2013年7月26日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会 議事録
日時
平成25年7月26日(金)15:00~
場所
厚生労働省共用第8会議室
出席者
出席委員(14名)五十音順
大槻 マミ太郎、 川崎ナナ、 菊池嘉、 清田浩、
佐藤俊哉、 鈴木邦彦、 関水和久、 田島優子、
田村友秀、 豊見雅文、 中島恵美、 福山哲、
前崎繁文、◎吉田茂昭
(注) ◎部会長 ○部会長代理
欠席委員(7名)
○新井洋由、 庵原俊昭、 奥田真弘、 濱口功、
半田誠、 増井徹、 山本一彦
行政機関出席者
今別府 敏雄 (医薬食品局長)
成田昌稔 (大臣官房審議官)
佐藤岳幸 (審査管理課長)
森口裕 (安全対策課長)
矢守隆夫 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)
山本弘史 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)
俵木 登美子 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構上席審議役)
中野惠 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)
大槻 マミ太郎、 川崎ナナ、 菊池嘉、 清田浩、
佐藤俊哉、 鈴木邦彦、 関水和久、 田島優子、
田村友秀、 豊見雅文、 中島恵美、 福山哲、
前崎繁文、◎吉田茂昭
(注) ◎部会長 ○部会長代理
欠席委員(7名)
○新井洋由、 庵原俊昭、 奥田真弘、 濱口功、
半田誠、 増井徹、 山本一彦
行政機関出席者
今別府 敏雄 (医薬食品局長)
成田昌稔 (大臣官房審議官)
佐藤岳幸 (審査管理課長)
森口裕 (安全対策課長)
矢守隆夫 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)
山本弘史 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)
俵木 登美子 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構上席審議役)
中野惠 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)
議事
○審査管理課長 定刻となりましたので、「薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会」を開催いたします。本日はお忙しい中、御参集いただきましてありがとうございます。
本日の委員の出席状況ですが、新井委員、庵原委員、奥田委員、濱口委員、半田委員、増井委員、及び山本委員より御欠席との連絡を頂いているところです。大槻委員、清田委員、鈴木委員におかれましては、後ほど来られる予定です。現在のところ、当部会の委員数21名のうち11名の委員の御出席を頂いておりますので、定足数に達していることを報告申し上げます。
続きまして、事務局に人事異動がありましたので御報告いたします。厚生労働省から、医薬食品局長の今別府です。大臣官房審議官の成田です。安全対策課長の森口です。続きまして、PMDAから、安全管理官の山本です。上席審議役の俵木です。新薬審査第五部長の佐藤です。本日は欠席ですが、審議役(国際・新薬審査担当)の山田です。最後に、申し遅れましたが、審査管理課長に着任いたしました佐藤でございます。どうぞよろしくお願いいたします。以上になります。
吉田部会長、以降の議事進行をよろしくお願いいたします。
○吉田部会長 本日の審議に入ります。事務局から、配布資料の確認と、審議事項に関する競合品目・競合企業リストについての報告をお願いします。
○事務局 資料の確認をさせていただきます。本日、席上に「議事次第」、「座席表」、当部会の「委員名簿」を配布しています。議事次第に記載されている資料1~13をあらかじめお送りしています。このほか、資料14「審議品目の薬事分科会における取扱い等の案」、資料15「専門委員リスト」、資料16「競合品目・競合企業リスト」を配布しています。また、当日配布資料として、資料17「佐藤委員からの御質問」、また資料2の追加資料の1枚紙、さらに資料番号を付していませんが、川崎委員からの資料13に対するコメントの1枚紙を配布しております。
続きまして、本日の審議事項に関する競合品目・競合企業リスト、資料16について報告します。各品目の競合品目選定理由については、次のとおりです。
資料16の1ページです。フルティフォームほか3品目です。本品目は「成人の気管支喘息」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
2ページです。ゾレア皮下注用150mg及び同皮下注用75mgです。本品目は「気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない難治の患者に限る)」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目はなしとしております。
3ページです。ユニタルク胸膜腔内注入用懸濁剤4gです。本品目は「悪性胸水の再貯留抑制」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
4ページです。アレジオン点眼液0.05%です。本品目は「アレルギー性結膜炎」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
5ページです。シナジス筋注用50mgほか3品目です。本品目は「RSウイルス感染による重篤な下気道疾患の発症抑制」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目はなしとしております。
6ページです。タラポルフィンナトリウムです。本品目は「悪性脳腫瘍」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目はなしとしております。以上です。
○吉田部会長 ただ今の事務局からの説明に、特段の意見等ありませんでしょうか。ないようですので、本部会の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについては、皆様の御了解を得たものといたします。
委員からの申出状況についての報告をお願いします。
○事務局 各委員からの申出状況については、次のとおりです。
議題1「フルティフォームエアゾール」、退室委員なし、議決には参加しない委員は清田委員です。
議題2「ゾレア皮下注用」、退室委員なし、議決には参加しない委員は大槻委員です。
議題3「ユニタルク胸膜腔内注入用懸濁剤」、退室委員なし、議決には参加しない委員は田村委員です。
議題4「アレジオン点眼液」、退室委員なし、議決には参加しない委員は大槻委員です。
議題5「シナジス筋注用及び同筋注液」、退室委員なし、議決には参加しない委員は大槻委員です。
議題6「タラポルフィンナトリウム」、退室委員は関水委員、議決には参加しない委員はなしです。以上です。
○吉田部会長 本日は審議事項が6議題、報告事項は5議題、その他が2議題となっております。審議事項の議題1に移ります。議題1について、機構からの概要説明をお願いします。
○機構 審議事項議題1、資料1-1、資料1-2「医薬品フルティフォーム50エアゾール56吸入用、同125エアゾール56吸入用、同50エアゾール120吸入用及び同125エアゾール120吸入用の生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」医薬品医療機器総合機構より説明いたします。
本剤は、吸入ステロイド薬(以下、「ICS」)であるフルチカゾンプロピオン酸エステル(以下、「フルチカゾン」)及び長時間作用性ベータ2刺激薬(以下、「LABA」)であるホルモテロールフマル酸塩水和物(以下、「ホルモテロール」)を有効成分とする気管支喘息治療用の加圧式定量噴霧式吸入剤です。ICS/LABA配合剤は、定期使用を要する気管支喘息患者においては利便性が高く、アドヒアランスの向上等につながることから、治療ガイドラインにおいて使用が推奨されています。本邦では、気管支喘息に係る効能・効果を有するICS/LABA配合剤として、フルチカゾンとサルメテロールキシナホ酸塩、及びブデソニドとホルモテロールが承認されていますが、新規の配合剤として新たな治療薬の選択肢を提供することを目的として、本剤の開発が行われました。海外において、本剤は、2013年4月現在、欧州を含む20か国で承認されています。本申請の専門委員としては、資料15に記載しております6名の委員を指名いたしました。
主な審査内容について簡単に説明いたします。審査報告書24ページ「2)第II相試験」の項を御覧ください。日本人気管支喘息患者を対象に、本剤に含まれるフルチカゾン単剤と国内既承認のフルチカゾン製剤との治療学的同等性を検証するため、無作為化単盲検並行群間比較試験が実施されております。用法・用量は、本剤と同一の吸入器にフルチカゾンのみを封入したもの(以下、「KRP-108フルチカゾン」)又は既承認製剤のフルチカゾン(以下、「既存フルチカゾン」)50μgを1回2吸入、1日2回投与することと設定され、投与期間は4週間と設定されております。主要評価項目である投与4週後のモーニングピークフローのベースラインからの変化量の結果は、25ページ表13に示したとおりであり、KRP-108フルチカゾン群と既存フルチカゾン群との群間差の90%信頼区間の下限値は、同等性マージンの下限値である-15L/minを下回ったことから、治療学的同等性は検証されませんでした。一方、下に示す表14のとおり、呼吸機能検査値、喘息症状等に関する各副次評価項目においては、両群で大きな相違は認められませんでした。喘息予防・管理ガイドライン2012年等の治療ガイドラインにおいて、薬物療法による喘息コントロールについては、呼吸機能の改善だけではなく、喘息症状及び日常生活への影響も考慮して判断することが推奨されていることも踏まえ、これらの副次評価の結果も勘案し、機構はモーニングピークフローの両群間の差違は臨床的に大きな意義のある差違ではないと考え、第III相試験における本剤中のフルチカゾンの用量を既承認フルチカゾン製剤と同様に、通常用量として1回100μg1日2回投与と設定することは許容可能と判断しました。
審査報告26ページ、「3)第III相試験」の項を御覧ください。日本人気管支喘息患者を対象に、本剤の有効性及び安全性を検証するため、既存フルチカゾンを対照とした無作為化単盲検並行群間比較試験が実施されております。なお、本試験は当初、KRP108フルチカゾンに対する本剤の優越性を検証し、配合意義であるフルチカゾンに対するホルモテロールの上乗せ効果を示す予定とされておりましたが、KRP-108フルチカゾンと既存フルチカゾンとの治療学的同等性が検証されなかったこと、また、実臨床において本剤は主にフルチカゾン等の既承認ICSから切り替えて使用されることが想定されることから、より保守的な有効性評価となるよう、既存フルチカゾンに対する本剤の優越性を検証する試験デザインに変更して実施されました。用法・用量は、本剤(フルチカゾン50μgとホルモテロール5μg)、又は既存フルチカゾン50μgを1回2吸入、1日2回投与することと設定され、投与期間は8週間と設定されております。結果については26ページ、表16に示しておりますとおり、主要評価項目とされた投与8週後までの平均モーニングピークフローのベースラインからの変化量は、本剤群30.5L/min、既存フルチカゾン群9.9L/minであり、本剤の既存フルチカゾンに対する優越性が検証されたことから、ICS/LABA配合剤としての本剤の有効性は示されたと判断しました。
35ページ以降「(3)安全性について」を御覧ください。ICSであるフルチカゾンにおいては、副腎皮質機能への影響をはじめとする全身性の有害事象、LABAであるホルモテロールにおいては、重篤な心血管系有害事象等が特に留意すべき有害事象と考えられることから、これらを中心に国内外臨床試験成績に基づき検討したところ、ステロイドに関連する有害事象については37~38ページの記載のとおり、またベータ2刺激薬に関連する有害事象については38~41ページの記載のとおり、類薬を上回るリスクは示唆されませんでした。しかしながら、国内臨床試験で評価例数は限られており、特に高用量投与時、長期投与時の安全性データが限られていることから、44ページ「(1)製造販売後調査について」に記載しております製造販売後調査において、本剤の安全性について引き続き検討する必要があると考えております。
以上の審査を踏まえ、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で御審議いただくことが適当と判断しました。本申請に係る再審査期間は6年、また製剤は毒薬及び劇薬のいずれにも該当せず、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。
以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○吉田部会長 委員の先生方からの御質問、御意見をお願いします。
○菊池委員 29ページなどに、本剤で鼻咽頭炎の有害事象が約5割までに上がっている記載があり、ほかのところでも結構あるのですが、この辺の御配慮は、何かありますでしょうか。添付文書には、その辺について特段書かれていないようですが、いかがでしょうか。
○機構 鼻咽頭炎については、多くは軽症、中等症で、臨床上問題となる事例は確認されておりません。気管支喘息患者の臨床試験では一般的に鼻咽頭炎が多く観察される事象ですので、特に本剤で発現率が高いということはなく、類薬を上回るリスクが認められているとは考えておりません。
○菊池委員 しかし、48%ですから、軽症なものを入れたとしても、かなり高いという言い方をしなくてもよろしいのですか。
○機構 臨床試験が実施された時期が冬の時期も含まれた影響もあり、発現率が多くなったという可能性も考えられると思います。
○吉田部会長 よろしいですか。ほかにございますか。
○佐藤委員 審査報告書の20~21ページにかけて、スペーサーの使用のことが書かれているのですが、スペーサーの使用はどういう予定というか、どうすることになっているのでしょうか。
○機構 スペーサーの使用の有無は、どちらも可能と考えております。
○佐藤委員 21ページの上に、スペーサーを使用して本剤を投与した日本人の評価症例はないことから、製造販売後調査において、「スペーサーの使用の有効性及び安全性に及ぼす影響について確認する必要がある」と書かれているのですが、その後の製造販売後調査の所を見ると、スペーサーの使用についての調査項目が書かれていないのですが、その点はどうなっているのでしょうか。
○機構 スペーサーの有無の影響については、調査の中で確認するよう、申請者に指示しております。
○吉田部会長 よろしいですか。ほかにございますか。審査の経緯が分かりにくかったのですが、海外でもKRP-108フルチカゾンとして承認されているのですね。
○機構 御質問としては、KRP-108フルチカゾンが海外で承認されているかということですか。
○吉田部会長 そうです。
○機構 海外では、配合剤のみが承認されております。
○吉田部会長 単体でなくて、ですね。
○機構 はい。本吸入器を用いたフルチカゾン単体は、日本と同様、承認されておりません。
○吉田部会長 分かりました。よろしいでしょうか。特に御意見がなければ、議決に入ります。なお、清田委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。お諮りします。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。
御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
議題2に移ります。議題2について、機構からの概要説明をお願いします。
○機構 審議事項議題2、資料2「医薬品ゾレア皮下注用150mg及び同皮下注用75mgの製造販売承認事項一部変更承認の可否及び再審査期間の指定について」医薬品医療機器総合機構より説明いたします。
本剤の有効成分であるオマリズマブ(遺伝子組換え)は、ヒト化マウス抗ヒトIgEモノクローナル抗体であり、血中遊離IgEに結合し、肥満細胞、好塩基球等の炎症細胞に対するIgEの結合を阻害することにより、炎症細胞の活性化を抑制し、アレルギー反応を抑制すると考えられています。本邦において本剤は、成人に対し気管支喘息に係る効能・効果で承認されており、用法・用量は、審査報告書5ページ上段に示しています既承認の投与量換算表に従い、初回投与前の血清中総IgE濃度及び体重に基づき、1回当たり75~375mgを、2週又は4週間隔で皮下投与することとされております。
初回申請時において、本剤投与により血清中遊離IgE濃度を25ng/mL以下まで低下させることで臨床効果が示されること、血清中遊離IgE濃度を25ng/mL以下まで低下させるための本剤の用法・用量は、投与前のIgE濃度、1IU/mL及び体重1kg当たり0.008mgの2週間隔皮下投与、又は0.016mgの4週間隔皮下投与であることが示されており、この臨床推奨用量に基づき、投与量を算出する煩雑さを軽減するために、本投与量換算表が作成されております。
本申請は、小児適応の追加及び投与量換算表の変更に係るものです。5ページ上段の表に示していますように、既承認の投与量換算表で対応可能な範囲は、血清中総IgE濃度が700IU/mLまで、また体重が30kgまでですが、喘息患者のIgE濃度は、アレルギー疾患の中でも比較的高値で、特に小児では高い傾向があるため、既承認の投与量換算表では本剤の適用が不可となる患者が存在します。そのため、1回当たりの最大投与量を600mgまで増量することで、小児も含め血清中総IgE濃度が700IU/mLを超える患者に対する本剤の投与を可能にすること。さらに、既承認の投与量換算表で2週間隔投与とされている一部の範囲について、1回当たりの投与量を2倍とし、投与間隔を4週に変更することにより、患者の通院負担を軽減することなどを目的として、開発が行われました。
海外において、小児への適応及び1回当たり600mgまでの用量追加については、2013年4月現在、それぞれ35か国以上で承認されており、投与間隔の変更については、2012年5月にEUで承認されています。本申請の専門委員としては、資料15に記載されております5名の委員を指名いたしました。
主な審査内容について、簡単に説明いたします。まず、小児適応の追加に係る審査内容について説明いたします。本邦において、本剤の適用対象となる最重症持続型のアレルギー性喘息患児数は限られることから、本邦では小規模の非盲検非対照試験が実施され、海外で実施されたアレルギー性喘息患児における検証的試験成績と併せて、日本人患児における本剤の有効性及び安全性が検討されております。
海外の検証的試験について、審査報告書12ページ中段、2)外国人アレルギー性喘息患児を対象とした試験、IGE025AIA05試験の項を御覧ください。既存治療で効果不十分な中等症から重症のアレルギー性喘息患児627名を対象に、11ページ、表7の投与量換算表を用いて、本剤又はプラセボを4週間毎あるいは2週間毎に皮下投与したときの有効性及び安全性を検討するため、プラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験が実施されております。その結果、13ページ上段の表9に示していますように、主要評価項目であるステロイド固定期の増悪発現頻度について、本剤群のプラセボ群に対する比は0.693であり、本剤群はプラセボ群に比べ増悪発現頻度を有意に抑制することが示されました。また、薬力学に関する評価項目である投与後24週の血清中遊離IgE濃度の幾何平均は15.0ng/mLであり、25ng/mL以下に抑制されました。
次に、国内臨床試験について、審査報告書10ページ中段、1)日本人アレルギー性喘息患児を対象とした試験、CIGE025B1301試験の項を御覧ください。既存治療で効果不十分な最重症持続型のアレルギー性喘息患児38名を対象に、11ページの表7の投与量換算表を用いて本剤を4週間毎、あるいは2週間毎に皮下投与したときの有効性及び安全性を検討するため、非盲検非対照試験が実施されております。その結果、11ページ中段に示していますように、主要評価項目である投与後24週の血清中遊離IgE濃度の幾何平均は15.6ng/mLであり、海外の検証試験と同様に25ng/mL以下に抑制されました。また、ピークフロー、喘息増悪発現頻度といった副次評価項目等についても、ベースラインと比べて減少する傾向が認められました。
以上の結果、並びに日本人及び外国人併合データを用いた母集団PK-PD解析より、成人と小児及び国内外で、本薬のPK-PDの関係がほぼ同様であることが示されていること、安全性についても、27ページの表19などに示しているように、血清中総IgE濃度が高い患児における有害事象発現状況も含め、成人の安全性プロファイルと比較し、新たな問題は示唆されていないことを踏まえ、機構は小児適応の追加について許容可能と判断しました。
次に、1回当たりの用量の追加及び投与間隔の変更に係る審査内容について説明いたします。審査報告書20ページの2)新たな投与量換算表で設定される用法・用量の有効性及び安全性についての項を御覧ください。本項の6行目に記載していますように、1回当たりの用量の追加については、海外臨床試験において700~2000IU/mLの高濃度の投与前血清中総IgE濃度を有する成人患者に対して、1回当たり本剤450、525、又は600mgを投与したところ、血清中遊離IgE濃度は25ng/mL以下に抑制され、かつ本剤群ではプラセボ群と比較し即時型喘息反応を有意に抑制することが示されています。本邦では、臨床試験は実施されていませんが、初回申請時に日本人と外国人のPK-PDは同様であることが示されており、母集団PK-PD解析に基づくシミュレーションからも、日本人喘息患者において当該用量により血清中遊離IgE濃度は10ng/mL付近まで低下することが予測されております。また、投与間隔が変更される用法・用量についても、母集団PK-PD解析に基づくシミュレーションより、日本人及び外国人のいずれにおいても、血清中遊離IgE濃度は10ng/mL付近まで低下することが予測されております。
さらに、本剤600mgまでの高用量投与時の安全性について、海外高用量試験併合データに基づき検討したところ、21ページの表16及び22ページの表17に示しているように、主な有害事象又は本剤投与との関連が示唆されている血小板数減少、出血及び動脈血栓塞栓イベントの発現が用量依存的に増加する傾向は示唆されませんでした。
以上の結果、並びに本申請において追加・変更される用法・用量も、既承認の推奨用法・用量である投与前のIgE濃度1IU/mL及び体重1kg当たり0.008mgの2週間隔皮下投与、又は0.016mgの4週間隔皮下投与を満たすものであること、アレルギー反応とIgE抗体との関係を踏まえると、本剤投与によりIgE濃度が十分に抑制される場合には、IgEを介したアレルギー反応が抑制されることは推測可能であることを踏まえ、機構は1回当たりの用量の追加及び投与間隔の変更について、許容可能と判断しました。
最後に、34ページ中段、(1)製造販売後調査についての項を御覧ください。追加・変更される用法・用量における日本人成人アレルギー性喘息患者での投与経験はなく、日本人アレルギー性喘息患児の臨床試験成績も限られていることから、成人及び小児、それぞれを対象として、記載のような製造販売後調査により、追加・変更される用法・用量における使用実態下での安全性及び有効性について、更に検討することが予定されております。
以上の審査を踏まえ、本申請を承認して差し支えないとの結論に達し、本第二部会で御審議いただくことが適当と判断しました。本申請に係る再審査期間は4年とすることが適当と判断しています。薬事分科会では報告を予定しています。
なお、部会に先だち、佐藤委員より3点、御質問を頂いております。1点目は、「審査報告書31ページ、下から7~10行目において、小児の成長に伴う体重増加により、用法・用量の変更があり得ることが指摘されていますが、換算表では投与前の血清中総IgE濃度が600~700IU/mLのセルの対象者が、体重20~25kgのセルから25~30kgのセルに移ったときのみ4週間隔投与から2週間隔投与に用法も変更となり、30~35kgのセルに増加すると再び4週間隔投与に戻ります。この4週間隔投与から2週間隔投与の変更にどのぐらいの意味があるのか、375mg、4週間隔投与では何がいけないのか、申請者に確認をお願いします」との御質問です。
