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2013年6月21日 第3回 平成25年度化学物質のリスク評価検討会 議事録

労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室

○日時

平成25年6月21日(金) 15:30~


○場所

厚生労働省2階共用第6会議室


○議事

○岸室長補佐 本日は大変お忙しい中、またお暑い中御参集いただきまして、誠にありがとうございます。ただいまより、第3回化学物質のリスク評価検討会を開催いたします。本日は津田先生、池田先生、櫻井先生が所用により欠席、西川先生は他の所用がございますので、少し遅れて来られるということです。それでは、以下の議事進行を名古屋先生にお願いいたします。

○名古屋座長 それでは事務局から、資料の確認をよろしくお願いします。

○岸室長補佐 資料としては3分冊と1枚の資料をお配りしております。1つ目として、議事次第が一番上に付いている資料で、リスク評価書等があるものです。1枚めくった裏側に配布資料一覧があります。資料11ページから、資料251ページから、資料387ページから、資料4121ページから、資料5157ページから、資料6171ページから、資料7209ページからとなっております。2つ目の分冊は、参考資料の皆様に配布しているバージョンです。参考資料11ページから、参考資料25ページから、参考資料37ページから、参考資料411ページからとなっております。机上配布としては参考資料56がもう1分冊あり、参考資料51ページから、参考資料643ページからとなっております。また、N,N-ジメチルアミドと、N,N-ジメチルホルムアミドの尿中代謝物測定調査という表をお配りしております。

○名古屋座長 皆様、大丈夫でしょうか。それでは本日の議事に入りたいと思います。第1ということで、平成24年度のばく露実態調査対象物質のリスク評価について、事務局から1物質ずつ、資料1からよろしくお願いします。

○中西化学物質情報管理官 それでは、資料1の酸化チタン(ナノ粒子)について御説明したいと思います。資料の2ページを御覧ください。まず、物理的性状等についてです。(1)が化学物質の基本情報です。名称は酸化チタンです。物理的化学的性状は、外観は無色から白色の結晶性粉末です。(3)の生産・輸入量、使用量、用途ですが、用途についてはルチル型が化粧品、塗料など、アナターゼ型が光触媒などに使われております。

2が有害性評価です。詳細は別添1及び別添2に添付しております。(1)の発がん性についてはIARC2B、ヒトに対する発がんの可能性があるということです。これは2010年のものです。そのほかに3ページの上のほうにありますように、産衛学会などでは設定無し、ACGIHではA4などに分類されております。閾値の有無の判断は有りとしております。その根拠は、遺伝毒性試験でin vitro及びin vivoで陽性反応が得られているが、二次的な遺伝毒性と考えられるというところで、有りとなっております。

(2)が発がん性以外の有害性です。急性毒性について、酸化チタン(ナノ)についてはラットの経口毒性が示されております。そのほかに皮膚刺激性/腐食性は無し、目に対する重篤な損傷性/刺激性は無し、皮膚感作性は無し、呼吸器感作性は無し、反復投与毒性は有り、生殖・発生毒性は判断できない、遺伝毒性は有りというようにまとめております。

(3)が許容濃度等です。ACGIHTLV-TWA10mg/m3(1992)、二酸化チタン全体を対象としており、ナノ粒子には限らないということで設定されております。ACGIHでは、発がんに関する分類ということでA4、ヒトに対する発がん性については分類できないとなっております。4ページを御覧ください。4ページの上のほうにありますように、ACGIH以外の許容濃度等については、このように設定されております。

(4)が評価値です。一次評価値は評価値無しです。二次評価値は0.15mg/m3 です。これについてはラット、マウス、ハムスターの13週間吸入ばく露試験より、試験の気中重量濃度によるNOAELを、ヒトのばく露濃度に換算した値を二次評価値としたということで設定していただいております。

3がばく露実態評価です。(1)が有害物ばく露作業報告の提出状況です。詳細は別添3に添付しております。こちらは平成21年に酸化チタンとして、有害物ばく露作業報告を求めております。合計920事業場から、4,123作業について報告がなされております。主な用途は顔料、染料、塗料又は印刷インキとしての使用で、ほかの製剤等の製造を目的とした原料としての使用などです。また、主な作業の種類は計量、配合、注入、投入又は小分けの作業などです。

(2)がばく露実態調査です。有害物ばく露作業報告を基に、平成22年度にばく露実態調査を行っております。このときは酸化チタンということで、調査を行っております。そうしましたら丸数字1丸数字2にありますように、酸化チタンを塗料として使用する粉体塗装の作業と、酸化チタン(ナノ粒子)を製造する事業場で臨時に行われたふるい分けの事業で、高いばく露が見られたということです。このため、酸化チタン(ナノ粒子)について調査をするということで、関係業界団体から酸化チタン(ナノ粒子)を製造し、又は取り扱っている事業場をお教えいただきまして、平成24年度に9事業場を選定し、ばく露実態調査を実施しております。対象事業場においては、製造又は取扱作業に従事する25人について個人ばく露測定を行い、1単位作業場において、作業環境測定基準に基づくA測定を行い、26地点についてスポット測定を実施しております。測定分析法については別添4に添付しております。

 対象事業場における作業の概要ですが、対象事業場における酸化チタン(ナノ粒子)の用途は、ほかの製剤の製造原料として使用又は対象物質の製造です。酸化チタン(ナノ粒子)のばく露の可能性のある主な作業は、梱包、充填、投入等の作業でした。また、大多数の作業場では局所排気装置が設置されており、全ての作業において作業者は防じんマスクを着用しておりました。

 測定結果です。個人ばく露測定の最大値は、対象物質を製造している事業場における包装作業場での袋パレット積作業で、1.644mg/m3 でした。また、全データを用いて信頼率90%で区間推定した上限値(上側5)は、2.887mg/m3 となっております。この結果、二次評価値0.15mg/m3 を上回っているという状況です。

5ページ、4のリスクの判定及び今後の対応です。以上のことから、酸化チタン(ナノ粒子)については今後、更に詳細なリスク評価が必要である、その際、酸化チタン(ナノ粒子)を取り扱う作業、特に当該物質の製造工程における充填、梱包作業を行う事業場に対して、当該作業に係る追加調査を行い、当該作業工程に共通した問題かをより詳細に分析する必要がある。また、詳細なリスク評価の実施に関わらず、当該物質は発がん性が疑われる物質であるため、事業者は製造・取扱作業に従事する労働者等を対象として、自主的なリスク管理を行うことが必要と考えるとしております。6ページに個人ばく露測定結果、ばく露実態調査の集計表を掲載しております。

 そのほかに別添1の有害性総合評価表については、9ページを御覧ください。発がん性の所ですが、IARCの発がん分類2Bを私どもは誤って訳しており、津田先生から御指摘いただきました。2Bの訳は「ヒトに対する発がんの可能性がある」というのが正しい訳ということで、修正させていただいております。13ページからの有害性評価書についても、同じように29ページに修正を入れております。酸化チタン(ナノ粒子)については以上です。

○名古屋座長 評価値の0.15mg/m3 を超えておりますので、このまま行きますと詳細リスク評価に行くという手順になると思いますが、その前に何か質問等はありますか。

○花井委員 (4)に書いてある評価値についてです。二次評価値が0.15mg/m3 というのが、どこから持ってきたかというのが分からないのです。8ページの別添資料を見ていましたら、この上にあるのですが、これも引用文献が書いていないのです。後ろを見れば何かあるということですか。あるのでしょうけれども、もうちょっと書いてくださってもいいのではないかという気がします。

○大前委員 後ろのほうの投与毒性のどこかに吸入ばく露が。

○花井委員 これはどこかが自分でやったデータですか。それとも外国のデータですか。

○大前委員 これは外国のデータだと思います。今直ちに見つからないのですが。

○花井委員 では、後で探しますからいいです。

○名古屋座長 どこかに分かるような形でということでよろしいですね。計算は多分このとおりだと思いますので、出典が分かるような形にしておくと。

○花井委員 どの部分をどこで使うかによりますけれども、もうちょっと分かるようにしていただきたい。

○名古屋座長 いずれにしても、この0.15mg/m3 を使いましたということですね。分かりました。

○花井委員 それから、このタイトルが「酸化チタン(ナノ粒子)」となっていますね。前にもどこかで申し上げたかもしれませんが、最初に物理的性状などが書いてある話というのは、ナノと限定しない顔料とか、いろいろなものを含んだ酸化チタン全体ですよね。後ろのほうで毒性うんぬんを議論する所には、ナノ粒子には限らないという注意書きがあるのです。もしそうだとすれば、その辺はもう少し早い時期にそれを書いて、酸化チタン全体におけるナノ粒子の位置付けみたいな記述があってしかるべきだと思うのですが、どうでしょうか。

○名古屋座長 ナノの酸化チタンの前に1回、総粉じんとしての酸化チタンをリスク評価していますので、今回はナノ粒子を中心にリスク評価したということで、ここのタイトルがナノ粒子になったと思います。

○花井委員 それだったら、そのこともどこかに書いてあってもいいのではないですか。

○名古屋座長 分かりました。

○鷹屋委員 二次評価値の0.15mg/m3 の粒径が指定されていないのです。後ろの分析法などはPM4.0で指定しているのですが、これは吸入性粉じんについてチタンが0.15mg/m3 という意味ですか。

○名古屋座長 そうです。

○大前委員 いや、これはナノサイズの吸入だと。

○鷹屋委員 材料としてはナノサイズですけれども、気中濃度を評価するときには、少なくともこの分析法で捕集するのは、吸入性の分だけを取っているのです。

○名古屋座長 ナノ粒子を対象にしたサンプラーで測定するのではなくて、ナノ粒子の凝集体を含めて測定対象であることからNW354サンプラーを用いて吸入性粉じんの測定を行い、評価値だけナノ評価値を使いますという行き方をしておりますが、それでよろしいですか。

○鷹屋委員 逆に、インハラブルで取るという意味ではないということも。

○名古屋座長 そういうことです。

○花井委員 それに関連して、同じことですが、別添4の分析法もPM4.0としてサンプリングと書いてあって、今の話に行ったのです。表題が「ナノ粒子の酸化チタン」となってくるとこの表題は、例えば「吸入性の酸化チタンの分析法」という表現にしたほうが間違いないと思うのです。

