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2013年1月22日 第7回今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会 議事録

職業安定局派遣・有期労働対策部需給調整事業課

○日時

平成25年1月22日(火)10:00~12:00


○場所

厚生労働省 専用第14会議室(22階)


○出席者

構成員

鎌田座長、奥田委員、小野委員、木村委員、竹内(奥野)委員、山川委員

事務局

宮川派遣・有期労働対策部長、尾形派遣・有期労働対策部企画課長、富田需給調整事業課長、
三上雇用支援企画官、牧野派遣・請負労働企画官

○議事

○鎌田座長 定刻となりましたので、第7回「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会」を開催いたします。まず、事務局より、委員の出欠状況と資料の確認をお願いいたします。
○佐藤補佐 委員の出欠状況です。本日は阿部委員より御欠席との御連絡をいただいています。
 お手元の資料は、議事次第と座席図のほか、資料1~4までお配りしています。資料に不備等がございましたらお申し付けください。
○鎌田座長 よろしいですか。それでは、議事に入ります。これまで数回にわたり、有識者の方々及び派遣元・派遣先・派遣労働者の方々からヒアリングを行ってまいりました。今回からは、いよいよ中身の議論に入りたいと思います。まず、事務局より資料の説明をお願いいたします。
○三上企画官 派遣・有期労働対策部企画課雇用支援企画官の三上と申します。私からは、去る平成24年12月にお取りまとめいただきました、「非正規雇用労働者の能力開発抜本強化に関する検討会報告書」について御説明いたします。この検討会は、本委員会の委員でもあります獨協大学の阿部正浩教授に座長をお務めいただきまして、小野委員にも御参画いただいています。
 資料として、それぞれ1枚紙の「検討会報告書」と「非正規雇用問題に係るビジョンの概要」、それから報告書本体の3つのセットをお付けしています。
 能力開発抜本強化検討会開催の前提となりました非正規雇用問題全体について、取りまとめていただいたものを簡単に御紹介した上で内容を御説明いたします。まず「非正規雇用問題に係るビジョンの概要」を御覧ください。平成24年3月に、慶應義塾大学の樋口美雄教授に座長をお願いしまして、懇談会を開催してお取りまとめいただいたものです。基本的な方向性として、日本経済全体の持続的な発展を目指す観点から、非正規雇用問題、これは派遣にかかわらず契約社員の問題、パートの問題その他全般を含むものですが、今後の非正規雇用対策に求められる基本姿勢と具体的方向性を御提示いただいたもので、これに基づいて非正規雇用対策の取組を推進するという位置付けのものです。
 「労働市場の状況」では、非正規雇用問題に関する全体的な認識を示しています。人口減少社会が続き、今後、就業者数は大幅に減少していく。御案内のとおりですが、失業率は高止まりになり、非正規雇用の方々は全労働者の3分の1を超える現状にあります。
 このようなことを踏まえ、活力ある経済社会を構築するためには、「人材立国」として社会全体で一人一人の労働者のキャリア形成を支えることが重要である。また、雇用形態にかかわらず公正な処遇を確保し、フリーター等の「不本意非正規就業者」の正規雇用への転換などを行うことが重要である。このような施策・行動を行うことにより労働者の士気や職業能力の向上につなげ、企業の生産性の向上ひいては日本経済全体の発展という、いわゆる「好循環型社会」を目指すという指針を示していただいています。
 このビジョンの中で、下の段にありますとおり、7つの方向性が示されています。そのうち、2の「正規雇用・無期雇用への転換促進」、4の「公正処遇の確保、不合理格差の解消」、5の「均等・均衡待遇の効果的促進」、6の「職業キャリアの形成の支援」の4つの点を踏まえ、非正規雇用の能力開発についてより具体的な施策の方向性を示していただくため、「非正規雇用労働者の能力開発抜本強化に関する検討会」を9月に立ち上げまして、12月に御報告をお取りまとめいただきました。
 報告書の説明に移ります。先ほども申し上げましたとおり、この報告書は非正規雇用労働者全般にわたるものですので、特に派遣労働に関わる部分に重点を置いて御説明いたします。
 まず、基本的な視点をまとめています。なぜ非正規雇用労働者の能力開発が重要であるかについて、報告書の3ページに取りまとめられていますので、かいつまんで御説明いたします。非正規雇用労働者の方々の現状は非常に厳しい、全体の3分の1を超える状況にあります。そうした状況の中で、企業による教育訓練は全体として低下しています。さらに、特に非正規雇用の労働者の方々については、職業能力形成機会が乏しい状況にあります。このような状況では、先ほどのビジョンでも申し上げた好循環型社会の実現が非常に難しい。そのようなことも踏まえ、人材が最も重要な資源である日本においては、能力開発機会に恵まれない非正規雇用労働者の増加を防ぎ、人的資源を蓄積していくことが重要であると御意見をいただいています。
 その一方で、非正規雇用の労働者の中には、不安定な雇用や低い処遇から抜け出せないという将来への展望が描けないまま、生活の不安や結婚もままならない状況に陥っている方がかなりおられる。こういった状況を打開するには能力開発が必要であるという視点で、今回の報告書をお取りまとめいただいています。
 1枚紙の資料にお戻りください。そのような観点による「基本的な視点」として、正規・非正規という雇用形態にかかわらず、将来に夢や希望を持ちながら安心して生活を送れるような収入を確保することを目的として、能力開発機会を提供し、キャリアアップを支援することが必要である。その際、特にフリーター等の不本意非正規の方々に焦点を当てていくべきだとお取りまとめいただいています。
 本文の4ページに、非正規雇用の方々の状況を分類しています。(1)の(4)を御覧ください。労働者の方々の希望と各企業の雇用形態に鑑み、4つの形態に分類しています。アは、契約社員、派遣労働者、フリーターなどに比較的多くみられる、正規雇用を希望されていながらその機会を得られなかった「不本意非正規」の方々です。イは、パートタイム労働者などに一部みられる、企業内で柔軟な働き方を維持しつつキャリアアップすることを望む方々。ウは、派遣労働者や契約社員などに一部みられる、専門性を身につけながら企業の枠にとらわれずキャリアアップすることを望む方々。ウで申し上げる「専門性」は、労働者派遣法にあります専門26業務の概念にはとらわれず、それぞれの能力という意味で、能力を持って専門的知識で企業の期間的雇用などを受けて活躍される方々で、派遣法の概念よりも広いものだと御認識ください。それから、エは、定型的・補助的業務で働く方々や高齢者の方々、アルバイトの方々です。
 5ページの(2)の中段辺りを御覧ください。先ほど、不本意非正規に焦点を当てると申し上げましたが、不本意非正規の方々に焦点を当てつつ、他方でイやウの方々のキャリアアップについても、希望がかなえられるような道を社会全体で確保することが必要であると取りまとめていただいています。
 1枚目にお戻りください。このような施策を受けまして、非正規雇用の労働者の方々を「人財」として企業、業界団体、公的部門等社会全体で育成していくことが不可欠である。この結果として、労働者の方々の将来像を「見える化」し、未来に希望を持っていただくという取りまとめをいただいています。
 「施策の方向性」は、3つの大きな柱となっています。特に派遣労働に関係するところでは、「複線的なキャリアアップの道の確保、労働者の選択に応じた能力開発機会の確保」という点でまとめられています。先ほど申し上げたように、企業枠を超えたキャリアアップとして、簡単に申しますと、専門職型キャリアアップシステムの構築ということです。本文の10ページ、一番上のウを御覧ください。専門性のある業務については、労働者のキャリアアップの観点からこのような専門性の分野において、労働者派遣事業者による能力開発や仕事の場のマッチングが可能な派遣労働形態の活用が期待されている。このためには、労働者派遣事業が、このような分野で非正規雇用の労働者のキャリアアップに資することも踏まえた育成を図ることが必要である。しかしながら、引き抜き等の問題もありますので、個々の労働者派遣事業者の能力開発の投資の回収が難しいので、なかなか進まない面があるのではないかとして、業界団体等の取組や公的部門による支援も重要だと御指摘いただいています。
 1枚目に戻ります。労働者の方々の移動を踏まえ、実用的な職業能力評価ツールの整備が必要です。スキルポータビリティ化に向けた資格・検定制度の再構築など、このようなことが必要であろうと御指摘いただいています。
 以上を踏まえ、今後、具体的な取組を強力に推進して「好循環型社会」を実現していくということです。この中で御指摘いただいている労働者派遣制度の見直し等につきましては、以上のような観点からの取組を強化すべきであるとお取りまとめいただいています。
○佐藤補佐 資料2は「ヒアリング結果の概要」です。過去4回にわたり、有識者の方々、個別の会社の方、労働者の方、事業者団体の方、労働者団体の方々からヒアリングを行い、その際の発言内容や提出資料を基に事務局でまとめたものです。細かい説明は省略しますが、登録型派遣の在り方、製造業派遣の在り方等、この検討会で御議論いただきたい論点に即して、私どもで発言内容を整理して記載しています。今後の議論の際に、適宜参照していただきながら議論を進めていただきたいと思います。
