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2013年4月25日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会 議事録

○日時

平成25年4月25日(木)
15:00~


○場所

厚生労働省共用第8会議室


○出席者

出席委員(15名)五十音順

○新 井 洋 由、 奥 田 真 弘、 川 崎 ナ ナ、 清 田     浩、
  佐 藤 俊 哉、 鈴 木 邦 彦、 関 水 和 久、 田 島 優 子、
  田 村 友 秀、 豊 見 雅 文、 中 島 恵 美、 福 山    哲、
  前 崎 繁 文、 増 井    徹、◎吉 田 茂 昭
(注) ◎部会長 ○部会長代理
他参考人1名

欠席委員(6名)

  庵 原 俊 昭、 大槻 マミ太郎、 菊 池    嘉、 濱 口    功、
  半 田    誠、  山 本 一 彦

行政機関出席者

平 山  佳 伸 (大臣官房審議官)
赤 川  治 郎 (審査管理課長)
俵 木 登美子 (安全対策課長)
矢 守  隆 夫 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)
森     和 彦 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)
佐 藤  岳 幸 (独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)

○議事

○審査管理課長 薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会を開催いたします。本日はお忙しい中御参集いただき、ありがとうございます。

 本日の委員の出席についてです。庵原委員、大槻委員、菊池委員、濱口委員、半田委員、山本委員より、御欠席との御連絡を頂いております。増井委員が遅れられています。

 当部会委員数21名のうち、14名の委員の御出席を頂いておりますので、定足数に達しておりますことを御報告いたします。カメラ撮りはここまでとさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

 次に、当部会委員に就任されました委員を御紹介いたします。東京大学大学院薬学系研究科微生物薬品化学教室教授の関水和久委員です。

 また、本日は議題1に関する参考人として、国家公務員共済組合連合会虎の門病院臨床腫瘍科部長の高野利実先生、議題6に関する参考人として、川崎市健康安全研究所所長の岡部信彦先生に御出席いただいております。吉田部会長、以後の進行をよろしくお願いいたします。

○吉田部会長 審議に入ります。事務局から、配布資料の確認と、審議事項に関する競合品目・競合企業リストについての報告をお願いします。

○事務局 資料の確認をさせていただきます。本日席上に、議事次第、座席表、当部会委員の名簿を配布しています。議事次第に記載されている資料1から資料10をあらかじめお送りしています。このほか、資料11「審議品目の薬事分科会における取扱い等の案」、資料12「専門委員リスト」、資料13「競合品目・競合企業リスト」を配布しています。また、当日配布資料として、資料14「佐藤委員からの御質問」を配布しています。

 続いて、資料13「競合品目・競合企業リスト」について御報告します。各品目の競合品目選定理由について、資料13を御覧ください。1ページ、パージェタ点滴静注用420mg/14mLです。本品目は、HER2陽性の、手術不能又は再発乳癌を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 2ページです。オレンシア皮下注125mgシリンジ、1mLです。本品目は、「関節リウマチ(既存治療で効果不十分な場合に限る)」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 3ページです。アミノレブリン酸塩酸塩です。本品目は、筋層非浸潤性膀胱癌の腫瘍摘出術中における腫瘍組織の視覚化を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目はなしとしております。

 4ページを御覧ください。リファキシミンですが、本品目は肝性脳症を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 5ページを御覧ください。アバスチン点滴静注用です。本品目は悪性神経膠腫を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。

 6ページを御覧ください。細胞培養インフルエンザワクチン(プロトタイプ)「バクスター」及び同「タケダ」5mLです。本品目は、パンデミックインフルエンザの予防を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、資料に掲げる品目を競合品目として選定しております。以上です。

○吉田部会長 ただ今の事務局からの説明に、特段の御意見等はございますか。ないようですので、本部会の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについては、皆様の御了解を得たものといたします。

 委員からの申出状況についての報告をお願いします。

○事務局 各委員からの申出状況については、次のとおりです。

 議題1のパージェタ。退室委員は田村委員、議欠に参加しない委員はなし。

 議題2のオレンシア。退室委員なし、議欠に参加しない委員は奥田委員、前崎委員。

 議題3のアミノレブリン酸塩酸塩。退室委員及び議欠に参加しない委員はなし。

 議題4のリファキシミン。退室委員なし、議決に参加しない委員は田村委員。

 議題5のベバシズマブ。退室委員はなし、議決に参加しない委員は奥田委員、田村委員、前崎委員。

 議題6のインフルエンザワクチン(プロトタイプ)。退室委員なし、議決に参加しない委員は清田委員。以上です。

○吉田部会長 本日は審議事項が6議題、報告事項は3議題、その他が1議題となっています。本日は、議題1及び議題6に関しまして、参考人においでいただいていることから、まず議題1、続いて議題6を審議し、その後、議題2から順に審議することといたします。

 議題1に移ります。田村委員におかれましては、議題1の審議の間、別室での待機をお願いします。

— 田村委員退室 —

 議題1について、機構からの概要説明をお願いします。

○機構 審議事項議題1、資料1「医薬品パージェタ点滴静注420mg/14mLの生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」、医薬品医療機器総合機構より説明させていただきます。

 本剤は、ヒト上皮細胞増殖因子受容体2型(以下、HER2と略す)に対する免疫グロブリンG1サブクラスのヒト化モノクローナル抗体であるペルツズマブ(遺伝子組換え)を有効成分とする抗悪性腫瘍剤です。

 本剤は、HER2の二量体形成に必須なドメインII、HER2のヘテロ二量体形成を阻害すること等により、腫瘍の増殖を抑制すると考えられています。

 今般、本剤はHER2陽性の手術不能又は再発乳癌に対して効果を示す薬剤として、承認申請されました。本剤は審査報告書の6ページに記載していますように、平成2412月時点において、HER2陽性の手術不能又は再発乳癌に関する適応にて、四つの国又は地域で承認されています。本品目の専門協議に御参加くださいました専門委員は、資料12のとおり、10名の委員です。以下、HER2陽性の手術不能又は再発乳癌に関する、本剤の承認審査の概要を説明いたします。

 今般の承認申請では、主な臨床試験成績としては、本邦を含む国際共同治験として実施された第III相試験であるCLEOPATRA試験が提出されました。有効性については、審査報告書の47ページ上から17行目以降及び83ページの上から13行目以降に示しますように、化学療法未治療、HER2陽性の遠隔転移を有する、又は再発乳癌患者における本剤の有効性及び安全性を検討したCLEOPATRA試験の結果、全体集団において、プラセボ併用群と比較して、本剤併用群で無増悪生存期間が有意に延長し、また、全生存期間の延長も認められました。一方、日本人集団に関する部分集団解析からは、全体集団からとの結果の一貫性は確認できませんでした。

 安全性については、審査報告書の55ページの上から5行目以降及び83ページ下から15行目以降に示しますように、本剤投与により好中球減少症、白血球減少症、下痢、粘膜炎、心臓障害、infusion reaction、間質性肺疾患、発疹、過敏症、アナフィラキシーが認められており、注意喚起が必要と考えておりますが、これらの有害事象については、がん化学療法に精通した医師による慎重な観察と適切な処置により、対応可能と判断いたしました。

 以上のように、CLEOPATRA試験の部分集団である日本人集団における本剤の有効性に関して、全体集団との一貫性は確認できなかったものの、審査報告書66ページ、本文上から1行目以降に示しますように、CLEOPATRA試験の全体集団において、全生存期間の延長が認められていること等を考慮すると、添付文書において、CLEOPATRA試験の日本人集団の結果について、十分な情報提供を行った上であれば、本剤を承認することは可能と判断いたしました。

 ただし、本剤の日本人における検討症例数が限られていることに加えて、日本人集団における本剤の有効性に関する情報を引き続き収集する必要があると考えることから、審査報告書69ページ下から11行目及び85ページ下~17行目以降に示しますように、製造販売後にはコホート研究等を実施するとともに、現在実施中の臨床試験を注視する必要があると判断し、申請者に指示しております。以上のような審査の結果、機構はHER2陽性の手術不能又は再発乳癌を効能・効果として、本剤を承認することは可能と判断いたしました。

 本剤は、新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は8年とすることが適当であり、原体及び製剤は劇薬に該当すると判断し、生物由来製品に該当すると判断いたしました。本剤の製造販売承認の可否等について、御審議のほどよろしくお願いいたします。

 なお、事前に佐藤委員から御質問、御意見を四つ頂きました。一つ目は、日本人患者における有効性についてであり、以下のような趣旨です。

 審査報告書54ページ最終行から記載されている機構意見、すなわちCLEOPATRA試験結果からは、日本人患者において、本薬の有効性が期待できると判断することはできないと考えるとする機構意見に私も賛成するが、機構は最終的な判断として、本薬は日本人患者に対する治療選択肢の一つとして位置付けられるものと判断したと結論しています。このような総合的な判断に至った理由として、機構は審査報告書65ページの本文上から9行目以降に記載されている2では、CLEOPATRA試験に参加した国・地域における乳がんの医療環境は類似している。3.では、日本人と外国人の本薬のPKに明らかな差異は認められないとしていますが、2.と3.は、日本人患者のデータがない状況であれば、CLEOPATRA試験の結果から、本剤を承認する理由としては、いずれも納得のいくものであります。しかし、残念ながらこの2点は、日本人患者におけるPFSの追加解析結果のハザード比が1.92と、プラセボ併用群よりも悪くなっていることの説明にはなっていません。むしろ、医療環境やPKに差異が認められるのであれば、日本人以外の集団と日本人集団のPFSの結果の相違を説明できる可能性がありますが、医療環境やPKが同じであるということは、日本人患者でPFSが悪いという結果は説明できず、その理由は不明という結論にしかなりません。また、総合的な判断に至った理由として挙げられている1.のトラスツズマブとドセタキセルの併用投与に対する本剤の上乗せ投与が、日本人患者のOSを悪くはしていないについては、PFSは延長したが、OSでは明確な効果が見られない場合の理由としては適切かもしれませんが、今回のようにPFSで逆転しているように見える場合の説明としては、説得力に欠けます。以上から、機構が、本薬は日本人患者に対する治療選択肢の一つとして位置付けられるものと判断したことには、十分な根拠がないように思われます。

