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2014年5月22日 第3回厚生科学審議会結核部会議事録

健康局結核感染症課

○日時

平成26年5月22日(木) 10:00~12:00


○場所

中央合同庁舎第5号館 共用第8会議室(19階)


○出席者

加藤部会長 中山委員 鎌田委員 小森委員 深山委員
磯部委員 南委員 山岸委員 有馬委員 杉本委員
御手洗参考人 河津参考人

○議題

(1)病原体サーベイランス等について
(2)その他

○議事

○難波江補佐 それでは、定刻より少し早いですが、皆さんおそろいですので、これより第3回「厚生科学審議会結核部会」を開催させていただきます。

 本日の委員の出欠状況について御報告いたします。本日は、遠藤委員、吉山委員、徳永委員より御欠席との御連絡をいただいております。

また、本日は参考人として、公益財団法人結核予防会結核研究所抗酸菌部部長の御手洗聡様、同じく結核予防会結核研究所臨床・疫学部研究員の河津里沙様に御出席をいただいております。どうぞよろしくお願いします。

 それでは、この後の議事進行につきましては、加藤部会長にお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

○加藤部会長 かしこまりました。

 皆様、おはようございます。本日もどうぞよろしくお願い申し上げます。

では、早速でございますけれども、事務局から資料の確認をお願いいたします。

○難波江補佐 それでは、お手元の資料を確認させていただきます。

 議事次第、座席図、委員名簿。

 その後に資料1、参考資料1から4までとなっております。

 不足などございましたらお知らせください。

○加藤部会長 どうもありがとうございました。

よろしゅうございますでしょうか。

○難波江補佐 申しわけございませんが、カメラはここまでとさせていただきますので、報道の方、御協力のほどお願いいたします。

(報道関係者退室)

○加藤部会長 それでは、議事に入りたいと思います。本日の会議の進行は、お手元御案内の議事次第に従って進めてまいりますので、よろしくお願いいたします。

まず、資料1「病原体サーベイランス等について」に入る前に、御手洗参考人より参考資料1「結核菌病原体サーベイランスシステムと現状」を御説明いただいた後に、事務局より資料1「病原体サーベイランス等について」の説明を求めたいと思います。

それでは、御手洗参考人、説明をお願いいたします。

○御手洗参考人 結核研究所の御手洗でございます。よろしくお願いします。

 参考資料1「結核病原体サーベイランスシステムと現状」ということで、資料を準備いたしました。これに沿って御説明をさせていただきます。

 まず、1枚めくっていただいて、2ページ「感染症サーベイランスの目的」でございます。「感染症の動態を明らかにし、国民が疾病に罹患しないよう情報を提供すること」というのが一般的な理解だと思います。これには当然新たな流行の把握、あるいは感染症(状況)の推移を見る、対策とモニタリングの評価ということがコンポーネントとして含まれます。

感染症(状況)の推移という点では、疾病側(患者)と病原体側(微生物)という2つのコンポーネントがあろうかと思います。

疾病側としては発生状況、集団感染等のモニター、病原体側としては特定の株の流行、あるいは結核等に関していいますと、薬剤耐性情報等のモニタリングを行うということになろうかと思います。

次のページは「病原体サーベイランスの必要性」であります。

 一般にここにお示ししたような内容が必要だろうと思われます。まずは分子疫学調査です。古典的な疫学調査に加えて、現在では遺伝子タイピング等の技術が進んでおりまして、菌の指紋、フィンガープリンティングを見ることができるようになっています。この分子疫学を基本にして、感染動態の把握、あるいはこれまでわかっていなかった、あるいは菌の一致から推定される未解明の感染ルートの発見といったようなことで必要性があろうと考えています。

 もう一つ古典的な意味合いとして、薬剤耐性の現状把握、あるいは薬剤耐性状況の推移の把握といったところで必要性があろうと考えています。

次のページをごらんください。

ここにお示ししているのは、日本を含む近隣の国は必ずしも最新でアップデートされておりませんので、こういったところが実際に情報の限界ではありますけれども、日本を含む周辺国の多剤耐性結核菌の発生状況であります。「N」としましたのが新規の患者、「P」としましたのが「Previously treated」ですので、治療歴のある患者さん。これで見ますと、例えば日本は多剤耐性結核、新規の患者さんで0.4%、既治療でも4.1%でございますが、最新の情報では、中国全土で見ると、新規で5.7%、既治療では25.6%。ロシアの一部地域では、新規でも15%、既治療に至っては、正確なデータがここにはございませんけれども、50%以上というところもございまして、日本以外の国は基本的に耐性率が高いというのが一般的な認識でございます。

次のページは「病原体サーベイランスの効果」、どういったことが得られるかということであります。分子疫学では先ほど必要性の項でも申し上げました集団感染の有無の判断が可能であるとか、あるいはタイピング情報のデータベースを集積することにより、患者間の疫学的情報とあわせて分析、感染の地域、集団に対する集積生活、あるいは地域内の伝搬状況の詳細を知るといったことが可能になろうと思います。

データベースを集積して系統的に解析することによって、疫学的に高病原性、これまで病原菌というのは全て同じと思われている節がありますけれども、実は同じ菌でも病原性が違うというのが現状であります。

こういったものの存在を特定することも可能であろうというふうに考えられますし、迅速なタイピング技術があれば、接触者健診の範囲内の正確な設定、結核の場合ですと、結核対策への積極的応用といったことも考えられます。

薬剤耐性について見ますと、薬剤耐性の推移を観察することにより、結核対策が適正に行われているか、この評価をすることが可能でありますし、新たな耐性結核の流行の把握、耐性結核菌株を集めて解析することにより診断法あるいは対策等の開発が可能となると思われます。

 ここで日本の結核の疫学的特異性について考えておきたいと思います。

分子疫学的調査の前提は、罹患率、有病率などの疫学的パラメーターがある程度以下であるということが必要であると思います。つまり、アノニマスの接触が無作為に大量に発生するということになりますと、感染ルート等の特定ができませんので、ある程度の有病率あるいは罹患率以下である。日本はこういう状況にございます。

しかし、過去の高蔓延の時期の感染者が大量に、特に高齢者にございますので、病原体について考えますと、ある程度高蔓延状況下で、個別の事例に関する感染要因が希釈された状況でのいわゆる集団的感染動態、この結核菌の病原性を評価するには現在、この状況下で疫学的な調査を行わなければいけないというふうに考えられます。

