ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 労働政策審議会(労働条件分科会)> 第105回労働政策審議会労働条件分科会 議事録(2013年11月18日)




2013年11月18日 第105回労働政策審議会労働条件分科会 議事録

労働基準局労働条件政策課

○日時

平成25年11月18日(月)15:58~17:57


○場所

中央合同庁舎第5号館22階 専用第14会議室
(東京都千代田区霞が関1-2-2)


○出席者

【公益代表委員】

岩村委員、野崎委員、権丈委員、田島委員、守島委員、村中委員

【労働者代表委員】

新谷委員、高松委員、冨田委員、八野委員、春木委員、宮本委員

【使用者代表委員】

秋田委員、小林委員、鈴木委員、田中委員、平岡委員、宮地委員

【事務局】

中野労働基準局長、大西審議官、土田総務課長、村山労働条件政策課長、古瀬労働条件政策課調査官

○議題

1 報告事項
2 今後の労働時間法制の在り方について
3 その他

○議事

○岩村会長 それでは、ただいまから「第105回労働政策審議会労働条件分科会」を始めることにいたします。

 本日の出欠でございますけれども、公益代表の山川隆一委員、労働者代表の工藤智司委員、使用者代表の池田朝彦委員が御欠席ということでございます。また、公益委員の田島委員は少しおくれて来られると伺っております。

 欠席される池田委員の代理で、きょうは日本商工会議所産業政策第2部副部長の高山さんが出席されておられます。よろしくお願いいたします。

 では、議事に入ります前に、定足数の報告を事務局のほうからいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○村山労働条件政策課長 定足数について御報告申し上げます。労働政策審議会令第9条により、委員全体の3分の2以上の出席、または公労使各側委員の3分の1以上の出席が必要とされておりますが、定足数は満たされておりますことを御報告申し上げます。

○岩村会長 ありがとうございます。

 それでは、議事に入りたいと存じます。お手元の議事次第に沿いまして進めてまいります。

 最初の議題でございますけれども、報告事項となっております。これにつきましては、事務局のほうから、まず研究開発力強化法の関係について、次に国家戦略特別区域法案の関係についての2つについて報告があるということでございます。

 それでは、まず事務局のほうから説明をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○村山労働条件政策課長 それでは、事務局より御説明申し上げます。

 資料No.1-1-1です。ただいま分科会長からお話がありました研究開発力強化法ほかの一部を改正する法律案の要綱です。

 この資料の性格ですが、資料の右肩に書いてありますように、1031日の自由民主党の内閣部会、文部科学部会、厚生労働部会、科学技術・イノベーション戦略調査会合同会議に、科学技術・イノベーション戦略調査会に参集された議員の方々から提出された資料で、公表済のものです。

 この法律案ですが、主たる改正の対象となっておりますのは、正式名称は長いですけれども、いわゆる研究開発力強化法の関係です。この研究開発力強化法ですが、平成20年に自公民3党の共同提案で、そもそも議員立法で成立しているという経緯がございます。平成20年に成立した際に、附則第6条に検討規定が置かれており、施行後3年を目途にさらなる研究開発力強化のための見直しが行われる旨が規定されている法律でした。

 その後、当初の予定よりは少し時間を置いたわけですけれども、自由民主党の科学技術・イノベーション戦略調査会で御議論をことしに入ってから積み重ねられまして、とりわけ9月からその調査会の中に議員の先生方の立法チームが設けられて集中的に検討されてきたという経緯です。そして、一定の成案を見て、調査会として意思決定され、その上で関係する部会の先生方もお集まりになって合意形成を図った。それが先ほど申し上げました合同会議でして、その後に公表されている資料ということでございます。したがいまして、1031日の時点で、自由民主党の政調審議会のもとに設けられる調査会や関係部会レベルでの合意内容ということです。

 その後、まず現状ですが、連立与党の公明党にこの案が提示され、関係部会さらには政調全体会議等で了解がとられている。したがって与党としては、この方向での立法を現在、お進めになっているということです。

 ただ、与党内の議論の途中でありまして、役所の審議会でこうした議員立法の検討途中のものについて御説明するというのは、いささか異例ではございます。ただ、公表されている内容の中に労働契約法の特例が含まれております。したがいまして、関係の議員の先生方の御了解をいただいた上で、本日、本分科会にこの資料を御報告申し上げるものでございます。

 なお、検討の過程におきましては、この自民党の調査会におきまして、国立大学協会、公立大学協会、私立大学団体連合会等からのヒアリングも行われたと承知しており、そうした中での御意見も踏まえて、このような立案に至られているということです。

 具体的な内容ですが、資料の1ページ目で申しますと、第1の2 労働契約法の特例(第15条の2関係)がございます。ここが該当の部分ということになります。そこにもありますように、「1から4までに掲げる者がそれぞれの有期労働契約を期間の定めのない労働契約に転換させるための申込みを行うために2以上の有期労働契約の契約期間を通算した期間が5年を超えることが必要とされていることについて労働契約法の特例を定め、10年を超えることが必要であるとすること」というのが、この改正の眼目でございます。

 ※印が書いてありまして、1、2、3、4の下に※印の注が入っております。本法律における科学技術の定義ですが、この法律全体としては人文科学のみに係るものは除くということが第2条第1項で定められておりますが、本改正項目、すなわち労働契約法の特例に関しましては、人文科学のみに係る科学技術も含む取り扱いということで、全ての学部・学科ということを見渡した改正内容であるということが注意書きされております。

 次に、具体的に対象となる1から4の方々についてでございます。

 1 科学技術に関する研究者又は技術者であって研究開発法人又は大学等を設置する者との間で有期労働契約を締結したものとされております。研究開発法人というのは、この法律で別な条に定義規定が置かれており、研究開発関連の非特定独法、これは別表に個別に列挙されておりますが、三十数個の独立行政法人のことでございます。「又は」の後の「大学等」でございますが、この「等」の意味するところは大学共同利用機関でありまして、むしろ「大学」の中に大学院とか短期大学といったものは全て入っていると御理解いただければと考えております。

 それから、2の対象者です。研究開発等に係る企画立案等の業務、この「企画立案等」の「等」は、資金確保や知的財産権の取得・活用等ということでございます。そうした業務に従事する者のうち、専門的な知識及び能力を必要とする業務に従事する者に限定した上で、研究開発法人又は大学等を設置する者との間で有期労働契約を締結したものが対象者ということです。いわゆる研究支援者と呼ばれる方、あるいはリサーチアドミニストレーターと最近言われるような方の多くは、ここに含まれようかと考えております。

 以上、1と2が要すれば研究開発法人や大学で研究等を行われている先生方、あるいはそれを支援される方々で専門的な方々ということですが、対象者は、さらに3、4とございます。

 3は、試験研究機関等、研究開発法人及び大学等以外の者、具体的には民間企業等が想定されますが、そうした主体が、試験研究機関等、研究開発法人又は大学等との契約により共同して行う研究開発等。これを「共同研究開発等」と読み替えております。そうした業務に専ら従事する科学技術に関する研究者又は技術者であって有期労働契約を締結したものということで、大学等と民間企業等が共同研究開発される業務があった場合に、ほかの業務にはかかわらず、そこに専ら従事される研究者や技術者の方々についても、この対象とされているということです。

 1と2の関係と同じように、3を見ていただき4ということで、共同研究開発等に係る企画立案等の業務に専ら従事する者であって有期労働契約を締結したものということで、先ほど2で見ていただいたような支援者のような方でこうした形態の方がいらっしゃれば、4によりそれらの方々も対象ということです。

 これが労働契約法のいわゆる無期転換ルールに関しまして、5年超を10年超とする特例の対象の方々ということです。

 1枚お進みいただきまして、裏側、2ページ目です。

 第2のところで、この研究開発力強化法と束ねて、大学教員任期法、大学の教員等の任期に関する法律に関しましても一部改正する案であります。

 具体的には、大学の教員等がその有期労働契約を期間の定めのない労働契約に転換させるための申込みを行うために通算契約期間が5年を超えることが必要とされていることについて、労働契約法の特例を定め、10年を超えることが必要であるとすることということで、基本的に大部分の対象者の方々に関しては、先ほど見ていただきました第1の2のところとかぶった規定内容になっておりますが、教員任期法のみで射程されています、例えば大学評価・学位授与機構等の研究者あるいは先生のような方々に関しても、ここで対象とされているということです。

 実態として、大学の就業規則等は、教員任期法に依拠した形で規程されていることが多いと考えており、むしろ大学の労務管理の現場では、こちらの法律が引用されることが多いのかなと考えているところでございます。

 以下、6ページにお進みいただきますと、新旧対照表の該当部分がございます。6ページの後ろのほうですが、労働契約法の特例という条見出しで第15条の2がございまして、第1項の部分は先ほど申し上げたところと重なりますので、説明は割愛させていただきます。

 あわせまして、第2項で、前項第1号及び第2号に掲げる者(大学の学生である者を除く。)のうち大学に在学している間に研究開発法人又は大学等を設置する者との間で有期労働契約(当該有期労働契約の期間のうち大学に在学している期間を含むものに限る。)を締結していた者の同項第1号及び第2号の労働契約に係る労働契約法第18条第1項の規定の適用については、当該大学に在学している期間は、同項に規定する通算契約期間に算入しないとされており、いわゆるティーチングアシスタントやリサーチアシスタントのような形で、補助を行われていた方々が、そのままその大学等に有期雇用で、例えば助教なら助教のポストを得られた場合に、前後の期間の契約期間の通算は、クーリング期間の有無にかかわらず通算しない。

 それによって、テニュアポストに進むかどうかの必要な見極め期間のようなものを確保する立案であると理解しているところです。

 最後になりましたが、このような法改正を与党で検討されるに至った背景としては、1つには、5年を超える長い期間の後に一定の人材の見極めを行った上で、いわゆるテニュアのポストにつけるか否かの評価がなされるのが通常のキャリアパスになっているという特殊性があるということ。また、実態として、プロジェクト研究費の比重が増大する中で、有期雇用が大学とか研究開発法人で増えてくる実態の中で、研究開発力の強化等の観点から、こうした立案が検討されているということであると承知しております。

 以上が1つ目の資料の説明でございまして、資料1-1-2のほうは、後ほどこの研究開発力強化法に関し質疑があれば、その際参照していただくための参考資料、定義集のようなものでございます。

