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2013年10月10日 第195回労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会 議事録

職業安定局派遣・有期労働対策部需給調整事業課

○日時

平成25年10月10日10:00~


○場所

厚生労働省 共用第8会議室(19階)


○出席者

(公益代表)鎌田委員、柴田委員、橋本委員、阿部委員、竹内(奥野)委員
(労働者代表)石黒委員、清水委員、新谷委員
(使用者代表)小林委員、高橋委員、青木オブザーバー、大原オブザーバー

事務局

岡崎職業安定局長、宮川派遣・有期労働対策部長、鈴木企画課長、富田需給調整事業課長
松原派遣・請負労働企画官、鈴木主任中央需給調整事業指導官、亀井需給調整事業課長補佐、木本企画調整専門官

○議題

今後の労働者派遣制度の在り方について

○議事

○鎌田部会長 ただいまから、第195回労働力需給制度部会を開催いたします。本日は使用者側代表の秋山委員、労働者代表の春木オブザーバー、宮本オブザーバーが所用のため御欠席と伺っております。それでは本日の議題、労働者派遣制度の在り方についての議事に移りたいと思います。はじめに、事務局から資料の御説明をお願いいたします。
○亀井補佐 議事次第を御覧ください。本日の配布資料は5種類です。事務局から資料1、2、3、5、そして新谷委員から資料4ということで、それぞれ御用意しております。御確認いただき、過不足等がございましたら、事務局にお伝えいただければと思います。
 それでは資料1について御説明いたします。資料1は、各項目を議論する上での論点(案)です。本日の論点である派遣期間制限の在り方について御留意いただきたい点を、事務局がまとめたものです。中身を大きく2つに分けております。1番として、現行の派遣期間制限の課題、いわゆる26業務という区分に基づく規制の在り方の課題です。現行制度については様々な課題が指摘されていることから、国会の附帯決議において、派遣労働者や派遣元・派遣先企業に分かりやすい制度になるよう求められているが、どのような対応が考えられるかということです。
 2番として、派遣期間制限をはじめとする今後の常用代替防止策の在り方についてです。これについては、更に項目を2つに分けております。(1)として、派遣期間制限の基礎の1つとなっている常用代替防止の考え方について、(2)として常用代替防止の具体策についてというように立てております。(1)は常用代替防止という考え方について、(1)から(3)のような指摘がなされていることを踏まえて、どのように考えるか。また、常用代替防止のために設けられた業務に基づく派遣期間制限についても、ここに例示したような指摘がなされていることを踏まえて、どのように考えるかということです。(2)は、常用代替防止という考え方を維持する場合に、ここに例示したような具体策が考えられるが、どのような対応が適当かという内容です。参考として、今回も研究会報告書の抜粋を付けておりますが、第1回で御紹介しておりますので、今回は省略いたします。
 資料2は関係資料ということで、本日の論点に係る基礎資料を集めたものです。1ページは、現在の派遣期間制限の概要をまとめた資料です。現在の期間制限の仕組みですけれども、派遣労働者が担う業務に応じて、派遣受入期間の制限を設けております。下段のいわゆる26業務に該当すれば期間制限なし、それ以外は同一の業務で一定期間の期間制限がかかります。この同一の業務については、後ほど定義を御紹介いたします。原則1年間、例外3年間の期間制限です。
 2ページが、いわゆる26業務とは何かという概要をまとめた資料です。上の囲いが26業務を選ぶ考え方、下の囲いが具体的な業務です。考え方としては以下のいずれかに該当し、かつ、常用代替防止との関係で問題がないものとして定めます。(1)として、「その業務を迅速かつ的確に遂行するために専門的な知識、技術又は経験を必要とする業務」です。(2)として「その業務に従事する労働者について、就業形態、雇用形態等の特殊性により、特別の雇用管理を行う必要があると認められる業務」です。こういった考え方に即して指定しております。
 3ページが今申し上げた考え方に基づいて、26業務がどのような変遷をたどってきたかという資料です。平成8年の改正時に現在の26業務となって以降、大枠は現在に至るまで変わっておりません。
 4ページが派遣労働者数を業務別、雇用形態別に内訳を示したものです。4ページから7ページまで、派遣労働者が最も多かった平成20年以降、年次ごとのデータの推移を付けております。専門26業務に従事する派遣労働者は、数・割合ともに減少傾向にあります。平成21年に少し増えておりますけれども、それ以降は減少傾向にあるということが見て取れるかと思います。
 続いて8ページまで進んでください。26業務に従事する派遣労働者数の業務ごとの内訳を示したものです。最も多いのは、上から5番目にある事務用機器操作で、35.5%の割合を占めます。これに次ぐのが一番上のソフトウェア開発、それに次ぐのが下から4つ目のテレマーケティングといった状況です。
 9ページは、8ページとは別の「平成24年派遣労働者実態調査」を基に、26業務とそれ以外の業務に従事されている派遣労働者を、業務別・雇用形態別の割合で示したものです。こちらも26業務については、事務用機器操作が最も多くを占めております。次いでソフトウェア開発と、その右の機械設計が多くを占めるという内容になっております。これは登録型と常用雇用型に分けて見ることができます。事務用機器操作については登録型のほうが多いけれども、ソフトウェアと機械設計については、常用雇用型のほうが多いという内容になっております。
 10ページは、冒頭に申し上げた派遣期間の制限を受ける同一の業務について、その概要をまとめた資料です。上の囲いがその考え方で、下が実務で扱っている要領を引用したものです。「同一の業務」とは囲いの中にありますように、「派遣先における組織の最小単位において行われる業務」として運用しております。では、「最小単位の組織」とは何か。「業務の内容について指示を行う権限を有する者とその者の指揮を受けて業務を遂行する者とのまとまりのうち最小単位のもの」です。この最小単位については、下の下線の部分に例示されております。係又は班、課、グループ等が該当する場合もあり、名称にとらわれることなく、実態により判断すべきという運用がなされております。
 11ページが、いわゆる付随的業務の概要です。26業務に従事する派遣労働者がそれ以外の業務を行う場合に、期間制限を受けるか否かといったものです。同じく上の囲いがその考え方で、下がその要領です。考え方にありますように、26業務に従事されている方がその他の業務を付随的に行う場合で、その時間数が全体の1割以下の場合であれば、派遣期間の制限を受けないという整理になっております。ちなみにこの1割という数字は、注2を御覧ください。労働政策審議会の建議(平成14年)において、該当箇所を引用しております。「いわゆる26業務の実施に伴い付随的に行う場合であって、かつ、その割合が低い場合」であればということで、1割が適当ではないかということで現在に至っております。
 続いて12ページに進んでください。今説明した派遣可能期間の制限を回避するための行動を、派遣元などがどの程度行っているかという調査結果です。12ページが派遣元に対する調査で、13ページが派遣労働者に聞いた結果です。表1にありますように、部署を変えたり変わったりといった経験は、派遣元・派遣労働者ともに2割弱あって、8割程度はないと。変わった先の部署はそれぞれ様々ですけれども、仕事の内容が変わったのかということについては、13ページの表3にあります。「前とほとんど同じ」と「異なる」というのが、それぞれ半数程度という結果になっております。
 14ページと15ページは、国会の議論において26業務に基づく期間制限の在り方が指摘された際の議論を抜粋したものです。主に課題について御指摘いただいている部分に、アンダーラインを引いております。ポイントを申し上げますと、1つ目はマージナルな部分がいっぱい出てきて限界が分かりにくい、2つ目は技術進歩に伴って結論が変わってくる、3つ目は一般事務と区別が付きにくいものがあるといった議論や指摘がなされております。
 15ページに進みますと、こうした課題を踏まえて、現在行っていただいている期間制限の在り方の検討が必要であるという議論です。アンダーラインの部分ですけれども、現大臣の田村憲久議員と、衛藤晟一議員や丸川珠代議員の御議論として、専門26業務のみならず、期間制限をどういう形で掛けるべきか、人なのか、それともその業務・業種に対して掛けるのかということも含めて、抜本的に検討する必要があるのではないかと。下もほぼ同じ内容です。本当にいわゆる26業務という話が適当なのか、それとも個人に対してなのか云々という議論が、同時になされております。
 16ページ以降は、常用代替防止の考え方に係る基礎資料を集めたものです。16ページは労働者派遣法制定時などに、どのような整理がなされていたかを御紹介するものです。上半分の「中央職業安定審議会小委員会報告書」は、制度の在り方のたたき台となったものです。下線部を御覧ください。制度創設に当たっては、「新規学卒者を常用雇用として雇い入れ、企業内でキャリア形成を図りつつ、昇進、昇格させるという我が国の雇用慣行との調和を図る必要がある」と。このような観点から、業務を限定することが適当であるとして、(1)、(2)といった考え方が示されております。この小委員会の報告書を更に明確化したものとして、下に審議会の答申とか、その後国会でなされた議論に基づく附帯決議を付けております。下線を引いておりますように、対象業務を具体的に定めるに当たっては、我が国の雇用慣行との調和に留意し、常用雇用労働者の代替を促すこととならないよう、十分配慮するといった形で、更なる明確化が図られております。附帯決議においても、同様の内容が確認されております。
 17ページは、労働者派遣事業を行い得る対象業務を、ポジティブリスト方式からネガティブリスト方式に改めた、平成11年改正時の考え方の整理です。いわゆる26業務については、(3)に挙げられた考え方のとおり、常用雇用の代替のおそれが少ないことから、期間制限の在り方を維持することが適当だと。一方、26業務以外のものについては、上の下線部にありますように、「常用雇用の代替のおそれが少ないと考えられる臨時的・一時的なものに限定する」という内容になっております。
 18ページは参考として、労働市場全体での非正規雇用労働者の数・割合の推移を示したものです。非正規雇用労働者は、全体として数・割合ともに増え続けております。
 19ページは非正規雇用労働者について、その内訳が分かるようにしたものです。派遣労働者を御覧いただきますと、平成20年に140万人とピークに達した後は、数・割合ともに減少を続けて、現在は平成16年と同水準になっているという状況です。
