ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 労働基準局が実施する検討会等> ブランコ作業における安全対策検討会> 第1回 ブランコ作業における安全対策検討会 議事録(2013年10月8日)




2013年10月8日 第1回 ブランコ作業における安全対策検討会 議事録

労働基準局安全衛生部安全課

○日時

平成25年10月8日(火) 10:00~12:00


○場所

経済産業省別館108各省庁共用会議室


○出席者

検討会参集者(50音順、敬称略)

石原 成昭 清水 尚憲
杉本 旭 中西 勲
西田 收 山田 忠彦

厚生労働省

半田 有通 (安全衛生部長)
奈良 篤 (安全課長)
一瀬 壽幸 (安全対策指導業務分析官)
野澤 英児 (建設安全対策室長)

○議題

(1)検討会開催の趣旨説明
(2)ブランコ作業における労働災害発生状況及び現状
(3)ブランコ作業における労働災害防止対策
(4)その他

○議事

○事務局 それでは、若干早いのですが、皆さんおそろいのようですので、第1回「ブランコ作業における安全対策検討会」を開会いたします。

 本日は、検討会の初回になりますので、座長を選出するまでの間、事務局のほうで議事進行を務めさせていただきたいと思います。

まず最初に、本検討会の開催に当たりまして、半田安全衛生部長から御挨拶を申し上げます。

○半田安全衛生部長 おはようございます。

10月といってもまだ暑い日々が続く中、先生方には御多忙の中、御参集いただきまして、ありがとうございます。

 このブランコ作業の安全対策の検討に至りますまでには、全国ガラス外装クリーニング協会からたびたびの御要請がございました。

正直申し上げまして、私どものほうでは、高所作業は基本的には作業床をきちんと設けてやっていただくというのが原則だということで、ブランコ作業を公式に扱うということはやりづらいというような立場だったのは事実でございます。ただ、現実問題として作業床が設けられないような高所作業があるのも事実ですので、拱手傍観しておくわけにはいかないということでございます。西田会長を初め、関係業界の皆さん方が一生懸命やっておられる訳ですし、民と官が協力して万全の安全対策を講じていかねばならないということだと思い、私どももブランコ作業の安全対策に正面から取り組もうということを決意した次第でございます。

しかしながら、ブランコ作業の安全対策を進めるに当たっては、適用範囲等々、難しい部分もございます。ブランコ作業を正面から捉えようという方向で検討を進めていくことにしたものの、基本的に高所作業において作業床を使うということは絶対ゆるがせにできない部分でございますので、どういった場合にブランコ作業が認められるのか、そのときにはどういう点に留意していけばよろしいのか、そういったことを明確にしていただく必要がございます。こういったことを検討いただくのがこの委員会の目的だと理解してございます。

また、この委員会にはもう一つ重要な意義があると考えてございます。

平成18年の労働安全衛生法改正以来ですからもう7年ぐらいになるわけでございますが、18年の改正以来私どもが安全衛生対策の一つ柱として掲げておりますのは、リスクアセスメントの推進ということでございます。

ブランコ作業の場合、毎回作業場所が変わることになりますので、これから検討いただく安全対策はもとより、作業の都度、リスクアセスメントを実施して、作業の安全性をより高めていくことが大切ではないかと考えてございます。

そういった意味で、ブランコ作業については、リスクアセスメントもかなり真剣にというか、実用的に取り込めるものにできないか、委員の皆様のご意見をうかがいたいと考えております。

そういったことで、ブランコ作業の安全の問題は、歴史的と言うとちょっと大げさかもしれませんけれども、意義のある課題だと考えてございます。

先生方におかれましては、この課題の解決、あるいはよりよい方針の確立に向けまして、ぜひ御協力のほどよろしくお願い申し上げます。

どうぞよろしくお願いいたします。

○事務局 続きまして、本検討会に御参集いただいた皆様の御紹介をさせていただきたいと思います。

お配りしている資料1-2に参集者名簿をつけておりますので、御紹介をさせていただきたいと思います。

名簿の上から五十音順に並べておりますが、御紹介させていただきます。

清水建設株式会社土木事業本部土木東京支店安全環境部長の石原委員です。

○石原委員 石原です。よろしくお願いいたします。

○事務局 独立行政法人労働安全衛生総合研究所上席研究員の清水委員です。

○清水委員 清水です。よろしくお願いします。

○事務局 明治大学理工学部機械工学科教授の杉本委員です。

○杉本委員 よろしくお願いいたします。

○事務局 公益社団法人日本保安用品協会技術主管の中西委員です。

○中西委員 中西でございます。よろしくお願いします。

○事務局 全国ガラス外装クリーニング協会連合会会長の西田委員です。

○西田委員 西田です。よろしくお願いします。

○事務局 公益社団法人全国ビルメンテナンス協会理事の山田委員です。

○山田委員 山田と申します。よろしくお願いいたします。

○事務局 半田部長は、所用によりここで退席させていただきますので、よろしくお願いいたします。

○半田安全衛生部長 申しわけございません。きょうはこれで失礼させていただきます。

○事務局 続きまして、議事次第の「3 座長選出」に移らせていただきたいと思います。

資料1-1の開催要綱の4の(2)にございますように、本検討会には座長を置くことといたしております。

事務局といたしまして、杉本委員にお願いしたいと考えてございますが、皆様、いかがでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○事務局 それでは、杉本委員に座長になっていただくということで、以降の議事進行を杉本座長にお願いしたいと思います。

それでは、よろしくお願いします。

○杉本座長 よろしくお願いいたします。

こういう役目が適切かどうか、ちょっと自信がないのですけれども、多少安全に絡んでやってきましたので、お引き受けしようかなと思います。

皆さんとはちょっと関係ないかもしれませんけれども、私は中災防で顕功賞というのをいただいてしまいまして、急におまえは安全をこういうふうにやってきたのだからというので引っ張り出されました。賞をいただいたという関連もありまして、厚労省の仕事をしたいなと思っておりましたので、協力させていただきたいと思います。

それからコメントをちょっと生かしますと、ブランコ作業というのはよくわかります。

屋根に上がるのに5メートルのジャンプ、つまり、自分の体重を5分の1ぐらいにしてしまいますとジャンプができるのです。上下の作業域を拡大すると、作業の領域がすごく広がるのです。その実験をやりました。逆に言うと、これは非常に危険だということもよくわかりますので、そんな経験も踏まえて御協力をさせていただきたいと思います。

よろしくお願いいたします。

それでは、資料の確認ということで、事務局のほうからよろしくお願いいたします。

○事務局 本日お配りしております資料は、クリップどめになってございますが、全て1枚紙でございます。

資料1-1は、安全対策検討会開催要綱でございます。

 資料1-2として参集者名簿。

 資料2として「検討スケジュール(案)」というものがございます。

 資料3「ブランコ作業における墜落死亡災害概要」となってございますが、これが片面で1枚あるかと思います。

その次が資料4「ブランコ作業の類似作業における墜落死亡災害概要」ということで、これは表裏の両面コピーになってございます。

その次は資料5-1と5-2に分かれておって、これも両面になっておりますけれども、「全国ガラス外装クリーニング協会連合会:講習会別・年度別実態調査」という資料があるかと思います。

次に、資料6「ブランコ作業における労働災害防止対策(論点)」となっておるものでございます。

最後に関係法令ということで、労働安全衛生規則の関係条文を並べたものがございます。こちらのほうは参考でございます。

あと、委員の皆様には机上配付資料ということで、全国ガラス外装クリーニング協会連合会さんがおつくりいただいた「ブランコ作業マニュアル」という冊子を机上に配付しておりますので、御確認いただきまして、何か漏れ等がございましたら、おっしゃっていただければと思います。

 よろしいですか。

では、資料確認は以上でございます。

○杉本座長 ありがとうございました。

 資料について、皆さん、大丈夫ということで確認いたしました。よろしくお願いいたします。

それでは、議題「(1)検討会開催の趣旨説明」につきまして、事務局から説明をお願いいたします。

○事務局 それでは、資料1-1と資料1-2、資料2を使って説明をさせていただきます。

まず、資料1-1「検討会の開催要綱」のほうをごらんください。

ビルのガラスの清掃作業などにおいて、高所からロープをつるして、そのロープを伝って下降しながら作業を行っていくという作業、いわゆる「ブランコ作業」と呼ばれている作業がございます。

労働安全衛生法令では、高さ2メートル以上の場所で作業を行う場合には、足場を組み立てるなどの方法によりまして作業床を設置することが事業者に義務づけられております。

作業床の設置が困難な場合には、例えば労働者に安全帯を使用させるなどの代替措置となる墜落防止措置をとることも認められているところですが、あくまでも高所作業における墜落防止措置は作業床の設置によることが原則であるということで、そちらのほうを中心に指導しております。