 それから、報告事項の2つ目です。国家戦略特別区域法案、いわゆる特区法案の関係です。これに関しましては、前回の1030日の分科会におきまして、経緯さらには1018日に決定された日本経済再生本部の決定内容を説明し、御審議をお願いしました。その後、本部決定内容を踏まえ、11月5日に関係の法案がこのような形で成案を得て、国会に提出されております。現在、衆議院の内閣委員会に付託されており、審議は既に委員会で2回行われ、今も続行しており、今週も審議が見込まれる状況でございます。

 法案全体の概要、趣旨書きは、経済社会の構造改革を重点的に推進することにより、産業の国際競争力を強化するとともに、国際的な経済活動の拠点の形成を促進する観点から、国が定めた国家戦略特別区域において、規制改革等の施策を総合的かつ集中的に推進するために必要な事項を定めるということです。全体の仕立てとしては、内閣総理大臣のもとに国家戦略特別区域諮問会議という重要事項を調査・審議する会議を置いて、そこでの審議も踏まえつつ、資料の右側にございます基本方針とか特区の指定等を行っていく。

 さらに、特区ごとに、その資料の左側真ん中にございますように、国家戦略特別区域会議、通称では国家戦略特区統合推進本部において、特区ごとにどのような規制の特例措置や税制措置、金融支援等を組み合わせて、あるいは地域の実情を踏まえながら対応していくのかということを、右の下側にある国家戦略特別区域計画、いわゆる特区計画を策定していく。その上で、これも諮問会議に上げていって、最終的には内閣総理大臣の認定を経ていく。そういうスキームです。

 資料の右下のさまざまな特例措置、支援措置の一環として、雇用関係の内容についても議論されてきたということは、前回も御説明申し上げたとおりでして、2ページ目には、前回御報告申しました日本経済再生本部で1018日に決定されました検討方針の関係部分を掲載しております。

 本日、御説明しますのは3ページ目以降で、先ほどの法案の中で具体的にこの検討方針がどのように具体化されているのかということです。

 まず、第36条、条見出しが個別労働関係紛争の未然防止等のための事業主に対する援助です。

 国は、国家戦略特別区域において、個別労働関係紛争、括弧の中で定義としては、個別労働関係紛争解決促進法と同様の定義だということが書いてありますが、これを未然に防止すること等により、法の目的である産業の国際競争力の強化又は国際的な経済活動の拠点の形成に資する事業の円滑な展開を図るため、国家戦略特別区域内に新たに事業所を設置して新たに労働者を雇い入れる、その後の外国会社は一つの典型的な例示でして、そうした事業主に対する情報の提供、相談、助言その他の援助を行うものとするということです。

 第2項としまして、前項に規定する情報の提供、相談及び助言は、事業主の要請に応じて雇用指針、これは検討方針における雇用ガイドラインですが、法律上の用例の関係から雇用指針と言いかえており、括弧しまして、個別労働関係紛争を未然に防止するため、労働契約に係る判例を分析し、及び分類することにより作成する雇用管理及び労働契約の在り方に関する指針であって、会議の意見を聴いて作成するものをいうとされておりまして、この「会議」というのは、28条で読み替えがなされておりますが、重要事項について調査・審議する国家戦略特別区域諮問会議のことです。

 この雇用指針を踏まえて行うものを含むものでなければならないということで、これをしっかりと踏まえながら、特区において、前回御説明したセンターを設けての相談、援助を行っていくという趣旨が規定されているところです。

 次の4ページの第3項ですが、内閣総理大臣及び関係行政機関の長。内閣総理大臣は、分担管理事務の担当大臣としての内閣総理大臣、すなわち特区を担当する内閣総理大臣と、関係行政機関の長は厚生労働大臣を想定しておりますが、これは国家戦略特別区域会議に対し、当該国家戦略特別区域会議に係る国家戦略特別区域における事業主への援助の実施状況に関する情報を提供するものとするとされており、国の行政機関のほうから地域の特別区域会議のほうに、実施状況の情報を逐次提供していくことが規定されております。

 その上で、第4項で、特別区域会議は、第1項に規定する援助の実施に関して、その情報の提供を受けて、内閣総理大臣及び関係行政機関の長に対し、意見を申し出ることができるという規定が置かれているところです。この部分は、検討方針の中では統合推進本部のもとにセンターを置くという形になっていたわけですが、会議体のもとに恒常的な行政サービスを行うような窓口を位置づけられるかという論点もあり、こういった形で緊密に連携を図るということで立法化したということです。

 附則の第1条が施行期日でございまして、基本的には、この法律は、公布の日から施行すると書いている上で、1号のところで、第3章、4章、及び先ほどの第36条の規定も含めてですが、公布の日から起算して四月を超えない範囲内において政令で定める日ということで、基本的には26年4月から始まる新年度からの事業スタートも可能な施行期日の設定にされているということです。

 続きまして、検討方針の(2)有期雇用の特例がございました。それを具体化しておりますのが附則の第2条です。条見出しが検討となっておりまして、政府は、国際競争力の強化及び国際的な経済活動の拠点の形成の推進を図るという全体の法目的の観点から、一定の期間内に終了すると見込まれる事業の業務(高度の専門的な知識、技術又は経験を必要とするものに限る。)に就く労働者であって、使用者との間で期間の定めのある労働契約を締結するもの(その年収が常時雇用される一般の労働者と比較して高い水準となることが見込まれる者に限る。)その他これに準ずる者についての、期間の定めのある労働契約の期間の定めのない労働契約への転換に係る労働契約法第18条第1項に規定する通算契約期間の在り方、具体的には5年超で無期転換の形成権が発生するという、その5年超の在り方、及び期間の定めがある労働契約の締結時やその満了時等において労働に関する法令の規定に違反する行為が生じないようにするために必要な措置その他必要な事項であって全国において実施することが適切であるものについて検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする、とされております。

 その上で、第2項において、政府内でこの検討を担当する厚生労働大臣は、前項の規定による検討を行うに当たっては、労働政策審議会の意見を聴かなければならないということが法律上、明記されているという点を御確認いただければと存じます。

 第3項は、スケジュールの規定でございまして、政府は、第1項に定める特定措置を講ずるために必要な法律案を平成26年に開会される国会の常会、いわゆる通常国会、通常は1月に開会されることが多いと思いますが、これに提出することを目指すものとするという規定となっております。

 雑駁ですが、報告事項の説明は以上です。よろしくお願いいたします。

○岩村会長 ありがとうございました。

 それでは、2つの項目について、今、事務局のほうから報告がございましたので、順番に扱っていきたいと思います。

 そこで、まず研究開発力強化法関係で御意見あるいは御質問がありましたら、お願いしたいと思います。

 では、八野委員、どうぞ。

○八野委員 御説明ありがとうございました。

 まず、研究開発強化法についてですが、今、与党内での議論中ということで、議員立法を目指しているというご説明がありましたが、これは2の労働契約法の特例というところから見ますと、1、2で、大学等の研究開発法人の研究者又は技術者等々が、3、4で、大学等で共同研究を行う場合は民間企業で有期雇用される者についても、無期転換申込権が発生するまでの期間を5年から10年に延長することとされています。

有期労働契約の無期転換ルールについて定めた改正労働契約法は、この労働条件分科会の場で議論を尽くして成立し、本年4月から施行されたばかりです。労働契約法の改正については、ILOの三者構成原則というものに準じて進めていくべきだろうと思いますが、今回のように、三者構成審議会での調査審議を経ることなく労働契約法の特例を設けることについての厚労省の見解をお伺いしたいと思います。

 これは、第2 大学の教員等の任期に関する法律の一部改正も含まれていますので、大きくは3つの分類があるということだと思います。特に、民間企業で雇用されている者も入っておりますので、その辺も含め、十分な見解をお伺いしたいと思います。

 もう一点は、私も勉強不足のところがありまして、例えば1、2について、従事している人がどのぐらいいるのか、ちょっと見当がつかないのです。3、4も含め、または第2の大学教員等について、どのぐらいの人数が対象となっているのか、わかれば教えていただきたいと思います。

○岩村会長 それでは、大きく2点御質問ということだと思いますので、では課長のほうからお願いいたします。

○村山労働条件政策課長 御質問ありがとうございました。

 まず、第1点でございます。このような形で、議員立法によって労働者の労働にかかわる権利義務に触れるような法律について改正することについて、ILO三者構成原則との観点も含めて、厚生労働省はそもそもどのように考えているかということです。

 本来、労働分野の基本ルールに関しまして、フィラデルフィア宣言の基本的な考え方、根本原則として、労働者及び使用者の代表者が政府の代表者と同等の地位において、一般の福祉を増進するために自由な討議と民主的な決定にともに参加する、継続的かつ協調的な努力によって遂行されることが必要だという考え方が明記されており、また実際、我が国におきましても、これまでも労働分野の法律の制定・改廃に当たりましては、労働の現場を熟知した労使が参画する審議会での御議論を経て、その上で現実に妥当するルールづくりというものが進められてきているということです。

 厚生労働省としては、今後ともこうした政策決定プロセスを尊重してまいりたいと考えております。

 一方、ただいま八野委員から御指摘のありました研究開発力強化法等の改正法案が射程している対象について見ますと、1つには、大学等ですが、これは雇用の場であると同時に、憲法上保障された学問の自由のもとに真理を追求する場としての位置づけもあるということで、基礎的な研究とか最先端の研究等を行う人材育成という、ほかには見られない人材育成が期待され、あるいはまた憲法上、求められているという特殊性があるということは言えるのだろうと考えております。

 また、研究開発法人に関しましては、そうした大学等と活発な人事交流が行われて、また人材育成面でも共通する特殊性があるとともに、研究分野におきましても、その大学等と類似の、例えば基礎的研究とか最先端研究というところを担われていると考えています。また、大学等や研究開発法人には相当の公費が投入されているという共通点もあるのではないかと考えております。

 それから、八野委員から特に御指摘のありました民間企業と大学等との共同研究開発等の関係でございます。この規定も、専らそれに従事される方ということで、そうした意味では、今、申し上げた大学等や研究開発法人に準ずるような性格の分野に厳に限った規定になっているものと考えております。

 それから、加えて申しますに、今回の法律改正内容は、労働契約法以外はいずれも科学技術分野の政策であるということもあるのだろうと思います。先ほど御説明申し上げた与党で検討されています労働契約法の特例規定の主たる対象者は、今、申しましたような大学等あるいは研究開発法人の教員や研究者の方々でありまして、その勤労権の保障と、もう一方では、大学等における学問の自由という、いずれも憲法上の価値を調整しながら、分野を明確に限定した特例として立法される訳でありますし、また、そもそも議員立法により制定されました法律を議員立法で改正するということも相まって、例外的に労働政策審議会の諮問・答申等の手続はとらずに、本日異例な形ではありますが、こうした形で法案の国会提出に先立って、本分科会にその内容を御報告し、御理解を得たいと考えているものでございます。

