロメタンを含んでいて、かつ他の有機溶剤を含んでいて、両方で合わせて5%超というような混合物があったとすると、それについては有機則の規定を準用して措置をするというような形で仕組み方を考えているところでございます。もちろん両方合わせて5%超でもその中でジクロロメタンが1%超になっていれば特化則の規制がかかるんですけれども、例えばジクロロメタンが1%以下であって有機溶剤と合わせて5%超になる場合については基本的に有機則の規制がかかってくるという、昨年の1,2-ジクロロプロパンで規制したような仕組みと同様な仕組みを今考えているところでございます。

 

堀口 で、「発がんの恐れのある有機則10物質は、結果によっては実質的に使えなくなるのでしょうか? 川下のメーカーより対象かどうか質問されます」ということです。

 

角田 使えないっていうことはございません。規制措置で記録の保存なりを30年にするとか新たに加わる部分の規制に対応していただければ、使えなくなるということはございません。

 

堀口 「発がんの恐れのある有機溶剤に関して、今後グループ2B以上に格上げされる物質等が推測できると作業場での使用頻度を減らす等の事前の対応が可能となるのですが、難しいでしょうか。IARC次第になってしますのでしょうか?」

角田 IARCの発がん性分類なり、あるいはGHSで区分が1になっているような生殖毒性とか神経毒性とかそういったものを中心にリスク評価をやってきておりますので、今後そういったものの中から検討会の先生方のご意見を聞いて選定していくということになります。具体的にこれがなりそうというのはまだはっきりとは申し上げられないんですけれども。

宮川 一言、2B のものが将来規制されるかもしれない、あるいは検討対象に上がるかもしれないということで、これを避けるということで毒性が全く分からないものをわざわざ使うというのは、逆に言うと評価されていない何が出てくるか分からないということもあって、別の化学物質の管理に関する検討会では「毒性が分かっているものの中で最も毒性が低いものを選びましょうと」なっております。分からないものをむやみに使うとんでもないことが起きる可能性もあるという観点だと思いますけれども、こういう議論も行われてますのでご利用いただければと思います。

 

堀口 「現場作業員だけでなく製品開発等の担当者に対しても発がんの恐れのある有機溶剤に関する記録の保管、健康教育等は必要ですか? 研究開発部門の方です。」

岸 研究開発でも取り扱いをする人はおられるかと思いますので、そういう人は同様に行っていただければと思います。

 

堀口 「特別管理物質に指定されることで、作業記録の保存、作業場への掲示以外にどのような規制が加わるのでしょうか。IARCの分類と特定化学物質指定の関連は?」 と書いてあります。

角田 作業記録の中身の話ですか。

堀口「作業記録の保存、作業場への掲示以外にどのような規制が加わるのでしょうか? 特別管理物質に指定されることで。」

岸 今回の有機溶剤につきましては、できるだけ有機溶剤中毒予防規則のばく露防止措置はそのまま守っていただき、あとはそれに作業記録の作成や関係書類の保存を加えるというような方向性で結論が出てますので、その対応で考えていただければと思います。ただ、すそ切り値が5%から1%に変わることで、1%から5%までが今まで規制になってなかったのが規制の対象になるので、そこの部分が新たなばく露防止措置とか健康管理等が必要になっていくということになっていくと思います。

堀口 先生、付け加えること。

宮川 はい。もう一つ、IARCの分類は少なくとも原則的にはハザードベースの分類だと思いますので、2Bの物質等を見ていただければ、ああ、こういうものも入っているのかなというのがいろいろあると思います。実際に有害かどうかというのは、すいません、リスクがあるかどうかというのは、その物質のその作用の強さとばく露量に関わるものであって、ある性質を持っている可能性が高いから、あるいは可能性があるからといって、直ちにリスクが高いというわけではないので、さっきのリスクベースの判断を実行することが重要かなと思います。

 

