第12回 厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会 議事録

日時

平成30年7月17日(火)13:00~17:30

場所

中央合同庁舎4号館1208会議室

出席者

委員

議題

1 開会
2 議事
  (1)国立研究開発法人国立長寿医療研究センターの平成29年度業務実績評価について
  (2)国立研究開発法人国立成育医療研究センターの平成29年度業務実績評価について
  (3)国立研究開発法人国立精神・医療研究センターの平成29年度業務実績評価について
  (4)その他
3 閉会
 

配布資料


【国立研究開発法人国立長寿医療研究センター】

資料1-1 平成29事業年度 業務実績評価書(案)
資料1-2 平成29事業年度 業務実績概要説明資料
資料1-3 平成29年度 財務諸表等
資料1-4 平成29年度 監査報告書


【国立研究開発法人国立成育医療研究センター】

資料2-1 平成29事業年度 業務実績評価書(案)
資料2-2 平成29事業年度 業務実績概要説明資料
資料2-3 平成29年度 財務諸表等
資料2-4 平成29年度 監査報告書


【国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター】

資料3-1 平成29事業年度 業務実績評価書(案)
資料3-2 平成29事業年度 業務実績概要説明資料
資料3-3 平成29年度 財務諸表等
資料3-4 平成29年度 監査報告書
 