 一方で、一般に労働関係法令、とりわけ基本的な権利義務にかかわるものの制定・改廃に当たりましては、労使が参画する審議会での議論を経て立案すべきであると考えておりますし、こと法律に関しましては、審議会の諮問・答申手続を経た上で内閣提出法案として提出すべきである旨の認識に、私どもとして変わりはないということをこの場を借りて申し上げ、第1点目の御質問への回答とさせていただきます。

 それから、第2点目で、どれぐらいの人数かということについての御質問がございました。率直に申し上げて、非常勤まで含めた詳細な数字というのは、文部科学省でも一覧でなかなか把握していない実態にございますが、まず大学の教員の方々につきまして、常勤のみで見ますと、総数では184,000人程度の方々がいらっしゃる。その中で、任期付きの常勤の方が4万3,000人程度いらっしゃるということです。さらに、その外側に非常勤の方々がいらっしゃるということでして、4万3,000人プラスアルファの有期の方々の中で、この特例の対象となる5年を超えて反復更新される方の比率が直ちにはわからないということです。

 労働契約法の審議のときにも、我が国の雇用者全体ですと、5年超えて反復更新している人は有期全体の29.5%という数字をよく用いましたが、これが直ちに妥当するかどうかわかりませんが、おおむね4万3,000人プラスアルファに何割掛けかした方々が、大学の分野でこの法律の主たる対象になる方々かと考えております。これが1の部分の大学等です。

 それから、1の中で研究開発法人等の研究者の方々は、総数が約1万6,000人、そのうち任期付きの常勤の方が約3,700人、非常勤の方が約2,500人で、合計で6,200人ということで、この6,200人掛ける、その中で5年超の方々というのがどれぐらいになるのかなという規模感と御理解いただければと思います。

 それから、2のリサーチアドミニストレーター等々の方々に関しましては、さまざまな部分的な統計はありますが、そうした今、申し上げたような桁と比べると、ぐっと小さい人数と考えております。

 3、4の専ら共同研究開発に従事されている民間の有期の労働者の方々については、正直言って、統計的に何か調べているものがなくて、ちょっとわからないというのが率直なところですが、立案されている与党の先生方の共通認識として、恐らくそれほど多い人数ではないのではないかとお考えになっているということで、1、2、3、4の中では、1の研究開発法人で有期の方、あるいは大学で有期の方の中で、合計5万人余ということですが、それに5年超えての方がどれぐらいいらっしゃるかという人数が、具体的にこの条文の特例対象の射程になってくるのではないかと、私どもとしては考えているということでございます。

 雑駁ですが、以上でございます。

○岩村会長 ありがとうございました。八野委員、よろしいでしょうか。

○八野委員 はい。

○岩村会長 ほかにいかがでございましょうか。では、鈴木委員、どうぞ。

○鈴木委員 研究開発力強化法の立案経緯につきましては、アカデミアの分野ということ等の特殊性があるものだと理解いたしております。ただし、労働政策というものは企業経営に多大な影響を及ぼすほか、労働者の生活にも直接かかわってまいります。先ほど村山課長からも御説明がございましたけれども、その決定に職場を熟知している労使が関与するということで、現場の大きな混乱を減らしたり、法令遵守の徹底を図りやすくするという利点が認められると思っております。とりわけ、使用者と労働者の権利義務を定めるような労働関連法令の策定・見直しに当たりましては、三者構成主義を最大限尊重することが重要だと考えております。

 他方、この特例措置を設けるという法案の中身につきましては、改めて現場の実態や、実務への影響はさまざまであり、一律に措置することには限界があることを示唆しているものだと受けとめております。今後、労働政策を検討する際には、この点を十分留意しておくことが重要だと感じた次第でございます。

 以上です。

○岩村会長 ありがとうございます。

 ほかにいかがでしょう。では、新谷委員、どうぞ。

○新谷委員 先ほど八野委員も申し上げましたが、議員立法という方法でILOの三者構成原則とは違うルールで労働政策が立案されて、それが改正されていくというプロセスについては、非常に遺憾です。今、使用者側の鈴木委員もおっしゃった、労働関連法令の策定・見直しに当たっては、三者構成主義を最大限尊重することが重要だという点については、本当に同感です。

 特に、有期法制のような純然たる民事強行法規が一部の労働者に対して、労政審を経ることなく異なるルールになることを非常に危惧しております。18条の無期転換ルールは、有期労働契約が持つ雇用の不安定さ、要するに雇い止めがあって、次、契約が更新できるかどうかわからないという非常に不安の中で働いている方々に対する雇用安定措置として入れたルールでありますので、研究開発力強化法改正案で対象となっている1から4の方々は、そういった雇用の安定措置がきちんと図られるのか、という点も非常に気になるところです。たしか厚労省と文科省で大学における雇用管理のあり方について検討が始まっていたかと思います。こういった方々に対する雇用安定措置を別途何かお考えになっているのかという点について、もしおわかりになれば教えていただきたいと思います。

 それと、ILOの三者構成原則に関して気になる動きがありましたので、これについても厚労省のほうから見解をお伺いしたいと思います。ちょうど1週間前の1111日に産業競争力会議の雇用・人材分科会が開催され、長谷川主査から提出された資料に、労政審にかわる労働政策の基本政策の策定の仕組みを考えるべきではないかという提起が出されていたと思います。ILOの三者構成原則とは違うところで、労使の利害調整の枠を超えてという趣旨で資料が出されておりまして、政府としてこれをどう扱うのか、今後、非常に気になるところです。

 先ほど鈴木委員が発言されたように、もともと労働政策は現場を一番熟知している労使が政府と一緒に政策を決定するという大原則があるはずなのに、それを超えて別の仕組みをつくるという検討がなされていることに対して、非常に危惧するところです。この点について、もし見解があれば教えていただきたいと思います。

○岩村会長 それでは、課長、お願いします。

○村山労働条件政策課長 まず、第1点目でございます。労使各側取りまとめ委員の御指摘は重く受けとめた上ですが、特に御質問のございました厚生労働省と文部科学省の連携した検討、あるいはその検討体制のもとでどのような議論がなされてきたのかということについてです。これに関しましては、こうした与党の検討の動きと並行して、政府においても教育再生実行会議とか産業競争力会議、そうした諸会議の御指摘の中でも、この大学研究者等にかかる無期転換ルールに関する御提起があったものですから、春以来、文部科学省の関係局の局長と私どもの局長をトップにします連携体制を設けて検討を重ねてきたところです。

 その結果、例えば特にそうした御議論のプロセスの中で強い提起のありました研究支援者の方々について、今、何年間かの有期のプロジェクト研究が終わってしまうと、その中心になっている先生方はキャリアアップということもあるかもしれないですけれども、研究支援者の方々はそこで雇い止めの不安に非常にさらされている面もあるということから、コンソーシアムのような仕組みをある程度の規模の研究機関や大学等で設けて、そうした人材の情報を共有しながら次への異動、キャリアアップが図られるような仕掛けについて、検討していくという文科省からの御提案もあり、また我々も人材支援の面で御協力できることがあればということで、そうした協議の内容も文科省の26年度概算要求の中に反映されているものと承知しております。

 また、それ以外にもテニュアトラックの普及・定着の事業等に関しましても、逐年、充実が図られており、またそうした予算についても文科省のほうで増要求をしていただいているということで、今後とも関係省庁の間でも、雇用の安定に向けた努力ということについては、しっかりと積み重ねてまいりたいと考えているところです。それがまず、第1点目の御質問への回答です。

 それから、第2点目の産業競争力会議の雇用・人材分科会でございますが、これは現在、プロセスで言いますと、秋から分科会での審議が再開されて、年末の中間的な報告に向けての途中段階の御議論でございます。資料自体は公表されておりまして、その中で御指摘のあった主査名のペーパーが配布されているのは事実ですが、そこで書かれているのも、労使の話し合いを一切否定するといったことでは必ずしもなくて、より高いレベルでの意思決定も含めてという含みも持たせた書き方であったかと受け止めております。

 いずれにいたしましても、どのように対応しているのかという点に関して言えば、私どもとしては、先ほどのお話ではございませんけれども、現場できちんと通用するルールということをつくり上げていくためには、労働の現場を熟知した労使の話し合いの積み重ねが重要であり、とりわけ労働関係法令の制定・改廃については、労働政策審議会での議論の積み重ねが必要であるということを繰り返し、あらゆる場で訴えているところでして、また今後とも産業競争力会議に厚労省の政務や幹部も呼ばれることも、今までもございましたし、これからもあるだろうと思いますが、引き続きそうした姿勢を堅持しながら、しっかりと対応してまいりたい、このように考えているところでございます。

○岩村会長 では、小林委員、どうぞ。

○小林委員 一部繰り返しになりますけれども、この研究開発システム改革の法律案の労働契約法の特例の件で、労働側も使用者側も三者構成主義という考え方で一致だと思いますので、改めて申し上げたいと思います。

 ただ、これは契約法の改正に当たっていろいろ議論しているときに、たしか大学教授並びに研究者の話というのは使用者側からも申し上げたことなのですね。5年間のプロジェクトじゃなかなかできないよ。10年単位のものもあったりということを、たしか使用者側の過去の委員が申し上げていたと思います。それに当たって、厚生労働省に対しては、文部科学省とも十分連絡をとって、現在の大学の状況とか研究開発、特に理科系の研究開発等について長期のものがあるではないかということで、役所間の連携を十分とってください、確認してくださいということを使用者側からもお願いしたのを覚えております。

 ところが、こういう形で、実際にはかなりの長期のプロジェクトがあって、10年を超えることが必要であるということで、新しい法律案が出てきた。この案については、やはりそのとおりかというのを感想でも持っておりますし、逆に言うと、過去、厚生労働省さんが文科省さんと十分に連絡をとっていたのか。大学関係の研究の現場のことについて、話し合っていたのかどうなのかということを疑うわけじゃないですけれども、そう思う次第でございますので、今後ともいろいろな関係部局との連絡というのは、他省庁の場合、特に密接に連絡をとるような形で進めていただくようにお願い申し上げます。

