2020年3月30日 第160回労働政策審議会労働条件分科会 議事録

労働基準局労働条件政策課

日時

令和2年3月30日(月) 14:00~15:30

場所

厚生労働省共用第6会議室(合同庁舎5号館3階)

出席者

公益代表委員
 荒木委員、安藤委員、川田委員、黒田委員、藤村委員、平野委員、両角委員
労働者代表委員
 川野委員、北野委員、櫻田委員、津村委員、八野委員、仁平委員、森口委員、世永委員
使用者代表委員
 池田委員、早乙女委員、佐久間委員、佐藤委員、鳥澤委員、輪島委員
事務局
 坂口労働基準局長、村山安全衛生部長(併)労働条件政策、賃金部門、久知良総務課長、黒澤労働条件政策課長、石垣監督課長、長良労働関係法課長

議題

  1. (1)労働基準法の一部を改正する法律について
  2. (2)「労働基準法施行規則等の一部を改正する省令案要綱」について(諮問)
  3. (3)2019 年度中間評価について
  4. (4)科学技術基本法等の一部を改正する法律案について

議事

議事内容
○荒木分科会長 それでは、ほぼ定刻で、全員おそろいということですので、ただいまから、第160回「労働政策審議会労働条件分科会」を開催いたします。
本日の委員の出欠状況ですけれども、御欠席の委員として、公益代表の水島委員、使用者側代表の齋藤委員、松永委員と承っております。
議事に入ります前に、事務局から定足数の報告と本日の議事運営について説明をお願いいたします。
○労働条件政策課長 事務局でございます。
定足数について御報告いたします。
労働政策審議会令第9条第1項により、委員全体の3分の2以上の出席または公労使各側委員の3分の1以上の出席が必要とされておりますが、定足数は満たされておりますことを御報告申し上げます。
次に、本日の議事運営について申し上げます。新型コロナウイルス感染症対策といたしまして、本日は報道関係の方のみの傍聴とさせていただいております。また、傍聴席の間隔を広げさせていただくなど、措置を講じた上で運営をさせていただきます。
会場の皆様におかれましては、入り口備付けの消毒液の御利用を始め、マスクの御着用や咳エチケットに御配慮いただきますようお願い申し上げます。
また、議事開始後、適宜、換気のために窓を開けることがございますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。
以上、よろしくお願いいたします。
○荒木分科会長 カメラ撮りはここまででお願いいたします。
(報道関係者退室)
○荒木分科会長 それでは、本日の議題に入りたいと思います。お手元の議事次第に沿って進めてまいります。
本日の議題の(1)「『労働基準法の一部を改正する法律』について」及び(2)「『労働基準法施行規則等の一部を改正する省令案要綱』について」、事務局から説明をお願いいたします。
なお、(2)「労働基準法施行規則等の一部を改正する省令案要綱」につきましては、本日、厚生労働大臣から諮問を受けた案件でございます。よろしくお願いいたします。
○労働関係法課長 それでは、資料のほう、私から説明させていただきます。
資料1-1が「『労働基準法の一部を改正する法律』の経過」でございます。去る1月に労働基準法の一部を改正する法律案要綱につきまして本条件分科会でお諮りいたしまして、その後の経過を、こちら、一枚紙でまとめているところでございます。
2月4日に法律案の閣議決定をいたしまして、第201回の通常国会に提出いたしました。その後、衆議院の厚生労働委員会に付託されまして、3月11日に質疑、それから採決が行われ、17日の衆議院本会議で可決されました。その後、参議院に送付されまして、3月18日に参議院厚生労働委員会に付託されまして、24日に質疑、それから採決が行われ、27日の参議院本会議におきまして可決、成立となったところでございます。
この労働基準法の一部を改正する法律案につきまして、次のページでございますけれども、附帯決議が付されております。3月11日付でございますのが衆議院厚生労働委員会における附帯決議でございます。一番から四番まであるわけでございますが、概略だけ申し上げますと、一番は、1行目の真ん中以降、「施行後五年を経過した場合においては、3行目、賃金請求権の消滅時効期間を原則の五年とすることを含め検討し、その結果を踏まえて適切な措置を講ずる」ということで、施行5年後の検討に関する決議がなされているところでございます。
その後の4行目以下、「その環境整備のため」というところでございますが、次の行、「中小企業等における記録の電子データ化を支援」といった内容が盛り込まれたところでございます。
大きな2点目でございますが、「賃金の未払いを発生させないよう、事業所に対する指導・監督を徹底する」などの内容でございます。
3点目、災害補償請求権の消滅時効期間についてでございますが、施行後五年経過した際の検討について盛り込まれております。
4点目、改正後の規定に基づく消滅時効期間が、これはこの法律案を議論いただいた際にも問題になりました経過措置のところでございまして、この消滅時効期間が本法の施行日以後に支払期日が到来する全ての賃金請求権に適用されること、これについて周知徹底するという内容でございます。
続きまして次のページでございますが、参議院厚生労働委員会の附帯決議でございます。こちら、衆議院の附帯決議と内容的に重複する部分もございますが、追って、一番から順に概略だけ申し上げます。
一番は、3行目の「施行後五年を経過した場合においては、賃金請求権の消滅時効期間等を原則の五年とすること等について速やかに検討を行い、その結果を踏まえて適切な措置を講ずる」。衆議院の一番の検討規定の部分の決議と同じでございます。
二番、その環境整備のためでございますが、その2行目、中小企業等における賃金関連記録の電子データ化を積極的に支援するといった内容でございます。
三つ目、賃金の未払いを発生させないよう、事業所に対する指導・監督を徹底・強化する旨の内容でございます。
次のページ、四点目、災害補償請求権の消滅時効期間についてということでございますが、施行後5年を経過した際に、速やかに専門的見地からの検討に着手する旨の内容でございます。
