2021年2月15日 第166回労働政策審議会労働条件分科会 議事録

労働基準局労働条件政策課

日時

令和3年2月15日(月) 15:00~17:00

場所

AP虎ノ門 Aルーム(東京都港区西新橋1-6-15 NS虎ノ門ビル11階)

出席者

公益代表委員
 荒木委員、安藤委員、川田委員、黒田委員、平野委員、藤村委員、水島委員、両角委員
労働者代表委員
 北野委員、津村委員、仁平委員、森口委員、世永委員
使用者代表委員
 池田委員、早乙女委員、佐久間委員、佐々委員、佐藤委員、鈴木委員、鳥澤委員、山内委員
事務局
 吉永労働基準局長、小林審議官(労働条件政策、賃金担当)、石垣総務課長、黒澤労働条件政策課長、尾田監督課長、大塚賃金課長

議題

  1. 資金移動業者の口座への賃金支払について

議事

議事内容
○荒木分科会長 それでは、ほぼ定刻になりましたので、ただいまから第166回「労働政策審議会労働条件分科会」を開催いたします。
本日の労働条件分科会も、会場からの御参加とオンラインでの御参加、双方で実施をいたします。
本日の委員の出欠状況ですが、御欠席の委員として労働者代表の川野英樹委員、櫻田あすか委員、八野正一委員と承っております。なお、使用者代表の佐々達也委員、山内一生委員におかれましては、所用のため途中退席される予定と伺っております。
では、最初に事務局より定足数の報告と、本日の議事運営について説明をお願いします。
○労働条件政策課長 事務局でございます。
最初に定足数について御報告いたします。
労働政策審議会令第9条第1項により、委員全体の3分の2以上の出席または公労使各側委員の3分の1以上の出席が必要とされておりますが、定足数は満たされておりますことを御報告申し上げます。
続きまして、本日の議事運営につきましても、新型コロナウイルス感染症対策として、会場参加、オンライン参加、双方によります開催とさせていただいております。
会場の皆様におかれましては、会場備付けの消毒液の御利用やマスクの御着用につきまして御配慮いただきますようお願い申し上げます。
カメラ撮りの方がいらっしゃいましたらば、ここまでとさせていただきます。
以上でございます。
○荒木分科会長 それでは、お手元の議事次第に沿って進めてまいります。
本日の議題は「資金移動業者の口座への賃金支払について」であります。
事務局より、説明をお願いします。
○賃金課長 賃金課長の大塚でございます。
それでは、資料に基づきまして、「資金移動業者の口座への賃金支払について課題の整理」について御説明いたします。
2ページをお開きください。
2ページから4ページは、前回1月28日に各委員からいただきました御意見、御質問等を項目ごとに並べたものでございます。かいつまんで御説明申し上げます。
まず「銀行口座との比較」でございますけれども、2つございました。1つは、銀行口座と全く同じ条件ではなく、その代替措置も含めて同程度の仕組みを模索することが重要という御指摘。一方で、労働者保護に欠けることがあってはならない。安全性、保全、補償は少なくとも銀行口座と同等でなければならないといった御意見がございました。
次に「資金保全」についてでございますけれども、1点目、資金保全については銀行と同等であるということが前提という御意見がございました。また、次のポツでございますけれども、現時点でどのようなものを想定しているのか、どの程度、具体化が見込まれているのかについて御質問がございました。
続きまして「不正引出し等への対応」についてでございます。かいつまんで申し上げますと、2点目でございますけれども、振り込まれた後に不正利用されるものにつきまして、対応ができるものなのかといったような御意見。次のポツも関連していますけれども、不正の場合の補償、セキュリティー等、ほかにも比較する点があるのではないかということで、これらの点につきましては、後ほど資料8ページなどで御説明いたします。
「換金性」についてでございますけれども、換金性について、証券では1円単位での払戻しが要件となっているとのことだが、資金移動業者についてはどうなっているのかといった御質問がございました。
次のページ、「制度化のニーズ」についてでございます。一番上、必要性は十分あるのではないかといった御意見がございました一方で、次のポツですけれども、私どもが8月以来御説明申し上げておりました公正取引委員会の調査の回答者の対象、これはコード決済利用者であることなどから、情報の非対称性があるのではないかという御意見もございました。続きまして、アメリカでは銀行口座振込に並行して、ペイロールカードが利用されているといったことを御指摘された上で、その実態等について教えてほしいといった御意見もございました。
その次、「導入に当たっての企業実務」につきまして、様々な御意見をいただきました。1つ目ですけれども、振込エラーにはどのように対応するのかといった御質問。続きまして、資金移動業者に送金依頼するときは何の情報が必要なのかといった御質問。続いて、本人同意の手続についても重要であり、論点として追加してほしいといったような御意見。この点につきましては、後ほど13ページの論点の4の部分で御説明いたします。ちょっと飛びまして、一番下ですけれども、無料から一定とのことだが、手数料についてのイメージや、使用者として利用すればどのようなメリットがあるかについても整理してほしいといった御意見もございました。
「労働行政との関係について」でございますけれども、まず資金移動業者に対して、労働行政がどこまで監督指導できるのかといった御質問、御意見。また、金融庁が管轄する部分に対し労働条件分科会の議論がきちんと反映されるのかといったような御意見がございまして、これらの点につきましては後ほど5ページのほうで御説明いたしたいと思っております。
4ページでございますけれども、「その他」として幾つか掲げさせていただいております。1点目、企業が資金移動業者の口座に賃金を支払う場合の具体的な資金の流れを示してほしいといった御意見。また、そのプロセスを踏まえてどこにリスクがあり、どう対策するのか検討してほしいといった御意見がございました。下から2つ目でございますけれども、労働者保護の観点から、滞留規制により労基法24条違反を回避するために何ができるかという視点で検討すべきといった御意見もございました。
1月28日の分科会では、このように御紹介したもの以外にも様々な御意見、御質問をいただきましたけれども、その中で事務局として整理できたものにつきまして、次のページ以降に御紹介しております。ただ、今、御覧いただきました前回の御意見のうち、例えば資金の流れについて示してほしいといった御意見ですとか、あるいはアメリカのペイロールカードの実態等について示してほしいといった御意見もございました。これらに関しましては、実態の調査等になお時間を要しておりますので、可能であれば次回に御説明いたしたいと思っております。
では、次の5ページをお開きいただければと思います。
こちらは、前回の議論の際に、例えば資金移動業者は現行80業者あるのですけれども、それらが全て今回の賃金口座振込の対象になるのかどうかについて、共通認識が得られていないのではないかとも思われました。これからその議論を深めていくに当たりまして、制度導入ありきというわけではないのですけれども、右肩にありますように、各委員の御指摘を踏まえて事務局で議論の素材として図のようなものを作成させていただきました。
まず御覧いただきますと、1階部分として青色に塗ってある金融庁の枠がございます。現行では、資金決済法等に基づきまして利用者の保護及び資金移動業の適正かつ確実な遂行の観点から、80業者全ての資金移動業者に対して必要な規制がなされております。ここの部分に関しましては、金融庁が規制やルールを定めておりまして、それに基づくモニタリングや監督などを行っております。
仮に資金移動業者の口座への賃金支払いを認める場合には、この青色の1階部分に加えまして、労働基準法施行規則に基づきまして、賃金の確実な支払いを担保するための要件を満たす一部の資金移動業者のみに限定することが必要なのではないかと考えております。その意味で、1階部分の上に2階部分を追加しましたけれども、ここの範囲、横幅は80事業者ではなくて一部に絞るという考え方なのかと思っております。
絞る際の考え方の例ですけれども、この図の右側に書いてございますように、例えば資金保全ですとか、換金性ですとか、不正引き出しの対策・補償など、まさに後ほど課題として整理して挙げておるものを具体的な要件のようなものに仕上げていって、その要件を満たす業者を個別に厚生労働大臣が指定していくといったような流れが、一つのやり方として想定されるのかなと思われます。
6ページでございます。
こちらはニーズに関してでございますけれども、前段は前回も御指摘いただきましたけれども、公正取引委員会の実態調査を掲げたものであります。
先ほどもちょっと御紹介しましたけれども、こちらの調査対象は右の(注)に書いてございますように、コード決済を利用している消費者4,000名に対するウェブアンケートということでございまして、約4割の利用者の方が自身が利用するコード決済サービスのアカウントに賃金の一部を振り込むことを検討すると回答しております。
【考えられる背景】として、後段3つ掲げさせていただきました。
1つ目が、QRコード等によるキャッシュレス決済というものが普及しているのではないかということで、こちらの1番は資料出所に書いてございますように、一般社団法人キャッシュレス推進協議会が調査したものでございまして、2020年9月の時点で月間アクティブユーザー数が3000万人を超えているということで、ずっと右肩上がりで推移しております。