議事

第12回 厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会
○医政局医療経営支援課江口課長補佐 
 定刻になりましたので、ただいまから第12回「厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会」を開催いたします。
 議事に進むまでの間、進行役を務めさせていただきます、医療経営支援課の課長補佐をしております江口でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 委員の皆様には、大変お忙しい中お集まりいただきまして、まことにありがとうございます。
 本日は、大西昭郎委員と本田麻由美委員が御欠席と連絡をいただいております。
 8名の委員の先生方に御出席いただいておりまして、過半数を超えておりますので会議が成立することを御報告いたします。また、深見委員におかれましては、議事の2番目、成育の部分から参加される予定である旨の連絡をいただいております。それでは、本部会の開催に当たりまして、医政局医療経営支援課長の樋口より御挨拶をさせていただきます。
○医政局医療経営支援課樋口課長  
 医療経営支援課長の樋口でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日は、委員の先生方におかれましては、非常にお暑い中、また、御多忙のところ御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。
 本部会におきましては、国立高度専門医療研究センターの第2期中期目標期間におきます3年目ということですが、平成29事業年度の業務実績評価に係る御意見を頂戴するものでございます。この部会につきましては、本日と来週、また、23日の月曜日でございますが、その2日間にわたりまして御審議いただくということでございますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 この部会におきましては、委員の皆様方から御専門の立場から忌憚のない御意見、御助言を賜れればと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 簡単ではございますが、開会に先立ちまして挨拶とさせていただきます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
○医政局医療経営支援課江口課長補佐 
 続きまして、本日の会議資料の確認をお願いいたします。
 まず配付資料でございますが、委員の先生方のお手元に委員名簿と座席表。
 紙の媒体としまして資料1-2と資料1-4が長寿医療研究センターの部分です。成育医療研究センターの部分で資料2-2と資料2-4。精神・神経医療研究センターの部分で資料3-2、資料3-4となっております。資料1-1、資料1-3、各々奇数の部分につきましては本体資料等でございますが、タブレットに入れております。いずれにしましてもタブレットには全ての資料が入っております。
 そのほか、委員の先生のお手元にのみでございますが、今回、評価を御記入いただく用紙としまして、平成29事業年度評価評定記入用紙をセンターごとに配付しております。こちらまた点数を入れていただきまして事務局に提出いただくのですが、本日でも結構ですし、来週23日の2回目のときでも結構です。6センターまとめて全部横並びで見ながら評価される先生もいらっしゃるでしょうから、8月1日までに事務局に提出いただきたいというものでございます。いずれの方法でも可能でございますので、委員の先生方に沿ってやっていただければと思います。
 また、永井部会長から事前に依頼がありました資料を非公開資料として先生方の机上に置かせていただいております。特に非公開資料の参考8、参考9が初めての資料でございます。
 資料の不足、乱丁等ございましたらお申しつけください。よろしいでしょうか。
 それでは、以降の進行につきまして永井部会長、よろしくお願いいたします。
○永井部会長 
 暑い中、先生方、また、センターの皆様、お集まりいただきましてありがとうございます。早速、国立研究開発法人国立長寿医療研究センターの平成29年度業務実績評価について御議論をいただきます。
 初めに、研究開発の成果の最大化に関する事項の評価項目1-1と1-2に係る業務実績及び自己評価から始めさせていただきます。
 法人から説明をいただいて、その後に質疑応答で進めてまいります。
 それでは、よろしくお願いいたします。
○国立長寿医療研究センター鳥羽理事長 
 お暑いところ御苦労さまでございます。
 いつもネクタイを締めているのですが、命にかかわる猛暑ということで失礼させていただきます。
 評価実績、ポンチ絵の3ページと4ページを使いまして、法人の長として御挨拶とお願いがございます。
 3ページにございますように、センターの設立目的は、加齢に伴って生じる心身の変化及びそれに起因する疾患であって、高齢者が自立した日常生活を営むために特に治療を必要とするものに係る医療に関して、調査、研究、技術の開発を行うとありまして、理念は、それを簡単にしたものでございます。
 組織の規模といたしまして、職員数は570名でございますが、22年度から比べると100名以上増えております。また、この主なものは医療従事者が増えております。
 次のページを見ていただきますと、組織の最大化を図るためにセンター内センターをつくりまして、病院と研究所の連携を密にして、心と体の自立を促進するための有機的な連携が図られているかどうかをぜひ御評価いただきたいと思いますが、前大島総長が「治す医療」から「治し支える医療に」というふうにコンセプトを展開しなければいけないということで、もちろん高齢者の自立を阻害する認知症、フレイルといったものの治療にかかわる予防、治療、研究開発が最大の指針であることは間違いないところでございますけれども、加齢に伴って指数関数的に増える2つの疾患は、いずれも90歳、100歳では9割以上の罹患率になりまして、同時に支える医療、福祉あるいは社会的な対応も含めて、これらを社会実装と捉えているところでございます。
 したがいまして、教育や医療介護システム、介護の科学化に至る、あるいはエンド・オブ・ライフケアにかかわる、そのような高齢者の全体像に関する医療・介護の研究開発といったものが8つのセンター及び病院、研究所でできているかどうかといったことを評価の軸の1つとして御評価いただければ幸いでございます。
 以上、簡単ではございますが、よろしくお願いいたします。
○国立長寿医療研究センター柳澤研究所長 
 研究所長の柳澤です。よろしくお願いします。
 それでは、業務実績概要説明資料の5ページをご覧ください。評価項目1-1、担当領域の特性を踏まえた戦略的かつ重点的な研究・開発の推進について、認知症に関する研究成果を中心に説明させていただきます。
 「Ⅰ 中長期目標の内容」は、記載のとおりであります。
 「Ⅱ 目標と実績の比較」では、平成29年度の成果のうち特に顕著なものとして、以下の3点を挙げさせていただきます。
 第1点、アルツハイマー病血液バイオマーカーを世界で初めて開発いたしました。
 第2点、アルツハイマー病先制治療薬開発を企業導出前まで推進いたしました。
 第3点、世界初の時間軸を踏まえた認知症コホートレジストリを構築いたしました。
 以上を踏まえ、評価項目1-1の自己評価はSとさせていただきました。
 次に、それぞれにつきましてポンチ絵で説明させていただきます。
 7ページをご覧ください。アルツハイマー病変を正確に予測し得る血液バイオマーカーの開発に世界で初めて成功し、本年2月にNature誌に発表いたしました。脳内病変を早期に、かつ、正確に検出することは新薬開発に重要ですが、これまでのPET検査や髄液検査は費用が高額で、侵襲性が高いことが大きな障害でありました。私どもは島津製作所と共同し、わずかな血液で90%の正診率で脳内病変を発症前の段階から検出することに成功いたしました。プレス発表の直後から大きな注目を集め、JAMAを初めとした専門誌や国内外のメディアで広く紹介されました。早急に外部の皆様からの解析依頼にお応えできる体制を整え、実利用としてはアルツハイマー治療の治験の大幅な効率化、アルツハイマー病診断精度の向上、さらに予防薬あるいは治療薬が開発された段階におきましては、一般検診への組み入れも検討したいと考えます。
 8ページ、アルツハイマー病先制治療薬開発では、Aβ重合阻害薬につきまして探索系構築、ヒット、リード化合物の獲得、リード化合物の最適化を経て、平成29年度にアルツハイマー病モデルマウスでのPOC試験を実施し、本年1月に私どもの最適化リード化合物が安全かつ有意に脳内のアミロイドの蓄積を抑制することが示され、製薬企業導出に向けた協議を開始いたしました。
 このAβ重合阻害薬は、これまでの抗アミロイド薬とは作用標的、作用機序において一線を画すものであります。具体的には、現在の治療薬開発の主役であるBACEインヒビターのように、脳内の生理的代謝を阻害することはなく、Aβ重合という病的過程の開始点をピンポイントで叩くことにより、副作用の軽減が期待されます。また、抗体医薬やワクチンに比べ圧倒的に廉価であり、長期間の使用も可能であることが大きな強みであります。アルツハイマー病の発症を抑える先制治療薬として、また、発症後の進行を抑える通常治療薬として有用性が期待されます。また、29年度においてはタウオリゴマー標的薬、ミクログリア機能調節薬の探索研究にも着手いたしました。
 9ページ、オレンジレジストリー・コホート研究は、平成29年度に大きく進展し、前臨床と軽度認知機能障害の登録者数がそれぞれ4,500名、1,000名となり、さまざまな臨床研究や治験への活用が可能となりました。加えて平成29年度におきましては東北メディカル・メガバンクと連携協定を締結し、若年期から高齢期まで長期にわたって認知症発症危険因子等の解析が可能な、世界に類を見ないコホート研究体制の構築が可能となりました。この大規模なコホート研究の最終的なアウトカムメジャーは認知症発症におきますが、発症前に客観的に捉えることが可能なアミロイド病理やタウ病理に与える生活習慣病等の危険因子の意義や、さまざまなゲノム情報との関連も明らかにし、同時に運動や食事指導等の介入効果についても個別のアウトカムメジャーを設定し、検討を加えてまいりたいと考えます。
 10ページ、アルツハイマー病病態解明の研究成果の1つを紹介させていただきます。主要病理であるアミロイド病理、タウ蓄積、そして脳内炎症の意義について、ヒト剖検脳とアルツハイマー病モデル動物脳を対象に遺伝子ネットワークの解析を進め、平成29年度におきましては、右側にお示ししたようにアルツハイマー病の病期特異的な脳内炎症の意義を分子レベルで解明することができました。これは今後の抗炎症治療薬の適用に重要な指針を与えるものと考えられます。
 最後に、評価項目1-1の自己評価をSとさせていただいた根拠となる3つの研究の進捗を11ページで説明させていただきます。
 血液バイオマーカーにつきましては、平成25年より島津製作所と共同研究を行い、26年に第1報を発表した後、厳密な検証を行うべく国際共同研究を開始し、平成29年度に解析結果の取りまとめ、追加試験を繰り返し実施し、Nature誌に発表いたしました。本血液バイオマーカーは治験対象者の正確な絞り込みを行うことで、治験の効率を大幅に高めることが可能であり、これまで難航しております治療薬開発が一気に加速されることが期待されます。本年度に入り、新たな国際共同研究等の計画を進めるとともに、臨床現場での活用に必要な薬事承認や保険収載に向けたPMDAとの協議を開始いたしました。
 次に、先制治療薬開発については、独自の研究成果をもとに作業を続け、平成29年度におきましては最適化リード化合物のPOC試験での安全性と有効性が示され、ヒトを対象とする臨床試験の展開を前提とした製薬企業との協議に入りました。
 最後に、認知症コホートレジストリに関しましては、前年度の国際連携基盤の構築に引き続き、平成29年度には、より若い年齢層を対象とする東北メディカル・メガバンクと連携協定を行い、これまでにも増して長い時間軸で認知症発症前から研究可能な世界に類を見ないコホートレジストリの体制が構築されました。登録者数は既に5,000名を超え、治験を初めとしたさまざまな利活用につき、治験コンソーシアム、CINで協議を開始したところであります。
 以上です。
○国立長寿医療研究センター荒井理事・病院長 
 病院長の荒井です。よろしくお願いいたします。
 12ページをご覧ください。私からは評価項目1-2、実用化を目指した研究・開発の推進及び基盤整備という点について御説明をさせていただきます。
 まず、この点に関しましては、5つの分野にわたりまして強調させていただきたいと思います。この5つの分野におきまして、いずれも極めて顕著な成果が得られたと考えておりまして、自己評価をSとさせていただいております。
 具体的には12ページの「Ⅱ 目標と実績の比較」でありますけれども、丸1に関しましてはロボットに関する研究開発。これは高齢者の生活支援を中心としたロボット開発を通じまして、世界最大の23個というロボット開発を行っておりまして、うち5つの社会実装を行ったという点が極めて特筆すべき成果と思っております。
 2番目、メディカルゲノムセンターにおきまして、目標数を大幅に超えたデータ登録を行いました。目標の800例に対して実績が1,054例であります。同時に7,000以上の検体を研究者に分譲しております。また、800例を超えるゲノム解析を行いまして、国内最大級のデータストレージとなっております。
 また、東北大学のToMMoと連携をいたしまして、認知症に関する遺伝子解析、これは1万例を行いました。これは世界最大とは言えませんけれども、西洋人、欧米におきまして7万3,000というデータはありますが、アジアにおいては最大の1万例という認知症に関する遺伝子解析を行ったということで、これについても極めて特筆すべき成果と考えております。
 3番目、介護、認知症の予防を目指したポピュレーション・アプローチの実施かつ利用手引き等の資料作成等、加齢に伴う疾患に関する国内最大規模の介入あるいは観察研究を行っております。
 丸2治験・臨床研究推進体制の整備ということに関しましては、支援内容を拡充し、臨床研究、治験に関しまして目標が年間200でありますけれども、235件ということで達成度が117%に達しております。
 丸3につきましてはガイドラインでありますけれども、これまでの実績といたしましては27、28ともに年3件でありましたが、29年度は10件ということで、この3年間で16件ということで、目標が10件ですので達成度は160%になっております。特にサルコペニア診療ガイドラインというのは世界初の診療ガイドラインでありまして、日本サルコペニアフレイル学会、老年医学会、当センターによる世界初のものであるという点が非常に特筆すべき点であると思っております。
 具体的にポンチ絵を用いまして御説明をさせていただきたいと思います。
 13ページをご覧ください。ロボット、メディカルゲノム、治験、臨床研究、そしてコホート研究につきましては、後で具体的なポンチ絵をお示ししたいと思います。
 右側のガイドラインをご覧いただきたいと思います。先ほど申し上げましたようにサルコペニアの診療ガイドラインは世界初のものであるということで、私が委員長としてまとめたものであります。このガイドラインは昨年末に日本語版を発表しまして、本年5月に英語版を発表しまして、現在、世界的にサルコペニア診療ガイドラインをまとめる作業を行っておりますけれども、このガイドラインが主に使われているということで、私もメンバーの一人に加わっております。
 フレイルにつきましても、診療ガイドラインを世界のメンバーと作成したものを昨年公表しております。学会等が作成するガイドラインということではここには加えていませんが、国際的なメンバーと一緒に作成したガイドラインがフレイルに関して昨年発表されまして、私が日本を代表として参加させていただいております。
 私は老年医学会と動脈硬化学会の副理事長を兼務しておりますので、高齢者脂質異常症診療ガイドライン2017を中心にまとめさせていただきました。同時に動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版におきましても、高齢者の部分の担当をさせていただきました。その他、認知症、糖尿病、男性下部尿路症状等々のガイドラインにおきまして、当センターのメンバーが非常に重要な役割を果たしております。
 ロボットに関しまして14ページ、15ページをご覧いただきたいと思います。これまでのロボットの開発につきましては死の谷があると言われておりまして、現場の課題、どのような機械があるのかわからないであるとか、開発側はどういったニーズがあるのかわからないということで、この間のギャップを埋めるのがなかなか難しいということがありました。100件以上の会社からの相談を受けまして、提案をいただいたロボットについて改良を依頼したり、その後実証研究を行いながら、さらに改良を進めて5件のロボットを上市したという実績がございます。
 右側にその具体例をお示ししておりますけれども、高齢者の生活支援ロボットの開発・実証ということで、夜間の排泄行動支援システムの開発に関連するロボット、そして通所リハでのロボットアクティビティーのアプリの開発。これはPepperを使用して日本舞踊を取り入れたアクティビティーを作成したということであります。
 右下に小さな鳥みたいなロボットがありますけれども、これは傾聴ロボットでありまして、これはうちのスタッフとの会話が成立するということで、全ての人というわけではありませんが、なれた人と会話することが世界で初めて20分を超えたということで、革新的なロボット技術の発展にも貢献をさせていただいております。
 このロボット開発につきましては、もろちん大学でも行われておりますけれども、大学でのロボット開発は主に医療ロボットということで、我々のセンターでは主に生活支援ロボットということで、その違いは大きなものであります。15ページに具体的なロボットが記載されております。
 メディカルゲノムセンターにつきましては16ページ、17ページをご覧いただきたいと思います。数につきましては先ほど御説明したとおりでありまして、17ページをご覧いただきますと、認知症1万件というのはアジア最大ということについて提示させていただきました。下の認知症5,000件のマイクロRNAのプロファイルを蓄積・共有化といいますのは、AIを用いまして、今まで臨床レベルでは鑑別診断が難しいケースも、マイクロRNAの解析をAIを用いてすることによってADと血管認知症とDLBに分けることができるということで、これは現在、投稿中であります。
 18ページにつきましては治験・臨床研究推進センターでありまして、その支援回数が極めて大幅に増えたということについての御説明であります。
 19ページは認知症に関するコホートの研究結果でありまして、右側の上のほうをご覧いただきますと、当センターでは健診を行いまして、その活動の記録も同時に取り込みまして、それをサーバーに落とし込んで、それをもとに解析を行って異常の早期発見を行い、その発見を行ったものを認知症疾患医療センターに情報を提供し、アウトカムの取得も含めて解析を行っているということで、これについても極めてユニークな活動であると思っております。
 以上であります。ありがとうございました。
○永井部会長 
 ありがとうございます。それでは、ただいまの御説明に御質問、御意見をお願いいたします。いかがでしょうか。
○内山部会長代理 
 超高齢化社会を迎えている日本において、最も必要とされている医療の一つである認知症に関連した研究開発にすばらしい成果を上げておられることに感心しています。
 1つ教えていただきたいのですが、アルツハイマー病の早期診断法開発につきまして、低侵襲、低コスト、大規模検査が可能とあるのですが、今後の展開について教えてください。特許を取られた後、検査可能な検査機関に集中するようにするのか、あるいは、各地域で検査できるようにするのか、将来的な展望について教えてください。
○国立長寿医療研究センター柳澤研究所長 
 これまで全て島津製作所の研究所の中にある田中耕一所長のグループで解析しております。今後もしばらくはそのような島津製作所内での解析になります。将来的な解析体制については私どもというより島津製作所の戦略によります。あくまで私の考えですが、ヨーロッパ、アメリカに何カ所かの拠点を設けて、そこできちんとした形で血漿試料が調整され、凍結して空輸する形などが考えられます。国の規模からいきますと、恐らく日本はせいぜい2カ所ほどのそのような拠点があれば全国をカバーできると思われます。
○永井部会長 
 今の知財はセンターとして何%ぐらい確保されているのですか。
○国立長寿医療研究センター柳澤研究所長 
 この血液バイオマーカーに関して、私ども2つの特許申請を行っています。第1段と第2段ですけれども、第1段に関しては2割、第2段に関しましては貢献の度合は均等だろうということで5割というような形です。
○永井部会長 
 どうぞ。
○祖父江委員 
 どうもありがとうございました。私もこの2年、3年ぐらい非常にプログレスがすばらしいので大変感銘を受けておりますが、先日のプレリミナリーのときにも御質問をさせていただいたのですが、1つは今と同じです。こういう非常に世界に突出する成果が実装化のところで日本独特といいますか、欧米のところが実装化の実を担って、実装化が完成した暁にまた逆輸入というパターンが今までよく見られるので、今も恐らくお二人の方の御質問はそこだと思うのです。ぜひそれは何とか日本発でずっと最後までやっていただけるといいなというのを願っております。いろいろお考えになっておられるようですので、ぜひよろしくお願いします。それが1つ。
 もう一つは、これもこの間ちょっとお聞きしたのですが、オレンジレジストリ、これも規模的には世界に冠たるものだと思うのですけれども、先ほど途中で出ましたが、時間軸を踏まえた世界初のとうたってありますので、その辺の時間軸をどういう形で取り込んで、時間軸型のデータをどうつくっていくのかというのは多分、今後になると思うのですけれども、まだできて時間がたっておりませんので、むしろそこのところが今回、お聞きしたいなと。プランニングでもいいですけれども、その辺はどうですか。
○国立長寿医療研究センター柳澤研究所長  
 最初の点、コメントありがとうございました。
 これまで日本からは、最初の成果がよく出ても実装化のところでうまくいっていないというケースも残念ながら多々あったかと思います。幸いなことに今回は厚生労働省も非常に応援してくださいまして、先日、PMDAの相談窓口といいましょうか、そういった点でも御支援をいただいたので、既に実装化に向けた議論をしているところです。
 もう一つは、世界的には欧米が先行している領域であるというのも事実であります。実は今週末なのですけれども、グローバルなスタンダーダイゼーションを議論するミーティングにも私ども参加して、一緒に検討して参ろうと思っています。
 オレンジレジストリに関しては理事長のほうから。
○国立長寿医療研究センター鳥羽理事長 
 発症の早期発見、予防については19ページにある東北メディカル・メガバンクと、当方のマザーコホートを合わせて16万人くらいのもので大きな疫学研究でやっているところでございますが、9ページにございますMCIという前段階の時間軸のコホートも、これらは数年単位で病状をフォローしていくことで治験や介入などができるところであります。
 もう一つの認知症のレジストリについても、当センターを通じて数千のものがありまして、既に5年、10年、我々のデータを持っているものがあるものですから、これらは認知症の自然経過や病状については、まずは生かしていこうということです。
 もう一つ、最後に介護の科学化に伴うケアレジストリといったものを大府、東京、仙台の認知症介護研究センターを中心にやっていただいていて、これらはインターネットと介護指導者からのグッドプラクティスを集めて、これが縦断的にどのような効果があるかということが始まっているところでございます。
 いずれにしても、当事者から見ると予防した方がMCIになり、認知症になり、ケアのほうへどのようなベネフィットを得られるかというのは10年単位のことなものですから、このレジストリが私が今、班長をしておりますけれども、10年、15年、続いていったときに、これがスムーズにほかのレジストリに登録がされて、ベネフィットを得られるような形のことをぜひ考えていきたいと思っております。以上です。
○祖父江委員 
 ありがとうございます。できればその辺の構想を宣伝ではないですけれども、どういう見通しで今後やれそうなのかというのを少しというか、かなり前傾にですけれども、述べていただけると非常にインパクトが出るのではないかという感じがします。そのとおりいくかどうかわかりませんけれども、東北大学メディカル・メガバンクも今おっしゃったように私どもも共同していることがあって、10万人を超えるフォローアップをやっていますので、認知症がどのぐらい発生して、どういう遺伝子を持った人が出てくるのかというのは、今後見ていく非常に大きなテーマだと思うのです。ですからその辺を少し盛り込んでいただけると、我々も非常に安心感を持ってというか、心配感もありますけれども、やっていただけるといいかなと思います。
○国立長寿医療研究センター鳥羽理事長 
 ありがとうございます。将来展望、スコープをぜひ盛り込みたいと思います。
○福井委員 
 最初のところで職員が100人ぐらい増えたとおっしゃいましたが、研究者はどれくらい増えたのでしょうか。原著論文の数自体は、6ページのデータからいいますと、この3年間は余り増えていないように見受けました。今回のアルツハイマーの診断法にしても、薬にしても、最先端の診療につながるような研究がさらに控えているかどうか、わかる範囲内で教えていただければありがたいのですが。
○国立長寿医療研究センター柳澤研究所長 
 残念ながら研究者数に関しましては増えておりません。むしろ今、さまざまな計画のもとなのですけれども、若干、独法前に比べると減っているかと思います。
 今回は非常にヒットが生まれたかもしれませんが、次はどうかということなのですが、確かにNatureクラスの業績が毎年出るかというと、それはわからないと思います。ただし、アルツハイマー病というのは非常に多様な局面をもつ病態であって、いろいろな方法論を駆使して研究しなければいけないという点では、数こそ研究者は少ないかもしれませんけれども、私どもNCGGでは多方面からアプローチしていますので、第2弾、第3弾は出るものと私は信じて指導しております。
○国立長寿医療研究センター鳥羽理事長 
 つけ加えさせていただきますと、研究者の給料というのは運営費交付金が使えないものですから、どうしてもそれほど増やせない。増えているのはお医者さんが十数名増え、リハビリが80名くらい増えたということで、リハビリが特に回復期も含めて地域包括も含めて愛知県内で2番目。これも説明しましたが、ベッドの数は東大の3分の1ですけれども、リハスタッフは東大の2倍いるということです。
○花井委員 
 介護用のロボットの開発のところなのですが、私たちみたいな素人から言うと期待と懐疑が入りまじるのだと思うのですけれども、結局、日本は機械工学的なものはかなりレベルが高いけれども、情報工学になると欧米に負けるという印象があるのですが、基本的には工学系の研究者は企業におられて、長寿医療センターにおいてはここにあるようにマッチングみたいなことに特化しているのか。それともアルゴリズムとかそういうことに対しても割と医療センターとして関与することがあるのでしょうか。
○国立長寿医療研究センター荒井理事・病院長 
 原則としましては、長寿医療研究センターにいるのは医師と、ロボットセンターにはPh.Dもいますけれども、そういったデータ分析ができる研究者はおりますが、開発のコンセプトといいますか、そういったものは全て企業にあるということで、長寿のほうにあるのはいろいろなお話が来たときにどれがいいかどうか、物になるのかどうかということをまず選定して、だめなものはだめだとお断りをするということで、望みがあるものに関してディスカッションを継続していて、実際の研究の場を提供するというのは当センターの売りかなと思っておりますし、その後の販売に向けても当センターのノウハウというのがありますので、販売に向けた支援もさせていただくということが我々のセンターの特徴だと思います。
○花井委員 
 世界初の20分という、この前も聞いたのですけれども、これってどのくらいすごいのかがいまいちわからない。botというアルゴリズムでも会話は20分ぐらい成立したりするのです。AIだと今、自然言語領域が一番競争が激しいと思うのですが、AI的なブレークスルーがあったのか、それか割とbot的なもので介護に特化して何かやっているのかみたいなところは何かあるのですか。世界初かもしれないけれども、本当にすごいのかがわからないというところが何かあれば教えてください。
○国立長寿医療研究センター荒井理事・病院長 
 それにつきましては、AIをどの程度取り入れているか、これから取り入れる予定にはしていると思いますけれども、この20分という時間がどのくらいすごいのかということについては、これから実際にそれがどういった形で生かされるのかというのを見ていかなければいけないと思いますけれども、そういった形で単に長くするだけではなくて、それが高齢者の方の実際の生活に寄与するかどうかということをメーンに我々としては見ていきたい。そういったものをアウトカムとしていきたいと思いますので、単に延ばすだけではなくて、そちらのほうがしっかりとデータを取っていくということが、今後のまずは我々の目標かなと思っています。
○藤川委員 
 さっき祖父江先生がおっしゃっていた、今までやったことではなく将来どうなのかという点で、例えば11ページの年度ごとにどういうことをやってこられたか、先々どうかということを示していただいたのは非常にわかりやすいのですけれども、最後の30年度以降というような、ここをできる限りもう少し具体的な、難しいのだけれども、どれくらいインパクトがあるのかということがわかると、こちらも偉大な研究成果というところが見えてくるので、ぜひアピールをもっとしていただきたいなと思いました。
 そういう点で、日本は世界で一番高齢者がどんどん増えている、最先端を行っているということからすれば、このセンターから世界初が次々出るというのは、ある種、当たり前になっていかないと逆にいけないのだろうとすら思うのですけれども、そのような中で11ページの一番下の認知症コホートレジストリとか、17ページに出てくるバイオバンクの数量、これもアジアは最大であるけれども、先ほど欧米は7万とおっしゃっていたかと思うのですが、7万と1万は随分差があるなというふうに感じたのですけれども、その辺がまだまだ環境が整っていなくて、今後は最先端に行こうという状況に、どの辺でそのようになるのかということを教えていただけるとありがたいです。
○国立長寿医療研究センター荒井理事・病院長 
 7万3,000と1万との違いは主に予算規模だと思っていまして、例えばアメリカにおける認知症研究に関する補助金というのは日本の約10倍以上あると言われていますから、そういった意味でなかなか予算の壁に打ち勝つのは難しいと考えています。そういった中で1万件の認知症に関する遺伝子解析は、まず遺伝子多型をきちんと解析して、その遺伝子多型から何らかの有意のある遺伝子変異の候補を選ぶために最低必要なのが1万検体ということで、今までの研究はほとんど数百という研究しか行われてこなかったということもありまして、この1万件というのは日本としては初めてであるということで、そこからはきちんとデータを出していくことができるだろうと。これからGWASからエクソーム、コーディングリージョンの解読、そして全遺伝子の解読というふうに進めていきますけれども、これもアメリカとの比較で恐縮ですが、アメリカも何オーダーも違う数の遺伝子解析をしようという計画があるそうでありまして、それにつきましてももちろん予算さえあれば、ちゃんとアメリカと同じことはできると思っています。
○藤川委員 
 厚労省さんに予算取りしていただくしかないということですね。
○国立長寿医療研究センター荒井理事・病院長 
 そのとおりです。
○国立長寿医療研究センター柳澤研究所長 
 1点よろしいでしょうか。コホートレジストリの将来におけるインパクトについては、大きな研究成果が得られるまでに、バイオマーカーや創薬の研究に比べてさらに時間がかかると思います。最終的に大事なことは、認知症、アルツハイマー病を含めて、予防だと思うのです。予防をきちんとした戦略のもとに達成するためには、ほかの変性疾患でよく祖父江先生も指摘しておられるように、病気の自然歴といいますか、それをレジストリ研究をもとにきちんと理解する必要があります。またそこにゲノム情報をも組み入れる必要があります。恐らく今回のコホートレジストリが初めてそういう意味で活用できるものになると期待されますが、ただ、それは来年か再来年かというと、もう少し時間がかかるかなと思います。
○祖父江委員 
 今の話は先生おっしゃったのはまさにそのとおりだと思うのです。だから将来、どういう点とどういう点とどういう点を目指してやろうとしているんだという旗をぜひ揚げていただけると、皆さん協力しようかというふうにだんだん広がってくると思うのです。
 もう一つは、東北メディカル・メガバンク、先ほど理事長おっしゃったように10万人以上のいわゆる健常者のコホートをずっと追っていくというスタディーですので、これが合体されるということなので、ぜひ合体されて一緒にやるというスタイルが非常にいいのかなと感じています。
 1つお聞きしたいと思ったのは、これから説明があるのかと思ったら切れてしまったのですけれども、オレンジタウン構想は非常におもしろいなと思ったのです。つまり病気を中心にして、それをいかに予防していくか、あるいは治療していくかということをやっておられるというふうに理解しているのですが、こういうある地域とか、それももちろん射程に入っていると思うのですけれども、社会科学といいますか、社会的な問題のアプローチというのが今後同時に、非常に求められてくると思うのです。病気と関連してですけれども、そういうものを担う研究体制としては長寿研ではないかなと思っておりまして、それはどこかにありましたよね。何とかセンターというものが。ああいうところはどれぐらいやっておられるのか、この前もちょっとお聞きしたのですけれども、そういうものを含んだ構想なのか。この構想自体は初めて今回お聞きしたので、もう少し今の社会システムとかそういうものも考えながらやられるのかどうか、その辺も含めて御説明をいただけるとありがたいと思います。
○国立長寿医療研究センター鳥羽理事長 
 後で説明になってしまいますが、30ページに医療政策の推進に関する事項にオレンジタウン構想というものがございまして、これは愛知県と一緒に名古屋大学、藤田保健と一緒にやらせていただいているわけですが、認知症が医療問題、介護問題だけではなくて社会問題になっている。それは徘徊、運転免許の問題からさまざまな若年者の場合に就労の延長の問題もあるわけですが、このように単に医療、福祉だけで解決できない社会問題となった場合に、地域づくりのモデルとして国立長寿医療研究センターが縁の下の力持ちとなって関連の企業あるいは当事者の方、家族の方を含めた新しい支え合う地域包括ケアの認知症モデルをつくらなければいけないということで今やっているわけでございます。
 これが全県的に広がって、あるいは厚労省、内閣府も入っていただいていますので、このような形が超高齢社会、認知症社会の解決になるような、このための知識が例えばコホート研究における認知症の知識でありますとか、コホート研究における介入試験、さまざまなサービスをすると要介護が減るとか、認知症の方が家で穏やかに暮らせる、あるいはエンド・オブ・ライフケアの研究が下支えとなってオレンジタウン構想をやるということで、大府市でこれをやりましたけれども、東浦でもやり、東海市でもやりということで、まず愛知県内で広げ、全国的にモデルに早くなるようにノウハウを国に提供していくのは、うちの長寿医療研究センターの務めだと思っております。
