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2013年6月14日 第14回今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会 議事録

職業安定局派遣・有期労働対策部需給調整事業課

○日時

平成25年6月14日(金) 10時00分~12時00分


○場所

厚生労働省 職業安定局第1・2会議室(12階)


○出席者

構成員

鎌田座長、奥田委員、小野委員、木村委員、竹内(奥野)委員

事務局

岡崎職業安定局長、宮川派遣・有期労働対策部長、尾形企画課長
富田需給調整事業課長、牧野派遣・請負労働企画官、亀井需給調整事業課長補佐

○議題

1 事業者団体からのヒアリング(公開)
   ・日本経済団体連合会・全国中小企業団体中央会
   ・日本商工会議所・日本人材派遣協会
2 その他

○議事

○鎌田座長 定刻より少し早いのですが、委員の皆様、今日ヒアリングで最初に御対応いただく方も来ていらっしゃるということですので、ただいまより、第14回今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会を開催いたします。
 本日は、事業者団体4団体からのヒアリングを予定しております。
 それでは、委員の出欠状況と資料の確認を事務局よりお願いいたします。
○亀井補佐 まず、委員の出欠状況ですが、本日は阿部委員と山川委員が所用のため御欠席と伺っております。
 また、本日のヒアリングに御対応いただく方々の御紹介ですが、本日は事業者団体としまして、一般社団法人日本経済団体連合会、全国中小企業団体中央会、日本商工会議所、一般社団法人日本人材派遣協会の4団体にお越しいただくことになっております。
 それでは、お手元の議事次第に即して資料の確認をさせていただきます。本日の議題は「事業者団体からのヒアリング」と「その他」になっております。
 配布資料です。資料1は、毎回お配りしております前回の主な議論の概要を事務局において参考までにまとめたものです。資料2として枝番が3つありますが、本日御対応いただく方のうち、日本人材派遣協会から御提出いただいている資料と参考資料が2部、計3部御用意しております。資料の確認は以上です。
○鎌田座長 ありがとうございます。それでは早速、議事に入ります。ヒアリングは1団体ずつ、最初に15分程度御説明いただき、その後、15分程度質疑応答を行うという形で進めたいと思っております。
 なお、長時間のヒアリングになること、または席の都合もありますので、事務局の誘導に沿って1団体ごとに交替して進めるという形にさせていただきたいと思います。
 最初に、日本経済団体連合会から御説明をお願いいたしますが、御説明の前に出席者のご紹介を事務局よりお願いいたします。
○亀井補佐 日本経済団体連合会からは、労働政策本部主幹の坂下多身様にお越しいただいております。どうぞよろしくお願いいたします。
○鎌田座長 それではお願いいたします。
○日本経済団体連合会坂下様 経団連の坂下でございます。本日は、事務局から御提示いただいております7つの論点に対する当会の、現段階における考え方につきまして申し上げたいと存じます。本日お話させていただきます内容につきましては、経団連の機関決定されたものではありませんので、今後、考え方が変わり得る可能性があるということを御了承いただければと思います。そのため、本日の説明は、大変恐縮ですが、全て口頭にて失礼いたしたいと存じます。それでは早速、各論点につきまして述べてまいりたいと思います。
 まず、1つ目の論点であります登録型派遣、製造業務派遣の在り方についてです。登録型派遣、製造業務派遣は、我が国の労働市場において不可欠であると認識しております。例えば、企業が直接雇用により人を確保しようとする場合に、企業規模や地域の労働市場の状況によっては、必要な人材を迅速に確保することが困難な場合があります。これらが規制されるようなことになりますと、企業の需給変動に対する経営の柔軟性の低下だけでなく、派遣労働者の就労機会の喪失につながることが強く懸念されると考えております。
 登録型派遣につきましては、短期的に働きたいという労働側のニーズや短期的な労働需要のある企業が多いといった、労使双方のニーズが大変大きいこと、さらに、登録型派遣は我が国における最も一般的な派遣の形態の1つであると認識しておりますので、規制の強化・禁止は雇用に甚大な影響を及ぼすおそれがあると認識しております。そのため、禁止はもとより規制の強化は行うべきではないと考えております。
 製造業務派遣につきましては、少なくとも主要国において製造業務派遣を禁止している国はないと理解しておりますし、登録型と同様に労使双方にニーズが大変大きいことから、こちらにつきましても、禁止はもとより規制の強化は行うべきではないと考えております。
 一方で、派遣労働者の雇用の不安定性の問題につきましては、労使双方のニーズを前提とした派遣元や派遣先での雇用安定の推進、キャリアアップを希望する派遣労働者に対して能力開発の機会を提供するといった取組みは必要になると思います。しかし、最も重要な問題の1つであります派遣先の都合により派遣契約を解除する場合の措置につきましては、従来は派遣先の指針の中に記載されておりましたが、それを法律に明記する、つまり格上げするといった、派遣労働者の保護の強化に資する取組みもこれまで行ってきておりますので、こうした点についても評価をすべきであると考えております。
 続きまして、2つ目の論点であります特定労働者派遣事業の在り方について申し上げたいと思います。労働者派遣事業は、派遣労働者という人を扱う事業ですので、事業主は、基本的に同一の基準を満たす優良な事業主であることが望ましいと考えます。また、そうした優良な事業主であるか否かについては、参入時点のみではなく、定期的に行政による監督指導が行われて、継続的に確認されることが重要であると考えております。特定労働者派遣事業の届出制につきましては、派遣事業者が自ら廃止の届出をなさない限り、いつまでも事業者として残ってしまいますので、派遣事業者の実態把握を行う際の行政コストの増大を招くという問題もあるかと思います。
 以上を踏まえますと、派遣事業者は原則許可制として、一般労働者派遣事業との区分を廃止することが適当ではないかと考えております。ただし、研究会でも議論がありましたとおり、無期雇用をしている労働者のみを派遣する事業所につきましては、届出制でもよいとすることも考えられると思っております。
 続きまして、3つ目の論点であります期間制限の在り方について申し上げます。いわゆる26業務につきましては、専門性の基準はその時代ごとに異なりますので、常用代替の有無を判断する指標としては分かりにくい、そういう面はあると思います。また、いわゆる26業務か自由化業務かの判断をめぐりまして、労働局、派遣元、派遣先で見解に齟齬が生じることが多く、現場で混乱が生じているということも承知しております。したがいまして、日本人材派遣協会様などが主張されています、業務単位から人単位に見直してはどうかというお考えにつきましては、十分に検討に値するものであると思っております。ただし、常用代替防止原則との調整をどのように図っていくのか、これが課題になると考えております。
 他方で、いわゆる26業務による区分を廃止いたしますと、円滑な事業活動に支障が生じるおそれのある産業や業界があるだけでなく、いわゆる26業務として働いている派遣労働者にも影響が及びますので、全てを廃止するのではなく、本当に必要な知識等が求められるものに限定していくということも考えられると思っています。ただし、その場合には、制度の分かりにくさの原因となっております、付随的にその他の業務を行う場合の1割以下という規制につきましては、見直す必要があると考えております。
 このように、いわゆる26業務を限定化する一方で、その他の業務につきましては、派遣労働者のキャリアアップを考えれば、現行の原則1年、最長3年という期間では短すぎると思いますので、期間上限を原則3年とし、労使合意により最長5年程度まで延長できるようにしていくことも考えられるのではないかと思っております。
 続きまして、4つ目の論点であります派遣先の責任の在り方について申し上げます。派遣先の責任の在り方につきましては、研究会で議論がなされたとおり、団体交渉応諾義務は労組法の一般的枠組みで考えることが妥当であり、派遣先の使用者性については判例の枠組みで考えていくことが基本になると考えております。
 続いて、5つ目の論点であります派遣労働者の処遇です。まず、均衡処遇に関してです。我が国におきましては、外部労働市場の影響を強く受けながら決定される派遣労働者の賃金と、一般の企業における賃金決定の在り方は大きく異なっているのが実態です。したがいまして、欧米のように、均等処遇を前提とした概念は、日本では実務的になじまないと考えております。例えば、派遣労働者と同様の業務に従事している派遣先の正社員を特定することは、実務的に極めて困難であると認識しております。
 以上を踏まえますと、均衡処遇につきましては、派遣法や派遣元指針、派遣先指針で定められている内容について見直す必要はないと考えております。均衡処遇を考える場合、先ほど申し上げたような理由から、派遣先の正社員と派遣労働者の間ではなく、同一派遣元で同様の業務に従事する派遣労働者の間で均衡を図ることが現実的ではないかと考えております。
 続きまして、労働・社会保険の適用促進です。こちらにつきましては、研究会で議論がなされましたとおり、パートに比べて加入率が高い現状を踏まえますと、派遣に限定して加入促進の対策を講じる必要性は低いと考えております。
 次に、6番目の論点であります派遣労働者のキャリアアップです。派遣労働者のキャリアアップは、雇用主である派遣元が行うことが原則であると考えております。特に長期的なキャリアアップということになりますと、期間制限があることなどを踏まえれば、派遣先が支援することは現実的ではないと考えております。
 なお、仮に政策的に派遣労働者のキャリアアップを図るということであれば、派遣元のインセンティブが働くように、派遣元が行うOff-JT等に関する取組の支援を充実させていくようなことが望ましいのではないかと考えております。
 最後に、7つ目の論点「その他」に関連して、特定目的行為の在り方について申し上げたいと思います。無期雇用をされている派遣労働者について特定目的行為を認めるということにつきましては、前回の審議会において一度取りまとめられたものですので、審議会での議論を尊重すべきであると考えております。
 ただし、特定目的行為の定義といいましょうか、その範囲については、整理する必要があると思っております。例えば、派遣労働者とは直接に会わずに派遣元が作成する、いわゆるスキルシートと称されるものを見て、派遣先が自社の業務に必要な派遣社員の能力を把握し特定することは、事実上、必要なことと考えますが、現状では、特定行為に該当するということで、スキルシート自体について否定的な指導が行われている、そうした指導を行っている労働局が多数あると聞いております。派遣先が技能レベルに基づいてチェックするということについては認めるべきと考えております。私からは以上です。
○鎌田座長 どうもありがとうございました。それでは皆様、自由に御質問をしていただきたいと思います。
