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2014年3月26日 第3回東電福島第一原発緊急作業従事者に対する疫学的研究のあり方に関する専門家検討会  議事録

労働基準局安全衛生部労働衛生課

○日時

平成26年3月26日(水)
15:30~17:30


○場所

厚生労働省労働基準局第1・2会議室(16階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2)


○議事

○得津電離放射線労働者健康対策室長 本日はお忙しい中、御参集いただきまして誠にありがとうございます。定刻より若干早いですが、全員御参集いただきましたので、ただいまより第 3 回東電福島第一原発緊急作業従事者に対する疫学的研究のあり方に関する専門家検討会を開催いたします。初めに出席状況ですが、本日も 7 名の先生方、全員に御出席いただいております。なお、明石委員、祖父江委員については、この後の会議等ありまして、途中、退席されるということになっておりますので、あらかじめお伝えさせていただきます。カメラの撮影はこれまでとさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。

 これから先の議事進行につきましては、大久保座長にお願いいたします。

○大久保座長 早く退室される方もおられるようなので、フォーマリティは省略して進めたいと思いますが、資料の確認もいいですね。全部そろっているはずなので、もしお気付きの点があればどうぞ。今日は予定どおり、報告書の骨子案を御提出いただいておりますので、これについて 1 項目ずつ説明を受けた上で議論していただく、前回と同じような形をとっていきたいと思います。早速、第 1 項から、事務局のほうから案を御説明いただきたいと思います。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 資料 5 について説明いたします。通し番号 42 ページです。今回、骨子案という形でお示ししております。構成について説明いたします。 (1) として論点ごとに既存研究についてあります。 (2) として留意事項がありまして、 (3) として前回のコメントがあります。その後ろに四角く囲ってありますが、各論点ごとの骨子案ということでお示ししているということです。

 論点ごとに説明いたします。「集団設定、調査手法」です。既存研究については、既に前回、前々回で説明しておりますが、追加になっているところがあります。 1 (1) のオ、チェルノブイリの事故処理作業者に対する疫学研究、これはウクライナ政府が行っているものについても若干、入手しております。これはロシアが行っているのと同じように、レジストリーを作って、そちらに 24 万人の事故処理作業者を登録して行っていると。そのうち、キエフ及びその周辺の 5 都市の住民である約 11 万人を対象に疫学研究を行っているということです。手法としては、基本的には前向きのコホート調査と思われるのですが、現在、公表されている文献ではコホート内ケースコントロール研究に関するものがほとんどですので、主にそれを使っているようです。

テキスト ボックス: 資料2  カですが、子供の環境と健康に関する全国調査、これはエコチル調査と呼ばれているもので、現在、環境省が実施しているものです。これは放射性物質とは直接関係ありませんが、研究の形としては参考になるということで入れております。この研究については、胎児・幼児期の化学物質へのばく露と健康影響の関係を調査するということですので、お子さん、妊娠中については母親が調査対象となっているものです。規模は、化学物質へのばく露調査として 2 歳児が約 5,000 人、 4 歳児が約 2 万人、こういった方から生体試料を採取しており、その後 13 歳までフォローアップするわけですが、ばく露調査のための生体試料は 2 歳と 4 歳で取って、その後は取らないということです。手法としては、前向きコホート調査ですが、コホート内ケースコントロールスタディも実施されるということです。

(3) で「前回検討会でのコメント」ですが、かいつまんで説明いたします。アですが、いわゆる何をばく露因子として捉えるかというところに議論がありまして、一義的には累積被ばく線量の多い、少ないということがありますが、それに加えて短期間で大量の被ばくをしたということ、あるいは臓器別の内部被ばくという観点、緊急作業という名前の作業で行われた心理的なストレスといったものでばく露因子を設定することも可能で、こういった場合については生涯線量でマッチングした上でやっていくといった御議論がありました。調査対象者の要望を聴取した上で、いわゆる純粋な観察的研究とするのか、精密検査のフォローアップとか、そういう保健指導、健康相談まで含めたような介入的な要素も含めていくのかというところについて考える必要があるという御議論があったところです。

 こういった御議論、既存の研究を踏まえて、骨子案としては、 (1) 対象・規模ですが、緊急作業従事者は緊急被ばく限度が一時的に引き上げられた中、緊急被ばくで約 680mSv の高い被ばくをされた方がおられる特別な集団で、厚生労働省が運営する緊急作業従事者、長期健康管理データベースで長期健康管理の対象となっている集団があるということですので、これらを踏まえて緊急作業従事者については 2 万人全員を対象集団と設定するのが適切ではないかと考えております。

 対象集団の中で、研究対象とするばく露因子を複数設定する場合、例えば短期間で大量の被ばくをした群とか、そういったものを設定することも可能にするということですが、それも飽くまで緊急作業従事者の中でサブコホートのようなもので設定することを考えております。一方、どうしても緊急作業従事者以外の集団を対照群として設定せざるを得ないような場合については、緊急作業従事者以外を対象集団に加えるかどうかについて検討することにしております。

(2) の「研究の対象となるばく露因子」ですが、生涯線量をばく露因子として設定して、疾病とばく露の量反応関係を調査することを基本にしておりますが、例えば短期間に高い被ばくをしたことをばく露因子と捉えるような場合であれば、緊急時の被ばく線量が高い群と緊急時被ばく線量は低いけれども、それまでの通常被ばくの累積線量が高い群を生涯線量でマッチングして設定することも考えられますし、臓器別の内部被ばくの影響を調べるということであれば、内部線量を含む群と含まない群を分けることも考えられるということです。また、内部被ばく線量の評価については体内残留率を決定するための摂取日の情報が不確実である情報の中で、一定の推定を行っているものがありますので、集団設定の際に生涯線量として使用するときには、信頼性の評価は別途必要であるということです。

 緊急作業による心理的影響をばく露因子として調査するためには、緊急作業といっても実際は濃淡がありますので、例えば極めて初期の 3 月、 4 月と、もう緊急作業が終わりかけている 11 月、 12 月であると、状況はかなり違いますので、そういった面で分けて対照群とばく露群を設定する方法、あるいはほかの発電所の緊急作業従事者を対照群にすることも検討するということです。

 研究手法ですが、対象集団全員を対象とした前向きコホート調査を原則としていくわけですが、先ほど申し上げましたように、対象集団の中に生涯線量でマッチングしたばく露群・対照群を複数設定して、それぞれをコホート調査することも可能とする方法を考えると。発生率の低い疾病の放射線影響を調査する方法として、がん登録等を活用した上で、対象集団の特定の疾病のケースを把握した上で、対象集団の中に対照群を設定する、いわゆるコホート内ケースコントロール調査についても実施の方向性については検討できるのではないかと考えております。説明は以上です。

○大久保座長 手前の既存の話の所、骨子案の前の (3) のオに、「的」が付いているからいいのですが、「介入」はちょっと意味が違うような気がする。介入というと、例えば薬のあれみたいに考えていただいたら、こちらから研究のために介入した結果を見るということで使われることが多いので、例えばその後、事後措置をするとか、しないとかという表現にしておいたほうが誤解が少ないかなと思います。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 はい、分かりました。

○大久保座長 今、御説明のとおりで、骨子案を主に議論していただきたいのですが、対象の規模、ばく露因子という整理、 3 番目に研究手法となっておりますが、どこからでも結構です。お気付きの点を御議論いただけますか。先に私から一言だけ申し上げますが、 (2) の中でも細分化されて、いろいろ述べられているのですが、もし全員をコホートにしてやるのであれば、それは解析手法の話であって、違う研究方法とは捉えなくても済むような気がするのです。だから、こういうことを予定するのだったら、検査項目とか、コーディングのやり方を考慮しなければいけないということはあり得ると思うのです。ここの欄に入ってくるのは、全員にするかしないかというと、全員にすれば大体みんなそれで終わってしまうような気もするので、あとはこのコホートの 2 万人以外に、誰か比較対照を設けるか設けないか、主な議論はその議論だけかなと思うのです。そう思いましたので、その辺も御参考にして、明石先生どうぞ。

○明石委員 短時間の大量の被ばくと長時間の被ばく、いわゆる線量率の問題ですが、ここは言葉としてこういうざっくりというか、要するに線量率というと数字を区切らなくてはいけないので、集団としてこういう振り分けをしたという理解でよろしいのですか。後でも出てくるのですが、要するに総線量と線量率できちんと区別をして解析をしますというのが、多分この趣旨だと思うのです。

○大久保座長 そうです。笠置先生の御意見を入れたものです。

○明石委員 そういうことですか。分かりました。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 線量率といいますと、リジットに数字でガチッと固める感じなのですが、そこまでできるかどうかちょっと分かりませんので、フワッとした言い方にさせていただきました。

○大久保座長 趣旨はそういうことです。

○笠置委員 私自身も (2) のイがちょっと意味が分からなくて、私自身が思っていたこととはちょっと違う。

○大久保座長 そうですか。もう 1 回説明してください。

○笠置委員 これはこれでいいのですが、一番重要なのは対象群をどうするのかということだろうと。

○大久保座長 コントロールの対象ですね。

○笠置委員 いや、サブジェクトの対象をどうするか。ここではやはり 2 万人の方々をサブジェクトにするということで走るならば、私はそれはそれでいいと思います。 (2) のこの内容については、先生がおっしゃるように解析の問題という話になるので、 2 万人を追跡していけば、あとは処理できる、解析できるという意味だから、最初に対象をこのように決めることを確認しておけば、私はそれでいいのかなと。

 その中で、一体何をするのかという目的ですが、ここで少し書いてありますのは (2) のアです。疾病の量反応関係を調査する。これを基本とするのですが、ほかに例えば死亡だとか、あるいはがんの罹患だとか、検査項目の異常について、どうなっているのかを見るという話になっていくのだろうということがありますので、対象とエンドポイント、何をもって評価するのかが決まれば、あとはうまくいくのかと。それが非常に重要なことではないかと思っておりました。

○大久保座長 今、議論している箇所については、 2 万人全員かそうでないのか確認しておけば、あとは研究目的とか解析の方法というところで、全部今の議論は関係してきますので、この項目はそっちで全部役に立つ内容が書いてあると思うのです。

○祖父江委員 ただ、全体 2 万人を対象にするというのがいいと思うのですが、何か追加的にデータを収集するような場合に、あるサブサンプリングを対象として集めることは恐らくあり得る。そのことを書いておられるような気がするのですが、解析というよりも追加的なデータを集める対象をサブコホートなり、あるいはネステッド・ケースコントロールなりで集めるということではないかと思うのです。