なお、この3000万人という数字についての評価ですけれども、右の「2020年1月~2020年9月分は」のところに書いてございますように、コード決済事業者16社から聞いたものでございます。コード決済を行う事業者は16社以外にもございます一方で、1人の利用者が複数のコード決済を利用することもあり得るわけで、そういう意味ではこの3000万人という数字は一定の幅を持って見るべきものではないかとも思われます。
2番目と3番目は定性的な簡潔な書き方をしておりますけれども、利用者目線で見た場合に2つのことが言えるのかなと思っております。
1つ目は2でございますけれども、銀行口座から資金移動業者口座へのチャージを行う手間がありますが、資金移動業者口座に直接給与が振り込まれる場合には、その手間がなくなるのではないかということ。
もう一つは、大手の資金移動業者の口座と銀行とのリンクの状況などを見ましても、銀行との間で連携ができていない実態もございます。そうなりますと、そのリンクできていない銀行口座のほうを労働者が通常の給与振込口座として指定していた場合には、資金移動業者の口座を実際に使うとなると、そちらのほうにチャージなどをしなければいけないことになります。それが銀行と連携していないと、スマホのアプリ上でチャージができないことになりますので、わざわざチャージしに店舗等に行かなければいけないといった手間もかかり得るところでございます。
次の7ページでございますけれども、こちらは資金移動業者が破綻した場合の資金保全のスキームの例として、昨年の3月の時点で規制改革会議の投資等ワーキングに内閣府が提出した資料などを掲載しております。
前回も御説明しましたように、資金移動業者の資金保全スキームとしては、基本的には供託所に供託した供託金から還付するといったものでございますけれども、これだと半年程度時間がかかるというものです。この資料の方のスキームは、図の真ん中に「保証機関」が出てきますけれども、言わば保証機関が立替えのような形で利用者たる労働者に対して、速やかに一定の額を還付するというものでございます。
この流れなのですけれども、検討中のスキームの例に書いてある矢印3つに基づいて順次御説明しますと、まず1つ目の矢印部分は図で言うところの①から③に相当する部分でございます。資金移動業者が破綻した場合に、保証機関から労働者に対しまして破綻時における各労働者の口座残高の一定額、最大100万円を早期に支払うというものでございます。これによりまして、利用者たる労働者にとっては当座のお金は確保されるということになろうかと思います。
次に、④と⑤の流れなのですけれども、保証機関が保証履行することにより本来労働者が有する権利である供託金請求権が保証機関へ法定代理されるということになりまして、保証機関より財務局に対しまして、供託金の還付請求を実施します。保証機関は別途、そういった還付手続を行うわけなのですけれども、さきに御説明しました①から③の流れで、利用者たる労働者のほうには当座のお金は渡されているという状態になります。
この供託金につきましては、時期によっては不足するという可能性もなきにしもあらずということなのですけれども、それに対応するのが⑥と⑦でございまして、供託金の不足により、保証機関が履行した保証金額と代位請求により還付を受けた供託金額とで差額が発生し、保証機関が損失を被った場合には、保証機関型信用保険契約を締結している保険会社により、保険金として損失が補償されるというものでございます。
これはあくまでも一例でございまして、(注)にございますように、銀行から直接給与残高全額を支払うスキームなども検討されているところでございます。その検討に当たっては2つありまして、1つは十分な額。基本的には全額ですが、何か上限を設ける場合には100万円以上といった水準。そして、2つ目ですけれども、早期にということで、数日以内に支払われるといったスキームについて、別途検討していただいている銀行や保険会社もございます。
この資金保全のスキームに関しましては、委員の皆様方に御意見を承りたいのは、十分な額というのは、いかほどの水準であるべきかといったことですとか、あるいは早期にというのは具体的にいかほどの期間であるべきかといったことなどにつきまして、御意見をいただければと思っております。
次の8ページから12ページは、銀行と資金移動業者との比較ということで、それぞれの法規制等のスキームで、どのような違いがあるのかについて並べたものであります。
まず、左側の「銀行」についてですけれども、銀行は免許制、かつ専業制です。その上に、最低資本金や自己資本比率などの一律の定めがございます。
他方で、右側の「資金移動業者」でありますけれども、資金移動業者は現行類型におきましては登録制で、改正資金決済法後の世界におきましては、高額類型の場合には認可制、少額類型の場合には登録制ということになってございます。「資本要件」に関しましては、銀行のように一律の水準が示されているわけではございませんで、資金移動業を適正かつ確実に遂行するための必要な財産的基礎があることといった定性的な書きぶりの要件が書かれております。 実際に登録を受ける際には、金融庁・財務局がこの要件を満たしているかどうかを個別に審査して見ていくといったことになります。
なぜこのような違いがあるかですけれども、銀行の場合は為替取引のみならず預金や貸付けなどの信用創造機能を有しております。扱う資金の量も莫大であることから、リスクも相当高いものでございます。そういった意味で、預金者保護ですとかあるいは安定的な金融システムの維持・確保のためには相当強い規制を行うべきという考えの下、左側のような強い規制が課されているものでございます。
一方で、資金移動業者の場合は、携帯電話の会社などを想像いただければと思いますけれども、ほかに本業を抱えていて、そのサービスを十全あるいは効果的に発揮するために為替取引を組み合わせるといった事業モデルなども多く行われているところでございます。預金とか貸付けのような機能は持っておりませんので、そういう意味では低額の為替取引のみを行っているのがこの資金移動業ということになります。そうなりますと、リスクの程度というのは銀行に比べれば相当程度低い。ですので、規制のありようといたしましても、銀行に比べるとそれなりの規制になっているものでございます。
なお、登録制といいますのは届出制のように一定の書面を役所に提出すればそれで法的効果が生ずるというものではございません。登録制というのは、一定の登録基準というものがございまして、それに基づきまして申請書類ですとか申請に添付した書類などをチェックし、また財務局のほうから場合によってはヒアリングしたり実地検査したりしてその実態を確認し、それが事前に公示されております登録基準を満たしているとなった場合には、初めてそれを公に認めて公開するといったものでございますので、届出制よりは相当程度レベルの高い規制ということになります。
続きまして、「セキュリティ対策」の部分ですけれども、よりどころの書いてある場所が違います。銀行の場合には監督指針というもの、資金移動業者の場合には事務ガイドラインというもの、これらはいずれも、財務局の職員が監督等を行う際のよりどころとなる通達のようなものとお考えいただければと思います。
そこにセキュリティー対策についてのいろいろなことが書いてあるわけでございますが、システムリスク管理態勢・評価ですとか、情報セキュリティー管理、あるいはサイバーセキュリティー対策などにつきまして、監督に当たっての着眼点について同様の記載がなされていると承知しております。
次のページでございます。「マネー・ローンダリング対策」についてでございます。
根拠となる法律は両者とも共通でございまして、犯罪による収益の移転防止に関する法律、犯収法でございます。その下位法令等におきましては書いてある場所が一部違いまして、例えば銀行の場合には監督指針であったり、資金移動業者の場合には事務ガイドラインということであったりもするのですが、書かれている内容については共通であると承知しております。
すなわち、まず犯収法におきましては取引時確認等に関する内部管理態勢の構築ですとか、あるいはマネロンのガイドラインも共通でして、そこではマネロン・テロ資金供与リスク管理態勢の整理ですとか、あるいはリスクベース・アプローチの実施などにつきまして、同様の記載がなされていると承知しております。
監督指針と事務ガイドライン、それぞれ書かれている場所は違うのですけれども、例えばマネロン、犯収法に基づく取引時確認の措置などに関しまして、監督における着眼点ですとか、監督手法・対応につきましては同様の記載がなされていると承知しております。
次に「換金性」の部分に関してでございます。
換金性につきましては、前回の分科会でも御質問等もいただいたところでございますけれども、改めて申し上げますと、まず銀行につきましては現金化する際に、銀行窓口での受け取りもあります。この場合には1円単位での受け取りも可能かと思いますが、他方で銀行ATM等での引き出しの場合には、紙幣のみという場合も多くございます。また、銀行の中には最近固有のATMを持たないような銀行もございまして、そういった場合には提携先のATM等での引き出しということになるのですが、その場合には硬貨での引き出しはできないということも一部あるのかなと思われます。