○永井部会長 
 よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 続いて医療の提供とその他の業務の質の向上に関する事項、1-3から1-5について御説明をお願いいたします。
○国立長寿医療研究センター荒井理事・病院長 
 では、1-3の医療の提供に関する事項につきまして、病院長の荒井から説明させていただきます。
 20ページをご覧いただきたいと思います。当センターはベッド数が320の中規模の病院でありまして、そこにおきまして急性期とともに亜急性期、すなわち回復期リハビリテーション病棟と地域包括ケア病棟を持っております。そういった病床におきまして、大学病院あるいは一般の急性期病院とはどのように違った医療を行っているのかということについて、御説明をさせていただきたいと思います。
 我々のミッションとしましては、主に高齢期において増える老年症候群の中でも認知症あるいはフレイル、転倒といった問題について対応するということで、我々のセンターの試みあるいはその実践、研究内容を広く日本のさまざまな病院に普及して利用していただくことが重要だと思っています。そしてネットワークをきちんとつくりまして、日本における高齢者医療を世界に冠たるものにするというために、我々の病院が存在をするのだと思っております。
 そういった中で具体的な内容を御説明させていただきたいと思いますけれども、丸1と丸2につきまして御説明させていただきます。
 丸1につきましては認知症分野ということで、もの忘れセンター。これは世界最大級のもの忘れセンターにおきまして、29年度は1,152名の新患の患者さんを受け入れております。もちろん認知症の方は年々増えておりますので、この新患の患者数は当然右肩上がりになると予想されますけれども、実際にはこの後にお話しますように人材育成も同時に行っておりまして、サポート医あるいは初期集中支援チームといったものを各地域で育成をしておりまして、そういった人材育成を通して、実際に当センターにかかる新患の方は少し頭打ちになっていると思っております。それは当センターの経営にとっては余りいいことではありませんけれども、日本全国にとっては望ましいことであると思っております。
 (b)認知症ケアに関する研究、そして、本人・家族を中心とした認知症診療の開発ということで、特にこれは認知症の場合、家族の教育というのは極めて大事でありまして、家族教室というものを開催しまして、家族教室のモデルを全国展開するという計画を今、持っております。また、MCIの新しい治療として薬剤治験を実施したり、認知リハビリテーションを提供しています。特に認知リハビリテーションに関しましては集団でのリハビリテーションを行っておりまして、MCI、そして初期認知症につきまして非常にユニークなリハビリテーションを提供しております。
 (d)家族教室をクリニカルサービスとしておりまして、延べ200人以上が参加しておりますけれども、全国的に普及させるためのマニュアルを出版しております。
 フレイル分野に関しましては、新外来棟にロコモフレイルセンター、感覚器センターを開設しまして、フレイルにつきましては約300名のレジストリ登録を行っております。フレイル、サルコペニア、ロコモティブシンドローム等々に関して、学会で多くの研究発表を行わせていただいております。
 回復期リハ病棟、これは45床の病棟でありますけれども、脳卒中あるいは大腿骨近位部骨折の後のリハビリテーションを行うと同時に、アウトリーチも行っておりまして、訪問リハを行っています。これも近年、倍々で増えているということであります。こういったリハを提供することによって、高齢者のニーズにマッチしたリハビリテーションを提供させていただいていると自負しております。
 丸2、患者の視点に立った良質かつ安心な医療の提供ということでありまして、認知症ボランティアの研修を行って人材育成に寄与しております。そして認知症サポートチーム、これは当センターの活動をもとにデータを蓄積しまして、それが診療報酬として認められたということでありますけれども、これにつきましては週1回のラウンドを行いましてサポートを行いまして、同時に他病院におけるDST設立の支援をも行っております。エンド・オブ・ライフケアチームもありまして、これも新規依頼件数が138件であります。がんにつきましては緩和ケアにつきましての診療報酬が手厚く出されていますが、非がんについてはなかなか難しいということなのですけれども、当センターとしましては非がんの疾患が半数以上ということで、こういったユニークな活動をしています。
 4番目のトランジショナルケア・チームは、いわゆる在宅医療というふうにお考えいただければいいのですが、病院の患者さんを在宅に移すという過程で、通常の病院でも在宅医療をやっている病院がありますけれども、どう違うのかということなのですが、これはあくまでもトランジショナルということですので、病院を退院されて在宅のチームに引き継ぐといった活動をしているということでありまして、ずっとその患者さんを在宅で見るわけではなくて、在宅のチームあるいは今まで在宅ケアをやっておられなかったお医者さんに対して引き継ぐことで、そういった在宅医療にコミットできる医師の増加ということも目指して、このチーム医療を行っております。
 その他、3番目にありますように視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触感を総合的に捉え直すという世界で初めての試みを感覚器センターで開始しています。これは眼科と耳鼻科が中心になっていますけれども、同時に内科的な関与も行いまして、総合的な、包括的な診療を提供しています。
 具体的に見ていきたいと思いますけれども、21ページをご覧いただきたいと思います。もの忘れセンターにつきましては、先ほど申し上げましたように1,000名以上の新患患者を受け入れているということと、オレンジタウン構想に基づいた新たな地域連携活動を開始しています。そして、今まで当センターの問題としては、ほとんどの患者さんが愛知県の中から来るということであったわけでありますけれども、県外からの患者さんの受け入れを促すため、オレンジパス入院というものを始めました。一方で、もの忘れセンターの開設後の患者さんのデータをきちんとデータベースとして登録しております。
 そして、先ほど言いましたように認知リハビリテーションであったり、家族教室・看護相談として地域からの相談・地域連携、データベースの整備・利活用、最後に人材育成、多くのセンターあるいは海外からも視察に来られていますけれども、こういった活動を認知症に関しては行っているということで、診断・治療に関してももちろんでありますが、予防、ケア、エンド・オブ・ライフといった一生をしっかりと当センターとしてサポートする、支援するという体制で行っております。
 23ページ、ロコモフレイルセンターについての説明であります。これはロコモティブシンドロームという運動器に関する疾患、そしてフレイルという加齢に伴う病態を中心に、多職種での検討を行いながら介入していくというセンター、外来であります。具体的には医師、看護師、薬剤師、臨床研究のコーディネーター、管理栄養士、療法士というメンバーで議論を行っておりまして、身体機能、認知機能、社会的な機能を包括的に介入し、チーム医療としてどういった介入を行うことがベストかということをみんなで議論し、同時にその中で研究も行いながら患者さんの診療を行っているということであります。
 24ページ、地域包括ケアシステムに対応した医療モデルの充実ということで、先ほど言いましたようにトランジショナルケア・チームによる活動、これをモデル事業として展開をしております。平成29年度67名に対して、延べ100回以上のアウトリーチ、訪問診療を行っておりますけれども、約60%の自宅看取りを実現しております。この60%の数字ですけれども、知多半島の地域は比較的在宅看取り、自宅看取りが高い地域であります。その地域でも11~22%というのが現在の自宅看取り率となっています。
 当センターではモデル事業としまして在宅医療支援病棟というものがあります。これは20床の病棟なのですけれども、そこでも大体3割という自宅看取りの割合になっていますので、そういった割合を考えましても60%という自宅看取り率というのは非常に高い。これはエンド・オブ・ライフチームとかも加わって倫理支援も行いながら、この在宅の療養をサポートする。それをしっかりと在宅のチームに引き継ぐといった活動を数年前から始めているということであります。
 2番目のICTを用いた在宅多職種情報共有ツールというのも長寿版として開発を行っておりまして、特にこれは大府市と連携をして「おぶちゃん連絡帳」ということで、いろいろな医療スタッフ、介護スタッフが書き込めるような連絡帳をオンラインで作成し、提供しています。
 3番目に在宅医療に関する研修テキストの作成・実施ということで、これは臨床研修のための在宅医療研修テキストを作成しまして、在宅医療研修会を勇美財団との共催で実施しております。また、病院と地域スタッフと合同で研修システムを構築しまして、病院での在宅医療連携研修会を全国3カ所で行っております。
 最後に自己決定の支援と人生の最終段階におけるモデル医療の確立ということでありますけれども、先ほど申し上げましたようにがんの緩和医療につきましては、手厚く診療報酬が充てられていますが、非がんについてはまだまだ、ほとんどそういう診療報酬がないという段階で、当センターとしてはエンド・オブ・ライフチームを中心として、非がんの方におけるエンド・オブ・ライフケア、そして倫理判断支援というものを行っておりまして、右下にありますように新規の依頼件数が138件でありまして、そのうち非がんの疾患に関して80件、58%で全国平均は3%となっております。非がんの依頼のうち倫理判断を行ったのが62件ということで、77.5%と非常に高い割合を示しているというのが当センターにおける診療の実態であります。
 以上であります。
○国立長寿医療研究センター井原企画戦略局長 
 企画戦略局長の井原でございます。
 私のほうで1-4、1-5について簡単に御説明いたします。
 まず1-4、人材育成に関する事項についてでございますけれども、資料は25ページから27ページにかけてでございます。中長期目標の内容については、そこに記載されているとおりでございます。26ページに実績の主な項目、27ページに経年の推移などを掲げておりますが、ここでは認知症サポート医研修と初期集中支援チーム員研修を中心にお話をしたいと思います。
 まず認知症サポート医研修でございますけれども、地域でかかりつけ医の認知症診断などに関する相談などの役割を担う認知症サポート医につきましては、新オレンジプランにおきまして昨年7月に数値目標を引き上げられ、一般診療所10カ所に対して1人を配置。具体的な数値としては32年度末までに1万人という数値目標が掲げられております。29年度におきましては、修了者数が目標の1.5倍となります1,498人、累計で8,217人となっております。
 また、27ページの右上の円グラフにお示ししておりますように、研修修了者の約8割が地域において活動をしているというアンケート調査結果もございます。また、30年度の診療報酬改定におきまして、本研修の実績が認知症サポート医が行う指導・助言を評価する認知症サポート指導料の新設に反映されたところでございます。具体的には施設基準の1つとして、認知症サポート医に係る研修等を修了しているということが位置づけられております。
 次に、認知症初期集中支援チーム員研修でございますけれども、修了者数は年度計画2,500人の目標を上回る2,884人、累計で6,411人となっています。全国の市町村の96%が修了しています。このほかコグニサイズ関係の研修、高齢者医療・在宅医療総合看護研修、連携大学院における研究者育成、レジデント及び専門修練医養成などの取り組みを行っています。
 また、その他考慮すべき要素のところに書いておりますけれども、25ページの老年医学会、老人保健施設協会共催の総合研修会の開催について、これを協力してきているところでございます。30年度の介護報酬改定におきまして、本研修の実績が介護保健施設サービスの質を担保するための基準設定に反映されているところでございます。
 以上のことから、中長期計画における初期の目標を量的及び質的に上回り、また、報酬改定という形で社会実装にも貢献し、顕著な成果が得られているとして自己評価をSとしてございます。
 続きまして、医療政策の推進等に関する事項について御説明いたします。資料につきましては28ページからでございます。
 実績のほうは29ページにまとめておりますので、29ページをご覧いただきたいと思います。まず目標として国への政策提言に関する事項でございますけれども、認知症医療介護推進に関する提言ということで、認知症医療介護推進会議における議論を踏まえまして、そこに書いてございますように連携推進あるいは技術革新に焦点を当てた提言を厚生労働大臣に行っているところでございます。
 また、G7/G8サミットに向けた各国学術会議の共同声明の取りまとめに協力しているところでございます。
 3点目といたしまして、警察庁の高齢者運転交通事故防止に関する有識者会議の提言作成に貢献をしているところでございまして、提言の内容についてはそこに書いてございますように、改正道路交通法の確実な施行等々でございます。
 2点目、29ページの右側でございますけれども、医療の均てん化と情報収集、発信に関する事項でございます。
 まずネットワークの構築という観点から、先程来、御説明しているところでございますけれども、国内におきましては東北メディカル・メガバンクとの連携によって、一般住民対象と疾病対象のバイオバンク間の包括的な連携ということで、我が国でも先進的な事例として取り組みを進めているところでございます。
 また、国外におきましてはロシア、シンガポール、台湾の関係機関との連携を強化しております。特にロシアにつきましては政府全体で取り組みを進めております日露協力の一環であり、政府内においても重要性が高いものと認識しております。
 地方自治体との協力ということで、先ほど御質問がありましたあいちオレンジタウン構想でございますけれども、具体的な概念図については30ページに示しておりますが、この構想策定に当たって私どもセンターとしても協力してきているところでございます。
 具体的にアクションプランとして32年度までの3年間の取り組みがありますけれども、これについて引き続き協力していくこととしています。その1つとして、先ほど説明がありましたけれども、大府市で1月末に自治体、それ以外に警察署、郵便局、地域の企業、関連団体などが参加して会議を開いておりますが、当センターも共催という形でこれに協力をしているところでございます。
 以上のことから、所期の目標を上回る成果が得られたと認められるとして、この項目についての自己評価はAとしているところでございます。
 説明は以上でございます。
○永井部会長 
 ありがとうございました。それでは、御質問をお願いいたします。
○内山部会長代理 
 ナショナルセンターの大きな役割として高度先進医療の研究開発、それと同時に医療の均てん化が大切だと思います。その観点から、人材育成とさまざまな情報発信をやられておられ、期待を持ってお話を伺いました。
 ひとつ、ネットワーク構築の運用につきまして、大学あるいはセンターとのネットワークはすごく大事なことだと思います。その関連で、こちらで講習を受けた、あるいは各地域に散らばった医療スタッフたちが、情報発信の中心となる国立長寿医療研究センターと連携し、各地域における医療の質を保っていく、あるいは高度化に寄与することが大切ではないかと思っています。研修を受けた方たちのフォローアップあるいはアフターケアもやっておられますか。
○国立長寿医療研究センター鳥羽理事長 
 老年医学領域では、教授に名古屋市に来ていただいて、先端的な取り組みと実際の医療について1年に1回、教授みずから報告していただいて、情報交換をしているところでありますし、若手の方については学会のとき、また、最近当センターから何人も教職についている方が、特に認知症関係で増えてきたのですが、それらは先ほど言ったオレンジレジストリの班会議の班員になっていただいて、さらにその活動で情報交換など努めているところであります。以上です。
○国立長寿医療研究センター荒井理事・病院長 
 追加ですけれども、長寿医療研究センターでコグニサイズという認知症予防の運動を広めていますが、そのコグニサイズを実践、指導していだく指導者と実践者というのを今、長寿のほうで育成していますけれども、今、横のつながりの連絡協議会というものをつくりまして、定期的に長寿に来ていただいて情報交流をするというようなことをやっております。
○永井部会長 
 どうぞ。
○花井委員 
 地域包括ケアシステムはずっとポンチ絵はあちこちで見ている割には、何が実現しているかよくわからないという事情があって、要は地域ごとに違っていて、あそこはうまくいっているとか、あそこは何だかという議論をしていて、では何がどうなのかというのがいつもよくわからない。明確なアウトカム評価ができればいいのでしょうけれども、60%の看取りというのが明確なアウトカム評価だと思うのですが、実は全国にも12%とか13%ぐらいですかね。その差を埋めるために他の地域には何らかの機能がないということですね。そうすると、そういう地域の包括ケアシステムにおけるこのような例えば機能の欠落というか、いわゆるストラクチャー評価のような地域ごとに何が足りないからできていないというアセスメントしやすいツールみたいなものがあってもいいかなと思うのです。それによって医療計画に反映されればより具体的に、今はそうなっていなければおかしいのですが、余り今はそうなっていないようなのですが、こちらのほうでうまくいっているのであれば、そういうものをどのようにしたらうまくいくかみたいなツールみたいなものがあったら、もしかしたらあるのかもしれませんけれども、その辺はどうなのですか。
○国立長寿医療研究センター荒井理事・病院長 
 非常に大事な点だと思いまして、まだそのツールというのはできていないように思いますので、なぜその全国平均の1割から我々のセンターの在宅看取りが6割になるかという、その違いの分析をこれから進めたいと思いますし、当センターがやっているトランジショナル・ケアはほかではやっていませんので、なかなかベンチマークすることができないのですけれども、ほかの急性期の病院で訪問医療をしているようなところの看取りというのはどうかということをこれから分析して、当センターとの違いは何かということについては、分析をしていけばいいかなと思っています。
○花井委員 
 ぜひファンクションとして明確にしてもらえれば、診療報酬とかにもつけやすくなっていきますし、もしかしたら全国的にこの地域ケアシステムがよくなる可能性があるので、ぜひお願いしたいと思います。
○国立長寿医療研究センター鳥羽理事長 
 太田先生の在宅医療の地域力のツールはあるのです。うちの近藤克則のやっている地域の介護・医療のサービスの地域力診断はあるのです。ないのは地域包括ケアで実際に連携をして、それがアウトカムとしてどのように反映するかということを予測するようなツールがないのです。ですからこれはうちがちゃんと今後やっていかなければいけない重要な指標です。ありがとうございます。ぜひそれを進めたいと思います。
○永井部会長 
 どうぞ。
○福井委員 
 2点ほど簡単に。最初にACP(Advance Care Planning)について。もう一つ広まる速度が遅いように思いますが、先生方のところでこれの広め方についての何かアイデアがあるかどうかというのが1つ。
 もう一つは非常に大ざっぱな言い方で申しわけないのですけれども、罹病率など、鳥羽先生がおっしゃったように社会に与える影響から言うと、がんよりも認知症のほうがずっと重要度は大きくなっていくと思うのですが、認知症のほうに研究費を多くするにはどうしたらいいか、何かお考えはございますでしょうか。
○国立長寿医療研究センター荒井理事・病院長 
 ACPのことについてですけれども、このACPにつきまして普及率が上がらない1つの要因は、法律化されていないということだと思います。ほかの国を見ますと韓国も台湾もオランダ、ヨーロッパの国々も法制化しています。法律ができて、それに基づいてACPを行うという仕組みができていますけれども、我が国でもいろいろ議論はありますが、なかなか法制化のほうに行かない。これは我が国独自で法律にしないほうがむしろいいのではないかという意見が根強くあるということもありまして、なかなか法制化に進んでいかない。それが基本的には広まっていかない1つの大きな要因かなと思っておりますが、当センターがあります知多半島ではACPファシリテーターの育成というものを一生懸命やっておりまして、そういった活動を通してこういったエンド・オブ・ライフの看取りというものがちゃんと在宅でできるかどうかということについては、きちんとアウトカムをとって実証していきたいと思うのですけれども、全国的には今、進行が若干遅いかなというのはそのとおりだと思います。
○国立長寿医療研究センター鳥羽理事長 
 がんは大事です。認知症より大事だとはとても言えません。ただ、認知症の研究費は先ほどもありましたように、アルツハイマーだけでアメリカでは1,800億円で、日本は50億円にも臨床の研究費は20倍、30倍の差があることは間違いないのですが、恐らく認知症といったものがインフォーマルコストで御家族の、あるいは離職など含めて年間3兆円から4兆円かかっている事実が十分まだ認識されていないのではないか。ですから、このためにはがんと同じように認知症といったものが基本政策あるいは認知症社会といったものが法制化されて、法律化されて、社会に重要性が共有されることが一番大切だと思っていまして、水面下ではいろいろやらせていただいておりますけれども、先生方のお力もぜひいただきたいところであります。以上です。
○永井部会長 
 どうぞ。
○祖父江委員 
 私もこれは前から何回も御質問しているのですけれども、法制化が非常に重要だと思いますが、認知症はがんに比べて働き盛りではないので、どうしても認知度が悪いですよね。だからなかなか難しい。脳卒中とか心筋梗塞も法制化を急いでいるのですけれども、なかなかうまくいかないです。それに対してがんは今度がんゲノムをやりますけれども、数十万例を前向きに、悉皆的にずっと追っていくというシステムが、このベースには法律があると思っています。ですからそういう形に一部だけでもなってもらうといいのかなと思っていますので、ぜひやっていただけるといいなと思います。
 もう一点は、これも先ほど来、予算とか何かのところで拝見すると、ロボットとか、先ほどの柳澤先生の企業との共同開発なんかも含めて、企業力をどれだけ引き込むか。お金も含めて、これは今後のナショナルセンターは非常に重要な柱になると思うのですが、例えばロボットについてどれぐらいの、先ほどもロボット開発に対してどういう役割分担をしているのかということが質問で出ましたけれども、お金の流れから言うとどのぐらいのお金の流れができているのかというのを教えていただけるとありがたいです。
○国立長寿医療研究センター荒井理事・病院長 
 今のところ23のロボットについて開発、実装を行っているという話でしたけれども、トータル3,600万を共同研究費としていただいているということで、今、経産省におけるグラントがいただけるということで、それが約2億のグラントとなっております。
○祖父江委員 
 やはりこれ、今後循環器病センターもそうですし、がんセンターもそうですけれども、企業からの共同開発で一緒に研究をやることによって、お金の流れも研究者の流れもよくするという方向が非常に重要だと思うので、ぜひこれを大きくというか、うまくやっていただくとありがたい。非常にひな形になっていく可能性があるなと思います。
○永井部会長 
 どうぞ。
○斎藤委員 
 人材育成のことでお伺いしたいのですが、大変有意義な努力をしていらっしゃると思うのですが、患者の数が物すごい、そしてニーズも物すごく高いときに、何百人、何千人の単位では全く追いつかないだろうと思うのです。人材育成をなさるのに一番いいポジションにあるのであれば、何かもう少し効率的にレバレッジをきかせて普及、人材育成できないものかというのをずっと考えておりました。例えばe-ラーニングというのがどのくらい効果があるのかどうかわかりませんけれども、基礎的なところはそういうもので何万人、何十万人というのをターゲットにすることもできるだろうし、何か大がかりにやっていただけないものかという気がするのですが、そういったことは御検討になったのでしょうか。
○国立長寿医療研究センター鳥羽理事長 
 認知症サポート医制度は、御存じのように伝達講習でサポート医の方が帰って、各医師会でかかりつけ医対応力向上研修をやっていますので、既に5万人くらいのお医者さんが同じテキストで講習が終わっているところです。
 一番e-ラーニングに適さないところは、各地域のどういう医療・介護資源があってということをグループ学習して、お互いに発表し合って高め合うような連携力強化というか、そこがe-ラーニングではなかなか達成できないというか、本当にフェイス・トゥ・フェイスで地域力、その地域の問題を話し合うというところが一番グループ学習の最適なところなものですから、そこはサポート医研修という少数でもよく次に伝達講習ができる先生を育てるという形をどうしても濃くやって、そこから先はかかりつけ医でという形をとらせていただいておりますが、確かにe-ラーニングでもそういうことができるかどうかは検討する時期に入っているかもしれません。ありがとうございました。
○永井部会長 
 どうぞ。
○藤川委員 
 今の関連なのですけれども、サポート医が地域に戻って、そこで拡大する、そこで議論をするというのはとてもいいことだと思うのですが、そこで抱えた問題をまたこちらで引き取って、また展開していくことをお考えになっているのかどうかということと、あと、当然研修を受けられてどんどんいろいろな情報とか、知識、経験が高まっていくのでサポート医研修の高度版みたいなものが企画されているのか、そういったところを教えてもらえますか。
○国立長寿医療研究センター鳥羽理事長 
 連絡協議会とフォローアップのことをもう既に始めております。
○永井部会長 
 では、最後に。
○祖父江委員 
 今の評価システムだとやむを得ないのですけれども、非常に短期的にやって、将来構想を幾ら言ってもほとんど意味がないですよという点数になってしまうので、だめなのですけれども、ナショナルセンターは10年計画とかそういうタームの計画を発信していくのが重要だと思います。ですから、そのはしりとしてでも評価の対象外としてやっていただくといいなと思っておりますので、先ほど来の連続でございます。
○永井部会長 
 ありがとうございます。
 続いて医療の提供とその他の業務の質の向上に関する事項、1-3から1-5について御説明をお願いいたします。
○国立長寿医療研究センター井原企画戦略局長 
 残りの事項につきまして、私のほうから御説明をいたします。
 まず2-1の業務運営の効率化に関する事項でございますけれども、概要ペーパーの31ページ以降でございます。
 経常収支率でございますけれども、29年度実績は98.6%で、28年度に比べて若干の改善となっているところでございますが、3年間の累計で98.7%ということで、引き続き努力していきたいと思っております。
 業務運営体制の構築につきましては、先ほど御説明がありましたロコモフレイルセンター、感覚器センターの設置あるいはセンター長会議の開催、特命副院長の増員など、業務運営効率化のための体制構築を図ってきているところでございます。
 効率的な業務運営に関する事項についてでございますけれども、主な取り組みといたしまして給与制度の適正化、材料費等の削減ということで共同購入の実施あるいは適正な在庫管理など。後発医薬品の促進については、29年度は数量シェア72.0%でございますけれども、29年度末では77.7%という数字が出ております。
 その他、収入の確保としてレセプト点検体制の強化など。医業未収金につきましては28年度から若干増えまして0.006%となっております。一般管理費の削減につきましては29年度実績で8,138万円、28年度対比740万円弱の削減となっております。
 財務状況等につきましては34ページ、運営状況は35ページでございますけれども、ここでは運営状況について、35ページに基づいて御説明いたしたいと思います。
 まず医業収支でございますけれども、収益は入院患者数の増、一人当たり単価の増が主な要因として、対前年度比2億8,900万円の増となっております。一方、費用のほうが6億300万円の増ということで、収支差1億2,900万円のプラスという状況でございます。
 医業外収支でございますけれども、収益のほうが対前年度2億9,300万円の増、費用が対前年度5,100万円の増ということで、収支差はマイナス3億7,200万円となっておりまして、総収支差は2億4,300万円のマイナス、この項目につきましての自己評価はBとしております。
 次に33ページをご覧いただきたいと思います。先ほど御質問がございましたけれども、外部資金の獲得状況でございますが、29年度は11億2,300万円となっております。その内訳は33ページ中ほどに記載しているとおりでございます。寄附金の受け入れは1,940万円。資産及び負債の管理状況でございますけれども、新外来棟整備について財投による資金調達を行い、期末残高は56億4,400万弱となっております。この評価項目についても自己評価をBとしているところでございます。
 最後に、その他業務運営に関する重要事項ということで、一番最後のページをご覧いただきたいと思います。実績のところでございますけれども、法令遵守等内部統制の適切な構築といたしまして、内部監査の実施等を行ってきております。その実施状況についてはそこに記載のとおり、内部監査10回等でございます。
 調達等合理化の取り組みといたしまして、昨年10月にコンサル業者を導入いたしまして6カ月で約350万円の削減効果をもたらしております。
 その他、職場環境の整備という点ではストレスチェックの導入、以前より取り組みを進めていますけれども、職員の育児・介護休業、育児短時間勤務による取り組み等々を行っております。
 説明は以上でございますが、この項目としては自己評価Bとしております。
 以上でございます。
○永井部会長 
 ありがとうございます。いかがでしょうか。
 病院収入は頑張って予算を超えておられますけれども、いろいろと改革をなさったのか、どのような工夫をされたかお話していただけますか。
○国立長寿医療研究センター荒井理事・病院長 
 病院収入につきましては、もちろんマイナスの部分を減らすという努力にかなり力を入れていまして、査定の減であったり、共同購入等々で費用を減らすという試みをやっています。同時に一人当たりの診療単価が年々増えております。外来も病棟も増えておりますので、こつこつと診療単価をふやすという努力とともにマイナスを減らすということで、あとは今後、回復期リハの病棟を持っていますけれども、4月に改訂がありましたので、今は入院点数は3なのですけれども、それを2に上げるような配置換えをすることによって、今後はさらに診療報酬のアップを図っていきたいと思っております。
○藤川委員 
 先ほども人を増やしたというお話があって、お配りいただいている資料でも人件費率がとても高くて、回復期リハとかリハの人員をすごく増やしたというのは今おっしゃっていたような話で、ある意味、仕込みの時期というか、これから収入が伴ってくるというような考え方でよろしいのでしょうか。
○国立長寿医療研究センター荒井理事・病院長 
 回復期リハあるいはリハについては、最も当センターの中で業績がいい部門でありまして、常に黒字を計上していただいていますので、既に実績は上がっていると思っておりまして、回復期リハだけではなくて当然、急性期のリハであったり訪問リハ、そういったものも含めてリハ部門はコントリビューションが非常に大きいと思っています。今のリハのスタッフはほぼ100人なのですけれども、それでほぼプラトーかなと。それが一番最大の収益を上げるために、効率よく収益を上げるために必要な数と思っておりますので、今後、新棟を建てるに当たってまた工夫が必要かもしれませんが、現状ではそのように考えております。
○永井部会長 
 ほかにいかがでしょうか。病院が何とかとんとんまで来て、少し余剰があるのですが、総収支差でマイナスになっていますね。これはどういうことが影響しているのでしょうか。
○国立長寿医療研究センター鳥羽理事長 
 医療外人件費が月々1,000万円くらい増えているのですけれども、これはさまざまなセンター内センターを当初は予算がついて整備するのですが、次の年から運営費交付金の一般の中に組み入れられて、最盛期に比べて36億が今28億円くらいで、2割運営費交付金が減った中で人件費が研究者の確保も含めて増えているということで、センターの組織を見直して縮小均衡を図るのか、研究費を多くとって間接経費で賄うかという決断を迫られておりまして、私としては外部獲得研究費を増やして研究者の人件費を賄いたいと思っておりますけれども、でも組織の見直しは必須で、最大化を図るために不要不急の組織についてはより厳しい見直しが図られなければならないと考えております。
○永井部会長 
 先ほどのアルツハイマー病の知財が入ってくるのは先なのですか。
○国立長寿医療研究センター柳澤研究所長 
 申し訳ありませんが、具体的なことは申し上げにくい状況です。
○永井部会長 
 どうぞ。
○福井委員 
 今おっしゃったことですが、研究収益が今回減ったということが書いてありますね。増える見込みはございますか。テーマからいって幾らでも受託研究を先生のところはとれるのではないかと思いますが、減ったというのは意外に思います。
○国立長寿医療研究センター鳥羽理事長 
 一番大きなものはAMEDのいわゆる調整費というもので、年間の億単位のものが1年で終わってしまったのですが、まだ正式決定ではないですが、今年はまた調整費でぐっとたくさんとれそうなものですから、いわゆる心電図予算なのですけれども、今年はQRSが少し大きく、また来年。今年は大丈夫なのですが、毎年大型がとれないとなかなか厳しい状況です。
○永井部会長 
 いかがでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 それでは、法人の監事から業務の監査結果等を取りまとめた監査報告の御説明をお願いいたします。
○国立長寿医療研究センター二村監事 
 御提出させていただいた監査報告のとおりでございます。今年度に関しましては、特に問題はありませんでした。
 以上です。
○永井部会長 
 ありがとうございます。
 続きまして、理事長から日々のマネジメントを踏まえて、現在の法人の業務運営の状況、今後の課題改善方針等についてコメントをお願いいたします。
○国立長寿医療研究センター鳥羽理事長 
 本日御指摘されたことは、まことにもっともなことばかりで、頑張っているつもりでも内部の無駄あるいは国民に成果を返すという意味で不十分な点があるかもしれません。そういう意味で1年だけではなくて中期的にどうすれば国民に税金をいただいて活動している我々の実績が効率よく返せるかについて、より計画的に、また、より戦略的に職員一同、頑張ってまいりたいと思います。どうもありがとうございました。
○永井部会長 
 ありがとうございました。
 何か委員の方々から御質問等よろしいでしょうか。もしございませんでしたら、以上で国立長寿医療研究センターの平成29年度業務実績評価を終了いたします。どうもありがとうございました。

