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2013年9月2日 第16回新型インフルエンザ専門家会議議事録

健康局結核感染症課新型インフルエンザ対策推進室

○日時

平成25年9月2日 10:00〜12:00


○場所

厚生労働省 専用第22会議室(18F)


○出席者

伊藤委員 大石委員 岡部委員 押谷委員 川名委員
小森委員 坂元委員 佐々木委員 櫻井委員 田代委員
永井委員

○議題

(1)平成25年度H5N1プレパンデミックワクチンの備蓄株の選定
(2)H7N9ワクチン開発に関する方針

○議事

○井上室長 定刻になりましたので、ただいまより第 16 回「厚生労働省新型インフルエンザ専門家会議」を開催いたします。委員の皆様方には御多忙の折、お集まりをいただき、御礼申し上げます。私は新型インフルエンザ対策推進室長の井上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。開会に当たりまして、佐藤健康局長より御挨拶申し上げます。

○佐藤健康局長 皆さん、おはようございます。御紹介をいただきました健康局長の佐藤敏信でございます。既に御承知の方もいらっしゃるかと思いますが、前任の矢島に引き続きまして、この職にあります。どうかよろしくお願いいたします。

 さて、この会議でございますが、もともとは閣議決定に設置された「新型インフルエンザ対策等有識者会議」というのがありますが、これは政府全体で決定すべき行動計画等、ガイドライン等の改訂ということで審議をしていただいているわけですが、この専門家会議は厚生労働省の健康局長の諮問会議という位置付けになっておりまして、取り分け専門的・技術的な内容について、御審議をいただいているという会議です。今日こうして暑い中、またお忙しい中をお集まりいただきどうもありがとうございます。

 最近の新型インフルエンザ対策の取組ですが、これは既に御承知のとおり、特別措置法が本年 4 13 日に、また、それを受ける形で政府の行動計画が 6 7 日に、そして、対策のガイドラインが 6 26 日に改定されるなど、着実に進捗していると言えると思います。また、この間には、今年の 3 月末から中国等で H7N9 が確認されたということで、この間も情報の収集に努めてまいったところです。

 さて、今日の新型インフルエンザ専門家会議ですが、平成 25 年度の H5N1 のプレバンデミックワクチンの備蓄株について、それに H7N9 ワクチンの開発の方針について御議論いただくと共に、この間、 WHO から公表されたパンデミックのリスクマネージメントガイドラインの暫定版あるいはリスクアセスメントについて情報を共有する場としたいと考えております。限られた時間ではございますが、御審議のほど、どうかよろしくお願いいたしまして、簡単ではございますが、冒頭の挨拶に代えさせていただきます。

○井上室長 次に、委員の皆様の出欠状況を確認いたします。全 14 名の委員のうち、本日は 11 名の委員の皆様に御出席をいただいております。庵原委員、吉川委員、丸井委員の 3 名の委員から欠席されるとの連絡をいただいております。なお、参考人として国立感染症研究所のインフルエンザウイルス研究センターの板村第三室長及び信澤第四室長に御出席をいただいております。どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、以降の議事進行を岡部議長にお願いいたします。

○岡部議長 おはようございます。それでは、新型インフルエンザ専門家会議を開催したいと思います。この会の構成などは、佐藤健康局長から御紹介がありましたが、本日は、議題として、プレパンデミックワクチンの備蓄株の選定で、既にワクチン作業班会議で議論はされているので、それについて、この会議で改めて議論を行うことになります。

 佐藤局長からご紹介がありましたが、 H7N9 のワクチン開発をどうするかという方針に関してですが、進捗状況は皆さん御存じだと思いますが、リスクアセスメントといった新たなというか、これまでも重要だと言われていた概念についての報告がありますので、時間が全体としては結構タイトになると思うので、活発な御議論をいただきながら、時間内に収めるよう、御協力をよろしくお願いします。それでは、配布資料の確認を事務局からお願いします。

○井上室長 配布資料の確認です。上から議事次第、委員名簿、座席表、厚生労働省新型インフルエンザ専門家会議設置要綱のほか、資料が 6 種類あります。資料の不足等がございましたら、事務局に申し付けください。

 なお、若干資料の修正がありますので、口頭で修正をさせてください。会議の座席図の各委員の肩書に若干間違いがありましたので訂正いたします。大石委員ですが、国立感染症研究所感染症情報センター長と誤りがありました。正確には感染症疫学センター長です。失礼いたしました。もう 1 点、永井委員ですが、 ( 日本呼吸器学会理事長 ) とありますが、既に退任されているという御報告を頂戴しております。以上、 2 点修正をさせていただきます。過不足等、特にありませんでしたら、資料の確認はここまでとさせていただきます。

 また、カメラの撮影もここまでとさせていただければと思います。ありがとうございました。

○岡部議長 それでは、議事に入ります。議事次第に従っていきますが、議題 (1) 「平成 25 年度 H5N1 プレパンデミックワクチン備蓄株の選定」で、議論は 30 分ぐらいが予定されていますので、よろしくお願いいたします。それでは、事務局から御説明をお願いします。

○井上室長 最初の議題の平成 25 年度 H5N1 プレパンデミックワクチンの備蓄株の選定に関して、資料 1 と資料 2 を基に、簡単に説明いたします。

 まず背景ですが、資料 1 に書いてありますように、国の新型インフルエンザ等対策政府行動計画に基づき、平成 18 年度から鳥インフルエンザ A(H5N1) ウイルス株のプレパンデミックワクチンを毎年約 1,000 万人分製造し、原液の備蓄を行ってきたところです。その概要図が資料 2 1 枚目のスライドです。このような形で平成 18 年度以降、逐次、備蓄を行ってきました。有効期限は 3 年ですので、既に平成 18 年度、 19 年度、 20 年度に製造したものは有効期限切れで、廃棄処分を行っております。

 今回の議題は、資料 2 1 枚目のスライドの紫色生の部分で、平成 22 年度に作ったベトナム株・インドネシア株の約 1,000 万人分が、今年度末に廃棄処分になることに伴い、資料 2 1 枚目のスライドの右下の赤い枠で囲んだ 25 年度の新たに製造する約 1,000 万人分の株を、どの株で製造するかを決定する議論です。

 資料 1 2. 備蓄株選定のプロセスですが、これは本会議、厚生労働省新型インフルエンザ専門家会議の下にあるワクチン作業班会議を本年 6 月・ 7 月に 2 回開催しました。その中で、世界における近年の H5N1 ウイルスの発生状況、さらには国立感染症研究所におけるベトナム株・インドネシア株のワクチン接種者の血清と現在の流行株との反応性を確認する試験等を基に、今年度、製造し備蓄する株の議論を行いました。

 資料 1 3. ですが、このワクチン作業班会議における検討の結果、今年度の備蓄株はベトナム株・インドネシア株としたいという結果が得られました。その際の株は、具体的にはベトナム株は Clade1 の既存株を使用すること、インドネシア株も既存株を使用するという判断をしました。このワクチン作業班会議における判断について、本会議において最終的な御承認をいただきたいというのが 1 つ目の議題です。

 このワクチン班作業会議における検討結果の技術的な詳細内容については、ワクチン作業班会議の班長である田代委員に補足の説明をお願いできればと思います。事務局からは以上です。

○岡部議長 それでは、続いて田代委員、補足という形で実際的なところの御説明をお願いします。

○田代委員 今、井上室長からご説明がありましたように、 6 月、 7 月に 2 回作業班で検討しました。資料 2 2 枚目に 2003 年、今回の H5N1 の流行が始まってから現在まで人の患者が出ている地域が書いてあります。 3 ページは毎年どのぐらい患者が出ているか、報告されている国がどこかが示されています。 2003 年、 2004 年ぐらいから毎年のように同程度の患者数が確認されています。未だに H5N1 の流行が終息しているという状況ではありません。

 色分けして国別になっていますが、患者が発生している地域がこのように少しずつ変わってきています。これについてはそれぞれの国で対策が、ある程度進められて、そういう国での新たな患者の発生がある程度食い止められているということだと思います。その代わり、それまで患者発生が報告されていなかった地域、国からも新たな患者が出て来ているという状況です。

4 ページは 2003 年以降、 H5N1 の鳥の間での流行ですが、赤で書いてある地域が鳥の間で、主に家禽、鶏、七面鳥、アヒルなどの飼われている鳥の中でこのウイルスが検出されたという地域です。日本も何回かこのウイルスが侵入してきています。肌色で書いてある所が野鳥、渡り鳥がこのウイルスに感染して、ここで見つかっており、こういう地域が色分けされています。

 この流行がスタートしてから 10 年経ちますが、その間にウイルスの遺伝子がどんどん変化していきました。右の方に書いてありますように、これは大ざっぱな図ですが、もともとの単一の起源の H5N1 のウイルスから、このように大きく分けて 10 の「 Clade 」と呼んでいる遺伝子的に区別されるグループに分けられています。更にそれぞれの Clade の中から毎年のように異なったウイルスが進化してきているという状況です。これを大きく色分けしたのが左側の図です。現在もともとの単一のウイルスから発生した H5N1 のウイルスが分布しているのはこのような状況です。 5 ページは今年 1 月から 7 月までの数字ですが、 8 月になってから数名の患者が新たにカンボジア、その他で報告されており、現在はこういう状況で患者が出ています。

 これに対して WHO はプレパンデミックワクチンの開発をずっと続けているわけですが、 6 ページに 10 年前から WHO が開発して推奨してきたワクチン候補株があります。この中の赤で囲っているものが、今回ワクチン作業班会議で平成 25 年度の備蓄用のプレパンデミックワクチンの製造株として推奨した株です。

 このように幾つもの株がワクチン候補株として現在推奨されています。カラムの左から 2 番目が遺伝的に区別される Clade です。大きく分けて、 Clade1 が最初に 2003 年、 2004 年に流行が起こったベトナムで最初に分離されたウイルスです。この系統のウイルスは、少しずつ遺伝的な変異を遂げながら、現在もベトナムで検出されています。

 インドネシア 5 と書いてありますが、これも 2005 年にインドネシアで分離された代表的な株です。この Clade 2.1.3.2 と細かく書いてありますが、大きく分けて Clade2.3 と言われるグループです。これが最初の頃に流行したウイルスです。最近、流行しているウイルスは、それ以下に幾つも書いてありますが、これらの直近のウイルスについては、それぞれの現在並行して流行しているウイルスの間では、かなり抗原的にも遺伝的にも異なってきています。