 順番が前後しますが、先に、資料4の横置きの「関係資料」から御説明いたします。1ページを御覧ください。まず「正規雇用・非正規雇用の労働者の推移」です。近年では、正規の職員・従業員は減少傾向にあり、非正規雇用の労働者の方が全体の約3分の1を超えている状況です。2011年には35.1%、1,811万人が非正規労働者の方々だという統計があります。
 2ページを御覧ください。この2011年の1,811万人の非正規労働者の方々の雇用形態はどうなっているかということです。パート、アルバイト、派遣社員、契約社員・嘱託、その他に分かれているうち、派遣社員の占める割合は、ここ10年前後は大体5~8%で推移しています。出典は労働力調査で、2011年は年平均で96万人の方が派遣社員として働いておられるという状況です。
 3ページは「正社員以外の労働者を活用する理由」です。これは「平成22年の就業形態の多様化に関する総合実態調査」から抽出した資料です。下は、各労働者別に、なぜこの労働者の方々を使うのかを事業者に対して調査したもので、派遣労働者の部分を黒枠で囲っています。一番左側が100%。その次に「正社員を確保できため」に派遣労働者の方を使うが20.6%で、他の就業形態の労働者の方より多い。それから、少し飛びまして「即戦力・能力のある人材を確保するため」が約3割。その横、「景気変動に応じて雇用量を調整するため」が24.7%で、契約社員や嘱託よりは多いのですが、臨時的雇用者に比べると少ない状況です。念のため補足しますと、臨時的雇用者というのは雇用期間が1か月以内の方で、パートタイム労働者は雇用期間が1か月以上の方として、この調査では「臨時的雇用者」あるいは「パートタイム労働者」と定義しています。
 1つ飛ばして、真ん中ぐらいのところです。「1日、週の中の仕事の繁閑に対応するため」とありますが、これは派遣労働者の方々は9.5%で、契約社員と大体同じぐらいの割合です。臨時的雇用者やパートタイム労働者の方々に比べると少ない状況です。その横に「臨時・季節的業務の変化に対応するため」は17.4%で、これも上の3つ、契約社員や嘱託に比べると高く、臨時的雇用者に比べると低い傾向があります。右から2つ目「正社員の育児・介護休業対策の代替のため」は、他の就業形態の社員に比べると高く、大体15%の回答が得られている状況です。
 4ページを御覧ください。それぞれの労働者の方々の「就業形態別の雇用契約期間」を図示したものです。出典は同じ調査ですので、一番左の「臨時的雇用者」や「パートタイム労働者」の定義は同じです。これについても、派遣労働者の方々の雇用契約期間がどうなっているのかを真ん中の黒枠で囲っています。派遣労働者は登録型と常時雇用型に分かれていますが、派遣労働者全体では「雇用契約期間の定めあり」の労働者の方々が8割弱、右から2つ目の欄の「雇用期間の定めなし」の方々が2割弱になっています。派遣労働者全体で見ますと、一番多いのは雇用期間が3~6か月未満の方々で、大体4分の1、24.7%になっています。次に多いのが1~3か月未満、それから、6か月~1年未満の順番になっています。
 5ページを御覧ください。労働者の方々に対して、現在の就業形態をなぜ選んだかをお聞きした調査です。これも真ん中に、派遣労働者を黒枠で囲っています。出典は同じ統計ですので説明は省略します。派遣労働者の方々がなぜ派遣という就業形態を選んだのかについて、一番多い回答は右から4つ目の箱の、「正社員として働ける会社がなかったから」が4割以上となっています。これは他の就業形態と比べて突出して高い状況です。その他、高いものとして、左から2つ目の「専門的な資格・技能を活かせるから」と回答したものが2割ぐらい。常用型では25.9%と高く、このように回答した方が、契約社員や嘱託に比べると低いのですが、臨時的雇用者あるいはパートタイム労働者に比べると高い状況です。それから、2つ右の「自分の都合のよい時間に働けるから」という回答が2割ぐらいで、契約社員や嘱託に比べると高い。ただ、臨時的雇用者やパートタイムに比べると低い状況です。
 6ページです。「今後の就業に対する希望」について、同じ会社で働きたいか、別の会社で働きたいか、あるいは独立したいかという形で、今後の希望について労働者の方々にお聞きした調査です。これについても、派遣労働者の方を真ん中の黒枠で囲っています。他の就業形態に比べて高いのは、「別の会社で働きたい」という回答をいただいているものが大体4分の1になっています。一番上にある「正社員以外の労働者」という欄は、正社員以外の労働者の平均の数字で、これが12.6%ですから、平均の倍ぐらいの回答をいただいている状況です。
 7、8ページは「派遣労働者数の推移」です。折れ線グラフは派遣労働者の数の合計です。下の棒グラフは、どのような事業所に雇用されているのかを整理した資料です。派遣労働者の合計は、平成20年度に202万人でピーク、平成23年度は137万人です。これを雇用されている事業所別の推移で見ますと、黒い棒グラフが特定労働者派遣事業所に雇用されている労働者の数で、これは近年は大体横ばいで推移しています。一方、薄いほうの棒グラフは一般の派遣事業所に雇用されている労働者で、これはここ3、4年は減少傾向にあります。
 8ページは、常時雇用労働者かあるいは常時雇用以外の労働者かで派遣労働者の数を整理したものです。左側の濃い色の棒グラフが常時雇用型の労働者、右側の薄い棒グラフが常時雇用型以外の労働者です。
 9ページは、派遣法でいう「常時雇用」の意味です。既に御承知のことと思いますが、改めて御説明いたします。雇用期間が無期だけではなく、一定の期間を定めて雇用されている場合であって、その雇用期間が反復継続されて事実上無期と同等と認められる者。すなわち過去1年以内の雇用期間がある、あるいは採用のときから1年以上の雇用見込みがあるという場合については、派遣法上は「常時雇用される」と整理されています。このページは、これについてまとめています。
 10ページは「雇用契約期間別の派遣労働者数」です。先ほど御説明した資料の再掲で、派遣労働者の部分だけ切り出しています。先ほど申し上げたとおり、多くは雇用期間の定めがある方が多く、雇用期間の定めがない方は全体の約2割弱です。一番下に「うち常用雇用型」とありますが、常用雇用型の労働者の方でも期間の定めがないという雇用形態の契約を締結しているのは、全体の3分の1ぐらいです。残りの3分の2の方は雇用期間の定めがある雇用契約を締結している、というのが常時雇用型の実情です。
 11ページは、先ほどの調査と違いまして、これはJILPTで行っている「派遣社員のキャリアと働き方に関する調査」という別の調査です。常時雇用型の派遣労働者でかつ有期契約の方だけを抜き出して、その方々の雇用契約期間を見た調査です。下の表で、登録型の場合の雇用契約期間と、常用型(ただし雇用契約期間の定めがある)の労働者の方の雇用契約期間を見たものです。常用型の期間の定めがある場合でも、9割弱の方々の雇用契約期間が1年以下であるという調査結果もあるのが現状です。
 12ページは、4年前の労働力需給制度部会の提出資料をそのまま引用させていただいています。これは、当時リーマンショックが発生し、リーマンショック後の雇止めの状況について、厚生労働省が調査した結果をまとめた資料です。黒枠の部分は、リーマンショック後に雇用が継続した労働者の方々がどれぐらいいらっしゃったかの調査結果です。常用型の場合は、全体の12.4%の方の雇用が継続されていました。一番右側の、登録型の場合には、全体の8.1%の方の雇用が継続されていたという状況です。ただ、常用型でも無期と有期で様相が違っていまして、常用型で雇用契約が無期の場合には全体の22%の方の雇用が継続しておられました。一方で、有期の場合には10%少しの方々の雇用が継続していたという結果になっています。
 13ページからは、教育訓練の関係の資料です。若干古いものですが、平成17年に厚生労働省が実施した「労働力需給制度についてのアンケート調査」の結果です。これは事業所に対して、教育訓練の状況についてお聞きした調査の結果です。この調査結果からどのようなことが言えるかです。まず、上のほうの1に「派遣元による教育訓練受講率(平成17年9月1日現在)」という表があります。この一番右の欄を御覧ください。平均で派遣労働者の方がどのぐらい教育訓練を受講しておられるのかです。常用の派遣労働者の方は、7~8割ぐらいの事業所で教育訓練を受講されています。一方で、登録型の派遣労働者の場合には、大体半分と少し、56%の事業所で教育訓練を受講されているという状況です。
 下のほうの表の2番目の「教育訓練を行うに当たっての問題点」は、事業所に対して教育訓練を行う際の問題点を希望したものです。これも、一般の事業所と特定の事業所で顕著に差があるものを黒枠で囲っています。真ん中辺りに「労働者が受講を希望しない」と御回答いただいている事業所は、特定の場合には7%足らずでしたが、一般の事業所の場合には20%ぐらいになっています。その右、「教育訓練を受けてやめてしまう人がいる」という御回答の事業所は、特定の場合は11%少しですが、一般の場合は27.8%となっています。先ほどの報告で、引き抜きの話がありましたが、そのようなことも影響しているかもしれませんが、このような状況にあります。
 14ページです。「各種研修の受講経験の有無」で、JILPTの調査を引用しています。これは、労働者の方々に対してアンケート調査をした調査結果です。登録型の派遣社員、常用型の派遣社員で期間の定めがあるかないかによって分けて、その方々に対してどのような教育訓練を受講したことがあるかをお聞きしたものです。登録型のと常用型のとで数字に差がありそうなものとして、黒枠で囲っています。一番左の「初級OAスキル研修」、ワードやエクセルの初歩のものについては、登録型の派遣社員は18%弱が受講されていますが、一番下の、常用型の派遣社員で期間の定めがない無期の方は10%足らずの方が受講しています。真ん中は「職能別研修」で、経理、貿易、医療などです。このような研修については、登録型は2%弱しか受講しておられませんが、無期は10%弱が受講しています。その横の「ビジネススキル研修」また「ビジネスマナー研修」についても、登録型と常用型の無期の派遣社員の間には2~3倍ぐらいの受講経験の差がある状況です。
