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2014年4月21日 第4回東電福島第一原発緊急作業従事者に対する疫学的研究のあり方に関する専門家検討会  議事録

労働基準局安全衛生部労働衛生課

○日時

平成26年4月21日(月)
15:30~17:30


○場所

厚生労働省専用第12会議室(12階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2)


○議事

○得津電離放射線労働者健康対策室長 本日はお忙しい中、御参集いただきまして誠にありがとうございます。ただいまより、第 4 回東電福島第一原発緊急作業従事者に対する疫学的研究のあり方に関する専門家検討会を開催します。初めに、委員の出席状況です。本日は高村委員が御欠席との連絡を受けております。それ以外の 6 名の委員の先生方には御参集いただいています。カメラの撮影はここまでとさせていただきますので、よろしくお願いします。本日も議事進行は大久保座長にお願いいたします。

○大久保座長 最初に、資料の確認をお願いします。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 まず 1 ページ目が次第で、 1 ページめくっていただきますと、資料 1 ということで開催要綱があります。 4 ページに資料 2 ということで、前回の議事録の案が付いております。 21 ページに資料 3 ということで UNSCEAR の報告書の概要、 24 ページに資料 4 ということで児玉委員提出の資料、 25 ページに資料 5 ということで疫学研究の体制のイメージ、 26 ページからは資料 6 ということで報告書の案があります。

○大久保座長  UNSCEAR( 原子放射線の影響に関する国連科学委員会 ) の報告書が出ております。この内容を拝見しますと、私どもが今検討している疫学調査に関係が深いので、この内容を事務局から御紹介していただきたいと思います。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 それでは 21 ページの資料 3 UNSCEAR の報告書の概要」を御説明いたします。この経緯ですが、 UNSCEAR 2011 年から、今回の震災に伴う原発の放射線レベルとその影響評価を行っております。これには大きく 4 点あります。 1 つ目が原発事故関連の各種データ、 2 つ目が放射性物質の放出と拡散状況、 3 つ目が公衆と作業者の被ばく線量と健康影響、 4 つ目がヒト以外の動植物の被ばく線量とリスクの評価、の各事項について、科学的な報告として取りまとめ、本年 4 2 日に公表しております。本日はこのうち、作業者に関する部分について御説明させていただきます。

2 (1) 「作業者の被ばく線量」については、かなりたくさんの記載があります。アが被ばく線量です。これは客観事実として、 2012 4 月までの作業者 2 万人少々のうち、最も高い実効線量が東電社員の 679mSv 、線量の中央値が約 5mSv で、 250mSv を超える案件が 6 件だったという客観事実が書いてあります。

 イが日本側が実施した内部被ばく評価に対する評価です。大きく 4 点ほど指摘があります。まず 1 点目が、最も内部被ばくが高い 12 人に UNSCEAR の独立評価を行ったところ、独立評価の結果と東京電力が実施した評価とは良好な一致が見られたという評価です。

2 つ目が、内部被ばく測定の開始が遅れたために、ヨウ素 133 のような短半減期の放射性核種が測定されていないということです。こういった短半減期核種による影響は、ヨウ素 131 による被ばく線量の約 20 %に当たると推定されると指摘されております。これらの要因あるいは、そのほかの不確実性により、事故初期の被ばく線量を確実に把握するためには、 UNSCEAR 側で更なる作業が必要であるといった評価があります。

 それから、協力会社が実施した内部被ばく線量については、 19 人が比較できたわけですが、そのうち 8 人が UNSCEAR による測定値の約 50 %未満であったということで、協力会社の内部被ばく評価については信頼性を確認できなかったという指摘があります。ただ、これについては日本側で 2013 7 月に、東京電力の評価と元請の評価があったものについて再評価を行っており、両者の乖離を解消するような形の再評価を公表しております。これについても UNSCEAR に情報提供をしておりますが、 UNSCEAR 側としては時間がなく、詳しい評価はできていないということで、今後再評価の更なる分析が必要であるというコメントとなっております。

 次のページが、 (2) 「健康への影響」です。これは確定的影響、一般的ながん、甲状腺がんと白血病という 3 つに分かれております。まず確定的影響については、緊急作業に従事していた作業について、放射線の影響による死亡又は急性の健康障害は発生していません。ただし、強い心理的な影響は認められていると。それから、 13 人の作業者がヨウ素 131 により、 2 12Gy の甲状腺吸収線量を受けたと見られますが、こういった者の甲状腺機能低下症の可能性は排除できないけれど低いだろうと。また、心血管疾患のリスクも非常に低いと。白内障のリスクについては、情報が不十分なので判断できないといった記載になっております。

 一般的ながんのリスクですが、ほとんどの作業者 (99.3 ) の方については、実効線量が平均 10mSv を下回るので、このグループの作業者で被ばくを原因とする健康影響が識別可能なほど高くなることは予測されない。一方、作業者の 0.7 %は 100mSv 以上の実効線量を受けておりますので、このグループでは、がんのリスクが高くなることが予想されるが、放射線被ばくによりがんの発生率の上昇が識別可能なレベルになる可能性は低いという評価です。

3 つ目の甲状腺がんと白血病のリスクです。約 2,000 人が甲状腺吸収線量で 100mGy を超えたと推定されております。この 100 1,000mGy の範囲で、成人期の被ばくの甲状腺がんの上昇の根拠は曖昧ですが、このグループ内での甲状腺がんの発生率上昇を識別できる可能性は低いという指摘です。甲状腺の吸収線量が 2 12Gy の方が 13 人います。これらの方の甲状腺がんのリスクは高いということですが、人数が少な過ぎるため、発生率の上昇は識別できません。また、これらの者の白血病リスクについても人数が少ないため、発生率の上昇を識別できるとは予測されないといった評価となっております。

 それから、今後の研究等に関する提言というのがありますが、作業者に関する部分です。まず、 (1) 「作業者の被ばく線量」に関する提言には、大きく 3 つあります。 1 つは、実効線量評価です。これについては事故初期の作業履歴、環境中のレベルのトレンド ( 短半減期核種を含む ) 、作業場所・休憩場所の空間線量、個人線量計を共有した際の信頼性、被ばく防護措置といったものを考慮に入れつつ、緊急作業従事者の被ばく線量評価の不確実性を定量化する必要があるということで、まだ引き続き詳細な検討が必要だというスタンスです。 2 つ目、等価線量評価については、緊急作業従事者の眼の水晶体吸収線量、水晶体混濁と白内障のリスクの評価についての検討が必要であるという御指摘があります。 3 つ目が協力会社の実効線量評価の品質の確認です。これについて、日本政府としては実施済みという認識です。

(2) の「健康への影響」の提言としては、将来、更なる調査を実施できるように被ばくをしていない作業者と、実効線量が 100mSv を超える社員について、外科手術により摘出された組織、これはがん細胞のことを言っていると思いますが、これを保管する組織バンクの設立が望ましいのではないかという御指摘がありました。説明は以上です。

○大久保座長 以上のようなことですので、本日の議論に際して皆さん方も念頭に置きながら、御発言を頂きたいと思います。本日の審議の主な目的は、事務局から用意されている報告書案について御審議を頂きます。全部で 8 項目ありますので、 1 項目ずつ討議を進めていきたいと思います。今までのように 1 項目ずつ、事務局から簡単に提案をしていただき、それに基づいて議論を進めたいと思います。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 まず、 28 ページのローマ数字1に「開催要綱及び参集者」というのがあります。これは出来合いのものを付けておりますので、説明は省略させていただきます。 30 ページのローマ数字2も「検討の経緯」ですので、説明は省略させていただきます。

31 ページからがローマ数字3、「疫学調査に当たっての基本的考え方」ということでまとめております。第 1 に「趣旨」ということで入れております。第 1 パラグラフに書いておりますのは、平成 23 12 16 日まで、緊急被ばく限度を 250 ミリシーベルトに引き上げていたと。この間、 2 万人の緊急作業者が作業に従事した上で、 173 人について 5 年間の線量限度を超える 100 ミリシーベルトを超える方がおられたと。こういった方については、放射線への被ばくによる健康障害の発生が懸念されますので、指針を制定し、厚生労働省でデータベースを構築し、離職後も含めた長期的な健康管理を行っているということです。

 次のパラグラフです。この長期健康管理に関する検討会の報告書では、このデータベース管理される情報は、一定の条件で疫学調査などに活用される場合を想定しております。その場合は適切な調査計画に基づき実施されるべきとされております。今回の検討会では、緊急作業従事者を対象とした疫学研究の研究計画を策定するに当たって、留意すべき基本的な考え方をまとめたという趣旨です。

○大久保座長 これはよろしいですね。最初の文章の中で「 2 万人が従事し、 173 人が」といきなりきているのですが、「このうち 173 人」と書いたほうが、恐らく誤解がないと思います。何か別の 173 人と読めないこともないので。よろしければ 2 番をお願いします。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐  32 ページから御説明いたします。第 2 として、「集団設定、調査手法」です。まず、 1 の「対象・規模」については御議論いただいて、基本的に緊急作業従事者約 2 万人全員を、対象集団として設定します。調査期間は、原則として調査対象者の生涯にわたるものとします。対象集団の中で、研究対象とするばく露因子を複数設定する場合には、生涯線量にマッチングした上で、対象集団の中に複数の小集団 ( サブコホート集団 ) の設定を行うことも可能とする。研究の実施に当たっては、倫理指針に基づき、研究実施機関における倫理委員会に諮った上で、同意の取得、個人情報保護などを適切に実施するというのが 1 番です。

2 番が「研究の対象となるばく露因子」です。基本的には生涯線量をばく露因子と設定するわけですが、それ以外にも様々なばく露因子を捉えることを可能にします。例えば注 2 に書いてありますように、短期間に高い被ばくをしたこと、あるいは注 3 にありますように、臓器別の内部被ばくといったそれぞれのばく露とエンドポイントの量反応関係を調査するような小集団設定も可能にするということです。

3 つ目が「研究手法」です。対象集団全員を対象とした前向きコホート調査を原則とします。コホート内ケースコントロール研究の実施についても検討すべきであると。それから、調査開始時には純粋な観察的な研究とするのか、希望者に対して一定の介入、例えば保健指導あるいは精密検査後のフォローアップ、健康相談といった介入を実施するのかということを判断する必要があります。いずれの場合であっても、受診率を維持・向上するために、ニュースレターの配布など、積極的な情報提供を実施すべきであるということです。