 しかし、それぞれの先祖に当たる 5 年前、 10 年前に流行したベトナム株やインドネシアの 5 については、比較的、抗原的にも遺伝的にも近いことが分かります。これを簡単に平たく言いますと、ヒトの場合でも、おじいさんと孫との間は 2 代ですが、曽孫同士の間はそれ以上に離れており、曽孫同士の顔つきはかなり違うけれども、おじいさんと孫との間はそれぞれかなり似ている、というように例えられるかと思います。

 次に感染研において行われた試験を説明します。これはベトナム株及びインドネシア 5 株のワクチンを既にプレパンデミックワクチンとして備蓄しておましたが、これを用いてボランティアに対してワクチン接種の臨床研究が、庵原先生の研究班によって行われました。そのときに得られたボランティアのワクチン接種前後の血清を分与して頂き、それについて 7 ページに書いてあるような幾つかの株について、ベトナム株及び 9 ページのインドネシア株のワクチン接種されたボランティアの血清が、最近流行しているウイルス株に対してどの程度反応するかを HI 試験で検討しました。

 その結果、 2004 年の 10 年前にベトナムで流行したウイルスに基づいたワクチン株を接種された方の抗血清は、最近のウイルスに対してもかなり対応できることがわかりました。赤で書いてある所が 40 倍以上の HI 抗体を示す、交叉性の抗体反応を示すことが分かります。こういうことで 9 年前のベトナム 1194 株を用いた場合にも、最近の流行ウイルスに対してもかなり対応できるだろうという結論になりました。

 ベトナム株のまとめが 8 ページにありますが、 2009 2012 年の最近 3 年間にベトナムでヒトから分離されたウイルス株に対して、 2004 年の 9 年前のワクチン株を接種されたヒトの抗血清の反応を検討した結果、最近のウイルス株に対しても、ある程度交叉性の抗体反応が見られることが分かりました。

 一方、インドネシア株についても同様に、 2005 年のインドネシア株を基にしたワクチンを接種されたボランティアの血清は、最近の株についても反応していることが分かりました。その結果として 10 ページに、 2011 年、 2012 年にインドネシアでヒトから分離されたウイルス株に対して、ワクチン接種株、接種者の血清の反応性を検討した結果、最近の株に対してもある程度反応できることが分かりました。インドネシア株については、最近分離されたウイルス株を用いて、感染研においてワクチン株の開発を進めましたが、この株をあえて使わなくても、古い株でもこの程度の反応性が期待できることが分かっております。

 その結果、第一の選択として、ベトナム株を備蓄するのがいいだろうということになりました。ベトナム株というのは、今回の流行の一番起源になっている株で、様々なウイルスに対して一番広く交叉する免疫を誘導できる株だということが分かっていますが、これを選択しておくのが、どのようなウイルスが出現した場合にも、一番幅広く反応できるだろうということで、ベトナム株を第一選択として選びました。

 しかし、ベトナム株の問題点は、卵での増殖効率が良くないということで、 1,000 万人分の備蓄ワクチンを現在供給可能な発育鶏卵を用いて作ることは、なかなか難しい状況です。 3 年前も同じような議論がありましたが、そこで可能な限りベトナム株を大量に作って、それで十分対応できない分については、第二の選択肢としてインドネシア株でその残りを作っていくということで、ベトナム株とインドネシア株合計約 1,000 万人分のプレパンデミックワクチンの備蓄を平成 25 年度に行うという結論・合意が得られました。以上です。

○岡部議長 どうもありがとうございました。もともとの話として、備蓄ワクチンを行うということを大前提に既に議論が行われていて、備蓄を今後どうするかはまた別の議論があると思います。

 またこれは以前からですが、ワクチン株の選定はかなり専門的・技術的な議論なので、主にワクチン作業班会議で方針を決めていただいて、最終的にはここで再度オープンにして結論を出そうということになっています。今までも作業班会議の結果を、尊重して決定しているという経緯があります。

 事務局と田代委員から御説明いただいた今までの経緯、決定理由等について、御質問、御意見がありましたら、よろしくお願いします。

○櫻井委員 今の御説明を聞いて教えていただきたいのは、最終的な結論について、ベトナム株、インドネシア株 1,000 万人分という話で、でもベトナム株をなるべく多くできるだけ作って、その残りをインドネシア株ということですが、できるだけ多くというのは、もう少し実務的にいうと、どのぐらいという数字なのか出てないといけないと思いますので、それは当然考えておられると思います。それを教えていただきたいというのが 1 点目です。

2 点目は、ベトナム株について、 2004 年のものを使うということですが、単純な質問で、 8 ページを見ると、これは数字が高いほど効果があると考えてよろしいのでしょうか。

○田代委員 はい、何パーセントということです。

○櫻井委員 そうすると、単純に見ると、 2009 年の株が 88 %前後ですから、これが一番高いわけで、なぜこれではなくて、 2004 年の株なのかという辺りの説明も頂ければと思います。

○田代委員 最初の質問の約 1,000 万人分の割付けですが、これについては我々のワクチン作業班の結論としては、具体的な数字はそのときは挙げておりません。これは実際にこれを製造するワクチンメーカーが試算をして、最終的にどのぐらいの数字になるかということは検討してもらい、最終的にその結果を見て、厚労省で判断していただくということになっております。大体の数字としては、 6 4 ぐらいの割合で、ベトナム株とインドネシア株になるのではないかと考えております。

 ベトナム株については、 2009 年の株をなぜ使わなかったのかということですが、 2009 年の株に対する抗血清を用いた逆の試験は行われておりません。ですから、 2009 年の株を用いた場合に、最近の流行株に対してどのぐらい対応できるかという成績がないのです。データが十分にないということで、これを選ぶことについては、 2009 年の株を選んだ場合に、周りで流行している違う Clade の株とはどのぐらい反応するかというと、余り高い反応性が期待できないということがあります。古い株のほうは 40 70 %前後となっていますので、この程度は対応できるということで、備蓄としてはむしろ妥当であろうという判断になりました。

HI 抗体価 40 倍という数字については、季節性インフルエンザのワクチン株を変更した場合に、 40 倍だと 50 %の人が感染防御できるという古い基準を基にして WHO が一応決めている数字ですが、 H5N1 についてはこの数字がどういう意味を持つかについて、実際のところは分かりません。仮に季節性と同じような判断基準を用いた場合にはこうなるということです。

 これは個人的な考え方ですが、 H5N1 がヒトに感染した場合には、ウイルスが血流中に入って全身感染を起こす可能性がかなり高いわけです。血清抗体というのはウイルスが血流中に流れている状況に対しては非常に有効であろうと考えられます。ですから、たとえ HI 抗体価が 40 倍以下であっても、 H5N1 の感染の重症化、若しくは死亡に至るようなものに対しては効果が期待できると判断しております。ですから、 HI 抗体が 40 倍以下でもプレパンデミックワクチンとして使用する目的とすれば妥当であろうと考えております。

○櫻井委員 コメントですが、そうすると、既に選定された原案自体の中に、データが全部それぞれ同じような形でそろっているわけではないという前提で、ある種の政策的というところで判断をされているのが、既に原案ということになるので、理想をいえば、本来は、もう少し数字が出て、分かっている数字、分からない数字というのは当然あるのですが、そういうことを含めて総合判断でやるということですが、総合判断については、本来いわゆる狭義の専門家だけでは議論できない部分で、それをここの会議等で議論なら議論するということになるので、もう少し踏み込んだ数字が出てくると、この会議が実質化するかなと思います。今後、御検討いただければと思います。

○岡部議長 ありがとうございました。田代委員、どうぞ。

○田代委員 櫻井委員の言われることはもっともで、全てのデータが出そろった場合に、最終的に判断するのが一番妥当な判断ができると思います。 2009 年の株、 2012 年の株については、試験ワクチンも作られておりません。したがって、ヒトにおける臨床研究、臨床試験も行われていません。ですから、こういうワクチンを試験製造して、それを接種した人の血清を用いた解析をしない限り、 2004 年の株で得られたような成績は出てこないわけです。毎年このような開発を実施するのはなかなか難しい状況にあると思います。世界的にも同じことが言えると思います。

○井上室長 櫻井委員の御質問の 2 つのうちの 1 つ目の質問に関して補足の説明をいたします。御質問はこれから作製する約 1,000 万人分のワクチンのベトナム株・インドネシア株の配分が明示されるべきではないかという御趣旨だったと思います。私どももできればこの段階でそのように確定させたいのですが、幾つかの技術的な事情において、なかなか確定しにくいことを簡単に説明させてください。

 まず、トータルで約 1,000 万人分ということがあり、それぞれのワクチンをどれだけ作れるかは、現段階では幾つかの未確定な要素によります。というのは、同じ製造ラインでこの冬の季節性インフルエンザのワクチンも作りますし、次の議題である H7N9 の治験ワクチンの準備もあります。それに合わせてこの H5N1 プレパンデミックワクチンの準備をする中で、それぞれのワクチン 1 単位当たりの原材料である有精卵からどれだけのワクチンの収量が得られるかということが、まだ未確定な状況があります。

 そうした中で、既存の国内の製造ラインを全て使って季節性インフルエンザ、 H7N9 H5N1 、それぞれ製造効率が違うものを組み合わせてトータルで最終的に目標とするそれぞれの製造ワクチン数を得るためには、最終的にはベトナム株・インドネシア株それぞれ製造効率が違うので、その製造効率の違うものを組み合わせて、ほかの要因も合わせた上で、トータル約 1,000 万人分にするというお約束までしかできません。

 先ほど田代委員から大目処の見込みとしては、ベトナム株・インドネシア株 6 4 という御説明がありました。私ども事務局としても 6 4 ないし 5 5 ぐらいの予定になるだろうと想定をしています。それ以上の細かい厳密な計算がまだ現時点ではできないという状況です。以上です。