 20ページは、いよぎんスタッフサービス事件の概要です。これは第1回の議論でも御紹介しましたけれども、派遣法が常用代替防止を立法目的としているところ、同一事業所への派遣期間が長期間継続することによって、雇用継続への期待権が生じるのか否かということで、これを認めなかったという事件の判例の概要です。
 21ページ以降は、常用代替防止策関連の資料です。まず21ページです。現在の派遣法にも盛り込まれている、派遣先による派遣労働者の直接雇用へ促したりする規定を抜粋したものです。この規定自体は、派遣労働者の雇用の安定を図るという趣旨ですけれども、常用代替防止の観点からも有効であるという御意見もいただき、本日御紹介させていただいております。ア)とイ)にその規定を抜粋しております。ア)の(1)とイ)が期間制限を受ける方々に直接雇用を促したりする規定で、ア)の(2)が期間制限のない派遣労働者に対する規定です。
 22ページの資料は、今申し上げた派遣可能期間の制限が到来した際に、派遣先がどのような対応をしているかという調査結果です。総数が327と、少ないことに御留意いただく必要があります。直接雇用をされた者が5割で、それに次ぐのが下段、派遣を終了して自社の従業員で対応、それに次ぐのが、そのまま継続して受け入れたという内容になっております。
 23ページと24ページは、諸外国の労働者派遣制度の概要について、国際比較を行ったもので、ポイントだけ御説明いたします。まず上から3つ目に、派遣労働者の定義がされております。EUを御覧いただきますと、臨時的に就労する労働者という内容になっているかと思います。これを受けて、EU加盟国ではいずれも定義の中に、臨時的ないし一時的といった内容が盛り込まれています。そのほかに、下の業務区分や派遣が許可される事由です。日本についてはこれまでも申し上げたように、業務区分に基づいて期間制限が掛かっています。フランスやベルギーにおいては、業務ではなくて事由によって利用できる業務に制限を掛けています。
 24ページでは派遣労働者の待遇に関する義務、みなし雇用についての国際比較を行っております。EU及びその加盟国においては、均等待遇が求められております。アメリカにおいては特にない。日本においては均衡待遇の配慮が求められているという内容です。また、みなし雇用制度については日本、ドイツ、フランス、ベルギーにおいて、それぞれ制度が設けられております。
 25ページ以降は参考です。労働者派遣制度の在り方に関する研究会において御議論いただいた際に、ドイツにおいては派遣労働者の受入れに際して、派遣先の労働者が関与できる仕組みがあるという形で御紹介したものです。25ページは、ドイツの派遣法の関連条文を抜粋したものです。その仕組み自体が、事業所組織法というものにありますので、26ページではその事業所組織法の関連規定を引用しております。
 27ページに御紹介しているのは、そうしたスキームを前提に、ドイツの金属産業における代表的な労働組合と使用者団体が締結した協約の内容を御紹介しております。労使が話し合う仕組みなどを定めております。ただし研究会報告書においては、ドイツのような仕組みを導入すること自体には、慎重な内容を提言しております。
 続いて、資料3の参考資料です。この参考資料の位置付けですが、これまでの議論の際に、委員からお求めのあったものをまとめたものです。まず、1ページと2ページを見開きで御覧ください。派遣労働者の時給の推移を見たいというお求めを受けて作成しました。1ページにある△と○が、正社員や短時間労働者の時給の推移です。これは「賃金構造基本統計調査」に基づき、所定内給与から時給だけを取ったものです。□と◇が、派遣労働者の推移です。当方が事業報告で把握しているのは時給だけではなく、手当や賞与なども含んでおります。このグラフを見ますと、そう差はないように見えますけれども、2ページを御覧いただきますと、正社員とパート労働者のほうに、派遣労働者のデータと同様に賞与や手当なども含めますと、このようなグラフになります。
 3ページは前回の議論でもお求めのあった、派遣労働者の雇用契約期間と派遣契約期間の関係を分析したものです。ネットを利用したアンケート調査に基づき、機械的に雇用契約期間と派遣契約期間を比べてみたものです。集計結果を御覧いただきますと、総数の約5割が雇用契約期間と派遣契約期間が一致しています。2割が雇用契約期間のほうが派遣契約期間よりも長い、3割が雇用契約期間のほうが派遣契約期間よりも短いという結果になっておりました。
 4ページは、前回お求めのあった製造業における労働災害の状況を、より詳しく分析したものです。左は、製造業に従事しておられる方には事務などに従事しておられる方も入っておりますので、その中から製造業務の作業に従事している労働者を抜き出して、労災の割合の推移を示したものです。右側が派遣労働者の推移を表したものです。派遣労働者のほうが全労働者と比較して、幾分高くなっているという結果が見て取れます。
 5ページ以降は、お求めのあったEUにおける「有期・派遣労働者健康安全指令」を抜粋して、御紹介したものです。
 続いて資料4、新谷委員から御提出いただいた資料です。こちらは後ほど議論の際に、適宜利用されると伺っておりますので、御紹介は省略させていただきます。
 続いて資料5です。先日、規制改革会議において取りまとめられた労働者派遣制度に関する意見書を、参考として御紹介させていただきます。1番は意見提出に至った背景で、2番に全体的な基本的考え方がまとめられております。労使納得の下に、多様な働き方が選択できる社会を構築すべきという立場から、いろいろな意見を申し述べるということで、そうした点について、労働政策審議会での議論を強く望みたいということです。
 1ページにあるのは、研究会報告書で提言された26業務という区分に基づく期間制限の廃止と、個人レベルの期間制限については、以下に掲げられている規制改革会議の主張にも沿ったものとして堅持されるべきではないかという意見です。一方、一番下の部分ですが、本日の論点案にも掲げております「常用代替防止」の考え方については、次ページにありますように、これを「派遣労働の濫用防止」に転換すべきであって、具体策としては均衡処遇の推進によって、その実効性を確保すべきであるという意見になっております。3番は研究会の報告書です。具体策について少し提案を行っており、それに対してそれぞれ意見を述べたものですので、詳細は省略させていただきます。以上、期間制限に係る意見です。
 また、本日の議題ではございませんが、4番として平成24年改正法に係る規定についても、意見が述べられております。結論のみ御紹介いたします。(1)の日雇派遣の原則禁止については、次のページにありますように、濫用的な利用の防止を図りつつ、例外規定も含めた抜本的な見直しが必要であるという意見です。(2)の労働契約申込みみなし制度については下の部分にありますように、廃止を含めた見直しが必要であるという意見です。(3)のグループ企業派遣の8割規制については、濫用的な防止を図りつつ、8割という基準の妥当性を含めた見直しが必要ということです。続いて(4)マージン率等の情報提供については、均衡処遇を推進しつつ、これを廃止すべきだと。最後の(5)1年以内に離職した方への規制については、就業機会の増進につながる場合があることから、適切な例外を認めるべきではないかという意見がまとめられております。資料の説明は以上です。
○鎌田部会長 本日御議論いただきたい論点は、派遣期間制限の在り方についてです。進め方としては、資料1に挙げられた論点ごとに、それぞれ時間を取って御議論いただいてはと思いますが、いかがでしょうか。
                                  (異議なし)
○鎌田部会長 では、そのようなことで進めます。1の(1)から御議論いただきたいと思います。必要であれば、常用代替防止のことも含めて御議論いただければと思いますので、柔軟に御発言いただければと思います。
○新谷委員 今、部会長から御指示いただきましたが、お互いに密接に関連しますので、1と2について、意見を申し上げます。
 まず、常用代替防止の考え方についてです。これは、我が国が雇用政策としてどういう雇用の姿を目指すのか、本来あるべき雇用の姿とは何か、という問題と関連すると思っています。我々としては、労働者が働きがいのある仕事に安心して従事するためには、雇用の原則は期間の定めのない直接雇用であるべき、と考えるところです。
 こうした考え方は、先ほどEUの派遣労働指令等も御紹介いただきましたが、欧州をはじめとして諸外国でとられている考え方でありますし、先に改正された労働契約法第18条の無期転換といった政策にも見られるように、我が国の中にも取り入れられている考え方ではないかと考えているところです。
 したがって、派遣は職業安定法第44条の例外規定として雇用と使用の分離を認めるということで、1985年に制定された法律に基づくものでありますが、先日来、実態等のデータも見ていただきましたように、やはり間接雇用であるが故に労働者保護に欠ける雇用形態であると言わざるを得ないと考えております。派遣法が制定されたとき以来採られてきたように、派遣を「臨時的・一時的な労働力需給調整制度」と位置付けた上で常用代替の防止を図るという考え方は、今後も堅持をするべきであると考えております。
 そのときに、研究会報告等では、常用代替の防止について、無期雇用派遣はその対象から外すという考え方が示されておりますが、この派遣という働き方については、雇用の安定という面から見ますと、無期であろうが有期であろうが、ともに雇用の安定に乏しいという実態にあるわけです。したがって、間接雇用である派遣労働の全てについて、常用代替防止の対象とするべきであると考えております。
 もし、仮に無期雇用派遣のみ常用代替防止から外すということになりますと、我が国に常態的な間接雇用法制を持ち込むということになりかねません。これはもう、一生涯派遣で働くということの環境整備をすることに繋がるわけですので、全く不適当であり、こうした考え方を受け入れることは難しいということを申し上げておきます。
○鎌田部会長 ほかの方で御意見はよろしいでしょうか。
○新谷委員 事務局に確認です。先ほどの説明では、資料5の扱いがよく分かりませんでした。規制改革会議の意見というものが出されているわけですが、これは労政審としてはどういう扱いにすればよろしいのですか。これは何なのでしょうか。
○富田課長 資料5は10月4日に取りまとめられたもので、資料5の「基本的な考え方」の真ん中の所に書いていますとおり、「以下の点について、労働政策審議会で議論されることを強く望みたい」とありますので、規制改革会議としては、労政審で議論していただきたいということが示されたということです。したがいまして、事務局としましては、これについてどう扱うかについては、労政審で御議論いただきたいと考えております。
○新谷委員 それであれば分かります。ただし、この規制改革会議の意見には今後の私ども労政審の論議は何ら影響を受けないという理解でよろしいでしょうか。
○富田課長 委員の皆様の御議論に委ねられていると考えております。
