ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 社会保障審議会(生活保護基準部会)> 第16回 社会保障審議会生活保護基準部会(2014年3月4日)




2014年3月4日 第16回 社会保障審議会生活保護基準部会

社会・援護局

○日時

平成26年3月4日(火)13:00~15:00


○場所

厚生労働省専用第18~20会議室


○出席者

駒村 康平 (部会長)
岩田 正美 (部会長代理)
阿部 彩 (委員)
大竹 文雄 (委員)
岡部 卓 (委員)
栃本 一三郎 (委員)
園田 眞理子 (委員)
道中 隆 (委員)
宮本 みち子 (委員)
山田 篤裕 (委員)

○議題

・住宅扶助について
・その他

○議事

○駒村部会長 こんにちは。それでは、定刻となりましたので、ただいまから「第16回社会保障審議会生活保護基準部会」を開催いたします。

 まず、本日の委員の出席状況について事務局より御報告をお願いいたします。

○大西保護課長 本日の委員の御出欠の状況でございますけれども、栃本先生がおくれて御到着されるという連絡を先ほどいただきまして、栃本先生が御到着になりましたら全員御出席となります。

 それでは、部会長、議事進行をよろしくお願いいたします。

○駒村部会長 それでは、本日の議事に入りたいと思います。

 前回の部会では、生業扶助と一時扶助について事務局から概要と活用実態の報告がありました。議論の中で出された御意見等においては、中長期的な課題として事務局においても十分尊重をしていただきたいと思います。また、住宅扶助についても若干触れました。

 そこで、今回は、まず前回議論した生業扶助の関係で、現在政府が取り組んでいる就労支援等の実施状況について御報告いただき、次に、来年から本格的に検証を実施していく住宅扶助について、現状や関連する制度を踏まえながら、まずどのような課題や論点、対応策が考えられるかなどについて、フリートーキングの形で議論したいと思います。

 最後に、昨年1月に取りまとめた本部会の報告書においても記載されているとおり、今後、次の5年後の生活扶助基準の検証に向けて、将来の基準の検証手法の開発を検討していく必要があります。長期的な課題ですけれども、現時点でどのような手法が考えられるか、簡単にフリートーキングをしていきたいと思います。

 まず、事務局より提示された資料1「就労支援等の実施状況等について」御報告をお願いいたします。

○伊沢保護課長補佐 資料1の御説明の前に、前回の部会におきまして、山田委員等からデータの整備に関する御意見がございました。現在の状況について御報告をさせていただきます。

 まだ内部での検討を始めたばかりでございますが、今後、どういった内容をどういった手法でデータの整備を図っていくべきか、有識者や自治体等の御意見も伺いながら、検討を進めていきたいと考えております。適宜部会には状況を御報告させていただきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

○野田保護課長補佐 それでは、資料1に基づきまして「就労支援等の実施状況について」御説明したいと思います。

 まず、資料の3ページをお開きください。

 現在、全国の福祉事務所におきましては、ケースワーカーが中心になりまして、就労に関する支援ですとか、それぞれその方の状況に応じてさまざまな支援を行っているところでございます。その中で、さらに本人の同意を得まして、就労支援の専門員を配置して、自立のプログラムに基づく支援を行っております。

 今回、御報告したいのは就労支援の状況につきまして、ごらんの調査を実施しておるところでございますけれども、その結果について御報告をしたいと思います。

 4ページをお開きください。

 平成24年度の全国の実態調査の結果について、御説明したいと思います。

 平成24年度におきましては、就労支援等としまして、実人数で全国で約11万人の方を対象に実施しているところでございます。

 ごらんの資料につきましては、その支援をされた方についての結果の資料でございます。

 まず、グラフでございますけれども、一番左端がその支援対象者、この方を100として、次の真ん中のグラフがその方が就労・増収に至った人、この割合を示しております。それが約43%となっております。さらにその中でほぼ脱却までに至った方がどれぐらいいるかというのが一番右でございまして、約9%ということになっております。

 ごらんの資料は、まず世帯類型別に帯グラフであらわしておりますけれども、一番左端、世帯割合を見ていただきますと「その他世帯に属する稼働年齢層にある者」はこの調査では18歳~64歳の者を指しておりますけれども、大体7割の方がその他世帯の方という形で支援が実際進められているところでございます。

 5ページをごらんください。

 同じ支援対象者につきまして、今度は年齢別でその状況を整理したものでございます。ごらんいただきますと、左の対象者割合のところでございますけれども、一番多いのが50代の30.8%、続いて40代の27.6%となっておりまして、40代以上の年齢の方で約7割を占めるという状況にございます。

 下の表は、年齢別の就労・増収率及び廃止率を示した表でございますけれども、やはり年齢が高くなるにつれ、就労の可能性ですとか、あるいは就労によってほぼ脱却に至る可能性が低くなってきている状況が見てとれるかと思います。

 めくっていただきまして、6ページをお願いします。

 6ページは、今度は最終学歴で整理したものでございます。

 一番左のグラフでございます対象者割合のところですけれども、支援対象としております者につきまして、中学校卒の方が約44%、高等学校卒業の方が約47%で、両者合わせますと9割を超えている状況でございます。

 下の表は、今度は最終学歴別に就労・増収率及び廃止率をあらわしているものでございます。こちらもやはり学歴が高くなれば就労あるいは増収につながっている可能性が高くなっているという結果が出ております。

 7ページをごらんください。

 今度は就労支援開始から就労開始までの期間で見た表を作成しております。

 一番上の表でございますけれども、全体として、就労支援開始から就労を開始されるまでの期間としましては、3カ月以内で45%程度、3カ月~6カ月で23.7%ということで、全体で約7割の方が就労支援を開始してから就労に結びついたという状況にございます。

 下のグラフは、今度はその方々につきまして、就労可能と判断されてからの期間で改めて整理したものでございます。

 就労可能といいますのは、保護開始時点から就労可能な方もいらっしゃいますし、保護を受けられたときには病気等で働けない状況で、回復されてから、働ける状況になってからというような意味で、就労可能と判断されてからというところを起点としまして、整理しているものでございます。

 これで見ましても、実際、3カ月以内にほとんどの方に対して、働ける方については就労支援を実施し、かつ、帯グラフの中でございますけれども、かなりの方が3カ月以内に就労開始という形になっているという状況が結果として出てきているかと思います。

 8ページは、支援の結果、どのような職につかれているかについて整理したものでございます。

 左上の円グラフでございますけれども、支援の結果、就労または増収になられた方がどのような雇用形態かということをあらわしております。正社員として雇用されるという場合は2割程度ということで、ほとんどの方がパート等の非正規雇用という状況にあるということでございます。

 右は、そのうちの廃止になった方について整理したものでございますけれども、ここで見ますと、正社員の方が、約3割程度という形で占めるようになってきている状況でございます。

 下のグラフにつきましては、雇用形態別の保護費削減額をあらわしております。ここで保護費削減額といいますのは、その方が就職されて手にされました就労収入そのものではなくて、それに勤労控除ですとか必要経費を抜いた後の、就労の結果、保護費が下がった分に着目して整理したものでございます。ごらんのような結果になっております。

 9ページは、年齢別に保護費削減額について改めて整理した表でございます。1人当たりの平均保護費削減額が一番高くなっているのは40代という結果になっております。

10ページをお願いします。

 職種ごとに就労・増収あるいは廃止についての関係を整理したものでございます。

 上のグラフが就労された方についての職種割合を示しているわけなのですけれども、左から、清掃、生産・製造という形で多く就労をされております。

 下の表は、その中で廃止になられた方につきまして、どういう職種の割合が高くなっているかを改めて整理したものでございまして、これで見ますと、建設・土木、その次に輸送・機械運転等の職種が並んでおります。

11ページをお開きください。

 この表は、正社員として雇用された方について、年齢と学歴との関係について整理したものでございます。

 やはり若くて学歴が高い方ほど正社員になる傾向が出ているかと思います。特にごらんいただきたいのは10代のグラフでございますけれども、正社員雇用となる割合は、10代中学卒で11%、高等学校等卒のところで見ていただきますと25.8%と、中学卒か高校卒かによって大きく差が出ているかと思います。

 このようなこともございまして、今、貧困連鎖防止ということで「子どもの貧困対策の推進に関する法律」がこの1月17日に施行されたところでございますけれども、この調査結果なども踏まえまして、いわゆる貧困連鎖防止につきましても、引き続き支援を充実させていく必要性があると考えているところでございます。

12ページをお開きください。

 職種につきまして、学歴と年齢の関係を整理したものでございます。

 中学校卒の10代ですと、接客・給仕という職種が多いのですけれども、年齢が上がってくると、清掃業務等につかれる方が多くなってくるですとか、学歴で見ましても、大学等を卒業された方で見ますと、20代、40代ぐらいまでは事務関係の職種につく方が多いという形の結果が出ております。

 次のページをごらんください。

 昨年5月から、段階的ではございますけれども「切れ目のない就労・自立支援とインセンティブの強化について」ということで、各段階ごとに実施する支援を充実させてきたところでございます。

 その中で、今回、次のページをお開きいただきたいのですけれども、まず、昨年5月から、自立活動確認書に基づく集中的な支援を実施しております。これは目的のところに記載のとおり、就労可能と判断される方に対して受給開始後一定期間に就労自立が見込まれる人を対象に、本人の同意を得まして、具体的な目標ですとか、内容、求職活動について決定して、福祉事務所と本人との共通認識のもとで本人の活動を的確に支援するために作成することにしておるものでございまして、内容等については資料のとおりでございます。これを昨年5月から実施しているところでございます。

 めくっていただきまして、この効果についてです。就労支援の専門員として就労支援員を全国に配置しており、現在、既に2,000人を超える方に活動していただいております。その方について、厚生労働省で昨年11月に全国研修会を実施しております。参加された方が200名を超えておりまして、約1割ということになるかと思いますが、

 その方々に、昨年10月時点でございますけれども、自立活動確認書について、アンケート調査という形で調査をさせていただいた結果を書かせていただいております。

 その結果でございますけれども、上の左のほうのグラフでございますが、まず、効果の有無については、何らかの変化、効果が見られたという回答をいただきましたのが約6割。その内容につきましては、右の円グラフでございますけれども、ケースワーカーとの情報共有がよりできるようになった、あるいは支援対象者の希望職種、勤務条件がよくわかるようになった、それを受けて適切な助言がしやすくなったという回答をいただいているところでございます。