五点目、こちら、衆議院には盛り込まれておりませんが、労働者が消滅時効により請求権を失うことがないよう、労働者個々の事情に応じた相談・支援の一層の充実・強化といった内容でございます。
六点目、改正後の規定に基づく消滅時効期間が本法の施行日以後に支払期日が到来する全ての賃金請求権に適用されることを含めた改正の内容について周知・指導を徹底するといった内容でございます。
七点目、こちらも衆議院には盛り込まれておりませんが、働き方改革関連法における改正項目が順次施行されていることを踏まえ、長時間労働の是正、年次有給休暇の取得促進等の施策を着実に推進するとともに、中小企業等における労務管理の適正化など、現場に混乱が生じないよう適切な支援を実施するといった内容でございます。
八点目も、衆議院ではございませんでしたが、いわゆる雇用類似の形態が増加している中で、労働者性を有する者に対しては、労働基準法を始めとする労働者保護法令が適正に適用されるよう労働者性の判断基準の周知徹底を図るとともに、その適用をなお一層厳密に行い、厳正な指導・監督を行うといった内容でございます。
以上が衆議院、参議院の附帯決議でございまして、こちらを付された上で、労働基準法の一部を改正する法律案につきましては、3月27日付で参議院本会議で可決・成立したという経緯でございます。
資料1-2は、この労働基準法の一部を改正する法律の案文と新旧をつけているところでございます。こちら、説明は割愛させていただきます。
続きまして本日の議題でございますが、今申し上げた労働基準法の一部を改正する法律案の成立を前提といたしまして、その施行に関する省令案の要綱につきましてお諮りしたいというものでございます。資料2を1枚おめくりいただければと思います。
「別紙」と書いてある労働基準法施行規則等の一部を改正する省令案要綱でございます。要綱という形で整理しておりますので若干分かりにくい部分がございますが、大きな点の1点目でございますが、記録の保存期間の延長、3行目に書いてある部分でございます。
「次に掲げる記録の保存期間について、五年間に延長する」。それから、(一)から(七)までの書類について五年間に延長するという内容でございますが、2枚おめくりいただきまして、三と書かれた2行目のところの「経過措置」でございます。「一による改正後の労基則に規定する記録の保存期間について、当分の間、三年間とする」、こういう内容でございます。
こちらに関しましては、労働基準法109条の規定によりまして、今般の改正法におきまして、記録の保存に関しまして、法律上の本則を5年、附則で当分の間にする旨の改正を行っているところでございます。こういった書類は、賃金台帳や労働者名簿などを始めとした関係書類となっているところでございます。一方で、この労働基準法109条に直接基づかずに、労働基準法施行規則においてそれぞれ独自に書類の保存の記録の規定がございます。これらについて、この労働基準法に準拠いたしまして、これまで3年間としていた書類の保存につきまして、原則、いわゆる省令上の本則を5年といたしまして、附則で、当分の間、3年とする、こういった内容でございます。
具体的な書類につきましては、1ページ目の(一)から2ページ目の(七)まで掲げられているところでございますが、順を追って申し上げますと、(一)、これは三六協定の特別条項における健康確保措置の実施状況の記録の保存、(二)が専門業務型裁量労働制に係る労働時間の状況などの記録、(三)が企画業務型裁量労働制に係る労働時間の状況等の記録、(四)企画業務型裁量労働制に係る労使委員会の議事録、それから、(五)は年次有給休暇管理簿、(六)高度プロフェッショナル制度に係る同意などに関する記録、(七)高度プロフェッショナル制度に係る労使委員会の議事録、これらそれぞれにつきまして、これまで3年としていたものを、本則5年、附則で3年とする、こういう規定の整備でございます。
続きまして、3ページ目の「二 記録保存期間の計算の起算日」と書いてあるものでございます。こちらが改正内容の大きな2点目となってきますが、その(一)労基法109条に規定する賃金台帳及び賃金その他労働関係に関する重要な書類の保存期間の計算について、当該記録に係る賃金の支払期日が当該記録の最後の記入の日又はその完結の日より遅い場合には、当該支払期日を起算日とするという内容でございます。
この趣旨でございますけれども、労働基準法109条に規定する賃金台帳につきましては、文書の保存のいわゆる起算日は、この賃金台帳の最後の記入の日となってございます。加えまして、賃金その他労働関係に関する重要な書類につきましては、その完結の日から起算するという形で、現在、労働基準法施行規則に定められているところでございます。
一方で、労働基準法115条の消滅時効に関しましては、今般の見直しにおきまして、賃金の支払期日、こちらが起算点であることを明確化したわけでございますけれども、それぞれの法令の規定が分かれていることによりまして、記録の保存の起算日とこの消滅時効の起算日が必ずしも一致しないのではないかと解される懸念があるところでございます。
したがいまして、賃金の支払期日、これが消滅時効の起算点となりますけれども、先ほど申し上げた賃金台帳やその他の重要書類につきまして、こちらの日より遅くなる場合は、この支払期日を起算日として計算してくださいということを省令上明確化するという内容でございます。
こちらが大きな2点目でございまして、(二)につきましては、その省令上の記載している各種の書類、記録につきましても同様の扱いとするという内容でございます。
以上が労働基準法施行規則でございまして、4ページ目の第二とあります「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法施行規則の一部改正」につきましても、同趣旨の改正を行うことといたします。
一でございますが、「記録保存期間の延長」ということで、本則5年、先ほど申し上げた附則で、当分の間、3年という改正でございまして、書類の内容としましては、(一)労働時間等設定改善委員会の議事録、(二)労働時間等設定改善企業委員会の議事録、こういったものについて、今申し上げたような保存期間の定めをするということでございます。