 二つ目は、日本人患者における有効性に関する情報の入手可能性についてであり、以下のような趣旨です。

CLEOPATRA試験以外での本剤に関する日本人患者への有効性については、審査報告書70ページ下~15行目以降に記載されているように、T-DM1の併用投与に関するMARIANNEの試験、術後補助化学療法に関するAPHINITY試験が国際共同治験として実施中であり、機構は申請者による情報収集として、これらの試験を利用することを了承しています。また、審査報告書86ページ上~6行目以降に記載されているように、専門協議においても、これら2試験から日本人患者における本剤の有効性に関する情報が得られることには、一定の意義があるとされています。しかしながら、これら2試験から、日本人患者について、どの程度のレベルの情報がいつ得られるかに関して、審査報告書には全く記載がないため、どの程度の意義があるのか評価ができませんでした。MARIANNE試験及びAPHINITY試験では、何名の日本人患者が参加しているのか、また、それぞれの結果はいつ分かる予定であるのか教えてほしい、というものでした。

 三つ目は、追加の臨床試験の可能性についてであり、以下のような趣旨です。

CLEOPATRA試験において日本人集団と全体集団との相違が説明できず、また、日本人患者における本剤の有効性について、信頼できる情報がタイムリーに入手できないのであれば、本剤を承認する前に追加の臨床試験を実施する必要があると考えます。専門協議では、審査報告書86ページ上から3行目以降に記載されているように、CLEOPATRA試験の結果が得られている状況下で、製造販売後にCLEOPATRA試験と同様の患者集団を対象として、無作為化試験を国内で実施することは現実的ではないと考えるとされていますが、承認前であれば、試験に参加しなければ本剤を使用できないので、実施可能ではないでしょうか。また、同じく専門協議では、PFS評価に必要な画像検査について、製造販売後調査では限界があることが指摘されているので、製造販売後調査としてではなく、臨床試験として実施させるべきと考える、というものでした。

 四つ目は専門委員の御意見についてであり、以下のような趣旨です。

 審査報告書84ページ15行目以降に記載されているように、専門委員から、CLEOPATRA試験において、日本人と日本人以外の患者集団間で治療効果の交互作用が認められており、日本人集団と全体集団とで一貫した有効性の結果が得られているか否かについて、確認することは重要であるが、日本人集団の患者数及びイベント数が少ないことから、解析に用いたモデル自体が機能していない可能性があるという意見が専門協議で出されていますが、よく理解できませんでした。日本人集団の患者数、イベント数が少ないので、交互作用が有意にならなかったという結果であれば理解できますが、患者数、イベント数が少ない状況で、モデル自体が機能していないと、なぜ交互作用が有意となるのか、専門委員に説明していただくようお願いします。

 以上の四つの御質問、御意見に対しまして、順不同にはなりますが、機構の考えを説明させていただきます。

 機構としましては、CLEOPATRA試験を基に、日本人集団における本剤の有効性が期待できると判断することは困難と考えていますが、一方で、CLEOPATRA試験を基に、部分集団である日本人集団における本剤の有効性が否定されたとまでは言い難いと考えております。

 また、機構としても、実施が可能であればCLEOPATRA試験と同じ患者を対象とした臨床試験を再度実施することも考慮すべきと考え、申請者との議論及び専門委員の御意見を踏まえた上で、実施可能性についても審査の過程で十分に検討してきました。しかしながら、CLEOPATRA試験の全体集団でOSの延長が認められており、このような臨床的に極めてインパクトの高い試験成績が示されているにもかかわらず、当該試験と同じ設定で対照群を置いた臨床試験を再度実施することは、現実的には実施困難な状況でございます。

 このような状況のため、機構としましては、CLEOPATRA試験等、現時点で得られている成績に基づき、本剤の承認の可否に関する判断をせざるを得ないと考えました。

 御指摘のとおり、日本人集団においてOSに悪影響を及ぼす懸念のないこと、CLEOPATRA試験に参加した国、又は地域における乳癌の医療環境は類似していること及び日本人と外国人の本剤のPKに明らかな差異は認められないことは、日本人集団と全体集団のPFSの結果の相違を説明できるものではありません。

 しかしながら、審査報告書65ページ本文上~1行目以降に示しましたように、CLEOPATRA試験では、全体集団において主要評価項目とされた独立判定機関判定に基づくPFSのみならず、副次評価項目とされた、真のエンドポイントであるOSの延長も認められたこと、及び日本人集団において、本剤、トラスツズマブ、ドセタキセルの3剤併用投与は忍容可能であったことから、化学療法未治療のHER2陽性の手術不能、又は再発乳癌患者の診療に与える本剤の影響は、国内外共に極めて大きい状況であると考えました。

 これに加えて添付文書において、CLEOPATRA試験の部分集団である日本人集団の結果等について、十分な情報提供を行うことを前提に、MARIANNE試験やAPHINITY試験等のランダム化比較試験及びコホート研究により、日本人患者における本剤の有効性に関する更なる情報収集が行われることを総合的に考慮した結果、本剤を使用する専門性を有する医師及び患者が、日本人患者における本剤の有効性に関して十分に理解した上であれば、現時点において、本剤は日本人患者に対する治療選択肢の一つとして位置付けられると判断いたしました。

 なお、MARIANNE試験については既に登録が終了しており、試験全体で登録された1,095例のうち、日本人患者は82例であり、2014年の上半期に使用評価項目のPFSの解析結果が得られる予定になっています。

 また、APHINITY試験につきましては、試験全体の目標症例数を4,800例として現在登録期間中であり、最新の情報では、試験全体では2,517例、このうち日本人では155例が登録されており、最終的には240300例の日本人が登録される予定で、2016年頃に主要評価項目の結果が得られる予定になっています。

 最後に、専門委員の御意見に対して頂いた御質問についてです。審査報告書には、大きく分けて、全体集団に対する多変量解析結果と、日本人集団に対する多変量解析結果の二つを提示しております。

 専門委員から頂いた御意見につきましては、CLEOPATRA試験において、日本人と日本人以外の患者集団間で治療効果の交互作用が認められており、日本人集団と全体集団とで一貫した有効性の結果が得られているか否かについて、全体集団に対する多変量解析により確認することは重要である。一方、日本人集団に対する多変量解析については、日本人集団の患者数及びイベント数が少ないことから、解析に用いたモデル自体が機能していない可能性があるという趣旨であり、モデルが機能していないから、交互作用が有意となったという御意見ではありませんでした。今後は誤解のないよう、審査報告書に記載してまいりたいと考えております。御質問、御意見に対する説明は以上です。

○吉田部会長 本議題につきましては、高野参考人にお越しいただいています。佐藤委員への回答を含めまして、何か補足することがありましたらお願いします。

○高野参考人 よろしくお願いいたします、虎の門病院臨床腫瘍科の高野と申します。まず、HER2陽性の転移性乳癌に対しましては、10数年前にトラスツズマブが承認されて以降、かなり治療成績が向上したというのはありますが、まだまだ不十分で、延命効果も十分なものではなかったという中で、今回この新薬のパージェタが出ることに対しましては、臨床現場として、医師及び患者の期待はかなり大きいものであると考えております。

 その理由としましては、まずCLEOPATRA試験で、OSも含めて非常に明確な差が付いたということがございます。試験全体で800数例の試験において、OSで有意差が付いたということをもって、パージェタというのはトラスツズマブ、ドセタキセルに、更に上乗せすることで延命効果をもたらすというのは、明確かと思います。

 その800数名の中には日本人も含まれていたわけですが、日本人集団でのサブグループ解析においては、残念ながら明確なパージェタの上乗せ効果は示せなかったわけですが、そもそも日本人の症例数は非常に少ないものですので、統計学的には不十分な解析しかできないということがあります。たまたまパージェタの有効性は示せなかったということかと思うのですが、日本人を含む、全世界の800数名の患者において、パージェタの有効性が統計学的に明確に証明されている事実をもって、日本人を含む乳癌患者の延命効果を期待できる薬ということはいえるのではないかと思います。逆に、今回の不十分な統計的なサブグループ解析によって、日本人における効果を否定し得るものではないだろうと考えますので、私は専門医として、今回の承認については賛同するものであると回答したものです。

 もう一つは、この臨床試験を承認前に行うという御意見については、それは非常に大事なものでありますし、もし可能であれば、日本人においても同じように800例規模の、統計学的に正しい結果が得られるだけの症例数をもって、日本人だけでのデータを出すことができれば、当然それは望ましいわけですが、それが難しい中で、グローバルの治験に参加する形で、日本人も含めての全世界の患者におけるデータを出したというのが、現在できることだったかと思っております。

 この時点において、今回サブグループ解析で十分な結果は示せなかったということを理由に、新たに日本人のみにおける臨床試験を繰り返すというのは、世界全体の流れからしても時代に遅れているものですし、既に有効性が証明されている薬と、プラセボを比較する試験というデザインになるかと思うのですが、それに参加をしてもらうことを説明するときに、十分な倫理性をもって説明することができないと、臨床試験を行う立場からは思いますので、この時点でプラセボ対照のパージェタの臨床試験を、再び同じセッティングで繰り返すというのは極めて困難で、倫理的にも問題があるだろうと思いますので、臨床試験を行うことは否定的であろうかと思います。

 まとめますと、現在の医療現場及び患者側からの期待に応えるためにも、パージェタは、今回のCLEOPATRA試験での明確な結果に基づいて、承認の方向で御検討いただけるのがいいのではないかと思っております。

○吉田部会長 佐藤委員、今の回答について何かございますか。

○佐藤委員 高野先生にお伺いします。仮に、CLEOPATRA試験と同じ試験をするにしても、コントロール群はプラセボではないですね。トラスツズマブ+ドセタキセルのグループがコントロールになると思いますから、プラセボが対照群になるわけではないと思います。それが、どうして実施できないのかという理由がよく分からないのです。現在の標準治療ですね。

○高野参考人 現在の標準治療はそうだったのですが、既に米国では承認されて、トラスツズマブ、ドセタキセル、ペルツズマブの3剤併用が標準治療になっております。それはグローバルのガイドラインにも記載されておりますので、日本においても、当然ペルツズマブが承認されれば、それが標準治療とみなされる状況にあります。