 続きまして、めくっていただきまして、今度は「就労活動促進費について」でございます。

 この取り組みは昨年の8月から実施しているものでございます。趣旨としましては、自立に向けての活動というのは、基本的にやはり御本人が主体的に取り組んでいただくということが重要だと考えております。

 しかしながら、就労活動の状況にかかわらず、保護費の受給額は同じであることから、就労の活動に対するインセンティブが働かないという御指摘がございましたので、活動に必要な経費の一部を賄うということも含めて、原則6カ月以内でございますけれども、就労活動のインセンティブとして月5,000円の支給を実施しているものでございます。

 次のページをごらんいただきたいのですけれども、この就労活動促進費につきましても、同じく就労支援の方にアンケート調査という形で、その効果についてお聞きをしております。

 左上のグラフにありますとおり、促進費の効果の有無でございますけれども、何らかの変化や効果が見られたというのは約6割という形になっております。その具体的な内容につきまして、複数回答でございますけれども、ハローワークに行く回数、求人に応募される回数がふえたということですとか、また就労に向けた適切な助言がしやすくなった等、何らかの効果があったという回答をいただいているところでございます。

 最後のページでございます。

 これは、今年の7月から実施予定の就労自立給付金でございます。

 生活保護から脱却されますと、今まで負担のなかった税・社会保険料の負担が発生しますので、それを踏まえまして、保護から脱却していただくためのインセンティブということで、また脱却直後の不安定な生活を支えて、再度保護に至ることがないようにということで、支援するという趣旨で創設しようとしている制度でございます。

 内容につきましては「支給要件」のところにございますけれども、御本人が保護受給中に働いて収入認定を受けられた額の中で、仮想的に積み立てて、脱却されたときに支給するという形をとることとしております。

 支給の上限額につきましては、単身世帯は10万円、多人数世帯は15万円ということで、これは保護脱却後の税・社会保険料等の負担も考慮して設定しているものでございます。

 イメージは下に記載のような形で計算することを考えております。

 今の就労支援の活動状況については、このような調査をしつつ、新しく設ける制度につきましても適時工夫して、実態把握をしながら、必要な対応もしつつ、支援を充実させていきたいと思っておりますので、よろしくお願いします。

 説明は以上です。

○駒村部会長 ありがとうございました。

 では、この資料1について、御質問、御意見がある方、どうぞ。

 大竹委員、お願いします。

○大竹委員 2つありまして、1つは、4ページ、一番最初の就労支援の状況というときに、全就労支援対象者というのは全生活保護対象者のうち、どのくらい占めるのかということを教えていただきたいというのが1つ目。

 2つ目に、就労支援によって、どのくらいの効果があったかという学歴別であるとか年齢別の詳細な分析をいただいているのですけれども、この政策が効果があったかどうかを見るには、この政策がなかったら、この人たちはどうだったのだろうということがやはり情報としては必要だと思います。

 理想的には、医療における治験のように、ランダムに支援を受ける人と、受けない人を選んで、そうでない人を比べるのが1つだと思います。機会均等という点で問題があるかもしれません。その場合は、同じような景気の状況のときに、このような人たちはどのくらい就職できていたのかという情報をうまく取り出すことができれば、この政策がどのくらい効果があるのかということがもう少しわかるのではないかと思います。

 もう一点だけ。似た点ですが、自立活動確認書の効果について、いろいろな主観的な評価が出ているのですけれども、これもやはり新たな政策をつくるときには、何か客観的な数字で得られるようなものを事前に考慮できればありがたいなと思っています。最後のものは希望です。

○駒村部会長 ほか、いかがでしょうか。

 山田委員、どうぞ。

○山田委員 今、大竹委員からありましたように、こういう、まず実施状況について詳細な説明資料をつくっていただいたというのは非常に参考になりましたし、政策評価という観点からは非常に大きな一歩だと思います。

 その上で、やはり大竹委員と同じなのですけれども、政策評価をするためには、政策がなかったら、どうだったかということを確認するために、対象者だけれども政策を受けなかった人というのは、統計的な形でも、実際、ランダムな割り付けでという形にしろ、そういった人を比較対象群にしないとなかなか見えてこない。

 もちろんこの資料は非常に有益で、非常に勉強になりますけれども、もう少しピュアな効果は何だったのかが見られると。ひょっとしたら、この中にはそうした政策介入がなくても就労した人とか増収になった人というのも含まれている可能性がありますので、もう少し、そこら辺の効果を見るためには、政策対象となるのだけれども、政策を受けなかった人たちへの比較対象群、統計的にしろ、ランダムな割り付けにしろ、やはり見る必要があるというのが1点目です。

 それと絡んで、就労自立給付金というのは、平成26年7月から実施されるということですので、繰り返しになりますけれども、そういったピュアな効果がとれるような統計の取り方を、要するに政策導入に先立って、あらかじめ用意していただくことが重要ではないかと思います。

 3点目と4点目は細かい質問なのですけれども、7ページ、就労支援をしてから就労開始までの期間を見ますと、もしこれが本当に効果があるという前提に立ちますと、就労者の支援開始直後が一番効果があるということですけれども、じっと見てみますと、この図表に基づけば、1年たってから就労支援の効果があるという人たちの割合も一定程度いることが見てとれるので、そういう見方でいいのかどうかということですね。1年を超えても一定程度の人は就労開始しているということで、このグラフを素直に受け取れば、短期集中型で全部そこに集中せよというのではなくて、ある程度長期的な就労支援も重要ですねということなのか、ということです。

 4番目の質問は、今度は17ページの「就労活動促進費の効果について」です。何らかの変化や効果があらわれたと回答した就労支援員の方は6割いらっしゃるわけですけれども、一方で、少なからぬ割合、4割が特に変化や効果は見られないとしています。

5,000円という額について、下のほうには、その他の意見ということでいろいろと述べられていますけれども、この特に変化や効果が見られなかった理由というのは、一番下に※印でつけているような理由が主だったものかというのを、きょうはちょっと細かい数字をお持ち合わせでなければ、確認の上、また教えていただきたいということです。

 以上です。

○駒村部長 岡部委員、どうぞ。

○岡部委員 就労の支援員の活動やケースワーカーの活動の就労支援は非常に高く評価しております。それをまずお伝えしたいと思います。その上で、就労に関しては、大きくは次の3点を考える必要があると思っています。

 1つは、収入を上げて生計の足しにする、そういう生計の観点から意羲があると思います。2つ目には、やはり経済活動に関わり、貢献するということで意義があります。3点目は、社会とのつながりや、自己の達成感や肯定感を持てるということで意義があるかと思います。

 1点目の収入の増を図るということは、これはまた生活保護費の圧縮につながるというところでもあります。

 2つ目の経済活動、これは1に関連するということで、それは全体として決して大きくはありませんが、一定の貢献を果たしているのではないでしょうか。

 私が注目するのは3点目です。社会的なつながりであるとか、あるいは自己の達成感というのは、就労支援の最も大きな効果として考えてよいのではないか考えます。

 これはどういうことかといいますと、私は2010年に東京のある区で生活保護を受給されている全稼働年齢層の全数調査を実致しました。そこで、社会的なネットワークであるとか、メンタルヘルスであるとか、就労の可否等を調査項目として調査を行ったところこれらの稼働年齢層の人たちは、非常に多数の社会的な不利を抱えていることがデータとして出てきました。

 そこでは1つは、誰も相談相手がいない。自己肯定感も非常に低い。働きたいのだけれども働くすべがない等そのことで、これは平成23年の生活保護基準部会の第4回ですか、自殺率が高いことがデータとして出されていると思うのですけれども、私たちの実施した調査でも極めて抑うつ度が高い結果が出されています。

 このような状況下で、稼働年齢層に就労支援を行うことは、要するにケースワーカーであるとか、就労支援員が、その人たちに対してこのような状況を押さえた上で働くことを通して、自己肯定感を持って、社会とのつながりを持っていくということを行っていくことが必要となってきます。

 これは、先ほどの効果測定の中で、どれだけ増収を図ったのかとか、就労が開始されたという観点以外に、社会的つながりや自己肯定感などの指標でこの生活保護の受給者の稼働年齢層の就労支援というものを量的にあるいは質的に何か見ていくことをしないと、この就労支援の位置づけが見えてこないのではないかと考えております。

 そのため、私のほうで述べたいのは、就労支援の実施状況についてこれまでのデータはそれはそれでいいのですが、もう一方では心身の状況、健康状態がどうなのか社会的関係性などそういう人たちの状況等も加味しながらデータを出していただくと、この就労支援の意味づけはより理解されるのではないかということです。データがとれるならば、この対象の属性の中に健康の尺度や、社会的な関係性も入れていただきたいというのがお願いです。

 もう一点なのですけれども、早期に就労支援を行うのはいいのですけれども、どういう状況に置かれた人なのかということを、より慎重にして就労支援を行っていただきたいということがお願いです。今後に向けてということで結構です。

○駒村部会長 では、阿部委員、どうぞ。

○阿部委員 ありがとうございます。1つ目の資料の就労支援の状況調査なのですが、3ページ目では、調査項目に「就労支援の内容」とありますのが、就労支援のタイプ、内容ごとの実績といったものがもしあれば、先ほどの大竹先生、山田先生がおっしゃったような効果測定は、バイアスの問題とかいろいろありますので、厳密なところまでいかないですけれども、でも、その差を見ることによって、少しはどのような就労支援であればより効果的なのかということを見ることができるのではないかなと思いますので、調査の中に項目としてあるということであれば、ぜひ、このクロス集計も出していただきたいなということのお願いが1つです。

 それから、これは調査の項目に含まれていなかったのかもしれませんが、今の岡部先生のお話にも似ているのですけれども、就労支援を受けた側の方々に調査票を配っているわけなのですね。

 彼らは就労支援を有効と思ったかどうかといったことは主観的なものでありますけれども、そこのところで、参加という意味でも、こういうものの評価に実際に受けた方の意見もやはり聞くべきではないかなと思いますので、おそらく、その中では就労できなかった方々のいろいろな御批判等も入っているかとおりますので、そういったところも、ぜひ次回、もし調査するのであれば調べていただきたいと思いました。