○笠置委員 今おっしゃったのは、サブジェクトとして 2 万人ですが、それ以外のサブジェクトを考える。要するに出発をさせるときに、最初こうするということで、コントロールのほうも一緒に入れておかないと、後々振り返ることはできないですね。ですから、例えばいろいろな検査をすることになると、コントロールのほうも一緒にしておかないといけないので、そうではなくて 2 万人の人たちをサブジェクトとすれば、それはそれでいいという御意見ですね。サブコホートと言っておられたので、別の集団かなと。

○祖父江委員 いや、中です。だから、ある程度コホートの中でバリエーションが確保されているという意味です。要するに高線量もあれば低線量もある。いろいろな生活習慣もあるので、その中でサブコホートを設定する。

○大久保座長 その話は次の 2 項以降でもダブってくる話なのですね。どの検査をするかとか、何を解析するかとか、ばく露をどのように捉えるか、多分そういうところと。どっちでもいいのですが、どっちで議論したって同じことなのですが、最後の報告書を作るときの整理としては対象集団はこれと言ったら、ほとんど定義できてしまっていることになる。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 今回、御検討いただきたいのは、例えば (2) に書いてあるような短時間で高い被ばくをしたという観点から、ばく露対象を作れるかとか、内部被ばくという観点から、ばく露対象を作れるかと。そういうことでできるような対象ということで御理解いただいて、こういうことも含めてできる 2 万人ですよということで御了解いただければ、もうそれでいいのかなとは思います。

○大久保座長 後のほうで、ばく露のことも別個で取り上げているので一緒にして考えればいいのではないですか。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 そうです。例えば心理学的な調査をするときに、どうしても緊急作業従事者以外の人間も入れざるを得ないというような御議論があれば、ここで入れないといけないので、ばく露因子をどのように捉えるか、ちょっと御議論いただきつつ、対照群を決めたいということです。

○大久保座長 無関係ではないので。もう 1 回、繰り返し、ここで基本的に今日、御意見を頂きたいのは、 2 万人以外、何か比較しなければいけない集団を設定するか、しないか、これに対する。すぐ難しさが思い浮かぶものだから、難しいところがあるのですが、しなければいけないのだったら、これから真剣に考えたほうがいいと思います。特に心理的な問題を取り上げるとき、どうですか。ある意味では全部、緊急従事者ですからね。全部エクスポーズドになってしまうから。

○笠置委員 ある面では、いつ入ったかによって、これは対照が取れる、コントロールが取れるというのだったら。

○大久保座長 コホートの中で、ばく露量によって比較すればいいということですね。

○笠置委員 はい。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 現実問題としては、 3 月、 4 月の切迫した緊張感と 11 月は、はっきり言って違うと思いますので、そのように入場した日を捉えて分けるのはあり得ると思うのですが、それで十分なのかどうかだろうと思います。

○大久保座長 議論の材料として、最初の 2 か月にいた人と、そこは全然経験していないで、その後、緊急作業に入った人の人数の比はすぐ言えますか。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 大体、毎月、新規入場者が 3,000 5,000 人ぐらい来ていますので、それほど特定の月に偏って新規入場者が多い、少ないはないので、そういった設定が可能だとは思います。

○大久保座長 かなり分けてできますね。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 はい。小刻みにやろうと思えば。

○大久保座長 そうすると、ほかの集団を連れてくると、ほかのコンファウンディングがうるさいから、この 2 万人の中で分析したほうが確実ですね。

○得津電離放射線労働者健康対策室長 ちなみに今、緊急作業従事者は大体 2 万人弱で、 3 月、 4 月にデータがある人は 7,500 ぐらい。だから、それ以外の人数は 5 月以降に入ってくるということなので、そのような区分はやろうと思えばできると思います。

○大久保座長 比較的良い数字の比率になっていますね。直感的にそれだったらできるという感じです。一応 2 万人だけ、緊急作業者と呼ばれている人だけを対象にするということで、先に進んでよろしいですか。あと今、御説明いただいた (2) とか (3) は覚えておいてください。これは全部そっちのほうに移動させた報告書の形にするということです。定義としては 2 万人を対象に終生追跡調査をするとか、期間の定義はここへ入ってくるかもしれないですね。これはできるかできないかは別ですが、やるのは好ましいですよね。やるのだったら終生ですよ。ここのところはそういうことで、先に進みます。

 次の検査等について、先ほどと同じ形で、まず説明してください。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 続きまして、 46 ページから説明いたします。「必要な医学・生物学的検査等の項目及び実施頻度」です。新しい知見としては、チェルノブイリの事故処理作業者に対する疫学研究ということで、高村先生から頂いた資料があります。これは 62 ページに表 1 という形でまとめられております。これはロシア政府が実施している健康診断の結果を、 2 つ目の列に入れてあります。丸1にあるのが 1986 年から 1987 年において事故処理した作業者、 1988 年にシェルターの建設に従事した作業者、非常に大量の被ばくをされた方に対するものについては年 1 回していて、その他の作業者については 2 年に 1 度の検査を行われているということです。検診項目は、ここに述べてあるように、血液・尿の一般的な検査ということだそうです。

 丸3ですが、現在全てのカテゴリーの被ばく市民の健康診断と頻度を、一般の勤労者を年に 1 回にする制度を検討しているということです。現在行われている勤労者の健康診断項目はここに挙げておられるとおりですが、広島・長崎と比べるとちょっと多いと思われるのは、マンモグラフィとか、女性がおられますので婦人科の関係といったもの。それから、前立腺のマーカーとか、ちょっと詳しめになっているということです。

47 ページの前回のコメント等ですが、染色体の検査については御議論がありまして、染色体の検査を行えば、細胞に異常がなかったことを被験者に伝えることができるというメリットがあるという話とか、ただ、検出限界としては 50mGy という御議論がありました。また、検査の頻度が例えば 5 年に 1 度、 10 年に 1 度のように、定期的に検査する方法、あるいは被験者に疾患が出たときに初めて検査するような方法があります。また、これも当然すぐに調べるのではなく、凍結保存してやることも考えられるということです。広島・長崎の調査では、健康診断は 2 年に 1 回の頻度ということです。全てのがんについて、臨床検査で把握できることは困難であるため、がんの調査はがん登録制度を十分に活用する必要があるといった御意見がありました。

 こういった御意見を踏まえて、骨子案としては、 (1) 「研究の対象となる疾病」です。これについては、ほとんどのがんをカバーすることを目的にはするわけですが、こういった全てのがん等の疾病を臨床検査で把握することは非常に困難ということですので、がん登録制度、人口動態調査等と組み合わせて調査を実施するということが書いてあります。

2 つ目が「必要な生化学検査の項目及び頻度」です。こちらはいろいろ御議論いただきたいところですが、検査の手法や分析手法がどうしても日進月歩ということで、 1 つの検査を調査の初期に決めても、それを 30 年後ずっと同じというわけにはなかなかいかないということですので、検査の項目の変更や追加ができるやり方が必要だということです。現時点における検査項目としては、広島・長崎の原爆被爆者を対象に実施されている検査項目をベースにして決定すると。その際、チェルノブイリのものも横目に見ながら考えるべきではないかとまとめております。

 検査の頻度については、前回は 2 年に 1 回という御議論もありましたが、まず職域の一般健診が 1 年に 1 回行われているということ、一般的ながん検診、これはもちろん検査の内容によって異なりますが、おおむね 1 年に 1 回が多いということ。チェルノブイリでも初期の事故処理作業員に対する血液検査等については、年に 1 回実施しているということですので、年に 1 回をベースに考える必要があるのではないかと現時点では考えております。

 染色体の検査については、前回いろいろ御議論があったところです。ただ、やるべきだというラインで御議論されていたという認識ですので、対象者、検査方法、検査頻度についてはいろいろなオプションをお示しいただきましたが、具体的にどうするのかというところについて、若干御議論を深めていただければ、それを報告書に盛り込みたいと考えております。検査対象者は、例えば 50mGy 以上に限るのかどうか。検査の方法としては、 46 本の染色体を全部調べるのか、調べないのか。検査の頻度については定期的なものなのか、それとも 1 回だけ取って、疾病が発生したときに遡ってやるのかといった御議論です。

(4) 「人口動態調査やがん登録の活用」ですが、こちらについては祖父江先生がお詳しいということで、後ほど何か御説明を頂ければと考えております。心理的影響に関する調査ですが、これもどういう調査票を使うのかとか、先ほどちょっと議論がありましたが、ばく露群・対照群の設定をどうするのか。あるいは、先ほどちょっとありましたが、介入的といいましょうか、調査を踏まえて、メンタルヘルス不調が見つかったときにどうするのか、そういった内容についても御議論いただければと考えております。以上です。

○大久保座長 今の御説明で、私のほうからは特にありません。

○数藤委員 前回の後またいろいろ調べまして、補足させていただきます。結局、緊急作業者で重要といいますか、ラインとしては例えば 250mSv という基準が守られたかといいますか、それを超えたか超えないか、あるいは 100mSv を超えたか超えないかのあたりを重要だと考えれば、ラインは 50 ではなく 100 で切るというのが 1 つの考えだと思います。例えば個人線量計の値なども持っている作業者がほとんどですが、数人で 1 個だった時期も考えますと、特に初期の頃だと思うのですが、本当に 250mSv 以下だったかどうか、あるいは超えている方、そういったところの確認として初回検査。個人線量計値又は全体のシーベルトが 100 以上となって、内部も合わせて 100 超えか、外部だけで 100 超え、どちらでも皆さんのお考え次第ですが、これを超えた方だけを初回検査するというのが 1 つの考えだと思います。

○大久保座長 繰り返して検査をする意味は余りない。

○数藤委員 放医研で作業者の受入れを初期にやっておりましたが、そのときはその検査の結果が安全範囲であれば、あとは専門医の判断によって、 3 か月、あるいは 6 か月、 1 年後健診をやる、やらないを相談して決める形でした。

○大久保座長 この表現の問題なのですが、検査をすれば細胞に異常はなかったと言っていいのですか。

○数藤委員 これは多分、この前の御説明はこうではなくて、検査したときにバックグラウンドレベルだったということを言った場合に、被験者が安心されたということです。

○大久保座長 この表現だと、ちょっとほかの異常も含んだ話になってしまうから。

○数藤委員 どうしても自然発生率として異常はありますので。

○大久保座長 あくまで異常といっても、被ばくによって染色体異常が生じたかどうかということに関する異常であって、それはちょっと断らないと、別な異常も含まれて、それで誤解されるといけないので、報告書のほうではその辺をお書きください。