結核中蔓延状況というのは、ある意味世界的にユニークでありますし、中蔓延状況で、しかもこういったことが実施できるインフラがあるというのは、今、日本がほぼ唯一に近いだろうと思われます。

そういった疫学的な特異性を考えると、やはり病原体サーベイランスによる解析というのは、今を置いてほかにタイミングはなかろうと考えるわけであります。

 7ページをごらんください。

 病原体サーベイランスを考える際に必要な因子が多分4つほど必要であろうと思います。

病原体の分離同定と保存。

統一・標準化された解析方法と実施機関の確保。

さらに、分子疫学情報と臨床情報のリンク。

次いで、情報を利用し医学的に介入するシステムとしてのエフェクターであります。

次をごらんください。

病原体サーベイランスシステムそのものを概念的に解釈すると、こういった形であろうと思います。

状況を解析、診断を正確にし、そこから正確な検査を行って情報収集。それを解析して医学的な介入を行い、さらに状況評価。スパイラルに改善していく。永続的に改善するのがサーベイランスシステムであると理解されます。

もし情報解析の時点で大規模な問題が発生していることが確認されれば、当然ながら大規模なサーベイを実施するためのキャパシティーも確保しなければなりません。

次のページは「病原体サーベイランスの現状」でございます。

 まず、診断・病原体の分離と保存について申し上げます。

日本では結核菌の分離と保存は、病院検査室あるいは検査センターで実施をされております。これは患者管理のためであり、基本的に公衆衛生上の用途ではございません。現状として検査センターで7080%は実施されていると思われます。

結核菌は基本的に四種病原体に分類されておりますので、結核菌のバイオリスク対策がかなり厳密に求められておりますし、多剤耐性結核については三種病原体に指定されておりますので、所持については施設基準を満たし、さらに厚生労働大臣への届け出が必要でございます。さらに、譲渡されない限り、場合によってはこれは滅菌廃棄されてしまうということであり、サーベイランス上の重要な菌株が最も失われやすいという状況にあろうかと思います。

さらに、結核菌(分離菌)の生菌としての移動は四種以外は容易でない。

三種病原体の移動には公安の許可と適切な運搬体制が必要でございますし、発送そのものが免許制といったような形ではありませんので、梱包の精度が確実であるかということは実は不確定でございます。

次のページは、実施方法と施設の確保です。

先ほど言ったようなファクターで分子疫学、薬剤耐性といったところで見てみますと、まず分子疫学的については遺伝子タイピングということになりますが、これは耐性遺伝子等も含むと思います。

方法の標準化ができていない。

地域を越えた比較、あるいはそのためのデータベースがございません。

どの程度の地域的範囲が効果的であるかということも評価されていないと思います。

薬剤耐性(薬剤感受性試験の実施)ということでございます。病院あるいは検査センターにおいて、医療基準のほうで分離された結核菌につきましては、薬剤感受性試験を必ず実施ということになっておりますので、データは日々量産されております。しかしながら、これを効率的に収集・解析するシステムがございません。

これは極めて重要なポイントですが、遺伝子タイピング、薬剤感受性試験ともに精度保証するシステムがございません。ですので、出てきたデータが正しいのかどうかはわからないということであります。

11ページは、薬剤感受性試験の外部精度評価試験を行った結果でございます。2004年から2011年まで、WHOの基準で考えたときに合格した率はどのくらいかというと、54.1%から84.3%でございます。15%強は少なくとも合格していないという状況であります。この状況でデータを集めることに果たして意義があるかという問題がございます。

次のページは、分子疫学情報と臨床情報のリンクについてであります。感染症法第15条を根拠とすれば、発生状況、動向及び原因に関する調査の基礎的要件として分子疫学的調査を実施することは可能であろうと考えます。

ただし、研究として実施されている場合は、疫学研究に関する倫理指針等を遵守する必要があり、原則的にはインフォームド・コンセントを得る必要があると思います。インフォームド・コンセントを前提としますと、必要な病原体・疫学情報リンクが得られない可能性がございます。

次をごらんください。

これらのことから、病原体サーベイランスシステムの利益と課題についてまとめてみました。病原体と臨床情報を効果的にリンクし解析することにより、病原体サーベイランスシステムを確立いたしますと、結核対策の適正性の評価、タイムリーな薬剤耐性の情報、薬剤耐性機構、毒力解析、新技術開発のための試料・情報提供、こういったことが提供可能になる上、さらに患者あるいは接触者に対しても健診上有用な感染動態情報の提供等ができる。

しかしながら、それを実現するに当たっては、適切な精度保証、合理的な検査方法の確立、予算・人材の確保、バイオリスク管理、こういったところが必要になると考えます。

では、病原体サーベイランスのためのステップとして考えられることは何かということでございます。

多剤耐性結核菌については、かなり管理基準が厳しいということでございますので、三種病原体等指定の見直しをお願いしたいと考えています。つまりは、最も重要な解析対象を失わないための基本的条件であろうと考えます。

標準的遺伝子タイピング法の設定が必要であろうと考えます。これは広域での有用性を評価するために、暫定的であっても標準的方法が設定される必要があると考えるからであります。

次に、広域です。現在では自治体あるいは地域だけで限定的に使用しているというのが一般でありますが、広域での遺伝子タイピングデータを利用した際に、これがどういった価値を持つのかといったことがきちんと評価されていないように思われます。日本というセッティングにおいてこの効果がどうなるかというのは、評価をしてみないとわからないところであります。

行政調査としての実施。これは研究を前提としない検体・情報収集というところであります。つまりは、インフォームド・コンセント等の問題を提起しているわけであります。

これはサーベイランスだけにかかわらず、研究的にも非常に重要でありますが、精度保証の必要がございます。検査室の精度がわからない状態での病原体サーベイランスは質的に問題がございます。

15ページは、あくまで参考でございます。

今、申し上げてきたのは、効果的範囲が基本的には地域で考えられている。これまで集積されてきた情報から考えたところでございます。

その後は、地域それぞれでサーベイランスのシステムができた場合に、これをネットワーク化するためにどうするかといったことでございます。

階層的ネットワーク化、相互接続的、インターネット的な接続があろうかと思いますが、そこにお示ししたとおりで、それぞれゼミ、アドバンテージ、ディスアドバンテージがあるというふうに考えます。