 下の表の右から2つ目に、「以上の派遣会社の研修を受けたことがない」という回答項目があります。これについては、無期の派遣社員の場合は3割少しぐらいですが、登録型の派遣社員の場合には4割以上の方が研修を受けたことがないと回答しているというものです。
 最後の15ページです。派遣労働者の方々をなぜ就業させるのか、事業所に対してお聞きした調査です。一番多い回答は、左から3つ目の「欠員補充等必要な人員を迅速に確保できるため」で、大体7割です。それから、左から2つ目の表の「一時的・臨時的な業務の変動に対処するため」、真ん中ぐらいの「専門性を活かした人材を活用するため」、こういった回答が多く、このようなことで派遣労働者の方々を就業させているというデータです。
 片面1枚紙の資料3を御覧ください。このような状況を踏まえ、本日御議論いただきたい事項として、座長とも相談しましてこのような形でまとめています。大きく2つありまして、1つ目は労働市場における派遣労働者の位置付け、2つ目はキャリアアップ措置です。
 まず、1点目の「労働市場における派遣労働者の位置付けについて」です。4つの○の1つ目、派遣労働者の方は、他の雇用形態の労働者と比較してどのような特徴があるのか。社会経済環境の変化の中で、今後、労働市場においてどのような位置付けとすべきか。その際の課題は何かということです。特に、先ほど御説明申し上げましたように、ここ数年は派遣労働者数が横ばいあるいは減少傾向にある一方で、非正規労働者の数は全体として増加傾向にあることとの関係をどのように考えるのか。
 2つ目の○は、これまで派遣労働者は、有期・無期の違いにかかわらず、間接雇用という理由で、ほぼ区別せずに非正規労働者として取り扱われることが多かったが、このことについてどのように考えるか。また、有期と無期の違いによって、派遣労働者の労働市場における役割はどう異なるのか。
 3番目の○の、派遣法の制定時以来の目的である、いわゆる「常用代替防止」についてどのように考えるのか。4番目の○、労働契約法の改正によって、有期労働契約の反復更新による長期的な活用については無期契約へという道筋が示されていますが、派遣労働者の活用にどのような影響があると考えられるか。以上の4点です。
 次に、大きな2つ目の「派遣労働者のキャリアアップ措置について」です。これも、4つの○を作りました。1つ目の○は、そもそも派遣労働者のキャリアアップが重要である理由は何かということ。2つ目の○は、派遣労働者のキャリアアップの措置として、どのようなものが制度的に対応すべきものと考えられるのか。また、派遣元、派遣先にどのような役割がそれぞれ求められるのかということ。3つ目として、有期と無期の雇用形態の違いによって、派遣労働者のキャリアアップの課題はどのように異なるか。一番下の○は、派遣労働者のキャリアアップの観点からは、1か所で同じ仕事を長く続けること、複数の仕事を経験すること等どのようなキャリアパスをとることが望ましいのか。これらの点について御議論いただきたいと思っています。事務局からの説明は以上です。
○鎌田座長 本日は資料3の「御議論いただきたい事項」を中心に、委員の皆さんの御意見をいただきたいと思います。その前に、今御紹介いただきました本日の資料について、御質問などがありましたら、まずこの点についてしていただきたいと思います。
○奥田委員 資料4で分からない点が3点ありましたので、御説明いただきたいのですが。1つは、3ページの臨時的雇用者とパートタイム労働者の違いは、1か月未満か以上かという期間の説明だったと思うのですが、パートタイム労働者は短時間労働者なので、臨時的雇用者というのは1か月未満の短時間労働者と理解したらよろしいのでしょうか。それが1つ目です。
 2つ目は、これは何箇所か出てきたのですが、例えば10ページに期間の定めのことが出てきて、登録型の労働者に「雇用期間の定めなし」が6.2%と出てくるのです。ほかのところでも何箇所かあったのですが、登録型の派遣労働者で雇用期間の定めがないという状態は、具体的にどういう状態かをもう少し教えていただきたいです。
 3つ目に、これは資料の読み方で、見る人が見たら分かるのかもしれないのですが、6ページの真ん中で「別の会社で働きたい」が25.1%というのが、他の非正規労働者に比べて多い特徴として御説明いただいたと思うのです。例えば現在の会社で働きたい、別の会社で働きたい、独立して事業を始めたいというとき、派遣労働者が別の会社で働きたいというのは、この比較の前提としてどういう意向だと捉えればいいのか、ちょっと分からないのです。その3点だけ、もう少し教えていただければと思います。
○佐藤補佐 1点目、パートタイム労働者と臨時的雇用者の定義の関係です。この調査の定義をそのまま引用させていただきますが、臨時的に又は日々雇用している労働者で、雇用期間が1か月以内の方をいうのが臨時的雇用者です。一方でパートタイム労働者については、正社員より1日の所定の労働時間が短いか、1週間の所定労働時間が少ない労働者で、雇用期間が1か月を超えるか、又は定めのない者をいう。こういう形で定義をして区別をされております。ですので、先ほど雇用期間が1か月以内か、あるいは1か月を超えるかという形で、大きくは分かれるということで御説明申し上げたということです。
○奥田委員 ということは、臨時雇用者の中身は、フルタイムで1か月未満の人も含まれているという理解でよろしいのですね。
○佐藤補佐 さようでございます。2点目ですが、登録型の雇用形態で、期間の定めがない方についてどう考えるのかということですが、あなたの雇用期間はどうなっていますかというのは、これは労働者にお聞きしている調査ですので、労働者の方々が必ずしも雇用期間と登録を十分に整理ができていないというケースもあろうかと思います。その辺りの調査、統計上の誤差というか、その辺りが登録型であっても無期の人がいますということになっているのではないかと推測はされます。
 3点目ですが、6ページ目の派遣社員の「別の会社で働きたい」という場合の解釈です。下のほうに注で細かく書いてはあるのですが、注2に派遣労働者の場合には、派遣元での状況についての回答ということで、派遣社員が「別の会社で働きたい」のは、派遣先を別にしてほしいということではなくて、調査表の趣旨としては派遣元を別の会社にしたいと、質問の趣旨はそうなっています。実際に労働者がどういう回答の趣旨でされたのかはちょっと分からない部分はあるのですが、質問設計上の趣旨はそういう趣旨です。以上です。
○鎌田座長 ほかに資料について御質問はありますでしょうか。1点だけ私のほうで確認ですが、資料4で、いくつか雇用期間についての御質問、例えば4ページ目の「就業形態別の雇用契約期間」、10ページ目の「雇用契約期間別の派遣労働者数」、11ページ目の雇用契約期間別の、これはいわゆる継続している雇用期間というよりは、1回の契約時の定めを基準にして書いているということですね。
○佐藤補佐 はい、そうです。
○鎌田座長 分かりました。適宜御質問があれば、事務局にお答えいただくということで、これから中身の議論に入りたいと思います。限られた時間の中で御議論いただかなければならない事項が多岐にわたりますが、時間を区切って、御議論いただきたい事項の1「労働市場における派遣労働者の位置付けについて」、まず御意見をいただきたいと思います。皆さん自由に御意見をいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○奥田委員 少し漠然としているので、どの辺りから議論するのか分かりません。要するに、これまでの資料から、どういう位置付けがされているかを分析するということなのか、あるいは政策として労働市場の中で更なる有効活用を図るとか、そうでないとか、そういう議論なのでしょうか。
○鎌田座長 事務局で今の御質問の趣旨について、何かありますか。
○富田課長 座長と御相談してここをお示ししている趣旨としては、実態として派遣労働者がどのような状況にあるのか。それも、ここで言っておりますのは、派遣労働者だけを捉えても偏った分析になると思いますので、資料4で示したとおり、他の雇用形態と比べると派遣労働者の特徴が出ますので、特徴を事務局でも先ほど数字としては示させていただきましたが、先生方の御知見をいただきたいというのと、そういった状況を踏まえて、今後、政策的にプリフィケーションを導き出せるのか、どうするべきなのかという点についても、両方について御議論いただきたいというのが資料3の趣旨です。
○鎌田座長 1の点について、ここでお聞きしたいことは、派遣労働者の労働市場における特徴、特に他の雇用形態、契約社員だとか、パートだとかありますが、そういう他の雇用形態の方と比較して、派遣労働者にどのような特徴があるか。同時に、派遣事業は労働市場におけるマッチングの機能を果たしているという事業者でもありますので、そういったような労働市場のマッチングという観点から、派遣事業者、派遣制度はどういう役割を果たしているかということが1つだと思うのです。
 次に、労働者派遣制度を考える場合に、特に派遣先の正規の従業員の方たちとの関係で、常用代替防止という原則がずっとあるわけですが、これをどのように考えるか。御意見として、どのようにすべきかという御意見ももちろん大切ですし、そもそも常用代替防止をどういう文脈で、どのようなものとして理解されてきたのかということも御意見をいただければと思います。