 骨子案のカの丸2で、 46 本全て調べるか、 1 本かというのは、これは手間の上ではどうなのですか。

○数藤委員 現実的といいますか、実際 250mSv とか 100mSv 超えだったかどうかをポイントに置けば、線量評価を対象にして、今世界的に 3 本の染色体がメインで使われているので、 3 本の染色体の FISH をやるのが一番現実的だと思います。

○大久保座長 手間はどうなのですか。培養とか何かは全部同じですよね。

○数藤委員 緊急時の診断ではありませんので、緊急時の線量評価より 2 日余計にかかりますが、そんなに手間ではありません。

○大久保座長 どっちにしてもですね。

○数藤委員 はい。

○大久保座長 だけど、現実的に 3 本でいくのがいいだろうというので。

○数藤委員  46 本ですと複雑すぎて、普通の染色体異常との区別が分からない。

○大久保座長 分かりました。

○数藤委員 ちょっとお聞きしたいのですが、広島・長崎の原爆で、ここの検査項目には特に染色体は載っていないのですが、あれはこれとは。

○大久保座長 検査としてはやっていません。

○数藤委員 やっていなくて別個で研究としてやっている。

○大久保座長 そうです。線量を確かめる特別な集団だけをやっている。祖父江先生、ちょっとリクエストがあったので、がん登録を使って、がんの罹患を調べることに関する可能性と問題点。

○祖父江委員 その前に、「必要な医学・生物学的検査等の項目及び実施頻度」ということでまとめられていますが、 2 つの要素が含まれていて、 1 つは観察開始以降にどんなばく露というのですか、状態にあるかを積極的に検査等、あるいはアンケート等をすることによって把握する行為と、それからその人が結局どうなったかというフォローアップのところですね。疾病の発生と死亡、あるいは転出、移動の状況等の把握をどうするかというのが混在しているように思います。前者のほうは、恐らく全数把握にならないので、常に参加者が数割という形で状況が把握されるものであるのに対して、後者のフォローアップに関しては、 100 %を目指して把握することが必要になるので、ちょっとアプローチの仕方が違うと思います。

 ですから、フォローアップに関して、ちょっと別の記述をしたほうがいいような気がするのです。それは人口動態統計であり、住民票の照会であり、がん登録での把握ということが列記されることであり、健診の受診だとか、今の染色体の検査等は、ばく露に当たるようなところとしてはフォローアップとは別の項目で記述するほうがいいような気がします。

○大久保座長 いや、必ずしもそうではなくて、やはりアウトカムの観察のためにやる健診なのですよ。

○祖父江委員 それもあるのですが、フォローアップとしてやるものはかなり把握をよくしないといけないのに対して、健診というのはちょっとニュアンスが違うような気がするので。

○大久保座長 先生の言われている意味は、最初に研究を始めたときに、いわゆるばく露に相当するもので、それ以外にいろいろな状況に関する調査をちゃんとして、定義付けられた人たちをずっと長期的に追いかけようということですよね。その部分の話と、途中でフォローアップ中に検査する項目とは、ちょっと表現を変えたほうがいいという論点でしょう。

○祖父江委員 それと、転帰として病気になりました、亡くなりましたという情報の収集のことと、 3 つあるのかもしれませんけれども。

○児玉委員 今の件に関連してですが、検査値が放射線被ばく、検査値異常、病気という、いわゆる中間因子のことも十分あるわけですね。今回、私は長期間、出張していて申し訳なかったのですが、成人健康調査で放射線被ばく、被ばく線量と関連して数値が上がっているもの、あるいは下がっているもの、これについての情報を大至急、提供させていただきますので、次のときに御議論していただけるようにできたらと思います。幾つか放射線被ばくと関連して増えている、あるいは減っている、値が上がっている、あるいは下がっているものがあります。必ずしも因果関係があるという意味ではないかもしれませんが、検討していただく価値はあろうかと思いますので、次のときまでには。

○大久保座長 そういう意味では、今の染色体のケースだって同じような性格の話ですね。次の項目でやるばく露のモニター、ばく露を把握するという項目とも関係がある。フォローアップの話として、アウトカムの話として、がん登録の最近の情報について、簡単にお願いします。

○祖父江委員 がん登録は今、県単位でやられていますが、がん登録推進に関する法律が成立したので、 2016 年からは国単位で、がん登録を国の事業として行うと。しかも、届出義務を課せられるので、登録率等はかなり改善されて、全国的ながん登録、罹患のデータベースとしては整備されると思います。ただ、それを研究目的で利用するには、基本的に対象者の方々の個々の同意が必要だということになっていますので、今のところこういうコホートを設定して、がん登録の照合によって罹患を把握するには、あらかじめ対象者全員の同意を取っておくことが必要になります。

○大久保座長 全国のがん罹患者の中で、このコホートの人だということをどうやって同定するかというのは、技術的には可能なのですか。

○祖父江委員 国民番号というものがないので、ユニーク番号がないので、かなり難しい点はありますが、一応、国レベルで名前、性、生年月日、住所地という個人情報を使って照合する。この過程は、がん登録を行う中で、複数の届出票がある中での罹患の情報の照合と、死亡との照合を実際に国レベルでやるわけですから、その中でのノウハウを使えば、内部ファイルとの照合は恐らく可能になっていると思います。

○大久保座長 これはまだ細かいことは分からないのでしょうけれども、この研究を実際に研究班という形で組織した場合に、例えば国の調査なのか、民間の調査なのか、位置付けによって違うと思うのですが、見通しとしては実際の利用の可能性はどういう調査形態というか、どういうオーソライズがあったら可能で、どういう場合には難しいとか、そんなものはまだ分かりませんか。

○祖父江委員 ですから、国が情報の使用者となっている場合も、条文には書いておられますが、普通はそういうことはせずに、研究的な利用でいくのが通常ではないかというように、説明は聞いています。

○大久保座長 この調査をどういう母体でやらないと利用できないとか、そういう制約は今は余り考えなくていいということですね。いいのですね。

○祖父江委員 研究で行う場合には、同意の制約が課せられますけれども。

○大久保座長 そっちは必要でしょうけれども。

○祖父江委員 国が主体となって行うものであれば、必ずしもそこは求められないということです。

○大久保座長 分かりました。ありがとうございました。ほかにどうでしょうか。

○高村委員 確認なのですが、 47 ページにも書いてありますが、前回の議論での頻度ですね。どのぐらいの頻度でやるか、前回 2 年に一遍という議論が。

○大久保座長 いや、決めたわけではない。そこは非常に大事なところなので、是非、御意見ください。

○高村委員 「これをベースにして検討すべき」というのがエに書いてあります。それで、今回の骨子案では年に 1 回にしているということなのですが、これは根拠として。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 我々の提案としては、現実問題としては職域健診が年に 1 回ということと、一般的ながん検診のほとんどが年に 1 回、それからチェルノブイリが年に 1 回やっている中で、 2 年に 1 回にするという明確な根拠というか、エビデンスがあればあれなのですが、それがない限りなかなか 2 年に 1 回にするのは難しいな、というのが今のところの考えなのですが。

○数藤委員 自動的に毎年データといいますか、検査結果が出るということでもあるのです。 1 年に 1 回、健診がある。

○大久保座長 健診のデータでいいのだったら、毎年もらえるということです。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 精度管理の話はさておきですが、 1 年に 1 回、健康診断を行う機会はあって、在職中の方であれば受診率は非常に高いという現実はあります。

○笠置委員 検査値の話なのですが、 1 つはプリバレンスとしてどうなのか。被ばくの前どうだったのかというのは、やはり押さえる必要があると思うのです。それは健康診断を受けることになっていますので、そういう情報がもしあれば、それをバックグラウンドとして、「生化学検査の項目と頻度」と、ここで書いてあるのは、これから調査をしていって、何か異常があるのかどうかをエンドポイントとして見るという話だと思うので、その 2 つの必要があるのかなと。以前と以後ですね。もう 1 つは、追跡調査をしていく間に、いろいろな検査がありますが、なるべく絞るべきではないかと思うのです。たくさんの項目をしますと、何かしら突然に有意な関連が出たり、特にハード的なエンドポイントであるがん罹患とか人口動態とはちょっと違って検査値ですから、いろいろなバリエーションが入ってきますので、結構たまたま出たりする可能性もあります。これはやはり必要だなということ、その辺を絞る必要もあるのかなということを、今ちょっと思っております。

○大久保座長 頻度の話と、今ちょうど出たように、がんの検診をすべきなのかどうか。その辺のところは、祖父江先生どうですか。 

○祖父江委員 がん検診をすべきかどうかは、一般的には受けることでのメリット、ベネフィットと、受けることでの不利益ですね。利益・不利益バランスで決めるというのが大前提ですが、利益がきちんと科学的な証拠で証明されているものがどれだけあるかというと、やはり幾つか限られるのです。それが一般のがん検診として推奨されていますので、一般にがん検診で推奨されているものをこの集団に当てはめるというのは、別にそれは OK だと思います。頻度が一応、厚生労働省の出している指針で年 1 回となっていますので、その頻度で行うのが原則だと思います。

 それに加えて、一般にはやられていないのだけれども、新たながん検診の項目を加えるか。ここに関しては慎重に考えるというか、理屈立てをして、やみくもに検査項目を増やすわけではなく、きちんとリスク・ベネフィットバランスを考えての導入が望ましいと思います。

○大久保座長 甲状腺はどうですか。

○祖父江委員 甲状腺に関しては微妙ですね。非常に微妙だと思います。だから、やみくもに検査の頻度を高めて、毎年やるということはバランスから言ってどうなのかと思いますし、かと言って何もしないのがいいのかということも、こういうリスクを抱えた人に関しては一般とは違うのだということで、やるということも、ある程度正当化されると思います。

○大久保座長 先ほどの表にもあるように、 100mSv 以上の方は、がん検診、 3 部位はやられているのですよね。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 はい、やられています。

○大久保座長 これは今後も我々が何を言おうと、黙っていても続く。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 それは精度管理という面を度外視すれば行われます。