○佐藤委員 それはおかしいと思います。機構の判断はペルツズマブが承認されても第一選択にするのではなくて、治療選択肢の一つであるということで承認してほしいといってきているわけですから、今、高野先生のおっしゃった見解は、機構の見解と大分異なっていると思います。機構に伺いたいのですが、逆にこれを承認して、そういう第一選択であるという使い方を日本人でされては困るのではないですか。飽くまでも治療の選択肢の一つとして承認するということですね。

○機構 審査報告書の中で記載させていただいた意図としましては、CLEOPATRA試験の全体試験の成績をもって、世界的には第一選択薬となっているとは理解はしているのですが、今回、CLEOPATRA試験における部分集団解析の日本人の結果を踏まえると、日本人において、今この時点すぐで第一選択薬といえるかどうかというところは、今後の情報も踏まえて判断されていくものだろうという考えは、承認時点の考えとしては、治療選択肢の一つにはなり得るのではないかというような意図で、まとめさせていただきました。

○佐藤委員 そのように私は理解していたのですが、どうでしょうか。飽くまでも、日本人でも治療の選択肢の一つという解釈で。

○高野参考人 私は機構の意見ということで述べているのではなく、現場の感覚で述べております。齟齬があったら申し訳ないのですが、私の個人的な考えとしましては、日本人ですからとか、日本人以外の乳癌患者と日本人の乳癌患者を分けて考えるということはしておりませんので、今の議論に沿った議論をすることができないのは申し訳ないのですが、私としては、承認されてペルツズマブが使える状況になりましたら、3剤併用を第一選択肢として考えると。これは、個人の意思の裁量としても認め得るということが、今回の機構の判断には含まれることかと思っております。

○佐藤委員 例えば、これがブリッジング試験だとして、この日本人50名の患者のデータがあったら、承認できますか。

○吉田部会長 それは高野先生には答えられないのでは。

○佐藤委員 機構に伺います。PFSで2倍ぐらい負けているという結果になっているわけですから、これはブリッジングの要件を満たしていないと思うのです。そのデータがあって承認するということは、相当きちんとした理由がないと、確かに人数が少ないといっても日本人の患者のデータがないわけではないですから、いくらCLEOPATRA試験全体の結果がOSを含めて非常にいい結果であったとしても、日本人患者に使った結果がある以上、それに基づいて判断すべきだと思います。

 それから、先ほどから部分集団の解析の結果で、日本人患者が100名ぐらいだということで、そのデータ解析の結果をどう考えるかが問題になっています。この試験の解釈の仕方というのは、日本人患者の部分集団の人数が少ないから、たまたま偶然の変動で、日本人で少し悪く見えたのだという解釈か、あるいは我々が分からない未知の要因があって、日本人患者には効かないのかもしれない。多分どちらかです。どちらか分からないわけです。そしたら、それをきちんとデータを示してくださいというのは、それほどおかしなことではないと思うのです。

 特に、もしこの日本人部分集団のサンプルサイズが小さいことに起因して、こういう結果になってしまったのだとしたら、国際共同治験への日本の参加の仕方をもう少し考えていただいた方がいいのではないかと思います。

 先ほどの私の追加の質問で、例えばMARIANNE試験の場合も日本人患者は82名ぐらいです。APHINITY試験は術後補助化学療法なので少し多くなっていて、240300名ぐらいの患者が集まるということになっていますが、これは術後補助化学療法ですから結果が出るのはまだ大分先で、すぐにこの両試験の結果が分かるわけではないと思いますから、本剤について、日本人患者の有効性に関する情報というのは、比較的簡単に、すぐに手に入るということは、もちろん中間解析の結果がどうなるかは分かりませんが、今の時点では、少し考えにくいと思います。やはり日本人患者について、本当にCLEOPATRA試験と整合するような結果が見られるのかどうかは、私は承認前にきちんとデータを出していただくべきだと思いますが、いかがでしょうか。

○機構 機構としても、実施が可能であれば対照群を置いた試験をすべきと考えて検討してきたわけですが、申請者より、臨床的に高いインパクトのある試験がCLEOPATRA試験で示された中で、これを承認前であっても実施することは困難という見解が示されまして、更に、それに対して専門委員の意見を聴いた上でも、やはり困難であろうという見解を示されましたので、現実的には実施困難な状況と考えまして、現時点で得られている成績に基づいて判断せざるを得ないと考えたものです。

○吉田部会長 そういう答えを期待していたのではないのです。そもそもはと言うと、最初から議論になったのだけれども、国際共同治験というのは、1例でも日本人が入っていれば外挿できるという、極端な例えでもって始まっていて、これまでも国際共同治験の場合、日本人が10名以下とか、そういう試験も幾つかあって、そのときは必ず市販後に厳しい条件を付けて、データを出すようにしていました。今回は、2020で、40何人がいたものですから、subset analysisではどうだろうかと成績を見てみたかったというところも、実はあると思うのです。

 ところが、その結果、本薬が有効か有効でないかについては、日本人の特有の背景があるかもしれないし、数が少ないせいかもしれないが、とにかく分からなかったというのは、そのとおりだと思います。

 そのとおりで、もしかしたら日本人には効かないかもしれないという可能性はあるのだけれども、国際共同治験のルールからいえば、国際共同治験の全体で有意差が出たものは受け入れるというルールになっているのです。そういうルールを無視して、日本人が40人しか入っていなくて、2020では分からないから、100になるまで待つとか、200になるまで待つとかの議論をしてしまうと、行政上、承認行為が一歩も先に進まなくなり、我が国だけが置いていかれることになってしまうので、グローバル試験で差が出たら受け入れるという態度を採っているのです。

 もう一つは、参考人の高野先生が一生懸命言っているのだけれども、世界的にこういうデータが出てしまうと、日本でこれからいろいろな試験を考えたとしても、例えば本薬を入れるか入れないかということの試験をしようとしたときに、患者の了解が得られなくなるということがあります。。具体的にいうと、これだけ世界的に有意差が出ている薬を、私に使ってくれない場合もあり得るのなら、そういう試験は受けられないということになって、結局患者が集まらないのです。そういうことで、できないということになるのです。技術的にできない、政策的にできないのではなくて、患者が集まらないのでできないということです。

 それから、プラセボコントロールにしてしまうと、今度は倫理的な問題が出てきます。効かない可能性が極めて高いアームを、未治療の患者に使うということは倫理的にやってはいけないということになります。つまり、倫理的な問題と、実際に患者を集められないという二つの問題があります。そこを理解していただければと思うのです。

 私は、佐藤委員の御質問は、全くそのとおりだと思うのです。それを具体的に審査報告書に反映していないで、20数例、20数例のデータを持ってきて、さも結果につなげるようにいろいろ解析して見せているのですが、そうではなくて、数が少ないか、特有な背景があるのか分からないけれども、日本人集団では差がなかったということを明確に書いておけばいいのではないかと思うのです。それは市販後、あるいは今後の臨床試験で検証していくのだということにしておかないと、読んだ人には根拠のない話をただ積み上げているように見えてしまい、それは報告書として非常に具合が悪いのではないかと思います。もう少し、すっきりと割り切る必要があるのではないかと思います。

○審査第五部長 御指摘ありがとうございます。報告書の中に、そのような説明を書き加えておけば、先生の御理解もあらかじめいただけたのかと思いました。御指摘も踏まえまして、審査報告書の書きぶりにつきましては、追記するなり考えさせていただきたいと思います。

○吉田部会長 書きぶりも考えてほしいのと、実際問題として効かない可能性もあるので、それを市販後にどういうことで検証していくかということを、historicalな比較でもいいですが、少なくともそういう格好で、有効性を検証していく方向で考えるというふうにしてくれないと収まらないと思います。

○審査第五部長 御指摘のとおり、臨床試験の形で試験を組むことの難しさは、私どもも感じております。審査報告書の中にもここは記載させてはいただいたのですが、少なくともコホート研究という形にはなりますが、少しでも日本人の有効性に関する情報を、私どもとしましても、製薬企業を通じて収集いたしまして、そのようなデータが得られ次第、医療現場にも情報提供するようにしたいとは考えております。

○佐藤委員 部会長のおっしゃったことは非常によく分かります。以前に、アバスチンのときにも同じような議論になって、国際共同治験である程度の有効性が分かった後に、日本人のプラセボ対照が難しいというのは、非常によく分かります。

 別に、プラセボ対照でなくてもいいのです。今、私たちが持っている結果というのは、CLEOPATRA試験でのプラセボ群のPFSの結果と、日本人のペルツズマブ群のPFSの結果が、ほとんど同じというデータなのです。これはさすがに問題だと思いますので、CLEOPATRA試験のプラセボ群のPFSよりは、少なくとも日本人でペルツズマブを上乗せしたら上回るという結果を見せていただきたいと思います。それは比較試験でなくても、ワンアームの臨床試験で、市販前に実施できないのですか。比較試験は難しいということは理解できましたが、ワンアームの臨床試験を実施するという選択肢はお考えになったでしょうか。

○高野参考人 それもselection biasがかなり掛かりますので、特にoncologyの場合ですと、癌の患者は多様な患者が入ってきますので、ランダム化比較試験でない限りは、シングルアームでというのはかなりばらつきのあるデータになります。逆にいえば、いいデータを出そうと思えば、いい患者だけを集めることも可能であるという状況ですが、余りシングルアームのデータというのは意味はなさないのではないかと思います。

○佐藤委員 しかし、プラセボよりいい結果が出るかどうかということを知るのは重要なことですし、今のデータでは、それすら保証がないわけですね。今もし先生がおっしゃったことが本当だとしたら、市販後調査では何も分からなくなってしまいます。

○高野参考人 市販後調査で効果を確認するというのは、非常に限界があるというのは、常々思っていますし、機構もそういう認識をしているのだと思います。

○佐藤委員 機構としてはいかがでしょうか。

○機構 併用での試験の中での、1例1例を見たところのものではありますが、パージェタが入った群について、日本人の成績としては、全体集団のPFS、18.5か月を上回っているものは10例程度認められているということです。

○佐藤委員 そうではなくて、ワンアームの臨床試験を市販前にするという可能性は、検討されたのですか。

○審査第五部長 ワンアームで試験を行うとしても、外部比較になってしまうというとか、selection biasが生じてしまうところについては、十分に考えなければいけないのではないかと思いました。