○新谷委員 分かりました。その上でお尋ねします。規制改革会議の所管は内閣府だと思いますが、そうするとこの資料の不思議なところは、3ページの「労働契約の申込みみなし制度」について、平成27年10月施行予定であるにもかかわらず「廃止を含めた見直しが必要である」と、行政府が出された資料の中に記載されている点です。先ほど資料にも出していただいたように、昨年の3月28日に成立した改正法は、民主党、自民党、公明党の3党共同提案で修正案が出され、先ほど説明があったように、当時の田村議員が提案趣旨説明をされて、その答弁もされていたわけですが、そのような形で立法府として決定成立したものです。そのうち、まだ施行もされていないもの、要するに施行した場合にどのような課題があって、それゆえ再改正に向けての立法事実があるのかどうかも分からないものについて、早くも修正しろという意見を行政府が出してくるということに対して、これはどのように見たらいいのでしょうか。もし見解があれば教えていただきたい。
○富田課長 この資料は内閣府でまとめられた資料で、厚生労働省に見解を求められましても、コメントがしづらいところです。ただ、私どもとしましては、こういうお話があるということをこの審議会に提出し、扱いについては審議会で御議論いただきたいと思っております。
○青木オブザーバー 教えていただきたいのですが、派遣制度が規制として行われる以上、政府全体としての規制の在り方の問題として議論されることはやむを得ないし、それが政府の方針であれば、考えを考慮して検討すべきではないかと思っているのですが、今回のこの意見に関して何ら影響を受けないということで本当によろしいのでしょうか。私としては重要な意見であると考えていたのですが、これは違うのでしょうか。
○鎌田部会長 誰に対する御質問でしょうか。
○青木オブザーバー 誰に対して言えばいいのか分かりませんが。
○富田課長 先ほど申し上げましたとおり、影響を受けないと申し上げているつもりはありませんで、この会議の場に提出しております。その扱いについては審議会で御議論いただきたいと申し上げております。
○鎌田部会長 それ以外の点についてでも、どうぞ御発言をいただければと思います。
○大原オブザーバー 先ほど部会長から、本日の論点について、多少前後してセットで議論をしていいということでしたので、私からも、まず常用代替防止という考え方をどう捉えるかというところから、意見を述べさせていただきたいと思います。
 1985年の派遣法制定以来、常用雇用代替の防止を目的として、基本的な枠組みを構成しているということは当然理解をしていますし、そういう考え方を否定するものではないわけですが、私どもとしては、その考え方に基づいて、今、実態的にどういうことが起きているのかという観点から考えたいと思っています。
 今、申し上げたとおり、正社員を中心とした雇用制度、とりわけ派遣先の常用労働者の代替となることを防止するという、その目的を基本的な枠組みとしていることで、結果的には業務そのものに限定があるとか、あるいは業務によって就労期間が異なる、また、職場を基準とした派遣期間の制限があるなど、派遣労働者に対して、ある意味で大変不自然な働き方を強いてしまっているのではないか、そのように我々は考えております。
 常用代替防止という考え方に基づく諸規制は、結果的には派遣労働者の就業機会、あるいはキャリア形成を制約、阻害する面が大きいと言わざるを得ないと考えています。有期雇用者全体が増加しているという雇用社会、あるいは労働市場が大きく変化しているということも踏まえれば、派遣労働といったものを常用代替防止という枠組みの中だけでの議論から一歩進めて、他の労働法規制との調和も図りながら、まずは非常に分かりにくい、複雑だと言われている制度を分かりやすく、明快な派遣制度として、新たな需給調整機能として、位置付けるべきではないか。結論として、常用代替防止という考え方については、見直すべきではないかと考えております。まず、その点を申し上げておきたいと思います。
○石黒委員 今オブザーバーからありました「派遣で働く方々の働き方を常用代替防止という考え方が阻害している」という発言については、余り理解ができません。また、常用代替の防止については、今回いろいろなところで言われているように、「非正規労働者が増えているという実態があるのだから間接雇用である派遣労働に限って常用代替の防止という考え方を維持しようとするのはおかしい」といった意見がありますが、それは根本的に的外れだと思っています。もともと間接雇用である派遣労働については、先ほど新谷委員も申し上げたように、職業安定法第44条の例外として雇用と使用の分離を例外的に認めましょうということで始まったものであります。したがって、間接雇用でない直接雇用の、いわゆるパートなどの非正規労働者が増えたといった現実を追従して「常用代替防止という考え方はもう必要ないのだ」とする御意見については、全く的外れというか、何を考えているのかよく分からないと思っております。したがって、現実追従的に「非正規労働者が増えたのだから常用代替の防止という考え方も必要ないのだ」という意見については、全く理解できないということを、まず初めに申し上げておきたいと思います。
 もう1点です。直接雇用の非正規労働者が増加している実態については、いろいろ課題として私たちも認識しておりますし、政府そのものも非正規の状況を含めて問題があるということから今年4月に施行された労働契約法でも、無期転換、すなわち常用雇用に誘導していくという方針を出されたのだろうと思います。すなわち、基本的には、私たちが考えているように、直接雇用であり無期雇用であるというのが、労働の原則だと考えられているのだろうと思います。これは今日の資料にも出されているEU指令等にもあるように、国際的にもそれが基本であるとされています。こうした中で、常用代替の防止については、派遣法の根幹として今回の見直しにあっても入れていかなければならないもの、堅持していかねばならないものだと思っています。
 さきほど、「常用代替防止は正社員の保護だ」と、また、「非正規が増えたのだから正社員保護のようなものは要らない」と言われたようにも聞こえましたが、常用代替防止は正社員の保護のためのものではありません。今、申し上げたように、基本的にはどういう雇用の在り方を志向していくべきかということを考えたときに、間接雇用は例外であるので直接雇用かつ期間の定めのない雇用を志向していくべきだというのであれば、当然派遣法の根底として常用代替の防止という考え方を入れておくべきだと思っております。
 「派遣労働者の保護と常用代替の防止が整合しない、相反するものだ」という意見についても、常用代替の防止を図りながら派遣労働者の中で無期雇用や直接雇用に誘導したり、若しくは均等待遇、これは「均衡」というのは国際的には全くスタンダードではありませんので「均等」処遇だと申し上げますが、こうした派遣労働者の保護を同時に行っていくことは可能だと思っております。常用代替の防止ということが今の派遣労働者の保護と全く相反するものではないと考えています。そうした観点からも、常用代替の防止は堅持していくべきと考えています。
○高橋委員 私も常用代替防止の考え方について、意見を申し上げます。今回の研究会報告書においては、常用代替防止について検討された結果どうなのか、ということについて書かれていないように見受けられました。常用代替防止の考え方自体は維持するという前提の下での報告書のように、私は読ませていただきました。
 先ほどの資料の中で、「諸外国の労働者派遣制度の概要」があります。個人的には、ほかの国の制度がどうだから日本もどうだという、analogyをすぐに当てはめることには否定的なのですが、改めてこの資料を見ても、常用代替防止を掲げている法制を採っているのは、ここに載せられている国の中では日本だけです。日本だけが、常用代替防止原則の下に、派遣先の業務の種類によって、受入れ期間の上限を設定しているという特異な法制を採り続けているということについては、留意をしていく必要があろうと思っています。
 その上で、労働契約法の改正がなされました。第18条によって、5年を超える契約更新をした場合には、無期転換権が付与されるという、新しい法律も施行されたところです。当然ながら、この労働契約法は派遣労働者に対しても、適用されます。
 そうした中で、この常用代替防止というものを派遣法においてのみ持ち続けることについては、廃止も含めた抜本的な見直し議論が必要なのではないかと思っております。
○新谷委員 今、高橋委員から「諸外国においては常用代替防止の考え方がないのではないか」という理解が示されたのですが、私はそのようには思っておりません。資料の23ページにもありますように、もともと派遣労働者の定義については、ヨーロッパ諸国では「臨時的な労働に限る」ということが規定されています。また、フランスにおいては、派遣を受け入れるに際して派遣が許可される理由が限定的に規定されていて、それはベルギーでも同じです。こうした規定が常用代替防止を表すものでなくて一体何であるのか、というように考えています。
 それは言葉の定義の問題ではありますが、いずれにしても、あるべき雇用の姿は、雇用と使用が分離しているような派遣労働のような例外的な働き方ではなく、そうした働き方は広く普及させてはならないという枠組みが、各国ともに入っているわけです。これらをもって諸外国でも常用代替防止が図られているとみなすべきだと私は理解しています。
 その上で質問です。資料1の「論点」の(1)の(1)ですが、「パート、契約社員等、非正規が増え続けているといった近年の労働市場の変化を踏まえるべきではないか」と、事務局から論点が示されているのですが、これは何を意図しているのかがよく分かりません。「契約社員のような非正規労働者が増えているから派遣が増えてもいいではないか」という観点から論点を示されているのでしょうか。2010年以降、樋口先生が座長を務められた雇用政策研究会、あるいは厚生労働省でおまとめになった「望ましい働き方ビジョン」であるとかいった場で、非正規対策をそれぞれ打ってこられたわけですが、労働市場政策として非正規労働の扱いをどのように捉えているのか、こうした背景について、もう少し説明していただければと思います。
○富田課長 論点(案)の中身については、実際に世の中で御指摘があるということを踏まえて、審議会としてもこういった御意見に対して対応を考えていく必要があるのではないかということで、あげさせていただいております。
 具体的に申し上げますと、規制改革会議の意見書の中にも、こういう状況があるので、常用代替をなくすべきではないかという御意見があります。一方で有識者の先生方がまとめられた研究会報告については、こういった状況があるので、派遣先の常用代替だけではなく、労働市場全体を見据えた常用代替という考え方も必要ではないかという御意見があります。そこで、例えば、研究会報告の中では、無期雇用を増やしていくという政策的な判断が必要ではないかということが書かれていると認識しております。
 したがいまして、私どもとしましては、このような指摘があることを踏まえて御議論いただきたいと考えております。御意見の相違が労使双方であるのは重々承知しておりますが、世の中にこういう意見があることを踏まえて、御議論いただきたいという趣旨で入れております。
○新谷委員 分かりました。規制改革会議では「既に職場には4割近くの非正規が入っているのだから、常用代替防止の考え方は採るべきでない」という論理を展開されているわけですが、それに決して乗ってはいないのだという理解でよろしいのでしょうか。