○大久保座長 先ほどの議論で、普通の一般健康診断、今回の緊急作業者の健康診断、緊急作業者の中でも特に被ばく線量の多い方の健康診断と、 3 つのデータは我々が今、検討している研究のデザイン如何にかかわらず、自動的にこれからもデータは発生するわけですね。それとのリンケージをどう取るかを考えていくのも、 1 つの作戦ではあると思うのです。改めて同じ客体のサブジェクトに対して、研究用に別な検査をするというのはちょっと考えられませんのでね。

○得津電離放射線労働者健康対策室長  100mSv 超えは、確かに今おっしゃったように 3 つのがんと甲状腺の検査をやるのですが、 100mSv 以下はどうするかという話があって、ここのところで御意見を伺いたいのと、甲状腺の超音波については、今回、祖父江先生の所の特別研究で今のベースラインを把握するという視点でやってもらっていますが、そういうものも次回いつ頃やったらいいのか。その辺の頻度的なものも御意見等頂けると有り難いと思いますけれども。

○大久保座長 どうしますか。

○祖父江委員 ゆっくりしたがんの場合、とにかく発見率が高くなるのは初回であって、繰り返し行うことで、ものすごく発見割合が高まるかというとそうではなくて、どちらかというと要精検率というか、微妙な異常があるのだけれども、恐らくがんではないという所見を毎回、引っかけることになるのです。そのことによる心理的な不利益というか、不安があって、余り高頻度にやるのはどうなのかというところです。私は初回やり、あとは割と間隔を開けてやったほうが望ましいのではないかと、個人的にはそう思うのです。

○大久保座長 それと今 100mSv 超えの方にやっているがん検診は、あくまでこれはいわゆる健診のためにやっているのですね。もし、我々が今回提案するとすると、今度は調査研究のための検査になるので、例えば精度管理とか診断基準とか、そういうものをきちんとそろえないと、使いものにならないですね。その工夫もしっかり考えておかないといけないと思うのです。今 100mSv 以上ですが、 50mSv 以上を研究対象にしましょうといったときに、その 50mSv 以上のものは今やっている 100mSv 以上に対しても全部、精度管理を掛けないといけないことになるのです。だから、やはり先生が言われるように、研究的要素としてはある程度間隔を開けて、必要な間隔ごとに特別調査としてがん検診に入れると。それは説得力があるのですね。

○祖父江委員 そのほうが望ましいような気がしますね。

○得津電離放射線労働者健康対策室長 それはスクリーニングレベルという理解でいいのですか。要するにスクリーニングに引っ掛かっていても、精密検査に行くわけではない。そこの精度管理まで研究で踏み込むのかどうかという話、それを精度管理というのかどうか。

○大久保座長 精度管理はスクリーニングの精度管理だと思うのですが、あとはケース・バイ・ケースなので、全部ストラテジーが変わりますから。

○得津電離放射線労働者健康対策室長 結局それはがん登録で情報が把握できれば、それをマッチングさせればいいのかと思うのですけれども。

○祖父江委員 検診で要精検になったものは、それをほぼ追っていくのが望ましいことであり、健診を受けないような人から出てくるがんをがん登録で把握するのが、本来の筋だと思います。

○大久保座長 検診の頻度そのものはどうしますか。がんはとりあえずそういう話にして、ほかの検査についての頻度は、とにかく年 1 回でできるなら、年 1 回でいいということですよね。一応とにかく年 1 回という案で、先へ進ませていただきましょう。

○祖父江委員 あと 1 点、人口動態調査は、今、単独で行っても個人同定はなかなかしづらいところがあって、住民票で死亡日を同定しなければ死因にたどりつかないという構造になりつつあるのだと思いますけれども。

○大久保座長 うちがやっているように戸籍照会から始めないと、恐らくできないと思います。

○祖父江委員 戸籍か住民票か。

○大久保座長 住民票かで、どっちかで。とにかく死亡を確認してから、その特定の方についての死因を調べない限りは、死亡診断書で国レベルで集めたもので照合しようというのは、恐らくかなり難しいと思います。そういう意味では、この 2 万人の方に同意を頂くときに、可能であれば戸籍を教えていただく。それで、その戸籍を使って死亡をフォローすると。

○祖父江委員 それが可能であれば、非常に安定したものでよろしいとは。

○大久保座長 提案だけはしますよ。

○得津電離放射線労働者健康対策室長 毎年、住所地といいますか、連絡先、現況調査をやっていて、 1 年に 1 回は住所を把握するので。

○大久保座長 そうですね。今の状態だとちゃんと現況調査をやって、移動も全部、把握できるようになっているので、戸籍がなくても死亡すれば死亡したという情報は取れるのですよね。

○得津電離放射線労働者健康対策室長 それである程度は追いかけられるかなと思うのですけれども。

○大久保座長 言った先ですぐ変えてすみません。今の健康相談制度のフォローアップシステムを使って追跡をするということでいいですね。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 そうですね。この中に明確に書いていなくて恐縮です。研究とは別にデータベースを管理するための事業がありまして、そこで移動履歴をずっと追いかけていきますので、その結果を研究側にフィードバックできますので、現実はそれと組み合わせた形のデザインで。

○祖父江委員 それでやるのであれば、きちんとそれも計画の中に。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 それはおっしゃるとおりで、ちょっと抜けておりますので、入れたいと思います。

○大久保座長 後で元に戻ってもいいです。お二人の先生方がお帰りになるのが、だんだん近付いてきてしまうので、 3 にいきましょう。被ばく線量です。お願いします。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐  3 番の「生涯被ばく線量等の調査方法」です。これは既存研究でロシア政府の行っておりますチェルノブイリの疫学研究ですが、これもレジストリーというデータベースが付けられておりまして、そこの個人ごとに発行された証明書に記載された線量で評価しているということです。

 それから、前回の御議論ですが染色体の話で、物理線量測定と生物学的線量測定の比較ができるというお話と、あと、特に内部線量につきましては、実測値がないものについて保守的な推定をしているという問題があります。それで、そのときに研究班で、内部被ばくの評価方法について今、整理中ということでしたので、それにつきまして今回、資料を付け加えておりますので、若干説明させていただきます。

22 ページです。これは昨日、報道発表をしたというものですが、内部被ばく線量の追加再評価を行ったということです。今回、追加再評価を行ったこと自体、今回の議論とは関係がありません。 25 ページを見ていただきたいと思います。ここにありますように、内部被ばくの評価の方法は 6 つのバラエティがあるということです。

 まず 1 番目は、一番確実ですが、ゲルマニウム半導体検出器を装着したホールボディカウンターによってヨウ素 131 が実測されているものです。これにつきましては、測定されている数値は確かです。ただ、どのようにその摂取日を設定するのかというところで誤差があります。 2 番目は、核種を同定できないホールボディカウンターを使ったときに、本来は空間線量率を測定するためのサーベイメーターを喉に当てて直接甲状腺の線量率を測ってヨウ素を確認したというものがあります。 3 番目は NaI のシンチレーションのホールボディカウンターで、核種を同定できるものでヨウ素が同定されたものです。この 3 つにつきましては、取りあえずヨウ素が実測されています。 4 番、 5 番は実測されていない場合です。

 これにつきましては、丸4ですが、検出されなかった場合は 2 つの方法で推定をする。 1 つは、 a) ということで書いてありますが検出限界値からの推定です。ヨウ素 131 の検出限界は機器によって出てきますので、それが測定されたと仮定して、計算コードによって摂取日まで戻して残留率を割り戻すというやり方です。 2 つ目は、セシウム自体は実測されていますので、この実測されたセシウムをシナリオを使って摂取日まで残留率で戻して、そこからヨウ素・セシウムの比を使ってヨウ素を推定するという方法です。このいずれかの方法の低いほうを採用することにしております。

5 つ目がプラスチックシンチレーションによるホールボディカウンターです。これは、核種の同定ができないシンチレーションで、ホールボディを測った場合にどうしているかということです。これは、 NaI のサーベイメーターで測った有意な値が出ているヨウ素 131 の測定値とそのプラスチックシンチレーションで測ったものの測定値を近似式で近似して、そこから測定日ごとのセシウム比を算出できるようにしてありまして、それを検出されたセシウムの値に乗じてヨウ素を推定するということをしております。

6 つ目がこのいずれにも当てはまらないものです。例えば同じ作業を同じ時期にやっていた人のヨウ素・セシウム比を使っているような場合、それから、ほかの原子力施設にもっと詳しい、ゲルマニウム半導体で非常に早い段階で非常にたくさんの、核種まで全部がっちり分かっているようなものもありますので、それは別途の評価をしております。

 これだけバラエティがあるという前提の中で、 32 ページがあります。これは摂取日をどのように考えるかというところです。これにつきましては、相当議論があったわけです。例えばプラントメーカーは、作業に初めて入った日に全量を摂取したというシナリオで考えている所もございました。あるいは、この下のほうにありますが、震災当日から 3 23 日まで従事したような場合は空間の放出物質にピークが立っていますので、そのピークに合わせて摂取日を設定しているとか。あるいは、例えば 10 日間あるいは 1 か月間入っていればその中間日を摂取日としている。様々な考えがある中でこれは、専門家の御意見を踏まえて最も保守的な評価をするということで、作業初日に全量摂取した急性摂取シナリオを採用するということで統一したということです。ですので、真の値がなかなかない中で非常に保守的な推定を行っているということは御理解いただきたいと思っております。

 資料の 49 ページに戻ってください。前回の御議論で、代表者測定を行っていた場合もありますので、外部被ばく線量の生の値を保管しておくべきとか、臓器別の内部被ばくの線量の推定も行っていくべき、臓器別線量の推定を行っていくべき、それから、レントゲン CT による医療被ばくの把握をしっかりしなければいけない、その意味で健康カレンダーとかレセプトデータによる受診記録などを十分に集めるべきだ、こういった御意見があったわけです。

 これを踏まえまして骨子案としましては、 (1) 内部被ばく測定につきましては、先ほど説明いたしましたように、長期健康管理の側面から最大限高い数字が出る形の推定を行っているのは妥当なわけですが、疫学研究の観点から申しますと、ばく露が課題になっておりますと、量反応関係的に見ると、検出されにくくなるというデメリットがありますので、長期健康管理とは切り離した上で疫学研究の観点から採用する被ばく線量を再評価することも考えるべきではないかということを入れております。この場合は最大値ということではなくて、中央値とか、あるいは最も確からしい数字、そういったものを考える必要があるのではないかと。臓器別の被ばく線量についても、できるだけ計算をするということです。これにつきましても、確からしい数字を使うべきではないかということです。