○木村委員 どうもありがとうございました。3番目の期間制限の在り方に関する所でお話があった点に関して質問させていただければと思います。お話の中では、専門的業務を26業務、それを見直すことに関して影響が及ぶ団体があるとか、労働者についても影響が及ぶので限定の仕方については考える必要がある、検討課題があるというようなお話でしたが、その影響が及んでいくというのは具体的にはどのようなことでしょうか、教えていただければと思います。
○坂下様 26業務を活用することが定着しているような業界や、26業務が廃止されると事業の運営に支障が生じる業界があると聞いております。そのため、急に一律に廃止になりますと、そうした業界の企業はもとより、そこで期間制限なく安定して働いている派遣労働者の雇用にも影響が及ぶことが懸念されますので、慎重な検討が必要であると考えております。
○木村委員 分かりました。どうもありがとうございます。
○鎌田座長 ほかにございますか。
○奥田委員 今と同じ点なのですが、例えばどういう所というように、もう少し具体的にお聞きできますか。
○坂下様 どういう所といいますと。
○奥田委員 影響というのは。
○坂下様 どの業界や産業に影響があるかということでし
○奥田委員 そうです。
○坂下様 私どもで聞いておりますのは、例えば民放事業者さんやアナウンサー、さらに、去年追加されました非破壊検査や下水道などでは、影響は
○奥田委員 ありがとうございます。
○竹内(奥野)委員 今の点に関連して。影響が大きいというのは、お話の中を忖度しますと、26業務のような現在の専門的業務のような対象から外れていくと、一般的な期間制限が掛かる派遣になるからというような御趣旨でしょうか。
○坂下様 業界によっては影響が大きいということを申し上げています。そのため、本当に専門的な業務であるならば、期間制限から除外していくことも十分検討に値するのではないかと考えています。また、人基準に変えると、非常に分かりやすくなるとは思いますが、常用代替防止の原則をどのように考えていくかという課題をクリアしていく必要があると思います。いずれにしても、26業務には良い点がありますので、需給部会でしっかりと検討して行く必要があると思います。研究会でも是非、この点についても御議論いただければと思っております。
○竹内(奥野)委員 私が正しく理解しているか確認させていただければと思いますが、要するに、業務の単位ではなくて人単位というような形に整理するとしたら、そこでは、例えばこのように本当に専門的な業務については引き続き期間制限なしにというような考え方も、もちろんそれは選択肢としてはあるかと思いますが、その場合、人単位にすると常用代替との関係で検討課題があるからというようなことで慎重に検討すべきだと、そのような御趣旨でよろしいでしょうか。
○坂下様 はい。
○竹内(奥野)委員 ありがとうございます。
○鎌田座長 ありませんか。
○木村委員 ありがとうございました。期間制限の件のその他業務についての件と、そのほかに2点というか、3つお聞きしたいのです。
 まず、期間制限の点です。その他業務は、原則3年、5年までの延長、これが雇用の安定のためによろしいのではないかという御提案だったのですが、今は実質3年までということで、それを5年に延ばすということを、今は3年で、その後、無期に移していくということで安定を図っているのですが、これを5年にするほうが彼らの雇用安定のためにいいというお考えの根拠というか、それを1つお聞きしたいのです。
 2点目は、派遣のキャリアの所で、派遣元の教育インセンティブを高めるための支援の充実ということであったのですが、例えばで結構なのですが、派遣先との関係もあるのでしょうけれども、どういうところで派遣元が困っているか、例えばどういう支援があり得るかということです。
 3点目は確認です。最後、特定目的行為のスキルシートの活用ということであったのですが、例えば、こういう業務ですよというそのスキルのリストではなくて、個人のスキルが○×が付いている、○×というか、そういうものが付いているものを想定されておっしゃったのかなと思いますが、その確認だけです。
○坂下様 まず1点目の自由化業務の期間制限を5年にしてはどうかと申し上げた根拠ですが、先生は雇用の安定ということでおっしゃいましたが、そうした観点もあろうかと思いますが、基本的には、派遣労働者のキャリアアップや能力開発を考えた際に、1年や3年ですと短いために難しいのではないかと思っております。それが5年ぐらいであれば、促進されやすいのではないかと考えております。5年というのも労使で議論して決めることだと思っています。
 2点目の派遣元のキャリア支援、能力開発にはどういったものがあるかということですが、派遣元では、階層別研修のようなものであるとか、業務遂行に必要な教育訓練コースのようなものを用意しているところがあると聞いております。そうしたものについて、どのような支援があり得るのかを議論してはどうかと考えております。
 もう1つ、派遣労働者の中には、あまりキャリアアップの必要性を感じておられない方々もおられると聞いておりますので、政策的に推進していくということであれば、そういった方々に対しても周知していくことがあり得るのではないかと思っております。
 スキルシートに関しましては、私は「シート」と申し上げましたが、イメージはリストに近いものです。
○木村委員 分かりました。
○小野委員 ではお願いします。2点ありまして、1つ目が期間制限についての所です。先ほどお話を伺いました民放のところの、アナウンサーであったりとか、専門職の方が、ある意味非常に長い期間、期間の定めのないような所で働いていらっしゃるということがあるということですが、例えば派遣元で雇用期間に定めがない場合ですね、いわゆる常用化した場合に、派遣先での派遣期間も無期化になる可能性が選択としてあった場合は、それはそれでいいというようにお考えになるのかどうかというところが1点です。それに付随して、それほど長い期間派遣するのであれば、どうして派遣先で直用してくれないのか、という素朴な疑問が2点目です。
 最後に、大きな2点目としてキャリアアップについてです。派遣先でキャリアの能力開発を行うのは現実的ではないというお話があったのですが、例えば、何か評価をしたり、先ほども5年なかったらキャリアアップができないというようなお話があったのですが、その辺とちょっと齟齬するような気もしていて、派遣先でやり得るキャリアアップというものが何か、お考えが仮にあるとするならば、その辺も併せて教えていただきたいのですが。
○坂下様 1つ目の派遣元で無期雇用されている場合に、派遣先に期間制限なく受け入れられるようにすることについては、十分検討に値すると思います。しかし、先ほど申し上げた常用代替防止の観点など、いろいろ論点があると思いますので、そこは、実際には需給部会での議論になると思いますが、研究会の中でももう少し議論を深めていただければと思っております。したがって、繰り返しになりますが、考え方を否定するわけではなく、十分検討に値すると思いますが、そのためには検討する課題がまだあるだろうということです。
 2つ目が、派遣先が派遣労働者を長期で受け入れている場合に、なぜ派遣先が直接雇用しないのかということですが、それはケース・バイ・ケースだと思います。派遣労働者の方も、派遣として働き続けたいと考えている方が多数おられるというのを聞いておりますし、派遣先のほうにもいろいろな事情があると思いますので、それは個々の判断によるものと思います。
 3つ目の派遣先でのキャリア評価等、派遣先にできることはないかという点については、現状ですと、例えば26業務で受け入れている場合に、その業務を遂行していただくために必要な育成とか支援といいたものはすでに派遣先でもなされているのではないかと思っています。したがって、そうした中で教育、あるいは必要な評価などは当然になされるものだと思いますし、なされているのが実態ではないかと思っています。但し、例えば、派遣労働者がいずれ別の会社に派遣されていくことが分っているような場合に、長期のキャリアアップや能力開発を派遣先が考えるということは、なかなかイメージが湧かないというか、難しいのではないでしょうか。
○小野委員 分かりました。
○鎌田座長 では私からも、確認の意味も込めてです。幾つかあるのですが、まず期間制限に関わることで、常用代替防止原則というのが一応派遣法の1つのコンセプトとしてあるのですが、これは、先ほど来の議論ですと維持するというようなニュアンスでおっしゃっていたように感じるのですが、そう理解してよろしいかということが1つです。
 2つ目ですが、期間制限に関わる単位についてです。派遣協会などが提言されている「業務から人へ」ということについては、積極的に受け止めたいという御趣旨の発言があった上で、原則3年から、労使で協議して最長5年とおっしゃいましたね。
○坂下様 はい。
○鎌田座長 というようにお聞きしました。そこで1つ、細かいことなのですが、仮に最長5年とした場合に、人で5年と見ているのか、あるいは、例えば人で3年だけれども業務では最大5年というような発想でお考えなのか。いわゆる常用代替防止というのは、従来は業務単位で考えていましたから、その調整ということになると、恐らく人と業務とをどう組み合わせるかという問題になると思うのです。その5年の単位の意味を教えてくださいということです。
 それから、労使でということでおっしゃったような気がしたので、それは、最長期間については各企業単位で変更できる、というようなニュアンスでおっしゃったのかということです。以上ですが。
○坂下様 まず、1つ目の常用代替防止の概念の維持・堅持でよいかという御質問ですが、これは十分議論をする必要があると思っています。考え方自体は非常に重要であり、尊重しなければならないと思いますが、制度の見直しに当たって、別の考え方ができる、あるいは整理ができるということであれば、それも十分に検討に値するのではないかと思います。これから議論して決めていくことではないかと考えております。
 2つ目の期間制限の単位に関してですが、日本人材派遣協会様などが主張する、人単位への見直しついては、先ほど十分に検討に値するというような表現をいたしましたが、繰り返しになりますが、今の段階では、私どももまだ議論、検討している最中で、十分に整理しきれておりません。そうした中で、具体的な提言がありましたので、常用代替防止の考え方の整理をしながら、検討していくことが重要であろうと申し上げております。人単位への見直しという考え方は、最初から排除されるものではないだろうというような趣旨で受け止めていただければと思います。
 3つ目の5年の単位を人で見るのか業務で見るのかということですが、私どもが申し上げているのは業務単位のイメージです。人単位に変えた後のことを想定しているわけではなく、26業務を限定的に見直した上で、現在の自由化業務のところ、原則1年、最長3年ですが、そこを、労働者のキャリアアップも考え、もう少し延ばすということを派遣先の労使が議論して、そういう道を作ることも考えられるのではないかと、そのような趣旨で申し上げております。
○鎌田座長 どうもありがとうございます。
○竹内(奥野)委員 揚げ足取り的な話になってしまって恐縮なところもありますが、3年から5年について派遣先の労使で延ばすというようなお話ですが、3年から5年というのは、キャリアアップのために延ばしたらどうかということですよね。他方で,キャリアアップの観点については、派遣元がやるほうが必要だというようなことをおっしゃっているわけですね。そうするとトータルで見ると、今のお話というのは、派遣先がキャリアアップについて責任は負えない、できないのだけれども、しかし、5年に延ばすかどうかは派遣先で決まるというような構造になっているように聞こえたのですが、それは、考え方としてはどのような御趣旨でしょうか。