○駒村部会長 では、岩田委員、どうぞ。

○岩田委員 私の質問は単純なのですけれども、まず、今、阿部委員からも質問があったと思うのですけれども、3ページにある就労支援等の状況調査のほうは、就労支援を受けた人に調査票を渡して、記入して出してもらったというものだと理解していいかということです。

○野田保護課長補佐 支援した側、福祉事務所に対し調査した結果でございます。

○岩田委員 そして、実数はわかりますか。パーセントでは、いかにも違いがあるようにも見えるのだけれども、意外と違いがないのではないかという感じもしなくもないのですが、これはどのぐらいの数ですか。後でも結構です。

 2点目の質問は、就労・増収率というのがあって、就労支援の効果がどうかということですが、生活保護は受けているけれども、もう既に何か就労している人がいるわけですね。その人にさらに働きかけて、もっといい仕事に転換して収入がふえたのか、それとも、その人の就労意欲や何かの動機づけを非常に強くして収入がふえたのか、あるいはしていなかった人がするようになったのか、そこが仕分けがつかない。

 全体からいいますと、就労支援によってどのぐらい保護費が削減されたかというのはわかるので、それを気にする人たちに向けての表としては8表、9表はいいと思うのですけれども、福祉事務所によっては独自な就労支援をしていたところもかなりあると思うので、地域差などもあると思うのです。

 ですから、先ほどの効果の話ではないけれども、全然していなかった人に対して、こうやったからこうだったというのと、大体1週間に例えば3日、3時間ずつ働いているというような状況は、「その他の世帯」類型では多いケースだと思うのですけれども、そういう世帯がどうだったかというのは仕分けがつかない。

 それから、傷病世帯で、病気が治ってから支援開始というのは当然あるので、支援開始の期間についても、その前に病気あるいは障害があって、あるいは母子世帯で子供がまだ小さい、あるいは障害を持った子供を抱えているというような、いろいろな状況があると思うのですけれども、そういう状況をクリアするのにどのぐらいかかって、その上で就労支援をしたらどうなったかということは、それぞれ意味が相当違う。

 つまり、生活保護の人はみんな働いていなくて、一生懸命就労支援をすると働くようになって、これだけ減りましたよという図のようにも見えるのですけれども、今回の改正前から、幾らか働いて収入があって、最低生活費として足りない分を生活保護利用している、こういうケースも当然あるわけですね。だから、どちらに効果があったのかです。あるいはどちらにも効果があった。あるいは効果はあったのだけれども、ありようが違ったというのは区分けして示したほうがよかったかなというか、今後、もしもそういう分析ができればお示しいただければありがたいと思います。

 以上です。

○駒村部会長 では、栃本委員。

○栃本委員 既にお答えされたのかもしれないのですけれども、先ほど来、今回の回答者数は、就労支援員222名に対して聞いているわけですね。

○野田保護課長補佐 そうですね。

○栃本委員 それで、なおかつ実際に対象者数についてもお尋ねがあったわけですね。

○野田保護課長補佐 そういうことです。

○栃本委員 それでは、このデータは、要するに222名で、なおかつ調査に参加された時点において調査したという形ですね。

○野田保護課長補佐 そういうことです。

○栃本委員 だから、これを今後、さらに加工してとかいうのは、なかなか難しいということですね。

○野田保護課長補佐 この調査については難しいです。

○栃本委員 そうですね。だから、過剰な解釈は避けるべきだというのが1点です。

 もう一つは、こういうデータというのは、そもそも222という数字は出ているのだけれども、それ以外はパーセントだから、そういうデータは気をつけなければいけない。だから、後ほど数はお示しくださるのだろうけれども、その2つを経た上で議論しないといけないなというのは1点です。

 ただし、そういう意味で、先ほどの対象数がどのくらいかということを知った上で、やはり議論しなければいけないなというのが1つです。ただ、記述的な調査というか、そういうことでは極めて意味のあるものであることは確かだと思うのですね。これが1点。あと、先ほどの全体的な対象者数を教えてくださいということ。

 もう一つは、年齢階層であるとか、世帯類型であるとかという形で調べられているのだけれども、どういうわけか男女のがないのですね。男性、女性の表はここには入っていない。分析はしたのかもしれないけれども、入れていないの。

○野田保護課長補佐 入れていないです。調査していません。

○栃本委員 そうですか。調査するときに、男女は入れないでしたということなのですね。わかりました。では、それはしようがない。

○岩田部会長代理 それはしたほうがいいですね。

○栃本委員 それは普通そうです。何か考えられてそうしたのかどうか。通常だと、やはり男性、女性で見ることによって、あと年齢層であるとか、世帯類型であるとかというのはわかりますし、その他世帯というのは、実際上、傷病とか障害の中には入っていない、カテゴライズされていないのだけれども、精神的な課題を持っていたり、その種類の方が多い。おおよそ大体はわかるのだけれども、ただ、男性、女性で、やはり次回されるときは、ぜひそういう形にしていただきたいということです。

 あとはこれも次回にあれなのでしょうけれども、最初の入り口のところで、この人は就労可能だなという形で、早期にやるとかなり効果が出るぞみたいな、あと学歴ごとによっても大分違うのはよくわかったのだけれども、その一方で、最初は生活保護の被保護者になって、その後、多少時間がたって、このぐらいからはできそうだなとか、何か兆しがあるなみたいな形で、2年たっているのだけれども、これは可能であるという判断をした場合、どうなのか。

 これは先ほど何人かの委員の先生方の質問とも関係があるのだけれども、そういうものを見てみるのも、今後、調査されるのであれば重要だと思います。いずれにせよ、かなり興味深いデータで、こういうものが示されることによって、議論が深まるので大変ありがたい調査だったと思います。

 以上です。

○駒村部会長 では、宮本委員、それから、道中委員の順番にお願いいたします。

○宮本委員 もうたくさん御意見が出ているので、ちょっと追加なのですけれども、7ページの下のグラフを見て、興味深いのですけれども、これを見ると0~3カ月に非常に多くが集中していて、あとはばらばらになっていて、2年以上になって若干ふえるということなのですけれども、そうすると、0~3カ月で就労開始に至った人たちというのはどういう人なのか。その後になると、結構、長く時間がかかる人たちだということになると、これは対象者の持っている属性が違う可能性があるのですけれども、このあたりは把握されているのでしょうか。

 だから、もともとの就労開始の中で、一番早期に回答が出そうな人たちと、かなりじっくり時間をかけてやるべき人たちというふうにグループ分けが可能になるのだろうと思いますけれども、今、そのあたりの属性がないので、それがこの調査で可能かどうかということを含めて伺えればと思います。

○駒村部会長 同じ御質問ですね。7ページ下段のこのグループがどういう属性、イメージ像なのかという、何か集計して、抽出してというようなことはやられているかどうかということで、重要だと思うのですけれども、これはいかがでしょうか。

○野田保護課長補佐 今はまだそこまでの調査にはなっておりません。

○駒村部会長 もし可能な範囲であれば目的も、宮本先生がおっしゃるように、全く違うグループなのかどうなのかということも確認していただければ。

 宮本先生、続けてありますか。

○宮本委員 先ほども出ているかと思いますけれども、そもそもこの就労支援等の施策というのは、ゴールをどこに持っていくかという問題が重要であるわけですね。

 だから、効果測定を何でやるかということになるので、このデータというのはどのように読むかとか、使うかということがかなり問われるかと思うのですけれども、先ほどのこの7ページなどを見ていても、早期に決まる人は、比較的軽症の人の可能性がある。だけれども、かなり時間がかかって、2年以上かかっても、でも動きが出てくるという場合の効果測定ということになると、通常は2年先に回答が出たというようなことは余り許されなくて、1年くらいとか期間を限定した中で、どういう効果が測定できたかということに大体なりがちなのですけれども、その点で、この事業はどういう効果測定を前提にしているのかということが、この評価の使い方としては問われるのではないかと思います。

○駒村部会長 道中委員からはいかがでしょうか。

○道中委員 ありがとうございます。

 全体像の就労支援の方向性みたいなものがこの調査でわかったので、非常にありがたい数値かなと思うのですけれども、栃本委員などもお話があったように、少し過剰な評価があるのではないかと。

 大体、私のほうでもやっていきますと、過去、自立支援という形で就労支援をやったケースでも多くて5.5%です。だから、3%ないし5.5%ぐらいのところで前後しているのかなというのはあるのです。それはかなり自立支援プログラム以前の数値でありまして、対象者がその他世帯が随分増嵩している状況の中では、数値が動いているのかなということも考えられますし、さまざまな要件があるかなとは思うのですけれども、私の実感としては、総じてこの数字が非常に高い。

○駒村部会長 その5%とかいうのは、どの部分と比較していますか。資料の4ページあたりの廃止の8.9%あたりと比較という意味ですか。

○道中委員 はい。5ページの廃止率の8.9%ですね、9%の廃止率というのも非常に深い数字だなと思います。いろいろな福祉事務所の実態を見てみますと、おそらくこの半分程度ではないかなと。働いても生活保護をお受けになっているというケースがほとんどなのですね。だから、この数字がどういう意味を持つのかなということもあるのですけれども、このアンケートをされている人が、自分で自己評価をやっているような。支援員の方ではないのですか。

○野田保護課長補佐 2つの調査を組み合わせておりまして、前段につきましては、就労支援員の支援などについて、全国の福祉事務所に対しまして悉皆の調査を行っております。冒頭でそこをきちっと説明すればよろしかったのですけれども、該当する支援、調査対象になる支援をされた者が24年度にどういう状況であったかということにつきましての結果でございます。

○道中委員 福祉事務所のケースワーカーが中心になって調査したということですか。

○野田保護課長補佐 はい。福祉事務所のケースワーカーが自分のケース、対象者について回答していただいたというものでございます。

○道中委員 いずれにしましても、やった側からの評価だと、自己評価ということにはなるかなと思います。

○駒村部会長 自己評価の部分のデータと状況調査のデータと2つから構成されていて、頭のところに状況調査、これは悉皆ですね。この廃止率8.9%は悉皆のほうで、後のほうで出てくるアンケート的な、例えば確認書の効果などは自己評価になっている。だから、資料に小さく書いてあるので、少しややこしいのですけれども、母数は5、6、7ページは確かに数万人分のデータですので、廃止率のところはどうも悉皆らしいですね。