以上です。ありがとうございました。

○加藤部会長 ありがとうございました。

 どうしても今すぐ聞きたいという御質問があればお受けします。後に事務局の御説明も含めて議論しますが、よろしいでしょうか。

それでは、続きまして、事務局より資料1「病原体サーベイランス等について」の説明をお願いします。

○梅木補佐 それでは、お手元の資料1「病原体サーベイランス等について」という資料に移りたいと思います。

 では、1枚おめくりいただきまして、「(参考)病原体サーベイランスについて」というタイトルが記載されておりますが、感染症全体としてのサーベイランスの説明になっております。

 患者発生サーベイランスで報告された患者に由来する検体から病原体を分離・同定し、病原体の動向を監視するもの。現在、感染症発生動向調査事業として実施されております。

 中には2種類ございまして、全数把握の疾病でこの中に結核が含まれているもの。定点把握の疾病として例えばインフルエンザ等がありまして、その2つのタイプで実施しているということになります。

 全数把握の疾病ですが、医師から患者発生届け出を受けた保健所は、必要に応じて病原体検査のための検体及び病原体情報について地方衛生研究所への提供依頼を行います。

診断した医師は、協力可能な範囲において地方衛生研究所に検体を送付する。

こういった流れになっております。

また、定点把握の疾病については、都道府県は病原体の分離等の検査情報を収集するため、患者定点として指定された医療機関の中から病原体定点を指定します。

指定された医療機関は検体を採取し、地方衛生研究所に送付するといった形になります。

また、地方衛生研究所は、患者が一類感染症と診断されている場合や、都道府県域を越えて集団発生があった場合等は、検体を国立感染症研究所に送付するといった流れになっております。

次のページは「結核菌病原体サーベイランス」です。

これについては、もともと結核というものに関しては、特に総合的に予防対策に取り組むべき感染症として位置づけまして、平成19年に策定された結核に関する特定感染症予防指針に記載されております。

そちらの記載としては、丸ポツの2つ目、新規施策として国及び都道府県等は薬剤感受性検査及び分子疫学的手法からなる病原体サーベイランス体制の構築に努めることが記載されております。ここで言う「分子疫学的手法」というのは、具体的には結核菌を遺伝子検査によって分析する手法ということで、具体的にはRFLP法やVNTR法などがあるというところです。

次のページに行きたいと思います。

結核に関する特定感染症予防指針は、平成23年に改定されたところなのですけれども、こちらに関する進捗状況について、昨年度アンケートを実施して中間評価を行っております。本部会の第1回目及び第2回目においてアンケート調査をお出しし、中間評価を実施しているということになります。調査結果は、一番後ろの参考1に何枚かつけております。

具体的には、都道府県、政令市、中核市、保健所設置市、特別区の計140自治体に調査票を送付しまして、31問について質問をしています。

こちらの部会でのおまとめが4月3日に中間評価として出されているということになりまして、その中間評価の中に病原体サーベイランスの構築に一層努めることなどが指摘されているといった現状になります。

次のページは「結核菌病原体サーベイランス等に関する課題」ということです。

薬剤感受性検査及び分子疫学的手法からなる病原体サーベイランスの構築に当たっての具体的な課題は以下のとおりという形で整理させていただいております。

現状として、薬剤感受性試験というものは都道府県等の事業ではなくて、医療機関で実施されていることが多いという現状があります。これについては、薬剤感受性試験の結果を医療機関から都道府県等が得る必要があるということになります。

2つ目の現状としては、イソニコチン酸ヒドラジド及びリファンピシンに対して耐性を有する結核菌、これらを以下「MDR」と言いますが、これらが病原体規制のため病原体サーベイランスの対象から除外されることがあるという現状がございます。

平成18年に感染症法の中に病原体規制の考え方が入りまして、それから10年弱が経過するということで、結核治療の最新の知見を踏まえる必要があるのではないかといった課題がございます。

次のページです。こういった結核菌病原体サーベイランス等に関して必要な措置ということを提案させていただきたい。

1つとしては薬剤感受性試験結果の確実な把握ということで、結核登録者票というものを保健所長が整備することが決まっておりますが、その中の記録すべき事項として薬剤感受性試験の結果を入れてはどうかといった提案です。

参考までに結核登録者票の記録事項を施行規則第二十七条の八から抜粋しております。一から六までこういった形で記載すべきと定められているものです。

2つ目としては、多剤耐性結核菌の病原体等管理規制の対象範囲の見直しをしてはどうかと。三種病原体として取り扱う多剤耐性結核菌の定義について、WHOは新たに定義をしたMDRのうち、一次抗結核薬のみならず二次抗結核薬、フルオロキノロン系薬剤に加えて、アミカシン、カナマイシン、カプレオマイシンの3種類の薬剤のうち1剤以上と。こういったものに耐性を有するものを広範囲多剤耐性結核菌、以下「XDR」と言わせていただきますが、XDRの基準に準じて変更してはどうかといった提案です。

これの見直しについては次のページに詳細を記載しております。

見直しの趣旨です。

現状として、結核菌については、人為的な感染症の発生を防止するため、感染症法上、四種病原体として使用、保管の基準の遵守が義務づけられております。ただし、結核菌のうちMDRについては、三種病原体等としてその所持等の届け出が義務づけられているところです。あわせて、さらに運搬等に規制が設けられております。

一方、WHOにおいては、平成18年といった時期にXDRを新たに定義しておりまして、各国にその対策を求めているところです。

課題です。

国内において、MDRについて、その保管・運搬等に厳格な規制が設けられているため、その調査・研究が十分なされていないといった現状がございます。

また、見通しとしましては、抗結核薬について、諸外国において二次抗結核薬は、一次抗結核薬と比較して抗菌力は劣るが、多剤併用により効果が期待される薬剤として使用されているものです。使用されているものはフルオロキノロン系薬剤(レボフロキサシン)というものがございまして、レボフロキサシンについては、国内において現在は適用がない状況なのですが、適用を拡大するような動きが見られております。

 新しい作用機序の新薬、「デラマニド」といった一般名でございますが、これが国内で薬事承認される見通しといったところもありまして、今後MDRの治療成績が向上することが期待されております。

そういった中で対象範囲の見直しについて御議論いただきたいのですが、三種病原体として取り扱う多剤耐性結核菌の定義について、WHOXDRの基準に準じて変更することとしてはどうかというところです。

次のページは具体的な対象範囲のイメージを載せているものです。

あとは参考1として前回の部会等でお出しした資料を一部抜粋しているということになります。

事務局からの説明は以上です。

○加藤部会長 ありがとうございました。

ただいまの御手洗参考人と事務局からの説明に対して何か御意見、御質問はございますでしょうか。小森委員、どうぞ。

○小森委員 教えていただきたいことですが、これは、イメージ図から言うと、現行の三種病原体であるMDRを管理上はちょっと違った分野に置こうという趣旨と理解してよろしいのでしょうか。