それから、「二 記録保存期間の計算の起算日」でございますが、先ほど申し上げた起算日につきまして、第一の二の(一)、先ほど申し上げた賃金の支払期日のほうが遅い場合には、その支払期日を起算日としてくださいという内容でございますけれども、同様の扱いとするということでございます。
最後でございますが、最後のページ、「第三 その他」と書いております。一番で、「この省令は、労働基準法の一部を改正する法律の施行の日(令和二年四月一日)から施行する」という内容でございます。
以上が省令案要綱でございます。御審議、よろしくお願いします。
○荒木分科会長 ありがとうございました。ただいまの事務局からの説明につきまして、何か御質問、御意見があればよろしくお願いいたします。
佐藤委員。
○佐藤委員 ありがとうございます。
今、御説明のありました賃金請求権の消滅時効の起算日と、それから記録の保存の起算日が必ずしも一致しない場合があるということに関しての確認ですけれども、例えば勤務表などのタイムカードであったり、ICによる勤務カードの締めが2020年3月31日、月末締めだとして、その賃金がその翌月の4月25日に支払われるという給与の場合には、賃金台帳であったり、その他労働関係に関する重要な書類というものは、2023年の4月25日、そこまでが保存期間になるという理解でよろしいでしょうか。
○労働関係法課長 今の御質問の件、例えば、今年の3月31日にタイムカードが書類として完結されるといったケースかと思われます。賃金支払日が、改正省令であれば施行日後ということになりますけれども、その場合においても、いわゆる賃金支払日、つまり、4月から起算して3年の記録が必要と考えているところでございます。
○佐藤委員 ありがとうございます。
○荒木分科会長 輪島委員。
○輪島委員 ありがとうございます。
もう一度確認ですが、今の事例で言うと、3月31日までのデータについては、基本的には3年、それに基づいて改正法が施行された4月以降の4月25日の給与の支払いについては、今の改正の省令の案で言うと4月25日まで、だから3年後の2023年4月25日まで保存義務があると、そういう理解でよろしいかという質問だと思うので、もう一度明確にお答えいただきたいと思います。
○荒木分科会長 事務局からお願いします。
○労働関係法課長 今おっしゃった趣旨で結構でございます。
○荒木分科会長 よろしいですか。
ほかにはいかがでしょうか。
仁平委員。
○仁平委員 施行が4月1日、明後日からということがございまして、今回改正された内容は、賃金債権について、労働者の権利保護を拡充するものであって、この内容をぜひ周知徹底していただきたいと思っております。言うまでもなく、賃金、これは労働者にとって重要な生活の糧でもございますし、経済状況が厳しくなったとしても、未払賃金を発生させてもいいということではないと思いますので、この点についてもぜひ厳正な監督指導をお願いしたいと思っています。
その上で、先ほど資料2でもございましたが、政省令の要綱については改正労基法と同様に、記録の保存年限を原則5年とする中身でございますし、おおむね妥当なのではないかと考えております。起算日の明確化についても、支払われるべき賃金債権における記録を確実に保存するための改正として行うべきだと思っております。
なお、附帯決議にもございましたが、中小企業等における電子データ化の積極的支援が盛り込まれておるわけでありますが、5年後の見直しにおいて、本則の5年に戻すよう、記録の保存に係る負担の軽減を、ぜひとも積極的に進めてもらいたいと思っております。
また、今回の改正によって消滅時効期間と記録の保存記録が同じく3年となるわけですが、未払いの賃金債権を発生させないということは当然ですが、時効の完成直前にこの未払債権に気づく労働者もいると思いますし、その保護が欠けることのないように、記録の保存に関してもしっかりと監督指導していただきたいと思います。
以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょう。
池田委員。
○池田委員 ありがとうございます。私のほうからも、附帯決議のデータ支援の関係について一言申し上げたいと思います。
私どもといたしましても、生産性の向上であるとか、あと人手不足の解消の観点から、電子化については幅広く進めていくことが重要だと考えております。附帯決議の中にもあるとおり、中小企業等を中心に、まだまだデジタル管理が進んでいなくて、文書のデジタル化であったり、電子決済を進める機器の購入、Wi-Fiの設置ですとか、企業の生産性向上のために環境整備を行っていく必要があると考えます。
また、電子申請の割合が、三六協定であるとか、就業規則の届出に関しては非常に低いと聞いております。ぜひとも労働基準監督署の窓口でこういった部分も強力に奨励しまして、電子申請の普及を図っていくべきでないかと考えております。
以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
確認の質問はございましたけれども、特段、異論、異議があるということではございませんでしたので、ただいま説明のあった省令案要綱につきまして、おおむね妥当と認め、労働政策審議会宛て報告することにしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○荒木分科会長 ありがとうございます。そのように進めさせていただきます。
それでは、事務局から答申の案文と報告のかがみの配付をお願いいたします。
(事務局から答申案文、報告かがみ配付)
○荒木分科会長 それでは、お手元の答申と報告の案について御確認いただきたいと思いますが、事務局から読み上げはよろしいですか。
それでは、短いものですので、御確認いただきたいと存じます。
御覧いただいたということで進めますけれども、労働政策審議会令第6条第9項及び労働政策審議会運営規程第9条の規定により、「分科会の議決を持って労働政策審議会の議決とすることができる」こととされております。
そこで、お配りしたかがみ文のとおり、労働政策審議会長宛てに報告し、この報告のとおり厚生労働大臣宛て答申を行うこととしたいと考えますけれども、よろしゅうございますか。
