閣議後記者会見概要

H21.07.24(金)10:45~11:04 省内会見室

広報室

会見の詳細

閣議等について

大臣:
閣議について特別に報告することはございません。

質疑

記者:
昨日、民主党がマニフェストの元となります政策集を公表致しました。社会保障分野では、子ども手当ですとか年金制度改革が柱になるかと思いますが、この政策集について何か受け止めがありましたらお願いします。
大臣:
細かく検討したわけではありませんのでコメントはそういうことをやってからにしたいと思いますが、各政党がきちんと政策を出して政策論争を40日間やるわけですから、有権者の御判断を仰ぐというのは大変結構だと思います。自民党も今作業をしているところですので出すと思いますし、各党も出します。やはり選挙は政策の勝負だと思います。私もここのところずっと公務で忙しくて、ほとんどテレビ番組は何度お誘いがあっても物理的に無理なので出ていませんけれども、TBSの牧嶋さんがおられますけれども、明日はTBSの「サタデーずばッと」という番組に出させていただいて、ずばっと話をしたいと思っています。
記者:
原爆症の関係ですが、原爆症の認定状況を巡っては、被爆者手帳を既にお持ちの方、これは医療費が無料になっていると思いますが、そういった方に対して「何故科学的知見を乗り越えて認定を政治決断でするのだ」という議論があると思います。そこのところをきちんとクリアしないと「選挙目当て」などの言われ方をして、救済される側にとっても、救済する側にとっても双方にとって不幸だと思いますが、何故、そのタイミングで更なる救済をするのか、その大義について大臣はどのようにお考えでしょうか。
大臣:
今も官房長官と法務大臣と私とで、今おっしゃったような問題について若干議論の整理をしてきたところであります。これまでハンセン病についての控訴断念という一つの政治的決断がありました。それから、薬害肝炎訴訟は国家賠償法であって、原爆訴訟の援護法とは性質が違います。これも、和解という裁判の場においてどうするかということで、相当皆さんも取材なさっていたように、相当苦労した上でやってきました。基本的に一番大切なのは、ハンセン病の時もそうですし、今でもハンセン病について一生懸命やっていますし、肝炎も、肝炎の方々と検討をやっていますけれども、やはり被害者の方々、原告の方々と心を一つにして解決するのだということに尽きると思います。その為に色々な障害がある。その障害を「どういう形で乗り越えていくんですか」という話になります。今の原爆症について一つわかりやすい例を言いますと、これは原爆症の認定をするかどうかということは、それは赤十字病院や原爆病院のお医者さんがずっと患者さんを診られて、その知見を基にして一つ一つ検討されるわけです。どう見てもこの方は原爆症という方はすぐに認定される。しかしながら、色々なことでやったけれども、「爆心地から遠くに住まれすぎてる」とか、「広島に入った日にちが原爆を落とされてから二週間以上経っている」とか、色々あって、認定の委員会の方が認められないという決定を下します。そうすると「ちょっと待って下さい。私は原爆が原因で体が不調だと思います」ということで訴えを起こされているわけです。その上で、裁判官が自分の良心に基づき良くお調べになって、「この方はやっぱり認定しましょう」「この方は認定できませんよ」ということになります。裁判官から見ても「この方は認定できませんよ」といった方がおられます。この人に対してどうしますか。「厚生労働大臣、あんたが何でもやってくれ」といって、司法の判断が下ったのに行政の長である私が「そんなもの関係ない。認定します」ということをやることは、日本国憲法に背く、三権分立に背くことであって、司法の判断は司法の判断でものすごく重いのです。したがって、そういうことを良く考えて、そして仮に、原告団や弁護団の方々は「一括して全部認定しろ」とおっしゃっていますね。仮にその意見をそのまま入れてしまいますと、厚生労働大臣は三権分立の独立した裁判の決定まで右左勝手に動かせるということになりますね。これは日本国憲法を学んだ方は誰が考えてもおかしいということになります。したがって、厚生労働大臣としてはそういう決定を下すことは出来ないということが当たり前のことなのです。そこから先をどのようにしてそういう方々に対して光を当てるのかというのは別の問題です。したがって、肝炎の時は御承知のように、行政で出来る最大限の努力を行いました。肝炎の方々と心を一つにして、大きな積み重ねの上に最後の政治決断ということで、議員立法でやったわけです。私は今まで、心を一つにして積み重ねをやってきて、例えば今までの大臣に比べて30倍近い人を認定しています。それからお医者さんに「何だ大臣、医者に文句を言うのか」と言われながら、新しい方針を作りました。原告306名中197名、3分の2は認定済です。