とはいうものの、実態として、例えばゴンドラがないようなビル、あるいはなかなか足場も組めないような状況、作業床を設置できないような場合において行われる高所作業では、どうしてもブランコ作業という作業方法を選択せざるを得ないという現状がございます。

こういった現状を踏まえまして、本検討会では、作業床の設置が困難な場合において行われますブランコ作業における安全対策、とりわけ墜落災害を防止するための対策について技術的な検討を行いまして、あわせて実際に作業を行う作業者に対する安全教育の内容などについても検討を行って、報告書として取りまとめるということを目的といたしましてこの検討会を開催するものでございます。

資料1-1にも参集者としてお名前を載せておりますが、参集者名簿を抜き出したものが資料1-2のとおりでございますので、御確認をいただければと思います。

 なお、ブランコ作業では、メインロープにブランコを下げて、そこに腰かけて作業を行うというものですけれども、ブランコを使わずにロープのみを使用するような場合もございます。

そういったブランコ作業に類似した作業のほか、斜面、のり面での作業でもロープを使用する場合がございますので、これらの作業に係るような対策もあわせて検討していければと考えております。

続きまして、資料2「検討スケジュール(案)」をお示しさせていただいております。これをもとに検討会の大まかなスケジュールについて説明をさせていただきます。

本日の第1回目の検討会を皮切りにいたしまして、平成26年3月までの間に3回から4回の検討会を開催して、報告書を取りまとめたいと考えてございます。

 具体的な流れでございますが、今回第1回ではブランコ作業に係る労働災害発生状況や業界における取り組みなど、現状の確認をした上で、必要な労働災害防止対策を策定するのに際して、どういった論点があるのかということを議論して固めたいと考えております。

第2回では、ブランコ作業に類似した作業ということで、とりあえず業界団体からのヒアリングと書いてございますが、のり面での作業の現状などを業界団体からヒアリングをさせていただければなと考えておりますが、そういうのり面関係のヒアリングと、第1回で固めた論点を踏まえて、事務局のほうから報告書の骨子案を提示させていただいて、それを検討したいと考えております。

その後、第3回目で事務局から報告書案を提示いたしまして、検討の上、その報告書を取りまとめるという段取りで進めたいと考えておりますが、もし3回目までで報告書がまとまり切らない場合に、予備として第4回目を開催するということを考えているところでございます。

本検討会の開催の趣旨とスケジュール(案)についての説明は以上でございます。

○杉本座長 ありがとうございました。

 そういうことで、年に3回から4回開催しようと。今回は特にブランコ作業の現状の確認といいますか、論点を御説明いただいて、それを討論していこうと。

 2回目は、類似作業を皆さんのところで専門の方に討論いただこうと。

 それから取りまとめをしていく。

4回目は予備として用意してある。

先ほど部長がおっしゃったように、リスクアセスメントなどの関係がどうなのか、未定でありましょうけれども、リスクアセスメントというのは、危険をみんなで共有しましょうと。わかっているというのは、皆さんで共有できますから対策がとれるのです。現場と提供者、みんなで危険を共有していって、それをどういうふうに処理しようか、それに対してどう考えるかというのを共有していきましょう。人によって違うようなことがないようにということで、リスクアセスメントは非常に有効だと言われておりますので、そういう新しい考え方も踏まえまして体系がつくられるといいなというふうにちょっとコメントをしておきたいと思います。

 ということで、4回にわたってやっていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 今の御説明に対しまして何か御意見、御質問がございましたら、よろしくお願いいたします。

 特にないと考えていいですか。

それでは、次の議題に移っていいでしょうか。

議題「(2)ブランコ作業における労働災害発生状況及び現状」について、まず事務局から説明を願いたいと思います。

○事務局 それでは、資料3と資料4をごらんいただきたいと思います。

まず、ブランコ作業に係る労働災害発生状況ということですが、資料3では、平成20年から24年までの5年間の間に発生しましたブランコ作業における墜落による死亡労働災害10件につきまして、こういう災害が発生すると、事業場から労働者死傷病報告というものを監督署のほうに提出していただくのですが、労働者死傷病報告の内容を踏まえまして、簡単に取りまとめて発生年月順に並べた表となってございます。

業種としては、10件中9件がビルメンテナンス業、1件がその他の建設業となってございます。

「概要」のところに簡単な概要が書いてあるのですけれども、ブランコ作業の準備中に墜落したものが、左側にNo.1から10まで番号を振っていますが、6と7と10が準備作業中に墜落をしたというものでございます。

ブランコ作業を行っている最中に墜落したのがNo.1から5、8、9というもので、7件ございます。

なぜ墜落したかということなのですが、災害の概要のところに明確な記載がなくて、なかなかわかりづらい部分もあるのですけれども、はっきり書かれているのが2件。ロープが切断したことによるものがNo.2とNo.5、ロープがほどけたことによるものがNo.4の1件となってございます。

資料4は、ブランコ作業の類似作業、のり面作業に係る労働災害発生状況を取りまとめてございます。

こちらにつきましても、対象期間は平成20年から24年というもので、墜落による死亡災害のうち、ロープを使用していた作業に関連して墜落したもので、ただ、これは全数ではなくて、労働者死傷病報告の情報から墜落の状況がある程度明確になっているものを14件ほど抽出して、表として発生月順に並べたというものでございます。

業種は、8件が土木工事業となっています。2件が建築工事業。4件がその他の建設業となっています。

作業の内容としては、垂直にぶら下がっての作業が7件。具体的に言うと、No.1、5、6、7、9、1013

のり面の作業がNo.2から4、8、11から1214、この7件となっております。

災害発生の原因でございますが、安全帯をそもそも装着していなかった、未装着によるものが1件、No.14になります。

安全帯は着用していたものの、フックやグリップを外していたことによるものが7件。No.2、6、8、9、11から13

親綱などがほどけたり、緩んだりしたことによると考えられるものが3件、No.4、5、10です。

親綱が切断してしまったことによるものが1件、No.7になります。

あと、グリップの誤操作によるものが1件、No.3です。これは、落ちそうになったのでグリップをつかんでしまい、つかんだアクションで逆に緩んでしまって、それで落ちてしまったというものです。

それから安全帯は着用していて、親綱との接続もきちんとしていたのだけれども、墜落して宙づり状態になったということに起因してダメージが生じて、それで被災したものが1件、No.1となってございます。

行政として、こういった墜落災害防止のための取り組みについて、高所作業における墜落災害を防止するための一般的な対策としては、先ほど資料1-1の検討会開催要綱の説明でも申し上げましたが、原則として作業床の設置を基本としておりますので、作業床の設置に係る指導がどうしても中心になっているというところでございますが、作業床の設置が困難な場合におけるブランコ作業につきましては、都道府県労働局に対しまして、関係業界団体とも連携・協力しつつ、集団指導の実施でありますとか、ブランコ作業に係る安全教育講習の計画的な実施を促進するように指示をしているところでございます。

安全衛生教育については、平成23年に全国ガラス外装クリーニング協会連合会さんが安全教育用のテキストとして、本日委員の皆様に机上配付しております「ブランコ作業マニュアル」というものを作成してございます。

ブランコ作業に係る現状についての事務局からの説明は以上でございます。

○杉本座長 いかがでしょうか。御意見、御質問がございましたら、御討論をよろしくお願いいたします。

作業床における残留リスクといいますか、現状の作業床は完璧であると考えていいのでしょうか。それとも作業床も管理上の強い条件があると考えたほうがいいのですか。

それとも作業床を使っていればいいよ、それが標準だというふうに考えていくのですか。作業床の管理がしっかりしているので、それを守ってもらって、それが基本なのだ、標準なのだという考え方ですか。

○一瀬安全対策指導業務分析官 足場も作業床ですし、高所作業車も作業床の一つですし、ゴンドラも作業床の一つでございます。

ですから、その上で作業するという形で、その台になるものというか、そういう意味づけだと考えております。

それぞれ足場の基準、高所作業車の基準、ゴンドラの基準とかありますので、そういったものについては、規定に従ってしっかりしたものをつくっていただくということになると思います。

○杉本座長 ということが十分に行われていれば防げるのだけれども、できるにもかかわらずそれをやらなかったということもあるし、あるいはどうしても作業上、作業床の条件が整わないといいますか、利用できないというところの現実からこういうことが起こっているのかもしれない。