 その一方で、現時点でのCLEOPATRA試験の中でも、これも外部比較になってしまうので、どこまで統計的に物を申せるかはありますが、実薬群とプラセボ群との比較を考えたときに、プラセボ群での平均値よりも上回っている個々の患者がいらっしゃるという意味では、先ほど申し上げたとおり、実例が何例かはいらっしゃるということを確認しました。

○吉田部会長 佐藤委員が言っておられるのは、3剤を使ったPFSが、このように悪くない、例えばワンアームでも何例か追加して、スタディーの形でやれば、例えばCLEOPATRA試験のときのデータよりこのぐらいよかったというのを見せてくれないことには安心できない。こういうことだと思うのです。それを承認条件とするのか、承認後に、例えば日本人を対象にしたワンアームの臨床試験を組むことを条件にして承認するか、どちらかだと思うのです。

 というのは、データがないからです。中途半端なデータが出てきたことが問題なのか。基本的にいうと、国際共同治験のルールに従えば、全体のデータで有意差が出ているのですから、承認すべきなのです。ただし、今回そういう形で、日本人に対して不都合な結果がいるかもしれない、分かりませんよ、探索的も探索的な数ですから。だけれども、市販後でもいいから、そういった憂いを払拭するために、例えばprospectiveに何例かやってもらって、PFSを観察してもらって、CLEOPATRA試験よりもいいか悪いかを確認してほしいというなら、市販後調査でもできる範囲だと思うのですが。

○審査第五部長 CLEOPATRA試験で見られている懸念点を、本来払拭するためには、再現性を確認する試験を組めればいいのでしょうけれども、それができない状況だと考えております。シングルアームも考えはしたのですが、先ほど気にしたselection biasとか、そういったことを考えたときに、それとほぼ同じようなことをCLEOPATRA試験の実薬群とプラセボ群をある程度比較することと、余り大きな差にはならないのではないかということも考えました。

 ただ、そうは言いながらも、本当に有効性についてどうなのかというところをもう一度検証するために、今できることとして考えたのが、調査という形にはなりますが、そういう選択肢でいかがかと思ったということで、我々が考えた経緯はそのような状況です。

○吉田部会長 2020の比較というのは、そもそも科学ではないのです。科学的ではないのだけれども、懸念だけは出てきてしまったわけですから。そのような懸念に対してであれば、純粋に科学的な根拠の重さで測れるものでなくても良いのです。市販後に何も成績を示さないとなると、国民は、効かないかもしれない薬を認めたのではないかと思ってしまうでしょ。そういう意味でいうと、うわさを払拭するだけの何らかのデータは要るとは思うのです。

 ですから、市販後できるだけ早い機会に日本人のデータでPFSを確認して、公表してほしいということでいいのではないかと思うのですが、それぐらいはできるのではないですか。

○機構 今、御指摘いただきましたとおり、製販後にワンアームの試験を含めて、どのようなことができるかを検討し、そういった対応を指示する方向にさせていただきたいと考えております。

 

○佐藤委員 今の市販後調査の件です。今の計画では、14か月で252名の患者を登録して、そのうち90%の人から調査票を回収し、2年間追跡するという計画になっています。専門協議で懸念があったように、日常診療で、PFSに必要な画像の情報をどれだけ得られるかというのは、かなり疑問だと思います。

 計算してみたのですが、CLEOPATRA試験のプラセボ併用群のPFSの中央値よりも日本人患者の方がいいということを検証するためには、1年間で100名の患者を登録して、1年間追跡すれば、検出力80%の成績が得られるはずです。ですから、これは市販後にやるとしても、市販後調査ではなく市販後臨床試験として、PFSの結果がきちんと得られるような形でやっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○機構 そのように検討して、対応してまいりたいと思います。

○吉田部会長 ほかにいかがでしょうか。

○鈴木委員 今のお話を伺っていまして、私は佐藤委員がおっしゃるのが真っ当な御意見だと思いました。こういう意見が出ないまま通っていったら、何のためにこの部会があるのかという気がしますので、今日はよかったと思います。

 申し訳ありませんが、参考人の方というのは推進される側の方ですから、こういう疑問が出たときに、それは違うとは言いにくい方々が選ばれているわけです。ですから、そういうことに対しては、あらかじめ事務局がしっかりしたデータを出さなければいけないと思いますし、佐藤委員がおっしゃるとおり、突き詰めていけば、現時点では有効性が確立されていないが、外国では確立されている。日本人が入った国際共同治験で有効性が確立されているからいいではないか。逆にいえば、1人でも日本人が入っていれば、それはもう有効だということで使えるということになります。極端に言えば、もし日本人のデータがなくても、外国で有効であったら、そのまま持ってくればいいのではないかとなったら、我が国のこういった仕組みは要らないのではないかということにもつながりかねないし、有効性が確立されていなくても、世界的に見たら人道的な使用などもあるのに、今までの枠に全部押し込めて無理矢理通そうとしているという気がします。こういった結果が出た以上は、それなりにきちんとそれを説明した上で、こういう問題点がある、こういう事情で患者の必要性が高いとか、もう少し理解できるような言い方に直していかないと、言いくるめようとしているというか、余り真剣に書類を見ていない先生方も多いかもしれませんので、全部私たちがやってあげます、そのまま通していただければ結構ですと、参考人として賛成する方だけを呼んで、セレモニーのようになってしまっては、全く意味がないので、今日の佐藤委員の御発言は、専門的な立場も踏まえて、貴重な御意見だと思って拝聴させていただきました。

○吉田部会長 私は、この薬の使われ方が非常に問題だと思うのです。3剤にすると、PFSが長くなる、OSが長くなるということですが、そうすると、お金もすごくなってきますね。そこで、例えばハーセプチンをやめて2剤にしてくれという患者が出てきたりすると、承認条件が乱れてめちゃくちゃになりそうな気がするのです。その辺に関して、例えば乳癌学会などではガイドラインを作って、使い方の教育をしていただくことを考えられておりますでしょうか。

○高野参考人 医療現場では、完全にエビデンスに基づいての判断であって、本当は当然コストを考えなければいけないのですが、ガイドライン作成においては、コストはほとんど考慮に入れていないで作るのが原則かと思います。

 そういう意味では、今回もCLEOPATRA試験以外のエビデンスはないわけですので、そういうエビデンス以外の使われ方がされないような歯止めは、必ず必要だと思います。

 私は、決して推進派という立場で発言はしていませんが。

○吉田部会長 例えばハーセプチンが承認を取ったときも、その後、補助療法など様々な使われ方がされて、後追いで承認する形になったのだけれども、ハーセプチンが何でHER2を完全に抑えきれないかが、すごく不思議でしようがなかったのです。普通、分子標的治療というのは、パチッと当たったら、そこを完全に押さえ込むはずなのですが、実は、別のルートがあって、それを例えばこの薬が押さえるという説明でないと理解しにくいのですが、その辺はメカニズム的にどうなのでしょうか。

○高野参考人 そういう議論があるかは分かりませんが、ADCC活性というのが大きいのだとは思います。

○吉田部会長 そのように、いろいろな疑問が出てくると、いろいろな使われ方をする可能性が出てきます。AもBも同じようなactivityがあって、同じであったらいいのですが、違うメカニズムも入っているかもしれないということになると、いろいろな組合せをしてしまう可能性が現場で起こると思うのだけれども、その辺をうまく指導していただきたいと思います。

○高野参考人 そこはきちんと歯止めを掛けないといけないと思っています。

○吉田部会長 是非ともよろしくお願いしたいと思います。

○高野参考人 あと最後に1個ですが、今回もこういう問題になったように、国際共同治験という大規模なものが行われた中に、わずかな症例だけ日本人が入るということが、これまでも行われていて、この先も行われると。胃がんのアバスチンに続いて、今回乳がんのペルツズマブで、今までで一番大きな問題に突き当たったという状況です。

 今後もこの問題は繰り返すと思うのです。一つは、我々investigatorが、もっときちんとした症例数でグローバルをリードして、症例数を入れていかないといけないと肝に命じているのですが、本当に今の形のままでいいのかというのは、是非議論していただきたいと思います。

○吉田部会長 例えば日本人が100例入るまで待ってくれといっても、メーカーサイドは待たないですよ。目標症例数に達したら、あとは知らないときますから、そのときに日本が20例しか入っていなければ、それでおしまいです。

 国際共同治験というのは、日本のためではなく、世界中の人のためにやっているので、日本の都合というのはほとんど聴かないです。先ほども言ったように、極端な話、1例でもやらざるを得ないというのは、そういうことなのです。

 それは、確かに我々側から見るとすごく不都合なことなのだけれども、視点を変えて全体を見ると、ある程度は仕方なくて、日本側から条件を決めるとか、例えば厚生労働省が、日本人は何%までは入れなさいということまでは言えないのです。それをやってしまうと、恐らく日本は国際治験から外されてしまいます。その辺が、harmonizationの難しいところだと思いますが、その辺りの事情も少し御理解いただければと思います。ほかにございますか。

○審査管理課長 誤解のないように付け加えさせていただきます。私どもは、国際共同治験を推進しております。国際共同治験をやりますと、日本人の症例を少しでも確保していればいいのではないかとの懸念もあろうかと思います。

 私どもとしましても、平成19年に「国際共同治験に関する基本的考え方について」をまとめています。幾つかの統計的な考え方を示しまして、例えば日本人の症例をあるやり方で、およそ15%確保する、あるいは別のやり方でおよそ20%確保するといった考え方をお示ししております。

 そういう考え方をお示しはしているのですが、国際共同治験を開始いたしますと、どうしても治験の症例数の集まり具合は各地域で異なってきてしまいます。日本は、正直申し上げまして、余り早く集められる国ではないということもあって、一定期間で症例をエントリーし、結果を出すということになりますので、どうしても日本人が、必ずしも目標症例数に達しない場合もあろうかとは思いますけれども、私どもも、できるだけ日本への新規の薬のアクセスが遅れることのないように、国際共同治験を進めさせていただいています。そういった意図の下、そういった考え方も示していることは、是非この部会の先生方に御理解を賜りたいと思っているところです。

 それから、今日は参考人をお呼びしております。利益相反の関係で退席されている委員もございますので、そういう意味で、今回参考人でお呼びしています。なおかつ、その場合でも、皆様方と同じ利益相反のルールで御出席いただいていることを、併せて報告させていただきます。