○名古屋座長 ナノの場合は、もともとナノ粒子を扱うときに凝集体になったときは、ナノの取扱いにしようとなっている部分と、その辺が難しい。例えば顔料を扱っている所と、そうでない化粧品を扱っている所とでは、当然粒径が違いますので、それから原材料が混在していますよね。そういうことがあるので、住み分けが難しいのですが、今回の場合はナノを対象にして測定をするときに、ナノのサンプラーを使うのではなく、吸入性粉じん測定用のサンプラーを用いてナノ粒子を測定し、その測定結果をナノ粒子の評価基準で評価するという流れです。

○花井委員 ですから、分析の技術としてはそういうことだと思うのですが、リスク評価というか、有害性などを評価するときは、やはりサイズは重要だということと、サイズの分布とか、一次粒子なら一次粒子としてこういうものがあるというのを、ちゃんと見ておく習慣を付けるというか、そういうことをちゃんとやっていかないと、将来、いろいろなものがごちゃごちゃになって分かりづらいのではないかという気がするのです。これは私の意見です。

○名古屋座長 それは測定方法のときにどうするかですよね。もともとナノではない粒子、顔料などは大きな粒子ですから、ナノではありませんよね。それは多分、吸入性粉じんで評価する。ここはナノ粒子に対してリスク評価をするので、測定は吸入性粉じんですが、評価はナノ粒子の0.15mg/m3 になっている。今回のリスク評価はあくまでもナノ粒子の酸化チタンの評価を行うと言うことで。

○花井委員 今、分析の細かいことは分かりませんが、ここに書いてあることを素直に読むと、チタンの分析法としてはこう書いてあるのです。チタンの酸化物とか、そうでないものといった、いわゆるキャラクタライゼーションの観点が、もう少しあってもいいのではないかと思うのです。一般の有機物の場合は余り問題にならないかもしれませんが、粉体とか金属粒子の場合は、そういうところはもう少しどこかで押さえておく必要があるように思います。

○名古屋座長 ナノ粒子の分析のときに、この委員会の下に分科会が設置されてそこで検討しました。もともとナノ粒子を扱っている所は吸入性粉じんを測定して、評価はナノ粒子で評定がいきますよと。ただ、もともと吸入性粉じんのときは、評価値は分かりませんけれども、吸入性粉じんの評価値を使って評価を行うと答申はしているのです。ここはナノ粒子だけに特化してリスク評価をして、ほかの所の粉じんについての粒子径は、まだここには反映されていないということです。分科会で議論した時、難しかったのはナノ粒子と吸入性粉じんが混存しているものです。そのときにどちらを測定するのかというところが、いまだにクエスチョンになっているのです。

○花井委員 分けて測定するというのは、また非常に難しいところです。どういうものを測定したかというのを、はっきりさせる必要があります。

○名古屋座長 ここは飽くまでもナノ粒子を対象にして吸入性粉じんを測定して、0.15mg/m3 で評価したらという評価法になるということです。これは後で確認したいと思います。いずれにしてもその方法でいくと、ここは最初はリスク評価がいきますから、そのときに今の測定方法と併せて再度検討が要るかどうか、検討したいともいます。あとはよろしいですか。

○西川委員 4ページの評価値に関することです。一次評価値は無しですね。私も十分理解していないのですが、9ページを見ますと、通常の遺伝毒性試験では遺伝毒性有りとなっています。それから3ページの閾値の有無の判断については有りとあって、遺伝毒性で陽性反応が得られているけれども、2次的な遺伝毒性と考えられるので、こういう判断になったかと思います。2次的な遺伝毒性と考えられる根拠として、26ページ辺りに培養細胞を使った幾つかの試験があって、活性酸素種が発生しているとあります。それが2次的な遺伝毒性という意味だと思うのですが、in vivoでそれを確認した試験は多分ないと思うのです。したがって、ここで閾値有りと言う必要があるかどうかについて確認したいのです。最初に用いた一次評価値はないですよね。したがって、閾値の有無の判断はできないということでは駄目なのでしょうか。

○大前委員 一次評価値はほかの機関等々でユニットリスクは出していないので、もともとないということでいいのです。2次的な遺伝毒性という話ですけれども、in vivoでそういう証拠がないのではないかというお話がありました。ナノのチタンの実験の中で、オーバーロードを起こして発がんを起こしているものはあるけれども、オーバーロードにならない状態では発がんが起きていないということで、オーバーロードの起きた所で肺の中で2次的な遺伝毒性が起きたのだろうという評価で、こういう形になっていました。そういう意味ではin vivoでも情報はあったかと思います。

○西川委員 今の御説明は、in vivoでエンドポイントと言いますか、何を指標にして検討したものだったのでしょうか。

○大前委員 1濃度か2濃度ぐらいの発がん実験だったと思います。

○西川委員 あれは別の実験、リフラクトリーセラミックファイバーのことではないでしょうか。

○江馬委員 Heinrichらの発がん試験があったと思います。詳しくは覚えていないのですが、オーバーロードが原因だっただろうということは記載しております。

○西川委員 とはいえ、これまで発がん性閾値があるかないかというのは、遺伝毒性があるかないかで判定していたと思うのです。それと比べると、これはまた違った見方をしているわけです。したがって、もし閾値があると断言できるのであれば、それなりの根拠が必要かと思いますし、それが難しいのなら判断できないということにすると、評価ができなくなってしまうのでしょうか。一次評価は無しということですが。

○大前委員 一次評価値はもともと提案されていないので、これはないということでいいと思います。今おっしゃった2次的な遺伝毒性に関しては、今までは細胞の試験で毒性があれば、遺伝毒性は無しということでやっていたのですけれども、この物質と。この物質が初めてですか。この物質が初めてになりますか。何かもう1つ。

○清水委員 確かそうですね。

○大前委員 それもオーバードーズのところで、こういう考え方にしようということです。そういう意味では、少し考え方が変わったということにはなります。

○西川委員 閾値があるとしないと評価はできないものなのでしょうか。判断できないというのは駄目ですか。

○大前委員 閾値があるという判断をしたので10で割って、それから時間を掛けてそこの数字になっているのですけれども、判断できないというのは、今まではどうしていましたか。

○内山委員 判断できなくてもPM2.5というのは、まさに閾値があるかどうか分からないということで。ただ、そのときは閾値があるからということではなくて、非常に苦しい解釈をしているのですけれども、PM2.5は今のところ、閾値があるかどうか分からないということです。ですから、全く評価できないというわけではないと思います。

○名古屋座長 この中で言う閾値の有無というのは、「有り」という形の表現でよろしいですか。

○大前委員 これはそういう形で作っているのですが、閾値有りというところを判断できないとした場合に、どうなるかということです。

○名古屋座長 どうしましょう。

○圓藤委員 判断できないのだったら「参考値」になります。

○名古屋座長 判断無しとしてもPM2.5と同じ形だから、二次評価値は別に設定すれば問題ないと。有りとすると、どこを直すか。このままでいいのか。この辺の表現の扱いをどうしましょうか。

○宮川委員 有害性評価小検討会等でいろいろと議論してきた上でできたものだと思うのですが、両方集まったこの段階で、非常に微妙なところで御意見が出るということであれば、もう少し確認と検討をしたほうがいいという気がします。

○大前委員 今の数字自体は発がん性で判断しているわけではなくて、肺の炎症で判断していますので、これは構わないと思うのです。そういう意味では、遺伝毒性で判断できないと書いても数字は変わらないと言いますか、読み方は全然変わらないので、それは構わないのです。ただ、今まで統一的にどうやってきたかという記憶が余りないのです。

○名古屋座長 詳細リスク評価に問題はないのです。そこの所で議論をしていただいたものを詳細リスクに戻すときに、表現をちゃんとしようという形でよろしいでしょうか。

○宮川委員 ほかの所も、エンドポイントごとに前は「判断できない」というのと「有り」と「無し」というのが普通であって、それ以外は余りなかったと思います。発がん性の表現については、IARCの直訳に合わせて表現を変えたということですね。IARCの判定の部分の日本語訳としては「疑いがある」ではなくて、「可能性」でよろしいと思うのですけれども、発がん性の有り無しの判断を、今までは必ずしもIARCの表現に合わせていたわけではなかったと思います。その辺の細かい表現については、多少検討の余地があるということで、今日のところはよろしいのではないかと思います。

○名古屋座長 これもまた大前先生のところでよろしくお願いします。

○宮川委員 それともう1点。現在の表現ですと、これを見た人が現場調査で測定されているものが、もともと一次粒子がナノサイズであった二酸化チタンを取り扱っている事業場だけを見たのか、それよりも大きいものが混じっている所を見たのか。括弧して「ナノ」と書いてあるだけだと、いろいろ混じっている中からナノ粒子を測定したというように誤解されやすいところもあるかという気がします。例えば表だけを見たような場合です。その辺が心配です。

○名古屋座長 私が知る限りにおいて、今回の場合はナノ粒子を対象にしておりますから、凝集体の所を測定しています。ナノより大きい酸化チタンを取り扱っている所は測定していないのです。凝集体を含めた形で測定しています。

○宮川委員 一次粒子がナノサイズのものの所に限ってやっているということですね。

○名古屋座長 そういうことです。そこだけに限定して測定をしています。ですからこの後も多分、そういう形での詳細リスク評価になる。では、吸入性粉じんはどうなるのだろうというところは、この後で事務局と議論していかなくてはいけないことかと思います。測定したということで、それで大丈夫ですよね。ナノを対象にして凝集体をやっても、測定のやり方は一緒ですよね。

○東久保氏(中災防) はい、そうです。一次粒子径についても、データをいただいて実施しております。

○名古屋座長 そうしますと、ナノ粒子を対象にしたところで、また詳細リスク評価に移るという形でよろしいですね。ありがとうございました。

 次に第2の資料、ジメチルアセトアミドということで、これも事務局からよろしくお願いいたします。

○中西化学物質情報管理官 そうしましたら、資料51ページからN,N-ジメチルアセトアミドの初期リスク評価書案です。

52ページを御覧いただけますでしょうか。1番、物理化学的性質(1)化学物質の基本情報ということで、N,N-ジメチルアセトアミドの情報を記載しております。(2)物理的化学的性状ということで、外観が刺激臭のある無色、油状の液体です。蒸気圧は0.33kPa20℃です。(3)生産・輸入量、使用量、用途です。用途は反応溶媒や精製溶剤、樹脂溶剤などに使用されています。