 以上です。

○岩村会長 ありがとうございます。

 では、課長、お願いします。

○村山労働条件政策課長 小林委員から御指摘をいただいた点でございます。審議会自体か、審議会をめぐるコミュニケーションの中でか、いずれにしてもそうした御指摘をいただいていたにもかかわらず、一旦法律を施行した後に議員立法でこうした事態になっているということに関しては、小林委員の御指摘、重く受けとめなくてはならないと思っております。また、政府部内でも、法案を提出するに当たっては、当然省庁間で調整を行った上で閣議決定して法案を提出しているわけでございますが、その際により一段実態に近いところで、無期転換ルールがどのようなさまざまな雇用管理の現場に影響を及ぼすかという点について、さらなる精査が必要ではなかったかという点について重く受けとめさせていただきたいと思います。

 また、ただいま小林委員から御指摘のありました、今後、政府部内での十分な連携を図るようにという点は、現在も労働時間法制という横断的な幅広い議論を先生方にお願いしているわけでございますが、政府部内、各業所管の省庁を初めとして、連携に十分に意を尽くし、漏れのないような審議会運営の事務局としての務めを果たしていきたいと考えております。御指摘、重く受けとめさせていただきたいと思います。

 以上でございます。

○岩村会長 ありがとうございました。小林委員、よろしいでしょうか。

○小林委員 はい。

○岩村会長 ほかにいかがでございましょうか。では、野崎委員、どうぞ。

○野崎委員 ちょっとお話が戻ってしまうのですけれども、この法律案要綱をつくるに当たっては、大学の関係者等のヒアリングもされたと伺ったのですけれども、そのヒアリングではどのような方が意見を陳述されて、その意見がこの案にまとめられたという過程をもう少し知りたいなという気持ちもございます。

○岩村会長 それでは、時間の都合もありますので、簡潔にお願いします。

○村山労働条件政策課長 与党の会合でのことですので、個別のお名前は差し控えたいと思いますけれども、先ほども申しましたように、国立大学、公立大学、私立大学、それぞれを代表される団体のしかるべき方々が、いずれも改正労働契約法の趣旨は踏まえつつも、無期転換ルールの特例を求める要望を要望書に基づいて陳述されたということでございます。先ほどのお話の中に適用除外というお話もございましたが、直ちに適用除外を求めるというよりは、大学の雇用管理の実態等に照らして、無期転換の年数のあり方について特例の検討を御主張された方々が多かったと仄聞しているところでございます。

○岩村会長 野崎委員、よろしいでしょうか。

○野崎委員 はい。

○岩村会長 ありがとうございます。

 ほかに。では、新谷委員、どうぞ。

○新谷委員 報告事項の。

○岩村会長 2点目のほうでしょうか。ちょっと待ってください。ほかに1点目についてはよろしいでしょうか。

 分科会長としましては、今回の案件については、文部科学行政の分野における議員立法による労働契約法、特に無期転換ルールというものを大学などに絞って見直しをするものと理解しておりまして、直ちにほかの分野にこれが一般化して広がるものとは理解は必ずしもしておりません。ただ、きょう何人かの委員からも御指摘がありましたように、厚生労働省としましては、一般に労働関係の法律を見直すに当たっては、この労働政策審議会の審議を経た上で対応することが基本であるということをぜひ徹底していただきたいとお願いしたいと思います。

 労働関係のさまざまな法律、政策について、労使で協議の場を設けて、それにのっとって政策立案等を行うというのは、先進諸国において過去のさまざまな経験を踏まえて生まれたものだと理解しております。それによって、先ほど来、労使双方が言われておりましたように、法律の適切なしっかりとした施行というものが可能になるとか、社会的なあつれきとか紛争をそれによって回避するといったような意味があるものだと理解しておりますので、今後とも厚生労働省としては、労働政策審議会の場での審議というものを経た上で対応するということで、基本的な立場をぜひ維持していただきたいと私からもお願いしておきたいと思います。

 それでは、お待たせしました。2番目のほうに移りたいと思います。では、新谷委員、どうぞ。

○新谷委員 2点目の国家戦略特別区域法案について、3つお伺いしたいと思います。

 1点目は、本日の資料1-2の3ページに関係する条文の抜粋が出ておりますが、肝になる36条についてです。1018日に日本経済再生本部が決定した「国家戦略特区における規制改革事項等の検討方針」には特区に雇用労働相談センターを設置する旨が記載されていますが、36条にはそうした記載がありません。個別労働関係紛争の未然防止等のために事業主に対して行う相談、助言その他の援助は具体的にはどのような組織を通じて行うのか、お聞きしたいと思います。

 2点目は、その設置される雇用労働相談センターにおいて、具体的に相談、助言を行うということであれば、その相談、助言に携わる人は一体どのような者を想定しているのかということをお聞きしたいと思います。

 この361項によれば、援助の対象となる事業主は「国家戦略特別区域内において新たに事業所を設置して新たに労働者を雇い入れる外国会社その他の事業主」とされており、区域内の全ての事業主のことを指し外国会社は例示として書かれているだけだと思いますが、外国会社ということになると、多分外国語に堪能な人で、かつ労働の専門家であって、かつ求められるのは、労使紛争において公正中立な立場で判断して助言、相談をするという、非常にスペックの高い人ということになります。このような人を特別区域ごとに設けることになりますと、一体どういう形で選定され、どのような運営をされていくのか。合議制なのか、単独の1人が決めてしまうのか、もしわかれば、教えていただきたいと思います。

 3点目は、362項に雇用指針というものが規定されており、これは「国家戦略特区における規制改革事項等の検討方針」にあった「雇用ガイドライン」のことだと思いますが、この雇用指針は、労働契約に係る判例を分類して作成すると書かれています。国家戦略特区WGでは、920日に八田座長が提出した資料では、雇用ガイドラインがいわゆる裁判規範となるという非常に強い効果を持ったものとされておりましたが、多分それはここではかなり後退しているはずだと思います。また雇用労働相談センターなるものに、具体的な紛争に当たり、解雇が権利の乱用に当たるかどうかという判断権限まで持たせるのかどうか。一体どのような権限を持たせて、これを運用するのかということ。

 また、もともと労働契約法の16条、17条では、解雇の有効性判断は、一義的に司法が判断することになるわけですが、雇用指針なり、あるいは厚生労働省が労契法の施行の際に出した行政通達なりとの関係では、その司法判断とこの雇用指針、あるいはもともと厚労省が出している通達との関係を一体どのように捉えたらいいのか、以上の3点について教えていただきたいと思います。

○岩村会長 では、事務局、お願いします。

○村山労働条件政策課長 まず、御質問の1点目、検討方針には雇用労働相談センター(仮称)となっているが、36条には組織が特段書かれていないが、どのような組織で対応するのかということでございますが、予算措置におきまして何らかのそうした相談窓口をつくって、それをセンターと名づけるというのは今までもよく取ってきている手法でございまして、むしろ恒常的な国家行政組織として法定の組織を設けるというよりは、予算措置も含めて弾力的に対応できるように考えているということです。いずれにしても、何か新しい地方支分部局を設けるのではなくて、効率的かつ効果的な相談対応という観点から、最も現実妥当性の高いようなやり方について、これから検討してまいりたいと考えております。

 第2点目、いずれにしても、その相談センターでどのような人材が対応するのかという中で、途中、外国会社は例示だと思うがという御指摘、ございました。おっしゃるとおり、外国会社はあくまで例示でございまして、検討方針の中には、そもそも新規開業直後の企業もございますし、また前回の御確認の中でもあったと思いますが、それ以外の地域区域内の企業というのも、特に行政サービスを対象として排除する考え方をもって検討しているわけではございません。一方で、検討方針の中でもグローバル企業の投資判断に資するようにという点は、政策の方向性として強調されているところでもございまして、そうしたニーズにも対応できるようなことは考えたいと思っております。

 そうしたところから、先ほどの御質問にございました、外国語もできて、労働関係の専門性もあって、公正中立ということになると、非常にスペックの高い人材が求められると思うけれども、どのように検討していくのかということでございますが、まさにそうした人材を委嘱する形として、どのような形がいいのかという点も含めまして、いずれにしても、この法案自体、現在、法案審議中でございますので、国会審議の状況なども踏まえながら、今後具体化する中で詰めてまいりたいと考えております。

 それから、第3点目で、まず御確認として、この雇用指針は検討方針、雇用ガイドラインだと思うがというお話がございました。お見込みのとおり、これは雇用ガイドラインというのは、法律上、ガイドラインという言葉が用例がないものですから、雇用指針と言いかえているということでございます。

 その上で、実質的な質問として、これは裁判規範になるものではないということで、前進とか後退ということではなくて、政府決定を踏まえた条文といたしまして、特に準司法的な何か役割を果たすものでは一切ないということです。1018日時点の政府決定で申しますと、裁判例の分析・類型化による雇用ガイドラインということで、裁判例を分析・類型化したそのものということで御理解いただければと思いますし、その趣旨は36条の2項の括弧の中にも入っておりますけれども、労働契約に係る判例を分析し、及び分類することにより作成する指針ということでございまして、そうした指針の基本的性格のもとに対応してまいりたい。

 逆に言えば、その有効・無効を何か準司法的に判断するようなセンターとか相談といったことを考えているわけではないということで御理解いただければと考えています。その上で、よりよいサービスを今後検討してまいりたいと考えています。

 以上でございます。

○岩村会長 ありがとうございます。

○新谷委員 通達との関係についてもお願いします。

○岩村会長 労契法の通達との関係ですか。それでは、そこもお願いします。

○村山労働条件政策課長 労働契約法の通達は、それ自体、基本的に特に判例法理をそのまま引き写したものに関しては、その考え方について整理しているものでございますし、また、政策的な部分に関しましては、国会での立法者意思を初めとして、そうしたものを取りまとめているものでございますので、これを十分に参酌しながら、この雇用指針のほうも検討されるべきものと理解しております。

○岩村会長 よろしいでしょうか。

○新谷委員 はい。

○岩村会長 ほかにいかがでございましょうか。では、宮本委員、どうぞ。

○宮本委員 ありがとうございます。

 それでは、資料1-2の2ページの検討方針の有期雇用の特例のところに、無期転換申込権の発生までの期間の在り方等について検討を加え、必要な措置を講ずるという文言が盛り込まれております。有期労働者の無期転換ルールについて定めた労働契約法第18条ですけれども、これは今年4月に施行されたばかりであって、当時、この5年後にどのようなことに効果が出るのかという議論もした記憶がありますけれども、現時点では、まだ法改正でどのような効果が出たかの検証もできないような状況です。労働契約法の改正に当たって、この分科会で約1年半にわたって議論をし尽くしてきたにもかかわらず、先ほども皆さん方も発言されたように、ILO条約による三者構成原則の場である、この労政審とは違う場所で改正項目とするための実質的な議論がなされ、再び議論を行うこととされたことについては、私も非常に違和感を覚えているところです。