○富田課長 あくまでも、世の中にそういう意見があるということを踏まえて、論点(案)の3行目にありますとおり、常用代替防止の考え方を維持すべきかどうかということについて、御議論いただきたいと考えております。
○新谷委員 その上で、(2)に「多様な派遣労働者の実情に十分に即していないのではないか」ということが論点として書かれています。確かに自分の希望する時間帯などに働けるという理由で派遣を選んでいる労働者がおられるというのも事実でありますし、そういうニーズもあると思っております。ただ、「多様な働き方」というのと、「多様な雇用形態」というのが、なぜ結びついてしまうのかという点がよく分からないのです。
 「多様な働き方」を目指すというのであれば、正規の中でそういう多様な働き方を準備すべきである、すなわち、正規の中で多様性を準備するというのが政策として求められるのではないかと思います。なぜ働き方の多様性を求めようとするときに、雇用が不安定で処遇も下がってしまうようなものを容認してしまうのかが、私たちには理解できないところです。今は、正規においてこそ多様な働き方が求められているのではないかと感じましたので、一言申し上げておきたいと思います。
○青木オブザーバー 先ほどからのお話を聞いていて、直接雇用原則などの派遣法はその例外のような中身があったかと思います。私の理解としては、間接雇用と直接雇用のどちらが原則だとか、法的にどちらが上というのはないと理解しているのですが、どちらが望ましい働き方かを考えるときは、雇用の安定が図られているかと、適正な労働条件が確保されているかという視点で判断するべきだと思っております。
 それと、最初のほうになるのですが、新谷委員の発言で、「制定以来、臨時的、一時的な雇用が派遣法の中に入っていた」というような発言がありましたが、これは確認なのですが、臨時的、一時的な位置付けというのは、平成11年のネガティブリスト化された際にそのような位置付けがされたものであって、制定以来、臨時的、一時的な労働力需給調整制度ということではないです。つまり、派遣契約で定められる派遣契約について、制限はあったものの、派遣受入れ期間に制限はなく、臨時的、一時的な労働需要の対応のために定められたものではないですよね。それは確認なのですが。
 その上で、常用代替防止の考え方も含め、当協会の考え方を述べさせていただきます。社会の安定のためには、安定雇用が望ましい反面、常用代替防止の、派遣だけの常用代替防止の考え方も問題だと思っています。特に現在においては、労働移動を促進することも重要な政策課題であり、同じ雇用主に継続して雇用されるだけではなく、失業なき労働移動によって雇用の安定を図ることも重要だと考えています。
 現在の常用代替防止の考え方は、派遣先の常用労働者との代替を防ぐことのみに着目していて、日本の労働市場の中で派遣労働をどう評価し、位置付けていくかという視点に欠けていて、派遣労働者の保護や雇用の安定の考え方が必要だと思っています。
 先ほどから数字の話も少しありましたが、特に非正規労働者が全労働者の4割近くを占めて、パート・アルバイト・契約社員など派遣以外だけで3分の1となるなど、大きく状況が変化して、その中で今日データも出ましたが、派遣労働者は非正規労働者全体の5%、労働者全体の1.7%にすぎず、正規労働者を代替する要因としては極めて小さいという事実を直視して対応すべきだと考えています。
 また、先ほど多様な派遣労働者の話が出ましたが、働く若者においては、人生の価値観の多様化、女性の社会進出、定年退職後の再雇用者の増加、ワーク・ライフ・バランスなどにより、有期雇用のほうが都合がよい労働者が増加している事実を直視して対応すべきであって、もう1つ重要なこととして、派遣労働者の賃金が、一般に契約社員やパート・アルバイトなどと比較して高い水準にあることを踏まえた検討も必要だと思っています。
○新谷委員 派遣法が制定されたときの論議を振り返ると、1985年に高梨先生が座長でずっと研究会をやられて、その後この資料にもありますように中央職業安定審議会で報告書が取りまとめられて制定されたということです。
 確かに派遣が臨時、一時的なものであるというのは1999年改正の際、それまで26業務に限られていた派遣対象業務について、5つの禁止業務を除いて全てが解禁され、ポジからネガに入れ換わったときということであり、たしかに明文の規定として入ってきたのは1999年改正でありました。
 ただ、派遣法の制定以来、これは労働者供給の形態として戦後ずっと禁止をされてきたものが職業安定法第44条の例外規定として初めて規定されたわけですが、そのとき以来、派遣というのは通常の労働ではないということは派遣法の中に脈々と伝えられている考え方であります。たしかに明文の規定として入ったのは1999年からですが、それ以降ずっと、派遣は臨時的なものであるという考え方は変わっていないと思っております。
 それと、今、賃金が高いというお話がありました。これもデータの取り方がよく分からないのですが、先ほどの参考資料で配られているものについて、1ページは明らかに対象が違うことから参考にならないと思います。手当・賞与を含む賃金が派遣には入っていて、正社員・正職員についてはそれが入っていないということですから、明らかに対象が違うのです。賃金のデータの(1)については、審議会の資料として出すのは相応しくないのではないかと思っています。仮に出されるのであれば、2ページの(2)のほうが、より実態に近いと思います。要するに、条件がそろっているということですので、比較するのであれば、(2)を使うべきであると思っています。
 今回、私どものほうで資料4を提出しています。これは一部加工していますが、全て厚生労働省から発表されているデータ、あるいは報告書の中のものを貼り付けたものです。
 資料4の1ページにあるのは、先ほどの資料は年度別の平均額の推移ですが、これは2010年の厚生労働省に設置されておりました雇用政策研究会の資料です。それを貼り付けて「連合作成」と書いていますが、連合で付け加えたのは、派遣労働者の所の赤い丸を付けた部分だけでありまして、それ以外は元のデータを貼り付けただけです。
 これを見ていただきますと、賃金基本構造調査、賃金センサスのデータを使われたようですが、派遣労働者と全労働者、正社員の年齢別での賃金を比較しております。平均値だけで見るとよく分からないと思いますが、今日論議になっている常用代替防止を考えるに際して、派遣先の長期雇用システムのもとにある労働者との置き換えが起こらないということを考えたときに、派遣労働者の賃金プロットがどうなっているかという点については、一目瞭然です。すなわち、ほとんど派遣労働者については年齢による賃金の変化はありません。これは勤続期間が短いからなのか、その原因分析はできておりませんが、ほとんど全年代にわたって年収の変化が見られないというのが実態です。
 次のページは、これも厚生労働省から出されているデータです。先の派遣の研究会でも出ていた資料ですし、この前の本部会でも示されたデータでありますが、これを私どもでグラフ化したものが2枚目の資料です。赤い所が無期雇用派遣、青い所が有期雇用派遣です。4,000件のインターネット調査のデータを厚生労働省で採られたという部分です。これで派遣労働者の年収分布を見ますと、有期であろうが無期であろうが、年収は全く変わらないのです。300万円未満を合計すると、ともに77%ぐらいになっております。無期雇用派遣だから処遇が高いということは、ここからは全然見て取れません。先ほどの年齢別の分布で見たときに、もう少し違うデータが出るのかと思って見てみたわけですが、有期雇用派遣であれ、無期雇用派遣であれ、全く変化がないということです。
 したがって、研究会報告の中で常用代替防止の適用を外すといわれていた無期雇用派遣については、雇用の安定が確保されていないということだけでなく、処遇についても低いままに置かれている現状があるということを直視すべきだと思っています。
 最後の所は、これも厚生労働省で出されている事業報告書のデータです。「M」と書いているのは、我々が追加したマージン率なのですが、これも研究会報告で出されていた資料にマージン率を追加して加工したという資料です。1か所誤植がありまして、上の囲みのリード文の所で「派遣元から派遣先に」とありますが逆でして、「派遣先から派遣元に支払われる派遣料金の変動に伴い」というのが正当です。
 これを見ますと、特定労働者派遣事業において顕著ですが、まさに外部労働市場の影響を受けるということで、派遣料金が下がるに従ってマージン率はほとんど変わらない中で賃金はそれに伴ってどんどんと下がっていっていることが分かります。特に、平成16年から平成19年を見たときに、約1万6,000円から1万3,000円に2割も賃金が下がったという状況が見て取れるわけです。均等待遇原則は入っていないものですから、正社員の賃金はこんなに下がっていないはずなのですが、派遣労働者の賃金についてはこのように大変な影響を受けてしまうところに何とか歯止めを掛けなければいけないのではないかと思っております。したがって、派遣の方々の賃金が高いという主張は、私どもとしては理解できないということを申し上げておきたいと思います。
○鎌田部会長 時間も大分押しておりますので、常用代替防止に関わる一般的な御議論をお聞きした上で、具体的に常用代替防止の現行制度においては実現する制度として、26業務の区分の問題、専門業務以外については、受入期間の限定と現行制度では制度化しているわけですが、この26業務という区分に基づく規制の在り方について、やや具体的な問題となりますが、御意見を頂ければと思います。
○小林委員 26業務の問題というのは、期間制限の問題とも関わると思うのです。下の「派遣期間制限をはじめとする今後の常用代替」のポジショニングの所にも関わると思うのですが、期間制限が26業務にはないわけです。26業務には、専門性のあるもの、雇用管理の難しいもの、その他もありますが、26業務を研究会報告等では全て廃止ということも眼中にあるようなのです。私は全てを廃止するというのは短絡的ではないかと思っています。
 実際に、いろいろな指摘があって、時代の流れの中で26業務で事務のものもあれば、専門的なものもかなりありますが、事務的なものの範囲というのは、「データ入力ができる」というのを1つ取ってみれば、「ワード・プロセッサーを使用して」という当時の書き方をしているものもありますが、当時はワープロはほとんどなかった時代、過去、派遣の26業務を選定するときに、ワープロが普及し始めてきたときで、特殊な扱いになっていたのでしょうね。今は、誰でもパソコン操作はできるということで、ワードプロセッサー機能というのはパソコンの中にあって、こういう文書を作るのもあるわけですが、これが専門的な業務かというのは、変わっている部分は確かにあると思います。
 ですから、見直す部分というのは必要だと思います。この中で専門性があるものというのを捉えるのは必要だと思いますが、全て廃止というのはいかがなものかとは思っています。