○梅木補佐 現在はMDRという2剤耐性を有する結核菌について、三種病原体等という形での規制がなされている現状があります。「MDR」という定義の範囲を見直すことになりまして、定義の範囲が「XDR」という定義。要は、MDRの中でもさらに二次抗結核薬であるフルオロキノロン系薬剤と注射薬のアミカシン、カナマイシン等4剤以上に耐性を有する結核菌にしてはどうだということになります。

○小森委員 その場合、現在、三種病原体等については、運搬の届け出を公安委員会に事前に届ける等、その安全性の担保ということについての見解を同時にお述べいただきたいなと思ったのです。そのことについての認識はいかがでしょうか。

○難波江補佐 平成18年改正でこういう形で今のMDRの定義、三種病原体等として扱われてきたわけですけれども、最近の医療の体制の強化、WHOの定義の見直しというか、対策の総括というものが当時と変わってきまして、1つは、「見通し」にございますとおり、当時、MDR等だったら使う薬がないようなものが、新しい薬がつい先日、薬食審の第二部会のほうで了解されて、近々承認されるということになった。

それから、フルオロキノロン系の薬が諸外国では使われていたのですが、日本ではなかったのですが、こちらも未承認薬検討会のほうで開発要請がなされて、今、動いているという状況。こういった状況の変化を踏まえて、規制の対象をより限定的にしてはどうか。当時と比べて、安全上の管理で、仮にそうなっても使える薬が期待できるというところに違いが出たというものでございます。

○小森委員 わかりました。規制はある意味緩和するわけですので、安全性ということに対するコメントを確認しておきたかったということです。ありがとうございます。

○加藤部会長 平たく言うと、医療の進歩によって厳しい規制にする対象でなくてもいいようになったという理解でよろしいかなと思います。

御手洗参考人、理解としてはそんなところでよろしいですか。

○御手洗参考人 正しいだろうと思います。

○加藤部会長 ありがとうございました。

 ほかにございますか。鎌田委員、どうぞ。

○鎌田委員 北海道医療センターの鎌田でございます。

今の小森先生のお話とも関連いたしますけれども、今の三種と四種の間の3.5的な考え方を導入するようなお考えはないのでしょうか。確実なサーベイランスのためにMDRについての規制を緩める考え方、あるいは方向性には勿論賛同致しますが、現在まで厳格に管理していたものを、ある日を境として通常の結核菌と同じ四種ということでひとくくりにすることには、若干の違和感を感じております。

多剤耐性結核の患者さんの移送に関しては非常に大変な状況がありまして、それは実際に経験しているところではあるのです。本日は病原体についての議論ですけれども、多剤耐性結核の患者さんの移送などに関しても緩められるのか。耐性のない結核の患者さんと全く同じような対応でよろしいのかというところは、ある程度の文言を入れておく必要があるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

○加藤部会長 どちらからお答えいただけるか。1つ理解として、病原体は規制がありますけれども、患者については菌ではないですので、規制の対象にはなっていないのです。これは患者さんの人権とも関係がありますから、しっかり区分けして考えなければいけないということだと思うのです。

 その上で、鎌田委員、3.5というのは、どんなことを想定されているのでしょうか。

○鎌田委員 通常の四種と三種の境目がきょうまではMDRなのですけれども、XDRだけが三種となった時に、今までMDRとしていたものの取り扱いがどの様になるのかに疑問を感じた次第です。四種に丸ごと入れるのか、あるいは今後三種から外れるものの、現在の四種、即ち耐性のない結核菌よりも取り扱いには多少注意が必要であるといった文言を残すのか。それを1つの言い回しとして3と4の間の3.5といったイメージで申し上げたということです。

○加藤部会長 ありがとうございます。明確になりました。

では、事務局からお願いいたします。

○中嶋室長 病原体管理のほうも担当しております感染症情報管理室の中嶋です。

考え方として、ポンチ絵のところで深い青色のものが現在、四種病原体、薄い青と白のものが三種病原体となっている。MDRを要すれば、今は三種病原体としての規定になっているのですけれども、三種病原体をXDRに絞り込んでしまうと、薄い青の部分がどういうふうになるのでしょうかという御質問だと思うのですが、ここについては四種病原体としての取り扱いで扱うものと考えております。

○加藤部会長 ありがとうございました。

 磯部委員、何かございましたら。

○磯部委員 富山県衛生研究所の磯部です。

 今の先生の御質問に対する意見としては、ほかの四種病原体も非常に厳格な管理でもって移送されているので、四種病原体の扱いになったからといって途端に危険が増すとかという意識ではないのかなと思います。特に公安の扱いということで、テロ対策みたいなところの管理が少し緩くなるのかなという感じ。「緩い」という表現がいいかどうかもわからないのですが、そういう認識なので、そこは大丈夫なのではないかと思います。

○鎌田委員 ありがとうございます。

○加藤部会長 現場からの貴重な意見ありがとうございました。

 ほかにございますか。山岸委員、どうぞ。

○山岸委員 御手洗参考人にお聞きしたいのですけれども、MDRの菌が2007年に新規で0.4%ということで、先ほど御発表があったのですが、XDRは新規で何%ぐらいだったでしょうか。

○御手洗参考人 実はXDRは非常に分離数が少ないので、率として果たして正しいかどうかというのは問題がございます。ただ、2007年に全国調査を行いましたときのデータでいきますと、MDR15%という数字でございます。

○加藤部会長 山岸委員、よろしいでしょうか。

○山岸委員 そうしますと、同じ率でいくとすれば、15%の人は今までどおり三種病原体として管理される、移送がしにくい状態が続くというふうに考えてよろしいのでしょうか。

○御手洗参考人 MDRそのものが近年かなり減少しておりますので、XDR、いわゆる超多剤耐性結核だけを三種とするということになれば、実質的にはほとんど存在しなくなるのではないかと思います。

○加藤部会長 実数でいくと、サーベイ上、挙がっている数字が年間60くらいだと思うのです。ただし、菌陽性の中の検査されているのが七十何%、約4分の3ですので、100前後。ざらっと言うとそのぐらいかなと思うのですが、どうでしょうか。