(「異議なし」と声あり)
○荒木分科会長 ありがとうございます。そのように取り計らうことといたします。
それでは、ここで坂口労働基準局長より御挨拶をいただきたいと存じます。よろしくお願いします。
○労働基準局長 賃金請求権の消滅時効に関わります労基法の改正につきましては、先ほど御紹介しましたとおり、先週末、国会のほうで成立し、4月1日から施行される予定となっておりますが、委員の皆様にはこれまで真摯に御議論いただきまして、誠にありがとうございます。
また、本日、この改正を踏まえました労働基準法施行規則等の一部を改正する省令案要綱につきましても、ただいま御報告を頂戴いたしましたことについて感謝を申し上げます。
今後、本法の円滑な施行に向けましてしっかりと対応を進めてまいりますので、委員の皆様方には引き続き御協力をよろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。
○荒木分科会長 ありがとうございました。4月1日の施行直前ではございますけれども、省令改正についても御協力、御理解いただきましたことに分科会会長としてもお礼を申し上げます。どうもありがとうございました。
それでは、次の議題に移りたいと思います。「(3)2019年度中間評価について」であります。事務局から説明をお願いいたします。
○労働条件政策課長 事務局でございます。
資料No.3をお手元に御用意いただきたいと思います。資料No.3「2019年度中間評価 評価シート」、1枚おめくりいただきまして資料の1ページを御覧いただきたいと存じます。
労働政策の推進に当たりましては、労働政策審議会の各分科会におきまして関連する目標を定め、施策の実施状況について毎年中間評価及び年度評価を行うこととされております。当労働条件分科会におきましては、2020年までの目標といたしまして、1ページ目、上のほうに書いてございますとおり、年次有給休暇取得率を70%とする。それから、週労働時間60時間以上の雇用者の割合を5%まで下げるということを目標としてございます。
このたび、後者、週60時間以上の雇用者の割合に関しまして実績が出ましたので、このタイミングで、2019年度の中間評価を行うものでございます。
2019年のデータでございますけれども、この表にございますとおり、週労働時間60時間以上の雇用者の割合は6.4%となりました。2年前の7.7、前年の6.9からさらに減少を続けているところでございます。
一方で、2020年に5%に下げるとするためには、昨年が6.9でございましたので、5.9%になることを目指しておりましたが、そこまでには至らなかったというところでございます。
1ページ目の中ほどから下に、2019年度の施策の実施状況を記載してございます。1ページ下のほうの○にございますとおり、順次施行されております働き方改革関連法の周知、それから、めくっていただきまして2ページ目に、○でございますけれども、様々な支援といたしまして、(1)の働き方改革推進支援センター、(2)の改善コンサルタント、(3)の助成金といった取組を進めております。また、今般、新たな項目といたしまして、(4)「しわ寄せ」防止総合対策について記載してございます。
これにつきましては、昨年の6月に、厚労省、中企庁、公正取引委員会の3者連名によりまして、「しわ寄せ」防止総合対策を策定いたしまして、大企業、親事業者から中小下請事業者に対しまして、例えば著しい短納期発注、あるいは頻繁な仕様変更、そういったしわ寄せが行われた場合には、中小・下請の労働環境を悪化させ、その働き方改革を阻害するおそれもある。そのようなことから、3省庁の連携による情報共有を図りながら、しわ寄せ防止に取り組んでいるというものでございます。
続きまして、1枚おめくりいただきまして、3ページを御覧いただきたいと存じます。3ページからは施策の実施状況の分析について記載してございます。
まず、マル1として、今回はまだデータは出ておりませんが、年次有給休暇について記載してございますが、その4段落目、「さらに」から始まる部分、この5行に関しまして新たに記載してございます。その内容でございますが、昨年の年度評価におきまして、働き方改革関連法によります年5日の年休取得の義務化、それにはとどまらずに、10月のキャンペーン期間などを捉えて、さらに取り組んでいくべきという御指摘を頂戴していたことを踏まえまして、10月にやっております取組、さらにはゴールデンウィーク、夏季、年末年始などの連続休暇、そういった取組について記載いたしてございます。
また、同じ3ページの一番下でございます。今回データが出ました週労働時間60時間以上の雇用者の割合、これは6.4%でございましたが、3ページの一番下、「また」のパラグラフ、新たに記載してございます。これは昨年の中間評価におきまして、最も長時間労働に陥りやすい週労働時間が40時間以上の雇用者の中での週労働時間60時間以上の者の割合、これも明らかにすべきであるという御指摘を頂戴していたことを踏まえたものでございます。
記載のとおりでございますが、割合といたしましては、2019年が10.9%でございますので、全体の6.4よりは大きくなってございますが、前年の11.6%からは減少を続けているという状況でございます。
最後の4ページを御覧いただきまして、4ページに関しましては、まず改正労働基準法の施行に関して書いてございますが、3番目のパラグラフ、「また」ということで、勤務間インターバル制度の取組に関して記載を新たにしてございます。
これにつきましては、昨年の中間評価におきまして、企業各社では労働時間の短縮、長時間労働の抑制、様々な対応をしている、そういった中で、勤務間インターバル制度など、施策を総動員して目標を達成していくべきであるという御指摘を頂戴していたことを踏まえたものでございます。
以上のような取組を踏まえまして、「施策の達成状況を踏まえた評価及び今後の方針」とございます。今回データが出ましたマル2、さらに、今回データは出てございませんが、マル1も含めまして、まずは働き方改革関連法、その履行確保、さらには丁寧な助言・支援に取り組んでいくということ。さらには、この改正法にかかわらず、各種施策の総合的な推進を図ることによりまして、過重労働による健康障害の防止、さらにはワークライフバランスの観点から、企業における自主的な取組を含めまして促進していく、そのようにまとめさせていただいてございます。