 先立って、この部会で加えられた、例えば下水道の管理、ああいうオペレーターの方々というのは、特殊な専門機器を扱う業界で、それに長けた方しか操作できないわけです。それも期間制限を加えることとなってしまうと、また問題になるという側面は多分あるのだと思うので、この部分については、業務についての見直しは当然必要だと思うのですが、全て廃止という形で期間制限を掛けることになると、それは短絡的ではないか、もう少し慎重に議論する必要があるのだと私は思います。
○新谷委員 私どもとしても、今、小林委員がおっしゃったことと同じ思いです。26業務という業務区分を設ける際の業務とは、専門職としての業務であって、独自の労働市場を形成している業務であるというのが従来から考えられてきた内容だと思います。したがって、常用代替防止という観点にたって派遣先の労働者との関係についても整理することができてきたというように思っております。
 そういった意味でいくと、1985年に派遣法ができた際には13業務から始まった業務区分ですが、それがだんだんと変化をしながら26業務になってきたわけですが、その中身についてはもう一度精査をしなければいけないと思っております。小林委員がおっしゃっていたように、私が社会人になって職場に入った頃に、ワードプロセッサーというのが職場に入ってきました。それで大きな8インチのフロッピーを用いてバチバチやっていたのですが、それも課とか部に1台しかなく、その機械を扱える方というのは、やはり本当に専門職でした。専門職の方が養成されて、タイピストの方が転職して来られていたのです。
 しかし、ただ今おっしゃったように、26業務の中には今日的に見れば本当に専門職とするのが妥当と言えるのかといった業務が幾つかありますので、真に高度な専門職であるのか否かという今日的な観点からの見直しを行う中で、この業務区分による期間制限という枠組みは維持するべきであると考えております。
○大原オブザーバー 26業務区分の問題につきまして、私どもは撤廃も含めて見直すべきではないかという意見を持っております。その点について、専門性の観点と、業務範囲と派遣労働者のキャリア形成の観点という2つの視点から意見を述べたいと思います。
 まず、専門性の観点ですが、今程御意見が出ているとおり、確かに業務の専門性といったものについては、例えば国際的な競争環境の変化、あるいは技術の革新、ITの進化、様々な要因によって時代とともに変化を続けている。これは皆さんお感じになっているはずだと思っています。加えて、世の中にあるいろいろな業界、業種、仕事、さらにはそれぞれの企業活動、それらの各々において求められている専門性や種類、あるいはレベル、これは極めて千差万別だと理解をしています。
 したがって、こういう業務の状況の中、これを網羅的に捉えて、専門性の有無をもって派遣業務として可否を決めていく、それを決定し、管理していくということは、極めて難しいのではないかと、基本的に考えています。
 次に、現在26業務について、業務の限定がなされていることと、派遣労働者のキャリア形成の観点です。今日、企業活動においていかに生産性を向上すべきかということは、極めて重要な課題です。したがって、こうした観点から個々の労働者の業務は単一的なものではないわけです。そのときどきの事情に応じて、主業務を中心にして周辺業務への対応もしながら遂行されている、これが日々の業務の現場ではないかと思っています。さらには、チーム業務、あるいは職場における円滑な人間関係を保つという観点から、業務の相互協力といったことも欠かせないと理解をしています。
 一方で派遣はどうかといえば、いわゆる26業務については、業務範囲そのものが極めて厳格に限定されている、しかもその主業務が時間にして9割以上という規定が付いているわけです。その結果、業務の変化、あるいは業務の繁閑にフレキシブルに対応することが極めて難しい状況、あるいは職場における調和が図りにくいといった意見も寄せられています。常に、主業務9割を測定することが求められる、これまた極めて不自然な働き方と言わざるを得ないと考えています。さらに、26業務と自由化業務に跨っている問題があります。付随的業務、その他業務の取扱いといったものが、期間制限の相違とあいまって、大変分かりづらい仕組みになっているということです。
 結果として、業務が限定されていることによって、派遣労働者にとっては担当業務以外の知見、経験を十分に広げることがなかなかできない、キャリア形成に必要な経験、スキル向上の妨げとなっているのではないかと考えています。
 現実的には、業務区分のしばりの中で、期間制限を意識しながら業務を決めていくよりも、派遣先の要望、派遣労働者の意欲、能力に応じて、職場実態に合った業務内容を定義していくことのほうが、理にかなっていると思っています。
 こうした業務の専門性の有無をどう判断するか、あるいはキャリア形成の課題を踏まえれば、26業務区分は撤廃も含めて見直しをして、業務による期間制限の相違をなくしたほうが、派遣労働者のキャリア形成、能力開発あるいは保護につながっていくのではないかと考えています。
 最後に、今、私どもは26業務区分は撤廃ということを申し上げているわけですが、これはあくまでも次に議論される期間制限の在り方とセットで考えているわけです。つまり、例えば研究会報告で提案されている個人レベル、派遣先レベルの期間制限の在り方が、例えば規制色の強い仕組みになっていくとするならば、現在26業務で期間制限を受けない派遣労働者の雇用に大変大きな影響を及ぼす、あるいは派遣先の事業活動に影響を及ぼすということを勘案すれば、結果として派遣就労の機会そのものが減少していくような仕組みになっていくとするならば、そこまでして26業務全体の撤廃を求めているわけではない。あくまでも、セットでの議論であるということは申し上げておきたいと思います。
○青木オブザーバー 先ほどから皆さんのお話を聞いていると、26業務が専門的な業務だけの話のように捉えられているので、きちんと整理しておきたいと思います。今日お配りされた資料の2ページに、26業務の指定基準に対して、「その業務に従事する労働者について、就業形態、雇用形態等の特殊性により、特別の雇用管理を行う必要があると認められた業務」と規定されていて、専門性のない業務も含まれています。したがって、先ほどから皆さん「専門26業務」「26業務は専門が」という表現ばかり使っていますが、これ自体が不適切ではないかと考えているのが1点です。
 加えて、昭和59年11月17日に出された当時の審議会の小委員会、当時高木先生が座長でしたが、その報告書の「労働者派遣事業問題についての立法化の構想」によれば、いわゆる専門家とされる業務についても、「当該業務を迅速かつ的確に処理するためには、単純労働者以外の専門的知識や経験を有する者に行わせる必要のある業務」とした上で、その中で「当該業務を処理する事業所において、その直接指揮の下に行わせることとする必要のある業務」と記載していて、単純労働者以外の業務を想定したものであって、高度に専門的な業務を想定したものではないです。このような立法の趣旨からすれば、高度に専門的な業務か否かという観点から業務を見直すことにはならないと私は考えています。
 当協会の意見としましては、26業務に関しては、専門的な知識等や特別な雇用管理が必要な業務という判断が、先ほどから皆さんがおっしゃるとおり時代状況によって大きく変わること、常用代替のおそれの有無を判断する際の基準にすることはすごく難しいと思っていますので、現行制度の26業務への派遣については、業務の範囲に厳しい制約があり、26業務に該当するか否かの問題のほか、付随業務に該当するか否かの問題もあるので、そのことから派遣労働者の仕事の広がり、向上を阻害していると理解しています。また、先ほどからありますが、境界線上の問題についても分かりにくいし、判断が難しいという問題もあるので、そのため26業務という区分自体を廃止して、派遣期間制限については、私たちの業界団体としては、業務単位から人単位に変更すべきではないかと考えています。そのほうが国会の附帯決議にもありますように、派遣労働者や派遣元、派遣先企業にも分かりやすい制度となるのではないかと思っています。
○高橋委員 本日御提出いただいた資料2の4ページから、各年の「業務別・雇用形態派遣労働者数の内訳」が出されております。引用させていただきますと、4ページの平成20年6月1日現在では、製造業務を見ると、56万人、翌年は25万人となっており、これはリーマン・ショックの大きな影響を受けたことによるものと思われます。その後は、24万人、26万人と、雇用者数はほぼ安定しています。
 また、「上記以外の業務」を見てみますと、平成20年は47万人、その後42万人、46万人、47万人と、これもかなり安定的に推移しています。
 ところが、専門26業務、青木オブザーバーが指摘した通り、なぜ「専門26業務」という表現になっているのか、この資料は是非訂正していただきたいのですが、いわゆる26業務を見ると、平成20年の100万人から翌年には90万人まで減少し、その後は75万人、64万人と、大幅に減少しています。
 かねてから新谷委員が御指摘されているように、製造業務派遣において、大きく労働者数が減少した、確かに56万人から25万人となっており、31万人減少しています。
 他方で、いわゆる26業務については、100万人をピークに、実に36万人減少していまして、製造業務派遣以上に労働者数が減少しています。とりわけ顕著なところでは、平成22年に15万人、平成23年に11万人と、大幅な減少が見られています。
 この減少は明らかに、いわゆる専門26業務適正化プランの影響が非常に大きいと言わざるを得ないと思っております。すなわち、制度そのものは何も変わっていないのに、ある日突然、厚生労働省の解釈が一方的に変更され、厳しく労働局で指導された結果として、このような実態があったということを、十分検証していく必要があろうと私は思っていますし、いわゆる専門26業務適正化プランなるものが一体どのようなもので、どのような結果や、効果をもたらしたのかという検証を、是非この労働政策審議会需給制度部会の場で行いたいと思っていますので、関連の資料を是非御提出いただきたいと思います。
 26業務の分かりにくさだけではなく、ここに代表されるような行政の在り方が分かりにくいということが、非常に大きな問題だろうと思っております。そこも含めて、議論、検討していくことが必要なのではないかと思っています。
 それから、先ほど大原オブザーバーが御指摘された専門性の担保については、一般論としては御指摘のとおりだと思っておりますが、他方で、この労働力需給制度部会は許可諮問案件があり、我々委員が毎月厚生労働省にやって参ります。一般論としては、何が専門的なのかどうかということを担保するのは極めて難しいのですが、先程小林委員が御指摘された通り、平成24年10月には2業務が追加されました。
 その際は、公労使の三者が一致して、これこそ政令の定める業務として指定すべきだという意見の一致を見たわけでありまして、そういう機動的な対応が担保される仕組みになっていますので、一概に一般論だけで専門性は担保できないというのは、個人的には違和感があります。