○鈴木委員 該当する議題の推進論者でない方を参考人として呼んでいるというのは、私が出席した中では経験はございません。

 日本で、これだけ医療制度が平等に行き渡っている国で、がんの治験の例数が集まりにくいという理由について、教えていただけますか。

○審査管理課長 日本で臨床試験の症例数が集まりにくいのは、一つには、医療機関の治験の実施体制が必ずしも十分整っていないことです。

 今、医政局で、臨床研究あるいは臨床試験の中核病院を整備しようとしています。特に、国際共同治験になりますと、ケースレポートを英語、しかも電子的に登録することになりますので、どこでもできるというものではございません。そういった環境的な整備が日本でも不十分なところがあります。そういうところは、行政側もてこ入れをしているところです。

 それから、御案内のとおり、日本は皆保険制度ですので、どなたでも、どこの医療機関でも、すぐにアクセスできるという国です。なかなか治験によって医療を受けようという方は、基本的には現れにくいと言われている状況です。

 そのほか、企業側の日本での治験を推進するインセンティブがあるかどうか。これは日本の市場がグローバルな市場の中で、どの程度の位置を占めているのかということで、グローバルな市場の中で40%ぐらいを占めている米国での開発が優先的に、国際的にも、そういった所で始められる傾向があるということはあると思います。日本は10%ぐらいの市場ですが、そういったところにも市場アクセスしていただくべく、私どももできるだけアクセスしやすいように、行政的にも施策を講じているところです。その辺は御理解賜りたいと思います。

○吉田部会長 議論が思わぬ方向に発展したので、これでやめたいと思いますが、今の鈴木委員のお話に課長が答えられましたが、英語の問題も重大で、CRCが英語をきちんと理解できる、有害事象報告も全部英語でやり取りができるという施設は、本当に限られてしまいます。

 もう一つ決定的につらいのは、時差です。国際治験の多くは、グリニッジ標準時で動きますが、日本は一番遠い所にあって、電話やメールがオンタイムでいかないなど、アメリカやヨーロッパと付き合っていくにはかなりの労力が必要になります。

 今、厚生労働省も機構も、国際共同治験をやるように指導していただいて進んできております。日本でも胃がんの国際共同治験もやりましたし、今は大腸癌をやっていて、だんだん日本が主導権を取っていけるようになってきております。もう一頑張りなのではと私自身も期待しているところです。

○鈴木委員 もうこれ以上は言いませんが、2番目の理由の国民皆保険があるから患者が集まらないというのは、私は理由としては正しくないと思います。治験でなければ治療が受けられないような国が問題であって、我が国の方が優れているのは明らかなので、それを乗り越えた詰め方を考えていただかないと、国民皆保険が悪いとも捉えられかねませんから、そのようには思っていらっしゃらないとは思いますが、それを理由にしてはいただきたくないと思います。むしろ、外国の方が悲惨な状況で、治験にすがる思いで参加せざるを得ないという状況があるということだと思います。

○吉田部会長 ほかに御意見はございますか。

○川崎委員 品質面からコメントさせていただきたいと思います。本品目はバイオ医薬品では初めて、デザインスペースが認められた製品だと思います。したがいまして、審査報告書、申請書の記載方法について、機構内で随分議論があったと思いますが、私からも3点希望を述べさせていただきます。

 まず、1点目です。従来の申請書では、規格及び試験方法が設定されていますので、重要品質特性CQAと管理戦略の関係が明確だったのですが、今回の審査報告書と申請書からは、CQAとデザインスペースの重要工程パラメータの関係が不明瞭であると思います。したがいまして、今後、製法などを変更した際に、パラメータの変更が、どのCQAに影響を及ぼすかが分かりにくくなっていると思います。審査報告書や申請書に、CQAとデザインスペースを含む管理戦略の関係が分かるように、工夫をしていただきたいと思います。

 2点目です。デザインスペースでは、重要工程パラメータは独立せず、相互に関連性があるはずです。この申請書では、その関連性が明確になっていないように思います。例えばコンタープロットのような工夫をしていただき、パラメータ間の相互作用が分かるような記載を考えていただきたいと思います。

 3点目もデザインスペースの件です。申請書を見ましても、デザインスペースが幾つあるのか、工程のどこがデザインスペースなのかが分かりにくいと思いました。また、デザインスペース単独で品質を管理しているのか、モニタリング等と組み合わせて管理しているのかもよく分からないので、今後はフローチャート等工夫をすることにより、管理方法が明確になるようにしていただきたいと思います。

○吉田部会長 いかがですか。

○機構 御指摘の点については、機構でも今後検討していきたいと思っています。

 また、デザインスペースがどこまでの範囲かが不明瞭ということがありましたが、本品目においては、いわゆるアップストリームの部分とダウンストリームの部分のそれぞれについて、デザインスペースが検討されております。最終的には、全てのパラメータについて、デザインスペースが構築されていると機構は理解しております。

○川崎委員 デザインスペースの設定箇所は、今のご回答で理解できました。今後、審査報告書や申請書への記載についても、工夫をお願いしたいと思います。

○機構 ありがとうございました。

○吉田部会長 よろしくお願いします。ほかにございますか。

 いろいろと議論してまいりましたが、先生方からの御指示に対応することを前提として、これから議決に入ります。本議題について、先ほどの議論を踏まえて対応することを条件とし、承認を可としてよろしいでしょうか。

 異議がないようですので承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。

 本日、高野参考人は御予定があるため、ここで退席されると伺っております。高野参考人、長時間ありがとうございました。

○高野参考人 ありがとうございました。

─ 高野参考人退室 ─

○吉田部会長 別室で待機中の田村委員を呼んでください。

— 田村委員入室 —

○吉田部会長 続いて、議題6について、医薬品医療機器総合機構からの概要説明をお願いいたします。

○機構 審議事項議題6、資料9「医薬品細胞培養インフルエンザワクチン(プロトタイプ)『バクスター』及び同『タケダ』5mLの生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」、医薬品医療機器総合機構より説明いたします。

 審査報告書、3ページです。A型インフルエンザウイルスは、ウイルス表面に存在する赤血球凝集素(HA)16種類及び、ノイラミニダーゼ(NA)9種類の亜型に分類されます。現在ヒトの間で流行している亜型は、H1N1型及びH3N2型で、季節性インフルエンザと呼ばれておりますが、抗原性が大きく変異することで、ヒトへの感染性を有する新たな亜型のウイルスとなり、世界的な大流行、すなわちパンデミックを起こすインフルエンザの出現が懸念されております。

 本剤は、様々の亜型のインフルエンザウイルスに対応可能な模擬ワクチンであり、細胞培養で増殖させたインフルエンザウイルスをホルムアルデヒド及び紫外線により不活化する製造工程を、モデルとなるインフルエンザウイルスを用いて設定しております。これによって、パンデミック発生時に迅速な製造と供給が期待されております。

 本剤は、2009年に欧州で模擬ワクチンとして承認され、現在33か国で模擬ワクチンとして承認されております。本剤は、2012年9月の本部会において、希少疾病用医薬品の指定について御審議いただき、同年9月に希少疾病用医薬品として指定されております。

 本剤は、H5N1型のウイルスから製造したワクチンを用いた国内臨床試験成績等に基づいて、武田薬品工業株式会社及びバクスター株式会社より2012年9月に承認申請されました。本剤の専門協議に御参加いただいた専門委員は、資料12にお示しした7名の委員です。

 審査の概略について、臨床試験成績を中心に説明いたします。有効性については、審査報告書22ページの表4-2を御覧ください。国内第II/III相試験において、本剤の抗原量7.5μgを2回接種した後には、筋肉内接種、皮下接種のいずれの群においても、接種後の血中抗体化が本邦のガイドラインに定められた免疫原性評価基準を満たしておりましたことから、有効性が期待できるものと判断いたしました。

 安全性については、審査報告書23ページを御覧ください。国内臨床試験において、臨床上問題となるような副反応は認められず、接種用量又は接種経路の違いによる安全性への影響は認められませんでした。また、審査報告書3132ページに記載していますとおり、海外臨床試験及び海外製造販売後の安全性情報においても、臨床上問題となる副反応は認められていないことから、本剤の安全性は忍容可能と判断いたしました。

 製造販売後の対応については、審査報告書38ページを御覧ください。本剤そのものは、平時においては製造販売をされるものではありませんが、パンデミックが発生した有事の際に、本剤と同様の製造方法で製造されるパンデミックワクチンの製造販売後調査及び製造販売後臨床試験について、機構は、国の動向を注視して、必要な対応策を講じた上で、情報収集を行うことが妥当と判断いたしました。

 以上の審査の結果、機構は本剤をパンデミックワクチンの製造モデルとして承認して差し支えないと判断いたしました。また、本剤は生物由来製品に該当し、希少疾病用医薬品であることから、再審査期間は10年、原薬及び製剤はいずれも劇薬に該当すると判断いたしました。なお、薬事分科会には報告を予定しております。以上、御審議のほど、よろしくお願い申し上げます。

○吉田部会長 本議題については、岡部参考人にお越しいただいておりますが、何か補足がありましたらお願いいたします。

○岡部参考人 ただ今御紹介いただきました川崎市健康安全研究所の岡部と申します。この審査に、ほかの先生方と加わっており、本日は参考人として伺いました。パンデミックインフルエンザに備えたインフルエンザワクチンの製造用ということで、既に新型インフルエンザに関するパンデミックインフルエンザに備えたプロトタイプワクチンの開発等に関するガイドラインがありまして、それに基づいて本ワクチンは製造されたことになります。特に、通常インフルエンザワクチンは、御存じのように鶏卵で培養するわけですが、それでは製造に取り掛かるまで時間がかかり、緊急的に必要なときには間に合わないことがあるために、細胞培養由来、これは長く研究が行われていたりしているのですが、それによってこのワクチンを製造して少しでも製造期間を短くするのが本ワクチンの製造法に関する目的だと思います。ただし、今広く現行で使われているわけではないので、この製造法、それからミニマムな有効性と安全性を一応チェックした上で、この場合はH5ウイルスで検討しているわけですが、仮にほかの形のウイルスによる流行や、今たまたまタイミングがいいのだか悪いのか分かりませんが、H7の話も出ていますが、そのようなときにこれを応用した形でワクチンが作れることに対する準備が以前から始めてられていたものです。