2有害性評価の結果です。詳細は別添1及び別添2に添付しています。(1)発がん性。発がん性についてはIARC、産衛学会などでは設定は無しとなっております。ACGIHA4です。今回、日本バイオアッセイ研究センター試験報告書、2013年に報告がありましたそちらを記載しています。ラット、マウスにN,N-ジメチルアセトアミドを吸入ばく露させて発がん性を調べた結果です。雄ラットや雄マウスなどでそれぞれ腫瘍の発生などが見られています。また、雌マウスでも同じように腺腫などの発生増加が認められていますので、この結果を記載しています。

 閾値の判断ですが、こちらについてはバイオアッセイ研究センターの試験報告は加味していない状況で、判断できないと記載しています。※注意書きとしては、なお日本バイオアッセイ研究センターの試験報告書に基づき、閾値有りとして計算した場合は、下記のとおりということで記載をさせていただいています。

(2)発がん性以外の有害性です。急性毒性はマウス、ラット、ウサギでそれぞれ表のようになっています。また、皮膚刺激性/腐食性は有り、目に対する重篤な損傷性/刺激性は有り、皮膚感作性は報告無し、呼吸器感作性は報告無し、反複投与毒性については有りで、ラット吸入ばく露においては肝臓・腎臓の重量の増加、肝臓の細胞変性及び脂肪変性等が見られています。また、マウス吸入ばく露の試験では、肝臓重量の増加、網膜萎縮の頻度増加等が見られています。生殖・発生毒性については有りです。母動物の体重増加抑制と肝細胞肥大、胎児の体重と生存胎児数低下、胎児の内臓と骨格の奇形等がラット吸入ばく露試験で見られています。遺伝毒性については判断できないということです。

54ページです。(3)許容濃度等です。ACGIH、日本産業衛生学会では同じく10ppmとしています。

(4)評価値です。一次評価値は4.5×10-1ppmです。こちらは先ほどありました日本バイオアッセイ研究センターのマウスを用いた吸入によるがん原性試験結果より算出しています。二次評価値としては10ppmで、ACGIH、産衛学会が勧告しているばく露限界値とし、許容濃度を一次評価値としています。

3ばく露実態評価です。有害物ばく露作業報告の提出状況です。詳細は別添3に添付しています。平成23年におけるN,N-ジメチルアセトアミドの有害物ばく露作業報告は139事業場から292作業についてなされています。主な用途は溶剤、希釈又は溶媒として使用、ほかの製剤等の原料として使用等です。主な作業は計量、配合、注入、投入又は小分けの作業などです。

(2)ばく露実態調査結果です。今回、有害物ばく露作業報告のあった事業場から、平成24年度には7事業場を選定して、ばく露実態調査を実施しています。対象作業場においては製造又は取扱作業に従事する25人について個人ばく露測定を行うとともに、4単位作業場において作業環境測定基準に基づきA測定を行い、43地点についてスポット測定を実施しております。

55ページ上です。測定分析法は別添4に添付しています。対象事業場における作業の概要です。対象事業場におけるN,N-ジメチルアセトアミドの主な用途は、ほかの製剤等の原料としての使用でした。N,N-ジメチルアセトアミドのばく露の可能性のある主な作業は、計量、原料投入、サンプリング、抜き取り、ろ過、点検、充填等の作業で、一部の作業場では局所排気装置が設置されていない屋内で行われていたというところです。

 測定結果としては、個人ばく露測定の最大値は、他製剤の製造原料として使用している事業場における溶液の移送・ろ過・抜き出し及び溶液槽の洗浄作業で、値が4.964ppmでした。

 また、今回得られた25データはコルモゴロフ・スミルノフ検定、K-S検定で対数正規分布には適合しなかったということで、今回、個人ばく露測定の最大値4.964ppmを評価値と比較したところ、評価値よりも低い水準となったところです。

4リスクの判定及び今後の対応です。以上のことからN,N-ジメチルアセトアミドの製造・取扱事業場におけるリスクは低いと考えられるが、当該物質はヒトに対して発がん性が疑われる物質であり、事業者は当該作業に従事する労働者等を対象として、自主的なリスク管理を行うことが必要と考える。なお、N,N-ジメチルアセトアミドは経皮吸収性が極めて高いことから、十分注意が必要であり、この観点からも事業者により自主的なリスク管理が必要であるとしております。

 続いて56ページに個人ばく露測定の結果、上位15データのグラフ、ばく露実態調査集計表を記載しています。別添1については有害性総合評価表です。これについては61ページを御覧いただけますでしょうか。委託事業で御作成いただいた有害性評価書の総合表については、バイオアッセイ研究センターの試験報告の分が記載されておりませんでしたので、そこの部分を追加して修正案を作っています。

 資料61ページ、発がん性のところですが、発がん性の有無について、今現在ヒトに対して「発がん性が疑われる」という文章になっていますが、ここはできればIARC2B相当でヒトに対する「発がんの可能性がある」という文言に直させていただけたらと考えています。

 以上ですが、実は追加資料で1つ、先生方のお席にだけ配布させていただいていますが、今回、圓藤先生からN,N-ジメチルアセトアミドとN,N-ジメチルホルムアミドの尿中代謝物測定の調査の結果をいただいております。経皮吸収性が極めて高いというところで、この値も測定の調査の結果も加味した上で、今回のリスク評価書をどのようにまとめたらよいかということで、御検討いただけたらと思います。よろしくお願いします。

○名古屋座長 何か質問等はありますでしょうか。基本的にはこのままですと、自主的な管理ということで、詳細リスク評価で終わるということで、そうは言っても圓藤先生のデータを見る限りでは経皮吸収性があるということなので、やはりそれを注意喚起したような形での自主管理にもっていかなければいけないということで、その辺は先生いかがでしょうか。

○圓藤委員 ただ、このN,N-ジメチルアセトアミドには発がん性があり、しかも肝がんが出ていることと、労災では肝障害、劇症肝炎が起こったり、中毒性肝炎が起こっていたりするので、ここはもう1つ、何かきちんと入れてほしいと思います。そしてもう1つは、N,N-ジメチルホルムアミドも発がん性が認められたということで、その代替溶剤としての使用に切り替わっていると思うのです。実際にピークを見てもらうために、N,N-ジメチルホルムアミドの受託件数は13,878と書いてあるのですが、全体でいうと47,000検体ぐらいあるのです。そのうちで、NMACのピークの有無を見てもらったのが、これだけの検体ということなのです。ですから、実際にはもっと入っている。ですからN-ジメチルアセトアミドは今測定義務がないので、これは自主的に測定された結果でこれしかない。だから、実際にいうともっともっと使われているということなのです。だから、測定していない所でも、この1割ぐらいの可能性が出るとしたら、かなりの数があるのではないかと思うのです。たまたま今回、気中濃度を測った所は低かったのですが、必ずしもそうとは言えず、しかも、経皮吸収性が非常に大きい物質なので、こういう物質については気中濃度測定だけではなくて、同時にバイオロジカルモニタリングをして、実際に生体にどのくらい入っているかというのを調べてからでないと、評価は難しいのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

○原委員 すみません、数字が全然思い出せないのですが、この30 mg/Lというこの数字はACGIHの基準値ですか。

○圓藤委員 そうです。これは10ppmに対応するBEIです。

○名古屋座長 そうすると、これは本来ですとばく露からいくとリスクは終わるのだけれども、もう少しそこだけではなくてほかに、要するに自主的な管理の中で厳しくこういう状況があるよとするのか、そうではなくて、もっと行政的にきちんと何かほかの測り方をして、実態をきちんと把握していって規制をかけるのかという形の2通りあると思います。先生は逆に言うと、リスク評価だけで注意喚起するのではなくて、きちんと。

○圓藤委員 有機則に入ってもいいと思うのです。

○大前委員 今、リスク評価は環境濃度だけを対象にしますが、こういう物質とか、長期にわたって体内に蓄積する物質は、そのときの気中濃度だけではリスク評価できないと思うのです。だから非常に吸収の多いもの、蓄積が長いものに関しては気中濃度プラスバイオロジカルモニタリングを使ったリスク評価を考えなくてはいけないと思います。今はまだそういうルールがないので気中だけですが。それをやらないと環境中、大気中は低いけれども、実はたくさん吸収している、若しくはもう過去に溜まったものが悪さをしているということはいっぱいあると思うのです。今回は時期的に無理ですがそういうことを考えていったほうがいいと思います。

○名古屋座長 今すぐとは言いませんが、今までのばく露のガイドラインのところの記述を少し直して、そういう形のものに対してはどう対応するかという手直しをする必要が、だんだん出てきているのかなということでしょうね。これはどうしましょうか。ここのところはすぐ決断できないので、次回以降の検討会でもう一度という形にしてもよろしいですか。そこは事務局、ちょっと判断していただけますか。どうしましょうか。本来のところとはちょっと評価の方法が違ってきているという、特に経皮毒性と蓄積性があるという形の中で、このままではなかなか難しいかなと思いますが、どうしましょうか。

○岸室長補佐 考えていたのは、この前、動物試験の評価をして、がんの指針の対象になるということですので、そこのところで経皮吸収のことについて触れて、そこでのばく露防止をしっかりしてくださいねということは注意喚起はしようと思っています。今後に向かって、バイオロジカルの測定が必要であるということであれば、その辺りはまたガイドラインの修正とかも必要になるかと思いますので、その辺はまた図っていきたいと思います。いずれにしてもここで特に大切なのは経皮毒性が強いということで、そこは早めに業界等につなげて、使っている所に役所のほうから通達とは言いませんが指導するという形で、その後の取扱いのところは。

○圓藤委員 予防指針は出るわけですね。

○岸室長補佐 そうですね。

○大前委員 参考までですが、うちの教室でやった実験でACBMの両方なのですが、実験室レベルの話ですが、経気道ばく露のみと経皮ばく露のみをヒトでやりまして、尿中の代謝物で見て、大体半々ぐらい吸収されます。実際にDMFを使っている、ゴム手袋を作っている工場で同じようなことをやらせていただきまして、そうなると当然労働負荷がありますから、経肺吸収のほうが多いのですが、それでもやはり3分の1か、4分の1ぐらい経皮吸収で説明できるくらい入りますので、参考までに申し上げました。