他方で、資金移動業者の場合なのですけれども、業者やサービスの内容によって現金化の手段等は様々でございまして、まずは提携先店舗、コンビニエンスストアなどでの受け取りもあれば、銀行口座に送金後、銀行ATM等での引き出しもあれば、提携金融機関のATMでの引き出しもある。資金移動業者は固有のATMを持たないのが普通と考えられますので、そういう意味では現金化する場合に1円単位での現金化ができにくい場合もあるのかなとも思われますし、幾つかの業者の送金の実態を見ますと、そもそも送金のときに1円単位での送金ができず、100円単位ですとか1,000円単位での送金に現状とどまっているという実態も見受けられるところでございます。
手数料につきましては、無料から一定額までいずれも様々かと思われます。
次の10ページでございます。「個人情報」について記載してございます。
個人情報に関しましても、根拠は個人情報の保護に関する法令で基本は一緒です。一部、例えば銀行の場合は銀行法施行規則ですとか、あるいは監督指針、資金移動業者の場合には資金移動業者に関する内閣府令ですとか事務ガイドラインなど、書いてある場所が一部異なりますが、書いているルールそのものについては共通なのだろうと認識しております。
すなわち、下の表に書いてございますように、個人データの安全管理に係る基本方針等の策定ですとか、個人データの安全管理措置に係る実施体制の整備ですとか、第三者提供の制限などが求められております。
また、監督指針、事務ガイドラインにつきましては、今、申し上げたような項目に関する適切な取扱いを確保するための監督における着眼点、あるいは監督手法・対応について定めておりますけれども、基本的には同様の記載がなされていると承知しております。
なお、個人情報のうち、個人を特定できる部分を消したいわゆる匿名加工情報につきましても、ルールは共通と認識しておりまして、その下の※に書いてございますように、あらかじめホームページ等で第三者に提供する匿名加工状況に含まれる項目及び匿名加工情報の提供の方法を公表することですとか、あるいは提供先に当該情報が匿名加工情報である旨を明示しなければならないといったようなルールが共通ルールとしてあると認識しております。
次の11ページでございますけれども、こちらは「破綻した場合の資金保全」について、前回御説明した内容を表にしたものでございます。
書いてある内容は、前回の資料などと一緒でございますけれども、念のため振り返りますと、まず銀行の場合には最終的な補償の手段として預金保険制度がございます。これによりまして、1金融機関ごとに預金者1人当たり元本1000万円までと破綻日までの利息が保護されるというスキームになっております。
払戻し等までの期間でございますけれども、その下にございますように、準備が整い次第速やかに払戻しが可能となっているような仕組みでございまして、具体的には※のところに書いてございますように、払戻しに要する期間については破綻金融機関の預金者データの整備状況によるということが前提ではありますけれども、「例えば金曜日に破綻した場合、翌週月曜日から払い戻せるように努める」とされているところでございます。
一方で、資金移動業者の場合には右側でございますけれども、資金決済法に基づく供託のスキームが現行のスキームでございます。これによりますと、要履行保証額として1週間の基準期間における最高額をまず算出しまして、その最高額以上のものを供託するというスキームでございます。これについては下のほうに線を引っ張っておりますように、例えば資金移動業者の取扱額が週ごとに大きく変動しているような場合には、業者破綻時に供託額が必ずしも十分ではなく、債権額に応じて案分した額しか受け取れない可能性があるといったような問題もございます。
また、払戻しまでの期間につきましてはその下に書いてございますように、半年程度は必要ということで相当時間がかかるというのが現状の仕組みでございますので、先ほど、7ページで御説明したような民間の保険、補償の仕組みを組み合わせて何らか代替措置として補償できるかどうかを議論していただければと思っております。
次の12ページでございますけれども、不正払戻しの際の補償などについて記載したものでございます。
左側が「銀行」、右側が「資金移動業者」ですが、まず銀行に関しましては、15年以上前にキャッシュカードが盗難されたり偽造されたりして、それをATMで言わばなりすまして引き出されるといったような事件が社会問題化しました。これを受けて、議員立法で預金者保護法という法律が制定されたところであります。
この預金者保護法におきましては、利用者の過失割合に応じた補償についても定めがございまして、利用者が無過失の場合には補償割合はいずれも全額となってございます。過失があった場合につきましては、盗難カードの場合には4分の3、偽造カードの場合には全額といった定めがあります。また、立証責任も転換されておりまして、この過失などに関する立証責任は銀行側のほうに転換されているといったような仕組みになってございます。
この預金者保護法はあくまでも、ATMを使ったなりすましへの対応でございます。そういう意味では、インターネットバンキングはATMを持っていない場合もございますので、そういった場合がこの法律の射程から外れているのではないかという議論もございまして、この預金者保護法ができたときの国会の附帯決議におきましては、インターネットバンキングへの対応などについても措置すべきだという決議がなされております。
それに基づきまして、全銀協申合せというものができました。これによりますと、利用者の補償割合に関しましては無過失の場合には全額、過失や重過失があった場合については個別対応といったようなルールが全銀協申合せの中で規定されていると承知しております。
なぜ、過失があった場合などについて個別対応なのかということにつきましては、前回も口頭で御説明申し上げましたが、※1にその趣旨が、全銀協申合せの文言を抜き出す形で書いてありますので、必要に応じて御参照いただければと思います。
それに対しまして、資金移動業者のほうでございますけれども、まず今、申し上げたような全銀協申合せに相当するような一般的な業種団体としてのルール、取決めがあるわけではありません。払戻しの補償に関しましては、基本的には各社の利用規約なり約款によるということになってございます。
そういうことから、過失があった場合、なかった場合の補償割合についても各社によってばらつきがあるのですが、無過失の場合については全額としているところが多く見受けられるものの、業者によっては補償の上限を定めているようなところもあるようでございます。また、過失がある場合につきましても、個別対応ということで、若干のばらつきがあるように見受けられます。
これを資金決済業協会として、何らかのルールを設けるのかどうかということに関しては、参考のところに記載してございますように、今後、資金移動業の利用者のアカウントを不正に利用する場合、乗っ取りの場合の補償等について、指針等として取りまとめていく予定ということで、まさに今から検討するといった状況であるように聞いております。
次に13ページでございますけれども、前回もお示ししました課題につきまして、前回の議論を踏まえて一部リバイスしております。
1番目の「資金保全」につきましては、書きぶり等は変えてございません。これは、先ほど民間のスキームなども御紹介いたしたところでございますけれども、資金移動業者が破綻した場合に十分な額が早期に労働者に支払われる仕組みが必要ではないかということで、この労働条件分科会として十分な額としてどの程度の水準が適当とお考えになるのか。また、早期にというのはいかばかりの期間が適当なのかといったことなどを中心に御意見をいただければと思っております。
2番目の「不正引出し等への対応」につきましては、セキュリティー不備による不正引き出し等への対策ですとか、今、直前で申し上げましたような補償の仕組みなどが必要ではないかということで、具体的な補償の水準などにつきまして御意見をいただければと思っております。
3番目の「換金性」につきましては、前回の文言から一部リバイスを行っております。前回は、賃金は通貨払いが原則であることを踏まえれば、適時に換金、出金できることが必要ではないかという表現にしていたのですが、この「適時に」というのは、ここに記載しましたように所定の賃金支払い日という趣旨であると御説明しましたので、そのような文言に改めております。
これに関しましては、現行の銀行振込についてどのような通知がなされているのかということでございますが、現行の銀行振込の場合には、その所定の賃金支払い日の午前10時までに払出しが可能な状態になっていることを求めておりますので、基本的にはそれと並びであるかとも思われますけれども、委員の皆様方の御意見を承れればと思います。
また、※のところに書いてございますように、換金の手数料ですとか換金の単位につきましても検討が必要ではないかということで、これにつきましても御意見があれば承れればと思っております。
4番目の「労働者の同意」は、前回の委員の御指摘を踏まえて新たに課題として特記したものでございます。
2つ書いてございますけれども、1つは労働者の同意、これは真意であることが大前提であると考えていますけれども、同意に当たっては銀行口座と資金移動業者の口座との違いについてもきちんと理解した上で、真の同意を得ていくといったことが必要ではないかと思われますので、その辺りにつきまして、どのようなやり方等があるのかも含めて、委員の皆様方の御意見を承れればと思っております。