堀口 「溶剤の吸入防止のために、吸収管の付いた保護マスクの着用が必要となりますが、局排があれば着用が不要ですか?」

岸 有機溶剤のばく露防止につきまして、基本はまず発散抑制っていうことで密閉措置とか局所排気装置によって労働者がばく露しないようにすることが基本ですので、局排がしっかり付いていればマスクは必要ありません。ただ、局排等が付けることは困難でどうしても作業者にばく露が及ぶということであれば防毒マスクを着用して体内に入らないような措置を講じていただくということで対応していただくことになります。

 

堀口 「対象有機溶剤に関する作業環境測定では、B測定まで必要でしょうか」と。

岸 B測定は特定の発散源がある場合で一番高い部分の作業位置でB測定をするっていうルールになってますので、通常の作業環境測定と同様にそのようなケースがある場合にはB測定が必要となってきます。

 

堀口 「有害性の表示について数が多いので、丸数字1から丸数字4の全てをここの溶剤について表示できません。名称と共通的な影響、注意事項に集約してもいいですか?」

岸 共通する内容であれば集約していただいて結構です。

堀口 先生、追加します?

宮川 集約という意味が、このリーフレットにある3の有害性等の情報の表示で、丸数字1名称、丸数字2人体に及ぼす影響、丸数字3取り扱い上の注意事項、丸数字4使用する保護具ということを書けということであると、この項目が、四つ必要ということですよね。

岸 そうですね、共通、例えばスチレンの場合は防毒マスク、ジクロロメタンの場合も防毒マスクということでそれぞれここに書くのではなくてまとめて書いていただいても結構です。 

 

堀口 「それで、表示対象物質、通知対象物質が増えるので、ラベルやSDSの改正へのフォローに非常に手間と費用を要しています。これらに対するサポートは考えておられますか」ということですが。

角田 私どものほうで標準となるSDSを公表、改正しておりますので、それをご参考にして対応していただくことが可能と思います。

 

堀口 「昨年のエチルベンゼンに続き、スチレン、MIBKと特化則対象が増えました。有機溶剤は有機則で局排、掲示をすでに実施しており、さらに職場に掲示となると掲示物でいっぱいになります。ホルムアルデヒドも含めて作業者が見やすい掲示物となるような規制を希望します。個々の物質に対する具体的な掲示を法で決めていただけると助かります。」ということなんです、ご意見ではあると思うんですけれども。宮川先生、何かありますか?

宮川 行政の立場からじゃなくって、GHSにある程度関与していた者として言わせていただければ、GHSに書いてあるような項目を個々の物質ごとにきちんと出すということで、それが何枚にもなるのかもしれませんけれども、労働者が見ようと思えば見える所にSDSに書いてあるような、あるいはラベル表示に書いてあるようなものが手近にある、ということが一番重要なのかなと思います。「なんだかわからないもの」ではなくて、「僕らはこういうものを使ってるんだ」ということが分かるようにしていて、「意味がよく分からない、難しくてよく分からない」という場合があれば、そこを聞けるような状況にしておくのが望ましいのではないかと思います。

 

堀口 「今回対象となる化学物質は、塩素化された炭化水素例えば塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、などが多いですが、規制する対象として包括的な名前ではなくて、化合物名で規制をかけられる理由は。1,2-ジクロロプロパンのように後追いでの規制では労働者の健康が守られないと思います。よってポリ塩素化アルカン、アルケンのような名称で規制すべきではないでしょうか。個人として思います」っていうことなんですが。

角田 化学物質の規制については、やはりいろいろ有害性も異なりますし、構造等も異なっておりますし、現場で使っている実態も異なりますので、やはりくくった形というよりは個別に実態なり性質に応じて規制していくっていうほうが適切というふうに思います。そういうご趣旨の質問でしたら。

 

堀口 今の質問に関わるのですが、「安衛法では総称名で規制されている化学物質群がありますが、有識者のどのような知見に基づいて総称での規制となったのでしょうか。水銀条約ではその対象は絞られたようですが、安易に総称での規制を取り入れないでいただきたいと思います。議事録ではなく、理由が示された文書等があるのであれば(その総称になった理由に関する)ご教授ください」ってあるんですけど。