(国立長寿医療研究センター退室)

(国立成育医療研究センター入室)

○永井部会長 
 それでは、ただいまから国立研究開発法人国立成育医療研究センター平成29年度業務実績評価についての御議論をお願いいたします。
 最初に、研究開発の成果最大化に関する事項、評価項目1-1及び1-2の業務実績と自己評価についてでありますが、最初に簡単に理事長から御挨拶をお願いします。
○国立成育医療研究センター五十嵐理事長 
 理事長の五十嵐でございます。今日は評価部会で御説明の機会をいただきまして、まことにありがとうございます。
 当センターは周産期の母子から成人に至るまで、小児の心と体に関係する健康問題に関する医療と研究を行うセンターでございます。さらにこれらの分野における人材育成も極めて重要な使命と認識しているところでございます。
 皆さんの前で申し上げるのは大変恥ずかしいのですけれども、安定的な経営がなくてはすぐれた医療と研究を行うことはできないと考えております。さまざまな理由でこれまで安定的な経営ができなかった時期がありましたが、最近ようやくこの3年間で安定的な経営状況になっております。ただし、依然として課題もたくさん残されております。
 国立研究開発法人の目指すものは、大学病院あるいは1つの研究所だけではできない国全体を考えた医療と研究だと考えております。周産期、小児の医学あるいは医療は、成人の医学、医療に比べますと大変遅れておりまして、これは研究費あるいは医療費という問題もありますけれども、そもそも研究者の質と数の問題もあるのではないかと考えています。
 当センターは、周産期、小児の医療、医学におけるできるだけ広い分野での我が国のリーダーを目指しておりますけれども、そのような観点から考えますと、大きく4つに分けて私どもの活動があるのではないかと思います。
 1つは、IRUD-P事業だとかES細胞を用いた先天代謝異常症の治療などの基礎研究にあると思います。
 2つ目は、政策提言につながる社会医学研究だと思います。
 3番目は、小児がんの中央病理診断あるいは生体肝移植、アトピー性皮膚炎の予防法の確立、胎児治療などのいわゆる高度先進医療と言われているものだと思います。
 そして、最後に小児慢性特定疾病の情報センター、妊娠と薬情報センター、新生児マススクリーニングの精度管理、小児医療情報収集システムの確立、こういった国の施策を補完あるいは代行する事業であると考えております。
 そういう意味で、我が国のリーダーとしての、あるいは大学や研究所が担うことのできない難しい活動を少しはしているということが言えるのではないかと思います。
 ただ、周産期あるいは小児の医学の医療の守備範囲は非常に広いですので、当センターが担うべき仕事の中には、まだまだ欠けている分野があると認識している次第でございます。きょうの部会では私どもの活動につきまして忌憚のない御意見、御指導をいただきたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
○永井部会長 
 それでは、1-1と1-2に関する説明をお願いいたします。
○国立成育医療研究センター松原理事 
 まず1-1につきまして、研究所長から御説明させていただきます。
 横の資料の5ページをご覧ください。1-1につきましては、全体としての自己評価はSとさせていただきました。具体的に御説明させていただきます。 
6ページ、まず独創的な研究及び基盤的・重点的研究の推進といたしましては、まず丸1といたしまして有機的な連携による独創的な研究の展開として、原因や診断が不明な患者さんについて、最先端の遺伝子解析機器を駆使してDNAを調べて原因や診断の手がかりを探す全国規模の研究プロジェクト、IRUD-Pと呼ばれていますが、その拠点として1,500例以上の臨床検体の解析を実施いたしました。
 6ページの右側をご覧ください。基盤的、重点的研究の推進としました成育コホート研究が挙げられます。これは後ほど説明させていただきます。
 丸3として、医療に大きく貢献する研究成果として、当該年度は3件を挙げさせていただきました。具体的には次のページから説明させていただきます。
 7ページ、まず第1に、小児難病に対するES細胞を用いた再生医療の治験開始でございます。29年度はES細胞からつくった再生医療等製品を尿素サイクル異常症の新生児に移植する医師主導治験を国に申請いたしました。これによりましてES細胞を使った国内でのヒトを対象にした研究を初めて行う。そして世界的にも肝臓への移植は初となる予定でございますので、こういった研究成果をいずれは再生医療製品の開発につなげていきたいと考えております。
 8ページ、2番目です。日本人にとっての適切な妊娠中体重増加量の算出でございます。近年、妊婦さんのやせとかそういったものが問題になってきておりますけれども、今回、適切な体重増加量の算出を行うことによって、現在、厚労省が推奨しております妊娠中の体重増加量はやせ型、BMI18.5以下の女性には低過ぎる可能性があることが示されました。こういったエビデンスに基づいてガイドラインを見直すことによって、いずれ早産率、低出生体重児出生率の低下につなげたいと考えております。
 9ページ、3つ目でございます。5歳未満死亡率の都道府県間格差の経年的変化に関する分析でございます。我が国の人口動態統計、115年分の大規模データをもとに解析いたしまして、その結果、2000年代に入ってからこの格差が再び上昇し始めていることがわかりました。今後この知見を我が国の施策にぜひ生かしていっていただきたいと考えております。
 10ページ、ここから重点的な研究開発戦略でございます。
 まず1番目、次世代を担う子供と家族の健康の確保に関する研究ですが、これにつきましては小児期に発症するアレルギー疾患の発症予防の研究が挙げられます。昨年度の研究で、生後12カ月の卵アレルギーの発症を8割減少させたことをランセット誌に報告いたしましたが、当該年度はこれに基づきましてランダム化比較試験研究を開始したところでございます。
 丸2といたしましては、エコチル調査事業。これは環境省が主導する全国調査でございますが、この中でメディカルサポートセンターとして成育がその中心的役割を担っております。
 10ページの右側、丸3をご覧ください。当該年度で発表いたしました原著論文の発表数です。394本、うち英文原著論文が360本でございます。これは参考資料の6ページに記載した研究者の数で割りますと、発表論文数及び被引用回数は、研究者1人当たりにいたしますと6ナショナルセンター中トップという数字になっております。
 11ページ、成育疾患の本体解明ということで、左側の丸2をご覧ください。成育疾患の発症機序や病態の解明につながる研究の推進といたしまして、非IgE依存性消化管アレルギー、これは世界的にも、あるいは我が国でも急増している疾患でございますけれども、この分野の研究開発を成育はリードしております。それから、その下に書いてありますが、国内外の医療機関からさまざまな成育疾患、臨床検体を集積して、ゲノム・エピゲノム研究などを行って病態の解明に努めております。
 11ページ、右側の下のほうをご覧ください。成育疾患の実態把握といたしまして、疫学研究を推進しております。先ほど申し上げましたが、成育コホート研究は現在2つ走っております。まず第1の研究は、平成15年に登録開始した成育コホート研究でございまして、10歳までの追跡率は62.4%でございます。当該年度におきましては赤字で書いてございますが、乳児期の乳酸飲料摂取がアトピー性皮膚炎と食物アレルギー抑制因子であることを見出しました。これはアンケートに基づく調査だけだったのですけれども、今年からはこの結果をもとに、介入研究をヤクルトの協力を得て開始したところでございます。
 早産防止β刺激薬リトドリン、これは我が国で非常に使われておりますが、これが児の喘息発症の危険因子であることを明らかにいたしました。その他、抗生剤曝露とアレルギー疾患の危険因子、こういったことも研究しております。
 12ページ、左上には成育母子コホート研究という別の2,014名の登録を行ったコホート研究ですけれども、こちらでも幾つかの知見を見出しております。
 右下に移っていだきます。小児慢性特定疾患治療研究事業は、成育に巨大なデータベースを構築しておりますので、今後、世界にも類を見ないいろいろな研究成果がこの中から生まれてくるのではないかと思っています。
 13ページ、ここの中では左下のところ、先天性免疫不全症に対する遺伝子治療の体制整備を行ったということを掲げさせていただきます。
 右側のところに赤で幾つか書いてあります。そのうちの下3つが胎児治療の臨床試験あるいは先進医療でございますが、これは病院長から説明させていただきます。
 14ページ、左上のところ、小児医療情報収集システムを整備したということがあります。それから、その下のほうに小児がんの中央診断業務体制を成育で整備いたしまして、全国の基幹施設にその診断を提供しております。そして、ここからいろいろなデータあるいは検体が得られますので、その検体を用いまして小児白血病に関する遺伝子研究、世界で初めてといったものを生み出しております。
 15ページの左側にはES細胞より作成したミニ小腸を利用しての薬剤のスクリーニング。右側には小児診療部門におけるガイドラインをさまざまに作成したことを挙げております。
 16ページに移っていただきますと、新生児マススクリーニングに関しましてはCPT2欠損症という新しい疾患を全自治体での実施をするということに、厚生労働省母子保健課と協力いたしまして実現いたしました。
 17ページ、成育では妊娠と薬情報センターあるいはプレコンセプションケアといったものを全国に向けて情報提供いたしております。
 以上、1-1について説明させていただきました。
○国立成育医療研究センター斉藤臨床研究センター長 
 続きまして1-2、実用化を目指しました研究・開発の推進及び基盤整備について、臨床研究センターの斉藤から御説明をさせていただきます。
 18ページ、目標と実績の比較でございますけれども、高い目標達成率と国際的に見て初の治験を行っているということなどから、評価はSとしております。
 それでは、個別について御説明をさせていただきます。19ページをご覧ください。まず左側でありますけれども、研究所と病院との連携強化ということでありまして、連携強化及び組織横断的なゲノム医療の実現といたしまして、成育医療センター、各診療科はもとより、全国の医療機関から試料が提供され、解析を行っているところでございます。
 また、治験・臨床研究におけます研究所と病院の連携推進といたしまして、理事長、病院長、研究所長を初め、幹部のメンバーによる臨床研究推進本部会議を開催し、戦略的に臨床研究の実施を推進しております。このために必要な臨床検査等に関する日本適合性認定協会によります審査も受審し、一昨年、28年度にISOを取得いたしまして、その体制の維持に努めております。
 右側に行きまして、臨床研究開発の企画及び評価のための体制整備といたしまして、戦略的に研究開発を推進するため、成育医療研究開発費につきましても運営委員会によります適切な評価に基づいて、研究課題の採択及び進捗管理を実施しているところでございます。
 下に行きまして、企業等との連携強化あるいは共同研究及び受託研究の推進といたしましては、知財・産学連携室長を中心といたしまして、企業等の産業界あるいは大学等の研究機関と当センターの連携を強化しております。その1つといたしましては、小児医療に特化いたしました国内初の小児治験ネットワークを整備いたしておりまして、平成29年度時点で40施設が参加し、約6,500床のベッド数を抱えております。施設間の連携強化に努めているところでありまして、中央審査委員会を整備いたしまして、毎月IRBを開催して、平成29年度は製薬企業の治験を12件実施したところでございます。
 20ページ、さらに平成29年度から小児領域におけます新薬開発推進のための医薬品選定等に関する研究として、小児科学会を中心として治験をオールジャパン体制で支援する小児医薬品開発ネットワークを整備いたしました。この事務局機能を成育が全面的に支援する体制を整備いたしまして、IRB審議などを行い、このネットワークでの治験を推進することとしております。
 産学連携といたしましては、現在、1社と産学連携の総括協定を結びまして、複数のプロジェクトについて具体的に検討を進めております。平成29年度のこれら共同研究あるいは受託研究数の合計は146件でございまして、昨年度同様、高い実績を示していると考えております。
 続きまして、知財の管理強化及び活用推進につきましては、知財・産学連携室長を中心とし、相談を受け、昨年度は65件の発明に対する相談を受けました。発明審査委員会も開催し、審査件数は14件に上っております。そのうち特許を取得した件数が4件でございまして、全て企業との共同出願でございました。
 21ページ、研究等の倫理性・透明性の確保といたしましては、毎月、倫理審査委員会を開催いたしまして、審議内容、審議結果、これらについてはホームページ上で情報を開示しているところでございます。また、研究倫理に関する意識・知識の向上のために、講習会を年間21回実施いたし、倫理審査委員会の申請は講習会の受講を必須としております。なお、小児を対象といたします臨床研究の実施に当たりましては、インフォームドコンセントのほかに患児へのアセントも重要な部分でございますので、より理解しやすい言葉やツールを使って説明をしているところでございます。外部の研究資金の獲得は22億強でございました。
 22ページ、これらの治験、臨床研究の推進状況でございます。First in HumanあるいはFirst in Childの治験といたしましては、ヒトES細胞を用いるFirst in Human試験の実施に向け、PMDAとの相談を終了し、試験計画が1件作成されております。本年度中の実施を予定しております。
 医師主導治験の実施につきましては、中長期計画5件に対しまして実績は新たに6件ということでありまして、その中で実施しましたサリドマイドの医師主導治験について御説明させていただきます。
 サリドマイドは御存じのように慢性肉芽腫症関連腸炎に対する世界初の臨床試験として開始いたしまして、世界に先駆けた小児用剤形、口腔内崩壊の剤形も開発いたしました。年間発症5人のところ、ステロイド薬では致死的感染症のリスクが高いという問題点をクリアするために、感染症を起こさず寛解に導く療法と剤形をつくった次第でございます。
 平成27年度から検討いたしまして、口腔内崩壊錠、毒性試験、サリドマイドでございますので安全性管理手順書といったものを作成し、全国5施設で共同試験を実施しております。患者レジストリに関しましては、学会のレジストリを活用してリアルタイムに把握しているところでございます。
 先進医療につきましては、平成29年度、1件の承認を得ております。一昨年度に承認を取得しましたミコフェノール酸モフェチルについても現在まだ進めておりまして、これも世界初の臨床試験として年間約70人の発症に対して実施をしているところでございます。全国27施設の多施設共同治験を実施し、80症例の予定のところ77例の報告を得ております。
 23ページ、臨床研究の実施につきましては29年度255件と高い数字を維持しております。治験の数については30、39、50件と、だんだんと治験の数が増えているところでございます。
 学会等が作成する診療ガイドラインへの採用件数につきましては、年間30件を数えるところとなりました。
 教育でございますけれども、以下に示すように多くのセミナー、ワークショップあるいは成育単独、小児科学会等とのコラボレーションによりまして、小児医療機関共同で開催しているワークショップもございます。
 最後に24ページ、左でありますけれども、前年度から「小児と薬」情報収集ネットワーク整備事業で整備いたしました小児医療情報収集システムを稼働いたしまして、電子カルテデータ、現在25万人分から添付文書の小児に関する使用経験がないなどの記載があるものでも500例以上の使用が確認でき、厚生労働省の安全対策課からの安全性情報として情報提供されていますし、成育のホームページでも公表しているところでございます。この作業のルーチン化についても厚生労働省と検討しているところでございます。
 以上でございます。
○永井部会長 
 ありがとうございます。それでは、御質問、御意見をお願いいたします。
○内山部会長代理 
 胎児期から成人に至るまで、幅広い分野で日本の小児医療のリーダーとして大いに活躍されていることにまず敬意を表したいと思います。
 その中で理事長先生の御挨拶の中にもありましたけれども、ナショナルセンター、特に成育医療研究センターの役割として、小児科領域の高度先進医療の研究開発、それと同時に国の政策の代行があげられますが、一般社会に対する影響も日本のリーダーとしてかなりよい部分が出ていると思います。この1年間を拝見しておりましても、小児アレルギー分野での啓蒙など具体的な臨床研究の内容ですとか、先ほども発表がありましたが、日本人にとって適切な妊娠体重の増加量、これもかなり一般の方たちに誤解があって、このような啓蒙で我が国の医療の均てん化に資する点は多いと思います。
 その中で少し気になりましたのは、都道府県の5歳未満の死亡率の格差指標です。これは先ほどの御挨拶の中にありました国の施策の代行ということではなくて、時には、厚労省にどんどん提言し、それぞれの地域で問題意識を持って解決できる方策を、厚労省を通じて指導していただけるとありがたいと思いました。ありがとうございました。
○永井部会長 
 花井委員、どうぞ。
○花井委員 
 評価項目1-2の医師主導治験の実施のところなのですけれども、何せ小児医療なので治験というのは本当に難しくて、医師主導でやらざるを得ないというのが多いと思うのですが、中期計画で5件あって、今年度は計画で4件で、6件ということで急に一気に増えたような感じなのですが、理由が何かあるのでしょうかということと、サリドマイドの安全管理というのはTERMSに準じてやるということですか。妊娠の心配がないから違うと思うのですけれども、そういったことについて、これは企業と連携してやるということだと思うのですが、特に小児が故の何か違った点というのはございますか。この2点について教えていただけますでしょうか。
○国立成育医療研究センター斉藤臨床研究センター長 
 まず数が増えた件につきましては、平成25年度から旧臨床研究中核病院指定になりまして、29年度まで5年間実施をしたのでありますけれども、この中で臨床研究あるいは治験の掘り起こしというものを徹底的に行いまして、自分の施設はもとより、ほかの施設にどういったものがあるかということを探す目的で小児科学会あるいは周産期学会の学会等に治験相談窓口というものを設けまして、そちらにブースをつくって、そこでいろいろな治験の御相談を受けるというような作業をやってまいりました。そういったうわさを聞きつけたのか、いろいろなところから情報が入ってまいりまして、こういった形で治験が進むという形になってきました。
 我々の施設の中にもホームページを設けまして、そこでも企業の方あるいは臨床研究を実施される医者の方からも御相談を受けまして、サリドマイドはそこから発生した案件でございます。
 子供、サリドマイドの特有のところでございますけれども、TERMSはもちろん患者会と一緒に相談させていただいてつくりました。子供だから安全というところもございますが、投与するのが母親ですので、母親の妊娠の確率は非常に高いというところもございましたので、母親が扱うときの注意、ここら辺を中心的に取りまとめて実施したところでございます。
 以上でございます。
○永井部会長 
 どうぞ。
○福井委員 
 いろいろなテーマについて非常に質の高い研究成果が矢継ぎ早に出ていて、すばらしいと思っています。
 1点だけ、最初のところの8ページの日本人にとっての適切な妊娠中体重増加量の算出、それから、9ページの格差指標などの論文は非常に重要だということでプレゼンテーションをされましたけれども、両方とも日本の学会の雑誌だと思いますが、これらの論文は国内でだけしか評価されないのでしょうか。できましたらもっとインパクトファクターの高い小児科領域の雑誌に掲載されるといいのにと思った次第です。
○国立成育医療研究センター松原理事 
 これは実際、投稿のときの詳細について私は把握しておりませんけれども、1つはやはりこれだけのデータはなかなか国際誌に投稿するというのは結構なエフォートもありますので、まず日本でこういったものをきちんとデータとして早く出していきたいという意図があったので、余り無理せずにさっと出してしまったというところが一番多いのではないかと私は考えております。後でまた確認します。
○国立成育医療研究センター賀藤院長 
 小児科はとても謙虚ですので、それで御理解いただきたい。
○永井部会長 
 どうぞ。
○祖父江委員 
 非常に広範な領域でたくさんの業績が出ているなという感じは非常に強く持ちました。
 1点ですが、この間も前振りのディスカッションの中で少し御質問させていただいたのですが、発達障害とかいろいろなものに対して胎児期から治療を始めておられますね。先ほども胎児治療の幾つかがあるんだということもおっしゃったのですが、がんとか何かは非常によくわかるのですが、長期の予後です。例えば小児というと発達がどこまできれいに完成して、どこまで社会に適用できてというような長期アウトカムというのが非常に大事だなと思うのですけれども、それがどれぐらいやられているのかというのが気になって先ほど来、お聞きしていたのですが、成育コホート研究というのは疾患オリエンテッドでやっておられるわけではないのですか。その辺のインターベンションをやった方々が内科的になるのですかね。その辺の長期のフォローアップでどういうアウトカムなのかというのは国民も非常に関心が高いところだと思うのですけれども、その辺のデータづくりとかはどうかというのは、現状をお聞きしたいというのがあります。
○国立成育医療研究センター松原理事 
 成育のコホートは2つ走っております。これは介入研究ではございません。しかも疾患コホートではなくて成育で出産した方をリクルートしてずっと追跡していくということでございます。まだ始まって10年ちょっとしかたっておりませんので、成人されたところまで行っておりませんけれども、これはずっと成人、そして、次の世代を産む世代、そして、その人たちが生活習慣病を発症してくる壮年期、老年期、そういったところまで追いかけていきたいということで計画をしております。
○祖父江委員 
 胎児期からいろいろな治療をやっておられますよね。そのアウトカムというか、インターベンションをやられた方々の長期フォローというのはどうなのでしょうか。
○国立成育医療研究センター松原理事 
 それもこれからでございます。恐らくそういう治療を受けられた方というのは成育から逃げていくというか、よその施設に行かれることはないと思いますので、そういう方についても全て追跡して長期アウトカムというところまで見るということにしております。
○祖父江委員 
 簡単な資料でもいいですが、5年後、10年後、15年後、20年後はどうなったかということが、知りたいところなのだけれども、なかなかわからないですよね。成育なんかはそれをぜひやっていただけるといいかなと前から思っておりました。
○国立成育医療研究センター五十嵐理事長 
 補足よろしいでしょうか。例えば先天性心疾患の左心低形成不全症候群という病気がありまして、これは30年前はみんな亡くなっていたのですけれども、この10年間ぐらいで治療を2回、3回、手術をすることによって今、例えば20歳まで行く人が60%ぐらいになってきたというデータが各学会ごとに今ございまして、それを実は学会がデータをずっと管理するのが難しいということで、いろいろな学会のデータを成育医療研究センターでまとめようという動きが今ございまして、計画ですけれども、近いうち検討する段階になっております。
○永井部会長 
 ほかにいかがでしょうか。
 ES細胞の研究ですけれども、これはまず細胞は生着するの、効果があるのか、そもそもこれは再生医療なのか、細胞治療なのか、その辺の御意見をお聞かせいただけますか。
○国立成育医療研究センター梅澤研究所副所長 
 梅澤からお答えをさせていただきます。
 まず再生医療か細胞治療かということでございますが、細胞治療という範疇に入ると思います。薬効成分はアンモニア代謝能を期待しているものでございますので、細胞のアンモニア代謝能を期待しているということになります。
 また、細胞の生着につきましては、投与後3カ月前後に肝移植いたしますので、そこの肝移植された肝臓を全部摘出されることになりますので、そこでどのぐらいの生着率かということを詳細に、別の委員会が検討するという仕組みになっているところでございます。
○永井部会長 
 ありがとうございます。今、再生医療については有効性の評価が大きな問題になっていますが、ここは謙虚に細胞治療と言っておいたほうが私はよろしいのだろうと思います。
 いかがでしょうか。
 それでは、次の1-3から1-5について御議論をお願いいたします。
○医政局医療経営支援課江口課長補佐 
 すみません、お手持ちの資料の非公開資料の外来の予約方法、参考資料7です。成育医療研究センターの部分、25ページになるのですが、差しかえをしたいということで今、お配りをさせていただくのですが、よろしゅうございますでしょうか。今、事務局の者がお配りいたします。
(差しかえ資料配付)
○国立成育医療研究センター賀藤院長 
 前回、質問をいただきましたので、もう一度、データを解析してグラフをつくり直しました。待ち時間が長いのは特に大きな変化はございません。
○永井部会長 
 図のつくり方が違っていたということですか。
○国立成育医療研究センター賀藤院長 
 結局、前回は実際の診療時刻から受付時刻を引いた時刻。今回はこのとおりで、実際の診療時刻から予約時刻を引いたということであります。
○永井部会長 