それから、高裁判決で認められた方は全員これを認めています。そういうことを積み重ねて、本当に心を一つにして、ここまでやってきています。私は行政の長として、日本国憲法体制でやれることはここまでです。私が手を抜いて何もやっていないなら、彼らも信頼しないでしょうけれども、良くここまでやってくれましたと、信頼してくれています。そこから先は、国権の最高機関である国会という場で、例えば議員立法という形で片を付けるというのは一つの方向なのです。そういうことを一生懸命、原告や弁護団の方とも議論をして、これは「大臣が駄目だから」とか「大臣が失敗したから」とか「大臣が手柄を立てた」とかそういうレベルの話をしているのではないのです。どうすれば解決できるかということを考えないといけません。その為に日夜力を合わせてやっているというのが今の段階ですから、私は「国民全体が納得出来るような解決策をきちんと見つけましょう」ということは官房長官にも申し上げていますし、法務大臣にも申し上げていきます、法務大臣は法の番人ですから違法行為を許してはいけないので、その中で何とか光を見い出そうとしているのが今の状況です。是非、原告や弁護団の方と心を一つにして努力をしていますので、報道機関の方々も一緒に心を一つにして、そういう方向で努力をしていただければありがたいと思っています。
記者:
大臣の今のお考えというのは、敗訴原告については認定基準の変更を勝ち取った功労があるという形で解決金を支払う考えもあるのですが、今の大臣の御発言というのはそれと矛盾をしないものと捉えてもいいのでしょうか。
大臣:
例えば、がん、甲状腺の機能障害について言えば、医学的所見においても非常に被爆と関係が深いということがあります。ですから、そういう問題について出来るだけ認めようと。裁判官にしても何も勉強もしないで、ただ言いたいことを言っているのではなくて、本人の良心のみに従って行動するわけですから、今までの研究報告ですとか、お医者さんの研究論文をお読みになって自分の裁判官としての生命を掛けてきちんと判決を下されていると思いますから、何度も申し上げますように判決は重いのです。そういうことも勘案して行っています。ですから、裁判官が「私だって認められないよ」という方々に対して、どうするのですかということは難しい問題だということは分かると思いますから、針の穴を駱駝が抜けるように難しいことかもしれませんが、それでも努力をするというのが私の立場ですので、是非努力をしたいと思っております。
記者:
今ほどのお話ですと、河村官房長官は先般来、来月の6日、9日の原爆祈念日に麻生総理大臣から解決のメッセージを発したいと御発言しているのですが、先ほどの大臣のお考えですと議員立法も一つの手段だということですが、そうすると政府として議員立法を行うことを言うことに少し違和感を感じるのですが、その辺はいかがでしょうか。
大臣:
ですから、行政としてどこまで出来るかは、既に大変努力をしております。ただ、我々は憲法違反とか法律違反を犯すわけにはいかないわけですし、裁判官の独立を犯すわけにもいけません。そういう中で行政で出来ることは最大限の努力をする。しかし、出来なかった時には例えば、議員立法という方法がありますよということです。それはまったく性格が違いますので、肝炎の問題と原爆症訴訟の問題を並べて論じることは論外なのですが、一つ例を挙げれば政治決断という時の例はそういう問題ですということを申し上げました。国権の最高機関は国会ですから。後から出来た法律の方が有効性がありますし、特別法というのは一般法に優先しますので、そういった法的な理論を踏まえた上でやれば、国会での議員立法という形が私の考えかどうかと言えば、いろいろな意味で一番適切な方法であろうということです。政府が大きな方針を決めるというのはそういうことであって、そうしておかないと無理難題を何でも総理が言えば決まる、厚生労働大臣が言えば何でも決まるというのでは法治国家ではありませんから、一定のきちんとした対応が必要だと思っております。ただ、今までの実績があり、肝炎も何もしないであそこまで行ったわけではありません。皆様に見えないところで双方が努力をし、熟した柿がポトンと落ちるところで、柿をポッと落とすのに触ったのが政治決断というところまでいかないと、柿の種を埋めた段階で実を取ることは出来ませんから、私は相当柿が熟すところまで双方努力をしてきたと思っておりますし、今も皆様に見えないところでやってますから、是非そういう方向で行きたいと思います。ですから、政治の役割というのはそういう大きな方向を示すということである必要があります。ただ、相手があることですから最大限の努力をする。肝炎の場合は努力をして、あの解決もすべて解決したわけではありません。肝炎の患者さんはたくさんおられますし、原爆症訴訟についてもこれですべて片付くわけではなくて、今後ともいろいろな努力をしていかないといけませんので、そういう努力に繋げるような形で行っておりますし、肝炎の検証会議も原告の皆様方が入って、更にいい政策を行っています。ですから、原爆症訴訟についてもそういう方向を目指したいと思っており被爆者の方々も私と心は同じだと思っておりますので、全力を挙げていい方向に努力したいと思っております。今おっしゃられたことはよく分かりますが、そういう懸念が払拭できるように残された日にちをがんばりたいと思っております。
