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2013年9月25日 第75回労働政策審議会安全衛生分科会

労働基準局安全衛生部計画課

○日時

平成25年9月25日(水)9:00~12:00


○場所

厚生労働省 省議室(中央合同庁舎第5号館9階)


○出席者

委員:五十音順、敬称略

明石祐二、犬飼米男、岡本浩志、小畑明、栗林正巳、桑野玲子、城内博、新谷信幸、鈴木睦、角田透、土橋律、中澤善美、中村聡子、縄野徳弘、半沢美幸、三柴丈典、水島郁子、上條氏(中村節雄委員代理)

事務局:

半田有通 (安全衛生部長)
井内雅明 (計画課長)
奈良篤 (安全課長)
泉陽子 (労働衛生課長)
森戸和美 (化学物質対策課長)
毛利正 (調査官)

○議題

(1)関係団体からのヒアリング
(2)第12次労働災害防止計画を踏まえた検討について(意見の整理と検討の方向性)
(3)労働安全衛生関係法令に基づく指定事務の手数料の見直しについて(報告)
(4)その他

○議事

○分科会長 定刻になりましたので、ただいまから「第 75 回労働政策審議会安全衛生分科会」を開催いたします。

 本日の出欠状況ですが、公益代表では山口委員、労働者代表では勝野委員、辻委員、それから使用者代表では中村節雄委員が欠席されております。その代理として、日本商工会議所産業政策第二部労働担当課長の上條様が出席されております。

 それから、労働者代表側の半沢委員ですが、少し遅れるとの連絡がございましたが、開始させていただきます。

 議事に移ります。本日の議事は、「 4 つの関係団体からのヒアリング」「第 12 次労働災害防止計画を踏まえた検討 ( 意見の整理と検討の方向性 ) 」、そして報告事項が 1 件となっております。

 議事の進め方ですが、議題 (3)(4) のメンタルヘルスに関するヒアリングについては、先方の都合もあり、後半を予定しておりますので、議題 (2) のヒアリングの後で議題 (5) の「第 12 次労働災害防止計画を踏まえた検討」のほうに進めさせていただきます。その後、休憩を入れてメンタルヘルス対策に関するヒアリング、議論という順に進めたいと思います。

 本日は、議題盛りだくさんですので、ヒアリングは 1 団体当たり質疑を含めて 20 分程度を見込んでおりますので、円滑な議事進行への御協力をお願いいたします。

 それでは、 1 つ目の議題「関係団体からのヒアリング」に入ります。今日は、御多忙のところ、新日本スーパーマーケット協会から事務局長の島原康浩様、調査役の小澤信夫様にお越しいただいております。

 早速ですが、まずお二人から説明をお願いいたします。恐縮ですが、時間の関係上、 10 分程度でよろしくお願いいたします。

○新日本スーパーマーケット協会島原氏 御紹介いただきました新日本スーパーマーケット協会の島原と申します。よろしくお願いいたします。私のほうから協会の概要とスーパーマーケットを取り巻く環境の関係についてほんの数分間お話をさせていただき、労働災害状況については、小澤のほうから御説明をさせていただきます。

 現在日本には、スーパーマーケットは約 1,200 社ございます。 5 年前と比べて、法人数は 300 減っております。人口減少に伴って、スーパーマーケットの過当競争も多くなって、 5 年間で 300 社倒産、 M&A という状況の中で、厳しい価格競争をしているという状況です。消費者は食品については、非常に値段にシビアでして、なかなか高いものを買っていただけないという状況の中で、スーパーマーケット協会は、アベノミクスにおける影響はほとんどないという状況が続いております。協会の会員は、スーパーマーケット 400 社、スーパーマーケットを取り巻く会社、商社、メーカー 700 社の 1,100 社で、現在会費を頂いて運営しております。

 厚生労働省関係でいきますと、スーパーマーケット職業能力基準というものがございまして、そちらのスーパーマーケット検定を、毎年 3,000 名から 4,000 名の受験者を得て協会で活動しているという状況です。非常に厳しい環境の中で、労働災害が減ってないという御指摘をいただいておりますが、端的に申し上げますと、パート・アルバイトの比率が、数年前は 60 %台だったのですが、いまは 85 %を超えるような非常に非正規社員の比率が高く推移してきております。これは、経営を行っていく上で、正社員を雇う人件費を出せない企業が増えてきているという状況、また、パート比率が上がることによって、非常に事故が増えてきているのかなと伺えます。詳細については、担当の小澤のほうから資料に基づいて御説明をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

○新日本スーパーマーケット協会小澤氏 おはようございます。それでは、単刀直入に御説明したいと思います。いま御説明がありましたように、流通業界は激変しておりまして、いま小売業の売上げはどうなっているのかとざっくりで言いますと、我々スーパーマーケットが 21 兆円の売上げです。コンビニエンスストアが 9 兆円です。百貨店が 7 兆円を割ってきた。このように皆さんの考えと違うと。ほとんどがスーパーマーケットの売上げになっている。それから、コンビニエンス、百貨とこういう形になっている。

 よって、労働力人口も大きく変わってきているということなのです。簡単に申し上げますと、図表では見づらいので、 2010 年現在で言いますと、組織労働者 5,463 万人、 5,400 万人。そのうち製造業は 996 万人、これは 18.2 %減ってきております。建設業が 7.4 %、 406 万人、我々第三次産業はの全労働者の 73.2 %、 3,998 万人、約 10 年間で 1,000 万人増えている。よって、言い訳はしないが、労働力人口、作業者が増えて災害も増加しているというのも実態です。これは、虚心坦懐に反省しなければいけない。一方で、サービス化・ソフト化社会に突入して、第三次産業の労働力が激増しているという現実も踏まえて御説明をしたいと思います。

8-2 ページです。大手スーパーマーケットに、どういうものがお客様から届けられたかということです。クレームとか声が届く店、企業ほど伸びているというのが実態でして、これは首都圏 302 店舗を網羅するスーパーマーケットの実態分析です。ポイントだけ申し上げます。 1 週間に 340 件のお客様の声が届いています。年間で 1 5,000 件です。その中で、クレームが 30 %、御要望が 60 %、結構お褒めもあるという形で、意外とお客様は、この会社は何かやってくれるなと。こういう店には、クレームも声も届いている。この会社に言ってもしようがないなという所は、何も言わない。よって売上げが激減している。これが実態だと理解していただければよろしいかと思います。

8-3 ページです。小売業の労働災害です。これは、全労働災害の 1 割を占めて 1 2,000 件という形になってます。確かにグラフが示すとおり、上が全産業、下が製造、建設と小売となっていますが、小売業は若干増えている。小売業の労働災害というのは、どういう面があるかということです。まず、転倒、つまずき、滑り、これが 3 割を越しています。あとは、交通災害。これは、通勤労働災害になりますが 13 %。動作の反動、反復が 11.3 %、切れた、こすれた、転がったが 8.9 %になっている。これをよく細かく分析していきますと、ほとんどの作業、労働災害が生鮮作業に集中しています。精肉・鮮魚・青果・惣菜・インストアベーカリーに集中しているということが言えると思います。ほとんど転倒の 31 %に含まれております。

 その次の 8-4 ページです。これは、東京都の分析をいたしました。東京都についても、流通産業、第三次産業は 52.7 %という形で、労働災害の比率は高まっているというのが言えると思います。下の棒グラフも、 2 番目のグラフが小売業ですが、小売業も右肩上がりに労働災害は増えている。この現実です。

8-5 ページ、これは、先日あるスーパーマーケットを訪れまして、実態は今どうなっているかという労働災害の分析をして、聴取して報告書にまとめたものです。大変細かく書いているから読みづらいので、ポイントだけを申し上げます。鮮魚・精肉・青果・惣菜・インストアベーカリーで 8 割の労働災害が起きているということです。一般食品では、カッターナイフ、そして調理場、作業場で起きているというのが実態、現状です。インストアベーカリーでは、手を突っ込んでしまってやけどをしてしまったとか、脚立から落ちてしまったとか、そういう作業場、また安全管理を怠って労働災害が多発しているということです。

 その後の最後のほうに書いてありますように、これは大手の実態分析です。 2011 年度は 27 件ありました。 2012 年度は 52 件の大きな労働災害がありました。 192 %、ただ今年はまだ 7 月までの累計ですが、若干労働災害が減ってきているという現実です。

 では、どうしてこうなっているかということを分析してまとめました。高齢者雇用安定法で 65 歳まで継続勤務することが法制化をされて、小売業も積極的に定年延長する、若しくは継続雇用をしています。この辺の方がかなり転倒とか作業上の事故を起こしている。

 一方で、未熟練労働者、勤続年数が短い、御存知のように今は 90 %がパートタイマーです。パートタイマーは、 6 割が 1 年間で入れ替わってしまう。退職・入社が激しいという現実です。あとは、精肉・鮮魚・青果・惣菜等で発生しているということです。

 これについて、いま企業・お店においては、お店ごとに契約指定病院を置いてますが、それだけでは間に合わないなという形で、私が行ったスーパーマーケットでは、会社本社内の人事部に産業医を置いて、リアルタイムに事故が起きた場合、対応して現状分析をして対応している。こういう形をやっているということです。

 その次は、実際業界では、どういうことをやっているかということです。 5S という形で、整理・整頓・清掃・清潔・しつけという形で、企業によって格差はありますが、こういう形で対応している。お店によっては、労働安全衛生委員会というのを設置して、基本的には、副店長が委員長になって、労働組合支部長、部門長と衛生管理者で対応しているということです。

8-7 ページの「会員事業場における安全衛生管理体制の状況」とありますが、いま事務局長からございましたように、店舗の間接部門の人員、これは、基本的に理解しておいていただきたいのです。百貨店というのは、支店経営、ブランチ経営です。よって、百貨店は、そこに経理、財務が全部あります。チェーンストアというのは、本部が 1 つあって、 300 店舗全部をそこでインテグレートする、統括管理する。これがチェーンストアの労務です。よって、パートタイマーは 90 %、これが現実です。

 今、いろいろな形の中で、 150 坪前後の店がどんどん出来ている。高齢化という中で、買い物難民が現れている。それに対して何とか我々はしたいということで、今までは店にお客様に来ていただいていましたが、店がお客様に近づくという形で、マンションの下という形で、イオンとかマルエツは「プチマルエツ」とか「ばすけっと」という形で年間 50 店舗ぐらい出していくということで、お客様に買いやすいようなお店を作っている。こういう形でいま進めているということです。

 あと安全衛生の担当者については、店長が基本的責任者で運用していると理解していただければと思います。

 次のページです。本部における労働災害というのは、実態はどうなっているかと言いますと、本社は労使協議会という形で、いろんな賃金、福利厚生をやっています。その下部機関として労働安全衛生機関というのを置いてます。人事部長とか労務部長、総務部長が委員長となって。労働組合本部の書記長が入ったり、安全衛生委員が入って、年度の労働安全衛生方針を樹立する。これからについては、年末商戦の事故をどう乗り切るかと、あとパワーハラスメント、セクシャル・ハラスメントの対応、しっかりとテーマを決めて議論していく形でやっているわけです。

 現状の安全管理体制の仕組みということです。若干の御要望をお話しておきたいと思います。高齢化比率が 24.1 %と出ていますが、先々週発表の国勢調査では、 25.1 %が 65 歳以上、 3,000 万人が 65 歳と現実の日本の状況はなっています。よって今はどういうことが起きているかと言いますと、買い物に行かない買い物難民が地方や都市の一部で発生している。したがって、それに対して我々は御用聞きであったり、宅配の需要というのをしっかりとやっていきたいという形で対応していきます。 50 坪、 100 坪の小さな店をマンションの下にどんどん出して、そこで買い物にコンビニエンスを与えていこうという形で考えております。

 そういう店は正社員が 1 人であったり、 2 人であったり、パートタイマーが 15 名、こんな運用実態であるということも、御認識をしていただければよろしいかと思います。現状のマネジメントにおいては、 1 人の店長が 2 3 店舗を統括管理している。店長は 1 人しかいないのですが、 3 店舗一緒の支店長だと、こんな形で運用している企業もあるという実態です。

 確かに製造メーカー、機械メーカーについては、リスクマネジメントを徹底して、事故が減少しているのは、よく理解しています。我々小売業においても、標準化・マニュアルをしっかり作成していって、事故のない現場というのを作り上げていきたいと思います。

 いろいろな意見を頂きまして、安全管理責任者を店舗ごとに設置したらと、こういう意見もございます。我々は、それは十分理解していますが、現実をファクトファインディングする中で、とてもそれは不可能なことだろうと考えてます。店長の日常のオペレーションのマネジメントの中で、マネジメントしていくということが 1 つの解決なろうかと考えております。以上です。

○新日本スーパーマーケット協会島原氏 以上ですが、最後に小澤のほうから触れさせていただきましたが、安全管理者の義務化については、業界団体としては、今のところ大きく考えておりませんと、今のままで極力事故を起こさないようにすべく、最後に参考事例として、作業の姿勢の仕方ですとか、そういったものを協会としては、会員各社に配り、労働災害の防止に努めているというところですので、御理解を賜りたいと思います。以上です。