 早く来るのは自由なので、約束の時間からどれだけ遅れたかが重要です。
○国立成育医療研究センター賀藤院長 
 では、病院のほうから1-3について御説明申し上げます。
 1-3について、医療の提供に関する事項については自己評価Sをつけさせていただきました。
 最初、高度・専門的な医療の提供についてですが、まず26ページの左側のグラフに書きましたように、全国の大学病院からの紹介患者数は約1,760人で総数ですが、大体直接の入院は180人ですので2日に1回は大学病院から御紹介がある。小児の専門病院、小児病院からの紹介は年間450で、大体10日に1回ぐらいの患者さんが直接紹介されてくるというように、全国の大学病院、小児病院から送られてくるということで、この傾向は少し前よりはちょっと増しているかなという形で、全国の最後の砦としての役目を果たしているかと思います。
 次に最近小児領域で急速な増加を示しております炎症性腸疾患がだんだん増えてきまして、当センターが日本の現在としてはセンターとなっておりまして、月に2~3人ぐらいの新患患者、特に小児ではクローン病が多くなっておりますので、逆に言えば1歳未満で言いますとクローン病なのか潰瘍性大腸炎なのか診断がつきにくい患者も出てきたということで、新しい病気のことも考えざるを得なくなってきている状況が見られてきました。海外の患者さんは特に大きな変化はございません。
 27ページに行きますと、やはり一番大きな私どもの特徴は、右側に書いてあります先ほど話題にもなりましたが、胎児診療科というものを日本で唯一持っている病院でございまして、その手術件数は特にラジオとか双胎間輸血症候群の例数は世界でトップクラスでございます。最近は胎児期の横隔膜ヘルニアに対する胎児治療を治験として始めておりまして、今ちょっと臨床研究のために書き直していますが、重症大動脈弁狭窄症、あとは脊髄髄膜に対するものを今、準備中でございます。横隔膜ヘルニアについては今しておりまして、だんだんと少しずつデータが出てきております。今のものは日本で唯一、私どもで行っております。
 小児がんに関しては、厚労省から小児がん拠点病院事業というものが行われており、その中央機関または診療中央支援機関としてやっております。それでもってだんだんと患者数は当然増えておりまして、先ほど少し出ましたが、小児白血病の新患の免疫診断、現在は成育が全部全て100%行って、それによって日本の小児がん患者の治療が開始されるという体制を整えました。
 28ページにまいりますと、そのため造血幹細胞移植症例数も増えてきまして、まだ日本でトップということではございませんが、今、3番目ぐらいだと思いますが、それによって小児血液以外にも特徴的なのが慢性肉芽腫症という免疫不全症の1つですが、この骨髄移植を積極的に行って、全国の約半数、移植数の半数を私どもで行っております。生着率はほぼ100%成功しております。
 29ページに行きますと、やはり私ども特徴である肝臓移植においては、昨年は57件でしたが、生存率は96.5%、この生存率は世界でトップレベルです。
 30ページに行きますと、次には患者の視点に立った良質かつ安心な医療の提供ということで、一番大きいのは小児在宅医療の推進ということでございます。どうしても医療的ケア児という言葉が最近マスコミで出始めましたとおり、小児在宅に関してはまだまだ小児分野では立ちおくれてまいりましたが、地元の先生方、看護師さんたち、ケアマネジャーの方々を招いた講習会などを行ったりとか、31ページに来ますと板橋にあります心身障害児総合医療センターの合同講習会とか、いろいろな方々の講習会を入れて少しずつ小児の在宅の体制を整えつつあるし、それを全国に普及させつつあると、これは自負しております。
 次に、初めて小児の専門の緩和ケアを始めました。これは小児科の拠点病院が始まったことと同時なのですが、ただ、非がん、がんではない患者さんたちのケアも少し始めております。
 31ページの右側にございますように、頻度としては40人に3人いると言われている、いわゆる発達性読み書き障害について、これはきちんと教育すれば正常の成人として大学まで行けて、それでタックスペイヤーになれるものですが、これをきちんと就学前検診を行い、その教育プログラムというものを世田谷区教育委員会、そして今度は東京都の教育委員会と共同して、きちんとそのシステムを整えております。
 次に32ページは、医療安全等は特にこれはやるのが当然でございますので、特にこれは主張すべきことではなく、やるのが当然ということできちんとやっております。
 33ページは耐性菌のことですが、JACHRIの小児病院をまとめてインペネム等、そういう抗生物質の投与量を減らしたことによって耐性菌の率が減ってきたというグラフを提示しました。
 34ページですが、そういう結果、右側の病床利用率は80%ですので、大したことはございませんが、そのかわり平均在院日数は9.8日と短くなったということで、新入院の患者数は増加したという結果になりました。
 1-4、これは自己評価Aでございます。
 37ページ、特にこれは人材育成のところでございますが、小児のCRC養成をきちんとやっていったということは、これは先ほど説明していることにもつながります。
 38ページに行きますと、小児の臨床研究の行い方に関してはハンズオンセミナーとかを行いつつ、臨床研究センターと一緒になっております。そのほか右側に行きますと新生児または小児の救急の組成の研修会とか救急診療科のレクチャー。特にこれは500名以上が参加する大きなものになっておりますし、小児がん拠点病院の事業としては小児がんの専門相談員というものの講習会とか、100名以上でつくっております。
 39ページにおいては、国内外の小児病院。これは最近はとみに活発化しておりまして、中国、韓国、台湾、ベトナム、タイ、インドネシア、ロシアという形で、当然ほかの国内の小児病院とは頻繁な人事交流を行っております。
 1-5、自己評価Aでございますが、これは前回、御指摘をいただきましたものをまとめさせていただきました。
 まず41ページ、これは国の政策提言に関するところですが、一番大きいのは医療的ケア児という存在に対する在宅医療の推進だろうと思います。そのことが1つ。あとはそれに関しての医療型短期入所施設である「もみじの家」というものをモデルとして提示して、それによってこれがきちんと日本に波及するように、今、厚労省と相談しながらやっている最中でございます。
 次はトランジション外来と書いてありますが、いわゆる移行期。小児から成人期の医療へどうやって移行するかというものを今、きちんと筋を立ててプログラム、あとはそういうものをつくって、それを日本にどのように広めていくかということで現在やっております。
 42ページにおいては、先ほど申しました小児がん中央診断。これは完全に小児白血病においては全部100%成育で免疫診断を行うシステムを整えております。かつ、小児固形腫瘍の病理診断においては、このグラフに示しますように急激に増えておりまして、この一番の原因は脳外科、脳腫瘍の病理診断が急激に増えてきたということは、脳外科領域への啓発が大分実現していることのあらわれかと思っております。
 43ページに行きますと、医療政策について一番大きいのは小児の事故。小児の事故に関しては余り小児病院というのは今は医療側は大きく携わってきませんでしたが、地道に小児の事故というものの統計をきちんととって、その情報を現在出しております。その結果、国民生活センターからの注意事項や東京都からの報告事項とか、小児の事故の半分以上は成育でのデータが利用されている状況です。
 小児慢性においては、慢性疾患を持った子供たちの自立支援というものをきちんと研修会を行っているのは、成育と難病子供ネットワークと一緒に共同開催しておりますが、年2回行っております。
 妊娠と薬において一番大きいのはプレコンセプションケア。いわゆる病気を持った女性の方々、今まで余り相談できなかった方々のニーズを掘り起こして、きちんと彼女らが妊娠できる体制を整えていくということで、始めたのはその前の年なのですが、啓発活動がだんだん広がって、今きちんと患者数が増えているということです。
 もう一つ、小児と薬の情報収集ネットワーク。いわゆる成人領域ですとMID-NETがありますが、これは本当は成育で始めたのが一番早くて、そのシステムをつくったのが私ども早いのですが、やっとそれがきちんとデータが出始めて、今年度には主なビッグデータを利用して小児での薬の情報、副作用のことが今、結果が出つつあります。
 44ページに行きますと国際貢献。先ほど申し上げましたように種々のいろいろな国内外の小児病院と密接な人事交流をしておりますので、これはやはり日本でトップのレベルだと思っております。
 以上でございます。
○永井部会長 
 ありがとうございます。それでは、御質問、御意見をお願いいたします。
 先ほどの待ち時間、やはりこの間のものはおかしいなと思ったのですが、状況はよくわかるのですが、非常に複雑なのです。だからぜひこれが少しでも改善する方向に持って行っていただければと思います。
 どうぞ。
○深見委員 
 たくさんのほかの病院からの受け入れとか、周産期医療の充実等々、本当にすばらしい成果だと思います。
 1-3に関してなのですけれども、発達障害、心のケアとか薬剤、妊娠とお薬の情報の充実等々、新しく取り組みとしても始めるということなのですが、成育医療センターとしてより専門的なところ、要するに本当の医療の周産期の手術等々に関するものと、若干周辺というか、成育医療センターでやらなくても逆に言えばほかの機関に任せてもいいのかなというような気もして、より専門的なところに特化するというのではなくて、こういう広げるというものと特化するという、そういう方針についてはどのように考えていらっしゃるのでしょうか。
○国立成育医療研究センター賀藤院長 
 今おっしゃったのは、いわゆる発達障害、心のケアということも含めてということですか。
○深見委員 
 そうです。そういうものだと、もちろん重要な領域だと思うのですけれども、そのような分野であるならばあえて成育医療センターがやらなくてもカバーできる。
○国立成育医療研究センター賀藤院長 
 実際、ところが大変少のうございまして、1つはまずはいわゆる身体的な病気というのは、それはそれで一生懸命頑張ってきてここまで来ましたけれども、いわゆるみんな何で困っているのかというと、発達の問題とか心のケアで多くの子供たちが、親が悩んでいることは事実で、ところが、それを受け入れる病院がないというのも現実で、実際、私どもの救急で13~14歳の統合失調症が送られてきますが、送る場所がございません。そういう現実がたくさんあってくると、これは放置できない。ものすごくみんなが困っていることだろうと思っています。ただ、すぐに体制は整いませんけれども、きちんとした世界レベルのエビデンスをつくりながらやっていく診療体制は、私どものセンターの1つの役目ではないかと私は考えております。
○祖父江委員 
 今のことに関連してなのですけれども、前も同じようなことを議論した覚えがあるのですが、全国から患者さんがどんどん、先生のところしかできないということで皆さん来られて、そこで高度医療をやって地域に帰されるというような図式をイメージしたのですが、それが1つ重要な役割で、医業収入を増やすという点でも非常に重要なミッションだと思いますが、今の話と関連して、あのときも同じ議論が出たと思うのですけれども、中での体制がどんどん押し寄せてくることに対して医療者とコメディカル、例えば小児専門病院からの紹介患者というのは、倍にはなっていませんけれども、16年から見ると相当増えていますね。これは恐らく今後もどんどん増えていくと思うのですが、病院としての体制は持ちこたえているのかどうか。文句というか、そういうものは出てこないのかどうか。その辺は前も議論した覚えがあるのですけれども、いかがですか。
○国立成育医療研究センター賀藤院長 
 少しお時間をいただければ。1つ私どもの病院の特徴として2つ思っています。
 1つは、世田谷区の地域病院だということです。世田谷区で小児が入院できる施設は99%私どもしかございません。90万の人口で子供が増えている珍しい区で、小児が入院できる病院は99%私どもです。これは山梨県に1カ所しかないということと同じです。ということで軽症な人たちも入院するようなことになっています。
 もう一つ、今、先生が申し上げましたように難病、希少疾患も全国から受け入れるということでございます。というところでせめぎ合いがありまして、ただ、軽症も受け入れているということは、逆に言えばそこはまたバッファーになっているところがございまして、ですのでそういういわゆる全国から受け入れるとか、それを優先ではないのですが、ベッドがあいている限り全部受けるのですが、それはまだまだ、主科は専門診療科で、サポートは総合診療部という形で、逆に言えば地域医療に関しては主科が総合診療部でサポートが専門診療科ということで、結構バランスがとれているのではないかと思っています。
 ベッド稼働率は100%ございませんので、そこは全然今は問題なくやっていけますし、専門診療科は逆に言えばそういうものは紹介してほしい。あとは回転をよくしていますので、施設間搬送を私どもはやっております。いわゆる救急も夜中もどうせ運ばれてくる病院は医師はつきませんので、夜中でも私ども迎えに行きますし、新潟でも名古屋でも私どもの救急車が迎えに行きますし、帰りも送っていきます。なのでどんどん回転させれば特に大きな問題は起こっていません。
○祖父江委員 
 大変かと思ったのですが、十分回っていると。
○国立成育医療研究センター賀藤院長 
 救急診療チームは、いわゆる搬送とか何かは生きがいにしているところもございますので。
○祖父江委員 
 わかりました。
○永井部会長 
 どうぞ。
○藤川委員 
 もみじの家というのは17ページにも41ページにも出てきて、賀藤先生が27年度のときから28年度に始めます。これはすごく大事な試みですとおっしゃっていたのを記憶していますし、ずっと出てきていて、キャンセル待ちがありますよとか、好評ですよというお話は聞くのだけれども、これをこの先どういうふうに展開していくのかということが、ここだけしかないということだともっと全国に、先ほどもお話がありましたが、展開していく必要もあるのだろうと思いますし、いずれにしても途中で患者さんの家族をどういうふうにケアしていくかということも大事だよと。国家資格を持っているような女性陣が世田谷区の成育のそばに住んで、仕事をほぼやめてという事例が私の周りにもいっぱいありまして、そういうところをもう少し何とかしてほしいなということもあるので、そのあたりどういうプランがあるのか教えてください。
○国立成育医療研究センター賀藤院長 
 1つは成育だけこういう施設があってもだめだと。地方自治体に1つあってほしいということ。そのために経営的に成り立たないとどうしてもだめですので、今年度あった診療報酬改定のときには、厚労省の障害保健福祉部の方々ともいろいろ議論させていただきました。いろいろなデータも取りながらということだったのですが、どのレベルを広げるのかということで議論がございまして、一番の議論は成育でやっているケアの質の高さを維持する、いわゆるこの指とまれ式です。ここまでやればこのくらいの報酬がもらえるんだということで頑張ってもらうほうがいいのではないかということで、もう少し時間をつくって、それでもって体制を整えて、報酬でやっていける体制を整えるということをやってはどうかということで、厚労省側と相談をさせていただいている最中です。
 ですのでそういう意味では全国に広めないとだめで、それが一番の目標でございますので、そのためのことを今も情報交換していますし、何とかその道はいわゆる厚労省の障害保健福祉部の方々も一生懸命考えてくださっている最中ではあります。
○国立成育医療研究センター五十嵐理事長 
 補足しますけれども、よろしいですか。うちは11床ございまして、ようやく10床まで開設をするようになりました。そういうわけで今まで年間、昨年は5,000万円ぐらいの赤字でしたけれども、今年はその結果として2,000万円ぐらいの赤字で済みそうだということと、入院患者、世田谷区の場合には補助が出ます。今度、川崎市も補助を出してくれるようになりましたので、そういう意味からも自立して運営ができるような体制に向かいつつありますので、そういう事例になってくると各県の自治体でもそういうものができるのではないかということで、少しゴールが近くなったのではないかと期待しているところです。
○永井部会長 
 どうぞ。
○福井委員 
 ほとんど非の打ちどころがないプレゼンテーションのように思いました。細かいことで申しわけないのですが、33ページの左上の医師からのインシデントレポートの報告率は、インシデントの対象が何なのかによっても異なりますので一概には言えませんが、一般病院では医師からの報告率は10%をめどに考えておりますので、もしインシデントにかかわっている医師が提出していないようでしたら考慮いただければと思います。
○国立成育医療研究センター賀藤院長 
おっしゃるとおりです。これはまだまだ少なくて、今きちんと啓発活動をやっている最中でございます。これはまだまだ少ないと認識しております。
○永井部会長 
 どうぞ。
○深見委員 
 29ページに心臓手術の際の死亡率が書かれていたのですけれども、心臓手術以外にもほかにもいろいろ難しい手術がたくさんあると思いますので、死亡率が全国平均と同じというのは逆にもっと高くなるのではないかという印象を持つのですが、ほかの手術成績についてもこのようにかなり低い率で抑えられているのか。それから、胎児治療というのもありますけれども、日本はほかに比べるのは難しいかと思いますが、こういう胎児医療をやっているほかの国々と比べても、こういった治療成績、死亡率なのかよくわかりませんけれども、何を比べたらいいのかわかりませんが、そういうものは同じぐらいだと理解してよろしいですか。
○国立成育医療研究センター賀藤院長 
 まず新生児期の心臓を含めた手術ですが、死亡率は低いです。ほぼ亡くなることは余りありません。これは本当にもっと宣伝したいぐらいなのですけれども、外科医は逆に小さい子の手術が大好きで、1,500グラムだと言葉は悪いですが、目を輝かせて俺にやらせろという形で、大きい子は余り興味を持たない。ですので3,000グラムは大きい。2,000グラム前後をやりたい人ばかりなので、それは逆に言えば絶対にできるという自信があるからであり、かつ、あとは術後管理がきちんと、外科医は術後管理しません。完全にICUがありますので、小さい子であればNICU、人工心肺を回したり、2,000グラムでもこれは逆に小児のICUがやりますので、そういう分担ができている。外科医が疲れない、術後管理が疲れないシステムをつくっているというところで、心臓外科医はうちは5人しかいないのです。ですので脳外科医も4人しかいませんが、術後管理をしませんので、そういう意味では疲れない術後管理というのが一番大きなポイントだろうと思っています。胎児治療に関しては成績は大変いいと思っています。
○永井部会長 
 ほかによろしいでしょうか。
 それでは、続いて2-1から4-1、業務運営の効率化、財務内容の改善、その他、業務運営に関する事項について御説明をお願いいたします。
○国立成育医療研究センター古川総務部長 
 それでは、私から評価番号2-1から4-1まで関する事項につきまして、まとめて簡単に説明させていただきます。
 まず2-1の業務運営の効率化、3-1の財務内容の改善、4-1のその他に関する事項でございますが、それぞれこの自己評価につきましてはB評価としてございます。
 2-1の業務運営の効率化に関する事項について、特に48ページをご覧ください。ここで特に申し上げたいのは、左上のところに書いてございますように、2期連続の黒字決算を達成したというところでございます。これは業務運営の効率化を進めた結果でございますが、医業収益の増を図り、費用の削減を進めた結果でございます。具体的には説明資料の前後に記載させていただいてございますけれども、特に収支の改善としましては、部門別決算を実施しまして収入増加等の対策を立てたこと、また、一般管理費の削減に努め、材料費についても共同購入の実施や在庫管理の見直しをすることで削減を図ることができました。
 51ページ以降でございますが、3-1で財務内容の改善に関する事項についてでございます。これにつきましては自己収入の増加として治験ネットワークの拡大や競争的資金の獲得をするなど、外部研究資金の獲得に努めたり、あるいは施設設備投資についてはセンターの運営に支障を来さないことを前提に優先順位をつけて計画的な投資を行い、固定負債である長期借入金についても約定どおりの償還を適切に行いました。また、平成29年度の決算において約8億円の剰余が発生したため、積立金として処理する予定でございます。
 4-1の54ページ以降でございますけれども、それぞれの事項としまして内部監査や外部監査を実施し、実効性を高めておりますが、目標4回に対しまして実績14回も内部監査を実施したというふうに大幅にこなしているものもございます。また、研究の推進や医療の質の向上の観点から、クロスアポイントメント制度を活用したり、他の機関との人事交流を図るなど、中期目標に対してもそれぞれ目標を達成してございます。
 なお、先ほど申し上げました積立金についてでございますが、補足しますと53ページの右下に積立金として29年度の決算において積み立てすることとしているという記載の仕方がございますが、57ページをご覧ください。左側の真ん中2番目のところに積立の処分に関する事項として積立金の実績がないと書いてございますが、これは現在まだ財務諸表が承認されていないこともありまして、ないという記載をしておりますが、8億を予定しております。
 最後に御紹介させていただきますけれども、59ページをご覧いただきたいと思います。当センターでございますが、アメリカの評価組織でありますTOP MASTERS IN HEALTHCARE ADMINISTRATIONから高度の技術を有する世界の小児病院30の一つに選ばれました。アジアでは日本が1カ所、当センターのみでございました。今後とも引き続き職員一同、努力をいたす所存でございます。
 全体的に2-1から4-1まで大ざっぱでございますが、簡単に説明させていただきました。
 以上でございます。
○永井部会長 
 ありがとうございます。それでは、御質問をお願いいたします。
○藤川委員 
 この間のときに、看護師さんの離職率の話が出たと思うのですけれども、少し高まってしまったけれども、新人は大幅に下がりましたよということだったのですが、新人が大幅に下がったということは、逆にもう少しベテランの方が結構やめられてしまったのかなというようなことがあるのですが、それは結構最近いろいろきつい、厳しいコストもかけないというところがあって、人に対して余り還元できていないのではないかというような危惧が去年もありましたので、そういうところに影響はないでしょうかというところがありましたから、新人の方はそういう厳しいのはまだ影響はないので、ベテランの方にとってどうだったのかなというところを説明いただければと思います。
○国立成育医療研究センター賀藤院長 
 病院長から答えます。ベテランというか、こちらに来てから10年、20年の方々がやめて、一番大きなことは、前回はたまたま御主人の転勤と重なった方が結構いらっしゃいました。あとは介護です。介護で離職する方が増えたということが今後、私どもも考えなくてはいけない問題かなと思っております。
 先ほど申しましたように現場が疲れている。それはそのとおりなので、これは今年度から定員をふやす方向で今、動いております。ということで何が原因か。もう一つ、看護師は外来と病棟でやっていたのですが、病棟のほうに少し移動して、いわゆる外来の患者さんを受ける事務方とか看護師さんで少し役割を分担するような形で置いていきましたので、そういう意味では外来をやっていた看護師さん自体が意に沿わないということもあったというファクトが1つあります。そういう意味では病棟における看護師の数は少しふやしたという形です。
○永井部会長 
 どうぞ。
○斎藤委員 
 黒字を2期、しかも19億であるとか、当期総利益11億円とか、まだ決算の前なのでなしと書いてありますけれども、8億円ですとおっしゃっていたように、ほかのセンターと比べて桁外れな数字をお出しになっていて、これはBではなくてもっと高く評価していいのではないかと思います。特に受託の数もずっと増えているし、部門別の決算をしてコスト意識を徹底させていらっしゃるとか、大変経営のセンスというか経営の努力をしていらっしゃるように私には見受けられます。それをBと私から言うと下げられたのはなぜなのでしょうかということを伺いたいです。
○医政局医療経営支援課江口課長補佐 
 事務局からよろしいですか。いつもまさに大臣評価と委員の先生方の評価の乖離がある唯一の部分でございます。
 昨年度で申し上げますと、我々は当部会の意見を踏まえまして、基本的にはそれをベースに省内調整あるいは総務省との調整をするのですが、ガイドライン上、120%の黒字がAだということで非常に我々も憤りを感じておるのですが、その部分が変えられないということで、いろいろなところ方々に延べ5~6回かけ合ったのですが、そういう返事でした。
 一方で、では赤字だからCかというと、そういうことではないということでもあったので、100%が分岐でAかCかということではなくて、ある程度の振り幅はBでしょうというのが1つの見解でございました。少なくとも我々が非常に努力をしてかけ合ったのですが、現実的には無理だということを受けて、その大臣評価の結果を受けて恐らく成育医療研究センターでも気持ち的にはAなりSなりを打ちたかったところなのですが、大臣がそう言うならしようがないなというところが現実的かと思います。
 以上でございます。
○永井部会長 
 どうぞ。
○内山部会長代理 
 世界トップ30の小児病院に入ったということは、私ども部外者にとっても、誇りに思うところであります。日本の小児医療に対する貢献に大いに感服し、ありがたく思っている次第です。