○道中委員 そういう意味で、ステークホルダーと申しましょうか、やはり阿部委員のお話にあったように、受給者の側の評価も少し入れるということで、ないものねだりかもわかりませんけれども、そういうことで、より調査が客観的になってくるのではないかなと考えております。

○駒村部会長 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

 きょうは最初の就労支援に関する議論でありましたので、データのとり方や集計、効果測定の開発等、それから、そもそもその効果とは一体何なのか。複数の委員からも、就業に至るまでの非常に困難なケースにおいては、心身の変化なども効果ではないのかという話があって、そういうものについては御本人に聞いたほうがいい、あるいは何らかの客観的な測定方法は世の中にあると思いますので、そういうものも今後使われて、慎重に効果測定を考えていただきたいという御意見が多かったと思いますので、この議論はまた今後も続けていきたいと思います。きょうは、今、事務局が手元にある資料で1回状況を教えていただいたということでございますので、まだ議論もございますので、次の議論に入らせていただきたい。

 ありますか。どうぞ。

○野田保護課長補佐 数字だけ御説明をさせていただきます。説明が不十分で大変申しわけございませんでした。

 まず支援の対象者になっている人数でございますけれども、総数的には、私どもは、いわゆる稼働年齢層の中で、障害、傷病等で、どうしてもこの方は働けないという方を除きますと、大体40万人程度いらっしゃるのではないかと思っています。これは今、お示ししました調査とはまた別のところで推計している数字ですので、今回お示ししていなかったのですけれども、全体的にはその程度の方がいらっしゃると思っております。

 その方に対して、この24年度におきますと、実数で11万人の方を対象に支援をしまして、就労、増収された方が4万7,000人との数字を報告いただいているところです。廃止者については9,900人程度の方が廃止という形になっております。

 就労と増収のことでございますけれども、就労というのは働いていらっしゃらなかった方が支援を受けた結果、新規に働けるようになった。増収というのは何らかの就労につかれていらっしゃったのですけれども、さらにもう少し収入が稼げるようなところに転職されるとかということについて支援した場合、それを合わせた数字として、今、お示しているという状況でございます。

 今、ほかのいろいろな分析方法等も御意見をいただきましたので、今後どこまでできるかというのはあるのですけれども、この調査につきましても、悉皆調査の部分については、かなり福祉事務所にお願いをして実施しているというところもございまして、先ほど御指摘のありました男女という基本的な部分についても調査するかどうかも含めて、いろいろ議論したのですけれども、今回はそこは調査できていないという状況がございます。

 御指摘がありましたとおり、就労だけではなくて、健康面ですとか、そういったあたりも実際、私どもも把握したいところでもございますし、あるいはそこに至るまでの経緯ですとか、御指摘のとおり、2年たってでも、やはり就労される方はいらっしゃいます。

 これは状況をきちっと把握しないとできないことでございますけれども、推測されるところでいえば、やはり就労となりますと、本人だけでなくて、見合った求人もなければいけないというところもございますし、御本人の働ける条件とのマッチングがうまくいかなかったというところも大きいのかなとは思っていますが、きちっとしたそこの分析ができるような情報は今、得ておりませんので、そのあたり、どこまで調査できるかわかりませんけれども、御意見を受けとめまして、来年度においても同じような調査を実施したいと思っております。

 新しい施策につきましても、項目をふやすなどして、今回の結果等の分析等ができるかどうかということを少し、今、検討はしております。引き続き工夫してまいりたいと思いますのでよろしくお願いします。

○駒村部会長 40万人のうちの11万人が対象になっていると。それを選んだのは福祉事務所であるということですね。

○野田課長補佐 そうです。

○駒村部会長 だから、ランダムに選んでいるわけではなくて、割と優等生であり、それは先ほどの道中委員のデータとの齟齬はもしかしたら、そういう対象の母数が違うもので、もしかしたら、ランダムにやると5%かもしれない。

 でも、割と福祉事務所がこの方はと思って選べば、このぐらい出ているのかもしれない。少し幅のある調査をしておかなければいけないということでしょうか。11万人がどういうふうに選ばれたのか、ちょっとよくわからなかったのですけれども、これについての情報は特段ございますか。

○野田保護課長補佐 そうですね。地域ごとに雇用形態は異なってきますし、支援対象とする方も異なってきますので、その福祉事務所のそれぞれにおいて対象者を決めていただいて、支援員を配置してということになっておりますので、必ずしも全ての福祉事務所で同じ対象者に同じ支援をしているということではない部分があります。ある程度幅があります。

○駒村部会長 ありがとうございます。どうぞ。

○栃本委員 本当に短く。そういう意味で、福祉事務所間における格差というか、格差というとあれだけれども、必ず取り組み状況の差は出ますね。そこら辺もこれから、先ほど来、効果とか、そういうお話があったので、やはりこれをスタートラインとして、市と市の間の格差というか、取り組みの状況はかなり違ったりするから、それを取り組みが不十分なところは、客観的に取り組みが不十分だということがわかるような形で、それでもってよくしてもらうということも必要だと思う。

 もう一点だけ。「自立活動確認書の効果について」というので、特に変化が見られない人は80なので、それ以外については、3つまで回答していいというのだけれども、平均すると大体2つなのですよ。

 しかも、これはよくなったというか、こういうのでプラスになったという形なのだけれども、せっかく今回スタートラインなので、よくなったということだけではなくて、こういう部分が使いづらいとか、こういうところはやりにくいとか、そういうことも入れたほうが、よくなったというのは宣伝用にはいいのだけれども、やはり改善して、改善しつつというプロセスの中ではそういうものも、個別にはいろいろ研修会を通じてお聞きになっているとは思います。だけれども、それではない形でのそういうものもとられたほうが、今後するのであればよろしいのではないかと思いました。

○駒村部会長 山田委員、では、手短にお願いします。

○山田委員 済みません、手短に。こうした就労支援等の状況調査は続けられていくということなのですけれども、その際に、またその対象者が稼働可能であるのに就労支援を受けるに至ったかという、生活保護を受給するまでの背景ですね。

 どうしてこれが重要かというと、今の開始理由というのが余りにも粗過ぎて、稼働年齢層がどのような理由で生保受給を開始したかというのがよくわからない。具体的には、例えば前の就労で体を壊したとか、そういったところがちょっと見えてこないので、要するにエフェクティブな政策対象を識別する上でも、そこら辺はきっちり生保の開始理由について、その背景も含めてわかるようにしていただければというのがお願いでございます。

 以上です。

○駒村部会長 では、今日はまだ議題がございますので、続けて資料2に移りたいと思います。事務局、資料2及び参考資料について御報告をお願いいたします。なお、本日は園田委員より資料の御提出があるため、資料3については、園田委員からもあわせて御説明をお願いいたします。まず事務局からお願いします。

○伊沢保護課長補佐 それでは、資料2について御説明いたします。

 資料2では、前回の部会での議論等を踏まえまして、住宅扶助の現状や関連する制度につきまして、いささか雑駁ではございますが、資料をまとめさせていただいております。

 資料の3ページでございますが、住宅扶助の現行規定でございます。生活保護法第14条で扶助の範囲を、法第33条で扶助の方法を規定しております。基準額につきましては、厚生労働大臣が定め、下段にございますとおり、告示でお示しをしているところでございます。

 住宅扶助は困窮のために最低限度の生活を維持することができない方に対して、家賃、間代、地代等や、補修費等住宅維持費を付与するものでございます。

 住宅扶助の方法は、原則として金銭給付でございますが、これができない場合や適当でない場合、その他保護の目的を達するために支障があるといった場合には、例外的に宿所提供施設等を活用することによって現物給付することができることになっております。

 3ページの下段の1に、現行の基準額を示しておりますが、現在の家賃、間代、地代等の基準額は1級地及び2級地で月額1万3,000円以内、3級地で8,000円以内となっております。また、補修費等住宅維持費の額ですが、全級地共通で年額117,000円以内となっております。

 家賃等が1の基準額を超える場合には、2にお示しのとおり、都道府県、指定都市、もしくは中核市ごとに厚生労働大臣が定めます特別基準額の範囲内で必要な額を認定することが可能となっています。さらにこの限度額によりがたい場合であっても、世帯人員や世帯員の状況、当該地域の住宅事情により、やむを得ないと認められたものにつきましては限度額の1.3倍、7人以上の世帯につきましてはさらにその1.2倍の範囲内で必要な額を認定することができるようになっております。

 4ページ、現行基準額を構成しております一般基準及び特別基準につきまして、それぞれこれまでの経緯等をお示ししております。

 住宅扶助は、現行生活保護法が制定された昭和25年に創設されています。創設当時の考え方を当時、課長でございました小山進次郎氏の「生活保護法の解釈と運用」で確認いたしますと、「戦後の日本は戦災による住宅の大量喪失のため、極度の住宅不足に悩まされていたという特殊事情のもと、住宅費を他の費用から分離して、これに食い込む余地をなくし、しかる後にこの問題を個別的に解決する以外に方法はない。住宅扶助は係る事情に基づき創設されたものである」との記述が見られます。

 また、それに続く部分でございますが、「今後、基準を多様化するとともに、特別基準の設定が特に要請される」とございます。制度創設当時から、特別基準等の必要性は認識されていたものと考えられます。

 住宅扶助の一般基準ですが、生活保護受給世帯の家賃実態などを参考にいたしまして、改正をしてきております。平成元年度に、物価動向を勘案いたしまして、現行の基準額となっています。一方、特別基準ですが、昭和30年代に都道府県及び指定都市管内の第2種公営住宅の家賃を参考に設定されています。以降、第2種公営住宅の家賃や、生活保護受給世帯の家賃実態などを参考に、基準額を改定してきているということでございます。