以上が2019年度の中間評価の概略でございますが、この4ページの一番最後、「分科会委員の意見」という欄に、本日この後頂戴いたします御意見を整理して記載させていただきました上で、この中間評価シートの取りまとめとさせていただきたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
○荒木分科会長 ありがとうございました。ただいまの説明につきまして、何か御質問、御意見があればお願いいたします。
津村委員。
○津村委員 ありがとうございます。
今、御説明いただきました、まず週の労働時間60時間以上の者の割合に関しましては、これまで我々労働者側委員のほうからも、週の労働時間が40時間以上の者のうち、週60時間以上働いた者の割合についても達成目標を設定し、実績値の記載を行うべきではないかといった意見を述べてまいりました。実績値に関しましては記載を追加いただいたということで、まず御礼申し上げたいと思っております。
また一方で、年次有給休暇の取得率の関係でありますが、今、御説明があったとおり、2020年までに70%という目標と、今、御説明のあった実績値、この間は非常に大きな乖離があると認識しております。
そういった意味で、目標達成に向けた取組の内容を、評価シートの4ページにも記載していただいておりますが、このような従来の内容を踏襲するというだけの取組では、2020年までに掲げている目標を達成するというのは難しいのではないかなとも受け止めておるところであります。
労働組合としましても、それぞれの職場におきまして、全ての労働者が最低5日取得するのはもちろんのこと、取得率100%を目指して計画的な取得の制度化などにも取り組んでいるわけでありますけれども、現状を踏まえますと、政労使の一層の取組が必要ではないかと思っております。
年次有給休暇の取得率だけではなく、週労働時間60時間以上の者の割合に関しましても言えることでありますが、少し言い方が失礼かもしれませんが、本気でこの目標を達成しようということであるならば、政府の取組を、抜本的に見直しをすることも含めて拡充していく必要があるのではないかという受け止めをしております。この点につきまして、ぜひ事務局の見解をお伺いしたいと思っております。
以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。お尋ねありましたけれども、事務局からいかがでしょうか。
○労働条件政策課長 事務局でございます。
津村委員の御指摘、ありがとうございます。この間、両方のデータに関しましても、この目標値には近づいてはいるものの、まだ両方とも距離があるというところは御指摘のとおりであると思います。そういった中で、前回も申し上げましたとおり、今回のこの改正法といったもの、まずこれが基本としてはかなりの影響が出てくると。ただ、それだけでは必ずしも十分ではないということで、さらにそれを上回る労使も含めてのお取組をどのように進めていくのかということであったと思います。
そういったお話におきましても、先ほどのインターバルも含めまして、この直接目標値に関連すること以外の部分であっても、こういった労働時間の短縮、あるいは休暇の取得促進につながる施策もあろうと思いますので、今後とも、そういう幅を広げて様々な取組をよくよく進めていきたいと考えております。また、そういった状況に関しましても、今後ともこの分科会にもこういった機会に御報告させていただきながら進めてまいりたいと考えてございます。
○荒木分科会長 よろしいでしょうか。
○津村委員 ありがとうございました。おっしゃるとおり、色々な角度や方面から、様々な取組を考えていくというのは当然必要だと思うのですけれども、今の目標設定は、漠とした全体の統計の数字の位置づけでありますので、例えば業種・業態、規模別とか、もっとブレークダウンして、実際にどこの部分でどういったところの取得率が伸びていないのかとか、そういったことも含めて分析を詳細に行った上で、効果的な取組というのはどういうものがあるかというアプローチの考え方もぜひ検討いただければと思っていますので、よろしくお願いします。
以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
世永委員、どうぞ。
○世永委員 私のほうからも中間評価について、年次有給休暇の取得向上に関連して発言させていただきます。
皆様御存じのとおり、運輸業界は、全産業の中でも労働時間が特に長く、年次有給休暇の取得率向上もなかなか思うように進んでいないという状況です。
近年、ネット通販が急成長して、労働者が非常に多忙になっています。特にまた、最近では新型コロナウイルス感染症の影響で、通販関係の業務がさらに増加しています。
こうした運輸産業の働き方の改革に向けて、政府では、ホワイト物流を始めとした様々な取組を進めてもらっています。
これらの取組の中でも問題意識が共有されているように、運輸産業の労働者の働き方は、荷主や一般消費者の意識・行動によって特に影響されます。特に今回のコロナの関係では、テレビ、マスコミ等の報道のとおりだと思っています。そういったことを変えていかないと、いくら個社で努力しても限界があると考えております。政府の目標の達成のためには、評価シートで記載されている「働き方改革関連法の周知啓発」、「働き方改革支援センターでの支援」、「働き方・休み方の見直しに向けた自主的な取組の促進」といったことは非常に重要であり、今後もぜひ力を入れてほしいと考えております。
ただ、このような一般的な取組だけでなく、先ほど運輸産業の事例を申し上げましたけれども、業界特有の構造的な問題に着目していただき、産業ごとに全然違うのだということをぜひ御理解いただきたいと思っています。そうした点にも目を向けて、産業ごとの特殊性を踏まえた、実効性のある取組をぜひ進めていただきたいということであります。
以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょう。
鳥澤委員。