○分科会長 御説明ありがとうございました。ただいまの説明につきまして、質問等ございましたらお願いいたします。

 はじめのほうで、スーパーマーケット検定というのが出てきましたが、その中には、何か安全衛生に関する項目はあるのですか。

○新日本スーパーマーケット協会島原氏 主にスーパーマーケット検定は、厚生労働省の中の職業能力基準という課がございまして、そちらの仕事の能力を図る検定ということなので、安全管理については、触れてはいないことはないのですが、試験の題目には入っておりませんので、例えば入社して 3 年たって、売り場のチーフになったときに何ができなくてはいけないですとか、商品の知識であったり、陳列の仕方であったり、それぞれ厚生労働省の職業能力基準にのっとった能力があれば、検定を受けていただいて授与する。国家検定ではないのですが、国家検定に準拠するような形の検定をやっておりまして、いま先ほどの労働災害については、大きく触れておりませんが、作業の姿勢ですとか、そういった形のものは、当然新入社員、それからパート・アルバイトの方にはお教えをしているという状況です。

○分科会長 御質問等いかがでしょうか。

○新谷委員 何点か質問させていただきたいと思います。いま御説明いただいた状況は、スーパーの一般的な話だと思いますが、安全衛生委員会の設置や間接部門の形態については、協会の会員企業にとっては一般的な内容と理解してよろしいのでしょうか。あるいは、大手企業に限ってこういう体制になっているのか、中小企業もこういう体制になっているのか、お分かりになれば教えていただきたいのが 1 点です。

 もう 1 つは、労務構成の話があって、先ほど、未熟練、勤続年数の短い労働者の方が多く、 1 年で 6 割が入れ替わっているという状況で、かつ不慣れな故に労働災害が多いという御報告を頂いたのですが、そういう実態であれば、新しく入ってこられた労働者の方への安全教育は、どのような体制でどの程度実施をされているのかということを教えていただきたいと思います。

 また、当該職場の安全衛生を確保するというのは、必要な管理コストとして、当然企業が負うべきコストだと思いますが、事業を運営する際には、間接要員についてはミニマムの要員でやられていると理解しますが、安全衛生については、コストだけでは論じることができないのではないかと思います。本部にこの管理が集中する体制になっているということですが、安全衛生の体制において、正社員の店長以下、少ない正社員の方が中心となって、安全衛生の体制をお作りになっていると思いますが、本社からの安全衛生に対するエリア巡回なり、安全衛生管理の体制は、どのような体制をお組みになっているのか、お聞きしたいと思います。よろしくお願いします。

○新日本スーパーマーケット協会小澤氏 たくさんの質問を頂きまして、まず 1 番目はそのような安全衛生管理体制、委員会を大手も中小もちゃんとやっているのかという御質問だったと思います。そういう意味では、パーフェクトにやっているとは言えないと、大手については 100 %やっていると、中小はそこは浸透していない。これが実態であろうと思います。

 オリエンテーション時の安全教育をどこまでやっているのだと、そんなにやめる人にちゃんとやっているのかと、その辺は確かに疑問を持たれるとおりでして、例えば技術教育とか、それからレジ訓練だとか、接客マナー訓練と、これはしっかりやってますが、マニュアルに沿って、マニュアルがちゃんとあるのです、例えば安全装置をちゃんと使ってパンをスライスしなさい、それだけをもう少し徹底して教育をしていくと、オン・ザ・ジョブ・トレーニングしていくということが我々反省点としてあるかなという形で今の御指摘の中で強く感じています。パートタイマーについては、確かに年間でかなりの人がやめますが、それは言い訳にはならないと同時にしっかりとした教育をやっていくべきだと今の御指摘について強く感じております。

 では、巡回の指導体制はどうなっているのだと、大手については、巡回指導とスーパーバイザーというのがいまして、それはヒト・モノ・カネ・情報、そして技術管理という形で指導して、エリアごとにスーパーバイザーを大体置いている。ただ、中小のスーパーにおいては、そこまで徹底してない。これについては、もう少しメスを入れてしっかりと対応をし、技術教育をしていく必要があるという御指摘のとおりと捉えております。以上です。

○角田委員 詳細かつ丁寧な資料をありがとうございます。資料の中身について質問させて頂きます。 4 枚目、別紙 2 に労働災害の原因と現状の対応についての詳細な分析と企業の対応の方向性についてお示しいただいています。ただいまの新谷委員からの御質問に関連して、例えば資料には書かれていませんが、従業員個人個人に対する指導に関わるようなことも言及して頂きました。それぞれ原因の分析、現状への対応、企業の対応についてですが、例えば高齢者の雇用が増加したとか、未熟練労働者が多いとか、勤続年数が短いとか、いろいろと問題点を上げて頂いております。そこで、それらのことに対しての個別の対応、具体的な対応策ということですが、恐らくお考えがおありだと思いますので、もしあれば補足していただけるとよろしいと思いますが、如何でしょうか。

○新日本スーパーマーケット協会小澤氏 御指摘のとおりですが、一方でこの流通産業については、人手不足というものがあるのです。有効求人倍率は 0.93 で大変よくなっているのですが、第三次産業は、なかなか来ていただけない。本来ならば、いま先生の言われたとおり、ちゃんと訓練をしてできないことをできるようにして、売り場に出す、作業をさせるというのが基本原則だと思います。その辺をもう少ししっかりとして、教育を受けなければ現場に出さない、作業をさせない。もし、起きた場合は反復教育をしていくと、これを徹底していかなければいけないだろうと考えています。一応、いろいろなマニュアルは全部あるわけです。それがしっかりと熟知されていないし、侵入社員に徹底されてない。この辺は、教育上の訓練という形の中で、解決を求めたいと考えております。

○分科会長 おおむね時間が過ぎておりますが、よろしいでしょうか。それでは、島原様、小澤様、本日は、当分科会での審議にとりまして、非常に有用なお話をありがとうございました。

 それでは、議題 2 に移らせていただきます。議題 2 につきましては、全国社会福祉協議会から浦野正男様、菅原里美様にお越しいただいています。浦野様は全国社会福祉協議会の構成組織である、全国社会福祉法人経営者協議会の総務委員長をお務めになっており、また、社会福祉法人中心会の理事長でもいらっしゃいます。菅原様は社会福祉法人中心会えびな北高齢者施設の所長でいらっしゃいます。

 早速ですが、御説明をお願いします。時間の関係上、 10 分程度でお願いいたします。

○全国社会福祉協議会浦野氏 おはようございます。全国社会福祉協議会、全国社会福祉法人経営者協議会総務委員会委員長浦野でございます。本日は、このような機会を頂戴しましてありがとうございます。お手元に資料 2 を用意していますので、御参照いただければありがたく存じます。

 今、御案内しましたような団体ですが、会員法人が約 6,900 あります。その会員法人が経営する事業場は、老人福祉・介護分野、障害者福祉分野、保育や児童福祉の分野など、社会福祉全般にわたる、多岐にわたる事業場を経営しています。現在の業界における労災の状況ですが、残念ながら組織としては全体の状況を把握していませんので、後ほど私が理事長を務めています法人の事例を御紹介します。取組状況についても同様です。会員事業場の間接部門の人員ですが、多くの事業場においては間接部門の人員は極めて少ないと考えています。従業員の大半が生活相談員、介護職員、看護職員、保育職員、児童指導員、支援員など、いわゆる利用者のケアに直接従事をするような者、あるいは、栄養士や調理人のような現業部門で仕事をしている者です。 1 事業場当たり、事務員等の間接部門の人員は通常は 1 2 名という状況です。

 安全衛生の担当者ですが、衛生管理者の配置義務がある所では、衛生管理者の任用資格である医師、保健師などの免許を有する者が配置されているような事業場、全体の中では少数ですが、そういう所ではその医師や保健師等が衛生管理者を務めていることが多いと思います。その他、多くの事業場では、施設長、事業場の長が担当していることが一般的ではないかと考えております。

 安全の担当者の配置は、特に明示的に配置をしていることはないと思います。事業場の規模は、平均的、あるいは一般的には数十人~ 100 人前後といった事業場が多いものと思います。ただ、保育所、保育園、これらの中には、従事者数が 10 人にも満たないような小規模な所も少なくないという状況です。

 私が理事長を務めています法人の、過去 2 年半ほどの労働災害の状況を一覧にした資料を御参照いただければと思います。この中で、多少見にくいのですが、薄い網掛けをした部分がいくつかあります。全体の半数ぐらいを占めていますけれども、これは特別養護老人ホームにおいて、介護職員等が利用者を介護する場面で生じている労働災害です。この場面での事故は職員の負傷等に結びつくと同時に、利用者の負傷等にも結びつくということで、この介護場面での安全管理は非常に重要だと考えています。これらの場面で起きている事故の原因は、やはり正しい理にかなった方法による介護というものがきちんとできていない場面で起こりがちです。あるいは認知症の利用者の行動によって職員が負傷するような場面もあるわけですが、この場合も認知症の利用者の行動についての正しい理解、留意すべき点を見落としてしまうために起こるというような事故が多いと、これは一社会福祉法人の事例ですが、このように考えております。したがいまして、職員の教育という観点で言えば、労働安全ということがイコール利用者の安全で快適な介護と、非常にニヤリーイコールな関係にあると理解をしています。

 そういうことで、特にこの労働安全に関する教育というのを組織的にやっている所は多くはないと思いますけれども、多くの介護系の施設などでは、利用者の安全管理のための正しい介護をすることについては相当注意をしている所も多いのではないかと思っています。これについて、私どもが今取り組んでいることを簡単に取りまとめましたので、菅原のほうから御案内をしたいと思います。

○全国社会福祉協議会菅原氏 業務中の職員の負傷として、肩を痛めたり腰を痛めたり、膝を痛めたりというようなことがあります。原因としては、持上げ介護等により発生しています。ベッド上で御利用者を体位変換する場合やベッドから椅子に移動させる場合に、介護者の力で移動させようとして、無理な姿勢で職員が体をひねってしまって発生しています。その原因としては、介護方法が身についていない、道具を正しく使っていない、利用者の状態をしっかり把握していないことが挙げられます。対策として、介護部門の指導監督職と品質管理部門によって、各介護事業所で発生している介護事故分析の学習会を開催していて、平成 22 年度から毎月 1 回実施しています。そのことによって事業所間で水平展開ができるところと、事故原因と対策が取れるようになってきています。

2 番として、介護技術の習得をさせるために、年に 4 回の介護技術研修を実施しています。基本的に介護福祉士会で作成しているテキストを活用して、同じ基準で施設内で実施をしています。

 道具の活用では、スライディングシート・スライディングボードというようなものとか、あとはリフトとかもあるのですが、私の施設ではスライディングシート・ボードを御利用者さんを移動する道具として使っています。その道具を正しく使用させることを学ばせています。

 4として、 KYT トレーニングを日常的に実施しています。介護現場で起きている写真などを使って、考えさせる行動を取っています。

 5の、ヒヤリハット等は、かなり上がってきているのですが、それを介護部門全体で共有させています。御利用者の介護方法の変更の見直しや、職員個別の問題であれば、速やかに教育の実施をしていくようにしています。また同じようなケースに活用して、介護方法を見直しすることに努めています。

 6ですが、理学療法士がいますけれども、利用者個別のケア、方法全体で、移動移乗等の見直しを、やはり力で持ち上げないために論理的にどうすればいいのかのところを、理学療法士の力を活用して、見直しを行っています。

 7は、御利用者の身体・精神状況を正しく把握するということで、日常の様子を把握するための道具として、アセスメントシートを活用しています。アセスメントシートというのは御利用者さんの生活全般のことを項目別に整理整頓できるシートですけれども、内容は、日常的に更新をしていき、 3 か月ごとに介護計画書を見直ししています。

 8は個別で職員個々が学習して身につけていかなければいけないこともありますので、外部研修には積極的に参加の促しをさせています。

 事故内容の 2 番では、御利用者に殴られてしまうようなことも起こってしまいます。原因としては、認知症の方や精神疾患などの理解が全くなくて、利用者を驚かせてしまうとか、怒らせてしまい、暴力的な行動に至らせてしまい、職員が殴られて負傷してしまうということが起きています。対策としては、上で挙げたことと同様ですが、御利用者の状況把握ができるようになるための、アセスメント力をつけさせるための勉強をさせる。2は介護計画書でケア方法を統一させる。3認知症、精神疾患の基礎学習をさせるということに取り組んでいます。以上です。

○全国社会福祉協議会浦野氏 あと参考資料として、最近の刊行物で私どもの事例が紹介されていますので、これも御参照いただければと思います。以上で説明を終わらせていただきます。

○分科会長 どうもありがとうございました。質問等ありますでしょうか。

 会員さんが 6,900 ということで、学習会なり研修会などをやって、水平展開されているということですが、かなり会員数が多いですけれども、どのくらいカバーしているという感じでしょうか。

○全国社会福祉協議会浦野氏 全国に社会福祉法人が約 1 9,000 ぐらいあります。そのうち、社会福祉施設や社会福祉サービスの事業所を経営している所が 1 7,000 ぐらい。そのうちの 6,900 ですから 40 数パーセントの組織率という状況です。

○分科会長 そういった研修会等の参加等を見て、どのくらいの企業さんに浸透していると考えていらっしゃいますか。

○全国社会福祉協議会浦野氏 労働安全という観点ではほとんど取組は白紙に近いと思います。ただ、高齢者介護等の介護系の施設では、利用者の介護上のリスクマネジメントというのはもう 10 数年来、 20 年ぐらい前からでしょうか、業界として相当力を入れて取り組んでいますので、何割とはちょっと私も言えませんけれども、その部分に関してはかなりの浸透度があるのではないかと思っています。業界団体としてもこの介護リスクマネジメントのリスクマネージャー養成研修を毎年行っていまして、毎年何百人の単位での受講者がありますので、その部分についての浸透度はあるのではないかと思います。