 今、事務局から説明がありましたように、有効性の方法論の違いがあったり、あるいは幾つかの議論はありましたが、基本的には現在とっておくべき方法のワクチンとしては、妥当であると委員会では判断をいたしました。ただ、対象年齢等については、例えば小児や妊婦等、十分にN数があるわけではないのですが、そこは外国例などを引いて、現在のところでは治験は十分に行われていないが、緊急用のワクチンとして、そのような対象も視点において審議をいたしました。

○吉田部会長 非常用ということですね。分かりました。委員の先生方からの御質問、御意見をお願いします。

○前崎委員 先ほど岡部参考人も言われましたが、例えばこれは時間的に沈降ワクチンに比べるとどれぐらい短縮できて、実際に使えるようになるのでしょうか。

○岡部参考人 目の前に卵が大量にあり、同時にスタートしたのなら、それほど変わりないと思うのですが、細胞培養の一番良いところは、普段その卵を用意しておかなくてもいい、というところです。ということは、卵がない段階でも製造に取り掛かれる、と。しかし、ウイルスを培養してそれを基に回収するわけですから、ウイルスが増殖した後の時間的な差はないと思います。

○前崎委員 実際に、前回のH1N1のときには、輸入ワクチンを承認したときにはもう既に流行が終わっていたというような状況で、ほとんど使えませんでした。例えば、明日から作りましょうと言ったときに、実際にこれが患者さんに打てるようになるには、どれぐらいの月日がかかるのかを知りたいのですが。

○岡部参考人 例えば、今まで説明していたのは、エッグベースでやっていると途中での安全性の確認等で半年ぐらいかかるであろうというものが、卵が目の前にあるということは飛ばしますが、これですと半分ぐらい、あるいはそれ以下に短縮できる可能性はあると思います。ただし、それについて緊急度とニーズと照らし合わせて、ウイルスとしては新しいものを使う可能性があるので、それをどうするかはもう一つ別の議論がいるとは思います。

○前崎委員 それから、これはH5以外の亜型に有効だろうと書いてありますが、先ほど言ったように別の亜型が起こったときに、実際の抗体がどれぐらいできるかどうかは、確認しないで使っていいものかどうかは、いかがでしょうか。

○岡部参考人 ですから、効果が期待できるであろうというところに留まらざるを得ないわけです。実際に治験をやっているのはH5であります。今は季節性インフルエンザになっていますが、確かH1では製造をやっていたところもあると思いますが、基本的にはH5において治験を行ったところです。今の流行状況から、仮にH7を使用するとなると、それは未知のウイルスを使うというところですから、先ほど申し上げたような重症度と広がりとニーズとのバランスが必要ではないかと思います。それから、もう少し付け加えますと、ワクチンの製造がH1のときにはたまたま卵があったのですぐに作れているのですが、それにしても市場に出てきたのは流行が終わってから、というのがあります。しかし、実際にはワクチンが幾ら早くても流行のピークには間に合わない可能性があるので、最初の段階からワクチンに頼るというのは無理で、私の理解では第2波以降が本当にワクチンが効いてくるので、いわゆる第1波のときにはそれほど間に合うとは、過大な期待をしないほうがいいのではないかと思います。

○吉田部会長 ほかにありますか。

○事務局 少し補足させていただきます。このメーカーに関しては、これまでのやり取りの中で、実生産のロットが出せるのは半年近くかかるのではないかという感触があることは伺っております。

○吉田部会長 ほかによろしいですか。

○増井委員 ウイルスのバンクに関しての安全性のリストが6ページの上の表で出ているのですが、この部分は細胞についてはどのように調べられているのでしょうか。細胞自身はサル由来ですから、いろいろなレトロウイルス等が入っている可能性があるといわれているわけです。これは日本人の作った細胞で世界的に使われているのですが、やはり調べれば調べていくほどそういうものが出てくる可能性があると思っているのですが、そのデータがここには付いていないのですが。

○機構 今回セルバンクをマスターファイル登録されておりまして、セルバンクの資料は9-2にまとめさせていただいております。資料9-2の報告書の2ページの表1に、ベロ細胞について行ったウイルスの否定試験等をまとめております。

○増井委員 これは、クリーンですか。

○機構 試験項目等に関しては、十分であると判断いたしました。

○増井委員 そうですか。分かりました。

○吉田部会長 ほかにありますか。

○佐藤委員 よく分からないところがあったので教えていただきたいのですが、これを承認すると、例えば何か新しいインフルエンザが流行って、この方法で作った製品はもう審査はしないですぐ市販していいということなのですか。

○事務局 先ほど岡部参考人から紹介のありましたガイドラインにおいて、新たなパンデミックの株が決定された段階で、品質や非臨床のテストを行い、それに基づいて申請を行っていただき、新たにパンデミックワクチンとしての承認を取っていただき、そのワクチンとして使っていただくということで、今のところガイドライントしては定めさせていただいているところです。

○佐藤委員 その期間が、半年ぐらいかかるということですか。

○事務局 そこの審査に関しては迅速に行うことになると思うのですが、メーカーの方で製造、検査等に関して、このメーカーはファーストロットを出せるのには半年ぐらいかかるのではないかというような予測をされています。

○吉田部会長 臨床的なワクチン株に対するレスポンスもみるのですか。

○事務局 臨床に関しては、ガイドライン上は必須要件にはしておりません。そこに関しては、状況によってできる場合とできない場合があるだろうと。ただ、今回も審査報告の方で製造販売後、パンデミック時の対応ということで、抗体価に関しては臨床試験を実施するであるとか、先ほどありましたが、どうやって調査をするかという問題はあるのですが、実際に打たれた方の安全性等も、パンデミックワクチンとしての安全性を集めていくというようなことをメーカーとしても計画を立てているところです。

○吉田部会長 あらかじめ、プロスペクティブにデータを取れませんしね。なかなか大変ですね。やはり、ある程度集団のデータを取っていくしか方法はないのだろうと思います。岡部参考人にお伺いしたいのですが、基本的にはプロトタイプワクチンというのは、亜型がどれぐらい入ろうと、例えばH5N1でもいいのですが、そういうモデルで一つ臨床試験をやっておけば、このプロトタイプはそういう亜型が変わっても、大体免疫血清等も同じだと理解されているものなのでしょうか。

○岡部参考人 そこは分からないところで、今たまたまH7が出てしまっているわけですが、それがワクチン株として適当なものかどうかもはっきりしないわけですね。それから、通常の季節性インフルエンザの場合でも、流行株がそのままワクチンに適当であるとも判断できず、結局ベストチョイスではなくてベターチョイスをやるときもあるので、これについても新たなウイルスについてどうであるかというのは、不測の部分が多分にあります。ただ、それであっても一応備えておいて製造法でこういうものがあれば短縮できるというところで、飽くまで最初に申し上げましたように、危機管理的なものでたまたまH7があるので身近な問題のように見えますが、これはいろいろな検討が今まで積み重ねられてきた結果であると思います。

○吉田部会長 理論的には、ウイルスを持ってきて合わせて、そこでワクチン化して殺して、この構造の中で処理すれば大丈夫だということなのですね。ほかにありますか。よろしいでしょうか。それでは、議決に入ります。なお、清田委員におかれましては利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。

 異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。本日、岡部参考人は御予定があるため、こちらで退席されると伺っております。ありがとうございました。

— 岡部参考人退室 —

○吉田部会長 それでは、議題2に移りたいと思います。医薬品医療機器総合機構からの概要説明をお願いします。

○機構 審議事項議題2、資料2「医薬品オレンシア皮下注125mgシリンジ1mLの生物由来製品及び特定生物由来製品の指定の要否、製造販売承認の可否及び再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否について」、医薬品医療機器総合機構より説明いたします。

 本剤の有効成分であるアバタセプト(遺伝子組換え)は、ヒトcytotoxic Tlymphocyte-associated antigen(以下「CTLA-4」)の細胞外ドメインと、ヒトIgG1のFcドメインより構成された遺伝子組換え可溶性融合タンパクです。アバタセプトを有効成分とする点滴静注用製剤は既に承認されておりますが、本申請は皮下注用製剤に係るものであり、点滴静注用製剤に比べ、自己投与を可能にすることなど利便性の向上を図ることを目的として本剤の開発が行われ、今般、関節リウマチ(以下「RA」)に係る効能・効果で申請がなされたものです。海外において、本剤は2013年3月現在、欧米等9か国で承認されています。

 本申請の専門委員としては、資料12に記載されております5名の委員を指名いたしました。主な審査内容について、簡単に説明いたします。

 既承認の点滴静注用製剤の開発において、海外試験とのブリッジングが成立していることから、本申請においてもブリッジングによる開発計画がとられており、点滴静注用製剤に対する皮下注用製剤の非劣性の検証を目的として実施された海外第III相試験をブリッジング対象試験、本海外試験とほぼ類似する試験デザインで実施された国内第II/III相試験をブリッジング試験と位置付け、両試験成績の類似性等を確認した上で、海外第相試験の成績を日本人に外挿して、国内申請データパッケージを構築する計画とされております。

 まず、ブリッジング対象試験である海外第III相試験成績から説明いたします。(22ページの3)海外第III相試験、IM101174試験の項を御覧ください。本試験は、MTXで効果不十分な外国人RA患者1,457名を対象に、点滴静注用製剤に対する皮下注用製剤の非劣性を検証するため、無作為化二重盲検並行群間比較試験として実施されております。用法・用量は、本剤群(以下「SC群」)においては、投与1日目に負荷投与として点滴静注用製剤を体重別固定用量で点滴静脈内投与し、その後本剤125mgを投与1日目が週1回皮下投与すること、点滴静注用製剤群(以下「IV群」)においては、点滴静注用製剤を体重別固定用量で投与1、1529日目、以降28日間隔で点滴静脈内投与することと設定されております。なお、本剤の用法・用量については、点滴静注用製剤において、血清中トラフ濃度を10μg/mL以上とすることで有効性がほぼ最大になることが示されており、RAに対する点滴静注用製剤の承認用法・用量での投与において、大部分の患者で10μg/mL以上の血清中トラフ濃度が得られることから、本剤でも同程度の血清中トラフ濃度が得られることを目安として、125mg1週間隔投与と設定され、更に定常状態に短期間で到達させることを目的として、初回投与時に点滴静注用製剤による負荷投与が設定されております。