皆さんのほうが詳しいと思います。

そういう状況であると思いますが、皆さんの御意見がいただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○西田委員 先ほど半田部長様のほうからも御説明がありましたように、原則は作業床ということになってくるのですけれども、ガラスのクリーニングという作業の中で、なぜブランコ作業というものがこれだけ定着していったかということについては、枠組み足場を組んだり、ゴンドラを設置するのに非常にコストがかかってしまうということがあります。窓ガラスのクリーニングをやりますということで、お客様が支払ってもいいよと言ってくださる金額からは、とてもじゃないけれども、枠組み足場やゴンドラというものを設置するだけのものが出てこない。

 しかしながら、私たちも10年、20年近くブランコ作業をそれなりの安全対策もとりつつやってきているという現状の中で、ブランコというものを使えばその価格でもガラスのクリーニングはできますよということで、ビジネスを展開しているという背景もあるのです。

 そのことについては、特に地域の監督署等々から、ブランコは作業床でないから、そういう作業をやってはいかぬという御指導はいただいていなくて、やむを得ないケースとして、親綱というものをしっかり使ってやってもらえば、私どもとしては別に問題はないと思っているというような回答をいただいています。

そういう背景がありますので、御報告申し上げます。

○杉本座長 いろいろ勉強になります。

ということは、本来お金や手間がかかるかもしれないけれども、作業床でやることもできるのだけれども、価格の問題等々があって、そちらのほうがという考え方も若干あるということですね。

○西田委員 現実的には。

○杉本座長 どうぞ。

○清水委員 先ほど半田部長のほうからも今回リスクアセスメントを導入するという話があったのですが、御存じのように、アセスメントをしたときに、リスクに対するリスク低減方策に優先順位がございまして、一つは本質安全設計です。本質的に危険源そのものを除去するか、低減する。

それができない場合には、いわゆる安全防護、足場とかゴンドラだと思います。

それができない場合には、保護具だとか、管理教育とか、そういった形で優先順位が今、国際的に決まっているのです。リスクを低減する中にコストというのを入れていくか、入れていかないかというのは大きな観点だと思うのです。

基本的に今ある最高基準の技術でできないことであればできないのですけれども、できるのに、コストがかかるからやれない、あるいはやらないということを認めていくのか、あるいはなるべく原理原則にのっとってやるというふうにこの委員会で持っていくのかというのは、ちょっと意思統一をしておいたほうがよろしいかなという気がするのですが、いかがでしょうか。

○杉本座長 御意見をいただければと思います。

 もう一つ加えますと、本当は法律優先なのです。やはり法律を犯してはいけないわけで、まず法律で決まっていることを大優先して、どうしてもそれができない場合は、こういうふうに委員会にかけて検討を進めて、それで正式にその権利を得ていく、そういう手続が重要だと思うのです。

そういうのが決まっていない場合は、自分たちの管理下にありますから、最高のやり方を理性的にというか、討論で決めていくということがありますが、コスト、あるいは作業性も含めまして、法律があるならば、それをきちんとやって、どうしてもできないなら、できないということで集まっていただいて、正式なルートでその許可をもらう。

そういう意味では、皆さん、これの検討の会議をやってくれと御要望されたといいますか、非常に正当な話だと思います。

そうなりますと、例えばリスクアセスメントでやりたまえとなりましたら、最高のリスクアセスメントをやって、そこで生ずる残留リスクについては社会が責任をとるといいますか、みんなで認めていく、そういう流れになると思います。

そういうことでは、今のルートでコストのものとか、ほかのところはできるからやっているのに、あそこはコストがかかるからこちらに行ってしまったみたいな話は、許されるかどうかわかりませんので、討論をいろいろやっておく必要があると思います。非常にいい機会をいただいたと思います。

ということで、御意見をいただければと思いますけれども、いかがでしょうか。お願いします。

○西田委員 自分ばかりしゃべっていて、ちょっと申しわけない気もするのですが、確かに安価だからリスクをしょってもその方法でやるのだよということではないと私たちは考えているのです。

 と申しますのは、ブランコ自体、我が国独自のものではなくて、ヨーロッパでもありますし、アメリカでもありますし、今、こういうインターネットの時代になって、そういう情報がかなり行き来しているわけです。そういう中で、いろんなリスクに関する情報というのをグローバルに共有できている部分もある。また、商品そのものもグローバルに流通している部分もある。

という中で、例えばEUの法律であるとか、アメリカにおいても、OSHAのレベルではまだ規定はされていないのですけれども、州法の中ではきちんと制定されたりしている部分もありますので、一概に現行の法律とそぐわないからこれはリスクが高いよというふうな判断をいただくと、ちょっと困るかなというか、我々としては現実的にお仕事をしていく部分でいろいろ問題が生じてしまう部分があります。

確かに、こういう専門家の先生方に集まっていただいて、やはりブランコというのはリスクが高いのだよと。例えば我々日本人の特性だったり、日本人の文化だったり、そういうものも吟味した上で、これはこの国ではリスクが高いと言わざるを得ないねという結論が出れば、それはそれでまたそこで対応していかざるを得ないと思うのです。

現行の法の枠内に入っていないからリスクが高いよということではなく、ゼロベースで議論していただければありがたいなと思います。

○杉本座長 今の御意見に対して、御討論がございましたら。どうぞよろしくお願いします。

○事務局 今の法令がどうなっているかということを1回事前に確認しておいたほうがいいと思いますので、参考資料「労働安全衛生規則(抄)」というのを見てください。

一番最初のところに「(作業床の設置等) 第518条」というのがあろうかと思います。518条の第1項は原則が書いてあり、高さが2メートル以上の箇所では作業床を使いなさいということが書いてあります。

第2項のところで「前項の規定により作業床を設けることが困難なときは、防網を張り、労働者に安全帯を使用させる等墜落による労働者の危険を防止するための措置を講じなければならない」となっているので、作業床を設けることが難しい場合というものをある程度想定したつくりにはなっています。

では、実際これはどういうことを想定してつくられたのかというと、過去の解釈などを見ていきますと、昔、これをつくったころは、この2項というのは、トラックの荷物の積みおろし、大型トラックなどの場合、2メートルを超えた荷物を積むということがありますので、そういうものについて、現実にトラックが頻繁に出入りするようなところに足場をつくったり、作業床をつくるということは現実的ではないということで、安全帯を使ったり、「等」と書いてありますのは、墜落防止、防護用のヘルメットなのですけれども、そういうものをつけることによって安全を確保していきましょうという解釈になっております。

ただ、これをつくったのは非常に昔の話なので、当時はブランコ作業というものは余り想定されていなかったということではないかと思います。

単純に法令を読む限りにおいては、今やっていることが法令違反かどうかというと、そんなことはないような気がいたします。要は、解釈の問題だと思いますし、そういうものを現実的にどう安全にしていくかというのが、まさにこの検討会なのかなという気はいたしております。

先ほど西田会長が言われた監督署の指導というのは、多分こういうことを根拠に、直ちに法違反ではない、ちゃんと安全帯を使って安全確保をすればやむを得ないですねという話になっているのではないかと考えておりますので、一応御参考までに。

○杉本座長 よくわかりました。

 ある意味で歴史が込められているわけで、実際に死んでいるわけですから、そういう過去のデータベースがこの法律にまとめられているわけです。そうすると、今のブランコ作業というのは想定されているとは思えませんから、改めてきちんと考えていくか、あるいはこの法律の中に適用していくということを整理していくか、あるいはこれを分けて、むしろこういうやり方よりも、もっとこれに適正な安全の対策があるのだということを提案しながら、独立させていく道があるということだと思います。

 ほかに御意見がございましたら、どうぞ。

○清水委員 そうすると、この委員会でこの作業をアセスメントしながら安全対策をとっていくときのスタートの地点というのは、作業床を設けられないというところからスタートするのではなくて、作業床を設けるというところから検討をスタートするという位置づけでよろしいのですか。

 それとも、ブランコ作業というところからスタートするお話でよろしいのですか。

○事務局 作業床の設置を前提にすると議論が発散して収拾がつかなくなってしまうので、ここは議論を絞らせていただきたいと考えております。

○清水委員 そうすると、設けられない、いわゆる残留リスクありというところからの話ということでよろしいですか。

○事務局 はい。

○清水委員 わかりました。

○杉本座長 それでいいと思います。

 ある程度独立したというか、ブランコ作業というのはちゃんと定義をして、これは作業床が難しいという前提で物を考える。これをやらなくても作業ができるというのだったら、無理にこれをやることはないわけですね。