○坂下様 5年にしなければいけないと考えているわけではなく、1つの考え方として申し上げています。例えば労働契約法との関係もあると思いますし、一般に企業がOJTや人材育成をするときに、3年ぐらいですと、大分分かってきたなというところでローテーションにより異動してしまうというようなジレンマがありますので、労使で話し合って、5年とか4年とか、あるいは5年以上もあり得るかもしれませんが、具体的な上限は労使で決めるという考え方もあるのではないかということです。
○竹内(奥野)委員 ありがとうございます。
○鎌田座長 あと、ありませんか。それでは、いろいろとお聞きしたいこともたくさんありますが時間も限られておりますので、日本経済団体連合会に対する御質問はここまでとしたいと思います。日本経済団体連合会の皆さんにおかれましては、大変御多忙であるにもかかわらず、本研究会に出席いただき、誠にありがとうございます。
○坂下様 ありがとうございました。
○鎌田座長 引き続きまして、全国中小企業団体中央会からヒアリングを行います。準備が整うまで少しお待ちください。
              (経団連退席、中央会着席)
○鎌田座長 本日はどうもありがとうございます。それでは、事務局から出席者の御紹介をしていただいた後に、全国中小企業団体中央会からの御説明をお願いしたいと思います。
○亀井補佐 全国中小企業団体中央会からは、労働政策部長の小林信様にお越しいただいております。どうぞよろしくお願いいたします。
○全国中小企業団体中央会小林様 労働政策部長をしています小林と申します。本日は、今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会で発言の機会を頂きまして、誠にありがとうございます。厚く御礼申し上げます。
 初めに、中小企業における派遣労働者の概況について、御説明をさせていただきまして、あらかじめ要請のありましたヒアリング事項について意見を述べさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 昭和39年以降毎年、中小企業の労働事情を調べる中小企業労働事情実態調査を本会で行ってきましたが、約半世紀にかけて、ずっと続いている調査です。この調査は以前、概ね5万の中小の事業所を対象に、アンケート調査をしていました。今は若干減りまして、4万1,000強ぐらいを対象に調査いたしまして、約2万、昨年の場合ですと1万9,000ちょっとですが、回答を頂いています。
 厚生労働省の媒体で、30人以上の事業所が調査対象になっていますが、私ども30人以下が約68%だったと記憶していますけれども、7割弱の回答を頂いている、小規模を対象にした調査です。その調査で派遣の制度について調査を行えばよかったのですが、昨年いろいろなほかの労働関係の調査項目がありまして、限られた枚数の中で、派遣制度について調査できませんでしたが、派遣労働者の採用状況については、時系列で追っています。その数字を御紹介させていただければと思います。
 派遣労働者を採用している事業所の割合は、1万9,189企業の回答のうち、9.0%、1割弱の派遣労働者の方からサービスの提供を受けている状況にあります。企業規模で見てみますと、企業規模が大きいほど、採用の事業所の割合が高くなっているということです。特に業種でいきますと、機械器具が30.1%、化学工業が27.1%、金属銅製品が18.4%、情報通信業が10.7%というような状況になっております。それぞれの事業所において、従業員全体に占める派遣労働者の割合、私どもでは派遣比率と言っていますが、これがおおむね20%以下というのが80%の状況です。
 派遣労働者の割合、派遣比率が30%以上という高い業種もあります。これを申し上げますと、情報通信業が13.8%、対事業所サービス業が13.5%、総合工事業10.0%などが高くなっております。
 総合してみますと、小規模企業の中小企業では、派遣労働者はほとんど採用していない傾向があることと、企業規模が大きくなるほど、派遣を採用している事業種が多くなるという傾向が見られます。
 過去のデータと比較してみますと、平成21年に従業員では1.2%、それから採用事業所数では3%ほど減少がありました。それ以降、横這いの状況がずっと続いているという傾向です。これはリーマンショック、東日本大震災の影響で生産規模、売上げの低迷が企業で続いていて、派遣労働者の採用が減っているのがずっと続いていると理解しています。
 この調査とは別に、派遣労働者を受け入れている企業からの状況について若干、傘下から上がってくる声について御報告いたします。派遣先の中小企業にとって、欠員補充として必要な人員を迅速に確保、一時的・季節的な業務量の変動に対処するため、専門性をもった人材を活用することを理由に、派遣労働者を採用しているということです。派遣労働者から提供される役務サービスは、派遣労働者を採用している中小企業にとって、有効な戦力となっているという声が多く聞かれるということです。また、現在の労働者派遣制度は、派遣労働者、派遣元、派遣先企業にとって、若干分かりにくい制度になっていることから、多くの中小企業から不満の声が出ているのも事実です。
 では、あらかじめ御要請のありましたヒアリング事項について、お答えをさせていただきます。1つ目の登録型派遣、製造業務派遣の在り方についてです。登録型派遣、製造業務派遣による労働力の需給調整システムについて、中小企業にとっても有効に機能していると思っています。そのため、登録型派遣、製造業務派遣の維持・存続が必要であると認識しております。中小企業にとって、単発的・季節的な業務量の変動への対応、欠員補充等の必要な人員を確保するため、有期契約労働者又はアルバイト等の募集を行っても、人員の確保がなかなかできない状況に現在はあります。その際、人員の確保の確実性、募集・採用コスト等を勘案すると、派遣企業を通じての派遣労働者の役務サービスの提供が有効に機能していると認識しております。一部の製造業では人員の確保が困難な状況から、紹介予定派遣を人員採用ツールとして活用している企業も見られています。
 前回の法律改正において、登録型派遣、製造業務派遣の禁止が議論されたことによって、それを機会に派遣先企業では業務請負に変更するケースが多数見られております。労働者派遣制度は1つに、労働者側のニーズに基づき多様な働き方を認めるという側面、2つ目に、企業側の柔軟な労働力の確保といった側面があります。全面禁止となれば、企業にとっては硬直した雇用形態を強いられ、企業における雇用が難しくなる。労働者にとっても、かえって失業者の増大を招くのではないかという懸念を持っています。また、登録型派遣、製造業務派遣が禁止されるようになったら、単発的な業務量の変動に備えた雇用を行うことは、企業にとって大変なコストになります。国際競争力の低下は避けられず、企業が安い労働力を求めて更に海外に生産拠点を移転すれば、雇用の一層の悪化を招くのではないかという懸念を持っています。
 特定労働者派遣事業の在り方について申し上げます。特定労働者派遣事業者は、その多くが中小企業者であると認識しています。当研究会で、特定労働者派遣事業者についても届出制から許可制にすべきとの意見もあるようですが、現行の届出制を維持することが必要だと認識しております。特定労働者派遣事業者は全国の各地域にあり、それぞれの地域での労働者供給や調整システムの重要な役割を果たしていると思います。
 労働者派遣法での常用制について議論されているところですが、現在の「常用雇用される」という考え方については、1つは、期間の定めがなく雇用される労働者、期間を定めて雇用されている者であって、その雇用期間が反復継続されていて、事実上期間の定めなく雇用されている者と同等の者、日々雇用される場合であって、雇用期間契約が日々更新されて、期間の定めのないのと同様に認められるというような考え方で今はおります。しかし、当研究会でこの「常用雇用される」の解釈をめぐって、有期か無期かというような形の議論が混在していていいのかといったことで話がされています。現行の法律30条において、有期雇用派遣労働者等の雇用の安定等について書かれているところであって、派遣元事業主に対して、期間の定めのない雇用でできるような機会の提供や、紹介予定派遣の対象や、教育訓練により無期への転換を推進するというような措置が既に講じられて、「実施してください」との形になっております。このことを考えると、現在もう法規定があることと、労働契約法の改正で、5年たつと無期への転換というのもルール化されたことですので、余り有期・無期にこだわることもなく、現状の考え方で捉えるのでいいのではないかと認識しております。
 期間制限の在り方については、いわゆる26業務については専門的な知識、それから特別な雇用管理が必要な業務ということで判断されています。時代の変化によって、それらの業務も変わるものであり、いわゆる26業務の見直しは当然ながら必要ではないかと認識しております。この業務の捉え方、職務なのか業務なのかとか、そういう部分も含め、現場ではかなり混乱していますので、その見直し、整備は必要だと思っております。
 常用代替防止の在り方については、労働者派遣法は常用代替防止の考え方が立法の趣旨であると認識しておりますし、この考え方は堅持すべきだと思っております。労働者派遣法は明文規定は設けられていませんが、労働者派遣法上の枠組みに従って行われている労働者派遣の派遣先事業主について、該当派遣労働者との関係において、労働法の関係のことがよく議論されています。それは労組法第7条の使用者に該当しないことを原則として、もともと立法されたものではないのかという捉え方を持っております。
 派遣労働者の処遇についてです。均衡・均等待遇については、労働者派遣法並びに指針において、派遣元事業主に対しては配慮義務、派遣先事業主には賃金等の情報の提供に努力するように規定されています。また、労働・社会保険の加入について、指針において、派遣元事業主には適切な加入、派遣労働者に対する未加入の理由通知の規定があり、また、労働・社会保険適用の促進に関する規定がなされています。派遣先事業主に対して、より一層の加入促進のPRに努めることが必要だと認識しております。
 3つ目の派遣労働者のキャリアアップについてです。派遣労働者のキャリアアップのための職場訓練等は、派遣元事業主が行う、又は、派遣労働者が自主的に行うことが基本であると思っています。派遣法並びに指針において、派遣元事業主は派遣労働者に対する能力及び経験に応じた就業の機会及び教育訓練のための必要な措置を講ずるように配慮することとしています。また、派遣先事業主に対しては指針に示されているとおり、可能な限り協力するほか、必要に応じた教育訓練に係る便宜を図るよう努めることが必要であるとされています。派遣先、派遣元は、派遣労働者に対して、その周知・理解を更に深めていくことが必要だと考えております。
