柳澤大臣厚生労働記者会共同会見概要

H18.09.27(水)16:38~17:13 省内会見場

広報室

会見の詳細

質疑

記者:
幹事の方から各社からの質問を取りまとめて、まず、お尋ねしますのでよろしくお願いします。まず、安倍総理が総裁選中でも言及されました、社会保険庁改革関連法案の取り扱いですが、今後の見通しについては、どのようにお考えになっていますでしょうか。
大臣:
昨日、初閣議で、この社会保険庁の改革関連法案を継続してご審議をお願いしたいと、こういう閣議決定を致したところです。したがって、我々としては、この法案を中心としてご審議をお願いするということであります。ただ、いろいろ状況の変化がありまして、この間与党の方でも、さらにいろいろと検討をされると、また現にしつつある、こういうこともよく承知を致しておりますので、こういうような与党側のご議論の推移、こういうようなものも反映する形で、私どもこの審議が行われるということを期待を致しておるわけです。その結果、一番いい結論が出れば、それは政府としても歓迎をするというか、そういうふうな考え方に立っています。
記者:
社会保障費、給付費の今後の見通しですが、6月の骨太方針で、今後5年間で1.1兆円を目安にして削減していくということになっておりますけれども、今年度分、あるいはそれから先、今後5年分について、どのような見通しをお持ちになっていますでしょうか。その削減内容について。
大臣:
これは、これまでの毎年の、このごろは自然増という言葉を使うようですが、私の時代では当然増という言葉なんですが、いずれにしても、社会保障制度を維持しますと、その公的負担の部分が増崇をきたすわけです。そういう見通しの下で、これから5年間をかけて1兆1、000億円、これまでも2、200億円程度、厚生労働省として、これの縮減に努力をしてきたという実績を踏まえて今後5年間も同様の努力が行われると、こういうことを想定しまして5年間で1兆1,000億円の削減を行うということが想定される骨太方針になっている、こういうことです。しからば、来年度はこれをどういうふうに実現するか、ということですけれども、来年度については、今、行っている概算要求ベースで大体想定されていることなんですけれども、雇用保険の面で政府の負担はどういう率であるべきか、あるいは、若干特別会計にたまりの部分もあるので、そういったものも活用できないか、こういうようなこと。あるいは、生活保護費ですね。そういったことについて、さらにいろいろ精査をした上で、本当に必要な人には、当然支給がされることなんですけれども、受給者の中に何かもうちょっと合理化出来る余地はないかというようなものを、しっかり分析・精査して、そういう節減努力の金額を満たしてまいりたい、こういうように思っております。その後についてはどうかということですけれども、これは、今、具体的に中身はこうですということは、率直に言って、言う準備はありませんけれども、社会保障制度全体の中で、何とか期待されている、想定されている金額の削減努力というものを実現させていきたいと、このように考えているところです。
記者:
出生数の関係ですけれども、今年は対前年に比べて増加の兆しが出ているという数値が公表されておりますけれども、こうしたトレンドをどのように受け止められているかということと、これが今後の社会保障政策やあるいは少子化対策に与える影響については、どのようにお考えになっているのでしょうか。
大臣:
今年1月~7月までの実績値が明らかになっておりますけれども、1万5,000人程度、昨年に比べて、出生数が増えたということで、我々も大変嬉しく思っておりまして、この推移を期待をしながら見守っているというところです。一体何がこういう事態を招いてくれたんだろうかということに関心があるわけですけれども、今我々の分析がそこまで十分に行き届いているということでありませんから、確たる事は申し上げられないんですけれども、やはり、機運的には、景気が良くなった。このことで、若い人の結婚の希望というものが現実のものになるというようなことがあるのではないか、あるいはエピソード的に言うと、黒田さんのご結婚なども影響しているのではないか、あるいは、もっと希望的に言うと、我々政府与党が本当に少子化対策というものに大きな関心を払って、いろいろな所でいろいろな発言が出ているというようなことも、若い人たちの出産というものをエンカレッジする背景として作用しているとしたら有り難いな、またそういう期待を裏切らないようにしなければいけないなというようなもろもろのことを思い浮かべながら、今その推移を見ているところであります。