角田 今の、どういう総称でっていうのが思い当たるものがないのですが、もしお書きになられた方で今これだっておっしゃれればそれを伺いたかったんですけど。

堀口 書かれた方で、はい、どうぞ。

○A氏 例えばなんですけれども、金属名の化合物とか、金属およびその化合物、そういったものを指します。

岸 例えばマンガンおよびその化合物とか、そういうことですか。その場合は金属に由来する有害性が化合物にも及んでるということでそこはひとまとめにして、規制の対象にしているということにしておりますので、そういう書き方になっています。

 

堀口 よろしいですか? で、「何かその理由とかが書かれているものってホームページかなんかで見つけられるんですか」っていう質問が加わってたと思うんですけど。

角田 特にその観点で整理をしているっていうのはないと思うんですけれども、個別には、例えば金属とその化合物という形でのリスク評価書は全てホームページに掲載されておりますので、その中で有害性なりをリスク評価でそのように判定した根拠の部分で言及しているとは思いますけれども。今ちょっと手元にないんではっきりと申し上げられませんので、ちょっとそういった資料もご参考にしていただければと思います。

 

○A氏 先ほど先生のほうからもご回答があったかと思うんですけれども、さっきの例えば酸化チタンの場合だと、その結晶構造によってもその有害性は変わる可能性があるというふうなお話があったと思うんですけれども、そうすると、その金属を頭に立ててその総称としてその全てを規制するというのはちょっと乱暴なんじゃないかというふうに思いますが、その点はいかがでしょうか。

堀口 宮川先生どうですか?

宮川 行政のほうではなくて、実際の有害性評価をやった立場から言いますと、総称として検討しているわけじゃなく、実際は塩化なんとか、硫酸なんとか、金属なんとかというものの個々の情報が集まってきて、それを検討するわけです。それでリスク評価事業で有害性評価書を作りなさいとなって、実際にやる場合には、それをまとめて評価してくださいと言われる場合もあれば、個々の場合もあります。それから、まとめてやろうとして集めてみたら、「化合物によって、溶けるか溶けないかとかによって随分違う」、「これは十把ひとからげにはできないな」というものもあって、きちんとやるためには個別のものも全部やらなければいけない。そうすると、年に数十しかできてないところがもっといっぱい増えるというので、ここはなかなか難しいところかなと思います。厳しい規制がかかるときに総称でかかるというのは確かに過剰な規制につながるかもしれませんが、名称表示などでこういうものを含むときにはちゃんと書いてくださいねというときには、ある程度「何々およびその化合物」という場合もあり得るのなと思います。ただ、実際に有害性評価をするときは、できればきちんと個別の化合物ごとにやりたいのですが、そこまではデータがない場合も多いのですよね。最近、その逆で、女性則の改正で一昨年ごろ三十数物質が入りましたけれども、そのときにニッケルに関しては特定の化合物で特定の状態のものに限るというような限定が付いた例はございます。

○A氏 昨年ですかね、コバルトのときにもコバルトおよびその無機化合物っていうふうな限定が入ったかと思うんですけれども、なるべく限定をされていくような形でその総称名を付けられる方向で考えていただきたいというふうに思います。

角田 コバルトのときは、まさにそのご意見のとおりで、実際にこういったリスコミの場でいろいろご意見等もありまして、それを踏まえて中身を検討致しまして、それで化合物を無機化合物に限定したというような経緯もございます。そのときは、ACGIHTLVは無機化合物、産衛学会では勧告があったんですけれども、その提案理由等見ますと有機コバルト化合物を特定した有害性情報がないというようなこともありましたので、無機化合物を対象に規制したということでしたので、そういったデータも踏まえて対応をする必要があると考えております。

○A氏 そういうふうなことが行われたっていうことはさらに安衛法の総称で決められているようなものについても限定され過ぎても方向的に先に行くということはあるんでしょうか。