○岡部議長 ほかにコメントあるいは御質問がありましたら、よろしくお願いします。

○伊藤委員 株の選定は理解したのですが、プレパンデミックワクチンに関しては国内で作るわけですね。事前に頂いた資料の中にそのように書いてあったのですが、まずそれが時間的にどのぐらいかかる予想がついているのかです。 2008 年に海外ワクチンとの効果の比較みたいな話が話題になったと思うのですが、それについてはどのように考えておられるのでしょうか。

○岡部議長  1 点目は事務局で。

○井上室長  1 点目の質問は事務局から、 2 点目はややテクニカルな質問ですので、できれば田代委員からお答えいただければと思います。

 まず、 1 点目の質問、全て国内で作るのかどうかということに関しては、御指摘のとおりで、全て国内で製造予定です。いつまでにできるかということに関しては、同じ製造ラインで季節性インフルエンザ、 H7N9 H5N1 それぞれ作ってまいりますが、今年度作るものについては、資料 2 1 枚目のスライドにある平成 22 年度に作っているベトナム株・インドネシア株が廃棄になる前に、できればそれで国内で常に約 3,000 万人分の備蓄という原則が保たれる形ですので、平成 22 年度に作製した約 1,000 万人分の株が廃棄になる今年度末までに製造という想定です。

○岡部議長 第 2 点目の外国製ワクチンとの比較は、田代委員にお答えいただきます。

○田代委員  H5N1 に関しては海外で製造しているワクチン株は、大きく 2 つあると思います。 1 つは日本と同じように卵で作った全粒子を不活化したワクチン、それに日本の場合にはアルミアジュバントを加えているわけです。そういうワクチンを製造している国は、現時点では日本とオーストラリア、中国、その他幾つかの国があります。

 一方で、欧米、主にヨーロッパのワクチンメーカーは、卵で増殖させたワクチンを、現行の季節性のワクチンと同じように、エーテル、若しくは界面活性剤でばらばらにします。それを用いて抗原としています。日本の場合は全粒子のままで、そこが違います。

 海外の場合、ヨーロッパのメーカーは、ばらばらにした抗原に対して新しいアジュバントを加えています。これによって免疫力を高めて 1 人当たりのワクチン接種量、抗原量を大きく減らすことができるというワクチンを作っています。単純に臨床試験の成績を比較しますと、ヨーロッパのワクチンのほうがヒトにおける免疫の応答は高いことが明らかです。

 一方で、 4 年前の H1N1 パンデクミックのときの経験からしますと、このようなヨーロッパタイプのワクチンを使った場合に、幾つかの強い副作用が出てきているという報告があります。そういうことを総合的に勘案しますと、ヨーロッパで使われている新しいアジュバントが、果たしてどの程度の安全性が確保されているのかという大きな問題が残っており、アメリカではそのアジュバントは現時点では承認されておりません。

 アメリカでは、ヨーロッパと同じでばらばらにした抗原を用いて免疫原性を高めるために抗原量を増やして、通常の 12 倍量を接種するという戦略をとっています。ワクチンの供給を考えますと、これは全く現実的ではないわけです。そこで日本で行われているような安全性をある程度確保しながら、免疫を誘導できるというワクチン製造が妥当だろうとして、我々はこれを選択しているわけです。

WHO でも免疫を増強する薬についての安全性については、非常にいろいろな議論が行われていますが、最終的な結論として、現時点で安全性が確保されているアジュバントは、日本で使用されているアルミアジュバントだけであるということになっています。

○坂元委員 質問ですが、ベトナム株とインドネシア株を今年度末で 1,000 万人分廃棄ということですが、少なくとも今年度末までベトナム・インドネシア、アンフィ、チンハイの 3 つで 3,000 万人分がストックされている。そうすると、例えば今年度末までにヒト - ヒト感染が起きたときに、最大量 3,000 万の人分のワクチンがプレパンデミックワクチンとして供給できると解釈するのか、それともヒト - ヒト感染が起こった株によって使えないものがあるのか。以前、交叉免疫に関する細かい説明を受けたと思うのですが、その予測として、もし今年度内に起きたときに、プレパンデミックワクチンとして使える最小量はどの程度と推測できますか。最大量は 3,000 万人分だと思いますが、最小量は大体お分かりになるのでしょうか。もし分かれば教えていただきたいと思います。

○田代委員 現在備蓄している総量は約 3,000 万人分です。そのうち 10 %ぐらいが小分け製品として、すぐにでも使えるような状況になっています。実際に H5N1 のウイルスがヒト - ヒトで流行を起こした場合に、現在幾つかに分かれているうちのどこに由来したウイルスが流行してくるかは実際に起こってみないと分かりません。

 ですから、現実問題としてそういうものがどこかで新たに検出された場合に、それを用いて、ここに書いてある 4 種類のワクチンについては、日本では臨床試験が行われており、ボランティアの血清が残っていて持っているわけです。それを用いて新たなウイルスに対してどの程度反応するかを急いで検討します。

 その結果、どれが交叉反応として期待できるのかを判断して、どれを使うかということになると思います。最悪の場合にはどれも駄目だという可能性はもちろん否定できません。どういうウイルスが起こるか分かりませんから、そういう可能性も一応念頭に置いておく必要があると思います。ただし現在、鳥の間で流行している直近のウイルスについては、この 4 つの株に対するヒトの免疫血清と、どれかがある程度反応しているという状況です。

○岡部議長 よろしいですか。ベストな選択肢はないので、製造している国々はそれぞれに考えながらやって、その中でどれを選択するかということで、日本は今までのような経緯でアルミアジュバントを用いた全粒子ワクチンです。それが今までのやり方で、ウイルス株については現在、提案されているものについて 2 つ合わせて約 1,000 万人分を用意しておくということだと思います。

 私も質問させて頂きますが、一時、緊急性のためにバルクではなくて、小分けしてとっておこうかという案も出たと思いますが、それの割合はどこかで検討されているのですか。あるいは今作ったもの、今年度の予定で作るものについてはバルクでとっておくという基本方針になりますか。

○井上室長 基本的にはバルクでまとめてとっておき、そのうちの一部をアンプル化して、すぐにも使用できる形にしております。一部というのが全体のどれだけの割合かということを明示的には我々は定めておりませんが、要するに、物事が起こったときに、当面必要になる分で、当面の間にバルクで保存してあるものを小分けするだけの時間が稼げる分量ということで、そのうちの一部、数 10 万人分を既に小分けした形にしています。

○田代委員 それぞれの株について大体約 1,000 万人分ずつ備蓄しているわけですが、そのうちの 10 %弱を毎年小分けにしていると聞いています。

 問題は、バルクの状況で備蓄しますと、 3 年間は劣化がそれほど起きない。有効期現と言っていいと思いますが、 3 年です。小分け製品にしてしまうと 1 年しかもちません。ですから、全部を小分けにして、すぐにでも使えるように準備をしておくと、毎年作らなければいけません。現在は約 3,000 万人分を備蓄することになっていますが、毎年約 3,000 万人分作らないと対応できないという状況になります。

 バルクから実際にパンデミックワクチンを製造して接種するまでにはどのぐらいの時間がかかるかというと、 2 か月ぐらいはかかる可能性があります。というのは、最終製品について、安全性の試験、国家検定、その他を行わなければいけません。ですから、そのぐらいの時間はかかると思います。更に 2 回接種する必要がありますから、 3 週間の間隔を置いて 2 回接種して免疫が上がるためには、更に 1 か月ぐらいかかります。現在のバルクとして備蓄しているワクチンの限界がそこにあるということです。

○岡部議長 そこもバランスの問題で、全部小分けにすれば早く間に合いますが、作るのに大変だということもあります。その辺は最終的な判断だと思います。

 それでは、今までいろいろ議論をいただき、御質問もいただいたのですが、一応ここで次の議論に入りたいので、平成 25 年度の H5N1 プレパンデミックワクチンの備蓄株については、今までワーキンググループから御提案があったベトナム株 (A/Vietnam/1194/2004) とインドネシア株 (A/Indonesia/5/2005) を、この委員会でも承認するということでよろしいでしょうか。

( 了承 )

 

○岡部議長 ありがとうございました。この委員会では、この 2 株を了承するということでいきたいと思います。先ほどお話しましたように、幾つか継続的に議論していかなければいけないところがあるので、この専門家会議、並びに有識者会議でも検討することにしたいと思います。

 次の議論は、これも一時下火になったかのようには見えていますが、これからの議論としては注視しておかなければいけないのですが、 H7N9 についてのワクチンをどうするかということで、まずは事務局から御説明をお願いします。

○今井室長補佐 資料 3 を御覧ください。鳥インフルエンザ A(H7N9) ワクチンについてです。本年 3 月の中国における A(H7N9) ウイルスのヒト感染例の報告を受けて、ワクチン作業班において H7N9 ワクチンのあり方を検討したところ、次の結論が得られました。大きく 3 点あります。

1 点目は、現時点では大量生産や備蓄を行うのではなく、今後必要に応じてワクチンを生産・備蓄できるよう、試験的に少量を製造した上で、非臨床試験を実施するなど、 H7N9 ワクチンの開発を進めていく必要があるという方針です。理由として、今後、 H7N9 ワクチンがパンデミックを起こす可能性が否定できないこと。現時点で H7N9 ワクチンの大量生産や備蓄についての計画を公表している国はないということです。

2 点目は、当面治験用の H7N9 ワクチンを製造し、非臨床試験まで実施するという方針です。ワクチン製造候補株については、現在日本で分与が可能となっている NIBRG-268 の株と、 NIIDRG-10.1 の株の 2 株について増殖性・抗原性等を検討した上で、治験用ワクチンを製造できるよう準備を進めることが適当で、また、ワクチン形態は、鶏卵培養法による不活化全粒子ワクチンで、アルミニウムアジュバントを含む場合と含まない場合で検討することが適当ということがワクチン作業班会議での御意見でした。留意点として、 H7 型ウイルスは、ワクチンを接種しても免疫ができにくい可能性があるという指摘があるため、既に承認されているインフルエンザワクチンの抗原量で免疫が誘導されるかどうかなど、抗原量を検討する必要があるという御意見でした。

3 点目が、国内での臨床試験の実施については、上記の国内での非臨床試験の結果や、海外での臨床試験の結果など、各種の情報を踏まえて検討するという方針です。以上について、新型インフルエンザ専門家会議として、了承してよろしいかお諮りいたします。