だから、これが必要になるというのは、この作業を独立して扱っていくということができる、改めて考えていくことができるということで、そういう立場をとりたいと思います。

ほかにございませんでしょうか。どうぞよろしくお願いします。

○山田委員 ビルメンテナンス協会の山田と申します。

実際作業床の設置が困難なビルはほとんどありません。

ただし、これに関しまして、先ほど西田委員が言われたように、コストの面、作業効率の面というのを考えて、昭和40年代、例えば渋谷の西武デパートでゴンドラが墜落して、児童が3名ぐらい亡くなられたとか、そういう災害もありましたし、その中で、より安全により効率よく作業できるのがブランコ作業であるということをガラス外装クリーニング協会のほうでやっておりました。そういったところで、まず第一に、作業床の設置が困難というところはほとんどないですね。

その中で、今、安衛則で高さ2メートル以上のところでということで、安全帯、保護帽をつけるというところだけしかないので、逆にブランコ作業の安衛則をつくるぐらいのことをしていかないと、この委員会は全く意味をなさないのではないかと考えております。

ガラス外装のブランコ作業、また、ブランコ作業以外の乗り出し作業とか、非常に危険な作業があるので、その辺を含めて安衛則を変えるぐらいのことをしていかないと、なかなか災害はなくならないのではないかなと私どもは考えております。

以上です。

○杉本座長 話をまとめますと、こういう作業が生まれたのだ、これは新しい作業なのだと。だから、改めてこれを安衛則に付加してくれと。きちんと考えていくと、従来の作業床でやってきた作業のリスクアセスメントと、新しいブランコ作業のリスクアセスメント、対策を独立に考えてみれば、むしろ改善されるのだと。だから、悪くなっているのではなくて、むしろ従来の作業が改善されていくプロセスなのだと。一般的に言うと、こういう程度のリスクが残るのだけれども、ブランコ作業を定義して、このリスクを考えて、きちんと管理をしていく。一般的な仕事の中から特にこれを取り上げて、独立して体系をつくってあげれば改善されるのだと。改善されるほうに否定されるのは困るという意味ですね。

○山田委員 そうです。安衛則の中で考えると、この法律に抵触している作業だと思うのです。そこをこのまま続けていくのであれば、結局、行きどまってしまうと思いますので、そこをしっかり変えるためにも、どちらかというとファジーな部分で作業しているところなので、その辺をしっかり考えていかなければ、なかなか難しいのではないかなと考えております。

○杉本座長 討論をお願いします。

お困りの点はよくわかります。

ヨーロッパが従来のやり方を全部一回捨てようと。労働安全新法がイギリスでありましたけれども、あのときは、今までつくった法律を全部クリアして、メーカーとユーザーが最高の契約関係をつくる場は国が提供するけれども、それ自体は自分たちでいじくらないというのをやりました。あの歴史がイギリスの新法の歴史です。

ある意味で一回クリアしてもらって、古い皮袋は破いていただいて、新しいものをつくるチャンスというか、開放するというような意味ですね。大変な要求だと思います。現実的にどうかというのはちょっとわかりませんが、御意見がございましたら、どうぞ。

○一瀬安全対策指導業務分析官 作業床を設けることが困難な場合ということの具体的な考え方の問題になってくると思うのですが、現状、行政のほうの考え方として、ガラスクリーニングのような1回だけ行うことについては、より安全な方法としてブランコ作業ということも考えられる。

一方で、例えば外装の塗装とか、あるいは補修である程度長期にわたるようなものについて、最近はコストなどの関係もあってブランコ作業で行うケースが出てきているようなのですが、そういった場合にはしっかり足場をつくっていかなければいけないのではないかということがございます。

そういう意味で、安全性と効率性、いろいろなことを考えた上での判断であろうと考えておりまして、現状でガラスクリーニングについて違反だというふうな考え方ではございません。

○杉本座長 今の御意見というのはどう思いますか。

○山田委員 例えば東京都内でゴンドラが設置されているビルについては、ガラス外装クリーニング協会のほうで把握されていると思うのですが、大体どれくらいの割合があるか。ビル自体も、オーナー様もそうですし、私どもビルメンテナンス協会が管理している物件もそうですし、ゴンドラが設置されていないビルが大半なのです。そういったところを含めると、やはりブランコ作業は絶対必要なものだと私どもは考えております。

 ブランコ作業をするという形で外部の窓ガラスの清掃の予算も計上しています。そういったところを踏まえて、安衛則をしっかり変えるべきだと考えております。

以上です。

○杉本座長 相当根本の話になりますけれども、それは討論が長引きそうですので、ちょっと置いておきましょうか。よくわかりますし、行政側の問題もありますので。

ガラス外装クリーニング協会連合会が作成した「ブランコ作業マニュアル」というものがございますが、その内容について、西田委員から御説明をいただきたいと思います。

○西田委員 それでは、御説明を申し上げます。

 簡単な御説明ということなのですけれども、大きく分けますと、ハードの部分、イクイプメント、我々は機械ではありませんので、何という言い方をしたらいいかよくわからないのですが、ハードの部分と、それをどう取り扱うのかというソフトの部分に分かれています。

17ページから50ページまでがハードの部分、道具に関連することについての内容になります。

 見ていただくとわかるのですけれども、一口にロープと言っても非常に多様なロープが現状の国内のブランコ作業では使われているのです。

 安全帯にしてもそうですし、下降器具というのは、ブランコ台という腰かける板を取りつけて下がっていく道具なのですが、35ページを開いていただきますと、(1)シャックル、(2)エイト環、(3)ラック、(4)ハンドルレバー・ディッセンダーということで、その中でもレスキューディッセンダー、ロープアクセス・ディッセンダーと非常にいろんなものが使われていますので、先ほど杉本先生からお話があったように、理想的にはメーカーのほうできちんとリスク情報というものをユーザーに引き渡したものを使いたいのですが、昔のタイプの下降器というのは、シャックルにロープを特殊な方法でよじって通してブレーキをかけるという仕組みになっているものですから、当然シャックルのメーカーからこれを下降器として使った場合のリスク情報なんて手に入らないわけです。

そういう中で、現状、1つのマニュアル的に使われているものをある程度リストアップして、私どものほうで、これを使うとこういうリスクがあるよというものをまとめていったのが50ページまでの部分になります。

51 ページからはマニュアルというか、その道具を使ってどういう手順で作業を行えば基本的に安全が担保されるのかということについて、81ページまで記載をしています。

内容はかなり専門的なところに踏み込んでいますので、実際にこの作業を御存じない方はぴんとこない内容になっているかもしれませんが、大まかに言うとこのマニュアルはそういう内容になっていまして、このマニュアルを使用して私どものほうで講習会を開催していますし、各企業のほうで安全教育に使用してくださいというふうにしております。

以上です。

○杉本座長 ありがとうございました。

 安全の考え方というのがあるのです。冗長系、リダンダンシーではないですけれども、多重系、多様系等々あるのです。インターロックがあるのです。それから信頼性があって、壊れ方設計がある。例えば2つ用意しておいて、両方壊れて初めてやられてしまうので、一方のほうが壊れたときに、一方で助かって、交換する。

多様系にすると、1つのほうはまた違う2つを組み合わせて、それで同時故障がないようにするとか、あるいはインターロックで、1本のほうがとまるということ専用で、一方が機能的なもので、機能的なものがあると、とまるというところに全部ひっかけて助ける。作業の役目と安全の役目を完全に分けて、先に機能のほうが壊れてももう一方で止めて安全を維持する。それはインターロックと言います。そういうふうにやる。

安全の考え方というのがありまして、安全のやり方でもって証明しないとヨーロッパでは認証をくれないのです。少なくとも事故が起こったときは認証団体が責任を持ちますから。特に死んでしまうという事故がありますと、まずやってくれないのです。

ヨーロッパの話をしてしまいますと、ヨーロッパの基本的な考え方は全部事前ですから、事前にこういう処理をしましたので認証を下さいと。事前でないとだめなのです。

逆に言うと、事前にやるというのは限界がある。「この限界でもってやりました」「どういう限界ですか」「こういう限界です」「その限界までやりましたね。限界をやったのだから、後になってがたがた言いませんから」という社会制度の中でやっているのです。

そのときの証明の仕方も、事故が問題ではないのです。安全のつくり方というカテゴリーであって、このつくり方でやって、その限界をきわめたから、これで起こった事故については後で責任をとらせないでくれと。こういう考え方なのです。

それを日本に適用するかどうかは別にしましてね。

だから、ずっと安全をどうするか見ていきますと、私の頭の中で、もしもヨーロッパで安全規則をつくって、ここまでやってくれたら事故が起こっても仕方がないよというふうに言えるかどうかというのを判断する。どのやり方でやったのですかと言ったときに、こうやったから認証くれと言うやり方が浮かんでこない。