角田 総称というか整理する段階において、やはり今のコバルトの例ではありませんけれどもきちんとした有害性情報が適用されるものに限定して対応を考えていくのが基本であると思います。

○A氏 ということは有害性情報がないものについては省かれる可能性もあるということでしょうか。

角田 そういうふうに理解しております。

 

堀口 「弊社では本日対象である発がんの恐れのある有機溶剤10物質のうちMIBKを溶剤として使用し、製品中に1%未満残存致します。よって、MIBKの現在の通知義務は1%以上ですので、SDS中の記載はしておりませんが今後特化則に指定されたことにより、この1%がより低い値となる可能性はあるでしょうか。今回同時に指定されます他9物質はいずれも0.1以上が通知義務で、このMIBK1%以上と比べて飛び抜けて高い印象を受けましたので」、という質問です。1%より低い値となる可能性はあるのでしょうか。

角田 今のおっしゃってるその1%っていうのが、特化則の規制の対象になる1%という意味であれば、現在のところはその1%の足切りということで考えております。要するに1%を超える含有率のものについて特化則の規定を適用するという考え方で、これは1,2-ジクロロプロパンとかエチルベンゼンとか、ああいったものと同じような整理の仕方です。ちょっと質問のご趣旨と違っていればご指摘いただきたいのですが。

宮川 逆に言いますと、その通知対象というのはGHS/JIS準拠のMSDSを作るときのカットオフの値だとすると、原則0.1というのがありますので、それはそれとして引っ掛かってくるということになります。

 

堀口 それで「韓国の規制により製品の溶媒をトルエンからMIBKに替えた事例がありますが、国際的な規制の整合性はどうなるんでしょうか。」

角田 規制の整合性については、リスク評価の検討段階とそれからその規制を導入した後のいろいろ情報提供というようなことがあると思います。リスク評価の段階では今のIARCのデータとか、それを踏まえてあるいはACGIHのデータを踏まえて評価値を設定してリスク評価を実施しておりますし、実際にわが国でそういった規制を導入したものについては適宜1,2-ジクロロプロパン等もそうなんですけれども、国際的な関係機関に規制の情報を発信して連携を取っているという状況でございます。

 

堀口 「特別管理物質に関する対応、測定結果の30年保存等は具体的にどうして必要なのか。具体的に、将来的にどのように利用されることが想定されるのか。」

岸 遅発性のがんということになりますと、例えば20年、30年たってから発症したときにその人が当時何をしてたのかということを振り返ろうとして作業記録が5年や健診記録5年で廃棄されてますと、そのときの状況が分からないということになりますので、その当時の状況を後々までしっかりと記録として残しておくために30年間を保存していただきたいということでございます。

 

堀口 「有機物ばく露作業報告で平成25年報告の対象物質になっているMIBKが、いきなり平成26年の秋ごろに特化則として規制されるのか理解できない。この作業報告の結果をまとめ、審議してから決めるべきである」というご意見をいただきました。それで、「作業記録の分かりやすい事例、様式を提示してほしい」ということなんですけれども。

角田 作業記録については、今のところ項目として想定できるのは、その作業を実施した方の名前とか作業の概要でありますとか従事した期間でありますとか、そういったことを整理をしていただくという形ではないかと思います。今の時点では細かい様式までは整理をすることは考えていないんですけれども、今申し上げましたような形で、まとめやすい形で適宜整理していただければと考えております。

 

堀口 それで、「エチルベンゼンはキシレンに混入していますが、キシレンも30年記録の保管となるのでしょうか。有機溶剤は不純物レベルも対象になるのでしょうか。」

角田 キシレンは対象にはなりません、30年保存の。

 

堀口 それで、「SDSの交付義務である化学物質について、リスクアセスメントを義務付けるという法改正が行われると聞いています。詳しいことをご教授ください」っていうことです。