○鳥澤委員 ありがとうございます。
まず、この中間評価の年次有給休暇の取得率についてです。従業員規模の小さい中小企業にとってはなかなか有給休暇を取りづらいということがありますが、経営者の意識改革、また管理職及び従業員の意識改革等を行うことによって少しずつ取得率は向上していると私は思っております。今年度は新型コロナウイルスの影響があったため前年度との比較が非常に難しいのですが、取得率というのは増えているのではないかと思っております。
ただ、従業員等と話をしますと、今回のこの新型コロナウイルスの状況にあっては、なかなか取りづらい、残しておきたいという意見が出てきているのも事実でございます。ですので、今後、経営者や企業にとっても、また労働者にとっても不安を解消できるような有給休暇の形というのを模索する必要があるのだろうと私は感じてございます。
次に、施行に向けた支援の(4)「しわ寄せ」防止総合対策についてということでございますが、昨年4月から大企業に対する時間外労働の上限規制が施行されております。日本商工会議所が本年1月に実施した調査では、12.1%の中小企業、特に建設業では2割、具体的には19.9%の企業が、発注者側企業の働き方改革に伴って、業務負荷の増大が生じているという事実がございます。
また、3月に実施した景況調査では、業況判断DIが-49.0と、前月比-16.4%と過去最大幅の下げでございました。さらに、新型コロナウイルスの感染拡大に関して、経営に影響があると回答した企業は実に92.1%に達してございます。まさに未曾有の危機ということでございます。こうした状況を踏まえ、厚生労働省におかれましては、他の省庁と緊密に連携して、中小企業等に対する「しわ寄せ」防止対策を強力に推進していただきたいと考えてございます。
以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
佐久間委員。
○佐久間委員 ありがとうございます。
2019年度の中間評価については、働き方改革、本格的に稼働していく途中段階であり、一つ一つの項目を見れば、まだまだ達成はしていないということが言えると思います。働き方改革について、このような中間評価をしていく際に、業務を改善しながら効率的に、よりよい仕事をしていく。そして、一つ一つの項目を積み重ねて生産性向上を図っていくということで、労使ともに協議をしながらやっていくものではないかと考えております。
そこの中で、この数字だけを見ると、何%達成したというのは当然ですけれども、そこに表れる生産性がどのぐらい伸びたかとか、世の中、利益がなかなか出ないことから、すぐ生産性が上がるわけではないと思うのですけれども、そういう生産性的な指標というのを意識したものが余り出ていないのではないかと感じております。この数字を見れば、効率化が図られているとか、そういうのが見えにくいかもしれませんけれども、ぜひ生産性を意識した数値的なもの、指標的なものを今後入れていただくような検討をしていただくのもよろしいのではないかと思います。
以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
川野委員。
○川野委員 ありがとうございます。
先ほども若干触れられましたけれども、新型コロナウイルス感染症の拡大が今広がって、先が見えない状況が続いており、経済活動に深刻な影響を与えていると言わざるを得ないと思います。この影響によって、働く現場の実態も大きく変化し、特に報道でも取り上げられていますけれども、マスクの製造会社、医療機関等では想定しなかった長時間労働を行っている反面、小売業等と飲食店等々については労働時間が大幅に短縮される、操業を停止する、休業するということが広がっているところでございまして、産業によって、かなり違いが出ているということでございます。
先日、我々、組織の中で緊急調査を行ったところ、746企業労働組合のうち380労働組合が「操業に影響が出ている」「今後影響が出ると考えられる」という双方の回答が半数以上を占め、深刻な状況にあると認識しているということでございまして、これが長引けばより一層さらなる深刻な状況が強まるだろうと思っています。
こうした状況を受けて、先ほど説明いただきました中間評価については、労働時間や年次有給休暇の取得状況について調査を実施して政策評価を行うこととなるわけでございますけれども、その際に、前置きしました新型コロナウイルス感染症の拡大によって現状の働き方が変化している中で、年次有給休暇の取得率や週60時間を超える労働者の率が一時的に低下するということが、2020年の調査結果においては反映されるのではないかと思いますので、調査の値に新型コロナウイルス感染症による影響が加味されていることを留意しながら分析していただきたいということをお願いしておきたいと思います。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
事務局からお願いします。
○労働条件政策課長 事務局でございます。
世永委員、鳥澤委員からいただいた御指摘、1点目の津村委員の御指摘とも共通する部分があろうと思いますので、そういった業種別などの分析も踏まえまして、今後工夫を検討させていただきたいと存じます。また、佐久間委員からいただいた生産性的な指標に関しても、あり得るかどうか、少し検討させていただきたいと思います。
また、新型コロナウイルスの影響に関して、川野委員からございました。確かに今年のデータに関しましては、恐らく通常と違った動きもあろうかと思いますので、ある程度そういった、例えば中期的なトレンドと併せて見ていくとか、そういったことも含めて留意してまいりたいと思います。ありがとうございました。
○荒木分科会長 ほかにはよろしゅうございますか。
それでは、ただいまいただいた意見を踏まえてまとめるようにお願いいたします。
次の議題に移ります。「(4)科学技術基本法等の一部を改正する法律案について」であります。事務局から説明をお願いいたします。
○労働関係法課長 それでは、資料No.4-1、それから4-2に基づきまして御説明させていただきます。
資料No.4-1は一枚紙になっておりますが、「大学、研究開発法人等の研究者等に対する無期転換ルールの特例について」と題しているものでございます。