 その他の件です。労働者派遣と請負との区分について、意見を申し上げたいと思います。先般、派遣法の改正以降、多くの企業で派遣から請負に変更する機会が多いと承知しております。厚生労働省の告示として、労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(37号告示)が示されています。これに関する質疑応答集が作成されています。事業主からは、分かりにくい、明確でないというような指摘がありますので、明確なものを作成され、周知されますことをお願い申し上げたいと思います。
 もう1つはクーリングオフについてです。現在の自由化業務では、3年間同一業務で派遣労働者を受け入れた場合、3か月のクーリングオフを設けるような形になっています。これが適切に行われているのかどうかを含めて検証いただいて、その見直しが必要であれば、その見直しについても御検討をお願いしたいということです。以上です。
○鎌田座長 どうもありがとうございます。それでは、皆さん御質問をよろしくお願いいたします。
 では、私から申し上げます。期間制限の所で少し質問します。まず、常用代替防止の在り方については、維持すべきとお聞きしたような気がします。それでよろしいですか。
○小林様 はい。
○鎌田座長 そういうことですか。それから、期間制限に当たっての議論の中で、業務から人へのという、制限に当たっての単位の問題が議論されておるのですが、それについてどうお考えか。それから、いわゆる26業務の見直しの必要があるのではないかとおっしゃったようにお聞きしました。具体的に何か、その見直しのポイントがあれば、お聞かせいただければと思います。よろしくお願いします。
○小林様 先ほどの常用代替の考え方なのですが、もともと派遣法が立法されたときから、常用代替を禁止という趣旨で作られた法律だと理解しております。本来、法律の立て付け、それから、多くの中小企業で人員が足りないとか、常用的な人員が欲しいというニーズは高いと思います。しかし反面、常用の従業員を抱え続けるということの、やはりそれだけの景気状況も含めて、難しさもあるわけです。
 それで、現在中小企業では最低限の常用人員を持って、生産なり、いろいろなサービスの提供を図っています。ただ、取引先の要求によって、一時的単発のものや、季節的な変動が避けられない状況です。その中で、一時的・補完的に行う労働者の確保に派遣労働者が役割を果たしている。その労務提供サービスが十分機能していると認識しています。その中で、従来、いわゆる26業務というような形で、法律でソフトウェアの開発など、業務について制限してきたのですが、果たしてそれが今、業務から人へというような考え方、人単位の考え方、それも1つの考え方だとは思うのですが、実際にそれが制度として成り立つのかどうなのかがちょっと見えない、分からないところであります。今の26業務については、そぐわないものが幾つかあると思います。
 実際に、これは労政審の中で議論していくべきだと思いますが、ファイリング作業やデータの入力作業も、専門業務になっています。昔はコンピュータを使う方は、数が少なかった時代だったと思いますが、今はほとんどの方々がパソコン操作ができるような状況になっています。事務処理の中でそれが専門性があるのかどうなのかということになると、やはり疑義が生じるものも幾つかあると思います。ですから業務の見直し、26業務の見直しは、これを維持するのであれば、当然行う必要があるでしょう。逆に、これをなくして人へということになると、やはりそれによってどういう違いがあるのかが派遣元、派遣先も含めて、十分に認識してもらうのに相当な時間がかかるでしょう。その間は、今の26業務の見直しという暫定的な期間も要るのかもしれない。そういう意味で、いずれにしても、業務から人へ移る、今の業務を見直していくにしてもどっちにしても、見直しが必要だという意味で、先ほど申し上げたところです。
 ポイントということですが、これはここで言うのもなんですが、やはり専門的な知識を有する者は残すべきだと思います。そうでない者との区別をはっきりするべきというのが、まず1つのポイントなのかと。それから、特別の雇用管理を行う必要がある業務というのが分かりにくい部分です。ここを中心に見直しを図るのも、1つ基準としてあるのではないかというのが感じているところです。
○鎌田座長 ありがとうございます。
○竹内(奥野)委員 時間も限られているかと思いますが、2点お聞かせいただければと思います。初めに、どうもありがとうございました。1点目は、特定労働者派遣事業の在り方についてということに関して、お聞きした内容が私の理解が間違っていなければ、特定労働者派遣事業を行う事業主については、中小企業が多くて、それで、そういうような事情を踏まえて届出でいくべき、維持をすべきという形で聞こえました。要するに、現状は団体が多く存在していて、影響があるから、なるべく影響がないようにという御趣旨ということでよろしいでしょうか。それ以外に具体的な理由があって届出でいくべき、ということでは特にないということでよろしいでしょうか。これが1点です。
 もう1点は、最後にクーリングについての話がありましたが、適宜、ちゃんと機能しているか検証して見直すべきということですが、これは何か背景となる問題意識等がありますでしょうか。もしあれば、教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。
○小林様 1点目の特定労働者派遣事業についてです。今、制度として、許可と届出の2つの制度が一般と特定という形に分かれています。常用の雇用制があるのを認識した上で、特定派遣事業者は届出ですむような形になっています。これは行政の管理するコストです。今、制度的には労働局でそれを受け付けて、届出については受理して、事業を執行してもらっている。
 登録型等一般のものについては、本省に上がって審査でやるわけです。需給制度部会で、約1か月遅れで認めるような手続になっています。
 全てを許可制にすれば、相当な案件が本省のほうに上がってきて、それを精査していくということになります。中小のものから大規模のものまで含めて、許可制にすることがいかがなものかと。行政コストの側面からも、労働局で精査することによって、届出制というのはある程度機能しているのかと。先ほど竹内先生が言われたように、ほとんどの届出特定労働者派遣は中小企業なのです。その中小企業、従業員数が少ない所が多くを占めているということで、それが地域においていろいろなサービスをしているのは事実です。
 ですから、許可制にして、資産要件などいろいろな条件でクリアーできないというのが大きな彼らの悩みだと思います。その辺も含めて、資産要件が達しないことが派遣事業者の許可の全てなのかというと、そうでもない。そこでは専門的な知識を持った従業員を抱えていて、単発的・季節的なサービスなどに対する需要と供給のバランスを取った上で、サービスを提供している所があるわけです。そこをむやみに排出させるということがいいのかどうなのかは、十分議論したほうがいいと思います。
 クーリングオフについては、制度的、一次的、二次的なために派遣を雇うので、恒久的に雇い続けるのはいけないという考え方から出ているわけです。それで一定期間の制限があったと。この期間をどうするか、経団連から先ほどお話もありました。それはまた別のところで議論するべきだと思います。
 限られた期間、常用性というものに対して、これは、やるのならしっかりやらなければならないので、常用性があるということが認知できるようであれば、それは派遣先のほうが常用雇用に変えていくべきだと思うのです。派遣から常用へというようなことも、法律でもうたっているわけですから。派遣の方から、期間雇用であろうと、直接雇用に変えていくなどというのが、考え方としては1つの方法なのでしょう。しかし、これを本当に企業が捉えているのかどうなのか。派遣元もそれを認識した上で、企業にちゃんと説明しているのかどうかは疑義があるところであり、その実態がどうなのかというのは、十分制度は出来ているが、守られていないものになっているのではないかというのが、私の感想です。
○竹内(奥野)委員 どうもありがとうございました。
○鎌田座長 ほかにはございませんか。
○小野委員 一番最初の登録・製造業務派遣の在り方についての所で、人員確保というのが非常に中小企業では困難である。特に、アルバイト等の人員が集まらないので、派遣労働に頼らなければいけないのだというお話があったように思うのです。
○小林様 アルバイトだけでなく有期労働も含めてです。
○小野委員 有期労働もです。ですから、本来であれば、直用の非正期の労働者が望ましいのだけれども、それが人が集まらないという事情もあるので派遣を利用せざるを得ない、と理解して大丈夫ですか。
○小林様 現在、業務の内容によっても違うのですが、多くの製造業務の方の経営者から、派遣をなぜ利用するのだとお伺いする。それから、直接雇用の無期の方の雇用をなぜしないのだということでお伺いするのですが、ハローワークを通じて募集をかけたところ、多数の方から御応募いただくのです。それだけで、見ているだけでも大変だと。選別するのが大変だと言いますが、実際に面接して、来ていただけるかというと、お断りが逆に来るというのです。マッチングできないのです。手数とコスト、時間とコストは掛かった上にマッチングが成立しないというのが多くあるということです。
 それから、個別に採用募集をかけて宣伝したところで、逆に来ない。いろいろな地域に、例えば山に近い地域に工場団地がある。企業もその工業団地の中にあるわけです。従業員が来てくれるかというと、来てくれないわけです。でも実際派遣会社に頼めば、来てくれるわけです。その方々をトライアル雇用ではないですが、働きながら、紹介予定型派遣という前提で働いてくれるかというと、それでもなかなか居ついてくれないというのが実態みたいです。ですから、先ほど申し上げたように、いろいろなツールを使うのですが、端的に仕事が増えたときには、やはり派遣の方にお願いして来ていただいて、一時的な業務に対応していただく。その人がよければ採用したいというのは企業経営者の思っているところなんですが、その方もなかなか来ていただけないというのも実状です。ましてや専門的知識が必要な業務については、専門職の方が名も知れない中小企業に就職する気になるかどうかは、これもまた残された課題です。中小企業側も考えなければいけないところですが、なかなか来ていただけないという実情があります。
○小野委員 どうもありがとうございました。
○鎌田座長 よろしいですか。それでは、全国中小企業団体中央会に対する御質問はここまでとしたいと思います。全国中小企業団体中央会におかれましては、大変御多忙であるにもかかわらず、本研究会に御出席いただき、本当にありがとうございました。
○小林様 どうもありがとうございました。
○鎌田座長 引き続きまして、日本商工会議所からヒアリングを行います。準備が整うまで、少しお待ちください。
            (中央会退席、日本商工会議所着席)
○鎌田座長 本日は、お忙しいところをありがとうございます。事務局から、出席者の御紹介をお願いします。
○亀井補佐 日本商工会議所からは、産業政策第二部副部長の高山祐志郎様、同じく産業政策第二部課長の上條久美様にお越しいただいています。それでは、御説明をよろしくお願いいたします。
○日本商工会議所高山様 日本商工会議所の高山でございます。本日は、このような機会を頂きまして、誠にありがとうございます。今日は、これまで私どもが労働政策審議会等の場で使用者側委員として、商工会議所として申し上げてきたこと、主張してきたことを中心に、お話をさせていただきたいと思います。先ほど経団連さん、中央会さんからお話があり、労政審の場でも同様の主張をしていたということもありますので、重なる部分もあるかと思いますが、御容赦いただきたいと思います。