この点について申請者は、追加資料で配布しておりますが、既承認の投与量換算表で設定された投与レジュメは、75mg、150mg、225mg又は300mgの4週間隔投与、若しくは225mg、300mg、又は375mgの2週間隔投与の計7種類であり、また成人適応の承認当時は150mgバイアルのみの承認であったことから、投与レジュメの種類が増え、複雑になることによる誤投与を防止するため、375mgの4週間隔投与という投与レジュメは設定しなかった旨を説明しております。また、本申請では海外臨床試験データを利用していることから、投与量換算表も海外と合わせ、当該セルの用法・用量を225mg、2週間隔投与とした旨を併せて説明しております。
2点目の御質問は、「審査報告書31ページ4~10行目、本剤の使用は効能又は効果に関する使用上の注意において、『症状が安定しない』患者とされており、その定義が成人と小児で異なっています。このことで、小児期に本剤を投与、使用していた患者が、成人期での『症状が安定しない』の定義に当てはまらずに本剤を使用できなくなるケースもあり得ると思いますが、この点は問題ないでしょうか」との御質問です。
この点については、小児において症状が安定しない患者、すなわち「毎日、喘息症状が観察される」、「週1回以上の夜間症状が観察される」、「週1回以上、日常生活が障害される」のいずれかに該当し、本剤の投与が必要となる最重症の患者では、持続する気道炎症により気道障害とそれに引き続く気道構造の変化が惹起され、これに伴い非可逆性の気流制限、気道過敏性の亢進等が引き起こされていると考えられます。このような患者において、成人における「症状が安定しない」患者、すなわち「喘息に起因する明らかな呼吸機能の低下」、「毎日喘息症状が観察される」、「週1回以上、夜間症状が観察される」のいずれにも該当せず、本剤を使用できなくなる可能性は低いと考えております。この点に関しては、呼吸器の専門委員の御意見も確認しております。
3点目の御質問は、「小児に関しては、成長による体重増加に伴う用法・用量の変更による安全性が懸念されますが、現行の市販後調査計画では、観察期間が成人・小児ともに1年となっており、小児の成長による用法・用量変更の影響が捉えられないのではないかと思います。小児については、観察期間を少なくとも2年間とする方がいいのではないでしょうか」との御質問です。
こちらについては、御指摘を踏まえ、小児の成長による用法・用量変更の影響を捉えられるよう、小児を対象とした製造販売後調査における観察期間をより長期とするよう検討したいと思います。
なお、審査報告書8ページ、下から5~7行目の記載について、誤記の指摘を頂いておりますが、こちらについても適切に修正させていただきます。御指摘ありがとうございました。説明は以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○吉田部会長 まず、佐藤先生、いかがでしょうか。
○佐藤委員 ありがとうございました。1点目の換算表の所ですが、確かどこかに小児が2週間ごとに来なければいけないというのは大変だという記載があったと思うのですが、その点を考慮しても、ここのところだけ突出してというか、ここだけ変なように、4週毎だったものが2週毎になって、また次の体重のセルに移ると4週毎に戻るという格好になっているのですが、本当にこれで不便はないのでしょうか。
○機構 海外でもこの投与量換算表で承認されているのですが、承認後にコンプライアンス等の問題は特に報告されていませんので、今回、海外臨床試験を利用したデータパッケージということも踏まえ、投与量換算表を海外と揃えて225mg、2週間隔投与とすることを考えております。
○佐藤委員 ここの部分は、別に小児で海外の用法・用量の変更適応拡大の試験を行った結果を移しているわけではないですね。
○機構 国内外で小児の臨床試験が実施されておりますが、どちらも225mg、2週間隔投与で実施されております。
○吉田部会長 佐藤先生のおっしゃるのはもっともで、375というドースも、下の方で設定されていますが、理由が、薬のバイアルがきちんとできていないとかということではないと思うのです。ただし、この辺のドースの換算表に関しては外国のデータに完全に頼っているので、我が国としては独自に動けないところもあるのだろうと思います。要するに根拠がないと。そういうことで、承認申請の段階では海外のスケールをそのまま持ってきて、一応PD上は問題ないだろうということなのだと思うのですが、この辺について、市販後でも良いですので、不便があったかないかとかいうことも、調べてもらうことはできませんか。
○機構 はい。製造販売後にコンプライアンス等の問題や、不便で使いにくいという臨床現場からの指摘が多く出てくる場合には、対応を検討させていただきたいと思っております。
○吉田部会長 いかがでしょうか。
○佐藤委員 はい、結構です。2点目はよく分かりました。3点目ですが、3点目も例えば小児全部を長期間観察するというのではなくて、体重が増えたことで用量が大きく上がるような所に該当する小児だけ長期間観察するとかという計画でもいいと思いますので、そのようなことを申請者と相談していただければと思います。
○機構 はい、御指摘ありがとうございます。検討させていただきます。
○吉田部会長 ほかにございますか。
○鈴木委員 添付文書の、小児への投与という所に、「低出生体重児、新生児、乳児又は6歳未満の幼児に対する安全性は確立していない(使用経験がない)」という記載があります。一方では小児の場合も投与が認められているということなのですが、この辺の経緯について、もう1回確認させていただきたいと思います。
○機構 質問内容を確認させていただきたいのですが、添付文書の小児への投与の項には、「新生児、乳児又は6歳未満の幼児に対する安全性は確立していない(使用経験はない)」とあるのだけれども、用法・用量については小児への投与が含まれるという理解でよいか、との御質問でしょうか。
○鈴木委員 今回、小児への投与が含まれていますね。
○機構 はい。
○鈴木委員 その理由について教えてください。
○機構 ここについては、小児への投与の項で、「6歳未満の幼児に対する安全性は確立していない」と記載することで、6歳未満の小児に対する投与は推奨しないということを注意喚起しています。
○鈴木委員 ということは、小児といっても6歳以上ということですか。
○機構 はい、そうです。
○鈴木委員 分かりました。
○関水委員 プラセボのことですが、13ページに血清中遊離IgE濃度は15ng/mLとなったということですが、これはプラセボのデータはないのですか。
○機構 確認いたします。
○吉田部会長 それではその間、大槻先生どうぞ。
○大槻委員 皮膚科では適応がないのですが、アトピー性皮膚炎で海外で臨床試験も行われているということから、気になった点を幾つか質問させていただきます。細かいことなのですが、21ページの表15、600mg以上の投与群で、口腔ヘルペスが数としては少ないのですが、パーセンテージとしたら600mg未満の群と比べると3倍ぐらいに上がっています。口腔ヘルペスというのは、多分粘膜のものだけだと思うのですが、メカニズムを考えると、TH2とTH1のバランスで考えれば、IgEを抑えることでTH1の方に傾く可能性があって、ウイルス性感染が増える可能性があるわけです。これはほかのヘルペス感染症を全部合わせた数字はないでしょうか。口腔ヘルペスが3倍上がるとなると、例えばアトピー性皮膚炎を合併しているとカポジ水痘様発疹症とか、皮膚のトラブルがもっと増えるのではないかと懸念されるのです。これは、有意差はないということになっていますが、全体のヘルペス感染症のデータがもしあれば教えてください。
○機構 ヘルペス感染症全体としては集計しておりません。この表自体は1回当たりの最大投与量が600mg未満の群に比べて600mg以上の群で発現率が3%以上高い事象についてのみということで記載しております。
○大槻委員 この質問はそんなに大きな質問ではないのですが、実際アンメツトニーズというのがありまして、気管支喘息でもIgEが700の人というのは、なかなかそれに収まる人が少ないということがあるだろうと思うのです。23ページにも実際に使おうと思っても、□%、□%の方で適応外になってしまって使えないというように記載があります。アトピー性皮膚炎の場合には、適応外ですが、実際にシクロスポリンとか全身治療を必要とされる方というのは、大体何万単位でIgEがあるわけです。こういう新しい画期的な薬はIgEが万単位の方に効く薬であってほしいわけですが、700までだったのが1300、今回1500ぐらいまで使えるようになり、門戸を開放されることはすごく良いことだと思うのです。今回の審議に直接関係することではないのですが、これがもう少し使えるようになるのか、そのためには増量したときの安全性ですね。例えば血栓、塞栓、血管イベントが増えるのではないかとか、いろいろ懸念が書いてありますが、用量依存性ではないと結論されていますので、例えばIgE5000とか、そういう者に対しても増量していくような展望があるのかどうか、分かったら教えてください。
○機構 御指摘いただいたIgEが1500IU/mLを超える患者に対する本剤の開発予定ですが、IgEが1500IU/mLを超える患者では、600mgより高用量の投与が必要となります。本剤には75mgと150mgのバイアルがあり、投与するための薬液調製等に手間がかかるものなのですが、投与量が増えることで薬液調製がかなり負担になることや投与液量自体が多すぎるため、申請者は、1500IU/mL以上の患者に対する本剤600mgを超える用量の開発は、現時点では予定していないと説明しています。
○吉田部会長 今の質問に関連してなのですが、多分、用量依存性はないというのでしょうけれども、ここに書いてある口腔ヘルペス87例中5例ですね。これは600mg以上になっているのですが、具体的にどの辺りの量で出現していて、投与量とは本当に関係ないかというのは今すぐ調べられますか。もし分かれば確認してください。
○機構 今の手持ちのデータでは、600mg以上の投与量での発現というところまでしか確認できません。
○吉田部会長 分かりました。先ほどの件は、わかりましたか。
○機構 資料を確認しましたが、こちらの手持ちの資料では記載がありませんでしたので、後ほどお知らせいたします。
○吉田部会長 分かりました。それはまた連絡していただいて、24週の血清中の遊離IgE濃度がプラセボ群では何ng/mLだったかということだけお願いします。
○機構 報告させていただきます。
○吉田部会長 ほかにありますか。よろしいでしょうか。意見も出尽くしたようですので、議決に入ります。なお、大槻委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づいて、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。お諮りします。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。
御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
議題3に移ります。議題3について、機構からの説明をお願いします。
○機構 審議事項議題3、資料3「医薬品ユニタルク胸膜腔内注入用懸濁剤4gの生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。
悪性胸水は、悪性腫瘍に伴い胸水が異常貯留する病態です。悪性胸水が貯留した患者に対しては、症状緩和のために胸水の排液が行われますが、多くの患者で再貯留が認められることから、胸水の再貯留を抑制するために、排液の後、胸膜癒着剤を使用した胸膜癒着術が実施されております。本剤の有効成分であるタルクは、胸膜腔内に投与することにより、胸膜の炎症を惹起し、臓側胸膜と壁側胸膜を癒着させることで胸水の再貯留を抑制します。
今般、本剤は悪性胸水の再貯留抑制に対する薬剤として製造販売承認申請されました。なお、タルクについては、平成19年1月に開催された「第11回未承認薬使用問題検討会議」において、本邦において治験が早期に開始されるべきと判断された薬剤です。また、平成22年4月に開催された「第3回医療上の必要性が高い未承認薬・適応外薬検討会議」での検討において、医療上の必要性に係る基準に該当すると判断され、同年5月に厚生労働省から申請者に対して本剤の悪性胸水の再貯留抑制に対する開発要請がなされております。審査報告書4ページに記載しているとおり、平成25年4月時点において、タルクとして悪性胸水の再貯留抑制に関する適応にて23以上の国又は地域で販売されております。
本品目の専門協議に御参加いただいた専門委員は、資料15にありますとおり、4名の委員です。
以下、悪性胸水の再貯留抑制に対する本剤の承認審査の概要を説明します。今般の承認申請では、臨床試験成績として本邦で実施された国内第II相試験成績が提出されました。有効性については、審査報告書16ページ下から13行目に記載しているように、悪性胸水が貯留した患者を対象とした国内第II相試験において、胸膜癒着術後30日及びより長期の胸水再貯留の有無について有効例が確認されたことに加え、タルクに関する国内外の代表的な教科書及び診療ガイドライン等の記載を踏まえると、本剤は悪性胸水の再貯留に対して有効性が期待できると判断しました。
安全性について、本剤の使用に当たって注意すべき有害事象としては、審査報告書28ページ、下から13行目に記載しているように、急性呼吸窮迫症候群、発熱、胸痛及びC反応性タンパク増加であると考えております。これらの有害事象については、悪性胸水の治療に十分な知識と経験を有する医師によって、胸膜癒着剤として適切に使用され、有害事象の観察や管理等の適切な対応がなされるのであれば、本剤は忍容可能と判断しました。ただし、審査報告書30ページ上から8行目以降に記載しているとおり、申請者は製造販売後には本剤を使用した症例を対象として、目標総症例数300例、観察期間1か月の調査をすることとしております。
以上の審査の結果、機構は、本剤は胸膜癒着剤の1つとして有用であると判断し、悪性胸水の再貯留抑制を効能・効果として本剤を承認することは可能と判断しました。本剤は新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間を8年とすることが適当であると判断しました。また、原体及び製剤は毒薬・劇薬のいずれにも該当せず、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しました。以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○吉田部会長 それでは、委員の先生方からの御質問、御意見をお願いします。
○関水委員 有効性に関する質問ですが、これを生食でやった場合、何も入れないでやったときどうなるかということよりも、有効性だったらどこを見れば分かるのですか。
○機構 質問の意図としては、生食等と比べたときにどういう有効性が出るかということでしょうか。本試験は単群しかやっておりませんで、例えば生食をプラセボにおいて比べるという試験はやっておりません。有効性の判定は、投与後の30日後に胸水の貯留が10%未満という判断をしております。
○関水委員 有効だったというのはよく分かります。この有効だったのがタルクによっているという論証がどこにあるか。
○機構 基本的に国内外の教科書、ガイドライン等で、広くタルクの有効性は認められているので、それに基づいて判断しています。
○吉田部会長 いや、お話の向きは、自然消失することもあるのではないかということでしょう。田村先生は御経験がいろいろあると思うので、解説していただけませんか。
○田村委員 我々は余りタルクの使用経験はありません。
○吉田部会長 ピシバニールでも何でもいいのですが、効果をどうやって判定するかについて。
○田村委員 我々がごくまれにタルクを使用するのは他の方法で胸水がコントロールできない患者さんです。タルクを投与すると強い反応を起こし、がっちり胸膜癒着を起こします。今回のデータだけでは言い切れませんが、昔から癒着効果は間違いないものと考えられています。
○吉田部会長 要するに、放っておいても水がどんどんたまるような状況で、癒着してしまって、肺がつぶれない状況を見れば、効果は一目瞭然であって、自然に消えることはないということですね。
○田村委員 はい、そのとおりです。
○吉田部会長 炎症性のものであれば消えることもありますが、がん性の胸膜炎だと、どんどん水がたまる一方なので、止まればそれだけで大したものだということですね。
それよりも、田村先生のお話にもありましたように、むしろ有害事象が気になるのですが、その辺りの懸念はいかがですか。
○田村委員 以前の製剤では、激しい痛みなど、その後の影響はかなり強いのではないかと。ほかの方法でコントロールできない人が主な対象になっていました。
○吉田部会長 ファーストチョイスではやらない方がいいというような、何かガイドラインみたいなものを作ってもらえるのでしょうか。あるいは、既にありますか。これをいきなり使わないということは、呼吸器の腫瘍内科医としては当然の常識なのでしょうか。
○田村委員 これまで我々はそのように思っていましたが、外科医は、手術時に麻酔状態でよく使用しています。
○吉田部会長 それでは、本薬の高度の有害事象にかんがみ、その辺りの使用法について学会等々でガイドラインを作成してほしいということを、希望で出しておきましょうか。ほかにコメントはありますか。
未承認薬検討会議から上がってきた医薬品ですが、特段これ以上の意見はなさそうですね。それでは、先ほど言いましたように、その辺りの使用法のガイドライン等々について、申請してきた学会を中心に適正使用への配慮をお願いしたいという希望を付けておきたいと思います。これは市販後に何かをやることはないのですね。
○機構 市販後については、目標症例数300例、観察期間1か月間の調査を実施することとしております。
○吉田部会長 そのときにも、広く日本人の場合のデータを紹介して頂き、ガイドラインに反映してもらいたいと思います。
○機構 本日の御指摘については、申請者に伝えたいと思います。
○吉田部会長 ほかにはよろしいですか。
御意見がないようですので、議決に入ります。なお、田村委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき議決への参加を御遠慮いただくことといたします。お諮りします。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。
御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
議題4に移ります。機構から概要説明をお願いします。
○機構 審議事項議題4、資料4-1、4-2「医薬品アレジオン点眼液0.05%の生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」医薬品医療機器総合機構より説明いたします。
本剤は、ヒスタミンH1受容体拮抗作用及びメディエーター遊離抑制作用を有するエピナスチン塩酸塩を有効成分とする点眼剤であり、今般、アレルギー性結膜炎に係る効能・効果で申請がなされたものです。本邦において、本剤の経口剤は、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹などに係る効能・効果で承認されています。
海外において、本剤は、2012年9月現在、アレルギー性結膜炎に係る効能・効果で、欧米など49か国で承認されています。
本申請の専門委員としては、資料15に記載されている5名の委員を指名いたしました。
主な審査内容について簡単に説明します。審査報告書15ページの(3)第III相試験N801-DFT試験の項を御覧ください。季節性アレルギー性結膜炎患者248名を対象に、環境下で本剤0.025%又はプラセボを両眼に1回1滴、1日4回点眼したときの有効性及び安全性を検討するため、プラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験が実施されております。その結果、16ページ上段の表6に示しているように、主要評価項目である二重盲検期間中の眼そう痒感平均スコアについて、本剤群のプラセボ群との群間差は-0.10であり、統計学的に有意な差は認められませんでした。
次に、審査報告書18ページ中段の(5)第III相試験、01141101試験の項を御覧ください。無症状期のアレルギー性結膜炎患者87名を対象に、抗原誘発試験(CAC試験)により、本剤の有効性を検討するため、プラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験が実施されております。用法・用量は、A群には片眼に本剤0.05%、対眼にプラセボを1回1滴点眼、B群には両眼に本剤0.05%を1回1滴点眼、C群には両眼にプラセボを1回1滴点眼し、治験薬同様一定時間後にアレルギー症状を誘発するため、スギ花粉抗原溶液を点眼することと設定されました。抗原誘発は異なる来院日に3回設定され、治験薬点眼15分後、1日4回点眼に相当する治験薬点眼4時間後、1日2回点眼に相当する8時間後にそれぞれ実施することと設定されました。また、治験薬投与8時間後の抗原誘発終了後、A~C群の全例がD群又はE群に再割付けされ、D群には片眼に本剤0.05%、対眼にプラセボを1回1滴点眼、E群には片眼にオロパタジン0.1%、対眼にプラセボを1回1滴点眼し、4時間後にスギ花粉抗原溶液を点眼することにより、本剤0.05%とオロパタジン0.1%の有効性が比較されました。その結果、19ページ上段の表9に示していますように、主要評価項目である治験薬点眼4時間後に抗原誘発したときの眼そう痒感スコア及び結膜充血スコアについて、A+B+C群における本剤とプラセボとの群間差は、眼そう痒感スコア及び結膜充血スコアともに-1.3であり、いずれのスコアにおいても本剤0.05%のプラセボに対する優越性が検証されました。また、表10に示していますように、副次評価項目の一つである治験薬点眼4時間後に抗原誘発したとき、D群及びE群における眼そう痒感スコア及び結膜充血スコアにおいて、本剤0.05%とオロパタジン0.1%の有効性は同程度であることが示されました。
以上のように、環境下で実施された第III相試験においては、本剤の有効性は検証されませんでしたが、20ページ中段の1)抗原誘発試験による有効性評価の妥当性についての項に記載していますように、アレルギー性結膜炎を対象とした環境下での比較試験では、スギ花粉の飛散の特徴等により、試験間、試験内又は被験者間において環境条件をそろえることができないこと、抗原の暴露量が同じでも、惹起されるアレルギー症状の程度は被験者により異なること等から、試験の感度及び再現性が低く、本剤に限らず、プラセボに対する優越性を検証することは難しいことが知られています。一方、抗原誘発試験は花粉飛散量等の薬効評価へ影響する因子をコントロールし、対象患者の均一性を確保することが可能であること、症状の発現機序については環境下でのアレルギー性結膜炎と同様と考えられること等から、抗原誘発試験により有効性を評価することに一定の合理性はあると考えられます。また、海外においては、近年の抗ヒスタミン薬の点眼剤の開発にあたり、抗原誘発試験が検証的位置付けで実施されていることも勘案し、抗原誘発試験においてプラセボに対する被験薬の優越性が検証されるとともに、環境試験により有効性が確認された対照薬と同程度の有効性を有することが示されることを前提に、抗原誘発試験により抗ヒスタミン薬の点眼剤の有効性を評価することについて許容可能と判断しました。
以上を踏まえ、前述の抗原誘発試験においてプラセボ群に対する本剤0.05%の有効性が検証され、かつ環境下での有効性が確認されているオロパタジン0.1%との比較においても、同程度の有効性が示されたことから、本剤のアレルギー性結膜炎に対する有効性は期待できると判断しました。
次に、25ページ中段、(3)安全性についての項を御覧ください。環境下で実施された国内臨床試験における主な有害事象の発現状況を、26ページの表16にまとめております。機構は、本剤の投与により発現した有害事象のほとんどは軽度であり、本剤の安全性に大きな問題は示唆されていないと考えておりますが、臨床試験では他の点眼薬との併用時の安全性、合併症を有する患者における安全性等について情報が得られていないことから、28ページ下段に記載しております製造販売後調査において、使用実態下での安全性について検討する必要があると考えております。
以上の審査を踏まえ、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本第二部会で御審議いただくことが適当と判断しました。本申請に係る再審査期間は6年、また製剤は毒薬及び劇薬のいずれにも該当せず、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しています。薬事分科会では報告を予定しています。