○青木オブザーバー 先ほどのデータの話に付け加えたいと思います。高橋委員からお話がありました、資料の18、19ページに掛かっている話なのですが、このデータを見ると、派遣労働者のみを常用代替防止の対象としても、正規労働者が増えるわけではなく、その意味で逆に派遣労働者が代替するのは正規労働ではなく、他の非正規労働だと考えられると思うのですね。それは、なぜかというと、先ほど話に出ました適正化プラン。これ自体は問題があると思うのですが、その結果、労働力調査の集計結果で、平成21年から24年に掛けて、派遣労働者全体で18万人減っているにも関わらず、非正規労働者全体では86万人増えているのですね。つまり、派遣労働者だけが18万人減りながら、派遣労働者以外の非正規労働者は、104万人増えているのです。派遣労働者のみを常用代替防止の対象としても、正規労働者が増えるわけではないことは、この大きな流れの数字で御理解いただけるかと思うのですね。以上です。
○小林委員 先ほど、高橋委員が触れた適正化プランについて述べたいと思います。私どもの団体にも、厚労省から要請されて、傘下に適正化プランについては連絡はしたところです。当時を振り返ってみますと、結構中小企業でも派遣先となっている企業がありまして、そこから幾つか連絡があったのが、26業務の内容、特に事務系で細かく労働局が入られていろいろな指導をなされたようなのですが、地域によって温度差があったようなことを伺っております。指導に入られる労働局の方によって、かなり違いがあり、ものの見方が変わったと。正に、ここに国会の附帯決議に指摘されている、派遣元、派遣先企業にとって分かりやすい制度になっているかどうかという部分でいきますと、行政でも分かりにくくされている部分があり、派遣先、派遣元にとっても分かりにくい仕組みは、現に確かにあるのだと思います。これは、この26業務の見直しに当たって、専門性や労務管理の仕組みの中で今までの仕組みがあるのですが、弾くものは弾くということをしていかなければいけないと思いますので、そのような見地でこの見直しを是非ともやっていただきたいというのが、お願いです。
○清水委員 今、派遣だけが常用代替のものではないのだというお話があったわけですが、しかし決定的に違うのは派遣というのはやはり間接雇用だということですよね。ほかの非正規は、そこの表の中であればパートにしてもアルバイトにしても、嘱託にしてもそうですが、それは直接雇用だということです。ですから、使用者と雇用者が違う派遣というのは、それはそれとして、きちんと正規な規制の対象に置いてやるべきだと、本当に思います。
 それからもう1つ、26業務との関係ですが、これはやはり洗い直しが必要だと思います。例えば、この中で建設の清掃というのが当初から入っておりますが、いわゆる建設現場の中で間接雇用の方々が現場の危険の中に入っていくと。その中での安全性を確保する上でのことですと、ほかにもきちんとした正規の、派遣ではない清掃業者の方々がいらっしゃるわけですから、そこでこの派遣というのがなぜここにあるのかは、私はずっと前から疑問でした。
 それから、今日の資料の中で、労災の件数の割合の問題が出ておりましたが、あれも報告では多少高いというようなことでした。あの表をよく見ていただくと分かるとおり、率でいえば1.5倍ですよ。これは、決して低いということではありません。ですから、そういうことも含めて御議論いただければと思います。
○新谷委員 先ほど使用者側委員から幾つか出された意見について申し上げます。1つは、分かりやすさの追求ですが、これは確かにこの法律自体が業法であって、取締法規としての性格が強い法律ですので、その取り締りの基準が分かりにくいのは確かにあると思うのです。それによって、現場が混乱することはあってはならないことです。そうした観点からは、いわゆる26業務の見直しに際しては分かりやすさをどのように追求するかも考えるべきだと思っています。
 それから、先ほどオブザーバーから「非正規労働者全体で見ると派遣労働者の数は少ないのだから、何でそこに目くじらを立てて常用代替防止を図る必要はないのではないか」という意見があったのですが、それもよく理解できない話です。私どもが申し上げている常用代替防止とは、何も正社員を守れといっているわけではなく、こういった間接雇用、前から申し上げているように雇用が不安定で雇用と使用が分離している、まさしく労働者供給の例外として設けられているような働き方をこれ以上増やしてはならない、というのが私どもの考え方です。「全体で見ると派遣労働者の数は少ないからいいではないか」という論理は、全く成り立たないと思っております。
 それから、今、清水委員が安全管理についておっしゃったのですが、今日もEUの資料を出していただいています。前回の製造業務派遣の議論の際にも申し上げましたが、この26業務の見直しに当たっては、本当にそこに派遣労働者を派遣して大丈夫なのかといった業務の在り方についても、見直しの視点として加えるべきだと思っております。それと、青木オブザーバーから「26業務が専門業務だけであるかのように発言しているではないか」というご意見がありましたが、十分私どもは事情を承知の上で申し上げている次第です。もともと先ほど出ていました1985年にアメリカから業務請負業が入ってきて、同時にその当時入っておりましたビルメンテナンスや駐車場管理といったものについてもどのように処理するかということになった際に、高梨先生が知恵を出されて「特別の雇用管理を要する業務」というカテゴリーを作られてきたという経緯があることは承知をしています。しかし、「専門26業務」という言葉は一般的に通用しているものであって、ずっと専門、専門と言われているものです。たしかに専門業務だけではないというのは承知しておりますので、その上で、いわゆるこの26業務をどうするかも併せて業務の見直しの中で検討していくべきだと思っています。
○青木オブザーバー 労災の件について誤解をしていただきたくないので、説明させてください。まず、このデータをもって、製造派遣だから労働災害が多く危険だという結論を付けるのは、間違っています。それはなぜかというと、建設現場でもそうだと思うのですが、ベテランの方と新人の方では、新人の方のほうが労働災害に遭う確率が高いことは御理解いただけると思うのですね。このデータの左側は、それこそその道40年のベテランの人から、就業経験が短い新人までを含めた製造業に従事する労働者全体の数字なのです。それに対して、右の派遣労働者は、最長3年という制約の中で働いている、比較的製造現場での就業経験が短い新人が多い中での比較データになるのですね。そういった特性を御理解いただきながらデータを比較していただければと思いますし、そうであれば派遣労働だから、異常に労災が多いとは言えないはずだと思っています。
 現に、厚生労働省の安全衛生部の方にお聞きしたときには、派遣だから労働災害が多いことはなく、業務経験が短い人が多いから被災しているとも聞いています。もちろん、私たちはこのままではいいとは思っておりませんし、経験の少ない人は労災になりやすいことを認識して、厚生労働省の方々の指導をいただきながら、できる限りの対策、また企業の意識を高める努力をしていかなければいけないと思っています。
○鎌田部会長 公益委員の方で、今まで常用代替防止、それからいわゆる26業務についての議論は行われておりましたが、発言があればお願いします。よろしいですか。それでは、いわゆる26業務以外の派遣期間の制限で、現在の派遣期間の制限の在り方、それから今後常用代替防止の在り方を含めて、期間制限の在り方をどのように考えていくかについて、御意見があれば伺いたいと思います。
○石黒委員 繰り返し常用代替防止という目的について発言していますが、その観点からは、基本的には今の業務区分に基づく期間制限を維持するべきと思っております。すなわち、先ほど申し上げた26業務について期間制限はいたしませんが、そのほかの業務については業務単位に基づく期間制限を行っていくべきと思っています。先ほど、大原オブザーバーから「職場の中には様々な派遣の方々がいるので、専門性を含めて業務区分による期間制限は撤廃するべきだ」という御意見もありましたが、そのような派遣期間制限がなくなるということは、まさしく無期派遣で常用代替を行おうとすることそのものだと思います。やはり、業務区分に基づいてきちんと期間制限をやっていくべきだと思っています。
 また、「派遣先の労使がチェックする」ということが(2)の論点のところに書かれていますが、これは最初の部会において在り方研究会の報告書について発言した際にも申し上げましたが、どのようなものをイメージして論点として書かれているのか、もし事務局でイメージをお持ちになっているのなら、お聞かせ願いたいと思います。
○富田課長 研究会報告は、有識者の皆様にまとめていただいたものですので、事務局からはなかなかコメントを申し上げるのは不適切ではないかと思っております。ここで労使がチェックする方法を書いているのは、研究会報告にも労使がチェックするというようなことが書かれているためです。また、研究会においては、ドイツにおいて労使でチェックをする仕組みが入っていることも踏まえて、議論されたと承知しております。更に具体的なものについては、今、事務局としてお示しできるものはないと御理解いただければと思います。
○鎌田部会長 研究会の発想ということであれば、一応お二人委員がおられます。法律家としては、竹内委員が参加されていますが、竹内委員の御意見で結構ですので、何か補足があればお願いします。
○竹内(奥野)委員 派遣先の労使の議論によるチェックの方法ですが、これについては,期間制限に関して、現場の労使から見ればどうであるかを検討してもらうものであるともいえると思います。これは、規制を外から一律に掛ける、掛けないという方法ではなく、むしろそれは現場の状況を踏まえて、現場の労使の議論で、判断するというものであり、労使自治の観点からも、支持し得る側面があるとともに、現場の実情を踏まえたものであるという点で、実情に沿う可能性もあるのではないかと思います。
 それから、これは常用代替防止をどう実現するかの話ですので、常用代替防止が前提になっております。ですので、労働力を利用するユーザー側として、使用者が事業運営の中で派遣労働者をどのように利用するかの判断も当然関わってきますが、これとともに、常用代替される対象となる派遣先の常用労働者も参加し得る仕組みになっております。そのような意味でも、現場の意見を反映する仕組みの制度の可能性として、労使の議論というものが1つあるのではないかと、研究会では議論が出てきたものと私は認識をしております。
 他方で、現行でも、労働法の中では、例えば労使委員会のように、労使の議論に利用しうる具体的な制度は、限られた領域においてではありますが、存在するわけですが、あえてそのようなものを特定せずに、労使の会議という形で報告書において述べているのは、必ずしももちろんそのような選択肢は否定するわけではありませんが、この報告書が出たあとにこの審議会の場で具体的な中身について、どのような可能性を取り得るかも含めて、そこは御議論いただきたいとする趣旨であったと思います。ですので、特定の会議体や、労使委員会などが、当然に前提にされているわけではないという議論状況であったという認識をしております。私からは、研究会に参加したということがありますので、私なりの認識の下で、議論状況の紹介とさせていただきます。