 今日、人材派遣協会さんの資料を拝見していましたら、先週発表された、1万人を対象にした調査結果がありました。拝見すると、日頃私どもが会員の事業所や全国各地の商工会議所から伺っている話にかなり近い、肌感覚に近い結果が出ているなという感じを持っています。望んで派遣社員をされている方が非常に多いということを、常日頃各地から聞いていますので、不本意で派遣になった方ばかりではないということは、日頃から実感しているところです。ほとんど残業しないとか、通勤が楽といったような、時間や場所、ワークライフバランスを重視される方、また、パートやアルバイトに比べて賃金がいいなど、待遇を重視される方もいらっしゃいますし、人間関係や職場の雰囲気を重視される方もいらっしゃる。理由は様々ですが、かなり納得感をお持ちであるという方が非常に多いということは、普段聞いているところです。今後の派遣法の在り方を考えるに当たりまして、こういった多様な派遣社員のニーズといったものを考えた上で環境を整備していくという視点が、必要ではないかと思っています。
 併せて、必要な見直しは是非行っていくべきだと思っています。例えば昨年の日雇派遣の原則禁止における年収制限のような、少し理解が難しい制度は、派遣社員として働きたい人たちや、これまで問題なく働いていた方々の雇用の機会を減らすようなことが実際に起こっているとも聞いていますので、実際に生じている悪影響なども考えて、今後の在り方を考えていくべきだと考えています。前置きが長くなりましたが、各論点についてお話をいたします。
 まず、登録型派遣、製造業務派遣の在り方についてです。経団連さん、中央会さんからほとんどおっしゃっていただいていますので、相違はございません。また、中央会さんが毎年やられている実態調査の数字もお示しいただいていまして、大体あのような数字だろうと私どもも認識しています。この登録型も製造業も、労働者側、企業側双方のニーズが非常に高いもので、「主な議論」の中でも「これが失われるのは労働市場にとって大きな損失」というコメントがありますが、私どもも同じように考えています。
 次に、特定労働者派遣事業の在り方ですが、これは中央会さんとほぼ一緒の意見で、現行の届出制でいいのではないかと考えています。参入時点のみでなく、継続的に企業の状況をチェックすることは大事だと思いますが、あまり入口でハードルを高くすると、中央会さんが先ほどおっしゃったような行政コストの問題もあるでしょうし、地域によって正常に機能している事業者が、結果として許可されなかったときの雇用機会の減少や、現在ある雇用の喪失につながるおそれがあるので、慎重に考えるべきではないかと思っています。また、どの業界においても悪質な事業者の排除というのは必要ですし、優良な事業者はしっかり評価されるべきだと思っていますが、現行の届出制で何か大きな問題があるということであれば、その問題点の解決について御検討いただければと思っています。
 次に、期間制限の在り方についてです。現場から上がってくる声で一番多いのは、経団連さんの御説明にもありましたが、「専門26業務の付随的業務の1割」についてです。この規制は、派遣先企業だけではなく、派遣社員の方々、その周りの同僚からも、非常に分かりづらいという声が多いと聞いています。その次に多いのが、1年、3年という期間です。派遣として働き続けたいという方には、3年という期間は非常に短いのではないか。経団連さん、中央会さんもおっしゃっていましたが、ちょうどOJTで仕事に慣れてきた3年というところで派遣期間の区切りが来るということで、派遣として同じ職場で働き続けたいと思っていらっしゃる方にとっては、制度の見直しを考えるべきではないかと思います。例えば、旦那さんの転勤に付いて行って、赴任期間が残り1年というときに、派遣期間の3年に達した場合、最後の1年は、別の派遣先に行かなければならない。このようなことも起こっていると聞いていますので、この1年、3年の派遣期間については、先ほど経団連さんから、労使合意で5年という線もあるのではないかというお話がありましたが、5年がいいのかというのはよく分かりませんが、その辺りの弾力的な見直しは必要だと思っています。
 それから、業務単位から人単位に変更するという議論があります。これも、要望としてはありますが、先ほどからの議論にありますように、そもそもの派遣法の趣旨の大きな転換になりますので、やるにしても準備期間のようなものが必要でしょうし、その前に26業務の検証がある。先ほど、26業務の見直すべき業務の例として、ファイリングなどが上がっていましたし、専門性が高い業務の例として、放送や下水道や非破壊検査が上がっていましたが、その辺りについてはもう一度検証して、見直しを当然やるべきだと思っています。その後、業務単位から人単位に変更するということに関しては、これも大転換ですので、影響等についても考えながらやっていくということは、別に否定するものではありません。
 次に、派遣先の責任の在り方についてです。これは、資料にあるような考え方で全く異論はありません。
 次に、派遣労働者のキャリアアップについてです。中小企業の場合、派遣先では、自社の業務に関するものについては、多くの場合OJTで教育していると思います。ただ、自分たちの企業の正社員の若手に対してでも指導人材が不足しているということが、私どもの調査でも分かっています。ましてや派遣社員にどれだけのことができるかというところは、企業の皆さんが非常に不安を持っているところです。中小企業の声として、それぞれの会社のニーズに即したオーダーメイド型のキャリア形成支援制度のようなものがあれば是非使いたい、という要望もあります。そういった制度が今後つくれるようであれば、これは正社員、派遣社員問わないと思うのですが、そういったものを利用するケースも増えていくのではないかと思っています。
 「その他」です。面接の件ですが、各地からの声としては、事前の面接を行いたいという要望はあります。雇入れ後のミスマッチは労使双方にとって不幸ですし、面接をすることのメリットとデメリットを考えると、もしかしたらデメリットのほうが大きいのではないか、というような声もあります。ただ、これは圧倒的というわけではありませんので、そこは是非、今後、御検討いただけたらと思っています。
 なお、近年、派遣法だけではなく、労働契約法、高齢者雇用安定法などが若干規制強化のほうに振れています。また、最低賃金も、この6年で全国平均が70円以上という、非常に大幅な引上げが行われています。それに加え、企業の社会保険料負担も増大していまして、中小企業には、ボディーブローのように利いているところです。今後の研究会の議論の中でも、雇用、それから正社員を増やしていくということに関して、これは派遣法だけでできるものではありませんので、そういった面も考えていただく、それから、もちろん派遣社員でずっと働きたいという方も多いわけですから、そういった方々が不利にならないようなことも是非考えていただく、ということをお願いしたいと思っています。
 先ほど、中小企業には人が来ないというお話が中央会さんからありましたが、まさにそういう声が多く、例えば、ハローワークには不満もあるが期待も大きいわけで、機能を改善して、正社員のマッチングを進めていただきたいと思っています。また、最近では、新卒市場でなかなか就職ができなくて、最初から派遣社員になる大学生もいると聞いています。現状は、学生の大企業志向がまだ強く、学生と中小企業のミスマッチが生じている面があります。最初から中小企業を就職先として志向する学生を増やしていく仕組みも当然必要ということで、私どもでは、大学・学生と中小企業を直接的につなぐ仕組みの構築を呼び掛けているところです。最後は別の話になりましたが、私からは以上です。
○鎌田座長 どうもありがとうございます。それでは、皆さんから何か御質問があれば、よろしくお願いします。
○竹内(奥野)委員 どうもありがとうございました。3番目の「期間制限の在り方に関して」でお伺いできればと思います。御説明の中で、1年が原則的な上限というのは短いのではないかと。その理由の1つとして、派遣で長く働くことを希望するような労働者から見ても適切でなく、3年が標準で、場合によってはそれより長くということが教育訓練的な観点からもよろしいのではないか、というような趣旨のお話だったと思いますが、派遣という形態で長く働きたいというのと、特定の派遣先で長く働くというのは別問題なのです。そういう意味で、業種などで現在、派遣できる期間について制限があるということと、派遣で長く働きたい人のニーズに合致するということの関係について、もう少し補足いただけないでしょうか。
○高山様 先ほど中央会さんからもお話がありましたが、とてもよく頑張っていただいて、3年勤めて業務を把握していただいた方というのは、企業主からしても「是非こちらで働いていただきたい」と声を掛けるケースが非常に多いと思うのです。そのように声を掛けて、「私は派遣がいいのです」という方にまで、3年だから正社員に転換しなければならない、というよりは、もう少し柔軟に考えてもいいのではないかと思っています。派遣協会さんの調査にもあると思うのですが、正社員になるとつらいとか、いろいろな制限が掛かるということで、正社員にまではなりたくないということもありますので、期間は、4年がいいのか、3年半がいいのか、5年がいいのか分かりませんが、やはり短いという声は多い。それから、現場で両方の希望に合っていない。労働者側の希望にも沿っていないし、企業主側の希望にも沿っていないということがあるということです。
○竹内(奥野)委員 私も、この質問をするときに、むしろ次の人材派遣協会の方に質問すべき内容かと思っていたのですが、今の話を聞くと、「直用にならないか」と声を掛けても、派遣でいたいという状況だということだと思うのです。そうすると、派遣社員はなぜ派遣のままで働きたいのか、なぜ直用を望まないのか、という疑問が私には浮かびます。今のお答えを聞いている中だと、いわゆる正社員にはなりたくないということのようですが、それで理解としてはおおむね正しいでしょうか。
○高山様 そうですね。例えば最初に申し上げたような時間ですね。残業はできないとか、組織の中にきっちり入ってしまうことなども理由ではないかと。もともと、仕事を辞めた経緯が、人間関係が嫌で辞めたという元正社員という方が多いわけでして、そこはそれぞれいろいろなニーズがあると思いますし、結構な数いらっしゃると伺っていますので、その方々が1年目、若しくは3年を迎えたときに、不本意ながらどこか違う企業に替わらなければいけないということは、少し考えたほうがいいのではないかということです。
○竹内(奥野)委員 そうすると、仮定的な質問になりますが、いわゆる正社員ではなく、今は多様な正社員という議論もありますが、そのような限定的な社員制度を入れることは、別に法的に制限されているわけでも何でもないのです。そういう形で雇うということを前提とすれば、そのような意味での直接雇用に誘導していくということについては、いかがお考えでしょうか。
○高山様 それは労働者の方の可能性が広がるし、そういう正社員ならなりたいという派遣が事実いらっしゃると思います。転勤ができないとか、いろいろなことがあるかと思いますが、地域限定社員とか、残業しない社員とか、時間が決まった社員というようなものが新たな正社員像として提示できて、それを望む派遣労働者の方がいらっしゃれば、そちらのほうに移っていくというのはいい流れだと思っています。