記者:
今まさに残された日にちとおっしゃられましたが、今、大臣がおっしゃった柿が熟す時というのは、来月の原爆祈念日に合わせてということは変わらないのでしょうか。
大臣:
それは相手のある話ですから一人で決めるわけではありません。皆で努力する必要があるということまでしか言えないと思います。
記者:
関連ですが、原告側は一審判決で勝訴している原告については原爆症認定してくれと求めていると思いますが、そこについてはいかがでしょうか。
大臣:
それをするとすれば、どういう形でやり、どういうことをやれば法に違背しないのかということを考えないといけません。それから、控訴しており、控訴するのはするなりの理由があります。その事実は変わりませんので、控訴を取り下げることは可能であるかどうかも検討しないといけません。ハンセン病の場合は控訴をしなかったのですが、そういうことを含めて現在検討中ということですので、出来るだけいい形でまとめたいと思っております。
記者:
民主党の岡田幹事長が、先日、診療報酬改定に国会が関与したらどうかということを提案されたのですが、それについてどうお考えでしょうか。
大臣:
それも一つの考え方だと思います。いつも申し上げておりますように、なかなかその時々の大臣の意思が100%反映されるわけではないです。大臣がころころ変わることも問題ですが。ただ、逆に言えば、その時の大臣の意向で右にも左にもなるようであってもいけないので、中医協だけではなくて全部の審議会に関わる問題です。労働分野についても全部審議会で議論しないといけませんし、最低賃金もそうです。そうしますとプラスとマイナスがあります。要するに、審議会で大臣の暴走を阻止するという良いところは良いところで使う。中医協は医療提供側と、医療を受ける側と中立側が入って構成されていますので、私も様々な批判をしてきましたが彼等は立派な仕事をしてくれているということについては、疑いを差し挟んでおりません。そういう中で例えば、ハイリスク分娩に加算するということと産婦人科医や救急医を救いたいと思って言い続けて来たら、中医協で認めてくれております。ですから、大臣が相当しっかり言えば意見が反映されます。中医協を全くなくしてやった時のプラス、マイナスがありますので、組織を変えただけですべてが変わったりするのであれば、そんな楽なことはないので、どういう組織であれ、そこを動かす人がどうかということもあります。しかし、一つの重要な提案だと思いますからよく検討していいと思います。
記者:
新型インフルエンザの患者が5千人を突破して、患者が増えていることで脳症を発症する児童が2人出ているのですが、これについてのお受け止めをお願いいたします。
大臣:
まさにこの蒸し暑い、湿度の高い夏に患者数が増えております。ですから、新型インフルエンザについて病原性が低いからといって、皆安心しておりますが、私は是非国民の皆様に警戒を怠らないでいただきたいと思います。脳症を発症する児童が出てきました。私の知る限り世界で初めてのケースだと思いますが、そういうことを引き起こすとすれば、人類が知らない新しいインフルエンザですので警戒を怠らず、人混みの中に入ったら手を洗う、うがいの励行、こういう暑い時ですから睡眠、栄養をよく取り抵抗力を高めて行くことをきちんとやらないといけないと思います。今はまだ気候が暑いからいいのですが、寒くなる秋、冬にかけての第二波は相当警戒が必要だと思いますので、ワクチンの準備、病院の体制の整備を引き続きやって行きたいと思います。「脳症の患者が出た、こういうことに気をつけてください」といった情報を逐一国民にお出しいたします。集団感染の場合のみの報告義務にしましたが、今の様な状況ですからお分かりいただけると思います。しかし、まさに集団感染を含めて警戒を忘れてはいけないので、是非、国民の皆様にも引き続き警戒を怠ってはいけませんということを申し上げたいと思います。そして、情報を含めて厚生労働省としても最大限の努力をいたしますので、国民全体で新しい驚異に対応したいと思います。幸い、脳症だと診断されたお子さんは今36度台の平熱に戻っておりますから、生命の危険はなく健康は回復しつつあります。今後ともそういう方が出てくる危険性があると分かりましたので国民皆で団結してこれに対応したいと思っております。

(了)