○御手洗参考人 MDRに関して、多分推定的にはそのぐらいであろうと思います。

ただ、お断りしておかなければなりませんが、MDRを新規に0.4%、既治療4.1%という数字を出しておりますが、このサーベイを行った時点で既に感染症法が発効しておりましたので、MDRがその時点で集められていない可能性がありますので、過小評価である可能性は否めません。

○山岸委員 ありがとうございました。

○加藤部会長 ありがとうございました。

ほかにございますでしょうか。

 それでは、対象範囲の見直しとして、三種病原体として取り扱う多剤耐性結核菌の定義について、WHOXDRの基準に変更するという方向でよろしゅうございますでしょうか。

(「はい」と声あり)

○加藤部会長 それでは、御出席の委員の皆様の御了解をいただけたかなと思いますけれども、よろしいでしょうか。

 事務局、どうぞ。

○梅木補佐 感受性試験結果の確実な把握についてもよろしいでしょうか。6ページです。今回2つ審議していただきたいのですが、薬剤感受性。

○加藤部会長 次にいこうと思ったのです。7ページの一番下に書いていて、こちらは患者のほうなので、ちょっと分けて議論したほうがいいかなと考えていたのですけれども。

もう一つは薬剤感受性検査ですが、これは患者さんのデータとしての把握ということになりますので、先ほどの病原体と法律的な枠組みはちょっと違うということですね。ここは確認した上で、これまで結核登録票の記載事項の中になかったものとして薬剤感受性検査の結果ですね。これはどこまでとかと具体的にはまだ入っていないのですね。

○梅木補佐 はい。

○加藤部会長 どうぞ。

○有馬委員 そこのところなのですけれども、結核で亡くなった方などが、接触者健診を実施する場合、必ず感受性検査は必要になるのですが、医療機関では、患者が亡くなってしまいますと、菌株を廃棄してしまったり、感受性検査をするということにおいてのお金の出どころが問題になります。特に大阪などは、住所不定者の方が亡くなった場合は、感受性検査のお金の出どころがとても宙に浮く状態になってしまうのですけれども、そのあたりはどんなものなのでしょうか。

○加藤部会長 データの収集のプロセスの問題ということになりますね。

○有馬委員 ええ。とても必要であるし、こうして法律に書かれますと、現場のほうでは確実に入手するというところが義務づけられるというか、きちっと把握できるようになると思うのですが、少しそういう問題も出てくるのではないかなと思っておるのですけれども。

○加藤部会長 この点についてはどのように考えますか。医療機関側としてはどんなことになりますか。

○山岸委員 医療機関としては、亡くなった方の検査を保険請求はできませんので、病院で検査するのであれば、病院が負担してやることになります。

 一方で、今、お話があった保健所のほうから疫学的に必要であるということで、保健所持ちでやってくれると一番わかりやすくて、ありがたいと思います。

○加藤部会長 考え方を整理すると、積極的疫学調査の対象みたいな形で整理されることは可能なのでしょうか。

○梅木補佐 ケースによっては可能ですが、もともと今回の薬剤感受性試験の結果というのは、最初に御手洗参考人がおっしゃっていたように、医療の基準に載っている、要は、培養が出た場合には確実に薬剤感受性検査をするということが定められておりますので、そういった内容を記載していただくというのをまずは想定している。例外的な話をどこまで詰めるかということはまだこれからでありますが、大枠としてはそういったところの記載をお願いしたい。

○加藤部会長 わかりました。

今の御説明のとおり、医療基準にのっとった必要性の範囲の中でデータを集めると。それから先については再度検討いただくということでよろしいでしょうか。

 ありがとうございました。

 ほかはございますでしょうか。中山委員、どうぞ。

○中山委員 教えてほしいのですが、薬剤感受性試験というのは、今のように診断があったときには菌を培養して検査をするわけですね。そうすると、亡くなってからということは余りイメージとして湧かなかったのですが、これは例えば何カ月に一遍とかそういうタームでやるような試験なのでしょうか。

○加藤部会長 いかがでしょうか。

○山岸委員 今、有馬委員がお話しになったのは、痰から菌が出て結核と診断されたのだけれども、既に患者が亡くなっているというようなことだと思うのです。結核菌というのは通常、検査室にまだ残っていますので、検査室に薬剤感受性検査をしてほしいというのが先ほどの趣旨だと思うのです。ですから、残っているものですから、それは死亡しても使えるわけです。

○中山委員 一度やったらおしまいというか、1回やればいいものなのでしょうか。

○山岸委員 いろいろ考え方があるのですけれども、通常は診断前に喀痰抗酸菌塗抹・培養検査を3回やっていると思います。診断がついて治療を開始してから、一般的に週1回行っている病院が多いのではないかと思います。

○鎌田委員 中山委員の御質問は薬剤感受性検査の頻度についての御質問と思います。培養陽性となった段階で薬剤感受性検査を行って、耐性の無いことが確認出来れば、その後頻回に行うことはありません。

○加藤部会長 亡くなった方の必要性という観点で言えば、接触健診としてやった場合に、接触を受けた人に対して予防的治療をするわけですね。前で言うと予防的、現在は潜在性結核感染症の治療をするのですけれども、その際に使うイソニアジドという薬について、感受性があるかどうかという確認が必要だという観点から、亡くなった方のデータがあったほうが望ましいということになります。

 うつった可能性がある人についても、もし発病した人の治療という観点から、亡くなった方についても可能な限りデータがあったほうが望ましいという理解になります。

 ほかにございますでしょうか。

 それでは、事務局からの提案、結核登録者票の記載事項として薬剤感受性検査の結果を入れるということについて、皆さん、よろしゅうございますでしょうか。

(「はい」と声あり)

○加藤部会長 それでは、結核部会としてこれを了承したという結論にしたいと思います。

 ほかに病原体サーベイランスについて、何かありますでしょうか。よろしいでしょうか。

 それでは、議題1について部会として了承したということでまとめたいと思います。

 次に、その他の報告事項に移りたいと思います。

まず初めに、参考資料2「新規抗結核薬について」ということで、事務局から説明をお願いいたします。

○梅木補佐 それでは、お手元の参考資料2「新規抗結核薬について」の説明、報告に移りたいと思います。

 1枚おめくりいただきまして、「新規抗結核薬とMDR結核の現状と今後について」ということになります。

 平成24年の新登録患者数は2万1,283人いました。そのうち肺結核培養陽性結核患者で薬剤感受性試験結果の報告があった者が8,347人ということで、培養結果が出た場合は薬剤感受性試験を必ずやることと決められていますが、そういった対象の中では約74.1%ぐらいがこれでカバーできているということになります。