なお、部会に先立ち、佐藤委員より御質問を頂いております。「抗原誘発試験による第III相CAC試験でプラセボに対する優越性が示されたことから、本剤の臨床試験における実験的な有効性(efficacy)については検証されていると考えます。一方で、環境試験である第III相N801-DFT試験では、プラセボに対する優越性は示されませんでした。N801-DFT試験では、試走期間でプラセボレスポンダーを除外していますから、この試験でのプラセボ群の結果は単なるプラセボ効果ではなく、審査報告書20ページ、下から6~7行目にあるように、『プラセボ点眼による眼表面の抗原の洗い流し効果』だと考えられるので、この結果からは一般用医薬品の目薬を点すだけでも十分だと考えられます。したがって、実臨床における有効性(effectiveness)に関しては、機構が、審査報告書21ページ、23行目にあるように、『実臨床における被験薬の有効性を担保可能であると考え』たことには無理があると思います。
第III相CAC試験では、オロパタジンに対する非劣性も検証していますが、審査報告書26ページ、下から8~11行目にあるとおり、『現在アレルギー性結膜炎に対する治療薬として、ヒスタミンH1受容体拮抗薬の作用を有する点眼薬は、ケトチフェンフマル酸塩、レボカバスチン塩酸塩及びオロパタジン塩酸塩の3剤が承認されているが、二重盲検比較試験における有効率はいずれの薬剤も60%程度とされており、臨床的効果に個人差があることから、患者毎に適した反応のよい一剤を選択することとされている』のであれば、単に非劣性を検証するデザインでなく、プラセボとの比較と同様に本剤とオロパタジンを個人内でランダムに割り付けるデザインで、オロパタジンはあまり効果がないが、本剤は効くという方がどの程度いるのかを調べることができます。少なくともそのような結果がなければ、本剤は承認できないのではないでしょうか」との御質問です。
本審査においても、また専門協議においても、先生に御指摘いただいた本剤の実臨床における有効性(effectiveness)が検証されていない点については議論になりました。環境試験である第III相試験(N801-DFT試験)においては、試走期間でプラセボレスポンダーを除外し、また、花粉飛散期に被験者を集中的に組み入れる等により、花粉飛散量の変動等の環境要因を可能な限り排除することを試みたものの、有効性の検証には至りませんでした。この結果については、抗ヒスタミン薬の点眼剤の開発に当たり、国内外で実施された多くの環境試験においてプラセボに対する優越性の検証に至っておらず、また環境試験の条件下における抗原の暴露の条件を一定に保つことは困難で、各被験者で異なることが想定され、アレルギー性結膜炎に対する薬効評価の限界が示唆されたものと考えております。
御指摘のとおり、プラセボにおいても抗原の洗い流し効果により一定の有効性が認められると考えられますが、本剤のCAC試験で比較対照としたオロパタジンは、海外で実施された環境下の比較試験においてプラセボに対する優越性が示されており、洗い流し効果を上回る有効性が示されていると考えられます。また、CAC試験の利点の一つとして、薬剤間の薬効の厳密な比較が可能であることが挙げられると考えており、CAC試験において、オロパタジンと同程度の効果が認められたことは、本剤においても洗い流し効果を上回る有効性が認められることを支持するデータであると考えております。
また、専門協議において、抗ヒスタミン薬の点眼液については、アレルギー性結膜炎に対する第一選択薬として臨床的位置付けは確立しており、アレルギー性結膜炎の重症度等の患者背景によらず、広い範囲の患者に使用されていること、薬剤の選択にあたっては反応性の違いのほか、患者の使用感の好みによるところも大きいため、薬剤の選択肢が増えることは意義があるとの御意見を頂いております。先生に今回御指摘いただいたように、類薬との薬効の比較にあたり、どのような患者集団に対して本剤が有効性を示すかを検討することは意義があると考えておりますが、抗ヒスタミン薬の点眼剤の臨床現場での位置付けや選択方法を踏まえると、類薬では余り効果がないが本剤では効果がある患者集団について検討することは、承認に当たり必須とは言えないのではないかと考えております。以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○吉田部会長 佐藤先生、いかがですか。
○佐藤委員 抗アレルギー薬の審査はいつも難しいのですが、それならオロパタジンのジェネリックでもいいのではないですか。なぜ、わざわざ新医薬品でこの薬を承認しないといけないのですか。
○事務局 確かに、今回臨床試験で示されたエビデンスは、efficacyとしては示されましたが、effectivenessとしては示されておりません。一方で、申請者から申請があった場合、薬事法に基づく承認を拒否するためには、薬事法上の規定に基づいて、承認拒否事由のどれかに合致しなければならないと考えられますが、今回の機構の審査においてはその基準には合致しないということで、本剤を承認しても差し支えないのではないかという結論に至ったのではないかと思います。
○吉田部会長 要するに、原因に対しての薬効はあります、しかし、季節性のアレルギー性結膜炎は難しいですと。しかも、いろいろな薬をやってみたけれども、なかなか実用性が出ません、ということは、おっしゃるように試験をするのが非常に難しいからだと思うのです。本薬の試験期間は□□年□月~□月までとありますが、難しいのであれば、それなりの患者さんに対する管理や、効果のいろいろなバイアスなど、考えられるバックグラウンドを記載するとか、かなりきちんと評価してやらないといけないのだろうと思うのです。通り一遍のプロトコールスタディでやってしまうと、暴露されたのは非常に抗原性の薄い場合もあるだろうから、日によって違ったりすることも当然あり得ます。ということで、この試験のクオリティはどんなものだったのかを知りたいのですが、どういうプロトコールでどのように動いたかを、簡単にお話いただけますか。多分、通院しているのですね。
○機構 はい。先ほど読み上げた試験のほかにも環境試験をやっているのですが、その際にもプラセボに対する優越性は示されなかったということで、この環境試験の第III相試験を行うに当たっては、プラセボの試走期間を設けるとか、実施地域を限定する等、いろいろ工夫をしたのですが、それでもなおかつうまくいかなかったというのが実情です。類薬等でも、同じようにいろいろ工夫して環境試験が実施されていますが、成功する場合もありますがまれで、失敗する例の方が多いと理解しております。
○吉田部会長 N801-DFT試験そのものは、どこでやられて、どういうプロトコールだったのでしょうか。
○機構 □□近辺に限定して行われています。
○吉田部会長 地域はかなり限定されていて、スギの木がたくさんある所ですね。
○機構 はい。
○関水委員 議論に割って入るほどの専門知識があるわけではありませんが、これは、適応は環境試験としてネガティブだったけれども、アレルギー試験に対してはポジティブであるということですね。本剤はアレルギー性の疾患に対して有効なので、そういうものを販売したいというのは非常に論理的で、必ずしも環境試験がポジティブでなかったからといって、駄目ということにはならないと思うのです。
○吉田部会長 駄目とは言っていないのです。薬効があるのは皆さん認めているのです。ただ、佐藤先生は、環境試験のような条件でも効能を担保できるというのは言い過ぎではないかと。
○関水委員 環境試験で効能があるということは言っているのですか。
○吉田部会長 ですから、そこの話になってくるのです。
○関水委員 それは、特段この審査報告書には書いていないように思うのですが。
○吉田部会長 実臨床における被験薬の云々ですね。いずれにしても、有効性に関して、「実臨床において被験薬の有効性を担保可能であると考えている」と21ページに書いてありますが、それはなぜかというと、この試験のreliabilityがないので、使えば洗い流し効果を含めて実臨床にとって実害があるわけではないし、効果はある程度は出るのではないかという言い方だと思うのです。でも、それでは少し言い過ぎかもしれないという話なのではないですか。ただ、そうであれば、むしろ有効性に関しては試験自体のreliabilityが少ないので評価しないとか、そういうことの方がむしろ筋としては通りますし、reliabilityがないので、それよりもreliabilityの高い試験を有効と取って薬効を認めるというような整理であれば、それでいいと思うのですが。
○機構 記載の意図としては、抗原誘発試験の成績では既に実臨床で使われている対照薬に匹敵する薬効はあると判断でき、実臨床でも対照薬と同様の薬効は期待できるだろうということで書かせていただきました。
○佐藤委員 ただ、通常非劣性で承認するときには、有効性以外の何かメリットがあることが条件で、そうでなければ、先ほどお話したようにジェネリックを承認することと変わらないことになってしまいます。この場合、ほかの治療に対してメリットがあるというのは機構も書かれていますし、申請者も言っていますが、個人差が大きいので、幾つかの薬を試してみて、一番良いものを使うといいと主張されて申請してきたわけですが、今回提出された資料ではそれが証明されていません。しかも、それを証明するデザインはあったと思うのですが、なぜそのデザインを使わなかったのか、その試験がどうしてできないのかということです。オロパタジンと、個人内で両眼にランダムに割り付けて比較すれば、一方は効いて一方は効かないということが分かるはずですね。プラセボ対照の試験はそうしてやっているのに、オロパタジンの試験は片眼にプラセボと片眼に本剤、片眼にプラセボと片眼にオロパタジンと、個人内の比較ではなく、わざわざ2群比較の試験にしているわけですよ。
○機構 御指摘のように、そのような試験デザインも考えられるかとは思いますが、今得られている成績から、プラセボに対する有効性は示されていること、オロパタジンと同程度の有効性であることも示されているということで、承認に値するとの判断は可能と考えました。専門協議においても、類薬とどういう使い分けをするのかという議論もしましたが、抗ヒスタミン剤の点眼剤に関してはアレルギー性結膜炎に対する第一選択薬ということで位置付けがはっきりしていることと、安全性に関して大きな懸念があるものではないので、患者様の特徴等に応じた薬剤毎の使い分けが大きく求められるようなものではないということで、そこは必須の要件ではないだろうとの議論をさせていただきました。
○吉田部会長 製薬会社側の言い分もあると思いますが、シンプルにアレルギーに関しての有効性は認められたので承認する、でいいのではないですか。ああいう使い方があるだろうとか、こういう使い方があるだろうとか、どう慮っても、こちらが考える必要はないのではないでしょうか。アレルギー性に対する有効性を認めて、第一選択薬として使えると判断しましたと、それで十分ではないですか。
○機構 ほかのものが有効でないときに選択肢になるというのは、あくまで申請者の説明です。
○吉田部会長 でも、そういう試験をしていないのですから、試験結果についての評価と、その結果に基づく判断ということにしてしまえば、reliabilityがないので評価しなかったと。しかし、片方では抗原性に関しては評価がある。そういうことでは有効性を認めた。したがって、薬効はある。使い方に関しては、抗原の明確なものに関しては使える。それでいいのではないでしょうか。ストーリーをシンプル化するということでいいですか。
○佐藤委員 私は少し考え方が違うのですが、確かに両眼にランダムにオロパタジンと本剤を割り付けても、本剤が効く患者を選べるとは思えないのです。オロパタジンは効かないけれども、この薬が効くという患者さんがいれば、申請者が主張している良い薬を選びなさいということは、全く納得がいくと思うのです。そのことについては、抗原誘発試験と同じぐらいの例数でやって十分検証できるはずなのです。そのデータなしで、申請者が適切な薬を使うのがいいのだと言って主張して申請してきたものを、そういうエビデンスもなしに承認していいのかということです。先ほど私が言ったように、ジェネリックを承認するのと何が違うのかということになるのです。
○吉田部会長 質問の意味が分かりますか。新製品であれば、こういうメリットがあってこうだと、それが同じなのだったらジェネリックでいいではないかと。でも、そういう話ではなく、効かないものも対象に組みこんだのであれば、効かない人に対しての有効性を調べてもいいのではないか、どうしてやらなかったのだろうということです。
○機構 繰り返しになりますが、有効性は示されているということと、類薬に対しても効果は劣らないだろうということで、承認は可能と考えました。類薬と比較した特徴は明確ではありませんが、専門協議において、患者様の使用感の好みで薬剤が選択されることが多いという実情もあり、使える剤が増えることは意義があるという御意見をいただいています。
○吉田部会長 それでは、製造販売後調査2000例をやりますね。そのときに、効かなかった症例に対する有効性を、他剤で効かなかったときの有効性を含めて検証すること、と言っておけばいいのではないですか。要するに、事務局が言っているように、薬事承認手続上の瑕疵はないのです。ですから、これで駄目だとは言えない。しかし、佐藤先生の仰るように、日常臨床上の疑問はかなりあって、その辺を明らかにする価値はあると思うのです。ですから、製造販売後調査のときに、二次使用の場合と一次使用の場合とデータを作ってくださいと言えばいいのではないですか。
○機構 今の御提案は、製造販売後調査の中でということですか。
○吉田部会長 情報を上げてもらえばいいのです。例えば、類薬で効かなかった人に対して使った場合の結果が、2000例のうち500例なら500例あって、その有効性はこれぐらいありましたとか、逆にこちらが効かなくて、類薬が効いたのがどのぐらいあるとか、そういうことを教えてもらえばいいのではないかと思います。
○機構 ありがとうございます。そのような調査は可能かと思います。
○吉田部会長 そういう形で、患者や医療従事者に位置付けが分かるようにしてくれれば、手続上は有効性に関するデータがないわけではないので、それはいいと思うのです。よろしいですか。
○佐藤委員 部会長の提案に賛成します。もう1つお願いですが、環境試験の第III相試験の結果も、添付文書に情報提供として載せていただいた方がいいように思います。
○機構 御指摘を踏まえ、対応したいと思います。
○吉田部会長 ほかに御意見はありますか。意見もないようですので、議決に入ります。なお、大槻委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただくこととします。お諮りします。本議題について承認を可としてよろしいでしょうか。
御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
議題5に移ります。機構から概要説明をお願いします。
○機構 審議事項議題5、資料5「医薬品シナジス筋注用50mg及び同筋注用100mg並びにシナジス筋注液50mg及び同筋注液100mgの製造販売承認事項一部変更承認の可否及び再審査期間の指定について」医薬品医療機器総合機構より説明いたします。
RSウイルス(以下、「RSV」)は、2歳以下の乳幼児が細気管支炎又は肺炎に罹患した場合の主要な原因ウイルスの1つであり、1歳までに半数以上、2歳までにほぼすべての乳幼児がRSVに感染します。RSV感染による細気管支炎の病態形成には、生体の細胞性免疫が深く関与しており、早産児や先天性心疾患患児、慢性肺疾患を有する小児等では重症化しやすいことが知られており、RSV感染の重症化により無呼吸等の呼吸障害が起こった場合、酸素療法や人工呼吸管理等の対症療法以外に救命の手段がなく、死に至る場合もあります。
パリビズマブはRSVに対するヒト化モノクローナル抗体であり、RSVが宿主細胞に感染する際に機能するFタンパクに特異的に結合することにより、RSVに対して中和活性を示し、ウイルス複製を抑制することでRSVによる重篤な下気道疾患の発症を抑制します。
本剤は、「RSV感染症のハイリスク児におけるRSVによる重篤な下気道疾患の予防」を効能・効果として、1998年に米国で最初に承認を取得し、2013年4月現在、本剤は米国、欧州連合等80以上の国又は地域で承認されています。本邦では、早産児及び気管支肺異形成症の治療を受けた24か月齢以下の患児に対するRSV感染による重篤な下気道疾患の発症抑制に係る効能・効果で2002年1月に承認され、24か月齢以下の血行動態に異常のある先天性心疾患の患児への適応が2005年10月に承認されています。
今般、日本小児リウマチ学会、日本小児血液学会及び日本小児がん学会より、免疫不全を伴う患児に対する効能追加に関する開発要望書が提出され、厚生労働省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」において「医療上の必要性が高い」と評価され、厚生労働省から申請者に対して本剤の開発要請がなされました。これを受け、24か月齢以下の免疫不全児に加え、RSV感染症の重症化リスクが高いと考えられる継続する呼吸器症状を有したことのあるダウン症候群患児を対象とした国内臨床試験が実施され、本剤の有効性及び安全性が確認されたとして、製造販売承認事項一部変更承認申請が行われました。
本申請の専門委員としては、資料15に記載されています5名の委員を指名しました。
審査内容について、臨床試験成績を中心に説明いたします。まず、CTD2.5の19ページ、表2.5-8を御覧ください。24か月齢以下の免疫不全児及びダウン症候群患児への本剤の予防効果を検討することを目的として、表に示された原疾患を伴う患児28例に対して本剤を予防的に投与したときの臨床試験成績が提出されています。
審査報告書の7ページ、下から14行目を御覧ください。2011年9月~2012年3月のRSV感染流行期間に、本剤15mg/kgを30日間隔で筋肉内投与された28例において、治験薬投与開始から最終投与30日後までの間にRSV感染による入院を必要とした被験者は認められませんでした。
次に、審査報告書5ページの表を御覧ください。本剤が投与された患児における本薬の血清中トラフ濃度は、過去に実施された国内臨床試験における早産児又は24か月齢未満の気管支肺異形成症の治療を受けた患児及び血行動態に異常のある先天性心疾患を有する患児における血清中トラフ濃度と類似していました。本薬のRSVに対する中和活性は、モノクローナル抗体としての本質的な作用によるものであり、宿主の免疫状態を含む原疾患の状態によりRSVに対する中和作用が大きく影響を受けることはないと考えられたことから、免疫不全児及びダウン症候群患児に対しても本剤の有効性は期待できると判断いたしました。
次に、安全性についてです。審査報告書12ページの表を御覧ください。本剤の安全性について、免疫不全を伴う患児を対象とした国内臨床試験において、有害事象は96.4%に認められ、副作用は25.0%に認められました。また、既承認効能取得時に実施した臨床試験における主な有害事象及び副作用と比較したところ、発現率が高い有害事象が認められたものの、白血球減少症等の免疫異常に伴う事象や免疫不全の有無にかかわらず、新生児、乳児及び幼児で一般的に認められる事象と考えられ、免疫不全を伴う患児に特有の安全性上の懸念はないと判断いたしました。
なお、免疫不全児及びダウン症候群患児への本剤の使用経験は限られていることから、本剤投与時の有効性及び安全性については引き続き製造販売後調査を実施し、情報を収集する予定としています。
以上の審査を踏まえ、24か月齢以下の免疫不全児及びダウン症候群患児に対する効能・効果を承認して差し支えないとの結論に達し、本医薬品第二部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本申請の再審査期間は4年とすることが適切と判断しています。なお、薬事分科会には報告を予定しています。以上、御審議のほどよろしくお願いいたします。
○吉田部会長 委員の先生方の御質疑をお願いします。
○関水委員 有効性に関するデータは、7ページに示された、投与してからRSV感染による入院を必要とした被験者の割合が0%、28例、これだけですか。
○機構 本開発で得られているデータはこちらのみです。
○関水委員 これが有効性を示しているというのは、私にはよく理解できないのですが。投与しなかった場合は幾らになると予想されるのですか。
○機構 免疫不全を伴う患児に対して本剤を投与しなかった場合にどれぐらい入院に至るかという明らかなデータは得られておりません。その点に関しましては、製造販売後調査でも、免疫不全児やダウン症候群の患児に対して重症化リスクがどれぐらいあるかについて、引き続き検討してもらう予定です。
○関水委員 そうすると、臨床上の有効性を示す直接的なデータはなさそうですが、血中濃度などのデータから、これはRSV感染に有効であることが予想されるのですか。
○機構 はい。先ほども説明させていただきましたが、ウイルスのタンパクに対して直接的に結合することでウイルスの複製を阻害するという作用機序であり、既承認の効能取得のときに得られている血清中の濃度と、今回得られている血清中の濃度を比較すると、ほぼ同程度のものが得られていますので、既承認の効能の患児と同等の有効性は期待できるのではないかと考えています。
○吉田部会長 よろしいですか。
○関水委員 非常に治療が難しいことを踏まえると仕方がないことだとは思いますが、ウイルスに対して治療が有効であったという、何か説得力のあるデータがあることが極めて望ましいですね。
○吉田部会長 そうなのです。結局、市販後調査を2年間で250例やるということですが、それなら感染のエピソードがないというようなことではなく、もう少し直接的に有効性を示すような、疾患に対して、例えば病態の改善が見られるというようなことがあるといいのですが。これはどういう使われ方をするのでしょうか。ダウン症だったらすぐに使ってしまうのですか。つまり、感染の危険があるから積極的に使うという使い方になるのでしょうか。
○機構 どのような患児に使うかについては、現在、申請者が適正使用の手引を作成しています。ダウン症候群にある器質的な特徴、例えば、巨舌、舌根沈下、気道軟化症などを伴っているダウン症候群の患児に本剤の投与が推奨されるというような内容になる予定です。
○吉田部会長 例えば「免疫不全状態を伴うような新生児や乳児、幼児」となっていますね。ですから、合併症の出現を防ぐためにこれを積極的に使っていくという使い方になるのでしょうね。そうすると、いつまでたっても効果は、そういうエピソードがなかったということでしか分からないのでしょうか。
○機構 そもそもの重症化のリスクが分からないのではないかという点につきましては、各医療機関にアンケート調査を行って、本剤を投与していないこれらの患児がRSV感染で入院しているかどうかを調査する予定と申請者より説明されています。
○吉田部会長 これは世界80か国で既に承認されていて、しかも未承認薬検討会からの要望で上がってきているとなると、有効性がかなり担保できるから認めてくれということだと思います。そうすると、倫理的にコントロール群をおいて合併症を起こしてみるというような比較試験ができなくなってしまうので、結局、全員が使うということでしかデータは出てこないのではないかと思うのです。その辺の評価の仕方はどうしているのですか。
○機構 対象患者は異なりますが、これまでの有効性に関するデータを先に説明させていただきます。1.8「添付文書」の項の5ページを御覧ください。既承認効能における有効性について、海外の臨床試験ではありますが、プラセボを対照とした群を置いて比較しています。その中で、RSVウイルス感染による入院患者数は、本剤投与群の方が少なく、本剤投与による発症率の低下傾向が認められています。この結果をもって既承認の効能は承認されています。今回の患者に対しても同程度の血中抗体濃度が得られるということで有効性は示されるであろうと考えています。シングルアームなので、本剤の有効性を比較するデータにはなっていませんが、この薬の有効性は期待できると考えています。
○吉田部会長 市販後調査が予定されていますが、そのときに、ヒストリカルなデータでいいのである程度きちんと集めて頂いて、日本のデータでは少し足りないかもしれませんが、それと比較してエピソードが減るというような形の評価の仕方をしてくれると、我々も理解しやすいと思います。
○機構 ヒストリカルというのは、先ほど述べましたが、各医療機関のアンケート調査で得られたデータを対照として比較する予定と説明されています。
○吉田部会長 いや、ですから、未承認薬検討会のときに、すでにそういうデータがたくさん上がっていると思いますが、それと比較して、これだけエピソードが減りましたという形で評価するような製販後調査をやってくれればいいのではないかと思います。
○機構 はい、分かりました。
○吉田部会長 ただ、エピソードがありませんでしたというだけではなくて。そういうことであれば分かりやすいのではないかと思います。よろしいですか。ほかにございますか。
○菊池委員 確認です。HIVは残念ながら誰もいなかったのですが、これは使えないのですか。将来、出てきたときには、HIVの患児には使えるのでしょうか。
○機構 今回の適応は「免疫不全を伴う」とさせていただいていますので、免疫不全状態であるHIVの患児であれば使用は可能であると考えています。