枠囲みの中にございますように、「有期労働契約が更新により通算5年を超えた場合には、労働者の申込みにより、無期転換できる」。これはいわゆる無期転換ルールと称しておりまして、労働契約法第18条に規定しているところでございます。
ただ、傍線で書いております大学等、研究開発法人等の研究者等につきましては、科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律におきまして、無期転換の申込みができるまでの期間を通算10年とするという特例が定められております。この特例は平成25年に、法律であれば旧名になってくるわけでございますが、略称研究開発力強化法などと称されておりましたが、この法律、議員立法で制定されたという経緯もございまして、この法律におきまして、先ほど申し上げた無期転換ルールの通算年数が5年ではなく10年とするというような特例の規定が設けられているところでございます。
この特例の対象者が、真ん中の枠囲みの中に書いている対象者でございます。それから、対象となる大学、研究開発法人、試験研究機関などにおきましても限定列挙がされているというような法律上の仕組みになっているところでございます。
そこで、資料No.4-2でございます。ちょっと厚い資料でございますが、1枚目に概要の資料をつけております。科学技術基本法等の一部を改正する法律案が今国会に提出されたところでございます。この内容につきましては、科学技術の関連する法律の束ね法の性質を有しておりますが、その中で、2と書いてあるところでございます。科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律(科技イノベ活性化法)というところでございますが、今般、この改正におきまして、法の対象に人文科学のみに係る科学技術を追加するとともに、人文科学分野などの3つの独立行政法人を研究開発法人に追加するという改正が行われているところでございます。
先ほどの一枚紙では研究開発法人それぞれ法律上列挙されているところでございますが、これに加えまして、国立特別支援教育総合研究所、経済産業研究所、環境再生保全機構といった人文科学に関連する人文科学分野の独立行政法人が新しく研究開発法人に追加されたというような内容となっているところでございまして、今般、労働条件分科会にこちらの内容について御報告をさせていただくというものでございます。
説明は以上でございます。
○荒木分科会長 ありがとうございました。ただいまの説明につきまして、何か御質問、御意見があればお願いいたします。
八野委員。
○八野委員 報告ありがとうございました。今、報告として聞いたわけですが、今回の改正によって、人文科学分野の3つの独立行政法人で働く有期契約労働者の研究者も無期転換ルールの特例の対象になるという報告がございました。思い返してみますと、第105回、106回の労働条件分科会に、有期契約労働者の研究者等の無期転換申込権の発生要件を10年超にするという特例を設けるという報告が出てきました。これは議員立法による法整備であるということで、今、報告もありましたが、その理由で、労政審の場で議論が行われませんでした。
そのときに、これは労使双方の委員からも、また当時の座長からも、労働関係法令の見直しは労政審の議論を経た上で対応すべきだという意見が出されました。それに対して事務局のほうからは、労働関連法令の見直しに当たっては、三者構成主義を最大限尊重することが重要である、という答弁があり、また、当時の座長からは、労政審の場の審議の基本的な立場を維持してほしいというようなご発言がありました。
今回の法改正は、無期転換ルールの特例自体の見直しではない、だから、労政審で議論すべき労働関係法令の制定・改廃には当たらないという認識でいるのかどうか。雇用の安定を目指す無期転換ルールの趣旨に合致しない特例の対象を拡大するということは、事実上、基本的な権利義務に関わる制度の見直しであるという見方もできると思います。
というのは、新たな特例の対象になる方たちが50名ぐらいいらっしゃるということで聞いておりますが、これは決して多い少ないという数の問題ではなくて、その人たちの労働条件を決める重要な部分であろうと認識しております。また、将来的に考えた場合に、研究者が増えてくることで、特例の対象者が増えてくるという可能性があるのかもしれません。
そういうことを考えていった場合に、議論の進め方として、この労働条件分科会で報告だけを行うという扱いでいいのかどうか、例えば関係者のヒアリングなどを行う、または実態を十分私たちが理解した上で、その成案を得るというような手順をとるべきなのではないかなと、またはそうあるべきでなかったのではないかと考えます。
今回、当分科会で我々が直接ヒアリングできたわけではなく、その内容を熟知しているわけではない中で、人文科学分野にもこういう特例を拡大していくということを、こういう決め方で進めると、やはり無期転換ルールの規定が空文化してしまうという懸念もあるのではないかと考えています。
労政審の議論のあり方、または今後の特例対象者の決め方ついて、事務局としてどのような見解を持っているのか、ここでお伺いし、確認したいと思います。よろしくお願いいたします。
○荒木分科会長 事務局からお願いします。
○労働関係法課長 ありがとうございます。何点か御指摘をいただいたところでございます。
今回の科学技術イノベ法の見直しに当たりましては、委員御発言いただいた内容とほとんど重複する部分もございますけれども、直接、無期転換ルールの特例といった労働法令の見直しに該当するものではないということではございますが、結果的に、委員がおっしゃるように、労働契約法の特例の対象者が、非常に少ない人数ではあるものの、一定程度増加するというような内容を含んでいるということでございます。
したがいまして、直接この労働政策審議会での御審議という形ではないものの、この労政審に御報告するという形で、今般、私どものほうでそのような形をとることが適当ではないかと判断したところでございます。