 続きまして資料 4 です。 1 ページ目の「鳥インフルエンザ H7N9 のヒトへの感染の対応について」を御覧ください。感染の状況については、 3 31 日に中国政府がヒト感染 3 例を公表して以来、これまで感染確定患者 135 名、うち死亡者 44 名が報告されております。 4 月に多く患者が発生しましたが、その後減少し、 6 月以降発症した者の報告は 2 名のみとなっております。主な特徴については、感染源は確定されておりませんが、生きた家禽類等の接触による可能性が最も高いとされております。厚生労働省では感染症法に基づく指定感染症に指定するなど、ここに記載している対応をこれまで行ってきております。

2 ページ目の平成 25 年度 H7N9 ワクチンの開発スケジュールはイメージを示しております。まず、一番上の「厚労省」と書いてあるカラムの 9 月の所に新型インフルエンザ専門家会議とありますが、これが本日の会議です。

 「感染研」と書いてあるカラムにワクチンと製造候補株 2 つを記載しております。 1 つ目が、感染研で作成された NIIDRG-10.1 株です。これは 7 月末に WHO のワクチン製造候補株のリストに掲載されております。もう 1 つが、イギリスの品質管理機関で作成された NIBRG-268 株で、これは 6 月中旬に輸入されております。

 一番下の「メーカー」と書いてあるカラムですが、 8 月下旬からこれら 2 つのワクチン製造候補株がワクチンメーカーに順次分与されております。ワクチンメーカーにおきまして、株の増殖性や抗原性などを検討していただいて、問題がなければ治験用ワクチンの製造に入っていただくことになります。その後、非臨床試験を実施して、その結果や海外の試験結果を踏まえて、臨床試験の実施について改めて検討することになります。

3 ページ目は、インフルエンザワクチンの比較という資料です。ワクチン作業班では、 H7N9 ワクチンの形態を検討する際にどのような選択肢があるか、ということを検討しております。一番左側が現在使用されている季節性のインフルエンザ HA ワクチンで、鶏卵培養法で製造されており、ワクチンの形態はアジュバントを含まない不活化スプリットとなっております。

 左から 2 番目が、季節性の全粒子ワクチンです。これは HA ワクチンが製造される以前に製造されていたワクチンで、現在は製造されておりません。これは鶏卵培養法によるアジュバントを含まない不活化全粒子となっております。真ん中が H5N1 の沈降インフルエンザワクチンで、現在、プレパンデミックワクチンとして備蓄しているワクチンです。鶏卵培養法で製造されており、水酸化アルミニウムをアジュバントとして含む不活化全粒子となっております。

 右側の 3 つが、新型インフルエンザワクチン開発・生産体制整備事業において、開発中の細胞培養ワクチンです。現在 3 社が開発中ですが、ワクチン形態は各社で異なっており、アジュバントを含まない不活化全粒子、アジュバントとして AS03 を含む不活化スプリット、アジュバントとして水酸化アルミニウムを含む不活化全粒子の 3 つの形態がありますが、いずれも、国内製造におけるワクチンは、現在、薬事申請中です。

 こうした選択肢を検討して、鶏卵培養法による不活化全粒子でアジュバントを含む場合と含まない場合で、 H7N9 ワクチンを検討していくことが適当とされました。

 次のページは、 WHO H7N9 ワクチンの製造候補株です。現在、 WHO Web サイトに掲載されており、 NIBRG-268 NIIDRG-10.1 がこの中に記載されております。資料の説明は以上です。

○岡部議長 リスクアセスメントに基づいて、いろいろな検討をされるようになってきておりますので、感染研の大石委員からリスクアセスメントについて御説明をお願いします。

○大石委員 感染症研究所疫学センターの大石です。資料の鳥インフルエンザ A(H7N9) ワクチンによる感染事例に関するリスクアセスメント対応について御説明します。これは国立感染症研究所として、 8 30 日にアップデートした資料です。今回、たくさんの研究成果が報告されており、かなり長くなっております。主に疫学的な情報について、特にアップデートされた部分について説明いたします。

1 ページ目の疫学的所見については、下線部分を読み上げます。

WHO の発表では、 8 11 日現在、中国及び台湾から 135 症例の報告がされており、うち 44 例が死亡されています。これが 33 %の致命率になります。年齢中央値は 61 歳と高齢者に偏っております。症例の発生は、 5 月以降はなかったのですが、 7 月に入って新たに 2 例の発症があり、最終症例の発症日は 7 27 日です。これまでに中国 2 10 省及び台湾で発症したことになります。

 文献上、一番症例数を多く扱った『 The New England Journal of Medicine 』の論文をまとめたものを説明しますと、 76.6 %の症例が ICU に入室し、 27 %が死亡の転帰を取ったということです。年齢分布については、先ほどと余り変わりませんが、 61 %の症例が少なくとも 1 つの併存症、基礎疾患があったということです。臨床症状としては、入院時にほとんどの症例で肺炎を認めたということです。特に、中等症、重症の急性呼吸促迫症候群 (ARDS) も発症しております。特に基礎疾患がある人で ARDS の発症リスク因子となっているということです。

 抗ウイルス剤の投与はほとんどの症例で行われているのですが、治療開始が発症後 7 日と非常に遅れて、診断の遅れ、治療の遅れが指摘できます。

 次のページ、中国本土から発症・症例の経路を調査した論文です。 5 27 日時点で報告された 130 例のうち 5 (4 ) が、インフルエンザ様疾患に対する病院定点サーベイランスで探知されており、これらの 5 症例は全て軽症から中等症であることが報告されました。こういった所見から相当数の軽症例が潜在している可能性が示唆されます。

 特に基幹病院定点のサーベイランスでは、外来症例が余り検出されていなかったことがあるだろうと考えられます。感染源については、家禽との接触歴が 75 %の症例であるということです。下線で示している浙江省での今年の 4 月、 5 月に実施された鳥インフルエンザ H7N9 ウイルスに対する血清抗体価の検査において、一般の健常人のほとんどは抗体陰性でしたが、家禽市場で働く健常者の 6 %に抗体陽性者が認められています。これらの所見は、家禽市場の従業者で不顕性感染が起こっていたことが示唆されております。ちなみに昨年の血清検査では、家禽市場での従業員で抗体陽性者は見つかっておりませんので、その後に不顕性感染が起こったものと考えられています。

 次のページは、日本における調査として、様々な年齢層の 500 例の血清検査では、ヒト由来のアンフィ株に対する特異抗体を保有していないことが感染研の調査で確認されております。ウイルス学的所見については、流行初期のウイルス株に関する遺伝子学的な解析結果を確認する動物実験のデータ等が数多く報告されております。

 最後から 2 ページ目の「リスクアセスメントと今後の対応」で、一番下のポツの所で、現時点で、持続的なヒト - ヒト感染は確認できておりませんが、ヒト由来のアンフィ株が、これも動物実験でフェレット伝播モデルにおいてある程度の飛沫感染伝播が起こることが確認されております。またヒト型レセプターへの結合及びヒト上気道の温度で効率よく増殖することが確認されていることから、本ウイルスが哺乳類への適応性を高めていることが更に明らかにされています。したがって、残り数箇所の遺伝子変異が起こるとパンデミックを起こす可能性は否定できないと考えます。厚労省・感染研では適時のリスク評価に基づいてパンデミックへの対応を行っていきます。以上です。

○岡部議長 どうもありがとうございました。これは 8 30 日時点での発表ということですので、詳細はホームページにも掲載されていると思います。続いて信澤先生、あるいは板村先生、田代先生含めて、ワクチン、あるいは技術的なコメントがありましたらお願いします。田代先生のほうからお願いします。

○田代委員  4 年前の H1N1 パンデミックワクチンの開発、製造に比べて、今回の H7N9 ワクチン開発が少し時間的にも遅れているという問題があります。これは幾つかの技術的な問題があり、一番大きな問題は、前回のウイルスはそれまで流行していたソ連型の H1N1 、若しくは 1956 年まで流行していたスペイン風邪の直接の子孫のウイルスと 4 年前の新型ウイルスが免疫学的に似ていたということ。その他、卵での増殖効率が良かったとか、様々な幸運が重なり、比較的早くワクチンを開発、製造することができたという事情があります。

 それに対して、 H7N9 の場合には、恐らく誰も免疫を持っていないから 2 回接種する必要があるということと、このウイルス自身は卵では余りよく増えない。その 1 つの理由として、かなりヒト型に近づいているために、むしろ鳥型からは遠ざかっているのではないか。そういうような問題があります。

 更に H7 の場合には、これはヒトに対する免疫を誘導する免疫原性と言いますが、それが非常に低いことが推定されます。これは WHO 10 年ぐらい前から H7 に対するプレパンデミックワクチンの開発を推奨してきて、それに応じて 2 つの臨床試験がアメリカで行われました。その結果を見ますと、ヒトに対して H7 のワクチンは、非常に免疫原性が低いと。これまで開発されていた季節性インフルエンザ及び H5N1 ワクチンと比べても、免疫原性が低い、ということは、もっと大量のワクチン抗原が必要であるか、若しくは強力なアジュバントが必要であるということが強く推定されています。これは我々の遺伝子の解析からもある程度推定されてきたことです。

 今度の H7N9 のワクチンに関する主な標的の抗原である HA NA の抗原において、 T-cell エピトープと言いますか、抗体を誘導するためにヘルパー T というものがある程度必要な場合が多いのですが、それに対する抗原刺激になるような構造がない、欠落していることが強く推定されています。そういうことからワクチン開発については非常に困難が予想されています。ワクチン開発が少し遅れる可能性があることに 1 つ大きな問題があります。

 現在国内で製造承認されているインフルエンザワクチンとしては、 2 枚目の最初の表に書いてありますが、季節性のワクチンのフォーミレーション、抗原当たり 15 μ g を使うと。 1977 年以前に承認されていた全粒子の不活化ワクチンも 15 μ g HA 抗原量です。 H5N1 のプレパンデミックワクチンの承認条件も、全粒子不活化ワクチンにアルミアジュバントを加えて、抗原量とすれば 15 μ g ということです。この 3 つしかありません。この 3 つで H7N9 ワクチンを作った場合、いずれも十分な免疫を誘導することが難しいのではないかと考えられています。そこで抗原量を少し増やすような検討が必要であろうということになっています。それは具体的にどういうような条件でやったらいいのかどうかというと、非臨床試験つまり動物実験で十分に検討する必要があります。その上で、ヒトにおける臨床試験の条件を絞り込んで行う必要がある。ですから、これは 4 年前のパンデミックワクチンの開発、製造に比べて、かなり余分な過程が必要になってくるということです。