 派遣制度、あるいは派遣労働者の位置付けとして、皆様御存じのように登録型と常用型、あるいは派遣事業者の許可・届出に関しては特定と一般があります。いずれにしても、調査の中で御指摘いただきましたように、常用型といっても必ずしも無期ということではないわけです。そこには、これはずっと長く議論もされていることなのですが、有期・無期という視点で見るとどうなるのか、あるいは常用・登録という視点で見た場合に、今まで見えていないものが見えてくるということはないだろうか。このようなことが1で皆さんに御意見をいただければ有り難いなと思っております。キャリアアップとか職業訓練については、2で更にお聞きしたいと思っております。どれについてでも結構ですが、御意見をいただければと思います。
○竹内(奥野)委員 私もまだ十分に考えきれていないところもあるかと思います。先ほども少しやり取りの中でなされたように、今御説明いただいた統計の数値等から、どのように分析できるかという観点での話ではないのですが、1点目に関しては法学的な頭から考えると、何よりも派遣労働者は間接雇用であると。直接使用している者が雇用しているわけではないというところが、ほかの雇用形態と比べて何よりも違うところがあるかと思います。
 他方で、他の雇用形態との比較というところは若干薄くなりますが、同時に派遣労働者と言葉遣いがなされる場合には、非正規労働の1カテゴリーという意味で、非正規労働という趣旨で遣う言葉の置き換えという形で、つまり非正規雇用だというような点で、この派遣の働き方を捉えている、あるいはそのようなものと考えているという2点の特徴があるのではないかと考えております。
 どのような位置付けとすべきかということは、なかなかすぐに答えが出ませんが、少なくとも両者の特徴があって、それぞれの特徴から見た場合にどのような施策をすべきかとかいう観点で議論をしていく。あるいは少なくとも両者の特徴があって、それぞれの特徴として見た場合に考えられる施策がどのようなものであるべきか、という考え方をしていく必要があるのではないかと思います。間接雇用という形で見た場合には、先ほど話が出たマッチング効果などというところは、労働市場の中では重要な役割を果たしている就労形態の1つだと見ることができるかと思います。
 そのようなものは一方で活かしつつ、例えば非正規という形で、例えば賃金のコストを抑えるという形で派遣労働を利用するというところでは、それはいわば非正規の働き方の一種として、正規よりも安くて済むからという観点だと思いますが、そのようなところについて、そのままでいいのかとかいう形で考えていくことは1つあり得るのではないかと思います。少なくとも間接雇用であるからどうすべきかという観点、そして現実に非正規雇用と位置付けられているところからどうすべきかと。間接雇用であるというのは、法的に見てもそのような仕組みになっているかと思いますが、その2点のどちらから議論をしているかというのは、意識はしておく必要があるのではないかと思います。
 1点、2点とまたがるコメントでもよろしいですか。2点目は、これまでも少し申し上げさせていただいておりますが、有期か無期かというところについては、直接には雇用契約の期間の話ですので、期間が満了した際の雇用の終了がどうなるかと。契約の終了時、雇用の終了時における取扱いというところが、有期と無期では異なると。少なくとも直接雇用の場合を念頭に置いた中では、非常に異なるものであることを前提に取り扱われていますし、議論をされているわけです。
 そのような意味では、派遣労働についても有期・無期という観点から、現実には常用とそうでないという形で、これまで考えられてきているところがありますので、どこまで異なった考え方ができるかは分かりませんが、少なくとも雇用終了の取扱い等について、保護等があるかないかとか、そのような場面では有期雇用である、あるいは無期雇用であるという法的な位置付けの際に照らした分析が,常用かどうかという観点ではなくて、そのような有期・無期という観点から検討する必要があるのではないかと思っております。
 例えば無期雇用であれば、一般にはより雇用の保障には厚いというように現在の法制度の下では考え得るわけですので、そのような場合については例えば許可等の対象ではなくて、届出とか、そのような規制の基準を緩く考えることができる。他方で、有期であれば、雇用が1年間続いているかどうかとは別に、より雇用が不安定だと考える。そうすると、より厳格な規制の下に置くという考え方等も出てくるかと思います。
 少なくとも,常用かどうかという現在の分類は、法的な雇用期間、あるいは雇用終了における扱いと必ずしも一致しないわけではないのですが、一致しない部分がかなりありますので、そのような観点からは分けて、むしろ雇用終了に関しては有期・無期という契約の期間の定めの観点で整理したほうがよいのではないかと思っております。差し当たり以上です。
○鎌田座長 ほかに御意見はよろしいでしょうか。
○木村委員 では、申し上げます。派遣労働者の労働市場における位置付けということになると、労働市場における派遣労働の機能なのですが、いろいろなものがあります。企業側から見たり、労働者側から見たりでいろいろありますが、共通しているのは柔軟性というか、利便性というか、人を使う側にしても、仕事を探す側にしても、エージェントが介在することによって、間接雇用によって介在者があることによって、利便性が高まるということなのです。
 理論的なことはともかく、現在の統計から見られるような他の雇用形態の非正規労働者の比較でいきますと、資料4の5ページにあったとおり、ここの数字で単純に見ると、現在の派遣労働者は正社員として働ける会社がなかったからということで選んでいる人が非常に多くなっている、というのが現実的な特徴であるといえると思います。特に労働者側から見ると、仕事がないと。正社員の仕事に就けないと。比較的仕事に就きやすい、若しくはそれなりの給与がもらえるということで、正社員の仕事に就けなかったときの駆け込み寺としての機能を担っているということがあると思います。
 その他の非正規労働者との関係ということに話を移しますと、常用代替ということが関係してくるのでしょうけれども、現状を見る限りでは正社員が増えていっている中ではなくて、非正規労働者の中で、非正規雇用形態の中での雇用形態が増減していて、派遣が減って、ほかのものが増えているということで、常用代替というよりは、現在、非常用同士で代替し合っているという感じになっているのではないかと思います。
 結論的なことを言えるわけではないのですが、無期雇用というと、ここで私が今から言う発言の中では「期間の定めのない」という意味で言いますが、有期でいくか無期でいくかということになると、雇用リスクを誰が負うかという話になって、有期でいくと労働者が負うと、無期でいくと派遣元が負うということになるのです。どのぐらいの需給調整リスクがあるかということで、非常に単純に言えば、同じ業界内の企業ごとの需給差で調整できる範囲であれば無期雇用でいけるのですが、それを超えてしまうと無期雇用は難しいと。非常に単純に言えばそういう側面が1つあって、ほかにもいろいろありますが、そういうことがあると。
 現在の常用化という話でいきますと、結果として常用が増えてきているわけです。計画的に無期にして、無期派遣を増やして常用が増えてきたのではなくて、結果として反復されて常用が増えてきたということだと、このデータを見て解釈しましたので、結果的に特定の人の派遣期間が延びてきたということだと思います。本来、正社員になりたい人が事実上、常用化してきているということは、ある意味、派遣が長期化してしまっているというケースが結構含まれている可能性があって、正社員転換ということでいきますと、これは可能性ですが、リスクが大きくなっているかもしれないと。つまり、派遣で無期化ではなくて常用化していく中で、正社員に近付いていくようなキャリア形成ができているなら別なのですが、派遣の仕事の中にロックインされている状態で常用化をしてしまうと、むしろそこから抜けられなくなっている人が出てきている可能性があると。それが現在のほかの雇用形態と比較した場合の、派遣労働の問題となっているのではないかと思います。以上です。
○小野委員 順に話をさせていただきたいと思います。まず、派遣労働の者の労働市場においての位置付けなのですが、年齢的に見たときに若年層がかなり多いというのが特徴的であると思います。職種については、普通の非正規労働は現業であったり非事務的なところが多いのに比べて、派遣労働はどちらかというとホワイトカラーに接続するような職種であったり、専門的な職種が多いというところがあります。ですので、その辺がパートタイマーとは違う部分であろうと思っております。
 そういうところを考えた場合に、いかに専門的なところを使う人材、そういう労働市場である部分を育てていくか、長所を伸ばしていくかというところが私は重要ではないかと思っております。ただ、専門的な職種が多いとはいうものの、実際に現場を調査したところ、今のところ専門性にも限界があると。正社員になったほうが、その限界は外れるというところがあります。ですので、専門職である、ホワイトカラーであったとしても、比較的キャリアの中で初期的な、あるいは中期的なキャリアまでの専門職であると思っておりますので、個々の派遣労働の方向性としてどういう方向に延ばすか。縦に延ばしていくのであれば、どのように労働者の専門能力を高めていくか、というところが私は重要な方向性ではないかと思っております。
 有期・無期については、これは派遣労働者を一括りにして非正規労働と言われるのですが、確かに調査をやると、「うちは無期雇用で雇っている」「私は無期雇用の派遣労働者なのに非正規扱いされて、腹が立つ」という文句を多々言われます。色眼鏡をかけて見られるところのつらさというか、そういうことを言われるところがあるので、峻別する必要はあるのだろうなと思っております。