 現行の基準額は、消費者物価指数の伸びや生活保護受給世帯の家賃実態等を勘案いたしまして、改定しているところでございます。

 参考でございますが、平成25年度の特別基準額を47都道府県、61市別に一覧したものを5ページに載せております。

 6ページ、生活保護受給世帯の居住状況につきまして、住居の種類別及び級地別の状況をお示ししております。

 住居の種類ですが、借家または借間の世帯の割合が増加傾向にあるとともに、民営住宅の割合も増加傾向にあることが確認されます。

 世帯人員別に見ますと、単身世帯が増加しております。

 級地別では、1級地が微増しております。

 右下の表でございますが、住宅扶助の平均額を経年で見ております。7人以上世帯以外では増加傾向が見られることが確認されます。

 7ページでございますが、家賃及び間代の金額階層別に見た被保護世帯数の状況をグラフにしております。

 公営住宅等では、比較的低額家賃の世帯が多くありますが、民営住宅では特定の金額階級の世帯数が多くなっております。

 次の8ページでございますが、特別基準の上限額に対します家賃及び間代の状況をお示ししております。

 ご覧のとおり、民営住宅では、家賃等が特別基準の95105%に相当する世帯が最も多い状況です。単身世帯で民営住宅にお住まいの世帯の39%、2人以上の世帯ですと37%、それぞれ約4割を占めるという状況でございます。

 一方、公営住宅等では、特別基準に対して3545%の世帯が最も多くなっているという状況です。

 9ページ、家賃物価について、平成22年を基準といたしました推移をグラフ化しております。東北地方及び沖縄以外は、家賃物価が下がってきております。

10ページ、住宅・土地統計調査で把握いたしました住宅の空き家の状況を、住宅実数に対する空き家実数の割合でお示ししたものでございます。後ほど、また園田委員からも御説明があるかと思われますが、近年、住宅の空き家率は上昇傾向にあるという状況でございます。

11ページ以降は参考資料になります。

 住宅支援給付や公営住宅といった低所得者層に対する関連施策について、概要を簡単にまとめさせていただいております。

11ページでございますが、住宅支援給付事業でございます。

 リーマン・ショック後の失業者対策としまして、失業した方のお住いを確保し、安心して就職活動を行っていただくために、平成2110月から住宅手当緊急特別措置事業を行ってきました。住宅手当緊急特別措置事業は、第2のセーフティネットとして機能を果たしてきた一方、引き続き生活保護受給者が増加している状況を勘案しまして、平成25年4月から支給要件、就職活動要件等を一部改正し、より効果的な就労支援を実施するため、住宅支援給付事業に発展をさせているところでございます。

 事業内容といたしましては、離職者であって、就労能力及び常用就職、常用は雇用契約において期間の定めがないものや、または6カ月以上の雇用期間を定めているもの、こういったものに就職をしたいという意欲のある方のうち、住宅を喪失している方、または喪失するおそれのある方を対象としまして、家賃に充てるための費用を支給するとともに、就労支援等を実施し、住宅及び就労機会の確保に向けた支援を行うものです。

 支給の対象となる方は離職後2年以内、かつ65歳未満であり、現在住居がないか、または住居を失うおそれのある方になります。

 主な支給要件といたしましては、資料にマル1~マル3をお示ししております。

12ページ、支給額及び支給期間をお示ししております。

 支給額は生活保護の住宅扶助の特別基準額の範囲内で支給されております。支給期間は原則3カ月でございます。延長、再延長が可能で、最大ですと9カ月まで受給することができます。支給額は住宅の貸主等の口座に実施主体である自治体から直接振り込まれる形になっています。

 給付実績としましては、平成2110月から平成25年3月までで、136,631件の支給決定がなされております。そのうち、常用就職に結びついた方の割合でございますが、41.4%。直近の24年度の実績で申し上げますと58.5%という状況でございます。

 公営住宅に関しまして1315ページに資料をつけさせていただいております。

 公営住宅は憲法25条の趣旨に則り、国と地方公共団体が協力して、住宅に困窮する低額所得者に対し低廉な家賃で供給することを目的としています。地方公共団体は公営住宅の建設、買い取り、または借り上げを行い、管理いたします。一方、国は全体工事費などの概ね45%程度の整備費等を助成するという形になっています。

 公営住宅の整備基準としましては、床面積が25平米以上や、バリアフリー対応など、国交省で規定しております基準を参酌し、実施主体が制定した条例によって整備されています。

 入居者資格としましては、収入の状況や住宅の困窮度合いが参酌されています。収入が基準を超過した場合や高額の所得がある場合には、明け渡しに係る手続が準備されているところでございます。

 公営住宅の家賃でございますが、入居者の収入、公営住宅の立地条件、規模、建設時の経過年数等に応じて、また、近傍同種の住宅の家賃以下で事業主体が定めることとなっています。

 家賃の算定式に関しましては、14ページに掲載させていただいております。

 なお、収入超過者や高額所得者の家賃算定の基礎にもなります近傍同種の家賃につきましては、15ページにございますとおり、住宅の時価、修繕費、管理事務費等勘案して、毎年度事業主体が定めているということでございます。

 先ほど、住宅扶助の特別基準を改定する際には、第2種公営住宅の家賃を参照していたという説明をさせていただきましたが、平成8年の公営住宅法の改正で応能応益の考え方に立脚した家賃決定の仕組みが公営住宅制度の中に導入されました。それに伴いまして、第1種、第2種という種別区分は平成8年に廃止されています。公営住宅制度の創設時には、入居者の収入に応じて第1種、第2種の区分を設け、これにあわせまして国庫の補助率に関しましても、差が設けられていました。基準面積に関しましても、差が制度創設時には設けられていたとお聞きしております。

1617ページでございますが、最低居住面積等の水準を規定しています住生活基本法等の概要でございます。これも後ほど御説明のある園田委員の資料の中に盛り込まれておりますので、説明は割愛させていただきたいと思います。

18ページ、前回の部会でも話題に上がりました貧困ビジネスにつきまして、現況と対応状況等をお示ししております。

 資料の左上にございますが、無料低額宿泊施設の現状といたしましては、平成22年6月末時点でございますが、施設数が488カ所、入居者数が1万4,964人。同じく同時点で、社会福祉法に法的に位置づけのない施設、これが箇所数といたしましては1,314カ所、入居者数といたしましては1万6,614人という状況でございます。

 真ん中から下の部分にございますように、劣悪な施設からの転居支援、優良施設への支援、居住の安定確保支援等の対応を行っているところでございます。

 平成23年に行われました国と地方の協議におきましても、抱き合せの契約を行っている無料低額宿泊所等に対して、新たな法規制を講じる必要があるとの中間取りまとめがなされているところでございます。

19ページ、住宅扶助に関する意見としまして、平成25年度予算執行調査結果及び財政制度等審議会が昨年1月に報告しました、平成25年度予算編成に向けた考え方を載せおります。

 なお、昨年5月に出ました財政制度等審議会の財政健全化に向けた基本的考え方におきまして、「住宅扶助も含め、生活扶助以外の扶助制度について、生活保護の一層の適正化に向け、生活保護基準部会において、さらなる検討が行われることが期待される」との意見が明記されております。

 また、社会保障審議会の下に設けられました生活困窮者の生活支援の在り方に関する特別部会におきましても、平成25年1月にまとめられた報告書の中で、生活保護の住宅扶助について、特別部会の中で議論に上がった意見が記載をされております。

 参考ですが、口頭でその部分を読み上げますと、生活保護の住宅扶助を生活保護制度から切り離し、恒久的な住宅手当として再編し、公営住宅などの公的賃貸住宅や、民間賃貸住宅の家賃を補助することや、住宅手当の充実も検討すべきである。」なお、「生活保護の住宅扶助を切り出し、完全に別の制度として、生活困窮者に対して住宅手当を支給することについては意見が分かれるところであり、議論が必要である」との御意見をいただいているところでございます。

 資料2の説明は以上でございます。

○駒村部会長 ありがとうございます。

 では、園田委員から、資料3の御説明を、大変申しわけないのですが、10分ぐらいでまとめていただければと思います。よろしくお願いします。

○園田委員 はい。わかりました。

 前回、幾つかの住宅扶助に関しての意見を提示させていただいたのですが、きょうは関連する資料などもつけてお話したいと思います。

 まず1点目は、住宅扶助を考える大前提として、日本の場合にもかなりの方々が民間賃貸住宅に住んでいる現状を鑑みますと、市場家賃をどういうふうに捕捉するのかという問題があろうかと思います。

 ということで、必ずしも日本と事情が同じということではないのですが、アメリカでどういうふうにこの市場家賃を捕捉しているか。公正市場家賃というものがアメリカの住宅政策の上でも大変重要な役割を果たしておりますので、そのことについて、御紹介したいと思います。

 アメリカの公正市場家賃につきましては、最初から4枚目以降に原文がありますが、アメリカで行われているFair Market Rentsの現状、これは2007年7月時点のオーバビューですが、先月確認した時点でも、これが現状では最新です。そのダイジェストを最初に御紹介したいと思います。

 翻訳が違っているところがあるかもしれませんので、もし変なところがあれば、自分で確認していただくということにして、アメリカのこの資料はセクション8、住宅補助プログラムにおける公正市場家賃ということです。

 アメリカでは、これをFair Market Rentsと呼んでいるわけですが、この公正市場家賃は、アメリカのバウチャープログラムにおける標準支給額の決定、その他セクション8というアメリカの住宅手当的なものが絡むプロジェクトについての改定家賃の決定、それから、単身低所得者向けのホテル活用の漸進的社会復帰プログラム等々の賃料などの決定などについて使われているものです。

 アメリカの住宅・都市省(通称:HUD)では、530の大都市圏と2,045の非大都市圏でFair Market Rents適用地域を設定しておりまして、毎年そこでの市場家賃を国として決めているということです。

 では、そのFair Market Rents、公正市場家賃というのはどういうふうに決まっているのかというと、公正市場家賃は住戸や地域の選択が可能な程度に高くなければならなく、かつ、より多くの低所得者世帯に対し、対応できる程度に低いという、高過ぎてもいけないし、低過ぎてもいけないというところで市場家賃を求めようとしています。それと、公正市場家賃というものには、総家賃としては住宅と必要設備という言い方になっていて、電話、テレビ、インターネット料金などは除くことになっております。