だから、ヨーロッパにこれを持っていっても、では、どの安全の考え方でやったのですかというところで曖昧になってしまっているので、事故が起こるまではこれでいきます、事故が起こったら怒られますというのではないけれども、後の処理のほうがどうも出てきてしまうのではないかと思うのです。ちょっと心配なのです。

だから、ずっと見ていると、一つだとリスクの残留がまだ大きいので、それを2重にしてくださいねとか、これを違う方法でバックアップしておいてくださいねとか、これはインターロックで、1本の線は命綱ではないけれども、それをきちんと通して、そこのところに最後まで仕事をやっていただく。だめなときにはこいつに自動的にぐっとなるようなメカニズムにしてくださいねと。

認証団体が、これではまだ十分なリスク低減になっていないので、これをやって許容リスクに落としてくださいという言い方が成立していない。ちょっとそれが気になるなと思ったのです。

何で安全なのですかという考え方のカテゴリーが大体4つあるのです。向こうはそれしかやらないですから。僕らがフェールセーフの研究をヨーロッパへ持っていったら、全然受け付けなかったです。それは自分たちの安全のつくり方と違うと言われたのです。

もちろん、ヨーロッパと比較することはないのですが、余計な話を続けますと、やったときに、本当にこれで安全なのか、認証という判断、認証でけじめをつけながらやっていくといいのです。認証の手を借りないで最終まで自分でチェックできていないと誰も安心できないと思ったのです。

ですから、目先の技巧的、機能的なやり方でうまくやっていくと確かに事故が防げる、それでできるのに、あ、切れてしまった、落っこってしまったと不意に起こることは防げない。だから、うまくやっているときは非常にいいのだけれども、最後の最後に事故が起こらないという証明、認証団体が、これで証明が終わりというところは、やはり人間が事故を防ぐと言うような管理的・機能的ないいものをもって安全と言っているような気がします。中を見てみないとわかりませんけどね。

より安全は進歩していますので、従来のやり方よりも、ブランコ作業というものに限ってかもしれないけれども、それを専用に考えたときには、こういうやり方を皆さんと共有していけば安全が改善されるので、作業床でやるべきことの中で考えて、改善するというものとして認めてもらいたいみたいな話を成立していくには、それなりのことを考えていかなければいけないなと今、感じました。

ちょっと長くなりまして済みません。

表面的なことしかわかりませんけれども、ロープはずっと使っていると切れてしまうと思います。やはり切れるということを前提で物を考えていかなければならない。全く使わないものがそばにあって、こちらが切れたときだけぎゅっと使う、最後の命綱ではないけれども、そういうものがあるかとか、使っているものが同時故障はないので、古いものと新しいものを多重にするとか、方式が違うものを多重にするとか、そういう安全の理論でもって証明は終わりと。

先ほど清水先生がおっしゃったように、方法論には優先順位があるのです。その優先順位があると、堂々と今の規則から新しい皮袋の規則に発展できることになるかなとも思います。

そんな印象を持ちました。

この検討は1日目で終わるわけではありませんので、要求はなるべく高いところに置いていただいて、検討を進めていきたいと思います。

これに関して、ほかにございませんでしょうか。

今、災害の事例がありましたけれども、高所作業というのは危険ですね。死んでしまうのです。死ななければリスクの話も出すのですが、死ぬということは、まさに取り返しのつかない災害なのです。

ヨーロッパでは、死亡事故が絡みますとリスクから完全に外します。認証団体では、死亡事故が1年間に3件までならいいよということは絶対ないです。取り返しのつく事故が災害としての条件で、その確率、その頻度を見ていきます。

本当に死んではまずいのです。死亡事故が出てしまう可能性があるのだったら、みんなで事前にこうやってやろうということを申し合わせていかなければいけないと思いますね。そうすると、データがなければデータをとって、このデータを共有して、この法律はでき上がるのだというところまで行く。

リスクアセスメントでもって皆様がそれを共有していくなら、それのデータをとる、あるいは使ってみて、落っこってから反省するのでなくて、交換をするタイミングは必ず落ちる前というか、切れる前に保証される方法がないといけない。

確率ですと言ってしまうと、死ぬのでなければ余り気にしないのだけれども、死亡事故が絡んできますと、全く意味が違うのです。

国際規格も、死亡事故が絡むと流通させません。認証団体が別に分けてしまいます。だから、大きな事故はまずいというのが共有されていますので、そういうことも含めまして、慎重な討論をしていきたいと思います。

御討論、ほかにございませんでしょうか。どうぞ。

○清水委員 今、杉本先生からもお話があったのですけれども、死亡災害の概要を見てみますと、かなりリスクが高いのです。何かあったら死んでしまうようなリスクが発生しているということが非常によくわかるのですが、これに対して、原理原則から言いますと、例えば被災者がグリップを使用していなかったとか、古いロープを使ったということで、人の注意力に依存していることがかなり大きいのです。

その中で、今の下降器具をちょっと見させていただきますと、1つ見ると、いろんなものが出ていると思うのです。これも例えば最初はシャックルだけだったのが、その後にいろいろ技術的なことで出てきていると思うのですけれども、それぞれどういうリスクがあるかということを考えると、かなり違ってくると思うのですが、今、協会さんのほうで、例えばシャックルにかわるこういった新しい技術のものが出てきたよというときに、今まで使ったものも使っていこうという認識で書かれているのか。あるいは先ほど一つ一つどういうリスクがあるか洗い出すというお話でしたけれども、そういったときに、今、使っているからあれでしょうけれども、将来的には何かに移行していくといった考えもあるのでしょうか。ちょっとお聞かせいただきたいと思います。

○西田委員 今のところ、我々の協会や連合会のほうで、道具についてこういう方向に業界を動かしていこう、そこまで踏み込んだ対応をしよう、あるいはできるとは思っておりません。

16ミリの縒りロープを使ってシャックルで下降していく。もちろん、親綱は使うのですけれども、何十年も営業されている企業さんで、そういうやり方をやっていても事故が発生していない企業さんもいらっしゃるわけです。

単純に道具だけのリスクアセスメントをやった場合は、決してそのリスクが低いわけではないのだけれども、それは恐らくその会社の文化なり風土なり、あるいは何か教育的なものがあってそれを担保しているのではないかというふうに推察している部分もあって、もっといい道具が出ていますから、そちらのほうを使ってくださいねというのは、なかなか言い出しにくい状況があると感じています。

ただ、海外では「ブランコ作業」という名称でなくて、「ロープアクセス」と言うのですが、ロープアクセス用に開発された商品が国内にもかなり流通されてきているという状況もありますので、そちらのほうが普通に考えて使いやすい。軽い。価格的に古いタイプのものよりも多少高くなっているかもしれないけれども、決して手が出ない金額ではないという中においては、マーケットというのは徐々にそちらのほうに動いていくのではなかろうかというのが現状の我々のスタンスです。

○清水委員 私は機械屋なのですが、物の安全というのを考えるときに、あらかじめ想定されるヒューマンエラーというのを最初に考えるのです。ですから、そこを注意して使いましょうということは、アセスメントを導入するということから報告書の書き方をどういうふうにするかと考えた場合に、リスクを低減していくときに、ここで注意して使うとか、管理を徹底するということがリスク低減の最後の落としどころになってしまうのではないかなという懸念がありまして、そこを非常に気にはしているのですが、いかがでしょうか。

○杉本座長 いかがでしょう。

人間の管理ではリスク低減ができないのですね。ハードをどうやって使いこなすかという情報を人間に提供するということに一応なっているのです。

例えば飛行機というのは空中に上がると必ず落ちるのです。だから、飛行機を捨てに行くためには、飛行機が落っこってから捨てに行ってもしようがないのです。ここでやめますからという判断を落ちる前にするのです。でも、あれだけの飛行機が世界中を飛んでいて、落っこってから捨てに行くのではなくて、中古で売ったとしてもちゃんとルールがあって、こういうふうになったときにはもう捨てましょうと。

ロープがだんだんと劣化してきて、落っこってから、もうちょっと早くやめればよかったというわけにはいかないですね。

飛行機はアリゾナの砂漠に捨てに行くのですが、捨てに行くのにやるせないわけです。だって、まだ落ちていないのですから。でも、必ず落ちる前に捨てに行く。これをどういうふうに決めているのかというのが安全の理論にあるのです。

 あれだけの数の飛行機を、落っこってから捨てに行くのではなくて、落っこちる前に必ず捨てるという規範を飛行機の材料でつくり上げたのです。中古でベトナム航空に売ってしまっても、ベトナム航空は、捨てる時期が来ましたというルールでやる。