8,347人の培養検査結果が把握されているのですが、その中で2剤、先ほどのイソニアジドとかリファンピシン、両剤耐性を有する者は60人いたといった報告になっております。

 2段目に移ります。

 こういったMDR結核治療に使用する新薬について、現在、世界では開発が進められておりまして、2剤が実用段階に近いということになっております。デラマニドとベダキリンというものになります。

国内においては、デラマニドという大塚製薬がつくっている薬が、国内で数十年ぶりの抗結核薬として平成26年4月30日に薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会において承認を可とされたところになります。MDR結核治療に対する成績向上への貢献が期待されているといったところです。

デラマニドが正式に承認された場合においては、結核医療の基準の改正の是非についても審議を予定しているといったところになります。

以上です。

○加藤部会長 ありがとうございました。

 ただいまの御説明について、御質問等ございますでしょうか。よろしいでしょうか。先般の結核病学会でも議論が多少ありましたね。

○山岸委員 今、お話がありましたように、MDRの結核の患者さんは60人ぐらいということで、人数が少ないのですけれども、当初は多剤耐性結核だけを対象にしてやっていきたいと思っているのですが、一定の治療の成果が出てから、治療期間の短縮とか結核医療の基準の改正のところでまたお話が出てくるのではないかと思っております。

○加藤部会長 ありがとうございました。

 ほかに何か御質問はありますか。有馬委員、どうぞ。

○有馬委員 大阪市の有馬と申します。

 ちょっと素人感覚の質問になるかもわかりませんけれども、多剤耐性の患者さんが出てきたというのは、薬に対しての耐性菌がふえてきて、耐性状態になったと。デラマニドに対しても、多剤耐性の患者さんに使用していくという形になっていきますと、どれぐらいの期間、どんな状況になってくると耐性になる可能性があるのか。多剤耐性の患者さんがこの新薬を心待ちにしている現状を私は目の当たりに見ておりますので、早く使ってあげてほしいというのが現実なのです。

しかしながら、患者さんのほうは、またどうせこの薬に対しての耐性が出てくるのではないかという不安を抱く。その方はXDRですので、とても心配をしていらっしゃるのです。そのあたりはどんなものなのでしょうか。

○加藤部会長 山岸先生、よろしいですか。

○山岸委員 デラマニドに対する耐性というのはまだ余り明らかになっていないと思うのですけれども、1つ言えるのは、単剤の使用はやめてほしいと。ですから、XDRということでお話がありましたが、ほかに使える薬剤がないと使用は難しい。デラマニドに対する耐性をつくってしまうと、とても悪い影響を及ぼすということで、ほかに使える薬剤を確保しておかないと、この薬剤も使えないと思います。

○有馬委員 そうなのですね。単剤治療になるような患者さんには適用にならないという状況は変わりはないということですね。

○山岸委員 はい。

○加藤部会長 ありがとうございました。

 ほかはよろしゅうございますか。

 それでは、続きまして、報告事項の2つ目ということで、参考資料3「結核院内(施設内)感染対策の手引き」というのは、お手元の冊子のとおり、厚生科学研究の成果物になったわけでございまして、私がこの研究代表者でまとめたものですので、私のほうから御説明を申し上げたいと思います。

お手元の「委員にのみ配布」と書いてあるものはメモ程度のことなのですが、それに沿ってお話し申し上げます。

この経緯ですけれども、結核の集団感染の厚生労働省の報告事例は、毎年のようにこの部会において公表されていると思いますが、2011年の前の年が38件。それまで大体40件前後で推移したのですけれども、2011年には64件と非常に増加しまして、特に病院での事例が非常に多くなったということで、今回策定しました手引きが求められたというものであります。

この手引きは、平成12年当時、結核が急増した後の厚生労働省の緊急研究班が策定されて、そこの成果物として「結核院内(施設内)感染対策の手引き」が平成12年に策定されたものですから、かなり時間がたっているということで、これを改訂する必要があったわけです。

改訂と言いながら、当時のメンバーと全く違うメンバーがつくっていますので、改訂というのはちょっとおこがましいですが、26年3月に策定したことになっていますけれども、平成12年につくったものが下地になっています。

お手元の参考資料3に研究協力者の名前がございますが、結核医療と対策の専門家、それに加えて、ICNあるいはICDといった院内感染対策の専門家の協力をいただきまして、この原案を策定しました。

これは前年の成果物として策定したのですけれども、これにつきまして、日本医師会、国公立大学附属病院感染対策協議会、私立医科大学病院感染対策協議会、厚生労働省結核感染症課、精神・障害保健課、高齢者支援課、法務省矯正局矯正医療管理官室等から意見をいただきまして加筆・修正し、最終版としたものであります。

 小森委員にも御協力いただきまして、まことにありがとうございました。この場をかりて御礼申し上げます。

策定の方針としては、院内感染対策の基本的な考え方というのは余り変わっていません。

お手元の参考資料3、本編の6ページの表3に「結核院内感染対策の基本的な5要素」ということで書かれていますけれども、結核菌の除去のための早期発見、一般の患者、結核以外を疑われる患者との分離、化学療法、治療。

結核菌の密度の低下のために、換気とか採痰時の注意、紫外線の照射とか患者さんのマスクの着用。

吸入する菌の減少のために防御マスク(N95型マスク)を着用する。

発病の予防のためのBCG接種とか潜在性結核感染症治療。

早期発見のための定期健康診断、あるいは有症状時の早期受診。

こういったことは基本的に変わっていません。

したがいまして、今回策定に当たりまして、統計等は新しいものにしていますし、この間に当時の結核予防法が感染症法に統合されているということで、それに伴って結核対策全般が大きく変わっていますので、そういった法令規制等を更新した上で、技術的なものとしては、感染診断法としてインターフェロンγ遊離試験が新しくなっている。治療等もそうですけれども、特にこれについては大きく変わっていますので、取り入れています。

ただいま御説明申し上げたとおり、関係機関の意見を取り入れて、結核を専門としない医療従事者とか施設においてもなるべく理解しやすいようにというふうに配慮しています。

日本結核病学会も平成22年3月に「医療施設内結核感染対策について」という声明を出しておりますので、それも参考にしながら原案を作成しております。対策については「必要である」ということで、望ましいのだけれども実際は難しい部分があるということで、ある程度区別をしまして、実情に即して内容として記述しておるということであります。ぜひ現場の対策に活用していただければと思っております。

