加藤大臣会見概要

H29.12.18(月)14:52 ~ 15:02 省内会見室

広報室

会見の詳細

平成30年度予算編成大臣折衝について

大臣:
先ほど、麻生財務大臣等と平成30年度予算編成に関して、社会保障関係費などについて折衝を行いました。まず平成30年度の社会保障関係費の伸びについては、診療報酬改定、薬価制度の抜本改革などにより、概算要求時点の自然増6,300億円から1,300億円程度を削減し、5,000億円程度に収めることといたしました。そして、診療報酬の改定率については、厳しい財政事情の中ではありますが、医療機関の経営状況、医療従事者の方々の賃金の動向などを考慮した結果、診療報酬本体の改定率は0.55パーセントであり、薬価の実勢価格等の改定率は▲1.36パーセント、薬価制度の抜本改革による影響分▲0.29パーセントも含めると▲1.65パーセント、また医療材料の改定率は▲0.09パーセントとなっております。診療報酬改定に合わせ、大臣折衝事項ではありませんけれども、地方自治体から要望を受けている地域医療介護総合確保基金に関して、地域医療構想の実現に資するものであることから、金額は精査中ではありますけれども、国と地方を合わせて30億円程度を、公費ベースでありますが積み増すことを想定しております。また、薬価制度に関しては、新薬創出・適応外薬解消等促進加算の抜本的な見直し、長期収載品の薬価の引下げ等の抜本改革を行うこととしております。また、調剤報酬に関しては、いわゆる大型門前薬局の調剤報酬の適正化などの措置を講ずることといたします。介護報酬改定については、厳しい財政事情を踏まえ通所介護などの各種の給付の適正化を行うことといたしますが、介護事業者の安定的経営の確保などの観点から、改定率は0.54パーセントとしております。また、障害福祉サービス等報酬改定についての改定率は0.47パーセントとしております。併せて、各サービスの収支状況を踏まえつつ、メリハリを付けてその中で対応していきたいと考えおります。また、今年度末までの経過措置とされていた食事提供体制加算については、与党からも申し入れがあったことを重く受け止め、食事の提供に関する実態等について調査や研究を十分に行った上で、今後の報酬改定において対応を検討することとし、今回の改定では食事提供体制加算の経過措置については継続とするということにしております。また、生活保護制度・生活困窮者自立支援制度については、生活扶助基準の見直しについて生活保護世帯への影響を緩和する観点から、減額となる世帯については減額幅を概ね5パーセント以内に抑制した上で、段階的に実施する工夫をしていきたいと思っております。また、生活困窮者や生活保護受給者の一層の自立の促進や、生活保護制度の適正化にも取り組むこととしております。持続可能な社会保障制度を構築する観点から、経済・財政再生計画改革行程表に沿って着実に実行していくことを確認いたしました。また、社会保障の充実については、消費税増収分と重点化・効率化による財政効果を活用して、平成30年度予算では全体で約1兆8,700億円を確保することとしております。また、子ども子育て支援のうち事業主拠出金制度の拡充については、企業主導型保育事業及び「子育て安心プラン」に基づき増加する保育の運営費に要する費用に充てるため、拠出金率の法定上限を0.45パーセント、また来年度の拠出金率は0.29パーセントにすることとなり、経済界の協力を得て「子育て安心プラン」の実現を図っていきたいと思っております。また児童扶養手当については、全部支給の所得制限限度額について2018年(平成30年)の8月分から扶養親族等の数が一人の場合は現行の130万円から160万円に引き上げることとしております。また、支給回数については2019年(平成31年)の11月の支給から、現行の4ヶ月に一度の支給から隔月支給とすることとしております。これらの制度改正と合わせて、必要な適正化及び財源の確保に取り組んでいきたいと考えております。詳細についてはこの後事務方からブリーフィングをさせていただきます。私から以上です。