○新谷委員 特に、高齢者の介護の第一線の状況がよく分かる資料をお示し頂いたと思います。 1 点お聞きしたいのですが、社会福祉協議会全体としての安全衛生の状況を把握していないということで、今日、一法人の事例を御報告いただいたと思います。これは高齢者の介護施設での事例かと思いますけれども、私どもも、介護職員の方の離職率が非常に高いという、一般的な状況は承知しているわけですけれども、貴法人においては安全衛生の管理をする際に、教育を随分なさっているようですけれども、職員の方の離職、あるいは新たに入って来られる方に対して、どのような対策をされているのか、あるいはそういう現状は貴法人ではあるのかどうかは分かりませんけれども、介護職員の方の入れ替わりが非常に激しいのであれば、職員の方の教育体制、あるいはそれを前提とした安全衛生管理体制についてはどのようにお考えになっているのかをお聞かせいただきたいと思います。

○全国社会福祉協議会浦野氏 ちょっと手元に資料がないので正確なことは言えませんけれども、離職率は法人全体を通じて見ると、年間 12 13 %ぐらいかなと見ています。これが高いほうか低いほうかというと、そう高くもないけれども、そう低くもないというくらいのところかなと思っています。もちろん離職はできるだけなくしたいということで、私どもとしましては、公費で運営している組織ですので、財源が限りなくあるということではなくて、あらかじめ決められた財源でやっていくという性質の事業ですので、何でもできるわけではないですけれども、その中で現在、何人もいますけれども、育児休業、介護休業の取得は積極的に奨励をするということをしています。また育児短時間勤務等も積極的に活用する。特に女性労働者の多い職場ですので、そういうことが必要だろうと。それから年に 3 回は 1 週間の休暇を取れということで、年次有給休暇が 20 日あります。 5 日の年次有給休暇と週休 2 日で一週間は年に 3 回連続して休むということを基本に、少しクーリングオフをすることを奨励をするということをしていまして、私どもの法人では年次有給休暇は 95 %ぐらいの取得率です。

 それからやはり、職員に学ぶ機会を与えることが非常に重要だと思っていまして、こういった自組織内での今御案内したような研修を行っていますし、外への研修についても積極的に出していくということで、全て丸がかりというわけにはいきませんけれども、費用については全額保障するけれども、自分の休日等を活用してやってくれというようなパターンとか、より重要なものについては費用も労働時間も全て雇用主側で保障をして研修に出すことをやっています。そういった取組が非常に重要なのかと思っています。

○城内委員 貴重な資料をありがとうございました。私は介護の事故等における対策というのは、もちろん外枠のシステムとしてどう対策していくかということも大切だとは思うのですが、基本的に日本では欠けていることがあるのではないかと思っていまして、それはつまり介護する人の教育システムの中に、介護者が自分をどう守るかという人間工学的な視点のカリキュラムが米国等に比べるとかなり日本では入っていないのではないかと思っています。それをきちんと教育することによって、ここで御紹介いただいた個別の施設で教育をしなければいけないということが、もう既に介護者としては教育されているべきなのに、それができてないことのほうがかなり大きな問題ではないかと思っています。そういう観点から、施設を経営なされていて、今後の介護者をどう育てていくかということも含めて、何か御意見があればお伺いしたいと思います。

○全国社会福祉協議会浦野氏 我が国には介護の専門資格制度として介護福祉士という制度がありますが、現実には介護福祉士を養成する学校の入学定員が十分に満たないと、 7 8 割、あるいは 6 割とか、定員に対してそのくらいの入学者しかない状況が非常に多くありますし、また、これらの介護福祉士の養成学校そのものが廃校に追い込まれるような状況もあるということで、若い人たちの進路に、なかなか十分にその進路に進んでくださらないという状況が全体としてあります。ですからどうしても採用後に教育をしていくという形で、資格を取るためには 3 年間の実務経験というルートもありますけれども、実務経験を通じて教育をしていくしかないです。私どもの所では、定期採用をして 4 1 日から就職する職員については、採用前に 2 週間ぐらい集中して教育をし、そして 4 1 日に正式配属という形をとっています。それでも決して十分ではないということは承知しております。

 それからもう 1 つは、やはり継続的な教育訓練が非常に重要で、どうしても一度覚えて身につけたつもりのことが、時間が経つとだんだん自己流になっていってしまって、自分の癖が出てしまうという、それが介護事故に結びつくようなこともありますので、定期的に軌道修正をして、自己流になっていないかをきちんと見ていく必要があると考えております。

○分科会長 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、浦野様、菅原様、有益なお話をありがとうございました。

 次の議題に移ります。冒頭に申し上げたとおり、議題 3 、議題 4 は後ほど行うこととし、議題 5 「第 12 次労働災害防止計画を踏まえた検討」について、事務局から簡単に説明をお願いします。

○井内計画課長 資料 5-1 です。これまで御議論いただいた中での論点、関連する主な意見ということでまとめています。テーマごとに分けて、これまでで認識の共有が図られた点と、これからの検討の方向性、公労使の主な意見をまとめています。

1 ページ、化学物質の関係です。これまでに認識の共有が図られた点として、特化則などの特別規則の対象でない化学物質について、化学物質の有害性やばく露実態に応じた対策を進めることが必要ということです。具体的な方策は、専門検討会で検討してもらうのが適当ということです。

 専門検討会で、これまでに確認された方向性としては、化学物質管理の原則として、化学物質の性質あるいは作業方法に基づくリスクの除去・低減を第一として、更に残留リスクに対するリスク防止・低減措置が講じられるべきである。これらの対策においては、工学的対策が優先される。局排とか、そういった換気装置等の話です。

 それから、危険有害性が明らかな化学物質について、新規に採用する場合等には、事業者によるリスクアセスメントが確実に実施されるべき。併せて、中小企業への支援等が必要で、コントロールバンディングやチェックリストなどの関係です。

 ラベル表示の対象について、安全データシート、 SDS の対象を参考として拡大するべきである。その際、混合物については、成分表示等ラベル表示について見直されるべきである。こういった方向性です。主な意見については割愛させていただきます。

 資料 5-2 の最初のページが、今、御覧いただいた検討の方向性の専門家検討会の検討状況で、こちらはこの分科会の後、明後日に 3 回目で、報告書の取りまとめを行う予定です。これまで確認された方向性として、枠に書いてありますのが、今、御説明したものです。

2 番目は、資料 5-1 3 ページです。「良好な安全衛生水準の企業の評価・公表」のポイントです。認識の共有が図られた点としては、労働環境水準の高い優良企業が、より社会的に評価されるような仕組みが必要。具体的な評価方法などについては、客観性や公平性も踏まえた検討が必要ということです。検討の方向性としては、具体的な評価方法については、専門家の意見を十分に聞いて、引き続き検討してはどうかということです。意見はその下にございます。

 次に 5 ページです。 3 番として、「重大な労働災害を発生させた企業の改善方策」です。認識の共有が図られた点としては、重大な労働災害を繰り返して発生させる企業について、何らかの改善を図らせる仕組みが必要。その改善のための担保手段の 1 つとして、公表も考えられる。

 検討の方向性は、同種の重篤な労働災害を複数の事業場で発生させるなど、全事業場を通じた企業全体での改善が必要と認められる場合、事業者に対して全事業場を通じた改善を促す仕組みを設けることを検討してはどうか。改善が見られない事業者については、その名称等の公表の適否を検討してはどうか。計画の作成を指示する基準となる「重篤な労働災害」の対象をどのような範囲にするか、検討を深めてはどうかということです。

 これについては、関連資料で資料 5-3 を御覧ください。これまでの議論でもありましたが、本社というのは、安全衛生や労務管理にどう関与しているのかということで、その実態を調べるべきだという御意見を頂きましたので、それに対してのアンケート調査を急いで実施しました。

 調査結果の概要としては、ほとんどの企業が、事業所も含めた企業全体の安全管理、健康管理、労務管理を本社が直接実施するか、本社で統括管理していると。 9 割近い企業が、労働災害が発生した場合に本社で情報を取りまとめ、社内で共有して、事業所に対する再発防止の指導を行っているということです。

 調査としては、厚生労働省でやりまして、 7 月中旬から 8 月中旬、回答が 252 社ということで、業種別はその下にありまして、こういった業種でした。また、従業員規模別の企業数、拠点数別の企業数、こういった状況です。

 今、枠の中を見ていただいたものを、 4 項目に分けて見ていただきますと、その下の黒枠囲みで「 1 」とありますが、本社による安全管理 / 健康管理の面はどうか。ほとんどの企業の 95 %で、本社が企業全体の安全管理 / 健康管理を直接管理又は統括管理しているということです。

4 ページ、 2 番として、本社による労務管理はどうか。これについては、 98 %の企業で、本社が企業全体の労務管理を直接管理又は統括管理しているということでした。

3 番は労災の関係です。個別の労災に対する本社の対応はどうか。 99 %の企業で、本社が個別労災事案を把握している。その中で、 6 割を超える企業が、本社が直接対応するか、対応について本社から指示を行っている。

4 番は労災の再発防止に対する本社の対応です。 88 %の企業で、労災の情報を本社で取りまとめ、社内で共有し、各事業所に再発防止の指導を実施しています。

5 ページは業種別の結果で、先ほども業種別がありましたが、今の 1 2 3 4 の項目について、建設、製造、以下、業種別に見たものが 5 ページと 6 ページです。

7 ページ、 8 ページが、アンケートの質問票です。以下、本社による関与の仕方というのは、今の資料で説明させていただきました。

 資料 5-1 7 ページの 4 「違法な機械等の回収・改善の方策」です。認識の共有が図られた点としては、回収・改善命令の対象となっていないものでも、回収・改善が必要と考えられるものがある。現在、回収・改善の対象になっているものでも、十分な回収が図られていないものがある。具体的な方策は、専門検討会で検討してもらうのが適当ということで、専門検討会で御議論いただき、第 3 回の検討会で報告書がまとまったわけですが、その方向性です。

 以前に出ました D-1 の機械等、動力伝導部分等の話です。命令制度のないもの、 D-1 の機械等について、回収・改善命令の範囲に加えることは、慎重に考える。欠陥が見つかった D-2( 安衛則に規定 ) 、未規制の E といった機械等については製造者又は輸入者に災害防止措置が義務付けられてはいないが、多数出回っている場合など、製造者や輸入者が回収・改善を行うことが、災害の再発防止を図る上で効率的と考えられる場合は、製造者又は輸入者に回収・改善を行うよう要請することができるということです。

3 点目です。回収・改善を要する機械等が不特定多数に流通して、回収・改善が困難な場合は、まず製造者又は輸入者に対して、公表を指導していく。製造者又は輸入者の取組のみでは回収・改善が進まない場合には、国が公表に協力することが適当ということです。

 十分に回収・改善が進んでいない事例について、国は流通業者にも情報提供を要請することが必要ということです。関連として、資料 5-4 ですが、 9 20 日に報告書が取りまとめられた機械の関係の検討会です。参考資料 3 として報告書を付けています。

 資料 5-1 9 ページ、 5 「安全衛生管理体制」です。認識の共有の図られた点は、労働災害が増えている第三次産業、特に、小売、社会福祉施設、飲食店で労働災害を減らしていくためには、一層の安全対策の取組を進めていくべき。安全管理者 (50 人以上 ) 、安全衛生推進者 (10 49 ) の選任義務がない安衛令第 2 条第 3 号の業種については、現に労働災害が増加していることから、安全意識の向上という観点からも、安全の担当者を置くなど、安全管理体制を整備することを検討していくこと。また、この検討に先立って、関係者からのヒアリングを行うことということで、先ほどヒアリングをしていただいているものです。第 3 号業種において、一定の条件下であれば、複数の事業場で共有、共同選任を認めるということです。

 検討の方向性としては、第 3 号業種について、安全の担当者 ( 仮称 安全推進者 ) 等の選任を義務付けることに関して検討を深めてはどうか。その際、第 3 号業種において、複数の事業場で共有、共同選任を認める条件について、検討を深めてはどうか。

 関連の資料は資料 5-5 11 ページです。これまでも御意見を頂きまして、労働災害の発生状況については、雇用者数の増減もあるので、それも含めて見ていったほうがいい、災害発生の頻度なども見たほうがいいということでしたので、今回まとめてありますのが、建設業などの第 1 号業種、製造業などの第 2 号業種、その他の小売業などの第 3 号業種、こういった業種ごとに頻度を見た千人率を、平成 15 年から平成 20 年、平成 24 年と、お示ししています。

 この中で建設業などの第 1 号業種は、それぞれ千人率が 5.0 から 4.2 に下がり、第 2 号業種の製造業は 3.4 から 2.8 に下がっています。そういった減少傾向にありますが、第 3 号業種、その一番上ではその他の小売業がありますが、 1.0 から 1.5 に増えていまして、こういったような傾向があります。これまでも説明させていただきましたが、資料としてもデータをお示ししています。

 資料 5-1 12 ページの 6 「施設等管理者」です。認識の共有が図られた点としては、陸上貨物運送事業は労働災害が多く、事業者、荷主等それぞれが災害防止対策を進めていくことが必要。荷主等による労働災害防止対策については、荷主等の実施事項を含めたガイドラインにより示したところで、その後の状況を踏まえて、今後引き続き検討していくことが必要。方向性としては、当面、本年 3 月に策定した「陸上貨物運送事業における荷役作業の安全対策ガイドライン」の実効性を高め、国土交通省と連携することにより、対策を進めてはどうかというものです。