以上、簡単ですけれども、御説明させていただきました。

これにつきまして、何か御質問等ありますでしょうか。できたものですから、これから変えるということはなかなか。次期の改訂までできないのですけれども。どうぞ。

○小森委員 医療機関において院内感染を抑えるというのは医療機関の使命であると強く認識をしているところですが、特に採用時にIGRAを全例行っていくと、かなり高額であるわけです。

しばらく前は、定期の胸のレントゲンであるとか、採用時にツベルクリンのテスト、記録をしっかり残すということは、いろんな形で各医療機関の隅々まで、市区町村の医師会のレベルを中心にして、結核予防会の森先生とかにも来ていただきながら、我々も学びながら、100%やっていこうねということなのです。

金銭的にもかかるわけですが、そういうことは責務として強く認識しているところですけれども、そういったことの実効性を上げていくということが必要なので、医療機関に対する研修会、講習会に対する御支援もぜひお願いしたいなと思っています。局長もいらっしゃるので、そこら辺はぜひお考えいただきたい。

私どもとしても、患者さんを守るためには、その時期その時期の医療水準を医療機関がしっかり実行しているかということが極めて重要な視点です。そういう意味で、事前にお話もいただいたのですが、担当としては、医療機関の責務としてこれを積極的に受け入れましょうということでお話し合いをしてきたわけです。

さりとて、すべての医療機関に周知され、実行されて初めてこれが意味があるということですので、そのことについての特段の配慮をお願いしたいということを申し上げておきます。ぜひよろしくお願いします。今のところは総論的なことです。

○加藤部会長 ありがとうございました。

 ほかに何かございますでしょうか。

貴重な御提言をいただきましたけれども、自治体とか医師会レベルで研修会をやられているということは時々ありまして、私どももその講師として呼ばれて、ここにおいでの先生方もそういうことがあろうかと思いますが、ある程度実施されているところかなと思いますが、より徹底というふうな御提言ということで承りたいと思います。ありがとうございました。

 それでは、次に、参考資料4「保健所に向けた刑事施設における結核対策の手引き」ということで、河津参考人から御説明をお願いいたします。

○河津参考人 結核研究所の河津と申します。よろしくお願いいたします。

 まず、最初に申し上げておきますが、こちらの手引きは厚生労働科学研究「地域における効果的な結核対策の強化に関する研究」の分担研究として行われました「社会的弱者の結核対策に関する研究」の成果として作成いたしました。

 参考資料4の2ページ目をごらんください。

まず、この手引きの作成に至りました背景について、少し御説明させていただきたいと思います。

刑事施設被収容者が結核のハイリスク者であることは世界的にも認知されておりまして、各国でさまざまな対策が進められております。

本邦でも刑事施設の被収容者の結核罹患率は、一般人口と比べて約13倍前後であることから、結核に脆弱な人口であることは間違いないと思われます。

一方で、本邦では刑事施設における結核対策に刑事施設と保健所の連携は必須と考えられますが、これまでに連携のあり方について明確な指針が存在しませんでした。そのため、個々の刑事施設や保健所が手探りで対応していて、それぞれの認識や取り組みにばらつきがあって、刑事施設の結核対策に格差が生じている。このことは、元府中保健所の保健師の臼井氏が自身の保健医療科学院の研究テーマとして2年前に発表、報告されています。

今回、我々も手引きを作成するに当たり現状調査を実施しましたが、結果としては同じような状況が明らかとなりました。

3ページ目をごらんください。

こちらは刑事施設より発生届を受理した際に、保健所は患者に対して初動調査の一環として面接を行っているかということを聞いた結果をお示ししています。62%が「面接をしたことがない」と回答しており、その9割弱が刑事施設のほうでちゃんとやってくれるだろうといった理由で必要性を感じない。なので、「面接の要請をしたことがない」と回答しておりました。

一方で、19%の保健所は常に患者と面接をしているという状況でした。

次のページは、治療途中の患者が出所する際に、刑事施設とどういった連携、主に情報提供を受けているかということを聞いた結果をお示ししています。

半数以上、65%が出所日、帰住先、また連絡先等の情報提供があると回答していましたが、一方で、18%は出所日のみの情報提供、また、7%は一切の情報提供がないと回答していました。

次のページをごらんください。

したがいまして、本手引きの狙いとしましては、刑事施設で発生した結核に対して保健所がかかわり得る段階において、刑事施設と整合性のある協力、連携体制を築いていくための保健所職員向けの指針となることを目的としました。

次のページは、主な内容をお示ししています。

4章で構成されておりまして、第1章が序章として世界と本邦における刑事施設の結核の現状をまとめております。

第2章が新規患者発生時の対応について。

第3章が接触者への対応について。

第4章が刑事施設に対する普及啓発について、まとめてあります。

また、今回、積極的疫学調査票と服薬支援計画票、リスクアセスメント票の様式をあくまで案、参考様式として提示させていただきました。こちらについては追って詳しく御説明いたします。

 次のページは、新規患者発生時の対応に関してです。例えば現状調査からはお示ししてあるような課題、問題点が明らかになっていました。

一例を挙げますと、積極的疫学調査に伴う情報収集が困難、あるいは得られる情報の質と量が施設によって大きく異なっているということが明らかになりました。

主な原因としましては、感染症法と個人情報保護法の兼ね合いと申しますか、それに対するそれぞれの担当者の理解が異なっているということが明らかになりました。

情報収集が困難であると回答した保健所のほぼ全てが、刑事施設のほうで「個人情報保護法のため」という理由から情報提供がないというふうに話されていたのですが、一方で、積極的疫学調査において情報提供していただいている、ちゃんと協力いただいていると回答した保健所の多くが、感染症法の説明を丁寧に繰り返し行うこと、刑事施設担当者と実際に会って協議すること、日ごろから連絡を取り合って風通しをよくすること、そういったことが信頼関係の構築につながって、情報の共有につながったと話していました。

手引きとしましては、これらの経験をまとめて刑事施設から理解、協力を得るためのポイントとして紹介するほか、患者情報の収集が行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律の第八条第二項に該当することを説明し、したがって、法的根拠があること。

また、必要に応じて刑事施設担当者にそのことも説明する。

また、先ほども触れましたが、患者調査票を提示したりするということを提案しております。

患者調査票に関しましては、参考資料の番号はないのですが、こちらの手引きの41ページをごらんください。今回の現状調査からは、積極的疫学調査の際に独自で作成したものを使用している保健所もあれば、特に調査票はつくらず、口頭で情報を得ている保健所、また、情報がもらえず、登録票がほぼ毎回白紙に近いという保健所がありました。