○阿部委員 私の議論の大前提としては、これは個人的な意見ですが、安全、安心が可能になる生活をできる雇用を目指すのが、やはり労働政策としては大事だろうと。そういう意味で、直接雇用か間接雇用か、あるいは派遣の問題をどうするかは、私は個人的には自ずと望ましいものはあるだろうとは思っています。さはさりながら、現代の企業経営を見ていますと、臨時的、あるいは早急にこういう仕事をできる人が欲しいというニーズはもちろんあると。その中では、やはり派遣が果たす役割は十分あるだろうと思っています。そういう中で、どの企業がいつも派遣を必要とするか、あるいは一方で全然派遣は必要としないという企業もいろいろとあるだろうと。そういう意味で、その企業がどのように派遣を使う、あるいは正社員を雇う、あるいはパート・アルバイトを雇うというのは、企業の判断で、それは企業が勝手にやればいいと。ただ、そのときに、労使でいろいろな話し合いの場はあってもいいだろうと。その中で、労働側が、いや、そこは派遣ではなくて正社員だとか、パートではなくて正社員だという議論があってもいいだろうと私は理解しています。
 ただ、労働政策を考える上では、全体として労働者の中で余りにも不安定な雇用が増えるのはいかがなものかと考えていくと、労働市場全体、マクロ全体で常用代替防止というような形で考えていくべきではないかと思っています。その意味で、個別企業なり事業所単位で、労使が派遣なり、正社員なり、パートの在り方なりを議論するのは、あってもいいだろうとは思っています。そういうことで、このような派遣先の労使がチェックするという話があるのは、理解いただけるのではないかと思っています。
○石黒委員 見解の背景はよく分かりました。そうなりますと、そうした枠組みを作るところまで、本年の12月までにできるのかどうかという問題があります。先ほどの期間制限の問題に絡めて言えば、もう少し具体的に、派遣先労働組合できちんと意見上申していくという仕組みについてももう少し強化していく必要があるのかなと思っています。
○高橋委員 常用代替防止策の在り方については、そもそも常用代替防止の考え方をどうするのか、についての結論がない中でコメントをするのは、大変難しいと言わざるを得ません。先ほど言い忘れた事項がありまして、常用代替防止に代わるものとして、私は優良な事業者によるオペレーションがなされることが大変重要なのではないかと思っています。需給調整機能そのものの重要性は、決して減じられるものではなく、むしろますます重要になっていると思います。失業なき労働移動の実現という国の政策の基本方針もありますし、また労使双方に多様な働き方に対するニーズがあることを踏まえれば、需給調整機能を強化していく、という極めて重要な視点に基づいて、我々は考えていかなければなりません。その上で、様々な問題が生じていることを踏まえれば、本当に優良な事業者がオペレーションをする派遣労働市場になれば、今あるような問題も相当是正されるのではないかと、個人的には考えております。
 その上で、仮に常用代替防止策の在り方についてコメントいたしますと、常用代替防止の手法として3通り挙げられております。期間制限や派遣先の労使のチェックは、先ほど大原オブザーバーも御指摘されたように、パッケージで見ていかないと、これだけを取り出してコメントすることは難しいと思っております。
 他方で、均等待遇、均衡待遇については、現段階においてもコメントができると思っています。これは、釈迦に説法ですが、我が国における内部労働市場の賃金制度と、先ほど諸外国の制度の比較にあったような国々の賃金制度とは大きく異なる実態があります。そうした中で、均等待遇などを突き詰めていくと、偶然比較的賃金の高い企業に派遣された後に、賃金の低い企業に派遣されたら、派遣労働者の賃金は下げるのかという問題になると思っております。これによって、常用代替防止を講ずるというのは、派遣労働者に対してもよろしくない影響が生じ得ると考えます。常用代替防止の手法の在り方としては、期間制限の見直しや、派遣先の労使のチェックを勘案するといったことが考えられるのではないかと思います。
○新谷委員 高橋委員が言われるように、パッケージで考えるというご意見もよく分かります。しかし、今回、人単位で期間制限を設けるということが研究会報告で提案されている中で「労使のチェック」というものが入ってきているものですから、それについてはなかなかコメントしづらいところがあります。ただ、この「派遣先の労使のチェック」というのは、現行の法律でも、自由化業務における原則1年を超えて最長3年まで延長する際の労使のチェックという形で存在しているわけですので、まずはそうした現状の評価をしないとなかなか論議はしにくいのではないかと思っています。
 「労使の会議」といったときの集団的労使関係にかかる枠組みとしては、今は労働組合と過半数代表と労使委員会という3つの枠組みがあるわけですが、現在の過半数代表者の選出の在り方については、先日のJILPTの研究会報告においてもかなり問題があるとの指摘がなされていました。しかも、残念ながら組織率は18%を切っている状況ですから、労働組合のチェックが掛からないところが大半でありまして、かつ労使委員会もそんなに設置されておりませんので、ほとんどの事業所では過半数代表者が単独で判断しているという実態にあるわけです。現実的に「労使のチェック」といっても、現在ですら多分にチェックができていないのが実態ではないかと思っていますので、新しい枠組みを考える前に現在の運用が一体どうなのかといったようなところも、今後資料があれば出していただいて、論議してまいりたいと思っております。
 それから、均等待遇の件で、今、高橋委員から「均等待遇を導入すると同じ派遣元であるのに派遣先によって処遇が変わることになるではないか」という御指摘がありました。それは研究会報告でも書かれていまして、そういった派遣元での労働者間の不公平感をどう見るのかといった指摘がありました。こうした意見については理解できないところです。先ほどお示ししましたように、マクロのデータとして賃金構造基本調査のデータを見ていただければお分かりになるように、明らかに派遣労働者と通常の労働者の間には賃金の格差があるわけです。そうした現実を前にして、それを改善する方策として、私どもは均等待遇原則を入れてはどうかと言っているわけでありまして、「派遣元での不公平感」といった懸念に対しては法目的として一体何を追求するつもりであるのかと申し上げたい。処遇格差の解消こそ、あるべき姿として追求されるべきであるにもかかわらず、「それをしようとすると派遣元で不公平になってしまうからそれを入れない」というのであれば、木を見て森を見ずといった感があると、私は思っております。
○鎌田部会長 ほかに御意見はありますか。
○大原オブザーバー 派遣期間の在り方です。先ほど、労働側委員より、現行の業務単位による派遣期間制限は維持すべきだという御意見がありました。それについて、私どもとしては、先ほどの26業務の見直しと重複する話ですが、現在の業務単位の期間制限においては、御案内のとおり、派遣の受入期間制限ですので、一定期間の中においてそこで就労する派遣個々の派遣労働者の就労期間は、全く関係がない、あくまでも受入期間だけでその就労期間が決まってくると。したがって、例えば複数の派遣労働者の方がいる場合に、最長3年の中で、3年働ける方もいれば、1年あるいは半年しか働けないといったような様々なことが起きるわけです。
 先程来言っているとおり、派遣労働者の方々の人材育成、キャリア形成をいかに実りあるものにしていくかという観点からすれば、その就労機会をうまく捉えて、基本的には派遣期間制限を業務から人に改めて、誰もがある一定期間は同一派遣先、同一就業先で継続的に仕事をすることができるようにしたほうが、派遣労働者の方々のキャリア形成につながっていくのではないかと考えております。
 したがって、私どもとしては、この現行の業務単位による期間制限から、人単位への期間制限に整理をすることで、これはある意味より分かりやすい制度にもつながってきますし、ある一定期間を、私どもは目安としては3年と考えております。例えば、この3年という区切りをもって、個々の派遣労働者の方々が次のキャリアを考えていく上での区切りとしていくと。そういう意味で、私は期間制限を人単位として、その期間ごとに派遣労働者の方々の次のキャリアを考えていく。派遣を続けることを望む方、それから直接雇用を望む方、それぞれ必要なサポートをしていくということです。
 いずれにしても、先ほどの26業務の問題と、この業務ごとの期間制限の問題があいまって、大変分かりにくいということが労使双方から提起されているわけです。そういう意味では、この業務単位の期間制限を人単位に改めるべきではないかと考えております。
○新谷委員 今、大原オブザーバーから発言がありました。オブザーバーの方がたくさん喋られる上に、直接の利害関係者である派遣元事業主の方が派遣労働者のためにとおっしゃられている点もよく分かりません。さて、先ほどの発言の中で、業務単位で期間制限があるから「後任の人は半年といった残りの期間だけの派遣になってしまい、それで雇用が不安定になる」とおっしゃったのですが、今日論議している常用代替防止や期間制限という事項に関しては、やはり労働市場政策の中でなぜ例外的に派遣という業態が認められ派遣会社が事業を営んでいるのか、ということの意味をもう一度考える必要があると思っているのです。
 前回の部会でも我々が需給調整機能を営んでいるのだとオブザーバーの方はおっしゃっていたのですが、このように例外として認められているに過ぎない派遣の中で需給調整機能というものをどのようにお考えになっているのか、オブザーバーお二人にお聞きしたいと思います。
○大原オブザーバー 派遣就労については、雇用と使用の分離という特殊な働き方であり、これを間接雇用というような新しい呼び方で呼ばれています。そして、この間接雇用故に問題がある、また不安定雇用であるという指摘がなされているわけです。
 私どもは、従来から申し上げているとおり、派遣の機能については、まず第1に労働市場への橋渡し機能が極めて重要だと認識をしております。働こうとする人が多様な選択肢、正社員、パート・アルバイト、あるいは派遣という選択肢から、どのような形でエントリーをしていくかという中で、私ども派遣会社、特に一般登録型派遣会社が果たしている役割は大きいと考えています。正しく、需給調整機能、マッチングの機能について、我々は他の入職経路よりも優位性を持っていると考えております。そういう意味では、一旦労働市場に参画をしていただき、そして、その後のその方のキャリア形成や継続就業がどうあるべきかは、先ほどの繰り返しになりますが、御本人の希望に応じて、それぞれの支援をしていく仕組みを構築しているということを申し上げているわけです。様々な需給調整機能、派遣制度のメリットはあるわけですが、まずそれが極めて重要だと認識をしております。
○青木オブザーバー 同じなのですが、雇用主としての責任をきちんと果たしながら、今の話になります。それと、もちろん派遣労働者保護と雇用の安定と、派遣法の目的に書いてあることを基本として活動しています。