角田 123日に労働安全衛生法の一部を改正する法律案の要綱について労働政策審議会に諮問がなされまして、審議会からおおむね妥当であるという答申がありました。その法律案の要綱では、事業者は表示義務の対象物および通知対象物による危険性、有害性を調査しなければならないものとする、ということで、リスクアセスメントを義務化するという方向で今整理をしているところでございます。この審議会等での議論を踏まえて安衛法の改正案の今国会提出を今目指しているという段階でございますので、そうしたリスクアセスメントの義務化について法案の審議が今後行われる予定でございます。

 

堀口 「安衛法の改正内容に640物質の表示、リスク評価が義務付けられるようですが、この表示内容は現行の表示物質の内容と考えてよろしいでしょうか。」

角田 項目自体を替えるっていうことは特に聞いてはおりませんので、基本的に現行と同じだというふうに考えております。それからそういったリスクアセスメント義務はは今お話ありましたとおり、640の物質について、対象にしていくというふうに聞いております。

 

堀口 それでリスク評価のとこなんですけど、11ページの上で、「区間推定上側限界値とありますが、どのように算出するのでしょうか。事業場ごとにばらつきがあると上にぶれるのでしょうか。個人ばく露測定値が下回るのはどういったときでしょうか。」

角田 区間推定上側限界値っていいますのは、そのデータの中で一番個人ばく露が高かったものを最大値にしようという方法で以前はやっていましたが、本当にそれでいいのかと、要するにデータの分布、ばらつきの状況から見て、その最大値を超えるばく露が起こる可能性もあるのではないかという問題意識が出てきたものですから、平成21年頃統計の専門家の方をお呼びして、どういうふうにやればいいだろうかということを検討した結果、最大値と区間推定上側限界値の比較検討で大きい方を最大値とする方が正確に安全性を見込めるだろうという判断で今のような形になっています。ご質問のその具体的にどういう計算方法で出してるのかっていうのは、今すみません、手元にデータがないんで申し訳ないんですけれども。(算定式掲載 URL https://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/01/s0115-4.html )

 

 

堀口 はい。で、「詳細リスクに移行した後、事業場の改善が見られ値が低くなった場合は規制対象から外れるのでしょうか?」

角田 詳細リスク評価で再度細かく検討した結果、2次評価値との関係でリスクが高くないということが認められれば、それは規制の方向には行かないということになります。

 

堀口 あと、いろいろ書いてあっていまいちよく見れてないんですいません。27ページの上の「2次評価値の0.01ppmから0.1mg/m3 の換算方法はどうなってますか」ていう。

岸 これは気体中の分子量の違いで計算してます。ppm100万分の1と気体中の体積%ですし、mg/m3 は気体中のミリグラム数ですので、要は分子量に応じて質量に直したという事で、でお考えいただければ。

 

堀口 それと、「ACGIHTLV、作業者体重の違い等、日本とアメリカっていうのは考慮されているんですか?」

宮川 評価値を選ぶときには、産衛があればそれを第1優先で産衛の許容濃度を使っています。ない場合は次にACGIHがどうなっているかということですので、そこをわざわざ日本人とアメリカ人の違いを考慮してどっちが適切かということで選んでるわけではありません。一般的には、それほどアメリカと日本で大きな違いはないと思いますが、ただアルデヒド等一部のものについては酵素の多型がアメリカと東アジア人では違うということで、サイエンティフィックに考慮しなければいけないところはもちろんあると思います。

 

堀口 「リスク評価の内容が公表されているウェブサイトを教えてほしい」というのがあるのですが。

角田 先ほどの資料の最後のページにも載っていたかと思うんですが、厚労省のホームページ(トップページ)をご覧になっていただきますと、「審議会・研究会等」の部分がございますので、クリックしていただき、その審議会の所を見て行くと、「上記以外の検討会、研究会等」というのが一番下に出てきますので、その中の「労働基準局」をクリックすると労働基準局の検討会が、かなりの量なんですけど、載っておりまして、その中に先ほど宮川先生がご説明された化学物質のリスク評価に係る企画検討会、化学物質のリスク評価検討会、有害性評価小検討会、ばく露評価小検討会などが検討会ごとにまとまって掲載されており、その報告も載ってます。第何回ということで資料が載って議事録が載って、報告は報告としてまた載ってます。それから健康障害防止措置の検討会でしたらその部分を見ていただくと、同じように資料と議事録と報告書が載っておりますので、そこでご確認いただければと思います。