あともう一つは、同意の際の確認事項についてでございます。銀行口座の場合には、個別同意の際の確認事項として3点ありまして、1つは銀行口座振込を行ってほしいと労働者が考える賃金の範囲、もう一つが振込先の口座番号等の振込先に係る各種情報、そして3つ目が振込の開始を希望する時期、この3点について同意するということになってございます。
資金移動業者の口座への賃金支払いが仮に認められるとするならば、これだけでは足りないのではないかという問題意識がございまして、具体的に申し上げますと、例えば1番の資金保全のスキームとの絡みで、資金移動業者が破綻した場合の話がこの1番の資金保全の部分でございますので、資金移動業者が破綻したその補償を当該資金移動アカウントのほうに送るというのは、多分これは無理な話でありますので、そうした場合など事前に何かあったときの補償を振り込むべき口座というのは、別途の銀行口座などを指定しておくべきなのではないかとも考えられます。
このように、同意の際の確認事項について、今の銀行口座振込と違う点なども意識しながら、どういったものが考えられるかなどにつきまして、御意見をいただければと思っております。
5番の「その他」につきましては、適正に資金移動業者に賃金支払い業務を行ってもらうために、幾つか整理が必要ではないかということで掲げさせていただいております。
1点目は、先ほどの5ページの2階部分の図を思い返していただければと思うのですけれども、この5ページの2階部分の点に関しましては、厚生労働省が施行することが前提であります。ですので、資金移動業の業務運営状況等を踏まえて資金移動業者が賃金支払い業務を適正かつ確実に行うことができる体制を有していることを、厚生労働省が何らかの手段で確認することが必要だと考えます。これは、個別の資金移動業者の指定の申請があったときもそうですし、申請を受けて一定要件を満たすことを確認し、その結果、個別に指定した後も同様でございます。
指定後の話として関連するのが次のポツの部分でございますけれども、賃金支払い業務の実施状況等を適時に厚生労働大臣に報告できる体制を有することも併せて要件として求めることによって、事後的に指定の後も要件を充足し続けているかどうかを確認できるような体制というものを維持していくことが考えられるのではないかということで、掲げさせていただいております。
その他、前回も使用者側委員の皆様方から、企業の賃金支払いの実務の観点からいろいろな疑問や御意見をいただいたところでございますけれども、それはまさにこれが仮に制度化された場合には必要な視点だと考えておりまして、企業の賃金支払い実務が確実かつ円滑に行われることが必要ではないかということで、今日もいろいろ御意見をいただければ幸いにございます。
説明が長くなりましたが、以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
ただいまの事務局からの説明につきまして、御質問、御意見があればお願いをいたします。
会場の方は挙手いただき、オンライン参加の方はチャットに「発言希望」と入力をしてください。
それでは、森口委員、お願いします。
○森口委員 ありがとうございます。労働側の森口でございます。
私からは8ページ以降の銀行と資金移動業者との比較について、大きく3点意見させていただきたいと思います。
まず、1点目、運用の実態についてでございます。
先ほど御説明いただきましたが、セキュリティー対策やマネーロンダリング対策、個人情報などにつきましては、銀行においては監督指針、資金移動業者については事務ガイドラインと、書かれている場所は異なりますが、内容は同じだとの説明でございました。しかし、文言が同じだから金融庁として同じように監督指導していると言えるのでしょうか。例えば資金移動業においては、ポイント還元キャンペーンなどの実施によって、度々システムダウンが起こっていると認識しております。利用者にとって不利益となるようなトラブルが、銀行と資金移動業において年間どの程度起こっているのか、また行政としての指導はどのように行っているのでしょうか。単に指針やガイドラインに書かれている文言だけではなく、運用の実態についても比較する必要があると考えております。
続いて2点目、資本要件にある資金移動業者の財産的基礎についてでございます。
前回も指摘しておりますが、資金移動業者には専業業務が課されておらず、本業を別に有するところが多いと認識しております。資金移動業を適正、かつ確実に遂行するための必要な財産的基礎があるかどうか、実際の資金移動業者の業況も開示していただけないでしょうか。
続いて3点目、補償対応についてでございます。
前回の審議会におきまして、インターネットバンキングにつきましては、補償は個別対応ということで、資金移動業者と同様であるとの説明がございましたが、個別対応した結果として銀行と資金移動業の補償割合に違いはないのか教えていただきたいと思います。全銀協では、ネットバンクにおける補償の実施割合や、補償されない事例などについて公表しており、利用者はある程度予測することが可能ですが、資金移動業者においてはそのような取組をされているのか確認させてください。
以上3点、意見となります。よろしくお願いします。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
意見ということですが、事務局からお答えになりますか。
○賃金課長 森口委員、御指摘ありがとうございました。
御意見として承りつつ、次回に示せる資料を整理して何らかお示ししたいなと思っております。
金融庁の対応ぶりについて一言だけ申し上げますと、金融庁は、銀行に関してもあるいは資金移動業者に関しても、リスクベースでモニタリング、監督を行うという姿勢を取っていると聞いております。ですので、セキュリティーにしても、マネーロンダリングにしても、リスクの度合いに応じてそれに必要な対応というものを求めていると聞いていますが、今、御指摘いただきました3点に関しまして、次回何らかの資料を示せるように金融庁とも調整したいと思います。
御指摘ありがとうございました。
○荒木分科会長 オンライン参加で途中退席予定の山内委員から手が挙がっておりますので、次に山内委員から御発言いただきたいと思います。
お願いします。
○山内委員 ありがとうございます。使用者側の山内です。
私からは質問を3点お願いしたいと思います。いずれも3点とも5ページの資料に基づいた内容になっております。
1点目です。ページの右の下のほうに「資金移動業者からの申請に基づき、要件を満たす業者を厚生労働大臣が指定」とあります。この「指定」という言葉の行政行為はどのようなものかを御説明いただければと思います。例えば認可であるとか、届出との違いはどうなのか、あるいは要件が満たされなくなった場合の指定の取消しのあるなし、また、その指定が取り消された場合の賃金振込の扱いがどうなるのか等々について事務局側の現状のお考えをお示しいただきたいというのが1点目でございます。
2点目、同じく5ページですが、真ん中ほどの図の2階部分です。こちらは厚生労働省が労働基準法施行規則において要件化する例が右のほうに3つほど書いてございますが、一番下に「不正引出しの対策・補償など」と記載されております。これは具体的にどのようなことをお考えいただいているのかを御教示いただければありがたいと思います。
最後、3点目です。これは図の中に書いてございます「連携」という表現でございます。厚生労働省と金融庁との連携のイメージをお示しいただければと思います。労働法の関係法令に該当する2階部分について、労規則における要件化とか厚生労働大臣による資金移動業者の指定、今日御説明いただきましたこれらに対して、仮に賃金の不正引き出しが発生した場合に厚労省と金融庁で共同で事業者、あるいは労働者に対して具体的な措置が講じられるものかどうかについて御教示いただければと思います。
以上3点でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
では、事務局よりお願いします。
○賃金課長 山内委員、御指摘ありがとうございます。
まず、山内委員御指摘の1点目についてお答え申し上げます。
この大臣指定の法的な性質でございますけれども、資金移動業者がこの大臣の指定を受けた場合には、現行の労基則7条の2で認められております銀行や、証券総合口座を開設する証券会社と同じような法的地位、すなわち賃金の支払いに関与する法的地位が新たに付与されるという位置づけになろうかと思います。そういう意味におきましては、この資金移動業者の権利義務に関わるものになりますので、行為の性質としては行政処分ということになるのではないかと考えております。
他方で、一般的な許認可というのは、一般的に禁止されているものについて解除しつつさらに認可の場合には法的な地位を与えて、その認可対象者が行う行為について一定の法的な意味づけを付与するといったような性質のものでございます。しかし、資金移動業者に関しましては、一般的に資金移動業者の口座に対する賃金振込というのは禁止はされていないのです。現行法におきまして使用者が資金移動業者の口座に賃金を振り込んだ場合には、それは使用者が労基則7条の2にない手段として賃金を振り込んだということで責めを負うのですけれども、その資金移動業者自体はそれによって労基法上の責めを負ったり、あるいは資金決済法上の責めを負う立場には現状ではないのです。そういう意味では、一般的に禁止されているのが前提であるかどうかという観点におきましては、許認可とはちょっと違うのかなと思われます。ただ、いずれにしても処分性のある行為であろうと考えております。