 常用代替についてなのですが、常用代替の定義というか、考え方が派遣の労働法の中に入った頃は、不況もあって、正社員が同じグループ会社の中の派遣をやっている子会社に転換させられるということがあったり、派遣に代替されていくような現象が懸念されたわけです。
 今、企業の中を見ますと、大体リストラが終わってしまって、人材が不足しているような状況になっております。団塊の世代も、もう皆さん定年退職されていますので、逆に正社員への転換が始まっているとも聞きます。例えばグループ内企業の派遣会社から本体に派遣労働者が派遣されたりしておりますが、その中から優秀な派遣社員を正社員として転換していくということがみられます。ですので、考え方としては常用代替防止というのはなくてはならないものだとは思いますが、毛色としては情勢的に見てトーンダウンしていく方向性かと思っております。
 4つ目の○ですが、有期労働契約法の関係で無期契約への道筋が示されているわけですが、派遣労働者の場合は2つ無期契約の行く方向性があって、派遣元に行くのか、派遣先に行くのかということになると思います。雇用責任があるのは派遣元なので、派遣元で無期雇用にすることになると思うのですが、恐らく多くは抱えきれないことになる。かなり難しい面もあるのだろうと思います。ただし、派遣先において、10何年も派遣社員として働き続けている方もいらっしゃるわけです。その派遣先で10何年も働いているのだったら、派遣元で常用することは考えられないのかと思ったりします。その辺は、派遣元と派遣先の間で、これから先、ある程度の長期スパンで雇用が継続される見込みがあるのだったら、契約の反復を繰り返すのではなく、派遣先とのやり取りの中で、常用に転換していく、無期に転換していく可能性も見出せなくはないかと思っております。以上です。
○山川委員 この○全部ではないのですが、最初の○について、先ほど木村先生のおっしゃった非正規の中での相互代替のような点は、確かに資料4の1ページ目、2ページ目を見るとあるのではないかという感じがしております。いろいろ理由はあると思いますが、派遣が減少した以降は、むしろパートと契約社員が増えているという状況にあるということです。趨勢としては、1990年とか1985年以降を見ると、正規雇用の割合は減少している傾向にあるということで、常用代替を全体としての比率の問題として考えれば、正規雇用が減少しており、常用代替ということになるのかもしれません。
 しかし、先ほどの非正規間での代替ということを考えますと、よく言われているのが、もぐらたたき現象のようなことが懸念されるということです。つまり、一方の規制が突出すると、他方に流れ込んでいく。そういう現象が起きるので、非正規雇用ビジョンができましたように、非正規を全体として考えるという発想は必要ではなかろうかと思います。
 常用か否かという点については、有期と無期の区別とはずれています。これは竹内委員のおっしゃるとおりで、法的には有期か無期かのほうが重要ですし、もう1つは資料の14ページを見ると、常用型の中でも期間の定めがあるかないかによって、受講経験、あるいは労働者のニーズについても差があるかもしれません。資料の14ページで、無期か有期かで、常用型の中でもかなりトレーニングの状況が異なっているということで、無期のほうがキャリアアップ的というか、能力開発的にもメリットは出てくるのであろうという感じがしております。その意味で、常用型という、許可・届出との関係での定義の問題は、前の厚生労働省の研究会でも問題提起をしたところですが、改めて問題意識を持つ必要があるのではないかと思います。
 それと先ほどの常用代替防止については小野先生からも御意見があったところですが、これはいったいどういうレベルで考えるか。労働市場全体で考えるか、しかも数で考えるか比率で考えるかとか、いろいろな視点があるかと思います。先ほど小野先生の言われたのは、ミクロ的な企業内の問題ということで、これはコンセプトとしては重要であると思いますが、いろいろな意味を持ち得るということで、労働市場全体として非正規が増えていくことへの対応という発想も、合わせて取り入れることも考えられるのかと思います。
 そうしますと、例えば有期ではなくて無期の派遣労働者というタイプの方々をどう考えるかという問題が出てくるかと思います。そういう場合でも、キャリアアップが図れるとしたら、派遣労働者の中で有期・無期をどう取り扱うかが、常用代替防止と言われるものの関係でも、問題になり得るのではないかと思います。まだ具体的にどのように考えたらいいかまで定見があるわけではありませんが、統計資料からするとそのような感想を抱きました。以上です。
○奥田委員 3点ほど申し上げたいのですが、最初に竹内委員がおっしゃった間接雇用という点は最も特徴的だと思うのですが、法律の観点から見ますと、間接雇用であるがゆえに、事業者間の契約と連動して雇用が終了するというところが、ほかの直接雇用と違っていて、どうしても事業者間の契約が終了すると、それに伴う雇止めが通常であれば問題になり得るところが問題にならなかったり、そういうことが基本的に間接雇用との関係では一番問題になってくるかと思うので、事業者間の契約との連動性が特徴的に表れる雇用形態であることを考える必要があると思っています。
 そういうことで考えると、やはりそこにも先ほどから先生方がおっしゃっている有期と無期という違いが特徴的に表れていて、恐らく前提となっている労働契約が無期であれば、事業者間の契約との連動性はさほど発生しないかと思いますが、そこが有期であると、どうしてもそれとの連動性が出てきて、中途解約は認められないとしても、雇止めは裁判例の中でもほとんど認められているということだと思いますので、その辺りが他の非正規との特徴の違い、労働法規の適用ということから言うと、大きな違いになってくるのではないかと考えています。
 2つ目は、常用代替の防止は、これも大きな問題なのでいろいろ考える必要はあると思うのですが、この間の裁判例等との関係などから見ていきますと、目的としての常用代替の防止と、実際に常用代替の防止になっているかというのは全く乖離していて、実際には常用代替になっているのだけれども、例えば派遣法の目的は常用代替の防止だから、雇用継続の期待は生じ得ないという裁判例が出てきたりもします。常用代替の防止をどう考えるかというときに、私自身はだからといって目的から外すべきだとは思いませんが、実態として常用代替の防止になっているかどうかということと、目的としての意味合いを両側から考える必要があると思っています。
 3つ目は、先ほど木村先生がおっしゃった正社員として働けないというところとの関係では、有期契約のことがいろいろ議論されたときに、有期契約の人が雇用が不安定になるということで、無期化することの必要性は言われていても、必ずしも雇用管理区分で正社員になりたいかどうかは定かではないと。中にはいろいろな責任という点から考えて、正社員になりたいわけではないという議論が結構あったと思うので、派遣労働者が正社員として働けないから派遣労働者として働いているというときに、その道があれば正社員化されたいのかどうかというところなど、もう少し明確に分かればいいと思います。
○鎌田座長 本当にいろいろな視点から、また重要な御意見が出されたと思います。いくつかの論点で、皆さんの御意見で確認を含めてお聞きしたいと思います。派遣労働者の特徴ということで、間接雇用ということと非正規雇用と、若干ずれるものがあるのではないかということで、その際1つの視点としては、例えば無期の派遣労働者は、間接雇用ではあるけれども、非正規と捉えていいのだろうかという問題提起もありました。間接雇用と非正規との位置付けというのは、普通、派遣労働者というと間接雇用で非正規でといわれるのですが、こういった観点で竹内先生が分けてみたらどうかということで、その場合の間接という意味合いをもう一度、特徴付けていただければと思います。例えば無期の派遣労働者などというのは、竹内先生ならどのようにお考えですか。
○竹内(奥野)委員 私が間接、非正規というように分けてというか、それぞれの特徴から捉えて考えるべきだと申し上げた趣旨としては、間接雇用であるということであれば、原理的に考えると、直接の雇用契約上の責任を派遣先が負うわけではないというところとか、特に雇用終了の場面で、雇用責任については、直接の雇用主である派遣元がもともと負っていると。そのような観点で、特に雇用終了の場面で、ほかの雇用形態と比べて顕著な差異が出てきているだろうと。ですので、雇用終了の場面などでは間接雇用であるということを前提としつつ、それをどのように考えていくべきかという観点かと思います。
 他方で、非正規として見た場合、非正規として位置付けられているようなところは、もちろん雇用の終了の場面もあるかと思いますが、間接的雇用であることは直ちには別に賃金等で低い処遇を意味しないところがあるとは思うのです。
 しかしながら、現実には正社員と比べて低い処遇になっていると考えられるのは、それは正社員でないから、非正社員とか非正規と位置付けられているからということだと思うのです。しかしながら、少なくとも法的に見た場合には、間接雇用であるところがほかの雇用形態と分ける大きな違いだと思います。そうすると、非正規と位置付けられていることについて、法的にそれをどのように考えていくのがよいのか。これは処遇の均衡等をどう図っていくかという話だと思いますが、そのような視点が必要になりますし、また間接雇用は法的に見れば前提として考えざるを得ないと思いますが、非正規というところを、これは実際上そのように位置付けられているところだと思いますが、それをどこまで前提とするか、あるいは是正をどこまで図るかというのは、また異なる踏込みの程度があるかと思います。そのような意味で、それぞれの特徴から分けて検討すべきだということです。