ステンレス、ジュラルミンの材料は、どういうふうなことになったら必ず捨てなければいけないというルールになっているのです。

人間にその判断、落ちる前に捨てましょうなんて言っても無理なのです。そこには、こうなったら交換というふうに強制的に判断できるような内容がないと無理ですね。

人間の判断だと必ずおくれるのです。ブレーキは必ずおくれるのです。おくれて、どかんといってからとめてもしようがないわけです。先にとまって事故を防ぐというのを永久に繰り返さなければならない。そういうルールをハードウエアなどでつくれるかどうかが物すごく大きいのです。

つまり、落っこってから捨てに行きますよというのではなくて、とまって事故が防げましたという構造が常に満ちているというのを判断するのが認証団体なのです。

だから、それが厳格にできるかどうかというのに本当にかかっているのです。清水先生はそれをおっしゃっているのだと思うのです。

 ある意味でそういうことが可能かどうかということですね。

限界がありますから、最後は人間だというのがもちろんあるのですけれども、だけど、どこまでやむを得ないというのを言うことができるかということです。これは労働安全の全体の問題ですからね。

ハードウエアを用意するのも、これは死ななければいいのですが、落っこってしまってから誰が悪かったみたいな話は余りしたくない。だから、できるだけといいますか、そういうところを決めていくのかなと思いますが、どうでしょうか。

○清水委員 私があれなのは、自分の不注意で使い方を間違えて落ちてしまって、病院でうなっている人に対して「おまえが悪い」と言うとか、そういったことは絶対にしたくないのです。

仮に人がミスをしないようなものが器具であるならば、業界としてそちらのほうへ移行する。今まで使ってきた文化とか歴史はあると思うのですが、先ほどのあらかじめ想定されるヒューマンエラーを考慮した形でアセスメントをするならば、そういったものに移行することを積極的に考えていくというのも一つだと思うのです。

○杉本座長 第1回目ですので、屈託なく今の山田先生のような意見を言っていただいて、高いレベルの要求をつくっていこうという提案をしていただく。もちろん、最後は非常に現実的なところ、実践力のあるものに落ちつくかもしれませんけれども、まずや御討論をいただければと思います。

 どうぞ。

○石原委員 日建連から来ました石原です。

 日建連(建設業)の立場から見ると、ブランコ作業というのは、どちらかというとあまり勧められる方法ではないと思っています。

 ブランコ作業を法律や規則で謳うことになると、現在、足場や作業床を設置して行っている作業が、不経済で手間がかかるという理由で、ブランコ作業を採用する方に走るのではないかという心配が懸念されます。

 そうしたことがないようにするためにブランコ作業に関しては、ビルのメンテナンスやガラスクリーニング作業などで、ゴンドラが設置されていない、または足場やゴンドラが設置できないような場所などの、特殊作業環境条件に対して限定する必要があるのではないかと思います。

足場上で作業している時に、自分の不注意や不安全行動およびやらなくてはいけない安全設備をやっていなかったために落ちるというのが墜落災害だと考えると、例えばブランコ作業のロープが切れるというのは、作業員の不注意以外に道具・器具・作業環境条件という部分が出てくるのではないか。ブランコ作業での災害を少なくするためには、作業計画の届出や許可制にするところがその法律の中に入ってこないといけないのかなという感じがします。

どうしてもそういうブランコ作業をしなくてはならない特別な作業条件という場所はあると思います。今も現実に古いビルやビル同士が近づき過ぎて足場を設置することができなかったり、ゴンドラが設置されていないビルがありますので、ブランコ作業に頼る以外に方法はないというのは十分理解できます。しかし、これを法律化すると、ビルの内側などで天井が高い場合に、足場が設置できるところでもブランコ作業でやってしまうとか、一回だけの補修だからと足場を設置できる場合でもブランコ作業で計画してしまう可能性があります。ブランコ作業を行う場合には、その作業の環境条件や特殊性を考慮した計画と、災害防止がされていることを確認することが大事だと考えます。

○杉本座長 そういう意見ももともとあると思いますね。きちんとできるのか、どういう保証をもってきちんとできるという根拠が確保できるのかということがなければ、できる作業の種類、作業の範囲は広がるのだけれども、いたずらに危険がふえていくのではないか。そういう意見も出てしかるべきと思います。

逆に言うと、どういうふうにやるのがきちんとしたブランコ作業なのか、どういうことを確保すれば、この作業を社会が許可し得るのかということを少し時間をかけて討論する必要があるのではないかと思います。

時間のあれもありますので、資料5-1と資料5-2の説明がなかったと思いますので、これについてお願いします。

西田さん、よろしくお願いします。

○西田委員 先ほどの清水先生、杉本先生のお話を聞くと、そのとおりだなと思って、この検討会を通じていろいろ勉強させていただいて、我々としても、それを持ち帰って、よい結果につなげていきたいと思っています。よろしくお願いいたします。

 それでは、資料5-1と5-2です。

これまでも漠然とお話の中に出てきましたけれども、改めてブランコ作業の概況について触れさせていただきたいと思います。

一つのきっかけの時期は、労働安全衛生法の制定の時期なのかなというふうにも思っています。

それ以前は、窓は内側からあくものだという想定のビルが多くて、ほとんどの場合、窓をあけて、窓にしがみつくような格好で、雑巾のようなものを使って磨き上げていたという時代だったのです。

昭和40年代、東京オリンピックがあって、近代的なビルをふやしたり、そういう中で、ある程度高さがあるビルで窓があかない建物がふえていったわけです。そうすると、これは下からはしごのようなものでアクセスをするか、あるいは屋上からおりてくるかということで、はしごというのは、せいぜい2階とか3階ぐらいしか届きませんから、屋上からアクセスする方法として、一つにはゴンドラ、もう一つは縄ばしごというものが当時よく使われていたのです。その中にブランコというのも当時からあったと思います。

先ほど山田委員からお話が出たように、渋谷の西武デパートのゴンドラの落下事故を契機にしまして、ゴンドラ安全規則が制定されます。これによって、ゴンドラというのは届け出が必要になってくるのです。

それ以前のゴンドラというのは、届け出も何も必要なく、ただワイヤーとモーターとかごを持っていれば、現場に行って勝手につけて、おろして作業するということが可能だったようなのです。

それが、届け出をしなければいかぬ、検査をしなければいかぬということになって、業者が自前でゴンドラを持って現場に行くということはほとんどなくなってきます。

リース会社というものが別にあって、ゴンドラを使うときはリース会社に頼んで設置してもらって、作業者は単にゴンドラに乗って作業する。届け出関係もリース会社のほうで全部手配をするという仕組みにどんどん変わっていくわけです。

 規則制定以前の状態から一気に届け出が必要だ、点検が必要だというところまで持っていったものですから、コスト的には数倍ではおさまらないぐらい高いものになってしまって、当然工事レベルのものになれば、そこまでやっても対応できるのだけれども、1日行って窓を拭くだけという場合に、果たしてそれができるのかという中で、ブランコというのがどんどん注目されて、使用されるようになっていったという背景があります。

当初は、窓をあけて外に出て拭く場合も親綱を使ってくださいという御指導がかなりあったようで、それだったらば屋上からおりてしまったほうが手っ取り早いということもあったのですが、どういうわけか、ブランコというのは1本でいいというふうにみんなが思っていた時代がありました。そうしたところ、いろんな事故もあって、ブランコは今でもそうですが、ネットとかも張らないで、簡単な立入禁止みたいなことはやりますけれども、町なかで墜落災害、墜落しますので、結構ニュースになったりするわけです。

そういうこともあって、我々は「ライフライン」という言葉を使っていて、それがいいのか悪いのかという議論もあるのですが、ライフラインを使いましょうということでやってきているのが現状です。

安全教育講習会の受講者の数を記入した表がお手元にあると思うのですけれども、中でもブランコ作業安全教育講習会というのが一番受講者が多くて、高所作業安全教育講習会やら、ゴンドラ取扱い業務特別教育講習会、災害防止責任者(職長等)安全教育講習会というのをやっているのですが、資料5-1の「全国計」の右端の数字を見てもわかりますが、ブランコ作業安全教育講習会は圧倒的にニーズがあるのです。だから、各社それぞれこういった教育というものを求めているのだろうと思います。

先ほど紹介させていただいた「ブランコ作業マニュアル」を使って教育をするのですけれども、この中で一番強調しているのは、今でもライフライン、ロープは必ず2本使いましょう。1本はワーキングラインですよ、1本はセーフティラインですよ、役割もきっちり分けて使ってくださいということをやっているというのが現状です。