この指定が取消しもあり得るのかという御指摘もございましたけれども、この指定を行うに当たりましては、資金保全の要件等々の一定の要件を満たして初めて指定という処分を受けられるものと考えておりますので、事後的にこの要件を満たさなくなってしまった場合には、指定の取消しは当然あり得るのだろうと思っております。
指定が取り消された場合に、賃金を振り込んだときにどういう問題が起きるかということでありますけれども、まず使用者に通貨払いの原則の例外として認められているのは、労基則7条の2の1号と2号に定められております銀行の預金口座への振込や、一定の要件を満たす証券総合口座への振込のみでございますので、それ以外の口座、アカウントの類いに賃金を支払った場合には、使用者側が労基法24条の責めを負い得るということになろうかと考えております。
山内委員が御指摘の2点目ですけれども、不正引き出しの対策や補償につきましての具体的なイメージですが、これを要件として位置づける場合にどのような要件であるべきかというのは、まさにこれから皆様方の御意見を承りたいと思っておりますけれども、例えばこの図の部分で申し上げますと、不正引き出しへの対応につきましてはセキュリティー面等を含めて、現行では1階部分で金融庁が資金決済法や事務ガイドラインなどで一定のルールを定めているところでございます。
それの対策としては、例えば施行状況などについて資金移動業者に係る各種情報を厚生労働省に提供してもらって、それらの状況も踏まえて賃金振込先としての指定がふさわしい業者かどうかを判断するといったようなこともあり得ます。
補償に関しましては、先ほど12ページの部分で、不正引き出しの補償の比較表などをお示ししましたけれども、資金移動業者側として一定のあるべき補償の水準論などにつきましても、要件にするとしたらどうあるべきかについて、委員の皆様方からの御意見をいただければと思っております。
3番目ですけれども、金融庁と厚生労働省の連携のイメージなのですが、2階部分、すなわち労基則でルールを定める部分に関しましては、基本的には厚生労働省が施行するという前提であります。さはさりながら、資金決済法上の業務をきちんと資金移動業者がなしているのかどうかなどの厚労省では知り得ない各種の情報を金融庁は有しているところでございますので、まずは日々の連携あるいは事案が生じたごとの連携などを行うことによって、共通の認識の下にこの資金移動業者が指定に値するのかどうか、あるいは事後的にその要件を満たし続けているのかどうかなども含めて確認していくのだろうと思います。
具体的な連携の中身などにつきましては、この労働条件分科会での制度の枠組みに関する議論が進めば、より具体的な協議を金融庁と行っていけるのではないかと思っております。
雑駁ではございますけれども、私からの答えは以上でございます。
○荒木分科会長 山内委員、いかがでしょうか。
○山内委員 ありがとうございました。
この後の議論の中で具体化していくことについても了解しました。
引き続き、よろしくお願いします。
○荒木分科会長 オンラインで鈴木委員、池田委員、世永委員、鳥澤委員と手が挙がっておりますが、その前に北野委員から手が挙がっておりましたので、会場の北野委員、お願いいたします。
○北野委員 ありがとうございます。北野でございます。
資料の7ページ、資金保全スキームの図にある保証機関についてまず確認したいことがございます。
検討中のスキーム例として、保証機関を中心とした図になっております。この保証機関は銀行においては預金保険機構のような公的な機関だと思うのですが、この図における保証機関は銀行と同様の公的な機関なのか、まず、この点を確認させていただければと思います。
○荒木分科会長 事務局からお願いします。
○賃金課長 この保証機関に関しましては、公的な機関ではなく民間の会社であると認識しております。
○荒木分科会長 よろしいでしょうか。
○北野委員 公的機関ではない民間の会社だということですが、供託では破綻時の払戻しに時間がかかるため、早期に払い戻すことを目的として間に保証機関を入れた資金保全スキームだと認識をしました。その上で、例えば利用者が相当多い資金移動業者が破綻した場合、保証機関が一時的に支払う金額も多額になるということも十分想定されると思いますが、それほどの資本力を持った保証機関であるのか、また多数の口座利用者に対して早期に支払うことのできる体制を有しているのか、これは誰が監督するのでしょうか。
また、このスキームはあくまでも一例ということでございますが、資金移動業者ごとに保全スキームが異なることもあり得るのでしょうか。
それから、今回示されている保証機関、保険会社について、これはあくまでも民間の企業だということであるならば、民民でリスクが移転しているにすぎないのではないか、資金保全スキーム自体が特定の事業者のリスクを過度に抱える仕組みではないか、このような疑念を抱くのですがいかがでしょうか。
○荒木分科会長 事務局からお願いします。
○賃金課長 北野委員、御指摘ありがとうございます。
まず、保証機関が間に入る意義なのですけれども、これは資金移動業者が持っているアカウント等の情報を常に連携して、それによって各利用者の資金移動アカウントに残っている残高を言わばリアルタイムに把握している。そういったような業者が間に入ることによりまして、迅速性の部分をうまく見ていくためのスキームであると承知しております。
一方で、資金の関係などについていろいろな御心配、御懸念の向きもあろうかと思いますし、保証機関に監督が及ぶのかといった御意見も今、承ったところでございまして、それらにつきましては論点なのかなと思っております。
具体的には、5番の「その他」の課題のところで掲げさせていただきました点のうち、例えば2番の部分で、ここは特出しはしていないのですけれども、適時に厚生労働大臣に報告できる体制としてどういうスキームが考えられるか御意見も承れればと思っております。例えば一例として手続の流れに沿って述べさせていただきますと、仮に制度化した場合に資金移動業者が指定の申請をします。申請には申請書類のほかに各種の契約書の写し、例えば資金保全契約、こういうものを結んでいるといった契約書の写しなども併せて添付していただいて、その中身が本当にこの資金保全のスキームとして十分な額が早期に利用者たる労働者に支払われるスキームなのかどうかを確認していくというプロセスが入ってくると思います。
その契約書の写しと併せて、例えば、保証機関ですとかあるいは保険会社、銀行とかといったようなこの資金移動業者破綻時に何らかの保険、補償を行おうとしているところから同意書を取り付ける。何の同意書かというと、厚生労働大臣が適時に報告を求めるときにはそれに応じるとか、必要な書類やデータ等を出すことに応じるといったような同意書をあらかじめ取っておいて、それに基づいて厚生労働省が何か問題があったと思われるときなどに、それらの保証機関や銀行等に対して一定の報告を求めるといったことも一アイデアではありますけれども、考え得るのではないのかと思っております。
いずれにしましても、指定の申請があったときに、その契約ですとか約款などの中身を見た上でそれが適正かどうかを判断する、さらにはここに登場するいろいろな機関について状況把握のために何らかの権限を付与するといったことなども考えられるのではないかと思いますけれども、委員の皆様方の御意見を承れればと思います。
○荒木分科会長 よろしいでしょうか。
それでは、オンライン参加の鈴木委員、お願いいたします。
○鈴木委員 鈴木でございます。
既に各論の話に進んでおりますが、私からは総論的な観点で一言申し上げたいと思います。
資料の6ページに、今回事務局より資金移動業者の口座への賃金支払いに関する労働者のニーズと考えられる背景を記載いただきました。
見直しの必要性につきましては、当分科会において過去2回、労使各側から発言があり、とりわけ公正取引委員会の実態調査報告の数値に関して、異なる捉え方がされたということを記憶しております。
ただ、今回の見直しというのは、あくまでも労働者本人の同意を前提に、労働者の賃金受け取り手段の選択肢を広げることを可能にするものであるため、一定のニーズがあるのであれば、この制度化を議論することは大変重要であることを重ねて申し上げたいと思います。
加えて、新型コロナウイルス感染症の影響によって、スマートフォンを用いた決済の利用頻度が高まっているというデータもあります。社会のデジタル化あるいはキャッシュレス化が急速に進む中で、給与の受け取りの選択肢を広げ、利便性を高める議論は大変意義があるものだと思っております。
事務局より今回、様々な新しい資料をお出しいただきましたが、議論を進める上で必要な情報の共有は大変重要だと思っておりますので、引き続き事務局には資料等を提示していただきながら皆様方と深掘りの議論をできればと思っております。
私からは以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
それでは、次に池田委員、お願いいたします。
○池田委員 どうもありがとうございます。使用者側の池田でございます。
私からは、前回も同じようなことを申し上げておるのですけれども、議論に当たって労働者保護という部分は非常に大切で、きちんと議論を尽くしていきたいと考えておりますが、その上で制度をつくったときに企業の負担が大きいものになってしまうと、せっかく制度をつくっても企業側が採用しない、もっと言えば採用できないということが生じかねず、結果として制度ができても、利用希望者が利用できないことになってしまうと危惧しております。ですので、ぜひとも実務がスムーズにできる仕組みということをふまえた上で、議論を進めていきたいと考えてございます。