 そこで、事務局と、できれば公益の先生にも4点お考えをお尋ねしたいと思います。

 1点目は、仮に無期転換権の発生を5年以上に延長した場合、雇用の安定が後退するのではないかと思われますが、要件に定める当該の労働者には、いわゆる雇用の安定というのは必要ないのかどうか。

 2点目は、仮に無期転換権の発生を延ばした場合に、何か雇用安定措置を考えているのか。

 3点目は、民事強行法規である労働契約法に対して、今回の改正案ではどのようなスキームで改正しようとしているのか。労働契約法そのものを改正しようとするのか、あるいは別の立法で労働契約法を修正等するのか。さらには、法の下の平等を保障している憲法14条との関係をどのように整理するのか。

 最後に、今後もこのようなスキーム等で民事強行法規である労働契約法の修正を行うのか。

 以上4点について、お考えをお聞きしたいと思います。         

○岩村会長 御質問の点については、まさにこれからこの場で検討すべきものが多々入っているとは理解します。したがって、事務局としてもどうお答えするか、非常に難しいと思いますが、まず課長のほうからお願いします。

○村山労働条件政策課長 ただいま分科会長からもお話のございましたように、まさに今、宮本委員から御指摘のありましたような点も含めて、さまざま検討の必要な点もあればこそ、全国規模の規制改革として労働政策審議会において早急に検討をお願いしたいという政府の検討方針になっており、またそれを踏まえて、現在審議中の法案における附則第2条第2項で、厚生労働大臣は、その検討を行うに当たっては、労働政策審議会の意見を聴かなければならないと規定されていることを前提の上で申し上げたいと思います。

 御質問の1点目で、対象になる方々、いかに限定をかけるといっても、そのような方々については、雇用の安定の必要がないのかという御質問でございますが、まさにどういう対象の方々にすれば、そうした弊害の懸念を抑止しつつ、その一方で、労働契約が適正・適切に行われるために必要な措置等との兼ね合いとか、どういう対象者のくくり出しといったものがあり得るのかということについて、審議会で御議論を詰めていただきたいと考えているところです。

 2点目についても同様な観点から検討されるべきことではないかと考えております。

 3点目は、民事の強行法規でどのようなスキームで改正しようとしているのかということですが、これはまさに御議論の取りまとめの仕方によって、さまざまな改正の仕方が論理的にはあり得るだろうと考えているところでございます。例えば労働契約が適切に行われるために必要な措置というものが、一まとまりの法律効果を持ったような内容ということがあるのであれば、それは直ちに労働契約法になじむのかといった点も含めて、まさにこの審議会で御議論いただければと考えているところでございます。

 あわせて、憲法14条との関係でございますが、これは1回の労働契約の期間に関しても、労働基準法上、一定の専門的な資格とか年収要件を満たすような方々については、原則は3年だけれども、例外で5年という例もございます。これは、もともとのよって立つ法律が違う例ではありますけれども、そうしたものも参考になるのではないか。直ちに一定の方々について、社会的なコンセンサスがあって、一定の措置が図られたときに何も例外を講じることは認められないということはないのではないかと考えているところです。

 雑駁ですが、いずれにしても、これからの労働政策審議会で十分御議論いただいて、今、御質問のような点も含めて、しっかりとお答えを出せるようなものをつくり上げていくべく、我々としても努力していきたいと考えております。

○岩村会長 ありがとうございます。宮本委員、よろしいでしょうか。どうぞ。

○宮本委員 ありがとうございます。

 昨年、この労政審で労働契約法改正の議論をした趣旨は、有期労働契約は、雇用の不安定さに加えて、正規に比べて労働条件が非常に低く、キャリア形成のための教育訓練等の機会も少ない、そういった多くの問題点を抱えた雇用形態であり、また、雇止めを背景に、労働条件の切り下げが容易に行われたり、年休取得等の労働者としての権利行使が阻害されたりする問題を踏まえ、これは何とか防止していかなければならない、という趣旨であったと思います。

 このような観点を踏まえれば、今後の労政審での労働契約法に関する検討に当たっては、2012年改正の趣旨が損なわれることのないように、慎重な議論が尽くされるべきだということを申し上げたいと思います。

○岩村会長 では、御意見として承るということにさせていただきたいと思います。

 では、鈴木委員、どうぞ。

○鈴木委員 今、御発言いただいたことに関して、ちょっと申し述べさせていただきたいと思います。

 非正規労働者の雇用の安定を図るというのが労働契約法18条の趣旨だということは十分理解した上で、その枠組みについては三者で決めたことですので、この大原則というのは、施行に向けてしっかり準備するということは大変重要だと思っています。ただ、答申に際しましては、使用者側として実務への影響等、審議時間が足りなかったのではないかということを申し述べさせていただいた経緯もあるところでございまして、一度決めたことを遵守することも大変重要ですけれども、一度決めたからといって議論を封じるということではなしに、虚心坦懐に実態に向き合うというのが本来の審議会のあるべき姿ではないかと思っております。

 以上は、意見ということでお聞きいただければと思います。

○岩村会長 ありがとうございます。御意見ということで承りたいと思います。

 では、新谷委員、どうぞ。

○新谷委員 先ほどの課長の御答弁にも少し関係いたしますが、本日の資料1-2の2ページの、(2)の最初のポツに「これからオリンピックまでのプロジェクトを実施する企業が」と書いてあり、これでいくと有期事業を想起させるわけですけれども、「7年間限定で更新する代わりに無期転換権を発生させることなく高い待遇を提示し優秀な人材を集めることは、現行制度上はできない。」と書いてあるのです。これは、一体どう読めばいいのか。

 先ほども課長から、1回の契約期間の上限については、労働契約において差を設けている云々という御答弁をいただいたように、まさしく労働基準法14条の第1項に有期事業の特例が書いてあって、1回の契約期間の上限が原則3年、専門職5年に限らず、有期事業が終了するまでの間ということで有期事業ができますので、更新するかわりに無期転換を発生させることなく、オリンピックが終わるまでに1回の有期労働契約を締結すれば全く問題なく優秀な人材が集められるわけです。

 これは要するに反復更新をして、それでかつ無期転換権を発生させずに、かつ高い待遇を提示して優秀な人材を集めるということを想定しているのかということなのです。そうなると、労働契約法の17条2項に、必要以上に短い契約期間で反復更新することのないように配慮せよ、との配慮義務が入っているわけであり、労働契約法17条2項との関係、かつ現実の姿として、こんなことをやって短い契約でつないでいって、本当に優秀な人が集まるのかどうか、現行の法の枠組みを理解せずに書かれているのではないかという懸念がありますので、もしその点で何かコメントがあれば聞かせていただきたいと思います。

○岩村会長 では、事務局、お願いします。

○村山労働条件政策課長 まず、今の御質問ですが、資料にも書いていますように、1018日に日本経済再生本部として、厚生労働大臣も参画する全閣僚参加の場で決定しておりますので、今、委員から種々御指摘がございましたが、そうした前提の上に立って、有期の反復更新で無期転換権を発生させることなく、7年間限定でということは、現行制度上は、無期転換権が発生するのでできないという趣旨で書いているということでございます。

 今も御指摘ありましたように、労働基準法14条で一定の事業の完了が必要な期間を定めるものについては、そもそも3年とか5年の規制の適用外になっておりますので、一度の事業の完了として7年間ということ自体、何ら排除しているわけではありませんけれども、ここでの問題意識は、再三になって恐縮ですが、有期の反復更新ということについて問題意識を持って書かれているということが1点でございます。

 その上で、今、御指摘がございましたように、契約法17条2項では、必要以上に短い期間にならないようにという配慮規定もあるわけでございますけれども、そうしたものと総合的にどのように考えて、これに対して答えを出していくかということにつきましては、先ほどの繰り返しになって恐縮ですけれども、ぜひこの労働政策審議会で全国規模の規制改革としての調査/審議をお願いしたいということでございます。

 雑駁なお答えで恐縮です。

○岩村会長 新谷委員、どうぞ。

○新谷委員 違う省庁が書いた文章でしょうから、それ以上のコメントは難しいと思いますが、7年の有期事業で有期雇用契約で人を雇うことは今の14条を使えばできるのに、オリンピックといういかにも国民受けする例を出して提案している点などは、国民が、みんながそうだ、そうだとなびいてしまう目くらましのような感じがして、違和感を覚えるところです。

○岩村会長 今の点につきましては、今後、この場で議論していくということになりますので、そのときに議論をより深めていただければと思います。

 それでは、この報告事項については。では、簡潔にお願いいたします。

○高松委員 国家戦略特別区域法案の附則第2条によれば、全国規模の規制改革として、この労働審議会で検討を行って、かつ来年の通常国会へ制度見直しに関する法律を提出することを目指すということになっています。日程の時間的な余裕もないわけですが、今後具体的にどのような事項あるいはどのようなスケジュールで検討がされていくのか。本分科会においても大変関係が深いものですから、詳細がわかればお教えいただきたいと思います。

○岩村会長 まだ国会で法律が成立していないものですから、なかなか事務局としても答えにくいと思いますが、済みません、お願いします。

○村山労働条件政策課長 分科会長からもございましたとおり、現在、この法案自体が審議中でございますので、その審議の状況を見守り、当然、政府提出法案のできる限り速やかで円滑な成立をお願いしているところですが、成立した後に速やかに公労使各側の先生方とよく御相談の上、どのような対応にしていくかということについて考えていきたいと考えております。

 以上です。

○岩村会長 それでは、成立の暁にはということでございまして、また公労使の先生方に御相談が事務局のほうからあると思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 申しわけありませんけれども、時間の関係もございまして、議題の第1点の報告事項につきましては、ここまでとさせていただきたいと思います。

 次の議題は、今後の労働時間法制のあり方についてということでございます。この議題につきましては、前回のこの場で事務局のほうから、労働時間等総合実態調査結果を報告していただきました。それにつきまして、委員の皆様からクロス集計やデータの精査を求める御意見というものが多数出されたところでございます。これらにつきまして、事務局のほうでさらに調べていただいたということでございますので、説明をまずいただきたいと思います。