13 ページ、 7 「規制・届出の合理化」です。認識の共有が図られた点は、現場の実態に合っていない手続面の規制の合理化について、技術水準の向上等により、現在では規制の目的が果たされていないものがあれば、廃止を含めて合理化すること。方向性としては、安全衛生水準の向上を踏まえ、規制の目的が実質的に達成できている手続規定として、労働安全衛生法第 88 条第 1 項の廃止を検討してはどうかというものです。

14 ページ、 8 「メンタルヘルス対策」です。認識の共有が図られた点としては、メンタルヘルス対策の充実が必要ということです。検討の方向性としては、関係学会のヒアリングや企業におけるメンタルヘルス対策の最近の取組状況等を踏まえて、次の観点から制度の実施に当たって工夫すべき点はないか、更に掘り下げて検討すべきではないか。

 労働者の適切な健康管理のためには、事業場の実情を知り、産業保健の知識を有する産業医がストレスチェックに関与することが重要。既に行われている取組で良いものをいかすことが重要。ストレスチェックや面接指導の結果を理由とした不利益な取扱いがなされないようにすることが重要ということです。

 関連資料として、資料 5-6 です。以前にお示しした資料ですが、これについてもっと新しいデータが出てから議論すべきだという御意見がありましたし、それ以外の足りない部分もありましたので、平成 24 年の労働者健康状況調査なども出ましたので、例えば 15 ページにある上下のグラフについては、平成 24 年のデータを載せています。上の右の円グラフは追加をしたものです。 16 ページの下の表については、平成 24 年のものを追加しています。

 資料 5-1 15 ページの 9 「受動喫煙防止対策」です。受動喫煙防止を進めていくことが重要という認識の共有が図られた上で、検討の方向性としては、企業における受動喫煙防止対策の最近の取組状況等を踏まえ、対策の普及のためには義務化よりも、助成金等による支援が必要であるとの意見にも留意する必要があるではないか。

 こちらも、参考資料の 17 ページ以下に、受動喫煙防止関係のデータを更に出してほしいということでしたので、資料 5-7 としてお出ししています。 17 ページは変わりませんが、 18 ページのグラフは平成 24 年のデータを入れています。 19 ページ、 20 ページについても、平成 24 年の労働者健康状況調査が先だって出ましたので、そのデータをお示ししています。以上です。

○分科会長 論点ごとに区切って議論を進めます。論点は 9 つと多いので、円滑な審議に御協力をお願いします。特に、これまでの議論で検討の方向性がある程度まとまっているものについては、効率的に審議を進めたいと思います。まず、論点 1 「化学物質管理の在り方について」ですが、御意見、御質問はございますか。

○城内委員 化学物質の表示、 SDS の所で、例えば資料の 5-2 ですが、 3 番目に「ラベル表示の対象について、 SDS の対象を参考として拡大すべきである」という文言があります。一方、省令の改正で、ラベルは全ての危険・有害な化学品に付けましょうとなっているわけですが、記載の違いが理解できないのです。つまり、努力義務としては、全て含まれているのだけれども、それをあえて、「ラベル表示の対象については SDS の対象を参考として拡大すべきである」という、意味が 2 つあるように思うのですが、どういう意味なのか御説明をお願いできますでしょうか。

○井内計画課長 現在、 100 ぐらいの物質をラベル表示の対象にしておりますが、そのラベル表示を対象とする物質について、 SDS 640 ぐらいの物質が対象になっていますが、そういうデータシートでいろいろと情報を渡すということになっている SDS の対象物質を参考として拡大すべきだという意味は、ラベル表示の 100 ぐらいの物質を、 640 ぐらいの物質を参考にしながら広げていってはどうかという意味です。

○城内委員 理解できないのですが、安衛則の第 24 条でいっている「全ての物質にラベルを付けるように努力しましょう」との違いが分からないのですが。

○森戸化学物質対策課長 努力義務と義務は違うと思うのですが、義務というのは、しないと罰則が加わるということですので、そのような違いがあります。

 今日の資料の中の参考資料 1 に、いつも入れているピラミッド形のものと、規制の程度の図があります。現在のラベルについて義務付けられているのは、特別規則のところまでで、 SDS の交付対象の義務にまでは広がっていませんので、表示についても、 SDS と同じラインまで下げることを考えているということです。

○分科会長 ほかにいかがでしょうか。本件については専門検討会で検討中ということですので、次回以降、専門検討会の検討結果を分科会で報告していただき、それを踏まえて議論を深めていきたいと思います。いかがでしょうか。

                                  ( 異議なし )

○分科会長 そのようにさせていただきます。

 次に、論点 2 「良好な安全衛生水準の企業の評価・公表」です。本論点については、本分科会での議論を踏まえて、評価方法などについては専門家の意見も聞きながら、引き続き厚生労働省で検討していただくということかと思いますが、そういった方向性で御異論はございませんでしょうか。

○縄野委員 「検討の方向性」として、「具体的な評価方法については専門家の意見を十分に聞いて、引き続き検討してはどうか」となっておりますが、ここでの「専門家」というのは、具体的にどういった方々を想定しているのでしょうか。

○井内計画課長 これは幅広い安全衛生関係の取組の中で、むしろ災害を発生させていないということから、いろいろな観点があって、これまでの御議論の中でも出していただいているようなこともあるかと思いますが、基本的には労災を出していない、事業場、企業全体として、労災を出さないためにどのような取組をしているか、それが継続的にやられているのかどうかというような、幾つかの指標を示してやっていくことになるのだろうと思いますので、幅広い意味での安全衛生について、学者を含めた専門家を参集して、そういった方々の御意見を参考にして考えていくことになろうかと思っています。

○分科会長 ほかにいかがでしょうか。この件は、具体的な検討に当たっては、厚生労働省で専門家の意見を聞きながら進めるという方針とします。

 続いて、論点 3 「重大な労働災害を発生させた企業の改善方策」に移ります。御意見、御質問がありましたらお願いします。

○明石委員 前回の分科会のときに認識を共有したと 2 点書かれています。 1 点目について、「何らかの改善を図らせる仕組みが必要」と書かれていますが、仕組みが必要という認識までは共有していません。

 それに関わることとして、 2 点目は 12 次防にも「公表の是非については考える」と書いてあります。そのことを踏まえても、検討の方向性は走りすぎていると思います。重大な労働災害を起こしたというだけで、現在の事業場単位でやっているものの枠組みの外に出されるというのは、私には理解ができません。

 もう 1 つ理解ができないのが、資料 5-3 の実態調査です。「本社による安全管理 / 健康管理」とあるのですが、「 / 」は and ですか or ですか。

○毛利調査官 安全衛生又は健康管理をやっているということです。

○明石委員  or だと、別々にきちんと調べていただかないと、実態は出てこないのではないかと思います。

 それから、「直接管理」「統括管理」と書かれていますが、語句の説明がないので、何をもってそういうのかが分かりません。それと、「指導等」と書かれていますが、何をもって指導なのか、どこまでが「等」なのかが全く分かりません。

○毛利調査官 まず「 / 」の意味です。資料 5-3 の後ろのほうにアンケート調査票が付いています。この質問は、「従業員の安全管理や健康管理について」ということで、「や」ということで質問していますので、安全管理と健康管理の両方ということで質問しています。

○井内計画課長  2 点目についてです。「地域本部に対して指導等」という記載については、もう少し強く本社から指揮をするというのもありますし、指揮命令、指導、場合によってはもう少し緩いような、状況も聞きながらの相談、アドバイスもあると思います。そういったことを含めて、「指導等」ということでまとめています。

○明石委員 それだと管理の範囲が曖昧になって、どこまで本社が管理しているのかを判断できないと思います。せっかくやっていただいているのですが、もっと細かくやっていただかないと十分なものにはなりません。これで 9 割以上がやっているという示し方は、読むほうにとっては納得がいきません。

 内容として、括弧内の 2 つ目に、「各地域本部に任せているが」、 3 つ目には「各事業所に任せているが」とあります。任せているのであれば、「統括」というのがどこまでの範囲かが分からないと、本当に本社がどのぐらい管理をしているのかが全く分かりません。「直接管理」という言葉だけを聞くと、東京本社で、北海道事業所の総務部の B さんの健康管理まで毎日しているというように聞こえるのです。

○分科会長 という意見ですが、少なくとも改善を図らせるために公表するというところまではいっていなくて、改善を図らせる仕組みは必要だと。具体的な内容としては公表も考えられるけれども、ここは検討するというまとめかと思いますが、それでも御異論はあるわけですか。

○明石委員 そこまではいいのですが、方向性です。企業単位はどう考えても。厚生労働省全体で、企業単位に変えるということであれば検討に値すると思いますが、重大な労働災害を発生させた企業だけを枠外に出して、企業単位で、公表も含めてそういうことをやられるというのは、理解できません。

12 次防でやられたということで確認しましたが、 12 次防には「企業単位で検討する」ということは書かれていません。無理があると思います。

○犬飼委員 厚生労働省は本年 9 月を過重労働重点監督月間として、集中的な監督指導を実施し、電話相談を行ったと聞いています。そして、電話相談を受けた 1042 件のうち、長時間労働や過重労働が 4 割、パワハラが 1.5 割という結果も出ています。

 労働災害が起こり得る原因や、労働災害をじゃっ起させる土壌がまだまだあり、結果として重篤な災害が起こってしまうこともあるため、予防するための素地というものが必要であると思います。労働安全衛生の観点からすれば、例えば長時間労働に対する医師の面接指導、事業主による安全・健康管理措置の徹底を図っていくということや、重篤な労働災害を発生させた企業に改善を促す仕組みが必要であり、それが社会の要請に応えていくことにもなると思いますので、この点について前向きに考えていただきたいと思います。

○毛利調査官  12 次防の記載の確認です。 22 ページに、「法令違反により重大な労働災害を繰り返して発生させたような企業について一定の基準を設け、着実に労働環境の改善を図らせるため、企業名と労働災害の発生状況をホームページ等で公表することを含めて検討する」となっています。ですから、今回はこれに基づいてこの課題を掲げているということです。

○岡本委員 今後の検討ということですので、検討していただきたいのですが、文言だけを読むと「重篤な労働災害」というのは、いわゆる休業災害、死亡災害だけと受け止められるのですが、労働時間管理、雇用均等というのは対象外かどうかというのも、今後検討するということなのでしょうか。それとも、いわゆる怪我だけに絞るのでしょうか。それも未定でしょうか。

○毛利調査官 このテーマについて、「検討の方向性」ということで 3 番目に挙げているのは、正にそういう内容ですので、そういう内容を含めて検討していただければと考えています。

○岡本委員 明石委員からも話が出ましたが、労働基準行政というのは、基本は事業場単位で指導していて、全国規模で、北海道や九州、四国に事業場があるところは、全部地元の監督署が事業場を指導しているのに、なぜこの公表だけが、例えば本社が東京にある企業名の公表になるのか、そこに論理的飛躍があるように思うのです。

○毛利調査官 おっしゃるように、これまで確かに事業場単位ということで、法違反があった場合の対処などをしてきましたが、あちこちの事業場で同じような災害があるときに、企業として横展開をしているところもあるわけですが、そうでないところは、新しい枠組みで取り組むことが必要なのではないかということで、このテーマが出てきているということです。

○岡本委員 それは理解できますが、横展開するのは企業の自主的な取組であって、法令で横展開しろとも何とも決められていないのではないでしょうか。

○毛利調査官 もちろん今は決められておりませんので、そういう改善の仕組みを今回設けることが必要かどうかについて、議論していただきたいと思っております。

○新谷委員 今回の「検討の方向性」に書かれているように、重篤な労働災害を複数の事業場で発生させている企業があった場合に全体として労働災害をどう防止するかという新しい仕組みを考えているわけですし、前回使用者側委員からリクエストがあった本社の関与の程度についてのアンケート調査の結果も示されているわけです。質問票も付いていますが、使用者委員からは精緻な質問なのかという御指摘がありました。私は精緻な質問なのではないかと思いますし、私どもが感じている安全衛生に関する本社の関与の実態を、ある程度表しているのではないかと思います。

95 %の企業が、本社での管理体制の中で安全衛生体制を推進しているというのは、実態に近いのではないかと思いますので、これを反証できるデータがあるのであったらお示しいただきたいと思います。「今後の検討の方向性」に示されているように、根本の企業の本社の管理体制を問うというところを、今回の新しい枠組みとして検討を進めるべきではないかと考えます。

○鈴木委員 重大な労働災害というのを重大災害と考えているのかどうかは不明なのですが、普通であれば重篤な労働災害を起こしますと、法的な行政処分、社会的な処分、責任、民事の訴訟など、いろいろございます。本当に重大な災害を繰り返すような企業がありましたら、今の段階でその企業は経営が成り立っていかないと思うのですが、本当にそういう企業があるのかどうかというのを、実際に厚生労働省は把握した上で、こういうことが出てくるのでしょうか。

○井内計画課長 普通はこういう企業はあり得ないと思いますし、あってはいけないのだろうと思いますが、私どももデータの取り方で、ある企業のいろいろな事業場が同種の重大な災害を起こしているかどうか、すぐに出てくるわけではないのですが、幾つかあるということで、当然ある程度の件数、事例があることは把握しています。