○岡部議長 ありがとうございました。信澤先生、板村先生ありますか。

○信澤参考人 特にはありません。

○岡部議長 よろしいですか。それでは参考人の先生方も含めて、御質問がありましたらお願いします。

○押谷委員 資料 3 ですが、現時点では大量生産、備蓄を行わないという結論で、その理由として書かれていることが、ほかの国が公表していないからというのが理由で、この後で議論されることですが、 WHO もパンデミック対策をリスクアセスメント+リスクマネジメントの考え方で判断すべきとしている。感染研も、先ほど大石委員が説明されたような形で、リスクアセスメントしていくとしている。ほかの国がやっていないという理由は、日本のリスクアセスメント上では全く関係のない理由だと思うのです。日本で今このウイルスのリスクをどう考えるのか。これに対して日本の今のワクチンの製造体制や、今、田代委員が言われたようなワクチンの製造に関わるいろいろな問題があって、そういうことを考慮した上で備蓄を行わないと言うなら分かるのですが、そうではなくて、ほかの国がやっていないから日本もやらないと。これは理由としては非常に問題があるのではないかと思います。

H7N9 のリスクアセスメントを考えるのに、いろいろなことを考えなければいけないのですが、例えば、資料 4 2 枚目のスケジュールでいくと、いろいろなシナリオが考えられます。そんなことは起こらないかもしれない。これはパンデミックを起こさない可能性もあって、ただし、このシナリオスケジュールでいくと、もし仮に今年の秋から冬にかけてパンデミックを起こしたら、我々はワクチンが全くない状況で、このウイルスに対応しなければいけない。これを政府としてどう考えているのかという辺りが大きな問題になると思います。

 あとは仮に今後例えば 1 年、 2 年というタイムフレームでこのウイルスがパンデミックを起こしたときに、日本はワクチンに対してどう考えていくのか、きちんと考えた上で備蓄をどうするかということを議論していくべきだと私は思います。

 今、これは中国を中心に起きていますので、そういうことを考えると、日本はもし中国で持続的なヒト - ヒト感染が起きた場合に、時間的な余裕がないかもしれないということは考えておかなければいけない。すぐに日本に波及する可能性があります。 2009 年の例で言うと、恐らくメキシコから起きたと思いますが、アメリカと同じような状況に日本が置かれるかもしれない。パンデミックの発生が分かった時点で、かなり早い時期に日本でも第 1 波の流行が起こるかもしれない。

 実際に 1957 年はそういうことが起きているわけです。中国で最初に流行があって、その後、日本は世界に先駆けて流行が起きてしまったものですから、そういうことが起こると、このウイルスに対してワクチンは全く存在しないと。そういうふうな状況で対応しなければいけない。いろいろなことを考えてリスクアセスメントした上で、このウイルスに対するワクチンの製造、備蓄の方針を考えていくべきだと私は思います。

○岡部議長 ありがとうございました。これは事務局のほうから、室長どうぞ。

○井上室長 押谷委員、御指摘ありがとうございます。全く御指摘のとおりであると思います。資料 3 は、事務局で作成した資料ですので、ここで押谷委員が御指摘された点に関して、若干の説明をさせてください。御指摘は、資料 3 の一番最初の○の理由のポツの 2 つ目の「現段階で、 H7N9 ワクチンの大量生産や備蓄についての計画を公表している国はない」というのが理由で、日本の判断が左右されるのは本来のあり方ではないと思います。私どもも、資料の作り方にもう少し工夫するべきだったと反省しております。我々が念頭に置いていたことは、実際にはリスクアセスメントをし、マネジメントをするというプロセスの中で、ありとあらゆる情報を判断材料にしなくてはいけない中で、他国はどういう状況にあるかということは判断材料の 1 つにはなるということで、集めなくてはいけない様々な判断材料の中で、国境を越えて全世界で流行について、ほかの国はどういう対応をしているかということは、判断材料の 1 つという趣旨でここに記載したものです。これが私どもの政策判断の主たる理由ということではありませんので、事務局でも全く押谷委員と同じ考えであることを確認させてください。以上です。

○岡部議長 よろしいですか。そこは強調しておいたほうがいいと思うのですが、ほかの国がこうであるから、うちはやらないということではなくて、そこを考慮した上ですが、非臨床試験をはじめ、その他に入っていくという考え方ではないかと思います。ほかにはよろしいでしょうか。

○板村参考人 この説明のところで「現時点では、大量生産や備蓄を直ちに行うのではなく」というところの議論の中で、要は、今の時点でエフェクティブなワクチンがそもそもあるのかどうかということが極めて分からない点があるので、そういう意味ではリスク評価する以前に、まずはエフェクティブなワクチンを作るべきだろうというところが、まず第一義的な議論であったと理解しています。

○岡部議長 ありがとうございました。続いて、押谷委員どうぞ。

○押谷委員 それはよく分かります。今、製造、備蓄に耐え得るワクチンができないということが最大の理由です。ただし、日本にとってのリスクアセスメントをきちんとした上で、このワクチンの開発、製造に日本としても真剣に取り組んでいかなければいけない。このウイルスで、もし起きた場合には、こういうようなシナリオが考えられて、発生して 2 3 か月で日本に波及するというシナリオを考えた場合に、日本は全くワクチンが存在しない中で、第一波の流行を迎えなければいけないかもしれないので、そういうことはきちんと考えて整理をしておく必要があるというのが私の意見です。

○岡部議長 鳥インフルエンザ H7N9 ワクチンについての案になっていますが、今の押谷委員の御意見などを入れて、少し理由の所は書き換えたほうがより分かりやすくなるのではないかと思いますので、そこはよろしくお願いします。

○坂元委員 素人質問で申し訳ないのですが、先ほど抗原量を増やさないと駄目かもしれないという御説明がありましたが、抗原量を増やすことに対して、何かリスクがあるのか。それとも別に抗原量を増やしても、例えば有害事象との関係はないのか、もしその辺がお分かりになれば教えていただきたいと思います。

○岡部議長 田代委員、お願いします。

○田代委員 全粒子ワクチン、アジュバントを使ったワクチンの抗原量を増やしたという経験は、臨床試験で H5N1 ウイルスにおいて実施した以外はないのですが、季節性のワクチンで現在 3 価ですから、抗原量は 3 倍なので、そういう意味では H7N9 ワクチンは 1 価ですので、ある程度の余裕はあるとは思います。ただし、全粒子でアルミアジュバントを加えた製剤については、全くそれ以上増やした経験はありません。

○岡部議長 私から質問ですが、もしこの抗原量を増やすということ、もう 1 つは、全粒子ワクチンは今までライセンスがないわけですが、これを戻すといったときは、どこで議論すればこれが動くのですか。あるいはどこを動かさないといけないのですか。

○野村血液対策企画官 ただいまの御質問についてお答えいたします。先ほど御覧いただいたインフルエンザワクチンの比較については、現在、季節性全粒子ワクチンについては、過去の承認は残っておりますが、これに基づいて指定した株が使えるということになります。如何せん、古い承認ですので、これは薬事の審議会になりますが、そこで一部変更する手続も必要になってくるかと思います。

 仮にアルミアジュバントを加えた場合ということで参照される承認としては、中ほどにあるオレンジ色のプレパンデミックワクチンというものがあります。こちらについては株が H5N1 ということで指定されておりますので、別途、承認を取るということで、これも薬事の手続があります。ただしこの表の下にあるとおり、 H5N1 での承認時のいろいろな資料もありますので、そういったものも参照しながら、作業を進めていくことになります。

○岡部議長 ありがとうございました。それとお願いですが、これは使うときになると、小児も使う可能性があるので、今、当然臨床試験には入っていないのですが、小児に使うということも、これから先の念頭に置いておかないと実際に使えるものがなくなるので、是非その辺も視点に入れておいていただくようお願いしたいと思います。ほかはいかがでしょうか。

○田代委員 今の野村さんのコメントに追加ですが、現時点ではプレパンデミックワクチンとして、 H5N1 として得られた剤型を中心に検討しています。ここで問題が 2 点あります。 1 点は、今お話があったように、現在の承認は H5N1 だけに係っているわけですから、これを H7N9 に応用するためには、新たな承認を取らなければいけないのが 1 点です。現時点では、 15 μ gHA 含量と決まっていますが、これが例えば 30 μ g とか、 45 μ g 必要だった場合には、新たにドーズについても承認を取り直さなければいけない。その 2 点があります。そのために非臨床試験と臨床試験を実施する必要があるだろうと考えています。

○岡部議長 ありがとうございました。確認ですが、今、 H5 だけしか通っていないというのは、プレパン、プロトタイプ、両方ともですよね。それでよろしいですか。

○田代委員 プロトタイプというのは、細胞培養ワクチンに関しての新たな枠組みです。現在、製造承認が得られているのは、武田と国内では輸入のバクスターと 2 つだけですが、これもプロトタイプワクチンとして H5N1 だけでなくて、ほかの亜型のものについても同じ作り方、同じ条件であれば簡単な審査だけでできるという枠組みにはなっています。ただし、バクスターと武田の場合は 7.5 μ g ですが、これが例えば 15 μ g とか 30 μ g 必要になった場合には、これは新たな承認を別に取る必要があるのではないかと考えられています。

○岡部議長 ありがとうございました。それでよろしいですか。今のところはかなり重要なところだと思うので、確認させてもらいました。ほかに御意見がなければ、これについても H7N9 ワクチンは非臨床試験を進める。そこから先のことは非臨床試験の結果を見て、幾つか検討していかなければいけないと思います。少なくとも臨床試験を開始する際には、そういったようなデータを参考にしてスタートすることになるかと思います。大基本方針としてはそれでよろしいでしょうか。 H7N9 については、非臨床試験によって、これからワクチンとして使えるものになるかどうかを検討するということになると思います。これもこの委員会の承認ということで、よろしくお願いいたします。

 

(承認)

 