4 つ目が「調査対象集団の捕捉のための現況調査等」です。これについては厚生労働省のほうに、法令に基づき提出された被ばく線量などが集まります。また、厚生労働省が運営するデータベースに関して、定期的に現況調査を実施する予定です。ここで住所や電話番号、雇用事業者、放射線業務の有無などについて把握するので、研究実施者は厚生労働省のデータベースから更新された住所情報などを入手し、それを使用して疫学研究を実施するということです。入手する方法については、研究開発型独法又は厚生労働省予算による研究実施者からの申請に基づいて、厚生労働省のほうで個人情報保護の方策などが十分に講じられていることを審査した上で提供するというスキームを構築するということです。

○大久保座長 これは非常に基本的なところです。いかがでしょうか。御発言はございますか。

○笠置委員 確認です。 1 (3) で、「対象集団の中で、研究対象となるばく露因子を複数設定する場合は、生涯線量でマッチングした上で」と書いておられます。これはそういう集団の設定を行う時点までの線量という理解でしょうか。多分、この方々は将来的にいろいろな施設で働いて、放射線ばく露ということがあり得るわけですから、生涯的に線量でマッチングというのが、ずっと続いていくという話になります。ですから小集団を設定するときまでの累積線量、それを「生涯線量」と言うのでしょうけれども、それでマッチングするという理解ですよね。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 おっしゃるように、今回は作業者を対象にしていますので、生涯線量は日々変わっていくという困難さがありますので、一定の時点を切った上で設定せざるを得ないかと思います。もちろん、それはずっと後でフォローしてはいくと思います。

○大久保座長 私もそれは問題だと思っているところです。 1 (1) で、しっかりと対象者を定義していますよね。この理由は、上限値を変えた期間に従事した人を対象にしているから、当然それを対象にするのだったら、まずターゲットにするばく露はその期間のばく露にしないと、話がこんがらかると思うのです。それ以外のばく露について、どう取り扱うかということで整理すると、今の話は整理されると思います。

 そういう意味では研究対象となるばく露因子、 (2) に書いてある所にターゲット、研究の対象にしているのはいつのばく露であるということを、まず書いてしまったほうが後が簡単だと思うのです。そうすればそれ以前にばく露したものも、それ以降にフォローアップの期間中にどんどん蓄積されてくるものも、それは全てコンファウンディングなばく露と定義されるので、そういう構造のほうが多分、論理的にはしっかりしていると思うのです。それでどうでしょうか。

○笠置委員 おっしゃるとおりだと思います。

○大久保座長 先生も前から、昔からのばく露と今回のばく露との対比をする必要性を主張されていたけれども、そういうようにすれば必要な対比が、全部定義できるのではないでしょうか。

○笠置委員 ただ、 2 万人の集団の中で小集団で設定を行うということが、 (3) で書かれておりますので。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 ここで意図しているのは、例えば緊急作業中に 10 ミリシーベルトぐらい受けた方と、 500 ミリシーベルト受けた方がいるとして、その対比を見ようとするときには、もちろんそれぞれ分けて集団を追いかけるわけですが、その時にはやはりそれまで受けた過去の被ばく線量は無視できないので、その時点は決めないといけません。例えば、それを平成 23 3 11 日と決めてもいいのですが、その瞬間までの線量でマッチングした上で集団を分けるようにすれば、緊急の被ばくのばく露の違いだけで、エンドポイントに違いが出ることになってきますから、そういったことを念頭に置いているということです。

○大久保座長 ですから対象内集団云々という話は、そういうように整理すると、 2 番の「研究対象となるばく露因子」のほうに移したほうがいいですね。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 そうですね。

○大久保座長 研究対象とするメジャーなところは決められた期間だけれども、それに対していろいろな期間内の分析もするし、それ以前のばく露も以降のばく露も全部解析していかなければいけないので、そういうように対峙させたほうが整理できると思います。「生涯線量」という言葉は、これでいいのですか。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 今の御指摘を踏まえますと、「緊急作業以前の線量」と言ったほうが正しいような気がしてきました。

○大久保座長 そうですよね。「生涯線量」という言葉が少し曖昧になってきたと思うのです。緊急作業時の被ばくというのは内部被ばくもあるので、預託線量を含めたその期間の生涯にわたる線量ですよね。ということは、預託線量でいいということでしょ。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 預託線量は内部被ばくになりますので、もちろん外部被ばくも含めて。

○大久保座長 預託線量プラス外部被ばくですね。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 はい。私もその辺はきちんと区別していませんでした。マッチングするときの生涯線量は緊急作業以前の線量ですので、その辺は分けて。

○大久保座長 だから、それはいろいろな解析があり得るのですよね。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 はい、そうです。

○大久保座長 ギリギリ言うと研究の方法の所かもしれないけれども、倫理に関する所は 1 番に入っていていいですよね。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 「研究手法」に移しても差し支えないですが。

○大久保座長 そうですね。ここは大きくは基本的な集団の定義をしている所だから、後ろへ移したほうがいいかもしれないですね。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 分かりました。同意書を取るというのがありました。結局、同意が取れないと集団にならないので。

○大久保座長 そこで一緒のほうがいいですね。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 分かりました。では、 3 番へ移します。

○大久保座長 それから「研究手法」の所で、「一定の介入」というのがあるのですが、実際は必ず調査をしたときに何か説明をしたり、祖父江先生が言われるように、分析の結果をきちんと常にお返しすることで、対象の方々に対していつも情報提供していくというのが我々の姿勢なので、ここで介入するしないという話が入ってしまうと厄介ですね。

○祖父江委員 研究手法と言うより、基本的な姿勢とか考え方だと思います。

○大久保座長 姿勢の話ですよね。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 介入する部分としない部分を分けてやるとか、いわゆる純粋な介入研究をするわけではないと思いますので。

○祖父江委員 研究として 2 つに分けるようなことはしないけれども、基本的な姿勢として、良くしていこうということでの情報提供は妨げないということですね。

○大久保座長 そうです。ですから、ここはそういう書き方にしておいたほうがいいかもしれないですね。「介入」と言うと治療薬を投与するとか、我々はすぐそういう話に誤解してしまうので。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 分かりました。これは飽くまでも情報提供程度にとどめるので、いわゆる介入研究で言うような、薬剤を投与するというような意味ではないと。

○大久保座長 ですから基本的な趣旨は、我々がよく批判されている、調査はすれども治療せずということではないのだよと。調査対象になっている方には最大限お返ししていくものを考えながら、そういう研究を進めるという書き方にしておいていただくのが、祖父江先生の一番言いたいことではないでしょうか。

○祖父江委員 はい。

○大久保座長 最後の現況調査などの話もこの章と言うよりは、具体的な方法論の所かという気もしないでもないのです。例えば、これは提供されるものを使うけれども、標準化が必要なので。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 ここで提供するデータは単なる住所情報ですので、研究の内容に関わるものではなくて、集団を維持するために必要な情報ということでの捕捉情報です。捕捉というのは、フォローアップという意味での捕捉です。

○大久保座長 そういう意味ですね。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 正に住所の情報です。これは集団設定に大きく関わる問題ですので、こちらのほうがいいと思います。

○大久保座長 分かりました。それはやはりここのほうがいいですね。では、その意味を書いたほうがいいかもしれないですね。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 はい。

○大久保座長 こういう情報を入手することによって、対象集団の追跡を可能にする、あるいは維持するという言葉を、ちょっと付け加えていただくと分かりやすいかもしれません。この章はいかがでしょうか。ほかに何か御発言はございますか。

○明石委員 「研究の対象となるばく露因子」の生涯線量という (1) の注 1 で、「測定結果の信頼性の評価が必要である」とあります。これは具体的に言うと、このデータを使う場合はシナリオを多少変えて、線量を高い保守的な場合とそうでない場合とを比べてみるという意味でしょうか。これはここでもう 1 回、線量の評価をし直すという意味になるのでしょうか。ここを教えていただければと思います。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 ここに入れるべきかどうかはあれだったのですが、第 4 で、 37 ページにありますように、特に内部被ばく測定については最大限に安全側の評価が行われているということで、これは健康管理の数値として妥当なわけです。一方で疫学研究の観点からは、量反応関係が検出されにくくなるということがありますので、「疫学研究の観点から採用する被ばく線量」を再評価することが望ましいというラインで書いております。これを念頭に置いて、先ほどの記載となっております。

○明石委員 この内部被ばくのシナリオをいじると、多分線量がかなり下がってくると思うのです。そうすると、ここに書かれている数字より大分違ってくる場合が出てくるのです。要するに、最大限、保守的で安全側に取っているので、基本的にその数字は使うけれども、他と比較する場合は線量の再評価も、もう一度考え直すという意味ですか。ここのイメージが湧きにくいのです。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 比較するやり方はいろいろあると思うのです。今年度実施している甲状腺の疫学研究については、内部被ばくをできるだけ確からしい数字に再評価していただいて、それをばく露線量として評価するということをやっておりますので、例えば、そういうやり方もあるのではないかとは思います。

○明石委員 分かりました。

○大久保座長 変えなくていいですか。

○明石委員 意味が分かりましたのでいいです。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 もっと分かりやすい表現になるか工夫いたします。

○大久保座長 ほかに御発言がないようでしたら、 1 つ先に進めさせていただきます。では、第 3 です。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 第 3 「研究の対象となる健康影響とその把握」について、 34 ページを御覧ください。 1 番として「研究の対象となる健康影響 ( エンドポイント ) の基本的な考え方」です。研究の対象となる健康影響としては、表 1 に掲げられているとおり、過去の研究において放射線影響の可能性があると報告されている固形がん、白血病、非がんの疾病を可能な限り網羅するというスタンスは維持する。ただし、これらの疾病を臨床検査によって全て調査することは困難なので、がん登録制度や人口動態調査などと組み合わせて調査を実施することが必要だということが基本的な考え方です。

2 番は「必要な検査項目」です。これについては、資料の 48 ページの表 3 を御覧ください。表 3 に入っている項目は、前のページの表 2 にあるように、原爆被爆者に対する疫学調査、当省で作成した緊急作業従事者の健康管理指針に基づく検査、法定健診 ( 一般健診及び電離放射線特殊健診 ) の項目を全て割り振っている形になっています。考え方としては、毎年実施する項目、 3 5 年ごとに実施する項目、今回の疫学調査に関して実施の必要性、頻度について検討が必要な項目の 3 つに分けています。