○吉田部会長 よろしいでしょうか。議論も出尽くしたようですので、そろそろ議決に入ります。なお、大槻委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして議決への参加を御遠慮いただくことといたします。お諮りします。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。
御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
議題6に移ります。関水委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議題6への審議の間、別室で御待機いただくことといたします。
── 関水委員退室 ──
○吉田部会長 議題6について事務局から概要の説明をお願いします。
○事務局 審議事項議題6、資料6「タラポルフィンナトリウムを希少疾病用医薬品として指定することの可否について」、報告事項議題5、資料11「希少疾病用医薬品の指定の取消しについて」御説明いたします。
資料11を御覧ください。Meiji Seikaファルマ株式会社が開発するタラポルフィンナトリウムは、平成20年12月に悪性神経膠腫に関する希少疾病用医薬品として既に指定を受けていますが、現在、本剤の開発を「悪性神経膠腫」を含む、より適用範囲の広い悪性脳腫瘍を対象にして行っていることから、希少疾病用医薬品の指定についても変更が必要な状況となりました。つきましては、資料11に基づき、既に指定されている「悪性神経膠腫」に関する効能・効果を取り消すとともに、資料6に基づき、新たに「悪性脳腫瘍」を予定される効能・効果として指定することについて御審議いただくものです。
資料6を御覧ください。「悪性脳腫瘍」を予定される効能・効果とする指定についてです。対象患者数は、厚生労働省による平成23年度の患者調査によると、中枢神経系の悪性新生物の総患者数は約7000人と報告されていることから、患者数が5万人未満という希少疾病用医薬品の指定基準を満たしているものと考えています。
医療上の必要性についてです。本邦における悪性脳腫瘍に対する治療は、手術により最大限に腫瘍を摘出することを基本とし、術後に組織型に応じて放射線療法又は化学療法を追加する集学的治療が行われていますが、その予後は不良であり、治療成績の向上が望まれています。
本剤は、主要組織への集積性を有する光感受性物質であり、特定の波長のレーザ光を照射する医療機器と組み合わせて使用することで、手術による腫瘍の摘出後に、残存した腫瘍組織を傷害することを目的としています。本治療法は悪性脳腫瘍に対する摘出手術成績への上乗せが期待される新規治療法であることから、医療上の必要性は高いと考えています。
開発の可能性については、本邦において術前画像診断により悪性脳腫瘍を疑われる患者を対象に、本剤を用いた光線力学的療法の有効性及び安全性について検討することを目的とした第II相臨床試験が行われていることから、本剤の開発の可能性はあると考えています。以上のことから、本薬は悪性脳腫瘍に対しても希少疾病用医薬品の指定要件を満たすと判断しています。以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○吉田部会長 それでは、委員の先生方からの御質問、御意見をお願いします。これは以前、悪性神経膠腫で希少疾病用医薬品として承認されていたのでしたか。
○事務局 既に平成20年12月に指定されています。
○吉田部会長 オーファン指定していますね。これを悪性脳腫瘍に拡大したいということですね。
○事務局 そのとおりです。
○吉田部会長 御意見ございますか。よろしいですか。疾病の重要性もあり、臨床開発の可能性もありそうですね。特に御意見がなければ、議決に入ります。本議題について、指定を可としてよろしいでしょうか。
御異議がないようですので、指定を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
別室で御待機されている関水委員をお呼びください。
── 関水委員入室 ──
○吉田部会長 それでは、報告事項に入ります。報告事項について説明をお願いします。
○事務局 報告事項議題1、資料7「医薬品キュビシン静注用350mgの製造販売承認事項一部変更承認について」報告いたします。
キュビシン静注用350mgは、環状リポペプチド系抗生物質であるダプトマイシンを有効成分とする抗生物質製剤です。本邦ではMSD株式会社により開発され、2011年7月にMRSA感染症治療薬として承認されており、その際、本剤の用法としては「点滴静脈内投与」が設定されています。今般、用法に「緩徐に静脈内注射する」を追加する開発が行われ、日本人健康成人を対象にした国内単回投与試験が実施された結果、申請用法の安全性が確認されたことから、製造販売承認事項一部変更承認申請がなされたものです。医薬品医療機器総合機構における審査の結果、申請用法の追加を承認して差し支えないと判断いたしました。
続いて、報告事項議題2、資料8「医薬品スチバーガ錠40mgの製造販売承認事項一部変更承認について」報告いたします。
スチバーガ錠40mgは、血管内皮増殖因子受容体等、複数の受容体型チロシンキナーゼ等の阻害剤であり、現在は「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌」の効能・効果で承認されています。今般、バイエル薬品株式会社から、「がん化学療法後に増悪した消化管間質腫瘍」の効能・効果を追加する製造販売承認事項一部変更承認申請がなされました。医薬品医療機器総合機構における審査の結果、本品目を承認して差し支えないと判断いたしました。
○事務局 続きまして、報告事項議題3、資料9-1、9-2「優先審査指定品目の審査結果について」事務局より説明いたします。資料9-1を御覧ください。優先審査の取扱いにつきましては、資料の1枚目の裏に概要をお示ししています。この制度は、薬事法第14条第7項の規定に基づき、希少疾病用医薬品やその他医療上特に必要性が高いと認められる品目を指定し、ほかの品目に優先して審査を行うものです。その指定にあたりましては、適応疾病の重篤性、医療上の有用性を総合的に評価して判断するものです。
資料の表にお戻りください。今回の対象品目は、販売名が「イクスタンジカプセル40mg」、一般名「エンザルタミド」、申請者はアステラス製薬株式会社です。本剤につきましては、「前立腺癌」の効能・効果で承認申請がなされています。
事前に取りまとめられた医薬品医療機器総合機構の報告書に基づきまして、本剤の優先審査の該当性について説明いたします。報告書の4ページを御覧ください。「(1)適応疾病の重篤性」については、申請された「前立腺癌」は「生命に重大な影響がある疾患」に該当すると考えています。
「(2)医療上の有用性」については、本邦では術後再発又は進行性前立腺癌に対する初期治療として、アンドロゲン除去療法等が行われており、これらの治療後に病勢進行が認められた去勢抵抗性前立腺癌に対しては、ドセタキセル水和物が使用されています。しかし、現時点で、ドセタキセル水和物による治療後に病勢進行が認められた患者に対しては有効な既存の治療法は存在しておりません。本薬は、既存の薬物療法のない患者において、プラセボ群と比較して本薬群で全生存期間での有意な延長が認められており、また、現時点で得られている安全性情報により、本薬は忍容可能であると考えられることから、5ページの下段からの総合評価にあるとおり、本剤の医療上の有用性は高いと考えています。以上を踏まえ、本剤は優先審査品目に該当すると判断しています。
続いて、資料9-2を御覧ください。販売名が「エルプラット」「カンプト」「トポテシン」「アイソボリン」「レボホリナート」「5-FU」の6品目に関する優先審査指定品目の審査結果について報告いたします。
申請者は、それぞれ、株式会社ヤクルト本社、第一三共株式会社、ファイザー株式会社及び協和発酵キリン株式会社です。これらの品目につきましては、オキサリプラチン、イリノテカン塩酸塩水和物、レボホリナートカルシウム及びフルオロウラシルの4剤を併用投与するFOLFIRINOXレジメンとして「膵癌」の効能・効果で承認申請がなされています。
事前に取りまとめられた医薬品医療機器総合機構の報告書に基づきまして、本剤の優先審査の可能性について説明いたします。報告書の6ページを御覧ください。「(1)適応疾病の重篤性」については、申請された「膵癌」は「生命に重大な影響がある疾患」に該当すると考えています。
「(2)医療上の有用性」については、化学療法未治療の治癒切除不能な膵癌患者を対象とした海外第II/III相試験においてFOLFIRINOXレジメンは、既存の治療法であるゲムシタビン塩酸塩単独投与と比較して、全生存期間の有意な延長が認められています。また、現時点で得られている安全性情報より、本剤は忍容可能であると考えられることから、7ページの最終行からの総合判断にあるとおり、本剤の医療上の有用性は高いと考えています。以上を踏まえまして、FOLFIRINOXレジメンとして申請予定の6品目につきましては優先審査品目に該当すると判断しております。本剤の承認の可否につきましては、今後、医薬品医療機器総合機構での審査を経た後に改めてこの部会で御審議いただくこととなりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
○事務局 報告事項議題4、資料10「医療用医薬品の承認条件の解除について」事務局から説明いたします。資料10、サムチレール内用懸濁液15%に係る「承認条件に係る審査報告書」を御覧ください。
1ページの「I.品目」のとおり、対象品目は「サムチレール内用懸濁液15%」、一般名は「アトバコン」です。その下の「1.製造販売後調査の実施の経緯」ですが、本剤は「ニューモシスチス肺炎」、「ニューモシスチス肺炎の発症抑制」に係る効能・効果で平成24年1月に承認されており、その際、1ページ中程の記載のとおり、国内における薬物動態試験の実施等の承認条件が付されています。今般、この承認条件のうち、国内における薬物動態試験の実施に関して、グラクソ・スミスクライン株式会社より総括報告書が提出され、機構における審査が終わりましたので報告いたします。
2ページを御覧ください。「2.提出された資料の概要、(1)国内単回投与試験の概要」ですが、日本人成人を対象に、アトバコン及びプログアニル塩酸塩の配合錠のほか、本剤750mg及び1500mgを食後に単回投与したときのアトバコン等の薬物動態を検討することを目的として試験が実施されており、中程の表のとおり、薬物動態パラメータが得られています。
続いて、3ページ「3.機構における審査の概要」を御覧ください。中程の表は、日本人健康成人及び外国人健康成人に本剤750mgを食後に単回投与した際の本剤の薬物動態を比較して示しています。これらの結果から、本剤の薬物動態に国内外で差異はないとの申請者の見解は受け入れられるとされています。
以上を踏まえまして、3ページの「III.総合評価」に記載のとおり、日本人における本剤投与時の薬物動態はこれまでに得られている外国人における薬物動態と同様であると考えられることから、本承認条件の内容について確認できたものと判断されています。
報告事項議題5「希少疾病用医薬品の指定の取り消しについて(タラポルフィンナトリウム)」は、審議事項の議題6で説明しておりますため、省略させていただきます。報告は以上です。
○吉田部会長 用法追加、適応拡大、優先審査、承認条件の解除でした。委員の先生方からの御質問がありましたらお願いします。よろしいですか。それでは、報告事項につきましては御確認いただいたものといたします。
続いて、その他の事項の議題1について説明をお願いします。
○事務局 その他議題1、資料12「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議において公知申請を行うことが適当と判断された適応外薬の事前評価について」順に説明いたします。
1ページを御覧ください。クリンダマイシンリン酸エステルに、「顎骨周辺の蜂巣炎・顎炎」の適応を追加する要望に係る報告書について説明いたします。なお、要望では、成人における「1回600mg、1日4回」の用法・用量となっていましたが、公知申請の該当性の検討においては、より低用量の用法・用量や小児の用法・用量についても併せて検討されています。
2ページの「3.欧米等6か国の承認状況等について」を御覧ください。5ページ下にあるように、ドイツ及びフランスにおいて、顎骨周辺の蜂巣炎・顎炎を含む適応が承認されています。
また、13ページ「5.要望内容に係る国内外の公表文献・成書等について」では、国内外の文献において、成人及び小児の歯科、顎、口腔領域の重症感染症患者での症例報告が複数あり、本剤の有効性及び安全性が確認されていること、教科書や国内外の各種ガイドラインで本剤が治療薬として推奨されていることがまとめられています。
これらの内容を踏まえ、25ページ下からの「7.公知申請の妥当性について」に記載するとおり、有効性については、国内外の教科書・成書又はガイドラインにおいて推奨されていること、国内での使用実績が蓄積されていること、また、クリンダマイシン塩酸塩の経口剤が顎骨周辺の蜂巣炎・顎炎の適応を取得しており、クリンダマイシンが当該適応症の原因菌に対して抗菌活性を有することが明らかとなっていることから、「顎骨周辺の蜂巣炎・顎炎」に対する本剤の有効性は期待できると考えられます。
安全性についても、26ページの中程に記載するとおり、成人及び小児の歯科、顎、口腔領域の重症感染症患者において報告された有害事象は既知の事象であったこと、また、本剤は国内外において使用経験が蓄積されており、これまでに安全性に大きな問題が認められていないことから、新たな安全性の懸念が生じる可能性は低いものと判断されています。以上より、本剤の顎骨周辺の蜂巣炎・顎炎に対する有効性及び安全性は医学薬学上公知であると判断されています。
27ページを御覧ください。効能・効果については、要望どおり「顎骨周辺の蜂巣炎・顎炎」とすること、また、用法・用量については、国内症例報告等を踏まえて、本剤について既に承認されている用法・用量と同一とすることが適切であると判断されています。
続いて、35ページを御覧ください。ストレプトマイシン硫酸塩に「非結核性抗酸菌症」の適応を追加する要望に係る報告書について説明いたします。36ページの「3.欧米等6か国の承認状況等について」ですが、海外において当該効能又は効果では承認されていないものの、40ページの「(2)欧米等6か国での標準的使用状況について」で記載のとおり、標準的療法として位置付けられていると考えられます。
41ページの「5.要望内容に係る国内外の公表文献・成書等について」は、国内外において要望内容に係る有効性・安全性に関する文献が公表されていること、教科書や国内外の各種ガイドラインにおいて、標準治療に本剤の追加投与が推奨されていること、さらに、62ページの「6.本邦での開発状況及び使用実態について」に記載のとおり、国内においても使用実績が確認されていることから、本剤の追加投与は非結核性抗酸菌症に対する治療法として確立されたものであり、臨床現場においても使用実績が蓄積されているものと判断されています。
以上を踏まえ、64ページの「7.公知申請の妥当性について」ですが、有効性については、国内外の臨床論文や教科書、ガイドライン等での報告及び記載等に基づき、非結核性抗酸菌症に対して本剤は幅広く使用されており、その有効性が確認されているものと考えられました。また、安全性については、非結核性抗酸菌症患者における情報は限られているものの、設定した用法・用量は既承認の範囲内であり、国内外での使用経験において、これまでに安全性に大きな問題は認められていないことから、新たな安全性の懸念が生じる可能性は低いと判断されています。
以上より、本剤の非結核性抗酸菌症に対する有効性及び安全性は医学薬学上公知であると判断されています。
65ページを御覧ください。効能・効果については、非結核性抗酸菌症の適応を有する他剤の記載を参考に、下線部のように設定することが適切と判断されています。また、66ページにあるとおり、用法・用量については、要望された用法・用量を踏まえ、また、使用実態や本剤の既存の用法・用量の記載等を考慮し、上段の下線部のように設定することが適切と判断されています。また、「用法・用量に関連する使用上の注意」として、本剤を非結核性抗酸菌症に用いる場合には、国内外の各種ガイドライン等最新の情報を参考に投与すべき旨、注意喚起する必要があるとされています。説明は以上です。
○吉田部会長 委員の先生方から御質問はございますか。
○前崎委員 クリンダマイシンの件です。恐らく、感染症学会はいわゆるPK-PDの概念から600mgを1日4回という使い方の方がより有効性が高くなるのではないかということで、このような用法・用量を要望されていると思います。保険用量は、600~1200mg、1日2~4回となっていますので、実際の臨床では、600mg、1日2回という使い方をすることが多いのです。ですから、本邦では、投与量が少ないとか、投与回数が欧米に比べて少ないと言われています。保険用量を変えるには、ほかの疾患についても1日600mgを4回に変えないと、現場が混乱するのではないかと思います。一応、学会にはこのことを問い合わせていただいて、用法・用量の変更をお伝えしてあるのでしょうか。
○事務局 検討会議のWGにおける検討の一環として、学会等とも意見交換を行っております。
○前崎委員 これは、600mg、1日4回、最大用量は2400mgですね。最大用量で1日4回という投与法がより有効性を高めるには好ましいということを、できればどこかできちんと書いていただいた方がいいのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
○事務局 公知申請の事前評価に関しては、この部会でお認めいただいた場合には、改めて企業から承認申請が上がってまいります。そのときに添付文書における記載方法等の整備も行われますので、その一環で検討させていただきたいと考えております。
○前崎委員 ほかの疾患についても、できれば、クリンダマイシンはこのような用法・用量に変更するようなことを企業側にも働き掛けていただきたいと思います。
○吉田部会長 今の前崎先生の御指摘は非常に大切だと思います。申請者側にもしっかり伝えて、今後、そういった形で申請、承認を提案するようによろしくお願いしたいと思います。ほかにございますか。それでは、本議題については御確認いただいたものといたします。
続いて、その他の事項の議題2に移りますので、事務局から説明してください。
○安全使用推進室長 その他議題2、資料13「医療用医薬品の販売名の制定について」説明いたします。医療用医薬品の販売名の取扱いについては、「医療事故を防止するための医薬品の表示事項及び販売名の取扱いについて」の通知等により運用していますが、本日はその基本的な考え方の概要を紹介いたします。お手元の資料13を御覧ください。
まず、「1.医療用医薬品の販売名の類似性の評価に係る一般的な考え方」についてです。販売名の一部を省略して記載した場合に、省略された販売名と同一の販売名の医薬品があることなどが誤投与を招く原因となるおそれがあるため、これを防止する観点から「医療用医薬品の販売名の取扱い」として定め、新規医薬品の承認申請を行うものについては、これに従い命名するようにしています。
原則として、剤形及び有効成分の含量(又は濃度等)に関する情報を付すことが必要となっています。記載事項の原則の代表例として、先発医薬品については、「ブランド名+剤形+含量」、後発医薬品については、「一般的名称+剤形+含量+屋号」、配合剤については「販売名+剤形+接尾字」となっています。
「2.医療用医薬品の販売名の類似性の評価時期」については、医療用医薬品の製造販売承認申請直後となっていますが、最終的には部会・分科会で御意見を頂き承認することになっています。
3.医療用医薬品の販売名の類似性の評価についてです。まず、医薬品名称の類似性の判断をサポートするツールとして、一般財団法人日本医薬情報センター(JAPIC)のホームページ上に公開されています「医薬品類似名称検索システム」があります。このシステムの検索結果に基づき医薬品名称の類似性の判定指標として利用されるものが「新規承認医薬品名称類似回避フローチャート」で、参考資料として2枚目に添付しています。本日は時間が限られていますので詳細な説明は割愛させていただきます。フローチャートを一部改変して吹出しを付けていますので御参照ください。
判断に当たっての留意点としては、フローチャート上でピンク色にお示しした「要変更」となった場合には販売名の変更が必要だということです。また、フローチャート上で「要検討」となった場合で、相手薬が、糖尿病薬や抗がん剤、ジギタリス製剤、ワルファリン等のリスクのある薬剤である場合には、販売名を変更することとしています。ただし、「要変更」若しくは「要検討」の場合でも、相手薬の投与経路が違うですとか、販売が終了している医薬品の場合には、原則として変更不要としています。なお、原則としてはこのフローチャートに基づき判断させていただきますが、必ずしもこれに該当しない事例もありますので、このフローチャートのみに頼ることなく、販売名ごとに医療安全の観点から固有のリスクを評価しています。以上でございます。
○吉田部会長 ただ今の議題について御意見、御質問がございましたらお願いします。
○川崎委員 資料13の1枚目にバイオ後続品が載っていませんので、バイオ後続品についても御検討いただきたいと思います。バイオ後続品の名称に関して、一般名については「×××(先行品)」の後に「後続1」を付けることになっています。しかし、販売名になると「後続1」は一率「BS」に変わります。現在、フィルグラスチムのバイオ後続品が2品目、4製品販売されており、一般名「後続1」のものが2つ、「後続2」のものが2つありますが、販売名はいずれも「フィルグラスチムBS注」となっています。バイオ後続品の場合は、一連の治療期間内に代替又は混用することは基本的に避ける必要があるとされていますので、販売名から製品間の関係が分かることが望ましいと思います。バイオ後続品の申請は今後も増えると思いますので、この件についても併せて御検討をお願いしたいと思います。
後発医薬品の販売名について、「一般的名称+剤形+含料+屋号」とすることとされていますが、構造や効能の類似性から一般的名称が同一のステムで開始される類似医薬品が幾つかあります。例えば、セファロスポラン酸系抗生物質は「セファ」で始まっています。同一会社がその類似品を複数販売しているケース等があると思いますので、誤投与のリスクがある医薬品については今後も引き続き御対応をお願いしたいと思います。
○吉田部会長 事務局、いかがですか。
○審査管理課長 まず、川崎先生から頂いたコメント1について、審査管理課からお話いたします。販売名で全てを区別することがこれまでは難しかったということで、先発と後発、また、一般名では先のものと後のものの関係を示させていただきました。添付文書上ではこの関係がよく分かるようになっています。今の段階では、その添付文書を御覧いただくことで関係が分かるのではないかと思っています。ただ、それだけで十分かどうかにつきましては、今後いろいろと事例を踏まえて、何が適切か検討を進めたいと思っています。
○吉田部会長 質問です。これは、申請者にこれを求めるのですか、それとも、管理側がスクリーニングするのですか。どちらなのですか。
○安全使用推進室長 まず、申請者側で名称は考えていただきますが、安全第一部に医療安全に関して確認している部局がありますので、名称の取り違いが起こりそうかどうかについても十分に検討させていただいて、必要があれば修正のお願いをさせていただきます。
○吉田部会長 少なくとも申請者側に、例えばフローチャートには必ず載せてチェックしなさいというようなことはできるのではないかと思います。
○安全使用推進室長 第1段階としては、まずチェックはもうしていただいている状況です。
○吉田部会長 分かりました。これから、バイオシミラーなどいろいろ出てきますから。
○審査管理課長 追加ですが、バイオシミラーに関しましては、本年2月14日付で、審査管理課長名で「バイオ後続品に係る一般的名称及び販売名の取扱いについて」が通知されています。この中でも例示などをいろいろと書いてあります。これらにつきましても、先生の御指摘を踏まえて、今後どうしていくかについて検討させていただきたいと思います。
○川崎委員 お願いいたします。
○吉田部会長 雲霞のごとく出てきそうですし、ジェネリックも大変増えてくると思うので、是非、混乱のない方向でお願いします。