○名古屋座長 そこのところは何らかの形で早めに現場に伝えてあげたほうがいいですね。

○圓藤委員 一度調査をしてみてもいいのではないですかね。対象作業場の尿をもらって。

○名古屋座長 今日は結論は出ませんが、その後の行政のところでまた細かい打ち合わせ等は要ると思いますが、今日のところでは、ばく露については詳細リスクまではいきませんが、何らかの対応をしていただくという形で、また必要に応じて今までのガイドラインを変えることとか、こういう形についてどう扱うかということは、また別の委員会で検討できるようにしていただければという形で止めたいと思いますが、それでよろしいでしょうか。

○西川委員 54ページに一次評価値があります。その計算式が62ページにあります。これはバイオアッセイの新しい報告書に基づいているのですが、その上といいますか、閾値の有無について判断できないとある部分ですが、この計算式はNOAELを基に計算してありまして、閾値有りという判断で計算されたものと考えられます。この辺りは大丈夫でしょうか。

○名古屋座長 これはどうでしょうか。

○大前委員 今のところですが、正に文書でバイオアッセイ研究データに基づき、閾値有りとして計算した場合ということで計算してあります。それは4.5×10-1 ということです。閾値無しと計算した場合は今回は結果はないのでちょっと分かりませんが。

○西川委員 61ページに遺伝毒性のところですが「判断できない」とあるのですが、それを遺伝毒性は無しという判断の基に閾値有りということになっているのでしょうか。

○宮川委員 私の記憶だと、遺伝毒性がもし有りの場合にはユニットリスクがないと計算できないから扱わないということになって、閾値があるということであれば、LOAELNOAELがあれば計算できるので計算するということたったので、これについてはユニットリスクがなかったので、それによる計算を採用しなかったというように記憶しています。閾値有無の判断ができない場合には、片方は計算のしようがなくて、片方はこういう計算になるということで、閾値有りとして計算したほうだけ使っているということだと思います。

○名古屋座長 特段表現を直さなくても大丈夫でしょうか。

○宮川委員 そういうように仮定を置いて求まった一次評価値を、一次評価値が求まったとはっきり書いてしまうのか、参考として書くかは判断が分かれるところだと思います。私としてはもしきちんと求められた一次評価値があるのであれば、グラフのほうに0.45の線も引いておいて、多くのところが一次評価値は越えている可能性もあるのだということを見せたほうがいいし、またここの一次評価値が仮のだということだとすると、そこまではやらなくてもいいのかなという気もしています。

○名古屋座長 分かりました。

○花井委員 確認なのですが、日本バイオアッセイの報告書の中で、閾値有り、無しということを判断しているのですか。

○大前委員 いや、それはしていないと思います。

○花井委員 それは向こうはデータだけが出ていて、こちらで判断すると。

○大前委員 はい。

○名古屋座長 ということは、一次評価値のところの中で、バイオアッセイで計算したらこうですよという経緯は書いてありますが、そこを使うかどうかのところの表現は、これはこれでよろしいですか。そうすると、きちんと書いてしまうと。

○宮川委員 今までだと、参考と書いておいて、一次評価値も参考として、したがってグラフのほうには書かないというのでは。

○名古屋座長 このままだとグラフに書かなければいけませんよねということですが、それはどうしましょうか。この扱いをどうしたらよいでしょうか。

○大前委員 これは有害性評価のところで何らかのルール付けをせざるを得ないと思いますので、今日の段階では参考くらいで付けておきますかね。そして将来的にはどうするかはまた別の機会で。

○名古屋座長 一応参考という形にして、グラフにはまだいかないという形で、今日はとどめておく形で。いずれにしてもこの後、もう一度検討しなくてはいけないことだと思いますので、今日のところは一応そういう形でとどめていただいて、経皮毒性についてはかなりありますので、この後、どういう扱いをするかということで、またこの後の委員会で検討したいと思います。

○宮川委員 61ページの発がん性ののところで、バイオアッセイのデータを使うことにして、ヒトに対して発がん性が疑われるという形になりましたが、ここはIARCの訳ではなくて、強いて言えばGHSの訳に近いと思うのですが、ここもヒトに対してうんぬんということは、今まではわざわざ書いていなかったかもしれないと思います。動物実験だけがあるときにですが。その辺も「ヒトに対して疑われる」という書き振りをするのかどうかについても、いろいろな条件によって違ってきますし、世の中に与える印象も違いますので、是非御検討をいただきたいと思います。○名古屋座長 先生のところでよろしくお願いいたします。それでよろしいですか。これを検討して、また直す。その結果において文章を変える可能性はありますねということでよろしいですか。分かりました。ありがとうございます。そうしましたら、そういう形で対応させていただきたいと思います。

 それでは次の物質、金属インジウムということで、よろしくお願いいたします。

○岸室長補佐 資料3を御覧ください。インジウムについては、88ページから文章がありますが、これまでの経過を説明いたします。419日のばく露評価小検討会でばく露値の検討がされ、その後、52日の有害性評価小検討会で評価値等の検討がされました。金属インジウムについては、有害性に関する情報が不足していることから、今後の調査研究の進展を待って評価するとの結論に至りました。今年度中にリスク評価を終えることができないため、中間報告としてこの資料をまとめました。そういう前置きで説明させていただきます。

 インジウムの基本的情報としましては、分子量は114.82。物理化学的性状としては、銀白色の軟らかい金属、比重は7.282、融点は156.6℃です。物理化学的危険性としては、不燃性で、粉末や顆粒状で空気と混合すると粉じん爆発の可能性がある。また、強酸や強酸化剤、イオウと反応し、火災や爆発の危険をもたらす。

 生産量は2009年のデータで70トン。リサイクルは2006年のデータで543.6トンです。輸入量は2009年のデータで215トンです。用途としては、銀ろう、銀合金接点、半田、低融点合金、液晶セル電極用、歯科用合金、防食アルミニウム、テレビカメラ、ゲルマニウム、トランジスタ、光通信、太陽熱発電、電子部品、軸受金属、リン化インジウム結晶の原料として使われています。

 有害性評価の結果及び経過についてです。インジウム及びその化合物については、平成21年度に初期リスク評価を実施し、問題となるリスクが確認されたことから、平成22年度において詳細リスク評価を実施しました。有害性評価については、平成21年度に評価書が作成されたが、その後得られたインジウム・スズ酸化物(ITO)について新たな知見を踏まえ評価の見直しを行った。その結果、インジウム及びインジウム化合物については、その製造・取扱いを行う全ての作業について高いばく露が認められました。インジウム化合物については平成2410月に特定化学物質に指定されましたが、溶融を伴わない金属インジウム又はその合金の取扱作業については、「現時点においては有害性に関する情報が不足しているため、健康障害防止措置の適用を除外し、今後の調査研究の進展を待ち必要な措置を検討することが適当である」とされました。

 重視すべき物質性状とばく露ルートについては、インジウム及びその化合物は常温で固体(粉体又は結晶)であり、ほとんど気化しないが、粉末の状態で拡散するなどした場合は、取扱時の飛散によるばく露が問題となります。

 重視すべき有害性として、発がん性については、金属インジウム又はその合金について、発がん性に関する判断に有用な情報は得られていないということです。参考としては、リン化インジウムでは、ヒトに対する発がん性が疑われるため、IARCで「グループ2A」と分類した。また、バイオアッセイ研究センターで行われたITOでの長期吸入ばく露試験によるラットで発がんが確認されたことが根拠となっています。

90ページは、閾値の判断についてです。これは、リン化インジウムで閾値は有りとしています。また、閾値については、ITO0.01で、先ほどの日本バイオアッセイ研究センターの試験結果を基に算定されています。発がん性以外の有害性については、金属インジウム又はその合金について、発がん性以外の有害性に関する有用な情報は得られていないということです。参考として、インジウム化合物についての急性毒性や反復毒性その他有害性について、以下のとおり記載されています。

91ページの、許容濃度についてです。ACGIH1969年に、TLV-TWA0.1mg/m3(インジウムとして)と設定しています。これは、ラットを用いて酸化インジウムを2497mg/m3 の濃度で連日吸入ばく露し、224時間ばく露したものの有害性を根拠としています。

 評価値についてです。一次評価値、二次評価値とも今後検討として、未設定の状態です。

 ばく露作業についてです。ばく露作業報告としては、インジウムとその化合物について報告を受けています。38事業場、145作業について報告され、1,364人の作業者数がありました。取扱量は合計約1万トンでした。

92ページは、ばく露実態調査です。平成21年度と平成22年度について行っています。この2年間についてはインジウムとその化合物のセットで行っていますが、平成24年度は金属インジウムのみの取扱事業場に対して追加調査を行っています。化合物を含む平成2122年度は省略します。

 下のほうの、平成24年度においては、金属インジウムについて、厚生労働省が指定する事業場で、歯科医院又は工業的に補填金属を加工して取り扱う5事業場、歯科用補填金属の製造の3事業場、半田材料又は半田製造の3事業場、スパッタリングターゲットを製造する2事業場の計13事業場で特定の作業に従事する47人の労働者に対し、個人ばく露測定を行い、3単位作業場に対し、作業環境測定(A測定)を行い、また、38地点についてスポット測定を行ったものです。測定方法については記述のとおりです。

 測定結果のうち、平成24年度の調査結果は94ページにあるとおりです。測定データの最大値は0.0240312mg/m3 で、44TWAのうち1つのTWAが技術指針の目標濃度0.01mg/m3 を超えたということです。さらに、11TWAについては、技術指針で許容される濃度の3×10-4mg/m3 を超える値を示し、また、33TWAの値は指針の許容する濃度未満の値を示しました。

 なお、平成24年度の調査においては諮意的に対象事業場を選定しているため、区間推定のばく露推定は行っておりません。

95ページの、リスク評価の詳細では、評価値が未設定のため評価できないとして、測定値のみをグラフとして、高位20のデータと低位24のデータを2つのグラフに分けて表示しています。判定結果としては、「評価値が未設定のため評価できない」としています。

96ページは、結論です。中間取りまとめとして、「金属インジウムの有害性の評価については、有害性に関する情報が不足しており、今後の調査研究の進展を待って評価することとする」とさせていただいています。