○竹内(奥野)委員 分かりました。ありがとうございました。
○鎌田座長 ほかにありますか。
○奥田委員 今の点で言いますと、一定の選択肢があれば間接雇用よりも直接雇用のほうが望まれていると理解してよろしいですか。
○高山様 現状はないので、恐らく現状でベターな派遣社員を選んでいらっしゃるケースが多いのではないかと思います。
○奥田委員 最初に御説明いただいたように、労働者派遣に労使のニーズがあるということがあって、使用者からするとマッチングが非常にやりやすいとか、労働者からいうと、限定されないとか縛られないとか、いろいろなニーズがあると言われる。その場合に、なぜ間接雇用がいいのかというのは、私はもうひとつ理解できなかったのですが、そうだとすると、間接雇用を望まれているわけではなくて、多様な可能性があれば、やはり直接雇用で契約を結ぶほうが望ましいということかなと、今理解しました。そのように理解していいのですか。
○高山様 間接雇用と直接雇用のどちらを望んでいるかは分かりませんが、理想の職場のようなものをイメージされていて、それに一番近い形のものが正社員として用意されていれば、正社員になりたいという方は、派遣社員の中にもいらっしゃると思います。
○木村委員 ありがとうございました。別の点で2点あります。1つ目は、派遣社員のキャリアの所です。横断型の支援制度があるといいという希望が聞かれるということなのですが、例えばどのような希望が出ているのか。あと、「その他」の所で言われた事前面接の件ですが、デメリットのほうが大きいというところで、それは事前面接の禁止のデメリットなのか、事前面接そのもののデメリットなのかという確認と、そのデメリットの内容を教えていただければと思います。よろしくお願いします。
○高山様 支援制度については、一般的なものではなくて自社のニーズに合ったもので人材育成をしたいのだけれども、指導できる人材がいないとか、時間がない、お金がないという話がある一方で、自治体によってはオーダーメイド型の訓練をやって、それなりの成果を挙げていると聞いていますので、そういったものを中小企業向けに開発していただければ、非常に有効ではないかと思っています。
 面接については、面接したいという要望です。なぜ面接をしてはいけないのか、という単純な感じです。それによって労働者側が断るケースももちろんあるし、企業主側が、自社の業務にはちょっと合っていないのではないか、やってみて3か月で駄目だったというと、この方にも申し訳ない、という気持ちがある方もいらっしゃるので、そこは、先ほど、チェックシートの話が出てきましたが、ある程度は、お互いのことが分かるような仕組みというのは必要なのかなと思っています。
○木村委員 ありがとうございました。
○鎌田座長 それでは、日本商工会議所に対する御質問はここまでとしたいと思います。日本商工会議所の皆様におかれましては、大変御多忙であるにもかかわらず、本研究会に御出席いただき、誠にありがとうございました。
○高山様 ありがとうございました。
○鎌田座長 引き続きまして、日本人材派遣協会からのヒアリングに移りたいと思います。準備が整うまで、少しお待ちください。
          (日本商工会議所退席、日本人材派遣協会着席)
○鎌田座長 お忙しいところを誠にありがとうございます。それでは、事務局から出席者の御紹介をお願いします。
○亀井補佐 日本人材派遣協会からは、会長の家中隆様、副会長の高橋広敏様、理事の大原博様、以上の方々にお越しいただいております。どうぞよろしくお願いいたします。
○鎌田座長 それでは、御説明をお願いします。
○日本人材派遣協会家中様 12月に続きまして、再度こうした機会を頂きまして、誠にありがとうございました。13回にわたる在り方研の論議を踏まえまして、日本人材派遣協会としての考え方を、今から御説明申し上げたいと思います。説明は派遣協会で改正派遣法の担当理事であります大原理事からいたします。
○日本人材派遣協会大原様 よろしくお願いいたします。まず、お手元の資料ですが、資料2-1から2-3の3種類を準備させていただいております。資料2-1が本日これからの説明のメイン資料です。2-2については、家中から御説明いたしましたとおり、前回のヒアリングで既に御説明しております私どもの提言書です。資料2-3は、私どもが行っている派遣スタッフ1万人調査の結果概要です。2と3については御説明の中で適宜使用させていただくということで、資料2-1に沿って御説明いたします。
 それでは、早速ですが、主な論点に対する私どもの考え方です。「はじめに」はお読みいただくとして、2ページを御覧ください。1の当協会が提案する「今後の労働者派遣制度の在り方」についてということで、資料2で私どもが既に提言している事柄について、今一度この場で確認をさせていただいた上で、論点に対する見解を述べたいと思います。
 1の私どもの考え方の1、今後の派遣制度に求められることですが、私どもは2点考えております。「派遣社員・本人の希望に応じた」キャリアの選択を支援する制度、あるいは仕組み、サービスを強化する必要があるというのが1点目。2点目は、派遣就業をステップとしてキャリア形成を実現していく、その支援を通じて派遣社員の方々の声に寄り添った派遣制度を目指していきたい。これが基本的な理念です。ここで「キャリア」という言葉が出てきますが、労働力人口の減少とか少子高齢化の中で、雇用形態を問わず、いかに生産性を向上していくのか、あるいは、いかに人材育成を図っていくのかが急務の課題であるという認識に基づき、従来より派遣社員の方々は、例えば能力開発の機会が乏しいとか、総じてキャリアが積み上がりにくいという指摘を受けている中で、私どもとしては派遣社員の方々のキャリア形成を積極的にサポートするといった姿勢が肝要であろうということで、この2点を掲げているわけです。
 1の2、それを踏まえて「3つの提言」を私どもはしております。まず1点目は、派遣社員の希望に応じて、原則3年を区切りとしてキャリア形成を支援することによって、就業の安定のための選択肢を広げてまいりたい。就業の安定というのは、様々な形での雇用継続を実現するということです。また、それを行っていくために(2)と(3)があるわけですが、(2)については、いわゆる「専門26業務」の業務区分を撤廃するべきではないか。(3)は、いわゆる自由化業務における派遣受入期間制限については、派遣社員ごとに不公平な期間制限になっている実態もありますので、ここは「人単位」の期間制限に改めるべきではないか。このように3点を提言しているわけです。
 以上、私どもが従来から申し上げていることの確認を踏まえて、2で、この在り方研究会における様々な論点に対する見解を御説明いたします。
 2の1は登録型派遣、製造業務派遣の在り方です。1ポツ、登録型派遣については、本当に多種多様な就業希望を持った労働者の方々と、一方、必要なときに必要な能力、労働力を確保したいという企業を、正しく迅速・的確にマッチングをする。登録型派遣はそのマッチング機能を有しており、現在のような不確実性の高い経済環境下においては、逸早く就業機会を提供することができるシステムとして、我が国の経済社会の発展に必要不可欠であります。したがって、禁止はもとより規制強化をすべきではないということです。
 2ポツ、製造業務派遣については、御案内のとおり、確かに景気あるいは為替の変動の影響を受けやすいなど、一般的な他の派遣業務と異なる点はあるとはいうものの、これは派遣特有の問題ではないという整理をしておりまして、そういう意味では切り離した議論は反対です。
 更に追加の説明で、下の四角の枠ですが、先ほどの他団体の中での質疑応答でも出ておりましたが、いわゆる間接雇用の問題です。私どもは派遣労働者にとって間接雇用であることの有意性、メリットを皆様方によくお話しております。そこに書いてあるとおり、派遣元は、労働者の方々のエージェント機能として、労働者の方々のスキルに応じた賃金の交渉、これは料金の交渉ということにもなるわけですが、あるいは職場環境の改善、本当にセクハラ、パワハラといった深刻な問題もあります、あるいは契約の維持・継続について、派遣社員の方々にとって、働きやすい環境を維持・整備をしていくことで、不安定雇用の解消にも努めている。そういう意味で、私ども派遣会社というのは、派遣社員に代わって派遣先と折衝していく役割を負っているということを、当然考えているわけです。
 続きまして、2の2、特定労働者派遣事業の在り方です。1ポツにありますとおり、人を扱う事業であるという以上、特定派遣事業も原則「許可制」とすべきではないかと考えております。一般労働者派遣事業と同等の、例えば資産要件の基準などを設けること、あるいは、更新時に基準適合の確認がなされることで、優良な事業主をしっかり確保していくことが大事な視点ではないかと考えているところです。
 2ポツは「但し」ということですが、いわゆる常用の定義の中で、無期雇用している労働者のみを派遣する事業所については、「届出制」でもよいのではないかと考えています。
 3点目は期間制限の在り方です。1ポツは先ほども御説明をしたとおり、期間制限については、「業務単位」から「人単位」へ変更すべきではないかということ。現行の派遣先部署における受入期間を基準とする期間制限については、派遣社員の就業期間を問わないために、派遣社員にとって不公平な状態も発生しております。「派遣は役務の提供である」、労働サービスの提供であるという考え方については変わりませんが、派遣社員の方々の保護、キャリア形成の観点から、同一派遣社員の派遣期間の基準については、「人単位の期間制限」に変更すべきだという整理をしております。具体的な期間の年限については、原則3年ということは先ほど申し上げております。
 これはセットの話です。2ポツにある業務区分の撤廃。現在の「専門26業務」については、「付随」「付随的」「その他」の業務の有無によって、「自由化業務」と判断されるという仕組みになっているために、その判断が現場では非常に難しい。派遣を利用する者にとって大変分かりづらい仕組みになっております。また、その業務を限定するという考え方が、派遣社員の方々のキャリアアップの障害となっているのではないかと考えております。
 期間制限が業務の判断によって異なる、期間制限に相違がある。したがって、現場では業務の縛りと期間制限を考慮しながら業務を執行していく。極めて不合理な実態となっています。派遣先の要望、派遣社員の意欲と能力に応じて、職場の実態に合致した形で、業務内容を定めていくべきだ。勿論、業務内容は何でもいいとは申しておりません。業務内容はきちんと定めるべきだと思っております。ただし、現在の26業務区分は撤廃して、期間制限の相違をなくしたほうが、派遣社員のキャリア形成につながるものであると考えています。
 4は派遣先責任の在り方です。これについては研究会での御議論のとおりです。現在定められた派遣先責任をしっかり履行していくことが大事であろう。ただし、2ポツは、具体的な中身はこれから詰めなければいけないと思っていますが、派遣社員の方々の安全衛生の向上という点については、派遣先における安全衛生の管理教育・配慮など、何か更に派遣先の責任の在り方については検討の余地があるのではないかということは、イメージとして持っております。