 

堀口 それで、26ページの上のすそ切り値の5%から1%なんですけど、「GHSとの関係(表示 通知)は?」というふうに書いてある。

角田 特にGHSというより、これは要は有機則なり特化則での今までの規制との整合性を踏まえまして、すそ切り値を決めているという形でございますので、特にGHSに応じてこれに設定しているということではございません。

 

堀口 ご意見等もあるので読んでいきます。あと、「有害性評価値の詳細のスキームを示してほしい」ってあるんですけど。

宮川 評価値の算出方法の詳細なスキームということであれば、タイトルはリスク評価の手法、24年改正版というのがウェブサイトに載ってるわけですね。

それからもう一つ、実際の計算については、個別物質の評価文書をダウンロードしていただきますと、その中の有害性総合評価表の所に元の実験値がこういう値で、それでばく露時間だとかばく露期間だとか、あるいは安全性係数に幾つを使ったかという計算の式も出ております。(参考URL http://anzeninfo.mhlw.go.jp/user/anzen/kag/ankgc09.htm

 

堀口 はい。ちょっと意見なんで読んでいきます。「リスク評価は化審法でも行われています。労安法と化審法の区分は分かるが、化学物質管理としてはその目的は同じはず。横断的な規制評価がもう少し行われればと思います」ということです。

  それから「健康障害防止についてはできる限り既存の法規制の枠組み内で運用を強化してほしいと思います。混合物の場合対象製品をどのようにきちんと把握するかが重要と思います。ばく露は作業および製品の形、液状、粉体によっても異なるので、実際に則した規制であってほしい」と。

  それから「事業者の自主的リスクアセスメントの在り方について行政的な立場、国のリスクアセスメントの関係等行政当局としてのご意見をお聞かせ願えればと思います。」何かご意見ありますか?

角田 最初のほうのことからでもよろしいですか。

堀口 はい、事業者の自主的リスクアセスメントの在り方について。

角田 事業者の自主的なリスクアセスメントですね。先ほど3ページの三角の図(スライド4)について宮川先生からご説明があったんですけれども、法令で規制する部分っていうのはやはり規制しないと健康障害が生じる恐れがある、リスクが高いものについて、規制をしていくっていう形になるんですけれども、それ以外の部分についてはSDS制度に基づいて自主管理をしていくっていうのが真ん中辺にあったと思いますが、こういった部分を適切に対応していっていただかなければならないという考え方でやってきております。そういう中で、1,2-ジクロロプロパンの胆管がん問題がありましたように、危険で健康障害を生じる恐れがあるものについては、リスクアセスメントを強化していかなければならないという観点で今回法改正も含めた検討を行っているというところでございます。

堀口 はい、それでですね、質問が。「リスクベースばく露量の把握が必要です。シミュレーションがあって実測値へのトリガーは?それから、個々の製品について既存物質の評価をどうするのか、全て対象とするのか?ばく露の反復数(n)、正規分布とは限らない。nが大きくないと適切な分布は得られない。データの取得はメーカーへの負担が大です。化学物質、毒性情報の不足をどうカバーするのか。」というようなことが一連にざくっと書いてあるんですけど、宮川先生のほうから。

宮川 データはただではやはり得られないので、お金を掛けずに少しだけのサンプルからバサッとするのがいいのか、どこが負担するかは別として丁寧にお金を掛けてきちんと面倒を見て、ピンポイント規制をあるいは自主管理をするのがいいか、これは簡単に決め付けられないところかと思います。一つ前の質問ですが、国は例えばコントロール・バンディング等個々の事業者によるリスク評価にはこういうような方法がありますよとかいろいろ言っていますけれども、私は研究者の立場から言うと、基本は許容濃度と実際のばく露がどうなってるかというのが一番の基本で、国のリスク評価自体がそうなってるのと同じように、事業者でやられる場合にも、SDSを取って、許容濃度がどうなってるかを調べ、じゃあ、実際のばく露はどうか、というのが、私はリスク評価の基本であると思います。