 本試験の結果、23ページ上段の表15に示していますように、有効性の主要評価項目である投与6か月時のACR20%改善率は、SC群76.0%、IV群75.8%であり、IV群に対するSC群の非劣性が検証されております。

 次に、ブリッジング試験成績について、審査報告書18ページの1)国内第II/III相試験、IM101250試験の項を御覧ください。本試験は、MTXで効果不十分な日本人RA患者118名を対象に、本剤の有効性及び安全性を検討するため、点滴静注用製剤を対照とした無作為化二重盲検並行群間比較試験として実施されております。用法・用量は、先ほどのブリッジング対象試験と同様に設定されております。

 本試験の結果、19ページ上段の表11に示していますように、有効性の主要評価項目である投与6か月時のACR20%改善率は、SC群91.5%、IV群83.1%であり、両群で類似した有効性が認められております。以上より、海外第III相試験において、点滴静注用製剤に対する本剤の非劣性が検証され、国内第II/IIIいてもSC群の有効性はIV群と類似する結果が得られたこと、また、薬物動態についても日本人と外国人で大きな相違はないと考えられたこと等から、機構は、海外第III相試験の成績の外挿は可能であり、日本人RA患者における関節痛等の症状に対する本剤の有効性は期待できると判断いたしました。

 次に、29ページ中段、()安全性についての項を御覧ください。国内外の各臨床試験成績に基づき、本剤と点滴静注用製剤の安全性を比較したところ、29ページの表23及び30ページの表24のとおり、全有害事象発現率、並びに点滴静注用製剤において、主要な有害事象とされている重篤な感染症、悪性新生物、自己免疫疾患等について、国内外ともにSC群とIV群で大きな違いは認められませんでした。また、33ページの下段、()自己投与についての項に記載したとおり、本剤の自己投与時の安全性についても、特段の問題は示唆されませんでした。しかしながら、国内臨床試験における日本人RA患者の安全性情報は限られていることから、製造販売後調査において、自己投与時も含め、使用実態下での本剤の安全性について更に確認する必要があると考えております。なお、本剤の用法・用量については、3637ページにかけての記載のとおり整備することが適切と考えております。

 以上の審査を踏まえ、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本第二部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本申請に係る再審査期間は6年、また、製剤は劇薬に該当し、生物由来製品に該当すると判断しています。薬事分科会では、報告を予定しています。

 なお、部会に先立ち、佐藤委員よりコメントをいただいております。添付文書案の「臨床試験成績」の項について、「海外臨床成績では表4にACR20の群間差と95%信頼区間が記載されていますが、国内臨床試験成績(表3)には、その記載がありません。国内臨床試験での本剤投与群の成績が、一見点滴静注よりもよく見えてしまいますので、誤解のないよう表3に信頼区間も記載するべきではないでしょうか。また、表3と表4で脚注のabが逆になっていますので、統一した方がいいように思います」との御指摘です。こちらについては、表3にも群間差及び95%信頼区間を追記するとともに、表3及び4について脚注のabを統一させていただきたいと思います。御指摘ありがとうございました。説明は以上です。よろしく、御審議のほどお願いいたします。

○吉田部会長 佐藤先生、よろしいですか。それでは、ほかの先生方からの御質問、御意見をお願いします。

○川崎委員 品質面から質問とコメントをさせていただきます。本製品では、従来の製法では品質上の逸脱が認められたことから、製造方法の変更がなされています。□□□社の逸脱の原因が、□□□□□□□□社が製造した培地に含まれる金属イオンの濃度が上昇したことであり、その原因が培地の製造中にステンレス容器から金属が溶出したからとされています。そこで、今回培地成分に金属イオンを塩として添加し、関連するパラメータを変更しています。このことから、金属イオン濃度は品質に影響を及ぼす重要工程パラメータと考えられますが、申請書には塩の含量が示されていません。重要工程パラメータである塩の含量を示す必要はないのかどうかをお聞きしたいと思います。

 また、品質管理が原材料供給会社に任されていた状況は望ましくないのではないかと思いますので、今後は製造販売業者に原材料の受入れ規格等を定めるような指導をしていただけたらよろしいのではないかと思います。

○機構 御指摘いただき、ありがとうございます。既承認の点滴静注用製剤の方でも同じような問題があり、本剤の審査中に点滴静注用製剤の一変審査が終了しております。その際、製販業者と培地のメーカーでのやり取りとして、今後培地の成分の含量を変更することがあったときには、製販メーカーに適切に情報提供するというような取り決めをする形で、変更時の確認漏れがないようにという対応を取りました。そのときに、処方番号と含量を紐付けまして、含量等が変わったときは処方番号も変わるというような対応で、含量の正確な情報は開示されないのですが、そういう情報が変わったことは製造販売業者に伝わるので、それをもって品質の管理等をするという約束事はされております。

○川崎委員 製造方法変更申請につながるような重要なパラメータは製造販売業者の方でも受入れ規格を設定する等管理される必要があるのではないかと思います。

○機構 いろいろな生物由来製品等で、培地を使っているところではあるのですが、なかなか買ってきた培地の含量の受入れ規格を設定するというようなところが難しいところもあり、現時点では適切な契約によってやり取りをするというところが、対応としてはできるところなのかなとは考えておりますが、いただいた指摘は真摯に受け止めて、今後検討はさせていただきます。

○吉田部会長 ほかにありますか。

○新井部会長代理 このタンパクは、Fcとのフュージョンタンパクで、シグナルを伝えるインタラクションを弱めることが作用機序だと書いてあるのですが、ADCCのようなことが起きて、結局は抗原提示細胞の低下が実は大きな原因ではないかという可能性は、どのぐらい検討されているのでしょうか。

○機構 既承認点滴静注用製剤のときに、そのようなことを検討されています。本製剤については、ADCCもCDC活性も持たないということになっておりまして、純粋にシグナルの阻害をするというのが作用機序と説明をされております。

○新井部会長代理 分かりました。

○吉田部会長 ほかにありますか。少し難しい原薬の製造方法の変更が行われたりしているようですので、その辺りの管理をよろしくお願いしたいと思います。ただ、前回の部会のリウマチの薬は何でしたっけ。

○機構 アクテムラです。

○吉田部会長 あのときは皮下注と静注で差が出てしまったので、かなり論議を呼びましたが、今回のものを見る限り、皮下注と静注の同等性は一応担保されていると考えてよろしいでしょうか、佐藤委員。

○佐藤委員 はい。

○吉田部会長 ということのようです。ほかによろしいでしょうか。御意見も出尽したようですので、そろそろ議決に入ります。なお、奥田委員、前崎委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。

 御異議がないようですので、承認を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。

それでは、議題3に移ります。事務局からの概要説明をよろしくお願いします。

○事務局 審議事項議題3、資料3「アミノレブリン酸塩酸塩を希少疾病用医薬品として指定することの可否について」、事務局より説明いたします。

 品目の名称は、アミノレブリン酸塩酸塩、予定される効能・効果は「筋層非浸潤性膀胱癌の腫瘍摘出術中における腫瘍組織の視覚化」、申請者は、ノーベルファーマ株式会社、SBIファーマ株式会社です。

 対象患者数ですが、筋層非浸潤性膀胱癌は、膀胱の尿路上皮粘膜から発生する悪性腫瘍のうち、膀胱の筋層に浸潤していない初期の膀胱癌になります。本邦での患者数は、国立がん研究センターがん対策情報センターによる報告や文献等により、約1万5,000人から1万7,000人と推定されており、希少疾病用医薬品の指定要件を満たすものと判断いたします。

 筋層非浸潤性膀胱癌の基本的な初期治療として、膀胱温存を目指した内視鏡による経尿道的膀胱腫瘍摘除術が行われますが、術後の再発が見られる場合があり、腫瘍の完全切除が重要とされております。

 腫瘍摘除術前に本剤を投与することで、従来の膀胱鏡検査では確認が難しい平坦な病変を検出しやすくなることが期待されます。現在、膀胱癌における光線力学的診断を目的とした体内診断薬は承認されておらず、本剤の使用が腫瘍残存率の低下、ひいては再発の抑制につながることが期待され、医療上の有用性は高いと考えております。

 本剤は、今年の3月に「悪性神経膠腫の腫瘍摘出術中における腫瘍組織の可視化」を効能・効果として承認され、さらに現在、高度医療の枠組みでの臨床研究が実施されております。筋層非浸潤性膀胱癌についてですが、我が国で2004年から臨床研究が開始されております。また、筋層非浸潤性膀胱癌を対象とし、本剤による螢光切除術の診断能、安全性及び臨床推奨用量の検討を行う、国内第II/III相医師主導治験も実施中です。以上のことから、本剤の開発の可能性はあると考えております。説明は以上です。

○吉田部会長 委員の先生方からの御質問、御意見をお願いします。疾患の頻度、それから医療上の必要性、取り切ることの重要性、開発の可能性で既に臨床研究が始まっているということですので、3点とも大きな問題はないと思いますが、よろしいですか。では、御意見がないようですので、議決に入ります。本議題について、指定を可として

よろしいでしょうか。

 御異議がないようですので、指定を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。

それでは、議題4に移ります。事務局からの概要説明をお願いします。

○事務局 審議事項議題4、資料4「リファキシミンを希少疾病用医薬品として指定することの可否について」、「事前評価報告書」を基に事務局より説明いたします。「評価報告書」のタブをお開きください。申請者は、あすか製薬株式会社です。希少疾病用医薬品の指定要件の対象患者数、医療上の必要性、開発の可能性の3点について、順に説明いたします。

 まず対象者数ですが、1ページの下方において、平成20年厚生労働省患者調査、分岐鎖アミノ酸(BCAA)製剤の売り上げ、文献調査等から算出した患者数は、それぞれ2万1,000人、3万3,000人、3万5,000人~4万2,000人であり、本剤の予定される効能又は効果における患者数は、指定要件の5万人未満を満たすと考えられます。

 次に、「医療上の必要性」について、肝性脳症は肝硬変等の重篤な肝障害あるいは門脈体循環シャント形成に起因する重篤な合併症であり、意識障害等の再発性の精神神経症状を誘発し、患者のQOLを著しく低下させます。また、肝硬変患者の約3045%が肝性脳症を合併し、脳症発現後の予後は悪く、初回発症後の1年生存率は50%前後とされております。