 では、よろしくお願いいたします。

○村山労働条件政策課長 それでは、ただいま御指示のありました資料No.2-1から御説明します。前回、多数の御質問、御意見を頂戴いたしましたけれども、クロス集計でお求めいただいたもののうち、割増賃金率関係は集計に時間を要するものですから、それ以外の回答・報告をこの資料に基づき、さしあげたいと思います。

 まず、調査対象事業場数です。前回は、裁量労働制の実施事業場以外に関しては、事業場センサスによって現実の産業別の雇用者数の分布等に復元して集計してデータを御報告したところです。その際に、そもそも調査対象事業場数自体の業種別の分布がどうなっているのかという点の御照会をいただきました。これについて、事業場数、あわせて実数の構成比についてお示ししているのが1ページ目ということです。

 各労働局等におきまして無作為に選んでおりますので、どこかに際立って偏っているわけではないということを御確認いただければと存じます。

 次に、2ページ目から4ページ目です。2ページ目は、業種別の雇用者数、それから、3ページ目、パートタイム比率といったものについて、前回の調査的監督の時点である平成17年との比較を行っているものです。

 その際に、19年に標準産業分類の見直しが行われている関係で、直ちに接続しない分類も少なからずあるわけですけれども、対照可能な範囲で申しますと、例えば2ページ目で雇用者数を見てみますと、製造業ですと1,058万人、全体の22.06が、24年には980万人19.79%と減少している。あるいは、建設業で458万人9.55%が、雇用者数で見て411万人8.30%減少しております。

 一方でパートタイム比率を3ページで見ていただきますと、製造業のパートタイム比率は13.59%から12.71%と減少し、建設業は同じように雇用者数が減少している産業ではございますが、パートタイム比率は4.39%から5.2%と上昇しているという傾向が見てとれるかと思います。

 一方で、雇用者数がふえた産業について見てみますと、2ページに戻りいただいて、医療、福祉に関しまして雇用者数が435万人9.07%から、24年には597万人12.06%と、約3%ポイント増加しておりますが、その内訳を見ますと、3ページでパートタイム比率23.56%から28.53%と、4.97%ポイント増加しているということで、それぞれの産業を取り巻くようなさまざまな環境によって、数字の動きもそれぞれであるのかなと思っております。

 また、これに関しては、2ページ目は労働力調査、3ページ目は毎月勤労統計調査で見ているという点についても、今後どのように数字を扱っていくのかという点について、御指導いただければと考えております。

 4ページ目は、その産業分類の変更についての状況の詳細です。

 次のまとまりが5ページ目から8ページ目でして、5ページ目の資料は、1回目の分科会でも出しました長時間労働者の状況をあらわすのによく用いられる「労働力調査」の、週60時間以上、月に換算すると法定外で八十六、七時間以上働いている雇用者の推移の数表でございます。これに関しまして、男女別、年代別あるいは企業の規模別、さらに産業別にどのようになっているのかということについての御質問を頂戴しました。

 まず、男女別・年代別、従業者規模別に見たのが6ページでして、これも調査的監督の1年前の暦年データで、16年と24年を比較しているところです。全体として12.2%から9.1%に減少しているということは前回も申しましたが、この中で特に週35時間以上就業者、フルタイムに近いような働き方で働いている人の中で、この60時間以上の方の比率がどうなっているのかという数字を見たいというお話もございました。それが16.0%から12.6%ということで、全体としては3.4%ポイント減少している。それぞれの性別、年齢別、あるいは右側の従業者規模別の推移はそのようになっているということです。

 その上で、特に規模別に関しては制度との関係もあるので、直近の時系列的な数字を見たいというお話がありました。それをあらわしているのが7ページ目です。7ページ目を見ていただきますと、先ほどの12.2%と9.1%の間に、平成20年以降ですけれども、最近5年間の推移をお示ししているところでございます。特に22年4月1日からは割増賃金率等の関係の制度改正も施行されているところですが、例えば1~9人とか1029人、3099人、100499人のところで全体に総じて比率が微減傾向になっているのに対して、500人以上のところでは、おおむね横ばいないし微増になっているということから、どのようにこれを受けとめるのかという論点があるのかと考えております。

 続きまして、8ページ目です。特に業種別に少し数字を拾うようにという御指示を頂戴いたしました。先ほども申し上げましたように、非農林業雇用で全体では減少傾向にあるわけですけれども、その中で19年と24年の2時点で比較してみますと、増加しているのは、例えば建設業が12.9%から13.6%と、0.7%ポイント増加。あるいは、電気・ガス・熱供給・水道業は、3.1%から6.5%、3.4%ポイント増加。あるいは、教育、学習支援業が9.7%から11.2%、1.5%ポイント増加ということです。

 この間の生じていたことを考えますと、復興需要に伴います建設業の繁忙もあったかと思いますし、電気・ガス・熱供給・水道業の雇用者のかなりの部分を占める電力産業におきまして、節電対応、原発問題等の対応もあったかと思います。さまざまな背景があろうかと思いますが、業種別に見てみると、このような数字になっているということで確認いただければと存じます。

 それから、9ページから12ページが次のまとまりの資料です。これは、前回、クロス集計してみるようにお話があった点でして、特別条項付き時間外労働に関する労使協定において定める特別延長時間がどうなっているのか、それと、実際の法定時間外労働の実績がどうなっているのか、というクロス集計の結果です。1カ月の数字と1年の数字についてとってみましたが、前回の御議論の中で、1カ月のものについては4月に調査しているという季節的な要因が排除できないので、なるべくその影響を持ち込まないような形で議論を進めるべきではないかという御議論がございました。

 したがって、本日は、1年についての11ページ、12ページの数字、11ページが最長の方に関する数字、12ページが平均的な方に関する数字ですが、これをもって御説明したいと考えております。

 1年の特別延長時間が、表の左側の360時間超から、4005006008001,000という区切りで層化しており、それぞれの特別延長時間に対して、実際に法定時間外労働の実績がどうだったかを、示しております。例えば360時間超400時間以下で見ますと、括弧の部分で特別協定を結んでいる中で1.4%だと示した上で、それを100とした場合に360時間以下に実際には収まっているという数字が81.6%で、その内訳が、100時間以下が11.8%、100時間超150時間以下が5.0%等々となっております。

 さらに大きな縦線の右側で360時間超がどうなっているのかということで、360時間超400時間以下が2.1%。以下、薄い網のかかっているところは問題のある事業上の比率ですが、400時間超500時間以下が8.6%等々となって、全体の平均時間が276時間51分ということです。一番下の1,000時間超で見ていただくと、それが全体に占めるのは1.2%の割合でございますが、実績が360時間以下に収まっている比率が16.6%、360時間超の中で特に山が来ているのが400時間超500時間以下の53.1%と、その上500時間超600時間以下の21.1%あたりになっているということです。

 平均した時間は、一番右にありますが、467時間31分ということで、平均的な実績値というのは、特別条項で定める特別延長時間が長ければ長いほど、最長の方が働かれている平均時間も長いという傾向がある。一方で、それが直ちに特別条項の時間ぎりぎりに張りついているわけではなくて、前回、保険的性格というお話もございましたが、それの半分とか、もうちょっと下の部分で分布の山が来ている実態にもあるという傾向が見ていただけるかと存じます。

 続きまして、12ページ、平均的な方についての傾向値もおおむね同様でございます。ただ、平均的な方ですので、最長の方と比べると左側に実績値が寄っているのが確認していただけるかと存じます。大きな考え方、傾向は、最長の方と同じですので、説明は時間の関係もあり、割愛させていただきます。

 それから、13ページ目に過半数代表者の実態に関しまして、JILPTにおいて平成19年に調査した結果を掲げさせていただいております。これについては、前回、過半数代表者の選出方法等がどのようになっているのか、重要なポイントなので、実態のデータを出すようにというお話があったものです。

 まず、従業員規模が1,000人未満の企業となっておりますのは、この調査自体の問題意識として、これを超える大企業の場合には、過半数組合が十分に機能している場合も多いので、問題点を浮かび上がらせるために1,000人未満の企業をそもそも母数にしているということを前提としていただきたい。回答率に関しまして、JILPTが行いました郵送調査ですので、2割であるという点にも御留意いただき、一定の幅を持って見ていただければと考えております。

 その上で、(1)過半数代表者の選出方法に関しましては、選挙が8.3%、信任が23.5%、全従業員が集まって話し合いが8.5%、職場ごとの代表者など一定の従業員が集まって話し合いが9.6%等となっております。その先、社員会・親睦会などの代表者が自動的に過半数代表者になったが11.2%、会社側が指名したが28.2%で、こうした部分については、労働基準法施行規則に定める過半数代表者に関するルールから言うと、大いに課題のあるところだろうと受けとめております。

 また、過半数代表者の職種でございますが、一般従業員クラスが22.0%、係長・主任・職長・班長クラスが49.5%となっております。その先、課長クラスが13.2%、部長・次長クラス以上が10.6%ということで、最後のほうは管理監督者で専ら構成される事業場でない場合には、課題のあるところかと受けとめております。

 最後に、14ページでございます。調査それ自体の信頼性に関しまして御指摘がございました。これは、最初に申しましたように、ほとんどの調査項目に関しては、事業所サンサスを使って産業構造等が現実のものと平仄をとったものになるように復元しているわけでございますが、裁量労働制に関しましては、導入事業場数が僅少であるということもあって、管内の導入事業場を優先的に選定して実数調査し、その結果をそのまま掲出していることに関する御意見でございました。

 下の参考2にもございますように、そもそも専門業務型裁量労働制を導入している企業は、そういった業務があるという中ですので、全体の2.3%、企画業務型の裁量労働制が0.7%ということです。そうした中で、専門業務型裁量に関する協定届出が7,805件、企画業務型裁量に関する労使委員会の決議届が2,295件ということでして、それに対して調査事業場数がどのようになっているかが一番上の数字です。

 具体的には、専門業務型裁量労働制は1,016事業場、届出事業場数の約13%を網羅している。また、企画業務型裁量労働制について決議届が2,295件出ているうちで、756事業場に関しまして、今回の調査で臨検調査している。届出事業場の約33%であるということで、実施している事業場の相当のところを調べた上でのデータであるということは、御理解いただければありがたいと思いますし、この点を出発点として議論を深めていただければありがたいと考えております。