○新谷委員 ありがとうございます。今、お二人から需給調整機能についてのお話をいただいたわけです。やはり、労働市場政策の中でこの派遣というものが例外的に認められていくための有意義な目的を押さえなければいけないと思っています。特に、登録型派遣について、「派遣期間制限の残りの期間が過ぎてしまえば雇用がなくなるという話があり、それゆえ雇用が不安定になるので期間制限を撤廃すべき」という論議があったのですが、派遣が認められている所以である需給調整機能というのは、単なるマッチング機能を意味するだけではないと思っているのです。そうであるなら、職業紹介と同じになります。なぜ派遣が派遣として認められているのかと言えば、短期雇用であってもそれをずっと結合してつないでいくという需給調整機能をしっかりと果たすことが期待されているがゆえであります。半年で派遣期間が満了したのであればその次には違う派遣先を必ず用意していくというのが派遣元が果たすべき需給調整機能であるはずなのに、期間がきたからもう雇用が終わりなのですと言われるのであれば、まさしく登録型派遣のビジネスが典型的な雇用の不安定さを抱えているということを自ら認められたことと同じだと思うのです。やはり、この派遣が認められるためには、短期の雇用をつないでいくための雇用の場を開拓・確保していくことが派遣元としての責任だと思います。実はそういう御意見を本当はお聞きしたかったのですが、期間が到来すれば雇用も終わりというのであれば、単なる職業紹介と同じであり、何も変わりがないと思います。
○大原オブザーバー オブザーバーは発言が多いと御指摘をいただきましたが、今の発言ですが、需給調整機能を短い時間で一言で申し上げるということで、代表的な事例を申し上げただけです。確かに、職業紹介と我々が違うところは、就労期間中の雇用責任、派遣労働者に対するフォローアップは極めて重要であるのは当然です。就業環境の問題を改善していく、あるいは本人の就労の継続性といったものについて派遣先と交渉をしていくと。おっしゃったとおり、派遣期間が終了したときに雇用契約が終了するという仕組みについていえば、私どもに登録をいただいた大切なスタッフの方々を、いかにリテンションを図るか、つまりその派遣会社の中で次の仕事を御紹介していくか、これは事業上も、御本人にとっても、両者にとって極めて重要な課題です。そういう意味では、当然のことながら我々は日々のオペレーションの中で派遣期間が終了し、雇用契約が終了したときに、御本人の就労希望に応じて、新しい派遣先の就業や紹介予定派遣に切り替えていくことは、日常的な業務として当然対応をしておりますし、そういった事柄は今後も大変重要な役割だと認識をしておりますので、一応申し上げておきます。
○新谷委員 力強い決意をおっしゃっていただきました。期間制限が到来する半年が経ったからと言って雇用が不安定になるということではないということでした。おっしゃるように「自分たちはずっと雇用を継続するのだ」ということであれば、逆に期間制限が到来しても全く問題ないのではないかと思います。きちんと短期の労働をつないでいって雇用は守るということで、そうした需給調整機能を市場の中で有意義なものとしてビジネスを営んでいただければ結構ではないかと思います。何も、私どもは派遣そのもの、あるいは派遣労働者そのものを否定するわけではありません。本来あるべき労働市場政策の中での派遣事業としての存在意義を改めて問い直していただきたいと思っている次第です。
○鎌田部会長 公益委員の方から、何か御発言はありますか。
○新谷委員 高橋委員の御発言に関連するところなのですが、先ほど高橋委員が優良事業者によるオペレーションを行うべきであり、その考え方を採り入れるべきだというのは、私どもも全く同じ思いです。前回論議したときに特定労働者派遣事業の許可の在り方について、今の届出制を許可制にするのかどうかというご発言があり、我々もよく考えてみました。改めて、この優良事業者による事業運営を確保するために事業者をふるいに掛けていく、そのときの入口の規制の在り方として届出制から許可制にすべきであるというのは、私どもも考えるところです。
 ただ、高橋委員から、一般労働者派遣事業の許可と特定労働者派遣事業の許可について、許可という入口が一緒であれば、事業も含めて全て一緒でいいのではないかというご発言があったのですが、それに関してよく分からないところがありますので、事務局にお伺いします。今の一般労働者派遣事業と特定労働者派遣事業において、入口における許可制と届出制といった違い以外に、業務取扱上や取締上の扱いにおいて、もちろん許可制と届出制という入口との関係でその後の行政処分のあり方は当然に違ってくるのというのは分かっているのですが、それ以外に何か違いがあるのかどうかを教えていただきたいと思っています。
○鎌田部会長 今、お答えできれば、お答えしていただければと思います。
○富田課長 許可と届出はどう違うのかという御質問についてですが、許可については、有効期間があり、初回3年で以後5年ごとに定期的に更新が必要になってきます。一方届出については、更新の必要がないことから、必然的にそれに伴う差が生じてきます。どのようなものがあるかと申し上げますと、入口に許可基準の違いがあり、更新のときにも許可基準を満たしているかどうか、チェックされることになります。具体的には、派遣元事業主が派遣労働者を適切に保険加入させているのか、あるいは派遣元責任者講習があるわけですが、それを定期的に受講させているのか、あるいは資産状況についても、適切に満たしていて安定的に運営できる水準にあるのかという事項については、更新の度ごとにチェックをしていくということです。それ以外の事業報告は毎年求めておりますし、私どもが行っております定期指導といった指導・監督について、異なるところはありません。
 一方、出口のところは、もちろん名称の違い、許可のほうは許可の取消ですし、届出については事業廃止命令というような違いは、許可、届出の違いによってあります。
○新谷委員 分かりました。今後、我々も検討を深めていきたいのですが、やはり特定労働者派遣事業については非常に参入障壁が低くて、いろいろな事業者の方が参入されています。それゆえ、特定労働者派遣事業のほうで問題が多いというデータが出ております。そこで、この特定労働者派遣事業の参入の在り方について、行政としての処理の在り方については、やはり我々も許可制という形でもっていくべきだと思っていますし、その方向で検討したいと思っています。ただ、今の特定労働者派遣事業については、その定義において「常用雇用」という概念が入っているわけですが、この「常用雇用」には無期雇用だけでなく一定の有期雇用も含まれるなど有相無相が入っておりますので、これは無期雇用だけに純化すべきであると考えております。今の「常用雇用」という考え方がどのように残されながら許可制というものに扱いを上げていくのか、今後論議をしてまいりたいと思っています。
○阿部委員 均等待遇、均衡待遇について、新谷委員から研究会報告書で何か意味がよく分からないというような発言がありましたので、それについて一言申し上げたいと思います。研究会報告で均等待遇、均衡待遇は実質上難しいのではないかというのは、理想的、あるいは理念的に均等待遇、均衡待遇は私も個人的には望ましいとは思っていますが、実際にそれを行ったときに、第三者が何をもって均衡だ、均等だといえるのかという問題は、今の労働市場ではずっとあるだろうと。それで、理念としては私も分かるのですが、実際そういった場面になったときに、その判断が難しいのではないかというのは、思いとしてはあります。そういうことで、報告書では書かれているのではないかと思います。
 それは、同じことが、いわゆる26業務にも通ずるものではないかと思っています。先程来、26業務があったほうがいいのではないか、どうだろうかという議論がありましたが、これを残した際に、第三者が何をもって26業務にふさわしいのか、あるいは26業務と別の仕事をした際に、どこまでの範囲を許可できるのかを、第三者が判断できるのかという問題はあるのではないかと思います。その問題も考えないと、この26業務の問題は語れないと。特に分かりやすい制度を求められている以上は、その点は考えておく必要はあるのではないかと、皆さんの議論を聞きながら個人的に思っています。
○新谷委員 今のことに関連して、阿部先生からお話をいただいたように、理念としてはお持ちだということをお聞きして安心しました。私どもは研究会に非常に期待しておりました。均等待遇のベースになる賃金決定の仕組みが我が国とほかの国では違うのは当然に理解した上で、これを進めるべきだと考えていた次第であり、そのための方策を研究会の中でもう少し論議をいただきたかったということを、今後の議論の深まりへの期待も込めて申し上げておきたいと思います。
 例えば、パートタイム労働者の均等・均衡待遇を目指す際も、物差し研をつくって、どうやれば均等・均衡に近づくかということに関連してそれを測るための物差しをずっと検討してまいりました。今ではパート法のスキームがあったり、あるいは今年4月から施行されている労働契約法第20条のような不合理な格差を禁止するといったスキーム、すなわち分かりやすいところでは例えば通勤手当や食堂の利用といったことについては明示的に合理性がないというような示され方をしております。そこで、こうしたスキームなどをもう少し参考に検討をいただき、均等・均衡を進めるためにどうすればいいかというところを検討いただきたかったな、という期待を込めてのコメントとさせていただきます。
○青木オブザーバー まだ、私のほうで派遣先の労使のチェックについての意見を言っていないものですから、一言だけ言わせていただきたいと思います。まず、派遣先における労働者派遣の受入れに関しては、これは本来派遣先の事業主が企業経営の観点から判断すべき事項だと思っています。仮に、派遣先レベルで1つの期間、今は3年というお話がありましたが、それを超えて労働者派遣の受入れを行うに当たっては、先ほど新谷委員からお話がありましたが、現在第40条の第2第4項で規定されている過半数労働組合又は過半数代表者の意見を聞く、これが本当に今問題があるのかどうか。私どもとしては、現在その制度については何の問題も生じていないと判断していますので、派遣先におけるチェックはこれで十分であり、これ以上の規制を行う合理的な理由はないと考えています。
○鎌田部会長 よろしいでしょうか。そろそろ予定の時間もまいりました。本日は、いろいろな御意見があり、なかなか集約は難しい状況にあると、私としては理解しております。今後の議論の宿題をいただいたとは思っておりますので、本日の議論としてはこれで終了したいと思います。事務局から連絡事項はありますか。
○亀井補佐 次回の日程ですが、10月25日(金)の午前10時から、場所は5階の共用第7会議室にて開催いたしますので、よろしくお願いいたします。
○鎌田部会長 ほかに御意見がなければ、以上をもちまして第195回労働力需給制度部会を終了いたします。本日の議事録の署名ですが、石黒委員と小林委員にお願いしたいと思います。ありがとうございました。


(了)

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