 ここから先は報告事項になります。まず、新型インフルエンザ等の対策については、今までのところにあるのでご存じだと思いますが、特別措置法、行動計画、ガイドラインと次々に出てきていますので、その進捗状況、抗インフルエンザ薬、パンデミックワクチンの開発。今の検討もありますが、こういうことも含めて室長からよろしくお願いします。

○井上室長 資料 5 に基づいて、前回この会議が開催されて以降の新型インフルエンザの対策の進捗状況について、簡単に御報告いたします。

 スライド 1 からです。前回のこの会議の開催以降、新型インフルエンザに関しては、特別措置法、我々は特措法と呼んでいます法律が実際に制定され、それに基づいて政府の行動計画が策定され、更には、そのブレイクダウンであるガイドラインが策定されるという大きな動きがありました。既にもう様々な形で報告されているので御承知のことも多いかと思います。簡単にもう一度振り返るために、スライドをざっと御説明いたします。

 スライド 2 です。特措法に関しては、実際の平時の体制整備、それから有事になった際の「新型インフルエンザ等の緊急事態宣言」、それに基づく新型インフルエンザ等対策事態発生の際の措置に関して定めたものです。

 その目的は、スライド 3 の概念図にあるように、実際のパンデミックの発生時に、そのピークをできるだけ遅らせ、ピーク時の患者数を小さくすることにより、国全体の健康上の被害、国民生活・経済に及ぼす影響が最小となるように取り組むことを目的としたものです。

 この特措法に基づいて、スライド 4 にあります「政府行動計画」が本年の 4 月に策定されました。ここでは大きく 5 点、体制、まん延防止、予防接種、新感染症、留意事項ですが、法に基づき、個々の事項について行動計画を定めたものです。

 スライド 5 6 に、その内容を時系列で、有事の際に何が起こるかということを書いております。横軸に海外発生時期、国内発生早期、国内感染期、国内小康期というように時系列で分け、それぞれの時期ごとに個別の対策、どのような対策を採っていくかを整理したスライドです。

 スライド 7 です。ガイドラインでは、これをさらに 10 個の項目に分けておりまして、 1 から 10 まで項目を付けております。個別の対策の事項に関して、国、地方公共団体、医療機関、事業者、家庭、個人等における個別の取組の基準を定めたものです。

 スライド 8 以降が、この 10 項目それぞれのガイドラインに関して、それぞれ 1 枚でその概要のポイントをまとめたものです。既に発表されているものですので、お時間があるときに見ていただければと思います。

 スライド 18 です。こうしたガイドラインを踏まえて現時点で、すなわち未発生期において、厚生労働省が実施している新型インフルエンザ等の対策をまとめました。これは現在、私どもが行っているものを、改めて整理し直したものです。縦軸が実施体制、サーベイランス・情報収集、情報の提供・共有、予防、まん延防止、医療提供、国民生活・経済の安定の確保、それぞれの項目において、現時点、平時において、ここに書かれたような取組を行っているという形です。

 スライド 19 ですが、さらには厚生労働科学研究において、未発生期の現在、個々の項目においてこうした研究を各研究者の皆様に取り組んでいただいているという形です。

 スライド 20 は、これも先ほど議題 1 で議論したスライドです。

 スライド 21 22 は、抗インフルエンザ薬、現在商品名タミフルとリレンザと 2 種類ありますが、それぞれにおいて備蓄の状況を示したものです。タミフルにおいては 3,000 万人分を備蓄しており、リレンザにおいては 530 万人分の備蓄をしております。タミフルはスライド 21 に示しているように、使用期限が 7 年から 10 年に延長されたことを踏まえ、若干の備蓄計画の見直しをしておりますが、原則として約 3,000 万人分を備蓄する方針は変わりありません。それぞれ着実に備蓄しております。

 スライド 23 です。これは新型インフルエンザのワクチンの開発・生産体制の整備の臨時特例交付金の事業に関してお示ししたものです。新型インフルエンザ対策の中で、ワクチンに関する現時点の問題としては、現在の生産方法である有精卵を用いた鶏卵培養法では、パンデミックが起こった後、全国民分のワクチンを準備するまでに非常に時間がかかる、 1 年半ないし 2 年かかるという問題点がありました。こうした技術的な問題を克服するために、製造方法として、鶏卵から作るのではなく、細胞培養法という新たな製造技術を基に、有事が起こった際に、より短期間でパンデミックワクチンを製造できるように取り組んでいるという形です。現時点では平成 25 年度中の実用化を目指し、 23 ページの下に書いてあるように、各事業者に取り組んでいただいています。

 以上、前回の本会議が行われた以降の新型インフルエンザの対策の進捗状況について簡単に御報告いたしました。

○岡部議長 これに基づいて研究班や自治体、いろいろなグループでの実際のガイドラインというところに、大分、取り組んでいただいていると思います。最近では、医療体制におけるガイドラインといったものもホームページに出たりしていると思いますので、何かのときには参考に見ていただければと思います。

 今の事務局からの説明は、大まかなところはこれまでの会議で御存じだと思うのですが、何か確認することなどありましたらお願いします。

○川名委員 細かいことで恐縮ですが、 21 ページにタミフルの備蓄について、これまで 7 年だったのが 10 年に延長ということになっています。これについては、恐らく国や自治体が備蓄しているものに関しては 10 年ということだと思うのですが、例えば、それぞれの医療機関などで独自に備蓄されているものに関しても、温度管理などが適切であれば、 10 年という有効期限で使ってよろしいのでしょうか。

○野村血液対策企画官 この点は少し確認をしないといけないところもありますが、薬事法上は原則 10 年に延長した以降に出荷したものについては、医療機関などで 10 年が使えると思います。ただ実質上、余り古いものを流通の中で置いておくようなことはありませんので、そういったところについては、実質上は余りないかもしれませんが、出荷からということになります。

 先生の御質問は、そうではなくて、国、自治体以外が備蓄をしているようなものという御質問かと思いますけれども、確認をしてお答えさせていただければと思います。

○川名委員 例えば病院で備蓄されているようなもので、今年 7 年目を迎えるといったものもあると思いますので、それがそのまま、あと 3 年延長していいのかどうか、御確認をお願いします。

○岡部議長 実際、病院などでは流通備蓄なので、回転しながら備蓄しているのではないのでしょうか。そうでもないのですか。

○川名委員 回転しているものもあると思うのですが、恐らく多くの病院が一定量を独自に備蓄していると思います。それは過去にアンケートをやったりして判明しているのです。そういうものが、例えば 7 年目を迎えたものが、あと 3 年持つのか、それとも駄目なのか、それは結構深刻な問題だと思いますので、御確認いただきたいと思います。

○岡部議長 では、それは確認していただいて、委員には何らかの形で連絡をお願いします。

○坂元委員 もしお分かりになれば、都道府県の行動計画の進捗状況、どれぐらいの都道府県で現在もう策定されたのか、策定中なのかということが、国のほうでお分かりになれば教えていただきたいと思います。

○岡部議長 自治体としては非常に気になるところですね。

○廣澤室長補佐 現在、内閣官房新型インフルエンザ等対策室で都道府県から報告を受けていまして内容を確認中だということです。現時点では厚労省の手元にはありませんが、徐々に、届いていると伺っております。

○岡部議長 では、それも集めてみて参考になると思いますので、よろしくお願いします。

 それでは、今の報告事項を確認したということで、次の議題に移りたいと思います。これは WHO のリスクマネジメントの暫定ガイダンスということで、これも今まで、押谷先生を中心に作業していただいていましたので、それについて御発表いただきたいと思います。押谷先生、よろしくお願いいたします。

○押谷委員 資料 6 に従って説明させていただきます。 1 ページです。新しい WHO のガイダンスが今年の 6 月に公表されました。これは、今年 4 月にジュネーブであった会議を受けて出たものです。この作業に私も関与してきたので、この内容について簡単に説明します。

 この基本的な考え方は右側に書いてありますが、これまで WHO 1999 年、 2005 年、 2009 年とガイドラインを出してきているのですが、特に 2005 年に出たものとはかなり趣きの違うガイドラインになっています。どこが違うかというと、これまで WHO はある程度、どんな対策をしなさいということを、ガイドラインの中で各国に示していたのですが、そういうものはほとんどなくなりました。各国に何をしろと言っているかというと、各国がそれぞれのリスクアセスメントに基づいて、リスクマネジメントという考え方でパンデミック対策をやれということが基本的な考え方になっています。

2 ページです。新型インフルエンザに関するリスクアセスメントとしては、リスクマネジメントする前提になるリスクアセスメントは 2 つに分けられると思います。 1 つは、パンデミック発生前のリスクアセスメントです。例えば、今、感染研がやられている H7N9 に対するリスクアセスメントは、こういうパンデミック発生前のリスクアセスメントということになります。この WHO の新しいガイドラインで主に扱っているのは、パンデミック発生後のリスクアセスメントになります。パンデミックが発生した後に、若しくはパンデミックになる蓋然性が非常に高いウイルスが発生したときに、各国がどういうリスク評価をしてリスクマネジメントをしなければいけないのかということが中心になります。

3 ページです。こういうパンデミック発生後のリスクアセスメントがなぜ必要かというと、このリスクアセスメントという考え方が前面に押し出されてきた最大の理由は、 2009 年のパンデミックの対応の反省です。これは日本だけではなくて世界的に同じことが起きていて、適切なリスクアセスメントなしに病原性の高いパンデミックを想定した対応が各国及び WHO でも行われてきました。日本はそうでもなかったのですが、 WHO 、特にヨーロッパの国々からパンデミックへの対応、 WHO の対応に対する非常に強い批判を受けて、その批判を受ける形で、リスクアセスメントに応じた対応を基本とするということに方針転換しています。日本政府も、先ほど事務局からお話があったように、特措法などの新しい行動計画等で、病原性感染力に応じた対応をするということが明記されています。この辺りが、 WHO の言っているリスクアセスメントの考え方に近いものだと思います。