○安全使用推進室長 事務局 2つ目の御意見について安全対策課からコメントさせていただきます。後発品の販売名については、従来は一般的名称ではなくて、各メーカーが販売名等で付けていた時期がありましたが、いろいろな製品がいろいろな名前を付けてくるということで、医療現場でもかなり分かりにくいという話があり、「一般的名称+剤形+含量+屋号」という形にしております。ただ、川崎先生の御指摘のように、抗生物質などについては、セファロ何々で始まるものが非常に多いということが現実問題としてはあります。これは避け難い状況で止むを得ない部分もありまして、そこは何とか御理解いただきたいと思います。誤投与のリスクもありますが、セファロ何々という一連の抗生物質という関連の中では、医療現場の先生もそういうものがたくさんあることは十分御存じであると思いますので、そういった中で気を付けていただけるのではないかと思います。また、万が一、誤投与があった場合でも、薬の用量を間違えて何か起きるというケースも余りないのではないかということもあります。もし、それでも医療安全上、取り違えて問題があるようなケースについては個別に対応させていただきたいと思っています。
○吉田部会長 例えばヒヤリハットその他も、そういうデータベースから間違えたものを体系付けて探していくということもやっているのですか。
○安全使用推進室長 承認が終わった後も、そのような形で引き続きフォローしながら、問題となっている医薬品名称については対策を取らせていただいています。
○吉田部会長 よろしいでしょうか。御質問がなければ、本議題について御確認いただいたことといたします。
本日の議題は以上です。事務局から何か報告はありますか。
○事務局 次回の部会は8月26日(月)午後3時から開催させていただく予定です。よろしくお願いいたします。
○吉田部会長 本日はこれで終了させていただきます。御苦労さまでした。
(了)
本日の委員の出席状況ですが、新井委員、庵原委員、奥田委員、濱口委員、半田委員、増井委員、及び山本委員より御欠席との連絡を頂いているところです。大槻委員、清田委員、鈴木委員におかれましては、後ほど来られる予定です。現在のところ、当部会の委員数21名のうち11名の委員の御出席を頂いておりますので、定足数に達していることを報告申し上げます。
続きまして、事務局に人事異動がありましたので御報告いたします。厚生労働省から、医薬食品局長の今別府です。大臣官房審議官の成田です。安全対策課長の森口です。続きまして、PMDAから、安全管理官の山本です。上席審議役の俵木です。新薬審査第五部長の佐藤です。本日は欠席ですが、審議役(国際・新薬審査担当)の山田です。最後に、申し遅れましたが、審査管理課長に着任いたしました佐藤でございます。どうぞよろしくお願いいたします。以上になります。
吉田部会長、以降の議事進行をよろしくお願いいたします。
○吉田部会長 本日の審議に入ります。事務局から、配布資料の確認と、審議事項に関する競合品目・競合企業リストについての報告をお願いします。
○事務局 資料の確認をさせていただきます。本日、席上に「議事次第」、「座席表」、当部会の「委員名簿」を配布しています。議事次第に記載されている資料1~13をあらかじめお送りしています。このほか、資料14「審議品目の薬事分科会における取扱い等の案」、資料15「専門委員リスト」、資料16「競合品目・競合企業リスト」を配布しています。また、当日配布資料として、資料17「佐藤委員からの御質問」、また資料2の追加資料の1枚紙、さらに資料番号を付していませんが、川崎委員からの資料13に対するコメントの1枚紙を配布しております。
続きまして、本日の審議事項に関する競合品目・競合企業リスト、資料16について報告します。各品目の競合品目選定理由については、次のとおりです。
資料16の1ページです。フルティフォームほか3品目です。本品目は「成人の気管支喘息」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
2ページです。ゾレア皮下注用150mg及び同皮下注用75mgです。本品目は「気管支喘息(既存治療によっても喘息症状をコントロールできない難治の患者に限る)」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目はなしとしております。
3ページです。ユニタルク胸膜腔内注入用懸濁剤4gです。本品目は「悪性胸水の再貯留抑制」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
4ページです。アレジオン点眼液0.05%です。本品目は「アレルギー性結膜炎」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。
5ページです。シナジス筋注用50mgほか3品目です。本品目は「RSウイルス感染による重篤な下気道疾患の発症抑制」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目はなしとしております。
6ページです。タラポルフィンナトリウムです。本品目は「悪性脳腫瘍」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目はなしとしております。以上です。
○吉田部会長 ただ今の事務局からの説明に、特段の意見等ありませんでしょうか。ないようですので、本部会の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについては、皆様の御了解を得たものといたします。
委員からの申出状況についての報告をお願いします。
○事務局 各委員からの申出状況については、次のとおりです。
議題1「フルティフォームエアゾール」、退室委員なし、議決には参加しない委員は清田委員です。
議題2「ゾレア皮下注用」、退室委員なし、議決には参加しない委員は大槻委員です。
議題3「ユニタルク胸膜腔内注入用懸濁剤」、退室委員なし、議決には参加しない委員は田村委員です。
議題4「アレジオン点眼液」、退室委員なし、議決には参加しない委員は大槻委員です。
議題5「シナジス筋注用及び同筋注液」、退室委員なし、議決には参加しない委員は大槻委員です。
議題6「タラポルフィンナトリウム」、退室委員は関水委員、議決には参加しない委員はなしです。以上です。
○吉田部会長 本日は審議事項が6議題、報告事項は5議題、その他が2議題となっております。審議事項の議題1に移ります。議題1について、機構からの概要説明をお願いします。
○機構 審議事項議題1、資料1-1、資料1-2「医薬品フルティフォーム50エアゾール56吸入用、同125エアゾール56吸入用、同50エアゾール120吸入用及び同125エアゾール120吸入用の生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」医薬品医療機器総合機構より説明いたします。
本剤は、吸入ステロイド薬(以下、「ICS」)であるフルチカゾンプロピオン酸エステル(以下、「フルチカゾン」)及び長時間作用性ベータ2刺激薬(以下、「LABA」)であるホルモテロールフマル酸塩水和物(以下、「ホルモテロール」)を有効成分とする気管支喘息治療用の加圧式定量噴霧式吸入剤です。ICS/LABA配合剤は、定期使用を要する気管支喘息患者においては利便性が高く、アドヒアランスの向上等につながることから、治療ガイドラインにおいて使用が推奨されています。本邦では、気管支喘息に係る効能・効果を有するICS/LABA配合剤として、フルチカゾンとサルメテロールキシナホ酸塩、及びブデソニドとホルモテロールが承認されていますが、新規の配合剤として新たな治療薬の選択肢を提供することを目的として、本剤の開発が行われました。海外において、本剤は、2013年4月現在、欧州を含む20か国で承認されています。本申請の専門委員としては、資料15に記載しております6名の委員を指名いたしました。
主な審査内容について簡単に説明いたします。審査報告書24ページ「2)第II相試験」の項を御覧ください。日本人気管支喘息患者を対象に、本剤に含まれるフルチカゾン単剤と国内既承認のフルチカゾン製剤との治療学的同等性を検証するため、無作為化単盲検並行群間比較試験が実施されております。用法・用量は、本剤と同一の吸入器にフルチカゾンのみを封入したもの(以下、「KRP-108フルチカゾン」)又は既承認製剤のフルチカゾン(以下、「既存フルチカゾン」)50μgを1回2吸入、1日2回投与することと設定され、投与期間は4週間と設定されております。主要評価項目である投与4週後のモーニングピークフローのベースラインからの変化量の結果は、25ページ表13に示したとおりであり、KRP-108フルチカゾン群と既存フルチカゾン群との群間差の90%信頼区間の下限値は、同等性マージンの下限値である-15L/minを下回ったことから、治療学的同等性は検証されませんでした。一方、下に示す表14のとおり、呼吸機能検査値、喘息症状等に関する各副次評価項目においては、両群で大きな相違は認められませんでした。喘息予防・管理ガイドライン2012年等の治療ガイドラインにおいて、薬物療法による喘息コントロールについては、呼吸機能の改善だけではなく、喘息症状及び日常生活への影響も考慮して判断することが推奨されていることも踏まえ、これらの副次評価の結果も勘案し、機構はモーニングピークフローの両群間の差違は臨床的に大きな意義のある差違ではないと考え、第III相試験における本剤中のフルチカゾンの用量を既承認フルチカゾン製剤と同様に、通常用量として1回100μg1日2回投与と設定することは許容可能と判断しました。
審査報告26ページ、「3)第III相試験」の項を御覧ください。日本人気管支喘息患者を対象に、本剤の有効性及び安全性を検証するため、既存フルチカゾンを対照とした無作為化単盲検並行群間比較試験が実施されております。なお、本試験は当初、KRP108フルチカゾンに対する本剤の優越性を検証し、配合意義であるフルチカゾンに対するホルモテロールの上乗せ効果を示す予定とされておりましたが、KRP-108フルチカゾンと既存フルチカゾンとの治療学的同等性が検証されなかったこと、また、実臨床において本剤は主にフルチカゾン等の既承認ICSから切り替えて使用されることが想定されることから、より保守的な有効性評価となるよう、既存フルチカゾンに対する本剤の優越性を検証する試験デザインに変更して実施されました。用法・用量は、本剤(フルチカゾン50μgとホルモテロール5μg)、又は既存フルチカゾン50μgを1回2吸入、1日2回投与することと設定され、投与期間は8週間と設定されております。結果については26ページ、表16に示しておりますとおり、主要評価項目とされた投与8週後までの平均モーニングピークフローのベースラインからの変化量は、本剤群30.5L/min、既存フルチカゾン群9.9L/minであり、本剤の既存フルチカゾンに対する優越性が検証されたことから、ICS/LABA配合剤としての本剤の有効性は示されたと判断しました。
35ページ以降「(3)安全性について」を御覧ください。ICSであるフルチカゾンにおいては、副腎皮質機能への影響をはじめとする全身性の有害事象、LABAであるホルモテロールにおいては、重篤な心血管系有害事象等が特に留意すべき有害事象と考えられることから、これらを中心に国内外臨床試験成績に基づき検討したところ、ステロイドに関連する有害事象については37~38ページの記載のとおり、またベータ2刺激薬に関連する有害事象については38~41ページの記載のとおり、類薬を上回るリスクは示唆されませんでした。しかしながら、国内臨床試験で評価例数は限られており、特に高用量投与時、長期投与時の安全性データが限られていることから、44ページ「(1)製造販売後調査について」に記載しております製造販売後調査において、本剤の安全性について引き続き検討する必要があると考えております。
以上の審査を踏まえ、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で御審議いただくことが適当と判断しました。本申請に係る再審査期間は6年、また製剤は毒薬及び劇薬のいずれにも該当せず、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。
以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○吉田部会長 委員の先生方からの御質問、御意見をお願いします。
○菊池委員 29ページなどに、本剤で鼻咽頭炎の有害事象が約5割までに上がっている記載があり、ほかのところでも結構あるのですが、この辺の御配慮は、何かありますでしょうか。添付文書には、その辺について特段書かれていないようですが、いかがでしょうか。
○機構 鼻咽頭炎については、多くは軽症、中等症で、臨床上問題となる事例は確認されておりません。気管支喘息患者の臨床試験では一般的に鼻咽頭炎が多く観察される事象ですので、特に本剤で発現率が高いということはなく、類薬を上回るリスクが認められているとは考えておりません。
○菊池委員 しかし、48%ですから、軽症なものを入れたとしても、かなり高いという言い方をしなくてもよろしいのですか。
○機構 臨床試験が実施された時期が冬の時期も含まれた影響もあり、発現率が多くなったという可能性も考えられると思います。
○吉田部会長 よろしいですか。ほかにございますか。
○佐藤委員 審査報告書の20~21ページにかけて、スペーサーの使用のことが書かれているのですが、スペーサーの使用はどういう予定というか、どうすることになっているのでしょうか。
○機構 スペーサーの使用の有無は、どちらも可能と考えております。
○佐藤委員 21ページの上に、スペーサーを使用して本剤を投与した日本人の評価症例はないことから、製造販売後調査において、「スペーサーの使用の有効性及び安全性に及ぼす影響について確認する必要がある」と書かれているのですが、その後の製造販売後調査の所を見ると、スペーサーの使用についての調査項目が書かれていないのですが、その点はどうなっているのでしょうか。
○機構 スペーサーの有無の影響については、調査の中で確認するよう、申請者に指示しております。
○吉田部会長 よろしいですか。ほかにございますか。審査の経緯が分かりにくかったのですが、海外でもKRP-108フルチカゾンとして承認されているのですね。
○機構 御質問としては、KRP-108フルチカゾンが海外で承認されているかということですか。
○吉田部会長 そうです。
○機構 海外では、配合剤のみが承認されております。
○吉田部会長 単体でなくて、ですね。
○機構 はい。本吸入器を用いたフルチカゾン単体は、日本と同様、承認されておりません。
○吉田部会長 分かりました。よろしいでしょうか。特に御意見がなければ、議決に入ります。なお、清田委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。お諮りします。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。
御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
議題2に移ります。議題2について、機構からの概要説明をお願いします。
○機構 審議事項議題2、資料2「医薬品ゾレア皮下注用150mg及び同皮下注用75mgの製造販売承認事項一部変更承認の可否及び再審査期間の指定について」医薬品医療機器総合機構より説明いたします。
本剤の有効成分であるオマリズマブ(遺伝子組換え)は、ヒト化マウス抗ヒトIgEモノクローナル抗体であり、血中遊離IgEに結合し、肥満細胞、好塩基球等の炎症細胞に対するIgEの結合を阻害することにより、炎症細胞の活性化を抑制し、アレルギー反応を抑制すると考えられています。本邦において本剤は、成人に対し気管支喘息に係る効能・効果で承認されており、用法・用量は、審査報告書5ページ上段に示しています既承認の投与量換算表に従い、初回投与前の血清中総IgE濃度及び体重に基づき、1回当たり75~375mgを、2週又は4週間隔で皮下投与することとされております。
初回申請時において、本剤投与により血清中遊離IgE濃度を25ng/mL以下まで低下させることで臨床効果が示されること、血清中遊離IgE濃度を25ng/mL以下まで低下させるための本剤の用法・用量は、投与前のIgE濃度、1IU/mL及び体重1kg当たり0.008mgの2週間隔皮下投与、又は0.016mgの4週間隔皮下投与であることが示されており、この臨床推奨用量に基づき、投与量を算出する煩雑さを軽減するために、本投与量換算表が作成されております。
本申請は、小児適応の追加及び投与量換算表の変更に係るものです。5ページ上段の表に示していますように、既承認の投与量換算表で対応可能な範囲は、血清中総IgE濃度が700IU/mLまで、また体重が30kgまでですが、喘息患者のIgE濃度は、アレルギー疾患の中でも比較的高値で、特に小児では高い傾向があるため、既承認の投与量換算表では本剤の適用が不可となる患者が存在します。そのため、1回当たりの最大投与量を600mgまで増量することで、小児も含め血清中総IgE濃度が700IU/mLを超える患者に対する本剤の投与を可能にすること。さらに、既承認の投与量換算表で2週間隔投与とされている一部の範囲について、1回当たりの投与量を2倍とし、投与間隔を4週に変更することにより、患者の通院負担を軽減することなどを目的として、開発が行われました。
海外において、小児への適応及び1回当たり600mgまでの用量追加については、2013年4月現在、それぞれ35か国以上で承認されており、投与間隔の変更については、2012年5月にEUで承認されています。本申請の専門委員としては、資料15に記載されております5名の委員を指名いたしました。
主な審査内容について、簡単に説明いたします。まず、小児適応の追加に係る審査内容について説明いたします。本邦において、本剤の適用対象となる最重症持続型のアレルギー性喘息患児数は限られることから、本邦では小規模の非盲検非対照試験が実施され、海外で実施されたアレルギー性喘息患児における検証的試験成績と併せて、日本人患児における本剤の有効性及び安全性が検討されております。
海外の検証的試験について、審査報告書12ページ中段、2)外国人アレルギー性喘息患児を対象とした試験、IGE025AIA05試験の項を御覧ください。既存治療で効果不十分な中等症から重症のアレルギー性喘息患児627名を対象に、11ページ、表7の投与量換算表を用いて、本剤又はプラセボを4週間毎あるいは2週間毎に皮下投与したときの有効性及び安全性を検討するため、プラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験が実施されております。その結果、13ページ上段の表9に示していますように、主要評価項目であるステロイド固定期の増悪発現頻度について、本剤群のプラセボ群に対する比は0.693であり、本剤群はプラセボ群に比べ増悪発現頻度を有意に抑制することが示されました。また、薬力学に関する評価項目である投与後24週の血清中遊離IgE濃度の幾何平均は15.0ng/mLであり、25ng/mL以下に抑制されました。
次に、国内臨床試験について、審査報告書10ページ中段、1)日本人アレルギー性喘息患児を対象とした試験、CIGE025B1301試験の項を御覧ください。既存治療で効果不十分な最重症持続型のアレルギー性喘息患児38名を対象に、11ページの表7の投与量換算表を用いて本剤を4週間毎、あるいは2週間毎に皮下投与したときの有効性及び安全性を検討するため、非盲検非対照試験が実施されております。その結果、11ページ中段に示していますように、主要評価項目である投与後24週の血清中遊離IgE濃度の幾何平均は15.6ng/mLであり、海外の検証試験と同様に25ng/mL以下に抑制されました。また、ピークフロー、喘息増悪発現頻度といった副次評価項目等についても、ベースラインと比べて減少する傾向が認められました。
以上の結果、並びに日本人及び外国人併合データを用いた母集団PK-PD解析より、成人と小児及び国内外で、本薬のPK-PDの関係がほぼ同様であることが示されていること、安全性についても、27ページの表19などに示しているように、血清中総IgE濃度が高い患児における有害事象発現状況も含め、成人の安全性プロファイルと比較し、新たな問題は示唆されていないことを踏まえ、機構は小児適応の追加について許容可能と判断しました。
次に、1回当たりの用量の追加及び投与間隔の変更に係る審査内容について説明いたします。審査報告書20ページの2)新たな投与量換算表で設定される用法・用量の有効性及び安全性についての項を御覧ください。本項の6行目に記載していますように、1回当たりの用量の追加については、海外臨床試験において700~2000IU/mLの高濃度の投与前血清中総IgE濃度を有する成人患者に対して、1回当たり本剤450、525、又は600mgを投与したところ、血清中遊離IgE濃度は25ng/mL以下に抑制され、かつ本剤群ではプラセボ群と比較し即時型喘息反応を有意に抑制することが示されています。本邦では、臨床試験は実施されていませんが、初回申請時に日本人と外国人のPK-PDは同様であることが示されており、母集団PK-PD解析に基づくシミュレーションからも、日本人喘息患者において当該用量により血清中遊離IgE濃度は10ng/mL付近まで低下することが予測されております。また、投与間隔が変更される用法・用量についても、母集団PK-PD解析に基づくシミュレーションより、日本人及び外国人のいずれにおいても、血清中遊離IgE濃度は10ng/mL付近まで低下することが予測されております。
さらに、本剤600mgまでの高用量投与時の安全性について、海外高用量試験併合データに基づき検討したところ、21ページの表16及び22ページの表17に示しているように、主な有害事象又は本剤投与との関連が示唆されている血小板数減少、出血及び動脈血栓塞栓イベントの発現が用量依存的に増加する傾向は示唆されませんでした。
以上の結果、並びに本申請において追加・変更される用法・用量も、既承認の推奨用法・用量である投与前のIgE濃度1IU/mL及び体重1kg当たり0.008mgの2週間隔皮下投与、又は0.016mgの4週間隔皮下投与を満たすものであること、アレルギー反応とIgE抗体との関係を踏まえると、本剤投与によりIgE濃度が十分に抑制される場合には、IgEを介したアレルギー反応が抑制されることは推測可能であることを踏まえ、機構は1回当たりの用量の追加及び投与間隔の変更について、許容可能と判断しました。
最後に、34ページ中段、(1)製造販売後調査についての項を御覧ください。追加・変更される用法・用量における日本人成人アレルギー性喘息患者での投与経験はなく、日本人アレルギー性喘息患児の臨床試験成績も限られていることから、成人及び小児、それぞれを対象として、記載のような製造販売後調査により、追加・変更される用法・用量における使用実態下での安全性及び有効性について、更に検討することが予定されております。
以上の審査を踏まえ、本申請を承認して差し支えないとの結論に達し、本第二部会で御審議いただくことが適当と判断しました。本申請に係る再審査期間は4年とすることが適当と判断しています。薬事分科会では報告を予定しています。
なお、部会に先だち、佐藤委員より3点、御質問を頂いております。1点目は、「審査報告書31ページ、下から7~10行目において、小児の成長に伴う体重増加により、用法・用量の変更があり得ることが指摘されていますが、換算表では投与前の血清中総IgE濃度が600~700IU/mLのセルの対象者が、体重20~25kgのセルから25~30kgのセルに移ったときのみ4週間隔投与から2週間隔投与に用法も変更となり、30~35kgのセルに増加すると再び4週間隔投与に戻ります。この4週間隔投与から2週間隔投与の変更にどのぐらいの意味があるのか、375mg、4週間隔投与では何がいけないのか、申請者に確認をお願いします」との御質問です。
この点について申請者は、追加資料で配布しておりますが、既承認の投与量換算表で設定された投与レジュメは、75mg、150mg、225mg又は300mgの4週間隔投与、若しくは225mg、300mg、又は375mgの2週間隔投与の計7種類であり、また成人適応の承認当時は150mgバイアルのみの承認であったことから、投与レジュメの種類が増え、複雑になることによる誤投与を防止するため、375mgの4週間隔投与という投与レジュメは設定しなかった旨を説明しております。また、本申請では海外臨床試験データを利用していることから、投与量換算表も海外と合わせ、当該セルの用法・用量を225mg、2週間隔投与とした旨を併せて説明しております。
2点目の御質問は、「審査報告書31ページ4~10行目、本剤の使用は効能又は効果に関する使用上の注意において、『症状が安定しない』患者とされており、その定義が成人と小児で異なっています。このことで、小児期に本剤を投与、使用していた患者が、成人期での『症状が安定しない』の定義に当てはまらずに本剤を使用できなくなるケースもあり得ると思いますが、この点は問題ないでしょうか」との御質問です。
この点については、小児において症状が安定しない患者、すなわち「毎日、喘息症状が観察される」、「週1回以上の夜間症状が観察される」、「週1回以上、日常生活が障害される」のいずれかに該当し、本剤の投与が必要となる最重症の患者では、持続する気道炎症により気道障害とそれに引き続く気道構造の変化が惹起され、これに伴い非可逆性の気流制限、気道過敏性の亢進等が引き起こされていると考えられます。このような患者において、成人における「症状が安定しない」患者、すなわち「喘息に起因する明らかな呼吸機能の低下」、「毎日喘息症状が観察される」、「週1回以上、夜間症状が観察される」のいずれにも該当せず、本剤を使用できなくなる可能性は低いと考えております。この点に関しては、呼吸器の専門委員の御意見も確認しております。