 医療被ばくの把握につきましては、特に CT は線量が大きいということですので、場合によっては職業被ばく線量を上回ってしまう可能性もありますので、これを把握しないと研究として意味をなさなくなってしまう可能性が高いという状況です。また、医療被ばくの把握を単に記憶に頼りますと本人の健康意識などによって偏りが発生することもありますので、健康カレンダーのようなものをお渡しして治療の記録を、例えば領収書を貼り付けていただくとか、そういった形でフォローする必要があると。あと、客観的な資料としてレセプトによる実施記録も望ましいということですが、これは本人の同定ができない状態にしかなっていませんので、これを収集するとなりますと、東京電力等の個別の健康保険組合との協議が必要になる上に、しかも御本人同意が要るという、ハードルは高いということです。

 被ばく線量等の記録の適切な保存については、将来の検証に耐えられるように、外部被ばく、内部被ばくとともに、測定器の種類とか測定条件、測定結果を可能な限り原票の形で保管すべきであるということ。内部被ばくは、特にスペクトルデータ、検出データといった測定値の詳細に加えまして、摂取日とか、その他の評価に使える勤務シフト表とか、出勤簿とか、そういった行動調査的なものも十分に保管しておく必要があるということです。これら一次資料につきましては、一義的には東京電力と元請事業者が保管するということですが、資料の散逸ということを考えますと、本人同意が得られたものにつきましては、研究組織においてもこういったものの写しを保管することについても検討すべきではないかと書いてございます。

 それから、事故の前、事故の後に受ける通常被ばく線量を把握する必要がありますので放射線影響協会の中央登録センターとの連携は必要不可欠であるということですので、本人同意を取る場合には、中央登録センターの利用も含めて同意を取る必要があるということです。

 染色体検査における生物学的測定の活用については、物理的線量測定との比較は有意義であると考えておりますが、差があった場合にどういう整理をするのかということについては御議論いただきたいと考えております。特に内部被ばく線量、先ほど推定をしているということもありますので、そこで推定された物理的線量と生物学的線量で下がった場合どうするのかというところは、御意見を頂ければと考えております。

○大久保座長 ありがとうございます。いかがでしょうか、どこからでも結構ですので。

○明石委員 特に内部被ばくについては、この調査というか、データとして残しておくということは、今後新しい何かが出てきたときに使えるので、これは必要不可欠だと思います。例えばスペクトラムを残す、機種を残す、検出限界、バックグラウンド、全部、今までの測定値として残しておく、これは必要不可欠かなと思います。

 もう 1 つ、「臓器別の線量」といっているのは恐らく、ここで指しているのは甲状腺と目と皮膚と実効線量ということでしょうか。ほかに何か。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 これは前回、児玉先生から頂いた骨髄とか。

○児玉委員 例えば、白血病の場合は骨髄の線量があったほうがいいと。

○明石委員 それは計算値として求められるのでデータを残す、そういうことでしたね。

○児玉委員 ええ、この間はそういう話でした。

○明石委員 分かりました。

○大久保座長 生のデータを取っておけば後でできます。

○明石委員 そういうことですね。

○児玉委員 後でということで。

○大久保座長 数藤先生、どうですか、染色体の検査と物理推定が食い違ったときどうするのか。

○数藤委員 いや、食い違うというのは今までの経験でも。今、 60 人ぐらい調査しておりまして、もともとの検出限界が最初にあったように 50mGy というレベルです。あとは、それ以下の 1mSv 以上の外部被ばくの場合に被ばくはしていたようだというのは確かに見えるのです。でも、ここでは、どちらかというと、 100 とか 250 という基準値を超えなかったかどうかということのほうが多分きちんとした結果が出せると思います。

 それから内部被ばくです。これも、上位何人かを使って今、調査中です。それで、大きめに計算をして体内に存在するセシウムやヨウ素から染色体検査の対象であるリンパ球がどれぐらい被ばくしたかということをやると、やはり数 mGy とか、 10mGy とか、それより少ない可能性のほうが高いのです。そうなってきますと染色体異常レベルでは恐らく、何千個かに 1 個という頻度でその影響を受けたものが見える可能性はあるのですが、それは、バックグラウンドとの差はかなり難しいと思います。ただ、これは現在、まだ調査中でして、研究には多分、あと 1 2 年ぐらいは時間がかかります。

○大久保座長 ですから要するに、先ほど明石先生がおっしゃっていたように、細かい記録を残しておけば、後でいろいろ操作はできると思うのです。

○数藤委員 そうですね、そう思います。

○大久保座長 それから、今、内部被ばくの推定の御説明が細かくあったように、いろいろなケースがあると、結局、 1 点で推定できなくて、その可能性の範囲が分かるということですね。笠置先生、これは最後のリスクアナリシスのときに。何もエクスポージャーデータは 1 点のデータでなくても、変数で入れても大丈夫ですよね。

○笠置委員 よろしいですか。

○大久保座長 はい。

○笠置委員 ここに「中央値」という言葉がありますが、これは、ある個人にとっての線量がたくさんあって、その中央値という意味ですか。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 説明が省略してありまして申し訳ありません。例えばセシウム・ヨウ素比を計算するときに、一応集団的に見ております。例えばセシウム・ヨウ素比が 5 倍から 100 倍までばらついているときにどれを使うかというときに、今回、我々は 100 倍を使っているのです。

○笠置委員 そういうことですか。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 では、中央値ということになると、頻度で見るか、どういう平均で取るかは別に見ると間の値はやはりありますので、それを使うのかどうかと、そういうことです。

○笠置委員 これは多分、解析上の話になってくるのだと思います。

○大久保座長 それで解決できますよね。

○笠置委員 ええ。私は中央値には賛成だと思うのですが、最大とか最小は中央値を採用したことによってどう変化が来るかというような感度分析的なところで利用すれば、それは 1 つの方法かなと思います。

○大久保座長 大事なことは、この 2 万人の方でタイプ 1 からタイプ 5 までのどういう推定方法で決めた値なのか、その記録をきちんと残しておくことが大事なのです。そうしておけば後は笠置先生が何とかしてくれますから。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 ばく露につきましては、現在行われております祖父江先生が主任研究者の甲状腺の研究でも、それぞれのケースごとにかなりばらつきがあったり、いろいろ議論が出ています。その部分は、恐らく疫学研究を進める中でばく露分析というのを、また別に研究班を作ってやっていく話だろうとは思いますが、ここでは飽くまで、基本的な考え方だけ御確認いただきたいということです。

○大久保座長 それでは、あと 5 分しかないのでお二人の先生方、区分を設けないで最後の 3 項目に関して、お二人から言い残すことがあったら伺う時間にします。 1 つは交絡因子です。それから研究体制です。何かポイントになるところで御発言があれば、是非お聞かせください。最後は研究スケジュールです。

○祖父江委員 交絡因子として情報を取りにくいかなと思うところが感染の状況です、ピロリ菌とか HC HB とか。ただ、がんのリスクに関していうと非常に影響が大きいので、そこの情報が得られるとコンファウンディングの調整としては非常に有効です。

○大久保座長 今、ピロリ菌は血液か何かで調べられるのでしたか。

○祖父江委員 いろいろやれます。

○大久保座長 血液を採れば。

○祖父江委員 血液を採ればやれます。

○大久保座長 採れば分かるわけですね。

○祖父江委員 はい、 HC HB ももちろんそれでいけますから。ですから、そこのところの情報があると非常にいいかなと思います。

○大久保座長 研究体制については何かありますか。

○明石委員 幾つかの所でいろいろな研究をされているので、対象を絞っているので別のケースというと、これはカテゴリーのデータを頂いたりすることはないわけですね。

○大久保座長 もう 1 回。

○明石委員 つまり、 2 万人の人が対象になっているのですが、 2 万人の人が受けた検査は、どういうカテゴリーで受けたということではなくて、その人が受けたデータをもらうということなので、どこか別の所で調査されている集団が特に取ったデータを頂くということではなくて、この通常の検査でやったものだけを取り込むと、そういうことですよね。

○大久保座長 いや、この研究計画としてきちんとデザインした調査をすることはできるのです、今は、実際にできるかどうかは別ですが。我々としてはそれを提案しなければいけないと。

○明石委員 分かりました。

○大久保座長 ほかでやっているのは全部健診ですから、精度管理をしていませんので。それから、途中でいなくなっても、それは気にしない検査です。我々のほうは、一度決めたら最後まできちんと追わなければ意味がないです。

○明石委員 最後までフォローアップするという。

○大久保座長 はい。

○明石委員 分かりました。

○大久保座長 ですから、そういう意味では体制は非常に大事だと思っています。

○得津電離放射線労働者健康対策室長 補足をします。今、祖父江先生の所では特別研究が動いていて、白内障を金沢医科大学の先生にお願いして動いているという状況がありますが、将来的にこういう研究体制ができれば、そういったものも下にぶら下げるような形で全体を、そんなイメージを我々も持ちつつはあるので、体制のイメージとしてはそのようにしていったほうがいいのかなと。

○大久保座長 少なくとも今、机上のプランニングをやっているので、一番理想的なことを提案したほうがいいと思います。

○得津電離放射線労働者健康対策室長 明石先生にお伺いしたいのは、これまでも UNSCEAR のレポートの日本語訳をされたりしていますが、そういう経験からこういう放射線の研究をするに当たって中心的な機関の要件のようなものが相場観として何かあればコメントを頂きたいのです。

○明石委員 私、自分の組織のことを考えてみると、結局、放射線の今回の事故のことでも、何か戻ってくると、必ず線量に戻ってきてしまうのです。ですから、何かいろいろな情報が残っているところで後で再計算ができる、いろいろなことができるところだけは確実に担保しておくことが。特に外国の機関からの問合せはほとんど線量に戻ってしまうのです。ですから、そこだけはきちんと担保できるように、データ、そういうところができる機関をアイデンティファイしておくことが、私は一番重要かなと感じています。

○大久保座長 今は、ですから一元的に。先生の所は全部持っているのですか。

○明石委員 いや、全部は持っていないです。

○大久保座長 ないですか。

○明石委員 持っていないです。

○大久保座長 そうすると、やはり会社が保管している部分もある。

○明石委員 いろいろな組織で不足して、 1 つの組織しか持っていない所もいっぱいあります。

○大久保座長 この班としてはそれを提言して。全部、一元的に集約するということは、やはり私どもの非常に大事な使命ですね。そろそろ先生方が時間になってしまったので。ありがとうございました。