 毎年実施する項目については、例えば法定健診では、疫学調査をしようがしまいが実施される項目がありますので、研究班として収集するデータは 2 種類考えています。 1 つは、生体試料を収集するというもので、一番左の、例えば血液検査、肝機能検査、脂質検査、糖代謝関連検査です。これは全部血液ですが、これらについては血液そのものを収集して分析する。もう 1 つの、身長・体重、血圧、尿検査、胸部 X 線などについては、数値のデータ、所見、画像のデータを健診機関から入手する形で研究を実施するということです。

3 5 年ごとに実施する項目についても、生体試料を収集する項目としては、採血による甲状腺ホルモンの検査や、それ以外の、例えば頸部の超音波検査や眼科的な検査については、画像データや所見を入手する形で行うことを考えています。

 一番右の欄は、広島・長崎の被爆者に対する調査で行われている検査で、腎機能検査、炎症関連の検査、腹部の超音波検査、ヘリコバクターの感染症検査、肝炎関係の感染症検査などが行われています。これを果たして今回の疫学調査でやる必要があるかということについて、本日、御議論いただきたいと考えています。

34 ページにお戻りください。 3 番は「検査頻度」です。法定健診項目については法令で年 1 回の実施が義務付けられていますので、仮に疫学調査として検査を行う場合であっても年に 1 回実施すべきだとしています。また、大臣指針に定める検査項目のうち、一般住民向けの健診で毎年実施されている項目がありますが、これについても、当然、毎年実施ということです。先ほど説明した、それ以外のがん健診、甲状腺、白内障などについては、比較的穏やかな進行ということもありますので、 3 5 年に 1 回程度の範囲内でよいのではないかということです。

 それから、要検討です。生体試料については、すぐに検査するものと長期保存するものに分注して長期保存するという御議論もありましたので、こういったものをするのかどうか。するのであれば、どのぐらいの頻度で分注するかということ。また、原爆被爆者に対して実施されている検査項目のうち法定健診にも指針検診にも含まれないものについては、その実施の必要性と頻度について検討が必要だと考えています。

4 番は「染色体の検査について」です。これについては、被ばく線量を生物学的に測定できるということですし、将来、健康影響が発生した場合に、過去に遡って生体試料を採取時の放射線による染色体への影響を確認できるということで有益です。これについては前回に御議論いただきまして、被ばく実効線量が 100 ミリシーベルトを超える者に限定して実施し、検査の方法は安定型 ( フィッシュ法 ) による検査としています。

 それから、議論いただきたい点として、検査頻度は、当然、初回検査には実施するということですが、追加的に例えば 5 年後、 10 年後にフォローアップする必要があるのか、ないのかということがあります。また、初回時に採血したものを、例えば凍結保存するのか、しないのか。そういった点についても御議論いただきたいと思います。

5 番は「人口動態調査やがん登録の活用」です。がん登録制度については、平成 28 年よりがん登録が義務化されるのでこれを使うということですが、本人同意が必要であるので、同意書の中にがん登録制度の使用について同意を含める必要があるということです。

 人口動態調査については、がん以外の死因についてはこれしか分からないというので、人口動態調査の死亡票データを活用することが考えられるのですが、これも、現在、死亡日時が分からないと探し出すのが難しい状況になっているということなので、厚生労働省のデータベースや現況調査で死亡日時が把握できた情報を研究班に提供することとして、それを使って死亡票データの活用を図ることを考えています。

6 番は「心理的影響に関する調査」です。これも、やるべきだということはまとまっていますが、方法論についてはもう少し深く御議論いただきたいと思います。どのような調査票にするかというテクニカルな御議論もありますし、また、緊急作業の時期、例えば非常に初期の方々とそれ以外というような設定をするということでよいかということ。それから、ここでまた「介入」という言葉を使っていますが、調査結果を踏まえてメンタルヘルスケアなどをするのかどうか。そういった内容もあります。説明は以上です。

○大久保座長 ここは御議論いただくことがたくさんありますが、どこからでも御発言ください。

○祖父江委員 まず、人の動態の死亡の把握についてです。厚生労働省のデータベースの現況調査により把握すると記述されていますが、その厚生労働省のデータベース自体は一体どこをデータソースとするのか。住民基本台帳等の照合をするのか、それとも、個人のコンタクトだけで死亡を把握するのか。そこはどうなっていますか。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 一義的には、取っ掛かりとしては現況調査をしますので、御遺族の方から情報を頂くことが第一だと思います。それに失敗した場合は、住所は押さえていますので、住民票をトラックする形になるのではないかと思っています。我々も長期健康管理をいつかどこかで終了しなければいけませんので、死亡したかどうかの把握は客観的に行う必要があります。それは手を尽くす予定です。

○祖父江委員 本人にコンタクトするだけでは追跡不能が出てくるので、公的な資料を使って死亡の事象をきちんと把握する手立てを取っておかないといけないと思います。

○大久保座長 そうですね。少なくとも私どものレポートとしては、優先順位で、データを取れれば、もうその次はしなくてもいいけれども、住所あるいは戸籍の照合でキャッチするということも、安全を見て、最低限、保険の意味で書いておいたほうがいいですね。ただ、そのためには御本人の同意をそこも含めて頂かないといけないですね。

○笠置委員 多分、戸籍というのは大変だろうと思いますので、住民票の請求で生死を確認ということ。そのため、住民票の請求に対する同意もここで行っておく必要があると思います。

○大久保座長 住民票だけで大丈夫ですか。

○笠置委員 私どもの調査も住民票で生死の確認をしています。住所地は分かりますので、動態統計とマッチングでほとんど合います。死因は取れると思います。

○大久保座長 そのためには定期的に住民票を照合していかないといけないわけですね。ずっとしていないと、もう分からなくなってしまう。

○笠置委員 除籍の保存期間が 5 年ということがありますから、でも、本調査ではずっと追跡されるということでしたね。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 現況調査で住所は毎年ずっと押さえていきます。転出があればデータベースの住所も変えていきますので。

○大久保座長 長期間ですから、生涯調査と言っているので、将来のことも想定した書き方を加えていただくということでお願いします。ほかに、どうですか。染色体の所で、凍結その他で幾つか質問が出ていましたが、数藤先生、いかがですか。

○数藤委員 「長期間たった段階でも実施可能である」というのは、長期間たってからの採血でも初回採血でもほぼ同じ、 35 年ぐらいの調査論文がありまして、余り変わらないということは分かっています。ですから、いつ再検査するかですが、採血自体は初回検査時でよろしいと思います。そこで標本作成までをしておけば、あとは、いつ検査しても、いつでも結果が出せるという状態です。それを、ここで言うと、 100 ミリシーベルトで切るのであれば 179 人ですが、それをすぐに線量評価まで持っていくのか、それとも、将来何かが起こった方に限って、特に個人線量計などの値と症例、症状とが合わないときなどに詳しく調べるという考え方もあります。 179 人ぐらいであれば、初回採血で 5 年以内に全員のデータを出すことも可能です。

○大久保座長 では、わざわざ凍結して保存しておく必要はないのですか。

○数藤委員 いえ、血液から細胞を培養して固定するところまでやっておけば。

○大久保座長 そこまでやっておくわけですね。

○数藤委員 はい。採血したものをそのまま、リンパ球を分離して凍結しますと、そこから、保存リンパ球から染色体を作るのはかなり難しいです。このときに、ある程度の血液が残存して、残余検体が発生するので、それを保存血液に利用することも可能です。採血量によってですが、場合によっては量的に 1 3mL ぐらいの全血が余ります。

○大久保座長 ですから、今の質問の、初回検査時に分けて取っておくかということについては、それはむしろ標本を作ってしまったほうがいいということですね。

○数藤委員 どなたかが何かほかのことに使いたい、例えば、血漿を採って。

○大久保座長 別なことは別として。

○数藤委員 染色体標本というか、浮遊液の状態まで持っていけば、そこで保存すればいいと思います。

○大久保座長 後になって変わるということはないのですね。

○数藤委員 ただ、その調査が少し古いので、本当かどうかということも調べることになると思います。

○大久保座長 いずれにしても、いろいろな理由で、 5 年、 10 年たつと、全ての人を採血するというのは不可能になってくる。やはり最初にしておくのが一番いいのだろうと思います。

○数藤委員 そうですね。

○大久保座長  3 番の血液を保存する話は別の話として、今は飽くまでも染色体検査のための話をしたと御理解ください。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 質問をよろしいでしょぅか。染色体浮遊液というのは、そのまま常温で保管できるのですか。

○数藤委員 常温ではなくて、マイナス 20 30 ℃です。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 標本を作った上で冷凍保存しなければいけないのですか。

○数藤委員 まず、固定液状態で保存できます。そこからスライドグラスに撒いたものと、両方とも保存が可能です。通常は両方ストックしておきます。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 スライドグラスのほうは、もちろん、冷凍保存は要らないということですね。

○数藤委員 要ります。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 スライドも要するのですか。

○数藤委員 はい。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 では、どちらにしろ冷凍保存は要するということですか。

○数藤委員 はい。

○大久保座長 要するに、培養するかしないかということですね。

○数藤委員 培養は必ずして、それで、 1 回分裂した状態で液の中に。

○大久保座長 ですから、普通の、 3 番でいう血液は培養しないで、そのまま冷凍保存するけれども、染色体用には培養して。

○数藤委員 染色体用は必ず培養しないと駄目です。

○大久保座長 では、 3 番に戻ります。質問を幾つか受けています。まず、検査の頻度。血液を保存するか、しないか。するとしたら、その頻度。これについて御意見を頂きたいと思います。特にないようでしたら、これはやはり保存すべきだと私は思います。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 この場合、毎年実施するものを毎年保存するのかという。

○大久保座長 それは要らないと思います。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 そうすると、何年に 1 回なのかというのが。

○大久保座長  5 年に 1 回ぐらいでいいのではないでしょうか。特に若い方はですね。どうでしょうか。

○明石委員 ここは何を念頭に置くかですね。血清保存で将来に何かを見るということであれば、一番意味があるのは初回で、次は何年後かというのは科学的に難しいですね。 5 年とか、 7 年とか。