3点目の御質問は、「小児に関しては、成長による体重増加に伴う用法・用量の変更による安全性が懸念されますが、現行の市販後調査計画では、観察期間が成人・小児ともに1年となっており、小児の成長による用法・用量変更の影響が捉えられないのではないかと思います。小児については、観察期間を少なくとも2年間とする方がいいのではないでしょうか」との御質問です。
こちらについては、御指摘を踏まえ、小児の成長による用法・用量変更の影響を捉えられるよう、小児を対象とした製造販売後調査における観察期間をより長期とするよう検討したいと思います。
なお、審査報告書8ページ、下から5~7行目の記載について、誤記の指摘を頂いておりますが、こちらについても適切に修正させていただきます。御指摘ありがとうございました。説明は以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○吉田部会長 まず、佐藤先生、いかがでしょうか。
○佐藤委員 ありがとうございました。1点目の換算表の所ですが、確かどこかに小児が2週間ごとに来なければいけないというのは大変だという記載があったと思うのですが、その点を考慮しても、ここのところだけ突出してというか、ここだけ変なように、4週毎だったものが2週毎になって、また次の体重のセルに移ると4週毎に戻るという格好になっているのですが、本当にこれで不便はないのでしょうか。
○機構 海外でもこの投与量換算表で承認されているのですが、承認後にコンプライアンス等の問題は特に報告されていませんので、今回、海外臨床試験を利用したデータパッケージということも踏まえ、投与量換算表を海外と揃えて225mg、2週間隔投与とすることを考えております。
○佐藤委員 ここの部分は、別に小児で海外の用法・用量の変更適応拡大の試験を行った結果を移しているわけではないですね。
○機構 国内外で小児の臨床試験が実施されておりますが、どちらも225mg、2週間隔投与で実施されております。
○吉田部会長 佐藤先生のおっしゃるのはもっともで、375というドースも、下の方で設定されていますが、理由が、薬のバイアルがきちんとできていないとかということではないと思うのです。ただし、この辺のドースの換算表に関しては外国のデータに完全に頼っているので、我が国としては独自に動けないところもあるのだろうと思います。要するに根拠がないと。そういうことで、承認申請の段階では海外のスケールをそのまま持ってきて、一応PD上は問題ないだろうということなのだと思うのですが、この辺について、市販後でも良いですので、不便があったかないかとかいうことも、調べてもらうことはできませんか。
○機構 はい。製造販売後にコンプライアンス等の問題や、不便で使いにくいという臨床現場からの指摘が多く出てくる場合には、対応を検討させていただきたいと思っております。
○吉田部会長 いかがでしょうか。
○佐藤委員 はい、結構です。2点目はよく分かりました。3点目ですが、3点目も例えば小児全部を長期間観察するというのではなくて、体重が増えたことで用量が大きく上がるような所に該当する小児だけ長期間観察するとかという計画でもいいと思いますので、そのようなことを申請者と相談していただければと思います。
○機構 はい、御指摘ありがとうございます。検討させていただきます。
○吉田部会長 ほかにございますか。
○鈴木委員 添付文書の、小児への投与という所に、「低出生体重児、新生児、乳児又は6歳未満の幼児に対する安全性は確立していない(使用経験がない)」という記載があります。一方では小児の場合も投与が認められているということなのですが、この辺の経緯について、もう1回確認させていただきたいと思います。
○機構 質問内容を確認させていただきたいのですが、添付文書の小児への投与の項には、「新生児、乳児又は6歳未満の幼児に対する安全性は確立していない(使用経験はない)」とあるのだけれども、用法・用量については小児への投与が含まれるという理解でよいか、との御質問でしょうか。
○鈴木委員 今回、小児への投与が含まれていますね。
○機構 はい。
○鈴木委員 その理由について教えてください。
○機構 ここについては、小児への投与の項で、「6歳未満の幼児に対する安全性は確立していない」と記載することで、6歳未満の小児に対する投与は推奨しないということを注意喚起しています。
○鈴木委員 ということは、小児といっても6歳以上ということですか。
○機構 はい、そうです。
○鈴木委員 分かりました。
○関水委員 プラセボのことですが、13ページに血清中遊離IgE濃度は15ng/mLとなったということですが、これはプラセボのデータはないのですか。
○機構 確認いたします。
○吉田部会長 それではその間、大槻先生どうぞ。
○大槻委員 皮膚科では適応がないのですが、アトピー性皮膚炎で海外で臨床試験も行われているということから、気になった点を幾つか質問させていただきます。細かいことなのですが、21ページの表15、600mg以上の投与群で、口腔ヘルペスが数としては少ないのですが、パーセンテージとしたら600mg未満の群と比べると3倍ぐらいに上がっています。口腔ヘルペスというのは、多分粘膜のものだけだと思うのですが、メカニズムを考えると、TH2とTH1のバランスで考えれば、IgEを抑えることでTH1の方に傾く可能性があって、ウイルス性感染が増える可能性があるわけです。これはほかのヘルペス感染症を全部合わせた数字はないでしょうか。口腔ヘルペスが3倍上がるとなると、例えばアトピー性皮膚炎を合併しているとカポジ水痘様発疹症とか、皮膚のトラブルがもっと増えるのではないかと懸念されるのです。これは、有意差はないということになっていますが、全体のヘルペス感染症のデータがもしあれば教えてください。
○機構 ヘルペス感染症全体としては集計しておりません。この表自体は1回当たりの最大投与量が600mg未満の群に比べて600mg以上の群で発現率が3%以上高い事象についてのみということで記載しております。
○大槻委員 この質問はそんなに大きな質問ではないのですが、実際アンメツトニーズというのがありまして、気管支喘息でもIgEが700の人というのは、なかなかそれに収まる人が少ないということがあるだろうと思うのです。23ページにも実際に使おうと思っても、□%、□%の方で適応外になってしまって使えないというように記載があります。アトピー性皮膚炎の場合には、適応外ですが、実際にシクロスポリンとか全身治療を必要とされる方というのは、大体何万単位でIgEがあるわけです。こういう新しい画期的な薬はIgEが万単位の方に効く薬であってほしいわけですが、700までだったのが1300、今回1500ぐらいまで使えるようになり、門戸を開放されることはすごく良いことだと思うのです。今回の審議に直接関係することではないのですが、これがもう少し使えるようになるのか、そのためには増量したときの安全性ですね。例えば血栓、塞栓、血管イベントが増えるのではないかとか、いろいろ懸念が書いてありますが、用量依存性ではないと結論されていますので、例えばIgE5000とか、そういう者に対しても増量していくような展望があるのかどうか、分かったら教えてください。
○機構 御指摘いただいたIgEが1500IU/mLを超える患者に対する本剤の開発予定ですが、IgEが1500IU/mLを超える患者では、600mgより高用量の投与が必要となります。本剤には75mgと150mgのバイアルがあり、投与するための薬液調製等に手間がかかるものなのですが、投与量が増えることで薬液調製がかなり負担になることや投与液量自体が多すぎるため、申請者は、1500IU/mL以上の患者に対する本剤600mgを超える用量の開発は、現時点では予定していないと説明しています。
○吉田部会長 今の質問に関連してなのですが、多分、用量依存性はないというのでしょうけれども、ここに書いてある口腔ヘルペス87例中5例ですね。これは600mg以上になっているのですが、具体的にどの辺りの量で出現していて、投与量とは本当に関係ないかというのは今すぐ調べられますか。もし分かれば確認してください。
○機構 今の手持ちのデータでは、600mg以上の投与量での発現というところまでしか確認できません。
○吉田部会長 分かりました。先ほどの件は、わかりましたか。
○機構 資料を確認しましたが、こちらの手持ちの資料では記載がありませんでしたので、後ほどお知らせいたします。
○吉田部会長 分かりました。それはまた連絡していただいて、24週の血清中の遊離IgE濃度がプラセボ群では何ng/mLだったかということだけお願いします。
○機構 報告させていただきます。
○吉田部会長 ほかにありますか。よろしいでしょうか。意見も出尽くしたようですので、議決に入ります。なお、大槻委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づいて、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。お諮りします。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。
御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
議題3に移ります。議題3について、機構からの説明をお願いします。
○機構 審議事項議題3、資料3「医薬品ユニタルク胸膜腔内注入用懸濁剤4gの生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」医薬品医療機器総合機構より御説明いたします。
悪性胸水は、悪性腫瘍に伴い胸水が異常貯留する病態です。悪性胸水が貯留した患者に対しては、症状緩和のために胸水の排液が行われますが、多くの患者で再貯留が認められることから、胸水の再貯留を抑制するために、排液の後、胸膜癒着剤を使用した胸膜癒着術が実施されております。本剤の有効成分であるタルクは、胸膜腔内に投与することにより、胸膜の炎症を惹起し、臓側胸膜と壁側胸膜を癒着させることで胸水の再貯留を抑制します。
今般、本剤は悪性胸水の再貯留抑制に対する薬剤として製造販売承認申請されました。なお、タルクについては、平成19年1月に開催された「第11回未承認薬使用問題検討会議」において、本邦において治験が早期に開始されるべきと判断された薬剤です。また、平成22年4月に開催された「第3回医療上の必要性が高い未承認薬・適応外薬検討会議」での検討において、医療上の必要性に係る基準に該当すると判断され、同年5月に厚生労働省から申請者に対して本剤の悪性胸水の再貯留抑制に対する開発要請がなされております。審査報告書4ページに記載しているとおり、平成25年4月時点において、タルクとして悪性胸水の再貯留抑制に関する適応にて23以上の国又は地域で販売されております。
本品目の専門協議に御参加いただいた専門委員は、資料15にありますとおり、4名の委員です。
以下、悪性胸水の再貯留抑制に対する本剤の承認審査の概要を説明します。今般の承認申請では、臨床試験成績として本邦で実施された国内第II相試験成績が提出されました。有効性については、審査報告書16ページ下から13行目に記載しているように、悪性胸水が貯留した患者を対象とした国内第II相試験において、胸膜癒着術後30日及びより長期の胸水再貯留の有無について有効例が確認されたことに加え、タルクに関する国内外の代表的な教科書及び診療ガイドライン等の記載を踏まえると、本剤は悪性胸水の再貯留に対して有効性が期待できると判断しました。
安全性について、本剤の使用に当たって注意すべき有害事象としては、審査報告書28ページ、下から13行目に記載しているように、急性呼吸窮迫症候群、発熱、胸痛及びC反応性タンパク増加であると考えております。これらの有害事象については、悪性胸水の治療に十分な知識と経験を有する医師によって、胸膜癒着剤として適切に使用され、有害事象の観察や管理等の適切な対応がなされるのであれば、本剤は忍容可能と判断しました。ただし、審査報告書30ページ上から8行目以降に記載しているとおり、申請者は製造販売後には本剤を使用した症例を対象として、目標総症例数300例、観察期間1か月の調査をすることとしております。
以上の審査の結果、機構は、本剤は胸膜癒着剤の1つとして有用であると判断し、悪性胸水の再貯留抑制を効能・効果として本剤を承認することは可能と判断しました。本剤は新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間を8年とすることが適当であると判断しました。また、原体及び製剤は毒薬・劇薬のいずれにも該当せず、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しました。以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○吉田部会長 それでは、委員の先生方からの御質問、御意見をお願いします。
○関水委員 有効性に関する質問ですが、これを生食でやった場合、何も入れないでやったときどうなるかということよりも、有効性だったらどこを見れば分かるのですか。
○機構 質問の意図としては、生食等と比べたときにどういう有効性が出るかということでしょうか。本試験は単群しかやっておりませんで、例えば生食をプラセボにおいて比べるという試験はやっておりません。有効性の判定は、投与後の30日後に胸水の貯留が10%未満という判断をしております。
○関水委員 有効だったというのはよく分かります。この有効だったのがタルクによっているという論証がどこにあるか。
○機構 基本的に国内外の教科書、ガイドライン等で、広くタルクの有効性は認められているので、それに基づいて判断しています。
○吉田部会長 いや、お話の向きは、自然消失することもあるのではないかということでしょう。田村先生は御経験がいろいろあると思うので、解説していただけませんか。
○田村委員 我々は余りタルクの使用経験はありません。
○吉田部会長 ピシバニールでも何でもいいのですが、効果をどうやって判定するかについて。
○田村委員 我々がごくまれにタルクを使用するのは他の方法で胸水がコントロールできない患者さんです。タルクを投与すると強い反応を起こし、がっちり胸膜癒着を起こします。今回のデータだけでは言い切れませんが、昔から癒着効果は間違いないものと考えられています。
○吉田部会長 要するに、放っておいても水がどんどんたまるような状況で、癒着してしまって、肺がつぶれない状況を見れば、効果は一目瞭然であって、自然に消えることはないということですね。
○田村委員 はい、そのとおりです。
○吉田部会長 炎症性のものであれば消えることもありますが、がん性の胸膜炎だと、どんどん水がたまる一方なので、止まればそれだけで大したものだということですね。
それよりも、田村先生のお話にもありましたように、むしろ有害事象が気になるのですが、その辺りの懸念はいかがですか。
○田村委員 以前の製剤では、激しい痛みなど、その後の影響はかなり強いのではないかと。ほかの方法でコントロールできない人が主な対象になっていました。
○吉田部会長 ファーストチョイスではやらない方がいいというような、何かガイドラインみたいなものを作ってもらえるのでしょうか。あるいは、既にありますか。これをいきなり使わないということは、呼吸器の腫瘍内科医としては当然の常識なのでしょうか。
○田村委員 これまで我々はそのように思っていましたが、外科医は、手術時に麻酔状態でよく使用しています。
○吉田部会長 それでは、本薬の高度の有害事象にかんがみ、その辺りの使用法について学会等々でガイドラインを作成してほしいということを、希望で出しておきましょうか。ほかにコメントはありますか。
未承認薬検討会議から上がってきた医薬品ですが、特段これ以上の意見はなさそうですね。それでは、先ほど言いましたように、その辺りの使用法のガイドライン等々について、申請してきた学会を中心に適正使用への配慮をお願いしたいという希望を付けておきたいと思います。これは市販後に何かをやることはないのですね。
○機構 市販後については、目標症例数300例、観察期間1か月間の調査を実施することとしております。
○吉田部会長 そのときにも、広く日本人の場合のデータを紹介して頂き、ガイドラインに反映してもらいたいと思います。
○機構 本日の御指摘については、申請者に伝えたいと思います。
○吉田部会長 ほかにはよろしいですか。
御意見がないようですので、議決に入ります。なお、田村委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき議決への参加を御遠慮いただくことといたします。お諮りします。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。
御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
議題4に移ります。機構から概要説明をお願いします。
○機構 審議事項議題4、資料4-1、4-2「医薬品アレジオン点眼液0.05%の生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」医薬品医療機器総合機構より説明いたします。
本剤は、ヒスタミンH1受容体拮抗作用及びメディエーター遊離抑制作用を有するエピナスチン塩酸塩を有効成分とする点眼剤であり、今般、アレルギー性結膜炎に係る効能・効果で申請がなされたものです。本邦において、本剤の経口剤は、アレルギー性鼻炎、蕁麻疹などに係る効能・効果で承認されています。
海外において、本剤は、2012年9月現在、アレルギー性結膜炎に係る効能・効果で、欧米など49か国で承認されています。
本申請の専門委員としては、資料15に記載されている5名の委員を指名いたしました。
主な審査内容について簡単に説明します。審査報告書15ページの(3)第III相試験N801-DFT試験の項を御覧ください。季節性アレルギー性結膜炎患者248名を対象に、環境下で本剤0.025%又はプラセボを両眼に1回1滴、1日4回点眼したときの有効性及び安全性を検討するため、プラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験が実施されております。その結果、16ページ上段の表6に示しているように、主要評価項目である二重盲検期間中の眼そう痒感平均スコアについて、本剤群のプラセボ群との群間差は-0.10であり、統計学的に有意な差は認められませんでした。
次に、審査報告書18ページ中段の(5)第III相試験、01141101試験の項を御覧ください。無症状期のアレルギー性結膜炎患者87名を対象に、抗原誘発試験(CAC試験)により、本剤の有効性を検討するため、プラセボ対照無作為化二重盲検並行群間比較試験が実施されております。用法・用量は、A群には片眼に本剤0.05%、対眼にプラセボを1回1滴点眼、B群には両眼に本剤0.05%を1回1滴点眼、C群には両眼にプラセボを1回1滴点眼し、治験薬同様一定時間後にアレルギー症状を誘発するため、スギ花粉抗原溶液を点眼することと設定されました。抗原誘発は異なる来院日に3回設定され、治験薬点眼15分後、1日4回点眼に相当する治験薬点眼4時間後、1日2回点眼に相当する8時間後にそれぞれ実施することと設定されました。また、治験薬投与8時間後の抗原誘発終了後、A~C群の全例がD群又はE群に再割付けされ、D群には片眼に本剤0.05%、対眼にプラセボを1回1滴点眼、E群には片眼にオロパタジン0.1%、対眼にプラセボを1回1滴点眼し、4時間後にスギ花粉抗原溶液を点眼することにより、本剤0.05%とオロパタジン0.1%の有効性が比較されました。その結果、19ページ上段の表9に示していますように、主要評価項目である治験薬点眼4時間後に抗原誘発したときの眼そう痒感スコア及び結膜充血スコアについて、A+B+C群における本剤とプラセボとの群間差は、眼そう痒感スコア及び結膜充血スコアともに-1.3であり、いずれのスコアにおいても本剤0.05%のプラセボに対する優越性が検証されました。また、表10に示していますように、副次評価項目の一つである治験薬点眼4時間後に抗原誘発したとき、D群及びE群における眼そう痒感スコア及び結膜充血スコアにおいて、本剤0.05%とオロパタジン0.1%の有効性は同程度であることが示されました。
以上のように、環境下で実施された第III相試験においては、本剤の有効性は検証されませんでしたが、20ページ中段の1)抗原誘発試験による有効性評価の妥当性についての項に記載していますように、アレルギー性結膜炎を対象とした環境下での比較試験では、スギ花粉の飛散の特徴等により、試験間、試験内又は被験者間において環境条件をそろえることができないこと、抗原の暴露量が同じでも、惹起されるアレルギー症状の程度は被験者により異なること等から、試験の感度及び再現性が低く、本剤に限らず、プラセボに対する優越性を検証することは難しいことが知られています。一方、抗原誘発試験は花粉飛散量等の薬効評価へ影響する因子をコントロールし、対象患者の均一性を確保することが可能であること、症状の発現機序については環境下でのアレルギー性結膜炎と同様と考えられること等から、抗原誘発試験により有効性を評価することに一定の合理性はあると考えられます。また、海外においては、近年の抗ヒスタミン薬の点眼剤の開発にあたり、抗原誘発試験が検証的位置付けで実施されていることも勘案し、抗原誘発試験においてプラセボに対する被験薬の優越性が検証されるとともに、環境試験により有効性が確認された対照薬と同程度の有効性を有することが示されることを前提に、抗原誘発試験により抗ヒスタミン薬の点眼剤の有効性を評価することについて許容可能と判断しました。
以上を踏まえ、前述の抗原誘発試験においてプラセボ群に対する本剤0.05%の有効性が検証され、かつ環境下での有効性が確認されているオロパタジン0.1%との比較においても、同程度の有効性が示されたことから、本剤のアレルギー性結膜炎に対する有効性は期待できると判断しました。
次に、25ページ中段、(3)安全性についての項を御覧ください。環境下で実施された国内臨床試験における主な有害事象の発現状況を、26ページの表16にまとめております。機構は、本剤の投与により発現した有害事象のほとんどは軽度であり、本剤の安全性に大きな問題は示唆されていないと考えておりますが、臨床試験では他の点眼薬との併用時の安全性、合併症を有する患者における安全性等について情報が得られていないことから、28ページ下段に記載しております製造販売後調査において、使用実態下での安全性について検討する必要があると考えております。
以上の審査を踏まえ、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本第二部会で御審議いただくことが適当と判断しました。本申請に係る再審査期間は6年、また製剤は毒薬及び劇薬のいずれにも該当せず、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しています。薬事分科会では報告を予定しています。
なお、部会に先立ち、佐藤委員より御質問を頂いております。「抗原誘発試験による第III相CAC試験でプラセボに対する優越性が示されたことから、本剤の臨床試験における実験的な有効性(efficacy)については検証されていると考えます。一方で、環境試験である第III相N801-DFT試験では、プラセボに対する優越性は示されませんでした。N801-DFT試験では、試走期間でプラセボレスポンダーを除外していますから、この試験でのプラセボ群の結果は単なるプラセボ効果ではなく、審査報告書20ページ、下から6~7行目にあるように、『プラセボ点眼による眼表面の抗原の洗い流し効果』だと考えられるので、この結果からは一般用医薬品の目薬を点すだけでも十分だと考えられます。したがって、実臨床における有効性(effectiveness)に関しては、機構が、審査報告書21ページ、23行目にあるように、『実臨床における被験薬の有効性を担保可能であると考え』たことには無理があると思います。
第III相CAC試験では、オロパタジンに対する非劣性も検証していますが、審査報告書26ページ、下から8~11行目にあるとおり、『現在アレルギー性結膜炎に対する治療薬として、ヒスタミンH1受容体拮抗薬の作用を有する点眼薬は、ケトチフェンフマル酸塩、レボカバスチン塩酸塩及びオロパタジン塩酸塩の3剤が承認されているが、二重盲検比較試験における有効率はいずれの薬剤も60%程度とされており、臨床的効果に個人差があることから、患者毎に適した反応のよい一剤を選択することとされている』のであれば、単に非劣性を検証するデザインでなく、プラセボとの比較と同様に本剤とオロパタジンを個人内でランダムに割り付けるデザインで、オロパタジンはあまり効果がないが、本剤は効くという方がどの程度いるのかを調べることができます。少なくともそのような結果がなければ、本剤は承認できないのではないでしょうか」との御質問です。