 

堀口 それで、あと3枚なので読んでしまいます。「海外でも化学物質が生産されています。日本だけ厳しい管理になり競争力がなくならないように願います。実際に、有機溶剤を使用している事業所が規制を守っているのか、確認が必要だというふうに考えます」と。それから「リスク評価の対象として評価した結果は労安法の対象物質としての評価だけでなく、医薬品、医薬部外品としての安全性の評価には影響しませんか。医薬品の安全性評価には人ばく露の試験項目はない。DDVPを使用した製品の安全性に対する評価への影響を知りたい。」

宮川 医薬品については、実際にヒトでどういうことが起こるのかということが分かった上で認可されていると思いますので、ヒトでのリスクを評価した上でベネフィットと秤に掛けて、使える者が使うということで動いてるのだと思いますし、意図的に承知の上で摂取をしていただくというものだと思いますので、知らないうちに労働者がばく露してる可能性がある、作業場での物質とはちょっと考え方が違うのかなと思っております。

 

堀口 で、「DDVPがリスク評価結果において新たに人に対して発がん性の可能性があると判明したことは評価されますが、他の物質で家庭用殺虫剤の殺虫剤用途のもの全てでリスク評価がなされたのかが、消費者目線からは気になるところです。」

宮川 今のことで言いますと、DDVPは発がん性があるとリスク評価事業で認めたとはなっていなかったと思います。最後のところでIARC2Bになっているとか2Aになってるとかですが、例えば「2Bは可能性があるというようにIARCが言っている」、「情報がありますよ」というだけですので、ちょっと誤解のないようにお願いしたいと思います。

 

堀口 はい。それで「食品、(添加物)に関するリスク評価が最優先だと思います」って書いてあるんですが、すいません、食品安全委員会の専門委員なので一言回答しますが、「自ら評価」と言って食品安全委員会の食品のリスク評価の項目を専門委員会で決めています。ただ、化学物質と違って食品の場合は評価法が分からない、どのように評価をしていいのかまだ分からないといったものがたくさんあって、評価に至っていないものがあるのが実際です。で、添加物に関して個々の添加物の評価はされて、それによって厚生労働大臣の許可がないと販売できないわけですけれども、例えば添加物の複合利用に関しての評価等は、評価法がいまだに確定できないので評価ができていないというのが現状です。以上です。

  ということで全て読みましたが、ちょっと時間が押してしまって申し訳ありません。何か追加であればフロアですいませんが個々にお尋ねいただければと思います。本日は皆さんご協力どうもありがとうございました。

 

司会者(鈴木) どうもありがとうございました。本日は大変お忙しいところをお時間ちょうだいしまして誠にありがとうございます。相当無理にご質問、ご意見いただきまして、実は自由な質疑応答したかったんですが、時間オーバーしたこともございまして、これから個別のほうでさせていただければと思います。化学物質管理につきましては今後も厚生労働省中心に情報発信をしてまいります。先ほどありましたように、ホームページにほとんど載っておりますので、オフィシャルな質問につきましては厚生労働省のほうにお願い致します。

お帰りどき、この赤の紙と青の紙を受付のほうに戻してください。それからブルーのほうのアンケート用紙、これもし差し支えなければ簡単に書いていただくと大変ありがたいんですがよろしくお願い致します。今年度のリスクコミュニケーションは今回で終わります。これについても行政のほうのホームページに議事録等載ってまいりますので、今日いただいたご意見をしっかりそこの中に盛り込むような形を取っていきたいと思っております。以上でございます。

今日は大変長くなりまして時間も約8分ほど延ばしてしまいまして、本当にありがとうございました。先生方も、本当に今日はどうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室
(電話番号)03(5253)1111(内線5511)

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