 5は派遣社員の処遇の問題です。均衡・均等の待遇については、1ポツに書いてあるとおり、現行法の趣旨、あるいは現行法指針にのっとり、適正な運用に努めるというのが第一義であろうと思っております。
 2ポツについては、労働・社会保険の問題は研究会での御議論のとおりですが、私どもの協会のみならず、労働者派遣事業の業界全体としては、更に適用を促進していく必要があるのではないか。ただ、当協会については、この問題については積極的に取り組んでおりまして、今後とも完全適用を堅持してまいりたいと考えています。なお、記載はありませんが、議論によく出る同一価値労働同一賃金の問題については、先ほど経団連からも御指摘があったとおり、考え方としては理解できるものの、実態としてなかなか合致しない側面が多いのではないか、困難なことが多いのではないかと理解しております。
 6は派遣社員のキャリアアップについてです。私どもは派遣社員・派遣先企業双方のニーズをしっかり踏まえて、派遣社員のキャリア形成と雇用の継続を両立させていくために、同一派遣先での派遣期間については、一旦3年を区切りとして、御本人に対して、例えば次のような措置を行ってまいりたい。1点目は、当該派遣先企業への直接雇用を望んでいる場合については、その直接雇用の支援、派遣先への働き掛け、あるいは実現するための派遣社員の能力開発。2点目は、私は派遣を継続したいという方々にとっては、他の派遣先を紹介するといったことを選択肢として考えています。3点目は、私どもの登録型派遣においては、限定的ではありますが、派遣元における常用雇用化といったことも考えていく必要があるだろうと認識しております。
 1点目の派遣先への直接雇用、2点目の他の派遣先を紹介していく。派遣社員のキャリア形成というものは、この2つのルートが基本的な考え方ではないか。派遣先への直接雇用を望む場合については、派遣という働き方を通じて正社員を目指す。具体的に言えば、そこの派遣先におけるより一層のOJTなどの御協力を頂きながら、その企業特有の能力などを高めていく必要があります。また、2点目の、私は派遣を継続していきたいのだという方々については、派遣という働き方の中でキャリア形成を図っていく。例えば、より専門性の高い職種へのキャリアチェンジなどが、キャリア形成として考えられるのではないかと理解をしております。
 ただし、私どものアンケート調査結果にもある通り、同一派遣先での就労を希望する方も多いという実態もありますので、3年経過後、2年を限度として同一就業場所・同一業務への派遣を5年まで延長できることも望ましいと考えております。
 最後に、その他事項を3点記載しております。「みなし雇用」「日雇い派遣」「グループ内派遣」を、それぞれの理由によって、見直し、あるいは撤廃すべきではなかろうかと整理をしております。取り分け1つ目の「みなし」の問題は、期間制限の考え方とも関連をしていると理解しております。先ほど申し上げたとおり、業務の判断によって派遣期間制限が異なる中で、当事者は26業務と判断していたものが、実は自由化業務として判断された結果、期間制限違反で、「みなし」の適用を受ける可能性もあるという事も踏まえますと、全体の仕組みとして、「みなし」の見直しも必要ではないかと考えています。私の説明は以上です。よろしくお願いします。
○鎌田座長 それでは、御質問をよろしくお願いします。
○竹内(奥野)委員 明快な御説明ありがとうございました。先ほどのヒアリングとも関連してしまいますが、質問としては、関連する項目として、スライドの4ページの論点1の「登録型派遣・製造業務派遣の在り方について」の所で、点線で囲んでいる本体部分と別の補足的な事項で、エージェントとして不安定性の解消に努めているということでしたが、お聞きした感じだと、労働条件内容についてエージェントとしていろいろ頑張っていただいているという形ですが、雇用の存続そのものについて、どのように安定を図っているのか。よく労働条件の中身と雇用のところと大きく分けて考えることがありますが、ここで書かれているのは労働条件の中身について、いろいろ派遣元が御努力、御活躍されているという話だと思いますが、雇用の存続だと、ここで書かれていることがどうして不安定性の解消になっているのか、まだよく分からないところがあります。
 あとはスライドで申しますと、9ページの6の「派遣社員のキャリアアップについて」ですが、そこで、同一場所での派遣就業を望む派遣社員が多いということを理由として、場合によっては延長もできるということはどうかという御提案がありました。
 最後に、その他の論点の7の「みなし雇用」規定ですが、質問の前に全体に入ってしまいますが、「みなし雇用」を撤廃するというのはどういう趣旨ですか。これは御定義されている内容の趣旨がよく分からないのですが、改正法で入って、2015年から施行される規定という御趣旨でしょうか。あの規定は、雇用みなしではなくて、雇用申込みのみなしなので、そもそも前提が違うと思うのですが、ある意味、みなしで雇用そのものが強制されてしまうということが前提の書き方になっているということでよろしいでしょうか。
○大原様 はい。
○竹内(奥野)委員 分かりました。その点は一旦置きまして、質問が分かりにくいかと思いますが、今申し上げた3つの点は、いずれも先ほどのヒアリングで質問させていただいた内容に関わることで、派遣としての就業を望むことがニーズとして大きいのだということが前提だと思います。私は数字しか見ていませんが、派遣で望んでいるという資料2-3の調査があるということで、そこに基づいての御意見だと思います。
 先ほどの質問の繰り返しかもしれませんが、派遣としての就業を望むのはなぜなのでしょうか。どこにメリットがあるから望むのか。例えば、資料2-3の1ページを見ても、「仕事や生活には満足するも、雇用の安定や教育訓練には不満が残る」と。雇用の安定について不満が残るということについて、この資料では,なぜ不満なのかよく分かりませんが、普通は雇用について不安だというのは、間接雇用であるとか、そのようなことが1つ大きいのではないかと思います。そうすると、派遣を望むということが一体何なのか。仕事のやり方について、いろいろ自由度が自分のほうも利くから望むということは何となく分かるのですが、雇用なども含めてどうなのか。派遣としての働き方を望むと言われている御趣旨を、もう少し詳しく御説明いただきたいと思います。質問そのものは派遣の方々が派遣で働くことを望んでいることというのは、具体的にはどういうことなのかをもう少し詳しく御説明いただきたいと思います。それが今申し上げた3つの点の御主張のかなり根拠をなしていると思いますので、その点を教えていただければと思います。
○鎌田座長 御質問も御回答も短くお願いいたします。他の先生方もお聞きしたいことがあると思いますので、よろしくお願いいたします。
○大原様 まず、資料2-3のアンケート結果を参考にさせていただきたいと思います。3-1を御覧いただきたいと思います。「派遣社員は自分たちの将来をどう考えているか」ということで、「どのぐらい働き続けたいか」。特に期間を定めず、できる限り長く続けたいが44.2。以下、3年、5年と区切りがあるわけですが、期間を定めて派遣を利用したい方が約30%。その30%の中の内訳が下の円グラフで、その中の約半数以上の方が正社員雇用を望む。これは私どもの調査結果が出ているわけです。したがって、派遣を継続したいという基本的なニーズが、まずそこにありますというのが1点目です。
 もう1つ、9ページの、「どちらの働き方が将来のキャリア実現に有効か」。「同じ派遣先を続け、決められた仕事以外にも対応することがキャリアの実現につながると考えられている」という棒グラフがあります。図表32を見ますと「一つの派遣先で長く就業する」というのを一番多く望んでおられて73.4%です。それに対して右側、「短期でも複数の派遣先で就業する」というニーズが26%強というように、同一派遣先で長く働きたいというニーズもここに現れていると、私は理解しています。
 そういう数字を前提に、では、雇用の不安定性が言われている中で、なぜ派遣を積極的に選んでいるのかということについては、アンケート調査結果2-1の「派遣を選んだ理由」で、1万人調査の約8割の回答者が、「以前、正社員を経験したことがあります」と答えています。さらにその中で、なぜ正社員を辞めたのかがそこに挙がっている理由で、今の御質問について言うと、では、派遣で働き始めた理由であるとか、2-2の満足度につながるわけですが、ここはワークライフバランスの問題だったり、正社員雇用では実現できなかった様々な課題について、派遣就労でそれを実現することができるといった点を広く満足度としてうたっているわけです。
 ただ他方で、雇用の不安定さがあります。これは派遣労働に限らず、有期雇用全体にも言えることではないかと思っていますが、先ほどの質問に関連して言えば、私どもがエージェント機能として直接雇用のパート・アルバイトの方に比べて、例えば期間を一旦定めたら、その期間をしっかり満了していただく、まず全うしていただく。そのことについては当然、派遣先のニーズの変化・変更があったりする中で、私どもはまずその期間の満了、さらに派遣期間の更新等の折衝を本人の意向を踏まえてしっかり対応していくというのが、私どもの雇用の継続における間接雇用のエージェント機能と理解しております。
○小野委員 先ほどのアンケート調査に基づいた中で、同一派遣先で長く勤めたい方というのは7割に上ります。そういった現状も踏まえて、単純になぜ3年という期間で切ってしまうという提案をされるのかというのが、今一、私にはふに落ちないというのが1つあります。
 その上で、9ページのキャリアアップについてですが、要は3年を超えた派遣社員には1、2、3のような手段を講じますとおっしゃっているのです。これは非常に理想的であるとは思いますが、業界団体の中には様々の派遣会社がおられて、確かに一生懸命やられている所もありますが、そうでもない所もあると思っております。1、2、3をちゃんと履行できるのかという問題です。ある意味、3年で切ってしまって、それで「はい、さようなら」ということに多くはなってしまうのではないかと懸念しているわけです。特に40歳以降の方で、2の再び新しい派遣先を紹介するというのは、派遣会社にとってもものすごい負担だと思います。そのようなことに対して、このように御提案をされるということは、何らかのお考えがあって提案されていると思いますので、その辺りをお聞かせ願えますか。
○高橋様 1つは、派遣社員の方々の御要望は非常に多様化していると思っています。今すぐ正社員を希望される方もいらっしゃれば、何らかの事情、若しくは間接雇用のメリットを感じていただいて、派遣を継続したいと思っておられる方がいて、我々としてはその両方に、社員の個別事情に応じて対応をしっかりしていきたいというのが根本的なベースになっています。
 その上で、7割の人が同一派遣先での就業継続を希望されるのに、なぜ無理やり3年に切るのかということですが、ここのベースになっている当協会の考え方は、一方でその方のキャリアをいたずらに塩づけするべきではないと思っています。期間の定めを設けることによって、もともとの派遣というものが日本において認められたのは労働者供給事業であってはならない。いわゆる雇用が派遣によって長期に代替されてはならないということが、そもそも派遣の法理の中で設定されていると思っています。もう一方で、働き手である派遣の方々にしっかりと機会を提供していく中で、3年、最長で5年ということを設定したらどうかとしています。