○得津電離放射線労働者健康対策室長 よろしいですか。祖父江先生がいる間に。

○大久保座長 どうぞ。

○得津電離放射線労働者健康対策室長 医療被ばくのところでレセプトを活用できないかというような話が、児玉先生からもあったかと思うのですが。確かに活用できる可能性はあるのですが、あくまでも請求上の書類なので、実際にやった回数がきちんと反映されていないものもありますし、 DPC みたいに、包括評価のときにはそういったものが出てこない可能性もあります。

 あと、医療被ばくは医療保険でない、いわゆる人間ドックなどで受けた場合のデータは全然把握できないので、単に健康カレンダーのようなものにきちんと書いてもらって、それに、先ほど安井からも説明しましたが医療機関の明細書を貼ってもらうとか、そのような形で記録を残してもらう。そうすれば、我々がその明細書を見て、多分、これは CT を受けているだろうというのが判断できると思うのです。そこに問合せをするとか、そういうことでデータの補強をしていけばいいのかなと私は思っているのです。一応そういう方向で、コメントがあれば頂けますか。

○祖父江委員 皆さんがそれにきちんと反応して正確に記録してくださればいいのですが、今までの経験で、本人からそういうものがきちんと出てくるのはやや望みが薄いのではないかというのが過去の経験から言われるところではないかと思います。

○得津電離放射線労働者健康対策室長 レセプトデータは確かに患者さん個人の情報なのかもしれませんが、作成者は医療機関なので、多分、そちらの了解も得なければいけないと思います。そういった意味では、調整のハードルは結構高いような気もするのです。それもチャレンジしていこうと思いながらも、それ以外の方法も並行して考えていかなければいけないのかなと思っております。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 恐らくですが、全員というのは多分無理だと思いますので、健康カレンダーみたいなものが一次情報としてある中でできるだけトライするという、二段構造になるのではないかという気はいたします。

○祖父江委員 バリエーションスタディのような形でどちらも、データが得られた人の健康カレンダーから得られた検査の頻度とレセプトからの頻度を比べて一致していたらいいのかなというところですね。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 ええ。

○大久保座長 児玉先生、 HS 2 年に 1 回インタビューをして一生懸命に聞き出しているわけですが、それでの印象はどうですか。

○児玉委員 やはりこれは記憶に頼るものですから、個人でえらく差があったりすると思います。それから、この間も申し上げたのですが、どういう検査を何回ぐらいしたかというのは言えるのですが、どの病院で、どの装置でということがないと線量の値までも取れないというので、やはりなかなか難しい問題があります。それから、 2 年たって「過去どうでしたか」というよりは、さっきの健康カレンダー的に、そのとき、そのとき、その都度、その都度、もし記録をしてもらえれば大変いいのですが、なかなか難しいです。

○大久保座長  1 つで完全なものはない、だから幾つかの方法を二重、三重にやって最大の努力をする、そういった表現でしょうか。それでは元に戻らせていただきます。一応、被ばくのところはよろしいですか、ばく露のデータに関する議論は。よろしければその次の交絡因子の所からもう一度元に戻って、最初に御説明を伺ってから議論をしたいと思います。

                            ( 明石、祖父江両委員退席 )

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐  52 ページ 4 番「交絡因子等の項目及び調査手法」です。これにつきまして新しい情報としましては、チェルノブイリの疫学研究につきましては、ロシアのものについては特段の交絡因子の調査は実施していないというお返事があったということと、前回のコメントですが、大規模コホート調査で使う質問票は標準化されつつあるので、できるだけそれに合わせたほうがいいという御指摘、それから、職業被ばくというのはやはり職業上の特性がありますので、有害物質へのばく露、学歴とか職位とか職種、そういったものも調べるべきだという御意見を頂いております。

 骨子案ですが、まず「基本的考え方」です。長期にわたる疫学研究であり、がんなどの様々な要因が考えられる疾病を調査対象とするため、交絡因子を適切に把握することは非常に重要だということ。それから、国内の大規模コホート調査で使用されている質問票が標準化されていますので、それは活用する。その中には、身長、体重、家族歴、既往歴、喫煙・飲酒状況等は、当然含まれている。

 「職域の特性を捉えた交絡因子の設定」です。職域の特徴として有害物質のばく露がありますが、これが必要不可欠ということ、作業上の身体的、精神的な負担に大きな影響を与えると考えられる学歴、職位、職種の調査も重要であるということで考えております。

○大久保座長 ありがとうございます。いかがでしょうか。

○高村委員 確認ですが、コホートのデータで対象者に、 HTLV-1 の抗体陽性頻度はきちんと把握されていると。

○児玉委員 やっていないです、部分的にはやったことがあるようですが。

○高村委員 全体としては。

○児玉委員 はっきり。

○高村委員 いや、さっき。当然、肝炎ウイルスとヘリコバクターがあって、作業者の地理的分布から考えると余りないのかなと。その辺はどうでしたか。ただ、言われたように、将来的に白血病が 1 つの。

○児玉委員 まあ、そうですね。

○高村委員 そういうことがあれば、日本でやるのであれば入れてもいいのかなという気はするのですが。

○児玉委員  ATL 以外の白血病が出るという意味ではないですよね。

○高村委員 そういう意味ではないです。だからそこを。

○児玉委員  ATL が放射線由来かもしれないという。

○高村委員 いいえ、そうではなくて、そこをきちんと、除外するではないですが、将来的に診断があったときに、 ATL が発症したときにきちんとそのデータを持っておく。

○児玉委員 それは交絡因子として。

○高村委員 そうです、交絡因子というか、基礎データとして。ただ、今言ったように、作業者の地理的分布を考えれば頻度はそんなに高くないかなという気はするのです。

○大久保座長 広島辺りではどうなのですか。

○児玉委員 広島は少ない。長崎は。

○高村委員 長崎は高いのです、一般的に西日本が高いので。

○大久保座長 今の話はそれで一応、御意見があったので入れておいてください。私は、やはり職業上の被ばくは大きいと思うのです。これは是非押さえないといけない。

 それから、職業はどんどん変化していきますので、特に現場の作業者の場合にはいろいろな作業場に入るので、それぞれの時点で放射線以外の発がん物質を取り扱う職場に入る人たちがいないということは、全く保証の限りではないと思います。

 ほかは何かございますか。よろしいですか。それでは次の「研究体制」について御説明ください。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐  54 ページの「研究体制」についてです。既存研究については、チェルノブイリの事故処理作業者に対する疫学研究、これはロシアのものですが、かなり詳しい情報が入っております。レジストリーと書いてあるのは、要するにデータベースのようなもので、それは政府がかなり関与してがっちり作っているということです。その下に、コーディネーション委員会を作ってやっていると。予算の財源としては、基本的には国家予算を使っております。各地方自治体の関与もあるということです。

 子供の環境と健康に関する全国調査、エコチル調査については、環境省からの補助金によりまして、国立環境研究所がコアセンターとしてデータの収集、データシステムの運営、生体試料、環境試料の保存・管理・適切な精度管理の下で分析、全体の事務局的な機能を果たしているということです。その中に運営委員会を設けて、その下に学術専門委員会を作って、技術的なマニュアル等の案を作成している。それを運営委員会で承認する仕組みをとっています。

 その下に、環境省の委託事業としてユニットセンターを全国に 15 か所設けて、コアセンターがユニットセンターの中にリサーチコーディネーターを育成する。このリサーチコーディネーターが同意書の取り付け、質問票の回収、生体試料の採取を実施している。このユニットセンターというのは、数百人規模から数十人程度までと様々である。倫理委員会については環境本省に倫理委員会があって、そこで基本的な審査を受けた後、ユニットセンターとコアセンター、それぞれで倫理審査を受けている。生体試料の分析については、コアセンターが委託する分析機関、これは 1 社で実施していて、分析機関が直接ユニットセンターから生体試料を回収して、必要な分抽を行った上でコアセンターなどで凍結保存している。化学物質の非常にマニアックな分析については、複数の分析機関に委託して行う場合もあるということです。研究謝金についても設定されております。

 同意書については、国内外の研究に幅広く利用されることとして、包括的に母親から取得しているということです。新しい研究が発生した場合には、追加同意を取る予定です。子供の同意も将来は取っていくということです。

○大久保座長  RC というのは何ですか。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 リサーチ・コーディネーターです。

○大久保座長 こんなにいるのですか。これは専任ですか。

○得津電離放射線労働者健康対策室長 コアセンターが教育して、その研修を受けた人はリサーチ・コーディネーターとして、この研究に入っている。

○大久保座長 このユニットセンターというのは、確か大学とか何かでしょう。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 大学の場合もありますし、何かいろいろでした。

○大久保座長 いや、いいです。ただ、 RC が何かなと思ったのです。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 専任という形ではなくて、いわゆる謝金対応ですので。

○得津電離放射線労働者健康対策室長 ユニットセンターは全部大学ですね。

○大久保座長 大学の研究員や院生とか助手とか、そういう人たちですよね。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 そうですね。医師・看護師も含まれます。

○得津電離放射線労働者健康対策室長 栄養士さんとか、そういった方も。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 前回の検討会のコメントについては、精度管理という観点から、やはり血液は 1 か所又は数か所で集中的に分析すべきではないかという御指摘。それから、 2 年に 1 回実施すると仮定すれば、相当の回数の健康診断が実施されますので、 1 回目、 2 回目、 3 回目という回数横断的な精度管理も要るという御指摘です。当然血液検査以外の項目もありますので、その精度管理も検討すべきだということ。検査項目や分析方法というのは日進月歩ですので、その検査方法の変遷とか、精度管理の記録というのは、やはり長期的にどこかの機関が一元的に把握、保存していく必要があるという御指摘がありました。

 被験者が現役の作業員ということもありますので、研究協力を得るための方策が必要で、研究謝金という方法もありますし、健康相談や保健指導など、参加することによるメリットをちゃんとやるべきだということです。

 事業者義務によって健康診断が現に実施されておりますので、それと同時に追加項目を実施したり、追加の血液検体の提供をしてもらうなど、法定健診と抱き合わせもあるのではないかという御意見です。倫理委員会については、中央に倫理委員会を設けた上で、全体の審査を行った上で、それぞれの研究機関でやり直すという 2 段階が有益ではないかという御指摘がありました。こういった御意見を踏まえて、今回、案としてお示しするのが、次です。