本審査においても、また専門協議においても、先生に御指摘いただいた本剤の実臨床における有効性(effectiveness)が検証されていない点については議論になりました。環境試験である第III相試験(N801-DFT試験)においては、試走期間でプラセボレスポンダーを除外し、また、花粉飛散期に被験者を集中的に組み入れる等により、花粉飛散量の変動等の環境要因を可能な限り排除することを試みたものの、有効性の検証には至りませんでした。この結果については、抗ヒスタミン薬の点眼剤の開発に当たり、国内外で実施された多くの環境試験においてプラセボに対する優越性の検証に至っておらず、また環境試験の条件下における抗原の暴露の条件を一定に保つことは困難で、各被験者で異なることが想定され、アレルギー性結膜炎に対する薬効評価の限界が示唆されたものと考えております。
御指摘のとおり、プラセボにおいても抗原の洗い流し効果により一定の有効性が認められると考えられますが、本剤のCAC試験で比較対照としたオロパタジンは、海外で実施された環境下の比較試験においてプラセボに対する優越性が示されており、洗い流し効果を上回る有効性が示されていると考えられます。また、CAC試験の利点の一つとして、薬剤間の薬効の厳密な比較が可能であることが挙げられると考えており、CAC試験において、オロパタジンと同程度の効果が認められたことは、本剤においても洗い流し効果を上回る有効性が認められることを支持するデータであると考えております。
また、専門協議において、抗ヒスタミン薬の点眼液については、アレルギー性結膜炎に対する第一選択薬として臨床的位置付けは確立しており、アレルギー性結膜炎の重症度等の患者背景によらず、広い範囲の患者に使用されていること、薬剤の選択にあたっては反応性の違いのほか、患者の使用感の好みによるところも大きいため、薬剤の選択肢が増えることは意義があるとの御意見を頂いております。先生に今回御指摘いただいたように、類薬との薬効の比較にあたり、どのような患者集団に対して本剤が有効性を示すかを検討することは意義があると考えておりますが、抗ヒスタミン薬の点眼剤の臨床現場での位置付けや選択方法を踏まえると、類薬では余り効果がないが本剤では効果がある患者集団について検討することは、承認に当たり必須とは言えないのではないかと考えております。以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○吉田部会長 佐藤先生、いかがですか。
○佐藤委員 抗アレルギー薬の審査はいつも難しいのですが、それならオロパタジンのジェネリックでもいいのではないですか。なぜ、わざわざ新医薬品でこの薬を承認しないといけないのですか。
○事務局 確かに、今回臨床試験で示されたエビデンスは、efficacyとしては示されましたが、effectivenessとしては示されておりません。一方で、申請者から申請があった場合、薬事法に基づく承認を拒否するためには、薬事法上の規定に基づいて、承認拒否事由のどれかに合致しなければならないと考えられますが、今回の機構の審査においてはその基準には合致しないということで、本剤を承認しても差し支えないのではないかという結論に至ったのではないかと思います。
○吉田部会長 要するに、原因に対しての薬効はあります、しかし、季節性のアレルギー性結膜炎は難しいですと。しかも、いろいろな薬をやってみたけれども、なかなか実用性が出ません、ということは、おっしゃるように試験をするのが非常に難しいからだと思うのです。本薬の試験期間は□□年□月~□月までとありますが、難しいのであれば、それなりの患者さんに対する管理や、効果のいろいろなバイアスなど、考えられるバックグラウンドを記載するとか、かなりきちんと評価してやらないといけないのだろうと思うのです。通り一遍のプロトコールスタディでやってしまうと、暴露されたのは非常に抗原性の薄い場合もあるだろうから、日によって違ったりすることも当然あり得ます。ということで、この試験のクオリティはどんなものだったのかを知りたいのですが、どういうプロトコールでどのように動いたかを、簡単にお話いただけますか。多分、通院しているのですね。
○機構 はい。先ほど読み上げた試験のほかにも環境試験をやっているのですが、その際にもプラセボに対する優越性は示されなかったということで、この環境試験の第III相試験を行うに当たっては、プラセボの試走期間を設けるとか、実施地域を限定する等、いろいろ工夫をしたのですが、それでもなおかつうまくいかなかったというのが実情です。類薬等でも、同じようにいろいろ工夫して環境試験が実施されていますが、成功する場合もありますがまれで、失敗する例の方が多いと理解しております。
○吉田部会長 N801-DFT試験そのものは、どこでやられて、どういうプロトコールだったのでしょうか。
○機構 □□近辺に限定して行われています。
○吉田部会長 地域はかなり限定されていて、スギの木がたくさんある所ですね。
○機構 はい。
○関水委員 議論に割って入るほどの専門知識があるわけではありませんが、これは、適応は環境試験としてネガティブだったけれども、アレルギー試験に対してはポジティブであるということですね。本剤はアレルギー性の疾患に対して有効なので、そういうものを販売したいというのは非常に論理的で、必ずしも環境試験がポジティブでなかったからといって、駄目ということにはならないと思うのです。
○吉田部会長 駄目とは言っていないのです。薬効があるのは皆さん認めているのです。ただ、佐藤先生は、環境試験のような条件でも効能を担保できるというのは言い過ぎではないかと。
○関水委員 環境試験で効能があるということは言っているのですか。
○吉田部会長 ですから、そこの話になってくるのです。
○関水委員 それは、特段この審査報告書には書いていないように思うのですが。
○吉田部会長 実臨床における被験薬の云々ですね。いずれにしても、有効性に関して、「実臨床において被験薬の有効性を担保可能であると考えている」と21ページに書いてありますが、それはなぜかというと、この試験のreliabilityがないので、使えば洗い流し効果を含めて実臨床にとって実害があるわけではないし、効果はある程度は出るのではないかという言い方だと思うのです。でも、それでは少し言い過ぎかもしれないという話なのではないですか。ただ、そうであれば、むしろ有効性に関しては試験自体のreliabilityが少ないので評価しないとか、そういうことの方がむしろ筋としては通りますし、reliabilityがないので、それよりもreliabilityの高い試験を有効と取って薬効を認めるというような整理であれば、それでいいと思うのですが。
○機構 記載の意図としては、抗原誘発試験の成績では既に実臨床で使われている対照薬に匹敵する薬効はあると判断でき、実臨床でも対照薬と同様の薬効は期待できるだろうということで書かせていただきました。
○佐藤委員 ただ、通常非劣性で承認するときには、有効性以外の何かメリットがあることが条件で、そうでなければ、先ほどお話したようにジェネリックを承認することと変わらないことになってしまいます。この場合、ほかの治療に対してメリットがあるというのは機構も書かれていますし、申請者も言っていますが、個人差が大きいので、幾つかの薬を試してみて、一番良いものを使うといいと主張されて申請してきたわけですが、今回提出された資料ではそれが証明されていません。しかも、それを証明するデザインはあったと思うのですが、なぜそのデザインを使わなかったのか、その試験がどうしてできないのかということです。オロパタジンと、個人内で両眼にランダムに割り付けて比較すれば、一方は効いて一方は効かないということが分かるはずですね。プラセボ対照の試験はそうしてやっているのに、オロパタジンの試験は片眼にプラセボと片眼に本剤、片眼にプラセボと片眼にオロパタジンと、個人内の比較ではなく、わざわざ2群比較の試験にしているわけですよ。
○機構 御指摘のように、そのような試験デザインも考えられるかとは思いますが、今得られている成績から、プラセボに対する有効性は示されていること、オロパタジンと同程度の有効性であることも示されているということで、承認に値するとの判断は可能と考えました。専門協議においても、類薬とどういう使い分けをするのかという議論もしましたが、抗ヒスタミン剤の点眼剤に関してはアレルギー性結膜炎に対する第一選択薬ということで位置付けがはっきりしていることと、安全性に関して大きな懸念があるものではないので、患者様の特徴等に応じた薬剤毎の使い分けが大きく求められるようなものではないということで、そこは必須の要件ではないだろうとの議論をさせていただきました。
○吉田部会長 製薬会社側の言い分もあると思いますが、シンプルにアレルギーに関しての有効性は認められたので承認する、でいいのではないですか。ああいう使い方があるだろうとか、こういう使い方があるだろうとか、どう慮っても、こちらが考える必要はないのではないでしょうか。アレルギー性に対する有効性を認めて、第一選択薬として使えると判断しましたと、それで十分ではないですか。
○機構 ほかのものが有効でないときに選択肢になるというのは、あくまで申請者の説明です。
○吉田部会長 でも、そういう試験をしていないのですから、試験結果についての評価と、その結果に基づく判断ということにしてしまえば、reliabilityがないので評価しなかったと。しかし、片方では抗原性に関しては評価がある。そういうことでは有効性を認めた。したがって、薬効はある。使い方に関しては、抗原の明確なものに関しては使える。それでいいのではないでしょうか。ストーリーをシンプル化するということでいいですか。
○佐藤委員 私は少し考え方が違うのですが、確かに両眼にランダムにオロパタジンと本剤を割り付けても、本剤が効く患者を選べるとは思えないのです。オロパタジンは効かないけれども、この薬が効くという患者さんがいれば、申請者が主張している良い薬を選びなさいということは、全く納得がいくと思うのです。そのことについては、抗原誘発試験と同じぐらいの例数でやって十分検証できるはずなのです。そのデータなしで、申請者が適切な薬を使うのがいいのだと言って主張して申請してきたものを、そういうエビデンスもなしに承認していいのかということです。先ほど私が言ったように、ジェネリックを承認するのと何が違うのかということになるのです。
○吉田部会長 質問の意味が分かりますか。新製品であれば、こういうメリットがあってこうだと、それが同じなのだったらジェネリックでいいではないかと。でも、そういう話ではなく、効かないものも対象に組みこんだのであれば、効かない人に対しての有効性を調べてもいいのではないか、どうしてやらなかったのだろうということです。
○機構 繰り返しになりますが、有効性は示されているということと、類薬に対しても効果は劣らないだろうということで、承認は可能と考えました。類薬と比較した特徴は明確ではありませんが、専門協議において、患者様の使用感の好みで薬剤が選択されることが多いという実情もあり、使える剤が増えることは意義があるという御意見をいただいています。
○吉田部会長 それでは、製造販売後調査2000例をやりますね。そのときに、効かなかった症例に対する有効性を、他剤で効かなかったときの有効性を含めて検証すること、と言っておけばいいのではないですか。要するに、事務局が言っているように、薬事承認手続上の瑕疵はないのです。ですから、これで駄目だとは言えない。しかし、佐藤先生の仰るように、日常臨床上の疑問はかなりあって、その辺を明らかにする価値はあると思うのです。ですから、製造販売後調査のときに、二次使用の場合と一次使用の場合とデータを作ってくださいと言えばいいのではないですか。
○機構 今の御提案は、製造販売後調査の中でということですか。
○吉田部会長 情報を上げてもらえばいいのです。例えば、類薬で効かなかった人に対して使った場合の結果が、2000例のうち500例なら500例あって、その有効性はこれぐらいありましたとか、逆にこちらが効かなくて、類薬が効いたのがどのぐらいあるとか、そういうことを教えてもらえばいいのではないかと思います。
○機構 ありがとうございます。そのような調査は可能かと思います。
○吉田部会長 そういう形で、患者や医療従事者に位置付けが分かるようにしてくれれば、手続上は有効性に関するデータがないわけではないので、それはいいと思うのです。よろしいですか。
○佐藤委員 部会長の提案に賛成します。もう1つお願いですが、環境試験の第III相試験の結果も、添付文書に情報提供として載せていただいた方がいいように思います。
○機構 御指摘を踏まえ、対応したいと思います。
○吉田部会長 ほかに御意見はありますか。意見もないようですので、議決に入ります。なお、大槻委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただくこととします。お諮りします。本議題について承認を可としてよろしいでしょうか。
御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
議題5に移ります。機構から概要説明をお願いします。
○機構 審議事項議題5、資料5「医薬品シナジス筋注用50mg及び同筋注用100mg並びにシナジス筋注液50mg及び同筋注液100mgの製造販売承認事項一部変更承認の可否及び再審査期間の指定について」医薬品医療機器総合機構より説明いたします。
RSウイルス(以下、「RSV」)は、2歳以下の乳幼児が細気管支炎又は肺炎に罹患した場合の主要な原因ウイルスの1つであり、1歳までに半数以上、2歳までにほぼすべての乳幼児がRSVに感染します。RSV感染による細気管支炎の病態形成には、生体の細胞性免疫が深く関与しており、早産児や先天性心疾患患児、慢性肺疾患を有する小児等では重症化しやすいことが知られており、RSV感染の重症化により無呼吸等の呼吸障害が起こった場合、酸素療法や人工呼吸管理等の対症療法以外に救命の手段がなく、死に至る場合もあります。
パリビズマブはRSVに対するヒト化モノクローナル抗体であり、RSVが宿主細胞に感染する際に機能するFタンパクに特異的に結合することにより、RSVに対して中和活性を示し、ウイルス複製を抑制することでRSVによる重篤な下気道疾患の発症を抑制します。
本剤は、「RSV感染症のハイリスク児におけるRSVによる重篤な下気道疾患の予防」を効能・効果として、1998年に米国で最初に承認を取得し、2013年4月現在、本剤は米国、欧州連合等80以上の国又は地域で承認されています。本邦では、早産児及び気管支肺異形成症の治療を受けた24か月齢以下の患児に対するRSV感染による重篤な下気道疾患の発症抑制に係る効能・効果で2002年1月に承認され、24か月齢以下の血行動態に異常のある先天性心疾患の患児への適応が2005年10月に承認されています。
今般、日本小児リウマチ学会、日本小児血液学会及び日本小児がん学会より、免疫不全を伴う患児に対する効能追加に関する開発要望書が提出され、厚生労働省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」において「医療上の必要性が高い」と評価され、厚生労働省から申請者に対して本剤の開発要請がなされました。これを受け、24か月齢以下の免疫不全児に加え、RSV感染症の重症化リスクが高いと考えられる継続する呼吸器症状を有したことのあるダウン症候群患児を対象とした国内臨床試験が実施され、本剤の有効性及び安全性が確認されたとして、製造販売承認事項一部変更承認申請が行われました。
本申請の専門委員としては、資料15に記載されています5名の委員を指名しました。
審査内容について、臨床試験成績を中心に説明いたします。まず、CTD2.5の19ページ、表2.5-8を御覧ください。24か月齢以下の免疫不全児及びダウン症候群患児への本剤の予防効果を検討することを目的として、表に示された原疾患を伴う患児28例に対して本剤を予防的に投与したときの臨床試験成績が提出されています。
審査報告書の7ページ、下から14行目を御覧ください。2011年9月~2012年3月のRSV感染流行期間に、本剤15mg/kgを30日間隔で筋肉内投与された28例において、治験薬投与開始から最終投与30日後までの間にRSV感染による入院を必要とした被験者は認められませんでした。
次に、審査報告書5ページの表を御覧ください。本剤が投与された患児における本薬の血清中トラフ濃度は、過去に実施された国内臨床試験における早産児又は24か月齢未満の気管支肺異形成症の治療を受けた患児及び血行動態に異常のある先天性心疾患を有する患児における血清中トラフ濃度と類似していました。本薬のRSVに対する中和活性は、モノクローナル抗体としての本質的な作用によるものであり、宿主の免疫状態を含む原疾患の状態によりRSVに対する中和作用が大きく影響を受けることはないと考えられたことから、免疫不全児及びダウン症候群患児に対しても本剤の有効性は期待できると判断いたしました。
次に、安全性についてです。審査報告書12ページの表を御覧ください。本剤の安全性について、免疫不全を伴う患児を対象とした国内臨床試験において、有害事象は96.4%に認められ、副作用は25.0%に認められました。また、既承認効能取得時に実施した臨床試験における主な有害事象及び副作用と比較したところ、発現率が高い有害事象が認められたものの、白血球減少症等の免疫異常に伴う事象や免疫不全の有無にかかわらず、新生児、乳児及び幼児で一般的に認められる事象と考えられ、免疫不全を伴う患児に特有の安全性上の懸念はないと判断いたしました。
なお、免疫不全児及びダウン症候群患児への本剤の使用経験は限られていることから、本剤投与時の有効性及び安全性については引き続き製造販売後調査を実施し、情報を収集する予定としています。
以上の審査を踏まえ、24か月齢以下の免疫不全児及びダウン症候群患児に対する効能・効果を承認して差し支えないとの結論に達し、本医薬品第二部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本申請の再審査期間は4年とすることが適切と判断しています。なお、薬事分科会には報告を予定しています。以上、御審議のほどよろしくお願いいたします。
○吉田部会長 委員の先生方の御質疑をお願いします。
○関水委員 有効性に関するデータは、7ページに示された、投与してからRSV感染による入院を必要とした被験者の割合が0%、28例、これだけですか。
○機構 本開発で得られているデータはこちらのみです。
○関水委員 これが有効性を示しているというのは、私にはよく理解できないのですが。投与しなかった場合は幾らになると予想されるのですか。
○機構 免疫不全を伴う患児に対して本剤を投与しなかった場合にどれぐらい入院に至るかという明らかなデータは得られておりません。その点に関しましては、製造販売後調査でも、免疫不全児やダウン症候群の患児に対して重症化リスクがどれぐらいあるかについて、引き続き検討してもらう予定です。
○関水委員 そうすると、臨床上の有効性を示す直接的なデータはなさそうですが、血中濃度などのデータから、これはRSV感染に有効であることが予想されるのですか。
○機構 はい。先ほども説明させていただきましたが、ウイルスのタンパクに対して直接的に結合することでウイルスの複製を阻害するという作用機序であり、既承認の効能取得のときに得られている血清中の濃度と、今回得られている血清中の濃度を比較すると、ほぼ同程度のものが得られていますので、既承認の効能の患児と同等の有効性は期待できるのではないかと考えています。
○吉田部会長 よろしいですか。
○関水委員 非常に治療が難しいことを踏まえると仕方がないことだとは思いますが、ウイルスに対して治療が有効であったという、何か説得力のあるデータがあることが極めて望ましいですね。
○吉田部会長 そうなのです。結局、市販後調査を2年間で250例やるということですが、それなら感染のエピソードがないというようなことではなく、もう少し直接的に有効性を示すような、疾患に対して、例えば病態の改善が見られるというようなことがあるといいのですが。これはどういう使われ方をするのでしょうか。ダウン症だったらすぐに使ってしまうのですか。つまり、感染の危険があるから積極的に使うという使い方になるのでしょうか。
○機構 どのような患児に使うかについては、現在、申請者が適正使用の手引を作成しています。ダウン症候群にある器質的な特徴、例えば、巨舌、舌根沈下、気道軟化症などを伴っているダウン症候群の患児に本剤の投与が推奨されるというような内容になる予定です。
○吉田部会長 例えば「免疫不全状態を伴うような新生児や乳児、幼児」となっていますね。ですから、合併症の出現を防ぐためにこれを積極的に使っていくという使い方になるのでしょうね。そうすると、いつまでたっても効果は、そういうエピソードがなかったということでしか分からないのでしょうか。
○機構 そもそもの重症化のリスクが分からないのではないかという点につきましては、各医療機関にアンケート調査を行って、本剤を投与していないこれらの患児がRSV感染で入院しているかどうかを調査する予定と申請者より説明されています。
○吉田部会長 これは世界80か国で既に承認されていて、しかも未承認薬検討会からの要望で上がってきているとなると、有効性がかなり担保できるから認めてくれということだと思います。そうすると、倫理的にコントロール群をおいて合併症を起こしてみるというような比較試験ができなくなってしまうので、結局、全員が使うということでしかデータは出てこないのではないかと思うのです。その辺の評価の仕方はどうしているのですか。
○機構 対象患者は異なりますが、これまでの有効性に関するデータを先に説明させていただきます。1.8「添付文書」の項の5ページを御覧ください。既承認効能における有効性について、海外の臨床試験ではありますが、プラセボを対照とした群を置いて比較しています。その中で、RSVウイルス感染による入院患者数は、本剤投与群の方が少なく、本剤投与による発症率の低下傾向が認められています。この結果をもって既承認の効能は承認されています。今回の患者に対しても同程度の血中抗体濃度が得られるということで有効性は示されるであろうと考えています。シングルアームなので、本剤の有効性を比較するデータにはなっていませんが、この薬の有効性は期待できると考えています。
○吉田部会長 市販後調査が予定されていますが、そのときに、ヒストリカルなデータでいいのである程度きちんと集めて頂いて、日本のデータでは少し足りないかもしれませんが、それと比較してエピソードが減るというような形の評価の仕方をしてくれると、我々も理解しやすいと思います。
○機構 ヒストリカルというのは、先ほど述べましたが、各医療機関のアンケート調査で得られたデータを対照として比較する予定と説明されています。
○吉田部会長 いや、ですから、未承認薬検討会のときに、すでにそういうデータがたくさん上がっていると思いますが、それと比較して、これだけエピソードが減りましたという形で評価するような製販後調査をやってくれればいいのではないかと思います。
○機構 はい、分かりました。
○吉田部会長 ただ、エピソードがありませんでしたというだけではなくて。そういうことであれば分かりやすいのではないかと思います。よろしいですか。ほかにございますか。
○菊池委員 確認です。HIVは残念ながら誰もいなかったのですが、これは使えないのですか。将来、出てきたときには、HIVの患児には使えるのでしょうか。
○機構 今回の適応は「免疫不全を伴う」とさせていただいていますので、免疫不全状態であるHIVの患児であれば使用は可能であると考えています。
○吉田部会長 よろしいでしょうか。議論も出尽くしたようですので、そろそろ議決に入ります。なお、大槻委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして議決への参加を御遠慮いただくことといたします。お諮りします。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。
御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
議題6に移ります。関水委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議題6への審議の間、別室で御待機いただくことといたします。
── 関水委員退室 ──
○吉田部会長 議題6について事務局から概要の説明をお願いします。
○事務局 審議事項議題6、資料6「タラポルフィンナトリウムを希少疾病用医薬品として指定することの可否について」、報告事項議題5、資料11「希少疾病用医薬品の指定の取消しについて」御説明いたします。
資料11を御覧ください。Meiji Seikaファルマ株式会社が開発するタラポルフィンナトリウムは、平成20年12月に悪性神経膠腫に関する希少疾病用医薬品として既に指定を受けていますが、現在、本剤の開発を「悪性神経膠腫」を含む、より適用範囲の広い悪性脳腫瘍を対象にして行っていることから、希少疾病用医薬品の指定についても変更が必要な状況となりました。つきましては、資料11に基づき、既に指定されている「悪性神経膠腫」に関する効能・効果を取り消すとともに、資料6に基づき、新たに「悪性脳腫瘍」を予定される効能・効果として指定することについて御審議いただくものです。