 その公正市場家賃をどういうふうに決めているかというと、標準的な質を備えた賃貸住宅の家賃分布の下限から40%分位の上限額を標準としているということです。そのときに大前提として、(ページ2と打ってあるところの注書き参照)何を標準の住宅にしているのかを決めておかないと、何に対する家賃なのかが規定できません。家賃を決める際の標準的な住宅というのは、アメリカHUDの場合には、現金によって賃料が支払われること、10エーカー以下の特定家主によるものであること、上下水道完備、フルキッチン、築年数2年以上ということで新築は含まないとしています。また、賃料には食費は含まない、この条件を満たす標準的な住宅の家賃分布をとって、それの下限から40%の上限を原則、公正市場家賃とするということです。

 ただ、その中には、地域によっては50%分位をとっているところもあるそうです。

また、市場家賃を算定するに当たって、公営住宅家賃を下回るものとか、アシステッド・ハウジング、日本でいうサービス付き高齢者住宅に該当するようなものですが、そういうようなものの家賃は除き、かつ2年未満の新築のものは除いて算定しているそうです。

 それに加えて、公正市場家賃を適用する地域というのも適度にそういう住宅が立地する圏域でないと算定できませんので、それもあるルールを決めてやっているようです。

 では、具体的に、どういう計算式で市場家賃を求めているかというのが、5ページ、横書きになっているところです。先ほど来、日本では住宅扶助をどういうふうに決めてきたのかという過去の経緯と、現状どういうふうに決めているのかの説明があったのですけれども、アメリカでの市場家賃は、大きくはセンサスという国勢調査と、ACSというアメリカ地域調査と、RDDという無作為に抽出した電話調査、CPI、消費者物価指数で算定し決めているようです。

 この流れを見ていただきますと、これが最新の2008年バージョンです(英文の中にはそれ以前のバージョンも入っていますのでご参照ください)。2008年バージョンでは、国勢調査かACS(地域社会調査)、それから、電話調査を使って、日本でいえば2DKに相当する、基準年の2寝室の住宅の40%分位の家賃をまず計算するのだそうです。

 この金額は毎年変わっていまして、HUDのサイトにアクセスしていただくと、場所を選ぶと、2014年のFair Market Rentsがぽんと出てくるようになっています。毎年の家賃をどういうふうに決めるかというと、ある基準年から社会調査が行われた年までの変化要素を加味して、データを更新する。そこで、次に住宅の賃料と、設備の賃料に仕分けるわけです。この設備料とは何だろうと思うのですが、日本でいう共益費みたいなものだと思います。これらの、住宅賃料と設備料に分けたものに対して、今度は消費者物価指数を掛けて、最新のデータにする。また再びそれを合計するというところで(4)番というプロセスに入っていきます。

 適用する期間の中間時点において、公正市場家賃のトレンドを求めて、計算で求めた公正市場家賃と、もう一つ、州の最低市場家賃を比較して、より高いほうを使うのだそうです。

 ここまでがずっと“標準という住まい”について計算していくのですけれども、最後のところで、今度は寝室サイズに応じて、もう少し小さいサイズだと幾ら、もう少し大きいサイズだと幾らというように公正市場家賃というマーケットレントを算定して、それをいろいろな家賃補助などを行うときの基準額として使うということをやっているようです。

 私が思ったのは、もうアメリカはビッグデータの時代ですから、今、いろいろな不動産情報を取り、解析をすれば、ある意味こんなオーソドックスな方法をとらなくてもいいはずです。もっとリアルタイムに情報をとって市場家賃を発表しているのかなと思ったのですが、どうもそうではないようです。今日ご説明した方法をまだ踏襲しているということは、ひょっとすると家賃の価格変動はそんなにリアルに社会情勢によって動くものではないというか、あるいは動かしてはいけないのかもしれませんが、固定的なところがあって、こういう方法をとっているのかなと思ったりもするのです。専門外なので、そういう経済的な変動と家賃の金額の関係はどうなっているのかと感じました。

 とは言いながら、日本でも民間の不動産会社などがもうものすごいデータが使えるようになっていますので、1枚目に戻っていただいて、民間の相場家賃は、例えば賃貸住宅経営者向けのそういうサイトなどに行くと、どこそこ県の何々市と入れると、間取りで相場家賃は幾らぐらいですよというのはリアルタイムで出てきます。そういうサービスがどんどんブラッシュアップされていますので、民間のそういうものを見れば、ある程度の相場家賃はかなりわかるという時代にもなっています。

 2つ目が、今度は、日本の場合の保障する住宅水準の問題です。先ほどアメリカの例を御紹介しましたが、日本で住宅扶助を考える上で、市場家賃がどうであるかということの連動というと、対象とする住宅の水準を規定しておく必要があるだろうという2つ目の論点です。先ほど事務局からの資料にもありましたが、日本でそういうものの根拠として何があるかというと、私の資料の後ろから2枚目のカラー刷のところです。住生活基本計画における居住面積水準というものがあります。住宅の広さが一番わかりやすい指標とすれば、居住面積水準です。これは先ほどの資料にもありましたが、計算式も割と単純です。一番低い水準は、赤いところですけれども、単身の、1人が住むという前提であれば25平米で、2人世帯はプラス5平米ですけれども、3人、4人以降はプラス10平米ずつで、2人30平米、3人40平米、4人50平米となっていいます。括弧に入っているのは、未就学の児童がいる場合は0.5人カウントということで、最低居住面積水準が、小さな未就学6歳未満の子供がいると、それぞれ5平米ずつ引き下げられて253545平米という水準が、国交省がハンドリングしている住生活基本法にのっとった住生活基本計画によって打ち出されています。

 ただ、それ以外に、実は住宅性能水準とか、住環境水準というようなこともあわせて決められていて、ある意味、それらに全部適合したような住宅というと、ものすごく絞り込まれてしまいます。面積水準で見ると、今、御紹介したようなことがあるのです。

 3番目の論点は、(1枚目に返っていただいて)多分ここが非常に問題だと思うのですが、大胆に言うと日本の20世紀後半の戦後の住宅政策と言っていたものは、暗黙のうちに2人以上の世帯、居住人員2人以上を前提にしたのが住宅であって、1人で住む人のことは、住宅政策の上では位置づけられてこなかったに等しい。単身者は寮とか、あるいは施設で対応すると領域が分けられていました。住宅というものは居住人員2人以上なので、1980年までは公営住宅も原則2人以上を対象として供給するものとし、単身入居というのは認めてこなかったのです。

ところが、今、単身世帯と、単身と障害者だけの世帯が大問題です。つい最近、御夫婦でお2人とも亡くなっていらっしゃったり、あるいは障害を持ったお子さんとお母さんが2人とも亡くられていたりとかということがあいついています。こうした世帯の社会的な関係力が非常に困窮していることが大きな問題です。単に住まいを箱としてあてがっても、住まい方の支援がないと適正な居住が成立しません。先ほど就労支援がテーマでしたが、そういう意味でいうと、関係力の付与とか回復を支援する、何て言っていいのかわからないのですけれども、そういうことをしないと、住宅を確保するだけでは、こういう方々の生活が維持できないという大きな問題があります。

 そういう意味で、住宅扶助というのは家賃プラス居住費的というか、あえて分けたのは家賃というのはハコモノ、住居にかかる費用ですけれども、居住費というのは生活支援、つまり見守りとか生活相談みたいなものが、実はないと居住が成立しないという大きな問題があると思います。

 先ほど貧困ビジネスの話があったのですが、私はもう少し大胆に整理してみました。貧困ビジネスというのは、単身の関係力困窮者を集約して、そこに書いた式のaの差益を得ることを目的としていると定義しました。つまり、何人かの人を集めて住宅扶助を集約するのですけれども、そこから低質な住宅費の部分と、それから、最低限の食事と見守り費を引いて、このaがプラスマイナスゼロだったら余り問題にならないのだと思うのですが、このaの部分で別の利益を上げるというか、別のことに持っていくというあたりがいかがなものかという構造だと思います。

 論点の4番目です。これもまた大きな問題だと思うのですが、賃貸住宅市場で供給過多の状況が起きているということです。先ほど紹介のあった戦後の日本国では住宅が全く不足しているという昭和30年代、40年代と真逆の状況になっていて、きょう、資料3をつけました(一番最後の紙)。これは国交省のサイトから取ってきたものですが、住宅・土地統計調査というのが5年に1回行われています。最近は2003年、2008年と昨年行われましたので、更に最新のデータが出てくると思いますが、特に賃貸用の空き家率が非常に高くなっております。そこには都道府県別に空き家率を示してありますけれども、明らかに20032008年の間に折れ線グラフが上がっていまして、今度2013年のものが書かれると、実は賃貸住宅は供給過多で、下図は東京の賃貸住宅の空き家がどのぐらいあるかということを色分けして示したものですが、東京都全体の空き家総数75万戸なのですけれども、そのうち別に傷んでいないという判断のつく賃貸用の空き家は40万戸あるわけです。ですから、これらが空き家になっていることをどう考えるかということだと思います。

 一番後ろについている資料ですが、2010年、2011年というふうに見ていくと、大都市では確かに民間の賃貸住宅の家賃は低くなっていっている傾向があるので、だから、その住宅扶助を適正なものに見直したらどうかという意見が出てきているのはわかるのですが、幾つかの問題があると思います。安倍政権になってからデフレ脱却ということで、一種のインフレ策がとられている中、私のつけた資料では、家賃は2011年時点までのデータなのですが、左側の住宅地の地価を見ていただくと、2012年と2013年を比べると、東京などは微妙ですけれども地価が上がっているのです。そうすると、今まではこういうトレンドだったから下げましょうと言っているのですが、今度は別の政策が打たれているときに、前は下がるようだったから下げてしまうと、それを下げたときには、それを取り巻く環境がまた違う状況になっているという、そのタイムラグの問題があります。それが1点目です。

 もう一つの問題は、実は、この民間賃貸住宅に、生活保護のかなりの方が住んでおり、前回の資料によれば、約100万世帯ぐらいの方が民間賃貸住宅に住んでいました。日本の総世帯数が大体5,000万ぐらいで、大きなつかみでいうと賃貸住宅居住は全体の4割なのです。ということは5,000万世帯の4割ということは、2,000万世帯が賃貸住宅居住で、そのうちの100万世帯が生活保護世帯というのは結構な割合で、民間賃貸住宅全体の5%になります。そうすると日本の場合には、住宅扶助を受け取っているのは最終的には民間の家主さんです。ですから、住宅扶助を下げると、家主さんの所得が減るという連鎖が起きてくるというところも視野に入れて議論しないと、そんなに簡単に片づく問題ではないのではないかと思います。