 1つお聞きしたいのですが、クロスアポイントメント制度につきまして、もし具体例がありましたら教えていただきたいと思います。
○国立成育医療研究センター賀藤院長 
 1つは国立がん研究センターでも小児の手術をしたいけれども、小児外科医が来ない。これは小児外科医の専門医の更新ができない。いわゆる手術件数が少ないことと、種類があるのですが、そういうことで何とかしたいということと、私どもが小児科の拠点病院になって小児の固形腫瘍が増えてきたので、そこら辺できちんと腫瘍に特化した外科をつくりたいというニーズとちょうど相まったものですから、私の腫瘍外科の部長と医長、その2人を国立がん研究センターとクロスアポイントメントして、それでもって2人の外科医をふやしたということがございます。
○永井部会長 
 そのほかいかがでしょうか。
○福井委員 
 非常に細かいことで申しわけないのですけれども、48ページの右上の一般管理費の削減。22年度の2億2,500万から8,800万まで削減されています。こんなに削減して大丈夫でしょうか。すごいことだと思いますので、教えていただければありがたいです。
○国立成育医療研究センター賀藤院長 
 これは一生懸命電気代、水道代、ガス代、あとはコンピューターがついていれば全部消して歩くとか、いわゆる夜です。徹底してやりました。毎月報告をして、各部署にコンピューターが何でつけっぱなしになっているんだとか、あとはこのくらい水道料が多かったとか毎月フォローさせていただきまして、これはこのとおり減りました。というか、逆に言えば使い過ぎていたのではないかと思うところもあるのですけれども、これは私たちもびっくりして、皆さん本当によく協力してくださって、今もコンピューターを使わないときは消してくれていますし、あれだけでも結構な、30台分でも全然違いましたし、そこら辺は大変感謝しています。水道代もそうです。あとはちょっと申しわけないですが、便座の温度とかああいうものも含めて全部やりました。
○内山部会長代理 
 医療スタッフ、特に医師は数字が出ないとなかなか、単に命令だけだと動かない人種だと思い込んでいるのですが、高熱水量の削減によくそんなふうに皆さん協力してくださって、感心しています。
○国立成育医療研究センター賀藤院長 
 これは結構みんな協力してくれました。
 もう一つ、収入増につながったのはDPCのコーディングです。これはDPC担当の医者をつくったのですが、彼らのチームが全部診療科に回っていっていろいろ説明したところ、みんな協力してくれました。コーディングはほぼ100%ですし、正確ではないですけれども、どうやったら上がるのか。このDPCのコーディングはこちらよりこちらのほうがいいのではないかという質問が大分来るようになりました。私どものセンターは物すごくほかの面でも説明をするとちゃんとわかってくれているので、その点は感謝しています。
○内山部会長代理 
 多分、説明の仕方がうまいのだと思います。ありがとうございます。
○永井部会長 
 どうぞ。
○祖父江委員 
 外部資金の獲得状況というところを見ますと、これはAMED、厚労省、文科省というところがあるのですが、先ほど来、企業連携、企業との開発というものが幾つか出ていたと思うのですけれども、どこのナショナルセンターもなかなか企業との開発からお金を生むというからくりがなかなかうまくいっていないのですが、企業から入る外部資金、例えば委託とか共同とか知財とかいろいろな流れがあると思うのですが、それはどの程度あって、どういう状況になっていますか。
○国立成育医療研究センター梅澤研究所副所長 
 御質問ありがとうございます。
 研究費ポートフォリオといったような形で私ども研究所のほうでは考えております。まずAMED、文科省、厚労、そしてその他というところ、その他につきましては現在、企業からの共同研究費が増加しておるところでございます。今、数値が挙げられないところでございますけれども、例えば再生医療センターにおいては年間4,000万円程度。そして10名ぐらいの企業からの参画を得ているところでございますので、全体といたしましてはそれなりの数字が入ってきているかなと。そしてまた今後、それらが増えていく傾向にあるのかなという印象を持っておるところでございます。
○祖父江委員 
 これはナショナルセンターの非常に重要なところだと思いますので、今、お話を聞くとまだ規模が小さい感じがしますけれども、ぜひ今後、展開をしていただけるといいかなと思います。
○国立成育医療研究センター斉藤臨床研究センター長 
 追加で治験関係の御説明をさせていただきたいと思います。
 51ページにまとめさせていただいているところには、2番の定性評価の1行目に治験ネットワークを介して6,400万という数字が書いてございます。これはネットワーク全体ですので、日本全国を含めた取り扱いを我々の取り分として記載しているものであります。そのほかに臨床研究のデータセンターの支援とか、そういったところも5年前から始めておりまして、それが大体5,000万ほど。それから、いわゆる治験という上がりで大体2,000万ぐらいになっています。
 治験に関しましては非常に上がりが少ないのですけれども、これは治験の数と1つの治験に入る患者さんの数の違いがありまして、がんセンターと治験の数だけ比べますとたしか12分の1ぐらいしかない。うちが50件でがんセンターが600件ぐらいあったと思うのですけれども、50件というのが多いか少ないかというところがありますが、平成28年度の世界のクリニカルドットコムという治験を登録するところでのデータでいきますと、日本は50件ということでございましたので、当センターが52件ですので、大体ほとんど網羅しているのではないかと考えております。ただし、1試験当たり希少疾患ですので1例、2例というところで承認がなされるものもございますので、トータルではがんセンターと比べると恐らく100分の1ぐらいの収入にしかならないというところになってございます。
○永井部会長 
 よろしいでしょうか。
 それでは、監事から業務の監査結果等を取りまとめた監査報告について御説明をいただき、また、業務運営の状況、今後の課題改善方法等についてコメントをお願いいたします。
○国立成育医療研究センター石原監事 
 監事の石原でございます。
 監査の結果につきましては、監査報告にも示しましたが、29年度の成育の業務は委員からも評価いただきましたように、2期連続の経常収支の黒字を達成しておりまして、効果的かつ効率的に運営が行われているものと認めております。
 これは理事長以下、職員の皆様の努力によるところでございますが、監事から見ましてややできるだけ無駄なことはしないと御指摘もございましたけれども、抑えてきている部分もございまして、今後の人員増、建物の修繕、高度医療機器の購入といった費用が見込める部分もございますので、決して油断することなく、引き続き緩みのない経営を行っていただきたいと理事長には申し上げておりますし、また、意見具申もしております。
 以上、報告いたしました。
○永井部会長 
 ありがとうございます。
 続きまして、理事長から日々のマネジメントを踏まえて、現在の法人の業務運営の状況、今後の課題改善方針についてコメントをお願いします。
○国立成育医療研究センター五十嵐理事長 
 今日は成育医療研究センターの活動を御理解いただきまして、ありがとうございました。
 御説明いたしましたように、何とか黒字化を2年間達成し、新年度になりましても経営はいい状況になっておりますけれども、これはかなり無理をしてきたところがございます。例えば医療機器が欲しいのだけれども、買えなかったとか、人員をふやしたいのですけれども、増やせなかったとかいう課題が先送りされた点もございます。
 これからは医療の疾病構造も変わっておりますので、私どもが本当にしなければいけないことは何なのか、先ほど少しまとめさせていただきましたけれども、きょうまた御指摘もいただきましたが、例えば発達障害の患者さんたちをどうしたらいいのかという点につきましても、診断はつけてもその後、本当に必要なサポート体制あるいはサポートする人材を育成するとか、こういうことが全く今、日本ではされておりません。しかもその前提となる、日本は確かに子供の死亡率は非常に低いわけですが、バイオロジカルには病気をかなりいいところまで対応できているわけですが、人間はバイオサイコソーシャルな存在なわけですけれども、このサイコソーシャルな面を対応すること自体がまず制度としてできていないというところに、大きな問題があると思います。
 パピローマワクチンの後に起きたいろいろな症状に対して医療側が適切な対応ができなかったということが、このような問題をこじらしているということの原因の1つにもなっているのではないかと思います。そういうことも含めまして、私どもやらなければいけないことがたくさんありますので、そのニーズに応えるようなプロジェクトをつくって、そして私どもやれることはもちろん限られていますけれども、社会の期待に添えるような形で頑張っていきたいと考えている次第です。幸いに先ほど病院長からありましたように、説明をすると職員の方は本当に一生懸命やってくれますので、私どもも襟を正してしっかり正しい方向を見据えて頑張りたいと思いますので、御支援、御理解をいただきたいと思います。
 今日は本当にありがとうございました。
○永井部会長 
 ありがとうございました。
 何か委員から質問、コメント等ございませんでしょうか。よろしいでしょうか。
 よろしければ、以上をもちまして国立成育医療研究センターの平成29年度業務実績評価について終了させていただきます。どうもありがとうございました。
(国立成育医療研究センター退室)
○医政局医療経営支援課江口課長補佐 
 予定どおり16時からの再開で、7分ほど休憩時間ということですので、お願いいたします。
(休  憩)
○永井部会長 
 それでは、ただいまから国立精神・神経医療研究センターの平成29年度業務実績評価について御議論いただきます。
 最初に理事長から御挨拶をお願いします。
○国立精神・神経医療研究センター水澤理事長 
 国立精神・神経医療研究センター理事長の水澤でございます。
 本日は我々の法人の平成29年度の業務実績評価、まことにありがとうございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 最初に私のほうからセンター全体の概要を御説明申し上げまして、その後、それぞれの担当からより詳しく御説明を申し上げたいと思います。
 横長の概要と書いたものがお手元にあろうかと思いますので、これを使って説明させていただきます。
 3ページ、何度かご覧いただいているかもしれませんけれども、我々のミッションはこのセンターの名前のとおり、精神・神経疾患の克服であります。より詳しく言いますと精神疾患、神経疾患、そして発達障害、筋疾患という各疾患の克服を目的としております。
 病院が1つ、神経研究所、精神保健研究所、2つの研究所を擁しておりまして、これらが一体となってこの目的に立ち向かうというところに特徴がございます。それを支えるものとしてセンターの中にさらにセンターを設置しておりまして、センター内センターでございます。左側から言いますと脳病態統合イメージングセンターは画像研究のセンターです。認知行動療法センターは精神療法の1つある認知行動療法のセンターです。それから、TMC、トランスレーショナル・メディカルセンターは臨床研究推進あるいはARO機能を持った組織としてつくっております。メディカルゲノムセンターはゲノム研究・診療だけではなくてバイオリソース、バイオバンクの機能も持っております。そこに右上にありますように霊長類を含めた、あるいは筋ジス犬といった大変貴重な動物を擁する実験施設を有しております。これらが一体となってこの目的を達成するために活動しております。
 さらに一番下なのですけれども、左側にあります専門疾病センターです。後でまた出てまいりますが、それぞれの専門疾病センターを病院の職員と研究所の職員から構成して、一体となって取り組む体制を担保してございます。
 右側に沿革がございますけれども、上から3番目の昭和53年に研究部門ができたというところが始まりと言っていいかと思います。ちょうど今年で40周年でございます。
 1枚めくっていただきますと横長の図が出てまいります。今、私が申し上げたことを時間系列で示したものでありまして、基礎研究から臨床応用まで、T0からT4まで、研究所から病院まで一気通貫で研究ができる体制を整えております。研究所と病院の間に今、申し上げましたセンター内センター、動物実験棟等がございまして、それを支えるという構図でございます。
 下のほうに目をやっていただきますと5ページ目でございますけれども、医療に関しましては486床の病院を擁しておりまして、精神科の病床が191床でございます。今、申し上げましたように精神疾患、神経疾患、そこには小児科も含まれるということで診療科は16ございますけれども、精神科、脳神経内科、小児科(小児神経科)、脳外科といったところが中心となります。
 右側のリストに目を転じていただきますと、上のほうから2階のほうで脳神経内科。これは筋ジストロフィーあるいはここに書いてございませんけれども、治験の病床も含んでおります。3階になりますと小児、脳外科といったものが出てまいります。下に進んでいただきまして、4、5階が精神科でありまして、4階北を見ていただきますと救急、解放、閉鎖、さらに下に行って8、9病棟で医療観察法の病棟という形で、精神科に関して言えば全ての精神疾患に対応できるようになってございます。
 注目いただきたいのは4階の南というところでございまして、色を変えてございますけれども、脳とこころの総合ケア病棟というものを1つ作りまして、これは構図からおわかりいただけるかもしれませんが、従来、精神科でございましたけれども、現在の需要の変化に応じましてこのような形にいたしまして、神経内科、精神科、両方で対応するという病棟を新設しております。
 左の下のほうにございますが、経常収益は160億くらいの実績でございまして、医業収益は約半分。そして、医業収支率は100%を超えておりますけれども、経常収支が残念ながらもうちょっと至らないというところまで来ております。今年度は目標の1日平均440床というところ、ここに411.7と書いてあるところが、平成30年度の目標は実は440なのですけれども、4月以降これまでそれを達成しております。これからうまく発展していくのではないかと期待をしております。
 もう一枚めくっていただきたいと思います。6ページでございます。先ほど申し上げた研究開発の成果の例を1、2ご覧いただきたいと思います。これはエクソン53のスキップ療法ということで、いわゆるデュシェンヌ型の筋ジストロフィーの治療法の開発であります。最初のほうは飛ばさせていただきますけれども、下のほうに行きまして丸3をご覧いただきたいのですが、First in Humanの試験結果をScience Translational Medicineに発表することができました。そして丸4を見ていただきますと、米国のFDAのファストトラックにも指定され、AMEDの代表的成果事例に選出されて、この6月には世界最高レベルのジストロフィン回復を確認してプレスリリースを行いました。今年度中の承認申請を目指すところまで来ております。
 8ページ、これは多発性硬化症という神経難病の治療薬開発の例でございますけれども、OCHというグリコリピッドでございます。発表から十数年たっておりますが、着実に開発を進めてきておりまして、現在フェーズⅡをこれから始めるところまで来ております。AMEDの承認を得て研究費をいただいて、これから国内の有力メーカーとともに第Ⅱ相を始めていくところでございます。これは下に書いてありますように炎症性腸疾患にも応用できそうだということで今、治験が進んでおります。
 戻っていただきまして精神疾患になりますけれども、7ページでございます。まだ統合失調症等、実はこれはほとんど原因がわかっていないという状況でございます。客観的な診断法もないというのが非常に精神疾患の治療法の開発、克服を困難にしていると思われます。それを何とか本態を解明して、治療法を開発したいということで、センターを挙げて学会と協力して取り組んでいるものでありまして、今、2つの大きな矢印があると思うのですけれども、精神疾患のレジストリというほうがそうなのですけれども、これは研究費として採択されまして進んでおります。精神疾患を全部臨床症状も含めてきちんと登録いたしまして、それと各種のバイオマーカー、ここにはブレインバンクを活用した死後脳のデータも含むという形で解析をすることで、本態が明らかにできるのではないかと考えております。
 さらにその下に書いてありますように、治験や臨床研究のデータベースを活用する。これはネガティブなデータも応用するということで、治療薬の開発にもさらに弾みがつくのではないかと思っております。これはこれから研究として認めていただきたいと思っているところでございます。
 こういう形で研究成果が上がってきておりまして、9ページをご覧いただきたいのですけれども、申し上げたような研究開発に関する事項に関しましては、私どもといたしましてはS評価であろうと考えております。また、2~4の医療の提供、人材育成、医療政策等に関しましてはA評価、それ以降の経営に関するところに関しましてはB評価ということで考えてございます。
 以降、詳しく御報告いたしますのでよろしくお願いいたします。
○永井部会長 
 ありがとうございます。
 それでは、1-1と1-2の部分を先に御説明いただけますでしょうか。
○国立精神・神経医療研究センター和田神経研究所長 
 和田が説明をさせていただきます。
 まず1-1、戦略的かつ重点的な研究開発でございますけれども、10ページをご覧ください。目標として大きく2項目ございます。1つは医療推進に大きく貢献する研究成果ですが、平成29年度目標値2件以上のところ、5件の実績を上げてございます。
 もう一つの目標でありますけれども、いわゆる論文の総数でありますが、平成29年度目標値、対26年度2%以上増のところ、実績値といたしまして9.5%増を上げております。具体的な数字で申し上げますと、目標値594件のところ620件でございました。
 また、インパクトファクターが付与されました論文の数でありますけれども、一番下にありますが、対前年比38.5%増の395件でございます。
 個々の研究成果につきましては13ページをご覧ください。まず硫化水素でございます。硫化水素の研究につきましては、2016年にResearch Front Awardを受賞いたしておりますが、2017年もHighly Cited Researcherに選出されてございます。右側の小さいグラフをご覧ください。発端になりましたKimuraの論文でございますけれども、年々、被引用数が増加しているのが見てとれるかと思います。それに伴いまして大きい棒グラフでございますけれども、硫化水素の研究分野が右肩上がりに成長しているのがお分かりいただけるかと思います。
 29年度の業績でございますが、左の方に赤字で示しております。まず神経伝達調節につきましては、一酸化窒素との相互作用を明らかにいたしました。また、神経細胞保護につきましては、還元力の強い過硫化グルタチオンを合成するということも見出してございます。硫化水素につきましては心不全を初め、いわゆる臨床治験が進行中でございますので、私どもも精神神経疾患の領域におきまして臨床研究、治験を進めていく努力をしているところでございます。
 14ページをご覧ください。こちらはベルツ賞を2017年度に受賞した研究でございます。概日リズム、すなわち体内時計に関する研究でございますが、左の方の字を少しご覧になってください。私どもこれまで皮膚細胞を用いて本当に簡便な末梢時計の測定法というものを開発いたしました。
 右側をご覧ください。その方法を用いまして、いわゆる24時間型の生活を送ることができない方では、末梢時計の周期が延長している、さらに周期が長いと治療成績が不良であることを見出してございます。これらの成果を受けてベルツ賞受賞に至ったわけでございます。
 15ページ、多発性硬化症でございます。先ほど説明がございましたが、私どもOCHに関しまして2017年、平成29年8月にFirst in Human試験を完了しております。現在、AMEDから研究費を獲得いたしまして、フェーズⅡに向けての準備を進めているところでございます。
 個々の2017年度の成果につきましては、下の方をご覧ください。多発性硬化症につきましては制御性T細胞への分化抑制が本態の1つではないかと考えられておりましたが、なぜこの抑制が起こるかということにつきまして、患者さんの血中エクソソーム中で特定のRNAが増加していることが原因であるということを見出してございます。
 16ページ、注意欠如・多動症児でございますが、早期診断、早期介入が必要でございます。私どもタッチパネル方式と光トポグラフィーを組み合わせまして新しい方法を考案いたしました。左下の図でADHD児のところを見ていただくとわかりますように、右前頭前皮質背外側部で血流が低下しておりました。これらの手法は新規性があるということで2017年度、アメリカと日本で特許登録を済ましております。
 17ページ、こちらは霊長類での研究でございます。筋肉がなぜ協調的な運動がとれるかということにつきまして、これまで筋シナジー仮説というものがございました。私ども実験的にこれを実証することができたわけであります。つまりシナジーとして幾つかに分けることで、特定のシナジーに原因があるという測定が可能になりました。今後、運動失調症等々で協調運動障害が見られるようなときに、この手法がその症状の定量的評価に貢献するだろうと考えているところでございます。
 18ページ、論文の推移を示したものでございます。ここで特に強調したいのは左下の表でございます。クラリベイト・アナリティクス社では毎年、日本の大学・研究機関のランキングを報告してございます。私ども2017年におきましては生物学、生化学の分野で9位に位置づけられております。その中で特に強調したいのは高被引用論文の割合であります。他の施設に比べまして6.7%と非常に高値でございます。また、この6.7%、直近のデータで申し上げますと7.2%まで増加しております。そこに載せてございませんが、サイテーション・インパクトという指標もございます。例えば東京大学19.1、京都大学23.88のところ、我々NCNPは32.78という数値が出ております。
 19ページは実用化を目指した研究・開発でございます。指標につきましては丸1と丸2がございます。丸1はバイオバンク体制のより一層の充実を図るということでございます。丸2につきましてはFirst in Humanを初めとする試験で中長期計画中に6件以上実施する。また、診療ガイドラインにも貢献するということが目標でございます。成果につきましては19ページの下の方にございますが、バイオバンクにつきましては2017年度は対前年比67%増の3,507検体を登録してございます。また、提供実績でございますけれども、2017年度は1,500検体ほどございました。また、企業への有償分譲等も6件ございまして、新しいビジネスモデルの構築に努めているところでございます。また、個々の患者さんのレジストリにつきましても進捗がございます。
 20ページ、丸2の試験の数でございますけれども、(イ)でありますように医師主導治験実施件数、2017年度に新規2件がございました。従いまして、目標値6件のところ、これまで実績値といたしまして8件上げてございます。また、ガイドラインにつきましても後半の方をご覧ください。平成29年度の実績値累計が8件でございます。
 21ページをご覧ください。こちらは臨床試験、治験の数の推移を示したものでございまして、増加しているということが見ていただけるかと思います。特に国際共同治験、左下にございますけれども、平成29年度におきましては我々が実施した治験のうちの56%が国際共同治験でございました。また、治験の対象疾患範囲も非常に多岐にわたっているのは、右の方で見ていただけるとおりでございます。
 22ページ、バイオバンクについての個々の説明でございますけれども、私どもこれまで骨格筋では世界一の規模を誇っておりました。それに加えまして脳脊髄液、てんかん手術脳でも着実な進展を遂げているところでございます。また、利活用につきましても併せて進めているところでございます。
 23ページと24ページにつきましては、それを具体的に示したものでございます。
 25ページ、クリニカル・イノベーション・ネットワーク、CINでございます。こちらにつきましては政府が骨太の方針としてその推進をしているものでございます。CINにつきましては縦軸班と横軸班というものがございます。横軸班では武田が主任研究者といたしまして、縦軸班といたしましては中村が主任研究者といたしまして、このCIN事業の中核を占める形で活躍をしているところでございます。
 26ページ、私どもが行っております主な疾患レジストリを挙げさせていただきました。
 私の報告の最後は27ページでございます。NCNP、これらの研究成果を受けまして人材を輩出してきております。2017年度につきましても准教授以上で転出した者が6名になりました。また、PMDA、AMED等々も定期的交流を進めております。さらに連携大学院等を含めまして連携協定も着実に伸ばしているところでございます。
 私の説明は以上でございます。
○永井部会長 
 ありがとうございました。
 それでは、委員の方々から御意見、御質問をいただきたいと思います。いかがでしょうか。
○花井委員 
 世界的に評価が高い論文がたくさん書かれているということなのですが、私ども素人なので、この中でも特に、例えば実際に治験が始まっている筋ジスの治療薬が先駆け指定されているということですね。それは既に臨床にすごく近くて、患者さんのもとに届くという感じなのですが、そのほかに今後のいわゆる臨床の姿自体がすごくブレークスルーする可能性が一番高い論文というのは一体どの論文なのでしょうか。また、それが世界的ステータスでどのくらいの水準にあるか、もう一度教えてもらえますでしょうか。