 間接雇用だけど無期契約だという場合、それをどのように考えているかは今すぐには思いつかないところがあります。正規・非正規の区分は実際上の概念ですので、定義はなかなか困難かと思いますが、それにもよると思います。少なくとも雇用の存続の保護という観点で見れば、先ほど来、御議論が出ているとおり、現在の法制度の下では、無期契約のほうが有期契約より、全般的なものを見れば雇用は安定していると捉えられているわけです。そのような意味では、より正規に近いような位置付けと見ることができるのかと思います。
○鎌田座長 木村先生の発言の中で、まず派遣労働者の特徴として不本意型が非常に多い、これが1つ特徴だということです。一方、常用代替との関係で言うと、正社員との常用代替というより、むしろ他の非正規労働者との代替が現在進んでいて、山川先生にも御指摘いただいたかと思いますが、非正規全体の中で広い意味での労務管理、人材活用の中で、非正規をその状況に応じて使い分けていくということが言えるのではないか、という御指摘があったように感じたのですが、この点について何か補足をいただければと思います。
○木村委員 良い補足になるか分からないのですが、例えば常用代替が起こり得るので、派遣を使う条件を厳しくして、正社員の雇用促進に向かわせようということだとすると、それが可能となる前提は、ある会社が採ろうと思えば正社員を採れるのですが、何かと責任を負いたくないだとか、コストをちょっとでも下げたいから派遣にしようと、本当は採れるのだという状況です。それがあれば、常用代替が成り立つのですが、そもそも正社員で採れる状況ではないというとき、派遣も含めて、非正規で採らざるを得ないという経営状況の中で、そのときに派遣という選択肢があるということであれば、それは常用代替というよりも、非常用の中でどの雇用形態を選択するかということになるのだろうと。
 これはマクロデータで正規と非正規の割合が出ているところですので、実際にはもう少し細かく見て、個々の企業の雇用形態別の増減、方針などを見て、常用代替が実際に起こっているのかと検証しなければいけないのですが、マクロの数字で見る限りは、正規雇用が増えるという経営状況には全体としてはなくて、どの雇用形態が一番活用しやすいかという形になっているのが現状ではないかと、そのような認識です。
○鎌田座長 あとで教育訓練のところというか、専門性と能力の開発ということでも御指摘をいただきますので、2でまた少し御議論をお願いします。
○木村委員 はい。
○鎌田座長 小野先生は、派遣の特徴として若年者が多いといったことで、いわゆる非正規、特にパートなどとはやはり性格が違っているのではないかという御指摘がありました。その中で、専門性の問題、専門性の限界、これはあとでキャリアのところでもう少し議論していただきたいと思うので、この点については後ほどということです。先ほど調査の感想ということでおっしゃったように記憶しているのですが、無期の派遣労働者に非正規という調査をすると抵抗感があると。
○小野委員 そうですね。これは相当、電話がかかってきました。
○鎌田座長 そうですか。自分は非正規だという認識がないということですか。
○小野委員 ないですし、特定の常用で無期で派遣をしている会社は、大体技術者派遣が多いのです。昨今の技術系の製造の派遣先などでの開発などの仕事のやり方は、チームで、プロジェクトで皆さんやるのですが、ヘッドに正社員を置いて、その下に派遣と請負で固めるという形なのです。机を並べて現場で一緒に仕事をしないと、密に連携しないと製品ができてこないので、そういう仕事のやり方上、派遣という形態をとらざるを得ないということなのです。なので、本人の意識としては、ほぼ派遣という意識はなく、技術者という意識のほうが強いです。なので、その辺の社会から見られている視点と本人の意識との齟齬が、特に技術者系の人には多くあるだろうなという気はします。
○鎌田座長 山川先生からは、特に私が注目したのは常用代替防止の考え方の中に、労働市場の全体の中で少し考えてみたらどうだということです。その点については、奥田先生からも常用代替防止を考える場合に、目的と実態ということを少し細かく考えてみたらどうかというお話でした。
 これは私もよく分からないのですが、常用代替防止というのは、広い意味で考えると正規職場を派遣労働者、あるいは派遣職場に代替しないと。そのような広い意味で考えられているのですが、実際には派遣法の中では、ポジティブリストのときの話ですが、当初は業務限定で常用代替防止の目的を現実化しようとしたと思います。それが1999年のネガティブリスト化の中で、派遣受入期間の限定、業務に着目した期間限定というように考えられていく。これは奥田先生が御指摘いただいたことでもありますが、その常用代替という目的が例えば裁判例の中で、これは伊予銀スタッフ事件を挙げたのでしょうか。雇用継続の合理的期待のところで、常用代替防止という理屈でないと、期待がないという文脈で使われることが出てきた。つまり、様々な使われ方をしているというのが実態です。
 その辺のところを考えて、常用代替防止をどのレベルで考えていくのか。1つは先ほど言いましたように、無期の派遣労働者についての常用代替防止をどう考えていくのか。今ここで皆さんの御意見がもしあればいただきたいのですが、今私が聞いたところでは、もう少し緻密に常用代替防止を考えていったほうがいいというように、メッセージとしては受け取ったのです。山川先生、もし付け加えることがあれば。
○山川委員 私も定見はないのですが、先ほど申し上げたのは、常用代替防止にはいろいろな意味があるので、必ずしも1つに限らないといいますか、労働市場全体で考えることも必要ではないか、いろいろ選択肢があり得るというお話でした。多分整理すると、労働市場全体で考える際も、比率の問題で考える場合の他、数の問題で考えて、全体として雇用が増えている場合もあるわけです。データでは現に雇用量全体としては増えているというのもあって、比率のほうが重要かもしれませんが。労働市場全体でも比率の問題と数の問題がありまして、ミクロの場合は更に誰を対象に考えるのかという問題があります。奥田先生も言われましたように、常用代替防止というのは、基本的には雇用安定という観点だろうと思いますが、これまでは派遣労働者の雇用安定というのはあまり考えていないという感じがするわけです。そういうことでいいのかという問題もあります。
 さらに、ミクロレベルで考える場合にも、今回の派遣法改正で対応が一定程度なされたような、正社員をリストラして派遣労働者に置き換えるという、かなりシリアスな常用代替もありますし、木村先生もおっしゃったように、雇用が全体として増えたときに、それを正社員で対応せずに非正社員で対応するという、雇用量増加の場合の正社員と派遣労働者の比率の問題とか、いろいろなパターンがあるような気がします。少なくとも1つに限るよりも、いろいろな選択肢をもうちょっと具体的に考えてみることもあるのではないかと、そういう趣旨です。
○鎌田座長 同様のことで、奥田先生も常用代替の目的と実態ということでお話されて、新たに補足で御説明、何か付け加える御意見があればお伺いしたいと思います。それ以外でも結構ですけれども。
○奥田委員 いえ、特に先ほどの点で付け加えるというのはありません。
○竹内(奥野)委員 既に御議論されている中で、認識されていることかとは思ったのですが、確認までで申し上げたいのですが、今、常用代替の防止という形で制定法以来、目的として出ているので、それはそれでどうするかという議論だと思います。ここでも「常用」という言葉が出ていることに議論していく中でようやく気付いたわけで、常用と言っているときに何を意味しているかということも併せて考慮した上で、山川先生が言われているようないくつかの場面を考えるということが必要だと思います。時代が違うということもあったのかもしれませんが、常用というのは直接雇用されている正社員が念頭に置かれていてということだと思うのです。先ほどの間接雇用で、しかし無期雇用はどうか、というような御質問にあった等も関連しますが、常用とこれから考えるときに、どういう意味のものとして、常用はどこまでのものが含まれて、どのようなものが常用でないのかということも、意味内容を注意しながら議論していく必要があるかなという気がいたしました。確認までです。
○鎌田座長 ありがとうございました。それでは、まだ御意見があろうかと思いますが、次の2「派遣労働者のキャリアアップ措置について」を進めます。この点について先生方、何か御意見はございますか。先ほどの関係でも結構です。
○木村委員 キャリアアップの措置でお話申し上げます。まず「派遣労働者のキャリアアップが重要である理由は何か」と挙げられております。キャリアアップということを考えると、労働市場全体というのもありますが、労働市場に入ってくる新規参入者、いわゆる新しく労働者になりにきた、一般的には、学生、生徒から労働市場に入る人たちで、そういう人たちが正社員の仕事に就きづらくなっている現状です。それが重要だと思います。
 正社員になれなかった人が派遣労働者になっていることを考えますと、キャリアアップの機会の提供ということで重要であることは言えると思います。ですが、キャリアということを考えると、個人の意向にかなり影響されまして、各個人がどこまでのレベルを目指しているのかで、個人の意識、努力が前提になってくるわけです。ただ、最初の資料1の御報告にあったとおり「好循環型社会」ということを考えますと、不景気、デフレということを考えますと、非正規でそんなに稼げなくていいやという人たちを、本人の意思に任せて、自由に増やしていくのが望ましいのかというと、そうとも言い切れないので、キャリアアップは本人の意欲喚起というか、そういったことも考えなければいけないという点ですね。
 あと、キーワードとして、どうしても能力開発ということが出てくるわけです。もちろん能力が前提なのですが、労働市場における価値は、能力は高くても陳腐化したものならば、労働市場では仕事に就けない、給料がもらえないということになりますので、いかに労働市場の価値にマッチしたキャリアを支援していくかになってくると思います。