資料5-2は、資料5-1の受講者数というものを会員と会員外に分けた表です。

ここで見ても、地域によってなのですが、会員外の方の受講がかなりあるということがおわかりいただけるかと思います。

実のところ、会員外の中身は、実際にブランコ作業をやっている会社でまだ会に入っていない会社ということではなくて、山田委員のように、ビルメンテナンスの関係の方々が、管理する立場としてブランコ作業の安全要件の勉強をしたいというニーズがかなりの数あります。

我々の世界では、大体ビルメンテナンスの企業さんが元請となって、そこから下請協力会社として受注するということがほとんどなのですが、その中で、本来安全というものは、安全にやらなければいけないものであって、それをビジネスにしたり、うちは安全だからうちに頼んでくださいねというのはちょっとおかしな話になるのですけれども、我々の世界では、「うちは安全です」というのが営業活動を展開していく上でかなりセールスポイントになるという状況もあることをつけ加えさせていただきたいと思います。

簡単ではございますが、以上です。

○杉本座長 何か御質問、御討論がございましたら、どうぞ。

 安全に仕事をするのですから、「安全です」などと言うと、何もしないのですねみたいになってしまいますね。安全に仕事をするわけで、手段、方法論といいますか、きちんとしていますという意味ですね。

 だけど、「うちは安全です」と言うと、何となくそれがということなのですね。

○西田委員 はい。

○杉本座長 わかりました。

 それから講習会といいますか、皆さんがブランコ作業に注目しているというのがこれでうかがわれますね。

 ということで、独自の存在を認めてくれという話になるのだけれども、ちょっと待てという状況で討論しているということでしょうね。ちゃんと考えるなら考えていこうではないかということでしょうね。御質疑、どうぞ。

○山田委員 何度も話すようですが、これも安全衛生法、安全衛生規則がないためにこのようなすき間の産業になっております。

また、そういったところで任意の安全対策なのです。安全教育講習会も、ゴンドラ取り扱い業務のみ任意ではなく法律にのっとったものでございまして、それ以外は任意の安全対策で、それがあるがゆえに管理不十分で、なおかつ技術、効率のほうに走って安全対策がおろそかになるところも若干あるかと思うので、これはやはり安衛則をしっかりつくってやらない限り難しいと思います。

以上です。

○杉本座長 いい御助言と思います。特別教育あたりではだめなのです。

どうぞ。

○清水委員 これは任意の講習会というお話でしたけれども、逆に言えば、この講習会を受けずにブランコ作業をしている方もいらっしゃるということですか。

○山田委員 たくさんいると思います。

○西田委員 そういう方のほうが多いです。

○清水委員 この講習会というのは、作業をするに当たって、1人で何回も受けている方もいらっしゃるのですか。

○西田委員 現状は、協会内の制度としての再教育制度みたいなものを検討しているのですけれども、そういうふうに声がけができるまで準備が整っておらず、とりあえず1回受けておけば良いというのが現状ですね。

○清水委員 先ほどのお話ですと、この講習会を受けて例えば修了証みたいなものをもらっても、うちはそういうものを全ての作業者に受けさせていますよということが商売にはなかなかつながらないということですか。

○西田委員 いや、現状はつなげているところのほうが多いと思いますし、まず受講のきっかけ自体が、ビルメンテナンス会社、管理会社さんのほうから、そういう講習、教育をきちんと受けている、修了している人をよこしてほしいという要望がますますふえつつある状況にあります。

○清水委員 安全というのは、何もしない安全というのはないと思うのです。皆さんが努力をしてかち取っていくのが安全だと思っていますので、そういった意味では、こういった講習会を受けているということを堂々と言うべきだと思いますし、もっと言うならば、今、山田委員もおっしゃったように、ちゃんとした講習会に格上げというか、認めていくというのが本来あるべき姿ではないかなと思います。

○杉本座長 いかがですか。まだ時間がありますから、討論をお願いします。1日目ですから、屈託なくいろいろ御意見をいただきたいと思います。

確かに作業というのは、ちゃんとできるという根拠があるといいのですね。要するに、作業の原理と言うのです。「人間、機械安全システムの論理的構造」というのが私のドクター論文なのですけれども、人間と機械が協働でこういう原理で作業をやると事故が起こらないという原理をびちっとやりますと、このとおりになっていますよと言うだけでいいわけですからね。だけど、残ってしまったのを人間に委ねてしまいますと、これは必ず起きますね。

私は安研の時代に災害調査で40件やりました。何人かは会社を潰しました。死亡事故を起こした会社は潰れてしまうのです。原因不明で、杉本、来いというわけで、原因がわかって、これはこの設計ミスですとやったら、会社が潰れてしまったのです。1人は自殺しましたね。

本当に嫌なのです。後になってからおまえのせいだというのは最悪です。特に死亡事故は嫌ですね。

だから、本当にやむを得ずといいますか、そういうことで事故が起こるのですかという話、限界できわめておかないと、嫌な話が残ってしまうということですね。

というのが老婆心からの教訓なのです。

そんな意味で、労働安全衛生規則、法体系というのは、よりいいものがあるのだったら、きちんと事前に証明するということで認めていくのかなというふうに思います。

そんなこともあって、まだ討論をする必要があると思いますけれども、意見も大体出たと思いますので、議題の「(3)ブランコ作業における労働災害防止対策」ということで、事務局から説明をお願いしたいと思います。

○事務局 それでは、資料6をごらんいただければと思います。

これは、ブランコ作業における労働災害防止対策を検討する際の論点として、今のところ考えられる点といいますか、考えついた点を箇条書きにしたものでございます。この論点をたたき台として検討を深めた上で、報告書の骨子を作成して、さらに肉づけをして、最終的に報告書にしていくというイメージでございます。

箇条書きにした内容ですけれども、大きく分けて「用具」「作業方法」「安全衛生教育」「その他」ということで、項目を立てました。

順に説明します。

まず、用具につきましては、さらに細分しますと、例えば用具の種類とか強度など、それぞれの用具に求められる要件というのが出てくるかと思います。

そういった用具の正しい使用方法、あるいはメンテナンス方法、そういった点。

その他留意事項、あるいはこういうことはやってはいけないという禁止事項といった内容に細分されるものと考えて、このように書き出したところでございます。

「2 作業方法について」でございます。

全体の作業の手順・流れというものをまず示した上で、本体の作業だけでなく、準備中の災害も多く発生している状況があることも踏まえ、作業の準備、作業本体、後片づけ、それぞれの工程においての安全対策を個別に示し、最後にその他留意事項や禁止事項を示すという形で書き出しております。

安全衛生教育については、特に細分化した項目は書き出していないのですけれども、今、申し上げた例えば用具とか作業方法についてのそれぞれの内容を、全般的に作業者に対して教え込むというイメージなのかなと考えて書き出しております。

最後の「その他」については、のり面作業も含む、ブランコ作業の類似作業に係る対策として、ブランコ作業と対応が異なる部分があれば特に書き出すことをイメージしています。

本日の議論の中で、窓から乗り出して作業をするというものもございましたので、そういったものもここに入ってくるのかなと考えておりますが、いずれにしてもそういうものをイメージしているということでございます。

この論点はたたき台として提示しているものですので、抜けなども多々あるかと思いますけれども、御検討いただきまして、何かございましたら御指摘いただければということでお願いしたいと思います。

以上でございます。

○杉本座長 今、たたき台といいますか、安全対策についての論点ということで項目を挙げていただきましたが、加えるもの、あるいは変更するものがございましたら、御意見をいただきたいと思います。

「リスクアセスメント」という言葉はここには出てこないのですか。リスクアセスメントについての立場といいますか。

○事務局 今は入れておりませんが、概念的なものとしては入ってくるとは思いますが、個別に項立てをしたほうがいいということであれば、それはそのようにして骨子をつくり上げていくという形になろうかと思います。

○杉本座長 この作業というのは、危険源はポテンシャルエネルギーですから、落っこってしまうといいますか、それをどうやって管理するかという一点です。その危険源がどのように事故につながるかというパターンをなるべく多く挙げて、危険源がどのような事故になるかということを俺は考えたのだ、考えることによって共有した、だから私に任せてくれという立場。

それからそれをどういうふうに扱うかというのも、こういう扱いでいいでしょうか、わからなかったら主任に必ず尋ねなければいけないとしたので、主任に尋ねに来ましたと。 勝手に考えてその場その場をやりなさいというのでなくて、わからないときはこういうふうにやるのだよということが共有されていて、そのためにこういう行動をとるというのを事前に認識しておくというのが非常に重要なのです。