 その他、まだいろいろあるのですが、現物給付か現金給付か、身元保証の問題、単給化か否か、それから、公営住宅との関係整理の問題もあります。先ほどの資料にもあったように、公営住宅と民間賃貸住宅というのは、質と家賃が完全に逆転しているねじれの状況があり、国交省、厚労省というふうに所管も分かれているのですが、オールジャパンで見たときに、そういう整合性をどうやって考えていくかという問題もあろうかと思います。

○駒村部会長 どうもありがとうございます。

 そうしましたら、この住宅扶助について質疑を始めたいと思います。どなたからでも、どうぞ御意見をいただければと思いますが、いかがでしょうか。

○岩田部会長代理 ちょっと質問を。

○駒村部会長 お願いします。

○岩田部会長代理 園田先生の大変わかりやすい御説明、ありがとうございました。

 ちょっと確認なのですけれども、最後の東京の空き家の状況というカラーの見出しがありますけれども、ここの数は空き家の数と考えていいのですか。

○園田委員 そうです。空き家の数です。

○駒村部会長 先生、よろしいですか。

 この最低居住面積水準、これは性格としては単身25平米。これはこれ以下になると健康に著しく何かがあるとか、そういう科学的な話があって、これが定められている経緯なり性格は一体、これをクリアしなければいけないのか。住宅というのは人の生活によってさまざまなパターンがありますから、別にこれはあくまでも参照ぐらいの意味なのか、これの性格を教えていただければと思います。

○園田委員 実は、私、その25平米の根拠をつくった仕事をした人間なので正確にお答えしたいと思います。そもそも日本で最低居住水準というのが出てきたときには、単身16平米だったのです。16平米というのは非常にわかりやすくて、4畳半に押入れがついていまして、更に畳1枚分のところに台所があって、便所がついている、お風呂はなしという形です。それを建築的に積み上げていくと16平米になります。

 それが25平米になった経緯は、実は単身世帯でも高齢者を想定したときに25平米という数字が出てきたのです。16平米の今、申し上げたものに対して、何が付加されたかというと、四畳半だった寝室が6畳になったことと、浴室が加わりました。もう一つは、高齢者の単身であると、非常に在宅時間が長いだろうということで、小さなダイニングキッチンを条件に加えました。これらを図面で設計しますと、25平米という数字が出てきたわけです。

 それを最低居住面積水準として定めたということなのですが、歴史的には16平米と25平米の間に、幾つか基準がありました。例えば、公営住宅では単身者向け最低19平米以上という値を使っていたことがあります。これは16平米だった最低水準に浴室だけを足して19平米にしたという数字です。

 また、高齢者の25平米に対しては、今、共同居住型という定義で、サービス付き高齢者向け住宅などに使われているのですが、食事と入浴などを共同化するという前提に立つ場合に専用住戸部分の面積を18平米以上と規定しています。便所だけが専用という前提だと18平米になります。住戸の面積基準としては、1625があって、途中に1918という数字がございます。

○駒村部会長 わかりました。ありがとうございました。

 ほかに委員の皆さんからは。

 岡部委員。

○岡部委員 非常に興味深く聞かせていただきました。ありがとうございました。特に、この住宅扶助の関係の貧困ビジネスの関係で、お聞きしたいのですけれども、一般的に住宅の質に見合った家賃になっているか、家賃の額が妥当性を持つかどうかという問題があります。

 もう一つは、住宅を入手する場合、借りる場合初期費用と保証人の問題があると考えます。そうしますと、園田委員がおっしゃった関係力困窮世帯というのを、関係力は食事とか見守りという部分に入っていますけれども、そのあたりのところは先ほど言ったような保証人とか初期費用がない方の場合は、ある意味ではソーシャルキャピタル、関係性を持っていないわけですから、そこはどうお考えになるのか、でお聞きしたいということです。

 このことに関連して、先ほどマーケットで空き家の問題とか空き室の問題があったときに、まず住宅で関わってくるのは保証人と初期費用の問題だと考えます。ここでいうパーソナルなサービスが必要かどうかということは、余り住宅を入手するということに関連しないと思いますが、この点についてどう考えるのか、できればとお聞きしたいと思っています。

○園田委員 住宅を確保するときには、保証人の問題というのは非常に大きな要件です。その保証人がいない場合にどうするのかということで、そこについては、若い人だと保証会社というところがあったり、住宅セーフティネット法という法律を国交省がハンドリングしており、高齢者とか障害者あるいは母子世帯、外国人などについては、身元保証に係る部分について、それぞれの都道府県で対応を考えなさいという考え方になっています。

 高齢者に関する身元保証としては、ある程度の費用を支払わなければいけないですが、民間のサービスあるいは東京都のサービス、それから、高齢者住宅財団というところで、身元保証ではないのですが、家賃保証をするというような仕組みも幾つかは出てきています。

 初期費用については完全に供給過多ですから、皆さんゼロゼロ物件というのをお聞きになったことがあるかと思うのですけれども、最近ですと一定期間フリーレントというようなことも出てきています。要するにある程度の信用力があれば、今はもう初期費用はとれない、フリーレントをやって、何カ月かただで住んでいただいて、そこから家賃を払ってくださいみたいなことは、民間の賃貸住宅の業界では、もうかなり一般的になっている面もなくはないのです。

 だけれども、生活保護の人とか、あるいは生活保護まではいっていないけれども、高齢者であると、家主さんは空いていても貸し渋るのですね。それは何かというと、御指摘のとおりに身元保証人がいないという以前に、何かあったときにどうするのかということがあるので、身元の確認までいかない前にはねられてしまうのです。生活支援の部分や見守りとか、病気になったときにどうするのかとか、そこがないと、次の段階には進めない。そういう問題があります。

○駒村部会長 わかりました。ありがとうございました。

 阿部委員。

○阿部委員 非常に住宅を詳しくお話をありがとうございました。

 もしかして厚労省からお答えしていただくことが可能なのかもしれないのですけれども、最低居住面積水準は国交省でも、日本の住宅の何%がこれを満たしているかという調査をやっていたと思うのですけれども、100%ではないのですね。特に、やはり賃貸のところでは、それを満たしていない住宅も多いということになりますと、それは生活保護の受給をなさった中に住んでいらっしゃる住宅の何%が最低居住面積水準を満たしているかという数値があるのかということです。

 また、それがもしないのでしたら、それを逆として、もしこれはもう一般的な話かと思われますけれども、生活保護の中での住宅の特別基準に決められている金額で、最低基準面積水準を満たしている住宅とそうでない住宅は何割ぐらいの割合でいるのかなといったような数値があるのかというこの2点についてお聞きしたいと思います。

○園田委員 住宅・土地統計調査で、最低居住面積水準未満率の数字は出ています。16平米が最低居住水準だった時代は、日本全体で、最低居住水準以下は約10%でした。それを25平米に上げたのは大変不評でして、ばんと水準以下の割合が高くなりました。今度、昨年の住宅・土地統計調査の最新の数字がもうすぐ出てくると思います。

○阿部委員 では、それは生活保護の受給者の中で調査された。

○園田委員 いやいや、それは日本全体でつかめる値です。

 先生の御質問の2つ目の保護世帯がどのぐらい水準を満たせているかどうかというのは、私のほうではわかりません。

○伊沢保護課長補佐 済みません、その被保護世帯がどういう居住状況にあるのかということに関しましては、また別途調査を行いたいと考えております。調査方法等具体的な内容が固まり次第、改めて御報告させていただく予定です。。

○駒村部会長 岩田委員、お願いします。

○岩田部会長代理 住宅扶助についての議論なので、当然、こういう形でいいと思うのですけれども、現実には住宅という定義から外れた場所に暮らしていて、短期間生活保護がきちっと開始するまでという場合もありますし、あるいは場合によってはそのままいってしまうこともあると思うのですけれども、住宅ではないところに住んでいるという人も、私が国勢調査で推計したときも相当数ありました。

 それから、生活保護の保護施設がありますが、この場合、救護・更生施設のような施設の場合と、宿所提供施設という住宅扶助の現物支給、この間も随分違いまして、実は宿所提供施設のほうが住宅最低限に近いのですね。だから、そこから更生施設に行くというルートが実は東京の場合などはあるのですけれども、大体嫌がるわけです。どうしてかというと、更生施設の場合は先ほどの4畳半以下ですね。ベットプラス物入れという感じになって、単身で自分の私的空間を所有するということがない状況ですから、そういうのもどう考えるかというのは少しあるかなと思います。

 生活保護を受けるまでに2週間ぐらい調査する期間があって、そのときに住宅のない人をどう処遇するかというのは福祉事務所の非常に大きな悩みでして、そういう人たちを言い方は少し悪いのですけれども、調査している間、「どういうところに置いておくか」というような言い方をよくされていますが、その場合、例えば東京ですと、ネットカフェにいて生活保護の申請に来た、相談に来たという場合は、しようがないからネットカフェにいてもらう。生活保護が開始されて初めて住宅を探して、開始するというようなことがあるわけですね。

 住宅不動産というのは、もちろん動かせないので、人が動くほうが園田先生の東京のプロットを見てもリーズナブルなわけですね。ところが、生活保護の行政区域、特に福祉事務所の行政区域は、行政側にとっては、そこの責任はその区域の中でしか果たさないといいますか、そこに責任があるのだという責任感は当然おありになるので、移管といって、地域移動というのは、公営住宅に入るときは移管しますけれども、それ以外は余り動かしたくないという雰囲気が私はあるように思われるのです。

 これは、先ほどの就労支援とも関わりますけれども、労働機会とか、住む場所というのは、当然、一番その人の生活状態に、そのときに最適な方法といいますか、いい勤め先があれば、当然その近くに住む。あるいは子供さんがいれば、逆に保育園や小学校を頻繁に変わらないように、一定期間同じところに住むというのは、住宅が持つ固有性だと思います。先ほど園田先生が住宅プラスアルファといいますか、そういう生活維持とか環境要因とか何かそういうものがあると思うのですけれども、その人が例えば就労支援計画のように、やはりきちんと希望を聞いて、一番合理的な住み方をして、それがアメリカでいう公正な市場価格で借りられるようなアパートがある、そういう状況になるのが一番いいのではないかと思うのですけれども、どうもそのあたりが難しい。つまり、生活保護を最初に実施する機関が過剰にその地域の中に何とか押しとどめようとするという言い方はちょっと語弊があるかもしれませんが、そこで面倒を見ようとし過ぎる傾向が私はあるように思われるのです。