 さらに、これは若干細かいことですが。資料4の14ページにあったように、研修の受講経験とか、こういうデータを見るときは若干注意が必要だと思います。派遣社員は新卒ではなくて、業務経験がある人も入ってきていると。例えば「ビジネスマナー研修」が少ないとあるのですが、もともとやっているから必要ない人もいるわけで、そういったところで、データを見るときに注意が必要かと思います。
 次の「派遣労働者のキャリアアップ措置として、どのようなものが制度的に対応すべきものと考えるか」と、次の有期・無期の点をまとめてお話します。先ほどお話がありましたが、教育訓練、能力開発をして、その投資をどう回収できるのかということで、無期雇用ならば回収できるだろうと、有期は回収ができないからそれがなかなか進まないということなのです。そこで1つ出てくる考えが、有期の場合は回収ができないので、そこは何か政策的に支援が必要ではないかということですが、これは逆にモラルハザードを引き起こすのではないかと思います。有期であって、回収ができないから補助するというのではなくて、本当に雇用の安定を考えるのであれば、無期にすることは派遣元にも相当な負担がかかるわけなので、能力開発投資までして無期にしようというのであれば、そちらに制度的な支援をするという考え方もあるのではないかと思います。
 一方で、無期化だとか、有期の反復のあとの無期化も含めて、派遣元に雇用責任を負わせていくことを考えると、いわゆる正社員になるわけですが、これは常に仕事があるという状況を前提とするので、理想的には、労働者派遣が常に需要超過でなければいけない状態が作られていなければいけないわけです。それがないと無期化は無理だろうということです。派遣元に雇用責任を負わせるような方向性でいくのでしたら、派遣先が派遣を使いやすい状況にしていかないと。つまり、派遣の需要を増やすようなことをしていかないと非常にバランスが悪くなるわけです。派遣元に雇用責任を負わせないのならば、派遣を使いづらくしてもかまわないとは言いませんが、そういったリスクのバランスが必要だと思います。
 そういうことを考えると、それが現実的にどこまでできるかです。これは現実的ではないかもしれませんが、無期の派遣の場合と有期の派遣の場合で、派遣先における扱いが違ってもいいのかもしれないということがあり得ると思います。
 4点目の、派遣労働者のキャリアアップの観点から、1か所で同じ仕事を長く続けることが望ましいのか、複数の仕事を経験するのが望ましいのかということですが、これは今までに世の中に出されているデータを見る限り、一概には言えないのではないかと思います。統計的に若干の有意差は出ると思いますが、圧倒的な差がない限りは、一概に1か所、2か所ということではなくて、そこでどのような仕事、本人の能力、働きぶりと、様々な要素が関連すると思いますので、ここはいろいろなことがあってよくて、むしろ、複数なのか、1か所なのかという軸で語らないほうがよろしいのではないかと思います。以上です。
○鎌田座長 ありがとうございました。ほかに。
○小野委員 順にお話します。派遣労働者のキャリアアップが重要である理由ということですが、私は全ての派遣労働者がキャリアアップが必要だとは思いません。現に13ページの「労働者が受講を希望しない」というところの、一般の労働者の方は受講を希望していない方もいますし、パートの労働市場と若干接合している部分もあるので、家計の補助的に働きたい方もいるし、全員ががつがつとキャリアを伸ばそうと思っているとは思っておりません。ですので、やはりその辺は峻別する必要があるのだろうと。全員が全員、教育投資をするのも限界がありますので、その辺はある程度の、派遣会社にしても、派遣先にしても、労働者のニーズがあって峻別をしながら投資をしていく必要があると思います。
 木村委員もおっしゃいましたが、正社員になりたくてもなれない人たちの受け皿になっているのは事実です。就職氷河期のときに、正社員になれずに派遣労働者としてスタートした方もいるので、こういう人たちの職業訓練、職業能力を高める場として、労働市場でキャリアアップができるようにしていく方向性が絶対的に必要だと私は思います。
 まず、派遣労働のよさという部分でいうと、入口のハードルが非常に低いのですね。逆に正社員になるときのハードルはものすごく高いのです。例えば、大企業に入りたい人がいて、正社員だと入社試験で振り落とされたらそこでは働けないわけですが、派遣という立場であれば入社試験を受けずとも大企業の中でも働くことができる。そこで、何か職業能力を身につける機会に触れる可能性だってあるわけですから、そういう入口の機能、ポート・オブ・エントリー(port of entry)と言われますが、そこの機能を重視して伸ばした上で、次のステップにつながる機能を持たせることが必要だろうと思います。
 2つ目の、キャリアアップ措置として、どのようなものが制度的に必要かです。派遣労働の難しさは、責任の所在がどこにあるか分からないことが直接雇用と違う部分でして、雇用責任は派遣元にあるのだからキャリアの責任は派遣元にあるだろう、と派遣先は言うのですが、実際のところ、人間は働いた所で、職場で職業能力は培われていくものですから、そこの話を抜きにしてキャリアは形成できないのですね。ですので、派遣元だけではなくて、派遣先にOJTとしての責任、人を育てる責任を意識的に持っていただかないといけないと思います。
 では、制度的にどうするかといえば、私は評価だと思います。今、派遣労働の中で、正社員と全く違うところは評価制度というのがない。ただ、先ほど言った、常用の技術者派遣に関してはこういう評価を持っていて、三者で、派遣先、派遣元と評価をやっているところがかなりあります。だから、そういうふうな評価と、その人を次の仕事に上げていく上でのマッチングであったり、ローテーションであったりというものを、構築していくかという仕組みづくりがやはり必要だと思います。
 今、派遣元はフォローという形で、派遣労働者と直接話し、派遣先に行って話す。個別に二者、二者で話をするのですが、そうではなく、元、先、労働者の三者で、「この人に1年後、このぐらいのお仕事をしてもらうように目標設定をしましょう」とか、「それに対しての評価はどうですか」という目標設定と評価の面談を行うようにする。そういうスキームはほぼ聞いたことがないのですね。ですので、そういう評価の仕組みづくりと、面接であったりとか、目標設定であったりとかいう仕組みづくりが必要だと思います。これは、正社員に転換していくときの目安にもなると思います。そういう評価がなければ、いざ正社員に転換といったときの根拠もないので、もともとの評価の仕組みづくりは、キャリアに関して何かをするときには絶対的に必要だと思います。
 3つ目ですが、有期と無期の違いによって、キャリアアップに関する課題はどのように異なるかです。キャリア、能力開発というのは長い目で見ないと、新入社員で入った人がすぐ使えるかというと、やはり使えないではないですか。入社してから3年ぐらいしてくると、ようやく仕事で使えてくることもあるので、やはり3年ぐらいのスパンでないと、人というのは育っていく、教育訓練したものが回収できる段階には至らないと私は思います。ですので、短期ではキャリアの話はなかなか成し得ないだろうというのがあります。
 そして、正社員転換や、無期化するときの転換のインセンティブを、派遣元あるいは派遣先に持たせないと、なかなかそういうことは成しえないと思います。木村さんもおっしゃっていましたが、有期のところに助成金を突っ込んで教育訓練をさせるということではなく、無期にさせるためのインセンティブをどう付けるかが重要だと私は思います。
 最後です。1か所で同じ仕事を長く続けることと、複数の仕事を経験するのと、どちらが重要か、望ましいかという話なのですが、これも非常に難しい話で。確かに現状では、木村委員もおっしゃっていましたが、どちらかというと、1か所で同じ仕事をしたほうが賃金は伸びるし、キャリアも伸びているように見えます。ただ、その有意差はそんなに大きなものではないので、何とも言えません。ただし、これが本当に望ましい方向かというのが若干疑問です。派遣労働はもともと外部労働市場の働き方なので、キャリアや専門性を持って、複数のところでキャリアを培っていけるのが本来の望ましい姿であるとするならば、複数の仕事をしながら回っていけるような労働市場を作るべきであって、そちらの方向性、ジョブ型の労働市場の構築が必要になっていくのだと思います。
 そうはいっても、日本の労働市場はまだそういうことにはなっていませんし、年齢によって切られるところも現実としてあります。例えば、年齢差別をしてはいけませんが、現実的に40歳以降に派遣労働を切られて、次の新しいところに就けるかといえば、かなり難しい困難なところがあるのです。
 だから、そういうことを現実的に考えたときに、全ての人を短期間で区切った職とした場合、中年以降のある年齢に達したときに、仕事にありつけないという現実性が出てくると思います。ある一定のキャリアの展開の仕方が、年齢によって違うと思います。恐らくこれは企業の正社員であったとしても、若者にキャリアをつけさせるために働かせる方と、40代以降の正社員につけるキャリアの働かせ方は全然違うと思っていて、それは正社員も派遣社員も同じだと思います。だから、ある一定の仕事を長く続かせるのは、どちらかといえば、40代以降の人に同じ仕事を長くやってもらいたいし、若い人にはいろいろなことを経験してもらいたいということがあります。ですので、これは一概にどちらかというのは言いにくい部分ではあります。
○鎌田座長 ありがとうございました。そのほか、先生方、何かございませんか。よろしいですか。お二人の専門家の方から、提言も含めて、かなり細かいお話をいただいて本当にありがとうございます。