そこで一つなのですが、使用者の資金移動アカウントから直接労働者に送金するということになっていった場合に、会社が資金移動業者のアカウントを持つことになると想像しておるのですけれども、そうした場合に会社として全ての業者に対応することが難しいということが起こるかなとも思っておりまして、その場合に各社が業者を絞り込むことができるのかということについて、事務局の想定をお聞かせいただきたいと思います。
あともう一点、別の話になりますが、資料の10ページです。
個人情報の取扱いにつきまして、金融機関、資金移動業者ともに、政省令や指針、ガイドラインにおいて、基本方針の策定、体制整備などが求められていることは分かりましたが、不正利用や情報流出を防止する観点からどのような措置が講じられているのか、その辺りのもう少し具体的な内容を説明いただきたいと思います。
私からは以上です。よろしくお願いいたします。
○荒木分科会長 それでは、質問がございましたので、事務局からいかがでしょうか。
○賃金課長 池田委員、御指摘ありがとうございます。
まず、1点目に関してですけれども、全ての資金移動業者に対応するのは難しいというような御指摘がございまして、すみません。私の答えがそれに沿ったものかどうかあれですけれども、まず仮に5ページの図のような流れの仕組みができた場合には、厚生労働大臣が幾つかの資金移動業者を要件を満たした場合に指定することになります。例えばAペイ、Bペイ、Cペイみたいな会社を指定したとして、それを池田委員御所属の本社におきまして、うちは取引関係にあるのはAペイとCペイだからということで、Bペイを排除する形でAペイとCペイのみを賃金支払い口座として利用するといったことは、企業の御判断、御選択として可能と考えております。
続きまして、2点目は個人情報保護の関係で御質問があったと思います。
まず、個人情報関係は根っことしては個人情報保護法なのですが、その個人情報保護法における安全管理措置の具体的な内容等につきましては、各主務大臣が策定している事業分野ごとのガイドライン等において、さらに具体的なものが示されていると聞いております。
この資金移動業の部分に関して言いますと、金融分野における個人情報保護に関するガイドラインの安全管理措置等についての実務指針という平成29年2月に策定された文書がございます。これによりまして、組織的な安全管理措置ですとか、あるいは人的な安全管理措置ですとか、技術的な安全管理措置などにつきまして整備することとなっております。
具体的に申し上げますと、組織的な安全管理措置としては、例えば個人データの管理責任者等の設置、個人データの取扱状況の点検及び監査体制の整備と実施、あるいは漏えい事案等に対応する体制の整備などが定められておりますし、人的な安全管理措置としては従業者との個人データ非開示契約等の締結ですとか、あるいは従業者の役割・責任等の明確化、従業者への周知徹底、教育及び訓練、従業者による個人データ管理手続の遵守状況の確認などが定められております。
さらに技術的な安全管理措置としては、個人データの利用者の識別及び認証、個人データへのアクセス権限の管理、個人データの漏えい・毀損等の防止策、個人データへのアクセスの記録及び分析、個人データを取扱う情報システムの監視及び監査といったことなどが、このガイドライン上規定されておりまして、これら個人情報を扱う金融関係業者に対しては、それらを整備することなどが求められていると承知しております。
○荒木分科会長 池田委員、よろしいでしょうか。
○池田委員 どうもありがとうございます。
前段のところではどういった形の送金ルールになるのかということはまだ見えてはおりませんが、最終的に企業で選択し得るということでしたので、少し安心しましたといいますか、ありがとうございます。
個人情報の件も、内容にというか、表記に差はあるにせよ同様のことが求められているのだろうということでしたので、この辺もまた労側の方々の御懸念もあるように思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
どうもありがとうございました。
私は結構です。以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
では、続いてオンライン参加の世永委員、お願いいたします。
○世永委員 ありがとうございます。
私からも今、使側から発言がありました個人情報の保護について発言させていただきます。
昨年の8月の当分科会で報告を受けた際、労側委員より、資金移動業者においては決済利用に伴う膨大な個人データが集まるため、データの利活用や流出に対しては厳格な管理体制が必要ではないかと意見させていただきました。
資金移動業に関しては、口座からコンビニの支払い等、様々な決済に直接利用できることになり、集まる個人情報については銀行の比ではないと考えますが、個人情報について銀行と同じ監督手法でよいのかという懸念があります。
したがいまして、資金移動業に関しましては、個人情報についても論点として整理していくべきではないかということについて意見として申し上げさせていただきます。
以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
それでは、続いて、鳥澤委員から手が挙がっております。
お願いいたします。
○鳥澤委員 ありがとうございます。
私からは意見を申し上げます。本件に関しましては昨年7月に閣議決定された成長戦略フォローアップにデジタルマネーによる賃金支払いの解禁について、早期制度化を図る旨が記載されていることに加えて、実現するとキャッシュレス社会の進展に大きく寄与するということも理解しております。今回の件は、労働者にとっても選択肢が増えるものだとは理解しております。
ただ、その一方で前回の分科会でも様々な意見や課題に関する発言がありましたし、本日の資料13ページにもございますとおり、制度化に当たっては資金保全をはじめ、、様々な課題がございます。
したがいまして、これらの課題を丁寧に議論していく必要があると思っております。少なくとも、使用側としましては、受入れ上限等の問題で資金移動業者側の問題によって、または労働者側の条件設定などの問題によって賃金を振り込めないといった事態が起きた場合に、事業者側にその責が負わないようなことを明確にする必要があると思っています。また、回避先の口座をあらかじめ指定しておくなどの措置を講じることが制度化に当たっては大前提だと思っております。
また、資料の5ページに記載がありますが、金融庁が所管する1階部分と厚生労働省が所管する2階部分の課題や論点を明確に切り分けて議論をしていく必要性があると思っております。
いずれにしましても、賃金支払いというのは労使の信頼の根幹となるものでございますので、ぜひ企業実務に沿った形で、様々な課題、議題を丁寧に議論していただきたいと思っています。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
続いて、津村委員、お願いいたします。
○津村委員 ありがとうございます。
私からは、監督指導体制の観点から1点御意見を申し上げたいと思います。
議論の土台ということで説明をいただきました5ページの「資金移動業者の口座への賃金支払を認める場合に必要な規制のイメージ」について、現行の例外として定められております銀行に関しましては、利用者の預金を預かる業として金融庁による監督や指導も厳しいものがある、こうした認識を持っています。
一方、資金移動業におきましては、先ほど来議論がありますが、1階部分としては資金決済法に関わる監督指導は金融庁にて行う。一方、2階部分の賃金口座として適切かどうかという点に関しましては、賃金の確実な支払いという観点から、厚労省が監督指導を行うという図であると理解をしておりますけれども、この賃金の確実な支払いのためには、単に2階部分の監督指導だけで済む話ではなく、そもそも本体であります1階部分にも密接に関係してくる話だと認識をしているところです。
仮に賃金が振り込まれることになると、一見すると銀行における預金のような、いわゆる資金の滞留が起こるということは当然予想されます。参考資料の19ページに「資金移動業の利用状況等」ということで、現状ではアカウントに滞留している資金の約95%が1円以上5万円未満ということになっていますが、これが賃金口座ということになりますと、当然滞留残高は上昇することが予想されるわけでありますが、それにもかかわらず1階部分において相変わらず資金移動ということを念頭に置いた規制の程度でよいのかというところが一つの疑念であります。
13ページに考えられる課題として、「5.その他」の1つ目のポツの中で、厚労省が施行することを前提としたうえで、監督指導体制につきまして課題提起されておりますけれども、先ほど申し上げたとおり1階部分も含めてどのような監督指導ができるのかという課題だと受け止めておりますので、課題の位置づけとしては「その他」ということではなく、論点の一つとして別建てにし、明確化していくべきだと考えておりますので、御検討をいただければと思っております。
以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
それでは、早乙女委員、お願いいたします。
○早乙女委員 ありがとうございます。早乙女でございます。
私からは、3点、お願いと御質問がございます。