 雑駁でございますが、資料2-1の説明は以上でございます。

 なお、資料2-2の内容に関しては、時間の関係で説明は省略させていただきますが、現在、規制改革会議の雇用ワーキンググループで、この労働時間関係の問題について、とりわけ労働時間のルールの問題について、ホワイトカラーの労働時間規制を重点課題として、委員とか外部の有識者の方、また労使を含めて関係団体の方、あるいは私ども役所のほうからヒアリングやプレゼンテーション等を行っているところでございます。

 この点につきまして、以前の本分科会におきまして、労働時間については規制改革会議ワーキンググループでも同時に審議されているけれども、三者構成主義の労政審での議論と並行していることに違和感があるというお話もございましたので、11月5日にちょうど同ワーキンググループに厚生労働省を呼んでいただきましたので、本分科会における現在の検討状況や検討スケジュールとあわせて、そうした意見があったことも含めて御紹介させていただいたところです。

 以下の資料の説明は割愛させていただきますが、既に公表されている規制改革会議の雇用ワーキンググループの委員のプレゼン資料です。

 雑駁ですが、説明は以上です。

○岩村会長 ありがとうございました。

 それでは、ただいま事務局から説明していただきました今回のクロス集計、その他の結果につきまして、御意見、御質問がありましたらお願いしたいと思います。また、前回は労働時間等総合実態調査について、一とおり議論はいたしましたけれども、時間の関係もありまして、十分御意見をおっしゃれなかった委員もおられるかと思います。それも含めて御議論いただければと思います。いかがでございましょうか。

 では、春木委員、その後、鈴木委員ということでお願いします。

○春木委員 前回私のほうから、当該労使協定下でどの程度の時間外労働が行われているか、その実態を見るために、特別条項付き36協定の特別延長時間と、法定時間外労働の実績のクロス集計をお願いしたところ、それにお答えいただき、本日説明もいただいたことについて感謝申し上げたいと思います。

 その上で、「特別条項付き時間外労働に関する労使協定における特別延長時間別の法定時間外労働時間の実績」の結果を特に御説明のあった1年のバッファで見てみますと、時間外労働限度基準の告示で定める360時間以内でおさまっている率が、平均的な方で88.7%、最長の方で63.3%という状況になっています。この結果を見れば、法の違反を避ける目的で、実際よりもかなり長目に協定を締結していることが読み取れますし、これを前回の鈴木委員の発言をかりれば、特別条項つき36協定は、いざというときのいわば保険的な性格ということになると思います。しかし、現実的にこれも鈴木委員から御指摘いただきましたが、17年度調査と比較して800時間超えの締結は減少しているという状況があり、この点からすれば、また、先ほど申し上げたように法定内でおさまっている比率も見れば、わざわざ高目に設定する必要は本当にあるのかどうかということを疑問に思います。また、特にさまざまな努力、例えば長時間労働の対象者を限定化しないためにも、さまざまな仕事のやり方などを見直すと言って上限時間の低減を図ってきた企業もあるという実態も、この現象からも明らかになっている状況から、それらの現象の流れというものを加速させていくことも重要だと思います。

 他方、11ページの表によれば、協定時間が長ければ長くなるほど、実際的な時間外労働の平均時間が長くなっており、上限時間を高く設定することが長時間労働を許容する意識にもつながっているのではないか、そうであるならば、これは看過できないと思います。

 したがいまして、以上からも、特別条項つき36協定というのは保険ではなくして、限度時間を超えて時間外労働を行わなければならない特別な事情が予測される場合に締結するという原則を徹底すべきですし、近年増大している過労死、過労自殺やストレス疾患などを未然に防止する意味でも、実質的な青天井になっている、この無制限の状況については規制を設けるべきと考えます。

○岩村会長 ありがとうございます。

 それでは、鈴木委員、どうぞ。

○鈴木委員 ただいま春木委員から御指摘いただいた点で、少しコメントさせていただければと思っています。

 ただいま春木委員から、限度時間を超えて時間外をすることが予測可能かどうかということの御指摘があったところでございます。これは例えば、タイの洪水があったときにタイから部品等が日本に入ってこなくなった。その一時点では労働時間がぐっと減って、稼働率が減ったわけですけれども、洪水から復興した後に生産稼働率を急激に上げないといけないということがあったわけでございます。世界規模でサプライチェーンの拡大があり、経済自体もどんどん世界規模で広がっておりますので、需要の変動が、タイの洪水のときに限らず予測がなかなか難しい。その振れ幅も大変大きいという声は、メーカー以外に、それに関連する物流などの業種でも同様に予測可能性が低くなって、さらに大きな変動に対応しないといけないという傾向が高まっているのではないかと思っております。

 一番いいのは、予測をしながら最大値をぎりぎり最小限の形で設定していくことであり、個別労使の話し合いの中で決めていくことについて、私ども、反対するものではなく、むしろそれを追求していかないといけないと思っております。しかし、そういった事情もあるために、前回も申し上げました36協定の保険的な性格ということについては、担保していただく必要が実務上高くなっているのではないかと思っているところでございます。

○岩村会長 ありがとうございます。それぞれ意見ということだと思います。

 ほかにはいかがでございましょうか。では、権丈委員、どうぞ。

○権丈委員 私のほうから、データのことにつきまして、恐れ入りますが、できれば1つつくっていただきたいものがございます。本日の資料2-1の5ページで、週労働時間別雇用者等の推移を出しております。これは、以前からもいただいておるものなのですが、これにつきまして、週35時間以上60時間未満のものについて、もう少し細かな区分でお願いできないか。それを時系列でお願いできればと思います。労働力調査のデータということでございますので、そちらには10区分とか12区分というのがございますので、その点をいただければと思います。

 背景といたしましては、特に全体規模の調査では、2つの毎月勤労統計調査と労働力調査がございまして、例えば9月27日の資料3の1ページに年間総実労働時間の推移ということで、毎月勤労統計調査がございます。これを見ますと、この3年間、21年を底にしまして若干上がっているということなのですが、週60時間以上のものについて見ますと、最近では割合が下がっているということですので、その間の状況ということをぜひ見て確認しておく必要があるのではないかと思います。

 また、週60時間から急に問題というわけでも、政府の目標としまして、週60時間を長時間労働ということでやってはおりますが、国際的に見ますと週50時間で長時間労働という指摘をされることもございますので、動向を見たいと。それによって、これまでの法改正の効果ということの検証に多少役立つのではないかと思います。

 よろしくお願いいたします。

○岩村会長 事務局のほう、それで大丈夫でしょうか。

○村山労働条件政策課長 承りました。12区分で対応したいと思います。

○岩村会長 ほかにはいかがでしょうか。それでは、秋田委員、冨田委員、鈴木委員という順番でお願いいたします。時間の都合もございますので、多くの人に発言していただきたいものですから、なるべく簡潔にお願いしたいと思います。

○秋田委員 それでは、簡潔に参りたいと思います。

 2つばかり申したいのですが、1つは、今回、おつくりいただきました資料の7ページの週60時間以上の雇用者の時系列的なものの中で規模別という形での資料でございますが、これは先ほど事務局からの御説明の中にもありましたが、割増率が引き上げられた平成22年以降、大企業において60時間以上のものは、この数字で見ていただけるように横ばいの状態でございます。したがって、割増率の引き上げということが長時間労働の抑制ということに本当に効果があるのかどうかというのを、今後、ここで論議していく必要があるのだろうと思います。これが1点でございます。

 もう一つは、前回の資料の中で、私のほうでお願いいたしまして、裁量労働制の調査の事業場数というのをお示しいただきました。この最終ページにあります、企画業務型で756事業場という数をお示しいただきまして、ありがとうございました。

 前回も申し上げたのですが、前回いただいたデータの中でこれを割り返していくと、極端な事例は事業場の標本数1という項目も幾つか見受けられたり、あるいは数事業場という項目もあるように理解いたしました。そういった極端な例につきましては、この調査時に臨検ということでございますので、指導票なりの改善指導が行われたと理解してよろしいのでしょうか。

○岩村会長 以上でよろしいですか。それでは、事務局のほうでお願いします。

○村山労働条件政策課長 いただいた御質問に何ですが、具体的にどのところというのを御教示いただいてよろしいでしょうか。

○秋田委員 具体的に申し上げますと、前回の表59の企画業務型裁量労働制で一番最多の日数のところは、合計の欄を見ますと0.1%と出ています。したがって、756事業場の0.1%ということであれば、これは1事業場であると考えております。ここは内容的にはかなり極端な状況でありますが、ただし、個別の状況が私も全然わかりませんので、ひょっとしたら極めて工夫されて、いろいろやっているのかもしれませんが、こういったところでは本当にみなし労働時間と同様の実態が行われていたのか、あるいはこれは別途、是正指導の対象であったのかどうか、お答えできるかどうかも含めてお願いします。

○岩村会長 事務局、いかがでしょうか。

○村山労働条件政策課長 あくまで一般論としてお答え申し上げますけれども、余りにも極端な長時間、あるいは実質休日がほとんどとれていないということであれば、それはみなしの制度というよりは、むしろ労使委員会での決議が社会上求められておりますけれども、そうしたものが適正に行われているかを直ちに確認し、その上で必要であれば指導票等を交付しているケースもあろうかと思います。具体的に特定の事業場についてどういう対応を取っているかについては、差し控えさせていただきたいと思います。

○秋田委員 そうしますと、11,575事業場の中の1事業場が極端な例として出るわけですけれども、それについては個別に指導されているということでございますので、全体の裁量労働制の活用の促進という意味からは、極端な例に引っ張られない論議が必要じゃないかと考えています。

○岩村会長 ありがとうございます。

 それでは、冨田委員、どうぞ。

○冨田委員 私からも裁量労働制の労働時間の把握のことについて、1点お示ししていただきたい点があります。本日、資料2-1の「裁量労働制の導入事業場について」では、調査事業場の割合は、専門業務型で届出事業場の約13%、企画業務型で届出事業場の33%となっており、その数字を見ますと相当程度信頼性の高い調査の結果であると受けとめております。

 その上で、前回、私のほうから裁量労働制の労働時間の状況について、どのように把握されているのかということをお尋ねし、今回の調査の中において、さまざまな指導も含めながら、例えば出退勤のチェックとか労使でのチェック等々、お示しいただいておりますが、実際に御報告いただいた状況を見ると、みなしの時間に対して労働時間の実態が長いという結果が出ており、また、「みなし労働時間制」が適用される労働者については、そもそも「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」から除外されていますので、特に前回、御報告いただきました健康福祉確保の一端からすると、過重労働の防止策というのは非常に重要かと思いますので、実際にどのような形で実労働時間の把握がなされたのか、その具体的な内訳や割合などを次回お示しいただければと思います。