○大久保座長  10 年も 20 年もたって発症してくるような疾病の場合には、その間にどういう変化が起こったかを見たいという話は出る可能性がありますが、その場合でも 5 年に 1 回ずつぐらいあれば、かなり。

○明石委員 そうですね。

○大久保座長 情報としては十分でしょうね。細かい話はまだこれから実際にこの研究を実施する委員会の中でもっと具体的に、専門性の高い方がいろいろと議論すると思いますので、私どもとしては、保存するということ。初回は全部して、それ以後は 5 年に 1 回ぐらいするという基本的なデザインで、ここはお答えしたいと思います。

 それから、人口動態の話は今の御発言がありました。心理調査についてはどうでしょうか。一番分からないところですね。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐  UNSCEAR でも指摘がありますので、何らかの調査をせざるを得ないと思います。ただ、そもそも、ばく露が何なのかという点が。緊急作業従事者というのは、もちろん、作業でも大変な目に遭われていますが、それ以外に被災者として非常につらい目に遭われているので、そういったストレスを果たして分離できるのかということには疑問があります。そこは調査票を工夫するということでしょうか。

○祖父江委員 心理的な影響というのは、線量と心理的影響の関連を、線量をばく露と見て、心理的影響をアウトカムとして解析するという意味ですか。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 それはかなり難しいのではないかと思っています。例えば、事故後非常に早い段階の 3 4 5 月ぐらいに働いた方と、 8 9 か月たって働いた方の比較などです。

○大久保座長 今のような質問が出ないようにするために、ばく露の所に心理的な負担を入れるのか、あるいは、次のコンファウンディングの所に入れるか。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 そうですね。

○大久保座長 どちらかに入れておかないと今のような質問が出ますね。放射線ばく露による心理的影響というふうに一義的になってしまうので。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 そうですね。ばく露だけを取り出したストレスを分別するのはほぼ不可能なような気がしますので。

○数藤委員 その、ばく露のストレスというのは、ばく露への恐怖とか、そういう意味のストレスですか。それとも、そういう危険作業へのストレスですか。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 交絡要因の所に記載がありますので、 39 ページを御覧ください。 2 (3) の注 2 にありますが、現在行われている研究が若干ありまして、業務上のストレス、悲嘆体験、被災者としてのストレス、差別・中傷などいろいろとありますが、我々が押さえるべきものとしては業務上のストレスなのではないかという気がします。それをどのように分別するのかというのは、正に祖父江先生がおっしゃったように、被ばく量と関係があるのかとか、その辺をどうすればいいのか、方法論がよく分かりません。

○祖父江委員 単なるコンファウンディングでもないような気がします。やはり、心理的影響をアウトカムとするような解析も必要な気はします。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 例えば、同じような時期に作業している人で線量が違う人を分けてみるとか、そういうことはあるかもしれません。

○祖父江委員 ただ、心理的影響に関して、線量が大きな決定要因かというと、恐らく違うと思うのです。ですから、線量を主たるばく露として考える解析ではないと思います。だけれど、アウトカムとして心理的影響というのはやはり重要だと思いますから、そのデターミナントを探索的に解析するようなことも必要ではないかと思います。

○大久保座長 私もそう思います。では、第 2 の「研究の対象となるばく露因子」の所に、新たに 1 項、文章だけで結構なので加えてください。作業の内容、作業した時期、御本人の被災状況など、そういったものと健康影響も調べると。簡単にそう 1 行入れておけばいいのではないでしょうか。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 分かりました。

○大久保座長 放射線の被ばく量と、そういったいろいろな心理的負荷とを同時に考えて、別の健康影響との関係を見るというような解析をやることになるのだろうと思います。それには放射線は余り影響していないけれども、作業の内容からくる心理的な負荷が結果としていろいろな関係となるというような答えが出る可能性もあります。それも健康影響ですからね。

○笠置委員 緊急作業の時期によってどうなのかというのも 1 つの課題なのではないかと思います。

○大久保座長 ですから、それをばく露因子の中に入れましょう。

○笠置委員 あれだけの状況下のときと収束に近いときでは状況が違うので。

○大久保座長 多分、そのほうがはるかに大きいような気がします。では、今の心理的影響に関する調査の「以下について要検討」という所についてですが、どんな調査票というのは、これは今ここで答えを出すのは難しいと思います。適切な調査票を使う、ということで。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 大分、御議論いただきましたので、ここに書いてあるように、例えば緊急作業によるばく露なども含めて。

○大久保座長 そういったものの影響を調べると。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 被ばく以外のばく露因子も含めて検討するというようなラインで検討させていただきます。それから、これについて、メンタルヘルスケア等もやるかどうかという点はいかがでしょうか。

○大久保座長 介入ですか。それは、当然、調査して何もしないということはできないので、もしその時点で非常にストレスの強い人がいれば、それに対して適当な指導はしないといけないのではないでしょうか。それは先ほどの祖父江先生のとおり、我々の基本的な姿勢ですから。

○祖父江委員 結果いかんだと思いますけれども。やはり、対応を必要とするような反応のある人には、それは適切な処置をするしかない。そうでなければ、観察でもいいと思います。

○児玉委員 よろしいですか。

○大久保座長 どうぞ。

○児玉委員  34 ページの、 3 の「検査頻度」の (4) の「原爆被爆者に対して実施されている検査項目のうち、法定健診項目と指針検診項目に含まれないもの」とありますが、これはどうしますか。

○大久保座長 これは答えを言っていませんね。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 これは具体的には、先ほどの。

○児玉委員  48 ページのことだと思いますが。少し議論をしておいたほうがいいと思います。もしよければコメントさせていただきます。

○大久保座長 お願いします。

○児玉委員  24 ページを御覧ください。これは、前回、私が急ぎ提出させていただくと申し上げた項目です。健診項目と言うよりも検査項目になります。放影研の原爆被爆者の調査で、放射線被ばく線量と関連して検査値が増加 ( 上昇 ) しているもの、それから、逆に減少 ( 低下 ) しているものを、そこに幾つか記載しています。

 まず、身長・体重です。小児期や胎児期に被ばくした人に、身長が低い、あるいは、体重が軽いといったことが観察されています。作業者の場合、小児・胎児ということはありませんので、これは該当しないと思います。次に、血圧は上昇傾向にあります。収縮血圧が主ですが、最大血圧と最低血圧の両方とも上昇傾向があります。白血球数は特に高線量に被ばくした方に増加する傾向があります。ヘモグロビンは低下の傾向があり、これは貧血傾向と言ったほうがいいかもしれません。腎機能も少し低下している傾向があります。コレステロールは特に女性で増加傾向。肝炎、特に B 型肝炎の感染率が増加して見られています。炎症反応で CRP が増加。リウマチ因子も増加。このようなことが見られています。

 それから、 48 ページを御覧ください。毎年実施する項目の中に、白血球、白血球の分画、ヘモグロビン、コレステロール等はもう既に含まれています。以上は生体試料を収集する項目です。委託健診機関等からデータを入手するものでは血圧が入っています。

 問題は一番右の、実施の必要性、頻度について検討が必要な項目です。まず、1.腎機能検査、それから、2.炎症関連検査が該当します。私の意見としては、この 2 つは毎年やる必要は全くないと思いますが、例えば 5 年に 1 回ぐらいは検査をしておいたほうがいいのではないかと思います。

 先ほど言い忘れましたが、原爆放射線被ばくと関連して上昇あるいは低下ということは見えるのですが、放射線がそれを引き起こしているかどうかというところまではまだ答えは出ていません。しかし、放射線被ばくと関連して変化している検査値は含めておいたほうがいいのではないかと思います。以上です。

○大久保座長 今のようなことを参考に次のレポートを作ってください。

○得津電離放射線労働者健康対策室長 検査項目の所ですが、感染症の検査で、ヘリコバクター・ピロリと。

○児玉委員  B 型肝炎ですね。

○得津電離放射線労働者健康対策室長 はい。これまでの御議論で、交絡要因として確認しておく必要があるだろうということで、我々で入れてみたのですが、この辺のインターバルをどのように考えればよろしいのでしょうか。

○祖父江委員 余り頻回にする必要はないと思いますね。特に肝炎などは、恐らく、ほとんど新規の感染はないと思いますので。

○大久保座長 そうですね。

○得津電離放射線労働者健康対策室長  1 回調べれば十分だと思っていますし、また、ヘリコバクター・ピロリも。

○祖父江委員 成人期からの新規の慢性化はほとんどないはずですから、 1 回だけでもいいと思います。ただ、除菌する人はいるので、そちら方向の変化はあると思います。肝炎もそうですね。今はインターフェロン治療を受けると駆除されてしまう人もいると思います。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 そうすると、 4 番、 5 番については、初回調査で十分ではないかということですか。

○祖父江委員 ですから、除菌や駆除を受ける人がいると減ってきますので、頻回にやる必要はないと思いますが。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 でも、そういう治療を受けたかどうかを逆に聴き取ればいいような気もします。

○祖父江委員 そうですね。ただ、自然に除菌される人もいますので。

○大久保座長 では、ここの 3 5 年の所に入れておけばいいのではないでしょうか。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 入れるかどうかですね、分かりました。そうすると、3.腹部エコーは余り必要性はなさそうだという理解でいいでしょうか。

○大久保座長 必須の項目としては入れなくていいでしょうね。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 分かりました。

○祖父江委員 やりますけれどね。

○明石委員 例えば、肝機能に異常などが出ると、大抵、エコーはやります。ですから、入れなくても現実にはやる頻度は高いのではないでしょうか。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 結局、所見が付けば精密検査で受けることにはなろうという気はしますが。

○大久保座長 いわゆる一次、全員に一斉にやる項目としては入れる必要はないのではないかということですね。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 分かりました。

○大久保座長 ほかには、よろしいですか。では、第 4 に移ります。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 第 4 は「生涯被ばく線量の把握」です。 1 番は、先ほど少し説明しましたが、「内部被ばく測定の留意点」です。これは、疫学的観点から採用する被ばく線量を再評価して、それをばく露として分析するというやり方もあるのではないかということです。また、内部被ばく測定結果についても、きちんと実測された要素に基づいた評価と、測定されていないものを推定しているものなど、信頼性にバラ付きがありますので、その分類を行って、分析のときには信頼性の高いものだけで分析するなど、そういったオプションも与えたほうがいいのではないかということです。