 これまでの話にありましたが、 12 次防のときの議論から、そういったものを放置しておけば、また別の事業場で同種の重大な災害が起こってしまう、人が死ぬかもしれない、本当に重篤な事例の場合もあるのだと思いますが、そういったことを未然に予防する観点からは、こういう取組が必要なのではないかという議論があって、今日の資料の中にもそれぞれの側の御意見がありますが、企業全体の取組が必要ではないかという御意見が非常に多かったわけで、このような検討になっています。

 死亡災害の事例、非常に重篤な災害としては、 6 月の分科会でお示ししましたが、同じ企業で同じような死亡災害が複数件発生した事例としては、 10 社ぐらいあります。過重労働の健康障害で同じ企業で複数件発生した事例は 20 社ぐらいあります。また、精神障害では 30 社ぐらいあるということでお示しして、資料としてもお出ししています。そういった、違う事業場であっても同じ企業の中で起こっているというのは、調べてみたらそのぐらいはあったということで、今回の議論につながっているということです。

○明石委員 今、御報告があった件ですが、これについては前回に議論があったと思います。全部、労災認定案件ですよね、違いますか。

○井内計画課長 おっしゃるとおりです。

○明石委員 前回も申し上げましたが、そうであれば企業名を公表できないはずなので、指導で企業名公表はできないと理解してよろしいのですか。それをすることは念頭に置いていないということでよろしいのですか。

○井内計画課長 その辺はこれから御議論いただきたいと思っていますが、実際にそういった事案が起こっていることについて、更に対応を取ろうということで御議論があるのだと考えています。

○角田委員 こういう席で適切な言葉でないかもしれませんが、公益的な立場で見ていますと、例えば「ブラック企業」という言い方がありますが、そのようには言われたくないと思います。トカゲの尻尾切りというのもあります。好ましくない、というニュアンスで使われています。大きな企業で、連帯責任とまでは申し上げませんが、 1 部分だけが問題だということで、それだけが悪いのだという考えは、やはり改めていただくことが必要ではないかと感じます。

 企業の責任というのは、財務や株主に対する対応をきちんとするのと同じように、安全衛生も同様に大事なことと思います。そういう意識を持っていただくように、全体が変わっていただく方向性が望ましいのではないかと感じます。

○新谷委員 先ほど法律の枠組みの話が出まして、「行政による取締法規としての安全衛生法の関係は事業所単位ではないか」という御指摘がありました。もともとの労働基準法もその法体系になっていると思います。

 確か、 2010 年に施行された改正労働基準法の中に、事業所単位から企業単位に管理単位を昇格させた条項が入っていると思います。これは、中小企業事業主における 60 時間超えの時間外割増率の適用については、事業所単位ではなく、「中小事業主」、すなわち企業単位に取締りの単位を変えていると思うのですが、そういった先例も既にあるわけです。このように安衛法のベースになる労働基準法はそういう形で企業単位を取り入れているところもあると思います。これについて厚生労働省に見解があれば、お聞かせいただきたいと思います。

○井内計画課長 時間外割増率の関係でそういった取扱いをしているのではないかということです。それを先例と考えるかどうかについては、考え方はあるかと思います。

 申し上げたいのは、労働安全衛生法は事業場単位で、それぞれ事業者がこういう措置を取りなさいとか、それに対して措置を取らなければいけない措置があり、罰則があったりするわけですが、今回、これまで 12 次防から議論が続いている考え方としては、その中で、いろいろな事業場で同種の重大な災害が起こっていることを未然に防止しよう、そのための対応を取るべきだという考え方があって、そこで御議論があって、 12 次防の議論の中でも、ああいう形で取りまとめられたわけです。

 それを、この 5 か年で具体的にどうしていくかということで、今の御議論になっているので、私どもはそういった考え方で、安全衛生分科会でこのテーマについて御議論いただいて、対応を考えていくのかなと理解しています。

○新谷委員 先ほど明石委員から「事業所単位から企業単位に切り替えるに際し法的な飛躍があるのではないか」という御発言もあったものですから、正しく、今、その法改正の論議をしているわけでして、既に先例として、労働安全衛生法のベースとなる労働基準法に設けられていることも参考に、法の構成を考えるべきではないかと思います。

○三柴委員  73 回のときにもお伝えしたのですが、その折には 6 点の根拠を挙げて、企業名の公表を含めた措置について賛成をしたわけです。

 まず、どこを対象にするかという点については、その折にも申し上げたように、安衛法は確かに「事業者」という書き方をしていますが、これは事業利益の帰属主体という意味であって、たとえ監督指導などが事業場単位で行われているとしても、それは統括管理者を置くとか、そういう単位として設けているのであって、法が義務付けの対象にしているのは、飽くまでも事業利益の主体である事業者です。ですから、事業場ごととは別の見立てになるはずだということです。

 それから、障害者雇用促進法とか、雇用機会均等法とか、既に公表制度を設けている法制度がありますが、これらの法律でも、事業主を名宛人としており、事業場単位というわけではありませんし、ほかにも何点か申し上げた経緯がありますので、それぞれについて検討していかなければなりません。

 最後にもう 1 点申し上げると、例えば先ほどお話があったように、もし企業側に落ち度があって訴訟になるようなことがあれば、法人単位で被告になって、訴えられて、裁判は公開ですから、そこで企業名が事業所単位ではなく挙げられ、最終的にそこが負けるなら負ける、勝つなら勝つということになるわけです。

 ですので、現状からそれほど大きな変更が、法的に見たときにあるのかということは考えなければいけなくて、たまたま今、現場重視で監督指導がどの単位で行われているかを取り上げて、だから企業対象は飛躍であるというのは、言い過ぎではないかと思います。

○明石委員 裁判になれば企業名は出ますが、私がここで言いたいのは、企業名公表というのは企業にとって、生きるか死ぬかの生命線です。企業名が公表された途端に売上げが落ちて倒産に結び付くこともありますので、そこは極力慎重に、いろいろなことを考えてやらないと、雇用の問題にもつながっていきます。今後いろいろな議論が行われるでしょうけれども、アンケートについて申し上げたのは、そういう背景を考えるとこれはいかにも弱すぎるのではないか、もう少し細かく調べていただきたいと。

3 4 で労災に関してお調べになられていますが、本社が直接対応しているのは当然だと思うのですが、「本社から指示等」とありまして、指示がどのぐらいなのか、どのようなものを指示というのかもよく分かりませんし、いろいろ強さがあると思うのです。現場に行くのと、メールを出すのは全然違う話だと思いますから、そこら辺はもっと具体的に調べていただきたいと思って申し上げました。

○新谷委員 今、明石委員から「雇用にも影響を与えかねない」という御発言がありましたが、再三申し上げているように、懲罰を目的として設ける制度ではなく、あくまでも労働災害を繰り返し発生させる企業に対して、その抑止力となるような制度を設けるべきだと思っています。潔白な企業を公表して経営破綻に追い込むようなことは全然考えておりません。要件をどうするかということについても、あくまでも労働災害を防止するというマインドを作っていただくための抑止策として考えるべきであることを、重ねて申し上げておきたいと思います。

○分科会長 時間も押しております。今回いろいろ御意見を頂きましたので、基本的には継続的に審議になろうかと思います。 12 次防の下で何らかの改善を図らせる、そういった仕組みを検討するという流れの中で、継続的に進めたいと思います。よろしいでしょうか。

 次に移ります。 4 「違法な機械等の回収・改善方策」です。先週の金曜日に検討会が終わりまして、間もなく報告書が出るところです。事務局から議論の取りまとめの資料を提示していただいています。現段階で、特段の質問、発言がありましたらお願いいたします。この件はよろしいでしょうか。

 次に進みます。論点 5 「安全衛生管理体制」です。質問等、発言はございますでしょうか。

○明石委員 これについては前回も申し上げましたが、 12 次防がこの 4 月から始まったところです。先ほどの 2 つの業種団体もそうですが、労災防止に努力を始めているところです。そういう状況にも関わらず、今すぐに、また新たにこういう選任を義務付けることについては、賛成はしかねます。 12 次防は 5 年間の計画ですから、その間でどのぐらいの努力をするかを見ていただきたいと思います。

 それと、先般私が申し上げたので資料 5-5 を出していただきました。先ほど課長からの御説明で、 1 号は下がっているし、 3 号の小売は上がっているということがありましたが、 3 号を見ると、確かに小売等は上がっているところはありますが、顕著にということではないような気はしますし、上がったり下がったりして、やはり下がっていくところが、 1 号、 2 号からも見て取れるので、今、申し上げたように、すぐにまた新たな対策を乗せるというのは、どうしても事業者にとっては過重になるので、新たな安全担当者、安全推進者等ということになっていますが、この義務付けについては反対いたします。

○半沢委員 資料 5-5 の推移のグラフについて、今、「上がったり下がったり」というご意見が出ましたが、 10 年間のスパンの傾向ということで捉えていきますと、安全の担当者の選任が義務づけられていない 3 号業種は増えている傾向があると思います。

 今、努力を始めているということではありましたが、その 1 つの効果的な方策として、安全担当者の選任ということが、このグラフを見ても、これまで経験してきた効果的な方策として考えられるのではないかと思っていますので、安全担当者の選任について義務付けの検討を深めていくべきと考えます。

○中村 ( ) 委員 第三次産業の安全対策はとても重要だと思うのですが、第三次産業も多彩な業種があり、今日ヒアリングをした 2 種類においても、災害の起こり方と対策の打ち方が違ってくるのではないかと思います。

 例えば介護施設などにおいては、安全管理者がいればいいかというとそうではなくて、入居者との間に起こる事故が中心です。ですから介護技術の向上のための教育のほうが優先される。例えばスーパーマーケットにおける安全の管理と介護施設における安全の管理のありかたは違ってくると思います。多彩な業種が含まれている第三次産業だからこそ、この業種はこういった対策があったほうがいいというような、もっと細かく考えたほうが有効な対策が打てるのではないかと思います。

○半沢委員 多様な業種があるということで、それぞれ多様な対策が必要になってくるとは思いますが、安全について一生懸命考える担当の人を置くことが、そこの事業所に合った対策を見つけ出していくことにもつながっていくのではないかと思っております。その点についても御検討いただければと思います。

○分科会長 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。本論点につきましては、まだ議論があるようですので、引き続き議論を進めていきたいと思います。

 ここで 5 分ほど休憩を取ります。休憩後は精神科七者懇談会からのヒアリングをいたします。

                                   ( 休憩 )

○分科会長 それではお揃いのようですので再開させていただきます。先ほど飛ばしました議題 3 になります。本日は精神科七者懇談会を代表しまして、日本精神神経学会の理事でいらっしゃいます中村純様にお越しいただいております。早速ですが説明をお願いいたします。恐縮ですが、時間の関係上 10 分程度でよろしくお願いいたします。

○精神科七者懇談会中村氏 ただいま御紹介いただきました精神科七者懇を代表してまいりました。精神科七者懇というのは日本精神神経学会、日本精神科病院協会、日本精神神経科診療所協会、精神医学講座担当者会議、日本総合病院精神医学会、それから全国自治体病院協議会、国立精神医療施設長協議会の精神科医の集まりです。

 現在の労働環境を考えた場合に精神疾患の一次予防にこの法律が本当に役に立つのか、職場のメンタルヘルス改善には一次予防、二次予防、三次予防のいずれの段階にも精神科医の役割が必要であると私どもは認識しています。労働者の方々が達成感や意欲を持って仕事をする中で、職場のメンタルヘルスの不調に陥る人は一定数いると考えています。そこで、このようなメンタルヘルスのチェックをすること自体には意義があると考えていますが、その内容が、例えば人事労務担当者や同僚、上司に知られることなく円滑にできるか、どのようにそれを担保するのか、現在の健診においても必ずしも健康状況の守秘義務が担保されていないのではないか、罰則規定がないということで、特に中小企業でそのことが守られるだろうかという心配があります。

 正規雇用の人は非正規雇用の人が増えて、より責任が重くなっていると認識しています。また非正規雇用の労働者の方々は、派遣元がどの程度彼らの心理的な負担を理解しているかという疑問があります。

 前回提出された法案に対する、これは日本精神神経学会の精神保健に関する委員会の見解ということで、私のパワーポイント資料の一番最後に書いています。 9 項目の検査項目が書かれていますが、精神疾患の早期発見としては不十分、エビデンスがないということ。それから検査結果をいかす体制が僅かであり、十分な対策を整えるべきではないかと考えています。

 それから、ストレスチェックの結果を労働者に直接通知することについて、労働者へのプライバシーの配慮からは当然必要だと考えますが、メンタルヘルスに関する管理がひとえに労働者個人に任されることになるのではないか。労働者に必要な受診を促すために、啓発などの対策を講じる必要がある。

 面接指導を事業者に義務付けることについて、これは希望者には全員面接指導を実施すべきではないか。精神科診断やストレス対処法に精通した産業医の育成が産業医学の分野では必要ではないか。医師の供給体制の整備は喫緊の課題と考えています。なかなか産業精神保健を理解している医師は少ないのではないかと思っています。

 事業者は医師の意見を聞いて就業上の措置を講じなければならないことについて、精神科と連携して精神医学的な適切な就業上の措置が取られるように、精神科医側も産業医と連携して職域についての見識を持つように、精神科の医師も産業精神保健についての知識が非常に少ないと考えています。