○国立精神・神経医療研究センター和田神経研究所長 
 こちらの論文は、どちらかといいますとまだ研究開発段階であるというものが多く登録されております。おっしゃいますように、すぐに臨床研究ということでは、来年度のカウントになりますけれども、先ほど説明がありましたScience Translational Medicineの論文は対象になり、この中に恐らく将来的には入ってくるだろうと思います。現在そこに挙げております13報につきましては、研究開発段階のものでございますが、先ほど申し上げましたように将来的に臨床研究、治験へと進めたいという計画でおります。
○永井部会長 
 どうぞ。
○祖父江委員 
 非常に多岐にわたるいい成果が出ているなという感じを非常に強く持ちました。特に今の筋ジスのところは世界を本当にリードしているお仕事だと思うのですが、基本原理、動物での実験、最初の第Ⅰ相、その辺まではナショナルセンターでやられていると思うのですが、見ると第Ⅱ相以後は米国に移っているのですか。その辺はどうなのですか。全部を日本でやるというのはなかなかいろいろな点で難しいと思うのですが、この事情とか教えていただけるとありがたいなと思ったのですが。
○国立精神・神経医療研究センター和田神経研究所長 
 後ほど武田からお答えいたしますけれども、基本的にⅡ相は企業さんと一緒にやることになりますので、企業さんとの兼ね合いで海外を先に優先することも事情によってはございます。武田から追加させていただきます。
○国立精神・神経医療研究センター武田理事 
 御指名がございましたので、追加をさせていただこうと思います。
 今、委員の御指摘のとおりでございまして、第Ⅰ相に関しましては医師主導治験として私どもの病院で実施させていただきました。第Ⅱ相につきましては、国内と米国で実施しております。
 国内の第Ⅱ相試験につきましても、中心になりますのは私どものNCNPの病院でございまして、大半の症例を私どもの病院で、今度は企業治験として実施しております。また、米国における治験に関しましては、私どもから米国のアカデミアのメンバーに紹介しまして、米国側の企業(日本側企業の子会社)が参画しておりますけれども、そのアカデミアが強い発言力を持って私どもと連携しつつ、第Ⅱ相試験を行っております。それでこのような結果が今、出てきておりまして、先の展開を楽しみに待っているところでございます。
 以上です。
○祖父江委員 
 よくわかりました。先生のところが主体的に物事を進めておられるという感じは非常に強く伝わってきているのですが、ほかのナショナルセンター、例えば、がんセンターとか含めてなのですけれども、社会実装のフェーズになるとなかなか日本の力が及ばなくなって、外国に移転して、そこからまた逆輸入するというパターンが結構目立つので、その辺を今後どうしていくのかというのが議論になっているのですが、先生のところの今のお話ですと、アカデミア主体で米国でも行われているということで、普通の意味の実装、今までよくあるパターンの実装とはちょっと違うなということで安心しましたけれども、ぜひ社会実装の面でどう今後やっていくのかというのは、我々も考えていきたいと思っているのですが、ぜひまた教えていただけるといいなと思っています。
○永井部会長 
 ほかにいかがでしょうか。
○藤川委員 
 16ページなのですが、先ほど成育センターからお話を聞いて、その中でも小児の発達障害の話が出てきて、すみ分けというか、一緒にやられる部分があるのか、それとも何か別々ですみ分けのようなものがあるのか、そのあたり教えてください。
○国立精神・神経医療研究センター和田神経研究所長 
 これは後ほど理事長がお答えするかもしれません。私の理解でお答えさせていただきますと、協調するべきところは協調する。それから、私どもは精神・神経医療研究センターでございますので、ブレイン(脳)のファンクション(機能)を中心に解析をするという立場でおります。
○永井部会長 
 どうぞ。
○国立精神・神経医療研究センター水澤理事長 
 今、申し上げたとおりでありまして、私どもは小児神経と精神科領域でこういうことをやっている研究者を擁しておりますので、病院や研究所で発達障害の研究を進めております。そこでは成育医療研究センターでやっていらっしゃることとは連携をしつつ、お互いに無駄な競合がないようにやっていくというやり方を考えております。
これはほかの例えば認知症とか、そういったことにも共通するやり方であって、それが良いと考えております。
○永井部会長 
 どうぞ。
○深見委員 
 2つ御質問させてください。前にも御説明いただいたような気がするのですけれども、エクソンの53スキップという方法なのですが、これは筋ジスのときに患者さんが52エクソンで変異が起こっていて、53もスキップさせることによってフレームシフトか何かが合うということですか。それでフレームシフトか何かが起こらなくなって、きちんとしたたんぱく質ができるようになるという理解でよろしいですか。
○国立精神・神経医療研究センター和田神経研究所長 
 おっしゃるとおりです。フレームシフトの乱れを修復いたしまして、本来のフレームで読ませる。ただし、カットした分、短くなりますけれども、そういうタンパク質をつくり出すという形になります。
○深見委員 
 これは犬でのvivoのところでは成果が出ていてということで、臨床が始まったという理解でよろしいですか。
○国立精神・神経医療研究センター和田神経研究所長 
 そのとおりでございます。
○深見委員 
 もう一つなのですけれども、大学との連携によるということで、研究センターの場合、このようにいろいろな大学との連携で学生さん等々を確保するということをされていると思うのですが、実際にはたくさんの大学と連携していますが、大学院の受け入れ状況というのがどのぐらいか教えていただけますか。
○国立精神・神経医療研究センター和田神経研究所長 
 手元に数値がすぐに出てまいりませんけれども、例えば山梨大学、東京医科歯科大学、早稲田大学、大体1つの大学につきまして若干名から数名ぐらいの受け入れはございます。
○永井部会長 
 どうぞ。
○祖父江委員 
 レジストリのことでちょっとお聞きしたい。確認なのですけれども、Remudyを初めとして非常にたくさんのレジストリをやっておられて、しかも非常に世界的なレベルで進めておられるということはよく存じ上げているのですが、例えば26ページに現在の主な疾患レジストリというのが挙がっているのですが、これはいろいろなパターンがあると思うのですが、登録を目指すというものと、フォローアップというのが非常に重要な意味を持つ場合があると思うのですけれども、この中でどうなのですか。フォローアップをそれぞれの疾患でどう捉えられていて、それはどう位置づけされているのか。実態がどうなのかというのを教えていただけるとありがたいなと思います。
○国立精神・神経医療研究センター和田神経研究所長 
 後ほど追加があるかと思いますけれども、基本的にはフォローアップも行うという形でレジストリは構築いたしております。例えば希少疾患でありますと、対照がとれないということもございますので、我々の方できちんとしたフォローアップを行うことでシングルアームの役割に堪えるというものをつくり上げていくところであります。
○祖父江委員 
 これだけの疾患をかなりきちんとフォローアップしようと思うと相当大変だと思うのですけれども、その辺はどうされるのですか。
○国立精神・神経医療研究センター水澤理事長 
 基本的にはそのようにしたいということで、そういうことができるような仕組みになっていても実際には研究費がないとか、人員が足りないということでできないことが多いと思います。
 例えば4番目のところに、これは私がやっておりますけれども、プリオン病の登録自然歴調査はすでに自然歴という言葉が入っていますが、これは今フォローアップをやっています。しかしながら、その2個下のJ-CATというのは脊髄小脳変性症ですけれども、ウェブ登録で自然歴調査もできるようにつくってあるのですが、研究費がないためにそれはできないでいます。レジストリだけに今はとどまっております。これからそれをやっていきたいと思っているのですけれども、おっしゃるとおりの現状があると思います。
 もう一個、3番目はインターネットのレジストリでありまして、これはフォローアップするような仕組みです。我々がフォローアップするタイプではないのですけれども、患者さんというか参加者が御自分で6カ月ごとにずっと経過を見られるという仕組みになっています。このように幾つかのタイプがあるということです。
○国立精神・神経医療研究センター武田理事 
 一言だけ、Remudyに関して御質問がございましたので追加させていただこうと思います。
 私たちは上下分離ということを基本的に考えておりまして、基盤としてレジストリを置き、その上に例えばナチュラルヒストリーをフォローアップするためのプロジェクトが走る。基盤については私どもの貴重な運営費交付金等を充当させていただいて、それをきちんと維持しながら、その上にプロジェクトを走らせて経過等を追うことにしております。
 それで委員に先ほど御質問いただいたのですが、日本のプロジェクトの多くが初期相は我が国でできても、後期相は外国に行くことが多い。その背景として我が国では疫学といいますかフォローアップが十分でないために、後期相を十分に行えないということがございました。そこで先ほどお話したエクソン53スキップについては、我が国でレジストリをもとにして、前向きのコホートを準備しているために十分米国とも協調しながら医薬品の開発を最後まで進めることができるものと考えております。
 以上です。
○永井部会長 
 そのほか、福井委員、どうぞ。
○福井委員 
 15ページのところにも出てきておりますが、ありとあらゆる研究に腸内細菌がかかわってきているようです。神経系を超えたいろいろなテーマとの密接な関連がある場合、腸内細菌にかかわる研究者を内部で抱えるのか、それとも外部の研究者との共同研究とするのか、そういう方針というか現状について教えていただければと思います。
○国立精神・神経医療研究センター和田神経研究所長 
 現状で申し上げますと、まず外部の研究者と共同研究を行うということを行っております。腸内細菌叢につきましても外部に非常にすぐれた研究者の方がおられますので、その方と共同でデータを出していく。もちろんその後に内部の研究者も教育をいたしますので、そういう他の臓器あるいは場所での生物学的な検証に対しても、知識を高めるような形での育成は行っております。
○永井部会長 
 よろしいでしょうか。
 それでは、続いて1-3から1-5について法人から御説明をお願いいたします。
○国立精神・神経医療研究センター武田理事 
 それでは、1-3につきまして武田から御説明させていただきます。
 28ページ、医療の提供に関しましては2つの目標がございまして、1つ目が高度かつ専門的な医療、標準化に資する医療の提供。2がその背景となる良質かつ安心な医療の提供でございます。
 その点に関してどのような実績を上げたかということでございますが、下のほうを見ていただきますと、1に関しましては反復経頭蓋磁気刺激装置を用いた治療について、薬事承認に到達することかできました。また、2につきましては、先ほどもお話がございました専門疾病センターを中心に活動しておりますが、医療に関しましてはアウトプットだけではなく、どのようなアウトカムまで達したかということが重要かと思います。
 そういった点に関しましては1ポツ目にありますように、精神医学領域におきまして精神医療電子情報収集(PECO)というシステムを活用いたしまして、臨床指標についてモニタリングをし、医療水準の向上に利活用しているところでございます。この2に関しましては定量的な面がございますが、専門領域の手術件数及び平均在院日数を中心にその要求をクリアしておりまして、この部分について自己評価Aとさせていただいているところです。
 引き続き、その内容について御説明させていただきます。30ページをご覧いただきたいと思います。中心になります、いわゆる神経筋疾患あるいは神経筋領域の希少疾患患者に関しまして、高度かつ専門的な医療、標準化に資する医療を提供するために努力しております。その結果といたしまして、右の表にありますように多発性硬化症、デュシェンヌ型筋ジストロフィーあるいはGNEミオパチー等に関しましては、我が国の患者総数のかなりのパーセンテージの患者さんを拝見しております。
 また、6ナショナルセンターの見直しでも出てまいりましたけれども、こういった努力を反映いたしまして、私たちのNCNPの病院には二次医療圏外あるいは東京都以外からも多くの患者さんに来ていただいているところです。今後はこういった遠くから来ている患者さんについても効率的に早い診断を提供し、医療を提供することが目標になるかと思います。
 その背景としまして、顕著な活動として31ページ目をご覧いただきたいと思います。未診断疾患イニシアチブ(IRUD)におけるNCNPの活動がございます。このNCNPはIRUDの中で診断連携、解析連携、データシェアリング、リポジトリ、中央倫理審査の体制等を確立しまして、その背景があって10以上の疾患で新規の原因遺伝子が見出され、また、新しい治療薬の開発につながるデータも出てきております。こういった背景があったことから、今年度からは私たちNCNPはコーディネーティングセンター(IRUD-CC)として、その研究を継続しているところでございます。
 32ページ、具体的にどのような領域について医療を提供しているかということについて、難治性神経疾患、てんかん、認知症、精神疾患、また、先を見ていただきますと34ページになりますが、薬物依存、以下の疾患を提示させていただいております。こうした中で、この医療の活動を特徴づけることを3点、ごく簡単に御説明させていただきたいと思います。
 1つが、冒頭に理事長からもございました「脳とこころの総合ケア病棟」の開棟でございまして、35ページにその解説がございます。左下の表を見ていただきますと、以前は4南という精神病棟でございました。それを病棟の見直しの中で一般病床としております。難病患者受け入れのニーズが高まっていることから、神経難病の診断治療を目標といたしますけれども、特に精神症状を伴う患者等を受け入れることを目標にしておりまして、そのために脳神経内科医ではなく精神科医、臨床心理士等との多職種連携を推進し、そういった患者さん、家族に見られる精神的ストレスに対するケア、運動機能、生活指導などを行うことを目標にし、地域移行支援も視野に置いております。
 36ページ、これが医療の活動の背景にある専門疾病センターでございます。この専門疾病センターは、通常の専門外来とは異なりまして、冒頭に御説明がございましたように、基礎研究側と臨床医及び病院のスタッフが組織横断的に協力して組織しているものでございます。現在11のセンターがございますが、その中で2つだけ取り上げさせていただきますと、上から3つ目、てんかんセンターがあります。てんかんセンターはNCNPがてんかん診療の全国拠点として認められているということを背景として、地域のてんかん診療拠点への支援等も行っているところでございます。
 もう一つ、下から3番目、薬物依存症治療センターを取り上げます。これは後からも御説明がありますけれども、依存症拠点機関のうち薬物依存症に関する全国拠点機関として研修会等を実施しているところでございます。
 次に、こういったことを背景としまして、37ページをご覧いただきたいと思います。訪問看護件数の推移を見ていただきますと、このように増加しておりますし、また、退院支援実施件数についても、このように順調な増加が見られます。そこで最後にポイントとして、38ページ目に記載がございます認知行動療法について御紹介申し上げたいと思います。
 認知行動療法については皆様もよくお聞きと思いますけれども、患者さんたちが思っていること、あるいは考えていることに重点を置き、さまざまな疾病の治療に貢献する分野でございます。これについては我が国で最初の国立のCBT、認知行動療法センターとして平成23年4月に設立されたところでございまして、研究、臨床、研修、連携において大きな貢献が認められます。
 例えば研究に関しましては、薬物依存に関しても貢献がございますし、臨床研究に関しましては右側に例が載っております。鬱病患者における睡眠薬及び抗不安薬の減量に関してCBTがこのように効果がございます。また、疾患について見ますと鬱病、不安障害のみでなく、強迫性障害や発達障害においても効果が見られることがわかります。このような臨床における活動、診療における活動に加えて研修についても大幅な数が認められまして、後ほどまた表に出てまいります。また、国内外の多くの診療機関、研究機関と連携しておりまして、こういった活動の支えとなっております。この認知行動療法が医療について安全かつ有効にその医療を届けることの背景となっていると考える次第でございます。
 以上が評価項目1-3の説明でございます。
○永井部会長 
 ありがとうございました。
 では1-4、続けて1-5までお願いします。
○国立精神・神経医療研究センター中込精神保健研究所長 
 評価項目1-4の人材育成と1-5の医療政策の推進等に関する事項に関して、私、中込から説明させていただきます。
 人材育成に関しましては、自己評価Aをつけさせていただいております。
 まずリーダーの育成に関しましては、我が国で臨床研究実施体制の中で人材が最も不足していると言われる生物統計家の育成に注力しています。生物統計学講座を目標値年5回という値を超えて10回開催し、受講者は361名を数えております。そのほか当センターの若手研究者を対象に臨床研究研修制度を今年度も実施し、若手研究者をPIとする特定臨床研究2本の立ち上げにつなげております。また、レジデント教育に関しましては、右下にありますように小児神経科でてんかん専門医、小児神経専門医を数多く輩出しており、当該領域の診療レベルの向上に寄与しております。
 1枚めくっていただきまして、モデル的研修・講習に関しましても発達障害、摂食障害、自殺対策等々、地域のニーズが非常に高く、ほかの教育機関では行えない研修を数多く実施しており、研究成果の社会還元に積極的に取り組んでいるところであります。
 41ページの表が当センターで実際に行いました研修と受講者数を示したものですが、平成29年度は下にありますように計2,990名に達しております。一例として認知リハビリテーションに関する実践研修の取り組みについて説明しますので、次のページをご覧ください。
 認知リハビリテーションという治療は、精神疾患の認知機能の改善を介して社会機能の改善をもたらすことに有効性が実証されている治療法でありまして、こういった教育用のゲームソフトを用いて行います。我が国では2007年に導入して以来、13回の実践研修を行っており、これまでに337名の医療スタッフが修了試験に合格し、各地域で治療を展開しております。実施状況につきましては定期的にフォローアップ調査を行っており、喫緊の調査の結果では延べ1,009名の患者さんが受療したことが明らかにされております。また、この普及活動に対しまして、認知リハビリテーションの国際学会で学会賞を授与されております。
 次に、医療政策の推進に関しましてですが、こちらも自己評価Aをつけさせていただいております。まず国への政策提言ですが、こちらに6件挙げさせていただいております。こちらについては後に少し詳しく説明させていただきたいと思います。
 1枚めくっていただきまして、医療の均てん化及び情報収集、発信に関しましてですが、中ポツの下から2つ目をご覧ください。私どもの領域に関する正しい情報を国民に伝えるという意味で、メディア関係者に対する啓発が重要だと考えております。NCNPではこうして毎年メディア塾を開催していますが、平成29年度も引き続き実施しており、参加者の方々からも高い満足度が得られているところであります。また、医療の均てん化に重要な診療ガイドラインについても、関連学会と連携してこのように数多く、その作成に寄与しております。
 45ページ、下のほうをご覧ください。こちらにNCNPの取り組みが政策に反映されている事例を挙げさせていただいておりますが、下の赤く塗った5項目は平成29年度に取り組んだ事例となります。
 46ページ、右上のグラフでお示ししましたように、我が国では平成10年に自殺率が急上昇し、自殺対策は我が国の喫緊の課題でありますが、自殺予防総合対策センターが平成18年に当センターに設立され、自殺率はご覧のように平成22年ごろより下降線をたどっております。しかし、先進諸国の中でいまだ高い水準を保っているということもあり、平成28年に新たに自殺総合対策推進センターとして改組され、より幅広い視点から自殺対策に取り組むこととなりました。
 47ページは自殺総合対策大綱の概要でありますが、平成29年度にはこの大綱策定のための新大綱のあり方についての検討会、こちらの座長を自殺総合対策推進センターのセンター長が務め、これを取りまとめ、平成29年7月にこの大綱が閣議決定されております。この中で平成38年までに自殺率を平成27年に比べて3割減を目標に現在、地域自殺対策計画の策定の支援を初め、さまざまな取り組みを開始しているところであります。
 48ページ、犯人が措置入院解除後に起こしたということで社会的な注目を浴びた、いわゆる相模原事件で、措置入院のあり方についての見直しが求められ、措置入院制度運用の実態に関する全国調査を行っております。その結果、措置診察の要否に関する判断基準や警察官通報の主体である警察と措置入院に関する機関との協力体制や、退院後の支援の体制が自治体によって大きくばらついていることが明らかにされ、その標準化のための措置入院制度運用ガイドライン、地方公共団体による精神障害者の退院後支援に関するガイドラインの発出に寄与しました。
 最後に、下のほうの薬物依存関係の取り組みについてご覧ください。こちらはNCNPが系統的に取り組んできました薬物依存に関する取り組みを御紹介させていただいているものでございます。
 薬物依存濫用への取り組みは、大きく一次、二次、三次予防に分かれます。NCNPでは飲酒、喫煙、薬物使用に関する全国住民調査を行ってまいりましたが、平成25年度に危険ドラッグの使用実態を初めて調査し、その生涯有病率が0.4%に上ること。さらにその有害性に関する知識の周知率が低いことを明らかにし、啓発活動が急務であることを当時の厚労省に報告しました。
 その一方で、依存性のある薬物の基本構造から類似の化学構造を有する薬物を乱用される危険性の高い薬物として包括的に規制するシステムを提案導入し、平成24年度から27年度までの4年間の累計で依存性薬物2,094種類が包括指定され、さらに21種類が麻薬指定されています。その取り組みは、危険ドラッグの流行の早期の鎮静化に寄与したと考えております。
 また、ほかの先進国に比べ、我が国では薬物依存者は医療より初歩的な問題と捉えられる傾向が強かったのですが、当センターの研究者は薬物依存を医療対象として見直す必要性を法務省保護局薬物処遇研究会の構成員として、また、マスコミ等を通じて訴え続け、平成25年6月、刑の一部執行猶予制度の公布に寄与してまいりました。
 また、この薬物依存の医療モデルの転換に関して治療法の開発が非常に重要でありますが、そこにも取り組み、当センターで認知行動療法的な集団療法であるSMARPPといわれる治療法の有効性を実証し、その研修、均てん化に努めています。その成果は精神科医療施設38カ所、精神保健センター35カ所での治療実践につながっております。
 1-4、1-5につきましては以上でございます。
○永井部会長 
 ありがとうございました。
 それでは、御質問、御意見をお願いいたします。いかがでしょうか。
○深見委員 
 30ページの希少神経難病症例の集積、専門的医療の提供というところで、多発性硬化症とデュシェンヌ型の筋ジストロフィーの患者さんがたくさん集まってきているという御発表だったのですけれども、この疾患が集積してくるアドバンテージというのはどういうところにあるのでしょうか。ほかの疾患は0.何%ぐらいが多い、1%前後のものが多い中で、この2つが多いというのは何か特別な技術等々があって、たくさん集まってくるという理解なのでしょうか。
○国立精神・神経医療研究センター武田理事 
 御質問ありがとうございます。30ページの表に関してでございます。多発性硬化症、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、こういった疾患について患者さんがNCNPの病院に集積してくる利点は何かという御質問かと思います。
 これは委員の方が御指摘されたとおりでございまして、診断技術が高く、新しい治療に関してもその技術、実績が集積しているからでございます。具体的には多発性硬化症に関しましては、新薬を含めて新しい治療法を御提案しておりますし、しかも多発性硬化症のステージあるいは亜型に対しても、新たな治療を御提案しているところでございます。
 また、デュシェンヌ型筋ジストロフィーに関しましては、確かに現在認められている治療はステロイド以外ございません。しかし、新しい治療に関してもさまざまな知識を持った、臨床医等がそろっておりまして、したがって臨床試験等を含めてほかの診療機関にはない患者さんが通うメリットがあると考えておる次第でございます。ほかの疾患についても、それに準じた議論ができます。
○深見委員 
 そういうアドバンテージがあるということなのですけれども、どちらもすごく難病で、ブレークスルーになるような新しい治療法というものがどのぐらい出てきているかというのが、私は神経の専門でないこともあって、外から見ると免疫分野であったりがんの分野だったら、新しいことが出てきたなという印象があるのですけれども、神経に対してそういう、特に硬化症とかイメージがないのですが、例えば新しい治療というのはどのようなところが今、社会に向けて発信できるようなことになっているのでしょうか。