エピソード的に言いますと、私の日頃お付き合いのあるある記者さん、自分と同じ年配なんだけれども、少しこの頃給料が上がってきて、結婚しましたよって、そういうことを伝えてくれる人もおりまして、やはり最初に言った要因、つまり景気、現実に給与が上がること、今安倍内閣は、「成長」ということを非常に強く押し出しておりますけれども、こういうことの影響が大きいんだとしたら、本当に今の安倍内閣の基本方針である「成長追求」というのが、単に財政収支であるとか、そういったことだけではなくて、そういう日本の一番の頭の痛い問題である少子化というようなものにもいい影響を与えていく、こういうことが考えられるわけです。その意味でも、この成長というものを追求していかなければいけないと思っています。しかし、楽観は許されないわけで、これから人口の推計でしょうか、人口動態調査みたいなものが科学的に行われるということですから、それらを見ながら、世代間の共助というのでしょうか、そういったことである年金などが円滑に運営されるように、これからまた次の再計算の時には、そういったことについても、きちんとした科学的な根拠に基づいた再計算をしていくということが求められるだろうと、このように思っています。
記者:
少子化対策ですが、6月に新しい政府与党の対策がまとまりましたが、一つの目玉だった乳幼児加算、財源等については、年末の予算編成まで先送りになっていますけれども、その辺の見通しも含めてですね、新しい少子化対策の内容についてどのように受け止められているか。それから乳幼児加算の財源についてお願いいたします。
大臣:
この少子化対策というものが、一体何が決め手になるかというのは率直に言って、先の質問にもありましたように、まだ十分な分析の結果というものがでておりません。いろいろ緻密なことよりも可能なことを全部総動員して対処していこうというような状況だと言っていいと思うんです。そういう中で、これは私が猪口大臣から、直接私の議員会館に来られて、私は税制調査会長だったんですが、私に向かってですね、「とにかく乳幼児に対する増加、上乗せの給付金が是非必要なんです」ということで、熱心に説かれていったということを、よく私も記憶しております。しかし、それにかかる経費というものの大きさを考えると、我々も一生懸命努力はしたいと、こういうように思いますけれども、厚生労働省の予算の範囲内でどこか生み出すなら生み出しなさいみたいなことが予算編成のこの頃の常道ですから、そうすると、また年末に向けて一つ頭の痛い問題が増えるのかなというように考えております。しかし、少子化、先ほど言ったような、1月~7月までパーセンテージにして2.3%ですか、とにかく増加に転じたという、この端緒というものは大事にしていきたいと考えておりますので、そこを踏まえて出来るだけいい結論になるように、この予算の折衝に臨んでいきたいと思っています。
記者:
先の通常国会で成立した、医療制度改革関連法案に基づいて、新たな後期高齢者医療制度というものが、平成20年4月ということで、それに向けて高齢者にふさわしい診療報酬体系のあり方など検討されていくことになっておりますけれども今後の新たな後期高齢者医療制度の導入に向けて、どのような点をポイントにして検討を進められていくお考えでしょうか。
大臣:
この後期高齢者医療制度を新しく作って、要は、その費用の分担関係を明確にする、それから、その分担された費用がきちんと医療サービスの費用を賄うという関係が明瞭になるということでは、非常に私は有意義な改革だったと、このように評価をしております。いずれにしても、その辺があいまいだと、いわゆる保険者機能というか、十分にワークしないということですから、負担と給付の関係がより明確になるということは、私はいい作用を及ぼすだろうと見ております。ところで、保険の主体については、自治体単独ではなくて、連合体、そういうものが必要だということが想定をされておりまして、したがって、まず準備段階では、そういう連合体の組成というものが円滑に実現を見ていくとこういうことが大事だというように思っています。そういうことで準備が着々と進んでいるということを期待したいし、我々もそういうことの実現に向けて働きかけていきたいと考えています。
記者:
4月に閣議決定されましたが、厚生年金と公務員などの共済年金の一元化ということで、閣議決定後、具体案をこれから作っていくということだと思うんですけれども、公務員の3階部分に代わる負担の給付のあり方とか、まだ決まっていない部分もありますが、この被用者年金の一元化についてどのように対応されていきますでしょうか。
大臣:
これは、公務員の共済年金については、いろいろな改革も常に内容を決定しつつあるということでしょう。問題は、一元化の法案というものを、どういうタイミングで提出をして、国会のご審議をお願いするかということであろうというふうに思っておりますが、これは前総理も現総理もたぶんそういうことになると思うのですが、とにかく早期に検討をし終えて実現をするようにということを言われております。このことは、私も担当大臣になりまして、肝に銘じているところでありまして、今早期にということを別の言葉でより具体的に言い換えると言うだけの準備は正直言ってありませんけれども、総理の指示の趣旨を十分踏まえて取り組んでいきたいと、このように思っています。
記者:
障害者自立支援法が10月から本格施行ということで、この間も現場ではいろいろ不安や混乱があるわけですけれども、今後、この障害者自立支援法の展開に当たってどのような点に注意されて進めていかれるお考えでしょうか。
大臣:
この問題は、法案が提出されるときにも、厚生労働部会で、あるいは社会保障制度調査会との合同の会議で、これで大丈夫ですと、こういうようになって提出をしたわけですけれども、その後、いろいろ街頭の活動等を通じて、非常にいろいろな声が上がってきました。私も、もう1回厚生労働省の担当官を呼びまして、どういうことなんだと、我々が自信を持って、もちろん改革であるし、今まで負担のなかった方々に1割負担であるとか、食費であるとかということについてお願いをするわけですから、それを喜んでお受けしますという、そういうようなことにならないとは、思ってはいたんですが、それにしても、いろいろと声の内容を吟味していると、そう簡単にこれを見過ごすわけにはいかないなという感じも、率直に言って、しましたので、私自身も今言ったような行動を取ったということです。しかし良く聞いてみると、若干負担の面を非常に過大に捉えて訴えるむきも、訴えを始める向きもあったということで、これはよく説明をするということが大事じゃないかと、私も指示をした経緯もあります。これから、いよいよ、障害児の方々への法律の適用という段階になってきます。これは、果たしてどうなるかということなんすが、少しいろいろ摩擦的に、支払い能力に対して、確かに負担が重いなというようなところについては、調整をして我々なりの工夫をし、円滑に何とか制度が定着する、浸透してくれるということを期待していきたいと、このように思っています。
記者:
薬害肝炎の関係ですけれども、訴訟で厚生労働省というか国が負け続けていて最高裁でも負けている部分もあるわけですが、B型、C型それぞれ実際の患者さんへの対策の問題と補償の問題、2種類問題があると思うんですが、それぞれについて、どのように取り組むお考えでしょうか。
大臣:
B型肝炎について、もちろん判決は、しっかり受け止めて措置していくべきことは措置すると、そういう考え方であります。加えて、補償とかうんぬんではなくて、一般的な我々としてケアすべきこと、健診をするということについては、従来同様とあえて言わせていただきますけれども、しっかり取り組んでいくということを考えております。C型肝炎については、一部地裁の判決が出たわけですけれども、これは、薬剤というものの宿命と言うんでしょうか、薬というものは部外にあるものを体内に取り組むという意味では、効果もあるんだけれども、それがもう全く100%良い効果だけで、何の弊害もない、副作用もないということは、あり得ないわけでありまして、そういう薬剤というものの本質を踏まえて、是非今後の司法の場でもご判断をお願いしたい。我々としては、先ほど言ったような、一般的な発症予防や、あるいは、現在での健康状態の認識などについては、きちんとこれはやっていきますけれども、補償うんぬんということについては、一部結論が出た地裁もあるようですけれども、この件については、やはり、しっかりした判断、より高い司法制度の中での判断もいただいていきたいと正直言って考えております。
記者:
幹事からの代表質問最後ですが、この間厚生労働省の場合は社会保障関係の大きな話題が続いていまして、今度は労働の面で労働契約法制、労働時間法制についてですね、今審議会で議論が進んでいますが労使の中にも非常に対立点も多いわけですけども、労働法制の見直しについてどのような姿勢で取り組まれるお考えでしょうか。
大臣:
今おっしゃったようにですね、3年がかりで最初年金、次介護、それから直前の川崎大臣が医療制度で、今高齢者医療制度の話もあったわけですが、そういったことの改革に取り組んで積み重ねて参りました。今度は労働行政の出番というか、そのようなことにサイクル的になっているということを私も承知をしております。頭にあるのはニート・フリーターとかというような人たちは一体なぜ生み出されたかということについて、私も改革・行革の事務局長あるいはいろいろな形で、規制緩和の中での労働法制の規制緩和というものに参画をするというの中で-まあ労働法制というものは保守的だったんですよ、率直に言って-これを改革しようということで改革をしたのであります。だからこのニート・フリーターあるいはそういうようなことによる格差が、労働法規の緩和から生まれてきたのではないかと言われるとですね、私なんかそれを推進してきた側からするとですね、そういうことが起こったことがそこのところに要因がありとされるのかというようなことで、正直言ってたじろぐような気分がなかった訳じゃありません。ただもうちょっと考えるとですね、やっぱり労働環境つまり今の雇用を欲しがっている雇用機会の質的な転換、こういったことの方が、より今言ったようなニート・フリーターといったもの、あるいは若者の雇用機会を得るのがなかなか難しくなっているということの背景には、実はそういうことの方がより大きくあるのではないかと-私はこういう批判を浴びたことから言ってですね、いろいろ考えてみましたけれども、役所に今確かめている訳ではないんですが-私はむしろそのように思っている。したがって、就任後ここに来た時もですね、労働については、私はそういう認識を基本にした表現をさせていただいたということでございます。さらにですね、これから労働契約、これについては、より就業規則との関係などについて安定的なものにしたいというようなことで、就業規則・労働契約で個別にいろいろ修正をしていくことのルール、このようなものが司法のいろいろなご批判を浴びる場合でも、より安定的にちゃんと受け止められるようにしたいというようなことで、これからいろいろ論議をしてもらうわけですけれども、ホワイトカラー・イグゼンプションなどについてもですね、基本は私は緩和がいいと思っていますけれども、みだりな緩和が労働法規というものが保護しようとする労働者の健康とか生活の保護といったようなことに支障にならないということを確かめながらこれに取り組んでいきたい、ご意見も拝聴していきたいと思っています。
記者:
今のホワイトカラー・イグゼンプションの話ですけれども、基本は緩和がいいというふうにお考えでいらっしゃるとを承ったのですけれども、一方で例えば少子化対策として、家庭と仕事、ワークライフバランスという観点からするとホワイトカラー・イグゼンプションというのは結局残業も多くなってさらに少子化を進めるのではないかという議論もございます。その点についてはどうお考えでしょうか。
大臣:
だから、そういうようなこともですね、私の頭の中には入っているんですよ。さっき生活という言葉を使いました。健康のみならず生活という言葉を使わせていただいたんですけれども、そういうようなことへの影響というのもよくよく考えて、結論を出したいと思っています。
記者:
日本を代表する企業の中でですね偽装請負問題が報道されているのですが、それについてどうお考えでしょうか。
大臣:
これはですね、社保庁改革つまり年金などの問題も背景にあるのではないか、私はちょっとその話を聞いた時に、ちらっとそういうことも思い浮かべました。これは社保庁改革というものの、野党・与党のご論議の中に当然私も含まれていくだろうと思うんですね。いろいろなことをこれから考えさせてもらいたいと思っていますので、あんまり立ち入って言うことはしませんが、私にもいろいろ考えていることがありますというのは既に申し上げましたので、どういうことをその時考えていたかということを言うと、私は皆さんご承知の通り財務畑の出身で若い頃税務署の署長もしたことがある。その後いろいろと税の執行面について取り組んだこともあるという中で、そういう税務の執行の経験からいろいろと感じていたこともあるんですね。もちろん年金の問題、厚生年金でいくべきか国民年金にいくべきかというようなことが、正しく適正に行われるということがもう一番大事なことなんですね。国民年金の未納率が高いということの他にも、その問題を私は非常に重要視しております。そういうことを考えるにつけ、税務の執行の経験というものに重ね合わせたときにどういう事をこれから考えるべきかというようなことについていろいろ考えを巡らせているということが、さっき言った私も感じているところがあるんですよということの意味合いです。今の問題提起に直接お答えしている訳じゃないんですが、そういう角度から今言ったようなことについて見ていると言うことでお答えにしたいと思います。

(了)