 それから非正規の労働者、産業医のいない小規模企業で働く労働者対策について、十分考えないといけないのではないかと思います。

2 枚目で論点を 1 5 まで挙げています。論点の 1 として、健康診断の中から「精神的健康度の調査」だけを除くということは現実には非常に難しいのではないか。今回提案されているものでは、医師による健康診断の中で精神的健康の状況に係るものを除いて行われなければならないとなっています。つまり精神症状と身体症状に分けているわけですが、現在既に大企業では行われているうつ病やその症状を示唆するような症状について、産業医という事業者の人間には知らされることにならないのか。

 そもそも症状によって精神症状と身体症状に分けられないことがあります。例えば不眠、頭痛、全身倦怠感、痛み、意欲・食欲低下など、身体疾患でもそういう症状が出てくることもあります。厚労省がメンタルヘルスの不調という言葉を使っていますけれども、これには ICD10 F コード、精神疾患全てに分類される精神障害だけではなく、ストレスや強い悩み、不安など、労働者の心身の健康、社会生活及び生活の質に影響を与える可能性のある精神的及び行動上の問題を幅広く含むと定義されていると認識しています。

 精神症状の多くは身体症状が前景に出てきます。昔、仮面うつ病という言葉が流行りましたが、多くのうつ病の方は身体症状を訴えて内科などを 7 割ぐらいの人が受診しており、精神科や心療内科を受診している人は 10 %以下だと言われていました。多くの疾患で精神症状を示すわけです。うつ病をはじめ多くの精神疾患では身体症状が主な自覚症状であることが多いということで、器質性の精神障害にも当たると思いますが、甲状腺機能異常をはじめ多くの疾患で精神症状を呈し、初期兆候である場合も多いということがあります。

 それから心身相関という概念は正に心の病気から身体疾患になるものですので、例えば喘息発作や心筋梗塞、がんの悪化など、様々な身体症状は精神症状によって影響されることはよく知られた事実であると思います。今回の法律が現在、先進的に大企業などで行われている産業医活動を、身体症状と精神症状とに分けることで後退させるのではないかという懸念が 1 つあると思っています。

 健康診断というのは労働者を一人の人間として対象とすべきであり、現在はそのような運営がなされていると考えています。心身のいずれの調査であるのかを分離することは、言葉の上では分離できるかもしれませんが、医療として心身の評価を分離できないことは既に私は常識だと考えています。医療の常識に逆らう規定を設けることは、特に最近外国人労働者も増えていることを考えますと、非常に問題があるのではないか。そういう意味では定期健康診断の中から精神的健康度の調査を除くという法改正は考えないといけないのではないかと思いました。

 論点の 2 です。私の誤解もあるかもしれませんが、裁判では産業医が知り得た情報は事業者が取得した情報として取り扱われています。ストレスチェックの結果を事業者に報告できないのであれば、産業医活動は実施できないのではないかという懸念があるわけです。産業医が措置を講じた場合に労働者の不利益が起きる危険性について、事業者の安全配慮義務を追求した裁判では、産業医は事業者側として取り扱われます。産業医がストレスチェックを行ってよいのであれば、そこで産業医が知り得た情報は事業者が取得した情報として取り扱われるわけです。労働安全衛生法の枠組みで行うのであれば、産業医が知り得た情報に基づいてきちんと就業上の措置を行うのが前提ではないかと考えます。つまり産業医が労働者に適切な措置を行うように指導した場合に、労働者への不利益が発生しない制度設計、運用方法がないままで実施することは非常に危険があるのではないかと思いました。

 論点の 3 として、今は非常に健診制度が複雑化していると思っています。特定健診、定期健診、面接指導、こういうものがあるわけですが、上記の制度は既に複雑で、近年導入された制度は実施率も高くなく浸透していない。これらの制度は既に法律で規定しているが、結局中小企業では実施されていないのではないか。中小企業にお金を払わせる制度ではなく、良い取組を助成する制度のほうがいいのではないかということも私なりに考えています。

 それから論点の 4 として、職場で労働者に受診義務を課すアンケート調査では、不正確な結果しか得られていないという事実があります。労使関係が存在する職場において強制的にアンケート調査を実施すれば、労働者の雇用や労働条件の確保に不利になる問題は隠そうとすることは容易に想像できます。医療機関ではなく職場において強制的にストレスを調査して、労働者にとって有益な結果が得られるという研究結果は、今のところ存在しないのではないかと思います。そういう意味で慎重に対応すべきではないかと思っているわけです。

2009 年の USPSTF(United States Preverance Survey Task Force) のメタ解析結果でも、メンタルヘルスコンディション、疲労とか不安、うつに関する自覚症状を尋ねるという意味では、法案で示される精神的健康度の調査、ストレスチェックにも該当すると解釈されますけれども、医療機関ですらこのようなルーチンのスクリーニングがうつ病のケアをサポートできなかったというデータを出しています。これにも異論があると思いますが、労働者の方に受診義務を課す方式の改正は、少し慎重にすべきではないかと思いました。

 いろいろな不備について、厚労省の方々との意見交換の中では後でいろいろな省令を書いていくとおっしゃっていますが、一般の企業は労働安全衛生法ですら実はよく理解していないのではないか。まして政令、省令、通達等を読み込んでいるのは大企業の一部ではないかと思っています。法律で「事業者が労働者の精神的健康度の調査を行わなければならない」と規定すれば、その一般的な日本語感に基づいて解釈されると推察されます。一方で精神的健康度の調査が何を指すのかについて、通達まで読み込まなければ分からないというのであれば、政策を現場に周知することだけでも混乱が起こるのではないかと考えました。

 少し言い過ぎかもしれませんが、精神科医としてはメンタルヘルスのチェックというのは必要だと思っています。今の自殺の問題、あるいは労働者で亡くなられる人は、特に働き盛りの労働者の方が 2 割程度自殺で亡くなっております。自殺者の半分、 1 5,000 人ぐらいの方が健康の問題で亡くなられており、半分ぐらいが、警察庁の調べではうつ病となっています。そういうことを考えますと、このようなことは画期的なことだと思いますが、もう少し制度を考えるべきではないかと私は思いました。以上です。

○分科会長 説明ありがとうございました。ただいまの説明につきまして質問等ございますでしょうか。いかがでしょうか。

○犬飼委員 資料3の 3 枚目のスライドに記載されている論点 2 で「裁判では産業医が知り得た情報は、事業主が取得した情報として取り扱われる」「ストレスチェックの結果を事業者に報告できないのであれば産業医活動は実施できない」という記載がありますが、これについての厚労省の見解はどうなのでしょうか。

○泉労働衛生課長 これまでの審議においてストレスチェックの結果については秘密保護に十分な配慮が必要だということで、労働者個人の結果の事業者への提供について本人の同意が必要であると議論されてきたもので、この点は原則論としては重要だと考えております。産業医が選任されている事業所については、ストレスチェックに産業医がなるべく関与するといった方向が適当だと考えており、この場合産業医が結果を知り得、産業医活動に用いることはできるだろうと考えており、それを事業者に知らせるには当然労働者の同意が必要になります。その具体的な内容については、さらに検討が必要だと思っております。

○精神科七者懇談会中村氏 そのことで労働者が同意をしなければどうなるのですか。

○泉労働衛生課長 労働者が同意をしない場合には事業者に通知はできないというのが大原則になります。しかし、ストレスチェックに産業医が関わらない場合、例えば外部機関に実施してもらってその結果について本人が事業者に伝えないでくれと言ったとしても、本人への結果通知時に必要だと思われる人には受診を勧めるような情報を一緒に出すとか、また事業所の、個人ではなく集計結果をフィードバックすることによって職場改善につなげる。このほか産業医が関わる場合については先ほど申し上げましたが、そういった形で、つまり全く抜け落ちてしまうことにならないような手立ては考えていく必要があると思っています。

○三柴委員 後でまとめて申し上げようかと思っていたのですが 1 点だけ、情報管理についてのご指摘がありましたので、コメントさせて頂きます。産業医ニアリーイコール事業者ではないかというご指摘だったと思います。確かに東芝事件の高裁判決でそのようなことが述べられているのですが、要は情報管理に関するルールというのは、ある種矛盾している面もあるので、実際には優先順位を付けて対応を図る必要があるのです。たとえば、産業医イコール事業者とも言い切れない根拠としては刑法の 134 条などもあるわけです。東芝事件判決の場合は、要は業務上の負荷で既に不調状態にある方について産業医と上司が情報を共有したほうがいいのではないかということを述べたのであって、一般的に産業医が知り得た情報、業務上知り得た情報を事業者なりその企業内のどなたかに提供していいということではない。だから、それは場面場面で医師としての専門性と良識に基づいて判断すべきであって、その点について、こういう制度が導入されようがされまいが基本は変わらないはずですし、また導入されるのであれば通達等で交通整理をするという方法もあるので、要するにオール・オア・ナッシングではないということをお伝えしたいと思います。

○中村 ( ) 委員 私は個人的には先生のおっしゃる懸念を共有しております。ただ職場におけるメンタルヘルス対策というのは非常に重要で、それならば、どういった方向で考えていけばいいのかということについて、何か提案がありましたらお願いします。

○精神科七者懇談会中村氏 臨床的に言いますと、精神症状と身体症状を分けることは不可能だと私は思っています。ということを考えると、今の労働安全衛生法の中にメンタルヘルスチェックを入れても全然問題ないのではないか。というのは身体疾患、例えばがんがある労働者の方に起こったようなことを公の場で、あの人はがんになっているのではないかと話が出るとか、そういうこともあるので、逆に精神疾患だけを外すとなると、何か逆に差別が起こるのではないかなと私は思ったのですけれど。

○中村 ( ) 委員 そうすると、普通の健康診断の 1 つの項目として、メンタルヘルスのチェックを加えて問診票の中に入れて、今までどおり健康診断の 1 つとして進めていく。事後指導と就労配慮をしていくという形を。

○精神科七者懇談会中村氏 でも、できるのではないかと思うのですよね。例えば不眠とか全身倦怠感といっても、例えば肝臓が悪くなって、お酒を飲み過ぎて肝炎になっていて全身倦怠感もあるし、うつ病、うつ状態の方もあるわけで、区別はできないので、そこのところだけが大枠ですけれども何とか法案の中にメンタルヘルスを入れることは私は何とかしていただきたいと思うけれども、分けるということは、諸外国でもこういうことはできないのではないかと思っているのですけれど。

○中村 ( ) 委員 ありがとうございます。

○栗林委員 現在の検査の 9 項目では不十分であるという見解と、それであるならば何か別の方法、別の検査項目で十分に近づくようなものが現存するのでしょうか。もう 1 つ、職場でそもそも質問することに無理がある、不利益の懸念があるということできちんと答えないという懸念があるわけですけれども、質問項目を 9 項目以外のものに置き換えることによって、職場でのきちっと答えないという問題点をも克服できるようなものが何か案としてありますでしょうか。

○精神科七者懇談会中村氏 最初の前回の提案の問題点としては、その 9 項目がストレス健康度調査によって得られたうつ関連のものを検討されて決まったと理解していますけれども、精神的なところでは不眠とか極端言えば抑うつ気分なども入れた項目がなされているのですよね。それで何か瑕疵があったとは私は思っていません。それと項目については、いろいろな専門家がおられるので議論すればもっと簡単な方法があるのかもしれません。ただ最初私たちが、精神科医側がはき違えたのは、厚労省は職場のメンタルヘルスの改善だと提案されたわけですよね。最初内閣府からの私の理解では自殺対策と考えていたので、うつ病の早期発見のようにちょっと早とちりといいますか、精神科医側がそう思ったというところはあると思います。ですから、いわゆるうつ病の早期発見という項目は入っていないのですよね。ということだろうと思います。

○新谷委員 中村先生の資料3の 2 スライド目を拝見すると、論点 1 で「健康診断の中から『精神的健康度の調査』だけを除くことは困難である」、ということで、 66 条の健康診断から精神状況の部分は削除するという提案がありましたので、それに関連して 2 点質問いたします。 66 条の精神状況の部分の削除に関しては、同時に新しい条文の追加があり、 66 条の 10 で精神健康状態について事業主に対して義務を課しています。ただ実施主体が 66 条の健康診断については医師となっているところ、新しく追加された 66 条の 10 では医師又は保健師と主体に保健師が追加をされております。そこで、先生のほうで、保健師による精神的健康状況の把握は、医師の場合と保健師が追加された場合とで違いがあるとお考えなのかどうか、お聞かせいただきたいと思います。また、先ほども御指摘されていましたが、健康診断項目とは別に精神的健康状況を把握するというスキームについて、これは義務付けを別出しにしているわけですけれども、こういうスキームでは産業保健の現場ではまずい状況に至るとお考えなのか、同時に行わなければならないとお考えなのか、教えていただきたいと思います。

○精神科七者懇談会中村氏 最後のほうから言いますと、何度も言いますけども精神症状と身体症状を分けること自体が不可能だと思っているのです。いろいろな分科会を作られ専門委員を集めて決められるかもしれませんけれども、何が身体症状で何が精神症状というのは難しいのではないかというのが 1 つですね。保健師が入ったのはよく過程は覚えていないのですけれども、恐らく産業保健スタッフという意味では十分機能できるスキームではないかと思います。

○分科会長 ほかによろしいでしょうか。それでは中村様、本日は非常に有益なお話を聞かせていただきまして、大変ありがとうございました。

 続いて、議題 4 にまいります。日本産業衛生学会から理事の川上憲人様にお越しいただいております。早速ですが、御説明をお願いいたします。恐縮ですが、 10 分程度でよろしくお願いいたします。