 臓器別の被ばく線量について、これも結局は、ほとんど計算によって求めるしかないということですが、例えば骨髄の等価線量などと白血病との関連を見るという意味では評価すべきであるということです。

2 番の「医療被ばくの把握」については、例えば CT の場合には被ばく線量が 10 ミリシーベルトぐらいいくようなものもあると聞いていますが、職業被ばくと比較しても相当大きいということなので、その把握は非常に重要です。また、医療被ばくの把握を記憶に頼ると、本人の健康意識などにより偏りが発生しやすいということなので、健康カレンダーの活用などによって、できるだけ客観的な把握が必要だということ。注 2 にあるとおり、より客観的な資料としては、例えばレセプトによる CT 等の実施記録が有効ということです。これは個別の健康保健組合と協議の上、本人同意を取った上でレセプトデータを活用することについて研究実施者が最大限の努力をすべきであるとしています。

3 番は「被ばく線量測定結果等の記録の適切な保存」です。将来の検証に耐えられるように、外部被ばく、内部被ばくともに、測定器の種類、測定条件、測定結果等を可能な限り原票の形で保管する必要があるということです。注にもありますが、そもそも、いつから作業を行ったか、どういう作業を行ったかというのも重要な問題になります。ここには書いてありませんが、例えば安定ヨウ素剤を服用したとか、服用したのであれば、その時期がいつかなどです。この点については、 UNSCEAR からも引き続きいろいろな情報を集めるべきだという指摘もありますので、より確からしい線量を出す努力は続けたいということで、今あるデータをできるだけ原票の形で保管するということです。これら一次資料については、東京電力、元請事業者が保管することが第一ですが、法令上の保存義務も掛かっていませんので、早い段階で研究実施者に移すように保管整理しておかないと、時間がたつと散逸していく可能性もあります。そういった機能についても研究実施者が担うべきではないかということが書かれています。

4 番は「放射線影響協会の中央登録センターとの連携」についてです。これは主に緊急作業に従事する前の線量とその後の線量については、中央登録センターのほうに基本的にデータが入ってくるということなので、これについても中央登録センターから協力を得ることが必要不可欠ということです。これについては、平成 25 年度に実施している甲状腺の調査の関係ではデータの提供を頂くことができていますので、引き続き御協力いただけるように参加者から同意を得た上で、放射線影響協会との守秘義務契約なども含めて適切な対応を取っていくべきだということです。

5 番は「染色体検査による生物学的測定の活用」です。これについては、原則として外部線量について活用するということですが、先ほど申し上げたとおり、 100 ミリシーベルト超の方について実施することを考えています。説明は以上です。

○大久保座長 既にもう議論したように、ここはまず、いわゆる当該被ばく、緊急作業による被ばくという項目と、それ以外の被ばくとに大きく分けてください。ということは、 2 番の医療被ばくは、その他の被ばくになります。影響協会の中央登録センターの話と医療被ばくについては、その他の期間の被ばくということにして、それ以外の表現のものを全部まとめて緊急作業による被ばくとするということで整理してください。

 それから、生物学的線量測定は外部線量について活用すると書いてありますが、この表現はこれでいいのですか。

○数藤委員 もう少し正確に言いますと、蓄積線量全部を見ている状態なので、結局、その方のそれぞれのデータの整合性があるかとか、特に個人線量計をグループで持っていた時期のものについて大体合っているかどうかといったことにも使えるのですが、それから、個人線量計の過去の長年のデータと整合性があるかということも見えてくるかもしれません。

○大久保座長 要するに、外部線量について。外部線量って何だろう。考えてみると、「外部線量」という言葉がよく分かりません。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 すみません、「外部被ばく線量」です。

○大久保座長 ということは、外部被ばく線量と言い切ってはいけませんね。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 前回の説明では、内部被ばくはなかなか検査が出ないということで。

○数藤委員 区別が難しい。

○大久保座長 区別がつかないのですか。

○数藤委員 今回のケースでは多分もともと非常に低い、少なくとも作業時に被ばくされたときから採血時までの線量になるので、実際にはかなり低い。ですから、ほぼ無いに等しいということです。

○大久保座長 という意味ですね。

○数藤委員 見えてこない可能性があります。

○大久保座長 でも、このように書かれるというのは少しまずいのではないですか。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 そうですね。私もその辺りははっきり分からないのですが、 50 年間の預託線量といっても、例えばヨウ素などの場合は 50 年もたたずに全部出ていってしまいますので、そういう意味では、やってみれば出るかもしれないという部分もありますが。

○数藤委員 特に、相互的に、様々な線量測定法でお互いに補うような形と、それぞれの人の症状などで検討できる内容だと思います。

○大久保座長 それこそ、緊急作業以前に CT スキャンを何回も受けたなどということがあれば、そういうものも入ってしまいますからね。

○明石委員  1 の内部被ばくの測定の留意点の所についてですが、 (2) に臓器別の被ばく線量 ( 等価線量 ) の例として「骨髄の等価線量を」と書かれていますが、これは恐らく内部被ばくばかりではなく、外部被ばくからも計算できます。ここは例を変えるか、内部被ばくから外すかしないと、整合性が取れなくなります。

○大久保座長 そうですね。内部被ばくで括られていますね。

○明石委員 それから、先ほどの議論の内部被ばくの線量について、健康管理のためのデータは別にして、既存のデータを再評価と言うよりも、多角的にと言うか、いろいろな角度から検討することで。先ほどの染色体の外部被ばく、内部被ばくということも含めて、「多角的」という言葉がいいかどうか分かりませんが、様々な角度から検討するという意味で書いたほうが分かりやすいのではないでしょうか。再評価すると言うと、今までの線量に不確実性があるのでもう 1 回再評価というように聞こえてしまうので。そういう言葉などを使うのも 1 つの例ではないかと思います。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 分かりました。この辺りは再度整理いたします。

○大久保座長 そうですね。ですから、まず、緊急作業による被ばくというカテゴリーとそうではないものに分ける。その次に、臓器別の被ばく線量という所は全体を外に出して、 1 つの独立した項目になるだろうということですね。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 そうですね。

○大久保座長 それから、記録の適切な保存というのも大事な項目なので、それぞれを皆、独立したものとして並べていくといいのではないでしょうか。

○明石委員 もう 1 点、医療被ばくの把握についてですが、健康カレンダーやレセプトなどいろいろと方法はありますが、ここで 2 万人の対象になる方はカードを持つとか、何かを持つのですか。つまり、例えば線量が非常に大きくて、医療被ばくで 20mSV 30 ミリシーベルトなどはすぐに出てしまう数字なので。ここでは何かカードを使うとかいうのは難しいのでしょうか。健康カレンダーと書いてありますが、健康カレンダーよりは何か持つほうが正確のような気がしますが、そこはどうお考えなのでしょうか。

○数藤委員 カードみたいなものですか。

○得津電離放射線労働者健康対策室長 カードを持っていることによって自動的に記録されるという、そういうイメージですか。

○明石委員 そういうことです。それがいいかどうかは少し議論しなければいけないのですが、医療被ばくの線量がそれほど小さくないということを考えると、ここは正確に記録したほうがいいような気もします。もちろん、今ここで決められるかどうか分かりませんけれども。

○大久保座長 今、この短時間の間に結論を出して確定的に書くことは、後で困るといけないので、今のことは、何という言葉を使うかは分かりませんが、「カードのようなものを使って長期間にわたって医療被ばくを確実に把握できるように工夫する」というような表現にして、実際にやる人に任せてはどうでしょうか。これは非常に大事なことだと思います。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 カードというと、全然違うカードですが、データベースに登録されている方を登録しようというのは、それには IC カードの機能などは全くなくて単なるカードしかありません。現況調査で現病歴は聴きますので、毎年 1 回、そのときに CT を受けましたかとしつこく聴くということはあるかもしれません。

○大久保座長 もちろん、それも必要だと思います。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 ただ、 IC カードのように自動的に入るということになると医療機関の協力が不可避ですので、現実問題として難しいような気がします。

○大久保座長 これは、どういう組織でどういうレベルの人が毎年面接をするのかとか、そういうことを決めていくときに、実際に具体的に決めていく。実際に使えるような方法を編み出さないといけませんね。まだいろいろなところが決まっていない段階で、はっきりそれを具体的に、そこだけを決めるのは難しいと思います。とにかく、医療被ばくがはっきりしないのに長期間フォローしても、本当のことを言うと、確かにいろいろな誤差が大き過ぎて意味はないのですよね。これはもう是非、今の時点から計画するのだったら、そのことをしっかりと、少なくとも最初のところは書いておいたほうがいい。あとは、実際にどこまでできるかというのは、これはやる人の能力の問題がかなりあると思います。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 個別具体的な方法論は、ここに書いてある以上のことは難しいと思いますが、より重要性を強調するような形にしたいと思います。

○大久保座長 そうですね。このセクションについては、ほかにはよろしいですか。では、第 5 に移ります。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 次は、第 5 「交絡因子の把握」です。「基本的な考え方」としては、長期にわたる疫学研究ということもありますので、がんなどの様々な要因が考えられる疾病を調査対象とすることもありますので、交絡因子を適切に把握することは研究遂行上、非常に重要であるということです。

 「交絡因子の項目」としては、別表のように整理していますが、原爆被爆者に対する疫学研究などで調査されている交絡因子についてはそれを含むということ。国内の大規模コホート調査で使用されている質問票がもう大分標準化されつつありますので、それを踏まえた交絡因子の設定をするということです。

 職域の特徴として、例えば有害な化学物質のばく露などもありますので、これも調査をするということです。ただ、これも物質の有害性もありますし、期間や量など、実際は極めて困難で、通り一遍聞いただけでは余り役に立たないのではないかと御指摘される方もおられるのですが、何らかの努力をするということを一応入れるということです。作業上の身体的、精神的負担は実際のところは調べられないのですが、それの 1 つの因子として、学歴、職位、職種といったもの等を調べていくということです。

 心理的影響の話が先ほど議論がありましたが、これはそもそも交絡要因なのかばく露なのかという議論があると思いますが、できるだけコントロールできるものはしたいということですので、業務上のストレスは、例えばばく露に入れるにしても、それ以外の悲嘆体験であるとか、被災者としてのストレスであるとか差別・中傷であるとか、こういったものはできるだけコントロールできるようにしたいと考えています。