 まず、研究体制の骨格としては、対象集団の構成員が、基本的に全都道府県に散らばっているということで、 1 つの研究機関が現在広島・長崎で行われているような形で、集約的に健康診断を行うというのは、かなり困難であると。一方、生体試料の保存整理、分析の精度管理、同意の管理、倫理委員会の受審、そういったものを管理する中心的な研究機関が長期安定的に存在することが重要であるということです。このため、研究全体を管理掌握する中心的な研究機関を指定した上で、その下に各分野の研究に協力する「協力研究機関」を設定するという構成が考えられる。さらに、中心的な研究機関から委託を受けて、研究の同意取得や生体試料の採取、生体試料以外の検査などの実施を担う「委託健診機関」といったものを設定することが考えられる。この場合は、「委託健診機関」などが採取した生体試料などの収集運般、分抽冷凍等を行う委託機関等が別途必要になります。生体試料の分析に当たっては、精度管理を確実になされる分析機関へ委託する。これが全体像としてあります。

 厚生労働省の役割については、放射線に関する研究は、必ずしも国が信用されていないところがありまして、国家の関与ができるだけ薄いほうがいいというのが国際的な常識になっておりますので、厚生労働省の役割としては、研究結果を評価するための評価委員会の運営などに限定すべきと考えております。ただ、現実問題として研究を円滑に進めるために、例えば東京電力や元請事業者との研究協力に関する協議であるとか、中央登録センターとか個別健康保険組合からのデータ提供に関する協議については、日本の場合は、なかなか役所が介入しないと前へ進まないという現実がありますので、そういった所は支援をする必要があると考えております。

 厚生労働省がデータベースを当然管理しておりますので、そこの格納情報の提供というのは、厚生労働省において行うということです。これについては、研究開発型独法あるいは厚生労働省予算による研究班からの申請に基づいて、個人情報の保護の方策が十分に講じられていることを審査の上で情報を提供するという仕組みを既に作っておりますので、これに則ってやるということです。

 中心的研究機関の役割として考えているのが 5 点ほどあります。まず、全体管理として、研究全体を管理する運営委員会を設置して、その下に分科会なりを設置して、同意書の作成や、交絡因子の調査票、生化学検査の項目、精度管理、こういった中央的に一元的に管理すべき事項については、ここが決めると。その上で、研究協力機関と役割分担するということです。

 関係機関との協議も当然必要ですので、東京電力や中央登録センターとの協議も必要です。関係機関の募集・指導ということで、例えば委託健診機関などの募集もしなければいけませんし、指導や費用分担、生体試料の収集等を行う機関も募集する必要がありますし、分析機関の募集、精度管理のための指導も行う。こういったことも全部中央機関が行う。

 大きな問題としては、生体試料の保存管理です。特に、冷凍保存することになると、この機関が中心となった形で管理及び保存が必要だということです。当然、会計管理といった事務処理の集中管理も必要だということです。

 もう 1 つの論点として、血液生化学検査の精度管理についても、検討のポイントとしては、できるだけ分析機関の数は少ないほうがいいと。 2 万人全員について一定の精度で検査ができるという観点と、今後数十年間にわたって数十回実施される検査結果の比較、回数を跨った比較可能性の確保という 2 つの観点からの精度管理が必要だということ。具体的には同一サンプル分析等の方向がありますが、精度管理について何か御意見があれば頂きたいと思います。

 研究への同意については、エコチルの例を御説明します。 41 ページ、これはエコチル調査の同意書ということで、現に使われているものです。例えば、真ん中の辺りにありますが、調べるものは血液等々です。それ以外にも医療機関、行政機関、学校が保有する医療機関が健康記録を閲覧・収集することがあります。収集した試料はデータなどを保管して、将来にわたって国内外の研究に幅広く利用します。検査の結果などは返却するものもあります。将来の遺伝子解析のために、血液などが保存され、実際に研究計画が定まった場合には、倫理審査委員会で承認を受けるなど、必要な手順を踏んでから実施します。研究成果は個人情報を含まない形で発表されるということになっていますが、かなり包括的な同意を取っている例があります。

58 ページに戻ります。こういったものを参考にして、調査項目別ではなく、かなり包括的な同意を取るべきだということ。同意取得の方法は、面接、郵送、事業者を通じた同意などがあります。これは先ほどの委託機関がやることになりますが、最適かつ協力を得やすい方法とすべきであるということ。血液検体を長期保存する場合、保存されたものの検査方法についても、かなり包括的な同意を取っておかないと、血液検体を使っていても使えない状況になりかねないということです。ほかに何か留意事項があれば教えていただきたいと思います。

 法定健診との関係ですが、非常に重要なポイントになるわけです。法定健診については、法令上に定められているということもありますので、実施率が非常に高い状況です。そういった機会を活用することで、検査への受診率は非常に高くなります。ただ、そこで実施されている検査の精度管理は非常に困難ということで、 1 つの方策としては、法定健康診断実施時に血液検体を余分に採取していただくとか、あるいは抱き合わせでがん検診等の追加検査を同時に実施していただくなどの方策も考えられる。こういった形で追加で採取された生体試料は研究機関に直接送付する。

 この場合、血液検査以外の検査については、雇用事業主から提供を受ける必要が出てきますので、その場合の費用分担、個人情報保護についてどういうことをするのか十分な協議が必要になります。血液検査以外の心電図や X 線の画像診断、そういったものの精度管理については課題として残るということです。

 研究協力を得るための方策ですが、被験者は現役の作業員ですので、健診を受診することで賃金が下がりかねないということがありますので、研究協力を受けるための方策として、協力謝金も考えるべきではないかと。それ以外にも、健康相談や保健指導、ニュースレターの発行なども必要ではないか。倫理委員会については、研究全体を審査する委員会が中央にあったほうが望ましいということですが、これは中心的な研究機関に設けられている倫理委員会を使うのが妥当ではないかという案にしております。当然、必要な予算を長期安定的に確保する必要がありますので、それを諮る必要があることと、中心的な研究機関として、同一の研究機関が長期的・安定的に指定される仕組みが必要ではないかと考えております。以上です。

○大久保座長 非常にいろいろな課題がありますが、どこからでも結構ですので、御意見をお願いします。

 血液生化学の精度管理の話はきっちり書いてあるのですが、それ以外の問診を含めたいろいろな診察とか、面接とかの標準化というのは非常に大事です。例えば、中心的な組織に評価委員会や運営に関する委員会があるのですが、そういったような内容を常時検討するための学術的な委員会というのか、標準化委員会と呼んでもいいのかもしれませんが、そういうものもやはり必要ではないかという気がします。あとはどうですかね。最近はこういった調査をするときには、対象になった方々の意見をちゃんと運営に取り入れることも大事なことかもしれませんね。ただ、誰が対象になるのか分からないので、そこが難しいのですが。ですから、外部評価の中に、例えば労働組合の代表者に入っていただく。それは多分いろいろな批判が出たときに、そういった方に入っていただいたほうが、理解を得やすいということはあります。ほかに何かないですか。

○笠置委員 よくできています。

○児玉委員 かなり良くできていますね。

○大久保座長 次の所に国際的な第三者委員会というのが入っていますので、入れる場所はここがいいのかどうか、もしかしたら、今議論している所に入れたほうがいいのかもしれませんが。そういうものも一応配慮されています。何か追加の御意見はないですか。事務局のほうで、私どもが何か決めておいたほうがいいことはほかにありますか。法定健診の関係ですか。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 法定健診との関係もあります。

○大久保座長 それ以外には。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 それ以外には室長からもお聞きしましたが、中央機関として求められる要件に何か、先ほど明石先生が言われた以外で何かあれば。

○大久保座長 とにかく恒常的に 10 年、 20 年という長い期間安定した運営が保証されている所が大事な条件になります。ぐらぐら変えられるのは非常に困ります。

○得津電離放射線労働者健康対策室長 疫学研究で手間暇がかなりかかるので、そういう事務局的機能がしっかりしている所と思っております。

○大久保座長 そうですね。それは、先ほどのエコチルの体制を考えると、やはり、あのような仕組みがないと続かないでしょうね。エコチルも、私は最初の頃の座長からいろいろ聞いていますが、これだけのユニットセンターみたいなものをつくるというと、我も我もという話になって、非常にそこのところの制御が難しかったみたいですよ。今はもう落ち着いているみたいですが。何か知らないけれども、俺が動かしているんだという人が、あっちにもこっちにもいて非常に大変だったみたいです。最初、中心になる所が相当しっかりしていないと、指導力と影響力がある所で最初はスタートしないとかき回されて、せっかく今検討しているような内容がきちんと最後まで貫けない心配があります。これは表現が難しいとは思いますが。

 法定健診については非常に悩ましいところです。我々は今、研究という切口から考えているわけですが、当然、対象者になる方々というのは、安衛法の健康診断です、臨時作業者の健康診断です、今度は研究の健康診断ですと言われて、同じことを何回も何回も短期間に繰り返されるというのは避けなければいけないと思うのです。受ける立場のことです。そうなると、現役の労働者に関しては、法定の健診という仕組みは何かうまく関連付けて、その中でできるような仕組みを考えるのが、実効上は一番大事なことだと思うのです。その中で、標準化や精度管理をどうやるかという非常に難しい課題があるのですが、その両方のリクワイヤメントをうまく何とか最大化して考えないといけないというのが、今ここで言える条件になります。

○笠置委員 同意書は非常に重要だと思いますが、 1 つはエコチル調査の同意書というのは包括的というか、結構広く書かれて、 1 つの参考になる。あるいはたたき台と言ったらおかしいですが、こういうことも頭に置いておられると思います。やはりがん登録、地域がんとのリンクや、住民票で追跡して生死の確認をしていくことは必要になってくるのだろうと思いますが、その辺をどのように書くかは別にして、それは読み込めるような形で同意書を是非作っていただきたい。

○大久保座長 研究者の立場からいうと、いつもそこが悩ましいところなので、できるだけ包括的にやりたい、できるだけそうなるといいなという気がします。ただ、子供を産んだ母親というだけの状態でも、これだけのものが取れるのだとすれば、今回は緊急作業に従事したという条件で、そのフォローアップということなので、説明は比較的やりやすいのかなという気がしますが。これよりエコチルの同意書が取れる率は聞いてありますか。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 率というか同意を取れないと参加できないので、参加された方が先ほど御説明したように 3,000 人から 5,000 人です。