○日本産業衛生学会川上氏 ありがとうございます。日本産業衛生学会の理事をしています川上と申します。本日はヒアリングにお招きいただきまして、委員の皆様方に深く感謝を申し上げます。本日私は日本産業衛生学会の 30 名の理事の 1 人として理事長から指名されて、ヒアリングに対応するようにということでまいりました。お手元に資料 4 がございますので、こちらに従ってお話をさせていただきたいと思います。先ほどの中村先生のお話と多少重なるところもありますが、日本産業衛生学会独自の視点もございますので、それも合わせて御説明させていただきます。

1 ページ目の 2 番目のスライドです。日本産業衛生学会は 90 年の歴史を持っておりまして、正会員は今、 7,600 人が活動しております。産業医や保健師、衛生管理者等の産業保健スタッフに加えて教育研修者などが所属しており、我が国では日本最大の産業保健専門職の学術団体と言えると思います。私たちの領域でも職場のメンタルヘルスは非常に重要な問題となっておりまして、この安全衛生分科会でもメンタルヘルスを取り上げていただいて、非常に熱心な議論を繰り返していただいて、私どもとしては大変感謝をしているところです。

 さて、 2 ページ目の上のほうのスライドですが、今回の事業所におけるストレスチェック制度の義務化に関しましては、非常に重要だと考える一方で、不透明な点や疑問点が多くあります。当学会としましてはこれまで、幾つかの要望や御質問をしたり、あるいは、場合によっては労働衛生課からも御説明をいただいたりして、いろいろ対応してまいりました。その経過が上のスライドに簡単に書いてあります。

 一番最近、この 8 月に、私どもで労働衛生関連政策法制度検討委員会という委員会がありまして、その中の WG がこの課題に関する中間報告を理事長宛てに提出していますので、本日は、この報告書を基に私どもの学会としての意見を述べさせていただこうと思います。残念ながら、この中間報告書は 13 ページありまして今日は資料として添付できませんでしたが、最後のページに中間報告の要旨部分と、それから、本中間報告は既に当学会ホームページに掲載されておりますので、そちらの URL を付けておきました。もしお時間がございましたら、一読いただければ大変うれしく思います。それでは、 2 ページ目の下のほうのスライドで、これまでの学会の対応に関連して私どもの持っておりますこの制度に関する主要な論点を 4 点御説明したいと思います。

 まず、このストレスチェック制度がメンタルヘルス不調の二次予防ではなくて、例えば精神疾患の早期発見等ではなくて、やはり一次予防の制度として運用される必要があるということを私どもの学会では強く主張してまいりました。また、この形では小規模事業場での取組が非常に進みにくい形になっていますので、この促進が重要であることも強く主張してきたところです。

 ただ、この制度に関する科学的根拠は、なお不十分であり、なお検証が必要だと考えております。これは先ほど中村先生がおっしゃった調査票の問題だけではなくて、調査票を使った全ての流れのシステムとして、果たして労働者の健康に良い影響があるかどうかについての検証がまだ出されていないというところが問題だと考えております。また、現在行われています労働安全衛生活動や、私どもが行っています、先進的事例を後退させないということも要望させていただいているところです。さらに、ストレスチェックよりももっと優先すべき職場のメンタルヘルス上の課題はあるのではないか、そういう意見も出しております。例えば非正規雇用や長時間労働など、職場における職場環境の改善といったこともありますので、そうしたことも述べております。

 こういう論点をベースにしまして、 3 ページ目ですが、今回、私どもが 8 1 日に理事長宛てに答申をいたしまして、理事会でも一応承認を頂いています中間報告の内容についてかいつまんで御説明させていただきたいと思います。 3 ページ目の上のほうのスライドですが、私どもの中間報告の最初の結論としては、このストレスチェック制度は法改正による義務化ではなくて、通達やガイドラインで好事例を示すことにとどめるというので良いのではないかという御提案です。

 これは幾つか理由がありますが、 1 つは、科学的根拠の不足と運用上の不安があります。先ほど申しましたように、この形での制度がストレス軽減に本当につながるのだろうか、あるいはどのぐらいの労働者が医師を受診するのだろうかという辺りの不安がまだ拭えないでおりますので、こうした辺りがきちんとされることが必要かなと思います。

 また、私ども日本産業衛生学会の専門職の立場から見ますと、労働者のストレス症状を、自覚症状を評価することよりも職場の心理・社会的な環境、例えば職業性のストレスなどを事業場ごとに評価して、その対策の立案、実施、改善を行っていくリスクアセスメントのサイクルを回すという制度への展開が本来は望ましくて、こちらのほうが、科学的根拠もありますし、国際的な動向にも一致しているというところがあります。

 この本来あるべき方向性と少し異なった方向性になっている点が懸念の材料になっております。もちろん、法律は手順を示したものだといえばそのとおりですが、私ども、産業保健職、現場で働く者にとりましては、法律は単なる手順だけではなくて哲学や今後の方向性を示すものであり、そういう意味では非常に重要な位置付けを持っております。その点を是非御考慮いただいて、法改正に関わります審議については十分な検討をお願いしたいと思います。

 ただ、職場のメンタルヘルスは、先ほども申し上げましたように非常に重要な案件で、一歩でも先に進めることも確かに必要だと考えているという意見もございます。ですので、この制度を実施するということであれば、より適切な形で推進できるように学会としても積極的に関与すべきという意見もあったことを申し添えたいと思います。

3 ページ目の下に移らせていただきます。そういう意見を踏まえまして、中間報告では次善の案として次のようなものを提案しております。これは先ほどの中村先生の御発言とも一致するところですが、現在の法改正の案では、健康診断、第 66 条に「精神的健康の状況に係るものを除く」という一文が入っています。この形で法が施行されますと、定期健康診断において、これまで産業保健専門職が心と体を一体として事業者の安全配慮義務の下に労働者の健康を守るという枠組みを行ってきたものが、一部崩れることになってしまいます。この点は非常に危惧をしているところです。

 私どもから見ますと、本来は、この条文は「精神的健康の状況に係るものを除く」ではなくて、「第 66 条の 10 に規定する精神的健康の状況に係るもの」と。つまり、ストレスチェックと同じものをここではしないようにという御意見だと思いましたが、そのことが明記されておりません。現時点では、一般的な精神的な健康を全て除くように読めるのを大変危惧しているところです。この点は是非御検討をいただけたらと考えております。

4 ページ目は、まず上のスライドですが、もしストレスチェック制度を導入するのであれば、中間報告では運用面でこのようなことを是非お願いしたいという御提案を幾つかしております。 4 点ございますが、まず 1 番目は、ストレスチェックの実施における事業所と産業保健スタッフの主体的な関わりを促すということです。現在のストレスチェック制度をそのまま読みますと、これまでの産業保健とストレスチェックが切り離されたように強く感じるところがございます。ただ、各事業所で健康診断の項目も考え、安全衛生計画も立て、という事業所の自主の下に運用されてきた労働安全衛生を考えるのであれば、事業所や産業保健スタッフがストレスチェックの実施自体に主体的に関わることがあっても当然かなと感じます。

 また、私ども産業医や保健師などが先進事例を行って、産業医がストレスチェックを行って効果の出る対策をしている所もありますが、先ほどもお話が出ましたように、もし産業医が事業者の代行とみなされるようであれば、産業医がストレスチェックをすることが不可能になってしまい、こうした先進事例が阻害される可能性もあると考えております。こういう点で是非、こうした産業医あるいは産業保健専門職がストレスチェックに主体的に関われるような形を省令や通達やガイドラインなどで明確にしていただきたいと思います。

 また、ストレスチェックを一次予防につなげるための方針が、私どもから見ますと、まだ不十分ではないかと考えております。ストレスチェックの結果を御本人に返すだけでは労働者のストレスは減りません。これは、幾つかの研究があってそのことが分かっています。労働者のストレスを減らすのであれば、ストレスチェックの後に労働者にセルフチェックなどの教育を提供する、管理・監督者の教育を行う、あるいは職場環境の改善を行うなどの、これまで効果的と分かっているような手法を続けていくことが必要ですが、その辺りの運用や指針が出ておりませんので、この辺りを明確にしていただくことを要望しております。もちろんストレスチェックに関する科学的根拠と事実の蓄積はまだ不十分ですので、この点について、この制度の科学的根拠と検証ということも必要かと思いますし、初めての制度ですので、制度の評価と見直しをある一定期間ですることも適切なのではないかと考えております。

4 ページ目の下のほうは、導入に当たりまして、これを運用する支援機関におきましては様々な職種を含む産業保健チームが関わることが望ましいと本学会では考えております。中小規模事業所などで機械的に外部の機関に丸投げをしてしまって行われるストレスチェックでは効果はありませんので、こうした産業保健に詳細な知識を持っている産業保健チームが関わることが望ましいと考えています。

 最後のスライドになりました、 5 ページ目ですが。本件とは多少離れますが、労働者のメンタルヘルス自体はストレスチェックだけで改善できるものではない、多様な課題があると考えております。この件につきましては、一層の推進が必要と考えております。私どもも、委員会の中で職業労働者のメンタルヘルスに関わる様々な視点から課題の整理と解決に向けての提言を準備しているところです。労働政策審議会におかれましても、ストレスチェックの問題だけにとどまらず、更に労働者のメンタルヘルスに関わる施策を推進していただけるようお願いしたいと思っております。以上です。どうもありがとうございました。

○分科会長 御説明、大変ありがとうございました。ただいまの御説明につきまして御質問等はございますでしょうか。

○三柴委員 有益な御所見、ありがとうございます。ただいま意見を伺いまして、産衛学会としては法制化に必ずしも反対というお立場ではなくて、条件面について整備を図ることが望ましいという考えもあるということでよろしいのでしょうか。

○日本産業衛生学会川上氏 率直に申し上げて、現時点では本学会としてこの制度の義務化に関して反対・賛成という立場を決めていないというのが現状ではないかと、私自身は理解しております。学会内にもいろいろな意見がございまして、私どもも、中間報告としてこの報告を出しているスタンスは、このようなまとめをしたけれどもこれは学会員としてコンセンサスが取れるものかどうかということを学会員に周知して意見を集めている、そういう段階です。ただ、この中間報告は、理事会では承認されておりますし、私の感覚では、学会員の多様な意見を非常に適切に反映したものになっているのではないかと感じております。

○分科会長 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは川上様、本日は大変参考になる御意見をお伺いできまして、どうもありがとうございました。

 それでは議論に戻りたいと思います。ただいま 2 件のメンタルヘルス関係のヒアリングをいたしましたので、順番が変わりますが、まず、論点 8 の「メンタルヘルス対策」について御意見等を伺いたいと思います。今のヒアリングも含めまして、御意見等がございましたらお願いいたします。 2 つの団体から御意見を伺ったところではありますが、行政からもし何かございましたら、一言お願いしたいと思います。

○泉労働衛生課長 今、 2 つの団体から御意見を頂きまして、両団体とも職場のメンタルヘルス対策が非常に重要であるというお立場に立たれて、その上で、このストレスチェックと面接指導の制度が本当にうまく運用できるのかというところについては幾つか懸念があるということで、大変重要な御指摘を頂いたと受け止めております。職場のメンタルヘルスが重要な課題となっておりまして、特にその取組が遅れがちである中小企業での推進が必要となっておりますが、このストレスチェックと面接指導の制度が 1 つ有力な対策というように行政では考えております。

 ただ、一方で、これまで先進的な事業所で進められてきた自主的な取組、良い取組を後退させないということも、これまた重要です。今後とも、両団体をはじめとして専門家の御意見を十分聞きながら、制度の詳細については検討したいと思っております。併せて、幾つか御指摘のあった点についての考えを申し上げてよろしいでしょうか。

1 つは、一次予防が非常に重要であるという点です。これは、制度を検討しています私どもも全く同じです。この制度では、ストレスチェックの結果を本人の気付きにつなげていき、ストレス軽減を図ることとともに、運用で職場単位の集計結果や職場診断のような結果を職場に返すことによって職場の改善を図っていただくということができますので、そうしたことで一次予防の推進に寄与するものと考えております。

 それから、ストレスチェックの項目と一般健診との関係について両団体からお話がございました。ストレスチェックを別立てで定義するというような議論になったのは、その結果について十分に秘密保護が必要であろうということで、これを事業者にお伝えするときには一定の本人の同意というハードルが必要だと、一方で、一般健診の中に入ってしまいますと事業者は、理論的にはその内容を知り得るということになりますので、それと切り分ける必要があるという御議論でこのような形になったと理解しております。

 ただ、行政のほうでも、精神と身体を全く切り離すのが正しいと思っているわけではありません。既に一般健診の中の問診で、例えば睡眠とか、疲労とか、食欲とか、そういったことを聞いていただいているということは十分承知しておりますし、それを排除しようという考え方はございません。ただ、何度も申し上げますように、ストレスチェックの結果として保護すべき情報があるはずなので、そのストレスチェックの内容とか範囲がどのようなものなのかというところは更に専門家の方々と検討が必要だろうと思っております。

 それからもう 1 点、ストレスチェックに科学的根拠が不足しているという御指摘を頂きました。中村先生からは、精神疾患の早期発見のためには根拠が不足しているというお話がありましたが、今回の制度設計は、様々な議論を経て、精神疾患の早期発見ではなくてストレスチェックであると、高いストレスを持っている方を見分けていくということでしたので、その点は目的がやや違うのかなと理解しております。