 「調査方法及び頻度」ですが、初回調査時に、同意書の取得と併せて調査票により把握するのが一番いいと思いますが、その後、どの程度の頻度で取るかという議論がありますが、それほど大きく変わるものではないという前提で、 5 年に 1 回程度でいいのではないかと考えているところです。

○大久保座長 ありがとうございます。先ほどの医療被ばくの話などは、 5 年に 1 回というのはちょっと危ないですね。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 そうですね。医療被ばくはばく露評価ですので、あれは交絡因子ではなくばく露として評価しますので、あれは先ほど言ったように、現況調査とか、もっと高い頻度で。

○大久保座長 考え方によっては交絡因子なんですよ。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 まあ、そうです、除外するという考え方に立てば、交絡因子ですね。

○大久保座長 この研究で何を目的にするのかというのは私は何回も言っているのですが、緊急被ばく時のばく露をエクスポージャーと考えるのだったら、その他のばく露は全部交絡因子なんですよ。

○数藤委員 例えば、 CT スキャンとかも一般的な日本人集団としての平均的なばく露量と作業者は変わらない可能性は高いのですかね。もし、そうだったら別に。

○大久保座長 それは分からないですね。

○数藤委員 分からない。いや、こういう仕事をしていると、特別そういう検査が必要。被ばく影響でそういう疾病の可能性が高まると、そういう検査も増えてくるという可能性があるということですかね。

○大久保座長 可能性はありますね。もし、それをドクターががんのリスクファクターだと思えば、やらない人にやってしまうこともあるかもしれないという。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 ちょっと医療被ばくを交絡因子に整理するとていうのはちょっと被ばくか被ばくでないという、ここには入れにくいですが、その辺は分かりやすくしたいと思います。

○大久保座長 分かりました。気持ちは分かります。いずれそれは具体的な調査をするときに、これは被ばく、こっちは交絡と分けて聞くわけではないので、対象者にお会いするときは、やはり全部一度にやらないといけないです。では、ここはそういう議論ぐらいでよろしいですか。

 次に進めさせていただきます。 6 番です。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 続きまして、第 6 の「研究体制」ということです。これについてはイメージ図を作っておりますので 25 ページを御覧ください。研究の体制のイメージですが、まず、中央研究機関を置くことです。ここの役割は全体管理、検査手法の標準化、関係機関との協議、委託健診機関等の募集・指導、生体試料等の保存管理、会計管理・書類管理という全体の統括的な業務を行う。これに当然協力機関として、それぞれの研究項目である被ばく線量評価、生化学検査等の実施、がん登録等の調査、心理的影響の調査といった個別のものについては、それぞれの専門機関の協力を仰ぎながら研究を実施していくというイメージです。

 実際の生体試料であるとか、その他のデータを入手するのは委託健診機関で、これは都道府県におおむね 1 か所設置するイメージで考えております。その中に、研究コーディネーターを各機関ごとに数名、人数は別にもっと多くてもいいのですが、数名程度選任して、その方が具体的には同意書の取得、検査手法の標準化、生体試料の収集、エックス線画像データ等の入手を行っていただくということです。この委託健診機関以外で緊急作業従事者の方が健診を受ける場合については、その健康診断機関と協議を行った上で、そこからの資料の提供をいただくというコーディネートもしていただくということです。

 そこで得られたデータについては、まず生体試料については左上の生体試料分析機関で一括して分析した上で、その分析結果を中央機関に提出していただく。中央機関としてはその生体試料分析機関の制度管理を行うということです。それ以外のデータ類については、直接中央研究機関に集約される。それからの研究等を実施するという、大体のイメージ図です。

 これで先ほどのページに戻っていただきまして、 40 ページです。「研究体制の骨格」としては、対象集団の構成員が全国に散らばっているということで、 1 つの研究機関で研究を実施することは非常に困難です。生体試料の保存整理、分析の精度向上、同意の管理、倫理委員会の審査受審など、中央研究機関が長期安定的に存在することもまた必要不可欠であるということです。中央研究機関を指定した上で、分野別に研究に協力する「協力研究機関」を設定するという構成をする。さらに、中央研究機関からの委託を受けて、研究の同意取得や生体試料の採取、生体試料以外の検査の実施などを担う「委託健診機関等」を設定するということが考えられるということで、この委託健診機関の中に、研究コーディネーターを置いておくということを考えています。

2 番目の「厚生労働省の役割」ですが、研究の客観性を可能な限り確保するために、直接厚生労働省は研究には参加しないということです。ただし、研究を円滑に進めるために、以下の事項については中央研究機関を支援するということで、東京電力とか元請事業者との研究協力、これは役所が間に入らないとうまくいかないことが多いということで支援をする。中央登録センター、個別健康保険組合からのデータ提供に関する協議についても、厚生労働省からの要請があった場合は進む場合もありますので、そういったところは支援をするということです。

 厚生労働省のデータベース登録情報の提供ということですが、まず、アに書いてあるのはいわゆる住所情報です。こういった情報について提供するということです。被ばくの情報についても提供するということですが、これについては研究開発型独法又は厚生労働省予算による研究実施者からの申請に基づき、個人情報保護の方策等が十分に講じられていることを審査した上で、情報提供をするというスキームは維持するということです。

 「中央研究機関の役割」ですが、全体管理としては、研究全体を管理する運営委員会などを設置した上で、その下に例えば分科会やワーキンググループなどを設置し、同意書の作成や交絡因子の調査票や生化学検査の項目、精度管理といった詳細な方法について、技術的事項を検討する。研究協力機関との役割分担についても全体管理として行う。検査手法などの標準化、制度管理についても、例えば生化学検査の精度管理、あるいは面接の方法などを含めた調査手法の標準化についても中央研究機関が行う。関係機関との研究協力に関する協議ということで、事業者であるとか、中央登録センター、個別健康保険組合からのデータ提供についての協議を行う。関連機関の募集、指導ですが、委託健診機関等の募集、指導、あるいは費用分担、生体試料の収集を行う機関、分析機関の募集、精度管理といったものの指導も行う。収集された生体試料の保管、例えば冷凍庫の確保及び管理、その他のデータの写しの保管管理も行う。その上で、会計管理や書類管理などの管理業務を行うことが中央機関の役割ということです。

 「精度管理、法定健診との関係」ということですが、まず、 2 万人全員について、一定の精度で検査を実施するという観点と、今後数十年にわたって複数回実施される検査間の比較可能性の維持ということで、その観点から精度管理を実施するということで、具体的には、生体試料については限りなく 1 個に近い分析機関にまとめて委託する。それ以外については標準化手法をまとめるということです。

 法定健診との関係については、様々な医療機関や健康診断機関が実施しているということですので、血液については精度管理の観点がそのまま使うのは難しいという一方で、法定健診の受診率は非常に高いということですので、その機会を利用するということで、検査の受診率というのは飛躍的に高まるということです。そういったものを踏まえまして、 1 つの方策としては、法定健診の実施時に血液検体を余分に採取するとか、がん検査等の追加検査を同時に実施するなどの方策を考えられる。採取された生体試料を中央機関に送付する。その血液検査以外の検査については、雇用事業者と十分に協議をして、データの提供をいただくことを考えるということです。

5 番の「研究への参加の同意等」ということですが、これはまず調査項目については、いろいろあるということですので、それぞれについて同意をその都度取るというのは非常に煩雑ということもあるので、研究開始時に可能な限り包括的な同意を取るということ。同意取得の方法としても、面接がいいのか、郵送がいいのか、あるいは事業者を通じての同意なのか、そういった最適な方法を考える。血液検体を長期保存するという議論になっていますので、その場合は新たな検査方法が出てきますので、それも含めた同意をすべきだと。当然厚生労働省のデータベースの登録情報の活用についての同意が要りますということです。

 大きな問題としては研究協力を得るための方策ということで、被験者が現役の作業員ということですので、いわゆる日給をもらっている人が非常に多いということで、検査を受けるとその分給料が減るという実態がかなりありますので、ここを乗り越えるための方策が、例えば研究謝金とか、そういったものが必要ではないか。それ以外に健康相談や保健指導といった別のメリットを与える必要があるのではないかということです。

 「その他の留意事項」ですが、まず、中央研究機関の要件としては、まず 1 から 5 に定める事項を安定的・長期的に実施できる人員、組織的、財政的基盤がないといけない。当然国際機関などから調査をいろいろ受けるということもあるので、それに対応できるような人員・組織体制があって、なおかつ研究成果を国際的に発信できる能力がなければいけない。特に先ほどの UNSCEAR の指摘もありますが、内部被ばく測定の評価を含めて、被ばく線量評価についての問い合わせや調査が非常に多いということですので、そこにきちんと対応できる、独自で被ばく線量強化を実施できるような機関でなければいけないということです。

 倫理委員会ですが、倫理委員会については、研究の全体像について審査する委員会を中央に設けることが必要で、その上で、そこで承認を受けた者を協力研究機関で審査を受けるというやり方が一番いいのではないかということです。必要な予算の確保ですが、長期安定的に必要な予算を確保することが大事ということと、中央研究機関がころころ変わることはあり得ないことですので、同一の機関が長期安定的に指定される仕組みが必要であるということです。説明は以上です。

○大久保座長 ありがとうございます。いかがでしょうか。なかなか難しいところで、特にこの中央研究機関がしっかりしていないと、何もことが進まないだろうと。今ここに書いてあることを具体的にどうしたらいいかというのは、なかなか難しいですよね。必要なことはかなり書いてあるように思いますね。

○明石委員  41 ページの一番下の注に、こういう画像データを入手する必要があると。これは御本人の情報に基づいてですが、これも求めるのであると、何かひとつ方法を考えないと、なかなか収集できないということもあるのではないですか。画像ですから当然電子的に今は紙ベースではないですよね、ハードベースではなく電子的にというか、 CD とかに入ってくることにもなりますし、ここは先ほど議論がありましたが、少し考えておかないといけない。例えば医療被ばくにこだわるようですが、直接関係のない、最近抜歯のときの写真を撮ったり CT を撮ったり、 CT でなくパノラマとか、そんなのも入ってくるので、やはりどうしても漏れてしまうものもあるのではないでしょうか。医療被ばく。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 ここで申し上げておりますエックス線検査は、いわゆる健康影響の趣旨のエックス線検査を念頭に置いておりまして、例えば胃のエックス線とか。