 1つ、私がもう少し突っ込んでお聞きしたいことは、いわゆるキャリアコストの回収で、これは一応、短期の場合が難しいのではないかというのが小野先生の話です。木村先生は、投資回収という観点からいって、有期というか、短いのは難しいと、この前提は同じなのかという感じがしました。
○木村委員 もちろん、短いからというのはありますが、有期の場合、特に登録型の場合は、その派遣労働者をその派遣元に拘束できないということがあるので。例えば、投資を受けて回収していたときに、教育してもらった部分の力をもって別の派遣会社に登録をして、そちらで仕事をしてしまうことがあり得るのです。もちろん正社員でもそれはあり得るのですが、雇用契約以上の心理的契約の部分とか、その処偶の後々のアップ等を含めると、縛りが若干かかるだろうということで、そこを重視しております。
○鎌田座長 ちょっとまとまらない質問をしてしまったのですけど。つまり、キャリアアップというのは、簡単に言えば、今は派遣元の仕事と思われているので、事業者の側から見て、キャリアアップを進めるにはどうしたものが可能かということ。それから、これからお聞きしたいのは、派遣労働者にとってのキャリアアップの必要性、重要性をどう考えたらいいのか。これについては、一般論として必要だというのはいいとしても、小野先生は、ターゲッティングしないと、みんな必要なのだからみんな同じようにやるというのは、これは余り現実的ではないのではないかというお話があったような気がします。
 キャリアアップをする際に、何らかの施策を考える場合に、派遣労働者のターゲッティングというのですか。簡単に言えば、意向を重視しながら、でも一方で、本人にその気がないから本人の意向で全てお任せするのかといえば、それは問題があると木村さんもおっしゃっていたので。その辺の、何ていうか、ある種、政策的にこの問題を考えた場合に、どう捉えればいいのか、御意見をいただければ。ほかの先生も、もしあれば、どうぞおっしゃってください。
○小野委員 派遣労働者のキャリアアップの必要性のまず第一は、お金なのです。給料です。それで、派遣労働者でずっと暮らせるのかという問題です。今は大体年収250万円ぐらいが平均ですが、それでこの日本で、この東京でその収入でずっと暮らして老後までいけますか、という話です。
 派遣労働にかかわらず、特に非正規労働というのはジョブ型の労働市場なのですね。仕事に賃金がくっついているわけです。だから、仕事内容が上昇しない限り賃金は上がらないのですね。それを現実的に考えたときに、キャリアアップをして、より難しい仕事に就くことによって賃金を上げる、派遣会社はより難しい仕事を開拓してくるということしか、暮らしていける賃金を獲得することが難しいのですね。そういう意味において、家計補助的ではなくて、これから先、1人で食べていくことを前提とするならば、キャリアアップすることはマストになると思っているので、やはりそこが必要性の部分だと思います。
○木村委員 若干の補足でして。キャリアアップということで、全員に年収600万円とか年収1,000万円の世界を目指させるのかということはないと思います。個人で意向に差があると。ただ、意向に差があるといっても、福祉政策の支援を受けなければいけない状態に容易に落ち入るとか、もう半分落ち入っているとか、そういう状態で就労を続けていることは、好循環型社会という点からは望ましくないということで、支援の程度というか、レベルの問題なのですが、自分で立つという意味の自立ですね。自活、自立ができるところには、全体の底上げ、意欲喚起、意識回復も含めてやっていく必要があるのではないかという考えです。
○小野委員 限らず必要なことは、ジョブの賃金を引き下げられないような仕組みを作るということも必要なのですね。だから、そういう意味でラダーというか、いかにレートとジョブを段階的につなぎ合わせていくかが必要で、その議論は前の非正規の能力開発抜本強化に関する検討会の中でも、つなぎというか、そういうものが必要だという議論をしています。だから、暮らしていけるだけの賃金を獲得するための能力開発と、それを賃金にくっつけ合わせるようなシステムづくりが必要だと私は思っていて、そして、それが一番やりやすい労働市場は派遣だと思います。それを作る業界団体があったりとか、仲介的に派遣会社が仲介的に中にいるので、そこでうまくキャリアを作れるような、ラダーを作れるような仕組みを比較的作りやすい労働市場になっているのではないかと思います。
○鎌田座長 そろそろ時間も押してまいりましたので、制度論から見て少しお二人にお聞きしたい。1つは、事業主の投資回収の可能性も含めて言うと、例えば、無期とか長期間雇う前提であれば、キャリアアップの投資をしやすいということがあるのですね。そうすると、そういう雇用形態を促進することが、キャリアアップを促進することになるといえるのかということですが、それは一般論ではいえるのですね。
○小野委員 それは誰が回収するかにもよるのですが、派遣元に関していうと、登録型だからどこから派遣されるか分からないので、どうしても手控えてしまうという問題があって。逆に、うちから派遣されている人間が引き抜かれるという状況に面したときに、教育訓練で投資をある程度している人間がすぐ引き抜かれたら、それのマージンで派遣会社は食べているところがあるので、この人が抜かれても痛くないような措置はある程度必要だと思います。例えば、これまで既に3年ぐらい働いていると、派遣されていると。そしたら、ある程度回収は終わっていると。だから、どの段階で、最初に派遣してから現在までの期間で投資回収が終わっているかといえば、そこは分かりません。ただ、その辺はやはり引き抜かれたときの紹介料というのがあると思うので、その辺を考えて勉強してみれば何となくその辺の相関は出てくる気がしないでもないです。
○鎌田座長 次は本体の話です。しかしながら、先ほど言いましたように、実際には短期あるいは有期で働いている方が多くて、そういう方たち、とりわけ若年者に対して、何らかの形でキャリアアップをしていくことが社会的には必要だといわれる。そうすると、社会で望ましいコストを個々の事業主に割り振れるかというと、それはそう簡単にはいかないと思います。例えばキャリアアップが必要だといっても。そうしたときに、この能力開発、国が、個々人の派遣労働者に対する支援というふうに話がいくのか、あるいはそうではなくて、派遣元、派遣先との間で、もう少し合理的なシステムは考えられるのか。1つは、先ほど小野さんがおっしゃったように、三者共同での評価制度の仕組みづくりというのがあるのですが、そういうようなことが必要になってくるということになるのではないですか。
○小野委員 そうですね。
○鎌田座長 木村さんの今言ったような問題意識、つまり、とは言いながらも有期の方が多いと、その人たちのキャリアアップは社会的に必要だと。では、そのコストをどう負うのか。まず、もちろん国が負うものもあると思いますが。
○木村委員 国が負えるなら負うに越したことはないのですが、現実的には難しいだろうと。国が負った場合のモラルハザードの問題、負ったときに何が起こるかを考えて、無期を促進したければ無期を促進するような形のコスト負担、コスト支援に全体としての形にしていかなければいけないということです。有期だから投資や回収ができないかというと、そうとも限らなくて、有期でも既に専門性が非常に高い人とか、自分で成長できる人であれば、短期の派遣を繰り返した中でも、特に投資をしなくても成長はしていけるのでしょうが、若い人で専門性がまだついていない人であれば、長期の投資と回収というサイクルが必要になってきますので、そのときには無期の形が望ましいだろうということです。
○鎌田座長 ありがとうございました。そのほか、これとの関連で。
○山川委員 単純なことですけどOFF-JTとOJTで、OJTの役割をどう考えるか。特に派遣先も巻き込んだOJT、あるいはOJTを超えるもの、評価となるとOJTを超えることになるかもしれませんが、法制的にはそれらが現在の労働者派遣法の中でどういう扱いになるか。もし何か支障があればそれを検討して、あるいは逆の副作用があるのならばそれも検討するということも検討の対象になるかという点だけです。
○小野委員 今のお話に付随してなのですけど。私が調査でやったとき、これはよく直面する話なのですが、派遣先に行って話を聞くのですね。評価みたいなことは大概やっていないのですが、先ほど申し上げたように、実際には、技術系のところなどは三者で評価をやっていたりする。事務系のところとかで、何で評価をやらないのですかといった話をしたときに、雇用責任が生まれるから評価はできませんと言うのです。私は、雇用責任が生まれるのかというのがはなはだ疑問で、よく分からない部分なのですが、評価をすることによって雇用責任が生まれる、そういうふうに思っている派遣先は多いのですね。だから、そこの部分をどうにか脱却しないとこの話は難しいと思っています。
○鎌田座長 ありがとうございました。その話を少し。今日は時間がないので、詳しくやるとなると、例の、請負と派遣の区分の問題という、非常に大きな問題に入らざるを得なくなってきて、今後この研究会の中でも、必要に応じてその問題も少し議論できればと思います。
 どうも先生方、ありがとうございました。大体予定の時間がまいりました。本日はこの辺りで終了したいと思います。次回の日程等について、事務局からお知らせをお願いします。
○佐藤補佐 次回ですが、2月12日10時からを予定しております。場所については追って連絡を申し上げます。以上でございます。
○鎌田座長 これをもちまして、本日の研究会を終了いたします。本日はお忙しいところ、どうもありがとうございました。


(了)

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