○岩村会長 事務局、お願いします。

○村山労働条件政策課長 前回、使用者側委員の先生からも具体的な実例に則した議論も必要ではないかという御議論もありました。そういう中で、健康・福祉確保措置、どのようなものであるかというのは極めて重要な論点だと思いますので、労使各側と御相談の上で何かできるか、よく考えてみたいと考えております。

○岩村会長 よろしくお願いします。

 それでは、鈴木委員、お願いします。

○鈴木委員 手短に申し上げたいと思います。

 6ページの資料でございますけれども、週労働時間60時間以上の雇用者の割合を、パートタイム労働者を含む形とフルタイムに近い週35時間以上の占める割合でそれぞれお示しいただきました。それぞれ3%ポイント以上減少しているということが確認されているわけでございます。とかくパートタイム労働者がふえたために、全体の労働時間が減ったにすぎないという見方もあるわけでございますけれども、このデータから見る限りは、フルタイム労働者と思われる層も、長時間労働対策が着実に進んでいる状況にあるということがうかがえるのではないかと思います。

 以上でございます。

○岩村会長 ありがとうございます。

 ほかにはいかがでございましょうか。では、田中委員、どうぞ。

○田中委員 ありがとうございます。

 いろいろなデータを拝見させていただいたのですが、8ページに業種別の週労働時間60時間以上の雇用者割合というものがございますけれども、例えば職種別のデータというのをお示しいただくことは可能でしょうか。もし可能であれば、業種の中でも現業職あるいは事務職あるいは研究職、営業職等々で、一つの業種でくくるのは、議論するのは危険かなという気がいたします。もし可能でございましたら、職種別というのを次回あるいはその後でも結構ですので、ぜひおまとめいただければと思っております。

○岩村会長 事務局、いかがでしょうか。

○村山労働条件政策課長 「就業構造基本調査」などでかなり詳細に、職種について、労使の御関心の高いホワイトカラーの分も含めて、とれるデータがあると思いますので、直近のものと、その前のものの比較のような形で考えてみたいと思っております。

○岩村会長 よろしいでしょうか。では、お願いいたします。

 ほかにいかがでございましょうか。では、新谷委員、どうぞ。

○新谷委員 資料2-2でもよろしいですか。

○岩村会長 どうぞ。

○新谷委員 この労政審での労働時間法制の検討と並行して規制改革会議の雇用ワーキングでも労働時間法制についての検討されているようであります。この雇用ワーキングは、規制改革の委員として政府が任命された5人のワーキングの委員と、2人の学者の専門委員からなる構成で検討されています。これまでも申し上げてきたように、この労政審では、それぞれ労使の代表的な団体から委員が出てきており、使用者側では、日本経団連は日本を代表する1,300社程度の企業の代表として、日商は全国五百幾つかの商工会議所、並びに加盟組織は百何十万社の代表として、中央会は企業組合の代表として、そして、我々連合は約700万人の組合員と全ての労働者の代表として、この場にいるわけです。しかし、雇用ワーキングの場合は、申し上げたような5人の有識者の方が自由に発言されて、それが政府で閣議決定され政策のベースになってしまっています。

 お聞きしたいのは、資料2-2の中で「無限定正社員」という言葉がよく出てくる点についてです。雇用WGの座長も「無限定正社員」という言葉をよく使うのですが、そもそも我が国において無限定な働き方というのがあるのかどうか。今、ちょうど話をしている労働時間においても当然規制がかかってまいりますし、配転法理で企業による自由な配転も当然できないわけでありますので、ここで言っている「無限定正社員」というのは一体何を想定しているのか、よくわかりません。良く出てくる言葉ですので、一度、厚労省の考え方をこの機会に教えていただきたいと思います。

 また、労働時間法制の比較について、欧米との比較はこれまでやってきたが、日本企業のライバルは韓国、中国、東南アジアなので、そこの法制とのバランスを考えるという提起が出されています。韓国も非常に長時間ですけれども、長時間である発展途上国も含めて、そこの時間を考えて労働時間法制を考えるという提起が出されておりまして、これもいかがなものかと思います。ここはコメントは求めませんので、無限定正社員についての考え方があれば、教えていただきたいと思います。

○岩村会長 事務局、いかがでしょうか。

○村山労働条件政策課長 これは、今まさに新谷委員もおっしゃったように、5人の委員の方々あるいは2人の専門委員の方々が、自由な立場から経済社会全体の構造改革に資する規制改革について御議論されている場でのお話ですので、この資料自体について、コメントするのは差し控えたいと思います。御質問の趣旨は、一般的に無限定正社員という言葉に対して厚労省の見解いかんということであると思います。

 私ども、そもそも限定正社員という言い方も含めて、行政の文書でありますとか、政務が国会で答弁する答弁メモでは、そういった言い方は使っておりません。多様な正社員をめぐる議論は、今、さまざまあるわけですけれども、その中で、それを具体的に定義づければ、職務とか勤務地とか労働時間が何らか限定されている人ということで使われているのは事実だと思いますけれども、これを限定正社員と言ってしまいますと、対概念としての無限定正社員というのは、まさに今お話のありましたように、何のルールも保護もない人というのを認知するのかという話にも、それは恐らくそういう言葉を使われている方々も本意ではないと思いますので、政府としてもそういった考え方はとっていないということです。

 その上で、多様な正社員自体は、例えば非正規の方のキャリアアップ、ステップアップですとか、あるいは会社の人事権の行使の幅が比較的広いような、いわゆる日本型の正社員の方のワーク・ライフ・バランスという観点から議論を深めるべき点は多々あると思いますけれども、それは一概に向こう側にある無限定な働き方というものを認知するという文脈ではなくて、よりよいディーセントな働き方を目指しての文脈の中で検討されるべきものであると考えているところでございます。

○岩村会長 新谷委員、どうぞ。

○新谷委員 ありがとうございます。最後、まとめていただいた内容については、今後、ディーセントワークや、ワーク・ライフ・バランスも含めての働き方がどうあるべきか、労働時間法制の中で検討していくべきだと思っておりますけれども、私たちとしては、雇用形態が変わらないと、そういった多様な働き方ができないというのは本末転倒であり、正社員も含めて、多様な働き方を検討していくべきであると思っています。今は、非正規労働者にならないと多様な働き方が実現できない世の中になっておりますので、今回の法改正においては、正規雇用であっても多様な働き方が実現できる法改正を目指すべきであるということを、改めて申し上げておきたいと思います。

○岩村会長 ありがとうございます。

 ほかにいかがでございましょうか。秋田委員、どうぞ。

○秋田委員 済みません、今の新谷委員の御発言に関連するのですが、私も疑問に思っているのですが、そもそも正社員という定義そのものが極めてあいまいだと思うのですが、これについて、厚労省としてはどういうふうに理解されているのでしょうか。

○岩村会長 難しい御質問だと思いますが、お願いいたします。

○村山労働条件政策課長 秋田委員、お見込みのとおり、法律上、何か定義がある、あるいは政府として閣議決定した文書とか意思統一したものがあるというわけではございません。一般に正社員という言葉を使うときには、直傭で期間の定めがなくて、フルタイムで働かれる方々という文脈で使われていると思います。また、先ほどの新谷委員の御発言とも関連しますが、その中である程度配転の幅とか仕事の内容とか時間外を命じられる頻度といったものについてのあり方が、今、議論されている多様な正社員の議論であると考えております。

 お答えになっているかどうかわかりませんけれども、そのように認識をしております。

○岩村会長 ありがとうございます。いずれにしろ、正社員というのは法律上の概念ではございませんで、したがって、ある意味で日本の労使関係あるいは雇用管理の中で生まれてきた、何となく通念のようなものかなと理解するしかないと思います。他方で、だからこそ皆さん、考えるイメージがそれぞれに違っていたりということがあるので、それが時として整理されずに議論されると混線する原因になるのかなと、法律家の立場からするとそういうふうに思います。

 もし、御発言があればよろしいでしょうか。

○秋田委員 まさに、そこのところがイメージが全くずれていると、今後の論議にならないと思います。例えば労働契約法で無期転換が適用されて、無期になった。今、村山課長の御説明の中では、直傭で期間の定めがないということであれば、無期転換された従業員に対しては、これは正社員なのかということになります。ただ、契約法上は期間以外の労働条件は変更しなくてよいということでございますので、これがイコール正社員とはならないと思います。もう現実にそういういろいろな多様な雇用の中身が出ているという実態をぜひ御理解いただければと思います。

○岩村会長 ありがとうございます。

 では、新谷委員、どうぞ。

○新谷委員 関連して、今、秋田委員が発言された内容については、確かに法律上の定義がないということで概念があいまいになっているということはあると思います。たしか厚労省職業安定局に設けられた雇用政策研究会の中で、先ほどの要件に加えて、長期の雇用システムにおける処遇を受けている者という要件が入っていたと思います。そこが、単なる無期の方と正社員との違いだと思いますので、今後論議するに当たって、この辺も改めて論議したらどうかと思っております。

○岩村会長 ありがとうございます。

 ほかにいかがでございましょうか。よろしいでしょうか。

 ありがとうございます。

 それでは、きょうの分科会はこのあたりでということにさせていただきたいと思います。

 次回の日程でございますけれども、これにつきまして事務局のほうから御説明をお願いします。

○村山労働条件政策課長 次回の労働条件分科会につきましては、1217日火曜日13時から15時を予定しております。前回の御意見にあったクロス集計のうち作業に時間を要する割増賃金関係、あるいは本日、先ほど職種別等々のお話や裁量労働の具体的な例というお話などもいただきました。そうしたデータについての共通認識化の議論を引き続きお進めいただき、それで年内最終回でございますので、できたらそこまでで労働時間のデータ的な議論について、ある程度の一つの区切りをつけさせていただければありがたいと思っております。開催場所は、また追って御連絡申し上げたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。

○岩村会長 ありがとうございます。

 それでは、本日の分科会はこれで終了ということにさせていただきたいと思います。

 議事録の署名でございますけれども、労働者代表につきましては八野委員に、それから使用者代表については田中委員に、それぞれお願いいたします。

 本日は、お忙しい中、ありがとうございました。


(了)

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