わからないから、うまくやりたまえと。彼は非常にうまくやって、よかった、よかった、彼は安全だなどという話はないのです。

何でやったのかといったら、こういうふうにやることによって作業性は落ちるかもしれないけれども、こうやって確実にやるということを皆さんと認識しているので、事前の申し合わせどおりに行動いたしましたということがきちんとできていると、何でとめたんだ、作業性を落としてしまったじゃないか、私はなるべくとめないようにしましたなどという話はなくなるわけです。

ということで、リスクアセスメントというのは、標準化の中で、今の作業床の標準と同じように、リスクをどうやって扱うかという標準的な考え方、規範をそろえていく意味で、俺にリスクを処理する、扱う能力を与えてくれ、私はその責任を果たすことができるという証明をするのにリスクアセスメントを使っていくというのがいいかなと感じております。

これは皆さんの御討論の中で進めていければいいかなと思います。

私の感想ですが、皆さんはいかがでしょう。どうぞ。

○清水委員 私も同じ意見でして、ブランコ作業というのは、かなり危険というと語弊があるので、リスクが高いという言い方をさせていただきますが、そもそもリスクが高い作業だという認識のもとにこういった対策の検討を行うということが大切で、今、いろいろな作業を見ても、危険の認識が非常に低い作業者の方が多くなっているというのを非常に問題視しています。

まず、自分がこれからやるブランコ作業というのはこんなにリスクが高いのだと。ですから、そのリスクをコントロールするためにちゃんとした決まりがあって、それを適切に守らなければいけないというものが、概念的にでもいいのでこの中に盛り込まれていると、非常に実のあるものになるかなというふうな気がします。

○杉本座長 御意見はいかがでしょうか。どうぞ。

○西田委員 今の清水先生の御意見は本当にそのとおりで、資料6「2 作業方法について」ということで、「作業の手順・流れ」、その次に「作業準備」「本作業」「後片付け」と出てくるのですが、作業準備中に墜落したという事例、先ほども紹介されていましたけれども、わかりやすく言うと、何でその作業をそんな危ないところでしなければいけないのか、それしか選択肢はないのかという事例もたくさんあるのです。どこで作業を行うべきかと。

そういうところから一つ一つアセスメントをしていって、この作業の流れの中でどの部分が一番リスクが高くなって、そこを担保するためには何が必要なのかというところまで御一緒にお話ができたらうれしいなと思っています。

○杉本座長 ほかにございませんでしょうか。山田委員、どうぞ。

○山田委員 弊社にも窓ガラスの清掃をする部隊があるのですが、まず、2点あるのです。屋上でブランコを設置する箇所の周辺を含めた安全管理体制と作業時の安全管理体制です。明確なものが出ていれば、多分災害は少なくなるのだろうと思います。

○杉本座長 もう一回お願いします。

○山田委員 屋上の安全管理体制とブランコに乗っているとき、作業時の安全管理体制、この2つだと思うのです。

 また戻るのですが、ゴンドラの場合は作業開始前点検を必ずしなさいというふうに決められています。

ブランコ作業の場合、これは任意なのです。

そういったところで、そういうものを含めてしっかり検討していければと思っております。

○杉本座長 わかりました。

 また余計なことを言いますけれども、ストレス・ストレングス理論というのがあるのです。

ストレスというのは、外力をかけるといいますか、仕事です。

ストレングスというのは、耐えることなのです。

耐えるという関係と攻めるという関係で、攻めるのが耐えるのを超えてしまいますと簡単に事故が起こるのです。

という理論になっていて、今、そういう一般論が安全の中で展開されてきているのですけれども、メンテナンスというのは耐えるほうなのです。

大体大きく3つに分かれていて、ストレス側、作業側と、作業側を許可する条件としての体制側、メインテインなのです。それから人間です。

3つを見て、それぞれのルールというのが決まっています。

あと、管理、マネジメントの問題です。

そうやってまとめていくと、そろうというのがありますので、そんなこともチェックをしながらいければいいかなと思いました。

ほかにございますでしょうか。

確かに危険、リスク、改めて生ずる問題が幾らでもあると思いますけれども、私の個人的なあれで申しわけないですが、皆さんに反対されてもいいのですが、こういう新しい作業は、逆に言うと、これだけ準備するからやらせてくれ、いいかげんなことで要求するのではないのだ、ちゃんとやるのだと。改めて新しい仕事の展開、作業の拡大ですから、いいかげんな態度でお願いするのだったら、こちらも心配でお願いできないけれども、これだけの行動を理性的に準備し、理論に従いきちんとやる。業界の中で変な作業をやらせない。お上に約束したことはきちんとやるのだということで法律をつくったのだから、これだけの準備をするのだということを徹底することによって、危険作業が許可されていくというか、そういう形態にならないかなと思うのです。

最初から事故が起こるのは当たり前で、自動車ではないけれども、1年間に5,000人死ぬのだみたいなことを言うのは非常に自由なのだけれども、自由過ぎてしまって、全部事故処理でやるのです。みんなで事前にこれだけの準備をきちんとやるという確約があって、それで危険な作業が信用されて、任されていくというのが私の夢なのです。

死亡事故だけは本当になくしてもらって、死亡事故だけは絶対起こしませんから、小さな事故は許してくださいというのでいいのです。そういうふうに展開していかないかなと思っています。

イギリスは完全にこれです。イギリスは、小さな事故についてはデータをとりません。小さな事故を許して、大きな事故は徹底的に許しません。そのぐらい徹底して死亡事故等々に対して深刻にやりますけれども、小さな事故、取り返しがつく事故は、取り返してくださいと言って終わりです。死亡事故は取り返せませんから絶対許しません。

それを明確に分けて、小さな事故のデータでさえもデータをとるのを控えます。向こうはわざわざ控えてしまうのです。

指差呼称は禁止です。人間に覆いかぶしたからです。

ということで、ある意味で許さないものは本当に許さないのだということをやっていくと。これも皆さんの御意見でやっていくことになると思います。

1回目でありますので、ある程度御意見をいただいたということです。

資料6につきまして、ほかにございませんか。

もしなければ、初回ということで、皆さんからいろいろ方向性をいただきましたので、第2回以降に具体的な仕事に入っていきたいと思います。

ということで、きょうの議論は終わりにしますが、「その他」というところで事務局のほうからございますでしょうか。

○事務局 次回の第2回の検討会でございますけれども、会議の前に委員の皆様から御予定をお伺いしているかと思います。その中で全員の御都合のつく時間帯として幾つかあったのですが、とりあえず第2回の検討会の開催日時を決めてしまいたいと思っております。

 候補として、1126日の10時から12時、12月5日の10時から12時、1213日の14時から16時、このあたりが全員の御都合がつく時間帯としてあったのですけれども、いかがいたしましょうか。1126日でよろしいですか。

○杉本座長 僕は火曜日なら大丈夫なのです。1126日でオーケーです。12月5日も大丈夫ですね。

11 26日火曜日でいいですか。

(「はい」と声あり)

○事務局 それでは、1126日の10時から12時ということで、場所については、これからとって御案内をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

 内容につきましては、本日議論いただいた内容も踏まえまして、基本的には報告書の骨子案の提示になりますけれども、あと、冒頭の説明でもございましたとおり、のり面作業に係る業界団体からのヒアリングなども行えればと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

 また、順番が逆になって恐縮でございますが、まさに資料6でいろいろと論点がございましたけれども、3回とか4回の検討会でまとめていこうとすると、この中身を具体的にお教えいただかないと、私ども事務局だけでこれをつくるのは非常に厳しいので、例えば用具の種類は何かといえば、多分西田先生に聞かないとわからないでしょうし、作業の手順とかもそうでしょうし、メンテナンスとか強度みたいな話であれば、もしかしたら中西先生のところかもしれませんし、次回までの間にいろいろと御相談なりお願いなりをさせていただいて、少しまとめたものを出して議論しやすいようにということかなと思いますので、そんなことについて御協力をお願いしたいと思います。

○杉本座長 実際にはいろいろデータ、状況の把握をしないとこの文案をつくっていけないということで、皆さんに実行部隊といいますか、知識をいろいろいただきたいという御要望がありましたので、よろしくお願いいたします。

 私は、どういう作業をやっているかというのを見てみたいなと思うのです。

見たことがありますか。

○清水委員 見たことがないです。

○杉本座長 そういうチャンスがあれば、ちょっと声をかけていただきたい。よろしくお願いいたします。

 それでは、第1回「ブランコ作業における安全対策検討会」を終了いたします。

きょうは長い時間どうもありがとうございました。お疲れさまでした。


(了)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 労働基準局が実施する検討会等> ブランコ作業における安全対策検討会> 第1回 ブランコ作業における安全対策検討会 議事録(2013年10月8日)

ページの先頭へ戻る