加えまして、無期転換ルールの特例の対象者につきましてでございます。ここについては、委員がおっしゃられましたように、きちっと注視していく必要があろうかとは思います。今般の改正により対象となる研究開発法人につきましては、法律上、限定列挙であり、法改正のプロセスが必要になると。加えまして、私ども、法律の所管省庁からは、現時点でこれ以上の内容について特段の拡大をする旨の検討を行っているということは聞いてはいないところでございますが、そこは引き続き注視していきたいと考えているところでございます。
以上です。
○荒木分科会長 八野委員。
○八野委員 ちょっとここで確認しておきたいのですが、まず、ある程度対象を絞って10年にするということは、すでに法改正されたことです。そこの枠が広がるということは、労働関連法制の見直しにはならないという見解でよろしいのですか。
○荒木分科会長 事務局からお願いします。
○労働関係法課長 今般の科学技術基本法等の一部を改正する法律の中では、法の対象の研究開発法人におきまして人文科学分野の研究開発を加えるという形で、科学技術の関連施策全体の中での見直しということでございますので、直接この労働関連法制度の制定・改廃には当たらないだろうと。
ただし、委員おっしゃいましたように、結果として影響が生ずるという部分も出てくるということはおっしゃるとおりだと思います。そういうことを踏まえまして、今般は、この内容につきまして、きちっとこの労働条件分科会に報告をすることが適当ではないかと事務局のほうで判断して、本日、こういった形で御報告させていただいた次第でございます。
○荒木分科会長 八野委員。
○八野委員 了解いたしました。ただし、今後なのですが、こういうことがまた様々な場面で起きてきたときに、使用者側でも労働側でも、この分野というのはなかなか直接関わりがあるところではありません。当分科会である程度報告を受けていかなければいけないということになった場合、もう少し、規模がどのぐらいで、現状がどうなのかというようなことの報告も含めて提示していただければ大変ありがたいと思いますので、よろしくお願いします。また、今後の運用をぜひきちんとお願いしたいと思います。
以上です。
○荒木分科会長 ありがとうございました。
北野委員。
○北野委員 ありがとうございます。同じ議題に関して質問と意見を申し上げたいと思います。
八野委員からもあったとおり、扱いについては少し私としても疑問が残るところではありますが、そもそも無期転換ルール、これは有期雇用契約労働者の雇用の安定を目的としたものだということからすると、雇用の安定は研究者であっても当然実現されるべきものであるということについては申し上げた上で、今後、この人文科学分野で特例が拡大されるのであれば、当然、対象者の雇用の安定が十分に図られなければならないと思っているところでございます。
そこで質問でございますが、研究開発力強化法の国会審議の際に、衆議院文部科学委員会において、特例対象者の雇用の安定に関する4項目の附帯決議がなされたと理解しております。その中には、特例の対象者の雇用安定のために必要な研究開発の推進の基盤整備について検討し、必要な措置を講ずるということ、それから、民間企業で有期雇用される研究者等が大学等と共同開発研究を行う場合の特例についても、研究者等の雇用安定が図られるよう検討を行い、必要な措置を講ずることということが求められていたと思いますが、まず、その結果と評価について事務局に確認したいと思います。お願いします。
○荒木分科会長 事務局からお願いします。
○労働関係法課長 今、委員おっしゃいましたのは大きく2点あるかと思います。1つは、特例の対象となる方の雇用の安定を図るために必要な、いわゆる研究開発などの基盤整備ということでございます。こちら、いずれも当省所管の部分ではございませんが、科学技術人材の育成に当たりまして、文部科学省などで様々な事業をやっていくことによって、例えば具体的には科学技術人材育成のコンソーシアムの構築、あるいは優秀な若手研究者が自律した研究環境を実現するための卓越研究員制度、こういったものがあるやに私ども聞いているところでございますけれども、そういった内容につきまして努力を重ねているやに聞いているところでございます。
もとより、科学技術の研究基盤におきましては、大学、あるいは研究機関に係る研究費、予算的なものをしっかり確保するといった努力が必要になってくるかと思いますけれども、そういったところを含めて関係省庁において取組を進められているやに承知しているところでございます。
もう一点におきましては、大学などと共同研究開発を行う場合、これは民間企業で有期雇用される形になっているところでございます。この法律の構成でございますけれども、この労働契約法の特例の対象者が著しく拡大するような懸念があったということがございまして、この共同研究をやる際の民間企業で有期雇用される研究者などのうち、特例の対象とする方についてはいわゆる専従者という形で法律上限定しているところでございます。こういった形で、しっかりと運用についても、厚労省、それから文部科学省それぞれが関係機関に通知を発出しているところでございまして、そのような運用についても引き続き私どものほうで注視していきたいと考えておるところでございます。
○荒木分科会長 北野委員。
○北野委員 ありがとうございました。その施策で十分特例の対象者の雇用の安定が確保されるかどうかを、もう少ししっかり見なければならないと思っておりますが、いずれにしろ、附帯決議も踏まえて、雇用が不安定にならないようにしっかりとした対応をお願いしておきたいと思います。ありがとうございました。
○荒木分科会長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
よろしいでしょうか。
それでは、本日の議題は以上で終了ということにさせていただきたいと存じます。
最後に、次回の日程等について、事務局から御連絡をお願いします。
○労働条件政策課長 次回の労働条件分科会の日程、場所につきましては、調整の上、追ってお知らせいたします。
○荒木分科会長 それでは、これをもちまして、第160回「労働条件分科会」を終了といたします。
なお、議事録の署名につきましては、労働者代表の川野委員、使用者代表の池田委員にお願いいたします。どうもありがとうございました。