 肝性脳症に対する薬物治療においては、合成二糖類製剤やBCAA製剤が用いられていますが、前者は下痢等の副作用を生じやすく、服薬コンプライアンスも良好ではないこと等の問題があり、後者は、病態によっては効果が一過性に終わるとの問題が指摘されていることから、より有効性・安全性に優れた医薬品の開発が望まれています。本剤は、難吸収性のリファマイシン系抗菌薬であり、本剤の医療上の必要性があると考えられます。

 最後に「開発の可能性」ですが、米国・欧州等34か国において、肝性脳症関連の適応で承認されており、国内では現在第II/III施されていることから、本剤の開発の可能性はあると考えられます。これらのことから、希少疾病用医薬品の指定要件を満たすと考えています。御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○吉田部会長 委員の先生方からの御意見、御質問をお願いします。対象患者数はいいと。それから、医療上の必要性については、類薬よりも有害事象が少ないということと、本体が抗菌薬だという特徴があるというようなことです。開発の可能性は、もう既に臨床試験が行われているということですが、よろしいですか。それでは、議決に入ります。なお、田村委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。本議題について、指定を可としてよろしいでしょうか。

 御異議がないようですので、指定を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。

それでは、議題5について、事務局からの概要説明をお願いします。

○事務局 審議事項議題5「ベバシズマブ(遺伝子組換え)を希少疾病用医薬品として指定することの可否について」、それから報告事項議題3「希少疾病用医薬品の指定の取消しについて」も、事務局から説明いたします。資料5及び資料10を御覧ください。

 ベバシズマブの希少疾病用医薬品の指定の変更について説明いたします。まずは、資料10を御覧ください。中外製薬株式会社が開発するベバシズマブ(遺伝子組換え)については、平成24年9月に予定される効能・効果を「膠芽腫」として既に希少疾病用医薬品としての指定を受けたところですが、その後、「膠芽腫」を含む「悪性神経膠腫」を対象に開発を行うこととしたため、希少疾病用医薬品の指定についても変更が必要な状況となっており、資料10に基づき、既に指定されている「膠芽腫」を取り消すとともに、資料5に基づき、新たに「悪性神経膠腫」を予定される効能・効果として指定することについて御審議いただくものです。

 資料5の事前評価報告書を御覧ください。「悪性神経膠腫」の指定に関してですが、対象患者数については、日本脳神経外科学会脳腫瘍全国統計委員会の症例登録で、2000年に登録された原発性脳腫瘍の患者数等をもとに推計した悪性神経膠腫の年間発生患者数は、1,700人であり、患者数が5万人未満という希少疾病用医薬品の指定基準を満たしているものと考えております。

 医療上の必要性については、国内ではテモゾロミド以外に、ニムスチン塩酸塩、プロカルバジン塩酸塩等数剤が承認されておりますが、カルムスチン脳内留置用剤を除き、いずれの薬剤も生存期間の延長が示されていないこと等から、新たな治療薬の開発が望まれており、医療上の必要性は高いと考えております。

 開発の可能性については、本剤は本邦でテモゾロミドと放射線療法による治療歴を有する再発悪性神経膠腫患者を対象に、本剤単独投与の有効性及び安全性を検討する第II験が実施されている等、本品目の開発の可能性はあると考えております。以上から、本薬は悪性神経膠腫に対しても希少疾病用医薬品の指定要件を満たすものと判断しております。御審議のほど、よろしくお願いいたします。

○吉田部会長 委員の先生方からの御意見、御質問をお願いします。頻度的には問題がないのでいいのですが、悪性神経膠腫患者に広げた理由、あるいは根拠は何ですか。

○事務局 今回、こちらの希少疾病用医薬品に関しては、企業の方から資料が提出されており、この範囲で開発を行うという説明がなされて、それがいわゆる輪切り申請のようになっていない合理的なものである場合には、それを審議いただくということでしてきております。その上で、現在企業の方で実施した臨床試験の成績等に基づきまして、今までの膠芽腫の範囲ではなくて、悪性神経膠腫の範囲で開発を行いたいという説明があり、資料の提出がありましたので、今回御審議いただくこととしております。

○吉田部会長 それはそうなのでしょうが、例えば鑑別が難しいからとか、何か症例が集まりにくいから等、いろいろ理由はあると思うのですが、膠芽腫ではなくても効くかもしれないという基礎的データとか、そういうものはないのですか。

○機構 御質問の点については、機構より答えさせていただきたいと思います。今、吉田部会長がおっしゃったように、今回この膠芽腫というのは病理組織の診断が非常に難しい領域のものです。脳腫瘍の分類で悪性神経膠腫というものがありますが、その中に膠芽腫が含まれる形です。この膠芽腫と膠芽腫以外の悪性神経膠腫は、今申し上げましたように、明確な判断が難しいとか、治療体系が同様という状況です。それから、海外の報告ではありますが、膠芽腫以外の患者に対しても、有効性が示唆される報告があります。今回、初発の膠芽腫患者を対象とした海外の第III相試験等が行われていますが、当該試験には、膠芽腫として組み入れられたにもかかわらず、中央病理診断の結果、膠芽腫ではないと診断された症例も含まれております。膠芽腫以外の患者の結果も限定的ではありますが得られていることも踏まえて、膠芽腫以外を含む悪性神経膠腫での開発の可能性は、否定するものではないだろうと考えております。

○吉田部会長 臨床的な観点から、膠芽腫も神経膠腫に包括して扱いたいということで、変更をしたいのですね。ですから、資料10があるのではないですか。資料10の説明はしましたか。ということで、今までの希少疾病用医薬品の指定を変えたいということのようですが、よろしいでしょうか。特に御異論はありませんか。御異論がないようですので、議決に入ります。なお、奥田委員、田村委員、前崎委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。本議題について、指定を可としてよろしいでしょうか。

 御異議がないようですので、指定を可とし、薬事分科会に報告とさせていただきます。また、報告事項の議題3については、御確認いただいたものといたします。

 それでは、報告事項に移ります。報告事項について説明をお願いします。

○事務局 報告事項議題1、資料6「医薬品ノボセブンHI静注用1mg、同HI静注用2mg及び同HI静注用5mgの製造販売承認事項一部変更承認について」、事務局より報告いたします。本剤は、遺伝子組換え活性型血液凝固第VII因子製剤であり、血液凝固第VIII因子又は第IX因子に対するインヒビターを保有する先天性血友病及び後天性血友病患者の出血抑制を効能・効果として承認されております。

 本剤については、医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議において、公知申請への該当性に係る報告書が取りまとめられ、平成241031日に開催された本部会における事前評価を踏まえて、今般、ノボノルディスクファーマ株式会社から、「血液凝固VIII因子又は第IX因子に対するインヒビターを保有する先天性血友病患者の出血抑制」の効能・効果における本剤単回投与の用法・用量を追加する製造販売承認事項一部変更承認の申請がなされました。医薬品医療機器総合機構における審査の結果、本申請を承認して差し支えないと判断いたしました。

 続いて、報告事項議題2「医療用医薬品の再審査結果について」、三つまとめて説明いたします。資料7-17-3で、これらはいずれも医薬品再審査確認等結果通知書です。資料7-17-3は、一般的名称「ミカファンギンナトリウム」、販売名「ファンガード」点滴用25mg、同点滴用50mg、同点滴用75mgのものです。これらの品目について、製造販売後の使用成績調査、特定使用成績調査等に基づいて、再審査申請が行われ、審査の結果、薬事法第14条第2項第3号に掲げられている承認拒否事由のいずれにも該当しないこと、すなわち効能・効果、用法・用量等の承認事項について変更の必要はない「カテゴリー1」と判定したものです。報告は以上です。

○吉田部会長 報告事項について、委員の先生方から御質問等ありましたらお願いします。特によろしいでしょうか。それでは、報告事項については御確認いただいたものといたします。その他の事項についての説明をお願いします。

○事務局 その他事項議題1「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議において、公知申請を行うことが適当と判断された適応外薬の事前評価について」、資料8に基づいて説明いたします。

1ページに記載されておりますように、研究班より要望がありました。要望内容は、既承認のフィブロガミンP静注用に「後天性血液凝固第XIII因子欠乏症による出血傾向」の効能・効果を追加するものとなります。

 医療上の必要性及び欧米等での承認状況については、1ページ~8ページに記載させていただいております。後天性血液凝固第XIII因子欠乏症患者では、出血の部位や程度により致死的となる場合があり、本邦においては本要望内容を効能・効果に薬事承認を取得した治療薬はありません。海外においては、本要望内容はドイツで承認されております。また、英国のガイドライン、国内の教科書、国内外の文献報告及び使用実態を踏まえ、検討会議において本剤は医療上の必要性が高いと判断されました。

 公知申請の妥当性については、8ページ~9ページに記載しております。海外で実施されました臨床試験において有用性が報告されていること、本邦において本剤の有効性が報告され、使用実態からも安全性上の問題はないと考えられることから、後天性血液凝固第XIII因子欠乏症患者に対する本剤の有用性は、医学薬学上公知であると判断されました。

 以上を踏まえまして、9ページ~10ページに記載させていただきましたとおり、効能・効果は既承認の先天性血液凝固第XIII因子欠乏症に関する効能・効果に下線部を加えた「先天性及び後天性血液凝固第XIII因子欠乏症による出血傾向」と設定することが妥当と判断されました。また、用法・用量はドイツにおける本適応に対する承認用量が、本邦の既承認の用量と同程度であることを踏まえ、先天性血液凝固第XIII因子欠乏症と同じ用法・用量とすることが妥当と判断され、特に変更はありません。ただし、この後天性血液凝固第XIII因子欠乏症に対する用量の選択においては、年齢、症状のほかに、欠乏の原因、インヒビター等の力価の原因についても考慮する必要があるということで、注意喚起等をする必要があるとされています。説明は以上です。

○吉田部会長 先天性が既承認で、それに加えて後天性を加えたいということですが、特段よろしいでしょうか。それでは、その他の事項についても御確認いただいたものといたします。本日の議題は以上ですが、事務局から何か報告はありますか。

○事務局 次回の部会は、5月27()、午後3時から開催させていただく予定ですので、よろしくお願いいたします。

○吉田部会長 それでは、本日はこれで終了させていただきます。御苦労さまでした。


(了)

備考
 本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

連絡先:医薬食品局 審査管理課 課長補佐 益山(内線2746)

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