質疑

記者:
社会保障費の伸びを抑えるためにいろいろな所がマイナスされておりますけれども、それが国民の負担に繋がると思いますけれども、その点厚生労働省としてどう対応されていくのでしょうか。
大臣:
今回の社会保障関係費全体については、必要な効率化などの見直しをしっかりしながら、他方で診療報酬、介護報酬、障害報酬、あるいは生活保護を含めて必要な財源を確保するということでやらせていただいているところであります。両方ありまして、例えば診療報酬、介護報酬を上げればその分だけ保険料の増加ということに跳ね返るという部分があります。ご指摘のようにその分自己負担が増えているのではないかというご質問なのかもしれませんけれども、そのあたり常に社会保障を特に少子高齢化等が進む中で、そうしたニーズにしっかり対応していく一方で、それが社会保険料や税の負担増にも繋がっていき、もちろんこうして個人の負担がどうなっているのか多面的に見ながら議論をしていかなければいけないと思っておりますので、今回も総合的な観点に立って議論し、他方もう一つは幅広い意味での財政再建ということでありますから、そういった意味で自然増を5,000億に抑えていくという一連の方針の下で全体のセットをさせていただいたということであります。
記者:
診療報酬の改定についてお伺いします。今回0.55パーセントの引き上げということで、前回よりもわずかながら上回りました。一方で、厚労族議員や日医などからは0.6~0.8というような引き上げを求める声も交渉過程ではありましたけれども、0.55という数字の評価と0.6~0.8まで行けなかった要因はどこにあるとお考えですか。
大臣:
まず、診療報酬について申し上げれば、経営実態調査の結果を見ると、人手の確保、それに基づく人件費増といったことで、経営の状況、収支率は低下しているということでございます。一方で、賃金と物価はしっかり上昇していく必要があります。しかし他方で、診療報酬を上げるということは医療保険の引き上げにも繋がる流れもあるわけであります。その点を総合的に勘案した結果、診療報酬本体について改定率0.55パーセントとしたところであります。そういった中で、これまでも診療報酬改定の時に申し上げましたが、2025年に団塊の世代が75歳を超えていくということを見据えながら、必要な対応、特に病院機能の分化等々をしっかりと進めていけるようにしていきたいと思います。
記者:
生活保護費の関係で伺います。前回、5年前も平均で6.5パーセントの引き下げが行われていて、今回、減額幅を抑制するとしても5パーセントを上限にとどめるという、2回連続の減額方針となり、いろいろな反発がありますが、引き下げるということに関しての大きな理由、根拠をお聞かせください。
大臣:
今回ご承知のように、基本的な夫婦と子一人の世帯について検証した結果、現在の生活扶助と一般低所得世帯の消費実態は均衡しているということでありますから、そういった意味で前回とそこは大きく違うのだろうと思います。その中で、世帯における家族の人数、地域、あるいは年齢といったことを細かく見ると、それぞれ消費の実態と現行の生活扶助水準にばらつきがあるので、その点を是正していく、実態に合ったものにしていくというのが今回の改正であって、引下げ自体を目的にしているものでは全くなく、そこは前回のようなデフレを反映したというのとは様子が違っているということは申し上げておきたいと思います。しかし、その中で、実態ベースを見ても中には大幅な減額になる方も出てきています。そこはそれぞれ現在の生活扶助で生活をされている実態がありますから、そこをしっかり配慮していく中で、減額幅を縮小する、減額のスピードを3年間に分けて対応していくということで、その影響に最大限配慮するようにということを生活保護基準部会等からもご指摘いただいておりますので、それを踏まえて対応させていただきたいと思います。
記者:
今回、医療・介護の標準報酬改定で実質2025年に向けて最後の改定と言われていましたが、今回のそれぞれ0.55、0.54という医療と介護の報酬の引き上げが、2025年に向けて十分だったと言える値とお考えでしょうか。診療報酬の引き上げが0.55に決まったことによって、介護報酬がそれより下の0.54となったと思いますが、介護の方が、人材不足や今後のニーズを考えると手厚くした方がいいのではないかという意見もあるように思いますが、介護報酬の0.54という引き上げが十分だったと言えるか、お伺いします。
大臣:
1点目については、医療の方で言えば医療機能の分化や連携、あるいは医療と介護の連携といったことを踏まえて、今回報酬改定をさせていただき、また併行して地域総合医療基金等についてもそれが進むよう、財源がなかなかない中で、30億円の積み増しを行ったところであります。0.55、0.54の話がありましたが、0.55があるから0.54を決めたわけでは全くありません。それぞれの必要性に応じてその水準を決定したということでありまして、介護についても実態を見ると、介護サービスはサービス毎に収支状況にかなりばらつきがありますけれども、総じて言えば、前回の介護報酬改定の影響、人手不足の中における人件費増加等もありますので、それらを踏まえて必要な金額を確保していくということで、今回0.54パーセントの改定を行うと同時に、地域包括ケアシステムへの移行を進めていくということで、これは具体的な中身はこれからそれぞれご議論いただかなければなりませんが、そういったことを見据えた中で、必要な改定幅を確保させていただいたということであります。
記者:
薬価について伺います。かなり大幅な引き下げになったと思いますが、併せて日本創薬力強化プランを今回出されているということですが、その意図をお聞かせください。
大臣:
まず、新薬創出加算制度が薬価制度抜本改革の柱の一つになっておりますが、これまでも革新性の低い品目も加算対象になっているのではないかという指摘がなされていたため、今回は革新的新薬の創出を促進するための効率的・効果的な仕組みということで行っているところです。具体的な中身については、後ほど事務局から説明させていただきますが、しかし同時に、日本の創薬力を強化していくことは非常に大事なことでありまして、そういった意味で日本発のシーズ、種が生まれる研究開発環境の改善を行うこととしております。そうした意味で、医薬品産業強化総合戦略を平成27年9月に厚生労働省が策定いたしましたが、この見直しに伴って、創薬環境の強化を行うということで、日本発のシーズが生まれる研究開発環境の改善、リアルワールドデータの活用による創薬コストの低減と効率性向上、各種臨床ガイドラインを通じた適正な医薬品の評価の環境・基盤整備といったことで、対前年度で言うと41.3億円増の82.2億円を予算計上しているところでありまして、これ以外に別途補正予算でもお願いをさせていただいております。また、研究関係予算については、30年度当初予算ベースでは前年同額の確保を図った上で、さらに補正予算でもお願いさせていただいております。これらを総合的に製薬企業に活用していただき、我が国の創薬力の強化を図っていきたいと思います。
記者:
今回の診療報酬の本体0.55と介護報酬の0.54という数字について、大臣としてどの程度手応えを感じているのか、改めて思いをお聞かせください。
大臣:
診療報酬・介護報酬については、2025年という団塊の世代が75歳を超えていくという状況の中で、ニーズも多様化していくわけで、それに沿った体制にしていかなければならないわけであります。併せて、必要な予算と財源を確保し、併行して医療保険や介護保険を負担していただくことになります。そういったことを総合的に勘案して、議論を進めてきたわけであります。加えて、財政再建も自然増を5,000億円に押さえるといったことも総合的に勘案した結果として、今回の0.55、介護報酬については0.54となったわけであります。その中で、具体的な中身はこれからそれぞれの専門家の方にご議論いただくわけでありますから、今申し上げた方向に沿って詳細設計を進めていただきたいと思います。また、そうした方向になるように、私としても努力していきたいと思います。

(了)