○明石委員 健康診断。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 ええ、そうですね。そのデータを入手するという、疾病の発見のスクリーニングという趣旨で得ようと考えております。

○大久保座長 被ばくのほうではなくて。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 被ばくのほうではないです。

○大久保座長 いかがでしょうか、何か追加の御発言はありますでしょうか。もし、ないようでしたら、先に進めさせていただければと思います。では、次の第 7 です。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 それでは、 44 ページの第 7 「研究期間、評価、研究結果の公表」です。まず、「研究期間等」に関しては、緊急作業従事者は 20 歳前半の方もおられますので、生涯フォローアップをするということの前提になりますと、研究期間が 60 年を超える可能性があります。それから、長期にわたる研究の品質の確保がありますので、研究費補助金ですから、当然一定の頻度で研究評価を受けることに加えて、 5 年に一度などの頻度で国際的な第三者委員会により評価を受ける仕組みを設けるべきだという提案がありましたので、それを盛り込んであります。

 それから、研究期間を 1 期、 2 期、 3 期のように、あえて期で区切る必要はないという御指摘でしたが、予算の関係等で必要がある場合は、国際的な第三者委員会による評価の時期を捉えて期を区切る。 5 年に 1 回ぐらいに区切って研究の見直しを図っていくべきであるということにしております。

2 番目が「国際的な第三者委員会による評価」です。これは、研究補助金に係る研究評価、例えば中間評価などをもともと受けることになっておりますので、それとは別に、国際的に著名な研究者を含んだ独立委員会として設置されるというイメージで考えており、その評価結果は報告書にまとめて、国際的に発信することを考えております。

3 番目の「研究結果の公表」ですが、これは研究費補助金ですので、当然厚生労働省に定期的に研究活動結果の報告をする必要があります。それに加えて、学術的な報告を定期的に国際的な学術雑誌などに掲載するということです。そのために、中央研究機関の中に公表すべき学術的報告を事前審査、内部審査するような組織を設けるべきだという提案もありましたので、それを盛り込んであります。以上です。

○大久保座長 いかがでしょうか。私も、これには何らコメントはありませんので。よろしいですか。では、皆さん賛成のようですから、これは余り触らないでください。それでは、 8 番をお願いします。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 続いて、第 8 「平成 26 年度に実質するベースライン研究」です。これについては、今まで御議論いただいておりませんので、初めて御議論いただくことになります。平成 26 年度に、おおむね調査対象集団の 1 割を対象とした調査をできる予算を確保してあります。これの位置付けとしては、平成 27 年度から本格的に実施する疫学研究に備えて、基本的に第 2 ~第 5 に掲げる調査項目等は全くそのままで、同様の内容について調査を実施することで、緊急作業従事者の有病率などを本格実施研究の研究計画策定に必要なベースラインのデータを得ることを目的とする。併せて、第 6 、これは研究体制ですが、非常に複雑な研究体制になると思いますので、本格実施前に試行的に小規模で、地域を限って限定的に実施することで、本格実施研究の研究体制の構築に当たって必要な情報を得る、教訓を得ることです。また、当然同意書の作り方や標準化のマニュアルなど、事前に研究を始める前に作らなければいけない書類がたくさんありますので、そういったものもこの時期に可能な限り作るという想定です。

 「留意事項」として、同意書を継続できないといけないということですので、この平成 26 年度の研究は、平成 27 年度研究と連続する形で実施する必要があります。それから、特に以下の事項として書いてありますので、例えば第 3 2 4 及び 6 は、必要な検査の項目や検査頻度、あるいは心理的影響に関する調査といった内容の詳細を検討する。第 4 1 5 は、生涯線量、被ばくの方法、被ばくの把握の方法についても検討すると。第 5 1 3 は、これも交絡要因ですね。どういう調査をするのか。それから第 6 は、具体的な研究機関の在り方ですが、そういったものについて優先的に検討して、一定の結論を得ることを目指すべきではないかと考えております。説明は以上です。

○大久保座長 初めて提案される内容ですが、いかがでしょうか。

○笠置委員 平成 26 年度で、予備的な調査をして、それに基づいて本格的な計画というような流れになっているのだと思います。今回のこの検討会は、要するに枠組みというか、大きな土俵を作るという意味でいいと思うのです。この中で少し抜けているのは、統計的な手法だと思います。ばく露要因等を設定して、様々な健康影響についての量反応関係を調査するのが基本だということになると、どのような方法でそれを調査するのかという統計的なプロトコールをしっかり作っておかないといけないことだろうと思っています。

 今、留意事項の中で最後のほうにどのような調査をするかという項目や頻度などの話がこの中では検討されていくのだろうと思っていますが、網羅的にいろいろな事項、項目を調査するということになっています。それはそれで、網羅的にやるのが当然そのような立場なのでしょうが、統計的確率から言いますと、いろいろな項目でやればやるほど、いろいろなことでひょっとしたら有意になる。あるいは、こういうことはありうるのに有意ではないと、いろいろなことが起こりえるのです。そうすると、いろいろなことでこれは少しおかしいねというような、あとでいろいろな理由を付けることがあり得ますので、最初からやはり統計的な解析でこういうことにすればこのような評価をするのだということをしっかり押さえておかないといけないだろう。そうしないと、あとからいろいろな理由付けがあり得ることだと思いますので、そこのところはしっかり押さえて研究計画を策定すること。是非、平成 26 年度で予備的に行うことでありますので、それを踏まえてプロトコールをしっかりして、その中で統計的な手法が抜けているので、それについての検討を行っていただきたいと思います。

○大久保座長 統計的手法というのは、ちょっと分かりにくいと思うのですが、もっとはっきり言うと、仮説ですか。

○笠置委員 仮説と、それに基づく検定方法などを最初から決めておかないと。そこで得られた結果の解釈を最初からこうするのだということがプロトコールだろうと思います。それを策定しておくのは、非常に必要なことだろうと思っております。この従事者の調査は、結果としていろいろなことが起こり得ますので、最初にそういうことを決めておかないと、後出しじゃんけん的なことになると、これはやはりよくないなと思います。是非、平成 26 年度の予備的な調査の中から、そういうことができるように、しっかり議論していただきたいと思っています。

○大久保座長 ちょっと、まだ理解できないですね。後出しじゃんけんはいけないと言われるけれども、調査してみないと分からないことがたくさんあるじゃないですか。

○笠置委員 ええ。ですから、そのときに例えば予期していないことが出たり、予期しているのに出なかったりと、いろいろなことが起こり得るので。

○大久保座長 そうですよね。

○笠置委員 このような調査で、このような結果になれば、このような理解をするというようなところは、しっかり押さえておかないといけないのかなと思います。

○大久保座長 それは、結果が出てから、その筋書きから変わってはいけないという意味ではないですよね。

○笠置委員 いえ、変わってはいけないのです。

○大久保座長 変わってはいけないのですか。

○笠置委員 はい。

○大久保座長 えっ。それは、ちょっと難しいのではないですか。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 多分、第 2 2 で「研究の対象となるばく露因子」という所があると思いますので、結局仮説を確かに設定しておかないと、それに十分な調査かどうなのかというのはありますので、仮説は確かに、事実上、 2 に仮説が書いてあるような気がしたのですが、確かにもっと明確に書けということであれば、もう少し。要は、後出しで仮説を作っても、調べていないと分からない部分はあります。

○大久保座長 そこまでは、よく分かります。しかし。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 あとは、検定とかはどこまであれですかね。そんなに研究内容に影響がありますか。

○笠置委員 検定ですか、方法ですか。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 ええ。統計的な検定とか。

○笠置委員 統計的な方法は、多分そんなにいろいろな方法をしたとしても、それは問題ないと思いますが。ただし、最初からこのような方法で検討を行うということは、やはり書いていたほうがいいのかなと思います。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 方法というと、統計的というとかなりいろいろありますが、それを全部列記すると。

○大久保座長 統計的手法のことを言っているのか。

○笠置委員 ええ、手法です。

○大久保座長 手法なのですか。

○笠置委員 手法です。

○大久保座長 いや、私は統計のために研究するわけではないから、それは無理だと思います。

○笠置委員 基本的には関連を見るということが書かれています。では、どういう方法で関連を見るのですか。

○大久保座長 それは、疫学的な意味での、いわゆるばく露要因と、それからそれによって何年後にどういう疾患が出るだろうという、いわゆる仮説モデルは当然なければいけないと思っています。

○笠置委員 それはないといけませんね。ですから、それを検討するための方法は一体何なのか。多分、これは平成 26 年度はそういうことを含めて検討されるのだろうと思うのですが、研究計画ですね。

○大久保座長 それは、今言われていることがよく理解できないので、それは駄目です。もっと説明してもらわないと、私は分かりません。

○笠置委員 例えば。

○大久保座長 統計的手法を最初に決めておくというやり方はあり得ないと思うのですよ。

○笠置委員 え、どういうこと?そうしないと。

○大久保座長 統計ならですよ。手法ですからね。

○笠置委員 ええ。そうしないと。

○大久保座長 仮説は大事だけれども。

○笠置委員 何か有意に出てきたから、今度は別のやり方をやりましょうとか、あるいはここは出てこないからこういうやり方をやりましょうとかいろいろなことを、あとから考え出すことはやめるということを言いたいです。

○大久保座長 有意なところ、どこが有意になるか、有意になるところばかりを探しまくるようなやり方はやめましょうと。

○笠置委員 やめましょうと。

○大久保座長 それは分かりました。

○笠置委員 あるいは、有意にならないようなところを探す。

○大久保座長 それは、統計手法ではないじゃないですか。

○笠置委員 統計手法ですよ。だから、最初に、どのようなことをやるかを決めないといけないでしょう。

○大久保座長 統計ではないですよ。疫学ですよ、それは。

○笠置委員 疫学でも、それはいいですけれども、あとから結果を見てあとから評価するようなことはやめましょうということです。

○大久保座長 はい、分かりました。

○笠置委員 ですから、そこがやはりこれは統計的な手法なのです。

○大久保座長 そうなのですか。私は、そう思っていないのですが。ちょっと、祖父江先生、仲裁に入ってください。

○祖父江委員 ガチッと統計的な指標を決めるというのは、いわゆる確証的な研究、検証的な研究ですよね。ですから、臨床試験などでサンプルサイズを決めて、αやらベータやら決めて、有意とすべき効果の大きさを決めて、それで検証するという形のほうが、今回はちょっとないですよね。かなり探索的なもので何が起こるか分からない状況で、きちんと検定法まで事前に決めてというのは、ちょっと私はやり過ぎかなと思いますが。