資料6を御覧ください。「悪性脳腫瘍」を予定される効能・効果とする指定についてです。対象患者数は、厚生労働省による平成23年度の患者調査によると、中枢神経系の悪性新生物の総患者数は約7000人と報告されていることから、患者数が5万人未満という希少疾病用医薬品の指定基準を満たしているものと考えています。
医療上の必要性についてです。本邦における悪性脳腫瘍に対する治療は、手術により最大限に腫瘍を摘出することを基本とし、術後に組織型に応じて放射線療法又は化学療法を追加する集学的治療が行われていますが、その予後は不良であり、治療成績の向上が望まれています。
本剤は、主要組織への集積性を有する光感受性物質であり、特定の波長のレーザ光を照射する医療機器と組み合わせて使用することで、手術による腫瘍の摘出後に、残存した腫瘍組織を傷害することを目的としています。本治療法は悪性脳腫瘍に対する摘出手術成績への上乗せが期待される新規治療法であることから、医療上の必要性は高いと考えています。
開発の可能性については、本邦において術前画像診断により悪性脳腫瘍を疑われる患者を対象に、本剤を用いた光線力学的療法の有効性及び安全性について検討することを目的とした第II相臨床試験が行われていることから、本剤の開発の可能性はあると考えています。以上のことから、本薬は悪性脳腫瘍に対しても希少疾病用医薬品の指定要件を満たすと判断しています。以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。
○吉田部会長 それでは、委員の先生方からの御質問、御意見をお願いします。これは以前、悪性神経膠腫で希少疾病用医薬品として承認されていたのでしたか。
○事務局 既に平成20年12月に指定されています。
○吉田部会長 オーファン指定していますね。これを悪性脳腫瘍に拡大したいということですね。
○事務局 そのとおりです。
○吉田部会長 御意見ございますか。よろしいですか。疾病の重要性もあり、臨床開発の可能性もありそうですね。特に御意見がなければ、議決に入ります。本議題について、指定を可としてよろしいでしょうか。
御異議がないようですので、指定を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。
別室で御待機されている関水委員をお呼びください。
── 関水委員入室 ──
○吉田部会長 それでは、報告事項に入ります。報告事項について説明をお願いします。
○事務局 報告事項議題1、資料7「医薬品キュビシン静注用350mgの製造販売承認事項一部変更承認について」報告いたします。
キュビシン静注用350mgは、環状リポペプチド系抗生物質であるダプトマイシンを有効成分とする抗生物質製剤です。本邦ではMSD株式会社により開発され、2011年7月にMRSA感染症治療薬として承認されており、その際、本剤の用法としては「点滴静脈内投与」が設定されています。今般、用法に「緩徐に静脈内注射する」を追加する開発が行われ、日本人健康成人を対象にした国内単回投与試験が実施された結果、申請用法の安全性が確認されたことから、製造販売承認事項一部変更承認申請がなされたものです。医薬品医療機器総合機構における審査の結果、申請用法の追加を承認して差し支えないと判断いたしました。
続いて、報告事項議題2、資料8「医薬品スチバーガ錠40mgの製造販売承認事項一部変更承認について」報告いたします。
スチバーガ錠40mgは、血管内皮増殖因子受容体等、複数の受容体型チロシンキナーゼ等の阻害剤であり、現在は「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌」の効能・効果で承認されています。今般、バイエル薬品株式会社から、「がん化学療法後に増悪した消化管間質腫瘍」の効能・効果を追加する製造販売承認事項一部変更承認申請がなされました。医薬品医療機器総合機構における審査の結果、本品目を承認して差し支えないと判断いたしました。
○事務局 続きまして、報告事項議題3、資料9-1、9-2「優先審査指定品目の審査結果について」事務局より説明いたします。資料9-1を御覧ください。優先審査の取扱いにつきましては、資料の1枚目の裏に概要をお示ししています。この制度は、薬事法第14条第7項の規定に基づき、希少疾病用医薬品やその他医療上特に必要性が高いと認められる品目を指定し、ほかの品目に優先して審査を行うものです。その指定にあたりましては、適応疾病の重篤性、医療上の有用性を総合的に評価して判断するものです。
資料の表にお戻りください。今回の対象品目は、販売名が「イクスタンジカプセル40mg」、一般名「エンザルタミド」、申請者はアステラス製薬株式会社です。本剤につきましては、「前立腺癌」の効能・効果で承認申請がなされています。
事前に取りまとめられた医薬品医療機器総合機構の報告書に基づきまして、本剤の優先審査の該当性について説明いたします。報告書の4ページを御覧ください。「(1)適応疾病の重篤性」については、申請された「前立腺癌」は「生命に重大な影響がある疾患」に該当すると考えています。
「(2)医療上の有用性」については、本邦では術後再発又は進行性前立腺癌に対する初期治療として、アンドロゲン除去療法等が行われており、これらの治療後に病勢進行が認められた去勢抵抗性前立腺癌に対しては、ドセタキセル水和物が使用されています。しかし、現時点で、ドセタキセル水和物による治療後に病勢進行が認められた患者に対しては有効な既存の治療法は存在しておりません。本薬は、既存の薬物療法のない患者において、プラセボ群と比較して本薬群で全生存期間での有意な延長が認められており、また、現時点で得られている安全性情報により、本薬は忍容可能であると考えられることから、5ページの下段からの総合評価にあるとおり、本剤の医療上の有用性は高いと考えています。以上を踏まえ、本剤は優先審査品目に該当すると判断しています。
続いて、資料9-2を御覧ください。販売名が「エルプラット」「カンプト」「トポテシン」「アイソボリン」「レボホリナート」「5-FU」の6品目に関する優先審査指定品目の審査結果について報告いたします。
申請者は、それぞれ、株式会社ヤクルト本社、第一三共株式会社、ファイザー株式会社及び協和発酵キリン株式会社です。これらの品目につきましては、オキサリプラチン、イリノテカン塩酸塩水和物、レボホリナートカルシウム及びフルオロウラシルの4剤を併用投与するFOLFIRINOXレジメンとして「膵癌」の効能・効果で承認申請がなされています。
事前に取りまとめられた医薬品医療機器総合機構の報告書に基づきまして、本剤の優先審査の可能性について説明いたします。報告書の6ページを御覧ください。「(1)適応疾病の重篤性」については、申請された「膵癌」は「生命に重大な影響がある疾患」に該当すると考えています。
「(2)医療上の有用性」については、化学療法未治療の治癒切除不能な膵癌患者を対象とした海外第II/III相試験においてFOLFIRINOXレジメンは、既存の治療法であるゲムシタビン塩酸塩単独投与と比較して、全生存期間の有意な延長が認められています。また、現時点で得られている安全性情報より、本剤は忍容可能であると考えられることから、7ページの最終行からの総合判断にあるとおり、本剤の医療上の有用性は高いと考えています。以上を踏まえまして、FOLFIRINOXレジメンとして申請予定の6品目につきましては優先審査品目に該当すると判断しております。本剤の承認の可否につきましては、今後、医薬品医療機器総合機構での審査を経た後に改めてこの部会で御審議いただくこととなりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
○事務局 報告事項議題4、資料10「医療用医薬品の承認条件の解除について」事務局から説明いたします。資料10、サムチレール内用懸濁液15%に係る「承認条件に係る審査報告書」を御覧ください。
1ページの「I.品目」のとおり、対象品目は「サムチレール内用懸濁液15%」、一般名は「アトバコン」です。その下の「1.製造販売後調査の実施の経緯」ですが、本剤は「ニューモシスチス肺炎」、「ニューモシスチス肺炎の発症抑制」に係る効能・効果で平成24年1月に承認されており、その際、1ページ中程の記載のとおり、国内における薬物動態試験の実施等の承認条件が付されています。今般、この承認条件のうち、国内における薬物動態試験の実施に関して、グラクソ・スミスクライン株式会社より総括報告書が提出され、機構における審査が終わりましたので報告いたします。
2ページを御覧ください。「2.提出された資料の概要、(1)国内単回投与試験の概要」ですが、日本人成人を対象に、アトバコン及びプログアニル塩酸塩の配合錠のほか、本剤750mg及び1500mgを食後に単回投与したときのアトバコン等の薬物動態を検討することを目的として試験が実施されており、中程の表のとおり、薬物動態パラメータが得られています。
続いて、3ページ「3.機構における審査の概要」を御覧ください。中程の表は、日本人健康成人及び外国人健康成人に本剤750mgを食後に単回投与した際の本剤の薬物動態を比較して示しています。これらの結果から、本剤の薬物動態に国内外で差異はないとの申請者の見解は受け入れられるとされています。
以上を踏まえまして、3ページの「III.総合評価」に記載のとおり、日本人における本剤投与時の薬物動態はこれまでに得られている外国人における薬物動態と同様であると考えられることから、本承認条件の内容について確認できたものと判断されています。
報告事項議題5「希少疾病用医薬品の指定の取り消しについて(タラポルフィンナトリウム)」は、審議事項の議題6で説明しておりますため、省略させていただきます。報告は以上です。
○吉田部会長 用法追加、適応拡大、優先審査、承認条件の解除でした。委員の先生方からの御質問がありましたらお願いします。よろしいですか。それでは、報告事項につきましては御確認いただいたものといたします。
続いて、その他の事項の議題1について説明をお願いします。
○事務局 その他議題1、資料12「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議において公知申請を行うことが適当と判断された適応外薬の事前評価について」順に説明いたします。
1ページを御覧ください。クリンダマイシンリン酸エステルに、「顎骨周辺の蜂巣炎・顎炎」の適応を追加する要望に係る報告書について説明いたします。なお、要望では、成人における「1回600mg、1日4回」の用法・用量となっていましたが、公知申請の該当性の検討においては、より低用量の用法・用量や小児の用法・用量についても併せて検討されています。
2ページの「3.欧米等6か国の承認状況等について」を御覧ください。5ページ下にあるように、ドイツ及びフランスにおいて、顎骨周辺の蜂巣炎・顎炎を含む適応が承認されています。
また、13ページ「5.要望内容に係る国内外の公表文献・成書等について」では、国内外の文献において、成人及び小児の歯科、顎、口腔領域の重症感染症患者での症例報告が複数あり、本剤の有効性及び安全性が確認されていること、教科書や国内外の各種ガイドラインで本剤が治療薬として推奨されていることがまとめられています。
これらの内容を踏まえ、25ページ下からの「7.公知申請の妥当性について」に記載するとおり、有効性については、国内外の教科書・成書又はガイドラインにおいて推奨されていること、国内での使用実績が蓄積されていること、また、クリンダマイシン塩酸塩の経口剤が顎骨周辺の蜂巣炎・顎炎の適応を取得しており、クリンダマイシンが当該適応症の原因菌に対して抗菌活性を有することが明らかとなっていることから、「顎骨周辺の蜂巣炎・顎炎」に対する本剤の有効性は期待できると考えられます。
安全性についても、26ページの中程に記載するとおり、成人及び小児の歯科、顎、口腔領域の重症感染症患者において報告された有害事象は既知の事象であったこと、また、本剤は国内外において使用経験が蓄積されており、これまでに安全性に大きな問題が認められていないことから、新たな安全性の懸念が生じる可能性は低いものと判断されています。以上より、本剤の顎骨周辺の蜂巣炎・顎炎に対する有効性及び安全性は医学薬学上公知であると判断されています。
27ページを御覧ください。効能・効果については、要望どおり「顎骨周辺の蜂巣炎・顎炎」とすること、また、用法・用量については、国内症例報告等を踏まえて、本剤について既に承認されている用法・用量と同一とすることが適切であると判断されています。
続いて、35ページを御覧ください。ストレプトマイシン硫酸塩に「非結核性抗酸菌症」の適応を追加する要望に係る報告書について説明いたします。36ページの「3.欧米等6か国の承認状況等について」ですが、海外において当該効能又は効果では承認されていないものの、40ページの「(2)欧米等6か国での標準的使用状況について」で記載のとおり、標準的療法として位置付けられていると考えられます。
41ページの「5.要望内容に係る国内外の公表文献・成書等について」は、国内外において要望内容に係る有効性・安全性に関する文献が公表されていること、教科書や国内外の各種ガイドラインにおいて、標準治療に本剤の追加投与が推奨されていること、さらに、62ページの「6.本邦での開発状況及び使用実態について」に記載のとおり、国内においても使用実績が確認されていることから、本剤の追加投与は非結核性抗酸菌症に対する治療法として確立されたものであり、臨床現場においても使用実績が蓄積されているものと判断されています。
以上を踏まえ、64ページの「7.公知申請の妥当性について」ですが、有効性については、国内外の臨床論文や教科書、ガイドライン等での報告及び記載等に基づき、非結核性抗酸菌症に対して本剤は幅広く使用されており、その有効性が確認されているものと考えられました。また、安全性については、非結核性抗酸菌症患者における情報は限られているものの、設定した用法・用量は既承認の範囲内であり、国内外での使用経験において、これまでに安全性に大きな問題は認められていないことから、新たな安全性の懸念が生じる可能性は低いと判断されています。
以上より、本剤の非結核性抗酸菌症に対する有効性及び安全性は医学薬学上公知であると判断されています。
65ページを御覧ください。効能・効果については、非結核性抗酸菌症の適応を有する他剤の記載を参考に、下線部のように設定することが適切と判断されています。また、66ページにあるとおり、用法・用量については、要望された用法・用量を踏まえ、また、使用実態や本剤の既存の用法・用量の記載等を考慮し、上段の下線部のように設定することが適切と判断されています。また、「用法・用量に関連する使用上の注意」として、本剤を非結核性抗酸菌症に用いる場合には、国内外の各種ガイドライン等最新の情報を参考に投与すべき旨、注意喚起する必要があるとされています。説明は以上です。
○吉田部会長 委員の先生方から御質問はございますか。
○前崎委員 クリンダマイシンの件です。恐らく、感染症学会はいわゆるPK-PDの概念から600mgを1日4回という使い方の方がより有効性が高くなるのではないかということで、このような用法・用量を要望されていると思います。保険用量は、600~1200mg、1日2~4回となっていますので、実際の臨床では、600mg、1日2回という使い方をすることが多いのです。ですから、本邦では、投与量が少ないとか、投与回数が欧米に比べて少ないと言われています。保険用量を変えるには、ほかの疾患についても1日600mgを4回に変えないと、現場が混乱するのではないかと思います。一応、学会にはこのことを問い合わせていただいて、用法・用量の変更をお伝えしてあるのでしょうか。
○事務局 検討会議のWGにおける検討の一環として、学会等とも意見交換を行っております。
○前崎委員 これは、600mg、1日4回、最大用量は2400mgですね。最大用量で1日4回という投与法がより有効性を高めるには好ましいということを、できればどこかできちんと書いていただいた方がいいのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
○事務局 公知申請の事前評価に関しては、この部会でお認めいただいた場合には、改めて企業から承認申請が上がってまいります。そのときに添付文書における記載方法等の整備も行われますので、その一環で検討させていただきたいと考えております。
○前崎委員 ほかの疾患についても、できれば、クリンダマイシンはこのような用法・用量に変更するようなことを企業側にも働き掛けていただきたいと思います。
○吉田部会長 今の前崎先生の御指摘は非常に大切だと思います。申請者側にもしっかり伝えて、今後、そういった形で申請、承認を提案するようによろしくお願いしたいと思います。ほかにございますか。それでは、本議題については御確認いただいたものといたします。
続いて、その他の事項の議題2に移りますので、事務局から説明してください。
○安全使用推進室長 その他議題2、資料13「医療用医薬品の販売名の制定について」説明いたします。医療用医薬品の販売名の取扱いについては、「医療事故を防止するための医薬品の表示事項及び販売名の取扱いについて」の通知等により運用していますが、本日はその基本的な考え方の概要を紹介いたします。お手元の資料13を御覧ください。
まず、「1.医療用医薬品の販売名の類似性の評価に係る一般的な考え方」についてです。販売名の一部を省略して記載した場合に、省略された販売名と同一の販売名の医薬品があることなどが誤投与を招く原因となるおそれがあるため、これを防止する観点から「医療用医薬品の販売名の取扱い」として定め、新規医薬品の承認申請を行うものについては、これに従い命名するようにしています。
原則として、剤形及び有効成分の含量(又は濃度等)に関する情報を付すことが必要となっています。記載事項の原則の代表例として、先発医薬品については、「ブランド名+剤形+含量」、後発医薬品については、「一般的名称+剤形+含量+屋号」、配合剤については「販売名+剤形+接尾字」となっています。
「2.医療用医薬品の販売名の類似性の評価時期」については、医療用医薬品の製造販売承認申請直後となっていますが、最終的には部会・分科会で御意見を頂き承認することになっています。
3.医療用医薬品の販売名の類似性の評価についてです。まず、医薬品名称の類似性の判断をサポートするツールとして、一般財団法人日本医薬情報センター(JAPIC)のホームページ上に公開されています「医薬品類似名称検索システム」があります。このシステムの検索結果に基づき医薬品名称の類似性の判定指標として利用されるものが「新規承認医薬品名称類似回避フローチャート」で、参考資料として2枚目に添付しています。本日は時間が限られていますので詳細な説明は割愛させていただきます。フローチャートを一部改変して吹出しを付けていますので御参照ください。
判断に当たっての留意点としては、フローチャート上でピンク色にお示しした「要変更」となった場合には販売名の変更が必要だということです。また、フローチャート上で「要検討」となった場合で、相手薬が、糖尿病薬や抗がん剤、ジギタリス製剤、ワルファリン等のリスクのある薬剤である場合には、販売名を変更することとしています。ただし、「要変更」若しくは「要検討」の場合でも、相手薬の投与経路が違うですとか、販売が終了している医薬品の場合には、原則として変更不要としています。なお、原則としてはこのフローチャートに基づき判断させていただきますが、必ずしもこれに該当しない事例もありますので、このフローチャートのみに頼ることなく、販売名ごとに医療安全の観点から固有のリスクを評価しています。以上でございます。
○吉田部会長 ただ今の議題について御意見、御質問がございましたらお願いします。
○川崎委員 資料13の1枚目にバイオ後続品が載っていませんので、バイオ後続品についても御検討いただきたいと思います。バイオ後続品の名称に関して、一般名については「×××(先行品)」の後に「後続1」を付けることになっています。しかし、販売名になると「後続1」は一率「BS」に変わります。現在、フィルグラスチムのバイオ後続品が2品目、4製品販売されており、一般名「後続1」のものが2つ、「後続2」のものが2つありますが、販売名はいずれも「フィルグラスチムBS注」となっています。バイオ後続品の場合は、一連の治療期間内に代替又は混用することは基本的に避ける必要があるとされていますので、販売名から製品間の関係が分かることが望ましいと思います。バイオ後続品の申請は今後も増えると思いますので、この件についても併せて御検討をお願いしたいと思います。
後発医薬品の販売名について、「一般的名称+剤形+含料+屋号」とすることとされていますが、構造や効能の類似性から一般的名称が同一のステムで開始される類似医薬品が幾つかあります。例えば、セファロスポラン酸系抗生物質は「セファ」で始まっています。同一会社がその類似品を複数販売しているケース等があると思いますので、誤投与のリスクがある医薬品については今後も引き続き御対応をお願いしたいと思います。
○吉田部会長 事務局、いかがですか。
○審査管理課長 まず、川崎先生から頂いたコメント1について、審査管理課からお話いたします。販売名で全てを区別することがこれまでは難しかったということで、先発と後発、また、一般名では先のものと後のものの関係を示させていただきました。添付文書上ではこの関係がよく分かるようになっています。今の段階では、その添付文書を御覧いただくことで関係が分かるのではないかと思っています。ただ、それだけで十分かどうかにつきましては、今後いろいろと事例を踏まえて、何が適切か検討を進めたいと思っています。
○吉田部会長 質問です。これは、申請者にこれを求めるのですか、それとも、管理側がスクリーニングするのですか。どちらなのですか。
○安全使用推進室長 まず、申請者側で名称は考えていただきますが、安全第一部に医療安全に関して確認している部局がありますので、名称の取り違いが起こりそうかどうかについても十分に検討させていただいて、必要があれば修正のお願いをさせていただきます。
○吉田部会長 少なくとも申請者側に、例えばフローチャートには必ず載せてチェックしなさいというようなことはできるのではないかと思います。
○安全使用推進室長 第1段階としては、まずチェックはもうしていただいている状況です。
○吉田部会長 分かりました。これから、バイオシミラーなどいろいろ出てきますから。
○審査管理課長 追加ですが、バイオシミラーに関しましては、本年2月14日付で、審査管理課長名で「バイオ後続品に係る一般的名称及び販売名の取扱いについて」が通知されています。この中でも例示などをいろいろと書いてあります。これらにつきましても、先生の御指摘を踏まえて、今後どうしていくかについて検討させていただきたいと思います。
○川崎委員 お願いいたします。
○吉田部会長 雲霞のごとく出てきそうですし、ジェネリックも大変増えてくると思うので、是非、混乱のない方向でお願いします。
○安全使用推進室長 事務局 2つ目の御意見について安全対策課からコメントさせていただきます。後発品の販売名については、従来は一般的名称ではなくて、各メーカーが販売名等で付けていた時期がありましたが、いろいろな製品がいろいろな名前を付けてくるということで、医療現場でもかなり分かりにくいという話があり、「一般的名称+剤形+含量+屋号」という形にしております。ただ、川崎先生の御指摘のように、抗生物質などについては、セファロ何々で始まるものが非常に多いということが現実問題としてはあります。これは避け難い状況で止むを得ない部分もありまして、そこは何とか御理解いただきたいと思います。誤投与のリスクもありますが、セファロ何々という一連の抗生物質という関連の中では、医療現場の先生もそういうものがたくさんあることは十分御存じであると思いますので、そういった中で気を付けていただけるのではないかと思います。また、万が一、誤投与があった場合でも、薬の用量を間違えて何か起きるというケースも余りないのではないかということもあります。もし、それでも医療安全上、取り違えて問題があるようなケースについては個別に対応させていただきたいと思っています。
○吉田部会長 例えばヒヤリハットその他も、そういうデータベースから間違えたものを体系付けて探していくということもやっているのですか。
○安全使用推進室長 承認が終わった後も、そのような形で引き続きフォローしながら、問題となっている医薬品名称については対策を取らせていただいています。
○吉田部会長 よろしいでしょうか。御質問がなければ、本議題について御確認いただいたことといたします。
本日の議題は以上です。事務局から何か報告はありますか。
○事務局 次回の部会は8月26日(月)午後3時から開催させていただく予定です。よろしくお願いいたします。
○吉田部会長 本日はこれで終了させていただきます。御苦労さまでした。
(了)
- 備考
- 本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。
照会先
医薬食品局
審査管理課 課長補佐 益山(内線2746)