 逆にいうと移管ケースを、受け取るほうが何か迷惑というふうに感じてしまうのか、そういうような状況もあります。そうではなくて、賃貸が東京全体を見渡せば空き室がある、そういうのを利用して、生活保護を利用しながら自立していくというようなことが、就労機会の問題ももちろんあると思いますけれども、福祉事務所の福祉区を余り堅苦しく考えずにもう少し連携しながらやっていく。これは全国的な制度ですから、どこに住むかどうかというのはその人の選択や、自立の土台となるべきだろうと思うのです。だから、住宅扶助プラス何というか、住宅設定と、その責任を誰が取っていくかということまで少し考えたほうがいいかなという感じです。

○駒村部会長 では、今、行政の話はいいのですか。

○岡部委員 いいですか。

○駒村部会長 ありますか。では、岡部委員と阿部委員でお願いします。

○岡部委員 住宅が居住選択の自由というのがありますので、その方の住居設定の自由があります。もう一方は、転宅資金が発生しますので、それが合理的な理由がないと、転宅資金は、額が大きいですので出しにくい。結果的にそれは先生がおっしゃられたように、その地域にとどめてしまうと見られることもありますが、合理的な理由があれば、転宅資金をお出しして転居していただくということもあります。他の福祉事務所に実施責任が移ることを移管という言い方をしますが、実施責任は変わるということで、それを嫌がるか嫌がらないかということではなくて、そういう合理的な理由があれば、それは認めるということは行われているのではないかなと思います。

○駒村部会長 阿部委員。

○阿部委員 済みません、これは本当に私の知識の足りないところなので、ぜひ園田先生にお聞きしたいと思っているところなのですけれども、物価についてなのですが、今、生保の消費者物価指数のところで調整しているというところがあるのですが、私の感覚では家賃は非常に幅が広いもので、野菜ですとかお肉ですとか、いろいろなものと比べてはるかに幅が広い。そうした場合に低家賃の生活保護基準ぐらいの家賃の物価と、平均的な家賃の物価の動きというのは同じと仮定してよろしいものなのでしょうか。

○園田委員 私もその辺になると専門外なのですが、大竹先生のほうがお詳しいのではないですか。消費者物価と家賃の変動の関係もよくわかりません。

○阿部委員 低い層の家賃と平均的な家賃の動き方のところで。

○園田委員 低家賃と高額な家賃の動き方が違うかどうかは、私にはわからないです。ただ、住宅というのは要するに世帯が単位で、非常に固定的なものなので、人数比例とか、そういうふうにして単純に段階的な家賃があるわけではなくて、最低限必要な固定的な部分がある。だから、1人でも最低居住面積25平米と決まっているのは、まずそこが固定ですね。あと、人数だけに関係する部分についは、少しずつ面積が加わっていくということです。ですから、少なくとも家賃は居住人数比例ではないということは言えると思います。

 ですから、広さのバリエーションも、日本の賃貸住宅は、実は面積で見るとそんなに幅広く分布はしていないのです。ものすごく小さいほうに偏っています。普通は、平米当たり幾らとか、坪当たり幾らというのが相場家賃の決め方なので、そこでほぼ決まってきます。先生の質問について正確にはお答えはできないのですけれども、家賃に関しては、普通の野菜のように短期間に物価が変動したり、中国で大量に生産されたからすごく安くなったというようなことはないと思います。

○駒村部会長 では、山田委員、お願いします。ちょっと時間も押していますので、済みません。

○山田委員 手短に、次回以降、資料をいろいろと御用意いただくときに、やはりちょっと見てみたいのは、先ほど言った野菜の分布とか、そういう価格の分布などと似ている質問なのですけれども、家賃を数千円動かしただけで、質的に、例えば風呂とか何かがついているついていないというのががらっと変わるような閾値があるのかないのかというのが気になっていて、それが例えばわずか数千円の動きであっても、住宅の質というか機能的には非常にがらっと変わるおそれがあるというので、そういったことがないのかどうかというのは、何らかの形で中長期的な課題になるかもしれませんけれども、確認していく必要があるのではないか。単に金額だけではなくて、非常に大きな質的なジャンプを伴った分布ではないかという可能性について、確認をしておく必要があるのではないかということ。

 通常はいろいろな要素が加わって、きれいななだらかな分布になるのかもしれないのですけれども、例えば先ほどあったキッチン、浴室とかそういったもので、数千円の価格の違いで、大きな質的なジャンプがないかというのが気になっているところなので、将来的にそういうデータが用意できるのであれば、見せていただきたいということです。

 以上です。

○駒村部会長 お願いします。

○栃本委員 これは事務局にお願いしたいのですけれども、無料低額の宿泊施設の部分で、かつて5~6年の傾向とか、そういうのを分析したデータが結構あると思うのです。前に貧困ビジネスがあったので。直近のもので高齢者の滞留を示すものであるとか、前のデータだと高齢者の要介護者がどのくらいいるかとか、そういうデータがあったのですけれども、最近はそういうのを調べられていたのでしたか、というのが質問です。

○伊沢保護課長補佐 ないです。

○栃本委員 それまでしかないですね。

○伊沢保護課長補佐 平成22までしかないということです。

○栃本委員 やはりこの本質的な意味での住宅扶助も重要ではあるのだけれども、それはある種のタイトルみたいなもので、特にこれが高齢者世帯であるとか、一般的にはホームレスとか入ってくるというので、平均年齢はそれほど上がらなかったり見えるのだけれども、実際的に言うと、高齢者は長期間にわたってそこに住んでいるわけですね。そこら辺との、かなり端っこと言ったらあれだけれども、そんな中心的なことではないのですが、そういうデータも見てみたいなということだったのだけれども、22年は以降は見ていないですね。

○伊沢保護課長補佐 取っていないです。

○栃本委員 取ってないですね。はい、わかりました。

○駒村部会長 きょうは入り口の議論ということで、大事な議論が幾つかあったと思います。住宅の場合、特殊でそれぞれ質が違いますので、質をちゃんとコントロールした上での比較の議論をしなければいけないわけですね。

 それで、きょうも議論、御質疑があったとおり、最低居住水準を満たしている割合が生保世帯なり、低所得世帯なり、一般世帯なりで、どのくらい違うのかということや、阿部委員がおっしゃったように、住宅の水準や家賃の価格帯によって、いわゆる価格の変動幅はどのくらい違うのかというようなことも、ちょっと今後は調べていただきたい、資料としては検討しておいていただきたいというような議論があったと思います。

 ちょっとオーバーして大変申しわけないのですが、もう一つだけ議題がございますので、事務局からかいつまんで御説明いただきたいと思います。よろしくお願いします。資料4です。

○伊沢保護課長補佐 済みません、少し時間が過ぎてしまいましたが、資料4、「生活扶助基準の検証手法の開発について」でございます。

 昨年1月に、本部会において取りまとめられました報告書でも、将来の基準の検証手法を開発していくことが求められる。こういったテーマが大きく宿題として残されております。このため次の検証に向けて、どのような検証手法を考えられるのか検討を進めてまいりたいと考えます。

24年度の検証の際には、生活保護の水準は実際各県からのアプローチのみでは判断ができない。複数のアプローチによる検討が必要であるとの御発言も御出席の委員の方からあったかと記憶しております。まずは、そういった視点も交え、フリートーキングで忌憚のない御意見を賜れば幸いでございます。

 なお、参考といたしまして資料につけさせていただいておりますが、23年度に本部会委員から御報告のありました最低生活水準を検証する手法の既存の提供でございました。これにつきまして概要だけで恐縮でございますが、一応、資料として付けさせていただいてございます。

 御議論のほど、よろしくお願い申し上げます。

○駒村部会長 これは中長期的な課題になってくると思いますけれども、すごく重要なテーマで、きょうは時間も余りございませんけれども、これまでの御発言がメモされていますが、この点についてはいかがでしょうか。

 阿部委員、どうぞ。

○阿部委員 このような検証の手法というのは、どうしても最初はトライ・アンド・エラーでいろいろやるしかないというものもありますので、このように部会とかでやるというよりも科研費枠プロジェクトですとか、そういった形の研究みたいなものをやる必要があるのではないかなとも思いますので、ぜひそのような方法も検討していただきたいなと思いました。

○駒村部会長 非常に、これだという決め打ちはできないわけで、いろいろなパターンを検証してみないといけなくて、それが直接その次の改定にどうのという話ではないわけですけれども、いろいろなパターン、やり方が考えられるので、研究プロジェクト方式がいいのではないかという御発言でした。

 栃本委員、お願いします。

○栃本委員 2点ありまして、その件については、前の期間の審議会でも申し上げましたように、やはり国立社人研とか、そういうところでも研究すべきテーマだと思うのです。前にお話したように、それが1点。

 もう一つは、今回、岡部委員が入られているので、前も岩田先生と阿部先生、山田先生からお話を伺って議論をしたので、ぜひ岡部委員から新たに出していただきたいなということです。

○駒村部会長 政策的な基準の検証ですから、国の研究機関なども活用したらいいというお話もあったと思います。岡部委員からも、もし準備が合えば、いずれこれをお願いできればと思います。

○岡部委員 そうですね。

○駒村部会長 ほかにいかがでしょうか。

 よろしいでしょうか。

 きょうは、最後のところは余り入り込めませんでしたけれども、時間もオーバーして大変申しわけございません。

 では、就業、就労と住宅扶助を中心にきょうは議論しました。きょうの審議はこれで終了させていただきたいと思います。

 最後に、次回の開催について事務局から連絡をお願いします。

○伊沢保護課長補佐 次回は、調整中でございますので、また追って御連絡をさせていただきます。よろしくお願いいたします。

○駒村部会長 それでは、本日の議論は以上とさせていただきます。

 御多忙の中、大変ありがとうございました。

 


(了)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 社会保障審議会(生活保護基準部会)> 第16回 社会保障審議会生活保護基準部会(2014年3月4日)

ページの先頭へ戻る