○大久保座長 そちらは分かっていて、何人にチャレンジして、何パーセント成功しているのか。

○得津電離放射線労働者健康対策室長 それはちょっと環境省からヒアリングはしなかったのですが。

○大久保座長 エコチルのスタディデザインがあったら結局、採血して、その中の化学物質を調べて、そのドースによって将来の結果を見ていくわけで、まだ比較的いいと思うのです。今回、うちの調査で同意書が取れないと、ちょっと致命的になる可能性があるので、もしそれが被ばく量にディペンドしていたりすると、これは研究の企画そのものが成り立たなくなってしまう。そうですよね。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 そうですね。

○大久保座長 そこは、そのバランスの中で決めていかなければいけないので、余り欲張って入れて取れなくなってしまったら元も子もなくなるのですが。そこのところは非常に難しいですね。あとは取り方の問題ですか。郵送で取ったら無理だと思います。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 多分、説明資料とかいろいろなものを入れてやらなければいけないので、あれもこれも入れると、資料ばかり多くて、多分全部見ないで、もう放り投げてしまう人も。

○大久保座長 ポイっとして終わりだと思うのです。全国に散らばっていても、最初はちゃんとトレーニングされた面接員が全部お会いして、御説明した上で取らないと。そういう意味では、最初はきちんとやったほうがいいと思うのです。先ほど祖父江先生がおっしゃっていた、最初の条件をうまく押さえておくことは非常に大事なので、フォローアップは最初さえそれでうまくいってしまえば、最悪、最低限のことは地域がん登録と死亡診断書で追えるわけですから。最初に押さえる条件が押さえられていないと、何をしたのか分からなくなってしまいます。最初が大事だということは、きちんと我々としては主張しておきたいです。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 説明員による説明というのは不可欠ですね。

○大久保座長 そうだと思いますね。これは例えば会社に全部委託してしまうとか、郵送でやるというのでは、とても精度は期待できないと思うのです。今まだホットなうちだと、それもかなり実現可能性はあると思うので、それでも今の相談事業で全然返事をしない人はたくさんいるみたいで、既に大分落ちているのは事実なのです。やはり、最初の頃、どさくさの中で住所も分からないような方を随分参加させているという話も聞いているので、その辺はこの時点では無理だと思います。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 今のところ捕捉率は 98 %ありますので。

○大久保座長 はい。それでは、最後の項目にいきます。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 最後は論点 6 です。これは中長期のスケジュールということです。既存研究で新しい情報としては、チェルノブイリのロシアの研究として、レジストリー、データベースのようなものが 1986 年から運営されて、最初の暫定評価は事故後 5 年後から始まって、疾病の評価は 10 年後から始まったということです。あとは、定期的に研究結果の発表は行われているということです。

 前回の検討会でのコメントで、研究が長期にわたるために、定期的に客観的な評価を受けることが重要で、海外の研究者も入った国際的な第三者委員会で 5 年に 1 回程度の評価を受けるべきではないかという御指摘がありました。

 こういったことを踏まえて、基本的な考え方としては、緊急作業従事者は現在 20 歳前半の方も多いということで、研究成果を上げるためには、相当長期間のフォローアップが必要になるということです。 5 年に 1 度の頻度で、国際的な第三者委員会による評価を受ける仕組みを設けるべきである。研究機関を期で区切る必要は必ずしもないわけですが、予算の関係等で必要があるような場合は、第三者評価の時期を捉えて、評価の報告書なども踏まえた上で研究の見直しを図っていくべきだと考えております。

 第三者委員会については、イメージが湧かないのですが、例えば国際的に著名な研究者を含む、これは抽象的な表現で恐縮ですが、具体的にどういうふうな観点で捉えるのかということ。委員会での評価結果は公表するということでよろしいのかどうか。その他、留意すべき事項があればということです。以上です。

○大久保座長 これはどうですか。ないですね。生涯にわたるフォローは必要だということです。留意事項の所には「生涯」と書いてありますが、骨子案には書いていないのです。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 生涯ですね。

○大久保座長 先ほども申し上げたように、最初に押さえておくべきことをきちんと押さえることが非常に大事だろうと思いますので、どこでも結構ですが、そのことを次の段階の案には是非入れておいてください。

○笠置委員 第三者委員会の件ですが、先ほど先生がおっしゃったように、ステークホルダーというか、入れるべきということは確認したほうがいいかと思います。

○大久保座長 あとは、研究結果の公表というのはないですね。これも先ほどのお話ではインディペンデント、厚労省は関わらないで、研究主体のほうが中心になって、アカデミックな研究論文として発表し、国もそれを使うし、国際機関もそれを使うと。それは最初に書いておいたほうがいいですね。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 そうですね。補助金を想定しておりますので、当然、国に対する報告書で別途しております。それはそれとして、どういうふうに活用するかということを書いておきたいと思います。

○大久保座長 それは必要です。それは実際の研究活動報告書であって、研究報告書ではないですよね。活動報告とは別に定期的にアカデミックな研究成果を、第三者的にインディペンデントの立場で作って、それを学術誌に公表すると。それは最初から書いておいたほうがいいですね。

○数藤委員 補足させていただきますと、今度の福島原発事故の作業者の調査でも、やはり UNSCEAR の放射線関連の取りまとめ報告書が何年かに 1 度出ますが、公開された学術論文でないと引用されないのです。ですから、必ず出さないと意味もない結果になってしまいます。

○大久保座長 そうですね。国際連合で放射線の人体影響に関してのまとめをレギュラーにやっていますので、そういうところでちゃんと採用されるようなものでないと意味がないので、きちんとしたレビューアが見ている第三者的な学術専門誌に公表することによって、研究成果を世の中に出すと。それは最初にきちんと書いておいたほうがいいですね。

○笠置委員 学術専門誌に出すというときには、それを出していいですよという、そういうことを承認を与えるような組織も考えるということですか。

○大久保座長 そうですね。先ほどのメインの機関の中に外部の人も入れた学術的な委員会も設けなければならないでしょうね。

○笠置委員 論文審査委員会的なものもその中に入れるということですか。

○大久保座長 そこでやるかどうかは、それはちょっと考えなければいけないけれども。

研究方法論とか標準化を考える委員会と最後の研究成果を出す評価を同じ人がやっていいのかどうかという問題はあります。これは別に書いたほうがいいですね。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 そうですね。現実問題として誰が書くのかというのは、かなりシビアな問題になりますので、その辺のさばき方というのは、放射線影響研究所では現実にどうされているか伺って。

○大久保座長 放射線影響研究所は内部での評価で出しています。その評価の仕方を含めて、毎年 1 回、外部の人から研究評価は受けています。ただ外部の人は、いちいち論文の審査をしているわけではないです。今回、我々の報告書は細かいことを書く必要はないと思うのです。ですから、ちゃんとしかるべき評価を得て、学術誌に発表する形で研究を公表すると。それだけ書いておけば、それでいいのではないですか。ほかにいかがでしょうか。

○高村委員 先ほど HTLV-1 の発言をしたのですが、あれはウイルスと疾患がほぼ 1 1 対応なので、全員にする必要はないので、削除していただいて結構です。もし疑いが出たときにやるということですから、最初スクリーニングでやる必要はありませんので、スクリーニングの候補としては削除していただいて結構です。

○大久保座長 いずれにしても、次回と次々回と 2 回ありますので、今日の議論を踏まえて、もう少し報告書の形に近い案を次回見せていただいて、そこでまた議論できますので。

○大久保座長 中央登録センターとの連携に関連して、放射線影響研究所の調査に関しては、被爆者援護法という法律の中に、そういう研究をするということが書き込んであって、それが私どもが補助金を頂いている根拠になっています。今のようなことを考えると、もし何か関連の法規の中に事業者が協力しなければいけないような法的な仕組みが作れると、それは大分違いますよね。簡単ではないことはよく分かりますが。もうそれは検討するまでもないですか。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 労働安全衛生法の中に疫学調査を実施することができるという、できる規定はありますが、それに伴う事業者に対する義務規定などは全くありませんので。

○大久保座長 例えばそれに基づく大臣告示くらいのことで、「この調査については協力してほしい」というようなことは余り見たことがないですね。

○得津電離放射線労働者健康対策室長 通常、厚生労働科学研究では、担当課から課長名で通知を出したり、事務連絡で是非協力をお願いしたいということで、そういうことで大体これはできているので、そういうものでなかなか研究が進まないという状況になったときには、もう少し上の段というのはあり得るかもしれませんが、基本はそういう線で努力をしていくということです。

○大久保座長 今の話を伺っていても、 70 何社あると、今はかなり関心が高いからまだ了解を取れるかもしれませんが、あと 10 年もして、ずっと関心が下がってくると、果たして協力してもらえるものだろうかと非常に心配です。

○笠置委員 同意というか、大変な努力は最初に必要だと。

○得津電離放射線労働者健康対策室長 我々も直接いろいろ状況を聞いたりはしていますので。

○笠置委員 そうですか。

○安井電離放射線労働者健康対策室長補佐 同意については、できるだけ 1 回で済むようにしたいと考えております。今回、大変御努力いただいて大変感謝しておりますが、毎年毎年やるわけにはいかないと思いますので、できる限り 1 回で包括的に放射線影響協会さんから同意を取る形にしたいと考えております。

○大久保座長 本人から同意を取ってしまうと、それでいいのですが、先ほど出たように、もし、事業者がやっている法定健診に協力してくれということになると、これは毎年頼まないといけないわけですよね。研究班と対象者の方が 1 1 の関係であるならば、 1 回同意書を取れば後はスムーズにいくでしょうけれども、その辺のところはどうですかね。やはり、会社で健診をやっているのに、また別の所へ行くというのは難しいですよね。

 私も職業がんの健康管理手帳で、退職後の健康診断というのをずっと見てきましたが、やはり、これも大手の企業は比較的協力はしてくれますが、一旦そこから離れてしまうと、会社を通じての協力というのはなかなか難しいです。この辺りで、次回までに事務局のほうで少し今日の議論を踏まえて、更に報告書の形に近いものをお作りいただくようにお願いしたいと思います。これでよろしいですか。

○得津電離放射線労働者健康対策室長 ありがとうございました。第 4 回の検討会については、 4 21 ( ) 午後 3 30 分から開催予定です。よろしくお願いします。また、座長からもありましたが、追加の意見がある場合には、 4 2 ( ) までに事務局までメール等で御提出いただければ幸いです。以上で、第 3 回の東京電力福島第一原子力発電所緊急作業従事者に対する疫学研究のあり方に関する専門家検討会を閉会いたします。本日はどうもありがとうございました。


(了)

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