4 ページです。 2009 年以前は、リスクアセスメントという考え方が全くなかったというと、そういうことではなくて、例えば米国 CDC 2007 年に出した「 Community Mitigation Strategy 」というドキュメントの中で Severity Assessment という考え方を入れていました。これが、 2009 年のときにちゃんと機能しなかったという問題があるのですが、そういう考え方が入っていました。 2009 年に改定された WHO のガイドラインの中でも、その右側にあるように、フェーズ 5 とかフェーズ 6 とかという話は、もうほとんどなくなりまして、その話について本日はしませんが、この新しいガイダンスの中でフェーズの考え方はかなり大きく変わっています。ただ、 2009 年のガイダンスの中にも、実は WHO の重要なファンクションの 1 つとして、一番最初に Assessment and Monitoring of Disease Characteristics and Severity ということが書いてあって、こういうアセスメントをきちんとしなければいけないということは、 WHO の機能としても、以前のガイドラインの中にも書いてありました。

 次の 5 ページです。 WHO はモニタリングをしなければいけない、リスクアセスメントをしなければいけないということが求められていて、実際に 2009 年のパンデミックが起きたときに、それを実際に WHO が中心になってやっています。 WHO と、そのネットワークと疫学モデリングなどをやっている人たちを中心に、世界の名だたる専門家を集めて、リスクアセスメントを 2009 年のパンデミックに対してやっています。発生してすぐにネットワークが構築されて、電話会議等で議論して、その結果が 5 11 日、ですから、パンデミックの発生が確実だということになってから 2 週間足らずで最初のアセスメントの結果が『 Science 』という雑誌に報告されています。ここで何を言っているか、最大の肝は、致命率が 0.4 %だという推計を出していて、これは実はメキシコのデータに基づくリスクアセスメントだったのですが、この 0.4 %というのは非常に過剰な推定だったということが後で分かりました。その後出た論文で、この 1 オーダー下の 0.055 %というデータが出て、実際にはさらに 1 オーダー下だったと。 100 分の 1 ぐらいだったということが出ました。こういう初期のリスクアセスメントは非常に難しいわけですが、その話はまた後でします。ただし、実際の特措法及び行動計画・ガイドラインに基づいて意思決定をしていかなければいけないわけですが、段階ごとの意思決定の中で、リスクアセスメントというのは非常に重要になってきます。

 例えば海外発生期で、この時点で今の H7N9 が中国でヒト - ヒト感染を起こしたとします。それでパンデミックが起こる蓋然性が非常に高いとなったときに、緊急事態宣言をどうするかという判断を国はしなければいけないことになります。国内で最初のヒト - ヒト感染が確認されたという事態になると、どこまで積極的な感染拡大防止策をやるかと。ですから、 2009 年の神戸・大阪のようなことが起きたときに、どこまでやるのか、学校閉鎖をどこまでやるのかなどを決めていかなければいけない。さらに、だんだん患者が増えてくると、医療体制をどう維持していくのかというようなことは全て、 WHO の新しいガイダンスの中では、各国のリスクアセスメントに基づいてやりなさいということになっています。ただし、一番下に書いたように、リスクアセスメントに必要なデータ、本当に致命率などが分かるのは、実は最終的にパンデミックが終わってからだと。パンデミック初期の段階、特に意思決定の上でリスクアセスメントが必要な段階では、非常に限られたデータの中で意思決定をしていかなければいけないという問題があります。

 スライド 7 です。なぜ発生早期のリスクアセスメントが困難なのかということです。これは重症度を評価するための、重症者や死亡者数などの分子はある程度分かっても、分母が分からない。今の H7N9 に関しても分母が分からないというのが最大の問題です。先ほど大石委員からお話がありましたが、定点サーベイランスか何かで出てきているわけで、恐らくその裾野にはたくさんの感染者がいると考えられるのですが、その「たくさん」というのがどのくらいたくさんなのかが分からない。これが、 2009 5 11 日に出た論文の中で致命率を大きく見誤った大きな理由の 1 つです。もう 1 つの理由は、疫学像や重症度などは、流行の進展とともに変化しているということもあります。現時点では発生早期に正確なリスクアセスメントをする方法論は確立していないというのが、世界的なコンセンサスです。ただし、先ほど言いましたように、特措法の中で緊急事態宣言をしなければいけない。そういうことは、発生早期に実施のメイキングをしなければいけないということになって、この辺りの非常に大きな困難を伴った中でリスクアセスメントをしなければいけないことになります。

 スライド 8 です。 WHO のガイダンスの中で 3 つのコンポーネントについての評価をすることが求められています。 1 つ目は感染性、 2 つ目が Seriousness of clinical illness となっていますが、臨床症状の重症度、これは日本の行動計画等にも「感染力」という言葉が使われていますが、それに応じて対策をしなければいけない。そういうことは、この重症度感染性を日本も評価しなければいけないことになります。もう 1 WHO のガイダンスの中で言われているのが Impact です。特にヘルスセクターへの Impact ということが述べられています。

 これをどう評価していくのかということは、実はこのガイダンスの中に、どうやりなさいということは全く書かれていません。どんな指標が参考になるかということが、次の 9 ページの Annex に羅列されているだけです。実際のリスクアセスメントの方法論は各国で考えなさいという、無責任と言えば無責任なのですが、そういうことしか書いていません。たくさんの指標がそこのリストの中に挙げられていて、これは A basket of Indicators という考え方で、少なくとも、今のコンセンサスは致命率などの単一の指標で評価することはできないと。そうすると、いろいろな Indicator を総合的に評価して考えるしかないのだということです。これは WHO のケイジクターが最後に言っていたことなのですが、恐らく、今、各国が流行早期にできる最大のこととしては、季節性インフルエンザと比べて悪いのかいいのかという検討です。季節性インフルエンザと同程度なのか、それとも、それよりも重症度が高いのかどうか、感染力が高いのかどうかです。恐らくそういう評価しかできないのではないかというようなことを WHO も言っていました。

 次のページです。こういう事態を受けて、こういうリスクアセスメントの必要性は、私も有識者会議や専門家会議で何度か発言させていただいていたのですが、これをやらなければいけないという状況になってきていて、感染研の大石委員が本日来られていますが、大石委員の感染症疫学センターと共同で、今、このリスクアセスメントのフレームワークの作成の作業を行ってきています。その基本となるのは、特措法、行動計画、ガイドラインの中で、病原性、感染力に応じた対応をするとなっているのですが、その方法論が今まで議論されてこなかった。私が今やっている厚労科研の研究班と大石先生のところで、共同でやっています。今までの議論のもっと詳しいものは感染症疫学センターのほうで文章をまとめていらっしゃいますので詳しいことは言いませんが、今、考えている現状と課題としては、大前提としては、発生早期には病原性、感染性等を示す明確な指標は得られない。そういう中で、いろいろなリスクアセスメントを考えて、実施のメイキングをしてこなければいけないのだ、ということが大前提になります。

 現在考えられている平時のサーベイランス+新型インフルエンザ発生時のサーベイランスが、今、新型インフルエンザ対策のガイドラインの中に書かれていますが、これだけではリスクアセスメントに必要な情報は全て得られるということではないだろうというのが、今までの議論の中で出てきたことです。入院サーベイランスの強化や積極的な疫学調査の実施体制の強化、イベントベースサーベイランスの導入などの対応が必要になってくるだろうと。

 最後のポイントですが、新型インフルエンザ発生前から、季節性インフルエンザなどに対するリスクアセスメントを実施して、実施体制の強化を図っていく。そのことが、季節性インフルエンザと比べてどうなのかということの評価ができることになりますし、平時にやっていないことは、なかなか緊急時にできないということもありますので、そういう体制を今後構築していく必要があるというのが、今の感染研の疫学センターとの議論の大まかな内容となります。以上です。

○岡部議長 ありがとうございました。大石委員、これは一緒にやっているところもあると思うので、何か補足があったらお願いします。

○大石委員 今、押谷先生から御紹介いただいたとおりなのですが、現在、リスクアセスメントについては、 Severity Assessment については作業中ですが、まだ議論し尽くせていない部分が多くあるのも事実であります。

 資料の 6 ページに海外発生期に緊急事態宣言をするかどうかということが書かれていますが、新型インフルエンザ等の有識者会議の中では、国内のある地域で新型インフルエンザの流行が発生して、それを受けて地方自治体の長が政府と連携をとりながら、この緊急事態宣言を発するということだったと思います。海外発生期から、どのタイミングで緊急事態宣言を発するのかということを計りながら、実際に国内に発生したときにどう決断するかというプロセスについて議論する必要があると思うのです。

○廣澤室長補佐 事務局から補足説明させていただきます。緊急事態宣言については、政府対策本部のほうで宣言するかどうかを判断しす。要件としては、国内発生以降ということになっていますので、国内 1 例目が発生した後に、政府対策本部のほうで、適宜、緊急事態宣言を行うかどうかを判断することになっております。

○岡部議長 御意見、コメントがありましたらお願いします。

○大石委員 私もそのように理解していましたので、この辺りは押谷委員とも、今後、議論を詰めておきます。

○岡部議長 これは、かなり自治体その他にも影響のあるところだと思うので、佐々木委員、お願いします。

○佐々木委員 発生後のリスクアセスメントですが、保健所は新型インフルエンザのときに、患者さんの所に真っ先に行くわけです。全国の保健所が患者の所に、積極的疫学調査をするのですが、今は感染源と接触者は誰かということを中心に見ているのです。それに、このリスクアセスメントに必要な項目はどういうことかというのを、全国統一的に収集できるような項目を示していただくことが重要だと思います。 2 つ目は、それをいかに早く先生方の所へ届けるようなシステムを作っていただく。その 2 つができれば、少しはお役に立てるかと思います。

○小森委員 両委員の御指摘は非常に大事なことだと思いますが、押谷先生のお話の中に、イベントベースサーベイランスという新しい言葉が入っていました。具体的にはどういった事象のことなのか。そして、イベントベースサーベイランスの導入によって、どのような効果というか、そういったことを期待できるのかを教えていただければと思います。

○押谷委員 実はイベントベースサーベイランスというのは、 International Health regulations という国際保健規則の中で決まっていることの 1 つで、本当は日本もこの体制を整備しなければいけないのですが、今まで全然きちんと整備されていなかったことなのです。今までの、インディケーターベースサーベイランスやケースベースサーベイランスと言われているのが普通やられているサーベイランスで、例えば、はしかの患者、インフルエンザの患者を報告する。個別の患者を報告していくということなのですが、イベントベースサーベイランスというのは、個別の患者の報告というよりは、イベントとして、例えば、ある医療機関で集団発生がありました、ある学校で集団発生がありましたと、そういうイベントとして報告していくものです。