○笠置委員 いいのですよ、探索的ならば探索的ということを考えれば、それは問題なくて、ただここに書いてあるように、影響を見る、関係がどうなのかを調査するということを書かれていますから、もしそうならば、方法をしっかり書いておかないと、このときはこの方法でやれば見えなかった、こういう方法では見えたということになり得ますので、それはすべきではないなということです。ですから、おっしゃるとおり、探索的、これはもう最初から対象を 2 万人にすることが分かっていますので、α、ベータというような話ではありません。そうすると、飽くまでも探索的ならば探索的と、これは前もって表示しておく、明示しておくことが必要だろうと思います。

○大久保座長 そういう意味で言うと、多分多目的なのですよね。ですから、特定の仮説として言えるような部分についてはきちんとして、それに合うようなデザインを最初からきちんと書いておくと。しかし、それだけではなくて、やはりコホートですから、ずっと研究していくうちにいろいろな予期しない事象、アウトカムが出る可能性だってあるわけですから。

○笠置委員 ありますね。

○大久保座長 それを観察する可能性を否定してはいけないと思うのですね。

○笠置委員 もちろんそうですが、いろいろな可能性が出るからこそ、解釈が非常に難しくなるということですね。

○大久保座長 それは、おっしゃるとおりですね。

○笠置委員 ですから、その解釈を、都合のいい解釈をしないようにということを押さえておけばいいのかなと思っています。

○大久保座長 全部事前に決めろと言われると、それはちょっと難しいような気がするのですが。ですから、先生の言葉をそのまま使えば、探索的な部分と、きちんとモデルを最初に想定して、それに合うような研究方法論をきちんと中に内包する部分と、両方をきちんとはっきり分かるようにすると。そういうことで、どうですか。よろしいですか。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 笠置先生の御指摘を聞いていると、私の解釈ですと、要するに都合のいい解析ばかりするとか、逆に都合の悪い解析ばかりするとか、恣意的な解析にならないような何らかの歯止めが要るのではないかという議論なのではないかという気がしたのですが。

○数藤委員 でも、そういう未知の、どんな結果になるか分からない研究をするときと、一般的に複数の手法で解析と。この条件下ではこうであった、このような解析法に基づいてやるとこういう結果が得られるといったようなことを複数出して、それを隠さないのが普通だと思うので、その隠さないということを明記するということなのでしょうか。

○大久保座長 最後に評価委員会、国際的な化学委員会といったようなもので、偏った解析をしていないかどうかをきちんとチェックすると。その役割を、具体的に書いていただくとどうですか。そうすると、笠置先生のおっしゃりたいことのかなりの部分はカバーできるのではないでしょうか。

○数藤委員 それから現実には、中央の下にワーキンググループという話があったので、本当にその専門家の方々で検討されるのもいいのではないかと思います。

○大久保座長 往々にして、国際委員会などを開くと、データを見てからあれやれ、これやれというのが出てきます。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 現実は、そうですよね。事前にこれしかやらないというのはかなり難しいかなという直感はあります。ただ、おっしゃるように、笠置先生は要するに研究の公正性というか、客観性の観点のような気がします。そういう意味では、数藤先生がおっしゃったように都合の悪い結果を隠さないでということなのではないでしょうか。有意差がある研究だけを並べるのではなく、有意差が出ないときもこういうものがあるのですということも含めて、まとめると。

○大久保座長 それは、どこかに書いておいてください。要するに、多分この調査というのは、ネガティブな結果になったことをネガティブだときちんと記述することが、これからにとって非常に大事なことだと思うのですね。そういうことを意識して、きちんと自信をもって検出力があるネガティブな結果であると言えるような結果も出すような。

○数藤委員 同じデータを計算法を変えることで有意になったり、そうではなくなったりするのは、これは是非有意であってほしいからこの方法で解析したということが困るという話ですよね。

○笠置委員 困りますね。

○数藤委員 そのことですよね。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 そういうのは、現実問題としてありますからね。

○数藤委員 もしかすると。

○笠置委員 いや、先ほど先生がおっしゃるように、こういう方法では有意になって、こういう方法では有意にならなかったと。それを公表するのはいいことなのですが、ではそのときにどう解釈するかですよね。

○数藤委員 そうですね。

○笠置委員 ですから、やはりこれはこういうことを見るというときには、この方法でやりましょうということを決めておかないと、いろいろな方法でやって有意だ、有意でないということになると、ではそれは一体どういう結果に落ち着くの、どういう結果になるの、という評価が非常に難しくなると思っています。

○数藤委員 それは、一般の方にも向けた最終の報告がまとまっていればいいのではないでしょうか。

○笠置委員 多分公表するときに、その結果を見てほかの人たちがどう理解するかというときに、非常に誤解を与えるようなことになると、それはそれで困りますね。

○大久保座長 これは前向きのコホート調査ですから、先生が言われていることを全部そのとおりにするのは無理だと思うのですよ。何が出るか分からないからこそやっているわけで。

○笠置委員 探索的にとなれば、それはいいのです。でもそうではなくて、何かを目的としてやることになれば、それは最初からきちんと計画を立てておかないといけないということを言っているのです。

○大久保座長 両面があるような気がしますが。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 仮説をできるだけ書くというのはあるかもしれないですね。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 サーチハイポテシスをできるだけ具体的に書くのはあるかもしれないですね。

○大久保座長 ただ、放射線の影響は確実にもちろん全部同じ知識レベル、程度だと思うのですが、やはり分かっていること、分かっていないこと。分かっていることでも、分かっている程度がかなり分かっていること、それからもしかしたらというレベルと、いろいろなものがあるわけですね。ですから、今回こういう調査をする 1 つの目的は、今までの研究でははっきり結論が出ていないようなものについて、しっかりとした研究デザインでそれを 1 つでも 2 つでも少し明らかにできるのが大事な意義だろうと思うのですね。しかし、それがどれなのかを最初から決めて、笠置先生が言われるようにきちんと解析の手法まで決めてかかることができるかというと、それがどれかを決めることができないと思うのですね。決められない以上は、最初から全部解析の手法まで書くことはできないのではないですか。探索的ではあるけれども、あるところでそれが証明できそうになってきたときには、その段階でそういう方向に向けて勢力を集中する形になるので、そのときならできるかもしれませんね。児玉先生、黙ってないで何か言ってください。

○笠置委員 私は、結論としては、要するにこのときはこういって、このときはこういくと。それはやめましょうというのが、ざくっとした言い方ですが。

○大久保座長 それは分かりました。

○児玉委員 多分今のことだと思うのですが、なかなか用語とか考え方とか疫学、統計といろいろあって、 1 つに収束するのが難しいなと思いながら、それで黙っていたのです。

○大久保座長 一番困るのは、安井さんが困ると思います。いかがですか。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 仮説も余り書くと縛ってしまうので、どこまで書けるかはあれですが、書くとすれば第 2 2 の「研究の対象となるばく露因子」の所で、仮説的なことを若干書くかどうかと、あとは大久保先生の御指摘がありましたように、評価の所でネガティブな結果も含めてきちんと公開していくのだということを盛り込むというところでしょうか。

○大久保座長 それと、第 8 の今年度の研究に関しては、今の発言は貴重だと思いますので、是非具体的な研究計画を立てるプロセスの中で、今までの既存研究で分かっているところからどこを分からせたいかというところを少しスクリーニングしていって、そのターゲットをもう少し具体的に絞って研究計画をきちんと立てましょうという形で、今の発言をいかすことはできると思います。ですから、今年度の研究の目的にそういう部分を少し入れてください。そうすると、いかせると思います。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 分かりました。では、第 7 にも入れるとともに、第 8 の平成 26 年度で一定の研究をすれば一定の数字が出てきますので、そうすればもう少し具体的な統計手法であるとか、仮説の検証もある程度できると思いますので、そういうことをやることも第 8 に盛り込むということです。

○大久保座長 祖父江先生、それでよろしいですか。

○祖父江委員 はい。

○大久保座長 明石先生、よろしいですか。

○明石委員 はい。

○児玉委員 このベースライン研究という名称が少し引っかかりました。ベースラインというと、普通は集団を設定して、コホートを設定して、それの全員に対する第 1 回目の調査になるのですよね。これは、先ほど笠置委員が予備的研究という言い方をされましたが、正に予備的研究なので、ベースライン研究というよりは、誤解を与えないように名前を変えたほうがいいのではないかと思います。

○大久保座長 使えるものは、ベースラインの一部に組み込むことは可能ということですね。

○児玉委員 当然そうですね。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 抽出の仕方が偏っていなければ、使えないデータとは限らないと思いますので、そこはベースライン的要素も残しつつ、表現ぶりは検討させていただきます。

○大久保座長 ですから、可能なものについてはベースラインとして使うということは入れて。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 そうですね。ばく露別にうまくきれいにランダムで抽出していれば、それはそれである程度使えるデータだと思います。

○大久保座長 ほかはよろしいですか。それでは、今日解散してからいろいろとお気づきになることがあると思いますので、 4 28 ( ) までに事務局へ御連絡ください。ということで、 5 16 日には今日の議論とその後の先生方のコメントを入れて、最終の案を提案していただくようにいたします。

○得津電離放射線労働者健康対策室長 今日はありがとうございました。先ほど座長からありましたように、追加の御意見がある場合は、 4 28 ( ) までに事務局にメールでお寄せいただければと思います。また、本日様々な御議論がありますので、また随時事務局から表現ぶりなどについては御相談をさせていただきたいと思っております。次回、 5 回目の検討会ですが、 5 16 ( ) 午後 3 30 分から開催予定となっておりますので、よろしくお願いいたします。以上で、第 4 回東電福島第一原子力発電所緊急作業従事者等に対する疫学的研究のあり方に関する専門家検討会は閉会いたします。本日は、どうもありがとうございました。


(了)

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