まず、1点目として資料の13ページ、課題の「3.換金性」についてでございます。
こちらに「所定の賃金支払い日に換金できることが必要ではないか」と記載がございました。大塚課長の御説明の中でも、「現行の通達では10時までに払出しできる」とございましたが、それ以外にどのような取扱いがあるのか。例えばですけれども、「取扱いの金融機関は1行、1社に限定せず複数にするなど労働者の便宜に十分配慮して定めること」などの運用が求められていると思います。次回以降、そのような現行の取扱いについて整理した資料を御用意いただければ、分科会においても整理して議論ができるのではないかと思います。
2点目については御質問なのですけれども、「5.その他」の2ポツ目です。先ほどの質疑のやり取りの中でも幾つか出てまいりましたが、「賃金支払業務の実施状況等を適時に厚生労働大臣に報告できる体制を有することが必要ではないか」と記載がございます。まず「実施状況等」の箇所について、先ほどのお話の中では「事後的に確認する」とございましたけれども、どういうことを意味しているのか。また、「報告できる体制」についても、先ほど大塚課長の御説明の中では「問題があったときなど」とございましたが、どのような場合に報告することを想定しているかについて御教示いただきたいと思います。
3点目も御質問ですが、こちらは参考資料の19ページでございます。
一番下、「金融庁・財務局によるモニタリングの状況」について、2つ目の○のところに行政処分として、業務停止命令が1件、業務改善命令が2件とございます。こちらの行政処分の具体的な事案と、その後、改善が見られたかのかどうかについてお伺いしたいと思います。
以上でございます。
○荒木分科会長 質問がありました。
事務局より、お願いします。
○賃金課長 直近の早乙女委員をはじめ、様々な御指摘を皆様方からいただき、誠にありがとうございます。
まず、早乙女委員の御指摘に対する回答から申し上げたいと思いますが、換金性に関しまして今の通達の取扱いでございますけれども、今、早乙女委員も言及されましたように、銀行口座振込の場合には、その所定の賃金支払い日の午前10時までに払出しができるような状態で労働者名義の口座のほうに振り込まれていることを求めているところでございます。
また、銀行を1行とかあるいは証券総合口座を開設している証券会社1社といったような1社指定、1行指定の場合には、労働者の便宜という意味では著しく配慮に欠けるのではないかということでありますので、現行の通達におきましては、賃金の払込先としての金融機関や証券会社等につきましては、1行、1社に限らず複数用意することによって労働者の便宜に十分配慮するといったようなことが定められているところでございます。
そういうところを考えますと、仮に資金移動業者の口座への賃金払いを認めた場合には、例えば通貨か資金移動業者アカウントかの二者択一を求めるといったようなものですと、これは労働者の便宜という観点では問題があるのではないかなと思いますので、今申し上げた現行の通達との並びなども意識しながら、その辺りをどのように考えるべきなのかということについて、委員の皆様方から御意見を承れればと思っております。
2点目の13ページの「その他」の論点に関します実施状況等の話でございますけれども、これは意識しておりますのは5ページの図でお示ししたような指定資金移動業者としての要件を引き続き保持しているのかどうかというのが、最も大事な視点なのかなと思っております。
そういう意味で、その要件に関わる資金移動業者の業務の実施状況、場合によっては1階部分の資金移動業者に関わる資金決済法上の業務の実施状況、この辺を適時にということでありますので、例えば個別の労使の皆様方から申告、情報提供などをいただいたような場合もございますでしょうし、あるいは金融庁との日常的な連携の中で何か問題事案の共有、把握などが行われることもあるでしょうし、そういったことを端緒に情報を更に深掘りしていくといったことが考え得るかと思います。
それを超えて、例えば定期的な報告を求めるかなども含めて、あるべき監督指導の在り方につきましても、ほかの委員からも御指摘がありましたが、一つの整理すべき課題かと思われますので、その辺についても今後、委員の皆様方の御意見を聞きながら整理していければいいなと思っております。
参考資料の行政処分についての御指摘がございました。行政処分は、資金移動業者については2社、3件行政処分が行われた実績があると聞いております。去年の12月末時点の金融庁から受けました報告によりますと、まず平成24年度に供託金の不足等によります業務停止命令及び業務改善命令の対象というのが1社ございました。また、平成26年度には委託先の管理不十分による業務改善命令の対象が1社あったと聞いております。これらの業者につきましては、いずれも業務改善計画の提出を求めるなど、金融庁・財務局としても引き続きモニタリングの対象とすることによりまして、法令に基づく業務の適正な執行体制の確認を行っていると聞いているところでございます。
早乙女委員の前にも様々御指摘いただきまして、必要に応じて課題の中に例えば監督指導ですとか、あるいはどのような形で載せるのか要検討ですけれども、個人情報の関係などについて載せるなど、皆様方の共通認識の下に議論が進められるように資料を工夫していきたいと思います。
引き続き、よろしくお願いいたします。
○荒木分科会長 早乙女委員、質問いただいた点についてはよろしいでしょうか。
○早乙女委員 ありがとうございました。
非常に課題が多岐にわたるところがございますので、ほかの委員の皆様も言っているように、丁寧に進めていきたいと思います。
ありがとうございました。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
それでは、佐久間委員、お願いいたします。
○佐久間委員 佐久間でございます。よろしくお願いします。
最初に意見といたしましては、この制度を実施するとまだ決定したわけではありませんけれども、まず本人確認の問題がどうなっているのかということに留意していただきたいと思います。前回も申し上げましたけれども、外国人の方々が、口座をなかなか銀行でつくりにくいということで、このような資金の移動業者を利用するということを当初、ご説明されました。資金を移動しやすいということは、逆に本人確認の有無というのが非常に難しくなるというか、労働者から言われた資金移動業者の口座に、別途、契約をすることになると思うのですけれども、そこに振り込んだ場合、ちゃんと振り込んでいるのに入っていない場合、使用者責任になると非常に困るものですから、この点は重視をしていただきたいと思っております。
あと、3点ほど質問をさせていただきたいと思います。
これも前回も申し上げたのですけれども、企業にとっての利用料、手数料の問題です。大手の銀行などでは、給与を振り込む場合、例えば基本料金があったり、契約料金があったり、また振込手数料、他行への振込、あるいは同行内の振替等があると思います。それによって330円とか、無料であったりとか、種類が多いことから、これをわかりやすく比較表にしていただきたいと思います。代表的な例を銀行でも2、3挙げていただいて、資金移動業者のほうも今80社存在しているわけで、全てが実施しているわけではありませんけれども、代表的なものがあれば、実際に振り込むに当たっての手数料を教えていただきたい。移動業ですから、多分その資金移動業者のペイロールの口座に入金していくということだけで、他に手数料は生じないのか、ほかの部分でもまた手数料が生じてくるのか、どこが発生するのかが分からないものですから、そこを絵にしていただきたいと思います。
それから、昨年の夏の本分科会での審議において、資金移動業者は、47社程度だと思ったのですけれども、現在80社まで増加しています。私も存じ上げないのですけれども、この中ではもしかしたら合併や倒産をしてしまったというところもあるかもしれません。もしそのような事例があれば、そのときにこういう資金の保全の関係でどういう対応をそのときされたのか、お伺いしたいと思っています。
あともう一点ですけれども、こちらで例示をいただきました、7ページの保証機関とか保険会社のこのスキームの絵についてであります。これも、今回は代表的なものをお示ししたということになっていますけれども、この保証機関は民間が実施するということをお伺いしました。例えばいろいろなパターンが出てきたときに、例えば、公的機関として設けられないものか。また、例えば保証機関が保険会社として一体となるのか、別の組織が運営するのかについて、いろいろなパターンの図をいつの時点というか、出していただく形になるのか。公的なもの、私的なものがあると思いますので、公的なものであれば公的の可能性についても提示ができるものなのか、それを教えていただきたいと思います。
以上です。
○荒木分科会長 それでは、質問がありましたので、事務局よりお願いします。
○賃金課長 佐久間委員、御指摘ありがとうございます。
まず、利用料の関係なのですけれども、銀行のほうで幾つかの例示を、実態を把握、確認の上、何らかお示ししたいなとは思います。基本は振込に当たっての法人との基本契約と個別の振込ごとの手数料だろうなと思われますけれども、実態も確認したいと思います。
他方で、資金移動業者のほうは、現行におきましては給与の振込というのは今は行われていないわけです。これを今後、手数料をどうするかというのは、まさにこちらのほうで厚生労働省としての制度設計ができた上で、ではどういうビジネスモデルでやるのかという話になりますので、今の段階で資金移動業者側がどういう手数料を考えているのかと示すのは困難ではないかと思いますけれども、いずれにしましても利用料、手数料に関する何らかの資料は整理したいと思っております。