 ストレスチェックの項目ですが、前回の検討時に簡便な方法として 9 項目を提示しておりますが、これは、既に専門家が様々検討されて広く用いられている職業性ストレス簡易調査票の 57 項目から抜粋したものです。この 57 項目については既に一定の使用実績もあり、一定の評価を経たものだと思っておりますが、そこから 9 項目抜き出したところについて検討がまだ不十分ではないかという面はあるかと思います。今後、両団体の先生方を含めた専門家の検討会といったところで更に実務的な検討をする必要があるかとは思っております。

○分科会長 ただいまの論点 8 につきまして御意見等はございますでしょうか。

○新谷委員 両団体のヒアリングでは非常に有益な御示唆を頂いたと思っております。両団体から言及のあった専門的な知見からのストレスチェックのチェック項目の内容については、更に行政のほうで、専門家の御意見も頂きながら中身の見直しを進めていくべきだと思っております。

 また、一般健診と精神健康状況の把握とが分離したように見えるという条文の作り方の問題もあろうかと思います、先ほど川上先生からは、第 66 条の括弧の除外の所については第 66 条の 10 との関係を書き込んではどうかという御示唆も頂いております。法律条文をそのまま読んだときに現場の産業保健のスタッフの方々が、これは有機的につながっているということが分かるような工夫が必要ではないかと思いましたので、そういったことも含めて御検討いただきたいと思います。いずれにしても両団体の御意見は、メンタルヘルスの対策は非常に重要であると、これはやはり一歩でも二歩でも進めるべきだという文脈の中で御指摘いただいたと思いますので、我々としてこの改正法案を早期に国会に提出してメンタルヘルス対策の強化を図るべきではないかと考えていることを、改めて申し上げたいと思います。

 もう 1 点は質問です。先ほどの中村先生の資料3の末尾に、非正規労働者は産業医活動が及ばないということが書かれてあります。非正規労働者は非常に増えておりますので、この対策も漏れることなくやるべきだという御指摘と捉えております。これは確認ですが、第 66 条の一般健診について、非正規雇用の適用除外については現在、雇用見込みと週の労働時間によって区分がされていると思いますが、第 66 条の 10 については、どのように捉えているのか、改めて確認させていただきたいと思います。

○泉労働衛生課長 最後の御質問の点につきましては、今の一般健診の規定と同様の扱いにすることになるのではないかと想定はしております。

○明石委員 大変貴重な御意見が聞けてありがとうございます。今日、平成 24 年度の労働者健康状況調査も出していただいているので、メンタルヘルス対策が重要だということは同意いたします。ただ、やはりこの中でいろいろな方策が取られておりまして、ストレスチェックだけではなくて、逆に、窓口があればいつでも相談はできる話かとも思いますし、少し咀嚼の時間を頂きながらまた、もっといい方法があれば、それも検討していきたいと思います。

9 項目については、先ほど新谷委員からも御意見がありましたように、我々も別に 9 項目にこだわる必要はないと思いますし、前回のここの建議を出す前の話では、 9 項目は 1 つのメルクマールというか、「 1 つ、この例として出します」ということで、これに付け加えることに関して、これを全面的に用いるようにということではありませんといったような議論がなされました。た今、 9 項目でいいのかどうかもありますし、企業で先進事例がいろいろありますので、この辺も含めて、また御検討いただきたいと思います。

○三柴委員 目下、精神障害として認定されるという事案が増えている、その他にも幾つかメンタルヘルス状況の深刻さを示すデータがあるわけですが、そういう状況がある中で、うつ病のスクリーニングということではなくて、労働者のストレスの状況を把握して、より深刻な状態になる前に予防のための措置を講じること、さらに職場の改善、いわゆる一次予防につなげることは非常に重要だと思います。本日頂いた学会からの御意見の中で、義務化までは不要ではないかという御意見も一部にありましたが、今回出ている法案自体、実際には、類似の内容という意味では、メンタルヘルス指針とか健康診断措置指針とか、そういったところに既に書かれていたにもかかわらず、それだけでは充分に対策が進まなかったという経緯を考えると、やはり一歩先に進めた措置も必要ではないかと思われますし、法制化による教育的・啓発的効果も考えられるように思います。

 実際問題として、今回予定された制度は手続的な枠組みを定めるものですから、要は活用法の問題であるということは、今日頂いた御意見からもうかがえると思います。まだ制度の骨格のみが示されている状態ですので明らかになっていない点もあるとは思いますが、今後も学会の方々のお知恵も拝借しながら、引き続き議論をしてまとめていくということで、制度の導入自体については問題ないのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

○角田委員 ヒアリングということで 2 つの団体から御意見を頂戴したわけですが、いずれも資料を見させていただいて、この法案に対する反対ということではなく、どちらかというと、建設的な御示唆を随分頂いているようなので、ここにご提出いただいている意見、見解がございますので、それを今後も生かしていくということで進めていければ大変よろしいのではないかと思います。両団体とも、積極的に協力するような趣旨のご発言もあったと思います。私たちも、そうしたことについて留意して進めて行けばよろしいのではないか、と思います。

○新谷委員 資料5-1の8メンタルヘルス対策の「検討の方向性」について、前回質問させていただいた点の確認をしたいと思います。ここでは「産業保健の知識を有する産業医がストレスチェックに関与することが重要」と書かれておりまして、全くそのとおりなのですが、前回指摘しましたように、派遣会社が産業医を派遣するという実事例が労働者派遣事業の許可申請で上がってきております。これについては、前回御質問したところ、労働衛生課長から情報収集をしてまいりたいという御答弁がありましたので、この実情と、こういうものが出てきたときの対応について行政としての考え方をお聞かせいただきたいと思います。

○泉労働衛生課長 前回の分科会で御質問いただきました産業医派遣の件ですが、需給部会の審議を経て平成 25 6 月に産業医を対象とした派遣を許可したという事案でした。当該派遣業の許可を受けた者に問い合わせてみましたところ、派遣業の許可は取りましたけれども現状としては、以前に産業医の有料職業紹介の許可を取得しておりまして、そちらだけをやっていて派遣は行わない予定であるという回答を得ました。私どもとしては、安衛法に規定されている産業医の職務は労働者の健康確保の観点から非常に重要であると考えておりますので、この事業者にも安全衛生法令の遵守に注意するようにお伝えいたしました。今後とも、安定局との情報交換を行いながら産業医活動が適切に行われるように対応してまいりたいと考えております。

○分科会長 よろしいでしょうか。ということで、今のヒアリング、それからここでの議論も含めまして、メンタルヘルス対策の充実が必要であると、そのためにはストレスチェック制度の導入と、そういう方向で検討を進めていくということかと思います。具体的にどういう制度にするのか、どう運用するのかということについては議論のあるところかと思います。資料の今後の「検討の方向性」に挙げている点、今日出ました御意見、あるいは、観点もいろいろ出ました。そういったものを含めて制度の具体化に向けた検討を深めていきたいと思います。ということでよろしいでしょうか。

 続きまして、論点 6 「施設等管理者」についてです。こちらについては、前回までの議論でガイドラインの周知を図っていくという共通認識となっておりまして、検討の方向性もそのようになっておりますので異論のないところかと思いますが、よろしいでしょうか。

○小畑委員 今お話がありましたように、「検討の方向性」に「国土交通省と連携をすることにより対策を進めてはどうか」とあるのですが、それの具体的なイメージについてお聞きしたいと思います。

 荷役作業の安全対策のガイドラインについては前回のこの分科会で、国交省のトラック輸送適正取引推進パートナーシップ会議に担当者を派遣して事業者あるいは荷主に対しての周知を行っているというような話がありました。しかし、国交省においてこのパートナーシップ会議というのは年に 1 回開催されるか開催されないかという開催頻度であると聞いております。こうした国交省と審議会との関係も含めてどのような形で連携をとっていくのか、そこの部分をお聞きしたいと思います。そもそも国交省は、運送事業者を指導監督する立場にはありますが、荷主を指導監督する立場にはありません。したがって、荷主による災害防止対策を進めるには、まずは厚労省が定めたガイドラインの周知徹底が極めて重要であると考えています。このガイドラインの実効性を高めるための具体策について、厚労省としてのその具体策についてお聞かせいただければと思います。

○奈良安全課長 ただいまお話がありました点につきまして御説明申し上げたいと思います。

 まず、荷役ガイドラインの周知に関する国交省との連携につきましては、今お話がございましたトラック輸送適正取引推進パートナーシップ会議、開催回数、年に一度程度ということですが、これにつきましては、本省、都道府県労働局が職員を派遣して協力をお願いしているというところです。また、国交省におきましては、 10 月から全国 47 か所で陸運事業者と荷主を対象としたトラック事業における荷主とトラック事業者のパートナーシップ構築セミナーというものを順次、開催することになっております。このセミナーに私どもから職員を派遣しまして、荷役ガイドラインの周知と協力をお願いすることといたしております。

 さらに、国交省との連携ばかりではなくて、私ども独自の取組も、当然のことながらしているところです。荷役ガイドラインを周知するための研修会は、全国 47 か所で実施しております。荷役ガイドラインを解説したパンフレット、陸運事業者向けの内容のものが 5 万部、荷主向けの内容のものが 7 万部ですが、これを既に作成いたしまして、労働局、監督署の指導の際に配布、活用するということで取組を進めているところです。また、荷役作業防止の担当者とか荷役作業実施者に対する安全衛生教育カリキュラムの策定を行っているところです。これにつきましては、実施困難な事業場につきましては、陸災防からも研修の実施を予定しているところです。テキスト類も今、陸災防で作成しているという段階です。

○小畑委員 そもそも、第三者に施設等を使用させる施設管理者に安全措置義務を課すべきかという議論がありました。これについては、一律に義務を課すのではなく、現場実態を踏まえた上で規制のあり方を検討すべきであり、さらにこれを実効あらしめるためにはこのガイドラインの周知徹底、これこそが一番重要だろうというような話で出てきた中身です。是非、その辺のところは今説明していただいたような中身で推進していっていただきたいと思います。

○分科会長 それでは、今ありましたように、ガイドラインの実効性を高めるという方向で進めていきたいと思います。

 それでは、論点 7 「規制・届出の合理化」についてはいかがでしょうか。特段ございませんか。それでは、第 88 条第 1 項の計画の届出については廃止の方向で検討するということにしたいと思います。

 それでは、論点 9 「受動喫煙対策防止」についてはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、資料にある方向性で進めさせていただきたいと思います。

 それでは、議題 6 「労働安全衛生関連法令に基づく指定事務の手数料の見直し」について、まず事務局側から御説明をお願いします。

○井内計画課長 資料 6 「手数料の見直しについて」です。厚生労働省の独立行政法人・公益法人等整理合理化委員会報告書に基づきまして、この安全衛生分科会に専門委員会を設置して、外部の有識者で構成される第三者委員会を開催して、その指定事務、試験等の手数料が適正であるかどうかについて御議論いただきました。その報告です。

 考え方としましては、今後 3 年程度の受験者とか登録者 1 人当たりのコストを推計して、現行の手数料との乖離度が平均しておおむね 10 %を超えるものについては均衡する水準に改定することが適当であるという考え方です。

 資料にいろいろ書いてありますが、 8 ページの最後の表に全てまとめてございますので 8 ページを御覧いただきたいと思います。試験手数料と登録手数料に分かれておりますが、免許試験につきましては、方針の所にありますように、平成 26 年度から平成 28 年度の試算による 1 人当たりの収支差はほとんどないということで据置き、改正案としては右、「現行維持」ということです。

 労働安全・衛生コンサルタント試験につきましては、 1 人当たりの収支差は約 3,000 円の赤字ではあるのですが、現行の手数料 2 4,700 円というのは高水準であるというようなことから、「更なる経費の節減による費用の抑制によって現行手数料の据置きとする」ということです。作業環境測定士試験につきましては、 1 人当たりの収支差はほとんどないため据置きと。下の登録手数料ですが、労働安全・衛生コンサルタントにつきましては、収支差が 1 670 円ということですので手数料を 1 万円値下げするということで、 3 万円から 2 万円に値下げと。書換えの手数料については、十分低い水準なので現行維持と。一番下、作業環境測定士ですが、 1 人当たりの収支差は約 7,000 円ですが、過去 3 年の実績による収支差が 5,300 円ぐらいであるということ。コンサルタントは、 2 万円とのバランスも考慮して 5,800 円を下げまして、 2 5,800 円を 2 万円に値下げすると。書換えの手数料については据置きとすると、そういう結果でした。第三者委員会にいろいろ御議論いただいてこういった結果にまとまったということを御報告させていただきます。

○分科会長 ただいまの件、御質問等はございますでしょうか。よろしいでしょうか。この件は報告ということですので、分科会として承ったということにさせていただきます。準備した議題は以上ですが、全体を通して何かございますでしょうか。よろしいでしょうか。

 これで全ての議題は終了いたしました。本日も熱心な御議論をありがとうございました。次回は、本日確認した検討の方向性に従い、議論を行っていきたいと思います。最後に、事務局から事務連絡をお願いいたします。

○井内計画課長 本日も熱心に御議論いただきまして、ありがとうございました。本日、ヒアリングで意見を述べていただいた団体の皆様には、今後もこの分科会の議論の状況をお伝えして、更に相談していきたいと思っております。次回の分科会は、 10 29 日、 16 時~ 18 時の開催を予定しております。

○分科会長 それでは、本日の分科会はこれで終了いたします。なお、議事録の署名につきましては、労働者代表委員は犬飼委員、使用者代表委員は栗林委員にお願いしたいと思いますので、よろしくお願いします。本日はお忙しい中、どうもありがとうございました。


(了)

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