また、現場からは、刑務所という特殊な施設に対して、どこまで聞いていいのかわからない、遠慮してしまうという声も聞かれました。

手引きに関しては、ことしの2月に意見交換会を実施しましたが、その際にも、この際、標準化したものをつくってしまえばよいのだという意見も出ました。

したがって、今回、接触者健診の手引きにあります調査票をもとに、刑事施設被収容者という特性を加味した変更を加えて作成して、そのひな形をあくまで案、参考様式として提案させていただいています。

次のページは、接触者への対応に関してです。接触者健診に関して、保健所がどのようにどの程度関与するのかといった認識、対応に格差があることが現状調査からわかりました。

また、意見交換会では、接触者健診の流れは原則として接触者健診の手引きに従うとしても、刑事施設の被収容者に関して、例えば当該施設に入所するまでにどういった経過があったのか、その間にどういった人たちとどれくらいの期間接触していたか、そういった情報が全くわからないので、提示していただきたいという意見がありました。

したがって、手引きとしましては、他保健所の事例の紹介のほかに、刑事施設側の職員である研究協力者にも御協力いただいて、刑事施設被収容者特有の接触者の特徴や、逮捕から刑務所入所までのプロセスと、その間に被収容者とかかわる可能性のある接触者についてまとめております。

最後に、刑事施設に対する普及啓発は、普及啓発活動を行っている保健所がそもそも少なかったので、提供できる事例が限られてはいたのですが、刑事施設側の研究協力者より、こういった機会に刑事施設を訪問して結核について普及啓発をしてはどうかとか、また、保健所としてはこういったサービスを提供できることを積極的にアピールしてはどうかなどといった提案が出されたので、それをまとめております。

こちらのテーマに関しては、まだ未開発であると考えており、章としては短いのですが、今後、この手引きをきっかけに事例が蓄積されれば、さらに詳しい課題の分析や具体的な提案を出していけるのではないかと思っております。

説明は以上となります。ありがとうございました。

○加藤部会長 ありがとうございました。

 ただいまの御説明に御質問はございますか。よろしいでしょうか。

それでは、以上で本日予定した議題は全て終了しましたけれども、各委員から特別御発言ございますでしょうか。よろしいでしょうか。では、山岸委員、どうぞ。

○山岸委員 まだ時間があるようですので、先々週、日本結核病学会が岐阜で開かれたときに話題になったことをお話ししたいと思います。

 日本の結核というのは、今、中蔓延国ですけれども、県によっては罹患率10を割るようなところもふえてきている。たしか3県あったと思います。低蔓延化に向かっている現在の日本の結核医療に関して言えば、医療の確保、すなわち人材の確保と病床の確保が非常に重要であるという話が出ました。

 その中で、人材確保に関しては、結核病学会が認定医・指導医制度というのを数年前から導入しておりまして、普通の専門医制度とは違って独自のものなのですけれども、若い先生方に結核に興味を持ってもらおうということで取り組んでおります。それで会員数がふえましたし、実際に結核の総会に出てくれる先生もふえてきております。

一方で、抗酸菌症エキスパート制度というのを今年から始めました。看護師さんとか保健師さん、それ以外のパラメディカルの人、薬剤師さんとかそういう方たちに参加していただきたいということで、今年から始めましたところ、これもかなり多くの方が参加してくださったということで、人材確保ということから言えば、結核医療にかかわる人材、若い方々の発掘というか、興味を持って参加していただくということに関してはうまくいきつつあるのではないかと思っております。

一方で、病床の確保ということなのですけれども、罹患率が減って、患者数が減ってきたということで、病棟単位で持つことがなかなか難しくなってきて、県内に1つの病院しか結核病棟を持っていない県というのが6県とか7県あると聞いていますが、そういう方向にだんだんなってきている。結核病棟には結核患者さんしか入れない、ベッドがあいていても一般の方は入れられないということで、どうしても不採算になってしまうということがあります。そういうことで、ユニット化してきたり、結核病棟を一般病棟に変更したりという形で、結核のベッドがだんだん減ってきているということが言われておりました。

少ない患者さんを診るようになると、結核の医療のレベルを確保するのがなかなか難しくなってきているということで、結核病床の確保に関しては、国として考えていかなければいけない課題ではないかなというふうな発言が学会の中でございました。

以上でございます。

○加藤部会長 ありがとうございました。

 結核に関する特定感染症予防指針でも、医療については非常に重要なポイントとして議論され、学会としても努力されていますし、医療機関でもユニット化等々で進めるということですが、総合的な対策の推進がさらに求められているという議論がされているということかと思います。ありがとうございました。

 有馬委員、どうぞ。

○有馬委員 大阪市の有馬です。

今回の審議の本題のところにまた戻るのですが、MDRが三種から四種になっていくということで、確実に搬送されてくる菌株がふえてくる。デラマニドなどがMDRの患者さんに使用されてくるから、耐性になっていないかどうかというのが確実にわかってくるというのはとてもいいことだと思うのですけれども、一方、市町村、都道府県の予算的なところが、サーベイランスの検査を実施していくに当たって厳しいという声も出てきておりますので、ぜひともそのあたりの担保もお願いしたいなということが1点。

もう一点は、先ほど多剤耐性の薬としてデラマニドが審議されて通っていったという話の中で、1剤だけという形になってきますと、先ほど言ったXDRの患者さんは使えないとか、いつ何どきまた耐性という状況になるか。ベギタリヤとかなんとか、もう一つありますね。

○加藤部会長 ベダキリン。

○有馬委員 ベダキリン。

耐性結核に対する薬が通ることは確実に難治性の結核の患者さんへの治療が進んでいくという形になっていくのかと思いますので、1剤だけが通っていくというのではなくて、できたら複数通って使用できるような状況をつくってほしい。持続排菌の患者さんが長期に入院されている現実がありますので、そういう患者さんに光が差した状態を早くつくってほしいなというのがあります。

 この2点を最後にちょっと言いたかったです。

○加藤部会長 ありがとうございました。

 ほかに何かございますでしょうか。

 それでは、全て議論が終了したということで、閉会とさせていただきたいと思います。

事務局から何か補足がございますでしょうか。

○難波江補佐 ありがとうございました。

 次回の開催につきましては、日程調整の上、改めて御連絡させていただきます。

○加藤部会長 それでは、これをもちまして第3回「厚生科学審議会結核部会」を終了させていただきたいと思います。本日はどうもありがとうございました。


(了)

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