 おっしゃるとおり、難しい面はあると思っています。3年ごとにころころ派遣先が替わるようになるだけではないかという話はありますが、そこは乗り越えていくべきポイントだと協会は考えておりますし、我々は働き掛けをしていきたいと思っています。今後のキャリアをしっかりと考えていただく機会を作らなければ、過去大きな経済変調になった際に、その方に次のポジションが作れなかったと。そうした反省を踏まえて、御本人にも派遣元にも派遣先にも、そうしたことはお考えいただきながら、派遣活用をしていただくべきだろうという意味の期間の3年、若しくは最長でも5年ということをお願いしているということです。
○鎌田座長 あとはありませんか。
○奥田委員 非常にクリアに説明していただき、資料もたくさん頂いているので、大変分かりやすかったのですが、時間の関係もあるので2、3点お伺いします。まず、処遇の所で、確かに平均的に時給は高くなると思いますが、例えば賞与とか退職金とか生涯賃金で考えた場合に、その辺りを派遣労働者本人がどう捉えておられるのか、あるいは全体的な傾向としてどうなのか、ある程度の傾向が分かれば伺いたいと思います。
 それから、やはりなぜ派遣を選ぶのかということで、特に「正社員を辞めた理由」が、ここで新たに示されていると思います。そうだとすると、本来は正社員であっても仕事と生活の両立ができるような働き方でなければおかしいはずですが、それが存在しないから派遣という働き方のほうが、仕事と生活の両立がより容易だったという理解でいいのかどうかということです。先ほども同じような質問をしたのですが、正社員であっても、例えば残業がそもそも存在しなかったり、責任の度合いということで正社員を選ばない方もあるようですが正社員がもう少し多様であったりということであれば、必ずしも派遣という形態を選ばないのかどうかということが疑問として残ります。先ほど申し上げたように、多様ではなくても、正社員がワークライフバランスが図れれば一番いいのですが、現在のそうではない状態を前提とすれば、そこがもう少し多様なものであれば派遣を選ばないことになるのかどうかという辺りを伺いたいと思います。
 キャリア形成に関しては、派遣先はキャリア形成にどう関わるべきだと考えておられるのか。その3点をお願いします。
○高橋様 昨今よく言われている有期労働法制が5年と決まったことで、いわゆる限定的な社員待遇を各社が用意していくことで、奥田さんがおっしゃられたように、様々な会社でこれまでになかった社員の領域、雇用が発生するのだと思います。先ほどの話と同様で、3年、5年という有期労働法制の部分と合わせることによって、派遣先で限定的社員に移行していく方、若しくは派遣就業をしながらも、新しい限定的な社員雇用が世の中にたくさん広がってくる中で、それを積極的に選ばれる方は何十パーセントかいると我々も思います。
 一方で、派遣の良さは、派遣社員からすれば、かなり早く速やかに仕事が決まるというのは、非常に大きなメリットにはなっていると思います。個別面接は基本的には禁止されていますので、仕事を提供している企業側にとっても派遣先にとっても派遣社員にとっても、まずスタートが非常にスムーズにできる。その上で、お互いに見極めた上で派遣先で雇用されていくということは、今後限定社員制度が広がっていく中で増えていくと思います。
 もう一方で、限定社員が増えたからといって、みんながそんなに速やかに仕事に就けるかというと、間接的に当協会のような派遣元がいるからこそ起き得るマッチングで、先ほど団体さまから、なかなか人が供給されない、見つからない、自社雇用をしようと思っても、簡単に人って見付からないという話がありましたが、理想的な職場ばかりではありませんから、そういったものへのギャップをどこが、誰が調整していくのか。当然ハローワークもおやりになっているし、我々のような人材会社、派遣元が、その両者のギャップをうまく調整しながら、一時的な雇用のところは作って、担わせていただいていると思っています。その結果として、人にスポットを当てて、3年若しくは5年という期間の中で、その会社に入社ができるということであったり、非常に素晴らしい方であれば、派遣元である我々自身が無期雇用化していったりということが、今後の部分としては、理想論かもしれませんが、一番いい形ではないかと思っています。
○大原様 3点目の派遣先の教育訓練の関わりの話ですが、第一義的には、雇用主である派遣元が派遣社員の能力開発に責任を持って行うというのは全く変わりません。その上で、例えば本人がその当該派遣先に直接雇用を望んでいることが明らかになった場合、個別の対応になると思いますが、いわゆる定型的な派遣社員すべからく全員に行われている派遣先のOJTのみならず、更により個別専門的なOJTにも参加をさせていただくような働き掛けを我々はしていきたいし、そういった協力も派遣先にはお願いしたいと思っています。
 我々は派遣元として、派遣先から派遣社員の働きぶりの評価を受けています。今後は、より一層積極的にいろいろ情報提供を受けなければいけないと思っています。したがって、派遣社員の生産性が向上して、本人の能力開発もあいまって、結果として、派遣先の業務についてしっかり貢献していく。そういう流れの中で、派遣先のインセンティブも発生するであろうと考えており、そういった点で派遣先への協力、働き掛けを強めていきたいという考え方で整理をしております。
○家中様 今の話は最後の資料の8ページの下段です。OJTをもって「役立つ」という方が50.8%、派遣先での実際の仕事を通じて成長するということを評価してくださっている方がそれだけいるという実態がありますので、派遣元、派遣先があいまってやっていくことかと思います。
○鎌田座長 時間を過ぎていますが、私からも。テーマとしては、常用代替防止に関わってのお考えをお聞きしたいと思います。まず、派遣協会様の御意見を私なりに理解したところで、特に期間制限については、いわゆる26業務については廃止し、一律に人単位での期間制限にすべきであると。業務から人へということです。したがって、これまでは業務で最大でも3年しかいられなかったのが、人について3年ですから、その業務については恒常的に入っていける状態になる。さらに、今日御提示いただいたキャリアアップの所で、人についても希望に応じて更に5年まで延長できるという制度を導入したいというお考えだということでよろしいでしょうか。
 そうしますと、現在の仕組みと大きく変わって、少なくとも派遣職場、派遣業務については、いわゆる常用職場から派遣職場への転換が可能となるということで、それは従来の考え方からいくと、常用代替防止ということと抵触することになって、恐らく「はじめに」の所で、「常用代替防止という考え方の見直しを含めて」というのは、そういった趣旨でおっしゃっているということですので、この際お聞きしたいのは、常用代替防止を見直さなければいけない理由は何かということです。1つは、不安定雇用の問題との関連で常用代替防止が議論されているし、もう1つは、間接雇用との関連で議論されています。取りわけ、職業安定法44条の問題です。そういったことで議論されているということを踏まえながら、お答えいただければと思います。
○大原様 まず常用代替防止という目的、考え方を否定するものではありません。まずそれは押さえておきたいと思います。ただし、今の規制が、それを基として業務区分、26業務の話であるとか、あるいは自由化業務における派遣の受入期間制限という仕組みが出来上がっているわけです。
 一方、我々が今回、基本的な理念として掲げている派遣社員の方々のキャリア形成を通じて、いろいろな形での雇用継続を実現していきたいと考えたときに、どうしても業務区分という考え方と、それに応じて期間制限が異なるという仕組みを見直さないと、より実効が高められないではないかと、一旦整理をしました。
 そのためには、今ある常用代替防止という考え方を見直さないと、今の受入期間制限を変更していく、形を変えていくことは難しいと理解しているので、常用代替防止法を見直すことは必要であろうと考えています。常用代替防止の目的である派遣先労働者の方々の正規雇用を確保する、守るという理念を持って、一方、派遣社員で実際に働いている方々のキャリア形成であったり、継続雇用が引き替えになって、派遣社員がネガティブなことで影響を受けていることについては、常用代替防止という大義があるからそれでいいとは思っていません。したがって、派遣社員のキャリア形成や継続雇用をより一層実現していくために、私どもは常用代替防止という考え方の見直しが必要だろうと思っています。
 では、提案をする以上、御指摘のあった、派遣先だけが使い勝手がいい仕組みではないかとか、あるいは不安定雇用の問題はどう解消するのだということについて、当然責任のある回答をすべきとは理解をしておりますが、そこの具体的なアイディアについては、大変難しい問題であると考えております。ただその中で、常用雇用代替を防止するということから、3年たったときに、どれだけ派遣先への直接雇用あるいは常用雇用につなげていくことができるのかというところについて、我々はより一層仕組みを強化していく。つまり、常用代替を防止するのではなくて、派遣先の直接雇用、常用雇用を生み出していくのだという考え方でこの提案をまとめています。したがって、常用代替防止という考え方を、決して否定しているものではないというように御理解いただきたいと思います。 
○鎌田座長 関連してですが、9ページに書いてある「派遣社員のキャリアアップについて」の3つの御指摘、「措置をおこなう」というのは、各派遣元企業の自主努力という趣旨ではなくて、何らかの法的措置も含めたニュアンスで考えておられるのですか。
○大原様 私どもがここで掲げているのは、当然私どもの自主努力として仕組みを作っていきたいということが第一です。ただ、そこに制度として仕組みをもし入れた場合、先ほどの雇用申込みみなしと絡むかもしれませんが、そもそも雇用というものは当事者の合意、当事者の積極的な意思表示があってこそ成立するものであって、それがあるからその雇用が継続するとか、あるいは労働条件が向上していくという期待がそこに生まれるわけです。それを制度として一方的に仕組みだけをそこに入れていった場合に、今言ったような雇用の継続性とか労働条件の向上につながっていくのかどうかという点で、私どもは必ずしもそうではないと理解しています。そういう意味では、当事者の合意に基づいた直接雇用が生まれていく仕組みが何かできないだろうかという視点で、このような提案をしています。
○鎌田座長 法的措置も含めたニュアンスも含んでいるということですか。
○大原様 そこまではないです。
○高橋様 協会としては自主努力としてやるつもりで臨んでいます。
○鎌田座長 時間をオーバーしながら丁寧に御説明いただき、本当にありがとうございました。
 それでは、日本人材派遣協会様におかれましては、本当に長い時間、ヒアリングに御協力いただき、ありがとうございました。改めてお礼申し上げます。
○日本人材派遣協会一同 ありがとうございました。
○鎌田座長 時間がまいりましたので、本日はこの辺りで終了したいと思います。次回の日程について、事務局から報告をお願いします。
○亀井補佐 次回の日程ですが、調整がつき次第、御連絡させていただきたと思います。
○鎌田座長 それでは、これをもちまして本日の研究会は終了いたします。皆さん、お忙しいところをありがとうございました。


(了)

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