 別添では、有害性総合評価表を97ページから、有害性評価書を101ページから、ばく露作業報告の集計表を115ページから、測定分析法を117ページから添付しています。以上です。

○名古屋座長 今回の場合、評価値ができないので中間報告ということです。1点、「金属インジウム」と書いてあったり「インジウム」と書いてあったりと混存しているので、まとめていただけますか。タイトルも、その辺をお願いします。

○岸室長補佐 「インジウム」でまとめたほうがよろしいでしょうか。

○名古屋座長 今、お聞きになってください。表現として「金属」を付けたほうがいいか、そのままの「インジウム」のほうがいいでしょうか。どちらにしましょうか。

○大前委員 「金属」がいいんじゃないかな。

○圓藤委員 でも、合金の部分でしょう、それは。

○大前委員 合金もあります。だから、「金属」を。

○名古屋座長 「金属」を付けたほうがいいですね。では、「金属」を付けるという形でお願いします。

○圓藤委員 でも、リン化インジウムも発がん性はあるのでしょう。

○名古屋座長 あと、表現等で何かありますでしょうか。

○鷹屋委員 94ページの、測定結果の最大値で、有効数字を6桁も書くのはどうでしょうか。

○名古屋座長 それはそうですね。それはよろしくお願いします。評価値が出てきて、このデータを使ってという形になるのではないかと思います。報告ということで、よろしいですか。

○宮川委員 95ページの表を見て気になったのですが、評価値が計算できないのでそれが入っていないわけですけれども、技術指針で一定の数値が出されていますよね。技術指針で一定の値を出しておきながら、評価値がないので判断ができないというところは、何となく気になります。

○名古屋座長 もやもやするわけですね。

○宮川委員 ほかの許容濃度等がない以上は、暫定的には、本来であれば、技術指針等に従って対応を取るべきだという考え方もあるのではないかと思うのです。

○名古屋座長 技術指針の場合は、どちらかと言うと、マスクの選定基準ですよね。

○宮川委員 はい。

○名古屋座長 そうすると、ここに書かないほうが、逆に。どうしますか。要するに、リスク評価をしているものではなくて、技術指針の値がないので、線は要らないのではないかと思うのです。それはどうなのでしょうか。いかにもこう線があると、あるにもかかわらずないというのは。もともとの考え方が違う値なので、ここは評価値がないので、この線を取ってしまったほうがいいのではないかと思いますけれども。

○宮川委員 あるいは、技術指針はこれこれこういう意味で出されているのでリスクの判断に直接使うのには適当ではないので、というようなことを、どこかに書いていただくなどが必要ではないでしょうか。

○名古屋座長 この技術指針も金属インジウムではなくて、違う値ですから。飽くまでもこの値は金属ヒュームに使う値ではないのです。そこも違っているので、今の御指摘のように、無いほうが私はいいのではないかと思います。

○宮川委員 それが分かるよう記入するか、なくすか。

○名古屋座長 そうですね。無いほうが分かりやすいのではないかと思います。これは取るという形でお願いします。

○大前委員 ただ、技術指針は金属も入っているのですよね。

○名古屋座長 入っています。

○大前委員 少し矛盾しているのですね、これは。もともとが矛盾しているので、どのようにしたらいいか。

○名古屋座長 あの頃は、まだ金属は後でやるという形で。ただ、有害性が高いので、今のところはマスクで対応するためには濃度をそのように決めておきましょうということでした。

○西川委員 107ページと108ページにも一部ありますが、遺伝毒性についてありまして、それに基づいて98ページで、遺伝毒性は「判断できない」ということになっています。ところが、90ページの閾値の有無の判断では、閾値「有り」とされています。これで本当にいいかどうかということなのです。その根拠の1つが、ばく露実験の結果として、肺の持続的な炎症反応の結果等々と書いてあります。その部分は、108ページの下から2つ目のパラグラフに書かれていることを引用したのだと思います。その文献の号が何かというと、産衛誌の論文のタイトルが「許容濃度の勧告」です。これで本当にメカニズムに関することが検討されているのかという心配がありますので、確認していただきたいのです。

○大前委員 その点について、元の文献は、NTPの実験をやった研究者による、なぜ起きたのかということに関するしっかりとした論文があります。

○西川委員 そうですか。

○大前委員 先生がおっしゃるように、本来それを引用にすべきです。許容濃度の提案理由は、おっしゃるとおり、まずいですね。そのとおりだと思います。

○名古屋座長 よろしくお願いいたします。先ほどの件ですが、技術指針は確かに金属も入れているのですが、まだやはり評価値が出ていないので外すということで、今回はよろしいのではないかと判断しますが、よろしいでしょうか。もし通達で出すようなときには、やはり、技術指針の中には金属も含まれているので、マスクの選定にはこれを使いなさいという話だと思いますが、今のところ、判定についてはこれを除いたほうが、概念が違いますので。よろしいでしょうか。ほかにはよろしいでしょうか。それでは、評価値が出てきたらこれを評価するという形にしたいと思います。

 次に、資料4の三酸化二アンチモンについて、よろしくお願いします。

○角田化学物質評価室長 121ページ、資料4で三酸化二アンチモンについて説明いたします。参考資料411ページ、横長の表で別とじになっているものがありますので、それもお開きください。

 先般5月に、有害性評価小検討会でこの物質を検討したときに、評価値の決定までには至らなかったのですが、会議では参考としてOECDのデータを出していたこともあり、SIAP(初期評価プロファイル)、評価の要約版ですが、そのSIAPを踏まえてOECDのデータを整理してほしいというお話がありました。SIAPというのは、11ページの左半分にサマリーがありますが、もう少し細かいSIAR、初期評価レポートとか、さらに、元データが載っている資料集の「Dossier」など、そういったものを整理することになりました。それを整理したものが参考資料の11ページです。左側はSIAPから抜粋した記述です。右側の「OECDSIAR」では、OECDから整理しようと思ったのですが、OECDには結局SIARがなく、OECDのケミカルのデータベースで「Final Assessment Report」というものを見ますと、EUSIARにリンクしていて、それが掲げられていますので、EURAR(Risk Assessment Report)を整理しています。その記述については、19ページ以降、具体的には21ページから個票が付いているのですが、根拠データの「Dossiar」の該当ページを付けています。

11ページにお戻りください。例えば、「反復投与毒性」の所で、SIAPでは2つの試験データが主に書かれています。それに対応すると考えられるものをEUのリスク評価レポートから抜いてみますと、Newtonらが1994年にやっているデータで、これは先ほどの「Dossier」の「p.50」、右下ではなく真ん中辺りに小さく手書きで書いたページですが、それが該当しています。また、今回整理した有害性評価書なり有害性総合評価表についても、引用している場合は、それを参考として備考欄に載せています。

 反復投与毒性についてです。OECDSIAPの記述の所に仮訳を載せていますが、1つ目のNewtonの資料は、12か月の試験、観察期間12か月の形で整理しています。これは、肺線維症とか肺胞の過形成などが高用量区で認められたというようなことが書かれているデータです。

 次のページに、もう1つの試験データを載せています。これは90日の経口試験で、三酸化二アンチモンは組織的な毒性を、雄では1,686、雌では1,879mg/Body Weightの用量まで引き起こさなかったということがOECDの中で整理されています。

12ページの下から13ページには、変異原性が書かれています。13ページの頭の所で、「三酸化二アンチモンはインビトロで遺伝子変異を誘発しないと考えられているが、インビトロでは哺乳動物細胞の染色体異常を誘発する。骨髄での染色体異常と小核の誘導及び肝臓での不定期DNA合成の誘発に関連するインビボ経口試験は陰性だった。三酸化二アンチモンの局所的な遺伝毒性作用は粒子過負荷を生じる濃度レベルで生物学的に関連性があるに過ぎないと考えられている。したがって、肺での局所的な遺伝毒性については懸念はない」というまとめをしています。関連のデータは、次の右の所にそれぞれ載っています。

14ページを御覧ください。発がん性についてです。発がん性はラットで3つの試験がありまして、右に、WattGrothNewtonという形で載っていて、15ページにまとめとして、「ラットの肺に腫瘍を誘発すると結論付けられる」と書かれています。肺への発がんのメカニズムについては、肺のクリアランスの障害と粒子の過負荷、続いて起こる炎症反応、線維化、腫瘍が生じているので三酸化二アンチモンは閾値を持つ発がん性物質とみなすことができると書かれています。「反復投与局所毒性から導出されて、粒子のクリアランス障害に基づくNOAECが発がん性にも使用される」と書かれています。ただ、「このNOAECは、コントロール群の肺の炎症の高いバックグラウンド発生のある試験で決定されたものであるため、数値の信頼性は不確実である」というような表現も見られます。

15ページは、生殖毒性についてです。2つ試験が載っています。16ページの頭の所に、「精巣毒性の経口のNOAEL1,200mg/kg bw/day」と書かれていて、これは経口投与試験です。もう1つの試験は、OECDTG408、ガイドラインに基づいて実施された90日の経口投与試験で、精巣と卵巣での変化を見たものです。ここに書いてある用量まで変化は観察されなかったということで、これらの結果によれば、三酸化二アンチモンは雌雄の生殖組織に対して毒性はなかったということになっています。

 最後に、17ページの、発生毒性です。ここは、「生殖毒性」ではなく「発生毒性」の間違いです。三酸化二アンチモンの発生毒性がOECDTG414に基づく試験法に従って行われ、これについては、発生毒性のNOAEC6.3mgと計算していまして、母体毒性のLOAEC2.6mg/m3 になっています。体重及び食物摂取量はどの用量でも影響なかったということです。SIAPで引用している試験データについては大体以上のようなものになっています。

 資料4の、詳細リスク評価書については、中間報告ということで、先ほどのインジウムと同じような形でまとめています。前回、まだ評価値の決定まで至っていないこともありまして、取りあえず、現在の状況を取りまとめたものです。したがって、両論併記になっている所や結論が書かれていない部分もあります。そのような形で整理したものを説明いたします。