また、合併や倒産が行われた場合の資金保全の例というお話でございましたけれども、まず倒産につきましては、資金移動業者が倒産した事例はないと金融庁から聞いているところでございます。合併の事例があったのかどうか分かりませんけれども、一般的に事業は承継され、それに基づいて権利義務関係も引き継がれると思いますので、基本的にはそこに資金移動業者が倒産した場合の資金保全のスキームが出てくる場面ではないのではないのかと思われるところです。
3点目の保証機関が公的なものになるのかどうかという点でございますけれども、まず金融庁のほうからは、資金移動業者の資金保全スキームに関して公的なものをつくる予定は特に聞いていないところであります。
7ページの図で言うところの保証機関と保険会社というのは、別主体とお考えいただければと思っております。
以上です。
○荒木分科会長 よろしいでしょうか。
○佐久間委員 はい。
○荒木分科会長 それでは、仁平委員、お願いします。
○仁平委員 ありがとうございます。
ほかの委員からもございましたが、今はアカウントの残高が5万円未満の口座が95%と圧倒的だということであり、本来は資金が滞留することを想定しておらず、破綻した際の払戻に半年程度かかる供託のスキームで現在は十分だと考えておられると思うのですが、賃金が振り込まれる口座となれば、話は別だと思っております。
今日の説明を聞いていても、それについては2階部分で措置をするという説明でしたが、そもそも速やかに払い戻すということについては、労規則ではなく資金決済法本体で措置すべきだと思っております。滞留している資金については、破綻したら速やかに支払うべきものだと考えております。
ほかの委員の方の質問にも関わりますが、12ページに不正引き出しの補償に関する銀行との比較がございます。資金移動業者については、各社の利用規約によるという、要は共通の規定はなく個社により補償のレベル感は様々だということだと思います。脚注には、不正利用の補償等について、今後指針等として取りまとめる予定だと書いてございますが、各社がそれに基づいて共通の対応をされるのかどうかは分からないと思っておりますが、この分からないことを前提に議論するのはいかがなものでしょうか。そのような状態で労働者に選択肢として提示するというのは、とても乱暴なことだと思っております。
そもそも賃金振込みの受皿となるためには、誰が利用しても同じ条件で安全性が担保されることが必要であって、それは細かな各社の約款を読まずとも分かりやすく示されるべきだと思っております。そのような業界の取組が十分でない現状を土台として2階部分の労規則で業者を絞るという議論の進め方自体にも違和感を覚えるところでございます。
労政審の議論の在り方として、労働者保護の観点から見て銀行と同等の安全性が担保できる環境が整ったので、新たな選択肢を加えることについて検討をしていくというのが本来の議題設定の在り方なのではないかと思っております。労規則に要件を定めるだけで、安全性への懸念が払拭できるのかどうかも分からないままに、議論の土俵を2階の労規則における要件化の部分のみに誘導していくような進め方は問題があると思っております。
意見として申し上げておきたいと思います。以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
事務局より、お願いします。
○賃金課長 仁平委員、御指摘ありがとうございます。
それよりも前のほかの委員からの御指摘でもございましたけれども、滞留問題についてどう考えるのかというのは極めて重要な視点だと私も認識しております。前回も申し上げたところでございますけれども、まず仁平委員から御紹介ありましたように、資金決済法におきましては資金移動業者に対する一定の滞留規制がかかっております。といいますのも、これはそもそもの業態として、銀行とは違い、預金などを前提にしていない業がこの資金移動業であることによるものなのです。つまり、そこに入るお金というのは、あくまでも為替取引のためのもの、例えば送金であったり、あるいはオンラインでの買物であったり、一時的に使うためのお金をそこに入れるだけのもの、それが資金移動業者のアカウントであります。ですので、この労基則において具体的にどういう制度にするのか否かというのはこれからの話ではありますけれども、大前提として資金移動業の口座、アカウントというのはそういう類いのお金を一時的に入れるべきものであるということは、制度設計の根底としてあるのだろうと考えております。
その滞留を防ぐための各種施策というのも、仁平委員がおっしゃったように資金決済法の中で定められておりまして、現行類型でありますと100万円を超えるもの、それを超えたから直ちにアウトというわけでは必ずしもないのですが、その受け入れた額あるいは受け入れた期間、それまでの送金額、利用目的等々を総合的に判断して、これは為替取引のものではないと判断した場合には、資金移動業者が利用者に対して払出しなどを要求するといったことなどが、改正資金決済法でも盛り込まれたところでございます。ですので、銀行預金のように長い目で見てそこにため込むことが前提ではないという使い方であることを前提に、皆様方の御議論をしていただければと思っているところでございます。
あと、不正払戻しの補償の関係で、ただいま指針について業界団体の取組がこれからであるので、そういう意味でそれを前提に2階部分は議論できないのではないかという御指摘もございました。仮に、この業界団体の指針、ガイドラインができたにしても、それは言ってみれば業界での取決め事項にすぎないわけなのです。そういう意味で、それとは別にその内容を超えるような基準を労基則で求めるというのも、それは考え方としてはあり得るのかなと思っているところでございます。
そういう意味で、この12ページの図をお示しした趣旨は、資金移動業者のほうで資金決済業協会が定めるガイドラインの策定状況を待つというのも一つの考え方ではある一方で、それを横目に見ながら労基則として資金移動業者に対して一定の補償の基準を策定していくというのもまた一つの考え方なのかなとも思われますので、そういった点も含めて、皆様方の御意見を承れればと思っております。
ありがとうございます。
○荒木分科会長 ほかに、委員の方から御意見ございましょうか。
安藤委員、お願いいたします。
○安藤委員 ありがとうございます。
13ページに課題として5点、挙げられております。私個人としては、この中の論点の「4.労働者の同意」が一番大事であると考えています。
なぜかと申しますと、労働者が同意しているというのはどういう状況かというと、今でも私自身もやっていますが、銀行に振り込まれた賃金の一部を資金移動業者の口座に移して使っています。このようなことをやっている人間が、自分で自分の銀行口座から資金移動業者の口座に移そうが、会社に振り込んでもらおうが、その先で使う金額が仮に同じであったとしたらリスクに差異はないのではないか。例えば10万円入ってきた賃金のうち、2万円を資金移動業者の口座に移して使うのを自分で移動するのか会社にやってもらうのかの違いがあるだけなら、資金移動に係る手間を省けるという労働者側のメリットだけが存在することになります。その意味で、まずは同意について考えることが重要かと感じております。銀行口座との比較で安全性、保全、補償が同等であることを求めるのかといったときに、今でも自分の判断で自分の賃金の中から2万円を移している場合と、自分の賃金全体の中から2万円を会社に振り込んでもらう、ここにどういう差異があるのかということに疑問を持っていますので、まずは安全性や保全よりも、本人の同意というところに個人的には関心があります。
その上で、重点的に調査すべき事項として考えておりますのは3点あります。
まず、どのような場合に労働者が自分の賃金の一部または全部を資金移動業者のアカウントに振り込んで欲しいと考えるのか。これが1点目。
2点目は、どのような場合に企業側が賃金の一部または全部を資金移動業者のアカウントに振り込みたいと考えるのか。
そして3点目、これが最も大事だと思っていますが、労働者が望んでいないにもかかわらず、使用者側が銀行ではなく特定の資金移動業者の口座に賃金を支払うことを望むとしたらどういうケースがあるのか。この辺りを整理して、労働者の同意というものがどういうときに真の同意と考えていいのか悪いのかを理解したいと考えております。
以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
特にほかには御意見はございませんでしょうか。
それでは、非常に今日も有益な御意見をいただいたところでございます。いろいろ有益な資料をつくってほしいという要望もございましたので、この議題に関しては引き続き審議を続けていきたいと考えます。
いろいろな御要望もあったところでございますので、事務局においてはさらなる課題の整理に資するような資料を準備いただいて、次回の議論に供していただきたいと考えております。
それでは、このほか特段御意見がなければ、本日の議論は以上としたいと思います。
最後に、次回の日程について事務局よりお願いします。
○労働条件政策課長 次回の労働条件分科会の日程、場所につきましては、調整の上、追ってお知らせいたします。
○荒木分科会長 それでは、以上で本日の労働条件分科会は終了といたします。
どうもありがとうございました。