 そういうことが、早期の Unusual Event です。いわゆる普通でないことが起きているかどうか、例えばインフルエンザで言えば、パンデミックがある程度広がってきました。ある所で突然、抗インフルエンザ剤が効かないような症例の集団発生がありました。これはイベントベースサーベイランスとしてきちんと報告してもらうことが、リスクアセスメント上、恐らく必要になってくるだろうと。そういう考え方を、このパンデミックだけに限らず、本来はいろいろな感染症でやっていかなければいけないことだと思うのですが、日本の中でもきちんとやっていかなければいけないということがイベントベースサーベイランスの考え方です。

○小森委員 この考え方によって、考え方というかリスクアセスメント上はどうしても必要というか、決定的な要因になり得る。

○押谷委員 なり得る可能性があると思います。例えば 2009 年の例でいっても、そのイベントをきちんと報告して、それを評価するという体制が日本になかった。きちんと存在していなかった。系統的にきちんと評価する体制がなくて、そういうことがいろいろな、神戸の問題もありましたし、そういう流行の見地や、何かが地域で起こっていることがきちんと把握されないことにつながっていたのだと。

○坂元委員 質問なのですが、 Impact というところを見ると、例えば、救急部門に来る患者さんの率などということになると、かなりある程度進入してきた時期になると思います。今、緊急事態宣言は国内で 1 例人 - 人感染が見つかったという、そこが 1 つの指標だというお考えもあったのですが、まず、これは 2 つに分けてやるという意味ですか。例えば海外で起こった事象に対して、この Impact というのを 1 つ見て、そこから次に国内である程度入ったときの Impact と、両方合わせて判断するというお考えなのでしょうか。

○押谷委員 それは、今後の議論をきちんとしていかなければいけないところだと思いますが、海外で起きたことと、国内で起き得ることとは、必ずしも 1 1 対応ではなくて、 2009 年のときにも、アメリカ、スペインではかなりの人が実際に亡くなったのです。しかし日本では致死率は相対的に低かったというようなことがありました。ですから、そういう意味で、日本でのリスクアセスメントをしなければいけない。ただし、日本の国内で患者が発生していない、若しくは数例しか発生していない段階で、日本のリスクアセスメントをどうやるのかと。そうすると、ある程度、海外のデータにも頼らなければいけません。だけれども、そのデータはどこまで日本にアプリカブルなのかというのはよく分からないという制限の中でやっていかなければいけないということになっています。

○岡部議長 多分そこがリスクアセスメントをする人の必要なところで、外国の医療事情や文化的背景で随分数字が違ってくると思うのです。数字は必要だけれども、その数字を鵜呑みにしないでもらいたいというのがあると思います。

○大石委員 岡部議長がおっしゃったとおりで、中国で発生したヒトの H7N9 インフルエンザの診療状況についても、重症例が多く、発症から診断まで 1 週間かかっているというところには、迅速診断キットや抗インフルエンザ薬の使用を含めたインフルエンザ診療体制が日本とは違うのかもしれません。また、 2009 年のメキシコで発生したパンデミック H1N1 の初期事例などでは、医療のアクセスは中国よりも悪かったと考えられ、感染症が発生した国によって、病原体は同じでも、リスクアセスメントの内容が変わってくるところが大事なポイントなのだろうと思います。

○田代委員  WHO の新しいガイダンスで、我々の WHO のグループでも随分これを検討しましたけれども、大きな批判は、ウイルス学的な評価が全く考慮されていないことが大きな問題だと思います。これは 4 年前のパンデミックのときに、 4 月の中旬だったと思いますが、アメリカの CDC が、新しいウイルスの全塩基配列を公表しました。これを 1 週間かけて WHO のネットワークで徹底的に検討したわけです。その結果、このウイルスは季節性のインフルエンザを超えるものではないだろうと。ほぼ完全にヒト型に近いウイルスになっているからパンデミックは起こす可能性は非常に高いと。しかし、健康被害はそれほど大きくないだろうという評価をしたわけですが、これは全く無視されました。これは、 WHO の最終的な意思決定は主にエピグループがやったと、疫学グループがやったということで、我々からすると、ウイルス学を全く理解していない判断であっただろうと評価しています。

 こういうことから、ウイルス学的な評価、今回の H7N9 についても非常にいろいろな情報が得られています。こういうこともリスクアセスメントの中の重要なファクターだと思います。アメリカの CDC では、 4 年前の反省から、パンデミックのリスクアセスメントに対して、 20 幾つのファクターを決めて、それで評価をするということを、我々も一緒に共同研究でやっています。大体、どういうエレメントを見ていかなければいけないかということはリストアップされました。そこまでは我々も非常に納得しているのですが、各 20 数項目についてスコアリングをするわけです。それぞれの重みを少し付けて、その合計スコアでリスクアセスメントをするというのが出ようとしています。それについては少し問題があるのではと、意見を出しているところです。

 いずれにしても、その中でもウイルス学的な評価、例えばヒト型にアダプテーションをどの程度しているのか。ヒトからヒトへの伝播性がどのくらいあるのか。ヒトに対する病原性がどのくらいのものなのかということが、判断材料として非常に重要だと思います。

 例えば今回の H7N9 については、かなりヒト型になっているので、感染研の 8 30 日のリスクアセスメントに書かれているように、あと数個のミューテーションが起これば、ヒト型パンデミックを起こすかもしれないということが一方でありますが、このウイルス学的な性状及び動物実験の成績から見て、これは致死率が 30 %を超えるような、特に高齢者を中心にしたアウトブレイクを起こすウイルスではないだろうと判断しています。恐らく、分母は非常に大きくて、既に何十万の人が感染している可能性がある。しかも、そのほとんどは季節性のインフルエンザ、若しくは、それよりも若干重症かもしれませんが、軽症の患者及び不形成感染の患者が大量にいるのだろうと。これは、現時点でのウイルス学的な判断からのリスクアセスメントです。

○岡部議長 ありがとうございました。ほかに意見はありますか。そろそろ最後ぐらいにしたいと思います。

○押谷委員 今、田代委員が言われた、この WHO 9 ページにダラダラと項目が羅列されているだけなのですが、この中にも、ウイルスのことも書いてあって、ウイルス学的な判断もするということは、一応書いてあるのですが、実際にそれをどうするかというようなことは、このガイダンスの中では全く書かれていないということです。

 それから、先ほど佐々木委員がおっしゃった、最初の積極的疫学調査をどうするかなども、感染研と一緒に、どういう指標を集めたらいいのかと。これは実は、行動計画の中だったと思いますが、行動計画の中に、地域の特性や地域の疫学状況に応じた対応をするということも書かれていて、これはどういうことを意味しているかというと、やはり地域ごとに、リスクアセスメントをしなければいけないということになっていくのだと思います。そのために何をしなければいけないのか。今のままで、特措法上も知事などの権限もかなり強化されていますので、そうすると、知事にいったい誰が、各県や各地域、保健所単位などどうなるか分かりませんが、各地域でリスクアセスメントをして、それを、知事や市長、村長などに、誰がアドバイスをするのかと。こういう体制をきちんと作っていかないと、きちんとしたリスクアセスメントに基づくリスクマネジメントができない。この体制作りが、日本の非常に大きな課題ではないかと思っています。

○岡部議長 ありがとうございました。そろそろ議論をまとめておきたいと思います。今、押谷先生と感染研の共同作業でリスクアセスメントが強化されてきているわけですが、この前の H1N1 パンデミックのときも、スタートは決してそんなに悪くはなかったと思うのです。ただ、それをどういうふうに評価していくかというのが、きちんと政府内でもうまくまとまっていなくて、私自身の反省にもなりますが、そういうようなことの評価をきちんと検討する場と、それを取り入れる場がなかったことが、大きな反省すべき点ではなかったかと思います。

 今回も、今のところ新型インフルエンザ等ということで、あるものを仮想してやっているわけですが、それが発生したときに最初はかなりきつい評価をしなくてはいけない場合があるかもしれないのですが、その時点で特措法が動いたときに、動きっ放しになるのか、あるいは、もっと強化しなくてはいけないのか、あるいは緩める必要があるのか、その辺りの判断をきちんとできるような、評価する組織と評価を受け取る所と、それをきちんとしておかなくてはいけないだろうと思います。

 つまり、どういうふうにハンドリングするかというのが、実際の混乱を少しでも少なくする mitigation の部分だと思います。特に、今のリスクアセスメントの研究班ですが、感染研は、私のいた所ですが、やはりエピ、ラボ両方いるのですから、エピが言っているからとか、ラボがやっているからとかということではなくて、常に、是非そこを、一致した形でできるのはそこしかないですから、きちんとした評価を出せるように力を付けるように、また、力を付けさせるように国のほうは動いていただければと思います。

 それから、地域の話も出ましたが、地域でやってくださいというだけではなくて、地域がそういう力を持てるようなことを国は提供していかなくては駄目だと思うのです。私も地域に行きましたが、地域の力が実際の現場では非常に重要になってくるので、それが、頭だけ決めておいて、後はやりなさいよというような批判のないようにいきたいと思います。一応、それを本日のまとめにしておきたいと思います。

 本日は、議題と報告事項幾つかについて議論をしたわけですが、今後の予定その他について、事務局のほうにお預けして、委員会としては終了したいと思います。

○井上室長 長時間に渡り、ありがとうございました。本日の議題 1 、議題 2 の御議論に基づいて、まずは 1 点目、平成 24 年度の H5N1 プレパンデミックワクチンについては、ベトナム株、インドネシア株で製造・備蓄を進めてまいります。 2 点目、議題 2 ですが、 H7N9 ワクチンについては、本日の議論に基づいて、非臨床試験まで進めてまいります。

 これにて、今回の第 16 回新型インフルエンザ専門家会議は閉会とさせていただきます。次回の日程は現時点では未定ですので、また、決まり次第、追って調整をさせてください。なお、このあと会場で約 1 時間、記者ブリーフィングのお時間を取っております。どうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

健康局結核感染症課新型インフルエンザ対策推進室

電話: 03−5253−1111(内線4609)

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