 まず、122ページ、基本的情報についてです。三酸化二アンチモンの物理的化学的性状として、白色の結晶性粉末。火災危険性については、不燃性だが、火災時に刺激性若しくは有毒なフュームやガスを放出する。(4)は生産・輸入量、使用量、用途で、ここに書いてあるとおりです。用途は、各種樹脂、ビニル電線、帆布、繊維、塗料などの難燃助剤、高級ガラス清澄剤、ほうろう、吐酒石、合繊触媒、顔料などに使われています。

123ページは、有害性評価の結果です。発がん性は、ヒトに対して恐らく発がん性があるとしています。IARCは、三酸化二アンチモンを「グループ2B(ヒトに対する発がんの可能性がある)」に分類しています。三酸化二アンチモンのヒトにおける発がん性は証拠不十分であるが、動物における発がん性の証拠は十分である。ただし、ACGIHはアンチモン工程に従事する労働者の職業がん疫学調査報告を評価して、三酸化二アンチモンの発がん性「A2(ヒトに対して恐らく発がん性がある)」に分類しています。

 閾値の有無の判断については、「判断できない。要検討」と書かれています。まず、in vitroでは、突然変異試験は陰性を示すが、染色体異常、姉妹染色分体交換及びDNA損傷試験では陽性を示している。in vivoでは、染色体異常試験は、マウス経口単回投与では陰性、マウス経口反復投与では陽性です。小核試験及び不定期DNA合成では陰性でした。三酸化二アンチモンに職業ばく露した男性労働者を対象としたリンパ球を用いたコメットアッセイで、高濃度ばく露群で陽性を示した。以上より、遺伝毒性があると考えられることから、閾値はないとの判断があり得るということです。

 一方で、遺伝毒性があるので閾値はないと従来は整理していたこともありますが、先ほどのリスク評価書、EURARですが、三酸化二アンチモン吸入ばく露による3つの発がん研究の用量を比較検討し、発がん機序の背景に肺クリアランス機能の低下が存在することを示したということです。先ほどのNewtonの試験等もありますが、13週間及び1年間、三酸化二アンチモンエアロゾル吸入ばく露試験から、肺当たり0.010.02mgの体内蓄積では半減期が2か月であり、肺当たり2mgの肺内蓄積で半減期が10か月に増大すると推算しています。さらに、「肺クリアランス低下に伴う炎症性障害の病理的組織所見は、5.0mg/m3 群から明確に認められるとして、NOAEL0.51mg/m3 であると判断した。三酸化二アンチモンエアロゾルの長期吸入ばく露による肺がんは、肺クリアランス機能の低下による微粒子の肺内蓄積の増加によって肺炎症性反応が長期にわたって持続する結果として引き起こされると考察した。したがって、三酸化二アンチモンは閾値のある発がん物質であって、肺クリアランス機能低下をエンドポイントとするNOAEL0.51mg/m3 が肺腫瘍発現の閾値とみなすことができる」と考察しています。

 先ほども議論がありましたが、3月の終わりの有害性評価小検討会では、幾つかの物質を挙げまして、遺伝毒性がある場合でも、ものによっては二次的な影響で閾値があり、発がんということもあり得るのではないかという議論がありました。これは個別に検討していこうということだったと思います。それから、今のEUのデータなどでも、閾値があることは考察されています。

 発がん性以外の有害性についてです。急性毒性としては、経口毒性、経皮毒性、腹腔内毒性、全てラットですが、LD50 の値はこのようになっています。

 それから、健康影響と実験動物への影響です。ラットに三酸化二アンチモン2,760mg/m3 4時間吸入ばく露した試験で、肺の軽度の限局性変色、白色巣が見られました。それから、皮膚刺激性/腐食性は有り。眼に対する重篤な損傷性又は眼刺激性は有り。皮膚感作性は判断できない。呼吸器感作性は報告は無し。反復投与毒性は有り。生殖・発生毒性は判断できない。遺伝毒性は有り。これは、後ろの有害性評価書と有害性総合評価表の記述を踏まえて整理しています。

 許容濃度等については、ACGIH0.5mg/m3(アンチモンとして)です。これは三酸化二アンチモンではなくてアンチモン及びその化合物ですが、このような値を設定しています。年次が1991年ですが、日本産業衛生学会はTWA0.1mg/m3 ということで設定しています。今、中でも暫定値を検討されている状況だと聞いています。それから、ドイツのDFG MAKは設定は無し。NIOSH0.5mg/m3 OSHA0.5mg/m3 です。

 評価値についてです。一次評価値は、評価値なしとして整理しています。二次評価値については、以下のような候補値が考えられるとして「要検討」としています。1つは、0.5mg/m3 で、ACGIHが勧告しているばく露限界値です。「アンチモン及びその化合物への職業ばく露について、この値で勧告する」ということですが、「この値は、上気道の刺激、腹痛及び食欲減退発現の可能性を最小限にする意図で設定した。著しく高い単回又は繰り返しばく露による重大な影響、例えば心臓や血液の障害を発生することがある。入手できる全てのアンチモン化合物に共通の有害性情報からTLVを導くことは困難。当該TLVは、生物学的に活性なアンチモン化合物の中の1つである五塩化アンチモンで特定できる健康影響からの外挿によって設定された」。また、「経皮吸収性、感作性、発がん性の注釈の付記、又はTLVSTLを勧告するための十分な情報はない」ということです。

 次のページは、三酸化二アンチモンの部分で、「ヒトの発がん性やその他の健康障害についての情報が不明確である英国及び米国のアンチモン製造工場の労働者の研究から得られたデータに基づいて、三酸化二アンチモンの製造現場環境について数値的なTLVは勧告しない。アンチモンの製造工場の労働者におけるアンチモンへのばく露と肺がんに関する歴史的なデータに基づき、肺がん性をA2に分類する。これらのデータはSb203 の製造現場環境を発がん性A1に分類するためには不十分で、それぞれが対立的である。TLVが勧告されていないが、発がん性が指定される全ての化学物質について、全てのばく露経路による労働者のばく露は注意深く管理し、ばく露濃度はできるだけ低くしなければならない」。要は、前段で0.5mg/m3 について整理していますが、後段では、できるだけ低くという形で書かれています。

 産衛学会の0.1mg/m3 の値については、「肺がんの発生と胚ないし胎児への影響及び心臓毒性を考慮するべき」として、ラットの胚への影響では、三酸化二アンチモンが82μg/m3 を最小作用濃度として考えるべきであるとしています。これを考え、現行のTLVMAKの勧告値より低い値を提案するとして、0.1mg/m3 を提案されています。先ほどの、丸数字1のACGIHについては、五塩化アンチモンである程度検討している値であること。それから、丸数字2の産衛学会の値については、ラットの胚への影響のデータは若干信頼度などの問題もあるようです。丸数字1も丸数字2も若干議論の余地があるということが前回の有害性評価小検討会で議論されています。

 これに関連して、129ページ以降に、有害性の総合評価表を付けています。先ほどの有害性の評価は、ここにありますものを入れて整理しています。129ページの一番下から、反復投与毒性について、これは「有り」という形になっています。先ほどのEUのデータにもありましたが、ラットの試験でNOAEL0.51mg/m3 と算定しています。これで評価レベルをはじくこともできます。

 生殖・発生毒性については、130ページのオで「判断できない」ということです。「母体毒性が認められた報告はあるが、試験の詳細が不明なことから、生殖・発生毒性については判断できない」としています。

 遺伝毒性については、カで遺伝毒性「有り」としています。根拠として、「in vitroでは突然変異試験は陰性を示して、染色体異常、姉妹染色分体交換及びDNA損傷試験で陽性を示した。in vivoでは、染色体異常試験は、マウス経口単回投与では陰性、マウス経口反復投与では陽性。小核試験及び不定期DNA合成では陰性。三酸化二アンチモンに職業ばく露した男性労働者を対象としたリンパ球を用いたコメットアッセイで、高濃度ばく露群で陽性を示した。本有害性評価書では、三酸化二アンチモンには遺伝毒性があり、肺過負荷を引き起こす高濃度ばく露で二次的な遺伝毒性が生物学的には意味を持つと考察した」と整理して、遺伝毒性は有りとしています。

 発がん性については、ヒトに対して恐らく発がん性があるということです。次のページのとおり、「閾値の有無は判断できない」としていますが、閾値が無い場合と閾値がある場合に分けて、それぞれリスクレベルを算定しています。参考の「閾値がある場合」の所は、先ほどの反復投与毒性と同じで、NOAEL0.51mg/m3 と算定しているデータがあります。これはEUのデータを踏まえて整理したものです。

 本文に戻ります。125ページの、評価値の検討です。ACGIHや産衛学会の数値、それから、今の試験等で算定できるリスク評価水準なども検討素材にはなるのではないかと思います。

3番のばく露実態評価です。平成21年に360事業場から869作業について報告を頂いています。対象物質の用途は、主に「触媒又は添加剤として使用」、「他の製剤等の原料として使用」、「顔料、染料、塗料又は印刷インキとして使用」等。作業の種類は、主に「計量・配合、注入、投入又は小分けの作業」、「ろ過、混合、攪拌、混錬又は加熱の作業」、「成型、加工又は発泡の作業」等でした。対象物質の取扱量の合計は46,685トン、作業従事労働者数の合計は9,863人です。全作業のうち作業時間が月20時間以上の作業の比率は65%。局所排気装置が設置されている作業は77%。防じんマスク、保護眼鏡を使用している作業はそれぞれ、78%、55%でした。

 平成23年度については、ばく露レベルが高いと推定される9事業場の31人について測定を行いました。アンチモン及びその化合物について、個人ばく露測定では、労働者31人のうち4人が0.1mg/m3 を超えており、最大値は0.40mg/m3 でした。当該作業は「三酸化二アンチモンの計量、投入、袋詰め」、「アンチモンメタルから三酸化二アンチモンを製造する作業」でした。

 これらのばく露実態調査結果と、IARCの発がん性評価で「2B」とされているのは三酸化二アンチモンのみであることを勘案しまして、評価を行う対象を当面は三酸化二アンチモンのみとすることが適当であるとされました。さらに、詳細なリスク評価を三酸化二アンチモンについて実施することとされた次第です。その際、三酸化二アンチモンを取り扱う作業、特に当該物質の計量、投入、袋詰めの作業、揮発精錬により製造する作業を行う事業場に対して、当該作業に係る追加調査を行い、当該作業工程に共通した問題かをより詳細に分析する必要があるとされました。

