Ⅰ 家内労働法の概要

 ◆ 家内労働法では、委託者や家内労働者に対して次のような義務が定められています。

1 家内労働手帳

委託者は、家内労働者との間のトラブルの発生を防止するため、仕事内容、報酬等の委託の条件を明記した家内労働手帳を委託、物品の受領又は工賃支払のつど、家内労働者に交付しなければなりません。家内労働手帳は伝票式の様式が定められています。
 

 

2 工賃支払いの確保

(1) 工賃は、原則として、現金で、その全額を支払わなければなりません。

ただし、家内労働者の同意がある場合には、郵便為替の交付、銀行その他の金融機関に対する預金又は貯金への払込みによって支払うこともできます。
 

 (2) 工賃は、家内労働者から製品を受け取ってから1か月以内に支払わなければなりません。

ただし、毎月一定期日を工賃(計算の)締切日として定めている場合は、その工賃(計算の)締切日から1か月以内とされています。

 

3 最低工賃制度

 

(1)  最低工賃制度の概要

   最低工賃とは、厚生労働大臣または都道府県労働局長が審議会の意見に基づき、委託者が家内労働者に支払うべき工賃の最低額を定めるもので、最低工賃が決定されると、委託者は、この最低工賃額以上の工賃を支払わなければなりません。
 最低工賃は、地域別、業務別に定められています。

※ 詳しくは、都道府県労働局もしくは最寄りの労働基準監督署にお問い合わせください。
 

(2) 最低工賃の決定、改正、廃止の手続き

  (1) 最低工賃の決定
   厚生労働大臣または都道府県労働局長が一定の地域内で一定の業務に従事する工賃の低い家内労働者の労働条件を改善するために必要があると認めるときは、審議会に対して調査審議を求め、その意見を尊重して一定の地域内において一定の業務に従事している家内労働者及びこれらの家内労働者に委託する委託者に適用される最低工賃を決定することができることになっています。
 また、家内労働者や委託者の全部または一部を代表する者も厚生労働大臣または都道府県労働局長に対して、最低工賃の決定をするように申し出ることができます。
 
(2) 関係家内労働者及び委託者からの異議の申出
   最低工賃の決定等について、審議会の意見の提出があった時は、その意見が公示された日の翌日から15日の間、関係家内労働者及び関係委託者は異議の申出を行うことができます。

※ 詳しくは、都道府県労働局もしくは最寄りの労働基準監督署にお問い合わせください。

 

 

4 安全及び衛生の確保



仕事による災害を防止するために必要な措置を講じなければなりません。

 

《委託者が守るべき事項》

 

委託者が家内労働者に一定の機械器具または原材料を譲り渡したり提供したりする場合には、危害防止のため、次のような措置を講じなければなりません。

 
 (1)  プレス機械等について、安全装置を取り付けること。
 (2)  モーター、バフ盤等については、覆いを取り付けること。
 (3)  危害防止のための「作業心得」などの書面を交付すること。
 (4)  有機溶剤を含む接着剤などの有害物については、漏れたり発散したりするおそれのない容器を使用し、容器の見やすいところに有害物の名称や取扱い上の注意事項を記載すること。
 
 

《家内労働者が守るべき事項》

 

家内労働者も自ら積極的に災害防止に取り組むことが大切です。次のようなことを必ず守るようにしましょう。

 
 (1)  接着剤の中には、体に害のある有機溶剤を含んでいるものがあります。このような危険有害な原材料等を使用する場合には、換気をよくして中毒にかからないようにしましょう。
 また、ストーブなどの火に近づけて火事になったりしないよう注意しましょう。
 (2)  プレス機械、織機などけがをするおそれのある機械を使用する場合には、安全装置を取り付けるなど安全な方法で作業しましょう。
 (3)  強烈な騒音の発生する仕事では耳せんを使用するなど、危険有害な仕事に従事する場合は、必要な保護具を使用しましょう。
 (4)  委託者から危険防止のための「作業心得」などの書面をもらったら、見やすい場所に貼って、その注意事項は必ず守るようにしましょう。
 

5 届出



 

(1) 委託状況届の提出


 委託者は、委託する仕事の内容や家内労働者数などについて、家内労働法にいう委託者になった場合には遅滞なく、それ以後は毎年4月1日現在の状況について4月30日までに、委託者の営業所を管轄する労働基準監督署に届け出なければなりません。委託状況届はオンライン電子申請も可能です。

 

 

(2) 家内労働死傷病届の提出


 委託者は、家内労働者又は補助者が委託した業務に関し、負傷したり疾病にかかったりして、4日以上仕事を休んだり死亡した場合には、速やかに委託者の営業所を管轄する労働基準監督署に届け出なければなりません。

[18KB] 様式第3号 家内労働死傷病届 [28KB]

 

6 帳簿の備付け
 

  委託者は、家内労働者の氏名や工賃支払額などを記載した帳簿を備え付けておかなければなりません。また、この帳簿は最後に記入した日から5年間保存しなければなりません。
  ※令和2年4月1日より施行された家内労働法施行規則の一部を改正する省令(令和2年厚生労働省令第62号)[41KB]により、帳簿の保存期間が3年間から5年間に延長されましたが、この改正の内容については、経過措置により、令和2年4月1日以後に締結される委託に関する契約に係る帳簿の保存期間について適用されます。