○国立精神・神経医療研究センター水澤理事長 
 私からお答えします。
 多発性硬化症は自己免疫疾患に分類される難病ですが、筋ジストロフィーとかなり状況は違っております。筋ジストロフィー、その下のミオパチー等につきましては根本的治療法は全くないと言って良いと思います。多発性硬化症等ほかの免疫性疾患では、多くの治療薬が開発されておりまして、特にモノクローナル抗体等、生物学的製剤というものが出てきまして、非常にその有効性は向上してきていると思います。したがいまして、疾患によってかなり状況は違っているかなと思います。筋ジスのほうは非常に難しい状況でありまして、先ほどのエクソンスキッピング等の遺伝子治療が漸く検討されている状況だと思います。
○永井部会長 
 どうぞ。
○祖父江委員 
 46ページの自殺率、人口10万対というグラフがありますね。これが平成10年に何でこんなに増えたのかよくわからないのですが、減っていますね。まだこれからも減る可能性がある。これは何でまた減ったかというのに対して、自殺予防総合対策センターが相当な役割を果たしているということであれば、これはスーパーSだと思うのですけれども、これは特異な増減だという感じがするのですが、その辺の分析を教えていただけますか。
○国立精神・神経医療研究センター中込精神保健研究所長 
 御質問ありがとうございます。平成10年の自殺率の急峻は経済状態の問題だと思います。バブルが弾けて、この平成10年の前年には山一證券が倒産したことがございまして、失業率が上がっております。日本の場合は特に自殺率が失業率と非常にパラレルに動くということがございまして、それが大きな原因だと思います。
 自殺率の減少に関しましても、経済的な影響というものは否定できません。しかし、私どもだけではありませんけれども、この自殺対策に対してさまざまな手を打ったことが影響していると思っています。
○内山部会長代理 
 今の話とも関連するのですが、47ページ、PDCAサイクルを通じて地域レベルの実践的な取り組みを推進するということですが、PDCAサイクルを回すときに貴センターがそこに直接助言できるようなシステムが既に確立されているのか。あるいは構築しつつあるのか。その辺について教えていただけますか。
○国立精神・神経医療研究センター中込精神保健研究所長 
 おっしゃるとおりでありまして、今回の自殺大綱の1つの特徴は、地域に自殺対策の計画を立案させることになっています。そのために地域の対策、計画立案に我々がかなり関与している。それは例えば地域におけるさまざまな特徴、自殺につながりやすい要因等の解析をして、その情報をパッケージとして与え、そしてその計画もチェックする。そのような形になっております。
○永井部会長 
 どうぞ。
○福井委員 
 認知症について、国立研究開発法人の国立長寿医療研究センターが中心的な研究テーマとして行っていますが、先生方の施設での認知症の研究面は外部とコラボレーションは行われているのでしょうか。
○国立精神・神経医療研究センター水澤理事長 
 コラボレーションと申しましょうか、先ほども少し申し上げましたけれども、お互いによくわかった上で無駄な競合はしないという形でやっております。例えば先ほどレジストリの話がございましたけれども、IROOPというものを我々は運営しておりますが、ここでは健常者の方々、なるかもしれないけれどもまだ認知症になっていないという方々のインターネットを通じたレジストリを行っております。それは認知症にかかわる多くのレジストリの中の我々の分担という形で、MCIとか、さらに認知症になってからのレジストリは長寿医療研究センターがやっているという形で、例えばそういう形のすみ分けになっています。
○永井部会長 
 どうぞ。
○藤川委員 
 アピールポイントというのを書いてある紙がありまして、その中で1-5の最後に薬物依存の話が出てくるのですが、きょう御説明いただいている紙で49ページが薬物依存の取り組みということでいろいろ書いてくださっているのですけれども、中身を見ると今年度、29年度にこれというのが余りよくわからないので、そこの御説明をお願いします。
○国立精神・神経医療研究センター中込精神保健研究所長 
 この薬物依存に関する取り組みは、系統的で継続的なものなので、29年度だけの業績というように切り出すのが大変難しくて、ただ、1つ言えることとしましては、現在、二次、三次予防のところの進捗状況といいますか、一部執行猶予制度はどういう影響を与えたかということの調査解析をしているということと、SMARPPの治療法の啓発、普及に関しては29年度にも進行中のことであります。この38カ所、35カ所というのは、数年前にSMARPPができる前に比べると10倍以上増えており、かなり治療体制は出来上がってきている。これは29年度においても前進しているところです。
 危険ドラッグの包括指定に関しても、平成29年度は7物質、指定薬物8物質は麻薬指定されていますので、継続的に行われているものでございます。
○永井部会長 
 どうぞ。
○花井委員 
 今ちょっと出た薬物依存の治療に関してですが、わからないので教えてほしいのですけれども、諸外国で例えばオピオイド系を使ったりとか薬物を使う治療法があると思うのですが、日本ではほぼそういうものはないのですが、そういう開発みたいな取り組みは考えていらっしゃるのでしょうか。
○国立精神・神経医療研究センター中込精神保健研究所長 
 先生のおっしゃるとおりで、日本でもそういう薬物の開発が考えられた時期もあったようでございますけれども、私は専門ではありませんが、専門の者の話によれば、薬物の有効性は十分なものではないと言われておりまして、そういったところで少しブレーキがかかっているのではないかと思われます。
 ただ、特に報酬系のアゴニスト系の薬物に関しては、日本でも取り入れられる可能性はあると思っています。
○花井委員 
 向こうは割とヘロインが多くて、日本は覚醒剤なので違う感じもあると思うし、ただ、そういうものに対する抵抗感そのものがブレーキを踏んでいるような構造がもしあるとすれば、サイエンティフィックな評価をしていただくのがこのセンターの役割かなと思います。
○国立精神・神経医療研究センター中込精神保健研究所長 
 まず先生おっしゃるように医療モデルとしての薬物依存を診てもらうというところから、薬物の研究も進めていくべきだろうと思いますし、参考にさせていただきたいと思います。ありがとうございます。
○永井部会長 
 では、最後にどうぞ。
○斎藤委員 
 素人なものですから、とんちんかんなことを申し上げるかもしれませんけれども、精神という意味で国に対して提案、貢献をなさると言ったら、例えばオウムの問題というのは精神的に非常に特異な人たちの集団で、皆さんの先生方の知見というのは非常に重要であろうと思うのですが、それがなされたのか。それから、この前、新幹線で突然、人を殺したというような突発的な事件もございました。そのような精神異常ではないのかもしれませんけれども、精神的に問題を持っている人たちが犯罪を起こすというのが最近、とみに増えているような気がするのですが、そのあたりを政府に対して何かアドバイスなさったとか、そういうものはあるのでしょうか。
○国立精神・神経医療研究センター中込精神保健研究所長 
 オウムに関しましては、そういった提言はしておりません。オウムに関しても、あるいは発達障害の件に関しても、大変重要な問題だとは認識しておりますが、患者さんをじかに診て、そして調査をしないと、提言もきちんとできないのではないかと考えています。
 ただし、新幹線の中での事件であるとか、突発的に起きるさまざまな問題に関しては、私どもも関心を持っておりまして、それは例えば暴力の問題とか、発達障害の衝動性の問題とか、一般的な問題として私どもの研究対象にはなっておりますが、いかんせん個々の事例に関しては診察をして、患者さんの個別的な状況を見ないと、軽々には物を言えないというのが実際でございます。 
○永井部会長 
 よろしいでしょうか。
 それでは、2-1から4-1まで続けてお願いいたします。
○国立精神・神経医療研究センター冨澤企画戦略室長 
 2-1、50ページをお開きください。業務運営の効率化に関する事項について説明いたします。
 ⅠとⅡがリンクしておりますので、Ⅱについて説明いたします。
 丸1ですけれども、まず給与であります。これにつきましては地域手当を今まで抑えておりましたが、適切な給与体系になるように見直すということで中長期目標を立てておりますので、この部分については今年度より引き上げまして、人事院勧告と同等にしております。
 一方、職員の不公平感等の是正のために特殊業務手当というものがありまして、これは精神科病棟の医療従事者に対する手当でございます。当センターは一般病床と精神病床がございまして、精神病床に対してはこのような手当がございます。給与体系の公平化を図るために、特殊業務手当を廃止する方向で5年間段階的に減らす方向で考えてございます。
 2から5までは、要するに目標となる数字が達成したかどうかということでございます。まず丸2は医薬品等の共同購入ですけれども、これはNC、国立病院機構と共同調達をしております。
 その次に後発医薬品ですけれども、こちらは平成29年度目標80%に対し82.5%ということで、こちらもクリアしております。
 丸4の一般管理費でございますが、これは平成26年度に対して27%以上の削減ということで、目標はそこの下に書いてございますように、対26年度15%以上削減ということでございます。
 次に丸6でございます。こちらは経常収支であります。昨年度、先生方から御指摘いただきましたように、また、先ほど理事長からの説明にもございましたように、病棟構成の見直し及びそのための改修をいたしまして、その関係で入院患者が減少したということでございます。この結果、経常収支が99%ということで、目標に対しての達成度が98.9%ということで、100%に1%足りなかったということになっております。
 その次の51ページですけれども、これは財務内容の改善でございます。こちらはまず丸1の競争的資金の導入であります。表を見ていただくとわかりますけれども、平成22年度から平成29年度まで36億円ということでございまして、外部資金につきましては急激な増加をしておりまして、努力しているということがご覧いただけるかと思います。
 繰越欠損金の解消計画ですけれども、こちらは先ほど申し上げましたように経常収支がやはり足りないものですので、それに連動して繰越欠損金解消計画については、平成29年度についてはやや足りなかったということでございます。
 52ページをご覧いただきたいと思います。これはその他業務運営に関する事項で、法令遵守、センターの維持運営の計画的な整備等でございますので、これについては割愛させていただきますが、先ほど申し上げましたような経常収支の99%に対してどのようにするのかということで、昨年度、先生方から御質問がございましたとおり、真ん中のピンクの色のところで書いてありますが、そこに病棟の構成が書いてございます。先ほどの説明にありましたように、4南病棟が旧精神科の病棟であったものを患者様の構成、待機状況等に合わせまして一般病床にし、それで精神病床の4北、5北、5南を35床から41床にすることによって、それぞれ6床ずつ増やして病床の数を増やし、なおかつ精神病床についても、その数を増やしております。
 29年度の事業収益が右側に書いてありますけれども、事業収益は平成29年度も伸びております。入院患者数は左下に書いてございまして、平成28年度は419.0、平成29年度は約412ということで若干減少しておりますが、こちらは病棟の改修に伴って、これは9月から1月まで行っておりますので、それに伴ってこれだけの数を確保するのに努力させていただいたということでございます。
 その次をご覧いただきたいと思います。54ページですけれども、昨年度、ここに書いてございますように約412名の入院の患者さんがおりましたが、今年度は440名ですので約30名ぐらいの入院患者さんが増えてございます。それと合わせた形で54ページの赤いところの精神科の一人当たりの入院の単価が1万8,800円とございますが、これが内科になることによって3万5,000円程度ということで、入院の患者さんと入院の単価の増加ということが取り組んでいるところでございます。
 ということで昨年度、29年度につきましては経常収支99%でございましたが、患者様のために改修し、ひいては繰越欠損金の解消計画にも資することはが必要でありましたので、精いっぱい努力したということで、評価していただきたいと思っております。
 以上です。
○永井部会長 
 ありがとうございます。それでは、御質問をどうぞ。
 要するに病棟を少し大きくして、数を減らしたということですか。
○国立精神・神経医療研究センター冨澤企画戦略室長 
 個室を複数の方が入れる病室にしたということでございます。
○深見委員 
 外部からの資金調達、51ページで、AMEDからすごくたくさん増加しているのですけれども、これは何か秘策というのか、何か成果が働きかけをした結果として出たのか、それともたまたまこうなったのか。
○国立精神・神経医療研究センター水澤理事長 
 特別のことと言うほどではないのですけれども、当然ですが、各研究者が自分の研究を発展させるために研究費が必要ですので、それを施設としてバックアップするといったことは常に行っております。その一般的な努力の結果と理解しております。
○深見委員 
 最近、大学なんかでは研究費をとるために機関がいろいろなサポート、要するにここは大学ではありませんしあれなのですが、そういうサポートまでする必要があるかどうかはあれなのですけれども、人材育成のところでもほかの大学にたくさんキャリアアップしていく方が出ているというとき、そういうところにそういう研究、個人の組織としてのということも大事ですが、個人の資金を獲得するというのもとても重要になっています。そういった中で組織としてそういうことをサポートする何かをしているのかなと思ったのですが。
○国立精神・神経医療研究センター水澤理事長 
 おっしゃるような活動は、先ほどちょっと御紹介を申し上げましたトランスレーショナル・メディカルセンターというところがありまして、例えば研究の倫理審査のこととかCOIとか、さまざまな面が研究者自身は時間がなくて十分できませんので、そういう支援というものをやるようにしています。また、事務方のほうでは企画医療研究課というものがございまして、きょうも担当者が来ておりますけれども、そういったところで研究内容のサポートあるいはこういう研究費の募集が来ているから、これはどうぞといった形の案内とか、大学でやっていると同じところまで行っていないかもしれませんが、できるだけそういう形で研究を支援する部分を強化していきつつあります。なかなか十分ではないのですが。
○福井委員 
 医療安全にかかわる問題点、例えば患者さんの身体抑制にかかわる倫理的な問題への病院としての対応など、何かあれば教えていただきたいのですけれども。
○国立精神・神経医療研究センター中込精神保健研究所長 
 御質問ありがとうございます。我が国は、特に精神科におきまして抑制、拘束が諸外国に比べて非常に多いということで批判を受けているところであります。先ほど武田から御説明がありましたクリニカルインディケーター、つまり臨床評価指標の電子カルテから吸い上げるシステムの中に拘束と隔離に関しては時間単位でとるようにして、それをモニタリングして、フィードバックするということをやっております。それは私どもの施設のほか参加している35施設でそういった試みをしているところで、それで減らしているという状況でございます。
○永井部会長 
 祖父江委員、どうぞ。
○祖父江委員 
 病棟の再編の取り組みは、インカムのほうから言っても非常にいいやり方だなと思いましたが、ちょっとあれですか。こういう形で少し弾力的な運用をしながら、何がベストかというのを今後も探っていこうというスタンスに見えたのですが、そういう感覚であるのですか。
○国立精神・神経医療研究センター水澤理事長 
 そうですね。そうそう簡単にはぱっと変えられない部分がございますけれども、将来的にもフレキシブルに状況の変化に対応していこうと思っております。
 今回こういうふうにしましたのも、精神科の患者さんが実際に入院される方が減っているという現状があります。逆に神経難病の方々が全国から集まってこられて、増えているといった現状がありますし、認知症にしても他の神経疾患にしても精神症状を持った方もかなりおられて、そういう方々のクオリティーなりを上げるといったことにも資するもので、経営上も悪くはないということで、両方うまくやっています。
○祖父江委員 
 もう一点だけ。それと余り直接絡まないのですが、ずっと毎年というか、今年もそうなのですけれども、拡大発展という感じがするのです。いろいろな領域に神経・精神科の疾患自体が非常に多岐にわたっているので、やはりだんだん横にというか、広がっていく感覚がどうしても私の印象としてはそういう感じもするのですが、スクラップ・アンド・ビルドというのは言い過ぎかもしれませんけれども、集約してどこかのところを今の病棟ではありませんが、改変していくデザインはなかなかやりにくいと思うのですけれども、その辺のお考えというのはいかがでしょうか。今後に向けてかなり集中してやる必要がある領域というのはあるような感じがしているのですが、そこは何かお考えは今後に向けてでも結構ですけれども。
○国立精神・神経医療研究センター水澤理事長 
 おっしゃるとおりだと思います。我々の持っている力が余り分散されてしまってはいけないと思っています。
 一見、何か領域が拡大したかのように見えるかもしれませんけれども、そんなには拡大していなくて、例えば32~34ページの医療の提供に関する事項を見ていただきますとおわかりいただけますが、御存じのように神経疾患にしても精神疾患にしても、非常にたくさんのものがありますけれども、その中でこういう神経難病とか、てんかんとか、認知症とか、ごく限られたものにしかなっておりません。結局、我々がこれまで実績を上げてきた筋疾患とかてんかんとか、そういったものはきちんと発展させる。それ以外で必要とされたものがいろいろと例えば研究費の募集等で来るわけですが、それにつきましては人とか研究費がついた段階で初めて手を出すというか、そういう方針で、無制限に拡大しているわけでは全くないということでございます。
○祖父江委員 
 中で重点的なものをおやりになっているということはあるのですね。
○国立精神・神経医療研究センター水澤理事長 
 そうですね。もう少しわかりやすくしたほうが良いかもしれません。ありがとうございました。
○花井委員 
 病床の見直しということで、歴史的な背景があって、隔離の場から治療の場に変わってきたという経緯で、全国的な調査もされているようなのですが、一般の閉鎖病床を35床にするというイメージですか。
○国立精神・神経医療研究センター和田神経研究所長 
 41です。
○花井委員
 まだ多いような気も何となくするのですけれども、例えば在院日数なのですが、全国の民間を入れるとまだまだ長いという感じなのですが、かなりこちらは全国とは乖離して短いというイメージでよろしいですか。だとすると、もっと減らせて転換できるかなと思うのですが、その辺の見通しはいかがでしょうか。
○国立精神・神経医療研究センター中込精神保健研究所長 
 精神におきましては、うちの病棟は全国平均に比べて明らかに短いと思います。
 実は今、全国的にもなるべく入院期間を短縮しようという運動はあるのですけれども、1年以内の入院患者さんが、この資料の中にも入っているかもしれませんが、再入院する率がその後、半年か1年の間に40%と言われているので、早く出すとすぐ戻ってくるという問題があって、それを退院後の支援をどうするかということで今回、提言の中に入れさせていただいています。やはり退院後の支援をしっかりしないと、短縮してもすぐ戻ってしまうという問題があるので、そこには力を入れていかなければならないと思っています。
 私どものところはかなり救急の患者さんを多く受け入れるとか、そういったことで入院期間を非常に短縮する努力はしていますけれども、一般の病院ですとなかなかそうはいかないので、そこまでは求めないとしても、少なくとも諸外国に近づけるように、そういう努力はしているところです。
○永井部会長 
 よろしいですか。では、最後にどうぞ。
○藤川委員 
 30年の1月に病棟の再編を完成させて、常勤職員数が751名から783名というのは期末時点で考えればいいのですよね。事業収益の推移というのが53ページですが、医業の部分で82から85に増えている。人件費率は去年より減っているということで、とっている時点が収益は1年分とって、人数を最終でとっているから1人当たりにすると減るとか、パーセントにすると減るけれども、今後は人件費はそれなりに増えてしまうということで考えてよろしいのですか。
○国立精神・神経医療研究センター冨澤企画戦略室長 
 人件費率が下がったのは、医業収益が増加したことに伴って人件費の割合が下がったとお考えいただければと思います。
○藤川委員 
 30人増えたのは、病床再編のために増やしたというものとはまた別なのですか。
○国立精神・神経医療研究センター冨澤企画戦略室長 
 これは例えばOTさんとかPTさんとか薬剤師さんとか、必要な方で診療報酬点数と見比べてどの職種の方が来ていただいたほうがいいのかということをマッチングさせた上で、必要な方については入っていただくという形をとったので、このように増えたということになっています。
○永井部会長 
 よろしいでしょうか。
○国立精神・神経医療研究センター武田理事 
 先ほど研究費と重点化についてお尋ねがございましたので、一言だけ研究の現場から追加させていただきます。
 51ページをご覧いただきたいと思います。AMEDの研究費は大変増加しております。ただ、これは重点的な増加でございまして、先ほど理事長から御説明があったTMCがやっている機能と関係して、例えば、レジストリ、CINの研究費、あるいはバイオリソース、ゲノム等につきまして大型の研究費が重点的に入っております。
 一方、実は文科省の科研費というものがございまして、これはボトムアップでございます。100万円単位ですが、それについては28年度統計が文科省のホームページに出ておりますけれども、私たちNCNPの採択数は実はがん、循環器等とほぼ同じであります。しかし、違うのは採択率でございまして、これは全国屈指でたしか4位か5位の高さで採択をされています。例えば認知行動療法分野、臨床心理学では全国でトップの採択数を示しております。このように大きなAMEDの研究費は重点的。ボトムアップについては研究者を督励して小さな額でもよくとるように進めていると判断している次第でございます。
 以上です。
○永井部会長 
 ありがとうございます。よろしいでしょうか。
 それでは、最後に監査報告を監事からよろしくお願いします。
○国立精神・神経医療研究センター林監事 
 監事の林でございます。
 監査報告に関しましては、お手元の財務諸表等の27ページに記してありますが、総括しますと法人のガバナンスは機能しておりまして、法令遵守等の内部統制の適切な構築もなされてきております。
 以上であります。
○永井部会長 
 ありがとうございます。続いて理事長から一言、お願いいたします。
○国立精神・神経医療研究センター水澤理事長 
 本日はどうもありがとうございました。
 課題と展望ということでありますけれども、展望につきましては、お聞きいただきましたように研究開発を初めとする医療提供、政策提言、人材育成などは、十分予定の業績を上げることができているのではないかと思っておりますが、それをさらに今後発展させていきたいと思っております。
 課題としましては、今、お聞きのとおり経営の健全化ということでありまして、先ほど私が冒頭にちょっと申し上げましたけれども、入院患者さんの数でいきますと、昨年度行いました施策がうまく機能してきているように思っております。予定の数が確保できているということがございますので、今後さらにその努力を続けていきたいと思っております。
 以上でございます。ありがとうございました。
○永井部会長 
 ありがとうございました。
 委員の皆様から何か追加の御質問、御意見はございませんでしょうか。よろしいでしょうか。
 そういたしますと、以上で国立精神・神経医療研究センター平成29年度業務実績評価を終了いたします。どうもありがとうございました。
 事務局から、今後の流れについて御説明をお願いいたします。
○医政局医療経営支援課江口課長補佐 
 今後の流れについて御連絡をいたします。
 昨年度と同様でございますが、本日御議論いただきました平成29年度業務実績評価につきましては、この後、本部会における委員の皆様の御意見や法人の監事及び理事長のコメント等を踏まえまして、厚生労働省大臣による評価を行い、その評価結果について法人に通知するとともに公表いたします。決定した内容につきましては、後日、委員の皆様にお送りいたします。
 次回は、本日3センター終わりましたので、来週7月23日月曜日の13時から、がんと循環器と国際の評価を予定しております。会場は厚生労働省の専用22会議室、18階となります。
 委員の先生におかれましては、冒頭にも申し上げましたが、机上に置いてございます評定記入用紙、記入をもし終えている場合は机上に置いたまま御退席いただきまして、後日提出いただく場合は来週でも結構ですし、最終的に8月1日までに事務局まで御送付くださいますようお願い申し上げます。
 また、本日配付しました資料の送付を御希望される場合につきましては、事務局のほうで送付いたしますので、机上の封筒に資料をお入れになりまして御退席いただければ、事務的に送付いたします。
 事務局からは以上でございます。
○永井部会長 
 ありがとうございます。
 本日は以上といたします。どうもありがとうございました。