 また、「なお」書きで、それ以外の物質についても、有害性を無視できないこともありますので、別途、「リスク評価に係る企画検討会で今後のリスク評価対象物質の選定をする際に候補物質として検討する」とされています。

 平成24年度は、丸数字2のとおり、三酸化二アンチモンについて、製造2事業場、成形用樹脂に添加剤として混入するペレットの製造原料として投入する事業場の追加調査を行いました。これらの事業場の9人について個人ばく露測定を行いました。2単位作業場でA測定、15地点でスポット測定をして、127ページの上の表のとおり、実施しています。

 調査の結果は、酸化炉・溶融炉の炉前作業、粉体作業を行うJ事業場において、5名中4名のTWA値が0.280から0.327mg/m3 の範囲となりまして、他の1名は0.07mg/m3 でした。また、K事業場は、酸化炉に金属アンチウムを投入して発生したヒュームを空気酸化して三酸化二アンチモンとしてバグフィルタで回収する工程で、0.0813mg/m3 TWA値を示しました。L事業場では、粉体の三酸化二アンチモンを押出成形機の混練槽に投入しまして、樹脂と混合してペレットを押出成形する作業を測定したところ、0.0440mg/m3 TWA値を示しました。

 平成23年度の評価結果と総合して評価しますと、本年度に実施した調査でも、平成23年度の結論の、「粉体(三酸化二アンチモン主体)の取扱い(投入、袋詰め等)、及び揮発炉作業等のばく露が高いこと」を追認するものでありました。

 最大ばく露濃度の推定については、ランダムサンプリングであるか否かの問題はありますが、平成23年度及び平成24年度測定データについて、K-S検定の結果、対数正規性の検定では対数正規分布に適合するとの結果でしたので、対数変換データで区間推定上限限界値を算出したところ、TWA値は、最大値0.40mg/m3 に対して0.59mg/m3 の値が得られました。

 前のページのグラフにお戻りください。評価値はまだ決定されていませんので入れておりません。間隔ごとに横線を引いているだけですが、個人ばく露の測定結果は大体0.4mg/m3 の水準ぐらいまででありまして、区間推定の上限値は、先ほど申し上げたとおり、0.59mg/m3 になっています。資料で整理していますのは以上です。

○名古屋座長 評価値が決まってないのでということと、評価値も微妙で、0.1mg/m3 だとリスク評価はそのまま、詳細リスクですから当然かかりません、0.5mg/m3 だとOKと、そのままいいよというようにはなかなか難しいのがあって、ここは評価値を頂いてから決定する形になるかという、一応、中間報告ですが、この記載について何か御意見はありますか。

○江馬委員 129ページ以降の有害性総合評価表の所が、OECDの文章を入手する前の文章だと思います。例えば、生殖・発生の所はSOTのアブストラクトうんぬんの所が違うと思います。根拠の所も「詳細が不明」ではなくて、詳細はあるので、受胎能試験がないからだと、そういう意味だと思います。

○名古屋座長 あとはよろしいでしょうか。

○花井委員 ちょっと教えてください。132ページの発がん性の評価の所ですが、閾値がない場合とある場合で2桁違いますよね。この閾値がない場合のかなり厳しい値、この論文というか、この情報は無視してもいいような、何か妥当な根拠があるということですか。

○大前委員 1つはこれはBMLで計算しているのですが、BMLをどうするかはまだ決まってなくて、数字は取りあえずここに出していますけれども、これはまだ手法を検討している段階になります。

○花井委員 ベンチマークドーズを採用するか。

○大前委員 はい、そうです、するかどうかも含めて。

○花井委員 考え方を、使うかどうかが検討中ということですか。

○大前委員 はい。それからもう1つは先ほどもありましたけれど、オーバードーズの問題があって、一番上が5mgぐらいのレベルですけれども、そこら辺のこともあるので、まだ中間報告ということではありませんが、このアンチモンがまだペンディングの状態なので、この段階であまりコメントをしていただいてもちょっとどうしようもないので、もう少し完成した状態でまた出たときによろしくお願いしたいと思っています。

○花井委員 はい、分かりました。

○江馬委員 125ページの丸数字2のラットの胚への影響として報告があったというのはどの報告なのでしょうか。125ページの丸数字2の所の中程です。ここには出てないのですか。

○角田化学物質評価室長 すみません、これは別途に。

○大前委員 これは1991年の時点では原本そのものではなくて、原本を引用したものを使っているのですが、この論文はソ連の論文で、2ページの論文なのですね。だからこの時点では採用と言いますか、取り上げたのですが、これはやはり少し信頼性が置けないので取り上げないということで、産業衛生学会が、今年新たに提案をしておりますけれども、その中には入れておりません。この胚の論文は無視をしていただいていいと思います。

○江馬委員 はい。

○名古屋座長 よろしいでしょうか。

 そうしましたら、4物質ですけれども、酸化チタンにつきましてはナノの粒子としてこれから詳細リスクが必要ということ。それから、ジメチルアセトアミドにつきましては、一応初期リスクで終わるのですが、そうは言っても経皮吸収はあるということなので、そこについてはこれから事業主さんたちにきちんとしてほしいということ。後、ガイドラインについて、尿中代謝物は多分記憶では最初は検討しましょうという話になっていたのですが、時期がもうちょっとしてからという形で、しなかったのがやはりこういう物質が出てくるので、尿中についてもちょっと検討しなければいけないことで、これもまた後ですると思います。金属インジウムと酸化アンチモンにつきましては記載の所を少し修正していただきたいということでよろしいでしょうか。

 そうしましたら、4物質はこれで終わりという形でよろしいでしょうか。

(異議なし)

○名古屋座長 時間が迫ってきて申し訳ありませんが、資料5の、発がん性のおそれのある有機溶剤の今後の対応の所をよろしくお願いいたします。

○岸室長補佐 資料5157ページを御覧ください。このテーマにつきましては、胆管がん事案を踏まえ、発がんのおそれのある有機溶剤の対応をどうしていくかということについて、検討してきたものです。検討の経過としましては、52日の第1回の有害性評価小検討会でまず検討をいたしまして、発がんのおそれのある有機溶剤は、有機則の対象物質のうちIARCで、12A2Bに評価されている10の物質を対象としたところです。また524日の第2回の化学物質のリスク評価検討会において、発がんのおそれのある有機溶剤の今後の対応について検討を行い、10の有機溶剤について、有機溶剤業務に従事する場合には、作業環境測定や健診結果からばく露が懸念されることから、職業がんを予防する観点から必要な措置を講じる必要があるということでの検討をいただいたところです。それらをまとめたものがこの資料5です。158ページからまとめたものを読み上げていきます。

 「発がんのおそれのある有機溶剤の今後の対応について」ということで、有機溶剤中毒予防規則で規制の対象としている有機溶剤については、中枢神経系に対する毒性と有機溶剤に共通性の高い明確な毒性による悪影響を予防するための措置を義務付けているところであるが、有機溶剤の一部には別表1のとおり、発がんのおそれのあるものがあると。これらの有機溶剤については当規則において、作業環境測定、及び有機溶剤等健康診断の実施を義務付けているが、別添1のとおり、発がんのおそれのある有機溶剤の労働者へのばく露は懸念される。

 今般印刷業務従事者に発生した胆管がん事案を契機として、発がんのおそれのある化学物質については、その旨を明らかにしてほしいという要望が相次いでいることも踏まえ、既に有機溶剤中毒予防規則で規制されている化学物質であっても、発がんのおそれのあるものについては、高濃度又は長期間のばく露による職業がんの予防の観点から、以下により対応することとする。

1対象となる有機溶剤。職業がんの予防の観点から管理が必要な有機溶剤は、平成25年度化学物質のリスク評価検討会(1回有害性評価小検討会)の検討結果を踏まえ、WHOIARCで発がん性が12A又は2Bに区分される以下の有機溶剤とする。クロロホルム、四塩化炭素、1,4-ジオキサン、1,2-ジクロルエタン、ジクロルメタン、スチレン、1,1,2,2-テトラクロルエタン、テトラクロルエチレン、トリクロルエチレン、メチルイソブチルケトンの10種類です。

 対象となる業務につきまして、職業がんの予防の観点から管理が必要となる業務内容は、有機溶剤中毒予防規則第1条第1項第6号に掲げる有機溶剤業務とするということで、有機溶剤業務につきましては、法令にありますものをそのまま引用しているものです。

 有機溶剤等の製造工程におけるろ過、混合、攪拌等の業務、有機溶剤系の化学製品を製造する工程におけるろ過、混合、攪拌の業務、印刷、文字の書込み、描画、つや出し、防水その他物の面の加工、接着のための塗布、物の接着、洗浄、払拭、塗装、乾燥、試験・研究、タンクの内部等における業務などとなっております。

 今後の対応としまして、現行の有機溶剤中毒の対象で、IARCで発がんのおそれがあるとされる10の化学物質については、有機溶剤中毒予防規則に基づき、事業者は作業主任者を選任して、作業に従事する労働者が有機溶剤により汚染され、又はこれを吸入しないよう、必要な措置を講ずるとともに、局所排気装置、プッシュプル型換気装置等、発散防止措置を講じることとされ、更に屋内作業場では6か月以内ごとに作業環境測定を行う等により、作業環境を良好な状態に維持するよう求められるなど、一連のばく露防止措置を義務付けられている。しかし、これらの措置をエチルベンゼンやエチレンオキシド等特定化学物質障害予防規則に規定する特別管理物質と比較すると、含有量が1%を超え、5%以下の混合物については、ばく露防止措置の義務付けられていないこと、発がん物質である旨を作業場に掲示する必要がないこと、製造・取扱いに伴う作業の記録とその保存が必要ないこと、作業環境測定の結果の記録の保存期間が3年であること、特殊健康診断の結果の記録の保存期間が5年であることなど、職業がんの予防の観点からは、健康障害防止措置が必ずしも十分とはいえない状況である。

 ここでこれらの物質を発がんのおそれのある化学物質として捉えた場合、ばく露レベルに応じたリスクを評価する必要があることから、現在実施している平成25年度ばく露作業報告の結果を踏まえ、ばく露実態調査を行い、有機溶剤業務以外の業務についても必要に応じて対象に加えるべきであるが、現行の有機溶剤中毒予防規則で規定されている有機溶剤業務については別添のとおり、労働者へのばく露が懸念される状態であることは明らかであり、事業者及び作業に従事する者が発がんのおそれのある化学物質であることを理解しないまま、現行の有機溶剤中毒予防規則の措置を講じさせることは適当とは言えない。このため、10種類の化学物質を製造し、又は使用して行う有機溶剤業務を対象として、職業がんの予防の観点から、化学物質の健康障害防止措置を講じる必要がある。なお、有機溶剤業務以外の業務については、平成26年度以降に行うばく露実態調査の結果を踏まえて、必要に応じて対象業務に追加することが妥当である。

 ということで、別添1につきましては、労働者のばく露について記載しております。有機溶剤中毒予防規則の対象で発がんのおそれのある化学物質については基本的物性に加え、別表2及び別表3に示す作業環境測定及び有機溶剤等健康診断の結果に関する基礎資料から以下のことが確認された。

(1)物性から推測されるばく露のリスク。発がんのおそれのある有機溶剤は沸点が低く、常温での蒸気圧が高いために作業の状況により労働者に高濃度のばく露を生じるおそれがあるものが含まれている。ジクロルメタン(沸点40℃、蒸気圧47.4kPa(20))、及びクロロホルム(沸点62℃、蒸気圧21.2kPa(20))については沸点が特に低いため、夏季などの高温環境下や、発熱体との接触、加熱等により蒸気圧が極めて高くなり、労働者の呼吸域で高濃度ばく露のおそれを考慮する必要がある。

(2)作業環境測定の評価の結果。作業環境測定の評価結果を見ると、発がんのおそれのある全ての有機溶剤で第2管理区分又は第3管理区分の評価が認められ、作業環境を改善するための措置を講ずる必要がある。特にIARCの発がん分類が1とされるトリクロルエチレンでは29.3%、胆管がんの原因となった蓋然性が高いとされたジクロルメタンでは22.8%もの作業場で第2管理区分又は第3管理区分の評価が認められており、直ちに急性毒性と健康障害のおそれがないとしても、職業がん予防の観点から、直ちに作業環境を改善するための措置を講ずる必要がある。

(3)有機溶剤等健康診断の結果。有機溶剤等健康診断においては、有機溶剤の種類により、生物学的モニタリングの検査を求めているところであるが、同検査対象である発がんのおそれのある有機溶剤、スチレン、テトラクロルエチレン、トリクロルエチレンの全てにおいて分布3に区分される代謝物の検出が認められ、更に高いところではトリクロルエチレンの尿中総三塩化物では1.6%、テトラクロルエチレンの尿中総三塩化物では1.4%の受検者で、分布3に区分される代謝物の検出が認められた。これらの結果について、個々に医師の判断により判断されるべきものではあるが、ばく露が多いと考えられる検査結果が含まれると言える。

 以上のように、発がんのおそれのある有機溶剤については、沸点が低いために高濃度ばく露のおそれがあるものが含まれるほか、作業環境測定においては、測定の評価結果が第2管理区分又は第3管理区分に区分される作業場が認められ、又は有機溶剤等健康診断においては、生物学的モニタリングに関する検査で、区分2又は区分3に区分される結果が認められるなど、職業がん予防の観点から、発がんのおそれのある有機溶剤の労働者へのばく露が懸念される、ということです。

 その他、別表1では10種類の有機溶剤についての用途、製造量や発がん性評価の区分、その他、有害性管理濃度などの情報を載せております。別表2は発がん性の評価区分のある有機溶剤の作業環境測定の状況で、10種類の有機溶剤の主な物性、沸点と蒸気圧と作業環境測定の評価結果を区分ごとに分けたものです。一番右側が第2又は第3管理区分の件数と割合です。ちなみに第2管理区分は下の注釈にありますが、当該単位作業場の気中有害物質の濃度の平均が管理濃度を超えないけれども、B測定にあっては管理濃度を超え、管理濃度の1.5倍以下の状態である。第3管理区分は、単位作業場の気中有害物質の濃度の平均が管理濃度を超える状況で、B測定であっては、管理濃度の1.5倍を超える状態であるということです。

 別表3は有機溶剤等健康診断の生物学的モニタリングに関する検査の実施状況です。対象物質3物質と検査項目、それと分布123の状況を示しています。説明としては以上です。

○名古屋座長 これは確認ですので、また何かありましたら後で事務局等に知らせていただければありがたいと思います。

○花井委員 ちょっと分からないのですが、10種類の有機溶剤を対象として、このリスク評価の委員会との関係はどういうことになりますか。

○岸室長補佐 この文章を今度、来月にリスク評価書を公表しますので、それに一緒に付けて公表したいと思います。ですのでリスク評価検討会の対応の結果としてお示ししたいと思います。

○花井委員 そうすると、そこで議論された健康障害防止措置がもうそこに書いてあるから、やりますよということですか。

○岸室長補佐 はい、そうです。これを受けて今度、措置検討会で具体的にどういう措置が必要かを検討いたします。

○花井委員 それの検討は別にやるのですか。

○岸室長補佐 そうですね。

○花井委員 分かりました。

○原委員 単品としての評価というか、考え方はこれでいいと思いますけれども、混合有機溶剤としての評価は触れられていないので、どう判断するかというその辺はいかがでしょうか。

○岸室長補佐 含有率との関係もあるかとは思いますけれども、これまで先行してリスク評価してきましたエチルベンゼンとか、1,2-ジクロルプロパンとかその辺りと近い考え方になるのではないかと考えておりますけれども。

○原委員 例えば、計算上簡単な問題で言うと、164ページの1,2-ジクロルエタンとジクロルメタンが2つともある職場で、1,2-ジクロルエタンが5ppmで、ジクロルメタンが25ppm、そういう職場があったときに、従来ですと有機溶剤としての取扱いでいくとそれは管理濃度で割っていって2分の12分の11になると。そうすると、厳密な計算はおいておいても、ちょっと管理濃度で考えると対策を取るべきであるというそういう方向の考え方になっていると思うのですが、そういう混合有機溶剤の考え方は今後検討するということなのでしょうか。

○岸室長補佐 混合有機溶剤の評価の仕方は有機則に基づく有機溶剤で作業環境測定の場合、そういう管理濃度で割って、換算値で評価するという考え方になりますので、発がん性を考える場合は通常はその有機溶剤、混合物であればその混合有機溶剤としての評価と、もう1つ発がん性のある物質としての単体としての評価の2種類の評価が必要になるのではないかと考えております。ですので、今のお話だとジクロルエタンとジクロルメタンは、それぞれ別個に評価しなければいけない問題というように考えております。

○原委員 特化物にされないのであれば、混合有機溶剤の評価は続くというように考えたいと思うのですが、もし、特化物のほうに1,2-ジクロルエタンとかジクロルメタンが移動されることになれば、その段階で混合有機溶剤の評価から外れるわけですよね。そうすると、単品評価で言うと、管理濃度よりも低いけれども、混合で考えると管理濃度を超えることもあり得るわけです。現場的に混合有機溶剤で使われる場合が非常に多いので、現状の評価よりも、安全側に評価してしまうことになることをちょっと危惧するのですが、いかがでしょうか。

○圓藤委員 原先生のお考えは元々有機溶剤が相加的に評価されるべきと言うことですが、神経毒性については相加的な判断をまずはしようということで、足していくことが考えられていました。発がんにそれがあるかというのは分からないので、混合有機溶剤を発がんの評価にもっていくのはちょっと違うのではないかと思うのですね。

○原委員 発がんの考え方では、同じメカニズムを考えられなければ、合計するというのはおかしいと思うのですが、有機溶剤としての性質はどうですか。

○圓藤委員 だからそれは、神経毒性というものを考えたときに相加作用として考えていいということで、混合有機溶剤のときは、足し算をしていったのが元々なので、発がんでもそれが成り立つかどうかをやらないと、ちょっとそれは無理だと思います。

○原委員 従来の考え方を変えるということですか。

○圓藤委員 それは神経毒性についての考え方ですよね。

○原委員 そうですね。

○名古屋座長 これは評価方法ですので、この後の話になっていますので、今日ではないので、時間もちょっと迫っていますので、またお願いします。多分、エチルベンゼンと同じような形になるのではないかと思いますけれども。その辺のところをこれから議論しますし、また管理濃度委員会でも評価方法を考えなければいけないので、その辺でも議論をすることになりますのでよろしくお願いいたします。

○原委員 議論をお願いします。

○名古屋座長 過ぎてしまいましたけれども、セラミックファイバーは修正の所だけだと思いますので、手短にお願いします。

○中西化学物質情報管理官 こちらは修正箇所がたくさんありましたので、念のため先生方にお目通しいただきたいと思いまして掲載いたしました。「リフラクトリーセラミックファイバー」に関しましては171ページから資料6として載せております。こちらは前回御指摘いただきました件を踏まえ、修正しましたのと、関係業界団体様の方に御確認いただきまして、適切な表現に直させていただいたところです。

 大きな点としては172ページの「セラミックファイバーの種類と組成」という所です。有害性評価書の185ページからにもありますが、有害性評価書の所で記載していた箇所がこちらの化学物質の情報よりは、ほかの健康影響の188ページの所に記載したほうがよいということで、関係業界団体様から御指摘いただきましたのでそのように修正させていただいております。また何か問題等がありましたら御指摘いただきましたらと思いまして載せておりますので御覧いただけたらと思います。よろしくお願いいたします。

○名古屋座長 前回の検討会でちょっと表現を変えたりとか、対象が現場と違って、動物実験の所に粒径が書いてあるということで、業界様に直していただいたということです。またお気づきの所がありましたらよろしくお願いします。

 最後になりましたけれども、その後の予定を事務局からお願いいたします。

○岸室長補佐 今後の予定です。資料7ですが、今年度のリスク評価につきましては今回のものを取りまとめて、7月に公表予定としています。今年度のリスク評価についてはこれで終わりということを考えております。また、来年度のリスク評価につきましては、有害性評価やばく露評価が終了した物質より、順次実施をするということで、来年春頃にまた実施したいと考えております。以上です。

○名古屋座長 以上で、本日の化学物質のリスク評価検討会を閉会いたします。本日はどうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室

電話番号: 03-5253-1111(内線 5511)

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